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1952-12-09 第15回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月九日(火曜日)     午前十一時四十八分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君    理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君    理事 勝間田清一君         淺利 三朗君  石田 博英君         植木庚子郎君  植原悦二郎君         岡本  茂君  加藤常太郎君         北 れい吉君  重政 誠之君         島村 一郎君  田子 一民君         塚原 俊郎君  永田 亮一君         永野  護君  灘尾 弘吉君         西川 貞一君  貫井 清憲君         原 健三郎君  本間 俊一君         南  好雄君  森 幸太郎君         山崎  巖君  北村徳太郎君         小島 徹三君  櫻内 義雄君         鈴木 正吾君  中曽根康弘君         古井 喜實君  松浦周太郎君         宮澤 胤勇君  石井 繁丸君         河野  密君  西尾 末廣君         西村 榮一君  平野 力三君         伊藤 好道君  稻村 順三君         成田 知巳君  八百板 正君         横路 節雄君  福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君        国 務 大 臣 大野木秀次郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         内閣官房長官 菅野 義丸君         人事院総裁   淺井  清君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         通商産業事務官         (大臣官房長) 永山 時雄君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十二月九日  委員川崎秀二君及び上林與市郎君辞任につき、  その補欠として井出一太郎君及び横路節雄君が  議長の指名で委員に選任された。 同日  井出一太郎君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。昨八日理事井出一太郎君が委員を辞任され、本日さらに委員に選任されました。理事一名が欠員になりましたので、先例によりまして、その補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつて委員長井出一太郎君を理事に指名いたします。
  4. 太田正孝

    太田委員長 なおこの際御報告いたします。当委員会運営につきまして、先刻理事会を開き、質疑期間等について協議をいたしまして、次のように申合せをいたしましたから御了承を願います。質疑は本日及び明日の二日間を保留質疑及びもつぱら予算案数字的内容にわたる事項を中心とする一般質疑に充てまして、明後十一日(木曜日)に締めくくりの総括質疑行つて、同日に質疑を終了することとし、その後の確定的日程についてはさらに理事会において協議することに申合せをした次第でございます。右御了承を願います。  それでは昭和二十七年度一般会計予算補正外二件を一括議題として質疑を行います。原健三郎君。
  5. 原健三郎

    ○原(健)委員 私は主として地方自治の問題、また地方自治制度について、本多国務相に質問をいたそうとするものであります。  今日地方自治制度が、非常に重大問題となつて参りまして、政府もこれを放任することができないと考えまして、地方制度調査会というものを政府がつくりまして、これで調査研究をさそうという腹をきめておられるそうであります。それでこの際地方自治問題について、いろいろお伺いいたしたいのであります。  第一に、総括的な問題として、昔からこれは非常に議論のある問題でありますが、地方分権主義で行くのであるか。それとも中央集権主義で行くつもりであるか。これが根本的な問題となつて諸般の問題がわかれて来るのであるが、これについて政府所見を承りたいのであります。
  6. 本多市郎

    本多国務大臣 政府といたしましては、地方自治強化拡充ということが、刻下の急務であると考えておりますので、勢い地方自治を振興するという方向に行きますことは、地方の自主的な財源を充実し、さらにまた権力の面におきましても、国の認可、許可の権限を整備する。さらにまた委譲する行政事務についても、同じ方向へ参りますから、地方分権方向へ向つておるものと考えております。
  7. 原健三郎

    ○原(健)委員 政府地方分権主義で行くという決意を表明ざれたことは、著しき進歩であります。今までであると、どつちを向いているかわからない。右を向いたり左を向いたりいろいろしております。それが地方分権主義で、地方自治確立のためにやりたいという決意は、非常にうれしく思うのであります。  それで地方自治の問題は、地方自治法という法律がありまして、この法律かすべてをくくつておる。この法律改正をやらざるにあらざれば、身動きもならぬところまで参つております。この法律を、今申した地方分権主義にのつとつて諸般改正をやらねばならぬのでありますが、逐次こまかく質問いたしたいのでありますけれども、今日地方自治法改正の一番大きな問題は、人口が六百万あるような大きな都市でも、三百万ある大都市でも、あるいはいなか寒村僻地の、人口が五百や六百、千くらいの僻村でも、この出方自治法という一本の法律でくくつておるのであります。五百万も六百万もある大都市と、地方寒村の五、六百や千、二千の人口町村とは非常にこれは違う。その人口が違うほど、たとえば機構が違うし、あるいは権限がまた違いましようし、財政至つても違うし、その他万般にわたつてつておるのであるが、これを一本の法律で縛つておるから、いろいろな矛盾撞着、非能率等々というものが百出いたしまして、救うべからざるものに今日なつておるのであります。これはどうしても、この法律をどの点で区切りをつけるか、非常に研究すべき問題があるが、方針としては、人口の多い大都市と少い町村とは、これを区別することが根本的に、絶対的に必要である。どの程度区切りをつけるかということは、これは非常にむずかしいが、やらねばならぬし、それはまた研究余地があろうと思うのである。たとえば人口五十万をもつて区切るとかいう説もあるし、あるいは市は市にし、町村だけは別にするというような意見もあつて、この点は議論余地があるが、とにもかくにも大都市と小さい町村とを区別してやらねば、今申したような非常なる矛盾撞着、非能率が現われると考えるのであるが、この点について政府はどういうふうにお考えであるか。
  8. 本多市郎

    本多国務大臣 御指摘のように、市町村の中にはその規模において非常に相違するものがあるのでありまして、それに対応する制度としては、自治法にも特別市の制度が設けられておるのでございますけれども、実施されるに至つておらないのでございます。これにつきましては、それ相当の困難な問題がやはりありまして、実施される運びに至つておらないのでございますので、さらにこれに検討を加えまして、大都市と中小の市町村との間に、何らかその規模に応じた行政運営のできる制度が必要であろうということは、感ぜられるのでございます。これについては、今回の地方制度調査会に十分な審議をお願いいたしまして、その答申をまつて、適当な制度を実現いたしたいと考えております。この問題につきましては、財源の調整の問題等が主になつて来ることと存じますが、大都市には大都市運営にふさわしいような財源措置等が、考慮されることと考えております。
  9. 原健三郎

    ○原(健)委員 今国務大臣も申されたが、その財源についても非常に問題がある。たとえば平衡交付金についても、財力の乏しいような農村地帯寒村に対しては、平衡交付金を多くあんばいしなければならぬのに、そういうところには非常に薄くして、あり余るようなところへ、また政治力を働かして運動したから、よけい平衡交付金をやるというようなこともあるので、平衡交付金制度についても、政府はここに何らかの考慮をめぐらさねばならぬということは当然であるが、今日までこれを放置いたしている。これをどうするつもりであるかというのが第一点。  第二においては、町村独立財源を非常に要求している向きが多いのであります。たとえば酒、タバコの消費税を少し何とかしてくれとか、ガソリン税を何とかしてくれとか、あるいは公共企業体固定資産税を何とかしてくれとかいうふうに、市町村においてもいろいろ財源研究されておる。この財源についても、どういうふうな配慮を将来考えられるのであるか。その点をお聞きいたしたいのであります。
  10. 本多市郎

    本多国務大臣 平衡交付金算定にあたりまして、政治力に左右されるというお話でございましたが、御承知のごとく、平衡交付金算定は、法律に基きまして単位費用が定まつておりまして、これに基いて算定するのでございますから、政治力に左右されるという面は、きわめてないじやないかと思つております。ただ今日地方財政が、財源難に陥つておるという問題につきましては、今日平衡交付金制度は、国、地方とも国家的財政の困難をわけ合うという建前になつておりまして、そういう見地から、平衡交付金総額の決定をしていただき、これをもつて基準財政需要だけは満たすことになつておるのでありますが、今日の地方財政不足額を生ずる大きな原因は、結局その地方財政、また国家財政に相応する以上の行政規模をやつて行こうという点に無理が生ずるものと思います。これにはどうしても国力の充実に伴つて行政規模の進展をはかるということでなければ無理が生ずるのでございますから、そうした観点で十分指導し、運営して行きたいと思つております。
  11. 原健三郎

    ○原(健)委員 地方町村の赤字問題などを論じていると時間がなくなりますので、次に移りたいのでありますが、町村合併ということは終戦以来非常な問題になつておる。適正規模町村をつくらねばならぬ。それでどのくらいの人口適正町村といえるかということもまた問題があるのでありますが、これを今までの政府は、何らかこれを勧めるがごとく、勧めざるがごとく、慫慂するがごとく、せざるがごとく、口ではそういうことを勧めておるのであるが、といつて法律でこれをきめるわけでもない。最近の全国町村長会議の案を調べてみますと、適正なる町村制をしくために促進法的措置を要望いたしておるのであります。法的措置がなければこれは実現できないから、ぜひ法的措置をやつてもらいたい、しかもその全国町村長会の案によると、町村の最低の人口はまず七、八千人以上くらいになるような町村にしてもらいたいということに、全国町村長会議はまとまつております。歴史的あるいは地理的条件もあろうと思うのでありますが、大体こういう点は妥当なのじやないかと思つておる。それで質問いたしたいのは、政府は一体これに対して賛成であるか、賛成でないかが第一。賛成とするならば、法的措置考えておるかどうか、その点をお聞きいたしたいのであります。
  12. 本多市郎

    本多国務大臣 御指摘通り町村に非常な規模の相違がございますので、この自治基盤である単位をできるだけ強化したいということは、政府考えているところでございます。これにつきましては、さきの地方行政調査委員会議におきまして、町村単位規模につきまして一応の答申は得ておるのでございますが、それを実施するにあたりましていろいろな困難が今日現われて参つておるのでございます。それと申しますのは、幾つかの村を併合した場合、併合したことによつて、従来別々でいたときに比較いたしまして、平衡交付金等総額が減少するというようなことが一つの支障になつております。また併合したために今までありました施設では不便で、それを統合した新たな施設をしなければならぬという場合の財源等にも支障を生じておるのでございます。そのほか農地関係からも支障が生じて来るのでございますが、これらは、政府方針といたしております村の統合によつて行政単位を強化して行きたいという考え方に矛盾するものでございますから、これも今回の調査会等において研究を願いまして、結論を得て善処いたしたいと思つております。もちろん現在の状態におきましても、起債の許す範囲内におきまして、そうした統合のための新たな施設というようなものにはできるだけの措置は講じておるのでございますけれども、十分といえませんので、これには合併を奨励するにふさわしい措置を講じたいと考えております。
  13. 原健三郎

    ○原(健)委員 それでは政府は適当に合併することには賛成であるが、法的にやるかやらぬかは地方制度調査会研究をまつてやりたい。しかしながら趣旨には賛成だからいろいろ便宜をはかりたい、こういうふうに了解してよろしゆうございますね。しかし私は便宜をはかるとか、それはけつこうであるというくらいではなかなからちが明かないと思う。全国町村長会議輿論としては、いわゆる促進法的措置をやつてもらいたい。またそれによつて生ずる不公平、それから平衡交付金その他の問題は政府において善処すればいいのであつて、いつまでもそうぐずぐずと—地方制度調査会結論などは、我田引水で、各政党別、あるいは知事市長町村長というようにいろいろなメンバーが入つて、なかなか議論がまとまりにくい。そのまとまるのを待つてそれから善処しようというのでは—今までもそういうことをやつて終戦後すでに七、八年を経過いたしているのであるから、この際強く政府に要望するのである。輿論はすでにきまつているのであるから、次の国会あたりにはこれに法的措置を講じ、その他の不公平になる予算財政等も勘案し、不便等も除去するようにやられんことを切に要望するものであります。  それに引続いて問題になるのは、今日町村が小さいというところからやはりいろいろ問題がある。たとい七、八千、一万、二万くらいの町村ができるといたしましても、依然として問題が残つている。一番がんになつておるのは町村長公選問題であります。人口二百万、三百万、少くとも数十万以上の市長公選けつこうである。知事公選についても反対する人もあるし、賛成する者もあるが、私は大都市市長及び知事公選には賛成であります。しかし町村長公選には反対である。なぜかというと、寒村町村長も、さつきも申したように、五百万も六百万もある大都市と同じように、公選には違いないのでありますが、公選すれば、それがただちに民主主義の実現であるなどというがごとき理論は、一を知つて二を知らざるの議論である。しかもまた論者は、今は過渡期であるから、いなか町村などで町村長選挙して、いろいろな問題が起つているが、だんだん民主主義が徹底して来ると、それはよくなるのだなどと言つおりますが、私が全国いろいろな町村で調べたところ、人口の少い寒村町村ほど、町村長選挙をめぐつて感情がもつれるし、利害が錯綜して来るし、選挙が済んだらカラッとせよなどと申しましても、これが一年、二年、三年、四年と続いて来る。これが今日全国に波及いたしまして、日本のいわゆる純朴な農村の平和を撹乱し、人心をして必要以上に激昂させたり、けんかをしたり、いがみ合つたり、たいへんなことが持ち上つております。これをこのまま放置して二回、三回やりましても、民主主義に徹底したから寒村が平和になろうとは、私はどうしても見受けることができない。こんなことは、ただ民主主義だ、民主主義だといつて、民族の精神も知らず、地方実情考えずに、ただ一片の民主主義の空理空論によつて押しつけてはたいへんであつて政府占領政策の中で誤まれるものはこれを改廃すると明らかに言明しているのであるから、この際どの程度のものを区切るか—さつきも申しましたが、そういう区切る点がむずかしい。地方制度調査会研究してもよろしいが、とにもかくにも市の方はまずいいとしても、町村長公選はこの際廃止してもらいたい。それならばどうするか。やはり昔のように、町村議会によつて間接選挙によつて選んだ方がはるかに実情に適しておる。このまま放置することは、農村地方その他の平和を撹乱し、いわゆる摩擦を起し、平地に波乱を起し、民主主義を曲解し、ますます堕落、腐敗して行くものであると信ずるので、この点の政府の英断を私は要望するものであります。いかがでありますか。
  14. 本多市郎

    本多国務大臣 御承知のごとく、町村は何といいましても、自治の第一線でございまして、これが国情にふさわしくできているかいなかは、自治の成績に非常な影響を及ぼすのでございますが、ことに自治基盤に関する制度改廃でございますから、きわめて慎重に研究を要することと存じております。政府は国の行政についても、地方行政につきましても、国情国力にふさわしい制度ということを目途といたしておるのでございまして、この問題はどうしても地方制度調査会十分審議を煩わしまして、それにふさわしい制度を立てなければならないと考えております。
  15. 原健三郎

    ○原(健)委員 本多国務大臣はふさわしいとおつしやられるが、もう終戦後七年も八年もたつておるのに、ふさわしいかふさわしくないかくらいの研究をしておらずして、一体政府は何をやつておるのかと私は言いたい。この際それに対する国務大臣としての見解があるはずだ。何も地方制度調査会意見なんかは聞かぬでもいいし、そんなものは尊重しなくてもよろしい。政府みずからはどう考えておるか。本多国務大臣がそうならば、政府代表として緒方国務大臣の御所見をひとつ承つておきたい。
  16. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。本多国務大臣からお答え申した通りに私も考えておるのでありますが、今のお話の点はきわめて重要な問題と思いますので、地方制度調査会でとくと御審議願つた上判断をいたしたいと考えております。
  17. 原健三郎

    ○原(健)委員 本多国務大臣にもう一度お尋ねいたしたいのであります。地方制度調査会の御意見と申しますが、これはいろいろ意見が出まして、おそらくそう簡単に—多数決できめるか何できめるか知りませんが、なかなかそういうものにばかりたよつてつてらちが明かない。これも終戦後アメリカの進駐軍の押しつけでやつておるのであります。吉田内閣もずいぶん長く続いておるが、今ごろになつてもその結論がわからず、これから研究しますということでは、日暮れて道遠しといわねばならぬ。国民として迷惑千万である。それで町村長公選であるが、地方実情を各所で調べてみると、今や公選制反対輿論が非常に多い。こういうように、公選を廃止して議員による間接選挙でやれという輿論が熟しておるのであるから、その国民輿論従つて政府は逐次進んでもらいたいと思う。そういう見解でまとまつておられるのか、それともそういうことは依然としてわからないのであるか、もう一ぺんその点をお聞きしたいのであります。
  18. 本多市郎

    本多国務大臣 ただいま緒方長官からお答えになつた通り結論になるのでございますが、何分にも地方自治基盤に関する重大なことでございますので、その制度改廃は慎重の上にも慎重を期さなければならないと考えます。法律の上から行きましても、今回地方制度全般にわたつて調査をして行くために調査会が設置されておるのでありますから、そこで研究を十分していただいた上に政府方針はきめたいと考えております。
  19. 原健三郎

    ○原(健)委員 どうも答弁がないのと同じような結論でありまして、やむを得ません。  次いでに申し上げたいのは、同じ町村教育委員会制度であります。大体教育委員会制度をこしらえてみたが、財政的措置が必ずしもこれに伴つていない。今日これを完全に運用しようと思うならば莫大な経費がかかるのである。それで本多国務大臣にお尋ねいたしたいのは、来年度になれば一体どのくらいの予算考えておるのであるか、それはすでに大蔵大臣と折衝されておるのであるか、この点からひとつお聞きいたしたいのであります。
  20. 本多市郎

    本多国務大臣 地方行政を自主的に運営する立場から十分の費用ということになりますと、それはお話通りになると思いますけれども、自治庁といたしましては、地方財政を確保するために基準財政需要額を満たすということで算定をいたしております。二十七年度の補正予算におきまして五箇月分、また来年度につきましては、この五箇月分にやはり準じた費用を計上することになると存じます。来年度の予算はまだわかつておりませんけれども、もしこの五箇月分の補正予算数字が必要でありますならば、政府委員から説明いたさせます。
  21. 原健三郎

    ○原(健)委員 今の五箇月分の費用は私も知つております。来年これに準じたものを十二箇月分持つて来るといたしましても、このくらいなことではおそらく教育委員会を完全に運営することはもうできない。これは初めからわかつておるのであつて町村においてもがんになつておる。たとえば町村長とこの教育委員会というものが二つにわかれてしまう。さつきから申し上げておりますように、ただでさえ小さな町村においては、町村長教育委員会二つがいがみ合うということがすでに現われて参つております。しかも財政的にただでさえ疲弊困憊いたしておる地方財政に、また教育委員会というようなものをつくると、よけいに混乱させるおそれがある。私は教育委員会のお題目もいろいろ知つておるのであるが、大都会においてはこれは賛成であります。しかしさつきから申すように、大都会地方農村、山村とは違うのであつて、こういう教育委員会地方においてはまつたく不必要である。不必要だけでなくして、こんなものをつくればますます弊害だけが続出して来る。これを一々申し上げておればきりがないのである。私どもはこれを廃止すべしと申し上げたのいであるが、一体政府はどういうふうに考えておるか。
  22. 本多市郎

    本多国務大臣 教育委員会についてはいろいろな批判も受けおるのでございますが、せつかく実施なつたことでございますから、この実績ともにらみ合せてさらに研究を進めたいと思います。
  23. 原健三郎

    ○原(健)委員 三年も五年もやつて、ずいぶん国費を使つて、そして地方弊害を与えておる。それをのこのこと今度改めるかどうかを考えようというのでありまして、まことに政治機動性がない、決断力がない。われわれははなはだ遺憾に思わざるを得ないのであります。しかしこれ以上そのことを言いましてもらちが明きませんから、このくらいにしておきます。  次に、私の考えではもう思い切つて教育委員会はやめて、その費用を今全国で問題になつておる教職員のベース・アップに使つた方が、はるかに教育的効果を上げるのじやないかと思うのであるが、これについて本多国務大臣はどういうお考えであるか。
  24. 本多市郎

    本多国務大臣 ただいま御答弁申し上げました通り教育委員会につきましては、実施になつたのでございますから、その実績も見つつさらに検討いたしたい考えでございます。ベース・アップにつきましては、国の公務員のベース・アップに準じまして、地方財政におきましても行えることになつておりますので教育委員会がかりに廃止になつたといたしましても、その金をそのまま教員のみのベース・アップに振り向けるということは困難なわけでございます。
  25. 原健三郎

    ○原(健)委員 むろん教育委員会予算が、ただちに無条件で教職員の方へまわるとは思つておるのではありません。しかしながら政府に言わすと、いつも財源がない、金がなくて困ると言うから、こんなつまらぬところにそういう国家財政を使わずに、それを一番熱望しておるし、しかも最も重要な教育に携わつている人たちにまわしてやれば、財源的にも解決できる。それは公務員に準ずるのであるが、文化国家といい、教育を重んずるのであるならば、準じた上に、さらにこの教育委員会などに使う—私をして言わしめればむだな費用を、教育によけいに与えることが、教育を刷新し、教育を重んずることになろうと考えます。この点は質問を求めましても、考えておきますというだけでありますから、やめておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、府県の規模の適正化である。これも町村規模の適正化と同様に、府県の統合とが合併を、久しきにわたつて、すでに運動をやつておるところもあるし、問題になつておるところもたくさんあるのであるが、政府はこれをどうする考えであるか。地方制度調査会意見を聞くとおつしやられるかもしれませんが、聞くのはけつこうであるが、政府自身において何らかの原案なり考えなりを持つておらずに、地方制度調査会意見だけを聞いてうのみにするわけでもあるまいと思う。それでこれについて、たとえば道州制をしくというような考えもありますが、これをどういうふうに考えておるか。推進するならば、法的にやるかやらぬか。
  26. 本多市郎

    本多国務大臣 府県の規模につきましても、研究を要する点はあるのでございますけれども、この統合ということは、それぞれ沿革がありまして、実現はなかなか困難なものでございます。しかし規模を強化するという見地からいつても、統合の必要の感じられる面もあるのでございます。これについて地方制度調査会意見を求める段階に至つておる政府といたしまして、あまり独自の方向を申し上げることは、かえつて調査支障を来すとも思いますので、やはりその御意見をお伺いいたしました上で、政府意見を決定した方が適当であると考えております。
  27. 原健三郎

    ○原(健)委員 もう一つ、今日地方自治で問題になつている自治体警察を廃止するのか存続するのかという問題であります。方々においてこれも議論になつておりますが、全国知事会議のまとまつた意見によると、府県単位自治体警察を置かしてもらいたいということを要望いたしております。今日のような市町村単位でなくて、府県単位自治体警察を置かしてもらいたい、こういう意見もあるのであります。あるいはこれを全廃して、国家警察だけにするという意見もあるが、政府はどういうふうに考えておるか。
  28. 本多市郎

    本多国務大臣 警察制度につきましては、国家警察と自治体警察のあり方、さらに自治体警察に関しましては、地方負担財源等の関係も考えて行かなければならないと思いますが、これをどういうふうに改革するということにつきましては研究中でございます。
  29. 原健三郎

    ○原(健)委員 それでは十分御研究を願うことにいたします。  それから私どもの直接問題になつておるのですが、国会が開かれるごとに大問題を起して迷惑しごくに思つているのは、特別市制の問題であります。五大都市に対しては特別市制をしくということが、地方自治法の中にあるのでありまして、これをたてにして特別市制をしいてもらいたいという五大都市側に対して、主として五大府県その他の府県の側が反対いたしておる。町村反対いたしておる。それでまた次の臨時国会になると、おそらくこれが再燃いたしまして、国会に陳情国が殺到して来るに違いない。しかもある某大都市においては一億円くらいの運動費を使つたとさえいわれておる。こういうことが繰返されておるのは、一に政府が態度を決定せず、優柔不断、吉田内閣が長く続いておるにかかわらず何とも軍配を上げずに、まあまあということでけりをつけているからであつて、われわれとしてもはなはだ心外にたえないのでありますが、これに対して、ことに本多国務大臣は、党におつたときから専門に研究している人ですから、これは知りません、存じませんでは済まされない。必ずや御所見があろうと思いますから、この点はぜひ政府の御見解をお聞きしておきたい思います。
  30. 本多市郎

    本多国務大臣 大都市に対する特別市制の制度は、自治法に制定されてはおりますけれども、これをどういうふうに実施するかということについては、いろいろ困難な問題がございますので、この制度をそのままにしておくか、それとも大都市自治制度にさらにくふうをこらす必要があるのではないかというような点につきましては、やはり地方制度調査会において研究していただくことが適当であると考えております。
  31. 原健三郎

    ○原(健)委員 どうも政府はみずからの見解を発表せずして、地方制度調査会へもぐり込んでしまうので、質問にはならないのでありますが、それで次にお聞きいたしたい点は、中央地方を通じて一番問題になつて来るのは行政整理の断行である。行政整理を断行し、国費を少くし、そして物価を安定し、賃金を安くし、低物価政策を実行するというふうに持つて行かなければ、祖国の再建は困難であることは何人も認めておる。吉田総理もわが党が続く限りは何回でも行政整理をやることをしはしば言明しておる。それでこの際政村は、次の臨時国会も控えておるし、行政整理をやる意思があるのかないのか、この点をお聞きいたしたいのであります。
  32. 本多市郎

    本多国務大臣 御承知のごとく前国会に行政機構の改革案を提案いたしたのでございますが、それが国会で審議されました模様等も勘案いたしまして、今後極力国情に沿うた規模に、機構においても、人員においても、これを持つて行くように研究中でございます。
  33. 原健三郎

    ○原(健)委員 研究中ということであるが、それでは来国会に行政機構の改革及び人員の整理をやる考えであるかどうかということを、もう一ぺんはつきりお聞きしたいということが第一点。  それから私が第二に申し上げたいことは、私も政府の何とか審議委員会に入つて研究したことがありますが、行政機構を簡素化し、人員を整理するなどといつても、実際にはできるものではない。二百八十名を持つておつたときの吉田内閣でもできなかつた。それは官吏が大反対をやつて、内閣の命とりになるからやれないのだ。今後それをおやりになるということを申しておつても、おそらくやる力は私はないと思う。そこで私が考えるのには、機構の簡素化というような複雑な、ことに難事中の難事をやめて、思い切つて天引をやつたらいいと思う。一割でもいいし、一割でいけなければ五分でもよろしい、数を減らしたらいいと思う。しかも役所におきましては、人員の余つておる所もあるし、足りない所もあるが、能率を上げるためには、一割や五分減らしても大丈夫だ。ぜひ来るべき国会で天引の法律案を出して、一割でも五分でもいいが、これをやる考えがあるかどうか。
  34. 本多市郎

    本多国務大臣 人員の整理につきましては、どうしても事務の合理化等によつて事務を簡素化して、それに伴つて人員が不要となつて整理されるという考え方によらなければならないと思つております。現業等におきましては作業を能率化する、機械化するというような方法によつて、人員の縮減ができるものはするという方向に進めなければならないと思つております。もつとも国費節約の見地から、でき得る限り人員の厖大化を防ぎたいという見地で、普段でも欠員の補充というようなことはできるだけ避けて、配置転換等によつて融通して、能率を上げて行くという方向に努力をいたしておる次第でございまして、次の国会に行政機構改革、人員整理の案を出すか出さないかはいまだ決定しておらないことでありますので、申し上げかねます。
  35. 原健三郎

    ○原(健)委員 これも聞いてもお答えがないかと思いますが、われわれ国民から考えると、占領政策の一環として最も不愉快に思つておるのは、人事院というものをこしらえておることであります。人事院に賛成の諸君は、おそらく人事院に勤めておる官吏だけくらいで、あとの人は人事院に反対しておる者が非常に多い。これは全国民の輿論となつておるが、この際こまかい行政機構の簡素化とかいうようなことは別としても、人事院くらいを思い切つて廃止するの決意政府にあるかないかをお聞きいたしたい。
  36. 本多市郎

    本多国務大臣 人事院制度につきましては、さきの国会に人事院の改組案と申しましようか、委員会に切りかえる法案を提出いたしたのでありましたが、これが成立に至りませんでした。その経緯もございますので、さらに研究いたしたいと考えておりますが、方針といたしましては、人事院は、御承知通り、国家の機関でありながら、行政組織法の適用を受けないことになつておりますので、行政機構としての国家行政組織法の適用を受ける組織にしたいというのが根本の方針でございます。
  37. 原健三郎

    ○原(健)委員 委員長が御注意の時間が参りましたので、このくらいで終りますが、人事院の総裁にお伺いいたしたいのであります。このごろ公務員に一級から五級まで地域差をつけておる。いわゆる地域給というのがあるのでありますが私にこの地域給というものは非常に問題があると思う。第一に問題のある点は、一級のものは二級になろうと運動し、二級のものは三級になろうと運動し、五級のものはこのままではたまらぬから六級をつくれ、こういう運動をやつて来る。何にも入つていない無級地のところは一級になるように運動をやる。これはおそらく何年たつてもいたちごつこで解決する道がない。隣りがどうだとかこうだとか、いろいろなりくつは非常につくのであります。相当妥当なりくつはつく。そうするとこれは解決の道がございません。しかもこれは年中行事となつて、しばしば勧告をやるものだから、地方の公務員は大挙して厖大な費用使つて陳情に来る。今日東京への陳情の中で、一番費用を使い、一番大々的にやつておるものは、この地域給を上げてくれという運動であります。これをこのままに放置すると、われわれとしても煩わしいだけでなく、たとえば地方の学校の先生だとか、郵便局員であるとかが、自分の仕事はほつておいて東京へ大挙して陳情に来る。これは国会ごとに来る。この費用、この仕事をなおざりにする点、この一点でもわれわれは承認することができない。またこれが居住地に関係なく、勤め先でもらつておる。たとえば無級地に自分が住んでおつて五級地へ勤めておるというような不公平も出ておるのであります。等々考え合せまして—もちろんこの地域給を定めた理由は知つております。東京といなか寒村とはその生活費の違うことくらいは知つている。知つてつても今のように一級地から五級地までつくることは弊害だけあつて困る。都市と地方とで生活費が違うのはまた別途に考えたらよい。別途にどういうふうにやるかということは、技術的にむずかしい問題でありますが、しかしそれは平衡交付金その他において考えれば考えられる。とにかく級地というものはやめてしまつて、あらためて生活費のかかる所は、別に国家の費用なりあるいはその他によつてこれを支給するという方法でやつたらいい。あるいは県へやつて県にまかすとか、いろいろやり方はこまかくあると思いますが、今のような一級から五級までにしてこれを放任することは非常な混乱を来す。私の聞いておる範囲では、地方の無級地の人も、あるいは一級、二級、三級に入つている人も、こんなものはやめてくれと言つておる。われわれは運動しているが、実は運動するのもいやだ。一つ上げればまた次に上げる運動をやらなければならぬので、まことに不安動揺を来しておちついて仕事ができぬと言う。だからこんなものはやめた方がいいと思うが、人事院総裁はどういうふうに考えておるか、お聞きしたい。
  38. 淺井清

    ○淺井政府委員 原さんにお答え申し上げます。陳情のために殺到しているということは事実でございますが、これはやはり切実な生活問題がそこにあるのだろうと私どもは考えております。ただ将来の方針といたしましては、原さんの仰せられたことはまことに御同感の至りでございます。内閣といたしましては、おそらくまだどういたすかはきまつていないと思いますが、試みに人事院の意見を申し上げることをお許し願えれば、人事院といたしましては、原さんの仰せられたように、将来はこれを廃止したいと思つております。ただここに若干の問題があるように思つております。第一点は、物価の地方差というものが、少くなりましたが、全然なくなつているかどうか。従つてこれを全廃することができるか、あるいは現在の地域差を縮めて若干のものを一部残さなければならないかどうかということであろうと思います。第二点は、地域給を廃止するといたしましても、今までやつておりましたものを、ただ無条件にはとりやめかねると思いますから、これを本俸に繰入れるとかなんとかというような方法を講じなければならぬかと思つております。第三点は、これを廃止する時期でございますが、これは本俸に繰上げるといたしますならば、予算上の措置も必要になつて参りますから、よく内閣とも連絡をいたしまして、その上できめなければならぬと思いますので、いりからこれが廃止できるか、まだきまりておりません。
  39. 原健三郎

    ○原(健)委員 人事院総裁お話、よくわかつたのであります。それで内閣の方では、これもまだ研究中かどうか知りませんが、あまりなおざりにされると困るので、人事院総裁は進んでこういう地域差はやめるようにしてもらいたい。今三点にわたつて見解を発表されたのでありまして、第一は、物価による地域差を若干残すこと、第二は、本俸に繰入れること、第三は、本俸に繰入れるとして、その予算をいつ組んでくれるかということ、この三つの意見をもつて根本的に廃止されるという御意向でございますが、内閣の御意向はどうでありますか、緒方国務大臣に伺いたい。
  40. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  41. 菅野義丸

    ○菅野政府委員 地域給につきましては、人事院の方でその地域の区分なり、あるいは率なりを研究いたしまして、政府並びに国会に対して勧告をすることになつております。従いまして内閣といたしましては、従来から地域給につきましては、人事院の勧告に従つて法律案を提案しているような次第でございまして、この廃止あるいは縮小につきましても、ただいま総裁がお答えいたしましたように、研究の結果おそらく勧告をして来ると思いますが、それを見まして、政府といたしましては考慮いたしたいと考えております。
  42. 原健三郎

    ○原(健)委員 それでは総裁にお尋ねいたしたいのでありますが、今政府の方としては人事院から勧告があつたらよく考えようという。おそらくその考えるという意味は、われわれ自由党の立場からいうと、それをのむと思うのであるが、一体いつごろ勧告を発せられる考えであるか。まだ次の本予算も組んでいないときでありますから、勧告をやるならば今が一番よろしいと思うので、どうぞその点のお考えを承りたい。
  43. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいま原さんのお尋ねは、現在の地域給を廃止する勧告をいつやるかというお尋ねと承知いたしましたが、それはさいぜん申し上げましたように、なお研究すべき問題を残しておりまするので、ここではつきりいつということは申し上げかねるわけでございます。
  44. 太田正孝

    太田委員長 午後二時から開会することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  45. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。古井喜實君。
  46. 古井喜實

    ○古井委員 私は総理にお伺いしたいことがありますが、御出席がありませんから、これは一応保留いたします。なお地方財政の問題を主としてつつ込んでお伺いしたいと思いますが、簡単に別の問題で、保安隊と警察の関係についてまずお伺いいたします。  木村保安庁長官にお伺いいたします。保安隊の目的は、たびたびの御答弁、御説明によつて、警察の目的と同一であるように伺いましたが、はたしてそうでありますか、あるいはその間に何かの差異がありますか。差異がありますれば、その点をお伺いしたいと思います。
  47. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り、一般警察は通常の治安維持の任に当るものであります。保安隊は高度のと申しましようか、一般警察力ではとうていその目的を達することのできないような事態に至りましたときに、警察を補助するために設けられた部隊であります。一般的性格から言えば、ともに国家の治安を維持するものでありまするから、性格はかわりありません。しかし今申し上げました通り、警察の力によつてはとうていこれを処置することのできないような場合において補助的に保安隊が行動するということにおいて、多少の差異はあると考えます。
  48. 古井喜實

    ○古井委員 警察と別に保安隊を設けます以上は、働く場合が違うことは当然のことでありますが、目的が同一であるかどうかという点であります、それで、それに関連してでありますが、本会議においても、保安隊の目的について、治安の確保ということと並べて、平和の保持ということをおつしやつたと思います。またこの保安庁法を見ましても、平和を維持するというふうな文句があります。これは一体どういう意味でおつしやり、またどういう意味に御解釈になつておるのか。警察もまた平和の保持という目的を持つておるかどうか、この点を伺います。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り、保安隊は国内の平和と秩序を維持し、人命と財産を擁護する必要のある場合、特にそういうような場合において初めて行動をする。御承知通り、警察では一般の治安維持のために、刑事事件その他被疑者の逮捕とか、あるいは捜査とかをやるわけであります。保安隊においては、そういうようなことより以上の、いわゆる国内の治安が乱れたような場合、すなわち特に必要のある場合において初めて行動をすることになつておるのであります。その点において差異があると考えておる次第であります。
  50. 古井喜實

    ○古井委員 それでは、平和の保持という意味はどういうことになりますか。警察もまた平和の保持という目的を持つているのでありますか。目的は違うのでありますか。同じだけれども、動く場合が違うという意味になるのでありますか。その点がはつきりしないように思いますので、なおそこに何か違いがあるのではないか、絶対にないとおつしやるのか、そこをひとつはつきりお伺いしておきたいと思います。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。平和の維持と申しますると、いわゆる一般的に、これは国内の治安を大きく見たときに、平和維持、私はこう考えます。国内の平和と秩序の維持。御承知通り警察法におきましても、国内の秩序を維持するためということになつておりまするから、これを広い意味に解すれば、ひとしく平和並びに秩序の維持と言えないことはなかろうと思います。しかし本来の保安隊の目的は、警察の力の及ばないとき初めて行動する。その意味において、保安庁法において、国内の平和及び秩序の維持という言葉を使つたものと私は了解するものであります。
  52. 古井喜實

    ○古井委員 少しはつきりいたしませんように思いますが、要するに大体同じである、こういうふうに私には聞えるのでありますが、何かそこに割切れぬものが残つておるような感も若干あるのであります。しかし大体同じであるというふうには了解できます。そこで大体同じであるならば、この保安隊、その前身である予備隊ができました節に、警察の定員についてなぜお考えにならなかつたか。御承知のように警察の定員は、警察法ができました場合に、昭和二十三年にきまつた定員であります。当時十二万五千、その後若干の変動はありましたが、今日約十三万であります。このときは軍隊はなし、予備隊、保安隊もなかつたのであります。しかるに国内の治安、これに当ろうとする厖大な予備隊ができ、保安隊ができたという後において、なぜ同じ目的を持つておるならば、警察の定員をお考えにならないか、必要のないことが起つてやしないか、目的が違うならばよろしゆうございます。同じであるならば、さらに十一万の保安隊とダブりやしませんか。どういうわけで、もとの定員を警察においては維持されるか、その理由をひとつお伺いしたいと思います。
  53. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今申し上げます通り、保安隊は警察力の及ばない、いわゆる大きな騒擾事件とか反乱というような場合に対処するために設けられておるのであります。普通一般の警察と、その点において私は差異があると先ほど申し上げた。国内の治安維持という大きな観点から考えますれば、ひとしく警察であります。いわゆる治安の維持に当るものと、そうして背後にあつて、警察力ではとうていこれに対処することができないような、治安が乱れた場合に初めて行動する部隊と、これを二つに分けて、この定員をきめた次第であります。
  54. 古井喜實

    ○古井委員 これは少しも答弁として伺うことができないのであります。一体私も従前若干警察の仕事に関与したことがございましたが、戦時中の警察は全国で七万であります。すでにこれが十三万という、倍に近い警察力であります。戦時中の警察は、防空もやりました。輸送というような仕事までやりました。今の警察よりうんと多い仕事をやつたのであります。それを七万でやつたのであります。軍隊がなくなつた後において、軍隊がないからということで、警察は大増員をやつたのであります。その当時は確かに、別個の目的の軍隊ではありましたけれども、これがないと治安上非常に心配だ、こういう意味において警察の定員がきまつたはずであります。今日ほとんど警察力にひとしいくらいな保安隊ができまして、なおかつ同じ数の警察がいるんだという理由を、ひとつお聞かせ願いたい。保安隊が違うものであるという意味ならば、了解できます。別の目的を持つということならば、了解できます。しかし、大体同じ目的を持つものだということであるならば、どうしてこれだけの大きな数がいるか、この点が少しも実は私には了解できない。御答弁でもわからないのであります。
  55. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安隊を設けておるにかかわらず、警察の定員をそのままにしておくのはどうかというような御意見のように伺いました。いろいろの情勢からかんがみまして、通常一般のいわゆる治安の任に当らせる一般警察と、しかして今私の申し上げますように、大きな治安を乱されるような事態に遭遇した場合に対処するものと、これは二つにわけて、その訓練の様式も違うのであります。保安隊においては、特にそういう場合に対処すべき訓練もしなければなりません。しからば、警察の定員をそのままにしてあるのはどうかということでありますが、今日の国内情勢を見ますと、ただいまの定員でも、私はある角度から見れば、不足しておるのではないかというふうに思われる現在でありまして、両両相まつて日本の国内の治安は維持すべきものであろう、こう考えております。
  56. 古井喜實

    ○古井委員 これはとんだ御説明を伺いましたが、非常の場合に保安隊がすでに出動し得るならば、その他の警察がやるべき仕事のために、私はこういう警察の大きな数はいらぬと思う。これでも足らぬというのはどういうことでありましようか。一体昔七万でりつぱにやれたものが、十三万というものがなぜいるかということがわからない。足らないというのはどういうことでありますか。これはほんとうにただ国民の血税をつぎ込んでおるというだけになると思う。足らないとおつしやる理由が承服できません。もう一ぺんお尋ねいたします。
  57. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは見解の相違でありまするが、われわれの見た国内情勢、ことに人口もだんだんふえ、またはいわゆる外国人が日本に相当数住居しておるのでありますから、これらの観点から考えてみまするとき、昔の警察力では私は対処できないと、こう考えております。
  58. 古井喜實

    ○古井委員 人口が倍近くも一体ふえたでありましようか。また国内の状況が、警察だけでも倍近い数になつておるほど、一体それだけ治安が悪化している状況があるのでありましようか、常識的に見てもそういうことはないはずであります。いわんやここへ保安隊という十一万のものが大体国内の治安のためにある、こうおつしやつておる。これは説明にならぬと思うのであります。見解の相違じやない。間違つているじやありませんか、どうでありましようか。もう一度重ねてお尋ねいたします。
  59. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は間違つていないと考えております。要するに御承知通りただいまにおきましては、外国人も相当数日本に住居しておるのであります。いろいろな問題を起しております。古井君も御承知でありまするように、ごく最近におきましても、昔は予想できなかつたような幾多の事案が内地に起つておるような次第であります。さような場合を考えてみますると、われわれは今の警察力でもま不足しているのじやないかと考えられるほどであります。これは国内情勢及び最近の国際情勢から考えまして、内地の治安というものを確保するにはこれだけのものは私はぜひ必要だろう、こう考えております。
  60. 古井喜實

    ○古井委員 外国の軍隊に属する人間はなるほど今日多いかもしれません。しかしながら、そうでない人間と一体どういう違いがありますか。従前と比べてどういう数字になつておりましようか。昔だつていろいろ外国人関係の問題もたくさんございました。それは昔を御存じでそういうことをおつしやつておりましようか。あるいははつきりした数字的な基礎でもあつておつしやつておりますか。大づかみにごまかしてしまうという意味でおつしやつておるのか。はつきり基礎があるなら基礎、数字があるなら数字をひとつお示しを願いたい。
  61. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はごまかしはいたしません。現に朝鮮人で六、七十万というものは、日本におるのであります。さような観点から見ましても、私は昔の状態とは違つておる、こう考えております。
  62. 古井喜實

    ○古井委員 おもに外国人というのは、朝鮮人のことのようにおつしやつておりますが、朝鮮人は戦時中にはもつと多くおつた。しかも労力が足らないということで、無理やりに日本に連れて来た連中までおつて、実に治安上骨を折つたものであります。私はそこに少しも違いはないと思います。この点はもう明かな問題じやないか。どれだけの対策があるかないかというだけの問題だと思います。どうでございますか。
  63. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 正確な数字についてはわかりませんが、その時分の朝鮮人と今の朝鮮人との思想的その他の行動において、よほどの相違があろうと思います。しかもその当時においては、軍隊という背景を持つておつたのであります。今は軍隊がありません。私は治安確保のためには、保安隊も予備隊も必要欠くべからざるものと考えております。
  64. 古井喜實

    ○古井委員 軍隊はないとおつしやるけれども、保安隊はすでにできたのであります。そうすれば軍隊ではないかもしれないが、対応するものができたという以上は、当時の警察よりなぜよけいいるかという説明にならぬと思います。どういうことになりましようか。
  65. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は現在の国内情勢その他から勘案いたしまして、今の警察と予備隊は必要であろう、こう考えております。
  66. 古井喜實

    ○古井委員 私はこの問題は、他の問題を急ぎますのでまた後の機会に譲りますが、要するに、御説明では少しも承服できないということを申しましまして、次の問題に入ります。  緒方国務大臣にお伺いいたしたいと思います。現在の警察機構の問題についてであります。今日の警察機構が、国家地方警察と自治体警察と二本建になつておる。その間に統一が少しもありませんし、まことに警察の機能と能率とを阻害していると思います。これを改める必要をお感じになりますか、どうでありますか。なおまたそれに関連しまして、近来国警が次第に領域を拡大して、町村自治体警察を統合して行つておりますが、これは警察を一元化するという趣意においてああいう改正を近時加えているのでありますか、この点をあわせてお伺いいたします。
  67. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。現在の警察制度につきましては、議論すべき点は多少あるかとも考えますので、これらの点につきまして十分論議を尽しました上で、民主的にして、かつ能率的な警察制度を確立いたして行きたい、かように考えております。また警察官の定員の問題にもこの際触れまするが、現在の社会情勢からいつて、必ずしも十分であるとは言い得ないかもしれませんが、制度運営面を改善してその点を補つて参りたい、かように考えます。
  68. 古井喜實

    ○古井委員 こういう二本建の警察機構をとつておりますれば、警察の機能がさつぱり役に立たぬということのほかに、非常に冗員を要すると思います。警察の人数が多い、これでも足らぬくらいだとおつしやる。それがもし理由ありとすれば、二本建の結果だと私は思うのであります。この点についてはつきりと二本建の弊は認めるとはおつしやつておりません。けれども民主的な改革、能率的な改革はしたい。意味はよくわかりませんけれども、その点に警察の大きな欠陥があるということをお感じになるかどうかということを、はつきりとひとつお伺いしたいりであります。
  69. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この点につきましても、地方制度調査会で十分の審議を尽してみたいと思つております。
  70. 古井喜實

    ○古井委員 そうしますと、能率的にして民主的な警察機構の改革という政策が掲げられておりますが、あれはただ漫然と調査会考えてくれというだけで、政府の政策には書いてあるけれども、あれは単なる文字であるということになりますか。すでにもう能率的、民主的な警察機構にしたいという政府方針がそこにあるのでありますか、ないのでありますか。白紙で調査会の言いなりほうだいになろうと、こういうことでありますか、その点をお伺いいたします。
  71. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 警察を一層民主的にいたしますと同時に、さらに能率的にいたしたいという考えは、政府は持つております。その趣旨に基きまして、地方制度調査会答申をまちまして判断をいたす考えであります。
  72. 古井喜實

    ○古井委員 これは私の主たる質問問題でありますので、十分承服できませんけれども、時間を急ぎますので、次の問題に移りたいと思います。  文部大臣にお伺いいたします。問題は各市町村教育委員会制度をしいた点であります。私は各市町村教育委員会制度をしいたということは、一大失政だと思つております。後日必ずこれは大きな弊害を起すということは、火を見るより明らかだと思つております。一方しかしすでに委員選挙をやりまして、態勢を整えたという今日になりますれば、これを廃止するということは実際上非常な困難な問題にぶつかつて来ると思います。つまりにつちもさつちも行かぬことになつてしまつたと思うのであります。しかし後日に大きな弊を残さないために、勇断をもつてこの市町村教育委員会制度を廃止されるお考えはないかどうか、この点をまず伺います。
  73. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。市町村教育委員会は、趣旨といたしましては日本のローカル・カラーを生かして、その土地々々における特殊の事情に応じまして、りつぱな教育をして行くという意味におきましては、私はいい制度だと思います。しかし御説の通りに、これにはなお検討すべき点がございます。その検討すべき点は、われわれは今後調整をやつて行き、同時に相当研究をしなければならぬと思います。しかし廃止する意思はございません。
  74. 古井喜實

    ○古井委員 廃止なさらぬのであれば、後日この制度が大きな弊害を起したときの責任は、必ずおとりになる考えでございましようね。  そこで、まずい点は直して行きたいとおつしやるが、まずい点とお考えになるのはどういう点でございますか。
  75. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。まずい点と申しましたが、これは私の空理空論でございまして、たとえて申しますれば、人事の交流が十分に行かぬとか、もしくは任命権は市町村教育委員会にありながら、給与の義務は都道府県にある、そういうような点がたくさんございますので、そういう点は少しまずいだろうと思います。しかしこれは調整によつてある程度できますし、また今の状態では、それが都道府県の条例によつて調整がとれることになつておりますけれども、各市町村委員会相互の間において十分なる連絡をとつて、また都道府県の教育委員会とも連絡をとつて運営の完全を期したいと考えます。
  76. 古井喜實

    ○古井委員 私も人事の問題に大きな弊害を起すと思つておるのでありますが、今文部大臣は、人事の交流がうまく行かぬという一点だけをおあげになりましたけれども、市町村教育委員会の大きな弊害の一つは、必ず人事をめぐつて起ると思つております。これが教職員に対してどういう悪影響を及ぼすか。交流だけではないと私は思つておりますが、人事の問題であることには相違ないと思います。給与の点にも、確かに負担が府県になつている点にむずかしい問題があると思います。そこで府県が給与を負担する、その給与について条例を設けるのだとおつしやいました。条例を設けて、一般的な基準は設け得ましようが、一体その基準のわくの中で、市町村委員会市町村の教職員の人事を実際上行えるとお考えになりましようか。教職員の人事権は、この制度からいえば市町村教育委員会にあるようであります。しかし給料を何ぼ出し得るかということを自分できめることができないで人事権といつても、これは空だと思います。幾ら月給を与えるかということが自分できめられないで人事権を持つても、これは空だと思います。まつたく市町村教育委員会の人事権というものは、これで死んでしまう、何のことかわからないと思うのであります。一方かつて市町村で人事をやつて、俸給もきめるということになれば、府県ではたまらないということが、やまやまあると思います。しかし、さればといつて府県に統一させたら、一々教職員の人事を行うたびに府県に縛られてしまつて、人事権はちつとも行えないということになると思う。この辺の矛盾はどうお考えになりますか。つまり市町村教育委員会が人事権を持つというところに無理と困難があるのではないか、どうお考えになりましようか。
  77. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいま都道府県で給与の責任を持ち、それから市町村教育委員会が人事権を持つ、こう御答弁申し上げたのでありますが、この点につきまして、都道府県の条例におきましては定員をきめております。でございますから、定員以上にふやすわけにも参りません。また市町村に任命権がございますが、その任命権はありましても、これに対する給与の準則というものは、やはり都道府県の条例できまつておりますから、それ以上にはみ出すということはできません。ただ私が心配いたしますのは、今までは都道府県の教育委員会が主になりまして、都道府県内全般の人事異動をしておりましたけれども、今後、すなわち新制度をしきました以上は、市町村教育委員会が人事権を持つ。それをいかに行政運営して行くかということにつきましては、各市町村教育委員会相互に連絡をとらせ、また都道府県の教育委員会とも連絡をとらせまして、うまく運営して行くように、ただいま文部省としては指示しておる次第でございますから、御了承願います。
  78. 古井喜實

    ○古井委員 給与の条例というものを都道府県でつくりましても、これは抽象的な規定であると思います。そこで具体的の人事、なにがしを教員に採用するというときに、これに幾らの俸給を与えるか、具体的の人間の俸給をきめることについて、一体都道府県の方が関与するのかどうか、この点はどうでありますか。
  79. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。それはちやんと給与準則というものがございまして、昔のように非常な抜擢とか、また特殊に給与をふやすとかいうようなことはできません。ちやんと都道府県の条例によりまして、そのわく以内でやるのであります。しかしながら市町村におきましては、財政の非常にゆたかなところもございますから、条例によりましてわくははめられておりましても、その公共団体の財政のいかんによりましては、それ以上の給与をやらぬとも限りません。それは一般的に何らさしつかえないことと考えております。
  80. 古井喜實

    ○古井委員 ただいま基準がきまるからとおつしやいましたけれども、その基準は、どれだけの年限がたてば昇給し得るとかいうことであつて、その期限が来たら必ず昇給させなければならぬというふうに、きちんときまつたものではないのであります。俸給を上げるか上げぬかということ、あるいは採用するときにどれだけの給与で採用するかということは、きちんときまつておるものではないのであります。そういうことについて一々相談をするのか、しないのか、この点であります。これがまた弊害のもとになるのであります。
  81. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これはちやんとわくがきまつておりまして、昇給期というものがありますから、ある限度の昇給期には上げればいいのです。それ以上げたときには、都道府県に財政上の負担をかけますけれども、しかしながらある学校を卒業した人間は、初任給が幾ら、そしてそれが何年たてばその間にどのくらいの昇給をする、何回昇級するというところまでちやんとわくがきまつておりますから、そのわく内では都道府県は財政支出をいたしましよう。しかしそれ以上は、先ほど申しましたように、その市町村財政状態いかんによつて、かつてにやつてしかるべきだろうと思います。
  82. 古井喜實

    ○古井委員 地方で扱う人事の実情をあまり御承知ないようであります。それよりも、市町村財政の余裕があればとおつしやいますが、市町村財政の余裕があれば、府県の負担になつている給与を市町村で払い得るのでありますか。市町村財政の余裕と何の関係がありましようか。
  83. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいままでのは理論的の答弁でございまして、市町村財政状態がいいか悪いかというのは、一万有余の市町村でございますから、これを一概に私は申し上げるわけには参らぬと思います。
  84. 古井喜實

    ○古井委員 話が違うのであります。給与をどうきめるかという点について、給与の問題は市町村財政と全然関係がないじやありませんか。関係があるのでありますか。つまり給与は府県が負担するはずなんであります。市町村財政の余裕があろうがなかろうが関係ないことと思います。
  85. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 さようでございますから、都道府県から給与費を出しておりまして、その出しておるわくはちやんときめてあつて、これだけこれだけとやつております。しかしながらそれ以上にもし市町村がやろうと思うときには、市町村はやり得るのであります。しかしながら、今まででもやはり都道府県が金を出しておりますから、町村財政のいい悪いによつて給料というものは影響しておりません。ただ県の財政がいい悪いによつてはある程度まで影響して参りましよう。
  86. 古井喜實

    ○古井委員 それでわかりました。要するに市町村とおつしやつたのは間違いで、府県の財政が余裕があるかないかということの間違いのように聞きました。そうでありますか、違いますか。
  87. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 今のは間違いでございます。都道府県の財政のことでございます。
  88. 古井喜實

    ○古井委員 そういう大きなことさえ間違えるくらいですから、人事の問題の実情がどうあるかということを御承知ないくらいは余儀ないことだと思いますが、要するに恐ろしいこれは人事上の弊害を起す。この人事権の問題については、必ずこれは検討される必要があると思います。  なおもう一点でありますが、この市町村教育委員会の設置についての経費の問題であります。あの基礎資料、参考資料を見ますと、教育長を置かない町村をお考えになつておるようでありますが、これはせつかく市町村委員会を置いても、一番大事な教育長を、専任の者を置かないというような町村をお考えになつておるのでありますか。さもなければあの予算数字が説明できないと思うのですが、どうでありますか。
  89. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。御承知通りに、ただいまのところ教育長になる人、もしくはそれに仕立てなければならないような人がとにかくたくさんございますので、そこで一時には教育長を置くわけには参りませんから、大体今年度は半分教育長を置く、こういうような考えでおるわけであります。
  90. 古井喜實

    ○古井委員 教育長を置かないような教育委員会は、つくつたつて意味ないと思います。これは教育委員会をつくつても、遊ばせておくという考えだろうと思います。どうするのでありますか。全然人事の中心である教育長を置かぬ町村、そんなものがあつたつて教育委員会が何の意味がありますか。どうなさる考えでありますか。
  91. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。これを企画いたしました専門の政府委員から御答弁いたさせます。
  92. 田中義男

    ○田中政府委員 お答えを申し上げます。教育長は、理想的には各委員会にそれぞれ専任を置くことが望ましい次第でございますけれども、設置早々におきまして、僻陬の町村にまでことごとく専任を期待するということは、いろいろな点で無理であろうかと考えましたので、とりあえず本年度の措置といたしましては、まずその半数を一応期待をいたしまして、その程度財政措置をいたしたわけでございます。
  93. 古井喜實

    ○古井委員 教育長を置くということは理想ではなくて、最小限度の問題だと思うのであります。教育委員というものは、日常は出ておるものでも何でもないのであります。人事をやるとおつしやるが、人事はどうして行うのか。教育長も置かないところでどうしてこの仕事を扱うのですか。仕事の動かしようがないと思うのでありますが、どうでありますか。
  94. 田中義男

    ○田中政府委員 お答えいたします。教育長を欠いていいというわけではございませんで、兼任等でさしつかえないのでございますから、しばらくそれらの措置によつて措置する、こういうことは可能だと考えておるのでございます。
  95. 古井喜實

    ○古井委員 一体専任を置かないならば、どういう者を使おうというのですか。
  96. 田中義男

    ○田中政府委員 お答え申し上げます。地方にはあるいは公民館もございますし、また場合によれば図書館等もございましよう。あるいはさらにやむを得なければ学校長もあることでございますから、それらの人々をしばらく兼務させる、こういうことも事情によつて可能と考えておるわけでございます。
  97. 古井喜實

    ○古井委員 学校の教職員の人事をやる学校長を都合によつたら教育長にしようというのでありますか。そういう意味でありますか。
  98. 田中義男

    ○田中政府委員 学校長がみずからみずからを監督するような地位につくということは、決して望ましいこととは思いませんけれども、いろいろな事情によつて、当分の間さようなこともやむを得ない、こういうことで私ども考えておるわけでございます。
  99. 古井喜實

    ○古井委員 この点は今の御説明のように、その通り文部大臣もお考えになつておりますか。これは望ましくないどころじやない、矛盾である、成り立たぬことだと思うのであります。自分の人事を自分でやる、そういうふうな機構というものはないはずだと思うのであります。それでいいというのでありますか。ひとつこれは大臣から御答弁を願います。
  100. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 過渡期でございますから、とにかく当分の間それでやつて行きたいと思います。
  101. 古井喜實

    ○古井委員 過渡期であれで、まるで成り立たぬことでもやつてもよろしい。一体そうまでして、なぜ教育委員会を設けなければならぬかというところまでさかのぼつて行かなければならぬと思いますが、過渡期であればどんなことでもやつてよいということになるのでありますか。自分の人事を自分でやる。そういう了解のできない、また成り立つことのできない機構はないと思うのでありますが、それでよいというのでありますか。過渡期と申しましても、十一月からいつまでをお考えになつておるかしりませんけれども、今年度だけでも相当期間があるのであります。年度末の教職員の人事、これは一体どうするのでありますか。これはひとつはつきり御答弁願いたい。
  102. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。大体公民館とかなんとかいう方面の人を使つてやることにしておりますが、何を申しましても、今そういうような人を養成をするために研修をしておる次第でありますから、そう長くはかからぬと思います。本年度くらいで片づくことだと思います。
  103. 古井喜實

    ○古井委員 私はこのただいままでの御答弁を伺つて、これまたまことに了解のできないことばかりでございます。そうまでして教育委員会制度を設け、またそうまでして後日大きな弊害を起させる必要はないと思います。この辺についてはもう少しさらつと、すなおにものをお考えになる方がよいだろうと思うのであります。私はもつとこの問題は論じたいのでありますけれども、その他の問題に移りたいと思いますから、この問題はここで打切つておきます。  次は、私は地方財政の問題について主として大蔵大臣にお伺いいたします。この吉田政府の施政の状況を見ますと、一つの大きな特徴は、外交偏重、内政軽視だと思うのであります。外交ということからほとんどすべての内政が割出されて来ておるように思うのであります。内政というお互いの生活生存というこの問題からむしろ割出して外交を行つてこそ、初めて確固たる外交も基礎を持つと思うのであります。今の状況を見ますと、外交、これが第一であつて、これにまつたく無方針、無計画に追随しておるのが内政の姿のように思うのであります。そこで、とりわけ吉田政府政治において軽視されておるものに、地方行政があると思うのであります。府県市町村行政であります。この府県市町村行政が、国政全般の上でどれだけの重要さを持つているか、どれだけの地位を占めておるかということを、閣僚の何人の方が一体知つておるかということを私は疑つておるのであります。まことに初歩のことを申し上げて失礼でありますが、財政規模からいつて、一体地方財政規模と国庫財政規模とどつちが大きいのか。国庫財政を一〇〇と見れば、地方財政規模は一体どのくらいの規模になるのか、こういうようなことさえあるいは御認識のない閣僚もおいでになりやせぬかと思う。あるいは御承知になつているかどうか伺つてみてもよい。しかしこれはあまり失礼でありますから伺う必要もありません。しかしこれはもう御承知のように、平和時においては、国庫財政よりも地方財政規模の方が大きいのであります。一方を一〇〇とすれば、一〇〇以上になつておる。昭和十一年、支那事変の前の年を見ましても、軍事費も含めた国庫財政、これに比べて地方財政は一二〇ということになつておる。その後戦争になりまして、戦時財政で国費が非常に膨脹しましたために、比率は落ちて来ましたけれども、また終戦後だんだんにこの地方財政の比率が上つて来ておる。もう国庫財政に対して八〇%以上の比率になつておるはずであります。軍事費あるいはああいう国防的な経費を除いた一般行政費を比べれば、ほとんど地方財政の方が倍に近い規模になつております。それだけのウエートを持つておるのであります。これだけの大きな地方行政というものがあるにかかわらず、まことに地方行政は軽視されておる。実にこれに対しては理解がない政治が行われておると私は思つておるのであります。ことに今日この地方行政がどういう状況にあるか、まずもつてこの財政面からもうつぶれかけておるのであります。大蔵大臣は、つぶれかけておればうれしいのかもしれませんが、つぶれかけておるのであります。特に今の地方財政の状況につきましては、これは大蔵大臣も十分に認識をしておいていただかなければいかぬと思う。昭和二十五年度の決算において、赤字を出した地方団体が一体どれくらいあるものか、翌年度の歳入を繰上げてやつと参決算をしたという地方団体がたくさんあるのであります。それから翌年度の歳入の繰上げはしなかつたけれども、事業の繰越し、支払いの繰延べということをやつて、そうしてやつと年をしのいだという、そういう地方団体になれば実に多いのであります。私はここに数字を持つております。一々申し上げてもよろしいと思います。しかしこれは特に政府に資料の提出を求めております。その趣意は、大臣にもひとつ見ていただきたいという趣意であります。昭和二十六年度の決算の見込みにおいても、状況はかわつておりません。おびただしい赤字団体を生ずることが明らかであります。私はこういう状況が一体ほうつておけるものかどうか、よくほうつておくものだということを疑つておる一人であります。数字を多少は例として申し上げませんと、実感も出ますまいが、昭和二十五年度の決算で申しますと、ほんとうの赤字団体、これが都道府県のうち十五であります。十五は実質上の赤字団体であります。五大市のうちの四市は、やはり赤字団体であります。またその他の市におきましても、八十五は赤字団体であります。そういうことで年を越しておるのであります。二十六年度の状況も似たりよつたりであります。こういうふうに地方財政が窮境に陥つている、今にもつぶたそうになつているということは、今までの地方財政史上かつてないことであります。これはほうつておけない問題だと私は思うのであります。一体これはどういうところに原因があるのかというのが、一番の問題点だと思うのであります。よく地方費には濫費が多い、こういうことも申せましよう。しかし濫費が多い程度でこのような大きな事実は起りません。これだけの事実がそういうことで起るはずはありません。また行政機構が複雑だという意味のことを、本多国務大臣は午前もおつしやつたと思いますが、それもありましようけれども、そういうことでこれほど大きな事実が起るはずはないのであります。各地方市町村、府県の状況は、行つてごらんになればわかる。小学校などは実に危険きわまる校舎が直せないでおるのであります。なおかつ代用校舎を使つても足らないというので、二部教授、三部教授までやつているところもあるのであります。その程度の必要やむを得ぬ校舎の改築、増築さえもできないくらいに事業を切り詰めておつても、なおかつ赤字なんであります。財源使つていないのではないのであります。使えるだけの与えられた財源は使い切つております。これに一体どれだけ標準課税率を越えた地方団体があるか。また法定外の独立税をしいてとつている団体があるか。この数字をごらんになれば明らかなことであります。使えるだけの財源使つております。しかもやりたい事業もやれないでいる。これは要するに与えるべき財源を与えないからであります。参必要な財源を与えないからこういうことになるのであります。ここに一番大きな問題があると思うのであります。  一体税源がどれだけ地方団体に与えられているか。これは私が申すまでもなく、よく専門の方は御承知でもありましようが、昭和二十五年度の決算を見ますと、総収入の中に税が何ぼ占めているかと申しますと、三〇%であります。これは都道府県では三〇%が税であります。その他の七〇%が税以外のものであります。税はこれだけしか与えられておらない。この府県と市町村との総体を見ましても、税は三五%。六五%というものは税以外のものである。税の与えられたものは三五%、二十六年度、二十七年度を見ましても、若干の変化はありますけれども、大きな違いはございません。与えられた税源は実に乏しいのであります。そういたしますと、税以外の財源でやつて行こう。健全財政の趣旨から言うならば、税をとつて足らないところは交付金で全部をまかなわなければならないはずである。ところが昭和二十五年度の状況を見ますと、平衡交付金は千五十億であります。実際決算の上では千八十四億と出ておりますが、結局これでも足らぬというので、二十五年度では三百二十二億の起債をいたしておる。健全財政からいうならば、税で足らなければ、交付金で全部を満たしてやるべきものではないかと思うのであります。しかもこれだけ起債をしたあげく、さつき申したような赤字を生じておるのであります。税のほかに、交付金で満たすべきものを満たさないで、起債をたくさんしておる。それでやつと年を越して、そのあげく非常におびただしい赤字団体を生じている。これが実情なんであります。地方財政はつぶれようとしているのではない、つぶされようとしているのであります。ちようど中小商工業者に対すると同じように、十や二十の地方団体がつぶれようがどうしようがかまわぬのだという政策が、やはりこの政府にあるのかもしれません。私は、結局これは必要な財源を与えないからだと考えるのであります。なぜこれを与えないのか。ひとつここでお伺いしておきたいことは、国の財政については健全財政の主義をとるとおつしやる。昔は均衡財政、超均衡財政、かわつて健全財政でありますが、健全財政を貫く。こういうことになつてつて地方財政については健全財政の主義は否認するんだ、とらないんだという理由はどこにあるか。借金で行け。国の財政については健全財政と看板を大きくして言いながら、地方財政については健全財政の主義は否認する。この理由はどこにあるかということを大蔵大臣にお伺いしたい。
  104. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私も実は東京以外のところに住んでおりまして、県の、または町村財政がよくやつて行くというふうに前には考えておりました。ただいまおつしやる通り、大蔵省に入りましてから、地方財政が非常に窮迫しているということをはつきりと認識いたしたわけであります。むろん相当の改善を要するものであるということには御趣旨同感でございます。政府は、地方財政の問題については全般的に検討を加えまして、地方財政の健全化を期するために一層努力するつもりでございまして、国の財政は健全で、地方財政は不健全でいいという考えは持つておりません。特に国と地方団体及び地方団体相互間の財源の配分等を中心としまして……(古井委員「そんなことは聞いていません」と呼ぶ)地方財政平衡交付金制度地方制度全般にわたつて根本的に検討を加えて参りたいと存じております。詳細につきましては、政府委員から御答弁申し上げます。
  105. 古井喜實

    ○古井委員 今日まで国の財政については健全財政で、公債は発行しないでやつて行く、こういう主義でありながら、地方財政の問題になれば公債へ追い込んでしまう。地方財政については健全財政の主義は否認してよろしい、こういうふうになる理由はどこにあつたか、またどこにあるか。今日の補正予算においても同じ問題でありますが、この理由はどこにあるか。もし中央地方を通じた財源が足らないで公債を発行する必要があるならば、国においても地方においても、均等に公債を発行するのが至当ではないか。どういうわけで地方だけを不健全財政に追い込むのか。公債を発行しなければやつて行けないようになぜするのか。中央財政に関連して、この理由をひとつ得心の行くように御説明願いたい。
  106. 河野一之

    河野(一)政府委員 今日地方財政が相当窮乏の域に達しておるということは、古井さん御指摘通りであります。もちろん地方団体は非常に数が多うございまして、一万有余の団体でございまするので、個々の事情によつて非常に違うと思います。御指摘のような赤字団体、ことに翌年度歳入を繰上げ流用するような団体が幾つかあるとおつしやることもよくわかるのでありますが、これはもちろん繰上げ流用、赤字になつた原因そのものについていろいろ検討して参りませんと、ただ仕事をやつて、それで赤字になつたのか、ほんとうの赤字であるかどうかという点についても相当検討を要すると思うのであります。国の方では、少くとも一般会計については健全財政と申すか公債を発行しないでやつておるのに、常に地方団体の方にそれを追い込んでおる、こういうお話でありますが、私どもとしましては、決してそういうふうに考えておるのではないのでございまして、過去においては、地方団体においても相当公債を発行しておつたのが、むしろ現在では、起債の少いことが地方団体の臨時的な事業その他を一般財源に追い込んで、かえつて苦しめておるのではないかというような感さえいたすのであります。平衡交付金で各団体の財政を平準化すると申しましても、個々の団体については、おのおの事情が違う。この村では学校を建てなければならない、この村はもう去年建てたからいいというようなことで、これをすべて一般の平衡交付金なり税でまかなうということは、平衡交付金の配分のやり方自体についても相当困難があり、不可能なことであろうと思うのです。従つて普遍的に行く面は平衡交付金をもつてそのめんどうを見て、一方臨時的なものにつきましては起債で行く。しかもそれは国の財政資金である預金部でもつてそこの調節をつけて行くということで、ここ数年来考えておるのでありまして、決して国が一人よがりをして地方団体に苦しみを押しつけておるというようには、考えておらないのであります。     〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕
  107. 古井喜實

    ○古井委員 私は、財源を十分与えないことが赤字を生ずる根本の原因だということを言つておるのですが、ただいまは、ほかにこれだけの大きな赤字を生ずる原因がありそうにおつしやつた。ほかにどんな大きな原因があるのか、あればそれを伺いたい。なおまた平衡交付金の問題について、若干の自治体が財源上剰余を生ずるのはあたりまえであります。生ずべきものであります。全部、一文も過不足なしに各地方団体を再起させるような平衡交付金の計算はできるものではない。余つたところができるのはあたりまえである。そういうことを考えることが、地方団体を無理な線に追い込んでおると私は思うのであります。つまり理解がなさ過ぎる。公債の問題についても、一般会計のために公債を発行しておるのである。公債を好んで発行しておるのではない。公債を発行せざるを得ないところに追い込まれておる。その公債自身もわくを締めておつて、あの通り地方からわんわん言つて陳情に来て、泣くように言つて公債をくれと頼んでおる。自分で借金することをあんなに頼まなければならない。これは実にさんたんたる状況だと思うのであります。一般会計の一般の経費は、公債を発行せんでも、国の健全財政と同じ趣旨で、公債以外の財源でやつて行ける。こういうふうに財源を与えるのが至当ではありませんか。これが健全財政であります。これは平衡交付金でやつてもちつとも悪いことはない。のみならず平衡交付金という制度が本質的に欠陥がある。というのは、いかようにでも財政需要を見積れる。実にあぶない。大蔵省にはたいへん便利な制度でありますけれども、地方団体にとつてみれば、これほど不安心な財源はないのであります。いかようにも見積られる。その例を一つ申しましよう。昭和二十六年度のことでありますが、照和二十六年度において地方財政委員会が当初歳入不足四百三十四億、この歳入不足を埋めるための財源がいる。これに対して大蔵省というのか、政府は百四十億でよろしい。同じ政府の機関でも三百億近くの見方の差が起つている。見方次第である。その後この補正予算の編成の当時に、地方財政委員会は不足が六百五十二億、しかしいろいろな財源で埋めて三百五十億結局足りない、こういう意見であつた。ところが政府あるいは大蔵省は、それどころじやない、七十七億の剰余があるのだ、こういう見方で大きな違いを起している。こういうふうに、見方でどうにでもなる。ところがこの余りが出ると称しておつた政府が、今度はその後地方の要望が強くなつたせいか、とうとう二百億の財源を与えた。交付金百億、起債百億のわくを与えた。余りが出ると言つていたのがどうして財源を後日与えたのか。まるで余りが出るという見方が間違つておつた。こういうふうに、どのようにでも見積りができるというあぶない制度なんであります。こういう制度は、地方団体のためにまことに危険きわまる。国庫の方から考えられれば幾らでも総額のわくを納められる。私は地方自治体に対するこの政府の無理解とこの平衡交付金制度の本質的な欠陥。これによつてやるべき財源、必要な財源地方に与えない、こういうことが今日のような財政状態を起している根本の原因だと思うのであります。さつきほかの原因もありそうにおつしやつたが、大筋から考えての御説明、御答弁が願いたいと思います。
  108. 河野一之

    河野(一)政府委員 地方財政に御造詣の深い古井さんにお答えするのもどうかと思うのでありますが、現在の地方財政のいろいろな推計を求めまする場合に、これは国の会計と違いまして、予算はもちろんのこと、決算もなかなか年度を越しても集まりませんし、それも一万有余の団体それぞれの特色を持つたものを単に集計したもので、ある団体においては赤字が出、ある団体においては剰余が出ても、それが相殺して出て来るかつこうになつているわけであります。そういう関係で、単に剰余があるとか、あるいは赤字があると申しましても、これは実は個々の団体について見なければなんとも言い得ないことなのであります。先ほど余りが出るとか何とかいうようなお話があつたやに思うのでありますが、過去における財政規模をどうつかんで、そうしてそれをどのように明年度において推計で伸ばして行くかというような点において、また節約を—各団体ともおのおの事情は違いましようが、これをどういうふうに見るかというような点で、どうしてもある程度そこに推計が違わざるを得ない。六千億にも上る地方財政でありますので、ちよつと違つてもおつしやつたように相当違うわけであります。われわれとしましては、自治庁と十分連絡いたしまして、地方財政の実態把握にかねがね努めているのでありますが、何しろたくさんの地方団体のことでもあり、調査、統計等も不備なことでありまして、なかなか御満足の行くような結果が出ないことを非常に心苦しく思つている次第であります。地方財政平衡交付金という制度、これは二十五年からやつたのでありますが、これは古井さん御指摘通りいろいろな問題点があろうと思います。大体地方財政平衡交付金考え方というものは、地方財源の絶対的な不足を補い、それとともに地方団体間の財政力の調整をいたすというような考え方で参つて来ているのでありますが、この数年来は、必ずしも後者の役目が百パーセント十分に果されているかどうかという点について、相当御議論余地があろうと思うのであります。これらの問題につきましては、中央地方を通ずる税制改革の問題といたしまして、地方制度調査会も目下発足御検討なさることでありましようし、そういつた点もかみ合せて、十分御意思に沿うような案が出て来ることと私どもとしては期待いたしている次第であります。
  109. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 古井委員に申し上げますが、時間が約八分ほど経過しておりますから、なるべく簡潔に結論をおつけください。
  110. 古井喜實

    ○古井委員 そういう言葉で簡単にまるめられてしまえばけつこうでありましようが、一体平衡交付金制度は欠陥がないとおつしやるのか、あるとおつしやるのか。ないとおつしやるのならば、昨年の補正予算の当時に剰余、つまり足らぬどころでない、余りが七十七億ある、こういう意見であつたのが、いつの間にか二百億足らぬということを認めて財源をつくつた。これはどういうことでそういうことになるのか。つまりどのようにでも見方次第、国の財政の御都合次第で平衡交付金というものの総額がきめ得るのじやないか。国の財政としては御都合がよかろうけれども、地方自治体としてはこういう不安定、不安心きわまる財源にたよつているということは実に不幸なことである。せめて昔の地方分与税の形ならば、国税の一定歩合が必ず地方財源としてもらえる。これなら国税の一定割合が必ずもらえるのでありますから、形は国税であつて地方の安心のつく財源であります。今はそういうつながりは一つもない。どつちも、歳出も歳入も見積りを受ける。ここに大きな欠陥があるのじやないか。欠陥がないと多分言われるだろう。国庫財政からいえば欠陥どころでない、非常な長所があるとおつしやるのだろうか、どうでありますか。
  111. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。地方自治が各団体とも非常に平準化して参つて来ている段階から申しますと、地方財政平衡交付金という基準財政需要に対して収入との差額をやるという制度は、一つの進歩した行き方であろうと思います。しかし一方におきまして、今古井さん御指摘のように、これが非常に浮動的なものであり、ことに地方財政需要というものが必ずしも正確につかめないという点で、おつしやるように欠陥が絶対ないとも申されぬと思います。従つてこの問題につきましては、いずれ適当な機会において、いかなる方向においてこれを解決するかということが考えられねばならぬと思います。
  112. 古井喜實

    ○古井委員 欠陥がないとも限らぬということであらまして、まずあるということであろうと思いますが、本多国務大臣は、この平衡交付金制度というものが欠陥がありそうなどころでない、本質的に欠陥があるかないか、どうお考えになるか、御答弁願います。
  113. 本多市郎

    本多国務大臣 平衡交付金制度の本質的な欠陥と申しますと、理論的欠陥があるかという意味でありますと、理論的にはまことにいい制度と思います。いかんせんこの制度は創設されまして三年目くらいですが、御承知平衡交付金算定するための基準財政需要額算定するにいたしましても、今日では法律で測定単位費用等は詳細にきまつているのでございますが、これが今日のところまで研究が進み安定するまでの間、そこに非常な地方財政の不安定があつたわけでございます。この測定単位費用を実態に即するようにきめることができるといたしますと、まことにいい制度であると私は考えております。すなわち地方団体に、全然政府の拘束しない、ひもつきでない一般財源として不足額を補填することができるものでございますから、地方団体はこれを自主的に運営することができますので、ほんとうに自主的な財政の確立の基盤になると考えております。しかしさいぜんのお話にありました通りに、国、地方を通じての予算の絶対的不足と申しましようか、そうした方面からの制約を受けまするので、今日府県にしても市町村にしても、行政規模は、単独事業といたしましてできるだけ急速にこれを実現したいということから、自主的運営の面が相当拡大されて行くのでございまして、これに対応することができないというような面も、今日の地方財政の非常な困難を感じている一つの原因であろうと考えております。この平衡交付金制度そのものの理論はまことに正しいのでございますけれども、過渡的な時期でありましたこと、さらにまたもう少しく安定したものを財源にした付与する——さいぜんからお話がありましたような、あまりに見込み等にたより過ぎるような算定の仕方は、収入の面においても不安定をまぬがれないと考えますので、そうした運営方法につきまして研究を遂げまして、地方制度調査会等で成案ができまするならば、進歩的ないい制度であると考えております。
  114. 古井喜實

    ○古井委員 私は、自治担当の国務大臣の御答弁としては、これはまことに遺憾であります。理論がいいというだけでこの制度がいいとおつしやるのは——私ははなから理論が悪いとは言つていない。実際上こういうはめに陥るような欠陥がある。全国の各市町村、あるいは各府県の基準財政収入あるいは財政需要、こんなことが正確に計算できるものじやない。またいかようにも見られてしまう。自治庁がこれだけと見ておるのを、大蔵省はこれだけと見てしまう、ここにあぶないところがあると言うのであつて、理論がいいとか、悪いとか言つているのではない。自治のためにこれは非常に不安心な財源ではないかと申しているのであります。現に補正予算の関係を見ましても、地方の税収入が増加するという見込みでもつて、今度の平衡交付金の増加額がきまつているようであります。地方税収が十億増加するという計算になつておりますが、一体増加するという十億は、どういう資料でその十億という数字を出されたか、どこで集めた資料で出されたか、これも今と関連しますので、問題を明らかにするためにひとつ伺つてみたいと思います。
  115. 本多市郎

    本多国務大臣 収入の面において、見込みでもつて収入を計上するのが、地方財政の非常な不安定と申しましようか、そういう意味であるということならば、一応見込みというようなものには不安がありますから、そうあるかと思うのでございます。しかし私は、基準財政需要額というものがほんとうに適当に決定されておりましたならば、今の税の見込みの変化につきましては調節ができるのでございますから、今回にいたしましても、補正予算において、税の増減等につきまして補正をすることになつております。この面から非常な違いがあつたのかと申しますと、総体的には、二十五年度の決算にしても、二十六年度の決算にしても、やはり見込みよりも多く税金はとれておるのでございます。もつとも個個の団体におきましては、さいぜん御指摘のように、赤字の団体も相当あり、事業を繰延べたり、あるいは繰上げ使用をしたりしてようやくやつたというところもあるのでございますが、総額といたしましては、収入は超過いたしておるのでございまして、基準財政需要額算定さえ、ほんとうに適当にできましたならば、収入の面は補正等によつてそう大きな困難をかけないでやつて行くことができるのじやないか、こういう私は感じを特つておるわけであります。
  116. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 あと一、二問で結論をおつけください。
  117. 古井喜實

    ○古井委員 御答弁のけりがつかないもので……。基準財政需要財政収入が適正に、正しく測定できればということでありますが、正しく測定できないからいけないと言つておるのです。今までの実績から見ても、正しく測定できない、人によつて見方がいろいろかわつて来る。ここに非常な危険性がある、あぶないところがあるということを申しておるのであります。この点は実際がそうなつておると私は言つておるのであります。  それからもう一つ、御答弁がなかつたのでありますけれども、十億増収、一体こういうことが何で算定できるか。各府県、各市町村から全部資料でもおとりになつてこういう数字を出されたか。それよりは、各府県、市町村はむしろ税収減だと言つている。それが増収になるはずがない。別の資料によつてお調べになつたのか、その別の資料は一体何であるか、目の子であるか何であるかということをお尋ねしたいのであります。
  118. 本多市郎

    本多国務大臣 本年度の徴収額の修正につきましては、やはり年度の経過によりまして、実績のだんだん現れて来たものもございます。たとえば法人等の決算が進むにつれて、だんだん見込額というものが確実化されて来たものもありますし、二十六年度の決算の結果、その実績が明らかになつて来たものもありまして、これは見込額が当初の見込みよりも確実化したものである、こういうふうに言うてよかろうと存じております。十億幾らの増収見込みの計算の基礎につきましては、政府委員から申し上げます。
  119. 古井喜實

    ○古井委員 計算の基礎じやない、どういう資料でやつたかと言うのです。
  120. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 お答え申し上げます。今回の修正地方財政額におきまして、総体として地方税で約十億の増収を見積つておりまするが、その大体の内訳を申し上げますと……。
  121. 古井喜實

    ○古井委員 内訳はけつこうですよ。つまりどこで集められた資料でこういう数字が出たか。私の言う意味は、資料なしで、手放しでもつて増収があるとかないとかということをきめてしまうような制度であるから困るということを言つておるのであつて地方団体の方では、今度これだけ減収すると言つているのに、むしろ増収だと言つているならば、それはどこの資料でやつたのか。何の資料もなしに、認定でやつたのかということを聞きたいのであります。
  122. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 お答え申し上げます。当初に見積つておりました地方税の総額があるわけでございますが、なおその後におけるいろいろな経済界における景況の偏向でありますとか、あるいは過去における、あるいはまた本年度に入りましてからの徴収の実績の状況でございますとか、そういうものを勘案いたしまして算定いたしたわけでございます。
  123. 古井喜實

    ○古井委員 その基礎資料をどこで集められたか。自治庁でもつてただ目の子で、推測でそういうふうに見られたのか、あるいは各府県、各市町村からみな材料を集めて、それをもとにして見られたのか、あるいは別のところからある資料でも持つて来て算定されたのか、これをはつきりしてもらいたいということであつて、一体いつでも資料の根拠なしに、収入はこれだけ増収があるのだとか、こういうことを見積るというところに、この平衡交付金制度の本質的な欠陥があるのだ。今回の場合も一体どういう資料で—十億という金額を論じているのではない。どういう資料でもつてこれは増収と見たかということを聞いておるのであります。簡単なことであります。     〔井出委員委員長、時間の制約をいろいろ言われますが、今のような見当違いの答弁では困りやしないか」と呼ぶ〕
  124. 本多市郎

    本多国務大臣 見込みは自治庁で立てたのでありますけれども、実績等の判明しているものは、その判明している実績を報告を受ける、そういう方法によつてでき得る限り確実な資料に基いて決定したものでございます。
  125. 古井喜實

    ○古井委員 要するに自治庁でもつて目の子で見てしまつた、こういうことに帰すると思うのであります。そうすれば、そういうことで地方財源がきめられるというところに、地方財政がこういう窮境に陥る根本の原因がある、こういうことをお認めになりませんか。私はこの点をはつきりお考えになつているか、ひとつ伺いたいと思います。
  126. 本多市郎

    本多国務大臣 政府の目の子勘定のでたらめから地方財政の困難が生じておるというお話でございますが、さようには考えないのでございまして、自治庁におきましても、地方団体からの実績に基く資料は十分これを求めて、それに基いてやつております。また地方税と国税との関係もございますので、国税の調定額等の根拠になつている数字等も、判明するものはこれを根拠にできるだけ補正を加えておるわけであります。
  127. 古井喜實

    ○古井委員 まつたく場当りの答弁でありまして、地方税の増収をどこで見ておるか。たとえば入場税を見ておる、この基礎資料を見れば、これは国税と何も関係はありはしない。基礎資料をよくごらんになつてくださればわかるので、一々申し上げませんけれども、まつたくの話が場当りをおつしやつておる。何々ふえた、どうせ一月から遊興飲食税、入場税が減ると、その減収はある。それにもかかわらずふえておる。また固定資産税がふえておる、増収を見込んでおる、これは何を資料にして増収を見たかということが私はわからない。もし地方実情に通じておる。現にそれを扱つている自治体からの資料でやつたというのであれば、府県や市町村が、足らぬ、減収だと言つている意見が、こう政府と食い違うはずはないのであります。この辺が—私はきようのこの問題を明らかにしてみれば、平衡交付金というものがわかるので、それで今伺つているのであります。今入場税がふえているというのはどういうわけでありますか。どこの資料でそういう算定を出したのか。
  128. 本多市郎

    本多国務大臣 御指摘の入場税等につきましては、月遅れで徴収額がわかつて来るものでありますから、そういうものが基礎になるわけでございます。
  129. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 あとの質問者の都合もありますから、これ一問で御中止を願います。
  130. 古井喜實

    ○古井委員 もう一点……。関連していますけれども、資料がどこにあるか、月遅れの調べがあるとおつしやるけれども、その調べは一体どこからおとりになつていらつしやいますか、つまりそうおつしやるだけじやありませんか。月遅れの資料を一体どこからおとりになつたものか、ありますか。ないとおつしやればそれでいいのです。あるとおつしやるから聞くのです。大体達観してやつたとおつしやるならばそれでいいのだ、あるとおつしやるから聞きたいのです。あるのかないのか、はつきりお伺いいたしたいと思います。
  131. 本多市郎

    本多国務大臣 入場税の収入実績は、府県の報告によつて認定して行かなければならぬと思いますが、今回の補正については、それらを十分調査していることと存じます。もし御必要でございましたならば、全体に対する見積りの根拠、それから入場税等につきまして、本年度の実績はどうなつているかということの資料をお示ししてもよかろうと思います。
  132. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 古井君に申し上げますが、どこまでお続けになるお考えでありますか。他党との関係もありますので、もし残つておりますならば別の機会にひとつ……。
  133. 古井喜實

    ○古井委員 もうあと一点ですから…。
  134. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 それでは古井君。
  135. 古井喜實

    ○古井委員 今の点は希望でありますが、府県からとつた資料からいえば、どういう数字が出ておるか。地方団体からとつた数字、そのまとめた資料をお願いしたい。  もう一点、やはり平衡交付金関係でありますが、地方公務員の給与単価の問題であります。給与単価を若干調整しておる。これは一体どういう根拠に基いて調整を加えておるのか、この関係をひとつ伺いたい。
  136. 本多市郎

    本多国務大臣 当初の地方財政計画におきまして基準財政需要額算定するとき、地方公務員の平均給与が国家公務員に対して高いということで、その高いと一応算定いたしました額を控除したものを需要額として計上いたしたのでございます。しかるにその後高いといわれる額がそれほどの差はないという知事会等からの意見もあり、またわれわれ自治庁といたしましても、これは再調査して補正すべきものであるということを前提といたしておりましたので、これを再調査いたしました。その再調査の方法といたしましては、自治庁、文部省、大蔵省の係官で調査連絡協議会を設けまして、地方公務員と国家公務員との給与の差というものを比較検討いたしまして結論が出たのでございます。その出ました結論は、当初財政計画に盛り込んだほどの開きがない、その開きがもう少しく小さいものであるということになりましたので、多く控除していた分だけを今回補正して財源を補填いたしております。
  137. 古井喜實

    ○古井委員 そこで政府の関係当局でもつて、抜き検査的に地方公務員の実際給与を調べてみた。そこから割出してみると、国家公務員より高い。ところが国家公務員の方については、実際給与というものはお調べになつたことはない。高いという片方の比較する調査がないはずである。あるならばどういう調査をなさつたか伺いたい。  もう一つ、これは簡単にするためでありますが、かりに地方公務員の方が実際給与が高い、こういうふうになつた場合に、事実それだけ高いには高いだけの理由もあり得る。地方公務員については特異性もあり得る。この特異性に応じて高い給与を地方団体がきめることは、地方自治の本質上当然のことである。当然のことであるならば、これを認めないということはできないはずである。これを国が、地方自治の権能で当然のこととして、かりに高いにしても、きめてやつておるものを否認するといつた根拠は、一体どこにあるか。これをひとつ伺つておかなければならぬ。
  138. 本多市郎

    本多国務大臣 第一の問題につきまして、国家公務員については実態調査をしておらないじやないかというお話でございますが、地方公務員に対して行いました厖大な実態調査に相当するような調査はいたしておらないのでございます。ただ国家公務員の給与につきましては、それぞれ法令の定むるところによつて、あるべき金額というものがきまつておりますので、そのあるべき金額を算出いたしまして、これをそれぞれ自治庁においては地方事務官等の実態について比較勘案し、文部当局においても、国立学校の教職員等と比較勘案し、大蔵省においてもそれぞれ勘案いたしまして、これは国家公務員の給与の実態と開きのないものであるという認定をいたしたのでございます。その認定に基いて、今回前回の開きがあるとした金額に相違があつたことがわかりましたので、これを訂正することにいたしたのでございます。  さらにまた、地方公務員の給与が高いとしても、それぞれ沿革のあることであつて、その実態を尊重すべきではないかという意味の御質問と存じますが、これにつきましては、地方公務員の給与は国家公務員に準ずるという法律の建前でございますから、政府の責任をもつて地方財政計画を立てるというその基準財政需要額に見積る金は、やはりこの準ずるという額によることが適当なものと考えたのでございます。
  139. 古井喜實

    ○古井委員 今の点で、地方公務員については実際の給与額を調べた。全部じやないが、抜き検査をなしたようでありますが、先ほど国家公務員については実際の給与額を調べていない。あるのじやなくて、あるべき給与額をここに考えて、それと比較したと言われたが、これは比較にならぬのであります。実際ある給与額を国家公務員についても調べなければ、高いか安いかはわからないはずだと思うのであります。この点はもう論議の余地なしに根拠が薄いと私は思う。それよりも第二番目の点の準ずるということ、準ずるということは同じことであるということじやない。特異性があるから特異性に応ずるのはあたりまえのことであるし、これは自治体としては当然の立場であります。それをなぜ一体この自治体の本旨を尊重することができないのか、してはいけないのか、しないでよろしいという根拠はどこにあるのか。これをひとつ聞かなければならぬのであります。これは自治体の本旨を尊重するゆえんではないと思います。
  140. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。国家公務員について実態調査をやつておるかというお尋ねに関連して、本多大臣からお答えがあつたのでありますが、国家公務員につきましては、二千九百二十円ベース、それから三千七百九十一円ベースの切りかえのときに、以前におきましては給与実施本部、その後におきましては人事院におきまして、個々にずいぶん調査をいたしております。その後におきましても、われわれの手元で、全部ではありませんが調査をいたしております。毎年四月に給与の実態調査を大蔵省においてやつております。地方公務員につきましては、これは先ほどのお言葉でございますが、われわれの考え方といたしましては、国家公務員に準ずるというからには、国が財源を付与します上におきまして、国家公務員と同様な給与の分のめんどうをみる、こういう建前でございます。地方の特有の財源で、おのおの地方団体の状況に応じてこれ以上の給与を出すということを別に妨げておるものではないのであります。ただ平衡交付金その他を計算する上におきましては、法律の趣旨に応じてそういう計算をいたしておる、こういうことにすぎないのでございます。
  141. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 古井君に申し上げます。石井君もお待ちかねでありますし、石井君御要求の関係大臣も見えておいでになりますので、この発言一回で結論をおつけ願います。
  142. 古井喜實

    ○古井委員 まだ返答がはつきりしない。
  143. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 また別の機会にお願いいたします。
  144. 古井喜實

    ○古井委員 それでは—国家公務員については人事院も調べたかのようであるし、大蔵省も年々調べた。しかし地方公務員の方は地方自治庁だけではなく、地方自治庁も大蔵省も一緒に入つて調べている。それと比較する場合の国家公務員の実際給与を調べるとするならば、大蔵省だけでなしに、ほかの方とも一緒に調べぬと比較にならぬ。大蔵省がお調べになつたものと比較するということは合理的でないと思う。それからまた準ずるといつたら、同じことじやなくて、準じようがどうしようが、条例できめるということになつている。自治体が自分で準じてきめるのであつて、特異性に応じてきめたものを否認するのじやないとおつしやるかもしれないが、財源を与えないで、他に財源がないことがわかりきつているのに、必要な財源を割引して与えるならば、これは引きおろせということになるほかない、強制することになるほかない。他に財源がないということは、結局自治体の自治に対する平衡交付金制度の濫用だと思う。財政手段による自治の侵害だと私は思う。脱法的な地方自治に対する抑圧だと思う。これは平衡交付金制度にも、自治の本旨にのつとれということが至るところに書いてある。平衡交付金という手を使つて、いわば地方自治に対して干渉を加えているものだと私は思う。この点について、もしはつきりしたお答えが伺えれば伺いたいと思います。
  145. 本多市郎

    本多国務大臣 お説でございますが、そのまた逆も言えると考えております。地方財政は自主的に運営するものでございまして、その実態に即応して中央の金が流れるということになりますと、非常に不公平に陥るおそれもありまして、政府が責任をもつて補填すべき費用というものは、やはりこの算定基準のごとき一つの方針に従つてやることが適当だと考えております。
  146. 古井喜實

    ○古井委員 それでは次会にもう一ぺん保留いたします。
  147. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 石井繁丸君。
  148. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 地方財政問題それから肥料の価格並びに生糸の輸出関係等を所管大臣にお尋ねしたいのであります。初めにごく簡単に緒方副総理並びに法務大臣に、民主政治の基本問題でありますから、一言お尋ねいたしておきたいのであります。  御承知通り、今回自由党としましても、講和会議成立後の初めての総選挙にあたりまして、公明民主選挙という建前で臨んだのでありますが、選挙の結果を見ますと、非常に違反が多くて、起訴人員が四千二百三十八名というような状態で、自由党におきましては二千百四十一、改進党が八百、無所属は非常に多くて九百七十五、こういうような違反を出しました。(「社会党は言わないじやないか」と呼ぶ者あり)社会党左右とも若干ありますが、非常に選挙の公明が害された。そこで犬養法務大臣は、恩赦によつて選挙違反の起訴が何とかないように、選挙違反は無罪にしようとかいうような問題等考えたようでありますが、これはいろいろと世論の攻撃にあつて葬られたのであります。そこでかような結果になつたので、検事局等におきましては、鋭意選挙の結果の公正、あるいは今後に備えて、いろいろと処置言つておるようでありますが、国民が一番疑問に思つておる点、並びにこの点について、十分に政府あるいは国会等がこたえなければ、議会政治の発展、あるいは国民の信頼がなくなるので、一言お尋ねしたいと思う。私がいまさら言うまでもなく、民主政治の基本は国会が国民から尊重されることである。ところが比較的いろいろと骨を折つて議員が出ながらも、国会が国民から尊重せられない原因がどこにあるかということは、国会議員は大きい顔をしているけれども、みな選挙違反を犯しておるじやないか。金を使つて当選しているのだ。こういうような点が国民から尊敬を払われない大きな原因になつておると思うのであります。そこでこういうことに対して、政府も国会も、選挙は公明にやる、かようなことは根絶する方針に向つているのだ、こういうことを国民に明快にしなければ、次第に国会が国民から軽視せられることは、何人も肯定しているところであります。そこで今度の選挙で当選者の中で非常に多くの起訴等もあるが、一番の問題は、選挙事務長等を逃がしておいて、六箇月の起訴期間を免れようといたしておる、こういうことが行われておるわけであります。岡崎外務大臣が今回就任をするにあたりまして、吉田総理はいろいろと尋ねて、起訴されるというような状態ではないからという考えにおいて就任を見たようでありますが、選挙の中心の人であるところの選挙事務長を逃がしておく。もうこれ自体で十分に国会議員として、あるいは国政の担当者としての資格はないのじやないか。問題が起ればともども選挙事務長とともに自分が警察に行つて言い開きをしなければならない、こういうように考えられる。それを、選挙事務長をどちらかへ逃がして、事態の進行をはばんでおいて、そして活然として恥じない。またこれを検事局あるいは警察方面もそのままにしておく。こういうことになると、もはや公明なる選挙に期待する、公明なる選挙によつて国会が国民から信頼されるということが、失われるということは明らかであります。そこで政府としましては、選挙事務長や何かが逃げておるというような問題については、議会政治尊重、公明なる選挙の結果国会が国民にから信頼をされるという意味におきましても、あくまで責任を追究いたして、そして事を明白にいたして国民の信頼にこたえたいと思つておるのかどうか。その点についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  149. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。御指摘のように、先般の総選挙の際に選挙違反が相当数ありましたことにつきましては、政府にしても非常に遺憾に存じております。このことは、将来国民の自覚と、また選挙制度を完備いたすことによりまして、何とか選挙違反を少からしめたいと熱心に考えております。なお、閣僚で違反の疑いがある者があるということを仰せられましたが、その事実がまだ確定いたしておらない今日、それについて発言いたしますことは差控えたいと存じております。
  150. 犬養健

    犬養国務大臣 石井さんにお答えをいたします。公明選挙の趣旨、つまりいい人があるけれども、そして立候補したいけれども、金がかかるのでは出られないというような事態があつてはならない、こう考えております。その趣旨に基いて選挙違反を処理しているのでございますが、ただいま特に御指摘になりましたごとく、なるほど選挙事務長や出納責任者で逃亡しておる者がございます。この逃亡の時効は、石井さんのおつしやるのと違つて一箇年でありまして、逃亡者に対しては政府もたびたび会同を開きまして、特に逃亡者に対する処置というものを緻密に打合せております。それから、私が選挙違反を立太子の大赦でなしくずしにすることで策動したというお話がありますが、これはまつたく事実無根でありまして、さらにお調べの上いつでも御質問に応じたいと思います。
  151. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 犬養毅氏の御子息でありまして、議会政治の尊重のために非常に努めた方の御子息でありまして、議会の公明のために努力をされておると考えておりますが、あの立太子のときに、国民全体の輿論の中に、選挙違反に恩赦を出そうということは非常に誤解を招いた、こう思うのでありまして、これらのことについては、公明選挙擁護という立場において、国民の気持を十分にくんでいただきたいと思います。そこで選挙事務長が逃亡しておる、出納責任者が逃げておる、この点については全力をあげて追究をいたして事を明白にいたす、こういうわけでありますが、私、非をあげたりなんかすることは、まことに好まないのでありまするが、新聞等に出ておる選挙事務所開きに数百人の人を呼んで酒肴を供する、これは実際常識を逸しております。私も過去いろいろな選挙で幾度か出たことはありますが、選挙事務所開きというものは、大体十数人がするめでお茶でも飲む、それで国民に訴えるというような建前—さような選挙史上にもまことに常識を逸しておる選挙事務所開きをしておる。そうしてその責任者がいないというような問題については、十分に国民の誤解を解くために、責任ある処置をとつてただきたいと思うのであります。これでなければ、議会政治国民から信頼は得られない。これが得られなければ、あといかに努力いたしましても、基礎がくずれるのでありますから、この点についての努力が願いたい。なお、さような関係の人を—岡崎国務大臣ももはや起訴不起訴がきまつておるようだ、もう不起訴処分になるようなことを言つておりますが、実際においては、今どのような具体的な結果になつておるのか、その点をお知らせ願いたいと思うのであります。
  152. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。岡崎国務大臣に関する選挙違反の問題でありますが、ただいま取調べておる範囲においては、ただちに起訴ということには至つておりません。     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕  それから問題は私も聞いております。事務所開きでたいへんな人数が集まつたということは事実でありますが、御本人がそこにおられて、何時から何時までというような問題で、今非常に緻密な取調べをいたしております。そういうわけで、ただいま判明している範囲におきましては、起訴というところまで行つておらないという報告でございます。
  153. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 このことをくどくは言いませんが、また、いないといつても数百名を集めておる。それにやはり出納責任者あるいは事務長が関係しておる、こういうことになると、それだけでも常識上、国民あるいは検察当局が見ても、また犬養法務大臣が見ましても、また緒方国務大臣が見ましても、結果は明瞭である。数百名の多くの人を事務所開きに呼んで酒肴を供するということが、常軌を逸したものであることは問題ない。この点はよく御考慮に入れていただきたいと思います。  本論に入りたいと思います。農林大臣、通産大臣もたいへんお急ぎのようでありますから、農林大臣から御答弁を願いたいと思います。御承知通り、日本の硫安は現在ドル建にしまして一トン六十七ドルである。米国が五十七ドルである。西独は五十ドル、英国は四十六ドルである。かような関係からいたしまして、台湾等においても、あるいはアジアにおきましても、日本の硫安がドイツ等から締め出しを受けておるわけであります。基礎原料を国外に求めるから、そこで日本の硫安がどうしても高くて太刀打ちができないということでありますれば、これは余儀ないのでありますが、御承知通り、硫安の材料である硫化鉱並びに硫黄あるいは石炭あるいは電気、日本におきましては最も恵まれたる資源でありまして、大体において世界各国におきまして、アメリカ等を除いては、日本の硫安製造は資源においては恵まれた立場にある、こう言い得ると思うのであります。ところが日本におきましては六十七ドル、西独においては五十ドルである。かような関係におきまして、日本の硫安が東南アジアあるいは朝鮮方面からも締め出しを食うのではないか、硫安製造業者は出血輸出によつてこれをまかなう、こういうふうな問題に立つておるということは、非常に貿易に依存しなければならない日本の国家としまして、寒心にたえない問題であります。さような点から、農民からしますと、それだけの原料がありながら日本の硫安は高い、そしてドイツのは安い、海外に安く売つて、日本の農民に高く売るということは不都合である。平野委員も昨日質問いたしたのでありますが、農民の気持とすると、ひとつここで海外から若干硫安でも入れて、肥料製造業者等に覚醒を与えることが必要ではないか、かような点等も議論に出ておるわけであります。しかしながら、かようなことになりますれば、硫安工業が壊滅に瀕するということになつて、これまた大問題になつて来る。農民等においても、さような意見もある。そこで農林大臣等はさような農民の意見にこたえるように努力をしなければならない。あるいは通産大臣は、これまたそういうような点をしんしやくして、輸出の面等を将来見越して努力をしなければならぬということは明らかな問題でありますが、農林大臣はさような問題についてどう農民にこたえようとしておられるのか、また通産大臣はさような点についてどういうふうに努力をしておられるか、この点を卒直に伺いたいのであります。
  154. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 石井さんにお答えいたします。今お話のように、日本の硫安価格が西欧のものに比べて高いことは御指摘のごとくでありますが、この価格の開きはどこから起つておるかと申しますと、主として先方は当方の約五割程度くらい割安の石炭を使つておる、こういう点にあるのであります。たとえて言いますと、石炭は日本で七千二百円くらいでありますが、向うでは七、八ドルの石炭を使つておるのであります。それから鉄鋼、セメント等、ほかの産業との有機的な結びつきを持つた企業経営を行つてつて、原料ガス、石膏、硫酸等において低いコストで生産をしておること、また副産の硫安が多いこと、金利が著しく安いこと、これらの点があげられるのであります。しかし日本の硫安工業を盛んにいたしますために、また安く供給いたしますために、私どもといたしましては、第一に設備の近代化、第二に電源開発に伴う操業度の上昇、第三に石炭鉱業の合理化、第四に硫安工業経営の改善、第五に長期低利資金の融通等、そのほかにいろいろ考案中でございますが、これは時間的にも相当かかりますので、国際価格並に輸出できるのには、しばらく時間をかしていただきたいと存じます。  なお念のため申し上げておきますが、今のドイツその他のものがこちらへ来まして安いのは、向うのこういつたような原因で安い点もありますけれども、最近運賃、特に船舶運賃が非常に安くなつておるということ等に原因しておるのでありまして、船舶運賃がノーマルな状態になりますれば、日本も国際価格の点まで競争し得る時期は、そう遠くなくあり得ると私どもは信じておる次第であります。なお数箇月以前までは日本の硫安が国際市価でも一番安かつたことは、石井さんも御承知通りでございます。
  155. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 肥料が外国に比して高いことは御指摘通りでございまして、ただこれを農民としては安く入手したいというのが希望であります。昨日も平野氏からお尋ねがあつたのでありますが、これをなるべく早く合理化をはかりまして、安くすることをこいねがうのでありますが、目前の問題といたしましては、審議会でもつくりまして、そうしてなるべく安く農村に入るように努力いたしたいと考えております。
  156. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 抽象的の答弁でありますが、日本の産業全体の立場から努力をしなければならない問題でありまして、特に過日の資料によりましてわかる通り、日本においての外貨獲得のうち、四億六千万ドルが進駐軍消費関係において得ている、こういうようなことでありまして、非常に輸出貿易の進展をはからなければならない。この点については、硫安については長期対策を立てる。しかしその長期対策も全力をあげて、そうして海外において他国に負けない、農民には安い肥料を与えるように努力する、こういう点は了承ができるのであります。しかしながら農民の中に、さつき申したような気持も非常に強く動いているという点を、ひとつ通産大臣、農林大臣も心に入れて努力してもらいたいと思う。  そこでやはり輸出等に関連があるのでありますが、日本といたしましては、生糸の輸出等が何といたしましても戦前は一番大きな問題であつた。大東亜戦争中生糸市場がほとんど荒廃に帰したのであるが、戦後それが復活を見つつあるのであります。しかしながら御承知通り、日本の国民が敗戦の実情にありながら生糸を使つて、内需に圧迫をされて輸出が伸びないというような現象が起りまして、輸出関係のものが非常に悩んでおるということは、御承知通りだと思うのであります。しかしながら、この間におきまして中共等においては、あるいはシベリア鉄道を通じたり、あるいは香港等を通じまして、ドル獲得等についていろいろと努力をいたして、将来においてまた中国の生糸の販路についての手配をいたしたいというふうに考えている、こういうわけである。そこでやはり大局から見まして、生糸は国際的には一応奢侈品であるというような気持をもつて、日本はこれの海外輸出によつてドルを獲得するように向けなければいけない。日本の国民がこの生糸を軽々しく使つて、そうして輸出を阻害するようなことがあつてはいけない、こういうような大局的な考え国民にあるとともに、また政府としてもそれらについて十分な対策が立てられなければならないと思うのであります。今生糸があるからというだけで、内需があるので高いというだけで、農民を安心させてはいけないと思う。将来中共の生糸等とも争つて海外に販路を広めなければならない。現在のうちに日本の生糸をアメリカあるいはヨーロツパの各消費国民になじませておかなければいかぬ。かような対策が立てられなければ、悔いを後日に残す、こういうふうに思うのでありますが、こういうような問題等について生糸の輸出関係業者も先を思つて、いろいろと通産大臣あるいは農林大臣等に希望等を申し、強くこれの輸出の発展について要請をいたしているようでございますが、いかなる考えをもつてこれに対処しようとするか、この点お答え願いたいと思います。
  157. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答え申し上げます。生糸は最近国内の需要が非常に多くなりまして、御承知のように、七月十八日に繭糸価格安定法によりまして、二十四万円の禁止価格を設定いたしたのでありますが、その後アメリカの方の相場も漸次これに追随して参りますとともに、輸出もだんだん増加いたしまして、本年は年間を通じましては、昨年程度の実績をあげ得ると信じております。しかしそれについて、さらにどういう方法をとるかということについてのお話が今ございましたが、さしあたりやり得ることといたしましては、これは関係方面に相談を要するのでございますが、ドル地域向けの輸出増進をはかりますために、輸出振興外貨というものがございます。輸出振興外貨の算定率は現行第二類になつております。第二類というのは一〇%でありますが、あれを第一類一五%まで引上げるということにいたしますれば、よほど輸出力が増進できると考えられますので、さようなことを目下研究中であります。いずれにしましても、お示しの通り、生糸の輸出は日本のドル獲得にはきわめて大切でありますから、この輸出力をそがないように、またむしろ加えるようにいろいろな対策を立てたいと存じております。
  158. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 通産大臣から農民に理解のある御答弁を願つたので、私はそう大して蛇足を加えることはないのでありますが、しかしこの生糸は非常に大事な輸出品でありまして、また農家経済にとつて重要な位置を占めるものでありますから、われわれといたしましては、この日本の生糸の価格が安定いたし、これが海外の需要を増すことをこいねがうと同時に、国内におきましては、桑の増植あるいはまた品種の改良あるいは病気の駆除等いろいろ施策を講じまして、優良な生糸をたくさん出すように努力いたしたいと思います。特にこの桑の増植等につきましては、なかなか一朝に行きませんので、これは昨年から始めたことでありますが、砂防工事等にもこれを用いて、土どめにこれを使つて、すでに日本で十県ぐらい荒廃地にこれを植えて、その荒廃地から桑をとるということまで考えてやつておるのであります。そういたしまして、この桑の量をふやすと同時に、繭の生産高を増して行くように努力いたしておるようなわけであります。
  159. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 この問題については、とにかく安定帯が生糸にはできましたので、私見通しとして相当に繭の増産はできると思います。それからまた農林省としましても、これには大いに努力いたしておるというような農林大臣の答弁である、かような点からしまして、やはり根本的に、現在日本の国民が、かようなる進駐軍の内地消費によつて収支をまかなつておる、こういうようなことであつてはいけない。何としましても、輸出によつて日本の国の経済の自立をしなければいかぬ、それには国民が生糸等の消費を多量にして輸出を圧迫するようなことでは、将来日本のためにならない、かような決心をもつて十分に国民に臨むとともに、また農林、通産両省とも、全力をあげて将来の日本のために努力をお願いしたいと思うのであります。農林大臣も多用なところであるというのでありますから、幾つかの問題はありますが、一応この点だけ質問して、農林大臣に対する質問を終りたいと思います。  これから自治庁長官に対しまして二、三お尋ねをいたしたいと思います。ただいま古井委員が、いろいろと自治庁の関係を本多長官に質問いたしたのでありますが、答弁が要領を得ない。こういうわけで非常に長くこまかい質問をいたしましたが、質問すればするほど要点を得られないというようなわけでありますので、私ごく要点だけを質問いたしまして、知事あるいは市町村長等が心配をいたしておる点等について、安心を得られるような御答弁を願いたいと思うのであります。御承知通り今度国家公務員あるいはその他が、生活実態から見まして、年末にあたりまして一万六千円ベースの要求をいたしております。あるいは国鉄はその裁定の完全実施について努力をいたしておりますが、これ等につきましては、政府財源がないというわけでいろいろとすげない態度をとつておるようであります。しかしながらここに何としても看過できない問題は、御承知通り地方長官あるいは全国町村長等がいろいろと政府に案をいたし、あるいは陳情等をいたしてその実現方をはかつて、何とかひとつ地方財政で切り抜けて行きたいという、切なる要求があるということはよく御承知のところと思うのであります。十一日に全国知事も集まりまして、知事会議を開いて、政府にいろいろと切実なる要求をしよう、あるいは市町村長等もこれに相対しまして、自分たちの要求実現のために努力をいたしたいと言つておるのでありますが、これらの人々の要求の基本とするところはどこであるか、こう申しますと、御承知通り、今回の平衡交付金二百億円、地方起債百二十億円、合計三百二十億円の財源だけでは、どうしても政府のいう地方公務員の二割のベース・アツプ、あるいは一箇月の年末手当等ができない。政府が国家公務員に実現をせんとして組まれたこの政府予算が実現せられれば、国家公務員等に対しては、政府の約束したものは間違いなく実現できるのだが、今回のこの地方財源の増加だけではどうしてもできない。われわれはこういうふうな見地に立つて何とかそれが実現できるように努力をいたしてもらいたい、かようなまことに切実なる要求のもとにいろいろと心配をいたしておるわけであります。そこで政府においては地方財政計画に対して修正計画を出しまして、とにかくこれで今度の二割の増俸問題並びに一箇月の年末手当等もできるんだ、こういうふうに言つておりますが、本多国務大臣として今度のこれでそれだけのことが実際にできるか、あるいは市町村等がこの財源で、政府の約束をした二割のペース・アップ、また一箇月の年末手当が、確実に実施できると確信を持つておるのか、その確信のほどを承つておきたいと思うのであります。
  160. 本多市郎

    本多国務大臣 まことにごもつともな御質問と存ずるのでございますが、県市町村という地方団体の中には、国家公務員に比して給与の多いところもあれば、また少いところもあるのであります。今回政府のとりました措置は、国家公務員に準ずる給与を基準といたしまして、その二割増、あるいは年末一箇月分の手当というのが算定してありますので、給与の低いところではこの算定に基いてできるということが言えますが、給与の高いところでは、必ずしもこの財源のみをもつてまかなうことはできない場合も生じて来ると存じます。しかし地方財政はこの平衡交付金のみが財源ではないのでございまして、一体として自主的に運営されるものでございますから、地方団体の自主的なくふうによりまして、適当に行われることと考えております。
  161. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 ただいま自治庁長官は、適当に行われる、こういうふうな御答弁でありました。力のあるところはまあそう心配ないだろう、力のないところは無理もあるかもしれない、こういうふうな御意見であつたのであります。今度のこの財源措置だけでは、県によつて政府の所期するところの二割ベース・アップ、一箇月の年末手当これができないところもあるかもしれない、こういうところの御所見であるかどうかひとつ承つておきたいと思います。
  162. 本多市郎

    本多国務大臣 政府財源措置といたしましては、国家公務員に準じたものを基準として、財政措置をするほかはないと思つておるのでございまして、これによつて地方団体は実情に即するように運営してもらいたいと考えております。これは必ずしも政府として、その運営の仕方にとやかく干渉すべきものではないと考えておりますので、財源措置としてはこの程度でやむを得ないものと考えております。
  163. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それでは、県によつてはこれだけのことができないかもしれないが、そのときはそれでその地方財政力が貧弱なんであるからしかたがない、こういうふうなお考えのようにうかがわれるわけでありますが、さような、場合によつてはできなくてもしようがないのだ、これはその地方財源が乏しいからだ、こういうふうにお聞きしておいてよろしいかどうか承つておきたいと思います。
  164. 本多市郎

    本多国務大臣 重ねてお尋ねでございますが、地方財政は自主的に運営されるものでございますから、政府としては国家公務員に準ずる財源措置をいたしまして、その自主的な面につきましては、地方で十分くふうと努力をしてもらいたいと思つております。
  165. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 大体地方におきまして、あるいは地方長官あるいは市町村長たちが、自治庁に対していろいろと不満を持つておるのは、今回の補正予算の組み方の問題である。御承知通り、今度の財源は七百九十八億円、こういうふうにわくが示されておる。そこで農林省は幾ら、あるいは何々は幾ら、こういうふうに各省で大体において要求額をとる。そこでみんなとつたあとにおいて財源がほとんどなくなつたとき、どうも地方財政も少し困難なようだが、幾らか残しておかなきやなるまいというので、あとで考えついたというぐらいのところで残された。これで何とかおつつけろ、こういうふうに本多国務大臣に押しつけた。そこで自治庁としましても、あてがい扶持で何とかあとのつじつまが合うように、地方自治体の財政の修正計画を立てた。つまり七百九十八億円を、まずいろいろと優先的に各省有力大臣が自分の所管の方にとる。そうしてあとになつて本多国務大臣の方にも何らかやらなくちやなるまい、こういうふうなわけでもうこれきりなしのだと言つてつて、そこで心ならずもあなたとしましては、地方財政財源措置をこれでまた下へ、おれも上から押されたのでお前たちを押すからというような、天くだり式におろしたのが今度の処置である、こういうふうな気持を強く持つているわけである。実際におきまして、今度の地方財源獲得について、地方自治体を代表する国務大臣として、どのような努力をいたし、そうしてどのような見地に立つてこの一般自治団体の要望にこたえようとしたか。この努力のあとをひとつ十分に率直に御説明にならなければ、さつき私の質問いたしたように、自治団体関係のものは国務大臣を見るわけでありまして、これに対して率直なる御答弁を願いたいと思うのであります。
  166. 本多市郎

    本多国務大臣 御承知のごとく、平衝交付金が全国地方団体の重要な財源をなしております観点から、今回の補正予算を編成いたしますにつきましても、一つの費目としては最も大きな金額を占めているものでもありまして、政府全体といたしましても、これに重大関心を持つて査定されたわけでございますが、私といたしましては、当初計画後に新たに生じましたいろいろな変化に対応いたします財源確保ということに、項目に従つて努力をいたしたのでございます。今回の起債を含めて三百二十億というこの財政計画の不足額の補填は、おおむね必要不可欠な基準財政需要はこれで満たしていると存じます。しかし歳入等につきましても、さいぜんから申し上げました通りに、歳入の増等も見込んでおりますので、この面において地方団体も相当の努力をいたして行かなければならぬことはもちろんでありますし、その他経費の節約等にも十分のくふうと努力を期待しているわけであります。くふうと努力が伴いましたならば、これだけの補填で必要不可欠なものは満たされている、均衡がとれていると考えております。
  167. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 おそらく今後知事等におきましても、本多国務大臣は、ないところはないところで何とか切り盛りをやつてもらいたい、こういう態度では実際に地方長官としての責任が尽せないという立場から、政府がやるといつただけくらいは何としても実現しなければいかぬと、かような見地から政府並びに本多国務大臣にいろいろと要求等をいたそうと思うのであります。さつき申した通り国務大臣といたしましては、選挙後いろいろな条件の変更下において責任の部署につかれたので、十分に地方意見等を承り、資料等を十分に点検をいたしておられなかつた点もあろうかと思うのであります。今後いろいろとそれらの点について了解し、また努力をしなければならないという点が見えるようになつたならば、政府におきまして、何らかこの点については責任が持てるように、また努力をいたしてみたいという考えを持つておるかどうか、承つておきたいと思います。
  168. 本多市郎

    本多国務大臣 地方財政の実質的な充実につきまして、地方団体のくふうと努力を期待しておるものでございますが、それでは今後さらに、政府平衡交付金増額等の考えがあるかとの御質問のようでありますけれども、今回補填いたしました三百二十億によりまして、大体において均衡がとれておるのでございますから、ただいまのところさらに増額をするという考えは持つておらないのでございます。ただしかし何かまつたく予測できなかつた新事態が生じた場合、これはその場合に応じて考えたいと存じます。
  169. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 今度の修正地方財政計画の中におきまして、いろいろとこまかいことが出ておるのでありますが、政府補正予算説明の中におきましても、かなり無理ではないか、こういうふうに地方財政の問題について思われる点があるわけであります。予算補正の説明中、政府自治体の歳出の所要額としまして、給与改善が二百七十五億、給与単価調整が九億、勤務地手当が九億、物件費、旅費の節約が六十億、歳入所要額においては、地方税の増加が十億、国庫補助の増加が六十七億、雑収入の増加が四十八億、こんなようなわけでありまして、歳出所要額三百九十六億円、歳入所要額七十六億、差引三百二十億であるから、今度の財源でまかなう、大丈夫だ、こういうふうな説明をいたしておるのでありますが、一、二の点を拾つてみましても、雑収入の増加の四十八億、こういうふうな問題でありますが、御承知通り、事業料等におきましてももう上げることがなかなか困難である、こういうふうな状態になつて来ておる。こういう中におきまして、雑収入が四十八億増加するというような問題は、非常に疑問があると思われるのであります。この点について、雑収入の増加の四十八億はちよつと無理ではないかと思うのでありますが、政府所見を承りたい。地方税の増加十億は、古井委員に対していろいろと御答弁がありましたから、くどくは申しませんが、これも無理ではないか。特に旅費、物件費の節約六十億、この点についてはまことに無理である、こういうふうに思われるわけであります。御承知通り、一般予算では三十五億の節約、こういうことになつております。八千億の予算の中におきまして三十五億の節約である。しかるに地方においては七千億円において六十億円の節約である。それももはや上三半期は過ぎて、あと第四・四半期しか残つておらない。こういうとこににおいて六十億の節約は無理である、こう思われるのでありますが、雑収入の増加四十八億、旅費、物件費の節約六十億、これらの点につきまして、ひとつ自治体の町会あるいは市町村長等が聞いても納得の行く御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  170. 本多市郎

    本多国務大臣 雑収入の増加につきましては、使用料等の条例を、今日の人件費が増額されたことに伴つて改訂しつつあるものもたくさんあるのでありまして、そうした改訂されたもの等も見込まれておるのでございます。すでに当初計画以後に相当条例の改訂等で増収が見込まれておるわけでございます。さらにまた節約につきましては、お話通り、当初の計画においては、相当の行政整理等もやることになつておりましたので、それに地方も準じてやることになつておりましたが、政府の計画の変更に伴つて地方においてもそれに相当する額の節約はできないというふうに、今回補正をいたしております。さらにまた物件費、旅費等につきましては、国の公務員に準じて計算したものでございまして、計算の根拠につきましては政府委員から説明申し上げたいと思います。
  171. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 今回の修正地方財政計画におきまして、雑収入を四十八億ばかり増徴の見積りをいたしましたことにつきまして、どういう根拠であつたかというお尋ねであります。実はこれは当初の地方財政計画におきまして見込みましたものの、算定見込みがえをいたしました結果の数字でございます。具体的に申し上げますと、当初の財政計画におきまして、使用料、手数料として見込んでおりましたものが百九十五億ございましたが、これを当初見積りましたときには、昨二十六年度の実積見込みが判明いたしておりませんでしたので、二十五年度の決算見込みをもとにいたしまして計算をいたしたのでございます。ところがその後二十六年度の決算見込みがわかつて参りましたことろによりますと、たまたま百九十五億という数字が出ております。そこで二十七年度におきましては、その二十六年度の実績から見まして、当然この程度の増収は期待し得るものということで、算定がえをいたした次第でございます。  それから次に旅費物件費節約額六十億についてのお尋ねでございますが、これは先ほど大臣からも申し上げましたように、国の予算におきまして節約を見込んでおりますのと同じ計算方法でございまして、大体旅費におきまして一〇%、物件費は約五%節約をする、こういう計算で、その根拠になりまする数字は、本年度平衡交付金算定をいたしますときに用いました基準財政需要額というのがございますが、それをもとにいたしまして、それから地方で実際に使います旅費額並びに物件費の標準需要額を算定をいたしまして、それに先ほど申しました率をかけて算定いたしたものでございます。
  172. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 これらの問題については、十分に各自治団体の納得の行くように、先ほど古井委員が申したように、十分に根拠と資料をあげて示してもらわなければ、何人も納得はできないわけであります。これらの点については、ひとつ権威ある資料を発表いたしていただきたいと思うのであります。  ごく大ざつぱに申しまして、今度の地方の公務員の給与の問題につきまして、政府においては一般会計の人が五十三万人で百二十八億円、地方公務員は百三十五万人で二百七十五億円、こういうふうなわけでありまして、大体二倍半以上地方公務員が多い。こういうふうになると、目の子勘定でも三百三十億円くらいは必要であると考えられるわけであります。ところが何かはかに財源があるからというふうなわけで、これに対する給与の増加に対するところの予算措置等が非常におろそかになつておる。かような点について地方の公務員が百三十五万人もあつて、今度の増加分は二百七十五億円でいいんだ、一般会計の公務員は五十三万人で百二十八億円であるというような点につきまして、何か根拠がありましたたらば、ひとつ御説明が願いたいと思うのであります。
  173. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 地方公務員について今回のベース・アップを行うのに必要な財源として、二百七十五億八千二百万円を算出いたしましたが、その算定方法は、この十一月一日現在における地方公務員の実給与単価に対しまして平均二〇%のベース・アップをやる、こういうことで改訂の単価を出しました。それをもとにいたしまして基本給の増加に要する経費を算定いたしておるのであります。なおこれに関連いたしますに、期末手当並びに勤勉手当等の算定は、全部国の場合と同じような根拠で算定いたした数字でございます。
  174. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 一応つじつまを合せるようにいろいろ努力をしたという跡は見られるのでありますが、何としても初めにわくを与えておいて、そしてそれに押しつけるという傾向が非常に強いのであります。そこで一点だけ承つておきたいのは、今度の勤務地手当の改正の問題でありますが、この勤務地手当の改訂について、今度の地方財政の増加においては考慮に入れておいたかどうか。
  175. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 十一月の二十四日に人事院から新しい勤務地手当についての勧告が行われたわけでございますが、今回の補正予算の計算はその前に行われておるのではないか、従つて今度の勧告による増加分は算入されておらないのではないかという御質問かと存じます。これは正確な数字はわかりませんけれども、国において人事院の方から地域給に関する勧告が行われるであろうということは、大体想定はされておりましたし、それと今回の財源計算におきましては、先ほど申し上げましたように、十一月一日現在の基本給—これは本俸と扶養手当及び勤務地手当を加えましたもの、その二〇%増、こういう単価を用いておるわけであります。従いまして厳密に申しまするならば、扶養手当等は必ずしも二%増になりませんし、また勤務地手当も本俸が二%上りましても、そのまま二〇%増にならないわけでございまして、財源計算上幅があるわけでございます。今回の勧告によりまして勤務地手当の支給率が上ります率は、地方公務員の場合におきまして、大体一%ないし二%弱という率に相なりますので、この程度の勧告でございますれば、ただいまやつております財源計算の範囲内におきまして実施ができる、かように考えておる次第であります。
  176. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それでは大体今の財源の間で何とかなるだろうという考えで、人事院勧告を別段予算を組むときには入れておかなかつた、こういうふうに考えてさしつかえないかどうか、これを承つておきたいと思います。
  177. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 お尋ねの通りでございまして、今度の財源で間に合うものと考えております。
  178. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 古井委員の質問にもありました通り、まことに今度の補正予算の組み方は、地方自治体に対しては、今後におきまして非常に問題が起るのではなかろうかと考えられるわけであります。一応政府において額を組んで、地方においてはこれで何とかまかなえ、こういうような立場を—地方自治体においては、先ほど本多国務大臣の言つた通り、非常に力の強い自治体もあれば、財源の貧弱な自治体もある。ないものはないで、これはまた何とかするだろうというふうな立場をとつておるようでありますが、結論といたしましては、年末の手当あるいはまたベース・アップ等について大きな問題が起るのではないかと思う。御承知通り、教職員等は給与等が比較的に高い、こういうふうな関係にあるので、二割というふうな線を出して来ると、その支給されておる給与の関係から、二割五分の線が出て来なければならない、こういう状態になるわけでありまして、相当に今後地方自治体と政府との間をめぐつて、そういうふうなトラブルが発生するのではなかろうかと思われるわけであります。しかしながら政府といたしましても、国務大臣といたしましても、これらの問題についてはまだ十分に研究が積んでおらないという関係で、いろいろと今後におきまして、そういうふうな問題については、十二分に地方自治体等の意見を聞いて対処してやらなければいかぬと思うのであります。最後にわれわれといたしましては、人事院勧告の線を守りまして、国家公務員、地方公務員の要求について努力いたしておるのでありますが、最小限度の要求をいたしておるところの地方庁あるいは市町村長があるということだけは、どうしても忘れてもらつては困るわけなんです。いろいろと教職員の方の人が一万六千円ベースの問題等において要求をいたしておりますが、しかしながらいざ政府案を実施したところが、年末一箇月、二割の予定されたベース・アップもできない、こういうことになると、おそらく文部大臣としましても非常に窮地に陥ると思われるのでありまして、文部大臣としましては、今度の予算で教職員やなんかにこれだけのことは十分やれるのだ、かような責任ある御答弁ができるかどうか、ひとつ承つておきたいと思うのであります。
  179. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 先ほど国務大臣本多さんから御答弁申し上げました通りに私も考えております。
  180. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 最後に、人事院総裁は再三人事院勧告をいたしまして、公務員のために御努力をされておるのでありますが、いつも人事院の勧告は無視せられ、非常に苦しい立場であろうとわれわれとしても考えるのであります。今度の問題におきましても、あるいは国鉄の問題、電産等の問題もありますが、何としましても少くとも裁定、調停あるいは責任ある勧告かような問題が尊重せられなければ、いろいろと紛糾を起しまして、問題を平和裡に解決いたすとゆうことが困難になろうと思うのであります。そこで人事院総裁といたしましては、今後の勧告が政府によつて無視をせられておる、去年も無視をせられた、こういう状態になつておるのでありますが、あくまで自分の勧告の貫徹のためには、職を賭しても努力をしなければいかぬ立場にあるわけであるので、いかなる所信を持つているか、承つておきたいと思うのであります。
  181. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。人事院といたしましては、人事院勧告を正当なるものと考えておりますし、またそれの実現に努力をいたして参り、その実現を期したいと存じております。ただ人事院は勧告をいたす場合に、財政上の考慮はいたしておりません。またこれはいたさないのがよいと思つておりまして、初めからさいふの中にある金を勘定いたしましては、正しい勧告はできないように存じております。従いましてこれが財政上支出が可能であるかどうかは、一に国会の御決定にまつほかはないと存じます。
  182. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 人事院としましては、とにかくこれが国家公務員の生活を守るためには絶対に必要な額である、かような確信のもとに勧告をされている、こういう御答弁でありますが、もう一度その点を確かめて置きたいと思います。
  183. 淺井清

    ○淺井政府委員 お説の通りでございます。
  184. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それからもう一点お伺いいたします。終戦後におけるところの給与の最低を見ますと、とにかく不満足ながらいろいろと増加はいたしております。ところが御承知通りいろいろと今度は二割増俸になる、あるいは三割というように言われておりまするが、さて実際に支給せられることになると、下の者に対しては二割とは言いながら二割を欠けている。高給をとる人はそれがあるいは四割であり、四割より上になるというような現象が現われているわけであります。人事院の方におきましては、最近における民間のさような地位にある人が非常に上昇しているのに相対応して、国家公務員の管理職のような人は上るのだ、こういうふうに勧告において説明をいたしているのでありますが、国家公務員と一般の民間との人はいろいろ立場が違う。何としましても、国家公務員は一番下の者であつても国家公務員という立場を国民から要求せられる。そういうときに三割値上げあるいは二割値上げというものが、実際にはその実質が伴わないものが下の者にできる。こういう現象についてはいかにお考えになつているか、承つておきたいと思います。
  185. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。国家公務員法によりますれば、国家公務員の給与は民間賃金と生活費を通じて算出せられることになりますので、人事院といたしましては、民間給与を詳細に調査いたしまして、それに国家公務員の給与を合せたわけでございますが、今回の勧告、またいつの勧告でも、現われておりますところの俸給の曲線は、すなわち民間給与の曲線でございまして、国家公務員の給与の曲線を民間の給与の曲線に合せますことは、国家公務員の給与を負担しております納税者たる国民各位の賛同を得る次第であろうと思つております。
  186. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 少くとも下級公務員が、二割値上げであつたというときにおいては二割、三割値上げだつたときは三割、やはりそれだけのものが実現せられなければならない。ただいま俸給の高いものは能率給というような線が現われているのでありますが、下の者はまだ能率給でなく実際生活給が保障されないというような線が出て来ているわけであります。まだ生活給が保障されない線が出て来ているときに、最近の民間における能率給的なものをそのまま持つて来るということにつきましては、下級公務員の立場が非常に苦しくなるわけでありまして、やはりこれについては国家公務員という立場から、下級公務員に対しましても、いろいろと考慮が払われなければならないと思うのでありますが、これについて総裁の御所見を承つておきたいと思うのであります。
  187. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。お説の通りでございますから、人事院といたしましては、一種の理論生計費を用いまして最低のものを定め、それより下に下らないように保障をいたしたわけでございます。
  188. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 これがいつも政府予算処置によつて切られるというような形になる。そして人事院の勧告が無視されたときには、大蔵省においていろいろ給与体系をつくるというような形になつているのであります。大蔵省においては、この問題について、やはり下級公務員に対する処置はもう少し優遇しなければいかぬ、こういう考えを持つているか。やはり上下の隔たりはできるだけつけておくというような、民間的な行き方が正しいと考えているのかどうか。これをひとつ承つておきたい。
  189. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。最低のところにつきましては、今回提出いたしております公務員につきましては四千四百円ということで、人事院の勧告よりたしか千百円ばかり高くなつているかと存じます。  それから上下の開きの問題でございますが、これは過去のことを考えてみますと、大体一番下から次官級のところが、大体二十五倍というのが戦前の例でございます。それから二千九百二十円ベーのときにこれが十倍になりまして、六千三百円ベースになつて五・七倍になり、さらに九・幾らということで、生活給から職務給、能率給というような考え方になりますと、上下の差というものは少しづつ従来の体系にもどつた方がいいのじやないか。また人事院の勧告もそのようでありますので、その勧告の趣旨を採用いたしましてこのような措置をとつた次第でございます。
  190. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 最後に一言お伺いいたします。私も大正十一年、安い俸給生活を東京の官庁でやつたことがあつた。その当時におきまして年末の手当等が出る、そのときに上の者に対しては十割、しかしながら下の者については十五、六割くらい出しまして、そうして給料の非常に安い人に対して何らかの優遇措置を講じている。こういうふうにやりまして、俸給の低い者に潤いをつけておつた。ところが今回の措置を見ますと、一般の公務員の要求する二箇月ということは無視されまして、一箇月ということになる。一箇月でありましても、上も一箇月、下も一箇月ということになると、その下の方の人は、この一箇月の手当におきましては、非常にしのぎずらいということができるということは明らかな問題になつて来るわけです。昔におきましても、さような年越しや何かのときにおいては、下に比較的に考慮を払つて上は通常の俸給が高いのであるから少しがまんをしてもらう、こういうふうな形をとつている。しかるに現在におきましてはさような処置が講ぜられない。確かに上の人が見ましても、昔のわれわれの立場だとそんなようなわけであつた。こういう点から見まして現在非常に不満があると思われるのであります。やはり物は全体的に見なければならないわけです。上の者に不満がある場合においては下の者の不満、生活の苦しさというのは非常に大きいものだろう、こういうふうな考え国務大臣大蔵大臣等になければなるまいと思うのであります。こういう点について、上の者については一箇月でいいが、下の者については何とか考慮をしてやろうではないか、こういうふうな考えがなければ政治ではないと考えるわけであります。この点民間と違います。大蔵大臣は民間に長くおつたので——民間の相当の待遇のある地位におつたので、それらのことについてはあまり関心がないかもしれませんけれども、しかし政治というものはそういうものであるというふうな見地から、いろいろとさような点についてしかるべく考慮を払つてただかなければいかぬ、こう思うのであります。かような年度末や何かで、上が一箇月のときには下の者には二箇月くらいやつて、そしてオーバーの一つも買わせてやろう、かような気持がなくてはなるまいと思うのでありますが、いかなる御所見であるか承つておきたいと思うのであります。
  191. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまおつしやいました通り、私も自分で民間におつてそういう給与の点については体験を持つておりますので、非常に楽ばかりしておつたわけではありません。非常に低い給与をもらつておつた時代が相当長かつたのであります。おつしやる通り、上と下とのやり方が多いとか少いとかいう点とか、あるいは年末に苦しいという点は私はよく考えたのでございますが、ただいまのところでは、どうにもほかに実際問題としてはできなかつたのでございまして、今後とくと研究してできるだけのことをしたいと考えております。
  192. 太田正孝

    太田委員長 横路節雄君。横路君に申し上げますが、御質問の順序等もございましようが、大蔵大臣が公務のため六時十五分までしかここにおられませんので、さようお含みの上御質問していただきたいと思います。
  193. 横路節雄

    横路委員 私は、最初に本多国務大臣にお尋ねいたしたいと思います。今般の平衡交付金二百億、それから地方起債百二十億に関連しまして、全国知事会では、先般地方行政委員会に参考人として呼びましたところが、全国知事会の代表の茨城県の友末知事が参りまして全国知事会のとしてはどうしても六百十三億必要である。これに対する自治庁財源措置は二百五十三億で約三百六十億の赤字が出て来るので、この点に対してはどうしても補填をしていただきたい、こういう要求があつたのでございます。さらに全国市長会の代表といたしまして大阪市長の中井氏も同様参考人として出席しまして、全国市長会としては三百九十八億最低必要である。同じく全国町村長会においては、平衡交付金において最低百五億、町村起債において二百四十四億を要求いたしているのであります。従つて市町村の分を合せますと七百四十七億でありまして、これに対して自治庁は、平衡交付金並びに起債で六十七億しか見ていないようでございます。従つて全国知事会の要求並びに全国市長会の要求及び全国町村長会の要求は約千三百六十億でございまして、これに対して三百二十億しか政府は見ていないのでございます。そこで私本多国務大臣にお尋ねいたしたいことは、この全国知事会で要求いたしました六百十三億は不当な要求なのかどうであるかという点でございます。さらに全国市長会の三百九十八億並びに全国町村長会において要求されました約三百五十億も不当な要求であるのかどうか。もしも不当な要求でなしに、これが都道府県の財政並びに市町村財政からいつて当然な要求であるとするならば、今日政府補正予算に組みました平衡交付金二百億並びに地方起債百二十億では当然足りないので、従つて二十七年度の年度末に至れば当然赤字が出て来るわけでございますが、この赤字に対して自治庁としてはどうなさるお考えであるか、この点について第一番目にお尋ねいたしたいと思います。
  194. 本多市郎

    本多国務大臣 府県市町村不足額として示しておりますところ、大体お話通りのような数字になつていると存じます。しかし地方財政は自主的に運営されるものでございまして、その自主的に行政をやります規模の大小によつて不足額は左右されるものでございます。政府といたしましては、平衡交付金制度に基き、政府の責任に属する不足額算定をいたしまして、これを補填するということよりほかはないのでありまして、府県市町村の要求が不当なりやいなやというお話でございますが、政府は今回補填いたしておりまする算定によりまして、不可欠な費用は満されている、かように考えております。この地方団体が厖大な赤字計算になるという根拠には、自主的な運営から来るものが多いのであろうと考えております。これにつきましては、どうしても中央に依存するというような風潮が今日強くなつて来ているようでありまして、特段の地方団体に対する御協力を得なければならないと思つております。
  195. 横路節雄

    横路委員 さらにお尋ねをいたしたいのでございますが、昭和二十七年度の年度末に至つて、都道府県の財政並びに市町村財政は、ただいまの国務大臣お話で、それは都道府県並びに市町村が自主的にやつておるのだからうまくやるだろう。うまくやるだろうということは、赤字財政にならないだろうというお話のようにお聞きするのでございますが、重ねてもう一ぺん明かにしていただきたいと思いますことは、今回政府が組みました平衡交付金の二百億並びに地方起債の百二十億で何とか都道府県の財政並びに市町村財政は年度末に至つても赤字にならない。赤字にならないのだから、政府としては年度末に行つてどういう要求があつても手当をしない、こういうお話のようにお聞きするのでございますが、それで間違いがないかどうかお尋ねいたします。
  196. 本多市郎

    本多国務大臣 大体においてお話通り考えただいま持つております。地方が自主的な責任において赤字を生じた場合、政府で漫然これを補填してやるというようなことでは、地方財政の健全化もできないのでありまして、ただいまのところでは、地方の努力と相まつて均衡を保つて行けるものと考えております。
  197. 横路節雄

    横路委員 ただいまの本多国務大臣お話で、地方が漫然と、いわゆる財政上の操作をして赤字になつたものに対して、政府としてはこれを見てやるわけには行かぬ、こういうお話でございましたが、私は大蔵大臣にお尋ねをいたしたいのです。これは先ほどからいろいろ各委員から問題になつておりますように、今回のこの地方財政の計画の中で一番大きい問題は、二十七年度の当初予算地方の職員、都道府県に勤めておる県庁職員に対しては、一般の国家公務員よりは四百六十二円高い。さらに教職員に対しては三百七十五円高い。市町村に対しては五百七十六円高いというので、本年度の当初予算でこれを地方財政計画の中で減額して組んである。ところが再調査をした結果、都道府県の職員は三百四十八円、教職員は三百四十九円、市町村は前と同様五百七十六円高いとして今回の平衡交付金算定の基礎をなしたのであるけれども、この算定の基礎にあたつて、いわゆる地方公務員については国家公務員よりは高いけれども、実態調査を大蔵省においては国家公務員に対してやつたことがないのだから——この点については自治庁長官である本多国務大臣も、国家公務員については調査をしてないとたびたび言明している。従つて全国知事会、市長会、町村長会においては、いわゆる国家公務員よりもそれぞれ高いというけれども、国家公務員については実態調査をしていないで、ただ単に昭和二十一年七月以降のいろいろな給与法に基くところの基準を法の上で示して、そして地方公務員にあてがつて地方公務員だけを一方的に高いということについてはどうしても了解できない。従つてそういう了解のできないものをもつて、これを約百五十万にわたる数職員を入れた地方公務員に対して、これだけの減額をして—今回二〇%減額をしてやるということについては、それぞれの責任ある首長としてはできない。従つてこの分は政府でどのように減額補正をやれといつても減額するわけには行かないと、こう言つている。従つて都道府県並びに市町村ただ漫然とやつているのではない。りくつに合わないと言うのです。そこで私は大蔵大臣にお聞きしたいのですが、大蔵大臣は、国家公務員については実態調査をなさる意思があるかどうか。もしも国家公務員について、いわゆる法の示す基準よりも高いということになつた場合においては、地方公務員に対しては、その国家公務員との実態調査の比較ができていないのであるから、当然増額修正をしなければならぬと思いますけれども、この点について大蔵大臣の御意見を伺わせていただきたい思います。
  198. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。先ほど申し上げました通り、実態調査をやつておるのでありますから、そのことは御承知だろうと思います。
  199. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、大蔵大臣ただいま実態調査をおやりになつている、こう言われますが、同じ政府機関であるところの自治庁長官である本多国務大臣は、実態調査をやつているということについては聞かない。ただそういうようにやつているのであろうと自分たちは信ずるというだけで、地方公務員が三百四十八円高いことについて、事実上国家公務員との実態調査上の比較をもつてそれが高いと言われた覚えはない、こういうように言つている。従つてこの点の食い違いがございますが、重ねてひとつ大蔵大臣から、この点ほんとうに実態調査をおやりかどうか。なお本多国務大臣は、国家公務員についての実態調査については自分らは知らぬ、その実態調査の比較の上で出されたものではないということを言つているわけですが、これははなはだ意見の食い違いがあつて、われわれとしても了解できませんので、重ねてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  200. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。国家公務員が高いか、地方公務員がどうかということは、単に平均ベースの問題ではありませんので、男女別、学歴別、経験年数、職種別、おのおの個々の調査がいるのであります。これは先ほど申しましたように、二千九百二十円ベースのときに新給与実施本部で、一々その切りかえにあたつて、それが高いか安いかということを是正したのであります。それから三千七百九十一円ベース、その次の六千三百円ベースのときに、すでに人事院に権限が移つておりましたが、その切りかえについて、何級の者は幾らというふうに、過去にさかのぼつて詳細な切りかえをやつたのでございます。そしてその後におきまして、われわれの手元におきまして毎年各省の各級別、職種別の人員をとりまして、幾らの給与になつておるか、昇給の関係その他が適当であるかどうかということについては、毎年見ておるつもりであります。申し上げましたのは、地方公務員につきましては、昨年カードを各府県市町村から出していただきまして、おのおの実態調査をいたしました。もちろん百三十万人の全部のものを調査するわけに参りませんが、大体半数程度のものにつきまして調べまして、それにつきましていろいろ御議論がありまして、ことしの七月ころ自治庁、大蔵省、一緒になりましてそれを調べました結果が、今おつしやつたような数字なつた次第であります。
  201. 横路節雄

    横路委員 ただいま、地方公務員については約九十万のうち半分程度実態調査をしたと言いますけれども、先般の地方行政委員会において、地方公務員の実態調査で実際に調査された人員が幾らであるかという数字が、自治庁から出ているわけです。それは一万六千九十七人です。わずか一万六千九十七人の人員を抽出して調査をやつたのに、あなたは今全体の半分を調査していると言うが、全体と言えば地方公務員は九十万人、その半分というと四十五万人である。あまりにも実態調査の人員に差があるので、もう一ぺん、ほんとうに大蔵省では責任をもつて九十万の半分、四十五万の調査をやつたのか、自治庁がここに言つているところの実態調査の人員は一万六千九十七人であると言つているが、どちらが間違いであるか、明らかにしていただきたいと思います。
  202. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。正確な数字はちよつと忘れましたが、府県につきましてはほとんど全県、東京と大阪を除きまして、係長以上の人についてすべてのカードを出してございます。それは去年のことでございます。それから市についてはほとんど全部、町村につきましては、自治体警察を置いている町村と置いてない町村と、それぞれ県知事の適当と思われるのを選んでいただきまして、それをカードに出していただきまして、それで調査いたしました。その結果が先ほど申し上げたような数字なつたのでございますが、これに対してとかくお話がございましたので、ことしの夏、おつしやつたような一万六千程度のものでありますが、ピツク・アツプをいたしまして再調査をいたした次第であります。そういう結果の数字でございます。
  203. 横路節雄

    横路委員 私はただいまの答弁については絶対に了解ができない。自治庁の資料は、地方行政委員会に三百四十八円高いという基礎的な数字で出されたもので、あなたのお話とはまつたく違う。役付の職員以上の者を出したいと言うが、それは逆だ。役付の職員を除外してやつたものである。しかも、これについてはここに明確になつているけれども、事務系統の職員の二割、技術系統の職員の一割、労務系統の職員はわずかに五分に相当する職員を抽出したけれども、実際に調査された人員は一万六千九十七人。そこで、これでも足りないので、さらに各ブロックについて一県当り、八県でカードの記入でやつた。これも実際に調査された人員は一万一千五百人となつている。一体あなたが大蔵省の給与に関するところの当面の責任者であるとするならば、あまりにも地方公務員に対するところの給与の実態調査の仕方を全然御存じない。御存じないということは言いかえたならば、われわれがどういうように自治庁に聞いても、大蔵省が責任を持つて国家公務員についての実態調査をやつたということは聞いていないのです。あなたが今答弁されたことはまつたく間違いであつたのかどうか、もう一ぺん明らかにしていただきたい。
  204. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。大蔵省において国家公務員の実態調査と申しますものは、毎年一定の時期を限りまして各省から報告を求めておるわけであります。そういうものがわかりませんと、二〇%アップにした場合に何円ベースになるということがわからない。何級の人が何人あり、男女がどのくらいありというような調査は毎年いたしておりますが、ただ学歴カードとかいうような、昨年地方公務員について実施いたしたような調査は、二千九百二十円ベース当時、あるいはその後一、二回ございました。それ以後はやつておりませんが、全体の各省のいろいろな権衝を見まして、この省が非常に不当なことをしておるとかいつた程度のことは十分この調査で観測できる次第であります。
  205. 横路節雄

    横路委員 重ねてお尋ねをいたしますが、国家公務員については、ただいま御指摘のように、われわれも別に総体の人員の平均給与が高いとか何とか言つているのではない。やはり学歴、勤続年数等でもつてこれを私たちも考えているわけですが、国家公務員については、今あなたがお話通り、いわゆる地方公務員をはかつたものさし、法の基準に示すところの理論的なものさしで国家公務員をはかつた場合に、各省ともそれに対して法の基準の通りであつて、それからは全然上に上つていないということをあなたはここで責任を持つて言えるかどうか、はつきりしていただきたいと思います。
  206. 河野一之

    河野(一)政府委員 国家公務員につきましては、切りかえのとき数回やつておりますが、その後における昇給でありますとか昇格というようなものは、すべて人事院の承認のもとにやつておるわけであります。昇給につきましても法律に規定があり、人事院の規則で正確にきまつておりますから、それを各省が個々の人について—あるいはインチキをしたとかいうことがあるとかないとかいう問題でありますが、これを個々の問題について調べるというのは決して容易ではありません。しかしわれわれとしては、毎年何月一日現在の各省の何級の人が何人というような調査をいたしておりますので、昇給の関係を考えまして、省の給与が適正に行われておるかどうかということは、始終見ておる次第でございます。
  207. 横路節雄

    横路委員 もう一ぺんお聞きいたしますが、各人別については調査してないというが、地方公務員については各人別調査をやつたわけです。各人について、大学を出て何年の者はどう、その後の経験年数はどう、高等専門学校を出ての経験年数、それから民間経歴はどうというようにして、各人別についてやつたわけです。今あなたは中央官庁については各人別にやつていないと言うが、それでは一体地方公務員との間の比較にはならないのではないでしようか、その点についてお聞きいたします。
  208. 河野一之

    河野(一)政府委員 私の申し上げ方が足りないのかも存じませんが、国家公務員については、切りかえの際におきましては、個々別々に学歴年齢を見ましてやつたのであります。その後において、一定の昇給あるいは昇格の規則をつくつて、それに応じてやつております。地方公務員については、そういうことをやつたことは一回もないのであります。教育公務員につきましても、現に国家公務員と地方公務員との間においていろいろアンバランスがあるというような話も聞いたことはございます。従つて昨年におきまして国家公務員ほどには行きませんが、地方公務員についてある程度カードをとつて、大体の趨勢をそれによつて見て、申し上げましたようなアンバランスの点を財源付与上は調整する、こういうことを考えたわけであります。
  209. 横路節雄

    横路委員 私は岡野文部大臣にお尋ねをいたしますが、義務教育費国庫負担法が来年の四月一日から施行されます。これの第二条には、御承知のように「国は、毎年度、各都道府県ごとに、公立の小学校、中学校」とあつて、「学校に係る教職員給与費について、その実支出額の二分の一を負担する。」となつている。そこで文部大臣としては、来年の四月一日から施行される義務教育費国庫負担法の第二条のこの「実支出額の二分の一」というその実支出額とは一体何をさすのか、この点についてまず第一番目にお伺いいたします。
  210. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。この実支出額と申しますと、実際支払つている給与に対して、その半額を与えると、こういうことでございます。
  211. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣にお尋ねをいたします。先ほど私から申し上げましたように、今日小学校、中学校の義務教育に携つている地方の教職員に関しては、大蔵省では、本年、今回の予算で三百四十九円の減額補正をして都道府県にやるけれども、しかし実際には、全国知事会としては、かかる不当なものに対してはその通り実施するわけに行かぬと言つている。その通り実施するわけに行かぬということは、言いかえたならば三百四十九円は減額しないで、そのまま元のまま下げないで、二〇、%の増でやる、この点については、先ほど大蔵当局の政府委員も、都道府県の財政において、自主的にやるものについては妨げないと言う。そうすると、昭和二十八年四月一日から施行される義務教育費国庫負担法によると、実際に支出した額の半分は渡すということになれば、当然大蔵省の方で苦労して三百四十九円引いては渡したけれども、知事は実際に三百四十九円を上げて渡す。そうすると、来年は実際に支出した額の半分はこの法律に従つて支給するということになるが、そういうふうに解釈してよろしいか。これは来年度の予算編成に非常に関して重大であり、しかも義務教育費国庫負担法が四月一日から施行されるので、私はその点大蔵大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  212. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。実支出額ということは実際の支出額でありまして、法令は現在まだ施行になつておりませんが、義務教育費国庫負担法ではその通りでございます。ただそこに特別の事情ある場合においては、政令でもつて一応整調ができるというような規定があるのであります。この点につきましてはいかように考えまするか、目下検討中でありまして、その方法その他についてはまだ申し上げる段階に至ておりません。
  213. 太田正孝

    太田委員長 大蔵大臣今の御返事でよろしゆうございますか。
  214. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 よろしゆうございます。
  215. 横路節雄

    横路委員 私は岡野文部大臣にお尋ねしますが、今の大蔵当局の説明では、あなたが文部大臣として義務教育費国庫負担法についてただいま御答弁なさつたそれは、実際に支出した額の二分の一である。その実際に支出した額の二分の一を、この第二条のあとにくつつけてある。「但し、特別の事情があるときは、各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度を政令が定めることができる。」そうなると実際には支出した、しかし三百四十九円は、都道府県は引かないでやつたから、各府県ごとにただちにみな頭打ちをしてやる。こういうことについて、あなたがもし文部大臣としてこれを承認するならば、義務教育国庫負担法のいわゆる半額国庫負担という根本精神にもとるが、その点はどうなのか、文部大臣としてのお考えをお聞きしたい。
  216. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。その法律にはたしか最高限度をきめることができるというように書いてあるはずでございます。地方公務員の待遇は、地方公務員法で一応わくがはめてございまして、これはやはりその地方の実業界の—民間の給与とかもしくはほかの振り合いとか、いろいろ—よく条文を覚えておりませんけれども、大体あまり世の中とかけ離れないでできるように地方公務員法に出ております。それを勘案しまして最高限度をきめるということになりますから、ただいまお説のように、三百四十九円がどうであるかという問題はに私は触れません。実際のところ最高限度というものを都道府県できめるだろうと思います。それから初めて支出額の半分、こういうことになるのでございます。
  217. 横路節雄

    横路委員 今の文部大臣の答弁は、最高限度を都道府県がきめるであろう、こういう答弁ですが、文部大臣がきめるのか、都道府県が最高限度をきめるのか、あなたは人ごとのように言つておるけれども、その点ひとつ所管の大臣としてはつきりしていただきたい。
  218. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまちよつと言葉が足りませんでしたが、しかし政令できめることになつております。
  219. 横路節雄

    横路委員 私は文部大臣にお尋ねしますが、文部大臣はただいま、地方公務員についてはそれぞれ地方の民間の給与その他との関係もあつてきめるであろう。これはお話通り、都道府県において給与条例あるいは人員については定数条例でやる。教職員については給与条例で定めた通り支給することになつております。そうすると当然今のあなたのお話のように、それぞれの都道府県の民間給与との間のバランスをとつてつている。そうなれば当然、都道府県において都道府県の給与条例で定められた通りあなたはやるべきであるし、それからあなたは、一番初めの答弁で、義務教育国庫負担法の精神によつて、実際の支出額の二分の一をやる、来年四月一日から施行される前に、実際の支出額というものは、めいめい各個人のふところに入つた総額の二分の一ということになる。あなたは今三百四十九円についてはとやかく論議すべきではないということを言つておるが、その点もう一ぺん明らかにしてもらわなければ—実際法の施行上からいつてどうなんです。
  220. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 言葉が足りませんからもう一度申し上げかえます。と申しますことは、この義務教育半額国庫負担法のできますときに、私もそれに参加しておるわけであります。そこで法の精神といたしましては、実際の支出額の半額をやる、こういうことにすることが原則でございます。しかしながら半額出します財源は、これはどこから出るかと申しますれば、むろん国民のふところから出るものでございますけれども、財政の立場から行きます。と、国家財政から出さなければならない。そういたしますと、むやみやたらにかつてにたくさんの給料を出しておるのに、その半額を渡すということになると収拾がつきませんから、ある程度の最高限度というものはきめておかなければならぬ。それで最高限度のわく内において実際の支出額の半額を国庫が負担する、こういうような立法精神でできておるわけであります。
  221. 横路節雄

    横路委員 今の文部大臣からの立法精神というのはこれは私は違うと思う。それはどういうふうに違うかというと、実際の支出額の二分の一を出すというのが立法の精神なんだ。但し特別の事情あるときは都道府県ごとに最高限度をきめるのであつて、実際には実際の支出額の二分の一をやるのだ。あなたのように、都道府県が財政のわくで適当にやるだろう、だから初めから最高限度をきめておかなければうまくないというのは、法の精神に違うわけです。またもともと義務教育費国庫負担法が制定せられた法の精神は、あくまでも実際の支出額の二分の一をやる。その点はあなたの方が違つているじやありませんか。私はこの立法の精神は実際の支出額の二分の一をやるというのが立法の精神であると思う。もう一ぺん御答弁願いたい。
  222. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 法の精神は実際の支出額の半額をやるということでございますけれども、先ほども申し上げましたように、これを無制限に出すということは国家財政上いけないから、そこで初めて最高限度によつて国家財政の立場を擁護しよう、それを政令で出そうこういうことでございます。
  223. 横路節雄

    横路委員 それではひとつ文部大臣のお考えになつている最高限度というのは、今日非常な問題になつている三百四十九円の問題とは全然無関係であるかどうかという点についてお尋ねいたします。
  224. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ただいまその点につきましていろいろ研究中でございます。これはただいまの補正予算の問題でございませんで、来年度予算のことでございますので、それまでに十分検討いたしまして政令を出すということにいたしたいと思います。
  225. 横路節雄

    横路委員 次に私は本多国務大臣にお尋ねいたしますが、先ほど申し上げました、都道府県並びに全国市町村の要求されている千三百五十億の要求に対して三百二十億になつた、その大きな違いの一つは、今の給与ベースの点でございますが、第二番目の点は、地方税の自然増であるか自然減であるかという点でございます。この点につきましては私たちこういうふうにお聞きいたしているのでございます。初め自治庁の方では、地方税は大体七十億近く減収される、こういうお見通しのもとで大蔵当局と折衝された、ところが、大蔵当局の方ではいやそうではない。これは地方税は自然減ではなしに増収になる。増収になる分が約三十億から四十億であるというので、その違いが約百億になつてしまつた、これは自治庁と大蔵省との違いであります。こういうようにも聞いているのでございますが、この点についてこれは今回の三百二十億のうちで、やはり地方税の自然増であるか自然減であるかという点について、非常に大きな問題がございますので、自治庁としてのお考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  226. 本多市郎

    本多国務大臣 まつたくお話通り、税の収入の関係が地方財政に非常な影響を及ぼしておるのでございますが、ただ今回提案いたしております数字結論でございまして、この結論に至ります過程においては、自治庁といたしましては、地方財政の健全化という見地から、どうしても見積りは堅実に見て行くというような関係で、そういう数字も示したことがあつたかと存じます。私は記憶いたしておりませんが、結論に至るまでの間においてはいろいろ意見の食い違いがあつたのでございます。しかし政府部内全体としての資料を持ち寄つて再検討いたしました結果は、だんだん年度が進行いたしまして実績の現われて来たものもある。これは本年度の実績ばかりでなく、前年度の決算等も明らかになつて来たものもありまして、今回提案いたしております根拠は確実化したものであるということが言えると存じます。この結論に到達いたします中間的な検討中の数字につきましては、この際責任を持つて御説明はいたしかねるわけであります。
  227. 横路節雄

    横路委員 次に、大蔵大臣は途中で御用がおありだそうですから、今関連したことを一つここでお聞きいたしますから……。  最初に文部大臣にこの危険校舎についてお尋ねをいたしたいのですが、昭和二十七年五月一日現在の文部省調査によりますと、公立学校の建物のうちで、建築基準法によつて使用禁止の命令を受けているものは四十三万坪に達していると、こういうように文部当局は発表しているわけです。この建築基準法によつて使用禁止の命令を受けているというのは、いわゆる生命があぶないということなんです。四十三万坪といたしますと、基準の一人当り最低の〇・七坪を用いますと、約六十万人の小学校の生徒は、毎日ちよつと風が吹けば学校がつぶれるのではないか、自分は下敷になつて倒れるのではないか、こういうように言つているわけなんです。文部省としては、これを本年度の補正予算から三年間計画でやろうと、こういうように努力をされたようですが、しかし遂にそれが実現を見なかつた。この点について文部大臣は今後どうなさるのか。この建築基準法によつて使用禁止の命令を受けている四十三万坪、小学校、中学校約六十万人に及ぶ生徒が、毎日生命の危険を冒して学校に行つている。この点についてまず文部大臣としてはどうなさるのか、それに関連して大蔵大臣にあとですぐにお聞きいたします。
  228. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の承知いたしておりますのが間違いでございませんならば、使用禁止をしておるものは十六万坪と心得ております。それからあとその倍くらいが使用制限になつておるわけですから、ただいまの六十万人というものとちよつと食い違いがございます。それはいずれにいたしましても、とにかく危険校舎があるということだけは事実でございます。そこでこの危険校舎に対しまして、すなわち老朽危険校舎は一体どこが主体であるかということを考えてみますと、これはやはりその市町村でございます。そこで今まで市町村がそういう設備をする責任を持つておりますので、市町村におきましても、地方財政の建前から—これはあとから事務当局で御説明させますが、毎年そういうような危険老朽校舎を直す起債を出しております。そうしてその起債によつてだんだんとやつて来ておるのでございます。しかしながらことしの五月一日現在そういうふうになつておるということを私発見しまして、それから原因をいろいろ探究して会すと、なるほど市町村がこれを直さなければならない責任を持つておるのでございましようけれども、その原因はやはり戦時中に軍が使用したとか、あるいはその後資金資材の統制を強化しまして、十分なる直し方ができなかつたというような、すなわち国の要請によつてそういう危険な状態がたくさんできておるというよなこうとも勘案いたしまして、これは何とかひとつ国庫で幾らか補助しても早く直したい、子供が死んでは困る、こういうことから補正予算に実は提出してみましたけれども、もともと、補正予算の性格上ちよつとそれができない、こういうことでごいますから、来年度はこれを十分計画いたしまして、大蔵大臣にもお願いしまして、これが速急に整備できるように努力いたしたい、こう考えます。
  229. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣にお尋ねをいたしたいのですが、きつと大蔵大臣もお子さんが学校に行つていらつしやるか、そうでなければ大分お年ですから、お孫さんが学校に行つていらつしやるでしよう。実は山梨県東八代郡柏小学校の小学生のものであります、短かい綴方ですから、大蔵大臣に聞いてもらいたいと思うのですが、「私たちの学校は日本一のボロ学校です、大風やじしんがおきるとすぐこわれてしまいそうです、こんなあぶない教室で勉強しているといつつぶれるかと思つてきがきでありません、先生は、みしみしいつたらすぐ机の下にもぐりなさい、といつてきかせます」こういう所で毎日勉強しているわけなんです。これは当然この起債の問題がございます。これは自治庁長官もおりますが、市町村の負担だというけれども、それは百二十億ですらやつとの起債が—この老朽校舎並びに四十年以上たつている校舎を、全部文部大臣の言うように、市町村の起債で、もしも大蔵当局が認めてくれれば、やりますよ。しかしそれとてできないのだから、この点について、こういうかわいそうな子供が、私の調べだと四十何万、文部大臣の調べでも二十五、六万いるようですが、この老朽校舎について大蔵当局はどうなさるのか、ぜひ一つ大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  230. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。六・三制の完成というために、それを先にいたしましたので、危険校舎の手配が遅れましたのは、まことに残念でございますが、来年度にはそれを考慮いたしてみたいと思います。
  231. 横路節雄

    横路委員 私は文部大臣にお尋ねをいたしたいのですが、市町村教育委員会の設置につきまして、文部大臣は当初一年間は延期しなければならぬ。一年間延期して種々検討すべきであると考えていたが、残念にも吉田内閣の突然の解散で大臣としても思いがけない市町村教育委員会が設置されてしまつた。そこで文部大臣としては、今でも市町村教育委員会はやはり一年延期しておいた方がよかつたという信念にかわりはないかどうか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  232. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えいたします。私の立場としては、実に御答弁しにくい立場です。と申しますことは、私は文部大臣になりましてから、もしもう少し国会の解散がおそければ、一年延期していただきまして、十分検討して実施したいと思つたのでございますけれども、しかしそれができませんで、結局実施に移されたわけでございます。しかし私のただいまの信念といたしましては、せつかくそういう法律があり、同時に実行された以上は、できるだけこれをいいものに育成して行つて、もし調整することがあれば調整もして行きたい、こういう考えを持つております。
  233. 横路節雄

    横路委員 市町村教育委員会を育成するということになると、やはり教育長を置き、指導主事を置き、職員を置き、そうしてよい教育委員会をつくることにあると思います。そこで今回全国市長会では、文部省の示す通りの市の教育委員会を設置したところが、その費用は五箇月分で七億一千万円になつたが、今回の平衡交付金ではわずか九千万円しか市に配付しない。さらに町村長会においては、これまた文部省の指示する通りにやると、二十億三千八百万円かかると要求をしているけれども、これまたわずかに九億九千万円程度でございます。そうすると、よい教育委員会をつくろうというのに、一体ただでさえ市町村財政がつらいときに、こういうように非常に市町村財政の負担をかけるような財源では、あなたの考えているようなことにはならないと思いますが、その点あなたが理想的な教育委員会をつくるとするならば、一体この財源についてはどうなさるのか、この点について一つお聞かせをいただきたいと思います。
  234. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。文部省が指示いたしまして、それにいる費用が十億八千万円ということになつたわけであります。そこで市長会とか、町村長会の七億とかいう申出は、文部省の指示通りやるためにいるというものではないと私は思います。  それからもう一つ、それでは十億八千万円でやつて行けるかといえば、少くともただいまの段階におきましては、一応やつて行けるという確信を持つているわけであります。
  235. 横路節雄

    横路委員 ただいま市町村教育委員会が設置されまして、市町村教育委員会と都道府県の教育委員会、都道府県知事、市町村長との間にいろいろ問題が起きているわけです。それはいわゆる財政の問題と行政の問題です。給与権の問題と人事権の問題です。そこで全国の市町村長会においては、教育委員会をぜひひとつ改正してもらつて、この教育委員会市町村の諮問機関にしてもらいたい。ところが都道府県の知事はどういうことを言つているかというと、この市町村教育委員は、ぜひ都道府県単位にして、これも行政財政との一体上からいつて、ぜひ都道府県知事の諮問機関にしてもらいたい、こういうようにすでに要求が出ているわけでございます。そこで文部大臣といたしまして、実際に設置されて運営されたが、今後そういう点についてはどういうお考えがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  236. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。いろいろ知事の方面では知事の方面の布望を申し出で、また市町村長の方は市町村長の希望をいろいろ申し出ておりますけれども、しかしながら、まだ発足してやつと一箇月にしかなつておりません。そういうようなものに対して、これを変更するということは、私は法律を尊重する意味におきまして不賛成でございます。しかしながら、私が一年延期しなければならないということを主張しましたのは、いろいろそれに検討をしなければならない点があるからでございまして、これがもし実施しませんでございましたならば、実施しないうちにいろいろ理論的に検討して、改正をして実行に移すわけでございますけれども、せつかく実施なつた以上は、いろいろそういうような御議論をあちらこちらから出していただきまして、そうして実績を見まして、その実際の結果によりまして、相当の検討をいたして行きたい、こう考えております。
  237. 横路節雄

    横路委員 緒方国務大臣にお尋ねをしたいのですが、吉田総理は本会議の施政方針の演説の中で、こういうことを言われております。「終戦後の教育改革については、その後の経験に顧み、わが国情に照して再検討を加うるとともに、国民自立の基盤である愛国心の涵養と道義の高揚をはかり、義務教育、産業教育の充実とともに、学芸及び科学技術の振興のために格段の努力を払う所存であります。」愛国心の涵養と道義の高揚という問題でございます。さらにこの点に関しまして、改進党の重光総裁の質問に答えて、こう言つておられます。「まず国民は愛国心の何ものかを知ることが大事であります。しかるに、今日まで日本の歴史を教えず、日本の地理を説かず、日本の国語を説かず、日本の国体の優秀なること、日本民族の優秀なることを少しも説かずして、」「愛国心のない軍隊のごときものは、まことに恐るべき軍隊であります。」こう言つておられるわけでございます。そこで私が緒方国務大臣にお尋ねいたしたいことは、吉田総理の言葉から考えられますことは、政府としては、再軍備のためには愛国心の盛り上りを期待しているのじやないか。しかも愛国心の盛り上りを期待するためには、義務教育において歴史、地理、国語、道義の高揚という点においては、かつてのいわゆる修身教育のようなものの復活を考えているのじやないだろうか。この点については、緒方国務大臣も御承知のように、戦前の日本の教育というものが、その時の政治権力に支配されておりました点は明らかであり、その支配されました中核は何であるかというと、いわゆる修身教育であり、さらに日本の国体の優秀、日本民族の優秀という、あの思い上つた、戦争中における一つの指導理念は、その当時の歴史教育から生れて来ておるわけでございます。この点に関しまして、一体政府は、こういうことをお述べになつている以上、愛国心の涵養、さらに道義の高揚というものと、それとの関連における文教政策は、どういうふうに政府自体がお考えになつておるのであるか、この点をお尋ねいたしたいと思つておるわけでございます。
  238. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。終戦後の教育改革につきましては、再検討を要するものが少くないと思つております。独立後の新しい日本を建設するためには、ただいまお話がありましたように、何としても道義の高揚、愛国心の涵養ということは、これはその教育の方法が重要でございますが、この問題は国民として最も緊要なことであると考えます。それで終戦後の教育改革につきましては、その後の経験にかんがみまして、わが国情に照して再検討を加えますとともに、義務教育、産業教育の充実と学芸及び科学技術の振興の見地から、新たなる教育制度の確立を期して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  239. 横路節雄

    横路委員 重ねてお尋ねをいたしたいのでございますが、それは緒方国務大臣のお考えになつております愛国心の涵養、道義の高揚という点が、実際に政府考えている文教政策との具体的な関連の上において、どうなさろうというのか、その点をお聞きいたしたいのでございます。
  240. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは文部大臣からお答えを申し上げます。
  241. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私はこういう感じを持つております。と申しますことは、終戦後皆さま方が、またもう世間で御承知通りに、道義が頽廃しておるというように感じます。これはいろいろ原因もございましよう。大きなところから申しますれば、おそらく国が貧乏になつた、そうして庶民の生活が十分でない、こういうことが根本原因でございます。しかしそれについては、各方面に対していろいろのことをやつて、できるだけ生活水準の向上、民生の安定をはかりつつ、今日まで来たわけでございます。それとあわせまして、やはり教育の面におきましても、道徳というものを尊重するというようにやつて行かなければならぬと思います。そこでよく私たち、道義の高揚とはけしからぬじやないか、修身科の復活はいけないじやないか、こういうようなことが私の耳にも入り、いろいろ世間でおうわさくださるのでございますけれども、しかしこれは言葉のあやでございまして、いつの世にあつても、また古今東西をわかたず、道徳というものが社会秩序の一番大事なことであるということは、これは皆様おわかりのことと思います。ただ問題は、一体その道徳の根本観念がどうなつておるかということに差があるわけであります。一昔の言葉と今とは違うかもしれません。しかし少くともわれわれ一代の間に、言葉がそうかわろうはずはありません。しかしわれわれが申しております道義とか、道義の高揚とか、修身というものは、これは封建時代のような道義とか、もしくは軍国主義時代の道義とか、こういうことを言つておるのじやございません。それでは道義の根本観念はどこにあるかと申しますれば、昭として先般発布せられましなところの新日本憲法、これが結局道義の源泉をなすものであります。そこで新憲法は民主主義であるから、その民主主義に徹底したような一つの道徳、そういうものをできるだけ一般に普及して行く。そうして人間というものは、個人であると同時に、社会の一員でございますから、その社会が安寧また平和に、そうして秩序あつて、人権を尊重して行く、こういう社会をつくつて行くためのいろいろな施策を講じて行くべきだ、こう考えておる次第であります。
  242. 横路節雄

    横路委員 私は緒方国務大臣にぜひお聞きをいたしたい点は、総理がお話をなすつておりますところの、いわゆる愛国心の涵養というものに対する基盤を、日本の国体の優秀さ、日本民族の優秀さという認識の上に築かれて行くというように、考えていらつしやるのではないであろうかということでございます。戦前における日本の軍隊の中核をなしたものは、やはり小学校における教育です。この小学校の教育は一貫して、御承知のように、日本の国体の優秀さ、日本民族の優秀さ、これが修身科を通し、歴史を通し、そうしていわゆる八紘一宇という精神になり、日本民族は世界における最高の優秀民族である。というような、こういう点が遂にああいう状態になつたのでございまして、この点一体総理大臣がお考えになつている愛国心の涵養というのは、どういうことをお考えになられておるのか。ただ抽象的に国を愛するというだけではわかりませんので、その点をぜひひとつお聞かせいただきたいと思います。
  243. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 総理のお考えは、日本の国民として民族の自信をとりもどそうというところにおありになるのだと思つております。日本の国民、その個性、その歴史、そういうものがどういうものであるかということを十分に国民に知らせまして、そうして占領治下におきまして、ややともすれば失われておりました、民族として国民としての自信を取返し、独立国としてふさわしい国民に仕立てて行くというところにあると考えております。
  244. 横路節雄

    横路委員 私は文部大臣にお尋ねをいたしますが、文部大臣は愛国心の涵養と道義の高揚、ことに道義の高揚はこの日本憲法を守つて行くことである、日本の憲法を実際に実践して行くことである、こうあなたはお話をされておるわけです。しかし現実に、一体それならば、たとえばいろいろここで論議されておりますけれども、憲法の第九条があつても、今日あれだけの保安隊ができて来ておる、こういうことになりますと、あなたは今、あの中にうたわれている、いわゆる人間個人としての人格の尊重なり、人間個人としての権人の尊重なり、さらに健康にして文化的な生活なり、さらに基本的な戦争放棄なり、いわゆる平和を守るというそのことが、この道義の高揚基の礎になるというように御答弁をなすつたのでございますが、そういうように私たちはお聞きしておいていいかどうか、もう一ぺんお尋ねいたします。なお重ねてお聞きいたしたい点は、又部大臣としてはこの点に関して、もしも義務教育の教科内容その他について、何か具体的な施策がおありでございましたならば、それもあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  245. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えいたします。私の申し上げましたことは、新日本憲法の精神による道義を日本の国民は尊重すべきであるということでございます。それから教科内容につきましては、目下検討中でございます。
  246. 太田正孝

    太田委員長 本日の質疑はこれにとどめまして、明十日は午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会