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1952-12-10 第15回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君    理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君    理事 勝間田清一君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    重政 誠之君       島村 一郎君    田子 一民君       塚原 俊郎君    永田 亮一君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       原 健三郎君    本間 俊一君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    北村徳太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    中曽根康弘君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       森山 欽司君    石井 繁丸君       河野  密君    西尾 末廣君       平野 力三君    伊藤 好道君       上林與市郎君    成田 知巳君       八百板 正君    福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         郵 政 大 臣 高瀬荘太郎君         建 設 大 臣 佐藤 榮作君        国 務 大 臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君         保安政務次官  岡田 五郎君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁保安局長 山田  誠君         人事院総裁   浅井  清君         大蔵事務官         (大臣官房長  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君         労働事務官         (労働統計調査         部長)     富樫 総一君         建設事務官         (計画局長)  渋江 操一君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       秋山孝之輔君         日本専売公社総         務部長     小川 潤一君         日本国有鉄道経         理局長     高井 軍一君         日本電信電話公         社総裁     梶井  剛君         日本電信電話公         社副総裁    靱   勉君         参  考  人         (公共企業体等         仲裁委員会委員         長)      今井 一男君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 十二月十日  委員栗田英男君、古井喜實君及び横路節雄君辞  任につき、その補欠として早川崇君、森山欽司  君及び上林與市郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員森山欽司君辞任につき、その補欠として古  井喜實君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     ―――――――――――――
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十七年度一般会計予算補正外二件を一括議題として質疑を継続いたします。     ―――――――――――――
  3. 太田正孝

    太田委員長 この際お諮りいたします。本日の予算審議に関し、国鉄専売その他の賃金改訂問題についての委員質疑に対し、公共企業体等仲裁委員会委員長今井一男君より、参考人としてその意見を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決しました。     ―――――――――――――
  5. 太田正孝

    太田委員長 それでは質疑に入ります。小島徹三君。
  6. 小島徹三

    小島委員 私は、本日の質疑応答議題が、補正予算に含まれております給与ベースのみに限定されております関係上、私が主としていたしたいと思つておりました質疑は、明日の総括質問に組んでいただくことにいたしまして、本日はただこの問題に関してほんの二、三点だけ、人事院総裁並びに大威大臣本多国務相にお尋ねしてみたいと思うのであります。  最近の電産争議あるいは炭労争議等におきまして、中労委権威というもりが非常に疑われ始めて参りまして、中労委をもう少し権威のあるものにしなければならぬために、法的措置をしなければならぬとまで言われておるのでございまするけれども中労委権威を強めるということに法的措置をとることは、第二次的のものであつてむしろそれではなくして、中労委裁定というようなものに対しましては、労使ともにこれはあくまで尊重するという精神を涵養させることが、一番必要なことではないかと思うのであります。その点につきまして、どうしても中労委にそういう権威をあらしめるためには、政府みずからが、そういう第三者の公平な裁定というものはこれを尊重するということを、身をもつて範を示すということが一番必要なものであろう、かよう考えるのでございます。そういう意味合いから申しまして、政府が今までの中裁委国鉄裁定に対してこれを受入れず、あるいはまた一般給与についての人事院勧告も、これをすなおに受入れないということは、労働秩序を乱す大きな原因なつているのではないか。そうしてまたそれが中労委等権威を少からしめておるのではないかということを疑つておるのでございますが、それについての大蔵大臣の御意見を承りたいと思うのでございます。
  7. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの公務員給与あるいは国鉄従業員に対する給与裁定というものは、十分に尊重して参る精神であります。予算上または資金上それが完全に行かないという点ははなはだ遺憾でございますが、尊重しておることはお認め願いたいと思います。
  8. 小島徹三

    小島委員 政府は常に仲裁委裁定こかあるいは人事院勧告等につきましては、これを尊重しておるということは言われるのでございまするけれども、現実の問題といたしまして、仲裁委リ裁定も遵守されておらないし、また人事院勧告も遵守されていないことは、だれも知つていることでございます。このよう政府が口の先だけで遵守すると言いながら、実際においてはこれを守らないというところに、私が先ほど申したように、中労委権威が疑われ始めて来る原因があると思うのであります。しかもただいまの大蔵大臣のお話を承りますと、財政上これを許さないとおつしやつておるのでございますけれども、たとえば国鉄仲裁委裁定にいたしましても、これを仲裁委決定通りにしたところで大した金の相違はないわけでございまして、私の計算が誤つておるならば問題ございましようけれども、私といたしましては、おそらく三十二、三億の金さえあればできることと思うのでございまするが、この三十二、三億を惜しむのあまりに、労働秩序の根本の原則をこわしてしまうということは、許されないことであろうと思うのでございます。もしも政府方面におきまして、この仲裁委裁定を遵守するために必要な財源を発見することができたならば、この仲裁委裁定を遵守せられる御意思があるのかどうか承つておきたいと思うのであります。
  9. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。裁定のペースを八月までさかのぼりますと、損益勘定において三十二億、工事勘定を入れて約四十億の財源が必要になるのでありますが、本年度の補正予算について、御承知通り国鉄におきましては一月、二月からそれぞれ運賃の値上げをいたしましても、なお三十億の赤字を生じまして、それを預金部から借り入れておるような状況でございまして、そのよう財源はないと考えます。
  10. 小島徹三

    小島委員 なお仲裁委裁定についてでありますが、年末賞与については政府は〇・七五で制限しておるのでございますが、なぜこのような大して大きな問題でないものを、団体交渉にまかせることができなくて、政府の方で〇・七五というようわくをはめてしまつたのか、その理由をお聞きしたいと思います。
  11. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます、予算上〇・七五というわくをきめておるわけではございません。総額百七億円の範囲内において、この財源の配分については国鉄総裁が適宜におやりになることと考えております。
  12. 小島徹三

    小島委員 仲裁委裁定におきましては、これは団体交渉にまかせるということになつておつたと私は了解するのでございまするが、なぜ団体交渉にまかせることができなかつたか。信用しなかつたのか、どういうわけであるか承りたい。
  13. 河野一之

    河野(一)政府委員 団体交渉を排除いたしておるものではございません。給与総額として百七億を補正予算に計上いたしまして、その範囲内におきまして国鉄総裁が適宜におやりになるものであります。
  14. 小島徹三

    小島委員 団体交渉を排斥したものではないとおつしやいまするけれども、そこに百何億のわくをはめてしまつたならば、団体交渉は事実上できないことになりますから、政府が何とおつしやつても、団体交渉を排斥したものだと了解するよりしかたがないのであります。私はこの点につきましてさらにつつ込んだ質問をしてみたいと思いますけれども、私はこういう問題について格別専門的な研究をいたしておるものではございませんから、この問題についてはこの程度で終りたいと思います。  次に人事院総裁に承りたいのでありますが、人事院勧告に基く一般給与ベース算定方法について、詳しく御説明願いたいと思います。
  15. 浅井清

    浅井政府委員 お答えを申し上げます。人事院勧告に関しますところの詳細の計算基礎は、すでに勧告に添えましてお手元に出しておりますから、それをごらんくだされば詳細判明いたすと思いますが、大体のところを申し上げますれば、常に人事院におきましては民間給与をはかり、同時に生計費をはかり、この二つ基礎といたしまして、本年五月を基準といたしました数字を算出いたしたのであります。
  16. 小島徹三

    小島委員 そういたしますと、人事院算定基礎には、世間ではよく言われておりまするマーケツト・バスケツト方式というもので算定されておるということも考えられるのでありますか。
  17. 浅井清

    浅井政府委員 御説の通りでございます。
  18. 小島徹三

    小島委員 最近の電産争議におきまして、いわゆるマーケツト・バスケツト方式というものが相当批判の的になつているのでございますが、その批判の的になつているマーケツト・バスケツト方式をおとりになつたのはどういうわけか。
  19. 浅井清

    浅井政府委員 電産争議云々につきましては所管外でございますから、私として御答弁のいたしようがございません。ただ人事院勧告におきまして、このマーケツト・バスケツト方式はいろいろ批判もございましようが、私どもといたしましては、これが一番よい方法かと存じております。
  20. 小島徹三

    小島委員 それでは、巷間伝えますところの電産労務者の要求いたしておりますマーケツト・バスケツト方式による数額と、人事院のなさいました数額とは、非常な相違が見えるようでございますが、どこにその原因があるのでございましようか。
  21. 浅井清

    浅井政府委員 お答えを申し上げます。電産の方面のことは私よく存じませんが、人事院の出しております数字は、人事院といたしまして、国家公務員と同じ職種の民間賃金と比較いたしまして、それと同じ程度に高める、こういうことを基礎としてやつておるわけでございます。
  22. 小島徹三

    小島委員 次に大蔵大臣に承りたいと思うのでございますが、現在補正予算大蔵省が出しておられます給与ベースは、人事院勧告から一定の割合を減じたものをお出しになつているのか、それともまた大蔵省独自で計算されて出された数字であるのか、承りたい。
  23. 河野一之

    河野(一)政府委員 人事院勧告趣旨を尊重いたしまして、内閣において決定いたしたものであります。
  24. 小島徹三

    小島委員 人事院勧告趣旨を尊重してということは、要するに人事院マーケツト・バスケツト方式を認めて、そうして別個計算されたということでありますか。
  25. 河野一之

    河野(一)政府委員 大体さようでございますが、出ました数字を検討いたしまして、これは国家公務員法にもありますように、民間生計費その他の事情を参酌してこれをきめることになつておりますので、そういつた事情を参酌いたしまして内閣において決定いたしたのでございます。
  26. 小島徹三

    小島委員 本多国務大臣に承ります。ただいまの人事院総裁並びに大蔵省の説明を開きますと、この給与基礎をつくるにつきまして、人事院でも同じ仕事をなさり、また大蔵省でも同じよう計算をなさつて、そうしておのおの別個のものを出しておられるのでありますが、もしも人事院勧告をそのままのむということでないならば、私は人事院仕事大蔵省仕事というものは、ダブつて行われるというむだがあると思うのでありますが、本多国務大臣はさようにお考えになりませんか。
  27. 本多市郎

    本多国務大臣 これは二つ立場においてやることが私は意義のあることだと思つております。公務員給与ベース等につきまして、特に独立性の強い人事院が、独自の立場でこれを算定勧告するということが意義のあることだと考えております。
  28. 小島徹三

    小島委員 そういう機関をこしらえておいて、その機関勧告をしたものに従うことができないということでありますならば、私は人事院存在理由はなくなると思うのでありますが、本多国務大臣はさよう考えになりませんか。
  29. 本多市郎

    本多国務大臣 人事院存在意義については、私はこれは疑いなく現在のような制度が必要であると考えておりますが、ただ人事院現状のままに置くかいなかという機構改組の問題につきましては、昨日も御答弁申し上げました通りに、やはり行政組織法適用を受ける政府行政機関にする方がふさわしいと考えております。
  30. 小島徹三

    小島委員 本多国務大臣は、かつて行政整理をなさつたときに、人事院を廃止するというような御意向があつたということを新聞紙上で見たことがあるのでありますが、今でもそのようにお考えでございましようか。
  31. 本多市郎

    本多国務大臣 ただいま御答弁申し上げました通りに、人事院の持つ機能というものは、公務員福祉確保という見地から必要なものであるとは考えますが、人事院を今のまま存続するかということにつきましては、先の国会に提案いたしました通り、これを廃止いたしまして、人事委員会というものを設けて、今日の人事院仕事を担当させる。従つてそれは政府行政機関として行政組織法適用を受ける、従つてまた定員法適用も受ける機関にすることが適当であると考えております。
  32. 小島徹三

    小島委員 私は残念ながら本多国務大臣とはまつたく相反する考え方を持つておるものでございます。憲法第二十五条に保障する健康にして文化的な最低限度生活をすることができるようにするためには、人事院よう別個権威ある機関をこしらえておいて、その勧告に基いて給与をきめるということが最も正しいのであつて官公吏の月給、給与というようなものが、常に時の政府の単なる財政的理由と称するものによつて左右されて、これらの人々の生活が安定できないということでは、私はほんとうに国家的な機構というものは動いて行かないと考えるものでありまして、そういう意味から申しましても、人事院ような強力なる機関をこしらえておいて、その勧告については政府はあくまでこれに従うという態度をとるのが正しいのではないか、かよう考えるものでございます。この点についての私の質問はこれで終ります。  次に、大蔵大臣に承りたいと思うのでございます。地域給について承りたいのですが、今度の補正予算に組まれておりまする給与予算の中には、もちろん人事院勧告地域給による給与増というものも当然含まれておると思うのでございますが、いかがでございましようか。
  33. 河野一之

    河野(一)政府委員 人事院勧告されております地域給を含めて、その部分を全部勧告通り採用するという建前予算が組んでございます。
  34. 小島徹三

    小島委員 人事院勧告は、御承知通りに十一月の二十二日ごろに出されたと思うのでございますが、そういたしますると、大蔵省は前もつて人事院打合せをして、大体人事院意向を確かめた上でこれを予算の中に組まれたものでございますか。
  35. 河野一之

    河野(一)政府委員 ある程度人事院内部的打合せをしたものでございます。
  36. 小島徹三

    小島委員 予算の組まれた日時から、その後人事院勧告されるまでの期間というものは、相当日がたつておるのでございまして、それから考えてみますと、大蔵省のこの予算の中に含まれておるといわれる地域給によるところの給与増予算というものは、相当伸縮性のあるものではないかと私は思うのでございますが、いかがでございますか。
  37. 河野一之

    河野(一)政府委員 給与ベースの問題といたしまして、二〇%程度を上げたのでございますが、その際におきまして、人事院勧告されておる地域給は全面的に採用するという前提のもとに、本俸を定めておる次第でございます。
  38. 小島徹三

    小島委員 それにいたしましても、地域給引上げということは、その後に大体の線でなされておるのでありますから、どうしてもこの予算の中には相当程度伸縮の余地があるという考えがいたすのでございまするが、そう考えては間違つておるのでございますか。
  39. 河野一之

    河野(一)政府委員 人事院の御勧告になりました地域給は大体平均一五%程度であります。その分をまず別除いたしまして、これを全面的に採用するという趣旨のもとに俸給の級別をつくつておる次第でございます。
  40. 小島徹三

    小島委員 人事院のなされました地域給に関する勧告というものは、人事院としてはおそらくベストを尽してなされたものと思われるのであります、その労は非常に多としなければならぬと思いますけれども、やはりどういたしましても、現地に住んでおる人間から見ますると、そこに幾多でこぼこがあつて不公平が生じておるのでございまして、そのために全国から幾多の陳情を受けつつあるというのが現在の実情でございます。この人事院のなさいましたところの勧告の中にも、やはり多少の不公平な点がある、でこぼこがあるということは、人事院総裁はお認めになりますかどうか。
  41. 浅井清

    浅井政府委員 お答えを申し上げます。勧告をいたしましてからあと、大体の空気を見ますれば、大体御満足を得ておるのではないかと私ども考えております。ただ、これはどうも物の考え方でございますからして、局所的にはそのような御意見もあろうかと存じます。
  42. 小島徹三

    小島委員 多少そういう点もあろうかと思われるのでございますが、そういたしますると、もしも国会において人事院勧告を修正するというようなことがございました場合に、はたして大蔵省は全面的にこれをおのみになるお考えでありますかどうでありますか。
  43. 河野一之

    河野(一)政府委員 どういうふうな御修正に相なりますか、その結果を見た上でありませんと何とも御返答はいたしかねます。
  44. 小島徹三

    小島委員 私の質問はこれで終ります。
  45. 太田正孝

  46. 川島金次

    川島(金)委員 私はもつぱら国鉄裁定を中心として政府見解をそれぞれこの機会に承つておきたいと思うのであります。本来でありますれば、順序として仲裁委員会代表者参考的意見を求め、次いで国鉄総裁労働大臣、最後に大蔵大臣にお尋ねをするのでありますが、いろいろ政府側の御都合もありましようから、それらのことはあとにまわしまして、さしあたり大蔵大臣に、大蔵大臣としてまた吉田内閣の閣僚としての立場から、若干この機会にお伺いしておきたいと思うのであります。  大蔵大臣もさだめし民間において御承知だろうと思いますが、わが国の国鉄戦争以前までは非常な成績を上げており、日本経済の発展のためにはもちろん、さらにその収益によりまして一般会計へ少からない寄与をして参つたのであります。ところが戦争に入りましてから、にわかに国家的な国鉄に対する要求の増加、そしてまた予算財政上のいろいろな事情で、国鉄の当然行うべき修繕、とりかえ、あるいは新線建設等はもちろん中止をいたされた形であります。その上に物価はインフレーションの荒波にもまれまして上昇の一途をたどつており、国鉄の需要する物件費の激増、並びに戦争がもたらしました熟練従業員の欠乏、これにかわる新規未熟練従業員の広汎な採用、そして人件費の増大、こういつた形に国鉄はやむなく置かれて参りました。そのために、一方においては国策立場から、物価上昇にかかわらず運賃の料率の引上げは不可能であり、にもかかわらず一面においては物件費人件費上昇に伴いまして、国鉄の経営はきわめて重大な段階を続けて参つたことは御承知通りであります。そこで昭和二十五年にはドツジ・ラインの一環といたしまして、国鉄をして公共企業体たらしめ、一種の独立採算制建前とする日本国有鉄道法というものが制定されまして、ここに新しく公共企業体としての姿で発足をいたしたわけであります。しかしながらこの日本国有鉄道法の内容については、大蔵大臣もあるいは御承知かと思いますけれども独立採算制を行わせると同時に、一方においては、その採算に基く収入の根幹である料金引上げ等のごときは、国策建前において、また日本経済の正常な再建の根本的な立場において不可能な実情にある。物価は戦前から見ると相当上昇しており、卸売物価指数にすれば、今日は昭和十一年の基準に比較して三百五十倍に相当するというよう上昇率を示している。しかるに運賃の倍率というものは、貨物さえも百四、五十倍、旅客は百十倍に足らないというのが国鉄料金現状であります。一体公共企業というもの、言いかえれば国民の経済福祉に密接な関係のある重大なこの事業をして、公共企業体たらしめると同時に、その経理の建前独立採算制をとらせることについて、いささかの矛盾がないものであるかどうか。この点は長い間大蔵大臣民間において実業人として相当苦労をされて来た方でありますので、その苦労をされて来た大蔵大臣として、この国鉄公共企業体としての実態に対しまして、何らの矛盾のないものであるか、大蔵大臣としては従来民間人として立つてつた人として、何らか他の見解があろうと思いますが、その点をまず聞きたいと思うのであります。
  47. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。鉄道公共性といふ点から行きまして、料金の制限というふうなことが起つておるのは、ある意味ではしかたがないですが、独立会計という点等は確かに私は矛盾があると思うので、これを是正する方法は一朝一夕に考え出せばしないかもしれませんが、それに近づけて行く努力はぜひ必要だろうと思います。私も個人としましては、鉄道が前に政府独立会計政府の一部としての働きの時分に、世界的に優秀なものであつて、外国の人が鉄道省の人を先生に呼んで、自分の国の研究にしたということも聞いております。私外国を方々歩きまして、日本の鉄道ぐらい時間の正確なのはなかつた。それが時間の正確ということは今もつて外国には劣らないと思いますが、今のようにいろいろの点で元ほどの優秀性を失つたの戦争の結果でございますけれども、まことに残念なことで、これは私は元は批評の位置に立つてつたですが、ただいまではこれをどうかしてよくして行きたいというふうにひたすら考えております。実は来年度の予算でも、鉄道というのはもつとよくなるよう方法を講じたいと考えてはおるのであります。それで運賃の点などは、ただ戦前の物価と比較するということでございますが、鉄道は幸い大きな戦前の資本を持つていますので、料金をほかの物価並に上げるということは、あるいは数字上も必要はないかもしれません。しかしこれも十分考えて適当のところへ持つて行くべきもので、ただ運賃を上げれば、すぐに民衆がそれの苦痛を訴えるというふうな点で、上げてよし、上げて悪しというふうなことが起りますから、鉄道運賃を上げるということもあるでしようが、その他の方法鉄道の改良ということをはかるべきものだと考えております。
  48. 川島金次

    川島(金)委員 大蔵大臣も今日の国鉄のあり方について十分な関心を持つておるようであります。そこで大蔵大臣として、かつまた吉田内閣の閣僚として、さらにあなたの御見解を聞いておきたいのですが、日本国有鉄道法の規定によりますと、かりに国鉄に利益があつた場合、その利益金の処分は、まず第一に繰越の損金の補填にこれを充てる。もし損失がありました場合には、鉄道債券の発行、あるいは一般会計からの借入れ、あるいは政府からの交付金の交付、こういつた一つのささえがなされることになつておる。しかし私寡聞でありますけれども国鉄が公企業体として発足いたしましてから、もつともわずかではありまするけれども、借入金等の問題は別といたしまして、鉄道債券の発行とか、政府かちの交付金の交付という具体的、積極的なことを大蔵当局が承認をしたこともないし、また国鉄自身もそういう事柄について積極的な働きかけ、あるいはその政策を明らかにしたこともないという実情であります。  そこで私は、国鉄が正当なる企業活動上支払うべき修繕、新線の建設はもちろん、物価上昇に伴う人件費の当然の上昇に対して、万一国鉄自身の経理の中でそれがまかない切れないということになりますれば、料金の値上げが押えられている限り、これは政府自体においてその不足な額を補填するという事柄にならなければ、今日の国鉄実情からいたしましてうそであると思うのであります。しかるにそういうことがなされないで、終始一貫独立採算制という美名のもとに国鉄が押しつけられて、いかに国鉄内が最大の企業努力をしても、運賃の値上げは抑制され、一方においてはその企業努力をした直接の労働者の賃金が、物価等の事情で当然に引上げられなければならないというはめに追い込まれても、なおかつ政府が最も消極的な立場でこれに対処しようとする姿であることを、私どもは見ておるのであります。そういうことであつてはならないと私は思うのでありますが、その点は大蔵大臣はどのようにお考えになりましようか、それをお尋ねしておきたいと思います。
  49. 河野一之

    河野(一)政府委員 国鉄法の中に交付金その他の規定があることは川島さんの御指摘の通りであります。しかし国鉄の経営上の赤字を国民の税金の負担でやるということは、これは過失において国民経済が非常に不安定であり、物価その他について強力なる統制をやつてつた時代においては相当意義があつたと思うのでありますが、今日の時代におきましては、その点は相当是正して考えるのがいいのではないか、そういう段階に来ておるのではないかというふうに考えるのであります。しかしながら、だからといつて国鉄自体に対して政府が援助をしないということでなしに、これは川島さんの御存じのように、国鉄公社発足以来四百五十億円、見返り資金を入れまして四百九十億円の投資をいたしてまして、国鉄の荒廃している施設の改良、建設に充てておる次第であります。また今年度におきましても、預金部から三十億円の貸付をいたしておる次第でありまして、御趣旨の点はまことにごもつともでございますが、現在の段階において、交付金によつて運賃を押えるべきだという御説については、必ずしも賛成申し上げかねるのであります。
  50. 川島金次

    川島(金)委員 たとえば国鉄は国民の福祉を守るため、ことに勤労階級の生計を守る等の観点に立ちまして、旅客運賃中の相当の部面を占めております定期券のごときに対しましては、大蔵大臣も御承知通り、今は割引率が半額に近い、こういう割引率をいたしておるということは、今申し上げましたように、日本の今日における勤労階級の生計の実態を勘案し、これに対して普通旅客の運賃と同じ運賃をとるということは、勤労階級の生計に対する一大脅威であり、それがやがて日本経済の再建に重大なる支障があるという建前もあつて、定期券のごときは最大の割引をいたしておる、こういう割引をしておるものを、かりに一般旅客運賃と同様な料率に直してみますると、国鉄の収入は若干の利用率の減収を見込みましても、なおかつ二百億くらいの増収になるはずであります。しかもその増収になるはずであるものを押えておるということ、言いかえれば、旅客の定期運賃を最大限に割引をしておるということは、やはり国民経済の大局的な見地に立つて行われておるところの一つの国策であると私は信じておるのであります。その国策のために、国鉄はまず一例をあげただけでも、二百億に相当するような一つの自己負担をしよつてつておるようなありさまでございます。     〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕  こういうことは少くともいかに独立採算制とはいいながら、国鉄が一種の国策に立つて自己負担をしいられておるという、この関係の問題に対しては、少くとも政府がみずからこの負担に当るということが、政治の妥当なやり方であり、それが経済の見地からいつても当然なことではないかと私は考えるのでございますが、これは大蔵大臣はいかようにお考えになるでしようか。
  51. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。国鉄公共性から考えますと、やはり国鉄の収支というものは、全体を見て行かなければならないものでありまして今の定期のごときを国費から出す、そういう勘定は立てかねるよう考えます。
  52. 川島金次

    川島(金)委員 そういう大局的な国策の線に沿つて押えておりますところの旅客運賃、それから生ずる国鉄自身の負担の過重、そういつた事柄に対して、私は政府自身がこの負担に報ゆるという立場をとることが当然のことだと思う。そういう事柄についてもなおかつ政府はきわめて消極的であり、きわめて冷淡であります。そういうことでありまするからこそ、国鉄従業員は最近におきましては非常な労働条件の過重をしいられております。しかも一般民間企業、ことに私鉄関係等との振合いにおきましても、その賃金は低い立場に押えられておる。そういうことが一切この賃金の上にしわ寄せをされておるというのが、私は国鉄従業員立場ではなからうかと信じております。従つて政府が今後、私は率直に申し上げますが、日本国有鉄道に対する考え方を改めるか、あるいは日本国有鉄道法の内容について再検討をするか、何らかの方法をお考えになりませんと、今後とも国鉄従業員の生計はもちろん、国鉄全体の運営の上において行き詰まりの来るようなことがあるのではないかと、私は心配をしておる一人でありますが、その点については大蔵大臣はどのよう考えておるでしようか。
  53. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。大蔵省としてこの国鉄の内容とか運用につきまして十分勉強いたすつもりでございます。
  54. 川島金次

    川島(金)委員 私は、今私の申し上げましたことについて、大蔵大臣見解をお尋ねいたしておるのであります。率直にひとつお答えを願いたい。別にあげ足とりなどいたしませんから……。
  55. 向井忠晴

    向井国務大臣 私はあげ足をとられるほどの足もございませんが、今御返事を申し上げました通り、よく検討いたしませんと、どうにも案が立たないと思うのでございます。ほかの関係閣僚が見て行くのは別ですが、大蔵省立場として国鉄を見て、私は計算という点を主といたしまして、そうして国家の交通機関としての国鉄を検討して参りたいと思います。
  56. 川島金次

    川島(金)委員 それではこういうことなら、大蔵大臣もくろうとでありますから、あなたの御見解が聞かれると思いますが、先ほども大蔵大臣ちよつと触れられたようでありますが、国鉄の今の資産は一兆百億内外、この資産の償却の問題が非常に無理になつておる。この一兆百億という資産の勘定というものは一七・七倍くらいの基準でやつておる。一般民間の企業は七、八倍程度基準として再評価、国鉄は一七・七倍というような大きな再評価の勘定に立つて、しかもそれを目一ぱいに償却して行こうという、こういう形をやつておる。そういうところにもそもそも国鉄経理の上に大きな無理があるのではないか。こういうふうに思うのでありますが、その点大蔵大臣はどういうふうに、お考えですか。
  57. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまおつしやいました償却の点につきましては、評価の仕方がどうかと思いますが、かりにそういう評価をいたしましてあたりまえの償却をして、そのために金が、いわば吸いとられるというようなこと、それも一番正しい計算をしますには必要でございましようけれども国鉄現状について評価をかえることもできますまいが、償却の十分にできない場合にはまた別に考えてもよいのではないかと考えております。
  58. 川島金次

    川島(金)委員 大蔵大臣もひとつ国鉄実情を御研究願いまして、今後の国鉄の経理の問題について十分の関心を持ち、公共企業体独立採算制というこの矛盾の上に立つた国鉄の今後のあり方、ことに大蔵大臣としての立場から十分ひとつ研究して検討してもらいたいと思いますので、希望を申し上げておきます。――委員長、なかなか希望した方が見えませんが……。
  59. 小坂善太郎

    ○小坂委員長代理 恐縮でございますが川島君に申し上げます。今ここにおいでの方は専売社総裁秋山孝之輔君、日本電電公社総裁梶井剛君であります。なお労働政務次官は、参議院の本会議におきまする緊急質問終了後ただちにこちらに参るということになつております。運輸大臣も同様のことになつております。そういうわけでございますから、今おいでになつている方であなたの御質問の点がありましたら便宜お続け願いたいと思います。
  60. 川島金次

    川島(金)委員 それでは私の希望しておりまする他の関係者がまだ見えませんので、話は前後して質問がやりにくいのでありますが、大蔵大臣ともう小し勉強をいたしたいと思います。  国鉄労働組合は御承知通り、今年の二月諸般の計算の上に立つて一万七千円のベース・アップを要求いたしました。当局とその交渉が妥結に至りませんので、仲裁裁定に持ち込まれ、その結果が御承知通り一万三千四百円、一万三千四百円のベースを、しかも裁定は本来であれば、四月から実施すべきであるが、しかしいろいろの事情を勘案して、最大限度労組に譲つてもらつて、八月からさかのぼつてこれを実施することが最も望ましいことである、こういうふうに裁定をいたしまして、それが八月に行われたわけであります。しかもその本俸の引上げを中心として、第二項から第四項、勤務手当あるいた石炭手当、あるいは年末手当等のごときは、一切をあげて本俸確定後勘案することが最も望ましいことであるという理由で、団体交渉にゆだねるというのが国鉄裁定のあらましであります。この一万二千四百円の裁定額を政府は十一月から実施する、国鉄裁定は八月からやる、しかも本来ならば四月から行われるべぎが至当なのだけれども、いろいろな事情で八月と定めたのが裁定である。政府はそれをしもできないで、十一月から実施するということになつ予算が出ております。これに対して労組は、いわゆる裁定の完全実施、これをまず強く主張をいたして今日でもその主張の建前に立つてあらゆる運動を起しております。その上に年末手当は一・七五、すなわち金額にいたしますれば二万二千七百円、これをぜひともよこしてもらいたい、そういうことでなければ四十万国鉄労組の年を越す生計を守ることは不可能だ、とても国鉄再建、輸送増強のために十分な力を発揮しての協力ができない、どうぞひとつ政府はこの線に向つて全力を尽してよこしてもらいたい、こういう切実な叫びを上げておるわけであります。そこで大蔵大臣にこれを聞くということは、こまかくなりましてどうかと思うのですが、国鉄国鉄の労組なりにこれに対する財源等についていろいろ研究をされて世間にこれを発表しております。大蔵大臣はその財源問題について発表されました内容をごらんになつておりますかどうか。もし見ておられまするならば、その点について大蔵大臣としてはどういうふうな感じを持たれておるか。それをひとつお聞きしておきたい。
  61. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまお尋ねの労組の調査というものは、私は存じておりません。しかし大体において裁定を取入れますことは財源上不可能でありますので、ただいまのようないきさつになつておるような次第であります。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂委員長代理 川島君にちよつと御相談いたしますが、あなたの御要求の大臣がそろわなくて非常に恐縮なんでございますが、次の成田君の御要求の方はほとんどそろつておるので、便宜成田君にやつていただいていて、そのうちにそろうと思いますから、そこでまた御質問なさるという案はいかがでございましようか。
  63. 川島金次

    川島(金)委員 それでもいいでしよう
  64. 小坂善太郎

    ○小坂委員長代理 それでは一時留保されておいていただきたいと思います。成田知巳君。
  65. 成田知巳

    ○成田委員 私は専売仲裁裁定と電信電話公社関係の調停案につきまして、関係者の御意見を承りたいと思うのですが、最初に大蔵大臣に承りたいのです。御承知ように、公共企業体というのは、その発足の趣旨から行きまして、独立採算制を主眼にしているわけです。経営の自主的な活動というものを最高度に発揮させようというのが、公共企業体の発足の趣旨だと思うのです。従つて予算の編成だとか、その運営については経営者側に相当大幅の権限を持たすべきだと思います。ところがこれは専売、電信電話公社に限りませんが、すべての公社というものは、予算の面について大蔵大臣の厳重な監督下に置かれているわけです。秋山総裁がお見えになつておりますが、総裁といいながら、準禁治産者のような形になつているわけです。これでは公共企業体の経営の能率化ということは不可能だと思う。そこで大蔵大臣も多年民間におられて会社経営の実態を御存じになつていると思う。予算決算について、官庁会計と異なつた大幅の弾力性を持つた予算決算方式を取入れる方向に進むのが、公共企業体発足の精神を生かすゆえんだと考えるのですが、まず大蔵大臣の御意見を承りたい。
  66. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えをいたします。ただいまの制度が大分弾力性を持つたものになつているんじやないか、私はそういうよう承知しているのであります。
  67. 成田知巳

    ○成田委員 弾力性を持つているということを大蔵大臣は言われましたが、御承知ように、予算を提出するときには、専売公社の場合でしたならば、大蔵大臣の調整、事実上の許可がなければ、予算というものは認められない。しかもその予算の内容たるや、歳入歳出、事業計画、詳細なものを提出して大蔵大臣の許可を得ることになつているので、事実上弾力性というものはないと思う。どういう点に弾力性があるか、お伺いいたします。
  68. 河野一之

    河野(一)政府委員 公共企業体の会計は国の会計とは別でございまして、財政法とか会計法とかいうものは原則的には適用がございません。また経理につきましても発生主義をとつておりまして、国の会計のような現金主義ではございません。国庫金の取扱い、あるいは契約その他について、一切国の会計とは別の扱いになつております。ただその公共性という建前から、ことに資本は全額国が出資しており、その及ぼす影響が国民経済に大きな影響を持つという点から、すべての公社、その他政府関係機関につきましては、大蔵大臣予算の編成について調整権を持つております。それは国の財政経済運営の上からする最小限度の要請でありまして、その他の点につきましては原則的に公社の自由判断にまかしている次第であります。
  69. 成田知巳

    ○成田委員 政府の方では相当弾力性を持たしている、こう言われるのですが、秋山総裁は実際専売公社を運営されまして、はたして相当の弾力性を与えられた経営ができるかどうか。私たちの考え方からいたしましたならば、たとえば公社としては、事業計画と予定貸借対照表、あるいは予定損益計算書、予定資金計画、この程度のものを大蔵省に出しまして、その承認を得たならばあとは一切公社側の独自の立場で経営ができる、こういうふうにしなければ、ほんとうの意味での独立採算制というものは全うできないと考えるのですが、実際公社を経営なさいました秋山総裁の御意見はいかがでございますか。
  70. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 お答えを申し上げます。ただいま御質問趣旨は、私ども公社経営者に対する非常に御同情的な意味を含まれているものと考えてお礼を申し上げますが、現在におきまする状態からすれば、私運営において若干の不便は感じておりますけれども相当の弾力性を徐々に――そういう方向に向いております。
  71. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、この事業計画の問題、予定貸借対照表の問題、これを別にいたしましても、今徐徐に相当弾力性を与えられて来ておるという御答弁でございますが、公社の総裁として、特に専売公社の総裁としてお考え願わなければいけないと思うのは、電信電話公社においては、予算については郵政大臣と大蔵大臣の協議で定めるとなつております。ところが専売については大蔵大臣の調整、事実上の許可、こういうことになつております。電信電話公社の方は一歩前進しておる。こういう先例もある以上、当然総裁としてもそういう要求はお出しになつてしかるべきだと思う。それから大蔵大臣にお伺いしたいのですが、すでに電信電話公社では独立採算制へ一歩前進しているのだ。同じ公社で専売公社はそれができないはずはないと思う。少くとも予算の提出の方法について電信電話公社と同じよう大蔵大臣の調整というのじやなくて、大蔵大臣の協議という線にまで改正すべきだと思うのですが、いかがでしようか。
  72. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 専売公社は第一着に公社制度を採用せられたものでありまして、もちろん完全なものとは私は考えておりません。そういうようなことを勘案されて電電公社というものも除々に欠点が除去されつつあるのであろう。私も電電公社の組織等につきましては深甚な注意を払い、またそういう方へ持つて行くものだ、こういうことを考えておりまして、大蔵当局とも寄り寄り話はしておりますけれども、まだ法案を提出する運びには至つておりません。なおまた申しつけ加えておきたいことは、ただいまにおいても若干の意見の食い違いがあるようなところもありますけれども、大体において法律規則だけではいけない。やはり個人的の接触においては私今大蔵省と別段非常に不便を感ずるような状態にはあません。     〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 成田知巳

    ○成田委員 いつも労働組合のベース・アップの問題が問題になりまして、仲裁裁定なり、調停案が出ましたときに、仲裁裁定のときはもちろん公労法の問題に発展いたしますが、事実公労法が無視された、そういう経験を今まで何度も繰返しているわけですが、その直接の原因予算総則に給与総額わくがあるのですね。そのために、たとい仲裁裁定で適当な裁定を出しましても、その予算総則の給与総額わくにひつかかつて事実上公労法が無視されている、こうなつているのです。秋山さんは相当の余裕のある取扱いを受けておると言われますが、裁定の問題になりますと、これにひつかかつていつも問題は解決してないのです。こういう意味で、当然予算総則の給与総額わくははずすのが正しいのじやないか、こう思うのですが、大蔵省当局並びに公社側の御意見を承りたい。
  74. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。現在の公労法、それから公社法その他では、給与準則を掲げなければならない、その給与準則に基いて給与総額を置くという法制になつております。これは予算上資金上可能な範囲をどう見るかという問題でございまして、現在のところこの給与総額の規定を廃止するつもりはございません。
  75. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 ただいまのお尋ねは、私は労働委員会等におきましてもしばしば応答をいたしたのであります。公社経営においてこの給与総額のきめられているということは、公社の経営者としてはまことに不便に感じております。この点につきましては公社法の根本に触れるのでありますから、今ここで根本問題を申し上げるのは、いろいろなことをもう少し勘案しないと私の決定的の意見を申し上げかねますが、ただ公社の給与総額は若干の考慮を払う必要があるじやないか、こう考えております。
  76. 成田知巳

    ○成田委員 川島君が今井さんに五分ばかりという話ですから……。
  77. 太田正孝

    太田委員長 川島君に申し上げますが、運輸大臣は間もなく来られるそうであります。
  78. 川島金次

    川島(金)委員 仲裁裁定委員会の今井さんが見えておりますので、時間の都合もあるそうでありますから、裁定をいたしました責任者でありまする今井さんに、この機会に御意見を参考に承つておきたいと思います。  今井さんは国鉄裁定に続いて専売といろいろ委員会の委員長として苦労をされて来たようです。そこで端的にこの機会今井さんの御所信を承つておきたいのでありますが、この国鉄裁定でございますが、一万三千四百円のベース・アップを八月からさかのぼつて実施すべきであるという裁定をくだされたわけであります。このことは今日におきましても今井さんは当然のことであるという御確信を持たれておられるかどうか。今日においてはすでに裁定から若干の日時を経過しておりまして、諸般の事情もかわつて参りましたので、従つて一般公務員は一万六千八百円が正しいものだという賃金要求を今日はいたしておるよう実情もありまするので、この裁定に対しての委員長としての御所信のほどをこの機会に承つておきたいと思うのであります。
  79. 今井一男

    今井参考人 お答え申し上げます。八月へ遡及というわれわれの基本的な考え方は、一つは公労法に元ございました規定、すなわち両者は一年に一回は少くとも団体交渉を行うという規定は、去る七月の改正によりまして修正されまして削除されました。私どもはやはり一年に一回は少くとも労働条件に関する再検討をやるべきだ、こういつた趣旨に了解するのが常識であると存じます。国鉄の問題は三月初めに起りまして、三月の末には調停委員会にかかつたのです。そこである角度から申せば、私どもは四月にさかのぼるべしという議論も立ち得ると思う。これを単なるバツク・ペイをしてはいけないというよう考え方は、労働問題のあり方として適当でないという意見、その意見を考慮したのであります。しかしながら一面におきまして御承知通り国鉄の現在の経理は、条件はどうありましようとも、現実の姿は非常にきゆうくつなものであります。のみならず本年の六月には新たに昨年はなかつた夏期手当というものをふところに入れることができた、こういつた点を総合勘案いたしまして、結局われわれ三人の結論は、八月が穏当、妥当だ、こういつたことに相なつたわけであります。一旦三人でそういう決意をいたしました以上、別にこれが今日になつてかわるというようなことは少しもございません。
  80. 川島金次

    川島(金)委員 そこで続いてお伺いしますが、公共企業体労働関係法三十五条には、「仲裁委員会裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」と明記してあります。これが大前提であります、「但し」という但書の中に第十六条云々とあるのであります。従つて私は、仲裁裁定委員会はこの但書をも十分に考慮に入れ、十分な調査研究の上この裁定がなされたものであるということを信じておるものでございます。しかるに政府は、この仲裁裁定に対して財政上、資金上不可能であるという意見国会に明らかにして参つておる。仲裁裁定の方では、この裁定にあたりまして十分な研究をした上なればこそ、財源等についてもそれぞれ明確なものを出して、これあるがゆえにこの仲裁裁定は実施できるものであり、実施すべきものであるという断定をされておるのではないかと私は思うのでありますが、そういう事柄については、委員長としてはどういうお考えであられますか、この点をひとつ重ねて伺います。
  81. 今井一男

    今井参考人 仲裁委員会の基本的な立場といたしまして、われわれは一つの企業体内における労使紛争を最終的に解決する、従つてわれわれは決していわゆる賃金委員会のようなものではない。すなわち労使間の意見の調整のできない部分に対して初めてわれわれが独自の意見を加えまして、両者の言い分の食い違つている面を調整して行く、こういう立場に立つております。従いまして、賃金も費用の支払い能力によつて相当の影響を受ける、こういう原則をわれわれは是認し、その上に立つて判断をして行く立場をとつております。国鉄につきましては――もちろん理由は御承知通りいろいろございますが、しかしながら私ども別の考え方といたしまして、これがもし民間の純粋の営利事業でありましたならば、ある場合に非常に経理能力に余裕があれば、十万円の年末手当というようなべらぼうなことが許されるかもしれません。しかし公共企業体ではそういつたことは許し得ない、そういつたときもこれはまた遠慮すべきだ。しかしながら、反対にいかに経理がぐあい悪くとも、この線まではという線はおのずから立つべきである。そういつた二つ考え方からはじいて参つておるのでありますが、国鉄の経理能力も、われわれの立場上、時間の許す限りとにかく一通りの検討は試みました。現在の予算で払えないことは明瞭であります。でありますけれども国鉄を一個の企業として考えますと、あれだけの事業を営み、あれだけの資産を持ち、また他の民間企業におけるいろいろの資産、負債あるいは収入対経費の関係といつたようなことを検討して参りますと、これだけの処置を何らかの方法でとられるしあるいは運賃値上げという方法もございましようし、借入金という方法もございましようし、またその他、いろいろな方法考え得ると思うのでありますが、そういつた方法でこれをまかなつていただいて、少くとも、国鉄の運営、その公共性考えても、国民全体の立場から見て不公正ではない、こういつた見通しのもとにああいう裁定をしたのであります。
  82. 川島金次

    川島(金)委員 そこで角度をかえてちよつとお尋ねしておきたいのですが、国鉄裁定と相次いで、専売裁定、いずれも政府はこれがのめない形になつております。一体、仲裁裁定委員会の仲裁機関というものを設けた趣旨はいろいろございましよう。しかし、重要なる理由の一つは、何といたしましても、国鉄従業員に対しては団結権と団体交渉権は認めて行くのであるけれども、罷業権を認めないということ。この罷業権否認の上に立つて労組の経済的その他の諸条件を満してやる一つの方法として、この賃金等の問題についての仲裁裁定機関というものが設けられたものであると理解をいたしております。しかるに政府は、せつかくつくつた仲裁裁定委員会のその機関裁定に対して、重ね重ねそれに応ずることができないという意思表示を今日やつておるのであります。こういうことになりますと、仲裁裁定機関というものの存在の可否という問題が起つて来るのではないかと私は思うのであります。仲裁裁定はしたけれどもそれは実行されない。その実行されないということは、機関裁定の必要がないということにさえも極論すればなろうかと私は思います。しかもその一面において、健全な労働組合のあり方として、実力の行使に訴えまして、法規に従い仲裁裁定に持ち込んで行つて、平和のうちに解決をいたしたいというのが労組の立場であつたわけであります。にもかかわらず、その事柄をも政府は、全面的ではないにいたしましても、まつたく無視したような態度をとつているのであります。こういうことであつては非常に問題であろうと思うのですが、そういうことについて、今井さんは、個人の立場に立つて、一体どういうふうにお考えになるか、できれば率直に所見を示しておいていただきたいと思うのであります。
  83. 今井一男

    今井参考人 個人の立場といなとを問わず、少くとも、自分が相当勉強して自分たちのやつた仕事が実を結ばなくてうれしい人間はおそらくないと思います。御賢察をお願いいたします。
  84. 川島金次

    川島(金)委員 そういう上手なお話でなしに、今私が申し上げた問題であります。三十五条の問題及びそういうことをたよりとして労組はやつて来た。にもかかわらず政府はこういう態度をとつて来た。そういうことが繰返されるということは、公共企業体労働関係法のこれを何ゆえに制定したかという意味さえも疑わざるを得ないことになるのではないか。これは私一人でなく、労働関係者は全体がそういう気持になつて来るのではないかと私は思う。それがたよりにならぬということになれば、実力行使やむを得ないという空気が醸成されて来る。これもまた同情すべき事柄ではないかと思うのですが、そういう事柄について今井さんはどういうふうな見解を持たれているかということについてお尋ねをしているわけです。ひとつ率直にお願いいたします。
  85. 今井一男

    今井参考人 私個人の意見を申してもどうかと思うのでありますが、公労法というものができました趣旨、この趣旨というものは、私の個人的な解釈によりますと、労働運動というものがなるべく政治運動にならないように、政府対労働組合の対立を極力防ぐようにというような意図で、その意図がいいかどうかは別として、マツカーサー元帥が出された二十三年の七月のマ書簡に基いてできたものというふうに私は解釈いたします。その意味から申しますと、あの法律三十五条あるいは十六条というものは、結局予算というものに対して全権を握つておる国会で処理をしてもらう。むろん予算問題は起り得ると思います。これは国民全体の立場において国会で審議してもらう、その間にあつて政府というものがこれに対して積極的なる行動をとることは望ましくない、こういつた意図でできたものであろうということは、私前々から個人的に思つておる。その趣旨からいたしまして、おそらくそれを国会の方でおきめいただけば、その点のお話合いはつくものと思いますし、またつけられることを期待してやまぬものであります。
  86. 川島金次

    川島(金)委員 今井さん、お忙しいでしようから、もう一言だけでやめておきますが、先ほどもお聞きの通り大蔵大臣予算上、資金上をたてにとつて、首をなかなか振つておりません。しかし今井さんのこの裁定によりますれば、これが当然である。しかも政府は全力をあげてこれを実現実施すべきことが当然の責任である。また経理内容においてもそのことが可能なんだということで、最終決定をされたのであります。しかし政府はそうでないと言い張つて裁定等の趣旨政府の態度はまつたくうらはらのような形になつております。そうすると裁定をいたしました立場の者から見て、この政府の態度というものは、非常に私は熱意と誠意を欠いたものではないかとさえ言われるわけでありますが、その点今井さんはどういうふうに考えられるか。今日は今井さんはもう純然たる第三者の立場である。かつて大蔵省の中におつたものとは違うのですから、そのあなたが裁定された問題に対して、最善と信じた裁定に対し、しかも政府がそれはできない、こういうことを言つておる。これに対しては今井さんは強い見解があろうかと思います。どうぞ勇敢にその見解を最後に表明していただきたい。
  87. 今井一男

    今井参考人 こういつた問題に対するわれわれの見解というものは、あまり大きな価値はないと思いますけれども、どうしても言わぬかということでありますから、一言申し上げます。私は今申し上げた立法の精神からいたしまして、結局最終的にはどうしても予算の決定権というものが国会にございます以上、国会でおきめ願うべき問題でありますがゆえに、政府の説明は私よく伺つていないのでわかりませんが、少くともこういう角度は私はやめてほしいということを常々思つておるのです。すなわち権衡上どうだこうだ、こういつた議論であります。少くとも公労法というものを置いておきます以上は、私は公労法の精神は、企業別に賃金をきめて行け、企業別に話をつけて行け、こういうことだと思います。それがいい悪いは別にしても、現実の姿はそうだと思います。従つて不権衡は当然起り得る。従つて国鉄の諸君には気の毒ですが、とにかくいかに働いても、ああいうきゆうくつなところにおれば、ある程度不利な目にあう、これはがまんしてもらわなければならぬ。と同時にほかとの権衡でかれこれという議論は、これは、公労法の精神からいえば、絶対に反するものだと思います。ただ予算として、国鉄運賃はいかにあるべきか、また国鉄の修理、補修は、いかにあるべきか、その他もろもろの問題につきましては、私どもは一応の検討はいたしました。いたしましたけれども、私どもはそれにつきましては、われわれをもつてそう権威者とはうぬぼれてはおりません。賃金につきましても権威者とはうぬぼれてはおりませんけれども、賃金につきましては、これを最終として考えていただかなければ労働秩序は保たれて行きませんから、これはぜひ最終と考えてもらいたい。しかし経理問題は、国民経済という大きな立場もございますから、公共企業体の性質上、これは国会で十分御審議の上、われわれの意のあるところをくんでいただければ、これは私も裁定者として非常に仕合せだと思います。
  88. 川島金次

    川島(金)委員 国鉄側が見えておりますので、国鉄側に一、二お伺いしておきたいと思います。国鉄当局では、長い間労組との折衝がつかないで、遂に裁定にまで持込まれて、この裁定がなされました。裁定が出されましたが、なかなかその裁定の完全実施という事情なつておりません。そこで国鉄当局自身としては、卒直なところ国鉄当局自身の経理のやりくり、もしくはその他の条件が加わるならば、この問題の完全な実施ができると考えているのか。また完全実施について、国鉄当局は積極的に今後とも努力をしようという考え方に立つておられるのかどうか、その点を一つお尋ねしてみたい。
  89. 高井軍一

    ○高井説明員 お答えいたします。国鉄といたしましては、裁定には申すまでもなく拘束をされるべきものであつて、この実施につきまして努力をいたしたのでございます。御承知よう裁定の第一項の問題につきましては、金額を確定いたしております。二、三、四項につきましては、団体交渉によりますことを前提としております。額は確定できないのでありますが、その一定の仮定のもとに国鉄として予算要求をいたしまして、関係各庁と折衝をいたしているような次第でございます。
  90. 川島金次

    川島(金)委員 そこで続いてお伺いいたしますが、確定した予算で八月にさかのぼつてこれが実施できるものであるかということと、年末の手当の関係はどういうふうな金額になつて参りますか、その点を明かにしていただきたい。
  91. 高井軍一

    ○高井説明員 現在査定を受けておりますのは、第一項につきましては、十一月以降査定の一万三千四百円のベースの額、第四項につきましては新ベースの〇・七五を支給する相当額を見込んでいただいております。
  92. 川島金次

    川島(金)委員 第四項の年末手当の〇・七五を新ベースの方に繰上げて、八月にさかのぼつて実施するというふうに振りかえて参りますと、その残額がありますかどうか。
  93. 高井軍一

    ○高井説明員 もしそういうことにいたしますと、残額は新ベースの〇・二程度のものになると思います。
  94. 川島金次

    川島(金)委員 一万三千四百円の新ベースを八月にさかのぼつて実施すると、年末手当の第四項は、〇・七五残つているから、それを振りかえてもなお〇・二は残る。従つて新べースの八月にさかのぼつての実施ということは、当局としては実行ができる形になるわけですか。
  95. 高井軍一

    ○高井説明員 この第一項と第四項関係につきましては、関連して八月から実施というようなことになりますれば、必然的に第四項の特別手当関係が減額される、制肘を受けるということになるのであります。これも一つの政府の方針でありまして、その方針によりまして第一項につきましては考えて行かざるを得ないのじやないかと考えております。
  96. 川島金次

    川島(金)委員 そうすると、かりに今の定められたわく内で操作をいたしまして、新ベースを八月にさかのぼつて実施する、年末手当はその関係で〇・七五が〇・二に削減される、一方において年末手当は労組側では一・七を要求しておる、その額は平均二万二千七百円、この二万二千七百円の年末手当の問題について、すでに過日来団体交渉がしきりと行われておろうと思うのでありますが、その交渉の経過及びその交渉過程におけるところの当局の考え方というものは、どこに置かれておりまするか、それを明らかにしていただきたい。
  97. 高井軍一

    ○高井説明員 国鉄立場といたしましては、要するに第一項と第四項というものは、別途なものではありますけれども、暮れに支給とかいうようなことになりましては、これは総体的に考えざるを得ないというので、総額の問題といたしまして組合と交渉をいたしております。
  98. 川島金次

    川島(金)委員 その組合と交渉いたしておりまする事柄について、国鉄当局はさらに組合の交渉に対して前進するという方針を持つておるのか、もうこれはぎりぎりの線であつて、達するまつたくの余地がない、こういう形になつておるのか、その辺を率直にひとつ明らかにしていただきたい。
  99. 高井軍一

    ○高井説明員 お答えいたします。現在のわくといたしましては、その程度しかありませんし、そうして特に輸送量の増加というものが予測でき得ないような、ことに現在の炭労のストの影響によりまして大きい輸送上の変化を来して参つておりますので、現在といたしましては、そのわく基準といたしまして交渉をいたしておるのでございます。
  100. 川島金次

    川島(金)委員 そのわく基準として団体交渉をやつておられたのでは、これは円満な自主的な解決は不可能であろうと思います。そこで国鉄当局は、政府とも緊密な折衝を重ねながら、この問題の円満な、さらに前進した姿における解決をはかるべきであろうと私は思う。ことに国鉄現状は、先ほども私は申し上げたのですが、戦後六十万以上を突破しておりました人員が、今日では四十何万人に激減をしております。このように激減をしたのにもかかわらず、国鉄の施設というものは戦争の影響を受けて、いまなおまつたく復活しておらない実情である。その施設等はほとんど荒廃に帰しておるという実情である。にもかかわらず、国鉄労働組合の四十万の職員は、この困難な条件のもとにおいて、日本の経済再建と輸送力の増強のために必死の努力を傾けて来たと私は信じております。しかもその結果、今日貨物においても旅客においても、その輸送力の実績というものは、戦前に比べてさらに劣らないところまで回復しております。ことに他の産業に比較いたしますれば、国鉄のいわゆる回復力、あるいは労働生産性というような事柄は、断じて劣つておらないのみならず、しいて言えば、他の産業に比較して、いろいろの条件を基礎にいたしますれば、むしろ他の産業よりも前進をしておるのではないかとさえ言える面があるのではないかと思うのであります。そういう条件のもとにありながら、これが公共企業体独立採算制という、大蔵大臣も明言いたしましたが、最も矛盾きわまる姿の中に押し込められておる。本来の国鉄の企業体としての面目を発揮するならば、私は人件費を償つてなおかつ余りあつて一般会計へ繰込むことができるよう実情であろうかと思う。しかしながら国鉄が、ひとり公共企業体という名のもとにおいて、そのあるべかりしところの収入が最も低く押えられておる。最も低く押えられているということは、これは一つの国策の犠牲であります。この国策の犠牲の上に立つて国鉄従業員四十万の諸君は、歯を食いしばつて増強に邁進をして、全力を傾けておる、こういう形であろうと私は思う。その国鉄の労組の諸君が、実力の行使に訴えるような破壊活動をしないで、法律に定められました平和的解決の立場において、自分たちの労働条件を確保しながら、しかもさらに前進の姿において国鉄の再建に一路邁進しようという重大な決意を持つておることは、いなめない事案であります。なればこそ今日国鉄当局との間において、いまだに実力行使らしいものが行われておりません。こういうような健全な立場に立つて行われておるところの労働組合の運動、あるいは要求に対して、当局はもちろん、政府みずからが体当りで積極的な熱意をもつてこれにこたえる、こういう決意がなければならないと私は思う。そこで私はお伺いいたすのですが、今日の国鉄当局の立場として、あの一万三千四百円のベースの完全実施はもちろん、年末手当に対しても、これ以上の配慮ができないというぎりぎりの線にあるのか、それとも他の経理の勘案をし、あるいはまた大蔵当局、政府自体との折衝によるならば、何らかの打開の方策があるという考え方のもとに立つて団体交渉を今日やつておられるのかどうか、この点をひとつ明快に率直に明らかにしてもらいたいと私は思うのです。
  101. 太田正孝

    太田委員長 川島君に申しますが、石井運輸大臣も出られておりますから……。
  102. 高井軍一

    ○高井説明員 国鉄の従事員諸君の能率につきましては、ただいまお話がありました通りであります。私ども従事員諸君に感謝をいたしております。とともに、それに報いることは当然のことでありまして裁定がありました限りにおきましては、この完全実施は私どもの義務なんでございますが、しかしながら現在の予算関係でできるかということにつきましては、今年の補正予算はあらゆる角度から検討をせられまして、当然運賃値上げの問題も生じますので、きゆうくつな予算なつておりまして、弾力性がなかつたのであります。しかしながら何とかしてそのうちでもできるだけのことはいたしたいというふうには考えておつたのでありますが、何分にも炭労ストの関係といたしまして、国鉄の経理上大きい変化が参つておりますことは先ほど申し上げた通りでございまして、現在の列車の削減にいたしましても、貨物関係だけははつきり出て参りますが、一日に三千五百万円程度のものが減収でございます。それからさらに明日から大幅の削減をいたしますと、貨物だけでも一日に八千万円の減収が来るのじやないかと思つております。そういたしますと、これはいつまで続くかということを、仮定と申しますか前提といたしまして考えなければならないのでありますが、現在の状況をもつていたしましては、国鉄といたしましては、何とかしたくてもでき得ないような状況であるということを御承知願いたいと思います。
  103. 川島金次

    川島(金)委員 先ほど私は大蔵大臣にちよつと意見を聞いたのですが、たとえば国鉄国策的な立場に立つて、旅客運賃中に相当な部分を占めるところの定期旅客運賃、こういつた最も低位な旅客運賃制をとつておること、この一例はやはり何といいましても、日本経済並びに勤労階級の生計の安定、こういつた国策的見地に立つて実施されているものであり、本来の企業であれば、さういうことを少くとも強制的には考えなくともよろしい。しかし国鉄公共企業体という立場に立つて、そのことがしいられておる。そのしいられております結果として、本来ならば、定期券のごとき普通の運賃と並行した立場に置かれるならば、二百億ぐらい浮いて来る、増収になる。その増収になる部分を国策的見地に立つて国鉄がそれに協力しなければならぬ立場であればこそ、当然に収入のあるべきところがないという、これは一例をあげればのことでございますが、かくのごときことは当然に国鉄政府に向つてこれが補填を要求する立場にあるのだ、また政府もこの要求に対しては当然に考えなければならぬことではなかろうか、こういうふうに私は思うのでありますが、国鉄当局はそういう事柄についてどういうふうに考えられておりますか。
  104. 高井軍一

    ○高井説明員 そうした社会福祉的公共的な要求が経理上に大きい影響を及ぼすものにつきましては、今御意見ように、公益命令につきましては補填をしていただくように要求するのも一つの考え方であると考えておりますが、但し国有鉄道はまた税金なりその他の関係で特典を持つております。そういうよう関係を勘案いたしまして、今後の場合を考えなければいかぬというふうに考えておりますが、概念的にはそうした大きく国鉄の経理に影響を及ぼすような公益的な命令につきましては、政府から補給金なり交付金なりをしていただくのが当然であるというようにいたすべきであると私ども考えております。
  105. 川島金次

    川島(金)委員 そこでそういうお考えに立つて、この問題の処理にあたつて今後政府に折衝されるおつもりがあるかどうか、また今までそういうことについて折衝された事実があるのかどうか、その点はいかがでございましようか。
  106. 高井軍一

    ○高井説明員 今申し上げましたのはこれからの問題でありまして、現在の予算は現在の制度を前提として行つております。従いましてほかの関係におきましてさらに減収とかあるいは予算上大きく公益命令として変更があれば別でございますが、現在のところにおきましては交付金を特に要求するというところまでは考えておりません。
  107. 川島金次

    川島(金)委員 そこで関連して運輸大臣にお伺いいたしますが、お聞き及びの通り事情でありますが、この問題はきわめて私は重大だと思うのであります。裁定は一万三千四百円のベースを八月にさかのぼつて実施せよ、そして年末手当の問題については団体交渉をせよ、しかもその裁定の中に、団体交渉にあたりましても、本俸の確定に準じて年末手当等も考えるべきだということが明瞭に記載されて、裁定が行われておるのであります。従つて労働組合はこの裁定を信じ、これを信頼いたしまして、当局に再三の団体交渉をいたして、できれば裁定通り八月にさかのぼつて実施することと合せて、年末の日本人の生活としての特殊な事情にかんがみまして、越冬資金と申しますか、手当と申しますかの一・七を要求し、平均二万二千七百円を求めております。この問題がもし長引いて、年内に片づかないということになると、電産及び炭労の争議に準ずる重大な段階に入るのではないかという懸念をいたしておるものであります。ことに昨夜来から随所において、超過勤務の拒否どころではなくして、超過勤務拒否のさらに前進した姿をどうやらとろうといたしている態勢が起つておることは、運輸大臣もさだめし御承知であろうと思う。たとえば昨夜来の私に入りました情報でありますが、全国の重要なる操車場において、この問題が長引き、政府に熱意と積極性がないならば、われわれは文字通りの遵法運動を行う、こういうことであります。遵法運動を行うということになりますれば、これは合法運動であります。法律を守るという運動であります。この運動が文字通り行われて参りますと、まず操車場が考えられます。操車場で遵法運動をそのまま実施いたしますと、今日国鉄が行つておりますところの操車の時間に比較しまして、三倍ないし四倍に達するような時間がかかるでありましよう。そしてしかも重要な操車場にはいずれも大きな停車場を持ち、本線を通しております。そういう関係から操車場の操車が従来の時間に比較して三倍、四倍の能率が低下いたして参りますと、貨物の運行の支障はもちろんでありますが、それから来るところの本線の列車の運行にまでさしつかえが来るということは当然の事柄であろうと思います。そういう事柄が起らないとも限らないというような情勢に実は昨夜来なつておると私は聞いておるのであります。こういう問題を控えて、その国鉄の監督官庁である運輸省の責任者である運輸大臣は、この裁定及びその裁定の実現に対してどのよう立場とどのよう考え方を持たれておりますのか、その点をひとつこの機会に率直に明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  108. 石井光次郎

    石井国務大臣 裁定を私どももらいましてそれをどう扱つたかということは御承知通りであります。基本給は私どもは適当なる御裁定だとそのままのんでおるのでありますが、実施期が遺憾ながら公務員、そのほかのいろいろな関係がありましで、国家の財政上、つり合い上どうしても十一月からしでいただきたいということに今申しておるわけであります。その他の第二項、第三項、第四項にありまする団交にまかせるという問題、その中の、特に御発言になりました年末賞与につきましては、今度〇・五のものを加えられました。これは今度の補正で出ておるのでありますが、それと在来のものと合せて、そうして国鉄の経理上でき得る限りにおいて、団交によつて、及ばずながらできるだけのことをいたそうという線で、国鉄総裁が団交に当つておるはずだと思います。私どもはぜひ一日も早く団交が結ばれますように、特に年末賞与の問題は、年末がだんだん日一日々々と差迫りますので、私も非常に気を病んでおります。早くやつていただき、そして何とかそこに打開の道があるだろうと私は信じておるわけであります。
  109. 川島金次

    川島(金)委員 先ほど来からの政府の話によりますれば、結論的には一万三千四百円の新ペースを十一月に実施し、年末手当は〇・七五、それきりないのであります。こういうことであります。この定められた一定のわく内で団交をこれから続けるといたしましても、それは一歩も前進しないと思う。もし政府にしてこの年末の重大な段階、しかも電産、炭労の争議政府の熱意のないこと、あるいは無策なこと等からいたしまして、どろ沼に入つたよう争議なつしまつた。そこにさらに加えて今度は国鉄の問題、この国鉄の問題こそ政府の最終における今年末の一つの対決した問題であろうと思う。この問題の解決の仕方いかんによつては、電産、炭労を合せ加えて、政府の重大な責任が生じて来る事態が起らないとも限らないと私は思つております。そこでこの新ベースの十一月実施と年末手当の〇・七五だけにとらわれず、何らかの形において問題の解決をはかるために、政府は積極的な前進的な方策を考えなければならぬと思う。そういうことを考えずして、一体国鉄のこの問題が円満にこの年の瀬を送るここができるという見通しがありますか。そういうことと一体何らか積極的に前進した姿で問題の解決に当るという、こういう基本的な考えがあるのかどうか、これは政府の一人として、大蔵大臣、運輸大臣お二人に、この際重ねて承つておきたい。
  110. 向井忠晴

    向井国務大臣 大蔵大臣といたしまして、ただいままでの予算の決定以上にはどうにもいたし方がないわけでございます。
  111. 石井光次郎

    石井国務大臣 先ほど申しましたように、今度補正に盛られました予算を合せまして国鉄経済の中で経理をやつてつてもらうという線以上には申し上げられないと思います。
  112. 川島金次

    川島(金)委員 そこで重ねてお伺いいたしますが、国鉄の中の経理上においては、先ほどはなかなかむずかしいのだというのでありますが、何か国鉄の内部において操作された事柄だと思うのでありますが、その点について何らかの見通しがありますかどうか、その点をひとつ経理局長からお伺いしておきます。
  113. 高井軍一

    ○高井説明員 現在の給与総額というものもきまつております。それから一方におきますと、小さい問題でありますが、炭労ストの関係によりまして、いろいろ給与総額に幾らかでも出て来るものもあるということも考えられます。それでそういうような問題を考えまして、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたごとく、補正予算できまりました線を基準としまして、できるだけのことは考えて参りたいというふうに思つておりますが、今のところといたしまして、その線を特に大きく考えるとか、あるいはどうするかというようなことまでは申し上げられないのでございます。
  114. 川島金次

    川島(金)委員 それでは大蔵大臣にお伺いしますが、われわれはこの一般公務員給与のべース・アップはもちろんですが、専売公社、全電通を加えた国鉄裁定の問題等に関して、給与に関する問題を中心とした予算の修正をわれわれは考えております。そうしてまたわれわれの立場から言えば、政府の熱意と積極性のいかんによりましては、当然に可能であるという線を、われわれは目下打ち出そうと作業中であります。従つてこの給与ベースの問題の積極的な解決を重点とした修正をわれわれが考え、しかもこの国会が至当だと認めるような問題が打ち出された場合に、一体政府はそれにこたえるだけの用意を持つておるのかどうか、そういうことがかりにできてもだめなのか、その点をひとつ最後にだめを押しておきたいと思います。これは大蔵大臣にお伺いいたしたい。
  115. 向井忠晴

    向井国務大臣 そういうことはただいまかりにとおつしやいましたが、私からはただいま御返事はできません。
  116. 川島金次

    川島(金)委員 補正予算の責任者は大蔵大臣でございます。従つてこの問題については、大蔵大臣が率直に答えるべき立場であろうと思う。その点はどうなんですか、重ねてお伺いいたします。
  117. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。補正予算に対しては、私はただいままでに原案をつくりました者として責任を持つております。それ以上にはお答えができません。
  118. 川島金次

    川島(金)委員 それ以上答えができないということは、大蔵大臣にはこの問題の前進的な解決について、いささかの誠意も熱意もないというふうにわれわれは理解しなければならないことを遺憾といたします。われわれは今後われわれの立場においてこの問題の解決をはかりたいと思つております。  そこで労働大臣の代理者にちよつと伺つておきたいのでありますが、一体公共企業体労働関係法の制定趣旨というもの、根本的な精神はどこにあつたのか、この点について関係相であるところの労働大臣代理の所見をまずひとつ聞きたい。あと一つを聞きまして私の質問を終りたいと思います。
  119. 賀來才二郎

    ○賀來政府委員 公共企業体労働関係法の第一条に書いてありますように、公共性の強い国有鉄道の運行を目的にして行きたい。かよう意味で制定されたものと考えます。
  120. 川島金次

    川島(金)委員 ことに公労法の仲裁委員会、この機関の設置というものは、非常に私は意義があるものと信じております。公共企業体として指定されました国鉄労働組合には、いわゆる団結権と交渉権は認めておりますけれども、憲法に保障された罷業権というものは否定をされております。こういう罷業権の否定にかわつて、平和的に民主的に賃金等の問題についての解決をはかり、あわせて労働者の生活を守つてやる、それを通じて公共企業体の最大の運営を行つて行くということが、私は仲裁委員会設定のゆえんの重大なる要素であろうと思います。しかしその意味においてつくられた仲裁委員会裁定が、今日においても同様でありますが、幾たびか実施されていない。またされようとする意思もないような形になつておる。こういう事柄に対して一体労働関係者といたしては、どういうふうな見解を持たれておるのか、そういうことができても、裁定があつても、幾たびか繰返して実施されないでも、それはやむを得ないのだというふうに考えておるのか、そうでない考え方に立つておられるのか、その見解を明らかにしてもらいたい。
  121. 福田一

    福田政府委員 お答えをいたします。お説の通り、憲法に保障されておりまするところの争議権をなくしておるという意味合いにおいては、当然調停あるいは裁定に対しましてこれを尊重しなければならぬということはごもつともなことであります。しかしこのことは、従来もしばしば当委員会あたりにおいても論じられておるところでありますけれども、第三十五条の但書によりましても明らかなごとく、また十六条の規定によつても明らかなごとく、予算関係上どうしても実施ができないという場合におきましては、これはやはり議会において御承認を願う、こういうふうにいたさなければならない、かよう考えておるわけであります。
  122. 川島金次

    川島(金)委員 労働省としては、この問題の解決に何らかの糸口をつけべき積極的な方針に出る考えがあるのかないのか、その点伺いたい。
  123. 福田一

    福田政府委員 もとより労働省は、労働者の利益というものを十分考えて行動すべきものであると私ども考えておるのであります。この意味合いにおきまして、予算編成の場合、その他の場合におきましても、労働者の利益を十分尊重した――閣議その他において、あるいは事務的な折衝においても、十分そういう面も強調をいたして参つたわけであります。その結果といたしまして、諸種の事情を勘案いたしまして、今回のよう補正予算を提出することに相なりましたような次第でありまして、この意味合いにおいて、私たちは従来努力をいたしたと存じておるのであります。今後この問題を掘り下げてもう一ぺん何らかの措置をとるようなくふうをしてはどうかという問題は、これは単に労働省だけの問題ではなくて、政府全体の問題と考えております。この意味合いにおいて、従来大蔵大臣あるいはただいまも運輸大臣から御答弁がありましたので、それで御了承を願いたいと思うのであります。
  124. 川島金次

    川島(金)委員 最後に経理局長に申し上げますが、私は私のことを申し上げて恐縮ですが、出身地が、鉄道の町といわれるようなところに住まつております。その町は半数以上の六割近い者が国鉄従業員であります。国鉄従業員の町といわれているようなところに、私は五十年にわたつて住んでおります。最近実はふとした思いつきで、市立の公益質庫――これは質屋ですが、この公益質庫の要件がありまして、窓口を尋ねて、たまたま調べた。公益質庫のいわゆる利用客というものは、もちろん勤労者、商人――といつてもきわめて低い地位にある小商業者なのであります。これらの公益質庫を利用する状況を見せてもらいましたところによりますと、質庫に質ぐさを持つて参りまして借りる金というものは、最低五十円、最高にいたしましてもせいぜい千円か二千円が限度であります。こういう最低は五十円から最高にいたしても千円、二千円の質ぐさをいろいろ持つ来て借りて参りまする質庫の利用客の中で、何ぞはからんや七五%は国鉄従業員もしくはその家族、こういう状態であります。国鉄従業員だけを私は取上げて言うのではないのですが、一般の官庁俸給生活者、ことに下級生活者、現場における者、これは十年、二十年をつとめて親子すでに四人、五人という家族になるような者でありましても、実質の手取賃金一万五千円になるという者はきわめてまれであります。大体一万五千円以下というのが実情であります。一方において政府物価政策、労働対策、いろいろの問題について誤りを犯して来た。そのために賃金と生計とのバランスがとれない。国鉄従業員もそのうずの中に巻き込まれておる。そして子供の晴着をつくりたい、あるいは子供の学校に行く学用品を新たに買うため、あるいはまた何かの不時の支出のために乏しいたんすの中から乏しい衣類その他を持つてつて、質ぐさとして、しかも中には五十円、今日の物価事情からして五十円の金を借りなければならぬという国鉄従業員の家族もおる、これは事実であります。しかも質庫の利用状況からいつて七五%が国鉄従業員であり、その家族である。千円以上の金を借りる国鉄の利用者というものはきわめてまれであります。みなせいぜい平均すれば四、五百円、その四、五百円の金が必要なために、なけなしの質ぐさを持つてつて金を借りてきて生活の補いにしておる。しかもその上に国鉄従業員の細君にして内職をする者が今日では非常にふえて来た。好んで内職をしたいというのではない。細君が子供をかかえながら、乳飲子を背負いながら内職をしなければ、主人の持つて来る月給袋だけでは自分の台所が保てない、こういう実情であるのであります。  大蔵大臣もよくこの問題は耳に入れておいていただきたいと思う。これは単に国鉄労組の家族の生計の実情だけではございません。一般公務員の下級生活者というものは似たり寄つたりの生活をしておるということは事実であります。政府は口を開けば日本の経済は発展をした、向上した、安定をした、物価事情も安定をしたなどと言うけれども、個人々々の国民の生活の中に飛び込んでみれば、今申し上げたようなまことに悲惨な状況を続けておる。これは事実であります。その悲惨な状況を続けておる上に立つて、初めて国鉄の四十万の諸君は家族を考え、子供を考え、おのれの生計を考えて切実な叫びを上げて賃上げ闘争をやむにやまれず行つておる。しかも国鉄の諸君の最近の態度というものは私は実に平和的で民主的であると思う。いささかの破壊的な行動をしておりません。法律に従い、憲法に従い、そして公労法に従つて、できるだけの平穏の間に自分の条件を少しでもよくしてもらつて、その上に立つて日本経済再建の動脈である国鉄の輸送力の増強に挺身しようという大決意をもつて、多少の例外はありましても、おそらく全部といつていいほどそういう決意を持つております。これは国鉄の人たちはよく知つておると思う。そういう事情のもとにあつてこその切なる要求なんです。いたずらに組合運動をせんがための要求ではございません。そういう切実な立場に立つておるという点を少くとも当局はもちろん政府委員全体が考えなければならぬ。そういうことを知らないから、わくがございません、財政がございません、資金上都合がつきませんの一片の言葉で葬り去ろうという冷酷、無残なる態度に出ておる。私はこの問題は、繰返して申し上げますが、今まで答弁された大蔵大臣ようなことで、今後進んで行くといたしますれば、おそらくやむにやまれぬ従業員四十万の中から、どのような非常な段階が来るような事柄が起らぬとも保証できない。私が今こうやつていろいろお話をしておる間に、どこかの操車場では、遵法運動が実行されて、貨物が山と積まれて、運行がいよいよ困難となる、そういう事態が起つているのではないかと心配をいたしております。それが全国に瀰漫すると、繰返して申し上げるのではありませんが、電産、炭労に続いての一大事態が起り、日本経済はまつたく根底から麻痺するような状態になる。そういう事態をも勘案して、政府はこの際熱意と積極性と深き愛情とをもつて、この問題の解決に体当りで当るという、私は積極方針を望んでやまないものであります。もしそういうことなくして、さらに重大な段階が来た場合には、その一切の責任はあげて私は吉田内閣にありと言わなければなりません。私はそういう責任が吉田内閣に来ることを望んでおるのではありません。日本経済のため、勤労階級の生活を守るために、何とぞこの問題の解決の一日も早からんことを熱望し、そしてこの問題の円満なる解決の上に立つて、輸送力の増強がさらに一層倍加されるという、こういう姿を国鉄が打出して行けるように、心から念願しておるものの一人でありますので、どうぞ政府は資金上、財政上という一片の冷酷無残な言葉でこれを無視し、蹂躙するような、ことでなくして、もつと勤労者、国鉄従業員の家庭の生活を、台所の中に飛び込んだ姿において、積極的な解決をはかることに努力をしてもらいたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  125. 太田正孝

    太田委員長 成田君。
  126. 成田知巳

    ○成田委員 大分時間が経過しておりますので、私は重点的に御質問申し上げまして、当局の御意見を承りたいと思います。  先ほど、公労法の精神を事実上無視する結果は、公社法の予算制度、会計制度にあるということを申し上げて質問いたしたのですが、以下具体的に仲裁裁定について承りたい。まず大蔵大臣――と申しましても、結局主計局長になると思いますが、予算総則の問題で、専売公社の予算総則第四条でありますが、第四条には、他の政府関係機関予算総則と異なりまして、他の機関の方は、当初予算幾らということをあげまして、補正予算幾らになる、こう書いてあります。ところが専売公社だけは、補正予算総額をあげまして当初予算があげてない。この関係はどうなつておるかまず承りたい。
  127. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは全文を改正いたした関係であります。
  128. 成田知巳

    ○成田委員 全文を改正した結果というのはわかりませんが、他の政府機関の総則のきめ方と、根本的に違つたきめ方をしているのですが……。
  129. 河野一之

    河野(一)政府委員 違つたやり方をいたしておらないと思いますが、おつしやる点はどういう点でございましようか。
  130. 成田知巳

    ○成田委員 たとえば専売公社関係につきましては、給与総額は六十三億八千百幾らと規定してあります。たとえば電通あるいは国鉄もそうでありますが、幾らであるものを幾らに修正する、こういう規定の仕方をして当初予算をあげておる。ところが当初予算との関係専売関係については明示されていない、その関係です。
  131. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは何も他意がないのでございまして、全文改正をした関係でこうなつておるのであります。つまり単なる技術的な問題であります。予算総則の三条を新たに入れましてこれは弾力条項でありますが、従来本予算においてはこの規定がなかつたのでありますが、これを新たに入れましたために、前の条文をひつぱり出したりする関係上、全文改正をいたしたのでありまして、これは公社の方の本予算の方を読んでいただければわかりますが、別にかわつたところはないのであります。
  132. 成田知巳

    ○成田委員 他意がないというのですが、他意がありそうに私は思われるのです。その問題に関連して御質問したい。専売公社は昨年十一月に仲裁裁定が出まして、一万四百円とされました。昨年の末の国会でも相当問題になつて、労働委員会でこの仲裁裁定は実行すべし、こういう決議さえされたのです。また今度の仲裁裁定を見ましても、経過の第一に、予算補正の結果、年末手当及び超過勤務手当の一部を流用することにより、裁定を実施し得る見込みが明らかになつた。これを国会に通知して提案を撤回し、裁定通りの額が決定された経緯となつている。こういうことになつております。従つてこの一万四百円という昨年度の裁定は、当然当初予算に組まれなければいけないと思うのですが、当初予算に組まれているかどうか。そこでこの関係を今御質問申し上げたのです。
  133. 河野一之

    河野(一)政府委員 当初予算給与総額としてあげておりまして、その中で、今成田さんがお読みになつように、年末手当等の財源を流用して一万四百円というベースがのめる、そういうものを使つてベース自体を上げる、こういうことのお話が総裁からあり、政府もそれでよかろうということになりましたので出したのであります。
  134. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、当初予算には昨年度のベースである九千五百八十三円、それに年末手当の十二分の一、すなわち七百九十九円を加えた一万三百八十二円というので当初予算をお組みになつているのでしようか。
  135. 河野一之

    河野(一)政府委員 成田さんも御存じのように、その裁定をのむということは、本予算がきまつた後でございまして、今年度の当初予算は一万四百円ということで組んであるわけではないのであります。基準賃金と基準外のものとがございますが、年末手当を入れて、その財源を流用して、裁定通り給与がのめる、こういうことで出したのであります。
  136. 成田知巳

    ○成田委員 当初予算は幾らで組んでおられるのですか。
  137. 河野一之

    河野(一)政府委員 九千五百六十円であります。
  138. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、昨年度の一万四百円という仲裁裁定の決定、さらにこれは、労働委員会でもこれを実行すべしという決議がなされたのですが、その決議は事実上無視されて、九千五百六十円ですか、最低線の給与ベースで当初予算を組んだ、こうなるのですね。
  139. 河野一之

    河野(一)政府委員 当初予算国会に提出いたしました後に、そり裁定をどういうふうに処理するかという問題が起つたのであります。九千五百六十円のほかに年末手当一月分がありましたので、これを使つて一万四百円ということで裁定が実施できる、その給与総額範囲内で実施できるということで相なつたわけであります。
  140. 成田知巳

    ○成田委員 そうすると年末手当の一箇月分を食い込んでいる形になりますが、これは秋山総裁に承りたいと思いますが、今年の年末手当一箇月、これは裁定にも出ておりませんが、社会通念からいつて、年末手当は当然出さなければいけないと思いますが、総裁はどうお考えなつておりますか。
  141. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 お答え申し上げます。昨年の裁定におきまして、私がその範囲内においてのみ得るということで解決をいたしました。従つて年末手当に充当すべきものが若干足らないということは当然であります。その年末手当について政府に交渉をしておるわけであります。その点において政府の善処をお願い申し上げておる次第であります。
  142. 成田知巳

    ○成田委員 財源が足りるか足りないかはあとで検討してみたいと思いますが、年末手当だけの問題ではないと思います。調停案を完全に実施するとすれば、ある程度財源不足が出て来ると思いますが、私たちの計算では、調停案をのむといたしましたら大体四億六千万円から五億円の金がいると思うのですが、大体公社側は幾らを予定していらつしやいますか、承りたいと思います。
  143. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 調停案には新規の基準ベースをのみます期日が、八月から十月になつております。その差額がおおよそ二億五千万円程度なつておりまして、今あなたのおつしやつた五億円から引いた額が年末手当の不足分くらいになるのではないかと思います。
  144. 成田知巳

    ○成田委員 九千五百八十三円で組みまして、その年末手当を食つたのですが、今度新たに調停案が出まして、一万三千百円ということになつているのですから、この調停案をのむといたしましたら、さらにそれ以上の予算不足を来すと思うのですが、その関係はどうなんでしよう
  145. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 補正予算には、年末手当に充当し得るものが約一億七百万円持つてつたのであります。この差額が――私今はつきり数字の加減乗除をやつておりませんが、ただいまあなたのおつしやる五億何千万から引いた額が、ちようど年末手当に不足する金額と私は思つております。
  146. 成田知巳

    ○成田委員 私たちの計算では、大体調停案はのむ、年末手当一箇月分を出すといたしまして、十億円くらいの財源が必要じやないかと思つているわけですが、その点は公社の方で十分精算されると思うのですが、その不足財源でございますね。これをどこに見出すかという問題なんですが、現在予備費は大体どれくらいおありでございましようか。
  147. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 予備費は現在十三億ございます。
  148. 成田知巳

    ○成田委員 この予備費の十三億のうち、来年三月末までに充当見込みのものがございましようか。
  149. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 御承知ようにタバコの売れ行きも相当活発であります。また原料等の増産もあるのでありまして、その方にまわす金額が約十億あります。
  150. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、予備費は大体三億残を予想されるわけですね。それからタバコの収益の増加が相当あると思うのですが、収益増加は大体どれくらいに見込んでいらつしやいますか、伺いたい。
  151. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 売れ行き増といたしまして、補正予算に組んであるものが二百十三億と覚えております。
  152. 成田知巳

    ○成田委員 そうしますと、予備費の三億残と、それから二百十三億の政府一般会計の繰入れを省きましても、約十億円程度の調停案をのむ財源というものはあると思うのですが、公社当局としては、どうお考えでしようか。
  153. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 財源と申しますか、公社の資金上におきましては、調停案をのむ余裕はあると申し上げてさしつかえないと思います。
  154. 成田知巳

    ○成田委員 今総裁が調停案をのむ余裕があるということをはつきり明言されたのであります。  そこで大蔵省当局に承りたいのですが、予算補正総則第三条に日本専売公社において、予定に比し業務量が増加し収入が予算額に比し増加した場合に、予備費を使用してなおその経費を支弁することができないときは、大蔵大臣の承認を経て事業のため直接必要とする経費にその収入の一部を充てるととができる。こうはつきり明記してあります。従つて予備費を使用してまだ総裁の言われたように収益増があるわけです。財源がある。そういたしますとこの第三条にそつくりそのまま該当すると思うのですが、大蔵大臣は承認を与えられる用意があるかどうか承りたい。これは大蔵大臣の方針ですから、大臣から承りたい。
  155. 向井忠晴

    向井国務大臣 政府委員お答えいたさせます。
  156. 成田知巳

    ○成田委員 これは方針なんですから、大臣から……。
  157. 太田正孝

    太田委員長 政府委員がやつて、それを大蔵大臣が承認したらいいじやございませんか。
  158. 成田知巳

    ○成田委員 それでは政府委員大蔵大臣とが逆になつてしまう。方針なんだから、大蔵大臣が承認を与えるかどうかという問題なのです。政府委員が説明をするという問題じやない。
  159. 向井忠晴

    向井国務大臣 私としましては、先に行きましてから、はたして収益があるかないか、確かでございませんので、政府委員にくわしいことを申し上げさせます。
  160. 成田知巳

    ○成田委員 収益があるかどうか確かでないというのですが、今秋山総裁は確信をもつてそれだけの財源があると言われておる、そういたしますと、この第三条にそのまま該当するのですから、その秋山総裁の今の御答弁を前提にして、大蔵大臣はもしそういう事実があるとすれば、三条の承認を与えるかどうか、その方針を承つておるのです。
  161. 河野一之

    河野(一)政府委員 かわつて御答弁申し上げます。補正予算に二百十三億の収入の増加を見込んでおります。この収入によりまして、一般会計において百億円の専売益金の増加をあげておるわけであります。これはこの前の総括説明のときに申し上げましたように非常に大きな売れ行きの増加を見込んでおるわけでございまして、総裁意見もございますが、今後この収入が確保できるかどうか、現在の段階においては、われわれといたしましては、補正予算には筒一ぱいにとつてあると考えておるのでございまして、今後の問題につきましては、何とも今の段階では申し上げられないと思います。
  162. 成田知巳

    ○成田委員 これは私たちとしては納得しないのです。やはり公社の経営の、実態を知つているのは、総裁が一番知つているのです。大蔵省主計局長がいかに明敏でいらつしやつても、秋山総裁以上に経営の内容は知らないと思うのです。秋山総裁が確信を持つてそれだけの収益は上ると言つておるのに、大蔵省の方でそうないというのは、私は越権だと思うのです。従つて秋山総裁のただいまの御答弁を前提にした場合に、これは大蔵大臣の御意見を承るのですが、第三条の承認を与えるかどうか、もう一度はつきり承りたいと思います。
  163. 太田正孝

    太田委員長 この問題について秋山総裁が発言を求めておりますから、それをお聞きになつて、すぐ大蔵大臣の説明をお聞きになつてください。
  164. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 私の二百十三億と申し上げたのは売上げ増でありまして、これが全部財政として補正予算には組んでないと思います。その理由は、葉タバコ、塩等の手持ちにおいて、その差額は私の手元にある勘定になります。
  165. 成田知巳

    ○成田委員 それでは売上増の益金はどれだけお見込みになつておるのですか。
  166. 小川潤一

    ○小川説明員 私総務部長をやつておりますので、総裁にかわりましてお答え申し上げます。ただいま総裁のおつしやつた二百十三億何がしという金額は、本予算に関しましてタバコの売上げ増でありますので、これは政府の方で歳入あるいは歳出に、今度の補正予算に組みかえられてありますので、その意味におきましては、余裕はないといわざるを得ないものと思います。それから政府の益金は、今回は百億をその中から見積つております。
  167. 成田知巳

    ○成田委員 政府は、その一般会計の繰入れは百億なのですが、それでは二百十三億の売上げ増で、百億円以上の益金というものは、大体予想されると思うのですが、その差額は大体どれくらいありますか。
  168. 小川潤一

    ○小川説明員 御承知ように、その差額でございますが、二百億を、百億はもう納めてしまいますから、あと百億残ります。その百億の中から二十五億経費がいりまして、それから急にタバコの売上げが増加しましたので、日本の耕作反別を急に増加することは間に合わなかつたものですから、インド葉、その地米葉を六十億近く購入いたしまして、その関係でかなりの歳出になつた。それから塩が少し、御承知ようにソーダ工業が悪いものですから、在庫がふえまして、その差額程度を在庫の増という形でいたしますので、そんな関係上、バランス・シート上は百億の差額があるのでございますが、益金としては百億しかないわけであります。
  169. 成田知巳

    ○成田委員 いつもそういう点で問題になるのですが、今葉タバコをインドその他から六十億買つた。塩の在庫増、これはまだ消費されていないのですね。一つの資産勘定、財産なんだと思うのですね。従つて当然二十五億の経費を省いたあとの七十五億というやつは会計上は資産勘定なんです。従つて損益からいつたら利益に上つて来なければいかんと思うのです。これを損金のように落してしまつて、利益がないということはおかしいのです。そういう点から考慮しましたら、先ほど総裁の言われたように、当然調停案をのむだけの経理内容だと、こう考えなければいかん。この点は大蔵大臣民間会社におられてよく御承知だと思うのです。どう考えても経理内容は調停案をのむだけの内容である、こう私たちは考えざるを得ないのです。従つて大蔵大臣は、もし第三条の承認を求めて来たときに、承認を与えられる用意があるかどうか。これを最後にひとつはつきり御答弁願いたい。
  170. 向井忠晴

    向井国務大臣 先ほども申し上げましたように、収入増加の見積りを立てることはできませんので、ただいま申し上げた通りでございます。
  171. 成田知巳

    ○成田委員 収入増加の見積りを立てることができないというのは、大蔵省がわからないというだけなんです。公社側の意見によりますと、二百十三億の収入増加、そのうち百億は一般会計に入れておるのです。あとの約百億、これについて、ほんとうに損金なるものは二十五億なんです。あとは全部資産勘定、従つてこれだけのものは益金と考えていい。これを損金というようにお考えになるから無理があるのです。こういうところを秋山総裁なり今小川さんが言われた。従つて当然経理内容としては、公社側の意見によれば、調停案をのむだけの余裕があるわけです。余裕があるとすれば、この第三条は当然大蔵大臣として承認しなければいかん、こういう結論になる。その公社側の意見を完全に無視されて、ただ大蔵省では、将来のことはわからない、将来のことはわからない。――今具体的内容を承つても、将来のことははつきりしておると思う。なぜ承認を与えると言われないのですか。もう一度ぼくは最後に承りたい。
  172. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは専売納付金の立て方の問題で、よく御存じであると思うのであります。益金計算においては、おつしやる通りのことになると思うのでありますが、専売の納付金を出す場合においては、現金のシステムで行つておりまして、年度末において幾ら現金が出るか、それを一般会計の方に入れるという建前で来ております。従つてかりにそういう益金がございましても、現金の形であるものではございませんので、従つて財源には使えません。
  173. 成田知巳

    ○成田委員 現金の形でないことはわかつておるのですが、そういたしますと、大蔵大臣が承認して、一時借入金でも何でもやつていいと思う。それだけの資産内容があるとすれば、一時借入金で資金面は当然融通できる。それをやらなければ、公労法の精神は完全に没却されてしまう。事実上それだけの資産の含みがあるのですから、現金納入という形であれば、現金については一時借入金を許すべきだと思うのですが、どうですか。
  174. 河野一之

    河野(一)政府委員 現在の公社の会計法では、そういつた納付金のための借入金という制度を認めておりません。
  175. 成田知巳

    ○成田委員 そこに公社法の一つの大きな矛盾があると思うのですが、専売関係はこの程度にいたしまして、では電信電話公社の調停案について質問申し上げます。  十一月の八日に調停案が出されまして、組合側は相当不満ではございましたが、これを受諾した。公社側もこの調停案は妥当である、その実行に努力したい、こう回答しました。ただ補正予算が組まれた関係上、ただちに実行は不可能だ、こういう結果になつたのです。調停案が大体成案を得まして、公社側に内示された。公社側としては、郵政大臣とその問題について協議されたのですが、そういう協議があつたにもかかわらず、なぜ補正予算に調停案をのむだけの予算を計上されなかつたか。これをまず承りたいと思います。
  176. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 電信電話公社に関しましては、お話のような調停案が出まして、公社からの協議もありました。しかし公社の現在の財政状態、それから国家の財政状態等から考えまして、その実施は困難であるというのが私の見解であります。それで公社も同じよう見解を持ちまして、まだ折衝が続けられておると私は思います。
  177. 成田知巳

    ○成田委員 これは公社の総裁にお尋ねしたいと思うのですが、今郵政大臣は、公社の経理状況からいうと実行不可能だ、こういう御答弁があつたのですが、調停案を、公社側は妥当である、この実現に努力したい、こういう回答をされまして、十二月三日には覚書を締結いたしたですね、この実現のために努力するという覚書を締結いたした。そういたしますと、今まで会社代表としてどのような御努力を政府当局におやりになつたか、政府側は不可能だというのです、公社側の御意見と、それから政府側との交渉の経過を承りたい。
  178. 梶井剛

    ○梶井説明員 調停案の趣旨は尊重して行きたいと申しましたけれども、先ほど郵政大臣からお答えがありました通りに、予算上、資金上その実現が困難なのであります。もちろん公社の収支の関係から申しますと、調停案をのむためには、どうしても料金の値上げをしなければその財源を得られない。しかし料金の値上げを本年においてしないといたしますと、節約ということによつてその財源を見出さなければならないのでありまして、その節約によつて得た資金におきましては、現在補正予算において提出されておる範囲のことしかできないと申し上げるほかないのであります。
  179. 成田知巳

    ○成田委員 調停案をのむとすれば、料金の値上げをやらなければいかぬ。本年度料金の値上げをやらないとすれば、調停案をのむことは不可能だ、こう言われたのですが、料金の問題が出ましたが、来年度、電信電話の料金値上げの御構想を持つておられるか。現在の公社の経理状況からいつて、どういう御方針を持つていらつしやるか承りたい。
  180. 梶井剛

    ○梶井説明員 財源として料金値上げをいたさなければ、本年度においても調停案をのめないと同様に、また来年度においても現在の二割の待遇改善に対しても財源が不足するということに相なるのであります。しかし料金値上げということは、政府並びに国会の承認を経なければできないことでありますから、現在来年度予算の編成中でありまして、その点につきましは、まだ明らかに申し上げることができないわけであります。
  181. 成田知巳

    ○成田委員 二割のベース・アップをやつて、来年度にそれを通すためには、料金の値上げが必要だというよう総裁の御答弁だつたのですが、そういたしますと、当然料金値上げというものは予想されるように思うのです。もちろん最後の決定は国会にあると思いますが、公社側の御方針としては、二割のベース・アップと料金値上げの関係をどういうようにお考えなつておるか。また具体的に料金値上げの構想を立つて予算編成をしていらつしやるのか。はつきり御答弁願いたいと思います。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  182. 梶井剛

    ○梶井説明員 来年度の予算編成中でありますので、正確な数字を申し上げかねるのであります。今回の補正予算におきまして、三十四億円の節約をいたしまして、二割のベース・アップの財源としたのであります。さらに来年度におきましては、幾ばくの節約ができるかということを正確に算出いたしませんと、料金値上げの程度もはつきりはいたさないのであります。従つてその算出をいたしました上に、料金値上げの案を作成いたしまして、政府に交渉するつもりであります。
  183. 成田知巳

    ○成田委員 この調停案をのむに必要な必要経費というものは、大体どれくらいに見込んでいらつしやるか。
  184. 梶井剛

    ○梶井説明員 調停をのむといたしますと、年間百九億ばかり必要であります。
  185. 成田知巳

    ○成田委員 年間百九億でありますが、今年の補正予算に関連いたしまして今年限りでは幾らくらいですか。
  186. 梶井剛

    ○梶井説明員 先ほど申し上げました節約三十四億のほかに、さらに四十億の資金を必要とするのであります。
  187. 成田知巳

    ○成田委員 そこで財源があるかないかという問題なんですが、予算総則第十四条で一億五千万円の予備費を充当することは認められておりますが、今予備費は大体どれくらい残つておりましようか。
  188. 梶井剛

    ○梶井説明員 予備費としては約六億ございます。そのうちから給与の予備費として一億五千万円が計上されておるわけでありまするから、それを除きますと約四億五千万円であります。
  189. 成田知巳

    ○成田委員 この四億五千万円を、現在予想される限りにおいて、お使いになるめどは、はつきりしたものがございましようか。
  190. 梶井剛

    ○梶井説明員 本来本予算におきましては相当の予備金を持つてつたのでありますが、幸いにして本年度は風水害がありませんでした。従つてその予備金を減額いたしまして、今回補正予算においては六億にしておるのでありまするが、今後におきましては、雪害等の予想がありまするので、予備金が全額いるかという懸念を持つております。しかしこの点は天災地変のことでありますから、われわれといたしましては正確なことを申し上げかねます。
  191. 成田知巳

    ○成田委員 私たちは、この予備費の中から一億五千万円お出しになつたのを、さらにこれを倍にするくらいのことは、できないことはないと思つておるのですが、これは見解相違だろうと思います。  それから減価償却でございますが、聞くところによりますと、五・七%の減価償却をおやりになつているそうですが、これは国鉄その他の公社と比較いたしまして、五・七%の償却というものはいかにも過大ではないか。この点についてはどういう御見解でありますか。
  192. 梶井剛

    ○梶井説明員 五・七%の減価償却の率は二十四年六月の物価によつて算出されております。従つて現在の物価に換算いたしますと、四・九%くらいになつておるのでありまして、通信器材のライフという点から見まして、決して過大とは考えられないのであります。
  193. 成田知巳

    ○成田委員 私たちも、これは大体第三者から見た勘でございますが、国鉄の経営状態と電信電話公社の経営状態を比較して、必ずしも電信電話公社の方が悪いとは考えない、むしろいいのではないかと思うのですが、その国鉄においてさえ、仲裁裁定は――時期の問題はありますが、本給その他については大体のんでおる。そのやり方として、資金運用部資金から五十億の借入もやつておる。さらに運賃値上げがいいか悪いかということは別問題として、国鉄当局としては運賃値上げをやりまして、これで裁定をのもうという計画を立てておるが、電信電話公社として、国鉄がやつたと同じような御努力をやつていないのではないかと思うのです。当然国鉄同様に、借入金の問題、あるいは料金値上げの問題、こういうものを真剣にお考えになるのが妥当ではないかと思うのですが、なぜ国鉄同様の努力をお払いにならなかつたか、これを承りたい。
  194. 梶井剛

    ○梶井説明員 料金値上げの問題につきましても、もちろん郵政大臣並びに大蔵省に事務的折衝は十分にいたしました。しかし内閣の方針として料金値上げの問題はこの際見合せるということでありますから、それによつて財源を得ることは困難なのであります。また補正予算におきましては、電信の拡張のために、預金部資金から借り入れることにおきましても研究いたしまして、交渉もいたしました。しかしこれも内閣として認められておりませんのですから、それ以上借入金をするという方法もないのでございまして、やむを得ず現状にとどまつておる次第でございます。
  195. 成田知巳

    ○成田委員 預金部資金からの借入金について政府から承諾を与えられなかつた、こういう御答弁なのですが、電信電話公社は、御承知よう政府からの借入金ということじやなしに、一般からの借入金が公社法の制定のときに認められておるわけであります。といたしますと、政府からの借入金じやなしに、日銀とか一般市中銀行からの借入金の道もあると思うのですが、こういう御交渉をおやりになつたかどうか承りたいと思います。
  196. 梶井剛

    ○梶井説明員 電信電話公社といたしましては、建設資金といたしまして借り入れることはございまするけれども、今回の待遇の改善は経営支出でありまして、恒久財源を必要とするのであります。従つて借入金によつて支弁することは、公社の財政上困難なのであります。
  197. 成田知巳

    ○成田委員 そこで公社側といたしましては、たとえば減価償却は、二十四年六月を基準とすると四・九%だと言われますが、せつかく調停案が出ておる、といたしますと、減価償却を年々大体百二十五億か百五十億おやりになつておるのですが、これを少し下げましてもそれだけの財源が出て来ると思います。そうして減価償却で少し減少された点は、それこそ借入金を建設資金の方へおまわしになる、そういう方向をおとりになつたならば、直接借入金を給与改善に使うというわけじやないのですから、借入金によつて調停案をのむことができるんじやないかと思うのですが、その点について承りたいのであります。
  198. 梶井剛

    ○梶井説明員 もちろん減価償却の資金は、電話の拡張等に使つておるのでありまして、主として現在行き詰まつておりますところの電話の設備を新しきものにとりかえる費用となつておるのであります。従つてこの金額を減らしますることは、ただちに電話の設備改善に影響を及ぼしまして、今後の電話加入者の増設を非常に困難ならしめる事態に相なるのであります。従つて電話の設備をとりかえるという経費をむやみに減らすことは、われわれは事業の安定を欠くのではないかというふうに感じておるのであります。しかしただいまお説のように、一時償却を延ばしても、借入金によつてそれを補つて、そうしてそれを経営財源としたらどうかというお話でありまするが、われわれといたしましては、先ほど申し上げました通りに、本年度限りの問題ではないのでありまして、来年度さらに再来年度とこの待遇改善の財源を確かに求めない限りは、常に減価償却の経費をそれにまわすということになりましたならば、将来事業は非常に危険な状態になるんではないかと考えております。
  199. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 森山欽司君。
  200. 森山欽司

    森山委員 最初に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、大蔵大臣公共企業体労働関係法という法律をお読みになつたことがあるかどうか承りたいと思います。――もちろんお読みになつたことがおありになるという前提のもとに御質疑いたしたいのでありますが、公労法第十六条第二項についてはどういうふうにお考えなつておるか。すなわち今の法律の立て方から申しますと、憲法は一応団体交渉権と罷業権を認めております。ところで、公共企業体の職員にはそういう罷業権を認めておらないのであります。しかしながら労使間に紛争が起きた場合には、裁定によつて両当事者を最終的に拘束するということになつておるわけであります。しかし予算上の問題があります関係上、この予算の問題については、国会の承認を得るという建前なつております。ところで、今回国鉄とか専売の仲裁裁定が出されまして、国会の承認を今求めておるわけでございます。そこでお伺いいたしたいことは、国会が承認した場合におきましては、政府はどういう態度をおとりになるのか、これは独立後最初の裁定問題でございますので、占領下の時代とはおよそ趣を異にしたものではなかろうかと思いますので、この際大蔵大臣の御答弁を承りたいと思います。
  201. 向井忠晴

    向井国務大臣 予算を提出いたしまして、それを御審議願つておるのでございまして、その御審議の結果は今私は承知をしないのでありますが、御審議の結果によつて行くよりしようがないと思つております。
  202. 森山欽司

    森山委員 これはもちろん予算の問題でありましよう。しかし私が伺つておるのは、予算の問題ではなくして、公労法第十六条第二項の規定によつて裁定のむべしという結論が国会において出た場合、従つて専売については七、八億の金がいる、あるいは国鉄の場合については、これは計算のしようでございますが、組合側の要求によれば、さらに百億あるいは最小限度五十億程度の金はいるようになるのではなかろうかと思う。そういう金の措置については、政府はどういうふうにお考えになるかということでございます。要するに国会がこれは認めてやらなければならないということをきめた場合、財政上どういう措置をとるのが常識的であるかということを、主計局長はよろしゆうございますから、向井さんの方から承りたい。
  203. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。ただいま審議中でございますから、確定するまでは何とも申し上げられません。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員   長着席〕
  204. 森山欽司

    森山委員 そういうお答えでは困るので、もう少しはつきりお答え願いたいと思います。御承知通り、労働委員会では、公共企業体労働関係法第十六条第二項に基いて承認を求めるの件が二つ出ております。すなわち一つは国鉄裁定であり、一つは専売裁定であります。われわれ労働委員の者がこれについて承認をしたといたします。これは非常に可能性があることでありますが、承認した場合、政府は一体これをどうするかということを私は聞きたい。要するに国会が承認した場合において、一体予算の上においては、大蔵大臣としてはどういう御措置をなさるつもりであるかということを承りたい。
  205. 向井忠晴

    向井国務大臣 政府委員に返事をさせます。
  206. 河野一之

    河野(一)政府委員 法律上の問題として申し上げます。仮定の問題について何も申し上げるべきじやないのですが、この問題について裁定の承認を求める方も予算も、同一の国会に出ておるのでありまして、従つて両方の意思が違うことはあり得ないと私は考えております。
  207. 森山欽司

    森山委員 私はそういう実際上の問題としては、大蔵大臣ならばその程度の御答弁でやむを得ないと思いますが、河野主計局長としては、もう少し論理的に御説明願えないでしようか。承認が出た、そうしたら政府はどういう責任を負うのだということを、ひとつ伺いたいと思います。
  208. 河野一之

    河野(一)政府委員 両方の案件が出ておりますので、一方においてある決定がなされますれば、それが予算に及ぶといたしますれば、それに応じて、国会二つの違つた意思が出ることはないのでありますから、これと相調整せられるような措置がとられるものと、私は法律上は考えております。
  209. 森山欽司

    森山委員 今回の場合と一応切り離して、そもそも裁定が出て承認になつた場合において、政府はいかに措置すべきであるかということです。国会がいかに措置すべきであるかという前に、政府がいかなる措置をすべきであるかということをお答え願いたい。
  210. 河野一之

    河野(一)政府委員 政府といたしましては、そういう予算を出しておるのでありましてこれが妥当なものと考えておるのであります。もしそういうようなことになりますれば、国会自身としてお考えになる問題だと思います。
  211. 森山欽司

    森山委員 私先ほど来河野さんに申し上げておるように、今回の事例として考えないで、今回の事例に適応すべきまず前段となる抽象的な問題として、裁定が出て国会が承認を与える、そうしたら政府は何らかの行動をする、国会が何らかの行動をするという、私は手順になるのではないかと思う。そこに政府に対する拘束性その他の問題があると思うので、一体河野さんは前と同じよう考えを持つているかどうかということを、ここに復習をしてもらう意味において、河野主計局長のお考えと、また向井国務大臣考えは私は必ずしも同じではないと思いますが、参考までにあなたのお話を承つておくのも一案であると思いますので、もう少しその点はつきり言つていただきたいと思います。
  212. 河野一之

    河野(一)政府委員 この問題は常に両方一緒に進行すべき問題でありまして、一方だけが進行するということは、今までもありませんでしたし、今後もなかろうと思います。
  213. 森山欽司

    森山委員 私はそれはいささか違うと思うのです。問題の出し方が少し遅れたかもしれませんが、昨年度の専売裁定の際のことを、この際振り返つてみたいと思うのであります。労働委員会の記録によりますと、昨年の十一月十五日に、労働委員側の質問に対して政府は、公社の予算給与総額中に含まれている年末手当、超過勤務手当を流用すれば、八月以降について一万四百円を支給することの可能なる旨を答弁した。かくして委員から、年末手当、超過勤務手当の財源を基本給に組入れることによつて裁定を実施することは可能だと思われるから、政府はすみやかに適当な措置を講ずべしということを、政府に申し入れるべきであるという動議が提案されて、これが可決された。これが十一月十五日でありますが、十一月三十日に、政府から次のような通知があつたわけであります。昭和二十六年度政府関係機関予算補正が成立し、年末手当及び超過勤務手当の一部を基準賃金に流用することにより、右裁定の全部を実施し得る見込みが明らかになりましたので、この段御通知いたします。衆議院は右の通知を受けて、公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き国会の議決を求めるの件は、自然消滅になつた旨、参議院に通知したのであります。ということは、前回の専売裁定の際は、裁定は実施可能であるということになつたのであります。ところが昭和二十七年度、すなわち今補正をしている元の予算の方を見ますと、その裁定は実施されておらないのです。この問題の出し方はちよつとまずいのでありますが、池田大蔵大臣は最初の国鉄の際、共産党の林百郎委員質問に対して、次のような答えをしております。私の私見ともつてすれば、国会が差額を支給すべしという決議をなさつた場合におきまして、国会に法律上の責任はございませんが、政府としては、政治上の予算提出の責任は負わなければならないかと考えております。ただ問題は、国会予算の提出権がないというのは、御承知通りであります。従つて裁定につきまして、どうしても法律的に政府が出さなければならないということでなしに、政治上のものであると私は考えております、と言つておるのです。私この際伺つておきたいのは、河野さんは、占領当時の最もはげしかつた時代の公労法第十六条第二項に対するところの、政府のいわゆる封建的解釈に対し、独立後の今日においても、いささかもこの考えに変化がないかどうか。おそらくその当時もあなたは主計局長をしておられたと思うのですか、これは向井さんは、こういう事例になりますと、ふしぎなことを議論しているものだと思われるかもしれません。しかし、まず河野主計局長に答弁に立つていただいて、それから向井さんが同じよう考えを持つておられるかどうか伺いたい。長年民間におられて、きわめてフランクに物事をお考えなり、また民間給与の実態を御存じり立場から、こういう解釈がいいかどうかを伺いたい。まず河野主計局長に伺いたいと思います。
  214. 河野一之

    河野(一)政府委員 昔から公労法に関する解釈は、かわつていないわけであります。
  215. 向井忠晴

    向井国務大臣 私もただいまの政府委員の返事の通り考えております。
  216. 森山欽司

    森山委員 また向井さんに失礼なことを言うようですが、そういうお答えをすると、大蔵事務当局のロボツト大臣になります。私はもう少し自由な物事のお考え方ができるのじやないかと思いますが、いかがですか。もう少し自由なお考えで御答弁を願えないものかどうか、承りたいと思います。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代   理着席〕
  217. 向井忠晴

    向井国務大臣 私は占領当時のそういう労働問題についての知識を、非常に欠いておるのであります。それで、ただいま当時の封建的な考えを今とどう違うかというような御質問でございますが、この点はこう、あの点はあるというように御返事がしにくいのであります。それで御了承願いたいと思います。
  218. 森山欽司

    森山委員 大体今の御返事に関する限り、決してわからないわけではございません。ですから、私が先ほど多少かみ砕いて申し上げましたように、憲法では罷業権、団体交渉権を保障されておるけれども公共企業体の場合には禁止されておる。従つて一方において、労使間の紛争が起つた場合に、ストライキに訴えることができないかわりに、仲裁裁定委員会というものを設けて、そこで労使それからさらに公益側と三者相談して、両当事者、すなわち労働組合の側と公社側と双方の最終決定としての裁定が出されたというわけでございます。その裁定予算上の観点を入れましても、国会としてのみ得る、あるいは大きくいえば、労働政策の上からのまなければならないという結論が出て参りました場合、またそれがのめるんだというような結論が出て参りました場合に、政府はそれに従うのが当然ではないでしようかということを、私は申し上げておるのでございます。今の私の話の範囲内におきましては、向井さんの御返事は私としては容易であろうかと思うのでお伺いしておるのでございます。いかがでしようか。
  219. 向井忠晴

    向井国務大臣 資金上、予算上できますことは、政府はやるべきものだと思います。
  220. 森山欽司

    森山委員 それでは、大蔵大臣にもちろんお伺いすることでありますが、河野さんにひとつあらたまつてお伺いしたいのですが、なぜ昭和二十七年度の予算に、専売公社の場合に、一万四百円のベースをのめるという返事を政府国会にしておきながら、事実上一万三百八十円と、わずか二十円ばかりの端数を小切つてつたかという、その根性の根源を伺いたい。河野政府委員がしやべります前に、専売公社側から、昭和二十七年度の補正の前の予算に対する金額が、どの程度不足しておるか、小川総務部長あるいは総裁でもけつこうでございますが、ひとつ数字をはつきりしてもらいたい。
  221. 小川潤一

    ○小川説明員 ただいまの御質問の、二十円ばかりベースにいたしまして足らないという問題は、先ほど主計局長から御説明のあつた通り、年末手当並びに超勤その他をくずして仲裁ベースを行うという建前計算いたしましたところが、一万四百円にならずに、一万三百八十円というような、二十円の差が生じたという関係でありまして、この問題は繰返して申しますが、年末手当と超勤をなしくずして行きまして、ちようどかすかすに一万四百円になるところがならなかつたということで、その差が出たのだと思います。
  222. 森山欽司

    森山委員 それは昭和二十六年度のことですか、二十七年度のことですか。
  223. 小川潤一

    ○小川説明員 二十六年度予算のことでございます。
  224. 森山欽司

    森山委員 かりに予算の実施面において、二十六年度にそういう不都合な結果を生じたとしても、少くも政府国会に対するお答えは、「昭和二十六年度政府関係機関予算補正が成立し、年末手当及び超過勤務手当の一部を基準賃金に流用することにより、右裁定の全部を実施し得る見込みが明らかになりましたので、この段御通知いたします。」とあるが、実際には御通知通りつていないわけです。一体その責任はだれが負うのですか。
  225. 小川潤一

    ○小川説明員 二十何円は、御承知ように、いつも予算定員と実員との差が若干あるのは世の中の実情でございますので、幸いそれによつてベースに関する限りにおいては仲裁裁定を実行して来たという状況でございます。
  226. 森山欽司

    森山委員 それじや小川さんにもう一回お伺いしますが、二十七年度はどうなつたのですか。
  227. 小川潤一

    ○小川説明員 二十七年度も同様な状況で、今日まで補正予算のきまるまでやつております。
  228. 森山欽司

    森山委員 昭和二十六年度の予算につきましては、二十六年度の当初予算とその後の補正予算との関係が原案通りつておる。そこで臨機の措置として、いろいろな面でかりに二十何円不足したという点は、問題を残しながらも、一応はそれで済ませるといたしましても、二十七年度の予算で、衆議院においてあの承認を求めるの件を取下げたのは、あの裁定基準がのめるというので取下げたのですから、それは国会に対するペテンじやないでしようか。少くとも二十七年度の当初予算に一万四百円という予算を乗つけて来るのが、大蔵当局としての政治的責任――池田さんのことをもつてしたつて、政治的責任があるじやないですか。本国会補正予算で穴をどうするのかと思うと、その穴も埋めていないのですが、その辺はどうなつているのですか。
  229. 河野一之

    河野(一)政府委員 ベースというものは、昇給の状況、欠員の状況その他でときどきにいろいろ変化するものであります。専売職員三万数千の者にそれをかけ、給与総額範囲内で一万四百円というベースが履行できるという見通しが立ちましたので、補正予算のときにおける一万三百八十四円という数字をあえて変更しなかつたわけであります。現に専売の最近の――と申しましても八月ぐらいでありますが、ベース自体は一万八百九十何円かになつております。
  230. 森山欽司

    森山委員 それじや小川さんに伺いますが、公社の実態としては、昭和二十七年度の予算が、技術的に見まして、これを尊重した上に立つているとあなたは思いますか。
  231. 小川潤一

    ○小川説明員 ベースは、先ほど申しましたように、年末手当と超勤をくずして、一応実行できるという予算で組まれていると思います。ベースに関する限りは実行可能であります。二十何円の差も定員と実員の差でやつております。
  232. 森山欽司

    森山委員 そこでお伺いしますが、今の御答弁は技術的の御答弁だと思いますので、公社としては、昨年の専売裁定を取下げるときの状況に即したような二十七年度予算の組み方であつたかどうかについて、いかがですか。
  233. 小川潤一

    ○小川説明員 おそらく森山委員の御質問は、ベースはいいけれども、夏季手当、年末手当はないのは、その点はどうだということだろうと思いますが、いかがでしようか。     〔橋本(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 森山欽司

    森山委員 昭和二十六年度においては、当初予算補正予算もあつたから、年末手当とか超過勤務手当の一部を予備費から流用するということをしなければ裁定基準はのむことができなかつたので、便宜的措置としてああいうやり方をした。あれは妥協案です。実質は裁定の一万四百円ベースをのむということが基準なんです。そうすると、そういう精神からいつて、一体昭和二十七年度の当初予算において裁定の履行をするよう予算の組み方になつておつたかどうかということを、小川さんに証言を求めているのです。小川説明員 二十七年度も一万四百円を実行できるという建前であります。
  235. 森山欽司

    森山委員 今のお答えはちよつとおかしいのでして、二十七年度に至るまで年末手当及び超過勤務手当の一部を基準賃金に流用するということはあの裁定にうたつてない。あの裁定を取下げたゆえんのものは昭和二十六年度においては、当初予算補正予算と両方のものがすでにきまつたあとであるので、やむを得ずああいうことで臨機の妥協の策をとつたんです。ですから、二十七年度の予算からは、基準賃金としてあくまでも一万四百円ベースで出すのが至当であります。当時は私はその妥協案の中心の一人としてやつたものでありまして、当時の国会の意思もそこにあつたといつて間違いないのであります。当時の国会の意思にかかわらず、何ゆえに大蔵省は一万三百八十円というようなしみつたれた数字を出すに至つたのか。これは今回の裁定についても非常に重要な関係があるわけで、国会の意思であろうとなかろうと、また政府が尊重したと言おうが言うまいが、大蔵当局の考え方一つで何でもできるというようなことは、これは一種の大蔵官僚のフアツシヨ時代です。すでに御承知でありましようけれども、国会議員の予算に対するいろいろな専門的、技術的な問題に対するいわばすきというものを見まして、大蔵官僚は、かつてこれは野田次官か何かのときに款、項、目、節の程度をえらく締めて、そして事実上大蔵省の言いなりほおだいの予算制度に今なつたんです。昔はそんなことはなかつたということを私は聞いておるのであります。さような点から見まして、何ゆえにあれを一万三百八十円にされたか。国会基準賃金は一万四百円ということが当時の精神であつた。それは間違いない。大蔵当局だつてわかつておるはずです。それを一万三百八十円という数字を出した理由を、向井さんはその当時まだおいでにならなかつたので、主計局長にひとつ伺いたいと思います。
  236. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは少し誤解がおありになるのじやないかと思います。二十六年度の補正予算については三百八十円という端数の問題もあるかも存じませんが、二十七年度の本予算につきましては、これはある程度の昇給を見て組んであるのでありまして、現に八月の給与はたしか一万八百九十五円というよう数字なつておるので、おつしやるようなことは当らないと思います。これを組んだ時分から言うと、一万四百円よりむしろ給与がよくなつておるというふうな気がするのであります。
  237. 森山欽司

    森山委員 それは違うと思うのです。小川さんに伺うのですが、今ので間違いないですか。一万四百円ベースという線から見て、二十七年度の予算上の問題が、そういう線になつておるのかどうか。
  238. 小川潤一

    ○小川説明員 ベースに関する限りは、主計局長の言われる通り、間違いありません。
  239. 森山欽司

    森山委員 それは昇給や何かも入れてですか。そうすると、私がお伺いしたいのは、昨日でありましたか、一昨日でありましたか、労働組合の委員長が、昇給を入れれば一万四百円をさらに上まわる数字が出るにかかわらず、それ以下の数字なつておるというような証言は、あれはでたらめなのでしようか。
  240. 小川潤一

    ○小川説明員 お答え申し上げます。計算基礎といたしましては、先ほど来申し上げましたような、二十円足らず足りないというようなものがもとになつておりますけれども、それに一定の昇給率というものが、かかつておりますので、主計局長の言われることも真実だと思います。きのうの証言もその通りでございます。主計局はいつもベースの計算には基本をきめられまして、その上に人間を見まして昇給率というものを加算して行かれるものですから、ベースは私今ここにはつきり記憶しておりませんが、割算をすれば一万三百八十円を上まわつた計算になります。但し基本としては、さつき言いました二十円足らずが基礎なつ計算ができております。
  241. 森山欽司

    森山委員 小川さんにもう一言だけ伺いますが、そういう主計局式の計算で公社当局は満足しておるわけですか。
  242. 小川潤一

    ○小川説明員 ベースに関する限りはやむを得ないものと見ております。
  243. 森山欽司

    森山委員 そこでお伺いしたいのでありますが、今回の仲裁裁定に対する予算の組み方を見てみますと、完全実施というようなことで問題になつておるのでありますが、何ゆえにこういう裁定を実施するということについて大蔵当局が渋られるのか。ひとつその理由を伺いたいと思うのでございます。
  244. 河野一之

    河野(一)政府委員 私ども裁定を十分に尊重いたして参つたつもりであります。ただ予算上、資金上の面におきまして不可能であると考えたのであります。
  245. 森山欽司

    森山委員 予算上、資金上の問題がありますけれども、あなたが、たとえば資金上と言われても専売なんかの場合では、これは少くとも財源はあり得るわけですね。これはたとえばピース二億本をよけい売上げできる見込みであるというような公社側のお考えが、すでに労働委員会あたりで出ておるのです。そうするとそういうような線についてあなた方はだめだ、そういうものはできないのだ、こう言うのですが、一体どういうわけで財源がないと言うのか。そうしてあるものをないというその気持は、一体どんな気持が根本になつておるのか、伺いたい。
  246. 太田正孝

    太田委員長 森山君に申し上げますが、その問題は先ほど繰返し繰返し財源論が出ましたので、簡潔にお願いいたします。
  247. 森山欽司

    森山委員 簡潔にお聞きします。
  248. 河野一之

    河野(一)政府委員 あるものがないというのではございませんで、本年度の補正予算におきまして、タバコの売れ行きが二十六億本――本年度当初予算が、前年度にたしか五十億本の増を見ております。さらに補正において二十六億本の増を見ておるのでありまして、さらにより以上の増加ということは、今後の情勢はもちろんわかりませんが、ただいまのところではその程度の売れ行きにとどまるのではないか、こう考えております。
  249. 森山欽司

    森山委員 この財源論は非常に見解相違と申しますか、河野さんがもう少し検討するといろいろ問題があると思いますが、この程度にしておきます。あなた方の根本に公共企業体の職員の給与公務員給与のバランスというようなことを考えておるのじやありませんか。
  250. 河野一之

    河野(一)政府委員 必ずしも公務員とのバランスを考えておるわけではございません。公労法の精神にのつとつてつております。
  251. 森山欽司

    森山委員 そういう非常に貴重な御発言を得たのでございますが、日本専売公社法及び日本国有鉄道法における職員の給与算定の仕方としては、国家公務員、それから民間給与を参酌してという言葉を使つております。国家公務員法にも同じような言葉を使つております。そういう誤解を避けるために、今後国家公務員給与との比較の問題、この比較というような言葉を削除するにはあなたは御異存はないかどうか。
  252. 河野一之

    河野(一)政府委員 政府委員の今申し上げましたのは、裁定を見る上において、公務員がどうであるからどうだというよう考え方を、いたしておるのではないということを申し上げておるのであります。ただ給与準則にございますように、民間生計費、あるいは国家公務員ということは法律に書いてあるのでありまして、従つて給与準則をつくる上においては、そういう考え方をしなければならぬということについて、私は考え方をかえておるわけではございません。
  253. 森山欽司

    森山委員 それでは大臣にお伺いいたします。専売公社の職員の給与一般国家公務員給与というものの間に、均衡というものがいるものと思つておるかどうか。それから公共企業体の各個別々の場合、国鉄専売というようなものはやはり各企業体の経営能力の立場からその給与は割出さるべきものと思つておるかどうか。従つて差が出て来ると思いますが、そういう点についての基本構想を承りたい。
  254. 向井忠晴

    向井国務大臣 仕事の性質上、もうけがある、あるいは損をするとかいうことのできますのは、やむを得ないと思います。これをまつたく無視してと申しますか、あるいはそういう状態を考えてやるとか、そういうことはただいまここでお答えはいたしにくいのでございますが、できるだけ公平なやり方をしたいというふうに思つております。
  255. 森山欽司

    森山委員 時間もなくなつて参りましたので、今のお答えでは不満足でありますがいずれまた別の機会がありますから、そこでやりたいと思います。  最後に一括してお尋ねをいたします。予算総則の上には、公共企業体等に関する給与総額というものがございますが、そういう給与総額というよう考え方を今後お捨てになるつもりがあるかどうか。それからまた今度の専売裁定の中で業績賞与ということが言われておりますが、これはすでに三年前の専売裁定の場合にも出ております。そういうものを実施するについてどういうお考えを持つておるか。これは予算上の問題と、法律改正を伴いますので、それについての御見解を承りたい。それから国鉄経理は、このままで行きますと、来年、再来年には非常に重要な段階になる。この国鉄経理という問題については、大蔵当局としても本腰に取組んで行くつもりがあるかどうか、承りたい。
  256. 向井忠晴

    向井国務大臣 初めにお話の業績賞与ということがございましたが、これは私どもよく存じております。それから鉄道につきましてはもちろんおつしやる通り、これから取組んで改善ということをやつて行きたいと思います。
  257. 森山欽司

    森山委員 その業績賞与をやる場合に、将来の問題といたしまして、予算上の問題とか、あるいは法律改正の問題がありますが、そういう点も十分御考慮なさるというのでありますね。
  258. 向井忠晴

    向井国務大臣 賞与というものにつきましては、今のやり方で悪いところがありましたならば、それは直して行かなければならぬと思つております。それから給与総額を動かすということは、法律上できないものと存じます。それを動かす考えはございません。
  259. 森山欽司

    森山委員 私がお伺いしておるのは、予算の中に、給与総額というので、公共企業体関係の職員に払う給与わくをきめておる。そういうわくをきめることはやめたらどうかということなのでございます。
  260. 向井忠晴

    向井国務大臣 それは法律を改正しないといけないものだと思うのであります。それを改正する考えはただいま持つておりません。
  261. 森山欽司

    森山委員 そうすると今までの向井大蔵大臣の御答弁を承りますと、大体うしろに参謀総長がついておつて、そのマイクロフオンのようお答えが大部分であります。そうでないお答えももちろんございますが、それですと公共企業における十六条二項は、池田大蔵大臣時代とかわらない。十六条二項に関する限りは死んでおるのだということと同じことになつてしまうのでしようか、承りたい。池田さんははつきり予算委員会の席上で、公労法十六条二項に関する限りは死んでいるものと思いますということを言つたのですが、あなたも同じよう考えを持つておるのでしようか、伺いたい。
  262. 向井忠晴

    向井国務大臣 私は死んでいるとは考えないのであります。(笑声)
  263. 森山欽司

    森山委員 十六条二項が生きているか死んでいるかという抽象論ではいけないのでありまして、先ほども申し上げましたように、憲法においては罷業権というものを一応認めておる。ところが公共企業体については、その罷業権というものを一応認めない、禁止しております。それで一方において仲裁裁定というものによつて、労資の紛争を解決し、その仲裁裁定というものは両当事者に対する最終決定だということになつているのです。しかし公共企業体が今の範囲内においていろいろ予算の上に縛られて来る。その意味国会に判断を求めて参ります。判断を求められた国会としては、国会としてその判断を求められますまでに、常にあらゆる場合に、国会に判断を求めなければならないように、大体においてこれはなつておるわけであります。というのは給与総額というわくもありますから、常にこれは予算上不可能なわけです。何でもかでも少くも金に関する問題は、まつすぐに参りますと、すべてこれは予算上不可能だということで、国会に参つてしまう。そうすると、これで第一番に予算上可能な場合というのが、給与その他金に関係のある紛争の場合には、非常に解決される道が少くなつて来る。そうとて今度は政府の封建的な解釈によりますと、国会がこれはのむべしと承認したところで、予算の提出権は政府にあるのだから、予算に対する、予算措置をとる法律上の責任はない。道義上政治的な責任があるにすぎない、こういうことですね。だから労使間の紛争が起きて仲裁裁定に持ち込んで行く、持ち込んで行つても、大部分の問題はすぐこれは国会に来てしまいます。今度は国会に参りますと、国会でもつてこれをやつたらいいだろうといつても、政府は法律上やらなくてもいい、こういう解釈に今なつております。それには今申しましたような、給与総額というようわくがはめられておるということも一つの理由なつておるので、池田さんは、そういう点から考えて、これは公共企業体等労働関係法十六条第二項は私は死んでおると思うと、たしか十三国会予算委員会の席上、十六条に関する限り死んでいると思うというようなことをはつきり放言しておるのです。あの方は放言なさる方ですが、向井さんはそんな放言はされないと思う。そういうような点について、同じよう考えを持つておるのか、要するにそれは死んでいるということでありますから、その死んでいるのであるか、生きているのであるかということを伺いたいのであります。
  264. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。一体政府というものは、今は金を出せ出せと言われておりますが、ほんとうは出すなと言われる建前のものだつたろうと思うのでございます。それで法律でもつて金を締められて、かつてなまねのできないようなつていた時代があつたのだと思います。そこで今はよけい出さなければならないという点で自繩自縛が来ておるという状態と思うのでございます。今おつしやる十六条第二項ですか、それが私は死んでいるとは思いません。やはり政府は将来ある時期においては、うんとかつてに使える金でも用意しておいて、そうしてそういう場合が起つたら、理由のある限り出せるようなつたらいいと思うのでございますが、今のところではどうにもそれはいたし方がないと思います。
  265. 森山欽司

    森山委員 時間がないので、まことに恐縮ですが、大臣の今のお答えでは、自分で殺しておいて、これは生きているのだ、生きているのだ、こういうことを言つているわけですな。しかし運用の実態においては、死んでいるから、こういうような議論が出るわけなんです。あなたは財政立場からそう見るのですが、労働政策の立場から見て――労働大臣はおられませんが、政務次官はおられるようですから、一体そんな解釈が労働政策の立場から好ましいかどうかということを、ひとつ政務次官に伺いたい。そういう解釈が好ましいかどうか。要するにあなたは、好ましいという御返事が出ますと、これは重大な事態が生ずると思うのでありますが、好ましいかどうか。
  266. 福田一

    福田政府委員 お答えをいたしますが、そういうことが好ましいというふうに言うべきものではないと、もちろん私も考えております。しかしながら大蔵大臣が答弁されました通り、やはりこの法律が生きているという意味は、尊重はするけれども、いろいろの財政上の事情から考えてみて、どうしてもそれができないという場合にはこれはやむを得ないのではなかろうか。そういう面も、労働者の福祉の面も十分考えてみて、またその他の条件もいろいろ勘案してみて、その上でどうしてもできないという場合に、この法律は生きておるものだと私は考えておるわけであります。
  267. 森山欽司

    森山委員 あなたの御返事を聞いておると、好ましいとは言わないが、しかたがないのだ、こういう御返事なんですが、そもそも公労法の十六条二項か最初できたときには、予算総則というようわくもなかつたわけであります。ところが実際やつてみると、予算総則というわくでもきめないと、というので、特に大蔵省考え方、そうしてその裏にはもちろん当時の総司令部というものがあつたわけであります。占領政策のいわば名残りであつたわけです。そういうよう財政上の占領政策的な名残りというものは、この独立以後においてはもう少し自由にしたらいいのじやないかと思うのであります。従つてこの独立以後におけるところのわが国の労働政策としては、依然として、これはしかたがないといつて大蔵大臣財政的な立場を強く主張されるのはよくわかるけれども、労働省当局がそういうような御返事をなされるということはいかがかと思われますが、いかがでしようか。
  268. 福田一

    福田政府委員 お答えをいたします。あなたはこういう問題については非常に御研究になつておりまして、その御熱意のほどは私もよくわかるのであります。しかしながら私といたしましては、これ以上の御答弁はいたしかねると思います。
  269. 森山欽司

    森山委員 もう一言だけ伺いますが、私といたしましてはこれ以上の御返事はできかねるというような御返事は、あなたも大臣並にそこに並んでおるのですから、やはりこの際もう少しはつきりした御返事をいただきたいと思うのです。今のままだつたら、吉田内閣には一種の財政政策はあるかもしれないが、どこに労働政策があるかといいたくなる。あつたら私は出して見せてもらいたい。何もないのです。今の状態では、要するに財政が苦しいから、財政が苦しいからといつて、法律の趣旨からいえば尊重しなければならない最低限度であるといつてもいいところの、仲裁裁定さえ認めないではないかということです。確かに財政上の勧点から見れば、当面は向井大蔵大臣でありますが、裏には河野主計局長がおる。参謀総長がおる。この参謀総長の言いなりほうだいになつている。私はどうもそういう点は、財政的な見地からいえば、そういう考えも一つの考えかもしれぬけれども、これは大きく国の労働政策のミニマムの線であります。そのミニマムの線くらいは、私は守つてもいいのじやないかと思うのであります。そういう観点から、向井さんは第一そういう点をお考えになられたことがあるかどうか(「つまらない質問だ」と呼ぶ者あり)まあそういうことはつまらない質問かもしれませんけれども、非常に重要な質問であります。このままで参りますと、おそらくそういうようなやじを飛ばされる方々も、情勢のいかんによつては、あわてられる事態が生ずるかもしれないような事態でありますので、この際もう一度はつきり承りたいと思うのであります。
  270. 向井忠晴

    向井国務大臣 そういう問題は考えてはおります。
  271. 福田一

    福田政府委員 重ねて申し上げますが、どんなに子供に何かをつくつてやりたいと思つても、ない場合はいたし方ないという、こういう気持もお考えになり――これは親心がないとは言えないと思う、親は何とかして子供のためにしてやりたいと思つておりましても、実際問題としてそういうことができない場合もあろうかと思います。この程度で御了承願いたいと思います。
  272. 太田正孝

    太田委員長 賃金改訂問題に関する質疑はこれにて終りまして、午後三時から再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後二時三十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十八分開議
  273. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。櫻内義雄君。
  274. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 初めに大蔵大臣にお願いをいたしておきますが、私が本日御質問申し上げますことは、先般の大臣の施政方針の演説、及び当委員会における御説明、またその後におきます財政問題を主として質問いたしました北村、福田河野の三委員の方々に対する大臣の御答弁に関連をいたしました質問が主でございます。従いまして、でき得る限り懇切丁寧に御答弁のほどをお願いしたいのでございます。と申し上げますのは、大臣のそれらの御説明や、あるいは御答弁、また記者団会見等で御表明になりました御所見の中に、若干の食い違いがございましたり、また私どもの納得行きかねる点がございますので、それらを主として御質問を申し上げる次第でございます。  まず最初に、大蔵大臣は北村委員質問に答えまして、現在の経済状況につきましてこういうことを言われておるのでございます。「経済現状は、戦後の悪性インフレ収束時に次いでの朝鮮動乱後の世界的情勢に対処しなければならなかつた時代に比べますと、一応安定を示しております。」こういうことで、経済現状を安定しておるという見地にお立ちになつておられるわけでございます。しかるにこの補正予算が提出されました現在の経済情勢というものは、私ども見解をもつていたしますならば、決して安定しておるとは思えないのでございます。また政府から提出されておりますところの資料すなわち経済審議庁の観測によりましても、今後いろいろ考えなければならない諸条件があると思うのでございます。たとえば投資活動につきましては一般産業は現在が頂点で、退潮傾向が強い、公共事業や政府事業は今後支払いの面では増加しても、実質的な増加は見られない、こういうふうに申しております。あるいは需要について検討いたしますと、特需の関係につきましては昨年度月平均三千万ドルのものが、現在は月二千万ドル平均に下つておる、あるいは防衛関係の需要、これは大臣の御説明によりまして、防衛支出金の方は二百二十一億円大体残つております。安全保障諸費の方は五百十五億円残つておりますが、これが今後の活発な需要にならずに、むしろ明年度に持ち越されるのではないかと思うのであります。あるいは鉱工業生産指数の総合をひもといてみましても頭打ちの感でございます。また小売物価指数のごときは、最近三箇月の状況は年初と比較いたしまして著しく下つておるのであります。こういうようなことを考えて行きますときに、大蔵大臣の現在の経済情勢についてのお考え方は、北村委員お答えなつたこととは違うのではないか、かように思うのでございますが、一応その辺の御所見をまず承りたいと思います。
  275. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。おつしやる通り、安定と私が申しましたのは、決して繁昌しておるのではない。私は北村さんの御質問を承りましてむしろもつともなお話だと思いました次第でございます。ですからこれからますますよくなるから安心していいというよう考えは決して持つておりません。むしろ今まで割合に上昇して来ておつた景気が停滞ということは免れない、その停滞の結果はあるいは悪い現象も起るかというふうにおそれております。
  276. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ただいまの御説明によりますと、北村委員へのお答えとは大分違つておる、現状の把握については相当その当時とは御心境が違うように思うのであります。しかし私どもから考えますならば、現在繊維、鉄鋼、ソーダ、肥料、非鉄金属などの部門に見られますところの輸出や国内需要の不活発で相場は下り、在庫はふえて、さらに在庫が相場を圧迫するというような状況を見ますと、安定をしておるとか、あるいは今後それほど不況にはならないのだというようなそういうお考え方よりも、むしろ現在すでに非常な不況が来ているのだというふうに感ずるのでございます。しかも在庫を減らすために操短をするということになりますと、コストが高くなりまして収益は減るという状況で、企業の経営難は非常に深刻なものがございます。これは日々の新聞を大臣も、ごらんになつて、十分御承知であろうと思うのであります。人員整理や経営規模の縮小あるいは問屋の倒産が非常に起つておるという現状でございますが、それでもなおただいま御答弁のようなお考え方をお持ちなのでありましようか。
  277. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。私はただいま心配があるということは申し上げましたが、別に非常に景気がいいあるいは今後まつたく安全なのだという考えは持つておらないのでございます。
  278. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 私は大臣が、現在すでに経済界におきましては不況にあつて、非常な困難な問題が山積しておるとい御認識を持つていただきたいということからいたしまして今一、二の点と御指摘申し上げておるのでございます。時に中小企業の経営不振は深刻でございまして、これまた連日新聞の報道しておるところでございます。しかるに今回の補正予算は、この提出されておる時期というものを大蔵大臣にお考え願いますならば、これは相当政治的な考慮が払われなければならないと思うのであります。政府においてこの中小企業あるいは現在の不況等に多少なりともお考えつたと見らるべき点は、預金部資金の国民金融公庫への二十億円の出資あるいは一般会計より商工中金への二十億円、農林漁業資金融通特別会計へ五億円、中小漁業融資保証保険特別会計五億円というよう財政投資の面で五十億円程度の支出をされておるのでございます。この十二月にこの補正予算が出されておるということは、こういう時期に対する政治的な考え方というものが、大蔵大臣には欠けておつたのではないかということを考えるのでありますが、いかがでありましようか。
  279. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。補正予算を組みますときの数字は今御指摘の通りでございますが、そのほかに年末に向いまして中小企業の金融について、中小企業の母体である、たとえば紡績とかあるいは主要なる工業の経営者に対して、銀行から融資をしてもらう、それから日本銀行にも、中小企業の方面に向つての金融の方法を講じてもらうようにそれぞれ話をいたしまして、それが実行されるというふうに私は思つております。
  280. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ただいまの大臣の御答弁は、けさ新聞紙上で拝見いたしましたが、小笠原通産大臣が国庫余裕金の預託七十億円を大蔵省に交渉しておるということについておつしやつておられるのでございますか。
  281. 向井忠晴

    向井国務大臣 その新聞は私は見ませんでした、しかしそのほかに私の今申し上げましたような金融方法考えまして、それはそれぞれ金融機関にお頼みをしまして、これは実行に移ると私は思つております。
  282. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ただいまの大臣のお考え方に、私も首肯する点があるのであります。繊維や鉄鋼産業の年末資金繰りは、容易ならぬものがあると思います。それが一部産業にとどまるだけではなくて、非常に影響するところが大きいと思うのでございまして、せつかくの大臣のお言葉でございますので、これら非常な不況にあえいでおる産業に対しての特段の金融措置をお願いしたいと思います。なおせつかくけさ新聞紙上で拝見しておることでございまして、国庫余裕金の預託七十億円の実現は、ぜひしていただきたいと思いますが、いかがなものでございましようか。
  283. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまのことはまだ話を聞いておりませんが、できるようなことはぜひいたしたいと思つております。
  284. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 なおこの機会にお聞きしておきたいのでありますが、施政方針の演説に際しましては、大臣の御説明は事務的な点が多かつたのであります。いささか当時落胆をいたしたのでございます。しかしながら、その最後に中小企業の金融の積極化につきましてかるく触れておられました。その中で、私どもがこの施政方針の演説だけでは十分承知のできない点の二、三がございますので、これをお尋ねしておきたいと思うのでございます。  それは中小企業信用保険制度の改善ということに触れられておるのでございます。あるいは信用保証協会の育成強化ということを御説明になつておられましたが、この具体的な点につきまして、どういうお考えを持つておられるか、御説明をいただきたい。
  285. 向井忠晴

    向井国務大臣 御返事いたします。信用保証協会の育成強化ということは、中小企業者が融資を受けようとする場合の最大の支障である信用力の不足を補充して、そうして中小金融の円滑化をはかろう、そういう意味でございますが、この育成強化につきましては今後において、この中小企業信用保険制度の改正との関連におきまして育成強化をはかりたい、目下検討中でございます。協会の根拠法が単に民法の公益法人の規定にすぎませんので、この根拠法の改正につきましても研究をいたしたいと存じます。それから中小企業信用保険法の改正ですが、中小企業信用保険制度につきましては、さきに付保し得る貸付金の額を引上げ、また新たに信用保証協会を相手方とする保険を加えるとかいうふうな一部改訂を行いましたのを、利用率はだんだん増加して来ておりますが、中小金融の現況にかんがみまして、さらにその活用をはかる必要がありますので、中小企業者の範囲、付保し得る貸付金の額及び保険料率についてそれぞれ検討を加えて、その改善をはかつて中小金融の円滑化に資したいというふうに考えます。
  286. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 なおこれは他の委員会で、大蔵大臣であつたかあるいは通産大臣からであつたか、中小企業融資の特別会計を設定するということが言われておりますが、これは事実でございますか。
  287. 向井忠晴

    向井国務大臣 その点はただいま検討中でございまして、いずれ御返事ができるようになるだろうと思います。
  288. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 次にお尋ねしたいのは、今後の日本の産業のあり方と申しますか、産業構成について大臣の考え方をお聞きしたいのであります。戦後における産業構成が、軽工業より重化学工業にかわりつつあるということは明らかであろうと思います。政府の発表した資料によりましても、金属機械、鉱工業、化学、こういうものの指数は、基準年度に対しまして百七、八十パーセントになつておるものもあるし、あるいは一・三%くらいまで伸びております。しかしながら繊維や印刷製本、ゴム、皮革、食料及びタバコというようなものは、基準年度よりも非常に下まわつておるのでございます。しかしながらこの重化学工業が戦時中軍事的な需要に結び、国家の保護のもとに育成され、戦後は朝鮮動乱後に顕著なる発達を遂げたものであろうと思うのであります。これらの重化学工業は巨額の投下資本を有し、資本回転率は低く、製品価格は対外的に見まして割高であるということは御承知通りでございます。しかるに、この軽工業方面を検討してみますと、繊維工業のごときは、戦後復興の度は、なるほどただいま申し上げた重化学工業に比較して非常に劣つてはおります。しかしながら、貿易の構成の上では大きな比重を占めておるのでございます。といつて、それでは今後の見通しにおきましてどうかというと、アジア諸国の軽工業化という事情考えますと、大きな期待はかけられないわけでございます。この日本の将来の産業構成というものが、重化学工業へ移つて行くのがいいのか、それとも現に貿易の中で占めている比重の大きい軽工業を主として考えて行くべきであるのかという点につきまして、この辺は大蔵大臣の非常に明るい点でございますので、ひとつお尋ねしたい思います。
  289. 向井忠晴

    向井国務大臣 櫻内さんのおつしやいますように、重化学工業に依存するとか、あるいはそれにもつと力を入れて大きくして行くというようなことは、実際問題としてはあるいは逆であるかと私は思います。軽工業――繊維工業とかその他を、主として東南アジアとかアフリカとか、ああいうヨーロツパの国と接触点になるような地方に、こちらの日本の仕事の合理化及び勤勉というようなことで販路を拡張しますとか、あるいはその方面へ大工業でない中小工業の振興をはかつて、そうして貿易面はもちろんですが、国内の需要に対しても割安ないいものを供給できるようにして行くということが、将来日本のとるべき道と思つております。そうして、御説の通り、その日本のものを売ります先が、自分から工業化して行つて販路がだんだんと縮小されるとか、あるいは、減りませんでも、需要のふえて行き方が鈍いというようなことは恐れるところでございます。しかしそれにはやはり相当な年月のかかることでありまして、今そういうことが起るといつて心配をして手を縮めておるべきではないと考えます。
  290. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 大臣のお見通しは了承いたしました。ところで、鉄鋼類の輸出につきましては、現在非常に困難を来しておるのであります。しかるに――これも施政方針演説で大臣が触れられたのでありますが、産業の合理化、特に設備、技術の近代化を促進するということを強調せられておるのでございます。これはおそらく重化学工業の発展に対するお考えではないかと思いますが、この産業の合理化、あるいは設備、技術の近代化について、何か具体策をお持ちになつて触れられているのかどうか、この辺の御説明をお願いしたい。
  291. 向井忠晴

    向井国務大臣 工業を振興させるために一番大事なことは動力源の拡張、あるいは改善ということだろうと思います。その点につきましては、やはり日本では水力電気を活用して行くということが大切なことでございます。その次に石炭を安く掘る、それにはやはり設備を改善しなければならない。それからまた工場あたりで石炭が割に高いとか、あるいは供給に不十分な点もありますので、重油をもつて動力源とするように設備を改善することも、一つの方法であろうと思います。鉄鋼の設備というふうなことは、これも改良すればよろしいでしようが、鉄鋼については原料を安く手に入れるという点が、一番研究を要する点と思います。
  292. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 なおもう一つ、施政方針の演説で不明な点がございます。それは蓄積外貨資金の積極的な活用をはかる施策を進める、そうしてただいま申した、産業の合理化、特に設備の近代化を促進し、これによつて将来の発展への基礎を固めるといわれておりますが、この蓄積外貨資金の活用というものは、どの程度に、どういうふうにして、あるいはどの方面にされる御意図を持つておられるのでございますか。
  293. 向井忠晴

    向井国務大臣 外貨資金を使いますのは、主としてやはり機械設備の合理化、機械設備をよくするというふうな意味で、その外貨を活用して行きたい。それから技術の導入というふうなことも、やはり外貨活用の道でございます。そういう、主として二つの点で日本の産業を助ける上の基礎的の外貨の活用ということが行われるのだろうと思います。
  294. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 次に大蔵大臣財政の基本方針について御質問申し上げたいのであります。それは今度の補正予算を検討して参りますときに、大蔵大臣が主張せられておる均衡財政は、これが堅持されるのか、あるいは是正をされるのかという点について、疑問の点があるのであります。私どもの見方からいたしますと、おそらく明年度の予算編成に際しては、均衡財政というものは是正される方向にあるのではないかと、かよう考えられるのでございます。本会議におきましては、「今後における財政金融政策の基調は、健全財政及び通貨安定の方針を堅持しつつ、財政及び金融を通じて経済施策の弾力ある運用をはかり、」ということを言われております。北村委員質問に対しまして、こういうことが触れられておるのであります。「今日回復と安定をとりもどした国民経済を堅実に育成して参りますには、どうしても一部論者の唱えるようなインフレ政策は、この際採用するものではないと存じます。」かように言つておられます。しかるに補正予算を通じて見ますと、次のような傾向を認めるのであります。一般会計のしわを資金運用部に寄せられまして、地方起債のわくを百二十億円広げた、あるいは国民金融公庫へ二十億円出す、鉄道新線敷設に二十億円出す、こういうような支出を見ておるのでございますが、これはほんの一つの徴候程度ではございますけれども、今後向井財政が総合的均衡財政を是正しまして積極財政へ転換して行くのではないかということは、新聞論調におきましても言われておる点でございますが、この点につきまして大蔵大臣お答えを願いたいと思います。
  295. 向井忠晴

    向井国務大臣 新聞で積極財政と書きましたかは存じませんが、均衡財政という言葉を用いますのは、なるべく出る金は入る金をもつてまかなつて行きたい。それからかりに一般予算が均衡がとれませんでも、財政投資というような点で――入つた金よりもよけいの金が出るのは、貸金にしましても使う金にしましても同じことで、出るということはいいことではないと思いますが、しかし今日のような状態では、そうそうきゆうくつにやつてつては、あるいは経済上日本は立往生するようなおそれがある。そこで幾分の弾力を持つて、しかしだらしなく金を使うと、その結果が必ずインフレにもなりましようし、それから外国からの信用も失うでしようし、物価の安定をはかる上からいつても、円のドルに対する為替レートも今の比率を動かすことはできませんし、かたがたいわゆる積極財政――これはどういう意味ですか精密に判定はできないのですが、積極的に金を使つて行くというようなことは、決してやれないと存じております。それで、無方針な使い方なんかはむろんしないわけですが、必要のある場合の弾力を持つということは、私は決してあなたが御心配になるような、均衡を失つた財政になるとは考えません。
  296. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 なかなか御苦心の模様の御答弁でございますが、財政投資について、それでは少し詳細にお聞きしたいのであります。これはやはり大臣の予算委員会の冒頭の説明の際に申されたことでありますが、「特別会計及び政府関係機関により予定されております各種の財政投資の財源調達につきましても、過去に蓄積された資金の活用をはかることとした」、かように申されておるのでございます。しかるところ十一月二十一日の閣議後の記者会見では、一般特別各会計を通じ、また年度を区切つての総合均衡を維持する、従つて過失の財政資金の蓄積を簡単に使うわけには行かない。このように、片方は記者会見での大臣の御説明でございますから、そう私も強く矛盾しておるとは申さないのでありますが、委員会におきましては、過去の蓄積された資金の活用をはかるということを申し、また他の面におきましては、蓄積を簡単に使うわけに行かない、こういうふうに言われておるのであります。この点はひとつ明快にしていただきたいのでございますが、ただいまも御指摘申し上げたように、補正予算を通じて見られます方針は、平たくいえば、占領中はあまり財政をきゆうくつにした。これから少し政府のさいふのひもをゆるめようというようなお気持ではないか。今の御答弁でもそれが察せられるのでございますが、この財政投資というのは、本年度では総額三千百六十七億円、うち補正増が六百五十二億円になつておるのでございますが、もう一度今後の財政投資についての大臣のお考え方を、ひとつお聞きしたいのであります。
  297. 向井忠晴

    向井国務大臣 今後の財政投資は、ただいまおつしやつた、新聞記者に言つたように、簡単にはできないということはもちろんでございます。過去の蓄積というものを後生大事にかかえておつたからといつて、これは何にもならないと思います。必要な場合、適当な額を放出して行きたいと考えております。
  298. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 もう少し財政投資でつつ込んでお聞きしたいのでありますが、先般北村委員よりも御指摘申し上げました通りに、この財政投資の問題は非常に重要であつて、かつ微妙であろうと思います。日本経済が現在不況で、輸出は年間十一億四、五千万ドルより見込まれないという見通しに立つておる。景気をよくしようとするためには、大いに減税を行つて、購買力を増大させて、国内消費を盛んにすべき方策がここに一つある。しかし一面輸出不振に対応するために、企業の合理化なり、国民に耐乏を要求するという方策をとる。しかしこの方策をとれば、ある期間景気が低調となつて、会社の経営は悪化するというように、今の不況あるいは輸出の不振というところから考えられる二つの方向があるわけであります。その場合に、財政投資の活用の仕方というものが、非常に微妙であり重要だ、かように思うのであります。これは別に信用すべき根拠ではないのでありますが、財政投資に対する大臣の構想として、こういうことが書かれておるのであります。民間投資のベースに乗りにくい長期資金、あるいは中小企業、農林漁業金融などに限定して補助的、調整的役割を果すということにしたい。というよう財政投資についての御見解を述べられたような記事が見られるのでありますが、この辺の御見解を承りたいと思います。
  299. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまお話のように、二つ矛盾した状態に日本経済は置かれておるのでございます。しかし景気をよくして購買力を増して、そして産業の振興をはかるといいましても、景気ということは微妙なものでございまして、いわゆる景気のうしろには濫費というようなこともありますし、それで景気をそうひどくよくしませんで、産業が急速に発達すればいいですが、それは望めないので、徐々によくなつて行くようにして行きたい。そういう考えを持ちますと、最後におつしやいましたように、短期の信用では間に合わないものに、長期の信用を与える、あるいは中小企業――中小企業といいましても、いろいろの産業の中小企業がございまして、農林漁業とかいうものも産業の重要な部面でありますから、そういう方面に適当な方法で投資をして行けば、それはあるいは手間がとれるかもしれませんが、割合に早く効果をもたらすのではないか、そう考えております。
  300. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 大体大臣の御方針は了承いたしましたが、次にお尋ねしたいのは、資本蓄積についてでございます。先般河野委員に対しましてのお答えが、なかなかまわりくどくて十分把握ができないのでありますが、速記録を読み上げてみますと、占領軍がいるときに割合に日本の状態をいいように言い、大体非常に苦しい立場にいるということを、日本人に知らせるという点の努力が今まで足りなかつたと思う。ですからどうも金の使い方が荒つぽい人が多い。それから貯蓄などはつまらないというような気分があつたりして、その貯蓄の不十分な点などが、日本の産業の資本を形成する上に非常なひけ目になつていないか。こう御答弁になつておるのであります。この御答弁を見ますときに、なるほど資本の蓄積については、あなたも強調せられておるわけでありますが、この言葉の中から察するに、政府の施策のよろしきを得なかつたから、資本の蓄積が不十分だつたというお考えよりも、どうも国民に対する不信感の方が強く出ているように思えるのであります。とすれば、池田大蔵大臣がとられましたように、資本蓄積の一つの方途として徴税を強化する。税金を取立てるのは、いわばこれは強制貯蓄なんだというよう考え方があなたにもあるのではないか、というように感ぜざるを得ないのでありますが、いかがでありましようか。
  301. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。徴税を強化しても、とても一般の人の貯蓄心などは出るものではございません。税が軽ければ貯蓄する考えも出て来ると思います。従つて徴税の強化ということは、私は考えておりません。それから政府の施策が悪いから人が金をためない、みんなの心がけが悪いから金がたまらないというふうな底意は、私は持つておりません。やはり幾らかでも個人並びに法人が持つている金を大切にするということが、結果においてはやはり国を助けるものであると私は確信をしております。
  302. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 それで安心するわけでありますが、いまさら御指摘するまでもないのでありますけれども、戦後の資本蓄積は、主として他人資本によつて行われておるということは、これは数字で明らかであります。昨年度の状況を見ますと、資本の構成中、他人資本は戦前の三九%に比較いたしまして、大体六九%になつております。また所要資金の自己調達力は、戦前の八六%に対して、二十六年度は二六%でございます。また他人資本中、金融機関への依存度は高いのでありますが、政府資金に対しては、戦前の〇・九%が、昨年度は七・八%になつておるというような資本蓄積の状況でございますが、ただいま大臣の言われたように、私は当然資本蓄積は、民間の盛り上る力でやらなければならないと思いますが、そういう見地からいたしますと、現在すでに明年度の税制改革をお考えなつておると思うのでございますが、それに関連いたしまして、特別償却の範囲の拡大であるとか、あるいは現行の価格変動準備金制度を改め、価格上昇のときに設定し、価格下落のときに取消し得るような制度にすること、あるいは貸倒準備金制度の限度引上げ、こういうような点につきまして、何らか大臣としてお考えを持つておられるのではないかと思うのでありますが、どうですか。
  303. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいま御列挙になりましたような点を、できるだけ実行に移したいと考えております。
  304. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 ただいま税金の問題に触れて言つたわけでありますが、ここでこれは大蔵大臣には関係がないといえば言えるのでありますが、自由党が選挙に際しまして、池田大蔵大臣の公約であるか、あるいは党としての公約であるか、その点は十分承知しておりませんが、いわゆる貯蓄国債の発行を公約されていると私どもは思つておるのであります。この場合、先ほども大臣が触れられました減税にこの問題がからんで来ると思うのでありますが、自由党の減税の中には、この貯蓄国債を持つた場合に、その買手に対して三百五十億円の減税を織り込んでおつたと思うのであります。すなわち発行予定額が七百五十億円、この買い手の減税額が三百五十億円、手取りが四百億円というようなことが選挙前に言われておつたのでありますが、この問題につきましては、たな上げされたのでありますか、それとも何らか新しい構想を持つておられるのか、ひとつお尋ねしたいのであります。
  305. 向井忠晴

    向井国務大臣 貯蓄国債は相手がありますことで、そう簡単に実行もできないというふうに私は考えるのでございます。たな上げをいたしましたわけではございませんが、よく慎重に考えて処したいというふうに存じております。
  306. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 次にお尋ねしたいのは、この補正予算についての説明書の中に、間接税の自然増についての御説明があつたのであります。それは国民所得の増加に伴う消費の増大の傾向を反映して見込んだのだということでございまして、酒税、砂糖消費税、物品税等の自然増収を大体二百三十六億円見込んでおるわけでございます。ところで国民所得の増加に伴う消費の増大で、この自然増収が出て来るということについて、私どもが十分納得のできない点は、今度の補正予算をずつと検討してみると、法人税はすえ置きです。それから所得税の関係で申告税は自然減収と税制改正で二百三十四億円の収入減としておる。そうして源泉徴収の所得税のみが自然増、ベース改訂また減税を総合して、四百三十億円の収入増となつておるわけであります。そうするとこの補正予算から出て来る傾向というものは、所得の増加、消費の増大というものは、この源泉徴収で所得税をとられておる人々ということが言える。言いかえれば、この源泉徴収でとられておる所得税の大部分をなしておる人というのは、年間所得五十万円以下の大衆層が多数だと思います。でありますから物品税の自然増収はこの大衆層から吸い上げておるというふうに思わざるを得ないわけです。今回の補正予算が減税あるいは給与ベースの改訂というような、非常に甘いささやきのある反面におきましては、実質的には大衆層から、ただいま申し上げたように源泉徴収の所得税で四百三十一億円、間接税で二百三十六億円、合計六百六十七億円を吸い上げる、こういうふうに見れば見られるわけでありますが、この辺に対する大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  307. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 私から先に申し上げます。税で自然増収が生じましたのは、御指摘の通り、今年は給与所得税と間接税でございます。給与所得税は、先般も申し上げました通り、朝鮮動乱の初期におきましては、法人の利潤が著しくふえましたが、給与は少し遅れて上つて来つつありまして、昨年から本年にかけまして相当つて来た、昨年の九月を一〇〇といたしまして、今年の九月の水準は一割七分程度つておる。私は大体、最近に至りまして、やつと動乱前に比べまして生産の水準に追いついて来ていると見ておるのでございますが、その辺からいいまして、税に、勤労所得税の自然増収が生じ、間接税の方はそれに伴いまして、消費が相当増大いたしております。もちろんそれだけではないわけでございますが、そういう事情は顕著でございます。もう一つは、給与所得者のうちで、階層別に少し見てみますと、やはり朝鮮動乱以後状況がよくなりましたので、給与の差が一時非常に平面的になつておりましたのが、最近は大分差がつき出した。同じ社員の中においても役づきの社員は相当よくなりつつあり、重役さんの報酬も二、三年前に比べますと、相当顕著にふえて来つつあるというようなわけでありまして、経済界がよくなるにつれまして、インフレ時代非常に平面的になつておりました所得の分布が、若干昔のようにもどりつつある傾向がございます。おそらくこういう事実を反映しておると思うのでございますが、今年になりまして課税物品の消費が非常にふえて来た、なかんずく今御指摘の物品税の対象になる消費が実は非常にふえておる。これは昨年の上半期と今年の上半期の実績を比較しておるのでございますが、比較的多いものを申し上げますと、たとえばゴルフ道具などは非常にべらぼうにふえております。しかしこれは非常に少数でございますから申し上げませんが、蓄音機が去年の上期に比して今年の上期は七割八分の増になつております、それから楽器におきましても同じく七割二分の増、化粧品におきましても三割増、レコードなども三割六分の増、扇風機も七割三分の増、電気冷蔵庫のごときは二倍以上になつております。また大型自動車等が急激に増加しましたことは御承知通りでございまして、これが約二・八倍に増加しております。その他電気器具とか、物品税の課税物品が多数ございますが、軒並に増加しておりまして、大体四割から五割程度ふえておるものが多い。従いまして歳入も今年の上期の実績がすでに相当増加いたしておるのでございます。従いまして単純に間接税も国民所得の増ということだけで見積つたわけではございませんで、今までの課税実績に基きましてそれぞれ計算いたしておるわけでございますが、実情はそういうふうになつておるということをここで重ねて申し上げておきたいと思います。
  308. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 御説明はわかりましたが、ただこれは私ども見解で、どうも減税、給与ペースの改訂等があつても、ただいま御指摘したように、大衆層に対する圧迫というものはあまり除かれておらないというふうに思わざるを得ないので、この辺は大臣におきまして十分御検討願いたいと思います。そこでお尋ねしたいことは、ただいまは物品税が非常に自然増収があつて成績がいい、こういうわけでございますが、この物品税につきましては、中小企業者がいろいろな意味で忌避しておるという実情は御承知だろうと思うのでございます。こういう物品税につきましては、なお引続き徴収されるのか、あるいは廃止される御意思が多少なりともおありなのか、また政府の今後の御方針としては、こういうふうに安定になつて来たときに、シヤウプの見解で行けば、直接税中心に移行するのがいいというように言われているけれども、引続いて間接税を強化、あるいは現状のままで行くのか、これにつきましては、ひとつ大臣の御見解をお聞きしたいのであります。
  309. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。物品税というものは、扱い上めんどうがあるので、ことに商売をしている人がいやがるものだと存じますが、しかしながらこれをなくなして直接税でとるということも、実際問題とするとなかなかむずかしいのでございます。物品税をなくなすということにはいきなり飛躍はできませんが、なお物品税をとる品目とか、その他運用の方法等につきまして研究をいたしまして、その上で善処したいと思います。中心はやはり直接税で行くよりほかしかたがないと思います。しかし間接税も決してなくなさない。これは間接税でとられる方が、とられる人はそう痛くないという意味で、国によつてはこれを主とするところもあります。そういう点から申しますと、大蔵省としては直接税がとりいい、しかし出す方は、間接税でとられる方が痛みを感じない、そういう両方の意味がありまして、折衷して進んで行きたいと思います。
  310. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 先ほどお話の中に、減税についての御熱意あるお言葉があつたのでございます。本委員会におきます御説明にも、極力国民負担の軽減をはかるため、主として低額所得者に対する減税を行うこととしたのであります。税制の一般的改正は昭和二十八年度において行うことといたしたい、こういうふうに言われておるわけであります。そこで念のためでございますが、ほんとうに国民の負担を軽減する御意思があるかないか。
  311. 向井忠晴

    向井国務大臣 国民負担を軽減させる意思は十分にございます。
  312. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 そこでお尋ねしたいのでありますが、明年度の減税は、平田局長が先般――これは参議院の委員会の御説明を私読んだと思いますが、明年度においての減税というものは、このただいま審議をしておる補正予算の案を平年化するにとどまるというような御説明をされておつたと思うのであります。これでは大臣が、税制の一般的改正は昭和二十八年度において行うということとは違うのだと思うのでありまして、今回の改正以上に基礎控除、扶養控除、勤労控除を引上げる御意思があるのか、あるいは減税の中心は国税に置くのか、それとも地方税に置くのか、あるいはいずれも行うのか。すでに明年度の予算補正を終られる時期でございますから、大体腹案ができておると思うのであります。この減税についての具体的な御方針をお聞きしたい。それは幾らにするとか、どうとかいうことは、大臣でございますから、けつこうでございます。大体こういう点で減税をして行くということをお聞きしたいのであります。
  313. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。減税は、今度の補正予算で現われているようなものだけでなく、このほかにも行つて行きたいと存じております。そのうちには、さつきからあなたのおつしやいましたような、会社の経理上に必要な蓄積というようなものに対する減税措置とか、あるいはただいま行われている譲渡所得税ですか、そういうものもなくなります。富裕税もなくなします。その他実際問題として減税の線に沿うて研究中でございます。
  314. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 大体私の持ち時間が切れるのでありますが、ただいまやや具体的な減税方針をお話くださいましたが、これをほんとうに実行してくださることをお願いしておきます。  ところで、最後に私は御指摘申し上げておきたいのであります。これはおそらく大蔵大臣は御存じないかとも思うので、ここで触れておきたいのでありますが、従来池田大蔵大臣は、減税を行つたつた、こういうことを言つておられるのであります。しかしながら私どもいただきました資料で拝見いたしますと、昭和二十五年、二十六年、二十七年の国民の総所得に対する租税負担率を見ていただきますと、すぐおわかりになるのでありますが、すなわち二十五年三兆六千八百三十七億円に対しまして、負担率は二〇・六%であります。昭和二十六年におきましては、四兆八千四百九十四億円に対して二〇・五%であります。昭和二十七年は五兆三千二百六十億円の所得に対して二〇・八%、これは国税、地方税を総合しますならば、負担率は明らかに上つておるのであります。これでも減税したとうそを言つている。これが国民が非常な負担を感じているゆえんのものであります。すなわち国税地方税を通じて減税々々とあれだけ言つてつても、所得に比例して負担率も上つている。だからおそらく大臣もお気づきであろうと思う。去年よりも今年の方が税金は実質酌によけい納めている。人によつては去年よりも割合もさらによけいになつている。こういう実情を十分御把握願いたいのであります。  そこで大蔵大臣に最後にお聞きしておきますが、あなたは、減税をされる、また具体的な方途も言われたのでありますが、二十七年度、二十八年度におきましては、国税、地方税を通じた負担率が実際に低下するかどうかという点をお聞きしておきたいのであります。
  315. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。この国民所得の数字は、むろん権威のある調べ方をしたのでございましようが、あるいは今までの税収というものがおつかけつこをしておつて調査ができたときには、もう個人あるいは会社の収入がふえているときで、それに対しての税金がかけられているために、国民所得に対して率が高くなつているというようなことがあるのではないか。これから後も税の率が国民所得に対して少くなるように相努めますが、ただいま申したように、ずれがありますと、ああいうことを言つたが、お前、結果はどうなつたかというようなことがありはしないかと思います。その点お含みおきを願いまして、極力負税担の少くなるように努めます。
  316. 櫻内義雄

    ○櫻内委員 最後にお願いしておきます。税法上の減税でなくて、ぜひ実質的な減税を行つていただきたいということをお願いして私の質問を終る次第であります。
  317. 太田正孝

    太田委員長 淺利三朗君。
  318. 淺利三朗

    ○淺利委員 私は建設大臣に対して質問をいたしたいのであります。私は建設委員も兼ねておりまして、大体大臣の御意向は承つております。しかしながら常に建設行政に伴うものは財政の裏づけであります。建設大臣はいろいろの構想、いろいろの希望、そうして努力をしておると申しましても、結局は財政当局に押されて、その政策の実現ができないというのが今日の実情であります。それゆえに、実は本日は大蔵大臣の臨席のもとに各閣僚の連帯の責任において、私の質問に対する主管大臣の答弁に対し、さらに大蔵大臣の裏書きをしていただきたい、こういう趣旨質問を申し上げるのであります。従つて私はここにこまかいことを一々申し上げません。大体のことについて申し上げたいのであります。  第一に住宅の問題であります。衣食住のうちにおいて、衣と食は今日どうやらわれわれが生活をつないで行くだけには達しました。住居の問題は戦後今なお解決されておりません。終戦後におけるあの三百数十万戸の不足数は、その後においてあるいは災害のため、あるいは人口の増加のために毎年数十万戸の不足を来し、今日までやり来つた跡を見ますと、ほとんどこれと相殺する程度にして依然として解決されておらない。これに対してどういうふうに政府はお考えなつておるか、最近社会保障ということがやかましくいわれております。われわれの生活の根拠としての住居の不足ということは、大ざつぱに申しましても、これは健康の問題であり、また能率の問題であり、また精神の問題であります。その実情なりその他のことをここにるる申し上げなくても、政府当局は御承知のはずである。ことに最近の新聞等を見ますと、道徳上の問題も非常に多い。ここ二、三日の新聞を見ましても、同居家族の中のある人の細君が同居者に横取りされたという事件が二、三件も載つておる。不良児童の発生もまたここから起る。また勤労者の住宅がないために、一日疲れて帰つてもいこいの場所がない、あるいは住居するところを得ずして、遠くから一時間、二時間の時間を費して通い、そして毎日の業務にいそしむ、この実情を放任して日本の再建をはかるというごときことは、とうてい期待せられぬと思うのであります。この問題については吉田首相も施政方針の演説のうちに、住宅の緩和ということを唱えております。しかしその具体的の問題になりますと、まことに遺憾の点が多いのであります。この三百数十万戸の住居不足を政府はどういう構想のもとに何年の間に解決するか、今日までの政府のやり来つたところを見ると、公営住宅においてわずかの戸数を計上し、あるいは住宅公庫によつて年々五万戸前後の新規住宅をつくつておる。この現状で行きましたならば、三百何十万戸の不足は、一方において年々人口の増加あるいはまた災害のための必要というものを計上したならば、三、四十年の後でなければ解決しない。おそらくは建設大臣の生存中にはこの問題は解決しまい。今の二十前後の人が世の中に出て住居の安定を得るころには、もはやしらがの時代になる。こういう現状を放任してはたしていいのかどうか、これについて政府当局としてはどういう構想でどういう計画をなされておるか、大体の構想をまずもつて通りつて、それから個々の問題についてお尋ねしたいと思います。
  319. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お答えを申し上げます。御指摘のように住宅問題はただいままことに緊急に整備を要する問題の一つになつておると思います。従いまして政府におきましても、また国会におかれましても、格別の関心を持たれてこの政策の実行を推進しておるのでございます。御承知ように前国会におきまして、公営住宅の三箇年計画というものの御決議をいただいておるのであります。この計画によりますれば、一年の間に六万戸をつくるという御計画でありまして、三箇年間に十八万戸をつくる。さらにまた公営住宅以外に、住宅公庫におきまして貸付の制度を考えておるわけであります。この方はただいま資金融資を受けたいという申込みが非常に多いのであります。従いまして今回の補正予算を編成するにあたりましても、新しい問題はできるだけ採用しないと申しますか、現在の財政状態から手が伸びかねたのでございますけれども、住宅公庫に対する融資については特に政府におきましても考えまして、三十億円を増額いたしましたような次第であります。しかしこの公営住宅あるいは住宅公庫の融資、これだけではもちろん不足であります。さらに次の国会におきまして御審議を賜わりたいと思うのでありますが、労務者の住宅の整備という観点に立ちましての融資方法も特別に考えて参りたいと思います。なおまた国自体がかような融資あるいは財政資金の投入によりまして、住宅の整備をはかりますと同時に、民間における貸屋の建築を勧奨し、同時に民間投資が容易になるように、この方面におきましても多大のくふうをいたしておるのであります。  以上が大体の概略でございますが、さらにつけ加えて申し上げますならば、最近の傾向といたしまして、公営住宅についての要望はよほど強いものがあります。また住宅公庫の融資につきましても、たいへんな申込みの状況であります。おそらく労務者住宅においてもさような状態に置かれておることだと思いますが、政府だけの力によりましては、現在の住宅問題を急速に解決はできかねるだろう、ここで民間の積極的協力を得るということは、見のがせない大きな問題のように思うのであります。私どもといたしましては、住宅問題の取扱い方において、特に民間の協力を得るような方途をも講じて参りたい。以上簡単でございますが、一応お答え申し上げます。
  320. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいまの御構想は、これはかねて承つておるのであります。建設大臣は第三次吉田内閣以来四人も交代しておる。この方々がその都度同じことを繰返しておるが、一つも具体性がないのであります。私のお尋ねしたのは、三百数十万戸のこの住宅問題を、どういう構想によつて何年の間にこれを解決するかという、その具体世を実は示していただきたいのが主であります。私も今日まで大臣の意向は承つておりますから、ここに申し上げても無理かもしれぬ。しかしながら今日までの建設省の計画しておるものは、いわゆる公営住宅において、昨年法律が発布以後三箇年計画を立てて、そうして内閣総理大臣が閣議で決定してこれを国会に諮問した。それは三箇年の間に十八万戸、三百数十万戸から見たらばこれは九牛の一毛です。それすらわれわれは不満であるが、さてその実現はどうか、昨年の第一年度の予算には、六万戸計上すべきものがわずかに二万五千戸である。政府が閣議で決定して国会の承認を求めた、みずから承認を求めておりながらこれを無視する、国会権威を損することおびただしいのであります。何のために国会に承認を求めたか、国会の承認を求めておりながら、政府みずからその計画をこわしておる。そういうことならば、国会に承認を求めないでおやりになる方がかえつて賢明であろう。国会の承認を求めて、最高機関がこれを承認したものを政府は実現しない。こういうことであつてはこの問題は何年たつても解決せぬのであります。当時の建設大臣は、これを補正予算の際に補充する、訂正することに努力するということでありましたが、結局補正予算を見ると、何らこの問題が解決されておらない。そこでこれはわれわれは不満でありますが、第一年目に六万戸に対して二万五千戸しかできておりませんので、第二年目には、第二年目の六万戸のほかに、この不足分の三万五千戸というものを合して計上されるかどうか、建設大臣は、これに対して責任をもつて国会の承認を受けたものを遂行するというところの熱意があるかどうか、また大蔵大臣は、国会の承認を得た内閣総理大臣のこの計画に対して、これを実施するところの責任をとられるかどうか、建設大臣と大蔵大臣に対してこの点についてお伺いしたいと思います。
  321. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 問題の公営住宅は、御指摘の通り本年は二万五千戸であります。私ども補正予算の編成にあたりましては、公営住宅をさらに増加さすべくいろいろ努力いたしたのでございますが、工期の都合もありますし、また財源等の関係から、これを今回計上することができなかつたことはまことに遺憾に存じます。しかしながら住宅の問題は、公営住宅あるいは公庫の融資合せて処理すべきものでありますし、特に今後も一層住宅整備については力をいたしたいと思います。そこでただいまお尋ねの来年度予算編成にあたりましては、来年度の年度割として考えられますものはもちろんのこと、さらにまたただいま御指摘の不足分等につきましても十分検討いたしたい、また建設省といたしましては国会の御意思を尊重してこれが実現に努力いたすつもりでおります。
  322. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいま建設大臣の言われました通りに、私も十分努力いたします。
  323. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいま大蔵大臣は努力されるということでありますが、これは従来の建設大臣も努力すると申しましたが、しかし努力の効果が現われなかつた大蔵大臣はみずから財政のかぎを握つておるのですから、大臣の努力は建設大臣以上に効果あり権威あるものと了承してよろしいですか。
  324. 向井忠晴

    向井国務大臣 あなたのおつしやいます通りでございます。
  325. 淺利三朗

    ○淺利委員 次に、この問題は公営住宅の三箇年計画の十八万戸、あるいはまた住宅金融公庫の年に百五十億や二百億の資金ではとうてい解決せぬと思うのであります。ひつきようするに、これは住宅問題に対する政府の熱意いかんにかかつておる、国策としてこれに重点を置くか置かぬかにかかつておると思うのであります。現に英国のごときは、毎年二十万戸の建設をしておる。ドイツは日本以上に敗残の跡を残しながら、六箇年計画で百八十万戸の実施計画をすでに立てて着々実行しておる。日本は三箇年といえどもわずかに十八万戸、十分の一であります。こういう状態にしては、いつの日にか日本の住宅問題が解決する。この問題についてはいろいろ隘路があることはわれわれも承知いたしております。政府は、この問題に対しては、財政資金の限度をどの程度に置くのか、また融資の方面についても何かお考えがあるか、われわれが従来建設委員会で主張いたしましたところは、火災保険の保険料、こういう問題は、船舶に対してはすでに融資をしておる。火災保険は建物を対象とする、従つてこの金を利用して新たに建築をする場合、さらにそれによつて保険も拡張して来る。次次に原因となり結果となつて火災保険会社も繁栄して行くはずであります。また生命保険のごときも、社会保障の点からいえば、われわれの幸福を守るという意味の生命保険でありますから、こういうものを住宅資金の方にまわすということを考えられてはどうか。外国のごときは、すでに生命保険もこの住宅融資の一環として取上げておる。また厚生年金の保険料とか、あるいは失業対策の保険料とかいうようなものも相当の額がある。こういうものも住宅の方面に融資するならば、これによつて国民の厚生も間接に改善されるのであります。そういう点についての資金の利用ということを取上げて考える御意思があるかどうか。従来は、預金部の資金等だけでありました。さらに住宅公庫をして債券を発行せしむるというお考えはないか。あるいはまた国自体であつても、住宅債券とかあるいは住宅のために起債をするというようなことをお考えになる御意思があるかないか。また住宅公庫をして預金を取扱わしめ、無税にして、この公庫に預金した長期預金をもつて住宅に利用するというようなことを考えたことはないかどうか。また東京都のごときは復興宝くじを発行しておる、日本政府は宝くじを発行しておるが、これは漠として、ただいたずらに投機心をそそるだけであります。もしこれに住宅復興のために、目的をつけた宝くじにするならば、この宝くじに応ずる者も国家的意義を感じ、またこういう宝くじというものの発行の趣旨も生きて来るので、そういう特定の目的を持つての金融方法考える御意思があるかないか、この点について大蔵当局の御意見を承りたいと思います。
  326. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまの御質問のうちの、保険会社の資金を使うといううなことは、非常に実際に即したお考えと存じます。その他いろいろな点につきましても、私はそれを実行に移して行くといいように存じますが、しかし実行上に支障のあるものもございますかもしれませんので、政府委員に詳しいことを答弁させます。
  327. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。生命保険会社の資金、損害保険会社の資金の運用方法として、特に、損害保険会社等につきましてこれを住宅の資金として活用してはどうかという御意見であります。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕  この点は、資金の運用方法として、それが十分に金融のベースに乗るものでありますならば、私どもは少くとも火災保険会社の資金の運用方法としては、いい方法であろうと考えております。ただ問題は、そういつた資金が損害保険会社の性質からいいまして、非常に保険契約者の利益を保護するという立場から、普通にいわれておりますように、金融ベースに乗るか乗らぬかという問題について十分考えなければならぬ。ことにこの金は非常に長い金になりますので、保険契約者の利益ということを第一にいたしております損害保険会社としてどの程度できますか、この点は十分に私どもとしては考えて参らなければならぬと思いますが、これらの条件が満たされる限りにおきましては、さしつかえない方法であろうと考えております。  それから第二点の住宅金融公庫に債券を発行せしめる方法でありますが、この債券がだれによつて消化されるという問題が、非常に大きな問題であろうと思うのであります。一般の公衆にこの住宅金融公庫の債券が消化せられるということになりますれば、これは必ずしもさしつかえはない点であろうと思うのでありますが、それが純然たる政府機関としての住宅金融公庫の使命からいいまして政府資金によつてそり債券を引受けるということになる場合におきましては、結局は政府からの借入金にいたすこととさしてかわらない。そういたしますと、結局住宅金融公庫の資金源をいかなる方法で拡充するかという問題にかかるわけでありまして、財政の中におけるウエートを、これらの住宅金融公庫に対する資金源の拡充の方へどの程度置くかという問題につきましても、純然たる政府機関としての立場からいいますと、公衆から直接債券の消化をはかることが適当であるかどうかにつきましては、御意見はなはだ考慮に値する点だろうと思いますが、さらにもうしばらく研究しなければならぬと結論がはつきり出ないと思うのであります。  それから第三点の宝くじの問題でありますが、東京都とかそういつた地方宝くじの形で募集するということでありますか、あるいは住宅公庫が直接新しい宝くじを発行するということでありますか、その点ちよつと私聞き漏らしたのでありますが、後者でありますならば、結局これは、先ほど債券について申し上げましたと同じように、政府機関たる住宅金融公庫の資金源を充実いたしますために、民間一般からそういう資金の調達方法をとることがよいか悪いかという根本問題にかかると思うのであります。現在まで私ども考えて参りました点では、純然たる政府機関の資金の源を満たす方法は、政府の資金によつてこれを補つて行くという建前をとつておるのでありますが、なお今後御指摘の点等も十分頭の中に置きまして検討を加えて参りたい、かよう考えている次第であります。
  328. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいまの宝くじの問題は、宝くじに一定の目的を持たせよう、今度の宝くじは住宅資金を得るための宝くじであるというような目的を持たしたらどうかというのであります。  それからただいま火災保険なり生命保険の利用という点については、金利のベースが乗るか乗らぬかという御意見、これはごもつともであります。なるべく有利にこれを回転せしむるということは、営利会社として当然であります。この場合に、私政府考えていただきたいことは、金利の補償をするという道を考えてはどうか。直接補助金を交付するということになれば非常に金がかかります。しかしながら金利の補助ということになれば、同じ何百億の金あるいは十億の金であつてもこれは何倍かにまわる。そういう方法考えたならば、そこに資金がある以上は、その資金を利用するという点において利回りの少い場合は、この住宅建設のために政府が一種の利子の補給をするというふうな方法考えたならば、これはわずかの金でできるではないか、そういうことも考えられるのであります。それから民間会社の利用方法、これもいろいろ御議論がありましよう。また現実の問題としていろいろあります。しかし本日はここで私はその詳しいことは申し上げません、  もう一つは、この住宅問題の隘路は土地であろうと思う。宅地の獲得、これが第一であろうと思うのであります。これも英国の制度を見ますと、あるいは強制買収をすることもでき、契約によつてやることもできる道が開けております。労働者なりあるいは官庁に勤めるとか会社に勤める人は、その近いところに住宅を求めるということが必要である。東京ならば都内に宅地を求めるということが必要であつても、それは得られない。地主は土地の値上りを待つて、ただこれを遊ばしておく。これが現実の姿であろうと思うのであります。でありますから、みずから住宅を建てる、いわゆる住宅地帯においてみずから住宅を建てるという者は格別として、みずから建てないであるいはこれを買却しよう、あるいは貸地にしようという者に対して、政府は何か強い手を打つて、そうしてその土地を獲得して、これによつて土地問題を解決して、住宅の建設に資するという方途を考えてはどうか。またそういう場合においては、あるいは空地を持つてただいたずらに遊ばしている者には空地税でもかけて、将来の値上りによつて利益を獲得しようとする者が、早くこれを処分しなければ結局損であるというよう考えを与える方法がないものであるか。そういういろいろの面から見て、住宅の敷地問題の解決をはかるということが第一であろうと思う。個人の人権の尊重ということも重要であります。この敗戦後の日本の住宅問題の解決は、公共的の性質が非常に強いのであります。この点を取上げて、この三百数十万戸の住宅問題を、一日も早く解決するという強力な手段をとることについてお考えがあるかないか、また今日までどういう程度にこれをお調べになつておるか、その点を伺つてみたいと思います。
  329. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 住宅の場合にも、土地の確保について政府はいかなるお考えであるかというお尋ねと思いますが、私どもただいま土地まで手がまわりかねております。そこで、まず家をつくる場合の公庫の融資のわくを拡大すること、あるいは公営住宅の予算の増額をはかり、さらに民間の住宅建設を容易ならしめるために、住宅建築の投資を容易ならしめる意味におきまして各種の減税等を研究して、あるいは低利の資金獲得等、これに協力するというような方向でただいま考えておるのであります。御説のように、土地自身が年々非常な高騰を来しておるような際でありますので、土地の問題をもあわせて考えねばなりませんが、土地の所有の問題、さらにまた借地の問題等をもあわせて考えますれば、総体的な資金の充実をはかるということが、ただいま当面しておる問題ではないかと考えております。
  330. 淺利三朗

    ○淺利委員 土地の問題でありますが、これを売りたいという者がある場合には、まずもつて政府なり地方公共団体が、まつ先にそれを手に入れるというような特別の方法考えてはどうか。これがために特別の融資をし、あとでこれを売りつけるというよう方法考えられると思うのでありますが、そういう点についても何かひとつ御考慮を願いたい。ただその問題は至難であるから、家を建てる者が、その土地を獲得して政府に融資を願つて来るとか、あるいは公庫に願つて来るというような者を待つてつたならば、これはいつまでも解決はできない。私はむしろ、政府の施策として、住宅問題をいかに解決するかということの問題を重点に置くのであります。今のように自然にできるのを待つておれば、なるほど住宅公庫は一箇年五万戸前後をつくつており、公営住宅も五万戸前後で、十二、三万戸の建設をしておるが、そんなことでは四十年も五十年もかかつて初めてこの問題が解決され、われわれの孫の代に初めてこの問題が解決される。そういうゆうちようなことならば、何ら手を打つ必要はないのであります。しかし政府としては、この住宅問題を解決するというならば、あらゆる手を打つて、一定の計画を立てて、いかにしてこれを実施するか、――資金の面において、土地の面において、あらゆる面において、そのほか税金の問題もあるでありましよう。こういうものを一貫した計画を立てて、すみやかにこれを実施するということをわれわれ熱望しておるのであります。これは一主管大臣に限らず、内閣の責任において、大蔵大臣も、日本の再建の基盤となるところの人間の生活の根拠を与える。それがやがて国民の健康に関し、能率に関し、また道徳の問題にも関連する。この重大な問題を大きく取上げてやつていただきたい。今日までほとんど住宅政策として見るべきものはないのであります。せつかく政府が立てた三箇年計画さえ、その初一年においてわずか二万五千戸に削減された、こういう現状をもつてしては、吉田総理の施政方針の声明というものはただ一片の机上の空論であり、国民に対する媚態を尽すにすぎないという結果になる、そういうことであつてはならぬと思うのであります。私はなおほかにもこまかいことでお聞きしたい点がたくさんあります。たとえばこの前に住宅緊急措置令を廃止した。そうして、この二十八年の三月三十一日までにはこの問題は解決される、これにかわるところの公営住宅もつくる、こういう声明であつた。その結果はどうなつているか、一方において、緊急措置令によつて余裕住宅あるいは住宅に転用するものを強制力をもつてつてつたものは、もはや住宅問題緩和したからこれを解除するという、解除するにはその行く先を何とかしなければならぬ。ところがこの問題についても、既定計画の住宅計画の中にこれを入れたらそれだけ不足して来る。そういうものは別わくにして予算をとつてこの問題を解決するということになるのかどうか。この緊急措置令廃止後の現況はどうでありましようか、すでに完備しているかどうか、あるいは今後何年かかるか、政府のやられたことの目的が着々実現されておるかどうか、この実施状況をひとつお示し願いたい。
  331. 渋江操一

    ○渋江政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、例の最初の問題に出ました空地、住宅の敷地としての空地なりあるいは遊休地を、公共団体ができるだけ買い上げる方法をとつて、確保して行くことを考えてはどうかというお考えように伺つたのでございますが、その点につきましては、建設省としてもかつて相当慎重に研究したことがございます。すなわち、遊休地あるいは空地の先買権をひとつ制度的に立ててはどうかというふうなことで研究をいたしたことがございますが、そのこと自体が土地の管理に関する行き方といたしまして、いわゆる土地の公共的な管理あるいは国家的な管理というような、土地制度の根本問題にもからむというような観点からいたしまして、なお今日まで慎重に研究をいたしておるというよう実情でございます。その点について一応事務当局で考えておりましたものを申し上げました。
  332. 淺利三朗

    ○淺利委員 これは私の質問が不徹底であつたかもしれませんが、私の質問しているのは、住宅緊急措置令を廃止したのであります。今日においてはもはや余裕住宅その他のものを強制的に収用する必要はないからこれを廃止した。廃止したについては、その住んでいる人の行く先を探さなければならない。この措置を講じなければ、せつかく法律を廃止しても実行ができないのであります。そこで、この廃止の結果、従来この緊急措置令に基いて住んでいた人がどういうふうに片づいたのか、この実施の結果、措置令等の廃止に関する法律がどの程度に実現されているかということを承りたかつたのであります。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長   着席〕
  333. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまの御質問については、実は住宅局長がこの席に来ておりませんし、私自身も実情をつまびらかにしておりませんので、後ほど資料としてお手元へお届けいたしたいと思います。
  334. 淺利三朗

    ○淺利委員 これはいずれ他の機会でもよろしいのであります。ただ、予算委員の方々もそういう問題のあることを御承知おきを願いたいと思つております。  それからもう一つは税金の関係であります。取得税、法人税等について、減価償却に対しての割増し償却を認めるということでありますけれども、これは機械その他の場合等と比較してはなはだ権衡を得ないのであります。ことに減価償却のいわゆる耐用年度というものが、住宅公庫における場合と、この税負担の対象になる場合の耐用年限というものが非常に違つておる。たとえば木造の家屋に三十何年とか、あるいは耐火建築で五十何年の長期にわたつて償却をする、こういう建前であります。一方住宅公庫においては不燃化建物について三十五年木造は十八年間、こういう短かい期間であります。税の方面においては長い償却期間にして、そうして償却の費用というものを少く見ておる、こういうことも一貫しておらぬのであります。それからもう一つは、固定資産税につきましては、建築後三箇年間、しかも二十七年の一月から三十一年の三月までですか、この間に建つたものについては、固定資産税の二分の一を減ずるように、自治庁から通牒が出ておる。各府県、あるいは市町村はこれをやるかどうかということは任意であります。しかもこの間において、一方においては減価償却の場合においては二十坪未満の家に対して適用する。固定資産税の場合は十五坪以下の家に適用する。こういうような一貫性がないのであります。住宅公庫においては貸付対象は三十坪まで認めておる。そうすれば住宅の建設を促進する意味ならば、固定資産税のごときは、これは新たに建てて新たに得る税金であります。減税となるにあらずして、これからふえるのである。減価償却でも同様であります。これから新たに建つものである。そうすればこれを大いに寛大にしてもいいのではないか、そういう点についてもほとんどこれはばらばらであつて一貫性がない。いわゆる住宅政策に対する政府の一貫した協力体制によつて行われた政策ではないのであります。こういうことについて、今私はここに一々答弁を煩わさぬでいいのであります。こういう点を内閣の責任において住宅政策の根本的方針を確立して、何箇年計画において資金はどうするかというようなことを至急に検討されまして、政策を樹立して、来るべき二十八年度の予算には、その片鱗を示していただきたい。これだけのことを申し上げまして私は住宅問題については、こまかいことは他日に留保いたします。  なお申し上げたいことはたくさんありますが、時間がないようであります。たとえば河川の問題にいたしましても、建設省は十五年計画をもつて明年度の予算には相当厖大なる予算を計上しておるそうであります。しかしこれもただゼスチユアにすぎないのではないか。実行性があるかどうか。大体三分の一は地方費の負担であります。でありますから、今日の地方の財源においてはとうていこれはできない。こういう問題も、治水の根本問題は真剣に考えなければならぬ。毎年の洪水の被害は、平均して四十五、六万町歩の災害をこうむつておる。そうして四万町歩前後というものが流失、崩壊しておる。一方において食糧増産を計画いたして開墾等をいたしておりますが、この既設の熟田を毎年五十何万町歩、約六十万町歩というものを荒廃に帰せしめておる。これを放任しておくというところに矛盾がある。でありますから、もう少し政府は治水策の根本について計画をされて、実現可能の範囲において、すみやかに実現することを希望するのでありますが、この問題もわれわれは建設大臣と質問応答いたしておりましては解決せぬのであります。これも政府において、建設省の計画を内閣の計画に進めていただきたい、きようはこの希望だけにとどめておきます。  もう一つは審議庁の方が見えておりますが、総合開発の計画は、すでに国土総合開発法が改正され、また全国において特定地域を十九箇所も指定され、八箇所の調査地域もできておるのであります、それをいかにして予算化するか、これを早急にしなければ、いろいろな点において困つた問題が起つて参ります。昨日来問題になつた只見川のあの電源問題についても、一方において新潟県は、新潟の方に流せば何十万石の食糧の増産、何百万石の食糧の増産ができる、こう申しておる。ところがこの総合開発の計画が遅れておるから、単に電力という点だけでこの問題は解決されておる。また総合開発ができないうちに電力が起されれば、その電力は遠いところに持つて行かれて、あとで総合開発計画ができても、もはやその地方においては使用すべき電力がなくなるというのが現状であります。私は富山においてその体験をいたしております。それで政府としては、この総合開発法の改正に伴つて国土総合開発の予算わくを別に設けて、明年度からこれを計上する段階に達しておるかどうか。この点についてだけ、ただ一点お答えを願いたいと思います。
  335. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいまの特定地域計画の予算上の取扱いにつきましては、普通の公共事業費に入れるか、そとも今浅利さんが言われたような別わくにするかということについては、なるべく別わくにいたしたいという考えのもとに、現在事務的に大蔵省と折衝いたしておる次第であります。
  336. 淺利三朗

    ○淺利委員 まだたくさんありますけれども、時間についての御催促もありますから、大体この程度にしておきますが、ただ最後に一点、建設大臣と大蔵大臣に伺つておきたいことは、この道路法の改正によつて国道網の指定もできるのでありますが、この道路の改修等について、今日までの建設省のとり来つておるところを見ますと、現在の経済的効果というところに重点を置く。従つてすでに繁華になり、産業の興つておるところに重点を置いております。しかし日本の今後というものは、どうしても既設のところだけを目標にして、そのあとをおつかけた道路の開鑿改修だけでは、とうてい日本の再建ができない。むしろ残されたる未利用資源のある地方に開発道路を設けて、そうして日本の原料の獲得なり、あるいはこれによつて産業の地方分布ということをはかる。開発道路にさらに重点を置くべきではないかと思うのでありますが、この点について建設大臣はどうお考えになるか。また大蔵大臣といたしましては、この道路の財源の獲得のために、従来問題になつておりますガソリン税を目的税にする。あるいは自動車の税金とか、トラックに対する税金とか、これらの事業税というものは、道路の目的税的に、あるいはこれと見合いの点において、道路財源を獲得するという方針をとらるる御意思があるかないか、その二点だけを伺つて、私の質問を終りたいと思います。
  337. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 道路はただいま公共事業費で新設、改良、補修をいたしております。さらにまた有料道路の制度を設けまして、新しく建設等をいたしておりますことは御承知通りでございます。そこでただいま道路関係財源等が一般財源からまかなわれておりますが、なかなか思うよう予算は現在の状態ではとり得ない状況にあります。そこでただいま御指摘になりました開発道路と申しますものは、在来からもさような観点で新設等をいたしておりますが、最近の要請にこたえるという意味におきまして、画期的な資源開発道路をつくるとなりますと、これは現在の財政状態ではなかなか実現が困難ではないか。そこで民間の資金、あるいは外国資本等の導入をも得るような特別な施設をも考えたらどうか、もつと具体的に申しますならば、外国等には道路会社という会社が民間の力で道路をつくつておる例も幾多あるのであります。ただいま御指摘になりました資源開発道路のごときは、事業といたしましても成り立ち得るもののよう考えますので、別途財源等を確保するというような観点から、かような事柄をも、ただいま研究をいたしておる次第であります。  なおまたガソリン税を目的税化するというお話が出ておりましたが、これまた私どもといたしましては、ぜひとも目的税にいたしたい、かよう意味合いにおいて、これまた研究中でございます。
  338. 淺利三朗

    ○淺利委員 私はやめるつもりでありましたけれども、ただいま大臣の御答弁によると、開発道路を外国資金等によつて、何か会社によつてやれば採算がとれるような御説明でありましたが、開発道路というものは、これはむしろ北海道とか東北のごとき、地下資源が眠つておるけれども、これは開発に金を要する、そしてその効果というものは一年や二年で上るものではないのであります。そういうものを今のような外国資本によつてやるとか、あるいはまた道路会社にやらせるというようなことが、はたしてできるかどうか。私どもはこの点について大臣と認識を異にしておるのであります。こういうものこそ国家資金によつて開発しなければならぬ。文化の進んだ経済力のある地方は、外資導入の資金なり、あるいは道路会社の資金において、有料道路の計画もできるでありましよう。未開発地の開発にそういうことは適当ではないので、現に北海道のごときは全額国庫負担でやつておる。それはすなわち今私の申し上げたような未開発の地方であつて、地元に負担力がないからであります。そういうものを今のよう考えで実施されるということについては、資金がないからこれはやらぬということならば、日本が今後国内資源を多くふやして、外国の資源を幾らかでも少くするという方策と合致しないというふうに考えるのであります。その点私少し疑問を持つのであります。重ねてその点について御意見を承りたい。
  339. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま浅利さんの御意見程度の開発道路は、もちろん従前も公共事業費でまかなつております。またその点は今後も同様だろうと思います。しかし私申し上げましたのは、非常な画期的な道路建設のいろいろの意見もあるのであります。たとえば東京・大阪間の高速の道路というようなことも申しております。それは民間で研究いたしましたところによれば、たとえば、東京から富士の北側を抜けて赤石山脈を貫いて大阪に出て行く道をつくりたい。在来の建設省のいわゆる弾丸道路とは別なルートを通つておるのであります。これなどは明らかに、中部地帯の未開発資源を開発する意味において、かような道路ができますれば、非常な効果を上げるものであります。具体的に申せば、たとえば木曽の杉が東京にわずか二時間で運び出されるというようなことになりますれば、現在の状況とは格段のものができるわけであります。かようなものについては、これは特別な方策を考えなければ、とても現在の予算では政府ではできない、ただ浅利さんが御指摘になりましたような純地方的なものでありますれば、在来もやつておりますし、今後も引続いて当然公共事業費をもつてまかなつて行くべきものだ、かよう考えております。
  340. 太田正孝

  341. 勝間田清一

    ○勝間田委員 外務大臣にちよつと具体的な事実の問題についてお尋ねしたいと思うのでございますが、実は最近三崎港の遠洋漁船組合の組合長から私の方の党に対して要望がございました。この要望を見ますと、アメリカの内火艇らしいものが日本の普通の漁船その他に発砲をしたということでございます。この内容を具体的に書いてございますので読んでみたいと思うのです。八月の二十二日に神奈川県三崎港在籍東北振興株式会社所属第八十振興丸、船長は寺島幸太郎氏、ほか乗組員二十五名が、折からコンパスの時差を修整のために、同日午後一時三崎港を出港、城ヶ島沖をまわつて時差の修整をいたしておつたところが、同日午後五時五十分に城ヶ島沖の南西ニマイル、北緯三十五度六分二十秒、東経百三十九度三十五分十五秒の地点において振興丸の南方より北進を続けておる戦時中のわが内火艇らしきもののあるを目撃しておりました。船尾には米国星条旗がはためき、船体はねずみ色、船長は約十四、五メートル、ブリツゲは船首より三分の一にあり、乗組員は砲座の箇所に一人上半身を出しており、船尾に一名、なお機関室のガラス窓に顔形のみの一人があることが確認され、二名は緑色の作業衣らしきものを着服しておりました。やがて振興丸の左舷から右舷三十度の角度において急旋回をなして振興丸に反航し、約二百メートル余り離れてから、突然振興丸の船尾に向つて二発の発砲をなし、大きな炸裂音とともに弾幕は約一平方メートルにわたり、ニメートルほど海上より上昇いたすのが見えました。この船は北東東京湾方面に向け姿を消して行きました。なお同時刻より五、六分前にも南西(伊豆方面)に向つて航行しておる運搬船(約百トンくらい、黒ぬりで船腹に白い線が一本くつきりと入つておる)が、振興丸の左舷南方へ三、四百メートルの海上を通過しておりましたが、該船に対して加えられた三発の実弾砲の炸裂音を聴取いたしております。しかもなお第二幸成丸(高知県)も同日実弾五発の発砲を受け、ただちに第二幸成丸より海上保安部に対して事件発生の打電がなされておつたとのことであります。翻つて三件に及ぶ発砲事件は偶発的なものとは思えず、作意的になされた行為であると思量するものであります。いやしくも本年四月二十八日、輝かしき独立への第一歩を踏み出したわが国の、しかも洋上ニマイルの至近地において、かかる不祥事の惹起いたしましたことは、痛恨のきわみであります。かかる事態が将来再び惹起されるとしたら、遠洋並びに沿岸漁業者はその生命財産の保全すらも期しがたいのではないかと憂慮されるのであり、そのことはひいては水産業振興を大きく阻害するのうらみなしとはしないのであります。  こういう状況で、非常に切々たる事情を実は訴えて参つておるわけでありまして、これが事実であるといたしますならば、まことに遺憾なことでありますが、こういう事実があつたかどうかを外務大臣にお尋ねをいたしたいと思う。なおこの文章の中には、保安庁の方にも打電をする云々ということが書いてございますから、保安庁の方でも、そういう事実があつたかどうか、お答えいただきたい。なおこの文章は写しでございまして、海上保安庁長官、第三管区本部長及び水産庁長官あてになつておるようでありますから、この事実もあわせてお答えを願いたいと思います。
  342. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は今のところそれは知つておりません。ただいまそういうお話でありましたから、あるいは何かあるかと思つて調べさせておりますけれども、まだ来ておりません。念のためちよつと伺いますが、事件が起つたのは八月ということでありますが、報告書の書類はいつの日付になつておりますか。
  343. 勝間田清一

    ○勝間田委員 八月三十日。
  344. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それじやおそらく保安庁に出してあるならば、保安庁方面でもちろん知つて調べておると思います。
  345. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 水産庁長官の方にもお訴えがあつたというお話でありますが、私まだ就任早々で聞いておりません。
  346. 岡田五郎

    ○岡田(五)政府委員 私今ここに入りまして、突然の具体的な御質問でございまして、あと政府委員が参りまして、確かめましてお答えいたします。
  347. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この事実はまだ御調査もない、あるいは就任早々ということでございますから、後ほど正確に調べられた後に、これらに関して質問さしていただきたいと思います。  大蔵大臣にこの前本会議におきましていろいろお尋ねをいたしましたが、その節お答えを願つた問題について、若干の問題がまだ残つておるよう考えられますので、ひとつお尋ねをいたしたいと思うのであります。池田大蔵大臣の当初から今日まで一貫して財政施策の方でとられて参つたのは、特別会計等々におけるインヴエントリーあつたことは、向井大蔵大臣もよく御存じのことと私は考えるのでありますが、これからの財政方針として、こういうものは一体取上げて行くつもりか、あるいは漸次これを一般の金融に移して行くつもりか。この点をひとつお尋ね申したいと思います。
  348. 向井忠晴

    向井国務大臣 これからは一般金融に移して行きたいと存じております。
  349. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこでこの前お尋ねがありました、あなたが来年の予算についても、大体本年と同じ規模で実はやつて参りたいという答弁が、速記に載つておるわけであります。これはやはり文字通り本年の予算規模に近いものを大蔵省としては計画しておる、こう考えてよろしゆうございましようか。
  350. 向井忠晴

    向井国務大臣 お話の通り、大差のない程度にやつて行きたいと存じております。
  351. 勝間田清一

    ○勝間田委員 インヴエントリーをはずすということは、金融に一応移して行くという考えを、今御答弁になつたわけでありますが、それと同時に、たとえば食管特別会計といつたようなものをなくして行こうということをも含んだものでしようか、そうでないのでしようか。
  352. 向井忠晴

    向井国務大臣 食管特別会計というものをなくして行こうということは、考えておりません。
  353. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで財政規模の問題が特に話に出たわけでありますが、軍人恩給をやつて行こうというお考えを、依然として答弁に、総理大臣以下大蔵大臣も出されておるわけであります。これについては現在何か構想がもうでき上つたのでございましようか。その点をお尋ねしたい。
  354. 向井忠晴

    向井国務大臣 その点については少しも構想がまとまつておりません。
  355. 太田正孝

    太田委員長 勝間田さんに申し上げますが、報告が来たそうでございますから、あなたの御質問の順序で、いつのときでも用意ができておるそうでございます。
  356. 勝間田清一

    ○勝間田委員 わかりました。それでは今大蔵大臣の途中でございますから、もうちよつとお尋ねしたいと思うのであります。この前貯蓄公債についての構想を練つておる、こういうお話でございますが、この方式はまだきまつておりませんか。
  357. 向井忠晴

    向井国務大臣 おつしやる通り、まだきまつておりません。
  358. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうすると、インヴエントリーはだんだんはずして行くという考えであられる。なおいわゆる財政余裕金の使い方については、この前御答弁がございましたから、お聞きする必要はないと考えるのでありますが、そうしますと、漸次やはり広い意味における財政余裕金というものをこれから出して行つて、それが前年度の剰余金であろうと、あるいはその年の蓄積であろうと、漸次これから出して行つて、資金の散布超過というような問題はあまり考慮せずに、むしろ散布超過を覚悟でこれからやつていらつしやる、こういうように解釈してよろしゆうございましようか。
  359. 向井忠晴

    向井国務大臣 ある程度までは資金の散布超過も起ると存じます。
  360. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それがいうところのあなたの弾力性ということでよろしゆうございましようか。
  361. 向井忠晴

    向井国務大臣 さようでございます。
  362. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうしますと、今度の大蔵大臣の方臣の方針というものは、貯蓄公債の面がどうなるか、構想が明らかになつて来ればわかると思いますが、確かに従来のドツジ方式をここで破る、こういうように明言されたと見てよろしゆうございますか。
  363. 向井忠晴

    向井国務大臣 ドツジ方式を破るとまでは私は明言いたしません。しかし弾力性を持つた財政投資なら財政投資、あるいは貸金というふうなことは行つて参りたいと思います。
  364. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大蔵大臣にもう一つお尋ねしておきたいと思うのでありますが、先ほど減税のお話を御答弁になつておられましたが、私は来年の予算規模というものを私なりに計算をいたしてみますと、あなたは減税を単に平年度に直しただけでなしに、別個の減税をやりたいということを、先ほどお話になつておられたように思うのですが、私はその余地が出て来ないという感じがいたすのであります。それはたとえば高額所得者に増税をして、下の方は減税するのだとか、いわゆる同じ予算わくの中で、あるいは同じ収入の中で税制をかえて行こう、こういうことを意味するのであつて、総体の租税収入というものについては若干の――それは国民所得がふえれば別でありますけれども、ほんとうの意味の全体としての減税にはなつておらない。いわゆる中のやりくりだ、こういうように解釈してよろしゆうございましようか。
  365. 向井忠晴

    向井国務大臣 全体においても減税になると私は思つております。中だけのからくりという意味には考えておりません。
  366. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それですと、もう一つお尋ねしたいことは、地方税に対して手をつけて行くつもりかどうか。それからその場合において、平衡交付金という制度はやはり依然として残して行くという方針でやられるのか。それにも手をつけてやられるのか、その点を一つお伺いいたします。
  367. 向井忠晴

    向井国務大臣 地方税についてはまた別に考えなければならないと思つておりまして、今どうということのお返事はできかねる次第であります。
  368. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでしたら、この際に外務大臣から御報告を承つておきたいと思います。
  369. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほどの御質問の八月二十二日に三崎沖で第二幸成丸が発砲を受けたという事件につきまして、おつしやる通り海上保安庁から外務省も報告を受けております。そこでさつそく先方に話しました。なお大体の話がついたので、日米合同委員会においてもこの問題を正式に持ち出しました。その結果十月三十日の第二十五回合同委員会におきまして、先方で調査の結果を述べました。それによりますと、米船上から船員があきカンをそとにほうり投げて、それをたわむれに撃つてつた。日本船に向つて発砲する考えでやつたものではないということが判明いたしましたが、アメリカ側は、かかる危険なことをいたすのはまことに当を得ないというので、それに乗つておりました責任者である海軍士官を正式に懲罰にいたしました。また同様の事件の再発を見ざるような措置を講ずるということを申しまして、さらにわが方に対しまして正式に陳謝をいたしております。海上保安庁を通じて関係者にその旨を通達しております。なおその趣旨は第二十五回の合同委員会の記録の中に載つております。
  370. 勝間田清一

    ○勝間田委員 保安庁長官お見えになつておりましようか。
  371. 太田正孝

    太田委員長 追つて来るらしいですが、今まだ見えません。
  372. 勝間田清一

    ○勝間田委員 長官に早く来るようにひとつ願います。それではちようど副総理もここへお見えでありますから、副総理の見解も一つ承つておきたいと思います。今日やはり依然として明らかでないのは、保安庁の保安隊あるいは警備隊というものだと私は思う。今日非常な装備を持つている。これは御存じの通りだと思う。大砲やその他のものをたくさん持つている。同時に演習場は実はどんどん拡張を受け、あるいは要望をされるような事態が今日実際に見えると思うのであります。しかし御存じの通り、保安庁法は任務の遂行に必要なる武器を持つということになつているわけです。またその武器を使用するといつた場合の限度も実はおのずからきまつているわけです。そういう面から見まして、私どもは保安隊の精神、あるいは保安庁できめるべきものと現に行われている装備というものとは非常にかけ離れたものに進んでいるのではないか、私はそういう考え方を持つているわけですが、副総理はこれに対してどうお考えなつていらつしやいましようか。
  373. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私保安隊の実情を十分に承知しておりませんので、政府委員から御答弁いたします。
  374. 岡田五郎

    ○岡田(五)政府委員 今保安隊の保有しておる武器は、勝間田君のお尋ねによりますと、少し限度を越しておるのではないか、こういうような御質問ように承つたのでありますが、現在保有しております武器は、原則といたしまして保安庁法に定められました国内の平和及び安全を維持し、人命及び財産を保護する、こういう目的で、そういう事態に出動する際に、必要やむを得ざる最小限度のものを現在持つておると私は考えております。
  375. 勝間田清一

    ○勝間田委員 必要最小限度の武器を持つておるとおつしやいますが、それではどんな武器を持つておるか、ここで御発表願いましよう
  376. 岡田五郎

    ○岡田(五)政府委員 お答えいたします。今保安隊が保有しております武器というのは、武器の種類または数量の点もお尋ねのことだと考えるのでありますが、御承知ように、今保安隊が使用しております武器はアメリカ軍の好意によつて使用しておるのであります。これの数量その他の発表につきましては、秘密会をお開きいただきましてから発表さしていただきたい。実は外務委員会におきましてもさような御希望がございましたので、秘密会の形をとつていただきまして発表いたしたようなわけであります。
  377. 太田正孝

    太田委員長 数量だけでなくて、種類もそうですが。――では秘密会は別の機会にいたしまして、あとへ留保しておきまして、御質問を継続していただきたいと思います。
  378. 勝間田清一

    ○勝間田委員 別の機会ということよりも、明日ということにあらかじめ御準備願えませんでしようか。
  379. 太田正孝

    太田委員長 なるべく早くということにいたしましよう
  380. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは秘密会でこの武器の内容等御発表願いたい。早く申しますれば、これは今までの政府の答弁から申しますと、国内の平和、秩序、人命、財産の保護ということが実は問題とされておるわけであります。しかし同様のことは日本の警察法でも主張いたしておるわけであります。ところが実際に今度は警察がピストルを撃つというふうなことになりましても、ちやんと刑法できめた場合、あるいはその他の法令に基いた限度内において武器を使用するということになつております。しかもその武器を使用するということが、この警察法関係におきましては、明らかに危害を加えないということに限定がされておりまして、例外事項といえども殺していいとはどこにも書いてない。しかし今日において、国内の国民がいかなる事態にあるにいたしましても、警察法でもそういう配慮が行われて、人命というもの、人権というものの擁護が行われておると思うのであります。ところが保安庁関係の法律におきましては、残念ながら限定が抽象的であつて、そして結局人命、財産のみならず、生命の保護というものについては、何ら記されていないのであります。それだけに、今日持つ武器というものは、私は非常に重大なものであると感じられてならぬのであります。  そこで私は副総理にひとつお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、現在のこの保安庁法にいうところの、いわゆる任務を遂行するに必要な武器という一つの限定と、それから出動を行う場合においては、必ず一つの、合理的に必要とされる限度というものが、武器が使われるときの限度になつております。そうしますと、もしここに大砲とか、あるいは迫撃砲とかいつた尨大な一つの武器があるとします。その武器が任務を遂行するために必要なものであるかどうか、あるいは合理的に必要とされる限度としてそれが認められるような客観的な情勢が、今日日本国内にあるのか、そういう条件があつて初めて保安庁法が完全に守られて、武器が正当に使用されるということが合理化されて来ると私は思うのでありますが、そういう条件が今日あるのでしようか、その点ひとつお答え願いたいと思う。
  381. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいま仰せられましたような客観的な情勢があるかどうかは存じませんが、ただかつてのスペインの内乱のような、非常に大きな内乱も予想されますので、あり得ると考えますから、相当程度の武器も用意する必要があるのではないかと考えます。
  382. 勝間田清一

    ○勝間田委員 スペインの例をとられましたが、日本にそういう客観的な事実があるのかどうかということです。
  383. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今そういう情勢があるということを予見してはおりません。
  384. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今そういう情勢を予見しておらないで、もし過大な武器がこの秘密委員会で明らかになつて来るということになりますれば、それは明らかに保安庁法を逸脱して武器を持つておるということになりますが、いかがでございましようか。
  385. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 保安隊としては、あらゆる場合を想定して武器を用意しておく必要があろうかと思います。
  386. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理はこの前の本会議におきまして、戦争の危機は遠のいたということをはつきり申された。それは世界の外交官の共通の、最近では常識だということであります。そういう状態のもとにおいて、現在の国内に、現在保安隊が持つておるような過大な武器を使う条件は出て来ないと私は思う。この点については副総理からもう一ぺん、どうですか。
  387. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 それが過大であるかどうかという判定は非常にむずかしいと思います。保安隊において情勢を察しまして、必要であるという意味合いにおいて持つておるのであろうと思います。
  388. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いずれにしろこの問題は、保安庁長官が参りましたら、さらにお尋ねしてみたいと思うのでありますが、そこで現在保安隊が無制限に――無制限にというとおかしいのでありますが、そういつた状態を無視してどんどん拡張をされて行くという事柄から、非常に大きな影響を持つて参りますのは、言うまでもなく演習場等に対する予備隊の要請でございます。この演習場については、現在ではほとんど農民側といたしましては、これを拒否する権利というものがほとんどない。これは現在の駐留軍の演習場等と関連して私はそう思う。どこで一体農民が保護されるのか、どこに農民の主張の根拠が出て来るのか、それは政治の上で考慮しておるということを言われたにいたしましても、それを守るべき正当な基準というものが今日示されていない。だから合同委員会なり、あるいは予備隊関係ならば国内の、ある意味では政治勢力によつてきまつて来ておるという形になつておる。これが今日の農民に対する非常な不当な圧迫としてあると私は思う。ここに保安庁の政務次官にお尋ねしたいのでありますが、予備隊の演習場、訓練場等に対する計画というものをお示しを願いたい。
  389. 岡田五郎

    ○岡田(五)政府委員 お答えいたします。実は予備隊の訓練場、演習場、しかも演習場には小演習場、中演習場、大演習場、いろいろ計画はあるのでございますが、先ほど仰せられましたように、農地の関係、あるいは開拓地の関係というようなことでなかなか適地が現在見つかつておりません。現在二、三箇所駐留軍の演習場を併用させていただきまして、実はそれを使つておるという現状でございます。もちろんこの保安隊におきまして演習場を具体的にきめる場合には、農地及び開拓地というものを十分勘案いたしましてこれらにできるだけ迷惑のかからない程度において、最小限度の具体的な演習場を計画いたしたい、かよう考えておるのであります。
  390. 勝間田清一

    ○勝間田委員 保安庁長官ちようどお見えになりましたからお尋ねいたしますが、演習場、訓練場等の計画について今政務次官から非常に抽象的な議論が実はあつたのです。この前も増原次長が記者団発表を実はやつておるわけでありますが、なかなか厖大な演習場計画があられるようです。たとえば管区の演習場二万八千町歩とか、あるいは戦闘の射撃場が二万五千町歩、あるいはキャンプの訓練場が一万五千町歩というような、六万七、八千町歩も実はあるのではないだろうかと疑われる節が相当ございます。こういう計画を今お持ちになつておるわけなんですか。
  391. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのところでは、今仰せになりましたような、そういう大きな演習場は、ごく少数を持ちたいという考えで計画いたしておるのであります。各地に持つておるわけではありません。御承知通り、大きな人数をそこで訓練するのには相当の面積がいるものですから、それについて実は苦心しておるのであります。各所におきまするいわゆるキャンプで使いますものは、そう大きなものではない。これは相当数いるのではないか、こう考えております。
  392. 勝間田清一

    ○勝間田委員 できればここをひとつはつきりさせていただきたいと思うのでありますが、保安庁で本年度で要求せられる、現在要求せられておる一切のこれらに対する面積はどの程度でございますか。
  393. 山田誠

    ○山田政府委員 お答えいたします。現在までのところ――十一月末現在でございますが、農地をつぶしたところは一件もございません。射撃場、教練場につきましては次のような状況になつております。  先般来農林省といろいろ折衝の結果話がつき、かつ予算的措置も講ぜられて近く整備に着手いたしますのは、次のような所であります。射撃場、射程が三百ヤード、総坪数が十三万三千坪、これによつて整備される部隊が宇都宮、松本、豊川、福知山等でございます。その土地の状況は、大部分は山林が対象となり、一部開拓農地が含まれております。所有者別としましては、民有地、公有地、国有地それぞれにわかれております。次に教練場でございますが、総坪数は二十三万四千坪になつております。これによりまして整備される部隊は、大村、竹松、鹿屋、釧路と相なつております。土地の状況は、おもに開拓農地と山林が対象となつております。これの所有者別は、民有地と国有地にわかれております。  次に予算的措置が講じられて、目下土地の取得方につきまして、農林省と正式に折衝中のものといたしましては、次のようなものがございます。まず、射撃場につきましては、総坪数二十二万八千坪、これによりまして整備される部隊は、旭川、秋田、福島、高田、水島、米子ほか三箇所になつております。土地の状況は、開拓農地及び山林が対象となつております。これが所有者別は、民有地及び国有地になつております。次に教練場といたしましては、総坪数二百六十五万五千余坪になつております。これによりまして整備される部隊が、土浦、霞ヶ浦、久居、青森、福島、目違原、福岡、帯広等となつております。土地の状況は、開拓農地及び山林が対象となつております。これが所有者別は、民有地及び国有地に相なつております。  次に演習場につきましては、目下のところ一箇所も保安隊といたしましては持つておりません。これは演習地取得に伴う予算措置が、今なお大蔵省との間に未解決になつております。
  394. 勝間田清一

    ○勝間田委員 すでに済んだものと、それから現に予算措置もとつて折衝中のものと、それから演習場については、現在大蔵省とまだ折衝中のものがあるということを聞いておりますが、この演習場の計画というものは、一体どのくらいになるのですか。この御計画をひとつ聞かせていただきたい。
  395. 山田誠

    ○山田政府委員 演習場の計画といたしましては、これは大体教練場と小演留場、中演習場、大演習場にわけて考えております。教練場と申しますのは、大体三万坪でございます。原則として各駐屯地ごとに一箇所設置いたし、日常の基礎的訓練に使用するものでございます。次に小演習場といたしましては、約二十五万坪を予定いたしまして、原則として各駐屯地ごとに一箇所を設置いたしまして、小隊、中隊訓練に使用するものであります。次に中演習場は、約二百五十万坪を予定いたしておりまして、四つの管区がございますが、各管区ごとにおおむね三箇所を設置いたしまして、大隊訓練等に使用するものでございます。次に大演習場といたしましては、約三千万坪を予定いたしておりまして、各管区ごとにおおむね一筒所を必要とするものでありますが、この演習場においては、連隊演習及び国家部隊の小規模の射撃訓練を実施するものでございます。
  396. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これを見ますと、実に厖大なこれからの小演習場、中演習場及び大演習場の計画ですが、おそらく大演習場は大砲やその他を撃たれることと思うのでありますが、一体こういう保安庁の計画は、早くいえば現在の保安庁法の範囲を私は逸脱しておると思うのでありますが、こういう要請に対して、やはり農民の農地を保護して行くということが、一体どこまで今日守られておるのか、私はそのことを非常に残念に思うのであります。農林大臣は一体農地を保護する上において、どういう現在法的な基礎があるのか。あるいはその欠陥をどう補つているのか。これをひとつさきにお尋ねしたいと思います。ひとつまじめにお願いいたします。
  397. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 法的のこまかい基礎は、実はよく私承知いたしておりませんので、これは政府委員からお答えをしてもらいたいと思いますが、しかしお話のように、現在食糧を増産しなければならぬという一つの大きな使命があるのであります。しかもまた農民はその農地が生命でありますので、われわれといたしましては、これをでき得る限り被害を受けないように努力をいたしておるわけであります。また万やむを得ない場合には、これを買い上げて、それを十分補償するように努力いたしておるわけであります。
  398. 勝間田清一

    ○勝間田委員 農林大臣は新任早々かもしれませんけれども、もう相当古い大臣ですから、はつきりした見解があろうかと私は思うのでありますが、一体農地保護というよう関係の法律なりをつくつて、はつきり防いでおかなければ、木村さんの方からどんどんとられて行くということでは、これはとても農民の代表はできないだろうと思いますが、どうですか。
  399. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 実はこの前農林大臣をいたしておつたときも、農地保護法をつくろうという考えを持つてつたのでありますが、それのみでなく、無制限に広がつて行く都市の膨脹等に対しましても、ある程度の制限を加えなければならぬと考えて、農地を保護する立法をしたいと考えておつたようなわけであります。
  400. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今度は外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、駐留軍あたりから、新たに演習場その他についての注文が相当あろうと思いますが、この状況について、お話できればしていただきたいと思います。
  401. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今までのところは、既設のものを使つておりまして、独立後合同委員会等で話をいたしました結果は、多くは飛行場の滑走路の延長といいますか、御承知ように最近の飛行機でありますと、従来の滑走路では足りなくなりますので、この点がおもなるもので、その点では一部農地の必要な場合もありますが、これは伊丹等の事例でも御承知ように、地元の反対があつてやめた部分がたくさんあります。従いまして、農地をつぶすということは非常に少いのであります。それから大きな演習場は、これはほとんど使いものにならぬと言つては語弊があるかもしれませんが、従来とも北海道の奥であるとか、あるいは仙台の向うの方の所であるとか、山林としてもあまり役に立たないような所を使つておりましたが、そういう所で引続きやることにしておりまして、しかもそれも、たとえば落ちた枝をとりに行くとかいうようなことに妨げにならないように、合同委員会で話しております。もつとも非常に正確なことは、ただいま資料がありませんので、必要があれば後ほど資料でお答えいたします。
  402. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いずれにいたしましても、最近の状態から申しますれば、二、三の事例等をも経験いたしておりますけれども、ある場合には県庁も知らない。ある場合には住民も知らなかつた。たとえばある漁区については、いつの間にかそういう場所になつしまつたというような状態が、一面において行政上続けられている。他面においては、住民はしようがないから、陳情する以外にない。そして結局政府に押しかけて威力を発揮する以外に方法がなくなる、こういう状態において演習場や射的場に土地がとられて行くということは日本にとつてたいへん悪いことだと私は考える。こういう問題について基準というものを明白にして行ける方針がなければならぬと思うのであります。これについてはひとつはなはだ恐縮でありますけれども、副総理と外務大臣、農林大臣に所見を承りたいと存じます。
  403. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 保安庁長官からお答えを願います。
  404. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まことに、ごもつともなことであります。そこでわれわれといたしましては、なるたけ農民の迷惑にならないようにできる限りの方法を十分とつて行きたい。ことにやむを得ず農地を使わなければならぬという場合におきましては、十分な連絡をとつて、誤解のないように、了解を求めてやりたいという考えでおる次第であります。
  405. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは駐留軍に関する問題ですが、ただいまのところは、新しい演習場とか射的場というものを設けることは一切いたしておりません。また、従来のものを拡張するということも、先ほどの飛行場の滑走路はこれは別でありますが、それ以外はいたしておりません。ただいま合同委員会で演習場あるいは射的場についての交渉は、ほとんど全部が占領中につくられたものでありますが、その中に前に農地を含んでいた部分がありますが、その農地であつた部分を変更することの交渉にほとんど全部が費されております。従いまして駐留軍に関係する部分では、むしろ農地を離れて行くという方針でやつております。
  406. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 勝間田氏の質問要旨に沿うような事例もあつた事実がございますので、われわれといたしましては、そういう場合農民の直接の陳情を受けて実は困却したこともある。単に県庁が知らないのみならず、村長も知らないというような事例がありましたので、これに対しましては政府部内で相談をいたしまして、そういうことのないようにいたします。
  407. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最後に要望だけいたしまして失礼いたしますが、とにかく現在非常な混乱を与えておるのは、予備隊及びその他の演習場の問題でありますが、これに対する明確な基準というものを少くとも政府は持たるべきであるということ、それからやはり現在同じ一つの問題を扱つて参りましても、演習場の問題を扱うならば、特別調達庁、外務省、農林省あるいは保安庁等と、四つも五つも通わなければ一つの問題が片づかない。それほど今日の農民は困難をいたしておるのであります。こういう問題について親切な道を一つくるということが私は必要だと考えております。ましてや今日の賠償につきまして、私も経験いたしましたが、約三年前の賠償を今になつて払つてもらつておる。貨幣価値はどんどん下つてしまう。そうして今度新たな基準の補償の料金がきまつて来る。そうすれば一反歩について何千円という違いが出て来る。そこに基準の違いも出て来る。ほとんど今日までの状態は無秩序であつたといつても私は過言でないと思います。こういう問題を、どうかひとつしつかり御計画を願わないといけないのじやないかと私は考えます。また水利であるとか、それから飲料水の水源であるとかいつた問題も、現在山村には非常に多いのでありまして、こういう問題に対しての配慮も今日はまだほとんど行き届いていないという状態であります。これは農民の立場から申し上げたのでありますが、私は同時に国のためであると考えております。どうか政府はこれに対するはつきりした道をつくつていただきたい。これを最後にお願いして私の質問を終ります。
  408. 太田正孝

    太田委員長 勝間田君に申し上げますが、秘密会の問題はなるべく私はやめたい考えでございますが、政府のたつての要求でございます。議場の整理等もございますから、川島君の質疑あとで、時間もかからぬようでございますから、やりたいと思つております。さよう承知を願います。川島君。
  409. 川島金次

    川島(金)委員 時間も大分過ぎておりますので、本来ならば私は質疑を明日に譲つてほしい希望であつたのでありますが、与党側理事諸君並びに委員長からの希望もありますので、若干質問を申し上げることにいたします。意見を加えずに大あらましに私の方から質問を申し上げます。政府の方でも私が重ねて尋ねませんでも、ただちに了解の行くような、簡にして要領を得た御答弁をぜひお願いを申し上げたいと思うのであります。  なおこの機会に、今夜は野党側の委員の出席が非常にありません。これは補正予算をめぐつての野党の委員同士の重要な協議もございますので、そのために出席がありませんことは遺憾ではありますが、その点そういう事情にありますることを与党の諸君にも御了承を願いたいと思います。  私は何といいましても、今後の独立日本の経済をほんとうの意味で再建をし、安定から発展の姿に持つて参りますためには、政府においてもよほど重大な心構えでございませんと、容易ではないのではないかという感じが強くしております。ことに昭和二十六年から二十七年にわたりましてすでに内政費以外の経費とも目されまする問題は、いわゆる防衛支出金あるいは警察予備隊の費用、あるいは海上保安庁、安全保障諸費、連合国財産の補償費、さらに平和回復善後処理費、こういつた一連の経費がわが国の財政と国民生活の上に大きくたれ下つております。このために及ぼす国の財政の上の影響はもちろんでありますが、それがやがては国民生活の前途に大きな不安と懸念を与えておるということも、まぎれもないことではないかと思うのでございます。ことに平和回復善後処理費の問題につきまして、対日援助資金の問題、あるいは外債の処理の問題、あるいは賠償の問題等々が、黒雲のようにわが国の経済の前途には立ちはだかつておる、こういつた一連のことを考え合せますときに、日本の財政経済、国民生活の前途きわめて多難だと私はいわなければならぬのであります。こういう事態に当面しているにもかかわらず、吉田内閣はともすれば国民に向つてきわめて安易な経済財政上の暗示を与えて、いかにも日本経済がきわめてスムースな姿において安定し、前途安定から発展への曙光すらもあるかのごとくに宣伝をいたしますことは、きわめて私は重大な事柄だと思うのであります。それよりむしろ日本の財政、日本の経済そうして国民生活の実相をして、政府はすべからく率直に国民にこれを訴えつつ、政府はまた重大な責任を感じながら、いわゆる手放しの楽観論を振りまわすのみではなくして、むしろ真剣に事態に取組んで、日本の経済再建、国民生活の安定を通しての、真の意味の日本の独立を闘い取るというこの気魄を国民に示し、政策の上においてもその具体的、計画的な施策を実行すべき事柄こそ、きめわて重要なことではないかと私は思つておるのであります。そういう観点から私はお尋ねをいたすものでありますが、まず第一に、防衛支出金の問題につきましては、先般の本委員会においてもお話がございましたので、これを省略いたし、第二の警察予備隊の経費についてお伺いいたします。二十六年度と本年度と合せますと、八百五十億の厖大な経費に及んでおります。この厖大な経費について今日までどのように支出され、どのように使われて来ておるかということをまずお伺いしたいと思います。
  410. 河野一之

    河野(一)政府委員 今年度に計上いたしてあります保安隊の経費は五百四十億でありますが、前年度からの繰越しを入れまして、大体七百二十億程度に相なつております。そのうち大体二百二、三十億ばかりが契約分でありまして、なお五百億程度、これはたしか資料でお手元に差上げてあると思いますが、いろいろな事情で調達が遅れて、まだ支出済みになつておらず、契約未済のものが残つております。
  411. 川島金次

    川島(金)委員 まだ使用されない分が五百五十億、この五百五十億は今後二十七年度中の見通しにおいてどういう形になりますか。率直に申し上げますと、はたしてこの五百五十億の残が、二十七年度中に完全に消化されるという見通しを持つておるのか、どういう形でありますか。
  412. 河野一之

    河野(一)政府委員 私からお答えを申すのもいかがと存じますが、保安隊における装備その他におきまして、いろいろ特別の規格その他があつて、試作をやつておるものがございまして試作後において正式な契約をいたすというようなことで、調達が相当遅れておるのでございますが、そういう段階も過ぎましたので、今後相当契約が進むと思つております。また今年度増員いたします三万五千人分の装備の内容その他について、いろいろ検討を加えておりました関係上、契約がまだ進んでおりません。しかし大体残額は年度内に契約はほとんどでき上る見込みでおります。
  413. 川島金次

    川島(金)委員 では同じ意味におきまして、海上保安庁費の二十六、七年度を通じましての実情は、どういうふうになつておりますか。またその見通しを詳細に承つておきたい。
  414. 河野一之

    河野(一)政府委員 二十七年度の予算額は保安庁の警備隊関係を入れて五百七十七億、前年度からの繰越しが百五十一億、合計いたしまして予算額が七百二十九億、十一月三十日現在において二百八十億契約をいたしておりまして残り、四百四十億ばかりが契約未済、但しこれは人件費等も含めてでございますから、主として中心になります機材、装備の関係で二百八十九億ほど契約未済になつておる、こういう関係でございます。海上警備隊の関係につきましても、これは船舶の引渡しが遅れております関係上、ことにこれにつきましては、協定について国会の方に御承認を求めておる関係もございまして、従つてその関係の経費の支出が遅れておるのでありますが、これは引渡しを受けました以後急速に支出ができるものと考えております。
  415. 川島金次

    川島(金)委員 次いでお尋ねいたしますが、連合国財産補償費、これは二十七年度でございますが百億あります。これがどの程度今日まで使われて参りましたか、またどういう内容であるか、今後の見通し等もお伺いしておきたい。
  416. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは御承知ように各国から補償の要求がございまして、これについて審査をいたすわけでございます。正確なことは記憶いたしておりませんが、百二、三十件ばかり現在のところ来ておると思います。年度内におきましては、これはたしか平和条約発効後九箇月以内だつたかと思いますが、請求を出すようなつておりまして、順次来ておりますが、現在のところの見込みといたしましては、年度内に三十億程度の支出になるのではないか、ある程度は翌年度に繰越されて行くのではないか、これはいろいろ具体的に関係各国と交渉する段階もございますので、遅れておるわけでございます。
  417. 川島金次

    川島(金)委員 そこで、すでに見通しのついたものが三十億、残りが七十億ある。この百億だけで、大体この問題は解消するという見通しになつておるのかどうか。
  418. 河野一之

    河野(一)政府委員 これはこの前の国会で申し上げたと思うのでありますが、われわれの大体の見込みでは、総額二百七十億くらいになるのではないだろうかということであつたわけであります。これは法律にもございますように、毎会計年度百億ということで、今年度は百億、しかし明会計年度も百億ということに一応はなるわけで、これはやつてみませんと、実際の補償額がどの程度になりますか、それによつてきまるわけでございますから、何とも申し上げかねます。
  419. 川島金次

    川島(金)委員 そうすると、二十八年度の予算にも百億は頭を出して来るということに了解してよろしいですか。
  420. 河野一之

    河野(一)政府委員 その辺のことは明年度のことでございますので、まだ何とも申し上げかねますが、今後各国から相当請求が参りまして、その進捗状況いかんにかかると思います。何しろ非常に複雑な法律で、その補償の算定その他非常に複雑なものでございますので、事務の進捗いかんにもよりますが、これは平和条約で課せられた義務でありますので、誠実に正確に、できるだけ早く履行いたしたいと考えております。
  421. 川島金次

    川島(金)委員 次に平和回復善後処理費の問題に移りまして、二十六年度と合せて二百十億、この平和回復善後処理費は今日までどのくらい使われて、どういう内容のものであるか、また今後の見通し等について伺います。
  422. 河野一之

    河野(一)政府委員 これはこの席で前回お話申し上げたのでありますが、二百十億のうち現在まで出ておるものは、たしか十一億くらいであつたと思います。しかしその後に、今月の二十二日に支払いいたします外債の関係が百三十七億、その他を入れまして大体百七十億くらいは現在のところ支出が確定いたしており、残り四十億くらいがありますが、これは今後の対外債務の処理その他いろいろの経費にあてられるであろうと思いますが、これは今後の対外折衝の進捗いかんによりますので、何とも申し上げかねます。
  423. 川島金次

    川島(金)委員 今まで支出されて来ましたおもなるものをあげていただきたい。
  424. 河野一之

    河野(一)政府委員 これはどんなものかと申しますと、大きなものでございますと、羽田の飛行場がこちらへ返つて参りましたので、その飛行場の維持運営費を出しております。これが三億三百万円、それから大鳥島におきまして気象の観測を従来終戦処理費でやつてつたのでありますが、平和条約成立後これはわが方でやつております。しかしこの分の金は向うからもらつております。それからX点、T点と申しまして、三陸沖及び土佐沖において気象の観測をやつております。これも従来終戦処理費でやつておりましたものを今回向うの金でもつてこちらでやつております。それが三億一千七百万円、それから連合国財産の返還関係で、いろいろな調査委託の経費が約二億ほどございます。それから解除物件、従来終戦処理費でやつておりました物件、これは解除になりましたものを現在でもかかえておりますので、これを処理する経費、これが約五千万円それから賠償財産、指定を受けました財産が、これが平和発効後解除になつたわけでございますが、それをそのまま放置するわけにも参りませんので、いろいろな手入れその他の管理の委託をいたしております。これは外務省関係でございます。そういう金が二千万円。ざつとそんなものでございます。
  425. 川島金次

    川島(金)委員 さらに今後予定されておる百三十七億のおもなるものはどういうものでございましようか。
  426. 河野一之

    河野(一)政府委員 これはこの前も申し上げたのでございます。
  427. 川島金次

    川島(金)委員 それならよろしい。それでは私もお尋ねするだけで、詳しいことは同僚からあしたやることになつておりますから、次へ移ります。  そこで先ほど申し上げましたように、これらの諸経費のあります上に、さらに対日援助の返還の問題があります。この対日援助の問題につきましては、目下いろいろと政府でも何か苦慮をされておるようでありますが、ことに対米債務の問題について、最近何かアメリカから具体的な申入れなどがあつたようにも伝えられておりますが、そういうことがあつたのか。それであつたといたしますればどのような内容のものであるか。公表のできるものでありますれば、公表してもらいたいと思います。
  428. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと前でありますが、アメリカ側から申入れがありました。それは要するによく普通にいわれますガリオアとかイロアとか、その他放出物資とか、いろいろなものがありますが、これの確認と申しますか、そういうものについて詳細具体的な打合せ交渉をいたしたい、こういう趣旨であります。
  429. 川島金次

    川島(金)委員 政府はこの対米債務のうち、ことに対日援助資金を、全額これを対米債務として確認をし、それを支払うという心構えであるか、それとも今後の折衝によつて、この対米債務は何らかの形で軽減をされて行くという見通しを持つておるのか、その辺の事情などについて話を承つておきたいと思います。
  430. 向井忠晴

    向井国務大臣 いわゆる対日援助資金につきましては一応債務と心得てはおりますが、その内容、金額、条件等は、今後の話合いにまちますところでございます。援助資金の返済が、わが国の経済にとつて過重の負担とらないように努めますし、またそうなることがないというよう考えております。
  431. 川島金次

    川島(金)委員 政府は日本の経済の現実に即し、また国民生活現状に即して、この対米債務をどのくらいに――ほんとうの腹を割打つてみれば、俗な言葉でいえば、軽減をしてもらいたいというような一つの方寸もあろうかと思うのですが、そういつた方寸にのつとつての話合いをまだ一度もしておらないのですか、どうなのですか。
  432. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まだこれは話合いをいたしておりません。
  433. 川島金次

    川島(金)委員 それではお伺いいたしますが、つい二、三日前の新聞によりますと、政府ではアメリカへ三億円、オーストラリアへ六億円を支払つたというのです。これはどういう性質の金であるのか。対日援助のものであるのか、それとも他の費目に属する債務として支払いを行つたのか。支払いの事実があつたとすれば、その内容を聞かせてもらいたいと思います。
  434. 向井忠晴

    向井国務大臣 そういうことは存じません。
  435. 川島金次

    川島(金)委員 外務大臣は御承知ありませんか。
  436. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もそれは知らないのですが、何か外務省関係のものではないのでないかと思います。
  437. 川島金次

    川島(金)委員 新聞記事をそのまま読みますと、「オーストラリア政府は昨年、占領中の医療品など払下げ余剰物資代金約九億円を支払つてもらいたいと申し入れ、これについて当時、総司令部を仲介として話し合つた結果、米国の余剰物資代金の取扱いと差別しないとの了解のもとに、政府はとりあえず米へ三億円、オーストラリアへ六億円を支払つた。オーストラリア政府は本年に入つて、残額の支払いを要求して来たが、政府はこの要求に応ぜず、懸案となつている。」こういう記事でございますが、これは心当りはないのでありますか。
  438. 河野一之

    河野(一)政府委員 わかりました。それは占領中におきましていろいろな放出物資がございました。そういうものを日本の方に渡してもらいまして、それを貿易会計で売つております。そのほか鉄道の車両などがありますが、その代金を貿易会計として持つて、現在にも引継いでおるわけであります。その分を一部返してもらいたいという話がありまして、過去においても一部そういうことは履行いたしたこともあるのでありますが、平和発効後におきましてはこれは一般の債務と同様に一括処理してほしいというようなことで、現在交渉いたしておるような次第であります。
  439. 川島金次

    川島(金)委員 政府は、この対日援助資金、概算いたしますと、二十億ドル以上に及んで、日本経済にとつては、きわめて厖大な経費に上つておるのでありますが、この対日援助というのは、この前の議会のこの委員会でもちよつと問題になつたのでありますが、政府があらかじめ国民の負担に帰するような契約をいたします場合、あるいは新たなる支出をいたします場合は、必ず事前において国会の承認を求めなければならないというのは、これは憲法の条章にまつまでもなく、明白に規定された問題であります。ところがこの対日援助資金がいつの間にかわれわれが予想しておつたのと違いまして、明確な日本の債務になり、国民の負担になるということが今日明らかにされて来たのであります。これは私は憲法の条章に照しまして、どういたしましても納得の行かない政府のやり方ではなかつたかと思うのであります。対日援助資金が将来日本の国民の負担であり、政府は支払いをしなければならぬという債務契約であるといたしますならば、事前に国会の承認を求め、国民を納得せしるに足るだけの処置をとらなければならなかつたはずであるにかかわらず、それがなされなかつたということは、――これは大蔵大臣と新たなる副総理にお尋ねをいたすのでありますが、憲法の条章と、この対日援助資金の返済という問題は、何らの矛盾がないものとお考えなつておるかどうか。新しい大蔵大臣と新しい副総理にお尋ねしておきたいと思うのであります。
  440. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。対日援助は占領軍の占領政策の一環としてなされたものでありまして、契約による債務負担ではないのであります。しかも日本側といたしましては、この援助の趣旨に従い、従来から債務と心得ておるとお答えしておりますが、現在でもその債務は未確定である状態においてかわりはないのであります。債務の範囲、内容及び支払に条件等は、今後両国間の協議によつてきまるものであるのでありまして、この協議が成立し、わが国が支払うべき債務として確定した場合は、国会に提出すべきものであると考えております。そういう意味におきまして憲法違反ではないと考えております。
  441. 向井忠晴

    向井国務大臣 私も緒方さんの言われたとまつたく同じ御答弁を申し上げます。
  442. 川島金次

    川島(金)委員 私は緒方さんの言葉にもまことに似わぬと思うのであります。およそ憲法のたしか第八十五条だと私は記憶いたしておりますが、この条章によれば、ただいま申し上げた通りで、あらかじめ国会の承認を経なければならぬということが明記されておるのであります。それを対日援助と称して、ありていに言えば、かつて国会が満場一致でこれに対する感謝決議などをやりました。その感謝決議をやつた底に流れるわれわれの意識というものは、これに対して、将来債務となるのだという感じはわれわれはその当時持つておりませんでした。またこの委員会その他において、政府に当時質問をいたしましても、それは債務ではないという明確な答弁をしたこともあるのであります。そういう形におきまして、従つて日本国民もまたこの対日援助に対しましては、将来返還をするというよう事情は生じないであろうという観測を持ち、それを期待しておつたのであります。しかるにかかわらず、それが突如として昨年来明確な債務ということに政府の口から発せられるように変化をいたして参つたのであります。対日援助の問題については、日本の経済、国民の生活の上に非常な助けとなつたことは私といえども否定はいたしません。しかし国民がそう思い、政府もそういうふうに国民に説明いたして来たものが、突然に債務になつてしまう。しかもその額の内容についてはこれからの折衝でありまして、あるいは軽減もされるでありましよう。しかし全額を払わなければならないかもしれません。いずれにしても額の内容は問うことではございません。ただ、こういう形において、いつの間にか国民の債務になり、国民の負担となるという形をとりましたことは、何といつて政府は国民に対して不信のやり方ではなかつたかと思うのであります。初めから国民に対し、この対日援助は債務であろう、確定はしておらぬが、将来は債務になるであろうというような、明確な政府の国民に対する説明があつたといたしますならば、また別でございますが、そういうことではなく、今申し上げました通り事情であつたのであります。しかも国民が知らぬ間に、ある一定の資金がやがて国民のふところから支払われなければならぬというふうになることは、国民にとつても、その点に関する限りにおいては、まことに迷惑千万なことであると思い、同時にまた憲法上の明白な規定からいたしましても、重大な疑義がある行為であると私は信じて疑わないのでございます。この点の憲法論はいくら繰返しましても、フリゲートと同じように、政府とわれわれの見解が違うのでありますから、これ以上論議はいたしません。  そこで時間がございませんから次に移ります。次は外債の問題であります。この外債も今日どのくらいあつて、しかもこの外債の支払いについては、今日政府はどういうふうな心構えになつており、具体的な準備があるのかどうか。その点についてまず伺わせてもらいたい。
  443. 石田正

    ○石田政府委員 数字の点について申し上げます。大体現在までにおきまして、外債も元本額を円で評価して計上いたしますと、一千四十七億円に相なつております。それから十二月二十二日までに未払いとなつておりますところの利子の累計額は、円にして六百三十一億円、合計して一千六百七十九億円、大体一千六百八十億円というものがこの十二月二十二日における政府の債務でございます。この処理方法といたしましては、この前にも補足的に説明を申し上げましたが、要旨は元本の償還期限を十年間ないし十五年間に延ばしてもらう、それから過去の六百三十一億につきましては、十年間を越えます分――ちよつと半端が出ますが、その分は十二月二十二日に現金払いをいたしますが、十年間に相当いたしますものは、今後十年間に分割して払うということにしてもらう、こういうことにいたしたのでございまして、その結果、本年度におきまして、どれだけの負担に相なるかという問題につきましては、大体利子の支払いの分と、それから減債基金の充当額とを合せまして百二十一億、先ほど百三十七億というよう数字がございましたが、これは会議いたしまして協定を妥結するに至りました前後におけるところのいろいろな経費、あるいはこれから支払いをいたします手数料、その他諸般の経費を計上いたしまして百三十七億というよう数字になるわけでございます。なお、来年度の負担といたしましては、大体元金の減債基金による一部償還分と、未払い分とを合せまして、大体百三十七億円ぐらいに相なるのではないか。それに手数料が加わりますが、手数料等の点につきましては計算がまだ未済でございます。
  444. 川島金次

    川島(金)委員 この外債問題について、さらにもう一つ明らかにしてもらいたいのは、この外債の中で、私は問題点が若干あるように思うのであります。たとえば満鉄の出資の関係での借り入れた金、あるいは朝鮮のでしたか、東拓の借入れの問題、台湾電力の開発あるいは運営資金のために借り入れたもの、これらに該当する外債というものは、元利合計で今日どのくらいありましようか、それがわかつてつたら……。
  445. 石田正

    ○石田政府委員 数字の点について申し上げます。大体満鉄の五分利英貨債は未償還元本額にいたしまして、三百四十六万六千ポンドばかりでございます。それから未払い利子の累計額が百九十万六千ポンドばかりあるわけでございます。英貨債といたしましては、それだけでございます。その両者の合計は大体五百三十七万二千ポンドございますから、大づかみにいたしまして約五十四億近い数字になるわけでございます。それから米貨債の方でございますが、米貨債は東拓の関係と台湾電力の関係がございます。この両者を合せまして元本額の方が約一千六百万ドル近くございますし、未払い利子の累計額が一千万ドル見当でございますので、大体二千六百万ドル見当と相なつております。これに三百六十円をかけましたものが円額と相なる次第であります。
  446. 川島金次

    川島(金)委員 そこでこれは外務大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、一体この満鉄の問題にしても、東拓の問題にしても、台湾電力の問題にしても、わが国が借金をいたしまして施設をし、運営をして来たもの、しかも今日その施設の場所はソ連が接収しておる、あるいは韓国が持つておる、あるいは台湾政府がこれを使用しておる、こういう問題については、私は日本経済実情から申し、あるいはまた実際処理の上から行きましても、これをしも日本が負債として背負い込んで行き、それを返して行かなければならぬということは、ちよつと国民的な立場、国民的な感情の上から行きましても、簡単に納得ができかねる点があろうと私は思つておるのであります。しかるにこの外債の処理の問題につきましては、外務大臣はこの問題について何ら考慮をされない形において、処理をいたそうとしておりますが、この問題はなぜ、外相といたしましてまた政府として、何らかの考慮をいたし、しかもその考慮の上に立つて折衝をするという心構え、あるいは積極的な折衝をしなかつたのか、あるいはしたのであるけれどもだめだつたのか、その点のいきさつをひとつ聞かしてもらいたい。
  447. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この満鉄とか東拓とか台湾電力とかの社債は、終戦前にすでに政府において承継したものであります。そこで講和条約の第十八条によりますと、「日本国は、日本国の戦前の対外債務に関する責任と日本国が責任を負うと後に宣言された団体の債務に関する責任とを確認する。」こういうことになつておりまして、これらのものは終戦前に政府が承継するということにいたしましたために、やはり日本の債務として考えざるを得ないものと私は思つておるのであります。そこでただいまおつしやるように、これらの社債の借入金でつくりましたいろいろの施設は、満州、韓国、台湾等にあるのでありますから、この点から今後これも平和条約に規定がありますが、これらの地域との間に、この請求権等の処理関しては、関係国とおのおの交渉をするということになつております。この処理の問題について話合いをなすときは、日本でこういう債務を承継して支払つておるのだからという点は、十分考慮に値するものと思つておりますが、今この際これらの資産がここにあるからといつて政府のすでに承継しました債務を否認するような措置はとるべきでないと考えておるわけであります。
  448. 川島金次

    川島(金)委員 私は何も、日本の立場においてこれを否認しろという意見のものではございません。ただそうした実情に即した立場において、私はこれに何らかの積極的な考慮を政府が払い、そのもとにおいて折衝を事前においてすべきではなかつたかと思う。また今後においても極力この問題は実態が実態であります。日本にはないのであります。しかも日本が少からぬ負債を負つておるにかかわらず、その施設は外にある。それで日本国民が何らそれについて恩典にあずかつておらないという実情である。ことに外国の利用にまかされてあるというこの実態にかんがみまして、私は今後とも政府は何らかの措置をもつて折衝する必要があるのではないか、こういうふうに思うので、お尋ねを申し上げたのであります。  それから最後に賠償の問題でありますが、本日の新聞によりますと、マニラのAFPの外電の報道でありますが、「フィリピン外務省は九日午後、日比賠償交渉の舞台は東京からマニラに移り、討議は急速に進められることになつたと、大要次のようなコミニユヶを発表した。」いよいよこの日本とフイリピン間におけるところの賠償の交渉がマニラに移つて、具体的な折衝に入るという、これは外電でありますが、こういうことになつているのかどうか、その点を承りたい。
  449. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは前々からいろいろの委員会等で申し上げておりますように、賠償の問題の話合いはなるべく早くまとめ上げたいと考えて、東京でもいたしております。現地でもいたしております。またこれはフィリピンだけでありませんで、他の国々とも下話の程度でありますが、やはりいたしております。
  450. 川島金次

    川島(金)委員 この報道によりますと、十八日には倭島日本外務省アジア局長がマニラを訪問すると断定して報道しておりますが、そういうことになるわけでありますか。
  451. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは明年の一月六日から三日間、ニューデリーでアジアの公館長会議と申しますか、大使、公使あるいは総領事等が会合いたしまして、相互のいろいろの事情を説明したり、あるいは通商貿易の促進工作と申しますか、お互いに意見を交換したりする会議をいたします。そのために担当のアジア局長はそこに出席するのでありますから、その前と後におきまして、管轄地域であるフイリピンとかインドネシヤあるいはビルマ、タイその他セイロンとか各地をまわりまして、在外公館の設備がどうなつておるか、また館員に手不足はないかあるか、その他いろいろの事情を現実に調べて参るわけであります。その節に旅程によりまして、はつきり日は私覚えておりませんが、今月の中旬なり下旬――下旬でありましよう。マニラにも寄ることになつておりますが、その節そういう話も、アジア局長が行けば、自然出ることと思いますが、目的は必ずしもそれというわけでないのであります。
  452. 川島金次

    川島(金)委員 外務大臣としてこの賠償の問題は、日本の経済財政、国民生活にとつてきわめて重大な問題でありますので、少し無理かもしれませんがお尋ねしておきたいのですが、これら賠償の問題について、政府はどのような見通しを持つておられるか。あらましのことでよろしいのですが、その見解が発表でさましたら、発表しておいてもらいたい。
  453. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろ唱えられております。たとえば現金賠償であるとかその他のことが言われておりますが、政府としては平和条約の規定の範囲内で実行いたしたい。もつとも元来この賠償を支払うというのは、その国の経済が日本軍の占領によつて非常に痛手をこうむつた、その痛手を回復するという意味でありますから、目的はその損害の回復にありまして、その手段として賠償の支払いということがあるわけであります。従いまして、他の手段によつてこういう経済上の損失が回復できれば、それでも目的が達せられるわけであります。従いましてわれわれとしては賠償の実行ということと同時に、たとえば経済の開発であるとか、あるいはその他技術者の養成とか、いろいろの手段があろうと考えております。これらをできるならば併行して行つて、それによつて相手国の経済の回復をはかり、同時にそれによつて相手国が多少なりともゆたかになれば、また日本の品物も貿易上よく売れるということもありましようし、また両国間の国民の感情も改善して来る、こういうようなつもりで、賠償自体としては平和条約の範囲内で行うつもりでおりますが、その他の一連のこういうやり方を、できるならば相手国の理解の上で行いまして、こうして両国間の国民感情の改善等に資したい、こういうふうに考えておるのであります。
  454. 川島金次

    川島(金)委員 今の外相の話では、平和条約に規定した生産や沈船の引揚げあるいは役務の範囲において、賠償に応ずるという心構えで臨むということであります。それもまた当然だと思うのでありますが、いろいろの事情で、この平和条約に明記されました三項目以外、すなわち現金で賠償に充てなければならぬというようないわゆる金銭賠償、こういつた事柄は絶対にないということを国民は了解しておいてよろしいのかどうか。あるいは今後の賠償問題の折衝のいかんによりましては、この平和条約に明記された以外のいわゆる金銭賠償も、ときによつてまたやむを得ない事情が起るであろう、その場合にはまた政府考えなければなるまいという建前をもつて今後進むのかどうか、その点の腹構えをひとつ明らかにしていただきたい。
  455. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのところ政府としては、今申しました通り、全体の賠償につきましてまだ正式な交渉に入つておりません。従つてはつきりしたことは申し上げられないし、また相手国の意見も聞かずに、いきなりこちらのやることはこれだけだというわけにも行きませんけれども、ただいま考えておりますのは、平和条約の範囲内、こう思つておりますし、またこれで相手国も多分納得するのではないかという期待を持つております。但しこういうことはあり得ると思うのです。たとえば沈船を引揚げる。この沈船はその国の沿岸にあります。公海にありませんから、その国のものといえるかもしれませんが、要するに日本の船が沈んでそこにおつた。それを引揚げる。そこでそのスクラップを日本が買つた場合は、現金がそれだけ行くわけであります。もつとも日本にはスクラップが来るわけであります。こういう意味のことを現金と勘定されればまたそれでもさしつかえない、私はこう思つておりますが、要するに趣旨は平和条約の範囲内、こう考えております。
  456. 川島金次

    川島(金)委員 時間がおそくなりましたから、結論に入りたいと思います。われわれはいろいろ政府にただいま大づかみに尋ねたのでありますけれども、結論的に申し上げますと、前段に私が若干申し上げました通り政府のいわゆる戦力にあらざる戦力、軍備にあらざる軍備の、いわゆるいうところの自衛力の漸増をまず考えておる。その一方においては外債の処理が当面に横たわつておる。さらにまたどのくらい厖大なものになるかわからぬが、とにもかくにも対日援助資金は、憲法違反であろうとなかろうと、その問題は政府の責任においてこれを返還いたして行かなければならぬという問題がまず横たわつている。その上にこれまた前途予測しがたいような賠償の問題が大きくわれわれの前途に横たわつているという実情であります。こういう各種のことを考えてみますときに、この日本の底の浅い経済力、しかも国民の生活の実態は、政府の宣伝するがごとくではなくして、かえつてきわめて困難ないばらの道を歩んでいるというのが国民生活の実態であります。こういう日本の経済と国民生活実情の上に立つて、しかも政府は一方的に防衛力を漸増しようとし、そのために内政費がきわめて大幅に削減されて行かなければならない。その上にさらに今の外債の支払い、対日の援助、あるいは賠償等の問題を考えてみますときに、まつたく日本の経済、日本の財政の前途というものは重大なものであるといわなければなりません。こういつた事柄を考えてみましたときに、政府がいたずらにただ野放しの日本の経済再建政策をとつて行きますことは、これらの問題を最も計画的に、最も巧みに処理をしながら国民の生活をも守つて行くということが、きわめて不可能なことになるのではないかと思うのであります。一切の対外債務を逐次支払い、また防衛力を漸増し、しかもその上に政府が言うがごとく減税も大幅にやるわ、国民の生活は安定せしむるのだと、言葉では言つておりますけども、実際においてはそれが次第に不可能な事柄に追い込まれて行くのではないかということを、国民は最も憂慮いたしておるのであります。  そこで私は最後に緒方官房長官並びに大蔵大臣にお伺いをいたすのでありますが、この種の問題を条件として出発して行かなければならない独立後の日本の経済財政、国民の生活、こういつた一連のことを考えた場合に、何らか政府においては計画的な一つの施策を打立てなければならないと私は考えるのでございますけれども、副総理である緒方さん並びに大蔵大臣向井さんに、最後にこの問題についての見解と所信とをお伺いして、私の質問を終りたいと思います。
  457. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。敗戦のあととは申しながら、仰せられますように、国として、国民としてまことに大きな負担を背負つておるわけであります。お言葉のように、国の前途はいばらの道ということに尽きるように思います。この間に処しまして、政府はできるだけ適切な施策をいたしまして、この困難なる前途を、なるべく早い時間に切り開いて参りたい。政府がこの任期の間の政治の基調を国民生活の安定、充実に置くと申しておりますのも、その意味にほかならないのであります。政府も懸命の努力をいたしますと同時に、国会の十分の御協力をお願いいたしたいと存じておる次第であります。
  458. 向井忠晴

    向井国務大臣 あなたのおつしやいました通り、非常にむずかしい時勢と存じますが、しかし不可能とまでは断言はできないのであります。私は実は初めから日本の情勢というものは、そう安易なものではないということは思つておりました、そこでこれを財政収支の償いますように、また同時に国力の回復のできますように、あらゆる方面から施策もしましようし、努力もいたしたいと思います。
  459. 川島金次

    川島(金)委員 今のお話ではちよつと心細いのであります。私の尋ねたことは、計画を持たずして、従来の吉田内閣の施策の看板である自由主義経済的な施策で、この苦難ないばらの道を歩んで行かなければならぬ、日本経済の再建、国民生活を守るということが、はたしてできるかどうか、その点についての見解をあらためて伺つておきたい。
  460. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいま私が申しましたことは、あるいは言葉が足りなかつたかもしれませんが、計画経済という形にして行くことは私は考えておりませんが、しかし計画を立ててこれからの財政あるいは施策を進めて行きたいということは考えているのであります。
  461. 川島金次

    川島(金)委員 今の大蔵大臣の言明によりますれば、今後は吉田内閣の自由主義経済の方向をかえて計画経済に入つて行くであろう、こういうことに了解をいたしまして私の質問は終ります。     〔「違う違う」と呼ぶ者あり〕
  462. 向井忠晴

    向井国務大臣 私は初めに、計画経済は不賛成であると申し上げたのでございまして、ただやることを計画を立てて進んで行こうと存じております。
  463. 太田正孝

    太田委員長 ただいまより本委員会を秘密会といたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  464. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつて秘密会とすることに決しました。委員及び関係者以外の方の退場を求めます。  なおこの際お諮りいたします。衆議院規則第六十三条但書によつて、当秘密会の記録はこれを特に秘密を要するものと決議して、これを印刷配付しないことにいたしたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  465. 太田正孝

    太田委員長 御異議がなければ、当秘密会の記録は特に秘密を要するものと認め、これを印刷配付しないことに決しました。      ――――◇―――――     〔牛後七時二十一分秘密会に入る〕     〔午後七時四十分秘密会を終る〕      ――――◇―――――
  466. 太田正孝

    太田委員長 これにて秘密会を終ることといたします。  それでは本日をもつて一般質問は一応終ることとし、明日は締めくくりの総括質疑を行うことに予定しておりましたが、内閣総理大臣が病気のため延期いたします。  次会の開会の日時は公報をもつてお知らせいたします。  なお明日午後一時より理事会を開きます。  これにて散会いたします。     午後七時四十一分散会