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1953-02-16 第15回国会 衆議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十六日(月曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    北 れい吉君       小坂善太郎君    重政 誠之君       島村 一郎君    砂田 重政君       塚原 俊郎君    永田 亮一君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    川崎 秀二君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       古井 喜實君    松浦周太郎君       井上 良二君    石井 繁丸君       西尾 末廣君    西村 榮一君       平野 力三君    稻村 順三君       上林與市郎君    和田 博雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         北海道開発庁次         長       谷口 明三君         保安政務次官  岡田 五郎君         総理府事務官         (経済審議庁総         務部長)    西原 直廉君         総理府事務官         (経済審議庁計         画部長)    佐々木義武君         経済審議庁審議         官      今井田研二郎君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (管財局長)  阪田 泰二君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         建設事務官         (計画局長)  渋江 操一君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十四日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として井  上良二君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員櫻内義雄辞任につき、その補欠として川  崎秀二君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  分科会設置の件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。昭和二十八年度一般会計予算外二案の審議のために分科会を設置いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつてよう決しました。  なお分科会の区分、主査の選定及び分科員の配置につきましては、先例によつて私に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつて決しました。  昭和二十八年度一般会計予算ほか二案を一括議題として質問を継続いたします。松浦周太郎君。
  5. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 農林大臣に質疑をいたしたいと思います。輸入食糧の問題についてでありますが、輸入品中最も大きな数量を持つておりますものは外米輸入でありますから、その方法について農林大臣の所見を伺いたいと思います。御承知の通り食糧輸入額は終戦後年々多額に上つており、米、麦、大豆の三品目は、二十五年度には二億五千五百万ドル、二十六年度には三億二千万ドルをそれぞれ輸入いたしておりますが、二十八年度の予算で見ましても、四億二千七百八十万ドルの輸入を見込んでおるのであります。そうしてこれらはその年のわが輸入総額の五分の一に達しております。ことにこのうちの外米輸入量はとみに増加いたしましたとともに、その金額も激増いたしておりますことは、単価の高騰によるものであります。すなわち二十五年度には輸入数量が六十七万トンであり、輸入金額が八千五百万ドルであつたものが、二十六年度には輸入数量は七十九万八千トンにふえておりますが、金額が一億二千万ドルに激増しておるのであります。最近の石当り単価は一万二、三千円という報告があるのであります。しかもこの外米がすこぶるまずい。現に東京都の食糧協同企業組合はあまりに都民の嗜好に合わないというために、また非常な有毒米があるというようなことのために、えさにまわしておる事実を報告されておるのであります。年に四、五百億に上る貴重な外貨をもつて政府輸入買入れした外米が、かくのごとき使途に供せられるにおいては、これほどむだなことはありません。政府はいかなる買付方法をやつておるか、また相手国販売方法はどうかということをお尋ねいたしたいのであります。最近の新聞の報ずるところによりますと、有毒米配給停止ということが大きく取扱われております。それは一万八千トンに及でんおり、しかもこれを石数に換算しますと、十二万石、安く計算いたしまして、これが石当り一万二千円にしましても、十四億四千万円になります。主婦の会合では恐慌を来しておる。農林大臣は一族郎党を集めて、やみ米朝飯会を毎日二、三十人でやつておると聞いておるが、農林大臣やみ米を集められることについては御不自由はないと思うが、配給米をくめんしてまかなう庶民階級の婦人の苦労はお考えにならないか。国民保健衛生上には支障はないか。厚生大臣はこの十二万石の米を国民保健上の理由から停止しておる。しかし十七日には試食会をやつて、そうして味覚に支障がなければこれを配給するというよう政治工作行つておられますが、国民衛生試験所の側では有毒米折紙をつけておる。またこういうふうに報道せられておるものを、政府はさらにいろいろな工作をもつて配給せんとしておられるのであります。特に読売にこういう大きい記事が出ている。その中にあるものは、食糧庁では、ビルマ米の中に黄変米のあることを事前に承知しながら輸入しておるものと見られ、この点が問題であるといつておる。さらに衛生試験所の方では、黄変米は二種あり、バクテリヤの作用で色のつく誤認黄変米有毒なかびをつけておるところの肝黄変米とがある。前者は無害だが、今度のは有害で、食えば肝臓を冒され、場合によつては死亡すると折紙をつけております。こういうものをどういう方法輸入して来られたか。またこれをさらに配給するという考えを持つておるか、これは農林大臣並びに厚生大臣からお伺いいたしたいのであります。
  6. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 お尋ね外米輸入量はおつしやる通り非常に多量に上つております。またこの買付方法につきましてはいろいろと苦心いたしおるのでありますが、第一、商社等が妙な競争をすることを避けるために、内地の買付人に対しましてはこれを二回にわたりまして整理をいたし、そうして無用な競争のないようにいたしておるようなわけであります。また外務省外国公館の方にお願いいたしまして、そうして農林省駐在員を置いて、いろいろその間のことについての検討をいたしておりますが、まだ現地の真の米の買付地帯農林省としての駐在員を置くまでには行つておりません。またこの価格をできるだけ安く、良質の米を買うことが一番望ましいのでありますが、何せ米については世界的に足りないので、まだ手落ちがあることはよく承知いたしておりますが、これに対してわれわれはできる限りもつと安く買うようにいたしたいと思つておるのであります。  それから有毒米のことでありますが、これは最初に発見されたのは昭和二十六年の十二月中旬であつたのでありますが、これも配給することなくアルコールの方に転用しておるのであります。ごく最近のものにつきましては、これはまだ配給いたしておりませんので、市中には出ていなかつたことは不幸中の幸いであると思つておりますが、こういうような米が実際買われたということは非常に残念でございます。このことについては今後とも十分検討をいたし、そうしてかようなことのないようにすると同時に、外務省を通じて、さような米を売らないように、現在措置を講じておるようなわけでございます。
  7. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいお尋ね病変米につきましては昨年の暮れに輸入されてそうして東京都内等配給されんといたしましたものにつきましては、その後検査をいたした結果無毒である。ただいま問題になつたのは、最近ビルマから輸入されたものだろうと思いますが、これは先般検査をいたしまして有毒なることを認めましたので、ただちに連絡をとつて、ただい配給を停止いたして適当の措置をとつてつております。なおこの問題につきましては重大でありますので、できますれば今後食品衛生法を改正いたしまして、これら有毒のものにつきましては、輸入禁止をいたしますとか、あるいはかりに輸入された後において発見された際においては、これらを配給いたさないというような、いわゆる食糧に供さないよう措置をとつて行きたいと思つております。今せつかくこれらの点を検討中であります。
  8. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 ただいま両大臣の御答弁は、この米を配給する考えを持つておるのか、それとも人体に影響があるということで、ただいお話のありましたアルコールあるいは飼料またはみそその他のものに、転用する考えを持つておられるのか。これだけ新聞に大きく発表したものをこのまま配給をすることになるならば、これはかりに毒が少くても国民は非常に不安を持つておる。またこれらの配給を受けて烏のえさにする。自家用の鶏なんかにこれを食わして、自分だけは別にやみ米を買うことのできない経済状態に置かれている人のことを考えなければならぬと思いますが、一体今の話では今後研究して云々と言つておられるが、これだけ大きく発表されてしまつたものを、このまま配給されることは不安がこの上増すことになる。これについてはどういうお考えを持つておるのでありますか。
  9. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 有毒のものを配給ようとは考えておりません。これを再搗精するなり何とかいたしまして、他の用途に供するようにいたしたいと思つておりますが、具体的なことはまだ承知いたしておりません。
  10. 山縣勝見

    山縣国務大臣 お答えを申し上げます。従来とも病変米については大体一パーセントあります場合とか、あるいは有毒の際には、厚生者といたしましては、食糧庁連絡をとつて配給いたさぬように申入れしております。ただい農林大臣お話ように、こういうものにつきましては、有毒でありますから食糧に供さないよう食糧庁連絡をとりたいと思います。
  11. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 そうであるならば、食糧配給する場合の価格に対して、その他のアルコールあるいは飼料みそにまわすような場合の価格は、私の考え方では大体買値の半額になるだろうと思う。これについてはどのくらいの価格でやるお考えを持つておられますか。
  12. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 実際払い下げる価格、かりにみそ、あるいはその他飼料に行く場合の具体的の値段はまだ承知いたしておりません。
  13. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それは非常に不親切な答弁であります。こういう問題が起つているのに、当局がそのことができないなんということで、一体どういう食糧政策をやつて行かれるのか。食糧にできなければ他の方に転用すると言われるが、それならば食糧と同じよう値段では、その方の原料には価格がふさわしくない、買つてくれる値段ならばどうしても半額以下になる。半額以下になると七億円の国は損失になる。この七億円は国民のしぼり出したる税金の中から払わなければならぬことを覚悟しなければならない。これは一体だれの責任になるか。たぬきは煙を吹かしているけれども、世の中の深刻な場面はそんなものではない。もつと真剣にこの問題に対する親切な答弁をしてもらいたい。
  14. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 決して煙に巻いているのでありませんので、私はまだどういうふうにこれを処分するか、事務の方でどう積み上げているか承知していないので、後刻政府委員から答弁するようにいたしたいと思います。
  15. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それではこの問題は政府委員の親切な答弁で、今後どういうふうにするかということをつまびらかにされたい。  私はこの機会に申し上げますが、政府買付している方法が非常に悪いと思う。ビルマタイにおいて生産される時期は、大体十二月から一月なんです。十二月から五月までの間に買付されるならば、雨期にかからない。それが雨期にかかつてからの五月から九月に買い入れるものでありますから、湿度の多いときに、貯蔵の不完備なところに貯蔵されているものでありますから、自然かびがはえることになります。私はこの買付方法について少しく申し述べてみたいと思います。  そこでビルマなりタイなり現地に派遣されているところの買付役人は、大学を出て数年という人が、二等書記官として低い地位で、大使館のすみで働いているにすぎない。相手国は米の輸出というものは、専売やその他の方法で、国家の財政の命であるので、政府総がかりで当つて来る。これに対し百戦練磨の華僑がわつとこれを取巻く、手も足も出ないという状態である。つまり向うの言うなりほうだい、翻弄されほうだいというありさまであります。戦前これらの地域において外米買付するには、三菱、三井その他の商社が、数十人のエキスパートを常時配しておりまして、広汎にして周到の調査をやり、虚々実々の商略を用いて買いつけておつた。だから外米は味は悪いけれども、極度に安いということが特徴であつたのであります。それがたつた一、二名の子供のよう役人が、翻弄されほうだいで、まずくて高い外米を、ただ数量さえ集めればよいというよう考え方で、せつせと買いつけているものでありますから、このよう状態になるのであります。これを改善するためには、まず現地買付の陣容を充実することが急務であると私は思う。そのためには大量の専門家熟練者の輩を常置することが必要であると思います。相手国は、米は政府専売統制になつておりますが、商売には表裏があります。それに乗ぜられないように、良品廉価の米を集荷することが国民にこたえるゆえんではありますまいか。農林大臣は米の買付に対する機構についてお考えはないのでありますか。
  16. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 米の買付について、農林省から堪能な人をやつていないのではないかというお話でありますが、米の買付については熟練している者が行つてはおりますが、数が少いのは非常に遺憾でございます。ただこの買付場所は、公館以外に実際は駐在員を置く方が一番よろしいのでありますが、今の法律の建前でそれができませんので、これは改良いたしまして、私たちが真に向うに、農林省を通して駐在員が置けるようにすることが望ましいのであります。かよう方法に向つて私は検討いたしたいと思つております。
  17. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 法律を改廃することは、最近の朝令暮改から見れば何でもない。もしそういうことを考えられておつたなら、なぜ早くおやりにならないのか。今後この買付に対して、今のよう有毒米買つて来るような不体裁でなく、十分なる機構を備えて国民におこたえにならんことを要望いたします。
  18. 太田正孝

    太田委員長 松浦さん、通産大臣がおられます。
  19. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 さらに農林大臣にもう少し聞きましてからいたします。タイビルマ等の米の生産技術加工技術というものは、きわめて低いものであります。反当収量は一石以下である。また脱穀、調製の面においてもロスが非常に多い。でありますけれども、世界の食糧の不足の関係から、需要がまた逆に多い。だから値はどんどん上つて来る。そこで私の疑問は、せつかくためた外貨を持ちぐされにしないで、そのうちの何千万ドルかでもよろしい。これで政府ドル借款を与えて、耕地の改良促進、あるいはすぐれたる日本耕種肥培農業技術指導をする。さらにまた精米施設合理化をやる資金に充てるというようにして、まず向うの灌漑、土地改良というようなことに対して日本が協力するならば、それに対するところの設備や機械の輸出日本からすることができる。また現地収量もぐんと高まつて来る。そうして増加した数量の全部なり一定部分なりをわが国輸入するという、両国政府間の協定を結ぶ。すなわち先方に技術資金を与えて、善隣友好外交をすることによつて良質米廉価に買いつける方法があると思う。こうして数量価格を確保することは有力な方法だと私は思います。さらに現地では収穫期精米所で米の買入れ資金が全体的に枯渇する様相を呈するのであります。でありますからこれらに流動資金を貸しつける、いわゆる商売でいうアドバンスを貸してやる、そうしてわが国収量を確保するという方法をとられることは、非常に有効な手段だと私は思つておるのでありますが、これについては農林大臣並びに大蔵大臣はどうお考えになりますか。私はこれは米の買付一つ商売として政府がかかるのでなければ、良品廉価のものを買い入れることはできないと思う。それは向う華僑の問題、向う政府考え方というものがありますから、外交手段とともに商売手段考えなければならぬと思うが、商売にたんのうなるところの大蔵大臣並びに農林大臣はどう考えますか。
  20. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 松浦さんのおつしやる通りなのであります。タイビルマ地方からたびたび向うの方が参つて、われわれに話してくれることは、単に米を買うというのでなく、もう少し技術とそれから援助がほしいということをわれわれは聞かされおるのであります。しかし今のところはまだ具体的な対策は立てておりませんが、インドあるいはその他の国から、ただいままで数々の技術者視察団参つております。また特にインドあたり日本技術を入れて現に農業をやつておるようであります。そういうようにいたしまして、私たちとしては精米機なりあるいはまた技術なりを向うにお送りして、そうして向うから廉価な米を買うように、長期的な契約ができることが望ましいのであります。われわれとしてはそのように今後各省と相談をいたしまして努力したいと思つております。
  21. 向井忠晴

    向井国務大臣 今までに仏印日本の人が米を栽培することを試みたことがある。これは四十年くらい前でした。これは時期が早過ぎたのか、あるいは行つた人が不適任でしたか、うまく行きませんでした。その次にビルマには日本商社でもつて米精米所をつくつた例がありますが、これの結果については、私はよく聞きませんでしたが、ひどく成功はしなかつたのです。そこで今の問題のことはお考えはいいのです。ただお互いの事情がよくわからないので、どういう人と組んでそういう仕事をしたらいいか、またできた米を——これは外国のもので、日本だけに来るものでないのですから、日本へとつて来るについてのいろいろの打合せなどもありますし、それからもう一つは、日本農地改良とか、食糧増産とかいうために出る金さえもろくすつぽないのに、外国行つてそれをやるのはどうかというような意見もあるでしよう。但し米をつくるについては、東南アジアの方が日本よりも作柄上都合のいい場所も相当ありますから、金の能率の点から行けば、向うでそういう仕事をするのが得策である場所もある。それから国情とかあるいは外交のただいままでの経過あるいは将来の見通し、そういう点を考えまして、急速には行かないと思いますけれども、研究してやる方針で行く方がよい、問題であると思つております。
  22. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 農林大臣大蔵大臣もやる方針がよいというお考えなんですが、これを外交上から、今大蔵大臣のおつしやつたように、ビルマでもタイでも日本だけに売るのではない。インドを初めその他七、八箇国に入札をしている。こういうところに、ただいま申し上げましたような、日本善隣友好方法をもつてやる場合に、ある数量価格を確保する外交上の交渉はできるかどうか。それからただい大蔵大臣の御心配になりましたところの、国内の食糧増産の経費をもまかなうことのできない現状において、外国食糧増産に寄与することは困難であるということは、ごもつともであります。私はかく考えます。現在の状況においてはどうしても自給食糧ということを忘れてはならない。先日重政さんや森さんのおつしやつたように、あるいは福田君の言つたように、国際貸借の問題も考えなければならない。けれども、きようの米はなくてはならない。きようの米をなるたけ少くて済むように安く買つて、その価格の差だけはせめて日本の農政のためにお使いになつたならばどうか。そういう行き方が親切であり、総合的な考えであると私は思う。私の考えはあくまでも自給食糧政策でなければならぬけれども、きようがまかなえぬからの話であります。それも一年や二年で済む見通しではない。でありますから、一方において良質の安い外米を少数買い入れて、しかも従来よりも安く買えるところの差額だけはせめて農村にやつたらどうか。私はこういう堅実な考えを持つておるのでありますが、これについて外務大臣並びに大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは話しようでありますし、やりようでありますから、原則論だけ言つても実は意味がないと思いますが、大いに努力してやつた場合できないことはないと考えております。またほかの国も価格を乱されることについてはもちろん好んでおりませんが、いろいろ研究してやつてみる方法はできると思います。それが別に国交上のさしさわりになるとはとうてい考えられません。むしろよい案ではないかと思います。
  24. 向井忠晴

    向井国務大臣 相当に大きな数量の米を買う国に対しまして、今のよう方針で今後の交渉なりあるいは研究をするということは、しごく有意義だろうと考えます。
  25. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 善処を要望します。  第三には、現在の食糧管理特別会計というものは、全特別会計中最大のものであります。二十七年度の歳入歳出ともに五千八百億円に上る厖大なものであります。この年の一般会計歳入歳出が八千五百億円であるのに比べましても、実に七割の額を占めております。これだけの厖大な事業を行政事務にまかせつきりにすること自体に疑義があると私は思う。今日はこれを問題にしないまでも、せめてこの米を中心にする輸入食糧だけについても、官民で組織するところの輸入食糧審議会というよう機関をつくり、ここで大方針をきめて、買付技術の蘊奥をきわめた立案を行う。官吏はこれに従つて事務を行うというふうにされてはどうか。こう言うと当局は、現に食糧輸入協議会というものがございますとおつしやるでありましようけれども、しかしあれは食糧輸入業者が役人の訓示を聞く会でありまして、弱体の御用機関である。食糧についてこの委員会にもかつて大臣をされた人、その方の専門家あるいはこれに熟練された人が、相当たくさんおられます。この衆参両院議員、学識経験者、熟練技能者を網羅した権威ある機関をおつくりになつたらどうか。官吏まかせの外米輸入はとうてい無理である。その現実の証拠がこの十二万石の有毒米である。また有毒米折紙をつけられなくても、先ほど御答弁になつたように、二十六年以来相当な数量が入つておる。このままで行くなら不経済であつて国民の負担が重くなるばかりである。でありますから、こういうよう機関をおつくりになる考えはないかということをお尋ねいたしたいと思います。
  26. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御説の通り、食管特別会計厖大な会計であり、しかもまた輸入量におきましても、外貨を消費する点においても、非常に大きな問題でありますから、私はそういう方向で審議会等を設置して、衆知を集めてやる方がよろしいと考えております。
  27. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 ぜひ審議会をおつくりになることを要望いたします。  また精米も、外米買つて来るだけではなしに、もみに入つたまま、あるいは玄米をお買いになる、そうして芝浦なり揚地に合理的な精米所をつくつて、従来商社がやつておりましたように、政府が適所に配給する。いわゆる有毒米はその他の方に使う。そしてもみをかぶつておりましたならば、もみによつて保護されておりますから、黄毒米とかそういう変質はない。そういう方法をおとりになることは最も必要なことだと思うが、米をもみで買つて来るということになれば、向うの脱穀調製並びに精米業者が反対するでありましよう。これはデリケートな問題だと思う。しかしこれに対して農林大臣及び外務大臣はどうお考えになりますか、私はそれは合理的だと思うが、どうですか。
  28. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御説のようなことを私も実は考えるのでありまして、カナダ米の輸入について、これはたしかもみ米で入れるよう交渉をいたしておつたわけでありますが、まだ入つておらないのではないかと思います。また南方の方の、東南アジア方面の集荷業者が、ほとんど精米業者である関係上、それからまた各国とのつながり等から、搗米でなければ困難であるようでありますが、私たちもそれについては検討をいたしております。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の聞いておりますところによりますと、これは主義としてはもちろんよいわけでありますが、実行はなかなかまだすぐには行かないように思います。この問題は前から考えられておりますので、今後もできるところがどの程度あるか、さらにこれは主義としては初めから政府としてもやりたいものでありますから研究は続けます。
  30. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 これもひとつまとまるように御交渉を願いたいと思います。  次には乳製品の輸入についてお尋ねいたしたい。バター、チーズの輸入です。バターは昭和二十四年度は十一万八千ポンド、二十五年度は九万三千ポンド、二十六年度は五十万一千ポンド、二十七年度は十月までで七十五万七千ポンド、十一月から十二月、一月に入つて九十万ポンド輸入いたしております。チーズは二十四年度は一万六千ポンド、二十五年度は三万五千ポンド、二十六年度は五十一万ポンド、二十七年度は一月から十月までが九十三万ポンド、両方の価額は約三億五千万円、こういうものを輸入しておられる。ところが今日まで農林省は畜産奨励についてどれだけの苦労をされておつたか、あなたばかりじやありません。日本の歴代の農業政策というものは、米作を奨励して来たけれども、一面においては有畜農業というものに対しても一貫せる政策があるはずである。有畜農業を度外視しては四本の農業は立ち行かない。これを壊滅に導くようなバターその他の乳製品を、輸出国が輸出奨励補助金をもらつて安く輸出して来るものに飛びついて、輸入するということによつて全国の酪農業者は驚愕しておる。そうして失望のどん底に陥つてしまつておる。廣川農林大臣は、自分自体の構想は有畜農業にあるはずだ。これをたびたび声明しておられるが、自分のつくつたものを自分に食わすという考え方に矛盾がある。この点について廣川農林大臣輸入に対する所信を伺いたい。乳製品を輸入するよりも、廉価な家畜伺料を入れられて、食糧を貴化する。これが国民食糧の質の向上において一石二鳥ではないか。今後ともこういうような趣旨によつて、バター及びチーズの輸入をされる考えであるか。有畜農業を放棄する考えであるか。この信念を伺いたい。
  31. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 われわれは実はあなたとまつた考えは同じであります。酪農を奨励いたしまして、農家経済を豊かにして行くという方向と食生活の改善という方面から行きましても、当然そこに行かなければならぬ。ただこの前外国製品が非常に安いので、これを外人の要望があるからというようなことで、多少のものを入れてもよいのではないかということが問題になつたのでありますが、われわれとしてはあくまで内地製品でこれを内地で消費をいたし、そして食糧の改善をし、酪農を振興させるという方向にはかわりありません。われわれといたしましては、大量のものを入れないようにということはあくまでも申し入れておるわけであります。
  32. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 今年度もお入れになる考えであるか。
  33. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 乳製品も酪農の奨励等によつてだんだん数が増しておりますので、われわれとしてはでき得る限り輸入を防遏するようにいたしたいと思います。
  34. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 防遏する程度ですか。これを禁止する考えはないか。
  35. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これはまだ禁止するまでには通産省とは相談いたしておりませんが、内地の保有量等を見てよく態度をきめたいと思います。
  36. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 国会の答弁のやりとりではありませんよ。これは真剣に考えてもらいたい。こういうものをお入れになるということ、これは安いから、国際価格日本のコストをさや寄せるという考えもあるでありましようが、相手国がこつちへ持つて来ておるのには、輸出奨励金によつてコストの半額くらいで入れて来ておる。それをこつちは、補助政策によつてようやく芽を出して来たところの畜産農業であるのに、これにさや寄せるなんというのは実にテーブル理論ですよ。信念はどうなんだ。あなたが入れないと言うのならば、閣内のことだから話がつくじやないか。
  37. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 国産奨励と酪農奨励の上からいつて、私たちは酪農団体その他からたびたび陳情も受け、また相談をいたしておりますので、原則としてわれわれは入れないで、内地でまかないたいという考えにはかわりはないのであります。
  38. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 しからば通産大臣はどうお考えになりますか。
  39. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 具体的に問題が出たときに考えます。
  40. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 具体的な問題は先ほどから申し上げておるのですが、昨年度は九十万ポンド入れておる。バターにおいても同額のものを入れております。これを今年も引続きお入れになる考えかどうかということを聞いている。
  41. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 外貨割当の問題がありまして、すべて各省から出そろつたものについて案を立てますから、まだそれらの資料がそろつておりませんから何とも御返事がいたしかねます。
  42. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 そのことは入れる考えだからそういうことになるけれども、入れないお考えなら割当の問題はないじやありませんか。あなたの考えは乳製品を引続き輸入する考えかどうかということを聞いている。
  43. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 相談いたした上できめると私は申し上げているので、私は入れるも入れないも……。
  44. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それでは入れないように努力を願いたい。
  45. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 承知いたしました。
  46. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それでは通産大臣お尋ねいたします。貿易のことについて少しお聞きしたいのですが、大体今まで相当やりとりされておりまして、いろいろ部分的に聞かれておりますが、大臣答弁というものはちぐはぐなんです。それについて私は少しく具体的にお尋ねいたしたい。前もつてお断りせねばなりませんが、われわれは吉田内閣のごとくに貿易が唯一の経済立国の政策であるとのみ思つていない。向米一辺倒とか向ソ一辺倒とかいう言葉がはやりますように、吉田内閣の経済政策は貿易一辺倒である。貿易はもとより大切なものではありますが、これと並んでわが国の経済自立のために、未開発の国土の総合開発計画に基く経済という大きな柱が、打ち立てられなければならぬと私は確信いたしているのでございます。これはあとに質問いたそうと思つておりますが、最初に吉田内閣がかほどに一辺倒化しつつあるところの貿易という国策について、すこぶる理解しがたいものが数箇ございます。先日来貿易の現状については種々の御議論がございまして、私は政府考え方がちぐはぐな考えを発表しておられてまだはつきりとつかむことができません。そこで第一点は、国際収支の関係でありますが、すなわち昭和二十六年度のわが国際収支の関係は、全般として一応の均衡に達せられているとはいえ、商品の貿易においては二億八千万ドルの輸入超過である。二十七年度における商品貿易も六億万ドルの輸入超過であります。また買い手の収入も両年度とも二億ドル台の支払い超過でございます。そうしてこれらの巨大なる支払い超過をば主として連合軍関係の消費、新特需によつてまかなつている現状であります。すなわち二十六年度においては、これらの受取額が六億二千万ドル、二十七年度においては八億二千四百万ドルになつております。この貿易の不均衡を支えた特需は、性格において一時的なものであります。その発注も不規則である。将来の経済自立を達成しようとするわが国の国際収支のあり方から見れば、きわめて不安定なものであります。しかもこれらの不安定なる受取り勘定にだけ支えられているという、正常な商品貿易のボリユームはすこぶる貧弱なものであります。すなわち戦前の昭和九年から十一年の三箇年を一〇〇といたしますれば、二十五年の輸出数量はわずかに二九%、二十六年度はもう二九%そこそこであります。二十七年度の推算もほぼ同様であります。同じ基準年度を一〇〇といたしますと、二十五年度の輸入数量は三二であり、二十六年度は四七であります。二十七年度の推定は五〇%そこそこであろうと私は推定いたします。輸出は戦前のたつた三割方にとどまり、輸入は三割台から五割台にふえている。そうしてこの超過を特需、連合軍の消費の受取り勘定の増大によつて辛くも支えられているのが現況であります。そしてその日ぐらしの吉田内閣は、今後もこのやり方でドルの保有のみをふやして行く考えであるかどうか。けれども戦前の三割に減つた商品輸出をそのままに放置しておいて、権道的な一時的ドルの受取りをふやして平気でいることは、貿易立国を一枚看板とする吉田内閣の政策的な矛盾ではありませんか。われわれから見ればこの不安定であるとはいえ、特需によつて収支の均衡が辛くも維持されている間において、手持のドルを活用して輸出の基盤を増大するために、施設の近代化、能率度の向上に資すべき幾多の施策が勇猛果敢に講ぜられてしかるべきであろうと思うが、どうでございましようか。戦前の失われたところの海外市場を復活することはなかなか容易ではございません。のみならず戦後の出血輸出によつて得た現在のものを毎日失つているのが現況でございます。これは坐視するに忍びません。政府は朝鮮事変始まつて以来足かけ四年、変態的な収入の累績であるところの米ドルの手持七億ドルになんなんとしている、このドル獲得については、商品輸出については出血輸出、特需については、日本経済のあり方を理解しない米軍並びに日本経済の弱点を突くところのかの鋭きネゴシエーシヨンによつて、あるものはコストの三分の一の価格において納材をよぎなくされているところの惨怛たるありさまであります。従つてこの七億ドルの手持ドルというものは国民のエネルギーから見るならば、二倍、三倍の集積である。出血の生産の結果である。血の結晶であります。この七億ドルの活用によつては、先日早川君の質問に同意をされたが、具体的の御答弁がない。これはわが産業経済よりしぼり出したところのものである。従つて産業経済に還元して海外市場の獲得に資すべきではございませんか。早川君の質問に対して抽象的であつて答弁がはつきりいたしておりません。もうすでにあの日から日もたつたことでございましようから、相当検討されておられると思うが、これに対するところのドルの活用について貿易の振興について、真剣な大臣の御意見をお伺いしたい。
  47. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大体御同意の点が少くなかつたのでありますが、しかし輸出のすべてが出血でも、ございませんので、双方採算のとれた有利な点もあることは、これは松浦さん自身が御承知の通りであります。但しお答えを求めておられました手持外貨の使用の問題についてお答えいたしますと、現在これにつきましては、輸出振興に資するよう十分な考慮を払つているのであります。すなわちドル地域からの輸入につきましては、日本産業の合理化に要する機械及び重要な原材料の輸入に重点を置きまする反面に、ポンド及びオープン・アカウント地域からの輸入につきましてもこれら地域からの輸入を促進するためにこの金を使うことを前提といたしておりますし、またこれらのために低利の別口外貨資金の貸付等をいたしております。それからそれを逐次拡大いたしております。それから為替銀行等に預入れをいたしているというようなことをやつておりまして、一口に申しますと、産業合理化と市場開拓とに向けて、今使つている次第でございます。ただ預けつぱなしで六億数千万ドルの金を持つておるという次第ではございませんので、この点はこのごろ相当活用しておるというふうに御了承願いたいと思います。
  48. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 この活用については、この間ここで公聴会を開きましたときにも、ここに非常な重点を置かれておる。また貿易業者、下請工場の現状を見ましても、そうしなければならない現状に追い込まれております。大臣は業界出でありますから、真剣にこの点と取組んで善処を要望いたします。  次に、私はコストの問題についてさらに検討いたしてみたいと思います。貿易、なかんずく輸出貿易の振興の基礎は、何といつて良品廉価でなければならない。結局これはコスト引下げによつて可能であると私は信ずるものでありますが、これがためには石炭、電力等の動力源はもとより、鉄鋼、運賃、消費者米価などの引下げが第一にとられなければならないと思うが、政府の施策を見ると、電力も上るがまま、石炭も上るがまま——将来のことはここで述べておられますが、現在はそうなんだ。鉄道運賃も上るがまま、消費者米価も値上げをされておる。さらに一方において、下請工業的な庶民金融を見ると、金利は実に目のまわるような高い金利である。そうして輸出振興の基本要件であるところのコストの引下げは、すべて逆コースの政策の連続である。一体全体その一枚看板の貿易増進に確固たる計画性を持つて臨んでおられるのかどうか。しばしば述べられるところの御答弁は、恒久的の理想論が多い。今日のコスト高で、毎日の国際経済戦の競争に敗退しつつある現況を救済するところの何ものもない。通産大臣は、五年先に三割の石炭の値下げを予想し、あるいは電源開発による豊富低廉なる電力を供給すると仰せられますが、それは将来のことであります。恒久的のものである。このコスト引下げについての応急的な対策はほとんど見当らない。現に各国がどういうことをやつておるか。わが国競争相手国は一体どういうことをやつておるか。西ドイツの貿易振興策は一体どうであるか。あるいはフランスのごとき、従来戦前はあまり貿易のことに重点を置かなかつた国が、この貿易振興のために四百二十億フランの予算を計上しておるではありませんか。近代化の設備、合理化等、あらゆる創意をこらしておるのに比べて、これに対するところの政府考え方は、実に問題にならない、比較にならない。こんなことでどうして競争ができるか。物価は世界的に横ばいであります。ことに戦前に比べて物価が二百倍以上の国は、日本を除いては中華民国だけである。国連調査局の統計の月報によりますと、昭和二十二年を一〇〇とするならば、昭和二十六年は、アメリカは一八七、イギリスは二四二、スイスは一九六、カナダは一九七、イタリアが少し高くて五二四八、日本が実に一九四五〇、朝鮮事変以来五割高になつておりますから、二五〇〇〇になつておる。でありますから、輸出にも不利であり、輸入にも不利であることは、三歳の童子といえどもこれを知ることができるでありましよう。現に政府の散布超過資金は千三百数十億と見込んでおられる。本年度の予算が施行せられるならば、いよいよインフレ要因は高まり、さらに将来公債のあと引きを余儀なくされるといたしましたならば、かりに石炭を五年後に三割引下げると仰せられましても、現在の物価の横ばいが精一ぱいであろう。そうして恒久論を振りまわして、本年の末には一割下るなんと仰せられておりますが、そんな言葉だけでは商売は成り立たない。毎日のオフアーで勝つことができない。一体経済に対する有能な経験と知識を持つておられるところの通産、大蔵両大臣は、ここに思いをいたして、今日の商戦に勝つ方法が応急的に講ぜられなければならぬではないか。しかるに大臣の議会答弁はまるきり春日の牛の歩みのようなものであります。こんなことで日本の経済を救済することができますか。出血輸出がさらにはげしくなることは必定でありましよう。現に昨年の下半期以来輸出は漸減しておる。そしてきようもあすも輸出は漸減しておるのであります。これらの姿を見て、吉田内閣の貿易政策というものは、実に十九世紀時代の原始的な、まつたく自由放任の時代遅れそのものであります。今日のように世界の諸国が、統制と計画と国家権力をもつて貿易を推進しておるのに比べまして、この国際社会の雰囲気にはまつたくマツチしないものがあると私は思う。これを私は痛感せざるを得ない。今日の国内の政治は国際政治の延長であり、貿易国策また強固にこれと連結した国内政治がしかれなけばならないであろうと私は思う。たとえば貿易増進のためのコストを引下げるのに施設の近代化をやる。そうするとこれがために首切りが起る。首切りを行おうとすれば完全なる社会保障制度がしかれておらなければなりません。この用意があつてこそ初めて首切りが思い切つてできるのである。しかるに吉田内閣の施策は、社会保障制度などという施策がほとんどないので、首切りもできない。消費者米価を引下げようとするためには二重価格制度をしがなければなりません。生産者たるところの農家を保護するとともに、勤労者の生計費を引下げるということが肝要と私は思うが、かような感覚もない。金利を下げるという掛声だけはあるけれども、貿易の下請工場は、政府の許した銀行以外の庶民金融機関によつて高利に追いまわされておるのが現況ではありませんか。石炭や鉄鋼価格を引下げようとするならば、政府はいやがつておるけれども、中共貿易を努力したらどうだ、開演炭を入れて来たならばどうだ、あるいは海南島から鉄鉱を持ち込んで来たらどうだ、これらの施策を思い切つてつてみたらどうだ。そうすれば値下げの引水にもなるでありましよう。これもやらない。せめて欧米諸国のとつておるところの、輸出品に対する減税や、キヤンセルやクレームに対する保証や、その他の補助、援助政策と、輸出信用保証制度の活用、または先刻申し述べましたところの手持ちドルの活用等を講じて、今日の国際経済戦に勝ち抜いて行くところの方法が、良品廉価、あるいはコスト引下げによつて戦われなければならぬと思うが、大蔵大臣並びに通産大臣はどう考えられるかお尋ねいたしたいのであります。
  49. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。コスト引下げは日本貿易のためにきわめて大切でありますので、その線に向つて全力を尽しており、すでに相当下つておるのもあります。五箇年後と言われますが、五箇年間の計画を立てて進んでおるのでありまして、この半年後、一年後着々と価格は下つて行くものと私は考えております。あなたほ石炭が一年後に一割ちよつとくらい下るというようなことじやしようがないじやないか。これはしようがないかもわかりませんが、私どもとしましては、あるいは資金の面、あるいは金利の面、あるいは税制の面にあらゆる措置をとつて、やはり国内の石炭業も自立して立ち行くよう考えつつ、他方この石炭のあらゆる合理化等を促進して、そして石炭の価格の引下げをやる。鉄鋼につきましては、すでに三箇年計画を立てまして、この二十八年で完成します。そうして鉄鋼の近代化の設備が終りますので、鉄鋼はもうすでに若干下つておりますが、二十八年には相当下つて参ります。その他いろいろ進めております。従いまして私どもは、日本の品物が五箇年後にはどこへ持ち出しても、鉄鋼あるいは石炭を資材とした物につきましては、十分な競争力を持ち得るということを実は申し上げておるわけでありますけれども、なお怠らずこのことは進めて行きたいと考えておる次第でございます。なおお話のうちに、またこの予算でも行われて、散布資金がふえて来ればインフレになつて、また物が上つてできぬじやないかというお話が、ございましたが、これはたびたび大蔵大臣が申しております通り、このくらいのことではインフレにならぬと考えでおりますし、また世界的にも、日本的にも、人も余つておれば、物も余つておる時節ですから、私どもはインフレは決して起ることなし、こういうふうに考えております。従いまして今の政策を着々と進めて参つて、歩一歩やつて参りますれば、日本貿易というものも正常な貿易となつて、必ず五箇年後には黒字になつて参る。これだけのことを私は確信して、その努力を進めて参りたいと考えております。
  50. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまのお話の中の、外国輸出する場合のいろいろの補助という点につきましては、為替に対する金利とか、それから外貨を為替銀行に貸すとか、そういう点で輸出を助けて行きたい。それから大体税制の上で、製造家なりあるいは輸出商の仕事のしやすいように改正を加えた点がありますし、また今考えておるものもございます。これは予算の上にひどい影響なしに、仕事をする人のやりよくなる方法があると存じております。  それから、私は今まであまり申し上げませんでしたが、外貨を持つていまして、外国との通商の関係において、向うのものを買うと、向うがまたこちらのものを買うという点が、相当あるものと思つております。これはただ向うがこつちへ売りたいといい、こつちが買いたいというものの、値段があまりこちらに有利でない場合が、今まであつたものですから、実行できなかつたと思いますが、よく研究しますと、また向うから買うという点に余地があると私は思うので、それをよく研究して行けば、外貨の利用にはこれが一番有効ではないかと思つております。
  51. 松浦周太郎

    松浦(周)委員  言葉じりをとらえるつもりはありませんけれども、小笠原さんの新議論、新理念というものは、ちよつとかわつたことをおつしやるが、人が余つている、物が余つているから、放漫的な消費財政をやつてもインフレにならないというような感覚だけは、おやめになつたらどうですか。
  52. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 それは私の言葉がちよつと足りませんでしたが、今申し上げた意味は、放漫な消費経済をやつてもという意味では全然ございません。人間が余つているという意味は、人がたくさんいるときには、賃金その他が暴騰するおそれがないので、そういう意味で申し上げたわけです。しかしそれは言葉が不十分であれば、それは取消してもけつこうです。
  53. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 議論していると、今の問題もなかなか問題です。今御答弁になつたことそれ自体も問題ですが、私は時間に制約されていますから、そのことは発言を留保しまして、後の機会にやります。
  54. 太田正孝

    太田委員長 松浦君、緒方国務大臣が出席しております。
  55. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 あと一つつてから緒方さんに聞きたい。その次はプラント輸出について私は小笠原さんの意見を聞きたい。プラント輸出についてはわが国は現にインド、パキスタンその他の東南アジア諸地域に、紡績織機その他繊維機械等盛んにプラント輸出している現況でございまして、昨年、一昨年あたりは前年よりも七五%もふえておつて、一千九百四十二万ドルにも達している輸出をみております。ところがこれらの国々はいずれも綿花の主産地でありますから、その国の原料を使つてこの紡績機械を稼働すれば、自給自足が可能となるばかりでなく、さらに他国に輸出することの能力が増して来るでありましよう。現にインド産の綿花が、他国に輸出することの余裕がなくなつた。製品は母国のイギリスの市場にどんどん輸出を開始されておるという状況である。しかしこの勢いをこのままにして続けるならば、やがては彼ら後進国の製品が、原料運搬の片運賃の差額だけが安くなるのでありますから、有利な条件になりますので、わが国にも逆輸入されるおそれなしとだれが保証することができようか。かようなときにおいて、わが国がどういう輸出品種に切りかえたらよいと思うのでありましようか。     〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕 口を開けば軽工業は重化学工業への転換を説きますが、しかし通産当局の御調査をまつまでもなく、世界のあらゆる市場において他国の製品にまさるわが廉価輸出品は、繊維を枢軸とするところの輕工業品のみであります。わが重化学製品はことごとく高価であり、かつおおむね品質が劣るものである。従つてわが生産資材のプラント輸出によつて、経験のない後進諸国の繊維工業が勃興し来つた。現にまたフイリピンにおいて、木材のラワンを日本輸出いたしておりますが、このラワンの輸出についても、すでに十箇所の合板工場のプラント輸出をやつた。従つて、もはやわが国の合板工業は、これらの製品に圧倒せられて立ち行かなくなつた現状である。今日ただちにこれらの各地区から転換し得べき性能を、重化学製品の輸出に求めることは時期尚早である。ではいつがその時期かといえば、先ほど来伺つて来たような無方針の出たとこ勝負である。総理大臣は今年の一月に、日本経済について新聞記者に聞かれたときに、経済は出たとこ勝負だとおつしやつた。吉田内閣の経済政策というものは出たとこ勝負なんだ。これではわが重化学製品の生産の近代化や合理化が促進される道はないのでありまして前途遼遠といわなければなりません。あるいは近代的な繊維化学工業というならば、ビニロンのような方向へでも転換する考えでも持つておられるか。その辺のことは一向不明瞭であります。一体どうしたらよいのか。政府はこのプラント輸出を始めたときに、将来を見通していかなる方策を講ぜんとしておられるのでありましようか。昨年八月、その昔蒸汽機関を発明した英国が、これを基本にして世界工業と世界海運の先進国として立つたのであるが、今このままではもはや世界の経済に雄飛することはできないと彼は断念して、今後いかなる方法を講ずるかといえば、ジエツト機工業並びに原子力工業に転換して、これらの工業の皆無であるところのアジア諸地域を販路にしようとさえ試みておるのであるけれども、百年一日のごとく、いつまでも今の状態の工業を進めおつて、その原料国の方にどんどんとプラント輸出をされる。このプラント輸出をされるときに、すでに将来の日本の貿易についてはこういうことをしなければならない、こういう品種に転換しなければならぬという政府当局考えがなくちやならぬと私は思うが、これに対してどういうお考えを持つておられますか。
  56. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 東南アジア地域は、だんだん軽工業が進んで来て、繊維製品等が向うの国でできることになり、従つて日本としては、だんだんプラント輸出等、重化学工業に転換しなければならぬということに気づいて、そういつた方面に漸次努力して来ておるのであります。ところが、それでは引続きそういうことでよけい出て行くかと申しますと、現在向うの民度に日本の製品が比較的合うのでありますが、向うの民度の上昇するにつれまして、やはりこちらの出すプラント輸出等も、向うの民度に合うだんだんと進歩した形態のものを持つて参りませんと、これは合わなくなつて参ります。そこで、本年から向うに重機械工業相談室というものをつくります。この予算に今度計上してありますが、そして向うのものとよく相談して今後の発展をはかりたい、こういうふうに考えておる次第であります。あるいはイギリスのものよりそういつたものが少し高過ぎるかもしれません。たしか一昨年は合計一億七千万ドル出たと思いますが、相当な金額のものが出て参ります。今度そういう相談室ができますと、もう少しよけい出て行くのではないかと思つて、引続き努力を怠らずおる次第であります。
  57. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 まだいろいろ通産大臣に聞おきしたいのでありますが、緒方さんがお忙しいようでありますから、総理のかわりに緒方さんにひとつ御質問いたしたいと思います。  総理が常に提唱しておられるところの輸出振興策の問題は、これは自由党の一枚立看板でありますから、総理みずからもこのことについて努力しておられることはよくわかります。しかしやはり経済的には、良品廉価の生産を要諦としなければならない。政治的には、経済外交の積極的活動が必要であることも言うまでもない。すでに昨年以来わが国輸出品はシヤツト・アウトを食つておる。ポンド地域の輸入の障壁は、イギリス外交の巧妙に張りまわされた鉄条網である。これは世界周知の事実であります。このときにあたつて、わが商品のはけ口たる植民地、あるいは属領を失つて、国権の背景たる武力を失つたわが国の苦しい立場は、重々理解することができるのであります。それならば、それだけでまつ裸でぶつかつて行く経済外交の勇敢な活動が望ましいのであります。日英支払い協定もいまだ結ばれません。日米通商航海条約なども半歳を費してもいまだその結論が出ない。関税問題その他重要なるポイントであるガツト加入についても遅々たるものがあります。しかもこれらの外交交渉は、おおむね外務省の局長どまりで、事務的な折衝が行われているにすぎません。さらに東南アジア向けの貿易のがんとなつているところの賠償問題も、局、課長級の交渉でいまだらちがあきません。これらの属僚まかせの経済外交による交渉遅延と、さらに枝葉末節が繁くして大局を逸した外交交渉が、わが貿易の促進のたくましい前途にどれだけ障害があるかは想像のほかであります。かのチヤーチルが、組閣直後にワシントンに飛んで、トルーマン氏と人をしりぞけて密談をしたのは、イギリス外交とイギリスの経済建直しの問題の根本についてであつたと伺つております。ついては、総理大臣も、日米間の経済外交の根本問題についてはワシントンヘ、日英問題の比率についてはロンドンへ、御苦労ではありますが足を延ばして、彼我の間に横たわるところの根本的問題について勇敢に折衝されたならばどうか、それは局面打開のために甚大なる効果を奏することと私は思う。その総理の政治的行動によつて、基本的な問題の解決した上での外務大臣まかせの事務外交ならよろしいが、この基本問題を解決もせずして、事務的な外交にまかせてどうして今日の経済戦に打ちかつことができるかという問題です。その腹案がおありでありましようか。現にコメツト機で行けば、短時間にしてロンドンに着くことができる。船舶の保有量をきめるに対しても、戦前の六百五十万トンの船が七洋を征服した、あるいは武力の背景を持つて大陸の貿易を盛んにしたときのことを思うと、今日の日本の経済外交は、平和と正義の上に打ち立てられなければならない。この打開は、平和と正義を旗じるしとして、向うの大統領なり向うの総理大臣にぶつかつて基本問題を解決して、日本民族のあり方をはつきりして、その基本問題がきまつた上に外交交渉外務大臣以下の属僚にまかすならばわかるけれども、初めからこれにまかせ切りにしてこの基本問題を解決するというのは、総理大臣の責任ではないか。これに対する総理の所見を伺いたいが、きようは総理がおいでになりませんから、ひとつ副総理から御答弁を一応伺つておいて、議会にこういう議論があつたからぜひ行つてみろと勧めてもらいたい。これは国民の要望である。
  58. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 総理が欠席しておられますので、私からかわつて答弁をいたします。イギリスのチヤーチルが、アイゼンハウアー新政府ができるに先だつてアメリカに飛び、イギリスの通商上の立場について新大統領並びにアメリカ朝野の了解を求めた。そういうことにつきまして、日本も総理大臣みずからアメリカのみならずイギリスにも飛んで、今日の国際的な、また通商上の難局を打開する根本方針を打ち立てるべきでないかという御質問のようでありまするが、御承知のような事情で、今総理大臣がすぐワシントンへ行かれるというような計画は持つておられないように思います。総理としては、外務大臣並びに外務省に信頼をされましで、その問題の打開に全力を上げるように督励しておられまするし、ことに日本の、近い将来において通商上の運命の一半を託するべきであると考える東南アジアに対しましては、特に熱心に、最近あるいは外務省関係、あるいは通産省関係でできるだけ多くの人を派遣して、まずもつて戦争後の日本に対する民族的のいい感情をかもし出させるようにし、さらに賠償問題につきましても、すでにたびたび予算委員会において外務大臣からお話がありましたように、逐次問題を具体化し、だんだん好転しつつあるようつております。ただこれらの問題はなかなか重要であると同時に、打開に力を要する問題でありまして、その点につきましては、今後も十分努力を払つて行くつもりであります。
  59. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 そのことはよくわかります。また外務大臣も熱心におやりになつておられましよう。しかしながら国民の総代表である地位と外務大臣の地位とは違う。また外務大臣交渉に行かれれば、向う外務大臣以下の局長クラスの者しか相手にしない。総理大臣が行かれれば、アイクとひざ詰め談判ができる。そして日本国民のほんとうの考え方であるということがはつきりするのだ。そこで体当り外交をやる、国民外交とはこのことである。これを促進するよう考えがあるかどうか。もう一ぺんお伺いいたします。
  60. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 御意見として承つておきます。
  61. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それでは次に進みます。総理、通産、農林諸大臣答弁を伺いましたが、吉田内閣のように長期的な計画性を持たない総合性の欠けたその日暮しの貿易政策では、遺憾ながら貿易だけにたよつて日本の自立経済を伸ばして行くことはむずかしいと私は思うのであります。冒頭に申し上げましたように、わが国の国際収支のバランスのうち、莫大な分量が特需、新特需及び連合軍人の消費によつて占められ、商品貿易の占める分量はわずかであります。しかもそれは多くの支払い超過を示しているのである。吉田内閣のように、こうした特需や新特需に漫然とたよつていることは、やがては国をあげて米国軍需工場の下請工場たる様相を呈し、これが刺激となつて戦争にみずからをかり立てる内面的衝動をうん醸する危険が大であります。さりとてわれわれが通常貿易にたよろうとすれば、とうてい国際収支のバランスを維持することができない。ここにわが国の特殊事情として、長い将来はともかくとして、貿易一辺倒の経済国是を立てることの困難があるのであります。そこで私が冒頭に申し上げましたように、貿易ももちろん必要であるが、これと並ぶ二本の柱として国内の立体的な総合開発計画による国際収支のバランスの補正と、国民所得の増加ということが果敢に行われなければならぬと私は思うのであります。先日の森君、重政君の質問のごとく、一石の増産をすれば一万三千円の輸出も同様であり、福田君の言葉のごとく、国際貸借の改善も必須条件であります。殷鑑遠からず、わが国とほぼ同じ立地条件にあるイギリスでは、つとに労働党が人口の制限と、外国との争いを避けるために国内開発を提唱しております。またイギリスの権威あるところの週刊雑誌オブザーヴアー誌も、昨秋長文の論説を発表いたしまして、イギリスの海外移民、海外進出の時代は去つた、われわれは世界の平和のために、国内における開発と食糧の自給促進に政策を転換しなければならぬと強く論述しております。その上にわが国は長い戦争で国土の四五%を失い、国土は荒廃し、戦災被害は莫大である。国富の損耗もはなはだ大であります。旧安本の調査によれば、太平洋戦争に基く物的被害は、その取得額でなく、経過年数による減耗をしんしやくいたしたところのものでさえも、昭和二十三年度の被害は実に四兆二千四百億に達するのである。この上に艦艇、航空機その他の被害の二兆六千万円を加えますと、被害は実に六兆八千億に達せんとするのであります。そのほかに公共建物や港湾施設や河川、林野などの自然傷害を受けたものが未復旧のまま放置いたしておりますから、これらが一昨年末では二千数百億円に上ると安本白書は言つておるのであります。事実最近の統計年鑑には国富という文字がありません。損耗の度合いがひどくて、調査の手段を失つたからであります。こうした国の資産状態の上に、生産増強や輸出振興の景気のよい旗じるしを一本押し立てて行くことは、損益計算書だけあつて、資産勘定を現わすバランス・シートを持たない会社と同様であり、かたわ者であります。しかもその損益計算書の売上げと費用は、国富の食い込みと米国の援助と世界的軍拡景気にささえられたものであつて、このうち国富の食い込みはもはや底をつきまして、米国の援助が断ち切れようとするとき、さらに大蔵大臣は、この米国援助資金というものは利子をつけて払わなければならぬと過日も仰せられたのであります。今日以後ひとえに資産勘定の増殖と、生産所得の進展を目ざす政府の政策が採用せられなければならぬと私は思う。衣食足つて礼節を知る、これは平凡な真理であり、昔も今もかわりはない。終戦後最大の困難は食の問題であります。ようやく得たところの外貨食糧輸入に消費されておる。そこで国内自給の食糧増産が必要になる。かの有名な平和の国デンマークは、独墺戦争に敗れ、興国の第一は食糧自給と輸出策であつたわが国でこれをいうと、公共事業であり、土地改良と耕地の拡大である。しかるに吉田内閣は、みずから食糧自給五箇年計画を天下に声明しながら、二十八年度予算の中に見られるものは実に僅少である。食糧の自給策は何年後に見当がつくか。みずから立案したものをみずから蹂躪しておるところの姿であります。そこで国内の総合的な開発計画が、貿易と並ぶ二本の柱として、大きく打出されなければならないと私は信ずるのである。ところが政府のこれに関する施策は、きわめて冷淡であると断ぜざるを得ません。吉田総理は、この国土開発の総合機関であるところの国土総合開発審議会の委員の任免権を持つておられる。これに関する経綸とその熱意のほどをお伺いしたいのでございます。経済審議庁長官は、現在までの調査、計画の内容と、その計画は何年かかつて何年までに完成するか、これを報告せられたい。
  62. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。政府の経済政策は、決して貿易だけを唯一の目標としておるものではないのでございまして、御指摘のごとく、国土の総合開発は経済自立の基盤としてきわめて重大な意義を持つておりますので、この方面に特に努力をいたしておるつもりでございます。国土総合開発計画のうち、特定地域総合開発計画につきましては、すでに総合開発審議会で審議を進めており、その他の総合開発計画につきましても、目下計画の決定と事業の実施を急いでおるような次第でございます。
  63. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 総合開発計画の特定地域については、昭和二十六年十二月、全国で十九地域が指定されまして、目下関係都府県において開発計画の作成を進めております。現在までに都府県から計画書が提出されましたものは、北上、阿仁田沢、最上、対馬、天龍東三河、利根の六地域であり、このうち北上につきましては、審議を終り、すでに閣議決定を行いました。その他につきましては現在審議中であります。なおこのほかに、昭和二十八年度内には全地域についての計画が提出される見込みであります。  昭和二十八年度予算について申し上げますと、公共事業債、食糧増産費その他を加えて約三十三億円が計上されておりまするが、昭和二十七年度約二十一億円に比べまして若干増加いたしております。すなわち六〇%増加いたしておる次第でございます。  国土総合開発計画の重要なることは仰せの通りでありまするので、今後とも格段の努力をいたしたいと存じております。なお北上特定地域の総合開発計画実施に要しまする総事業費は約一千百三十一億円であります。
  64. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 ただいまの緒方さん及び小笠原さんの答弁で熱意のほどはほぼわかりましたが、この国土総合開発法にうたわれているところのことから見ると、部分的なお話を今されたが、それがいけないと私は思うのであります。いわゆる全国総合開発計画がいまだ策定されていないのはどういうわけであるか。私の解釈によれば、同法第二条第三項にうたうところの、国が全国の地域について作成する総合開発計画がまず打立てられて、これに基き、これを目標として特定地域や地方地域や府県別の開発計画が立てられなければならないと私は思う。ところが政府のやり方は逆であつて、まず先に特定地域や都道府県の開発計画が調査されたり、一部施行されたりしておるのはあべこべではありませんか。私はこういうのは、つまり日本の国土開発をするということは、日本の縮小された領土並びに荒れ果てた領土、これと貿易とを見合つて、足りない分をうちに働いて、いわゆる総合的に各未開発資源を開発してこれに充てるというところになければならない。それが部分的に取上げられておる。私は第一に総合的に取上げて、総合の中の部分でなければならぬと思うが、この総合的な計画は、小笠原さんどうなつていますか。
  65. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま申し上げました十九箇所は、これがありますとほぼ日本のおもなものはあげられるので、そのほかにもそれはありますが、これが最も大きな地点でございまするので、これで総合しまする計画のもとをつくり得ると考えられます。
  66. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 御答弁でありますが、これはどうも私は納得しないものがありますから、少しお尋ねいたします。  自然発生的に生れた地域計画や都道府県計画というものの選定や計画にふに落ちないものがずいぶん発見されるのである。経済審議庁長官にお尋ねいたしますが、これらの地域は、単に党利党略の見地から、無計画にされたものが多いのではないか。政党領袖の名をとつて、何某地域、何兵衛地域ということが事務的にさえうたわれておる。これは払拭することができない始末であります。単にその地方の民度を引上げるという社会的の計画面も含まれておる。この開発計画の総合集大成によつて国が生きて行くという基調の一貫性がないのであります。こうした厖大な計画をば積み重ねて行つても、とうてい立国の基盤たるべき科学性を持つた国土総合開発計画は生れるものではないと私は思う。よろしく新規まき直ししてしかるべきではないか。もつとも現に一部調査中であるところの、あるいは一部施行中であるところの北海道地区とか、あるいは北上川開発地域とかいうところのごときは一概に悪いとは申せません。ただ調査も施行もともに電力と地下資源の開発は通産省、河川は建設省、土地改良、灌漑、排水は農林省というふうに各省割拠で行つておる。全体の調整総合というものはほとんど見られない。北上の下流地域で農林省が用水工事を始めようとすれば、建設省はちよつと待て、いまに上流の川幅を広くするから、流量が何倍にもなるから、やり直さなければならない、と言つて、じやまを入れる。しかも予算が各省のぶんどり主義であるから、予算をとるにうまい役所がどしどしと仕事を進めて行く。工事はたいがい継続的な事業であるから、経過年度と完成年度との食い違いが出て来る。かようなおびただしい不経済な、総合性のない進め方で、どこに国土総合開発計画の実が上ると思うのですか。また同じ地域におきましても、各郡、各町村の施行順位の競争運動が熾烈になつて参りまして、遂には計画年度を度外視して全管内総花的一時着手ということになる。いわゆる集中工事が行われない。資金の効率が生れない。従つて完成するまでにはインフレを起すというような心配も生れて来るということになります。立案者の意見などは浸透しないのが現状である。アメリカのTVAのやり方に比べてまつたく顔色なしのやり方である。この点について経済審議庁長官並びに緒方長官は何とお考えになりますか。
  67. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 方針としては今申し上げた通り、十九箇所のものをそれぞれ調査をさせまして、それに基いてやる。その中には大きいのもあります。たとえば東京湾、九頭龍、琵琶湖あるいは瀬戸内海、これは非常に大きな地域でありまして、吉野川、有明、十和田、岩木川、富士川、白根というぐあいに、地域がわかれておりまして一地域々々々がなかなか容易ならぬ問題であります。それでこれらのことがずつと出て来ますと、ほとんどその目的を達するのではないかと私は思いまするが、なおそれらの取扱いについては、今事務的にどうやつているかということは、政府委員よりお答えいたします。
  68. 今井田研二郎

    ○今井田政府委員 お答えいたします。総合開発計画を進めて参ります上に、まず全国計画から作成し、次いで部分的なる地方計画、特定地域計画を進むべきでないかというふうなお尋ねであつたのでございます。まことにごもつともではございますが、何分全国計画をきめますのには、相当広汎な準備もいりますし、また基礎的な諸調査もいります。しかるに一方地域的な開発というものは非常に急がれておりますので、まず急がれておる地域、しかも国民経済に最も関係のある重要な地域の開発を始めまして、そこから全体に及ぼして参りたい。先ほど大臣が申されましたよう方針で進めて参りたいというふうな考え方で、現在のところでは特定地域の開発に重点を置きまして開発を進めております。むろんただいお話がございましたように、全国計画の策定は政府の義務となつおりますので、ただいま経済審議庁を中心といたしまして、各省で相談して作成しております。おそらく今年中には、その草案が作成できるという段階に至ろうかと思つておるのでありまして、われわれといたしましては、御趣旨のように、できるだけ総合開発計画を進めて参りたいと考えておる次第であります。
  69. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 その点はひとつ総合的に行われるように、年度があとさきになることはやむを得ませんけれども、国全体が開発されて行くように、努力を要望いたします。  次に仕事のやり方だけではなくて、私はこの予算の立て方についても総合開発というものがなつていないと思うのです。根本的に問題になつていると私は思います。この二十八年度の予算書を見ると、経済審議庁と建設省の項に総合開発調査費というものが四千九百万円ほど盛られておりますが、これは多分調査地域と特定地域の調査費だろうと思います。今後実際事業をやつて行く場合のことを私は憂慮する。実際の事業費は各省予算に割振りされてしまつている。この経費を各省では土地改良とか、地下資源開発とかいう全国どこえでも使える一本の項の中にはうり込んでしまつている。これをほかのどの地域につぎ込まれても文句のつけようはありません。目節の流用は大臣間の協議によつて自由にこれを流用、移用できるのであります。たとえば国土総合開発に関するところの公共事業費の取扱いについていうと、経済審議庁の訓令だか、通牒だかが出ておつても、そこは各省の自由裁量の幅が大きいのでありまして、かようなことではとうてい円滑な、順調な総合開発を遂行することができないと私は思う。どうしても国土総合開発費という款を国の予算の上に起し、項を事業計画の地域に起し、目へ行つて河川、電源開発、造林、土地改良というふうに細分して行くことが本筋ではないかと思いますが、これに対する経済審議庁長官並びに大蔵大臣の見解はいかがでございますか。
  70. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 この点まことに御同感でありまして、ぜひそうしたいと思つて、本年度交渉したのでありましたが、まあ別の欄にしておくからということで、それだけで本年は納得した次第でしたけれども、今後はぜひそうしたいと思つております。
  71. 向井忠晴

    向井国務大臣 運用について十分注意いたします。
  72. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 河野さんどうですか。
  73. 河野一之

    河野(一)政府委員 私からお答え申し上げます。考え方といたしましては、予算を一本にとつて、その目的を明らかにするというのも一つ考え方であろうかとも思いますが、今までやつておりまする総合開発につきましては、各省各庁に非常に仕事関係が多いのであります。つまり経済審議庁を中心といたしまして、一定の北上川なりその他の計画を立てられましても、これを現実に実行されますのは、建設省であり、農林省であり、またその他の各省になるわけであります。従つてその予算というものは、現在の財政法、会計法の建前からいたしますと、その金を使うところに予算を組む。そうでないところに予算を組むということは、それの執行権はない次第でありまして、従つて現在の取扱いといたしましては、各省に計上いたしてございます。しかしその金がよその方に使われるということは、これは松浦さんのおつしやつたようないろいろな点もございまするので、予算の参照書におきましてたとえば北上川であれば、このうち幾らの経費は河川関係で北上川で幾ら、あるいは土地改良関係で幾らというようなことをすべて出して、その解決をつけておる次第でございます。
  74. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 そうやつても、大臣間の話合いならば目節はかえられるのでしよう。だから項、款をとつた予算でなければならないと私は思う。いろいろと答弁がありましたが、奥歯にもののはさまつたような感じを受けまして、さつぱりすつきりいたしません。それというのも、この問題については機構が介在するからでないかと私は思う。すなわち、今日の予算書の仕組みでは、独立の組織を持たなければ款の予算をとれません。北海道の総合開発経費も、本来ならば一本の公共事業費の中にぶち込まれるはずでありますが、北海道開発庁という独立の官庁組織があるために、款に相当する予算がとれ、ほかへの流用、移用が厳に防がれておるのであります。私はこの点についてちよつと触れたいと思いますが、公共事業費の中に入れられて、これらに依存しておるあり方というものは、今後改むべきではないか。何ゆえならば、今後の計画が進むにつれて、金額は年々増大して行く。公共事業費を食い込む率が非常に大きくなります。従つて他府県との割合が減少するおそれがある。さらに本年の公共事業費の査定のときのことを考えると、これはわくを最初にとつて、あとで他府県の事業費を盛り込むものでございますから、他府県が非常に憤慨する。そこに摩擦が起きるというようなことがあると同時に、北海道にとりましても、年次計画の半分にも及ばぬ結果になるのである。北海道の総合開発計画は、二十七年度より三十一年度までの五箇年計画であつて、総額は四千三百三十五億円である。このうち公共事業費に依存するもの千三百億円であり、民間投資が二千二百五十億である。その他地方自治体の負担並びに産業経済費の中からまかなつておるのでありますが、総計画経費のうちの三三%が公共事業費であります。今年のものは、その二十七年度と二十八年度は、二十七年度が当初計画の予想の四五%の予算がつけられ、二十八年度は五七%であつて、平均が五二%ぐらいのものである。かくすると五箇年計画は十箇年を要する。最終年度において多額な割当になつておりますから、あるいは十五箇年になるというおそれがあるのであります。また経済審議庁の計画のもとの、ただいま御答弁がありました十九地域は、概算して一兆五千億と仮定されておる。これは五〇%を国費に依存することになつておりますから、一時に全部着手するときは、毎年一千億の国費を必要とするときが来るでありましよう。これを各省割拠にまかすことは、国民が許さない。従つて議会は強い批判をするでありましよう。そこで北海道開発庁というようなものを拡大発展させる行き方で、独立の国土開発省というものをおつくりになる考えはないか。ここに数箇の局を新しく創設する。しかしながら、建設、農林、運輸、通産各省及びその他の従来総合開発関係を取扱つておるところの部課を総合吸収、合併または事務の転換を行つて、新たに人員を増加しない、そうしてこの省を国土開発省といたしまして、開発の計画を立てて工事を実行して行く、そうして工事が終つたならば、すぐにその地域の行政権を各省へ返して行く、つまり計画省であり、実行省であり、開発省である。従つて工事地域の現場へは、この省の代表者が総括指導者として乗り込んで、全責任をもつて立案の意思を貫くようにどしどし遂行して行くようにいたさなければ、各省割拠に宿借りをするような程度では、計画立案の意思精神というものは実現できるものではない。米国のTVAにおけるかの有名なデイヴイツド・リリエンタールは、計画から完成に至るまで、みずから現地の工事の監督をいたしまして、そうしてあの難局を一身に引受けて、これは世界の逸話の一つになつておるではありませんか。各省割拠のなわ張りは絶対に許さない、かような役所をつくつて、初めて貿易と並ぶ二本建の一本の国内開発という経済国是が、完全に遂行されると思うのでありますが、総理のかわりに出席されておるところの副総理の意見はどうでございますか。これを議会に提出するというようなことはどうであるか。この間緒方さんは、二月中には行政整理の案を議会に提出するということをおつしやつた。それとにらみ合せて合理的な国土開発省を関係省の合併によつて設置せられる考えはないか、これに対する御所見を承りたいのであります。
  75. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいまの御意見は委曲承りましたのでよく研究いたしますが、二月中に提案を予想しておりまする行政整理の、部分的にもせよ成案と同時には間に合いかねると思いますが、御趣旨のあるところはよく研究してみます。
  76. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 総理と御相談を願いましてぜひ実行に努力せられたいと思います。  もう一点、自由党の大会に御出席せられました総理は——この間中問題になつたところの問題でありますが、私はこの争いの中に入る考えはないが、いわゆる国力の培養のため国会の意思に反しても財政の緊縮と減税をはかつて行く、こうおつしやつたが、この国会の意思に反してもということはこの間お取消しになつたが、まさか財政の緊縮と減税はお取消しにならないと私は思う。そこで私は申し上げたい。国土の総合開発計画を叫んでもないそでは振れない、それならばどこに財源を求めるかということが、今日日本のために重大な問題なのです。国土総合開発計画の実行の所要資金を行政費の節減によつてまかなうことはきわめて容易であると私は思う。われわれの成案しておるというよりも、現に一昨年吉田総理が非常な熱意のもとに行政諮問委員会というものをおつくりになられまして、学識経験者、専門家がまじめに、かつ厖大な案をつくつた、この案によると中央、地方を通じて行政事務に徹底的な簡素化が行われることになつております。戦後濫造されましたところの行政機構を整理し、人員を整理する、どれくらいの人員が整理されるかというと、中央においては当時一般、特別両会計の定員が百五十一万八千人おつた者を十八万六千人減らす、地方においては現に百五十六万二千人であつたものを十九万七千人整理する、これを経費の上から見ると、昭和二十六年度の予算には中央が二百九十一億円、地方の国費、補助分の節約だけで七十七億円、計三百六十八億ということになつております。これは俸給、手当、雑給、旅費、物件だけであつて事務の廃止に伴う事業費、補助金の費用などが全然含まれていないから、これを合せれば概算七百数十億円になる。さらにその月から二年を経て俸給もベース・アツプされて諸物価が上昇し、同年度の予算より推算すれば、一千億内外の行政費の節約になることは必定であると私は思う。この年額一千億内外あれば本格的な国土総合開発の実行はきわめて容易であります。しかのみならず従来いたずらに国民の重荷になつてつた役人の不生産的な人口を国土総合開発のような生産的な人口に転換することができて、人口の配分の上からもまことに適切であると私は確信するものであります。かようなりつぱな案ができておるのにもかかわらず——吉田総理の諮問機関によつてちやんとでき上つてつた、ところが自由党内閣の政治力の不足のために実行に移せなかつたのははなはだ残念に思う。総理は今議会における冒頭の施政方針の御演説の中で行政整理を強くうたわれておるところを見ましても、本年度においてはこの程度の実行を期しておられることと信ずるが、せめてこの程度の案だけでも私は通してもらいたい。そういう勇気と所信はないか。総理の諮問機関がつくつた該案には人員整理が含まれている。今度われわれの手でつくつたところの行政節約を参考までに申し述べてみますが、これには人員の整理は含まれていない。単に経費最低限の節約案であります。たとえば同じ二十六年度における一般、特別両会計を通じて超過勤務手当五割を節約する。実際には超過勤務してもせぬでも一人当り幾らと定額でもらうという乱暴な役得経費である。この手当五割の節約程度は当然の措置であると私は思う。次に諸手当一割、雑給与七分、旅費五割、旅費は出張せずとも旅費だけを給して自宅で寝ころんでおつたり、また不急の用のために出張させたり、この三月末の年度末になりますと、その項の中にある旅費を使い尽してしまわなければ来年度の予算の査定に影響するというところから、用のない期末旅行というものをどしどしやる。この百五十万に近い国費の役人が、どこの役所でもやつている。これは実に私残念にたえない。こういうようなものの五割程度の節約は国民に対しても当然のことなのだ。次に物件費を三割、役務費を一割、食費、これは宴会費である、あるいは交際費を約七割ずつ節約する。これらの無理のない節約を合計いたしますと三百七十一億八千百余万円に達する。これをその後の二十七年、今年の二十八年の予算のベース・アツプによつて計算いたしますならば、おそらく五百億円以上に達するものと思う。首切りがいやならせめてこの程度の簡単な行政費の節約をやる勇気と所信がおありにならないか。そうしてこれを国土総合開発にまわすならばそれでもけつこうであると私は思う。政府は行政整理をうたいながら、一方において社会保障制度の確立がないためにこれをやることができない。しからば行政整理と未開発資源の総合開発計画とをにらみ合せて放漫消費、財政予算のうちよりしぼり出して、消費経済を生産経済に振り向ける考えはないか。これは特に大蔵大臣と副総理にお尋ねいたしたいのでございます。私がかく言うことは、日本の経済は行き詰まりつつある。その行き詰まりつつあるのを打開するのが、いわゆる未開発国土の総合開発計画によつて総合的な経済力が一方に浮き上つて来ることによつて国際収支のバランスも直り、食糧の自給政策もこれを完成することができるという祖国愛に燃えて私は申し上げておりますから、政府の確信ある答弁をお聞かせ願いたいのであります。
  77. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えを申し上げます。今回の行政整理は機構の改革よりも機構あるいはその運営の簡素化、能率化を主としておるのでありまして、どういう結論を得ますか、ただいま行政管理庁におきましてせつかく立案中でございますので、私から今御要求になりましたような正確なことは申し上げられませんが、できるだけ御趣旨に沿うように持つて参りたいと思います。
  78. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それはまことに迂遠な答弁ですよ。総理大臣は各省大臣を使つておられる、それならば各省大臣に全部とはいいません、国の大きな政策はこの方向で進めなければならぬというアイデアがなければどうしてやれますか。そのアイデアの中にこの問題が入つているかどうかということなのです。一体至るところで演説をし、ここでも答弁され、本会議でも施政方針の演説をやつてつて、行政整理をやるというところの総理の御方針がある。それならばこの程度のわくにおいてやれということ、それを事務的に行うということが私はほんとうの組織だと思う。さつきの外交交渉の問題も同じことなのです。基本問題は総理の政治的な達見によつてこれをやるというのでなければ、どうして行うことができるか。そこがこの内閣のいけないところなんだ。
  79. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 松浦君も御存じと思いますが、行政整理の問題はきわめてデリケートな問題でありまして、従つて総理の意思ははつきりいたしておりますが、それを実施する上にどういう立案をするかということがなかなか慎重を要するのでございます。目下行政管理庁長官におきまして大体の成案を得ております。それと各省との間に折衝を進める時期になつておるのであります。総理の方針はきわめてはつきりいたしております。
  80. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 一言申し上げたいのですが、けさの新聞にも、本多君からはこの行政整理は非常に軽微なことでとどめると言つている。そうすると、総理の考え方とあの発表は食い違いやしませんか。
  81. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 まだ本多国務大臣からその話は聞いておりませんが、私が今申し上げたことは、政府の計画といたしましては少しもかわつていないと存じます。
  82. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 本多君というのは一体閣僚ではないのですか。閣僚であるならば、それを発表するためにあなたの意見を聞かなければ発表できないじやないですか。
  83. 向井忠晴

    向井国務大臣 経費の節減ということは非常に大事なことと私も思つておりますので、これは行政管理庁とかあるいは各省大臣と私も連絡をとりましてせいぜい合理的な経費といたすように尽力いたします。
  84. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 これにて休憩し、午後二時より再開いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  85. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。西川貞一君。
  86. 西川貞一

    ○西川委員 大蔵大臣がお見えになりませんので、まず冒頭に中共地区よりの引揚者の問題について、外務大臣にちよつとお尋ねいたしたいのでありますが、この問題に対しまして、本日の正半日赤の本社への入電によりますると、昨十五日双方の代表者が公式の会談を行いまして、その際中共側の主席代表から、今回の日本人の送還は、帰国を希望する日本人の帰国に対しまして、中共が援助するという建前であつて、引揚げというのは妥当でないというような発言があり、その援助の方針につきまして、日本人が帰国をする港は天津、秦皇島、上海の三港を予定しており、それぞれの港から同時に三千人ないし五千人が出発できる、そうして第一回の帰国は日本側が配船の責任を負うならば、三月中には実施できるというような発言が先方の代表者からあつたという情報でございますが、この情報は政府の方でもお受けになつておりますかどうか。またその発言がその通りに行われますとしまするならば、これに対しましまして、配船の準備その他受入れの態勢は整つておるか、どうか、その点につきまして外務大臣のお答をお願いします。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も今おつしやつたような第一回の会談の内容については承知いたしております。ただ一、二まだはつきりしない点がございます。たとえば秦皇島、天津、上海、三港から同時に三千ないし五千の人を引揚げるといつておりますが、各港から三千ないし五千ずつであるか、三つの港をまとめて三千ないし五千であるか、そういう点がまだはつきりいたしておりませんが、いずれにしましても、三月の終りまでに第一船が出せるということは、こちら側の用意としてはできております。もつとも先方の言うのと、帰国希望者の希望状況その他調べもなければならぬだろうと思いますから、向う状態にもよりましようけれども、こちらとしてはその用意はできております。  なお引揚げといわずして帰国と言うということについては、何ゆえ引揚げという字をきらつて、帰国という字を使いたいというのか、ちよつと意味がはつきりいたしませんが、普通英語ではりパトリエーシヨンといつておりますから、帰国と使われてもこちらは別にさしつかえない。実際上帰つて来られさえすればいいだろう、こう考えておりまして、先方の提案通り三月末に第一船が出せて、夏までに引揚げるという計画であればけつこうだろうと思つて、その努力をいたすつもりでありますが、少くとも三月末に第一船の用意は十分できると考えております。
  88. 西川貞一

    ○西川委員 引揚げの問題につきまして前途に明るい見通しのついたことは、非常に喜ばしいことでございますが、またこの予算の執行におきまして、戦争犠牲者の問題が逐次解決して行きますことは、まことに喜ばしいことでございますが、その中できわめて深刻なる犠牲を払いました従来海外から引揚げました者の在外の資産の問題につきましては、これが補償につきまして非常に厖大金額にも上るでございましようし、また調査も非常に困難でございまして、解決はよほどむずかしいと思うのでございます。しかしながらその犠牲はひとり海外におつたたちのみに負わすべきものではないのであつて、国家としてその補償について考えなくてはならぬことは、外務大臣も先般この委員会において御答弁になつたのでございますが、先般御答弁になりました方針のもとに、何かこれらの関係者の人たちの気持を慰め、将来に希望を与える意味におきまして、これの調査その他に対しまして、何か具体的な方法考えておられますかどうか、政府に対しまして立法措置等を講じましてその問題の解決にすみやかに入ることができるように、関係者は非常に強く要望いたしているはずでございますが、これに対しまして、外務大臣の御所見を承りたいと思います。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この問題はお話ように重要な問題でありますが、一方におきましては、財政の現状も考えなければなりませんし、その他いろいろの考慮を要する点がありますので、ここでまだ正確に申し上げる段階に至つておらないのはまことに残念でありますが、一方におきましては、国により、またその部門にもよりましようけれども、全部が全部相手国の方に取上げられてしまうであろうかどうかについては、多少まだ望みのある点もなきにしもあらずと考えております。ある国等においては、非常に好意的に考えてくれている様子も見えますので、こちらとしても全部が全部をあきらめてしまうのだという態度ではなく行きたい、できれば多少なりとももどつて来るような努力もいたしてみたいと考えて、在外公館等に十分訓令をいたしまして、その点をいろいろの方面で力を尽しております。従いまして多少まだぼんやりしているような態度とお考えになるかもしれませんが、こういう意味で、すつぱりあきらめてしまうということでなく、できるだけ手を尽して行きたいので、はつきりしない点があるのでありますが、もう少し時日を待つていただいた方がいいのじやないかと考えております。
  90. 西川貞一

    ○西川委員 ただいまの御答弁は、先般伺つた通りで、それ以上一歩も出ないのでありますが、その問題の解決のために調査機関を設るけとか、あるいはそれに必要な立法措置をするとか、何か具体的な措置を講じて、関係者の希望を満たしてやる、そういう具体的なことがしてほしいのでありますが、ただいま御答弁をいただくことができませんければ、そういうことについて深く御考慮をお願いしたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点はお説の通り考えまして、十分考慮をいたして行きたいと考えております。
  92. 西川貞一

    ○西川委員 以下私の質問することは全部大蔵大臣に関連することなんですが、大臣が御出席になりませんことは非常に遺憾であります。
  93. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 ちよつと西川君に申し上げます。決算委員会にただい大蔵大臣御出席中でありますが、もう五分ほどで見えるということであります。
  94. 西川貞一

    ○西川委員 大蔵大臣の御出席を待ちたいのでありますが、運輸大臣が何か急いでおられるようでありますから、運輸大臣に対しましてお尋ねをいたします。大蔵大臣通産大臣がおられないのは非常に遺憾なのであります。  現在の一番重大な問題といたしまして貿易振興のために輸出商品のコストを引下げることが論議されておるのでありますが、その目的を達するためには、商品そのもののコストを引下げると同時に、その輸送上の経費を軽減するということが、一番要点であろうと思うのであります。そのためには鉄道、港湾、道路、あらゆる方面に対する施設が必要なのでございますが、特に港湾設備の改良はいま少し力を入れられる必要がありはしないか。現在最もやかましく論ぜられております石炭の価格のごときも、もし港湾の設備を改善いたしまして、全部接岸荷役ができることになるならば、北海道炭を東京に輸送して参りますのに、室蘭及び東京港の設備を改善することによつて、一トン当り一千円以上の経費を引下げることができるのであります。私は自分が住んでおります宇部港の——自分のところを申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、私はよく知つておりますから申し上げるのでありますが、宇部港の修築に二億円の経費を投じますと、一年間に一億円の輸送上の経費を軽減することができるのでございます。金利の引下げをやかましく言いますけれども、それは先般の御説明でも、トン当り七円、あるいは税制の改正をするにいたしましても、それによつてどんなに御努力になりましても、トン当りでそう経費の切下げにはならないのでありますけれども、港湾の改修を十分いたしますならば、北海道炭を東京に持つて来ることによつて、トン当り一千円の軽減ができるので、これは非常に大きいのであります。しかもこれは輸出入の商品の全部に影響するのでございまして、貿易の振興をはかるために、輸出商品のコストを切下げるがためには、港湾の設備の改修こそ、もつとも重点が置かれなくてはならぬと思うのでございます。本年度の予算を見ましても、公共事業費中他の経費に比較いたしまして、港湾の改修費の増加が少いと思うのであります。また過去においていろいろいきさつもあつたようでありますが、各年次の公共事業費の増加の振合いから見ておりましても、港湾は優遇されておらない現在のよう状態のもとにおきましては、いま少し港湾改修に力を入れられる必要があると思うのでありますが、これに対しまして運輸大臣の御所見を伺いたいと思います。
  95. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのお尋ねは、私どもも全然同感でございます。何とかして港湾の整備を早めたい。外国との交通関係、また地方経済の開発の関係での地方港湾、あるいは海難事故防止のための避難港というような問題等、どれもこれもやりたいものがたくさんありまして、われわれの希望するところには、予算をどうにも組むことができなかつたのは、はなはだ遺憾であります。本年は八十億の予算を組みました。これは二十七年度に比べますと約一割の増加でありますが、もつともつと金はほしいのであります。今のお話の中の外国貿易の関係とか、国内の輸送関係について、接岸によつて輸送をよくするということが、最も大きく経済的には好影響を及ぼすことであると考えておるのであります。ようやくにして八十億を計上いたしただけであります。今申しました各方面の港湾に割振りますと、どうしても自然と集中的に工事を進め得ないのは遺憾であります。私どもはできるだけ早く今のような線に近づけるように、港湾費の増額ということにも、今後とも努力を続けて行きたいと思つております。
  96. 西川貞一

    ○西川委員 港湾費は現在公共事業費一本で出しておられるようでございますが、この公共事業費という範囲内には入りにくいものでありまして。しかも商品のコストを切下げるために、非常に重要なる港湾的な施設が多いのでございますが、そういうものに対しましては、将来産業関連施設といたしまして、公共事業費と別に一本柱を立てておやりになる必要があると思うのでございます。その点は貴重な時間でありますから、あるいは分科会等において、さらに詳細に申し上げ、また御答弁を承りたいと思うのでございますから、この際特に御答弁をいただかなくても、特にそういう点が必要であることを御認識をいただいておきたいと思うのであります。特に港湾の整備の特別の施設に対しまして、政府資金の融通をはかることが必要である。これは各方面に御認識を得まして、本年の予算におきましては、地方団体の起債のわくの中から十数億円のものを、港湾の特別の施設に対する融資として、優先的にまわすようお話になつておると思うのでございますが、その点に対しましては、どういうふうに決定しておりますか。運輸大臣並びに自治庁長官から、この十数億円の港湾の特別整備費に対する起債の問題について、御言明を得たいのであります。
  97. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方財政計画の中に入つておりまする地方起債のわくの中から、特に港湾工事のための起債を別わくにして運営するというお話は、私は承知いたしておりません。従つてもし港湾事業について特別の起債のわくをおきめになるならば、さようなこともできるでありましようが、地方財政計画の中に入つておりまする起債の配分は、それぞれその地方団体の財政状況ともにらみ合わして配分するのでございますので、この中から十何億というものを特に港湾のための起債であるというふうに分離して配分するということは困難でございます。御承知の通り各省それぞれの事業を持つておるのでございますが、もし各省別々に起債のわくを分離いたしますれば、地方財政の総合的な運営ということはできないことになつて参るのでございまして、私の方といたしましては、港湾につきましては運輸省と緊密に連絡いたしまして、御趣旨に沿うように、効率的な配分ということに努力はいたしたいと思つておりますけれども、別わくにするということは、地方財政計画上困難であると考えております。
  98. 西川貞一

    ○西川委員 ただいまの御答弁は、私どもが従来理解しておつたことと非常に違うと思うのでございますが、ここでいろいろ言葉のやりとりをしてもいたし方のないことでございますが、しかし運輸大臣はただいまの自治庁長官の御答弁で、そういうふうに了解されておるのでございますか、運輸省側のお考えを承りたいと思います。
  99. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えします。港湾公共事業費を別わくを設けて地方債の中に置くということは、そういうことの希望をもつて私どもは初め話を進めておりました。自治庁の方も、実際の地方債の取扱いは非常にむずかしい問題がいろいろある、しかしその趣旨に沿つての支出を運輸省と相談しながら考慮するというお話でありました。その点についての深い打合せは、まだ最後までには至つておりません。趣旨はその線に沿うてやるという話が出ておるままで、その点まだ御相談いたすつもりであります。
  100. 西川貞一

    ○西川委員 その問題につきましてはどうか十分に御協議をしていただきまして、特に石炭等のコストの低下のためには、港湾における荷役設備の整備をすることが非常に効果がある、トン当り一千円も違つて来るのでございますから、その点につきましては特に自治庁におきましても、よく御考慮をお願いしたいと思います。  次に食糧増産の問題につきまして私も少しお問いしたいのであります。この問題につきましては連日この委員会において各方面から論じ尽されたのでありまして、私はもう多くを申し上げませんが、ただ大蔵大臣にお聞きしておきたいのであります。連日いろいろの方面からの意見をお聞きになりまして、大蔵大臣国民生活の安定と、日本の自立経済体制確立のために、食糧増産の経費が最優先的に、しかも最重点的に取扱われねばならぬということを御認識になりましたかどうか。もう大体御認識になつたであろうと思うのでありますが、あなたの率直なるお感じを承りたいのであります。
  101. 向井忠晴

    向井国務大臣 食糧については連日御質問を受けまして、身にしみた次第でございます。そこでせいぜいこの方面に重点的に金を入れるつもりでおります。今までもすでにそれはやつておるのですが、今後ともその考えでおります。
  102. 西川貞一

    ○西川委員 大蔵大臣にそのように御認識いただきまして私はその点は満足するのでございますが、そういたしますと、食糧増産の経費のうちの大部分を占めますのは、土地の開墾、干拓等に要する経費でございまして、これらの事業は相当の年数にわたつて継続的な施工を必要とするものなのでございます。しかもこの重要なる経費が、予算編成まぎわ、あるいはすでに予算のわくがきまりまして、各事業別に対する配分にあたりまして——現在もそういう状況にあるだろうと思うのでございますが、いわゆる予算ぶんどりなどといういやな批評を受けるような騒ぎをしなくはならぬということは、継続的な予算が組まれていないためであると思うのであります。とにかく頭だけ出しておく、そうして頭だけはたくさん出したけれども、後年度から相当の経費の配分のあることを期待して仕事の準備をしておる、人もそろえておる、しかしながらその後年度になりまして、思うよう予算の配分がないために、たいへんな騒動が各地では起つて来るのでございます。すでに苦しい財政の中からも、とにかく最重点的に優先的にこれだけはやらなくてはなちぬと御認識になりましたる以上は、かくのごとき農地の事業に対しましては、明年度以降におきましては継続予算をもつて年次計画を立てて、それらに対する大体の予算の配分を考え予算を組むことが、予算ぶんどりなどという騒ぎを起さないで済む一番重要な点であると思うのでございますが、その予算編成の仕方につきまして、そういうふうにやつていただけますかどうか、お伺いしたい。
  103. 向井忠晴

    向井国務大臣 私は今ここで毎年同じ金額を出して行くということを確信いたしますことは、はばかるのですが、しかし今おつしやる通りに、農地改革、食糧増産ということは大事なことで、それに重点的に金を出そうということは心得ております。今までのところでは、私の経験ではいわゆるぶんどりと言えば、この方面にぶんどられることが多かつたように思うので、これから後にはそういうことのない場合は十分にその方面に金を出すようにしたいと思います。
  104. 西川貞一

    ○西川委員 食糧増産経費の大部分は、ただいまも申しましたように耕地の開墾、改良及び災害復旧費でありますが、私は増産のために一番大切なのは既存耕地の耕種改善による反当収量の増加と、食生活の改善に重点が置かるべきであると思うのでございます。今日の農村は栽培の技術も年々進みつつありますし、また農村における労力も非常に豊富になつて来ておるのでございますから、本来申しますれば反当り収量が相当に増加しなくてはならぬが、あまり増加しないのであります。それはどういうことであるかと申しますと、私は肥料の問題であると思うのでございます。しかも肥料の問題が論ぜられますときに常に硫安の問題であり、また硫安の価格の問題が常に強く論ぜられておるのでございますが、かりに硫安を一俵に対して百円値下げするにいたしましても、米一石当りに影響いたしますところは三十円か四十円でございまして、農家経済の上に肥料の値下げをすることは大切ではありますけれども、これによつて農家経済の上にそう多くの影響がないのでございます。しかし肥料問題といたしまして一番重大な点は、戦前におきましては日本の肥料界は満州の豆かすその他において四百万トンという有機質の肥料が入つて来ておつたのであります。また朝鮮その他からにしん、いわしかす等の有機質の肥料が非常にたくさん入つて来た。その有機質の肥料がほとんど供給がなくなりまして、それにかわつて硫安を増産して、硫安が多く供給されておるのでございますけれども、しかし窒素分の供給は硫安によつて増加いたしましても、有機質の肥料と無機質の肥料とは土壌に対して作用をするその性質が非常に違うのでございまして、この有機質肥料がなくなりましたために、土壌の性質が非常に悪くなつて参りまして、穀物の結実黄熟に非常に悪影響を及ぼしておりますのが反当収量の増加しない根本原因であると思うのであります。これを救いますのには、今日の日本といたしましてはどうしても畜産の徹底的な振興をはかりまして、自給肥料の増産をする以外には方法はないのであります。もし畜産の振興によつて自給肥料の徹底的な増産が行われますならば、反当収量の一割くらいを増加することは私は決して困難でないと思うのであります。その反面に乳、卵、肉等の畜産食糧の供給が増加いたしますれば、穀物の消費を調整いたしまして、特に米食を粉食その他に転換する上に多大の効果がありまして、かくして初めて食生活の改善ができ、国民の体位、保健状態が著しく向上改善されまして、これが最も有効な結核対策にもなると思うのでございます。それによつて公私の医療保健費の節約に多大の貢献があると思うのでございます。しかし畜産の振興は掛声ばかりが相当大きいのでありますけれども、この予算面におきましてもわずかに五億余万円しかその方の金は出されておりません。これは農林省にその計画がないのであるか、農林省はりつぱな計画を出すけれども、大蔵省の方でその点が認識されていないためにその予算が認められないのであるか、私はその点を農林大臣から承りたいのであります。私は畜産に対しまして予算を出していただくことも必要でありまするが、むしろ国民の畜産思想を高揚するために、畜産所得に対する免税を実行することが一審適切であると思うのであります。畜産の所得に対しまして税金を課さないということになりますと、これは畜産思想を旺盛にするために非常な効果がある、しかも国庫の歳入は畜産所得に対する課税をやめましたところで、大した影響はないと思うのでございますが、これはまんべんなく畜産をやります者には行きわたるのでありまして、特に現在畜産の振興が非常に振わない理由は、牛でも豚でも生産をすることを農家は非常にきらうのであります。育成をしましたり飼育いたしまするその方の所得は、税務署の多少目こぼれもあるのでありますけれども、牛が子を生んだということになると決してのがさない。子を生ませれば税金にとられてしまう。またこれは所得の一番上に積まれますので、その所得の大部分が税金にとられる。また実際にその子を売りました価格よりも、税務署に押さえられる方が非常に大きい。このことが畜産の生産を非常に阻害いたしておる。その阻害いたしておりますのを、畜産を振興いたしまするのには免税をするということが、一番まんべんなく行き渡るやりやすい政策で、すぐにもやれることで、一番効果が多いと思うのでありますが、この点に対しまして農林大臣並びに大蔵大臣の御所見を承つておきたい。
  105. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この増産をする上において、既存農地を改良すると同時に、肥料を無機質から有機質にかえて行くことが大事ではないかということでございますが、まつたくその通りでありまして、この無機質の肥料を使うことは、すでにアメリカにおきましても、化学肥料を使うことは国を滅ぼすことであるという著書まで出ております。これも農林省において翻訳をいたしまして、各協同組合にこれを配つておるようなわけであります。戦前におきましては大豆かす、菜種かす、魚かす等をたくさん入れまして、土壌をほんとうに直して行つたのでありますが、戦後におきましては、この無機質の肥料を使い過ぎるために、特に愛知県のごとく、日本のデンマークといわれたような土地ですらも、秋落ちが非常にはなはだしくなりまして、反当収量は他の府県に比べて非常に落ちるよう状態になつておるのであります。そこであなたの御指摘のように、畜産の奨励をいたしておるのでございますが、これは現在の国家財政においては、なかなか思うように行かないのでありますが、去年の補正予算以来サイロあるいは堆肥盤等に至るまであらゆることを講じておるのであります。また国有林野整備臨時措置法等によつて、牧野の改良なりあるいはまた飼料の安定という方途を講じまして、畜産の奨励に全力をあげておるのであります。それでまたその畜産の奨励と同時に、日本の食生活の改善をやつて参りまして、日本の足りない、米麦に依存している食糧をもう少し改善いたしまして、万全を期する考えでおるのであります。また税金等によつてこれを阻害されるということでありますが、これもわれわれといたしては考えておるのでありますが、御期待にまだ沿えないことを遺憾に思います。
  106. 向井忠晴

    向井国務大臣 税金のことはとくと研究いたしまして、できますことは実行いたします。
  107. 西川貞一

    ○西川委員 税金をおやめになることは、一番政府の手のかからないことであつて、しかも畜産をやる者には全部行き渡ることでありまして、私は非常に効果があると思いますので、これは真剣に御研究いただきまして、近い将来に実行していただきたいと思うのであります。それから硫安は、私はもう現在の農村では使い過ぎておると思います。硫安の使い過ぎが多大の弊害を生じておると思いますが、しかしながら硫安のコストを低下いたしますのには、今日の重化学工業のすべてが生産規模を拡大して行くことが、コストを低下する一番大きな要件でありまして、従つてあらゆる手段を尽して硫安は輸出する。輸出した代価をもつて飼料を購入いたしまして、飼料を豊富に輸入いたしまして畜産の振興に資する。つまり硫安を直接日本の耕地に入れるのではなくして、外国に出して飼料とかえて、家畜の腹を通して有機質の肥料にかえて日本の耕地に入れるということが、私は食糧増産の要諦であると思いますので、農林大臣はそれについてはどういう方針を持つておられますか、お伺いしたいと思います。
  108. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 肥料をたくさん生産して、そしてこれを外国に売るということについては、私も同様な意見でございます。但し農村を犠牲にして、その犠牲によつて輸出をするということについては、われわれはこれは絶対反対いたしておるのでありまして農村にこれを入れる金額も、あるいはまた外国に出す金額も、決してその間にあまり差のないようにして、そして農村を犠牲にしないようにして輸出することがよろしいと思うのであります。そしてまた輸出したその金額によつて安い飼料等を入れて、これが家畜の飼料になることは望ましいことであろうと思います。
  109. 西川貞一

    ○西川委員 農地の開墾、干拓等に対しましては、政府も非常な犠牲を払つて努力されておりますけれども、しかし非常にこのことは犠牲が大きくて困難なのでございますが、最近駐留軍が、従来使つておりました、あるいは押えておつたと申しますか、そういう関係にあつた飛行場を解除いたしましてそして日本政府の手に返還をいたしておる所が相当にあると思うのでございます。そしてこれらの飛行場は農耕地として利用し得るものが相当面積あると思うのでございますが、これらはすみやかに、国有財産でありますならば農林省に移管をいたし、また農林省はすみやかに農民に払い下げまして、これを食糧増産の役に立てることがきわめて肝要であると思うのでありますが、そういう点はどういうふうになつておりますか。
  110. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 駐留軍等によりまして接収が解除されて、日本政府に渡つたものはたくさんございます。しかしその中で地元の要望等のありますものについては地方の府県と相談いたし、そしてまた保安隊、調達庁その他と相談をいたしまして、これを農地にするように努力いたしております。
  111. 西川貞一

    ○西川委員 ただいま接収を解除されました飛行場等におきまして農耕地として適当なる土地が相当ある。また地元の農民が払下げを非常に希望いたしておる、あるいはまた占領軍の接収当時において、すでに貸下げを受けて農耕地に使用しておる等の土地に対しまして、保安庁の方がそれを使用したいという意向を持つておるというようなうわさも多少聞くのでございます。そこで保安庁長官にお伺いたしたいのは、この予算において保安庁は飛行機の購入をされるようでございますが、その購入されました飛行機を使用いたしますために、何か保安庁の専属と申しますか、保安庁本位の飛行場をお持ちになるような御計画であるのでございますか。
  112. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安庁としては、この前の委員会でお答えいたしました通り、少数の飛行機を持ちたいと思つております。これは主として演習あるいは通信、警戒のためでありまして、飛行機を持つ以上はどうしても飛行場は必要であります。そこで今計画といたしましては、さしあたり管区ごとに各一箇所、これは保安隊のことであります。警備隊の方では各部隊、これは二つばかりありますが、各一箇所くらい持ちたい、こう考えております。しかしまだ具体的にどの場所を飛行場にするという確定はいたしておりません。ただここで申し上げておきますのは、飛行場と申しましても、今申し上げました通り、われわれといたしましては、きわめて軽微な飛行機でございますから、そう大きな飛行場は必要はない、こう考えております。
  113. 西川貞一

    ○西川委員 私は保安隊の活動の上に一番大切なことは、国民の理解と信頼と協力を得ることであると思います。これは軍隊でありましようとも、もとより必要なのでございますけれども、特に日本の保安隊の性格といたしまして将来保安隊が活動をしなくてはならぬというようなことがあつてはならぬと思うのでございますが、しかしありました場合におきましては、その場合一番肝要なことは、国民がよく保安隊を理解しておるか、またこれに協力する精神を持つておるかいないかということが非常に大切なのでありまして、もし保安隊が国民の理解を得ず、反感を買うようなことをいたしておりましたならば、これは保安隊を持つておることが、かえつて逆作用を来すようなことにならぬとも保証しがたいのであります。その点は長官は十分御認識をいただいておると思うのであります。私が保安隊のことにつきまして保安隊として活動される諸君に対して最もお気の毒考え、またわれわれ国民としても非常に遺憾に存じますることは、その成立が占領下において出発をいたしまして、そうして何かしらん国民の気持と離れた状態においてこれは出発しており、また育ちつつある。このことは今日の場合、政府国民も協力一致いたしましてこの保安隊の国民の理解を求め、また協力を得るように努力しなくてはならぬと思うのでございます。特に保安隊の所在いたします地元町村民の理解と協力を得ることは何よりも肝要なことでございまして、そういうような点から申しまして、保安隊が飛行場をお持ちになるにいたしましても、演習地その他の土地をお使いになるにいたしましても、よく地元民と協議をなされ、協調なされ、いやしくも地元民の反対を押し切つて昔の軍隊が至上命令としてやつたように、占領軍がやつて来たそのままのような行き方をなさいましたならば、これは保安隊の将来のためにまことに悲しむべき結果を来すと思うのであります。私は、時間がございませんので、あまり詳しく申し上げられぬことを遺憾といたしますけれども、そういう見地からいたしますと、保安隊の予算の要求、予算の編成の仕方等に対しましても、大蔵大臣におかれましてはよほどお考えにならなくてはならぬ点が多々あると思う。たとえば予算書を見ますると、保安隊の予算の中には器材費という一本の名目によつて二百五十億円の金が要求されている。その内容に関して何らの説明はない。今日貨幣価値が下落しているとは言いながら、二百五十億円という予算がたつた一本で要求されて、予算書にその内容の説明がないというようなとり方は、私どもには何だか昔の臨時軍事費的な色彩を持つているような感じがしてならない。この点は念には念をお入れになつて、十分に分科会でもその内容を御説明になり、もとより国会の十分なる理解を得られると同時に、国民に対して理解を求められるところの態度に出られなくてはならぬと思うのでございます。この点につきまして長官の御所見をお伺いいたします。
  114. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの、保安隊はその所在地の住民の理解をよく求めるようにしろというお話、まことにごもつともであります。私は衷心いわゆる愛される保安隊をつくり上げなければならぬと思つて、努力中であります。幸いにいたしまして、保安隊を設置した各町村におきまして、その土地の人たちはただいまのところ非常に理解をされまして、ほとんど涙ぐましいほどの協力態勢を整えられている、まことに感謝にたえません。  飛行場の設置につきましても、地元民とよく協議いたしまして、無理のないようにいたしたいと考えております。  最後に、器材費のことを申されましたが、なるほど器材費として二百五十億円計上しているのであります。しかしこれはその細目におきまして、あるいは通信器材、車両器材、訓練用備品、あるいは部隊関係器材等として計上いたしております。この間においてはつきりさせておりますので、昔のいわゆる臨軍費というようなものとは、全然性質を異にしていることを申し上げておきます。
  115. 西川貞一

    ○西川委員 それでは飛行場等の設置につきましては、地元民の反対を押し切つて、無理な土地の取上げ方などはなさらない、また駐留軍がせつかく接収解除いたした土地等につきましても、その点は十分御考慮に相なるものと了承いたしておきます。  次に、土地の払下げの問題でございますから、まつたく性質の違う問題でございますが、この際大蔵大臣に承りたいのであります。最近富士山頂の払下げの問題が、世上の論議をにぎわしておるのでございますが、申すまでもなく、富士山は日本国土の象徴であり、日本精神の象徴でありまして、現在国有地であるものを一団体、一法人の所有物として払下げることが、国民感情全体の上からもいかがかとも思われるのでありますが、富士山頂は国立公園の中心地であり、また国民保健のための公共地域といたしまして、厚生大臣から大蔵大臣に対して昭和二十六年十二月及び本年二月六日付の二回にわたつて、これを公共福祉用の財産として厚生省に所管がえを要求している由承つておりますが、そのよう措置されますことが、適当ではないか。この富士山の問題は一地方の問題ではなくて、全国民が深い関心を持つている問題でございますので、これに対する所管大臣の御所見を承つておきます。
  116. 向井忠晴

    向井国務大臣 その点につきましては慎重相談をいたして、決定するつもりでございます。
  117. 山縣勝見

    山縣国務大臣 私の答弁いたさんとするところは、今質問者が質問される際において十分述べられたのであります。これは大蔵省の所管でありますから、例の社寺境内地処分中央審査会の答申に基いて、大蔵大臣の権限においてやることであります。但しその答申の中にも、払下げはしてもよいが、公共用の見地から保留するものはしてよいということはいつておる。公共福祉の見地から申して、どの程度を保留するかということは問題であります。お話にありました通り、富士山は国土の象徴でありますから、そういう見地から、政府においては一般国民の納得いたしますような線で検討して善処いたしたいと思います。
  118. 西川貞一

    ○西川委員 次に、現在非常にやかましく言われております石炭価格の対策に関して伺いたいのでございますが、日本の石炭が高価である根本の原因はどこにあるかと申しますと、石炭資源の状態が貧弱であるということであります。これは石炭鉱業における自然の抵抗が強いからであります。従つて何とか自然の抵抗を排して生きて行かなくてはならぬのが、日本民族の一つの宿命的な事実でありますから、そういうことを根本的に十分に考えながら、これを克服して行く方策を研究しなければならぬのであります。政府は、金利の面、税制の面等におきましてコストの低下を考えておられるようでありますが、先般も御答弁になりましたように、これはトン当りそう多くを期待することはできない。縦坑の開鑿によりますと、相当大きなコストの切下げができるようでございますけれども、しかしここでわれわれが考えなくてはならぬことは、縦坑の開鑿はきわめてけつこうでありますが、すべての炭鉱に縦坑を開鑿してコストを切下げることができるわけではないのであります。そうして、石炭の価格を決定いたしますのは、他の工業製品とはよほど様子が違うのでありまして、いかに平均生産費が下つたからというて、それですぐ市場価格が下るわけではないのであります。石炭のごとき価格の引下げをはかろうとするならば、その限界点にある、いわゆる限界生産費を引下げることが一番肝要なのであります。もし限界生産費を高いところに置きまして、ただ一般の平均生産費を下げようとして努力をされたならば、その下つただけのコストは利潤として残る、これが石炭工業の本来の性質であります。一部の炭鉱がいかにたくさんもうけておろうとも、そして一部の利潤がいかに多かろうとも、それが石炭の市価を決定しはしない。すなわち石炭の市価を下げますには、限界生産費に該当する石炭鉱業のコストを下げなくてはならぬのであります。そして、これに該当する炭鉱は大手筋よりもむしろ中小炭鉱であり、しかも一枚看板の縦坑の開業は大部分大手筋の炭鉱ではないかと思うのでございます。従つてこれは限界生産費の低下にはならない場合が多いのでございます。そこで政府においては、縦坑の開鑿はもちろんおやりになることを希望いたしますが、同時に、限界生産費を低下する意味におきまして、中小炭鉱に対しまして何らかの対策を持つておられるかどうか、お伺いしたい。また大手だからといつて、全部のものが縦坑をやれるわけではない。縦坑はやれないけれども、他の方法によつて相当生産費を切下げることのできるような対策を持つております事業者に対しましては、それぞれ融資その他の方法によつてこれを助成され、促進される御用意があるかどうか、お伺いしたいのであります。  また輸入炭の問題がいろいろ言われておりますけれども、日本ような貧弱なる資源を開発して生きて行かなければならぬ国においては、国内でまかなうことのできる資源は、なるべく輸入にまたないようにしなくてはならぬと思う。強粘結炭その他どうしても国内で足らないものは輸入することが適当であるけれども、無煙炭とかあるいはその他のすそもので、国内に十分ある資源は、国内資源を利用することに重点を置かねばならぬ。せつかく傾斜生産方式、最重点的産業として多年多額の国幣を注ぎ込み、多大の犠牲を払つて育てて来た石炭鉱業が、この際政府の政策によつてつぶされることになりましたならば、これは産業全体のために、また国民生活の安定のために、非常に遺憾な結果になると思うのでございますが、その点に対しましてはどういう方針を持つておられるか、お伺いしておきたいと思います。
  119. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。お話のごとくに縦抗というのは大体二十二の事業主に対するものでありまして、縦抗は七十九本、四百九十億円の資金を投じてやることになつております。しかしお話の、俗にいう中小炭鉱に対しましてはそれは及ぶところではございません。従いましてこれらに対しては、税制の面、金融の面等でできるだけのことをいたしますほか、これらは自分の力では機械等の合理化ができぬ部分があるのでありますから、最新の機械等をあるいは政府の手で貸し付けるというよう方法をとることも一案であろうかと思つて、目下これらに対しても具体策を立てている次第であります。そしてあなたの、いわゆる限界生産費をできるだけ下げて行く、そういうことによつてつて行こう、こう考えておる次第であります。  さらに、一般について申しますと、お話のごとくに、輸入炭をみだりに増加するごとによつて国内産業を圧迫すべきものではない。しかし日本には輸入炭でなければならない炭種が相当ありますし、昨年はストその他の問題もございましたから、三百七十数万トンを入れましたが、本年はそれほど入れる必要はございませんけれども、やはり三百万トン程度のものは、炭種別を見ますと、どうしても輸入を必要とするかと考えております。一切の政策にあわせて石炭対策をやりますれば、漸次その目的を達成して行く、かよう考えておる次第でございます。
  120. 西川貞一

    ○西川委員 ただいまの中小炭鉱に対する機械のことにつきましては、通産省は予算を御要求になつたけれども成立していないように見られるので、今さらお考えになつてもことしの間には合わぬことでございますが、そういうふうに政府の方でこれをやろう、あれをやろうという官僚の机上の考えでなしに、業者自身が、それぞれ自分の山の対策を立てまして、こういう対策をすれば、こういうふうに自分の山ではコストが下るのだという計画をもつて出ましたならば、縦坑の開鑿に対しまして資金の融通をなされますように、中小炭鉱に対しても、また縦坑以外のものに対しても、融資等の面においてコストの下るような方策をおとりになるかどうか。ことしの予算に計上せられなかつたことを考えてもしかたがないが、まだ融資の問題は今年間に合うことでございますから、その点について大臣の確言をいただいておきたいと思います。
  121. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お話ようにことしの予算には計上はできませんでしたが、次の予算にはぜひ必要であると思つて、昨年はあまり具体的でもなかつ、たので、今もう少し具体的な案を練つておる次第でございます。  融資の問題につきましては、どうしても私ども必要と認めるものについては、十分あつせんの労をとるつもりでおります。
  122. 西川貞一

    ○西川委員 この点は通産省の一枚看板でありまする縦坑の開鑿と同じような見地から、縦坑のやれないものに対しましては、山自身が計画したコスト低下の計画に対しまして縦坑の開鑿と同じよう考え方で融資していただきたいということを強く要望いたしております。  これから予算案の本題に入りたいと思うのでありますが、この予算案におきまして、われわれ自由党といたしましては、わが党の公約である一千億円の減税が実現することを非常に欣快に思うものでございます。そうして租税収入は、この減税を行いましてなお前年度に比較して二百二十七億円の増収が見込まれておるのであります。政府は二十八年の景気の見通しにつきまして今日の世界経済は、朝鮮動乱後の異常なる好況状態が沈静して、調整過程にあるものと認められるが、このために日本経済の一部にも景気後退の現象が生じている。特に中小企業等の面には相当深刻なる影響を及ぼし、これが対策を必要としていると申されております。そのように景気後退の事実をお認めになり、また中小企業等に深刻な影響を及ぼしつつあることを認めておられながら、課税の基礎となる国民所得の算定におきまして、前年度に比較して増加の見積りをされておるのであります。すでに景気が後退の段階にあることを認め、特に中小企業に対して深刻なる影響があることを認めながら、どの部門を見ても所得は増加する、どの部門においても所得が増加しながら、景気が後退しておるとか、深刻なる影響があるとかいうのは、これはどうも少しおかしいと思うのでございますが、いかがでございますか。源泉課税の主たる対象であります給与所得等におきましては、公務員の給与ベースの引上げその他によりまして、この程度の見積りは妥当であろうと思われます。ところが法人所得におきましては、一割程度の減少を一応見積りながら、その税額に対しましては、昭和二十六年度の当初の見積りに対しまして、昭和二十六年度の実績は三倍という、べらぼうな増収になつたのでありますが、その伸び切つた二十六年度の実績の税額にはほとんど近いものが、二十八年度にも見積られておりますことがはたして妥当であるかどうか。特に申告所得税の方におきましては、二十六年度の実績は、一千八十億円でございまして、二十七年度におきましては、当初の見積りは、その実績にほぼ近い一千七十三億八千八百万円を計上されたのであります。ところが二十七年度の徴税実績にかんがみまして、相当の自然減収が必至となつて参りましたので、補正予算において二百三十四億円の減額補正をされたのであります。私どもはここに深刻なる中小企業に対する影響が反映して来た、つまりこの申告所得税の主たる対象であるこれらの事業所得は、昭和二十七年においてすでに下降の段階になつたと見ておつたのであります。ところが二十八年になりますと、これがまたぐつと上に上つておるのでございます。すなわち景気後退といい、特に中小企業の深刻なる不況と申しながら、二十八年度の申告納税の対象となりまする総所得におきましては、二十六年度の実績の七千五百四十五億四千七百万円をさらに二割五分増加いたしまして、九千四百億余円の見積りとなりておるのであります。二十六年よりも二割五分増加するという見積りなのでございます。二十六年には何と申しましても、朝鮮ブームによりまして、日本の景気が上昇の絶頂にあつたものと国民一般は解しておる。そして二十七年は少くとも中小事業の方面においては、所得がこう減つて来た。ところが二十八年におきましては、その二十六年よりもさらに二割五分増加するという、こういうお見積りなのでございます。これは私どもとしては説明を承らぬことにはどうも納得しがたいのであります。申すまでもなく国民所得とか国富とかいうものは、それを予想することは非常にむずかしいのでありまして、主税局におきまして、あるいは経済審議庁におきまして、どういう方式をもつて推進されておるか、この点は理論的にも非常に検討しなければならぬ点が多々あると思うのでございますが、日本政府の官僚の、国民所得の見積りに大きい錯誤のあることは、二十六年度及び二十七年度においてああいうようなべらぼうな、予想外の自然増収を見たことによつて証明されておる。二十六年度におきまして、当初見積りの三倍も法人税をとつたということは、二十六年度における景気の変動に対して、主税局なり経済審議庁がこれを予想することができなかつた。それが二割多かつたとか三割多かつたというならいいのですけれども、倍ではない、三倍も増収になるものを、当初予想し得なかつたということは、私どもは所得の推計のやり方に対して信頼しがたいものがそこにあるのです。そのときには増収になるものを見ることができなかつたのでございますが、私ども一番心配いたしますことは、過去におきまして国民所得増加の趨勢を予知し得なかつた当局が、今度は景気の後退期に入つて減収の趨勢を認識することができないで、常に上昇歩調のみをたどるものと予想いたしまして見積る結果、そこに私どもは非常に苛斂誅求的な現象が起つて来はしないかということを心配するのであります。そこでこの小さい数字を政府委員から承ることは、今日は時間の関係もありますからいたしません。ただ私どもはそういう統計に基いた数字よりも、財界のこと、事業界のことにつきまして、練達堪能な大臣の勘の方が、ここでは私は当てになると思うのであります。あなたはこの予算に対しまして、下から出しましたところの数字が、それはいかぬとはおつしやらなかつたかもしれませんが、あなたの勘で見られて、私どもが心配しておりますことが心配ではないという、十分な自信を持つておられますかどうか、この点に対する大蔵大臣の御所見を承つておきたいと思います。
  123. 向井忠晴

    向井国務大臣 私の勘から申しますと、このくらいの見当でいいつもりでおりますが、しかしながらさつき御指摘になりました二十六年度が非常に多かつたということは、主税局の誤算があつたと申すよりは、財界が急激な変化を来したという方が大きな理由だと思つております。
  124. 西川貞一

    ○西川委員 つまり急激な変化を予想し得なかつたから、今度は急激ではないけれども、だんだん不景気になりつつある、その不景気になる現象が、国民所得の上にどう影響するかということが、十分に予想されなかつたのではないかという点を私は心配するのであります。しかしこの点は、ここで言葉のやりとりはもういたしません。大臣は先般塚田委員の質問に対しまして従来の政府の減税は、主として自然増収を財源として減税して参りましたが、今後におきましては、自然増収ということはあまり期待できないので、将来の減税に対しましては非常に望みが薄いというような御見解を述べておるのでございます。しかし国民の負担状況は戦前に比較してどうなつているか。国民所得に対する租税負担の割合は戦前の二一・八%から二〇・四%へ、すわち七・六%の割合にすぎないのであります。ところがこれは総体の比率を見ればその通りでございますが、国民の個々の税金の負担がどのようになつているかということを調べてみますと、個人の場合において、戦前と戦後の負担関係を調べるということはなかなか千差万別でとらえにくいのでありますけれども、ここに大蔵省の局長、課長、課長補佐、係長、係員というような方の個人の所得と負担率というものを比較してみますと、昭和九年——十一年の平均におきましては、局長の総所得は年間七千九百二十円でございまして、それに対する税金は二百七十円である。局長でありまして三・四%の負担しかしていなかつたのであります。それが、今度御提案になつておるこの改正法におきまして——現在の局長の給与は六十一万二千五百六十三円でありまして、所得は約八十倍。ところが負担は十二万一千三百円になりまして、その割合は約二〇%になつておる。戦前におきましては三・四%のものが約二〇%になつておる。所得は八十倍となり物価は三百五十倍となつて負担は、実に四百五十倍となつておるのであります。課長におきましては、戦前に二・六%の負担でありましたものが、この改正案によりましてもなお一五・四%です。課長補佐におきましては、戦前は一・八%でありましたものが、この改正案におきましてもなお八%、それから係長におきましては一・五%の負担であつたものが四・二%、それから係員初任給は戦前は無税であつたものが一・一%となり、また家族のおらない者は三%の負担をするというように、率からいいますと現在年間六十万円程度の所得で、前の六千円、七千円の所得の階級の負担が非常に高くなつておるということであります。またこれを事業所得について見ますならば、戦前におきましては、三千円の事業所得に対しまして税額はわずかに五十四円でございました。その負担率は一・八%にすぎなかつた。これが今日戦前の二百倍の所得、六十万円の事業所得をあげます者は、十四万円の税金を負担いたしまして、二三・四%の負担となるのでございます。また戦前に五千円の所得の者はわずかに百七十円の租税でありまして、三・四%の負担率でありましたものが、現在百万円の所得に対しましては三十一万七千三百円、すなわち三一・七%の税金を負担しなくてはならぬ。戦前の一万円の所得の者は五百四十円の税金でありまして、五・四%の負担であつたものが、今日二百万円の所得に対しましては八十万九千二百五十円の税がかかりまして、その負担率は四〇%以上になります。戦前に二万円の所得の者は千五百六十五円すなわち八%足らずの負担でありましたものが、現在その二十倍の四百万円の所得の者は、実に百九十四万三千二百円という負担になるのでございまして、その負担率は四八・五%というように高くなつておるのであります。このことはどういうことを意味しておるかと申しますと、われわれ国民は非常に高い負担を負いまして、戦争に負けたからいたし方がないということで、一応あきらめておる。しかしさらに静かに考えてみますならば、戦争に負けたためになぜ負担が高くならなくてはならぬか、現実の問題としては、われわれは軍備の負担を免れておりまして、戦前予算のあるいは四割、あるいは五割、六割を占めておりましたところの軍事費の負担は、現在の保安費の負担と比較いたしますと、現在の方がはるかに軽くなつておる。植民地を失つたことも、内地の者が負担を増加しなくてはならぬ原因にはなつておりません。その他いろいろ考えてみますと、このように非常に高い率の負担をしなくてはならぬということは、国民として納得の行かぬ点が非常に多いと思うのであります。これにはもちろんそうなるべきいろいろの理由もあるでございましようが、その点をもつと国民によく知らして、こういう事情でこういう方面に金が使われておるのだから、このように負担が高くなるということを納得させなくては、このままの負担が今後将来続いて行くということになりましたならば、国民はなかなかがまんができかねると思うのでございます。特にわれわれが考えなくてはならぬことは、こうした数字から見ますと、戦前のわれわれの税金というものは、その税金をとらなかつたならば貯蓄となり資本化すところの、そういう階級の面から大部分の税金はとられておる。大蔵省の局長諸君ですらも、三%程度の負担しかせずに済んだのが、現在は二〇%も負担をしなくてはならぬということは、国民の生活費の中から大部分の税金が払われておる。つまり同じ税金でありましても、その性質がまつたくかわつて来ておる。この性格を真剣に考えますならば、国費を使用するという方面に、さらに根本的に再検討をしなくてはならぬ点が多々あるとわれわれは思うのであります。この個人別についての負担関係を見ますならば、われわれは現在の政治のやり方、行政のやり方、毎日問題になつております行政整理の問題にもほんとうに厳粛な気持になつて政府も国会も真剣に根本的に再検討をいたしまして、戦後の平年におけるところの負担から国民をどの程度に置いて行くかということを考え直して行かなくてはならぬと思うのであります。その点におきましては内閣の各大臣諸公はもちろん、特に大蔵大臣におきましても、さらに一大決心をもつて将来の財政に臨まなくてはならぬと思うのでございますが、それに対しましての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  125. 向井忠晴

    向井国務大臣 近年税金の高くなりましたのはいろいろの原因もございましよう。そのうちには荒れ果てました日本のいろいろの施設とかあるいは住宅がないとかいうふうなこともあります。これは戦前にはなかつたことで、この戦後になりまして起つた費目でございます。そのほかにも今御指摘になりましたように、今後倹約をして一般の民衆に対する税金が重くならないように心がくべきはもちろんでございまして、私自身といたしましても始終それは考えておる次第でございます。今後とも今の経費を節減し、それから行政の整理をして行くという点については努力を続けるつもりでおります。
  126. 西川貞一

    ○西川委員 実はもう少しぜひしたい質問があるのですが、時間がございましようか。
  127. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 あとの質疑者の都合がありますから、あとにお譲りを願えませんか。
  128. 西川貞一

    ○西川委員 一番根本の問題ですから、それではもう十分ほど……。
  129. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 それではあと十分。
  130. 西川貞一

    ○西川委員 この予算に対しまして、当委員会においても世上においてもインフレーシヨンの問題が一番論議の中心になつておるのでございますが、実は私は財政上におけるインフレーシヨンの問題は何らかタブーのような感じであつてそれには触れてはならぬ、もう何でもかんでもインフレにならなくちやどうにもならぬ、インフレだインフレだといいさえすればいつぱしの財政家であるように、とにかくこいつはインフレだといえば、それですぐおしまいになるというふうな気分がいたすのは、はなはだ遺憾であると思うのでございまして、インフレーシヨンというものの実体が一体何であるか、またどういう具体的な現象をとらえてそれをインフレというのかということは、もう少し掘り下げて究明しなくてはならぬと思うのであります。  財政面からのインフレーシヨンといたしましては、まず政府資金の散布超過による通貨の増発が問題となるのでありますが、本予算案が成立し、執行された場合の政府資金散布超過は、先般政府委員の説明によりますと確定的なものが千四十九億円、そのほかに国債収支の関係食糧管理特別会計の動きいかんによつて変動するものは若干あるが、大体千三百二十一億円の程度であろうということでありましたが、これによつて通貨関係の上にどういう影響を与えるか、明年度の通貨の総量はどの程度になるという見通しでありますか。またこの予算には、右のごとき散布超過と同時に減税国債、鉄道並びに電信電話公社の社債、地方債等、政府及び政府機関、地方団体等による資金の吸収も相当行われるのでありまして、その引揚げと散布が、通年的には散布超過になるにいたしましても、時期的に調整をはかつて行わないと、一時的には金融市場にはなはだしき圧迫を加えるのでありまして、私は年度の初めのころには金融界に非常に圧迫を加えることになりはしないかということを懸念するものでございます。この点に十分に留意して、隔月並びに各四半期別の政府対民間の収支計画をお立てにならなければならぬと思うのでありますが、とにかくこの予算によりまして、通貨の状態はどういうふうになつて来るというようなお見通しであるか、伺いたいと思います。
  131. 向井忠晴

    向井国務大臣 通貨は、大づかみの見当で四百億ぐらいのものがふえるんじやないかというふうに考えておりますが、しかしこれはいろいろの要素から動いて参りますので、数字的に確かなところの見当をつけるということは、ちよつとむずかしいと思うのであります。
  132. 西川貞一

    ○西川委員 時間の制約を受けましたので、私の所信を十分に申し上げることができませんし、またこの問題は非常にデリケートな、重大な、念を入れて検討をしなくちやならぬ問題でありますから、私はこれはあまり深く進むことをここではやめようと思うのでありますが、通貨は大体四百億円ぐらいの増発になる。しかし、それが増発になるということで世の中が非常に神経過敏になりやすいのでありますけれども、その四百億円の通貨の増発になることが、現在の他の経済数量のつり合いから見てそれだけで適当なのかどうか。その点に対しまして私がこれから申し上げたいと思いましたことは、私は現在はインフレーシヨンじやなくて、むしろはなはだしきデフレーシヨンの状態にあるんじやないかと思う。つまり戦前と比較いたしましても、また戦後の各年月の歩みを見てみましても、物価の上昇率とか、あるいは生産の比率というような他の経済数量関係に比較いたしまして、現在出ております通貨は、決して多過ぎるのではなくして、むしろ少な過ぎるんじやないか。これが少いために民間産業界におきましては短期の資金に非常に困りまして、お聞き及びのような非常に高利の金融業が跋扈いたしておりますその根本の原因は、物価の上昇率並びに生産の比率が非常に増大しておるのに対しまして、通貨が少な過ぎるのではないかということを、私は考えるのであります。  試みに二十一年以後の趨勢を見ますと、かりに戦前の昭和九年、十年を基本といたしまして、その当時の通貨の総量に物価の上昇率を乗じ、また生産の比率を乗じまして、物価が上つたその比率だけ、生産が増加した比率だけ通貨が増加すべきものとして見ますならば、現実に動いております通貨はどういう関係になつておるかと申しますと、二十一年は所要量が百九億でありますのに対しまして九百四十億出ておる。非常なインフレであります。二十二年は、四百二億の所要量に対しまして二千二百八十億出ておるのでございまして、これもまた非常に大きなインフレであります。二十三年は、千六百三十億の所要量に対しまして三千五百六十七億出ておる。二十四年は三千五百五十三億の所要量に対しまして三千五百七十九億、これも少し所要量より多いのであります。二十四年までは多い。しかるに二十五年以降におきましては逆転をいたしまして、二十五年は四千九百十九億の通貨所要量に対しまして、実際は四千二百五十四億しか出ておりません。八六・四%に通貨の方が下つて来て、二十六年になりますと、九千五百五十二億という数字が出るのに対しまして実際は五千百二億でございまして、これも五三%しか出ておらない。二十七年におきましても二十八年におきましても、大体数字の上では、戦前の通貨総量に物価の上昇率を乗じ、生産比率の上つただけの率を乗じますと、一兆億円に近い通貨の総量が出て来るのであります。しかるに実際は五千億円以下に押えられておるということは、インフレの議論がやかましいけれども、数字的によく検討してみますと通貨はむしろ過少の状態である。この過少の状態は、銀行の窓口からながめまして、特に通貨価値の安定ということを至上命令として考えております人たちには、これは通貨が過少には見えない。けれども実際に事業をして資金を使わなくちやならぬ、特に金融に非常に困つている中小企業者方面が非常な金融難に陥つて、あの高金利の金融業者が跋扈しているというよう状態、かくのごとき短期資金の欠乏は、確かに所要の数量に対しまして通貨がはなはだしく不足しておると私は考えるのであります。従つてそういう前提に立つて将来の財政というものを考えて行きますときに、本年の財政はその転換期の第一歩を踏み出しておりますが、明年、明後年等に対しましては構想を根本的にかえて、通貨の濫発はこれを戒めなくちやならぬ、インフレーシヨンはこれを戒めなくちやならぬけれども、通貨が少くさえあればいいというのではない。通貨を過少状態に置いて、極度の金融難のために興るべきところの産業を押え、それがために失業者を増加し、滞貨を充満させて、しかも金がないからあれもやれぬ、これもやれぬというようなまずい財政は、明年度以降においてはやめていただかなければならぬと私は思う。この点に対しまして私はるる、もう三十分ほどもらつて私の主張を述べ、また御所見も伺いたいのでありますが、与党の委員としまして議事進行に協力いたしますがために、まことに残念でありますけれども、私はこれをもつて質問をお約束通り打切ります。これに対する大蔵大臣の御所見の一端を伺つて、また他の機会に、ゆつくり私の所信も申し上げたいと思うのでございます。
  133. 向井忠晴

    向井国務大臣 御高説は十分に了解いたしました。そしてよく研究いたしまして、今後の財政上の措置につきまして、適当な処置をとりたいと思つております。
  134. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 この際委員長よりちよつと申し上げたいと思います。御質疑の時間は、理事会における申合せの次第もありまして、それを超過いたしますと、他の質疑通告者の持時間にも関係がございますので、その点をお含みの上に、なるべく時間の範囲内におとどめ願いたいことを希望しておきます。平野力三君。
  135. 平野力三

    ○平野(力)委員 私はもつぱら肥料問題、特に硫安問題について農林大臣通産大臣に特にお尋ねをするのであります。  廣川農相は過般この予算委員会におきまして、自由党の農業政策また廣川さんの考えておられる農業政策は、将来統制を撤廃して自由経済に持つて行く方針だ、しかし野放しにはしないのだ、こういうお説がありました。私はこの趣意は、この前の委員会において了承したわけではありませんが、答弁としては一応そういう方針であると承つた。ところがここでお伺いをしなければならないことは、はたして今ここに議題としておりますところの肥料、硫酸アンモニアというものが、昭和二十五年八月に政府において統制を撤廃せられて以後今日まで、これが野放しの自由でなくして何であろうか。これは農相の言明とは、肥料に関する方針が違つておる。これをまずただしたい。具体的に申しますならば、昨年の十一月、わが国の硫安製造会社が輸出をするにあたつて、東洋高圧、日東化学、住友化学、これらの業者が五十一ドルをもつて輸出をしたいという交渉をいたしておりまするときに、昭和電工が突如としてワシントンにおいて、四十六ドルで投売りをした。これは当時の経済新聞においては大きく報道せられ、われわれ硫安に対して多大の関心を持つておる者にも、相当大きなシヨツクであつたのであります。こういうように必要なる重要な物資の輸出にあたつて、ある会社がある値段で売ろうと思つていた、ある会社が外貨さえとればいいのだというので、極度に安い値段で売つて出る、こういう肥料情勢に対して、政府は一体どういう処置をとられたのか、おそらく処置をとる方法はなかつたのじやないか。よつて成行きを見ておられた。成行きを見ておられたということになれば、これは廣川農相の野放しにはしないのだという言明はあるけれども、事実は硫安に関する限り野放しの自由であつて、統制撤廃は真に野放しになつた、こう肥料政策を考えざるを得ないのでありますが、これについて農相の御所見をまず第一に伺いたいのであります。
  136. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 化学肥料、特に硫安等が、生産が非常にふえて参りまして、輸出するようになつたのでありますが、当時におきましては、この輸出価格が、国内においても、こういうふうに日本内地と国際間にこんなに開きがあるようになるとは実は考えておりません。内地においても国際価格にさや寄せして、肥料は下げ得るものであるとわれわれは考えつたのであります。そこで私たちは、今後の成行きとして、これを野放しにして傍観するのではないのでありまして、今いろいろとくふうをいたしておる最中でございます。
  137. 平野力三

    ○平野(力)委員 私が伺つたのは、根本方針として野放しにはしないのだという言明があつたが、硫安に関する限りはきようまで野放しでやつて来られたのじやないか。これをこれからどうするということは後ほど問いますから、正直に今までは遺憾ながら、野放しであつたという言明を得なければ、あなたのこの前の委員会の答弁は間違つておるのです。
  138. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 決して野放しではないのでありまして、安定帯をつくることに協力いたしたい。いろいろ手段を講じておるのでありますが、あなたの言うように、はつきり計画的にやらなかつたということは言えると思います。
  139. 平野力三

    ○平野(力)委員 これからやりたいということでありますので、これからの問題については後ほど議論するのでありますが、依然として、どういうような御言明がありましても、硫安に関する限り、最近まで廣川農政は野放しであつたと、遺憾ながらこれを承認せざるを得ません。  次に伺いたいことは、この硫安の輸出が出血である。最近出血という言葉が非常にあらゆる方面にはやつておりますが、現在硫安製造会社が外国に売つておる硫安は出血である。これはあるいはそうであるかもしれません。しかし出血であるとか、出血でないとかいうことを判断する根本は何かといえば、その生産コストを割つておるかどうか、これが根本であります。よつて伺いますが、現在の輸出が出血であるということに関しては、これは通産大臣にもお答え願いたいのですが、生産コストというものを政府において自信をもつて調べておるかどうか、またこのコストが調べてないということであれば、遺憾ながら野放しの自由にしておいたということになるのです。よつて伺いたいことは、出血ということですが、コストがどれくらいであるか、どういう出血があつたか、これを御説明を願いたい。これは両大臣から伺いたい。
  140. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 要するに野放しであつたというような裏づけになるようでありますが、二十五年八月から統制をはずして生産コストを調べ得る権限がなくなつたことは、あなたの御承知の通りであります。でありますから、会社の比率等に関する内容を調査するということは、遺憾ながら今のところできないのであります。
  141. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただい農林大臣の答えがありましたように、私の方では生産コストを取調べる法的根拠を持つおりません。会社がこれこれだといつて参考に出して来たものは持つておりますが、それ以外には何も持ち合せておりません。従いまして輸出がはたして出血かいなかということは、正確にわかりません。ただ私どもといたしましては、出血かどうかということはわかりませんが、今のように、御承知のように二百万トンの生産力を持つておるものが、その輸出をやめた場合におきましては、ただちに操業短縮を行わなければならぬから、輸出市場の確保をするということは、ひいてやはり国内生産を安くするもとになることであると考えておる次第であつたのであります。
  142. 平野力三

    ○平野(力)委員 私は輸出したことがいけないという議論をここに述べているのではないのです。肥料行政のまず根本を政府にただしたい。そこで生産コストというものを政府において調べる権利がない。また両大臣御言明のように、生産コストはわからないのだ。わからなければ、出血であるかどうか言えない。これは通産大臣おつしやる通りであります。そういうように、かような重大なものについて、コストもわからなければ、調べることもできないというような状況に、今日まで硫安をほつて来たというこの行政は、間違つていなかつたか。私は間違つてつたと思う。これらについて、間違つたとおつしやつたつて、何もそう特に追究しません。間違つたら間違つたとおつしやつていただきたい。
  143. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 どうも硫安の問題が昨年以来特に重大になつて参りましたので、議会の空気を反映いたしまして肥料対策委員会をつくり、生産者と消費者と、また中間の取扱い業者と、さらに学識経験者とを網羅しまして、その委員の方々が目下生産費をもあわせて調査中であります。その間に空白事態があつたことは、まことにそれは手ぬかりであつたと申すはかなかろうと存じます。
  144. 平野力三

    ○平野(力)委員 どうも御答弁については了承いたしかねるのですが、現在農村では、かような四十六ドルあるいは五十一ドルの輸出価格というものは、私がここで説明するまでもなく、十貫目俵にいたしますならば、一俵六百三十円あるいは六百九十円、こういうものである。内地の農民に安定帯として現在肥料が売られているのは、八百七十円から九百三十円、いずれも一俵について驚くなかれ二百円から三百円の開きがある。こういうような肥料行政に持ち込まれて来たということについては、全国の農村においては、政府の肥料行政の方向がどこにあるかということについて大なる疑いなきを得ないのです。よつて私は、過去のことは何も今ここでそうむやみに追究してこれをどうこうするというのではありませんが、一応従来肥料に対して統制を撤廃してしまつて、いわゆる野放しにして、生産コストもとらえることのできないようになつたということは間違つてつた。これを是認せられた上において、さて今後どうするか、こういう対策を立てるべきでありますから、この点を追究いたしましたのと、そこで伺うのは、はたして現在五十一ドル、四十六ドルというこの輸出というものは、肥料会社は別に損をしておらぬ、出血ではない、こういうように了承してよろしいですか。
  145. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 先ほど申したことは、まだ原価計算がわからないのでありますから、損であるか、損でないか、その辺ははつきりいたしません。
  146. 平野力三

    ○平野(力)委員 しからばここでもう一回農相に伺わざるを得ないのです。米の場合はパリテイ計算あるいは生産費計算、この生産の方法については二通りあるいは三通りになりましようが、厳密には二通りでありますが、大なる論争を重ねて、政府は七千五百円と押えた。農民団体は一万十四円、米の値段はこういうように厳密に何十何銭まではじいて、はつきり生産費を記帳してやつておるのに——わが国農業というものは、肥料変じて米となる。肥料なくして農業なしということは、いまさら私がここで喋々するまでもない重要なものであつて、しかも硫安の消費量というものは百五十万トン、これを俵数にいたしますならば四千万俵であります。農民一人が、いかなる人間でも、老若男女一俵の硫安を背負つておる。これを国民経済から言うならば、八千万にするならば、米を食つておる日本人は硫安五貫目を消費しておる。この三百億円に及ぶところの重大なる物資について、米についてはパリテイ計算、生産費計算をして何十何銭まで出しておるのに、硫安の方は今両大臣御言明のように、コストもわからなければ、いくら出血してもこれが損であるかどうかということがわからないようなことではたしてよいか、これをもう一回御答弁願いたい。
  147. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 原価を決定する場合における肥料の価格の問題でありますが、農林省といたしましては、経済審議庁の調査したことをほんとうに信頼いたしまして、それを基礎にしていたしております。
  148. 平野力三

    ○平野(力)委員 経済審議庁の調査したものを基礎としておる、それで一トン幾らというコストはわかつておりますか。
  149. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 米の方はああいう法律があつてつておりまするが、御承知の通り肥料については何ら法的根拠がなく、全然自由に置かれておるのでありますから、その点が著しく違うと思います。
  150. 平野力三

    ○平野(力)委員 それは米の方はあるが、肥料はないといわれるのだから、はなはだ私はあなた方を追究するようだが、これは農政の根本を立てるに必要だから、肥料を野放しにしてはずしてしまつて、コストもわかならないのは遺憾なことだ。間違つたと、ひとつ言明したらどうですか。——委員長答弁を勧めてくださいませんか。
  151. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 答弁ありますか。——答弁がありません。     〔「一番重要なものに答弁せぬということはない」「答弁がなければ論議も進みません」と呼ぶ者あり〕
  152. 平野力三

    ○平野(力)委員 それではひとつ私の調べたものを申し上げて、これについ石順次意見を伺いたいと思いますが、昭和二十五年八月統制を撤廃いたしました当時、私どもの調べたものによりますと、主として電解法を用いて硫安を製造いたしておりますところのA級の硫安製造会社の一トンのコストが一万六千八百円となつておる。これから推定をいたしますと、その後硫安は約五十万トンの増産になつておりますので、品物が多く増産されれば単価が下るという原則から申し上げると、相当に硫安というものは下らなければならない。しかしここに二十五年から今年までの間には相当の年月を経ておるので、いろいろな生産資材、労賃の値上り、こういうものから勘案いたしまして、必ずしも増産になつたから下つたというわけには行かぬ、こういうような議論が成り立つて来るが、かりに二十五年統制撤廃当時の一トン一万六千八百円というものが、今日のA級硫安会社の生産コストとすれば、現在の硫安の輸出はA級会社においては必ずしも出血ではない。いわんや安定帯として内地の農民に売られておるところの八百七十円から九百三十円というものからいえば、おそらく莫大な利益である。こういうことが論ぜられておる。米の方は生産費は一万十四円というものが出ておるのに、七千五百円で農林大臣は押えておる。この矛盾、これに対して通産、農林両大臣が、農政上の一つの明確な方向と一つの解決というものを与えられなければ、日本食糧行政がうまく行くはずがない。願わくはこの委員会において、この肥料と米の行政の矛盾を明快にひとつ答弁願いたいと思います。
  153. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 肥料につきましては、一時五十一ドルと四十六ドルというお話でありましたが、最近は御承知の通り六十ドルくらいのことを唱えております。一時的の市況にとらわれることなく、日本の肥料は恒久的にでき得るだけ農民の手に安く配給ができますようにということを念願して、あらゆる施策を立てているのであります。従いまして、たとえば石炭を原料とする分については、石炭の価格をできるだけ安くするように、それがために必要なものは外国炭を入れるというよう措置をとり、あるいは電解法による分については電力の割当を比較的多くするとか、あるいは金利の面とか、資金供給の面とか、そういつた措置をとりますとか、いろいろなそういうよう措置を講ずることによりまして、この引下げの方法をはかつております。  なお繰返し申すようでございますが、国内で消費しますのは、さつき平野さんが言われた通り硫安は百五、六十万トンであります。しかし日本の設備は二百万トンからありますので、外国輸出するということにしませんと、ただちに二割くらいの操業短縮をいたさねばならぬようになつて参ります。そういたしますと、すぐに国内のものの生産コストを高めることになつて参りますので、さようになつては相ならぬから、これについても、いろいろ西ドイツ等がやつてつたような例も参考にしまして最近におきましては、たとえば西ドイツは外貨優先割当を輸出についてとつているというようなこともありますので、そういつたことについて、一月からとるのも一つの案であろうということも考えているので、まだそこまでは今のところは輸出をさせておりませんから、そういうことも考えておるような次第でございます。
  154. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農政の基礎になる米価決定についての基礎条件である肥料の価格が不安定であるということをおつきのようでありますが、実際現在の市況から言えばそうなるのであります。国際的のダンピングが起つて、初めて実は気がついたようなわけでありますので、その点についてのわれわれの思慮が足りなかつたということは率直に認めるほかないと考えております。
  155. 平野力三

    ○平野(力)委員 ただい通産大臣の御答弁、どうもいろいろこうやろう、ああやろう、こういうお説がございまして、それは私が今繰返している今後の問題として伺おう、たとえば農林大臣のおつしやることは、どうもよく今まで間違つてつたという話でありますので、その点は了承したのですが、ここではつきりいたしたいと思うことは、一体現在の硫安のコストは政府にわかつておるのかどうか。わかつておらぬというならば、生産物のコストを政府が知らずにおつてああするこうするといつても、すべて政策としては砂上の楼閣なんです。はつきりわかつておらぬならわかつておらぬ、わかつておるならその概要をここで御説明を願いたい。
  156. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 現在コストは対策委員会で取調べ中で、ここではわかつておりません。けれども不日わかるのでありまして、すでに新聞等にも発表されておる通りです。たとえば一万田総裁も、金利の低下も必要である、あるいは電力の割当等についての緩和、あるいは外炭輸入等も必要であると言われておつてそうすることが幾らかでも下げ得るのであるから、決して夢みたいなことを言うのではありません。それらが実現すれば好影響をもたらすのです。
  157. 平野力三

    ○平野(力)委員 好影響をもたらすとかなんとかるるおつしやるが、私は通産大臣農林大臣が肥料のために全然努力しておらぬといつて責めておるのではない。コストもわからず野放しにしておいて、肥料行政を無方針にして来て、今これをどうこうするということを言つておられるのだが、われわれから見れば、すべてこれは了解に苦しむことだということを言つておる。今特に私がお伺いをいたしましたのは、その最も具体的な事例として、硫安製造のコストというものが政府にあるかどうか、お答えがない以上ないと解釈するほかはない。通産大臣にお考えを願いたい。これからとおつしやるが、今硫安のコストがわからずにこれからというようなことでは、農民に理解させようとおつしやつても理解できません。今までは統制をはずしておつたから、政府としては肥料行政はどうにもならなかつた、間違つたということを正直におつしやるなら、そこで一応ピリオドを打つわけです。それについては御答弁がなくて、コストを聞けばコストについてはまだわからぬ、これではたしていいのでしようか。くどいようだがもう一ぺん両大臣からコストがわからぬということについて御答弁になつていただきたい。
  158. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 平野さんが言われたように申し上げている。肥料行政については何にも統制しておらないので、法的根拠はないので、コストはわからないと、平野さんが言われていることを先刻から申し上げておるのです。しかし今対策委員会で先月以来毎日のごとく熱心に検討されておりますから——これは御承知のごとく内容がどの会社で違いますので、一つ一つの会社について取調べるかどうかわかりませんが、数会社についての例が出ますから、それで不日わかるであろうということを申し上げておるわけです。
  159. 平野力三

    ○平野(力)委員 肥料行政について誤つてつた、こうおつしやれば私は了承して次へ進みたいが、誤つてつたと全然言わないで、ただこれからこれからおつしやるから話がくどくなる。これは了承できません。それで伺いますが、肥料対策委員会、肥料対策委員会ということを通産大臣はおつしやいますが、この肥料対策委員会の第二条によりますと、肥料対策委員会は価格、生産、流通、消費、及び輸入に関する重要事項を調整、審議して、政府に対し意見を具申するとなつている。そうするとあなたの方では肥料対策委員会が意見を具申したらその通りおやりになるのですか。この法的根拠はどうなのですか。
  160. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 もちろん意見は尊重しますが、具申通り行うかどうかは、政府の責任でやることですから……。
  161. 平野力三

    ○平野(力)委員 通産大臣は、私が、肥料行政に対して政府は何ら法的根拠を持つておらぬ、具体的事例は生産費も握つておらぬ、それでは肥料行政は担当できないじやないかと言えば、肥料対策委員会を設けてやると言う。それなら肥料対策委員会は意見を具申するというのだから、その具申したものをやるかといえば、具申したものは具申したもので、政府はそれから考えるという。これでは何のことかわからぬ。率直に伺いますが、ある有力な雑誌にこういうことが書いてあつた。そうであればある、なければないとはつきりしていただきたいのですが、政府が肥料対策委員会を設けたことは、議会の農林委員会あるいは議会の各種委員会と政府がじかにぶち当ることは、政府ははなはだおもしろくないので、緩衝地帯を設けて肥料対策委員会に肥料問題をやらせて、むずかしい問題は肥料対策委員会でやつているのだ、この委員会は防波堤だと称していた。実は私はきようはこういうことを聞こうと思つていなかつた。もう少しすらすら御答弁があれば、雑誌がこういつていたということまで大臣に問わなくてもいいのですが、今の通産大臣の御答弁だと、この雑誌の意見がどうも裏立てをなして来る。言いかえますと、肥料対策委員会に政府は逃げ込んで、肥料行政をあいまいにしているというように疑うのです。そういうことはございませんか。
  162. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今コストの話が出ましたから、コストならこちらは何も持つておらぬ、その委員会が調べているから、コストの調べができるのを待つている、こう申し上げた次第でありまして、ほかの問題について申しているわけではありません。なお委員会について逃げるとかそういう意思は毛頭持つておりません。
  163. 平野力三

    ○平野(力)委員 そうするともう一つ伺いますが、政府はこの委員会に対して具体的なテーマを出して諮問されたのですか。諮問されたとすればその内容は何であつたか、これを御発表願いたい。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員   長着席〕
  164. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと記憶しておりませんが、先般衆議院の農林委員長から要求がありました。そのことはそのまま諮問してございます。
  165. 平野力三

    ○平野(力)委員 通産大臣のおつしやることはいよいよわからなくなる。肥料対策委員会というものをおつくりになつて肥料行政をやつている、ここでコストも調べ、いろいろの問題もここで審議する、よつて政府は肥料対策委員会に相当期待をかけているからある程度まかせようということじやなかつたか。いまに見ておつてくれという意味に私がとつたとすれば、この委員会に対して政府は何を諮問したか、どういうことを要求じているかということを通産大臣自身がここではつきりおつしやらないと、農林委員会がどうしたとかなんとかいうことを言われても困る。農林大臣も肥料対策委員会には多大の関心があるわけですから、この肥料対策委員会についてどういう見解を持つておるか、あわせて農林大臣からも御答弁願いたい。
  166. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと言葉が足りませんでしたが、はつきりした言葉があります。諮問事項、現下の情勢にかんがみ、化学肥料についてとるべき方策を諮問いたします、こういうのでございまして、非常に意味の広い問題です。
  167. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 ただい通産大臣のお答えした通りでありまして春肥の需要を前にして、いかにして安く農民に肥料が渡るかということ、また国際関係が非常に微妙になつておりますので、内地においても対応して国内の農民にいかにして安く行き渡るようにするかということが最大の眼目であります。
  168. 井上良二

    ○井上委員 関連して。
  169. 太田正孝

    太田委員長 平野君、どうでありましようか。
  170. 平野力三

    ○平野(力)委員 私はまだ質問がありますが、関連ならよろしゆうございます。
  171. 太田正孝

    太田委員長 あまり時間をとらないようにお願いいたします。
  172. 井上良二

    ○井上委員 ただいま平野君の質問に対しまして、政府からきわめて重大な答弁がございましたので、この際関連質問をお許しいただきたいのであります。  ただいままでの質疑応答を聞いておりますと、政府は、一つは出血輸出の問題にからんで、まつたく支離滅裂なる答弁を繰返しております。その一つは小笠原審議庁長官、肥料対策委員会の主宰者でありますが、先般確かに本委員会並びに本会議における答弁において、出血輸出による損害がもしありとすれば、国内価格にこれを転嫁しない、こういうことで政府の方では出血輸出であるということを認めておるのです。そうしてたびたび出血輸出出血輸出ということが繰返されておりますし、また通産大臣としてのその所管におきましても、所管の局部長もやはり出血輸出であることを認めております。これは議会における答弁ではつきりしております。ところが本日の答弁では、出血かどうかはわからないということを答弁されております。これは一体どういうことでございましようか。そういうべらぼうな確信の持てないことで、どうして今後の重要な硫安の公正妥当な価格政府があつせんしてきめることができますか。問題はこれにかかつておるのであります。この点に対して、いま一度はつきり出血であるかどうかということを明らかにされるとともに、それからいま一つの重要な点は、政府は肥料対策委員会を農林委員会の要求によつてつくられるごとになつたのでありますが、農林委員会では今そこでお読み上げになりましたような、そういう抽象的な漠としたことを、委員会を設置して結論を出すようにということを要請したのではないのであります。はつきり数箇条にわたつて肥料価格を引下げることも含んでおるのであります。ただそれを引下げる場合は、できるだけ公正妥当なる権威のある機関によつて審議する必要があるので、一応そういう暫定的な機関を設けてはどうかということは言つてあります。しかるに政府は、この委員会の当面最も問題になつておる価格引下げの問題に一言も触れずに、当面する肥料問題について審議を願いたいというようなことを、あなた方は権威のある人に問うのです。そんなことは委員会に政府から諮問すべき筋合いではないと思う。もし農林委員会及び国会側の要請によつて、当面する肥料問題の重要性にかんがみて肥料対策委員会をつくられたならば、当面しておる一番重要な問題を早急に解決することについて、政府があつせんしなければならぬ責任があるのです。この点に対して政府は何ら手を打つていないのです。これが第二点。  第三は、今問題になつておる出血輸出云々の問題にからんで、政府があつせんをしまして、この国内安定帯価格がきまつております。また出血輸出政府輸出管理令その他によつて認めたということからこの問題が起つておるのです。これはあげて政府の責任のある処置によつて、解決しなければならぬことになつておるのです。そうしますと、政府は、これから具体的に質問をいたして行きますが、この政府の今までとられたずさんな肥料対策によつて生じたこの責任を痛感されて、政府の責任において価格引下げに対する具体的な処置をおとりになりますか、これを伺いたい。
  173. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 最初にお答えいたしますのは、平野さんのお尋ねがコストの問題であつたもので、そこでコストの正確な調べがないから出血云々という問題に触れて来たのであつて、それはコストがわからぬから出血かどうかわからぬ、こういうお答えをしたのでありますが、いわゆる出血だということでありますならば、いわゆる出血の影響を国内消費者にかぶらせないことについては、私がたびたび言明いたした通りであります。  さらに第二の点でありますが、こういう点について現下の情勢において化学肥料にとらるべき方策、さような漠然たることをなぜ相当な人を集めて諮問するのかというのは、相当な人を集めているだけに、引下げについてとか、肥料価格云々とかいうことについての諮問は、かえつて穏当を欠くと思つたからこういうふうにいたしました。私が最初に平野さんにお答えしたように、農林委員長からはこういう要望も出ているのだ、従つてこの問題は取急ぐのだからといつて一応説明がしてあります。従つて農林委員長が当時要望された事柄は各委員とも知つておられて、取急いでその問題が取扱われている実情にあることは、委員各位がみな御承知の通りであります。従いましてこの点は、この諮問事項が非常に漠然たるものでありますけれども、結論は急がれておることは私が申すまでもございません。肥料行政というものが一貫して行わるべきものであることは当然のことであります。われわれとしても日本の農政に占める肥料行政の重大さを考えまして、農林省とも絶えずよく連絡をとりつつこれに向つて進んでおります。  なお、お尋ねの最後の点はちよつと……。
  174. 井上良二

    ○井上委員 今後の価格引下げに対して、政府は責任を持つた処置がとれるかということです。
  175. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 それにつきましては、本日この今の肥料対策委員会の委員が、製造の方と消費者の方とに、特に製造の方でしよう、若干価格引下げをするようにという勧告をされたそうでありますから、それについてどういう結果が来ますか、その勧告の模様をしばらく見まして、私どもの方としても相当な措置をとりたいと考えておる次第であります。
  176. 井上良二

    ○井上委員 本日の肥料対策委員会の経過を伺いますと、消費者の切実な要求により、また現実に国会の方においても肥料価格の引下げが満場一致で決議されており、諸般の情勢から、政府はこの際価格引下げについて、適当な処置を講ずることを妥当とする、というような結論になつているのではないかというお話です。私は肥料対策委員会がどういう結論に出ましようとも、問題は今までの平野君の質疑応答の経過からいたしまして、また今まで政府の国内肥料価格安定にとつて参りましたいろいろな処置から考え、また輸出も認めました見地から考えて、当然春肥に対する価格安定の一つの処置は、政府の責任においてとるべきであろうと考えます。そうでないというと、この問題の解決ははかられません。政府は依然として法律がないから、法律の裏づけがないから、そこで消費者と生産者との直接の談判にまかして交渉にまかして、政府はそういうことに何ら責任を負わぬということになりますか。それとも政府はやはり肥料行政の重大性を考え、国内の食糧増産の重大性をあわせ考慮して、この際早急に価格の改訂を政府の責任において処置したいと言いますか、その点をまず最初に明確にしてもらわなければ、それから先の話ができませんから、この点を明確にひとつつておきたい。
  177. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政府も適当に措置したいと思いますが、ちようど肥料対策委員会から決定をしたのを今政府の方へ勧告して来ましたから、全文読み上げて見ますとたいへんよくおわかりになるかと思いますから、ちよつと御参考に読んでみます。   目下春肥の需要期の切迫するに伴  い、需要者側より価格の低下を要望する声が強く、国会は政府側に対し、この件に関し申入れを行つた。  当委員会においては硫安の生産費の件につき、小委員会を設けて審議を続けておるが、検討すべき点が多々あり、最終的結論を得るにはなお若干の日数を要するので、とりあえずこの際当委員会としては、関係官庁もこれがあつせんに当り、メーカー及び全購連、卸売業者において先に決定した安定帯価格を引下ぐる趣旨をもつて早急再検討されるよう勧告する。これとともに政府においても肥料価格を可及的に低下せしむるため、至急左の措置を講ずることを要望する。   一、コスト低下の一方策として、とりあえず安価な外国炭の輸入、標準電力割当量の増加、財政資金の金利引下げ及び輸送費の逓減に関し必要な措置を講ずること。   一、価格の不安定に伴い、春肥需要の最盛期において需給の不円滑を生せざるよう関係業者を督励して、出荷及び受渡しを促進する措置を講ずること。 こういうふうなものを持つて参りましたから、この勧告に従いまして私どもも善処することにいたします。
  178. 井上良二

    ○井上委員 それに基きまして伺いたい点は、政府が責任を持つて春肥の価格を引下げることにあつせんをするというお話でございます。そのあつせんの裏づけとして、たとえば外国炭を入れるとか、電力の割当をふやすとか、金利を引下げるとか、資金をあつせんするとかいうことがいわれておりますが、この間において通産大臣農林大臣大蔵大臣とどういう打合せをされておりますか。これは非常に重要な財政上の問題になり、さらにまた外国炭の輸入がただちに硫安価格の値下げになるとは考えません。何とならば、外国炭はただちにこれをコークスに生産をし直さなければなりません。そうするならば、現在外国炭を一部使つてコークスを製造しておりますガス会社が、はたして国内炭と外国炭との価格差によるコークスの価格を、それだけ引下げてくれるかどうかということが、ここに問題になつて来る。さらにまた電力の割当と申しても、三月一ぱいまでは割当が済んでいる。そうしますと、四月以降の場合の電力の割当と考えてみても、かりに五%割当をふやすという場合に、新しく発電施設が拡充されて、それだけ発電力が多くなるなら別であります。そうでない限りは、他産業の配電を切らなければならぬ、こういう問題が起つて来るのであります。さらにまた金利の引下げの問題にしても、他産業に対する金利との関係をどうするかという問題もここに起つて来、それをやろうとすれば、当然予算的、法律措置がいる。そうして今当面している春肥の価格の引下げに非常に道の遠いようなことをここで言うて、いかにも値が下るような政治的な答弁をされたのでは、問題の具体的解決にはなりません。あなたの今御答弁になつておる外国炭の問題や電力の問題や金利の引下げや資金のあつせん等の問題は、今後の肥料の適正な生産による価格の安定を期する処置であつて、当面しておる政府の責任から起つた春肥価格の引下げの処置には、役に立たない処置です。この点をあなた方が区分けをして解決する方針をとらなければ、問題の具体的解決にはなりません。問題は、今春肥の需要が切迫しておるときに、この価格問題が国会の大きな政治問題になつて、末端においては取引がとまつておるところがあるのです。この問題を早く解決しなければ、増産の上に重大な影響を来して来ます。その責任はあげてあなた方お二人にあるわけです。だから当面する問題を将来の問題に結びつけて、問題をこんがらかしてもらつたのでは解決になりません。あなたは一体どういうお考えを持つて当面の問題を解決しようとするか、これをもつと具体的にわかりやすく、ただちに本日でも業者を集めて、あなたがあつせんをして、こういう理由だからとひとつこの際下げよと言うのか、それともそういうことは言えぬと言うのか、そういうことをもつと具体的に話をしてもらわぬと、将来の予算的、法律的処置のいるような問題をここに持ち出して来て、それで論議をしておつたのでは、それは植付には間に合いませんぞ。ここでは日の長い論議をしておつてもいいけれども、植物はおてんと様によつて育つのですから、そんなのん気なことを言うておられぬのです。あなた方、具体的に責任を持つてこの問題は数日中に解決するということがはつきり言えますか。これをまず言わないと、内容には入れませんぞ。
  179. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 最善を尽します。
  180. 井上良二

    ○井上委員 最善を尽しますというだけでは、問題の具体的な解決に対して責任を持つておる政府答弁ということにはなりません。そこでさらに具体的に掘り下げますが、たとえばそこに政府に対する一つの勧告といいますか、申入れといいますか、政府が信用ししてつくりました委員会からそういう申入れが来ておる。これによつて政府はただちに消費者代表、生産者代表を集めて具体的に会議を開いて一体いかなる価格の引下げが妥当とお考えになつていますか、これを農林大臣通産大臣から伺いたい。
  181. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 相手方もあることですから、相談いたした上やります。
  182. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 勧告が出たようでありますから、一々具体的に相談して善処いたします。
  183. 平野力三

    ○平野(力)委員 それではひとつ結論を伺いますが、ただいま肥料対策委員会から勧告が出て、その勧告の内容は肥料の価格を下げよという勧告である。通産大臣は対策委員会の具申については、十分尊重するという御言明であつたので、これは春肥は当然通産、農林両大臣の御責任の上において下げる、こういうふうに御言明を願いたいし、また誠意を持つてそういうように処置をされるものと、こう解釈をいたしましてよろしゆうございましようか。
  184. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 さよういたします。
  185. 平野力三

    ○平野(力)委員 さてそこで伺いますが、当面の応急処置としは、春肥を下げる、これは善処する、こういう御答弁がありましたから、その答弁をその通り御信用申し上げて行きたいと思います。しかし御答弁が非常に簡単であるので、——別に簡単なことを責めるわけではありませんが、一言述べさせていただきたいと思うことは、特に農林大臣農林省を通じて御承知でありましようが、現在農村の状況は、不買同盟という言葉は穏当ではないと思いまするが、硫安製造会社がかように安い硫安を外国へ売つておるとすれば、いずれは内地の硫安は下つて来る、これは平凡な農民の考え方なんです。一俵三百円も違うのだから、われわれがここで議論するような精密なコストの論はしばらくは別として、概念として、六百円台で硫安がどんどん外国に流れておる。たとえば昭和電工の工場から外国へ六百円で流れておる。農村へは九百円で流れて来ておる。農民の側から言えば、いま少し待つて下るものならば、しばらく買うまいという気分があることは当然です。これは不買同盟という言葉は当りませんけれども、一種の不買になつて来る。そういたしますと、硫安製造会社の方では荷が動かない。荷が動かないということになれば、いよいよ硫安製造会社の方でも困る。この困らせておる責任はどこにあるかといえば、これは率直に言えば、政府なんです。よつてこの国会の開かれておる予算委員会の席上において、通産、農林大臣、特に私はこの点は農林大臣からこの席を通して、春肥は下げる、よつて諸君の方も早く硫安を手に入れて、次の春の生産に邁進してくれ、こういう心からなる言明がなくては、これは農林行政とは言えない、かよう考えます。くどいようではありますが、ひとつ農林大臣から、今の肥料対策審議会の具申に基いて、春肥は下げる、こういう御答弁をいただきたい。
  186. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農民心理として、国際的に輸出した価格を見て春肥は下るであろうという心理はあたりまえであります。そこで私たちといたしましては、ほんとうにこの春肥を下げて、農民にこたえたいと思います。先ほど来平野さんから御指摘の、原価計算を入れる立法措置を講じないかという農林委員会の意見もありましたので、わが部内においても今検討中でございますが、通産省と相談をいたしまして、その点まで私は考えたいと実は考えております。
  187. 平野力三

    ○平野(力)委員  その点は一応下げるという御言明があつたので、その言明をお待ちいたします。  さらに私が当委員会の劈頭に申し上げた法的処置の問題であります。これはどう考えてみましても、ただい通産大臣のおつしやることも、この点は筋が通つておらぬのです。農相の答弁もあいまいですから、あらためてお願いをいたしたいことは、肥料の国家管理とか、あるいはその他いろいろ私どもの主張する、突き進んだ国家統制という問題になりまするが、これはこの委員会で結論を出すということはあるいは無理かもしれぬと私は思います。私は今国家管理にしたらどうかという意見を持つておりますが、国家管理にするかどうかという御答弁は、あるいはしないと言われればそれで打切りになりますから、これは一歩ここで譲つておきます。いずれ別の機会にやりますが何らかの法的処置を持たなければ、政府は硫安対策に対しては対策がとれない。これは十分おわかりになつていると思う。今農相の御言明の中にも、何か法的処置をとるということを省議で研究しておるという御意見であるが、あるいは肥料需給調整法であるとか、あるいは肥料に関するところの価格あるいその地の操作権とか、こういつたことについての法的処置を、比較的すみやかな時期において通産、農林両大臣が協議をせられて何らかの方法を講ぜられるかどうか、あわせ伺つておきたい。
  188. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 よく相談することにいたします。
  189. 平野力三

    ○平野(力)委員 これは申し上げておきますが、私は実はもう少し誠意のある御答弁をいただけるものと思つてお問いしたのです。しかしまあ考えると言われれば、答弁としてはそれ以上事実上ないのですが、いま少し誠意を示されないかと思うのです。と申しますのは、私はこの委員会で、御答弁によれば申し上げまいと思つたが、そういう御答弁だと申し上げなければならぬことになる。一月の十七日に、この肥料問題について農民大会を開催して農民が陳情に参つた。そのときに、私は実は十七日の前々日十五日に、ここにおいでになる小笠原通産大臣にも私自身が電話を申し上げて、農民が陳情に行くから、ひとら総理官邸に三時におつていただきたい、また廣川農相にも自分で電話をいたしまして、三時には自分が総理官邸に行く。そのときに両大臣とも、自分が行けなければ政務次官なり、あるいはだれか責任ある者を出しておくというお話で、私は一千人の農民の代表者諸君に、総理官邸に十七日の三時に行けば、官房長官はもちろん、通産、農林の責任者がいると言つておいた。ところが行つてみますと、農林、通産だれもおらぬ。これはもちろんお忙しいことだから、諸般の事情もあろうけれども、本来から言うならば、そういう農民代表が行つたときに、そこに通産大臣農林大臣も、自分が出られなければだれか代理を出して、そこで現在の肥料行政はこうなつてこうだというくらいの御説明がなければ——ただ、陳情隊は何とかしておけばそのうちに帰つて行くだろう、あるいはこの委員会で何とかやつておけばどうにかなるだろうというような誠意なき農林行政でありましては、——当委員会においてもしばしば出ておるように、外国から非常に高い米を買つておる。国内では安い米を出さしておる。日本の農民に高い肥料を売り、外国には安い肥料を売つておる。こういう矛盾がだんだん日本の農民の中に浸透して来ることになれば、あなた方が農業政策をどういうように口で唱えられても信用しないということになる。よつて私はもう一回伺いますが、肥料問題については何らかの法的処置をとつて、米を統制しておるならば、肥料についてもある程度の法的処置をとるのだ。これをひとつ農林大臣から御所見を伺いたい。
  190. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 先ほどもお話申し上げたのですが、国際間における肥料の一つのダンピングとでも申しましようか、非常に安く国際間に流れることが新たな事実として起きたのであります。これに対応して農林委員会から、何らかの措置を講じろという強い意思があるのであります。そこでわれわれといたしましては、米を統制しており、しかも米の価格決定について重大要素である肥料でありますから、これをせめて生産コストくらいは見られるところの立法措置を講じなければならないじやないかということで、そういうことをただい検討中であります。そして検討をいたしまして、通産省とも相談をいたしまして、せめてこのくらいまではやらなければいけないじやないかということで、検討いたしておるということを先ほど申し上げたわけであります。
  191. 平野力三

    ○平野(力)委員 本問題は、何らかの形において法的処置を講ぜられるように、これも前の答弁と同じように、そういう言明があつたものとして、私は了承したいと思います。但し、そこになお一言申し上げたいと思うことは、今ここに私が述べておりますることは、統制反対という声がありましたが、ただこれは統制とか統制反対というスローガンだけでこの問題を片づけようというのではないのです。現にドイツ硫安というものは非常に安く、東南アジア市場というものに対してどんどんやつて来る。日本の硫安工業はこれに対抗して何らかの闘いをしなければならぬ。これは私どももよくわかる。従つて国際的に見ても日本の硫安が非常に重要であり、しかも内地においても百五十万トン、四千万俵という大きな需要量である。これについて政府値段もわからなければ、数量もわからない。硫安製造会社が幾らで売つても、これに対して売つたという新聞記事が出て、あとで政府が知つたというようなことでは、これでは大きな意味で、外国貿易そのものに対しても日本政府は責任が持てるものではない。現に私が申し上げるまでもなく、通産大臣の先ほどの御答弁の中にありましたが、ドイツが東南アジアに向つてなぜかように安くやつて来るかということは、ドイツの硫安というものに対しては国家があらゆる政策を考え、硫安に対して諸般の設備をして、電力も下げれば、あるいは石炭も安くする。生産の機械についても安い資金を貸す。しかも外国に売つたものについては相当の補助をする。こういつた国家統制、国家管理の上に立つてドイツ硫安というものが、日本の近くの東南アジアに来ておるときに、わが日本だけが、これだけの大きな農業国であつて、これだけの生産工場を持つておる硫安に対して政府が全然法的処置を持たずしてこれで日本の肥料政策をおやりになるということでは、私は信用できない。私は時間もないからこの席上でむやみに肥料の国家管理論を展開しようとは思いませんが、何らかの法的処置を、通産、農林両大臣がとられなければ、農民も納得できず、また日本のこの硫安工場に対する対策も立たないから、この問題について私は誠意をもつて御質問を申し上げるのです。どうぞこれはよくお聞取りを願つて日本の硫安生産力が増強し、外国にも日本の硫安が合理的に輸出できる。こういう線に向つてとつ対策をとつていただきたい。それを希望し、最後にひとつ大臣から誠意ある御説明を聞きたいと思う。
  192. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 よく御承知のように西ドイツの硫安は鉄鋼業と合理的に非常によく結びついている。また石炭からが、向うのものは九ドルぐらいでしようが、日本のものは二十ドルぐらいについておる。そこへフレートその他も安くなつておる。輸出に対する外貨割当制度とかいろいろなものが非常に巧妙にできておる。私も輸出の硫安については何か特別な処置が必要ではないかと思つて研究したこともございまするが、しかし今のところまだ何ら成案を得ておりません。国内のものはしばらく別にいたしましても、輸出のものについては何らかの法的処置がいるのではないか、今後とも研究いたしたいと考えております。
  193. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これは先ほども申し上げました通り、国際間で非常に安いドイツ硫案出て来て以来、われわれは頭を悩ましておるところであります。それで私は全部の肥料を統制しようとかあるいはまた国家管理にしようとかいうことは考えておりませんが、しかし原価計算くらいまでは見れる方途を講じなければならぬという意図で検討いたしておるのであります。それでその基礎の上に立つての電力の増配なりあるいはまた外貨の優先割当とかいうことが、そうして行くことがほんとうではないかということでわれわれは検討しておるのであります。通産省ともよく相談いたしてその方向で行きたいと思つております。
  194. 平野力三

    ○平野(力)委員 私は本問題につきましては不十分な点もありますが、委員長から時間の御注意もありますので一応これで終ります。  最後に一点だけ官房長官に質問する時間をお与えいただきたいと思います。これはほんの簡単なことですが、現在街頭をときどきにぎわし、新聞にもときどき出ておる問題であります。昭和二十二年四月十二日法律第五十三号、社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律の適用に関して冨士山頂を静岡県に払い下げるという問題が起りまして、これについては政府においてもいろいろ陳情等を受けておられると思うのです。私はこれに対していろいろむずかしい議論をここに展開しよう考えておるものではありませんが、単に昭和二十二年四月十二日法律第五十三号というものだけをたてにとつて政府がこの処置をとられるということは穏当ではない。現にこの法律の附則といたしましても、もし本問題に対して国が他に必要であるという場合におきましては、国有財産を国有として保存しておくことも得るという法律があるのです。これは単に冨士山頂の問題ばかりでなくこの法律の適用については他にも重大な関連があると思いますから、ここに官房長官に申し上げるのでありますが、もしこの法律だけをたてにとつて静岡県の神社の要求だけをお聞入れになるということであれば、この法律の根本にさかのぼつて別の法律を出してわれわれもこれに対する審議をしなければならぬというようなことにもなるのであります。しかしここに国土保安その他公益上または森林経営上国において特に必要ありと認むるときは国有地として保存せしめることを得るというような条文がこの法律の附則に書いてあるのでありますから、従いましてこの紛争に対してはひとつ国家の大局から考えて、ただ法律まつ正面だけにとらわれて処分をされるということでなく善処を願いたいと思うのでありますが、官房長官の御所見はいかがでありますか。
  195. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいお話の冨士六合目以上の払下げの問題でありますが、これにつきましては冨士山の元宮浅間神社から八合目以上の全域は浅間神社の御本尊、御神体であるというような意味で全域百二十二万余坪の払下げの申請がありまして、今お話の社寺境内地処分審査会で審査いたしました結果、昨年の十二月九日に奥宮社殿敷地その他といたしまして、四万九千二百六十二坪だけを払い下げることが一旦きまつたようであります。ところが当事者におきましては、それを不満としてさらに最初の申請通りの払下げの訴願が出て参りきしたので再びここに社寺境内地処分審査会を開きまして、その結果公益上国有存置の必要あるものを除き譲与を適当と認めるというふうな答申がまたあつたのであります。しかしこの問題はただいお話になりましたようにいろいろの観点から考えるべきものであると存じまして、申請者の主張のよつて来るところ、また一般の国民感情というものを十分に考えて処置すべきものであるとして、今その裁決方につきまして慎重に考えておるところであります。
  196. 平野力三

    ○平野(力)委員 もう一点だけ、その委員会がすでに解散になつたというのでありますが、私は解散になつた委員会が、あるものを答申して解散しつぱなしになつたということについても相当議論があるのでありますが、しかしすでに本問題は四年九箇月の長きにわたつていろいろ審議した結果、この問題は他の問題とは違うという見解が濃厚であつたために、四年九箇月もここに審議が遅れて来て、しかも冨士山というものが、率直に言うならば国民全体に使用権があり、一団体が所有すべきものではない。同時にまたある団体が所有していろいろな施設を試みる、その施設の中には公に見て必ずしもよいと思われないような施設をしたような場合において、国がこれに干渉する権利もないということになるとまた問題が起る。何を好んで国有であるものをこの際特に払い下げなければならないか、裏を返してみればやはりこれを私有にして、ある意図を持つておるというような点もあるとすれば、政府の行政措置といたしましては、国家の大局から見て、冨士山は国民全体に使用権があるという判断のもとに行政措置をされてこそ明快なる行政上の判断であると考えます。私はこれは特に大蔵大臣にどうこう申しません。政治的な考慮を相当持たれる官房長官において——もちろんこれは内閣においてこの問題が論議されるとのきイニシアは官房長官にあると私は考えますので、官房長官において善処せられんことをここにお願いをし、要求をいたす次第であります。
  197. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいま抑せられましたように、その審査会は昨年末、先ほど申し上げました二度目の答申を終つて廃止になつておるそうでございます。その答申をどう裁決するかということは、これから政府が政治的に慎重に考えるべきところであると存じております。
  198. 平野力三

    ○平野(力)委員 私の質問はこれで終ります。
  199. 太田正孝

    太田委員長 突発事件につきまして緊急質問を許します。松浦君。松浦君に申しますが、保安庁長官は今院内を探し、方々探しましたが、見つかりませんので政務次官が出ております。外務大臣は出席されております。
  200. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 なおその分は緒方さんからまず御答弁を願います。  先刻アメリカの極東軍司令部より午後二時四十分発表で、北海道上空を哨戒中の米戦闘機二機は、国籍不明の飛行機を二機発見いたしましたので、これに着陸を命じましたが聞かなかつたので発砲し、その数弾は命中したと言つております。たまを食つた飛行機は長く飛ぶことができませんが、その後の第二報として北海道の領土内に落したかどうかという点を、第一点として外務省の方にお聞きしたいのであります。  北海道の上空は相当緊迫しておると思うが、この防禦措置は十分であるかどうか。不吉なことでありますが、盧溝橋や柳条溝の一発がああいうことになつた、あるいは北鮮の一発は今日の北鮮事変を起しておる、こういうようなことは道民はみな知つております。従つて道民はこの記事を見ましたならば、非常に憂慮することでございましよう。北海道はわが郷土、愛する郷土であります。北海道の道民が心配しないように守つていただくことはぜひ必要なことと思いますが、こういうような場合にひとつ問題になりますことは、発砲する場合に、権利と申しますか、条約上における問題でありますが、出撃する場合には話合いをしてやる、あるいはこういうとつさの場合には、どうして委員会を開くかということ、戦乱を誘発するような危険があると思うが、これはどういうふうにお考えになるか。守つてはいただかなければならないけれども、大げさなことをこつちでやると向うの神経を刺激しまして、北海道が戦乱のちまたになることを非常に憂慮するものであります。これに対しますところの外務大臣の御答弁をお伺いしたいのでございます。また木村さんがいらつしやいませんから、緒方さんからひとつ木村さんのかわりに北海道上空防衛に対する御信念を承りたいと思うのであります。
  201. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の方にもまだいろいろ報道が入りつつあるので、最後的な報道を申し上げるわけに行きませんが、われわれとしてただいま知つておる範囲では、これらの二機の侵入機は千島方面に向つて退却をいたしたようであります。それに対しまして駐留軍の飛行機は北海道の上空より外に出ても、これはむろんさしつかえないのでありますが、あまり千島方面の上空まで行くことはかえつて問題をむずかしくしますので、もうすでに常時の訓令として北海道の上空を守る範囲にとどめておりますから、千島方面に向つて逃げた飛行機については追跡をやめてもどつたということに聞いております。これが第一に対するお答えであります。従つてその飛行機の行方は今のところわかりませんが、飛行を続行してそちらの方に行つた考えられます。  それから第二の質問でありますが、たとえば委員会を開いて協議するとかいうような問題でありますが、これは何しろ今度来ましたのも戦闘機でありまして、おそらく時速六百五十マイル、あるいはそれに近いような速力のものだと思いますので、これに対してその場で協議をしてから措置をとるということは不可能でありますから、われわれの方では駐留軍と当初から連絡いたしまして、駐留軍側にも、また保安隊その他の方面にも双方に常時守るべき訓令が出ております。駐留軍の方にもまずかかる飛行機が上空に来たのを発見した場合には着陸を命ずる、着陸を命じても聞かない場合には退去をさせるよう措置をとる、これも無視された場合にはやむを得ず発砲をする。しかし北海道の上空を離れて追跡をしない。これだけのことで準備をいたしております。従つて駐留軍の飛行機等も常時その訓令に基いて行われておるわけであります。  なお今回の侵入地点は、根室の付近でありますが、目撃した場合、あるいはレーダーなどの報告によりましても、これは北海道の上空であることは間違いないのでありまして、決して上空を離れたところで問題を起したものではないと確信いたしております。この点につきましても、少しこれは慎重過ぎるかもしれませんが、十分上空に入つたことが認められた上で行動をとるということにいたしております。  また最後にそういう問題が道民たちの間で非常に心配されることは当然われわれも考えて、この点については十分無用の心配がないようにいたしたいと思いますが、すでに御承知のように昨年アメリカの飛行機が、これは針路を誤つたかどうしたか原因はわかりませんが、千島方面から追跡されまして北海道の上空で撃墜された事件があります。これはちようど逆の場合で、しかも撃墜されて、人も死んだのでありますが、しかしこれに対してアメリカ側は一応抗議はいたしましたが、その後特に問題になつておりません。一国の上空に侵入して来た飛行機に対して、これをしりぞけるという措置をとるということは国際法上十分認められておるところでありまて、しかも日本の領土につきましては、たとえば北海道、四国、九州、本州という四つの島以外の島につきましては議論がありまして、平和条約ではきまつておりますが、ソ連等は平和条約を承認しておりませんから、それについては議論がかりに論議上あつたといたしましても、ポツダム宣言に書いてあります通り、北海道は日本の領土であるということは、これはもうソ連といえども、あるいはそのほかの国といえども当然承認いたすと考えますから、北海道の上空に侵入して来るということは、どこの国から見ても日本の領土を侵すということになりますから、これに対してそれをしりぞける措置を講ずることは当然であり、またこれはしなければならない措置でありまして、これがために国際紛争を起すということは私はただいまのところ考えられませんから、道民の諸君に対しましてもその点は十分明らかにして安心の行くようにいたしたいと考えております。
  202. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただい外務大臣からのお答えで尽しておると思いますが、お聞きの通り今日上空侵害の行為に対しまして、独立国として当然、かつやむを得ない処置でなかつたかと考えます。今後起り得べきことに対しましては、十分に慎重に事態の取扱いをいたして参りたい、かよう考えております。
  203. 川崎秀二

    ○川崎委員 昨年日米行政協定が予算委員会で問題になりましたときにも、改進党からこれらの問題についてはしばしば警告的な質問をいたしたことがあるのであります。ただい外務大臣の説明によりまして、日米両国間に国籍不明の飛行機、または敵対行為的立場をとるところの飛行機が侵入した場合の訓令が発せられておるようであります。これは新しいことを私は伺つたのでありますが、それによりますと、北海道上空の侵犯に対する防衛措置を講ずるだけであつて、これに対して発砲ないしは追跡をするということはなるべく差控えたい、上空に限るという御答弁であつたので、かねて来心配しておつたことも、そういう訓令が発せられておつたとすれば、私は今日の政府の態度を了承するのでありまするけれども、この際特に承つておきたいことは、今回の場合のごときは、終戦以来、わが国において起つた事件としては最初のことであります。朝鮮戦乱は一昨年以来起つて、世界の非常な関心を払つておるところでありますが、これは何としても対岸のことである。今回のことは、終戦以来初めてわが国の上空において、わが国を防衛するものとの間に、敵対行為が起つたと見なければならぬと私は思うのであります。そうすると、これは行政協定第二十四条の防衛措置、すなわち「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合」ということを意味するものであるかどうか。当然これに伴つてだいまの訓令だけではなしに、日米合同委員会というものが開催されて適当なる防衛措置についての協議に入らなければならないという事態に該当するものかどうか、その点をまず承りたいのが一つと、先般領空侵犯が行われた後にも日米合同委員会というものは開催されたことがあるのかどうか、その点をお伺いをいたしておきたいと思います。
  204. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは領空を侵犯する場合には、敵対行為の目的を持つて侵犯する場合と、あるいは偵察その他場合によつては間違えて領空に入り込むような、つまり敵対行為を意図しないで上空に入り込む場合と二つあると思います。これはただいままで、つまり昨年中に十回以上も領空侵犯があつたのでありまして、当初はこれは何か気流その他の間違いで入つて来たとも考えられまして、注意をいたす程度にとどめておつたわけでありますが、あまりたび重なるので、これは意識的に入つて来たと考えざるを得なくなつたために、防衛的な措置を講ずることにいたしたのでありますが、その過去の事例に照しますと、先方は敵対行為を意図して侵入して来たとは考えられないのであります。従いまして領空侵犯をしりぞけるというこちら側の、国際法上認められておる手段をとるにとどまりまして、これは敵対行為とはただいまのところ考えられません。またおそらく今後もそうであろうと事の性質上思われるのでありますから、行政協定等の発動の理由はないと考えております。  また合同委員会はその後も開かれておりまするが、これは施設、区域等を主といたしまして、たとえば行政協定二十四条の敵対行為の緊迫せる事態等につきましては、行政協定に基く合同委員会の処理というよりも、むしろ両国政府間の協議ということにいたしております。この問題につきましてはいまだ両国政府間に協議をする必要がないと考えて、いたしておりませんが、しかしながら米国大使と私の間とか、あるいはこういう問題でありまするから、駐留軍司令官との間等には、非公式にいろいろ意見を交換しました結果、先般発表したよう措置をとることにいたしたいのでありまして、行政協定に基く措置は今のところ必要ないと考えております。
  205. 川崎秀二

    ○川崎委員 今回の場合は単に二機の侵入のみであつたわけでありまして、敵対行為でないと御判断になるならば、そういう判断もあると思いますが、これがもし将来大規模な侵入がある場合に、実際に現地の軍司令官が訓令をかえて追跡を命ずるような場合も起り得るのではないか、そういう場合を非常に憂慮しておるのがわれわれであるわけであります。そういうことのためには、行政協定をいうものをもう少しくしさいにとりきめをして、防衛措置に関しては別途の協定をやつたらどうかということをわれわれは心配をいたしておるのでありまするが、そういう場合に、もし訓令を越えての措置というものが緊急非常事態の場合にとられた場合、この場合には相当戦乱の危機というものが想像されるのであります。そういうような際においてのこともとりきめるために、さらに一層具体的な防衛措置というものを講じなければならぬのではないか、かように思うのでありますが、外務大臣はいかなる御見解でありましようか。
  206. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実は国際法上から申しますと、追躡権というのが認められております。これはつまり、たとえば上空を侵害した飛行機を追いかけて行つて、公海なり、またはその先の相手国の領土上においても追躡する場合には追躡はできるということになつております。従つて追いかけて行つても国際法上さしつかえないりくつでありますけれども、無用といいますか、特にこの際は慎重に考え、追躡権を行わないで北海道の上空を守る、こういうことにいたしておるのでありますが、この訓令は、現下の国際情勢上、現地司令官等は厳重に示達されておりますから、現地のはからいでこれを破るというようなことはとうてい考えられません。また諸般の情勢、これは現に上に飛んで来る飛行機ばかりでなくして、その他いろいろの材料から判断いたしまして、敵対行為を意図して上空に来るということは、当分考えられないことなのであります。従いましてただいまのところは、それ以上の必要はなしという判断でありますが、もちろんこういう点は十分注意をいたします。
  207. 太田正孝

    太田委員長 この際委員長より政府に対し厳に要望いたしたいことがあります。本日午前中の理事会におきまして総予算に関連する重要法案ないしその要綱を取急ぎ当委員会に提出せられ、予算審議に万全を期したいとのきびしい申合せがありました。よつてこの際政府に特にこれを要望いたしておきます。緒方国務大臣にこのことに関する政府の意図を尋ぬる次第であります。
  208. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 御要望に沿いまして、できるだけ早く提出いたしますように努力をいたします。
  209. 成田知巳

    ○成田委員 今委員長の方かう政府に要望されておりますが、法案ないし要綱と言われましたが、私たちが言うているのは法案でありますから、その意味で私は今の答弁を了承いたします。
  210. 太田正孝

    太田委員長 きようの午前の委員会におきましては法案ないしその要綱とありましたので、そのまま私は申したので、私がつくつたわけではございません。申すまでもなく法律案と予算との関係は従来の例もあることでございますし、今の意味を政府においてよく了解されることと存じます。  本日はこの程度にいたし、次会は明十七日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会