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1953-02-10 第15回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十日(火曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       石田 博英君    植木庚子郎君       植原悦二郎君    岡本  茂君       北 れい吉君    小坂善太郎君       重政 誠之君    島村 一郎君       塚原 俊郎君    永野  護君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    原 健三郎君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    井出一太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       早川  崇君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    中村 高一君       西尾 末廣君    西村 榮一君       伊藤 好道君    八百板 正君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二件を一括して質問を継続いたします。北吟吉君。
  3. 北昤吉

    北委員 昨日国民道徳高揚について、吉田総理にお尋ねをしたいと考えておりましたところ、御欠席でありましたので、本日に繰延ばしました。吉田総理施政演説にも道義高揚というお話があり、また自由党の公約のうちにも、第四項の国民道徳教育刷新というところにある程度内容を指摘してあります。昨日文部大臣から具体的な話はありませんでしたが、閣議に総理からの要望がありまして、その要望にこたえる努力をいたしておりますというお答えがありました。何か総理道義高揚についての具体的なお考えがおありになりますれば、承りたいと存じます。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。道義高揚の問題については、しばしば委員会、本会議等において質問がありましたが、これに対しては私の答えは一貫いたしております。道義高揚ということは結局各種政策が実施せられて、その集合の結果、国民生活が安定し、国民の意欲といいますか、安定感及び政治経済的な活動とかいう各種方面活動が現われて来てその間に自然生ずる、総合的結果から生ずる道義高揚、これが広く申して道義高揚でありますが、しかし今お話のような具体案といえば、結局は憲法精神を基調といたして進むということ、具体的に何が基本になるかといえば、結局国の基本法である憲法精神をもつて進むということをもつてお答えをするほか、抽象的、具体的といいますか、これが一番安全な答弁になると思います。
  5. 北昤吉

    北委員 実は私は総理の御演説を承つて日本政治家には国民を奮起せしめる道徳的原理の体得が足らぬということを痛感いたしております。失礼のようでありますが、ことに自由党内閣におきましての一番の弱点は、労働対策文教対策の二つだと思います。労働対策におきましては、労働組合が、自由党政策に対して反感を持つて、敵になつております。それから文教対策の方から行きましても、徹底しておらぬ。その証拠には、大学生の七割までが自由主義に反対で、共産主義とまでは行かないけれども、せんだつて、国防のことに非常に熱心な学生に二人来てもらいまして、話を聞きましたらば、大学教授議論でも何でも、自由主義諸国に対する反感を発表しておる。これは相当ゆゆしいことであります。過日芳沢謙吉さんが台湾から帰られまして、私は外交界の長老の有田八郎さんとか、武者小路公共さんとか、須磨彌吉郎君らを招待いたしまして、一夕意見を交換いたしましたが、蒋介石政権は、日本新聞雑誌を輸入しないそうである。なぜかというと、日本新聞はもとより雑誌至つては、半ば共産主義――半共産という言葉を用いて、台湾人心に非常に悪い影響を与えるから、輸入禁止の方針である。吉沢翁も非常に心配をされておりました。私は吉年学生共産主義的であり、革命的であるということは、ゆゆしき態度であると考えております。御承知のごとく、ロシヤ帝政時代革命運動は、大学生中心であつた支那共産主義運動も、北京の大学生その他の大学生中心であります。そこで私はこれは黙視することができないことだと思いまして、道義高揚には、彼らの持つておるイデオロギー違つた別イデオロギーを与えなければいかぬ。ちようど子供が危険なおもちやを持つておるとき、ただ奪うだけではいかぬ。りつぱなおもちやにかえてやらなければならぬ。ところが文部大臣お話を聞いても、総理大臣の御演説を聞いても、過日の自由党大会における演説の草稿を見ましても、どうも新興時代青年にアツピールする熱情が足らない。私は露骨に申します。ところがアイゼンハウアー元帥就任演説を私は見まして、非常に感激したのであります。出身は軍人でありながら、アメリカの自由を愛する伝統を身につけて、実に烈々たる気魄があります。たとえば「自由それ自体と同様に、自由の防衛というものを一体不可分のものと考えるとき」という言葉がある。自由というものは空名であります。自由そのものと自由を防衛する態度、施設が一体不可分のものである。日本の新憲法はもちろん自由主義民主平和主義思想をもつて貫いておりますが、防衛ということについては何も書いておらない。この点について私は新憲法について、非常な不満を持つて改正ということをつとに叫んでおる一人でありますが、総理大臣はこの青年学徒共産主義的、反米的、反自由主義的思想に対して、いかなる態度をもつて対処しようとするか、お伺いしたい。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 現在の大学生その他が、ある一種共産党とまで行かなくとも、あまり喜ばしくない傾向のあることは私も認めます。しかしこれがどういう事情のもとにできたか、これは一応考える必要があると思います。どこの国でもいくさが起るとか、あるいは飢餓が起るとか、社会に不安が生じた場合には、最も感じやすい学生が、現在の境遇に対して、一種の懐疑的な考えを持つのは当然であります。それでありますからお話のように、過去に他国においても大学にまず革命主義が入るとか、また不穏な主義が発生するといいますか、感染するということは、これは青年のごく感じやすい時代における学生が、世情といいますか、そのときの外界のために影響されることは当然であります。今日日本大学生その他に不穏当な考えがあるとすれば、これは国全体が一種の気違いになつ戦争中の時代、あるいはまた、終戦直後の生活の不安なり、もしくは欠乏、いろいろ不愉快な状態にあつた社会教育を受けた、そのために学生思想が不穏当な、あるいは好ましからざる方向に進んだということは、これは当然なことであると思います。しかしながら世の中の不安が張り、おちついて来たとともに、青年学生考え方もおちついて来る。これは青年学生ばかり責めるわけには行かないのであります。北君を含めた老人その他も不穏当な、(笑声)あるいは不穏な思想に支配される、これは学生ばかり責めるわけに行きませんが、最も感じやすい学生が、その外界事情に支配されるということはあり得ると考えております。しかし生活が、あるいは内外の国情がおちついて来るとともに、自然良識が生じ、グツト・センスが起つて来る。国民グツド・センスを持つことが大事である。グツド・センスを持ち得るような社会になることが大事である。この空気のもとに学生のたとえ奇矯な考え方があつても、おちつくところにおちつく、またおちつかせることが大事だ。  一つ私が北君の考え方と違うのは、政府当局者もしくは総理大臣が、大いに気魂のこもつた演説をしろという御希望でありましようが、これは私はよくないことであると思います。政府が、あるいはまたわれわれが、国民思想を支配するという考え方、これはいけないと思います。フアツシヨならとにかくでありますけれども、国民の、あるいは青年のおちついた良識を生ぜしめるということを考えるべきだと思います。こう考えるとか、あるいは共産主義はいけないとか、この思想は奇矯であるということを申すことは、かえつて感じやすい青年に悪い予期せざる結果が生ずるのではないか、こう私は考えておるのでありますから、私の演説も将来ますます気魂が足らないような演説をいたして、北君からしかられることがあるでありましようが、私の考えとしてはかくあるべきものだ、国民良識を養うことに努むべきものであつて、大いに自由を鼓吹するとかなんとかいうよりも、国民が自然に自由主義になり、自由の尊重すべきこと、基本人権なるものの大事であるということを考え良識を持つように努めるべきではないか、これが私の考えであります。
  7. 北昤吉

    北委員 吉田総理らしいお答えでありまして、私は、吉田総理が熱弁を振つて青年を奮気せしめてもらいたいという注文を別にするつもりはありませんが、やはり国家危急に際したときには、国民に訴える熱烈なる政治哲学的信念がなければ、指導者としての役目を十分に果すことができないということは私のかわりない信念である。私は、アイゼンハウアーをまた例にとりますが、そのうちにこういうことがある。歴史は自由の防衛任務を長く弱者卑怯者にまかせたことはないからである。世界的の危機を克服するという熱烈な意思を発表して弱い者や卑怯者には国際的の危機を克服する能力がないと言つている。私は日本戦争をやつて負けて、弱いということは知つております。たとえばフインランドの、ごときは、三百何十万の人口でありますが、ロシヤがいわれなく国境を侵して、侵略して来たときには、敢然として国をあげて戦うた。マンネルハイムとい元帥が大統領になつておるのをやめて戦うた。これは一九一九年のフインランド独立の恩人であります。この烈々たる気魂は、ともかくも一部の領土、ソ連にとつて重要なる地点はとられましたが、独立擁護いたしております。そうして共産主義にまだならない国であります。スエーデンのごときと違つて非常に弱い国でありながら、その意気を持つておるから、今日のフインランドがある。私は日本もいかに敗れたりといえども、ほんとうに自由を愛する意気があつたならば、ソ連アメリカと両方に圧迫されて向うところを知らない懐疑的の状態を脱却し得る、私はそういう信念を持つております。八千五百万の人口でありますから、これを組織すれば、相当抵抗力を養い得ると私は思います。ただ経済復興を待つというたところが、貿易の圏内は非常に縮まつております。中共との貿易は遮断されて、ことし下半期になつても、多少はよくなるかもしれませんが、急速なる復興はあり得ない。経済復興を待つて人心の安定、学生思想健全化を求めるということは、ここ五年や七年の間期待できないと私は思います。やはり日本は自由を愛する、自由擁護のためには、いかなる手段にも訴えるという烈々たる気魂がなければならぬ。憲法には、自由というものの獲得は、人類多年の努力の結果であると言うておるが、これは外国の話だ。フランスの革命アメリカ独立運動というようなものでありまして日本はどちらかというと、アメリカによつて与えられた自由であるから、自由を愛護するという烈々たる気魂が足らないので、この新憲法精神を生かすにあたつても、何らかの手段を講じなければならぬ。学生思想の悪化について総理大臣は、私などと違つてあまり心配しておらないようでありますが、現に一月に一回くらいは、われわれが見ても、現実に適しないと思う平野義太郎君とか学習院大学清水幾太郎君とか、そういう一連の岩波系のいわゆる思想家が講演に行つて、盛んに学生に訴える。学生は初めから参つてしもうそうです。私は学生というものは非常に敏感であるから、学生動き方によつて国家の動向はある程度支配されると思います。  少しく古い話でありますが、私は記憶を述べます。昭和七年、松岡さんについてゼネヴアに行つて、ひまをもらつて私はドイツに入つたゾルフ大使日本に十年くらいおりまして、私はときどき通訳に頼まれて行つたことがあるので、たずねた。三井、三菱の支店長にも会つたナチス運動の活発のときであります。外務省諸君にも意見を聞いた。ゾルフ大使はこういうことを言われた。ミスター北ナチス運動をあまり心配する必要はない。無学の人、青年と貧乏人が多いから大丈夫だ。私は南へ下つてハイデルベルク行つて元おつた下宿をたずねた。ごく純良な下宿屋のおかみさんがナチスの党員である。娘もフユーレリンという女指導者で、長男もナチス。元友達であつた宗教学の助教授をたずねたら、やはりナチスになつておる。調べてみたら、学生の七割がナチスで、二割がどつちもつかず、一割が共産党ということであつた。これは必ずナチスが天下をとる。ベルリンへ帰つて外務省諸君にも私は警告を発した。どうです、十二月に立つて、二月に国に帰る船の中で、ナヂスの政権の起きたことを知つたのです。私は青年運動というものは決して油断はできない。学生のみならず、農村はそうでもありませんが、都会の青年相当険悪になつております。今では手段は平穏でありますが、もし共産党手段によつてテロリズムがまじつて来たならば、私はこういう貧弱な国家組織は破壊することができると思います。これにはやはり自由主義のいい方面民主主義のいい方面を徹底的に私は国民に知らせる必要があると思います。文教の府に当る者はこの努力をしなければならぬ。今映画界状態を見ましても、きのう申し上げた通りに、「真空地帯」とか「ひめゆりの塔」であるとか、圧戦思想反米思想をあおり立てるものが流行している。これは作者がそれを目的としているわけじやないけれども、要求が多いからであります。現に私の知つている人のところヘアメリカの大使館の人が来て、ハリウツドでも二、三反共映画があるから、やつてくれぬか。だれもやるものがない。割当がきまつているから、そういうものをやれば損をするから、それはだめだと、はねつけられる。最近にはまた国府の反共映画日本に持つて来たいという。私は何とかそれをやらせたいと考えているが、もうからぬから、相手にしないのです。  私は政府はとにかく思想問題について、上から押しつけられるような東条内閣時代のようなことはやれないでありましようが、自分信念を持つている以上は、信念を普及するだけの努力をしなければ、結局は不精者で終つてしまう。私はそれを非常に憂えるものでありまして、大学の金をいかに出しても――東大だけで一年に十五億使つております。そうして国家要求と相いれない学生が輩出する。もちろん会社へ行くときにはたいてい自由党支持言つて入るそうです。そのうちに給料が増せば、ほんとう自由党支持にだんだんなるようでありますが、それは学生もやはり生活の方便であります。私はしかしだましてでも入るというその気持が好まないのであります。そうでありますれば、東条内閣のときには東条礼讃自由党が大きくなれば、自由党へどんどん入つ来る。今度はソ連が強くなれば、ソ連に傾くかもしれない。参国民に守るところがない。一人であつても正しいことは断然行うという意気がなくなる。そこで少くともこの内閣においては映画とか新聞とか、その他の手段を通じて自分らの信念――上から押しつけるという意味じやない。採用しなければかつてであります。自分らの信念を鼓吹するというぐらいのことはやつたらどうか。民主主義時代ですから、選挙のときにはいろいろ演説をやります。これは大宣伝でありますが、選挙はどちらかというと、札を入れるということが多少考慮のうちにあるから、そのまま述べられない。再軍備が必要であると考えておつても、再軍備をやると言うと、札が減るかしらぬと思つて手控えするという傾きがあります。そこへ行くと改進党の芦田君など堂々とやつて第一位で当選したから、私は見上げたものだと思つておりますが、ここは私は良心にそむくような控え目の形がかえつてあぶないと思う。これはひとつ総理大臣初め閣僚諸君に私は警告意味で申し上げておきます。  新憲法道義高揚の問題でありますが、私は新憲法思想根底自由主義民主主義平和主義けつこうであると思います。しかし日本国民にはぴんと来ない、アメリカがつくつて押しつけたという印象を持つております。ことにこの自由党の十大政策のうちにも、国民教育刷新のうちに家庭社会国家を愛しとなつておるが、憲法上は家という観念がさつぱりなくなつておる。そうして貴族院牧野英一博士が家を尊重すべしという修正案を出した。過半数で通過したけれども、三分の二の獲得ができないでそれが抹殺された。それは総理大臣事情はおわかりであろうと思いますが、しかるに忽然とここに家ということが出ておる。家というのをどうして書くか、青年は迷うのみならず、今の憲法日本の国風に最も合わないのは、家庭制度を根本的に破壊したこと、これはいなかに行くと、ことに声を一にしてみな叫ぶところであります。この家の制度を破壊したということは、東洋の社会組織根底を破壊したことであります。私は道義高揚はやりにくいと思いますが、憲法のこの点についても急に改正をやるという意味ではありません。それは衆議院の三分の二、参議院の三分の二、国民過半数というのは、今の機運ではなかなかできにくいであろうと思うのです。けれども準備ぐらいはやらなければならぬと思うのです。研究をして練りに練つて――明治憲法はもう五年も七年も準備したものです。ところが新憲法は、マツカーサーホイツトニー少将に命じて二週間か三週間でつくらして、十五分でこれを取入れろと言つたそうです。これはマーク・ゲインの書いているのは当てにならなくても、マツカーサーアメリカへ報告した書物が東大の「国家学会雑誌」に幾冊か出ております。この憲法を永久に持つて行けということは、これは無理じやないかと思う。非常にりつぱなものはあります。それは私も総理と同じ考えでありますが、憲法改正準備ぐらいはやるだけの努力をしていただきたい。お考えはいかがでしよう。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、私は憲法改正については、しばしば申す通り、これは軽々にいたすべきものではないと思うのであります。なるほど新憲法はよく米国製といいます。あるいは進駐軍の押しつけだ、こういいますが、しかし旧憲法のごときは、これは一時ドイツを学んだものだとか、どうとかしたものだといわれたものであります。でき上つてみた憲法については、御承知通りずいぶん議論がありましたが、何十年の間この憲法が国の基本法として行われておつたのであります。その結果あるいはそのために独裁になつたとか、あるいは軍国主義なつたともいわれます。その反動といえば反動でありますが、新憲法制定の当時には日本に対するいろいろな誤解があり、日本は平和を脅かす国である、自由を無視した国である、あるいは警察国家であるとまでいわれておつたのであります。この外界の疑惑を解くためにも、また国民に新たなる観念というか、時代に相応した自由とか基本的人権とか、そういう思想を植えつけるだけの効能は確かに新憲法にはあつたと思います。また新憲法制定についてはそう簡単なものではないのであります。ホイツトニーがどういうことを命令されたか知りませんが、とにかく新憲法制定については両院において相当機関を設け、相当研究をされてできたのであります。この憲法欠点があるとしますならば、その欠点についてはこれではいけない、これはこう直さなくちやならぬという国論が、長い間において自然国民輿論の帰結するところがあるであろうと思います。その帰結した点について取上げるのはとにかくとして、政府がこういうことは欠点であるからこれを改めたらよかろうとか、あるいは民主政治の今日において、政府が指導するというようなことはいたしたくないと私は思います。各政党においても、あるいは民間のいろいろな団体においても、家という制度が破壊された、これは日本国情に適しないことである、あるいはまた軍備の問題にしてもその通りであります。今のままではよろしくない、再軍備いたすべしという国民の盛り上る熱意といいますか、輿論傾向がはつきりしたときに、その輿論傾向の節々をとらえてそうして新憲法をつくるべきである。用意と言われますけれども、用意の仕方もいろいろありましようが、これは慎重に国民考えしむる上からいつても、まず新憲法欠点とすべきところ、また加えるべきところについて、相当の時間に国民輿論を得て、政府考えるべきものである。政府が、憲法はいけないのだ、新憲法には欠点があるのだ、これは改正するといつて着手いたしますと、悪い場合を考えてみると、かえつて結果はあまりおもしろくない、われわれの希望せざる方向に走らないとも限らないのでありますから、各政党、いろいろな学者その他が十分な研究練つた後に、そこに達するというふうにした方がよくはないか、これは私の議論であります。
  9. 北昤吉

    北委員 ただいま二十分でやめろということで、今になつて急に言つても、初めにそうおつしやつてくれればよかつたのですが、失礼ですが、もう十分だけ拝借いたします。私は五点の質問のうちまだ二点しか聞いておらぬのです。せつかくですから、今度は端的に問います。この、ごろ平和思想が非常に発達しておりますが、私は自由と主義というものが根本で、自由を守り、正義を守るときには、消極的には防禦的の意味で平和もまた犠牲に供すべきものでないかと考えております。たとえばパトリツク・ヘンリーの、ごときは、「自由を与えよ、しからずんば死を与えよ。」自由の擁護というものは、なまやさしいものでは擁護できません。私は自由と正義が平和以上のものだと考えますが、いかがでございましようか。その点をお聞きいたします。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 少々専門的の御意見でありますが、これはけつこうな話で、自由も正義も守るべきものだと思います。
  11. 北昤吉

    北委員 よく支那では仁と義という。西洋でも愛と正義ということがいわれる。愛というものは強い者の道徳だと思うのです。釈尊は衆生はわが子なりという思想を持つておるから、これは愛。キリストは神のひとり子だから愛。ところが正義というものは、強者が弾圧を加えるときに弱者が抵抗する道徳中心だと思います。日本は今では弱い者になつていじめられている方である。それであるから私は正義を鼓吹する必要があると思う。反抗心もある場合においては養う必要がある。それがため、には平和を犠牲に供してもよろしいと私は思う。それは積極的な意味ではありませんが、消極的な意味においてです。平和主義に徹底するならガンジーまで徹底しなければならぬ。現に東大の今の総長の矢内原君は、日本ソ連に占領されても、三年もたつて帰つてしまえば、元よりりつぱに復興するだろうということを言つております。これはクリスチヤンとしてはそういう考えを持つのも一つの識見ではありますが、一般国民にガンジーの思想をしい、矢内原君のような思想をしいることは非常に危険だと思います。簡単でよろしゆうございますから、その点について。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は矢内原君が何と言われたか実は知らないのでありますが、今申したように、正義と自由、これは憲法精神でありますからして、国民があくまでも擁護する気持にならなければならない、こう考えております。
  13. 北昤吉

    北委員 これ以上お尋ねいたしませんが、最後に国際危機について総理大臣から簡単に答えていただきたい。もし何でしたら外務大臣からお答えをいただきたい。吉田総理は、国民の気休めのためでありましようが、世界戦争危機は遠のきつつあるということをたびたび言われておるが、私はむしろ反対の考えを持つております。もちろんソ連アメリカと正面衝突をするとは考えませんが、中国とアメリカとは宣戦布告をせざる戦争の危険が、ますます濃厚になりつつあると考えております。台湾の中立を解除して封鎖を解きましてから、国民政府烈々たる意気をもつて本土反攻を企てております。朝鮮事変の今のこんとん状態を打開するためには、アイゼンハウアー政権は何らかの手を打ちます。北鮮に向つて、あるいは原子爆弾はやらなくても、原子兵器は用いるかもしれず、あるいは満州の基地を襲撃するかもしれぬ。そうすれば日本はいつ何どき危険に迫られるかもしれません。おそらくは宣戦布告をやらない戦争だろう。北鮮も宣戦布告はしておりません。日本の北支事変も支那事変も、事変々々といつて宣戦布告をせずに、四年も五年も戦うた近代の例があります。私はソ連はなかなか出て来ないと思いますが、しかし戦争の危険は迫つておる。第二次世界大戦は、きのうも申し上げた通り、まだ終つておらない。終つておらない証拠に、ドイツとの講和もできないし、オーストリアとの講和もできない。日本では一部共産主義国との講和ができておりませんから、バトルは済んでおるが、ウオーは済んでいない。戦闘は済んでおるけれども、戦争は済んでいない。まだ継続しておると考えております。いつこれが発展するかしれませんから、私は全国民にその危機をむしろ警告して、せめて心構えなりとも、非常時に向う精神準備を養わなければならぬと思う。(「再軍備じやないのか」と呼ぶ者あり)私は国が貧乏の間は、再軍備はできないと思うておりまして、吉田総理の自衛力増強という立場をとつておりますが、しかし心構えだけは――青年の組織的勤労精神くらいは、もうやらなければならぬと思う。そうでないとまさかのときには役に立たぬ、手をあげるだけであります。来ないというけれども、来るか来ないかはわかりません。孫子の言葉をかりて言えば、「来らざるを恃まず、待つ有るを恃む」とある。私は戦時中の軍閥が戦いを好んで日本を亡国に陥れたが、戦後の政治家の一部、実業家の一部あるいは学界の一部には、敗戦思想が濃厚であつて、いわゆるこういう言葉に当ると思う。「国大といえども戦いを好めば必ず亡ぶ」、これは過去の軍閥です。今は[天下安しといえども戦いを忘るれば必ず危うし」という言葉が司馬法にある。戦争はなかつた。もし来た場合にはどうするか。アメリカが守つてくれるから大丈夫だというかもしれない。守り切れないで逃げたらどうするか。「国安しといえども戦いを忘るればすなわち危うし」、これは千古の名言だと私は考えます。国際危機についてきようのニツポン・タイムスを見ても、プラウダやイズヴエスチヤはしきりに世界戦争危機であるといつておるし、それからアメリカの民主党が、戦争の危険があるとして反対をしておる。英国も警告を発しております。ただ戦争の中間にある日本総理大臣だけは、四海波平らかに、安全なようなことをいうのは、私はふに落ちないのです。この点についての御所見をひとつ伺いたい。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。私が世界波平らかなりと大いに誇張いたしたことはないのであります。ただ危機迫れり、戦争が今にも起るというふうに、国民を警醒することがいいか悪いかという問題であります。北君は、大いに国民に対して警醒、警戒せしむべしという議論でありますが、これが実際の政治においてどうであるか。国民はかなり過去においておびえておりました。戦争のためにかなり苦い経験を持ち、またこのために再び戦争が今にも起るというようなことがありましたならば、国民に及ぼすところの影響は少からざるものがあると思う。たとえばアメリカのごときは、実は戦争の危険にさらされておらない、戦争の経験を持たない、国自身が脅かされたことはいまだかつてないのであります。イギリスのごときも、空襲は受けましたけれども、しかしながらフランス、大陸ほどの惨害は受けておらない。日本至つては原子爆弾の損害まで受けておるので、国民ことに婦人、親としてはかなり戦争の悲惨なことを体験しておる。その記憶がいまだ去らないときに、再び戦争だということになつたら、国民は非常な動揺を来すであろうと思いますから、私は波平らかなりとは言いませんけれども、戦争が今にも起るというようなことを申して、いわゆる半鐘をたたくということがいいかどうか、これは問題であろうと思いますから、北君もお考えを願いたいと思います。
  15. 北昤吉

    北委員 もう簡単です。最後です。――これは見解の相違でありまして、ヒトラーがラインランドを占領したときに、当時の在野党の有力者であるチヤーチルは、これはヒトラーの侵略の第一歩であるとしてプレペアードネスと叫んだ。ところがチエンバーレンはあくまでもアピーズメント、宥和政策で傍観しておつた。そしてミユンヘン会議でヒトラーに譲り、あくまでも平和に努めた。最後にヒトラーのポーランド侵入が開始されてから、遂にチエンバーレンは内閣をしりぞいてチヤーチルにまかした。チヤーチルの出たときにはすでに手遅れでありまして、ダンケルクの悲惨なる目にあつたのであります。それで私は日本はどうせ軍備はできない。アメリカでも軍備をしてくれるよりほかはない。しかしながらチヤーチルは、同じ有力な政治家であるチエンバーレンが平和の見込みありというのに、見込みなしという断定をとつてそしてチヤーチルの方が当つたのであります。私は日本としても戦争の渦中に入り込り込むことはきらいでありますから、なおさらプレペアードネスという立場で、やはり国民に緊張してもらりて頽廃的気分を一掃しなければならぬ。現に今のごとく、まあパチンコぐらいは安上りで遊べるからよろしいが、麻雀にふけつたり、それから競輪にふけつたり、さらに今度はハイアライまでやろうという一部の連中があるそうでありますが、私は国民が平時において異常な遊蕩気分に陥るということは、一朝事あるときにはたいへんだと考えます。それであるから国民道徳高揚意味において国際危機をもう少しはつきり述べた方がいいと考えます。これは総理との見解が違うためにやむを得ませんが、私は党内においてはこの考えで各地を講演して歩きますが、よろしく御了解のほどを願います。
  16. 太田正孝

    太田委員長 川島金次君。
  17. 川島金次

    ○川島(金)委員 私は総理大臣に、数点につきましてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。何と言いましても、今日日本国民が最も重大な関心と期待をつないでおります問題は、日本の完全独立、同時に日本の平和をいかに維持するか、さらにまた日本の民主化をいかに徹底せしめるか、あわせて日本国民経済の安定と向上とにかかつておると私は信じておるものでございます。その立場から、以下若干お尋ねを申し上げる次第でございます。  まず第一にお伺い申し上げることは、全面講和の問題でございます。吉田総理大臣はサンフランシスコ講和条約を締結いたします以前において国民としても、もとより自分といたしま出しても全面講和が最も望ましいことである、こういう言葉をしばしば繰返して述べられたのであります。さらにまたアメリカへ出発いたします直前と記憶いたしておりますが、この講和が将来全面講和を前提とするよき導きの道であると信じて私は参るのであるという旨を語られたことは、総理の御記憶にあろうかと思うのであります。しかるに今日多数講和でそのまま条約の発効を見て以来、早くもおよそ一年になんなんとしおるのでありす。アメリカ政権の樹立によりましてことにアイゼンハウアーの就任の声明が中心となつて、ヨーロツパにおけるイギリスを中心として、またアジアにおいても台湾政府の中立解除等という問題、あるいは共産勢力に対する巻き返し戦術等の声明によりまして、思わぬ世界的な緊張を呼び起しておると私は信じておるのでございます。こういう場合において、この問題についての日本考え方及び今後における政府態度というものは、これまた重大なつながりを持つものではなかろうかと私は考えるのであります。その意味におきまして、今日いまなお吉田総理は全面講和を期待しておるのかどうか、またソ連中心としたこの講和条約に不参加な国々が、一日も早くこの条約に参加するか、もしくは日本が自主的な立場において、新たなる講和に入るという考え方を持たれておるのかどうか、その点について首相のお考えを承つておきたいのであります。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。全面講和ができればまことにけつこうなことであります。しかしながら、できるかできないかは、そのときの内外の事情によりましようし、また相手国の考えによることであります。でありますから、日本が全面講和を希望いたしても、相手国が同意をせざる間はいかんともできないのであります。全面講和ができれば、私は今でもまことにけつこうだと思つております。
  19. 川島金次

    ○川島(金)委員 重ねてお尋ねをいたします。それでは総理がその全面講和を今日でも望ましいものと期待しておりますからには、政府としてもこの問題について関心を持ちながら、何らかの具体的な努力が必要ではないかと私は考えるのでございますが、そういう今日までの努力をなされたかどうかについて、またこの全面講和についての今日の見通しとして、努力をいたしてもこれはもはや望みなきものであると考えられておるかどうか、その点についての御見解を承りたい。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 たとえば国連のごときは、これは平和を目的とする一つの団体であります。世界平和を目標の一つとして形成されておる団体であります。ゆえに政府としてはこれに協力することを惜しまず、また協力しつつあるのであります。しからば単独に何をしたかと言わるるならば、単独には今日までする方法もなければ、手段もないのであります。かりにソビエトに大使館のような国際連絡機関を持つておるというようなことがあれば、またその機関を通じてということもあり得ることでありますが、今日はその機関がないのであります。国交は断絶いたしておるのであります。これを回復するにはどうしたらいいか、また積極的にすべきではないかというお話があるかもしれませんが、方法が実はないのであります。天の星をつかめと言うようなわけであります。相手国が日本を敵視しておる。たとえば中ソ同盟条約のごときものをもつて日本を敵国と考えておる国で、手の出しようがないからいたさないだけの話であつて、全面講和ができればまことにけつこうだと私は確信いたしております。
  21. 川島金次

    ○川島(金)委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、今政府としては方法がないのだ、努力いたしたくとも道がないのだというお話であります。そういうことになりますと、この問題に関する限りにおきましては、ソ連その他中共等が、先方から積極的にこちらに呼びかけることがあるまでは、われわれの方といたしましては、打つ手がまつたくないという意味に理解してよろしいのでありますかどうか、お尋ねいたします。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申すのは、さほど狭い意味ではないのであります。国際の関係は始終かわつて参るのであつて、進んで共産主義国が日本に対して講和を申し出す場合もあるでありましようし、またわれわれとともに難を希望するというような事態が生ずるようなこともあるでありましようから、先方が申し込まなければこちらは受けないというほど、そういう狭い考えは持つておらないのであります。
  23. 川島金次

    ○川島(金)委員 私は日本の完全な独立を期待し、日本の平和を維持する一つの条件といたしましてできるだけ政府は所定の方針のごとくに、全面講和はの今後の絶えざる関心と努力が必要ではないかと考えますので、この点について今後政府の一段の努力を私は望んでやまないのであります。  次に私は国連加入の問題について、総理の御見解を承りたいのであります。わが国及び国民の大多数は、一日も早く世界平和機構の一つである、しかも唯一の機関であります国連への加入に重大な関心を持たれており、また多くの国民がこの加入を期待いたしておりますことは、総理も特に御存じの通りでございます。しかるにこの国連に対しましては、御承知通り昨年の九月でしたか、安全保障理事会におきましては、十対一によりまして十箇国は日本の国連加入を認めるとの態度を明らかにいたしたのでありますが、不幸にしてソ連の拒否にあつてそのままとなり、さらに昨年の十二月中旬だと記憶いたしますが、国連第七回の総会におきましては、五十対五の相違によりまして、これまた圧倒的多数によつて日本の国連加入を賛成されながら、わずか五箇国の反対によりましてこれがそのままとなつておるような事態になりました。私は国連内の機構や外交上の事柄については、まるきりのしろうとでございまして、よくわかりませんので、この機会に専門家である吉田総理に特にお伺いを申し上げたいのでありますが、国連の機構の条項によりますれば、総会でいかなる圧倒的な多数で日本の国連加入が成立いたしましても、安全保障理事会において、たとい一国でも反対する国がありましたら、これは今の機構において、今の条項においては、とうてい加入する見込みがないという形になつておるのでございます。私どもはそういうふうに理解をいたしておるのでありますが、今日の段階におきまして、ただいま申し上げましたように、日本ソ連との講和がいまなお成立いたしておりませんため、――これだけの問題ではないと思いますが、そういう条項が基礎的な条件となつて日本の国際連合への加盟が、ソ連の必然的な拒否ということになつて現われて来ておるのではないかと思うのでございます。その意味でお尋ねをいたすのでありますが、安全保障理事会において、このソ連一国だけの拒否が今後続く限り、日本の国際連合への正式な加入というものは、いかなる方法をもつていたしましても、今のところ断然見込みがないということになるのかどうか、その点についての専門家的な立場にある吉田さんの御見解を承つておきたいのであります。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えしますが、今の国際連合の機構としては、まさにお話のような拒否権の存在する以上はできないのであります。しかし日本の国連加入を歓迎するということは、国際連合に加入しておる多くの国がそう考えておるのでありますから、日本の加入を希望する国等のいろいろな動きもあるでありましようし、またソ連自身の動き等もあるでありましよう。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕 国際連合の一方がそうであるからといつて一方がかわるということもあるでありましようから、絶対に見込みなしとして考える必要はないと思うのであります。日本としてはあくまでも国連加入をはかり、また日本の国連加入を希望する国との間の連絡をとり、また日本が加入せざる限りは、国連自身としての動きにも支障を生ずるでありましようし、日本の加入を希望する、あるいは歓迎するという気持は、国連においてますます盛んであろうと思いますが、これが現在の状態ではできないから、それで永久に入るということを思いとどまるという必要はないと思います。
  25. 川島金次

    ○川島(金)委員 アジアにおける重要な地位を占めております日本の加盟というものは、世界平和にとりましても、きわめて重大な事柄であると認識しておりますところの加盟国が大多数であるということは、まことにわれわれとしても喜ぶべき事柄だと思うのであります。そこで国連への日本の加盟を喜んでおります。賛成をいたしております大多数の国の中において、しからば日本の加盟がソ連一国の拒否権によつて、当分の間加盟が不可能でありといたします場合において、一つの便法として、日本をして準加盟国たらしめてはどうか、しかもその準加盟国という条件には、もちろん決議権は持つべき筋合いのものではないが、発言権は持たせる、アジアにおいて重要な地位にあるところの日本、この日本にそのような処置をとるのは、これまた望ましいことではないかという意見さえも多く出ていると私は伝え聞いておるのであります。そういうような事柄が、日本政府の中に何らかの形で話が来ておるのかどうか、またそういつた問題が出た場合に、日本は準加盟国という立場において、これを承諾するという用意を持つておるのかどうか、その辺の見解について承つておきたいのであります。
  26. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう話は前にもありました。イタリアの場合にありまして、実現しなかつたのでありますが、イタリアの場合と同様に日本についても非公式には話がありました。しかしながらまだ準加盟といいますか、名前は別でありますが、そういうことは制度としては国連憲章にもありませんし、また先例がないものでありますから、どういう内容になるかはわからないのですが、いずれにしても、正式の国連加盟国よりも、発言権なりあるいは決定権なりにおいて、多少の違いがあるであろうということは想像されるわけであります、そこでイタリアの場合は世界の相当の有力な国である、それが正式のメンバーでなくして、それより劣るということは考えられないというので、拒絶したと聞いております。日本の場合もやはりこういう点も考えなければなりませんので、慎重なる研究をいたしておりますが、まだどちらとも決定はいたしておりません。
  27. 川島金次

    ○川島(金)委員 時間がありませんから、次に移つてお尋ねを申し上げたいと思います。先ほども北君から話があつたのでありますが、何といいましても、最近におけるアメリカの新政府の樹立並びにアイゼンハウアー大統領の内外に向つて発せられました声明書は、きわめて重大な事柄を含んでおりますために、アジアはもちろん、全世界に思いがけない極度の緊張を与えたということは、いなめない事実ではなかろうかと私は感じておるのであります。この緊張の問題を通しまして、日本の国内におきましても素朴なる大多数の国民の中には、このアイゼンハウアーの声明を中心といたしまして、平和を期待するという感じよりも、何らか不吉なる予感を感じておる者が多いと私は感じておるのでございます。これに対しまして吉田総理は、きわめて楽観的なお話をされておるようでございますけれども、しからばこの問題に対しまして、世界の緊張を通してやがて起るであろうという、素朴な国民から感じられておりますところの戦争への危機感、こういつた問題に対しまして、私は日本政府の最高責任者たる吉田さんは、何らか国民のこの不安感に対して、納得のできるような形における意見の公表があつてしかるべきではないかと思うのでございます。ただ単にそういう危険がないのだという抽象的な言葉だけでは、素朴な多くの国民には納得ができかねるような実情にあろうと私は考えておりますので、その点について吉田総理はどのような見解を持たれておりますか、この機会に明確に示されたいと思うのであります。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の考え方が楽観的だと言われるが、私は何らの材料なしに、根底なしに楽観論を述べておるのではないのでありまして、これは繰返して申しますが、英米その他の当局者は、戦争危機は遠のいた、こういうことを言つておるのであります。アイゼンハウアー大統領自身もそう言つておられるのであります。しこうして新大統領の演説なるものは、実は新聞等にあります通り、はなはだ漠然たる話であつてこのためにどれだけの衝動を受けたか。衝動がもしありとするならば、これは米国の対外援助が減るであろう、外国の英仏その他に今日まで再軍備のために与えた援助が減るであろう、支出を削減するということを言つておるから減るであろう、この点が問題になつておるようであります。しかしながら、ただちに戦争が起るというような衝動は世界に与えておらぬと思います。のみならず、今日ダレス氏、スタツセン氏等が実情を調べるためにヨーロツパにまわつておらるるので、その事実調べの結果どうなるかむろんわかりませんが、しかしながら、お話のような世界の危機が生じ、いくさが生ずる、そのためにダレス氏その他がヨーロツパに出かけて行つたのではないのであつて、ヨーロツパの最近の実情いかんということを調べに行つたので、戦争開始のために行つておられるはずはないのであります。でありますから、アイゼンハウアー新大統領の演説その他によつて平和の危機が迫りつつあるという印象を、私は全世界に与えておらぬと考えます。従つて日本国民に対しても、先ほど北君にお答えしたように、あまり人心を動揺せしむるようなことはいたしたくない。事態の経過を静観することこそ、われわれのとるべき態度である、こう考えるのであります。あえて楽観論を主張しておるわけではないのであります。
  29. 川島金次

    ○川島(金)委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、新大統領の声明によりまして、従来の共産勢力に対する封じ込め戦術から、いうところの巻き返し戦術に切りかえたと世間では言つております。この切りかえの戦術に続いて、日本にその切りかえの戦術が重大なる影響をもたらすであろう、すなわち言いかえれば、台湾の中立性の解除といつた一連のことからいたしまして、この事柄は日本に深刻な影響を順次もたらすであろうという考え方を持つ者が、国民の中にはかなり多数おるのでございますけれども、この問題に関して総理大臣はどのような見解に立たれておりますかを、国民に示してもらいたいと思います。
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 この間、米国政府がとつた台湾中立取消しという趣意はどこにあるか、実は私は知りません。ただ、新聞その他によつて伝えられるところだけ以上の知識は持つておらないのでありますが、中立取消しの動機はどこにあつたか、むしろ中立という宣言をいたした動機はどこにあつたかと言えば、中共が朝鮮事変に介入しないようにするために、あの中立声明をいたしたのである、しかしながら、その後に至つて中共は朝鮮事変に介入して、そしてあの中立声明なるものが何ら効能がなくなつたから取消したというふうに新聞に書いてあります。多分そうだろうと私も思うのであります。ゆえに、中立の声明を取消したから、ただちに台湾に中共が攻めて行くとか、あるいは台湾政府が本土上陸をするというようなことはないというふうに、ダレス氏も言つておらるるように新聞に書いてあります。言われたかどうか知りませんが、そういうふうに書いてある。ゆえに、中立取消しがただちに南方支那といいますか、中共政府台湾政府との間に戦争が起る、つまり戦争が拡大されるという危機はまずないと言つておらるるのでありますから、私はそう信じます。
  31. 川島金次

    ○川島(金)委員 それとあわせて、一昨日かの新聞の報ずるところによりますれば、――これはアメリカにおります英国の新聞記者の報道でございますが、その報道の内容の一節を見ますと、日本にとつてきわめて重大な事柄が報道されておるのであります。その一つは、新政権の出現によりまして日本は急速に再軍備が強要されるような形になるであろうということ、一つは、太平洋防衛同盟という問題が、具体化するであろうという事柄が報道されておるのであります。そこで前段の事柄につきましては、総理はすでにしばしば言明をいたしておりますので、それを承ろうとはいたしませんが、後段の太平洋防衛同盟なるものの問題がはたして出ておるのかどうか。この問題がかりに出て来た場合に、一体日本はどういう立場をとることになるのか。これは仮定の問題だから回答ができないということになればそれまでではありますけれども、この問題についても重大な関心を持つております事柄でございますので、できれば総理の見解なり、あるいは従来何らかその問題について接触があつたかどうかという点につきまして、明らかにしていただきたいと思います。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えしますが、この問題については何ら接触はありません。従つてまた太平洋同盟なるものの内容についても、何ら承知いたしませんからお答えができません。
  33. 川島金次

    ○川島(金)委員 私が劈頭に申し上げました国民の重大な関心事の一つでありますところの日本の民主化の問題、これは特に政府国民も相協力して徹底、確立をはからなければならぬ問題だと思うのであります。しかるに最近政府におきましては、いわゆる占領政策行き過ぎの是正という名のもとに、あるいは警察法の改正、あるいはまた義務教育費国庫負担の名をかりまして、教員一般の政治活動の禁止、あるいはまた独占禁止法の改正などをやられまして、せつかく日本経済の民主化がその緒につこうといたしておるにかかわらず、その民主化を根底からぶちこわすのではないかというおそれのあるような反動的な考え方を持つて、独禁法の改正などを考えておるようであります。これらの問題を引続き考えてみますと、政府日本の民主化、政治、経済社会生活の全般にわたる民主化の問題について、熱意と努力を払うかわりに、逆にむしろ反動的な立場で反動立法をなし、あるいは民主化の進展を根底からはばむような、積極的な態度に出ておるのではないかという印象を、われわれは強く受けておるのでございます。ことに労働者におきましては、一両日中にこの国会に、電産並びに炭労に関する事実上のスト禁止の法案を提案する支度をしておるように、われわれは聞いておるのであります。こういうことを考えてみますと、政府は何らかここに中央集権的な、あるいは権力的な立場をとりつつ、せつかく進展し成長して来た日本の民主的な体制を、くずすという方針をもつて臨んでおるかのごとくに、われわれは理解をいたすのでありますが、この点に関して、すなわち日本経済社会生活、政治等にわたつての民主化確立の問題について、政府はどのように考えておられるか。ことに吉田総理の見解なり方針なりを示してもらいたいと思います。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府は民主憲法のもとにおいて、民主化を阻止するような考えは毛頭ございません。従つてまた今御指摘になつた警察法、労働法等について、はたして民主主義に反するかどうか、これは政府が提出いたしました労働法等の法案について御審議の上に御意見の発表を願いたい。
  35. 川島金次

    ○川島(金)委員 私は今労働法の反動立法について話が出ましたから、ついでに総理の見解を承つておきたいのでありますが労働組合の健全なる民主的な発達を望むことは、われわれの念願とするところでございます。さりとて労働組合に若干の行き過ぎ的な行動があつたからとして、それをもつて、ただちに武器として反動的な立法を制定いたしまして、労働組合の健全なる運動を根底から弾圧するというような行き方はいけないと思うのであります。今日の労働者の生活というものは非常に低いところに置かれておるのでありましてこの低いところに置かれておるがゆえの賃金闘争というものがむしろ労働争議の大半を占めておるのであります。従つて政府のこれら労働運動に対する態度というものは、何がともあれ、これら労働階級の生活の安定を期せしめるということが、まず先決条件でなければならない。生活の安定について政府は全力を尽すということでなければならないと思う。しかるにそういうことをあまり積極的に全力を尽さないにかかわらず、一方においてこのような弾圧的な反動立法を次々に制定するということでは、労働運動の健全なる成長は望むべくもなぐ、また日本の民主的な経済の自立達成の上におきましても、きわめて障害になるのではないかとさえ私は考えておるのでございますが、その点についてはどのような見解にあるのでありますか、総理大臣の見解をお尋ねしたいと思う。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま御指摘のような考え政府は全然持つておりません。ついては法案をごらんになつたその上でもつて議論を願いたい。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員   長着席〕
  37. 川島金次

    ○川島(金)委員 今私が申し上げました前半の、まず労働階級の生活の安定が非常に重大なことではないか、これに対し政府は全力を尽すべきではないかということを申し上げたのでありますが、その点については政府はどういうふうに考えておられますか。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろんそういうふうに考えております。ついてはその法案が労働者の生活を脅かすようなことがあつたならば、その場合に御指摘をお願いしたいと思います。
  39. 川島金次

    ○川島(金)委員 時間がありませんから、最後に一点だけをお尋ね申し上げまして、他にお譲りをしたいと思います。  最近、これまた理論的な立場のものも若干ありますが、素朴な国民の大多数の中に、いわゆる日本の現状と将来、ことに日本の政界の現状にかんがみまして二大政党の対立論という問題が非常に重大な関心を求められて参つておることは、おそらく総理も御承知のことと思うのであります。私はこの二大政党対立論参の是非につきましては、私なりの別個の見解を持つておるのでございますけれども、素朴な大多数の国民の中には、日本独立をして、しかも日本の今後の完全独立を達成し、平和を求めて行き、繁栄を求めて行くためには、国内において小党分立の傾向をとることは、その繁栄と安定と独立のために、必ずしもプラスではないのである、そのゆえに日本の今後の難渋の前途を克服して行きますためには、内外ともに小党分立傾向を改めて、二大政党が確立されることが、日本の前途の難局を切り抜ける上におきましても、また望ましいことであるという論議が起つておるのであります。また理論的な立場、政治的な学者の中にもこの問題を論議いたしておる者があるのでありますが、この二大政党の対立の問題につきまして、吉田総理大臣は、一面において自由党の総裁として、どのような見解を持たれておるか、それについての見解を最後にお伺いを申し上げたいのであります。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。民主政治あるいは政党政治からいつて、二大政党対立論は、まことにけつこうなことであると思いますけれども、しかしながら、これを無理してこしらえ上げるということもまた考えるべきではないか、要するに輿論がそこに行き、政界の自然の帰趨がそこに至つて、初めて二大政党対立ということになり得るのでありますから、今日政府が無理をしてどうというようなことはいたすべきではなく、自然にまかすよりほかない、また私はそれが一番いいのである、あえて積極的にどうこうという運動はいたさないつもりであります。
  41. 太田正孝

    太田委員長 伊藤好道君。
  42. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私は総理大臣にお尋ねしたいのでありますが、先般の本国会の施政方針に対する質疑におきまして、外務大臣はこういうお話をされたのであります。すなわち「行政協定の中で、軍人、軍属、家族に対して裁判権を行使できないのは屈辱的だと言われまするが、英国その他欧州各国においても同様の裁判権は認めておるのでありまして、刑事裁判権が完全にならなければ独立国でないと言われるならば、これはイギリスもフランスも独立国でないというにひとしいのであります。」こういうお話がございましたが、総理大臣はこれについてどうお考えですか。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 外務大臣の考えました通りでございます。
  44. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私はこの問題は二つの点で私どもとして看過することができないと思います。一つは事実の誤りであると私は考えます。イギリスやフランスが刑事裁判権に若干の制約を受けおることはわれわれも知つておりますが、しかしその受けておる制約と、われわれが日米行政協定よつて受けておる制約とは大きな相違があると私は考えます。またイギリスが今日国連加盟国として、また朝鮮に兵隊を派遣している国としての立場と、日本は国連に加盟せず、またとにかく一応武力を持たない、こういう立場にある日本とは、国際的立場を異にしておると思います。従いまして事実が誤りであると思うが、この点に対して総理はどうお考えですか。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 事実の誤りというのは、どこが誤りか私ちよつと存じませんが、しかしいずれにしましても、この間この委員会で申しましたか、忘れましたが、主権とか刑事裁判権とかいうような観念時代とともにかわるのでありまして、たとえば外国の兵隊が一国に駐屯するということは、主権の侵害と考えられたこともありますが、今日はこれが普通になつております。刑事裁判権も同じようで、刑事裁判権の観念は時の推移とともに自然変更するものでありまして、かつて刑事裁判権に持つた観念が不変なものと考えるのは、これは間違いではないかと考えます。
  46. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私はそういう点をお尋ねしておるのではないのでありまして、日本がイギリスやフランスと同様な裁判権を外国の人に認めておるこの事態が事実と反するじやないかということについて、総理の御見解を承つておるのであります。
  47. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私が申したのでありますから私から申し上げます。違つているところは、それは各国ですから、もちろん国によつて若干の違いはありますけれども、あなたのおつしやるのは、つまり軍人、軍属は、おそらくこれは別で、家族ということだろうと思いますが、家族についてはイギリスは確かに認めております。
  48. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 さらに軍人、軍属、家族が私の行動で一定の地域外に出た場合に、日本と同じようにその裁判権をイギリス人は放棄しておりますか。
  49. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。
  50. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 その点については、私は見解を異にしておりますが、ここで議論をやつておりますと、他の非常に重要な問題について質問する時間がなくなりますから……。  そうすると、もう一つお尋ねしますが、外務大臣は、日本とイギリスとフランスが同様な刑事裁判権の制限を受けておる、こういうふうに言われておるのですか。
  51. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今申した通り、こまかいところでは多少の違いはありますが、大きな点では、たとえばアメリカならアメリカの軍隊がイギリスに行つておるときは、アメリカの軍隊の法律に従うのであつて、イギリスの法律に従わないのであるという大きなところは違わないのであります。つまり裁判管轄権が、イギリスにアメリカの軍隊がおつたときに、軍人、軍属、家族等が施設内はもちろん、施設外でもアメリカの裁判権に服する、イギリスの裁判権に服さない。この大きなところは違つておりません。手続規定等はイギリス、アメリカ、フランス等とは多少違いますが、ごくこまかい細目のところは異同はありますが、その大きなところは何ら違つておりません。
  52. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 なお、今の場合は、私の行動においても違いはないとおつしやるのですね。
  53. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 公の行動については、これは国際法上はつきり認められておるところでありまして、私の行動についての議論はあります。これは新しい国際慣例となりつつあると存じておるわけであります。
  54. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 そのこまかい点については、私はこれ以上やりませんが、もう一つお伺いいたしたい。これは総理にお伺いしたいのでありますが、こういう言葉を国会で外務大臣が使われることは、イギリス、フランズなどに対する国際儀礼どいう観点からいたしまして、総理は少しも支障がないとお考えでございましようか。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと御質問が聞き取れなかつたのですが、外務大臣の用いた言葉は不穏当だと言われるのですか。
  56. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 そうでございます。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は別段不穏当と感じておりません。感じた箇所も見出しておりません。
  58. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私は、その次に中立の問題について総理にお尋ねいたしたいと思います。この問題は実は非常に重要でありまして私どもは一昨年フランクフルトで社会主義インターの大会がございましたときに、一部の社会主義指導者によりまして全体主義的なコミユニズムの侵略性が戦争の原因であるから、これに対して反共集団安全保障の体形をとつて軍備もやむなし、こういうふうに決定したのであります。今度のラングーンに開かれましたアジア社会会議におきましては、世界平和に関する決議におきましてこの主張が破れました。戦争の原因は三つある。それは帝国主義的植民地政策の残存と、経済的不均衡と、それから米ソの両ブロツクの対立である、こういうふうに規定いたしました。しかも今日の国連がこの二大ブロツク化の傾向のために、本来の世界的な平和境としての役割を喪失しておる事態を遺憾であると指摘いたしまして、そしてここに独立経済開発と自主中立の立場こそが、世界平和を確立するための最も重大な最善の方法である、国連はすみやかに本来の精神に返るべきである。こういうふうにきめたのであります。私どもの中立の立場は実はここから来ておるのでありまして、自主中立のいわゆる第三勢力の力強い団結、すなわちこれを言いかえますならば、イデオロジカルな中立主義、ニユートラリズムをわれわれは主張するのではなく、ニユートラリテイつまり中立の態度、中立の政策、それは現にソ連の平和攻勢にも反対し、アメリカの集団安全保障にもくみしない、こういう立場を多少とつておるものであります。その立場から言いまして、先般の施政方針演説以来あるいは外務委員会などでも中立の問題で外務大臣がいろいろ御発言になつております。これもこまかく指摘いたしますれば、いろいろお尋ねしたいことがあるのでありますが、私は根本的な点だけ、実はこれは総理にお伺いいたしたいのであります。  そういうところから現われました政府の中立に対する方針、日本が中立的立場をとつてはならないと政府考えておられる根拠は二つあるようでありまして、一つは、中立は要するに武力がなければだめだという観念と、一つは日本の地理的環境からいたしまして、米ソの対立の先端にあるからどうも中立はできない、こういうふうなお考えのようでございますが、もしこういうお考えであるといたしますれば、これは現行憲法との関係がどうなるか。現行憲法のもとでは中立的立場はとれない、こういう結論になるように考えるのでありますが、総理は現行憲法のもとでは中立政策はとれないとお考えでございますか。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は現行憲法のもとに中立はとれないというような考え方はどうかと思います。しかし日本の今の立場は、御承知通り講和条約及び安全保障条約で決定されておるのであります。条約上の義務として国連に入り、中立的態度はとれないことになつておると私は見ているのであります。
  60. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 それではこれは外務大臣にお尋ねしたいのであります。われわれは武力がないから、あるいはこういう地理的な先端にあるからこそ、われわれはどうしても平和憲法を守つて、そのもとで中立的態度を堅持する以外に、日本の安全を保障する道がないと考えるものであります。その際も問題になつたと思うのでございますが、日本がいわゆる武力を持つといたしまして、その武力によつて米ソの対立のあつた場合、具体的に言えば共産勢力のことだと思いますが、共産勢力に対抗できると外務大臣はお考えになりますか。
  61. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 非常に御質問が漠然としております。日本が武力を持てば対抗できるかどうかという御質問のようでありますが、武力なるものを従来から総理大臣は持たないと言われておるのであります。再軍備はしないと言われているのであります。従つてあなたのおつしやるのはよくわかりません。しかしこれはまた武力の問題にもよりまして、将来えらい武力を持てば対抗できるかもしれない、そうでなければ対抗できないかもしれない。これはどうもお答えのしようがないと思います。
  62. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 角度をかえて御質問いたしますが、われわれの立場から申し上げますならば、この際平和憲法を確保して行く以外に道はないのでありますから、アメリカに対して安全保障の廃棄なり、あるいはまた行政協定の廃棄なり、こういう立場を強く求めて平和憲法本来の建前である日本を基地にしない、米ソ関係において日本に駐留軍の基地を置かない、こういうような強い立場をとる準備はございませんか。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話を伺つておりますと、日本憲法と安全保障条約とは矛盾するようなふうにとられますが、私はそうは考えておりません。また安全保障条約によつてのみ実際上日本の安全は守られると考えておりますから、お話のような考えは全然持つておりません。
  64. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 われわれが今日実は一番心配しておりますことは、これから何年か先に起るかもしれないという共産党あるいは共産系諸国の侵入ということよりは、実は私どもの目の先に迫つている朝鮮の動乱のことであります。従つてこの朝鮮の動乱にあたりまして、今現に世界で問題になつておりますように、どうしてもこの朝鮮の動乱に日本が巻き込まれないためには、現実には今アメリカの新しい大統領によついろいろな問題が起されているのでありますから、日本にはむしろ軍隊もしくは軍隊に近いようないわゆる保安隊、そういうものがない方が、日本人が朝鮮の戦争の場にかり出されるおそれが一層完全にない。その意味において私はこの保安隊あるいは軍隊の建設――建設は別でございますが、こういう点についてない方がむしろいいのだという立場をとるものでございますが、この戦争の危険について、この朝鮮の問題について保安隊との関係を外務大臣はどうお考えになりますか。
  65. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 伊藤君など前からおつしやつておりますように、自主中立とか自主独立とかいうことを非常に言つておられるようでありますが、今のお話は何だかその自主がなくなつたような気がするのであります。日本に保安隊がありましようとも、なかりましようとも、朝鮮の問題に巻き込まれるかどうかということは、これは全部というわけには行かぬかもしれませんが、主として日本自身の考え方によるものでありまして保安隊があるから巻き込まれるというのは、自主的な考えを少し薄くされたような感じがいたします。私はそんなことは全然ないと思います。
  66. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私は今の政府お話と反対でございまして、いくら政府が自主的々々々と言われましても、今の政府の言われる自主的の問題につきましては、とても十分な信用が置けないのであります。そこで私は朝鮮の、この一番われわれの眼前に迫つております戦争の問題について、こういうことをお聞きしたいのであります。先般インドの提案によりまして、国連で朝鮮の休戦に関する提案がされました。これはソ連系の反対によつて十分の成果をあげず、ここでとどまつているわけであります。そこで私どもは、実はこの間のアジアの社会党の大会に朝鮮休戦に関する三つの決議を出しまして、それの通過をはかつたのでありまして、これは今社会会議のビユーローで、この具体化について十分考慮することになつております。その場合の条件は両軍の撤退、中共の承認、朝鮮の民主的統治、朝鮮の非武装中立化ということでございますが、こういう案に対しまして政府はどのようにお考えになりますか、われわれはもちろんインドの提案に反対したソ連態度は間違つているし、われわれこれを攻撃する立場にあるものでございますが、あらためてアジア社会党の大会でこういうことが問題になりましたことについて、われわれの案を提示いたしまして、総理の御見解を承りたいと思います。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 今の社会党のアジアの大会における決議については、私は実は何も承知いたしておりません。従つてもし外務大臣が承知しておつたら、外務大臣からお答え申します。
  68. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 社会党のお考えはいずれとしましても、これは別に私ども批判する立場にもないし、またそれを遵奉する立場にもないのでございますから、特に申し上げることはありません。ただ一つだけ事実を申し上げますと、朝鮮事変の起る前には、アメリカ軍等は朝鮮から撤退して朝鮮を自主的にまとめて独立させるように努力をいたしたのでありますが、その南鮮の方の武力がなかつたに乗じまして、北鮮から急遽進撃をして来たような実際上の事実がありますから、今お話のようなことははたして列国で納得するかどうか、ちよつと疑問だろうと考えます。
  69. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 われわれはいずれ本会議などにわれわれの態度を明らかにしたいと思います。  次に、台湾の、新らしい大統領の声明による中立化政策の放棄と、政府態度について二、三御質問いたしたいと思います。今まで政府から承りましたわれわれの承知している話では、政府アメリカ政府から事前に通告を受けたということと、今までの教書はきわめて基本的な方針だけで具体化しておらないから、これについてどうにも態度のとりようがない、こういうような実は御説明だつたと私は思うのであります。ところがわれわれが、だれが常識的に考えましても、この教書の方針の発表によりまして、一つは朝鮮の動乱が長引くあるいは大きくなるおそれが生じたということ、それからいま一つは、現実にはせつかく禁止品目の範囲が狭まつて貿易ができかかつた中共との貿易に打撃を与えるということ、これは現実に銀行方面の警戒その他で明らかだと思います。さらに第三には、こういう状態においては、何かの偶発事件が今までよりも起るおそれがふえて来たということも私は事実だろうと思う。すでに蒋介石の飛行機が中国の南の方で、何かパンフレツトをまいたというような電報も入つております。さらにわれわれの心配するのは、アジアの共産主義でない諸国、インドとか、インドネシアとか、ビルマとか、そういう諸国に対してもいい影響を与えるものでない、こういうことは明らかだと私は思います。また総理はしばしば否定されておりますけれども、外務大臣も同様でありますが、いわゆるアジアにおいて反共の連合軍を結成しようとするような空気を助長促進するということも疑いないのでありまして、要するにこの程度のことはほとんど論議の余地が私はないと思います。台湾でもすでに家賃が下つたとか、金の価格が上つて来たとか、こういうようなことも外電は報道しているのであります。従つてこの程度のことは大体議論のないところでありますから、それを政府が事前に通告を受けて、何も措置をとらないで静観しておられたということについては、政府に手落ちがあつたのではないかと私は思いますが、これについて……。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは元来アメリカ自身が決定するところでありまして、アナリカ側は、ただ従来の関係から見て、事前にこの考えを通告して来たんだと思います。しかし中立放棄ということによつて起る四つの事実といつても、既定のようにお考えになつておりますが、たとえば朝鮮の事変が長引くか長引かないか、これは見解の相違でありまして、私はむしろ長引かないで短かくなるのじやないかと考えております。しかしこれはいずれにしましても事実が示すのでありまして、ここで議論いたしたくありませんが、あなたのおつしやるように必ず長引くのだときまつているとはとうてい考えられません。それからまた太平洋同盟といいますか、何といいますか、そういう方向に向いつつあるのだというようなことも私はとうてい考えられないのでありまして、さらにアイゼンハウアー大統領のステートメントをよく見ますと、平和の維持ということに非常に強く考えを及ぼしておるようでありまして、これによつて平和が乱されるというようなことでなく、アイゼンハウアー大統領はおそらく逆な考え方をいたしておるのだと思います。
  71. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私は日本政府と対照してイギリスの場合を見ると、現実にもう利益が上つておると思う。イギリスの政府は御存じのように、これに対して抗議をしたりいろいろ折衝したのでありますが、少くともイギリスのイーデン外相が――われわれはイーデン外相とも立場を異にする者でありますが、とにかくそれにしても、このイーデン外相が議会の報告として伝えられるところによりましても、これによつて一つはアメリカ側に侵略的な意図がないということについてはイギリス政府は承認した。いま一つ、いかなる重大問題の決定でも、これは事前に相談をするという確約を得たいということを、国会に報告しておるのであります。日本の場合には、われわれはいまだ事前に相談するという確約が得られたということについて、総理からも外務大臣からも何のお話を承つておりません。アジアの事態は非常にデリケートでありまして、日本の立場は非常にわれわれにとつて重大でございますが、こういう現実の利益をすでにイギリスは得ておるのでありますから、たとい抽象的で一般的な基本方針を事前に通告された段階においても、政府としては自主的に日本の立場を宣明してそして何らか日本の平和と安全のために努力される必要がありたのではないか。その点で私は失敗されたものと遺憾ながら認めざるを得ないのでありますが、その点について伺いたいと思います。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本政府は、日米安全保障条約に基く行政協定の二十四条におきまして、極東の平和を脅やかすような事態、もしくは日本に緊迫せる危険が起り得るような事態の場合には、両国政府間に遅滞なく協議をいたすということが、もうすでに決定いたしておるのでありまして、このことを契機として、そういうことをする必要はないと思います。
  73. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私はそういう事務的なことを申し上げたのではないのであります。私自身もごく一般的に申し上げれば、世界戦争の危険というものは、ある程度近来緩和しつつあつたものと私どもは認めるのであります。ただアメリカの新しい大統領の政府ができまして以後、さらにその状態を逆転させて戦争の危険を助長する方向に行きつつあるものと見ますので、そういう一般的な情勢のもとで、教書のようなああいう重大なもので一定の政治的な方針が出された場合、そしてその政治的方針の今後の推移いかんによつては、日本が現実にどういうふうな影響を受けるかもしれない。こういうような事態においては、私は政府はもつと真剣になつて努力される義務があると思いますが、しかしそういう努力を払われなかつた点ははなはだ遺憾だと思います。  次に話を進めまして、さらにもう一つ承りたいと思いますことは、国連本部からアメリカの某記者が打つて来た電報でございますが、そこに私は三つばかり重大な点があると思うのであります。その一つは、アメリカ政府国民政府日本とフイリピンとタイと、この諸国が今後地上軍を編成してつくるその兵力について、すでに詳細な検討を開始したと解されているという観測記事の電報を打つて来ております。そういう程度に向うの国連の記者などは観測しておるようでありますが、こういうことについて何らかの情報を持つておられるか。その情報の具体的なものがあるかどうか。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そのような情報は全然ありませんが、総理はしばしばこの点について当委員会その他においてはつきり申しておるのでありまして、新聞報道よりも総理大臣の言明を御信用せられんことを望みます。
  75. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 どうも新聞の報道がなかなかこのごろは真実を伝えることが多いので、もう一つその点に関連してお伺いします。これは憲法との関係でございますので、総理にお願いいたしますが、日本は平和憲法のもとで戦力を持たないことになつておるのでありますが、こういう観測がございます。アイゼンハウアー大統領は、もし軍事力が国連の決定あるいは国連のもとにある地域的防衛機構によつて使用されるならば、日本が自衛力を持つても右の憲法には違反しないと信じている。こういうのでございまして、国連の決定もしくは国連のもとにある地域的な防衛機構によつて使用されるならば、日本は戦力を持つて憲法上違反しないというふうに観測している記事がありますが、要するにこういう見方に対して総理はどういうふうにお考えになつておりますか。
  76. 吉田茂

    吉田国務大臣 戦力は憲法が禁じておりますから、国連でそういう決議があつても――私はそういう決議はしないと思いますけれども、日本としてはこれにただちに従うわけには参らぬと思います。
  77. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 それでは時間が参りましたから、もう一つ二つお尋ねいたします。この前の予算委員会におきまして外務大臣は、行政協定の改訂の問題につきまして、行政協定の改訂についての、おそらく下交渉だろうと思いますが、これは好望である、非常に望みがあるというようなお話をされましたが、大体行政協定のどういう事項についてどういうふうに改訂しようとしておるのか。それともう一つ、どういう理由によつて交渉が具体的にうまく行きそうだというふうに信じられて、ここでお話があつたのか。その二点を……。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は記憶はありませんが、行政協定の改訂が好望――そういうことを言つたことはないと思いますが、行政協定は必要があれば、NATO協定が発効したときは別としまして、発効しない場合でも、一年たてば改訂を協議するということになつております。それは今いろいろ研究しておりますが、過去一年間の実施によりまして、双方でもいろいろ考えるところがありますから、私の方でも研究しておりますし、先方も研究しているだろうと思いますが、リーズナブルな改訂は、私は前にそういうことを言つたとは思いませんが、決してむずかしいことではない、こう考えております。
  79. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 改訂の内容などについて、何らお触れになりませんが、これは今後の事態が明らかにしますから、時間もないからその点はこれでやめておきます。  もう一つお伺いしたいのは、外電などによりますと、イギリス、フランスの総理などはワシントンを訪問する予定があるようでございますが、日本総理にはそういうことはないのか。それから去年の暮れアイゼンハウアーが朝鮮へ来られたときに、どうも日本へ寄られるのではないかというようなうわさもわれわれは耳にしたのでありますが、なかつたようでありますけれども、日本は呼ばれておらないのかどうか。それからいま一つ、別にことしの三月ごろダレス長官が来るというような電報もありますが、それについて政府の方ではどういう情報を持つておられるか、どういうようなことが問題になるのか、というようなことについて伺います。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アイゼンハウアー元帥のことは、これはいろいろ機密保持ということもありましようし、ほんとうに朝鮮前線をごく短期間視察したということでありまして、日本に寄る、寄らないということは別問題だと思つております。もつとも寄られればそれは歓迎いたしたでありましようけれども、それは別問題であります。それから、ダレス長官の話は、新聞では見ましたけれども、正式には何ら公報を受けておりません。吉田総理大臣アメリカ等においでになつたらどうかというお話でありますが、吉田総理がおいでになることは非常にけつこうだと思いますが、これは吉田総理の御意向を伺わなければ、何とも私から申し上げられません。
  81. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 私は、おいでにならぬかじやなくて、行かれるような状態になつておるかどうかということをただ聞いただけです。最後にわれわれの希望を一つ申し上げておきます。私どもは、外交方針につきまして、政府と根本的に見解が違うものであります。それから私どもの立場は野党でございますし、政府アメリカ追随一辺倒の立場であります。あわれわれの立場は、われわれは正しいと信じ、ほんとう日本の国を守るためにはこのほかにないと信ずるから申し上げるのでありますが、本会議あるいは外務委員会などで、特に岡崎外相などの態度は、何かわれわれに挑戦するかのような印象を与えておるのでありまして、私は政府は、特に行政協定や安保条約のようなもとにおいては、野党の意見に対して十分にこれを尊重すべきものと考えます。イーデン外相の、ごときもこの間のアイゼンハウアーの問題が起きましたときには、国民特に野党が強硬であるということをやはり伝えて、ダレス氏と交渉されたように、新聞を通じてわれわれは知つております。従つて総理は、今後国民とともに外交をやる、いわゆる国民外交の建前から申しましても、見解が違う者の意見に対しましても十分の尊重をしていただきたいということを、特に要請いたしまして、私の質問を終ります。
  82. 成田知巳

    ○成田委員 関係質問
  83. 太田正孝

    太田委員長 成田君、かねて理事会でお約束した時間がごくわずかしか残つておりませんから、その範囲内で簡単に……。
  84. 成田知巳

    ○成田委員 ただいまの伊藤委員の質問に関連して総理にお尋ねしたいのですが、各議員がアイクの一般教書について質問しましたところ、総理は国際関係はむしろ緊張を減じておる、あるいは将来の見通しは困難である、こう言つておられる。私率直にお尋ねしたいのですが、このアイクの一般教書に対して、英国、フランス、その他の国は、相当手きびしい批判をしておる。またインドにおいても非常に不満の意を表明しておる。この一般教書並びに一般教書から予想せられるアメリカ政策の変更というものが、日本にとつては非常に重大な関係があるのですが、率直に吉田内閣として、このアイクの一般教書に好感を持つて迎えておるのか、あるいはイギリス、フランス、その他と同じように、相当批判的なお気持を持つておりながら、ただ言えないというだけで、表面にお出しにならないのか。この受入れ方についてお気持を伺いたは。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はアイゼンハウアー大統領の教書に対して批判をすることは好ましくありません。また特に好意を持つて見るか、あるいは批判的に見るかと言われても、別段私として批判的に見る考えはなし、ただ教書をそのまま率直に読んでおるのであります。これに対して批評はいたしません。
  86. 成田知巳

    ○成田委員 教書を率直に読むのはだれでも読めるのです。ただ一国の総理として、この重大なアイクの一般教書が、日本に対して好ましいものであるか、あるいは好ましくないものであるかということは、当然政局を担当しておる総理として、考え方がおありになるはずであります。現にイギリス、フランスでさえ、あるいはインドでさえ、率直に態度を表明しておる。日本だけが言えないはずはない。もう一度総理として、この教書に対していかなるお考えを持つておるか、見通しをお聞きしておるのではないのです。教書そのものに対する総理のお考えを伺いたい。
  87. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の考えは今申した通りであります。
  88. 成田知巳

    ○成田委員 いわゆる独立国になつたと言われる日本総理大臣が、アメリカのこの重大な一般教書に対して、何らの意見も言えないということは、私どもとしてはまことに残念だと思います。察するところこの教書に対して、世界のほとんどすべての国は反対しておる。ただこれを賛成しておるのは亡命政権の蒋介石あるいは李承晩政権吉田内閣は第三番目としてこの教書に対してある程度と申しますか賛意は表しておられるけれども、その意思を発表することが、国際にあるいは国内的に大きな反響があるというので、今総理はそのように逃げておるのだと私は想像するわけです。それからもう一点、これは外務大臣にお伺いしたいのですが、外務委員会で、わが党の帆足君がこの一般教書の問題について、もし満州爆撃をやつた場合にどうするか、世界大戦に発展するのではないか、こういう質問をいたしましたところ、外務大臣は満州爆撃をやつたからといつて、必ずしも報復爆撃をやるとは限らない、現に満州国境を越えて、中共から朝鮮に爆撃に来ておるじやないか、こういうことを言われた。このことは逆から言えば、日本爆撃を正当化しておる考え方とも私たちは考える。また現実の問題として中ソ友好条約というものがある。もし日本及び日本と結んだいかなる国の攻撃があつても、ソ連と中共は共同でこれらの敵と戦うという明文がある。従つて満州爆撃をやつたとすれば、当然日本は報復爆撃を受けることを予想しなければならぬ。にもかかわらず中共から朝鮮に爆撃に来ておる。それに対して報復爆撃がないのだからというようなことを言つておる。これは現実の国際情勢というものを無視した言葉だと思う。特にそのあとで新聞記者に談話を発表して、社会党が平和攻勢をやるものだからことさらに言つたのだ、こういうことを言われておる。まことに外務大臣としては不謹慎だと思う。外務大臣の御見解を承りたい。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろ言うことについて言葉じりをとられると、議論は盛んにできますけれども、私の申したのはそうではなくして、平和々々と言いながら、とにかく鴨緑江を越えれば大戦争になるというような宣伝をされるから、そう戦争というものはむやみに起るものではない、われわれはそんなに戦争ということでおどかされる理由はないと思いますから、ただそう申しただけで、もし言葉が十分でなかつたらそれは訂正いたしますが、趣旨はそういうことであります。
  90. 成田知巳

    ○成田委員 中ソ友好条約という厳然たる条約があるということを外務大臣は御存じだと思う。従つて今度のアイクの一般教書というものは、マツカーサーの戦略の再現なんです。満州爆撃をやれば、当然日本としては報復爆撃があるということを予想しなければならぬ。これに対して外務大臣が、ないと言うことは、中ソ友好条約の存在を無視しておる言葉だと思いますが、その見通しについてもう一度承りたい。
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そのときの速記を、ごらんになればわかると思いますが、報復爆撃はないとかあるとか、そういう議論をいたしたのじやないと思います。
  92. 成田知巳

    ○成田委員 あるとか、ないとか議論をしたことはないと言われますが、その議論の仕方がおかしいと思います。満州爆撃があつた場合に報復爆撃があるのではないかということに関連して、中共から満州国境を越えて爆撃に来ておる。それに対して報復爆撃がないからないだろう、こういう論理はだれも納得しない。やはり現実の事態から満州爆撃があれば報復爆撃もあるも了と思わなけれ繁らない。現にマツカーサーが首になつたのもそこにあると思います。大戦への発展の危険があるというので首になつた。ましてや日本の外務大臣が、その問題についてそういう議論はしていないのだと言つて、事実をごまかされることはおかしい。満州爆撃をやつた場合にどういう事態が起るかということを、国民に明確に示すべきだと思います。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今申した通り、報復爆撃があるとかないとかいうことを全然申しておりません。どうぞ速記をごらんください。
  94. 太田正孝

    太田委員長 成田君、今のお話は外務大臣の言われたように、速記を見て判断されるべき問題だと思いますから、この辺にとどめていただきたいと思います。  これにて休憩します。午後一時半より再開いたします。     午後零時二十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十六分開議
  95. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。早川崇君。
  96. 早川崇

    ○早川委員 それでは最初に吉田総理大臣にお伺いいたします。  第一は、日米安全保障条約を二年前に締結いたしまして、その中でアメリカの駐留軍にかわる、自己の責任における祖国防衛の自衛力の漸増を約束しておるのであります。すでに二年に近くなつておるのでありまするが、政府はこの条約にのつとりまして、いかなる自衛力漸増の計画を立てておられますか、まずお伺いいたしたいと思うのであります。
  97. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。漸増については保安大臣その他から説明してある通り、保安隊の人員はふやさない。しかしその素質を向上せしむることによつて漸増の目的を達するつもりでおります。
  98. 早川崇

    ○早川委員 私は、自由党経済政策が場限りの、その場限りの自由放任経済をとつておられると同じような意味において、自衛力漸増に関しましても、何年後はどういう防衛力を持つか、どういう自衛力を持つかという計画を持たないのではないか、場当りの手放しの放任政策ではないか、私はそれは日米安全保障条約を結ばれた吉田内閣のきわめて無責任な条約履行の態度であると思うので、私が吉田さんにお伺いいたしたいのは、総理大臣として、条約の義務を果す意味において、何年後に大体どの程度の自衛力を持たなければならないか、それを伺いたいという意味でございます。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。政府の計画をもつて場当りもしくは――何と言われましたか、ということは、あなたの批評の御自由でありますが、政府としては場当りではないのであります。現在の人員をもつてまずその素質を向上せしめ、よつてつて漸増という意味を……。
  100. 早川崇

    ○早川委員 年度計画はないのですか。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところはありません。
  102. 早川崇

    ○早川委員 持つてない……。
  103. 吉田茂

    吉田国務大臣 持つてない。
  104. 早川崇

    ○早川委員 それはおかしいな。
  105. 吉田茂

    吉田国務大臣 おかしいのは、あなたがそう思うので、政府はおかしくないと思う。
  106. 早川崇

    ○早川委員 U・Sニユーズ・アンド・ワールド・リポート誌の報ずるところによりますと、大体の日本軍備進行状況について、アメリカ側の意向を次のように報じておるのであります。日本軍事力の増強に関しては、戦備計画中最高の優先権を与えておる。二番目は、日本を攻撃から守るため、陸軍のほか海軍と戦術空軍を予定しておる。これはアイゼンハウアー大統領が標榜する、アジアを共産主義の脅威から守るためにアジア人を使うという目標に従つた措置である。第三番目は、日本の陸軍は、大体一九五三年末までに、現在よりもさらに七万名を追加して、戦闘力を十一個師団にするようアメリカ側は要望しておるが、現在のところ日本政府は同意を渋つておる、アメリカ日本陸軍を大体三十万名程度に予想しておるということを報じておるのであります。この報道がどれほど真実であるかは別といたしまして、吉田総理大臣に伺いたいのは、一九五三年末までに、さらに七万名の地上兵力の要請、すなわち十一個師団までを限度としての日本防衛力の強化に関して、日本政府は、何らかの形においてそういう話合いを受けたかどうか、新聞紙上においては、そういうことも昨年来報じております。その点をお伺いいたしたいのであります。
  107. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としていまだ公式にそういうような話は受けておりません。
  108. 早川崇

    ○早川委員 総理大臣と少し違つた意見を、木村保安大臣は日本の自衛力増強について述べられました。それは一月十八日に大阪で、日本の国土は日本人みずから守らなければならない、しかも将来の日本の祖国防衛は、空軍中心防衛力でなければならないということを、責任ある大臣がはつきり言明しておるのであります。私はこの機会に、木村保安大臣の祖国防衛、自衛力漸増の――あなた個人のお考えかもしれませんが、この大阪談話に関連いたしまして、空軍中心防衛力という構想についてお聞かせ願いたいと思うのであります。
  109. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。まず私が申し上げたいのは、一体自衛力とは何ぞや、これは独立国家として立つ以上においては、自衛力の必要なることは論をまたない。私の考えでは、自衛力とは、いわゆる一国の経済力、国民精神力、狭義の武力、これを総合したものをさす、こう解釈する。今申します通り、一国としてはこれらの総合力をどこまでも強化して行つて自立をはからなければならない、これは申すまでもないことであります。そこで問題は、この三つの中の狭義のいわゆる武力の自衛力をどう思うか、これだろうと考えております。ただいまの保安隊、警備隊は、保安庁法第四条において明白に規定しておる通り、わが国内の平和と秩序を維持し、人命、財産を保護するために、特別に必要がある場合に行動すべきいわゆる部隊でありまして外国との戦争を目的として設置されたものではないのであります。ただただ一国の平和と治安を守るべき最後の手段として設置されたものであることは申すまでもないのであります。しからば外敵の侵入に対してはどうするか。これはただいま日本軍備は何もないのでありまして御承知通り日米安全保障条約において、直接侵略に対してはすべてアメリカ軍がこれを担当することになつておるのであります。しかし私が大阪において申したのは、将来日本が真に経済力あるいは国民精神力が発展して、みずからの力によつてみずからの国を守るということでなくてはならぬ、私はそう確信しておる、いつまでもアメリカのごやつかいになつてつてはいかぬ。これは何年先かわかりませんが、われわ一日も早く日本の国力を増進し、精神力を活発にして、みずからの手によつて国土防衛の任に当ることは当然の義務であります。しからばそのときにおいてどうするかという問題でありますが、そのときに至れば、私は日本防衛力に関して一番必要なことは空軍である、こう考えておると申したのであります。  最後に申しておきたいのは、日本は外敵の侵入に対して、今は日米安全保障条約でもつぱらアメリカの力にたよつおる、ただく内地の平和と治安を維持するために保安隊、警備隊をつくつておる、こういうことであります。
  110. 早川崇

    ○早川委員 吉田総理大臣は、全然年度的な計画なしに自衛力漸増の二千億に近い予算をつくつておる、まことに国民としては驚くべきお答えをいただいたのでありますが、先般、元商相であります伍堂氏が、野村大将以下、経団連によつております保科中将その他による日本の自衛力の計画――大体空軍三千機案を持つて来られた。ほんとうにあの安全保障条約による趣旨で行くならば、こういうものを経団連あたり元職業軍人がどんどん計画しておることは非常に危険である。ドイツにおいてはブランク機関というものがありまして、正式にドイツの自国防衛をどうするかということを、再軍備するかせぬかということと無関係に、当然政府として考えなければならないという国民に対する高い義務から、それぞれの専門的な防衛に対する計画に着手し、実効をあげておるのであります。こういうものを民間でやられるのなれば、国内の防衛その他に関して、条約に制約せられておる政府みずからが、そういう機関を設けて、自衛力漸増の本格的な計画を立案される義務ありと私は感ずる。この点に関しまして全然無計画である、年度計画は持たぬと言われました誤りを、この機会に吉田総理大臣は率直に改められまして一歩進んだ条約履行の態度を示されてはどうか、吉田総理大臣の所見を私は伺いたいと思うのであります。
  111. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申したことは、政府に計画がないと申すのではないのであります。政府としては十一万の保安隊をもつて、これの素質なり施設なりを改良して行く、これがすなわち漸増である。すなわちこれが政府の計画であります。伍堂とか野村大将がどういう計画をしておるか、私のあずかり知らないところであります。政府としては保安庁が将来の計画、現在の計画等については、慎重に研究をいたしております。
  112. 早川崇

    ○早川委員 木村さんにお伺いしたいのですが、遺憾ながら保安庁においては総理の言われるような研究をしておらぬ。具体的な例を申し上げますと、あまりにも無計画であるために、すでに海上保安庁でつくりました警備船が、代船をしなければならないような段階に至つておる。もしそれ計画的な自衛力漸増の線であれば――当然船齢というものは十五年ぐらいはもつのであります。ところがすでに五、六隻の掃海船が、高い経費で代船をつくり直さなければならない。さらにまたこのたび千五百トンと一千トンの軍艦に近いものをおつくりになるというような計画を立てられて、それの予算を二十八年度に盛つておりますが、これは艦艇を建造することに少しでも知識を持つておる人ならば、まことに笑うべきものであります。どういうふうに笑うべきかというと、まずその基本設計をするのに半年かかる、さらにそのほか細目の設計をするのに半年かかる、一年かかるのであります。にもかかわらず、これから設計を始めて、しかも二十八年度で予算を組むという、ちよつとしろうとはごまかせますけれども、くろうとから見ればまことに笑うべき無計画な自衛力の漸増でございます。今後そういつた問題が非常に多く出て来るのであります。一般の平和産業と違つて、こういう防衛生産というものは二年、三年、五年という年度別の計画を立てなければ、本年つくつたものがすぐだめになる。二千億に近いこの予算がそういう無計画な自由放任の――国内産業なら自由放任政策もまだいいが、まことに予算の浪費になり、自衛力にならないという事実がすでに起つておるのでございます。私は、吉田総理大臣が保安庁で計画していると言われますが、こういう一、二の例を取上げてみましても、何らの計画を持つておらないものと思う。もしお持ちならば、どうかこの機会に木村保安大臣の御計画を首相の前で御発表になつていただきたいと思います。
  113. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま警備隊で持つておりまするいわゆる雑船、掃海艇など数隻のものが、すでに艦齢に達して代船を建造しなければならぬ状態である、これは無計画であるという第一の御質問であります。これは私が就任前のことでありますが、決して無計画のものでなかつたと私は確信しております。と申しますのは、申すまでもなく警備隊創設後日いまだ浅いのであります。しかもその当時において、いろいろの雑船を早急に何とかしなければならぬという建前から、一日も早くこれらを海岸の警備につかせなければならぬという観点から、船を求めてやつたものであります。もちろんそのときに優秀な船を建造しあるいはこれを配船すればよかつたでありましようが、事早々の際でありますから、やむを得ずそういうような雑船までも使わなければならぬというような立場になつたのであります。従いまして現在といたしましては、かような老朽いたした雑船を一日も早く新造船にかえて、警備のまつたきを期したいという念から、われわれはこの計画を立てたのであります。また二十八年度予算において要求いたしました警備船の問題に触れられたのでありますが、もちろん仰せの通りであります。これの設計においては、相当の日時がかかることは申すまでもありません。しかし計画を立ててこれを設計に上せるのに日がかかりますからといつて、そのまま放置することはできないのであります。早川さんも御承知通り日本の海岸警備というものはなかなか容易ではありません。幸いにしてアメリカから相当の船を借入れることになつたのでありまするが、しかしこれらの船といえども優秀な船だとは私は決して考えておりません。一日も早く日本において海岸警備に適切なる船をつくりたいと考えております。その一つの現われといたしまして、まず昭和二十八年度予算において数隻の船を建造する予算を要求したのでありまするが、これらの船につきましては、早急に設計をし、その建造に着手いたしたいと考えております。来年度においては、フリゲート船あるいはLS船の能力を急速に検討した上におきまして計画を立てたい、こう考えておる次第であります。
  114. 早川崇

    ○早川委員 この点は問題の核心に触れないので押し問答になりますが、要するに、日米安全保障条約による、米軍が撤退して、自己の責任において日本防衛することを期待するという要望に沿い得るような防衛計画を持つておらない。ほんの間に合せの、そのときそのときの小さなものより持つておらない。こういうことが大体お二方のお話で聞きとれるのであります。従つてこれではいかぬ、平和条約にはわれわれも賛成したのであるが、政府はむろんその責任者である。私の申したいのは、ドイツのブランク機関のような専門家を集めて、内閣において自衛力漸増計画を立てた上で――場当りのといつたら語弊がありましようが、きわめて短期的な計画を、二千億に近い予算でまかなつて行くということは憂慮にたえない。私は総理に、そういう自衛力漸増計画の機関なり人員の整備をして、本格的に安保条約にごたえる体制をつくる意思ありやなしや、この点をお伺いいたします。
  115. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府防衛考えについては、しばしば申すようでありますが保安隊と安全保障条約によつて守る。その限りにおいては現在の計画で十分であると考えるのであります。年度計画といわれますけれども、日本が自衛力を漸増し、もしくは独立の海軍力を持つということは、国力に照応すべきものであつて、現在の国力がこれを許さないからこそ、保安隊もしくは安全保障条約によつて国の安全を期することのやむなきに至つたのであります。もし日本の国力が許すならば、いわゆる年度計画も必要でありましようが、まず日本の国力を培養することが第一と考える。培養した後において年度計画その他は立案し得るでありましよう。現在の国力、経済力をもつてすれば、現在の計画をもつて足れりと満足せざるを得ないのであります。
  116. 早川崇

    ○早川委員 そこに吉田総理大臣の国際関係における認識の非常な矛盾と齟齬があると思うのであります。ニユーヨーク・タイムズは、最近の記事の中で、日本の九百万の予備兵力の調査を開始した、こう言つておる。さらに一方アイゼンハウアー政権が新たに台頭いたしまして、日本防衛の促進と、アジアはアジア人で守れという線が強く出ております。アイゼンハウアー大統領が就任後、アメリカ大使館に第一に訓令されたものは、どうして日本人がみずから守るような気持と態勢になることができるかという、その方法と課題をいかに解くべきか、これがアメリカ大使館の第一の重要な課題であつたと私は聞いておるのであります。さらに先般ハワイで太平洋の学術会議といいますか、日米の学界の人たちが寄りまして、何ゆえに日本人は自分の国を自分で守ろうという態勢にならないのか、こういう疑問が満場一致で出されておつたと、帰つた人に私は聞いたのであります。そこで問題の根本は、国民はあの条約を結んで以来その必要を感じておりながら、最も責任者である吉田さん自体が、この問題に対してはつきりした責任と、これに対する考え、決意を持つていないということが、この問題の最大の隘路であると結論されておるのでございます。こういう意味において、予算もすでにイタリア、スエーデンその他の、西欧のいわば国力において二等国程度の国と同じくらいの二〇%に近い国防費になつておるのであります。この四月にダレス氏が日本に来朝される。ダレスさんは御承知のように何でも具体的にきめて行かれる方のようで、欧州諸国ではずいぶん思い切つたことを言つております。はたして吉田さんの今までのようなほおかむり的な、消極的な、ネガテイヴな自衛力漸増に対する政府考え方で押し通せるかどうか。国際的な圧力、国際的な生きた政治の動きというものに取残されたような姿になつておる。これは私は吉田さんが卑怯だと思う。結局今自衛軍備というような方向に進むと、いろいろな国内の反発が出て来る。結局アメリカの圧力に屈したのだという印象を国民に与えることを望んでおられるかおらないか知らないが、結果においてはそういうことになることは、あまりにも明白であります。このことは日米の今後の国交に対して、私は心から深憂にたえないとともに、吉田さんなり向井さんが言われるように、国民負担をかえつて重くするものであると思う。おそらく自衛の決意さえ天下に声明するならば、必ずアメリカの軍事援助、これは手弁当で今以上のことができるという見通しを、私はある筋からはつきり持つておるのでございます。こういう観点からながめた場合には、吉田さんのそういうほおかむり的な、ネガテイヴなこの自衛軍備に対する考え方は、国民の負担を軽くするものではなくして、逆にこれを重くするとともに、日米の将来の国交のために、自分がひとりいい子になつて、日米両国民ほんとうの融和というものに対しては逆な結果を生ずるということを私はおそれるのでありますが、吉田総理大臣はこういつた重要な問題に対してどういうお考えを持つておられるか。私は今までの行きがかりにとらわれないで、国際情勢の大きい流れに立つて、大胆率直にお考えを改むべきではないかと思うが、首相の所信を伺いたいのであります。
  117. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、アメリカ大使館にそういうような問合せの訓令があつたことを私は毛頭知りません。だからその真意がどこにあるかということも存じません。あなたが、あなた自身の見通しによつて立てられた意見に対して批評をしろとおつしやられても、私はこれは御辞退をいたさざるを得ません。
  118. 早川崇

    ○早川委員 それでは私が今申したことに対する何らの回答になつておりません。私はこの論争の結末は、事実をもつて解決を迫られるという見通しを持つておりますから、吉田総理大臣は、将来の事態の発展を通じて本日の論争をよく御反省願いたいと思うのであります。  さて、吉田さんのがんこさはなかなか所信を改められないので、次に論点を若干建設的な方面に進めてみたいと思うのであります。首相は保安庁の開庁式において、保安隊は新国軍の基礎であるという訓示を昨年なされました。(「古い話だ」と呼ぶ者あり)古い話であります。さらに私は保安隊その他をながめまして、これは実体は安保条約による自衛軍備のさなぎの状態であることは明々白々な事実である。これは与党の諸君もすべてお認めであります。このことは隊員諸君の士気にも影響する問題でありますから、私はこの事態の発展は憲法上はこういうことではなかろうか。現憲法の中でも将来自衛軍備ができるということを前提にして考えておられるととらざるを得ないのであります。言いかえれば、二日前のニユーヨーク・タイムズによりますと、この日本防衛に関してこういう記事が載つております。日本憲法は国際間の紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、さらに陸海空軍その他の戦力はこれを保持しないと規定している。「しかしアイゼンハウアー大統領は、もし軍事力が国連の決定あるいは国連のもとにある地域的防衛機構によつて使用されるならば、日本が自衛力を持つても右の憲法には違反しないと信じている。」すなわちアイゼンハウアー大統領自体が信じている。この憲法は、アメリカマツカーサーから押しつけられた憲法であります。そういう観点から言いますと、あの日米安全保障条約というものを現憲法のもとにおいて結ばれたということと関連いたしまして、あの中でアメリカ駐留軍にかわる日本の自衛軍備の創設ということを期待されておるが、これは憲法第九条に違反しないというように考えて締結されたというのがすなおな解釈、それが具体的なこの軍備の日程がどんどん進んで参つた。しかも吉田さん自体もすでに半年以前に新国軍の基礎であると言つた。私が見て参りますと、あれはまさに自衛軍のさなぎの状態よりもう少し成長しておる。さらに先ほど申しましたワールド・レポートの報告でも、そういう具体的な計画として見ている。さすれば、私はこの機会に吉田総理大臣にお伺いいたしたいのだが、現在の憲法改正しないと言われたその真意の中には、アイゼンハウアー考えておるような憲法解釈、日本においては芦田博士、さらに佐々木博士、最近は高柳博士あたりが言われておるように、いわゆる目的によつて憲法違反になる。国連軍あるいはそのもとにおける集団安全保障は、平和と民主主義を守るための組織であるから、そのもとにそれに服従する意味の平和を守るための自衛軍は憲法改正せずしてなおかつできる。こういうような解釈で進んでおられると見るのがすなおな解釈の仕方である。私はそういう意味において、日本の保安隊員を、日本憲法に抵触するのではないかというような不安な、士気の上らない、投げやりな気持にほうつておくよりも、この際明確に、こういう考え方で進んでおるという、事実をもととしての憲法解釈をこの機会に明らかにされた方が、政府としてはりつぱな態度である。また保安隊員の思想上においてもいいのではないか。これはひとつ率直に総理大臣なり木村保安庁長官の御所見をこの機会に伺いたいと思うのであります。
  119. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま憲法上の御議論が出たようでありますが、憲法第九条第一項においては、国憲の発動たる戦争と、武力による威嚇と武力の行使は、国際紛争解決の手段としてはこれを禁止するということになつておるわけであります。そこで問題は自衛力の点にある。この条文からいたしまして、国家の自衛力というものは、決して否定されたものではないと私は考えております。ただただ武力によつて威嚇したり、あるいは国際紛争の解決の手段として武力を行使したり、あるいは戦争したりすることはいけない。しかしこれは一国の自衛力というものを持つてはならぬという規定ではないと私は考えます。しこうしてこの自衛力の限定いかんという問題であります。ただ第二項において、陸海空軍その他の戦力はこれを保持してはならぬという規定になつている。そのにらみ合せであります。あなたの仰せになりまするように、自衛力のためなら、軍備を持つてもいいのだという学説のあることを私は知つております。佐々木惣一博士の、ごときは、明らかにこれをまつこうから言つている。決して自衛のためなら自衛力は否定されていないのだ、持つていいのだという有力な学説もあります。しかし通説といたしましては、たとい自衛のためであつても戦力は保持してはならない。これは現在の通説であります。政府もその通説に従つて、自衛力は禁止されてはいないが戦力はこれを持つてはならない、戦力に至らざる自衛力は持つてよい、こういうことになるのだろうと私は考えております。そこで現在の保安隊、警備隊は、これは決して戦争を目的にするためではありません。自衛力と申しましても、これは外敵に対して備えるものではないのであります。これは先刻申し上げたように、保安庁法第四条によつて明らかに規定されておるのであります。この規定の範囲において保安隊と警備隊は設置されておる。ただ国内の平和的治安の維持のためにできておる。この限度においてわれわれは保安隊、警備隊の内容を充実いたしまして、そうして国内の治安の確保に万違算なきを期しておるような次第でございます。  そして保安隊、警備隊の志気の問題であります。今これを軍隊と言わずして保安隊というのであれば、志気が上らないのではないかという御議論であります。一面の真理はあると私は考えております。しかし私の最近に視察した限りにおいて、隊員はきわめて志気旺盛であります。私は喜んでおります。この保安隊員がどういう考えを持つておるかと申しますると、われわれはこの国内の平和的治安をどうしても維持しなければならぬのだ、これは先決問題だ、一国の政治にしろ経済にしろ文化にしろ、国内の治安が乱れては維持することができないのだ、何よりも国内の平和的治安を維持しなければならぬ、その大任をわれわれは負つておるのだ、われわれは志願して来ておるのだ、この任務こそ重大である、われわれまつしぐらにこの道を進まなければならぬという自覚のもとに、多くの隊員は今度志願をして来たものであります。きわめて志気旺盛であります。その点について、どうぞお喜び願いたいと私は考えるのであります。
  120. 早川崇

    ○早川委員 そうすると木村保安大臣の御解釈では、日米安全保障条約というものは、憲法第九条によつてこれを存置しなければならぬ。そのもとに結んだ。あの中でアメリカ軍が漸次撤退して、日本がみずからの責任において日本を守るという意味で、そのために必要な自衛軍備というものをつくることは、先ほどもお話がありましたように憲法第九条第二項に違反しないと解釈してよろしゆうございますか。
  121. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは先刻も申し上げました通り、この自衛力が戦力に至らない程度においては、これはさしつかえない。いわゆる外国との戦争を目的とし、しこうしてその内容において戦力に相当することになりますれば、これは憲法改正がここに問題として起ると思います。
  122. 早川崇

    ○早川委員 内容においてはすでに戦力であります。これはもう疑う余地はない。問題は、私の問うのは目的が違う。そこをアイゼンハウアー大統領もそう信じておるというこのニユーヨーク・タイムズの記事でありますが、私はかつて木村さんが原爆を持つたら戦力だ、原爆を持たなかつたら戦力でないというような、あまりにも何といいますか、法解釈上無理な、子供じみた御議論ではなくしてそういう意味ではなくて目的によつて違うのだという考え方をとられておるのかどうか、私はその点を聞きたかつたのであります。現在では、内容がすでに戦備であることは、だれだつてもう異存のないところであります。
  123. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私が原爆を持たなければ軍隊でない、そういうことを申した覚えはごうもありません。私の申したのは、現在の国において原爆も持ち、ジエツト機も持つておる国があるじやないか、そういうような国の軍備日本の保安隊を比較してみれば、これはものの数に入らぬ。従つて日本の保安隊、警備隊を軍隊なりと言うのは誤りである、こう申したのであります。原爆を持たなければならないと言つたような覚えはありません。  しこうしてこの戦力の問題は、私がいつも申し上げます通り、近代戦を有効的確に遂行し得る総合能力、こう思うのです。しこうして現在の保安隊、警備隊、これを早川さんがすでに戦力の程度に達しておるのではないかというお話、これはおよそかけ離れたものである。早川さんもいろいろお調べになつたでありましようが、近代戦の様相なり近代国家軍備なりを比較いたしますると、はなはだ残念ながら今の保安隊、警備隊は月とすつぽんであります。およそかけ離れた存在であります。決してかようなものを憲法第九条第二項にいうところの戦力だと言うことはできない。
  124. 早川崇

    ○早川委員 それではこの問題に対して、最後に吉田総理大臣の見解をただしたいのだが、憲法改正手続を国会に出すことをやめられたと新聞で報じておる。さらに日米安全保障条約によつて、米軍にかわる自己の責任における自衛力をつくる。自衛力漸増ということは、吉田総理大臣憲法改正しなくてもやつて行けるとお考えになつておられるのか。これは仮定の問題だと言つてはねられるかもしれぬが、すでに安保条約を結んでから二年たつておる。それに沿つて、しからば自衛力漸増の計画をしてないかといえば、しておる。自衛力漸増の計画をしておるのだが、それは憲法第九条に違反しないという解釈でなければ、今やつておることが理解できないのであります。そういう意味において吉田総理大臣は、安保条約の自衛力漸増は米軍にかわるのですから――米軍は今戦力である。それにかわる自衛力でありますから、当然これは戦力と見なければならぬ。それをあなたは現憲法のもとにおいて結ばれた。国連の平和目的という言葉もあるにはあります。従つてそういう範囲内での自衛の戦力は第九条に矛盾しないという意味で結ばれた。私がすなおに考えればそう解釈すべきだ。これには議論がございます。しかしそう解釈するのがすなおな考え方である。アイゼンハウアー元帥がそういう信念を持つておるというニユーヨーク・タイムズの報道もしかりでありますが、その点をはつきりしておけば、今後いろいろな問題は学者の論争に譲ればいい。政府はこういう線に進んでおる。これを、ごまかしておる。ここにいろいろ問題が起つて来るので、時期もすでに条約が結ばれてから二年ですから、自衛力漸増の計画が進んでいるこの事実に照してこの機会に明快な総理大臣憲法解釈を伺いたいと思うのであります。
  125. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては、自衛力・漸増は、さつきも申した通り、素質の改善あるいは設備の改善等において漸増は企てておりますが、いまだアメリカの軍隊にかわるだけの力といいますか、戦力というか、かくのごときことは考えておらないのであります。ゆえに憲法改正の必要なしと考えております。
  126. 早川崇

    ○早川委員 これを逆解釈しますと、自衛力漸増が進んで行けば、憲法改正の要あり、こう裏から弁証法的な理論で解釈してよろしいですか。
  127. 吉田茂

    吉田国務大臣 現在においてはその必要なしと認めておる。必要なしと認めるゆえんは、漸増はしつつあつても、これが戦力、あるいはアメリカの兵隊の引揚げにかわるというところまで漸増いたしておりませんし、漸増する考えもありませんから、憲法改正の必要なし。
  128. 早川崇

    ○早川委員 そういう解釈から言えば、米軍にかわる漸増計画はやらないということになりますが、どうですか。
  129. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 先刻申し上げましたように、われわれ国民といたしましては、一日も早く経済力を回復し、国民精神力を高揚して、駐留軍にかわりたいのはやまやまであります。しかし現在の段階においては、遺憾ながらそこまで参りません。そこでまずわれわれといたしましては、先決問題として国内の治安を十分に確保して行く。一面において外国の侵入に対しては、日米安保条約において米軍の力を借りるということであるのであります。要は、将来日本の国力、精神力の問題であろうとわれわれは考ております。
  130. 早川崇

    ○早川委員 くどいようでありますが、自衛力が漸増してアメリカの軍隊と一部でも交代できるという段階になつたら憲法改正する意思があるかどうかということを最後にお伺いします。――はつきりしておいた方が政府のためにもよろしい。
  131. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 自衛力というものは、私が先刻申し上げました通り、一国の経済力及び国民精神力及び狭義の武力を総合したものであります。この狭義の武力がいわゆる戦力の程度までこれを引上げるということになりますると、これは憲法改正の要あり、こうわれわれは考えておるのでございます。この憲法改正に至らざる程度においてできるだけの国内の治安力をわれわれは保持したい、これが精神であります。
  132. 早川崇

    ○早川委員 ただいまの憲法改正の要ありという議論は、総理大臣もその通りでございますか。
  133. 吉田茂

    吉田国務大臣 木村国務大臣の意見通りであります。
  134. 早川崇

    ○早川委員 この問題はその程度で一応の結末がつきましたので次に移ります。保安隊、警備隊というものが一つのさなぎである間に将来せみになつたときの危険を今から防いでおかなければなりません。そういう意味において、あくまでも文民優位制、シヴイリアン・シユービアリオリテイ、つまり今まで軍隊ではないから、制服に対する背広の優位ということを言つてもよろしい。こういうことが一番大事かと思うのであります。ややもすれば旧職業軍人が現在の保安隊に採用されておるのであります。しかも聞くところによれば、大佐以上、中佐以上の人たちの思想は、今は民主主義でございますが、辻政信君などの唱えておる武装中立論というような思想にも、かなり思想傾向としては共鳴されておる人が多い。これは国連主義民主主義というものとは根本的に相異なる思想であります。孤立国防論、こういう危険な思想というものがやがて文民優位の民主的防衛組織というものをして、再び背広に対する制服の優位ということになり、それがやがて戦車、大砲を持つて民主主義の失敗に乗じた一つの独裁政治の母体になることは、過去二十年のヨーロツパ、アジア諸国の――最近はエジプトにおいてもしかりでありますが、そういつたものの歴史の教訓から、きわめてわれわれか重視しなければならないと私は思うのであります。私はこういう意味において、保安庁長官、さらには総理大臣にお伺いいたしたいのは、少くとも保安監補以上の人事は――保安監補といいますと准将でございます。保安監補以上の人事は国会の承認を得べきものと私は考える。アメリカにおいては准将以上は全部国会の承認を得ております。さらに戦車とか大砲とか機関銃を持たない、ピストルだけを持つた警察官がすでに公安委員会という背広を着た民衆の代表によつて任免されておる。ただ一つ、この保安庁の隊員のみが何らそういう面においてチエツクを受けないということは、私は今後の保安隊の発展をながめまして、まことに憂慮にたえないのであります。私はこの機会に、保安監補以上の任免は国会の承認を得べきものである。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕 制服に対する背広の優位をさなぎのうちからはつきり確立しておくことが、日本の将来のためにきわめて重要であると考えるが、私の意見に御賛成の意思ありやいなや、ひとつお伺いいたします。
  135. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの保安隊、警備隊の行き方についての御心配まことに、ごもつともであると考えております。われわれもこの隊の組織並びに運営につきましては、細心の注意を払わなければならぬと考えております。  そこでただいま仰せの保安隊なり、警備隊については、旧軍隊の将校が多数入つているじやないか、それらの動向については心配はないかという第一点の御質問であります。それにつきましては、われわれは採用するときおいて、十分慎重な態度をとつておるのであります。幸いにいたしまして、ここへ入つておりまするただいまの隊員は、きわめて思想的におきましても、または学識におきましても、識見におきましても、われわれといたしましては申し分のないものと考えております。どうぞ私は御安心を願いたいと思います。私は責任をもつてこれが正しき方向に向わせたいと努力しておる次第であります。そうしてごの保安隊、警備隊の任用につきましては、現在保安庁におきましては次長、官房長、各局長等、そうして隊におきましては幕僚長、幕僚副長、方面総監、管区総監、幹部学校長、警備隊では幕僚長、地方総監、船隊群司令の職につくのにつきましては、すべて閣議の承認を得ておるのであります。一般職員については、各省の職員と何ら異なるところはないのでありまするから、これを国会で御承認を受くるということは、私は必要はないと考えております。これらの監督については総理大臣の指揮命令を受けて保安庁長官たる私が万全の処置を講じておる次第であります。ただいま警察における公安委員のごときものを設けたらどうかという仰せでありますが、私は警察と保安隊、警備隊とは相当制度なりまた運用なりにおいて異なる点があるのでありますから、さようなものはただいま置く必要はないと考えておる次第であります。
  136. 早川崇

    ○早川委員 ただいまの監補以上は国会の承認を受けるということは、今後の問題としてお考え願いたい。  次に、私は非常に危険な動きと思うのは、保安研究所というものを設けておることであります。これはかつての総力戦研究所のようなものでございます。私は、この保安庁なりあるいは軍隊というものができた場合、その中にいろいろな思想なり、政治なり、あるいは総力戦的な面からするインテリジエンスの研究機関というものは必要ないと思う。これがむしろ内閣に置かれるというならまだわかりますが――かつての総力戦研究所は内閣にあつたのですが、こういうものが保安庁内で発展するということは危険である。閣内に置いても、なおかつこれが総力戦思想の一つの推進力になると私は思う。私はこういう保安研究所というものは、むしろ廃止した方がいいのじやないかと思う。それが第一であります。  第二は、第一幕僚監部という、いわゆる陸軍的なものと、第二幕僚監部という海軍的なものが、すでに対立の萌芽を蔵しておる。たとえばT28という飛行機が二十八年度に百機整備を計画されております。この飛行機の分配をめぐつて、第二幕僚監部の方は、航空母艦に載るような飛行機の構造でなければならぬといい、第一幕僚監部の方は、陸上戦闘に使える型でなければいかぬという。その結果、それはシヴイリアンではできない、装備局長ではできないという争いにすら発展しつつあるということを仄聞するのでありますが、私は過去の日本のアーミイとネーヴイの対立という苦い悪夢を持つておる一人でありまして、憂慮しておる一人でございます。これはほんの一例でございますが、こういつた過去の日本の陸海軍の残滓を少しでも芽のうちにつみとつておくということが、木村保安庁長官のきわめて重大な責務であろうと私は思う。これに関してこの席で明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  137. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 適切な御質問であります。保安研究所につきまして、まず申し上げたいと思います。  保安研究所におきまする教育研究の対象は、主として保安隊、警備隊が行動する場合におきまして、両者が一体となつて緊密な連繋を整えまして活動し得るように、われわれは考えておるのであります。いわば保安庁の機能を総合した総合的な治安対策の教育研究を対象としておるのでありまして、昔の総力戦研究所というようなものは、こうも企図しておるわけではありません。なお治安問題に関連する限りにおきまして、国内の情勢あるいは国際情勢あるいは経済問題等を、一般教養としてこれを教育研究の対象としておるのであります。しかしこの目的たるや、実際に治安対策をどういうぐあいにして立てて行くべきであるか、これを総合的にふだんから判断する必要があるのでありますから、もつぱらその方面研究教育機関として保安研究所を設けておる次第であります。  なお今飛行機の問題につきまして、第一幕僚監部と第二幕僚監部の間においているいろいろと意見が異なり、あるいはそれについての主張が相違しておるというお話でありますが、これは私は全然デマと考えております。この飛行機の問題につきましては、御承知通りわれわれはこれを戦争の目的に使うのではありません。まつたく通信、連絡、練習に使うためにこれを購入しようとするのであります。しからばこういう機能を発揮させるのには、どういう型の飛行機が一番よいであろうか、その点についてお互いに研究をしようというので、ただいま両幕僚監部において、もつぱら研究をしておるのであります。いずれその結論が出ましたときには、私まで持つて来て私がすべてこれを決定したい、こう考えておる次第であります。
  138. 早川崇

    ○早川委員 先ほどの監補以上の任免権の問題といい、保安研究所の問題といい、今木村さんが言われるように、これがそういう総力戦研究所的になることを極力防止するということを銘記していただきたい。これは希望として申し述べておきます。  さらにこの機会に、向井大蔵大臣もおられますから、伺つておきたいのですが、T28の飛行機の問題に関しまして、私の知つておる範囲では、三億円の設備資金さえあれば、二十八年度内で百機の小型機――これはアメリカのジエツト練習機でありますが、日本の航空機製作能力において十分製造できるという確証を持つております。にもかかわらず、これを貿易商社を通じて海外から高いお金でお買いになるような御計画でありますが、私はこういう点に若干の不明朗さと方向違いを感ずるのであります。どうせできるものならば現在の国内の生産によつてこれをまかなうのが、私は常道だと思うのでございますが、この点につきまして保安庁長官の御所見をお伺いいたします。
  139. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。この飛行機は日本でつくり得るものならば日本でつくらせる、これは建前としてはぜひそういうことであつてほしいと考えております。ただ申し上げたいのは、練習用に使う飛行機にいたしましても、大体二百五十馬力から四百馬力、アメリカにおいてはすでに練習機として八百馬力の発動機を使つておるそうであります。七百馬力でありますならば時速四百五十キロぐらい出るのであります。今日本の隊員でアメリカの飛行機に乗せられて練習を受けておる者がありますが、この飛行機はわずかに八十五馬力と聞いております。八十五馬力というと、ちよつと強い風が吹けば吹き飛ばされてしまうまことに危険しごくなものであります。せめてわれわれといたしましては、人命の点から考えてみましても、馬力の点から考えてみましても、二百五十馬力以上でなければならないと考えております。そこで二百五十馬力以上の発動機を日本で今早急につくり得るやいなや、いわんや四百馬力のものにしたらどうかというようなことで、そこにわれわれ苦慮しております。できさえいたしますれば、これは日本でつくらせたいと考えて目下それについて研究中であります。
  140. 早川崇

    ○早川委員 次にお伺いしたいきわめて重要な点は、保安庁法第四条と第六十一条による保安隊出動の条件についてであります。  先般五月一日のメーデー騒擾事件において一部においてはあの法解釈が不明確であるために――予備隊の時代でありますが、予備隊を出動しろという有力なる意見が、ございました。幸いにこれは出動せずに済んだのであります。国内の平和と秩序と生命、財産ということは、きわめて抽象的なことであり、国内の平和のためには、外国の侵略であつたらこれを防ぐということも、広く解釈できるのであります。さらに労働運動の集団的ストライキなんかに関連いたしまして、予備隊が出動して、戦車、大砲で多数の同胞を射ち殺すというようなことも、あの条文を濫用するならば可能でございます。独立日本として、今後あれ以上の幾多の問題が出て来ることを私は予見できるのであります。そういう意味において、予備隊はこの問題をはつきり国民に示しておかなければならない。さらに私の所見を申し述べれば、保安隊というものは無用の用たるに甘んずるものでなければならない。大砲とか戦車をどんどん撃つておる隊員にしてみれば、柔道が強くなり、剣道が強くなればけんかしたくなるというこの衝動を、私は応召兵として行つたときにも感じた。この危険を防止する明確な線を、あの第四条と第六十一条に、もう少し具体的に規定しておかなければ、非常に危険な問題を起すと思うのでございます。剣道の達人である木村さんには、無用の用ということはわかりますけれども、少し視野の狭い保安庁長官があなたにおかわりになれば、その危険なしとしない。この機会に、はつきり国民に第四条、第六十一条による保安隊の出動の条件、内容、その運用をお示し願いたい、かように思うのであります。
  141. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これまたまことに適切なる御質問と思うのであります。私は誠心誠意そう考えて、私も常にそれを心配しております。そこで保安隊というものの性格でありますが、申すまでもなく保安隊の性格は、保安庁法第四条においてはつきり規定されておるのであります。これは軽々に出動させては相ならぬのであります。日本の治安の最後の守りとしてこれを存置されたい。かつての五・一五事件だとか、あるいはその他のようなときには、たいてい日本の一般警察にこれをまかせるべきで、保安隊が軽々に出動すべきでないということは、同感であります。私もその趣旨でやつておるのであります。今申されまする保安庁法第六十一条には、「内閣総理大臣は、非常事態に際して治安の維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」こう書いてあります。この規定が厳として存する以上は、今申し上げます通り、軽々に出動すべきものではない。国家の治安が乱れて、非常事態が遺憾ながら発生したときにおいて、総理大臣が必要と認めて出す場合のほかは、みだりに出動させてはならぬぞという規定であります。かような事態の発生はわれわれは好ましくありませんが、万一にもさような事態が発生したときには、総理大臣が出動を命ずるのであります。一般警察力において処置し得べき事件に対しては、保安隊は決して出動すべきものではないということを、はつきり申し上げておきます。
  142. 早川崇

    ○早川委員 時間がありませんので保安庁問題はその程度にいたしまして、一般の財政予算とともに私は外資問題を中心にして、首相と大蔵大臣に質問いたしたいと思います。  二十八年度の予算を見ますと、私は率直に言つて、八年間国会で予算委員会に出ておりまして、最大の失望を感じた一人であります。なぜならば、予算というものは、日本経済に対する大きな見通し、構想によつてつくられなければなりません。ところが相かわらず各省のぶんどり主義による妥協予算である。さらに悪いことは、自由党諸君にも申したいのですけれども、大蔵省の予算が閣議の決定に近くなつて与党がいろいろな注文をつける。これは政党内閣においては邪道であります。そうではなくてあくまでも与党の政調会が予算の大きな基本方向を大蔵当局にぶつつけて、それで事務的な予算作成をやるのが民主議会政治、政党政治の本筋であります。ところが残念ながらこれが逆になつておりまして、与党の政調会がほぼ数字ができ上つたころに、また難くせをつける。こういう無理を積み重ねましてできた予算でありますから、そこに日本経済再建の何らの構想なり、課題を解決せんとする熱意が見られないのであります。私は大蔵大臣に申したいのでありますが、少くとも本年度の予算は、自衛力漸増計画、先ほど吉田さんはほとんど計画を持たぬような御答弁でありましたが、西欧諸国は一九五六年を目途といたしまして、苦しい国力の中においても自衛力漸増の計画を進めておる。わが国が、その例外たり得るはずがありません。まず昭和三十一年までの漸増計画はどうだということを元にして組まれなければならない、これは至上命令である。  第二は、一九五六年という時期に、一応西欧諸国、自由主義諸国の軍拡が終りますから、そこに起る世界の景気後退、不景気が当然起つて参ります。その不景気になつたときに、日本経済力が弱いために輸出においても、輸入においてもパニツク状態が来ることをわれわれは恐れるので、その期間に基礎産業の経済の基盤をがつちり築いておくことを目途とした予算でなければならない。この二つの大きな日本経済の課題をいかにして達成するか、これはむずかしい問題でありますけれども、経済には奇跡はありませんから、この二つの目的を達成するためには、どうしても消費の抑制と資本の蓄積というものを強度に推進しなければなりません。ところが現在の吉田内閣経済政策を見ておりますと、御承知のように私は世界各国をまわつて日本に帰つたときに驚いた。敗戦国の日本ほどぜいたく三昧、キヤバレー、待合、ぜいたく品が氾濫しておるこの東京のごとき姿を持つておる国はない。そういうことをそのままにしておいて、どうして今言つた二つの日本経済の課題が解決できましようか。予算はこの大きな柱というものを解決するための独立後最初の自主的な予算でなければならない。ところが、こういう大きな構想に対して、何ら計画的な内容を盛られておらない予算であるという点において、私はこれは政党のぶんどり主義の予算であると指摘するゆえんであるが、大蔵大臣はこれに対してどうお考えになるか。まずこれから話を進めて行きたいと思うのであります。     〔尾崎(末)委員長代理退席、太田   委員長着席〕
  143. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 要点がないというふうにおつしやるのですが、それはまずそういうふうにおきめになつてから、こらんになつたのではないかと思うのですが、この予算の数字を見ましても、早々にこの基幹産業がよくなるように、また日本の国土の荒廃とか、あるいは交通機関の悪くなつたのを直すとか、また広義における民生の安定を企図する、住宅をよくするとか、ふやすとかいうことには意を用いてあるのでして、同時に今言われるような外国の軍拡が終つて景気でも悪くなるそのときに対処するために、日本の物価を安くするように努力する。それはただいまし上げましたようないろいろの日本の国力の回復という点に意を用いてそれができますと自然に物も安くなるし、また物もよけいにできて来る。そういうところをねらつたのでありましてぶんどり主義でもつて、方方の面に金がばらまかれたとごらんになつていると、自然そういうふうに解釈がつくかもしれませんが、私が言うようにごらんになれば、それぞれ目的を達した使い道であると私は考えます。
  144. 早川崇

    ○早川委員 原則を先にして結論を出したと言われるならば、私は逆にお尋ねをいたします。第一の防衛費の問題にいたしましても、当然隊員増加ということが将来予想される。それから賠償問題に対しても役務賠償に伴う相当な費用も見込まれる。ところがこの予算はそういう予備的な支出の増というものを全然予想しておらぬ。この点においてすでに国際情勢に対する誤りがある。次に経済の基盤を拡充しなければならぬということも満足さしているじやないかと言われるが、とんでもない話である。まず数字によつて指摘いたしますと、財政投融資だけをとりましても二十七年度より減つているのです。二十七年度は三千百六十九億円を出しておつた。しかもインヴエントリー・フアイナンスとかいろいろ経済的のクツシヨンがずいぶん多かつた。ところが今年はそんなものがないにもかかわらず三千五十五億円に減つております。さらにその三千五十五億円の中の五百億円というものは借金、国債なんです。さらに輸出振興のため、縦坑開議ための通産省のいろいろな要望はほとんど削られている。こういうことであなたの言われるような目的を達したかどうか、私は疑問であります。さらに資本蓄積の方はどうか。これもでたらめです。預金利子を若干課税を減らしたが、これは全廃すべきものである。さらに資本蓄積の上で税制上非常に考えなければならぬ問題があるのです。どういう問題を考えなければならぬかといいますと、依然として直接税が五六%、間接税は四十何パーセント、こういうシヤウプ税制そのままを採用している。ところが直接税と間接税とが六対四の比率をもつ税制をしいている国は、世界で最も国力の高い、直接税が非常に自由にとれるところのアメリカ以外にないのです。イギリスが日本にやや近い。ところがフランス、ドイツ、イタリアとなつて、ごらんなさい。直接税は税制の中で三〇%から三五・六%、こういう状態であります。過失の日本もそうであつた。そういうような矛盾をあえてしている。ほんとうに資本蓄積とか、あるいはまた先ほど申し上げましたように消費を抑制しようというならば、当然ぜいたく品に対する消費税とかあるいは砂糖の物品税というものを、もう少し間接税のウエートをあげて資本蓄積方向の税制を立てなければならぬ。租税の公平ということだけでは資本蓄積はできません。また株式移転税の廃止も考えるべきである。まことに不徹底だ。私はそういう具体的な例をもとにして帰納いたしまして今のことを言つてつた。あなたの言われたことは逆なんで、こういう問題に対してお答え願えればまことに私はけつこうかと思うので二、三具体的に御指摘いたしたのでありますが、それに対する御見解はいかがでございましよう。
  145. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 消費税を主とするかあるいは直接税を主とするか、そういう点については議論のわかれるところでございまして、軽々にどちらとも言えないものと私は思います。但し直接税はとられる人に苦痛を与える程度が多くて間接税ですとそれをあまり感ぜずにしまうという点はあるかもしれませんが、同時に物を買えば必ず租税がつく、そうすれば買わずにおけばいい、そうすると国民生活水準を下げるという雲行きも出て来るというようにも考えられる。簡単にこれは論じられない。そうすればやはり今の程度の直接税をとつて、そうして間接税に主としてよるという方針でない方が私はいいと思つております。それからそのあとは……。
  146. 早川崇

    ○早川委員 財政投融資が減つている。
  147. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 それはしかし国の投資機関である銀行の方で投資をしているので……。
  148. 早川崇

    ○早川委員 いや、銀行でない、財政投融資。
  149. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 開発銀行は入つていますね。     〔「不正直な答弁をしてはだめだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  150. 太田正孝

    太田委員長 静かに。
  151. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 銀行の投資はふえていると思います。
  152. 早川崇

    ○早川委員 財政投資が減つております。
  153. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 全体で言えば減つてつても、そのほかの方法でもつて……。
  154. 早川崇

    ○早川委員 銀行のことを問うているのではない。財政投融資を問うている。
  155. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 そうですが。それは確かにその通りでございます。(笑声)しかしながら全体からいつて国からの融資というものは私は減つていないと思います。その次は……。
  156. 早川崇

    ○早川委員 預金利子と株式譲渡税の廃止。
  157. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 預金利子はまるでなくなすということはできないことだと思います。ほかの所得に比例した程度の課税はしかたがない。それから譲渡税というのも、これはもう財源としては実に小さいものでありますが……。
  158. 早川崇

    ○早川委員 心理的影響が大きいですよ。
  159. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 まあ私もそう思いますけれども、(笑声)これは今までの譲渡所得税ですか、税金をなくなすと、それにかわるものとしてやはり取上げる方がいいというように私は考えております。
  160. 早川崇

    ○早川委員 時間が制約があるので、財政問題の微に入り細をうがつ質問ができないのを非常に残念に思うのですが、あとは第二陣に譲りまして、私は次にきわめて重要な問題を一点深く突つ込んで御質問いたしたいと思います。それは何か。自由党政府の公約、国民もそう理解しておつたのは行政整理とそれから外資の導入、目新らしい政策はこの二つです。  まず第一に行政整理について一問一問だけを総理に伺いたいのだが、二十八年度の予算においては、あなたの年来の主張である行政整理というものを何ら認められない。それのみならず。冗費節約においてすら何ら考慮されておらない。ウインストン・チヤーチルは内閣をとると官庁の自動車を減らしました。それくらいの気魂を持たなければ、日本の財政の膨脹を防いで経済基盤の拡充のための資金は捻出できません。この点について総理大臣の直接の御答弁を願いたい。
  161. 吉田茂

    吉田国務大臣 行政整理は実行いたすつもりであります。
  162. 早川崇

    ○早川委員 予算に組んでない。
  163. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは組んでないと申されましたが、行政整理のごときは、あたかもすすはきのごときものであつて、年々これをいたす必要があり、またすべきであると思います。政府としては現に行政整理の案を研究いたしております。成案を得次第、議会に提出いたします。
  164. 早川崇

    ○早川委員 まず第一の国民への公約は、見事この予算において裏切られました。非常に残念です。  第二は外資導入の問題を少し専門的に掘り下げて伺いたいと思うのであります。第一点は、吉田総理大臣は昨年の施政演説において、経済政策の根本であるとして外資導入を唱道されたのであります。ところが最近は外資導入はあまりうまく入らない。あたかもこれを忘れたようなかつこうになつておりますが、あなたはこの問題に対してお考え方をかえられたのかどうか、私はそれをまず伺いたいのであります。
  165. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 外資導入のことは決して忘れておるわけではございませんで、始終その達成に向つて尽力しておるのでございます。まとまつた新聞に出るような金高の外資導入ということはまだできてはおりませんが、しかし、そのときどきにいろいろの形でもつて外資が入つていることは、御存じの通りであります。それからただいまでも外国の銀行から相当の金額を借入れたいという交渉はしております。それについては確定はしておりませんが、私は望みを捨てていないわけであります。  それからもう一つついでに申し上げますが、さつきの二十八年度の財政投融資が減つているとおつしやるのですが、私は前年のを覚えていなかつたのですが、前年が二千八百億、ことしは三千五十億、この数字はふえたように現われております。
  166. 早川崇

    ○早川委員 あなたの思いつきで言われたら困るのです。私たちは野党の委員として十分調べておるのでありまして、そういう間違つた数字では困ります。  外資問題は忘れてはおらない、さらに要求をしておる、こういうことでございます。ところが残念ながら二年来言つてつた外資は、白洲特使の派遣その他を通じても、ほとんど実績が上つておらない。そこで私は大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、世界銀行に昨年八億ないし十億ドルの借入れの申込みをされたと聞いておりますが、その内容をこの機会に御発表願いたいと思います。
  167. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと数字を私預つておりますからお答えいたします。外資法が施行されて以来、昭和二十五年六月以降本年一月末現在で、外資が導入された金額累計二千四百万ドル、なお通産省としては、今後電源開発その他に交渉中でありまして現在交渉中の分累計二百十五件ございます。なおガーナー世界銀行副総裁の件について申しますれば、昨秋来朝したガーナー氏は、帰国後報告書を世界銀行あて提出いたしましたが、右の報告書は主としてわが国経済一般につき、現状の報告をしたものでありまして、日本政府の提出した融資要請に対しましては、具体的に言及しておりませんが、ガーナー氏の来朝した目的は、わが国の将来の貿易の見通しと産業構造のあり方に関して必要な資料を収集し、業界の意見を打診する点にあつたのであります。従いましてわが国に対する融資は、世界銀行において、今後これら資料の慎重なる検討を経た上で、遠からず決定されるものと見込んでおります。
  168. 早川崇

    ○早川委員 小笠原さんのような経済の専門家をもつて自任される方が、今のようなお話はまつたく驚き入つたのであります。世界銀行の調査員のギルマーテイン氏と副総裁のガーナー氏が来られたときにはつきりこう言われた。日本は七億ドル以上のドルがあるじやないか。それをさらに各会社あるいは経審、通産、大蔵から要求しているのは、外資のドルがほしいという理由ではなくて円がほしい。たとえば電源開発のためにお金がいる。ところがその電源開発にいる鉄にしても、セメントにしても、人件費にしても、全部国内でまかなえる、これは円でいいじやないか。さらにもう一つ指摘された点は、現在の経済政策をもつてしたならば、ずいぶん消費的なものにどんどん使つているじやないか。融資をしようというアメリカ自体が資金統制をやつている。こういうことで日本は外資がいらぬじやないか、外資導入の理由がわからぬと言つて帰られましたが、一体政府はどういう外資の必要理由をその人たちに御説明になつたのか。ここが問題なんで、大蔵大臣でも通産大臣でもけつこうですから、ひとつ御説明願いたい。これは非常な矛盾でございます。
  169. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。ガーナー氏からそういう説明がありましたので、私より、電源開発は大きな仕事であつて、五箇年にわたつてこれを継続してやらなければならない。現在はドルにして六億ドル以上の金があるけれども、現在ならばそのドルを使つてもやり得るが、来年になり再来年になると、このドルのうち三億ドルぐらいなものは、絶えずいる金で用意をしておかなければならぬものであり、さらに三億ドルぐらいは、常に日本はドル不足を感ずるところの国柄であるから、従つて現在すぐ金を貸してもらいたいということではない。もしあなたの方の都合によつては、来年貸してくれるという約束でもよろしい。そういうことを約束されぬと、来年になつて金が不足だというと、計画に齟齬を来すからという話をいたしましたところ、それはよくわかつたということでありまして、その点はガーナー氏のきわめてわかりやすい了解を得た次第であります。
  170. 早川崇

    ○早川委員 それはちよつとおかしいので、吉田総理大臣は昨年、一昨年から外資導入、外資導入と言つてもさつぱり入つて来ない。吉田総理の言われる外資は、数年後に入ることを目的とした外資導入であるのかどうか。それならば国民に対してまことに欺瞞なんで、外資導入がいかにも入るように言つて国民にえさをつつて自己の政府を正当づけようとしたことと根本的に違うが、総理大臣どうですか。
  171. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私から早川さんにお答えいたします。それは今すぐということは、日本の輸入その他の関係から見ますれば、あるいは数箇月にして足らなくなるかもしれませんので、つまり来年という意味は、私の答えたのは昨年でございましたのでそう申したのでありますが、それは数箇月先のことも意味しておりますので、今もうすぐ来年ではございませんから、その意味は昨年ガーナー氏が来たときの来年という意味で、たとえば昨年話しましたときからみますれば、あるいは今日をさしているのかもしれませんが、その辺よく御了承願います。
  172. 早川崇

    ○早川委員 世界銀行の日本のわくは七千万ドルしかないのを、八億ドルも十億ドルも借りようというのは、一体どこから借りようとして申込まれたのか。これは外国の笑いものになつている一つの事実でありますから、どこからお借りになる計画なのか、小笠原さんに伺いたい。
  173. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えします。当時日本としてはこういう資金が入用であるが、しかしそれに順位をつけるとすればこれこれであると言つて日本の所要額を出しましたが、その全額を借りるということではなかつたのであります。
  174. 早川崇

    ○早川委員 そういうことがおかしいので、一体借りられたらどう使うつもりか。ドルが減るというけれども、現に七億ドルあるのです。借金というものは、そういうものがなくなつて初めて入つて来る。しかも政府言つておることは、円資金がほしいので、向うから借りて来るとかいつてさらに資金統制はそのままにしておいて計画ばかりやつてつて、外資というものがほんとうに入つて来ると思われますか。ほんとうに閣僚という地位を離れてまじめにそういうことを言つておられるならば、私はあなたの識見を疑う。国民に対する一つの阿片薬として外資導入を言われておると極言されてもいたし方がないと思うのですが、どうですか。
  175. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私はある程度入るものと確信いたしております。
  176. 早川崇

    ○早川委員 問題の根本はこういうことなんです。今の自由党のそういう外資政策貿易政策経済政策をもつてするならば、ガーナー氏の言つたように、日本には外資はいらぬ、従つて入らないということであります。その根本をあなたは御理解ないのですか。
  177. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ガーナー氏がいかに考えておるかは、私にはわかりません。
  178. 早川崇

    ○早川委員 これは前大臣の池田君のときでありますが、在日及び在外の外国銀行が相当多額の短期信用、ユーザン・クレジツトを日本の方へ与えようという意思を表明された。ところが日本政府はこれを拒絶したのです。こういう矛盾したことをやられて、そこヘガーナー氏が来られた。これも外資導入必要なしという有力な根拠である。私は前大臣のことを言うわけではないが、あなたは前大臣の言うことを依然としてそのまま踏襲されておるのであるか。しからばその理由いかん。この点をお伺いいたします。
  179. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 当時そういうことがありましたそうでございます。しかしその時分としては、あまりそういう援助の必要を感じなかつたものと私は存じておりますが、今でしたらば、そういうことはやはりあつた方がいいかと思いますが、まだこちらから要請するほどのこともない、そういうことであります。
  180. 早川崇

    ○早川委員 外資導入、外資導入と言つておりながら、外銀から借りられる金額が三億ドルある。三億ドルが日本の外貨手持ちの残高としてずつとユーザンス・クレジツトを続けて行けば残つて行く。あなたはその必要はないというけれども、外資が実際にほしいならば、なぜ借りないのですか。そこにすでにもう矛盾がある。
  181. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私が今の他位になりましてから、そういう申込みは受けておらないのであります。
  182. 早川崇

    ○早川委員 外資導入を一枚看板にするならば、ドルの活用をごつちから積極的にするということを政府が申し入れるべきで、向うから貸してやろうということを待つて、何にも手を打たぬということは外資導入政策の根本の考え方がはつきりしていないのと、大蔵大臣の考えていること、総理考えていること、小笠原さんの考えていることが、まつたく無政府状態で混乱している証拠だと私は思うのだが、あなたの考え方をお改めになつて、もう少し外資導入に対して、根本的な経済政策の転換をはかる必要ありと私は思うが、どうでございましようか。
  183. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 借りられる金は借りるがいいというお説ですが、やはり時と場合によつては、借りる借り方がいろいろあるのでございましてそれは私どもにおまかせおきを願いたいと思います。
  184. 早川崇

    ○早川委員 池田前蔵相は、この問題の本質を若干理解しかけたころに、われわれ野党の反撃を食つて退陣された。どういうことかというと、問題は外資が入らないのは、先ほど申したように、外貨が七億ドルもある。日本の国力にしてみれば、イギリスの場合と比較すると、その三分の一でいいわけなのに七億ドルある。それから外資がほしいという事業が、全部日本の円資金でまかなえるようなことより事業計画を持つていない。それから資金統制をしていない。この三つです。そこで池田君は、この外貨の活用ということを若干考えられましたが、その後彼は失脚いたしまして、あなたたちにかわつた。あなたたちにかわつたとたんに、この外貨活用という問題に対して何らの施策を持つておらない。従つて七億ドルというものが現在日本に眠つていて、八億ドルとか十億ドルを世界銀行その他から借りると、それはあなた方の考え方では、ただ借りて積んで行くだけのことである。外貨が十八億ドルになるだけの話である。こういうばかな考え方でこの問題をお考えになつておるから、いつまでたつても入つて来ない。私の見通しでは、ガーナー氏から一億ドルも来ませんよ。あなたたちのこの外貨に対する根本の考え方がなつておらぬ、できておらない。ここに問題があるので、この外貨の活用なり、そういつたものを借りたらどうするのだということに対して、大蔵大臣なり通産大臣はどう考えるのか。外貨問題はあなたたち政府の生命ですよ。もつと真剣に私にお答え願いたい。
  185. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 真剣に考えなければならないということは、あなた方に言われなくともわかつております。しかしながら、外貨があるから貸さないとおつしやるのですが、私はガーナー氏にあの人が立つ前の日に会いまして、日本にドルがあるから貸さないというのかと聞きましたら、そういうことはないとはつきり申しましたから、そういう点は御心配に及ばないと思います。(早川委員「それは外交辞令で、実際貸してやるとは言わないでしよう。」と呼ぶ)それは向うが研究しておる間は、なかなかきまらないということはやむを得ない。  次に、材料を外国から買わないのに、外国から金を借りるのはおかしいというお話ですが、これは外国の例を見ますと、国によつては、その事業のために、外国に輸出し得るものを自分で使う、その引当てとして金を借りたいと言い、また貸したという例があるので、それを応用するということを向うも申しておりました。必ずしも外国から物を買わぬから金が貸せないということではないのであります。
  186. 太田正孝

    太田委員長 早川さん、大分時間が過ぎましたので……。
  187. 早川崇

    ○早川委員 大事なところですから……。  そこで問題は、外貨の活用をどうするかという問題であろうと思う。私は最初に申し上げましたように、四、五年前の不景気と、特需がなくなつた場合の日本経済の脆弱さを考えてこの七億ドルという外貨を背景にして、国内の基礎産業確立のために金融を疏通するということが前提であります。そうなると、勢い外貨は減つて行きますけれども、それによつて輸入をいたしますから、輸入のわくを減らして、インフレを押えて、外貨と見合つた国内金融疏通を大胆にやる。電源開発しかり、石炭の縦坑の開発しかり、設備の近代化しかり、あるいは道路の拡充しかり。そういう積極策に日本の産業を持つて行つて、一旦この軍拡の後退に伴い特需がなくなつて来るまでの間に、国際競争力をつけて、経済基盤を確立するためにこそ、この外貨に見合う日本の円資金の疏通をはかつて積極的なそういう経済基盤の拡充に向う、それ以外にこの道はない。ただ日銀から金を出すだけでは、これはインフレになります。すでに千二百億の散超になつておる。さらにそれで産業が興らないとすれば、最終的に、先ほど申し上げましたような防衛力の強化と、経済基盤の拡充のためにどうするかということの有力な一つの考え方は、この七億ドル以上に上る外貨というものを背景にした金融の疏通である。この積極政策をとることのみが、日本の産業基盤を拡充し、コストを切下げ、将来の国際競争、輸出振興に邁進し得る残された最後のきめ手である。それをただこの七億ドルを、ドル・バランスがとれなくなつたときに困るから積んでおけというようなことをやつておるから、ガーナーさんは、七億ドルあるから、八億ドルとか十億ドルの外資はいらぬじやないかと言う。これはもつともである。そこに外貨活用その他日本経済政策貿易政策の根本政策について政府は頭を切りかえなければならぬ。片方では防衛力がどんどん進んで行くためにインフレの懸念があるわけです。そこに現在の経済政策を転換しなければならない。外貨活用の方策をとらなければならない。そこで外貨が減つて来る。輸入はインフレを押えるためにどんどんふえます。そのときにこそ初めて外貨が日本に入つて来る状態ができる。この見通しをあなたたちは持たないで無為無策今日に及んでおる。ここに問題があるということを私は向井さんに申し上げたいのでありますが。その点に関する通産大臣と大蔵大臣、この両者の確信を伺いたい。
  188. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいままで伺つたうちで、今おつしやつたことが一番私には納得ができました。それでその通りに外国から物を買つて来て、これを生産的の道に利用する、そういうことを私は考えております。また通産大臣も同じことを考えておると私は了解しております。但し外国から物を買うについて、またこれを乱暴に使うということはできない、筋道の立つた一番的確な使い方をして行きたいと思つております。
  189. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいま大蔵大臣が答え通りでございます。
  190. 早川崇

    ○早川委員 この外資問題は自由党の一枚看板でありますが、今までほとんど入つておらない。これは次の方にさらに追いかけて詳細に論じてもらいたいと思います。時間がありませんのであと若干御質問いたしまして、私の質問を終りたいと思うのであります。  最後に私は……(「時間じやないか」「時間を守れ」と呼ぶ者あり)委員長の許可があるじやないか。
  191. 太田正孝

    太田委員長 お静かに。早川君、今の意味を御了解願いまして、なるべく簡単に願います。
  192. 早川崇

    ○早川委員 それではまだお伺いしたいことは多々あるのでありますが、あまり時間がありませんので、ただ一つ、一括して外務大臣にお伺いいたします。同時に吉田さんにお伺いいたします。  私は貿易が非常に衰退しておる。西ドイツ台湾まで硫安を入れて来ておる。一時エジプトまで伸びた日本貿易台湾まで西ドイツにやられる、これは重要な問題です。その根本を論ずることは時間がありませんが、その原因の一つは経済外交の失敗ということにあると私は思う。岡崎さんが外務大臣になられてから、残念ながらことごとく失敗しておられる。どういう点を失敗しておられるかというと、まず一つ、目印合弁の製鉄会社を東南アジア開発の名目でインドにつくろうとした。これがドイツのクルツプの圧力によつてみごと失敗いたしました。失敗するはずです。西ドイツ貿易振興のためにインドの技術者四百人ほどをただで西ドイツまで来させて技術の研究をさしておる。こういう経済外交をやつていれば負けるのはあたりまえです。次にインドネシアとの貿易においては、小笠原さんの時代であつたか知らないが、貿易政策はあまりにも無定見な、むちやくちやな輸出振興政策の犠牲となつて、インドネシアの貿易六千万ドルが残念ながら焦げついてしまつた。この貴重な外貨が六千万ドルも焦げついてとれない。これはまことに経済外交の失敗です、五年間に償還するというが、一体とれるかどうかこれは疑問です。さらにガツト加入の問題、これも言い出されてからずいぶん長いですけれども、よう解決しない。さらにポンド支払協定もペンデイングになつている。さらに日韓交渉の漁業協定もうまく行かない。行政協定の改訂もできない。国連軍協定もまだ十分解決をしない。日比賠償問題しかり、新木大使のごときはどうです、大使となつて独立国でアメつカに行つていまだ一度も向うの国務長官にひざ突き合せる機会がないというじやないですか。そういう情ない経済外交であります。私は岡崎さんの、無能というては恐縮ですけれども、どうしてもそういうことを認めざるを得ない。こういう外務大臣を総理大臣はどう思われるか。あなたが外務大臣をやつてつたころの方がむしろ仕事を若干されたと私は思うので、岡崎君の名誉のために私はこういう言葉を吐きたくないが、非常に多額の費用を国民が負担して、血と汗によつて外務省の拡充をわれわれは承認た。経済外交ますますけつこうだ、貿易経済外交によつて市場を獲得するよりしかたがない。ところが実際やつているところは、最も重要な国民生活に必要な――私が一例をあげただけでも六つ、七つの問題が全部失敗です。こういうことであなたはあくまで外務大臣の職にとどまろうとしておられるのであれば、まことにあなたのために私は嘆くのです。こういつた懸案問題の一々について、一体あなたはどういう確信を持つて臨んでおられるのか、その点をこの議場において説明していただきたいと思うのであります。
  193. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外交問題は、今おつしやつたのは何も経済外交ばかりじやない、行政協定まで引出されたようですが、外交問題の事項は非常に多岐でありまして、できるものもあればできないものもある。あなたはできない方だけをひつばり出されましたが、たとえば目印平和条約もできている。国民政府との平和条約もできているし、アメリカとの航空協定もできている。イギリスともできている。(「通商条約はどうだ」と呼ぶ者あり)通商条約もまさにできんとしている。だんだんいろいろの問題ができるのでありまして、まだわれわれとしては独立後一箇年もたつておらないので、全部が全部すぐできるというわけに参りません。しかしながらいつも言つておりますように、賠償問題も漸次好転しつつあり、ガツトの問題は現に今中間委員会で審議中であります。いろいろな問題がだんだんできて行くことはあたりまえで、そう一ぺんに何もかもできるというわけに行きませんから、私は……(「責任を感じろ」と呼ぶ者あり)責任を十分果したいと考えております。また日本の大使が向うの外務大臣に会つて十分話をする機会はあるのでありまして、御心配を要しません。
  194. 早川崇

    ○早川委員 責任を非常に痛感されておらないようですが、これは他日野党の諸君からさらに追究されると思います。時間がありませんのでこれをもつて終りますが、要するに現在の吉田内閣は、私は自衛軍備の問題、さらに第二は与党の公約の行政整理の問題、第三は外資導入の問題、第四は貿易競争において西独、イギリスに敗れ去つた戦争に敗れただけではなく、経済競争においてすでに敗れたりの感が深い。さらに経済問題しかり、さらに党内問題いろいろありましようが、こういつた重要きわまる問題において、今や今までの施策の弊害は頂点に達し、これ以上この経済政策とこの吉田内閣の施策をもつてするならば、五つ、六つの重要問題においては、私としては今までの行き方をするならば、何一つ希望を持ち得ないということをここに表明し、政府の反省を強く要望して、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  195. 太田正孝

    太田委員長 山崎巖君。ちよつと申し上げますが、総理大臣は四時からよんどころない公用のため、席をはずされますので、なるべくそのことを御注意の上、御質問を願いたいと思います。
  196. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 私は占領政策是正の問題を中心といたしまして内政各般にわたり現内閣の重要施策に関しまして質問をいたしたいと存じます。  まず第一に伺いたいと思いますことは、占領政策是正の基本的構想についてであります。現内閣は昨秋十月末組閣の直後声明を発表せられ、すなわち政府は終戦後の諸施策中、現在の実情に適応せざるものについては適当に是正し、独立国家としての完備を期したい所存であると言明せられておるのであります。また吉田首相は今国会再開の施政演説におきまして具体的政策に触れて、あるいは警察制度または教育制度の改革、労働法制、独禁法の改正あるいは行政機構改善等、占領政策の是正を強調せられておるのであります。未曽有の長期にわたる占領政策が実行せられること約七箇年、もとよりその間相当の変転を見ておるのであります。昭和二十年九日百、占領政策が開始されました。その基本がわが国に対する膺懲政策であり、弱体化政策であつたことは明瞭と存じます。当時の米国の外交政策ソ連に対する宥和政策であり、従つて占領政策中にも共産主義に対する措置を初め、ソ連の意向を尊重したものが私は決して少くないと思います。しかるにその後米国の対ソ外交方針の変更に伴い、わが国における占領政策も漸次変転を見、昭和二十三年後半以来緩和の方向に向いまして、朝鮮事変の勃発とともに急角度に変化し、昨年四月二十八日講和条約の締結と相なつたものと思います。米国の占領政策が終始日本の民主化を基本とし、わが国の復興再建に大なる寄与をなしたことは、これを率直に認めるところであり、また感謝すべきところであると思います。しかしながら占領期間を通じ、ことにその全般において強行せられた施策の中には、あるいは功を急ぎ、あるいはわが国の伝統と国情を無視したものも、決して私は少くないと存じます。私は政府がすみやかに勇断もつてこれが是正に当られることが、国民に対する一大責務なりと信じますとともに、今回政府がようやく二、三の具体案を提出せられんとすることは、むしろおそきのうらみすらあるように考えるものであります。占領政策是正がわが国の民主化を阻害せざるのみならず、すなわちこれを復古調でありあるいは逆行であるということの非なることは申すまでもありません。むしろ民主主義の前進でなければならぬと思います。さらに今回政府の提唱せられるところは、単に行き過ぎの是正というがごとき、きわめて消極的な意義のみを感ぜられますことは、私は大きな疑問を持つのであります。去る二日米国新大統領アイゼンハウアー氏は議会に対する一般教書におきまして、ヤルタ協定と推測せらるる過去の秘密協定の無効を決議するよう要請せられておるのであります。占領期間約七年間、その政策の基礎をなすポツダム宣言の前身であるヤルタ協定を廃棄せられるということを思いますときに、今やわが国は政治に経済にあるいは文化に更生一新すべきときであると思います。占領政策の是正もその一環として私は行わるべきものであると信ずるのであります。政府は占領政策是正の基本観念をいずこに置いておられますか、その点を伺いたいと存じます。
  197. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。政府が昨年内閣組織当時、占領政策是正の声明をいたしましたことは、ただいま山崎君から御指摘の通りでありまして、爾来今日の実情に適切でないものの是正に関しまして研究を続けました結果、今回警察制度改正その他の重要法案の提出となつたことは、御承知通りであります。占領政策につきましては、全体として見ますれば、私は比較的常識的な占領政策が行われたと申してさしつかえないと思うのでありますが、ただ日本の実情がよくわかつていなかつたために、その間善意の行き過ぎもあり、また国情に適切でないものが相当ありました。これにつきましては政府としては先年来政令諮問委員会に諮問いたしましてその検討を願い、その結果といたしまして今回の法案になつてつたのであります。私は日本の今日の立場、日本のよつて立つところは、結局国連と協力し、特にアメリカとの関係を緊密にするということがその基調たらざるを得ない――それは先般総理大臣が国会で演説をされた中にも述べられてありますが、それが基調であると考えますけれども、それが基調であればあるほど、日本の自主性をこの際日本独立獲得いたしました際に明瞭にいたしまして、日本独立国としての施策をはつきり行つて行く、それが結局日米親善を円満に行つて行くゆえんでもあると考えるのであります。その意味におきまして今山崎君の御指摘になりましたように、今日は占領後日本が七年ぶりに独立を回復いたし、庶政を一新する好機でありまして、その一翼、その踏出しといたしまして、占領政策国情に適せざるものの是正に着手をいたしたような次第であります。さらに政府研究を続けまして、今日提案しておるもの以外にも国情に適切でないものがあれば引続き是正をいたしたい、さように考えておる次第であります。
  198. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に私は占領政策是正の具体問題について三、四お伺いをいたしたいと存じます。  まず第一にお伺いをいたしたいと思いますことは、行政機構の改革と行政整理の問題であります。現在の行政機構を検討いたしてみますと、終戦後その機構がきわめて複雑になり、その人員が実に厖大に相なつたことに驚き入つたものであります。私といえども終戦後人口の急激なる増加あるいは社会状態の複雑化、これに伴いまして行政内容の高度化、あるいはまた官庁事務が非常に増加することのやむを得ざることは、十分認識をいたしておるものであります。しかしながらその実際を私が見てみますと、実に驚くべきものが多いのであります。一例をとつて申し上げますならば、支那事変前一内務省が管掌しておりました事務が、今や建設省、厚生省、労働省、国家地方警察、公安調査庁、入国管理庁、自治庁、人事院等の数省庁にわかれて五、六人の大臣がこれに当つておられるような状況であります。終戦前建設省の事務は一つの局、四つの課で行つてつたものが、現在建設省は一省となり、五局三十五課を有するような厖大な機構に相なつております。また例を総理府にとつてみますと、外局に相当します委員会を含めまして、実に外局十六、部三、課においては百八十四に及んでおるような状況であります。もちろんこれは官房長官御一人の所管ではございません。おそらく官房長官も自分総理府の管轄にどういう仕事があるかということは御存じないのが私は当然であろうと思います。例を内閣と建設省にとりましたが、各省ともその機構の厖大に相なつておりますことは大同小異でございます。さらに各省の地方におきまする出先機関の状況を見ますと、これは政府としても、私ははなはだ遺憾に存じますが、統計がほとんどございません。私はようやく古い統計を探し出して参りましたが、昭和七年と昭和二十四年の比較をとつて申し上げてみますならば、府県以上のいわゆる広地域に属する出先機関は、昭和七年は百十五でございます。昭和二十四年に至りますと、三百七十の多きに及んでおります。府県単位のものは、昭和七年が三百二十五、昭和二十四年に至つては実に千三百二というような数字に相なつております。それ以下の出先機関の状況は、昭和七年が一万四千五百十四、昭和二十四年に至りましては実に二万七千五百四十五に相なつているような状況であります。この状況は、地方機構にも当然に及んでおるのでありまして、その結果は、従来地方において解決し得ましたような案件も、あげて中央官庁において解決するような実情でございます。これがために、各県とも戦前かつて見なかつた出張所というものを東京におきましては設けまして、数十人の吏員を配置しておるような状況であります。そういう次第でございまして、府県知事、市町村長あるいは各界の地方の人々が、陳情のために上京いたしますことは皆様の御承知通りでありまして、私どももその応接に困つておるような状況でございます。もとよりその原因は、私は歴代政府の責任のみに帰することはできないと思います。この原因が占領政策施行中に、いわゆるGHQの各セクシヨンからばらばらな指令を出しまして、自分たちの便利な役所を相当つくらしておるような事実を私は見るのであります。政府はこういう点につきまして、この占領政策を是正する意味におきましても、ぜひ中央、地方を通ずる機構の改革をお願いいたしたいと存ずる次第であります。  さらに私は中央、地方を通じまして、職員数の現況を調べたことを申し上げてみたいと思います。支那事変前の昭和十一年と昭和二十七年の数字を比較して申し上げます。国家公務員におきましては、昭和十一年約七十万、それが何と昭和二十七年には約百五十万人に及んでおります。地方公務員におきましても大体同様の率でございまして、地方公務員昭和七年八十一万人であつたものが、昭和二十七年には約百四十万人の多きに及んでおる次第であります。これを政府の予算から私は検討いたしてみますと、昭和二十八年度政府予算におきまして、人件費は一般会計千二百五十二億円、総歳出の比率ほ二二・一%に当つております。特別会計におきましては七百十六億円、比率は五・三%の比率でございます。政府機関におきましては、実に千三百四十八億円の多きに及んでおりまして、比率は約三二%に相なつております。これを合計いたしますと、政府の二十八年度の人件費に使われます総額は、三千三百十六億の多きに上る状況であります。行政整理につきましては、第三次吉田内閣において企図せられたところでありますが、御承知のごとく参議院において修正に相なりまして、その結果は龍頭蛇尾に陥つておりまして、この点につきましては、国民のひとしく遺憾と感じたところであります。政府は来年度予算施行にあたりまして、欠員不補充あるいは配置転換等を考えられておられるようでございますが、政府予算の定員を私が二十七年度に比して検討いたしますと、一般会計において三千五百八人、特別会計において二千二百二十四人、政府機関において七千一言四十四人の増加をいたしておりまして、総計いたしますと、来年度の予算におきましては二十七年に比し一万三千八十六人の増員を計上いたしておられるのであります。政府はこの人員の厖大化、あるいは行政機構の複雑化に対しまして、どういう方策をもつて臨まれんとするのであるか。安易なるいわゆる天引き主義をもつてこれに臨まれんとするのであるか、あるいは行政事務の徹底的なる簡素化につきまして、十分の検討を加えられた上に行政整理の成案を得られるつもりでありますか、その点について御所見を伺いたいと存じます。
  199. 本多市郎

    ○本多国務大臣 お答えいたします。ただいま御指摘のありました通り、わが国の行政機構並びに公務員の数が厖大化いたしましてこれがまた国民負担の重圧となつておる事実はいなむことができないと存ずるのでございます。この機構、人員をいかにして縮減するかという問題でございますが、どうしてもこの国民負担の重圧を免れるという点から行きましても、国力、国情に相応する規模に縮減して行くという目標は動かせないところだろうと存じております。これにつきまして累次の行政整理もやつてつたのでございますが、今後行う行政整理は、ただいま御指摘のありましたような天引き整理を避けまして、どうしても行政事務の整理、改廃に伴つて定員を縮減するという方法によることが適当であると考えております。ただいまその具体案について政府は検討中でございますが、旧来の行政事務中改廃――改廃と申しましても、縮減の方向に向つて改廃をするのでございます。またお示しの占領下政策の是正、これもやはり縮減という方向に向つて是正いたしたいと存じております。さらに従来の事務の中で不急不要のもの、これにつきましては、政令諮問委員会の答申も出ておりますので、これらの行政事務の改廃、是正、さらに整理という施策によりまして、行政事務の量を縮減し、それに対応いたしまして人員を整理するという方針のもとに、ただいま検討いたしておるのでございます。さらに常に人員の厖大化を防ぐという心がけが必要でありますから、欠員不補充を強化する、従つて配置転換等によつてできるだけまかなつて行くというような措置もあわせて講じて行く考えでございます。また地方出先機関についてでございますが、これもまことに終戦後各省の出先機関がふえたのでございます。これは一つは地方府県知事が公選制度なつた関係から、どうしても各省が直接の出先機関を必要とするというようなところから多くなつて来ていると存じますので、ただいま地方制度調査会等で審議を願つておりまする府県の性格等のきまり方によつては、これら中央からの出先機関の思い切つた統合もできるのではないかと考えております。そうした見地でただいま十分検討いたしておるところでございます。
  200. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に私は行政機関の整理に関連いたしまして、審議会、調査会の問題について伺いたいと存じます。  政府においても御承知のように、現在各省には非常に多くの審議会ができております。もとより審議会制度は、民主的輿論を国政の上に反映する意味においてきわめて必要であることは、私もこれを認めるものでございまするが、今や政府関係の審議会の総数は約二百に及んでおります。総理府関係だけを見ましても、実に三十三というような大きな数になつております。これを筆頭にいたしまして、その大きい部分は経済関係の各省でございます。おそらく各閣僚の方々も自分の省にどういう審議会があるかということは御存じなかろうと思います。その中には年にほとんど一回も開かない、あるいは一、二回おざなりに開いて弁当を食つて帰るというような審議会も私は多々あるように見受けるのであります。こういう審議会につきましては、行政整理の際に思い切つた私は改善を加えていただきたいと存じます。なおまた私は審議会または委員会の中に決定権を持つております種類の審議会が相当あると思います。もとより文部省の文化財保護委員会とか、あるいは労働省の中労委でございますとか、こういう委員会相当の働きをしておられることは私も十分承知をいたしております。しかしながらこの行政権を持つております委員会の結果が、その責任の所在を非常に紛淆しておるような点を私は往々にして見受けるのであります。こういう点につきましても、行政権を持つた委員会につきましては、政府が一々十分なる検討を加えられましてむしろ委員会制度を廃して、政府の責任において行政を行われることが、私は適当であろうと思うのであります。これに関連いたしまして、私は通産大臣に一言お伺いをしたいと思うのであります。それは公正取引委員会の問題でございます。独禁法が日本経済の民主化に非常な大きな貢献をいたしましたことは、私はこれを認めるものであります。しかしながら同時に日本経済基本を破壊したものと申しても過言ではないと思うのであります。今や、先ほども申し上げましたように、世界情勢は百八十度の転回をいたしまして、アメリカの外交、政治の目標の一つは、日本産業をして世界市場の競争に対抗し自立せしめることが、私はその目標の一つではないかと思うものであります。独禁法の基礎をなしておりますところのポツダム宣言の前身たるヤルタ協定が破棄せられんとする今日、通産省も、あるいはその末端的存在でありますところの公正取引委員会も、この法律の存在のために非常な苦心をせられ、また末梢的な部分につきまして改正考えておられるように見受けるのであります。政府は独禁法はすでに一応の目的を達したものであるという観点のもとに、これをむしろ全廃いたしまして新たなる構想のもとに日本経済民主化を阻害しない見地において、貿易の振興、景気悪化の防止、企業の合理化のために新しい制度を建てられる御意思がありますかどうか、その点を伺いたいと存じます。
  201. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答え申し上げます。独禁法は、戦後経済民主化の趣旨に沿い、自由経済の原則にのつとつて制定せられたものでありまして公正自由な取引を確保し、経済の円満なる発達と社会一般の福祉の確保の観点から、経済倫理の基本としてその精神はあくまで尊重せらるべきものと考えまするし、わが国の経済の現状は、山崎さんも仰せのあつたように、先進資本主義国と構造的にも相違し、また資本蓄積を失い、さらに細分化された企業が景気変動に対する弾力性を失つた結果、競争激化のおもむくところは過剰競争に陥つて共倒れとなる危険さえ包蔵している。法の行き過ぎがかえつて国民経済の発展を阻害するおそれすら現われておるのであります。この見地から、国民経済の発展と消費者の利益、その他公共の福祉との若干の矛盾を調整し、わが国経済の実態により適合したものとするように、今国会に改正法律案を提出すべく目下関係官庁間において鋭意研究中であります。従来の行き過ぎがわが国の経済の実態に沿わなかつたように、この是正が逆に行き過ぎとなつて、不当に消費者の利益を害することとならないよう、改正にあたつては、十分慎重を期したいと考えております。従いまして政府としては最終的な結論はまだ申し上げるべき段階では、ございませんけれども、しかしこれを廃止して消費者その他の害とならないように措置いたしたいと考えておる次第でございます。
  202. 本多市郎

    ○本多国務大臣 御質問の審議会と行政委員会の問題でありますが、民主的な行政機構として行政委員会が非常にふえて来たといわれましたが、昨年度行政機構の改革によりまして、不急と思われるもの、それほど重要と思われないものは、この行政権を持つた行政委員会については、ほとんど整理が一段落済んだところでございます。しかしなおさらに検討いたしまして、不要のもの、不急と認められるものは、今後も整理を続けたいと存じます。審議会につきましては、昭和二十四年の行政機構改革貧ときに数百に上るものを、一挙に半減したことがあつたのでございますが、だんだん整理しても整理しても、次々に出て来ますので、時勢の推移に従いまして、おのずから重要性の薄弱なものができて来ると存じますので、今後も整理に努めたいと考えます。
  203. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 もう一点審議会についてお伺いしたいと思います。それは審議会の決定に対します政府態度であります。恩給審議会の、ごとき、その答申につきましては、政府は非常にこれを尊重せられまして、昭和二十八年度予算においてすでに軍人恩給の予算を計上せられましたことは、その努力に対して私どもは深く敬意を表するものであります。しかしながら、これと全然逆コースをとつた事実は、一昨年夏、数箇月にわたりまして非常に努力を続けられました選挙制度調査会の答申に対する政府態度であります。同調査会は、御存じのように、わが党の牧野長老を委員長とし、また改進党におきましては、わが国の選挙制度の権威者である古井委員、あるいはまた社会党におきましては、私の最も尊敬しまする三輪寿壮氏、こういうきわめて選挙制度について権威を持つた方々が参加せられておるのであります。その答申に対しまして、政府は何ら顧みるところなく、選挙法の改正につきましては、ほとんど具体案を持つておられぬような状況に見受けられるのでございますが、これらの点について政府の御所見を伺つておきたいと存じます。
  204. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 選挙制度調査会の選挙法に関しまする答申案は、小選挙制度中心としたもののように存じます。私まだ十分それを検討しておりませんが、私個人だけの意見を申しまするならば、イギリスの議会制度が比較的健全であるといたしますならば、それは半ば以上小選挙制度の結果ではないかと考えておりまして、その意味から私個人としては小選挙制度に賛成なのでありまするが、まだ今日いろいろな方面意見情報を総合いたしましてそれを実施するに時期が熟していないような感じを受けるのであります。なおそれに関連しまして、答申案に、たとえば連座法であるとかあるいは記号式投票方法というようなものがありまするが、それにつきましては、政府におきまして、その答申案に基いてさらに検討を進めております。それから憲法改正に関連いたしました国民投票法につきましても、すでに完備した答申案が出ておりまするが、これを法案化するかどうかにつきましては、今もつばら検討中でございます。
  205. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に私は地方制度の改革、ことに地方財政についてお伺いをいたしたいと存じます。  占領政策の結果、地方自治制度が特に新憲法第八章にうたわれ、昭和二十二年四月地方自治法の制定となりまして、府県知事の身分を公吏とし、地方議会の地位を強化し、中央政府の監督権を徹底的に整理いたしたのでございまして、制度上におきましては、地方分権制度は大いに拡充確立を見ておるのでございまするけれども、先ほども申し上げましたように、事実はこれに反するような場合が非常に多いように思うのであります。地方の小問題に至るまで、中央に持出しませんと、ほとんど解決を見ないのが現状であります。さらに地方団体の活動の源泉でありまする財源関係について見まするに、地方税は府県歳入の三〇%にすぎません。市町村におきまして、ようやく五二%でございます。ほとんどその財政の実体は、国家財政によつて支配される部面が非常に多いのであります。政府は地方行政の今後のあり方につきまして、地方分権に重きを置かれる御趣旨でございまするか、あるいは中央集権を強化拡充せんとせられる御意図でございまするか、この地方制度の根本につきまして、まず本多国務大臣の御意見を伺つておきたいと存じます。
  206. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方制度につきましては、お話通り政府も再検討の時期であると存じまして、地方制度調査会に諮問いたしておるのでございまするが、その目的とするところは、中央地方の有機的関係を密にするということを趣旨として諮問をいたしておるのでございます。この中央と地方の有機的関係を密にすると申しますのは、地方分権の精神もそこなわず、さらに中央との連絡も十分とれるということを目標といたしておるのでございますから、民主的にして能率的な地方制度ということに考えられるものと思つております。地方制度調査会の答申を得まして成案をまとめ上げたい考えでございます。
  207. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 おそらく御答弁は、地方制度調査会の答申をまつてということであろうと私も想像をいたしておつたのであります。地方制度の中で現在問題になつておりまする重要な点について二、三お伺いをしたいと思いまするが、いわゆる広地域行政すなわち道州制の問題、あるいは自治体としての府県と市町村の性格の問題、あるいは特別市制の問題等、私は種々あげることができると思います。これらの問題はおそらく私は地方制度調査会の答申をまつて政府が腹をきめたいという御答弁であろうと思いまするから、御答弁は伺いません。しかしこれらの問題はもう議論はすでに尽きておると私は思います。地方制度調査会にお諮りになりましても、府県と市町村の利害が相反しております。私は地方制度調査会はなかなか結論が出ないのじやないかということを心配するものであります。おそらく私は調査会はじんぜんこれらの問題について議論倒れになるきらいがありはしないかということを非常に憂慮するものであります。政府はこれらの地方自治に関する大きな重要問題につきまして、どういう時期にどういう目標をもつて、この調査会の結論を得んとせられるか、その点について本多国務大臣の御意見を伺いたいと存じます。
  208. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方制度調査会は、各界の権威者をもつて構成せられておりまして、りつぱな御答申のあることを期待しておるのでありますが、答申の時期は、来るべき通常国会には法案としてまとめ得るような時期までに答申されることを期待いたしております。地方制度調査会の御意向、また地方制度調査会の存在も、政府は十分尊重はいたさなければならぬのでありますが、当面処理しなければならない問題等につきましては、地方制度調査会の答申をまたずして、当面のことを処理しる場合もございます。しかしながら根本的な一般的な改革ということになりますと、答申をまつてからということになると考えております。
  209. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に府県知事、市町村長の公選制度について本多国務大臣の御意見を伺いたいと存じます。地方方自治民主化の基盤として創設せられましたこの公選制度の可否につきましては、私自身非常に判断に迷つておる問題でございます。ところが実情を見ますると、府県知事と府県会の間に非常に円滑を欠きまして、地方自治の進展を阻害し、あるいはまた府県住民に多大の迷惑をかけておりまするような事実を最近二、三見るのであります。私の出身県でありまする福岡の例もその一つであります。福岡の例は知事が自己の推薦をした、また法規によつて府県会の同意を得て選任いたしました副知事を、法の盲点をつきまして、府県会の意思を無視して罷免をした事実でございます。これは私は法制の不備だと思うのでありまするが、こういう事実から考えまして、府県知事公選制度は、今後どういうふうに持つて行くべきものであるかという点について、本多国務大臣の御意見を伺いたいと思います。  なおついでにお尋ね申し上げまするが、府県知事公選制度憲法第九十三条のいわゆる直接選挙に当るかどうか。すなわち府県知事公選の制度憲法改正を要するか、あるいは法律をもつて改正ができるか、この点につきましては、佐藤法制局長官の御意見を承つておきたいと思います。
  210. 本多市郎

    ○本多国務大臣 ただいまの御質問は、結局公選制の可否でございますから、府県を自治法上の地方公共団体としておくことが適当であるかいなやという議論になるかと存じております。この公選制は地方分権、地方自治制、民主化の見地から行われておるのでございますが、政府、中央との関係を密にするという趣旨をもつて政府は地方制度調査会に答申を求めていることでもわかりますように、何とかしていま少し地方と中央との連絡が密になるようにしたいと考えております。しかしこの公選制をいかに改むべきかということにつきましては、せつかく調査会で審議中でございますので、意見は差控えたいと思います。
  211. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お答えいたします。ただいま本多国務大臣からお答え申しましたように、公選制の廃止というようなことを政府として決定しておるわけではございませんので、それについての憲法論というものも、終局的の意見としては政府としてきめておりません。しかし私どもの考えておりますところを申し上げたいと存じます。  御指摘のように、憲法の中にただ「地方公共団体」とありますために、何がそこにいう地方公共団体かということは問題の種になるのであります。結論を申しますと、地方公共団体である以上は、その公共団体の長は必ず公選でなければならぬ。これはまた憲法できまつております。問題の要点は、憲法にいう「地方公共団体」とは何をいうかということに帰すると思います。これは昔の話でございますけれども、実は憲法を起案いたしますときに、あそこの条文に府県市町村というようにはつきり書いた時代もあるのでありますが、そのときわれわれは、憲法でそこまではつきりくぎづけにしてしまう。言いかえれば、地方自治体というものが二階建の建築であるということを憲法ではつきり判定づけてしまうということも行き過ぎではないか。それはやはり立法政策によつて適宜の措置をとられるように、ゆとりを残しておいた方がよかろうということで、実は今できておりますように、ただ単に「地方公共団体」といたしたのであります。従いまして現在の地方自治法におきましては、御承知通り府県と市町村というものを普通の地方公共団体の典型的なものとして、二階建をいたしておりますけれども、憲法上の要請といたしましては、必ずしも二階建であることを要請しておるものではないと考えております。もとより基礎的な地縁団体、共同体と申しますか、そういうものをなくしてしまうことは憲法上許されませんけれども、その二階建の上層の部分を性質をかえて地方公共団体でなくするということは、法律をもつてすれば可能であろう。従いまして理論上の問題といたしましては、府県知事の公選制を廃止することも、法律をもつて可能であるというふうな考え方を持つておるわけでございます。
  212. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に私は地方財政についてお伺いをいたしたいと思います。この点は大蔵大臣もよくお聞き願つておきたいと思います。  二十八年度の地方財政計画を見てみますと、歳入出八千四百億を上まわつております。なお政府一般会計予算歳計に比しまして、わずかに一千億が下まわる程度でございます。従いまして政府予算の審議にあたりましては、この密接不可分の関係にあります地方財政について相当の検討を加える必要があると信ずるものであります。地方財政の窮乏はきわめてはなはだしいものがあるのでありまして、赤字の状況はほとんど一般化して参りまして、また慢性化して参つておる状況であります。統計を見てみますると、実質上赤字団体でありまする府県は、昭和二十五年においては三三%、昭和二十六年において同様の三三%、市におきましては、実質上赤字を出しておりまする市が昭和二十五年が三九%、昭和二十六年に至りましては実に五三%、すなわち全国の市の半分以上は実質上の赤字を出しておるような状況でございます。町村は実質上の団体の調査がございませんので、形式的に調査いたしますと、昭和二十五年が二%、昭和二十六年が五%ということに相なつております。おそらく実質上の赤字町村は、この三、四倍に上ることは当然だろうと私は考えるのであります。こういうふうに地方財政の赤字になりました原因を私どもが検討してみますと、いろいろあると思います。まず第一に、地方財政が国家財政によつて支配せられる部面がきわめて多くて弾力性に乏しいことがはつきりわかるのでございます。昭和二十七年度の財政計画によりますと、国庫補助のつきました公共事業費、あるいは普通事業費、あるいはどうしても出さなければならぬ給与諸費、これが府県にありましては八四%、市町村にありましては五〇%というような状況に相なつております。従いまして府県、市町村の国庫補助あるいは公共事業以外の仕事は非常に財政的に限局をされておるのでございます。第二の原因は、政府が地方財政平衡交付金の算定にあたりまして、給与費を一方的に措置しておられることであります。すなわち地方の実情を無視されまして、国家公務員と同様の算定のもとに地方交付金を与えておられるのであります。ところが実際は、現に俸給が高い地方の公務員も、国家公務員並にすぐに減俸するということはとうてい不可能なことでございます。その結果がどういうことになつておるかと申しますと、昭和二十六年度におきましては六十六億、昭和二十七年度におきましては、実に百三十六億というような金に相なつております。また昭和二十八年度を私どもが推算いたしますと、さらにこれが増加いたしまして百五十七億に上つておるような状況でございます。これが地方財政の赤字を出した大きな原因ではないかと思います。またもう一つは、国庫補助の公共事業あるいは普通国庫補助事業は、年々政府予算が増額をされておるのに伴いまして、地方の負担が相当過重に相なつておると思います。昭和二十六年度よりも昭和二十七年度の事業費総額は二百億増加いたしております。また自治庁で調査ができておりませんが、二十七年度より二十八年度はおそらく三、四百億の事業費の増加があるだろうと思います。この国庫補助事業あるいは公共事業、これの増加が相当地方財政を圧迫しておるのであります。もう一つの原因は、国庫補助の基本額が非常に過少であり、そのしわ寄せを地方財政に与えておるという点だろうと思います。例をとつて申し上げますならば、もうすでに済んだことでございますが、新制中学の建築費の分担は国と市町村が二分の一ずつということになつております。ところが大蔵省の予算の基礎を見てみますと、児童一人当り〇・七坪という計算で国庫補助を計上しておられます。ところが児童一人〇・七坪ということになりますと、それでは学校の校舎と廊下と便所ができるくらいでありまして、特別の教室もできませんし、学校の職員の部屋もできないというような実情でございます。ところが地方民はそういうことでは決して納得をいたしません。結局これらの経費は地方が分担しておるという実情であります。これが地方財政に非常な赤字を出した大きな原因ではないかと思うのであります。また地方の行政内容あるいは機構でございますが、先ほども申し上げましたように非常に厖大に相なつております。しかしながらその根拠は多くは法律で強制せられたものが多いのであります。また現在の府県会は支出にブレーキをかけなければならぬ使命を持ちながら、ほとんど歳出の増加ばかりをはかるというのが実情でございます。従いまして地方自体が節約するということが非常にむずかしく相なつておるのでございまするが、結局地方財政のこの窮乏の原因は、私は国家の行政のやり方に大きな原因があることを痛感するものであります。この状況で推移いたしまするならば、私は地方財政の前途はまことに寒心すべきものがあると思うものでございます。この窮乏にあえぐ地方財政に対しましてあるいは自治庁長官、大蔵大臣はどういうお考えをもつて臨まれんとするか、この点をまず伺つておきたいと存じます。自治庁長官だけでもけつこうであります。
  213. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方財政が困難性に陥つておりますことは、御指摘の通りでございます。またこの困難に陥つた理由として述べられましたところも、一面の間違いない理由であると思うのでございます。しかしこの困難性に陥りました理由の一半には、やはり地方団体がその財政力に応じた規模の行政、事業をやつておるかどうかというような問題も起きて来るわけでございまして、終戦後荒廃いたしておりますために整備したいものがたくさんあるという関係から、事業を急ぐところに無理を生ずるという関係もあつて地方団体の赤字は増加するという結果になるものと考えられます。もちろん御指摘になりました政府の財政措置が潤沢でなかつたという点は、これも確かに言えるのでございますが、これは国家の財政状況から勘案いたしまして、国と地方と、財政の困難性をわかち合うという意味において、やはり潤沢な交付金は出せない、国の全体の力がそういう状態であるということで見て行くほかはなかろうと存じます。但し平衡交付金を算定いたしまする場合、中央の政府の責任において地方に行政事務を課するというような場合、その行政事務の一つ一つについて幾らの財政措置が必要であるかということは厳密に調査いたしまして、漏れなく算定はいたしておるのでございます。不可欠な経費については、すべて算定はいたしておるのでございますけれども、前申し上げました通り、潤沢とは言えない。これは国家財政の事情から来るやむを得ないところであると存じます。  そうした両面からの理由が、今日の地方財政の困難性を来しておるのでございますが、これをいかにして打開するかということにつきましては、望ましいことは、地方に普遍的な税源を付与することが望ましいことであると考えております。しかし地方財政の困難性は、財源のみで解決できるものではございませんで、いかなる程度の行政事務を担当せしむるかという、仕事の分量に応じての財政措置でございます。ので、その面からも研究をして行かなければならぬと存じます。いかなる行政事務が地方団体に担当せしむるのに適当であるかということにつきましては、府県の性格等につきましても見きわめをつけまして、その分量をきめて行かなければならぬと存じておるのでございます。財政は結局行政と不可分の関係にありますので、今後普遍的な財源を与えるということ、さらに国ができるだけ潤沢に交付金を出すということ、こんなことはもちろん当然地方財政を改善するに役立つ方向であることは、申すまでもないところでございますが、それとともに、地方団体自体におかれましても、自治精神の確立ということが伴わなければ、その実を上ぐることは困難であると思うのでございます。中には地方において、いろいろ好ましからぬ予算の使い方をするという非難さえあるのでございまして、そうした面につきましては、自治団体において十分これを監視して、予算の効率的な使用ということに努力して行く、この精神政府の措置と適当なる制度の確立によつて、地方財政を改善して行きたいと存じております。その財政制度の改善につきましては、これまた地方制度調査会の総合的な行政事務との関連において、さらにまた税制につきまして、国と地方との配分をいかにするかというような面につきまして十分検討、御答申をいただいた上にいたしたいと考えております。
  214. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 さらに私は二十八年度の地方財政計画について二、三伺いたいと存じます。二十八年度の地方財政計画によりますと、地方税が税額におきまして二十七年度に比して百五十二億増収を見ることに相なつております。この百五十二億は大体自然増収を充てておられるのであるかどうか、あるいはまた地方税の改正によりまして増税を企図せられておるかどうか、これに関連いたしまして本多国務大臣に伺いたいと思いますことは、現在地方財政の基礎をなしておりますのはいわゆるシヤウプ勧告でございます。このシヤウプ勧告に対しまして今後自治庁としてどういう態度をもつて臨まれるか、その点につきましてまず伺つておきたいと存じます。
  215. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方税の来年度百五十億ばかりの増徴は、主として自然増収でございます。ただ地方税法について若干の調整を加えたいと考えておりますことは、国税所得税の基礎控除の改正に伴いまして、地方税においても基礎控除の引上げ、さらに繰越欠損金を遡及して算入する期間の延長等を講じて、この面は減税になるわけであります。その他の面につきましては、定額制をもつて徴収しております税、これもその定額をきめてから相当年月たつておりますので、他の税との均衡を考えまして、これを是正したいと考えておりますが、これらの増収部分はわずかでございまして、ただいま申し上げました通り、主として自然増収でございます。  それから今の地方財政制度は大体シヤウプ勧告に基きましてできておるのでございますが、シヤウプ勧告は総合的な勧告でありましたために、これを全面的に受入れて実施することができましたならば、今日ほど地方財政の行き詰まりを生じなかつたのじやないかとも考えられるのでありますが、御承知通り、附加価値税等は実施を見ずにいるような状態でございまして、そうしたこと、さらにまた実情に合わない点もあつたことと存じます。その結果今日根本的に財政制度を再検討しなければならぬ時期に立つておるのでございまして、これをいかなる程度に改廃するかということは、地方制度調査会の御調査を煩わした後にいたしたいと思います。
  216. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 時間がございませんので、まとめてお尋ねを申し上げたいと思います。二十八年度の平衡交付金の二百七十億増加を大蔵大臣が御承認いただいたことは、地方財政の窮乏緩和に相当役立つことと思いましてこの点は私は感謝をいたしておるところであります。ただ当初平衡交付金は千七百二十億の予算でありましたものが、途中におきまして義務教育費国庫負担分九百二十億を振りかえて別途に計上をいたされております。従つて平衡交付金は八百億のわくに相なつておりますが、千七百二十億の交付金によつて地方財政の調整をすることは非常に容易であつたかと私は思いますが、八百億に減縮されましたこの交付金の額によつてはたして十分財政の調整ができるかどうかということに対しまして、非常な心配を持つておるものであります。この点は本多国務大臣からお答えをいただきたいと思います。  さらにまた財政計画の中に交付公債九十七億というのが計上せられております。これは多分私は地方の負担金を、地方から国庫に交付公債として納める制度であろうと想像をいたしております。はたしてしかりといたしますならば、この交付公債の制度は非常な名案でありまして、地方財政の緩和に私は大きな役割を果すものと存じます。大蔵大臣は昭和二十八年度はやむを得ず公債政策をとつたけれども、昭和二十九年度以降は公債政策はとらないという御説明でございますが、この交付公債の制度につきましては、他の一般の公債と別な意味を持つておりまするので、ぜひこれは二十九年度以降もお認めをいただきたいということを私は希望するものであります。これについて大蔵大臣の御所見を伺つておきたいと思います。  さらに財政計画中、地方債公募百八十億が認められております。昨年に比しますると、百億の増加に相なつております。これ消化はなかなか容易じやないのじやないかということを、私は心配をいたすものでありますが、大蔵大臣はこれの消化につきまして、ぜひ地方を援助していただきまして、十分の消化ができまするようにお願いをいたしたいと思います。これについて大蔵大臣の御意見を伺つておきたいと思います。  もう一つ、本多国務大臣にお尋ね申し上げたいことは、義務教育資金額国庫負担を本年はやむを得ず地方財政のわく内においてまかなつたようなきらいがございます。二十九年度におきましては遊興飲食税、あるいは入場税、あるいは鉱区税について、いろいろ御検討に相なるようでございますが、これらの税につきましても、国税の引直しということについては、いろいろ意見がございます。従いまして、私は中央地方の総合的な税制の改革によりまして、義務教育費全額国庫負担が国庫において支出せられるような法制を、ぜひおとりを願いたいと思います。これに対する本多国務大臣の御意向を伺つておきたいと存じます。
  217. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 交付公債のことは、あなたのおつしやつた通りに私も考えておりまして、そういたしたらよろしいと思います。百八十億の起債につきましては、私どももできます限り便宜をはかるようにいたしたいと存じます。
  218. 本多市郎

    ○本多国務大臣 御質問がたくさんありましたので、ちよつと失念した点もあるかと存じますが、第一の御質問は、平衡交付金一千七百二十億の中から、九百二十億の義務教育費全額国庫負担の金額を分離いたしたので、八百億の平衡交付金では、はたして本来の財政調整の目的を達することができるかいなかをいう点であつたと存じます。この点につきましては、一応ごもつともな御心配と思うのでございますけれども、この分離いたしました九百二十億のうち、給与費に充てられるものが九百一億で、教材費に充てられるものが十九億になることになつております。この九百一億の義務教育教職員の給与を、いかに府県に交付するかと申しますと、平衡交付金制度と同じ精神に従いまして、富裕団体には、全額交付せられないもの、一部交付せられるものというような措置を講じますので、交付された結果どうなるかと申しますと、交付された義務教育費全額国庫負担費の金額と、さらに自治庁から交付いたします平衡交付金の金額を合算いたしますと、平衡交付金一本で交付されたときと同じ状態になるように交付せられるのでございます。従つて平衡交付金制度の充実ということについて、将来の財政措置については、お話のありました通り、中央、地方を通ずる税制の改革というようなことによつて実現しなければならぬと考えておりますが、さしあたり、この義務教育費全額国庫負担制度を設けまして、平衡交付金の中から分離したことによつて、地方財政が特に圧迫を受けるというようなことはないわけでございます。
  219. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 ただいまの御説明は少し不完全のように思いますけれども、これ以上お尋ねすることは、時間もございませんからやめます。  次に私は警察制度について、法務大臣にお尋ねをしたいと思います。政府は占領政策の是正の一つとして、警察制度の改革をあげられております。申すまでもなく現在の警察制度は、昭和二十二年十二月の警察法に基礎を置いておるのでありまして、いわゆる国警と自警併立の制度でございます。この制度が警察民主化に相当貢献をいたしましたことは、私どもはこれを率直に認めなければならぬと思います。しかしながら、この改革の必要は、占領政策継続中にすでにこれを認めておるのでありまして、昭和二十六年六月の警察法の改正以来、自警を廃止いたしましたのが、市において五、町村において実に千二百に及んでおるのでございます。およそ警察制度につきまして、その改革の重点は、私は三つあると思います。その一つは、管轄区域と人事権の問題であります。第二は、政府と警察との関係、すなわち治安に対する責任制の問題であると思います。第三は、警察機能の問題であると考えるのであります。以下私はこれらの点につきまして、お尋ねを申し上げたいと存じます。私は管轄区域は、自警、国警が現在のように併立をいたしております結果は、いわゆる能率の向上、人員、資材面の不経済、こういう点から考えまして、これは一本化することが当然必要なりという意見を持つものであります。その一本化いたします場合に、その管轄区域を府県にするということは、これは当然の結論だろうと思います。この前新聞紙等にも出ておりましたが、五大都市には特別の措置を講ぜられるようなお考え政府にあるかどうか。私は五大都市につきましては、現在地方制度調査会において、特別市制の問題が相当論議をされることに相なつておると思いますので、五大都市を特にこの際特別の取扱いをするということにつきましては、私は賛成しがたいものであります。むしろ地方制度調査会の結論を待つて、もし特別市制が施行されるということになりました場合、その場合警察の管轄区域につきましても、五大都市を特別に引離すということが当然の措置であつて、この特別市制以前に五大都市を特に考える理由がどこにあるか、その点につきまして、私はまず伺いたいと存じます。
  220. 犬養健

    犬養国務大臣 順を追うてお答え申し上げます。管轄区域は府県単位がいいであろうという意見が、大体圧倒的でございます。もつともお断りしなければなりませんのは、まだ警察制度の要綱とか最後案ができておりません。今日も閣議がありましたが、閣議にもまだかけずにやつているような段階にございますので、その段階の程度のお答えしかできないことを残念に思います。どこの国でもそうでございますが、ことに日本の官吏の慣習といたしまして、命令が二途に出て、しかも仕事が似通つている仕事を併立的にやるということは、どうもうまく行きませんので、その点をどうしたらいいかということは相当の重点を置いて今研究しております。  もう一つ五大都市の問題でありまして率直に申していろいろの御希望があります。非常に人口の集中しているところは、それだけ公安委員会の警察組織も実力もできておるのだから、これを例外的に存続するというようなお話もありまして、一つの参考意見として承つておりますが、同時に反対の意見としては、仰せのように、これは他日の特別市制設立のときの伏線になるから、そういう政治的な意図のある考え方は今は困る、こういうお話もありまして目下慎重に研究いたしております。
  221. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に府県単位といたしまする場合に、その方法が三つあると私は思います。一つは国警一色に塗りつぶす案であります。これは現在世上非常に非難を受けております、いわゆる警察国家になる憂いがございますので、この案については私どもは賛成できないと思います。  第二の案は、府県の完全な自治体警察一本にするということが一つ考えられると思います。しかしこの案は警察能率の上から考えまして、現在すでに四万以上を擁しておりまする国警を、府県の自治警にするということは逆行であつてこの案に対しましては私は賛成しがたいものであります。そういたしますると、残る案は結局自警、国警の観念を一掃いたしまして、ここに新たな警察制度を立てるという考え方に立つことが必要だと私は思います。その場合最も問題になりますことは、結局人事権の問題であろうと考えます。この人事権につきまして犬養法務大臣はどういうふうな構想でお進みになる御予定でございましようか。またこの改革に最も重大なる影響を持ちますのは、自警、国警の給与ベースの相違であろうと思います。現在私の出身県でありまする福岡等において見ましても、給与ベースの上らなかつた時代におきましても、国警は自警よりも三千五百円ぐらいの給与の低下でございました。おそらく給与ベースが改訂になりますと、平均して五千円ぐらいの開きがあるのではないかと思います。もしも国警、自警を一本化されまして、その職員を国家公務員にいたすという案をお考えになつておりますならば、この給与ベースの調整をどういうふうにおはかりになる予定でありますか。私はこの点が改革の一つの大きなポイントではないかと思うものであります。この点について大臣の御意見を伺つておきたいと存じます。
  222. 犬養健

    犬養国務大臣 今の新しい警察制度の根本的な考え方については、大体山崎委員と同様の考えを持つておりまして、国警が勝つか、自警が負けるか、自警が負けて国警が勝つたというようなことでなく、日本の新しい警察組織をどうしようかという白紙から考えてみたいと思つております。その場合の給与ベースでございますが、お話のように自治警と国警は大分違つております。こういう問題は、現実の問題といたしましてより高い俸給をとつておる人の俸給を削つて、事を円満に治めるということは、これは人間同士ほとんど不可能なことでありまして現在のより高い方の俸給を何かの形でそつくり認めるか、また認めるのと同じ措置をとるか、この点については大蔵省とも打合せておりますし、また大蔵省の考えも諮らなければなりませんので、はつきり申し上げにくいのでありますが、大体二通りか三通りのやり方を考えております。いずれまた御審議を願うときがあると存じます。
  223. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 さらに警察関係につきましてもう二点お伺いしたいと思います。一つは国警、自警一本化になりまして、能率の向上をはかるという趣旨でございますならば、現在警察法によりまして設置せられました総人員は十三万四千くらいになつておると思います。警察法制定当時十二万五千で、ございましたのが、市町村の条例をもつて増員を認められました結果、その後七、八千の増加をしておると思います。この警察事務の能率化をはかる新制度におきましては、この人員に対しまして相当削減する余地が出て来るかと思います。  この点につきましては、本年度の政府予算二百二十億でまかなわれる場合には、相当の財源の一部になり得るように考えるものでございます。これらの点につきましても一応伺つておきたいと存じます。さらにまた私は第二の点、第三の点につきましても、ついでにお伺いを申し上げておきたいと思いますが、その一つは、治安責任の所在の問題であります。現在の制度におきましては、どういう事態が起りましても、治安の最終責任の所在が、きわめて明確を欠いておるのであります。警察法によりますと、総理大臣は国警長官に対しまして指示権を持つておられるのでありますが、事態が起りました場合に、総理大臣の責任は指示権の範囲にとどまるのであります。法務大臣は事実上総理大臣の委嘱を受けられまして、警察の事務を取扱つておいでになります。法制上法務大臣に何らの責任は、ございません。もしも昨年五月のメーデー事件のごとき騒擾事件が、終戦前起つたとしますならば、私はおそらく当時の警保局長あるいは警視総監は罷免をされ、内務大臣の責任になつたことは当然であろうと思います。こういう警察制度の責任の所在が明確を欠いておるということは、私は現在の警察制度あるいはまた今後の重要なる国内治安の処理に当る場合に、大きな欠陥ではなかろうかと考えます。この治安責任の所在について、将来いかにお考えになりますか。  第三の点は、警察機能の問題であります。終戦後警察の機能は、いわゆる民主化の声におびえまして非常に減縮をされております。私は例を二つばかりとつて申し上げますが、その一つは入国者管理の問題でございます。現在最も国内治安に関係の深い密入国者の取締り権は、警察に全然ございません。あるいは密輸船あるいは大きい船の一部分に隠れて乗つて来る者に対しましては、一人の入国審査官が船に乗り込んで行つて調査するという実情でございます。警察はこれらの密入国者に対しましては、入国した以後に何か事件が起つてから初めて取締りに当るというのが実情でございます。またもう一つの例をとつて申し上げますならば、火薬に対する行政措置でございます。従来火薬というものは、治安に大きな影響を持つ警察の取締りの重要な対象であつたのであります。しかるに現在この火薬の行政措置につきましては、府県知事の権限でございまして警察の権限に相なつておりません。私は最近私の郷里の署長の話を聞いたのでございますが、私の郷里の近くの共産主義者が、ある石の山を入手いたしまして、その石山に使う火薬を相当手に入れたという話を聞いたのであります。こういう事件に対しまして、警察は何ら手を下す法律上の根拠を持つていないのであります。こういう点につきまして、私は今後国内治安に重大なる関係のあるこの火薬の問題、あるいは密入国者の取締りの問題、これらは当然私は警察の機能の中に含まるべき問題であろうと考えるのであります。さらにまたこれらの点から考えまして、現在ございまする入国管理局、あるいはまた公安調査庁、こういう機関につきましても、将来どういうふうにお取扱いになるお考えでありますか。これらの点につきましても、一括してお答えをいただきたいと存じます。
  224. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。何か落しましたら御注意を願います。  最初に、今度警察組織を改革するに際して、剰員が出るのではないか、こういう問題でございます。私もどんな形にせよ、今度警察組織をかえますならば、人員が少し多過ぎると思います。この多過ぎる人員をどうするかという問題については、実際においてはよほど細心な注意を払う必要があろうと思います。下級警察官の人心動揺を来しますので、十分これは注意いたしたいと思います。一つの考え方はゆつくりやつて行く考え方であります。と申しますのは、警察官は十三万五千のうち、年々自然に自分からやめて行くのが六千人ばかりあります。それはなつてみるとなかなか職務がつらいので、ほかに職を求めてやめて行く人が大体六千人あります。その自然退職者と、またその欠員をふやさんという建前で三、四年かかつてつて行くか、一度にやるか、あるいはその中庸をとるか、こういう問題であります。自然退職者だけでやつて行く場合と、それが行政整理の大眼目からいつて、少しなまぬるいという場合には、少くもかりに十人の退職者をここに出すという場合は、自治警察系統の人五人、国警の人五人というふうに公平にやつて行かないと、実際上これはなかなかなかうまく行かない、こういうふうに考えております。  それから治安責任の所在、これは非常にやかましい問題でありまして、御承知のように、メーデーの例も始終聞かされておる次第でございます。現在の、たとえば私の地位なども、担当大臣というのでありますが、すこぶる責任が不明確なんでありまして、ここで答弁をしたり、予算を大蔵省に要求するための総理大臣の代言人みたいなことになつておりまして、責任があるようで、法規的に追究して行くとあまりないようになつております。今度どういう改正をいたすにいたしましてもこれはいま少しはつきりいたしたいと存じております。  もう一つ山崎さんが責任の明確化について疑問を持たれるのは、国家公安委員会というものが、国家警察の長である国警長官を、総理大臣の同意を得て任命するという問題でありまして、責任の明確化からいえば、総理大臣が任命する主役になつてしかし国民の声を聞くために国家公安委員の意見を聞く、こうした方がいい、責任の明確化ということからいえばそうなんでありますが、一方から考えますと、それでは内閣のかわるたびに、総理大臣または政府の気に入る長官を任命し、気に入らない長官は首切るという、ここに政変のたびごとに人心を非常な不安に陥れる原因も起るという点からいいますと、人心をやわらげるために、責任の法制上の不明確をあえて侵すという問題が起つて来るのでありましてこれは先ほど申し上げましたように、諮るべきところに最後に諮つてありませんので、目下慎重に考えておりますが、いずれにしても、現在の私の場合のように、担当大臣というあやふやな地位は避けたいと考えております。  次に入国管理局の問題でございます。御承知のように、たくさんの港に密入国の人がやつて参ります。それに対して率直のところ、これを取締る入国管理局の役人は少いのであります。お話のように、国内に入つてしまつた密入国者らしい者の捜査というようなことは、これは警官の力を借りているのであります。私の希望としては、これは大蔵省の関係もありますが、港における入国管理官、調査官というようなものはもつとふやしたい。なぜそこに警官を使わないのかという問題でありますが、今私は堂々と警官の服を着た人を港に出すわけには実際に行かないのであります。それは外国人を対象としておりますし、国交回復のやさきでありますので、なるべく入国の手続などを扱う官吏は、警官でない服装の者が当つて行くということが大切でなければならないと思います。その外に警官の協力応援を得るということがこれはよいのでありますが、船そのもの、税関そのもの、波止場そのものにただちに警官の協力を求めるということは、これは慎重考慮を要するのではないか。こういうふうに考えます。  それから火薬の取締り、これはお話通りでありまして、今の火薬取締法の行政監督は通産省と道府県知事の権限であります。そのためにたとえばあなたの御出身地の福岡のように鉱山の多いところは、非常に困つておられるようであります。これは何か実際上便利な方法を考えたいと思つておりますが、さりとて火薬取締法に関する行政事務の全部を警察が扱うということは、また行政警察権の拡大だというような、一種の難色も世間にありますので、その間どういうあんばいをするかということを、今研究しておる最中であります。  それから公安調査庁、これは単に人を調べるという観点から行くと、非常に警察と似ておるので、一緒にするかどうか、したらよいじやないかという意見もよく聞きます。しかしどうも今の公安調査庁はただちに警察と合併するのは疑問に実は思つております。調査官を増すというような問題、これもまた行政整理という問題で再考を要する余地がないでもございませんが、御承知のように、暴力主義的破壊団体の調査ということを公安調査庁がやつておるのでありまして、また思想の調査、つまり現実の犯罪の捜査でなく、長い目で見た思想動向がどうなるか、それが一国の運命にどう影響を及ぼすかという職務でありますから、これもあまり警官の服を着た人がうろうろ歩くのはまずいのではないか、こういうふうに考えております。もう一つ、こういう暴力主義的破壊活動をやる団体の規正という大切な役目がこの役所にあるのであります。その団体の規正等の立証というものは、複雑困難をきわめておりまして、一種思想的見地からやらなければならない。これが現実の犯罪捜査に当つておる警官とやや資格を異にしておるのであります。ことに第十三回国会に破防法が通りましたときのその運用については、満天下が心配したと言つても過言ではないのでありまして、それに当る役人は警察と違う者が当つておるということにすることが、やはり人心を安らかにするのではないか、こういうふうに考えているのであります。
  225. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 さらに教育制度並びに労働行政について伺いたいのでありますが、時間が非常に切迫いたしましたので、簡単にまとめて質問を申し上げたいと存じます。  まず教育制度について文部大臣にまとめて御質問申し上げますが、わが国の教育界は占領政策の開始と同時に、空前絶後の米国紹介時代を現出いたしまして昭和二十一年米国対日教育使節団の来朝とともに、わが国教育の大綱はアメリカ式に法律によつて定められたことに相なつております。教育憲法と称せられまする昭和二十二年三月制定教育基本法、学校教育法、社会教育法等次々に法律が制定をいたされております。教育基本法の基調といたしまする個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育を普及徹底するという、この趣旨に対しましては私どもは満腔の賛成をいたすところであります。しかしながら具体的にその実際を見ますと、ときにアメリカ式直訳であります。あるいはまた場合によつては直訳以上のものが見受けられるのであります。政府は占領政策是正の一つとして、教育制度の改革をあげておられるのでございますが、その基本的なお考え方をまず伺いたいのであります。  これに関連いたしまして、昨年夏設置決定いたしました中央教育審議会が、半歳を経てようやく本年一月六日に発足をいたしております。こういう重要機関の設置が何ゆえにかくのごとく遅延いたしたのか、その理由並びにこの重要なる機関を今後文部大臣はどういうふうに運営せられんとするか、この点についてお伺いをしたいと存じます。  私はまた第二には、教育内容につきましても詳細伺いたいのでございますが、時間を要しますので、簡単に一、二お伺いを申し上げたいと存じます。  一つは教育委員会制度でございます。教育委員会は私から申すまでもなく、教育基本法第十条によつて設置をいたされております。そうしてこの委員会が右によりまして地方の実情に即応した教育行政に相当の貢献をしたことは、私どもは率直にこれを認めるものであります。ただ市町村の教育委員会でありますが、これは昨年の秋、法の盲点として期せずして生れた制度であると私は思います。この運営は各市町村とも相当困難を来しておるのでありますが、この市町村の教育委員会に対して文部省は助成の方針をおとりになつておるように見受けられるのでありますが、実情はなかなか私はこれは育ちにくい機関ではないかというような感じを持つのであります。せめて町村の教育委員会につきましては、郡単位ぐらいに連合体をお認めになる必要があるんじやないか。また最近市町村長の間には市町村教育委員会を諮問機関にしてもらいたいという意見相当台頭いたしております。こういう問題について文部大臣の御意見を伺つておきたいと存じます。  次は教授内容の問題でございます。昨日北吟吉氏の質問に対しまして、文部大臣は地理、歴史の科目については大いに強化するというお説でございました。天野前文部大臣は児童の道徳教育につきまして、相当力を尽されたように私は思います。現岡野文部大臣はこの児童の道徳教育、修身科の復活等につきましてどういうお考えでありますか、この点も伺つておきたいと思います。  さらにまた職業ないし産業教育につきましても、文部大臣の御意見を伺つておきたいと思います。  次に私が伺いたいのは日教組の問題でございます。教職員組合の形成は私から申すまでもなく、米国の第一次使節団の勧告したところでありますが、日本の教職員組合はアメリカの意図以上に私は発達をしておると思います。御承知のごとく、昭和二十二年六月、日教組の成立以来漸次その地歩をかためて参つておるのであります。見方によりましては、私は日教組の問題は戦後教育の最大の変化と申してもいいのじやないかと考えるくらいであります。しかしながら私は最近の日教組の政治活動に対しましては、いろいろ問題があるように思います。私はここに二、三の実際の例を持つております。最近東京都の教職員組合が、児童を通じて各家庭に配りましたこのビラは、文部大臣御存じでございましようか。あるいはまた昭和二十八年一月二十日に神田教育会館におきまして日教組の中央委員会を開いておりますが、そのときの申合せ決議につきましても私はここに入手をいたしております。その内容を見ますと、義務教育費反対の内容でございますが、その反対をとなえることはこれはやむを得ぬといたしましても、その中には事実を曲げた点が相当あるように思います。その一例をとつて申し上げますならば、義務教育費に関連いたしまして「建築費の国庫補助は現在の二分の一から三分の一又は四分の一にへらされる」「一年生の教科書代も国が出さなくなり総て父兄持ちになる」こういう、事実を曲げた宣伝をいたしております。また東京都の場合におきましては「二部教授はますますふえるし、いたんでいる校舎がどんどんふえて小供達が大変きけんになります」こういう宣伝をいたしております。こういう日教組の政治活動に対しまして、文部大臣はどういうふうな御感想をお持ちになつておりますか、この点も伺つておきたいと存じます。  次に義務教育費国庫負担につきまして、この制度教育の機会均等と水準の維持向上、これを目的といたしております以上、私はこの制度自体には賛成をいたすものであります。ただ政府の計画によりますと、教職員の身分を国家公務員とし、定員定額制によつて国庫負担をいたすような方針に相なつております。これはもとより地方税制の改革までの暫定的の措置であり、しかも八大府県に対しましては国庫の負担がない建前に相なつておるのであります。さらにまた現在定員定額制によるよりも、各府県では平均三百五十円くらいのベースが上つております。これらにつきましては府県の負担になつております。これは暫定措置としては私はやむを得ないことであると思いますが、この措置につきましてはぜひ二十八年度に限つて、二十九年度よりは全額実質上の国庫負担に相なりますよう、文部大臣の特別の御努力を要請したいと存じます。  最後に法制局長官に一言伺いますが、今回の義務教育費全額国庫負担法によりますと、国家公務員を地方費負担とする場合が起るのであります。この国家公務員を地方費負担とする場合の法制上の根拠をぜひ伺つておきたいと思います。  さらにまた教職員の任免権を市町村の教育委員会に委任されることになつておりますが、この地方自治団体の付属機関でございます市町村の教育委員会に対しまして、国家公務員の任免権を委任するということが、法制上さしつかえないかどうかという点を重ねて伺つておきたいと思います。  最後に文部大臣に伺いますが、教材費を十九億円も予算に計上しておるのでありますが、これは全額国庫負担の俸給と同じような方法で配分される予定であるということですが、これらの点につきまして一括してお尋ねを申し上げます。
  226. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。第一点でございますが、御承知通り日本教育制度は終戦後アメリカの勧告もありまして、また新憲法に出ております文化国家というような意味によりまして、こういうような新しい画期的の教育改革を見たわけであります。ただ問題は、あまりに大きく急激でございまして、国情に合わぬ節もたくさんあるのでございます。文部省といたしましては、六・三・三・四の制度につきましては、これは地方公共団体の長とか、地方公共団体が非常な苦心をして、財政のゆたかでないときに、とにかくある程度までほぼ完成した形になつておりますので、この方針は堅持して行きたいと思つております。ただ、先ほども申し上げましたように、国情に合わぬ点はたくさんあると思いますから、この点をひとつ十分検討し、今後改善して行きたいと思つております。たとえて申し上げますれば、教育内容につきましても、またその方法なんかにつきましても、中学校とか小学校とか教育の面におきまして、これは前文部大臣も主張されたことでありますが、地理とか歴史とか修身とかいうことにつきまして、いろいろ計画されたものもありますが、私はやはり前文部大臣と同じような考えを持ちまして、そういう方面の改善をして行きたいと思つております。それからまた高等学校以上、大学方面につきましても、どうも急速に高等専門学校が大学なつたということで、何か画一的になり、同時にその教育内容も実際に日本の産業界、社会に合うかどうか私は疑問を持つております。そのうち一番気がつきますことは、産業教育の点が欠けておると思いますので、今般は来年度約九億円の予算をとりまして、それで職業教育をやつてみたいと思つております。  それからちよつと飛びますが、中央教育審議会がたいへん遅れましたことは、これはちようど天野さん時代にいろいろ苦心されておりましたのを私が引継ぎまして、その後またいろいろ検討を加えまして遅れたわけであります。これは私としては恐縮に感じておりますが、しかし、この中央教育審議会と申しますのは、文部大臣の最高の諮問機関でございますから、十分いろいろなことの検討をこの審議会にお諮りして参考にいたしたいと存じております。  それから教育委員会の問題でございますが、これは昨年各市町村にやらせたのでありますが、大体教育民主化の建前から申しますと、地方の住民の公正な意思を反映さして、ローカル・カラーを生かして行くという意味においては、私は行政組織としては適当だと思つております。しかし、非常にこまかい規模の団体では非常に運用上問題もありますし、それから私は自治庁の長官をいたしておりますときから考えたことでございますが、今の日本の町房規模は、実はいろいろの点からあまりに小さ過ぎる。これをもう少し大きくして行きたいと考えておりますから、これは自治庁長官と共同いたしまして、地方の規模を大きくし、同時にまたその他の点ではやはり実情に合わぬ点を直して行きたいと思いますが、これをこのまま続けて行くかどうかということにつきましては、私は一つの意見を持つております。しかし、これは独断をもつて専行しようとは思いませんが、私が文部大臣になりましたときの感想といたしましては、諮問委員会であつてほしい、こう考えております。これは私個人の見解でございますがそういう方向に進んだらどうか、こう思つております。  それから道徳教育でございますが、これはきのうも申し上げました通り、戦後道徳がわれわれの目から見ますと、非常に頽廃しておるよろな感じもいたしますので、これはやはりどうしても何とか教育の力をかりて、直して行かなければならぬと考えておりますので、今まで社会科というものによつて道徳教育をしたこともありますけれども、私が修身科を置きたいと申しますと、よく論語読みの論語知らずをつくつたつてしようがないではないかという人があります。しかし、その論語読みの論語知らずという言葉は、少くとも実践に移して教えて行けば、大多数はとにかく道徳律を守つて自分の身を修めて行く。たまたま論語を読んでよく覚えておつても、それが実行に移らぬという例外を論語読みの論語知らずといつておるので、私自身としては、今後経験の少い、またこれから新しくものに携わつて行くところの小さな子供に対してこういうことはしてはいかぬ、お父さんお母さんの経験上こういうことは社会生活としてよくない、だからお前はこういうことをしなければならぬということを先入感として教えて行けば、実際に自分自身が社会に出て見たとき、なるほどと思うこともあるのではないかと思いますから、私はこの点におきましてやはり修身科は独立のものとして置きたい。同時にそればかりにたよらないで、各学科に総合的に道徳教育を入れる、社会科に、算術に、そういうものを復元しまして、道徳方面をもう少し直し、大きくなつて人権を尊重するような教育の仕方をしたいと思つております。  それから日教組の問題でありますが、これは御承知通り教職員で構成しておりましてただいまの団体は任意団体でございまして、公務員法上の保護を受けた団体ではございません。私の態度といたしましては、政治交渉とかいうようなことは決してしたこともありませんし、将来もそういうことはせぬつもりであります。ただ文部大臣といたしましては教職員の身分を保障し、また安寧幸福を祈るという意味においては、その組合の諸君あたりの考えが、むろんそういうことで発足していると思いますから、そういうことにつきましては、私はおおらかな気持でもつて意見は聞いております。しかしながら私の感ずるところによりますれば、はなはだ無秩序に流れ、秩序を失して、学校の先生方の態度とは思われないようなことが始終あります。それからまた政治活動方面においてあまり行き過ぎた活動をしておるというように私は感じております。ことに先ほど仰せになりましたような都教組のビラとか、あるいは一月二十日の決議、あれなどを見ると、教育者の集まりではなくて、いかにも一党一派に偏した政治団体だ、学校の先生がああいうことを言うものでないと断言してはばからない。私はこのことについて相当な決意をもつて対処したいと考えております。  それから義務教育費全額国庫負担法を今度出しますが、予算編成最中に実はかわつたものでありまして、その準備が整つておりませんので、はなはだ申訳ありませんが、本年度内に税制改正などの措置をとりまして、平衡交付金の行つていないところとか、あるいはわずかばかりしか行つていないところとか、少い負担しかしない、また減額をしてやるというようなところを全部差上げるようにするつもりでございます。それにつきましては、閣議の決定によりまして、税制措置をして、できるだけ最近の機会にこれをやる、こういう決意でありますから、さよう御承知をお願いいたしたいと思います。  それから教材費の問題でありますが、この教材費は、そういうような予算の編成の結果によりまして得たものでございますから、十分とは申しませんが、十九億とつてございます。しかしこれは全市町村に差上げたいと思つております。ところがその点におきまして、私はなるべく小さいところの市町村に厚くしまして、大きな市町村には薄くして、そうして全般に行き渡るようにしたい、こう考えております。大体御質問の要旨は尽したつもりでございます。
  227. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私に関しましてのお尋ねが二点あつたかと存じますが、第一点の国家公務員の俸給、人件費を地方費負担にするという点については、国家公務員と申します以上は、原則は国でその俸給をまかなうというのが当然である、これはもう言うまでもないことでございます。ただ仕事が地方に非常に深い関係がある仕事であるということから、これは地方費負担にするというのもまた考えられることでありまして、これは御承知通り、昔は府県庁には府県庁所属の属、技手というのがおりましたし、あるいは警察官もそういうものがあつたと思います。新憲法になりましてからも、その点は法制的な考え方としては同じでございまして、警察についても警察法が新憲法から遅れて施行されましたけれども、警察法の施行前もしばらくの間は、やはり府県費負担の警察職員がおりました。現在でもたしか都道府県立の教護院でございますか、そういう例がございます。いずれにいたしましても、法制の面からは問題がございません。  それから第二点の任免権を地方の機関に委任するという問題、これもごもつともな御懸念かと存じますけれども、広く国の仕事について考えますと、従来でも、たとえば市町村長に国の事務を委任した例がたくさんございます。場合によつて日本銀行でありますとか、市銀にさえも委任したことがあります。任免権も国の事務でございますから、同じことであると申し上げてよろしいのであります。ただ旧憲法時代には任免権については例の官制大権と申しますか、任官大権というか、その方は実は旧憲法の方がうるさかつたのでありますが、今はそういうことはやつておりません。しかし御承知通り憲法になりましてから、官吏に関しての事務ほ法律の定めるところに従つて処するという建前になつておりますから、そういう点も一般の委任の関係と同じように法律をもつてお定めになれば可能であるというように考えております。
  228. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 労働問題並びに社会保障制度につきまして実は伺うつもりで、ございまして、労働大臣せつかくお待ちでございますけれども、たいへん時間がおそくなりましたから、分科会その他において御質問申し上げることにいたしまして質問を打切りたいと思います。
  229. 太田正孝

    太田委員長 本日はこの程度にいたします。明日は午前十時より開きます。  散会いたします。     午後五時四十四分散会