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1952-12-16 第15回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十六日(火曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君    理事 櫻内 義雄君 理事 川島 金次君    理事 勝間田清一君       相川 勝六君    淺利 三朗君       飯塚 定輔君    植木庚子郎君       植原悦二郎君    岡本  茂君       加藤常太郎君    北 れい吉君       重政 誠之君    島村 一郎君       田子 一民君    塚原 俊郎君       永田 亮一君    永野  護君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    羽田武嗣郎君       濱田 幸雄君    原 健三郎君       本間 俊一君    南  好雄君       森 幸太郎君    山崎  巖君       川崎 秀二君    北村徳太郎君       小島 徹三君    鈴木 正吾君       中曽根康弘君    早川  崇君       古井 喜實君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    石井 繁丸君       河野  密君    西尾 末廣君       西村 榮一君    平野 力三君       山下 榮二君    伊藤 好道君       稻村 順三君    上林與市郎君       成田 知巳君    八百板 正君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         建 設 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 十二月十三日  委員栗山長次郎辞任につき、その補欠として  永田亮一君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員清瀬一郎辞任につき、その補欠として宮  澤胤勇君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員石田博英君、加藤常太郎君、小坂善太郎君、  井出一太郎君及び水谷長三郎辞任につき、そ  の補欠として羽田武嗣郎君、飯塚定輔君、濱田  幸雄君、川崎秀二君及び山下榮二君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員濱田幸雄君及び飯塚定輔辞任につき、そ  の補欠として小坂善太郎君及び加藤常太郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  理事井出一太郎君の補欠として櫻内義雄君が理  事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     ―――――――――――――
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事井出一太郎君が委員辞任されました。理事補欠選挙を行いたいと存じますが、これは先例によつて委員長において御指名をすることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    太田委員長 御異議なければ櫻内義雄君を理事指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 太田正孝

    太田委員長 昭和二十七年度一般会計予算補正外二案を一括議題といたします。  この際改進党及び両社会党共同提案といたしまして北村徳太郎君外二十二名より一般会計予算補正に対する修正案並び特別会計予算補正及び政府関係機関予算補正に対する組みかえ要求動議が提出されております。順次その趣旨説明を許します。  まず修正案に対する趣旨説明を求めます。河野密君。
  5. 河野密

    河野(密)委員 私はただいま議題と相なりました改進党並びに日本社会党両派共同提案になります昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)に対する修正案趣旨を弁明いたします。  修正案骨子は、歳入において一千六百三十二億五千余万円、歳出において一千六百三十四億二千余万円をそれぞれ追加計上いたすとともに、歳入の面において四百五十五億円、歳出の面において四百五十六億六千余万円を新たに削減いたすものでありまして、先般政府より提出いたされました補正予算案原案、七百九十七億八千余万円に比しますると、歳出において三百四十四億円の純増と相なるのであります。政府原案は、まことに事務的なる計数整理をなしたものでありまして、この重大なる時局に対処して、いかなる方針をもつて財政経済の運営をなすかという性格を有せず、目下の重要課題たる一般給料生活者生活状態に対して無関心であり、農村中小企業者に対する対策を欠き、地方財政の窮状に対して目をおおい、社会保障費拡充等を懈怠するなど、とうていわれらの座視することができないところであります。ここにおいて、われわれは本修正案を提出した次第なのであります。  次に修正要点並びに理由を簡単に明明をいたします。第一に修正要点は、国家並びに地方公務員給与改善に要する費用の増額であります。政府原案によりますと、給与改訂については、一律に二〇%を引上げることといたしましたか、われわれは今日の物価の水準、ことに生計費現状にかんがみ、人事院勧告を完全に実施することが必要なりと認め、これを予算に計上することといたしたのであります。しかし、実施の時期に関しては、公務員諸君より、五月より実施してほしいとの熱心なる要望がありましたが、財源の点ともにらみ合せ、可能な限り遡及することとして、八月より実施することといたしました。なお、勤勉手当期末手当とすることに改め、一箇月分を支給することといたしたのであります。これに要する経費は、二百五十五億円でありまして、政府原案に比して約百二十六億円の純増と相なるのであります。  次に、第二に修正をいたしましたのは、米価に関する措置であります。米の買上げ価格石当り八千五百円に引上げ消費者米価はすえ置きといたしたのであります。このために、食糧管理費を三百八十五億円に増額するものでありまして、このために、政府原案に比して約二百七十億円の純増と相なります。今日、農村現状がきわめて重大なる立場に置かれ、食糧増産現下の喫緊なる要務といたされまするときにおいて、農家における米の生産費を償うに足る米価をきめることは、最も必要なることであると考えまして、この措置をいたしたのであります。  次に、地方財政平衡交付金並びに地方起債額増額であります。今日、地方財政窮乏はその極に達しておるのでありまして、これが緩和をはかることは一日もゆるがせにすることのできない要点でございます。しかも、今回の給与改善に要する経費によつて地方財政の負担は一層多くなるのでございますので、われわれといたしましては、新たに地方公務員給与引上げ、不当なる給与の切下げの復活、僻地手当改訂地域給分を含む公務員給与に対する地方平衡交付金増額をはかるとともに、窮乏せる地方財政を救済する意味において、五百五十一億円を新たに平衡交付金として交付するここといたしたのであります。従つて政府原案に対しましては三百五十一億の増加と相なるのであります。なお、地方起債の総額は二百四十億円といたすことに相なりました。  第四に中小企業対策であります。中小企業重要性については、いまさら喋々を要しないのでありますが、この歳末を控え、金融難にあえぎ、租税の重圧に苦しんでおる中小企業に対して、何らかの対策を講ずることは、最も必要なことであると存じます。しかるに、政府のこの点に対する施策は、一貫性を欠いておりますので、われわれといたしましては、中小企業救済のために、国民金融公庫の出資金を八十億円に増額をいたし、別に農林漁業金融資金中小企業金融資金中小漁業金融資金住宅金融公庫出資等のものは、一般会計よりこれを資金運用部に移して、資金運用部より百十億円融資することと改めたのであります。  第五に、公共事業費増額、十七億五千万円を計上いたしました。これは地方における老朽校舎復旧費に充てるものであるのであります。  社会保障費といたしましては、戦争遺家族援護費十億円、国民健康保険医療費補助額十九億五千万円を計上をいたしました。いずれも、今日の地方における情勢に応じ、また戦争遺家族その他国民健康上必要なる措置最小限度に計上したものであるのであります。われわれは、もとよりこれをもつて満足いたすものではございませんが、補正予算の性質上、この措置にとどめたのであります。  次に、歳入の面におきましては、現下国民経済現状にかんがみ、財政規模の急激なる増大を抑制する建前に立脚いたしまして、不用なる既定経費は、極力節約するの措置をとつたのであります。すなわち、当初予算において外国為替特別会計に繰入れました三百五十億円中二百五十億円を一般会計に戻入することといたし、さらに、本委員会を通じ、その他の場合を通じて、いまだ使用するに至つておらないものと認められます平和回復善後処理費から四十億円、安全保障諸費から百三十五億円を、それぞれ節約することといたしました。なお旅費、物件費等につきましてもわれわれは当初七十一億円の節約を見込んだのでありますが、この予算の適用が一―三月に該当するという関係上、さらに七十一億円の節約をすることは困難であろうという説もありましたので、この点を入れて政府原案の通り三十五億五千万円にとどめたのでありますが、予算の執行にあたつては、大蔵当局において、われわれの考えております当初の節約額に沿うよう、極力節約を実施せられんことを、強く要望するとの意見を付しておる次第であります。  なお歳入の面において前年度の剰余金の半額繰入れ、給与改善並びに米価引上げに伴う政府資金の散布による自然増収専売納付金を二十一億円引上げる等の見込をもつて右支出をまかなうことにいたしたのであります。  以上がこの三派共同修正案骨子でございますが、この点について申し上げたいと存じますのは、世上往々にしてこの三派共同修正案に対し、インフレを促進するものなりとの議論があることであります。インフレ防止はわれわれひとしく痛感をいたしておるところでございまして、われわれはこの予算においてインフレを促進するなどということは、毛頭考えておらないのであります。おらないばかりか、われわれは極力イフンレを回避せんとの措置をとつておるのでありまして、この予算実行いたしましたとしても、断じてインフレになるものではないとの確信を有しておるのであります。およそインフレは散布されたる資金が不生産的に使用せられる場合か、放漫に使用せられる場合に起るものでありまして、農村生産費を補償するに足る米価を決定して、これによつて食糧の再生産を促し、勤労者勤労意欲を刺激して生産力の向上を導くという措置をとることによつては、断じてインフレの懸念はなきものなりと信ずるものであります。(拍手)われわれはインフレを懸念するがゆえに、それゆえにこそわれわれは既定経費の大幅なる削減をあえいてたしたのでありまして、すでに定められております既定経費でありましても、不要なる、不急なるものに対しては、大きなるなたを振うことが、インフレ防止のためにとるべき態度であると存じます。われわれが安全保障費使用額に対してこれが削減措置に出、平和回復善後処理費についてこれが削減の処置に出たのは、インフレ防止の考慮に出たものでありまして、私はもし政府ほんとうインフレ防止せんとする熱意を有するならば、政府みずから原案においてかかるものを削除して本委員会に提出すべきものであつたと存ずるのであります。(拍手)それゆえにわれわれはわれわれの案によつてインフレを起すという、かくのごとき世評はまつたく当らざるものでありまして、インフレ危険性政府原案に対してこれを返上したいと存ずるのであります。  以上私は重要なる諸点について御説明を申し上げたのでありますが、すみやかに本修正案の通過を見ますように御協力を願いたいとともに、政府は本修正案の通過いたしましたあかつきにおきましては、現下経済財政政策に対してとりつつあるその無方針、無性格なる態度を改めて、大いなる反省をなすべきものと信ずるものであります。(拍手)  なお最後に申し添えたいのは、本修正案が通過いたしました場合におきましては、新たに加えるべき項の順位等につきましては委員長に一任いたしたいと存じます。  以上をもつて趣旨弁明を終ります。(拍手
  6. 太田正孝

    太田委員長 これにて修正案に対する趣旨弁明は終りました。  次に組みかえ要求動議に対する趣旨弁明を求めます。古井喜實君。
  7. 古井喜實

    古井委員 ただいま議題に供せられました動議の内容は、お手元に配付せられた印刷物に掲げられておりますので、これによつて承知を願いたいと存じます。  この動議は申すまでもなく、ただいまの一般会計予算補正に対する共同修正案と不可分の関連を持つのであります。われわれは一般会計予算に対すると同様に特別会計、また政府関係機関予算に関する政府提案に対して絶大な不満を持つものであります。しこうしてこの一般会計予算に対して修正を加えます以上は、同一の趣旨により、かつまたこれとの関連において、特別会計予算並びに政府関係予算に対して、修正整備を加うべきことも当然であります。われわれはあえて修正案作成のための労をいとうものではありません。ただしか是正整備を加うべき点は至つて明白であります。残る問題はこの修正案作成のための技術的作業のみであります。われわれはこの場合にかかる技術的な作業のために時間を費すことを好みません。むしろ政府において原案を組えかえ整備して、あらためてこれを提案することが、至当かつ最善であると考えるものであります。  至つて簡単でありますが、以上をもつて動議趣旨弁明といたします。(拍手
  8. 太田正孝

    太田委員長 これにて組みかえ要求動議趣旨弁明は終りました。  次にただいまの修正案並び組みかえ要求動議を一括して討論に付します。塚田十一郎君。
  9. 塚田十一郎

    塚田委員 私は、ただいま議題になつております野党三派共同提出政府補正予算修正案に対して、全面的に反対の意思を表明したいと思います。(拍手)  まず第一に、私がこの野党三派の共同修正案を拝見いたしましたときに、まつ先に感じましたことは、これは一体野党諸君は、本気でこういうものをお出しなつたかということを実は感じた。(拍手)大体主義政策の異なる人たちが、連合で絶えず同じ政治的行動をとつて来られるというのは、私はいつもおかしいと感じておつたのでありますが、その最もおかしい例が今度のこの予算案に対する共同修正であります。(拍手皆さん方も御承知のように、われわれの国の予算というものは、自衛力をどうするかということが、予算の骨格に非常に大きな影響を与えるはずなのです。このことは皆さん方もよく御承知のはずでありますし、当初八千五百二十七億円の予算の中に防衛関係予算は千八百億円あるのであります。これだけ重大な予算の中の大きな部分を占めておりますこの防衛力に対する考え方が根本的に違われる三つの政党が、予算案に対して一本にまとまつたものになつて出て来るわけがない。(拍手左派社会党の方々からいえば、なるほどこれは平和回復善後処理費安全保障諸費の残りをほかのものに使おうというのは、これはあたりまえだ。しかし少くとも改進党の諸君からは、補正予算財源にそういうものが出て来なければならない理由はない。おかしいのであります。おそらく野党諸君本気ではお出しになつてはおるまいと思うのでありますが、何でお出しなつたか。この間の選挙のときにこれらの事項が公約になつてつたのであります。その公約実行をどうしてもしなければならない……。(「おとといまで賛成しておつたじやないか」と呼びその他発言する者あり)委員長、制止されたい。
  10. 太田正孝

  11. 塚田十一郎

    塚田委員 諸君は、私が民同の中においてどういう意見を持つてつたかを御存じない。(発言する者あり)黙つていていただきたい。公約にこの間出しておかれたから、今度の予算の際には何かそれを実行しなければならないというのが、おそらくこの修正案共同でお出しなつた動機だと思う。     〔発言する者あり〕
  12. 太田正孝

  13. 塚田十一郎

    塚田委員 もしそうであるならば、実行のできないような、もしくはしたらとんでもないような公約を掲げられたその公約の方が間違つてつたのであります。(拍手)その公約実行するために、二重にこういう間違つた予算修正案を出されるのは、聞違いを繰返されるだけのことであります。(拍手皆さん方ほんとうにこの予算修正案をお出しになる場合に、日本財政現状と将来をお考えになつておるか、ということを実は疑わなければならぬのであります。私は、実は政府出しております今度の補正予算そのものについてすらも、こんなに大きな年々補正予算をお組みになつて、一体日本財政計画の将来が立つものだろうかということを本気で心配をしております。  御承知のように、二十五年度の当初予算は六千六百十四億円でありました。このときには幸い司令部の圧力がありまして、三十二億円の補正予算で済んだのであります。二十六年度になりますと、六千五百七十四億円の当初予算に対して、千三百六十二億円の補正予算をお組みになつて合計二十六年度の予算は七千九百三十七億円になつております。二十七年度はその七千九百三十七億円の二十六年度の合計予算よりも、さらに当初予算が上まわつて、八千五百二十七億円になつておる。その上に政府補正予算で七百九十七億円を追加して、九千三百億円以上の予算になつてしまうのであります。これを前提にして考えましたときに、二十八年度の当初予算というものは、当然その規模が想像つくのであります。予算というものはどんなものでも、ことに近年の日本予算というものは、一度ふえましたらば絶対にこれは縮小できないと御承知ください。そういう意味におきましては、予算はすべての項目全部尾を引くものであります。その上にもしも野党修正のようなこういう厖大予算をことしの補正でお組みになつて、来年一体どういう計画予算をお考えになつているか、どういう規模予算をお考えになつているか。     〔発言する者あり〕
  14. 太田正孝

    太田委員長 静かに聞いてください。
  15. 塚田十一郎

    塚田委員 とにかくも、そういうようにして私は予算厖大規模を極力おそれる。  そこで来年は一体財源として何が考えられるか。(「来年は君は野党だよ」と呼ぶ者あり、笑声)来年は財源として何が考えられるか。諸君の御説によれば、インヴエントリーもやめる、ことし三百五十億円であります。財源からのいろいろな出資、投資をやめる、二百億円であります。五百五十億円は諸君意見従つて財源が出て来る。三百二十八億円の二十六年度の剰余金は、諸君修正案ではことしお使いになることになつている。あとそうすればどこに財源があるか。しかもふえる見込みのものは、政府が今出しておられる補正予算案に基いても、来年は給与だけでももうすでに九百四十億円からよけいかかるようになつているのであります。軍人恩給つて幾らかは出さぬわけに行きますまい。そうして諸君ははたして、われわれの国は外債を背負つている、賠償の義務を背負つておるということを覚えていらつしやるのですか。(拍手)そういうものをお考えなつた場合に、われわれは今日の日本財政においては、あらゆるくふうをめぐらしても、これを小さくしなければならないというところに努力を必要とこそすれ、これをふやすという議論は、財政考える者の考え方からは出て来ないはずであります。ただ国民のきげんを伺うという考え方からは出て参るはずであります。  そこで次に個々の項目について申し上げます。まず第一に、野党諸君の御主張になる給与増加であります。私ども国家公務員及び地方公務員諸君が、この給与で今日どういう御生活をなさつておるか、なさることができるかということを考える場合には、われわれもまことにお気の毒な状態になつているということをよく承知いたしております。ただ残念ながら、そういうような状態にならざるを得ないのは、一つは国全体が貧しいからでありまして、決して国の財政計画そのものからは来ないのであります。従つて公務員給与というものは、一つには民間の給与状態とあわせて考えなければならぬ。いま一つは、国家財政規模とあわせて考えなければならぬ。そ、のいずれの観点からいたしましても、私ども給与に関する限りは、政府原案が妥当であると認められるのであり、それに対してプラスをされようと、する野党諸君修正案には、これは同調いたしかねるのであります。ことに給与の場合において特にお考えにならなければなりませんのは、われわれの考え方からするならば、国家財政に何がしかの余裕があるならば、むしろ減税にこそ持つて行くべきものであります。今日の中小企業者実態は、正確に徴税をし、正確に納税をいたします場合には、私どもの知つております調査では、中小商工業者の家庭は一人二千円そこそこの生活しかできない実態になつておるのであります。中小企業諸君がこういうような実態になつておるときに、その税制を基礎にして出て来る国家財政のゆとりを給与にまわすというような考え方は、私は残念ながら賛成いたしかねる、こういうように申し上げたい。  次に地方財政に対する考え方であります。地方財政窮乏は私もよく承知しております。そうして地方財政地方自治体側からの要求するところによれば、平衡交付金で六百二十二億円、起債で六百十六億円の増額がほしいという要求が出ておることもよく承知しておるのであります。ただ私は、地方財政に対する措置は、いま少し本質的に検討を必要とする。そうしてその場合には、平衡交付金そのものにも検討を必要とするからして、いま少し時をかしてもらつて、根本的な改革をしたい。そうしてその場合に、それまでに起きる赤字は、一応赤字で越して行つてもいいのではないか、こういうように考えておりますので、今にわかに政府原案に早急に、十分なる根拠もない増額を加えるということには、賛成をいたしかねるのであります。  次に米価の問題についてであります。今日の米価そのものが、農民の生産意欲に十分なる刺戟を与える程度のものであるとは思つておらぬのであります。しかしわれわれの党のものの考え方は、御承知のように、なるべく経済は自由にするという考え方であり、われわれの考える自由にする経済のもとでは、過去の統制供出のなかつた時分ですらも農村農業というものは、決して恵まれないものであるということであります。そういうようになるのは、農業自体が持つておる本質から来るのでありまして、この本質を直すことなしに、ただこういう二重価格制というようなもので、当面を糊塗して行つても、本質解決にならない場合には、この二重価格制から出て来る矛盾は、必ずどこかで無理をして負担されなければならないものである。従つてわれわれの農村生産意欲を上げるという解決策は、あの農村自体の生産性を向上する方向に向けなければならない。そういう意味において、こういう中途半端な政策には、党の政策として賛成をいたしかねる、こういうように申し上げたいのであります。  最後に補正予算というものに対する――これは政府御当局もよく聞いておいていただきたい。近年補正予算というものに対する政府及び政党の考え方は、実に甘過ぎる。皆さん方も御承知のように、この補正予算というものは、どういう場合に組んでいいものかということは、財政法第二十九条にはつきり書いてあるのであります。「内閣は、予算作後に生じた事由に基き必要避けることのできない経費若しくは国庫債務負担行為又は法律上若しくは契約上国の義務に属する経費に不足を生じた場合に限り、予算作成の手続に準じ、追加予算を作成し、これを国会に提出することができる」。「内閣は、前項の場合を際くの外、予算の成立後に生じた事由に基いて、既に成立した予算に変更を加える必要があるときは、その修正を国会に提出することができる。」つまり第二十九条の精神は、補正予算いうものは、よくよくの場合でなければ組んではいけない、こういう考え方であります。ところが近年の補正予算考え方というものは、残念ながら、私の承知いたしておりますところでは、年度の当初には財源の見通しがつかなかつたから、組まなかつた。年度の途中になつて財源の見透しをつけてみたら、幾らか余りが出そうになつたから補正予算を組む、そういうきわめて安易な気持になつておるのであります。そうして残念ながら今日の国会の各委員会のものの考え方も、国民の負担を考えて、国費をできるだけ切り詰めるという方向に考え委員会一つもない。全部予算をふやそうふやそうという努力をする委員会ばかり多い。こういうときに、政府はそういうような状態を察して、補正予算をお組みになるときに、よほどしつかりと、さいふのひもを締めてやつていただかないというと、ほんとうに税金を負担する国民はたまらないということであります。そういう意味におきまして、野党三派の諸君修正案は、言語に絶したものである。こういう意味において、絶対に賛成いたしかねるということを申し上げたいのであります。(拍子)
  16. 太田正孝

  17. 松浦周太郎

    ○松浦委員 私は改進党を代表いたしまして昭和二十七年度一般会計予算補正野党三派修正案昭和二十七年度特別会計予算補正、並びに二十七年度政府関係機関予算補正組みかえ動議に対する賛成の意見を述べんとするものであります。(拍手)  独立後の新しい日本財政の方向は、財政偏重のゆえ日本経済の活動をはばみ、金融を変態に陥れていたドツジ・ラインの修正にあります。超均衡財政を均衡財政に置きかえることであります。今回の補正予算に対する野党三派の修正案は、占領下にゆがめられていた国家偏重の財政を正常化、健全化せしめるようにするものであるのであります。(拍手)貿易が不振に陥り、企業が操短を余儀なくされ、滞貨金融が大きく要請されておる現在、この三派案に盛られた財政構想こそ、財政経済並びに金融の調和を意図するものでありまして、わが国国民経済を占領下のゆがめられた状態から、自主的なる、健全なる状態に復元するものであると信ずるものであります。すなわち言いかえれば、独立とともに、占領下のドツジ・ラインがデフレに傾きつつあるものを修正して、実情に適合せしめ、現在の金詰まり経済を正道に導かんとする良案と確信するものであります。世上、ただいまもお話がありましたが、この方針昭和二十八年度財源を失うものであるという向きもありますが、この案は税のみに依存することなく、生産的事業に対しては将来建設公債の発行を適度に行い、公共事業費、特に北海道の開発費のような、未開発国土の開発のごときものは、米国のTVA方式において見ることできるように、直接国民の負担を廃し、公債に依存し、開発によつて生産の向上をはかり、担税力の増加をもつて公債支払いの財源に充てるという抜本的改革の精神が盛られてあるのであります。  まず給与ベースの改善について、政府は人事院の勧告を尊重すると言いながら、この提出予算案に盛られたところの数字は非に欺瞞的であります。争議権を奪われた公務員に対して、公正なる勧告を無視することは信頼にこたえる政治とは言えない、愛の政策とは断じて言えないのであります。かくのごとき政治の貧困が、今日の基幹産業を停止状態に陥れたストライキの誘因となつたのである。現在の政策を改めずに放置せんか、社会不安は増大し、国民生活を窮地に追い込ましめるものであると私は思います。すなわち愛をもつて行えば愛をもつて報われることは真理であります。給与は人事院の勧告をいれ、生活の安定を来さしめ、同時に勤労者諸君に向つては勤勉を求むべきである。勤勉なきところには一家は立たず、一家立たざるところに一国は立たぬからであります。われわれは公正なる給与を与えるとともに、勤勉なる勤労をこそ欲するものであります。  米価については、政府は消費者価格を六百二十円から六百八十円となし、一割の引上げをしたのであります。政府は本年五月裁定の人事院の勧告を無視し去つて今日に及びましたが、住宅不足その他の関係において生活の困窮から社会不安はますます高まつておるのであります。この際一割の米価の値上げは、消費財の物価の高騰を促進し、大衆生活の安定を脅かすものであるといわねばなりません。さらに消費者価格の決定にあたつては、農林、大蔵両省の妥協の結果、十億円程度の集荷奨励金をあげておりますが、これはまさに二階から目薬のようなものであつて、農民の目をごまかすものであるといわなければなりません。また政府生産者価格を七千五百円に決定したのでありますが、この七千五百円をもつてして、米の再生産の保証ができるのでありましようか。すなわち農民生活をまつたく顧みない、暴挙といわなければなりません。(拍手野党三派は消費価格をすえ置き、生産価格を八千五百円とし、一方においては生産を確保し、他方においては消費者大衆の生活を守らんとするのが、その基本方針であります。  平衡交付金については、政府は知事会議の要請を無視し、その三分の一を計上したものでありますが、現在の税制においては、おもなる目ぼしい税源を全部中央に吸い上げ、地方自治体にはほとんど税源を与えず、しか平衡交付金が実情に即せず、いかに過少であるかは言をまたないのであります。かくして地方財政赤字に悩みつつあるのでありまして、今日のままに放置せんか、自治体は窮乏より進んで機能休止の状態になることをおそれるのであります。この姿はあたかも搾取農業のごとく、無肥料耕作にもひとしいのであります。この問題は、根本的には日本の弱化分裂を意図した初期の占領政策によつて地方には名目的に自治尊重の花を与えられ、実は極度の財政窮乏と、そのために必然的に起る中央依存という、いわゆる麻痺的、変態的状態に導かれたのである。私どもは議会に参りまして、あの陳情の群をながめるときに、いかに変態的な政治であるかということを憂えるものであります。(拍手)  政府は独立後の日本をになう政権として敢然と立ち、この歪曲された地方自治の建直しに邁進すべきが至当であると私は思うのであります。応急的には知事会議の最低要求をいれ、この危急の場より自治体を救出しなければなりません。今にしてこれらの緩急よろしきを得ておかざれば、自治体は崩壊し、現実の行政は麻痺状態が訪れるのでありましよう。ここにわが党の平衡交付金の大幅増額があるのであります。  次に中小商工業の問題については、政府の施策は冷酷非道である。それは池田前通産大臣の不信任案通過という一例を見ても明らかなのであります。およそ日本産業の構造から見て、中小商工業がその根幹をなしていることは、政府も認められるところでございましよう。この中小商工業は、年末を控えて不渡り手形の横行、濫発に悩み、倒産者は続出するというありさまであります。加うるに炭労及び電産のストライキは、輸送と動力とに決定的な打撃を与えるために、前述の不渡り手形は加速度に増し、悲惨事を倍加せしめております。あるいは遂に恐るべきモラトリアムの非常手段まで追い込むのではないかと憂えるのであります。これに対する政府の金融措置は、ちようど焼け石に水のごときもので、いささかの効果も示しておらない。この重大なる危局を救わんとするには、この修正案に盛る金額はまだ私どもは過少であると思う。しかしながら今やこの死地におもむかんとするところの者を、死中に活を見出す一滴の気つけ薬であると私は確信し、その緊急不可欠なる措置に賛意を表するものであります。  最後に財源の点に対しましては、池田財政が従来財政資金をいたずらに蓄積、遊休せしめて、財政のしわを地方財政国民経済及び金融に寄せておる点を修正せんとする大胆なる構想であつて、これこそ最も妥当なりと言えるのであります。従つて前年度剰余金をもつて充当し、またインヴエントリーを吐き出すことも当然の措置といわなければなりません。安全保障諸費平和回復善後処理費も本委員会を通じて、本年度不使用分が明らかにされたのでありますから、この節減をもつて財源の一部に充てたのでございます。  このような見地から見ますならば、三派共同修正案は、その収支は均衡せられ、インフレ招来の懸念はごうもないと私は信ずるものである。さらに修正案実施の結果が、本年度予算の膨脹を招くの因をなすことを杞憂せられる向きもあります。ただいま塚田委員も申されたのでありますが、これは占領下の強制されたところの非常時的超均衡財政から、独立国家にふさわしい平常の健全財政にもどそうという意図を持つて措置せられる限りにおいて、文字通り杞憂にすぎないのであります。このように、修正案は積極的な意図によつて提出せられたものであることは、以上述べた諸点によつて明らかであります。  私はここに本修正案に賛成の意見を表するものであります。(拍手
  18. 太田正孝

    太田委員長 西村榮一君。
  19. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は社会党を代表いたしまして、野党三派提出の予算補正修正案に対して賛成の意を表するものであります。  私は今より三月前の総選挙のときの、自由党の公約考えてみますと、自由党はまず第一に経済再建を主張され、国民生活の安定を主張されました。しこうして中小企業の安定策と一千億円の減税、これをもつて選挙のスローガンとなさつたことは、自由党の諸君いまだ記憶に新たなるところと信ずるのであります。(拍手しからば当然総選挙直後の本国会において、国民公約したところを実現すべく、ここに補正予算を提出されることは、その言葉の責任を感じ、良心ある政府ならば、その挙に出られることが私は当然だと思うのであります。  しかるに本補正予算案を見ますならば、一体いずこに減税案は行つたのでありましようか、中小企業の振興策は一体いずこにありや、あるいはまた日本経済の再建方策を今日の経済相はいずこに求められようとするのであるか。先ほど塚田君がきわめて興奮して申し述べられたのでありますが、静かに野党修正案をお考えくださるならば、これはむしろ自由党の公約に近い修正案を提出したのでありますから、これは御賛同になるのが当然だと思うのでありますが、興奮のあまり活字を見誤つたと私は思うのであります。(拍手)静かにお考えを願いたいのであります。  たとえて申しますならば、本年度補正予算に組まれたところの税の自然増収七百億余円の中に、それを財源として二百億余円を減税されようとする原案を盛られておつた。大蔵大臣ここにおいでになりますが、その七百二億円の自然増収はどこから出て来たのでありましようか、これは主として下層階級の負担に属する勤労所得税の源泉徴収に大部分を置いておるのでありまして、申告所得税ないし法人税は減少いたしておるのであります。しかりといたしますならば、源泉徴収七百億円近くをとりながら、二百億円だけ減税するということは、払う方から申しますならば、これはちよつとそろばんが合いません。  同時に、何がゆえに法人税が減少をし、あるいは申告所得税が減少したかと申しますと、現下の不況であります。昭和二十七年度予算を編成いたしましたときよりも、現在は貿易規模は四割に減少いたしております。ここに深刻なる不況がある。今改進党の同志が述べられたように、しからば問題はこの不況をどこで切断して、日本経済を再建して行くかということが、私は現下の政治の大きな任務でなければならないと思うのであります。一体現下日本の不況はどこにあるか、一つは貿易の行き詰まりです。一つは国内市場の梗塞であります。貿易の行き詰まりは幾多ございましようが、東南アジアの市場が閉塞されたということ、同時に東南アジア諸国は第二次大戦後において政治的に独立いたしました。アジア諸国は政治的に独立したが、これを奪還される危険というものは、経済の自立態勢が整わないというところで、これは従来の農業国、厚料供給国から軽工業、工業国に計画的に転換しておるのであります。しからば輸出の増進をはからんといたしますならば、これらアジア諸国の現在の経済政策と相マッチする日本経済の再建方策をとらなければならぬ。この日本経済の再建あるいは再編成というものは、ドツジ処方箋によつて民間の資本が全部政府に吸収され、民間には資本蓄積がありません。国民の購売力はない。しからば政府の持つておる厖大なる財政カをもつて日本経済の再建整備をやるということが、現実に置かれた政治の任務ではないかと私は思う(「ヒヤヒヤ」)向井大蔵大臣は先般の本議場において、来年度はむだなことはいたしません。きわめて有効に日本経済の再建のために財政は使いますとおつしやつたのでありますが。このことは一体何を意味するか。ドツジ財政修正です。あなたの潜在意識は……。(笑声)あなたはそういうことをアメリカに気がねして言われないかもしれないけれども、むだなことをやめて有効に使いますということは、ドツジ財政修正であります。実業家として育つたあなたの頭の中に――ドツジさんが四年間とつて来たあの残忍無比なる超均衡財政が、日本経済国民生活にいかなる悪影響を及ぼしておるかということは、実業家であるあなたの頭の中にぴんと来ておる。従つてこれを修正しようとする潜在意識があなたの頭の中にある。ここに私は向井財政の将来を嘱望するのであります。(笑声)  しかりといたしますならば、一体政府委員並びに財政当局も先般ここで申し述べられたように、大体二千七百億円の財政余力がある。現下日本窮乏を打開するためには、この二千七百億円の、政府が四年間にため込んだ財政余力をもつて日本経済の再建をはかり、輸出力を増大して、労働者の雇用力を高め、賃金水準を改めて、ここに国内市場と海外市場の培養をはかるということが、現在の財政当局に与えられた任務ではないか。これらが公約の中にちやんとある。あるのにかかわらず実行されていない。そこで問題になるのは、私はこのドツジ財政というものは、四年間何がゆえに均衡財政の上に超をつけたのであるか。財政というものは、あなたはそろばんはじくこと五十年、練達堪能の実業家として御経験のごとく、国民生活生産国家財政の三点が均衡のとれることが均衡財政であるのであります。国家財政ひとりゆたかになつて経済は枯渇し、国民生活窮乏に陥るということは、これは国民の総合的均衡財政ではありません。しからば日本を超均衡財政から普通の均衡財政に直して来る。それがためにはドツジ処方箋という財政というものはどこにねらいを持つて来たか。これは国民のあらゆる資本蓄積を政府の中にため込んで、しこうしてこの財政余力をもつて、国際情勢の変化に備えて、再軍備の費用としようとすることが、四年間計画的になされたドツジ財政の真実の政治的の目的なのだ。過ぐる総選挙において吉田さん初め内閣諸公は何と説かれたかというと、今は再軍備はいたしません、再軍備をするためにはまず経済の基盤を拡充せねばならぬ、国民精神は愛国心を高めねばならぬ、まず再軍備よりも経済の充実と国民生活の安定が先決であるということを、自由党の諸君が主張されたのであります。私は今日ここにおいて再軍備の是非を論じようとしない。しかながらこれが自由党の立場に立つて考えてみても、二千七百余億円という財政資金を、日本の再軍備のために、超均衡財政の名によつてため込まれて来たというならば、真実に現内閣が国民経済の安定と経済の再建と、それによつて日本再建をはからんとするならば、この二千七百余億円をもつて経済の再建をはかることが、吉田さんの公約に最も忠実なる財政政策なりと私は信ずるのであります。(拍手しからずんば、自由党の公約にも反するのでありまして、これら私は詳しいことを申し述ぶる時間がございませんから、以上簡単に大まかに申し上げたのでありますが、自由党の諸君におかれても、先ほど申し上げたように、これは自由党の選挙公約、自由党内閣の政策に最も近い修正案であるのであるから、これに賛成しないといたしますならば、自由党は選挙において、公約を無視して、国民に向つて偽瞳的政策を掲げたといわざるを得ないのである。(拍手
  20. 太田正孝

  21. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、今提案されました一般会計予算補正修正案並び特別会計政府関係機関予算補正の撤回並びにそれの組みかえの要求動議に対して、賛成の意を表したいと思うのであります。  先ほど自由党の塚田君から、意見の違う政党同士がここに三党共同の一致の案を出すということは理解に苦しむとおつしやいましたが、(「その通り」)私は今日における自由党内閣の政策が、まことに見るに見かねるほどの乱脈ぶりに達して、いわゆる国民窮乏の前に上つて来る国民輿論が、野党をしてここにまことに力強い結束に導いたものと確信いたすのでありまして、政治的な良心を持つておるといたしますならば、ここに当然この予算修正が行われなければならぬことは、明らかであると存ずるのであります。(拍手、「その通り」)今日私ども一番自由党政策に不満を持つ点は、ことごとく国民窮乏あるいは国家財政窮乏を一面において論ずるのであります。もとより今日の政戦国の日本状態が、われわれは決して楽観を許すべきものではなく、むしろこれがためには国民一致した再建の努力がなされなければならぬことは当然の帰結と存じます。しかしながら私たちがその前に考えねばならぬ事柄は、国民ひとしくその労苦をになうという点が貫かれて、初めてここに日本の再建の道が開かれて来ると私は確信いたします。一面において資本蓄積に名をかりて、現在ある富める者たちがみずからのふところに入れるための資本の蓄積論であつてはなりません。ましてや、そのもとにおける勤労階級の窮乏であつてはならぬことは明らかであると存じます。  政府はこのたびの給与ベース改訂におきましても、わずかな計上としかも十一月からこれの実施を行わんといたしております。しかし一面人事院の勧告というものが法制上つくられ、公務員の罷業権が制限をされておるのでありますから、それに対する良心を持ち、それに対する約束というものが政府によつて果されて、初めて私は国民から信頼を受ける政治となることができると存じます。しかるに、今日そうした一切の人事院勧告なりあるいは裁定なりあるいは調停なりを無視して、そしていたずらに国家の窮状を説き、あるいはいたずらに国民に努力を要請いたしたといたしましても、それは国民の政治に対する信頼や、あるいは国家再建に対する協力を得ることには断じてならないと存じます。政府は約束したことはちやんと果すという政治の確立を、まず第一に自由党内閣に私は要望せんとするものでございます。  しかも、今日二重価格制度に対する批判がしばしば述べられました。先ほど塚田君よりも同時にその意見について論及せられましたけれども、それならば、今日自由党諸君の政策が、肥料、飼料等々のあらゆる物資を自由放任にしておいて、そして経済の安定の基礎である食糧の価格を一面において統制しておいて、そしてこういう跛行な状態をつくり出しておいて、そこで二重価格制度はだめだ、こう言つてみても、一切の負担が農民にかかつて来ることはあたりまえだと私は考えます。もしその価格を米麦について統制しておくならば、今日何ゆえに農家の必要とする物資を国家はこれを保証する、あるいは国家はその価格に対する安定策を講ずるという施策をとられないのであるか、その政策が、とられない限り、二重価格制度というものは避け得られないものであると私は確信して疑いません。ましてや、今日の食糧の生産価格がわずかに七千五百円というような状態におきましては、可能な限り、この生産費を償うだけの少くとも財政的努力を払うのが当然であると私は確言いたすものであります。  いずれにいたしましても、資本蓄積の根源は私が申すまでもなく、あるいは固定資産における減価償却、同時に農民の再生産、労働の再生産というものが行われて、初めて真の意味における蓄積が行われると確信いたしますが、現在の自由党内閣の政策は、これらの労働やあるいは農民に対する再生産を保証せずして、そこに資本蓄積を持ち来らそうとするがゆえに、今日の政策は一面的なあるいは一方の階級の利益だけをはかつておるという批判が、ここに生れて来ると私は考えるのでありまして、この政策が真に確立されて初めて塚田君も、国家窮乏を訴える資格が出て来るものと私は確信いたします。  また今日この予算における一番大きな課題は、言うまでもなく今後における財政方針をどうとつて行くかという問題でありまして、予算委員会におきましてもこの点についてはかなり論議が行われたのであります。しかし今日自由党の予算の根拠になつておるものは、言うまでもなく朝鮮ブームの調整過程であるという認識に基いた財政政策でありまして、かかる認識に立つて財政政策がいかなる甘いものであるかということは、私は明白にここに考えなければならぬと存じます。すなわち、今日における状態は、第二次大戦によつていわゆる国際市場を喪失して、そして世界の三分の一の市場が一面いわゆるソ連ブロックに入り、他の部面がここに縮小を見て、しかもその中における資本主義国家がきわめて強烈なる争いをいたしておるというのが実情でありましよう。アウタルキーの傾向も、あるいはまた同時にブロック経済の傾向も現われて来る、関税障壁のつり上げも出て来る、こういう状態で狭隘の市場の中において競争が行われ、後進国である日本がその中に入つて行くための余地を失いつつ、現在の貿易額というものが減少を見ておる。これはすなわち資本主義全体系における今日の最大の問題であろうと存じます。しかもさらに再軍備という様相がこの中に加わつて参り、その再軍備が予定通り行かないという状態下で四囲の情勢がここに急転をいたしつつあるというのが、今日の日本経済の実情であろうと存じます。かかる課題に立つての認識と、朝鮮ブームの調整過程であるという認識のもとにおける国家財政の政策といものは、私は根本的にその態度を異にしなければならぬと存ずるものであります。  もとより今日この補正予算をもつてそれらの問題がすべて解決されるとは思わない。もちろん来年度における本予算がいかにして国内市場を開拓し、いかにしてアジア市場と結合するかという大きな問題と関連することなくして、この問題は解決しないと存じますけれども、いずれにいたしましても、今日いわゆるドツジ式に基くところの一部階級の資本を蓄積せんとし、あるいは国家資本を蓄積せんとして、他階級を抑圧せんとする従来の方式を改めて行かなければならぬことは、私は当然であると存じます。その場合におけるインヴエントリー・フアイナンスをどうするか、財政余裕金をどうするかという問題が当然出て来るがゆえに、その面を国家建設に持つて行くか、第一段階として国民生活の最小限の確保に持つて行つて行つて国民購買力を高めるかという問題となつて来るに違いない。われわれは補正予算おいてとらるる処置というものは平年度の一般会計とは違つて、ここに従来のしわを寄せられた勤労階級のための再生産の条件をまずつくり出して行くということが、今日われわれのとるべき態度であると存じます。ましてや、今日かかる状態において国家の資材を再軍備につぎ込んで行つて、その形でどうして日本経済再建の道が出て来るかということは、大蔵大臣もひとしく指摘せられておるところであります。その面をやめて国家再建を導くのでなければならぬ。安全保障費百三十五億円の節減等も私は当然であると存じます。もしインフレを起すということでありますならば、何ゆえに五百十五億円の金を残しておいて、しかも使い道のきまらない金二百十億円の安全保障費や平和回復諸費の四十億円を残しておくのか、これを一、二、三月の三月の期間に使うならば、これこそインフレを起す原因であることは明らかであると存じます。われわれはかかる財源に手をつけるということは、日本国家再建の立場からも、現在の財政上の立場からも、当然の帰結であると存ずるのであります。よつてこれらの修正案は当然の帰結とわれわれは考えます。  そういう意味において賛成の意を表する次第であります。(拍手
  22. 太田正孝

    太田委員長 これにて修正案並び組みかえ要求動議に対する討論は終結いたしました。  採決に入ります。採決は二つあります。まず一般会計予算補正に対する修正案を採決いたします。修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  23. 太田正孝

    太田委員長 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に特別会計予算補正及び政府関係機関予算補正に対する組みかえ要求動議を採決いたします。この組みかえ要求案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  24. 太田正孝

    太田委員長 起立二十三名。少数であります。よつて動議は否決されました。  次に原案すなわち予算三案を一括して討論に付します。中曽根康弘君。
  25. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は改進党を代表いたしまして、ただいま上程されました諸議案に反対の意を表するものであります。  池田財政にかわりました向井財政国民が期待をしましたのは、冷酷な池田氏の薄情政策に対して、駘蕩たる向井氏の温情政策であります。ドツジの申し子的な貨幣的安定に対する産業的かつ社会的安定であります。また八方ふさがりの貿易政策に対して、練達なる向井氏の貿易打開に対する放胆なる政策であります。この三つを国民は期待して新大蔵大臣を迎えました。そして現在の日来の国民経済考えるならば、今や政策の重点の切りかえが行われなければならない。すなわち今までのような貨幣的安定に対する新しい構想に重点が切りかえられて、そこに政策が集中されなければならないのであります。重点を切りかえて政策が集中されるということを要求しているのであります。従来はインフレの終焉期でありましたから、貨幣的安定を中心にする政策がとられたのは無理もありません。しかし今日においては十一億ドルに及ぶ外貨の蓄積があります。滞貨の激増もあります。輸出はストップであります。物価は下落しつつあります。しかも雇用指数は日に日に減つております。失業の増大であります。それから綿紡績その他における操短の拡大であります。そういうようなデフレ的な国民経済の中にあつて、未曽有の金詰まりと高金利が支配しているのであります。  由来日本は後進資本主義の国でありますから、この貧張な日本が外国に対して対等に国際競争力をつけて行くためには、明治以来の伝統であつたようにある程度の国民経済、特に産業に対する積極助成政策、これは不可避であります。しかるにこれに対して、ドツジ氏が参りまして、竹馬の足を切ると称してこの足をずばりずばりく切つてつた。これは終戦直後のインフレを終焉させるための一つの政策としては考えらるべきでありましよう。しかしそれが終焉して、しか日本が独立して国際競争に耐えて行かなければならないという新しいスタートに立つた今日においては、ドツジの政策は再検討を要するのであります。しかしながらここで考えなければならないのは、それはいたずらに資金量をふやすということではありません。積極的な助成政策の背景には、必ずきちんとした総合的な計画性と政治力が伴わなければならないのであります。重要なことは総合的な計画性であります。そのもとに資金の供給量をふやすということ、その資金を的確に使うということ、金利の引下げを断行すること、それから税制の改革をやつて、税の部面から来る産業に対する圧力をなるたけ排除してやるということであります。資金量をふやすということは、必ずしも私は不況対策として言つているのではない。現在デフレである、不況であるからといつて、これが対策として公務員の賃金を上げるとか、あるいはその他のインフレ的政策をやるということは、まだその段階ではないと思う。国民経済の基礎を拡大するために、そうして生産を迂回化して行くために、そうして国際競争力を増して行くために、すなわち国民経済の正常な発展を育成するために、そのような資金量の増大ということを不可欠としているのであります。そこで今までの政策に対して反省を加えなければならないのは、従来はインフレ終焉を旨といたしましたから金が中心であつた。すなわち財政あるいは金融あるいは租税、これが中心である。そうして貨幣的安定が講ぜられておつたのであります。従つて今までの国民経済の指導者を見ると、池田前大蔵大臣以来、すべて財政の権威者あるいは金融の権威者あるいは特に租税が権威者が国の指導者であつた。これらの人々は国民経済の主権者として君臨しておつたのであります。しかしこれは今や改められなければならない。そこに民間人である向井氏登場の意義があつたと私は思うのであります。こういうような重要な意義を持つた向井大蔵大臣は三井物産から大蔵大臣になられたのでありますから、それだけの政策を国民が期待したのはまた当然であります。  第二は、現在は十一億ドルに及ぶ外貨やあるいは国内の遊休資金が約二千億円ほどあります。これらの遊休資金や外貨を使うことがインフレになるという恐怖症が財界や政界の一部にあります。このインフレ恐怖症を払拭しなければなりません。それは自由経済によつて放漫に使い、あるいはキャバレーができる、ビルがめちやくちやにできる、そういうことをやつておれば、なるほどこれはインフレ恐怖症にとりかかるでしよう。しかし総合的な計画性と一定の政治力、国民の支援のもとに行われるそのような遊休資金の活用というものは、絶対にインフレの原因にはならない、またさしてはならないのであります。すなわち電源開発のために政府は外貨を要求しておられる。外貨を持つて来るということは、国内に持つて来ればこれは円になるのでありますから、これが電源開発に使われれば当然インフレになる。従つて円に関する問題については、日本が持つている十一億ドルの外貨と吉田内閣が入れようとしている十億ドルの外資というものは性格は同じであります。インフレになるというなら、外資の導入もやめた方がいいのであります。そういう点を考えてみても明らかでありまして、総会的な計画のもとに遊休資金を活用するという方向に、政策の重点が向けられなければならないのであります。  ところがそういうような日本経済要求に対して、今日の日本状態はどうであるか。私はつらつら考えますのに、ちようど日本が満洲事変に入つた前、昭和四、五年のあの不況期の門口に日本は立つている。さらにもう少し近くの例を見ると、朝鮮事変勃発前の昭和二十五年四、五月の情勢に日本が入つているのであります。なぜそれを言うかというと、一つの例を申し上げますれば、まず第一に貿易は春以来縮小しております。七月―九月の平均を見ますと、貿易は輸出が九千六百万ドルであります。一月―三月から比べれば二〇%減であります。しかも外貨の蓄積はやや減りつつある。これがふえるならばいいのでありますが、逆に減りつつある。特需はどうかというと、九月の契約は朝鮮動乱以来の最低のベースに入つている。将来はどうかわかりませんが、そう期待することとも無理でありましよう。企業整備の状態はどうであるか、生活が困つて店をとじねばならぬという数字を調べてみると、昭和二十五年上半期においては四百九十六件であつた。それが本年七月においては三百三十五件。昨年上半期が百三十九件であります。この企業整備の数字を見ても、朝鮮動乱勃発直前に今や近づいている。人員の整理はどうであるか。昭和二十五年の上半期においては月平均一万七千四百三十一人であります。ところが昭和三十七年、月平均上半期は二万七百五十人であります。朝鮮動乱勃発直前よりも首切りの数が多くなつているという現状であります。失業はどうであるか。完全失業の数を調べてみると、昭和二十五年八月、五十四万人であります。それが昭和二十七年三月ことしの三月においては五十三万人になつている。朝鮮動乱勃発直後すなわちドツジ・ラインが一番ひどかつたときと完全失業の数は同じになつている。離職の数はどうであるか。安定所に来た離職数を調べてみると、離職の表を見れば昭和二十五年の四月においては八万三千件であります。しかるに昭和二十七年六月においては七万八千件、五月においては八万四千件、すなわち離職者の者も、朝鮮動乱勃発直前と同じ状態に入りつつある、あるいはさらに最近の状態を調べれば、大学の卒業者の就職難の実態が、これを明瞭に現わしております。昭和三、四年の状態を調べてみますと、昭和三年においては、大学卒業者は九千五百四十人です。それに対する就職者は五千二百九十一人、就職率五五・四%、専門学校は七九・六一%の就職率であります。ところが昭和二十七年、最近の状態はどうであるか、これは九月の情勢でありますから的確なことはわかりませんが、大体就職の見通しのついた者は、九月末において一〇・五七%である、一〇%しかいない。就職の見通しのつけられる予想のある者は四八・八九%、あとの五〇%というものはまだ全然就職の見当もつかない。昭和三年においてすら五五の就職ができておる。これを見ても最近の日本経済の情勢というものは、昭和四・五年、満州事変のインフレに入る直前、あるいはさらに朝鮮動乱直前、その門品まで入りつつあるということが歴然としておると思うのであります。これを放置しておいてはよろしくない。  しかるに日本経済には、後進資本主義のゆえもあつて、構造的な矛盾が非常に露呈して来ておる。何であるかといえば、まず第一が国際的均衡と国内的均衡が矛盾するということである。国際的均衡とはどういうことであるかと申しますと、国際的に経済のバランスを合せようとすれば、国内に不景気が来るということである。すなわち国際的に輸出力を伸ばして行こうとすると、物価を安くしなくてはならぬ。物価を安くしようとすれば、操短あるいは失業、首切りという問題が起きて来るわけである。こういうように国際的均衡と国内的均衡は矛盾しておる、あるいはさらに長期的対策と短期的対策というものがここで矛盾して来る。すなわち長期的対策というものは投資をやることです。しかし投資は今何から出すかといえば、節約から出す以外にはない。節約を強行するならば、需要が減ります。消費需要が減つて来る。従つてある一定の期間においては不景気が出て来るわけです。そういう意味において長期的対策と短期的対策というものは明瞭に矛盾しておる。あるいはさらに投資の内客にしても、生産的効果を上げようとすれば、所得効果が減る。すなわち生産的救果といえば基礎産業を拡充するという方面です。しかしそうすれば公務員のベースをそう上げるわけに行かない。あるいはそうすれば公共的事業を短期的に起すわけに行かない。失業救済事業を起して所得的効果を上げようとすれば、生産的効果はマイナスになる。こういう矛盾がある。あるいは貿易にしても地域的均衡と貿易量の増大というものは矛盾する。これはドル圏とポンド圏の決済を見ればわかることである。こういうふうにして長期的対策というものと短期的対策というものは、ここに明瞭に矛盾して来る。  あるいはさらに第三には経済的合理性と社会的合理性、社会的福祉性の矛盾であります。すなわち合理化を促進しようとすれば、必然的に過剰雇用を整理しなければならない。これは社会的合理性に反する。あるいはさらに単価を下げようとすれば、生産や資本の集中を強行して行かなければならぬ。それをやれば中小企業は参つて来る。農村の二、三男は参つて来る。こういうふうに、社会的コストの高いものは、犠牲にならざるを得ぬ。これはしかし向井さんの責任ではない。日本が敗戦あるいはその前から背負つてつておるものである。資源が貧弱で、人口の多い日本が、宿命的に背負つて来た一つの構造的な矛盾である。これが満洲事変の前に露呈して来た。それを打開するために打つたのだ満洲事変である七朝鮮動乱の直前にドツジによつてまたそれが露呈して来た。それが朝鮮動乱によつて打開できた。  今日再びこういう状態が出たのに対して、政府はいかなる対策を持つておるか。今日大きな両ストライキが荒れ狂つておりますが、単にあれは一部の人間が使嗾していると考えてはならない。日本の社会にはああいうものを起すような地盤が、培養菌が毎日々々うん醸しているということを考えなければならないのであります。それに対する政策がないということは、政治家として責任きわめて重大であるといわなければなりません。われわれはこういう点について、内閣の抱負を聞きたかつた。遺憾ながら与党は時間をくれなかつたために、われわれはこれを追究することはできませんでしたけれども、大臣やあるいは総理大臣の御答弁に関する限り、そのような矛盾をいかに克服して行くかという政策の片鱗だに見ることができなかつたのは遺憾であります。  一体どうしてやるか。ここでわれわれの所見を申し上げますならば、やはり産業の合理化あるいは農業の拡大再生産という方向に向つて資金量を集中しなくてはならぬ。言いかえれば、生産の迂回化です。そのためには一時の欠乏や困苦が出て来るでありましよう、イギリスがやつたような一時的なものが出て来る。しかしそのような長期的な拡大再生産へ向つて前進するということは、必然的にまた雇用の増大を次の段階には持つて来るのであります。そういう大きな太い、しかも長い見通しを持つた強靱な政策をやつて行かなければ、この満洲事変やあるいは朝鮮事変前の悲劇をまた日本は繰返さなければならぬということになる。それは自由経済ではできない。やはり総合的な計画を持つた太い線で推進されなければならないと思うのであります。そういうような生産構造の迂回化、一時の耐乏は忍んでも、全力を振つて国際競争に耐え得るように、その生産財の拡大再生産をやつて、雇用の増大をして行くその方向に、集中的に政策の重点がかえられなければならぬ。それは基本的安定に対する一つの大きな変革でなければならぬのであります。  そういうような計画性を持つた方向へ経済が推進されなければならないのでありますが、それに対して自由党の政策がまつたく不安定な要素から行われているという顕著な例が一つあります。一つの例を申し上げれば、物価の問題であります。米価あるいは石炭の値段の問題であります。一体米価は、生産者価格にしても消費者価格にしても、経済的数量を離れて今きめられている。まつたく政治的米価であります。一体米価はどうしてきめられているか、七千五百円というものをどうしてきめられたか、これは生産費計算による米価でもない。パリテイ指数かといえば、パリテイ指数でもない。これはやめたらしい。では国際米価かといえば、国際米価でもない。では何であるか、経済的数量というものを離れて、米価というものが浮動してきめられている。まつたく政治的米価である。あるいはさらに消費者価格にしても同じであります。消費者価格の決定にあたりましては、御存じのように、農林省と大蔵省の案があつて、結局きめられたのはその中間の数字であります。六百七十円と六百九十円でありましたが、それを六百八十円にきめた。しかもそのきめるにあたつてはどういうことをやつたかというと、政府は二重価格を否定している。二重価格を否定したくせに、供出完遂奨励金と称して、一般会計からこの金を出しておる。供出完遂奨励金の一般会計から補填しているということは、これはすでに二重価格であります。政府はこれを行政経費であるから生産費その他に織り込む必要はないと言つておるのでありますが、明らかにこれは二重価格であります。実は二重価格をやりたいのだけれども、やれないから、これで妥協したというのが政府態度であるだろうと思います。このような消費者米価の決定というものを、生産者価格からは離れて政治的にきめられている。ここに一番根本的な問題があるのであります。しかもそういうような政治的な腰だめによつてきめられている米価によつて、都市の生活者や農民、特に零細な階層がいかなる影響を受けるかといえば、この点についての思いやりも全然ない。すなわち一キロ十円上るとなると、国民全体を計算すると、一箇月には十億円の金がいるのであります。そうすると、六十円上つたことになりますから、一箇月に六十億円の金がよけいにいる。これが一月から三箇月でありますから、百八十億円の金がいるわけであります。鉄道の値上りが約四十五億円です。この二つを足しただけでも、二百二十五億円の金が国民はいる。ところが政府は減税で二百三十億円安くしておる、こういつておる。それだけでもすでにもうとんとんであります。ところが政府はこれを計算するにあたつて、米は何日配給しているか、十五日しか配給していない。残りの十五日は計算に入つておりません。それだけではない。その米価の値上りによつて、諸般の物価が上つておる。この大きな圧力を受けたならば、家計費は、八%米価が上つたので減税によつてまかなえるということは、ある階層になれば吹つ飛んでしまう。それだけではない。なるほど減税によつて生活を救われる層はあるかもしれない。問題は減税の恩典に浴さない層である。減税の恩典に浴さない一万円以下の生活者というものは、国民の中には莫大にあります。その中で一番低い層は何であるかといえば、これは生活保護法で適用を受けておる層である。従つてこの層はある程度国家の恩恵を受けております。生活保護法で適用を受けている一番低い層と、一万円以下の減税の恩典に浴さない層が、今度の政策によつては全然手当が講ぜられていないのでありますが、これを何で講ずるかというのが、政治の基本にならなければならぬ。こういうような切迫して来た苦しい時代にあつては、政治のヘッド・ライトは常にその下層に向つて向けられておらなければならないのであつて、ここに何ら対策を施さないという点に重大な欠陥があると思うのであります。  そこでこれらの層が今まで一体どれくらいの影響を物価騰貴によつて受けて来たか、私の調べたところによりますと、終戦後昭和二十一年以来麦の値上りは十回あります。そして昭和二十一年三月から昨年の八月までで三十二倍上つております。電力料金はどうかといいますと、二十一年の一月からことしの十一月までの間に七回上り、五十五倍に上つております。あるいはガスばどうか、ガスは二十一年の八月から二十七年十一月までの間に九回上つております。そして料金は二百十七倍上つております。水道はどうかというと、二十一年一月から二十七年十一月まで七回上つており、二十四倍上つております。家賃は同じく五回上つて、これは十倍上つております。都電はどうか、東京都の都電は昭和二十一年から二十六年十二月までは九回上つて、これは五十倍に上つております。鉄道はどうかといいますと、二十一年八月から二十六年十一月まで六回上り、二十七倍に上つておるのであります。こういう層はなるほど給与ベースは多少上つて行くでしよう。しかし上るにしても、一万円以上の組織労働者やその他と比べたら、格段の小さな値しかつていないのであります。現に最近の情勢を見ると、大企業と中小企業の間の賃金の格差が非常について来ております。たとえば二十七年上半期を調べてみると、五百人以上の規模の会社の労働者が百円とつているとすると、三十人から九十九人の間は五九・五%であります。すなわち六割しかつていないのであります。さらに昨年の十一月調べで見ると、五百人以上の会社が百円とつておるのに対して、十人から十九人――ほんとうのこれは手工場です。この零細な手工場は四七・一%であります。九人以下に至つては四四・一%であります。こういうふうにして下層の方は賃金の値上りが少い、組織労働者と比べて上らないのであります。しかるに物価騰貴の圧力はその層にじんじん寄つて来るのであります。この層に対して政府はいかなる対策を講ずることがいいかといえば、それは社会保障制度であります。少くともこれらの層にまずやらなければならぬのは、医療費の国家補償であります。現在国民健康保険があるけれども赤字が三十億円ある。これを拡充して、われわれが主張するように、少くとも医療費の二割は国家が負担せよ。お医者の払いというものは、実際は実庭の主婦の重大な圧力になつておるのです。これくらいのことをやるのは当然のことでなくちやならぬ。そういうような点に対する愛情も政策も全然ありません。ここに今日の政府の重大なる政治の盲点があるのであります。  こういうふうにして、現在の政府のやつておる政策の基準というものは、きわめて政治価格であり、政治的である。向井さんの財政は新聞記者の諸君に言わせると、棒読み財政だと言いますが、まるで流れに浮ぶ丸太棒のようなものである。(笑声)これは漂流財政である。流れに浮ぶうたかたの財政である。一体どこへ流れて行くのでありましようか。国民がお伺いしたいのはこの点であります。こういう点についてもう少し明快なる責任ある基準を示されなくちやいかぬ。米価は何できめられたか。諸般の数字は何できめられたか、炭鉱に対する二十三億円の利子は、どうして払いもどしたか。みな政治的な腰だめか、利権か、あるいは選挙対策である。(拍手)こういう基準によつて政治が運行されておるというところに、今日の政治に対する不信があるのであります。そこでそういうような国民経済の指標というのは、満州事変前あるいは朝鮮動乱前の状態に悪化しつつある。これを辛うじて今までささえて来たのは何であるか。まず第一は内需であります。第二は金融であります。滞貨金融であります。第三番目は操業短縮である。昨年の暮れからことしの上半期にかけて、ともかく物価は朝鮮動乱前の五割程度を低迷しておる。生産は一三〇%を低迷しておる。これで横ばいに低迷している理由は何であるかといえば、一つは昨年の法人の収益が非常によかつた。そのためにベースが上つて、一般の消費水準が上つた、それによる内需であります。これで国民経済をややささえて来た。その次は滞貨金融である。大体上半期、第一・四半期において、約四千億円の銀行貸出しが出ておるけれども、その九〇%は運輸資金である。その大部分は滞貨である。これでささえて来た。もう一つは操業短縮である。  そこでわれわれが心配しておるのは、では来年度はどうなるか、これからどうなるかということなのであります。昭和二十八年度の展望を大蔵大臣に聞いても明らかにしない。しか政府出した数字を見れば、国民所得は二―三%くらいしか増さない。しかもあの数字を見てみると、貿易量をやや過大に評価している。貿易は輸出がすでに十一億ドルから十億ドルに減つている。そういうふうに悪化している。その安易な数字で来年というものを測定している。そういう点において来年度の経済規模いうものは、われわれからすれば、今の状態ではきわめて悲観的であります。そういうようなときにあたつて、ことしの補正予算から来年度の一般会計予算に向つてどういうつなぎで、どういうふうに国民経済を拡大して行くか、その重大な点に対する政府の解明が何らなされておりません。これは一番重要な問題であります。今政府は来年度予算を編成中であると思いますが、私が申し上げた点、特に内需の問題――内需ということは必然的には物価騰貴をもたらす、しかし国際市場打開をやらなければらぬ。しか日本経済の弱点というものは、国内市外が非常に狭隘であつて台湾や満洲へ進出して行つたことであります。しかし国内市場を適度に拡大し安定せしめながら、国際市場を展開して行く。むずかしいところであります。しかしそれをどういうふうにしてバランスをとつて財政的にやつて行くか、この点に関する政府の明確な政策を示すのが、三井物産出の向井さんの重要な国民に対する責任であると思うのであります。いろいろ御研究中であろうと思いますが、そういう今までの点をよく考えられて、この補正予算の運用、あるいは来年度の編成については御研究願いたいと思うのであります。  以上申し上げましたようなわれわれの構想からすると、今般提出されました政府のこの補正予算案というものは、依然として池田ラインの延長線にある。依然としてインフレ恐怖症にある。依然としてマネタリー・スタビリゼーションの段階にある。そういう意味において、向井さんはおそらくあなたは民間人でありますから、不本意ながら前者のこれを追つて、いやいやながら答弁をしたと思う。しかし来年一月以降は、こういういやいやながら答弁しないような予算をあなた方が出してくれることを切に望んでやみません。これはわれわれ先ほど申し上げましたような修正案及び動議を提出いたしました。この動議の中で、一般が批判されるのは給与ベースが高い、これはインフレの要因になる、こういうことであります。しかしそのことは、ただいま申し上げましたような総合計画のもとに遊休資金を活用して行くという政策をとる限り心配はないのであります。これは来年度予算の編成にあたつてもよくお考えを願いたいと思うのであります。特に大事なことは減税の恩典に浴さない、しか生活保護法の適用を受けない一番下層の中間の層に対して、政府が社会保障によつて恵みを与えるということを考えなければならないことでありまして、これを強調してやまないのであります。  ことしの四月以来政府財政を運用して参りました。またこの補正予算を運用して参るのでありますが、この補正予算を運用するにあたりまして、特に政府に警告しておきたい点があります。  まず第一は外貨及び余裕金の運用であります。この点はきわめて怠慢でありまして、先ほど申し上げた通りであります。政府が外資導入を叫ぶのならば、先に外貨を使わなければいかぬ。政府インフレを恐れているというならば、外資導入はやめなさい。同じことではありませんか。こういう理論が成り立つのです。これが第一であります。  第二番目には、防衛支出金及び安全保障諸費平和回復善後処理費、これらの対外関係経費の使途がきわめて不明確であります。また経費の内容が、われわれから想像すると、きわめてずさんであると言わざるを得ないのであります。まず防衛支出金はおいて二百二十一億円の残が十一月末現在にあるのであります。この使途はこれこれでありますと政府は答弁して来ておるけれども、この使途はわれわれが想像するに、予算委員会に聞に合せるためにつくられた数字であるとわれわれは考えざるを得ない。(「その通り」)あるいは安全保障諸費にしても、五百十五億円というものがまだ使つていない。あるいはさらに平和回復善後処理費にしても、二百億円がまだ余つている、全部合せると一千億円です。この一千億円を今まで政府が税金でとらないで民間の中に置いといてやつてごらんなさい。相当な生産資金になり、運転資金になつて活動しております。使わないものをなぜ先にとる必要があるか。この政府の責任は免れないのであります。一千億円であります。こういう点ついてわれわれは政府に対して重大なる警告を発しなければならない。防衛支出金に至つては分担範囲が明確でない。これも私は政府に所信を伺いたいと思つてつたのでありますが、時間がなくてできなかつた。防衛分担金は御承知の通り合同勘定を設けて、日本側の支出金とアメリカ側の支出金を出しておる。そうしてアメリカ側が小切手を発行しておるわけです。ところが最近においてはアメリカ側の繰入れが非常にあいまいになつている。日本は六百五十億円入れておる。アメリカはおそらくそれ以上現に入れておるでしよう。その入れている金額が行政協定に約束した範囲外のものを出しているではありませんか。われわれは時間がなかつたからこれ以上追究できなかつたけれども、特需やその他の金をこの防衛分担金から出しておる。これは重大なる行政協定違反であります。岡崎外務大臣もこれはよく聞かれて訂正されたい。これは重要な問題であります。あるいは安全保障諸費の問題についても同様でありまして、五百十五億円という金が不確定費として現在に残つておるということは、国民に対する責任を免れるものではありません。これらの点について政府は今後重要なる反省を要すると思うのであります。  第三番目に、それらの経費を背景にして行われた吉田内閣の政策であります。この点についてまずわれわれが言わなければならないのは自衛対策であります。自衛対策の中で約千八百二十億円の金が使われていることは先ほど申し上げた通りでありますが、この金の使途が的確でない、将来が明らかでない。これは非常に重要な問題であります。特に大事な点はかねがね論議された通り、吉田内閣のやるなしくずし軍備のやり方であります。われわれはこの国会の当初に重光総裁を立てて総理大臣に御質問をいたしました、われわれの総裁の発言は、ごまかしてはならぬ、国民に相談をかけようという態度であつた。われわれはなぜ吉田さんがまだあのようにごまかした、何というか国民を恐れた態度でこれを運用しているかふしぎでならない。事態はここまで来ているのである。従つてこれをどうしますと国民の前に相談をかけて、国民にげたを預けたらどうですか。国民がみんなでさわつてみてどうするか。日本国民は純心な国民です。政府がそんなふうにごまかさなければ一体どうしたらいいか真剣に考える。そういうようにずばりとげたを国民に預けて考えさせるという態度をやらないで、何だか自分のふところに入れて、人が見るのを恐れて隠している、こういうかつこうが政治に対する不信と国防問題に対する日本国民の疑惑を生んでおるのであります。学生や文化人の中に軍備に反対する人がかなりある。なぜあるかといえば、必ずしも彼らは軍備反対ではないのが多い。吉田さんのやつておるあのごまかしのやり方、ああいうごまかしをやられたのでは、今やらない、やらないと言われても朝鮮に連れて行くだろう、こういう疑惑からそういうものに反対だということになつておる。大事な国防問題から焦点をそらされておる。あるいは吉田さんのやつている冷血政策が、軍をつくつたら、また税金をとられる。そのことから不必要に国防問題に対する関心を失わせているのである。こんな点が悪い。このもつれた糸巻の糸をほごして行かなければならない。そこに今日の政治の課題があると思うのであります。しかも最近に至りましては対外関係は進んでおる、もはや国民に対して相談をかける段階である、そういう勇断を政府はやらなければならないと思うのであります。外交は、私らは若輩でありますから吉田さんの御心情はわかりませんが、潮どきがあるだろうと思います。この潮どきを逸したらチャンスを逃がします。そういう意味で決して国民を不信に思つたり、国民を恐れたり、野党を恐れたり、そういう態度を一働して、勇敢に国の進む道を国民に訴える態度に出ていただきたいと思うのであります。特に最近におきましてはフリゲート艦の問題がある、かつて予備隊の高射砲の問題について論議したことがありますが、あのころはまだ吉田内閣の態度は法衣の下によろいを隠して、ちらつかせておつた程度であつた、最近においてはどうかというと、よろいをもつて法衣である法衣であるといつて強弁しておる態度である、このことは国民は許さない、そこで政府は所信を表明して国民に相談をかける態度が必要であると思うのであります。  第二の問題は、政府の政策には国連対策というものが全然ない、政府対策に、外交対策は、なるほど対米対策らしいものはややある。これは迎合対策である。しかし国連対策というものは何らありません。国連対策というものは決して国連協会を各県につくつて行くことではない。国連対策というものは、国連憲章や国連精神あるいは平和条約のあの精神というものを、国民のすみずみまでに認識さして、心の構えと、国内の総合態勢をつくるということであります。そのような対策が講ぜられておるか、そのポイントはどこから来ておるかというと、一つは自衛問題に対する政府の韜晦あるいは逃避した態度から来ておる。もう一つは国連というものに対して、もつとまじめな国全体をあげての関心と、これに対する決心がまだないということであります。必ずしも私は情報局をつくつて国民に宣伝しろということを言つておるのではない、政府の政策でやろうとすれば幾らでもできます。国連対策一つのことを申し上げますならば、たとえば労働対策である、なるほど政府は労働問題については関与しないと言つております。しかしここに重要な問題がある。それは何であるかというと現在の政府の労働対策というものは、せいぜい保安要員を撤収するということになると緊急調整を発動する、それくらいしかない。これではならないのであります。政府は労働組合や労働政策に対する明確な原則なり所信を先に出されなければならぬ。すなわち労働関係のいろいろな法案に盛られたいろいろな精神がある。それを敷衍してその教育を実施して行くということは、決してこれは民主主義に反するものではありません。
  26. 太田正孝

    太田委員長 中曽根さんもう大分約束の時間が過ぎました。
  27. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 わかりました。――特にわれわれが考えなければならぬのは、総評左派に対する政策であります。今日の二大ストはどこから起つておるかといえば、総評左派の高野一派のたくらんだ政治政策である。これは二つの戦術を中心にしておる。そうして彼らは軍事予算反対、再軍備反対、これで打つて出て年末攻勢からさらに三月攻勢に出て参議院選挙に勝とうという。参議院選挙に勝つて参議院を固めて、憲法問題に対処しよう。そういつたような対策から来ておるとも考えなければならぬ。そうすると国際情勢と日本の国内情勢というものが逆コースを行つておる。ここに大きな、ギヤップが出て来ておる。これが将来日本と連合国あるいは国際連合とのがんになつて来ます。これを除去して行くのが国連対策や外交対策の基本にならなければならぬ。そういう点に対するまじめな政策がありません。
  28. 太田正孝

    太田委員長 中曽根さん、中曽根さん。
  29. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に申し上げますが、そのような不安定の政策の中に政府が最近やつておることを見るというと、疑惑を増すような事件ばかりやつておる。たとえば総理大臣の言明である解散の問題、あるいは秘密外交に対する問題、保安庁法違憲の問題、あるいは炭住融資の問題、只見川の問題、四日市の燃料廠の問題、鹿地亘の事件、あるいは清原通達、数えても限りがありません。ちよつと思い出しただけでもそれだけある。そういうような不信をやつておる間は政治に対する信頼はない。われわれはこのような非行や疑惑に対して、内閣が粛然として態度を改めて、国民に向つてあやまることを要求して討論を終る次第であります。(拍手
  30. 太田正孝

    太田委員長 岡本茂君。     〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕
  31. 岡本茂

    ○岡本委員 私はただいま議題になつております昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)その他の二案に対しまして、自由党を代表いたしまして賛成の意見を述べたいと存じます。  今回の補正予算はさきに編成実施せられましたところの昭和二十七年度当初予算を基礎といたしまして、その後に生じましたところの経済界の変動に対応いたしますために編成されたものでありまして、その基本方針は、健全財政と通貨安定の原則を堅持しながらも、財政金融を通じまして経済施策の弾力性のある運用をはかりまして、もつて独立後における日本経済の充実発展をはかるにある。そのおもな内容は、租税負担の軽減、公務員給与改訂地方財政平衡交付金増額財政投資及び公共事業費増額というようなものでありますが、これらのうち歳出に属しておりますものは、当初予算編成後に生じましたところの諸般の情勢の変化に伴いまして緊急避くべからざるものであります。あるいはまた現在の経済事情並びに国民生活の実情からいたしまして、緊切やみがたきものがあるのでありまして、おおむね適切なものでございます。さらに租税負担の軽減に至りましては、一般税制改革の一環といたしまして、本年度内において所得税法の一部を改正いたしまして、年度内二百三十億円、明年度におきまして約八百億円の減税を断行せんとするものでありまして、現在の経済界の実情と国民生活安定の上に、まことに適切なる措置と存ずるのであります。かような意味におきまして、私は原案に賛成するものでございます。  これは概論でございますが、以下修正案と比較いたしまして、原案を支持しなければならぬということを申し述べたいと存じます。第一には財政規模の問題でございます。修正意見は、厖大なる修正増額要求しておるのでございます。歳出面におきましては、実に千六百三十八億円という巨大なる数字に上るのであります。これを政府提出の七百九十八億円に比べますと、倍額以上の増加であります。かくのごとき巨大なる財政規模に似合わざる修正をあえてせんとすることは、きわめて危険というべきでありまして、私は絶対にこれに反対するものであります。われわれといえども……。     〔発言する者多し〕
  32. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  33. 岡本茂

    ○岡本委員 米価の二重価格のごとき、経済の基本政策に触れるものにつきましてはこれは別といたしまして、あるいは公務員給与引上げとか、あるいはまた中小企業者の金融改善をはかるという点におきましては、あえてその気持におきましては他党の後に落ちるものではありません。しかしながら、国家財政規模を無視して歳出を計上するわけに行かないというのであります。  第二には財源の問題でございます。修正案はその財源の見積りにおいてきわめて過大であり、また補填方法においてずさんであります。その過大なることは言うまでもありません。「(どうしてだ」「ずさんの内容を示せ」と呼び、その他発言する者多し)これから言います。まず第一に税収入であります。野党諸君は、補正予算におきまして政府の見積りが過大であるということを攻撃しているにかかわらず、今回の修正案によれば、さらに政府の見積りよりも百三十三億円上まわるところの税収入を見積つているのであります。あるいはまた……。     〔「ベース・アップのはね返りがあるじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  34. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  35. 岡本茂

    ○岡本委員 外為のインヴェントリー・ファイナンスの二百五十億円というものを回収して財源に充てておるのでありますが、これはすでに使用されておる実施済みのものであります。あるいはまた行政費の節約その他におきまして多額の財源を見込んでおるのでありますが、これらの大部分は実行不可能であります。節約不可能であります。縮小することは不可能であります。     〔「どこが不可能だ」「具体的に言え」と呼び、その他発言する者多し〕
  36. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  37. 岡本茂

    ○岡本委員 たとえば七十億円の節約額というようなものはとうてい困難である。あるいはすでに一旦……。(「数字を見ろ」「どこに計上してある」と呼び、その他発言する者多し)まあ聞きなさい。あるいはまた……。     〔「うそを言うな」「修正案を見てみろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  38. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  39. 岡本茂

    ○岡本委員 さらに中小企業振興費……。     〔発言する者多し〕
  40. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  41. 岡本茂

    ○岡本委員 農林漁業振興費……。(発言する者多し)あなた方が最初に計上されて………。     〔発言する者、離席する者多し〕
  42. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  43. 岡本茂

    ○岡本委員 しこうして農林漁業融通資金……。     〔発言する者多し〕
  44. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  45. 岡本茂

    ○岡本委員 中小漁業金融資金あるいは住宅金融金庫に対する繰入れを百十億……。     〔発言する者多し〕
  46. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  47. 岡本茂

    ○岡本委員 資金運用部の……。     〔発言する者多し〕
  48. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  49. 岡本茂

    ○岡本委員 資金に求めているのでありますが、資金運用部の繰越額は残額僅少であります。その僅少な資金運用部資金の中から、さらに百十億円の繰入れをなさんとするがごときは、これは乱暴きわまるものでありまして、赤字公債の発行とひとしい結果をもたらすものといわなければならぬのであります。  さらにその次は、恒久経費に対しては恒久財源をもつて充てるということは、財政の原則であります。予算編成の初歩的の原則であります。しかるにかかわらず、今回の修正意見によれば、俸給、給与のごとき恒久経費をまかなうのに一時的財源をもつてしているということは、きわめて危険であります。     〔「何が危険だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  50. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  51. 岡本茂

    ○岡本委員 さらに第三には基本政策の問題であります。野党の各派におかれては、予算面においてのみ協定をしておられるのでありますが、かくのごとき広汎な部面にわたつて予算修正をなす、あるいは組みかえの要求をするということであるならば、まずその根本をなすところの基本政策において協定することがなくてはならぬのであります。しかるにその協定をせずして単に予算面の数字のみをいじつておる。従つて矛盾撞着を至るところに露呈しておる。たとえば社会党両派はこれによつて……。     〔発言する者多し〕
  52. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  53. 岡本茂

    ○岡本委員 これによつて防衛費を認めた結果になるのであります。これは両派が従前主張して来られたところの再軍備絶対反対論というものを間接に認めた結果でありまして、両派の自殺的行為というも過言ではないのであります。  第四には、長期計画との関係であります。修正案は二十八年度以降の予算に何ら関連性を考えたところの形跡を見ないのであります。三箇月後には二十八年度の予算を実施しなければなりません。従つて補正予算修正し、あるいは組みかえを要求するにあたてつは、二十八年度の予算というものを十分考慮のうちに置く必要があるのであります。しかるにかかる考慮を払つた形跡は絶対にないのである。野党諸君政府に対して長期計画の提出を求めながら、みずからは……。     〔発言する者多し〕
  54. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  55. 岡本茂

    ○岡本委員 三箇月後において実施すべきところの来年度予算との……。     〔発言する者多し〕
  56. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 少し御静粛に願います。
  57. 岡本茂

    ○岡本委員 何らの考慮もない、概想もないということであります。かくのごときは危険きわまるといわなければなりません。     〔発言する者多し〕
  58. 塚田十一郎

    塚田委員長代理 御静粛に願います。
  59. 岡本茂

    ○岡本委員 これを要するに、修正案は現在の日本財政規模をはるかに超過したところの過大なる経費を一時に計上して、ただに過去におけるところの財政的蓄積を一挙に使い果すのみならず、さらに恒久的財源をもつてまかなうべきものを、一時的の財源をもつてまかなうというがごとき危険きわまる措置をとつておるのであります。もしこれを容認するにおいては、二十八年度予算規模はおそらく一兆一千億円を越えるに至るでありましよう。しかもこれは他の何らの経費を計上せずして、一兆一千億円に上るということになるのであります。かくのごときことは、われわれはとうてい容認することはできないのであります。(拍手)かくのごとき厖大なる修正要求というものは、現在の日本経済の実情を解せざるところのものである。敗戦後いまだその創痍のいえない日本経済のとうてい耐えるところではないのであります。もしこれを強行するにおいては、昭和二十八年度以降の予算を危殆に導くのであります。さらにまたインフレの脅威を再現せんとするものでありまして、危険きわまるものであります。従つてどもはかような修正案を絶対いれることができないのであります。ひつきようするに野党諸君は、人心の機微に乗じて大衆の歓心を買い、一面もつてこれを倒閣の具に供せんとするところの策謀から出たものであります。     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕 国家百年の大計をわきまえないものであります。われわれといたしましては、国民を愛し、国民のために忠実ならんとする念慮においては、あえて他党の後に落ちるものではありません。しかしながら国家百年の大計を無視して、これを危険に導ぐ、国民を不幸に導くごときことは賛成できないのでありまして、(「原案に賛成か」と呼ぶ者あり)修正案に賛成できない、修正案は反対であります。ただわれわれといたしましては、今回提出されましたところの補正予算に対しては、必ずしも無条件に満足しておるものではありません。補正予算は解散直後の早々の間に編成されたものでありまして、十分衆議を尽すいとまがなかつたといううらみがあるのであります。すなわちわれわれといたしましては、今後激増を予想されますところの、二十八年度以降の巨大なるところの財政需要に対しまして、日本財政規模をいかなる程度になすべきか、あるいはまた健全財政方針を堅持することは問題ありませんが、しかしながら独立後の日本の充実発展のためには、いかなる限度において弾力性を持たすべきかというようなことにつきましては、慎重に考慮をめぐらす必要があるのであります。ことに公務員給与ベースの改善、あるいは窮乏を伝えられておりますところの地方財政の健全化、あるいはまた中小企業金融の改善、その他の緊急なる案件につきましては、政府はすみやかにこれが有効適切なる対策を立てて実施せられる要があると存ずるのであります。  そこにおいて私は上程されております三案に賛成の意を表しますると同時に、この際本案に対しまして次のごとき附帯決議を付して議決されんことを提議いたすものであります。案文を朗読いたします。    附帯決議   政府現下諸情勢に鑑み、公務員給与改善地方財政の健実化、中小企業の金融改善等に対して速かに適切なる措置を講ずると共に、昭和二十八年度以降において予想される巨額なる新財政需要と国家財政力とを厳密に検討して将来の財政方針を確立すること。   右決議する。     〔拍手〕 ここに申し上げたうちのあるものについては、あるいはこの補正予算に計上することを適当とするものがあるかもしれません。しかしながらこの補正予算案は、その審議をきわめて急ぐのであります。公務員給与ペース等のごとき、一日の遷延も許さない予算案を包含いたしておるのであります。もしこれが不成立に終つた場合の結果は慄然たるものがあるのであります。従つて私は、政府に対しまして、あるいは補正第二予算あるいはまたその他適当なる方法において緊急対策をお考え願いたい、さらに二十八年度以降の計画につきましては、十分慎重なる考慮をめぐらされまして、適切なる対策を立てられんことを要望いたしまして、討論を終りたいと思います。(拍手
  60. 太田正孝

  61. 石井繁丸

    石井(繁)委員 日本社会党を代表しまして、政府提出の予算補正三案に対しまして、反対をいたすものであります。  ただいま中曽根委員あるいはまた岡本委員も、いろいろと日本の将来の財政経済の問題につきまして心配をされまして、おのおのの立場から賛成、反対の討論をいたされたのでありますが、われわれが政府提出の予算案を見まして一番心配する点は、やはりその問題なのであります。御承知の通り、日本が独立をいたしたあとにおきまして、日本財政経済あるいは外交等をいかなる方針において指導いたして行くか、これは国民の非常に関心を持つておる問題であります。しかるに政府が今回提出をいたしたところの予算案を見ますと、何らそれに対する方針が示されておらないという点は、ひとり国会議員にとどまらず、全国民の非常に心配をいたすところであろうと思うのであります。今まで政府におきまして補正予算案を組むときには、それがあるいは当を得ており、あるいは当を得ておらないかもしれないけれども、あるいは十五箇月予算である、あるいは十八箇月予算である、一つ方針と確信を持つて提出をいたしておつたのであります。今回の予算におきましては、何らそれらの点につきましての見通しと確信を持つておらない。こういう点は国民を非常に失望させ、よりどころを失わせるものであつて、われわれとしましては憂慮にたえないわけであります。補正予算と申しますが、自由党の塚田委員が申された通り、ほぼ一千億円に上るところの厖大なる予算であります。財政法の立場からいいますと、かような補正予算は提出すべきものでない、こういうような議論さえも塚田委員によつて出されておるわけであります。この厖大なる予算は、補正予算案といいながらも、講和会議成立後において自由党が、独立国家としましていかに日本を、日本財政経済を、あるいは外交の方針を持つて行くかという片鱗あるいはその大綱が現われなければならないわけであります。これについて、何らその点の見通しも計画もないということは、はなはだ遺憾にたえないわけであります。これを吉田総理大臣に、あるいは吉田内閣に求めることは、あるいは無理ではないかとも考えられるわけであります。御承知の通り吉田総理は八月に解散をいたしたわけであります。つまり講和後におきまして日本の内閣というものを、あるいは日本の政権を強化して、そうして今後起るべきいろいろな問題に対して、信念ある態度をもつて善処いたしたい、かようなる見解をもつて解散をいたしたわけでありますが、しかしながらその結果に現われたものは、自由党の二百八十名の絶対多数がくずれまして二百四十名になり、そうしてまた党内においては、吉田自由党総裁の透倒でなく、いろいろなる文書を掲げまして、二百四十名が実際におきましては一致いたしておらない、こういう関係で弱体内閣をつくつてしまつたわけであります。つまり講和後におきましては、吉田総理はあらゆる問題、特に自分の政権を強化するところの見通し等についても、ただちに来るべき選挙において現わるる結果が予見できなかつた。こういう吉田総理でありますから、長期計画その他についての見通しが立てられないというのも、もつともであろうとは思いますが、しかしながらこういう無定見なる一人の総理大臣の計画のもとにおいて立てられたる予算案であり、また大蔵大臣も初めての大蔵大臣、戦前の日本経済あるいは世界の貿易は知つておるが、その後においての経験がない、こういうことが、今回の予算案の何ら定員のない点を露呈いたしたのではないかと思うのであります。またこれを支うべき自由党におきまして、何らの定員がないということは、ただいま岡本委員が賛成討論におきまして、最後に自由党の附帯決議を出したわけであります。おそらくこの附帯決議は、自由党民同派と吉田総理の方におきまして、いろいろと予算案等に対しての取引関係もありまして、つくられたものであろうと存じますが、この附帯決議が、この予算案に賛成をいたす立場にありながら、いかに無定見であるかということを暴露いたしておるのであります。つまり公務員給与につきましては給与改善をいたす、地方財政の堅実化をはかる、中小企業の金融改善等に対して、すみやかに適切なる措置を講ずる、こういうことを附帯決議に出そうといたしておるわけであります。(「出したのだよ」と呼ぶ者あり)附帯決議に出す以上は、なぜわれわれの修正案に賛成をいたさないのか。あるいはまたわれわれの出し野党二派の修正案に対して、君たちの案は少し厖大に失するきらいがあるが、われわれの方はこの点においてはお互いに妥協ができると思うから、ひとつこの辺でお互いに努力しようじやないか、かようなるところの申入れをいたさるべきが、政党を持つて政策を論ずる立場におきましては当然であります。しかるに何らさようなことをなさず、この補正予算案に賛成しながら、そのあとにおいてかようなる附帯決議をしようということは、これ何ら先の見通しもなく、ただこれらの決議をしたといつて地方等に帰りまして、自分たちの攻撃を防ごうとするところの彌縫策、欺瞞策であると論断してさしつかえないと思うのであります。(拍手)かようなところの無定見、そうして何らの見通しのないところの見地に立つた予算案、これはいたずらに将来国民に、危惧と不安とをもたらすにすぎない予算案であると、論断いたしてさしつかえないと思うのであります。  次に、今回吉田内閣の提出したるところの予算案につきましては、その予算案の編成におきまして、自由党の政策と何ら関連性がないわけであります。御承知の通り、十一月二十一日閣議決定をもちまして、五施策推進、こういうところの政策を展開、表明いたしたわけであります。つまりかような政策を政府が発表いたして国民に問うべきときにおいては、当然予算の中にそれが盛り込まれていなければならないということは常識の示すところであります。しかるにこの五施策におきましては、民生安定促進強化であるとか、あるいは経済基盤の拡充展開、また農村の支持を得るためには食糧自給の多角的多年次計画、あるいはまた治山治水の多目的総合計画、かようなるところの大きな題目を盛り込んで、そうして出発をいたしておるわけであります。こういうところの問題等につきましては、その政策が閣議において決定されて、国民に所信を問う以上は、補正予算とはいえども一千億円になんなんとし、そうしてまた御承知の通りに講和条約後初めて編成する予算であります。非常に重大なる予算である。単に補正予算といつて言いのがれはできないところの問題であります。講和条約成立後に初めて断行されたる選挙において、独立と自主のもとに打出されたるところの政策であり、予算でありますれば、補正予算であるから政策等が盛り込めないということは言えないわけであります。こういう自由党の基本政策、そうしてそれが予算においていかに現われておるかということを、国民は心から心配いたし、あるいは特望いたしておる。しかし何らそれらに対しましての片鱗もうかがうことができない。これまた本予算がはなはぜ無責任にして講和後におきまして日本の国政を、力をもつて、責任をもつて担当いたして行こうという吉田内閣に確信がない、この露呈であろうとわれわれは本予算を通じまして、吉田内閣に申さざるを得ないわけであります。この点におきまして政府とそれに基く内閣との政策、予算においての関連性がないということは、はなはだ遺憾でありまして本予算に失望を感ぜざるを得ない問題であります。  第三点といたしまして、中曽根委員も申されましたが、日本におきまして国民が非常に関心を払つておる問題は、日本経済の今後のあり方の問題であります。御承知の通り貿易は、政府の年度計画におきましては、十七億ドルぐらいの輸出があるかもしれない、かような見越しを立てたのに、十億ドルそこそこという輸出で、七億ドル近い見当違いをいたしておる。特需の関係もまた思うにまかせない。こういうときにおきまして、今日本経済界において流れる一つの動きというものは、株等を通じて見てもごらんの通り、今の軍需株買い等が何ら根拠なくして行われて、値が上つておるという実態であります。特需に期待を失い、あるいは貿易に期待を失い、あるいは吉田内閣をもつてしては、中共貿易あるいはソ連貿易等につきましても期待は持てまい。かような立場に立つてあせつたところの産業人の向うところは、おそらく日本は再軍備をするのではないか、そういたしますと、軍需関係の産業は見込みがあるという立場において、軍需株の何ら根拠なくしての割高が実現をいたしておるわけであります。こういうときにおきまして、吉田総理は、再軍備はしない、あるいはまた経済力漸増によつて防衛力を高めるとか、あるいはまた現在以上には防衛関係費は支出しないとか、何か一つの基本的なる考えを持たせなければ、日本の産業人としましては大きなる迷いを出し、せつかくの日本の乏しい資金を機械産業、軍事産業等に振りまき、あるいはまた吉田内閣が再軍備するであろうということをいたずらに考えまして、そして株等を乏しい資金によつてつた人たちも、将来においては多大の迷惑をこうむるわけであります。つまりこの問題につきまして的確なる判断力と向うところを国民に与えたいという予算でなければならないわけであります。  われわれが今回の補正予算修正におきまして、安全保障諸費の末使用分につきまして、この使用を削減いたしたものは、日本の千八百億円に上る防衛関係費というものは、日本経済においては、これは過大である、そして今後におきましてはそれ以下に圧縮をしなければいかぬ、日本経済実態に沿つた防衛諸費を計上するにとどめ、そして千八百億円にも上るところのかようなる無定見な防衛関係費を計上すべきではない、かようなる所信のもとに平和国民としての自信を高め、並びに政府に対しまして政府の無定見がいろいろな点から国民を迷わす点に警告をいたしたわけでありまして、これに対しまして社会党の左派が防衛費に対して賛成をいたしておるとか、あるいは改進党の人々が再軍備を唱えながら非常に無定見なる考えであるとか、自由党の人はいろいろ揣摩憶測をいたしまして根拠のない反対をいたしておりますけれども、千八百億円という防衛関係費は、これは日本経済の許されざるところである、また平和国民として、かような経費を計上されることは、世界に信用を失墜する、かような見地に立つて、三党こぞつてかたく一致団結をいたして、そして提出いたしたわけであります。自由党の見解というものは、いたずらに揣摩臆測をいたすものでありまして、政治家としてとるべき態度でないと思う次第であります。かようなる点からしまして、今度の予算につきましては、全面的に政府のこの予算は信頼が置けない。何らの確信がない。第五次、第六次内閣を考えておる吉田総理大臣として、よくかような無定見なる予算出したものだ。かような点から全般的なる反対をいたすものであります。  各個の問題におきましては、若干重複を避けまして、簡単に申し上げたいのでありますが、米価の点であります。この自由党の農民政策の基本に流れるものは何であるかというと、横井時敬流の古い農業政策であります。つまり昔横井時敬氏が、小作人というものは、地主が用心棒をしてやらなければ、いつも間違いを起すから、地主というものが必要である、こういう見解に立ちまして、大正より昭和の初頭にかけまして、横井時敬農政が広く日本の支配層に珍重せられたのでありますが、今やはり自由党吉田内閣に流れるものは、横井時敬流の農業政策であります。そこで農民に高米価をとらせる、高い米の価格を払つてやると、むだ使いをする、こういうような考えがそこに流れておるわけであります。しかしわれわれが常に考えるのは、耕作農民が土地を得て、そして正当なる収穫、収益が与えられたときにおきましては、日本農民の勤勉性、土地を愛する気持ちからしまして、その多くの収入は、あるいは土地改良に、あるいはまた農具の改善に向け得るわけであります。つまり米の価格を若干引上げまして、そうして農民の生産費を償う、これすなわち食糧増産の基本である。かくして政府等において廣川農林大臣がいろいろ考えておるようでありますが、食糧自給五箇年計画、これらの政策と相まちますれば、あるいは五箇年内に千七百万石くらいの食糧増産等ができまして、将来日本の最大のがんでるる、四億ドルを支払う米穀、穀物の輸入等の阻止ができる、そのような見解に立つておるわけであります。つまり米の値が上る、そういたしますと、ただちに農民が浪費をするであろう、あるいは国民生活を圧迫するであろう、こういうような考えは、現在の解放せられたる農民に対する信念を欠除するものでありまして、われわれ二十数年にわたつて耕作農民、小作農民の解放に当つた者の現実の体験からしましては、これ以上耕作農民を侮蔑あるものはないと断言してはばからないものであります。その中におきまして、二重価格制をとつて、ただいま中曽根委員も言つた通り、あるいは税金その他何ら減税の思恵を受けられない人に対しては、二重米価制によつてこれを救う、これは当然とらるべき問題であります。政府のこれらに対する何らの定見もない点を修正をもつて是正をいたし、そうして政府のかような予算組み方に反対をいたすということはほんとう日本の前途を考え、食糧自給度を高めることによつて日本の将来における輸入超過のがんを今にして芟除せんとするところの愛国的至情の現われであるということを、よく御了解を願つておかなければならないわけであります。  次に給与ベースの問題でありますが、やはり政府におきましては一つ考えがあるわけであります。この給与ベースを上げるということは、何か国家公務員あるいは勤労階級というものが、勤労意欲なく、そうして永久にそれらの点につきまして要求を繰返しまして、財政混乱の根本をなすものである、こういうふうな考えを持つておるようでありますが、われわれは、終戦後苦しい生活の中において努力をいたした国家公務員あるいは勤労階級、これらが多くの犠牲を払つたということは、現実の姿である。そこで、講和独立の契機であり、初めての予算編成ではないか、一度くらいは政府人事院勧告をのみ、そうして公務員に対しまして、初めて日本の講和後におけるところの賃金の最低のノルマともなるべきところの人事院勧告、あるいは国鉄裁定案等を受諾をいたして、労使の苛烈なる争いによつての問題の解決でなくして、常識と合理性のもとにおいて問題を解決すべき基準を立つべきであろうと考えるわけであります。特にわれわれが考えるのは、先ほども申しましたが、日本経済は本年以降におきましては、あるいは物価低落あるいはまた経済不況等におきまして、いろいろと賃金の低下傾向等はあつても、異常暴騰等は考えられないわけであります。ことし人事院勧告をのむ、また来年も上るのではないか、こういう不安の点があるのでありましようが、政府におきましては、やはり日来の物価の指数はすえ置く、物価の高騰は防ぐ、あるいは日本経済力を培養して、海外競争に耐え得る物価の下落を考える、こういうふうに考え対策を立てる。こういうような確固たる信念がありますれば、今度給与ベースが上つたからまた来年もこの手で上げるのではないか、さような不安は一掃せられると思うのであります。いかに淺井人事院総裁といえども、人事院総裁の職にあるから、毎年給与ベースの改訂を出さぬと自分のポストがあぶなくなるから、まあ何でもいいから毎年出そう、かような無定見ではあるまいと思うのであります。やはり実情に基いて、出さなければならないときであるから、給与ベースの改訂も出す。政府財政経済の見通しのもとに、今年勧告をのんだとしましても、経済実態上将来においてはあまり心配の種はない、かような確信を持つて対処いたして、講和後初めての給与ベース、人事院勧告を受諾して、そして日来の給与のあり方、かような問題の解決のあり方を示す、かような勇断が必要であろうと思うわけであります。これを何ら考えず、いたずらに決議案等を出しまして、糊塗いたさんとするのは、はなはだ遺憾に思わざるを得ないのであります。  もはや地方財政については私が論ずる必要もないのである。塚田委員が自由党を代表して修正案に反対したときに、地方財政は困難である、しか地方財政について平衡交付金等はいろいろ考慮してもしかたがない、これは全面的に地方自治制を研究してからやればいいじやないか、こういうわけであります。つまりまさにおぼれんとする人に対しまして対策をせずに、あとで葬式になつてから香奠をよけい包んでやればいいというような考えであります。(拍手)まことに遺憾千万で、坊さんの仕事であつたならば、いざ知らず、政治家のとるべき態度ではないと確信をいたすものであります。この点につきましては本多国務相も、今度の二百億円の平衡交付金、百二十億円の起債では、政府の庶幾する二割ベース・アップ並びに年末一箇月の手当も与えられない県も出るかもしれない、そのときは何とか各県自治体においてこれを処理するであろう、こういう答弁であり、また自由党を代表する財政経済の大家塚田十一郎君は、これに対しまして、借りておいたらいいだろう、こう言うのであります。かようなる貧弱な地方財政においては、起債の道等を政府がとざしておいては、地方銀行等もなかなか金を出さないわけであります。こういうときにおいて、やはり修正案に盛つたことくに、地方財政平衡交付金あるいは起債等を考えて、そうして地方財政というものが膨脹し過ぎておる、これは何らか対策を立てなければいかぬ、こう考えたときは、法律をまたしつかりしたものをつくつて、そうして地方財政を実情に合うようにいろいろと、終戦後アメリカに押しつけられた形でできた委員会等も整理統合いたしまして、所信のほどを示す。広げておいて責任を持たないということは、これははなはだ内閣として妥当な処置でないと思うのであります。地方の知事等がこれらについているくの陳情をいたすということは、これはもつともであるわけであります。われわれといえども地方財政規模が少し広がり過ぎておるということは、いろいろと考えるわけでありますが、広げるもとをこしらえておきながら、そういう制度をこしらえておきながら、そうして金がかかるからといつて責任を持たないということは、これは政府としての態度でないと思うわけであります。  中小企業の問題、あるいはまた老朽校舎の問題、あるいはまた既定経費節約等の問題、いろいろと歳入面等にわたりまして論じますれば、いろいろな見解があるわけであります。ただ一言申し上げたいのは、外為関係の金を今度の費用の中に使うとか、あるいは安全保障諸費を使うとか、あるいはまた自然増の期待が大き過ぎるとか、こういつたようなことを修正案について言われますが、政府はいつも自然増等によつて当初予算より多くの歳入出しており、あるいはまたいろいろと本年度におけるところの予算を繰越して不明朗に出しおる。われわれとしましては、二十七年度予算については二十七年度において一つの区切りをつける、そうして国民に対して、与うべきものは与え、また使うべからざるものは使わせない、かような権威ある予算の執行をしなければいかぬ、こういう見地に立ちまして、政府案に反対をいたしまして、そうしてわれわれの修正案を強く押し出したわけであります。自由党の諸君並びに政府におきましても、この附帯決議案を出そうとするところの勇気があるわけであります。また中小企業公務員給与の問題、地方財政の堅実化に対しまして、誠意と同情を持つておられるわけであります。どうか竿頭一歩を進めまして、ただちにこの政府予算の中に盛り込まれるように努力をいたし、政府の機関を使いますれば、一日くらいでこの政府原案修正もできる、そのために努力くださらんことを最後にお願いをいたしまして、私の反対討論を終るわけであります。(拍手
  62. 太田正孝

    太田委員長 福田赳夫君。
  63. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 私は無所属倶楽部を代表いたしまして、本補正予算案に賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)きわめて簡単にその理由を申し述べてみたいと存じます。  実は私どもの間におきましては、本補正予算案に対しましては、公務員給与の点並びに中小企業に対する年末金融に関しまして、修正案を提出しようかという意見があつたのでありますが、よく検討してみますと、これが非常に時間がかかるのです。ことにこの案が成立いたしましても、この実施に時間がかかるということを考えまして、これをとりやめ、そのかわりこの点につきまして政府に十分要請をいたしまして、本案に対して賛成をしたい、かような次第であります。  私ども考えているところによりますと、現下財政はきわめて重大なる地位にあるということを考えております。たとえば私は今の経済情勢というものは、風船のようである。上に上ろうとする風船をささえておる唯一の綱が財政である。この財政につきましては、いまだまつたく安定の地位を得ていない。いつまた財政の安定というものが爆発するかしれないような危険な状態にあるというふうに観察いたしておるのであります。従いましてわれわれは、財政の運営につきましては一歩もゆるんだ態度がとれない。この上とも国費の増高が非常に厖大になるということになりますと、これがかえつて国民経済を圧迫する、経済の基盤をこわす、そうして勤労者、農家、中小企業というような、世の弱い者、小さい者の立場を押し流してしまうような、インフレの危機の端緒を与えるのではないかというふうに考えておるのであります。さような意味合いにおきまして、本補正案の基底を流れるところの財政の立場を死守しようとする思想、これにつきましては、私は満幅の協力をいたしたい、かように存ずるものであります。(拍手)  しかしながらこの補正予算を通覧いたしまして、まだ考える余地があるのではないか。ことに給与の問題、また先般本会議におきまして可決されました中小企業金融対策決議、この趣旨も織り込んでない。ことに公務員給与問題になりますと、私はこれはまだまだ考えなければならぬというふうに思うのです。と申しますのは、わが国の長い間の慣習といたしまして、大体三箇月分の年末年越し資金というものを予算に計上して来た。これを基礎にいたしまして、政府では数箇月の賞与というものを出して来たのです。この制度というものが、占領下の財政によりまして廃止になつた。これはアメリカ式になつたわけです。本補正予算を見ますと、当初の本予算において〇・五の一時金が考えられておる。それに今度の補正予算におきましてさらに〇・五、一・〇、一箇月分の年末資金というものが掲げられるのでありますが、これは税引き一万円です。一万円でわれわれ公務員が一体年越しができるか、これは議論の余地がないのではないかと思う。これを政府といたしましては、何とかそのくらいの思いやりをして、いいのではないかというふうに思うのであります。私は財政は非常に苦しい中にあると思う。これについては異論はない。この苦しい財政の中から何とか切盛りをいたしまして、この年越しの資金をこの公務員にも与えてもらいたい、こういうことくらいのことは考えられていいのではないかというふうに思うのであります。苦しい財政の中から苦心をして出すという政府の思いやりがありますれば、その苦しい生活の中から、苦しい生活と闘いながら、公務員国家再建に挺身するところの公僕精神がわき出すのではないか、かように考えるのであります。ぜひともこの点は政府においてこの本補正案とは別途にひとつ推進してもらいたい、実行してもらいたい、これを固く要請したいのであります。  なおさらに中小企業においてもそうです。年の瀬が迫つておる。この間決議案ができたばかりです。この決議案も、全国の中小企業の年の瀬を迎えた各位が、どういうふうにして実行してもらえるか待つておる。これもひとつ政府におきましては実現してもらいたい。  私はぜひこの二点につきまして政府が必ずこれを実現してくれるということを要請し、かたく確信いたしまして、本案に賛成するものであります。(拍手
  64. 太田正孝

    太田委員長 八百板正君。
  65. 八百板正

    ○八百板委員 私は日本社会党を代表正して、政府提出の予算補正に反対し、ここにその理由を申し述べてその立場を明らかにいたしたいと存じます。  このたびの補正予算給与改訂が中心となつておるのであるが、まず政府考え方が根本的に間違つておるということを指摘いたしたいと思います。(拍手)国はみずからの直接の使用人たる公務員に対し、憲法に定められたる労働組合としての基本権たる争議権を奪つたのであります。そのかわりに人事院を設けて、公務員の保護に当ることとなつたのでありますから、人事院の勧告制度というものは、政府はすなおに受けて予算組み、案として出せばよいのであります。これを多いとか、少いとか審議することは、国がやる、国会が取扱うというふうに考えるのが正しいのであります。(拍手)それは国鉄、専売の仲裁裁定及び電電公社の調停案についても同様であります。人事院勧告政府と国会に対して出されるのでありますが、政府はこれを織り込む作業をやり、国会がこれを審議するのであります。それを何の根拠もなく人事院勧告一万三千五百十五円を、たとえば一万二千八百円というふうに切下げて政府原案を出すというようなことは、本来の勧告制度の趣旨を抹殺するものであつて、行政府としては出過ぎた行為といわなければならないのであります。  さて私は予算補正を取巻く財政の全般についてながめてみたいと思うのでありますが、およそ一家個人の経済ならば、予定したよりもよけいに収入があるということは喜ばしことでございます。しかしながら国の財政について予算よりも多い収入があつたとしたならば、はたしてそれは喜ばしいことでございましようか。これを補正予算についてながめてみますならば、税金が多くとり過ぎているのであります。この予算はその自然増収財源として組まれているのでおります。そしてしかもその自然増収は所得税源泉徴収の七百億円が主となつているのである。補正予算全時の支出が七百九十七億円である。月給袋からとり過ぎたのが七百億円、公務員がこれでは食えない、年は越せないというときに、それでは二〇%上げてあげましようといつて、先に月給袋から七百億円よけいにとつておいた中から百二十八億円、地方財政に二百億円足らず交付する、それから二百億ばかりを減税するという。とり過ぎたから返すというのでありますが、まだうんと残つている。これではとられた方の側から見ますならば、追いはぎからお見舞をもらつたようなもので、まつたく目を白黒せざるを得ないのであります。(拍手)およそ不可解しごく、高等詐欺にあつたような感じがするのであります。また中央財政は税金の上りがよ過ぎて余つている一方、地方財政はいよいよ赤字で、その自主性を失い、起債を百二十億円に拡大し、借金主義がとられており、また国民個人々々の経済は金をためるどころか中以下ではまつた赤字に次ぐ赤字であるというのに、国家財政だけは黒字で金が余つておるというのであります。これまた国民経済国家経済との不均衡、ゆがみを示すものであつて、わが国の財政の七ふしぎの一つといわなければならないのであります。  歳出の面を見ますと、そこには日本経済の明日への理想もなければ、独立を呼称する日本政治の明日への確たる方針も発見することはできないのであります。また各省関係について、あれが足りない、これが足りないと補正が加えられているのでありますが、ひとり保安隊の費用、安全保障費、平和回復費用、防衛支出金などについては余つておる。足りないどころか、十一月二十九日現在大蔵省発表によれば、合せますと千四百四十六億円使い余つておる。年度内には使い切れずに、どうしてつじつまを合せて使い減らそうかというので苦心をしておる。よそは足りないのに、ここだけが余つて使い切れないというのは、一体どういうわけでありますか。当初予算の立て方が軍事費優先の考え方に立つて、でたらめ、ずさんに計上したことを暴露したものといわなければならないのであります。予備隊改め保安隊についていえば、昨年二十六年度は当初予算に百六十億円を組んだ。補正ではほぼ同額の百五十億円を要求したのであります。こんなに補正で倍にするなどという無定見が許されるものではないのであります。そうしてさらに百五十一億円を繰越したのでありますが、本年またあとで七百二十九億円の予算の中から使い切れずに五百億円をなお余しておるというのであります。しかるにこれらの未使用財源をほかに使うことをしないで、かえつてこれを別わくとしてしまい込み、いうところの自衛力漸増すなわちやみの軍備に充てようとするに至つては、予算全体の体系は支離滅裂、何の均衡ぞやといわなければならないのであります。吉田内閣の平和憲法無視、アメリカ追随、隷属の予算であり、国民を欺く陰険なる軍事予算といわなければならないのであります。(拍手)  さて一般会計支出の不足は、一方において巨額の特別会計食いつぶしの財政投資でまかなわれておるのでありますが、これはだんだん大きくなつて、今や日本産業の中で、財政資金が投資の王座になり、昔の国防経済のようなものが現われて来る危険もないとは言えないのであります。資金運用部資金、見返り資金の運用について見ましても、このたび六百五十二億円の増となつておるのでありますが、開発銀行への二百一億円と、金融債の引受け三百六十億円が目立つたものでありますが、この金は言うまでもなく勤労者の勤労の蓄積であります。零細な庶民資本の蓄積であります。これを食いつぶして、開発銀行その他につぎ込まれて行くのでありますが、流れる先は大産業と大資本のふところであつて、倒産に次ぐ中小企業のふところとは、きわめて縁遠いものといわなければならないのであります。申訳的に中小金融なども、ほんのちよつぴり見ておりますが、大資本偏重のそしりは免れないのであります。さらにまたこれらの国家投資が資本家を助け、兵器産業の資本となり、再軍備、他国の戦争への巻添えの危険を加えるものとなつているのであります。このようにして大資本家、財閥の復興、軍国主義の復興の危険はあつても、国民経済の復興には、これまた縁遠いものと申さなければならないのであります。  一体政府は、日本の自立経済の基礎をどこに置こうとしているのであろうか。特需や兵器産業に血道を上げて、日本の資本と資材、技術と労働をつぎ込み、食いつぶして、戦争協力の経済に不景気の打開を求めようとしますならば、独立日本経済にとつては、これほど危険なものはないといわなければならないのであります。自立経済の基礎は、中共を含むアジア貿易、そこに道を求めなければならないのであります。アメリカの戦争兵器はアメリカでつくるべきであります。わが国産業がアメリカの兵器を引受け、そんなところに力を注いでゆがめてしまえば、日本はそれだけ平和産業が遅れて、国際競争力をさらに弱めて、その間に多くのアジアの貿易市場を失うことを忘れてはならないのであります。それは隷属と亡国の道であります。日本独立の道は経済の自立にあり、経済の自立は国内購買力の充実と相まつて、アジアの貿易とつながり、平和な産業の中から、よいものをつくつて売り出し、お互いの生活を相互に高めて行くことでなければならないのであります。補正予算の中には明日への窓はまつたくとざされておる。生産は戦前の一四〇%にふえたが、国民生活水準は戦前の八〇%にしかつていない。吉田内閣の財政には国内経済をよくする何の施策もないのであります。四億ドルの外国食糧を輸入するならば、なぜその金を日本農業にまわして食糧自給の方策をとろうとしないのであるか。こういう点、財政支出の効率について、一体政府考えたことがあるのかどうか。政策の貧困をわれわれは指摘せざるを得ないのであります。  貿易政策に対しても何の抱負もなく、さらにまたこの補正予算には二十八年度予算への展望もなく、インフレの要因をはらみながら、漫然場当りのふくらまし予算組み上げたものといわなければならないのであります。  新しいものはと、しいて見つけようとするならば、老齢軍人に対する一時金の給与予算に見るのであるが、これまた社会保障制度とは何の関係もなく、軍人恩給の小手調べとして、そのはしりをここに見せたということは、再軍備徴兵制度への事前運動にその第一歩を踏み出したものであります。(拍手)  さてまたこの補正予算の減税について見まするに、すなわち二百三十億円の減税は、これまたインチキであります。国税全体が増額せられて、個人個人の減税などはあり得ないのであります。おかしいな話であります。このからくりの種となつているのは基礎控除の引上げ、扶養控除の引上げでありますが、物価高などで生活が苦しくなつて、最低生活のささえをする支出の基準が上つたので、それにスライドして基礎控除を引上げたにすぎないのでありますから、国民の負担が軽くなつたというものでは断じてないのであります。これを減税などと毎年宣伝いたしまして国民を惑わすということは、欺くもはなはだしいものといわなければなりません。また最低額所得者年所得が二万円以下の税率を百分の二十から百分の十五に引上げたということも、もとくとるのが無理なのであります。ところが高額所得に対する税額はすえ置きといたしまして、高額所得者の税を多くとらないのは、金持ちに金をためさせて、日本経済発展のための資本の蓄積をはかるのだと言つておるのでありますが、なるほど貧乏人に金を持たせれば、使つてしまつてたまらないでしよう。昔からもちはもち屋ということがありますが、金は金持ちにためさせた方がいい、こういうふうに考えるところの資本蓄積の方法は、大資本家の側から見ればなるほど喜ばしいことでございましよう。だがわが国の最高税額は五五%であるが、イギリスは九七・五%ドイツは東西ともに九五%となつております。アメリカにおいてさえ八三%の高率の課税が行われておるのであります。このようにわが国の資本家が税制の保護を受けて育成されておることは明らかでありますが、これを一方わが国の国民所得の中でどれだけの資本蓄積が行われているかということを、経済審議庁の調査によつて見ますならば、その割合は蓄積二五%となつております。アメリカその他では大体一〇%が常識となつていると聞きますが、一体われわれの家庭において例をとりましても、収入の二五%を蓄積するというようなことがはたしてできるでありましようか、それが日本の国では行われておる。これは国家の権力でいかに無理な収奪と蓄積が行われておるかということを雄弁に物語るものであります。(拍手)国の権力によつて大衆課税が重く課せられ、さらに財政金融政策、低米価、低賃金等々の政策と相まつて、この強制的資本の蓄積が行われて参つたのであります。国家権力による資本の蓄積は、このようにして国民の所得から吸い上げられ、私企業たる大資本と大産業に渡され、ふくらませて来たのでありますが、それならば国家権力は当然にその大産業と大資本を管理し、監督する責任を果さなければならないはずのものであります。(拍手、「その通り」)ところがそれをやらないで、自由放任の利潤追求にまかせておる。また個人経済からゆとりのないまでに吸い上げておりますところの政治と財政経済のもとにあつてみれば、勤労者個人の資本蓄積などというものはまつたくあり得ないのであります。でありますから、個人の経済をそんなにまで支配したのでありますから、その国家の当然の義務として、老後の生活の保障や、病気の治療、青年の教育等々については、あげて国家の負担と責任においてなさなければならないものであります。しかるにこれもやらない。わずかに社会保険費を基礎控除の中に加えたがごとき、二階から目薬の申訳にとどめて、社会保障制度の根本的、体系的確立に目をおおうておるということは、これまた大きな矛盾といわなければならないのであります。これでは国家国民のサービスの機関ではなく、資本家復活の機関であり、また税金は国民経済生活の富の再配分、調整のためのものではなくて、資本蓄積の資本家の手段となつておるのであります。これ実に税金の主たる性格が、勤労者、労働者、農民、中小商工業者の犠牲と収奪の上に立つて、資本家への富の集中をはかるための強制手段となつておるものと言うべきであります。十八世紀的な中世資本主義を日本に押しつけたドツジとその亜流を誇りとして参りましたところの池田勇人元大蔵大臣は、あえなき最期を遂げたのでありますが、(笑声)彼の発言が単なる言葉の失言として輿論のさばきを受けたものでないということも、これまた万人の周知のところであります。池田の不信任は池田財政とその経済政策に対する不信任である。して見れば、その後を受けて向井大蔵大臣は前車の轍を踏んではならないのであります。それは言葉の表現や物腰表情の転換であつてはならず、政策の転換でなければならないのであります。(「その通り」)もし依然として池田冷酷財政の後を受けたとしますならば、それは不信任をもつてつた国民の意思、国会の意思を無視するものであり、国会に対する挑戦というべきであります。しかしいまだ向井財政の中に、その積極的な反省と良心のひらめきを具体的に確認することはできないのであります。自由党の言うかびの生えた自由主義経済、資本主義経済をもし眼目とするならば、思い切つて税の全体を少くして、経済活動に対する財政の関与をなくするがよいのであります。しかるに口に自由を唱えながら、税制を通じては、たとえば法人税の改正などに見るごとく、産業界、金融界の要望にこたえて資本蓄積に協力するために税制上の経済政策的な考慮を加えるというやり方をとろうとしておる。まことに自家撞着、不届きしごくといわなければならないのであります。国家国民のものであるが、国家は資本家のためのものであるか、吉田内閣の財政はこのようにして民主的たるべき国家の権力を私せんとしておるのでありまする財閥の解体、封建的地主制度の解放、経済の民主化は、今や文字通り反動逆行の吉田政治によつて元のもくあみにならんといたしておるのであります。このようにして吉田内閣悪政の縮図ともいうべき二十七年度予算は、その積悪の結果たる今次の補正予算となつて現われたのでありますが、われわれは角度をどうかんがえて見ても、この補正予算に賛成すべき何ものをも発見することができないのであります。(拍手)  しかしわれわれは今これらの根本的矛盾を許しがたいものと考えるのでありますが、ひるがえつて目を現実の世相に転じますならば、今や年の瀬を前にして、多くの勤労大衆が悲痛な気持を持つてつておるのであります。明日の千円よりも今日の百円を待つておるのである。われわれは目のあたりこの姿を見ますときに、不満足ながら若干の修正を加えて、共同修正案をもつて臨んだのであります。ところが自由党は、一部鳩山派において野党修正に応ずるかのごとき策略、宣伝をやり、党内除名問題の取引の具として、予算問題を扱つたのであります。(拍手)かくしてわれわれは枯木に新芽をつぎ、枯木に花を咲かせることができないということを知つたのであります。われわれはこれらの政府案の根本的反動性を考え、さらに党略のためには何ものをもあえて犠牲にする自由党の態度とあわせて考えますときに、ここに百二十パーセントの反対を表明して、討論を終るものであります。(拍手
  66. 太田正孝

    太田委員長 これにて予算三案に対する討論は終局いたしました。  次に予算三案を一括して採決いたします。政府原案に対する賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  67. 太田正孝

    太田委員長 起立多数。(「何人だ」と呼ぶ者あり)起立二十七名。委員長を入れず。(笑声、拍手)よつて予算三案はいずれも原案の通り可決せられました。(拍手)  次に岡本茂君提出の予算三案に対する附帯決議を採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  68. 太田正孝

    太田委員長 起立多数。よつて本附帯決議は決定いたしました。(拍手)  この際向井大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。向井大蔵大臣。
  69. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 政府はただいまの附帯決議につきましては、今後予算の運用等により、できるだけ趣旨に沿うよう、適切なる措置を講じて行く考えでございます。(拍手
  70. 太田正孝

    太田委員長 なおお諮りいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 太田正孝

    太田委員長 異議なしと認めます。よつてそのように決しました。  この際、一言ごあいさつ申します。過ぐる十一月二十四日、補正予算外二案が提出されましてから、皆様方が活発に慎重に審議せられ、ふつつかなる私に同情せられ、御理解ある協力によりまして議事を進行し、ここに審議を終りましたことを、厚く心から感謝いたします。  本日はこれにて散会いたします。(拍手)     午後四時五十分散会