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1953-02-23 第15回国会 衆議院 予算委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十三日(月曜日)     午後零時十二分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       大泉 寛三君    大島 秀一君       大橋 武夫君    大平 正芳君       岡本  茂君    加藤 精三君       木村 文男君    北 れい吉君       小坂善太郎君    重政 誠之君       島村 一郎君    薄田 美朝君       砂田 重政君    高見 三郎君       塚原 俊郎君    中  助松君       永田 亮一君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    野澤 清人君       原 健三郎君    福井 盛太君       南  好雄君    森 幸太郎君       井出一太郎君    川崎 秀二君       北村徳太郎君    小島 徹三君       櫻内 義雄君    椎熊 三郎君       鈴木 正吾君    早川  崇君       古井 喜實君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    池田 禎治君       石井 繁丸君    加藤 勘十君       河野  密君    辻  文雄君       西尾 末廣君    西村 榮一君       日野 吉夫君    前田榮之助君       吉川 兼光君    足鹿  覺君       伊藤 好道君    稻村 順三君       上林與市郎君    八百板 正君       山口丈太郎君    和田 博雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         保安政務次官  岡田 五郎君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         食糧庁長官   東畑 四郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月二十三日  委員淺利三朗君、植原悦二郎君、加藤常太郎君、  北れい吉君、島村一郎君、田子一民君、塚原俊  郎君、永野護君、本間俊一君、森幸太郎君、山  崎厳君川崎秀二君、北村徳太郎君、春日一幸  君、川島金次君、河野密君、西尾末廣君、西村  榮一君、平野力三君、八百板正君及び和田博雄  君辞任につき、その補欠として大平正芳君、高  見三郎君、福井盛太君、大泉寛三君、加藤精三  君、永山忠則君、薄田美朝君、中助松君、大橋  武夫君、野澤清人君、木村文男君、松浦周太郎  君、椎熊三郎君、吉川兼光君、日野吉夫君、辻  文雄君、加藤勘十君、前田榮之助君、池田禎治  君、山口丈太郎君及び足鹿寛君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員中助松君、松浦周太郎君及び足鹿寛辞任  につき、その補欠として大島秀一君、川崎秀二  君及び和田博雄君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八、年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題とし、質疑を継続いたします。足鹿寛君。
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 最初総理大臣お尋ねを申し上げたいのでありますが、お見えにならないようであります。官房長官の御都合のつき次第御出席を特にお願い申し上げたいと思うのであります。
  4. 太田正孝

    太田委員長 足鹿君に申し上げます。御要求の緒方国務大臣だけまだ参りませんが、お申出のことをすぐ伝えます。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 私は最初農林大臣にお伺いを申し上げたいのでありますが、先日の本委員会におきまして、和田さんの農業政策目標いかんという問題について、農林大臣食糧増産農民生活の安定にその重点がある旨を御答弁になりました。しかしながら昭和二十八年度予算案、また関連法律案等を見ますのに、農林大臣の御答弁にありましたようなお言葉を裏づけするような、予算措置もまた立法措置も、きわめて不徹底きわまるものであると私は解せざるを得ません。第一に農林大臣は、法律措置伴つた食糧増産五箇年計画を打出されました。しかしながら、これは大蔵省予算削減によつて、事実上壊滅いたした感を抱かざるを得ないのであります。農業政策といい、農村政策といいましても、その帰一するところは農民政策にあると私は確信いたしておりますが、政府食糧増産計画あるいは増産運動の従来とり来つた方針、また今後とらんとする方針を見ますのに、政府方針は、戦争中の物動計画を若干修正して、これを踏襲しておるとしかわれわれ受けることができないのであります。農民の努力によつて増産されました結果は、逆に農民の利益とならずに、農民を圧迫する搾取形態がとられておる場合がきわめて多いのであります。農林大臣は、増産農民生活の安定に農業政策目標を置くと言われましたが、たとえば食糧増産政策重点は、食糧という一つの物に重点が置かれ、農民という一つの人格に対するところの施策が、きわめて低調であると私は考えるのでありますが、その食糧増産農民生活安定の二つ政府農業政策目標の上において、いずれにその重点を置かれるのでありますか、まずこの点をお伺い申し上げたいのであります。
  6. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この農業政策には二つ目標があるということは、前にも申し上げた通りでありますが、農民生活向上目標とすることは、これは言をまたないのであります。しかし食糧増産されることによつて農民生活を潤すようにしなければならぬのであります。要するにわが国経済自立のための基礎条件といたしましては、総合的な食糧自給度促進、こういうことにあると思うのであります。でありますからわれわれといたしましては、この基本的な、いわゆる生産の基本的な農地改良やあるいはまた種子の改良に力を注ぐと同時に、農家経済に対しましては、これを潤すようにしなければならぬのであります。税金等におきましても、農家の負担する税金を軽減することに努力すると同時に、また生産された食糧につきましても、これを決して無理のないよう価格で販売できるようにしたいと思うのがわれわれのねらいであります。でありますから、私たちといたしましては、この重要な農民生活に影響を及ぼすような農作物に対しましては、これを安定した価格で置きたいという考えから、重要生産物価格安定の立法をいたしたいと思いまして、ただいま検討中でございます。またさようにいたすと同時に、決して農民を犠牲にして食糧増産をするというよう考えでなく、無理はできないのでありまして、目標はやはり農民生活の安定ということを目標にしなければならぬと考えております。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 政府が当初お考えになつておりました食糧増産の五箇年計画によりますと、一千七百数十万石の増産を目途とし、それがための自給促進法の制定をもつて裏、つけをするように宣伝され努めておられたのであります。最近は大蔵省予算削減によつて、この増産目標を千六百五十万石に切下げて行かれるというふうに承つておりますが、それによりますならば、昭和二十八年度増産計画はどういう数字になるのでありますか。またそれに対する増産計画、特に種目別増産計画の内容はどういうふうになつておるのでありますか、伺いたい。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 最初食糧増産促進法考えておいたよりも、今年度予算削減されておることは事実でございます。しかしわれわれといたしましては、この十箇年の間におきましてこれを途中で補正するといたしましても、この食糧増産促進法というものをどうしても持たなければならぬと考えて、近いうちに案を具して御審議を願いたいと思う次第でございます。  大体二十八年度食糧増産目標は、農地改良造成におきまして百三十十万石、また耕種改善におきまして百二十六万石が大体われわれの目標であります。そのほかに、開拓等において雑穀類等増産が、大体玄米換算にいたしまして二十万石程度に上る予定でやつております。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 大体二百五十万石を二十八年度において増産をされるようお話でありますが、二百五十万石の増産をやれました場合に、私が先刻指摘いたしましたのは、ただ単に食糧増産をされることによつてのみでは、農民生活は安定しない事実が従来あるのであります。従つて増産をされたものは、そのことを農家経済の立場から考えてみました場合には、農家生産費低減をする。そうして反当収量が増加すると同時に労働生産性が増大をされることによつて、初めて増産の目的と農民生活安定が密着した成果をあげると思うのでありますが、さようなふうに考えました場合に、二百五十万石を増産した場合に、米一行当りに対し、あるいは麦その他の主要作物に対しまして、そのコストはどの程度までお下げになるお考えでありますか。そうでない限り、ただ単なる増産期待量であつて、それは農民生活の安定ということには必ずしも合致しない場合もあろうと思います。二百五十万石を増産された場合に、それが農業技術の普及、あるいは農業生産力基礎条件としての農地拡張改良、あるいは耕種改善等によつて増産されたものは、すなわち農民のそれだけの生産費低減という形で出て来なければならぬと思いますが、その生産費低減について、農林大臣はいかような具体的な数字をお持ちになつておりますか、お伺い申し上げたい。
  10. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 そこら辺のことは私はよく承知しておりませんから、政府委員から答弁させます。
  11. 東畑四郎

    東畑政府委員 二百五十万石の増産が、生産費低減になるかどうかという趣旨の御質問でございますが、具体的の数字としてはまだはつきり申し上げることはできないのでありますけれども、従来増産計画を立てます場合には、わが国においては、労働生産性ももちろん上昇いたしております。二百五十万石の反当の収量を増加する場合には、同時に労働生産性も上つて来るだろう、こういうふうに実は考える次第であります。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 ただ抽象的に労働生産性が上つているということだけでは不十分だと思う。何となれば、いつもの食糧増産事例を見ますと、増産計画を樹立する当初においては、農地拡張改良幾ら耕種改良あるいは改善幾ら、病虫害の防除で幾らというふうに相当綿密な御計算をされておりますが、その成果がいわゆる費目別種目別に御発表になつ事例はわれわれまだ一ぺんも聞いたこともありません。ただ単に増産計画を羅列したのみであるが、その成果作別にでも種目別にでも具体的に現われ、そうしてそれ薙らく数字なつたということが明らかになつて初めて労働生産性がお一面において何ほど向上したかということになると思うのであります。今の東畑さんのお話は、結局抽象的に労働生産性向上したというお話でありましてそういう御答弁では私は満足することはできません。さらにお答えを願いたいと思います。
  13. 渡部伍良

    渡部政府委員 お答えいたします。労働生産性の具体的の調査はなかなかむずかしいのであります。われわれのところでは、総体的の結果をつかみます前に特殊の村を選定しまして、そういう結果を拾つております。その結果土地改良をやつた部分とやらない部分との比較を出しまして、それを地域別検討を加えまして、今度の増産計画を組むときには採用しておるのであります。なおその点は、御指摘通り今まで十分でありませんでした。そこで今度食糧自給促進法を出します場合には、増産効果を調べましてこれを議会に報告するという規定を織り込みまして、二十八年度予算からそういう増産効果をねらつた調査をする費用もいささかいただいておりますので、さらに綿密にそういう効果が出るようにいたしたいと考えております。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員 今までの政府委員の御答弁では明確を欠いていると思います。農林大臣は、先刻の私の質問にもどりまして明確に御答弁願いたい。それは、食糧増産かあるいは農民生活の安定かという問題のいずれに重点を置かれるかということについて、価格政策裏づけをもつて方針とするという御答弁でありました。今政府委員の御答弁をお聞きになりましていかようにお考えになりますか。やはり労働生産性向上することによつてのみ、初めて農民生活の安定の問題が解決できると私は信じますが、もう少し生産コスト低減の問題について若干の予算という程度ではなくして、そこに重点を置いた将来の農業政策を推進される御意思はありますかどうか、その点をお伺い申し上げたいのであります。
  15. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それはお話通りでありまして少い労力で効果をあげるようにするのが大事なことでありますので、政府といたしましても、今後さようにいたしたいと考えております。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 私は先刻、価格政策の問題をもつて農民生活の安定に備えたいという農林大臣の御所見を承りました。しかし従来からの政府米価政策考えてみますと、必ずしも大臣が今申し述べられたような具体的な裏づけはなかつたと考えます。真に農民生活の安定を期待せられるならば、最終的には増産政策価格政策裏づけによるという点を明確に出されますならば、これを具体的に、日本農村収入の八〇%を占めるといわれる米麦政府買上げ価格に対してもつと認識のある、実情に即応した対策をとらるべきではないかと思う。昭和二十七年の五月二十九日の法律によりまして、食糧管理法の第三条は国会によつて修正をされました。その三条の主たる点は「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所二依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」というふうに院議をもつて可決され、施行されております。はたして昨年の米の買上げ価格あるいは麦の買上げ価格が、この再生産を確保することを旨として定むという法律精神に合致したと、農林大臣はお考えになつておりますか。
  17. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 大体全部が農民が満足をすべき価格ではないといたしましても、大体再生産ができ得る価格であると信じております。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 私は昨年の米価決定の経緯またはその合理性科学性というようなものから考えてみました場合に、今の農林大臣の御所見に対しましては納得することはできません。明らかに政府食糧管理法第三条の精神にもとつ態度をとつていると思います。その点について、価格政策の一番重点米価にあると思いますが、本年度も昨年度とつよう方針によつて米穀の再生産を確保することを旨とするごの条文に合致するというお考えであるか。どのよう方式をお考えになつておりますか、その点をお伺い申し上げたい。
  19. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 大体今までやつたと同様なパリテイ方式を用いまして、それにそのときの事情を勘案して、今あなたの御指摘条文に当てはまるよう価格を形成して行きたい、こう考えております。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 しかしながら本年度価格問題につきましては、昨年と同様の買入れ価格をもつて一応予算をおきめになつておりますが、最近の傾向を見ますと、農業パリテイ指数は漸次低下しつつある状態にあるように見受けられます。そうした場合において、政府が従来おとりになつておるようパリテイ方式によつて、いかように合理的におやりになろうといたしましても、実際とは合致しない現実の問題が出て来ると思いますが、先日和田さんの質問に対しても、この点については明確な御答弁がなかつたようであります。再生産を確保することを旨とするというこの条文に合致せんとするならば、当然生産費方式によらざるを得ないと私どもは考えておるのでありますが、従来のごとくパリテイ方式をおとりになり、一応腰だめ的に米価を算出しておいて、あとパリテイ方式をもつてこれを裏づけするような、非科学的な態度でもつて米価を御決定になるよう方針でありますか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  21. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これはいつでも米価審議会あるいはまた米価決定等について問題になることでございますが、生産費を全国一律に出すということは、なかなかむずかしいのであります。それにまた農業労働の問題についても、解決点とい暑のはなかなかございませんし、いわゆる土質もみな全国的に違つております。そういうようなことで、生産費を主体として行くということはなかなかむずかしいように思われますので、比較的正しく行くパリテイ指数方式を私たちはとつて行きたいと思つているのでありますが、単にこれのみでなく、これにいろいろな色をつけて、再生産ができるようにして行くことが今の場合いいの。やないか、こう私は信じております。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 今農林大臣は、パリテイ方式を基準として色をつけるというお話であります。その色は特別加算額、すなわち従来政府がとりましたプラスアルフアの問題であろうと思います。プラスアルフアをつけなければ再生産を確保する米価にならないということを、農林大臣はみずから告白になつたと私は考えざるを得ません。いわゆる色というものは、特別加算額のことをさしているのでありますか、他に何らかの方法をもつて生産を確保するに適当な方策というふうに解釈すべきですか、その点をもつと明確にお願い申し上げます。
  23. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 あなたの御指摘特別加算額であります。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 これ以上申し上げましても、時間の関係もありますし、この問題はあとでまた触れることにいたしまして、この際厚生大臣にお伺い申し上げたいのであります。また農林大臣からも御答弁を願いたいと思いますが、政府計画しておる食糧増産対策というものは、常に米麦に限定されておる傾きがあります。もつと食糧増産の対象を広義の食糧というふうに解釈をいたしまして、需要者食糧栄養をも重点とした、多角的な経営にマツチするよう食糧増産の構想はないかどうか。またこれはただ単に生産面においてのみそういう方式がとられましても、これに伴う消費者需要度の問題によつて非常な食い違いが出て来ると思いますが、厚生大臣は、食生活改善対策を、食糧増産対策と並行してどのようにお考えになつておりますか。本年の特別会計を見ますと、学校の児童に対して食生活改善の一助として、十六億円ばかりのわずかな金額が計上してありますが、厚生大臣はどのよう方針をもつてこの食生活改善対策を遂行して行こうとされておりますか、その食糧増産対策との関連において御所見を承りたいと存じます。
  25. 山縣勝見

    山縣国務大臣 お答え申し上げます。食糧増産食生活改善との関係に関しましては、この委員会においてすでに両三回御質問が、ございまして、一部すでにお答えを申し上げたのであります。ただいまのお話は主として食糧増産という見地からのお尋ねと思いますが、厚生省といたしては、かねて食生活改善の問題を、一面においては日本の人口の増加という問題と、また一面においては国民の体位向上あるいは栄養改善という二つ見地から、見ておるのであります。この食糧増産関係と、栄養改善体位向上の問題でありますが、いかに食糧増産見地から食生活のいわゆる転移をいたしましても、一方において体位向上あるいは栄養改善に支障があるといけませんので、両方兼ね備えた案を立てるべきであるというので、御承知ように、昭和二十二年に食糧及び栄養対策審議会というのができてその際に、日本の今後の食生活はどの方向をたどるべきかという案を立てております。そのことについてはこの前に大体申し上げましたので、重複を避けたいと思いますが、関連いたしますから申し上げますと、大体カロリーで二千百五十カロリー蛋白で七十五グラム、脂肪で二十五グラム、含水炭素で四百六グラム、こういうふうになつておりまして、それに対応いたしましたいわゆる食糧構成試案をつくつております。これも重複いたしますから詳しくは申し上げませんが、これに対して昨年——昭和二十六年度が最近における一番近い統計でありますから、それに基いて申し上げますと、蛋白は七十五グラムに対して六十八グラムとつておる。脂肪は二十五グラムに対して十八グラム、不足いたしております。含水炭素はこの前申し上げました通り、最も優秀で超過いたしておる。問題は、いつもいわれることでありますが、米麦偏重日本食生活から、むしろ良質動物性蛋白質転移して、それによつてたとえば日本が農作いたしておる米、麦を減少して、食糧増産に対して側面から、消極的な対策を講じたい、ということであります。それに対して厚生省としては、審議会の答申もありますから、できれば米、麦を減らして行く。これはもう承知だと思いますが、大体厚生省で一応考えておりますことは、決定的ではありませんが、かりに米麦を三割減らして、そのかわりに動物性蛋白質をとつて行つたらどうかということがよく言われておりますから、その点について申し上げたいと思いますが、たとえば米麦三割減といたしますと、さつきの昭和二十六年度統計では、米が大体三百五十グラム、麦が百三十五グラムですから合計四百八十五グラム、この三割といたしますと、約百四十五グラムこれをカロリーにすると、三・五をかけますから、大体五百七グラムであります。かりにこれを脂肪転移いたしたといたしますれば、大体五十グラムになります。これは厚生省としてはいろいろな案を立てておりますけれども、かりにこのうち脂肪で二十グラムをとり、あるいは魚介とかそういうもので大体七十グラムとり、あるいは肉類で三十グラムとり、大豆で十五グラムぐらいとる、こういうふうにいたしますと米麦の大体三割が転移できるわけであります。そのかわりに、そういたしますと一方において増産という問題があります。かりに脂肪で二十グラムとるといたしますと、それで大体六十万トンくらいのものがいりましよう魚介にいたしますれば大体二百二十万トン、あるいは肉類にいたしますればそれで約九十万トンぐらいいるのであります。それだけのものはたとえば家畜の増産とか、水産増産をしなくてはならぬのであります。これは農林省とも連絡をとつて協議いたしておるのでありまして、米麦はさようにいたして転移はできるが、一方において畜産、水産転移できるかという問題、またこれが一般食生活の上において単価にどう響くかという問題でありますから、たとえば脂肪なんかはできるだけ人造バター増産いたして、そうして安い、良質蛋白質を供給するということも考えなくてはならぬ、いろいろなことを考えております。この点は食糧増産とも関連いたしますから、できるだけ安い、しかも良質蛋白その他の脂肪を供給できるよう食生活、それに対する食糧構成、いろいろなことを厚生省としては研究して、農林省連絡をとつて推進いたしたいと存じます。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 厚生大臣から非常に具体的なお話を聞いたのでありますが、結局、かりに一つ事例を申し上げますならば——これはこまかいことではありますが、農村方面にとつては大きな問題であります。すなわち農村における簡易屠場の問題、これは農林省が畜産の奨励を十箇年計画で推進し始めだ。これに対して不十分ではあるが、いろいろな融資その他の施設が講ぜられつつある。ところが一方において先刻厚生大臣が申されましたように、農村において動物蛋白を多量にとりたいと思いましても、自分たちの飼育した牛であるとかあるいは豚であるとかいうような大動物になりますと、これを牛馬商の手にかけて屠場へ送り、さらに食肉業者の手を通じて農村に入つて来る。そのために農村としては非常に食べたいものでも食べられないというのが、現実の姿であることは御存じの通りであろうと思う。これを解決するいろいろな大きな計画はあろうと存じますが、現実の問題として農村に蛋白の自給を普及し、そして農村の青年あるいは婦人の体位向上ということをお考えになるならば、農村におけるこういう簡易屠場の問題等が、ろく解決して行くような具体的な対策を当然講じられなければならぬ。それが講じられない限り、絵に描いたもちではないかという感じを持たざるを得ません。これは一つ事例として申し上げたのでありますが、この農村簡易屠場の一つ事例についても、長い間の懸案になつておりますが、農林省とお打合せになり、どういう屠場法の改正等をお考えになつておりますか、この一点を最後に厚生大臣にお伺い申し上げたい。
  27. 山縣勝見

    山縣国務大臣 お答え申し上げます。お説の通りでありまして、先ほど私が申し上げました通り、どうしても日本といたしましては食生活改善をいたして、食糧増産体位向上栄養改善をはからなくてはいかぬのであります。これはただそれだけではただいまお話通り、絵に描いたもちでありますから、先ほど申し上げました通り、たとえば肉類にいたしましても私どもの方の一応の案としては九十万トンぐらいはいる。現在豚などは年に大体百万頭ぐらい殺しておりましよう。しかし現在の屠場法はたしか明治三十九年に成立したものでありまして、その後社会の情勢もかわり、また畜産の情勢もいろいろかわつておりますから、この際屠場法を改正いたしまして、従来公益優先でやつておりましたが、今回は農村または農協において、簡易にこういうような屠殺ができますように改正いたしたいと考えて、今準備いたしておりますから、いずれ御審議願いたいと思つております。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 その改正法案は、今国会に御提出になる見込みでありますか。
  29. 山縣勝見

    山縣国務大臣 極力さようにいたしたいと思つて今準備をいたしております。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 次に農林大臣にお伺い申し上げたいのでありますが、先刻の御答弁によりまして、農地拡張あるいは改良ということを食糧増産対策の根本として進みたいということであります。しかしながら、現在農地拡張あるいは改良といいましても、農林省としてはどちらに重点を置かれるのでありますか。終戦後大きな成果をあげました農地改革の断行、これに伴う農村の二、三男問題として、開墾干拓の問題が大きく取上げられましたが、最近の政府与党の方針を見ますと、ことごとくこれを経済効果重点主義に切りかえ、一方においては、農地改革の逆転することも予想されるような事態があるのではないかと憂えるのであります。本年度農地改革対策は、わずかに五万町歩であります。当初終戦後において、農村人口の問題と関連してお考えになりましたものは、百五十万町歩の農地の飛躍的な拡大政策というものが取上げられました。現在その方針はどういうふうになつておりますか。いわゆる農地拡張の問題は、ただ単に食糧増産の問題のみではなくして、農村人口の問題を基本的に解決して行く大きな政策の一つであろうと思います一海外への移住といいましても、年に五、六千人の人を送るのにどのような苦労をいたしておられますか。ほとんどその成果は、農村の二、三男問題には、焼け石に水であります。農地の飛躍的な拡張、拡大ということにその重点が置かれなければ、これは無意味であろうと思うのであります。政府が現在とつております農村の二、三男対策は、産業開発青年隊の、ごとき、わずか六、七百名の割当を本年度予算においてなされておる以外に何ものもありません。このよう農地拡大対策の貧困、人口対策に対するきわめて小さな政策でもつて、はたして何ができるのでありましよう食糧増産の面と合せて農地の拡大と改良方針を今後どこに置いて進まれようとしておりますか。二、三男問題もあわせてこの機会にお伺いしておきたいと思います。
  31. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農地の増大と農地改良とは、これは両々相まつてやらなければならぬと考えておりまして、どちらを主にし、どちらを従にするということでなく、やはり両々相まつて行きたいと思います。なるほどこの予算に制約されまして、最初計画していたようなことはなかなかでき得ないのでありますが、予算の許す限りこれをやつて行きたいと思うのであります。この農村人口の問題はこれはたいへんむずかしい問題でございますが、しかしこれにはわれわれが懸命に努力いたしまして解決しなければならない問題であります。ひとり農地の拡大と改良とによつてのみでは、人口の解決はなかなかむずかしいのでありますが、しかしやはり一番早いのはここに集中することになりますので、そういうような意味から本年も開墾事業に、予算は少いのでありますが、相当やはり重点を置いております。あるいはまた干拓等もやりたいと考えておるのであります。ただ急激にふえて来る農村人口をほんとうにはつきり解決して行くということは、なかなか骨でありますが、土地の高度の利用なり、あるいはまた酪農を奨励するなりあらゆることをいたしまして人口問題を解決いたしたいと思います。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  32. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの農林大臣の御答弁関連して経済審議庁長官にお伺い申し上げたい。農村の人口問題は、ただ単に農地の開拓のみをもつてしては基本的な解決はつかないということは、私もよくわかります。だといたしますれば、それによつて収容しきれない農村の人口問題を他に転換するとすれば、日本の産業構造を大きく切りかえて行かなければ、この問題は根本的には解決がつかないと思う。しかるに現在政府がおとりになつております産業構造の基本的な転換の目標というものは、きわめて明確を欠いている。部内において御検討の資料を見ましても、昭和二十八年度におけるいろいろな見通しはあつても、権威ある具体的な産業構造の改編についての方針というものがないように私は見受けます。そういうことで、はたしてこの急迫した農村の二、三男問題が具体的に解決できるでありましようか、農地拡張政策もきわめて不徹底である。政府の産業構造転換に関連して農村人口の吸収の点につきましても、きわめてこれまた不徹底である。といたしますれば、この問題は解決がつかない。審議庁長官の御所見を承りたい。
  33. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 足鹿さんが御心配になつている点は、私どもも同様な憂いを持つものでございます。しかし現在の情勢といたしましては、いわゆる公共事業に関する各種の施設、特に電源開発等を中心といたしまして、多額の財政投資をいたし、これらの方面に相当吸収いたしますほか、何と申しましても根本は、日本の貿易を振興して各種産業を盛んにし、その方面に吸収するということ以外にない、産業の発展をはかるという以外にないと考えている次第であります。
  34. 足鹿覺

    足鹿委員 今の長官の御答弁はきわめて抽象的でありまして、具体的なものをお示しにならない。各種産業を振興するといいましても、ある一つの基本計画に沿つて進む場合と、いわゆる場当りの政策をもつて行く場合とでも相違がありますが、いわんや現在の政府の基本的な方針が欠如しているときに、各種産業を振興すると、ただ抽象的に言われましても、産業発展の基本的な貿易は、きわめて不振な状態であり、国内の産業は、中小企業を中心にして、崩壊寸前の重大な事態に立ち至つております。これに対して政府のとつておる措置は、いわゆる特需、あるいは兵器生産等によつて、きわめて不徹底な対策を漫然ととつておいでになると、われわれは考えざるを得ないのであります。その点について具体的な基本的な方針をいつおつくりになり、それを他との関連において進められる具体的な施策がありますならば、明確にしていただきたいと思うのであります。
  35. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほども申し上げました通り、とりあえずといたしましては、今の電源開発等五箇年計画でやつておるものがありまして、本年度は電源開発にも、たとえば資金の面で申しますれば、千五百億円余を投じますので、その方面で従来よりも多数の人々を吸収し得ると考えております。そのほか公共事業も相当あり、その公共事業費のうちに、今の農地の開墾、干拓等も含まれております。また農村におきます各種工業の振興も含まれておりますが、しかし根本といたしましては、私どもは先ほど来申し上げました通りに、どうしても日本の貿易を拡大さして行く以外に根本対策はない。それ以外にどうしたらよいかというので、過日来いわゆる経済外交の強化とか、あるいは国際競争力をつけるために、各種産業の合理化とか、各種の方策を進めつつある次第であります。こうやつて日本の、いわゆる各種産業と私は申しましたのは、今そのうちで基幹産業を中心として、日本から貿易し得る各種の産業という意味を特に強めることによりまして、そういつた目的を達したい。しかし一気にこれがやり得るものでないことは、足鹿さんもよく御承知だと思います。
  36. 足鹿覺

    足鹿委員 きわめて抽象的な御答弁で、私は満足することはできません。ただお聞きしておることは、一つ日本の産業構造の問題を、基本的に方針をきめられる場合に、日本の農業、農民の地位を、どういう規模で、どういう地位に置くことをお考えになつておりますか。昭和二十一年におきまする国民所得と農業所得の比率は二四・一%、これが漸次下向して参りまして、昭和二十七年度においては一七・六に農業所得は低下しております。このような現実が、あなたの主宰しておられますところの経審の財政金融課の資料によつても明白である。これを一体どうするか。現在の政府のおやりになつておる食糧増産対策は、年々減産の一途をたどつておる。この問題に対しては、応急的な減産防止の道以外に何ものもない。同時に農民所得の面からいつても、年々所得が低下しておるのである。この低下する農民を、日本の産業構造の中にあつて、どういう水準にこれを引上げて行くのか。その引上げて行く基本的な対策はどこにあるのか、この問題が解決しなければ、問題は一歩も前進をいたしません。今長官は電源開発等の問題を出されました。しかしこの電源開発によつて農地が壊廃して行く。また一面においては、駐留軍の演習場あるいは保安隊の演習場というような問題によつて農地の壊廃は非常に大きくなつて行きつつある、こういう事態である。たとえば電源開発のために農地が壊廃して行く、また他の産業が農村地区に導入されることによつて、一面においてはそれが減産の条件となる。こういう実情はよく御存じのことだろうと思うのであります。その点どちらに経済効果を置いて、どういう具体的な対策をお立てになるのでありますか。インドにおいてすらも、国民経済会議という一つ方針を立て、その方針が外国の信用を高めて、それに従つて外資の導入が可能となり、綿紡のごときも以前においては、インドは輸入国であつたものが、急速に輸出国にさえも転換をするような機運に到達しておるやに聞いておりますが、日本において一体具体的にはどういう方針で、どういう要領でこの産業構造の問題を、農村との関係において解決せられるのでありますか。もう少しその点について責任ある基本方針を承りたいと存じます。
  37. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お話のごとくに、日本農家というものは零細農家であり、従つてその生活水準等が十分でないことは、これは御指摘通りであります。但し最近の日本の状況から見ますれば、御承知の、ごとく九十一年を標準とすると、昭和二十七年では生活水準は一一六まで農村の方は回復しておるのは事実でありますが、しかし御指摘のごとくに、実際農村の収入というものは、決してゆたかとは申されないのでありまして、生活水準は一応高まつておりますが、決してこれで足りるものではございません。私どもは日本の農村の収入をもちろんふやさなければならぬ。ふやすにはどうするかといいますれば、どうしてもその収入増加をはかるために、一反歩当り、その他そういつたものの農産物の収穫増加、及び技術の導入をもつとはかり、あるいは畜産と結びつける、そういうこと等によりまして、もつと収益をあげることと、それから一般の工業その他の方面に余剰人員を吸収して行く以外には、道がないよう考えるのであります。
  38. 足鹿覺

    足鹿委員 それはわかつておるのです。問題はそういう基本的な構想をお持ちになつておるのか、おらぬのか、具体的にそれを聞いておるのでありまして、それは小笠原さんのおつしやる通り、そういう方向へ進まなければならぬということは明らかなのでありまして、私の申し上げるのは日本の産業構造の転換の過程において、農民の地位、日本における農業の地位をどういう水準に置くかという具体的な経済審議庁としての方針、具体案を持つておいでになるかということを承つておるのであります。
  39. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま申し上げました通りに、農村の地位を高めることに対しては、十分私どもも力をいたす考えであります。但し今の経済構造をどうかえるかという問題になりますと、これはまた非常にむずかしい問題で、ございまして、今内閣総理大臣の任命で、各方面の権威者十五人を委嘱して経済審議会をつくつて日本の国策の根本のことを検討いたしておるのでありますから、その結果を待ちたいと存じております。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員 その結果はいつごろ現われるのでありますか、こういう押し問答を幾らやりましても解決がつかない、現実先刻から申しましたように、農村の二、三男は、まじめな青年もありますが、非常に前途に希望を失つて、頽廃的な方向へ走り、政府や与党のいわゆる賭博行為を伴つたいろいろな享楽施設の方向へ走つたり、まじめに農村を再建しようという人々もあるかわりに、反面これと逆な方向へ進んで行きつつある現状にある、これは急速を要する。経済審議会というものはどういう構造か私はよく存じませんが、少くともこの問題については急速におやりにならなければならぬと思うが、その結果の現われるのはいつでありますか。
  41. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 結果が何月何日現われるかということは申し上げかねるのでありますが、これらの方々も誠心誠意国のために努力されておるのでありますから、遠からず結果が現われることと確信いたします。
  42. 足鹿覺

    足鹿委員 それではもうこの問題はこの程度で……。
  43. 稻村順三

    ○稻村委員 ちよつとその問題に関連してお尋ねいたしますが、今足鹿委員から人口吸収政策いかんという話がありましたが、非常に抽象的な議論でございましたので、私にはどうしてもそれが納得できないので、もつと具体的に、その政策の一つ一つについて簡単にお答え願いたいと思います。  農村過剰人口を吸収するということが非常に重要な問題だということは、日本が近代生活に入るようになつてから、すでに問題になつて来たところでございます。従つて農村過剰人口の調査もすでにあることと思うのでございまして、この調査がなければ何にも計画は立つておらぬということになるのであります。従つてまず第一に、農村過剰人口がどれくらいあると仮定しておるか、それを御答弁願いたいと思います。
  44. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 こまかいことですから、政府委員より答弁させます。
  45. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 農村の過剰人口が幾らあるかというお尋ねでございますが、過剰人口というものをどういうふうに見るかということには、非常にむずかしい問題がありますことは御承知通りで、ござい手。いろいろな統計を見ましてもこれはなかなか的確につかめません。いつも困つておることでございますが、ただ農村の過剰人口を吸収するというふうな考え方と同時に、都市においても同じような問題が、ございまして、全体として、一体雇用がどういうふうに相なるかというふうに問題を規定する方が、ほんとうだろうと思つております。そこで、その方のお尋ねと若干違うか存じませんけれども、一応われわれの考え方を申し上げますと、明年におきましては、現在の状況から見ますと、一応人口の増加が百十万程度でございます。そのうちで、年齢構成から見まして相当な部分が、実は生産年齢人口の増加に相なりまして、それが端的に現われますのが学校卒業者の増加等でございますので、そういうふうな者が都市農村を通じて要就職人口というわけでございますが、これがどういうふうに相なるかということの第一点は、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、明年度公共事業費並びに電源開発等の財政投資が相当ふえます。この予算のうちの人件費から逆算しまして、新規に吸収し得る人口量を一応試算いたしますと、約十四、五万程度に相なろうかと存じております。それから毎年のいろいろな雇用並びに労働力の配分状況をしさいに点検いたしますと、これはある意味ではわが国一つのしわであるかも存じませんが、同時に長所でもあると見られますのは、毎年四、五十万程度の者が業主という形で、これはいわゆる中小企業主もあるかもしれませんし、農家の業主もあるかもしれません、いろいろな兼業、副業等の業主もあるかもしれませんが、約四十万はこれに吸収されております。これは遺憾ながら事実でございます。従いまして以上合せまして約五十五、六万程度の者は、例年のように吸収されておる。そのほかにも、ある業種によりましては——たとえば通信方面とか、ああいう方面におきましては若干予算上の増加もあるようでございますので、     〔尾崎委員長代理退席、委員長着席〕 従いまして明年に問題を求めますれば、雇用の趨勢は新規に財政投資で吸収されますほかに、ある程度のものがそういう形で一応の就職あるいは就業の道を見出しまして、いわゆる完全失業という形は、今年よりあまりふえないのではないか、こういうふうに見ております。
  46. 稻村順三

    ○稻村委員 私は一般失業問題を聞いているのではないのです。一般失業問題と非常に関係はあるだろうと思う。だがしかし、農村の失業というのは特殊の形態のもので、過剰人口というものは特殊な形態なのです。だからその過剰人口の見方は、一体政府はどういう見方をしておるのか。過剰人口があるあると言つたつて、その基礎数字がない。そうすると、どの程度のもの以上を過剰人口と言つておるのか。それから電源を開発するとか、あるいは公共事業をすると言つたつて一般の吸収、たとえば電源開発に、十四万やる、このうち農民の過剰人口はどれだけ吸収してやるのか、その他一般の就業が四十万から五十万くらいのところだと言うけれども、この就業のうちに、一体都市の失業者を吸収するのはどれくらいで、農村の過剰の人間をここべ吸収するのはどれくらいか。そういう見当を全然立てておらぬということになると、これは農村問題の根本が全然なつていないということになる。これを足鹿君が、こういうふうな根本的な問題がなつていないから、それで農村の国民経済における地位というようなものが全然わからない、政府自身がわからないから農業が困るのだ、こういう質問であつたと思う。だから私は関連して質問したのですが、もう一度お尋ねしたい。電源開発に十四万、その他一般就職として四十万から五十万の失業者を吸収すると言うが、その中に農村の過剰人口をどれだけ吸収する見込みでおやりになつておるか。この返答ができなければ、足鹿君に対する小笠原経済審議庁長官の答弁は、単なる抽象的ごまかし答弁になります。だからこの点、もう一度御答弁を願いたい。
  47. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 ただいま申し上げました数字は、電源開発と公共事業等の財政投資に吸収される分が十四、五万と申し上げたのであります。電源ばかりではございません。それから雇用の問題は、これは御承知ようにそれの見通しで、ございまして、計画的に配置という形の議論で実は参るわけで、ございませんので、農村でどういうふうに生産年齢人口の増加が生じて参るかというふうな推計は、実は非常にむずかしいのでございます。現在あります農村の次三男というものは過剰というふうな形でありますのかどうか、なかなかむずかしい形態にありますので、これを何万というふうに数えますのは、実はもう統計の技術を越えております。遺憾ながら、われわれとしても実はつかんでおりません。ただ言えますことは都市と農村の現在の人口比は、やや都会の方が多いようでございます。たしか五十三と四十七くらいでございます。おそらくはそういうふうな比率で、生産年齢人口の増加ができて参るのではないか、こういうふうに存じております。ただお答えしておきますが、農村で発生した過剰人口が電源に幾らとか、公共事業に幾らとかいう配置転換の問題は、これは事柄が雇用の問題でありますので、人間のことでもあるので、そう計画的には配分できませんし、発生のおもなるものは人口比に近いもので行くのじやないか、こういうふうに思います。
  48. 稻村順三

    ○稻村委員 どうも話を聞いてみると、何も基本調査もできないし、計画もできていないということをただ言つておるようであります。私は何もそんなに統計的にはつきり数字が出るようなことを言つておるのではなくて、農村過剰人口の吸収というものは、これは日本農業政策のうちで非常に重要な問題になつておる。そうすれば腰だめだけでも、農村過剰人口がどれくらいあるかということがわからないと言うなら、一切の農業政策は立たぬということではありませんか。おまけに小笠原経済審議庁長官が、この農村過剰人口を吸収するために電源開発もやるし、公共事業もやるし、その他もやると言うから、やると言うならば一年間に農村から一体どれだけの人口を吸収するという解決策があるから、これを解決策として出したのでしよう。ただ十四、五万くらいやるのならば、こんなのはいらぬではありませんか。都会の失業者全部をやるだけだつて、足りないではありませんか。農村から一体どれだけやるか。それでなければ、そこに出て足鹿君の質問に対して答える必要も何もない。それを足鹿君が言うのです。農村過剰人口をどうするかと言うたならば、電源開発や公共事業をやる。それならば、それに対して一体農村の失業者、農業の過剰人口をどれだけ吸収する予定なのかと言つたら、それは調査がむずかしいからと言うのでは、それでは初めからこれは計画になつていないではありませんか。こんなばかな答弁をしておるからいつも問題になる。全然計画がないなら、計画がないとはつきりおつしやりなさい。その方が正直でよろしい。私は要望ぐらいを述べて、関連質問ですから、これぐらいにして切り上げておきます。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 時間が十分ありませんので、いろいろまだお尋ねしたいことがありますが、簡潔にお尋ねを申し上げたいと思います。  食糧増産運動は、わが国の基本的な問題でありますから、政権がどのようにかわつても、常に長期、一貫性を持たなければならなぬと思うのです。にもかかわらずこの基本方針が、大蔵省の査定によつて常にぐらついておることは、非常に私は遺憾に思います。また具体的な運営の面におきましても、私は遺憾な点が多々あろうと思う。補助金は、各部、各課がばらばらにこれを流しておる。そうして小さく区分をして地方自治体にやる。これは官僚のセクシヨナリズムによつて、また細分的にこれが流れて行く。いわゆる総合性というものが非常にないようにうかがうのであります。大臣は中央計画にもつと弾力性を持たせて、地方自治体に自主的に運営をせしめる。たとえば補助金等の効率的な力を発揮できるよう方針をおとりになる御用意がありますかどうか、その点をお伺いいたしておきたいと思います。
  50. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 今立案いたしておりまする食糧増産促進法には、あなたのおつしやるような総合的な、長期な、計画的な方向で行きたいと思つております。そしてまた効率的にこれがほんとうに運用されるようにいたしたいと思つて、案をつくつておるわけであります。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 その長期、一貫性のある方針というものは、どういう名前の法律で、本国会にいつ、ごろ御提出になりますか。
  52. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 食糧増産促進法、大体そうなると思つておりますが、さようにしたいと思つております。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 いつごろ……。
  54. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 ごく最近に出したいと思つております。
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 当初においても食糧増産促進法であつた。ところが大蔵省の査定にあつて、ほとんど支離滅裂にまでこわされたものが、やはり食糧推進法というものでお出しになるように承りました。いかにもその内容の伴わないものをお出しになりましても、私は非常に農民も失望し、国民も失望すると思う。もつと一歩進めて、長期、しかも一貫した農業政策、あるいは食糧増産政策というものをお立てになるためには、推進法というふうな名前でなくして、増産基本法というような大きな構想でもつて進まれて、初めて私は所期の目的が達成できると考えるのであります。そういうものではなしに、削られたままの推進法ということなので、私は非常に失望いたしました。これはよくお考えになる方がよろしかろうと考えます。  そこでこの際大蔵大臣お尋ねを申し上げたいのでありますが、食糧増産計画によつて農民が非常に増産をした。これには若干の国家投資が伴つておる。たとえば積雪寒冷単作地帯を振興するために、臨時立法が一昨年できた。そうして新潟県やその他の方で、農民が一生懸命わずかの補助金で裏作をやつた。ところが大蔵省は地方の税務署を通じて、これをただちに調査して、税金をかけようとした。そのために、農民はせつかくわずかな補助金でようやく裏作が可能になつた今日、ただちにこれを課税の対象にして行かれたのではたまつたものではないというので、憤激をして、麦を青枯れにした事実があるのであります。農林省増産をやれという線に沿つて農民が自己負担を相当出して、国策に協力した。このものに対してはまだ投下資本の償却も済んでおらない。そういう増産施設に対して、その成果に対して、課税をするというようなことは、私はいかに政府食糧増産対策が、各省間において無統一なものであるかということを実証しておると思う。よつて私は大蔵大臣お尋ねを申し上げたいのは、国の援助によつて農民が負担して行う施設につきまして、投下資本の償却し終るまで一定の年限、増産分に対して免税措置をお講じになる御意思がありますかどうか、この点をお伺い申し上げたいのであります。
  56. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいま御指摘よう事情はごもつともと存じます。それでただいままでのところでは、実情に応じて課税の方法に手心を加えているということでございますが、その御指摘の点はよく考慮いたしたいと存じております。
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 次に私は農産物価格問題、特に主食管理制度の改廃の問題について、お伺いいたしたい。政府は米について、二十七年度に引続き、統制を継続すると言つておる。その方針は、昭和二十七年度とつ方針と同様であるかどうか。昭和二十七年度の供出の方針は、すなわち義務供出を軽くし、特殊供出を優遇して、いわゆる供出後の自由販売を政府は呼号しました。ところがその結果として、先日政府は公表しておりましたが、一月末の政府買上げ数量は、大体二千三百万石が義務供出、義務以外のものが三百四十万石、自由販売の米、いわゆる特殊供出がたつた二十五万石であります。すでに自由党及び政府が国民に公約した供出後の自由販売制度というものは、昭和二十七年度の実績において、もろくも崩壊しておる。失敗しておるのであります。完全な失敗であります。何ら実績が上つておらない。こういう二十七年度の実態になつておるのでありすが、やはり二十八年度方針は、二十七年度に引続き、統制を継続するということは、こういう具体的な内容を踏襲されるものと解釈してよろしゆうございますか。その点をお伺い申し上げます。
  58. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 大体本年やりました方針によつてやりたいと思います。最後に自由販売のことを失敗と言われたようでありますが、私は失敗ではないと思つておるのでありましてこれが協同組合等を刺激いたしまして、協同組合が今度くらい買入れについて政府に協力してくれたことは、私はないと思つております。そうしてまた、最終の供出は、大体私らが見まして、二千七百五十万石から二千八百万石近く供出されるのじやないかと、こう考えますので、決して私は失敗でないと思つております。
  59. 足鹿覺

    足鹿委員 失敗でないとおつしやいますが、義務供出が二千三百万石、義務以外のものが三百四十万石で、自由販売だと政府が称したものは、たつだ二十五万石なんです。だから比率の上から言つてこれは完全に失敗しておる。これは現実の事実でありますから、失敗でないとおつしやつても、私はそう解釈せざるを得ません。私の言いたいのは、要するにことしの供出の実績の示すのは、価格政策の妥当な裏づけさえあれば、農民は自主供出にあくまで協力をして行くということが、実証されたことであります。従つて自由販売にするということでなくして、農民の自主供出を中心としていわゆる管理政策というものを方向づけられることを、ことしのこの供出実績が示しておるのでありますが、そういうお考えであるかどうかということを聞いておるのであります。
  60. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この自由販売の特殊供出の方が二十五万石程度で、失敗じやないかということでありますが、これは農民の選択の自由でありまして、今まで協同組合がどれだけ農民に親切であつたかということが裏づけされるわけでありまして、決して失敗ではないのであります。ただこういうような方向でわれわれは進みたいと思いますが、悪いところはやはり直して、喜んで農民が供出できるような方途をむろん講じて行きたいと思つております。
  61. 足鹿覺

    足鹿委員 時間がありませんので、質問をはしよつて先に進行したいと思います。大臣がいかに強弁されましても、農民組織の協力を求めた自主供出制度の方向をやはりおとりにならなければ、むやみやたらに自由販売を呼号されましても、それは決して正しい公約ではない。従つてことしの成績のように、すぐ事実が証明するとふうことを、よく御銘記願つておきたいと思うのです。政府は今後の農政の基調として、主要食糧増産と農産物価格の調整のための施策を講ずることを方針にも明らかにしておりますが、いわゆる調整ということは、非常に矛盾があるから調整を必要とするのです。最近米を除いて自由販売にされましたが、次々といも類の価格が暴落をする。あるいは菜種が暴落する。いろいろな事実が現われて来た。そこで政府はあわてて農産物価格安定法なるものを用意しておると聞いておりますが、大蔵省がこの安定法に対してきわめて消極的であり、一部には反対の意見すらも持つておる者があると聞いております。そうしてそのために議員立法に委嘱するものとして、農林省提案見込みの法案の中に書いてあります。一体何ゆえに大蔵大臣は、先刻農林大臣が仰せられたように、食糧増産裏づけ価格政策であるということを肯定していながら、その価格政策一つの根幹をなそうという安定法を出そうというのに反対をされるのか、その意味が私にはよくわかりません。あるいは消極的であるという意味か、そうだとするならば、大蔵省農林省とは食糧増産政策に関する限り完全に意見が一致しておらない。すなわち施策がばらばらであるということを実証することになりますが、そのような事実がありますか。すみやかに御提案になる御用意がありますか、その点お伺いしたい。
  62. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 日本大蔵省はそうわけのわからぬ大蔵省でないと思います。特に大蔵大臣はアメリカの農産物を政府が買上げることをよく認識されております。ただ事務の折衝がまだそこまで行つていないと思いますが、私はできるだけ早く話をつけて提出いたしたいと思います。政府よりももつと議員の方にこの安定法を作成する熱意があるようでありますので、あるいは議員提出になるかもわかりませんが、これはよく相談いたしまして、どつちにいたしましても早く私は解決をして行きたいと思います。
  63. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 これは性質からいいまして、ごもつともな話でございますが、財政上よほど困難なものだと存じます。よく研究いたします。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 時間がありませんので、項目をあげてお伺いしたいと思います。農産物価格安定法の基本方針、これはいわゆる農産物価安定でありますか。農産物等という字が原案にあるようでありますが、「等」というのは一体何ですか。農産物価格安定法で、その目的は農産物の価格を安定するというものでありますか。「等」という字が入りますか、入りませんか。
  65. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 非常に頭のまわりがよろしいので、かえつて広く解釈していただいておるようですが、実は鯨油等が入ればなおよろしいのでありますが、今のところは鯨油を入れて考えておりません。農産物として出しております。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 大体政府予算対象になつておるのは澱粉類が食糧特別会計に載つておるようでありまして、あとは予備費に何らかを組んでおいでになるように私どもは察知しております。あの予算の組み方を見ますと、この予備費の中に鯨油あるいは脱脂乳というような工業生産物にまで波及するような印象を受けます。だから私は農産物等と「等」の字をお入れになるかどうかということを聞きただしたのでありまして、いわゆる純粋なる農産物に限定して行こうというお考えでありますか。あるいはいわゆる農村工業の生産物までも含めた方針で行かれようとしておるのでありますか、その点をお伺いいたしたい。
  67. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 今のところは農産物に限定して考えております。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 鯨油等や農村工業のものは、農産物とは別に一つの安定法をお出しになるのでありますか。
  69. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 まだ鯨油までは考えておりません。澱粉、菜種程度に現在のところ考えております。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも問題が具体的になりますと、一向はつきりいたしません。私は非常に遺憾に存じますが、農林大臣の構想としては農産物ということで行かれる、こういう方針だと解釈してよろしいのでありますか。
  71. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 そう解釈してさしつかえ、ございません。
  72. 足鹿覺

    足鹿委員 まだいろいろたくさんあるのでありますが、時間がありませんので、最後に入りたいと思いますが、委員長官房長官はおいでにならないのですか。
  73. 太田正孝

    太田委員長 官房長官は二時過ぎまで参議院の方の答弁に出ておつてそれまではむずかしいそうですから。……大分時間も過ぎましたので、しかるべくどうぞ。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 最後にもう一、二点お伺いしたいのであります。政府の災害復旧対策についてでありますが、本年度において百三十六億八千六百万円、前年度百十九億八千五百万円、差引の増はわずかに十七億、農村を歩いてみますると、二十四年ごろの災害がまだほつたらかしてある。一体災害を復旧いたしましても増産にはならぬのでありまして減産したものを元へもどすだけでありまして、これは一つの積極的な増産運動にはならぬのであります。減産防止の対策以外の何ものでもない。こういう重大な問題がわずか十七億の増額でありますが、一体政府は過年度災害をどういう方針によつて一掃されようとするのでありますか。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 あるいは年度を切つて、二十四年までのものは予算を通して一掃するならする、あるいは二十五年までの旧災害はこれを区切つて一掃して行くというような、少し現実に即応した対策がなされなければ意味をなさぬと私は思うのでありますが、この点いかがでございましよう
  75. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 政府委員から計画を説明させます。
  76. 河野一之

    河野(一)政府委員 農業のみならず、建設省所管、運輸省所管におきましても多額の過年度災害を擁しておることは事実であります。最近の災害の状況にかんがみまして、最近のものにつきましてはできるだけ財政の許す範囲で、その促進をはかつておるのでありますが、何分にもその総額が巨額に上りますので、十分な程度にまで行つておらないのであります。今後財政の許す範囲におきまして、できるだけ過年度災害の早急な復旧をやつて行きたいと思います。
  77. 足鹿覺

    足鹿委員 私のお聞きしているのは、要するに二十四年ごろまでのものが、まだ非常に地方にあるのです。だからこれを早急にやるということはもちろん同感である、そうあらねばならぬのですが、具体的には、遡及して古い災害を早く直して行くということが必要ではないかと思う。それが昭和二十八年度に至つても、二十四年のものが、ごろごろしているというようなことでは、食糧増産運動の重大な一環がその面からくずれて来るのです。ですからこれに対する具体的な方針はどうか、過年度災害は何年までのものをぴつしり片をつけるとかつけぬとか、ただ抽象的にそういう方針で行きたいということでは、どうも納得が行かないのです。御答弁がありましたら廣川さんから……。
  78. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 なるべく古いものから片づけて参りたいと思いますが、しかしその年の災害の度合いによつてあとのやつを先にやつた方がいいということだつたらそうしなければなりませんし、そうしなければならないのでありますが、しかしなるべく古いものから片づけて行きたい方針であります。
  79. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも内容に入りますと、一向明確でない。遺憾ながら私は急ぎますので次へ移りたいと思います。  農業団体の再編成の問題でありますが、補助金でつつて、そうしてこの農業団体の再編成を御計画になつておるように、予算面では見受けられます。一番問題になるのは、技術普及の問題ももちろんでありますが、農業と農民一般的な利益代表の機能を行わしめるために、都道府県の農業委員会を法人格にする、中央の農業委員会を新しく創設して、これに対する経費を国が補助することになつておりますが、これは農業団体再編成の非常に大事な点だろうと私は見ております。いわゆる農民の利益代表の機能を持つというそういう性格のものは、ときによつて政府農業政策にぶつかつて行かなければならないような機能を発揮しなければ、農民は満足しないのです。合法的に、どこまでも合理的に政府の政策の矛盾に対してぶつかつて行くのが、農民一般的利益を代表するほんとうの団体だと私は思うのであります。そのものに八千万や一億円のはした金を補助して、これにいわゆる農民の利益代表の機能を与えるといいましても、これはいわゆる官僚支配の農業団体の再編成と断ぜられても弁明の余地は私はないと思うのでありますが、この際にもつと別な角度からほんとうに農民が希求しておるのは、農民みずからの自発的な意思によつてつくつた農民組織が現在ある。この農民組織に対して、労働組合と同じよう一つ立法的な措置を与えて行くならば、いわゆる法治国家においては最も好ましい、いわゆる自主的な農民組織の整備、強化ができ、従つて農民の利益代表機関としての仕事ができると私どもは考えておりますが、農民団体法あるいは農民組合法というような面については、一顧もお与えなかつたように承りますが、農民団体法あるいは農民組合法というようなものについてお考えなつた事実があるか、またあつたとすればなぜその問題を構想から除外されたか、そういう点について、従来の経過と将来の見通しを承りたい。
  80. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農業団体再編成について、少しばかりの補助金をやつて官僚の代弁をさせることはけしからぬじやないかというお話でありますが、しかし少しばかりの補助金であつても、その団体が活発に働ければよろしいのでありまして、決して農民団体の欲求を押えるために補助金をやつておるわけではないのであります。その機能が完全に発揮できることをこいねがつておるのであります。また自主的な、下から盛り上つて来る農民運動について検討したかということでありますが、これは三年ぐらい前だつたと思います。司令部のあつたときからその検討をいたしておるのでありますが、これを法律でその方向を示すというようなことをせずに、あくまでもこれが自主的に発達し、また自主的にこれが活用されて行くことをこいねがつておりまするので、その農民組合法というような法についても、検討をいたしたことがないじやない、あるのでありまするが、まだ結論に至りませんので、今のところは自主的にこの農民運動が発達することをこいねがつておるわけであります。
  81. 足鹿覺

    足鹿委員 まだ他に大蔵大臣に対しての農業課税の問題もありますが、最近一応妥結をいたしました肥料安定価格の問題もありますし、あるいは米価算定の場合と関連いたしまして、政府の賃金政策の問題に対し、同一労働同一賃金の原則の問題が、米価算定の場合の農業従事者の自家労賃の計算の上において、必ずしも妥当適切でないというような点について、いろいろ意見も持ち、お伺いしたいこともありますが、私一人で会議の進行を妨げましても恐縮でありますから、これはまた別な機会において大蔵大臣にも経審長官にもお伺い申し上げたい。  緒方副総理がお見えになりませんので、別な機会に御答弁を承つてもけつこうでありますから、委員長においては最後にこの一点をたださしていただきたいと思います。総理大臣に対する質問は三つあります。一、農業政策はその性質上特に長期にわたる、しかも一貫性ある大国策の樹立を絶対に必要とするが、政府としての農業国策の目標はどこにあるか。先日の和田さんに対する答弁において農林大臣は、食糧増産農民生活安定にあるということを言われましたが、そういう農林省としていわゆる国策化しておらないものを、事前にどんどん新聞に発表する、社会に対して発表する、そうして農民にある程度期待をさせておいて、今度は大蔵省の査定でいけなかつたからというのが、政府の従来の方針であります。これは農林省方針であるから、一応大蔵省の査定によつてあえなくついえて行くのである。少くとも農業政策というようなものは、どこまでも長期一貫の方針が立てられて、どのような政権ができても、その基本のコースだけはかえないというのが、私は真の農業国策であろうと思います。その点について、総理大臣の農業国策についての所見を承りたいということが一点。第二点は、もし一つの方向があるといたしましても、予算、財政上の裏づけの場合、一定の計画態勢に基いてその配分が行われません。従来の事例がそうであります。各省間の分配あるいは事務的な折半、天引というような、いわゆる一つの分配技術によつて政策が常にゆがめられている。こういうことではたして何ができるか。少くとも私は政府農業政策がきわめてずさんであり、ほんとに長期、一貫性を欠いているという生きた証拠であろうと思いますが、この点については予算上あるいは財政上の裏づけの場合において、今後いかよう方針をとるか。政府全体としてどういう方針でもつてつて行くかということが第二点。  第三点は政府は昨年総選挙後の組閣に当つて、小笠原さんを農林大臣に任命し、就任直後に通産大臣に変更されました。そして現在の廣川さんが三度、四度農林大臣におなりになつたのでありますが、その更迭の事情をわれわれ見ておりますと、農林大臣として適材であると思つて任命した農林大臣を、わずか一月を出ずして解任せしめる、その理由は常に党内事情に私どもはあつたやに思う。真にいわゆる農業政策の担当者として適格者であるということできめたものならば、みだりに動かすぺからざるものであろうと私は考えざるを得ません。常に党内事情によつてような人事が行われて来たという点を、私は非常に遺憾に思うものであります。政策もない。他の産業構造との関係においての農業水準の引上げの具体性もない。予算裏づけについても分配あるいは折半や天引でやつている。そういうところへ持つて来て農林大臣が常にその地位が動揺している。第二次吉田内閣以降四年間にわたつて農林大臣の更迭は六回に及んでおります。他の経済閣僚の中にあつて農林大臣くらいひんぴんと更迭されたいすはありません。最初に森、廣川、根本、廣川、小笠原、廣川と六代にわたつて、わずかその大臣としての平均年限は八箇月に足りません。このようなことではたして真に権威ある農業政策の担当者として——具体的な実践家としての農林大臣がこういうように常に地位が動揺する、しかもその動揺の原因は常に党内事情にあるという従来の経緯と現実を見まして、結論的に言うならば農業をきわめて軽視しているという結論に私どもは到達せざるを得ない。この点について総理大臣の大体の今後の方針計画予算やそういうものを具体的に実践するのが農林大臣でありますから、その点につき今後の方針をお伺いいたしたいと思います。私のごの三つの質問に対する御答弁は、他日総理大臣なり官房長官の御都合のついたときに、本予算委員会の席上においてお願いいたしたいと思います。委員長においてもさようおとりはからいをお願い申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。
  82. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 稻村君から関連質問の御要求が出ております。これを許します。
  83. 稻村順三

    ○稻村委員 今足鹿委員からの米価に関する質問に対しての答弁関連しまして、ごく簡単に二、三質問してみたいと思います。それはこの前のだれかの質問に対して、農林省の今年の農林予算で、大体二百五十六万石であつたかと思いますが、それを増産する計画があるという話であります。増産というものは言うまでもなく米価との関係が非常に深いものでございますが、それならばまた米価との関係において、もしもマイナスになるような状態であれば、増産を強要するということがむしろ農民生活を犠牲にさせることなので、二百五十六万石を増産させることは、それだけ多く農民に犠牲をしいるという結果になるのであります。従つて二百五十六万石の増産というものは、少くとも米価プラスになるよう増産でなければならない。言葉をかえて申しますれば、この二百五十六万石の増産によつて米価生産費を引下げるという計画のもとになされなければ私は増産の意味が達しないと思う。その意味から申しまして、農林省は今度はいろいろな意味において農林予算をふやした、そのふやすことによつて増産をはかると、こう言つているのでございますが、これは経済審議庁長官でもどちらでもよろしいのでありますけれども、この二百五十六万石の増産によつて、大体一石当りの生産費を何パーセントくらい引下げるという計画のもとにやつているのか。この計画は何でもないようだけれども、こういう計画がなかつたところにやたらに増産なんて言われれば、これはほかの国民食糧のためだという理由のために、農民を犠牲にするごとになります。ですからその点の大体の大づかみの結論だけでよろしゆうございますが、簡単に、今年の予算によつて増産することにより、従来の生産費をどのくらい引下げるという予測のもとにこの予算が組まれたか、その点だけを御答弁願いたいと思います。
  84. 渡部伍良

    渡部政府委員 増産量を出しましたのは、農地改良、造成及び耕種改善であります。灌漑排水とか開墾とか、それぞれにつきまして大体石当りどれだけの経費がかかるということを算定して、地区を選んでいるわけです。たとえば土地改良では一石当り二万円から三万円くらいの財政投融資の必要なところを選んでいるわけであります。それによつて農地が造成された後に、いわゆる生産費の肥料とか労賃というものが、どれだけ節約になるかという点は、場所々々によつて相当効果があると思います。たとえば干拓の、ごときは収量が倍近くも上りますから、非常によくなると思いますが、全体的にパーセンテージを出すとなりましすと、これは何と言いますか、米麦増産量に対する比率が非常に低いものですから、パーセンテージで計算すれば、数字上はほとんど零コンマ以下になりますので、そういう計算はやつておりません。ただ今の具体的な事業の内容について、それぞれの効果検討しているというわけであります。
  85. 稻村順三

    ○稻村委員 そういう計算をしておらないと言うが、さつき政府委員の説明を聞いていると、計算できる。一つ一つ特別な事情はあるけれども、大体のところは計算できるという説明でありましたが、それならばなぜこれだけの予算を出せば、これだけのコストを引下げることができるというような意味のものを、明らかに示してもらえないか。この点を明確に示さぬというと、ややもすると政府がある程度予算を組んで増産させる。しかしそれによつて非常に多くの労力や肥料やその他食うために、むしろコストの引合わないよう増産をやりまして、農民の犠牲を大きくしているという事実はあるのです。全部がそうだとは言いませんが、条件の悪いところはそうなんです。ですからそういうふうな一応の計画があるならば、今でなくともよろしいですから、この予算委員会にそういう計画をお示し願いたい、またそれを中心といたしまして、われわれは、この予算がどういうところにどう使われているから、妥当であるかないかということの検討の材料にもなるのですから、ぜひそれを願いたいということを要望して、私の関連質問を終えたいと思います。
  86. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 それでは休憩に入りたいと思いますが、先刻の議院運営委員会において了承されているそうでありまするから、午後再開後は本会議の議事と並行して、当委員会審議を進めて行くことといたしますから、御了承願います。  これにて休憩し、午後は三時より再開いたします。     午後二時二分休憩      ————◇—————     午後六時四十分開議
  87. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質問を継続いたします。古井喜實君。
  88. 古井喜實

    ○古井委員 私は警察費と義務教育費国庫負担金とを中心として御質問いたしたいと思います。この両問題については、あるいは要綱が提出せられ、あるいは法律案が提出せられ、それに関連してある程度の質疑応答も行われました。しかしまだ明らかになつておらぬいろいろな問題があると思います。また御説明によつてかえつて疑問を深めた事柄もあるのであります。この両経費と、これと深い関係を持つております平衡交付金とを合せて約二千億という金額でございます。この二千億の金がわれわれの幸福のために使われるかどうか、これについては、さだめし政府あるいは与党の皆さんは心がお急ぎでありましようけれども、しかし納得の行く説明を伺わなければならぬと思うのであります。これはわれわれの国民に対する務めだと思うのであります。  私はまず警察費に関連して御質問いたしたいと思います。今日の警察制度にいろいろの欠陥があることは常識でございます。たくさんございましようが、とりわけ機構の分立という点は大きな欠陥だと思います。ことに国警と自治警というものが分立しておる、また自治警においては、多数の単位の警察が分立しておるということは一番大きな欠陥だろうと思います。そこで、これらの機構に対して一元化の方向に向つて改革を加えるという必要は、これを認めざるを得ぬと思うのであります。問題はその一元化というものを一体どういう方向に向つて、どういう形で実現するかというところにあると思います。政府の改革の御案を拝見いたしますと、どういう方向に向つておるか、また数字がすつきり通つておるかという点についていろいろ解のしにくい点があるということは、率直にだれしも認めなければならぬと思うのであります。  まず政府案におきましては、中央に国家公安委員会の組織に準じたような国家公安監理会を置いてあります。また地方に従来のごとき公安委員会を存置しようとされております。あたかも従前の警察の理念と体制を維持しようとなさつておるかのごとくであります。しかし政府の案におきましては、中央の公安監理会はもはや警察の責任者ではありません。警察の責任者は新しい警察庁長官であり、監理会は単なる諮問機関とされておるのであります。都道府県の公安委員会は、この要綱の上では行政管理、運営管理をつかさどるとされておるようでありますけれども、すでに警察長の任免権も持たぬのであります。その下の警察職員の任免につきましても、単に意見を聞かれる、それだけであります。これは従前の公安委員会とはまつたく似て非なるものとなつておるのであります。都道府県の警察職員は、一部の上級幹部を国家公務員として、その他の多数を地方公務員とされております。また警察の経費を都道府県費の負担ということにされております。あたかも自治体警察の体制を維持するかのごとくであります。しかし地方公務員たる警察職員も、その任免権は中央政府が任命し、かつ国家公務員たる身分を持つた警察長がこの任免権を持つておるのであります。経費の支弁につきましても、都道府県は単に財政的負担と支弁事務の負担とを課せられるだけでありまして、自治体自体としては何ら関与するところはありません。むしろかかるからくりを通して、経費の不足を転嫁されようとしておるだけであると思います。この政府の案におきましては、かように幾多あいまいな点があるのでありますけれども、しかしその本質は、明らかに国警的なものであると私は思います。なぜかと申しますと、警察の中心機関は中央では警察庁長官、地方では都道府県の警察長、この二つが中心機関であります。中央の監理会はもとより、地方の公安委員会もほとんど私はロボツト的な存在であると思います。公安委員の資格要件が緩和されましたことも、これもいわばロボツト化に役立つことであろうと思います。また中央の警察庁長官は閣議に列席される、かつ総理から指名された国務大臣であります。地方の警察長はその長官の任命する国家公務員である。ここに一貫した筋金が通つておると思うのであります。そうして長官は、列挙された警察事務だけについて指揮監督権があると言われておるけれども、その列挙なるものはまことに漠然たる列挙であつて、限界がないにひとしいのである。かつまたすでに任免権を掌握いたしました以上は、もう指揮監督権は万能であります。それは今日、国警本部長官はただ管区本部長の人事権だけを持つ、また管区本部長が地方の警察隊長の任免権を持つ、ただそれだけで何の指揮監督権もないにかかわらず、ごらんのごとく全国各府県の警察を駆使しておるのが実情であります。補助機関が地方公務員であるとか、警部以下が県費の支弁であるとかいうようなことは、これは何ら本質に触れるものではない。政府の意図される警察というものは、まことにその性格は明らかになつておると私は思います。  そこで政府にお伺いしたいのであります。警察の一元化は必要であるといたしましても、何ゆえかかる国警体制、少くとも国警的色彩の非常に濃厚な警察をつくらなければならぬか。終戦後今日までの七年間に、国民は徹底的な民主化の洗礼を受けました。今日の国民は、戦時あるいは戦前の国民ではないと思います。私どもはこの歴史的な大きな事実に目をおおうことはできないと思います。われわれ七年間、いわゆる追放の境遇におりました者等は、特にこの点について反省をしなければならぬと思うのであります。この大きな事実、これを元といたします以上は、今後の政治にいたしましても、行政にいたしましても、民主主義の基礎の上に全国民の努力と責任とでこれを展開し、発展をはかつて行かなければならぬと思うのであります。また今日の警察の現状を見ますると、十三万二千余の警察官のうち、国警に属するものが四万八千余、すなわち三六%、自治警に属するものが八万四千余、約六四%、すなわち三分の二に近い警察官は自治体警察に属する職員でございます。警察事務が一番困難で繁劇なのは、申すまでもなく都市であります。都市における警察は、今日とにかく自治体の態勢で維持されておるのであります。いろいろ言いようもありましようけれども、とにかくこれは大きな事実であると思います。自治警につきましては、あるいは人事の行き詰まりであるとか、素質の低下、志気の沈滞、非能率、地元との結託、いろいろなことがいわれております。しかしこれらのことは、おおむね小単位の警察であるということから起つておるのであります。これを府県単位に再編成するならば、その欠陥の大部分は補えるはずであると思うのであります。  なお、特に自治体警察のために弁明したいことがございます。よく自治隊警察においては、犯罪の検挙率が悪いということが指摘されます。しかしこれは、そもそも都市における犯罪の検挙そのことがむずかしいのであります。昔から都会地における犯罪の検挙率は悪いのであります。その点はしばしば指摘されますけれども、私はここで陳弁をしなければならぬと思うのであります。欠陥というならば、国警にもやまやまございましよう。いろいろ国警には優秀な人物も集まつておいでになると思いますが、しかし今日の国警の一番大きな欠陥は、批判機関がついていない警察であるということであると思います。府県における警察は、府県において常時批判を受けないところに致命的な欠陥があると思います。権力機関であるだけにそうだと思います。政府は警察官適格審査会を設けるというお考えがあるようであります。しかしこういう機構は、まつたく有名無実であります。一体一般市民のだれがわざわざ煩雑な手続きをいとわずに、また場合によれば、後難を意に介しないで苦情を持ち込むでありましようか。やはりこれは常時大衆に接触したり、大衆を背景にして立つ国会とか地方議会にして初めてその務めが尽せると思うのであります。私はこの問題の要点は、自治警の短所というようなことでなくて、国警と自治警とが分離しているというところにあると思うのであります。なぜ政府は自治警の短所を補つてこれを育成しようとしないで、せつかちにこれを抹殺して全警察を国警化しようとなさるのか、この点について私はまず第一に伺わなければなりません。ことにつけ加えておきたいと思いますことは、今日はすでに十一万の保安隊がおります。私は保安隊を政府のおつしやるように警察機構とは思いません。しかし何であろうが、従前の軍隊のときにおきましても、治安については、これが平素無言の大きなうしろだてになつておりました。また非常の場合には、直接に治安の確保にも当つた事実があるのであります。こういう点をもあわせ考えまして、なぜ政府は、この自治警の短を補つてこれを育成しようという方向をおとりにならないのか、この点についてまずお伺いいたしたいと思います。これは緒方副総理からお答えを得たいのですが、いつも簡略な御答弁が多いようでありますので、それならばなお詳しく犬養大臣から御答弁を願いたいと思います。
  89. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 法務大臣から御答弁いたします。
  90. 古井喜實

    ○古井委員 私は実は総理から今の問題をお伺いしたいと思つておりましたので、副総理からお答えを願うようにおとりはからいを願いたいと思います。
  91. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 犬養法務大臣から御答弁いたします。
  92. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。古井さんのお話の途中からここに参りましたので、あるいは落ちる点があるかと思います。  まず、なぜ自治警を育成しないかという問題でございますが、これは見解の相違になるかもしれませんが、私どもは都道府県警察の本質というものは、自治体なる都道府県の機関であると考えております。しかしそれを責務とする半面において、国家性をどうしても持つておる。従つて都道府県警察に対して国家が関与することは当然である、こういうふうに考えておるのであります。その関与の仕方をどうするかということが非常に大切であり、あるいはここがあなたと意見の違うところではないかというふうに考えております。  私の考えておる点を真剣に申し上げてみたいと思います。できるだけ府県単位でもつてつて行く、小さい市とか町を単位にすることはどうもおもしろくない、これは御意見と一致しておる点であります。それでは府県単位の自治警察だけで日本の今の情勢をまかない切れるかという点については、私はそうは思つていないのであります。この間もお話がございましたが、今の国内情勢の底に流れておる緊迫した性質というものは、国際的な情勢からも来ております。戦争の危機は遠のいたとはいえ——いやかえつて遠のいたから、一国の治安の底流の方にその影響が来ておるとも言えるのであります。この大きな情勢の把握は、どうも個々別々の県ではできない部分がある。どうしても中央からその深刻な情勢というものを、国内、国際情勢の認識から教えなければならない、ここに国家の府県に対する足がかりというものがなくちやならぬ、こういう考え方でございます。今のお話だと、府県の公安委員会というものはまるで骨抜きだという御意見でございますが、私はそう思つていないのでございます。なるほど任命は、府県の警察長は警察長官が任命いたしますけれども、これは国家公安監理会の意見を聞く。その国家公安監理会に対して府県の公安委員は、常時警察長及び警察官の点数をつけており、かつ罷免懲戒の勧告もできる。そういう権能というものは、昔の府県にはなかつたと私は思います。ですから、警察国家の再現というお言葉は、私はどうも当らないというふうに考えているのでございます。
  93. 古井喜實

    ○古井委員 今の大臣お答えによりますと、府県における警察は新しい改革案において自治体の警察だ、それにある程度中央が統制を加えるのだというふうに伺つたのでありますが、その通りでありますか。
  94. 犬養健

    犬養国務大臣 私どもは、繰返して申し上げますが、府県の警察の本質は自治体たる道府県の機関である、こういうふうに考えております。
  95. 古井喜實

    ○古井委員 自治体たる道府県の機関であるということでありますが、道府県は、警察の中心者である警察長の任免権を持たない、警察職員全体の任免権を持たない、これで一体道府県というものがこの警察に対して責任を負えるかどうか。道府県の事務であるにかかわらずかようになさるというのでありますか、道府県は責任を負えないかつこうになつておると思いますが、いかがでありますか。
  96. 犬養健

    犬養国務大臣 任命権の問題でございますが、これも意見の相違になるかもしれませんが、任命に関しては、広く日本全国の適材適所をすえる、こういう意味で中央から任命するのでありますが、それはなぜかと申しますと、府県の生活だけになじんでいる人には、やはり府県だけの考えがあるので、もつと広い立場から、人事交流の意味も含めてやりたい。ただ黙つてやつたのでは独断になりますから、意見を聞いてやる、それも聞きつぱなしでなくて、府県の人民の代表である公安委員は絶えず点数もつけますし、罷免懲戒の勧告というかつてない権力を持つて、煙たい後見役になるのでありますから、御心配の点はない、こういうふうに考えております。
  97. 古井喜實

    ○古井委員 道府県の自治体の仕事に国家公務員を置き、任免権も中央の警察庁長官が持つというようなことができますか。
  98. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 お答えいたします。警視以上の警察官は国家公務員にいたす所存でございます。かようなことは可能だと考えます。
  99. 古井喜實

    ○古井委員 可能だとお考えになつておるが、自治体の仕事のために国家公務員を置いた例がありましたらお教え願いたい。また自治体の仕事に国家公務員が置けるのでありますか、そういうことが成り立つのでありますか。
  100. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 道府県の警察の性格は、ただいま大臣が申されました通り自治体の機関ではあります。しかしながら国家的性格も、警察の本来の性格上持たざるを得ません。さような意味から、上級幹部だけは国家公務員にいたしたい、かよう考えております。
  101. 古井喜實

    ○古井委員 いたしたいということは、そう書いてあるからわかつております。一体自治体の仕事であつて、自治体の機構として国家公務員が置けるということの例がありますか。また一体そういうことが成り立ち得るかということを私は伺つたのであります。
  102. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察の仕事は全部完全に自治体のものとは考えられません。国家的性格も多分に持つておる。さような意味から、同じ府県の中におきましても、国家公務員を置いてやつておるのもございますが、仕事の性質によつてわけるわけには参りませんから、上の方だけを国家公務員にしたい、かよう考えております。
  103. 古井喜實

    ○古井委員 他の問題に移りたいと思いますけれども、私が尋ねておることについてお答えがございません。府県という自治体に国家的色彩がある。それはたくさんございます。そういう色彩もあわせて持つたものは、ございましようけれども、すでに道府県の自治体の性質を持つた仕事について国家公務員を置くという実例があつたら教えていただきたいし、どうしてそういうことができるか。もし自治体の仕事であるにかかわらず国家公務員を置き、かつこれに対する任免権を中央が持つというならば、自治に対する重大なる侵害であり、おそらく憲法違反であると思う。質問しておる点について明瞭にお答え願いたい。
  104. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 自治体の機関ではありますが、しかしその仕事は完全に自治体の本来の仕事のみではありませんから、従つて国家公務員をこれに置くということは支障がないと私は考えております。政府もさよう所見をとつておる次第であります。
  105. 古井喜實

    ○古井委員 質問に答えられません。明敏な斎藤長官も、どういう実例があるかもまだ示してくれません。私は繰返してそういう実例があるなら示してもらいたいということを申しております。できることではないと私は思う。一体国家から独立した自治体の独立性を尊重するということは、これは憲法に自治の本旨ということが特に書いてあるゆえんだと思う。これに対して国家公務員をかつてに置くということは成り立ちようがないと思います。もう一ぺん実例を示して答弁をしていただきたい。
  106. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は同じことを繰返すばかりでありまして法制上の点は法制長官がお答えになると考えます。
  107. 古井喜實

    ○古井委員 それではどなたか答弁していただきましよう。私は実例があるならばまず示してもらいたいということを言つておる。こういうことは前代未聞であるし、できることではないと思う。あるならば示してもらいたい。
  108. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今回の府県警察長の性格が国家的性格と地方公務員の性格とを兼ねておる。しかし国家公務員法の規定をもつてこれを律するというので、国家公務員であるという説明を今日までして参つたのでありますが、そうした地方団体に帰属する公務員に国家公務員を配属して、国家が給料の支給をやる制度が適当であるかいなかということであるならば、見解の相違でございます。そうした性格のものを法律をもつて国家公務員であるということにするのは、何ら私は憲法に抵触するところはないと存じます。実例を示せというお話でありますが、これは労働省の職員で、職名がちよつと思い出せませんが、国家公務員でありながら地方の府県の中に派遣されて仕事をしておる者もおります。さらにまた北海道開発関係職員の方もおります。     〔「公然違う」と呼び、その他発言する者多し〕
  109. 太田正孝

    太田委員長 静粛に。
  110. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは似たような場合を示せというお話でございますので、お話を申し上げたのですが、警察長という地位と比較はできないものであると存じますが、そういう例はあるので、ございまして、地方費負担の国家公務員、国費負担の地方公務員というものが、その性格によつてはあつて何らさしつかえないものである。もちろんこれは法律に根拠がなければなりませんから、その根拠は今回の警察制度であると考えております。
  111. 古井喜實

    ○古井委員 せつかくの御答弁でありまし余、まつたくますくわからぬようになつてしまいました。一体府県という自治体の仕事をやるならば、自治体の仕事をやるものは自治体の職員であるはずなんであります。職員は地方公務員というのがあたりまえのかつこうであります。その地方公務員というべきものを国家公務員という形に引きかえて中央で任免権を持つ、これは明らかに自治の侵害ではございますまいか。法律でもつて自治体についても置き得るといつても、自治の本旨にのつとるということは憲法に明らかに書いてある問題であります。その点から申しますと、実はせつかくの御答弁でありますが、さつぱりわからないのであります。
  112. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これはやはり私が最初に申し上げました通り、適当なりやいなやという見解の相違に基くものと思います。そうした制度を今回の改正法において採用することになりますのは、府県警察長の性格から来ることでございます。お話通り、国家的性格をもつて府県警察に従事するのでございますから、それを国家公務員にしても、何ら私は理論的にさしつかえがないと考えております。なお法律上のことに属しますので、法制局長官が来ておりますので補足いたします。
  113. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。警察のことについてのことであろうと存じますが、警察の仕事の実質が、地方の治安という関係にも関係がございますし、また国家治安という面から国家的の性格も持つておるということは、これはたやすく御了承願えることであろうと思います。そういう仕事のために従事する職員というものは、これは地方自治体の純粋の職員というもののほかに、あるいは国家的性格を持つている職員を加えても、これは自治権の侵害には必ずしもならないであろうと思うわけでありまして、この間も山崎委員の御質問に対してお答え申し上げました通りに、もちろんこれは古井さんも御承知通り、そういう例は旧憲法においては、府県庁にはたくさんあつたわけであります。新憲法になりましてから、そういう国家的団体に配属されているものがあります。これは、警察法が施行されましたのが新憲法実施後しばらく間を置いてからのことでございますが、それまでの間府県の警察そのものの地位、それからこの間例をあげましたけれども、都道府県の少年教護院の職員、地方自治法附則の八条でありますが、そういう関係の先例はたくさんあつたわけであります。
  114. 古井喜實

    ○古井委員 先ほど法務大臣の御説明によると、この都道府県における警察の仕事は、都道府県という自治体の仕事であるということを断定されたのであります。そこで私は、自治体の仕事をやる職員が一体国家公務員であるという形に切りかえられるかということを聞いたのです。今回の府県の警察は自治体の仕事だとおつしやつた。その自治体の事務についてやるのに、なぜ国家公務員という形が成り立ち得るか、そういう例があるか、こういうことを聞いたのであります。
  115. 犬養健

    犬養国務大臣 もう一ぺん誤解のないように申し上げて、あと法制局長官から答弁いたさせます。都道府県警察の本旨は、自治体たる都道府県の機関であると申し上げたのであります。しかしその仕事をいたしております警察というものは、半面において国家性を帯びている。従つて都道府県警察に対して国家が関与するのは当然である。それですから、補足いたしますれば、この意味において都道府県警察は、国家的性格をあわせ有している、こういう解釈をいたしております。
  116. 古井喜實

    ○古井委員 この問題がくどくなるのもいかがと思いますけれども、それだから問題なんでありまして都道府県の機構として設けるのだとおつしやる、自治体の機構である、しかし自治体の機構であるけれども若干国家的色彩があるから、そこで自治体の機構の一部を国家公務員にし、国が任免権を持つということにするのだとおつしやるから問題になつて来ている。自治体の機関なり自治体の仕事についておつしやつておりますから、その点を明確にしていただきたい。
  117. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これも先回申し述べました通りに、何が一番よい方法であるか、何が一番よい仕組みであるか、それによつて目的がりつぱに達せられるかどうかということがおそらく主眼であろうと思います。どういう組合せをするのか、どういう組織にした方がよいかということは方便の問題であります。従いまして、先ほど申しましたようにいろいろな例があるわけであります。これらの例は、いずれも相当の理由があつての先例であろうと存ずるのであります。現在におきましても、たとえば国家地方警察の機関となつております都道府県の公安委員会は、都道府県そのものの機関でございます。その下に国家公務員たる警察官が所属して一体となつてつておるのでありますから、その根本の趣旨はかわらないと思います。
  118. 塚田十一郎

    ○塚田委員 議事進行について。委員会の運営は、当然当該法律と両立してやる状態になつておりますから、本委員会におきましては、すべての問題はなるべく予算関連のある範囲においてぜひひとつつていただきたい。そうして当該委員会の権限を、予算委員会においてあまり侵害するという形の出ないようにぜひひとつ運営願いたいと思います。
  119. 太田正孝

    太田委員長 古井君に申し上げます。ただいま言われたことは当然なことでございまして、あなたの御質問はりつぱで間違いはないことでございましよう。けれども予算に直接的なものを取扱うべき本委員会においては、その意味をよく御了解願いまして、なるあえく予算を中心としておやりを願いたいと思います。
  120. 川崎秀二

    川崎委員 議事進行について。ただいまの古井君の質問は、経費分担に関連して、今度の警察法案と予算案とに重大な関連のある質問であつて、これを予算関係のない質問であるかのごとき議事進行があつたことに対して、われわれは納得が行かない。従つて委員長においては、今質問をされておるところの中心は、そういう実例があるかどうかということであつて、これに対する政府側の明確な答弁を求めるよう要望されんことを、私から要請するものであります。
  121. 太田正孝

    太田委員長 答弁がありますか。         ————— 答弁がありません。
  122. 古井喜實

    ○古井委員 委員長は私の質問予算関係なしとなさいますか。
  123. 太田正孝

    太田委員長 私は全然関係ないとは申しません。
  124. 古井喜實

    ○古井委員 それだけでありますか……。
  125. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは何回御答弁申し上げても同じことでございます。たとえば労働省の職員が府県の行政機構の中に溶け込んで、国家公務員でありながら、地方自治制度の中で仕事をしておる。その仕事はやはり労働関係の国家性の強いものについて、そういうことが行われておるのでございます。なお実例を示せというお話でございますので、調査いたしまして申し上げたいと思います。(「今すぐ示せ」と呼ぶ者あり)今申し上げたのもその実例であります。結局古井さんの質問は、意見の相違に帰着するのでありまして、そうした場合にそうした処置を講ずることがいいか悪いかという意見の相違ではなかろうか思います。われわれといたしましては、そうした両方の性格を持つたもので、府県の中に派遣してやらせる場合と同じように、府県警察長につきましても、国家性を考慮いたしますと、これを国家公務員として政府の方から任命して派遣して、これを担当せしめるということに、今回の法律決定いただきますならば、何らさしつかえがない、かよう考えております。
  126. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの御答弁は、求めている問題の答弁になつておりません。自治体自体の仕事について、そういう機構があるかということを言つておる点については、他の違つた種類のものをもつてお答えになつておる。のみならず、実例は調べて明らかにするとおつしやつております。私はお調べになつて明らかにしていただく、そのときまでこの問題は保留いたします。  次に移ります。そこで政府の案におきましては、人口七十万以上の市について特例を認めるとお示しになつております。予算関係がありますからよくごらんください。そこで七十万以上の市は、市議会の議決によつて、府県の会計から独立すると書いてあります。市議会だけで独立するということは間違いではございませんか。これはひとり市自身の問題ではございません。当該府県全体の問題であります。府県全体は何ら関与する必要はございませんが、この五つの市の独立の問題について、まずただいまの当該の市だけの、おまけに市議会だけの決議でできるという点は誤つている。この点についてそれでよろしいというなら、私は他の事例をもつて再び伺います。  もう一つ本多国務大臣に伺いたいことは、警察についてすでにこの大都市が他の区域から分離してやつて行けるということなら、他の一般の行政についても分離してやつて行けませんでしさりか。やつて行けるなら、特別市制ができるということであります。特別市制の問題については、まだお考え中だろうと思います。警察について独立できる力があつて、他の行政については独立できないとお考えになつているのか、それとも、これをもつて特別市制への方向へ第一歩を踏み出した、こういうお考えであるか、この二点について本多国務大臣に伺いたい。
  127. 本多市郎

    ○本多国務大臣 御指摘通り、特別市制の問題は法制化されてはおりますけれども、残存部分との財政調整等の困難性から、まだ実施するに至つておりません。この特別市制の問題は、その市部分と市を除く残存部分との財政調整の問題が非常に重要でございまして、私はここに難点が重点的にあるものと考えております。さらに警察制度について考える場合、同じような見方もできるのでありますが、しかしこの財政調整の措置という難点は、警察制度の場合には、はるかに減少するものを考えております。
  128. 古井喜實

    ○古井委員 もう一つの点はどうですか。もう一ぺん申しましようか。         ————— この人口七十万以上の都市の問題でありますが、この手続について、当該市議会の決議だけで独立できると書いてある。大体七十万以上の市ということは、大阪市、京都市、何々と具体的にいうと同じことだと思うのです。それ以上動きようがない。そうとすれば、私はまずもつて憲法の九十五条からいつて、住民投票にこの規定を付さなければならないのじやないかというのが第一点。かりに住民投票にこの規定自身を付さないにしても、この規定によつて独立する場合は、あたかも特別市制を施行する場合と同じように、その場合に住民の一般投票を求めるという手続、そういう内容にしなければならないのじやないか。これを市議会の決議だけというのは何ごとであるか。これを言つておるのです。これは一体市だけで独立できるのか。市議会だけで決議ができるのか。これは大間違いであると私は思います。これができるようなら、特別市制を市議会の決議だけで実行したらよろしい。この点であります。
  129. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今重ねて御質問がありましたが、これに対しては、私はさいぜん答弁したつもりでございます。特別市制を実施することの困難は、残存部分との財政調整が困難であるという点にあつたのでございますが、警察は、御承知ように市あるいは府県と違いまして、大きな事業をやるものではございません。従つて警察費のみに限定されますから、財政調整の困難性は非常に減少するものであるということを申し上げたのでございます。
  130. 古井喜實

    ○古井委員 一つの問題は、この警察費を当該の都道府県自体で負担するか、あるいは市だけで負担するかというのは、府県としても大きな財政上の問題でありましよう。こういう実際問題も府県としてあるのであります。簡単に当該の市だけできめ得る問題ではないと思うのです。かつまた他の事例等からいたしましても、私は、この規定自身を一般投票に付さなければ制定できないではないかという問題も一つつておる。またできるとしても、内容は少くとも特別市制を行うときと同じように、住民投票を行つてきめるべしという内容でなければならぬじやないか。それができないくらいなら、特別市制の地方自治法二百六十五条のバツク・ボーンというものは一体何であるか。これを伺つているのであります。
  131. 本多市郎

    ○本多国務大臣 要綱に書いてありまする七十万以上の市というのは、すべて現在自治警を持つておりまして、これを担当してやつておりまするその沿革もあわせ考えましたときに、これで支障ないと考えております。
  132. 古井喜實

    ○古井委員 どうも質問に対するお答えをいただいておらぬのでありまして、今おつしやつておること自体においても、七十万以上の都市は自治警をやつておる。七十万以上のみならず以下の市も今自治警をやつておるのであります。現在やつておるという話ならば、七十万以上の市だけの問題ではありません。答弁になつておらぬ。おらぬのみならず尋ねておる問題については、御答弁を少しも得ておりません。御答弁を願います。
  133. 本多市郎

    ○本多国務大臣 確かにお話通り七十万以下の市町村も自治警を持つておるのでございますが、七十万くらいから以上を府県警察で実施する警察として認めることが、適当であると考えたのでございます。
  134. 古井喜實

    ○古井委員 簡単に伺いたいと思うのでありますけれども、独立する場合に市議会の決議だけで独立するということは、間違いではありませんかということを申しておるのであります。
  135. 本多市郎

    ○本多国務大臣 従来自治警察を経験しておりまする沿革も考えまして、これは市議会の決議でその意思を決定さして、継続して市を担当する警察を持つか持たないかをきめるということがむしろ適当であつて、もし府県全般にわたることで決定するということになりましたならば、せつかく今日まで大都市の自治警察を経営して参りましたものが、あるいはその経験を生かすということもできないようなことになるのではないかとも考えられます。小さな市町村にまで認めるということは、今風の趣旨に沿いませんので、七十万以上くらいということにいたしておるということでございます。
  136. 古井喜實

    ○古井委員 まことに困るのでありますが、たとえば神奈川県が県の警察を持つておる。そこに新しく横浜市が独立市警をつくる。このときに一体横浜市の市議会だけの決議でできるのでありますか。これはそう書いてあります。そういうべらぼうなことが一体できるのでありますか。だれが考えつて、こういうことができるはずのものではない。県でやつている警察をとつて行くというか、独立させるのは横浜市の市議会だけの決議によつてできる、こういうことは一体成り立つのでありますか、これを伺つておるのであります。
  137. 本多市郎

    ○本多国務大臣 どうも古井さんの質問の趣旨がわからないのですが、成り立つものであるかどうかと言われますが、法律でそういうふうに御決定になりますれば、それでよろしいのでありまして、現に神奈川県におきましても県警察と、横浜市の自治警察と両建でやつておるのでありまして、大都市の警察は相当今日までに沿革もあります。また住民の数等から言いましても、これを府県警察と併立させるだけの価値のあるものと考えておりますから、市議会の決議でよかろうと思います。
  138. 古井喜實

    ○古井委員 これはすぐさま平衡交付金の問題にもなつて来るのでありますが、一体府県に属しておる警察を、市が独立して、その仕事を切りかえてしまうというのに、県も県議会も何も関係なくて、市会だけの決議でできるということはさしつかえないとおつしやるのでありますか。それならば特別市制を実行する場合に、地方自治法の二百六十五条の末項のごとき規定がなぜいるのでありますか、矛盾ではありませんか。これは何とおつしやつても、はつきり言えば間違いであると思います。
  139. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは警察制度と総合的な行政をやる府県、市町村制度の違いでございまして、さいぜんから申し上げます通り、総合的な行政責任は、府県、市町村にありまして、これは警察制度の、ごとく人件費を中心とする財政ばかりではなく、いろいろ事業もやらなければならぬのでありますから、これらの財政調整という点におきまして、警察制度の場合とは相当そこに困難性の相違があるということを申し上げたのは、そこに基因するのでございます。
  140. 古井喜實

    ○古井委員 はなはだ遺憾でありますけれども、尋ねておる問題についての答弁でありません。この要綱によりますれば、都道府県単位の警察ということに、ほつとけばなるのであります。これから市が独立するということは、そうなつあとでもできるのであります。前でもできるということは、経過規定はございましようが、あとでもできる。すでに都道府県に属する警察となつた場合に、後にその市の市議会だけの決議で、都道府県からひつぱがして行つて独立した警察ができるこういう手続になつておるのであります。そういうことが一体成り立つのかどうかということを言つておるのであります。それならば府県という自治体に対して平衡交付金が与えられても、いつ市議会だけの決議で持つて行かれるかわからぬ。容易ならぬことであるし、こういうことは他の諸制度と矛盾しておる。地方自治法第二百六十五条の末項を見ていただきたい。
  141. 本多市郎

    ○本多国務大臣 財政措置の問題でありますならば、その実態に即応した財政措置が必要になつて参ります。府県が単独で警察を担当いたしまする場合には、府県の警察費の基準財政需要額を全部そこへ計上しなければなりませんし、市が独立して持ちました場合には、市に対する基準財政需要額をその分だけは見なければならぬ。財政措置はその実態に即応してやらなければならぬと考えております。
  142. 古井喜實

    ○古井委員 何のことかわかりませんが多分……。
  143. 太田正孝

    太田委員長 古井君にちよつと申しますが、なおあなたの会派に属する者の残り時間もお聞き及びの通りと思います。従つて北村君の質問には響くわけでございますから、すでに一時間になつておることを申しておきます。それを承知の上でやつてください。
  144. 古井喜實

    ○古井委員 私は答弁を待つために時間を要したり、求めている質問に対して答弁が得られないから、時間を……。
  145. 太田正孝

    太田委員長 そのくらいな時間は差引きいたします。
  146. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの点の御答弁はいただけませんか、答弁が途中になつておりますが。
  147. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま本多長官から答えておりますように、この特別市が独立する場合と、この警察の新しい単位が一つできるという場合とは、本質的に大きな違いが私はあると思います。古井さんに申し上げるまでもなく、特別市というものは全面的に府県の単位からはずれて、そこに一つの府県に対立する地方団体の特別のものができるわけであります。手続がそれに即応したものとなつておるのも、これは当然のことと考えます。警察の場合はそれとは違いますからして、法律でもつてような定めをすることは一向妨げない、そういうふうに考えます。
  148. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの長官の御答弁は、明敏な長官にかかわらずまことにあいまいきわまる、まつたく答弁になつておらぬものと私は思います。おそらく答弁ができないのだと思います。もし答弁が得られるならばお待ちいたしますが、遺憾ながら少しも答弁になつていない。あなた自身もこれは答弁になつておるとお考えになつてはおるまいと思う。もしやられるならば受けますけれども、私は得心いたしません。長官が明確な答弁をされるまで論じなければならないと存じますから……。答弁やられますか。
  149. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 どうも先ほどから住民投票についてのお話が出たり、いろいろなことがはさまつておるものですから、お尋ねの趣旨がどこにあるか、住民投票のことならば、ここで明確なる答弁を申しますが、今の最後のお話は特別市の場合における自治法の手続と、今度の手続と違うじやないかというお尋ねと拝承いたしましたから、それは特別市が独立するということはたいへんなことですということの違いを申し上げたわけであります。
  150. 古井喜實

    ○古井委員 さすがに知つてつて逃げておいでになるのでありまして、私は当該の市の市議会の決議だけで独立するという、それでいいのかということを言つておるのです。県自体関係しなくていいのか、あるいは住民全般関係しなくてもいいのかということを言つておるのであります。それにつきましてただいまの御説明では答弁になつておらないと思いますけれども、答弁が得られますならばもう少し——得られないなら得られないで、次に進みたいと思います。
  151. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これもやはり住民投票によるのがいいのではないかという見解と、住民投票によるに及ぶまいという見解の相違であろうと思います。その論拠としては、さいぜんも申し上げました通りに、府県から市というその中心にある大都市が独立するということになりますと、財政の大部分も独立されるということになりまして、府県としては非常に財源難に陥る場合もあり得るわけでございます。そうした面におきまして、警察制度のみの地域がわかれましても、そうした独立制を実施した場合ほどの大きな財源の困難性はない。そこで今日まで自治警がやつて参りました沿革も考えまして、市の意思決定のみによつて警察を認めるということにしても、大なる支障はないというふうに考えておるのであります。
  152. 古井喜實

    ○古井委員 これは粗雑な案でお出しになつたからというのではなしに、よくひとつ考えておいていただきたい。少くとも当該の府県というものの意思が関与しない、これは間違つておると私は思います。府県に関係している府県の警察がわかれてしまうという場合に、府県というものが関与しないということはよく考えていただきたい。私はそれは間違つておると思う。それからなおまた住民一般の投票ということは私は至当な手続だと思う。よく書いてあるからというのでなしに事柄を考えていただきたいと思います。多分法制局長官はよくおわかりになつておると思う。大臣もよくお考えになつて、ぐあいが悪ければお直しになるのが至当であると思う。  次に、私がお伺いしたいことは、この警察に関する経費は府県の負担ということになつておるのでございますが、この府県における警察に対する責任はことごとく警察長にあり、また中央の警察庁長官にあると思います。府県は何らこれに対して関与する余地がないと思うのであります。こういう機構について府県に経費を負担させるということは、一体どういう道理でありましようか。これが府県の財政にも響けば、府県の行政全般にも大きな影響を持つのであります。この点について御説明を願いたいと思います。
  153. 本多市郎

    ○本多国務大臣 命令監督等を一元化いたしまして、確かに国家性が強くはなるのでございますけれども、その治安の確保の仕事はそれぞれ府県のためになるところの行政でございます。そうした点から、考え方として、中央でたくさんの税金をとつて全額負担でやるという方法もないことはございません。しかしそういう方法でおる結果は、お話の、かえつて中央集権化するのではないかと存じます。地方負担にしておきますと、地方の予算の中にその経費が計上されますから、予算等を通じて地方議会において警察費批判の機会があるわけでございます。そうした点からこういうふうな経費の負担区分というものは適当であろうと考えております。
  154. 古井喜實

    ○古井委員 府県が一体この仕事について何の責任も負えない、何にも関与するところがない。一体その府県というものに何の関係もない、責任も負えない事柄について経費だけ負担させる。その批判をさせるために何も関係のない経費を府県に持たせることになるのでありましようか。もしそれでありますれば、この府県財政と国庫財政の基本を定めたと称する地方財政の規定にも反していると私は思います。この点について御答弁願います。
  155. 本多市郎

    ○本多国務大臣 負担関係を理論的に申し上げますならば、結局こうした警察制度の改正によつて、府県民の期待する治安の確保は向上するかいなか、その点にあるだろうと思います。これによつて警察の治安確保の能率が向上して来るということになるならば、こうした制度で負担するということが何ら矛盾はない、こういうことになつて来ると考えております。
  156. 古井喜實

    ○古井委員 これはまことに奇怪しごくに思うのであります。地方財政法の十二条の規定というものに明らかに私は抵触していると思う。これはさしつかえないとお考えになつておるか、もう一度念を押して御答弁つておきます。
  157. 本多市郎

    ○本多国務大臣 実はその法律を持ち合わしておりませんので、間違いがあるといけませんから、古井さんの方でお持合せならば、その法文をお知らせくだされば、それに対処する私の根本的な考え方をもつてお答え申し上げたいと思います。
  158. 古井喜實

    ○古井委員 御自分の御所管になつている地方財政に関する基本法だという法律であります。私に説明を求めるということはどういうことでしようか。
  159. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 六法全書を持つておりますからお答え申し上げます。今の御指摘条文は第十二条でありますが、地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、地方公共団体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない。ということでありますが、今度は地方公共団体で処理するわけでありますから、そういう問題は起らないのではないか、それからもう一つ、先ほだのお尋ねに対して非常にあいまいなことを申し上げて申訳ございませんが、二百六十五条でしたかの末項というのは、あれは一の地方公共団体に対する特別法を前提にして——これは特別法であります以上は、憲法の例の条文によりまして、二百六十五条は憲法の要請するところでありますから、その当然のことを自治法でうたつただけであつて、今度の人口七十万以上というのは、憲法の特別法として公共団体に適用する法律であるかどうかという問題になるわけであります。それについては、この間たしか川島委員お尋ねがありまして、私がいろいろここでこまかくお答えしたときに、古井委員もうしろにいらつしやつたように覚えております。その点は重ねて御答弁はしなかつたわけであります。
  160. 古井喜實

    ○古井委員 今長官の御説明があつたのでやむを得ませんが、当該の地方団体が処理する権限を有しない事務であると思うのであります。府県における今回の警察事務は、府県という自治体自身が何ら処理する仕事ではないのであります。そうとすれば、一体十二条という規定にぴたつとぶつかつて来ると思うのであります。この点はいかがであるか。なおまたよけいに御丁寧に御説明があつて、前会の地方特別法問題について、多分前会自治法の百五十五条以降の例をお引きになつて、あれも地方特別法でないのだからとおつしやつたのでありますが、あれは経過規定の附則との関係でございましようけれども、これはまつたく話が違うのであります。あなたの方でおつしやる以上は聞くほかありませんが、自治法の百五十五条にこうある。区というものを設け得る市と、そういう制度をあそこできめておるのである。具体の市を何もあそこできめるのではないのであります。区を設ける市という制度をあそこできめているだけであります。そういう制度は、その各規定について地方特別法として住民投票に付することはいらぬと思います。今回の問題になつた附則は、この自治体警察を現に持つておる甲の市、乙の市と書き並べたと同じことであります。動きようのない具体の市であります。一つではない、数個ありますけれども、みな具体の市であります。その市に適用するというのは、具体的に並べたと同じことになつて来る。筋合いが根本的に違うと私は思うのであります。ここまできよう言う必要はなかつたのでありますけれども、言えとおつしやらんばかりにおつしやいますからお伺い申し上げます。
  161. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)委員 ますますお話がはつきりして参りました。前段の分は先ほど私が申し上げた通り、今度は都道府県の警察となりまして、都道府県の機関である公安委員会が運営管理をやるのでありますから、都道府県の権限に属することは、私は問題ないと思います。ただ第二の問題の方をもう少し詳しく御説明したいと思います。この間たしか古井先生もいらつしやつたに違いないのでありますが、私がお答えしたのはこの百五十五条第二項の市というのは、今お話に出ましたように行政区を置く市であります。それは政令で指定される。大阪とかどこそこという名前がはつきり出ております。ところがその政令で指定するときの問題ではなく、今度はたとえば公職選挙法というものをごらんになりますと、この百五十五条の市については特別の規定を置いてあります。あるいはまたその他の小型自動車云々の法律でありますとか、いろいろな法律において、これによつて指定された特定の五つの市というものについて特権を与える。その団体に対して特別の待遇をする法律が地方自治法のほかにある。今の御議論で押して行きますと、その法律を一体住民投票に付さなければならぬのではないかという御議論が成り立つのであります。たとえば公職選挙法とか、今の小型自動車云々の法律というものを、五大都市の住民投票に付すべきではないかという問題があるはずでありましよう。しかしそれは今までやつておりません。百五十五条の市という抽象的な基準で律しておるのだから、特定の市を名ざしてやつておるのとは違うという意味で、おそらく国会も憲法第九十五条の手続をおとりにならなかつたものと思いますし、私もこの考え方に賛成しておるわけであります。
  162. 太田正孝

    太田委員長 古井君に重ねて申しますが、ちようど一時間十五分やりまして、だんだん北村君の時間に響きますから、さよう申します。     〔中曽根君「委員長々々々」と呼ぶ〕
  163. 太田正孝

    太田委員長 今古井君に発言を許しています。
  164. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまこの二つの問題について御答弁がありますした。一つはこれは府県という自治体の仕事であるのだ、こういう意味で御説明がありました。さつきおいでにならなかつたと言うと問題になるかもしれませんが、警察についてそれが自治体の仕事なら、国家公務員を置いて国が運営するというのは、自治の侵害ではないかということをさつき言つた。しかしそれはその通り問題はないと私は思う、二番目の問題は法律の討論会でないから申しませんけれども、わざわざおつしやつておるのでありますが、百五十五条二項の市というものを他の法律で採用しておる。百五十五条二項の市というのは、その市の制度をきめているものであります。そこで具体の市を何市々々というものを書いているのではない、区を置ける市という抽象的な制度をきめているのであります。それが適用される市が政令で指定されるというだけのことであります。むしろ私は政令に問題があると思う。これは古い市制の八十二条の三項からそのままに受継いでいるところに、むしろ間違いがあると思いますけれども、これは事柄が違います。しかしこれを繰返しておつてもしようがないと思います。それでこれはよけいな御説明を伺つたと思います。  経費の関係について少し伺いたいと思います。明年度警察の経費二百二十億ということでありますが、平年度は二百二十億で国費に属する警察費はまかなえる見込みでありますか、かわつて来る見込みでありますか、われわれがここでこの制度を認めますれば、平年度いかなる国民の負担になるかということになつて来るのであります。そこで二百二十億ということで、平年度国費関係がまかなえるのでありますか、どうでありますか、その点についてのお見込みを伺いたいのであります。
  165. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 制度が改正になりましても、国費は二百二十億の範囲内で、十分まかなえると考えております。
  166. 古井喜實

    ○古井委員 まかなえるという、すでに見通しを持つておいでになりますならば、平年度は一体何ぼかかるかというお見込みでありますか、それがなければ二百二十億でまかなえるかどうかわからぬだろうと思います。まかなえるとおつしやる以上は、平年度国費が何ぼかかるとお見込みになつておりますか、これを伺いたい。
  167. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 制度が改正になりまして、来年度国費で当然支弁しなければなりませんものは、国家公務員の給料等でありますが、これが三十億程度でまかなえると思うのであります。あとは装備、通信等でありまして、これらも合せまして百数十億で十分まかなえるのであります。従いましてあとの分は、府県の支弁する費用に対する補助金として、府県に対して交付し得る余裕を持つております。
  168. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの御答弁は平年度のことでありますか、二十八年度のことでありますか、ちよつと明確を欠いたと思いますが、私は平年度のことを伺つたのであります。
  169. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 二十九年度以降の平年度のことであります。
  170. 古井喜實

    ○古井委員 そうすると、ただいまの御答弁で、この二百二十億のうちで相当な金額が、都道府県に対する補助金という説明でありました。この点については警察責任の大臣の方もその通り考えになるか、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  171. 犬養健

    犬養国務大臣 さよう考えております。
  172. 古井喜實

    ○古井委員 二十八年度関係についてお伺いいたします。これは切りかわつた後の問題でありますが、その前に国家公務員であつた警部以下の者のことであります。これは地方公務員となるわけでありますが、地方公務員となつた後も、この地方公務員に対して国が給与を支弁する、これは現在の予算の形式のままでできるのでありますか、あるいは何らかの今の予算の形式をかえなければならぬかどうか、伺いたいと思います。
  173. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。現在の予算のままでできると思つております。
  174. 古井喜實

    ○古井委員 そうすると、今の国家地方警察官署のあの経費のままでできるのでありますか、一応それをお伺いいたします。
  175. 河野一之

    河野(一)政府委員 国家警察地方官署の方の経費でできると思います。
  176. 古井喜實

    ○古井委員 そういたしますと、あの官署の経費で地方公務員の給料が払える、こういうことであると思いますがそうでありますか。
  177. 河野一之

    河野(一)政府委員 経過規定におきまして、そういう経費を国が負担するという法律規定を置くことによつて支弁できると考えております。
  178. 古井喜實

    ○古井委員 国が負担することは、経過規定が成り立てばできましようが、予算の形式もあのままでできるとおつしやる意味でありますか。
  179. 河野一之

    河野(一)政府委員 さようでございます。
  180. 古井喜實

    ○古井委員 そうすると二十八年度において、国費の関係において、この予算総則の十三条を適用する必要は何もありませんか。他に必要のある点がありますか。
  181. 河野一之

    河野(一)政府委員 御承知ように、予算は組織と項によつてでき上つておる、従いまして国家警察本部という組織が警察庁という組織に移しかえされまして、項自身はそのままで使えると思います。
  182. 古井喜實

    ○古井委員 次の地方費の関係について伺いたいと思います。二十七年度におきます地方費に属する警察費は総額でなんぼになつておりますか。またこれに対する平衡交付金の金額は何ほどになつておりますか、これをお伺いしたいと思います。
  183. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 二十八年度の地方費と申しますか、自治体警察を置いているところの予算総額はまだわかりませんが、二十七年度は二百七十億でございます。これにベース・アツプを加えましておそらく三百十億以内で二十八年度のものがまかない得るものと考えております。
  184. 古井喜實

    ○古井委員 平衡交付金のことであります。警察費に対する平衡交付金、これは基準財政需要額からあるはずです。
  185. 本多市郎

    ○本多国務大臣 平衡交付金の計算は、御承知通り、ただいま国警長官から申し上げましたような、基準財政需要額と基準財政収入額との差額になつて来ますので、特に警察費について幾らであるということは手元に資料がございません。
  186. 古井喜實

    ○古井委員 私の尋ねました意味は、基準財政需要額から見て、それに対して平衡交付金の金額はわかつておるのでありますから、当然お見込みがあるはずだと思つておつたのであります。これはわかつておりましようか、どうでありましようか。そういう意味であつたのでありますが、いかがでありますか。
  187. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま自治庁で算定をしておられますが、これに対する基準財政需要額は二百四、五十億と私の方は聞いております。責任官庁でありませんから、自治庁長官からお答えになると思いますが、われわれ今まで折衝しておりますのは、二百四、五十億というふうに聞いております。
  188. 古井喜實

    ○古井委員 自治庁長官から御答弁いただけますか、あるいは後日これはいただくことを待つことにいたしますか、どうしますか。
  189. 本多市郎

    ○本多国務大臣 手元に資料を持つておりませんので、資料を取寄せまして、後日ひとつ御説明申し上げたいと思います。     〔「後日じやだめだよ」と呼ぶ者あり〕
  190. 太田正孝

    太田委員長 古井君が後日でいいと言うのですから……。
  191. 古井喜實

    ○古井委員 後日お出しになりますならば、ひとつこの問題は保留いたします。  そこで経過措置について一、二の点をお伺いしたいのでありますが、この自治体警察を持つておる市町村の警察用の財産の点について、これが都道府県に当然に移転するということになつておつたのですが、これはどう考えても無償でもつて都道府県に移転するということは乱暴なように思うのでありますが、これに対して対価をお払いになつてはいかぬか、お払いになるのが至当ではないかと思う、この点についてどうお考えになりますか。あくまで無償でもつて法律上当然に巻き上げてしまうということにお考えになるのか、対価をお出しになるお考えはありませんか、この点を伺いたいと思います。
  192. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 今までの例によりまして、無償で譲渡をするということに考えておるのであります。その意味は、この前に本多国務大臣からもお答えになりましたように、なるほど所有権は無償で譲渡をされましても、その財産は当該地方の治安の維持に使われるわけでありますから、従つてその財産を今後維持管理をする府県に渡した方がよろしい、かよう考え方でございます。
  193. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの点についてなお進んでお尋ねいたしたいのでありますけれども、今警察用の財産といえば、警察署の建物なども市自身が自分の経費をつぎ込みまして、ずいぶん新築したところなどもあるのであります。こういう市費をつぎ込んでつくつたものを都道府県のものにしてしまう。そこに使われるとおつしやいますけれども、これが都道府県の警察の本部に使われる場合もあり得るのであります。その当該の市のためだけに使われると限つておらぬのであります。そういうこともあるのでありますから、大体財産を移転するならば対価を払うのがもともと至当である意う。これはどういう場合でも無償で移転するのだ、こういうことをなさるのか。少し乱暴過ぎるのではないかと思うのでありますけれども、そうお考えになりませんか。これは犬養法務大臣はどうお考えになりますか。
  194. 犬養健

    犬養国務大臣 国警長官と同じ意見を持つております。
  195. 古井喜實

    ○古井委員 市町村といえども、これは財産権として持つている財産であります。これを無償でとつてさしつかえないとおつしやるのでありますか。これは憲法の上から行つても無理があるのじやございませんか。その点からも、いかにも乱暴だと思うのでありますが、一向かまわぬとお考えになりますか。事が重要でありますので、どうしてもこれは再考を願いたいと思うし、またどうお考えになるか伺つておきたいと思います。いかがでございますか。
  196. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまのところでは、従前の例によりまして、同じくその当該地方の警察のために使われるわけでありますから、従前の例を踏襲いたしたい、かよう考えているのであります。
  197. 古井喜實

    ○古井委員 そこの場所のために使われるのだと、同じことをおつしやる。そうでない場合もあるのではないかということについては、そうでない場合でもかまわぬのだという御説明なら、これも一つであります。けれども現に県庁所在地の市の警察の官舎の建物などはその市の警察のために使われるとは限つておりません。県の本部になる場合だつてあるのであります。しかしそれにもかかわらずこれは市のためになるのだということで片づけてしまつていいのか、どうかこういう点やはりかまわぬとおつしやるのでありましようか。行つている場合、そういう場合もあるのであります。どうでございましようか。
  198. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私はおそらく市の建物を県の本部に使うということは考えられないと思いますが、もしさような場合が万が一あるといたしましても、その際はやはり市の警察のための庁舎を別につくらなければなりません。さようになりますと交換ということにもなりましよう。いずれにいたしましても市の警察を維持するために必要な財産ということにはかわりがないのであります。それを他の警察の用に使いましても、市のために使う庁舎というものはやはり別個に今度は府県費でつくるということになるわけでありますから、私は支障はないものと考えております。
  199. 古井喜實

    ○古井委員 その点は得心が行きませんが、同じことを繰返すので避けたいと思います。なおよくこの点をお考えつておきたいと思います。なおこの市警察等の財産が国に移る場合と都道府県に移る場合とがあるようであります。これはどういう違いでございましようか。国のものになる場合と都道府県のものになる場合と、これは国費と都道府県費にも関係して来るものと思います。どういうことでありましようか。
  200. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは制度改正後、国で維持管理するものは国に譲渡をしてもらうということを考えております。国で費用を持つて維持管理をするものは何かと申しますと、通信関係の施設、それから鑑識関係の施設、これは将来国が国費をもつて維持管理をいたしますから、さようにいたすのであります。
  201. 古井喜實

    ○古井委員 ただいまの点はまことに明快でございました。  そこで私は警察の新らしい機構がほんとうにどういう結果になるかということについて、多大の疑問を持つているものであります。こういう機構でもつてほんとうにお互いの自由、財産、権利が安全に守られるかどうか。またほんとうに昔のような警察、官僚的な警察にならぬかどうか、あるいは中央政府の意のままになるような警察にならないあかどうか、やまやま疑問を持つているのであります。しかしこれは一々ここで論ずることもあるいは度を越すがもしれぬと思います。しかし少くともこれについては、ただいまの質問応答で得心の行かぬ、あるいは十分答弁を伺わなかつた、あるいは十分資料をいただかなかつた諸問題があると思つております。これについては私は警察に関しても問題を留保しておくほかはないと思います。  それはとにかくといたしまして、政府緒方大臣にお伺いいたしたいと思いますが、政府の案には現在のところ、知事会も市長会もそれから全国自治体公安委員会連絡協議会、それだけならいいけれども、国警の公安委員会連合協議会までも、これに対してほとんど全面的な反対をいたしているのであります。これは事実であります。いわばこの案は四面楚歌のがつこうであるように思うのであります。どうしてもこの案についてさらに考慮を費やすというお考えをお持ちにならぬものかどうか。まことにどうも事は重大でありますけれども、かくも各方面からごうごうたる非難が起つている問題もめずらしいと思うのであります。この点について御所見を伺いたいと思います。
  202. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたします。ただいまお話になりました諸団体の意見は、この法案の決定する前に、非公式でありますが、法務大臣あるいはその他の方面において意見を聞きまして、今回の法案をつくり上げます上にも、十分に参考にいたしたつもりでございます。いろ川、な点においてなお意見の違いがありますが、その点につきましては、政府におきまして治安確保の責任を明らかにする上に、この法案につきましても十分その責任をとつて善処し、議会の協賛を得れば実施するようにいたしたいと考えております。
  203. 古井喜實

    ○古井委員 これは法務大臣に警察の関係についていま一つつておかなければなりませんが、かようにして市長会も反対し、それからいわゆる自公連なるものも反対いたしているのであります。この経過的措置を拝見いたしますと、二十八年度の十月から先半年というものは、この反対しておる市町村に今まで払つておつた警察費関係だけは払え、こういうことになつておるのであります。この点について山々法律問題があることは先般来の通りであります。私はまだこの法律問題は十分あると思つておりますし、前回までの御答弁では得心の行かぬものがあると思つております。それを一応別にしましても、これだけ反対しておるのでありますれば、経費の支弁を法でもつてただきめましても、これはなかなか経費を事実支払わぬと思うのであります。書いたものだから払うだろう、まことに楽観して先般もお話がありました。けれどもなかなか事はそう簡単に行かぬと思います。そうとすれば、給料の支払いから今まで市の公務員であつた警察官、それが今度身分が府県の公務員になつてしまう、それに対する給与の支払いだつて私は満足に行かぬと思うのであります。私が前回から、その場合の給与の請求権が府県にもあるのではないかということを申し上げたのはその意味であります。さもなければまことに不安を持つのであります。そういうことで、前回おつしやつたようなことが正しいとすれば、非常に警察官全体も不安に陥り、動揺し、緊迫した時勢のもとだと先般来おつしやつておりますけれども、そうであればそうであるほど、このときに、半年間多数の警察関係の者を動揺に陥れると、警察機能はほとんど停止してしまうのではないかと私は憂えておるのであります。この辺についてよく考えて行かなければ、とんでもないことになつてしまう。私はこれについて、ほんとうに確信を持つておいでになるのかどうか憂慮にたえぬのでありますので、法務大臣にお伺いいたしておきます。
  204. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。政府の今考えにおります警察組織の改正について、いろいろ御意見もございましようし、御批評もありますけれども、この案が一番実着だと考えておるのでございます。御指摘のいろいろの団体にも、私ども十分時間をさいて会いました。また国警関係の国公連の人にも会いました。その反対の重点がどこにあるかもよく承知しておるのでございます。それらの反対は、結局私どもの立案しております案のほんとうの真意や精神お話すれば納得してもらえるものと考えているのでございます。まして二十八年度におきましては、市の公安委員に過渡的に府県の公安委員の手伝いをして残つてもらうことになつておりますから、この制度の移りかわりのときには、まことによいあつせん役になつてもらえると思つております。それは私たち態度が、その人たちに対して誠意をもつて説明するやいなやにかかりますが、誠意をもつて説明し、また国家のためによりよい警察制度をつくるために協力を求めたいと考えております。
  205. 古井喜實

    ○古井委員 文部大臣と本多大臣にお伺いしたいと思います。今度の義務教育費国庫負担の問題について、八大都道府県に特例を設ける点でありますが、これは国庫負担という考え方をとる以上は、何にせよ筋が通らぬ。これは十分その通りにお考えになつておると思います。そこでそれならばこそ一年間という暫定措置とされておると思うのであります。私どもは一年間の暫定措置でも筋が通らぬ。待つたらよろ思いと思うのでありますが、一体なぜこの筋の通らぬことを一年間やつて行かなければならぬか。待つことができないか。この点についてお伺いをしたい。なおまた待つておれば財税制の調整の案が立つとお考えになつておるのかどうか。立つとおつしやる以上はどういう方角のことを考えたならば調節がつくか、方角だけでもありそうなものです。なければ立つか立たぬかわからぬということになつてしまうと思うのであります。私はこの点について文部大臣と本多大臣にお伺いしてみたい。
  206. 本多市郎

    ○本多国務大臣 なぜ急いで実施する必要があるかという、ことにつきましては、義務教育に対する国家の責任を明確化するという見地からでございまして、これについては文部大臣から御答弁があることと存じます。財政措置の問題につきまして、二十八年度——平年度の財政措置は別として、来年度からの財政措置をどういう方向で考えているかという御質問でございますが、自治体警察を持つておりました市町村においては、これを廃止することになりますので、その自治体警察を持つておりました市町村の警察費の、基準財政需要額というものは立てなくてもよいことになります。そのかわり府県において府県警察費を担当することになりますので、ここにあらためて府県の警察費の基準財政需要額を立てるのでございます。これだけの調整ではその金額が該当いたさないのでございます。その理由と申しますのは、自治体警察を持つております市町村が富裕団体で交付金の不交付団体も多いのでございますから、これだけでは調節ができないのでございます。しかし平衡交付金制度の問題といたしましては、ただいま申し上げました二つの方法と、国家から交付する平衡交付金によつて調整をはかるのでございますが、その前提といたしまして、どうしても国と府県間の財政調整を行う必要があると考えております。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕  もし平衡交付金一本で調整することになりますと、結局国家の支出を多額に増大しなければならないという点、あるいはまた富裕団体等に対する不均衡が一層はなはだしくなるというような点も生じて来るのでありまして、そのためにどうしても財源調整をいたしたいと考えております。その財源調整の方向といたしましては、いろいろ国税あるいは国家収入の委譲すべきもの、あるいは偏在しておる地方税の委譲すべきものというようなものが考えられますけれども、せつかく地方制度調査会で、御熱心な研究を煩わしておることでもございますので、その審議を待つて政府方針考えるということにいたしておりますので、考え方についてはまだ政府でもきまつておりませんし、私の意見といたしましてはこの際は差控えたいと思います。
  207. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 議事進行の発言の要求があります。吉川君。
  208. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 どうも予算委員会の従来の例から見ましても、この程度の進行のときに、こんなにおそくまで委員会を開く例はないのでありまして、異例に属することでありますが、すでに質問者の古井君も長時間やりまして大分お疲れのようでもあるし、このままでまだ夕飯を食わないでがんばつておる諸君もおりますし、閣僚諸公も大分お疲れのようでございますから、ひとつこの辺で生理的な要求もだしがたいというところを、委員長の特別なはからいで暫時休憩に入りまして、食事にも行こうし、便所にも行こうし、そういうようなはからいをしてもらいたいことを要望いたします。
  209. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 ただいま吉川君から議事進行について発言がありましたが、委員長として一言申しますのは、この時間のこの程度まで委員会をやつたことは、例がないというような御趣意でありますが、その点はお間違いであります。相当に、十二時近くまでやつた先例もございますので、そこで……。     〔発言する者多し〕
  210. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 静粛に願います。ただいまの議事進行の動議に関しまして……。     〔「動議じやない、相談だよ」と呼び、その他発言する者多く、離席する者あり〕
  211. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 静粛に願います。御着席を願います。         ————— 御着席を願います。         ————— 御着席を願います。ただいまの御要請に対しまして発言をいたしますから、御着席を願います。         ————— 御着席を願います。         ————— 一応御着席を願います。御着席の上で、私の方からただいまの御要請に対する発言をいたしますから、御着席を願います。         ————— 委員長席において強要せられることは……。     〔「強要とは何だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  212. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 一応御着席を願います。御着席の上に私の方から、ただいまの御要請に対するお答えをいたしますから、一応御着席を願います。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 太田正孝

    太田委員長 御着席を願います。私は大分夜深くなることはお気の毒に思いますが、お食事等はかわるがわるおとりになりまして、議事を継続されんことを望みます。     〔「かわるがわるとは何だ」「そんなばかなことがあるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  214. 太田正孝

    太田委員長 御着席を願います。御着席を願います。     〔離席する者多く、議場騒然、「本間何だ」「委員長、首を絞めたじやないか」「委員外の者が手を出すとは何だ」「委員長、処分してください」と呼び、その他発言する者多し〕
  215. 太田正孝

    太田委員長 まあ着席してください。     〔「今の暴行は委員長の権限で処分してもらいたい、委員長の目前において行われておる、委員長今の暴行を処分して下さい」と呼び、その他発言する者多し〕
  216. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと待つてください。みな着席してください。     〔「委員長、どうなんだ」と呼ぶ者あり〕
  217. 太田正孝

    太田委員長 まあ御着席ください。     〔「のどを絞めた」「委員長、一言も言わないのですか」「委員長、今の暴行議員を処分してもらいたい、これでは審議に応じられない、命があぶない、ネクタイをひつぱつて首を絞めたんだから」「議事進行」「暴力の前に議事進行ができるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  218. 太田正孝

    太田委員長 ただいま吉川君の議事進行についての要請と同時に、本間君に対する問題が起りました。まず吉川君の議事進行についての発言は、暫時食事のために休憩すべしとの御意見のようでありますが、これに賛成の方の起立を望みます。(「動議じやない」「意見を申し述べている」と呼び、その他発言する者多し)起立を望みます。     〔「そんなものは動議になりやしない」と呼び、離席する者多く、議場騒然〕
  219. 太田正孝

    太田委員長 休憩すべしとの御意見がありました。委員長は休憩しないことに決しました。なお本間君に対する……。(発言する者多く、聴取不能)私の決定であります。     〔「ここで一時間も休めば、あとスムースに行きますよ」「本間君の問題も出たのだし、理事会を開かなければならぬ、委員長のきめたことを、強要によつてひつくり返すなんていかぬよ」「お願いしているんだ「こんなやかましいお願いつてどこにあるんだ」「ちよつと相談しよう」と呼び、その他離席する者多し〕     〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕     〔「委員長、なぜかわつたか、質疑続行」と呼ぶ者あり〕     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長着席〕     〔「進行してください」「重大な問題ですよ」「委員長にまかせたらいいじやないか、理事会でやらなければだめだよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  220. 太田正孝

    太田委員長 理事会は開く必要はない。私の権能でできる。     〔「委員長の報告できようは散会して、明日十時から開く、あすは継続すると、それで行こう、着席してやろうじやないか」と呼ぶ者あり〕
  221. 太田正孝

    太田委員長 両方ですよ。     〔「委員長がかつてにやるならわれわれは知らぬぞ」「そつちの委員長がきめたことをやるのじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  222. 太田正孝

    太田委員長 御着席を願います。  吉川君の休憩要請がありました際、議場の混乱を来しましたことは、まことに遺憾に存じます。中曽根君から次のごとき暴行議員処分要求の申出がありました。  本日八時五十分、本間議員は委員にあらざるにかかわらず、酒を飲んで何だと事実にあらざる暴言を浴せ、ネクタイをつかみ、小生の首を絞め、遂に窒息死せんとするやの暴行を行つた。小生は右議員に対し断乎たる処置を要求し、一切に先だち、安心して審議し得るよう要求する。  私は大野議長に御報告申し上げようとして電話をしたのでありましたが、折あしく不在でありました。岩本副議長に電話いたしまして、一切お申越しの件を朗読して伝そました。岩本副議長は、いずれ明日議長に報告の上善処したいとのことでありました。右御報告申し上げます。質疑を続けてください。
  223. 古井喜實

    ○古井委員 私は本国会の最重要問題について質疑を行つておりました。議場はまつたく混乱に陥つてしまいました。二時間に及んだものであります。その間において、ただに秩序が乱れたのみならず、暴力もここに行われるという状況でありまして、実に身体の危険さえも感じたのであります。(「その通り」)私はこの警察制度の問題のみならず、教育法の問題につきましては、やまく国民のために論じたい点が残つております。しかしこの事態にかんがみまして、本問題が解決いたしますまで、すべての発言を留保いたします。
  224. 太田正孝

    太田委員長 本日はこの程度にとどめます。明日は午前十時より開きます。散会いたします。     午後十時三十五分散会