運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-12-08 第15回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月八日(月曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    石田 博英君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    北 れい吉君       重政 誠之君    島村 一郎君       田子 一民君    塚原 俊郎君       永田 亮一君    永野  護君       灘尾 弘吉君    西川 貞一君       貫井 清憲君    原 健三郎君       本間 俊一君    南  好雄君       森 幸太郎君    山崎  巖君       川崎 秀二君    栗田 英男君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    中曽根康弘君       古井 喜實君    松浦周太郎君       石井 繁丸君    河野  密君       西村 榮一君    平野 力三君       伊藤 好道君    稻村 順三君       成田 知巳君    八百板 正君       福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         建 設 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         総理府事務官         (自治庁選挙         部長)     金丸 三郎君         総理府事務官         (経済審議庁         計画部長)   佐々木義武君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         農林政務次官  松浦 東介君         食糧庁長官   東畑 四郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 永山 時雄君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      石原 武夫君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豐治君     ————————————— 十二月八日  委員井出一太郎君及び早川崇君辞任につき、そ  の補欠として川崎秀二君及び栗田英男君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十七年一般会計予算補正ほか二件を一括して議題に供します。質疑を継続いたします。平野力三君。
  3. 平野力三

    平野(力)委員 私はもつばら食糧問題を中心とする農業政策に関しまして、主として廣川農林大臣大蔵大臣厚生大臣等関係大臣に対しまして、これより質疑をいたしたいと思います。  まず第一に、政府にただしたいことは、政府食糧問題として打出しております政策は、大体において三つの点があげられる。第一点は外国食糧に約三百万トン以上を依存しておる。しかしてこの外国会糧三百万トン輸入に対しては、貴重なる四百万ドルの外貨というものを消費しておる。加うるに日本国内補給金として三百億円の多額に上る国費を消費しておる。これが大きな問題である。第二点は、これを補うためでありましようが、食糧増産五箇年計画というものを打出しまして、五箇年間に一千七百万石の食糧を増産しよう、これには約四千億円の国費を動員しておる。そのうち約三千億円は、国家補助金としてこれを捨てる、こういう計画であります。第三に政府が打出しておりまするところの大きな政策は、米の統制を廃止して、いわゆる自由販売に米を持つて行く、これは特に現内閣が打出しております一つ政策であります。そこで私がお尋ねをするのは、この三つ政府の重大なる施策の中には、大きな矛盾がある。どういう矛盾があるかというならば、外国食糧輸入して、三百億円の補給金を出すということは、これは統制であります。米の国家管理である。また五箇年計画という食糧増産計画を立てて、これに四千万円からの金を動員するということは、これは計画経済であります。国家計画経済なくしてこういうことは実現され得ない。この一、二の政策統制なりあるいは計画経済という線に食糧問題を移行しておりながら、国内内地農民の生産する米については、統制を廃止する方向に持つて行くということは、現内閣の大きなる思想問題です。食糧政策に対して一定の方針を持たないところの大なる矛盾であると指摘しなければならない。東京朝日新聞の十一月十五日の社説の中に、政府食糧政策は前とうしろに馬をつけた馬車のようなものだ。前にひつぱる馬があり、うしろにひつばる馬がある。この論説は私は適評だと思います。いいかえますならば、外米輸入とか、あるいは食糧増産五箇年計画というものが前進する馬であるならば、米の統制を撤廃するという自由経済移行というのはうしろにひつばる馬です。こういう矛盾した政策をおやりになることによつて、はたして日本食糧政策というものがうまく行くかどうか。私はここにまず根本的に大なる疑問を持つておりますので、この点について廣川農相矛盾なしという考えを持つておるのか、あるいは矛盾しておると思うのか、それをまず伺いたい。
  4. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 ただいま干野さんから御指摘通りに、食糧につきましては、外国食糧についても大きくたよつておるわけであります。またそれと並行して国内食糧自給度確立のためにも、大いに力をいたしておるわけであります。  最後統制と自由との矛盾の問題でありますが、わが党がいつも言つておりますように、野放しの自由ではないというとこわれわれは言つおるのであります。その中にはあるいは計画を含め、あるいはその中に自由を織込んで、非常に進歩した自由党にわれわれは脱皮いたしておるのであります。さようなわけで、その中にあるいは矛盾と見られるものがあるかもわかりませんが、両々相まつて国民食糧に満足を与えるような方策を講じて参りたいと思つております。
  5. 平野力三

    平野(力)委員 ただいまの御答弁は御答弁自体相当にごまかしであると、遺憾ながら私は率直に言わざるを得ません。私が伺つておるのは、食糧政策方向を問うておる。つまりいわゆる五箇年計画によるところの食糧増産とか、あるいは外国米に対して補給金を出すというよう思想は、これは何というても計画経済統制経済の線に向つておる方向なんです。しかして内地食糧自由販売にするという方向は、自由経済です。廣川農相は、それは進歩せる自由主義であるとか、あるいは統制、自由を織りまぜてというようお話であつたが、私の聞こうとするのは、こういう計画経済の線で行くというならば、内地の米の統制を撤廃するのではなくして、もつと供出を強化して、政府のレールにいわゆる内地米というものを乗せて、外米食糧増産と合せて一本として、国民安心を与えるよう方向に行こうとするのか。内地米統制をはずすから、終りには外米の方もこういう補給金を出さない、食糧増産五箇年計画というようなものも、そういう計画性ではない、自然にしても食糧はある程度生まれて来るのだ。自由経済というものに根底を置いた政策に行くのか。統制を強化して国家管理を強行することによつて食糧問題の解決の任に当ろうというのか。その方向はどちらなのか。これを伺つておきたい。
  6. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御指摘の点でありますが、わが党の基本方針は、自由経済に立脚してやるのが本来の眼目であります。しかし米におきましては、われわれはその線に持つて参りたいのでございますが、御存じのような情勢でありますので一挙にそこには参らないのであります。でありますから、今まで米の統制を廃止することも、われわれは時期を見て慎重にやりたいと考えておるようなわけでありまして、米自体についてはいろいろ供出方法等について検討はいたしておりますが、これを統制をはずす段階までに行つていないわけであります。でありますから、外国食糧に対する、輸入に対する補給金を出すことにいたしましても、あるいはまた年次計画を立てる場合におきましても、やはりこれは今まで通り統制の線に沿つて行くのでありますが、おもむろに統制をはずして自由に移行できるように、われわれは努力をいたしておるようなわけであります。
  7. 平野力三

    平野(力)委員 ただいまの御答弁によると、大体統制をはずして自由の方向に持つて行くんだ、これが大きな方針であるという点は一応明らかになりました。しかしただいまの御説明で、外国食糧についても順次自由経済の線に行ける、こういうお話ではありましたが、食糧増産五箇年計画というものについてのただいまの御説明はありません。これは政府が現在打出しておる食糧政策は、国民に与えておるかなり大きなスローガン、政策であります。この食糧増産五箇年計画というものを農林大臣が真剣に、ほんとうに頭の中で熱意誠意をもつて考えになるときは、何といつて計画性というものを持たなければできない。政府が四千万円の金をただ出して、ぱつとこれをばらまいたつて、決して千七百万石の米ができるものではございません。ここにはどうしても計画性というものを持たなければならぬということを考えるときに、一方では米の統制をはずすのだ、これは矛盾なんです。これはいくら矛盾でないとおつしつて矛盾でありまして、私はこの点においてただいまの御答弁を了承するわけには参りません。  そこでさらに掘り下げて、この問題について私が農林大臣に質したいと思うことは、こういう矛盾をなさつておるからここに第二の大きな矛盾が生れて来た。それは供出制度の問題、供出制度を見ておりますと、供出奨励金として一石について総花的に百円出す、これは明らかであります。それから超過供出については三千円を出す、これまではいい。ところが超過供出をしたあとには、これは自由販売にする。政府の御説明になつておる名目は、特別集荷制度というお話でありますけれども、これは何といつて超過供出を完了したものは自由販売にする、ここに農村には大なる混乱が起つておる。一体供出奨励金を百円出したり、超過供出三千円出すという点から見るならば、これは供出に対して政府はなお相当力を入れておるのだ、こういうふうに見えるが、供出したあとには全部自由販売だというならば、これは供出制度ではなくなるのだ、ここに割り切れない矛盾がある。これを矛盾考えられますか、考えられないか、また矛盾であつてもいいのか御答弁を願いたい。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 供出制度のことについてのお話でありますが、供出終つてからの米を自由販売としておりますが、これは言葉自由販売でありましても、厳密に申しますと、最終段階はやはり政府に入りますので、供出一つの行き方と見てもさしつかえないのであります。しかし商人機関を利用する一方、また協同組合の力も十分発揮できるように、両々相まつて、そして、最後段階国家に入る速度を早め、しかもまたその両方のよいところをとつてやることでありますので、あるいはその中間において多少の矛盾があるかもしれませんが、最終段階国家に入つて来ることを考えますと、そうその間の矛盾はじやまにならないと私は思うのであります。
  9. 平野力三

    平野(力)委員 しからばお伺いいたしますが、農業団体言論機関、または大新聞の論説等を綜合してみましても、ただいま農林大臣答弁による最終段階において、供出完了をしたものが米を自由に売れる、もちろん自由についてもある制限があるとおつしやいますが、とにかくにも供出を完了したならばこの米は商人に売れるのだ、こういうことをおきめになつた。このことは供出制度そのものに対してまず外ぼりを埋めた。どういうような言いまわしをされても、このこと自体政府がやつたということは、将来供出制度はなくなるのだ、こういう見解を一様に持つておる。もしそうでないというならば農林大臣だけがそうでないという考え方を持つておられるのであつて供出の任に当るところの農民全体は、もう供出制度はなくなるのだ、こういう考え方を持つているのであります。この点について農林大臣はそうでないというお考えですか。つまり供出後の米を自由販売にするということがきまれば、もう必ず供出制度というものはなくなつてしまうのだ、こういうふうに農民考えておる。これをどうお思いになるか。
  10. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農民の気持をごそんたくなすつてのお言葉ようでありますが、まだ農民自体はそこまで私は考えていないと思います。最終段階国家に入るという大きな一つの締めくくりがありますので、そこまでまだ心をゆるめていただくことにはなつていないと思います。
  11. 平野力三

    平野(力)委員 そういう御答弁があると、これはむし返してひとつけじめをつけておかなければならぬが、それでは市場に自由販売の米とそれから供出制度の米と二つが流れて来る。最終段階においては一ぺん商人が買つたものを政府に売らなければならぬという御説明ではあるけれども、そうでなくても現在米のやみ横流れというものは相当現実に行われておる。横流れが行われておつても、まだ政府のとつておる基本政策というものが、大体において供出制度というものを堅持しておるから、そこにある程度の秩序が保たれておる。この秩序あるがゆえに都会消費者がとにかくにも十五日なら十五日米が食えるのだ、こういうことになつておる。大臣はまだ供出制度というものはこれですたれるものでないというようなことを答弁されておるけれども、現実はこの制度が行われるために、地方においては協同組合商人との間で米の買い方について大競争が起つており、農村には混乱が起つておる。農民供出制度は大体なくなるのだという考え方を持つておる。そこにやみ米が横行する。どうしてこの秩序を保つか。これでほんとう秩序を保てると思つておつしやつておるのか。一応そうおつしやつてあとは何とかなるというような安直な考え方なのか、真剣にお考えになつてこれでいいというお考えなのか、それを伺いたい。
  12. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 決して安価に考えてはいないのでありまして、真剣に考えてああいう案を農林省としてはつくつたのであります。ただ農民供出意欲を増すことと、そして商人のいわゆる商才と申しましようか、商人の持つておる持味を出し、しかもまた協同組合集荷共同販売持味と両々相まつて集荷が円満に行くようにやつておるわけでありますが、その間のやみに流れることについての御心配でありますが、われわれも非常にその点を心配いたしまして、さようにならぬよう努力をいたしておるような次第であります。
  13. 平野力三

    平野(力)委員 さらにお伺いをいたしますが、政府は麦の統制をはずしますときに、政府考えたことは、麦はすでに統制ができなくなつておる。現実麦やみが大勢を支配しておる。こういう現実状態から見れば、統制をするよりもはずした方がいいのだ。これは当時の政府廣川さんがおやりになつたことかと思いますが、相当の根拠ある御説明つた。私はただいまここでの答弁を初めから聞いて感ずることは、米の自由販売というものを認めて、やめ米が横行しておる。現実米やみというものは、ここに法務総裁はおりませんが、おそらく、伺つて見ると、取締りは困難だという御答弁があるのではないかと思います。これは専門家に聞いてみてもそうであるが、そうすると結局廣川農相は、米の問題も将来麦の問題と同じように、現実やみができるよう経済体制にしておいて、米はこれほどやみがあつてどうにもしようがないから、統制をまたはずすのだというような、政治的意図から食糧問題を考えておられるのではないか。私はこの際もしそういうことであつたとするならば、この問題はまことに重要であるので、はつきりそうでないのだ、供出制度を擁護して、日本農民には供出に訴えて、供出制度で行くのだ、統制撤廃はしないのだ。こういう御言明がないと了承できないのでありますが、これをもう一回御答弁願いたい。
  14. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 お答え申し上げます。私としては決して米についてはそういう安価な考えを持つていないのであります。またさよう取締りのできないよう状態において、政治的に米を自由販売に持つて行くというよう意図は持つておりません。これはまだ現在のところしばらくは統制を続けで参りまして、その間にできるだけ需要の確立をはかつて、実際安心の行くところに持つて行くよう統制をはずすのがほんとうだ、こう考えております。
  15. 平野力三

    平野(力)委員 しからば具体的事実について農相に問うてみたい。本年の米の収穫予想は六千五百万石であります。正確な統計を見ますと、六千四百八十二万石という数字を示しております。この数字は過去五箇年間の平均より二百三十七万石増加、約二百五十万石の増加であります。米価は昨年七千三十円であつたものを四百七十円とにかくにも引上げて、七千五百円、米価約五百円の引上げ、普通に考えてみますと、今年は昨年よりも増産しておつて米価は五百円上つておる。供出はさだめし政府の思われる通りに、順調に行くであろうと考えたであろうが、驚くなかれ政府予想の二千四百万石の数量には及ばざること百五十万石、百五十万石政府予想より狂つておる。これは何か。これは大臣としてはこういうところにほんとうに掘り下げて真剣にものをお考えにならなければならぬ。よけいとれておつて価格が高くても、政府供出に乗つて来る米は少い。これは何か。私はこれを率直に申しますと、政府食糧問題に対するいわゆる根本的な観念が常に動揺するので、農民はこの点において非常な不安と反抗を持つておる。政府は信頼するに足らない。もし将来供出制度というものを廃止するというようなことであるならば、何を苦しんで供出制度ルートへ米を乗せる必要があるか。これは現在の農民の率直な政府に対する抗議だ。廣川さんはこういうことをやつて行けばうまく行くんだという概念的な議論答弁されましたけれども、もう一回私は繰返して申しますと、米がよけいとれて、米価を上げても、供出がうまく行かないというのは何か。明らかにこれは将来は自由販売にするんだから、供出というものに対しては農民熱意がないのだ。そこで伺いたい。この供出熱意というものがなくなつてもやつて行けるという自信がおありになるならば、それはそれでよかろう。もしも内地の米は相当政府ルート供出米を乗せてくれなければ、都会消費者には十五日の米を完全に配給する自信がなくなるというならば、ここはやはり真剣に農民の心理に投合する供出制度というものを考えなければならない。この点どういうふうに考えますか。
  16. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 最初政府予想しておつた二千四百万石に供出割当が達しなかつたことは、政府考えが間違つておるんじやないかというお考えでございますが、これはほんとう農民諸君話合つて供出割当をすることがほんとうでありますので、各県の県当局並びに農業委員の方々とひざを交えて個々折衝して、このへんで妥当であろうというところにきめたわけございまして、それは大体基本割当は二千三百万石程度でございますが、しかし最終国家に集まる米については、私は大いに期待をいたしておるような次第であります。
  17. 平野力三

    平野(力)委員 ただいまの最終段階に期待するという言葉に、私は非常に不安がある。それは供出というものは減つても、自由販売の線で多く押えるんだ、だから最後は米を出すんだ、こういうお考えならば、私が最初から問うておるように、政府は米の統制を撤廃して、自由販売にするんだ。そういう意味において農民に協力せよ、こういう議論にならないと、割当量は出さなくても、最終段階においては自由販売で買上げて何とかするんだ、こういうことでおやりになるということでありますならば、これは必ずいかなるところにおいてか、政府食糧政策には大なる蹉跌を招来する。またこの面において自信があるとおしやつても、そういう思想食糧増産五箇年計画として、四千億からの金をお出しになつても、これはここに大蔵大臣もおいでになりますが、片方においてはそういう所期の目的を達しない、きつとそうなんです。つまりもはや米は自由販売にするんだから、自由販売の線で多く押えるから安心せいという、国民に対する廣川農相の御答弁であるならば、片方に五箇年計画を立てて、千七百万石の米を増産して、それで補うのだというこの計画経済とは矛盾して来るのです。これを矛盾してないという考えでやつておられるということは、私はどうしても了承できない。そこでなおこのことについてひとつ答弁を願いたいのですが、供出制度に依存してなお食糧問題をおやりになるというならば、供出奨励金を百円、超過供出を三千円、あと自由販売というような、こういうむずかしいことをなさるより、米価そのものをきちつと引上げて、そうして政府が必要とするところの二千七百万石の米というものが、都会消費者に対してはどうしても必要なんだから、農民諸君、この点において誠意をもつて出してくれ、こういう堂々たる態度から農林大臣農民に訴えることができないか。やはり私は二段階にも三段階にもわけて、結局は何とかするから安心せいせい言つても、農林大臣安心するだけであつて、実際は筋が通つておらぬ。繰返して申しますならば、供出制度に依存するというならば、米価を合理的につり上げて、こういう百円とか、三千円とか、自由販売とかまわりくどいことにしないで、米価一本にして政府必要量二千七百万石は、農民諸君出してくれ、片方においては四千億の金を出して食糧増産をやるのだ、こういう筋の通つた声明をひとつ農林大臣はすることができないか。ここで御所見を伺いたい。
  18. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 供出割当が少くなつて自由販売の線で大いに期待しているというようにおとりのようでありますが、私はもちろん最初基本割当において多く出していただくことがよりよいのでありますが、今まで過去においてやはり超過供出等を用いまして、その超過供出の妙味から農民供出意欲をそそつてつた過去の実績がありますので、やはりこの超過供出等を用いているようなわけでありますが、それをもう少し広げて、自由販売最後段階をつくているのであります。本年の供出は非常に順調に参つておりまして、十一月末においてすでに二千百五十万石集まつているのでありまして、去年に比べますと、相当な成績をあげているようなわけであります。これもまだ自由販売の線がほとんど出ていなくて、本来の超過供出の方でこれが出ているのであります。  最後お尋ねでありました、これを抜本的に米価価格を上げて、最後数量を指示して、それを出すように協力を求めたらどうかということでありますが、これもやはり国家財政とにらみ合してやりませんと、なかなかそこまで参りませんので、いろいろくふうをいたしまして、国家財政の現情を勘案いたしまして、かようにいたしているようなわけであります。
  19. 平野力三

    平野(力)委員 ただいまの御答弁は、相当政治的な御答弁で、私は了承できません。政府供出数量を二千四百万石と踏んで、少くとも最終段階において二千七百万石を必要とする。この二千七百万石が手に入つても、外国食糧を三百万トン必要とするんだ。なおそれでも足りないから、食糧増産五箇年計画、こういうことを言つておられる。きよう二千百万石子に入つたから、これで成績がいいんだということはこれは受取れません。それは今日この段階において、すでに二千七百万石に達しているから安心をせいという御答弁であるならば、私は政策矛盾がかりにあつても、結果論において一応農相答弁を了承し得るかと考えます。しかし筋道は通つておらず、数量においてすでになお六百万石足りない。依然として外米依存、こういう問題をぶつつけておいて、ただ安心せよ、何とかなるんだということでは、私は将来予想せらるる日本食糧問題というものについては、了承することができないということを述べておきます。  そこで次の問題に移つて、これは重大関連を持つところの時価問題について、廣川農相がいかなる見解を持つておらるるか、これをただしたい。米価は生産者なる農民の生産費を保障すると同時に、次の再生産を確保するに足るだけの米価農民に給与する、これが根本思想でなくてはなりません。またこれはそういう意味の演説、政府の発表ということがしばしばなされているのでありますが、昭和二十七年度の米として政府の決定せられました七千五百円という米価が、今私の申し述べました米価の根本問題に合つておるからどうか、農相はこの点をどう考えておるか、これを伺います。
  20. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 米価を決定する場合においては、農民の再生産を確保することが大事であつて、それを確保するだけの価格にきめたかどうかということでございますが、この米価最終決定が七千五百円といたしまして、この当時における農民諸君の大多数の要望は、大体八千五百円程度の米価ということが主張されておつたわけであります。なるほど淺沼君外社会党の方々からは、一万円程度の米価にしてくれという陳情を受けておつたのであります。また委員会等におきましても、そういうお話を受けておりましたが、大多数の農民の諸君は、八千五百円程度の価格でよろしいということを言つてつたのであります。そこでわれわれといたしましては、再生産の確保をはかるために、七千八百円程度になるようにと思つて、非常に苦労をいたしたのであります。そこで早場米奨励金なり、あるいは超過供出奨励金なり、といつたようなものを含めて、大体八千円を越すという見通しをつけまして、この程度にいたしたようなわけでございます。
  21. 平野力三

    平野(力)委員 ただいま農業団体が八千五百円を主張したというお話でありますが、これは大体違つております。ここに全国農業委員会協議会から私どもに来ておる一種の請願書といいますか、陳情意見書というようなものが出ておりますが、こういうものを見ましても、農業団体が今日米の生産費として計算をいたしております正確な計算というものは、一万十四円ということになつておる。農林大臣は何を根拠に八千五百円という数字をお示しになりましたか。私もいろいろ調べてみたのでありますが、私の得ましたところの農業団体から出ておる資料を大体総合いたしまして、一万円以上、しかも最も正確に調べております中央農業会議の調査というものは、諸掛りから労働賃金すべてを計算いたしまして、これは相当正確なる根拠に基いたものとして、米一石一万十四円、こういう数字を出しております。私はこの一万十四円というものを政府が補償した場合に、農業団体の要求である米は、生産費を補償して、再生産に償うところの米価であるということにならなければならぬ。大臣としてはそれはできないが、こういうわけで七千五百円にしてやむを得ないのだという御説明があるならば、これは御説明で了承いたすのですが、農業団体が八千五百円だつたから、七千五百円でしかるべくこれでよかろうということでは、ちよつと了承しかねる。もう一回この点について御答弁を願います。
  22. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 平野さんからのお尋ねでありますが、決して私はこれでよいからということで押しつけたのではないのでありまして、この再生産をはかる上において、現在の日本国家財政とにらみ合せて、大体この程度で御満足を願いたいという程度でやつたわけであります。ただ八千五百円と言つて来た団体等もあつたことは事実でございますが、決して全般と言つているわけではない、一万十四円という数字もたびたび聞かされておる。ただこの生産費を基礎とする根拠につきましては、非常にむずかしいのであります。各地の生産資料については、各地とも違つておりますし、また自家労働の計算等につきましても、非常に問題があつてむずかしいので、われわれはやむを得ずパリテイ方式を採用いたし、そうして再生産をはかるためにこのよう数字を出したわけであります。
  23. 平野力三

    平野(力)委員 農林大臣はパリテイ計算というものは一体農民の生産費を償う計算方法である、こういうお考えですか、あるいはどうですか。
  24. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 生産費と申しましても、一様に全国一般の生産費が各地によつて非常に違いまするので、この点がむずかしいので、比較的妥当と思われるパリテイ方式でやつたというだけでございます。
  25. 平野力三

    平野(力)委員 農林省には、私が申すまでもなく、米価の生産費計算というものがありまして、いわゆる中庸米価—ヴアルヴライン計算といつたようなむずかしい名前もつけて、米価の中庸計算というものがあるのでありまして、これは私も了承いたしておりますが、もちろん農林大臣も御存じのことと思う。しかし私の今問うたのは、米の中にも高い米も安い米もあるということはわかつておるが、占領政策が始まつて以来今日まで、米価の計算についてとつて来たパリテイ計算、このパリテイ計算というものの根本観念というものが、農民に生産費を補償するという考え方から生れたのか、そうでない別の観点から生れたか、これを問うのです。私はなぜそのことを言うかと申しますと、ただいま農林大臣の御答弁の中にあいまいな点がある。米は安いけれども、国家財政の面から農民にこれはがまんをしてもらわなければならぬ、こういうことならば、米価の面ではがまんするが、その他肥料を安くするとか、税金をまけるとか、あるいはその他の方法においてカバーするからということが生れて来る。安いけれどもがまんする、しかしそういう面をカバーしないというなら、農民だけが都会の労働者の労働賃金以下で、農民だけが今日の社会階層の中において、自分のつくつたものを生産費を割つて国家に奉仕しなければならぬという根拠はない。やはり農民は生産者である。農民も労働者である限りは、生産については生産の利潤、また労働者は労働賃金を要求する権利はあるのです。ここを農林大臣たる者がはつきり区別して、この七千五百円という米価をきめたか、これは国家財政の見地からしかじかかようなわけであるから、農民諸君はがまんしてくれというのか、それともこれは理路整然として七千五百円は正しい、生産費を償つておる、これでやれというのか、こういう点をはつきりしてかからないと、私は日本の農政というものは軌道に乗らぬと思う。これをひとつ農相から伺いたい。
  26. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御指摘の点は私もよくわかるのであります。決してパリテイ指数のみでわれわれは満足いたしておるのではないのであります。でありますから、これに対して加算を行つておるようなわけであります。それにはこの肥料等の物的資本の投下量等のことも考え、あるいはまた都市の実質消費水準と農村の消費水準の上昇率の均衡化をはかるための調整比率というようなものを加えて、そうしてこれを勘案いたしましてつくつておるようなわけであります。
  27. 平野力三

    平野(力)委員 せつかくの御答弁ですが、実はだんだんはつきりしない、わからなくなつて来るのです。私は一つ自分の私見を述べることになりますが、パリテイ計算という方法は、日本食糧行政の上においては、占領政策が始まつてから始めて採用せられた方法なんです。これは今の農林省にはたくさんのお役人もおりますが、パリテイ計算というものは何かと問うたときに、こうこうこういうわけでこうだというふうに、明確に答えられる役人はおそらく乏しいのではないか。お並びのお歴々や大蔵大臣でも、もしパリテイ計算は何であるかと問われたら、あるいはお答えになれないようなむずかしいことじやないかと思う。これは私の研究によると、アメリカの共和党のタフト・ハートレー法で有名なタフト氏が、アメリカの農業政策の上において農民にパリテイ計算で行く、こういうことをしばしば演説しおる。私はタフトのこの演説集を見てみると、アメリカ農業においてはパリテイでやることが農民の生産費を補償するがゆえなりと明確に結んでおる。言いかえれば、アメリカのような大農業のところで、自然に放任しておけばどうしても農産品というものがたたかれてしまつて、安く買われる。そこでニユー・デイール政策によつて、パリテイ計算というもので農民の生産費を補償する。農民諸君が小麦ができ過ぎてしまつたから焼いてしまうというようなことをやらぬで、生産費を補償するためにパリテイ計算でやる、こういうことをアメリカでは言つておる。ところが終戦後日本の役人諸君が取入れたところのパリテイ計算というものはその形だけを取入れた。何でもパリテイ計算というものは、高等数学で、フイツシヤー式とかむずかしいことを聞かされましたが、私は率直に言つて、何回読んでみてもわからない。私は失礼ですが、農民運動を三十年、農村問題については相当研究しておりますが、率直に良必的に考えて、農民にパリテイ計算で君大丈夫だとは言えない。なぜ言えないかといえば、日本のパリテイ計算の方法はアメリカと違う。なぜアメリカと違うといえば、アメリカは、言言うまでもなく、経済というものが十年、二十年さかのぼつてある一定のシステムを持つて来ておる。戦争の終りころから終戦直後の日本の経済というものはめちやくちやで、こんなところに現われておる統計などパリテイをやつたつて答えが出るはずはない。そして農民団体の共通な米価計算の要求というものは—これは初め私も農林大臣時分に主張したが、米一石つくるのは肥料は幾ら、農具は幾ら、農具は幾らというようにこれを計算して、これを米価八千円になる、一万円になる、これを米価とするということが農民共通の要求なんです。従つて米を生産費できめるということが今日農民団体の輿論なんです。しかし他の大臣は別だが、農林大臣たるものは、この米価の計算方法について、わけのわからぬパリテイというようなもに迷うことなく、米一石の生産費は幾らかということを、農民団体が検討したものを少くとも擁護し、こを支持し、もしこれが通らない場合においてはこういうわけで農民諸君がまんしてくれという、筋一通の通つた政策を発表するのでなければ、私は米価問題についても、供出制度についてもうまく行かぬし、農民は了承しないと考えるのでありますが、この点について農林大臣の御所見を伺いたい。
  28. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この問題について平野君は非常な苦労をし、また御経験をなすつていることに私は敬意を表しているのでありますが、非常に苦い経験をなめておられるので、特にわれわれのような者とは違つた角度から非常に御研究をなすつておられますので、その点われわれといたしましても非常な敬意を表しております。しかし特に一番大きな問題になる労働条件の問題等をいろいろ検討いたしてみておりまが、なかなかこれは思つたよう数字が出て参らない。しかしそれかといつて、パリテイ指数が絶対だとは私は申さないのであります。現在まで農林省の持つている統計あるいはまた内閣で持つている統計等においても、相当まだ完全でないものがありますから、決してこれのみにわれわれは頼ろうとも思いませんが、しかし今のところは比較的これが無難であり、しかもこれにアルフアを加えて行つて、そして農民に納得してもらうだけの適当な数字を出して行こう、こういうふうに考えているようなわけであります。
  29. 平野力三

    平野(力)委員 それでは反問いたしますが、農林大臣は肥料、特に硫安の生産コストを計算するにあたつて、これをパリテイでやる、硫安は生産費でやつて行けない。石炭の問題も同様でありますが、石炭はきようの議題からちよつとそれますから申し上げませんが、農民が一番待望する硫酸アンモニアの生産費を一体どうしてきめるか。これもパリテイでやるという御意見ですか、それともこの方だけは生産費をもつて一俵九百円といおうが、千円といおうがかまわない。米の方だけはやはりパリテイ・プラス、アルフアで、依然として生産費では行かぬ、パリテイだ、こういう御見解であるか。これをひとつはつきりしておきたいに
  30. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 お答え申し上げます。パリテイと生産費でいろいろ御意見があつたのでありますが、肥料はもちろん生産費、原価計算をすべきものだと思います。農産物についても生産費計算というものは、平野さん御承知のように、農林省でやつておりますが、大臣が申し上げましたように、家族労働というものが非常に大きな要素を占めております。農林省の生産費におきましても、自家労働が、男子平均いたしまして百四時間ということに石当りになつております。この百四時間程度の自家労働をどう評価するかということが、いつも問題になるわけでありますが、農林省がやつておりますのは、日雇いの雇用労賃というもので評価いたしますので、生産費計算で出しましたものが、パリテイ計算で出しましたものよりも非常に低く出るわけであります。たしか昭和二十四年以外は全部パリテイ計算の方が実は高く出ているような次第であります。この自家労賃をどう評価するかという問題について、何か客観的なものを見出そうと今一生懸命努力しております。そういうものの計算方法が客観的に出ますれば、われわれとしましても生産費でやろうと思つておるのであります。ただいまのところ従来農林省がやつております雇用労銀で評価いたしますと、非常に低く出るということが唯一の欠点であります。従いまして、パリテイでいろいろな加算をいたしまして、米価を決定したのでありまして、これを百四時間程度の男女労銀に平均いたしますと、今日一日当りの労銀といたしましても、そう低いものではない、こういうふうに私は考えておるのであります。
  31. 平野力三

    平野(力)委員 いよいよ私はわからない。それはパリテイでやれば高くなる、生産費でやれば米が安くなるとかいうことを問うておるのではない。今問うたのは、米をパリテイでやるということであるならば、肥料の方もパリティでやる、生産費でやるならどつちも生産費でやる、こういう方法をとつて行くのでなければ、農民にはわかりにくいのだ。今食糧庁長官が御答弁になりましたが、私もよく知つております。農林省自体にも米の生産費調査というものがあつて、自家労働をどう見る、こう見るということをこまかくおつしやつたが、一定の生産費をもつて、次の再生産を償ところの米価計算の方法というものはあるのです。農林省が食糧問題の解決にあたつて供出制度というものを施行して行くというのであれば、生産費は、補償するのだ。言いかえれば生産費を確保するところの米価政策をなぜ堅持しないか。大蔵大臣なら別です。大蔵大臣ならば、国家の財政の都合上どうとかこうとかいうことを言つても、それは了承する。ところが供出の任に当つておる農林省としては、米の生産費を補償するという点は堅持した。しかし国家財政関係でしかじかかようになつたが、その部分は税金とかあるいはその他の点で補うのだという方向に、米価政策をなぜ切りかえられないかということを私は繰返して問うておる。これに反対するとか、あるいはそうしないとか、もう一回はつきりとお答えを願いたい。
  32. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 お答え申し上げます。米価をきめます場合に、生産費をしんしやくいたしますことは、これは法律上当然でございまして、農林省といたしましては、純えず生産費というものを計算いたしまして、これをしんしやくいたすことは当然でございます。ただ、ただいま申し上げますように、生産費の計算の方法について若干問題がありますので、結果といたしましてはパリテイ計算方式をとつておるのでございまして、生産費をとるということがもちろん重要なしんしやく条件であることは当然でございます。
  33. 平野力三

    平野(力)委員 しつかりした答弁ならば、大体それでよろしいと言いたいのですが、どうもわかりません。わからぬことはわからぬと言つておく以外にしようがありませんので、ただいまの食糧庁長官の御答弁も私ははつきりしない。いやしくも農林省は何十年来米を扱つておるのですから、米の生産費は幾らか、肥料会社が肥料を生産した値段も計算して、米は幾らかぴつたり出して、農民の了解を得て、ことに米価審議会というものもあるのですから、こういうところの了解を得て、農民に納得させるようにしなければならない。今のようなそんな態度はわれわれは反対である。もう一つ申し上げておきますが、パリテイ・プラス・アルフアーというのは何ですか。アルフアーとは何だ。アルフアーとは政治米価だ。これくらい筋の通らぬものはありませんよ。パリテイ計算だけを堅持して、何でもかでもこれでやるのだというなら、強引で、また筋道は多少通るかもしれませんが、パリテイで計算したものにプラス・アルフアー、一体アルフアーとは何か。政治力が強ければアルフアーがふえるし、政治力が弱ければ減るのだ、こういうことになりませんか。そういうあいまいな米価計算をなさつておるところに、私は農業生産の根本的な大なる混乱があると思う。この点食糧庁長官もう一度、プラス・アルフアーとは何ですか。アルフアーということはパリテイ自体の権威をなくしてしまうのではありませんか。
  34. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 お答えいたします。米価の算定方式につきましては、米価審議会の専門委員の方々の御協力を得まして、実は答申を願つたのであります。その答申に生産計算方式のものもございますし、パすリテイに対る修正のものもございます。今回きめましたものは、その答申の一部を実はお借りしたのでありまして、パリテイで出ました一つの均衡価格というものを、さらにそれを見通してアルマアーを加えたのであります。アルフアーの基礎は技術的に説明がつくのであります。これは米価審議会の専門委員の答申の方式をお借り申し上げた、こういうことでございます。
  35. 平野力三

    平野(力)委員 たざいまの答弁は非常に了承できません。米価審議会の方ヘアルフアーを塗りつけて答弁をして行くという態度はだめです。私は農林省自体の信念を問うておる。反問いたしますが、今米価審議会の話が出ました。私は時間もございませんから掘り下げないつもりであつたのですが、食管長官は、米価審議会のある意見を採用したごときことを言うのですが、農林省は米価をきめるのに米価審議会の意見を聞かないのですか。また政府はこれについて一体どうしたのですか。これからは米価審議会の意見をお聞きになるのですか。今まではお聞きになつておりませんが、これは盲腸のようなことならば何もつくらない方がいいのです。あなたは三回も農林大臣になられたのですから、これからの決定には米価審議会の意見を聞くのだと御言明になるならば、この項は一応やめておきます。
  36. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 十分尊重いたしまして、お聞きいたす考えでございます。
  37. 平野力三

    平野(力)委員 どうも尊重という言葉は、廣川農材大臣の本日の初めからの答弁ように、すべて政治的な答弁であつて、真剣にお尋ねをしておる私から言えば、非常にその点不満なんです。米価審議会の意見を聞けないというならば、聞けないという点を明らかにされたらいい。聞くというならば、つまりただいま食管長官の答弁ように、アルフアーというのは米価審議会からそう言うて来たから、これを採用したというふうに、顧みて米価審議会にものを塗りつけて、農林省は米価審議会に肩がわりするようなことならば、米価審議会はない方がいい。農林大臣自身がやつた方がいい。米価審議会こそいい迷惑だ。従つてこの点については尊重するというようなあいまいな言葉でなく、もう少しはつきり願いたいと思います。しかし時間をとりますから、次に大臣が立たれるときにあわせて御答弁願うこととして、次に私が項をかえてお問いするのは食糧増産五箇年計画です。  まず前提として伺いますが、これはほんとうにできますか。私は疑つておる。なぜ疑がつておるかと申しますと、大蔵大臣もいらつしやいますが、これは四千億からの金を動員するのですから、うまく行かぬということであれば、それはお互いに相当重要な問題です。従つて予算委員会としては、こういうものが出て、ただぱつと議論するのでなく、実際できるかどうかということをただす責任があるので、私はこれを掘り下げて伺つてみる。そこで農林大臣にまず一つ伺いたいと思うことは、これはどうせできるのだということをおつしやるに違いない。できないとお答えになるはずはないので、できるという答弁があつたものと考える以外にありませんが、農林省が最近やりました畜産三箇年計画、これをちよつと見ると、疑いなきを得ない。こまかいことを申しますと時間をとりますから、わかりやすく率直に申しますが、牛を買うために農林省が畜産三箇年計画補助金を出したら、乳牛の値段が四割上つた補助金を出したら上つた。三割の補助金をもらつて、買うものが四割上つたということになれば何にもならぬですな。この疑いがないか。四千億の金を動員して五箇年千七百万石けつこうです。だれも反対しませんよ。できることを必から念願いたしますが、あるいはおそる、牛を買えといつて補助金を出したが、補助金のために牛の値段が上つた。三割補助金をもらつたが四割上つていて、買いに行つたが買えない。くそやけになつて、いいころかげんの牛を買つて来たら、その午が使えない。これはどうするんです。従つてこの五箇年計画で千七百万石の米をふやすというように、いろいろな数字が書いてありますが、これだけの金を出して、労働賃金とか、資材とか、単価というものについて、農林大臣は十分調べて、これは大丈夫でという自信の上にこれをおつくりになつておるかどうか。この確信をひとつつておきたい。
  38. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 食糧増産五箇年計画についてのお尋ねでありますが、御存じのように、最初平野さんが御指摘ように、年々三百万トン、そしてまた四億ドルを越す大きな外貨を払つて食糧を求めておりますので、これを国内において自給することが最大の急務であるのであります。それがためにわれわれといたしましては、農響をあげて、また外部の人たちの意見を聞いて、この計画を立案いたしておるのでありますが、それには非常にこまかい検討を要するのであります。そのこまかい検討をしておるかどうかというお尋ねでありますが、われわれといたしましては、農林省をあげてこの問題を検討いたす考えであります。これができないことを御心配のようでありますが、どうか平野さんの政治力をわれわれに御協力願つて、できるように御努力を願いたいと思うのであります。  なおまた例をおとりになりまして、畜産三箇年計画についての、牛の購入の問題等のお話がありましたが、これは実はお話通りであるのであります。これはやつかいな市場を控えておりますので、この市場の暴騰等が非常に影響をいたしまして、なかなか満足に計画を進めて参られませんが、しかし牛の価格が高くなつたことによつて、牛の腹はからになつておりませんので、大体満腹いたして、増殖の方にはこれはかなり好影響を与えて、結論においては増殖されると私は信じておるのであります。牛の価格が下落いたしますと、交尾料を払うのさえこれを検約いたすのでありますが、だんだん高くなりますので、腹をからにしておくというような牛は、今日本には一頭もないくらいになつておりまするので、結果においてはふえて参るのじやないかと考えております。
  39. 平野力三

    平野(力)委員 私はこれは相当つておるのです。もちろん食糧増産に対しては、一農林大臣政府のみの責任ではありませんので、国民をあげて協力をいたしますが、しかし今申し上げた牛の例は一つの例にすぎませんが、このごろ私たちの仲間には、政府が出した補助金について監査制度というものを設けなければいけないじやないか、こういう議論相当大きく高まつておる。なぜ監査制度を設けなければならないかという問題を簡単に述べますと、これでけの耕地を開墾する、これだけの暗渠排水によつて幾ら増産をするというような予算が、最近相当つておるが、それではその通りに答えが出ているかという答えをとつて見るならば、おそらく全部出ておらない。それを一々申し上げますと、際限がありませんから、私は省略いたしますが、少くともそれは労賃とか資材とかあるいは物価の値上りというようなものについての、いろいろ政府の研究不十分のために、単に補助金を出したからといつて、その補助金の行方というものに対して十分分精密なる検討を加うるにあらざれば、ただ食糧五箇年計画あるいは畜産三箇年計画というても、それは往々にして政府がその時の議会を乗り切るための一つの方便にすぎないという結果になるということは、これはまことに遺憾に思うのでありまして、この点は特に食糧増産計画をお立てになる上にいて、農林大臣に要求しておくのであります。  次いでお尋ねしたいと思うことは、かよう食糧増産のために四千億円の金を投じ、また外米依存のために三百億の補給金を出す、こういうことを政府がやるならば、国内において食糧問題について、もつと考えて見る他の手段が残つておるのではないか、これなんです。以下私の所見を若干ずつ申し上げてこれに対する農相の御意見と答弁を煩わすのであります。  第一は土地の問題であります。現在日本にはなお六十万町歩の小作地があります。小作地と自作地は一反において一俵の生産力の差があるということは、これは専門家の定説です。そうすると六十万町歩の小作地を全部自作農としたと仮定するならば、六百万俵米がよけいとれる。石に換算いたしますならば、二百五十万石、これは補助金はいらない。人から借りて小作しておるから熱心にやらない。土地がおれのものだということになれば、丹精にやつて一俵よけいとれる。そうすれば六十万町歩の耕地を自作農にするだけで三百五十万石の米がとれる、こういう数字が出て来る。もちろんこれが全部米作地ともいわれませんから、数字には疑問があるが、考えられる。ところが私はここで廣川農相に伺うのです。あなたが過去三年間おやりになつておるところの農政を見ると、この農地改革というものとは逆行して、せつかく自作農になつたけれども、その自作農がだんだん小作人の方に落ちて来る政策がとられておる。  これは大体要約をいたしますと、あなたのおやりになつた政策三つの問題がある。第一点は、農地改革の統制令をはずされたこと、土地の自由売買、これによつて自作農が小作農に転落する機会が出て来た。第二には、小作料というものを七倍に増額された。これは実際において調べてみると、七倍ではあるが、無制限に小作料を上げてもいいという、小作制度をなくしようという方針であるのに、小作制度を擁護するという方法をおとりになつて来たのは一体どういうわけか。第三は、農地委員会というものを解散せられた。これは農業委員会をつくつたという御答弁があるかもしれませんが、農地のことを専門で扱うところの委員会をなくしてあいまいな農業委員会にした。この三点は、廣川農政が農地制度改革に逆行するものとして、遺憾ながら私は指摘せざるを得ない。農民の所有権の魔力というものは、砂地を黄金にするというくらいに、深刻な農民の生産意欲というものがあるのです。それは農政学者の一定の定説です。なぜ自作農というものにして、その地面から農民が丹精に米をつくるという意欲をそぐような、元の小作制度に復活するような農政をおとりになつたか。これははなはだ私の同意し得ざるところである。これについて、米が余つてつて、そういう問題はどうでもいいというときであるならば別でありますが、先ほど来申し上げておる通りに、食糧問題は実に深刻なる外国依存のときにおいて、この土地問題について一歩お考えを直される意思がないかどうか。これを問うのです。
  40. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 前段のお尋ねでありまするが、大きな土地改良事業あるいはその他の仕事をして、その仕事の最後の行方について無責任じやないかというお話でありますが、これは十分検査制度を拡充いたしまして、十分検査することが妥当であると私も考えております。  それからまた、次にお尋ねになられました、最も金のかからない増産方法として、小作農から自作農へ転換させることが最も妥当であるというようお話でありますが、これも先ほどの一反一俵増収されるということは、あなたの御指摘通り常識でございますが、しかし後段に述べられました実際農地改革に逆行しているじやないかということは、決してさようなことはいたしていないのでありまして、農地改革の線に沿うて、これをいかに維持して行くかということに苦労しているようなわけであります。この自作農から小作農に転落を防ぐために、実はいろいろな苦しい方法を考えて、一時国家がこれを買い上げて、年賦で償還させるような方法も考えてやつておるようなわけであります。また小作料の問題については、非常に一般の物価が上つて参りますので、ある程度上げましたがこれも限度で押えておるのであります。また土地につきましては、その土地取上げを制限する等において、十分これを押えているようなわけであります。また農地委員会を解消して農業委員会をけしからぬじやないかというお話でありますが、農業委員会にはやはりこの農地委員の仕事も十分やつていただくというようにいたしておりますので、決して農地改革に逆行いたしているようなことはないのでございます。
  41. 平野力三

    平野(力)委員 この問題は相当議論がありますが、時間の関係でここになお二、三の重要な土地問題に関する具体的な事例を申し上げて、それぞれ御答弁と御意見を伺いたい。政府のだんだんの食糧問題その他の御苦心でありますが、最近起つております二、三の事例を見ますと、千葉県印旛郡の台という開墾地、これは戸数が七十六戸、面積が大体において七十町歩、政府が投じました資金としては二百四十万円、こういう土地があります。これを最近ゴルフ場にするということで、今騒いでおる。こういう問題が起つておるのに、農林大臣、農林省としては、せつかく政府が二百四十万円も投資して開拓民を入れて、そうして食糧増産をやつておる。これをゴルフ場にする、これはどういうことなんです。これは御承知ないかもしれません。こういうことが起つておるから、土地問題を言うのです。これは食糧増産と逆行なんです。しかも政府資金を投じてやつたことが、こういうことに転用せられるということは、これは例は一つであつても、七十町歩は小さくない。  それから第二は、香川県木田郡の林村、いわゆる高松飛行場約五十町歩、これは簡単に申しますと、飛行場建設の途上において終戦になつた。それを終戦直後政府が強制的に買い上げた。終戦になつたから当然農耕地にもらえると思つたが、それは占領軍の管理するところとなつて今日まで来た。講和条約が成立したから、占領軍の管理から離れてただちに返還してもらえると農民は思つたところが、なかなか返らない。こういうものはただちに農民に解放をして農耕地にするというきわめて簡単なことは、当然できると私は思います。しかるにこれも聞いてみると、最近は観光飛行場の離陸地にするということで、農民と騒ぎが起つておる。ロカル観光施設としてあるいはこういうものも必要であろうかということについては、私も実情についてはそうであらうかとも感ずるのでありますが、香川県が日本一の過小農であるということはたれでも知つておる。なぜすみやかに五十町歩解放して農民に耕作させないか。こういう点を農林大臣はどう考えておるか。  もう一つ、同じような事例でありますが、あわせて申し述べておきたい。青森県西津軽郡赤石村、ここに流れておる赤石川という川をとめてダムをつくるということを東北電力に最近許可した。これによつて五百町歩の耕地がすでに灌漑水がないというので農民は騒いでおる。これは現在青森県では大騒ぎである。こういうものを許可するときに、なぜもう少し地元の農民の事情を聞いて許可しないか。ここには六つの魚場と二つの孵化場があつて関係農家が三千戸あるので実に大問題である。これは許可を取消さなければならぬという状況にあると考えておるがどうか。大急ぎでこの三つの問題を申し上げるが、拾い上げてみまするならば、高松飛行場のような例は現在日本に九つある。それから印旛郡のような例もずいぶん数多い。こういうような問題を等閑に付しておいて、ただ食糧増産五箇年計画に四千億円の金をやるんだということでは、私はどうも同感できぬ。農林大臣の御所見を伺いたい。
  42. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 千葉県のゴルフ場の問題に関しましては、これは私まだ承知いたしておりませんが、かようなものは許可する意思を持つておりません。それからなおまたこれと同じような場合が、東京の緑地地帯にあつたのでありますが、これは私どもが考えて生産緑地としてこれを存続することが妥当であろうという意見をつけ加えたことがございます。  高松飛行場につきましては、これは今検討中だそうでありますが、前々から農民から陳情を受けてよく承知いたしております。  それから青森県のことにつきましては、私まだ承知いたしておりませんが、これはよく調べまして検討をいたすようにいたします。
  43. 太田正孝

    太田委員長 平野君に申し上げますが、申合せの時間がもう過ぎましたので、しかるべきところで切り上げていただきたいと思います。あまり長くとりますと、やつぱりお約束の関係が困りますので……。
  44. 平野力三

    平野(力)委員 それでは大急ぎで伺います。委員長にちよつとお願いをしたいと思いますが、時間をよけいとらぬつもりでありますけれども、農業政策の面について、一通り概略だけ伺つておかなければ、予算審議の上におきましてもどうかと思いますので、私のみ時間をとることは恐縮でありますが、大急ぎでやりますので御了承願います。
  45. 太田正孝

    太田委員長 どのくらいかかりますか。
  46. 平野力三

    平野(力)委員 大急ぎでやります。次は税金問題でありますが、今日供出をいたしました米については税金を免除する、こういうことが論議されまして、これは大体政府においても了承されたものと考えておりますが、それでよいか。さらに百尺竿頭一歩を進めて現在の外米依存の食糧政策をやつておれば、内地の米作農家の税金を全廃して、農民が一層食糧増産に邁進するような方法をとることができないか。これは石炭等の場合におきましても特例を設けておりますが、税金免除のことをやつておるとすれば、これは当然考うべきものではないか。もしこのことができないというのならば、政府は当然われわれがすでに主張しておるところの米価二重価格制を、この際天下に堂々声明をせられて、消費者と生産者との間に矛盾なき方法をおとりになることが、絶対必要であると考える。イギリスにおきましては、食糧問題解決のために、イギリスは二重政策でありますが、四億ポンドの金を使つておる。ポンドを円に換算することは必ずしも正確を得ませんが、聞いてみますと、大体三億二千万円という金になる。イギリスの財政の約一割を食糧問題解決に使つておる。よつてイギリスの労働者は、パンは一定不変である。私はこういう数字を持つておる。ここに大蔵大臣もおいでになりますが、食糧問題に対して、やれ百円だとか三千円だとか、ちびりちびりと惜しそうに少しずつ金を出すのではなくして百尺竿頭一歩を進めて、米作農民の税金は全部免除して増産させるという手を打つか、あるいは米価二重価格制というものを堂々主張して、生産費を補償し消費者米価を上げない、この大政策というものをここに打立てることができないか、これをお伺いしたい。     〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕
  47. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 生産農家の税の問題でありますが、われわれといたしましては、だんだん税を軽減いたして行く考えでおるのであります。また米の二重価格につきましては、いろいろお話を承つておりますが、これは現在の国家の財政上なかなかそこまでは行かぬようでありまして、われわれとしてはなるべく消費者に迷惑をかけないで行きたいと思つておりますが、今のところはそこまで行かぬよう状態であります。
  48. 平野力三

    平野(力)委員 この問題は御答弁が不十分でありますから、いずれ農林委員会その他において徹底させよう考えますので、はなはだ遺憾でありますが、省略いたします。  最後に、ぜひ政府の所見をただしておかなければならない問題は、肥料問題であります。現在の肥料政策は簡単に申しますると、安い硫安を外国へ売つて内地農民には高い硫安を買はせておる。政府内地農民からは安い米を買つて外国から高い米を買つておる。これは何というても大きな矛盾であり、農政史をひもといても、おそらくかような大きな矛盾はないのじやないかと思う。政府としていろいろな御弁解なり、あるいは御説明もありましようけれども、とにかく現在農民に配給されております硫安の値段というものは、一俵大体九百円、肥料会社が最近売りましたものは六百十二円、何でこういう差ができておるのか、これについて農林大臣としてはどういうような検討を進められ、またこれを今後どうせられる方針か、あるいはやむを得ぬということであるのか、あるいはこれに対して何らか手を打つておられるのか、少くともこの予算委員会におきまして、肥料問題については相当明確にせられなければならないと私は考えるので、この点について農相の意見を伺いたい。
  49. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それは平野さんの御指摘通りでありまして、現在市販において高い肥料を買つておることは事実であります。しかもまた海外におけるこの入札価格を見ますと、非常に安い価格になつております。そこで前に価格の安定帯というようなものをつくりまして、業者と農民と、そしてまた農民代表等の納得の行く線を一つ築き上げたのでありますが、それもあとになりまして海外の生産品が東南アジアから朝鮮方面にまで入つてしまつて、非常な競争になつておるのでありますが、しかしながらさようになつておるといたしましても、農民の犠牲において出血輸血をするということについては、私は賛成しかねるのでございまして、これは業者と農林省と消費者とが一体となつて、審議会等も設けて相談をいたして、農民の犠牲にならないようにわれわれは考えて参りたいと思つております。
  50. 平野力三

    平野(力)委員 ただいまの御答弁は御答弁でありますが、それではこういうことは政府はできるのですか。肥料製造会社に対して、政府が値段について干渉することができるのですか。そういう法律はありますか。それを伺いたい。
  51. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 遺憾ながら今のところはございません。
  52. 平野力三

    平野(力)委員 それがないのに、農民にそういう負担をさせないという言明を農林大臣がなさるということは、そういう議会答弁は何にもならない。肥料値段がどうしてきまるかということは、これは需要供給の関係できまる。肥料の統制をはずしておるのですから、それは政府が肥料会社に希望を述べたり、農林大臣がいろいろ意見を述べられることや、農林省の役人が行つて肥料製造会社にいろいろのことはできるが、何を一体法制的根拠として、安い硫安を外国に売つて、高い硫安を内地農民に売るのはいかぬというのか。そういうことを何の権利においてやるか。ないということであるならば、いかに広川農林大臣が御言明をされても必配せざるを得ないのでありますが、もう一回大丈夫なら大丈夫という御見解を述べていただきたい。     〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 決して大丈夫と言つているのじやない。農民の犠牲においてそういうことをさしたくない、こういう希望を申し述べておるわけであります。特に大部分が国内農民の消費になつておるのであります。ただいま推定される海外に向けて出し得るものは、せいぜい四十万トン程度であろうと思うのでありますが、その他のものは国内消費が大部分であります。そこでこれは道義的にも、生産者と農民との間に話合いができ得るものであると思うのであります。また私の所管ではございませんが、通産省においても、この問題については深い考えがあるようでありますので、われわれといたしましては通産省とも相談いたし、十分検討いたしたいと思つておるのであります。
  54. 平野力三

    平野(力)委員 これは農林大臣の希望的な御答弁でありますけれども、私は最も必配しておる。どう考えてみましても、政府が肥料会社に対して干渉する法律的根拠が全然ないのに、ただいま農林大臣のおつしやるようにしたいということはできない。かつて肥料会社の相当大きな会社にストライキが起つて、一万トン減産になつた。この会社は一万トン減産になつたから、おそらく非常に損をしただろうと考えておるけれども、値段でこれをカバーした。それでこのストライキのときには、別の製造会社が行つて応援をして減産をした、そしてようやく値段を上げた、こういう事例がある。外国へ持つてつてどんどん売る。品不足になる。品不足になれば、農民は適期には肥料を買わなければならないから、地方の商店に行つて、何としてでも買う。これは自由経済の原則なんです。これは幾ら廣川農林大臣が政治力でもつてつても、どうにもならないことなんです。これに対して具体案を持つておられない農林行政であるならば、私は現下の情勢において、全面的に不同意であるといわなければなりません。  そこで、委員長から大分時間を制限せられておりますので、多くを申し上げることはできませんが、ここに一つお問いしておきたいと思うことは、肥料需給調整法というものを昨年お出しになるという考えのもとに、これを出しかけてやみに葬られたが、これは一体どういうわけなのか。こういう問題に当面すれば、何らかの形で国家が肥料問題に対して関与する法制的根拠を持たなければならないが、これについて何らかの用意があるかどうか。同時にその法律ができるまで、ものが間に合わないといたしますならば、あるいは肥料製造業者、政府農民団体、これらの協議会というような、少くともここに肥料問題に対するある程度の肥料の安定をはかる機関を、農林大臣みずからが先頭にに立つてやらなければならないと考えておるのでありますが、この問題について、農相の所見を伺いたい。
  55. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この前の議会に、実は肥料の調整法を出すようにわれわれも考えておつたのでありますが、いろんな事情で実は出せなくなつたのであります。これはわれわれも急いで考えなければならないと思つて、十分今検討いたしております。  それから後段のお話でありますが、これは大きな問題でありますので、われわれもさよう考えて行きたいと思つております。
  56. 平野力三

    平野(力)委員 これはちよつと大事な問題ですが、ちようど通産大臣が来られましたから、これだけはひとつ通産大臣からも御答弁を願いたいと思います。これは他の委員会でもお聞きになつておられると思いますので、詳しくは申し上げませんが、安い肥料を外国に売つて内地農民に高い肥料を売るという問題です。これに対して通産大臣としては成行きを静観するという方針でおられるのか、あるいは何らかの対策を最近お考えになつておるのかどうか、これをひとつここで御言明なすつていただきたいと思います。
  57. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今、参つたばかりで詳しくはわかりませんので、あるいは平野委員の御質問に対するお答えにならないかもわかりませんが、私どももただいまのところ外国の硫安を入れるという考えは持つておりません。これは日本産業の自立のために、ぜひとも必要でございますので、さよう考えは持つておりません。(笑声)
  58. 平野力三

    平野(力)委員 これはどうもただいま私が問うたことと違つておりますので、これはまた別の機会にお問いいたしたいと思います。  実は、なお食糧問題、農業政策など相当重要な諸点について私の質疑は残つておるのでありますが、大体与えられました時間も終つたようでありますから、今日の段階はこれで一応終ります。なほ残つた点は、ただいま通産大臣の御答弁ように、はなはだ要領を得ない点もありますので、質疑を留保いたしまして、一応終ります。
  59. 太田正孝

    太田委員長 去る四日中曽根君から御質問がありまして、政府答弁を留保されている問題があります。この点につきまして発言を求められております。これを許します。木村国務大臣
  60. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 過日中曽根君からの御質問に対する答弁を留保してあります。その点についてただいまより答弁いたします。  保安庁法におきましては、第八十七条において、船舶安全法の規定は、警備隊の使用する船舶については、これを適用しないといたしております。また第八十八条におきまして、船舶職員法の規定は、警備隊の使用する船舶及びこれに乗り組んで運航に従事いたします職員には、これまた適用しないことといたしておるのであります。これらの規定は海上における人命の安全のための国際条約及び国際電気通信条約の適用までを排除しようとする趣旨では毛頭ないのであります。従いましてこれらの条約は、当然警備隊の使用する船舶には適用があるわけでありまして、政府といたしましては、これらの条約のうち、警備隊の船舶に適用される条章は、当然これを尊重する考えでありますので、こうも条約違反ということにはならないと考えておるのであります。なお海上における人命の安全のための国際条約は、第一章第一規則において、原則といたして国際航海に従事する船舶、すなわち一国から国外の港に至る航海またはその逆の航海に従事する船舶に適用するものであるのであります。しかるに警備隊の使用いたします船舶は、沿岸警備に従事するものでありまして、こうも国際航海に従事するものではないのであります。従いまして警備隊の使用する船舶の構造等につきましては、当該条約の拘束を受けるものではないのであります。従いまして以上の観点から見て、こうも条約違反の疑いはないとわれわれは考えておる次第であります。
  61. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君に申します。実はお聞き及びの通り理事会の申合せによりまして、まだ他に相当質疑通告があり、この問題については後日に譲られたいということでありますが、お言葉の次第もあり、ただ一問に限りお許しすることにいたしたのであります。理事会においてすでにこのことは承諾済みのことでありますので……。(中曽根委員「一問なんということはできない。今の発言も間違つておる。今の発言も条約違反です。だから一問ということは私は承知できません。なぜ間違つているかを私は言はしてもらわなければならない。そんな申合せは聞いておりません。なぜ間違つておるかをはつきりさせることは議員の権利である。委員長発言を求めます。—委員長発言を求めます。」と呼ぶ)
  62. 太田正孝

    太田委員長 ちよつとお待ちください。—質問も答弁も簡潔にお願いいたします。中曽根君。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 まず外務大臣お尋ねいたしますが、外務大臣の御所見は、先般外務委員会においては違つておるように新聞で拝見いたしましたが、今の保安庁長官と同じでありますか。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はこの前外務委員会におりましたが、質問は保安庁長官に対する質問でありまして、保安庁長官及び法制局長官が答えられたと記憶しております。私は返事をいたしておりません。
  65. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 外務大臣の御所見は、ただいまの保安庁長官の御所見とまつたく同一であるかどうか。あなたは条約に関する主管者である。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私も保安庁長官と御相談の上、これが適当であると考えております。
  67. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの御答弁は、明らかに憲法違反か、あるいは保安隊の船舶をして軍艦といわなければならないか、こういうことになります。そこで副総理にお尋ねいたしますが、かような間違つた場合には、内閣としては責任をとるかどうか、まずお尋ねいたします。(「間違つていない」と呼ぶ者あり)間違つております。間違つていることは今から申し上げる。
  68. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は間違つていないと確信いたします。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 間違つておる場合に責任をとるかということを聞いております。
  70. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そういう仮定を前提といたしましての答弁はできません。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばお尋ねいたします。ただいま木村保安庁長官は、先般政府が外務委員会で答えたことと違うことを答えて来ております。それはまず第一に……。     〔発言する者あり〕
  72. 太田正孝

    太田委員長 静粛に。
  73. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この条約が適用されることをまず言つて来おる。しかし外務委員会におきましては、条約は適用しないと言つておる。そこでの問題をまず明らかにいたします。この海上における人命安全のための国際条約の第一規則の(a)では「国際航海に従事する船舶についてのみ適用する。」。と、もちろん書いてある。ところが(b)では「各章の適用を受ける船舶の種類は、各章で一層明確に定め、且つ、その適用の範囲は、各章で示す。」つまり各章ごとに適用の範囲を示すのだということをいつております。そうして第三規則におきましてこれが適用除外として、「軍艦及び軍隊輸送船」及び「総トン数五百トン未満の貨物船」以下が書いてある。軍艦及び軍隊輸送船は適用しない。これははつきりしております。そこで問題になるのは第五章であります。第五章に何と書いてあるかというと、次のように書いてある。「第一章第三規則の規定にかかわらず」—第一章第三規則というのは、軍艦及び軍隊輸送船は除外するということです—「にかかわらず、別段の明文規定がない限り、この章は、軍艦以外のあらゆる航海に従事するすべての船舶に適用する。」と書いてあります。この条章を見ても明らかなように、「第一章第三規則の規定にかかわらず」という意味は、軍艦、軍隊輸送船、五百トン未満の船には適用しないというのであるけれども、その規定にもかかわらず適用するかもしれないのだ。つまりこの章は軍艦以外のあらゆる航海に従事するすべての船舶、つまり軍隊輸送船も適用する、五百トン未満も適用する、それをこの章で明確にきめておるのである。その内容を読んでみてもそれは危険通報である、たとえば氷山が出て来たあるいは熱帯性の暴風雨が出て来た、あるいは気象業務、人命救助、こういう、船舶としては、国際航海をやろうが国内航海をやろうが、あらゆる船舶が義務を守らなければならぬものがここに書いてある。そういう意味で、あなた方が国際航海にのみ通用するとお答えになつたのは、明瞭な間違いである。  第二は第四章であります。第四章を読んでみれば、この点は第五章を受けて来て同じことである。「別段の明文規定がない限り、この章はこの条約が適用されるすべての船舶に適用する。」これも「すべての船舶」である。しかも「この条約か適用される」と書いてある。全部であります。規則だけではありません。それを考えてみても、明らかにこれは国内航海に従事する船舶にも通用するということがわかるわけであります。しかもこの内容を見てみると、第五章と同じであります。すなわち無線電信とか、警急信号とか、遭難信号、緊急信号とか、通信士の資格であるとか、人命救助に関することが規定してあるわけですが、これを見ても、明らかにこれは国内航海に通用する。すなわち保安庁船舶にも当然通用する。この点において、先般の政府の意見は間違つておると思うが、この点をまずお尋ねいたします。
  74. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お答えいたします。おそらくさようなお言葉があると思いまして、先ほど保安庁長官からお答えいたしました中にも、原則としてという言葉を使い、あるいは構造等についてという言葉を申し上げたわけであります。そこで御指摘の、この海上航海安全の関係になるわけでありますが、これは大原則といたしましては、もとより条約が適用になる。しかし御指摘になりましたような、危険通報とか、遭難通報なるものは、条約が適用になる、ならぬよりも、むしろ当然これは警備隊の職責でございますから、もちろん条約にのつとつてすることは、事柄の性質から申しまして当然でございます。  なお第四章でありますが、その関係についてのお言葉がございましたが、これはこの条約の趣旨といたしまして明白でありますように、国際航海に従事するもののみに適用する。そうでありませんと、逆にその規定は軍艦にも適用があるということになりまして、さような意味にはどうしても読めないというふうに考えております。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、政府は、先般予算委員会で答弁したのは誤りであるということになりますか、外務大臣お尋ねいたします。外務委員会におきましては、国際航海にのみ適用するといつておる。その点を、今あらためてもう一ぺん確認しておきたい。
  76. 太田正孝

    太田委員長 他の委員会の関係は、ここでどうこう処理することはできません。
  77. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政府が答えられないところを見ると、自分の非を認めたと私は解釈する。  しからばその次の問題は、国際電気通信条約であります。この電気通信条約によれば、すでに御承知の通り、こういう規定がある。国防業務の設備として、「連合員及び準連合員は、その陸軍、海軍及び空軍の軍用無線電気設備について完全な自由を保有する。」つまり陸軍、海軍、空軍の軍用無線電気設備は完全に自由であつて、この条約の適用外にあるということがはつきりうたつてあります。ところが政府は同じく保安庁法の改正において、電波法の一部を除外しております。その除外しているところは、無線従事者であるとか、あるいは認可の問題、検査の問題、この三つを除外しておる。周波数については郵政大臣の指揮を受けるというふうに書いてある。この三つの問題を除外しておる。ところがこの電波法の内容を見ると、この条約を受けて、日本の電波法が制定してある。先ほどのこの人命条約を受けて、日本の安全法が制定してある。国内法です。同じようにこの電波法が制定してある。ところがこの条約はどういう規定があるかというと、まず第一に許可の問題である。無線局を設置する場合には、国際的な基準がきめられております。すなわち第二十二条において、許可書として、許可書を有する者は条約第三十二条に規定する通り云々とあります。この許可書のこの条約を受けて、電波法は許可について同じく規定しております。いかなる規定であるかというと、第十四条、「電波監理委員会は、免許を与えたときは、免訴状を交付する。」と書いてある。無線局の種別であるとか呼出名称、電波の型式及び周波数並びに変調の方式、こういう点を明らかに受けておる。これを除外しておるということは、明らかにこの条約違反です。まだあります。この条約に違反しているところは、今の許可の場合、それからこの無線通信局に従事する職員の資格の問題です。無線従事者の問題です。この条約によれば、国家試験をやらなければならないということが出ております。すなわち同条約第二十四条によれば、各主管長は各証明書を得るに必要な試験の数を自由に決定する、つまりこのことは国家試験を必要とすると書いてある。さらに遭難の通信、警急信号、これは先ほど申した通り、この点も明らかに電波法を除外しております。こういう点を見ても政府は国際電気通信条約すらまた違反しておる。こういうふうにわれわれは考えるのであるが、それをいかに考えるか。木村保安大臣答弁を求めておるのであつて法制局長官答弁を求めておるものではない。
  78. 太田正孝

    太田委員長 政府委員答弁を保安庁長官が承認したら、それでいいでしよう
  79. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 保安庁長官が答えましたように、法律を除外したということは、ただちに条約を除外するということではございません。法律を除外しても、条約のかぶるべきものは当然かぶる。これは先ほど答弁、のあつた通りであります。従つて第九十八条に定める条約は適用になるわけでありまして、ただいま御指摘になりました数々の事柄は、実質的には保安庁の船に適用になります。従つて例にあげられましたような無線通信士というふな関係におきましては、一定の試験を通つた資格のある者を現に採用しておりますし、またさようにあらねばならぬと思います。
  80. 太田正孝

    太田委員長 木村国務大臣は今の政府委員の言われたことを御承認なさいますか。
  81. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま法制局長官から答弁した通りであります。
  82. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと申し上げたいと思います。問題は外務委員会、法務委員会がむしろ直接の関係かと思います。本委員会においては限定された問題はございませんが、他の委員会との関連もお考えくださいまして、簡潔にこの予算委員会においては御質問していただきたいと思います。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからばお尋ねいたしますが、政府はさきの委員会においては、適用しないと言つてつた。きようにわかにまた適用すると言い出した。しかも適用するという答弁の内容は、条約はすべて国内法にも適用されるのだから適用するのだ、こう言つておる。これは明らかに遁辞であります。第八十七条に何と書いてあるか。「船舶安全法の規定は、警備際の使用する船舶については、適用しない。」と書いてある。排除している。わざわざこういうふうに明文をもつて書いてある。この明文がなければ、むろん条約はただちに国民にも直接影響して適用しなければならぬ。明文がなければ、もちろん適用されます。明文をもつて、法律をもつてわざわざ排除しておる。排除しておるということは、適用しないということである。第八十八条は、同じく「船舶職員法の規定は、警備隊の使用する船舶及びこれに乗り組んで船舶職員の業務に従事する職員については、適用しない。」、適用しないとわざわざ言つているじやないか。適用しないといふことは、条約が適用しないということに間接的にはなる。条約を受けてこの職員法、安全法はあるのではないですか。今まで私は、政府からそんな答弁を聞いたことはない。今言つたことは、政府の立場がなくなつて、つまり軍艦となるか条約違反を犯すか、王手飛車取りになつて、せつちん詰めになつて、やむを得ずそう逃げたんです。
  84. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それはちよつと御無理ではないかと存じます。と申しますのは、ただいま御指摘になりました第八十七条を、私が持つておりますものによりますと、「船舶安全法の規定は、」とざいまして、海上における人命条約のことは全然触れておりません。これを除外するつもりでありますれば、船舶安全法及び海上における人命云々に関する条約の規定は適用しないとあるはずであります。さようなところは全然見受けられませんので……。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の法制局長官答弁は、重大な誤りである。船舶安全法第二十七条を読んでごらんなさい。第二十七条は、「船舶ノ衝突予防ニ関シ船舶ノ遵守スベキ船燈ノ表示、航法、信号其ノ他必要ナル事項ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム」と書いてある。同じく第二十八条、「危険物ノ運送禁止、救命艇手、操練及操舵命令ニ関スル事項並ニ危険及気象の通報其ノ他船舶航行上の危険防止ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」。この条章を見てごらんなさい。まず第一に危険防止、気象の通報—気象の通報というのは、台風が来るとか、氷山があるとかいう問題にもなる。あるいは危険防止、こういう事項はすべてこれに適用されておる。それを除外しておるじやないか、船舶安全法の規定を除外しておるということは、この条約を受けて船舶安全法の規定があるのだ、その規定を適用排除するということは、間接的に条約の適用を排除するということになつて、明らかに国際条約違反ではありませんか。それでも条約違反でないというのはこれは政府の遁辞であるといわざるを得ない。
  86. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今御指摘のことは、船舶安全法の中の条文でございまして、そういう条文を含んだ安全法をここで底抜けに適用しないと書いてあるわけでございます。そこでその前提になることをちよつと申し上げませんと、あるいは御了解願えないかとも思いますので、時間が許されるならば申し上げさせていただきたいと思います。と申しますのは、一体国内法というものと条約との関係はどうなつておるかという、その根本問題に事は触れることであろうと思います。国内法は条約に基いてできることもございます。また条約が締結されて、それに関連のある国内法ができておらない、国内法のない場合もたくさんあるわけです。今の場合は、条約はある、しかしそれに対応する国内法はないという場面になるわけであります。そういうことは、今御指摘の憲法の第十八条の条文にもございますように、条約はそのままの形において国内法的な力を持つということは、今までの法律一般の常識として考えられておるところでございまして考えられておるところでございまして、これは旧憲法時代から、あるいは新憲法にまたがりまして、条約は結ばれた、しかし国内法はできておらぬ。但しこの条約は当然に適用になる。法律の権利の働いておる場面は例をあげればたくさんございますが、そういうことになつておりますから、それを前提にお考えいただきませんと、話はいつまでも結末がつなかいことになるのではないかというふうに考えます。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今のは明らかに遁辞である。もう一回説明します。この条約によつて、気象であるとか危険防止、その他の条項がある。その条項を受けて日本国内法ができておる。船舶安全法の第二十七条、第二十八条、危険、気象の通報、これは明らかにこの条約の責任から来ておる条文です。これを適用しないと書いてある。海上保安庁の船舶については適用しない、フリゲート艦については適用しない。これを適用しないということは、元の条約を適用しないということになる。この条文がないならばいいですよ、条約は国内に通用します。しかしこの条文がある以上は、われわれは明らかに条約違反をやつておるといわざるを得ない。これは論理学でそうじやありませんか。当然の論理学じやありませんか。ですから、もう一つあなたにお尋ねいたします。いいですか。しからば海上保安庁には、安全法に該当するような別個の独自の条件、その他を規定しておるものがありますか。ありやしないじやありませんか。何にもない。何にもないだけじやない。政府が何にもしなくて何にもないというならばいいですよ。わざわざ積極的に排除して通用しない、適用しないといつて排除しておる。排除しておる結果何にもない。これに対応すべき何にもない。これは違反行為です。不作為ではない、作為でやつておる。その点は明らかに違反行為であるといわざるを得ません。現に電波法を読んでみれば、皆郵政省令、郵政省の規則に譲つておる。あらゆる場合を、条約を具体化するときには法律で具体化する。法律がない場合には、省令でやると明らかに規定しておる一連のそういう手続がある。しかし省令がない場合ももちろんあり得る。法律のない場合もあり得る。それは条約がそのまま通用します。この場合は積極的に政府が適用しない、排除しておるところに違反があるのである。こんなことがわからなければ法制局長官はやめなさい。
  88. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 問題は同じでございまして、この法律で……。     〔発言する者多く議場騒然〕
  89. 太田正孝

    太田委員長 お静かに願います。
  90. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その空白を埋めるのは条約が入つて来る。それだけのことであります。ただ、たまたまこの条約の客体が一般の民間に対する……。     〔発言する者多く議場騒然〕
  91. 太田正孝

    太田委員長 静かに願います。
  92. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 民間に対する場合でありますれば、例を申しますれば、たとえば大正十二年に軍縮条約が結ばれた。それによつて造船、造艦の業者に対する制約は条約で結ばれておるわけであります。しかしこれは業者に対する関係でありますから、あるいは国内法で特に艦艇製造についての取締法をつくつた方がよかろうということも成り立つのでありますが、その場合においてすら条約すなわち国内法という建前で、国内法は別に制定されません。ところが今度の場合は、これはまさに国の機関であり、国が当然みずから自粛してこの条約に従えばいい事柄でございますから、当然にこの執行については保安庁の中で内部の規則をつくるなり、あるいは実質上の訓令においてこれは果し得ることでありますから、法律上の心配はないということになります。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の佐藤法制局長官答弁は明らかに間違いであります。これを読んでみても積極的に排除しておるわけです。何回も繰返しておるように排除しておる。排除したあとに何かあればいいのです。何にもないじやありませんか。保安庁の訓令にもない。全然ない。空白なんです。それが政府が何もやらなくて空白ならいい。政府が積極的に排除して空白であるところに違反があるのです。政府の作為が加わつておる。その点はいかがです。それはどんなにあなたが抗弁しても逃げることはできない。
  94. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それでございますから、保安庁でやつておる実際をごらんになりますれば、無線の通信に従事しておる者で、免状を持つておらぬ者があるかどうかということをお調べになつて、いないということになれば、これは問題に……。
  95. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君に申し上げますが、問題は私も拝聴いたしまして、私は法律のことは詳しくないのでございますが、問題はどうも並行線上を行つておるように聞き取れます。しかし問題を国民の前に解決することは重要と思いますが、この問題は予算委員会よりも適切なる当該委員会があることでありますので、予算委員会に関する限り、重要なる論点を申し上げて、なるべく早く質疑を切つていただきたいと思います。簡潔にお願いします。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの政府委員の御答弁は、私が何回も繰返しておるように、明らかに間違つておる。それは自由党の諸君は政府を擁護するために、あるいは政府の皆さんは自分の政権をくずさないようにそういうことをおつしやるかもしれません。しかしこの条約及びこの法律関係から出て来ることは、今問題になつておるフリゲート艦が、外務委員会において協定として承認を求められておる。承認するか、しないかという重大な問題にもこれはからまつておるわけだ。しかしわれわれの見解をもつてすれば、政府はここで明らかに憲法違反をやつておる。これは当然予算委員会として調べなければならぬ。そのほかにまだある。あの問題で言えば、政府はそういうふうに軍艦をアメリカから借りて来て、これを船と称して、しかも軍艦の代用品に使つておるというところに間違いがある。しかも軍艦としての特権が与えられていない。だから朝鮮水域で向うの潜水艦が浮上して、大砲を持つているからこれは海賊船だといつて拿捕できますよ。ソ連とわが国との関係は休戦状態であつて、戦争は終つているのじやない。従つて向うはやろうと思えばできる。こちらは何ら法律上は抗弁することはできない。秘密も何もみなとられてしまう。そういうあやふやなものを出すことは、国際紛争の種をますます増すことになる。のみならず、この条約の適用すらあやふやであるから、久つている船員の生命の安全は保障できない。そういう実にあぶないことを政府が無知でやつていることをわれわれはついている。実に重大なことです。そういう重大な問題を、委員長が、もう時間が来たからやめろ、予算委員会の仕事ではないといわれるのは、心外にたえません。人間の生命に関することであり、国際紛争の的になることである。大体こんなめだかか何だかわからぬものを大海へ泳ぎ出させれば、いわしに食われる。     〔発言する者多し〕
  97. 太田正孝

    太田委員長 静かにしてください。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 めだかを使つていわしに食わせるようなことをするから、われわれはあだないと言つている。私は今の答弁に絶対服従することはできない。時間の関係がありますから、私は一応これで質問を保留いたします。そうしてもう一回明確に政府の再答弁を要求いたします。
  99. 太田正孝

    太田委員長 私はあなたに予算委員会の仕事でないとは申し上げません。重要なことで、冷やかにこれをしなければならぬので、他の当該関係委員会において重点を先にきめてからやつていただきたい。決してここの問題でなどと言つたのではございません。御趣旨はよくわかります。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば申し上げます。ただいまの私と法制局長官の問答の争点は、まず法制局長官は、先般の、これは国際航海にのみ適用するので、国内航海には適用しない、この前言を翻したのであります。第二点は、条約があるのであるから、積極的に国内法で排除しても、そこは条約として通用するのだ。しからばそこに訓令か何か実際にやつているかというと、何もやつていない。何でやつているかというと、事実上やつているかもしれないという程度である。これは問題です。この二つの点は今解決いたしておりません。そこで、時間も参りましたから、私はこの予算委員会においてあらためて権威ある者を呼んで解決していただきたい。それを委員長がお認めくださるならば、私は保留いたしまして引下ります。(「必要なし」と呼び、その他発言する者あり)答弁が間違つている。これは重要な問題です。前言を翻したことはいいです。第二の問題は、今言つた条約と国内法、国内法で積極的に排除した場合に、しかもあとに何にも規定をつくつておらぬ場合に条約が適用されるかという問題である。この問題は非常に重要な問題であります。だから、そういう点について委員長が特に配慮を加えていただくなら保留いたします。(「必要なし」と呼び、その他発言するものあり)しかしこれは重要な問題です。
  101. 太田正孝

    太田委員長 お申出の点は私としてわかりました。ただ問題が法律関係の解釈にありますので、他の委員長とも談し(「理事がいるじやないか」と呼ぶ者あり)その上で善処したいと思います。理事はもちろんのことでございます。
  102. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは委員長が善処してくれることを期待して、私は一応保留いたします。
  103. 太田正孝

    太田委員長 午前の質疑はこの辺にしまして、暫時休憩いたします。二時から再開いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  104. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします栗田英男君。
  105. 栗田英男

    栗田委員 私は今日日本最大の利権闘争の河川であると、国民から多大の疑惑を持たれておる只見川の電源開発に対しまして、関係大臣に質問をいたしたいと思います。  簡単に経過の概要を申し上げますと、今日只見川が世上重大関心の対象となりたるゆえんは、只見川がわが国産業の振興にとつて不可欠の要件である電力の未開発地点として、わが国最大の河川であるからであります。従いまして只見川の開発いかんは、わが国産業に及ぼす影響がきわめて甚大なるをもつて、その開発方式につきましては、電力界はもとより、政界、財界、福島、新潟両県等あげて重大なる関心を今日示しておるのであります。かくのごとくわが国最大の包蔵水力を有するところの只見川筋の水利権は、昭和二十五年の電気事業再編成の際に、あげて東京電力株式会社に帰属したものであります。電気事業再編成以来、公益事業委員会の只見川の開発方針は、かくのごとき大規模なる電源開発については、これを一会社はゆだねることなく、東京電力及び東北電力が共同して新会社をつくり、これによつて開発せしめんとする理念のもとに指導勧奨した結果、両会社は異議なくこの公益事業委員会の大方針を了承いたしたのであります。しかるに京北電力は、この公益事業委員会の勧奨によつて決定した東京電力との協定を破りまして、今年三月突如として、福島県知事に対しまして、東京電力の所有する上田、本名両地点の水利使用の許可を申請し、驚くべきことには、福島県知事はこれに許可を与えんとして、建設大臣及び公益事業委員会あてに稟伺をいたしたのであります。これに対し建設大臣は、東京電力の既得水利権を取消して、新たに東北電力に認可を与えんとすね動きを示したのであります。一方公益事業委員会は、本水利権はすでに東京電力の所有するものであり、その開発方式については慎重検討中であるという理由のもとに、東北電力に対する水利権の認可に反対をいたしたのであります。かくのごとく、協定を無視した白洲東北電力会長を中心とする吉田側近政治の謀略に驚愕せる東京電力は、いまだ只見川開発方式に関して、OCI、公益事業委員会等において最終的決定を見ないとはいえ、これ以上遷延するときは政治的陰謀によつて生ずる非常事態を憂慮し、福島県知事に対し本年六月既得水利権開発実施の許可申請を行つたのであります。しかるに福島県知事は、本水利権は東北電力に許可するため建設大臣に稟伺中であるから、もはや詮議の余地はないといつて。独断をもつて書願を東京電力に返戻したのであります。一方建設大臣は七月二十五日極秘のうちに閣議に諮りまして、さきに福島県知事の稟伺による東京電力の既得水利権を取消しまして、新たに東北電力に対し水利使用認可を決定いたしました。越えて八月四日に福島県知事に対し正式認可を与え、福島県知事は右認可に基きまして、八月五日東京電力に対しまして既得水利権の取消し、東北電力に対しましては新たに水利使用を許可したのであります。ここにおいて東北電力の上田、本名の開発に関する政治工作は急速に進められまして、その結果七月二十五日決定した秘密閣議の方針に従いまして、九月二十六日に両発電所の新設は、通産大臣から幾多の疑惑に包まれながらきわめて不明朗なうちに許可されておるのであります。すなわち只見川は、福島県の本流案と新潟県の分流案が相争つておる。しかも水利権を中心として東京電力と東北電力が激烈なる闘争を展開いたしております。しかもこの電源開発をねらうところの自由党の政治的謀略が三つどもえとなりまして、今やはてしない絵巻が繰り広げられ、只見川は日本最大の利権闘争の場所であり、驚くべき伏魔殿と化しつつあるのであります。これが今日までの経過の概要でありまして、私は関係大臣に対し、国民を納得せしむるに足る詳細にして親切なる答弁を求めるのであります。  質問の第一は、建設大臣お尋ねいたします。東京電力が所有した只見川の水利権は既得権であります。水利権は慣習法上りつぱな財産権であります。これを変更するならば、あくまでも会社と合意によるべきであり、政府なり県がかつてに変更して他の会社に許可するということは、これは乱暴きわまるといわざるを得ないのであります。建設大臣のかくのごとき異例な行政処置というものは、電気事業始まつて以来いまだかつてない暴挙であります。しかもこのような重大な問題を突如として閣議において秘密裡に決定したということは、はなはだ明朗であります。かくのごとく、行政処分の変更によつて無償で水利権を取上げるということは、一種の強奪であります。この重大なる水利権の取消をいかなる根拠によつてなされたか、御答弁をお願いしたいと思います。
  106. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答いたします。水利権の変更並びに設定の問題につきましては、ただいまいろいろお話になりましたような経過でございまして、七月二十五日の閣議におきまして、電力の早期開発という公益上の理由から、東北電力に水利権を与えることにいたしたのであります。根拠法規といたしましては、河川法第二十条によつておるのであります。
  107. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの建設大臣の御答弁では、閣議においては早期開発上きわめて有利であるという理由のもとに東北電力に許可を与えたのでありますか。もう一度念のためにお伺いいたします。
  108. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さよな精神で許可を与えたのであります。
  109. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの建設大臣の御答弁では、さような精神であり、しかもこれは河川法第二十条によつて許可を与えたという御答弁でありますが、おそらく許可は河川法第二十条の第六項によつてなされたものであると、私は考えておるのであります。河川法の第二十条第六項によりまして、公益上必要あるとき、これは取消しができるという一つの私は法的根拠であると思うのであります。そうなりますと、ただいま早期開発上許可を与えたと言うが、この法の趣旨からいうと、これは公益上必要。あるときということと大分食い違いがあるのですが、この点をひとつお尋ねをいたします。
  110. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日の電力事情は、御承知のよう国内の大問題であります。先ほど御指摘になつた通りでございます。私どもも早期に電源を開発したい。そうして今日の経済状況につきましても、一層の発展を期し得るようにしたい。申し上げるまでもなく、かような公益上の見地に立つておるのであります。
  111. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの問題でありますが、この公益上必要であるということは、非常に私は問題であると思うのであります。しからば東京電力の既得水利権を取消して、東北電力に与えるほど公益上必要であつたかどうか、この点に関して建設大臣の御答弁を求めます。
  112. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。基本的な考え方は、ただいま申し上げますように、電力不足に対する対策であります。そこで既得権者である東京電力がこれを開発するがよろしいか、東北電力がこれを開発するがよろしいかという問題が、当然あるわけでございます。御承知のように、只見川水系、その下流等におきまして、東北電力が経営しておる部分、あるいは開発計画を進めておるものもありますが、これらのことを考えてみますと、東京電力よりも、ロケーシヨンの関係から、東北電力の方が既設の設備、あるいは電力、あるいは労務関係、あるいは技術者、それらを使う上におきまして一層適切なりと、政府はかよう考えた次第でございます。
  113. 栗田英男

    栗田委員 早期開発ということを初めから考えておるならば、当然昭和二十七年度の電源開発計画の中に、上田、本名という両地点は入つていなければならないのであります。ところが昭和二十七年度の電源開発基本計画の上には、上田、本名の開発計画は全然入つておりません。それが早期開発上、公益上必要であるということで、突如として七月二十五日の秘密閣議において決定したということは、はなはだ不明朗である。この点をひとつ……。
  114. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 祕密閣議、祕密閣議と言いますが、閣議の内容、経過等は大体公表しないものでございます。別に祕密閣議ではございません。先ほど申し上げましたように、七月二十五日の閣議決定でございます。従前から只見川の電源開発につきましては、いろいろの案が研究されておりまして、古くそういう問題が取上げられないで、最近になつて取上げられたのはどうか、こういうお尋ねでございますが、最近になりまして、ようやく取上げるような時期に到達いたした次第でございます。
  115. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの閣議は祕密であるということで、ちよつとお尋ねいたしたいのですが、なぜ私は七月二十五日の閣議を祕密閣議であるかというと、当時電力行政の委員会であるところの公益事業委員会というものは、七月二十五日は存続中であります。しかも旧公共事業令の五十九条によりますと、都道府県知事から発電水力の利用について許可申請のあつた場合、意見を付して委員会に報告し、委員会の意見を求めなければならないと、こういう明らかなる条文があります。これはどういうことかというと、河川行政と電力行政との調整をはかるために、このような明白なるところの規定が設けられてあるのであります。しかるに七月二十五日のいわゆる閣議においては、公益事業委員会が存続中にもかかわらず、しかもこういう明文があるのにもかかわらず、何ら相談もなく、祕密裡に閣議に諮つたということで、私は祕密閣議とこういうのであります。しかもこのことは、普通ならばたいてい次官会議にはもちろんかけておるのであります。ところがこの水利権の決定は、次官会議にもかけずに、閣議決定後において次官会議の事後承諾を求めておるのであります。このような点から、いよいよ不明朗の感を与えておるのであります。この点をさらにお尋ねいたします。
  116. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように閣議案は、事前に次官会議にかけて、それから後に閣議にかけるということが、普通事務的の場合でありますと、原則と申しますか、常例でございます。しかしながら次官会議にかけますものは、どういたしましても事務的な部門に属するのであります。さよう政策的な面になりますと、閣議で決定をいたしまして、次官の方へあとで落して行く、かようなことがあるわけでございます。従いましてこの問題は、純事務的に解決すべき筋のものではないように私どもは考えております。
  117. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの、公共事業令との関係に関しましてお答えを願います。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当時の状態は、私あまり詳しく存じませんが、この問題をお尋ねがあるというので、詳細に取調べて参りました。その結果によりますと、公益事業委員会には、かねてから一応下相談がしてあつたそうでございます。しかしながら公益事業委員会の方からは、この閣議決定を見ますまで返事を受けておらない。おそらく、御指摘になりましたように、存続期間も非常に短かいことでありますので、公益事業委員会としては、問題に触れたくなかつたのではないか、かような想像もいたしております。
  119. 栗田英男

    栗田委員 私が今日まで調査したところによりますと、ただいまの建設大臣答弁とは、大分食い違つておりまして、公益事業委員会は、この問題に関しまして何らの相談も受けていなかつた言つておるのであります。またこの閣議の模様を伝える一つの問題といたしまして、当時の建設大臣の野田さんは、どういうことを閣議終了後電力業者に言つておるかというと、吉田総理の強力なる指示によつて、かかる不当なる処置をとらざるを得なかつたと、電力業者に対して告白をいたしております。ただいま御答弁に立つた佐藤建設大臣は、当時郵政大臣と記憶しておりますが、佐藤郵政大臣も、このような強権処分は、国民の反撃を受けた場合には、非常におもしろくないというような発言をしたように私聞いておるのでありますが、その点の真偽のほどをひとつお尋ねいたします。
  120. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 閣議の席上におきます議論は、発表を見合わさせていただきたいと思います。
  121. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの水利権の問題でありますが、河川の特別使用許可権というものは、これは一つの公法上の権利でありまして、これは経済的な見地から見たときには、一種の財産権であります。この財産権を、ただいまのような行政処分によつて、いわゆる強権処分によつてAからBにこの許可を移すということは、これは明らかに私は憲法の第二十九条に違反すると考えております。これに対します。建設大臣の見解をお聞きいたします。
  122. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は憲法に違反するとは考えておりません。先ほども申しますように、河川法第二十条によつて、行政処置もとれるものだと思います。憲法に申します点から申せば、もちろん救済方法はあるわけでございますが、この問題は、ただいま行政訴訟になつておることは御承知のことだと思います。
  123. 栗田英男

    栗田委員 目下東北電力から、只見川の上田、本名の上流の地点に対しまして、水利使用の許可申請を出しております。また新潟県知事からは、分流案として湯之谷地区の水利使用許可を、おのおの建設大臣に目下稟伺中でありますが、これらに対していかなる取扱いをするや、建設大臣のお答えを願います。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま研究中でございます。
  125. 栗田英男

    栗田委員 質問の二点を通産大臣、経審長官にお尋ねいたします。第十三国会におきまして、その審議過程において幾多の波乱を起して制定公布を見た電源開発促進法第十三条によれば、只見川の開発は当然電源開発調整審議会の議を経て決定しなければならないのであります。しかるにこの法律の公布のわずか五日前の七月二十五日に、火事どろ的に祕密閣議において認可を決定した。この違法許可を前提として九月二十六日上田、本名両発電所の新設を通産大臣は東北電力に許可をしておるのであります。この新設工事は、当然電源開発促進法によつて電源開発株引会社がこれに当らなければならないと思うのであります。ところがまたまたこの電発所の新設も東北電力に許可しておるのでありまするが、この関係について通産大臣の御答弁をお願いいたします。
  126. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お答えします。九月十七日開催の第二回電源開発調整泉議会に報告了解を得ておると承知いたしております。
  127. 栗田英男

    栗田委員 しからば、それと同様な状態の関西電力の庄川水系の御母衣発電所であるとか、あるいは中部電力の天竜川水系発電所の佐久間であるとか、この両発電所もことごとく—むしろ只見川の電力の開発よりも以前に着手された発電所工事であります。これがみな電源開発株式会社の関係において開発をされておるのでありまするが、東北電力だけにこの只見川の本名、上田の開発をまかせるということはどういうわけでありますか。
  128. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは東北電力に許可することが、さつきちよつと建設大臣から話もありました通り、早期開発上有利であるという点等もありまするが、大体三つの点からこの許可を与うるに至つたように承知いたしております。第一は、本地点開発に対し熱意を有し、供給力不足の現状において早期開発を期待し得ること。第二は、本地点は対する調査、設計を完了上、地元民の好意的態度のうちに地方補償関係も順調に進み、工事施行認可あり次第ただちに着工し得る態勢にあること。第三は、本地点下流に柳津、片門両発電所を現に工事中であり、工事準備も容易であつて、かつ下流の既設発電所との総合運営上も有利であり、送電連絡も容易であること。こういうこと等がそのときの決定の理由に相なつております。なお念のために申し上げておきまするが、この水利権の許可問題が係争に相なつておるのであります。水利権がすでに東北電力にありますれば、通産省といたしましては、この水利権を持つたものに発電所の許可を与える以外に道はございません。
  129. 栗田英男

    栗田委員 この水利権もきわめて不明朗な行政処分によつて決定をしたものであります。しかもこの水利権は今日係争中でございます。しかも今言つたように、八月一日から電源開発促進法によつて、当然この開発の決定をいうものは電源開発調整審議会において決定しなければならない。しかるにどうしてこのようないまだ係争中のきわめて不明朗なる水利権を前提として、通産大臣は両発電所の新設を許可されたか。
  130. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ただいまお答え申し上げたような理由で許可したのでありまするが、そのときに条件がついておりまして、もしその係争の結果、東京電力の方が勝ちにでもなりますれば、これは元へもどすことになつておりまするので、そういうぐあいに条件がちやんと付してこの許可がしてあるのでございます。
  131. 栗田英男

    栗田委員 発電所の新設を許可するのに、裁判の結果負けた場合はこれを取消すというような、このような条件を付して許可を与えたということは、これまつたく異例の措置であります。こういう異例な措置を私はやらなくても、わずかあと五日か十日たてば電源開発調整審議会というものがりつぱに電源開発促進法によつてできるのであります。こういうものにかけないで、むしろ公益事業委員会がなくなつたときと、電源開発調整審議会ができる間隙をねらつて許可を与えたということが不明朗なる印象を与えるのであります。もう一つは、今の電源開発の許可にからんで、根本的なことを政府は誤つておると私は考えておるのであります。それはどういうことかというと、東北電力に上田、本名の開発を許可するか、あるいは東京電力に許可するかという根本的な考え方は、東京と東北を比してどちらが電気が不足しておるかということが根本的な考え方でなければならないのであります。ところが両大臣は、この点に関して何ら触れておらないのであります。御存じのように、東京電力は年間百十億キロワツト・アワー使うのであります。東北電力はどうか、大体四十億キロワツト・アワーであります。しかも年間において、東京電力は約二十億キロワツト・アワーの不足を来しておりまして、逆に東北電力は、五億キロワツト・アワーないし十億キロワツト・アワーの余分の電力を持つておるのであります。従いまして今日では、東京電力は東北電力から年間三億ないし四億キロワツト・アワー買つておるのであります。しかもこれから先どちらが未開発の電源地帯を多く持つておるかというと、東京電力に比して、東北電力ははるかに未開発の電源地帯を持つておるのであります。しかも今後の需要状況はどうかというと、東京電力管下においては、京浜地区のような大工場地帯を持つておるのであります。このよう考えますと、根本的に公益上、あるいは早期開発上どちらが有利であるかとい、うその考え方は、どつちが電気が不足しておるかということが根本でなければなりません。この点に関して通産大臣の御見解を承りたい。
  132. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今の電力の需要供結についてのお話は、私もその通りであろうと存じます。但し、早くやりますことが当時必要であり、また幾らもこちらは買電、その他のことができますから、栗田さんに申し上げますが、私の承知しておるところでは、二十年中経つてちつともやらなかつたではないか、そういうところよりも、すぐやるところで、しかも資金手配ができておるところに許可するのが当然である。何らその間不明朗なものはない。こういうふうに私は承つております。
  133. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの通産大臣の御答弁で、二十年も開発をしなかつたということは、これは大きな誤りであります。どのような誤りかというと、昭和四年に東京電力の前々身たる東京電燈が只見川の水利権を獲得したものであります。これは何であるかというと非常に電力の余つておる時代でありまして、いかに電気を使つてもらおうかという時代であつたのであります。その後満洲事変が始まりまして、電力の国家管理によつて、この開発の一切の権利というものは日本発送電が持つておりまして、五千キロ以上の発電というものは、政府の命令によつて日本発送電が担当しておりまして、東京電力は開発に、関してはどうすることもできなかつたのであります。しかもその間において、東京電力は今の信濃川の発電所の十七万キロという今なお日本最大の発電所を建設いたしております。熱意がないと申しますけれども、京浜地区にこの只見川の大電力を送電するためには、送電線を先につくらなければならぬ。しかも政府の命令によつて昭和二十四年から約三十億円の金を使いまして、今日東京から群馬県の湯宿まで二十七万ボルトの大送電線を建設いたしておるのであります。そこで今のこの只見川の本名、上田が東北電力に参りますと、せつかく三十億円もかけた送電線というものは遊休設備になつてしまいまして、ただいま通産大臣が申しました東京電力に開発熱意がないということは、私はこれは誤つておるのではないかと考えますが、通産大臣の御答弁を求めます。
  134. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 その辺の事情につきましては、政府委員がよく存じておりますから、政府委員をして答弁せしむることにいたしたいと存じます。
  135. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまお尋ねの本名、上田間の出力は、約九万キロございます。それでただいま大臣からお話がございましたように、早期開発という点に主眼を置きまして、水利権が決定されましたので、その閣議決定に基きまして、通産省としては公共事業令により許可をいたしております。それで今お尋ねの点につきましては、東北と関東地区におきましては、現状におきましては両方とも需給のバランスは破れております。ただ今お話ように、包蔵水力等の観点からいたしますれば、東北の方が水力があることはもちろんであります。ただ只見川全体の開発といたしましては、お話ように、両地区、あるいはもつと広い地域の電力の、需給のバランスを考えなければならぬわけでありますが、本名、上山はその一部でございますので、東北にこれを開発させましても、東北電力か余るというようなことはないと存じます。今お話のございました送電幹線瀞は、今後奥只見を本格的に開発する際には、ぜひ必要になると考えております。
  136. 栗田英男

    栗田委員 通産大臣お尋ねいたしますが、いろいろ今までの電源開発で問題になつておる地点があつたのでありますが、これも調整審議会においていろいろ議を練つた結果、みな円満に治まつております。特に最近電源開発株式会社でやるようになつたのが、ただいまも申し上げました関西電力の庄川水系の御母衣の発電所であります。また最近きまつたのは中部電力の天竜川水系の佐久間の発電所であります。これは上田、本名よりもはるかに前に、各会社が独自の力をもつて開発をいたしておつた。ところがこれもみんな、電源開発株式会社が主宰者のかつこうになつて、その下請は関西電力あるいは中部電力がやつております。他の河川においてこのような処置をとつておるのにもかかわらず、只見川の本名、上田のみがこのような体系をとらないということは、きわめて不明朗であると思うのですが、この点に関しまして通産大臣にお答えを願いたい。
  137. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今後この種の問題については、もちろん電源開発調整審議会に出るのでございますが、しかし今の御指摘の分は、今政府委員の私に耳打ちするところによると、資金めどがついていないから、こういうところから遅れておるのだそうであります。
  138. 栗田英男

    栗田委員 大蔵大臣お尋ねいたします。国会解散の直前に、池田元藏相は、メキシコの国際通貨基金年次総会に出発直前、只見川の開発資金として、見返り資金から上田、本名二地点に対し十二億円を早急に融資することを大蔵省事務当局に言明した事実がある。そこで十月二十八日に、いまだかつてない驚異的なスピードと簡単な手続で、この十二億円が融資されておるのでありますが、この経過につきまして御説明を願いたいと思う。
  139. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 見返り資金の電力投資は、本年九月に日本開発銀行に引継がせましたが、それまでの間においては、経済安定本部を中心としまして、関係各省が協議の上、事業主体別計画を決定いたしまして、大蔵省においてはこの計画に基き、各社からの申請につき審査した上で見返り資金の出資は実施しております。
  140. 栗田英男

    栗田委員 この十二億円の見返り資金の配分に関しまして、きわめてこの点も不明朗であります。なぜ不明朗かというと、昨年から本年にかけて、電源開発の見返り資金は昭和二十七年度において三百億円でありますが、この三百億円というのは、すでに九電力会社に割当済みであつた。ところが突然七月二十五日の閣議で秘密決定をいたしまして、越えて九月二十六日に通産大臣から発電所の新設を許可されたのであります。ところがどうかというと、昭和二十七年度の開発計画の中には上田、本名という地点は全然入つておらないのであります。計画のないところに見返り資金を出すわけはありません。そこで計画がないのにもかかわらず見返り資金を出したことはどうかというと、おそらくあわてた大蔵、通産当局はどうしたかというと、上田、本名の両発電所の計画というものを明らかにこの二十七年度の計画にむりやり織り込んだものと思うのであります。このような強引な戦法をして、なおかつ十二億円の見返り資金を融通したということは、一体どういうわけか。この点に関して大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  141. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいま御返事をいたしました通り、経済安定本部が研究をした上で、通産省その他の各省できめたものを、大蔵省が行つたものと思います。
  142. 栗田英男

    栗田委員 もう一つ非常な疑問は、いわゆる電源開発の見返り資金のわくというのは三百億でありますが、この三百億というものは、九電力会社に昭和二十七年度分として配分してしまつた。さらにそこに別わくとして十二億円を特に本名、上田のために出したのであります。なぜ別わく融資までを本名、上田にやつたかということであります。しかもなお疑問なことは、そういうことになりますと、このように別わくからでも見返り資金を出すのならば、かりに他の会社が新しく電源開発をした場合において、このような便法をもつて見返り資金を出すのかどうか。この点に関しまして大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  143. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまのお話では、私は仮定に対しては御返事ができないのでありますが、当時十二億を出しましたもとにつきましては、予備費でもつて出したということを承知しております。
  144. 栗田英男

    栗田委員 今の只見川の問題よりももつと半年以上も早い本年一月から、神通川水系の打保という発電所がありますが、この打保という発電所は、すでに関西電力が自己資金一億八千万円をもつて工事に着手しておりまして、再三政府当局に見返り資金の放出を懇請いたしておりますけれども、これにはやつておらない。同じ大きさの発電所が本年の一月から一億八千万円の自己資金をもつて開発をしておるにもかかわらず、只見川の上田、本名が突然今年の九月からやるというのに、まだ計画が出てないのに十二億出したというのは、はなはだ不可能である。この神通川水系の打保と対照してはなはだ不可解と私は思うが、この点に関して大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  145. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私は前に御返事いたした以外には、材料を持ちますん。
  146. 栗田英男

    栗田委員 このときに特に池田蔵相から通産省に対して、見返り資金の本名、上田に対する放出依頼状を出したやに聞いておりまするが、この点に関して通産大臣の知る限りの御答弁をお願いいたします。
  147. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私はその点に関しては承知をいたしておりません。もし政府委員が知つておりますれば、政府委員から答弁いたさせます。
  148. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの十二億の問題にからみまして、本年十二月一日に再び見返り資金の配分の修正が決定いたしました。十二月一日に修正した配分の表を見ますると、東北電力に当初の予定より十二億上まわつているばかりでなく、さらに四億増加いたして、全体において十六億円というものが当初の割当額よりも増加いたしております。この点に関する大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  149. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その事件は私は存じせんから、よく取調べて御返事いたします。
  150. 栗田英男

    栗田委員 大蔵大臣に対する質問1は、私は留保1いたします。  次に吉田総理にお尋ねいたしたいのですが、総理がおりませんので、緒方官房長官にお願いいたします。東京電力は八月十六日に福島地方裁判所に対し、福島県知事を相手方として東北電力に許可せる水利権取消しの行政訴訟を提起いたしました。また東北電力はどういうことか、また発電所の建設ができない前から、通産省から発電所建設の許可が来ない前から、すでに工事に着手いたしておるのであります。こういう暴挙を阻止するために、東京電力は八月二十五日に行政処分執行停止の申立てを行つたのであります。しかるにこれを吉田総理は、異議の申立てによつて強引にこの東京電力の申立てを却下いたしておりますが、これはどういうわけか、この点の関係お尋ねいたしたいと思います。
  151. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。東京電力の仮処分の却下措置につきましては、もし水利権変更処分の執行が停止されれば、只見川の電源開発が遅れ、従つて東北電力に対し、許可した趣旨の電源の早期開発、電力不足の緩和による産業の振興という現下の要請に応ずることができないためにとられたのであります。
  152. 栗田英男

    栗田委員 私はこのようなやり方は非常に一方的であると思うのであります。私はあくまでも裁判所に、総理は判断の機会を与えなければならなかつたと思うのであります。このように裁判所に判断の機会を与えずに、一方的に吉田総理が強引に許可をするということは、私がいままで数々質問をいたしました不明朗な一連の政治的措置を、総理みずから裏書きするものであつて、きわめて遺憾であるといわざるを得ないのであります。そこで昭和二十五年に公益事業委員会という新しき行政制度ができました。この新しい行政制度ができたのはどういう理由でできたかというと、いわゆる政党と官僚の支配から公共事業というものを守る点にあつたのであります。ところがこの公益事業委員会という制度がなくなつたと同時に、このような不明朗な措置が次々ととられておるということは、私はまことに遺憾であるといわざるを得ないのであります。しかもこのような政治的措置によつて、巨額の財政資金を投入する電源開発が自由党政府の手によつて行われるということは、国民のためまことに不幸であると私はいわざるを得ないのであります。只見川はその発電力において、全国既設水力六百八十万キロの実に三割に当る二百万キロを包蔵しておるにかかわず、今日までその二割、約四十万キロが開発されておるにすぎないのであります。しかもこれが開発資金は約千六百億の巨額を要しますので、吉田側近たる白洲東北電力会長は、就任以来まさに只見川の開発というものは垂涎の地であります。しかもこの工事にからみまして、政治資金を獲得するためには絶好の河川といわざるを得ないのであります。白洲東北電力会長が就任以来、宮下、柳津、片門の三発電所、十二万キロの工事に着手いたしまして、今日まで大体七〇%の工事ができ上りました。これの請負会社は間、前田建設その他数社でありまして、今日まで早くもこれが請負金額は七十五億円に達しておるのであります。そこでなお不明朗な点は、この現場に近く、なぜ上田、本名の水利権を許可したかということ、結局今やつておるところの工事現場に上田、本名というものは非常に近いのであります。そこでどうやつたかというと、今言つたように、いろいろ当面はうまいことを言つておりますが、あの水利権は断じて陰謀による強奪です。大体この両発電所の総建設費というものは約八十億円であります。この八十億円を前記前田と間に対して匿名入札をもつて請負わしむるという条件を付したということは、一体どういうわけか、これに対して緒方官房長官の御答弁をお願いいたします。
  153. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 政府委員から答弁させます。     〔「だんだん臭くなつたぞ」「だれだ政府委員は。早くやれ」と呼ぶ者あり〕
  154. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 官房長官はは関係がないので、私からお答えいたします。さような条件がついておるとは私ども承知しておりません。
  155. 栗田英男

    栗田委員 ただいまさような条件はついておらないと申しまするけれども、現地におきましては、先ほど申し上げた宮下、柳津、片門の三発電所は間、前田がやつておることは、これは歴然たる事実であります。しかも今日上田、本名の工事がともに開始されております。十一月三日に起工式をあげておるのであります。しかも両発電所の請負人というものは、これまた前の発電所と同じ間と前田であります。しかもその入札方法は、特に匿名入札という方法をもつて請負わしめておるということも、これまた歴然たる事実であります。これに対してかかる事実はないという建設大臣の御答弁を、もう一回お願いをいたします。
  156. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 工事の施行は東北電力の会社の問題でございまして、政府の関与するところではございません。
  157. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの匿名入札の問題で非常に世間いろいろの疑惑が流布されておるのであります。これはどのような疑惑が流布されておるかというと、この請負入札にからんで、吉田側近は六億五千万円の政治資金を獲得したということが世上伝えらられておるのであります。しかもこれは総選挙、あるいは吉田鳩山首班抗争にばらまかれておるといわれておるのであります。しかも六億五千万円のこの金のごときは、金請負金額から見たならばわずかに氷山の一角にすぎないのであります。  そこで私は緒方官房長官にお尋ねをいたしたいのですが、このように数々の許可のことごとくが異例の強権措置であります。こういうことは電気事業始まつて以来一回もやつたことがないのであります。そういうことをするから、国民は現政府に対して多大の疑惑を持つのであります。そこでこの国民的疑惑を一掃するために、政府は上田、本名の水利権許可を白紙にかえす考え方があるかどうか、この点に関して緒方官房長官の御答弁をお願いいたします。
  158. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 そういうことは考えておりません。
  159. 栗田英男

    栗田委員 水利権を白紙にかえす考えがなかつたならば、電源開発促進法によつて、これを電源開発調整審議会に取上げて、技術的、経済的見地からもう一回再検討をする考え方があるかどうか、この点に関して緒方官房長官の御答弁をお願いたします。
  160. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 政府のこのことに対してとりました措置は、先ほど来各大臣からお答えを申しましたように、適切であつたと信じております。
  161. 栗田英男

    栗田委員 私はこの開発問題にからむ一連の強引きわまる工作というものは、きわめて不明朗であります。結局私は、只見川の一連のこの工作を見て考えることは、これは吉田総理、特に白洲東北電力会長、側近閣僚等の画策せる最も悪質なる政治的陰謀と言わざるを得ないのであります。そこで私といたしましては、また総理大臣が出席のときに、さらに大蔵大臣が再調査した答弁の際に、あらためご質問するということを留保いたしまして、私の質問を終ります。
  162. 太田正孝

    太田委員長 八百板正君。
  163. 八百板正

    ○八百板委員 私は予算の金額というよりも、内容的に政治問題化しております情報機関の問題について、総理はおられませんから、まず緒方副総理からお答えをいただきたいと存ずる次第であります。  緒方さんが、いずれはせよ情報機関を尊重するという立場に立つて、その設置を考えられましたことは、報道の重要性を主張せられたものとして、私も大いに同感なのでございます。ところがそのやり方を見ますと、どうも賛成ができないのであります。もうすでにして総理大臣の発言以来ずいぶん論議になつたものでありますから、どういう機構を具体的構想としてまとめておるかということは、すでに緒方さんの中にでき上つておると思うのであります。従つてまず緒方さんの、すでに固まつたところの情報機関に対する構想を、明らかにしていただきたいと存じます。
  164. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。私は多少の経験を持つておりますので、私だけの構想としては一応の考えは持つておりますが、まだ研究の範囲を出ておりませんので、ここで具体的に申し上げるのは差控えたがいいように存じます。現在政府として基本の考えは、政府施策の参考にするためにあらゆる情報を入手したい。それをどうするかということにつきまして、いろいろ今研究の最中であります。
  165. 八百板正

    ○八百板委員 責任のある言葉として出されまして、ずいぶん論議が出ておるのでありますから、具体的な構想がすでにでき上つてなければならないものだと私は思うのでありますが、なおまだ研究中であるということは、予算の審議がもうすでにして具体的な修正を考えなければならない、あるいはまた組みかえをも考えなければならないという段階にあたつて、今なおその点についての具体的な構想が固まつておらないということは、まことに遺憾に存ずる次第であります。今まで報道せられました片々の材料を中心としてお尋ねする以外にないのでございますが、まずその考えておられますねらいは、施策のための参考にする、そういう行政上の参考にするという内部的な機関としてお考えになつておられるのであるか、それとも外部に対して報道する広報機関、こういうふうに考えられておるか、この点を明らかにしていただきたいと存じます。吉田総理大臣は広報機関としての性格をとなえておおられるようでありますし、一方緒方さんは、事実出発において宣伝情報の重要性を考えて企画されたにもかかわらず、最近においては施策の参考としての機関であるというふうに、言葉を狭めて来ておられるのでありますが、この点はどちらの方に重点を置くものであるか、両方に重点を置くものであるか、ここをはつきり伺つておきたいと存じます。
  166. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 最初に申し上げておきますが、ただいま官房の調査室費として計上しております予算は、世間でいう情報機関とは全然別個のものでございます。それから総理のお話の広報機関云々ということでありますが、私の基本の考えは、先ほど申しましたように、政府の情報をどこまでも豊富にする。むろんそれは政府の施策の中に入りますから、それが政府のスポークスマン等の口から出て行く場合には、一つの広報的な意味を持つて参ると思います。いわゆる通信社的な広報機関をつくるという考えは、私には初めから全然ございません。
  167. 八百板正

    ○八百板委員 単にスポークスマン的な報道という程度にとどめて、通信機関をつくるようなことは考えておらないと言われますが、しかしそうして施策の参考として集められました資料は、いずれはかつての週報が復活するような形で、パンフレットにするとか、週報にするとか、そういうふうな形の広報をやらないと考えてよろしいかどうか、この点をはつきりお答えいただきたいと存じます。
  168. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 実はその点につきまして、私はまだはつきり考えがきまりませんが、かりにこの政府の仕事がスタートいたしますとして、政府がそういう何らかの活字にしたものを出すという場合に、私が考えますのは、集め得た純粋の情報、政府の主観の全然入らないもの、そういうものを出すことは私は重要であり、また適切なりと考えております。
  169. 八百板正

    ○八百板委員 政府の主観の入らないものを政府が調べて出すというのは、これは非常にむずかしいことでありまして、たとえばパンフレットを出す、資料を出すといたしましても、ほんのわずかのものを部内において出すという場合もありましようし、それがだんだんふえて行つて、一万となり、五万となり、十万となり、百万となつて、国論を指導するような形に発展するということもあり得るのでありまして、その場合に政府が集めた資料を無色のものとして整理分析するといつたところで、政府そのものが集めた限りにおいては、政府方針に基いて分析せられ、整理せられることは当然のことといわなければならないので院ありまして、その結果はやはり時の政府なり時の政党なりの意思が、その調査と報道の中に盛り込まれることは当然だと思う。そういうふうな点について、ただ単にそうではないと言つただけでは、機構として考えます場合に、これを容認することはできないのであります。政党の意思、政府の意思、そういうふうなものを断ち切ることを機構的に機関の上でどういうふうに考えられておるのであるか、この点をお答えいただきたいと存じます。
  170. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 多少誤解を与えたかと思いますが、私は通信社の通信という形で情報を出すつもりは全然ございません。今政府機関で、いろいろ入手した情報に基いて刷りものとして出すものはおそらく百種類以上あると思います。たとえば外務省の「世界の動き」というふうなものもその一つであると思いますが、私はそれよりももつと純粋の資料だけ、たとえば統計的なものとか、あるいは外国の、あとに残る有名な演説とか、そういうふうなものが資料になりはせぬかと思つておりますが、ただ出版のことはまだそこまでは考えておりません。
  171. 八百板正

    ○八百板委員 統計とか、純粋なあとに残る資料とかいうふうなものになりますれば、これは政府がやらなくても、国会図書館でも十分に考えてやり得るのでございまして、何も事新しく政府がこれを取上げてやらなくても私はよかろうと思います。話が非常にかわつて参りまするとますます心配になりますが、まづ第一に、この話の起りをずつとたどつて参りますと、伺いますれば、この話が出たのは、最初には、治安関係閣僚懇談会の席上総理から出たものであるということを、緒方さんが述べられております。さらにまた重大なことは、施政方針の演説の中において、吉田総理大臣は再軍備はやらないということを言つておきながら、物心両面の準備ができればやるんだというふうな意味のことを述べておるのであります。すなわち物心両面にわたる輿論の盛り上り、物的な裏づけができまするならば、それに応じて憲法の改正もやるし、再軍備もやる、こういう考え方だと理解せざるを得ないのでありますが、そういうふうに見て参りますと、そのいわゆる物的方面については、予算の面財政金融の面、産業の面を通じてそれぞれ施策が現われておるわけであります。具体的にわれわれの前に、よかれあしかれ、示されておる。ところがその心の面については、いわゆる物心両面の大きな一面でありますところの心の面については、国会では施政方針で述べられただけで、具体的には何ら示されておらないのであります。示されておるのは、この情報機関の設置一つだということを私はここで申さざるを得ないのであります。ということになりますと、輿論の批判と反撃の前に、だんだんと、通りやすくするように身体を細めては参つておりますが、これを通しましたとたんにおいては、開き直つて、来年度の予算にこれを大きく組んで、そうしていわゆる再軍備のために、物心両面のいわゆる心の面、精神動員の役割を果すところの輿論指導の機関に化する危険性が非常にあると私は思うのであります。そういう意味合いにおいて、そういうものにはならないという、機関的な、機構的な保障をこの際はつきりしておく必要があろうと思うのであります。そういう意味合いにおいて、来年度にどのくらいの予算をとるお考えであるか、さらにまた機構的に、そういうことにならない運営管理についての民主的な機構について、何らかの構想があるかどうか、これをはつきりお答えをいただきたいと存じます。
  172. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 総理の施政演説の中に物心両面の充実と言うておられます、心的方面は、私の想像では、愛国心とかあるいは道義の高揚というようなことを意味しておられるものと思います。私は憲法改正あるいは再軍備の準備行為としての精神力の高揚と申しますか、精神の作興というようなことをこの機関を通じてやろうという意思は全然持つておりません。これは先ほど申し上げましたように、政府の施策の参考にするために、世界のあらゆるニユースを—それは新聞、雑誌あるいはラジオの放送等を含めましたあらゆるニユースを収集いたしまして、それを整理分析することによつて政府の施策の資料を豊富にいたしたい、これが私の一番基本の考えであります。これは初めから私は少しもかわつておりません。
  173. 太田正孝

    太田委員長 八百板さん、二十八年度の予算のことはいいのでありますか。
  174. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 その点についてはまだ私数字を当つておりません。
  175. 八百板正

    ○八百板委員 大きくするつもりですか、小さくするつもりですか。
  176. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 大きくする、小さくするの基準がわかりませんが、そういう大きなものをつくるつもりはございません。
  177. 太田正孝

    太田委員長 八百板さん、ちよつと申し上げますが、先ほどこの予算の中にあるかということで、緒方国務大臣の方から、六百五十万円はその関係でないと言いましたが、その点の質疑はそれでよろしいのでありますか。
  178. 八百板正

    ○八百板委員 予算の中にもうすでに出ておりまして、さらにまた一部伝えるところによりますと、来年度予算としては、約三億円、二百人の要員を構想しておるというようなこともすでに伝えられておるのでありますからして、具体的なものになつておるのでありますから、こういう点について具体的な御意見をはつきり出していただきたいと存じます。
  179. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと緒方国務大臣に申し上げますが、さきほどあなたのおつしやつた六百五十万円が、その方の費用であるかないかということがまだ判明しないようでありますから、もう一度おつしやつていただきたいと思います。
  180. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今補正予算に計上しておりまする六百五十万円は、このいはゆる情報機関というものと全然関係ございません。
  181. 八百板正

    ○八百板委員 関係ないということになりますと、何に使う、どういうものか、もう少しこまかく具体的に御説明をいただきたいと存じます。
  182. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ここに資料を持つておりませんが、それは現在あります内閣官房調査室の報償費、調査費等がおもなものであります。
  183. 八百板正

    ○八百板委員 そうしますと、従来すでにある機関を拡充強化するための費用、こういうふうに理解してよろしかろうと思うのであります。そうしますと、従来問題になつております情報機関の設置というものは、これとは別個のものとして構想しておるというふうに考えられるわけでありますが、この点は、どういうふうにお考えでしようか。
  184. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今の予算関係とは全然別個のものとして考えております。
  185. 八百板正

    ○八百板委員 今度の予算に現れましたものは、従来の調査機構の拡充の費用である、将来にわたつて別個のものとして調査、情報の機関をつくるというお考えようでありますが、そういうことになりますと、機構的には、たとえば政府機関としてつくるのであるか、それともほかの機関としてつくつて、そこに金を流し込んで行くのであるか、そういうことが問題になろうと思うのでありますが、そういう点についてどういう構想のもとにそういうことをおつしやつておられるか、明らかにしていただきたいと存じます。
  186. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 内閣官房の中の政府機関としてつくるつもりであります。
  187. 八百板正

    ○八百板委員 内閣官房の中の政府機関としてつくるということになりますと、新らしくそういう機関をつくるのでございましようか。すでにある調査的機能を強化するということでございましようか。先ほどのお話によりますと、すでにある調査機構の拡充のための予算として六百万円というふうに伺つたのでありますが、それはもうすでに内閣の調査機構の拡充をも含んだものだと思うのでありまして、その方もおそらく来年度においてはふくらまして行くであろうと思うのであります。それとまた別に内閣調査機構をつくるとしますと、どういうものをおつくりになるのであるか、もう少しはつきり述べていただきたいと存じます。
  188. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 名前をつけますれば情報研究所とでも申しますか、今の調査室と同じ系列にある機関として置きたいと思います。
  189. 八百板正

    ○八百板委員 この点は私もよくわかりませんが、すでにして国立輿論調査所あたりからそういういろいろな動きがございまして、かつての情報局に働いておられた人、指導的立場にあつた人々がいろいろな計画をせられておつて、あるいは週報の復活を考え、パンフレツトの大量発行を政府機関を通じて流そうというよう計画をされておるというふうに私は聞いておるのでありますが、そういう情報研究所というようなものを内閣の中に新たにつくるという必要は一体どこにあるのであるか。そういう機関政府がつくらなくとも、民間の機関もあり、国会のいろいろな機関もあるのでありまして、ただいたずらにそういう機構に屋上屋を重ねるということは、ますます機構を複雑にして、その機能を果し得ないよう状態になると思うのでありますが、そういう点において、ほかの機関では果せない役割が、この機関によつて果せるのであるという、いわゆる情報研究所と申しますか、そういうふうな今おつしやつたものが果すところの、ほかの機関では果せない役割を、ここでひとつはつきり述べていただきたいと存じます。
  190. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私の考えでは、できれば政府で同じような種類の仕事をしておりますものを、そこに一つに集めまして、そうしてさらにそれを拡充いたしまして、昨今飛行機の便が非常に発達しておりますので、世界の各地で出版されております新聞雑誌等はもちろん、今のラジオのニユース等もことごとくそこに集めまして、そうしてそれを整理し、さらにすぐれた何人かの頭によつて分析することによつて、情報のほんとうの意味、あるいは世界のほんとうの動きというものを確めるところに新味を持ちたいと思つております。
  191. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと申しますが、午後四時から三十分、停電するかもしれないそうです。但し電燈一個だけはつく、マイクはとまるということですから、さよう御承知願います。
  192. 八百板正

    ○八百板委員 承知しました。そういうことになりますと、いよいよ事は重大でございます。内外の情報を一元集中いたしまして、これを国内に流す、そういう別個の機関を従来の調査機関の拡充以外につくる、こういう任務を持つたものだということになりますと、いよいよ事は重大な問題だといわしなければならないのであります。元来報道とか、情報とか、ニユース、こういうふうなものは、今日の近代国家におきましては、ある意味においては資本に次ぐところの実力であります。戦時中においては情報宣伝が兵器、弾薬と同様の重要性を持つものとして扱われましたことは、情報局に職を奉じておられました緒方さんは、十分に身をもつて感ぜられておつたことであろうと思うのでありますが、こういう実力あるところのものを一元化して集中して行くということは、これは資本の集中よりももつと危険なことであります。多元的に分散化されて、多様な角度の中から、個々人の判断と責任において情報と資料が整理せられるということが、人間の進歩のために役立つ民主的な報道のあり方であろうと思うのでありますが、それを政府の手によつて、内外の情報を一本にかき集めて、そうして政府の力によつてこれを流して行くということになりますと、どうしてもその結果は政府意図する方向に世論を誘導するために都合のいい資料だけが集められ、整理せられ、分析せられ、そういう方向に固められて行くことになることは、これは理の当然でございます。そういうことになりますと、これは完全に戦時情報局の復元であり、復活であるといつても過言ではないのであります。そういうことになりますと、いつの間にか政府好みの仕立てによつてつくられたお手盛りの安物の定食のような情報を毎日食べさせられまして、いつの間にか人間の規格版ができ上つてしまつて、梅干とたくあんだけで戦時中に人間規格版がつくられて戦争に使われたように、そういう危険な判断力のない人間が、日本国民の中に多くでき上つて行くという危険な方向をわれわれに心配しなければならないのであります。でありますから、そういうおそれのある機関をつくるということになりますならば、そういうおそれのないように、その機関を運営管理する民主的な機構について、その構想とあわせて考えて行かなかつたならば、これは大きな片手落ちであろうと思うのでありますが、そういう点について、そういう間違つた方向に行かないという民主的な運営管理をする機構的構想について、あわせてはつきり述べていただきたいと存じます。
  193. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は言論報道の機関は民営であることを条件といたします。し、多々ますます弁ずると思う。しかしながら政府の情報を集める機関は、これと全然別個でありまして、それは能率の点からいいましても、経済の点からいいましても、一つであつて一向さしつかえない。それから言論報道統制のことをいわれますけれども、私も実はそのことにつきましては、幾らか被害者の経験を持つておりますが、終戦とともに、新聞取締りの法律は、たしか十七ぐらい一ぺんに廃止せられております。私は政府がいかなる情報を出しましようとも、そうしてニュースとして流そうとも、あるいはスポークスマンの口から話しましようとも、そこに戦時中の憲兵であるとかあるいは検閲機関であるとかいうような威力がない限りは、それによつて言論統制は行われない。ことに新聞社の編集首脳者の見識がありまして、その見識が高ければ、今日調整する法律も、サーべルもない場合に、言論報道の統制というものは、私は絶対に行われるものでないというふうに考えております。
  194. 八百板正

    ○八百板委員 威力がなければそういう結果にならないという考え方は、これは非常に危険な考え方でありまして、報道の分析整理、資料の整理というようなものは、人間がやるのでありますから、主観なしにこれを整理することはできないのであります。どのように広汎な範囲において資料を集め、情報を集めましても、それを発表してほかの人に対して何らかの参考とし、ほかの人を動かすための何らかの資料にするというふうに、外に動き出す場合においては必ずそこに主観が入らざるを得ないのであります。たとえば同じ資料でありましても—緒方さんは新聞関係の出でありますから、よく御存じの通り、同じ記事でも見出しのつけ方によつてつて来るのであります。そういうふうにして情報の整理分析というようなものは、主観を交えないで、純粋のものとしてこれを流すということは、これはきわめて困難なことであります。従つてそういうものを扱います限りにおいては、そういう危険のないように、たとえばちようど警察の運営管理について、公安委員会というものをつくつてこれを運営管理した、成功不成功はしばらく別といたしまして、そういうような考慮を払つたと同様に、そういう重大な資料を集めて、これを民間に流すというようなことをします場合においては、そういう考慮をあわせてやらなかつたならば、そこに民主的な運営管理を保証することはできないのであります。そういう点についてただおれがやるのだから大丈夫だ、こういうよう考え方であつては、機構としてこれを容認することはできないのでありまして、そういう点について重ねてはつきり構想の具体的なものを出していただきたいと考えるのであります。
  195. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 先ほど来申しますように、政府はその集めました情報をそのまま通信の形において流すということにおいては一切考えておりません。それは政府の情報を豊富にするのでありまして、政府の施策の中に盛られて行くであろうと思いますが、その政府の血となり肉となつた後は政府考えはむろん織り込まれて参ります。政府のいろいろな時局の見通し等に対する考えは、今日でも実は新聞発表の場合にやつておるのであります。たとえば新聞記者諸君が、私に向つて、政局の見通しをどう見るか、あるいはアイゼンハウアーが大統領に当選したが、それによつて時局はどうなるかということに対して、私は求められるままに話しておる、それと同じことであろうと考える、それは決して新聞等の言論報道の統制にはなり得ないのであります。これは今までも、今後も同じことであろうと思います。
  196. 八百板正

    ○八百板委員 時間を節約する意味で簡潔にお尋ねいたしますが、そうしますと、内政の参考にするだけで、外には流さない、内部だけのものである、こういうふうにはつきり理解してよろしゆうございますか。
  197. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 その通りであります。
  198. 八百板正

    ○八百板委員 その内部だけのものであるとして、一部流れております報道によりますと、たとえば国警、公安調査庁、保安庁等の情報の入手をすることができるように、情報を通報させることを法律的に義務づける、さらに外国情報を入れる、そうしてその人員を三百名ぐらいにして、これを扱わせる、こういうようなことも聞いておるのでございますが、これはその通りでございますか。
  199. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 世界のラジオを集めるだけでも、相当数のリスナーと申しますか、そういう人間を要するのであります。その数はまだ具体的に当つておりませんが、ある数になると思います。
  200. 八百板正

    ○八百板委員 そうしますと、その機関を内部の機関とするか、外部の機関とするか、その点をはつきり願います。つまりそれに従事する調査士というようなものは、あるいは情報官といいますか、何か知りませんが、そういう人は公務員として、公務員の中からそれをとつて行くという、そういう扱い方をするのであるか、それとも民間の人をとるのであるかということを、明らかにして、いただきたい。
  201. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は仕事の性質から、やはりニュース・センスを持つた人を集めなければならないのではないか、そういう意味から、民間の人を採用する必要があろうと考えております。ただ全部であるかどうかわかりません。
  202. 八百板正

    ○八百板委員 民間の情報にセンスのある人を集めるというお考えはけつこうでございますが、その任免権、人事、給与、そういうふうなものをどういう体系において運営して行くという御構想でございますか。その点も明らかにしていただきたい。
  203. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ここで申し上げるまでの構想がまだ練れておりませんが、人事は大体内閣官房で扱つて行くようになると思います。
  204. 八百板正

    ○八百板委員 そうしますと、人事権を内閣が持ち、官房長官が持ち、予算を国から出してそういうことをやらせるということになりますと、これは当然に気に入らないよう方向の処理は、政府の意思によつて押えられるということになつて、とうてい公正なる純粋のものを整理し、集めるというふうな機能は、果し得ないということになるのであります。そういうふうな点についてもう一ぺんその間の構想を述べていただきたい。
  205. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は今言われたようなことは全然想像できません。政府の気に入るものを集めては何にも参考にならない。すべてのものを集めてはじめて参考になると思います。
  206. 八百板正

    ○八百板委員 こういうふうなものを内閣に置くという考え方は、大きな間違いであろうと私は思います。すでにして民間の調査機関もあり、すでに民間の情報機関もあり、さらにはそういう事柄のために国会の調査の機能も十分にこれを果し得るわけであります。もしそれ、そいううところで果し得ないものを政府の手によつてやるといたしますならば、それこそ完全にいわゆる諜報機関的なものに化してしまうのでありまして、民主的な政治の運営を阻害する、時代逆行の機関になることは、まことに危険なことといわなければならないのであります。そういう意味合いにおきまして、すでにしてこれに対する輿論の反撃はかなり強いものがありますが、そういう輿論をすなおに聞いてひつこめないで、あくまでも自分の意思を意地になつても通して行くのか。こういうふうな考え方そのものが、すでにして公正なるそういう機関の運用ができないという態度に通ずるものと私は考えざるを得ないのでありますが、すなおに輿論の声を聞いてとりやめる、そういうふうなお考えがあるかどうか。この際お示しをいただきたいと存じます。
  207. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 感情的になつて、すなおに輿論の声を聞かないということは、少しも私はやつておりません。私は世間の声を聞きながら、今構想を練つておる最中でありまして、決して感情的に反抗しておるというようなことはないつもりであります。
  208. 八百板正

    ○八百板委員 その構想をすみやかに発表いたしまして、十分に輿論の声を聞いて、輿論にさからうような処理をとられないことを、あらかじめ緒方官房長官の名誉にかけて切に御期待、希望申し上げておきます。  次に大蔵大臣お尋ねいたしたいと存じますが、大蔵大臣は先般世界銀行副総裁ロバート・Z・ガーナー氏とお会いになつて日本に金を貸してくれという話をされたそうでございます。その際に大蔵大臣の談話を新聞でちよつと拝見いたしましたが、それによりますと、日本では金をためる努力が足りないからという御注意を受けたというふうな話を伺いましたが、そこのところを少しお示しいただきたいと存じます。
  209. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。まさにその通りでございまして、金をためるくふうが欠けておりはしないかというふうなことは、申しておつたのでございます。
  210. 八百板正

    ○八百板委員 金をためるにあたつて問題となりまするのは、ため方をどうするかという点でございますが、そのため方について大蔵大臣の御構想をひとつ聞かしていただきたいと存じます。
  211. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。金をためますのは、まず個人としては貯蓄をふやし、会社としては資金の蓄積をはかる。その資金の蓄積ということは、金をためるだけでなく、これは今の世界銀行の方でも、資本の蓄積をするということは、たとえば減価償却というふうなことも含んでの話でございます。そういうものを十分にしないと、その会社の存続が安全でないから、会社の存続の安全になるような減価償却というふうなことも大事だということを言いましたが、まさにその通りであります。減価償却をするとか、あるいは持つている商品の値下りに対する積立金をやるとか、結局使つてしまわずに、あるいは配当してしまわずに、その会社の基礎を強固にするようにする。個人も法人もそういう方に向うのが肝要でありますし、またこれはでき得ることと思つております。
  212. 八百板正

    ○八百板委員 個人も法人もそういう角度から資本の蓄積に行かれるという御方針でございます。この前たしか北村さんの質問のときのお答えであつたと思うのでございますが、低額所得者の減税は消費を増大して蓄積にはならぬという面もあるという話に対して、私もそうだという御意見を大蔵大臣は述べられております。さらにまた就任早々大蔵大臣は、国民に対して今後の耐乏生活を要求するというふうなお言葉もあつたようでございます。してみますと、勢いおつしやられますところの資本の蓄積というものは、個人あるいは低い所得者を目標にしたものではなくて、大資本、そういう方面を中心とした資本の蓄積というふうなところへ、金のため方の重点を置いておられるように伺われるのでございますが、そういうふうに考えてよろしゆうございましようか。
  213. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。それは大きな資本とか大きな会社とかいうところは、適用いたしますのにあるいは便宜が多いかもしれませんが、低額所得なら低額所得らしく、やはりその心得は持つていてもさしつかえないと存じます。
  214. 八百板正

    ○八百板委員 低額所得者の減税は消費を増大するというお考えを持つておられるのでございましようか。
  215. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 特にそう私は考えておりませんが、低額所得者の人がお金が入れば、今まで買えなかつたものを買うということはあるかもしれませんが、消費を奨励しようという考えは持つておりません。
  216. 八百板正

    ○八百板委員 その消費もまた生産を促すのでありますから、国内の有効需要を軽視して行くということは危険だろうと思うのであります。産業を伸ばして行く、その需要をどういうところに求めて、生産活動をするというお考えに立つて日本の経済を考えておられるか、この点を述べていただきたいと存じます。
  217. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 今の御質問の点が私にはわかりかねましたが、もう一度言つていただけませんか。
  218. 八百板正

    ○八百板委員 つまり低額所得者の減税による消費の増大でありましても、それは当然に生産を刺激して、生産活動を促す作用をするものだと思うのでありますが、そういうものを軽視して行くというふうな行き方をとりますならば、生産増大の需要を、どういうところで国内においてまかなつて行く経済政策をとつて行かれるのであるか、どういうふうにして景気をよくするのであるか、そういうふうな点についてお考えを述べていただきたいと申し述べたわけであります。
  219. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、そういう低額の所得者が消費をいたしますために、生産物の需要がふえて行くということもございましようし、その他一般に購買力がふえて行つて生産品がさばけて行くことが望ましいと思うのでございます。御質問の点に少し出しやばる点でございますが、それだけで十分でない点は、やはり外国に売つて、そうして生産品の処置をつけなければならないと思います。
  220. 八百板正

    ○八百板委員 今まで大蔵大臣が述べられましたお話を伺つておりますと、大体において従来のドツジ方式と申しましようか、池田さんのやつて参りました財政経済政策を踏襲しておるというふうな感じがするのでございます。  そこでこの際大蔵大臣にお伺いしたい点は、池田さんは御承知の通り、いわゆる不信任案の可決に基きましておやめになられたわけでありますが、あれは言葉の上の池田さんの失言という問題ではなくて、池田財政に対する国論の反撃の結果であり、池田財政とその財政の結果中小商工業に寄せられます犠牲に対する国民の声の一つの表われであつたというふうに、私どもは理解いたしておるのであります。従つてそのあとをうけて向井大蔵大臣がここに—まつすぐに受けたのではございますでしようが、そのあとをうけて立つておられるのでございますから、当然池田財政の単純なる踏襲であつてはいけない、単純なる引継ぎであつてはいけないのでありまして、もしそれ池田財政を単純に引継いでやろうというのでありますならば、それはある意味においては、国会の意思に対する反抗ともいえるのでありまして、国会に対する挑戦であるともいえると思うのであります。従つてこの際向井さんは、どこに池田財政と違つた特異性を出すかというふうな点についてお示しをせられるのが適当であろうと私は思うのであります。向井さんの人柄をだんだん理解するにつれまして、私何となくだんだん味の出る方のように理解いたしておるのでありますが、その人間味に私は大いに期待をいたしておるのであります。財政の面でこんなふうにしたい、従来とかわつたところはこんなふうにやつて行きたいと思うのであるというふうな点をお示しをいただきたいと思うのであります。  さきに日本経済の安定の度に応じて、情勢に即して調整の措置をとるというような弾力のある言葉も述べておられますが、たとえばかりに従来と同じ方針をとるにいたしましても、いつまでも同じということはないのでありまして、きのうよりはきよう、きようよりはあすというふうにだんだんよくなるのでありますから、その辺に必ずドツジ・ライン、池田財政、次いで現われました向井さんの財政の中には、何らかの特異性と新味が、あなたの人間味を通じて表われるだろうと、私は期待しておるのでありますが、そういう点についてひとつ何らかの新しい方向をお示しをいただきたいと存じます。
  221. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。中小企業に対しましては、従前も相当にその育成あるいは助成ということをやつてつたと存じますが、これは一一数字は申し上げませんが、融資あるいは投資でもつてそういう助けをいたすようなことを着々やつて参るつもりでおります。また今までと違つたことを何かやれとおつしやいましたが、今までと違つたことといいましても、そう急に際立つたことをいたすわけにも参りませんが、追い追いにやりますからごらんを願いたいと思います。
  222. 八百板正

    ○八百板委員 いろいろ尋ねたいことがたくさんございまして、時間もございませんので、端折つて申し上げるのもなかなか困難でございますから、追い追いにそうい具体的の構想を期待申し上げるといたしまして、さしあたつてすぐにできる問題についてちよつと申し上げて御意見を伺いたいと思います。  財政の面では今すぐに新味を出せないとおつしやいますけれども、大蔵省の雰囲気の中に新しい雰囲気をつくつてもらいたいと思う。ものの考え方、見方について、大蔵省の最近の傾向に対して、私は大蔵大臣に対して一つの雰囲気と風格をつくつてもらいたいということを希望するのであります。各省をまわつてみますと正直に申しまして大蔵省が一番感じが悪い。これは大体考え方が間違つておると思うのであります。金を持つておるのでありますから、いつの間にかその金を錯覚を起して自分の金のように思い込んで、陳情に来る者に対しては物もらいのように扱つて行く、物もらいを撃退するような気持でもつて来客を処遇するのが大蔵省の一般の空気であります。それは私だけではないと思う。そういう雰囲気の中で育つて参りましたところの池田さんのような方であれば、感覚は麻痺しておりますから、自分の体の臭みが自分ではかぐという能力がなかつたと思うのでありますが、向井さんはそういう点について違つた立場から出ておるのでありますから、私はあなたの人柄に対して、年齢的先輩以外のものを付加えて、敬愛を表しておるのでありますから、大蔵省の現在の空気は現在の状態においてよいと思うかどうか、直すべき点があると思うならばそういう点について民間人から出ましたところのあなたによつて直すためにどんな考えを持つておられるか、述べていただきたいと思うのであります。
  223. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。大蔵省の方は大体正直な人が多い。そうすると、つい言うことがごつくなつて、お客様にも失礼なことを言うかもしれない。しかし陳情なんぞに対して態度が悪いとおつしやるのは、私も気がつきませんが、いつもお金をとられる方にばかり向いているので、人に会うとお金をとられやしないかということを考えるためてはないかと思いますが、そういうことは一切是正してもらつて、それぞれ事情によつて応待もするがいいし、それから仕事も人が助かるよう方向に向くように私はむろんいたします。私はまだ一月しか大蔵省にいないのでございますが、お金をもらうときなどもそうでございますが、おつしやることはおいおいこれは改良しなければならぬということがあると存じます。
  224. 八百板正

    ○八百板委員 それは民間人に対する態度ばかりでなくて、各省の予算査定などにもずいぶんいばつた態度を示して、各省の役人をふるい上らせておる事実もたくさんございます。会計の立場からだけ考えて、政策の面を度外視して、いわゆる会計の立場からわくをはめようという動きもかなり強いように私は考えております。さらにまた、思うように行かないと、しまいには施行の面において、あるいは単価の面で削つたり何かして意地悪をするというようなことも、盛んにやつておるように私は伺つておるのでありますが、こういう方向は改めてもらわなければならぬと思います。正直であるから勢い当りが悪くなるというお話がございましたが、しかし今度の補正予算を見ますと、正直ではありません。ずいぶんごまかしと紆余曲折、まぎらわしいやり方をとつて予算が出されております。ほんとうに正直な予算を組まれますならば、この自然増収に基くところの財源は、言うまでもなく月給取りの月給袋から天引きしましたところの源泉課税の大部分の収入でございますから、すなおな財政の組み方をしますならば、よけい取過ぎたのでありまするから、取過ぎた予算方に返すというふうな、そういう建前の補正予算が当然に組まれるべきだと思うのでございます。それを返さないで、やつたりとつたりして何かまぎらわして、ごまかして、いつの間にか高等詐欺にかかつてしまつたというような感じを抱くような予算を出したということは、決して正直な大蔵省の態度とは私は理解することができないのであります。これはもちろん向井さんの前のころから準備されておつたのだと思いますから、そういう意味合いにおいて向井さんの責任ではない面も相当あろうかと思うのでありますが、予算の立て方自体についても、もつと単純にして、率直、明快なる歳入体系、支出体系を示して、そうして国民の批判にさらす、こういうふうな予算の扱い方が必要であろうと私は考えます。こういう点について来年度予算についてどういう方向を打出そうとしておるか、今度の予算についてそういうそしりを受くべきものでないと考えておるかどうか、この点も述べていただきたいと存じます。
  225. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 来年度の予算におきましては、そういうそしりは受けないようにつくり出すつもりでございます。
  226. 八百板正

    ○八百板委員 考え方が、税金というものを年貢というふうな考え方から抜け切つておらぬために、こういう結果がやはり随所に出て来るのだろうと私は思います。年貢というのは、これは納めたとたんに所有権なり処分権なりは相手方の方に移りますから、煮て食おうが焼いて食おうがどうされても文句は言えないのでありますが、民主国家における税というものは、そういうものではないのでありまして、最終段階まで国民の批判にさらさなければならないのでありまして、自分のものだというふうに考え違いをしてはとんでもないことになるだろうと思うのであります。そういうふうな点において、当然に国の予算というものは、国民の代表によつてさばかれて、そしてその国会の審議に従つて輿論にこたえる、そういう形の予算が組まるべきものだと思うのでありますが、大蔵大臣はこの点をどういうふうにお考えになつておるか、この点をお答えいただきたいと存じます。
  227. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 国会の審議に従つて運営をすべきものと存じます。
  228. 八百板正

    ○八百板委員 大蔵大臣はすなおに答弁せられまして、議会の審議に従つて運用すべきものであると答えられたのでありますが、それならばこの補正予算が修正され、あるいは組みかえ等が本委員会において進められますならば、これに従順に従つて、必要なる財源的処置をするというような謙虚な態度が、当然にあるだらうと私は思うのであります。そういう意味合いにおいて、修正組みかえ等に対しまして、これに虚心坦懐に応ずる用意があるかどうか、さらにはまた、そういうことに対して政治的責任をとるというふうなところまで考えておられるかどうか、そういうふうな点をお答えをいただきたいと存じます。
  229. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 そういう点につきましては、できますことはいたしますつもりですが、できないことはやはりできないのであります。
  230. 八百板正

    ○八百板委員 できないことはないのでありますから、そういうふうにしてもらわなければならないと思います。  時間がございませんので、こまかい問題に触れる余裕がございませんから、一般的な問題をはしよつてお伺いしたいと存じますが、財政投資の占める割合が非常に大きいのであります。この財政投資を通じて資本の蓄積が、先ほどもお話が出ましたように、大資本を中心にして蓄積せられて行くという、そういう形の資本蓄積方法がとられておることは、全体を通じて明らかなところであります。ということになりますと、その資本の蓄積が国家の権力によつて、あるいは税金の形によつて吸い上げられ、あるいは財政経済政策を通じて国民から吸い上げられて参つたのでありますが、それらの蓄積なり財政資本が、いわゆる大産業に対して投資せられる、こういう形を通じて経済の高まりを考えておられるのが今の政府のやり方のよう考えております。そうなりますと、その資本の蓄積については、国家資本を投入し、財政資本を投入して、そういう資本蓄積活動を民間人にやらせるということになるのでありますからして、当然にその国家資本を、財政投資を出しました政府の責任において、そういう状態に民間の資本が使われることについて、最終まで監督する義務が国家にあるだろうと私は思うのであります。資本蓄積について政府最終段階まで財政投資がどのように行われるかということについて、これを監督し、そういう目的に沿わせるために、いかなる施策を考えておられるか、この点を明らかにしていただきたいと存じます。
  231. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。国の基本産業というふうなものにまず重点を置いて、財政投資というようなものが行われたために、結果的に見まして大資本の仕事に金が入つて行くというふうな結果が現われておると思います。同時に一々は申しませんが、大資本でないものにも相当に財政投資が行われておる。(「片方のものに比べてだよ、相対的にだよ。」と呼ぶ者あり)相対的ですか、大資本々々々ということは、やはり大きな資本ですから、そこに大きな投資が行われるということになると思う。そこで資本を投下したのにつきまして、監督とか調査ということは、できるだけのことはいたすべきもので、これは将来とてもやつて行きたいと思うのですが、法律上あるいはできない点もあるかと思います。できるものはいたすつもりであります。
  232. 八百板正

    ○八百板委員 できるものはいたしたいというお答えでありますが、そのお答えは当然にやりたいという意思の上に立つておるのでありますか。やりたいとしますならば、法的に機構的にそういう監督ができるような構想でやらなかつたならば、手落ちだろうと私は思います。そういう点について、もう少し積極的な御意見を示していただきたいと思います。
  233. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまのところでは、ただいまお答えした以上には御返事は申し上げられません。
  234. 八百板正

    ○八百板委員 そういうことになりまして、ずるずるとこういう状態が続けられて行きますと、財政投資は言うまでもなく国家権力を通じて重税の形において吸い上げられる、言葉をかえて申しますならば、税金は強権による強制貯蓄でありますが、そういうふうにして吸い上げられるお金あるいは低米価、低賃金、言われますところの中小商工業の犠牲、そういうような形において吸い上げられます財政資金が、結果的には大産業、大資本に流れて行く、これは大蔵大臣も言われた通りであります。そうしますと、取上げるときには国の権力によつてこれを吸い上げておいて、吸い上げたものを流して使わせるときには、営利を主とする資本家に流しておいて、これを手放しで、何ら機構的にも干渉もしなければ、ほつたらかしておくというのであつては、ずいぶん片手落ちなお金の使い方だと私は思うのでありますが、この点について、これはお考えにならないかどうか、お答えをいただきたいと存じます。
  235. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 営利的の事業に投資をするとおつしやるのですか、政府としては直接そういう事業に金を入れたことはございませんで、開発銀行とか、あるいはそれに似たようなもので投資をいたすのですが、何も大きいものを助けようというような、大きいから助けるというよう考えは毛頭持つておらない。それで大きなところが、もうけているのに金を入れるというふうなことは原則としてはやるべきことでない。(「では石炭はどうした」と呼ぶ者あり)銀行が、投資については十分見て行くべきものでございます。
  236. 八百板正

    ○八百板委員 時間がないようですから、かんじんなところだけ伺つておきます。来年度も自然増収で、こういう状態が起るということを予想しながら立てられるかどうか、この点を伺つておきます。
  237. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 来年は自然増収はあまりない見込みでございます。
  238. 八百板正

    ○八百板委員 そうすると、今年だけのことでございますから、これは勤労所得者の源泉課税などで取過ぎたお金でございますので、基本的な給与に織り込んで、一万六千円ベースという実現ができないといたしましても、せめなおに出されるのがよろしからうと思うのであります。そういう意味合いにおいて、俸給生活者から取過ぎたお金をお返しするという意味で、年末手当の方に予算よりもよけいにふやして行くというふうなお考えがあるかどうか、これをちよつと伺つておきます。
  239. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 勤労者から取過ぎたというだけでなく、自然増収があるのでございまして、これは財政の許す限り、この間うちから給与の引上げなどをやつたので、これ以上改正の余地はないと考えております。
  240. 八百板正

    ○八百板委員 勤労者からえよけいに取上げたのではないとおつしやいましたが、これは数字によつて明らかであります。すでに七百億からのお金を源泉徴収において月給袋からよけいに取過ぎておることは、大蔵省発表の数字によつて明らかであります。さらにまた大蔵省の、金を隠さないで正直にやらうという側の資料によりますと、九百三十億くらいの自然増収が見込まれておるという数字も、私の手許に参つております。どの面から見ましても、今度の予算が主として源泉課税を中心として財源を見積つたものであるということは、否定することのできない事実であります。そういう点については、取過ぎたものをすなおに返す、年の暮を前にいたしまして、年の越せない勤労者に対して、自分の使用人であるところの公務員に対して、そういう温情をもつて年越しをさせるような処置をするということは、当然だろうと思うのであります。人事院の勧告を完全に尊重することはもちろんでございますが、そういうふうな点について、特段の考慮が、大蔵大臣の人間味を通じて、具体化せられることが望ましいと私は考えます。時間がございませんから、この点だけをつけ加えまして、質問を終ることにいたします。
  241. 太田正孝

  242. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私も只見川問題について、政府に若干お伺いしたいのでありますが、先ほど栗田委員から明らかにされた点もありますので、お尋ねしないで済む点もありますし、まだお伺いしたい点もあるのであります。ただ時間の関係で、おそらく時間切れになるおそれがありますから、最初お尋ねしたい要点だけを申し上げておきたいと思うのであります。  私がお尋ねしたいのは、只見川問題の、先ほど栗田委員お尋ねになつた例の上田、本名水利権問題が一つ、いま一つは、例の只見川の奥地開発における本流案及び分水案に対しての問題なのであります。第一の問題におきましては、どうもあの問題に対する政府の措置についてわれわれに感じられるのは、少し明朗を欠いておる点がある。この点はどうか今後ひとつ十分気をつけていただきたいという考え方であります。第二の点におきましては、今世間一般に感じられ、そうじやないかといつて半ば信じられておるのは、どうも本流案の方が分水案よりいいのだ、こういうふうに考えられておるよりなのでありますが、私はそういう結論が出る過程において、政府及び関係当局の分水案に対する研究が不十分であるという点を、ぜひ指摘しておきたい。公平に調査されて出された結論とはどうしても私どもには思えない。おそらくこの問題は、将来調整審議会にかけて決定されると思うのでありますが、今度ばかりは、分水案は調査が不十分だから、資料が足りないからだめだというよう考え方で結論を出されませんように、そうしてそういう公平な結論を出していただくためには、調整審議会の委員の人選なども気をつけていただかなければならないと思いますし、補助者とし覆ういろいろな理事者たちの選定についても、御注意を願わなければならないと思うのであります。これがお尋ねしたい結論なのであります。  そこでまず第一の問題からなのでありますが、実は先ほど栗田委員からの質問に対しまして、あの閣議決定が次官会議にかけられなかつたのは、これは事務の問題でなくて政策の問題だ、こういう御答弁がありました。そういうことになると、あのときの主務大臣であつた建設大臣の野田君が今おいでにならないので、おそらくあの措置に対してどういう考え方で行われたかというほんとうの気持はお伺いできない。この点非常に不満足なのでありますが、しかしまあやむを得ないと思うのであります。そこで私もあの問題については、さつき申し上げますように、どうしてももう少し明朗にしていただかなければならないという考え方と持つておるのでありますが、そうかといつて、私はあの問題は、先ほど栗田委員が御指摘になつたように、裏面に何かスキャンダルがあるとは考えておらない。むしろそんなことはあり得るわけがないと私は信じておるのであります。私も国会に出ます前、相当長い間土建会社に勤務しておつた経験を持つておるのでありまして、そういう自分の体験からしても、あのような金が政党などに流れるわけもないし、流れた場合には、それを支出したものの経理処置などとうていつくものでないということは、私もよく承知しておるのであります。また匿名で工事が請負に付されたというようなことも御指摘になつておりましたけれども、これは匿名で入札に付する場合もありますし、指名入札で競争入札に付したからといつて、必ずしもいい結果が出るものでなしに、談合されてしまえば何にもなりませんのですから、それは先ほど建設大臣がお答えになつたように、そのときどきその建設業者が適切と思う法で決定するのでありますから、そこにも問題があるとは私は思つておらない。従つてこの措置については、私は政府に悪意があつたとは毛頭思わない。しかし少くともへまだつた。しかもそのへまな程度が非常にはなはだしかつた。そしてこのへまのために国民に疑惑を与えておる。ですから、私はどういう点がそのへまな点であるかということを御指摘申し上げて、それに対して御釈明がいただけるならば、おそらくこの問題は、本日のこの委員会における質疑をもつて、世間が納得するだろうと考えますし、またそういうような御答弁を得たいと自分は考えておるのであります。  まずへまだつた点の第一はどこにあるかというと、あの閣議決定ということと、それから建設大臣が福島県側に認可をされたときが悪過ぎるのであります。御承知のように、あの閣議決定は七月二十五日に行われた。建設大臣が福島県知事に対して認可されたのは八月四日であります。この間十日ある。ところがこの十日間のうちの七日三十一日という日がたいへんな日なのでありまして、あの日にまだ第一に第十三国会が終つておる。それから同じ日に公益事業委員会が行政整理で廃止になつておる。そうして公共事業令の改正によつて、公益事業委員会の持つてつた権限の一部分がこのときに通産大臣に移つておるのです。もう一つ重大な点は、七月三十一日、この日に電源開発促進法が施行されて、この日から効力を発生しておる。しかも効力を発生したばかりで、まだ施行令などもできないために、実際には運行がつかない状態で、生れることは生れたけれども動けない状態にあつた。この時期をねらつてつたのではないかという疑いが世間にあるために、非常な疑惑の種になつておる。(「その通り」)ですからまず第一に伺いたいのは、なぜこの時期にああいう措置がされなければならなかつたのであるか、この点であります。ただ先ほどからの政府答弁では、緊急を要するから、緊急を要するからと言われますけれども、緊急を要するならば、福島県知事が建設大臣に認可を申請したのは、これは二月のはずなんです。二月に認可申請が来ておるものをずるずるに延ばしておいて、国会もなくなり、公益事業委員会もなくなつたというときにばさりとやるから疑惑が出て来る。だから世間では、これはおそらく国会のあるうちにやつたら国会にたたかれるから、公益事業委員会があるうちにやつたら公益事業委員会がぐずるからというので、そのすきをねらつた、こういうよう言つておる。(「その通り」)この点に対してのまず政府の御見解を伺いたい。
  243. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。政府は別に特別の時期をねらつたわけのものではありません。先ほど申し上げましたように、今日電力事情は非常な窮迫をいたしております。経済界におきましても、また国民生活の面から見ましても、早期開発は要望されておるところでございます。そこで政策といたしまして、電源の早期開発ということを考えておるのでございまするが、御指摘の上田、本名という両地区は、御承知のように寒冷の地方であります。冬季になりますると積雪等がありまして、工事の進捗等はなかなか思うようにいかないのであります。政府が早期開発ということを考えますれば、御指摘になりましたような時期をも待たずして、もつと早目に許すべき筋である、かような御批判はあろうかと存じますが、諸般の準備の都合から順次遅れて参りまして、できるだけ早く工事を進捗さしたい、かよう考えますると、冬季に入る入に諸準備を進めたい。この面から今いろいろ誤解を受けやすい時期ではありましたが、さようなことを考えないで、早期開発の用意から遂に断を下したような次第ございます。
  244. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうもただいまの御答弁では、十分納得が行かないのでありますけれども、おそらく二月に認可申請があつてから、公益事業委員会との意見の調整その他で御苦労をなさつておるうちに思わず時を過して、そうしてあの時期において非常なへまな措置をしなければならなくなつたのであろうと、私は善意に解釈いたしておきたい、こういうよう考える。  そこで次に非常に私どが不愉快に感じられるのは、どうもこの七月二十五日の閣議措置というものが、ただ電源開発が急を要するんだというだけの口実で、いろいろな法に抵触しおるおそれがどうも多分にある、そういう疑いがある。また法に違反していないまでも、法の精神を無視しているのじやないかと疑われる節が非常にたくさんあるのであります。その第一は、閣議決定の行われた七月二十五日にはまだ公益事業委員会が存在しておる。従つて委員会は公共事業令の第四条及び第五条並びに第五十九条に基いて、水利権の新たな認可については職務権限を持つてつたのです。それにもかかわらず、公益事業委員会の意向を無視して、この閣議決定が行われておる。この点に対しての先ほどの栗田委員の質問に対して、政府側の御答弁が十分でないのであります。そうしてこの場合に考えられますのは、公益事業委員会ははつきりと反対の意向を持つてつたのだ。その点は当時の委員長松本烝治さんが、この「只見川水利権問題の私見について」というのではつきりと表明をされておる。時間がありませんから読みませんけれども、反対をしておられる。ですからこの七月二十五日及び八月四日にとられた政府の措置というものが、この公益事業委員会の持つてつた権限に何も抵触しておらぬのだという点を、はつきりひとつ法的に御説明を願いたい。
  245. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。御指摘ように、公益事業委員会が改組といいますか、なくなる直前のことでございまして、従いまして公益事業委員会といたしまして十分の意見を申達はされておらないのでございます。しかし先ほどお話になりました八月四日に指令が出たというその間におきまして、言いかえますならば、八月に入りましてこの公益事業委員会の権限を受継ぐであろうと考えられる通産省からは、これに何ら支障なしという返事を得ておるのでございます。従いましてこれが違法だというお話でありまするが、先ほども冒頭にお話になりましたように、電源開発促進法が発効いたします前、いわゆる空白の時代が相当の期間あるわけであります。施行令等の公布も遅れておりますので、そういうような期間は、この種の事柄を全部停止をするかと申しますると、これは停止しなくて、行政的処分は私は可能だと思う。先ほど申しますように、工事が冬季に入るとやれなくなる、かようなことをも勘案いたしまして、処置をとつたわけでございます。私どもは別に違法の問題はない、かよう考えております。
  246. 塚田十一郎

    ○塚田委員 憲法の問題がないという御答弁は、ただいまの建設大臣の御答弁では、それになつておらぬのであります。私も違法ではないと考えておるのでありますが、この点を政府委員からでもけつこうですから、もつとはつきりと御説明を願いたい。といいますのは、公益事業委員会が、この新しい水利権の認可に対しては、どういう権限を持つてつたのか。
  247. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 水利権の認可と当時の公益事業委員会との関係は、公共事業令の五十九条にございまして、都道府県知事が発電水力の利用につきまして、水利権の許認可をいたします場合に、意見を付して公益事業委員会に報告をいたしまして、公益事業委員会の意見を求めなければならぬということになつております。
  248. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そうするとこういうことになると思うのです。福島県側からは、あの措置に対して建設大臣に一方認可申請が出て来る。それと同時に公益事業委員会にあてても出て来る。公益事業委員会の権限はそれに対して意見を言うてやる。その意見を言うてやる段階においては、必要があれば建設大臣と協議をする。そこで意見を福島県側に言うてやつた場合に、その意見の効果はどういうことになりますか。ということは、公益事業委員会が賛成できないと答弁した場合に、福島県はそれに拘束されるのかどうか。
  249. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えをいたします。ただいまお話にございましたように、当時の公益事業委員会が都道府県に意見を出します場合には、建設省と協議をすることになつております。従つて実際に出ます意見は、建設省と同じ意見が出るものと考えられます。同じ政府部内でありますから……。従いまして建設大臣と同じ意見で、出る場合に食い違うということはないものと、実際問題として考えられるわけであります。もしかりにそのようなことでなく、仮定の問題といたしまして、食い違つて、公益事業委員会が建設大臣と意見が合わないで、あるいはそのまま出されるような場合がかりにあるといたしまして、その場合の法律論につきましては、ちよつとただいま確信を持つてお答えをいたしかねますが、一応私の考えを申し上げますれば、県知事は建設大臣の指揮に従いまして許可をいたしましても、違法ではないのではないかというふうに、一応考えます。
  250. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私も拘束力はないと承知をしておるのでありますが、しかしそれは別として、事実問題として、公益事業委員会から福島県知事に対して、何らか本件措置に対して意見が行つておるかどうか、この点はいかがですか。
  251. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えをいたします。公益事業委員会当時は、県から出て参りました意見の照会に対して、何らの回答をしておらぬのであります。それで通産省といたしましては八月一日機構改革によりまして、その書類をそのまま引継いでおります。通産省といたしましては、八月一日電力行政を引継ぎましてから、ただいま問題になつております七月二十五日の閣議決定の趣旨に基きまして、福島県知事に、通産省は建設省と同意見であるという回答をいたしております。
  252. 塚田十一郎

    ○塚田委員 了承いたしました。  次に疑問に思います点は、建設大臣が福島県知事に対して認可を発した八月四日になると、先ほども申し上げましたように、すでに電源開発促進法が施行せられておる。ただいろいろ調べてみますと、この法律を実施するに必要な施行令が出ておらないようでありますが、しかし施行令が出ておるか、おらないかは、親法である電源開発促進法の効力をかえるものではないと思うのですが、この電源開発促進法が効力を発生しておる八月四日になつて、この法律に違反しておるのではないかと思われるこの措置が行われた点は、これは政府はどういうようにお考えになるか。ことに私がこの電源開発促進法のどの規定に違反しておると感じておるかというと、この法律の第三条と第十三条、この二箇条であります。
  253. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、電源開発促進法は発効いたしておりますが、政令は未公布であります。従いまして、電源開発調整審議会もまだ設置されておらない、そういう状態のもとにかような措置をとつたのでございますが、これは先ほど来申しました早期開発の見地からとつた措置でございます。なお説明を事務当局からつけ加えさせたいと思います。
  254. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 お答え申し上げます。電源開発促進法のいわゆる基本計画の内容いかんという問題にからむ問題かと思いますが、この基本計画は、電源開発促進法施行令の方に委譲されておりまして、施行令の内容によりますと、公表する事項は、長期の電源開発の目標と、当該会計年度における電源開発等に関する左の事項とありまして、大体大綱的な事項のみでございます。もう一つは、電源開発株式会社が当該年度において着手すべき地点、あるいは規模、方式ということでございまして、電源開発株式会社以外の担当者が開発する地点に関しましては、基本計画の参考資料として公表するというだけでございまして、この審議会では、たとえば今申しましたような上田、本名地点を今度やるべしというような決定はやらないことになつております。
  255. 塚田十一郎

    ○塚田委員 この三条には、「内閣総理大臣は、国土の総合的な開発、利用及び保全、電力の需給その他電源開発の円滑な実施を図るため必要な事項を考慮し、電源開発基本計画を立案し、電源開発調整審議会の議を経て、これを決定しなければならない。」と書いてあります。この法律が効力を発生した以後においては、少くとも基本計画に盛らなければならないようなものは、必ずこれを通らないといけない、こういうふうに私は読むのでありますが、その点はどうなるのか。そうしてもしそうであるとすると、十三条には、本名、上田は除いてあるとは別に書いてない。只見川というものは必ず電源開発株式会社にやらせるのだとはつきりと書いてある。この点との関係はどうなのか。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  256. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、この電源開発促進法自身が、この大体の構成から見てもわかりますように、そこまでぎしぎしとこまかく差出た案文を実は盛つておりません。大所高所から、大きな観度からつくられております関係上、ただいま御懸念の問題は、電渡開発促進法自身からは出て来ない問題であると考えております。
  257. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これは、法制局長官からそういう実際的な御答弁をいただいたのでは困るのでありまして、法制局長官ならば、必ずこれは法的に違反をしておるか、おらないかという—私が疑いますのは、この法律があるいはその点できそこなつているのかもしれませんが、この法律で行くと、法律を施行した以後は、どうしてもこの手続をふんで行かないとできないのではないか。事実上緊急の必要があつてやられたという点は認めるけれども、そのことが法律違反になつてはおらないかという点をお尋ねしたい。
  258. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま申し上げましたように、この立案をして、あるいは決定をしなければならないという形にはなつておりますけれども、およそこの法律が施行された後においては、そのルートによるほかは事柄ができないという面からの規制は、私の見たところではございません。さような意味において、この法律違反にはなりません。
  259. 塚田十一郎

    ○塚田委員 法律違反にならないという御答弁を得て、一応納得いたします。  次にお尋ねいたしたいのは、今まで伺いましたいろいろな点は、この措置の形式的な面なんでありますが、この形式的な面をずつと検討して結論的に感じるのは、この措置の背後に流れる思想というものが、どうも法並びに国会を軽視している思想があるのではないか。そうして私が申し上げるこの感じは、たまたまこの問題の相手方の東北電力の会長をしておられる白洲次郎氏が文芸春秋十月号に、載せられた「只見川水利権問題に寄す」という一文の中にある一節を読むと、どうもそういり感じがするのであります。これは時間があると読むといいのでありますか、時間がないので読んでおられませんが、この文章をもしお読みになつていない方があるならば、ぜひひとつ読んでいただきたいのですが、この感じで行きますと、私が心配いたしますのは、そういう考え方こそは、民主政治を否認して、そのままフアシズムに通ずる、私どもが最もおそれなければならない思想以外の何ものでもないという感じを私は持つ。つまり法律がどうであろうが、国会の考え方がどうであろうが、必要だからやるのだ、こういう感じがどうしても出て来る。それでは民主政治時代の政治というものはならぬじやないか。しかし私は一私人白洲という人の考え方を云々するわけでないのでありますが、もしそういう人の考え方に時の政府が動かされたというようなことがあると、これは重大だ。この点はどうなんでありますか。
  260. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は当時の事情を実地に知つておりませんけれども、政府としてはそんなことは絶対になかつたろうと思います。
  261. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次にこの措置の実質からの検討を若干してみたいと思うのであります。七月二十五日の閣議請議というものがここにあるのでありますが、どういう理由でこの閣議決定が行われたかというこれを読んで見ますと、こういうことが書いてある。「他会社の水利権の現存する地点にその水利権の調整を行わずして新出願者に水利権の設定をすることはほとんど前例のないまつたく異例のことである。本地点は国土総合開発法による特定地域に指定されており、目下これが審議会において鋭意検討中であり、これが結論の答申とまつて処分するのが至当であるが、本地点の開発は早急を要するためこれが答申をまたずして決定しようとするものである。なおまた本地点の計画決定は、近く施行される電源開発促進法によつて設置される電源開発調整審議会において決定される基本計画に基いて決定するのが最も適切であるが」と書いてある。しなければならないとは、やはり書いてない。「適切であるがこの電源開発調整審議会の設立は相当遅れる見込みであるので、これが基本計画の決定をまたずして早急に本地点の開発計画を決定しなければならぬものである。」こういうふうに書いてある。これらの事実から見て、政府自身がこの措置が異例以上のものであるということは認めながら、なおかつこれをしなければならない理由があると考えてこれを行つたものである、こういうように読まれるのであります。  そこでまず問題のこの二地点に東京電力の持つてつた水利権を取消した福島県の側の法的措置の根拠となつておるのは、これは河川法二十条の三号、六号であるということが言われておる。その趣旨は、東京電力から取上げて東北電力に開発される方が公益のためであるということは、先ほど栗田委員の御質問の中で出て来た通りであります。ところで「公益ノ為」であるという文句でありますが、その公益のためであるということがどういうぐあいに出て来るのか、この閣議請議の理由書を読んでみても、理由として三つあげてあるのですけれども、これがどうしても公益のために必要であるという理由は出て来ないのであります。これにはこう書いてある。早期開発上有利だ、運営管理上有利だ、それともう一つは、「只見川については電源開発促進法により電源開発株式会社をして上流未開地点の大規模開発に当らしめる予定であり、また下流では東北電力株式会社が電力経営に当つている実情にかんがみ、さらに同一水系の本地点を東京電力株式会社に開発せしめることは将来ダム及び発電所の操作運営を複雑にしてきわめて不利不便である。」しかし私がこの理由を読んでみても、本名、上田の両地点を開発することをきめて、さてどの会社にやらせるかということになると、東北電力会社にやらせればなるほどこういう長所が若干あるかもしれぬという一応の説明になるけれども、あの時期にこんな異例な措置でこれをやらなければならなかつたという理由は、どうしてもここから出て来ない。しからばそういう理由がないのかというと、私はあると思うのです。それは、日本が電力に不足しておるから、電力を少しでも早く開発したいということはある。公益のために必要だということは、そこのところにひつかかつて来る、こういうよう考えるわけであります。ところがそうなると、今までなぜ水利権者である東京電力が開発できないでいたのかという点に疑問がある。次に国土総合開発審議会の答申が遅れておるといつておるが、それは何によるのか、その責任者はだれなのかということ。それから電源開発調整審議会の設立が遅れておるといつたが、これも責任者はだれなのか。最後に東北電力にまかせれば早くできるというが、その早くできるという事情がどこから出て来ておるかという点を検討してみなければならぬ。大体これらの事情を総合して考えられるのは、政府が自分に責任のある事柄によつて、東京電力は早急に開発できない立場にある。そうしてこれはあとで申し上げますが、まことにふしぎな現象によつて、東北電力にまかせるとすぐに開発できるようになつてつたのであります。そうしておいて、できて来た現実の上に今度結論を持つて行くからして、無理が出て来る、こう思うのであります。東北電力が、一体どうしてまかされればこんなに急速に開発ができるようになつていたのかというと、水利権を持たないうちに仕事をしておつたのであります。この点はどういうよう政府はお考えになつておるか、またそういう事実を御承知になつておるのかどうか。
  262. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのお話、電力の早期開発の必要のことは、私どもと御同様なお考え方を持つておらるるようであります。ただ私どもがかような処置をとりましたのも、電力を早く開発したい、あるいは経済上の事情から非常に困つておるから何とかしたい、こういうような、総体的な抽象的な考え方のみでかような処置をとるものではないのでございます。御指摘になりました河川法第二十条にいたしましても、公益上の必要があれば、一応在来の権利者の取消しができるということであります。この閣議決定にもありますごとく、異例な処置はできるだけ避ける、これが行政府の当然の処置だと思います。また今日の時代におきましては、十分関係者が相談協議をいたしまして、その結果に基くというのが本筋だろうと思います。過去におきまして、河川法第二十条をいきなり発動はいたさないが、在来の水利権が別な水利権者にかわつた例は幾つもある。これは多くの場合に、関係業者を集めて十分その間の事情を説明をし、納得づくで交代をいたしておるわけであります。今回の処置におきましても、かような事前の方策はいろいろとられたように私は聞いております。また塚田委員長も御指摘になつておるように、二月に申請されたものが七月まで約半年の間経過をして、今日の電力の事情から見れば一日も早く開発しなければならないし、ことに本名、上田の両地点が冬季には工事ができなくなる。そうすると、事前にできるだけの準備をしなければならぬ。かようなことは御承知のことだと思いますので、関係当局といたしましては、種々折衝に折衝を重ねて参つた最後の処理といたしまして、公益上の理由の第二十条第三号と第六号、これを根拠にいたしましてかような処置をとつたわけでございます。この間の事情は、場所柄おそらく申し上げる点によつて御了解がつくのではないか。また私どもも、今後の行政処置といたしましては、既得権者、あるいはまた新しい工事を担当する希望と申しますか、願書が出て参りますならば、両者の間十分事情も聴取し、慎重審議をいたしまして処置をとるべきものだ、これにつきましては異存のないところであります。
  263. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私は、この措置が東京電力にはまことに気の毒な結果になつた考えておるわけでおりますが、しかしそれは公益のためにごしんぼう願うのはやむを得ないとして、ただこの東北電力が、水利権を持つておらないところでもうすでに調査から準備工事といつていい段階まで仕事をどんどんして、そうして既成事実をつくつておいて、さておれにまかせれば非常に早く開発ができるぞというようにしておく。つまりこれら一連の措置は、法的に明らかに違法な措置であると思うのでありますが、そういうことをしてつくつた既成事実を、国の行政措置が認めたというような前例をつくることが最も困る。もしもこれが前例になつて、今後こういうものを悪意に利用するものがあつたらどうされるか。東北電力がほんとうに仕事ができるようになりましたのは、正式の意味におきましては、九月二十六日の通産大臣の開発してよろしいという許可のあつたときであります。ところがわれわれが承知しているところでは、ずつと早くから調査をしておるし、準備工事もどんどんやつておる。こういう状態にあつた。この点についてだけは、建設大臣からもう一言御答弁をいただきたい。
  264. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 東北電力は、御承知のように只見川下流におきまして電源開発をいたしておりますから、関連する流域について調査をしなということは、あり得ることじやないか。調査をとめる方法はもちろんないのだと思います。ただ調査したから、資料が整つているからこれは許すんだということは、今回の許可の場合の最も大きな理由ではない、これだけを御了承賜わりたいのであります。
  265. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次に本名、上田の工事に対して資金がどんなぐあいに出されておるのか。これも先ほど栗田委員から御質問があつたのでありますが、漠然としておつてはつきりしないのであります。今まで見返り資金から、いつ、どのくらいこの工事に使う分として東北電力へ出ておりますか。
  266. 石田正

    石田政府委員 御承知の通りに、見返り資金におきまして電源開発のために支出を本年度に予定いたしておるものは、三百億であります。このちう経済安定本部が中心になりまして、そして本年の十二月までに、第三四半期までに大体このくらい出したらいいだろうということで関係官庁においてきまつておりますのは、継続工事分が二百四十億であります。そのほかに井川、神通第二、この関係で六億五千万きまつておるわけでありまして、あと残りはきまつておりません。そこでここで問題になつております本名及び上田の関係でございますが、これは見返り資金といたしましては、直接特別会計から出してはおりません。ただ御承知の通りに、見返り資金はできるだけ早く従来の資金の貸付は開発銀行に引継ぐと同時に、開発銀行をして融資させる、こうい方針になつておるわけであります。見返り資金が直接貸付をいたしておりました時代におきましては、まだ見返り資金から本名及び上田関係として東北電力に金は出しておりません。但し開発銀行に引継がれたあと、開発銀行になりましてから、この関係といたしまして大体六億円すでに十月中に融資されておるというふうに承知いたしております。(「十月のいつだ」と呼ぶ者あり)私どもは十月中に六億出たということだけ了承いたしております。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長着席〕
  267. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これはわれわれが聞いておるのと大分違うのでありますが、資料をお持ちにならぬようでありますから、あとで調べてお聞かせ願いたいと思います。私がこれをお尋ねしたいのは、先ほど申し上げたように、東北電力が正式の認可をもらわないで工事をしておつた節があるんじやないか。そしてそういうことのできる裏づけを、政府が金をやつて援助しておるんじやないかという疑いを持つているのですが、そうでなければ非常に仕合せだと思うのであります。  それから次にお尋ねしたいことは公益のために非常に必要だというので、東京電力から二つの水利権をとつて東北電力にやつたということはまあいいとして、それでは東京電力にあの地点の水利権を与えたのは、御承知でもありましようが、二十六年の五月の例の電力再編成の九分割のときなんですが、九分割のときには、どういう標準でもつて、どの会社にどの水利権と、どの会社にどういう既設もしくは将来新設される発電所その他を与えるとかいうことは、私どもが承知しておるところでは、大体五河川一電力会社の原則というものが一つそれとあわせて、需要供給というものをあんばいしてわけたのだというふうに承知しております。そうすると、二十六年の五月に東京電力がやつた方がいいという考え方でもつて東京電力にやつたものを、二十七年の七月には、東北電力へ持つて行かなければならないように情勢のかわつたその間の経緯を、ひとつ説明願いたいと思います。
  268. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいまのお話ように、九分割のときには、水利権を上田から上流は全部東京電力に引継ぎ、それから下の部分を東北電力、こういうようにわけたのであります。それで上田はそれのちようど接続の地点になつておるわけであります。
  269. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私がお尋ね申し上げた要点をつかんでいただけなかつたと思うのですが、九分割をしたときも、これは政府の意思で東京電力にあの地点を与えるのが適当であると御判定になつた。ところが一年たつた七月になると、今度は同じ政府が、これは東北電力に渡した方が適当である、こういうよう考え方がかわつておるわけなんです。その経緯はどうか、電力需給の想定その他が九分割のときに間違つてつたというようなことで、そういう判継をせぜるを得なくなつたのか、その辺のことを……。
  270. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど栗田委員に、東北電力にいたしました理由は詳細にお話申し上げました。ことに通産大臣からも詳細にお話になつておりますと同様の考え方政府は持つておるわけであります。
  271. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうもまだ十分納得いたしません。ことに東北電力の需給関係、これも先ほど栗田委員お話になつたように、東北電力は現在でも売電をやつておる。電力を東京電力に売つておるのであります。買つておる方が水利権をとられて、売つておる方が水利権をもらうということは、どうも納得がいかないのです。ことに東北電力には、聞くところによりますと、ほかに開発地点がたくさんあるらしいですが、自分が開発すればできるところをほうつておいて、ひとの水利権をもらわなければならない理由が納得がいかないのでありますが、これは保留をしておきまして、次に進みます。次は、本流案、分水案の問題であります。只見川の奥地資源の開発計画として、本流案、分水案の対立をしておることは、御承知の通りだと思うのですが、只見川がどのように開発されるかということは、乏しい国の資源を最両度に利用するという見地から、これは重大問題であります。従つてこの開発計画、開発方式というものは、特定県の利益や何かに片寄つてはならぬ。よしてや特定会社の利益に片寄つて開発方式をきめられるというようなことになつたら、絶対にいけない、こう考えるわけであります。さらに只見川の場合は、ただ電力資源として意味があるだけでなしに、灌漑用水にどういうように使うかという食糧増産の観点からも、非常に意義があるわけでありますが、従つて私どもは、只見川の開発計画というものは、電力の観点と食糧増産の観点と総合して、特定県にも特定会社にも片寄らない立場で、ぜひ開発計画が立てられなければならないと思うのでありますが、この点についての建設大臣のお考えを承りたい。
  272. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 原則的な構想につきましては、しごく賛成でございます。
  273. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこでお尋ねするのでありますが、そのよう考え只見川の開発計画を御決定になる場合に、この上田、本名の水利権の許可が障害になることがないのかどうか。あれを御許可になるときに、総合開発計画というものを頭に置いて、それが決定された場合にも、これが障害にならないようになつているかどうか。一応これの中を読んでみると、ならないようになつているように書いてあるが、その点建設大臣のお答えを承りたい。
  274. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん只見川総合開発の根本の問題とは別個の問題で、上田、本名の両地点の開発がきまつたのでありまして、総合開発の基本的問題といたしましては、ただいま研究中でございまして、これとは全然別な問題であります。
  275. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこでこの只見川の水力資源の開発をどうするかという今までのいきさつでありますが、これは政府側からお伺いしておくといいのでありますけれども、時間がありませんので、かいつまんで自分で申し上げながら進みます。そこでこの只見川の水力資源は、私どもが承知しているところでは、ずつと前から日発が独自でやつてつた。国がこれに関係しましたのは、昭和二十二年からであると承知している。二十二年から二十四年にかけて、国が補助を六百三十六万円出している。ところが只見川に関する分水案の着想が初めて出ましたのが二十二年からである。国が補助を出したは出したのでありますけれども、この補助の使い方と補助金を使わせた相手が適切でなかつたために、この補助によつて出て来た調査報告というものが公正なものになつていないのであります。なぜかというと、日発は一体本流案を自分が考えた人なのです。しかも電力会社なんでありますから、どうしても物の考え方が本流案に片寄り、電気に片寄つてしまう。その人間に国の補助を全部やつて調査をさせてしまつて、新潟県側には何にも予算をやつていないから、結未が変なものになる。だからこの調査の報告を見てもおわかりになるように、調査の報告にはもちろん本流案の方がよいのだと書いてありますし、そうして灌漑水としての利用については一言も触れていない。しかも調査する目的のところを見ると、やはりそういう灌漑用水としての利用の点も調査するのだというように書いてあるのですけれども、結果が出ていない。そのあと御承知のように今度本流案、分水案の争いがはげしくなりまして、公益事業委員会がOCIに調査をやらせた。OCIの報告というものはここに出ているのでありますが、このOCIも、この報告書を読んでみますと、調査の依頼を受けたのは、分水案と本流案というものの争いがあつて非常に解決が困難だから、それで比較的第三者の立場に立てるOCIというものに頼んで裁定をしてもらおう、こういうことになつたと書いてある、ところがOCIも、世間周知のようにこれは本流案がいいと書いている。ところが灌漑用水の点になると、どういうぐあいに回答が出ているかというと、そういう面に分水案の効能があるということは、希望的観測にしかすぎないと言つて一蹴している。裁定をしてくれると言う人間が、一方を資料が十分でないとか、希望的観測だとか言つて軽く片づけてしまうというのは、絶対に公平な解決だと私どもは受取れない。しかしそういうへんぱな回答が出て来たのは、理由があるのでありまして、つまり政府が両院の裁定をしてもらう人間として選ぶのには、OCIというものは適当でなかつたということだ。なぜかというと、OCIというものは日発に招聘されて、この調査の依頼を受ける前にもう日発の依頼で来ている。日発の依頼で来ている者に依頼すれば、当然日発側が希望するような結論が出て来るのはあたりまえです。これは適切でなかつた。しかも新潟県側のいろいろなその後の検討によれば、この中に相当たくさんの誤謬がある、こういうよう指摘されているのであります。この点に対して私は、つまりこの従来の只見川資源の開発の調査というものが、やつた人、それからその人たちが何を専門にしておつたかというようないろいろな経過からして、公正妥な結論が出ていないと思うのでありますが、政府はこれに対してどういう意見をお持ちか。
  276. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。過去におきまして二つの調査が出ており、これにつきましてはいろいろの御批判があることだと思いますが、今日では電源の開発法が公布されておりますし、開発審議会等が発動いたして参りました際にかような資料をいかように取扱いますか。この審議会の運用にまたなければならない問題ではないか、かよう考えております。
  277. 塚田十一郎

    ○塚田委員 それでは審議会が今後の開発計画を策定します場合に、この報告書は一片の参考資料にとどまる、こういうよう政府がお考えになつていると解してよろしいか。その点を…。
  278. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは審議会の問題でございますが、大体さような資料として考えるだらう、かよう考えております。
  279. 塚田十一郎

    ○塚田委員 資料程度であるという御答弁を伺つて、非常に安心し、かつ満足したのでありますが、しかし一片の資料として使う程度のものにしては、少し国の大事な金を使い過ぎました。御調査になつてみるとよくわかるように、あちらこちら数字の穴だらけであります。そしてまたよく調べてみれば、OCIの調査団として来ておられる方々も、そう私どもは適任者であるとは実は思わない。しかしそんなことはよけいなことでありますから申し上げませんが……。  次に、只見川開発計画食糧増産関係でありますが、農林大臣にさんざお待たせ申し上げまして恐縮でございますが、これから農林大臣にお答え願う段階であります。只見川は昔から、政府考え方でも総合的に開発しなければならないという考え方であり、従つて電気だけという考え方ではいられなかつたということは、私どもは了解しているのですが、食糧増産に非常に御熱心でいられる政府農林大臣は、一体新潟県側がこの分水案によつて食糧増産の効果が七十七万石、こういうようにできる—これはほんとうかどうか私は承知いたしません。しかし少くとも一応調査をしてこういう意見を出しているのでありますが、農林大臣はそういう意見があるということを御承知になつているか。
  280. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 たびたびさようなことは聞かされております。
  281. 塚田十一郎

    ○塚田委員 承知していられるならば、その新潟県の調査がほんとうに正しいものであるかどうかという点を、農林省として御調査になつたことがあるかどうか、この点はいかがでしよう
  282. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 まだ本流案か分水案か確定いたしませんので、まだ詳細なその点の調査はいたしておりません。
  283. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これはちよつとおかしいのであつて、本流案か分水案か確定してないから、調査をしていないと言われたのでは困るのであります。確定をするために調査をしてもらわなければ困る。調査をして、それも資料にして考えて、どちらに軍配をあげるかということを御決定にならなければならぬ。実は、農林大臣は御承知ないけれども、農林省が、あなたの部下の人が調査をしている。ここに私が報告書を持つている。金沢農地事務局というものが、昭和二十六年度に信濃川総合開発調査報告というものをちやんとこしらえておる。調査をしておるのです。ただ巷間私どもが聞かされているところによると、この調査を金沢農地事務局がやつて、おそらく農林省に持つてつたのでありましようが、たいへん農林省にしかられた。大臣にしかられたのじやないかと実は私は疑つておるのでありますが、それはしかられた。それで、これは中間報告だということで発表しない、こういうことになつておるらしい。しかもこの発表しないでおけという裏に、農林省としては一応この調査の趣旨は納得できる面も多々あるが—ということは、なるほど新潟に水を落せば、どうも増産になると考えられる節はあるが、しかし農林省がそれでもつて分水案に力をかけてやるということはひとつ避けなければならぬ。しかし分水案にきまつたら、なるほどこういうこともあるのだといつて発表してもよろしい。こういうようないきさつでこれは発表がとめられているのだというが、その点は大臣どうですか。
  284. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 その辺のいきさつはまだ承知いたしておりません。
  285. 塚田十一郎

    ○塚田委員 また食糧増産に非常に熱心でいられる政府のこと、農林大臣のことでありますから、必ず、今後の奥地只見川の水力資源の開発には、この点も十分考慮して—と申しますのは、大体今政府がお考えになつている食糧増産計画は、これは莫大な費用がいるようになつておるのです。食糧増産だけでそんなに費用がいるくらいならば、電気を起して、そのついでに食糧増産ができるならば、これは一挙両得なのでありますから、決して農林大臣がそういうことを無視して開発計画をなさろうとは、私は思いません。その点は農林大臣の御答弁を信頼し、その達識に万幅の信頼をして、必ず、新潟県側にも、この面からも不公平な措置をされないものであるということを一つ最後に申し上げて、私の質問を終りたいと思います。
  286. 太田正孝

    太田委員長 田塚君の質問に関連いたしまして、栗田君をら政府の御答弁が食い違いがあるということでございまして、簡単な関連をお許しいたします。
  287. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの御答弁によりますると、七月三十一日に電源開発促進法が制定公布を見た。そこで七月四日に福島県知事に対して、建設大臣は正式認可を与えた、こう言つておるのであります。しかもただいま塚田委員から質問をしたときには、当然電源開発調整審議会の議を経て決定をしなければならないのであるけれども、早期開発上必要であるからして、電源開発調整審議会の議を経ずして、福島県知事に認可を与えたいという答弁をいたしておるのであります。私は、この答弁に関しまして御質問をいたしたいのでありますが、電源開発促進法というものは七月三十一日に制定公布を見たのであります。従つて、電源開発調整審議会というものを早くつくるということは、これは政府の責任であります。従いまして、政府は自分の責任をたなに上げておきまして、早期開発をしなければならないということに藉口して、政府みずから法を無視するところのこのような強権措置というものは、いかに電源開発が現下喫緊の課題であるからといえ、法治国といたしましてはまさに恥辱であります。この点に関しまして建設大臣の御答弁を求むるものであります。
  288. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、電源開発法が公布されましても、施行令を整備して出さなければ、手続その他で十分法規上の整備をいたさないわけであります。これにつきまして、政府といたしましてはもちろん急いでこれらの準備にかかつたわけでございますが、不幸にして八月の四日までには公布することができなかつた、かような実情にあるのでございます。
  289. 栗田英男

    栗田委員 ただいまも、この点は塚田委員からも指摘されたのでありますが、福島県知事が、東北電力に対して水利権の認可をすることを建設大臣及び公益事業委員会に稟伺したのは、本年の二月二十八日であります。しかも七月三十一日に電源開発促進法ができたのでありまするから、おそらく、この電源開発調整審議会もつくれば一週間か二週間でできると私は思うのであります。しかしながら、私はこの政府答弁にははなはだ不満足であります。次には、この点も重ねて塚田委員から指摘されたのでありまするが、九月の十二日に仙台市で聴聞会を開いたのであります。このときに東北電力はどのような言い分を言つたかと申しまするとこの点も、—文芸春秋に出ておつた白洲さんの書いたものであるといつて、ただいま中は読まなかつたのでありまするが、大体このうちの、聴聞会にあけるところの東北電力側の発言というものはどういうことかというと、早期開発のために、法を無視して他人の権利を侵害するということはやむを得ないと、こういうことを極端に東北電力は主張しておるのであります。ところが、このように東北電力が、早期開発のためには法を無視してまでやつてもいいという主張をする裏には何があるかというと、ただいま佐藤建設大臣が言われたように、政府がそのように法を無視して東北電力のしり押しをするから、東北電力は聴聞会においてこのような発言をするのであります。従いまして、こういうことを今後やられましては、電気事業に対して将来非常な脅威を与えるのであります。従つて、建設大臣はこのような措置を今後やるかどうか、重ねて御答弁をお願いいたします。
  290. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府といたしましては、どこまでも法律に従つて処理して参るつもりであります。
  291. 栗田英男

    栗田委員 私は、政府が非常に法を無視していると考えておるのでありますが、建設大臣が大いに法を尊重すると言えば、これはあくまでも並行線でありますからやむを得ません。  次に、大蔵大臣お尋ねしますが、大分私のときと食い違いがございます。
  292. 太田正孝

    太田委員長 栗田さんに申し上げますが、あなたの要求は食い違いの点ですが、ただいまお聞きしていると、必ずしもそうでないようでございますから、その点に限つてお許しいたします。
  293. 栗田英男

    栗田委員 先ほどの御答弁では、見返り資金が二百何億しか出ていないということであります。しかるに、本年度の決定分はすでに三百億円であります。ところが三百億円で、しかも上田、本名に別わく融資をするために、さらに十二億ふえたのであります。従つて本年度の投資分の見返り資金は、電源開発分で三百十二億であります。この点に対して政府答弁と大分違いがありまするので、この点の御説明を願いたいと思うのであります。  もう一つこれに関連して。ただいま、十月中に六億円を開銀から融資したというふうに言つておりますが、これは、十一月中に六億円ではなくして、十二億円を開銀から融資をいたしておるのであります。もう一つふしぎなことは、十月中に六億円開銀から融資をしたと言つておりますけれど、東北電力は、実際は半年前から工事はいたしておりますが、正式に朝野の名士を集めて起工式をあげたのは、十一月三日であります。まだ起工式の始まらない前に、すでに十二億円の別わく融資を政府はいたしておるのであります。しかも他の有力な水系に対しましては、本年一月ごろから、相当各電力会社において個人資金を集めてやりましても、それに対してはひとつも見返り資金の放出をいたしていない。この点に対して大蔵大臣の御答弁をお願いいたしたいのであります。
  294. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私はそういう点については、まことに相済みませんが存じないのであります。政府委員から御返事をいたします。
  295. 石田正

    石田政府委員 先ほど十月中に六億出したと申し上げましたが、これは日付をはつきりいたしました結果、十一月の二日に六億円出したことに訂正をさせていただきます。  それから今御質問がありました二百四十億の放資と三百億の関係でございますが、当初に見返り資金といたしまして、電源関係で予定して出しましたのが三百億であります。それからはたしか六月ごろであつたかと思いますが、一応各関係各庁できまりましたのが、継続事業として二百四十億、それからその際に新規のものといたしまして六億五千万円ときまつてつたのであります。その後におきまして、本名・上田の問題がございまして十二億でやるという話われわれといたしましても聞いておるのでございます。なおこの十二億が加われば三百十二億と相なつて、三百億と食い違うではないかというお話でありますが、見返り資金といたしましては、一般的に電源開発その他に一応上げました後に、予備費として四十億を予定いたしているのであります。これから先三百億で納まりますか、どうか、どうでありますかは、私ははつきりしたことは申し上げかねますが、しかしながら三百億が三百十二億になりましても、四十億の予備費の中から出道はあり得るのであるということだけ申し上げておきます。
  296. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの出す方法ということになりますると、それは手続、方法、あるいは関係官庁の審査検討というものは、見返り資金と同じ方法をとるのかどうか。それからその財源もやはり見返り資金から出るのかどうか、この点をひとつ答弁顧います。
  297. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その点も政府委員から御返事をいたします。
  298. 石田正

    石田政府委員 見返り資金の出し方につきましては、皆様も御承知であろうかと思うのでありまするが、大体全体としての資金計画というものが工事別に出ます。その中でいわゆる自己資金その他によつてまかなえるものを差引きまして、どうしても見返り資金から出してほしい、こういうことで見返り資金としての額がきまつて来るのでございます。それからなお見返り資金の現実の貸し方につきましては、これは過去におきましては経済安定本部が中心になりまして、事業その他を見まして、そうして大体このくらいの計画が適当であろうということがきまります。その実行方法になりますると、見返り資金は、きまつたからすぐ金を出すというのではございません。見返り資金といたしましては、その各会社の工事の進捗状況、金繰りの状況、それらを見まして、そうして一ぺんきまりましたわくの範囲内において現実に金を出すということにいたしております。これは先ほど申しましたように、十一月以降開発銀行に引継いでおりますけれども、やり方につきましては同様であらうと了承いたしております。
  299. 栗田英男

    栗田委員 今の十二億が六億円ということになりまして、六億円が開銀から出ておる。この六億円を開銀から出すのに、これは今まで新規計画に入つておらなかたのでありまするから、これを当然新規計画に組み入れて、この六億円の金を開銀から借り受けるために、国会解散の直前、当時大蔵大臣であるところの池田さんから大蔵省の事務当局が、早急に出すようにという厳命を受けた事実があるかどうか。この点に対して御答弁願いたい。
  300. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その点も私存じませんので、政府委員から答弁いたさせます。
  301. 石田正

    石田政府委員 申し上げます。私その当時外国におりまして知らないのでございますが、私帰りましてから、かわりに事務をとつていただいた方からこういうことがあつたという報告は受けておりません。
  302. 栗田英男

    栗田委員 これは塚田委員の質問と大分食い違いがあるのだが、塚田委員は、冒頭にこういうことを言われたのです。いろいろ不明朗な強権措置がとられたけれども、これによつて不正な金は流れていない。自分は土建関係の仕事にも従事をしておるので、こういうことは想像できないということを冒頭に述べられましたが、私はこれに対して非常な疑惑を持つておるのであります。どのように疑惑を持つておるかというと、ただいま七〇%建築中の宮下、柳津、片門、この三つの発電所、十二万キロの工事は大体七十八億円でございます。しかもその上流の、強権処分をとつた上田、本名の発電所の工事は、大体八十億円でございます。そうしてこの五つの発電所とも、これはダム式の発電所でございます。ダム式の発電と申しますると、この建設資金は、大体全投下額の七〇%がダム工事の土建屋に払われるものであります。そういたしますると、かりに一箇所の工事が八十億円といたしますると、その七〇%五十六億円というものは土建屋に支払われる。この五十六億円の大体六〇%というものは、これは人夫賃であります。今一箇所の工事で八十億円の工事をやるならば、三十三億円というものが実に人夫賃なのであります。そこで今の土建会社というものはどこでごまかすかというと、機械を買つたりなんか、そういうものでは断じてごまかさないのであります。そんなものでごまかしたらすぐわかつてしまう。どこでごまかすかというと、これは三十三億円の人夫賃を現実に二十億しか払つてないのに、三十三億円払つたといつても、これは一々人夫の判こうを調べるなんということはたいへんなことであります。従つて今日土建屋のいわゆる政治資金を浮かせるための方法は、みんなこの方法でやつておる。そこで工事現場が多ければ多いほどいいのであります。今、前田組と間組が只見川の下流の宮下、柳津、片門の工事をやつておる。そこでかりに三億なら三億という金を、こういう幽霊八夫によつて浮き上らしたかもしれない。だから工事が多ければ多いほどよろしい。そこで今のように、上田、本名というのは強権処分によつてまたまた前田組、間組にその工事を請負わしたというところに、大きな疑問があるのであります。私はこの点に関しまして関係大臣の詳細なる御答弁をお願いいたします。
  303. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと栗田君に申し上げますが、今のは政府答弁の食い違いでなくて、塚田君とあなたとの御意見の相違だと思います。但し必要な問題だと思いますから、その点は許しますが、問題はそれだけに限つていただきたいと思います。
  304. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 栗田さんは、たいへん土建業の実態について詳しく知つていらつしやるようでありますが、私は不幸にしてさような点もきよう初めて伺うのであります。     〔「そんなことで建設大臣が勤まるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  305. 太田正孝

    太田委員長 お静かに。
  306. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 しかしこの問題につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、どこまでも東北電力の問題でございまして、政府の問題ではない。これは先ほどの答弁とただいま申し上げたことと何ら食い違いはございません。
  307. 栗田英男

    栗田委員 私は今のように、政府の不明朗な—ただいま与党委員の塚田委員においてすら、非常に不明朗な強権措置であると、このように与党委員から強い発言を受けておるのであります。なぜこのような強い発言を受けておるかというと、政府与党の委員からかように疑惑を持たれるのでありますから、われわれ野党委員として疑惑を持つのは、これは当然であります。そこで私といたしまして、このような疑惑を持たれる場合、政府としてはこの疑惑を一掃する必要があると思う。そこでこの点は塚田委員から再々にわたつてこの議場においてこの疑惑を国民に一掃しろということで皆様に御質問した。ところが塚田委員は、関係大臣答弁では、これに満足をすることはできなかつたのであります。これは答弁では満足できない。政府がやることが無理なんだから、政府答弁によつてこの疑惑を解くわけには行かないのであります。そこでただ一つ疑惑を解く方法がある。これはどういうふうに疑惑を解くかというと、電源開発調整審議会というものがすでに発足した、おそまきながらできたのです。しかも今の発電所の新設許可というものは、もし電源開発株式会社がこの工事を取上げる場合においては、白紙に返すという条件付で、東北電力に許可をしておるのであります。従いましてこの際重ねて私は官房長官にお尋ねをいたしたいのでありますが、この上田本名の発電所工事をもう一回取上げて、電源開発株式会社によつてこれをやらせるかどうか。もちろん下請は東北電力にやらしてもかまわない。すなわち今の電源開発調整審議会にもう一回かけるということが、政府国民の疑惑を一掃する唯一の道であつて、これ以外に、関係大臣答弁では疑惑を一掃することはできないのであります。この点に対して官房長官の御答弁をお願いいたします。
  308. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 水利権の取消しの問題は、先ほど触れましたように、ただいま行政訴訟が行われております。従いまして訴訟の結果—これは公明正大に行われる訴訟でございます。だからその結果によりまして、処置の適否ははつきり批判を受けることになるのだ、かよう考えます。ただいまの点につきましては、私どもすでに水利権の処置はついておりまして、その後の処置も進行中でありますので、この裁判の判決を待つという以外に考えはありません。
  309. 栗田英男

    栗田委員 私の申し上げておるのは、水利権じやない。水利権はあるいは今あなたの言つたような条件でかまわないかもしれない。私の言つておるのは、電源開発促進法第十三条によれば、只見川のごとき開発は当然電源開発株式会社がやるのだというようにちやんと法に規定してある。法に規定してあるのだからして、電源開発の工事を電源開発株式会社にやらせるかどうかということである。
  310. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの状態をかえる考え方はありません。
  311. 栗田英男

    栗田委員 政府関係大臣答弁は、ことごとく私は法を無規したる答弁であると断定せざるを得ません。
  312. 太田正孝

    太田委員長 午前中の中曽根君の質疑に関連いたしまして、中曽根君から発言を求められております。同君の本予算委員会における御質疑のまとまりをつける意味におきまして、これを許します。
  313. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は午前中の質問に関しまして、関係大臣より御答弁を願いたいと思います。御答弁の内容によりましては、私はまた質問を留保いたします。  まず緒方副総理にお願をいたしますが、午前中の私の、もし政府が条約違反、憲法違反をやつている場合には責任をとるか、こういう質問に対して、緒方氏はそういう仮定を前提としての答弁はできません、こう答えられた。ところがすでにこれは仮定ではない、午前中の法制局長官及び木村国務大臣答弁によると、条約の適用を法律で排除した、排除したあとには条約が占領して来る、従つて違反はないのだ、こういうよう答弁をしておられる。適用を排除した残り及びその部分も要するに入つて来る、こういう答弁である。そういう問題は大きな問題であつて、追つて法制局長官及び国務大臣の責任をわれわれは追究しようと思いますが、それよりも、そんな議論をしなくても、この条約の第一条を読んでみると、「締約政府は、人命の安全の見地から船舶がその目的とする用途に適合することを確保するように、この条約を充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」こういうことを約束している。従つてこの適用を排除した残りに政府が何らかの法的措置を講じておらなければ、明らかにこれは条約違反であります。(「その通り」)ところが法的措置は何ら講じていない。従つてすでに仮定ではなくして、条約違反が現に出ている。官房長官はいかに責任をとるか、即答を願いたい。
  314. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 条約に違反することは絶対にありません。従つて責任をとるつもりはありません。
  315. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私がここで読んだように、日本政府は「この条約を充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」と書いてある。従つて当然国内法の措置をとつておかなくちやならぬ。しかもない。しかも保安庁法を施行したのは、本年の七月三十一日であるから、五箇月間というものは空白である。また今のところは、何にもない。従つて当然この間は憲法違反であり、将来も憲法違反である。従つて仮定ではない。現に責任問題が起きておる。私は法制局長官の回答を求めておるのじやない。あなたは、先ほど委員長にこの条文を見せたら、委員長はさつそくあなたのところに耳打ちして、お昼過ぎからうそを研究して来たのだろう。そんなうそを聞く必要はない。私は官房長官の意見を聞きたい。
  316. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 外務委員会ですでにそのお尋ねがございまして、お答えいたしましたから、私から申し上げます。御指摘の条文は、第一条の意味でございますが、しかしながらここにあります事柄は、おのおの各締約国の国内法体系においてこれは観察せらるべきものであつて、その国によつては法律を要するという事情の国もありましようし、それを要しないという事情の国もございます。これを日本の場合について考えますれば、先般来申し上げましたように、これは保安庁の警備隊に属する船のことでございますから警備隊の内部措置によつて十分目的を達し得ることであり、この条約の中にもただいまお読みになりました通りに、「その他のすべての措置を執ることを約束する。」と、明瞭にこの「すべての措置」の中に入つておると考えます。
  317. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 法制局長官にもう一回答えていただきたいと思うのですが、「充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令、命令及び規則を公布し並びにと書いてある。」並びにというのは公布の上に、それと同時に他のすべての行政措置もやる、そういう意味である。他のすべての措置をやつておれば、法律や政令や命令や規則はいらないのだというのではない。これが条約の解釈である。
  318. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今のお言葉によりますと、法律も出さにやいかぬし、政令も出さにやいかぬし、命令も出さにやいかぬし、規則も出さなにやいかぬ、これを全部出さにやいかぬということになりますけれども、それはちよつと無理だと思います。先ほど申しましたように、その国、その国の事情において、この中から必要な措置を選択すればいいものと了解しなければ、これは少し無理じやないかと思います。
  319. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 少なくとも法律ができない場合もありましよう。しかしそれは省令でやるとか—省令でやるのでもいろいろ無理がある。現にそれは今までの法体系を全部読んでみれば、電波法でも何でもみな法律をもつて省令に譲つておる。これが法体系の順序である。しかしそういうことが行われない場合もあり得る。そこでこの保安庁のような重要な問題について、特に国際条約であのように人命を保護するために規定しておる問題について、国内的法的措置を講じないということは重大なる条約違反であります。単なる行政措置で——なるほど事実上の採用においては、一等無線電信士の資格のあるものを採用しておるかもしれぬ。しかしそれは事実上の行為である。いまだ保安庁の訓令が出ていることを知らない。保安庁の庁令あるいは何か内部の規則があるということも知らない。現にないじやありませんか。明らかにこれは条約違反である。あなたが何と強弁しようが、あなたがいかに口でごまかしても、法制局長官の良心をごまかすわけには行かない、保安大臣お尋ねいたします。
  320. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 法制局長官から答弁したように、政府においては、つまり法律によろうと政令によろうと、あるいはその他の措置によろうと、便宜な措置をとつて条約を遵守すれば、それでさしつかえないと考えております。
  321. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その解釈が誤りであるということは、もうくれぐれも申しましたから言いません。ここに書いてある通り、保安大臣は土曜日の外務委員会で次のように答えられております。「予算委員会においては、実は条約の条文も何も持つていなかつたものですから、慎重を期するために答弁を留保したわけであります。御承知の通り、人命安全に関する国際条約は申すまでもなく国際航海に従事する船舶と書いてあります。従いまして、本件で問題になつております米国から借り受ける船舶は、国際航路に従事するものではないのでありますから、この条約の適用は受けないとわれわれは考えておる次第であります。」こう言つておる。すなわち国際航海に従事する船舶のみに、この条約が適用があるという解釈であります。ところがきようはどうですか。きようの速記を読んでみると、「保安庁法におきましては、第八十七条において、船舶安全法の規定は、警備隊の使用する船舶にはこれを適用しないといたしております。また第八十八条におきまして、船舶職員法の規定は、警備隊の使用する船舶及びこれに乗り組んで運航に従事する職員には、これまた適用しないことといたしておるのであります。これらの規定は海上における人命の安全のための国際条約及び国際電気通信条約の適用までを排除しようとする趣旨のものでは毛頭ないのであります。従いましてこれらの条約は当然警備隊の使用する船舶には適用があるわけでありまして、政府といたしましては、これらの条約のうち、警備隊の船舶に適用される条章は、当然これを尊重する考えであります。」こうかわつておる、そうすると土曜日の答弁と今日の答弁とは明らかに食い違つております。どちらがほんとうなのですか。
  322. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 土曜日にはまさにその通り申したのであります。それは言葉の多少の不足があつたでありましよう。しかし、御承知の通り、ただいま米国から借り入れんとする船舶は、要するに海岸警備のために使つて、普通の船舶とはその趣を異にしておる。装備の点から申しましても、また乗組員の点から相違しておるのであります。それはある点においては船舶安全法あるいは船舶職員法の適用を除外しておるということで申しておるのであります。もしもこれが矛盾しておるというような点がありとすれば、私の言葉のあやまちでありまして、今日ここで申し上げたことは正式な回答と御了承願いたいのであります。
  323. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 本日の答弁を正当な答弁とおつしやいますから、土曜日のは取消したとわれわれは解釈いたします。すなおでけつこうです。  そこで外務大臣お尋ねいたしますが、けさここであなたは、保安大臣と同じだと言つておられる。「私も保安庁長官と御相談の上、これが適当であると考えております。」こう言つておられる。ところがきよう外務委員会におきまして、あなたの部下の政府委員が何と答えたかというと、外務委員会において、国際航海に従事する船舶のみに適用があると依然として答えておる。同じ時間に、大臣政府委員の言う言葉が違う、委員会を異にするたびに答弁が違う。これは奇怪なことでありますが、いかなる現象でございますか、御答弁を願いたい。
  324. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 けさの発言は、条約局の課長がいたしたそうでありますが、きようの午後の外務委員会で条約局長から、あれは自分がいなかつたために間違いであつたといつて取消しております。     〔川崎委員「それは今法制局長官に聞いて、またかえたんだ」と呼ぶ〕
  325. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの川崎君の発言の通り。これは聞いてみるとまつた政府考えが支離滅裂であり、また法制局長官考えがいかに憲法違反であるかということは歴然たるものであります。私はこれ以上この問題を追究しない。しかし本質は残つておる。依然としてこの疑念は消えません。特に第一条第二項の規定は厳然とあるのであつて、これに対応すべき国内法令がないということは、厳然たる条約違反であり、憲法違反である。この問題はわれわれは断じて譲らない。この問題に対する明確なる答弁がない限り、われわれは船舶協定その他の問題においては重大なる決心を持つておる。私はこの問題については、今日発言することは控えるけれども、この問題に対する質問をあくまで留保するということを申し上げて、一応引下がります。
  326. 太田正孝

    太田委員長 これにて本日の質疑は終ることといたします。  この際去る十二月三日の当委員会における勝間田委員質疑に対する政府答弁について、自治庁選挙部長より発言を求められております。これを許します。
  327. 金丸三郎

    ○金丸政府委員 ただいま委員長からお話がございました通り、去る三日当委員会におきまして、勝間田委員から御質問がありましたことにつきまして答弁いたしましたことに間違いがございましたので、御訂正をしたいと思います。私の申し上げましたうちに、日本炭鉱労働組合から日本共産党に対しまして、二万円の政治献金があつたと申し上げましたが、これは労働者農民党に対する政治献金の誤りでございました。以上でございます。
  328. 太田正孝

    太田委員長 ただいまの金丸君の発言は了承のことにいたしたいと思います。  本日はこの程度にいたし、明九日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後五時五十七分散会