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1953-02-11 第15回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十一日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    北  吟吉君       小坂善太郎君    重政 誠之君       砂田 重政君    田子 一民君       塚原 俊郎君    永野  護君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    原 健三郎君       南  好雄君    山崎  巖君       井出一太郎君    小島 徹三君       櫻内 義雄君    鈴木 正吾君       早川  崇君    古井 喜實君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       石井 繁丸君    中村 高一君       西尾 末廣君    西村 榮一君       平野 力三君    稻村 順三君       上林與市郎君    八百板 正君       和田 博雄君    福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁装備局長 中村  卓君         総理府事務官         (経済審議庁次         長)      平井富三郎君         総理府事務官         (経済審議庁総         務部長)    西原 直廉君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         国税庁長官   平田敬一郎君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         食糧庁長官   東畑 四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十一日  委員石田博英君及び水谷長三郎君辞任につき、  その補欠として砂田重政君及び平野力三君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑を継続いたします。櫻内義雄君。
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員 まず最初に、ちようど総理大臣がお見えでございますので、今後の政局安定方策としての旨相の御所信を、一、二承りたいのでございます。というのは国会におきまして、総理はしばしば憲法改正はしない、これは慎重に考えなければならないと御答弁されておる。あるいは再軍備の問題につきましても、自衛力増加ということについては、お認めになつておるようでございますけれども、再軍備はしないというふうに、はつきりお答えをされておるわけでございます。しかしこの憲法改正問題なり、再軍備の問題ということは、当然遠からずどうしても私どもが現在以上真剣にとつ組んで行かなければならない問題だとかように考えるのであります。そうなつて参りますと、政局の安定ということは非常な重要な問題になります。言うまでもなく、憲法改正の問題につきましては、国会の三分の二の勢力を必要とするというようなことにもなつて来るのでございます。総理大臣はかつて二大政党主義を御主張になりまして、自由党に対して社会党育成強化をお考えになり、自由党社会党とによる政治の運用を御企図なさつておるように思われたのであります。しかし最近の事情は当時と相当違いまして、当時総理がそのようにお考えになりましたときには、自由党が絶対過半数を握つておる当時であり、社会党また分裂をせざる前にあつたと思います。しかるに現在におきましては、自由党それ自体が党内におきましても相当な派閥抗争をしておる。あるいは社会党は二つに割れておる。かくのごとき状況でございます。ただいま御指摘申し上げたような大きな国民の運命をかけるような問題が眼前に迫つて来ているわけでありますが、この場合における総理の今後の政党政治あり方と申しましようか、政局の安定に対する御所信をまず承りたいと思います。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。まず憲法改正の必要が眼前に迫つているという御意見でありますが、私はそうは考えておらないのであります。何となれば現在の機構で、すなわち保安隊国内の治安を維持する、そうして外国からの侵入に対しては、安全保障条約でもつて日本独立安全を守り得ると考えますので、この際において再軍備とか、あるいは再軍備とするがために憲法改正するということは考えておりません。ゆえにもし再軍備の必要が眼前に迫つておるからという理由でもつて憲法改正をと言われるならば、私はその必要はないと考えるのであります。  それから二大政党論は、民主政治もしくは政党政治あり方としては普通の議論でありまして、二大政党が対立するということは、憲法運営なり議会政治運営からよいという理想論を申しただけの話だが、これがために社会党育成するというような言葉が使われたために、思わざる攻撃を受けて実は迷惑いたしております。多分社会党も迷惑だろうと思いますが、私自身も迷惑しておるのであります。私の言うことは、反対党が強くならないと自党もまた強くなつて来ない、であるから政党政治を強化するためには、強い反対党が対立するということがよいのであつて、そうして堂々と議論を闘わせて行く、ここに議会政治政党政治の妙味が出て来るものであるから、二大政党なり大政党が対立することがいいということは、理論的に申したのであつて、しからば今ただちにどうするという考えはございません。
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員 ただいま憲法改正の問題につきまして、なるほど総理の言われるように、再軍備の問題にからんでは、私ども総理考え方とには差があると思います。しかし総理自身、先般の本会議におきまして、只野議員に対しまして、憲法制定当時の事情と今の国内事情は違うということもお認めになつておられる。また慎重は期さなければならないというお言葉は使われておりましたけれども、単なる軍備問題ではなくて日本独自の新しく発足した独立国家にふさわしい憲法、こういうものの必要性につきましては、只野議員に対する答弁のお言葉の中には、相当お認めになつておる口吻を私どもは感じたのであります。さような見地から申してみますならば、当時の憲法マツカーサー憲法とまでいわれ、押しつけられた憲法であるというように考えておる多数の国民があるわけでございます。かように考えて参りますときに、単なる軍備問題にからんでではなくて、真に新しい日本にふさわしい憲法をつくるのだということからいたしまして、当然独立最初の問題として、検討を加えらるべき問題ではないかというふうに解釈するのでありますが、この辺についてはいかがでありましようか。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。この問題についても、せんだつてこの委員会と思いますが、繰返して申したのであります。憲法は国の基本法であつて、一旦定まつた以上は、万世不易とは言いませんが、しかしながらこの憲法改正はよほど慎重に考うべきものであり、また国民輿論もそこに来て、初めて憲法改正という手段はとるべきである。しかしながら、それにしても、国の基本法であるから、よほど慎重に輿論の趨向を考え、もしくは内外の事情から必要やむを得ざる改正は試みるとしても、決して軽々にいたすべきものではないということを繰返して申しておるのであります。いわんや、政府が先に立つて憲法改正を唱道するというようなことについてはどうであろうか。少くとも私としては遺憾に考えております。
  7. 櫻内義雄

    櫻内委員 この問題につきましては、私どもは真剣に検討して、ほんとう独立国家にふさわしい憲法にすべきであるという見解を持つておる次第でありますが、次の問題に移りたいと思います。  ただいま再軍備の問題についてお答えがあつたわけでございますが、総理はしばしば、昨日も早川委員の質問対してお答えになつておるわけでございますが、安全保障条約に伴いまして日本漸増的に自衛力増加するということは、これは条約によつて明らかであります。これに対して早川委員より漸増的に自衛力増加する計画はどうなのだということについては、そういう計画をお持ちになつてないということを明らかにしておるわけであります。しかもそれだけではなくて常に再軍備ということよりも、国民生活の安定が必要なんだ、今はその時期ではないという御見解を吐露せら、れておるわけでございますが、本年度の九千六百五億円の総歳出に対しまして御承知のように、直接防衛費は一五%に及んでおる。千四百五十億円になつておる。しかも政府のお組みになりました予算の中で、再軍備の必要よりも、国民生活安定向上を求めているという政府考え総理の御主張とは遅つて防衛費関係が最も重点的に取上げられておるわけであります。今回の予算を見ますときに、直接防衛費のほかに、旧軍人あるいは遺家族の援護の費用等をこれに加えて行きますなれば、二〇%近いものは再軍備関係ある費用と見てさしつかえないのであります。それに対しまして、食糧増産あるいは住宅の建設費用とか、また社会保障制度的な費用を合計いたしましても、千五百億円程度なのでございます。でありますから、予算の上からいいますならば、吉田内閣は、明らかにその重点というものは、お言葉はどうでありましようとも、防衛なり、あるいは漸増的な自衛力増加のために、その予算構成重点が置かれてあるということは明らかでございます。もし総理が、ほんとう国民生活安定向上が先であるというお考えでありますならば、今回独立後の最初予算でございますので、さらにもつと思い切つて防衛費関係は削られていいのじやないか、こういう点につきまして総理のお考えを承りたいのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の主として申しておることは、国力培養ということを申しておるので、防衛費のごときも、国力にふさわしい、あるいは国力培養とともにふやすのだ、とにかく現在においては、この程度で満足するほかしかたがないと申しておるのであります。軍人恩給その他を防衛費の中に計算するというお考えもあるかもしれませんが、しかし政府軍人恩給遺家族等の手当を考えたのは、これは防衛のためではなくて、社会生活の安定といいますか、軍人恩給は文官の恩給とともに考うべきものであり、従来は軍人恩給軍国主義といいますか、そういうような観点からして廃止せられたのでありますが、しかしこれは社会正義の上からいつてみてもよろしくないという考えで、防衛費あるいは再軍備考えからして軍人恩給等考えたわけではないのであります。また国力培養のためには、治水、治山その他食糧の問題もそうでありますが、防衛というよりは、国民の生活安定のために、また国力培養のために、必要欠くべからざるものを重点的に組んだつもりであつて、決して再軍備目的とし、もしくは漸増という考えで組んだ予算ではないのであります。防衛費はなるべく減らすという考えからして、数字は忘れましたけれども、相当減額したつもりであります。漸増ということを約束しておりますが、その漸増は、さしあたりのところは人員をふやすとかなんとかいうことをせずに、素質の向上とか改善とかいうことによつて漸増という線に沿うて参るつもりでおります。
  9. 櫻内義雄

    櫻内委員 国力培養について総理が今お話になつたわけでございますが、大蔵大臣あるいは通産大臣等によりまして、経済方針が本会議あるいは予算委員会で明らかにされております。確かに、朝鮮動乱の反動として起つた世界的景気後退に伴いまして、日本もまた同様の状況にある。今後不況を打開いたしまして、自立経済を達成するためには、輸出振興なり国内資源開発等を通じて、国力培養をはかつて行かなければならないのは当然のことであると思うのであります。しかしながらこの問題にからみまして、大蔵大臣あるいは通産大臣におかれまして、あるいはまた政府として、経済政策方針が一貫してないというふうに思えるのでございます。たとえば大蔵大臣はかように申しておられます。それは現在が朝鮮動乱後の調整過程にある、こういうような見解に立たれまして、この景気後退現象が、主として海外における需給事情の緩和に伴う輸出価格の低下、そういうことからこの景気後退現象が現われたというふうに、施政方針の演説の際に触れられておつたと思うのであります。ところが通産大臣におかれましては、ポンド地域やその他の国の輸入制限措置の強化なり、それから輸出競争の激化によつて輸出は漸次不振になつて、現在の産業沈滞現象が現われて来ているのだというような考え方に立つておられるのであります。そしてこれに対しての対策としては、大蔵大臣としては、安易な景気振興対策をとるべきではないのであつて、正常の輸出増進をはかりたい。合理化能率化によつて経済力充実をはかるのだ、あるいは経費の放漫を戒めたり、また補助救済等によるような方策はとりたくない、浪費はいけないのだというふうにお説きになつている。ところが通産大臣の方におかれましては、この特需等がまだ行われている、こういう期待ができる間に、諸般の施策をもつと積極的に大いにやらなければならない。場合によつては、必要があれば補助金政策等もとるのだというふうに、こういう考え方の差があるのでございますけれども大蔵大臣並びに通産大臣より、この辺の点につきまして御所見を承りたいと思うのであります。
  10. 向井忠晴

    向井国務大臣 通産大臣と私の間にひどい見解相違があるとは思われないのですが、ただ私は職掌柄、金を出すのはなるたけ控えたい、そういう考えがあるいは言葉の上に表われたかと思うのであります。必ずしも金を出さずに施策ができるとも存じておりませんし、また通産大臣はその御所管の仕事において、いろいろのお考えがるとは思いますが、その間に調節をはかつて行つて生産を伸ばしたり、あるいは輸出振興して、日本経済上の発展のできるようにいたして行きたい、それが一番大事だと考えております。
  11. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答えいたします。私も大蔵大臣との間に意見相違があるようには考えないのでございます。ただ私が申し上げた趣意は、この日本国際貸借というものは、現在は特需その他で黒字になつておるけれども、これは正常貿易によつて黒字にするということが本来であるから、そこで当分の間は特需その他があつて黒字になつて行くが、その間に正常貿易によつて黒字等になつて行くように、あらゆる貿易施策を進めて行かなければならぬということを強調した次第でございます。
  12. 櫻内義雄

    櫻内委員 非常に抽象的な、御両者なれ合いの御答弁でございまして、私はこの際に少しはつきりしたことをお聞きしておきたいのであります。それは昨年の十二月十日の向井大蔵大臣は本委員会におきまして、わが国将来の産業構造について、一部に重化学工業化を唱える向きもあるが、わが国経済重化学工業に依存するということは、実際問題としては逆だと思う。貿易上の役割から見て、軽工業製品ヨーロツパ諸国との接触点である東南アジアに進出して、そこで販路を拡張することの方がいいと思う。この方面で中小企業振興をはかつて、割安なものをつくることが、今後向うべき道であろうというように答えられておるのであります。しかるに通産大臣は、また通産省としましては、池田大蔵大臣当時、重化学工業育成をはかることを主としておられまして、経済規模の拡大をするためには資本の蓄積を促進し、投資の重点化資本効率化とにより、電力石炭鉄鋼等重要基礎産業充実をはかつて行きたいというふうに常に主張せられておるわけでございます。このように、大蔵大臣軽工業重点を置き、通産大臣重化学工業にその重点を置いて行こうということは、しばしば明らかになつた点でございますけれども、この辺の相違についてはいかがお考えですか。
  13. 向井忠晴

    向井国務大臣 私は日本の現況におきまして、軽工業というものは今までずつとやつてつた仕事であつて、割合に楽に力が注ぎ得るという点で大切に思つておるのでございます。重工業必ずしも悪いとは思いませんが、軽工業が楽だろうという考えを持つております。但し、これは通産大臣が御返事するか知りませんが、池田さんが通産大臣の時分からして重化学工業ということを唱導すつたのは、たまたまそういうものに注意を注ぐような状態に向つてつた、あるいはインドとかその他ほかの国で、日本重化学工業生産注意を向けて来たようなことがありますが、それについて対策を研究なすつた、それがよけいに世の中に伝わつたために、重化学工業に大いに力を注ぐというふうに見られたのではないか、そう私は考えております。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 櫻内さんにお答えいたしますが、この機会に、誤解があつてはならぬから、少し詳しくお答えを申し上げておきたいと思います。国の産業構造はその基礎資源立地条件及び歴史的、文化的背景によつて定められるものでありますが、工業形態としては、あらゆる形態工業が円満に発達することが最も望ましいのであります。従いまして重工業軽工業を問わず、あらゆる産業発達せしむることが国目的であり、いずれに重点を置くということはないのであります。しかしながら工業発達段階は、歴史的に見ましても、まず繊維工業その他の軽工業発達いたしまして、次いで重化学工業に及ぶことが通例であり、最近東南アジア等工業的後進国におきましても、工業化の意欲は著しく、軽工業発達に注目すべきものがあることは、櫻内さんの御承知の通りであります。わが国のごとく貿易依存度の高い国といたしまして輸出振興をその生命としておる場合、従来のように繊維雑貨等軽工業品輸出品大宗を依存することは、今後の世界経済状況から見まして相当困難であり、機械類化学製品等重化学工業品市場を開拓し、輸出質的転換を行う必要があるのであります。反面、化学工業は戦時戦後の空白期におきまして、欧米諸国の著しい技術的発展に対し立遅れを見せておりますので、一日も早く国際市場において競争し得る力を育成しなければならない必要を痛感いたします。今日政府は、鉄鋼石炭電力の三大基幹産業財政資金を集中的に投下し、また機械工業化学工業技術的発達に意を注いでおりますのもこのゆえにほかなりません。しかしながら軽工業品はなお現在輸出大宗を占めており、また国民生活必需品軽工業に依存しておる。その重要性については、こうも減じておるものではございません。軽工業製品といたしましては、今後相手国の民度の向上に対応して、漸次高級品輸出重点を移すことにより、その発展をはかるべきものであると考えます。政府施策が、国際的、国内的な政治経済状態に応じまして、ときによりその表現形態を異にするところはありましても、産業の跛行的な発達を戒め、円満なる発達を目標とすることは常にかわらないものでなければならぬと考えます。
  15. 櫻内義雄

    櫻内委員 なるほどそうでなくてはたいへんなことでありまして、通産大臣大蔵大臣が全然考え方違つたのでは、これは最も重要なる経済政策のことでございますので、国民が迷惑をすることになります。しかしただいまの御答弁は、それは御答弁だけでございます。たとえば、最近の石炭単価引下げの問題にからみましても、通産大臣大蔵大臣意見がかわつておると思うのであります。たとえば、ただいまのように軽工業製品輸出よりも、むしろ機械類プラント輸出がいいのだというので、通産大臣プラント輸出の促進にからんで、鋼材補給金予算編成過程におきまして要求せられた事実があると思います。その際に大蔵大臣は、石炭鉄鋼価格引下げについて努力をしてもらいたいというように、意見が違つておると思うのでありますが、この点はいかがでありましよう。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点につきましては、まず鉄鋼業者鉄鋼価格引下げに努力すべきであるということに一致いたしまして、しかしプラント輸出等につきましては、向うに相談室を設けて技術等相談に乗り、今度予算措置もとつてございます。それらによつて便宜をはかることを第一としよう。いわば日本のこういつた輸出品についてのサービスが欠けておるから、まずその辺から始めよう。日本西ヨーロツパちよつと国際的に事情が違うところがございますので、ただちにそういう補給金等をとる段階には達しないであろう。こういうことに一致した次第でございます。
  17. 櫻内義雄

    櫻内委員 補給金の問題で、御意見の一致されておることはけつこうであります。ところが石炭鉄鋼価格引下げということについては、これは今一つの断片的な問題で、お二方の意見相違を指摘したのでありますが、しかしながらこの引下げ問題については、その後の経緯を考えてみますときに、通産大臣も先ほどの御答弁にもありましたように、やはり重化学工業というものの育成強化考えておられる。その場合におきましては、当然これは最重要な問題として取上げて来なければならないわけでございます。石炭鉄鋼価格が、現在のように国際価格と非常な開きがあるということでは、日本基幹産業育成強化にはなりません。そういうことから考えて行きますときに政府とされましては石炭鉄鋼の問題についてどういう考え方を持つているのか。現在鉄鋼価格にいたしましても、日本のものは七十二ドル余になつておる。アメリカのものは五十三ドルで、これを下げるのには石炭価格引下げ以外にはないのだ。しかも世界軍需景気後退によりましてアメリカの厖大なる製鉄能力日本を圧倒して来るのではないかというような大きな不安感もあるわけでございます。この場合における通産大臣としての、石炭鉄鋼価格引下げに関するはつきりしたお考え方をこの際承りたいと思うのであります。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 石炭価格引下げにつきましては、政府といたしましては税制その他の措置においてなすべきことはなしまするとともに、縦坑開鑿によりまして五箇年の後には約三割の価格引下げをなし得る予定であります。さらに今日の石炭需給状況にかんがみますと、約一年後には少くとも一割数分の価格引下げが現実に行われて参るという見通しを持つております。これは過日通産委員会において、この夏はもう千円以上も下るのではないか、そう下つて労働者の賃金が下つて困るではないかという質問をされた方があるのでありまして、私どももそこまで下るかどうかわかりませんが、一割数分下るであろうという見通しを持つております。また各種の合理化等をそれぞれやる考え方をいたしております。さらに資金その他の措置が必要なものについては、この措置をとる考え方であります。またかりに金利の低下等が必要でありますれば、その措置もとりたいと思つております。また業者の協力を求めることにつきましても、業者の協力を十分に求めたいと存じております。  そうやつて炭価が下つて参りますと、今の櫻内さんのおつしやつた鉄鋼価格に大きく響いて参ります。また鉄鋼の方は、日本鉄鋼の機械が相当老廃いたしておりましたので、二十六、七、八の三箇年で、鉄鋼の機械の更新化、近代化をはかつておりましたので、これが二十八年には完成して参ります。またこれについても税制その他の措置をとることにいたします。さらに合理化も進めますし、鉄鉱石につきましてもだんだん近間のところから鉄鉱石の供給を受けることにいたしまして、現にアジア方面にだんだんと転換して参つております。輸送賃金あるいは設備等につきましても、改革をはかつております。必要な資金はこれに供給して参つております。そういうこと等でだんだん国際競争力を加えて参ると考えております。従いまして私ども鉄鋼の方面も、右左というわけには参りませんが、数年たちますならば、相当な効果を必ず上げ得るものと自信いたしまして、目下着々とその計画を進めつつある次第でございます。
  19. 櫻内義雄

    櫻内委員 通産大臣が前段で言われましたように、多少の値下りが本年内にあなたのお考えでは予想せられるかと思うのでありますが、私どもは百歩譲つて通産大臣の、その程度の値下りで鉄鋼界が救われて行くとは思わない。それは御承知のようにどうしても三割以上の引下げをしなければならないというわけであります。ですから通産省としては長期計画引下げよう。また直接効果あるためには、外国炭の輸入をして国際価格と競争させてこれを引下げて行こうというような計画を立てられたと思うのであります。この石炭価格引下げという問題が、鉄鋼なり硫安なり重化学工業に全面的に影響があるということは、これはもうここでいろいろ申し上げる必要のない点でございますが、おそらく総理大臣といたしましても、この炭価引下げの問題について、あるいは重化学工業育成強化につきましては、非常な御関心があると思うのであります。日本経済復興のためにはこれは真剣に考えなければならない問題でございます。  ところでまことに残念なことではございますが、もしその事実なしとするならば、ここで御関係の皆様方から否定しておいてもらいたい。国会におきまして非常な問題となつておる炭価引下げのこのやかましい折から、新聞紙上に伝えるところによりますならば、一月二十三日築地において緒方官房長官、また石井運輸大臣、通産大臣大蔵大臣が業者と御会談をなさつておる。その結果これ以上輸入炭を入れることを控えたいというようなことに話合いがついたという記事を私は見て、まことに残念に思つております。特にその記事の中に緒方官房長官や石井運輸大臣は選挙区の関係ではべつてつたというようなことも付言されておるのでありますが、まず総理大臣にこの石炭価格引下げの問題の重要なとき、綱紀粛正にもからんでこのような事実がもしありとするならば、総理はどうお考えであるかという点についてお聞きいたしたいのであります。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は今のような事実を承知しておりませんので、関係大臣から答弁いたさせます。
  21. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。日にちは忘れましたが、炭鉱業者——大手筋も中小業者も両方でありますが、石炭が今日の基幹産業として、すべての産業を好況に導くと申しますか、一番大切なものであるから、いかにして炭価を引下げるかという問題について、炭鉱の事情も申し述べたいから、その機会をつくつてほしいということで、大蔵大臣通産大臣等相談いたしましてそういう機会をつくつたことは事実であります。しかし今お話の外国炭を入れるのをやめることを、その席上において申し合せたといいうようなことは全然ありません。
  22. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私もその席に列しましたが、私はそういうような話は一切聞きません。むしろ私に大声叱呼されたので、業者はかようなおしかりを受けるということは予期しなかつたと言いました。私は諸君はものを頼むときにはまずみずからなすべきことをなさなければならぬではないか。何をぼくの前でするのか、こう言つて席をけつてつたのでありまして、さようなことは私は何も陳情を聞きません。
  23. 櫻内義雄

    櫻内委員 別にこれを大いに取立ててどうということではありません。しかしこういうことが新聞紙上に出ますと、私ですら何だかくさいような気持を起すのでありまして、いわんや事情の全然わからない国民大衆にとりましては、やはり大きな疑惑を招かざるを得ないような、そういう空気が出るのは当然だと思うのであります。幸いにいたしまして今の御答弁でございますのでこの伴はそれ以上追究はいたしません。  この重化学工業と申しますか、特に石炭鉄鋼等に関する問題は、今後非常に大きな問題だと思うのであります。私は通産大臣の言われたような工場設備の近代化、経営の合理化というようなことだけでは、この問題は解決して行かないのではないかと思う。もつともつと大きな問題を将来に含んでおるように思うのでございます。聞くところによりますと、鉄鋼事業法のようなものでもつくつて鉄鋼事業界の再編成をしてみたいというようなお考えも持つておられるようでありますが、この辺はいかがでありましようか。
  24. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと私の先刻の言葉を訂正いたします。何かさつき頼まれたようなことをちよつと言いましたが、輸入炭とかそういうような問題ではありません。陳情をいろいろ受けたということであります。その点はいろいろ業者の訴えがあつたということでありまして、その点ちよつと訂正いたしておきます。  それから今の鉄鋼の問題につきましては今検討中でありまして、私どもこれは根本的に考えなければいかぬと存じて目下事務的に検討いたしております。
  25. 櫻内義雄

    櫻内委員 次に総括的に総理にお聞きしたいのであります。これは二日のアイゼンハウアー元帥の一般教書の中に、日本経済にいろいろと影響のある通商関係にりきまして四項目にわたつて説かれておつたと思うのでございます。このアイゼンハウアー元帥の教書につきまして多分総理は御承知であられると思うのでありますが、通商関係の四項目にわたるわが国に直接関係ある問題につきまして、総括的でけつこうでございますが、どういうふうにお考えであつたか、お聞きしたいのであります。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 私も新大統領の教書の中にある、今お話の四項を一々覚えておりませんが、要するに今日世界貿易が不振であり、その不振な原因の一つはアメリカの輸入が関税その他のことで阻害せられるから、その点は直してもらいたいという希望が各国からしてあつた。それに対する訴えの一端であろうと思います。もしアメリカが関税その他について輸入を容易にしてくれるようならば、また日本貿易においてもその余沢をこうむり得ると考えます。これは一般の感じでありまして、詳細は外務大臣その他からお答え申し上げます。
  27. 櫻内義雄

    櫻内委員 それではその四項につきまして少しく外務大臣、あるいは御関係通産大臣等にお聞きしたいのであります。その最初にこういうことが書いてあるのであります。「われわれは利潤がある貿易を妨げておる手続上の障害を取除くために、米国の関税規則を改訂するであろう。」こういう前提をしております。しかしそれについては条件がついておる。「この目標に向つて進むとしても、国内産業、農業、労働水準の正当な保障ということを無視してはならぬ。」アイクは対内的なそういう条件付で、関税規則の改訂をするであらうということを言つておられるのであります。しかるに現在日本アメリカとの間におきましては、いろいろ関税問題ではなお大きなLうなおではありません。今後幾多の大きな問題が残つておると思います。六月十二日で期限切れとなる互恵通商法の再延長につきましても楽観を許さないということであります。たとえば木ネジ、絹スカーフ、陶磁器、あるいは油づけまぐろ等これがすべてひつかかつて参るわけでありますが、このアイクの一般教書に伴いまして、日本関係のある関税問題、これにつきまして外務大臣より少しく承りたいのであります。
  28. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 関税の問題はたくさんあります。ことに問題になりましたのは、今御指摘のようなまぐろの関税でありますが、これも先般また一時むし返されたことがありますが、結局大したことにならずにそのまま立消えになつたようであります。われわれの方では、政府政府の間はもちろんでありますが、業界の方は業界の方で先方に当る。またこういう問題については、ワシントンに——これは必要に応じてでありますが、こういうタツクスに関するアメリカ人のコンサルタントも置いて、始終情報を入手し、対策を講じようと思つております。アメリカ政府としては日本貿易上の立場も考え、できるだけドル収入の多くなるようにと思つて努力してくれておるようであります。幸いにして今のところは大した懸念がなく済んでおりますが、今後とも十分警戒をいたすつもりでおります。
  29. 櫻内義雄

    櫻内委員 ここで通産大臣ちよつとお聞きしたいのでありますが、この対米の通商関係でございます。これは今ちよつと探してみて数字がはつきりはしていないのでありますが、大体日本アメリカから相当輸入をしておる、しかしアメリカには大して輸出はされていない。これは昭和二十六年の数字でございますので、あまり新しい数字ではありませんが、しかしながら輸出につきましては、二十六年度においては全体の一四%、それから輸入については全体の三四%、こういうような関係になつております。大体戦後の経緯を見ますと、一時非常にアメリカからの輸入のふえたときもございますが、大体三、四十パーセント、輸出の方は多くても二〇%にはならない、こういうような状況で、ございまして全体の上から見ますと、アジア州、特に東南アジア関係等の方が輸出の面においては、貿易面では重要性がある、かように見られるわけであります。こういうわけでございますから、このアメリカとの貿易関係というものが、こういうアイクの教書によつて、今後相当改善せられるとしても、輸出の面では大して期待されないではないかというような気持があるのでございますけれども通産大臣としてはいかがでありましようか。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは櫻内さんの御指摘の通りでございますが、日本もドル不足に悩んでおる国の一つでございますので、先般の演説のうちにも、日本もドル不足に悩む一国であるということを申し上げたわけで、これは日本といたしましても、今後とも全力を尽さなければならぬと存じております。
  31. 櫻内義雄

    櫻内委員 これはちよつと重要な点でございますが、第四項に、「われわれは他国に供給するものと交換に、公正なる割合でこれらの国々からわれわれの十分に持つていない重要な原料を今より多量に受取るであろうというのがアイクの言でございます。こうなりますと、第四項から行くならば、原料をほしいのだということを世界に向つてアイクは明らかにした。日本は、それでは原料として何をくれてやるのだということを考えてみますときに、これといつて浮んで来るものがないのであります。そこで吉田内閣におきましては、従来とも日米経済協力を非常に主張せられており、また日本としては東南アジアに対して相当な深い関心を持つている。アメリカ貿易の実情を調べてみると、アメリカとしては東南アジアから原料の供給を受けるということについては、これは非常な関心があると思います。また日本としては東南アジアに対して、向井大蔵大臣繊維製品を大いに出そうとお思いになるし、通産大臣プラント輸出をしてみたいといつて東南アジアに対して色目を使つておるわけであります。そこでこのアメリカの気持と日本のこの考えと、そして東南アジア、この三つを日米経済協力あるいは東南アジア開発というようなことにからんで相互関係が生じないものかどうか、あるいは従来日米経済協力を非常に主張して来られたわけでございますので、そういうような話合いがないのか、交渉された事実はないかというような点につきまして、まず外務大臣、それから通産大臣に承りたいのであります。
  32. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろの場合に話をいたしております。われわれの方のおもなる話は、アメリカ日本の直接の貿易ももちろん重要でありますが、東南アジア方面に対しても、オープン・アカウント地域もありますし、ドルの不足に悩んでおる状況は同じでありますので、もしアメリカ側が東南アジアの方の開発に力を入れるとか、あるいは原料を大いに買うとかしてドルの供給がよくなれば、それだけ日本東南アジアとの貿易も活発になり得るのでありまして、こういうふうにただアメリカ日本というだけの観点でなく、三角貿易といつてはおかしいのでありますが、各国を含めた貿易量の増大ということについては、常に話をいたしております。
  33. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 インドネシア等につきましては、こちらの方でほぼ決済方法等について確立いたしましたけれども、なお交渉中の案件が多いので、今のところ今後にまつべきものが多うございます。今のところ御報告を申し上げる程度にまだ達しておりません。
  34. 櫻内義雄

    櫻内委員 ただいま申し上げた点については、せつかく御努力を煩わしたいと思うのであります。時間も迫つておりますので少し飛ばしまして、次の問題をお尋ねしたいと思います。それは去る一月十三日に、政府は外国軍用機による北海道上空の領空侵犯につきまして、これを排除するための有効適切な措置をとることを、米国政府に対して要請せられたわけでございます。これは新聞紙上で拝見いたしましたが、岡崎外務大臣よりマーフイー大使に対して書簡を出され、またアメリカ大使館よりそれに対する返信が参つておるのでございます。これらは私から読み上げるまでもないのでございますが、このような領空侵犯問題にからむ日米往復書簡に伴いまして、次のような点をお尋ねしておきたいのであります。それは一月十四日の日本経済新聞におきまして、この措置は、日米行政協定第二十四条に基くものではなくて、一般国際法の原則に基く国の基本権の擁護である、こういうふうに政府の説明が記事として載つておるわけでございます。そこでお尋ねしたいことは、この書簡というものは、何に基いて出しておられるのか、この点をまずお聞きしたい。また領空侵犯のこういう書簡を出さなければならなかつたという事実につきましては、尾崎委員の質問に対して御答弁もあつたのでございますが、なおこの点につきましては詳細に承りたいのであります。
  35. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今お話の行政協定の第二十四条というのは、申すまでもなく日本区域において敵対行為が行われるか、または急迫した脅威が生じた場合というのでありまして、この場合は急迫した脅威が出たとは考えられませんから、行政協定によつての発動ではないのであります。但し安保条約第一条の中に「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し」という文句がありまして、日本の上空を国籍不明の外国機が侵すということは、いずれにしても日本の安全に影響があるのでありまして、ひいては極東の安全に影響があることでありますので、これに対して領空が侵されないようにという措置を講じたのであります。それに対しては日本の今の力で及ばぬところもありますので、米軍の援助を要請したのであります。
  36. 櫻内義雄

    櫻内委員 ただいま日米行政協定第二十四条ではなくて安全保障条約の第一条によつているのだということでございます。しかし書簡の中に、日本国の安全にも重大な影響を及ぼすものであると認めてこの書簡を出したのだということが書いてあるのでありまして、この安全に重大な影響を及ぼすという事実は何なのですか。
  37. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは国際法上日本のみならず、どこの国でも上空は領空としてその国の了解がなければ入つて来ることはないことになつております。従つてこれは、たとえばよその国の軍用機なりあるいはその他の軍に属するものが、日本の領土に無断で入つて来るということと、実は性質は同じなのでありますから、いずれにしてもこれは安全に重大なる影響のあることと考えられるのは当然と思います。
  38. 櫻内義雄

    櫻内委員 それはちよつと私には納得が行かないのであります。というのはその書簡の中で、あなたは前段で国際法上の不法行為であるということはもう指摘しているのですよ。それでそれにつけ加えて日本の安全に重大な影響があるということを加えているわけなのです。そこで私はお聞きするのですが……。
  39. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国際法上の不法行為でありましても、必ずしも安全に重大な支障を及ぼさないような性質のものもあるわけでありまして、これは国際法上の不法行為であるのみならず、安全に重大なる支障を及ぼす。つまりたとえば普通の漁船が日本の了解なくして日本の領海内に入つて来れば、やはりこれも国際法上は不法行為である。しかしこれは安全に重大なる影響を及ぼさないかもしれない。この場合はそうではないと考えております。
  40. 櫻内義雄

    櫻内委員 それではその事実をお聞きしたいのです。何万フイートか高いところを飛行機が飛んで、だれもそういう事実はわからない。アメリカのレーダーか何かに映つたものを取上げて、そしてそれが日本の国の安全に重大なる影響ありとして、この種の要請をするということは私にはわからない。もしこの要請が行われて、このことが不測の事態に波及して行つたとするならばどうするのですか。そのためにこのあなたの書かれた書簡というものについて、私は事実を前提としては考えられない記事があるので、お尋ねしているわけであります。
  41. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 櫻内君はアメリカのレーダーでこれを発見したというように断定しておられますが、そうではないのでりまして、事実はわれわれの方でもこれを確認しているのであります。また国際関係に重大なる影響を起すかもしれないじやないか、こう言われますけれども、領空を守るということは領土を守るということと同じでありましてこれは守るのが当然でありまして、従つて国際法上当然のことをなしたにすぎないのであります。
  42. 櫻内義雄

    櫻内委員 それでははつきりお聞きしたいのですが、この要請は、日本政府が独自の見解をもつて要請をしたならばいいのです。しかしアメリカ側からこのことについては君の方から要請してもらいたい、こういうことが前提になつて要請したということを聞いているのでありますが、そういう事実はありませんか。
  43. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう事実はありません。
  44. 櫻内義雄

    櫻内委員 それではお尋ねいたします。安全保障条約の第一条から参りますならば、その出動目的は先ほど外務大臣の言われたように、「極東における国際の平和と安全の維持」、米国は日本防衛する包括的義務があつてつたのだ、こういう出動目的がはつきりしているわけですな。しかしこの出動目的というのは、かかる個々の問題について要請の必要があるのですか、これは本来いうと、なかつたのじやないですか。
  45. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは要請の必要がない場合もありましよう。たとえば非常に急迫した事態でもつて、これを防がなければ日本の安全なり、極東の平和なりが、とうてい守れないという場合もありましようけれども、しかし場合はそれのみではないのでありまして、今度のように日本側が要請することも当然あり得るのであります。これに対してアメリカ側がどの程度応ずるかは、これはアメリカ側のまた考えによりましようけれども、要請して悪いということは決してないのであります。
  46. 櫻内義雄

    櫻内委員 要請して悪いとは私も考えません。しかし要請することによつて責任は出るのじやないですか。このことにつきましては、外務省の田中情報文化局長は、新聞記者団との会見で、この要請に伴う責任は日本政府が持つているということを言つているのでありますが、この点を明らかにしてもらいたい。
  47. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはもし日本におきまして十分なる空軍のようなものがかりにあつたといたしますれば、当然日本側で措置すべきごとであります。日本の責任において措置すべきことである。それが十分でないからして、アメリカ側の援助を求めたのでありまして、従つて日本がもしやり得るならば自力でやるべき性質のものでありますから、当然援助を求めた場合においても、日本の責任であることは明らかであります。
  48. 櫻内義雄

    櫻内委員 有効適切な措置をとることをこの書簡の中で明らかにしているわけでありますが、その有効適切なる措置ということについては、どういう意味合いを持つているのでありますか。
  49. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは場合によつてはいろいろ違いましようけれども、普通国際的に考えられておりますのは、まず上空を侵害した飛行機に対して着陸を命ずる、それが聞かない場合には、上空からの退去を求める、もし抵抗するような場合には、その場合にもよりましようが、撃墜されてもその飛行機はやむを得ない、こういうふうに思つております。
  50. 櫻内義雄

    櫻内委員 この要請の件につきまして、先ほど外務大臣が言われましたが、これは新聞記事でありますからどうということではないのでありますが、今後日本の要請がなければ、米軍は出動しないのだというように伝えられているのであります。今回のこの書簡は、日本の要請によつて出動するのだという一つの先例を開いたものであるというふうに伝えられているのでありますが、この辺はどういうことでありましよう。
  51. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは問題々々によつて違いましようが、少くともこういう上空侵犯ということについては、日本の要請によつて出動する場合あるべしという先例をつくつた認められないこともないと思います。その他の場合においては、急迫なる事態であればこれはまた別でありまして、一概に申せないと思います。
  52. 櫻内義雄

    櫻内委員 この問題につきましては、現在ソ連との間には、日本は国交関係はないわけでありますが、第三国を通じてこのことを明らかにしておるのでありますか、それとも単に日米間の問題だけにとどまつておるわけでありますか。
  53. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは遺憾ながら、この国籍不明の飛行機がどこの国の所属であるかということを確認する材料を的確に持つておりません。従いまして、これは一般的に世界に公表した発表文でありましてつまり警告を与えたものであります。どこかの特定国に対して、お前の国の飛行機が侵害したのだという的確な材料を持つておりませんので、いずれの国に対しても特に交渉等をいたしておりません。
  54. 櫻内義雄

    櫻内委員 この要請について、私はいろいろ疑問を持つのであります。先ほど外務大臣は、要請してもその要請に相手側が応じないような口吻があつたのでありますが、そういうことも予想されておるのでありますか。
  55. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは要請でありまして要するにアメリカ側としては、安全保障条約はもちろんのこと、たとえばこういう上空侵犯の場合にはどうするという具体的な措置はきめてないのでありますから、一般的に安全と平和を守るという趣旨でありまして、これが一体安全と平和を守ることであるかどうか。またそれをするにはどの程度措置をすればいいかということは、両国政府の話合いによらざるを得ない場合が多々あると思います。従いまして理論上は、要請しても向うの意見もありましようから、それは協議にまたなければならぬ場合もあるわけであります。今回の場合は、日本の要請によつて先方が欣然としてこれに応じてあらゆる措置を講ずるということになつております。
  56. 櫻内義雄

    櫻内委員 そうすると、要請によつて協議する場合もあるということになると、それは安全保障条約に伴う行政協定第二十四条の協議の場合と同じようなケースになつて来るのでありますか。
  57. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第二十四条の場合は、特にわれわれは日本に対する危険が急迫した場合ということを考えておりますから、これは必ず両国政府で協議をして適当な措置を講ずべきであると思つてこういうふうに書いたわけであります。しかし日本に急迫なる危険を生じない場合も、こういうような事態はありますし、また安全保障条約締結当時予想せられないような事態で、やはり安全保障条約の適用にかかるようなこともありましよう。そういうことは国際関係の問題でありますから、前例によつて事態がつくられる場合もありましようし、話合いによつてこれが行われる場合もありましよう。要するに安全保障条約というのは大きなものとをつくつたものでありまして、具体的措置については、そのおのおのの場合によつて適当な措置を講ずるのがあたりまえのことと考えております。
  58. 櫻内義雄

    櫻内委員 結論的にお尋ねしますが、そうしますとこの要請の点については、要請をしても断られることもあるということを予期しなければならないのでありますか。
  59. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 たとえば、これはりくつだけの話でありますが、日本の安全に危害を及ぼすのだと日本側が考えても、アメリカ側がそれはいや危害を及ぼさないのだ、こう考える場合もあり得ると思いますから、相談をいたすのでありますが、ただ日本の安全に非常な急迫な事態が生ずる、あるいは直接日本に対する危険が事実発生した場合、これは文句のない場合であります。それ以外の場合はおのおの意見もありましようから、やはり協議によらなければならぬ場合もあると考えます。
  60. 櫻内義雄

    櫻内委員 私はこういう点を心配するのであります。それは日本独立国家であります。そして安全保障条約に伴つて日本側が自主的に要請する、出動してもらいたいといつてつてもらえるならば、これは独立国家としての面目があるわけであります。しかし事と場合によつては、それは今お話の中では非常に急迫した場合、事実相当な問題が惹起される場合においては、出動してくれるであろうとは考えておつても、しかしこの要請に伴つて断られ得る場合もあるとするならば、日本としては非常にいろいろな問題を考えて行かなければならないと思うのであります。そこでお尋ねするわけです。
  61. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはりくつでありますが、たとえば何でもないような問題について、日本が要請したら必ずアメリカは応じなければならぬという義務はないのでありまして、こういう条約を結んだ以上は、お互いに話し合つて、そうして極東の安全に関係あり、あるいは日本の安全に関係ありと両方で断定したときに、初めて円満に履行できるのでありまして、何でもかんでも日本が要請すれば、いかなることでもアメリカはやるのだということは、それは条約面からも、また常識からいつて考えられないことであります。ただその中で日本に対する急迫せる危険があるというような場合には、これはやらなければならぬということは当然であります。しかしだんだん外へ行きますと、先ほど申したように、たとえば漁船が入つて来る、この危険はどの程度であるか、あるいは漁船でなくて鉄の商船が入つて来る、これはどうであるか。あるいは軍艦が入つて来る、だんだんいろいろな段階がありましようから、その段階については、やはりこの程度の危険があるということは相互に認めなければならぬであろうと思います。つまり遠くの方はいずれにしても相談によつてきまることになるのは当然と考えます。
  62. 櫻内義雄

    櫻内委員 そうしますと、安保条約に伴いまして日本はこの条約関係の上には立つけれども日本の自由意思といいますか、日本の意思によつて動かし得るところの戦力というものが、ここにあるというふうに考えていいわけでありますか。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 安保条約はむろん日本アメリカとの間で、日本に現在のごとく力の欠けておるところを、アメリカが補つて、主として外部からの侵略に対する防禦をいたすのであつて、それは戦力であります。従つてここに戦力があるとお考えになることはこれは当然だろうと思います。
  64. 櫻内義雄

    櫻内委員 そうしますと陸海空軍、そういう戦力は日本は保持していないが、いわゆる憲法第九条によるその他の戦力を保有しておるということになると思うのであります。これはどうで、しよう
  65. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私よりも法制局長官の方が的確な御返事ができると思いますが、憲法で規定しておりますのは、私は外国の戦力を規定しておるのではなくて、日本の戦力を規定しておるのだと確信いたしております。
  66. 櫻内義雄

    櫻内委員 そうしますと、吉田内閣としては、またあなたの責任において、この国際関係において、日本として自由に動かし得るいかなる戦力も持つていい、そういう戦力を保有していいというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  67. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の考えでは、日本は、憲法によつてかかる戦力を持つておりませんから、自衛の権利はあるけれども、自衛の権利を行使するに足るものを持つていない、そこで安全保障条約を結んで、直接侵略に対する防禦をはかつた考えております。そこで安全保障条約国会で承認を得た以上は、これはさしつかえないものである、こう考えております。
  68. 櫻内義雄

    櫻内委員 日本には自衛権はある、しかしながら憲法の条章より陸海空軍等の戦力は持たないのだ、これはいいのです。しかし実質的に戦力を持つたことになるじやないかと言つて指摘しておる一面におきまして、私の言つているのは、その戦力に伴ういろいろの事実については、日本自身の責任になつて来る。なるほど形式的には陸海空の戦力はなくとも、国際関係上戦力は持てるのだ、そしてその戦力の使用によつて日本がいろいろな危害を加えるのだというならば、日本自身が戦力を持つておる以上になおかつ大きな影響がある、かように断定せざるを得ないのでありますが、この点はいかがですか。同時に木村保安庁長官にもこの点お願いしたい。
  69. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま外務大臣から答弁がありましたように、憲法第九条第二項の戦力保有は、いわゆる日本国自体のことであります。日本国がいわゆる戦力を持たないということでありまして、たとい安保条約によつてアメリカが戦力を持つてつても、これはただちに日本憲法第九条第二項の戦力ということとは申せない。これは外務大臣が答弁された通りであります。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もただいま木村長官の言われた通りであると考えております。しかも何でもしていいというのではなくて、安全保障条約というものは、この条約の中に極東の安全なり日本の安全なりをはかるということ以外の目的は何も書いてない。しかも直接侵略のような場合にこれを守るのであるということでありまして、しかもこれは日本憲法にいう戦力とは考えられませんからしてさしつかえないものである。もつともこれは国会の承認を得なければならぬことと思います。
  71. 櫻内義雄

    櫻内委員 これはなかなか私には納得が行かないのであります。なぜかというと、さつき外務大臣は、この要請についての責任は当然日本にあるのだということを言われておる。それから私が指摘いたしました、国際関係によつての戦力を日本が持つたその事実は、憲法の違反にならないのだ。しかしながらそういう形式論議ではなくて、実際上日本の意思で動かし得る戦力がここにある。しかもその動かした結果においてはその責任は日本にあるし、またそれによつて大きな被害なり何なりを受ける要素というものを持つて来るということになるならば、これは大きな問題であつて憲法第九条のいう陸海空軍その他の戦力というものにおそらく抵触しておるのではないか、かように思わざるを得ない。実質的な効果というものは、戦力同様以上の効果がここに生じておる。この事実をあなた方はどうお考えになるかという点であります。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは安全保障条約を締結するときに、すでにたびたび問題になつたことでありますけれども、結局憲法等にさしつかえないという見解から国会の承認を得たのでありまして、実は今始まつた問題ではなく、研究し尽された問題であると考えております。その結論はただいま申した通りであります。
  73. 櫻内義雄

    櫻内委員 なるほどこの研究その他はけつこうです。それからへりくつをつけてどうだこうだと言うことはいいけれども、現実に今度あなたは書簡を出して要請をした。それで要請についての責任は負うのだというその事実から出発して、幸いにこれは北海道の上空何万フイートを飛んでおつた飛行機のことのために、問題は現に起きていない。しかし問題が起きたらどうするのですか、そのことまでも考えてもらいたいわけであります。やはり私どもから言うならば、その他の戦力の保有になつて、しかも陸海空軍を持つている以上に、ここに大きな影響を日本国民に与えるのだというふうに思うのであります。この要請が出たと同時に、私はこの要請それ自身も、このような簡単な取扱い方をしていいものかどうかということについての疑問があります。そこでお尋ねしますけれども、外務大臣はいつでもこういう要請をする権利を持つておりますか。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一この上空侵犯というのは、先ほども申した通り、どこの国でもこれを防ぐべきが当然の権利であり、また義務である。自国の領土なり領空なりをかつてに侵されて平気でいるということは、これは権利を眠らせていることのみならず、国際秩序を乱すことを放任しておくことになるのでありまして、こういうことを防ぐのは権利であると同時に義務なのであります。そしてこれは当然のことをいたしておるのであつて、かりに何かの事件が起つたとしても、日本側に損害賠償等の権利こそあれ、何ら日本側がこれに対して要求されるような問題ではないのでありましてこういう当然のことをやることは——外務大臣としてもしこれをやらなければ、むしろ職務怠慢になるべき性質のものであります。
  75. 櫻内義雄

    櫻内委員 それは私に了解できないのであります。なぜならば、そういう領空侵犯の事実を、国際法上にそういうことはいけないのだ、今わが国の上空に国籍不明の飛行機が飛来するということについて気をつけてくれということは、外務大臣としていいのです。しかしながら日本の国の安全に重大な影響ありとして、米軍の出動を要請するというこの事実について、有効適切な措置というものについて、先ほどあなたが説明されている日米安全保障条約に伴う戦力を、日本の意思において動かすという事実を私は言つておるのであります。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは何べん言つても同じことのような気がしますが、これは日米安全保障条約によつてこちらが要請いたしまして、先方が承諾してできたのであつて日本がかつてに使い得る戦力とまでは言い切れないのであります。
  77. 櫻内義雄

    櫻内委員 なお疑点がございますが、時間がございませんのでこれで終ります。
  78. 太田正孝

    太田委員長 この際古井君から政府に対して資料の要求があります。
  79. 古井喜實

    ○古井委員 義務教育費国庫負担に関する資料として、次の二つのものを政府に要求したいと思います。  一つは、九百二十億円を義務教育費国庫負担に関する政府の改革案によつて配分し、また八百億円を地方財政平衡交付金として配分する場合と、その合計額の一千七百二十億円をすべて平衡交付金として配分する場合、この二つの比較を、都道府県別に示されたいと思います。  第二番目は、義務教育学校職員の現員及び現給額、これと改正案による配当定員及びその給与額、この二つの比較を都道府県別に示されたいと思います。この両資料は、予算案の審議上重要な意味を持つておると思いますので、そのお含みをもつて御説明願いたいと思います。なお第一の資料について配分額を算出する基礎になる事実については、昭和二十七年における事実を用いられてもさしつかえございませんことを申し添えます。
  80. 太田正孝

    太田委員長 古井君の言われるごとく、予算審議に必要なる資料と思いますから、至急提出してもらいたいと思います。西村君からも同様の資料の要求がございます。
  81. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 昨日大蔵大臣は、財政投資の二十七年度の数字と二十八年度の数字を、早川君の質問に対して御説明になりました。その内容について明朝までに資料を御提出願いたいと思います。私の計算しているところと若干違つておりますので、一応それを調べてみたいと思います。あなたは二十七年度は二千九百幾らと言われ、二十八年度は三千五十五億円とこうおつしやつた。その二十七年度の内訳、二十八年度の内訳を御提出願いたい。しかしきのうのあなたの答弁が誤つておるなら、ここで御訂正なさつてもそれはさしつかえありません。
  82. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと西村君に申しますが、予算書の四ページにもそのことが載つておりますので、今のことは政府によく伝えますがどうぞよろしくお願いします。
  83. 向井忠晴

    向井国務大臣 きのう私の申したことは間違つておりません。
  84. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 それでは明日までに出してください。
  85. 太田正孝

    太田委員長 これにて休憩いたします。午後は一時から再開いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  86. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質問を継続いたします。塚田十一郎君。
  87. 塚田十一郎

    ○塚田委員 最初委員長ちよつとお願い申し上げておきたいのでありますが、委員会が始まりましてから本日まで、準備に追われてあまり出席をしておりませんので、お尋ねすることで、他の同僚委員からお尋ねになつたものがあつて重複するものがあるかもしれませんから、そういう場合には遠慮なく御注意を願います。
  88. 太田正孝

    太田委員長 承知いたしました。
  89. 塚田十一郎

    ○塚田委員 最初に国政全般の問題について、少しお尋ねをいたしたいと思うのであります。  第一の問題は、占領政治の行き過ぎ是正という問題なんでありますが、先般総理施政方針演説にやはりそのことを言及になつておるのであります。独立日本としては、占領中の施策中行き過ぎの感があるものに対して、この際これを是正するのは国の自主性のために当然の措置でなければならない、こうおつしやつています。私もその通りだと、こういうように考えております。ただこの考え方総理の口から明らかにせられましてから、世間のこれに対する反響は、ふしぎにこのあたりまえのことを総理が言つておられるのにかかわらず、非常に心配をしておる。どういう点を心配をしておるかと申しますと、行き過ぎの是正が、是正の行き過ぎにならなければいいがということを非常に心配をしておるのであります。行き過ぎを是正すること自体ちつとも悪くないのに、なぜ是正の行き過ぎを世間がこんなに心配するのか、私も若干心配をする面があるのであります。それで一体なぜそういうことを世間が心配するのかということをじつと考えてみますと、なるほどこれは意味が少しある、こういうように感じられる面がないではない。そこで占領政治の下でわれわれの国において行われましたいろいろな改革というものを今静かに振り返つて考えてみますと、まあ占領政治はいろいろな目的を持つてつてつたのでありますが、その中には日本を平和な国にする、それからもう一つは、民主的な国にするといういろいろな目的があつた。そうしてそれに対して、占領政治の治下において、占領軍が主として主導権を握りながらわれわれの国に行つた改革というものは、過去におけるわれわれの国があまりにそういう考え方からは隔たつてつたために、非常にそれを直すために努力をし、困難をした。その結果かなり目的に対して過剰な手を打つているという面が、確かにこれはあると私も考えている。行き過ぎの是正ということは、そういう日本を平和の国、民主的な国にするという意味において過剰であつたという分を直されるのは非常にいいのでありますが、さてそれを直す場合に、占領政治においてわれわれが思うことも十分言えなかつた、またはわれわれの考える通りにいろいろな施策ができなかつたということに対する反撥のために、今度逆にまた是正が非常に過剰な状態になりはしないかということもあると思う。私が非常に心配をいたしておりますのは、現在政府考えられておりますいろいろな点で、われわれの国の民主化の政治方向が逆になりはしないかという点が一番心配される点なのじやないかと考えられるわけであります。一体国の政治の民主化ということは、これからおそらくどこの国も絶対に曲げてはならない、逆行してはならない一つの方針だと思うのでありますが、しかしほんとう政治なり経済なり、もしくは社会万般の制度が民主化されるためには、その基本として国民の頭が民主主義精神というものによくなじんでおらないと、これはできない。民主主義精神ということをここで申し上げるのはまことに口幅つたいことでありますが、要するに人間はみな平等なんだという感じがしつくりと国民の頭にないと、その頭から出て来る判断で、ぴつたりと民主的な方向というものの把握ができない。そこでわれわれが過去に住んでおつた社会というもの——私なども絶えずそういうことで悩むのでありますが、われわれの過去に住んでおつた社会は、およそそういう考え方とは反対のものであつたということはいなまれないと思う。そういたしますと、私どもを含めて、政府の各位におかれてもかなりこの民主主義精神の把握というものには御困難になつているのじやないかと思う。そういうような状態においてこの占領政治の行き過ぎ是正ということを考えられると、これは悪意がないのにかかわらず、逆行するおそれが出て来ることになると思う。  そこで、今政府は行き過ぎ是正ということでいろいろな問題を考えられている。たとえば教育制度の改革、警察制度の改革、地方自治制度の改革、あるいは労働法規の改革というようないろいろなことを考えられている。そういう問題について政府考えられている考え方を新聞などで断片的にぽつんぽつんと聞くと、どうもそういう面に疑われる節がある。もちろん最後に確定的な具体案になりますまでには、世論の動向などを十分反映されて是正され、りつぱなものになつて出て来ると私も確信をしておるのでありますが、それらの点において、やはり非常に心配になる点があるのじやないか、こういうことも考えられます。そこで私は緒方官房長官にぜひお尋ねしておきたい点は、官房長官も非常に民主的なお考えの方でいられると承知しておるのでありますが、日本政治もしくは社会、経済の民主的な方向というものを絶対に逆行させないという強い決意をお持ちになつているかどうか、これを最初に伺いたい。
  90. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。占領政策のあるものは、日本の国情が十分にわかつておりませんでしたために、まつたく善意の行き過ぎというものも明らかにありましたし、また国情に沿わないものもあつたということは申してよいと思います。それを考えまして日本独立を回復いたしました今日、その行き過ぎを是正しようというのが、政府が組閣当初に声明したところでありますし、今度の国会に三、四の行き過ぎ是正の法案を出そうとしているゆえんであります。その行き過ぎ是正につきましては、今お話のように、趣旨としては塚田君も十分に了承なさつていることと思うのであります。これはまつた日本独立国としての自主的な立場から、今のわが国情に即し、かつただいま御心配になりました十分に民主的な行政運営をはかり得るように改正をしようと思つておるのでありましてわが国における民主主義の成長を阻害するようなことは絶対にいたさないつもりであります。今お話の占領政策の是正が是正の行き過ぎに相なつてはならない、その趣旨は政府におきましても十分慎重に研究いたして決定いたしたいと考えております。
  91. 塚田十一郎

    ○塚田委員 御答弁をいただいて安心をしたのでありますが、そこで非常に言葉の端くれにとらわれて恐縮なのでありますが、総理施政方針演説の中には、施策中行き過ぎの感あるもの、とこう書いてある。行き過ぎておる感じのあるものを直すのだということでありますが、どうもこの感じということが、どういうことによつて判断をされてその感じが出て来るのか、これが非常に心配になります。もちろん行き過ぎと感じられるものは、日本の国情に合致はしていない、今の日本の国情ではそういうようにしておくわけには行かない、こういうことであらうと思うのでありますが、そういうぐあいに感じる場合に、事実はその問題自体はそれがいいのであつて、国情に合致していないのならば、私はその合致していない国情の方を逐次直すようにする方がいいのじやないかと思うような問題が幾つもあるのではないか、そうしてそういう例としまして、今度の教育制度の改革について、政府が意図されおるもろもろの施策がどうも少し方向が違つておるのではないかという感じがするのであります。教育行政というものを民主的にしたいという考え方は、占領政治以降引続いてわが国にあるのでありまして、そういう意味におきましては、私はとかくの批評はあるにいたしましても、教育委員会制度というものは、やはり一応教育の民主化の方向を目ざしたものとしては是認できる。しかしこれは世間で非常に批判されておりますように、日本の今日の状態にマツチしないで、運営の上に非常な支障のある面がたくさんある、この点もまた否認できない。そこでどつちを直してこれを国の教育行政のほんとうあり方にするか、私はこの場合には、むしろ教育委員会制度の末端において多少是正する点があるかないかは別にいたしましても、根本の行き方としては教育委員会制度は存置して、それにマツチしない他の面を直して行く、たとえば教育委員会制度がうまく運営がつかないという幾つかの理由の中の大きなものには、私はやはり日本の自治団体の規模が小さ過ぎる点にあると思う。そうすれば、そういうものをなるべくまとめて大きくする方向に努力するのが正しいのであつて、それをもどすということはよくないのではないかと考える。今度お考えになつておる義務教育費の国庫負担の問題になりますと、われわれの感じでは、これはどうも方向が逆を向いておりはしないかという感じがするのであります。もちろん文部大臣も、その点については非常に御心配になつておると思うのでありまして、具体的ないろいろ諸施策の面でそれらの点に十分御注意くださると思うのですが、しかし私どもの心配いたしますのは、そういう懸念がもしあるといたしますれば、この法案なり、その法案によつて定められるいろいろな諸制度自体において、民主的な運営が確保されるようによほど配慮しておいていただかないと、おつくりになつた岡野文部大臣はそのつもりでおつくりになつても、それが人がかわつて末端に行つて運営されるときに、やはりわれわれの懸念するように逆行するおそれがある。この点について岡野文部大臣は、今企図されておる教育制度の改革と教育の民主化とを十分マツチさせて行ける確信をお持ちになつておるかどうかを伺いたい。
  92. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。義務教育費を国庫で持とうという案を今整理中でございますが、それによつて教育の民主化を妨げるかどうか、こういう御懸念でありましようが、絶対にそういうことはございません。むろんただいま各市町村、わずかな小さな村までやはり教育委員会は置いておりますが、これがいいとか悪いとか、もしくは運営がうまく行くか行かぬかということに対しては、相当議論があることでございます。これは地方制度の全般的の改革というものを待つて、そうして村の規模を大きくするとか、また教育委員会が地方の実情に合わない点があれば、それを直すという方向に持つて行きますが、今回考えておりますところの義務教育費は国庫が負担する、こういうような問題につきましては、教育委員会の民主化政治というものを妨げるものでは絶対ない、こういうことに私は考えております。
  93. 塚田十一郎

    ○塚田委員 なお実際の運営の上に十分御留意をお願いいたしておきます。  それから警察制度の改革についても同じようなことが言えるのでありますが、ここでは同じ種類の問題について繰返して申し上げません。また労働関係諸法規の改革を政府が企図されておるようでありますけれども、私どもがここで心配をいたしまするのは、先般の労働争議でもつて手をやいたから、すぐにあれを押えるのだというような反射的なものの考え方でなさらずに、今までの法律には、どういう考え方でああいうものがあつたかということを十分にお考えつて、労働法規の改正が、やはりそういう意味において逆行することのないように、この点もぜひひとつ御留意願いたいということを最後に申し上げて、この問題は打切りにいたしたいと存じます。  次に行政整理の問題でありますが、先般新聞の報道するところによりますと、この間の六日の閣議において、懸案の行政整理がまた問題になつた。そのときは行政管理庁の作成した行政制度の改革に関する基本方針というものを中心にして検討を加えた結果、現定員の一割天引については多少の異論もあつたが、ほぼこの基本線を了承して各省でこの基本方針に基く具体的整理案の立案を急ぐことになつたと、こういうように書いてある。一体政府は本気でまた行政整理をなさるおつもりがあるのかないのかということを、最初に官房長官にお尋ね申し上げます。
  94. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。行政整理を今回さらに企てましたにつきましては、もちろん本気でやつております。政府は現在政府職員の欠員不補充の方針で、常時総理が言われるすすはきの意味で、知らず知らず人員が過剰になつて参りますのを防いでおるのでありますが、同時にまた行政事務の整理、機構改革に関する検討、こういうものもあわせ行いまして、実行可能な行政整理の準備をせつかく今進めておる次第でありまして、具体案の準備ができ次第、国会の御審議を経たい所存であります。政府としては、もちろん実現可能の成案を国会に提出いたすつもりでありまするが、これが断行できるかどうかは、国民全般の要望でもありますので、各位におかれましても、大局的見地に立たれまして、実現方について十二分の御協力を煩わしたい、かように考えております。
  95. 塚田十一郎

    ○塚田委員 本気でおやりになるんだそうでありまして安心をしたのでありますが、実はこういうまことに失礼な質問をいたしましたのは、もし本気でおやりになる気があつたならば、行政整理という問題を取上げられる時期がもう少し早くなければならなかつたと思う。大体今度のは、第三次行政整理になると思うのでありますが、第二次行政整理のときには、前年の十月ごろから問題をお取上げになつている。ところがこの間二月の六日になつて、今度は初めてお取上げになつた。予算書を見てみると、行政整理というものは、予算の中には何にも含まれておらぬように私には見受けられる。かたがたこの前に相当大がかりで、しかも自由党二百八十名以上も持つてつた与党絶対多数でやつてもうまく行かなかつたから、実はもう行政整理は政府は投げられたんじやないかと疑つてつたのでありますが、しかし投げていられないということであつて安心をしたのであります。これはぜひやつていただかなくちやいけない。  そこでお尋ねしたいのは、一昨年十月の閣議決定によりますと、行政整理を十二万三千人やるということであつたのでありますが、実際に二十七年度末までにどれだけ行政整理の結果が出ているのか、これを一つ数字をお聞かせ願いたい。
  96. 本多市郎

    ○本多国務大臣 数字の点につきましては、資料を持ち合せておりませんので、取調べてお答えいたします。
  97. 塚田十一郎

    ○塚田委員 お持合せがございませんければ、私が持つておりますから、(笑声)これが確かかどうかお尋ねいたします。二十六年の十月、つまり閣議で問題になつた時分には、一般会計、特別会計、政府機関を含めまして百四十六万九千六百九十六人定員があつたという資料になつております。ところが今年の政府予算書をちようだいしておりますのによりますと、二十七年末の定員は、百三十八万八千三百六十二人となつておる。そうすると、十二万三千人の行政整理の計画が、実は八万一千三百三十四人しかできなかつた、こういうことになつておる。これはしかし八万人でも、できたのは非常にけつこうだと思うのですが、今度ちようだいしております二十八年の予算書の数字と昨年私どもちようだいしましたときの数字とが少し食い違うのであります。二十七年の、前の予算委員会のときにちよだいしました資料によりますと、百三十八万六千七百六十五人となり、今度の数字によりますと、百三十八万八千三百六十二人となつて、約千六百人ばかりこの間に食い違いがあるのでありますが、これはどういう関係でそうなつたのであるか。これもおわかりにならなければよろしゆうございます。そこでせつかく八万一千三百三十四人、非常な苦心をして行政整理をなさつたのが、政府が今度お出しになつておる予算の説明書によりますと、今年、昭和二十八年度の終りになると、百四十万一千五百四十八人になります。つまり一万三千百八十人ばかりふ、えるという予算をお組みになつておる。行政整理を本気でやろうというお、考え政府が、予算定員がふえる予算をお組みになつておるということはおかしい。この点はどういうことになつておるのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  98. 河野一之

    河野(一)政府委員 私からお答え申し上げます。いろいろな数字をあげて御質問になつたのでありますが、二十六年から二十七年において、十二万というのが大分かわつておるんじやないか。この一点はたしか警察予備隊で三万五千ふえておる関係が多いと思います。それから予算定員はいつでとるかということですが、常に年度の途中においていろいろ変化をいたします。大体年度末の予算定員をとつておりますが、補正予算におきまして多少警備隊の関係で異動がございます。そういう点がおそらく数字の食い違いの点だと存じます。それから二十八年度に相当人がふえておるんじやないか、こういう御指摘は、数字の上ではその通りでございます。ただごの内容を分析して申し上げますと、いろいろ要素があるのでございまして、一般会計におきまして、一般の定員につきましては三千五百人ほど実は残つております。にもかかわりませずふえておりますのは、一つは自治体警察が国の方に編入になりまして、それで約千三百人ほどふえておるかと存じます。それから結核の病林が前年度に建てましたものが今年度ふえますので、それの医者、看護婦等を入れなければなりません。そういつた関係、それから国立病院の一部を、これは売り払う予定でございましたが、これを一般会計に含めまして、結核の療養所にいたしておる点がございます。それから、これも御説明申し上げたのでございますが、警備隊におきまして保安官が多少ふえております。それから物品の調達、それから試験所、研究所等におきましてこれは予算の説明にもございますが、約二千人ほどふえております。そういつた関係でございます。それから特別会計におきましては、アルコールの工場の一部廃止等によりまして、相当減少をいたしております。政府関係機関においてふえておりますのは、郵政事業でも同じでございますが、一つは従来賃金の点で、定員法の定員外になつてつたものがあつたのでございます。大体アルバイトその他でやるという建前でやつてつた次第でございますが、そういつたものが、大分恒常化して参りまして、事業のふえたせいもございますが、従いましてそういうもの約七千人ほど定員内に振りかえたのでございます。それから鉄道におきまして少しふえておりますが、これは今まで建設いたしました新線が開通になりまして、そこの駅員であるとか、あるいは乗務員等がやむを得ずふえたという関係でございまして、一般の行政職員につきましては、先ほど申し上げましたように三千五百人ほど減つております。こういう数字でございます。
  99. 塚田十一郎

    ○塚田委員 一番大きな数字の食い違いとして、主計局長が御指摘になつ保安隊関係といわれるのは、これはおそらく主計局長の誤解でありましよう。私が申し上げた数字は、全部保安隊関係は合計していない数字であります。合計していない数字について比較を申し上げたのでありまして、保安隊だけの変化から申しますれば、私のところにあります表では、二十六年一月には七万五千百人、それが二十八年には十二万三千百五十八人になつて、これで二十七年末の定員に比して四千二百五人ふえるとはつきり書いてある。それはいいといたしまして、とにかく政府が行政整理をお考えになつているにかかわらず、やはり自然状態としてだんだんと全ているということは争われないと思うのであります。そこで、ついでにお尋ねしておきたいのでありますが、政府は減員不補充の方針というものを絶えず持つておられるというのですが、一体一年間にどれくらい自然減員があつて、その減員をさらに追い越して、一万三千百八十六人という人員がふえたのか、この点をひとつ……。
  100. 河野一之

    河野(一)政府委員 欠員の不補充はさきに決定になりまして、その分は補正予算のときには、これは年度末までのものでございますので、特に定員整理もいたしてありません。従いまして、補正予算のときにおきましては、定員は別といたしまして、人件費としては大きい、こういうような点がございます。それから今回の予算を組みます場合におきましては、そういつた関係を考慮いたしまして、予算定員としては整理いたしております。一年に、これを控除した場合にどの程度出るかという問題でございますが、大体従来の例で申しますれば三%ぐらい、これは所によつて非常に違いますが、平均して三%ぐらいであります。ただこの減員不補充につきましても、なかなかその通りに行かない、たとえば警察官でありますとか、あるいは刑務所の職員、病院の医者であるとか、必ずしも減員不補充をその通りにできない向きもございますが、大体一般の行政職員でありますれば、三%ぐらいは不補充を私の方では見ている、こう考えております。
  101. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そういたしますと、今度一割天引き整理をなさるというお考えは、この減員不補充のときに出て来る三%ぐらいのものを含めてあと七%ぐらいをひとつ現実に切ろう、こういうお考えであるのかどうか。
  102. 本多市郎

    ○本多国務大臣 ただいま検討いたしております人員の縮減につきまして、一割天引きを前提として御質問があつたのでございますが、まつたくさようなことを今度は考えておらないのでありまして、欠員不補充の制限によつてやむを得ない場合は、できる限り各省間の配置転換によつて補充して行く、これも一つの方法でございます。その他の縮減の方針といたしましては、昨日も御答弁申し上げたのでございますが、従来の行政事務の中で、この際縮減の方向に改廃できるもの、さらにまた占領政策の是正、これも縮減の方向をもつて是正する。また不要不急の仕事で整理すべきものというようなものを検討いたしまして、これについては政令諮問委員会の答申等もございますので、それとあわせ検討いたしまして、そうした事務量の縮減に伴つて定員を縮減して行く。この根本方針によつてわが国国力、国情にふさわしい程度にまで簡素化したいという考えで今検討いたしておるのでございますから、天引きという考えは今回はまつたく持つておらないのであります。
  103. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これはまた最初から、私が考えておつたのと全然違いますので……。それは考え方としては、私は本多国務大臣のおつしやる通り、行政整理というものはそういう考え方で行くべきものだと思うのでありますが、しかしそういうことをやつたのではとうていできないから、私は今度は、天引き整理という考え方に、お考えをかえられたのかと、こう思つたらそうではないのですか——。それでは、それはそれといたしまして、二日二十八日までに各省がそれぞれ案を出すというような話合いになつておるそうでありますが、この考え方からいたしますと、二十八年度の予算に行政整理の結果が出て来るかどうか。予管にはこう組んであつても、現実にはそれをさらに緊縮することになるのかどうか、そこをひとつ。
  104. 本多市郎

    ○本多国務大臣 予算ほすでに予算案として提出いたしてありますので、これを補正するという考えはないのでございますから、結局縮減できました分の給与というものは不用額として残る。できるだけ政府は節約いたしまして残すことに努めたいという考えでございます。さらにまた、行政整理のやり方がただいま申し上げましたような方法でございますので、全部一斉に一律に出そうということは困難じやないかと思つております。警察制度の改革をいたしたいというので、ただいまこれまた研究中でございますが、これもその一つでございまして、これによつて相当数の縮減がやはりできる。こうした方法を政策ごとに検討いたしまして、まとめてお諮りいたしまして、それが本年の、今提案いたしております予算の修正はいたさないまでも、実額において残るようにいたしたい、こういう考えでございます。
  105. 塚田十一郎

    ○塚田委員 行政整理の方はそのくらいにいたしておきまして、次にもうつお尋ねいたしておきたいのは、政府は近ごろ行政整理のことはしばしばおつしやるけれども、当然、行政整理に関連して考えられなければならない財政整理ということは、あまりおつしやらないのでありますが、これはどういうことなんでしようか、大蔵大臣に伺います。
  106. 向井忠晴

    向井国務大臣 財政整理ということは、私は今までにやつたことはないのですが、(笑声)たとえばどういうことですか。
  107. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私のお尋ねの仕方が不親切でありましたが、要するに行政整理は人件費を縮める考え方、財政整理は物件費を主として縮める考え方、こういうように考えて、財政整理の方はどうなのか、つまり物件費の縮減の方はどうなのか、こういうふうにお尋ねしているのです。こういうことは、もちろん大蔵省ではやつていらつしやるようでありますが、物の考え方の根本にあまり大きくお取上げになつていないのはどういうお考えなんでしようか、こういうことであります。
  108. 向井忠晴

    向井国務大臣 御趣旨はわかりました。それは当然やつておることでございますけれども、世間にわかるような程度行つていないものと私は考えております。しかしものによつては当然できるべき面もあるので、それは今後各省とも、また大蔵省もこれに発言を持ちまして、鋭意努めて行かなければならないと思います。
  109. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私が財政整理の話を特にここへ持ち出しましたのは、実は行政整理というものに対する考え方に必ずしも適正でない面が——ことに世間一般に考えられておる考え方に適正でない面があるんじやないか、こういうように考えるからなんです。行政整理は人件費を整理するのだ、こういうことでありますけれども、非常に厖大になつたと考えられるこの二十八年度の予算の中の人件費を見てみましても、私の計算に誤りがなければ、人件費総額は一般会計で一千八十六億、それに人間がおると必ずそれに伴つて出て来る旅費というようなものを加えてみても千二百六億、そうすると一般会計の総規模に対して一二・五%ぐらいになるわけです。一二・五%ぐらいのものを一割減らしてみても、総予算からしては一分二厘五毛ぐらいにしかならない。ほんとうに整理する、そうして予算を縮めるという考え方であるならば、当然財政面にもつと真剣にとつ組んで来なければならないはずなんです。こういうように考えられるのですが、どうもその面に対する政府のものの考え方に真剣味が少い。ことに私がこの物件費の面で非常に心配をしておりますのは、公共事業費でありますとか、食糧増産関係費用でありますとか、それから平衡交付金、義務教育の費用、これだけ合せますと、これだけで三千二百三十二億になるのでありますが、こういうものは、よほどしつかりとその使われる先まで確かめてやつていただかないと困るということを、実は最近しみじみと感じておるのです。もちろん私は公共事業費の総額を減らせとか、食糧増産費の総額を減らせとかいう考え方は持つておらぬのでありまして、むしろ後ほど申し上げますが、そういうものの総額は、必要があるならば、そうして役に立つならば、もつとおふやしになつたらどうかとさえ考えておるのであります。しかし今まで出ておる公共事業費や食糧増産費用の使われ方を見ると、残念ながらどうも国が考えている目的に合致しないような使われ方が非常にあるんじやないか。先般川島委員が本委員会においてやはり御指摘になつたようでありますが、たとえば公共事業費について申しますならば、災害復旧で、今までなかつたところに川に土手ができてみたり、それからまた検討すると、数量などの、ごまかしが非常にたくさんあるということがきわめて通俗にいわれておる。またそういうことがほんとうであるかどうか知りませんけれども、俗にいわれておるところでは、公共事業費の中でほんとうに事業費になつているものは半分ぐらいで、あとはみなその他の公の、もしくは公にならない人件費なんかで、飲んだり食つたりして済んでしまうのだというようなこととさえ世間が疑つておる。こういう点はよほど真剣に御検討を願わなければならぬと思うのでありますが、こういう面に対しての政府、ことに大蔵当局の努力が足りないのではないかと思う。どういうぐあいにしてこういう面の監督や監査をおやりになつておるか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  110. 向井忠晴

    向井国務大臣 私もその考えでおりますが、詳細は政府委員から答えさせます。
  111. 河野一之

    河野(一)政府委員 公共事業費というものは、予算の総額に占める割合を見ますと、この使途について相当監督をしなければならぬことは塚田さんのおつしやる通りであります。従来この面につきましては、いろいろな方面から違つた角度で監査をいたしておるのでございまして、現に会計検査院がそのような大きな権限を持つていることは御存じの通りであります。また行政管理庁におきまして、経済調査、行政監査の方面におきましてそういつた監査を常にやつております。また大蔵省といたしましては、会計法第四十六条の規定によりまして、予算の執行状況を監査する権限を持つております。財務局を活動させまして、常時そういうような事態を監査いたしております。その結果につきましては時々、場合によりましてはその場で是正させる、あるいは関係の各省庁にこのことを報告いたしまして、是正をさせる方法をとつておるような次第であります。
  112. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これもおそらく制度や法規の上では十分監督できるようになつておるのだと思うのでありますが、現実にうまくできておらないから、今申し上げるような事態が出て来ておると思うのであります。今後一層それらの点に御注意願いたいということをお願いいたしておきます。  そこで行政整理にもう一度もどりまして、行政整理に関連して政府が一般的には人員を減らそうと非常に努力されている一方、行政整理の抜け穴を一つおこしらえになつておる。それは政府機関という形で次々といろいろなものをおつくりになる傾向が近ごろとみにふえて来た。今度の二十八年度予算でも中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫というような二つの機関をおつくりになつておる。こういうことでおやりになつてつたのでは、行政整理というものの趣旨がそういうところから非常に大きく抜けて行つてしまう。もちろんそれぞれの機関は必要があつておつくりになつたのでありましようけれども、しかしまたものの考え方によつては、すでにああいう種類の機関が幾つもあるのに、さらにその上にああいうものをつくらなければならなかつたかどうかという点については、かなり疑問があるのであります。そういう点は一体どういう考え方でおられるのか、本多国務大臣に伺います。
  113. 本多市郎

    ○本多国務大臣 御指摘の通り公社、公庫、公団等というような組織が法律上創設されますと、行政機関定員法の法律の適用も受けないのでありますから、直接にはここの定員等につきましてこれを縮減するとかいうような、私の方の定員法上からの権限はないわけでありますけれども、中央の行政機構の縮減に順応いたしまして協力を求めて行く方針でございます。今回も公社等につきまして同じように協力を要請し、また国会等についても同じように協力方をお願いするつもりでおります。根本的な問題といたしまして、そうしたものを定員法の適用を免れない公社等にすることがいいか悪いかということは、これは国策上の問題でございますので、また別の観点から御検討願いたいと思います。
  114. 塚田十一郎

    ○塚田委員 行財政整理の問題はそれだけにいたしまして、次は防衛力の問題について木村保安大臣に一応お尋ねをしたいのであります。憲法第九条の規定がいろいろ解釈されてはおりますけれども、国がある以上はその国内治安を維持し、人命財産を保持する何らかの機構がなければならないという点においては、政府考え方が当つておるというふうに私ども考えておる。ただしかし非常に困りますことは、それにもかかわらず民間におきましては実に根強く、政府が今やつておられることはこれは、ごまかし軍備だということがいわれておる。そしておそらく一般の相当大きな部分の人たちは、そのように信じておるように私どもには受取れる。しかしもしも一国の政府憲法に禁止せられておることをやつてつて、つまり政府の今やつておることが、ごまかし軍備だというようなことであつたら、これはもう大問題である。私どもは絶対にそんなことがないと確信はいたしておるのでありますけれども、しかし少くとも巷間にそういう考え方が非常に広く彌漫しておるということであれば、われわれ与党としまして、また政府としましても、それがごまかしの軍備ではないということをはつきりさせていただく必要がある。もちろん、この問題は今までもしばしばたくさんの委員によつて取上げられまして、相当明らかにされておる面もありますが、どうもかんじんのところに行くと、ぼんやりしてしまつてなかなか最後にこれで安心した。なるほど政府の言う通り、今政府のやつておられることはごまかしの軍備ではないということの確信が持てるところまで行かない。そこでなぜ私ども政府のやつていられることに対して、民間にこういう考え方が出て来るのかということをいろいろ考えてみると、一つの原因は軍と警察というものの概念がどうもはつきりしておらないという点にあるのではないか、と申しますことは、一体世界の国々に軍のない国というのは大体今まではなかつた。われわれの国が新憲法によつて軍隊というものを持たないということになつたわけであります。ですから普通の人間が国家という立場で考えますときには、外敵に備える機構、それから国内治安を維持する機構、その他いろいろな、要するに軍、警察が従来やつておりました働きというものは、軍と警察二つでいつまでもやるものだという考え方を十分に整理し切つておらない。ところがもしも憲法で、またこれから他にもそういう国ができるかもしれませんが、かりに軍というものを持たない国というものがあるとするならば、これは今までの軍と警察二本立てという考え方、この考え方から来ると、当然警察でないものは全部軍だという考え方です。この考え方をひとつはつきりさせて、軍と警察の間に政府が今意図して、そうして政府が持つておられるようなものがあるのだということ、つまり政府に三本立ての考え方というものをはつきりとしていただかないと困るのじやないか、こういうふうにも考える。ところが新憲法も、あれができます時分にはこの概念整理が十分できておらなかつたために、新憲法の規定そのものにも若干観念混淆があるのではないかと私は疑つておるのですが、とにかくそこに一つごまかし軍備論というものが起る原因がある。それからかりに三本立てでやるにいたしましても、やはり防衛力の持つ装備その他の限界と、軍の持つ装備その他の限界というものは、当然にどこかでけじめがなくてはならぬのでありますから、このけじめをはつきりさせておかなければいけない。ということは、政府は現在どういうものを防衛力の装備として持つておられるのか。それから防衛力としてある以上は、どこまで以上は絶対に持たないのだという、この点をはつきりと示していただく必要があるのではないか。この点は木村保安大臣も、たびたびこの委員会においても、その他の機会においてもおつしやつていられるのでありますが、主としてそれに区別の標準として出しておられるのは、保安庁法にはつきりと保安隊、それから海上警備隊の任務目的というものは書いてあるから、あれなんだと言われるのでありますが、あれは私はどこまでも主観的な条件、要素だと思う。しかしこの区別をしますのには、この主観的な、国がこの防衛組織というものにこういう目的を持たしておるのだという考え方と同時に、やはり客観的にそれがどういうものを持つておるかという事実というものを、両方の面からけじめをつけていただかないと困る。ところが政府は、この防衛力の装備が現在どのくらいの、どういうものを持つておるのかということはなかなかはつきりとおさせにならない。そうなると、勢いこれが軍であるのか、軍でないのかということの判断が国民にははつきりしないのであります。  そこでこれは過般の委員会においても問題になりましたのでありますから、私が今保安隊及び海上警備隊がどういう装備を持つているかということをお尋ねしても、この委員会ではおそらくおつしやらないと思うのでありますから、巷間に流布されておるいろいろな資料を総合いたしまして、判断をしたものについて若干お尋ねしてみたいと思う。巷間に流布しておりますいろいろな資料を総合いたしますと、相当なものを持つておる。たとえばある軍の専門知識を持つておる人に計算をしてもらいましたところが、現在保安隊が持つておる装備は、小銃が一万九千八百ちようぐらいあるだろう、軽機、重機は八千ぐらいあるだろう、バズーカ砲は七百ぐらいなくちやならぬ、軽迫撃砲が一千七十五、重迫撃砲が二千六百十二ぐらいなくちやならぬ、高射機関銃は五百七十六ぐらい、戦車は三百三十四ぐらい、十サンチ榴弾砲が二百三十四門、十五サンチ榴弾砲が九十門、それに車両五千、高射砲が少くとも十八ぐらいはなくちやならないという、こういう計算になるのだそうです。これが実際に当つているかどうかは存じませんけれども、しかしとにかく今申し上げましたような種類のいろいろの装備を持つているであろうということは、大体想像がつくのでありますが、こういうものを持つておるものを、政府がなお軍にあらざるものとして十分御説明できるだけのはつきりした確信をお持ちになつておるかどうか。その点を保安大臣にお聞きしたい。
  115. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安隊、警備隊は軍隊でないということはしばしば申し上げております。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕 その根拠について明らかにせよという御質問であります。元来警察というものは、まず第一に警察法に規定されておるごとく、普通は犯罪の捜査と検挙、これは依然として警察法に規定されております。これは普通時における警察の機能であります。この社会がきわめて平穏であれば、今申し上げた警察機能だけで十分であるとわれわれは考えております。しかしながら国際情勢、国内情勢の変化によりまして、かような警察力をもつてしてはとうていまかない切れない、たとえば国内において大反乱、大騒擾が起つた場合にどうするか、これが問題になります。さような危険が必ずしもなきにしもあらずとわれわれは考えております。これは塚田君も十分御了承のこととわれわれは考えております。そういう場合において、安閑としておれば国家としては成り立ちません。私は常に申しておるのでありますが、一国においてまず何が一番必要であるかといえば、国内治安を維持することである。一たび治安が乱れれば、一国の政治も、経済も、文化も、一朝にして崩壊に帰するのであります。まず何としても政府当局としては国内の治安を保持しなければならぬ。しこうして国際情勢、国内情勢から見ますると、相当程度の準備をして行かなくてはならぬ、この意味合いからいたしまして保安隊、警備隊が設置されたゆえんであります。しこうしてこの保安隊、警備隊の設置目的は、断じて外敵と戦う目的で設置されたのではない。ただ今申し上げましたように、国内の治安確保のために設置されたものだ、これは保安庁法第四条において厳として規定されているところであります。つまり保安庁法第四条には、国内の平和と秩序を維持し、人命財産を保護する必要ある特別な場合において、これが行動することになつているのであります。ここに大きな意味があるのであります。普通の警察力をもつてしては、とうてい鎮圧することのできない国内の反乱、大騒擾を鎮圧するためにこれを用いるのであります。しからばその内容いかん。これが結局根本になつて来ると私は考えております。  そこで御承知の通り諸外国の反乱、大騒擾覧写ると、なかなか容易ならぬものがあります。あるいはスペインの反乱といい、あるいはイスラエルの反乱といい、現に起つておりますビルマの反乱軍の問題といい、あるいは仏印の問題といい、これらの諸国の内乱、大騒擾を見まするときに、相当の準備をしておかなければならぬ、これが根本問題であるのであります。そこで保安隊、警備隊ははなはだ不幸にしてさような場合が生じたときには、これを鎮圧するだけの装備を必要とする。ここにおいて、今塚田君が仰せになりましたようなものは持つて、備えを固める手段をわれわれは講じております。ここではつきり軍隊と保安隊との性格を申しますると、結局軍隊と申しまするのは、外敵と戦う、いわゆる戦争目的を持つておることが第一点であります。しかるに保安隊、警備隊については、今申し上げたように、外敵と戦う目的で設置されたのではなくて、ただただ国内の治安確保のために設置されたということが第一点であります。そしておおよそ軍備と申しまするものは、いわゆる憲法第九条第二項における「戦力」というものに相当するのでありますが、私がしばしば申し上げました通り、おおよそ戦争をする母上は、いわゆる近代戦争を遂行するに適切なる編制と装備能力を持たなければならぬのであります。しかるに御承知の通り、近代戦の様相あるいは各国の軍備を見まするときにおいてこれは相当高度なものであります。今現にわれわれが装備いたしておりまする保安隊、警備隊のごとき編成装備に至つては、おおよそこれとかけ離れておる。この意味において私は、保安隊、警備隊は全然軍隊にあらず、こう解釈をいたしております。これは世間において誤解があるようでありますが、保安隊、警備隊の設置目的並びにその内容を見ますると、ただいまのところは軍隊でない、こういう結論になつております。
  116. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうも十分納得いたさないのでありますけれども委員長からもう時間の通知をいただいておつて、意外で驚いておる。これからほんとうの質問を始めようとするものであります。そこで急ぎますから、もうしばらく時間の御猶予をいただきたいと思うのであります。これからいよいよ予算の本格的な問題についてお尋ねしたいと思うのであります。  私どもが漠然と近年の政府予算の組み方につきまして疑つておりますのは、一体政府予算をお組みになるのに何か計画があつてやるのだろうかどうだろうかということであります。国費を重点的にことしは使つた大蔵大臣も財政演説でおつしやつておられますけれども重点的というのは、大体計画があつてその計画の重要なものの度に応じてそちらに金をつぎ込んで行くということであつて初めて重点なのでありまして、計画がなければ重点というものが出て来ることはない。そこで私どもは、政府が今年お組みになつ予算にしましても——近年ずつとそうでありますが、政府の年々の予算というものは、これが一つの面から行くと、前年度の引延ばし予算じやないかと思う。去年はこういうことをやつてつた、それに物価、賃金の値上りをかけて行くとことしはこれくらいになるというのが、予算をおきめになる一つの要素で、もう一つは、それだけではちよつと困るから、少しゆとりをとつておいて、そして復活要求なんかやつて来たときにちよつとやるということになる。そうなると、閣議において非常に発言力が強い大臣がよけい持つていらつしやる。この中に大分よけい持つていらつしやつた大臣のお顔も見えるようであります。そうすると、これは顔役予算じやないかということになる。しかし顔役予算であつても、大事なところに大事な金が行つたのなら一向さしつかえないのでありますが、とにかく予算をおきめになるのに計画性というものが少しもない、そういうように私は疑う。  そこでまずこれは、安本長官でも大蔵大臣でも、あるいは政府委員の方々でもいいのでありますが、一体この国民所得の中でどの程度の部分が消費に向けられ、どの程度の部分が財政面に行くのか、またどの程度の部分が蓄積になるのか、そうしてさらに予算を通して所得の再配分をします場合に、こういう国民所得の状態だからこの程度に再配分の機能を持たせればいいのだ、たとえば社会保障に関係する諸費用をお出しになる場合には、これだけの国民所得に対してはこれくらいのものでなければならないというような考えがあると思う。また税金をおとりになる場合に、たとえば農林省の関係で行きますと、食糧の値段をおきめになる場合に、食糧の値段がどうきまるかによつて農業所得の国民所得に対する割合というものが当然きまつて来る。そういうことを総合的に御検討になつて予算をおきめになつておるかどうか、この点をひとつ伺います。
  117. 平井富三郎

    ○平井政府委員 お答えいたします。予算を編成いたします基礎といたしまして、一応国民所得をはじきましてそれに対する支出の面を予測いたすわけであります。その際に個人消費がどの程度になるか。たとえば昭和二十七年で、ごく推算した結果を申し上げますと、三兆五千億が個人消費に向う、あるいは資本形成に一兆二千億程度が向うというような大体のバランスを見まして、それに対して財政支出のわくがどの程度になるかということを一応推算いたすわけであります。しかし国民所得自体の推算からいたしましてこれからただちに予算のわくを決定して行くということではございませんが、これは有力なる一つの参考資料にはなるわけであります。
  118. 塚田十一郎

    ○塚田委員 ただいまの平井次長の御説明は、おそらくこうだろうと思うのであります。それは予算ができたあと、しかも時期的に相当おそくなつてから数字を調べてみると、そういう結果になつておるということをお話になつておるのであつて予算をお組みになるときにそういう点の推測を立てて、だからしてこういう予算でなければならないというようにはなつていないのじやないかと私は推察する。もちろんそこまで行くのには、日本のいろいろな統計が不備なのかもしれません。自分でもいろいろ考えて、みたけれども、どうも結論が出ないので、ただ政府がそういうお考え予算をお組みになつておるのかということを念のためにお尋ねしてみたのです。あるいはこういう問題に対して、はつきりこうしておりますということの御回答を得ることは困難かもしれませんので、これ以上は御追究申し上げません。  そこで何とかして今後そういうように運んでいただきたいと思うのでありますけれども、そういう考え方から今年の予算を見ます場合に、政府は非常に重点を置いた、重点を置いたと言われるにもかかわらず、ほんとう重点を置いていただかなければならない面に重点が置かれていないものがあるのじやないかという懸念を私は持つておる。それはことに日本食糧増産計画の面にそういう傾向がたいへん強いように私は感じておる。一体食糧増産計画について、農林省はどういう計画をお持ちになつておるかということをいろいろ調べてみましたところが、農林省は食糧増産の第一次五箇年計画というものをおつくりになつておる。三千億の国家支出と千億の融資と、それに地方費や受益者負担など合計五千三百億くらいかけて、五年間に玄米に換算して米麦合計千二百五十七万石を増産する、雑穀は九十万石、いも類は一億四千五百万貫増産するのだ、こういう計画をお持ちになつておるらしいのであります。ところがこれで私は食糧が十分に足りるのかどうかと思つて調べてみたら、それでも足りないのであつて、幾らか不足分がこれで少くなる程度だと思います。食糧増産に非常に御熱心な農林大臣はなぜ足りる計画をお立てにならないのか。あるいは第二次の五箇年計画にはそうなつておるのかもしれません。そこでまず第一に農林大臣にお尋ねしたいのは、食糧増産計画というものは、政府食糧を自給するという考え方でお立てになつているか、あるいは日本という国柄では絶対に自給はできないとして、ある部分はどうしても輸入しなければならないのだ、こういう考え方でお立てになつているか。そこをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  119. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 自給はできる計算で立てております。但し米麦のみでなく、総合された食糧の上に立つての自給だということでやつておるのであります。
  120. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私がちようだいしております資料では、総合したならば自給できるとい一数字はなかなか出て来ないのでありますが、第一次五箇年計画でそういうことになつておるのですか、どうでありますか。
  121. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 第一次五箇年計画は、この基礎を非常に固めなければなりませんので、特に農地の調査あるいは水流、そういつたような調査をして、特に米麦、雑穀等に主体を置いて行つておるのでありますが、そのほかにまだ水産あるいはまた畜産等というものが加味されて来るのであります。でありますから、そういうものを総合して食糧自給をやろうというのであつて、第一次五箇年計画はそういうふうになつておりますが、第二次五箇年計画では、やはりそういうふうに積み上げて参りまして全体として国全体が自給でき得る方向に持つて行きたい、こう思つております。
  122. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうも納得できにくいのですが、先へ進まなければなりませんので次をお伺いします。それで自給するつもりなんだ、しかし第一次五箇年計画ではまだ輸入が相当いるのだというわけですが、第一次五箇年計画の結果を見ますと、今申し上げたように、一千二百五十七万石も米麦は増産するけれども、その間に耕地改廃による減産量が五百万石もある。人口増加による需要増加が七百七十二万石もある。だから結局ことしの予算ですと、二千五百万石ぐらいの輸入数量になつていると思うのであります。ただ五百八十万石程度の輸入量の減少しかできないのだ、こういうふうになつておるようなのであります。そこで一体輸入するために日本経済もしくは国家財政の上にどういう影響が及んでいるのかと申しますと、輸入代金としてドルを四億二千七百万ドルもお使いになる。これを円に換算すると一千五百四十億ぐらいになる。そうして日本の米よりも高い米を買つていらつしやるものですから、補給金を三百二十億も予算からお出しにならなければならない。世界食糧事情を見ると、大体食糧が非常にいい状況の所もあるようでありますが、アジア地域はあまり芳ばしくない。昨年あたりは世界輸出できる米を日本が半分ぐらい買い占めたというような状態ですから、おそらく非常に高く不利なものをお買いになつていると思うのです。そういうような食糧事情でありますときには、予算を組む場合には、もう少し何か考え方があるのではないか。大蔵大臣は多年実業界において実業の御経営に堪能な方でいらつしやると思いますが、かりに大蔵大臣がこの国の経済状態というものを一つの営利企業の経済状態にたとえてお考えなつた場合、こういうように必要な費目があるときに、この金を国の財政が足りないから、もしくは予算がないからといつてちよん切られるか、これだけ必要ならば借金しても出すという考え方が出て来ないか、これをひとつ大蔵大臣にお尋ねしたい。
  123. 向井忠晴

    向井国務大臣 それはむずかしい問題でございまして食糧増産のために、ほかにやる金を少しでもどしどし入れるがよいという考えになるか、あるいは当分の間はやむを得ないから、力の許す程度において増産の方に金を入れるか、それについては、ただいまのところでは、今の程度食糧増産の金の入れ方でもつていたすよりいたし方がないと思つたのでございます。ただ私は、農業のことにはあまり経験のない人間でありますので、食糧増産に金を入れるのに、それが適切に使われるかどうかということを、先ほどあなたのおつしやつた財政整理という点に関連して、ぜひ能率的に使つてもらいたい、そういう意味で苦労しているわけであります。食い物を十分に持たなければ、国も復興しませんし、民生の安定もできませんことはわかつております。できることなら、もつと金を入れてよくなるものならば、ぜひそうしたい。今後もその方針ではおりますが、それと同時に入れた金が能率的に動くということを切に望んでいるわけであります。
  124. 塚田十一郎

    ○塚田委員 それくらいにしておきます。そこで大蔵省は、今年度の農林省予算をどういうぐあいに御査定になつたのかということであります。実は調べてみたら、農林省は六百二十億食糧増産費用を御要求になつたが、大蔵省が三百十一億にお削りになつた。しかしこれでも二十七年度から見ます。れば六十五億も増しておるのだぞというので、大蔵省が農林省に大分恩をお売りになつたというようなかつこうになつている。そこで一体この六百二十億でやつたならばどれだけ増産の計画になるのかということを調べてみたら、三百三十二万石増産になるが、この三百十一億になつたらどれだけ増産になるのかというのを新聞記事を資料にして数字を出してみたところ、二百三十三万石増産になるのですけれども、六百二十億で三百三十二万石、三百十一億で二百三十三万石ではちよつと比率がとれないように思いますが、これがほんとうだとすれば、これは削つた方が非常に能率的だということになる。この辺はどういうことになつておりますか。
  125. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 お答えします。二十八年度の増産石数は、ただいまお述べになつたのとわれわれの計算とはちよつと違つております。土地の改良、農地の造成によりまして百三十万石、それから耕種の改善、病虫害防除とか、種子の改良、そういうものによつて百二十六万石、合計二百五十六万石ということになつております。これにはただ財政予算の支出だけでなく、いわゆる農林漁業の長期資金の方も含んでおりますが、これが当初の要求に比べて比率が合わないというのでありますが、これは農地の造成、土地改良事業の着工箇所に重点を置くとか、あるいは大規模のものに重点を置くとか、そういつたようないろいろなものに、先ほど大蔵大臣のお話になりましたように効果的に使う、そういうことで予算の査定後、一地区々々々計算して積み重ねて計算しますと、そういう数字になる、こういうことであります。
  126. 塚田十一郎

    ○塚田委員 よくわかりました。そこで主計局長にひとつ伺います。大蔵省は、こういう予算を査定されるときに、何か基準の考え方をお持ちになるのかどうか。なおちよつと質問を補足します。というのは、今申し上げたように、これだけ金を削つてそれによる減産というものを計画面で検討してみて、どちらが損か得かというようなことを考えて削つていらつしやるのか、それとも予算はこれだけしかないから、もういいかげんに、こちらにも要求がある、こちらにも要求があるというので、腰だめでつまんで小づかいを親が子供にくれるようにおやりになつておるのか、その辺をひとつ伺います。
  127. 河野一之

    河野政府委員 お答え申し上げます。食糧増産をやる場合には、土地改良あるいは干拓、開拓等いろいろございます。そのほか耕種改善等による方法もあるのでございますが、財政の立場から、もちろん最小限度の費用で最大の効果をあげるものを実は重点的にやつております。その面から参りますと、土地改良が一番安上りでいいのでございます。その次が干拓でございましてその次は開拓ということに相なつております。従いまして限られた経費の場合におきましては、土地改良、これもいろいろやり方がございますが、そこに重点を置かねばなりません。また一方土地の問題というものは相当農民にとつて大きな問題でございまして、ことに次三男対策というふうなことから考えて、やはりある程度の土地造成をいたさなければならぬ。この開拓につきましても、農林省に一定の計画がごいざます。急傾斜地がどうとか、入植地がどうであるとかいうような計画があるのでございますが、そういうような既定の計画もできるだけ生かして、限られた範囲内でもつて、そういつた社会的な要請を入れて全体的に効果が上るように、例で申しますと、開拓でありますと、一反当り十二、三万円でありますが、土地改良では一反当り四、五万円で行く。干拓でいえばその中間くらいで行く、そういつた各方面の要請を入れまして予算を査定したわけであります。
  128. 塚田十一郎

    ○塚田委員 農林省関係予算で、土地改良その他のものにどういうぐあいに重点を置くかというお話はわかりましたけれども食糧増産予算と他の国費の面の予算と、どういうぐあいに御判定になるかというお話は、実は伺われなかつたのであります、これはいいとしまして、ただ希望としまして、こういうものには相当親切に好意を持つて考え願わないと困るのではないか。ことに私食糧増産関係予算について関心を持つておりますのは、私どものものの考え方は、米価政策の面ではそう大幅に米価を引上げられない、今日の日本経済状態では引上げられない、こういうように考えております。そのために、残念ながら国民所得の統計の上に出て来ます農業人口、農業者の所得というものは非常に低く押えられておることは、これは皆さん方もよく承知しておられる通りなんです。そこで食糧増産関係費用としてでもせめて流して行つて、これはどうせ農村の人たちのふところに入る金でありますからしてそういうことにしてその低所得を一部分カバーして行く。そうすることによつて、あわせて増産の効果が上るということであれば、非常にすばらしいじやないかということを考えて米価を上げるよりも、むしろこういう面に金を流す方がいいと考えますから、そういう点も今後ひとつ御留意願いたいと思います。  それから同じようなものの考え方が建設省関係予算にもあるのでありまして、ことに建設省関係予算で災害の復旧と災害の予防という金は、これはあまりにけちけちしてお渋りになつていてはいけないのじやないか、こういうものをもし渋るなら、ほんとうに世俗にいわれる一文惜しみの百失いという結果になつてしまうことが多い。そういう考え方からして、一体日本の災害を予算面でどれくらいめんどうを見てやつていただいておるかということをいろいろ検討してみると、やはり不満な面が非常に多いのであります。二十七年度の計画では二百五十二億で、二十三年度災害は七五%、二十四年度災害が六〇%、二十五年度災害が五〇%、二十六年度災害が四〇%、まだそうすると二十六年度の災害は六〇%も残る。ことしは大分お金をお出しになつたようでありますが、残事業費が千五百六十億、国費だけで九百億もいる。しかるに政府はその三分の一を来年度復旧されることになつている。また農業災害の復旧の方も五百八十四億、国費だけで三百九十億いるのに、これも三分の一しかめんどうを見なかつた。あとの三分の二は依然として残しておかれるという考え方に、私は少し考えが間違つていられる点があるのじやないか、こういうふうに考えておるのであります。こういう面は今後の予算の御査定なりにぜひ御考慮をお願いしたいということをつけ加えて、この問題を打切りたいと思います。  次に、時間がたいへん過ぎまして恐縮でありますが、税制改革について若干お尋ねいたしたいと思います。政府は今度税制改革をいろいろ企図しておられるのでありますが、私は、終戦後の日本がシヤウプ勧告に基いて税制改革をやつたときから、その後政府が幾たびか行われた税制改革は、最初に申し上げた行き過ぎを是正した面においていい点もあるが、どうもだんだんと安易に現実と妥協されている。税法、税制本来のあり方から行くと、後退されているのではないかという感じがする面が非常に多いのであります。ことに今度の税制改革におきまして、それからごこ数年来の所得、ことに申告を中心にする所得税の徴収のされ方においてもそういう感じが非常に強いのであります。そこでお尋ねしたい点がいろいろあるのでありますけれども、時間が十分ありませんので、最初にまず大蔵大臣に、今まで自由党が、もしくは政府がお持ちになつてつた減税方針というもの、予算はできるだけ緊縮して減税に重点を置いて行くという考え方を今後どうされるおつもりか。今後も続けて行かれるおつもりか、もし続けて行かれるというお考えであるならば、そういう財源は今後どこから出て来るかというようなことを、もし御意見がおありでしたら伺いたい。
  129. 向井忠晴

    向井国務大臣 減税は希望から申せばいたしたいのでございますが、財源が、ごく狭められておりますから、実行上には困難があると思います。特に私は法人税が割合に高いというふうに考えておるので、これが軽減ができるものならしたいというふうに存じております。
  130. 塚田十一郎

    ○塚田委員 もう少し掘り下げてお尋ねしたいのでありますが、時間がありませんので、これはまあ一応大蔵大臣の御意見を伺つたはなしにいたしておきます。  そこで次に申告所得の近年の徴収状況その他でありますが、これは先般新聞で拝見いたしますと、参議院におきまして木村議員が御質問になつたそうでありますが、私も同じ考えを持つておる。政府は近年申告所得というものを、他のものは年々自然増収であるのにかかわらず、自然減収として、補正減をお立てになつておる。これはおそらくとれないからということで、だんだんと検討してみられてああいうことになつたことと思うのでありますが、そういうことをここ二、三回続けて来られた結果、国民所得の上に出て来る勤労所得の統計数字と、それから業種所得の統計数字と、税の上に出て来るいわゆる源泉の税と、申告の税と、非常に大きな開きが出て来てしまう。もちろんこの開きには十分御説明のできる面が幾つもあることと思う。たとえば源泉の中には勤労者所得からでない源泉所得もあるはずであります。しかしそういう面をどんなに考慮いたしましても、これだけの開きというものは私は絶対に考えられないのであります。そこでなぜこういうことになつたのかと思つて、いろいろ原因を探究してみますと、やはり業種所得というものが非常に捕捉しにくい、捕捉しにくいものだから、だんだんと徴税の面で後退をされる、後退をして予算を直して行かれるから、こういう結果になつてしまつたのじやないか、こういうことを考えておるわけであります。二十八年度の数字で見ますと、勤労所得は国民所得の上で二兆五千七百五十億、個人業種所得は二兆四千三百四十億。ところが源泉による税収は今の給与所得以外の源泉税の分を含んでおりますが、千七百四十九億ある。申告の分が七百五十九億しかない。比率を申しますと、一方は六分八厘に当るのに一方はその半分の三分一厘にしか当らない、こういうような現象は、やはり私は十分説明できないのじやないかと思うのでありますが、その点についてどういうお考えを持つておりますか。
  131. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 お答えいたします。御説のように、申告所得税の方の税金は七百五十九億、それから源泉の方の収入は千七百四十九億でありますが、それは塚田さんが御指摘になりましたように、源泉の方には本来申告所得税に相当する分がありますので、国民所得の方と一応合せて行くためには、そうしたものを差引いたところで比較していただかなければならぬと思います。われわれ蔵入見積りをつくります段階におきましては、二十六年度の課税の実績を基礎といたしまして、その後における生産物価の動向等を勘案しまして、見積りをつくつて行くというわけでありますから、御指摘のように国民所得の見積りにおける給与所得対個人所得の全体を見まして申告所得の税額が給与所得の税額に比べてその割合いが少ないということで、いろいろ検討すべき点があることを、われわれも気がついて、いろいろ検討しております。ただこういう点が一つあるのではないかと思います。税額の見積りの対象になつておりますのは、御承知のように基礎控除、扶養控除をした後の、残りのものだけが課税の対象になつておりまして、失格者は入つておりません。それでいろいろ見て参りますと、たとえば扶養控除の家族の人員でありますが、これは有資格者の数字だけしかわかりませんが、扶養控除の家族の数字を給与所得者について見ますと平均一・六八人になりますが、申告所得者の場合でありますと四・二八人になります。最近のように扶養控除の額が割合に大きくなつておりますと、この点からも申告所得者の失格者が出て来ることも考えられる。たとえば二十八年度におきましては、われわれが見積つております農業所得者の課税人員は約百万人であります。この数は全農家をかりに六百五十万人ぐらいといしたますと、一五%ぐらいであります。その他は一応課税の対象からはずれているということもあると思います。  それからかつてほぼ同じぐらいになつていたものが、申告所得になつてから額がずつと減つた。これはいろいろ過去の見積りについて是正された面もあると思いますが、法人が最近相当多くなつているということも、一つの原因としてあげられなければならぬと思います。ただ御指摘のように申告所得の課税につきまして、調査の上にいろいろ難点がございまして、従つて給与所得者に比べて課税の行き渡り方が十分でないという点もあろうということは、われわれも認めざるを得ないと思つております。この点につきましては最近国税庁の方も相当熱心に努力しておりますし、申告の改善、調査能力の向上ということについても相当努力しておりまして、今度の見積りにおきましても、その分の増収を若干見積つておる次第であります。
  132. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろ原因もあるのでありましようが、私はどうも漠然とした感じでありますが、申告所得の面に非常に大きな捕捉漏れがあるのではないかと思う。しかも困つたことには、その捕捉漏れは低所得層にはほとんどないのであつて、高所得層に捕捉漏れがあるのではないかということを非常に心配しておる。そこで主税局はこういう調べをなさつたことがあるかどうか。つまり職を持つておる人間のうち課税面に捕捉されておる人間がどれくらいあるか、私がここに持つておる資料によりますと、給与所得の場合には割合それがはつきり出ておるようでありまして、二十八年の計算の基礎になつておるものを見ますと、支給人員は千二百四十九万二千人ある。その中から失格者が二百七十七万五千人あつて、結局課税される人が九百七十一万七千人となつておりますが、とにかく税金は納めて喰いないのだが、税務署が捕捉しておるものが給与所得者の面では千二百四十九万二千人ある。ところが業種所得の場合にはおそらく税金を納めておる人しか捕捉されておらないと思うのでありますが、業種所得の中でつかまつてはおるのだけれども、失格して税金を納めていないという人たちの調べはありますか。
  133. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 われわれの方の直接の資料といたしまして、失格者の全部についての調査は今のところございません。他の統計等によりまして業種所得の人数が何人あるか。従つてわれわれの方の分としてどれだけ把握しておる、こういう比率を検討したことはございます。結局税務署の調査能力に一応の限度がありますので、やはり課税対象になるような人の調査を充実する、特に今おつしやいましたように高額所得者の調査を充実するというような面もございますものですから、課税にならぬものについての調査は、第二にしておるということを御了承願いたいのであります。
  134. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これはつかまつておる人たちをただきつく調べてとるということだけではならないのでありまして、相当課税の面に捕捉されてない人たちがあるのではないかということを実は心配しておるのであります。と申しますのは、いろいろな統計で調べて会すと、就業者総数というものが大体ある。三千五百五十四万人くらいとにかく職についておる人たちがある。ところがその中で給与所得者はさつき申しましたように千二百四十九万二千人しかない。ところが業種所得者というものは数の上で行けば二百七十九万一千人しかない、合せて千五百二十八万三千人しかない。三千五百五十四万人の中から千五百二十八万三千人しか課税面において捕捉されていないのだということにもしなるとすれば、残りの二千二十五万七千人という人たちは、これは全部税法の面での失格者と言い切れるかどうか、この中に当然税金を納むべき人、しかも相当たくさんの所得を持つておられて税法上つかまつていない人があるのではないかという疑いを非常に持つわけなんであります。この点はどうなんですか。
  135. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 御指摘になつたような事例が全然ないということは私は言い切れないと思います。従つて税務署におきましても個人調査のような——われわれ個人調査と呼んでおりますが、業種的に全部の給与者について調べて行くということもやつておりますが、さようなことになつて参りますと、全部が全部毎年やれるというまでに参つておりません。しかしその辺につきましても漸次相当手を加えております。ただ私の聞くところによりますと、そういう大きな所得者で課税からはずれておるという方が、そう多数あるというふうには思つておりません。
  136. 塚田十一郎

    ○塚田委員 あとは議論になりますからこの程度にいたしますが、こういう疑いが十分にあると思いますし、ある程度は立税局長もお認めのようでありますから、ひとつそういう面にも徴税の上で、十分御注意願いたいということを申し上げて、この問題はこれくらいにいたします。  次にこのたび計画をしておられるいろいろな税制改革についてであります。その中で私が非常に心配をしておりますのは、今申し上げたような全般的な感じであるのにかかわらず、政府がさらにそれに輪をかけてまたそういうような不均衡を大きくされるような改革を今度おやりになつておるのではないかという懸念がある。もちろん今度おやりになつたいろいろな改革が、資本蓄積という面からお考えなつたということはよくわかるのでありまして、ただ資本蓄積、資本蓄積ということでやつて参りました。そうしてまた実際に蓄積の結果が、かなり上つてつておるようでありますけれども、それがあまり片寄つて蓄積されるということであると、全般の国民がこうして非常に重い税に苦しんでおる今日、これはやはり適当ではないのではないか。そういう意味におきまして有価証券の譲渡所得の課税を廃止されたのや、預貯金の利子所得の源泉徴収の税率をお引下げになつたのは、どうもぴつたりしないのではないかということを考える。この点はいかがでありましようか     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員   長着席〕
  137. 渡辺喜久造

    ○渡辺(喜)政府委員 お答えします。有価証券の譲渡所得に対する所得税を廃止せよと言われますが、これは理論的にはずいぶん意見のあるところと思つております。ただ実施の経過を見て参りますと、やはり相当の資料を徴しなければ、なかなか課税がうまく行かない。ところが、その資料を徴する手数ということが、なかなか大きなあでございますので、ある一定限度——現在は千株以上ということになつておりますが、そういうことになりますと、なかなか出て参ります資料の抜ける場合が非常に多うございますし、実行上その他の面から参りましても、うまく実行ができない。結局税務署の方で無理に調査しようとしますと、いらざる摩擦まで起さなければならぬといつたようなこともございまして、なかなか実行が困難である、実績が上らないというようなことを考えまして、むしろこの際としては昔の移転税のようなものに返したらどうであろうかというので、理論的には確かに一歩後退と言えようと思いますが、実際の面と結び合せて参りますと、やはりこういう態勢の方がいいんじやないかということを考えております。なお今回の改正におきましては、全体としましてはやはり所得税に重点を置きまして、特に低額所得者の負担は相当引下げになつているというところに、今度の税制改正重点があるということは言い得ると思つております。
  138. 塚田十一郎

    ○塚田委員 富裕税の廃止についても同様な考え方から若干疑問がありますが、時間もありませんので、これは飛ばしまして、ただもう一つ政府の今度の税制改革の中で、交際費、機密費をある限度を設けて、それを越えるものは否認をしようという考えがおありのようでありますが、これはどういう考え方から出て来たのか、これをひとつ大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  139. 向井忠晴

    向井国務大臣 よく世間で申します社用族、会社の金で遊んで歩くという性質のものを、会社としては交際費あるいは機密費で出すというようなことがあるようですから、それをある点まで規制して行きたい。そういう考えで編み出したものでございます。
  140. 塚田十一郎

    ○塚田委員 おそらくそうじやなかつたかと思つてつたのでありますが、もしそういう考え方からされたんであるとするならば、これは大よそ見当違いであつて、意図されたところと違う結果が出て来るということを、私は実は心配をしているのであります。大臣も長く実業界におられたのでありますが、大臣はうんと偉くいらしたが、私も長く実業界でもつぱら経理の面を担当しておつた期間がかなり長い。そこでもし社用族を退治しようとするならば、それも経団連とか経済同友会がやかましく言われる分にはいいけれども政府が、ことに徴税当局がそういう金を使えば税金をとるぞという形で、あれが退治できるとお考えなつたら、これはたいへんな見当違いじやないかと私は思う。なるほど私も今日の実業界その他社会全般の風潮のうちで、社用族というものはよくないものだとは思つております。そうして何とかできるものなら、ああいうものはなくしたいと思つておりますが、しかしこれは政府考えて、それをことに徴税の面でおとめになるという考え方ではとまらない。ああいうものができますのは私が申し上げるまでもなく、できる基盤があつてできるのでありますから、ことに事業なんかの立場におきましては、交際費なり機密費はたいていそれを使わないと商売ができないという場合が相当ある。それに便乗している。そこでこれを税法で、もし政府の意図されるようにお取締りになると、私が長年経理をやつて、しかも今は計理士、税理士というような商売をやつております自分の経験と勘から申しますと、実額はちつとも減らない。しかし帳簿の上に出て来る交際費、機密費は必ず減つて参ります。それはもう必ずしつかりした経理を持つており、もしくはしつかりした計理士、税理士を雇つているところはそのようにさしずするにきまつております。従つて使つた金は減らないけれども、どこかほかの費目に行つて必ずふくれているにきまつている。そうしてそうなつた場合には今でさえなかなか申告所得税が捕捉できないでお困りになつている今の徴税当局では絶対にこれはつかまりません。そうするとその場合にはだれが一体この税法の改正によつて縛られるかというと、しつかりした経理を持つていない人間や、しつかりした計理士、税理士を雇う能力のない人間、うかつにやつた人間だけがつかまる。予算書を見てみますと、政府はこれによつて三十七億何がしかの交際費否認による増収を見込んでおられるようですが、これはどこから計算されたか私も知りません。これは絶対に私はとれないと思う。こういうことを税法で、しかも政府がおやりになるという考え方は私は聞違つていると思う。この点はどうでございます。
  141. 向井忠晴

    向井国務大臣 有能なるあるいはずるい経理部長がいましたならば、それは御説の通りになるでしようが、しかし必ずしもうそをつけるものではないと思つております。私も自分の経験は非常に浅いのですが、やはりうそはそうつけないものです。ですからまつたくほかの費目に化けてしまつてつかまらないということもないだろう。それからもう一つはやはりそういうことになると、そういう交際費とか機密費とかいうものの使い方が減つて来る。そういうものを使うのを慎むということにもなるでしようし、そういう意味で、まるで見当違いのものとは私は思わないのですが、これは結果によつて判断するよりしようがないと思います。
  142. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これは大蔵大臣の方が、私よりは人間が少し善人でいらつしやるらしい。私は大蔵大臣のような感覚にはならない。これは結局ずるいやつがひつかからないで、ほんとうに善人の知恵のまわらないのがひつかかつてしまう。そういうことが税法の面で出て来ては私はやはりよくないのじやないか、こういう感じをどうしても捨て切れない。  そこでおそらくこの裏になつているものが、例の減税国債だろうと思う。私はこれもどうもちよつと見当違いをしていらつしやるのじやないかと思う。減税国債は利子四分ということであります。そして一般の国債は五分五厘という。一分五厘の利子を低くするために幾ら税金をおまけになつているか。三百億の一分五厘といえば四億五千万であります。ところが政府予算を見ますと、三百億の公債を売るために六十七億税金をおまけになつている。もちろん大蔵大臣のお考えになるように、一方の交際費、機密費、こつちの面から規制して行けば所得がよけい出て来るからして、そういう面からの六十七億は全額税が少くなるということにはならないというお考えじやないかと私は思いますが、私の考え方はそうした減税国債をお出しにならないでも、あの六十七億に当る税金は必ずとれるし、とらなければならないのだと思う。三百億の四分利の公債をお出しになるのに、六十七億税金をまけるという考え方は、ちよつと見当違いではございませんか。どうですか。
  143. 向井忠晴

    向井国務大臣 あなたのおつしやるのは六十七億が出し過ぎるという意味でございますか。それはまあそれより少くて目的を果せばいいんですが、やはり減税というのは、すなわち政府も今の税が高いというように思つているから起つたことと了解を願いたい。そうすればそれをある方法で軽減しようということもまつたくできぬこともない。そういうふうに考えます。
  144. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうも税金をまける目的が減税国債にあつたとおつしやると、さつきそこらからやじが出ておりますように、私も同じ考え方なんでありまして、それだと負けてもらわなければならない人が安くならないで、負けて上げないでもいい人が安くなるということになつてしまう。これは減税という目的と減税国債というものの発行とは私はつながらないと思う。やほり濫費を押えて国債を買つてもらうというところに、私は理由があればあると思うのですが、それにしては少し無理なよけいな手をお打ちになつたのではないか。結局結果においては世の中で遊んでいる金が、これにまわつて行くようになればいいのでありますが、それならばもう少し金利の高い公債をお出しになるということの方がまだいいと思う。もちろんそうすると全体の金利政策、ことに公社債の金利政策というものをくずすからというお考え方であろうと思いますが、しかし結果においては同じことになつてしまうと思う。もちろん勤労所得者なんかは、タンス預金をひつぱり出して来て公債を買うでありましようけれども、事業をやつておる人たちはどつちにしたつて金を手一ぱい始終使つておりますから、公債を買わされれば、それが金融の面のどこかにふくれ出して行きます。そうすると銀行からどんどん金を借りを力を持つている人たちは買えるかもしれませんけれども、そうでない人たちはやつぱり買えない。これが金融の面に及ぼして来る影響は、私はどつちにしても同じことではないかと思う。そうすると税とからませられたこの減税国債というものの考え方に、どこか少し考え違いをされておる面があるのではないか、こういうように考えるのですが、一応この程度にいたします。たいへん長時間お許しをいただきましてありがとうございました。
  145. 太田正孝

    太田委員長 中村高一君。
  146. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣の質問は明日できるそうでありますから、その点を保留させていただきまして、おいでになつております閣僚に御質問をいたしたいと思います。  最初に外務大臣にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、先般アメリカの大統領が教書を出しましたときに、外務大臣の意見としてでありましたか、政府としての意見でありましたか、発表されたものの中に、ヤルタ協定の廃棄に関しまして、日本は樺太並びに千島に関して関心を持つというようなことを発表をしておるようでありますが、一体この関心を持つというのはどういう意味なのか。ヤルタ協定が廃棄されるということで、樺太やあるいは千島が返されるということに関して関心を持つのは、政府ばかりではなくして、国民ことごとくが領土問題に対しましては深い関心を持つておると思うのであります。問題は、関心を持つということがただ外交的な言葉であつて国民に対する一つのゼスチユアであつて、この問題については国民とともに政府は心配しているのだというような程度の意味なのか。あるいはさらに進んでもう少し深い意味があるのか。ただ関心を持つという程度のことであるとしまするならば、言うても言わぬでもいいことでありまして、ことさら大統領の教書に便乗をして関心を持つというような、よけいなことを言うてみたところが意味はないと思うのでありますが、何かこれには具体的な手でも打とうというお考えがあつたのかどうか。むろんソ連に交渉しても返してくれるという手はあるはずはありません。あるいはアメリカに対して骨を折つてくれろという具体的な交渉でもしようというのか。その辺のところはどういう意味でああいうことを言われているのか、ひとつはつきりいたしてもらいたい。
  147. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府の大統領の教書に対する意見は、私の外交演説に述べておる程度であつたのであります。ところが中村君も御承知のように、予算委員会におきましても、外務委員会におきましても、大統領の教書についての政府意見をたびたび求められたのであります。従つてそれに対する答えをいたした中に、そういう言葉があつたのであります。その趣旨は、ヤルタ協定等は、平和条約締結の当時にも国会で説明しているように、われわれはポツダム宣言受諾後もヤルタ協定なんか知らなかつたし、従つて何らそれらに拘束もされなければ関係もないのであるという立場を、ずつととつて来ておるのであります。ただポツダム宣言は受諾しているので、そのポツダム宣言の中には、日本の領土は本州、四国、九州、北海道と、その他連合国の定める諸小島に限られると書いてある。従つて不満が国民の中にもあり、政府としても残念に思う点がありましたけれども、ポツダム宣言を受諾した以上は、その規定にある通りの決定に従うべきが当然であると考えて従つたわけでありますが、吉田総理もサンフランシスコの演説の中でも千島等に言及しておられて、これは決して日本が暴力をもつてつたものではないのだということを言つておられるのであります。しかし日本の領土の決定は平和条約によつてきまつておるのでありまして、直接にはヤルタ協定とは関係を持たないわけであります。また現に祕密協定の廃葉ということはアメリカ側で言つておりますけれども、まだヤルタ協定を廃棄したということも言つておりません。また廃棄したと仮定しても、すぐにそれが日本の領土に影響を及ぼすかどうかは、直接には今申したような関係でありますから、ないかもしれないのであります。従つて私の発言は、国民に対してヤルタ協定が廃棄されれば、すぐにあの領土等はもどつて来るのだというような、はやまつた印象を与えるわけに行かない。しかしながら旧領土であるから、決して無関心ではあり得ない。こういう説明をいたしたわけであります。
  148. 中村高一

    中村(高)委員 領土権の回復は、敗戦国民であります日本国民全体の悲願でありまして、一日も早く失われた領土権の回復をしなければならぬことだと思うのでありますが、どうも政府のやつておりまするところの声明などを見ると、アメリカ側に対しては何となし卑屈であるという、いわゆる追随的な政府の態度につきましては、もうしぱしばわれわれがいろいろの場合において主張いたしておる通りでありますが、もし政府がこういう機会に領土権の問題に手を触れるのでありますならば、樺太、千島の問題と同時に、沖繩あるいは小笠原あるいは大島等の問題につきましても、同時に重大な関心が払われなければならぬことでありまして、同じくすぐに折衝をすることのできない今日の国際情勢からいたしまするならば、沖繩や小笠原であるならば、アメリカ相手でありまするから、これの方ならば直接交渉ができるのであります。この問題につきましは、従来政府のやつておりまするところはまことにたよりないということは、われわれが考えるばかりでなく、現に島民諸君がしばしば訴えておる要求なのであります。これらのアメリカ関係の、すぐ交渉もできる領土権の回復問題については、現在いかなる方法をもつてどんな手を打たれようとするか、お答えを願いたいと思います。
  149. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 沖繩や奄美大島等については、領土権の回復の問題はないのでありまして、主権は日本にあるということまでは、平和条約の際に話がついておるのであります。つまりその主権の上に立つ行政とかその他の統治の権能を、一時的に平和条約アメリカ側が行うということになつております。しかしながらわれわれとしては、不必要なものは日本側に返すべしと考えておりますし、また島民の希望もそうでありますから、平和条約発効以来ずつと話をいたしております。但しこれも全般的に行政権の返還というような話になりますと、なかなか障害にぶつかりますから、結局のところはそこに行くことになりましようけれども、たとえば戸籍の事務はこちらでやるとか、あるいは学校の経営はこちらでやるとか、道路の建設はこちらでやるとかいうように、一つ一つく話のつくものを集めて行つて最後になると結局行政権なりその他のものが、こちらに返つて来るという形にいたしたいと思つて、すでに南方連絡事務局も設置いたし、この方面にはずつと話を続けて具体的な解決をはかつております。またこれにつきましては、これは大分前でありますが、昨年の十月の、初めにアメリカの管轄者であるラドフオード司令官を見えまして、現地を視察し、われわれと意見の交換をして帰つたのですが、先方の海軍側にはいろいろ考えるところが多いようでありますが、こういう問題はずつと現にただいまでも話を続けておりますので、漸次具体的な解決がされるものと信じております。
  150. 中村高一

    中村(高)委員 議論をして解決される問題ではありませんから、この問題たつきましては、政府の努力を要請することにいたしておきます。  次は、日米行政協定の第二十六条にありまする合同委員会に関することについて政府の所見をただしておきたいのであります。行政協定はまことに一方的でありまして、行政協定の内容は、主として米軍の日本駐留に関する日本側の義務を規定せられたものが多いのであります。合同委員会の任務を見ますると、日本国内の施設または区域を決定する協議の機関ということになつておりまして、委員会の規定から見ますると、対等のような協議ができてそうして日本国内の施設や、あるいは必要な軍事施設の地域などをきめることができるように規定はされておりまするが、事実はまことに情ない実情にありますことは、われわがしばしば実際問題でぶつかつておるのであります。たとえばここに宿舎を一つつくるとか、あるいは石川県にありましたように、射撃場をつくるというような問題が出ております。そして行政協定に基く米軍と日本内地の農民であるとか、居住者あるいは漁民というような者との間に、深刻な問題が各所に起きておりますことも、外務大臣の御承知の通りであります。しかもこの最終決定は合同委員会の協議の上に行われるというのでありますけれども、事実は、合同委員会は、委員としては日本側が一人であつて、これは伊関局長であり、アメリカ側も一人でありますが、ほとんど協議をしても、これは問題にならぬことも想像できるのであります。この問題について、もし問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府に、さらに考慮されるように移すこともできることになつておるのでありますが、事実はほとんどそういうような手配が行われておらぬように思うのであります。合同委員会運営の実情というものを、この際明確にしてもらうことが、各所に起つておりまする問題の解決のために必要だと思いますので、合同委員会運営の内容をお聞きいたしたいと思うのであります。
  151. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 合同委員会委員は、お話のように日本側一人、アメリカ側一人となつておりますが、その他に日本側からは大蔵省、農林省、法務省等の関係者を代表なり代理なりに任命してあつて、これらが十分なる話合いをいたしております。またそのほかに調停とか、あるいは財務、演習場、商港その他いろいろの分野にわたりまして二十一の分科委員会をつくつて、それぞれ双方の代表が集まつて協議をいたします。さらにその協議が内定いたしました場合には、日本側としてはこれを閣議に出しまして、閣議の決定を経てから、先方と最後的に話合いをすることになつておりまして日本側としては十分に農民なり漁民なりその他の方とよく打合せてから、しかも閣議の決定を経て、先方と最後的の了解に達する、こういう方法をとつております。直接間接に関係のある国民の立場はできるだけ尊重するように努めております。たとえば現にいろいろの施設をつくるにあたりましても、法律では収用というような規定もありますけれども、今までのところは、一度もそういうようなことは発動せずして、所有者の合意によつて実施しておるような状況でありますので、現在のところは、合同委員会が手を上げたから、政府間の協議に移したというような事例はありませんけれども、将来そういう場合があれば、これは別の問題として考えるわけであります。
  152. 中村高一

    中村(高)委員 問題は、合同委員会にかかるとすらすらと解決してしまうのであります。どんなに農民が騒ぎましても、あるいは居住者が騒ぎましても、合同委員会はきわめてスムーズに問題の解決をされてしまいまして、それはどうしようもないのであります。あなたは御存じないかもしれませんけれども、現地に参りまして直接折衝をする人などは、法律を説明をして、なあにお前らが反対すれば、いつでも土地収用はできるんだという言葉を、いつも使われるそうであります。われわれは聞いたことはないけれども、そういう言葉を使つておる。おそらくこれは土地収用法というものを適用するしないは別といたしまして、行政協定の内容を見ましても、調達については日本側の意思は考慮をされず、直接調達の形式になつておるようであります。工事についても、あるいは施設要求につきましても、場合によれば、日本側で苦情を言うてもそういうことは問題にせずに、直接請負者に工事を請負わしてもよろしいし、あるいは土地の所有者と直接交渉をしてもいいということの方が、原則になつておるようでありまして、むしろ日本側との協議をするというようなことは、まつたく恩恵的な規定でありまして、やろうと思えば直接調達のできるような規定になつておるようでありますが、合同委員会で問題が解決されずに、政府で再考慮をしたというような実例が、今まであつたかどうか、お尋ねをいたしたいのであります。
  153. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今直接調達をすると言われましたが、それは何かの間違いだと思います。合同委員会を通ぜずしては、アメリカ側は施設等を使うことはできないのであります。施設等を使う場合に、合意ができました場合に、その上にたとえば工事をするとか、建物を建てるという場合には、これはアメリカ側で請負者を雇つて建ててやつております。そこまでは日本側はめんどうを見ないということになつておりますが、その根本である、どこの施設を使う、どこの土地を使うということは、すべて合同委員会を通じなければできないことになつております。なお今までは、合同委員会で話合いができずに、政府の間の協議に移したという事例は、一つもありません。
  154. 中村高一

    中村(高)委員 外務大臣は、合同委員会の議でまとまらなければ、直接調達はできないと言うけれども、そんな規定は行政協定の中にはないのであります。行政協定の中には直接調達ができるという規定があつて、あとの方に協議の機関として任務を行うということはありますけれども、今大臣の言われるように、合同委員会の議を経なければ調達ができないということはないと思います。調べたところではそうでありますけれども、その点は外務大臣のかつての解釈だと思うのです。規定の上にはそういうことはない。
  155. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今あいにく規定を持ち合せておりませんが、行政協定は私がつくつたものでありまして、私が知つておるはずであります。合同委員会を通じないで、施設や区域をかつてに向う側が使うということは、絶対にあり得ません。
  156. 中村高一

    中村(高)委員 解釈問題についてはまた別の機会にいたしまして、実際問題として非常に問題が多く起つておりますし、今後も宿舎ができたり、あるいは基地の拡張の問題、あるいは国際情勢が変化をいたして参りまするならば、もつともつと私は兵舎の増設とか、飛行場の拡張というような問題が、起つて来ると思うのであります。こういう場合に、今までのように合同委員会で処理をされて政府が片づけるという形でなく、何か民間側の代表も入れた、こういう場合の苦情処理についての機関を設けなければいかぬと思うのであります。直接関係者が訴える場所がない。外務省に行つてみたところが、それは役所の者でありまして、外務省の方は一つの制約を受けておりますから、なかなか外務省に陳情してみたところが、体裁のいい外交辞令はもらつて来ますけれども、結果においてはびしやり。これは幾らも例のあることでありまして、私らが経験をいたしたものだけでも石かく問題の解決は思うように行つておらないのであります。たとえばこれは立川の一つの例でありますけれども、基地がありまして飛行場がありますために、井戸水にガソリンがまじつてしまつて、火をつけると燃えるというような水が井戸から出て来る。これを集めて、ある人はガソリンにして六十本も売つた人があるというのであります……。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 いかにたくさん井戸の中からガソリンが出るかがわかるのであります。こういうものに対して、行政協定においては賠償をするという原則にはなつておりますが、いまだ賠償をせられず、ようやく政府で水道を引くことについての協議が行われている程度であります。こういう問題の解決のために、何か苦情を処理するような機関を設置するお考えがないかどうか。調達については、何か調達の調停委員会というようなものはあるようでありますが、こういう場合の苦情を処理する、民間側と接触する機関を何かつくらないと、今後問題が続出いたしまして、場合によつたならば、無理に押しつけられた農民や漁民は、あなた方の意思に反する結果となつて、あるいは反米思想にもなつて来るでありましようし、あるいは基地に対する反対の思わざる結果も起つて来ると存じますので、何かそういうものに対しては、あなた方役人だけが問題の解決に当るということでなく、もう少し広い意味の処理機関を設けることがいいと思いますが、御所見いかがでありますか。
  157. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 役人々々と言われますが、たとえば農林省の代表は農民や漁民の利益を極力守ろうとして非常に努力しておるのであります。また現地にみな行きまして、事情を聞いてやつて来ております。従つてむしろ政府部内で、まずいろいろ意見の調整がなされなければならないような現状でありますから、私は今の合同委員会に出ておる各省の人たちは、非常によくやつておると思います。しかしこういう問題はなかなか住民の気持ちにも影響する、よく考えなければならぬ問題でありますから、今のお話のような点はさらに十分考えて、必要があれば適当な措置を講ずることにいたします。
  158. 中村高一

    中村(高)委員 問題がたくさんありますから、ほかの問題に移りますが、次は在外資産の賠償の問題であります。先般来、海外に資産を持つておりまする引揚者の諸君の団体が大会を開いて、おそらく外務大臣のところにも代表が行かれたはずでありますし、決議文も、ごらんになつておると思うのでございますが、確かにこれは放任のできない問題でありまして、占領中でありますならば別でありますが、今日のように日本独立をいたしましてそれ想応に戦争の被害者に対しますところの対策も講ぜられ、現に旧軍人恩給法の復活というような問題も出て参りまして、先般も総理大臣は戦争の被害は国民全体が負担をするという立場に立つのがいいのだというようなことを言われておりますが、その点については、われわれも同感であります。戦争の結果、あるいは戦争そのものの論議は別といたしましても、不幸な結果を得た日本国民が、負担の公平な責任を負うということは、われわれも当然だと思うのでありますが、在外資産の賠償問題については、今日まで何らの解決もされておりませんし、政府からもこれに対するはつきりした意見も示されないので、引揚者の諸君はいきり立つて、先般も政府に来られたと同様に、各党にも要請を持つて来られておるのであります。しかしこの問題については、なかなか範囲も広いことでございますし、資産の内容につきましても、戦争前からおつた者、あるいは戦争中行つて資産をつくつた者もありましようし、なかなかこれは日本の財政等の関連もありますので、一概に簡単な解決のできないことは、よくわかるのでありますけれども、この問題に対しましても、政府の所見を述べていただくことが適当だと存ずるのであります。
  159. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今、中村君のおつしやつたように、その内容がかなり複雑でありますから、いろいろの調査をしなければならない。しかし原則的に言いますれば、在外資産がなくなつた場合には、やはり私有財産を尊重するという見地から、政府は考慮すべきは当然だと思います。但しその考慮する内容については、いろいろの階級のものがあると存じます。それから今度は、考慮するとしましても、一体ほかのいろいろの戦災を受けたりなどしました人々に対しても、ある程度の額で打切つておる、あるいは在外公館借入金というようなものを返済する場合にも、最高額をきめて打切つておる。こういうような戦争の被害を受けた人々に対する待遇と大体におきましては均衡をとつたものでなければなりますまいし、またその原則に立つても今度は財政上の問題もありましよう。いろいろの点から考慮しなければならないので、ついこれがおそくなるのでありますが、さらにまたある国のごときは、在外資産を返還する——たとえばインドのようにそれを約束しておるのもありますし、また他にも返還をするのではないかと思われる向きもあるのでありまして、こういう点も考えてみなければならないので遅れておりまして、はなはだこれは残念でありまするけれども事情がそういうような事情でありますから、いましばらく御猶予を願いたいと考えております。
  160. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると原則は認めるというふうに解釈してさしつかえないと思います。  次は移民の対策についてであります。外務省の中に本年度移民課をつくるということでありますが、その移民課の構成の内容等についても、われわれは注文があるのでありますが、一体本年度の移民の見込みはどのくらいを政府は予想されて準備をしておられるのか。この点につきましては、移民課ができるということも一歩前進でありますが、そうした小さな計画でなく、われわれは、日本国内に人間のはち切れるほどおります現在において、もう少し大規模な計画を立てられて、移民の促進をなすべきではないか。特に問題のあまり複雑でない中南米等につきましての移民の計画、こういうようなものに対しまして、一体本年度どのくらいを予測しておるか。さらに移民を輸送するといたしまして、船舶の問題などはどういう準備ができておるのか。また移民をするものに対する財政局な援助というようなものは、どんなふうになつておりますか、本年度の移民計画についての説明を願いたいと思うのであります。
  161. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 本年度とおつしやるのは来年度のことじやないかと思いますが、来年度につきましては、計画移民は約七百家族でありますが、そのほかに呼び寄せの移民が二千人ぐらいは入り得ると思います。これは主としてブラジルとかアルゼンチンでありますが、その他、ほかの国々にも多少ずつは行くものと思つております。これは元来非常に少い数でありますけれども、この移民が出ますときに、政府の方で十分の世話をし、十分選んでりつぱな者を出せば、今度はもつとよけいよこしてくれというようなことになり得るのは、ほとんど確実でありますので、まだまだ前途は有望だと考えております。しかし、ただ、ここで申し上げておかなければなりませんのは、これで人口の問題が解決できるのだとお考いにはならないと思いますが、その点は国民にもよくわかつてもらわなければならない。というのは、たとえば十万人の人を出そうとすれば、今お話の船のことでも非常にむずかしいのでありますから、十万人出してもなかなか人口の解決にはならない。船の方は今のところ大阪商船等の船が使えるものがありますけれども、それでも何千人となりますとこれはやはり現状では外国船も使わなければならぬと考えております。移民に対する援助としましては、来年度の予算の中に数億円を計上しておりまして、これを渡航費の補助に充てて行きたい、こういう考えでりまして、それらのいろいろの問題を処理するために、行政機構の縮減をはかつておる現在でありますが、でき得れば局程度のものをつくつて十分に力を入れたいと考えております。
  162. 中村高一

    中村(高)委員 もつと大規模な計画を立てて、移民問題については、積極的になさねばならぬと思うのでありますが、たとえばアラスカの森林の伐採の人夫を入れるというような問題につきましても、政府の交渉のやりようによつては、季節的あるいは定着的な移民が可能であるというようなことも聞いております。あるいは先日社会党の代表の者がインドに参りましたときに、インドから五千人くらいの農業技術者でありますならば、ぜひよこしてもらいたいというような話もあつたそうでありますから、政府としても、もつと積極的な行動をとるのが当然だと思うのであります。  その次は今日フイリピン並びに濠州におります受刑者の問題でありますが、現在フイリピンのモンテンルパに百数十名、濠州のマヌス島に百九十何名か受刑者がおるのでありますが、これらの内地受刑への転換策でありまするが、おそらくこの問題につきましては、国民全体の関心を深めておる問題でありまして、同じ受刑をするにしても、一日も早く国内に移管をしてやるということが最も適切だと思うのでありますが、これに対して交渉なり、あるいはその相手国状況なりにつきまして、どんな状況でありますかお答えを願いたいと思うのであります。
  163. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまつたくお話の通りでありますので、両国政府国民の理解を得るために、今までにたびたび繰返し繰返し努力をいたして参りました。まだ戦争中の反感を依然として持つておるような人も——これはどうもやむを得ないのでありますが、あります。従つてこういう問題が出ると、やはりそれらの国においては反対をする人もあるのであります。しかしだんだん理解が深まつて来ておりますから、私はことし中というよりも、もつとことしも早いうちに相当程度の解決を見るんじやないかという希望を持つに至つたのであります。しかしこれらの取扱いは非常に慎重にしないと、相手国政府をいたずらに困らせるような結果にもなりますので、できるだけ慎重な態度をもつて臨みたいと考えております。
  164. 中村高一

    中村(高)委員 次にもう一つ外務大臣にお尋ねをいたしておきたいのでありますが、国際小麦協定のことであります。本年の六月三十日で国際小麦協定が失効をしますについておそらくこれは継続せられるのだろうと思うのでありますが、日本政府からも代表が派遣をせられておるようであります。問題は本月の四日にアメリカで決定をしております小麦価格の値上げの問題であります。これは農林省にも関係をして来る問題でありますから、農林大臣もよくひとつ聞いておいていただいて、あとで農林大臣に質問をするときに、一緒に答えていただきたいのであります。  日本国内で今日持つております小麦が約百六十万トンあります。この外国から買つておりまするところの小麦が、相当日本の外国輸入食糧の重要な部分を占めておるのでありましてこの小麦の価格の引上げということは、必ず日本の輸入価格が増大をするという結果になつて来るのでありまして、この問題については一挙に四〇%も引上げられるという決定が事実であるかどうか、もしも事実であるとしまするならば、これに対するいかなる折衝ができるか、しかもわれわれが理解をするのに困難なのは、現にアメリカにおきましても、あるいは濠州、あるいは南米、カナダ等におきましても、いずれも小麦が昨年よりも豊作であつて、戦前の二倍も小麦の増産がされておるというのに、どういう状況からこの小麦の価格を引上げなければならないか。特に日本との間におきましては、特殊なアメリカとの間に関係を持つて、占領以来食糧につきましては非常な援助を受けておるのでありまするが、この問題はもし価格が引上げられるとするならば、やがては日本国内の麦価にも影響して来ると思いますので、この点につきましての御説明を得たいと思うのであります。
  165. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはただいま開催しておる理事会の議論になつておりまして、日本側からはアメリカにいる武内公使と食糧庁の部長とが代表になつて出席しております。輸出国側はもちろん単に小麦の値上げを要求しておるのでありまして現在では輸出国側は一ブツシエル当り最高二ドル二十五セントないし二ドル五十セント、最低が一ドル七十五セントないし一ドル九十セントという主張をいたしておりますが、輸入国側の方はそのような大幅の値上げを承知せずして、ただいま評議の最中であります。これは御承知のように協定ができますと、一年十セントずつ下げるということになつて来ておりまするが、世界の一般の物価は横ばいの状況もあり、値上りもありますが、あまり物価が下つているという方には向いておりませんから、輸出国側は肥料の値段とかその他のコストの問題から引上げを主張しておるし、これに対してできるだけ安いところにおちつかせようと思つて、輸入国側は一致してこれに抗議をいたしております。なお日本においては、この小麦協定で輸入の割当量は一年に五十万トンとなつておりますが、われわれはこの小麦協定による輸入の方が割安でありますので、この輸入の割当量を広げるためにも交渉をいたしております。
  166. 中村高一

    中村(高)委員 それでは時間の都合上外務大臣には別の機会に伺うことにいたしまして、せつかく待つておられるようでありますから、保安大臣に一言承りたいと思います。  戦力の問題についての議論は、どうももう限界点に達しておつてなかなか問題の解決があらゆる場合において支障を来しておるようでありまして、おそらくこの問題について議論をいたしても困難だと思いまするが、順次保安隊の内容が整備されつつありますることも事実であります。しかし今後の国際情勢の進展のいかんによつて、巷間で伝えられまするところでは、現在は十一万の保安隊であるけれども、やがては十八万とか、あるいは三十二万になるのではないかということが一つのうわさになつておるのでありまするが、保安大臣はこの程度で今日足りるというようなことを言つておるのでありまして、なかなかこれ以上ふやすかふやさぬかというようなことにつきましては、言明はいたしておらぬのであります。しかし内容の整備という名によりまして、各種の兵器がだんだん充実をいたしておりますることは、国会に現われて参りまするものだけでも明らかであります。先般の委員会におきまして、現在の陸の保安隊の持つておりまする兵器につきましては秘密会で発表を受けまして、委員の者だけは一応説明を受けたのでありますが、とにかく陸の保安隊の持つておりますところの兵器も多種多様でありまして、相当これは武力といいますか、戦力と言えるか、力を持つておりますものを所持している。聞くところによると、飛行機も本年内に百台とかつくるというのでありますが、私が特に保安大臣にお尋ねをいたしておきたいと思いますることは、これらの兵器を今日アメリカから貸与を受けておりまするけれども、これは何も協定というようなものが結ばれずに、アメリカの軍隊から直接保安隊に貸し与えられておるのであります。この間の経緯について、このままでよろしいかどうかが私のお尋ねいたしたい要点であります。先日海の方のフリゲート艦と上陸支援艇についてだけは、初めてアメリカとの間に貸与協定が結ばれまして、これだけは国会にかかつて来た。けれども陸の保安隊の持つておりまする兵器については、一回も国会に対して承認を求めたこともないし、また協定を結んでいる事実もありません。おそらく飛行機についてもそうであろうと思うのでありますが、このような各種の兵器が日本保安隊に貸し付けられる、しかもこれは、国民はもちろんどんな経緯でどうして借りて来るのかもわからず、どんなものを持つておるのかもわからず、まして国会でさえもこれがわからないで、言いようによりまするならばやみ取引だ。いい意味においては好意を持つて貸すということも言えるかもしれませんけれども、この内容が全然国民にも知らされず、国会にも示されないということは私はよろしくないと思う。少くとも今日の保安庁の予算から考えまするならば、これは全部無料でありまするけれども、もし有料であるとすれば、おそらく数百億の金を払わなければ借りられないものだと思うのであります。貧乏な日本でありまするから、別に好んで金を払えというようなことを申し上げるのではありませんが、これだけの兵器を外国から借りて来てこれだけの大きな構想を持つており、しかも保安大臣のいつもの説明によるならば、軍隊ではなくして、主として警察的な目的を持つているというのでありますから、これは秘密にする必要も何もないことであります。こういうようなものに対してはよろしく国会に諮つて、その上で借りるということが私は当然だと思う。さもなければ、何となしに外国から押しつけられる軍隊であつて日本がほしいのかほしくないのかさえわかりはしない。一つも国会にそういう議論が現われないで、黙つて向うから借りて来る。一体日本ではどれだけの機関銃と、どれだけのトラツクと、どれだけのものがほしいのかというようなことを国会においても少しの論議もされず、ただ向うから貸し与えられるままに借りて来る。これでは際限がないので、私は保安隊そのものに対して各種の議論が起きて来るのだと思う。保安隊というものは、保安大臣の言われるように、心配ない、戦力じやないという言葉よりは、むしろ国会に向つてはつきりした方針を示すことの方が私は必要であると思うのでありまするが、御所見はいかがでありますか。
  167. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安隊が今使用している武器は、仰せのごとくアメリカの駐留軍将校から各保安隊の部隊ごとに使用を許可されて、現在使用しておるのであります。そこでこれは私もいろいろの点か最扱い上の都合もありまするので、駐留軍の当局から保安庁の当局へ、これを一括借入れるように今交渉中であります。そこでこれを条約にして借り入れることがいいかという問題でありますが、アメリカ側では条約を欲しないのであります。また御承知の通り何らの負担もいたしておりません。いわゆる無償で使用するということになつておりますが、これはわれわれの責任おいて借り受けることにいたしたいと考えております。これを発表すればいいじやないかということでありますが、私もむろん発表したいです。この前の委員会では祕密会を開いてこれを発表したのでありますが、祕密会でなしに、当委員会においても発表したいと思つております。しかしこれは今アメリカ側が所有し、かつ保管いたしておるのでありますから、アメリカとの交渉を要するわけです。私はなるべく早い機会にこれを明らかに発表するようにしたいと考えておる次第であります。そうしてごの武器は、なるほど一面から見れば大したものに見えるのですが、われわれの目から見ればそう大したものではないと考えております。なるべく早くそのようなものは日本内地でつくつて保安隊員にこれを使わせるということが建前上いいのではないかと考えておるのでありますが、何分にも財政の関係上さように参らないことをはなはだ残念に思つておる次第であります。
  168. 中村高一

    中村(高)委員 これは保安大臣に対する質問でありますが、問題だけを提起して、あとはお答えを願いたいと思うのであります。通産省の航空機生産審議会で、日本国内でジエツト機を製作しろというような答申を最近出しておるようであります。それから上陸用舟艇、潜水艦、駆逐艦というようなものを目下造船所で設計中だということもいわれておるのであります。さらに保安庁の諮問機関として、旧軍人を入れて防衛専門会議というようなものを持とうという御意見が出ておるということであります。お答えを得たいと思います。
  169. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今のお話の、通産省でジエツト機をつくるということ、あるいは上陸用舟艇をつくるということは、私は少しも聞き及んでおりません。おそらくさような事実はないと考えております。ジエツト機をつくるとしても、専門的に研究しなければそうたやすくできるものではないのであります。最近われわれが計画して二十八年度予算に要求いたしました保安隊、警備隊の用いる飛行機は、まつたくの練習機であります。決して軍用機ではないのであります。われわれといたしましては、この練習機がはたして日本でつくれるかどうかを実は危ぶんでおりますが、できることならば日本でつくりたいと考えております。今申します飛行機、これは昔は相当高度に発達したようでありますが、今は技術者も全部ばらばらになりまして設備の点においてもほとんど荒廃に帰しておるというようなぐあいで、これを再建するには何年かの年数がかかりましよう、そうたやすくできるものではないのです。  次に、この何とか専門委員会とか、そういうことは全然ありません。私の責任においてはつきり申し上げます。おそらくそれは何かの間違いだろうと私は考えております。さような計画もありませんし、また現実にさような委員会もありません。
  170. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 通産省内に航空機生産審議会があるのは事実でありまして、これはちよつと連絡が悪かつたのでございますが、この航空機生産審議会で、わが国航空機工業の再建振興方策というものをとつたのであります。その答申としまして、ジエツト航空機の試作研究及び航空工業に関する試験研究の施設に対するものが出て来たのです。その答申というものは、ちようど英国のコメツト機の例がありますので、純民間のものとしてこれが最も発達したものであるということから出て参つたのでありまして、別に軍の関係のものをつくるとか、そういうものでは全然ございません。それで、中村さん御承知のように、航空機というものは一番の総合工業で、機械工業の水準を高めるためにそういうものが必要だ、こういう点から出て来たものでございまして、昨年の十一月の三日発足して、現在まで六回会議を開いて、ごく最近出て参つたので、まだそこらにまわつておりません。従つて通産省の中だけでやつてつたものですから、全然よそで知つておりませんので、今保安庁長官の言われたような答弁が出て来たわけでありますが、そういう答申が出て来たことも事実でございます。
  171. 中村高一

    中村(高)委員 時間の催促がありますので、急いで進行いたしますから御了承を願いたいと思うのでります。農林大臣があまり元気がないようでありますから、少し農林大臣に活を入れて、元気のある答弁を願うことにいたしたいと思うのであります。  農業団体の再編成問題で大分、ごねたようでございますが、農林大臣も今までは野人でありまして、官僚のきらいな方であります。私らと同じように官僚攻撃をやる大臣なのでありますが、今日では農林大臣で、とにかく首になりそうでびくびくいたしておるのであります。この官僚ぎらいの農林大臣の手で農業団体の再編成が行われて、官僚の手でごねられて、再び戦争中のような官僚支配、農業報国会なつたり、あるいは帝国農会に復活ずるような形にもどることは不時千万だという声が、農民の中から聞えておると思うのであります。しかしまた農村の声の中には必ずしもいい分子ばかりではありませんし、農村のボスもありまして、政府の金を使つて仕事しようという者もないとは言えないのでありますが、せつかく戦後農業協同組合というものをつくつた、この構想は私は一応いいと思う。ずいぶんいろいろな構想があるようでありまするけれども、とにかく弱い農民が協同組合組織を持つて行く以外に今日の農村の再建の方法はないと思う。これに活を入れることは正しい、それには自主的に農村のこの協同組合を引上げて行くということならばけつこうでありますけれども、逆コースになつて参りまして、せつかくできたこの協同組合も、またまた怪しげな方向に逆もどりをいたして参りました。商人と競争しては負け、あるいは銀行と競争しては信用組合が負けて、赤字になつて来ておりまするのが今日の協同組合の現状であります。政府は今度農協の復活の方策として、中央会とかあるいは府県に支会をつくるとかいうようなことをやり、あるいは農業委員会を全国組織にするような機構をつくつておるのでありますけれども、こういう官僚の計画をしたものに農村をまかせることが、一体農林大臣としてがまんできるかどうか、またあなたも官僚の前に屈服したのかどうか、その点をひとつ答えてもらいたい。
  172. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農林省の官僚は実に忠実でありまして農民の利益をまつたく代表してやつておるのであります。この農業団体の再編成につきましては、各種の団体から種々雑多な意見が出ておつたのでありますが、十二月になりまして、各種団体の話合いの結果、自主的な線に参つたのであります。それが今度皆さん方に御審議を願う案でありまして第一に、農業協同組合はほんとうに機能を刷新して商人にも負けないように、そしてまた他の市中銀行にも負けないように、活を入れて行きたいと思うのであります。また農業委員会においても、農業並びに農民を代表する機関をやはり強化して行きたい。そしてその中に技術員をおいて国あるいは地方自治体等でやつております改良普及の制度も、また十分油を注いで相協力してやつてもらうようにいたす考えでおります。決して私は農民を度外視して官僚に屈服したのではなくて官僚がほんとうに農民の奉仕者になるような案であると考えております。
  173. 中村高一

    中村(高)委員 農協は生産団体としての一つの使命を持つておるのでありますが、今日農民は、労働組合と同じように、ひとつの自主的な組合をつくつてつておるのであります。われわれとしては、やはり合法的な組合をつくつて、自主的な農民の盛上りというようなことをやらなければならぬと思つておるのでありますが、農民組合法の制定について、占領中もアメリカからいろいろ指示を受けたにもかかわらず、これに対してはついに問題にならずに押しつぶしてしまつたのであります。自主的な農民の機関をつくるために法律を制定することについては、今日のように労働組合をいじめようとする吉田内閣に対して賛成を求める方が、おそらく無理であることは言わずとわかつておるのでありまして、この上に労働組合や農民組合が出て来て騒がれた日にはたまらぬという考えだと思うのでありますが、一応、農民組合法の制定については反対か賛成か、それだけでけつこうでありますから承つておきたい。
  174. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農民運動はあくまで自主的なことをわれわれは欲しておりますので、法律をもつてこれに方向を指示しましたり、あるいはまた制約をいたしたりするような考えはないのであります。あくまで自主的に健全な発達をすることをこいねがつております。
  175. 中村高一

    中村(高)委員 もう一つ肥料対策につきましてお尋ねをいたしておきます。これは他の農林委員会等におきまして、おそらく議論もされておりますし、前国会以来議論をされておるところでありますが、肥料対策委員会をつくつて肥料価格の決定をしようといたしておることは、政府方策としてわかるのでありますが、だんだん肥料の価格が上りつつあるのであります。昨年の九月、肥料の安定価格というようなものが一応決定をされております。これは業者側との間にも問題があるようでありますが、安定価格というようなものが一体今日でも認められるのかどうか。今日いろいろの事情が変事されて来ておるのであります。特に昨年の十一月以来の政府の外国べの輸出肥料の点などから考えてみましても、肥料価格というものが非常な変化を来しておるのでありますが、業者側の言うような安定価格というようなものは、一体今日まだ政府でもこれを認めておるのかどうか、この点をお尋ねしておきたい。
  176. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 われわれはあくまでも農民の立場に立つて、安い肥料を農民諸君に使つてもらうことが望ましいのであります。しかし先日価格の安定帯をつくりまして以来、海外輸出品価格と内地の価格が非常に違つておりますので、その間の調整をいたしたいと思つて現在苦慮いたしておるのでありますが、それに関しては各界、各層から衆知を集めて、現在御検討を願つておる最中でございます。またこれは農林委員会その他の方からも出ておりますが、肥料を現在のようにいたしておつてはいかぬ、あるいは法律をもつてこれを縛らなければいかぬじやないかという声も出ております。農林省においても、この点については今慎重に検討しておりますが、何せ春肥の需要が目前に迫つており、時期が来ておりますので、通産省と十分相談いたしまして、新たな安定帯をつくり得るように、目下審議会と並行して努力中でございます。
  177. 中村高一

    中村(高)委員 農林大臣としては、むろん肥料の価格を下げねばならぬ立場にありますし、またそれに対して当然その努力をせなければならぬことは申すまでもないのであります。     〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、この一月十七日に全国の農民団体の代表者が大会を開きまして、肥料価格を少くとも輸出価格まで引下げなければならぬということで、肥料価格引下げ要求、さらに肥料については審議会をつくつて、そうして農民の代表を入れた価格決定の機関をつくれというような決議を持ちまして、代表が要請に参つたのであります。農林大臣は御存じかどうかわかりませんが、その代表があの総理大臣の官邸へきわめて静粛に行つたのにもかかわらず、警察官が出て来て両方の門を締めてしまつた。きわめておとなしい農民の諸君でありましたので、多少数は多かつたかもしれませんが、ほかの開きをあけてまた代表が大臣に会おうといたしたのでありましたが、今度はまた内玄関の戸を締めてしまつて、あそこでまた入れぬというようなことで、大分いざこざをやつたのであります。農林大臣もそのときには出て来て農民と会うという約束をしておりながら、どこかへ逃げしてまつておられなかつたそうであります。農民に対するこういうような乱暴な事実が起つておる。せつかくの肥料価格引下げの要請を踏みにじるような乱暴なことをしておりますけれども、そのことについて農林大臣は報告を聞いておるかどうか、伺つておきたい。
  178. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 報告は聞いております。また要請書も拝見いたしております。ちようどそのときは、私何かの公用でそこにおらなかつたように記憶いたしております。
  179. 中村高一

    中村(高)委員 私の聞くところでは、それはどうもうそであつて小笠原通産大臣にも打合せておつたのに、あなたが、いやああいうものには出なくてもいいと言つて通産大臣を引きとめたということでありますが、そういうたぬきのような行動をとつてははなはだいかぬと思うのでありまして、(笑声)一般の要請に対しては、農林大臣もまじめにごたえてもらわなければならぬと思うのであります。  さらに蚕糸業対策につきまして一つだけお尋ねいたしておきたいのであります。蚕糸業法の改正案を今度の国会に提出するとかいうような準備ができておるそうであります。戦後日本の蚕糸業が順調に発達いたしておりますことは、まことにわれわれも喜んでおるのであります。特に今日農村の生産いたしますものが、いずれも低物価によりまして相当下つております中に、ようやくにして養蚕だけは価格を維持いたしておるようであります。これに対しましても、幸いにして輸出が順調に進みますならば、農村におけるところの、唯一の現金獲得の道である蚕糸業が活気を呈して来ると思うのであります。蚕糸業法を改正いたすという趣旨には、いろいろの問題があるようでありますから、こまかい点につきましては、いずれ準備ができてから議論することにいたしまして、この法案を提出せられるかどうか、さらに今後の生糸の生産輸出の見通しについて、農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  180. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あなたの御指摘のように、生糸は日本にとつては非常に大事なものであります。特に農村にとりましては、金のすぐ入る商売でありまして、農村にとつてはなくてはならぬものであります。そこで戦争中に荒廃いたしました桑園その他を改良し、そうしてたくさん増産できるような目標をもつて改正法を提出する予定であります。なおまた輸出につきましては、実は内需が少し多過ぎると思います。特に奢侈品といいますか、ぜいたくな織物等に内需として流れて参りますので、これを押えて、そうして外に向くようにしたらどうかという声まで起きておりますが、それには第一に外国の市場を開拓しなければなりませんので、その外国の市場獲得のために、宣伝費といいましようか、これを国で二千万円、業者から一億円程度のものを出しまして、販路の拡張に努力いたしまして、今のような状態でなく、もう少したくさん生糸を外国に出して、外貨を獲得するようにいたしたいと思います。
  181. 中村高一

    中村(高)委員 それでは時間の都合で、私の質疑を打切ります。
  182. 太田正孝

    太田委員長 福田赳夫君
  183. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 農林大臣にちよつと伺つておきたいのですが、先般どなたかの質問に対しまして農林大臣は来年度の増産目標について承知しないという答弁で、私非常に落胆したのですが、きようの答弁では、増産目標が二百五十六万石というふうに申された。ところがこの予算説明書によりますと、百万石というふうに見込まれておる。これはどういう状況か、どつちが正しいのか、ひとつ御説明願いたい。
  184. 河野一之

    河野(一)政府委員 予算の説明書に載つておりますのは、土地改良及び開拓で米麦が百万石、そのほかに農林漁業金融において単独事業によりますものを含めまして百三十万石、別に三十万石あるわけであります。
  185. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 私は政府、ことに総理大臣を中心にいたしまして、国の経済財政というものをどういう方向に持つて行くかということにつきましてお尋ねしたい、こういうふうに思つたのでありますが、きようは総理大臣もおられませんから、それは明日補足質問をいたすことにいたしまして、大蔵大臣にひとつお願いいたします。  最近外電を見ますと、盛んにいわれておることは、ドツジさんが予算局長に就任されまして、そうして一つの方針を示しておる。それは第一は、国防に努力することに積極的でない国家に対しては、アメリカといたしましては援助しない。それから第二は、インフレ抑制不十分な国家に対するアメリカの援助は、援助をしても効果を期待し得ないから、これは差控える。かような二つのことを盛んに唱道しておるという話であります。さらに最近の情報によりますと——これはアメリカ大使館筋から出ておるわけですが、アメリカ大使館から出ておる情報によりますと、アメリカ大使館に対して、この方針日本に臨めと言つて来ておるという話でありますが、その辺の情報を承知しておるかどうか、これをお伺いしたい。
  186. 向井忠晴

    向井国務大臣 私は全然そういうことは聞いておりません。
  187. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 どうも大蔵大臣承知してないという話でありますが、これは承知しておるなしにかかわらず、そういうふうな動きがあるべきことは、いろいろな情報から想像し得るのです。これに対しまして、日本政府は再軍備はしないというふうなことを始終言つておられる。言つておられるが、この第一の問題である国防に積極的に努力するという問題につきましては、これは事実において国防をやつておる。私は先般保安隊に関する各種の資料を本委員会に提出するように要求してあるのですが、その結論を見ますれば、これは実にはつきりして来ると思う。あるいは装備の状況といい、あるいはいろいろな施設の状況といい、これはだれが何と言おうとも、軍備として解釈をするべき客観性を持つておるというふうに考えておるのでありますが、これはアメリカのそういう第一の要請に対して、日本政府が何というかしれませんが、アメリカとしては相当理解を持つて考えることができるような状況にあると思うのであります。第二のインフレ抑制の問題につきましては、これは相当大きな問題があるのじやないか、かように私は考えておるわけであります。本委員会におきましても、インフレになるのじやないかというような質問がずいぶんある。向井大蔵大臣はこれに対しまして、インフレにはならぬ、こういう一応の答弁はされておりますが、これは言論界でも評論家もあるいは実務家でも一致した見解である。言論界でも非常な不満を述べており、財界でもそうである。あるいは証券界のごときは、これはインフレ予算だというので、立会停止までやらなければ事態が治まらぬというような状況までなつて来ておる。今度の予算というものは、私非常にインフレ的であるという印象を与えておると思います。アメリカというところは、申すまでもなく輿論を尊重する。日本のこの予算に対する輿論というものがどういうふうになつておるか、こういうことでいろいろ判断をされるところがあると思うのでありますが、この第二のアメリカの要請であろうというふうに思われるところのインフレに対して、本委員会を通じてまだ私は大蔵大臣からはつきりとした回答を聞いていない。どうもインフレになりそうもないというくらいな、おざなりの答弁である。どういう方法をもつて、またどういう構想で、このインフレととつ組んで行くかというような基本的な考え方——あとでこの予算のインフレ性というものについては伺つてみたいと思うのでありますが、まず第一にどういう根本的なお考えでこの予算はインフレ的でないと言えるか、ひとつ御所見を承つてみたい。
  188. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。インフレになるとかインフレにならないとかいうことを申すのですが、なぜインフレになるかといいますと、資金の散布が多過ぎるという点から来るかと存じますが、資金の散布というものは、歩合から申しますと、前年に比べて一割以下のふえ方だと私は思つております。それでその程度ならば、あるいはそれだけではインフレの要因になるかしれませんが、それに対しての金融措置あるいは生産増加という裏づけがあるというふうなものがあります上に、やはり外国から物を買えば、それだけの金高が輸出市場から外貨にかわつて吸収されるというふうな点で調節されて行くので、インフレにはならずに済む、そういうふうに私は考えております。それに反対の御説はいろいろおありでしようが、結局どちらも仮定の問題ではないかというふうに考えております。
  189. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 インフレにはならぬという、ごく常識的なお考えでありますが、一審問題はインフレになるかならぬかという判断のほかに、インフレになるかならぬかという事実のほかに、インフレになるのではないかという危惧を非常に与えておる。その一番大きな原因は何と申しましてもこの予算の編成にあたりまして、向井大蔵大臣は二つの大きな立場をとつておると思うのであります。一つは非募債主義であり、また一つは投資特別会計は設定しない、こういう二つの大きな柱を持つて臨んだというふうに考えますが、これが与党の強圧によつて二つともついえ去つた。そこに一つの大きな原因があると思うのであります。と同時に、終戦によつてわれわれは解放され独立した。独立したということは何と申しましても私は慶賀にたえない。われわれの看るところで、われわれの頭でわれわれみずからを処置して行くことができるということでありますから、人生これ以上の幸福はない。国民といたしましてもそうです。しかしながらその解放された余勢に乗じまして、この独立ということがややもすれば乱に流れる傾向を持つておるのではないか。予算編成にいたしましても、その傾向が多分に動いておるというふうに私は思うのであります。また最近の国会の動向、あるいはガソリン税というような問題があります。これはだれが見ましても財政のABCの議論からいいまして、ガソリンから出る税金だけはすべて道路に使うというような考え方は取入れ得ない。これはABCからの議論だと思うのです。それがほとんど国会満場一致で通過しなければならぬというようなことにもなる。国の資金を総合的に運営するという面から見ましてこれははなはだ遺憾なことであると私は思う。もとより道路の整備は必要でない、こういう考え方ではないのです。その基礎に流れる考え方、自分に利益を持つところの道路だけに、優先的に金をとつてしまおうという思想並びに仕組み、これに対しましてははなはだ大きな不満を持つのでありますが、さような予算ぶんどりの傾向、たとえば最近の事例といたしましては、資金運用部資金に統合運用されておつたところの簡易保険の積立金、これが分離された。これなんかもこのきゆうくつな国家資金を投じてそういう分割運営をする必要があるか。これも国会において政府与党支持のもとに、さような仕組みというものが出て来ておる。これは政府が現在の財政状況の現実を無視しておるのではないか、また財政というものの本質に対しまして、大きな誤解をしておるのではないか、そういうふうに思うのであります。どうしてもこの財政思想というものが、もう少し大蔵大臣によつて強く打出されなければいかぬ、これを大きく要望しておるのでありますが、この点に対して大臣はどういう考えを持つておられるか、またどういう方策を持つて今後対処せられますか、ひとつお考えを承りたい。
  190. 向井忠晴

    向井国務大臣 それは非常に苦しい御質問で、私はそういう税金を特別の使途にするとか、あるいは投資の財源を、ある財源によつては別の方面から投資をするとかいうことは、必ずしも賛成できないのでございます。しかしいろいろの事情から、前からそういうことが半ばきまつてつたというふうな話で、私としては窮した形になつておる。それで今もつて私はそういうやり方に賛成はいたしておらないので、機会があればまた元にもどそうというふうに考えております。
  191. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 ひとつ大いに機会を見て盛り返してもらいたい。この財政を運営する面におきまして、どうも財政当局の背景が少し足らぬのではないか、私はそれを痛感するのです。予算を編成するにいたしましても、要求する側は自分のことしか考えない、だれも自分の関係する経費を出してもらいたい、こういう要求をするにきまつておるわけでありますが、その際政府はもとより、与党もあるいは野党も、国民全体のことを考えなければならぬ。この全体のことを考えなければならぬという思想を、今後ますます推進して参らないと、今非常にむずかしい段階にある財政がどこに吹つ飛んでしまうか、これは私は努力すればインフレはとめられるというふうに思うのでありますが、その努力をこれから大蔵大臣としてぜひやつて行かなければならぬのではないかと考えておるのであります。  また国会の制度というものも、そこに大きな災いが起きておる、私はさような感じがするのであります。ただいま常任委員会制度というものがありまして、そうしてこの常任委員会が大体において各省にわかれて配属になつておるわけでありますが、この国会の制度自体に対しては、私ども会議員の責任の事項でありますから、これは政府に要望すべきものではないと思うのでありますが、この常任委員会制度、これが非常に割拠主義のために有力に働いておる。現在の財政の機構からいいまして、きわめて警戒すべき制度であるというふうに考えるのでありますが、大臣がこれまで見られた感想だけを承りたい。
  192. 向井忠晴

    向井国務大臣 私の感想はあなたの今おつしやつた通りでございまして、なかなか骨が折れると存じます。
  193. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 次に二十八年度予算は、わが国独立して最初予算であります。最初にわれわれの頭で考え、われわれの考えをそのまま実行できるような立場に置かれた予算でありますから、これは国の将来というものをどうやつて行くかという大きな構想が、この予算ににじみ出ていなければならぬと私は思うのであります。現在日本といたしましては四つの島々にとじ込められて、そうして八千万人という大きな人口を擁しておる。一体これをどうして行くか。また昨年四月に日本の国は独立国ということになつたけれども、私はこれは条約の上の、ただ単なる紙の上の、ペーパーの独立である、さような感じがしてならないのであります。どうしてもわれわれが当面大きく民族といたしましてやつて行かなければならぬ仕事というのは、この三千年以来養われたわれわれ日本国の独立をわれわれの手でとりもどさなければいかぬ、こういう大きな仕事じやないかというふうに思うのであります。独立国になつた、紙の上の独立国というのは多い、世界には幾らでもある、七十、八十とあります。しかし外国から支配も干渉も受けない真の独立国ということになりますと、これは五つか六つぐらいしかないと思うのです。その五つか六つの国に日本が今後入れるかどうか、今生きておるわれわれは大きな使命を持つておるというふうに思うのでありますが、ひとつ経済審議庁長官にこの羅についているく御意見を承つてみたいのであります。私は日本の国をほんとう独立国にして行くということには、あるいは外交でありますとか、あるいは防衛の問題、あるいは道義の問題、いろいろ問題がありますが、まず第一に最も重要な問題は、自立経済を達成する問題ではないか。国がアメリカその他外国の援助なしに行ける経済をつくり上げなければならぬというふうに考えるのでありますが、長官はいかなる考えを持つておられるか。
  194. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今福田さんのお話の通り、私ども日本独立のためには自立経済を確立することが根本であると考えます。お話のごとくにこの狭い土地に多数の人口を擁し、そうして自立経済目的をいかにして達成するかということは、はなはだ容易な問題ではございません。そういたしますとどうしてもまず貿易を伸張するということが最初の大きな課題になり、同時に国際貸借を改善するということがさらに大きな課題となり、国内資源の開発をするということがまた大きな課題となつて来るのであります。そこで私どもといたしましては、まずいかにして海外貿易を伸張するかということの課題に対しまして、これには経済外交の強化、日本の商品の国際競争力の強化及び今比較的衰えた商社の強化、この三つを進めて参ることにいたし、さらに国際貸借の改善につきましては、船舶、その他、あるいは特需等もそうでありますが、これによりまして、日本国際貸借増加に努めることにいたす。まあ観光事業、そういつたようなことも全部これは含まれておるのであります。そういつたことと、国内資源の開発、特に化学繊維その他を初めとして化学事業に対する努力を怠らずやつて行く。こういうことによりまして、国内資源の開発、そういつたことを全部やるということに努めて、そうして日本を大体五箇年後——私はよく申しますが、日本特需その他のあります間に、正常な貿易関係日本国際貸借黒字になつて参るというふうなぐあいに持つて参りたい、こういうことを念願してすべての政策を進めておるというのが、今までの政策の根本に相なつている次第でございます。まあ短かい言葉で簡単にお答え申し上げますと、これが私どもが今進めて参つている政策の根幹であります。
  195. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 そういう大体の構想をとるほかないと思うのでありますが、しかしながら今第一に申されるところの貿易振興という問題、これは言うべくして非常にむずかしい問題じやないか、私はそう思う。大臣は五箇年というような期限のことを申されましたが、その貿易はどういう速度をもつてどういうように解決して行くか、今戦前の四割でありますそれがどういうふうになつて行くというように考えておられるか。
  196. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは現在のごとく最も親しいアメリカとすらも通商関係が結ばれない、どこの国とも貿易関係が結ばれないというような状態でもつてものを想像することは困難でありまして、もう少し貿易が拡大するというふうになつて参りますれば、これはどこの国も今貿易の拡大を唱えているときでありますので、これはそうそう先々まで悲観すべきものでないと私は考えている。そこでむしろ日本の品物に国際競争力を与えるということにいたさなければならぬ。日本の品物に国際競争力をどうして与えるか。電源開発というものは、これは正確な速度で三十二年までには行えます。また今の石炭につきましても、五箇年後には三割の引下げが行えます。それが行えますと、板ガラスとか、セメントとか、各種のものについても相当国際競争力を持つて参りますので、私どもは前途についてはさまで悲観をいたしておりません。そこで私どもが一応考えております点は、三十二年まで考えれば、正常な貿易関係でまずどんどん、あるいは若干のプラスぐらいになるであろう、こういうふうに実は考えておるわけであります。
  197. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 御所見ではありますが、私どもはそれは非常に甘い考えであるというふうに思うのであります。それは中共の状況を見ましても、これがそう伸びて行くというふうには考えられない。また小笠原大臣が本会議で、英連邦会議の結果、英連邦との交易が改善されるというふうに申されたのを聞きましたが、これはまつたく逆じやないか。あれは一九三〇年のオタワ会議の結果を再確認したというような性格のものであつて、決して日本貿易に有利に響いて来るものじやない、私はそう思う。また東南アジアにいたしましても、購買力をつけてやらなければならぬ。日本にはあそこに購買力をつけてやる力がありはしない。これを当てにするわけには行かぬ。私は、貿易の伸展というものは、それは五年間にどうというふうにいわれますが、なかなかむずかしいのじやないか。日本経済が、今一番大きく当面している問題は、この貿易問題じやないかというふうに思うのであります。申すまでもなく、日本の国の経済というものは、貿易で伸びて来た。ことにこれは外国から原料を買いまして、それに加工して売る、この加工貿易で伸びて来たと思うのであります。この考え方、ややもすれば貿易立国、貿易にすべてをたよるという考え方、これが現在指導しているところの指導階級に大きくみなぎつているのではないか、こういうふうに考えるのであります。しかしながら、私は貿易はなかなか伸びにくい。戦前の四割が、この先に五割になるのか、六割になるのか。なかなかそういうようなうまいわけに行かないというふうに思うのであります。もちろん世界の情勢が一変しまして、そうして冷たい対立も何もないというようなことになりますれば、これはよろしい。ある程度の回復はあります。しかしながら現在の政治情勢をもつていたしますれば、当分の間、日本貿易立国ということではいかぬのじやないかというふうに考えるのであります。どうしても逆に、貿易が現在の線を維持して、さらに伸ばすことを努力しなければならぬ、これはお説の通りでありまして、私どもそれには全面的に協力したいと思うのでありますが、しかし、その点貿易立国という、貿易が非常に伸びるという建前を前提とした国の諸政策、これに対しまして、どうしてもここで大きく回転をして行かなければならぬ、私はそう思うのであります。今日本と大体同じ傾向にあるのがイギリスじやないか、イギリスでも大きくその議論が起つておる。レス・インポート・アンド・リヴ、輸入を節して活路を見出さん、こういう思想であります。日本におきましても、どうしてもそこに経済の主眼を置かなければならぬというふうに思うのでありますが、その点は長官はどう考えられますか。
  198. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま私が楽観的な言葉を申し上げたようでありますが、私は前途に希望を持つ意味を申し上げたのでありまして、現状についてまたこの数年間について決して楽観をいたしておるものではございません。今お話のごとくに、日本がイギリス人の心持ちを持ち、特にチヤーチル以後のイギリス人があらゆる耐乏生活に耐えて、ほとんど実勢において二割も安かつたポンドを回復した。この努力というものは並々ならぬものがありまして、われわれ日本人としてはまことに学ぶべきものがあると思うのであります。特に最近の日本人がほとんど資本の蓄積を怠り、また資本の使用について非常な誤りを重ねておる点等については、私どもはきわめて反省をしなければならぬものが多々あることを感じまして、それはあらゆる機会に今後私ども国民諸君の協力を求めて、ぜひ今お話のごとくに日本貿易立国の点を皆様とともに国民に周知徹底せしめてその協力のもとに邁進いたしたいと考えておる次第であります。
  199. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 そこでちよつと伺つてみたい問題があるのでありますが、経済審議庁の計算によりますと、大体国の生産力は五割方ふえて来ておる、それに対しまして国民生活は、依然として戦前の水準になるかならぬかという境を彷徨しておる、こういうのであります。これは一体どこに原因があるか、私は今これは日本の置かれている貿易問題、これと大きく関連いたしておると思うのでありますが、経済審議庁長官は、この五割の隔たりはどこにあるのか、またこれをどういうふうにつずめて行きたいと考えておられるか、これを伺つておきたいと思います。
  200. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 九十一年に比べて、私どもの調べは五までは行つておりません。四割ちよつと程度かと思います。国民の生活水準は、大体九十七、八のところでございますから、お話のごとくに、その開きは大体御指摘の点にあるかと思います。こういう点につきましては、まだ政府施策に足らぬ点があるのではないかと考えております。
  201. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 考えてみますと、結局働けど働けど暮しは楽にならざりけりというあの文句の通りなんです。生産をいくら働いて上げましても、四割ないし五割増しにまで働いてみましても、われわれの生活はちつとも楽にならない。そこに大きな問題があると私は思うのでありますが、今日本は、この観点からいたしますと、一番大きな問題は、何といいましても食糧アメリカその他の外国から輸入しなければならぬという立場に置かれておる点がこれは大きな問題であるというふうに考えます。輸出計画を見ますと、大体五億ドルである。その五億ドルの輸出に対しまして四億ドルの食糧を輸入しなければならぬ。しかもごの食糧が非常に割高である。内地ではそうもしない食糧を石一万何千円も出さなければ買えないというような状況、そこで非常な損をしておる。また買う上ころのその他の食糧以外の輸入品、これは大体原材料費、これが非常に割高なんです。鉄に例をとりますれば、申し上げるまでもないことでありますが、普通に買える鉄鉱石の三倍のものを日本は買つて行かなければならぬ、貿易というものが非常に損な立場に置かれておるということが私は言えると思うのであります。世界の大勢から見ましても、さような状況にあります。今調べてみますと、世界人口の増加は毎年一・二五%ぐらいで増加しておる。それに対しまして農業生産食糧生産というのが〇・三なんで、食糧が非常に不足になる傾向を世界的に持つている。この最もわが輸入品の大きな部分を、世界的にだんだん不足して世界価格も高くなる食糧に置かなければならぬという点です。これは非常に日本経済の大きな弱点であろうというふうに思うのであります。どうしてもこの食糧問題を大きく解決して行かなければならぬという立場にあることは、他のいろいろな角度からも言えるのであります。また同時に原料品というものが、世界市場において非常に高くなりつつある。一九十三年を一〇〇にした原料生産は、一昨年の統計を見ますと一五五%です。これに対しまして製品の統計は実に二百四十七億円になつております。製品が非常に多くなつて来る反面におきまして原料品というものは生産が伸びない。そこで日本が今輸入するところのものは食糧、そういう性格を持つた原料品である、どうしてもこれは日本経済の骨格を考える場合におきまして、原料品を外国から買うというこの態勢を、何とかして改めて行かなければならぬ、独立経済の基本というものは、どうしてもそこに置かなければならぬというふうに私は考えておるのでありますが、そのためには食糧の増産をやらなければならぬ、これはもちろんのことでありますが、国内で原料品も生産する、資源の開発、これも一つでありましようが、もう一つは、何と申しましてもナイロンその他のああいう新しい原料というものを、大きく国策的に、採算を無視というか、採算をも度外視した大きな援助というものがいるのじやないか、原料品を何とかして海外依存を少くいたしたい、かように思うのでありますが、これに対して長官はどういうお考えを持たれるか。
  202. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は私も数箇月前、ちよつとそういう数字を調べてみてまことに驚いたのであります。それで今の御指摘のごとくに、特に人口の増加に比べて食糧がふえておらぬ。なかんずく米のふえ方が最も少いのであります。それで日本人が米を主食とする限り、これは非常に高い食糧を入れるほかない。小麦でありますと割合にそうでもございませんが、米の場合は一層そうなんであります。そこで農林省の食糧増産五箇年計画というものは、ぜひとも急速に遂行する必要があるということを痛感いたした次第であります。あれがたしか米麦千五百五十万石、五箇年に増産することに相なつてつたが、これはぜひ早急に、万難を排してでもやらなければいかぬというので、この議会の勢頭——今度ではありません。今の国会最初の演説の中に、特に年次的、多角的計画という文字を総理の演説の中に織り込んでいただいたのは、そういうためであつたのであります。それからあとの、今のお話の点は、ちよつと私が最初に福田さんに御説明申し上げたときに、国内資源の開発ということと化学繊維ということを特に申し上げましたのは、その点なのでありまして、日本のごときが綿花等を多量に輸入するということでありますと——これは今ちようど御指摘のあつた点は私も気がついたのであります。特に日本で原料費というものに比べますと、生産費の方が非常にふえるというのが、それが非常な不況のもとをなしておるということに気がつきましたので、それでただいま非常に短かく御説明申し上げた中にも、国内資源の開発、特に化学繊維等についての増産というような言葉を使つたと思いましたが、そういうことを申し上げましたのは、その点なのでありまして、まつたく今福田さんが言われたことは、全的に私は同感でございます。
  203. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 要するに終戦後われわれ国民は相当努力しておる、しかし努力だけじや足らないという問題なんです。ここにどうしても経済の向うべき方向づけというものが必要じやないか。これは経済審議庁の責任をもつて処理すべき事項なんです。この点特に長官に強調しておきたいのであります。何と申しますか、私は今日本経済というものは革命的段階にあるというふうに考えます。と申しますのは、何と申しましても領土の喪失であります。満州あるいは支那の勢力地帯、あるいは朝鮮、台湾、これを喪失したということは、日本経済にとりましてたいへんなできごとであろうと思うのであります。と同時に世界の客観情勢、これがどうしても、われわれが楽観して考えるわけに行かぬような情勢である。これは日本経済がいまだもつて当面したことのない非常事態であるというふうに考えるのでありまして、この革命的事態に対しましては、革命的勇断をもつて臨んでもらいたい。なるべく海外依存の態勢、しかも貿易立国の半面をなすところの輸入の抑制、これに特段の努力をしてもらいたいと思うのであります。  ついでに伺いたいのでありますが、大蔵大臣は本年度予算におきまして——予算政府の歳出は大きなものであります。国民経済五兆六千億ですか、ともかくそれだけの国民経済のうち、政府財政で扱うところの資金は、地方団体も入れますると実に二兆五千億になり、半分近いのであります。これにどういう態度をとるかということがまた日本経済に大きな影響があるのでありますが、そのうちで国際貸借を改善するための配意をしたかどうか、これをひとつ伺いたい。
  204. 向井忠晴

    向井国務大臣 国際貸借の改善ということは輸入の削減でしようか。
  205. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 そういうことです。
  206. 向井忠晴

    向井国務大臣 それは格別、予算の上でできるものは今思い当りませんが、やはり持つている外貨を有利に活用して行くということで幾らか助かる。すなわち受取り外貨がふえるということがあると存じます。そのほかに国際貸借で支払い分が減るという予算的の措置は今思い当りませんが、その点よく考えてまたお答えいたします。
  207. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 安定期の財政におきましては、どうしてもこの財政資金から海外に支払われる予算というものは抑制して行かなければならぬ。この考慮を大いに活用してもらいたいのであります。予算の実行上の問題として、おそまきながらこれをされてもけつこうだというふうに思います。  それから予算書を見ますと、各省に外国旅費というのがたくさん出ておる。役人——国会議員もそうでありますが、外国旅費というのが去年はなかつたが、ことしはたくさん出ておる。これは一体どういうわけなのか。ことしになつて初めて、外国にそんなに人を出すのかどうか。終戦後たくさん人が出ましたが、最近少くなつてよかつたと思う。それがにわかにたくさん出るようになつたのでありますが、これはどういうわけでありますか。
  208. 河野一之

    河野(一)政府委員 私からお答え申し上げます。二十七年度の予算では、国際会議を開く外国旅費は一本の予算で、五億円と見てあつたわけであります。その一年間の実績を見まして、それを各省にわけてあります。たとえば単に出て行くということもあるし、各方面の国際会議がございますから、それに各省からもいろいろ出て行きますので、そういつた経費を各省にわけて、それが出ておるわけであります。
  209. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 そうしますと、それは新しく出て来たというものじやないので、組みかえというような性質のものですか。
  210. 河野一之

    河野(一)政府委員 そうです。
  211. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それならばそれでいいのです。  次に大蔵大臣に、この予算が非常に危殆に頻しておる、悪化して来ているという点について申し上げてみたいのです。これは私が大蔵大臣をとがめるという趣旨ではない。しかしながら客観的に予算が非常に脆弱化して来た。これに対しましては、国民総がかりで用意をしなければならぬ、こういう意味において申し上げてみたいのであります。  まず第一に、先ほど大臣からも、国庫収支というか政府資金の散布超過というお話がありましたが、これが向井大蔵大臣が出現したとたんに悪くなつて来た。二十六年度においては引揚げ超過、二十五年度におきましては若干の散布超過でありましたが、二十四年度は多額の引揚げ超過である。大体なべて見ますると、引揚げ超過の時代が続いたのでありますが、二十七年度、ことに向井蔵相が出現いたしまして補正予算を組んだ当時から、非常に収支が悪化しておるのであります。実に十二月末には相当の散布超過でありまして、十二月末の数字では千百二十億円の散布超過を来しておる。非常に驚くべきことなのであります。さらに二十八年度の日本銀行の推計によりますると、二十八年度の一月——三月というのは政府資金の引揚げ超過の時期なのであります。非常な引揚げになるわけであります。ところが昨年は七百四十七億円の引揚げであつたのが、今度は予算の規模が非常にふくれておるにかかわらず、六百億の引揚げ超過にしかならない。これも悪化の著しい徴候であるというふうに思うのであります。これに対しまして、どういう措置をして行かなければならぬか。これは道は私はあると思うのでありますが、ただいま大蔵大臣といたしましては、この余勢がずつと来年度続いて出て来る、これに対しましてどういう政策をもつて臨まれる考えであるか、これをとくと承つておきたいと思います。
  212. 向井忠晴

    向井国務大臣 一々どうする、ああするということは金融機関の考えることでございますが、金融機関をして、散布超過の程度をせいぜい少くさせるように措置をとつてもらうということに考えておる次第であります。
  213. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それは金融機関が考えることはないので、政府考えるべき事項だと私は思う。金融機関にこれをまかせておいたら、これはどんなことになるかわからぬ。ぜひ政府において取上げてもらいたい。この散布超過対策をぜひ確立していただきたいのであります。  国庫収支が非常に悪化して来たという点が第一の弱点だと思うのでありますが、第二に予算の均衡がきわめて困難になつて来ている。今年度予算を見ますと、前年度に比較しまして大体二百八十億円の増加でありますが、実質的にはこれはたいへんな増加になるわけであります。軍人恩給関係で五百億円、また給与二割増しの平年化の問題等がありまして、もし安全保障費がばさつと全額不用になるというような関係とか、あるいは外国為替資金のインヴエントリーをやめるとか、あるいは投資特別会計というような別口をつくるとか、さようなことをいたしませんと、これは前年度に比べまして千五百億円ぐらいの赤字になるというふうに思うのであります。非常に歳出規模が実際上は膨脹いたしておるというふうに思うのであります。ことに本年度ばかりでない、将来のこと、すぐ追つかけて参るところの二十九年度というようなことを考えましても、軍人恩給の平年化、軍人恩給はことしは初年度であるから、翌年度はまたふえなければならないというふうなこともありますし、あるいは防衛支出金、ことしは防衛支出金は、前年度からの繰越しでやつて、どうやら間に合うから出さないでいいわけでありますが、来年度にはその繰越しというようなものもない。こういうような状況でありまして、非常に均衡が困難になつて来ておる状況にあるのであります。ことに将来のことを考えると、これはなかなか楽観を許さない。今度の予算をつくられるにあたりまして、将来の五箇年計画とか、あるいは十箇年計画とか、さようなことを検討されたかどうか。ことしはことしだけという予算であるか。将来のことまで考えた何箇年計画の第一年度であるのか。その点をひとつ伺いたい。
  214. 向井忠晴

    向井国務大臣 将来のことをまるで考えないことはないのです。しかしながら、まず二十八年度における諸般の必要な経費というふうなもの、あるいは遷延してはいけないと思うものを、ことしやつてしまわなければならない。そういうふうに考えましたので、繰延べてことしの経済を倹約して行くというよりは、やはりどうにかして要請のある国費をまかなつて行かなければならぬ、そういう考えで組み立てたものでございます。
  215. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 その年限りという大体のお考え方では、非常に心もとないのであります。  次に大きな予算の弱点と申しますか、それは減税国債であります。先ほどどなたかから御指摘がありましたが、利益を与えて国の財政手段を調達するという考え方、これは、日本経済はそろそろ安定期に入ろうとしておるのであつてその安定期の対策ではないのです。これはインフレ期の非常の手段でありましてどうしてもこれは通常の国債をもつて臨まなければならぬ、私はそう思うのであります。ことにこの制度は、減税国債を買い得る能力のある者、これにはきわめて有利であります。さような有利な態勢を与えないでもいいような人に有利でありまして、その負担が大衆に行く。こういうことになるのでありまして、この減税国債の構想というものは、今度の予算の非常な弱点の一つであるというふうに思うのであります。今後財政、国庫収支の状況は、先ほど申し上げました通り、二十六年度、また二十七年の半ばまで続いたところの健全状況から、いよいよ散布超過の時代に入る。これに入りましてこれにどういうふうな用意をもつて臨まなければならぬかということを、ほんとうに真剣に考えなければならぬ段階に立ち至つておるというふうに思うのであります。私は三百億程度の国債を発行することについては、異論はない。異論がないというのは、先ほども国の収支ということを申し上げましたが、今後の情勢を考えますと、どうしても国債にたよらざるを得ない状況になつて来ておるというふうに思うのであります。公債にたよらなければならぬ場合になつて来れば来るで、その構えをして行かなければならぬ。私はその予算の裏づけとしての構えが、非常に欠乏いたしておるというふうに考えるりであります。ただ私は公債を出してもかまわないとは言いますが、百億円の貯蓄国債の形の公債はまつたく好ましくない。何とかしてこれはやめて行きたいというふうに考えるのであります。さようなドツジ財政から少し弾力性のある向井財政に転換した今日においては、これに対応するところの対策というものがどうしても必要である。第一は、何と申しましても強力な貯蓄対策であります。今政府におきましても、また一般国民の風潮といたしましても、貯蓄という観念が非常に薄らいでおる。これを何とかして再建しなければならぬというふうに思うのであります。これほなかなか言うべくしてむずかしいことでありますが、努力を尽さなければならぬ。これはもう総理大臣以下政府全員がその構えをしなければならぬ。大蔵大臣はもとよりであります。と同時に、この国の財政というものが、さような非常にむずかしい段階に来ておるのに対応いたしましてこれを救う道は、その財政を受けて立つ国民全体が勤倹節約をするほかない。この考えというものを何とかして強力に推し進めてみたいのでありますが、この予算にはそういうところの施設が何か考慮されてあるかどうか、これを伺つてみたい。
  216. 向井忠晴

    向井国務大臣 予算の上には今の点は打出されていないと私は思つております。しかしながら私の言うことなどは一向役に立ちますまいが、私も貯蓄が大事だということは始終言つておりますし、あるいは大蔵省あたりからの関係で、貯蓄奨励のできる金融機関の施設というふうなこともできると存じましてこれはよく研究いたします。
  217. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 まあ言葉をかえていいますと、結局税というものは、ただいまの状況では、国の需要を満たすのにもう限界点に来ておるというふうに思うのであります。将来国費はだんだん膨脹する傾向にある。それに対して増税をもつて対処するかどうかということになりますと、どうしても税ではなかなか立ち向いができない。そうすればどうするかというと、もう自発的に国民が蓄積をするほかはない、私はそう思うのであります。蓄積公債を出しましても、蓄積をもつて金融機関が国債を買い得る状態にありますれば、これは小額の国債を出しましても、問題はさしてはないというふうに私は考えておるのでありますが、それにはそれに応ずるように、政府全体が心構えをかえて行かなければならぬというふうに思うのであります。税の問題にいたしましてもそうであります。シヤウプ税制以来税々ということで、税万能、税中心主義に凝り固まりまして金融関係というようなものに考慮が薄いと思うのであります。たとえば預金の利子に対する課税の問題、かような問題につきましても、税制自体に蓄積を奨励すべき大きな手があると思うのでありますが、これなんかも顧みられていない。また法人の蓄積にいたしましてもそうであります。また利下げ問題というものが、最近非常に大きな金融界の問題になつて来ている。これを考える角度も、これは利下げをいたしますれば、国の産業は負担が軽減になる。これは確かにその通りであります。しかしながら国の産業全体において普通金融機関の利子の占める割合というのは、大体五%くらいのものだというふうに聞いております。これは一割下ろうが大した影響はない。反面におきまして、利下げをいたしますれば、どうしてもやはり預金利子というものを引下げなければならぬ状況になつて来るのが、勢い勢いであろうというふうに思うのでありますが、そういたしますと貯蓄推進の関係に大きな影響を持つて来る。この利下げ問題に対しましても、私は何か向井・一万田ラインというので、利下げを強権的にやるのだというような風説も聞いておりますが、これはひとつ慎重に臨んでもらいたい。今どういうお考えを持つておりますか、ひとつ承りたい。
  218. 向井忠晴

    向井国務大臣 福田さんが御心配になる同じことを私は考えておつて利下げ下げとといつてもそうそうはできないと実は思つておるのです。貸す利子を下げれば預かる方も下げなくちやならぬ、それから貸す利子を上げれば貯金の方も上げる。これは両方相関連しておるものでありますから、従つて私は新聞などに出ておるように、日本銀行総裁と組んで強行しようというふうなことを言つたこともございませんし、考えもございません。ただ銀行が自分の力でもつてやり得る程度で、貸付の利子を下げてくれるということは希望いたす次第でございます。貯蓄を奨励するために利息を上げるということは、今のところではあるいはできにくいかというふうに考えております。
  219. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 さように考えてもらいたいのです。ことに利下げの問題に対しましては、利下げをする前に一つ問題があるのは、やはりいわゆる実質金利を下げてもらいたい。現在の利息というものは、きまつた公定利子と、そのほかにいろいろな形のやみ利息というものに近いものがついておるわけです。あるいは両建預金というような仕組みになりますとか、あるいは歩積みというものもある。手形を割引く、その都度その都度一定額を預金をして行かなければならないというような仕組みもありますし、いろいろな形で銀行から金を借りるところの資金コストというものは高くなつておる。これをひとつ何とかしなければならぬ。大体昨年度におきまして大蔵当局は——これは事務官でいいのですが、預金が幾ら集まつたと見ておられるか、ちよつと伺いたい。
  220. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 銀行局長がおりませんからかわつてお答えいたします。銀行の昨年一年間の預金の集まり方は非常に好成績で、ございまして九千億くらいを集めておるはずでございます。
  221. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 その九千億というのが非常にまゆつばものなのです。というのは、預金は幾らでも伸びるのです。伸びるというのは金を貸す、その反面におきましてその半分は預金せよとか、こういう風習が行われておるから伸びるのでありましてこの両建あるいは歩積み預金とか、そういう性質のものがある限り、一体幾ら貯蓄性の貯蓄というものが出て来たかということはわかるはずはないのです。それを九千億とかなんとかいつて満足しておる大蔵省当局はひとつ反省しなければならない。向井大蔵大臣はこの実質金利——いわゆる歩積みでありますとか、あるいは両建預金であるとか、さようなものに対して何か有効な抑制手段をとる考えはないか、これをひとつ伺いたい。
  222. 向井忠晴

    向井国務大臣 私もこれは考えて銀行の人によく申すのですが、私の会つている銀行の人はそういうことはない。これはよく議会でも言われますが、表面的の返事であるだろうと思います。なおよく銀行内部でもつて掘り下げてそういうことのないようにしてもらう、また銀行以外の金融機関でも、金利については十分に大蔵省として目のとどくようにいたしたいと考えております。
  223. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 実質金利、利子負担の点につきましては、大蔵大臣におかれては日銀とも連絡をとりましてぜひ何らかの手を打つてもらいたい。それから銀行の店舗——銀行ばかりでなく、あらゆる金融機関でありますが、店舗の問題、これは大蔵省銀行局におきまして統制をしている。あすこに店を出しちや悪い、ここに店を出しちや悪いというふうに、非常にうるさい問題らしい。しかしながら私は出したい人にはどんどん出さしたらどうか。その方が一般大衆から預金を吸収する上におきまして非常に便利だろうと思う。銀行の方でもうからなければやめてしまいます。また貸出しをやらない預金だけを集める銀行、その仕組みをまたひとつ復活すると申しますか、銀行の店舗について大蔵当局がそういうむずかしい干渉をしないで、預金を大いに包容するという態勢を考えられたらどうか、こういうふうに思うのでありますが、大臣はどういう御所見ですか。
  224. 向井忠晴

    向井国務大臣 新しくある人が銀行を始めるというときは、よく研究する必要もございますでしようが、支店でも出すという場合には、そう厳重にしなくてもいいように私は考えるのであります。そういう趣旨でもつてつて行きたいと思つております。
  225. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 大臣のお言葉でありますが、実際はそういうふうになつていない。ぜひひとつその線でお進め願いたいと存じます。要するに財政はあらゆる角度から非常にむずかしくなつて来ている。これに対する対策の主軸をなすものは、総力をあげての貯蓄という点です。国民が勤倹節約をいたしまして資金を捻出いたします態勢になりますれば、これは微動だもしない態勢であるというふうに思うのであります。この貯蓄という点につきましては、いろいろの角度があろうと思うのでありますが、ぜひこれはほんとうに心魂を砕いていただきたいというふうに思うのであります。と同時に政府予算を使う場合におきましても、冗費の節約——塚田委員からも先ほどお話がありましたが、ぜひむだな経費がないようにこれをひとつ実行してもらいたい。私は今三百億円の貯蓄国債というものを考えておりますが、三百億くらいの節約をするのは、大蔵大臣総理大臣政府全員がほんとうにその気になりますれば、必ずできると思う。この三百億円の節約をひとつ——行政整理ということも先ほどありましたが、私はこの行政整理に対しましては、そう政府が言われるように甘い考えは持てない。先般の行政整理におきましても、初め広川行政管理庁長官に対して吉田総理が注文したのは、五十万人という話だつたそうであります。私はそういう新聞記事を見まして、これはもうとんでもない、とても五十万人はおろか、五万人も実際はできはしまいというふうに考えたのでありますが、そう人の首を簡単にちよん切れるものじやないのです。これは吉田さん流の非常にせつかちな考えだろうと思うのです。行政整理の面で金を節約しようということは、きわめて困難な事情にあるのじやないかというふうに思うのでありますが、ひとつ冗費はぜひ節約してもらいたい。昨年暮れに補正予算が成立するにあたりまして、附帯決議というものがあつたはずです。その附帯決議の実施の結果として政府職員に〇・二五の一時金を出したというふうに聞いておるのであります。ああいうことはやろうと思えばできる。年度末も押し迫つてなかなか資金の残高も少い、そのときに〇・二五の一時金を捻出するということがやすやすとできる。それをひとつ大臣に考えてもらいたい。これは参考のために承りますが、この予算を編成するにあたりましては、さような今までのありきたりの経費、つまり去年は幾らだつたからことしも幾らとるのだ、そういうのでなく、去年は幾らだつたからその幾ばくを節約するという思想が、全面的に入つている予算であるか、あるいは去年はこうであつたから、ことしもこの程度だという予算であるかということを承りたい。
  226. 向井忠晴

    向井国務大臣 主計局長はなかなかやかましいことを申したようでして、毎年の慣例に従つたやり方ではないと存じております。  それから冗費を減らすということはしごく御同感でありまして、私も力の及ぶ限りはこれをやりたい、また私の力で及ばない場合は、それぞれ適当な筋からこれを進めて行きたいと考えております。
  227. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 これは主計局長でいいのですが、〇・二五の予算を今年度において節約したわけでありますが、その節約したのと同じ調子を来年度に持つて行くかどうか、伺いたい。
  228. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。〇・二五につきましては、御説明申し上げましたように、いわゆる超過勤務手当の繰上げでやつたわけであります。明年度の予算の編成につきましては、補正予算のときも申し上げましたが、旅費につきましては一〇%、物件費その他については五%という節約をいたしたのでありますが、それを明年度において平均化いたしましてやつておるのであります。〇・二五の問題は超勤自体の問題でありまして、超過勤務自体の予算はふやしておりませんが、おつしやるような節約の趣旨でやるつもりであります。
  229. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 総理大臣も、占領政策を再検討する、占領政策の行き過ぎを是正するというふうに言われておるのでありますが、この予算書を見ると、幾らもそういう問題が出て来るわけであります。来年度予算は、政府からその角度の検討を遂げられた予算として提出を見なければならぬはずのものです。ところがそれがされていない。されなかつたのだからしようがないわけでありますが、ぜひこれは予算の実行の問題として、あすからでもいいのですが、法令審査委員というようなものを設けて、どしどしとこの占領政策によりましてふえた国費——これはたいへんふえておる。人間にいたしましてもたいへんな増加であります。大臣御承知かどうか知りませんが、戦争中日本政府職員というものは約倍になつた。戦争によつて領土は半分くらいになつたのですから、実は政府の機構も半分くらいになつていいわけです。ところが逆にこれが戦後七年間にまた倍になつておる。すなわち戦前の四倍の状態です。その大きな責任というものは、占領政策にあるわけです。その調子で経費もまたふえて来ておる。私が先ほど申し上げました通り、首切りというものはなかなかむずかしい。しかしながら事務を簡素化し、経費を減らすということは可能な問題なんです。ぜひひとつ、あすからでもおそくはありませんから、政府の全機構にわたつてたくさんある冗費を節約してもらいたい。これは向井財政の一つの問題として私は大きなミステークだと思う。減税国債を実際上発行しないような仕組みをとつていただきたいと思うのでありますが、大臣はそう決意ありやいなや、お伺いしたいと思います。
  230. 向井忠晴

    向井国務大臣 決意と申しますと何でありますが、できればそういうふうにいたしたいと思います。
  231. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 できればそういうふうにいたしたいというお話でありますが、それに努力してみる、かようなお考えがあるかどうか。
  232. 向井忠晴

    向井国務大臣 努力してみます。
  233. 太田正孝

    太田委員長 福田委員に申し上げますが、ソ連及び中共軍の軍事情勢につきましては、材料を得られないということであります。また米軍の極東における軍事情勢については、公表することがむずかしいという政府側の返事でございまして、さよう御承知を願います。  古井委員から、資料につきまして発言を求めております。古井君。
  234. 古井喜實

    ○古井委員 今朝義務教育費国庫負担に関係して二つの資料を政府に要求したのであります。これに対してまことに不誠意きわまる政府側の御回答がありました。この義務教育費国庫負担の問題は、この国会における最重要案件の一つだと思います。これについては、われわれ国会としては十分な審議を尽さなければならぬと思うのであります。私が要求した資料の一つは、この制度を行えば地方財政にどういう結果が起るか、あるいは場合によれば財政の成り立たない地方団体も起るのじ、やないか、そうだとすればこれに対して財源のことも一応考えなければならない、そういう点に触れた重要な資料だと思つております。  いま一つの資料は、教員の現員現給と、今度政府の行おうとする改革案と比較いたしまして、どういう結果になつておるか、つまり教員の首切り、あるいは待遇低下の問題を起しはしないか、こういう点に触れた資料であります。これがないと、一体どういう結果になるかということをわれわれは十分に見きわめることができないのであります。これに対して政府側の御返答によれば、定員定額による府県別の給与額は、政令ができていないからわからない、こういうことであります。  もう一つの点は、来年度の実際の学級数とか学校数その他の事実を見なければはつきりわからないということでありますが、私はそういうことを求めているのではないのであります。すでに九百二十億の予算額が計上されているのであります。この予算額を算出するについては、その基礎になる定員と定額がなければならぬはずだと思います。定額と定員があるはずである。総定員がすでにありますならば、これは架空な定員ではないはずであるから、各府県の定員が基礎になつて出て来なければならない。これがなければまつたく架空な総定員になると思います。各府県の定員は、これを算出した基礎がなければならぬと思うのであります。この算出した基礎が、ひつくり返せば配分の基礎になると思います。かかる金額を算出した基礎になつたこの定員定額、各府県における定員定額がわかれば求めた資料はできるはずだと思います。なおこれは来年度の事実ということを求めておるわけではないのでありまして、これは今年度の事実を使つてもよろしい。予算の基礎になつた資料について求めておるのでありますから、できないはずは絶対にない。これはおそらく逃げ言葉であると思います。この数字を出せば政府案のボロが出るというのか。ボロが出ないならば資料を出してみればよろしい。これはぜひ出していただきたいと思います。
  235. 太田正孝

    太田委員長 ただいまの古井委員の御要求は、九百二十億の予算の基礎となる定員定額を各府県について調べて出せ、こういう意味でございますね。
  236. 古井喜實

    ○古井委員 それを基礎にすれば要求した資料がつくれるはずであるという意味であります。
  237. 太田正孝

    太田委員長 政府の方にしかるべく要求をいたします。  本日はこの程度にし、明十二日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十九分散会