運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-06 第15回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月六日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 中曽根康弘君    理事 川島 金次君 理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    加藤常太郎君       北 れい吉君    重政 誠之君       塚原 俊郎君    永野  護君       灘尾 弘吉君    貫井 清憲君       原 健三郎君    南  好雄君       森 幸太郎君    山崎  巖君       井出一太郎君    北村徳太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    古井 喜實君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       石井 繁丸君    河野  密君       西村 榮一君    松岡 駒吉君       伊藤 好道君    稻村 順三君       八百板 正君    和田 博雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         保安政務次官  岡田 五郎君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (為替局長)  東条 猛猪君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月五日  委員平野力三君辞任につき、その補欠として中  村高一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑に入ります。井出一太郎君。
  3. 井出一太郎

    井出委員 過日の本会議において吉田総理大臣は、思うに独立日本前途は容易でないと述べられましたし、また向井大蔵大臣は、わが国経済前途は必ずしも楽観を許さないと申しておられます。この点はわれわれもまつたく同感でございます。しかしながら今ここに提出された予算を拝見いたしますと、必ずしも以上の認識の上に立つておられない、安易な計数の羅列を示されたという感を覚えるのでございます。予算というものは、時の政府の持つ政策を具体的に顕現したものであるといたしますならば、ある一定の性格を持つて貫かれておらなければなりません。少くとも吉田的な背骨をそのうちにひそめており、あるいは向井流の体臭が感ぜられる、こういうものであつてしかるべきでありますが、今回は事務官僚計数はあつても、雄渾なる経綸がうかがわれないのがまことに遺憾であります。予算の細目にわたつて論議をいたしまする前に、その基盤をなすべき日本をめぐる内外の情勢に関しまして、若干の点をお尋ね申し上げたいと存じます。  去る一月の二十日をもつてホワイト・ハウスの主がかわりました。二十年ぶりの共和党政権は、アメリカ国民変化を欲する要求から生まれたものであります以上、アイゼンハウアー氏はその施策の上でこれにこたえんとするのは当然でありましよう。コンテインメントからロール・バツクへの転換は、選挙裡における公約でもありました。もちろんアメリカ外交政策が超党派の上に立てられ、長い伝統を持つて来たのでありますから、さほど大きな変化はあるまい、こういうふうな予想を持つて当初は見られておりました。しかるところすでに大統領就任演説があり、ダレス氏の外交第一声を聞き、さらに大統領一般教書が発表せられました今日、その輪郭は漸次判明いたして参りました。民主党時代外交とさほど大きな変化はあるまい、こういう感覚でおりましたところ、むしろ打つてかわつて大胆なきめ手が逐次打たれつつあるもののようでございます。われわれに感じとられますことは、今や冷戦の舞台がアジアに移つて来たということでございます。そのイニシアチーヴは米ソいずれが握るかはしばらく別といたしまして、ヨーロツパにおいては、むしろこのアメリカ打出し方に対していろいろな批判が起り、あるいはそつぽを向いているというような状況も見えるのであります。  そこでまず伺いたいことは、米国極東政策にいかなる変化が予想されるか、なかんずく日本の運命にどのような影響をもたらすか、こういつたひとつ総括的な問題につきまして、まず総理の御見解を承りたいのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。新大統領、またダレス国務長官が、就任以来新聞あるいは声明演説において抱負を述べておられますが、さて日本にどういうふうな影響を及ぼすかということは、今日まで私も承知いたしません。ただ想像いたすだけでありますが、思うに新大統領が当選早々朝鮮に来られて、そしてアメリカに帰る途上においても、軍艦において各直属長官といいますか、閣僚になる人といろいろ相談をしたということは、よほど愼重考えておられると思います。それからまた共和党としても二十年の間の空白があつて、そして新しく政局に立つたのでありますから、かつてが違うといいますか、民主党のごとく長く政権を担当して、そして事実の経過等について詳細知つているのと違つて、ただ外部からしていろいろ批判をして来た共和党としては、実際にあたつてどういう政治を行うかということは、これはよほど愼重にすべきものであり、事実また共和党政府なつたからといつて、はなはだ要領を得ない政策もとれもしますまいし、とりもいたさないのでありましようから、はつきりした線で政策を出して行くという考え方に立つのは、当然であろうと思います。そこで愼重考えるということも、また考えられるのであります。それからダレス氏も今ヨーロツパに行かれ、場合によつたら東洋方面まで一まわりしてというような考え方でおられるようであります。それから三月には国連会議でありますか、NATOの会議でありますか、とにかくヨーロツパ政治家アメリカ政治家とが集まつて協議するというプログラムになつているようであります。かたがた新内閣としては政策を立てるにあたつて、相当従来の民主党立場とは違つた、はつきりした線を出したいという考えをもつて愼重に考慮しているものと思います。新大統領朝鮮から帰られた直後において、朝鮮問題はなるべく迅速に解決したいが、しかしながらこれに対する万能薬というものがないのであるということを言つておられるのであります。とにかくよほど愼重考えておられるものと想像して誤りがないと思います。  さてその結果日本にどういうふうな影響を及ぼすか、日本立場としてはつきり申せば、何か新しい要求がされるのではないかということを、しばしば質問を受けますが、これは将来になつてみなければわかりませんが、今日私として考え、あるいはダレス氏その他の政治家に対する印象から考えてみて、そう無理なことは申し出ないと思います。また申し出ないことを希望いたします。たとえば日本に再軍備をしいるとか、あるいはまた朝鮮に兵隊を持つて行けというような、そんな日本国交がこれを禁じ、もしくは輿論がこれを受入れられないような難題を持ち出すということは、私は考えない。何となれば、独立日本講和条約に対して非常に尽力してくれたのがダレス氏であり、またドツジ氏のごときは、日本均衡予算を立てるためにたいへんな努力をしてくれた人であります。この人たち日本経済を破るような、あるいはまた日本の民心にそむくような、あるいは独立後の日本を動揺せしむるような問題を提供しようとは、私は考えないのであります。でありますから、かりに要請ありとしても、こうしてもらいたい、ああしてもらいたいという新しい希望があつてみても、それは日本が受入れられないような困難な問題を提出するということはないのみならず、むしろ日本経済が生き立つように、日本独立が完成するように、そして極東における事態が平穏になるようにという考えを持ち、もし提案がありとするなら、そういう考えから出るので、日本に対して無理なことをしいるということは私は夢想もいたしておりません。一応お答えいたします。
  5. 井出一太郎

    井出委員 ただいま非常に詳細に御答弁がございましたが、総理のお考えは、さきの施政方針演説にもございましたように、アメリカとの結びつきをますます強化して行かれよう、この立場に立つて、きわめて善意に物を見ていらつしやるようでございます。私はアメリカ共和党伝統的政策といたしまして、ギヴ・アンド・テークとでも申しますか、必ず援助の代償を求めようとするような考えが強いのではないか、こういうような観点から、おそらくはヨーロツパに対しては西欧統合をもつと促進せよ、こう言うでありましようし、また日本に対してはあるいは共同防衛態勢の強化、こういうふうな線で臨んで来るのではなかろうかと思うのであります。ただいま伺いますれば、アメリカの新政権の中には、ダレスさんあるいはドツジさん、非常によく日本を知つておる人々が入つておるのでさような変化はなかろう、こういうお説でございますけれども、私はどうも共和党性格からいたしまして、何か日本に対して手を打つて来るんじやないか。今申し上げましたような、アジア共同防衛態勢、こういうふうなものがそれは内容はあるいは総理のおそれる再軍備というふうな線はしばらく避けるとしましても、何らかの手を打つて来るのではないかと思うのでございますが、その点はいかがでございましようか。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 今申した通り、私は今日まだ新政府内外に対する方針等について、漠然たる演説はありましたけれども、それによつてただちにお話のような日本に対してある要請をする日本が受入れることのできないようなものは来ないでありましようが、ある要請をするというかりにありとして、その要請がどういうものであるか。要請をするかしないか、これも私はまだはつきり思つておりません。ただいま申すように、ダレス長官世界一週して後に具体的の案が定まるのではないか。それからまた結局その政策はやはり予算において現われるということになるでありましようが、この予算は七月でなければきまらないものであります。しばらくの間いかなる態度に出るか、いかなる政策に出るかということは、これはアメリカ国民もけだし予知しておらない。想像以上に出ないであろうと私は思います。  そこで今日アメリカの新政府がこういう態度に出るであろうとか、ああいう態度に出るであろうとか想像して、かれこれ議論するということは差控えたいと思いますが、しかし大体論として、私は、今申した通り日本が受入れることのできないような無理な注文をして、独立後の日本を傷つけるようなことは万々ないと思います。
  7. 井出一太郎

    井出委員 総理のお考え方は、アメリカ政権は非常に愼重態度で臨んでおるから、こちら側もまずそれに順応して形勢を観望しよう、こういうふうに受取れるのでありますが、私どもの耳目を驚かしておる、次々と打つて出て参るいろいろな手がすでに判明しております。たとえば台湾中立化の解除でありますとか、あるいはヤルタ秘密協定直接ヤルタ協定を目ざしてはいないようでありますが、ヤルタ秘密協定破棄であります。こういうふうなことがすでに外電によつて伝えられておる。これらはやはり私どもは軽々に看過するわけには参らぬと思うのでございます。  そこで伺いたいのは、今まで第七艦隊というものが、いわば台湾中立化のためにあの辺の海上を遊弋しておる。これを撤退すべき命令ラドフオード司令長官に命じたと伝えられるのでございます。そういたしますると、次に考えられる日程は何か。そこから国府の大陸逆上陸、こういつた反抗作戦というふうなものも予想されるのではないかと思いますし、あるいはまたこの中立化政策が、逆に今度は中共に対する海上封鎖というような線に発展して行くのではないかというようなことも懸念せられます。もしさような場合には、海上封鎖ということがあつたならば、日本東南アジア防衛というようなものにも相当な影響を及ぼすでありましようし、また今現に開始せられようとしている引揚げの問題、こういうものにも影響なしとしないと思うのでございますが、この辺の見通しを伺いたいのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、この中立問題、第七艦隊引揚げということが、どういう趣意命令をせられたのか、実は私もよく存じません。まだ数日前のことでありまして、何のために中立問題、第七艦隊引揚げをさせたのか、その趣意至つては私といたしましては承知いたしておりません。従つてこの問題を中心として将来どうなるか見通しを立てろとおつしやつても、中立問題、いわゆる第七艦隊引揚げ趣意はどこにあるかということをまだ了承しておりませんから、承知した上でお答えいたします。
  9. 井出一太郎

    井出委員 この問題に対して岡崎外務大臣外務委員会の御答弁の中で、あらかじめこういつた線が日本側に打合せがあつたような御発言をされておりますが、そういう事実はございませんか。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはこの間申した通り、事前に通告があつたのであります。それには理由が付してあると申しております。しかしそれは簡単に申せば新聞に出ておるような、つまり中共側中立を守つてやるような結果になるから引揚げるという、あとから見れば演説の中にあると同じ理由であります。おそらく総理の言われたのは、それ以外の大きな政治的意味を言われたのであろうと思います。
  11. 井出一太郎

    井出委員 この問題はもう少し発展の推移を見なければならぬといたしまして、先ほどちよつと私の触れましたヤルタ協定破棄という問題も、この際明らかに願つておきたいと思うのであります。これは一昨年の講和会議の席上において、私も傍聴席の片すみから、総理が熱をこめて千島あるいは南樺太というものは、明治初年の日露両国の間における交換条約によつて平和裡日本主権が確認されたのだ、これは歴史的、民族的にわが領土である、こういう主張をされるのをじつと伺つてつた記憶を呼び起すのであります。この大統領声明がただちにヤルタ協定の一方的破棄ということになつて日本主権が回復されると簡単には私は考えません。けれどもこのことによつてソ連米国との間に新しいトラブルが起るおそれはないか、あるいは外交慣例上こういう一方的宣言でもつて一体有効になるのかどうか。あるいはさらに遠く、日本のこの歴史的、民族的領土というものが、今の形では宙に浮いてしまうかつこうでありますが、将来一体どういうことになるか、この辺をひとつ総理の口から伺つておきたいと思います。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。ヤルタ協定そのもの経緯は、私はここで論じませんが、しかし一体大西洋憲章によつて見ましても、戦争を理由としてその領土を侵すということ、あるいは領土の併合をはかるということはしないという原則を立てた。その原則ヤルタ協定はまさに反するもので、蹂躙をするものであつて、これはサンフランシスコにおいても、ダレス氏が演説の中に明らかに指摘いたしております。アメリカとしては、ヤルタ協定破棄といいますか、ヤルタ協定によつて千島等をソビエトに割譲せしめたということは、それが不正である、あるいは大西洋憲章に反するものであるということは、すでにしばしば主張しておるところであるにもかかわらず、事実上今なおこれを占領して返還しないということはよろしくないという議論は、今日に始まつたのではなくて、あのサンフランシスコ講和会議以来この問題は提起されておるのであります。ゆえにこの際ヤルタ協定破棄ということを声明したところが、これによつて米ソの間に新しい問題を引起すということは考えられない、すでにもう問題は引起されてあるのでありますから、このために特にここに新しい交渉問題あるいは米ソ国交影響を及ぼすような新事態が生ずるとは私は考えられません。
  13. 井出一太郎

    井出委員 もう一つわれわれの非常に憂慮にたえない問題は、朝鮮の戦局がどうなるかという問題でございます。去る一月五日に李承晩大統領は、クラーク国連軍司令官の招きに応じて来朝されました。このことは日本政府にはあらかじめ何らの通告がなかつたもののように聞くのでありますが、日本独立国家のはずでございます。その独立国日本首府東京のまん中で、外国軍隊司令官が他の国の元首と会見をするのに、日本側に何らのさたがなかつたとするならば、これはまことに私は奇怪なことだと思うのであります。この点は、一体日本はいわば招かれざる客のような立場であつたのか、これを伺いますと同時に、翌一月六日に総理大臣李承晩大統領を訪問されております。これは訪問されることは私は当然だと思う。そこで、李承晩という人はかねて日本ぎらいでもつてつておる人でございますけれども、このときの会談はすこぶる友好裡に進められた、こう伝えられておるわけであります。総理李承晩氏との会談において、日韓両国の将来が希望的に打開をされるというお見通しを持たれたかどうか。これはひとつあたりさわりのない範囲で、もしもおさしつかえがあるということならば別にまた考えますが、この席でその会見てんまつをひとつお知らせをいただきたいと思います。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。李承晩大統領が来られたのは、これは公式ではなくてクラーク大将ゲストとして来られたのであります。ちよつと日にちは覚えておりませんが、到着せられる数日前と思いますが、あるいは昨年の暮れであつたか、クラーク大将からそういう話がありまして、自分ゲストとして来たいという意向であるから、喜んで自分のところの客とするつもりである。これは遊びに来たいという程度の話であつて、何のための政治的意思をもつて来られるか、いかなるモテイーフで来られるかということは全然知らない、しかし、来たらば自分のところの晩餐等に来てくれるかと言うから、それは喜んでお伺いする、晩餐会等には出席しよう、しかし、それとともに私の方もお招きしようという社交的の話であつて、全然政治意味ではなかつたものであります。さらに経緯を申しますと、これは岡崎外務大臣がよく知つておられることと思いますが、クラーク大将がいつか日本にも遊びに来ないかと言つたことがあるので、それで来る気になつたのではないかと思うというような、漠然たる話で、それが政治的交渉のために、また外交交渉のために来たということは初めから毛頭言つておられないのであります。自分ゲストとして遊びに来る、ついては晩餐に来てくれるか、喜んで行こう、また自分もお招きしよう、こういうお話です。また李承晩大統領マツカーサー元帥がおられたとき、はつきりしませんが、三、四年前に日本に見えたことがあるのであります。そうして私も李承晩大統領に会い、そのときは晩餐とか何とかいうようなことはなかつたのですが、李承晩大統領名前であつたか、朝鮮代表部名前であつたか、とにかくお茶に呼ばれて行つたように思います。会つてはおります。知らない仲ではないのであります。そこで、見えるということを承知して、見えた場合には社交的の意味合いで私は招かれるというような約束ができたわけであります。しかしながらちようど秩父宮様の御逝去があつたものでありますから、私は晩餐は中止しました。またクラーク大将のところに出席することも遠慮しました。そこで、翌日でありましたか、大統領が立つから自分のところのお茶に来てくれないかというクラーク大将希望であつたものですから、喜んで行こうといつてお茶外務大臣と一緒に行つたのでありますが、そのときの席においては別段交渉問題はない。しかし、これは大統領が言われるのでありますが、日韓関係は古い関係で、兄弟のような切つても切れない関係にあるのであるから、善隣の関係を早く打立てたい。自分日本に対して言葉は忘れましたが、今お話のようにあまりいい感情を持つておらないといわれておるけれども、これは新聞が申すので、自分自身はそうではない。過去はともかく、将来は仲よくして行きたいという希望を述べられて、私はこれに対して反対する理由はない、仲よくいたしましようという社交的な話をしただけであります。また李承晩大統領希望もそういうので、ただちに外交交渉に入るつもりで来られたようには見えません。仕合せにして、その後朝鮮等における関係は、そのたまにでありましようか、とにかくよくなりつつあるように思います。それは従来日本新聞通信員等には会わなかつた大統領ではないかもしれませんが、朝鮮政府役人も、あまり日本新聞等に親切にしておらなかつた態度が、親切になつたとか、あらゆる交渉もよく行つておるというようなことで、李承晩大統領東京訪問以来の空気は大分よくなつたと承知いたしております。しかしどうよくなつたか、まだ具体化するほどには行つておりませんが、朝鮮役人の気分だけはよくなつたように思います。
  15. 井出一太郎

    井出委員 私は今までに主としてアメリカの側からの諸問題を伺つたのでありますが、もう一つ世界であるソ連の側からも、日本に対しましていろいろな手が打たれておるのではなかろうかと思うのであります。昨年十月初旬に、ソ連共産党の第十九回大会が久方ぶりに開催せられました。その席におけるマレンコフの演説、あるいはさらにボルシエヴイーキ紙に載つたスターリンの論文、こういつたものから見ますときに、新しい平和攻勢とでも申すべきものが展開されようとしております。しかして最近東独を初め、共産圏国家内においては相次ぐ粛清をもつて異分子を除去する。鉄の鎖をもつて衛星国との紐帯を強化しようとする。そしてまたおそらく本年におけるソ連の触手というものは、アジアないしアラブ諸国を目標としてその積極的な働きかけが行われるのではないかと考えられるのであります。かかる際においてアメリカ外交転換というものが、いずれかの地において米ソの間の摩擦をはげしくする部分を生ぜしめ、そこから火を吹くというようなおそれもなきにあらず、こう考えられるのであります。たとえば北海道周辺地区において、外国の飛行機が飛来をして来る。これを迎え撃つところの決意を政府としてはすでにされたようでございますが、そこいらから何か不測の事態が起りはしないか。こういう計算を考慮に入れておられるかどうか。この問題をまず伺いたいと思います。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。国際の関係は実に安心ができないといいますか、今日の事態をもつて明日の事態を律することができないような状態にあるのでありますが、といつて、急に雷が落ちて来るようなことも考えられないのであります。しからばソ連アメリカと、あるいは共産主義国と自由主義国との間の関係はどうであるか。一般的な関係から申すと、むしろよくなりつつあるのではないかと私は思うのであります。急に日本に重大事件が突発するとか、あるいは第三次世界戦争が起るというような事態よりは、その事態が漸次緩和されつつあるのではないかと思われるのは、たとえば一、二年前においてはアメリカもその他の自由諸国も軍備を非常に急ぐというような形勢でありましたが、その軍備は従来の通りでなくて、大分緩和せられた。あるいは軍備の歩度がゆるんだといいますか、自由国家においては、いろいろ議論はありますが、しかしながら軍備の歩調はゆるくなりつつあることは事実であります。またアイゼンハウア一新大統領にしても、それからチヤーチル総理大臣にしても、イーデン外務大臣にしても、あるいはアチソン前国務長官にしても、戦争の危険は次第に遠のきつつあるということをみな言つているのであります。各種のそういう世界全体の状況から見て、一、二年前のような緊迫した国際関係はだんだんゆるやかになりつつある、こう見る方が正しいのではないかと思います。しかし局地々々においてはいろいろな変化がありましようが、全面的に考えてみて戦争機運はやわらぎつつあると見ることがほんとうではないか。いろいろその説明の仕方もありましようが、たとえば英米その他の自由諸国の工業力が非常な勢いをもつて増大しつつあるとか、あるいはまたソビエト自身も米ソの間に戦争が起るというか、第三次戦争というよりは、むしろそういう戦争は起らないが、資本主義国自身の間に争いが起ると言つたか忘れましたけれども、スターリン大統領は……(「元帥だ」と呼ぶ者あり、笑声)むしろ資本主義国の間に問題が起る。共産主義国との間の戦争よりは、資本主義国内において問題が起りはしないか。これは始終言うことでありますけれども、そういうことを言つている。それからまた北京においても、モスクワその他においても、いわゆる平和会議なるものが起されて平和機運を助長しておる。また他方においては、今お話のような、パージとか何とかいう問題があります。これは鉄のカーテンの中において、ある現象が起りつつあるのではないかと想像します。悪く想像すれば、これは鉄のカーテン内にかえつて異常な事件が生じたのではないかというふうにも考えられます。これを要するに、地方地方において地方的事件が起るとしても、大体の傾向としては、戦争機運は薄らぎつつあるというか、遠のきつつあるということは、事実なりと考えていいと思います。なるほど北海道の上空に国籍不明の飛行機が飛んだとか、空中円盤とかなんとかが飛んだといううわさがあり、うわさは百出しておりますが、大体の空気はおちつきつつあるのではないか。従つて大戦の危機迫れりと考えてわれわれの神経を悩ますよりも、むしろ世界はだんだん平和におちつきつつあると考えた方がよろしいのではないか。またそうすることがますます人心をおちつかしむるゆえんであり、おちつくことによつてさらにまた将来他の平和機運が生ずる。これを、戦争へ近づけるといつて、そして人心が動揺するということは、そこから自然戦争の危険を生み出すのでありますから、空気は平和的になりつつあるのだ、おちつきつつあるのだというふうに、世界の人心を持つて行くことが、平和を増進するゆえんではないか。こう私は考えます。
  17. 井出一太郎

    井出委員 総理の御見解はそういうお考えもあるでありましようが、私どもはそう手放しな楽観ではいけない、こう考えておるのであります。先ほど来申し上げておる、ソ連の新しい方針とでも申しますか、これが日本へどういう形で打返されて来るか。たとえば日本共産党の最近の動き、これを政府はどの程度まで把握をしていらつしやいますか。最近特に情報機関設置その他で情報をとることに非常に御熱心でありますから、何か知悉されていらつしやると思うのであります。たとえば新聞面等に最近見られる現象として、地下へもぐらざるこれは大物がもぐつて小物がもぐつていないのかもしれませんが、元代議士であつたという諸君が、大分共産党から離脱をして行こうという傾向が見られるのであります。こういうような一連の現象に対しまして、どういう御見解を持つていらつしやいますか。これは犬養さんですか、ひとつ伺つておきたい。
  18. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。ソ連の傾向は、先刻井出さんが仰せられました、ソ連の各種の大会におきまして行われた党の決定のうち、著しく感ぜられますのは、今世界米ソの対立ということが主要な問題ではないのであつて、むしろ資本主義の諸国家の間の矛盾と軋轢ということが当面の重大問題である。ソ連邦は衛星国を取入れて、そのゆたかな経済圏というものの確立はますます強くなつて来たに反しまして、資本主義諸国家は、マーケツトの喪失その他によつて非常に苦しい立場にそれぞれある。従つて資本主義というものが疲れ、資本主義というものが崩壊して行くというところに、非常に重点を置いているように思うのであります。この資本主義諸国家間の軋轢から生ずる戦争の危険を避けるためには、何よりもまず各民族、ことに東洋あるいはアラブ方面に平和運動というものの必要を説いて行つたならば、東洋におけるたとえば日本ども、しまいには必ず共鳴して来るだろう、こういうねらいを持つておるように思うのであります。それが反映しておりますのが、やはり日本の共産党の最近の動向でございまして、これはあとで詳しく申し上げますが、今かいつまんで申し上げれば、つまり中共とか北鮮との友好関係の促進とか、貿易の促進というようなところに、そのモスクワの思想の反映があるように感じて、その方の研究を私どもつておるわけでございます。  日本共産党の動向といたしましては、一昨年の秋に、民主革命の完成というようなことから、その手段として軍事方針というものを、御承知のように、強く打出して来まして、昨年の上半期七月ごろまではいろいろな、何といいますか、暴力主義的破壊活動が行われたわけでありますが、七月にいわゆる徳田論文というものが発表されまして、はたしてこういうようなことでいいのか、党員はテロやデモに夢中になつておるが、それに対して自己批判をしなければならぬのではないか、国民感情とのみぞをどういうふうに自己反省をしたらいいのか、というような問題が提起されまして、ただいま申し上げた点に触れるのでありますが、下半期はむしろ平和運動、そして隣接諸国家間の友好促進、貿易促進、あるいは反米運動の奨励とか、民族意識の高揚に対する奨励とかいうふうになつて来たように思うのでございます。しかし地下運動の流れといたしましては、依然として軍事方針を捨てておりません。そこで私どもソ連邦が資本主義諸国家間の軋轢、資本主義の矛盾の露呈というようなことに対してねらいを定め、その軋轢の間隙を縫つて国家間に平和に対するあこがれを起させる、日本どもそういうふうな方針で力を集中して来ておる、こういうふうに思つておるのであります。
  19. 井出一太郎

    井出委員 もう一つ、在東京ソ連代表、これが一体その後は全然解消してしまつたものであるか、あるいは日本政府要請によつて撤去し、向うへおとなしく帰つたのか、そういう跡始末からソ連との間に別に問題はないのか、こういう一連の点を伺いたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ソ連代表部は、法律上からいいますれば、平和条約成立後は無条約の関係にある、ソ連の代表が国内にいる理由はないのであります。しかしながらあの建物は、ソ連国有の従来の大使館であります。また事実上中におりました人々は、平和条約成立後は相当多く帰国いたしておりまして、建物の管理その他に残つている人及び多少の人が今残つておるような状況であります。そこでわれわれとしては、外交官的な特権はもちろん与える理由がありませんから、何もいたしておりません。また外へ出まして、適当ならざる活動をすることは認められないと思うので、その方面で監視をいたしております。しかし今のところそういうことは別に報告は受けておりません。そこで結論的に言えば、まだ少数の者はあそこに残つておりますが、これを力を持つて追い立てるかどうか、この点は特に何か日本の国内上の必要があれば別であります。たとえば不法の行動をするとか、その他宣伝をするとかなんとかいうようなことがあれば、それは即座にもやるべきことでありましようが、今のところは愼重に取扱いまして、数も非常に減りつつありますので、いましばらく様子を見守ろうというふうに思つております。
  21. 井出一太郎

    井出委員 それからもう一つの問題は、中共からの邦人引揚げの件でございます。これはまさしく近来の朗報でございまして、あるいは平和攻勢の一環だというふうな考え方もできないことではありますまいけれども、しかし同胞の一員として、われわれはきわめてこれを喜ばしく考えるものであります。先ほど中共に対する海上封鎖ということを私は申しましたが、引揚げ問題は、あるいはアメリカに先手を打つて出た中共の積極策ではなかろうか。少くとも引揚げが完了いたしますには相当の日子を要するはずである。その間はおそらくアメリカとしても海上封鎖はできない。中共帰還者を迎えること、長い忍苦のうちに待つて参りました日本国民としては、この引揚げはまさしく日本人の悲願でございます。これをもしアメリカ海上封鎖が妨げるというふうなことありとすれば、これはアメリカ日本国民の怨府となる。こういうような方向において中共が打つた先手ではないか。これは意地悪く解釈するかもしれませんが、こういう見解に対しまして、岡崎外務大臣はどうお考えになりますか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この引揚問題につきましてはいろいろ想像も行われまするし、また事実ではないかと思われる節のある説もあるわけであります。たとえば政府を除外して民間の団体を代表にするというのは、一体どういう意味であろうか。あるいはちようど折から参議院の選挙のある前に、帰還者がだんだん帰つて来るということは、何か意味があるのじやないかというような、いろいろのこともありますので、今おつしやつたような考え方も一部に成り立ち得るものだと思いますけれども、そういうことはいろいろ考えられるにしましても、政府としましては、引揚げということが人道上の問題であつて政治上のいろいろの意味を離れたものであるというまつすぐな道をとりまして、できるだけそういうほかの考えを入れないで、純粋に引揚問題としてこれを取扱いたいと思つております。それで実はアメリカ側のいろいろの考えに対抗するという今のお話の点も、考えられないことはありませんけれども大統領選挙などが実際に行われます前から、今度は引揚げがあるかもしれないというような報道も、ぼちぼち中共地区から参つてつたのであります。大統領選挙などと関係なく、中共側でも引揚げの問題をかなり前から考えておつたんじやないかと思われる節もあるのであります。また事実上、かりに実際の戦闘行為が行われている地域にありましても、その地域の中にとじ込められた避難民を救い出すためには、あるいは停戦を行うとか、あるいは赤十字が中に入つて救出をやるとかいうふうな、砲火が実際交わつておるときでも、過去においてしばしば避難民救出というような事態は、双方の了解によつてできたものでありますから、この引揚げのような多数の人間がようやく帰れるという場合には、かりに海上封鎖といいますか、何かそういうような問題がありとしても、その間に双方の了解を得て実施できるであろうと、私どもはかなり広く考えております。またこれはできるものだと思つております。その筋でいろいろ準備をしております。
  23. 井出一太郎

    井出委員 ただいま外務大臣も申されましたが、この引揚問題に対しては、日本政府というものはどうもまつたく無視された感がございます。シテの役も、あるいはワキの役もせないで、せいぜいツレかトモというところでございましよう。これはある意味政府の醜態だ、こういうことになるのですが、たとえば高良旅券問題などは、まつたく岡崎さん黒星をまた重ねたわけであります。これはよいです。私は日本政府が醜態であろうとなかろうと、引揚げが完了されればこれに越したことはない。  そこで新聞等による数字でございますから、的確性を欠くかもしれませんが、抑留者の数字が八万七千六百名、こういう発表があつた。そのうち今度は三万名を帰すということも伝えられておる。政府の握つていらつしやる数字というものは、一体中共在留者というものはどのくらいあるか。これとどの程度の食い違いがあるか。これをまず伺いたい。それから三万名だけでは困るのであります。技術関係とか、あるいは兵器関係とかに従事しておるものは向うでは返さないようなつもりでありますが、こういうものは一体どうなるのか。さらに日本側における受入態勢と申しますか、これは私はきわめて重大だと思います。今回の厚生関係予算に若干の数字がのぞいておりますけれども、かつてソ連帰りの、いわゆるアクチーヴというか、筋金入りと称するものが帰つて参りまして、これが日本の社会へかなり深刻な影響を与えたと思います。今回の中共帰還者というものは、そのような心配はないものであろうか。受入態勢とあわせて、その辺の見通しを伺いたいのであります。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共地区に在留しておると思われる人々の数字は、私の方で計算したのは約五万九千人であります。但しこれはお断りしておかなければなりませんのは、一九四五年、終戦の直後から現在に至るまでの期間におきまして、何かの方法で、この人はあるところにおつたということのわかつた人がそれだけでありまして、従つて五万九千人がむろんそのまままるまる現在まで生きているとは考えられない。つまり相当数がおれば、あるパーセンテージは自然にしてもなくなる人があるのであります。その他ずいぶんいろいろの場所におるのですから、特に病気その他によつてなくなる人もよけいあるかもしれません。ただ私どもの言いますのは、五万九千人というのは、現在と終戦のときとの間のいつかの期間に、とにかく一度生存しておつたという人の数字であります。その後のことはわからないのであります。従いまして、先方が三万人といいますと、それでは二万九千人はなくなつてしまつたのかという議論にもなりますが、この点は、われわれの数字も何も現在一々見てきめた数字じやございませんから、そう特に主張する理由はないのであります。私どもは始終その説明をしておる。五万九千とは言つておるけれども、とにかくあるときに生きておつたという何かの材料があつた人の集計である。従つてこの点で特に中共側と争うつもりはありませんが、お説の通り先方で三万人と言つております。しかし三万人の中でも希望する人というので三万人がその通り帰れるのか、多少帰らない人もあるのかもわかりませんし、またあるいは日本人でなくして中国の国籍をとつたような形になつておる人もあるかもしれません。いろいろのことがあつて、実際上は日本人であつても残る人があるように想像もされないこともないのでありますが、せつかく今引揚げ交渉も行われておる最中でありますから、こういう点をあまりわれわれが強く申さずに、こちらの代表もよく実情を調べて参りまして、またその結果によつてはさらに話合いの余地もあるかもしれぬと考えておりますので、一応この点は代表に善処を願う、こういうつもりでおるわけであります。なお厚生関係の方は厚生大臣の方からお答えいたします。
  25. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。受入態勢に関しましては、昨日の衆議院の特別委員会において詳細に申し上げました通りでありますから、重複を避けますが、大要を申し上げますと、引揚げに対する配船でありますが、これは高砂丸その他万全を期しております。なお南方地方からも引揚げが必要のときにはそれに対して配船を用意しております。なおまた輸送中の船中における給食、医療、これらに対しましては万全を期しておるのであります。  なおまた舞鶴等に引揚船が着きましたとき以来定着地までの輸送の旅費、これは運輸省とも相談いたしまして、本人あるいは携帯の貨物に対しましてはその輸送を考えております。なおまたそのほかの雑費もいりますから、大体距離に応じまして、千円ないし三千円の雑費を給することに相なつております。  なおまた今回は従来の引揚げと多少違う点もありますので、特に万全を期したいと考えまして、初めて帰還手当を考えおります。予算的な措置もとつてあります。これは大体おとなが一万円、小人五千円であります。  なおただいま舞鶴援護局においてすなわち舞鶴に輸送船、引揚船を予定いたしております。今後また事情に応じましては考えまして、一応舞鶴において万全の措置をとつておりますので、従つて舞鶴の援護局において、この引揚げの態勢を整えておりますが、着きまして以来、今回は従来と違いまして、舞鶴におきまするいろいろな帰還に関する手続等も、できるだけ早く完了して、早く家庭に送りたいという準備をいたしております。その間の、たとえば、給食等におきましても、三千カロリーぐらいはできるだけ支給して、丁重に扱いたい。  なお問題は、定着地におきます援護であろうと思いますが、定着地に関する援護のうちで一番重要な点は、御承知のように、住宅の問題と、その後におきまする就職あるいは就労の問題であろうと思います。住宅の問題は、とりあえず昭和二十七年度に実は今後の引揚げ交渉がどういうふうになりますか、できるだけ早く促進をはかりたいと思つておりますが、予算的には一応本年度内に四千人、来年度において二万六千人、あるいはその他の地域から千人、これだけ予定をいたして、一応の予算措置をとつております。従つて引揚げされる方々に対する住宅措置は、一応本年度におきましては、一時前の収容所を北海道その他の五大都市に設けます。それの予算措置もとつております。なお来年度におきましては従来は主たる都市に一時的の収容所を設けておりましたが、来年度は各府県に少くとも一箇所を設けたい。なおまた定住される引揚者住宅でありますが、本年度において四百六十戸、来年度におきましては三億五千万円の予算をもつて三千戸を予定いたしております。なお今後その他の第二種公営住宅等におきましても、できるだけ引揚者がそれらの住宅を持たれるように努力いたしたいと考えております。  なおその他の問題は、今後そういうような方々が更生されて、日本の社会にあたたかく飛び込まれるという問題であろうと思いますから、今回さらに更生資金を国民金融公庫の中から、現在においては予算措置を二億円、一世帯三万円を予定いたしておりますが、できれば五万円にいたしたいと思つております。なおまた、帰つて来られた後に家庭を持たれました際に、応急の家財等がいりましようから、それに対しましても適当な措置を講じて、できるだけあたたかく受入れをいたしたいという、万全の措置を講じておる次第であります。
  26. 井出一太郎

    井出委員 私がただいままでに伺いました諸点は、米ソ二大勢力の間にはさまれた弱小国日本の宿命的な問題を論じたと思つております。この二つの勢力が相激突するところに地理的な位置を示めておりまする日本の運命は、これは動揺常なくゆすぶられておるのであります。しかも日本の側から積極的に局面を打開するという余地はきわめて乏しくて、いつも相手方からの働きかけに応じて身構えをしなければならない受動的立場でございます。連合国の信義と誠実とを信じ、一つ世界を背景としてでき上つた日本国憲法、これさえもが今その根底をゆすぶられつつあるのでります。われわれは一応の独立を与えられはしましたものの、日本をめぐる内外の情勢は、冒頭申し上げましたように、容易ではありません。今からちようど百年前、嘉永六年でありますか、浦賀の岸頭にペルリの率いるアメリカの黒船が現われたそのとき、長崎の港へ今度は露将プチヤーチンの率いるロシヤの軍艦が現われた。今日の国際環境というものはまさしくこれをほうふつせしむる点において、一種奇異の感じを私は抱くのであります。爾来一世紀の日本の歩みを思い、今後また一世紀の日本の将来を見るときに、まことに感慨無量なるものがあるのであります。この百年前に比較いたしまして日本領土はほぼ同様と言いたいが、沖縄、千島、こういつたものが日本から今削られたと見なければならぬ。ところが逆に人口の点は八千五百万、まさしく三倍に近い人口を擁して、身動きができない状態でございます。しかも国際社会へ日本が進出するという場合には、狭き門がかたく閉ざされているのであります。われわれは自由社会の一員として、国際連合によつてわれらの運命を打開することを決意いたしました。国連加入国の多くは、日本立場を理解してくれまして、過ぐる国連総会においては、賛成者五十、反対者五、棄権四、こういう票数をもつて、圧倒的に日本の加入を支持してはくれましたけれどもソ連の拒否権の存しまする限りは、いかんともすべからざる状態でございます。そこで、われわれが最終的に運命を託そうとするこの国連加入の問題は、どうしたら実現できるのか。国連憲章をしかるべく改正することによつて日本が受入れられる見通しがあるのでありましようか。あるいはまたノン、レギユラー・メンバーとでもいいましようか、一種の準会員的な立場において、日本はしばらくしんぼうしなければならぬのか。われわれは国連協力においては、今までも努めて来たつもりでございまして、権利を享有することなくして、義務のみ果しているという感じがいたします。政府国連に対する日本立場をいかにして打開されようとなさるか。この点は総理から伺いたいと思います。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 私から一応お答え申し上げますが、国際連合としては、今お話のように、日本の加入については十分考慮をもつて対しているというのは御承知の通りであります。これから先どうするかということになりますと、一番先に問題になるのは、いわゆるソ連というか、拒否権をどうするかという問題でありますが、これに対しては、相当協議も進められており、また自由国家側においてもいろいろな提案を出しております。その提案が日本のために利益であるかどうかということが、今政府としては考えられつつある問題でありますが、これは外務大臣から詳細お答えを申し上げます。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体は今総理お話通りであります。第一に、加盟の問題は拒否権の点がありますから、真正面からは困難でありますが、ソ連側がかつての提案をいたしたこともありまするし、また加盟のような政治的の意味の少いものは総会でやろうというような提案も出ておりますし、また例の、一括加盟に関する委員会の研究題目もありますので、いろいろの方面から、これは日本のみではありません、ほかの国の加盟も同時に双方の陣営で必要とするわけでありますから、漸次解決されて行くのではないかと思い、われわれはその方面にいろいろ努力いたしておる次第であります。そこでいわゆる準加盟とか、アソシエート・メンバーとかいろいろな説がありますが、これは今までに例のないことでありますので、一体どういう条件と申しますか、資格で加盟するものかもまだ決定しているわけではありません。しかしながら日本のような、とにかく人口も多いし、文化の程度から見ても、すべての点から相当の地位を占めるべき国が、何か半分しか資格がないということではいかがであろうかとも思われますので、この点は愼重考えているようなわけでありまして、むしろまつ正面からの国連加盟について、いろいろの面から今後推して行きたい、こう思つてつておるわけであります。
  29. 井出一太郎

    井出委員 われわれは、国連加入に対しまして、その一日もすみやかならんことを祈るものでありますが、今おつしやる程度の御答弁では、これは一体いつの日に果されるかすこぶる心もとない感がいたします。それで国連の方がそういう状態にありますとき、私は同時に考えねばならないことは、国連アメリカの道具であるという意味の見解が一方にあることであります。これは二つの世界が対立しておる限りは、そういう考え方はあるでありましようが、このイデオロギーの相剋に悩んで、リー事務総長は先般とうとう辞任をしてしまつたというような現象も出て来ておる。こういう際に私は、この間岡崎さんが外交演説で述べられたような、いわば第三勢力排撃論といいましようか、不必要なる摩擦を招来するような御見解はいかがなものかと思います。われわれが最も基本的なことは、善隣友好の精神でなければなりません。日本がモラルの高い国家になり、信義を重んずる民族だということを示すことによつて、国際社会で尊敬を博するということでなければならぬのでありまして、ことに東亜の諸国との間においては、その友好と理解をとりもどさなければならぬのであります。あなたは第三勢力と申しますか、そういうものは存在価値がないというように申されましたが、現にインドを初めとしてそういう立場をとつておる。これが東亜に存在をしておる。これともわれわれは友好関係を持続して行かなければならぬ。こう考えまするときに、せんだつての本会議の外相の演説というものは、何かアメリカの意を迎えるに汲々というような感じがいたしまして、いかがなものかと私は思うのであります。もう一ペン御見解を御開陳願いたい。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私としては自分考えをいろいろな面からひつくり返して検討してみた結果でありまして、別にアメリカと相談したわけでもなければ、アメリカの意を迎えるつもりでやつたのでもないのであります。趣旨とするところは、平時において中立的な政策をとるということが一つあります。また一朝事あるような事あるというのは語弊があるかもしれませんが、非常な、緊急の場合に、中立政策で、軍備なくして国を安全に守り得るかどうかという議論と、さつき申しました平時において中立政策をとつて行くという議論とは、別問題であります。私はその緊急な非常時におきまして自分に兵力もなく、またその国の地位がちようど双方の陣営にとつて戦略的の場所である場合に、自分中立であるからどこにもつかないからといつて、国が守れるかどうか、非常にむずかしいもので、おそらくそういう考えでは八千五百万の国民を守つて行くことはできないというのが、一つの私の理由であります。  それからもう一つは、平時においてどつちにもつかない政策をとる。これは経済とかその他文化とかいう点においては、いいでありましようが、いろいろな全体としての国の傾向を考えましたときに、平時におきまして、この二つの陣営が争つておる場合に、これはそのとき申しましたように、局地的な利害だけで争つておる場合は、局外中立ということはあり得ますが、いずれに正義がありやというときに、それでも両方に介入しないというような、たとえば終戦後しばしば見受けましたが、これは例が悪いかもしれませんが、汽車などでずいぶん乱暴をする人があつたときに、さわらぬ神にたたりなしというので、乱暴されている人があつても知らぬ顔をして横を向いているというのでは、社会の秩序は成り立たない。こういうときは自分が弱くても、乱暴されている人に味方して、その正義を守つてやる気持を持たないと、社会が混乱すると同様に、国際間におきましてもいずれの方面に正義があるかということがはつきりいたしておる場合には、進んで正義の方に味方するのでなければ、国際社会の秩序は保ち得ないであろう。従いましてこの非常時におきまして、中立を努力なくして保つということは非常にむずかしく、これはできない相談ではないかと思うのと同時に、平時においても正しい方に味方するのがあたりまえじやないか、こういう議論を私は言つているのでありまして、国際間におきまして、よその国にまで中立破棄せよとか、中立ではだめだという意味ではないので、特に言葉を注意いたしまして、国際間においては結局自由を守る国と、自由を認めない国の二つにわかれるのである。その自由を守る国の中にどういう政策をとる国があるかは別としまして、それは第三勢力という考え方を持つておる国もありましようけれども、結局大きくわけますと、自由を認めない国と認める国とがあるというふうに私は考えておるのであります。  そういう意味で、決して無益な議論を誘発するつもりはないし、またよその国のやり方を批評する意味でもないのでありますが、ただ日本の国民としては正しきにつくという気持が必要ではないか、こう考えますのでああいうふうに述べたわけであります。
  31. 井出一太郎

    井出委員 この問題はいずれ社会党の諸君に譲るといたしまして、今あなたの言われた言葉の中に、私は非常な危険性を感ぜざるを得ないのであります。と申しますことは、日本の今の力によつてある程度裏づけられておる、その立場において正義を主張することでなくてはならぬと思う。今の日本立場でもつて、いたずらに岡崎さんのような理論を展開することは非常に危険なことではないか、こういう点を申し上げるにとどめておく次第であります。  緒方国務大臣は見えませんか。         ————— ひとつお呼びを願いまして、その間もう少し続けます。  先ほど申し述べましたように、日本の宿命は人口と領土のアンバランスの上にございます。狭小なる土地、貧弱なる資源、そしてまた厖大なる人口を持つたこの日本において、野放しな自由経済というものがいかにおそるべき結果を生みつつあるか、これをわれわれは近ごろ身辺至るところに見出すのであります。壮麗なるビルデイングが続々と建設されて行くかたわらには、都会の谷間といわれる部分がいまなお戦災当時そのままの形で残つております。また何十万台という自動車が走つているかたわらには、白衣の傷痍者が物乞う姿をさらしておる。農村へ参りますならば、近ごろ農家の貧富の差というものは歴然と現われて参りました。昭和初年ごろの地主と小作人の争議とも相似た経済的落差ができて来ております。これは第一次吉田内閣において、画期的な農地改革を行つてまだ七年目の成果でございます。こういつたでこぼこの経済ができ上りつつあるのは、単に個人差、能力差の問題だけではなくて、自由経済が必然的に生んだところの所産であろうと、こうわれわれは考える。こういつた自由経済の弊害を何とか打開する必要をお感じになつていらつしやらないか。そのためにいかなる手を打とうとされていらつしやるか。私は総理経済問題をたくさん伺おうとは思いませんが、この一点だけ総理から御答弁を願いたいと思います。
  32. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答え申しますが、人口問題については、日本だけの問題ではなくて、実は世界的の問題であります。世界の人口が増殖する、これに対して食糧の生産が伴うか伴わないかというような問題から始めまして、人口問題はすでに国連においても考えているように、世界的の問題で、一つ世界的に考えなければならぬ問題でもありますし……。
  33. 井出一太郎

    井出委員 人口問題は私はあとから言うつもりなんですが、経済問題なんです。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつとそれは無理ですから、ひとつ小笠原君から……。
  35. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 現地の段階におきましては、私どもはなお自由主義経済で可なりと思つております。しかし情勢の変化によつて多少の修正を要することは今後起つて来るかもわかりませんが、(笑声)現在の段階ではさように考えております。
  36. 井出一太郎

    井出委員 それでは緒方国務大臣がお見えになりましたので、最近問題になつております情報機関に関連してお尋ねをいたします。この情報機関というものに関係する費目は、本年度の予算においていかほど計上をなさり、それは前年度との対比においてどれだけふえているか。まずこの数字を最初に伺いたいと思います。
  37. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。予算概要でございますが、総額一億三千四百万円。内訳は人件費が一千万円、報償費が三千万円、旅費が百万円、庁費が四百万円、会議費が三百万円、刊行物作成費が五百万円、交際費が八千万円。そういう数字でございます。
  38. 井出一太郎

    井出委員 官房長官は本年初頭西下せられました際に、たしか大阪であつたと思いますが、記者会見の際に次のように語つていらつしやる。新情報機関は総理府調査室を拡充し、職員二百名くらいの予定である。早ければ四月から仕事は始められると思う。官庁の人は中に入れない。旧軍特務機関のような質の悪いものはまつぴらだ。無線や暗号翻訳等の技術者に旧軍人を多少使うかもしれない。大よそこういうふうな意味のことを言うておられますが、これはさように了解をしてよろしゆうございますか。
  39. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 人員につきまして二百名ということを申したかはつきりいたしませんが、今行政整理の必要が強調されております際、できるだけ簡素なものにいたしたいと思いまして今内定いたしておりますのは三十人くらいでやりたいと考えております。それから今のお話の中に暗号の解読があつたようでございますが、それは調査室ではいたしません。ほかは仕事の性質は大体そういうものであります。
  40. 井出一太郎

    井出委員 ちようど官房長官の今の車中談が発表せられますのと相前後いたしまして、各新聞紙が一斉に情報機関設置進むとか、あるいは諜報部を設けるとか、こういう記事が出たのでありますが、これはおそらく官房長官の支配下の総理府のどこかから出たものに違いないと思う。それによりますと、この機関は単なる情報だけではなくして、謀報というような面にまでも及ぶように受取れるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  41. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。情報だけをやるつもりであります。
  42. 井出一太郎

    井出委員 情報と謀報の相違というふうな問題になりますと、これはきわめて微妙なことになろうかと思います。単なる情報だけに限定されるという御答弁でございますので多くは私は申し上げませんけれども、これが諜報に転換する危険性といいましようか、この差はほとんど紙一重ではないか、こういう感じがいたします。もしこれが発展をいたしまして、かつて戦争中にあつた総力戦研究所とでも申しますか、そんなふうなものにまでも至るという危険性を私は心配いたしますがゆえに、あえてこの問題を取上げてみたゆえんでございます。そこで単なる情報機関でありますならば、これは外務省にもあるでしようし、保安庁にもございましよう。国警あるいは公安調査庁にも、情報をとるところの機関は備わつているはずであります。あえてこれだけの新規予算を投じて内閣に情報機関を置く必要はないと考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  43. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 外務省にも情報機関がありますが、場合によりましては重複いたさないように、情報収集に関する限り一緒にいたしたいという考えを持つております。それから単に国際的な問題だけでなしに、内外の情報をここにことごとく集めまして、そうして総合的に見て、それを整理分析して、正鵠なる情報をつくつてみたい、こういう考えであります。
  44. 井出一太郎

    井出委員 その場合に、今までありました内閣調査室というものはいかが相なりましようか。これは廃止をされてその後に新しい機関が生れるのか、それとも調査室を強化拡充することによつて、今の官房長官の構想を実現されようとなさるのか、いずれでございますか。
  45. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今までの調査室を廃止いたすつもりはございません。言葉で申しますれば強化拡充ということになりますが、仕事は新しい仕事が加わるわけでございます。
  46. 井出一太郎

    井出委員 それでは私は以下主として向井大蔵大臣にお尋ねをいたします。
  47. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと井出さんにお諮りいたしますが、どうせ午後にまだ引続くことでございますし、御都合のいいところであるいは休憩にしたらどうかと思いますが……。
  48. 井出一太郎

    井出委員 それではこれでちようど今切りがよろしゆうございますから……。
  49. 太田正孝

    太田委員長 政府に一言申しますが、山崎委員から、昭和二十八年度の地方財政計画の資料を出していただきたいということです。予算審議の上に重要なことと思いますから、なるべく早くお出しを願いたいと思います。  なお西村さんから要求のありました書類はできておりますか。きよう午前中に出すというお言葉でしたが、できておりませんか。国民所得に関係する資料です。         ————— なるべく早く出していただきたいと思います。  それではこれにて休憩し、午後三時より再開いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後三時十二分開議
  50. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。井出一太郎君。
  51. 井出一太郎

    井出委員 時間の制約を受けておりますので、午後の質問は、主として大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  それに入ります前に、簡単なことでありますが、午前の質問に関連して、岡崎外務大臣と山縣厚生大臣にお尋ねをいたします。先ほど岡崎さんの御答弁中、中共抑留者に関する数字について、五万数千人という御返事がありましたが、これは大体いつを基準としての調査でございますか、これをひとつお願いをしておきます。  それから厚生大臣には、人口問題に関連いたしまして、人口問題審議会とでも申しましようか、かつてそういうものがあつたはずであります。しかるに中絶をしておりまして、今この人口問題が総理の口からも施政方針に述べられたこの際、かような審議会を復活なさるか、それに対する構想、人口問題を取上げまする以上は、私はどうしても経済の長期計画というものがなければならぬはずだと思いますが、それはそれとして、今の審議会の構想をこの際承つておきたいと思います。以上二点。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 五千数千という数字は、昨年の九月に国連総会に特別委員会というものがありまして、日本側からも議員その他が行かれたのであります。その行かれるちよつと前までに極力集めて出た数字であります。もつともその前にも大体そこいらの数字に来ておりましたけれども、最後の締めくくりはそのときだと思います。
  53. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。人口問題に関して何らかこの際審議会を設ける意思ありやいなやというお尋ねであります。この人口問題は現在の日本といたしましても、きわめて重要な問題であります。実は最近日本の人口の増加が数字的にはいささかむしろ減少減少というのは、率が減少いたしております。戦前はたしか千人に対して三十一人が大体平均でありましたが、たしか昭和二十二年が最高で三十四人、昨年あたりおそらく千人当り二十四人ぐらいに相なるのではないかと思うのであります。しかし一方においては死亡率が、最近公衆衛生等の普及によりまして減少いたしております。最高が戦前千人に十七人くらいだと思つておりますが、昭和二十六年度においては十人、昨年はおそらく九人くらいになるのじやないか、こう思つております。しかしそれによつて純増加は、これはまだ昨年末までの統計が判明いたしておりませんが、大体今まで取得まする統計によつて推算いたしますと、昭和二十七年度は大体百二十五万人ないし百三十万人に相なると思うのであります。その率は大体千人当り十五人、御承知でありましようが昭和二十三年度が最高で、大体千人あたり二十二人、百七十万人というのが最近における一番増加の大きかつた年であります。かようにいたして一応人口の増加は、戦後英国あるいは米国と同じような程度まで増加率は下つて来ておりますけれども、一面において、十五才から五十九才までの生産年齢人口といいますか、これはむしろ昨年あたり、おそらく九十万人ぐらい出るでないかと思うのであります。従つてこれらの面を勘案いたしてこの際日本といたしましては、領土もきわめて狭小でありますし、天然資源も少い、また産業構造におきましても、なかなかそこまで参りませんので、この問題を取上げて、これは国家として重要な問題として何らか基本的な線を策定することが必要でないかというので、実は昭和二十八年度の予算におきましても、この際これらの重要な問題を基本的に取上げて、国家として何らかの線を策定いたしてそして至急にそれに対する施策をいたしますのがよろしいのじやないかという意味で、この人口問題審議会をこれはただいまお話にありましたが、昭和二十四年に内閣にありまして昭和二十五年に廃止されておりまするが、この際再び人口問題審議会を政府で持つて、そしてこの問題を調査審議いたして行こうというので予算を実は要求いたしておるのであります。ただいまその構想についてお話がありましたが、ごく簡単に申し上げますと、大体委員は四十人、専門員二十二名、そしてその調査研究をいたしまする内容は五つ取上げておるのであります。第一は人口と生活水準との問題、第二は人口と産業構造の問題、第三は人口と資源の問題、第四は人口と受胎調節の問題、第五は人口と資質向上資質向上と申しますと、優生学的な見地から人口問題を解決する、これらの問題に対して基本的に調査研究をいたして、至急何らかの線を出して、国家的の見地からこの重大な問題の解決に当りたい、かように考えておるのであります。
  54. 井出一太郎

    井出委員 非常に厖大な機構を持つた審議会ができるようであります。今の政府の悪いくせは、さようなものをこしらえても尊重しないということであります。願わくは今の厚生大臣の意気込みは非常に御盛んであるようでありますから、ぜひとも設置の意義が遂げられますような御配慮を願いたいと思う。  今回の予算を一瞥して、指摘されますことは、無性格予算である、あるいは無計画な予算である、そしてまた総花主義であつて、重点がぼけておる、こういうふうに大方の御批評が帰一しておるようであります。昭和二十四年以来のドツジ・ポリシーなるものは、すこぶるドラステイツクであつて日本経済へ劇薬を盛つた感じがいたします。しかしまた、それなりに一つの強烈な性格を持つておつたことも事実でございましよう。ところが独立第一年における自主的予算と称すべき本予算は、頭痛にもきく、腹痛にもよさそうだ、かぜにもきく、何でもききそうな処方をなさつておられるが、実はどれにもあまりきかない妙な調剤方法だと私は思うのであります。向井さんが各省の要求でまず上着を脱がされてしまつた、次に自由党の強圧によつて下着を脱がされたストリツプ予算であると私は申し上げたい。吉田総理もこの点、大分気になられたと見えましてぶんどりをやめろと幾度か制止いたしましたものの、少しも効果が見られない。のみならず予算ができ上つてから、国会の意思に反してまでも切り詰めるというような、とんでもない国会軽視の発言をなさつておる。残念ながら総理がおられませんが、この予算の編成権、提出権は厳として内閣にあるわけでありまして、その内閣の最高責任者が今のような言をなすということは、見当違いもはなはだしい。おそらく吉田総理自身がこの予算案に不満の意を表したものであると私は解釈をいたしておるのであります。向井大蔵大臣は、旧臘大みそかの閣議のあとで次のように語つておられます。きようの閣議では、大蔵省原案の説明だけで審議には入らなかつたが、各閣僚から文句が出た、今後の閣議でも復活要求は行われると思うが、財源の点からこれ以上の予算規模の拡大は不可能なので、全部断るつもりだ、来年の景気の見通しもあまりよくないので、積極的に資金の放出を行いたいと思つているが、現状ではこれがただちにインフレを招来する傾向にあるので、財政投資もこの程度にとどめた云々、こう言つておられる。その際あなたの手でできた大蔵省原案なるものは、九千四百六十五億のわくでございました。しかるにその後公債発行が五百二十億、これは別わくといたしまして、なおかつ九千六百五億という財政規模の増大を見ておるのであります。ですから実際は六百七十億から膨脹をしたということに相なる。この予算作成の過程において大蔵大臣は一体どういうような心境で終始されたか。あなたの認めておられるインフレ招来の傾向というものは、予算を膨脹させることによつてますます不可避になるのではないか、こう私どもは思うのでありますが、まずこの点から考え方を伺いたいと思います。
  55. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。ドツジ・ラインというのは戦後のインフレーシヨンを収めるためにとられた措置でありまして、財政金融政策というものは経済の実情に即して行われるべきものと思います。戦後のインフレが一応安定しましたし、また世界経済情勢等の見通しから見まして、二十八年度予算はいわゆるドツジ・ラインをそのまま行うべきものではない。これは十二月三十一日以前から思つておりました。もつとも基礎がしつかりしません日本経済は、まだインフレの可能性がなくなつたわけではないのですから、ドツジ・ラインの考え方をまるでなくすということはもちろんできないのです。従つて今までの非常にきゆうくつなやり方にかえるに、弾力のあるものにしたいというふうに思つておりました。それから今数字をあげておつしやいましたが、なるたけ財政の規模を小さくしたいということは引続き考えておつたことで、今もなお、予算は別としまして、財政規模は小さいものがいいというふうに考えますが、実際問題として、いります金は公共事業とか、あるいは食糧増産とかなので、そういうものを縮め過ぎますと、今のいじけたいろいろの公共事業の関係の復旧費とか、あるいは食糧をよけいとるためにいる金とかが中途半端になつて、かえつて後日不利益が起るというような心配もありましたので、できるだけ縮める考えではありましたが、幾分かゆるめる、そういう結果になつた。そしてその金額も、今おつしやる通り何百億とは申しますけれども、全体の規模からいつたら、パーセンテージも大きいものではないし、まあしかたがないというように考えております。
  56. 井出一太郎

    井出委員 どうもしかたがない予算のようであります。ただいまドツジ・ラインは一面においては、残すが、別個に弾力性を考えたと言われますが、私は率直に言えば、むしろそこに並んでいらつしやる閣僚の中で特に腕の強い閣僚——廣川さんであるとか、あるいは幹事長になつた佐藤さんというような方々によつて、どうもあなたが強奪されたという感じがしてならぬのであります。一般会計はなるほど均衡をしておる。しかし特別会計、政府機関では赤字公債が出ている。予算の費目は非常に消費的性格が強い、こういつたことから考え、財政の全体のわくが膨脹していること、それから散布超過が千三百億余りあるということから、インフレ要因を多分に含んでいるので、これに対してブレーキをかける役は、どうしても金融操作にまつ以外にないと私は思うのであります。従来、池田財政というものは、財政のしわを金融の面に寄せていたといわれて参つた。ところが向井さんは、財政の内部でそのしわを一応伸ばしてしまつたわけであります。そういたしますと、どうしても別個に金融政策がよほどうまく行かないと、たいへんなことになりはしないか。この予算に即応した何か金融政策の新しい手というようなものを、あなたはお考えになつていらつしやるか、これを伺いたい。
  57. 向井忠晴

    向井国務大臣 散布超過といいましても、これが初めからしまいまで同じような程度に散布超過ということでなしに、散布超過が起れば下半期だろうと思いますが、下半期に金融政策の新手を考えるといつても、別に私は新手の持合せがございませんが、貯蓄の金高をせいぜい多くさせるとか、貸付に制限を加えることはいけませんが、使い道を選ばせて、銀行なり金融機関が、なるべく生産的なものに金を貸し付けるとか、融通するとかいう方向に向わせて行きましたならば、だらしなくゆるみ切りの金融でなくなるのは確かでございます。そういうことでインフレは十分に防げると思つております。
  58. 井出一太郎

    井出委員 従来金融は政府の手から離れておつたと申しましようか、日本銀行なりそのポリシー・ボードが自主的に大体の方向をきめていたと思うのであります。こういう予算を組まれた以上は、政府が権力的と言つては語弊がありますが、今おつしやるお言葉の中にも資金規制のような意味のことがありました。そうすると何らかの法的措置をお考えになつておるかどうか。たとえば日銀法の改正とか、政策委員会の性格をかえるとか、そういうことはお考えになつておりませんか。
  59. 向井忠晴

    向井国務大臣 法的措置はただいま考えておりません。
  60. 井出一太郎

    井出委員 それで今私が心配しておるような点がうまくカバーできるかどうか。これは非常に大きな問題を含んでおると思います。  そこで予算の内容に少し立ち入つてみますが、歳入面からこれをながめますと、非常に弾力性を失つているという感じがいたします。最近の景気後退を材料に入れますと、税収入は、今までのように自然増収に対して安易な期待をかけるわけには参りません。昭和二十七年度は千二十八億円という自然増収が見込まれて補正予算ができましたし、二十六年度は実に千七百六十億という自然増の数字が出ております。これでは税収見積りの的確さというものが無意味に近いものになるのでありますが、二十八年度は一体どう考えていらつしやるか。大蔵大臣は最近の経済現象を朝鮮ブームの修正過程と考えているのだ、こういうふうに見ていらつしやるようですが、私はそうじやなくて、今の日本経済の困難は、日本経済自体の本質的なあるいは構造的な矛盾に立ち至つておるのだ、これと対決しておるのだ、こういうふうに私は認識をいたすのであります。そういたしますと、今年の景気というものは自然増収が期待されるという甘さはとうてい考えられない。この点大蔵大臣はどうお考えになつていらつしやいましようか。
  61. 向井忠晴

    向井国務大臣 財源がきゆうくつと申すことは確かにお説の通りで、私は甘いというふうに考えておりません。但し税収入のことにつきましては大体ひどく見当は違わないはずで、従つてこれからよけいな金がいるということの見込みもない。ただいまあなたが甘い歳入を見込んでおるとおつしやいましたが、よけいな金のために今後さらに財源を求めなければならぬというふうなことはとらないつもりであります。(「補正予算を出すと言つたじやないか。」と呼ぶ者あり)補正予算は出さない。
  62. 井出一太郎

    井出委員 補正予算を出すか、こういうふうにあなたに伺いますならば、これはもう出さぬと言われるにきまつておる。今われわれは二十八年度の予算を審議しておる最中で、このときに大蔵大臣が、補正予算を出すのだ、こうは言えた義理じやございません。けれどもあなたがかりにノーと言われても、このきゆうくつな予算では、補正予算を組まざるを得ない段階がもうやがて出て来る、こう私は見ております。たとえばこの間理財局長が発表しました資金運用部の資金計画などを見ましても、昭和二十六年度からは五百四十億の繰越しがあつた。ところが二十七年度末は二百四十八億になつた。二十八年度末は百二十億になつて、これはもう資金運用部の資金計画の最低ぎりぎりだ、こう言われる。今までけちけちしながらためて来た資金運用部資金は、ここに至つて底を払うということに相なりましよう。あるいは今度の予算を見ると、手持ち国債を日銀へ売却をしておる資金運用部で百八十一億円、見返り資金の継承である投資特別会計でもつて百九十七億円、これらも考え方によつては、新規公債を発行するのとかわりはないインフレ要因になると思うのであります。こういうふうに歳入面における弾力性を非常に欠いておつて、インフレへのルートはここにも存しておると思うのでありますが、この点大蔵大臣はどのようにお考えになりましようか。
  63. 向井忠晴

    向井国務大臣 この投融資が多くなつた、あるいは剰余金を使つてしまつたというお話でございますが、これは先ほども申しましたように、いろいろと日本のこの現在の状態を改善するがために使う金で、やむを得ないものと思うのでありますが、財政、金融を通じてインフレを生じないように、蓄積資金の活用をはかることを考えております。ただいま申しましたように資金の還流に努める。そうして同時にインフレというものは、物資がない場合に非常にひどく起るもので、ただいまのように生産が十分に行つているときにはひどいインフレはむろんないのであつて、金融の措置によつてインフレを防ぎ得ることができると私はかたく信じております。
  64. 井出一太郎

    井出委員 大蔵大臣はかたく信じているということであつて、具体的な方策が少しも示されておらない。私は公債の問題、国民所得の問題あるいはその他歳入の方における幾多の問題がまだ伺いたく残つております。時間の制約がきつくございまするが、歳出面をこのまま見過すわけにも相ならぬ多くの問題がございますので、角度をかえてお伺いをいたします。  それは防衛関係費の問題であります。当初大蔵省原案では、全体を二千三百億に押えて、大体前年度のわくを踏襲しようとの構想であつたようでありますが、それが途中でアメリカ側との折衝によつて、安全保障諸費をゼロならしめ、防衛支出金を三十億減らし、保安庁費は二百三十八億増加するということで大体収まつたようであります。このことは私どもがさきの補正予算を審議いたしました際にも強く主張したところであつて、特に安全保障諸費を切れというこの要求向井蔵相が耳をかされて、先方に交渉したものである。これに対しては私どもは敬意を表しております。この機会に私は、アメリカ側との交渉てんまつを本委員会を通じて明らかにされたいと思います。これはアメリカ日本防衛に対する根本的態度を知る上においてもきわめて重大でございます。ことに安全保障諸費なるものは、二十七年度予算を審議いたしました際に最も論議の集中された点であつて、時の池田大蔵大臣は、言を左右にして行政協定がきまるまでというようなことでこれに対する答弁を与えなかつた。それゆえに二十七年度予算は、野党全部が返上論に立ち至つたというようなわけでございます。マーフイー大使と大分取組まれて御努力をなさつたようでありますが、その辺をひとつお話していただきたい。
  65. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。マーフイー大使と取組むというほどの大事ではございませんで、今度の防衛費を幾らにするということについて私の考えを申しました、それで帰りました、それだけのことであります。
  66. 井出一太郎

    井出委員 いかにもすらすらと運んだようでありますが、その間、何かもつとやりとりがありはしなかつたか。少くとも昨年は六百五十億というあの厖大な費目を組んだのであります。それが本年は、ただあなたが一言話しただけでゼロになる。こういうことで防衛費の問題が片づこうとは私は思わない。もう一ぺん御答弁を願います。     〔「手柄話をしなさい」と呼ぶ者あり〕
  67. 向井忠晴

    向井国務大臣 手柄があれば申し上げますが、一向手柄にも何にもならぬことであります。保安庁費が八百三十億にふえましたが、それがもつとある方がよいというふうな意見は、マーフイー大使でなく、ほかの人が言いましたけれども、それはその後八百三十億円という金高の説明をしまして問題が氷解したのであります。そのほかのものについては、お説の通りに、むずかしい話しで済んでおります。
  68. 井出一太郎

    井出委員 岡崎外務大臣は別に介添役はおやりになりませんでしたか。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は私でむろん話はいたしましたけれども向井大蔵大臣が話をいたしました。
  70. 井出一太郎

    井出委員 昭和二十七年度は、防衛費の柱ともいうべきものは、防衛支出金と安全保障諸費と保安庁費の三本建でございました。ところが二十八年度は、安全保障諸費がとられて防衛支出金と保安庁費の二本建になつてしまつた。去年所要であつて、本年はいらない、これは一体どういうわけなのか。また本年いらない以上は、もちろん明年もこれはいらぬ、こう考えてよろしいか、この点をお伺いいたします。
  71. 向井忠晴

    向井国務大臣 本年いりません金は来年もいらぬと思います。
  72. 井出一太郎

    井出委員 本年度末における、つまりこの三月末における防衛関係諸費が使用せられて、どの程度余る見込みであるか。特にこれは、安全保障諸費については、非常に大幅に余るはずでございます。防衛支出金の関係、安全保障諸費の関係、保安庁の経費、平和回復善後処理費並びに連合国財産処理費、この五つの項目について、三月末にどれくらいそれぞれの費目で剰余が出るか、これをお聞かせ願いたい。
  73. 向井忠晴

    向井国務大臣 その点は大分数字がこまかくなりますので、政府委員に返事をさせたいと存じます。
  74. 河野一之

    河野(一)政府委員 便宜私からお答えさせていただきたいと思います。  まず防衛支出金でございますが、これは補正予算のときに御説明申し上げましたように、在日米軍に対する交付金が五百七億円、それから行政協定第二十五条第二項(a)の施設等の提供、それから第十八条の駐留軍の行為に基く損失の補償、こういうことで百四十三億になつております。これは補正予算で御説明申し上げた通りであります。在日米軍の交付金の五百七億円は全額交付済みであります。従つて余りはございません。それから百四十三億円につきましては、一月三十一日現在で七十二億二千七百万円使用いたしております。残り七十一億円まだ未使用のものがあるわけでございますが、これが一番見込みが違いましたのは、不動産の購入費と返還財産の補償費でございました。不動産購入費と申しますのは、現在飛行機などの滑走路になつておる土地農地を買うことになつてつたのでありますが、価格等の点においてなかなか折合いがつきませんで、これがまだ少し残つております。それから接収返還財産の補償につきましても、補償価格等についていろいろ折合いがつきませんで、七十一億のうち、さしあたり最近出る見込みのものが約二十億程度ございます。その後さらにふえるとは思いますが、さしあたり五十億程度のものがまだどこに幾らということの見当がついておらない。しかしいずれその補償の価格の決定に伴いまして、これが出る予定であります。年度内に出るかも存じませんし、あるいは一部は繰越されるかもわかりません。御了承願いたいと思います。  その次に安全保障費でございます。安全保障費につきましては、先般補正予算のときには、たしか移しかえ使用済みが四十五億とかいうふうに申し上げたと思いますが、一月三十一日現在におきまして、移しかえ使用いたしました額が百九十八億六千二百万円、今後最近の期間におきまして、少くとも今月一ぱいに移しかえ使用の見込みのものが百七十五億九千三百万円、合計いたしまして、現在計画がはつきり確定し、使用中のものが三百七十五億円ほどございます。現在移しかえましたもののおもなるものを申し上げますと、道路が九十五億円でございます。前回のときには確定のものがたしか向井大蔵大臣から三十億と申されたと思うのでありますが、これが九十五億、港湾が二十五億六百万円、それから施設等の関係におきまして六十九億五千六百万円、その内訳を申し上げますと空軍関係が四十八億、陸軍関係が七億、海軍関係が約十四億円であります。保安庁の経費として九億円を移しかえております。今後移しかえ見込みのものといたしましては、道路の関係におきまして約四十四億円、それから港湾につきましては十五億五千万円、施設の関係で九十七億円、それから通信施設の関係で二十億円というものを予定いたしております。道路は現在までに第四回までの予算をつけておりますが、第五次のものを最近につける予定になつております。港湾につきましては、門司でありますとか小樽、川崎、東京港等でございますが、これはすでに計画決定しておる事項でございますが、事務的な手続におきまして、まだ移しかえの手続が完了いたしておりません。数日中にこれをやる予定でございます。それから施設につきましては、そのうち約四十六億円は空軍及び陸軍関係の施設でございますが、そのほか東京横浜地区におきまして、たとえば第一ホテルとか、大阪ビル、横浜郵船ビル等の接収解除を行おうとして、最近において手をつけたいと思つておるものが約五十億程度ございます。通信関係におきましては、柏飛行場の市外ケーブルでありますとか、あるいは東京・国分寺間、横浜・富岡間のケーブルとか、こういつたようなものを最近の期間において予算をつける予定になつております。なお未計画のものが相当あるのでございますが、御承知のようにこの施設関係につきましては、駐留軍当局からいろいろな設計の資料を出していただきまして、それを日本側の設計に直すのでございまして、そのために相当の手数を要しております。それから施設につきましては、具体的な場所等の決定が相当遅れている関係もございまして、当初の計画より多少ずれているのでございますが、補正予算の当時申し上げました金額は、大体その程度いるであろうというふうに考えております。また代替施設等につきましても、単に何坪がいるということでなしに、どの程度の規模のものを、必ずしもアメリカ軍としての要請ということよりは、日本的な企画によつてつてもらうというような点で、木造にするか、あるいはコンクリートにするか、そういつた点についての具体的な話合いが相当手間取つているという点もあるのでございます。
  75. 井出一太郎

    井出委員 安全保障のぎりぎりの余りは幾らですか。
  76. 河野一之

    河野(一)政府委員 今後の計画といたしましては、余りになるものはございません。(「一月三十一日現在で幾らになるか」。と呼ぶ者あり)先ほど申し上げましたように、一月三十一日現在で百九十八億でございます。最近の期間においてつけまするものが百七十五億円でございます。残り百八十五億ほどあるわけでございますが、これについては空軍関係の施設二十億円、陸軍関係の施設八十億円というものが現在予定されております。そのほか横浜地区その他の約七万坪の施設移転の関係で、七十億円程度が現在予定されております。
  77. 太田正孝

    太田委員長 主計局長ちよつと申し上げますが、皆さんの御質問の趣意は、防衛費の中の各費目でどれだけ残るかということだと思います。私の今聞いたところでは……。
  78. 河野一之

    河野(一)政府委員 現在の計画のもとにおいては、残る見込みはございません。
  79. 太田正孝

    太田委員長 先ほど安全保障諸費が百八十五億円と空に覚えているのですが、それがどうなるかということが一番大きな問題じやないかと思います。
  80. 河野一之

    河野(一)政府委員 百八十五億円の予算をつけましたので、これでもつて現在工事を施行いたしておるのでございます。従つてこれはそのまま使つているわけであります。さらに最近の期間において百七十五億円のものをつける予定であります。現についたものもございますが、これも使う予定であります。残りが百八十数億円ございますが、これもやはり先ほど申し上げましたような数字で、空軍関係二十億、陸軍関係八十億程度の現在の計画を持つておるということを申し上げたのであります。  それから次は平和回復善後処理費でございますが、これは御承知のように二十七年度におきましては、前年度の繰越分と合せまして二百十億でございますが、一月三十一日現在におきまして、百五十億円使用いたしております。  なお今後使用の予定と考えられておるものが二十五億ほどございまして、返還の港湾都市の復旧費、賠償指定外財産の補償その他でございますが、大体三十億円程度が明年度に繰越されるかと存じます。  それから連合国財産は大体年度内三十億円程度の使用であろうと思います。  それから保安庁の経費でございますが、一月三十一日現在におきまして、支出負担行為未済のものが三百七十億円ほどございます。そのうち人件費が五十億円程度でございます。一番大きな原因は機材費でございますが、機材費が約二百二十億円程度でございますが、この前の予算のときにもたびたび申し上げましたように、検収が遅れておるということと、それから試作をした上で注文を発しておるというような関係がございます。それから装備の内容がなかなか決定に至らなかつたが、最近におきましてこれが決定いたしましたので、今後順調に出て行くと思つております。
  81. 井出一太郎

    井出委員 ただいまは私の要求よりは説明が少し詳し過ぎたようであります。そこでこれは資料としてひとつ御提出を願いたい。ただいまの五つの費目に関連をして、その予算額、移しかえをいたしました額、あるいは契約額を事業別、工事別にお示しをいただきたい。その残が幾ら、こういつた一連の表を御提出をいただきたいと思います。この問題はいずれこの資料を拝見いたしましてから詳細に論じたいと思いますが、昨年安全保障諸費を論じました際に、われわれの了解しおるところでは、進駐軍が都心から郊外あるいは地方へ移転する、その移転費ないし施設費である。その大よその額はまず三百億以内でとどまる、まずこう聞いておつたわけであります。ところがどうも今主計局長の説明からはなにか年度の終りに近くなつて来て、むやみに濫費をいたしておるような感じがいたしてなりません。これはひとつ数字の御提出を待つて詳細に検討をいたしたいと思います。  次に今回の予算の中で公共事業費が一千億を越えております。これは地方費の義務負担部分を合せますと、おそらく千五百億以上に相なるでありましよう。われわれの知るところによれば、この費目の効率といいますか、これが末端まで行く場合に非常に減殺されてしまう。途中で水が漏つてしまうという事実が多いのであります。まずこの予算を獲得するがためには、陳情、運動等に旅費がいる。あるいは饗応、贈答の費用が莫大である。各省ごとに外郭団体なるものができておつて、その方でまた賦課金を天ばねする。従いましてこれは工事を施行する段取りになりました場合、地方団体は地元負担になるべきものを出さないくふうをして、多くは国費だけでやろうとしておる。その間土建屋との談合もあれば、不正工事も行われる、こういうようなことでありまして、実際の工事量というものはせつかく国で配付いたしました予算額の三割も四割も減つてしまうのが普通でございます。そこには利権がからむ、あるいは疑獄の暗い影がさして来る。そのために先年の天狗橋事件というふうなものなどもございました。これは監査機関といいますか、監察制度といいますか、公共事業費をこれだけ厖大に使います以上、何か本来の目的のために効率的使用ができますような道がなければならぬと考える。これは大蔵大臣どうおぼしめしでありますか、この点を伺いたい。
  82. 向井忠晴

    向井国務大臣 私もそういう点は懸念を持つております。こういう場合に今おつしやつたようなことを監督する機関はあるようですが、それが十分に働いているかどうかということは私は疑念を持つておるのです。たとえば会計検査院が調べるとかあるいは監査制度があるとかいいますが、それが十分に動いていないと欠陥が起る、従つてこういう制度を十分に動かすように私としては努力いたす考えでございます。
  83. 井出一太郎

    井出委員 公共事業費の中で弾丸道路というのがございますが、私は一ぺんこれの予算額と工事計画の大要を伺いたいのです。予算額は大蔵大臣おわかりですか。
  84. 河野一之

    河野(一)政府委員 東京・大阪間のいわゆる弾丸道路という計画が前からあることは御承知の通りであります。これは約五百七十キロでございまして、そのうちトンネルの分が三十二キロというふうにいわれております。総額は千百五十億円程度でございます。
  85. 井出一太郎

    井出委員 この道路は昭和二十八年度において、東京・御殿場間を建設するんだと聞きますが、それは事実でありましようか。またそれに要する予算の額は何ほどであるか。大阪まで直通するためには、一体何箇年計画でおやりになるのか、これがおわかりでしたらお聞きしたい。
  86. 河野一之

    河野(一)政府委員 ただいまのところ東京・大阪間のいわゆる弾丸道路を早急にやるという計画は樹立いたしておりません。ただいま井出さんのおつしやつたのは東京・御殿場間の道路をやるかというお話だと思うのでございますが、これは少し誤伝がございまして、東京・座間・御殿場間の道路は、相当荒廃いたしておりまして、また車の行きかいも駐留軍関係で非常に頻繁でございまして、これを改修してほしいというお話があるのであります。これをやりますと、現在のいわゆる弾丸道路というのは二十二メートルでございますが、普通の改修をいたしまして、十二メートル程度の現在あります路線を大体その通りつて行くといたしますと、大体三十三億円程度でございます。そのことで現在いろいろと計画をいたしておる段階でございます。
  87. 井出一太郎

    井出委員 ただいま三十三億円という予算額が明示されましたが、この費目は何から出るのでございますか。
  88. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは安全保障費で駐留軍の施設の間を連絡する、今まで九十五億円と先ほど申し上げましたが、もしやるといたしますれば、あの系統の経費で支出することになるであろうと思います。しかしまだその計画としては具体的に確定いたしておりません。
  89. 井出一太郎

    井出委員 この東京・御殿場間の道路というものは、いわゆる弾丸道路とは違うようでありますが、世上非常な疑惑を生んでおります。東京から富士山麓の演習地へ通ずるところの軍用道路である。先ほどの安全保障費との問題にもからみましてこういうものを一体あえてこの際やる必要があるかどうか、これだけのものをやるのならば、もつと直接緊急な、ただいまの住宅問題などをどうするか。十坪の住宅がかりに二十万円でできるとするならば、この三十億の金を使えば、一万五千戸の庶民住宅ができる。金の使い方という点から申しましても、相当に問題のある費目だと思うのであります。  私に与えられた時間はすでに経過をいたしまして、次の尾崎さんにはたいへん恐縮でありますが、もう一点食糧増産対策費の問題を伺つておきたいと思います。本年は四百九十二億円計上してございます。前年に比して八十九億からの増加を示しておる。終戦以来連年食糧増産のためにつぎ込んだ国費というものは莫大なものであります。けれども日本の米穀生産は、まず六千五百万石あたりで、そう飛躍的な増強は見られない。昨年、やはりこの予算委員会において私は廣川農林大臣に、昨年は三百九十億ぐらいの予算でありましたが、この金を使つて、一体幾らの増産をもくろんでおるのか、こう伺いましたところ、土地改良、開拓によつて百五十万石、品種改良その他によつて二百五十万石、計四百万石の増産を目途としておるという御答弁を拝承いたしております。しからば本年は昨年に比して、八十九億食糧増産費は増大になつておる。本年の増産目標は幾らか、これは廣川さんに伺います。
  90. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 食糧の増産に多額な費用を使つておるが、効果があまり見えないのではないかというお話でありますが、年々人口がふえて参るのであります。人口増に必要な食糧は大体百五十万石、それからまた年々農地がつぶれて参るのでありまして、この農地のつぶれるものを換算いたしますと、大体百万石というものが常識であります。これだけのものを、年々輸入を増加するかというと、そうではないのでありまして、これで補つて参るところに、今までの投資した効率が現われておると私は思うのであります。御存じのように本年の供出米を見ればわかるのでありますが、現在すでに千六百万石近く集つておるのでありましてこれを昨年度に比べますと、非常に多くなつているわけであります。明年度のことについては実は数字を手持ちしておりませんが、明確なところはあとから政府委員答弁いたさせます。
  91. 井出一太郎

    井出委員 全然見当違いなのです。私は供出のことなんかちつとも聞いてはおらぬのですが、廣川式禪問答になりそうでありますが、もう一ぺん伺います。本年これだけの厖大なる国費を使つて、増産目標はどれだけを予定されておるか。
  92. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 目標の数字の的確のことは実は今手元にありませんので、お答えできませんが、あとで政府委員から御答弁申させます。
  93. 井出一太郎

    井出委員 あなたは予算をとる名人だといわれている。ともかく四百九十二億の大きな予算をさらつて行かれた。それに対して増産目標が幾らか御存じないということは、これはひどい農林大臣です。あなたは党内問題にうき身をやつしておられて、さつぱり政策には身が入つておられない。大蔵省で発表してある数字はこれだけの費目を使つて百万石、こういうようにわれわれは承知をしておりますので、廣川さんに伺わなくてもこの線で予算の論議を進めて参りたいと思います。  まだ残余の諸問題を持つておるのでありますが、先ほど尾崎委員との紳士協約もございますので、他日時間をお与えくださいまして、残つた諸問題を論及いたしたいと思います。一応これをもつて終ります。
  94. 太田正孝

    太田委員長 井出君御要求の資料につきましては、政府も早くお出しになるように御手配を願いたいと思います。  尾崎末吉君。
  95. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 総理大臣からお伺いいたします。  総理は昨年の第十三通常国会におきまして、私のここからの質問に対して、再軍備ということは考えていない。敗戦後の日本を立て直す重大時期である現在は、何はさておいても国民経済力の充実、国民生活の安定が第一である。将来国民の経済力が一層充実して、独立国の防備は自分の手でやらねばならぬという国民大多数の盛り上る声が出て来た場合には、そのときになつて初めて再軍備のことを考えたらいいだろう、従つて憲法の改正等のごときも考えていない、こういう意味の御答弁をなさつたのであります。その後も機会あるごとにこの趣意お話があつたのでありますが、現在もこの御心境におかわりがないか、まずこのことを伺いたいのであります。
  96. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。その心境については、こうもかわつておりません。
  97. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 けつこうであります。また自衛力の漸増ということについての私の質問に対しましても、現在わが国が持ち、かつ漸増しようという自衛力は、日本の国内の治安を守るにふさわしいものといたしたいというのであつて、わが保安隊当時は警察予備隊であります。これが米国その他の要請等によつて外地に出るようなことはしないし、また外地に出るようなそういうまとまつた組織と力とを持つものでもない。従つて二十八年度からの自衛力の漸増は、二十七年度の治安防衛費関係の千八百二十億円以上に出る計画はないのだ。かえつて若干減少する見込みである。経費は減ずるが、装備や訓練等において増強となることを考えておる。これが自衛力の漸増であるのだ。こういう趣旨のことを、当時の池田大蔵大臣とともに答弁しておられるのでありますが、このことはここに提出をされました昭和二十八年度の予算案の中から見ますと、防衛費に関する分は、二十七年度よりも約三百五十億円ほど減少せられておるのでございますから、総理の言われた方針にはもとつていない、こういうことを証明することができるのでありますが、ただ私はここにいささか心配をいたしますのは、米国アイゼンハウワー新大統領によつて極東政府が相当に強化というか、あるいはまた積極化せられるのではあるまいか、こういうふうに思われますので、それによつて朝鮮その他の諸情勢等に変化が起つた場合必ず起るとは申しませんが、起つた場合がありますならば、その際現在までのこの吉田総理の御方針によつて、わが国の安全が保たれ得るかどうか、心配しなくてよろしいかどうか、この点について、重ねて総理の御確信を伺いたいのであります。
  98. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは先ほど私から一応御説明もいたしましたが、アメリカ政府の方針については、実は私も承知しておりません。また何らの暗示も受けておりません。思うに新大統領にしても、また新国務長官にしても、愼重にその政策を勘案して、方策を決定するつもりではないかと思います。現にダレス氏は近くヨーロツパに行かれるそうでありますし、新聞の伝えるところによればこれは新聞だけでありますが、インドその他東洋にも来るということであります。新国務長官としては、各地をまわつてその実情に即した政策を立てるのであろうと思います。その結果、日本にある要請をするということがありましても、いかなる要請をするか、これは先ほど申した通りダレス氏にしても、またドツジ氏にしても、日本独立日本経済力を無視したような乱暴な要請をせられるはずはないと思います。  なぜかと申すと、日本講和条約について最も力を入れていただいたのはダレス氏であり、また日本均衡予算、その他についてインフレを防止して、日本経済を健全な基礎に置こうと企てられたのはドツジ氏であります。この両氏が重要な地位につかれた新アメリカ政府として、日本に対して無理な要求をせられることは断じてないと私は確信いたします。いかなる要請をなすつもりであるかということは、これは今のところ私はまだ全然見当がつきませんが、大体の見通しは今申したようなことであります。
  99. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に伺いますのは、ちよつと角度をかえてお伺いいたしたいのでありますが、日本独立と安全とのために、もとより国連へ加盟をせなばならぬことは当然であります。わが国が国連へ加盟した場合、あるいはまた加盟前の現在におきましても、国際連合に対しまして協力をいたさなければならないのはもとよりであると思うのであります。一体わが国が国際連合に協力をするところの具体的の方法、どういう方法で協力をするのか、これをもう少し砕いて申しますれば、さつきから総理が申されますように、米国がわが国に対して、無理に再軍備をせよとか、またわが国の保安隊を朝鮮戦線等に出動せよとかいうことはないとすれば、日本アメリカ国連によつて独立と定全とを保障してもらうが、日本が積極的に国連に協力する、そのものが現在のところでは見当らない。でありますから国連米国等によつて保障してもらうかわりに、日本ももとより協力をしなければならないのだが、その協力する具体的の方法はどういうものがあるのか、このことを伺つておきたいのであります。
  100. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、今申したようなことは大体の見通しであります。そこで日本国連に加入するその場合に、いかなる条件でもつて日本の加入を許すか、また日本がいかなる条件をもつて加入を希望するか、これは将来の問題でありまして、日本の加入を許す場合には、こういう条件でとか、あるいはこういうことをしてもらいたいとかいうことは、自然出るでありましようが、しかし国連日本にある要請をする、あるいはある条件をつけるとしても、日本の憲法が、あるいは日本の法律その他がこれを許しておらない。たとえば兵力を持てとかなんとかいうことは言わないことと思います。その国の憲法その他において容認せられた以上の手段を要求するということはないはずであると私は思います。また日本の輿論が承認のできないような要求、すなわち無理な要求をいたすことはない。というのは、それでは国連に加入することによつて日本の秩序が乱れるとか、あるいは日本が混乱を生ずるということであり、国連の目的とするところは平和であり、世界の平和を増進するというところでありますから、日本を混乱に陥らしめるような要請をいたすということは常識的にないと思います。しからばどういう条件かと言われましても、条件について話を具体的に、こういう条件でもつて日本に入つてもらいたいというような交渉は、今までないのでありますから、これに対して日本からこういう条件ならば入る、こういう条件ならばごめんをこうむるとかいうことが、今言える段階にありませんからこれは差控えます。
  101. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 わかりました。要するに加入の条件についてはまだ示されていないのであるが、日本の憲法の範囲内による加入の条件となるであろう。従つてそう心配することはない。こういうふうなことに了承をいたしておきます。  次に伺いますのは、平和条約は将来適当な時期におきまして、米国のあつせんや連合国の好意等をかち得ますならば、もとよりわが国の外交上の努力等も相まつてある程度改訂できるものであるかどうか。このことについての見通しを伺いたいのであります。と申しますのは、先ほども井出君からこの点に触れられたようでありますが、アメリカのアイゼンハウアー大統領は、ヤルタ協定を廃棄するという方針を発表しているのでありますが、協定を廃棄する時期と方法がどういうものであるかはもとより私存じませんけれども、このヤルタ協定とポツダム宣言と平和条約とは密接な関係があるのでありますから、このことを伺つておきたいのであります。幸いにして平和条約が将来改訂できるという見込みがありといたしますならば、千島や樺太等戦争によらないで、わが国の領土であつたところは将来日本に返つて来るという楽しみも出て参りますので、この点を伺つておきたいのであります。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 条約もこれは人間のつくつたものでありますから、関係当事国の意見が合えば、改訂ということもむろん行われるわけであります。しかしこの特定の問題につきまして、ただいま改訂できるものかできないものかという議論を、ただ議論として申しても、いろいろ国内に反響を起し、それが今の段階では国民に事実以上の期待を抱かせるようなことになるとかえつていけないと思いますので、理論としては当事国に相談すれば、それは改訂できるものでありますけれども、今改訂できるのであるか、するのであるかというようなことについては意見を差控えたいと思います。
  103. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それ以上追究いたすことはいたしません。次に伺いますのは、元の日本の統治地帯に残留いたしております元のわが国民の私有財産は、一体これからどうなるのかということと、それから平和条約によつて請求権を放棄いたしました地域にある私有財産に対しては、将来やはりこの条約の改訂等の機会か、その他のよいチヤンスをとらえまして、復活を要求することはできないものであるかどうか。復活ができないといたしますならば、これらの請求権を放棄した私有財産に対しましては、一体政府は将来どういうことをなさろうと考えておるのであるか、この点も伺つておきたいのであります。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 初めの方の、日本領土から離れました地域にある国民の私有財産等につきましては、これは平和条約によりまして、その当該国と日本との間に協議をいたしてきめることになつております。それからそれ以外の、今最後にも言われました連合国等にありまする私有財産については、これはまた今お話のように、将来何か改訂されれば別でありますが、条約によりますれば、これは放棄することになつておりますからして、国内的に見れば、私有財産の尊重という見地から何らかの措置をしなければならないわけであります。但しこれも財政その他の見地より、たとえば戦争中戦災にあいました人々の保険料等を一定の限度で打切つたり、あるいはいわゆる在外公館借入金という部類に属するものを一定限度で打切つておるというような、いろいろな事態がありますので、財政とのにらみ合せ、またほかの取扱いと公平を期するという考え方もありましようし、これは大蔵省等においてずつと研究中であります。まだどういう措置をとるかということはきまつておらないわけであります。
  105. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に伺いますのは、アイゼンハウワー・アメリカ大統領の新政府が発足いたしまして、この新大統領はその就任演説で、米国の今後進むべき指針として九原則を明らかにいたしたのは御承知の通りであります。その九原則の中におきまして、侵略者に対しては絶対に融和妥協しない、隣邦を助けるとともに、その隣邦の協力を期待し、またかかる協力の前提として自由諸国家間の経済力、生産、貿易の発展等に努力する、こう述べておるようでありますが、これは前のトルーマン大統領のしまいのころにおきまして変更せられておつた経済援助はやめて、軍事援助に切りかえる、こういうやり方になつてつたのを、また今回のアイゼンハウアー大統領によりましてさらに変更して、さつき申しましたような内容の援助をする、こういうふうに解釈せられるのであります。この際政府の努力によりまして、わが日本に対しましてもさらに経済援助を与えられるようにこれを要請し、かつその目的を達成する見込みはないものであるかどうか、この点について御見解を伺つておきたいのであります。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体の方針といたしましては、今おつしやつたように、直接の援助というよりも、貿易等の面においてできるだけの便宜をはかつて、そうしてその国の外貨等の状況がよくなるように、それが間接には援助になるような方向に向つて行くようでありまして、これはアメリカのみならず、援助を受ける方と言つては悪いかもしれませんが、たとえばイギリスであるとかその他の国々も、援助というようなものよりも、自分の力で働いてとり得る貿易というような面の方に、アメリカがもつと重きを置くべきだというような意見と呼応するものかと思います。そのような方針は、日本としても私はけつこうなことだと思うのでありまして、もしそれによつて日本のドル地域との貿易が大いに発展し得るようなことになれば、従つて日本経済もよくなりまして、援助等はなくても十分やつて行ける場合があると思います。しかし他方においてまだなかなか困難な状況もあります。援助と一口に申しますけれども、今まで直接にお金を貸すというような種類の援助は比較的少くて、たとえば軍事援助と申しますか、そういう種類のものとか、あるいは日本で言えば特需にあたるといつたようなものが、かなり援助の部類に入つていると思います。日本の場合にしますと、そのいわゆる特需とか新特需とかいわれるような方面の注文は、今後むしろ前よりもふえるような傾向にあると考えておりますが、いずれにいたしましても、われわれとしては各国と共同して、日本経済の改善になるような努力をずつといたしております。
  107. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に伺いますのは、政府は来るべき日米安全保障条約の改訂の時期におきましてこれはもう遠くないことであると思うのでありますが、どういう用意をいたしておられるのであるか。と申しますのは、この安保条約を元のままに延長しようということであるのか。(「行政協定だよ」と呼ぶ者あり)これは行政協定でありますが、そのうちの適当ならざる部分と思われるところを、改訂するというような御用意があるのであるか、そういうことについての御所信を伺つておきたいのであります。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのはもちろん行政協定の問題だろうと思いますが、行政協定はあの規定にありますように、一年たつた後に、裁判管轄権等につきましてさらに討議をいたす。いたすが、日本側の当時のまた今でもそうでありますが、当時の主張は、あの裁判管轄権というかわりに、いわゆるNATOの協定を入れようじやないかというのが原案であります。これは種々困難があつてできなかつたのであります。そこで協定にもNATOの協定が批准された場合にはそれを入れる。そうでない場合には、一年後においてさらに検討をするということであつたのであります。幸いにしてNATOの協定は米国の上院に批准されるために提出されておるようでありまして、もしこの協定の批准が四月二十八日以前に完了いたしますれば、そのままNATO協定が、そのままといいましても、こまかい規定はヨーロツパ日本では違うところがありますが、大体そのまま入るわけであります。そうでない場合には別の考慮をしなければならぬわけであります。この点については、ただいまずつと研究を進めておりますし、アメリカ側とも時折、折にふれ相互の意見の交換もいたしておりますが、まだNATO協定の批准前でありますし、その内容等についてはしばらくNATO協定の様子を見てから申し上げたいと考えております。
  109. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そこで伺いますのは、イギリス連邦との間における刑事裁判権の問題で、相当国民の頭を刺激いたしたのでありますが、その後あの消息を知る機会がないのでありますが、一体どういうことになつておりますか。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 イギリス連邦とおつしやつたのは、国連軍全体との協定だと思うのでありますが、これは前にも申し上げました通り国連軍側の主張と日本側の主張が合わないのであります。そこでたびたび話をいたしましたけれども、まだ協定締結のところまで行つておりません。しかしながら今でも現に定期的に話をいたしております。そこで大体この相互の立場はわかるのでありますが、どうもこちらも一定のところ以上には譲れない点がありますし、向うも国内の立場上なかなかむずかしい点があるようでございまして、ただいまのところは、この協定ができない間は依然として従来のような取扱いで行こうというつもりでおります。しかしながらいろいろ水兵事件その他がありまして、先方も日本側の裁判の係争とかあるいは検察のやり方とかいうことに多大の理解を持つている。われわれの方も先方の裁判の方式とかあるいは軍隊の紀律とか規則とかいうものにつきましても、さらに詳しい内容を知ることができましたので、今後はそうむずかしい事件が起らずに済みそうに考えておりますが、これは私だけの考えであります。できるだけ早くこれもNATO協定ができますれば、双方簡単に問題は解決できるわけであります。しからざれば、今申し上げた通り、なかなか主要点について話合いがむずかしいので、暫定的に取扱いの基準をこちら側できめてやつて行くよりしかたがないであろう、こう考えます。
  111. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次は外資導入についてお伺いいたします。外資の導入につきましては、政府が今日まで相当な努力を払つて来られたことはよくわかるのであります。そこで特に伺つておきたいと思いますことは、従来考えられて来た外資導入の方法、また従来御努力を願つた外資導入の方法からさらに方法を一変して、新しい外資導入の御計画をなされる抱負はないかどうか。それにはもとより政府が直接交渉する外資導入と、民間で相談するものとの二つにわかれると思うのでありますが、その両方についてできるだけ具体的な御構想を伺いたいのであります。
  112. 向井忠晴

    向井国務大臣 外資導入を政府の手でいたすということはあまり適当でないかというふうに存じます。それはあちらの、おもにアメリカが相手でございますが、アメリカの方では政治的な資本の融通ということはあまり考えていないようであります。従つてこちらの国家が向うの国家に借りるというようなことは、ただいまの状態では縁遠いというふうに考えております。それからあちらの民間の人のお金を持つて来るとしますと、やはりこちらへは仕事の上でお金を持つて来る、あるいは事業の性質で向うが投資のうま味があるから入れようとか、あるいは金を貸して利子で利益を得るというようなことは、相当仕事によつては余地があろうと思います。それからもう一つは、あちらの銀行家が、いわゆる世界銀行とか、輸出入銀行というようなところが、日本に借款を許すということがあると思います。これはあるいは日本政府が保証をしてある仕事に出資をしてもらう、貸してもらう、融資をしてもらうということでございますが、まあその二つで行くべきものだというふうに考えております。その他個人的にこちらの株を持つとか、技術をこちらに出資するとかいうようなやり方があるようであります。これはあまり目立たずにぽつぽつ種々できておりますが、これも今後進めて行けばいいというように考えます。しかし何十億ドル、何百億ドルというようなそんな大きな話は、これからもちよつと実際問題としてはしばらく見込みがないというように私は考えております。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
  113. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 英国の世界投資会社、セールス・カンパニア社長が日本に来ておられて、去る四日帝国ホテルにおきまして一万田日銀総裁、津島大蔵省顧問、佐藤帝銀社長、川北興銀総裁その他と会見せられて、日本における今後の電源開発に伴う重工業や自衛力漸増による防衛生産等の拡充に対して、投資を行う方針を明らかにした、こう新聞に伝えられておりますが、ここで政府伺つておきたいのは、先ほどの大蔵大臣の御答弁とも関連をいたすのでありますが、政府の保証によるなり、ごあつせんによるなり、あるいはまた民間同士の話合いによるなりして導入するその外資を、日本におけるどういうような事業に使わせるか。あるいは事業の種類によつてはなるべくその外資を導入することを避けたいというような事業の種類、種別を今においてお考えになつておく必要はないかどうか。もつと具体的に申しますならば、電力事業とか、電気軌道の事業とか、そういつた平和産業、交通事業みたいなものに対する外資の導入はもとよりけつこうでありますが、将来の日本に非常に不安を与えるような、たとえば国内航空事業等のごとき問題につきまして、向うの外資を著しくたくさん導入して、そうしてその実権を握らせるというようなことにでもなると、その影響するところは相当に考慮しなければならない、こういうことなのであります。重ねて申しますが、事業の種類によつて外資を使うか使わないか。こういうことを大体において方針をお定めになつておく必要はないか。このことを伺つておきたい。
  114. 向井忠晴

    向井国務大臣 外資を使います上に、どういう事業に使うかということは考えておく必要もありますことで、今お話のような、電力事業あるいは鉄道交通機関、それから重要産業の主たるものである石炭の採掘を改善することとか、そういうようなことに外資の入りますのは非常によろしいことと思います。それから今おつしやつたように、航空事業なんぞに向うが金を入れて、そのために不都合が起るといけないということも事実でございます。それは事業の経営とか管理とかいうことが、向うの手に移らない以上はさしつかえないと思います。初めの契約において、その仕事のために金を借りるという形をとつておれば、それによつて支配権をとられるというようなことはございません。ある会社の株を持たせるということになりますと、その会社の株の過半数でも持つて、経営に参加する。あるいは経営に参加するだけならまだいいでしようが、握るというようなことになると、やつかいな問題が起りますので、その点は十分にまずもつて日本政府としては考えて行かなければならないというふうに考えております。
  115. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これは資料としてお願いをしてもけつこうでありますが、あるいはおわかりでしたら今御答弁伺つておきたいのでありますが、今までの外資導入の実績を大体でいいですから、お示しを願いたい。
  116. 向井忠晴

    向井国務大臣 私そらで覚えておりませんので、これは後ほどお手元に差上げることにいたします。
  117. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 この質問は総理大臣に特にお伺いいたしたいのでありますが、総理大臣が強調せられておりますし、私どもまたできるだけの御協力を申し上げておりますところの対米親善関係の緊密化についての問題であります。この間の施政方針の演説においても、総理はこれを強調せられたのでありますが、この対米親善関係を緊密化するということについては、どういつたようなやり方によつて親善関係を緊密にして行くか。なぜこういうことを御質問申し上げるかと申しますと、近ごろ一部に、私どもが見ましても、反米的と思われるような言動がふえつつあるかのように思われますので、特に心配になりますので、このことを伺つておきたいのでありますが、何か御構想がありましたらお聞かせ願いたいのであります。
  118. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたしますが、特に日米親善のためにこういう仕事をすべきだ、あるいは制度、組織でも、そういうふうなことは、私はかえつてよくないと思うのであります。今日アメリカ考え方としては、いわゆる自由国家の共同防衛とか、あるいは集団的防衛とかいうような線を強調しておりますが、政府としては、これに対して誠心誠意協調するということがまず第一歩でありまして、特に人為的にどうということはしない方がよろしいと思つておるのであります。なるほどお話のように、一種の反米感情とか、あるいは言論がずいぶんあります。しかしそれは洗つてみますると、実は根底がないのであります。たとえば日本が新政府によつて軍備を強要せられるのではないか。あるいは朝鮮派兵というようなことになるのではないかというような心配から生ずるいろいろな反米的言論の現われがあります。しかしながらその基礎たる事実を洗つてみれば、何らそういうことがないのでありますから、こういう議論は自然そのうちに解消すると思うのであります。要はアメリカ政府が、あるいはアメリカ国民日本の国民の気持を理解し、また日本国民もアメリカの事情を理解することによつて、自然の間に日米親善というものができると思う。それに対して故意にある行為をなすということはよくないことと思います。が、海外事情といいますか、あるいは国際関係から申すと、日米の間に緊密な関係を保つて行くことが、相互の利益であるということはよく了解されつつあると思うのであります。ゆえに特にこういうことをしたらよかろうということで、人為的に日米の関係をこしらえ上げるということは、かえつてよくないと思うのであります。私ははなはだ無策のようでありますが、成行きにまかせておいても好結果を生ずる、人為的に作為をなすということは、かえつて日米の親善を傷つけやしないかと考えております。
  119. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 人口問題の対策について伺います。あとから外務大臣に移民局等の問題についてお伺いしますが、ここでは総理にまずお尋ねいたします。今申しました移民や貿易振興等の問題は、人口対策として考えなければならない重要問題でありますが、内における人口対策の一つといたしまして、国土を有効に利用いたしまして、産業と経済の開発を十分にはからなければならないことはもとよりでありますが、政策の上からする産業と経済の開発だけではなくして、国土開発青年隊というがごとき構想のものを具体化して、日本の青年たちに愛国の念を振起せしめながら、一方においては道路の開発や、あるいは植林事業や、あるいは災害防止等の事業に喜んで協力をせしめるという必要も感ぜられるのであります。こういつたような国土開発青年隊というがごとき構想によつて、何らか具体的な方法をお立てになるお考えはないかどうか。このことを伺つておきたいのであります。
  120. 吉田茂

    吉田国務大臣 人口問題については、私はかねて委員会その他で申しておつたと思いますが、結局人口の問題は日本だけの問題ではなくて、いわゆる世界的な問題であります。つまり食糧の増産が人口の増殖に伴わないということが今大問題になつておるので、一つ世界的に人口問題の解決ということをはかるべきであり、国内問題として今お話のような方策もあるでありましようし、要するに日本の産業政策、その他が総合的に効力を発揮して、そして過剰人口、あるいは増殖した人口が生産方面に吸収せられるということにならなければ移民問題のごときも一つの方法でありましようが、これだけでもつて人口問題を解決するということはむずかしいと思います。そこで地方の青少年をして今お話のような方向に向けて行くということも一つの方法でありましよう。しかしただこれのみによつて解決するということはむずかしいと思う。これは政府の総合的施策によつて、人口を吸収するという案を立てるよりほか方法はないのであろうかと思います。なお移民問題については外務大臣からお答をいたさせます。
  121. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 移民問題については外務大臣にあとから少しく触れてお尋ねいたします。総理大臣にいま少しくお伺いしたいことは、戦争犯罪者で巣鴨におられる、あるいは外地におつて受刑をしておる方々に対する処置については、衆参両院におきましても、しばしば決議等をもつてその善処方を要望いたしておるのでありますが、その後この問題の成行きはどういうふうになつておりましようか。これは外務大臣でけつこうであります。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国内におきましてもまた国会におきましても、いろいろの意思表示等がありまして、これも関係国にはずつと伝わつております。政府としてもこれらの考え方を反映しまして、各方面にいろいろの申入、要請等を行つておりますのは、もうすでに御存じのことだと思います。その結果どうなつたかと申しますと、アメリカの方は御承知のように、いわゆるクレマンシー・ボードというものができて、仮釈放等を行つて来ております。A級を含む全部の戦争裁判受刑者に対する全面的釈放ということは、先般の立太子礼のときにも申し入れたのでありますが、これにつきましては賛成してもよかろうと言つてくれたのは、ただいまのところインド政府と中華民国政府だけでありまして、アメリカとかイギリスとかフランスとかいうような国々は、お互いに、関係国間で相談をするという程度にしかまだ回答は来ておりません。しかしイギリスにおきましてもあるいはフランスにおきましても、それからオランダもそうだつたと思いますが、アメリカにおきますような、名前は違いましようが、クレマンシー・ボートというような、赦免委員会と申しますか、そういうようなものをつくりまして、B、C級については仮出所、減刑その他につきまして研究して、個々のケースに基いて適当に処置をするようにいたすことになつておるという通告がありました。フイリピンにおります人々につきましては、これまただんだん賠償その他の話合いが進むにつれまして、空気もよくなつて来たようであります。将来に多少ずつ明るい期待がかけられるように思つております。現在におきましては、待遇の改善に主として重きを置いておりますが、この方面ではかなり満足を得つつあると思つております。現にかなり感謝をしておるような通信もあるのであります。濠州のマヌス島におりまする人々につきましては、先般濠州の海軍大臣が見えましたが、マヌス島の管轄者だそうでありますので、この人ともいろいろ話をいたしましたが、まだいろいろの関係で、ただちに措置をすることは困難と思いますけれども、これも暗い見通しではないと私は考えております。大体以上のような現在までの経過であります。
  123. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 なお外務大臣に伺いますが、吉田総理の言われる自由諸国家群との提携ということは、自由国家以外の国は、先方も提携をしないし、そうなるとこちらも提携をしにくいということであると思うのであります。また外務大臣の言われるところも、吉田総理と同じ趣意と思うのであります。すなわち、午前中も問題になつたようでありましたが、共産主義国家においてさえ、その当初は人民戦線であるとか、あるいは統一戦線などと称して各方面の分子を糾合するが、漸次異分子を清算して共産主義の一色とする、こういうやり方で、国民を敵か味方かにわける、こういうやり方を私どもは見ておるのであります。かような中立または第三勢力のごときものの存在を許さないやり方は、国と国との間においても大体同様であろう。現在の世界情勢において、結局国民の自由を守る国家か、自由を認めない国家か、そのいずれかにわかれる、こう言われているのが岡崎国務大臣の言い方であろうと思いますが、結局するところは、総理の言われるところと一致するようであります。  そこで私が言わんとしますところは、かように世界が二つの陣営にわかれる、こういう表現だけをいたしておりますと、多くの国民の見るところは、あたかも同じような勢力が相対して二つにわかれておるというような印象を与えるようであります。そこで国民の中には、その同じような勢力のどちらの陣営に入つた方が都合がよいか、こういうことで迷う者が出て参りまして、ついうかうかと共産主義の中などに落ち込んで行く者があるように思うのであります。でありますから、この迷いを未然に防ぎ、または解き、認識を正しくせしめるために、自由国家共産主義の非合法国家群との両陣営は、それらの国の数においてどのくらいの違いがあるのか、軍事力や経済力においてはどのくらいの違いがあるのか、日本が提携するならば、貿易やその他親善関係等の利害得失は、どちらにわれわれが協力をいたした方がよいのか、こういつた事柄を国民に知らしめる必要がある、こう私は思うのでありますが、これらの実情をここで御説明願いたいと思うのであります。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは少しむずかしい御注文でありまして、御満足の行くようにお答えができにくいと思いますが、私の知る限りについて申しますと、大体世界の国として勘定しておりますのは、たとえば七十国あるという人もありますし、六十六だという人もありますし、あるいは七十七だという人もあります。はつきりわからないようなわからないと言つては悪いのですが、アフリカ等に、国として勘定すべきかどうかというような議論のあるところもあるようでありまするが、国連に加盟している国等から勘定しまして、そういうアフリカ等の一部の国は、かりに勘定に入れないといたしまして、これも必ずしも、中には自由国家群であるとはつきり性格のわかつている国のみではないにしましても、少くとも共産国家ではないということははつきりしている国々を集めてみますと、国の数としては、いわゆる自由国家群側の方が約五十箇国と見ていいのじやないかと思います。共産国家群の方は、十箇国ないし十一箇国であろうと思います。これも共産国家内において、たとえば外蒙であるとか、その他いろいろな国は、一体これは一国として勘定するのか、それとも中共の一部として勘定するのかという議論がありまして、はつきりわかりません。また同じ共産国家でありましても、ユーゴスラビアのように、共産国家でありますが、日本とも使節を交換しておるというような国もありますので、多少これはあいまいでありますが、ごく概略として五十箇国対十一箇国、こうなると思います。  それからいろいろの生産力等につきましても、これも御承知のように、ソ連などは絶対量をなかなか示さないのでありまして、鉄にしてもあるいはその他の物にしましても、計画の何パーセント上まわつてこつちでは目的を達成したとか、前年に比べて何パーセント増しであるとかいうようなパーセンテージで行きまして、これが何万トンとれるとか、何千万トンとれるかということがはつきりわかりませんから、その点はまた正確でない点もあると思いますが、今まで方々で研究しましたものの中で最大公約数といいますか、一番意見の合つておるようなところを総合して申し上げてみますと、石油は、共産国家群の全生産量に対して自由国家群の方が八倍くらいであろうと思います。電力は四倍くらい、石炭は三倍くらい、鋼鉄は四倍、アルミニウム五倍、ウラニウム五十倍などという推定が行われるわけであります。食糧にしましても、含水炭素においては、一人当りの食糧はあまり差がないが、蛋白源等は自由国家群の方が三倍ぐらい多いであろう。繊維のようなものは、綿花あるいは羊毛等は非常に多いのでありますが、大麻等においてはわずかに共産国家群が優勢である。  それから軍隊の数等につきましては、今のところは共産国家群の陸軍は六百万といわれ、自由諸国の方は四百万といわれておるようでありますが、これも質だとか装備だとか、いろいろのことを勘定しますと、ただ数だけでどうということはなかなか言えないように思います。海軍は自由国家群が約五倍であろうといわれております。空軍は双方ともほぼ同じくらいであろうといわれております。原子爆弾に至つては、双方とも非常に秘密でありますからわかりませんが、御承知のように、自由国家群は非常に多いであろうというようなことをいわれておるだけであります。  以上ごくはつきりいたしませんが、比較といえば比較になるわけだと考えます。
  125. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それからこの問題は先ほど井出君から御質問があつたようでありますので、多くをむし返しませんけれども李承晩大統領が韓国から来られた後、対日感情が非常によくなつておるというお話はさつき伺つたのであります。ただここで伺いますのは、その後日本漁業の代表者等が、李承晩ラインの問題、あるいは拿捕された船舶等の問題について向うに参つておるように聞いておるのでありますが、それらの向うとの交渉経過や現在の状態はどういうことになつておりましようか。このことを伺いたいと思います。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これらの人々は先方に行きましてなかなか好遇されたようでありまして、こちら側の考えを詳しく申し述べたように聞いております。私はまだ直接報告は聞いておらないのでありますが、しかし先方は快く受入れてこちらの言い分は十分聞いてくれたようであります。しかし同時に先方もなかなか強い主張を持つておるようであります。従いまして、先方の理由がどこにあるか、ほんとうの目的とするところはどこにあるかということ等についてさらによく研究しないと、はつきりしたことはわからないと思いますが、これによつて、多少でも漁業関係についても空気がよくなりつつあるということは事実だと考えておりまして、さらに直接報告を聞きまして、いろいろ対策を考えたいと思つておるところであります。
  127. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それから先般北海道上空に外国軍用機の領空侵犯が行われたということに対しまして、これは国際法上の不法行為であるにとどまらないで、日本の安全に重大な影響を及ぼすものであるというので、外務大臣はこれに対して、駐留軍の協力を得て何らかの措置をとるということを述べておられるのでありますが、その何らかの措置というのはどういう措置であるのか、またその措置をおとりになつた結果どうであるか、おさしつかえなければこのことを伺いたいと思います。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、日本の状況が御存じのようなわけでありますので、米軍の協力を得なければ適当な措置はとりにくいと考えまして、アメリカ側に協力を要請したのでありますが、一月の十六日に、日本要請に基いて必要な協力をする用意がすべてできたという回答があつたのであります。こういう領土の上空に無断で飛来する飛行機につきましては、天候のかげん等でやむを得ない場合もありますが、そうでない場合におきましては、普通国際法上認められておりますのは、これを退去せしめるために一定の信号をする、それでも退去しない場合には、今度はこちらから飛行機なり何なりで強制的に退去せしめる、これに対して抵抗をするような場合には、撃墜されてもやむを得ないというふうになつておりまして、またその場合に、たとえば地上においてどういう監視をするか、いろいろの措置がいるわけでありますが、アメリカ側は、日本側の援助のもとにアメリカ側としてできることはやる、日本側でできる措置は日本側でやつてもらいたいということで話合いをして、準備を整えております。しかしその後現在までのところは、上空侵犯の事実はないという報告を受けております。これがもし日本側の発表によつて関係国で考えて上空侵犯をしないのならば、非常にけつこうだと思つておりますが、まだ発表してから時日がそう長く経過しておりませんから、どういうことでありますかわかりませんが、ただいまのところは、まだ侵犯の事実はないという報告であります。
  129. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に、外務大臣に対して経済外交と貿易について伺いたいのであります。先ほど大蔵大臣に伺つた角度と違つた角度からお伺いをしてみたいのであります。  と申しますのは、振り返つてみますと、わが国にかつて相当強い軍備というものが置かれておつて世界の一等国だといつて相当の信用をかち得ておつた時代におきましての貿易やその他のことは、これらの軍備という背景によりまして、または一等国という信用の背景によりまして、相当に効果を上げて参つておつたように思うのであります。もとよりかつて日本の軍国主義時代におきましては、経済外交などというものはあまり重きを置いていなかつたようであります。重きを置いていなかつたにもかかわらず、これらのバツクが相当の力をなしておつた。今日の日本は、何ら軍備ある場合においては、外国をいわゆる威圧できるような軍備というものを持つておるでもなく、また敗戦によりまして国の信用を失墜いたした今日でありますから、この後のことは、経済外交によつて行くということが一番大事なことでありますので、このことを伺うのであります。この経済外交を強く広く推進するという建前から考えまして、自由国家諸国との間に、または東南アジア諸国との間等に対しまして、わが国の経験とか技術とか交通等の力をうまく活用して、同時に学問と文化の交流や、友好親善関係等の増進をはかつて、この貿易の振興や外資の導入に当らねばならぬということは重大な問題であると思うのであります。このやり方がうまく成功するかしないかということによつて、国土の狭小な日本に次第に増加して行くところの人口問題の解決ができるかできないが、こういうことにも相なるのでありますから、これらのいわゆる自由国家諸国やあるいはまた東南アジア諸国との間に、さき申しましたような経験や、技術や、交通や、あるいは学問の交流、そうしたものをもつてどういうふうに経済外交を推進して行くかということについての御構想があれば伺つておきたいのであります。
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今お話のような点は、われわれもまつたく同感でありまして、大きく申せば、まず各国間の親善の上に立つて行わなければならぬものでありますから、その意味でいろいろの背景が必要だと思います。それにつきましては、できるものからやつて行くよりしかたがないと思います。たとえば文化使節を出して有効なところは、そういうものを出しますし、あるいは日本の商品展のようなものをつくることが有効で、また向うもそれを歓迎すれば、そういうものをやる。いろいろな方法をとつております。そしてまたそれにつきましては、通商条約あるいは貿易支払い協定、こういうものももちろん必要でありまするし、またかなり多くの国がポンド地域に属しておりますので、ポンドの決済等の問題も十分考慮に入れなければならぬと考えております。そのために、従来もそうでありましたが、今後もいろいろその方面の専門家に行つてもらいまして、実情を視察する、場合によつたら日本側からも資金を出したり、技術を出したりして、資源の開発等にも援助したいと思いますが、これも昔のように、経済侵略だというふうに考えられると困りますので、十分愼重にしながらやつて行きたいと思います。     〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 なお人口問題解決の一助としての質問でありますが、先ほど御答弁がありましたように、そう大きな力にすぐなるということは困難でありましようし、移民の問題等は、もとよりこれは努力をしなければならないところであるのでありますが、移民の問題等に具体的にどんな方法をもつて努力をするというのか、聞くところによりますと、外務省に移民局を設けるという計画等があるとも聞いておるのでありますが、それらの内容はどういうものであるか。  それから先般アマゾンに向つて出発をいたしました若干のわが移民団や、また南米諸国によつて許可せられておるところの来年度七百戸ほどの移民等に対しまして、どういう具体的の措置をとられようとしておるのか、このことを伺つておきたいのであります。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず移民の実際の取扱いにつきましては、ただ移民を受入れると言われても、非常な未開墾のところに、非常な瘴癘の地にほうり込まれて、苦労して実が結ばないということがあつても困りますので、来年度送るものにつきましては、まず実地に調査しまして、はたして初めて行く日本移民でやつて行かれるところであるかどうか、またどういう施設、どういう設備をすればやつて行かれるかというようなことを研究してからかかりたいというので、その準備をいたしております。幸いにして来年度の予算には、もし予算がそのまま認められますれば、三億あまりの費用がありまして、この大部分は渡航費の補助でありますけれども、これらの費用の一部で、たとえば現地の調査も行う、あるいは受入れ国との間に移民に関する協定を結ぶような機運になつて来れば、それもやりたいというように考えております。そしてまた現地において移民のめんどうを見、またその渡航費等を将来だんだん返還するときの便宜もはかるために、現地においてもある程度の機関がなければいけないと考えております。しかし今おつしやつたように、大体イタリアにしてもその他の国にしても、最近は政府で元締めをして、政府で責任をもつて優秀な移民を送るというようなことをやつております。これが相手国の信用を得るゆえんのようにも思われますので、今行政縮減ということもありまするけれども、これはまた別問題で、日本の国民の将来を切り開く方法でもありますので、外務省に移民局と申しますか、名前は何ということになりますか、それはわかりませんが、また機構もできるだけ簡素なものにはいたしまするけれども、専門的にこの移民の問題にとりかかり得るような人間と機構を備えたい、こう考えまして、研究中であります。不日成案ができあがりましたら、さらに御検討を願いたいと考えております。
  133. 太田正孝

    太田委員長 尾崎君に申し上げますが、総理大臣に対する質問はまだありますか。ちよつと所用があつて、御退席になりますが……。
  134. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 私も御所用があるように伺いましたので、お帰りになつてもけつこうであります。  なお貿易の当面した具体的問題でございますが、聞くところによりますと、ビルマ、パキスタン、インド、セイロン等東南アジア地域から、ポンド決済による取引にかえて、バーター取引を行いたいという旨の申入れがあるというのでありますが、それらの実情はどうであるのか。またポンド取引とバーター取引の利害得失というものはどういうことになるのか。なおまたポンド地域との貿易は、日英支払協定でポンド決済を原則とするということになつておるが、それとの関係はどうなるのか。この三点を伺いたいのであります。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 バーター取引と言われますのは、おそらくパキスタンのことじやないかと考えますが、パキスタンでは、綿花の処分の必要からだと思いますが、綿花を輸出した商社に対して輸入のライセンスを与えるということにいたしたものでございますから、綿花を輸出する商社がその綿花の見返りとして輸入を自分のところではかる。ほかの商社は、パキスタンに対する輸入のライセンスをパキスタンでもらえないというようなことになつたものでありますから、そこで綿花とのバーター取引のようなかつこうになつたわけであります。これは普通の取引と違つてきゆうくつでありまして、輸出するときに、輸入品もうまく合わなければ輸出ができない、あるいは輸入ができないということになりますから、きゆうくつでありますので、バーター取引よりは普通の取引の方が好ましいには違いないのであります。ただ西欧の諸国も、このパキスタンのやり方に対していち早くこれに順応するようにして、バーター取引でどんどん仕事を進めるような傾向にありますので、日本としても遅れるわけには行きませんから、これについてはその方式に従つてつておるわけであります。これがバーターとおつしやる点だろうと思いますが、ほかの国からは、まだそういうことは申し入れられておりません。なるべく広く普通の取引で行きたいという考えでおります。  なお日英の間の今の話合いは、主として今までイギリス側でイギリスと言つては語弊がありますが、ポンド圏ではドル不足のために輸入を抑制する、つまり日本からの輸出がとめられたいという結果になつておりまして、今度の話合いで、両方の輸出入をバランスさせて、もつと大きな話にしようぢやないかというのが一つであります。  それからもう一つは、日本の方でもつとポンドを使う、またポンドを受取る。たとえば日本で、今までポンドで取扱つてない国からポンドで支払いたいと言つたら、受取る。そのポンドでまた輸入を大きく拡大してゆく、それについてイギリスといろいろ話合いをいたしておりますが、まだその結果は、請訓の必要があつてわかりませんが、日本側考え方は、十分了解されたと思つております。できるだけそういう意味で貿易の拡大をはかつて日本の国内の産業をもつと活発にしたいという希望でやつております。
  136. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 賠償問題について伺いますが、賠償問題の経過はどういうことになつておるか。これは親善関係にも、貿易関係にも非常に大きく影響いたして参ることはもちろんでありますから、このことを伺いますとともに、つけ加えまして、この賠償問題とは別に、英国やオランダ、スイス、スエーデン、ポルトガル等から太平洋戦争前あるいは戦争中に日本軍から受けた人的、物的損害を補償せよという要求が出されておるやに伺つておるのでありますが、そのことは事実であるかどうか。事実であるといたしますれば、その内容はどんなものであるのか。これに対して政府はいかなる態度をもつてお臨みになるのか承つておきたいのであります。
  137. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 賠償問題につきまして、今進捗しつつありますものは、申すまでもなくフイリピンでありまして、沈船の初めの調査は一段落いたしまして、次にはさらに他の方面の調査を行うわけでありますが、さらに先方は沈船の引揚げの方もやつてもらいたいということでありますので、できればこの方もやりたいと考えて、今話合いをいたしておりますが、これがもし平和条約のできた後でありますればまた格別でありますが、平和条約締結前に沈船引揚げを行うとすれば、日本政府としては国会の承認を得てからでないとできない、こういう建前をとつて今話合いをいたしております。インドネシア、ビルマ、仏印等にも話合いをいたしておりまするが、ある国は国内の政治上の問題でちよつと困難であろうという点もあります。またある国は、まだ準備が整つておらないから、話合いに入る段階に来ていないという点もあるようであります。そういうようなことで、ほかの国とはさらに具体的な話合いを進めて行く必要があると思います。  それから第二のお尋ねの点でありまするが、これはイギリスからは平和条約の第十八条に基きまして、これは一ぺんではありませんが、今までに三百三十九件の死亡だの、身体上の傷害だの、あるいは財産上の損害を受けたものに対する請求権の提起が来ております。オランダは、主として戦争中の蘭印におけるオランダ人の日本軍による抑留の被害として三十数件が来ております。スエーデンは、主として戦争中のわが軍の徴発に基くスエーデンの財産に対する損害補償約三十件が提起されております。スイスは、私人の債権等約一千件に上つておる請求が来ております。その他にも、たとえばデンマークとか、その他の外国からの請求はあるのでありますが、これらは政府としましては、一括して今のところはただ事実の研究を進めておるという段階でございます。
  138. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 昨年日本独立後、米国を初めて各国に在外使臣、すなわち大使、公使等を派遣いたしたのでありますが、その派遣をいたした後のそれらの国々におけるところの活動状況と申しまするか、その後の模様を一通りお聞かせ願いたいのであります。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは大使を送つておる所、公使を送つておる所、あるいは代理大使、代理公使、総領事、在外事務所、普通の領事、いろいろなものがありますが、大体におきますと、これらの在外公館を設置して参りましてから、非常にその効果が上つておるようでありまして、両国の関係等がその後口だけでなく、実際によくなつて来たように考えます。また向うからもいろいろ日本について尋ねたいこと、あるいは要求したいこと等もありますが、今まではどうすることもできなかつたというのが、直接在外公館に行きまして、話合いをいたしますので、その点で実際上の便宜もはかれる、またこれらからいろいろの経済的なその他の報告が参りまして、これは日本関係商社にはずつと配つておりますが、これによつても非常に材料がふえて、海外の事情がよくわかるということで、まずまず在外公館の目的は相当程度達せられたと思つておりますが、ただ最近外国へ行く人々が日本でも非常に多いために、在外公館の一部では、交通の衝に当るようなところは、これらの人々の接待に非常に追われて、悲鳴をあげているようなところがありまして、どうしてもこれは多少増員もしなければならぬような場所があると考えております。また帰朝者の話によりますと、あそこはふやしてくれ、ここはふやしてくれというようなところが非常にたくさんありまして、もつと活動を十分にしなければならぬだろうと思つて、今せつかく研究中でございます。
  140. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ちよつと委員長にお聞きいたしますが、あとまだ持ち時間が五十分近くあるわけですが、継続してやりますか。
  141. 太田正孝

    太田委員長 やつてください。
  142. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それでは大蔵大臣に伺います。二十八年度予算は、いわゆるドツジ・ラインの予算方式を著しく緩和いたしまして弾力性ある総額九千六百五億円に達する予算が編成せられて、ここに提出せられておるのであります。国会における野党の諸君はもとより、新聞雑誌等の中におきましても、この予算をインフレ予算などと批評しておるものもあるようであります。しかしながら、ドツジ・ラインの予算を編成して超均衡予算といわれた二十六年度の予算においても、国民所得との割合は一七%程度であつたのでありまして、また昨昭和二十七年度予算におきましても、大体国民所得との比率が一七%程度であつたことは、国民のよく承知をいたしておるところでありますが、経済審議庁の詳細な調査によつて見まして、二十八年度中の国民所得五兆六千七百億というのでありますから、比率から考えますと、この二十八年度の予算もやはり一七%弱であるのであります。この予算の中に軍人恩給であるとか、社会保障諸費であるとか、その他相当多額のものが盛られておることは言うまでもないのでありますが、食糧増産対策費や道路河川等を初め、産業と経済開発等のために著しく大きなものが盛られておる点等も、これを特にはつきり見ることができるのであります。これは考えようによりますと、わが国が講和独立後において、国民の要望にこたえて、積極的に国力と民力の充実と涵養とに資するという面が濃厚に出ておる、こう私どもは見ることができるのでありますが、大蔵大臣は、このインフレ傾向があるという議論と、私どもの見る国力の充実に資する点が多いという点との両点について、どういう御所見をお持ちになつておるのか、このことをまず伺つてみたいのであります。
  143. 向井忠晴

    向井国務大臣 インフレの危険ということにつきましては、私は、先ほども申しましたように、金のタブつくことを防ぐ、それを金融操作によつて吸い上げるということで防ぎ得ると思つております。それでその金の使う道は、御指摘の通りに食糧増産とか、公共事業費に相当多く出しておるので、これは国力の充実とか、民生の安定とかには十分な効果のあるものである。私はインフレをこわがつてそういう金を出さずにおくよりは、インフレの起らないような方法を講じながら、国力の充実と民生の安定に努めた方がいいと思いまして、この予算の編成方針を立てたのであります。
  144. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に、財政蓄積資金の問題について伺います。  健全財政堅持の建前から、財政蓄積資金には手をつけないという方針で数年来今日に至つたのであります。その蓄積資金はざつとただいまのところ二千八百億円に上つておると聞いておるのであります。この蓄積資金のほかに、現在手持ちの外貨が約十一億ドル、邦貨にして四千億近いものがあるようであります。これらの蓄積資金は、予算編成の際にあたつては絶えず有力な財源と考えるものがあつたのであります。現に二十八年度予算におきましても、見返り資金の手持ち国債を日銀に売却をいたしたのが三百八十億円くらいに上つておるようであります。財政蓄積資金は現金で手元にあるわけではないのでありますが、ともかくこの二、三回前の国会等におきましても、野党の面から、これを有力な財源として生産的な予算に出せ、こういうようなことの出張が相当あつたのでありますが、大体この財政資金と申しますものは、日本の現在のように底の浅い経済の時代におきましては、なるべくこれは使わないという建前、場合によつてはそのわずか一部くらいは使用するとしても、なるべくこれは使わないで、かえつてこれを漸増して行く、ふやして行くという方向に持つて行くべきであると、こう私どもも思つておるのであります。先ほどもちよつと井出君によつて触れられたようでありますが、この二十八年度の予算編成にあたつて、大蔵大臣はこのことについてどういうふうな御構想を持たれ、またこの後この問題に対してどういうふうなお考えを持つておられるか、このことを伺いたいのであります。
  145. 向井忠晴

    向井国務大臣 蓄積資金はどうかして大切にとつておくべきもので、ひとりでにできた金ではなく、やはり国民の税収のうちからいわば積み立てたようなものでありますから、これを大切にすることはもちろんでございます。今度もそのつもりでしたが、これからもこの蓄積資金は大事にして、ごく緊要な支出に充てるということはありましても、大ざつぱな使い方などは決していたさないつもりでおります。むしろできますれば、今後でも資金の蓄積が望ましいというふうに考えております。
  146. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 あと文部大臣、運輸大臣、農林大臣、通産大臣等がありますので、大蔵大臣には、ごく大ざつぱに飛ばして参りますが、特にここに伺つておきたい点は、治安防衛費の問題であります。大蔵大臣は二十八年度の予算編成にあたつて強い御決意を持たれたものと見えまして、防衛関係の諸費を二十七年度分よりも約三百五十億も縮減されまして、これを他に有効に使用せられたことに対しましては、深い敬意を表する次第でありますが、これについていささか杞憂と申しますか、そういう点を申してみますと、自衛力の漸増ということが唱えられ、昨年第十三国会におきましてその内容が明らかにせられました際、この自衛力の漸増とはどういうことをさすのか、この当時の警察予備隊、今日の保安隊の訓練や装備の強化をさすのか、いわゆる自衛力の漸増であつて、決して予算を増加するものではない、大体が二十七年度の予算と同等またはその範囲内でやるのだ、こういう答弁吉田総理や当時の池田大蔵大臣からなされたのでありますが、二十七年度の防衛関係予算の一千八百二十三億よりも思い切り少い、三百五十億も少くするという、こういう努力をなさつたことは並々ならぬ御苦労であつたろうと思うのでありますが、ただこのことのために、現在のところはないといたしましても、このことによつて将来日米経済関係の根本に触れて来るようなことはないか、この心配が一点と、それから現在の日本の保安隊は、今回計上せられた予算の程度で、最初から計画せられておるような運営というものができるものであるかどうか、この二点につきまして伺つてみたいのであります。
  147. 向井忠晴

    向井国務大臣 防衛費、自衛力の漸増という点で予算を減らしたということは、まあ申せば非常に喜ばしいことでないこともないとも思われますけれども日本の国力が強くなくて、いろいろほかに大事な金のいり道があるということは、アメリカでもよくわかつておると存じます。従つてこれを有効適切な方面に使つております以上は、あまり日米間の経済上の関係に悪影響を来すものとは私は考えておりません。  それから保安隊の経費が今くらいで済むかどうかということでありますが、これはあるいは保安庁長官からお答えがあるかとも思いますが、予算的に申しますと、ことしくらいで行きますれば、人間の数をふやさない以上は、これを増加する必要はないものと存じております。
  148. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 この問題は保安庁長官関係がございますので、保安庁長官からも御答弁伺つておきたいのであります。
  149. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの保安隊の予算でもつて十分保安隊の増強をはかつて行けるかどうかという御質問であります。私の考えといたしましても、必ずしも十分とはいえません。しかしながらただいまの隊員でもつて、これを十分に訓練して、そうして内容の整備充実をはかつて行きますると、国内の治安を維持して行く上にはまず十分かと考えております。
  150. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大蔵大臣にもう三点であります。この二月、三月に危機が来ると、こうしたことを言われておる向きがあるのであります。それは二月、三月の金融事情等の上からこういうことが言われるのでありましようが、一体二月、三月の金融事情というのはどういうことになるお見通しであるかということと、それから一般産業界が依然として現在活発でなく、これに加うるに来る三月十五日が個人企業の確定申告の期日であるようであります。この三月十五日の個人企業の確定申告の期日に前後して、今日の産業状態から考えて著しい危機が来るのではないかということが言われておるのだと思うのでありますが、この三月危機説なるものに対しての御見解を伺いたいのであります。
  151. 向井忠晴

    向井国務大臣 産業界の一部において景気が後退していることは見られます。ただ政府としましては、今年度及び来年度を通じての国庫の収支、金融情勢等と見合いをつけますと、国民経済の健全なる運営に必要な資金の融通には遺憾の点はないつもりでございまして、ただいまおつしやつた三月危機ということは、私どもとしてはないものと考えております。
  152. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それから義務教育費の国庫負担金は、本年は地方税制の関係から、八大都府県は調整して交付することにする、こういうことになつておるようでありますが、いわゆる義務教育費の全額国庫負担の制度を完全に実施するためには、税制の改正が行われなければならないことはもとよりであると思うのでありますが、政府は一体いつごろ、どういうふうにして税制の改正を行われるつもりであるのか、このことを特に大蔵大臣に伺つておきたいのであります。
  153. 向井忠晴

    向井国務大臣 義務教育費の国庫負担制度に伴い、政府は最近の機会に税制の改正に所要の措置を講じまして、すべての都道府県に国庫の負担金を交付できるようにしたい所存でございますが、やはりこれは地方制度調査会の答申と申しませんでも、その審議の進行に従つて意見を考えて行くべきものと存じております。
  154. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 最近ということでありますが、大体いつごろになりましようか。これはあとに関する非常に重大な問題でありますので、大体の見通しとして時期を伺つておきたいと思います。
  155. 向井忠晴

    向井国務大臣 これは私だけで御返事ができないと思いますが、なるたけ早くという程度で、ひとつごかんべんを願いたい。
  156. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 もう一点伺つておきます。炭価の引下げに伴う問題であります。通産大臣は御事情でここへおいでにならないようでありますが、炭価の引下げのために炭鉱に対して縦坑の施設をやるとか、その他いろいろのことを考えておいでのようでありますから、このことに関連をいたしまして大蔵大臣に伺つておきたいと思うのでありますが、今通産大臣が考えておられるようなやり方で、言われますように炭価を三割程度切り下げることができるといたしますれば、もとよりけつこうなことでありますが、その際における影響を聞いておきたいのであります。かりに炭価が三割下るといたしますれば、諸物価が大体三割下るものと考えなければならない。こういうふうに炭価に従つて諸物価が下つて行く。これはもちろん国際物価等と競争いたすためには、まことにけつこうなことでありますが、私が聞かんとするところは、こういうことで石炭を初め諸物価が下りました際に、二十八年度における国民所得の額が減りはしないか、減つた場合に二十八年度の予算影響して来やせぬか、なぜこれを申すかと申しますれば、石炭の値段の引下げは何としてもやらなければならない重大問題である。ですから全体から見ればけつこうなことでありますが、やつた場合にたちどころに二十八年度の予算影響しやしないか、こういうことを心配いたすのであります。特にこのことを最後に伺つておきたいのであります。
  157. 向井忠晴

    向井国務大臣 三割もいきなり下げられては、困ると言つちや誤弊があるかと存じますが、影響が甚大だろうと思います。これはいきなり下るものでもないと思いますから、国民所得の上に影響してそれがいろいろの点に響く場合には、あるいは事業も思つたほど金がかからずに予算が余つて来るかもしれませんし、自然の調節ができるというふうに、私は楽観的に考えております。
  158. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 私は諸物価が三割下るというのではなくして、炭価を三割下げようということが通産大臣の計画の中にあるようだから、それが影響して他の物価も相当下りはしないか、こういう表現で、他の物価が三割下るということではございませんから、誤解のないように願います。今伺つたところによりますと、炭価が三割下り、他の物価がそれに従つて下れば、それだけ需要が多くなつて、かえつて収入がふえるかもしれない、こういうふうに承つてよろしゆうございますか。  文部大臣に対しましてお伺いいたします。文部大臣は、施政方針演説において、総理大臣が述べられたところの国民の道義の高揚、これは主として総理大臣が強調せられたことではありますが、これに対して特に何らかの措置をお考えになつておるか、御構想があるか、このことをまず簡単に承つておきたいと思います。
  159. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。道義の高揚はどこの国でも、いつの時代でもこれをやつて行きませんと、国家の永遠の将来が非常に危険に瀕する、私はこう考える。総理が施政演説で道義の高揚をあげられましたことにつきましては、文部大臣といたしましてもいろいろ構想を練つて考えておる次第であります。これはまず第一に学校教育、それから社会教育、こういう方面においてやつて行きたいと思います。いろいろ具体策はこまかくできておりますけれども、少くとも今日の義務教育から始めまして大学教育に至るまでの間、——なるほど終戦後制度は完備はいたしておりますけれども、教育の実は十分にあがつておりませんから、これを刷新して行きたい。また社会教育の方面におきましても、これは昔の軍国主義時代でありましたが、青年学校というものがありました。しかし今は学校に行つておりますところの若い人と、それから学校に行かないで勤労しておる人と比べますと、学校に行かないで二十四、五才までで勤労に従事している人が、社会層で非常に大きな層を占めております。この方面の人々が修養する方策をいろいろ講じたいと存じます。これにつきましては青年学級を拡充するとか、放送によつて教育するとか、また映画とか、そういう方面の教育、社会の国民の目に見、耳に聞くところのその内容を品位のあるものに向上させて行きたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  160. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そこで時間が迫つて参りますから、簡単でけつこうでありますが、六・三制に対しての過去の実績等から考えてみまして改善の必要がないかどうか。もつと具体的に申しますと、特に新制大学等の中には、質的に大学教育としてやや不完全なものもあるように思われるのでありますが、これらのものを整理統合するとか、その他のやり方によつて現在の六・三制に対して相当の改善と申しますか、変更を加えるような御構想はないか、これを伺つておきたいと思います。
  161. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。戦後学制改革ができまして六・三・三・四が実行されておるのでありますけれども、しかしこれはあまりに多くの大学ができた、そうしてその内容が充実していないということが一般の批評でございます。われわれといたしましては、今後大学を整備して、同時にその内容を充実して行く、そうしてもう少しいわゆる日本の社会に役立つ人材を養成して行く、こういうふうに大学の方面は考えております。小学校、中学校の方面はむろんりつぱな制度ができておるのでございますが、しかし財政が非常に逼迫しておりますときに、あまり完備し過ぎたような学制改革ができたものでありますから、ただいまでも十分とは申し上げられませんが、今後できるだけ財政の許す範囲内においてこれを充実して行きたいと考えております。
  162. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ここで伺いたいことは、義務教育費の全額国庫負担に関しまして、一部の方面に反対の声があげられておるようであります。その反対の理由として、義務教育費全額国庫負担はかえつて今までよりも父兄に負担がかかる、こういうようなことを言つておる者もあるようでありますが、どういつた方面からこういうような声が出て来るのであるか。義務教育費国庫負担の反対に関するこういう問題について、文部大臣のお考えを伺わしていただきたいのであります。
  163. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。義務教育費の全額国庫負担と、こう通俗に申されておりますが、これは給与を国庫が負担しよう、こういうような意味なのでございます。そこで私は最近いろいろこれに対する反対を受けておるのでございますけれども、どういうわけで反対されるのか、その理由を発見するのに苦しむものであります。もともと平衡交付金ができまして、平衡交付金の中にはやはり地方の義務教育費に対するある算出基礎をもちまして、そうして地方に交付してあるはずなのでございます。ところがあの平衡交付金ができまして以来、地方財政もあまりよくなつておりません。そしてまた貧弱な地方におきましては、そういうふうな教育費が国家から交付されておるにかかわらず、ほかの方面にこれを流用して、教員の給与などがあまりよくならない、また賞与とか何とかいうことも十分していない、こういうようなことで、どうしてもやはり教育費として出す金は、地方に教育費としてひもをつけて出してくれなければ教員は立ち行かない、こういうようなことが二十四年以来の輿論であります。そこで昨年の夏半額国庫負担というものができたのでございます。しかし、もともと各方面からの要請というものは、全額を負担してくれ、こういう要望ばかりであつたのでございます。私もまたその趣旨はもつともであると考えまして、今回全額国庫負担にすることにしたのでございます。しかし何がゆえに父兄の負担が多くなるかということは、私はその理由を発見するに苦しむのであります。いわんや今回全額国庫負担をするにつきましては、教材費も合せて支給する、こういうことになるのでございます。私の理想を申しますれば、父兄に負担をかけない、また地方公共団体に、義務教育に関する限りはあまり迷惑をかけないで、やはり国家が責任を明らかにして、国庫によつてこれをやつて行きたい、こういう理想で行くのでございます。これはいろいろ国家財政の都合によりまして、今すぐに一足飛びに十分には行きませんけれども、われわれといたしましては、教材費を今回計上すると同時に、将来学校給食ももう少し十分に金を出して行く。また今すでにできておりますところの、教科書無償の法律によりましてこの無償はただ一学年だけの教科書に限つておりますが、今後これを全学年に配付したい、こういう考えでございます。また学校の施設につきましても、いろいろ国庫の方で補助したい、こう考えまして、今回明年度予算には危険校舎に対する補助金も新しく計上してある次第でございます。全額国庫負担にするために、むしろ地方の方で父兄の負担が多くなるということは、どうしても理由が発見できない次第でございます。
  164. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ついでにこれに関連しまして、この反対の中に、特に定員定額のものを支給せられるのであつては、その府県に非常に島の多いところや、山間僻地の小さな部落に分教場等が建つておるところなどでは、非常に困る結果が出て来る。現在よりもうんと職員の数が減つて来る。こういうことで反対しているところもあるようでありますが、これらの問題については何か特例でも設けられる御構想があるのであるか、承つておきたいのであります。
  165. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。定員定額としますのは、全国を見ましてその児童数というものから定員定額を理論的に算出したわけでございます。しかしながらただいま仰せのごとく、小さい村とか小さい島とかというふうに区分がわかれております。そうして学級がたくさんにわかれておる、こういうような方面につきましては、むろん文部省といたしましては、これに十分なる職員を置き得るように、全国的に調整をするという方策を講じておりますから、そういう御心配は一向ないということを御了承願います。
  166. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 文部大臣にもう一点であります。この教育の刷新充実と学力の向上について、格段に御配慮を願つておきたいことが最後にあるわけであります。もとより日本の将来が、文化の上からも平和の上からも、住みよい国家として繁栄するか、また逆に衰亡するかは、一にかかつて教育の力にまつところが多いことは申すまでもないと思うのであります。ところが最近の生徒や児童の学力が著しく低下しておるという事実を公表されたことは、文部大臣も御承知であろうと思うのであります。それは去る一月二十五日から四日間、高知市で日教組の総力を結集したといわれる第二回教育研究大会が、日教組五十万名の中から五千名の代表者が集まつて、そしてあらゆる収集した資料に基いて研究討論をいたした結果、三つほどの大きな結論が出されておりますし、その他に一つの典型的は現象が現われたことを新聞紙によつて報道されておるのであります。  この三つと申しますのは、第一は、学力が著しく低下いたしておるということ、第二は、義務教育費全額国庫負担は反対だということ、第三は、駐留軍基地の児童に及ぼす影響がはなはだしいから、米国兵の撤去を要求する、そうして撤去要求の一大運動を起す、こういうことの結論を出しておるのであります。この三つのうちの第二の義務教育費全額国庫負担法反対の問題は、一種の政治問題としても見られるのでありますし、またただいま文部大臣の御説明によつてよくわかりましたので、これは他日別の角度から検討することといたしたいということと、御答弁のごとく義務教育費の全額国庫負担をやつてもらいたいということは、日教組からもしばしば陳情が参つておることは、私どもこれを受けて承知いたしておるのでありますから、従いましてこの問題については別に考える、こういうことにいたします。第三の問題として、基地付近の子供に与える悪い影響が多い、従つてこの駐留軍の撤退を要求する大運動を起す、こういうことになりますと、その結果、日米関係なりに及ぼす影響と、一面においてはこういう問題をとらえて赤の思想を宣伝するところの一つの道具に使われるおそれもあるのでありますから、この問題についての御善処を希望いたしておきます。  特に申し上げますが、第一の学力の著しい低下、こういう問題については、百年の将来を考えてみましてまことに憂いにたえないのでありますから、この研究大会の実情等を詳細にお調べ願いまして、しかるべく強い力をもつて御善処を希望いたしておきたいと思うのでありますが、これらについて何らかの御構想があれば、簡単でけつこうでありますから伺つておきたいのであります。
  167. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お説の通りに、第二の問題の全額国庫負担に対する反対、私は、日教組としまして、自分の今までの要請をかえつて、むしろ政府がやろうとするそれに反対することは、まことに遺憾に存じます。  次に第三点の風俗の問題でございますが、これもまたわれわれといたしましては、できるだけそういうことを避けようとして努力をいたしつつある次第でございます。しかしながらその問題と駐留軍に撤退をしてもらうとかいうこととは別でございます。むろん教育のためには、われわれはそれを避けることに大いに努力をいたし、また努力をせんとしておる次第でございます。しかし駐留軍を置くということは、国民の意思によつて国会で議決されていてもらうことに安全保障条約でできておるのであります。その国家がきめていることに対して、風俗の関係からひつかかりをつけて帰つてもらいたいというようなことは、考えが行き過ぎだろう、私はこう思います。  それから第一の点にもどりますが、学力の低下、これはお説の通りでございます。すなわち読み書き算術とかいうものを戦前と比較いたしますると、学力が著しく低下したようなことになつて来ております。ただ問題は、これは終戦後の教育方針の変化によることでございまして、昔は何でも基礎的な知識を詰込み主義でやつておつた。しかし戦後におきまする教育の方法といたしましては、できるだけ日常生活においてあらゆることに接して物事を判断し、また目的に向つてどういうふうに態度をとつたらよいかというような、ごく常識的な方面に教育をして行くことになりましたものですから、基礎的の読み書き算術というような問題が、幾分低下したことは事実であります。しかしながら今後私どもといたしましては、基礎的の教育方針も十分に確立し、同時に常識を発達させて、りつぱな人格を持つた人間をつくつて行く教育をあわせ進めて行きたいと考えます。これは今後の方針といたしまして十分な処置をし、善処して行きたいと存じております。
  168. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 さきに質問の際に申し述べました三つの結論と、一つの変形的な様相が、この研究大会に現われておつた、こういうことであります。  つけ加えておきますが、この五十万日教組を代表した五千名出席の大会の模様については、労働組合方と研究方との対立が見られて、この研究会があたかも組合大会のような空気であつた、こういうことが有力な新聞に報道せられておるのであります。これは御参考までに申し添えておきます。時間の関係上、文部大臣に対してはこれで終ります。  次に運輸大臣に御質問申し上げます。国鉄の工事勘定五百五十億円というのが二十八年度の予算のようでありますが、この工事勘定五百五十億円をもつて輸送の安全を十分に確保できるかどうか。聞くところによりますと、また私が運輸委員として経験をいたして参つたところから申しましても、国鉄の施設や車両の荒廃の復旧には多額の金額を要すると思われるのでありますが、こういう今日の実情において、この程度の工事勘定をもつて一体その復旧の目的を達成することができるかどうか、これについての御構想を伺つておきたいのであります。
  169. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えします。国鉄の工事費勘定五百五十億円、これでいろいろな仕事もやりながら、老朽施設、車両の取替、復元等ができるかというお尋ねでありますが、今までに国鉄が老朽施設やら車両の取替等を含めまして、ぜひやりたいと思つております金額は、約千八百億にも上るのでありまして、そういうことをいたしますと、輸送の要請に応じまして、主要幹線の増強やら、通勤輸送対策にも意を用いることができるのでありますけれども予算関係上やむを得ず五百五十億ということで了承いたしておるのであります。ただこの工事関係の中で、輸送の安全確保という点だけは、鉄道の方の一審大事な最後の線でありますので、この点だけはこの金額の中においてまかない得ると信じております。
  170. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 電化とデイーゼル・カーとのいわゆる近代設備の問題について、ちよつとお伺いしておきたいのであります。国鉄施設が老朽、荒廃をいたした状況は、今御答弁なつ通りでありますので、これに対しましては、なお最善の御努力を願いたい。ただ、今御説明になつたような一部のことだけでは、最も安全を期さなければならない交通機関として、まことに不安にたえないのでありますから、十分の御尽力を願いたいと思うのであります。  さらに国民の要望として、電化を早く推進せよということと、特にローカル線等におきましてデイーゼル・カーをまわしてもらいたい、こういう要求が各方面から非常に強く出ておることは、運輸大臣御承知の通りでありますが、これらの問題に対しまして一体どういう御計画を持つておられるか、このことを伺いたいのであります。
  171. 石井光次郎

    石井国務大臣 鉄道の電化はやればやるほど経営上も楽になりますし、国鉄の企業を独立させる意味においても早く進めたい問題でありますし、また乗る方の側からしても非常に期待しておる問題であります。今度の予算では七十八億円ほど電化に使うごとにいたしております。二十六年度から着工いたしております浜松・姫路間の電化工事は、だんだんこの七十八億によつて進行させて行くつもりでありまして、本年の八月にはまず浜松から名古屋までの運転ができると思つております。それからなお東京の山手の貨物線が電化されてないものでありますから、いろいろな点で、輸送の連絡、その健康的な点から見ましても、煤煙等を出しましていやな思いをしておりますので、こういうものを電化することが来年度の予算によつてやれると思つております。地方では各地から盛んにこの電化問題も言われているのでありまするが、来年度の予算においては、ただいま申し上げました点、それから名古屋から以西の方へ工事を進めるという範囲だけしか電化はできないと思つております。  それからデイーゼル車をふやして、地方の不自由な線路にもつと便宜を与えろという問題は、これはぜひやりたいと思つて努力いたしておるのでありますが、来年度におきましては、約三百両の新造を計画いたしております。これによつて要求の全部とは言いませんが、大分満たし得るだろうと思つております。
  172. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それから新線建設の問題でありますが、昨年着工いたしました新線の継続した建設と、それから昨年鉄道建設審議会で勧告をいたしました路線等の全部を着工いたしますには、百二十億いるというので、御要求があつたということを承知いたしておるのでありますが、ここに決定をいたしましたのが、いわゆる新線建設費九十億ということでありますが、この九十億をもつて勧告線全部をやりくりしてでも着工なさるのであるか、あるいはまたそのうちの一部を残されるのであるか。これは国民が非常に大きな関心を持つておる問題でありますので、このことを特に伺つておきたいのであります。
  173. 石井光次郎

    石井国務大臣 本年度予算並びに補正で着工いたした二十四線のほかに六線ほど残つておるのであります。補正で組みました十三線は、すでに着工命令を出しました。来年度まで繰越しまする六線は、予算の金額はただいまお話のように減りましたけれども、多少年限を延ばしても、竣工の時期を延ばしましても、来年度は着工いたすつもりでおります。そのつもりで近く鉄道建設審議会に諮るつもりでおります。
  174. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 その点非常に力強い御答弁を伺いました。但し、私の選挙区に新線があるわけではありませんから申し上げておきます。  次に伺つておきたいと思いますことは、国民生活並びに経済の開発上、重要な地方鉄道、軌道を助成する、補助する必要があるということであります。この地方鉄道、軌道につきましては、明治四十四年以来、昭和二十二年までの長い期間にわたつて、国庫補助がずつと与えられておつたのであります。その後、終戦後の二十二年かに至りまして、これが補助が打切られて今日に至つておるのであります。従いまして今日の状態から単に鉄道を廃止をしてしまう、あるいはまた乗合バス等にとりかえようか、こういうような傾向があちこちに出て来ておるのは、まことに私ども心配をいたしておるのであります。と申しますのは、採算の上からははなはだ不利な鉄道ではあるが、場所によりましては冬の期間中、四箇月も五箇月も他の交通機関は通じない、ただ鉄道だけが唯一の交通機関である、従つて人の往復もあるいはまた郵便物その他重要なものの交通も、鉄道によらなければいけない、こういうような路線が相当にあることを承知いたしておるのであります。これらのものが、採算の上から考えてみてやめてしまうなどということになりますれば、関係地方民に非常に大きな影響を与える、こういうことになるようでありますから、これらに対しまして何とか助成の方法を講じてもらうことが必要でありまして、昨年私どもが議員立法でつくりました離島航路整備法、その内容は離島航路に使うところの船の改造、建造等には、政府が融資をあつせんする、その利子の補給は年四分を与える、なおこの航路には補助金を与える、こういう三つの内容を含んだものが昨年できました離島航路整備法であつたのでありますが、今申し上げましたような僻地にある陸の地方鉄道、軌道と申しますものは、あたかも離島航路に相当するようなものなのでありますから、これに対しまして何らかの補助、助成の手段を講じて行くということが絶対に必要なことだと思うのでありますが、これについてあるいは地方税の免除をやるとか、その他何らかの方法をお講じになるようなお考えはないかどうかということを承つておきたいのであります。
  175. 石井光次郎

    石井国務大臣 東京の近郊とか大阪の近郊にありまするような私鉄は、経営は大体いいのでありますが、僻陬の地にありまする私鉄が実際上困つておる例を私どもは一、二承知いたしております。それに政府が直接補助金を与えるというような行き方は、国家の仕事もそうでありますが、原則的にとつていないのであります。しかし実際上そこいらの住民の生活問題から考えますると、今お話のありまするように、いくら道をよくしてバスを通わしても、冬の間はそういうものが使えない地帯もあるのであります。鉄道でなければどうしてもいけないというところ等もあるのでありますから、これらにつきましては、何らかの方法でそれが立つて行くような道を講じなければなるまいということは考えているのであります。現にある一つの問題につきましては、金融上の問題で非常にお困りである。われわれの方でいろいろお手伝いして、それが立つような道を相談したこともあるのでありますが、それがうまく行かずにあるものもあるのであります。実際問題につきまして、いろいろ御協力をいたしたいと思つております。
  176. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大蔵大臣に対する質問は、一応時間の関係で終つたつもりでありましたが、非常にがまん強くお残りを願いましたので、この問題につきまして、大蔵大臣はどう考えていらつしやるか、簡単でけつこうですから伺つておきたいと思います。
  177. 向井忠晴

    向井国務大臣 できれば出すのでございますが、まだその余裕がございませんので、せいぜい心がけたいと思つております。
  178. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 非常に時間が過ぎましたが、農林大臣、最初から最後までお待ちを願つてたいへん恐縮でございますので、二、三点、ごく簡単にお伺いしておしまいにいたします。農業団体再編成に対する推進の状況はどうであるかということと、農業協同組合系統の金融のこげつき資金が約百三十億あることは御承知の通りでありますが、これは一体どういうふうに始末しておやりになる考えであるか。食糧統制の緩和に従つて、農業協同組合の仕事が非常に重要な役割を持つて来るということと、農林大臣が現在御計画になつて、非常に努力しておられるところの食糧増産対策というものが進んで参りましても、農協の健全化ということは非常に必要となつて参りますので、いわゆる農業団体の再編成の推進の状況と、それから百三十億のこげつき資金をどういうふうに御配慮願つておるか、このことについて伺つてみたいのであります。
  179. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 農業団体再編成は、年来いろいろな問題を提起されて、検討いたしておりましたが、団体の間において昨年末意見の一致を見たのであります。それは、この農業改良事業は、現在の制度を整備強化して行くということ、そうしてまたこの農業委員会には技術員を設置するということ、そうしてまたこの農業委員会の農業の代表という問を完全にやつて行くために、この都道府県に農業委員会の法人をつくる、また中央に法人をつくるというふうに意見が一致いたしたのであります。また協同組合につきましては、この協同組合の組織といいますか、組織の改善といいましようか、機能の発揮といいましようか、そうしてまた仕事を指導する意味において中央に中央会を設置するという方向に一致いたしましたので、この国会にこれの必要な改正法律案を出して御審議を願いたいと思つておる次第であります。
  180. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 あと簡単でありますから……。次に、食糧の輸入、補給金を思い切り減らして直接国内の食糧増産施策にお使いになるような御構想はないかどうかということと、時間の関係上ほかのものをまとめて一緒に申しますが、それから食糧増産対策費につきまして、非常に農林大臣が力を入れてやつておられますので、特に御注文申し上げるのでありますが、この増産対策費と申しますか、従来、この種のやり方から申しますと、散発的と申しますか、総花式と申しますか、こういうことに陥るおそれがありますので、できるだけこれを有効に力強くおやりになるということが必要だと思われるのでありますので、この二点について御答弁をいただきたいと思うのであります。
  181. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 先ほどの質問でまだ残つておるのが一つ二つあるようでありますが、一つは、協同組合の問題になつておる百三十億程度のこげつき資金のことでありますが、これは今大蔵省と話中でございますが、この資金の融資をいたしまして、利子補給をいたして、そうして融通をいたさせたいと考えておるようなわけであります。  また、最後に協同組合がかりに統制がはずれても、協同組合は大事だが、どういうふうな構想を持つておるかということでありますが、この協同組合は御承知のように農村の中核体でありますので、この協同組合をして共同集荷、共同販売の面に十分力を注いでやらして行きたい、こう思つておるのであります。  それからその次の輸入補給金の問題ですが、これは来年度においても輸入を減少させて行く方向でありますが、何分にいたしましも、国内において増産しなければこの補給金を減らすというわけにはなかなか参らないのでありまして、これはどつちが先どつちがあとというよりも、私は、第一に食糧増産であろうと思いますので、その方向でやつておるようなわけであります。  それからまた、食糧増産に要する費用は非常に多額に上つておりますが、これは散発的で困るじやないかということであります。そういうきらいがないでもなかつたのでありますが、来年度は重点的にこれをつぎ込みまして、能率を上げたいと思つておるようなわけであります。
  182. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 もう一問であります。昔の経世家が教えた言葉に、国を治めることは山を治め水を治めることであるという言葉があるようでありますが、こういう見地から考えて参りますと、今にして山を治めるという方向に大きな努力をしなければ、将来たいへんなことになると思うのであります。このために、仮称でありますが、たとえば造林公社というようなものを設けまして、森林を非常に大きく育成して行く、こういうようなお考えはないかどうかということが一点と、その他に、農家の二男、三男対策などに対して何らか農林政策一つになるような特別な御構想はないかどうかということ、この二点をお伺いいたしまして、しまいにいたしておきます。
  183. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 ただいまのところ国有林を公社にするというような考えは持つておりません。現在の機構を整備いたしまして、そうして強力に治山治水の面にお努めいたしたい、こう考えております。  それから農村における二男、三男の対策ですが、これは非常に問題でありますので、いろいろな点を考えておりますが、その一つとして集団的な生活を営ませまして、そうして開拓地等にそのままそこに入植させるというような方向で、ただいま全国で府県が二十県ぐらいになりましようが、そういうような構想でただいまやつております。その他にやはり酪農なりあるいはまた土地の高度利用なりをいたしまして、そうしてこの対策を進める以外に、今のところは大した手はないと思います。
  184. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それでは、時間の関係もございますから、通産大臣その他自治庁長官要求大臣に対する質問は後日に保留いたしまして、本日はこれで終ることにいたします。
  185. 太田正孝

    太田委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日は午前十時から開会いたします。これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会