○西川
委員 つまり急激な変化を予想し得なか
つたから、今度は急激ではないけれども、だんだん不景気になりつつある、その不景気になる現象が、
国民所得の上にどう影響するかということが、十分に予想されなか
つたのではないかという点を私は心配するのであります。しかしこの点は、ここで言葉のやりとりはもういたしません。
大臣は先般塚田
委員の質問に対しまして従来の
政府の減税は、主として自然増収を財源として減税して参りましたが、今後におきましては、自然増収ということはあまり期待できないので、将来の減税に対しましては非常に望みが薄いという
ような御見解を述べておるのでございます。しかし
国民の負担状況は戦前に比較してどうな
つているか。
国民所得に対する租税負担の割合は戦前の二一・八%から二〇・四%へ、すわち七・六%の割合にすぎないのであります。ところがこれは総体の比率を見ればその
通りでございますが、
国民の個々の税金の負担がどの
ようにな
つているかということを調べてみますと、個人の場合において、戦前と戦後の負担
関係を調べるということはなかなか千差万別でとらえにくいのでありますけれども、ここに大蔵省の局長、課長、課長補佐、係長、係員という
ような方の個人の所得と負担率というものを比較してみますと、
昭和九年——十一年の平均におきましては、局長の総所得は年間七千九百二十円でございまして、それに対する税金は二百七十円である。局長でありまして三・四%の負担しかしていなか
つたのであります。それが、今度御提案にな
つておるこの改正法におきまして——現在の局長の給与は六十一万二千五百六十三円でありまして、所得は約八十倍。ところが負担は十二万一千三百円になりまして、その割合は約二〇%にな
つておる。戦前におきましては三・四%のものが約二〇%にな
つておる。所得は八十倍となり物価は三百五十倍とな
つて負担は、実に四百五十倍とな
つておるのであります。課長におきましては、戦前に二・六%の負担でありましたものが、この改正案によりましてもなお一五・四%です。課長補佐におきましては、戦前は一・八%でありましたものが、この改正案におきましてもなお八%、それから係長におきましては一・五%の負担であ
つたものが四・二%、それから係員初任給は戦前は無税であ
つたものが一・一%となり、また家族のおらない者は三%の負担をするという
ように、率からいいますと現在年間六十万円程度の所得で、前の六千円、七千円の所得の階級の負担が非常に高くな
つておるということであります。またこれを事業所得について見ますならば、戦前におきましては、三千円の事業所得に対しまして税額はわずかに五十四円でございました。その負担率は一・八%にすぎなか
つた。これが今日戦前の二百倍の所得、六十万円の事業所得をあげます者は、十四万円の税金を負担いたしまして、二三・四%の負担となるのでございます。また戦前に五千円の所得の者はわずかに百七十円の租税でありまして、三・四%の負担率でありましたものが、現在百万円の所得に対しましては三十一万七千三百円、すなわち三一・七%の税金を負担しなくてはならぬ。戦前の一万円の所得の者は五百四十円の税金でありまして、五・四%の負担であ
つたものが、今日二百万円の所得に対しましては八十万九千二百五十円の税がかかりまして、その負担率は四〇%以上になります。戦前に二万円の所得の者は千五百六十五円すなわち八%足らずの負担でありましたものが、現在その二十倍の四百万円の所得の者は、実に百九十四万三千二百円という負担になるのでございまして、その負担率は四八・五%という
ように高くな
つておるのであります。このことはどういうことを意味しておるかと申しますと、われわれ
国民は非常に高い負担を負いまして、戦争に負けたからいたし方がないということで、一応あきらめておる。しかしさらに静かに
考えてみますならば、戦争に負けたためになぜ負担が高くならなくてはならぬか、現実の問題としては、われわれは軍備の負担を免れておりまして、戦前
予算のあるいは四割、あるいは五割、六割を占めておりましたところの軍事費の負担は、現在の保安費の負担と比較いたしますと、現在の方がはるかに軽くな
つておる。植民地を失
つたことも、内地の者が負担を増加しなくてはならぬ原因にはな
つておりません。その他いろいろ
考えてみますと、この
ように非常に高い率の負担をしなくてはならぬということは、
国民として納得の行かぬ点が非常に多いと思うのであります。これにはもちろんそうなるべきいろいろの理由もあるでございまし
ようが、その点をもつと
国民によく知らして、こういう事情でこういう方面に金が使われておるのだから、この
ように負担が高くなるということを納得させなくては、このままの負担が今後将来続いて行くということになりましたならば、
国民はなかなかがまんができかねると思うのでございます。特にわれわれが
考えなくてはならぬことは、こうした数字から見ますと、戦前のわれわれの税金というものは、その税金をとらなか
つたならば貯蓄となり資本化すところの、そういう階級の面から大部分の税金はとられておる。大蔵省の局長諸君ですらも、三%程度の負担しかせずに済んだのが、現在は二〇%も負担をしなくてはならぬということは、
国民の生活費の中から大部分の税金が払われておる。つまり同じ税金でありましても、その性質がま
つたくかわ
つて来ておる。この性格を真剣に
考えますならば、国費を使用するという方面に、さらに根本的に再
検討をしなくてはならぬ点が多々あるとわれわれは思うのであります。この個人別についての負担
関係を見ますならば、われわれは現在の政治のやり方、行政のやり方、毎日問題にな
つております行政整理の問題にもほんとうに厳粛な気持にな
つて、
政府も国会も真剣に根本的に再
検討をいたしまして、戦後の平年におけるところの負担から
国民をどの程度に置いて行くかということを
考え直して行かなくてはならぬと思うのであります。その点におきましては内閣の各
大臣諸公はもちろん、特に
大蔵大臣におきましても、さらに一大決心をも
つて将来の財政に臨まなくてはならぬと思うのでございますが、それに対しましての
大臣の御所見を伺いたいと思います。