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1953-02-09 第15回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月九日(月曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 本間 俊一君 理事 中曽根康弘君    理事 川島 金次君 理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    北 昤吉君       小坂善太郎君    重政 誠之君       島村 一郎君    田子 一民君       塚原 俊郎君    永野  護君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    原 健三郎君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    小島 徹三君       櫻内 義雄君    鈴木 正吾君       古井 喜實君    宮澤 胤勇君       松岡 駒吉君    河野  密君       中村 高一君    西尾 末廣君       西村 榮一君    伊藤 好道君       上林與市郎君    八百板 正君       和田 博雄君    福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君  委員外出席者         検  査  官 東谷伝次郎君         会計検査院事務         官         (検査第一局         長)      池田 修蔵君         日本国有鉄道副         総裁      天坊 裕彦君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 二月九日  委員松岡駒吉君辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質問を継続いたします。北昤吉君
  3. 北昤吉

    北委員 私は国民道徳高揚の問題について総理大臣の所信を伺いたいつもりでありましたが、本日御出席がありませんから、総理大臣への質問は明日まで保留させていただきます。委員長にお願いいたしましたが、総理大臣への質問は明日に御延期願います。
  4. 太田正孝

    太田委員長 よろしゆうございます。その旨を伝えまして極力出るようにいたします。
  5. 北昤吉

    北委員 総理大臣に対する質問は保留いたしまして、文部大臣に対する質問をいたします。総理大臣施政演説において、道義高揚ということを唱え、また自由党が選挙前に公約としてパンフレットを刊行いたしましたが、その中に、国民教育の刷新という題がありまして、社会教育及び学校教育を通じ、国民道徳高揚をはかる、こういう項があります。総理大臣から文部大臣に対して、道義高揚について何らかの御指示があつたのでありましようか、具体的のお話をお願いいたしたいと思います。
  6. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えをいたします。総理大臣から閣議においてそういう御趣旨が発言されまして、閣議道義高揚ということを、われわれ内閣といたしまして十分徹底させようじやないかということで、閣議の決定に従つてそれをやつております。
  7. 北昤吉

    北委員 道義高揚ということについて、総理大臣から御意見の発表があり、閣議がこれを了承いたしてということは事実でありましようが、今日の日本は、御承知のごとく各方面道義廃頽いたしております。ことに青年におきましては、享楽的気分射倖的気分射倖というのは、ばくちというと、ちよつとぐあいが悪いけれども、チャンスによつて利得を得たいという気風が盛んであります。御承知のごとく、政府が富くじを発行したり、あるいは民間では麻雀賭博パチンコ、競輪、さらに今度の内閣で出すか出さぬか知りませんが、スペインのハイアライまで持ち込もうという計画があると聞いておりますが、これは道義廃頽の事実であります。ことに映画方面で見ますと、御存じのことと思いますが、最近ひめゆり旋風と称せられるくらいに、沖縄の女学生を題材にして、共産党諸君映画をこしらえたフィルムが八十本出ておつて、空前の盛況であります。私はこれは一面の世相、一面の真理を伝えておる。それでなければ青年にこれほど訴えるわけがない。これは無理な戦争、無名な師を起して青少年に多大の犠牲を負わした反動でありまして、これは青年の罪よりも、今日の支配階級、ことに戦時中の支配階級の責任であると思います。ともかくも非常な道義廃頽の現状であります。これについて、具体的にどう取扱つて行くか、対処して行くかということが重大問題でありまして、私は文部当局総理大臣をいじめるつもりは少しもありません。私自身も実は迷うておるのであります。私は専門がむしろこういう方面でありまして、絶えず外国の有名な著書等も参考にいたしておりますが、まだ的確につかめないのであります。御承知のごとく日本思想は、明治憲法並びに教育勅語によつて大綱が示されておる。もちろんその基礎となるものは五箇条の御誓文でありますが、私は明治時代の三大御詔勅と考えております。そして教育勅語は故井上哲次郎博士の「教育勅語衍義」によつ正統的解釈が下され、また憲法の講義については、故穗積八束博士解釈を下され、もちろん天皇主権説に対しては美濃部博士、その他副島博士等の異論がありましたが、この二人の思想家によつて日本思想をリードして太平洋戦争に突入し、戦争直後まで続いたのであります。ところが新憲法制定とともに教育勅語時勢に適せず、明治憲法指導精神時勢に適せず、今や国民指導する精神が失われておる。あるいは新憲法国民思想指導精神にしようかという考えもあるでありましようが、これも日本国情に適しない。ことにアメリカに強制されたという疑惑が多い。それであるから、盛り上る国民精神高揚にはあまり役立たぬ。文部当局はいかなる方針でこの頽廃しつつある道義高揚するつもりであるか、ただ六・三制を完備したり、国民教育に当る小中学の先生の費用を国庫負担でまかなうというだけでは形骸にとどまる。現にアメリカハーバード大学の有名な社会学教授のソローキンという人が、二十世紀は教育設備が非常に拡大しておる、上は大学より下は幼稚園に至るまで、あらゆる設備が完備しておるが、青少年不良児は非常にふえつつあるし、キリスト教の儀式で結婚した者も、三分の一以上が離婚をしつつある、神の前でつくつた契約すら自由に破棄するから、国際条約のごときは一片のほごとして破ること朝飯前だ。さらにアメリカ人人生観は、りつぱなうちにおつて、うまいものを食つて、カクテルを飲んで、きれいな女とあらゆる機会において性交を交え、さらに性欲を刺激するダンスやジヤズ、最後には余勢をかつて名誉と権力を求めるのが、アメリカ人一般人生観であると痛撃いたしております。日本アメリカの影響を受けて教育設備は拡大し、充実しつつあるようでありますが、魂をどこに置くか。本尊のなき殿堂をつくつても、かえつて私は国民精神高揚に害があるとまで考えておりますが、文部大臣はいかなる方針をもつてこの頽廃しつつある道義の回復、復興をはかるおつもりであるか、御所見を承りたいと思います。
  8. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。戦後道義の頽廃ということはお説の通りでありまして、われわれ毎日遺憾なことばかり新聞とかラジオで聞いております。またこれはひとり日本ばかりの情勢ではなくて、やはり世界各国とも道義は戦前よりは頽廃しているように私は承つております。これは戦争という非常な残虐なるところの行動をして、その間に人生観をして少し間違えておつたような感覚になりまして、戦後どこの国でもいろいろ困つた状態になつておることは、これは御承知通りであると思います。そこで私は文教の府の大臣としまして、むろん所管事項によつて道義高揚をするのには、万全を尽したいと存じますけれども、しかしもう一つ大きな点から見ますと、日本人生活の安定ということに力を尽すことが、結局まず一翼をになうべきものだろう、同時にそれができるまで待つておれませんから、今度は精神的方面から道義高揚をはかつて行かなければならないと思います。  そこで私はごく浅学な者でございましてよくわかりませんけれども、日本が今日に至つたということは、大きく見れば、明治維新のときに精神の確立ができていなかつたということが私は原因じやないかと思うのです。と申しますことは、われわれの祖父とか曽祖父とかいうような時代には、子のたまわくとかお釈迦様がこうおつしやつたとか言えば、無条件にその道徳律守つたのであります。しかしながら明治維新になりまして、漢字思想仏教思想も一擲されてしまいまして、そうして国民精神迷つた時代があつたはずです。私たちが生れぬ先でございますけれども……。しかしそのために何とか道義高揚をしなければならないというので、教育勅語というものが出たはずでございます。そこであの教育勅語は、終戦後廃止されたのでございますけれども、しかしこれは汝臣民に告ぐとか、拳々服膺しようじやないかというような、いわゆる君民――封建的な関係時代の文句を使つたり、形式を使つてあるから廃止されているのでありますけれども、しかし私はその内容においては、千古の真理を持つていると考えます。いつも申すことでございますけれども、親に孝行せぬでもいいなんということは、どこの世の中でも――少くとも日本においては、親に孝行せぬでもいいという理論は出て来ない、また訓示も出て来ないと思います。「夫婦相和シ」といいますけれども、夫婦相けんかしてよろしい、こういうことはないのであります。そこで私たちはいかにして今後の思想統一、すなわち日本国民として精神のよりどころをどこに求めるかと申しますれば、やはり長い間の人間の習性によつて、いかにしたら自分が純潔に、また社会の人に対して人の権利を害しないような集団生活ができて行けるかと、こういうようなことを主にしまして道徳律をつくつて行かなければならぬと思います。そこで戦後民主主義にかわつた、すなわち君主政治から民主主義にかわつた。その民主主義におけるところの社会人間の本性がちやんと合うようにやつて行く、こういうふうに行かなければならぬと思います。教育基本法というものは、教育勅語にかわるべきものだということで、できておるはずでございますけれども、毎日々々個人自分行動を整理して行くということには少しほど遠いわけであります。そこで前天野文相のときに教育基本法というものの観念を取入れて、それを日常生活においていかに処して行くかということを国民実践要領として出そう、こういうような話があつたのでありますが、しかし非常な世論の反撃がありましてそのまま立消えになつております。ただいま私はそれと取組んでおりませんけれども、しかしながら民主主義というものが、戦後いかなる状態において日本人考えられておるかと申しますと、私は、民主主義ということが、むやみに自由奔放ということに解せられておるのではないかと考えます。これでは私は今後の日本道徳としてはいかぬと思いますから、これは相当に是正しなければならぬと思います。それで私はいつも考えることですが、民主主義民主主義と申しますけれども、しかしお釈迦様とかキリストがつくつておるところの天国の人民じやないのであつて人権は尊重するけれども、しかし国家の中におる一つ人間である。先般も外務大臣が申されましたように、五十あるか七十あるかわかりませんけれども、世界というものはそういうふうに国家が対立しておる世の中でありますから、人間であると同時に国民であるという自覚を私は持たなければならぬと思う。ところが今の国民には、人間であつて人権を尊重されてほしいという自由奔放の考えはありますけれども、国民であつて国家を大事にしなければならぬという感じが少し抜けておるのじやないか、この点は私はいかぬと思いますけれども、このことに対して相当思いをいたして、今後の学校教育社会教育をやつて行きたい、こう考えております。
  9. 北昤吉

    北委員 私も非常に苦しんでおる盛りでありますから、互いに懇談的に意見を述べたいと思いますが、実はアメリカでは建国日浅いにかかわらず、伝統ができております。口を開けばワシントントーマスジエフアーソンリンカーン承知のごとくワシントン独立功労者であります。トーマスジエフアーソンアメリカ独立宣言書を書いた。ことにジエフアーソンデモクラシーにおいては、個人人権を非常に尊重し、個人権利少数者権利を主張して、ライト・ツー・レジスト、反抗権から、ライト・ツー・レボルト、反乱権までも主張しております。われわれは自由党内で反乱軍と思われておりますが、トーマスジエフアーソン精神からいうと、多数の横暴に対して少数が闘う、アメリカではジエフアーソニアン・デモクラシーといつて、これは非常に尊敬されております。私の考えでは、デモクラシーというものは、多数の支配ということを承認しますが、その多数が静的であつてはいかぬ、スタテイツクであつてはいけない。今日の少数党が明日の多数党になり得る余地を与える。言論の自由、集会結社の自由は、それを擁護するがためである。絶えず多数が支配するが、その内容は違う。今日の社会党が明日の多数党になつて天下支配することあり得る余地を設けるというのが、いわゆる動的デモクラシー。すなわち私は動的デモクラシー信者でありますが、トーマスジエフアーソンアメリカで非常に尊ばれておるのはこの点であります。もう一人、リンカー奴隷解放の勇士である。また最近ではウイルソンであります。ウイルソン国際連盟には失敗いたしましたが、私は、近代アメリカの唯一の理想的政治家だと思うております。あの戦争に勝つておりながら、無併合、無賠償、民族自決秘密協約反対イタリアを三国同盟から脱退せしめて英仏の陣営に入れんがために、ロンドン・シークレツト・アグリーメント、ロンドン秘密協定をやつた英国はこれを認めた。ところがウイルソンがこれに反対をして、ヴエルサイユ条約への調印も拒んで、いわゆる単独講和をやりました。それに比較すれば、同じ民主党の流れであるがルーズヴエルト、トルーマンの諸君秘密協定を結んだ。しかし今は共和党の天下においてヤルタ、ポツダム会議までも否定せんとしておる。これはやはりウイルソン伝統に返りつつある。真理は長いうちには復興して来ると思うのであります。アメリカにはとにかくこの四人の大きな伝統が生きております。  また、すべての運動、ことに革命的の運動には思想が背景になつておる。孫逸他革命では言うまでもなく三民主義。ところが、三民のうち民権主義民族主義はある程度まで行われたが、民生主義は行われないものだから、毛沢東がこれをひつさげて立つて、今や共産党天下になつております。ドイツにおきましては、古い話であるが、ナポレオンに蹂躪されたときに、愛国哲学者フイヒテが叫んだ。ドイツは力も何もないけれども精神の自由だけはある。ドイツ文化を擁護すべし。ルーテル宗教改革、カントの哲学、ペスタロツチの教育学、この三つはドイツ民族の至宝である。これを青年に鼓吹した。明治維新のときには、いわゆる尊王思想勤王家が提携して立つた。ところが薩長の藩閥政治家日本国民を征服したつもりでさらに弱者をいじめた。日清日露戦争まではよかつた日露戦争においては、とにかく白色人種と初めて戦うて勝つたというので、アジア民族の誇りとした。支那革命等もこれによつて鼓吹されたということは、後に国民党の元老になつた戴天仇の「日本論」という書で詳しく書いております。青年トルコ党もこれによつて起きた。インドの志士も日露戦争に刺激されて起きた。ところがその後は日本は急速に堕落して、権力をもてあそぶ者が弱者をいじめて、アジアを解放すべき神聖な任務を帯びている日本人を率いてアジアの隷属をはかり、侵略をはかり、そうして道義廃頽したがために、世界から袋だたきにあつて東亜共栄圏を目ざしてかえつて東亜共衰圏を招くようになつた。これはある意味においては、教学が堕落した結果であると考えております。最近におきましても、私はヒトラーを全面的にほめるものではありませんが、ワイマール憲法であまり小党分立して自由をもてあそび過ぎたから、中産階級運動として、資本主義共産主義の二つの害悪に闘うために起きたもので、あれは行き過ぎて侵略をやつたからまずかつたドイツ民族の優秀を説いてユダヤ人を迫害したから、世界にうらみを買うた。ムソリーニも御承知のごとく堕落したデモクラシーを救わんがために出て来たのだ。初めは非常によかつたが、後には権力に陶酔して侵略を企てたから失敗したが、同じくムソリーニにまねしたものでも、フランコ将軍は熱心なるカトリツク信者であり、家柄もりつぱである。いまなおヨーロツパにおいて信望を負うております。フランコがなかつたならば、スペインはいまなお無政府状態を続けておると私は思う。要するに思想が健全であつて指導者がその国の国情に適する指導をやつたならば、必ず国は栄える。私はフアツシヨナチスが悪いから滅びたとは思わない。適用を誤つたからである。興るときには興るべき相当の理由があつたのであります。とにかくナチスにしてもフアツシヨにしても、勤労精神を鼓吹したところは非常にりつぱで、鳩山さんが「世界の顔」で勤労精神をほめたからといつて進駐軍の方で追放したというが、追放したのは間違いである。勤労精神が勃然として起きた。国の興るときには、勤労精神のない国はありません。私はこれらの点を考えますにあたつては、日本では何を伝統として復興するか、まず文部大臣にお尋ねしたいのでありますが、アメリカではワシントントーマスジエフアーソンウイルソンリンカーンとこういわれておるが、日本では二千何百年の歴史中、何人をもつて国民の儀表として鼓吹したらよろしいか、私も迷うております。一番近いところで思いつくのは二宮尊徳翁であります。これは日本の農村には適する。古いところでは、支那文化日本文化とを融合せしめて和魂漢才の偉人である聖徳太子を私は尊ぶものでありますが、文部大臣はどういう人を尊びますか。これは子供だましのようであるが、英国の有名な社会学者のマクドウガルは、「グループ・マインド」という書物を書いて、愛国心英雄と離れることはできない。イタリア近代愛国心はガリバルヂ、マチニー、カブール、この三人を離れてあり得ない。これは日本の隆々たるときに書いた本であります。日本愛国心伊藤公憲法制定日露戦争の東郷、乃木のごとき大人格者を離れては考えられないとまで書いております。私はそこまで英雄崇拝論者ではありませんが、やはり国民を教え導くには、模範的の人物を掲げて、そして鼓吹すべきものだと思うて、二宮尊徳翁のごときは、今日でこそ封建的でみな笑うかもしれないが、私は古今まれなる大人傑だ、大聖人だと思つておりますが、いかがでありますか。
  10. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はアメリカのように非常に国が若くてそうして傑出した偉人と、それからあとは移民というふうなものとにわかれておりますが、その時分から特に目立つている人は少い。しかし二千何百年来の歴史を持つておる日本には、あまりに偉い人が多過ぎる。そこでわれわれがだれにたよつていいかと言うことは、これは私はできぬと思います。そこで私は、こういう一つのたとえでございますから、ぴんと来るかどうかわかりませんが、私は昔建築をやつたことがあります。日本銀行のあの元の旧館でございますが、あれは一まとめになつて、外から見まして非常にかつこうがよくなつております。ところが私がつくりました新規工事というものは、非常にりつぱなものでございますけれどもかつこうが悪い。また今ずつとごらんになればおわかりの通りに、それはなるほど内部の設備というものは非常に便利にできております。しかしながらもう一つ足りないことは、どの建物を見ましても、ギリシヤとかローマの昔の時代のように、均整のとれたりつぱな形建築というものは今ありません。と申しますのはどういうことかと申しますれば、いろいろの設備が完備して、そうしてこういう便宜がある、ああいう便宜があるというと、それは全部取入れますが、しかし、それを統合して、りつぱな形のものにする力が建築界にないのです。私は日本の今の時代に、私はむろんその選に入りませんが、もし日本人のうちに非常に偉い人が出て来て、そうしてその人が日本の昔の偉い人の思想とかなんとかいうものを統合しまして、そうしてあちらから一端をとり、こちらから一端をとつて日本人は、昔こういう考えでおつた、こういういい思想があつた。これをとりまとめて、そうして日本人の真骨頂を発揮する。こういう総合的のことができる偉人がおりましたならば、私は思想統一、並びに国民精神の作興ということに役立つことであろうと思います。しかしながら、ただいまは御承知通りに、敗戦後、非常に国民自信を失つております。これは非常に私としては残念なことであります。先ほども軍隊のこととか、ヒトラーのこととかいろいろと仰せになりましたが、私は大東亜戦争がいいことか悪いことかということは申し上げませんけれども、しかし、日本人は優秀であるということだけは、私は証明できるだろうと思います。少くとも世界各国を相手にして四年間この戦争ができたということは、日本人優秀性こう申し上げますというと、何だか民族のうぬぼれを誇張して、そうしてまた封建的の考えになるのではないかと言われるかもしれませんけれども、あまりに自信を失い過ぎておりますから、私は日本人はそんな自信のないものではない、という感じを皆様に持つていただきたいということを、国民の各位に申し上げたいと思います。  そこで、あとへもどりますが、私といたしましては、日本にはあまりに多くの偉い人がおつて、そうして、それを統合して、どういう方針で持つて行くかということにつきましては、私はよういたしません。だれかりつぱな人が出て来まして、この日本人の昔の偉い人を総合しまして、そうして日本人精神というものはこういうものだ、こういう優秀な考えを持つているのだということを統一したならば、りつぱな国になれると考えております。
  11. 北昤吉

    北委員 これは私が聞くのは、自分自身がまだ自信が乏しいから聞くのであります、自分考えがあつて文部当局をいじめるというような悪い気は少しもありませんが、私は日本国民を無条件に優秀とはどうしても思えぬのであります。これは文化という点から申しますと、大体支那文化、インドの文化を入れたもの、近代でヨーロツパの文化を入れたもので、日本人は総合の能力はありますが、ほんとうに創造する力は乏しいように私は思うのであります。そこでこれは将来の問題になりますが、やはり日本人の自発的な精神、自立的の精神、独創的の精神を涵養して行かなければならぬ。いわゆるバートランド・ラツセルのクリエテイヴ・インパルス、創造的の欲求にむちうつて、創造を努力させるよりほかない。私は日本人は、農民として漁民としてはなかなか優秀であると思うが、学者や政治家をあまり優秀とは思わぬ。文部大臣の言うごとく、優秀なる政治家がたくさんおつたならば、日本をここまで持つて来るわけはない。日本人はまた物忘れが早くてあきらめがいい。今のうわさも七十五日第一次大戦のとき、ドイツを誤らした者は敗戦後一人も政界へ頭を上げたものはない。次官級の事務屋がやつている。第二次大戦で負けた後は、ヒトラー内閣におつた者はそのまま没落しております。ところが日本では負けても負けても戦時中の閣僚がどんどん頭を上げて、日本を再び支配しようとしておる。日本人はおめでたいというか、あつさりというか、これはちよつと改進党にも言いたいことでありますが、(笑声)やはり妙なところがある。私は、アメリカ人がこういうたというが、日本人は敗戦の経験をはや忘れた、そういうところが相当あると思うのです。復古調もこれによつてだんだん生ずる。私もその点は非常に心配しております。そうして戦後に出た人をアプレなんて悪く言うが、やはりアプレの中から英雄は出なければいかぬと私は思う。それにはやはり教学の立直しをやらなければならぬが、私の考えでは、日本で教学を統一することは困難と思います。たとえば大体において経済思想は、資本主義系統と社会主義系統の二つの流れがあります。これを統一的に国民教育に利用することは困難であります。たとえていえば、資本主義系統の方は、個人生活擁護には私有財産が必要であるとし、社会主義系統においては、生活権の擁護は根本的の必要であるが、これは公有財産制度、生産手段を大体公有にして、分配も公の機関でやる。それによつて保障する。もちろん基本的人権一つとして財産権は各国でも数えておりますが、私はこれは第二次的のものだ、生活権が根本的で、財産権は第二次的のものだと考えております。ところがその手段として財産権をあくまでも主張するのと、これを重視しない傾向と二つあるから、国民道徳統一するのは困難であります。現に第一次大戦後のドイツへ入りますと、もう学校教育はめちやくちやで、旧教は旧教の教育をやる、新教は新教の教育をやる、社会党の強いところは唯物論的、無神論的教育をやる。ことにプロシヤの文部大臣ホフマンは、社会党の左派に属していた人であるが、牢の中に入つてバイブルの欠点ばかり研究して、牢から出て文部大臣になると、バイブルを一節ずつ引用して皮肉つて、えらい問題を起した。戦後においてはどうしてもそういう傾きがあります。私は十年ぐらいはそうなると思う。ドイツへ私が入つたのは、ヴエルサイユ条約ができて六箇月の後でありますが、二度目に昭和七年暮れに行つたときに、ようやく民族意識が発展した、精神的復興には十年かかる。日本青年と同じように、一番安上りはダンスであります。男女青年がくつつき合つて踊る、これが一番安上りで、それから一緒に旅行する。酒を飲むと少し金がかかる。(笑声)日本も今一番ポピユラーなのは。パチンコで、これは五十円か三十円でやれる。そういう安上りの享楽をやつておる時代であります。それで私は、日本も、もう三年たたなければ引締まらない。それまで軍備などをいくら考えてもこれはだめだ。ドイツが十年かかつた。それ以上の打撃を受けたのだから、日本はもつとかかりはせぬかと実は心配しております。そうして、国民教育の標準がありません。いまさら忠君愛国を鼓吹しても愛国の根底としての国が、四つの島に八千五百万がうようよしておつて、いくら働いても食えない。昔の学生は、学校を卒業すると、大学の学費の倍くらいの俸給は、どこへ行つてももらえた。ぼくは三倍もらいました。十五円で勉強して四十五円もらいました。ところが、今日では二万円ぐらい使つてつて、卒業すると学費以下で勤めなければならぬ。これはお互い年寄りの責任です。あなた方や、われわれ皆の責任であります。それで青年ばかりいじめられぬが、どうしても青年にやつてもらう気分を創出しなければならぬ。ところが今言つた通り社会主義的のイデオロギーと資本主義的のイデオロギーが多少接近しております。アメリカ資本主義であつても、重税をとつて社会政策をどんどん行う。日本でも産業資金というもので今度は産業をまかなつてつて、やはり農地改革とかあるいは河川工事とかいろいろに用いておりまして、これは社会政策を大いに取入れて、修正資本主義を実際に行つているわけであります。改進党でなくても、自由党もこの修正資本主義を行つておりますが、社会党であつてもまた何でもかんでも公営にしようというのではない。社会党の天下のときに石炭国管をやつたのがただ一つの手柄で、何一つ社会主義的のことをやつておらぬ。力がない。でありますから、これは口で言うておるだけだ。口で言うても宣伝力は偉大だから、青年はどちらがいいか迷うておる。しかし私はこの中庸をとつた、文部省あたりで試みに基本的のものを出してみてはどうですか。もちろん国定教科書風に縛るのはいけない。しかしわれわれ当事者はこういう考えを持つておるという、基本的のものをこしらえてはどうですか。私は戦時中民政党を代表して、教科書調査委員を三年やつております。当時政友会の調査委員の島田俊雄君、貴族院の林博太郎君などと一緒に、当時は国定教科書時代で 私はその点については文部省に相当考えを述べたことがありますが、今国定教科書時代でなくても、やはり東洋道徳を基礎にして、西洋の進歩的思想を入れた教科書の、ごときものを試みにつくつてみたらどうです。それでよかつたら採用する、もちろん悪ければ採用しないで、多少損をするかもわかりませんが、それはかまわずに、それくらいのことは今やつてみないと国際情勢は第一次大戦後は一時二十年くらい平和でありました。今度は第二次大戦がまだ済まないのに、第三次大戦に連続しつつある。アメリカに行つても、世界平和を建設するのが戦争の目的だからというて、世界平和どころか、こういう言葉がはやつている。「パーペチユアル・ウオー・フォア・パーペチユアル・ピース」「永久の平和を求めんがために、永久に戦う、」こういう状態で、第二次大戦はまだ終らない、済んでおらぬ。戦争目的を果さぬから、英米ソ連も戦勝者じやありません。ルーズヴエルトその他は戦勝を得ておらぬ。戦勝というのは、戦争目的を果したのが戦勝である、だから戦勝しておらぬ。日本ドイツをつぶしたが、それ以上の、彼らからいうと悪い国が出て今悩んでおる。戦争は失敗しております。今訂正しておるのが今度の秘密協定破棄とか、一度日本をまる裸にしたが、日本に自衛軍を設けさせようとか焦慮しておる。これは時勢とともに転向しつつある証拠でありますが、日本といたしましては、この二大強国にはさまれておるので非常に困難であります。ちようど中国の春秋戦国のときの小国の悩みと同じであります。小国ではいかにも偉い政治家が出ても、大して働けない。第一次大戦後、ギリシヤでは偉いベネジユラスという政治家が出たけれども、国が小さいので何も役に立たなかつた。スイスの方は世界一に教育が進んでおるというが、国が小さくてろくな学者もろくな軍人も出ない。人物らしい人物は宗教家ジヨン・カルヴインと文学者ゴツドフリード・ケラーと二人だとドイツのトライチユケは主張しております。国が小さいのでそうなので、岡野文相の、ごときは今人材が輩出したというたつて、人材は輩出していません。どんぐりの背比べで、要領のいい者がうまい飯を食つて、いい自動車に乗るだけのことで、要領の悪い者は没落する。当分その状態を続けなければならぬと思うが、国民の平均的の道徳、平均的の知能を、私は教育の力によつてスイスのごとく、スエーデンのごとく上げ得ると思う。これに全力を注がなければならぬと思うのですが、その具体的の方針として、文部省で天野さんは国民道徳実践要綱をつくつて失敗したようであるが、あれはむだではなかつた。天野さんも相当りつぱな考えでありますが、ああいうものをやはり大勢の人を集めて、そして基準的のものをつくつてみたらどうです。あるいは社会主義体系の倫理思想と、資本主義体系の倫理思想というのを公平に叙述して、国民に選択権を与えるという形でもよろしいと思うがいかがでございましようか。
  12. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答えを申し上げます。私が民族優秀性を申し上げましたところが、御不満のようでございますが、なるほど日本人は独創的の、世界に率先して偉いことをするとか、発明をするとか、世界をリードするような思想ができるというようなことは、なるほど歴史を見ますとございませんけれども、しかしまねのできる国民であるということは、最も優秀な国民であろうと思います。  それからもう一つ、学者にろくな学者がないというお話でございますが、しかしこれには私は異論を申し上げます。と申しますことは、湯川博士をごらんになればおわかりと思います。世界を見てもなかなかもらえないようなノーベル賞を、日本人の血が通つている湯川博士が得たのでありますが、中にはやはりりつぱな学者がおる、決してそういうことは劣つていないと思う。  それから資本主義とか社会主義とかいうものがまだ何していないということでありますが、私は自由党内閣でも昔手放しでいつたときの資本主義じやなくて、やはり社会主義も取入れられておりまして、これが並行して行きつつあるのです。そこで私自身といたしましては、日本はなるほど文明を入れましても、それから思想統一をいたしましても、これは時間がかかるのです。と申しますことは、仏教が渡来しましたときに、あれで血を見るような革命が起きましたけれども、しかしながら長い間かかれば、やはり本地垂迹の説が出たことく、日本に最も向くような仏教に消化しております。ですからその意味におきまして、私は今後相当な時間をかけてやれば、りつぱな調整を遂げることができるようになる、すなわちわれわれといたしましては、大器晩成の国民である、こう考えております。  それから国定教科書を使つてつたらどうかというようなお説のように承りましたが、ただいまのところでは、国定教科書というものはつくつておりません。しかし文部省に検定制度というものがございまして、それによつて検定をしておりますから、大体の方向はきまつて行くわけでございます。しかしそのほかに実業教育であるとかまた盲聾学校のように、これは一般国民の間で教科書をつくるのはなかなか採算が合わないとか、またりつぱなこともできないというようなものにつきましては、文部省といたしまして、自分自身で編纂しておるようなところもございますから、この点におきましては文部省がある程度指導しておるわけでございます。要しますのにただいまは混乱時期でございまして、独立して一年になるとかならぬというような考えもございますけれども、御承知通りに百八十度の転換をした、君主政治から民主主義になつて、その民主主義をいよいよわれわれの手によつて手放しで自由にやつて行けるということになつてからまだ一年になりません。少くとも占領下におきましては、われわれが考えておりましてもその通り行かない情勢であつた。しかしながら、昨年の四月二十八日以来われわれは自分の頭で判断していかにして行くかという自由が与えられておるのであります。それでございますから、私はいくらか時間をかけて行かなければおぼしめしのような方向に進まないと思いますし、またこの社会の混乱ということが敗戦後何で起きたかと申しますれば、生活の不安定ということが最大原因であろうと思いますから、まず生活を安定さして行くということと、ある時間をかけて戦後の教育方法をどう持つて行くかということの適当な結論を得たい、こう考えております。
  13. 北昤吉

    北委員 ただいまの文部大臣の御意見は大体私賛成でありますが、やはりまた教育内容を多少今度はだんだんかえて行つたらどうかと思います。たとえてみれば、漢文の問題でありますが、御承知通り漢文は封建時代思想を養うといつて非難することも十分わきまえておりますが、やはりヨーロツパ諸国でもギリシヤ語、ラテン語はやります。ギリシヤ語をやれば、プラトン、アリストテレスの、ごとき大哲人も奴隷制度を認めておつた、奴隷制度にかぶれるじやないか。ラテン語を研究する者は多くシーザーのガリヤ遠征記を読みます。これは標準的なものですが、帝国主義じやないか。そういうことは言わぬのです。当時の思想であるとして大目に見て、そのうちのとるべきところをとつて行くのでありますが、私は漢文はやはり高等学校の卒業生まで必修科目としてやつたらどうか。封建的の思想が悪いというならば、やはり孔孟の思想に続いて孔墨といわれる墨子の思想ならば社会主義も入つておれば、平和主義も入つている、非戦論も入つてつて、孔墨の思想としてはやつたぐらいであるから墨子ぐらい教えてもよろしい。いくらでも牽制できる。私は十一才にして漢学塾に入つて四年おりました。私の兄もそうでありましたが、今日の自分精神の確立に今なお影響を受けております。たとえば孟子の威武も屈することあたわず、富貴も淫することあたわず、貧賤も移すことあたわず、これ一つでも私は今日の教訓にしております。アメリカの富貴に淫するあたわず、ロシアの威武に屈するあたわず、日本の貧困に移すあたわず。貧乏であるから悪いことをするというのは、君子もとより窮す、小人窮すればここに濫す、貧すれば貧すというので孔子がすでに戒めておる。日本は貧乏であるからしかたがないと言うのは困る。貧乏であつても正しく生きる人もあるし、金持でもどろぼうする者もある。官吏でもつて次官とか局長、自動車に乗つて歩く相当の身分の者でも、国家の金をごまかす者があるのです。大臣でも、戦後にはそういうのが相当輩出したようであります。それでありますから、私は経済状態が非常に悪ければどろぼうなどになるおそれもあるが、また金持になつて裕福になつても、ますます欲が深くなつて悪いことをする。比較的中流階級は悪いことをしない。ジヨンスチユアート・ミルは、「中産階級の讚美」という書物で、金持はおごる、貧乏人はうらやむ、さもしいもんだ、中流階級が一番いい。私は中産階級をもつて自分でも任じております。(笑声)それでありますから漢文あたりは、そこへ行くと孔子の教えにもりつぱなものがあります。西洋の科学思想に対して、ことに中国の倫理の思想は恐るべき真理が多い。宗教においてはそれはインドやユダヤには及びませんが、倫理思想は西洋人を圧するだけの思想がありますから、ぜひ学ばせていただきたい。  それから日本も、もうそろそろ歴史の書物を出してもいいと思うのです。今まで天皇神格化で皇室中心の歴史であつたが、反動的に盛んに解剖し、批判して、相当おちつくべきときが来たから、歴史と地理も教えたらどうか。これは今まで進駐軍がうそ八百を教えて迷信だということであつたので、迷信でないような歴史や地理が出るべき時期だと思います。これは簡単にお答え願います。
  14. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。漢文につきましては、お説の通り私は教えて行くべきだと思います。漢文を教えれば封建思想が出て来るからというような、もしも御懸念がありますならば、これは大きな間違いです。学問の自由は許されておることです。大学において、共産主義の研究もさせておるくらいです。そんなことは一向さしつかえございません。ただ戦後、教育方針が、なるべく日常のことを早く覚えさせて、日常の生活からいかに自分自身の態度をとるべきかというようなことを主とした実際的の教育内容になつて来ておるものでございますから、そこまで手が届かないのであります。しかしながらお説のように今後漢文はことに日本の何百年来、何千年と申すほどの間の国民思想を、とにかく指導して来たところの漢文でございますから、これはもうすでにわれわれの血の中に溶け込んだ思想と言つてもいい。そういう意味におきまして、われわれは歴史を知る意味においてまた自分の倫理を反省する意味におきまして、私は漢文を研究することは少しもじやまにならぬ、こう考えております。  それから歴史とか地理は、私就任以来ぜひもう少し強化しまして――日本歴史を知らない、日本の地理がわからないということでは、愛国心なんというものはとんでもないことであります。われわれとしましてはやはり国家というものを理解する意味において、動的に、すなわち昔から今まで経て来たところの日本というものを理解するためには歴史が必要だ、また静的の日本というものを理解するためには地理が必要だという考えでやつておりますので、できるだけ御趣旨に沿うような方向に進んで行きたい、こう考えております。
  15. 北昤吉

    北委員 まことにけつこうなお答えをいただいて安心いたしました。それからもう一つは、スポーツを相当奨励いたしておりますが、鳩山さんがせんだつて訳したカレルギーという人の著書を見たところが、英国の紳士道はスポーツによつて鍛えられておる、昔の武士道精神とスポーツ精神と両建だということを非常に詳しく書いて、私も同感であります。私はスポーツであるかないかは知らぬけれども、そこに木村長官もおいでですが、剣道はぜひ奨励してもらいたい。柔道は体質によつて選択科目でけつこうでございますが、私は剣道は徹底的にやつてもらいたい。私も剣道は絶えず熱心にやつて今日になつて、今日の体力、多少の精神力も養つたつもりでありますが、これについて文部大臣はいかがでございますか。私は正科にしてもらいたいと思います。
  16. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。柔道はどうでもいいけれども、剣道はぜひやるべきだというのは、私反対であります。(笑声)柔道も剣道も、これはやはり達するところは同じことなんです。でございますから、私は柔道をやりますが、柔道と剣道と試合をするときに、私たちは物を持たず相手はあいくちを持つて、そしてとにかくやるという競技もありまして、これを柔道が悪くて剣道がいいと言うことは、これは非常に不満でございます。しかしお説を曲げるわけには行きませんから、拝承いたしておきます。お説の通りに敗戦後アメリカが来まして、柔道はいいけれども剣道はやらさぬ、こういうような方針でただいままで来ておりますけれども、これは私は間違いであると思う。柔道にしろ、剣道にしろ、精神修養、魂を入れるという意味では非常に役に立ちますから、今後そういう方向に進んで行きたいと思います。
  17. 北昤吉

    北委員 文部大臣に対する質問はこれで切り上げまして農林大臣にひとつ質問をいたしたいと思います。  日本の農村は非常に気の毒で、ことにわれわれのような雪国の単作地帯の人間は実に気の毒なのでございます。しかし大局から考えて、全国民の四割の人口で四割しか食わせられない、ほかの二割の分は輸入しなければならぬ、しかも最近は輸入食糧が莫大な金額に達しておりまして、千四百三十億ぐらいでありましよう。さらに国内における外国米に対する補給金が三百億、そうすれば千七百億で、日本の国防費に当るだけの金を出しておる。これは私は非常に遺憾でありまして、国民道徳の点からいつても遺憾でありますが、幸い日本は耕地が一割七分以下で、山地が八割三分ありますから、山地を少し開墾して雑穀をつくらす、すなわちじやがいもとか、豆とか、とうもろこしをつくれば、あとの二割は食わせて行けます。来年から輸入しない決心でつくらせて行けばいやでもおうでも食わせて行ける。それには千七百億の金を農民にくれてやる。農地改革で三百億ぐらいとるのに廣川農林大臣が苦心さんたん、悪戦苦闘する必要はない。私は日本人は雑穀の食い方を知らぬと思う。私がアメリカに行つたときには、麦の次にとうもろこしをつくつて、みな粉にしてパンに入れて食うか、朝かゆにしてミルクをかけて食う。ドイツに行つたときには、ちようど大戦でもつて日本人にはパンをくれないから、じやがいもを三月食つておりました。日本人は煮て食うからまずいが、ふかして食えばうまい。人造バターをつけて食べればけつこう滋養になります。私たちもそれをやろう。そうすれば外国に払う金をみな投じてもよろしい。農村の二男坊、三男坊は半失業者になつて悪いことばかり覚えるから、これに耕させて奨励金を与える。ルーズヴエルトのニユー・デイールぐらいの度胸がなければ、この難局は救えないと思う。御承知のごとく、昭和七年に私が二度目にアメリカに行つたときには、千三百万人の失業者があつた。ルースヴエルトはそれをニユー・デイールでテネシー渓谷のダムやそのダムを開発して、全部吸収した。昭和八年にドイツに行つたところが、ヒトラーもルーズヴエルトのまねをして、八百万人の失業者を道路の改築によつて全部吸収した。それでありますから、日本で失業者を吸収するのには、やはり農村で働かせる。私は国民思想の健全という点からいつても、農民の人口をふやし、そうして食を与えたいと考えております。簡単に申せば、世界民族生活形式は四つあります。農耕民族は平和的で、勤勉であります。それから牧畜民族侵略ばかりやつておる。コザツク、アラビア、トルコなどは牧畜民族である、狩猟民族は内乱ばかりやつておる。ドイツやオーストリアがその傾向がある。それから海洋民族はイギリス、デンマーク、スペインなどである。ところがこのごろ第五族が出て来ておる。それはオフイス民族といつて、大都会のオフイスによつて世界の貿易をやる。このオフイス民族がふえるということは、非常に国が軟弱になる。貿易伸張によつてのみ日本が生きて行こうというのは、日本民族をみんなオフイス民族化して、利害の打算ばかり鋭い商業民族になつて、私は国の末路が今日に見えるように考えておる。そこでやはり農村に働かせる。そうして電力を開発さして、農村から薪炭を駆逐する、あるいは食糧増産をやらせる、植林をやらせる、道路を開発する。人間が大勢おることは日本の宝である。私の考えでは、日本は少いものでは開発できません。あり余るもので開発しなければならない。あり余るものは四つあります。山が八割三分、人間が八千五百万、雨がたくさん降つて、水があり、海がある。人と山と水と海をうまく利用すれば、日本の開発はできる。これは自由主義経済の野放しではだめで、ある程度までの経綸を立てて、そうして廣川農相の政治力をもつてこれを実行する。そういうことからなら内閣を倒してもよろしい。吉田内閣のようなものは、いくら倒してもいい。(笑声)そういうときにはやつてもよろしい。私は今度の予算はやむを得ないから、承認いたしたいつもりでありますが、この次の予算からは、日本国民の労力を全部働かせる。勤労に向ける。そうすれば、もうばくちなんかで遊ぶことはなくなる。これは易々たることではないかと思う。私は廣川農林大臣に承りたいのは、もし米ソ一朝事あるときには、米なんか一粒も来ません。来ない方がいい、華僑がうんと金をもうけて、三等米のくず米の、ごときものを日本に持つて来て、高い金で売る。人道上許すべからざることであります。日米戦争のとき、御承知のごとく、六十そうの潜水艦で運送船四百五十万トン倒しております。ソ連の潜水艦が今海南島、上海、青島、大連、旅順、それからウラジオストツクにいるのであるから、米ソ一朝事あるときには、一粒も来ないと思う。やはり非常時に備えるための食いものの準備くらいしなければならない。さつそくじやがいもと豆ととうもろこし、ぐらい――食いものがないよりはよろしいのですから、いやがるものは食わぬで死んでもよろしい。それほどの非常手段を講じなければだめです。アメリカ流のダンスをやり、アメリカ流の映画をながめて、そうしてパチンコや麻雀や、今度は競輪で足らぬで、またハイアライまでやろうとしている。私はそういうことではだめだと思う。やはり為政者が率先してその考えを出してもらいたい。質実剛健の気風を養つてもらいたい。農林大臣いかがでございますか。
  18. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 北さんの豪壮なお考えでございますが、及ばずながらやはりその方向に向つて農政を進めて参つておるのであります。御承知のように、日本の農地はまだ大分残つております。但し民有地等におきましては、もうほとんど傾斜地帯も農耕地になつております。四国、中国あたりの段々畑がその一番いい例であります。しかしまだ官有地等におきましてはその余地がありますので、これも森野整備特別措置法を設けて、どしどしそれに適した土地を、これを農村の村なり、あるいは協同組合なり、そういう協同体に向けて払下げを進めております。それから全国三千箇所にわたる農地改良のことも、やはりこの食糧の自給度を確立する。あなたの思想のように向いておるのでありまして、この三千箇所にわたる農地改良によつて、米麦を主体とし、また開拓民等によつて、いもあるいは雑穀等をふやして参つておるのであります。そうして国民経済の基盤である食糧に対して熱心にやつておるのであります。決してわれわれは社会主義改革をするものではないのでありますが、計画経済も入れてやるために、十箇年計画を立案いたしまして日ならずしてこれを国会に諮りまして、御審議を願いたいと思うのであります。さようにいたしましてわれわれは単なるあなたの御指摘の非常時でなく、日本は非常に気候の変動のはげしいところでありますから、異常災害構えても、われわれは輸入を少くいたしまして、備蓄しなければならぬと考えておるのであります。それからこれと並行いたしまして、食生活の改善につきましては、これは子供のうちから食生活の改善をし、米食から粉食に、そうしてまたいわゆる米麦に依存せずに、他のもので体力を向上するような教育しをなければならぬと考えて、食生活経済と生活改善と、両方面強力にこれを進めておるわけであります。そうして今非常に苦慮して入れております外米、外麦等に対して、これを幾らかでも少くしたいと思いまして、われわれは懸命に努力いたしおります。幸いに来年度におきましては、本年度よりも大体二十万トンぐらい減少できる見込みでありますが、これをなるべく国内において増産いたし、食糧の輸入をでき得る限り防遏する考えでおります。
  19. 北昤吉

    北委員 廣川農林大臣の御説明ではどうも物足らぬ。廣川農林大臣総理大臣になればやつていただきたいと思う。これはやはりもう少し政治力を振わぬと、二十万トン、百二十万石ぐらいのものではだめだ。現にイギリスの貧乏は、七割五分食いものを輸入しておるから、いかに輸出でもうけて飢餓輸出をやつても、食いものを輸入する限りは、英国は永久に貧乏である。やはり食物の自給自足ということが立国の根本である。かりに米ソ争つて、どつちかにつけといつたら、食いものがなくなれば食いものをくれる方につくということにならざるを得ない。それは「民は食なり」という有名な支那の言葉がある。それからフオイエルバツハは、「人間はその食うところのものなり」と言つた有名な言葉がある。食は人民の本質であると考えておりますから、これは閣僚諸君全部こぞつて、食物の輸入をとめるという方向に進んでいただきたい。  もう一つは、小笠原通産大臣にお尋ねしたいと思いますが、このごろ中共貿易という要求がかなりあります。政府はなるべく聞かないような顔をしておるらしいのですが、私が関西へ演説に行つても、その声が高い。私は中共貿易恐るるに足らぬと思う。これはこうしたらどうか。これは私の試案であります。お考えを承りたい。私は昨年の六月五日、旧盆に、長崎へある新聞社の主催で演説に行きました。三菱会館に三千人集まりました。原子爆弾で苦しんだ所でありますが、私の話を二時間おとなしく聞いてくれた。私は長崎を見て、涙がこぼれるくらいであつた。元支那事変中は上海のごときは、長崎県上海ということで、毎日船が往復した。今日は船がとだえて、沿岸の漁業と、びわでもつくつて食つているところの退嬰萎縮の状態であります。私はどうしても中国との貿易をやらなければならぬと思う。しかし野放しの貿易で、共産党が金をもうけて革命資金をつくつては困るから、共産国との貿易においては、国家の管理貿易会社をつくつて、長崎とか博多、あるいは門司でもどこでもよろしい、政府が適当なところを開港場として、そして中国の商人をそこへ迎える。向うも大きな貿易は管理貿易でありますから、それで旅館を指定して、旅行の自由を許さない。日本からもそのかわりに上海や青島あたりの開港を要求する。徳川時代には中国人やオランダ人が来て、長崎にちやんと居住して貿易をやつてつたのでありますから、徳川時代の故知にならつて、そして貿易をやる。中国から買いたいものは、何と言おうと、鉄と石炭、豆と塩、この四つがおもなるものです。日本のものを買いたがるものは、輸送機関です。機関車、貨車、客車、トラツク、自転車、電気器具、薬、雑貨、それから木綿等でありまして、こういうものを日本がやつても、そう向うの戦力を高めるというわけのものじやない。よくアメリカは戦力を高めるというが、米ソ戦争あるいは米国と中共との戦争のときには、輸送機関のごときは、アメリカ特有の爆撃でやればすぐこわれるだけのもので、消耗品にすぎないから、私は普通の輸送機関をやつたから戦力を増すなんというと、食いものをやつても戦力を増す。それからわずかの着物をやつても戦力を増すといえば数限りがない。戦争になれば平和産業はみな戦争に役立つから、軍需産業の性格を帯びるのであります。それですから、アメリカにも強く出て貿易をやる。石炭のごときは、アメリカでは製鉄業者などは六ドル半で石炭を買つておる。日本に来ると二十ドルぐらいになるらしい。中国からは十二ドルか十三ドルで来るが、日本の基礎産業の振わぬのは、鉄と石炭が高いからで、中国からそれが来れば、日本の基礎産業は振う。今の、ごとき原料の高いものを米国その他から入れておれば、労働者の賃金をいかに圧迫しても、コスト高でもつて競争に負ける。自転車のごときも、現に英国に負けております。日本の自転車が三十ドルすれば、英国からはそれよりずつと安く来ております。何でも負けます。それでありますから、私は貿易港を指定して、貿易管理をやつて、そして物々交換をやらせる。またソ連とでもやつたらどうか、やはり小樽ぐらいを開港して樺太のどこかの港を開く、向うから石炭とかパルプを買えば非常に安い。パルプのごときは私はある人を通じてソ連の連中に聞いてみたところが、日本の相場の半分で来る。石炭のごときは中国から買うよりもつと安くよこすということです。それはやはり戦争になればやめなければならぬかもしれませんが、それまでは私は貿易はやるのがあたりまえじやないか。アイゼンハウアーも大統領就任前に、日本と中国との貿易をあまりきゆうくつにすると、日本人が腹を立てて中国になびくおそれがあるから、もう少し緩和しなければならぬ。せんだつて九十何品目か緩和したようでありますが、こんなものじやだめです。もつと日本に必要なものを支郡から入れる手を講ずる。なかなか中共もずるくて、決済についてはいろいろやかましい議論があるそうですが、そこの困難を押し切つて行く。またこれが東南アジアとの貿易を振興するより早いと思う。東南アジアは購買力がないから、ポイント・フオアによつて非常に開発をして購買力を増してやる。せんだつてアメリカからフイツシヤーが来て、日本人の米のつくり方を教えれば三倍ないし五倍にふえるだろう、そうして購買力が増せば、日本の貿易が振うということを言つておるのでありますが、その通りでありまして、もう台湾からはすぐにでも本土をやれる。ソ連や中国がしかけて来れば、それはやはり守らなければならぬが、こちらからけんかをしかける必要はないので、なるべく穏やかに貿易だけはしたらどうか。徳川の鎖国時代においてすらやつたのですから、今日徳川以上の鎖国をやる必要はないであろう。小笠原通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  20. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。西ヨーロツパ諸国は、東欧とはただいまお話のような条約などが締結されておりますので、そういつた管理会社をつくつていろいろやつておりますが、中共との間におきましては、まだ条約その他が締結されておりません。のみならず、日本は国連協定の線に沿つてやることが必要な条件にも相なつておりますので、お話の点には示唆を受ける点が非常に多いのでございますが、ただいまのところそういう特殊管理機関を設けてやるという段階には、ちよつと参らぬように考えております。
  21. 北昤吉

    北委員 支那人はこういうことを戦時中も言うておる。日本人には法律あつて生活なし、支那人には生活つて法律なし、日本はあまり法律にこだわり過ぎる。支那人は法律なんぞ実際は眼中にないのです。戦時中に日本がいろいろ支那本土に統制法規をつくつたけれども、支那人は笑つてつたアメリカでは飛行機を増産しておるのに、日本は法律を増産しておると言つたら、私は支那人に非常に共鳴された。支那人というものはそういうものではない。支那人というものは実利があれば法律などはどちらでもよい。彼らは超法的のことをよくやるのです。私は超法的の態度で貿易をどんどん推進すればよろしいと思う。日本は昔はそれは得意だつたのであります。倭寇というものは元来強奪ではなく貿易であつたのであります。それがために非常に繁栄したのであります。それでありますから、私は中国との間には、アメリカの思惑をある程度まで無視する、ということはいかぬけれども。思惑を訂正してもらつて――アメリカ人はがんこのようであるが、改めるにはばかることなかれ、思い立つたが吉日というところがあるのです。それであるから支那の政策についても、台湾を封鎖しておるかと思えば今度は封鎖をやめた。吉田総裁はいかにも楽観的のことを言つておるが、イギリス政府が騒いだ。アメリカでも民主党が騒いだ。これはなかなか楽観できない。私はこれは明日総裁に話しますが。私は非常な危険状態があると思う。私は吉田総裁はチエンバレンみたようなものであると思う。ヨーロツパは安全だ安全だと言つておると、チヤーチルは野におつて危険だ危険だとプレペアードネスを叫んだ。結局戦争が起つて、今度はチヤーチルが出て来たが、けれども、ダンケルクで負けた。私はチヤーチルをもつて任じないけれども。プレペアードネスを叫ぶ点においては、やはりチヤーチル流に行きたいと思う。吉田さんはそこへ行くとチエンバレンのような傾きがある。あなた方もチエンバレンの閣僚のごとき安易の感じを持つていてはいかぬと思う。やはり二十世紀は革命戦争の時期でありますから、この時期において進むには、相当心臓の強い度胸の発達した目先のきく人々ばかりでなければ私は閣僚は勤まらぬと思う。また戦争が起きて、さあ困つたといつてしりぞくような閣僚では困る。やはり私は危険はいつでもあると、こう考えております。戦争が起きたらやめるが、それまではやる。私はちようど長谷川海軍中将が上海におるときに遊びに行つたら、陸軍の諸君はもう英米というとすぐ憎む、私は英米人と平気でカクテル・パーテイをやる。しかし戦争が起れば明日でもすぐやる。その用意はあるのだ、それまでは平気で交際している。日本もそれほどの雅量があつて中共とでもソ連とでも貿易をする。やはり一般国民は食えないから食えるようにすることが最高の任務である。その戦争が起きたら、またこれは模様をかえればよろしい。やはり変通自在でなければならぬ。今までの軍部のような動きのとれぬような政策で、負ける戦争でも勝つ勝つという宣伝をしてまるで道場で首の根を締められてくちびるが紫になつてつても畳をたたかない。たたいたときには参つてしまつて落ちてしまつておるというような状態では困る。私はアメリカの手先になること必ずしも悪いとは言わぬ。コーペレーシヨンの時代であるから、手先になつてそれは得であるときは得であろう。しかし私は日本の自主的の精神は、ことに貿易の件については、あくまでもやつていただきたい。自由党とか社会党の諸君がみな固まつて中日貿易促進令を起しました。あなたのところにこれからやかましく言うて行くかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。(笑声)これだけ質問しておきます。総理大臣質問の点はあすにいたします。
  22. 太田正孝

    太田委員長 暫時休憩いたします。午後一時半から始めます。     午前十一時四十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十一分開議
  23. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際社会党西村榮一委員の要求にかかる資料を政府において整えてもらいたいのです。手持ち外貨の残高、その内訳、昭和二十七年におけるその保管並びに活用の状況、これを予算審議の上に必要と認めますから、なるべく早く御調整を願いたいと思います。  質問を継続いたします。川島金次君。
  24. 川島金次

    ○川島(金)委員 私は総理大臣に対する質問を留保いたしまして、大蔵大臣その他関係閣僚に若干のお尋ねを申し上げたいと思います。  まず最初に、緒方官房長官兼副総理が見えておりますので、二三お尋ねを申し上げたいと思います。今日国民の大半が念願をいたしておりますことは、日本独立の完成と平和の確保、あわせて国民生活の安定という事柄であろうと私は思います。ことに日本におきましては、敗戦直後における諸般の事情下において制定されたとは申しながら、厳然として非武装平和憲法が存在いたしておりますことはいうまでもありません。この非武装平和憲法が厳然として存在しておりますにかかわりませず、昨年以来何かしら国民の間に、あるいは一部政治家、評論家の間に憲法の改正が論議されておるということもいなめない事実であります。私は、日本の平和憲法というものは、実に日本民族が敗戦後まつたくの非武装の立場に立ち、今後における世界平和と全世界民族共栄の大理想に立つた憲法であり、憲法の前文に明記されている通り、その内容といい、文字といい、その気宇といい実に人類不変の原理にのつとつた、われわれ日本民族が全世界に誇るに足りる大憲章であると信じております、しかるにただいま申し上げましたように、軽々なる憲法改正論議が行われておりますことはわれわれの立場から申しましてきわめて遺憾な事柄であると考えております。憲法の第九十九条には、天皇を初め摂政あるいは総理大臣、国務大臣、国会議員、裁判官その他あまねく公務員がこれを尊重し、これを擁護しなければならない旨が明記されておるのであります。この意味におきましてこの際政府がみずから憲法擁護の何らかの積極的な態度に出るという考えがあるかどうか。  また国民の中にほうはいたる憲法擁護運動がもし展開されて来るような事態があります場合には、政府はこれに対して最も理解あり、積極的な支援をする用意があるかどうか、まずこれをお尋ねしておきたい。
  25. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。現行の憲法について世上にいろいろな批判があります。もとより現行の憲法といえども、理想的な欠陥のないものということは言えないかもしれない。そのことについては過般衆議院の議場におきまして総理大臣から答弁もありましたが、いろいろな要素のほかに憲法が制定せられた当時の環境の影響も受けざるを得なかつたということを言われました。そういう意味におきまして、今日の目をもつて見ますれば、多少批判の加えられるところもあるかと思います。しかしながら何と申しましても憲法国家統治上の基本法でありますがゆえに、これを改正することにつきましては最も愼重を期しまして、輿論の熟し切るほど熟すのを待たなければ容易に手をつけるべきものではないと考える。その意味におきまして政府は、今日現行憲法に対していろいろな非難があるにかかわらず、ただいまこれを改正しようという意思は持つておりません。  憲法擁護運動についてもお言葉がありましたが、これは擁護運動を起すまでもない。憲法に対しては、国の基本法としての重要性について、機会あるごとに国民の注意を向けて行くべきである、かように考えます。
  26. 川島金次

    ○川島(金)委員 今私がお尋ねしたのは、民間に憲法擁護運動が抬頭いたしました場合に、これに対して政府は積極的な支援を与える用意があるかどうかということであります。
  27. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 憲法の擁護運動が起りました場合には、その運動の起された動機あるいはその趣旨等をよく検討いたしまして、政府の態度をきめたいと思つております。
  28. 川島金次

    ○川島(金)委員 内閣の中には国立世論調査所というものが、昨年度から設置されたはずだと私は記憶いたしております。この世論調査に関する予算がきわめて妥当のものであつたかどうかは別といたしまして、できるだけの予算だけは組まれておりましてすでにここに一年になんなんとしております。この世論調査の目的は、国民の中におけるところの諸般の輿論を調査し、なおかつこれを公表するということが、その目的になつておると私は記憶いたしておりますが、憲法の問題につきあるいは憲法の中の重要な問題でありますところの再軍備等の問題について、政府はこの世論調査を通じて、何らかの結果をつかんだことがあるかどうか、もしあつたといたしますれば、その世論調査の経過につき、結果について、この機会に明らかにしてほしいと思うのであります。
  29. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。私が官房長官に就任いたしましてから後におきましては、政付のいわゆる国立世論調査所を通しまして、今お話のありましたような世論調査をしたことはないように思うのでありますが、その前に、どういう世論調査をしたかにつきましては、私ここで存じておりませんので、御必要であればそのリストでも差上げてよろしいと思います。
  30. 川島金次

    ○川島(金)委員 内閣の中にはせつかく世論調査所がありまして、それに対する予算もわれわれが認めた形になつておりますので、その意味において世論調査のその後におけるところの努力の経過、結果等について、すみやかな機会にこの委員会で公表されんことを一応望んでおく次第であります。  第三には、先般の施政方針演説の中で、吉田総理大臣は行政整理を断行する旨を強調せられたと記憶いたしておるのであります。最近これに相呼応いたしまして、行政整理の基本方針並びに内容等が一般世人に伝えられておるのでありますが、政府はこの世上に伝えられておりますがごとき、いわゆる一割天引きの機械的な行政整理を、しやにむに断行するという腹を固めたものであるかどうかということについてお伺いをしたいと思います。これは官房長官から特にお答えを願いたいと思います。
  31. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 総理の施政演説にありますように、政府では行政整理の計画を持つております。但しそれはただ人員の縮減ということのみを考えておるのではございません。人員につきましては、とかく気のつかぬ間に膨脹いたすおそれが多分にありますので、欠員不補充その他の方法によりまして、できるだけ人員がふえないように、常時心がけて行く次第でございまして、ただいま仰せの一割天引きということは、今のところ議題になつておりません。ただ行政整理という以上、数をあげれば一割ぐらいな、これは天引き的ではありませんが、目標が立つのではないかというようなことを話合つたことはありますけれども、それは政府で持つております今度の行政整理の目標ではございません。
  32. 川島金次

    ○川島(金)委員 それでは重要な問題につきましては、明日の総理大臣出席を待ちましてお尋ねを申し上げることにいたしまして、副総理に対するお尋ねはこれで打切りたいと思います。
  33. 太田正孝

    太田委員長 川島君、先ほどの世論調査は、御要求にして政府の説明を求めますか。
  34. 川島金次

    ○川島(金)委員 どうぞお願いいたします。  次に大蔵大臣にお伺い申し上げます。何といいましても、先ほど私が申し上げましたように、八千万国民の要請をいたしております重大問題は、日本独立完成と平和の確保と、あわせて国民経済の自立達成へ国民生活の充実、安定と発展にあろうかと私は信じておるのでございます。その意味でお尋ねをいたすのでありますが、二十八年度の予算の劈頭にあります防衛費は、昨年度一千八百億程度であります。本年は、大蔵大臣自信を持つて言明されているように、若干の削減がございましたけれども一千五百億円、さらに旧軍人等に対する恩給復活の経費等を広義的に防衛費と解釈いたします場合には、これは二千億円になるのでございます。この防衛費は、今後減少することはなくて、漸次増大する傾向にあるのではないかと私は想像をいたしております。政府もまた国民所得の増加に従いまして、この防衛費を引上げて行くかのごとき用意があるように私どもは察知をいたしておるのでありますが、この防衛費が、国民経済の発展、ことに国民生活安定の上に何らの障害にならないものと、大蔵大臣においては考えておられるかどうか、その点についての大蔵大臣の見解をまず承つておきたいと思います。
  35. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 国家の自衛力は、国の安定をはかる上に必要でございます。従つて防衛費というものが出るのは避けがたいものと思います。やはりこれは不生産的と言われましても、国の安全、治安を保つというふうな点からいいまして必要な経費と思います。
  36. 川島金次

    ○川島(金)委員 私のお尋ねいたした主要なるねらいは、この防衛費が漸次増加する傾向にあるが、その事柄が直接国民生活安定の障害にならないと考えておるかどうかという問題でございます。もう一ぺんひとつ明確に御答弁願います。
  37. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 安全を維持するということには障害にならない、あべこべにこれは助けるものと思います。従つて障害にはならないと私は考えております。
  38. 川島金次

    ○川島(金)委員 障害にはならないというお話でございますが、昨年度の千八百億円、さらにまた今年度の千五百余億円の防衛費が、今かりに現実において昨年からこれが二分の一に削減されておつたといたしました場合に、その事柄が国民生活の安定、経済の直接の発展の上に、いかに大きな役立ちをしたであろうということはいなめない事実であろうと思うのであります。今の大蔵大臣のお話によりますと、防衛費は必然的なものであるかのごとき御答弁であります。そうしてまたこの防衛費というものは不可避的なものであるかのごとき御答弁でございますが、私は断じてそういうものではないと思うのでございます。その意味で私は、この防衛費の漸次増大という傾向は、やがて国民生活の上に重大な障害となるのではないかということを非常に懸念しておる者の一人でございます。この点については、大蔵大臣と押問答になるおそれがありますので、これ以上深追いをいたすつもりはございませんから、次にお尋ねを移したいと思うのであります。  それではこの防衛費は、政府が繰返して言われているように、今後国民所得の増加に従つて漸次これをふやして行くという方針であるのか、それとも事情によつては、この防衛費はできるだけ削減をいたして行こうという根本的な方針を持たれておるのかどうか、その点についての方針を示してもらいたいと思います。
  39. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 自衛力はだんだんとふやして行く、漸増ということを考えておるのですが、これは必ずしも国民所得がふえたら、それだけふやすというふうな考えではおりません。しかし大きな意味での日本の治安をはかるために、保安隊なら保安隊が今までよりも増強されるということは必ず起るべきものと思いますので、思い切つて減らすということは、私は考えられないと思います。
  40. 川島金次

    ○川島(金)委員 政府はこの防衛費の問題をめぐりまして、一部世論に沸き立つております再軍備論と対蹠的な立場において、この程度の防衛予算は必ずしも戦力とはならず、従つて再軍備ではないとの繰返した言明をやつておるのであります。しからば私は、逆にこの際大蔵大臣にお尋ねいたしますが、予算の中に占める割合すなわちたとえば具体的な額をどの辺に計上される場合に、これが戦力予算であり、軍備予算であるという建前を持たれておるか、その点の限界についての大蔵大臣の説明をこの際煩わしておきたいと思います。
  41. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 それはむずかしい問題で、幾らから戦力で、幾らまでが戦力でないということは、ちよつと考えかねるのですが、今は一割五分くらいになつておるわけです。これが多少ふえても戦力とは言えないでしようし、それから同じ金額を払つても、予算の規模が減つたときには、自衛力に対する費用は歩合がふえるわけですから、一概に何割までが戦力でなく、何割から戦力だということは申し上げかねます。(「ごまかすな」と呼ぶ者あり)ごまかしではなく、それはきめかねる問題だろうと思います。
  42. 川島金次

    ○川島(金)委員 それではちよつとしつこいようにお尋ねをいたしますが、今日の日本の経済の実態に即しまして、物価がこのままであり、国民所得も大体この状態である――財政の規模は別といたしましてしかもその防衛費が、かりに五千億程度に一躍飛躍して計上されざるを得ないような事態になつたときには、これをしもなおかつ防衛力予算であつて、必ずしも戦力でないと言い切るだけの自信が大蔵大臣にあるかどうか、これをお伺いいたします。
  43. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 まずあたりまえの国の予算を見ましても、そういう飛躍的に国費の半分に当る防衛費を使うというようなことはないようです。従つてかりに日本にそれが起れば、穏やかでないと私は考えます。
  44. 川島金次

    ○川島(金)委員 穏やかでないという抽象的なお答えでありますが、五千億は、なるほど日本の二十八年度の予算に比較しますれば、半分に近い。しからばもう一ペン、一歩しりぞきまして、今の防衛経費は一千五百億円程度、これが倍額の三千億円計上されるようなことになつたといたしますれば、これでもなおかつ単なる従来の防衛費であるか、それともそこまで上つて参りますときは、戦力予算であると国民が認めてよろしいのか、その理解についての点を、もう一度、くどいようでありますが、お尋ねをしたい。
  45. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 あたりまえの場合でしたら、戦力と言われてもいたし方がないのですが、三千億円にはいたさないつもりでございますから、心配はないと思います。
  46. 川島金次

    ○川島(金)委員 続いてお尋ねをいたしますが、この防衛費の問題について、昨年度の、いわゆる二十七年度の防衛費の問題については、われわれはかなりの論議をいたしましたことは、大蔵大臣も御承知通りでございます。しかもその結果から見ますれば、私どもが予想し、懸念をいたしておりましたごとくに、安全保障費あるいは防衛費あるいは保安庁費等々の予算に対して、今なお使用されざるところの金額が、数百億円に上つておるという驚くべき事実になつておるのでございます。いやしくも今日の国民経済の実情、ことに乏しき勤労階級や農民、あるいはその営業にすら非常に困難を覚えておりますところの大多数の中小企業者等が中心となつて納税いたしまするその租税の使い方について、驚くなかれ、数百億円という未使用分を出すような結果になるところの予算を編成いたしたということは、私は国民に対してきわめて重大な問題だと思うのでございます。予算のことでございますから、さ少の違いのあることは、われわれもあえて認めないわけではございません。しかるに国民の間にきわめて重大な問題となつておりましたところの各防衛経費の上において、このような多くの未使用分を出して二十八年度に繰越しをしなければならないという結果にさせた政府の責任は、きわめて重大であると思うのであります。今日国民大衆が納めまする税金の大半は、まことに血のにじむようなものであるということは、大蔵大臣もお認めのことと思うのでございます。この血税の結晶であるものによつて編成されるところの予算が、その実施のあかつきにおいて、このような剰余を出すという事柄に対しては、重ねて申し上げますが、大きな問題が残ろうと思うのでありますが、こういつた事柄について、政府国民に対し、何らの責任を感じておらないのかどうか、大蔵大臣の所見を承つておきたいと思います。
  47. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 未使用分と言いましたのは、使用するという点の事務上の延引というふうなことが、相当の理由になつているのでございまして、ほんとうに使わないという分は、私の記憶では、そう多くないと思います。従つて繰延べというものはないというふうに私は考えておりますので、予算が誤つていたということには考えません。
  48. 川島金次

    ○川島(金)委員 大蔵大臣はそう言われますけれども、先般の政府職員の説明によれば、相当の未使用額があることが明瞭になつているのでございます。それならば、さらに重ねてお尋ねをいたしますが、今度計上された防衛費の千五百億円と前年度の繰越分とを合せて、これが今年度に使い切れる見込みがあるのか。おそらく二十八年度に計上された防衛費と繰越分とを合せて使つてつた場合に、これまた相当の額の二十九年度への繰越しが生ずるのではないか。ということは、大蔵事務当局が新聞紙上等にも漏らしている事実であります。そういうことについても、なおかつ政府国民に対して責任を感じないかどうかということを重ねて承つておきたい。
  49. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 二十八年度の予算が、また二十九年度に繰越されるというふうには私は考えておりませんが、そういうことがあるとしましたら、取調べます。
  50. 川島金次

    ○川島(金)委員 そういうことがあることをすでにいろいろの新聞紙上等に、大蔵当局から放送されていることは事実であります。大蔵大臣はただいまの繰越分と二十八年度の防衛費も使い切るのだと言明をされておりますが、おそらくそれは本年の末ごろになると、重大な食言であつたということが明らかになるのではないかということをつけ加えて、この点はこの程度にしておきます。  そこでさらにお尋ねをいたしておきたいのでありますが、防衛費において、大蔵大臣は今回は三百億ほどの減額をしたということをもつて、きわめて手柄のような口吻をもつて言明されたことを、私は記憶をいたしておるのでありますが、この未使用分を考え合せて参りましたときに、この防衛費というものは、ことに二十七年度分においては、あらかじめ政府は二十七年度中には使い切る見込みがないということを予見しておりながら、この困難な生活を続けておる国民の中から税金の名において強制徴収し、いわゆる自衛力漸増のために国民を欺瞞しつつこれをたくわえて来た、こういうことが解釈のしようによつては言われるのでありまして、私はこの点をとらえまして政府の防衛費に関する限りにおいてのやり方というものは、国民にとつては一種の欺瞞的な財政政策であつたのではないかという感じを強くいたしておるのでございます。この点に関しましては、大蔵大臣向井さんには似合わない性質の悪い、欺瞞的な、計画的な財政政策を立てたということが言えるのではないかと私は感じておるのでございます。こういつた問題に対しまして、一体大蔵当局はどのような解釈で、この問題に処せられて行こうというのであるか、この点についての見解を承つておきたいと思う。
  51. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまの御質問の三百億円とおつしやつたのは何ですか。
  52. 川島金次

    ○川島(金)委員 全体での防衛費の減額です。
  53. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 それは安全保障費がいらなくなつたから、三百億円くらい減つたわけであります。これは来年度の話でしよう。
  54. 川島金次

    ○川島(金)委員 要するに二十七年度の防衛費の各種目について相当の未使用分を残して来ておる、これは政府があらかじめこの未使用分を残すであろうということが予見されておつたにかかわらず、この困難な国民経済の実情に背きなが防衛費を、いわゆる防衛力の漸増の名のもとに、資金蓄積をしたという国民を欺瞞したやり方ではなかつたか、こういう問題であります。
  55. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 そういう意向でやつたものでは、ございませんことを言明いたします。
  56. 川島金次

    ○川島(金)委員 それではその次にお伺いします。  新聞紙の伝えるところによりますれば、この二十八年度の予算編成が最終的に決定をいたしました直後において、向井大蔵大臣は、その正直である性格からでもございましようが、新聞記者の質問に対しまして、この予算はわしが初め考えておつたのと違つて、船の方向が若干違つておるわい、こういうことを記者会見の上に漏らしておるのでございます。この事柄は私はとりようによつては、きわめて重大な言葉だと思うのであります。この大蔵大臣が思わず漏らしました言葉というものの底をたたいてみれば、いわゆる減税国債の問題に胚胎しておつたのではないかと思うのであります。この問題はかつて井出君からも触れたのでございますが、減税国債、いわゆる公債政策をこの機会に実施をするということは、日本経済にとつてマイナスであり、あわせて公債政策はひとつの阿片政策のようなものであるから、一ぺんこの政策を実施するというと、阿片をのんだと同じような結果で、またそれが繰返されるというおそれが十分にあるという旨を述べられまして大蔵大臣は、これまた公債政策は阿片のごときものであるというような言明をされた事柄が、新聞紙上にも報道されておるのであります。そういう大蔵大臣の基本的な態度、基本的な考え方と違つた形において与党の強制に遭遇し、やむなくこの三百億円に上るところの減税公債を発行しなければならないことに立ち至つた結果の嘆きの言葉であろうと思うのであります。その点について大蔵大臣は、この公債政策は――しかもインフレ論に対しまして、公債を発行してもインフレにならないと、今日では言明をいたしておりまするけれども、この公債政策が閣議以前の重大な党内の問題になつておりましたときに、大蔵大臣が漏らしました嘆声が本音であろうと、私は実は忖度をいたしておるのでありますが、その点について大蔵大臣の本音をこの機会にあわせて聞かしておいてもらいたいと思うのであります。
  57. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私も嘆声のつもりでは、ございませんが、三百億円の公債が出ましてもインフレにならないということを、私は今でも信じております。  それから予算編成にあたつて予算の規模は少くする方がいいというふうに考えたのですが、各方面への出費、ことに荒廃した施設類を復旧させるためには、やはり使う方がよいというものがいろいろありますから、それを使いますためには、公債も必要とする。但しあなたのおつしやるように、たびたび出すのは、あるいは大きな額を出すのはいけませんが、このくらいの程度ならば、荒廃した国土の復旧のためには必要なものと考えた次第でありまして、圧迫を受けたとか、あるいは強制されたというものではございません。
  58. 川島金次

    ○川島(金)委員 公債政策の問題でございますが、いわゆる減税公債と言われ、しかもこの公債を買つた個人に対するところの減税の方針、また法人が購入した場合には、その法人に対する減税の政策を織り込んであるのでございます。ところがこの公債がはたして大蔵大臣が見込んでおりますように、市場消化というものが完全にできるかどうかということについては、私は若干の懸念を持つておるのであります。かりに大蔵大臣が予定いたしておりまするごとくに、民間消費が完全にできたといたしましても、民間の蓄積資金というものはそう余裕は多くございません。そこでこの購入されました減税公債というものは、個人の場合においても、法人の場合においても、これが担保となつて銀行に預けられ、あるいはまたその市中銀行からさらに日本銀行に上つて、それを担保にして信用造出を依頼するというかつこうになるのではないかということを、私は懸念をいたしておるのであります。こういうことになる場合におきましては、大蔵大臣考えておるような、また私の言う完全なる市場消化というものは不可能であつて、それが結局において全額とは申し上げませんが、その半額程度というものは、やがて日銀の信用造出によつて、肩がわりされる危険があるのではないかということを、私は懸念いたしておるのでありますが、その点大蔵大臣はどういうような見通しを持たれておりますか、お伺いしておきたい。
  59. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 減税公債というものは、市中で完全に消化されるという見通しをもつて発行いたします。
  60. 川島金次

    ○川島(金)委員 私の言うのは、形式上においては市場消化が完全に成り立つといたしましても、その後において、その購入者の法人もしくは個人が、さらに市中銀行に担保に入れて、資金を融通し、市中銀行はまたこれを日本銀行に持ち込むというおそれはないかどうか、こういうことについての見通しをお尋ねしておるわけです。
  61. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 有価証券を担保にして金を借りるということはあり得ることであります。従つて将来この公債を担保にして金を借りる人が絶無であるということは申し上げかねますが、しかし御心配になるようなものではないと私は考えております。
  62. 川島金次

    ○川島(金)委員 私はこの減税公債が、ただいま申し上げましたように、一応政府の予定し、見込んでおるように、形の上においては完全消化になるかもしれない。しかし一度完全消化された減税公債というものが、まわりまわつて日銀の信用造出の結果になるのではないかということを、私は懸念をいたしておるのであります。大蔵大臣が初めから見込んでおられまするようなことになるならば、別に問題は、ございませんが、私はそういう懸念が非常にあるということをこの際申し上げまして、大蔵大臣の今後この問題に対するところの厳重な警戒をしてほしいと思うのであります。  あわせて私はお尋ねいたすのでありますが、この減税公債というものは、先ほども申し上げましたように、公債を購入いたした個人と法人、それぞれの違つた形ではございますが、大体において購入いたしました国債の価格の四分の一程度の額に相当する減税が実施されるようであります。この問題は、参議院あたりでも議論になつたように私は聞いておるのでございますけれども、今の国民経済の実情から申しましてこの減税公債を買い得る余裕金を持つておる者は、勤労大衆、零細農民、中小企業者にはございません。従つてこの公債を買う相手方というものは、個人においてはきわめて余裕のある金持、また法人においては相当な配当をし、あるいは事業実績の非常にもうかつておるところの法人が、これに手を出すのではないかということは、きわめて見やすい理であります。しかるにこの余裕のある資産家、余裕のある企業家に恩典を過分に与えるような減税国債というものを、どうして出さなければならないのか。これを逆に申しますれば、この減税国債は政府が金持や大企業家のためにことさらに減税という恩典を与えて、結局においては勤労大衆の負担になるもの、この犠牲の上において発行された債券だとも、見ようによつては見られるのでありまして、この債券は、そういう意味合いから申し上げますと、資本家や大企業家に奉仕するということ、並びに資本家や大企業家の税金をこの公債発行の形においてことさらに不当な減税を実施し、それらの人たちの階層の利益を守る、こういう方針に出た公債ではないかということが批判されつつあります。こういう事柄について、大蔵大臣はどういうふうに考えておられまするかをお聞きいたしておきたいのであります。
  63. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 この公債をある個人または法人が買いますのに、その金額には一定の制限があります。そうしてそれに対して減税が行われる。そこで税を重くかけられる者に幾らかの減税が与えられる、そういう仕組みになつておるので、必ずしも税のかかる金を持つておるやつに恩典を与えて、金のない者にはそれがないという意味ではないのでございます。今おつしやる零細な人には税金のかかりようも少いし、あるいはかからない人もあるでしよう。それは減税が少い、またはないということが起るのはあたりまえと思うのであります。多くの金のある者を庇護したということにはならないと思います。
  64. 川島金次

    ○川島(金)委員 その点は、あとの税金のお尋ねを申し上げますときに、もう一ぺん御質問をしたいと思いますので、その程度にしておきます。  大蔵大臣は一昨日かこの委員会の席上で、この公債政策は本二十八年度限りにおいて中止をする、こういう言明をあつさりやられたのであります。この大蔵大臣が公債政策を一年限りであつさりとりやめるという心境に立たれたということは、この公債政策というものは、今日の段階における日本経済の上に必ずしも大きなプラスにはならないという見解に基いての、公債政策の中止論であろうかと想像いたすのでありますが、その通りに理解をしてよろしいかどうか、大蔵大臣の見解を伺います。
  65. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 プラスになる、ならないでなく、公債は発行したくない、こういう気持でおりますので、今度限りというつもりでおります。
  66. 川島金次

    ○川島(金)委員 要するに、あつさり言えばこの公債政策などというものは、今の日本の段階においては、マイナスになればとてプラスにはならない、こういうことの結果であろうと私は理解をいたすものであります。ただ大蔵大臣は、せつかくの担当責任者でそういうことが言明できないという苦衷を私はお察し申し上げるだけでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、先ほど出ました公債に関する担保の問題について大蔵省の中にいろいろの論議があつたように承つておるのですが、この担保の問題については、別に制限をつけるとか何とかいう事柄はないことになつておるのかどうか、その点をさらに承つておきたい。
  67. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 担保には制限をつけないつもりでおります。ただいまのところでは制限はつけないつもりでおります。
  68. 川島金次

    ○川島(金)委員 先般の大蔵事務当局からの説明によれば、二十八年度の政府資金散布の超過額は、実に一千五百億に上るであろうという重大な説明があつたのであります。おそらくこの問題は大蔵大臣もすでにとくと御承知のことと思うのであります。この一千五百億に上る政府資金の散布超過というものは、国内経済にとつてきわめて私は重大な問題であろうかと思うのでございます。この問題についても、これまた先般の委員会においてどなたからか議論があつたのでありますが、この問題について大蔵大臣は、この散布超過があるにかかわらず、物量の生産というものが順調に行つておるから、いわゆる世間で懸念しておるようなインフレーシヨンの糸口をつけるようなことはないのだ、こういうことをきつぱりと言つておるように思われるのでありますけれども、私どもの見解から申し上げますれば、今の日本経済の実情、あるいは物量生産の現状からいたしまして、これ以上生産力が飛躍的に高まつて行くという見込みであるならば別でございますが、貿易の面にいたしましてもそれほど飛躍的な期待はされておりません。さらにまた一般の鉱工業生産を中心とする、諸生産力の飛躍的な増強というものを、政府は見込んでおらないのが現実でございます。こういう現実の問題を基礎として考えました場合に、しかも一千五百億という厖大な資金散布が超過されるということは、必然的にそこには物価騰貴というものが伴つて来るのではないかと私どもは考えておるのでありますが、大蔵大臣はこういつた一連の事柄を考えても、なおかつ資金散布超過に伴いますところの、いわゆる物価騰貴の懸念というものはまつたくない、こう繰返して断言ができるかどうか。この点についての見通しを、もう一ぺん繰返すようでありますが、お尋ねをしておきたいと思うのであります。
  69. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 物価の騰貴する次第について私が断言するということは、これはちよつといたしかねるのですが、しかし千五百億円の散布超過という見積りが当りますか当りませんか、これもまだ仮定的のものであります。それに対して資金の吸い上げという市場操作もできますから、それによつて市場に金のだぶつくことを防ぎ得て、おまけにさつきもあなたが言われたように、生産力も飛躍的の増加はしないでも、今の程度の生産力でもつて行けば、物価が著しく騰貴することはないと私は考えております。
  70. 川島金次

    ○川島(金)委員 大蔵大臣の今の言明によりますと、まことに心もとないのであります。物価はこの散布超過があつても金融操作でやるから心配ない、しかし物価が徐々に上ることは別といたしまして、著しく上ることはないであろうという。そうすると、その反面から承り申すと、これは若干の物価騰貴の要因を含んでおる、こういうふうにも理解されるのでありますが、そういうふうに理解してよろしいかどうか。
  71. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 逆は必ずしも真でないのでありまして今おつしやつたことには、私はその通りということは申し上げかねるのであります。徐々に上るときもあるでしようが、しかし徐々に上らないかもしれませんし、上るものだということを私は予想しておりません。
  72. 川島金次

    ○川島(金)委員 責任ある大蔵大臣の答弁としてはまことに心もとない。重ね重ね心中の苦しみのほどは想像にあまりあるのでありまして、およそこの問題は、やがて五月あたりを起点として、国内の若干の物価は上つて行くのじやないか、こういうことをわれわれは予測いたしております。大蔵大臣はそのときに対する重大な責任を今から覚悟されておつた方がよいのではないかと私どもは考えております。その事柄について、今日国民の大多数は非常に懸念をいたしておりますので、くどいようでありますが、この機会にお尋ねしたのであります。  そこで、今大蔵大臣は、金融の操作でやるとか、資金の吸上げでやるというようなことも言われておつたのでありますが、これまた私はきわめて重大な事柄であろうと思います。なるほど政府が資金操作をするということは、経済を握つておる立場からあり得ることではございます。しかし伝えられるところによりますと、この散布超過がもたらすところの物価騰貴、インフレの糸口をつけるような懸念を感じながら、一部には金利の引上げもまたやむを得なかろうという説も行われております。むしろ逆にわれわれの立場からいえば、国際物価に均衡せしめるために、日本国内の物価をいかにして引下げるかということが、当面の重大な案件であろうと考えるのであります。一部に伝えられるところによりますれば、そういつた問題にからみ合せて、金利を引上げることもこれまたやむなしとの説を立てておる者もあるのでありますが、この説は大蔵大臣として妥当なものと認めるかどうか。そういうことは少しも考えておらないのかどうか。その点についてお尋ねしておきたいと思います。
  73. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 一体金融はよほど変調を来しておりますので、今でも市場は資金が不足して困つているというふうに私は考えております。そこでそれが緩和されて来るということはいい現象であります。たとえば幾らかの金が散布超過になつて、それで民間の資金が楽になるということはいいことであります。かりにあまりだぶついてはいけないというときにでも、金利を上げてこれを調節するということは、私は間違いだと思つております。従つて自身はもちろんですが、貸出しの金利の引上げでもつて調節しようと考えておりません。
  74. 川島金次

    ○川島(金)委員 それでは逆にお尋ねいたしますが、政府は、日本の今後の貿易の拡大生産をはかつて行かなければならない、このことが日本経済の自立達成の上にきわめて重大な要件であるとしばしば繰返しおります。そこで今触れたのでございますが、日本の国内物価をして国際物価にさや寄せをいたしますときには、必然的に産業の合理化、あるいは重要物資の人工的な引下げをもいたさなければなるまいと思うのであります。たとえば、石炭の単価の引下げ等のごときはその一つであろうかと思うのでありますが、今大蔵大臣は、金利を引上げるというような逆説は断じてとらないという言明でありましたが、しからば逆に日本の物価引下げのために、この際大蔵大臣は思い切つて金利を引下げる繰作をするという用意を持たないかどうか。この点についての大蔵大臣の明確な方針を聞かしてもらいたいと思います。
  75. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 金利は引下げるに越したことはないのですが、しかしこれを操作でもつて引下げるということは間違つておる、従つて自然に下るような方法で金利は考えて行かなければならない、こういうつもりでおります。
  76. 川島金次

    ○川島(金)委員 今日の国際的な金利というものは、大体三分から四分くらいだろうと思う。おそらく五分には達しておらないのじやないかと私は記憶いたすのですが、これに反しまして日本の金利は、およそ一割が最低くらいじやないかというような感じで私は見ております。国際金利が一方においては三分か四分で、国内の金利はしかも一割を最低限度としておるというような途方もない金利であります。その開きがすでに五分以上もあろうというような現状であつてこの金利政策をもつて推し進めて行つてはたして日本の低物価政策、政府のいうところの物価政策というものが実施できるかどうか。今大蔵大臣は、人工操作でなくて、自然的に金利が引下ることを望むと言つておりますけれども、日本の現状では、そういうことはとても望まれないのではないかと思う。銀行の現状は私が言うまでもなく、このごろは非常に能率を上げております。そうして非常にもうけております。配当もよろしいし、また銀行職員の待遇も、一般勤労大衆の一番先端を行つております。こういう実情にあるにかかわらず、政府が今日なお銀行の利子をそのままに放置しておいて、いたずらに金融資本だけの利益を守つて行くのだというような形をとることは、私は物価政策の上から見ましてはもちろん、いろいろの観点から言いまして、必ずしも望ましいことでないのではないかと思うのでありまして、この際どうしても国際物価に日本の物価を引寄せるためには、何はともあれ、まず金利の引下げというものを断行することが、私は先決条件ではないかと思うのでありますが、この点について重ねてお伺いしておきたい。
  77. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 あなたの御意見は非常に性急な御意見で、日本の金利は元から外国よりは高い、ただその高い程度が今は多いというふうに私は考えております。これは一朝一夕に銀行の貸出金利を幾らにしろというふうなことを言つて安くすべきものではない。従つて銀行も経費を減らし、いろいろの方法を講じて、日本の金利を国際基準に近い程度に持つて行くべきものとは考えますが、干渉をして金利を押えるということは、ただいまは考えられないと思つております。
  78. 川島金次

    ○川島(金)委員 その点は押問答になりますから、一応やめておきますが、それでは次にお尋ねいたします。今度の予算を見ますと、一般会計において、われわれ国民が負担をいたします租税は七千五百億ばかりになつております。このほかにわれわれが日常吸つておりますタバコの形において、政府に吸い上げられます純利益が一千四百億、合せまして八千九百億が国民全体の負担になるわけであります。これだけにとどまらないで、すなわち国鉄会計におきましても、およそ一千数百億円の運賃が吸収されて参ります。さらにまた地方財政の面におきまして、われわれが県民として、あるいは市町村民として納めます租税の負担総額というものが、これまた大蔵大臣承知通り、数千億円に上るわけでございます。これらを一切合せますと、二十八年度中において国民が負担いたします負担総額というものは、実に二兆四千億くらいになるのではないかと思うのであります。一般会計はもちろん政府機関、特別会計及び地方財政、こういつたものをひつくるめました総予算額の中からダブる経費を差引き、すなわち純経費の計算がそのくらいになるのではないか。簡単な計算でございますから、若干の間違いはあると思いますが、その程度になるのではないかと思う。こういうような厖大な負担を国民がして行かなければならない。しかも政府は、この国民所得は総額において二十八年度は五兆六千億だ。国民総所得五兆六千億の中において、租税を中心として地方税を加えますと、二兆四千億というとほうもないところの負担になるといたしますならば、国民の税額負担というものは、直接、間接の問題ではございまするが、実に四〇%に近いものの負担ということになるのでございます。私は日本国民生活の現状に即しまして、単に政府一般会計の予算の中に占めるところの租税の総額と国民所得との関係、あるいは総予算と租税との関係、こういつたものを勘案しただけでは、国民の負担の苦痛を推しはかることは正確にはできないと思うのでありまして、こういつた問題を考えた場合に、国民の負担というものは実に重大であると私は思うのでありますが、この点について大蔵大臣はいかようなことを考えられておるか。この負担をもつていたしましても、国民の経済において少しも心配のない負担だ、国民一般大衆に苦痛を与えない負担額であるというような考え方を持つておられるのかどうか、その点についての見解を示してもらいたい。
  79. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 国民にとつてこの負担は非常に重いもの、苦痛を与えているものと私は考えております。
  80. 川島金次

    ○川島(金)委員 それでは、この租税負担について大蔵大臣は、中央及び地方を通じて何らか国民的の積極的な政策において減税を断行するという方策を持ち合せておらないのかどうか、その点についての方針を示してもらいたい。
  81. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 政府の経費の節約とか、あるいはその他の国費をせいぜい節約しましてできることならば減税をいたしたい、またものによつてはできるものというふうに考えております。
  82. 川島金次

    ○川島(金)委員 吉田政府とその自由党は、二十八年度の税制におきまして実に千九億円に上る減税をしたとこれを公表しております。私の見るところによりますれば、なるほど税法上から申し上げれば、一千九億くらいの減税になろうかと思うのでありますが、国民の求めておりますところの減税というものは、目の先の税法上の一千億円の減税ではなくして、実質上の負担の軽くなるところの百円を渇望しておる立場であろうかと私は思うのであります。政府はそれをしも無視いたしまして、一千九億の減税だ減税だと高唱しながら、実質におきましては、今申し上げましたように、重大な負担をかける、しかも大蔵大臣が言明されたように、今日の租税は中央地方を通じた場合において、実に大きな苦痛を国民に与えているという現実であり、二十八年度の租税政策から見ましても、なおかつ今大蔵大臣が言明された通り国民に大きな苦痛を与える税体系でございます。にもかかわらず吉田政府はいかにも一千億以上の減税でもしたかのごとく宣伝をいたしておるのでありますが、これは非常に欺瞞的な言葉だと私は思うのでありまして、こういつた問題に対して率直に吉田内閣並びに自由党は、この税制政策の上において実質的には減税どころか国民にがまんしてもらわなければならぬほどの増税になつておるんだということを、私はむしろ正直に国民の前に明らかにすべきだと思うのでありますが、この点はいかがですか。
  83. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私は増税になつておるとは考えません。
  84. 川島金次

    ○川島(金)委員 なるほど一般会計における一千九億の部面だけを限つて論じますれば、そういうことでありまして、私の見たところだけでは、正直に申せば、租税の点におきましては、なるほど昨年の二〇・六%から本年は二〇・四%となつておるようであります。従つてその差額は見るところ減税という形にはなつております。しかしながら一千億の減税といつたら、まことに厖大な減税がなければならぬが、実際においては〇・二%にしか当らないのであります。しかもこれは直接国税その他いわゆる国税の関係においての減税の程度でありまして、一方においては物価が上つております。それからまた地方税が厖大にふくれ上つております。こういつたことを勘案いたしますと、これは減税ではなくして、国民の立場から申し上げると、実質的には増税であつたと断言せざるを得ないのでございますが、そういう点はなおかつ大蔵大臣は減税だと言い張るだけの根拠と自信を持つておりますかどうか。持つておるならば、その根拠をひとつこの機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  85. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 根拠を一々申し上げるわけには参りませんが、減税いたしたものはやはり減税になつておるのであります。増税になつておるということはない。
  86. 川島金次

    ○川島(金)委員 私は繰返して申し上げますが、増税になつておると断定しておるのであります。従つて減税にはたしてなつておるならば、その明確な根拠をこの機会に明らかにしていただきたい。今でなくともよろしいから、それを明らかにしていただきたいと思うのであります。さらに、時間がだんだん迫つて参りましたから、取急いで質問を申し上げます。私は大蔵大臣に今度は積極的にひとつ提案を申し上げたいと思うのであります。大蔵大臣が言明されました通り、今日の国民の側に立つて、租税負担というものは非常に苦痛である、こういうことは大蔵大臣も率直に認めたのであります。そこで私は大蔵大臣に建言かたがたお尋ねいたすのでございますけれども、昔は大蔵大臣も知つておる通り、戦前でございますが、一箇月月収百円、一年を通算いたしまして千二百円程度のものに対しましては、大蔵大臣も体験の通り、直接国税は一銭もかかつておらなかつた。一年を合計いたしまして千二百円は、今日の物価に引直しますと、三十五、六万円ぐらいになるのではないかと思うのでありますが、この三十数万円の問題を引出して戦前はこうであつたから、今日三十五、六万円の所得以下の者に対しては国税をかけるなというような非常に極端な論議は私はしようとは思いませんが、今日の国民大衆の生活の最低基準を守る線が私はあろうと思うのであります。私はかりにいろいろの都市生活あるいは地方におけるところの生活の、世帯の生計費等を勘案いたしまして、少くとも今日の所得額といたしまして、月収二万円、一箇年間総額二十四万円、こういつた所得、いわゆる低額所得者に対しましては、昔並に思い切つて免税措置を断行する、こういう方法を私は考えておるのでございますけれども、大蔵大臣はそういう思い切つた減税政策をこの際考えるという勇気はないのであるか、心構えはないのであるか、その点をひとつお伺いいたしたい。
  87. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私もそういう点は、あなたのおつしやる二十四万円という程度には行きませんでしたが、考えたことはございますし、今でも考えてもおりますが、しかし今の日本の国の財政上からは、そう思い切つた気持のいいやり方はできないのが遺憾だと存じます。
  88. 川島金次

    ○川島(金)委員 私は政府においてそういう強い思いやりを実施するという勇気と力があれば、不可能ではないという計算を持つておるのでありますが、その事柄について議論をしますと、時間がかかりますから、省略いたします。  しからばお尋ねいたしますが、政府は今度税制改正をやりまして、いわゆる累進的な税率についても若干の改正をいたしました。その税率の改正はいたしましたけれども、まだまだ大資本家あるいは大金所得者に対する税制対策はなまぬるいものであると私は思う。大蔵大臣政府当局が繰り返し繰り返し述べておるように、今日日本経済全体は容易でない。この楽観すべきものは一つもないというような事態を突破いたしますためには、金のなき勤労階級は力を振つて出し、資金的に余裕のある者、あるいは負担能力のある者は思い切つて国のために力を捧げるという体制をつくることが、私は最も必要なことであろうと思うのであります。そこで税率のごときにおきましても、私は高度の累進税制をつくり上げて、少くとも一千万円以上のものは最終的には九五%くらい税率をかけるくらいな、思い切つた抜本的な税制対策をつくり上げる必要があるのではないかと思うのでありますが、そういう点は大蔵大臣はどのように考えておりますか。
  89. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 日本と外国とは生活のやり方が違うと私は思うのでありまして、あるいは友人関係にしましても、いくらか楽なところには苦しい人が頼つて行くということが、外国人に比べてはまだ日本の方が多い。そこで外国のように――外国にもいろいろあるでしようが、大体風習として自分のことは自分でやる。人には頼りもしないし頼られもしないというやり方のところとは事情が違うと思います。いわゆる富裕な階級に極度に高い税をかけるということは、日本ではむずかしい、むしろ事情に反するというふうに思います。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕 それからいくらか余裕があるものはそれを蓄積して一つの力とすることが、社会的にも便利な場合があるとも考えられます七今おつしやるようなきわめて高い税率をかけるということは、研究としてはよろしいのですが、にわかに実行するのは考えものと存じます。
  90. 川島金次

    ○川島(金)委員 さらにお尋ねしますが、この、ごろ大企業家で相当の利益をあげているものがあり、中には四割も五割もの配当をするものがある。しかも相当な社内の留保、蓄積資金もあるというような企業があるように見えます。こういつた利潤を多額にあげている法人に対しましては、超過利得税をとつたらどうかと私は考える。もしまた超過利得税がむずかしければ配当制限でもやつたらどうか、こういつたことも考えている。そういうことによつて、一方自由的な資本蓄積なりあるいは政府の強制によつての資金蓄積なりをやるべきではないかと私は思うのですが、そういう点はどのように考えられますか。
  91. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私はその点も考えたことがございますが、しかし今の高率の配当に対しまして税をかけるということは、実行の上になかなか困難がある。そこでそれはまずやりにくいことというふうに考えております。それから制限ですが、これもそう連続的にもうかるという事業はあまりないのでして、それをつかまえて配当を制限してもやはり実効の少いもので、制限してみたら今度はほんとうにもうからなくなつたというふうなことがありがちなものです。これもその事業をやつている人が、あまり高い配当をしないで、もうかつたものは蓄積して内部の改造とか設備の改善という方に方に使うように考えてもらいたいという程度に存じております。
  92. 川島金次

    ○川島(金)委員 それではついでにお伺いしますが、今度の税法の改正によりまして、法人に対しては貸倒れ準備金とかあるいは物価の変動に対する準備金の制度のわくを拡大するようであります。なるほど法人に対してそういつたあたたかい制度をしいております。しかもその半面において当然法人あるいは富裕な階層が果すべき責任を果させないで、ことさらな政策を行つて行くということは、私は公正なる政治ではないと思う。一方において勤労大衆は、今大蔵大臣も認めておるように、非常な苦痛を感じるような税金を背負いながら働いており、生産に協力しておる。しかも一方では金持だけがその恩典にあずかるという減税公債を発行し、一方では税法を改正してこういつた貸倒れ準備金とかあるいは物価変動準備金などのわくを拡大して手厚い保護をしておる。こういうことをやつておりながら、金利は下げない、しかも今言つたような累進課税などはしない、あるいは配当制限をしない、超過利得税はとらない、こういつた一連の政策をにらみ合せてみると、まぎれもないことは、向井大蔵大臣のいわゆる財政政策は、金持のみに手厚い保護を加え、金持のみに奉仕するという感じが強い。こういうことが国民大衆にわかつたときには、勤労大衆に非常なる反感と憤懣を呼び起して、容易ならない事柄を起すようなきつかけどもなることを、私は心配をいたすのであります。そういつたことをにらみ合せて、少くとも私は、応能の精神によつて、力のあるものは大いに負担をし、また力のないものはその分に応じて生産の増大に協力し、そうして日本の完全な独立を達成せしめるということが、独立後の日本においてまず着手しなければならない最も緊急な案件ではないかと思うのであります。その点について大蔵大臣は何らお考えがないのかどうか、もう一ぺんお伺いいたしたい。
  93. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 あなたのお話では、事業会社というものは事業をやつて人も大勢使わないし、ただ何となしにもうけてはそれをためておるというふうに聞こえますが、積立金の税金を減らすのは、あたたかい気持とあなたはおつしやいましたが、あたたかいというよりは、そういう会社が弱つておるのを補強しようとか、あるいは弱らせないようにしようという仕組みであつて、あくまでももうけさせようというふうな意味は毛頭ないというふうに考えおります。いろいろの点から、金のあるものを助けて行こうという方針というお話でございますが、事業会社がよくなればそれに関連した、たとえばその下請をしておる工場などもよくなるでしようし、そこで働いておる人の福祉も増進するでしようし、またそういう会社の株を持つておる金融機関とか、保険会社とかいうふうな会社の収入もふえましようし、それがひいて社会全体の福祉をよくするごとになりましようから、今のお話のように、片寄つた扱いをしているという御解釈は私は当らないと思います。
  94. 川島金次

    ○川島(金)委員 この点は議論になりますからやめておきます。だんだん時間がなくなりましたので急ぎますが、政府は去年から今年にかけまして国民生活が著しく改善されたということを誇らかにうたつております。私どももまたあえてその事実を否定するものでは決してございません。しかしながら国民の一歩突き進んだ生活の実態に入つてこれをつまびらかにいたします場合には、必ずしも政府の保障しておるごとくに国民生活は改善されておらないと私は考えておるのでございます。たとえば食糧の事情においても、終戦直後の事情と引比べますれば、それはなるほど格段の相違を来しております。さらにまた、衣料等の問題につきましても同断でありまして、これもまた戦争前の国民生活の実質的な水準と、今日の実質的な食生活並びに衣料生活と比べました場合には、いわゆる消費水準だけで示されておるように、八十何パーセント、九〇%も越えたというようなことは、必ずしも言えないのではないかと信じておるのであります。ことに国民大衆にとつて重大な問題である住宅問題のごときは、今全国において三百万戸も不足しておる。しかも年々歳々くずれたり、倒れたり、流されたの、あるいは人口の増加等によつて、新しい住宅が三十万戸も必要だといわれております。これに反して、政府の住宅政策では、年々十万戸あるいは十一万戸を建設する程度のことしか行われておりません。こういつた事実を考えた場合に、日本国民生活の水準は、消費生活の水準によつて表わされたほど上つておらないと考えておるのでございますけれども、この問題は経済審議庁長官がよろしいと思いますが、こういつた国民生活水準の実質的な引上げという問題について、いかなる構想といかなる計画を持たれておりますか、この点について詳細な説明を願いたい。
  95. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今お話のごとくに、住宅の点が最も欠け、特に都市の住宅において最も不足しておるのでありまして本年の予算でも住宅の問題については最も重きを置き、特に勤労者の住宅については一番重きが置かれておるのであります。ただ、川島さんがおつしやつたように、数字の点から見ますと、九―十一年を一〇〇としますと、生活水準は相当つておりまして、都市の方は、御指摘のように、大体八四、農村は一二八、平均九八というふうになつておりますが、今住宅の点が最も欠点となつておりますので――今年度の予算は今までよりは一番多く計上されておりますが、まだ不十分な点が多いので、今後これに対してもつと努力をしなければならぬと考えております。
  96. 川島金次

    ○川島(金)委員 農林大臣もおりますから、この問題についてちよつとお尋ねしておきたいのですが、戦争前の国民の食生活、すなわちエンゲル係数でいえば、大体三十数パーセントが標準でございました。しかし、今日なお五五%以上というものが、食生活におけるエンゲル係数であります。こういつた実情にあるにもかかわらず、政府は、国民生活水準が非常に引上げられ、改善されたかのごとくに、ややもすれば宣伝しがちな実情であるのであります。そこで私は、消費水準の引上げあるいは所得水準が引上げられても、食生活を中心としたエンゲル係数の引下げ、すなわち実質的な生活水準の引上げがない以上は、国民生活の実質的な飛躍的な上昇だとは断言できないのではないかという考え方を持つておるのでありますが国民の食生活を中心とした今後のエンゲル係数の引下げについて、農林当局はどういうふうに努力をしようという考え方を持たれておるか、その点についての方針を説明してもらいたい。
  97. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 御指摘のように、実質的に生活水準を上げるということは大事なのでありまして、万般の施策をそれに向けて私どもは努力をいたしております。
  98. 川島金次

    ○川島(金)委員 あまりに抽象的でさつぱりわかりません。世間でいわれるたぬきさんのような答弁であります。それでは国民は満足をいたしません。生活上の中心問題でありますから、もつとまじめにお答えを願いたいと思うのであります。  たとえば、今日米はまだ配給制度でありまして、米食率は戦前に比べてまだまだ非常に差異のあることは事実であります。こういつた問題を中心として、国民生活、いわゆる食生活の実質的な向上をはかる、このことについての具体的な計画あるいは努力をするという心構えは、政府において当然なさなければならないと思うのでありまして、その問題についての具体的な方策があればそれを示してもらいたい、こういうことであります。
  99. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 一つ一つ具体的に言いますと、供出については、農家保育米をふやして行くこともその一つでありましようし、あるいはまた家畜を飼つて食肉を供給するために、その飼料に関する対策を講ずることも一つでありましようし、あらゆる面に向つて私は努力いたしておるつもりであります。
  100. 川島金次

    ○川島(金)委員 それは農家のことだけでございます。一般の都市居住者――米を消費する側に立つて一般勤労大衆の食生活の実質的な向上といつた問題、従つて米の配給をふやすとか何とかいつた具体的な方針がなければならないと私は思う。また今日エンゲル係数の示すところによりますれば、主食を中心として、一般勤労大衆の家計上の大きな負担は、農林大臣も御承知でございましようが、副食物でございます。副食物は肉、野菜等を織りまぜたものでありますが、こういつた問題の実質的な引上げに対して、政府の特段の計画的な努力がなされなければならぬと思うのであります。そういう点について、大臣が答弁できませんければ、かわりの者でもけつこうでございますから説明を願いたい。
  101. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 副食物については、先ほども申し上げました通り、食生活の改善をモツトーにしておりますわれわれといたしましては、全般の副食物について特に畜産、水産等については意を用いておるのであります。また野菜等につきましても、市場の機構等をだんだん驚いたしまして、一般消費大衆の負担を軽減するようにいたしておるのであります。なおこまかい答弁が必要でありますれば、政府委員から答弁いたします。
  102. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 御指摘のありましたように、都市と農村の生活水準の回復の程度は違つております。従いまして、エンゲル係数は終戦直後に比べますと、相当回復しておりますけれども、所得の回復はまた戦前まで帰つていない状態でありますので、エンゲル係数を戦前の状態まで持つて行くことについては、まだ今後相当の力がいると思います。食生活内容の改善につきましては、ただいま大臣の方からお話がありましたように、質的に米食率をよくすると申しましても、朝鮮、台湾を失つた日本の現状では、米だけにたよることは――御承知のように、外米の買付競争で非常に高い米を買つているという関係もありますので、食生活の質的な内容を改善することについては努力はいたしておりますが、エンゲル係数の点に関して申しますれば、まだ相当努力がいると考えております。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員   長着席〕
  103. 川島金次

    ○川島(金)委員 時間が大分たちましたので、もう二、三お尋ねしてやめたいと思います。私前段にも申し上げたのですが、政府が予算を編成される場合には、必要欠くべからざる経費をもつて、しかもその年度内において使用されるという責任ある見通しと確信のもとに編成されるべきであつて、かりそめにもこの国民の苦しい経済の実情の中から、強制的に余分な税金をとるという形にすることは、厳に慎むべき問題であろうと思うのでありますが、それとあわせて大切なことは、国民の血税を使う場合に、公明厳正な立場において有効にこれを使つて行くという心構えが、厳に必要であるということは言うまでもないのである。しかるに二十五年度における会計検査院によつて報告されまして、議会に送られました検査報告書によりますと、実に大蔵省を中心として乱脈きわまる経理がなされておるということでございます。不当なる支出あるいは不当なるところの払下げ、あるいはまたはなはだしきに至りましては、国有財産を民間に貸し与えておつた者が、いつの間にか、現金がまだ払われておらないのに先だつて、国有財産がその貸し与えられておつた者の所有に帰しておつたなどというような、乱暴きわまるめちやくちやな驚くべき事実が実に多いのでありままた新聞等に出て参ります汚職事件等のごときも、政府道義高揚ということを国民に求めておきながら、まず政府の足元においてそのような汚職官吏を出したり、あるいはまた国民の血税を使います場合に、そのような乱暴きわまる、無責任きわまる使い方をするということに至りましは、断じて私は国民の立場において許せない事柄であり、同時にまたそうしたことが大きく行われるときには、政府は率先して重大な責任をとつてこそ、初めて私は責任政治のゆえんがあろうかと思うのでございます。しかるにまた二十六年度におきましても、私の伝え聞くところによりますれば、二十五年度に比してなおかつ過ぐるとも劣らないところの非常なる各省にわたつての、経理上の不当とか不正とかいうものが起つておるように聞き及んでおるのでありますが、この機会に会計検査院の立場において、われわれの手元にはまだ報告書が参つておりませんけれども、検査院の方ではもうすでに検査が終了済みであり、これが概略については政府の方にさしまわしてあるやにも承つれおりますので、そうした問題について二十六年度はどのような状況であつたか、大要について、大ざつぱなことでよろしいのでありますが、おもなる経理の乱脈ぶりその他についての御報告を、この機会に国民の前に示してもらいたいと私は思うのであります。
  104. 東谷伝次郎

    ○東谷検査官 ただいま川島さんからお尋ねがございましたので、ごく概略を御説明申し上げたいと存じます。ただいま川島さんからお話に相なりましたように、二十五年度におきます会計検査院の検査の結果不当もしくは不正といたしまして国会に御報告をいたしました件数は、二十五年度は千百十三件ということになつております。二十六年度は、昨年の十二月三十一日付で政府の方へお出しをしまして、ただいま実は印刷中でございますから、遠からざるうちに国会に政府から御提出になることと存じております。その件数は千百九十八件でありまして、八十五件ふえているということになつております。  会計検査院におきましての検査の仕方につきましては、先ほどからお話がございましたように、一口に言えば国民の血税でありまして、その血税の行方をどこまでも追求して行きまして、政府会計の是正、改善をはかるということに主力を注いでいるのであります。乱脈きわまるということでございますが、実はこれは戦争中に仕事が先であつて整理はあとだというような気持が多分にございまして、終戦後は非常にすべての点がごたごたしておりまして、また会計経理担当者も戦争その他でがらりとかわりましたり、ふなれの点その他諸般のおちつかない点がございましたので、だんだんと会計検査院の検査の結果、不当事項が現われて来たのでありまして、不当事項だけの件数から申しますと、終戦後年を追うて多くなつておるような状況でございます。ただ会計検査院は、二、三年前までは会計経理担当者の非常なふなれの方々も幾らかございましたので、指導的立場といいますか、是正、改善という方を主としてやつて来たのでありますが、それでも件数は年々上つて参りまして、ただいま申しましたのは二十五年度と二十六年度と申したのでありますが、終戦直後は会計検査院の検査の結果、不当というのは二十二年度においては三百八十五件、二十三年度は六百二十三件、二十四年度が七百五十件、それに先ほど申し上げました二十五年度が千百十三件、こういうことに相なつておりまして、二十六年度も幾らかふえておりますが、達観的に申しますと、会計経理はだんだんによくなつておるのでございまして、政府御当局の会計担当者が非常に熱心に、会計方式あるいは予算を守つて行くということが、だんだんと会計検査院の検査の結果も現われて来ているようであります。ただ会計検査院の検査も、全部実地検査などをいたしまして、検査をいたしかねるような状況にございますので、年度初めにおきまして、ことしはどの方向に向つて重点を指向してやるというようなことを定めまして、検査を実行しておるのでありますが、そういう関係におきまして、ごく簡単に申し上げますが、二十六年度は何が主としてふえたかと申しますと、補助金の関係が……。
  105. 川島金次

    ○川島(金)委員 時間がないから大ざつぱに金額とか件数とか……。
  106. 東谷伝次郎

    ○東谷検査官 それではごく大ざつぱに申し上げます。これは租税などの是正された事項でありますが、昨年が二百八十八件に対しまして、本年は三百九件ということになつております。補助金の関係はただいま申し上げましたが、昨年が約百六十件くらいでありますが、本年五百件になつております。大体そのようなものでありますが、不正事項は非常に少くなつておりまして、昨年が百九十三件でありましたが、本年は七十二件、こういうことになつておるのであります。そのおもなものを申し上げますと……。
  107. 川島金次

    ○川島(金)委員 時間がないから、あとで報告書にして出していただきたいと思います。
  108. 東谷伝次郎

    ○東谷検査官 ただいまの点の報告書は、先ほど申し上げましたように、印刷に付しまして数日中にできるはずでございますから、その報告書をもつて私の説明にかえさしていただきたいと思います。
  109. 川島金次

    ○川島(金)委員 不正支出、不正支払い、両方合せて総額としてどれくらいあるか。
  110. 東谷伝次郎

    ○東谷検査官 不当の金額は、いろいろありますが、全部合せて、昨年が百四十九億四百余万円ということになつておりますが、本年は三十億五千八百余万円ということになつております。  以上私の説明を終ります。
  111. 川島金次

    ○川島(金)委員 それではちよつとお尋ねをいたします。労働大臣が見えておりますので、この機会に一言だけお尋ねいたします。伝えられるところによりますれば、労働省におきましては、この国会に労働組合法あるいはその他一連の労働法の改正案を議会に出す。ことに問題になつておりますのは石炭、電産の争議の昨年の実態にかんがみまして、これら両企業体をも公益事業に編入せしめて、実質上のスト禁止を断行するというような考えを持つておるというふうに伝えられておるのでありますが、そういう用意が進んでおるのかどうか、その点についての報告をお願いしたいと思います。
  112. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、先般来もだんだん御質疑がありまして申し上げておるのでありますが、昨年の冬の争議の状況から考えてみて、行き過ぎた点について適当な措置をいたしたいという程度のものでございます。ただいまお話のような争議を禁止するとか、そういうふうな考え考えておるわけではございません。
  113. 川島金次

    ○川島(金)委員 争議の実質上の禁止でないというお話でありますが、しからば大体の構想でよいのでありますが、スト禁止でない別な対策というものがおありだつたらば、この機会に説明ができるのでしたらやつてもらいたいと思います。概括でいいです。
  114. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 まだ成案を明らかにいたしておりませんので、はつきり申し上げることはできないのでありますが、大体電産と炭労の関係で行き過ぎたと思うところを多少制約するといいますか、今後そういう点に過ちのないようにしたいという意味で考えておるわけであります。
  115. 川島金次

    ○川島(金)委員 時間がありませんから、その問題については、また後に機会を得たいと思います。  そこで最後のお尋ねをいたしたいのですが、保安庁の問題であります。この新しい保安庁の経費の中には、演習場の購入とか、船舶の建造とか、飛行機の購入とか、弾薬倉庫の建設、あるいは弾薬の購入、こういつた一連の容易ならない物騒な費目が、大分頭を持ち上げて参つております。そのほかにまたいろいろな意味において、人員も増加されるのではないかというふうに、この予算を見ますと、感ぜられるのでありますが、一体演習場、船舶の建造、飛行機の購入、弾薬兵器の購入、こういつた問題について、どういうふうな具体的な計画を持つているのか。あわせて時間がありませんから聞きますが、これら一連の海、陸、空にわたつての保安隊の経費の内容、ことにその装備の昨年以来今日までかわつてつております点などについて、概括でよろしいのでありますが、それをまず説明を願いたいと思うのであります。
  116. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。元来保安隊は、国内の平和と治安を維持するために特に必要なる場合において出動する部隊であります。要するに国家の平和的治安を維持するにふさわしい装備と人員をふだんから用意しておかなければならぬ。御承知通り、国内情勢、国際情勢から見まして、何どき国内の平和が乱れるかわからぬ。治安が確保せられぬとすれば、これほど国家にとつて不幸なことはありません。従いましてこれに対処すべく、ふだんから相当の準備をいたさなければならぬ。飛行機にいたしましても、これは戦闘に用いるものでなくて、まつたく通信、連絡その他において必要欠くべからざるものである。また船舶ににいたしましても、これは御承知通り日本の海岸線は九千マイルの長きにわたつております。これらの密輸入船その他に対する警戒から考えまして相当な手当をいたしておかなければならぬ。それにふさわしい設備を国が持つている必要があるのであります。演習場にいたしましても、これらの保安隊員は日常訓練をさせなければならぬ、その必要上やむを得ざるものであります。従いまして現在の保安隊は、いろいろな観点から日本の内地の平和的治安を維持すべく最大の努力を払つているのであります。決して世間のいうごとく、軍隊でも何でもないということを御承知願います。
  117. 川島金次

    ○川島(金)委員 まだ私は軍隊論をやつておるわけではないのです。内容を聞いているわけですが、言わず語らずのうちに、やはりどこかの片すみに若干のしこりがありますと、漏れるものであるということがわかつたようなわけです。そこでお尋ねするのですが、保安隊は定員が十一万、警備隊が七千六百、フリゲート艦は現在十八隻、上陸支援艇は五十隻、ヘリコプターは二十一機、こういつた形において、今度新たに上陸支援艇の乗組員が二千ばかりふえる。あるいはまたヘリコプターの要員を五百ばかりふやす、こういつたことで漸次また人員も強大になつて行こうといたしておりますが、この人員をさらに今年内もしくは明年に至つて増加するという方針を持つているのか、その点をひとつお尋ねしておきたい。
  118. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。警備隊員の増加の点については、昨年末国会において御承認を願いましたアメリカからの貸与船に乗り組ませるべき人員であります。これらの警備隊員と現在十一万の保安隊員をもつてすれば、まずく現在の程度においては日本の平和的治安を維持するに足りると考えております。ただし将来国内情勢、国際情勢の変化によつて、あるいはこれを増員しなければならぬかもわかりませんが、まだまだ私はそれを予想する程度に達していないのであります。
  119. 川島金次

    ○川島(金)委員 そこでさらにおつつけてお尋ねいたしますが、現在のフリゲート十八隻、上陸支援艇五十隻、ヘリコプター二十一機、この装備をさらに今年度内に増加させて行くという方針でもあるのかどうか、その点はいかがですか。
  120. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 二十八年度の予算で要求しております程度で、ただいまは事足りると考えております。目下のところそれ以上には上らないとわれわれは考えておるのであります。
  121. 川島金次

    ○川島(金)委員 この間うちの新聞を拝見いたしますと、写真入りで保安隊、その他海上警備隊の演習ぶりなどが報道されておるのでありますが、この装備などにつきましても、いい意味においては充実でありましようが、われわれの立場からいえば、今まで政府が説明して来たものとは、およそ似ても似つかない大装備になりつつあります。たとえば飛行機のごときも、昨年の春あたりでは、飛行機などはほとんど入れるような予定はないということを言つたこともありますし、また大砲に類するようなものは、ほとんど入れる方針もないというようなことを、かつて政府側から言明されたこともあるのであります。しかるにその言明に反しまして、いつの間にか国民がつんぼさじきにでもおるような間に、この保安隊の装備というものはますます強大になろうといたしております。これまた最後に私は念を押しておきたいのですが、この保安隊の装備をもつてしてでも政府は軍備ではない、軍隊ではない、戦力でもないといつておるのでありますが、先ほど予算上の問題でお尋ねした意味と同様の意味におきまして、しからば保安大臣として、いかなる装備までなつて来たときにそれが戦力であり、今日の立場において兵力になることになるのか。そういつたことの限界というものがおそらくあるべき筋合いのものだと私は考えておるのでございますが、その限界について何か考えておるところがありますれば、この際明らかにしてもらいたいと思う。
  122. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。結局御質問の要旨は、ただいまの保安隊、警備隊は軍隊であるか、あるいは言葉を返しますれば、憲法第九条第二項の戦力であるのではないかという御質問のようであります。元来保安隊、警備隊は、先ほどからも申しますように、その設置の目的が戦争を目的としておるのじやないということをはつきり申します。いわゆる国内の平和と治安を維持するために設置されたものである、これが第一点。第二は、御承知通り戦力とは何であるか。戦力とは要するに近代戦を遂行するに足るものなる全体的の総力であります。従いまして現在の保安隊、警備隊は、いずれの観点からいたしましても、これは戦力ではない。要するに御承知通り近代戦の様相、あるいは各国で持つている軍備、これらと比較いたしますと、おそらく月とすつぽんのような程度であります。この日本の現在持つている保安隊、警備隊の装備、能力というものは、きわめて微々たるものであります。そのいずれの点から申しましても、これは憲法第九条第二項の戦力に該当しないと出やえます。
  123. 川島金次

    ○川島(金)委員 私が質問をする前に、先に答えて深入りしているようでありますが、私は今その憲法違反の問題とかなんとかをむし返すつもりで質問したのではなくして、近代的な様相を呈しておるものが戦力である、しかしその近代的な様相ということは、非常に抽象的な事柄でありまして、私どもには必ずしも納得が行きません。ただ責任ある大臣の立場において、また政府として今日頭の中で考えておられるところの、いわゆる近代的な戦力あるいは兵力、こういつた形のものは最低限度があろうと思うのであります。切りのないことでありまして、ソ連の持つている兵備あるいは米国が持つておる強大な軍隊、こういつた最高もありましようが、最低限度というものもまたあろうかと思います。従つて自衛力から戦力に一歩踏み出すところの、自衛力から戦力にかわるところの一種の限界というものが、人員の上にかあるいは装備の上にかあるいはその他の点においてあろうかと私は考えておるのでありますが、そういつた点について具体的に一体どういうふうに考えておるか、その点をくどいようですが、もう一ぺん聞かしていただきたい。
  124. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いかなる程度に至れば戦力なのであるかどうかということは、これは時と場合によつておのずから異なるのであります。いわゆるその国の置かれた地位及び環境ということで判断すべきことであります。これを数字的に幾らまでが戦力、幾らまでが戦力にならぬということを、はつきり区別をつけることはできません。いわゆる社会通念によつてこれを決定するわけであります。
  125. 川島金次

    ○川島(金)委員 その置かれたる地位、条件、環境。しからば日本の今日置かれたる地位と環境と条件において、どの程度のものが兵力だと言うことができるのじやないかと思うのです。その意味において、もつと明確に、責任ある大臣でありますから、おそらく研究しておるのじやないかと私は思います。
  126. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの程度においては、保安隊、警備隊は戦力でないということをはつきり申し上げるのでありまして、それを数字的にいかなる程度に至ればこれは戦力であるかということは、われわれは申し上げることはできないのであります。
  127. 川島金次

    ○川島(金)委員 しからば日本においては、憲法の条章の示すところによつて、兵力、戦力、戦争放棄といいますか、そうすると政府は、われわれの反対にもかかわらず、自衛力の漸増に名をかりて、一種の実質上の再軍備を強行していることはまぎれもない事実であります。しかもその軍備であるという判定をするのは政府自身でなくして、何人がこれをすることになるのでありますか。そして憲法違反というような問題を起したときに、一体その判断はだれがするのか。それからまた兵備、戦力ということの認定をするときには、だれが責任をもつてやるのかという問題も起つて来るのでありますが、その点はいかがですか。
  128. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まず戦力であるかどうかということの判定は、責任ある当該政府がいたすべきである。これについて争いがあれば、結局最高裁判所においてこれを決定すべきものであると考える。
  129. 川島金次

    ○川島(金)委員 この問題についても、保安大臣は答弁に非常に苦心さんたんをしておる様子でありまして、まことに御同情にたえない。この問題を繰返しておりますことは、私ももはや持時間をなくしておりますので、他にもいろいろ質問があるのでありますが、この程度で打切りたいと思うのです。  最後に外務大臣と通産大臣がおりますから、一言お尋ねをいたしますが、本日の新聞紙の報道するところによりますれば、国民が重大な関心をもつて見守つて参りました日米通商航海条約の案文が、決定的なものであるかどうかしりませんが、発表されております。従来いろいろ問題になつおりました事柄も若干緩和され、あるいは留保されたというような事情があるように新聞紙ではわれわれは察するのでございますが、この日米通商航海条約の問題点及びきようの新聞紙上によつて発表されたような最後の妥結を見るという見通しを持たれておるのかどうか、その点について両大臣いずれからでもけつこうでありますが、具体的な説明をお願い申し上げたいと思うのであります。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まずお断りしておきますが、きよう新聞に出ましたのはどういうものでありますか、われわれの考えておるものとは必ずしも一致しておりませんで、違つておるところが非常にたくさんあります。従いましてあのままでこれがどうだということをお考え願わないでいただきたいと思うのであります。なお日米通商航海条約の問題点は二、三ありますが、おもな点は要するに外国から入つて来た投資、その投資の利潤を外国に送金する場合にどうするか、あるいは利潤を送金しない場合に国内でどういうふうにしたらいいかという点で、日本側の経済がまだ脆弱であるために、あまりに多くのそういう日本円によつての操作で、国内の種々の産業がおもしろくない影響を受けることを防がなければならぬというのが一方にあります。他方においては、できる限り外貨をよけいに日本に導入できるような仕組みにいたしたいということで、いろいろ調節をはかつておるわけであります。われわれとしては、しかしながら内閣の政策にも外貨の導入をうたつてあるのでありまして、できるだけ外貨の入つて来る方針をとりまして、ただこれがあまり不当に国内の産業を圧迫しないような措置を講じたいというのでいろいろ考えております。一昨日の新聞にも出ておりますが、われわれとしてああいう案を持つてつて、これでアメリカ側と話をいたしつつあるところでありますから、内容についての発表はしばらく差控えたい、こういうつもりでおります。
  131. 川島金次

    ○川島(金)委員 そうするときようの新聞に報道されておる内容の問題を私どもは見たのですが、ああいう案で折衝するということに理解することは違つておるのですか。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま申した通りの原則で行つておりますが、その具体的内容については申し上げることをしばらく差控えたいと思います。ただ今日出ておりますのはどういう径路で出たものか知りませんけれども、大体通商航海条約というものは一つの型がありまして、アメリカが今までよその国と結んでおつた通商航海条約をよく研究しますれば、日本の場合は、向う側の意見によればどうなるであろうかということがわかります。それを今度は日本側のいろいろの意見を総合してこれを修正すれば通商航海条約らしいものはできるはずであります。しかしただいま私が申し上げるのは、今日出ましたものは、今現に交渉中のものとはいろいろの点において違つておるということでありまして、もうしばらく交渉の結果をまつまで発表を差控えたいと考えております。
  133. 太田正孝

    太田委員長 伊藤好道君。
  134. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 防衛分担金とか、あるいはまた保安庁の費用とか、その他関係の費用についての一月末現在における使用しない残高の資料は、委員長の手元に出ておりますか。
  135. 太田正孝

    太田委員長 政府に申しますが、ただいま伊藤委員の言われました資料は、いつごろできますか。
  136. 河野一之

    河野(一)政府委員 一両日中にできます。
  137. 太田正孝

    太田委員長 一両日中ということでございますが、それでよろしゆうございますか。
  138. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 よろしゆうございます。それからもう一つ、ついでに資料を要求したいのですが、それは各国の軍の兵備あるいは軍隊の人数とか、あるいは持つている武器といいますか、そういうような大体の軍事力についての一応のリスト、これもできるだけ早い機会に出していただきたい。
  139. 太田正孝

    太田委員長 木村国務大臣にお聞きいたしますが、今言つた資料はできる見込みでございますか。
  140. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 多分できると思いますから、できましたら、できるだけ早く提出いたします。
  141. 太田正孝

    太田委員長 それでよろしゆうございますか。
  142. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 よろしゆうございます。緒方官房長官にお尋ねするのでありますが、きようの川島委員憲法問題についての御質問につきまして官房長官からいろいろのお話があつたわけでございまして、輿論が熟するときでなければ軽々に憲法の改正はしない、こういうお話で、ございましたが、ただそのお話の中に、憲法の制定については環境の影響などがあるので云々というお言葉があつたように思うのであります。これは環境の影響があるので、従つてその影響が特に濃いという――あるいは環境がかわつた場合には、やはりかえなければいけない、こういうような意味に重点を置いたお言葉であるかどうか。これをただしておきたいと思います。
  143. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。私が申し上げたのは、本議場におきまして、総理大臣がどなたかの質問に対して答えられた、その言葉を引用したつもりであつたのでありますが、それは私の記憶では、憲法制定については、歴史あるいは民族的の個性その他のものが要素となつて憲法の制定の方向をきめるが、そのほかに環境というものも影響を与えておると言われた意味は、私は、当時占領下において、憲法が制定せられました際には、それぞれの機関を通して審議を尽されたのでありますが、占領下における日本側の独立していない際における環境の影響ということを言われたのではないかと思うのであります。その意味のことを申し上げたのであります。
  144. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 官房長官にもう一つお尋ねいたします。いわゆる情報機関の件でございますが、補正予算に関する予算委員会におきまして、官房長官は大体各国の情報の入手といいますか、それも具体的に名前をあげられたのでは、大体ソ連関係あるいは衛星国、そういうような関係の情報を特別に入手しなければいけないというようなお話であつたように記憶するのでございますが、ちようど最近アメリカにおきましても、心理戦略委員会とか俗称されておる委員会ができて、ダレス国務長官の弟さんかたれかが、その責任者になられたというような記事を見ただけでございますが、官房長官のお考えになつておる情報機関の設置は、これと何らかの関係があるのかどうか。あるいは何らかのヒントを得られたものであるかどうか。あるいは何らかの要請でもあつたのか。それらの関係についてお話願いたいと思います。
  145. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいま仰せになりましたアメリカのジヨン・フオスター・ダレスの弟さんのアレン・ダレスさんが委員長でありますか、長官でありますか、それになられました、俗にCIAという機関は、主として諜報を集める機関でありまして、それと同じものをつくる意思ではございません。普通の内外の情報をできるだけ多く集めて、それを整理分析して正当な国際情勢、あるいは国内情勢の判断をいたしたいというつもりでおります。
  146. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 外務大臣にお尋ねいたします。アメリカとの通商航海条約に関する件でございますが、今お話では、新聞に出ましたのは政府の今交渉されている具体的な案とは違うような御答弁であつたと思うのでございますが、ただ私どもが非常に心配をいたしますのは、こういうことであります。アメリカ日本の事業に対する投資の問題に関しまして特に公益事業とか、あるいは私企業というような分類の仕方で制限される点が異なつているような記事を二、三回にわたつてわれわれは見受けたのでありますが、公益事業と普通今まで日本で言われているものの中には、鉄鋼とか石炭は入つておらないように思います。今度あらためて石炭はストライキ問題に関連して公益事業としてとり上げられつつあるようにわれわれは承るのでありますが、そういう重要産業について形式的に私企業であるからといつて、外国の資本が無制限に入つて来るというようなことは、日本の経済の自立と今後の発展とにとつて、非常に重要な意味を持つと思いますので、この点についてはどのような問題があるのか、できるだけひとつ問題点についてお話を承れれば、ありがたいと思うのであります。
  147. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま交渉中の案件については、申し上げることを差控えたいと思いますが、アメリカとしては方々の国と通商航海条約を結んでおりますから、一般的な原則については申し上げられると思います。今おつしやつたのは二つのことが混同しておるように私は思うのですが、一つは外国人が日本で経営できない事業、これが何であるかということは、これは各国の通商航海条約が軌を一にしておりまして、ほとんど差異がないのであります。つまり制限事業と申しますか、これはたとえば交通事業であるとか、あるいは水道事業であるとか、そういう公益事業のほかに、たとえば鉱山であるとか、あるいは金融業の一部であるとかいろいろなことがあります。これは外国人が日本でできない仕事であります。それから今おつしつたのはおそらくこういうことだろうと思います。普通アメリカ側が各国と相談して協議しておりますのは、政府の事業と民間事業が競合する場合に、政府の方は一般に税金を払わなかつたり、土地は国有であつたりするので、有利な立場にある。そこで民間の事業が圧迫される。そこで民間の事業と同じ事業を政府がやつている場合には、政府の事業と民間の事業が同等の立場にならなければいかんのじやないか、こういう議論であります。これはたとえばアメリカで中南米等におきまして、まだ何も発達してない事業について、アメリカを中南米の諸国が招請しまして、たとえば石油事業を発達させるとか、あるいはいろいろなほかの事業を発達させる、アメリカ人からいえば苦心して事業を盛り立てるわけです。そしてかなり有利なところまで行きますと、今度はそれと同じような事業を政府がやるのです。政府の方は税金も払わないし、土地もただだし、コストも安いから、アメリカが苦心さんたしてやりました事業が圧迫されて、経営ができなくなつてしまう。そしてただ同然に取上げられてしまう、こういう事例があるそうであります。それを防ぐためにアメリカ側は中南米等に、いつも強く主張しておりますのは、民間事業に対して政府の事業があとから一緒にやる場合には、政府事業が特に有利な立場に立たないような措置を講ずるということ、これは政府事業と民間事業の競合の場合。もう一つの方は、公益事業のみならず一般にどこでも考えておりますが、その国にとつて外国人に許すことのできない事業、これはどういう事業であるか、これは制限事業である。これはまた別個に各国の通商航海条約できまつておるような種類のものが普通きまるようになるだろうと思います。この二つの問題がありますが、いずれもまだ協議中であります。
  148. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私が最初に申し上げましたのは、内容が確かに少し複雑なようでございますが、ただ私の申し上げたいことは、日本の重要産業に対する、どういう形にしろ外国の無制限な支配に対しては、十二分の警戒心を持つて交渉に当られたいということであります。  そこで、私は予算のことについて大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますが、最初に二十八年度予算を組むにあたつてその前提となつたいろいろな事情であります。そういういろいろな事情は、私どもは簡単には大蔵大臣の予算の説明なり、あるいは経済審議庁長官の経済についてのお話によつてつたわけでありますが、それらの私どもが承りました大体の調子から申し上げますと、どうも二十八年度における日本の経済は大分むずかしいように、私どもは拝聴したわけであります。従つてもし経済のそういう実態に即して予算を組む、こういうことになれば、その予算は当然にむしろ少くなるのがあたりまえではないか、こういうような気持を持つわけでございますが、出されました二十八年度の予算案は、申し上げるまでもなく去年の補正予算を含めた予算額に対しても、数百億円膨脹しておるようであります。そこで私はそれに関連してお伺いいたしたいのでありますが、まず第一に、そういう点でどうも早算が大き過ぎる、これについて大蔵大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  149. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ことしの予算は民生の安定とか、あるいは経済の発展のために必要とします金、ことに公共事業とかあるいは食糧増産対策とか、荒廃したいろいろの施設の改善というふうなことに加うるに社会保障上のいろいろの経費増を見まして、どうしてもいると思う金高を計上いたしましたので、それがたまたま前年度より多くなりましたけれども、これを極端に圧縮するということは、かえつて民生の安定に害のある結果を来しはしないか、そういう懸念でただいまの規模の程度まで、むしろふえた予算が作成された次第でございます。
  150. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 その点はわれわれは大蔵大臣反対でございまして、もし保安庁の費用その他について大きなメスを加えますならば、今言われました民生の安定についてさらに徹底した仕事が、当然に予算の上でできると思うのでありますが、これは見解の相違でありますから、あとでまた触れるといたしまして、政府は大体二十八年度の国際収支の見通し、貿易の状態あるいは国内購買力関係などについて、どういうような見通しを持つておられますか。
  151. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ちよつと数字を見てお答え申し上げます。大体二十七年度の国際収支は、御承知のごとく貿易は収入の方が十二億八千九百万ドル、支出の方が十七億一千八百万ドル、貿易外は収入の方が一億七千百万ドル、支出の方が三億四千八百万ドル、特需関係で収入が八億二千百万ドル、支出の方が百万ドル、合計しまして収入が二十二億八千万ドル、支出が二十億六千万ドル、こういうようなぐあいに見ておるのであります。二十八年度につきましても、大体こういうような見方をいたしておるのでございますが、大蔵省とは、貿易とかあるいは特需関係の見方で多少かわつておる点がございます。
  152. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私も大蔵省と経済審議庁の間に、貿易その他の見通しについて若干意見の食い違いがあるように伺つておるわけでございます。従つてわれわれはこういういろいろな事態についての、一応の今まで承つた政府の御説明は、大体に予算の規模が大きくなつたので、それに準じて、どうもいろいろな項目にわたつて予規模が、たとえば国民所得に対してはあまり大きくない、こういう結論をつくるために、説明のいろいろな材料ができたのではないかという疑いを十分に持つわけであります。従いまして大蔵大臣は今までのお話の中で、補正予算は出さない、こういうふうに言つておられましたが、今のこういう状態で行きますならば、この大き過ぎる予算を使つて行きながら、しかも予算を膨脹せしめる原因が将来当然に起つて来ると思いますので、補正予算がさらに必至となつて、この予算の膨脹はいやが上にもふえるのではないかという心配をわれわれは持つわけであります。戦前は、申し上げるまでもなく予算は国民所得の一五%ぐらいでありましたが、今日はそれをはるかに上まわつておる。しかも政府はそれについてまだ再軍備はしておらない、軍隊は持たない、こう言つておる。かつては帝国の陸海軍があつてしかもなお予算の規模は国民所得などに対して今よりは若干下まわつた数字が出ておつたわけです。従いまして今日の国際情勢あるいは国内におけるいろいろな動きから見まして、私どもは政府の予算規模の無方針な膨脹に対しまして十分これについて注意を喚起したいと思います。なおこれは一般会計だけではないのであります。個人的に予算委員長からもいつか承つたことがありますが、純計予算、特別会計、政府関係機関予算、さらに地方財政を加えますならば、今日の政府関係の使う金額は、おそらく合せれば二兆数千億円にはなるだろうと思います。おそらくは国民所得の四割以上五割近くに上るのじやないかと思うわけでございます。従つて、予算の規模に対してさらにわれわれはこれについて十分の検討を加えなければいけないと考えるものでございますが、そのように実は予算そのものが、一般会計を中心にいたしまして非常に膨脹いたしておるわけでありまして、それが政府の計画に従つて運営されておるわけであります。他方一般の民間経済は、いわゆる政府方針であり自由経済的なやり方で、大体経営されておるわけであります。従つて、そういうやり方で行つてこの厖大な金を政府関係で使いながら、日本の経済は一体困難なくして――むろん困難は幾らかあると答えられるでしようが、これでやつて行けるかどうか。これについて私は大蔵大臣のお考えを承りたい。現に最近では、農産物価の安定について、政府はいろいろ考えておるということが言われます。飼料の問題でも、あるいは肥料の問題でも、あるいは鉄やその他の問題でも、いろいろ新たに統制を加えるとか、あるいは統制を強めるとか、あるいは統制について再考慮しなければならない段階になつて来ておるようにわれわれは思うのでございますが、そういう点に関してこの厖大予算を前にして、大蔵大臣はどういう御所見を持つておられるか。
  153. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 予算の金額がふえましたにつきましては、私はぜひいる金額を計上したので、これはむだな金を使つているとは思われないのです。同時に、金額がふえて参つたのは明らかな事実であります。しかしながらこれは、ただいまの経済事情諸般に現われております数字あたりから考えまして、やつて行けるもの、すなわち産業に統制を加えるとか、いろいろの制約を加えるとかいうことは避けて、運営のできるものと考えております。
  154. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 これはもういろいろな方面で物価統制その他が行われかけておりますから、問題にならない御意見だと思いますが、話を進めます。  次に、今度の予算で私どもの一番対蹄的に考えられることは、防衛支出金ないし保安庁の経費、あるいは軍人恩給費などと対照した文教関係の費用の削減であります。  政府のお話では、安全保障諸費をとりましたから、従つて軍事関係の費用は、われわれの言う再軍備費は減つたというお話でございますが、恩給を入れればむろんふえて参ります。どの程度かはつきりわかりませんが、この間主計局長から大まかのお話を委員会の席で承つて集計したところでは、六、七百億円はありそうな気がしますが、もしそうなれば、日本の軍事費は、そういうものを来年度全部使うという計算にいたしますれば、おそらく二十五、六パーセントにはなるだろうと思います。おそらくかつての満州事変以前の日本の財政における陸海軍経費の占めた位置と、それほど大した隔たりはないだろうと思います。これはどう考えましても実質的に軍事費は大きくふくれ上つております。他方文教施設費などを見ますと、非常な削減でございまして、私の計算では一五%ほど削減しているように思うのであります。私どもはここに実は今度の予算の大きな特徴があつてそしてわれわれはここに不健全さがある、かように考えます。特に文教施設費などは、政府は他方において道義高揚のために、義務教育費の全額国庫負担という名前の法律を施行しようとしているようでありますが、そういうものと対照して実際に文教のために必要な経費を一五%も削減し、そして二十八年度に実質的に再軍備関係に使おうとする費用は、実にすばらしい膨脹を示している。こういう予算の状態に対して、大蔵大臣の御所見はいかがですか。
  155. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 防衛費というふうな数字がふえて行くというのではなくして、二十七年度に使えなかつたという数字でありまして、二十八年度にふやしたというものではないと私は思つております。それから文教の方も、二十八年度において必要のないある経費が滅つておるので、文教費全体として平常の施設から見ましたらばふえておるほどで、一割五分減つておるとは私は考えておりません。
  156. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 文教施設費は、私の持つておる資料では二十八年度は大体六十六億円であります。二十七年度は七十八億円でありますから、十二億円ほど施設費は減つておるということでございまして、私は間違つておらぬと思います。
  157. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私どもの方の調べによりますと、五十億円くらいふえておるということになつております。
  158. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 それははつきり申し上げておきますが、私の言うのは文教施設費であります。この予算の説明の五ページの8でありますが、私の言うことは間違いないものと信じますが、数字の間違いでございますか。
  159. 河野一之

    河野(一)政府委員 私からお答えいたします。文教予算全体としては、義務教育国庫負担金九百二十億をとりましても、五十億円ほどふえております。この文教施設費と申しますのは、国立学校あるいは公立中、小学校等の経費でありまして、施設建築の経費の補助であります。これはここにもありますように、災害の関係が減つておるのでございます。つまり二十五年、二十六年は相当災害が、ございまして、ルース台風とか、十勝沖震災とか、いろいろな災害復旧のための補助を二年あるいは三年の計画でやつておりますが、幸いにして昨年は災害がございませんでしたために、十八億ほど災害関係で減つておるので、それを除けばかえつて文教費自体としては実質的にふえております。
  160. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 こういうことは議論しても何でありますが、文教上の問題としては、これは多くの教育関係諸君が言われますように、ただいまもちよつと触れられました施設費の増額という問題が一つの大きな柱であることは言うまでもないのでありまして、私どもはこの施設費の削減に対しては納得するわけには行きません。  なお大蔵大臣は、軍事予算を使用した結果、本年度なお残るものがあるかもしれないが、これは事務上の立ち遅れだからというようなことを言われ、これは川島委員からもお話がありましたが、何といつても国の経費は実際手一ぱいであり、足りなくて困つておるのであります。従つてたとい事務的と言われましようとも、二十七年度の当初に、むざむざと使えない金を組まれたのは――向井大蔵大臣はそのときは大蔵大臣でないのでありますから、これは個人としては問題ではないのですが、今の吉田内閣としては、やはり私は予算の組み方が疎漏であつたという点は否定できないと思います。私どもはこれは一点疑いがないと思うのであります。  その次に今度は予算と国民生活との関係についてお尋ねしたいと思います。これは川島君も触れられましたが、私は若干別の点から触れてみたいと思うのであります。その一つは税金関係のことであります。これは今までもいろいろ言われたのでありますが、減税と増税の問題でございます。国民全体から政府に払う税金が、二十八年度は七千八十億円にふえておるという予算が出ておるのであります。去年は六千八百五十三億円で、若干ふえておることだけは間違いありません。税法上減税したにかかわらず、なお税収入が増加されると見込んであるのだというような御説明ならまだ納得が行きますが、ただ国民のふところから出る税金は二十八年度においてふえるということを私は申し上げたい。しかもその内容を私どもが見ますと、たとえば所得税については若干の軽減になつております。しかし所得税の減九十一億のうちで、一般勤労大衆が負担しております源泉所得税の軽減はわずかに十二億円でありまして、他は要するに経営者とかそういう人たちの税金の軽減にほかなりません。しかも注目すべきは、他方において大衆負担の消費税が相当の増徴を見込まれておるということであります。酒の税金も税率は減つたようでありますが、やはり来年度は八十三億ばかり増収が見込まれております。砂糖も大ざつぱに見て百五十二億ほど増収が見込まれている。タバコの収益も百何十億見込まれております。酒にしろ、砂糖にしろ、タバコにしろ、こういうものはいわゆる間接税、消費税で、ございまして、この負担は金持と貧乏人とにかかわらず一様に降りかかつて来るものでございますので、こういう大衆の負担が特に二十八年度において増加されるということについては納得が行きません。これらの事実について大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  161. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 酒の税収入の増加ということは、社会政策上はあるいは問題があろうと存じます。安くなつた酒をよけいに飲むだろうという見積りでございまして、飲ますのがいいとか悪いということになりますと、大いに問題があることだと思いますが、これはまた別の問題であります。それから砂糖は大分安くなつたので、このくらいの税金を上げても、食生活上に非常な困難を与えるものではないというふうに考えた次第でございます。
  162. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 その理由ではないのでありまして、事実上大衆から税金をたくさんとる結果になる予算案が提出されておるということに、私は政府の注意を喚起したまででございます。  なおこれに関連してお伺いしたいのでございますが、租税政策の問題でございます。これはまだ具体的に出ておりませんが、巷間しきりに伝えられますのは、日本は今日直接税中心の租税制度を実行しておるがこれは行き過ぎである、ついては今後は消費税、間接税に相当ヴエートを置くように租税の根本政策をかえたらどうか、こういう意見をいろいろわれわれは耳にするわけであります。その理由としては、たとえばイギリスでは所得税中心は日本よりも強いかもしれぬ、しかしフランスやイタリアをごらんなさい、これは日本よりもはるかに消費税中心の税制をしいているではないか、こういうようなことを耳にするのでありますが、そういう租税の根本政策について政府の御意見があつたら伺いたい。
  163. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 これはいろいろ問題がございまするし、税金を取立てる上の便宜とか、あるいは物を使う人が、使うに対して払う税金というふうな考え方で、消費税の方をよけいにするのがいいというふうな意見があるようでありますが、ただいまのところは、そういうものを今までとかえた細工をいたそうという考えは持つておりません。
  164. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 これは今後当然に起つて来るようにわれわれは危惧いたしますので申し上げておきますが、フランスやイタリアは税制の点で、あるいは財政の点で日本の学ぶべき国ではないと信じます。その点ではイギリスの方がはるかにわれわれに教えるところが多いわけでありまして、特に所得税は累進率のかげんさえよければ、相当大衆も納得の行く税金でありますが、消費税については、申し上げるまでもなく以上のような問題があるわけでありますから、われわれの意見だけを申し上げておきます。  次はインフレーシヨンの危険の問題でありますが、この点についてはすでにいろいろ議論も出ておりましたから、私は一、二の点についてだけお尋ねしたいと思うのであります。今度政府が特別国債三百億、その他の公債類を二百二十億ばかり発行するのでありますが、この金額をちよつと見ましても、われわれの常識からいつて、これは大体一年間における日本の最近の社債の消化額と匹敵するということであります。従つてそこに新たに政府のこういうものが出されて行つた場合には、やはり消化の点に問題があるのではないか。大蔵大臣がきよう言明されたように、かりに三百億の特別減税国債は売り切つたといたしましても、今度は産業資金の方がどうなるかということになりますると、そこに私は大きな問題があると思います。ことに今度の政府の産業資金関係のいろいろな案によれば、政府機関とか地方債などは、相当予算がふえているようでありますが、輸出入銀行あるいは開発銀行関係への資金は、大分減つているようであります。これは申し上げるまでもない。従つて産業の規模を拡大するとか、とにかくここで日本経済の基礎を築かなければならないとされている政府の建前からいいまして予算のこの点に大きな問題があり、結局金がないということになれば、銀行を通じ、あるいは日本銀行などが出て来て、名前はいずれにしろこういう救済融資、滞貨融資という形のものが行われ、そこからも通貨の膨脹を来すおそれがあるのではなかろうか、こう思うわけでありますが、この点についてはどうなりますか。
  165. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 産業資金の表に現われました数字が減つておるのは事実でございます。これはやはり金融機関に余裕のできるような情勢に導いて行つて、かりに産業資金の不足がありますれば、それに充当するようにいたしたいと思つておりますが、同時に金融機関に対しても、貸付の対象については生産的な産業に重点を置いて、不急のものの融資は差控えてもらうというように指導して行きたいと存じます。そうしますとかりに五百何十億の起債がありましても、御心配のような悪い結果は現われまいと考えます。
  166. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この予算で今年度ただちに大きなインフレーシヨンが起るとは、実はわれわれも考えてはおりません。ただ防衛費の漸増というような根本的の政策がとられておる際に、しかも二十八年度という独立後最切の予算で、そういうことに金がたくさんいつた結果、結局公債を発行するという挙に出られた、ここに将来のインフレーシヨンに対する危惧を抱くわけであります。これに対して大蔵大臣は公債は今年度限りでやめるというお話でございますが、どういう理由によつてやめることができるのか。こういう政策をとり、こうなるから公債発行は今年度限りでやめるというその根拠をお示し願いたい。
  167. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 公債を発行しないためには、金を使わずにおくよりしようがないのであります。予算の編成にあたつて公債を発行しないでいい限度に圧縮しておる、こう考えております。
  168. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 今年度はよう押え切れなかつたけれども、来年度は大いに予算の膨脹を押える自信がある、こういう御意見ですか。  話を少しかえて、今度私は輸出関係のことについて、通産省関係のことで一、二お尋ねしたいと思います。一つの問題は、今ここで金利の引下げ問題が論ぜられましたが、通産大臣は、輸出産業を振興させるために、輸出産業について金利を特に考慮するとか、引下げるとか、こういうような方針を持つておられるように、われわれは新聞などを通じて拝聴しておるわけでございますが、そういうお考えであるか。そういうお考えのもとに大蔵大臣ともし御折衝になつたとすれば、どういうような成行きになつているか、この点をひとつお願いいたします。
  169. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えいたします。金利引下げは非常に望ましいことではありますが、実は、一番今の輸出振興に必要なことは、過日来よく申し上げました通り、経済外交を強化すること、その次には日本の輸出品が安くてよい品物、言いかえますれば国際競争力をつけるということであります。それで国際競争力をつけるために、例を私石炭にとつて少し研究したのであります。石炭で金利を引下げてどれぐらいなことがあるかということで、この間研究してみました。現在の金利をかりに六分に引下げたといたしまして、一トン当りどれぐらい金利で影響するかということを見ましたところが、大体七円ぐらいしか影響しません。ところが縦坑をやりますとどれぐらい影響するかというと、三割ぐらい影響いたします。一縦坑の開鑿によつての影響は三割の影響があります。従いまして金利の低いことはもちろん大きな影響がありますが、しかしトン七円ですから、影響といいましても縦坑開鑿に比べての影響は非常に少いのでありまするから、まず今のところは、一般的に金利引下げは非常に望ましいのでありまするけれども、しかし現在金利の引下げということよりは、そういつたいわゆる有利な品物を安く出すという、産業の合理化という点に最も重きを置きまして、それに資金の潤沢な供給をなすこと、それに財政資金等を出すこと、それから商社が非常に弱つておることは伊藤さんがよく御承知通りでありまして、従つて商社の強化、これに力を入れることによつて貿易の伸張をはかる。経済外交の強化、国際競争力の培養、商社の強化、この三点に最も重きを置いてやつておりますが、もちろん金利の引下げについても協議はいたしております。特に商社につきましては、相当つてもおりますので、金利の引下げ方について相談はいたしておりまして、すでに大体二銭七厘の金利を一銭六厘くらいに引下げたものもございますが、それはその商社が相当整理案を立て、みずから犠牲を払つてつているものについてやつておるのであります。まだ一般的にそういうところまでは運んでおりませんが、金利の引下げは、世界的に見て日本の金利が非常に高いのでありますから、今後とも話は進めたいと思つております。しかし意外にこの金利というものは大きな影響がないということを実は発見したような次第です。
  170. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 通産大臣にもう一つお尋ねいたします。いわゆる新特需についての政府の見通しの問題でございます。この間事務当局からも承つたのでありますが、たとえば兵器をつくる会社などにつきましても、弾丸をつくつている会社とか、いろいろな会社があるようであります。われわれは兵器生産には反対するものでございますが、これは輸出用というような意味でやつているようであります。将来注文が継続的に、しかも一定の数量、あるいは注文額が予定されてどんどん出て来るかということについては、おそらく事業界では非常な不安を持つていることだろうと思います。現在われわれは、もちろん日本の産業経済の中において、そういうものがそれほど大きな位置を占めるものは思つてはおりませんが、飛行機などについても、かなり大きな会社などもそれに目をつけかけたような話も承りますので、政府は、そういう新しく動きつつある産業界の将来について、アメリカとの間に、この新特需などについてその継続性、その将来の注文規模とでも申しますか、そういうようなことについて連絡と申しますか、話合いと申しますか、そういうことがあるのかないのか、そういうことについてどういう実情にあるかということを、結論的なところでけつこうですから承りたい。
  171. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 JPAという注文の機関がありまして、通産省はそれとは絶えず連絡をとつております。私どもは、日本には兵隊はおらぬけれども、武器生産といつておりますが、その九割九分は向うの注文であります。私どもも輸出品の一つとして取扱つておりますが、向うの注文は大よそ見当がついております。そうして相当長い間注文があるものと大よその見通しもついております。従いまして通産省の方で一応指導をいたしておりましてよく世間にいわれるような出血受注というようなことはなるべく避けさせておるのであります。これは伊藤さんに念のためにちよつと申し上げておきますが、よく出血受注をするといつておりますが、出血受注をしておるかどうかということにつきましては、私どもはわかりません。この間私どもが大阪に行つたときには、反対にこういうことを言つた人がある。一割以上もうけるということを禁じておりますが、もつともうけさせてもよいではないかということを、商工会議所で立つて話をした人があるので、そういう点からみますと、もうけておるような実情があるのではないかというように思われた次第もありましてはたして出血受注をしておるかどうかわかりません。  なお下請をいじめるというような話もありますので、元請に対して注文をとるときに、下請にそういうことをしてはいかぬという一札を入れさせた上で、初めて元請をさすことにいたしておりまして、そういつたいじめるような処置は、一切禁じておるのであります。従つて、そういつた面からの弊害は防ぐ、ことにいわゆる中小のそういつた下請業者に対する出血のことは、・一切させないことにいたしております。今後のことにつきましては、私どもは、この議会に武器等製造法案を提案しておりまして、そういう弊害がないように一切処理して参りたい。何条でありましたか、受注契約の届出をさすというような箇条があの中に入つておりまして、それによりますと、そういうことをいたさせないようになつております。さしあたりここ数年間は、そういう数量は減るものではないと私どもは見込んでおります。従つて今後このものを私どもとしては、当分の間一輸出産業の一つとして相当重要に取扱つて参りたいと考えておりますので、武器等製造法がこの議会の協賛を得まするならば、これを適宜取扱いまして、なるべくお互いの無用な競争、あるいは事業の濫立等を防いで――あれは同じような業種がたくさんあるのです。そういつたことの競争等も避けさせまして、なるべく輸出産業としてりつぱに育成さして参りたい、かようなぐあいに考えている次第でございます。
  172. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 何しろ日本は御存じのように行政協定で、間接調達でなくて、直接調達されておるので、政府がともすればつんぼさじきに置かれるおそれがあるのではないかと心配するものでございまして、そういう点から、特に日本の経済の将来の混乱とか、そういうようなことのないような意味合いにおいて、今御質問したわけであります。  今度は、私は文部大臣に義務教育費の国庫負担のことでお尋ねいたしたいと思うのであります。過日の本会議の施政方針の演説におきまして総理は道義高揚ということを非常に強調されまして「道義高揚は、究極において教育の作振にまつほかはありません。政府が今回義務教育費の全額国庫負担を決意し、教職員を国家公務員とするの措置をとるは、このゆえにほかならないのであります。」こういう演説をされたわけでありますが、岡野文部大臣はこれは間違いがないと思われますか。
  173. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。道義高揚をするためには、教育を刷新しなければならぬということはしばしば申しております。戦後道義が頽廃したということは皆さんもよく御承知通りでございます。これはひとり日本ばかりでなく、世界各国ともそういう情勢であります。そこで道義高揚することについて、特に教育行政を重点的に取上げましたのは、これは将来の日本の国をよくするという意味であります。昔から衣食足りて礼節を知ると申しますが、道義高揚を現在と将来にわけますならば、現在においては、民生の安定をすることと、現在の教育をする。また将来につきましては、いわゆる将来の経済の繁栄をもたらすということと、教育して行くこと、二つございます。われわれ文教政策の方に関係しておる者から申しますれば、まず学校教育社会教育と、両方から道義高揚をして行こう、こういう考え方であります。そしてその学校教育の中でも一番根幹をなすのが、将来の日本を背負つて立つところの子供にりつぱな倫理観を与え、そしてりつぱな人になつてつてもらいたい、こういうことで義務教育費というものが一つ取上げられたわけであります。そして義務教育を全額国庫負担にするということにつきましては、これはわれわれといたしまして教員に身分の安定を与えて、安心して義務教育の職務に従事してもらいたいということと、また機会均等を与えますために、山間僻地におきましても、やはり国家的水準を保たしてやりたい、こういうことから考えた次第でございます。
  174. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この総理の意見によりますと、義務教育費の全額国庫負担とは書いてありますが、むろんこの内容は、申し上げるまでもなく、教員の給与を国家で全額負担するという建前になつているようであります。そこで教職員を国家公務員にすると、どういうわけで日本道義高揚されるのですか、これで高揚されるというりくつが私にはどうもわかりません。
  175. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。とにかく義務教育というものを完全にやつて行きますためには、まず根幹としましては、やはり教職員の生活の安定ということが求められなければならぬと思います。そこでまず第一に、教職員の給与を国家が保障してやる。今でもやはり国家が保障しているはずでございます。これは地方に対する平衡交付金として交付しておりますが、しかし貧弱な県に至りますと、たとい平衡交付金で渡しましても、ほかに入り用があつたり、税収が少かつたり、また災害が起きたりいたしますと、自然にその教育費をさいてその方に向ける。これでは教員が十分なる待遇を受けられないということになりますから、その意味におきまして、平衡交付金からはずして、国家が直接ひもつきで教職員の給与費を出す、こういうことでございますから、これは結局職員の身分の安定をはかつて、安心して義務教育ができる、こういうことになるわけであります
  176. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 今のお話だとしますと、教員はこれによつて今日事実上もらつている給与は下らず、それから教員の人数を制するとか、こういう問題は起きないものだというふうに考えてよろしゆうございますか。
  177. 岡野清豪

    岡野国務大臣 その通りでございます。
  178. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 私はこの論理には反対でございます。こういう重大な、究極において、と総理も言つておりますが、この教育上の根本的な一つの制度の改革でございますが、これについては、私どもの承知しておる範囲でも、教育委員会法、国家公務員法、教育公務員特例法、平衡交付金法等々非常にたくさんのいろいろな法律の改革、変更が必要でありますし、究極的にいえば、地方税制の根本的改革が必要だと思いますが、こういう各方面のことについて政府は万全の策を講じたのですか。
  179. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。来年度四月一日から実行いたしますにつきましては、それにできるように万全の策を講じます。また一日までに実行できないことは、二十八年度中に早急にこれをやる、こういうふうな方策を講じてやつておる次第でございます。
  180. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 当面の経過的措置のことは、おそらく当分の間、それにもかかわらず、給与の負担の責任は都道府県で負う、こういう建前だと私は理解しますが、それにつきましては、自治庁と文部省との間には今日見解が一致しておりますか、そうしてどういうふうにきまりましたか。
  181. 岡野清豪

    岡野国務大臣 自治庁と完全な了解がつきまして、両省あわせてその方針を実行いたしたい、こう考えております。
  182. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 ただいま給与や人員のことについてお尋ねしたのでありますが、今度は人事権の問題であります。これは今度の政府の政策によれば、大体文部省が人事の最高の最後の締めくくりをするようでありまして、地方においては地方教育委員会と市町村長の協議ということになつているようでありますが、おそらくこれには当分の間は都道府県あるいは都道府県の教育委員会あたりも関係するのじやないかと思うのです。こういう複雑きわまる人事についての管理のやり方で、教員の身分が安定するとか、あるいはまた教員の地位が確立されるとはわれわれは考えることができませんが、これについてはどうですか。
  183. 岡野清豪

    岡野国務大臣 御承知通りに、今各市町村に教育委員会を置いておりますものですから、これを極端に法律だけでやりますと、ある村だけでその教員を動かす、そしてその隣村には何らの人事交流もできないというような、非常なきゆうくつなものになつておりますから、それをできるだけ人事交流もよくでき、同時に御承知でもございましようが、その財政の規模に応じまして、富裕県におきましては相当な待遇をして、退職金を与え、また一時金を与えるというようなことになつておりますが、しかし貧弱県では非常に悪い状態のものもあります。そこでわれわれといたしましては、国家公務員という全国一律の水準をとにかく与えまして、そうしてむしろ身分の安定、それからまた待遇の向上ということをはかつておる次第でございます。教育委員会は都道府県にもございますが、市町村にもございますので、人を動かしますには、たとい現行のまま行きましても、いろいろ複雑箱交渉し合わなければならぬことになつておりますから、今度全額国庫負担にしましたからといつても、そう複雑なことにはならず、実情は今と同じことになると思います。
  184. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この問題は申し上げるまでもなく、われわれ野党はもちろんのこと、各種の地方団体、それからこれを適用される教職員の組合あるいは世間の輿論はあげて反対しておるわけでありまして、私どももこれについては地方行政委員会または本予算委員会におきましてもあとから詳細に追究するつもりでおりますから、私はこれ以上あまり長くこの問題にかかわりたくないのであります。  最後にお伺いいたしたいのは、地方財政との関係であります。まず第一にお伺いいたしたいのは、去年は千四百五十億円ほど平衡交付金が出たようでございますが、このうちで大体教職員の給与に充てられると推定される、あるいははつきりわかつておればなおけつこうでございますが、金額はどのくらいのものでございましようか、自治庁長官にお伺いします。
  185. 本多市郎

    ○本多国務大臣 せつかくのお尋ねでございますが、あいにく昨年の基準財政需要額の計算は、今手元に資料がありませんし、記憶いたしておりませんが、本年は千七百二十億で、その計算の根拠になつている基準財政需要額は、給与費で九百二十億だと承知しております。
  186. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 その点は大体わかつておりますが、われわれが心配いたしますのは、政府は職員の給与費として九百二十億しか計上しておりません。これは文部省の最初の原案から見ると、相当削減されたものであることは明らかでありますし、この削減の基準はどういう理由でここへ持つて来たというようなことも、われわれには納得いたしかねるのでありますが、いずれにいたしましても、その結果といたしまして本年度の地方に対する平衡交付金は八百億円となつており、ほかに起債が約百億ほど見積つておるようでありますし、この結果は地方財政を大きく圧迫することだけは事実だと思うのでございますが、この地方財政の窮乏をさらにはげしくするかどうか、それについてどういう対策を持つておるかということについてお尋ねします。
  187. 本多市郎

    ○本多国務大臣 実は平衡交付金から九百二十億の義務教育費全額国庫負担という項目に分離いたしたのでありますが、この配分をどういうふうに考えて行くかという問題でございます。この配分が結局文部省から交付される義務教育費の負担金と、自治庁から交付いたします平衡交付金とを合計いたしますと、平衡交付金一本で配付した金額に該当するということが目標に行われることと存じておりますので、特にこの制度のために地方は財政的に圧迫を受けるようには考えないのでございます。もつともわずかばかりの教材費を別に交付するということに文部省でお考えのようでございますが、その教材費等の配分によりまして、いささかは違う点が生じて来るかと存じておりますけれども、ただいまのところ私の方といたしましては、大体において二本建で参りますけれども、府県の財政に入ります金額は平衡交付金制度一本でやつたと同じぐあいにやはり入つて行く。この制度のために現在と特にかわつたような財政的圧迫を生ずるようなことはないものと考えております。たとえて申しますと、東京、大阪の、ごとき、もし昨年と同じ財政状況をたどるといたしますと、平衡交付金の行かないところがあります。この行かないところには、義務教育費も豊富にならない、暫定処置としてはならないと思いますけれども、そうなれば少しもかわらない。またその他一部義務教育費の交付があるというところへ対しましても、その一部と今回自治庁から交付いたしますところの平衡交付金とを合算すれば同じことになりますから、多少の余剰財源のあつた団体のその余剰財源状態にも変更はあまり来さないものであると考えております。
  188. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 この問題はあとに譲ります。  最後にひとつ、いわゆるストライキに対する禁圧法の関係だけ一言お尋ねをしておきたいと思います。去年の秋に電産や炭労の大ストライキがありまして、それによつて日本の経済はいろいろ大きな影響を受けたというようなことが中心になつてこの問題が起きておるようでありますが、私どもの見るところでは、この争議に対する日経連を中心とする経営者諸君の態度は最も悪質であつたと思います。初めから争議に対して、電産なら電産という一本の組合で交渉するという組合本来の建前を突きくずす、できるなら組合を分裂さしてしまう。炭労においても同じような努力を明瞭にしたのでございまして、しかもそれは中労委の中山会長からの最初のあつせん案におきましても、賃金交渉に入る前に、まず統一交渉かどうかということで組合の分裂を策したことは、天下公知の事実でございますが、われわれからいえば、こうした経営者の政治的な意図こそ、今後むしろ何とかして防ぐ必要があるとわれわれは考えるものでございまして従つて今の戸塚労相の御構想のストライキに対する問題にあたつては、こういう経営者の政治的なストライキ対策とでもいいますか、そういう政治的な意図についてどういうふうにお考えになり、あるいはストライキについて問題を考える前に、この点に大きな重点を置いたお考えはないかということをお伺いいたします。
  189. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 お答え申し上げます、昨冬の争議について、日経連その他経営者の方に不純な考えがあつたというお話でございますが、私は別にどちらをどうこうというふうに申し上げることはいたしません。昨年の争議については、両者ともかなり強硬な主張であつたことは承知いたしておりますけれども、私どもの見るところでは、両者がそれぞれ自主的に話合いを進める、あるいは中労委のような機関によつてこれを調停する、あるいはあつせんをするということで進んでもらうことを望んでおつたのでありますが、その間にどちらがどうということは私は考えません。
  190. 伊藤好道

    伊藤(好)委員 時間が来たようですから、私の爾余の質問は次の機会に譲ります。それから総理についてはあすの委員会で御質問するごとにしてきようは終ります。
  191. 太田正孝

    太田委員長 福田赳夫君から資料の要求がありました。ソ連の極東の軍事情勢を知るに足る資料、中共軍の軍事情勢を知るに足る資料、米軍の極東における軍事情勢、特に日本及び日本周辺における情勢、保安隊の装備の現況、保安隊の編成一覧表、保安隊付属官衙、学校、研究所等一覧表、保安隊の主要配備を知るに足る資料、保安隊の主要施設、演習場、射撃場等二十八年度における装備改善計画、右以外の二十八年度における重要計画、保安隊は陸上の分、海上の分に区分する、こういう要求がありました。  今日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より開会いたします。散会いたします。     午後五時二分散会