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1953-02-17 第15回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十七日(火曜日)     午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    加藤常太郎君       重政 誠之君    島村 一郎君       砂田 重政君    田子 一民君       塚原 俊郎君    永田 亮一君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    北村徳太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    早川  崇君       古井 喜實君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    石井 繁丸君       河野  密君    西尾 末廣君       西村 榮一君    平野 力三君       足鹿  覺君    伊藤 好道君       稻村 順三君    八百板 正君       和田 博雄君    福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         人事院事務官         (給与局長)  滝本 忠男君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         食糧庁長官   東畑 四郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十七日  委員川崎秀二君、井上良二君及び上林與市郎君  辞任につき、その補欠として櫻内義雄君、水谷  長三郎君及び足鹿覺君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑を継続いたします。和田博雄君。
  3. 和田博雄

    和田委員 最初通産大臣にお尋ねしたいと思うのですが……。
  4. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと和田さんに申し上げますが、先ほど理事会でいろいろな時間の問題が出まして、大体一時間見当ということで進めて行くことになつておりますからそのお含みで、また政府答弁を聞いておりますと、少し長いような場合もありますので、さりとてむやみに端折つて、禅問答のようなことでも困りますので、その点をよく御注意の上、議事の進行を円満にさしていただきたいと存じます。
  5. 和田博雄

    和田委員 政府は今度の施政方針演説、その他の経済関係演説におきまして、今後とる経済施策のおもなものといたしまして、貿易振興を第一番に取上げておられるのであります。貿易振興が、日本の再建にとつて重要なことは言うまでもございませんが、その貿易振興の中で、経済外交の問題を取上げておられるのであります。そこで私は一応簡単に聞いておきたいと思いますことは、現在通商協定の締結なり、更改なりの現状がどうなつておるかということを、まず簡単にお聞きしたい。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在通商協定としまして話が行われておるものは、アメリカとの関係だけでございますが、支払協定その他ができておりますものが、日英支払協定、あるいはイタリアとかフインランドとか、そういうものを合せますと、合計二十二国に達しております。
  7. 和田博雄

    和田委員 その二十二国のそういう協定の中で、貿易計画を含んだ協定は、どことどことでございますか。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつとこまかくここに記憶しておりませんから、あとで何かの機会に数字的に述べさせていただきたいと思います。
  9. 和田博雄

    和田委員 私はこの通商協定なり支払協定の問題は、平和条約が結ばれて以後、やはり日本の今後進むべき道として、大きく残された問題だと思うのであります。従いましてこういう問題につきましては、資料をお出し願うだけでなしに、通産大臣としてあるいは外務大臣として、どういう状態であり、今後どういう方向でやるのかということについて、はつきりと御答弁を願いたいと思うのですが、外務大臣に、もしもこの点についてお考えがありましたら、お聞きしたい。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 多くの場合は、占領中にございました貿易並びに支払協定現状に基いて改正しつつ、すみやかに通商協定を結ぶまでの暫定措置をしようという意思ですから、従来と根本的にあまりかわつたものはございません。しかしたとえばイギリスとの間の協定につきましては、今まで御承知のような関係で、ポンド地域輸入を抑制しておりました関係上、こちらも買う物は少い、向うも入れる物は少いで、だんだん輸入量が減る傾向になつて来ました。ところが最近ポンドの力が非常によくなつて参りまして、その点は改善し得る見込みがありますので、今話をしておりますのは、できるだけ日本側ポンドで物を買つて来る、まずこちらで大いに買う、その反面にイギリス側日本品輸入を促進する。今度はかなり大幅に貿易量の増大をはかろうというので、ただいま貿易協定の中で支払いの面について、相談をいたしましてやつておるわけであります。  それから先ほど通産大臣が言われました通り通商協定はただいまアメリカ話合いをしておるほかには、たとえばスエーデンとか、その他二、三箇国と下話をしております。なお中立国については、御承知のような関係で前の協定が生き得る立場にありますので、全面的に生かそうとか、あるいは一部生かそうとか、いろいろ話はいたしております。
  11. 和田博雄

    和田委員 この点については、おそらく相当の資料があるだろうと思いますから、資料の提出を通産大臣にお願いしておきます。  ただいま日英間の貿易の問題について外務大臣が触れられましたが、これはあとで、もつと詳しくお聞きしたいと思います。  そこで次はガツト加入の問題でありますが、ガツト加入につきましては、同僚の諸君からも質問があつたと思います。去年の十月二日にジユネーヴで総会がありまして、日本ガツト加入するのは原則的には賛成だということでありましたが、かつて世界貿易におきます日本のいわゆるダンピング問題等がありまして、加入条件と時期については、会期間委員会の方できめるということになつてつたように私思うのであります。その際でも、加入賛成していない国としましては、イギリスであるとか、フランスであるとか、あるいはオーストラリアニユージーランド等の国があつたように聞いております。そこでただいまこのガツト加入の問題について、一体会期間委員会がどういうふうな情勢になつておるか、その点をお聞きしておきたい。     〔委員長退席本間委員長代理着席
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま会期間委員会を開催中のことは御承知通りであります。今おつしやつたように、初めは日本加入によつて経済上の圧迫を引起すのじやないかという心配もいろいろ意見が出ましたが、この点は大体わが方のいろいろの説明によつて、納得したようであります。しかしながら、ガツト規定の中に一般的な——つまり日本加入条件というのではなしに、一般的な規定として、経済上の緊急の場合には、ガツト承認条件として、応急措置がとれるというふうな趣旨規定を強化するようになるのでございますが、各国とも、今の会期中に結論を出すつもりでやつております。従いましてそれができますれば、日本加入に対する勧告が、総会に対してなされるわけであります。従つて日本加入が原則的に勧告されて、あと加入をいたすに必要な手続の問題であります。手続言つてはちよつと語弊があるかもしれませんが、つまり関税協定を結ぶということです。そこでこの関税協定につきましては、今年中にはどうしてもガツトとしては、関税協定各国とも更新しなければならぬ立場にありますから、十月ごろに開催してそこでやるか、その前に日本だけは個別に各国とやるか、いずれにしましても、日本は前提としてこの関税交渉をやりまして、それが終るとこれによつて総会加入が認められるということになりますから、時期的にいえば、いくら早くても今年一ぱいはかかると思いますが、加入見通しはほとんどついたと言つていいのではないかと考えます。
  13. 和田博雄

    和田委員 加入見通しがついたということでありますから、そういうことになればいいと思いますが、大体において政府としてガツト加入について、何かこつちから条件でも持ち出したのでございましようか。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こちら側としては、無条件加入することを強く主張しております。先方は、初め加入について条件をつけるというような意向でありましたけれども、それをやめまして、一般規定の中にそういう応急措置がとれるような改正を行つて、それで日本加入を認めようじやないか、こういうことになつて来たようであります。
  15. 和田博雄

    和田委員 そうすると、こちらからは何の条件もつけないで——こういう点は日本として困る、たとえば沖縄というような関係関税問題で困るからという点では、全部条件をつけずに、ただ無条件で入るということだけの努力をしておるわけですか。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ガツトに対してはそうでございます。そのガツト加入するについての各国との関税交渉をする場合には、そういう問題が出て来るわけでございます。
  17. 和田博雄

    和田委員 このガツト加入の問題について一番大きな問題となつて日本加入について賛成の態度をとつていない国々心配した点は、やはりダンピングの問題だと思うのですが、そういうダンピングの問題について、現にガツト加入しておる国々が、どういうような意向一体つておるか、どういう考え方を持つておるか、ひとつ詳しく説明していただきたい。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはもう説明するまでもなく、非常に心配しておるわけであります。そこでただいまの考え方は、もしそういうダンピングのような緊急の事態が来たときには、輸入防遏措置応急的に講じ得る、しかしながらそれは事後において総会承認を求めなければならぬ、こういうふうにガツトの一般的な規定を改正するという方向に向つております。これは必ずしもどこの国という相手はない。一般的にそういう応急措置をとることが認められる、そういうのが多くの国々意見であります。
  19. 和田博雄

    和田委員 そこが非常に問題になるのだと私は思うのであります。今、日本ガツト加入問題に対して、反対の立場をとつているイギリスにしても、あるいはフランスオーストラリアその他の国にしても、ほかの国のダンピングというものはあまり問題にならないのです。戦争の前だつて、やはり一番問題になつたの日本の伸びて行く経済力世界市場における競争力に対して、その競争相手方の国々——例をとつて申し上げれば、これが一番問題になるのはイギリスだと思いますが、そういう国々が一番問題にするのはやはり日本なのです。戦後においても、イギリスが問題にしておるのは日本西ドイツなのです。そうしていつでも応急措置がとれるようにして、向うガツトにおいてダンピングということにきめてしまえば、そのほこ先は結局日本に向つて来るわけなのです。ほかの国はほとんど問題にならぬと思う。だから無条件で入つたにしても、政府としてダンピングについてのやはり何らかの主張がなければ、ガツト加入してみても、日本としては非常に不利な状態で入つて行くということにならぬのでしようか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ガツト加入だけを考えられるとそういう議論にもなるかもしれません。また日本を恐れておる国があることも事実であります。しかしそれと同時に関税交渉もいたします。また貿易協定もいたしておりまして、その方面で実際上の心配はない。またダンピングなどは日本としてもやるべきものではないのですから、その方を十分注意すれば、おつしやるような心配はないだろうと考えております。
  21. 和田博雄

    和田委員 そうも行かないのでありまして、その前にちよつと聞いておきたいのですが、個別的な関税交渉は現在やつておられるのですか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ガツト加入のための個別的な関税交渉でありますれば、加入勧告会期間委員会できまりましたときにやる。その用意はいたしております。
  23. 和田博雄

    和田委員 関税交渉の場合でも、ガツト加入の場合でも、ダンピングが問題になつたときに、その一番の論点は、やはり日本の低賃金の問題だと思うのです。従つてこの問題がある限り、個別的な関税交渉の場合においても、やはりそれが常に問題になつて来る。現にアメリカのいろいろな関税の問題、まぐろ関税その他で起つておるものも、つつ込んで行けば、やはり最後は、日本における低賃金ということが、向う側の大きな論拠になつておるのだと私は存じておるのですが、そういう点はいかがでありましようか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう論拠を使われる人もむろんあります。けれども現在の日本賃金ドルに直してみますと、私が申すまでもないと思いますが、少くとも東亜において決して低賃金とはいえないと考えております。その点は各国もだんだん認めております。
  25. 和田博雄

    和田委員 日本生活水準から考えてみてあるいは西ドイツ生活水準から考えてみて、アメリカと比べて約十分の一、イギリスと比べても約六分の一です。決して日本が低賃金でない、日本賃金というものは非常にリーズナブルであるというわけにはなかなか参らぬのだろうと思います。その点をいかに理解させて行くか、いかに日本における妥当な賃金政策をとつて、それを世界国々にほんとうにわからせて行くかということは、私はやはり経済外交中心点だろうと思う。そのような努力は、今の吉田内閣においては何ら払われていないのであります。そうしてガツト加入の問題についても、今おつしやつたように、おそらく無条件で入るといいながら、実はガツト加入しておる国々の間では、日本に対するダンピング規定だけは強化して、そうして日本を入れようという、これが今の世界情勢なのであります。従いましてそういう点については、やはり政府におきましてただ単に外交という面でなくて、相互的な日本立場日本生産力というものが、外国の競争によつて不当に弾圧されて来るような状態を、打開するための努力がいるのではないかと私は思うのでありますが、この点についてはあと賃金政策を聞くときに、多少また触れたいと思います。  時間の関係もありますので、あとポンド地域貿易について、少し通産大臣に聞きたいと思います。ポンド地域貿易は、日本にとつては非常に重要でありますし、また現在の状態におきましても、ポンド地域が一番日本からの輸入制限なんかもやつておりまして、競争の最も激甚化するおそれのある、また現に激甚なところであります。イギリス連邦首相経済会議でいろいろな決定がなされましてそれについては本会議でも多少聞いたのでありますが、まだ要領を得なかつた点もありますので、ちよつと聞きたいと思うのです。ポンド自由兌換性の問題が大きく取上げられておつたわけでありますが、外務大臣なり通産大臣なりは、このポンド自由兌換性という問題が現実化する可能性、またかりに現実化するとすれば、どういう形で一体現実化して来るかということについて、どういう考えを持つているか、お聞きしたい。
  26. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつとむずかしい問題で、はなはだお答えに苦しむのでありますが、スターリングドルとが両方とも支払いの具に充てられているような地域では、ただいまのところみなドルを選んでおるのでありますが、スターリングでもさしつかえない、こういつたところから始まつて行くのではないか、かように私どもは見ております。なお今お話のありましたポンド地域に対する日本貿易関係につきましては、ここが大切であることはお言葉通りと思います。
  27. 和田博雄

    和田委員 私がなぜこの問題を聞くかといいますと、ポンド兌換性の問題が解決した場合には、日英支払協定な人かは考えなければならぬ点が出て来ると思う。日英支払協定はことし一ぱい期限があるわけですが、こういうイギリスのかつて支配圏であつた、しかも日本にとつては大きな市場であるポンド地域の問題については、今世界情勢は大きく動いておるから、そういう問題がどういうふうになつて来るかということにはやはり見通しをつけて、ある程度の考えを持つていただかないと、その都度外交になつてしまつてできたあとからあとから追つて行くということになると、日本としては非常にきゆうくつな立場に追い込まれることになるのではないかと思うのであります。またイギリス経済会議において、もう一つ多角決済機構の問題が取上げられておりますが、こういう問題については、もちろん日本としては賛成的な立場にあるべきであつて、こういう問題についても今後御研究を願つていただきたいと思いますと同時に、一体日英通商会談というものについてはやるつもりなのですか。やるとすれば日本側としてどういうことを議題として主張して行くのか。経済外交ということを政府は盛んに言われているのだから、日英通商会談なんかはやはりどんどんやつて行くべきではないかと私は思うのですが、岡崎さんいかがでしよう。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは当然考えておるのでありまして、先ほど申した通り趣旨で大いにやるということを考えております。
  29. 和田博雄

    和田委員 先ほど申したということですが、いろいろな問題があると思うけれども、どういう問題が考えられているかを、もつと具体的にお話願いたい。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 つまり、言葉は悪いかもしれませんが、ポンド蔑視という感じを向うに与えておつた。しかるに実際はポンドは決してだめなものではなくて、ポンドで十分買い得る品物がたくさんあるのだから、ポンドをできるだけ活用しようというのが趣旨であります。その活用によつて日本輸入がふえますから、それによつて日本輸出もふやして行く、そこで大体大きなわくとしてどのくらいのところまで輸出入が行くかという点が、話の根本問題になるわけでありますが、これはかなり大幅に話がつくのではないかという期待を持つております。
  31. 和田博雄

    和田委員 会談はいつごろからやりますか。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 通商会談といわれるとどういうふうになるかわかりませんが、ただいまやつております。
  33. 和田博雄

    和田委員 名前はどうでもいいのですが、そうすると日本イギリスとの間に、貿易拡大をやるために今正式な会談をやつている、こう理解していいのですか。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りであります。英国側からも専門家が来ておりまして、もうかなり進んで来ております。
  35. 和田博雄

    和田委員 岡崎君御承知のように、ポンド手持高はだんだん減つて来ている。今まではこんなに減らなかつたが、十一月は八千三百万ポンドというように、十月から比べればかなり減つておる。その前から比べても減つておる。それはポンド地域国々が極端な輸入制限をやつたことが大きく響いておるとは思います。しかし日本側としてもやはり正常貿易にはドル・ギヤツプがあるのですから、やはりポンド地域というものは軽視できない。そうすればやはりイギリスとの間に話をつけて行くことが、何といつて最初にすべきことであると思う。そういう点からいつて投資の可能性であるとか、あるいは支払協定の中の行政振替を運用さすとか、いろいろ重要な問題——技術的な問題ではあるけれども、実は貿易拡大に役立つ問題があると思う。そういう点について現に話が進んでおるなら、やはり国会においてはもう少し具体的に、どういう点が問題になつておるのか、その交渉経過話合い経過を聞きたい。これはもちろんある程度は言えない面もあるかもしれないが、その方向は言えるのではないかと思います。どんなものでしようか。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実は今お話のように、先方との話合いであり、先方はいろいろロンドンに相談しておるようでありますから、ここでその内容を申し上げるのはちよつとさしさわりがありますが、要するに方向としては、行政振替の問題もあります、それからこちらでポンドを需要する場合、たとえば今までのスターリング地域と称するもの以外からもポンドをとるかとらないか、要するに今まではポンドの実勢が安かつたものですから、何割方かコストが高くなつておるのが、それがなくなりましたから、今度はポンドをどこから買つてもそんなに支障がないというようになつて来ておる。これは国際情勢でまたかわるかもしれませんが、しかし今の調子を見ると、決してまた急激な変化がありそうもありませんから、できるだけポンド使つてポンド圏から輸入をする。今のようなドル圏からの輸入の切りかえという意味で、ポンドをよけい使う。従つて貿易はそれだけ大きくなる。その大きくなつたもので今度は輸出をやつて行く。こういう趣旨でずつと話を進めております。
  37. 和田博雄

    和田委員 かつて日英支払協定の場合におけるがごとく、日本側としてはすつかりやられてしまつて行政振替というものがあつたにしても、実際・上はそういう事柄についてほほとんどやられないというので、特殊の事情でポンド圏における日本貿易が伸びたにしても、日英支払協定の場合においては、明らかに日本側がやられた。そういうような意味において今後の日英会談においては、何しろ世界における、ことにアジアにおける経済的な競争相手としてイギリス日本を目的にしておるのです。日本はやはりイギリスが目・的なのです。そうなつて来ると、やはり国際場裸における経済の戦いは、外交面においても十分な準備を整えてやつて行くのでなければ、ただよい商品を安くつくればよいのだというようなのんきな考えでやつてつたのでは、今後における日本貿易拡大というものは、非常に楽観できないものがあるのではないかと思うのです。そういう意味において、ポンドについて今度の吉田内閣が取上げた経済政策の面を個々に具体的に当つて行きますと、単なる演説に終るのでなしに、実際の効力を発生するように、政府側としても十全の措置をとるべきことだと、経済面から見て、——外交その他の関係についてはまた一応の考えがありますが、そういうふうに思いますので、この点については外務通産がお互いによく連絡をとつて通商のことはおれの方でやるのだ、あるいは外務省の方が通商の方は通産省が専門であるとかいつたようなつまらない争いをやるのでなしに、一体になつてつてもらいたい、こういうことを申し上げておきます。  それから次に東南アジアとの技術交流の問題ですが、これは現実にはどういう状態になつておりますか。
  38. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 たびたびプラントなどを出します時分に技術の使節などを送りましたが、今度は重機械相談室というものをつくりまして、向うで常時相談を受けて、いわば一種のサービスもしてやるというようなぐあいにいたしております。交流と申しましても、また向うから来ます者については受入れの態勢もしておりまして、各工場その他の方面へそれぞれ見学その他の道を開いておりまして、十分向うのために指導的なこともやつておる次第でございます。
  39. 和田博雄

    和田委員 日本からどこの国に何名くらいどんな技術者を出しておるのでありますか。
  40. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 人数をちよつと記憶しませんが、これはあとから数字を申し上げます。
  41. 和田博雄

    和田委員 この技術交流の問題は、ことに東南アジアの国々において要望があることは私も承知いたしておりますが、技術の交流というものは必要であります。しかし技術交流というものは、これが切り離れされた問題ではありませんで、やはりその技術交流の背後にあるところの国々経済の建設なり、あるいはいろいろな問題があるのでございます。これと結びついての技術交流でなければ成功するめどはないと思う。そこでやはり政府が今度大きく技術交流の問題などを取上げられておるわけでありますが、予算を見ると予算面にもあるのでありますから、これについて、どういうような計画でどういう方面に技術を交流するのかということについても、予算を組まれるときにすでに具体的なものがなければならぬと思う。そうでなければ意味がないと思うのです。ですからその点についてひとつ明確な御答弁をお願いいたしたい。
  42. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 将来行うことにつきましての予算はそういう措置がとつてありますが、しかしどの地方にどういう人間を何人やるかということは記憶いたしておりませんから……。(「何にも知らぬじやないか」と呼ぶ者あり)お答えいたします。ただいまのうち本年交流すべき技術者の分については、まだ向うからどういうものを要望するかはつきりいたしませんので、実は予算だけとつてあるけれども、実情に基いてこれをきめたいということであります。但し昨年の分についてははつきりいたしております。技術員を送りましたのが四十名、一時派遣いたしましたのが約百名、これだけ昨年度に送つております。
  43. 和田博雄

    和田委員 どういう技術員を送りましたか、その点がわかつておれば、政府委員でけつこうですから、お答え願いたい。
  44. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 これまでは大体パキスタンが主でありまして繊維関係製造、染色、加工というものが大部分であります。一、二肥料関係はまだ工場が建設の運びに至つておらぬようであります。いろいろ相談に応ずるというような意味で一、二名参つております。実は品目別の表を今持つておりませんので、あとで詳細申し上げます。
  45. 和田博雄

    和田委員 その技術員が行つたのは、技術員だけとして行つたのですか、それともプラント輸出と結びついてやられたのであるか。
  46. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 技術員の方は、機械の商売をいたしました場合にその機械について参りますのは、これは商社のサービスと言つておりますので、いわゆる技術者の派遣というふうには考えておりません。技術者の出かせぎ人というような意味で、向う政府あるいは民間の会社あるいは地方自治団体で、技術労働者としての要望がありまして行つたものを、いわゆる技術者の派遣というふうに考えております。
  47. 和田博雄

    和田委員 農林大臣、農業方面の技術員の交流はどうなつておりますか。
  48. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 農業の方は具体的に一番大きいのは稲でありますが、稲の方はFAOで品種の交流研究を一昨年から始めております。それができませんと、日本式の水田農業をそのまま移すということがむずかしいのです。現在のところはパキスタン、インド、ビルマ、シヤム等から相当多量に技術者が来ております。一番多いのは四十人の班を組んで先週ですか来ましたが、この春もまた来る予定になつております。それから向う側の政府の要請として現在ビルマに蚕糸の技術者が行つております。またパキスタンに水産局長の要請で行く話があつて、今人選中でございます。具体的に向うに人を送るのにつきましては、語学の点とかなんとかがありまして、農業の方はいなかに入つて指導してくれというのがありますので、なかなかうまく行つおりません。     〔本間委員長代理退席、委員長着席〕 現在のところは向うから来まして、これは学生とか蚕糸試験場とか農事試験場とか、それから土壌等については大学ですが、そういうところに最近相当活発に、向うから委託学生のようにしてやつてくれぬかという要求が来ておりますので、私の方では大体英語が話せればあまり条件をつけないで受入れる、こういう考えでいるわけであります。
  49. 和田博雄

    和田委員 技術者の交流の問題を私がやかましく言つているのは、これがやはり経済外交の大きな糸口になるし、ささえになるからお聞きしているのであります。ただやはりこれをやるについては、向う側の計画ももちろんありましようが、こちら側からの計画もちやんとしておつてまず外交的にも話合いをして今の御答弁を聞いてもぼつぼつと行くような形ではなしに、やはりもつと系統立つた外交を進めて行くようにしなければならぬのではないかという気持を私は持つているのでありますが、外務省としては経済技術の交流という点について、何か努力をされているかどうか、その点をちよつとお聞きしたい。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省としては、当地におります大使なりあるいは先方におります日本の大使なりを通じまして、ただいまのパキスタンの話なども大使と話をしてやつている。またその他にも大学における教授をよこしてくれとかいうとき、いろいろこちらでは大きなわくで計画を立て、これこれこういうふうにしているわけでありますが、向うではその中のたとえば五%をとるとか一〇%をとるとかいうのではなしに、その大きな計画の中でとり得るものをぼちぼちとつて行きますから、形としてはぼつぼつ出たような形になつていますが、計画としては大きく話をしてやつているわけであります。ただいやがるものを押しつけるということはすべきではありませんから、結局これは向うの希望ということになります。
  51. 和田博雄

    和田委員 岡崎君の今の答弁は私は少しく誠意を欠いていると思う。なぜなら今度の通産大臣あるいは経済審議庁長官の演説を見ても、「同地域資源の開発、工業化計画に積極的に協力いたしますとともに」というようなことを言つておられる。こういう考え政府の側にあるわけなのです。そうするとやはりこれはいやがるものを押しつけることはできないと思うし、またやるべきではないと思うが、こういうことを言われる以上は、政府においても少くとも一貫した何らかの技術面におけるそういう計画がなければ私はならぬと思う。少くともある程度の具体化されたものを持つていなければ、これはもう単なる演説だし、せつかく経済外交という重要なことを言いながら、結局将来何もやる見通しがないと言われてもしようがないと思う。ですからそういう点については、経済面だけでなくて、各国との外交——それぞれの国がとつている政府の制度が違つております。あるいは社会党がとつているところもあれば、保守党がとつているところもある、そういう政治関係がやはりこれに伴つて行かなければならないとは思いますが、政府としてはどういう形でこういうものを積極的にとるかについての、少くとも見通しなり計画なりがなければならぬと私は思います。どうも今のお話を聞いていると、非常に心細い気がするのですが、外務大臣として、こういう点についてどういうふうに具体的にやつて行かれるつもりであるか、もう一度くどいようでありますが、御説明願いたい。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今申しましたように、一つは大きな文化交流という考えからやつております。一つは直接の経済協力といいますか、やつておりますが、それが一ぺんに大きな形で出て来ないだけであります。たとえば具体的に申しますと、ビルマのようなところは向うの一番まず希望しておりますのは、農業のほかには各町村に医者と看護婦が一対ずつになつて来てくれという話が来ております。それから日本の戦後にできましたような簡単な木でつくる家、これに対する技術を供給してくれというのが一番おもなもの、そのほかに農業があります。それからインドの場合はまず大学の中に講座を設けてそこでもつてインドの学生に講義をしてもらうということから始まりたいというので、その話もいたしておりますが、その前にまず一般的に見てみようというので講師を派遣しております。そしてそのあとはおそらく農業技術になると思いますが、その方面になります。パキスタンはすでに大使館によつて技術家を募集して派遣しようとしているのもあります。それから大学の教授を、これはエンジニアとメカニツクでありますが、派遣してもらいたいという話もあります。インドネシアの方はまだ具体的に行つているのはありませんで、個々に個人契約のようなものはあります。フイリツピンの方は今度賠償関係で来る人がその案を一、二持つて来るだろうと予想しております。各国によつて違いますけれども、われわれの方はそういずれにも応ずるというような話をいたしているような次第であります。
  53. 和田博雄

    和田委員 岡崎君は御承知のように、これは通産大臣にも聞きたいのですが、インドにはやはり五箇年計画というものがあるわけです。それからビルマにしてもやはり経済計画を持つている。日本がそういうものに協力しよう、東南アジアに協力しようというときには、まずやはりインドなんか政府が立てて実行している五箇年計画が問題になつて来るわけです。インド側とすれば、おそらくその計画に基いて、日本に協力を求めて来るということに私は当然なるだろうと思う。従いましてそういう点について、外務大臣としてこういう協力関係を打出している以上は、そこにどういう点で日本が協力でき、また向う側の要求とも合うかといつたようなことについて、外交的に一体話し合つてみたことがあるかどうか。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インド側とは特に話は始終いたしております。そこで五箇年計画とかいうものもありますが、しかし現実の問題は、その五箇年計画のごく一部の各方面に出て来るのであつてその計画に合せてこちらもこういうふうにやるのだというような、そういう計画はこちら側は持つておりません。
  55. 和田博雄

    和田委員 いろいろ質問したいこともありますが、時間がありませんから、この問題は一応これだけにして、あとちよつと関連して、防衛生産について通産大臣にお聞きしたいのです。いわゆる砲弾とか鉄砲とかいうものをつくつておる防衛生産でありますが、今までの防衛生産によるドルのかせぎ高と見通しを、これは資料をいただいたかとも思いますけれども、お伺いいたしたい。
  56. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと今数字を記憶しておりませんから、あとで申し上げますが、防衛生産一般のことについてならば私から御答弁申し上げます。数字のことは政府委員の方からお答え申し上げます。
  57. 和田博雄

    和田委員 これは政府委員からでも聞きたい。なぜなら、防衛生産というものがどれだけドルをかせぐか、あるいはその見通しはどうかということは、おそらく今度の予算をつくられる場合でも、今後の日本経済見通しをやられる場合でも、いろいろな政策を立てる場合の一つの大きな要素だと思いますので、お伺いしたい。
  58. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただ防衛生産のみでなく、その他を含めました一切の国際収支の受取勘定でありますならば、いわゆる特需関係その他の受取勘定でありますならば、昨年度は七億八千万ドルであり、本年も約七億ドルから七億五千万ドルに達するであろうと存じます。但し今御指摘の防衛生産がそのうち二億何千万ドルになるか、三億何千万ドルになるか、私にははつきりいたしません。
  59. 和田博雄

    和田委員 私は小笠原さんに申し上げておきたいのですが、その点はやつぱり詳しくお調べになつていただきたいと思うのです。そんな二億も三億にもなるものではないのです。
  60. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 防衛生産の範囲もいろいろございますが、一応兵器だけに限りますと、昨年におきます契約高は三千万ドルちよつと上まわつておると思いますが、これが現実に御質問のようなドルの受取りということになりますと、契約その他の関係もございますから、現実にはまだそれが全部受取りにはなつておらない、こう考えております。
  61. 和田博雄

    和田委員 政府委員になおお尋ねしますが、三千万ドルですか、私の計算だと大体二千万ドルくらいしかならないのですが、その点はもつと正確な数字をいただきたいと思う。
  62. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 今のお話は、契約されましてもいろいろな関係で取消しその他もありますから、そういう関係を差引かれた数字かと存じますが、また再契約もございますので、大体三千万ドル程度になつておると存じております。
  63. 和田博雄

    和田委員 どんな会社が、今そういう兵器をつくつているのですか。
  64. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 砲弾が一番中心でございますが、砲弾は完成品の砲弾としましての契約会社は、小松製作所あるいは大阪金属等でありますが、これはもちろん下請もございますから、関係会社はふえるわけであります。
  65. 和田博雄

    和田委員 私の調べたところだとそういうものではなくて、この兵器生産で一番特徴をなしているのは、紡織関係の元の工場が一番多いのじやないかと思います。この紡織機の関係が非常に多いということは、これはやはりわれわれとしては考えてみなければならぬ点があると思います。もとよりこういうものは、元兵器生産をやつてつたものもありますが、これはやはり一体貿易が不振になつて、ことに中国との貿易が禁止されて以後、業界として一つの救い道を、ことに中小企業が自分たちの救い道を求めたのが、やはりここに来ているのだろうと思います。従つてそういう点からいつても、私は中国との間の貿易というものもこの面から考え直して中国との貿易を再開する努力を、やはり政府としてはやらなければならぬのではないかと思うのであります。ことに今の出血受注がはつきり示しておりますように、私はそこに非常にむだがあると思う。むだというか、非常な犠牲があると思うのです。ことに、技術的にいつても資本的にいつてもしつかりしていない会社が、注文だけは非常に安く受取つてそして物はつくる。物はつくるが、また非常にぺケなものも出て来るというのでは、ぼくは乏しい国内資源を濫費しておると思うのです。兵器生産の問題は、ただこれが輸出産業だからといつて安易に受取るべきでなくして、乏しい国の資材、資源を濫費する形、しかも中小企業者の犠牲において国の資源が濫費されておるということは、これは国民経済の上からいつても、どうしても避けて行かなければならぬ点だと私は思うのです。その意味において、この兵器生産の問題については、政府としては今後どういうような対策をとり、また態度をとつて臨まれるのか、この点について通産大臣の御答弁を願いたい。
  66. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今、国会の方へ提出して御審議を願つている武器等製造法案は、今の御懸念の点を憂えて立案したものでございまして、つまり日本が今少い物資を、そういつたむだな方面にいろいろ使つおるような状況というものは、これはまことに遺憾な点があり、そしていわゆる出血受注をしておるというような点は、まことに残念に思われますので、そういつた点をある程度取締り得るように、また設備がすでに過剰の状態にあるのに、一方では今御指摘になつたような紡績工場を使つてこれをやつておるというような点等をためるために、そういつたことを許可制度にするとかいうようなことにいたしたいというので、武器等製造法案を提出しておる次第でございまして、現在のところは、たびたび申し上げます通り、ほとんど九割九分は向うの注文をやつておりますので、輸出産業の一環としてだけ取扱つておるのでございます。また近い将来もおそらくそれが続くだろうと私は信じておりますが、しかしそれにいたしましても、一切のむだのないように、またそういう浪費のないように、また国民生活を苦しめないように持つて行くことは、ぜひ必要と考えておるので、そういう措置をとつておる次第でございます。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  67. 和田博雄

    和田委員 私は武器生産が憲法違反であるとか、あるいは軍備反対であるとかいう議論は今はやりませんが、現象的に今出ているその面だけをとらえてみても、日本経済が非常にひずみをここに持つていると思います。岡崎外務大臣は、こういうような事態が国内において発生しておるにかかわらず、中国との間の貿易という点については、今までのような態度をとられるのか、なお一層貿易について今後お互いに道を開いて行こうとされるのか、その点をひとつ……。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは通産省とよく相談いたしまして、戦力増強にならない範囲で、また各国の歩調の合う範囲では貿易をやつて行こう、こういうつもりで進んでおります。
  69. 和田博雄

    和田委員 この兵器生産の問題は、ぼくはやはり日本経済にとつて、今後非常な災いをなす面が出て来ると思うのでありまして、長期にわたる計画は日本側で立てるわけに行かない。日本アメリカの予算に依存している。アメリカの政策がかわればどうかわるかわからないわけです。しかしそれと同時に、今現に日本ではいろいろな出血受注までやつておるわけですから、日本側としては、やはり何かそこにある程度の見通しがなければ、資本を投下するにしてもあるいは何をするにしても困ると思う。外国のどこを見ても、兵器生産をやつていても、アメリカの注文に対しては一体何年くらい続いて、どういうものがどうだということがはつきりした上で、政府がどこまでも乗り出して来ていると思う。こういう点について何らか政府側において、今は直接調達みたいな妙な形をとつてつてだめになつておるのですが、向うと実際話し合つてみたことがあるのでしようか。ただ向うの言いなりに、注文があつたら受けるという形そのままにされておるのであるか、そういう点についてどういうふうになつておるか伺いたい。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今までも、日本の国内産業を保護する意味から、アメリカ側に対してできるだけの情報といいますか、材料あるいは考え方といいますかを話し合つて進めて行くように努めておりますが、もし将来日本が本腰を入れるような場合には、当然今おつしやつたよう意味の安定した注文がなければいかぬと考えております。
  71. 和田博雄

    和田委員 まだいろいろ聞きたいことがありますが、農村問題について少し農林大臣に御質問したいと思います。  農林大臣としまして、いろいろと農業政策をやつておるわけですが、農業政策の基本的な目標というものを、一体農林大臣としてはどこに置いてやつておられるのですか、その点をひとつお伺いしたい。
  72. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これはやはり食糧の自給度を確立することを目標といたし、それについて農家の生活の安定をはかることが、目標であると考えております。
  73. 和田博雄

    和田委員 私はやはり農業政策という場合には、農民に対する政策と、それから農業に対する政策というものがあると思うのです。今農林大臣の御答弁を聞いておると、食糧の自給度を高めることが一つの目標である。同時に農民の生活安定をはかることが必要だ。食糧の自給を高めること、言いかえると、食糧増産をやることがそのまま農民の生活の安定になるかというと、これはすぐには私はならないと思う。この間にはいろいろの中間項があつて、生産をふやしたことが、すぐ農民の安定というわけには私は行かないと思う。そこで今度の食糧の自給の予算を見てみますと、従来農林省がやつてつたいろいろなことを、ただ平面的にふやしたというだけであつて、その間に必要なものが欠けておると思うのです。たとえば増産をするが、できたその全体の米の価格の点については、一体どういうふうに考えておるのであろうか。あるいは食糧の統制の問題についても、政府一体どういう前提の上に立つておるのだろうか、いろいろなことが私はやはり欠けておると思う。農林大臣としては、そういうような点について、一体どういうようにお考えになつて増産計画をお立てになつたのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  74. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農林行政の基本方針については、やはり二分して見ることが正しいことは私も認めております。単に農地を拡大いたしたところで、ただちにそれが農家経済に響いて行くということにならぬことは、お説の通りであります。それと並行して農家経済がゆたかになるような方途を講じなければなならぬ、それについての一番大事な御指摘の米価の問題についても、これはやはり農民が納得するような方向に向けて参らなければならぬ、再生産をやれるようにいたさなければならぬということは、これは農林省の方針であります。それからまた、その他農家経済を潤す上において、農村の経済に強く響く米麦その他のものについても、やはり価格の安定等も考えなければならぬと思つて、そういうような方向で進めて参りたいと考えております。
  75. 和田博雄

    和田委員 米価の決定は、従来通りパリテイ計算できめてお行きになるつもりなのですか。
  76. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これはいろいろ論があるのでございます。特に生産費を主体として考えろというような説もたびたび聞かされて、これは身にしみておるのでありますが、農業の労働力の算定、あるいはまた各地域別の土壌の差異、いろいろな問題が積み重なつて参りますので、生産費を主体として価格を決定するということはなかなか困難でありまして、今までのようなパリテイ方式によつてつて行くのは当然だろと思います。但し、それのみでなく、再生産ができ得るようアルフアを加えて、そうして調節を保つて行く方が、今の場合よろしいのじやないかと考えております。
  77. 和田博雄

    和田委員 米価については米価審議会があるわけです。ところが米価審議会は、常に米価がきまつてからかけられるようなかつこうになつてつて、ちつとも権威がない。政府がきめたところと違つた意見を出しても、政府はそれを採用するわけでもなし、という形になつておるわけです。私はこの米価の決定については、少くとも農民が満足すると同時に、やはり消費者価格については、消費者側においても満足するものでなければならぬと思う。そこで今のような形でやるのでなしに、もつと米価審議会なり何なりに権威を持たせることが必要ではないかと思うのです。スエーデンでは、たしか農民側の代表と消費者側の代表と、それに政府が加わつて審議会みたいなものをつくつてそこで重要な農産物の価格をきめる。そのきめた価格を国会が承認した場合には実行するという形になつてつたように思うのです。価格の決定については、やはり政府がそれだけの順序をふんで、米価自体が、やはり都市と農村との間の均衡をとつて行く一つの要素として決定して行くようなことをお考えになつてもいいと思うのですが、農林大臣いかがでしようか。
  78. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 米価の決定は、農民に与える影響と一般消費大衆に与える影響が非常に大きいものでありますから、米価審議会等を設けでやつておるのでありますが、ときどき実はちぐはぐになつて、あなたの御指摘のようなことがなかつたわけでもないのでありますが、われわれとしては、今後そういうことのないように、審議会を十分活用してやりたいと思つておるようなわけであります。
  79. 和田博雄

    和田委員 ただ活用だけされては困るのであつて、やはり審議会をつくる以上は、その審議会の構成がちやんとしたものである限り、やはりその決議は重んじて実行して行くということでなければ、行政なり政治は行われないと思うのです。たとえば人事院を設けながら、その勧告を常に受入れないような態度を、今まで政府はずつととつて来られた。これくらい政治の信義を裏切るものはないと思う。米価についても、その点については、私は十分政府として反省していただきたいと思うのであります。  それから次にお聞きしたいのは、日本の農家は、最近は農地改革以後専業農家がふえて、一つの村をとつて見ましても、農家全体として見ましても、大体半分くらいは平均の生産力に及ばない低位農家があるのじやないかと思うのです。あるいはもつと多いかもしれない。増産が目程に上るごとに、低位農家の増産ということが一番大きな問題として私は上つて来ると思う。ところが政府の今度のいろいろな食糧自給について考えられた増産法を見てみますと、低位農家の問題というものは、どこかに置き去りにされちやつているように思うのです。そういう点で農家との結びつきというものが非常に稀薄のような感じがするのです。私はやはり日本の平均以下の農家の生産力を上げれば非常に増産になると思うのです。この問題は一体どういうようにお考えになつているのか、その点ひとつお聞きしたいし、また今後どういう具体的な方法をとつて行かれるか、その点についてあわせてお聞きしてみたいと思う。日本の農家としては、やはり米を持たずに消費者の立場に立つ階級が一番多いわけです。生産力が非常に低い、中には農家として取扱うのは妥当でない、ほかの方面からの収入がより多い人もありますが、やはり生産力の低い農家が多数であります。そういう農家の生産力を高めて行くということについて、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  80. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 お説のように低位の生産をしておる農家が非常に多いことは事実でございます。今度の増産計画からいつて、個々の農家自体に対してのことは御承知通り予算面を通しては少い。しかしこれは普及員を増しましたり、あるいはまた畜産を奨励いたしたり、そういつた方面からやはりこの低位生産農家をやつて行きたいと思つております。結局は今のところ集団地である低生産地と申しますか、こういうような傾斜地であるとか、あるいは寒冷地帯とかについては、多少考えておるのでありますが、個人々々のつながりについては、今のような方法でやる以外にはしかたがないと思つております。
  81. 和田博雄

    和田委員 私は最近の農政を見て、一番農政で欠けておる点がその点にあるのじやないかと思うのです。昔は適正規模の農家の創設といつたようなことをやつて、少くとも日本で可能な限りにおいて、そういう意味での低生産力の農家を解消して行くという方向をとられたと思うのです。ところが今においてはその点については開墾が私はあると思うのですが、そういう開墾、開拓については、政府側としてはそう熱心でもない。それでは低位農家そのものはいつまでたつても低位の農家である。ただ多少の補助金を出すとか、技術員を置くとかいうふうな形では解消できない問題である。協同化の方向をたどるとか、あるいは個々の農家というものを育てて行くのならば、農業規模そのものを考えるとか、何とか私は手があるのじやないかと思うのです。そういう点について、増産計画を立てられるときには、働くのは農民なのですから、やはり政府としてお考えになつてしかるべきだと思うのです。ただ畜産を入れるといいましても、小農家には畜産は入りません。やはりある一定の規模を持たなければ、牛というものは入つて来ない。そういう意味において、農林大臣は将来その点をお考えになる考えであるかどうかお聞きしたい。
  82. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 お説の通り十分考えたいと思います。
  83. 和田博雄

    和田委員 これは事務当局でもいいし、むしろ農林大臣が簡単にお答え願えばいいのですが、農業団体の再編成ですね。それは今どういうような状態になつておるか、具体的な内容をちよつとお伺いしたい。
  84. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これは今まで国あるいはまた地方自治体等でやつております改良普及事業のいわゆる整備と申しましようか、拡充というような意味からいたしまして、農業委員会の中にありました事務員一人を技術の改良普及員というふうにいたし、それからまた農業委員会を整備いたしまして、各府県に団体をつくり、そうしてまた国に国体をつくるというように強化いたして行きたいと思つております。  それから協同組合については事業指導、経営刷新等の意味からいたしまして府県並びに国に協同組合中央会をつくつて、これを活躍させるような基礎をつくるようにいたしたいと思いまして、法案の準備中でございます。
  85. 和田博雄

    和田委員 労働大臣にお聞きしたいのですが、労働行政の基本的な目標というものを、一体政府としてはどこに置いて労働行政をやつておられるのか。その点がどうも私どもにははつきりしないのです。たとえば完全雇用というものを目標にして各般の労働行政をやつて行くのか、そうでなくて、そういうような雇用の関係は離れてしまつて、ただ失業が出たときに失業の手当をやるとか、あるいは争議が起つたときに争議の制限をやるとかいつたような法案だけを考えておるのか。労働行政そのものについての方針を、明確にしていただきたいと私は思います。
  86. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 ただいま御指摘の争議の場合にどうする、あるいは失業者が出た場合にどうというふうに考えておるつもりではありませんで、私のむしろ一番基本的に考えておりますのは、やはり労働者の福祉を増進させるということを根本に考えて行かなければならぬ、かように存じておるのであります。同時に、これもその一つではありましようが、あるいは衛生安全の進歩をはかるとか、または能率を上げるようなくふうをする、そういう面から考えて行くのが一番ほんとうの——ほんとうのといいますか、おもなものではないか、かように考えておるのであります。もちろん労使関係の調整でありますとか、また雇用関係を増大させるとかいう面も大切でありますけれども、根本にはそういうふうに積極面で努力をいたして参りたい、かように考えております。
  87. 和田博雄

    和田委員 この問題は労働大臣でなくて、むしろ総理大臣に承つた方がいいと思つておるのですが、それではもう少しこまかいことについてお聞きします。大体今失業者と潜在失業者がどのくらいあるのか、それから二十八年度の雇用の見通しといいますか、そういう点はどういうようにお考えになつておりますか。
  88. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 いわゆる失業者と申されておりますものは、昨年において大体四十万台を前後しておつたようであります。本年もおそらくその程度で横ばいと申しましようか、行くのではないかというような見通しをつけております。潜在失業ということになりますと、ちよつとここで私にははつきりわからないのであります。
  89. 和田博雄

    和田委員 それから二十八年度の見通しは……。
  90. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 二十八年度の見通しは、ただいま申し上げたと思いますが、大体昨年の程度で行くのではないかというふうに考えます。
  91. 和田博雄

    和田委員 完全失業者は四十八万です。潜在失業者はわからぬという話でありますが、日本の場合はむしろ失業問題にとつても、潜在失業者の方が問題なのでありまして、それをどう考えるかによつて、失業対策もやはりかわつて来なければならぬと思うのであります。そういう点については、はつきりした資料をもらいたいと思いますが、御存じないというのではしようがないと思います。  それから二十八年度の雇用が大体今年と同じだという見通しは、これはおそらく生産力の増大、あるいは工業生産の指数とも関係があるし、貿易の面とも関係が出て来るのでありますが、最近は雇用がずつと横ばいというよりも、むしろ月によつては下つて来ているようなときもあるのでありましてその点で二十八年度が二十七年度と大体同じ程度の雇用であるというように考えられていると、私は非常に甘いのではないかと思うのであります。と申しますのは、貿易の面から言つてみましても、ことしが去年よりもよりよくなるという見通しはないのです。これはこまかくなりますから、予算面について、あるいはいただいた資料について議論することはやめますが、私どもほむしろそういう点は悲観しているのであつて、一方では予算の中で非常にインフレ的な要因を含みながら、一方では非常にデフレ的な傾向を示していることを私は心配している。それだけに最後に出て来ることは、この失業者の問題になつて来るわけです。政府が行政機構の改革をやろうとしている。あるいは義務教育費の全額国庫負担の法案を出そうとしている。すぐ出て来るのは、やはりその面からの失業の問題である。しかもその失業者を吸収するところの産業の発展というものは、予算の政府の説明を見ても、鉱工業指数は六%の上昇を予定されている。しかし六%の上昇ということは、実際問題としては私はなかなかむずかしいと思うのです。雇用の面でも、今ことしと同じ程度だと言われるが、私どもはむしろその点についてはそう甘くは考えられないのでありまして、労働政策をやられる以上は、やはりそういう点についてのはつきりした見通しを持つておいてやつていただきたいということを私は言いたいと思うのです。  もう一つ賃金について聞きたいのですが、最低賃金については今の賃金審議会ですか、そこでこの議論をされているらしいのですけれども、大体いつごろに政府として最低賃金についての案を出される見通しなのか、その見通しだけをちよつと聞いておきたいと思うのです。
  92. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 最低賃金制の問題については、本会議でも和田さんから御質疑をいただきました。そのときにも今中央審議会で審議中であるとお答え申し上げましたが、中央審議会では低賃金の業種についてまずはつきりして行きたいということになりまして、昨年の十月四業種を選び、絹、人絹織物製造業、家具、建物製造業、手すき和紙製造業、玉糸座繰生糸製造業、この四種類について実態調査をいたしておるのでありまして、いま少しでこの実態調査が終るような段取りになつている状態であります。従つてその結果をまつて検討いたして参りたいと考えておりますので、今回の国会にはちよつと間に合いかねるのではないかと存じます。
  93. 和田博雄

    和田委員 そうしますと、この審議会の決定があれば、その審議会の決定に従つて法案をつくつて行くというお考え方なのですね。
  94. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 決定通りと申し上げるわけにも参りますまいが、その決定をまつてよく政府として検討いたして参りたいと考えております。
  95. 和田博雄

    和田委員 もうあまり時間がありませんからいろいろの点は打切つて、ただ岡崎外務大臣に最後にちよつと聞きたいことがあるのです。それは先般わが党の成田君の質問に対しまして、自衛力の漸増ということについての答弁の中に、自衛力の漸増というのは保安隊だけではなくて、道路とか、あるいは産業その他経済上の問題や食糧自給の促進や、文化までも入つて、そういうものがだんだんとよくなつて行くことを言うのだというような答弁があつたわけでありますが、それはそういうふうに理解していいのでございますか。
  96. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そう考えております。
  97. 和田博雄

    和田委員 今自衛力と言われている場合には、二つのことを考えられているのじやないかと思うのです。政府としては一つは戦争、一つは侵略だと思う。戦争の場合においての自衛力というものを岡崎外務大臣答弁から考えてみると、これは昔の総力戦の考え方です。これは近代戦は総力戦だということの別の表現だと思うのですが、そうなつて来ますと、今政府考えている自衛力の漸増の場合に、一体どつちに比重が傾いているのか、岡崎さんはその点どういうふうにお考えですか。
  98. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 総力戦ということはいいことか悪いことかは別として、実際問題として、かりに戦争のようなことになればそうなることは当然だと思いますが、自衛力については、私はこれがすべて数をふやすことであるというような議論に傾いておるように思いましたから、むしろ必ずしもそうではないのだという意味で申し上げるだけであつて、それはどつちかといえば、数を多くするとか装備をよくするとか、そういう問題になつて来ると思います。
  99. 和田博雄

    和田委員 自衛力の漸増の限度を示せと、本国会においても前の国会においても、野党の諸君からいろいろと政府に質問している。ところがそれについては政府としては限度は何ら示されない。ところが現実の世界情勢なり、あるいは経済の動きなり、日本の今度の予算の編成をよく見てみると、やはりその点が重要な問題になつて来ると思うのです。なぜならその限度というものをはつきり何らかの形で示さなければ、予算面においても防衛関係の費用は動揺常ないものになるのではないか。そうすれば一国の予算を組む場合にはほとんど組めないし、経済的に非常に不安定な予算になると思う。今度の予算を見てみると、防衛関係の支出金で、二十八年度にわたつて使用されるべきものが、二十七年度においては、政府資料を見ても三百三十億ですか残つておる。実際はこの年度末になつてばたばたとたくさんのものを使つているのです。そういうことは本来予算を組む際に、そういうぶざまなことにならないように、政府としてちやんとしたものがなければならぬはずです。いつもそういうことがふらふらしておつて、そうして最後になつて使用残がたくさんになつて来る、こういうことになれば、予算を組む場合にそういう大きな不安定な要素があつて組めない。あるいはほかの経済に対する影響その他を見ても、正確な判断がつかないで、いつも基礎の薄弱な予算を組んで行かなければならぬことになつて来る。そういう面から見ても、私は自衛力の漸増ということを政府が言われるなら、少くとも三年なり五年なりはこれで行くのだという限度を、はつきり示されることが、政府としては正直でもあるし、また政治家としてとるべき態度であると思う。片方では軍備をしないと言いながら、実際上は軍備を進めて行つて、しかもその限度は何もわからない。そういうときに岡崎君がたまたま答弁されたように、ただ量をふやすだけではなくて、経済なり食糧なりその他文化なりをよくして行くことが自衛力であるということは、これは限度ではない。言いかえれば国力がだんだん発展して行くということを言つておるにすぎない。これでは私は、こういう予算の面において占める大きな費用についての判断なり批評なりというものは、なかなかできにくくなつて来る。ごまかしだと言われてしようがないと思う。そこで私はお聞きしておるのです。その点についてもう一ぺん岡崎さんはどういう考えであるか伺いたい。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもう和田さんもむろんおわかりのことだと思う。たとえば今食糧自給とかいうことが非常に問題になつておりますが、かりにいくら保安隊がたくさんあるとしましても、食いものがなければやはりだめで、そういうふうに議論を進めて行けばそうなります。私が申したのはただいたずらに数をふやすだけが能じやないのだという意味を申しただけであつて、それ以外のものじやありません。
  101. 和田博雄

    和田委員 それなら自衛力漸増という意味でのいわゆる自衛力、主としてその内容になつておる保安隊なりその他の自衛力というものの限界は、今年の予算総額である、防衛関係の費用であるということですか。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は別に限界を言つておるのじやないのであります。自衛力の漸増ということを、ただ数をふやすことだけじやないという話をしただけであります。その意味におとりを願いたいと思います。
  103. 和田博雄

    和田委員 だからそれはそれでいいのです。君の今言つたようなことだけを言つたのだというのならいいのですが、しかし限界そのものについてはどう考えるかということを今お尋ねしているのですよ。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の答弁する範囲ではないと思いますけれども、お尋ねだから申しますが、私はこういうふうに考えておるのです。つまり木村さんのよく言われるところの近代戦というのは非常に高いところへ来ている。今やつているのは非常に低いところだ。そこでこの間に非常に差があります。これが非常に接近しているならそれは問題になるだろうが、非常に差があるのだからまだ限界まである。おそらくずつと行くのでしよう。そこで限界の問題は、今この下の方ではどこまでということは言えないという議論じやないかと思います。
  105. 和田博雄

    和田委員 私は保安長官の木村さんの出席を要求しておつたのですが、お出になつておりませんから、いずれこの問題は関連してまたあとで聞くことにして、留保しておきます。  それから最後に岡崎国務大臣に一つだけ聞いておきたいのは、この間芳沢大使が多辺的同盟参加の用意があるということを言われたのですが、これは一体外務大臣と打合せがあつたのか、それとも大使の単なる放言なのか、その点はどういう状態なのでしようか。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 打合せは全然ありません。それから今はつきりとこういう問答があつてこういうようなことは正確には来ておりませんが、一応電報で知る範囲におきましては、そういう趣旨のことを言つたのではないようであります。何か誤解かあるいは誤伝であろうと考えます。
  107. 和田博雄

    和田委員 もしも私が今言いましたようなことを言つたとすれば、これは非常に重大問題だと思うのです、政府はとにかく太平洋同盟には参加しない、再軍備はしないということを繰返し言つて来られた。この点についてもしも真実に芳沢大使がそういうことを言つたとしたならば——これは総理大臣に聞きたいと思つたのですが、やはり政府としては何らかの処置を私はすべきだと思う。今国際情勢が、ことに台湾をめぐつてヨーロツパとアメリカとの、特に英米間の関係が非常に微妙になつておるときに、いやしくも出先の単なる外務官僚が言うのではなしに、大使が軽々にそういうことを言うということは、これは私はとるべき外交方針ではないと思う。そういう点について外務大臣としてはどういうふうにお考えになつているか、外務大臣としての御意見をお伺いしたい。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 出先の大使が軽々にそういうことを言うべきものでないということは御同感ですが、現に芳沢大使はそういうことを言つたのではないということに私どもは考えております。それは報告によつてそう思つておるのであります。芳沢大使は決してそんな軽率な言動をするわけはないと今でもかたく信じております。
  109. 和田博雄

    和田委員 それでは正確にはどういうふうに言つたのですか。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま申した通り正確に一問一答、こう言つたからこう言つたという後信はまだ届いておりません。電報によりますと、そんなことは全然言つたことはないのだということであります。
  111. 和田博雄

    和田委員 それは報告が届いたら、この国会において報告してもらいたい。私の質問はこれで終ります。
  112. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 これにて休憩し、午後は一時五十分より再開いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  113. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。小島徹三君。
  114. 小島徹三

    ○小島委員 私は実は吉田総理大臣及び岡崎外務大臣並びに木村保安庁長官に対して質問したいと思つたのでありますが、吉田総理大臣は欠席のようでありますから、総理に対する質問は留保いたしておきます。主として岡崎外務大臣及び木村保安庁長官にお尋ねしてみたいと思います。  私は吉田総理大臣が世界情勢を分析して、戦争の危機は遠のいておるという考え方のもとに、日本は現在再軍備する必要はないとおつしやつておるのは、私たちの考えとは多少考え方が違つておりますけれども、それはそれとして、一つの見識として私はこれを尊敬して行きたいと思うのであります。また同時に吉田総理大臣が、いやしくも一国の総理大臣として戦争の危機が迫つておるというようなことを国民の前に言つた場合には、第二次世界大戦の被害に苦しんでおる国民に対して、かえつて悪い影響を与える。そのために吉田総理大臣が、戦争の危機が迫つておるということを国民に言わないというのも、これも一つの識見として私は尊敬いたすものでありまして、吉田総理大臣の考え方に対しては、後日また私の意見を申し述べる機会もあると思いますからして、これは留保いたしまして、ただ私は、吉田総理大臣の再軍備をしないという御意見と、また先般の本委員会において木村保安庁長官が言われました、日本が直接侵略を防禦するために、いわゆる自衛軍をつくるという場合には憲法を改正すべきであつて、憲法を改正しなければそれはできないという御意見をもとにいたしましてこの御意見と日米安全保障条約並びに世界で言われておりますヴアンデンバーグ・レゾリユーシヨンというものとの関係、並びに外資導入という問題に関連して、岡崎外務大臣にお尋ねしてみたいと思います。日米安全保障条約を拝見いたしますと「アメリカ合衆国は、平和と安全のために、」云々とありまして、最後に「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」とありましてこれは明らかにアメリカ日本に対しまして、日本が直接及び間接の侵略に対する防衛力を漸増することを期待しておるものであると思うのでありますが、この条文によつて日本がはたしてアメリカに対して直接及び間接の侵略に対する防衛力を、漸増する責任があるのか、義務があるのかということを外務大臣にお尋ねしたいのであります。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはごらんになる通り、安全保障条約の前文に書いてあるのでありまして条約の本文でもありませんし、その内容は期待すると書いてあるだけでありますから、法律上の議論といたしますれば義務はないわけであります。もし義務とすれば、一体いつまでにする義務か、それも書いてないわけであります。従つて純然たる法律論から言えば義務はない。けれども安全保障条約の前文にも書いてあり、日本側もこれを了承しておるのでありますから、もちろん義務があるとかないとかいうことで、それをただ法律上の議論で押し通すという気持は全然ないのでありまして、でき得ればこういうこともいたしたいという気持は、日本政府として当然持つておるわけであります。
  116. 小島徹三

    ○小島委員 本委員会でかつて吉田総理大臣及び岡崎外務大臣は、この日米安全保障条約に基いてアメリカ日本の安全を保障する義務があるのだということをおつしやつたと思いますが、この条文をごらんになりましても、そういうふうに安全を保障する義務があるということがはつきり書いてある条文はないのであります。ただしかし安全保障条約全般の建前から、日本の安全を保障する義務があるのだとおつしやつたと思いますが、そうではありませんか。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そう言うとまた長くなりますが、要するに義務を負うのだという文句は安全保障条約にない。ないけれども安全保障条約全般の意味からいい、また何のために安全保障条約を結んだかという点からいいまして、当然これは日本に対して安全を保障する義務を負つておる、こう申したのであります。
  118. 小島徹三

    ○小島委員 そういうふうに解釈できるといたしますと、この日本文におきましては「アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある。但し、」というふうに但書になつておりますけれども、英文の方を見ますと、アメリカは「イン・ザ・エクスペクテーシヨン・ハウエヴアー・ザツト」というふうになつておりまして、日本が漸増的にそういう責任を負うことを期待して、アメリカはこういうふうに日本の国内に軍隊を駐屯させるというふうになつておりまして、先ほど条文そのものでは、安全を保障する義務はないのであるけれども、全体の構成からみて、安全保障をする義務があるということになりますと、そういう建前から申しますと、期待するという言葉の中には、日本としては当然これをつくる義務があるということになるのではないかと私は思いますが、いかがでありますか。
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えでは、義務であるとか義務でないとかいうことはむしろ別の問題でありまして、日本が独立国として自国の安全を自国の手で守るのが普通であります。義務があるなしにかかわらず、当然やり得ればやるべきことであるわけであります。ただ今やれないから安全保障条約をつくつておるのでありまして、元来安全保障条約では、暫定的ということをずつと条約のときに御説明して来た通りであります。従いましてこれは義務があるからやれという問題ではなくて、国である以上は、当然でき得ればやるべきことなのでありますから、その点はあまり大して義務づけられたからどうということではないと考えるのであります。
  120. 小島徹三

    ○小島委員 そういたしますると、この日米安全保障条約に基いてアメリカ側から日本に対して、直接侵略を防衛するための自衛軍と申しますか、防衛する力を漸増的にふやすことを要求する権利はないのでありますか。そういう要求はできないのでありますか。
  121. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 法律上義務がなければ権利もないという議論になりますけれども、アメリカ側で期待するということを書いておるのでありますから、アメリカ側は当然期待するのであります。われわれもできればいたしたいという考えを持つております。ただ現状はこれを許さないというだけの話であります。
  122. 小島徹三

    ○小島委員 それでは一体アメリカから、もしも直接侵略防衛のための力を漸増してもらいたいという要求があつた場合に、日本政府としては、法律上は別といたしまして、政治的にいたつて断ることはできないと解釈してよろしいのでしようか。
  123. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、国内の事情が許さなければ断るよりしかたがないわけであります。一に国内事情にかかるものだと考えております。
  124. 小島徹三

    ○小島委員 それではお伺いしたいのですが、木村保安庁長官は先日の委員会におきまして、日本が直接侵略を防衛するため軍隊をつくる場合には、もはやそれは保安隊の域を脱しておる軍隊であるからして、憲法を改正しなければならぬ、かようにおつしやつておられまするが、吉田総理大臣のように、今日本は再軍備をしない、従つて憲法を改正しない、ということはとりもなおさず、これを裏から申しまするならば、日本は直接侵略を防衛するための軍隊はつくらないのだということを意味するのでありまするが、そういうことをはつきりしておいて、この日米安全保障条約には何ら関係ないのですか。
  125. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田総理大臣も、未来永劫絶対に軍隊を持たないとは言つておらないのでありまして、いつも言つておりますのは、経済的にもこうである、国民感情もこうである、持ちたくても持てないという議論をいたしておるのでありますから、日米安全保障条約とは矛盾しないと考えます。
  126. 小島徹三

    ○小島委員 岡崎外務大臣も十分御承知だと思いまするが、アメリカの軍隊が日本に駐屯しておるためにいろいろなトラブルが起きまして、その結果日本人とアメリカ人との間に相当感情的な問題が起きて、いわゆる反米思想というようなものがそれによつて起きて来ている現状というものは、非常に憂慮すべきものがあると私たちは考えておるのでありまするが、この日米安全保障条約に基いて、私は日本アメリカに対して駐屯軍を一刻も早く引揚げてもらいたいということを要求したいと思いまするが、その場合もしも日本が、木村保安庁長官の言うように、憲法を改正しなければ直接侵略を防衛する軍隊はできないのだという建前をとつておる限りにおきまして、この日米安全保障条約で、一体日本としてアメリカに駐屯軍を引揚げてくれという要求ができるかどうか聞きたいのであります。
  127. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本側が要求する前に、もうすでにアメリカとしては、できるだけ早く引揚げたいのだ、とそこに自衛力漸増の期待があるわけであります。できれば早く引揚げたいという気持は、先方の方がむしろ強いだろうと思います。従いましてほかの条件を抜きにすれば、要求をすることはちつともさしつかえないわけでありますが、今のところはそれにかわるべき力がないということで、はなはだ残念なわけであります。
  128. 小島徹三

    ○小島委員 私は日米安全保障条約というものは、日本の安全を保障するということはもちろんでありまするけれども、私から露骨に申しまするならば、この日米安全保障条約というものは、日本の安全保障をするという目的はもちろんでありますけれども、間接的には、むしろアメリカの意思としては、日本の安全を保障することによつてアメリカ自体の安全も保障しておる条約だと私は思つております。従いましてアメリカがかりに日本から駐屯軍を引揚げるにいたしましても、アメリカといたしましては、日本が直接侵略を防衛するだけの力がない場合に、私はアメリカ日本から引揚げるとは考えられないのであります。従いましてアメリカが駐屯軍を引揚げる場合に、アメリカといたしましては、日本の保安隊と称するものは、木村長官から言わせまするならば直接侵略を防ぐ力のないものであるにかかわらず、アメリカがかつてにこれは直接侵略を防ぐ力あるものなりと認定して引揚げることになるのでありますか、それともはつきりとアメリカは、日本が直接侵略を防衛する力ができ、またそれが国民の意思としてはつきりしたというときに限つて引揚げると思われるか、外務大臣の御意見を聞きたい。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ自身の防禦のための目的もあつてとおつしやいましたが、それはちよつと言い方が私はどうかと思うのです。もちろん日本が侵略の対象になるということは、世界平和維持の目的から言つて非常にマイナスになり、また日本が新鮮のようなことになれば、世界各国もまたここへ来て、平和維持の努力をしなければならないという観点から、日本だけの利益というのでなく、やはり同時にこれが世界の平和維持のためになるからというので、アメリカは安全保障条約を締結することを承認したのだと考えます。従いまして実際にまだ直接侵略を守る力がないのに、もうできるのだと認定して引揚げるというようなことは考え得られないのであります。要するに、日本が侵略されることは世界平和を脅かすのだという観点から見れば、世界平和を脅かされることを最も好まないのはアメリカでありますから、そういう観点から、無理に引揚げるということはいたさないだろうと考えております。またそれが当然であると申してさしつかえないと思います。
  130. 小島徹三

    ○小島委員 結局岡崎外務大臣の御意見からみますと、現在の保安隊のままであつても、アメリカ側においてこれが直接侵略を防ぐだけの力になつておると認定すれば、軍隊を撤兵することがある。逆に申しますと、アメリカが軍隊を撤兵したというときには、大体日本の保安隊というものは直接侵略を防ぐ力ができておる、かようにアメリカの方で認定したものと考えてさしつかえないのでありますか。
  131. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは条約でありますから、アメリカだけが認定して、一方的に行動をとるということはないのでありまして、もちろん日本側と協議をして、両方納得の上で措置をとるのであります。私の申しますのは、直接侵略を保安隊が防げる状況になつたときとおつしやるけれども、アメリカ軍のここにおります一番第一の原因は、無責任なる軍国主義がいまなお世界の各地にあるからということにあるのでありますから、この無責任なる軍国主義がなくなつてしまえば、かりに日本の防禦が不完全であつても、アメリカの軍隊はここにいる必要がなくなるということも考えられるのであります。相対的のものだと私は思つておりますが、いずれにしても、どつちか一方の認定だけで事がきまるというわけではないのであります。
  132. 小島徹三

    ○小島委員 次にお聞きしたいのですが、世の中にいわゆるヴアンデンバーグ・レゾリユーシヨンというものがございますが、そのレゾリユーシヨンによりますと、私たちの了解するところでは、アメリカが外国を援助する場合には、その国が自分の手で自分の国を守るということをはつきりした場合に限つてこれを援助することができるということになつておるようでありますが、そうではございませんか。
  133. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ヴアンデンバーグ決議案とおつしやるのは、一九四八年の六月、ヴアンデンバーグの提出した決議案だろうと思いますが、これは相互援助に基く地域的の集団安全保障体制の確立を促進するために、また促進するとともに、アメリカがこの機構に参加するということを明らかにしておりまして、この集団安全保障体制にアメリカが参加する、その限度はやはり相手国でも安全保障を十分にしなければならぬという点にあるのでありますが、今のほかに、各種のアメリカ側の援助はいろいろの種類のものがあります。MSAもあれば、その他いろいろありますが、これは必ずしもこの国が軍備がなければやらないとかいうような種類のものではないと考えております。
  134. 小島徹三

    ○小島委員 しかしいずれにいたしましても、その国が自分の国を守るというかたい決心を持つということがはつきりしない限りにおいて、アメリカは援助しないということになつておるのじやないでしようか。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはどう申しますか、独立国で自分の国を自分で守ろうという決心のない国はおそらくないと思うのであります。ただそれをどれだけ実際に行い得られるかという力の問題になるのだろうと私は考えます。日本でも、自分の国は自分で守りたいという気持においては何らかわりがないと考えるのであります。もしそういう気持がなくて、自分の国はどうでもいいのだということになれば、それはまた何をか言わんやでありまして、アメリカ考え直すであろうかと思いますが、今実際にそういうような国はないだろうと考えております。
  136. 小島徹三

    ○小島委員 私のお尋ねしたいのは、実は吉田総理大臣は、繰返し日本は直接防衛をするための再軍備はしないということを言つておられるのであります。この際岡崎外務大臣に思い出していただきたいことは、岡崎外務大臣がまだ官房長官でおられましたときに、講和会議を結ぶにあたりまして、吉田総理大臣は、自由党単独でやるのだ、他党なんかどうでもいいのだというようなことをたびたび言われておつたのでありますけれども、その当時ダレスさんからわずか一片の手紙が参りましたために、吉田総理大臣はあわてて当時の民主党の苫米地さんのところをたずねて行つて、ともどもに講和会議に臨んでもらうことを頼まれたのであります。というのは、要するにダレスさんなんかの考え方からいたしますと、一吉田総理大臣あるいは自由党だけがいくら講和会議を結んだところで、はたして国民全般が望んでおるのかどうかということが一番大きな問題であるからして、できるだけ超党派的なものとして講和会議に臨んでもらいたいというのが、ダレスさんの意思であつたことは、もう言うまでもないと私は思うのであります。その点岡崎さんも十分御承知だと思うのであります。ところで吉田さんのように、直接防衛をするための再軍備はしないのだということを言つておられますると、日本の国民が憲法改正をしなければ、日本の国をみずから守るのだということの決心を表現することにならない。つまり、日本の国民がほんとうに国を守るという決心をしたのだというためには、憲法を改正する以外には道がなくなつてしまうのじやないか。なぜならば、直接防衛をする軍隊をこしらえたときには、憲法を改正しなければならぬということでありますからして、そういうものをつくるという国民の意思表示というものは、憲法改正以外には道がなくなつてしまうのじやないかと私は思うのですが、どうでしようか。
  137. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつとお断りを申し上げますが、吉田総理は、私が官房長官をいたしておる当時、講和会議についてはできるだけ各党の参加、賛成がほしいということは初めから考えておられたのでありまして、ダレスさんの手紙があつたかどうか私は知りませんが、よそから入れ知恵をされてそんなことをしたのではないことは、確信いたしております。  なお今の御質問でありますが、日本の国民が、自分の国は自分で守るという意思があれば、それは守るに軍隊を必要とするという場合には憲法を改正する必要がありましようけれども、守るという意思を表示することは自由でありまして軍隊でなければ守れない場合もありましようけれども、軍隊がない場合でも、できるだけ国を守るということはあたりまえのことでありますから、憲法改正の有無にかかわらず、日本国民の意思というものは一貫してかわらないものだと私は考えております。
  138. 小島徹三

    ○小島委員 岡崎外務大臣の話は何だかよその話をしておられるようであります。私のお聞きしたいのは、直接侵略を防衛するためには、いくら岡崎さんが何とおつしやろうとも、私は軍隊がなければ守れないと思う。そこで国民全部が日本の国を守るのだという決心をしたということを意思表示するとすれば、木村保安庁長官の前の委員会のときの言からすれば、どうしても憲法を改正する以外にその意思表示をする方法がないのじやないか。一吉田内閣、一吉田総理がいくら話をしてみたところで、それは永久のものではありませんし、吉田総理大臣が言つたにすぎないということになるのでありましてほんとうに国民の意思がはつきりするということは、憲法改正以外には道がなくなつて来るのではないかと私は思うのですが、どうでしようか。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは意思ははつきりしておるのでありまして、ただその意思を実行するだけの力が今ないということに尽きるのじやないかと私は思います。そこで今度小島君の議論を極端に言いますと憲法を改正して、軍隊という名前さえつければ、どんなものでも国を守れるのかというと、そうも行かないのでありまして、軍隊であつたつて、ごく少数の、ごく装備の悪いようなものであれば、名前は軍隊であつても、やはり国を守るには足りないのであります。内容のちやんとしたものでなければならぬわけでありまして、単に憲法改正という問題だけですべてが解決するとは私は考えないのであります。そこで安全保障条約の前文にもあります通り日本は自衛権はある、自衛権はあるが、これを行使する適切な手段を今持たない。そこで日本の国民の意思はあつても、経済的理由その他の関係で、その意思を実現するところまで今来ておらないというのが実情でないかと思うのであります。かりにそういう状態でありとすれば、憲法を改正しても、やはり実際の内容は国を守るに足らないものになるかもしれない。従つてすべては内容になるのじやないかと考えます。
  140. 小島徹三

    ○小島委員 私はどうも今のお話が納得できないのであります。私は、憲法を改正して自衛軍をつくることをきめたからといつて、ただちに日本が実際において国を守ることができるということを申し上げておるのではないのであります、ただ先ほど申しました通りに、ヴアンデンバーグ・レゾリユーシヨンによりましても、とにもかくにも日本が自分の手で自分の国を守るという強い意思表示をしたということでなければ、私はアメリカの援助というものは期待することができないと思う。私は、憲法を改正したからといつて、ただちに日本の国を守ることができるというのではないのでありまして、その意思表示によつてアメリカ日本国民の意思というものをはつきり認識して、そこに初めてアメリカの援助を期待することができ、そうして後に初めて日本の国を守ることができるようになるのでありまして、憲法を改正したからといつて、すぐ国を守る力ができたというのではないのであります。  そこで私が岡崎外務大臣にお聞きしたのは、今までの吉田総理大臣のように、直接侵略を防衛する軍隊をつくるためには、どうしても憲法を改正しなければいかぬのだ、憲法を改正しない限りにおいては、それは直接侵略を防ぐだけの力でないとおつしやつておりまするならば、アメリカ日本の国を守る決意を認識するためには、どうしても日本としては憲法を改正しなければならぬという立場に追い込まれて来るのではないか、そういうことをお聞きしたいのであります。
  141. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法の問題はしばらくおきまして、アメリカがたとえばいろいろの種類の援助をするというときには、これは各種の問題が入りましようけれども、主としてこれは政治的の安定とか、経済上の安定ということが一番大きな前提でありまして、軍備を持つとか持たないとかいうことよりも、まずそういう問題が先に来るのだろうと考えております。
  142. 小島徹三

    ○小島委員 アメリカ経済的援助というものがコンマーシヤル・ベースに基いたものでありまするならば、もちろんそういう政局の安定とか、あるいは経済の安定ということを主として来るものであることはわかるのでありまするけれども、日本現状におきましては、経済の安定ということ自体すらアメリカの援助というものがなければできないのではないか、かように私は思つておりまするために、岡崎外務大臣にもう一度聞きたいのでありますが、そういう政治的な援助と、吉田総理大臣のしばしば言われるような外資というものは、この日本国民の強い決意というものの意思表示がなければ、アメリカとしては納得しないのではないか、私はこう思うのですが、外務大臣どうでしよう。
  143. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは前にも総理大臣でありましたか、その他の閣僚でありましたか、ちよつと記憶しませんが、日本としてはいわゆる——これはいわゆるでありますが、政治借款ということを考えているのではなくて、経済的な借款あるいは外資を考えておるのだということは申し上げてあると思いますが、そういう趣旨のことでありまして、何も理由のない、いわゆる政治的な借款とか外資とかいうものを今考えておらない。従いまして、経済上の安定にはまたアメリカの外資が入つて来ることが必要だ、これはもちろんでありますが、その前にできるだけ安定すれば、それだけ外資も入りよくなるということを申し上げておるのであります。現実に援助と申しますことは、むろん経済上のいろいろなこともりますが、たとえば先般の海上警備隊に対していろいろの船を貸してもらつておることやら、あるいは保安隊の方に武器を借りておることなども、現にアメリカが一種の援助を行つておるのだと思うのであります。これがすでに行われておるのでありまして、必ずしも軍隊がなければそういう援助は来ないのだというふうには考えておりません。
  144. 小島徹三

    ○小島委員 軍隊がなければ援助しないというのではなくして、ほんとうに直接防衛をするだけの力のある軍隊をつくるためにアメリカから援助が来るのではないか、またアメリカはそれを援助するのではないか、私はかよう思うのであります。今岡崎外務大臣は船舶貸与法案であるとか、あるいは多少の保安隊に対する武器の貸与というものをもつて、これはアメリカが援助をしておるのだと言われておりますけれども、私はこんなものは援助のうちには入らぬと思います。こんなことで日本の直接侵略を防衛することができるということでありますれば、私は何をか言わんやであります。私たちの考えております防衛力というものは、そんななまやさしいものではないのでありまして、相当程度大きな援助がなければできない、日本経済状態から見ましても、私はとうていできないと思うのであります。でありますから、そういうものに対する外国の援助というものは一体どうしたら来るのだ。木村保安庁長官の言う建前から申しますならば、どうしても私は憲法改正以外にない、かように思われるのであります。いくら外務大臣と議論いたしましても、私はその程度しか話はできないと思いますから、木村保安庁長官にお聞きしてみたいと思います。  この前木村保安庁長官は、現在の保安隊というものは間接侵略を防衛するだけのものであつて、直接侵略を防衛するものではない、直接侵略を防衛するものになるためには、どうしても憲法を改正しなければならぬということをおつしやつたのですが、今でもそういうお考えですか。私は実のところは、今岡崎外務大臣とたびたびやりとりいたしておりましたように、もしも木村保安庁長官の言われるような考え方に立ちますならば、日本の国民が——吉田内閣ではございません、日本の国民がほんとうに自分の国を守る決心をしたのだということをアメリカにはつきりした意思表示をするためには、どうしても憲法を改正しなければならぬという問題が起きて来ると思うのでありますけれども、木村保安庁長官何と考えられますか。
  145. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知通りわが憲法は第九条第一項において、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇、武力の行使は国際紛争の手段としてはこれを禁止するという厳たる規定があるのであります。しかしこの規定からして、自衛力は否定されていない。独立国家として自衛力を持つことは当然であります。この日本の憲法の九条第一項でも自衛力を規定しておるわけであります。ただ九条第二項において「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」ということになつております。いわゆる総合的な一つの近代戦遂行に足るべき武力というものは持つてはならぬ、ここに限定されるのであります。自衛力の範囲内において相応の武力を持つことは否定されていないと私は考えております。戦力に至つては、第二項において規定されておるから持つてはならぬ、持つことはできない、憲法改正の要があるのであります。この点をはつきりさせれば、これはきわめて明瞭に解決できると思います。つまり戦力を持つ程度に至ることであれば、これは憲法を改正する必要がある、これであります。自衛力は決して否定されていない。保安隊は申すまでもなく直接侵略に備えるものではございません。保安庁法第四条においてきわめて明確に規定されております。これは国内の平和と秩序を維持するための保安隊であります。直接侵略に対してこれを設けたわけではないのであります。従つてこれは軍隊でない、しかもその内容においても何ら戦力に至らない程度である、これははつきりしているのであります。
  146. 小島徹三

    ○小島委員 そういたしますると、直接侵略を防衛するということのために必要な軍隊をつくるということになると、やはり憲法を改正しなければできないということになりますか。
  147. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは戦争を目的としてつくられるということになれば、いわゆる一つの軍隊ということになりまして、憲法の改正の要はあると考えております。
  148. 小島徹三

    ○小島委員 木村保安庁長官の前回の委員会におけるお言葉と今のお言葉とは、多少違つているのでありまして、戦争の目的のために直接侵略を防ぐ軍隊をつくれば、これは憲法を改正しなければならないということでありまするから、そこに一つの条件がついて来ておりますので、多少私は救われる道があると思いまするが、私のお聞きしたいのは、要するに直接侵略を防ぐものであつても、自衛力と考えられる場合には要するに憲法改正をする必要がないと言われるのではないのでしようか。
  149. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はどこまでも戦争を目的とするためにつくつたものであれば、これは軍隊と、こう言わなければならないと解しているのであります。
  150. 小島徹三

    ○小島委員 直接侵略を防ぐということは、これは戦争の目的のためということじやないでしよう。私は直接侵略を防ぐためでも、自衛のためということもあり得るのでありますから、直接侵略を防衛するものをつくつたからといつて、それは戦力とは言い切れないと思いますが、どうでしようか。
  151. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは結局自衛力の問題になりまするが、自衛力は必ずしも武力だけじやないと思う。いわゆる経済力、あるいは精神力、狭義の武力、これを総合したものがいわゆる自衛力であります。この自衛力の漸増ということはいろいろな方面から検討しなければならぬ。しかしながら、もう初めから他国と戦争をする目的を持つてつくられたものであれば、これは私は一つの軍隊と見なければならぬ、とこう考えております。そこでこの自衛力は何であるかというと、今申し上げましたように、その狭義の自衛力になつて来るのであります。しかしわれわれの考えは、何も他国と戦うためのものを限つたわけでない。日本の国力が増進して行けば、これは一つの自衛力になるのであります。他国と戦争するばかりが自衛力でないと、こうわれわれは解釈しております。
  152. 小島徹三

    ○小島委員 そのことはよくわかるのです。ただ私の言いたいことは、直接侵略を防衛するものでも自衛軍、自衛力ということは言い得るのだ、そういうものはあり得るのだ。直接防衛をするということは戦争するということになるとは思わない。憲法上言う国際紛争を解決するための戦争というものとまた違うと思う。今木村長官の言われる戦争というもの、直接侵略を防衛するのをただちに戦争と考えるのは間違つているじやないか。自衛ということもあり得るので、そういう軍隊をつくつたところで自衛力の中に入るのじやないかと、こう私は言いたい。というのは、先ほど来岡崎外務大臣としばしば議論しておりました通り、私はもしも木村長官のように直接防衛をする軍隊を持つということになれば、憲法を改正しなければならぬのだということになつてつたならば、私は今の間はごまかしがきいても、ごく近い将来にどうにも憲法改正をしなければならぬことになつてしまうのじやないか。そこまで追い込まれるということがはたして一体日本にとつていいのかどうかということを考えまするから、その点を木村保安庁長官に一問聞いておきたいのです。どうしても憲法を改正しなければ直接防衛する軍隊というものは持てないのか、自衛力という意味においてこれを持つことができるのではないか。そうしておくことが日本の将来にとつていいのではないかと私は考えますので、木村長官の御意見をもう一ぺん聞いておきたい。
  153. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ここでやはり自衛力の問題になるのでありまするが、保安隊も一つの自衛力なのであります。しかし軍隊にあらず、これは明瞭であります。そこでその範囲においての自衛力であれば、持つてさしつかえない、こう考えております。ただ初めから戦争を目的としてやるということであれば、これは一種の軍隊でありまするから、憲法改正の必要がある。こう解釈すべきものであろうと考えております。
  154. 小島徹三

    ○小島委員 木村さんは何べんも戦争の目的のためと言われますけれども、私は保安隊が軍隊であるとかないとか、そんなやぼな議論はもういたしたくないのであります。だれが見たつて軍隊は軍隊であり、保安隊は保安隊であるのでありますから、そんな議論はしたくないのでありまして、ただ私が木村保安庁長官にお聞きしたいことは、要するに戦争とおつしやいますけれども、それは直接侵略を防衛するということが、一体戦争なのかどうか。まずその点から聞いて参りますが、それが一体戦争を目的としたものであると考えられるのですか、それともそうではないのですか。
  155. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。直接侵略に対する防衛の方法もいくらもあるのであります。必ずしも戦いを交えるということではありません。そこで、国内の治安を維持することも、これは防衛力の一つであります。従いまして、保安隊を戦力に至らざる程度に増強することは決して憲法違反ではない、私はこう思つております。ただ初めから戦争を目的としてつくるようなものであれば、これは軍隊となる、こういうことであります。
  156. 小島徹三

    ○小島委員 どうも何べん議論してもそこがおかしいのですが、一体戦争を目的とするということはどういうことなんですか。直接侵略を防ぐということが戦争なのかどうか、その点をまずお聞きしたいのです。直接侵略を防衛する軍隊、あるいは自衛軍といいますか、自衛力ができるということは戦争を目的とするものだとお考えになるのですか、どうですか。
  157. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 直接侵略を防ぐ目的のために軍隊をつくるということであれば、これは憲法改正の要あり、私はそう考えております。軍隊をつくることになるので……。
  158. 小島徹三

    ○小島委員 自衛力の中には軍隊というか、武力も入つておるし、独特の経済状態も、あるいは国民の精神ということも含まれることは間違いないでしようけれども、どうも私は木村保安庁長官の今の言葉はよほど考えていただきたいと思うのであります。と申しまするのは、私はもしも今の木村保安庁長官の言われるように、直接侵略を防衛するために自衛軍をつくる、いわゆる自衛力を漸増するということになつたときは、木村保安庁長官の考え方及び内閣の考え方からすれば、憲法を改正しなければならぬ、こういうことになるのでありまするけれども、憲法改正ということは、吉田総理大臣の言われまするように非常に重大なことでありまして、そうやすやすとこの憲法が改正できるとお考えになることは非常に私は間違つておると思うのであります。ところがアメリカ日本との関係及び国際情勢から見ましたならば、私は憲法改正をしない間、できない間にどうしても日本が直接侵略を防ぐだけの自衛軍を持たなければならぬときが来るのではないか。従いまして、私はその問題は先ほど岡崎外務大臣とも議論いたしましたが、アメリカの援助というような問題におきましても、吉田総理大臣は経済的の外資の導入のことを言つてつたのであつて、そういうような政治的の外資のことを言つてつたのではないということをこの前弁解されておりまするけれども、私は最初の吉田さんの考え方というものは、むしろ政治的な外資のことを考えておられたのだと私は考えております。それができなくなつたから、経済的の意味の外資だということを言つておられるにすぎないと思うのであります。そういうものを期待する場合において、憲法を改正しなければ、日本はヴアンデンバーグの決議によるような、国を守るというかたい意思表示はできないのだということになつて来ればたいへんな問題が起つて来ると思いますから、私はその木村長官の考え方をもう少し考え直していただきたい、かように思つて実は先ほどから繰返して質問しておつたのであります。もういくら議論しても際限がございませんから、その点につきましては、私はまた後日お尋ねすることがありましても、本日はこれにとどめておきます。  ただ一つ岡崎外務大臣にお聞きしたいことは、最近の新聞紙上によりますると、フランス、ドイツ、あの辺におきまして、アメリカから七十五日以内に再軍備と申しまするか、欧州軍を創設するかどうかはつきりした態度をきめてもらいたいと要求されておるというようなことが書いてあつたと思うのでありますが、そういう事実がございますか。
  159. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 正確に何月何日ということではないにしましても、そういう種類のことがあつたものと考えております。
  160. 小島徹三

    ○小島委員 そういう同じようなことで、日本に対しまして日本が再軍備するかどうかはつきりした態度をきめてもらいたいというようなことを、アメリカから要求されたことはございませんか。
  161. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうことはございません。
  162. 小島徹三

    ○小島委員 先ほど私は繰返し申し上げたのですが、もしもほんとうに、日本が憲法を改正しなければ直接侵略を防衛するための軍隊ができないのだという建前をおとりになつてしまつて、自衛軍というものは、憲法を改正しなければ持てないのだということをあまりはつきり言い切つてしまうことは、私は日本の政治の将来にとつて非常な不幸が起きるじやないか、今まで吉田総理大臣はその点をお考えなつたと見えまして常に、現在のところは再軍備しないのだという一点に集中されておつて、木村保安庁長官のようにはつきりと言われたことは今までないのであります。でありますから、その点について私はもう一度お確めしたいと思うのでありますが、吉田総理大臣がおられませんから、本日はこの程度にいたしまして私の質問を終ります。
  163. 太田正孝

    太田委員長 石井繁丸君。
  164. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 いろいろと保安隊の性格、再軍備の問題等につきまして議論がむし返されました。ただいま小島委員もいろいろとその点につきまして申されましたが、国民も何となく見当がつかないというような間に、保安隊につきましては戦車ができる、あるいは百六十六ミリのカノン砲ができるとか、こんなような事態が進んでおるのであります。その間におきまして、また今度政府においては、警察法の根本的改正をするというような形になりましたので、いよいよ国民としましても、国内の治安の問題、あるいはまた再軍備の問題、あるいは警察の今後のあり方の問題、かような点について心配をいたしたり、あるいはまた危惧の念を持つのではないかと考えるのであります。そこで警察法の改正等にからみまして、日本の国内の治安の維持というような問題等につきまして、根本的に政府はどういうふうな点を考えておるか、この点を岡崎外務大臣並びに保安庁長官、法務大臣等にお尋ねをいたしたいと思うのであります。ただいま保安庁長官は日本の保安隊は軍隊ではないと、こういうふうなことを言つておる。しかしながら、国民の常識から見るというと、あれは軍隊じやないかというふうな考えも出ておりますが、御承知通り、バズーカ砲等を相当に持つておるわけであります。もしバズーカ砲が五十ちようもありましたなら、ノモンハンにおきまして、小松原兵団の三万幾千の全滅はなかつたであろうと思うのであります。こういうことを見ると、あの当時の日本の軍隊よりも、なお優秀な兵器を持つておる、保安庁長官も過日、新町の戦車隊をごらんになつたようでありますが、われわれが大東亜戦争中にかつてつたことのないような戦車であります、最も優秀な戦車——今におきましては、時代が少しおそくなつたかもしれないが、相当に優秀な戦車であるということは考えられるわけであります。こういう現実を見ると、これは軍隊じやないかと考えられるわけであります。しかしながら、そういう問題につきまして、いろいろ議論をむし返しても、言葉のあやになつてしまつて問題の解決にはならないわけであります。一番中心の問題はただいま小島委員も質問をいたしましたが、大体日本国民としては、アメリカ軍が全部帰つてしまつたなら、日本の国においても何らかの武器を持つておかなくちやならないんじやないかと考えるのは、一つの常識ではなかろうかと思うのであります。また一面におきましての日本における議論としては、アメリカ日本を隷属国にしておこうと思う、あるいは植民地にしておこうと思つているから、軍隊の撤退等は考えないであろう、こういう議論が左翼の議論として行われていることは、過日の社会党の左派の大会において、日本アメリカの植民地なりという一つの決定をしたらどうだ、こういうふうな議論が出ておつたというようなことにおいても、おわかりであろうと思うのであります。そこで、国民の間にいろいろの議論はありますけれども、要約されたものは、一応軍備というようなことはしない、しかしながら国内の治安の責任は国民が持つべきものじやないか。それから、アメリカの軍隊等は、いてもらうのがいいか、あるいは適当のときにおいて引揚げてもらうのがいいか、こういうこと等については、それぞれの状況によつて解決をして行くべきものじやなかろうか。しかしながら、国民の気持としては、アメリカの軍隊が駐屯していて、いろいろトラブルを起すというようなことは好ましくない。こういうことは実際の問題であろうと思うのであります。そこで一番中心の問題において、国民の中におきましては、アメリカの軍隊は引揚げようとはしないのである、いつまでも日本に駐屯をしていようとしておるのである、こういうふうな考えが相当にあるのでありますが、ただいま外務大臣は、アメリカはむしろ引揚げようと考えておると思うと、こう言つておられます。しかし、今朝鮮事変が起つている、こういう実態においては、政府は、アメリカの陸軍等をすぐ引揚げてくれというようなこともできまいと思いますが、アメリカも朝鮮事変等が一応目鼻がついたなら引揚げようと考えておる、こういうふうに言われたのであります。政府にしましても、一応朝鮮事変が終りましたなら、保安隊等ももう相当なものができてあるのだから、海軍、空軍までも引揚げろということは無理であるが、陸軍等につきましては、もう引揚げてもらつてもさしつかえないのだ、こういうふうなお考えを持つておるかどうか、あるいはまた、アメリカ等にそういうところの交渉をしようと思つておるかどうか、この点をお伺いしたいと思う。海軍あるいは空軍等でなくして陸軍だけに限つてこの点をひとつお尋ねしておきたいと思うのであります。
  165. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この安全保障条約は朝鮮事変を頭に置いてつくつたものではないのでありまして、むろん朝鮮事変というようなものがある原因は、やはり条約に言つております無責任なる軍国主義的な勢力がまだあるからということになるのでありましようが、直接にはそれを考えておらないのであります。しかし安全保障条約の第四条にありますように、要するに心配がなくなればアメリカの軍隊は一日も早く日本を去りたい気持はある。もし朝鮮事変が終りまして四海波静かになれば、これはむろんアメリカの軍隊にいてもらう必要はないのであります。そのときの情勢がどうなるかによるのでありまして、日本に危険があるかないかということが判断の基準になります。危険がなくなればアメリカの軍隊にいてもらう必要がなくなる、また危険があればいてもらうということになりますので、そのときの情勢によるので、朝鮮事変の解決だけで、すぐに右か左かということは、私は言えないだろうと思います。
  166. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 その点について保安庁の長官にお尋ねするが、直接侵略に対しましては、実際問題として、なかなか今の保安隊をもつてこれに対抗するというようなことは、これはできないと思うのであります。しかし直接侵略等の問題は、そう簡単にあり得るものだとは、何人も考えないわけであります。問題は、国内の平和と秩序の維持が現在の保安隊等によつて十分に保ち得るであろうかどうか、こういうような問題が、国民の保安隊に対する期待であろうと思うのでありますが、木村長官は、非常に保安隊の士気高揚あるいはその他の万般に向つて努力されていると思うのでありますが、現在の予算に組まれたところの定員ができますれば、これで一応国内における秩序と平和は保ち得る、かような確信を持つているかどうか、承つておきたいと思います。
  167. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいまの程度では十一万の保安隊、一万の警備隊、これを十分訓練し、整備し、士気を高揚いたしますれば、十分治安を維持できるとわれわれは考えております。その点についてわれわれは常にこの訓練を十分にし、士気を高揚させるということに努力いたしたい。但し御承知通り、国内情勢国際情勢というものは変転きわまりないものであります。そのときの情勢によつて、あるいはまたこれを強化しなければならないような時期に至るかもしれません。現在の段階においては、その程度においてできるだけの態勢を整えたい、こう考えております。
  168. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 重ねてお伺いするわけでありますが、あらゆる問題を考えて、そしてあらゆる問題に対処するということは、困難ではあるが、一応、日本の国内の平和と秩序が満たされると想定される範囲内においては、今の保安隊の訓練等によつて、保安庁長官は責任が持ち得るであろう、かような御確信と承つたわけでありますが、さように承知しておいてよろしいかどうか、重ねて承りたいと思います。
  169. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 現在の段階においては今申し上げた通りであります。
  170. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 そこで、保安隊のあり方でありますが、これはいろいろと議論があります。先日富岡公述人も述べましたが、国内の治安を維持するということにつきましては、ああいうアメリカ型の訓練の方式で、実際に起る事態に対処ができるかどうか、これについては、どうもわれわれとしても、国内におけるいろいろな擾乱等に対する経験等がないので、言い切れないが、いろいろとそれらの問題については研究をし直すべき問題があるのではなかろうか、こういうふうな意見であります。前の警察予備隊は警察の補助的なる存在というふうなわけでありましたが、保安隊となりましても、国内におけるところの秩序と平和を守るというような形が多いのでありますから、その点におきましては、警察等において手に余るというような問題についての責任を持つ、こういうことについては、やはりかわりがなかろうと思うのであります。その点についての御意見を承つておきたいと思うのであります。
  171. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安隊は、要するに警察力をもつてしてはこれを制圧することができない反乱とか、大騒擾とかいう場合に、出動することになつておるのであります。要は、この保安隊のあることによつて、一つの大きな力を国が持つことになると私は考えております。申すまでもなく、普通の刑事事犯その他につきましては、警察力をもつてこれを制圧するのであります。かような力の及ばないときに、初めて保安隊が出動することになつておるのであります。
  172. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 ただいま保安庁長官も、現在の保安隊を十分整備、訓練をしますれば、大体において保安庁法で考えておるところの国内の平和と秩序は責任が持てる、こういうふうな御意見である。そこで岡崎外務大臣は、外敵の侵略とか、あるいはいろいろとまだ軍国主義的な脅威が去らないというような問題等考えると、こういうふうな点から、アメリカの陸軍等の引揚げについては、明答はできないというふうな御意見でありました。私は先ほども申した通り、海軍も空軍も一挙に引揚げてもらうというふうなわけではありませんが、とにかく国内における治安という問題につきましては、木村保安庁長官以下大いに保安隊を訓練しまして、国内の治安維持のために努力されておつて、責任が持てる、こういう段階になつておるということは、ただいまお聞きの通りである。そうなりますと、朝鮮事変等が一応一段落をいたしまして、そして内地が朝鮮事変におけるアメリカ軍隊の収容地になつたり、あるいはまたこちらが駐屯的な用地に供される、こういうふうなことの必要が早晩なくなつて来るように思われるのであります。そうなりますと、少なくとも国内における陸軍の駐屯関係は、なるべく早くお帰りを願つて、そうしてこの保安隊が国民に愛される保安隊となつて、国内の治安の責任は持つてもらう、こういうふうなことが最も好ましいことではないかと思うわけであります。アメリカもせつかく金をかけて、駐留軍が日本におつて、これが日本を植民地化するのだとかなんとか悪口を言われて、いる気はないし、日米関係を阻害する。こういうことになるわけでありますから、こういう事態を見通しがつくようになつたならば、なるべく早くアメリカの陸軍はお帰りを願つて日本のことはただいまの保安隊によつて責任を持つ、こういうことが好ましい状態ではないかと思うのであります。外務大臣のそれについての御意見はいかがであるか、承つておきたいと存じます。
  173. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 安全保障条約の建前は、間接侵略に対しては、日本のその当時の警察予備隊、今の保安隊が守るのであつて、直接侵略の方は手がまわらないから、安全保障条約を結んだということになつておるわけであります。従つてこれは仮定の問題ですが、外部の方が何らそういう心配がなくなれば、日本が希望していても、アメリカはここに駐屯することは好まないでありましよう。それは問題ないと思います。ただわれわれの考えなければならぬことは、朝鮮事変が終つたということで、世界が全部平和な、何も問題のないところの状況になるかどうか、これはそのときになつてみないとわからない、こう申し上げるだけであります。
  174. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 外務大臣はどうもなるべくいてもらいたい、こういうふうな口吻が見られるわけであります。私は最後まで陸軍も空軍もというわけではないのであります。われわれはやはり段階を踏んで行くわけであります。陸軍の問題に限つて言つておる。ところがなるべく長くいてもらいたい、こういうふうな気持があるわけであります。そこで一部においては、自由党や吉田内閣アメリカの隷属国家として甘んじようという考えがあるのだ、口の悪いのは、アメリカの駐屯軍がいるといろいろとドル収入があるから、ドル財源や何かとしてこれを残しておきたいという気持があるのだ、こういうふうにいろいろと判断が出て来るわけである。根本方針として、政府としてはいろいろの条約の関係があると言いますが、陸軍、海軍、空軍全部を引揚げてもらうというのじやない。もう幸いに保安隊もかような状態になつておる。それからまた朝鮮事変等の一応の見通し等もついたならば、いろいろと問題等も起り、やつかいなことも起りますから、海軍、空軍についてはまだしばらく別として、しかし軍におきましては、もう世話にならなくとも、一応国内のことについては責任が持てるから、そういうことが言い得るだろうと思うのであります。どうも外務大臣の説明を聞くと、アメリカは帰りたいのだが、おれの方はなるべく離したくないというふうに考えられる。これがまたいろいろと問題を起し、国民に疑念を持たせる根本の原因だろうと思います。幸いに木村保安庁長官も、内地の治安維持については、責任が持てるというふうに断言ができる段階になつたわけでありますから、外務大臣としましても、さような所信に進んで、そうして外交の線を打つてもらいたいと思うわけであります。その点について御考慮を願いたいと思います。
  175. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の申し上げることが何か誤解があつたようで、はなはだ恐縮でありますが、私も決してアメリカの軍隊にいてもらいたいと思つているわけではないのであります。あなたのおつしやる以上に、必要がなくなれば、空軍でも海軍でも、全部いない方がけつこうだと思つております。ただ、今あなたのおつしやるところの、国内の治安維持ができればもう必要ないという点が、少し違うのでありまして、初めから保安隊というものがあつて、国内の治安の維持は必ず守れるという前提のもとに、直接侵略だけのことを考えて、安全保障条約を結んだのでありまして、直接侵略の心配がなくなりさえすれば、一日も早くこういうものはなくした方がよい、これはまつたく御同感であります。
  176. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 この点は詳しく言いますと、戦術、戦略上の問題になりまして、私の言うのは、直接侵略というのは、アメリカの機動艦隊その他が東洋に一応集中し得るという形態においては、直接侵略は考えられない。劣勢なる海軍力をもつてしては、そういうことは企図できないのだ、また空挺部隊等もそういうふうな大規模な直接侵略等にはなかなか使えるものではない、空軍の相当な激撃力がある限りにおいてはそういう問題は起らないのだ、こういうふうな戦略上の見解に立つて申しておるわけであります。さような見地から、一応直接侵略の脅威がなくなつたというような事態におきましてはまず陸軍はお帰り願うということが、アメリカのためにも日本のためにもいいのではないか。それによつてドル財源がなくなるというようなことは、貿易その他の伸張等に努力することによつてカバーするべき問題である。かような点を私は申しておるので、これらの点については外務大臣も各閣僚も、根本的にお考えおきを願いたいと思うわけであります。——法務大臣はまだ見えませんか。
  177. 太田正孝

    太田委員長 今出られないならば政務次官でも出るようにということを言つたのですが、もうちよつとお待ちください。
  178. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 法務大臣の来る前に金利の問題について承つておきたいと思います。御承知通りこれは利息の問題でありますが、戦後裁判所等におきましてもいろいろと利息に対する判決が問題になつておりまして、日歩三十五銭まではさしつかえない、あるいは五十銭まではさしつかえないとか、こういうふうな問題が出ておつて、高金利に悩まされておる人が相当あるわけであります。御承知通り昔は利息制限法というのがあつた。それから民事訴訟法でも遅延利息の問題につきましては、いろいろな実状を考慮して公序良俗に反しないという範囲内において判定を下すという実情になつてつたのでありますが、戦後におきましては金利の最高限という問題につきましてあり方がきまつておりませんで、判決等におきましても日歩三十五銭あるいは五十銭までは大蔵省が認めておるのだからさしつかえない、こういうような問題が起るわけです。なぜ私はこのことを御質問申し上げるかというと、国民は政府の資金運用部にはうんと金があるのだから、それを出すとこういう事業もできる、ああいう事業もできると言つておるのであります。ところがその資金運用部の資金はほとんど郵便貯金や何かで構成されておるわけです。しかるに大蔵省では日歩五十銭までは認めておるのだということになつて来ると、いろいろな人が金貸しを始めて、農村で堅実な貯蓄をしようとか、あるいは勤め人で郵便貯金でもしようというような人々が、これらに金を持つて行くというふうな状態になつて来る。そうしますと国民の堅実な貯蓄心もなくなる、政府のとらの子にしている資金運用部資金も乏しくなるわけです。この金利の問題について大蔵省はどういうふうな態度をとつておるのか、これをお聞きしてみたいと思うのであります。
  179. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 金利につきましては、高金利を下げるということは経済の安定の上に大事でありますが、そのために一般の金融機関については臨時金利調整法あるいは大蔵大臣の認可制等でなるべく低利の融資が行われるように指導して参りましたが、貸金だけを業として預金等の受入れを禁止されておるものにつきましてはその監督上届出制をとりまして届出がありますと日歩五十銭まで届出の受理を認めておるのであります。これは預金等の受入れを許されていない貸金だけを業とするものについての制限でありまして、これを正規の金融機関並びに引下げますのは貸金業の性質から見まして困難でありますので、ただいままでそのままにいたしておるのでありまして、四年ばかり前に届出を受理するということになつたのでありますが、今になりますとこれはもつと安いものにしないといけない、安いものにして受理するということにしたいと思つております。しかしごく短い期間の貸金にこういうことが起るのでありまして、金利一般の水準に大きな影響を及ぼすとは私は考えていないわけであります。
  180. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 これは貸金業等の取締りに関する法律と、臨時金利調整法に基いてやつている、短期の金については五十銭というふうに言われますが、五十銭というと一年に二十割になるわけであります。この臨時金利調整法は昭和二十二年にできたのでありますが、御承知通りインフレ時代であります。インフレ時代には物を買つておけば三倍にも四倍にもなるということを考えて大蔵省としても日歩五十銭というものをおきめになつたと思いますが、要するに国民経済も安定させなければならぬという時期に入つて来たわけであります。それから一時金を貸すというけれども、実際は手形を貸してその手形をちよちよい切りかえて行くという貸し方を大体やつておるわけであります。私たちがなぜこういうことについて心配いたすかというと、農村におきまして農民の中で最近自分の土地を二反なり三反なり売つて、自分の持つている金と合せて五、六十万円の金をつくると、日歩五十銭までは貸せるのだからというわけで金貸しを始めたりして、農村のためにも本人のためにも、また金を借りる方の実情を知らないで手形を振り出す人々のためにも、非常に多くの問題があるわけであります。金を貸して一年で二十割もとれるのだという気持になると、堅実に仕事をするという気持はなくなる。そこへもつて来て国会においてもハイアライ法案や何かをつくろうというような気持もある。これではまじめに預金等をするというふうな考えがなくなつて来る。どう考えてみましても世の中に二十割の利息などというものは、貸す方も貸す方だし、借りる方も借りる方である。金利というものから見ますれば、一箇年において二割あるいは三割、こういうところが最高限であるという一つの常識が出て来なければ、堅実なるところの金融、あるいは金利、こういう問題に対する気持が確定して来ないわけであります。ひとつ大蔵省におきましては、今までのインフレ時代の昭和二十二年にやつた五十銭まではよいのではないかというふうな考え方を至急に是正して、国民が堅実なる金融を受け、あるいは金融をする、こういう気持に指導して行かなければなるまいと思うのでありますが、今までの五十銭や何かについては、ひとつ根本的に考え直すお考えであるかどうかを承つておきたいと思います。
  181. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私も御同感でありまして、その方向に進んで参ります。
  182. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それでは法務大臣がまだお見えになりませんので、農林大臣にひとつ伺います。  食糧増産の問題は、ずいぶん大きなこととして論ぜられるのでありますが、実際に先ほども和田委員から、各農家の食糧増産ができるようにいろいろ考えてやらなくちやいかぬではないかと述べられたのであります。これは建設大臣とも関係があるのでありますが、御承知通り日本においては水利ということ、特に田畑に対する水利や何かの問題に関しましては、今までの権利者がありまして、そこでおれの方は米がとれるのだということで、少しは余つてつても自分の権利を確保して、よその方に水を使わせないということが非常に多いのであります。ところが今後何だかんだといつても、土地もつぶれて来るのであります。そこで食糧の増産等はどうしてもしなければならない。たんぼにするについては全面的にそう豊富に水はないということになりますと、畑作灌漑等が非常に奨励されなければならないと思うのでございます。そこで今まで水利権を持つてつても、これはおれの権利だといつて固執させない。いろいろ農林省等が技術的に考えてみまして、この川の用水はこの辺で間に合う、あとは畑作灌漑その他に使つてもさしつかえないのではないか、こういう見当がついたらば、その用水は畑作灌漑その他等についても利用ができるように、なお安定的な水であつたならば、その分は改田等にも使える。こういういろいろな問題を考えなければいかぬと思うのであります。この畑作灌漑の問題、あるいは改田の問題等が今後非常に起るのでありまして、大規模の多角的ダムをつくるとかなんとかいうことも非常に必要でありますけれども、こういうようなこまかいことにも気を使わなければなるまいと思うのであります。その点いろいろなことについてこまかく気を使われておる農林大臣でありますから、如才がないと思いますが、どんな考えを河川法の改正については持つておられて、建設大臣等と折衝して行かれようとするのであるか、あるいはそれらについてどういう独自のお考えを持つておられるか、その点をひとつつておきたいと思うのであります。
  183. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 御前述の河川法というものは明治二十九年にできた法律でありまして、単に河川の改修ということが目標につくられておるのであります。ところが現在になりますと、水はでき得る限りこれを利用して、余つた水を海に流すという方向に来ておるのであります。ことに農業水利は河床の変動によつて違うのであります。河床の上下によつて取入口の変更を来し、そしてこれが農業水利に及ぼす影響が非常に大きいのであります。また余つた水のみでなくて、足りない水でも畑地灌漑等に使いまして、主として耕地の改善もしなければならぬのでありますが、そういうような意味から行きましても、この河川法の改正に対しましては、農業水利の面について特に重要な関心を持たなければなりませんので、建設省では何か独自な案を持つておるようでありますが、農林省といたしましては、これを農業水利の面から強く河川法改正については今申入れをしておるようなわけでありますので、われわれとしては、川の水をまんべんなく利用いたしまして、日本の食糧増産のために使いたいと考えております。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  184. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 法務大臣がおいでになつたので前の続きを少し申さないとおわかりにならないかと思いますが、ただいま木村保安庁長官に質問いたしたのであります。大体国内の平和と秩序は、現在において木村長官のもとに訓練をしておる保安隊をもつて十分に維持ができる、こういうような答弁を得たわけであります。また岡崎外務大臣は、今すぐということも言えないが、世界情勢がおちついたならば、次第にアメリカの軍隊には帰つてもらうように考えるべきである、またアメリカも引揚げたいと考えておるであろう、こういうふうな御答弁があつたわけであります。これらの御答弁考えてみますると、国内における平和と秩序というふうな問題は、一応保安隊等の力等とも相まちまして、起り得べき問題、考えらるべき問題については、まず確保されておるというのが実態であろうと思うのでありまするが、法務大臣はこれらの考えについて、一応日本におきましては保安隊の整備、あるいはまた共産党関係の方においては公安調査庁の活動等と相まつて、いろいろと国内に起るべき治安の乱れ等に対しまして、平和と秩序が維持できるとお思いになつておりますかどうか、この点をお伺いしておきたいと思うわけであります。
  185. 犬養健

    犬養国務大臣 石井さんの前の御質問を伺つておりませんので、あるいは食い違いましたら御注意を願いたいと思います。  お話のように、昨年の上半期にいろいろ国内的にもけわしい状態がありましたが、今はそれに比べますと、表面平穏なような形になつております。しかし法務省の関係といたしましては、常時地下に流れております思想動向を調べておりまして、これらの暴力主義的破壊活動をもつて主義としている人人が、やはり軍事方針を捨てておりませんことに多大な関心を持つているわけでございます。お話のありました公安調査庁は、この思想動向について絶えず調査研究をいたしておるわけでございます。ですから私どもの立場からしましては表面平穏ではあるが、その底流として流れているものに対しては、今なお緊張してこれを監視して行く、こういうありさまになつている次第であります。
  186. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 いろいろと国内の治安に責任のある当局の責任者として、そういうことは当然のことで、またそうなくてはなるまいと思うのでありまするが、ものは疑えばきりがないわけであります。疑心暗鬼、いろいろと心配すればはてしがないわけでありまするが、とにかく保安隊も相当に訓練が届いており、いつ問題が起りてもこれが活動できるような状態になつておる。また公安調査庁等も、大体におきましてその動向等はよく内偵あるいは調査をいたしておる、こういうふうな状況でありますれば、一応は保安隊あるいは公安調査庁あるいは現在の警察の体制をもつて、予期し得べきところの——あるいは去年の皇居の二重橋前の問題であるとか、あるいは昭和二十四年当時に起つた福島の問題であるとか、いろいろと過去の実例もありまするが、ああいうふうな日本の共産党その他が考えておるような問題等については、対処ができるのではなかろうかと考えるわけでありまするが、その点について自信がおありであるかないか、その点を承つておきたいと思うのであります。
  187. 犬養健

    犬養国務大臣 大体御趣旨意味は、保安隊の任務の限りにおいては今そう心配のないところまで行つておる、公安調査庁の思想動向に対する組織建前も、一応そう欠点のない程度に行つておる、それで法務省あるいは国警担当当局としてほかに心配はないか、こういう御意見のように承つたのでありますが、警察に関する限り、同時多発事件を予想してそれに備える準備をせいぜいいたしておくということは、国民に対する義務だと存じまして、その準備は今も心がけておるのでございます。ただ石井さんもお触れになりましたように、ことさらに国家が危機に臨んでおるということを大げさに言いふらして、危機の観念を国民に与えて、政治を独裁的な方に持つて行こうというような考えは毛頭持つておりません。
  188. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 国内におきまして同時多発の問題等が起るかもしれない、それに対しては警察を十分これに対応できるようにいたさなければならない、こういうふうな御答弁でありまするが、ただいま保安庁長官も言つたのでありますが、国内の平和と秩序を維持する、つまり同時多発あるいは一箇所において相当強力なる、警察の手に負えない暴動等が起きた、同時多発によつて警察の連繋等が欠けるので、万全の処置がとれない、こういうふうなことのために保安隊等が備えられておるものであろうと考えるのであります。同時多発とか、あるいは一箇所において相当大きな暴動等が起つた場合においては、大体において保安隊にお願いする、これが保安隊の建前ではなかろうかと考えるのでありますが、この点についての法務大臣のお考えをお尋ねしておきたいと思うわけであります。
  189. 犬養健

    犬養国務大臣 御質疑のお心持よくわかりますし、同感の点がございます。ただこれは程度があるのでありまして、明確なる内乱の形をとつて参りましたときは、保安隊が出動いたしましても内外ともにもつともと思うでありましよう。しかしそれまで行かないが、なかなか騒ぎが大きいというときに一々保安隊が出ると、日本という国は、よくある中米やバルカンの国と同じように、始終軍隊でも出なければ国の平穏の状態が保てないという感じは世界に対してもいかがかと思いますので、内乱にはならないが、相当の騒ぎだ、あるいは騒ぎになる見込があるというときに、私どもは警察の組織というものをそれに備えるだけのことをしておきませんと、国民に対して義務を果したことにはならぬのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  190. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 ここで問題になるのでありまするが、内乱であるというふうなときは保安隊にお願いする、それ以外においては大体保安隊には出てもらわないのだ、こういうふうなお考えのようでありますが、昔足尾鉱山にストライキがあつたときにおいて、高崎の連隊が出動したこともあるわけであります。これを見ますと、日本の軍隊といえども、それがいいか悪いかは別問題として、内乱でなくて一つの大きなストライキにおいても昔出たことがあるわけであります。一応各方面に内乱と言わなくても、相当に計画的な多発的な騒擾等が起つたときにおいては、保安隊に出てもらう、こういうふうに考え、また自由党の吉田内閣としましても、そのために保安隊をこしらえておる、そこで軍隊ではない、こういうふうに言つておるのだ、こう思うのでありますが、その点についての見解はどうなつておるか、お尋ねしておきたいと思うのであります。
  191. 犬養健

    犬養国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかるのでありますが、いかにも保安隊が出てふさわしい場合と、保安隊が出なくてもよさそうじやないかというふうに国民感情が感ずる場合とは、私はどうも区別があると思うのでございます。またこれは引例が当らないかもしれませんが、この前メーデーのたいへん大きな騒擾事件がありまして、あまり日のたたないうちに皇居前の広場でおめでたい催しがありました。その際にまた不祥事件が起つてはいかぬということで、保安隊を出そうかという話もあつたのでありますが、いかにもそれはものものしいというので、その場合警察がふだんよりもたくさんの人数が出て、緊張して警備に当つた。そういうような場合を予想されるのでありまして、鉱山の騒ぎのごとく、昔の兵隊が出ていい場合でも、警察が特別の訓練を受けておりますならば、警察でちようどほどのいい場合もあるし、また非常に大きくなれば、なぜ保安隊を出さなかつたという国民感情が起る場合もある。これは程度の問題だと考えております。
  192. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 大体国民におきましては、ただいまの法務大臣の言われたようなそういうふうな問題等につきましては、保安隊が出ていい問題ではないか。もしそういうときを目標としないでおるのならば、保安隊というものは、実際は保安隊というけれども軍隊で、よその間接直接の侵略に使うことが目的、あるいは朝鮮等に持つて行つて使われるのが任務ではないか、こういうふうに考えるのももつともでありまして、やはり保安隊の性格というものは、保安庁法にも現われておる通り、国内の秩序と治安、平和を維持するということが根本の任務であるということになりますと、警察がいろいろと自分たちの権限を拡大してそうしてなるべく保安隊の仕事は少くして、保安隊には出てもらわないようにして、全部国内のことについては、手に余つた特別な問題以外は、みなわれわれの方でやらなければならないのだ、こういう考え方は少し間違いではなかろうかと思うのでありますが、この点について法務大臣の御意見を承つておきたいと思うわけであります。
  193. 犬養健

    犬養国務大臣 だんだん御質疑の御趣旨がわかつて参りましてそれに沿つて答弁をいたしたいと思います。保安隊というものは、吉田内閣考えからいえば、軍隊でないので、国内の治安に当つていると言つているじやないか。だから少し大きな形の騒ぎはそれでやればいいじやないか。もしそれを避けて保安隊をなるべく出さないというなら、保安隊は軍隊の心持で隠しているのではないか。かつまた警察は、保安隊が出て済むところを、なるべく権限を拡大して、そうして警察の行動というものを幅広く国民生活の中でとつておく、そういう心がけはよくないではないか、こういう御趣旨だと思うのであります。私も警察がそういう心がけを持つということはよくないと存じております。ですから、いわゆるわれわれ国民生活の日常に触れる意味の警察の事務というものは、できるだけ府県の自治的なものにおまかせしたいと考えておるのであります。しかし国の内外の情勢を見て府県の自治的な警察だけではどうしても割切れない部分があるということを、遺憾ながら私どもは認識いたしているのでありまして、この認識があるいは石井さんの御認識と食い違つているのじやないか。どうしても国家の心持として、各府県に対して同時多発の、しかし保安隊が出るには及ばない程度の事件というものを予想して、中央から地方の自治的な警察に対して、国家がある連絡をつけておくということがどうも必要なんじやないか、こういうふうに私ども考えております。この点はあるいは御意見と食い違うかもしれません。私どもはそのために別に警察の行動というものを非常に幅広くとつて、保安隊の範囲まで入つて行こうという考えは毛頭ないのであります。これは御了承願いたいと思います。
  194. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 入りたくないと思つても、やはり入れるような力が出ると、自分がこれは一切やるから、あなたの方には出てもらう必要はない、こういうふうになるのが、これは官庁機構の昔からの建前でございます。なるべく自分でやるからほかのものはやらないでくれ、たな上げをしよう、こういうのが一つの警察の考え方であります。  そこで今度、御承知通り警察制度を改正する、新聞によると治安警察庁というのを設ける、こういうふうに発表されておるのでありますが、さようなお考えであるかどうか承つておきたいと思います。
  195. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。治安警察庁という名前がよくはないかという意見も、たしかに一時出たのでございます。しかしいろいろ私どもが考えまして、何か特高警察のような、特別の役所をつくるような感じを国民に与えはすまいかということを考慮いたしまして、警察庁とあつさり名乗りたいと考えております。
  196. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 治安警察庁というものの考えが出たということは、これは相当に私は警戒しなければならないと思います。私治安警察庁と聞いたときに、治安警察法ということをただちに考えた。これは御承知通り大正の終りか昭和の初めに廃止されたのでありますが、有名な、民衆圧迫のシンボルといわれたのが治安警察法であつた。その治安警察法の名前をとつた治安警察庁をこしらえよう、まずそれがいいじやないかと考えたこの考えに、非常に危険性があるのじやないかと私は考える。法務大臣はその点については、いろいろと民主的に考えて、あつさり警察庁としよう、こういうふうにお考えのようでありますが、私が警察の権限拡大の問題について非常に心配をするのは、御承知通り自由党の中におきましては、今度内務官僚系の人が相当出たわけであります。それは大体五十四、五才が多かろうと思います。大体大正十年前後二十四、五才で高文をとつて警視となつて、それから警察署長をやつている。二十四、五才の若い者で警視をやると、朝登庁すると敬礼というわけで、一般の民衆がいると人民も敬礼するのだ、こういうふうな雰囲気で育つた人が、大体自由党に三十何名か入つた。そこで警察を何とかひとつ強化したい、昔の警保局が思い出される、あの警察の全盛時代が思い出される、こういうふうになつておるということは、これは自分の古巣でありますから、望郷の感が強かろうと思います。この考えが大体盛り上つて来たのが、今度の警察制度の改正であるということは、それは隠れもない事実であろうと思うのであります。こういう制度がどうしてもよくないから、そこで警察というものはなるべく民衆のための警察にしようというわけで、警察法というものができて、いろいろと問題等ありましたが、国家公安委員というものが中心になつて警察を運営する。そして人民の警察にするために保護警察を考え、それからまた司法警察の任務とする治安というような問題については、一応その当時占領軍がいたので、全般的な治安は占領軍にまかせ、警察はひたすら司法警察、保護警察、こういうふうな点において、公安委員を中心として全国的に考え、あるいはまた地方的に考えて、自治警察等ができまして、そして警察の民主化に非常に努力をいたして来ておつたわけであります。その関係で非常に成績があがつているのは、昔は代議士等がもらい下げ等に行つたり何かすると、どうも代議士等がときの内閣等に結びついて、警察官の身分や何かに異動を与えるというふうなわけで、それが影響があつたのですが、最近におきましては、警察は警察、国会は国会、検事局は検事局、こう建前ができたので、そういうようなこともなくて、おのおのその職責に尽すというふうなわけになつた。選挙違反の問題につきましても、悪いものは悪いもので検挙ができるようになつた。これに対しましてどうもこれは芳ばしくない、昔のような強力なる警察制度に復活したい、公安委員というようなものは思わしくない、こういうふうな内務官僚の考えがよみがえつて、また警察を昔の形にしよう、保護警察あるいは民衆の警察を改めて、治安警察、こういうものによつて国民に臨もうじやないかという考えが、今度の警察法の改正に現われておる、こういうふうに何人も率直に考えておるわけであろうと思います。法務大臣はいろいろと御弁解はなさろうと思いますが、それが根本の精神ではなかろうかと思う。民主主義に逆行することこれ以上はなはだしきものはないと思う。一応保安隊ができて国内の秩序は平和に維持するという建前ができておる。保安庁長官も責任が持てる、こう言われておるときにおいて、それらの機能がある限りは、いよいよ自治体の警察、あるいは民衆の警察として、そして司法警察の場面においては検事局等が一体となりまして厳正なる司法行政をやる、これがほんとうの警察の今後のあり方ではなかろうか、公安委員あるいは自治警察その他についていろいろと問題がありますれば、それについてまたお互いに研究、是正する、これがほんとうの民主主義のあり方ではなかろうかと思うのでありますが、今度の警察法の改正は時代逆行もはなはだしいものであるとお考えになつておりませんかどうか、承つておきたいと思うわけであります。
  197. 犬養健

    犬養国務大臣 いろいろ御心配の点はよく参考にいたしたいと思います。保安隊の領域を侵かして出しやばつた警察体調は、今いろいろ御意見ありましたが、道府県の公安委員会から考課表にバツテンをつけられますし、罷免の勧告をすることができるのであります。なかなか油断ができないものだと私は考えております。また公安委員会というものは、今申し上げたように、それだけの権能を今度付与せられますので、公安委員会はなるべく骨抜きにしようとか、そういうことは毛頭考えておりません。また個々の警察官には気の毒でありますけれども、行き過ぎのありましたときには、何人といえども日本国民である限り訴追ができることにしたいと考えまして、今度いずれ御審議を願いますが、警察官等資格審査会というようなものをつくつて、あなた方のどなたでも著しくふらちな者に対しては訴追ができる、こういうふうにいたしたいと考えております。警察官の個々の行き過ぎ、それも是正し、公安委員会というものは罷免の勧告権まで持つものにいたしたいと考えておりますので、いろいろ御心配の点は参考にいたしたいと思いますが、骨抜きにいたす考えは私どもには毛頭ございません。
  198. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 やはり警察は、保護警察あるいは司法警察、こういうふうなことでなければならぬ。また人民にいろいろと当面要望されるような問題をやつて行く。民主主義国家としてはこれが警察の本来のあり方であろうと考えるわけであります。保安隊等がなかつたときは問題でありますが、保安隊等もできておるときには、いよいよ警察はその線に行くべきではないか。しかるに今回選挙によつて多くの警察官僚等が出まして、かような警察法についての根本的な改正をいたして、そうして警察の姿を治安警察に切りかえる、こういうふうなかつこうははなはだ時代の逆行である。戦後における民主化の行き過ぎを是正するといいながら、これは昔の警察よりもなお強力なものをこしらえて、非常に国民に不安を与えるのではないかと考えるわけであります。昔からお父さんの代から自由主義の精神を体得して、あるいは藩閥警察のために大いに努力をされた法務大臣でありまするから、自由党は、今度は旧内務官僚、警察官僚が入つたから、大いに警察強化をやるであろう、こういうふうに考えられるときにおきまして、われわれはいかに内務官僚が入つても、警察官僚が入つても、警察については民衆の警察、自治警察の育成等に大いに努力するんだ、こういう態度をもつてつていただきたいということを心から念願いたすわけであります。  特に一言申し上げたいことは、自由党の方もお聞き願いたいのでありますが、公安委員の任免等であります。これは今までは非常に制約されておつたわけであります。政党人やなんかは公安委員等になれなかつた。今度はひとつ政党や何かの人々も公安委員に入れようというお考え。一方におきましては、選挙法について連座制であるとか、こういう選挙違反や何かについての取締り規定を強化するということにおいては反対しておる。そうして一方においては、そういうふうな公安委員や何かについては、政党人や何かを進出させて、警察を動かそう、こういうかうな考え方は、国民に非常に悪影響を与えると思うのです。官房長官はおりませんが、一切の責任が法務大臣にあるわけですから、それらについては十分にお考えおきを願いたいと思うわけであります。
  199. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 ちよつと石井君に御相談申し上げますが、河野密君より二分間を限つてという関連質問の申出があります。よろしゆうございますか。——それじや河野密君。
  200. 河野密

    河野(密)委員 今警察法改正に関する要綱が配付されたのでありますが、この予算案そのものには警察法改正のあれは一つも盛られておりません。国家地方警察を廃止するという新しい警察の要綱でありまするが、この予算案には国家地方警察に関する費用を要求しております。従つて府県警察費に関しても同様の問題が起るのでありまするが、これはいかように取扱われるのでありまするか、修正案をお出しになるとしまするならば、予算の審議の途中において出されるということは非常に迷惑しごくであると存じまするので、この点まず大蔵大臣の御意見を承りたいと思います。
  201. 犬養健

    犬養国務大臣 いずれ大蔵大臣からもお答えがあると存じますが、とりあえず当の責任者の私から申し上げたいと思います。予算の総額には変動のないような範囲でやつております。従つて新財源を伴うことは予想しておりません。どういう款項目でどういう変化、出入りがあるか、これは今調査中でございます。この財政措置との調整ができるかできないか、この点をにらみ合せながら施行時期をきめたいと考えております。
  202. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 新制度の施行期日は政令で定められる予定でございます。そこでこれはまだ確定いたしておりません。ことにその施行にあたりましては相当の準備を要しますので、これらすべての準備を完了しまして——その具体的措置の確定をまつことなく予算の措置を講ずることは困難でございます。従つて現在提出している予算について今ただちに組みかえ等を行う考えはない。
  203. 河野密

    河野(密)委員 それでは念のために伺いますが、その警察法の改正は本予算施行の以後において行われるものである、本予算施行の間においては警察法の改正は行われないものである、かように承知してよろしいのですか。
  204. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 施行の期日はまだきめておりません。今きめてございませんから、従つて年度内に施行された場合におきましても、現行予算の科目間の形式的な組みかえにとどまつているわけでございます。
  205. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 もう一問だけに願います。
  206. 河野密

    河野(密)委員 こういう重大なことをうやむやにしておくことは非常に不本意だと思うのですが、本予算の款項目を組みかえるといたしましても、その款項目の組みかえは、当然に予算委員会の審議を経べきものであると私は承知いたすのであります。もしそうでないとするならば、本予算の施行の範囲内においては警察法の改正は実施に至らないものであると、大蔵大臣は少くともさように了解して、この予算を提出されたものとわれわれは解するが、よろしいか、もう一度念を押しておきます。
  207. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 組みかえ等の方法を用いて施行するつもりでおります。
  208. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 義務教育費全額国庫負担法案の問題につきまして、自治庁長官と文部大臣にお尋ねいたします。  この法案が義務教育費全額国庫負担法案、こういうふうに新聞等においては論じられておつた。ところがだんだん新聞等に出ましたり、文部省に聞きますと、義務教育学校職員法案というふうにたいへんと話がかわつた法案で出て来るようになつて、本日も要綱が配られたわけであります。初めに政府では、義務教育費は全額国庫負担をやるのだというふうなわけで呼びかけた。ところが中身を見たら、義務教育学校の職員法案というふうになつて来たので、多くの人が見当が狂つたと思うのであります。われわれも初めに義務教育費の全額国庫負担ということにつきましては、この前の衆議院の自由党から社会党全部を通じまして、義務教育費国庫負担法案を衆議院立法として通過さしたわけでありますから、全額国庫負担はけつこうじやないか、こういうふうな考えを持つて見ておつたのでありますが、出て来たものは職員の法案だ、こういうことになる。この点については何人も非常に奇怪に思うのであります。そこで、文部大臣のほんとうの腹は、教職員の政治活動が少し行き過ぎてうるさい、今度の参議院の選挙なんかにも相当うるさく活動するだろう、そこで何とか動きをとめたいと考えてそれには国家公務員にする、国家公務員にするには、教育費を全額国庫負担ということにしなければならない、こういうふうな考えで、教育をどうしても機会均等に、どの教育職員等においても地位を安定して教職に勤めさせなければならない、こういう気持から、この法案を出したのではなく、参議院選挙を目当てに教職員の政治活動を封鎖しよう、こういう腹からこの法案を提出したというふうに、われわれは、別に邪推をするのではありませんが、考えられるのであります。文部大臣はそれについて率直に、おれはこういう気持はなかつたけれども、自由党がこういうふうに持ち出したので、こんなふうになつたということを、何でもけつこうでありますが、御答弁願いたいと思うわけであります。
  209. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。閣議の決定事項から申し上げますが、通俗に全額国庫負担という名前で、新聞なんかに出ておりますけれども、あれは半額国庫負担法というものがございますから、その半額ではいけないから全額にしよう、こういうことでその比較対照の意味において全額国庫負担ということをかりに考えた。しかし閣議決定事項の表題としましては、やはり義務教育職員の身分を安定させる法案と、ちやんと括弧に入れて注釈をつけてあるのでございます。これは昨年できましたところの半額国庫負担法の半額の負担を全額にするということでございます。  それからもう一つ、これをどうして全額国庫負担にしなければならないかということを考えましたのは、これは皆様方もよく御承知通りでございますが、平衡交付金ができましてから、平衡交付金法で教育費をちやんと勘定して、各都道府県また市町村あたりに出しているのでございますけれども、これがえてして特に貧弱市町村あたりでは全部政府が勘定して、交付している平衡交付金通りは使用されておらぬから、これをひとつひもつきにして、教育費として出したものは教育費に必ず使わせるようにしてもらいたいというのが、平衡交付金のできました直後から起きた運動でございまして、そのときに全額を負担してもらいたいという要求がたくさん出ておつたのでございます。しかし半額が今までの例であるから、全額でも負担しようじやないかということでできたのが今度の法律案であります。ところがこれもよく誤解をされることでございますが、半年前にあれだけ半額国庫負担に反対しておきながら、今度全額国庫負担をするということはけしからぬじやないかということが、俗説に言われておりますけれども、これは真相を知らない人の言うことでありまして、なるほど当時私は自治庁長官として反対はいたしましたけれども、しかし全額なら筋が通るし、またいろいろな弊害が起きないから、全額にしようじやないかということを私は主張しておつたのでございます。     〔尾崎委員長代理退席、委員長着席〕 今回文部大臣を拝命いたしましてもしできますならば、私自身としては私の信念、経倫を行いたいと思いまして、これを全額にしたわけでございます。  それから国家公務員にするということは、全額にすれば、当然国家公務員にしなければなりません。しかし国家公務員にしなければならない理由は、主としてただいまは各市町村の地方公務員でございまして、ある一つの村から隣り村へ転任しましても、中断されて恩給もつかない。また昇給に必要なところの経過年数なんかの勘定から行きましても、その前の前任地でもらつてつた既得権、すなわちたとえば八箇月勤めたものが隣り村へ転任しますと、その八箇月間は昇給年数に勘定されないということになります。そういうわけでまた新しくスタートしなければならぬ。特にひどいのは、一つの村から隣り村へ転任しようと思えば、その村で辞職して、隣り村で新規採用をしなければならぬ、こういうことになりますから、それではなかなか人事の交流もできないし、身分の保障も安定できないし、いろいろ支障がございます。これを国家公務員にすれば、むしろ給料を全額国庫負担にしなくとも、それだけの効果がある。両々相まちまして私は一番いいことだと思います。  それから今政治活動の問題が出まして、その政治活動を禁止するために、こんなことをもくろんだのではないかというような御説でありますが、私といたしましてはそんなことは考えておりません。しかし一言申し上げておきたいことは、ただいまの日教組の政治活動というものに対しては、私はあまり好ましいことじやない、地方公務員にしろ、国家公務員にしろ、これは全体の奉仕者であると同時に、人の師表に立つべき人があの無秩序の活動をされるということは、少し直つてほしいものだと思います。そういう意味でございますから、決して政治活動というものの禁止のために今度の法案を出したということは、少し間違つておると私は考えております。
  210. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 文部大臣は自治庁の長官当時も、本心は全額国庫負担でやるというような御心境のようでありました。それに邁進したのであつて、別に他意はない。また人事等もそれが教職員のためになるからというようなお話でありますが、しかし何としましても国民の受ける印象、その考えはぬぐい切れないと思うのであります。新聞等においても、教育費の全額国庫負担法案だと思つたらば、出て来たものは義務教育の学校職員法案である。ほんとうに義務教育費を国庫負担にするということが中心であつたらば、義務教育費国庫負担法案を改正いたしまして、その間にまた身分のこと等についても触れておけばさしつかえないのではなかろうかと思う。義務教育費の国庫負担法案はそのままにいたしておいて、義務教育学校職員法案という別の法案を出すというようなことが非常に問題ではないかと思う。いろいろと教職員の政治活動については意見があります。しかしまた世の中というものはいろいろとかわるものでございます。廣川農林大臣を前に置いて申すのも妙でありますが、昔はやはり社会運動をおやりになつた。今は自由党の幹部として総裁候補というわけで活動している。いろいろと変化があるのであります。教職員等もまた相当に変化がなければならないと思う。われわれとしましても、国家から俸給等を受ける者、つまり税によつて俸給がまかなわれる者が、マルクス主義の階級の理論に立つて政治活動をやるということはあり得ないことであると考えておる。当然それらの点については、政党支持の考え方等につきましても、次第に変化も出て来るのであろうと思うのでございます。それをあらゆる問題についてまず動かさないようにするというふうなことを考えて、それに全額国庫負担を乗つける、こういうやり方はまことに明朗を欠くと思う。まず義務教育費の国庫負担法案を改正して、全額国庫負担にする。身分等につきましては、これはまたゆつくり考えようじやないか、これくらいの弾力性とゆとりがあつてさしつかえないと思う。法律は遡及をすることもできるわけだ。また来年の国会におきまして、身分等のことについてはいろいろと論じたらいい。まず現在においては国庫負担の問題を中心にして考えるべきであつて、身分等のことについては選挙前や何かで、何か他に意図があるような考えを持たれるような扱い方は、はなはだ不明朗ではなかろうかと思うのでありますが、この点についてひとつ意見を承つておきたいと思うのでございます。
  211. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は義務教育に従事している教員が、ただいまのところでは身分が安定しているとは思いません。その意味におきまして、ただこの身分を保障して、教育の機会均等、また義務教育の水準の維持向上をはかるという目的で、国家公務員にすることをやつたわけでございます。
  212. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 次に今問題になりますのは、やはり自治庁の関係と文部省の関係、あるいは教員の方の局であるが、文部省の方ではこれは定員定額制である、そして今よりも給料あるいは人員を減らすのだというような考えである。そして現段階におきましては一応定員定額制をとつて、それをはみ出したものは地方自治体において、府県等において責任を持つてもらうのだ、こういうふうなやり方である。そこで自治庁側の方においても、どうもこつちへしわ寄せされて来てはかなわないというような問題が出ておるのでありますが、文部省のいうように定員定額制と減給制をやつた場合に、本来全額国庫で負担すべきものを、定員定額制をとられたために、地方の財政等においては実際においてどれだけかぶせられるようになるかということにつきまして、文部大臣でも自治庁長官でもけつこうでありますから、その点をひとつお知らせ願いたいと思います。
  213. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。定員定額にいたしましたら首切りでもありはせぬか、あるいは給料の引下げでもありはせぬかというようなことが、よく世間に伝えられておりますが、ただいまの私の考えとしましては、そういうことは出て来ないと思つております。と申しますことは、経過措置といたしまして、この際現員現級で横すべりをする形になるのであります。同時に平衡交付金並びに国庫負担金を両方合せますと、今までと同じように地方財政に行くことになりますから、何ら減員をする必要もないし、また値下げをする必要もないと思います。それからこれは事実でありますから申し上げますけれども、定員定額にいたしますければ、全国的に相当余裕がとつてございますから、それによりまして、もし今で足りなければまだふやすこともできる情勢でございますから、首切りは絶対にございません。
  214. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 人事院総裁が昨日から腹をこわしたのだそうでありますので、給与局長に質問しておいて、これでひとつ機会を見て御答弁を願いたいと思います。人事院では御承知通り、去年給与改訂の勧告をいたしたのでありますが、財政の関係上、それが全部実現できなかつたわけです。その後いろいろと国鉄の運賃値上げ、あるいは食糧の値上げ等があつたので、人事院としては、また給与改訂の勧告をしなければならないという問題があろうと思うのであります。人事院においてはそういうふうな問題についてどう考えておるか。  それから地域給は御承知通り非常に問題がある。ある町にあつた官庁が、いろいろの関係ですぐ隣接の町村に移ると、今度は一割五分ぐらいの減俸になつて来る。前の通りに勤めておつて、そこに住んでおつて、役所がちよつと移つただけでそういう問題が起る。終戦後大都市は非常に物価が高い、住宅がないというときがあつたが、現在におきましては逆にいなかの方が文化が遅れて案外物価が高いという場面が出ております。そこで地域給の問題につきましては、人事院では現在どう考えておるか。地方の公務員についていろいろと研究をし直す問題があるのではないか。大都市偏重になつており、地方について今後は十分に考慮すべき問題があるのではないか、この点についての考えはどうであるか、それをお尋ねしたいと思うのであります。  それから給与準則を今構想中であるそうであるが、これは大体においてどんな点を中心として構想を練つておるか、この点を人事院総裁にお尋ねしたい。次会でもけつこうでありますが、一応御答弁を願いたいと思います。
  215. 滝本忠男

    ○滝本政府委員 人事院総裁がおりませんので、給与局長がかわつてお答え申し上げます。なお人事院総裁が出て参りましたときに、御答弁申し上げることもあろうかと思います。  まず最初に、昨年の年末からずつと運賃とかいろいろなものが上つておるではないかというお話でございます。人事院はベース・アツプの勧告をいたします際には、ただそういつた漠然としたことでなしに、それを統計的にとらえまして、そうして事実、たとえば生計費が五%以上上つておるということ、あるいは民間の給与、これは公務員の給与と比べられるような、同じような職務をとつて考えるのでございます。そういう民間の給与というものがはたして上つておるかどうかということを確認いたしました上で、この勧告案を作成するということになるのであります。このことは人事院におきましては絶えず研究いたしております。現在のところにおきましては、生計費等の上りというものが、最新の資料によりましても、なおかつ昨年の五月に比べて、二・五%ぐらいじやなかろうかというふうに推算いたしております。現在ただちに給与の水準を引上げる勧告をいたすという手順にはなつておりません。ただ研究は絶えずいたしておりますので、必要があります場合にはこれをいたす、こういうことになろうかと思います。  次に地域給の問題に関連いたしまして、官署が移るというようなことがある場合にどういうふうにやるかというお話でございますが、これは現在勤務地手当のおきめを国会で願つておるわけでございますが、それに関連いたしまして、かりに官署が敷地の変更等で移るということがありました際には、最小限度に官署指定という方法で人事院に権限をおまかせいただいております範囲で、こういう問題を解決して行くということを考えております。目下昨年の年末に御審議願いましたこの地域給の問題に関連いたしまして、官署指定の問題をどの程度にやるかということを研究いたしております。そのような現状でございます。それからまた地域給の問題につきましては、これは御指摘のように、現在少しおかしいのではなかろうかという御議論があろうと思います。この問題につきましても、抜本的に将来どういうふうに地域給を持つて行くかというような問題につきまして、われわれは研究を進めております。これはいろいろと根本的な問題を含んでおりますので、あるいは今ただちに行うということはできがたいというふうに思うのであります。さしあたりにおきましては、この地域給が現在〇%から二五%という非常に幅の広いものとなつておりますが、これをとりあえず二〇%程度に縮めて行くということが最初の目標ではなかろうかというので、そういう方向に向つて努力いたしたいと思つております。  なお給与準則は現在われわれ事務当局におきまして検討いたしております。これは御承知のように国家公務員法が要求いたしておりますところの給与体系でございます。現在の給与法は、公務員法ができます以前からあるものでありまして、これはいろいろ変遷を経て現在の給与法になつておりますが、どちらかと申しますと、非常に生活給的な色彩が強いものであります。そこにはほとんど成績というものが反映される余地がない。どういうふうにやつてつても、年限さえ来れば上るというのが一応の建前になつております。ところがまた一方におきまして級別定数というものがきまつておりますために、いたずらにそういうものの障害を受けまして、上の級に進み得ない。従つて昇級がストツプしてしまう。ストツプともいえませんが、非常に緩慢な昇給になるというような現状があるわけであります。現在の給与法はいろいろいい面も持つておりますが、一面生活給的な部面を持つておりながら、なおかつ級別定数というような問題でいろいろ困難があるわけであります。われわれは国家公務員法の要求いたします新しい給与体系——この基礎には職階制というものがあるのでありますが、われわれは日本の現在におきましてどの程度職階制を導入し得るかということにつきまして、いろいろ研究をいたしております。従いまして、あまり無理のない程度におきましてこれを取入れて、そうして公務員法の要求するような給与体系をつくりたいということで、目下この研究を進めておりますが、人事院の事務当局といたしましては、ほとんど成案を得ておる次第でございます。これを近く国会に勧告できる時期が来るのではなかろうかというふうに考えておりますので、詳細はそのときに御説明申し上げたい、このように考えておる次第であります。
  216. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 なお軍人恩給等につきましても質問をいたしたいと思つてつたのであります。特に軍人恩給は非常に不合理な場面を含んでおりまして、いろいろな角度から見まして、これは政府に反省を願わなければならない場面が多いので、質問をいたしたいと思つてつたのでありますが、緒方官房長官もおりませんし、総理もおりませんので、このことにつきましては、いずれまた各法案の出そろつたときにおいての重要法案に対する質疑の際に譲りたいと思います。本日は私の質問はこの程度をもつて終りたいと思います。
  217. 太田正孝

    太田委員長 河野君にちよつと申し上げます。河野君から議事進行についての申出がございます。同時に山崎君から関連事項の質問もございますが、先に河野さんにお許しいたします。河野君。
  218. 河野密

    河野(密)委員 先ほど警察法改正の問題に関する私の質問に対しまして大蔵大臣の答えられたことは、はなはだその意を得ないと思うのであります。現にこの警察法の改正は要綱だけしか提出されておりませんで、はなはだ不満足でありますが、その要綱によりましても、国家地方警察を廃止するということが明確に書いてあるのであります。国家地方警察を廃止するということになりますならば、ただいまわれわれに審議を要求されておる予算案には、国家地方警察の経費として二百二十億が計上いたされておるのであります。さらにおそらく自治体警察の費用も三百億に余るでありましようが、これもそれに応じて増額しなければならないわけでありまして、予算の全面的な組みかえを必要とするものであるのであります。しかるに途中において卒然として草案だけを出して、予算に対しては何らの措置を講じないでわれわれに審議を求めるのは、はなはだその意を得ない。政府はいかなる意図を持つておるのかという質問に対しまして、この予算を施行する間においてはさしつかえがないという観点においてこれを提出しておるのであるという答弁をするかと思えば、あるいは組みかえをして流用するからさしつかえがない、こういうような答弁を大蔵大臣はしておるのでありまして、これはもつてのほかの言い分だと私は思うのであります。かような予算の草案とも称すべきものをわれわれは審議することはできないのであります。同時に組みかえを前提とするような予算を、われわれは審議する理由は毛頭ないと思うのであります。この点重ねて大蔵大臣の明確なる答弁を求めておきたいと思います。
  219. 太田正孝

    太田委員長 山崎君の質問もやはりこれに関連したことでございますか。
  220. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 同様な質問でございます。
  221. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これは議事進行ではなくて関連質問に属しますので、関連質問でありますれば、前に関連質問の要求のある山崎君にこれをお許し願いたいと思います。     〔発言する者多し〕
  222. 太田正孝

    太田委員長 静かに願います。その点は、議事進行を先にやりましたが、同じ問題であるならば、その関連としてやはりあなたの次に言うこともさしつかえないと存じます。山崎君。
  223. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 私もただいま河野君から御質問がございましたように、警察法改正と二十八年度予算案はきわめて重大なる関連を持つ案件だと思います。従いまして本二十八年度予算を審議するにあたりましては、警察法改正の結果がどういう影響を及ぼすかということを十分承知をいたしておきたいのであります。現在警察費の負担は、国警は国費、自治警は、東京都におきましては都、その他の市町村においては市町村がこれを負担することに相なつております。しかるに今回の改正案によれば、国費と府県費の負担にかえられておるのであります。はたしてしかりといたしますならば、二十八年度政府予算に計上せられました警察費二百二十億をもつてしましては、本改正案の実施が困難なることは明瞭であります。政府は、警察法改正に伴いまする予算措置をいかにせられるのでありますか。先ほど大蔵大臣の御答弁によりますと、追加補正は必要としないという言明でございましたが、少くとも私は予算内容の補正は必然的に起つて来るということを信ずるのであります。このことはきわめて重要でございますから、この際政府の明確なる御所見を伺つておきたいと思います。もとより本改正案は、先ほど大蔵大臣もお述べのように、この二十八年度予算の実施期間中に実施をせられることは私は当然だろうと思います。ゆえに本国会に改正案が提出されるものと考えるのであります。  同時に、私はついでに地方費の関係につきましても、本多国務大臣に伺つておきたいと存じます。現在市町村警察費に対しましては、約六十億の平衡交付金が支出に相なつておると思います。今回の改正案によりますれば、地方費の負担は道府県ということに相なつておるのでありますが、この改正案実施のあかつき府県の財源をいずれに求められるか、この点につきましてもあわせて伺つておきたいと存じます。
  224. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 新制度の施行期日は政令で定められる予定でございまして、まだ確定はいたしておりませんが、ことにその施行にあたりましては、各都道府県警察の構成、幹部の職員の選任、五大市警察設置についての市会の議決、新制度の実施によつて生ずる給与費その他の不均衡の是正措置、市町村警察の都道府県移管に伴う地方財政平衡交付金の変更等につきまして、相当の準備を要しますので、これらすべての準備を完了してその具体的措置の確定をまつことなく、予算的措置を講ずることは困難なのでございます。従つて現在提出している予算について今すぐに組みかえを行う考えはございません。なお年度内に施行されました場合におきましても、現行予算科目間の形式的な組みかえにとどまつて、予算の総額には異同はない見込みでございます。
  225. 本多市郎

    ○本多国務大臣 御指名でございましたが、今の大蔵大臣の御答弁の中に含まれております通り、予算的措置を講じた後に実施するという趣旨でございます。
  226. 河野密

    河野(密)委員 ただいま大蔵大臣の御説明によりますと、総額はかわらないから、その予算の範囲内において流用をするという意味の御趣旨であつたと思うのでありますが、いやしくも国家地方警察費として計上されたるものを、それを自治体の平衡交付金にまわすとかいうことはあり得ないことだと思うのであります。そういうことが予算として許されるものであるとするならば、われわれは本日ここで予算の審議をする必要は毛頭ないと思います。もう一ぺん大蔵大臣の明確なる御返答を願いたい。財政法のいかなる条項によつてあなたはそういうことを言われるのですか。財政法を示してください。
  227. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私はこの科目間の形式的な組みかえにとどまりまして、予算の総額に異同がなければそれでよろしいというふうに考えております。
  228. 河野密

    河野(密)委員 国家地方警察費として計上されているものを地方自治体の平衡交付金あるいはその他の形で表わすものが、どうして科目間の移動によつてまかない得るという観点に立つのであるか、その根拠を示していただきたいと思います。
  229. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。国家地方警察官署という項になつておりますので、これを交付金には使えないではないかという御趣旨であろうかと思うのでありますが、形式的にはその通りでございます。従いまして現在の国家地方警察官署の経費の中にも特別区の警察に対する交付金が含まれておりますが、もしこれが全面的な交付金ということになる場合におきましては、おつしやるようなこともごもつともであろうと思います。しかし先ほど大蔵大臣が申し上げられましたように、これには相当の準備が要するのでありましてその具体的な措置がきまつた後でないと予算的な措置を講ずることは困難である。従つてそれができました後におきまして多少の調整を要するであろう、こういうことを申し上げておきます。
  230. 河野密

    河野(密)委員 ますますもつて承服できないのであります。予算の総額がきまつておるから、総額の範囲内で有無相通ずるならばさしつかえないという趣旨の御答弁だと思うのでありますが、そういうことであるならば、財政法によつて予算を組むについて、部にわけるとか項にわけるとかいうことを決定する必要は毛頭ないと私は思うのであります。そういうことを無視して、予算の総額が決定されているから、その範囲内においてその予算を流用することはさしつかえないという観点に立つならば、われわれは断じて承服することができない。本日限りこの予算の審議をわれわれはしない。
  231. 河野一之

    河野(一)政府委員 申し上げました意味は、その具体的な措置がきまつた後においては、形式的な予算の補正をいたすつもりであるという意味でございます。しかし、その場合におきましても予算の総額はかわりませんので、その国家警察官署の予算総額の範囲内において交付金あるいはその他の措置がとられるであろう、それは具体的な措置がきまつてからそうするつもりである、こういうことを申し上げておるわけであります。
  232. 河野密

    河野(密)委員 主計局長の言われることは、そのあとで使途その他が明細になつた場合において組みかえを出すけれども、総額に変化がないから今この予算を審議しておいてもさしつかえないという趣旨だと思うのであります。しかしながら予算の総額が問題となりますと同時に、その予算をいかなる部門にいかに使うかということ、そこに審議の重点があると私は思うのであります。二百二十億の国家地方警察に使つたものを、それを自治体に対する交付金に与えても総額にかわりがないからさしつかえないのだ、こういう趣旨の補正あるいは組みかえという趣旨である、だからさしつかえないのだと言わんばかりの御答弁は、われわれには断じて納得ができない。警察法の改正案を提出するならば、少くともその裏づけとなる予算の修正案も同時に提出してここで審議を求むべきものであるとわれわれは考えるのであります。この点について、主計局長でなく大蔵大臣自身から答弁を求めます。
  233. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 初めに申し上げましたことと同じことをまた繰返すわけですが、期日がまだきまつておらないで、ことにいろいろの準備に日がかかりますので、その準備が完了して具体的の措置の確定をまたずに予算的の措置を講ずることは困難でございます。それで現在提出しておる予算について今すぐに動かすことはいたしませんで、後日年度内に施行される場合におきましては、科目間の組みかえの変更をいたすつもりであります。
  234. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま大蔵大臣と主計局長答弁を聞きますと、非常に重大なる食言を政府はやつておる。それは大蔵大臣はこの予算案は不完全な予算案であるから、補正をやる意思があるかどうかとのわが党の質問に対してあなたは補正しません、しない所存でありますと、はつきりここで答えておる。私はそこで重ねて、やらないのかと言つたら、やりませんとにつこり笑つてそこへすわつた。ただいまから一週間前の話である。ところが主計局長の話によれば、臨時議会で補正予算を組みますというようなことをここで言つておる。これは重大なる食言です。こういうような何百億という大きな費目にわたるものを、そのような不明確な、しかもわれわれに対する間違つた答弁を両方がするようでは、こういう予算を信用するわけには行かぬ。少くともわれわれは、ここに書いてある予算は、平衡交付金に出すものだと思つて審議しておる。まさか警察に行くものだとは思つておらぬ、あるいはまさかこれは教員の給与になるものとは思つておらぬ。平衡交付金という法律に基いて、それに使うものとして一生懸命審議しておる。それがいつの間にかわからぬところに——警察にまわつたり、教員の費用にまわるというのでは、予算の意味をなさぬ、しからば一体いつからその切りかえをやるのか。そういうところからはつきりしなければ、これは予算とは言えない。予算というものは、何月何日から何月何日までこの金を使うのだ、その使い先はどことどことどこである、であるから御承認を求めたい、これが予算である。適当なときに、適当なところに使うようにいたしますから、そのときは御了承ください。これは予算ではない。今までの大蔵大臣や主計局長答弁では、われわれは予算と認めない。認めないがゆえに、今までの答弁をやるなら予算案の審議をやる必要はない。大蔵大臣の答弁を求めます。
  235. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ただいまの中曽根君の御質問に関連をいたしますから、一緒に御答弁願います。大蔵大臣の答弁せられたところはこういうことであるかどうか、こういう御質問を申し上げます。それはこの警察法をつくつても、実施の時期はまだきまらないのであるから、きまつた際においてはあらためて予算を補正する。しかしながら現在においては現行警察のまま実施をして行くんだ、こういうのであるかどうか、この点をあわせて御質問申し上げます。
  236. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 この予算を御審議くださいまして、そうして警察法が通過いたしましてその上でいろいろの準備が済みました場合に組みかえをいたす、それで必要がございますれば、形式上の補正をいたす所存であります。
  237. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 補正はやりませんとはつきりここで言つた。それを補正をやりますということは、それ自体をわれわれは追究しなくちやならぬのです。     〔発言する者多し〕
  238. 太田正孝

    太田委員長 ちよつとお静かに願います。私からとりまとめて政府に聞きただします。本予算案は、現行制度のもとにおける予算案と思いますが、そうでございますか。
  239. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 さようでございます。
  240. 太田正孝

    太田委員長 補正をしないということにつきましての問題は、かりにこれを形式的、実質的とわけるとしたら、今の金の範囲内でやると大蔵大臣の言われたのは、実質的補正をしないというような意味で申されたのでございますか。
  241. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その通りでございます。     〔「そういう誘導尋問は意味がない」と呼ぶ者あり〕
  242. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ここで拝見しました義務教育学校職員法案要綱、これを読んでみると、「当分の間教職員の給与は、都道府県が負担する」と書いてあるが、これは墨で消してあつて、「当分の間」と書いてある。一体当分の間というのはいつになるのか。予算というのは四月一日から三月三十一日まで使うものと、ちやんと期間を区切つてこそ予算の意味がある。こういう当分の間というような白紙委任をやるのは予算ではない。あるいは今の警察制度の問題についても同じであります。これについては当分の間とも何とも——警察法自体が出て来ていないから何ともわかりませんが、白紙委任状を政府に出せということであるこれは予算案の原案であつて予算案じやない。そういうような不明確なものに対して、われわれはまじめに審議に応ずる勇気はない。国民の負託に沿うゆえんでもない。第一補正予算を出さないと、につこり笑つてそこへすわつた大蔵大臣自体食言しておる。われわれはこれに応ずるわけには行かぬ。今の委員長の誘導尋問みたいな助太刀をするような質問をしたつて、もちろん問題は解消していない。こういう問題に関するもつと誠意ある所信や、あるいは政府の方策を示しなさい。そういうものを出さないうちは、われわれは審議に応ずるわけには行かぬ。
  243. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 今大蔵大臣が、組みかえを予想して、現行法律に従つてというようなお話がありましたけれども、少くともこれは閣議決定されて、近く法律案として出るのであります。従来も、予算審議の過程において法律案が伴わなくても予算の審議をした例がございます。税制法の他いろいろある。しかしながらそれは予算案の大綱の方向従つて審議して来たのであつて、この警察法その他を見ますと、予算案とは別な法律案が出て来る。従つて予算の組みかえが必要とされて来ておる。予算案と別な法律案が出るということは、これは政府提出の予算案に精神分裂の症状を来しておるのである。(笑声)同時にわれわれはこの予算委員会において政策の研究会をやつておるのではありません。予算案を中心として政策の審議をなしておる。従つて政府が出すところの問題——この警察制度の改正要綱とは一体何だ。われわれは要綱を審議しようとするのじやない、法律案を審議しようとするのである。要綱なら別の機会に承りましよう。それでわれわれは、先ほど河野委員並びに中曽根委員から提案がありましたが、組みかえを予想せられる予算案をこの貴重な時間において審議するわけには参りません。従つて法律案をしつかり政府がおこしらえになり、その法律案に従つて、今提出されておる予算を組みかえて、あらためて予算の審議を求められることが私は当然じやないかと思う。先ほど河野君や大蔵大臣の答弁の中に、総額の予算がきまれば、あとは大綱にかわりはないのだから、組みかえますと言うのであるが、それは財政法において厳禁されておるところなのであります。新しき憲法においては、行政府の専行を防ぐために、財政法によつて流用を禁止されておる。憲法違反の行為ではないか。従つて私どもは以上の見解に立つて政府はこの予算案を組みかえて法律案とともに出されるまで、審議はできないということを、ここに提案する次第であります。(拍手)     〔発言する者多し〕
  244. 太田正孝

    太田委員長 暫時休憩します。     午後四時五十九分休憩      ————◇—————     午後五時四十一分開議
  245. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日はこの程度にいたし、次会は明十八日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会