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1952-12-05 第15回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月五日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君    理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君    理事 勝間田清一君       相川 勝六君    淺利 三朗君       石田 博英君    植木庚子郎君       植原悦二郎君    岡本  茂君       加藤常太郎君    北 れい吉君       重政 誠之君    島村 一郎君       田子 一民君    塚原 俊郎君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       原 健三郎君    本間 俊一君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    櫻内 義雄君       中曽根康弘君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    石井 繁丸君       河野  密君    西尾 末廣君       西村 榮一君    平野 力三君       水谷長三郎君    青野 武一君       稻村 順三君    上林與市郎君       成田 知巳君    八百板 正君       福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         農 林 大 臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         郵 政 大 臣 高瀬荘太郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         建 設 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法務事務官         (刑事局長)  岡原 昌男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (為替局長)  東條 猛猪君         通商産業事務官         (大臣官房長) 永山 時雄君         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      吉岡千代三君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      石原 武夫君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 富樫 総一君         労働事務官         (労政局長)  賀來才二郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 十二月四日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として小  島徹三君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員山田長司辞任につき、その補欠として青  野武一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     ―――――――――――――
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十七年度補正予算三案を議題として質疑を続けます。昨日も申し上げました通り、午前中の質疑は、おもに電産、炭労労働争議の問題について行うことにいたします。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島(金)委員 政府もすでに御承知のように、日本産業基幹産業である炭労及び電産が、労使双方の協定が結ばれずいたしまして、一方においてはすでに二箇月の長期にわたり、一方は一箇月の長きにわたりまして依然たる対立状態にあり、この労使双方対立が今やいつ解決を結ぶかもはかり知れないという事情に立ち至つております。この日本産業の最も重要な部門をなします石炭並びに電力国民産業の二大熱源ともいうべきところのこの産業が、今や麻痺的状態に立ち至つております。その波及いたしますところは実に国民経済に重大な影響を及ぼして参る。なかんずく電力石炭の及ぼすところは、国鉄においてすでに年末を控えながら、運行を制限いたさなければならないという事態に立ち至つており、一方ガスにおいてさえも停止をしなければならないという状態に差迫つており、電力全国にわたりまして大産業はもちろん、中小企業にまで重大かつ深刻な影響を与えておるということは、政府もよく御存じ通りであります。この重大な労使双方対立及びその影響するところの国民経済に与えた深刻な現段階実情に対しまして、まず政府はいかなる見解をこの問題に対して持つておられるか、これにつきまして緒方官房長官の明快な所見をひとつまず劈頭において伺つておきたいと思うのであります。
  4. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。御指摘のように、ストライキは漸次重大視すべき段階に参つておると認められますので、政府といたしましては、従来の努力を一層強化し、善処して参りたいと考えております。
  5. 川島金次

    川島(金)委員 ただいま緒方さんから一層の努力をいたしたいという答弁でございますが、しからば従来政府はいかなる努力をこの問題に対して払われて参つたか、その点についての具体的な説明をお願い申し上げたいと思います。
  6. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その点につきましては、労働大臣からお答えいたします。
  7. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お答え申し上げます。政府は今回の両争議について、いかなる努力をいたして来たかというお尋ねでありますが、御承知のように、政府がみだりにこれに介入することは、かえつて本来の基本方針を誤るものであると思いますので、ときに応じて双方当事者勧告をするとか、また中労委のあつせんを要請するとか、そういう間接的なことになるのでありますが、いやしくも介入にわたらざる程度において、ときに早く解決するように進めるとかいうような方法をとる以上に、政府として決定的な手段を持つておらないのでございます。申し上げるまでもなく、現在の制度におきましては、争議解決は主として自主的の解決にまち、それがどうしてもできないい場合には、中労委調停あつせんによるという建前になつておりまして、もちろん中労委は国の機関でございまして、政府が直接に出ない方がよいという制度になつておるものと考えておるのであります。そう申し上げますと、きわめて政府が冷淡のように聞えますけれども、今日のごとく大きな影響があることについて決して冷淡に考えておるわけではありませんが、今申し上げたようなわけでありまして、諸種の情報等は始終とつて政府が出てさしつかえない程度においてはいたしておつたつもりでございます。
  8. 川島金次

    川島(金)委員 ただいまの労働大臣お話はきわめて抽象的な言葉であつたが、政府がこの二大ストの問題に対して、いかなる具体的な努力を払つたかという問題であります。その問題について具体的な答弁をお願いしておるのであります。
  9. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 炭労争議につきましては、当初当事者双方が自主的に解決するという強い決意を持つておりましたので、政府としては主としてその成行きを注視しておつたのであります。あまり長引いて参りましたので、先月の十五日、中労委と連絡して、中労委事情を聴取いたしたのであります。しかるにその際経営者側はやはり自主的で行きたいからというような意向が多く、また組合側もしいて中労委介入を好まいなような態勢でありましたので、そのまま見送つてつたのであります。ただ今月の一日に至りまして、にわかに双方硬化して、決裂状態になりましたので、その機をとらえて、二日の日に中労委会長にあつせんを要請し、同時に当事者双方を招致して、熱意をもつて解決をはかるように勧告をいたしたのでございます。その後中労委においてあつせんに努めておるところでございます。なお電産の争議につきましては、前後二回にわたつて、初めは十一月の十三日と、二回目はあつせん案に対して双方が取合わないと申しますか、組合側はただちに拒否する、経営者側答えを保留しておるというような状態でありましたので、二十八日と思いますが、このときも双方を呼んで中労委のあつせんに協力するように勧告いたしたのであります。その後中労委のあつせんははかばかしく進みませず、むしろ内部的のいろいろの交渉をやつておるようでありますが、現在の状態におきましては、政府としてはこれを非常な関心を持つて注視いたしておるようなわけであります。
  10. 川島金次

    川島(金)委員 労働大臣のただいまの説明によりますと、中労委に対して勧告をしたという事柄が、政府として今日までとつた最大限努力のようであります。言うまでもなく、労働関係調整法の第三条によるまでもなく、こうした国民経済及び日本産業の中に占める重要な産業に対する争議に対しては、政府平素から重大な関心を払い、できるだけこの種争議の起らざるように、政治的な、経済的な政策をも努めて来なければならないと私は信じております。従つてこの労調法第三条におきましても、こうした争議の発生を防止すべき責任があると明記をされておるのもそこにあろうかと私は信じております。しかるにかかわらず、この年末しかも重大な時期にあたりまして、一方は二箇月の長期にわたつて、一方は一箇月の長きにわたつて争議が続行されております。この重大な事態に立ち至らしめました政府責任は、私はきわめて重大であろうかと存ずるものであります。政府はこの問題に対し、いかなる責任を感じておるのであるか、まずそれについて政府の所信を伺つておきたいと思うのであります。
  11. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたします。政府はこの事態影響するところをきわめて重大に考えまして、消費者の利害、治安の問題等に関しまして、できるだけの万全の策を講じておるつもりでございます。
  12. 川島金次

    川島(金)委員 この種の重大事態が発生いたしました政府責任を私は問うておるのであります。今後に処する政府処置というものの責任のあることはもちろんでありますが、この種の重大な争議を発生せしむるに至りました政府責任は、きわめて重大だという見解を私は持つておりますので、この問題に対するところの政府所見を私は伺つておるのであります。もう一度お尋ねしておきます。
  13. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 このストのよつて来る原因、その社会的に及ぼします影響等慎密に考えまして、今後こういうことが再び起らないようにできるだけの努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  14. 川島金次

    川島(金)委員 しからばお伺いいたしますが、今日の電産及び炭労組合側要求いたしております要求は、政府において妥当と認めるものであるか、その点についての政府見解をお伺いしておきたいと思います。
  15. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 両者の要求主張につきましては、批判的に政府として今申すことは差控えたいのでございます。
  16. 川島金次

    川島(金)委員 しからば、労働大臣にこの問題をお伺いすることは、現在の段階上微妙な事柄でありますから、無理だと思います。そこで通産大臣にお伺いをいたします。石炭に従事いたします労働関係、及び電力に従事いたしております電産の組合諸君の今日の待遇が、今日の労働階級生計実情あるいは物価の実情に照し妥当のものであるか、それとも妥当でないものであるか、こういつた問題については、当然通産大臣平素から研究をされべき立場であり、責任があろうと私は思いますが、この問題に対する通産大臣所見を伺つておきたいと思います。
  17. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はこの両方主張に対しましての批判は避けたいと思いますが、その問題の妥当かどうかということにつきましては、これは両方経済事情による事柄でありまして、一方的にのみこれを妥当だと申し上げることはできぬと存じます。
  18. 川島金次

    川島(金)委員 それでは続いて通産大臣にお伺いいたしますが、現在の電産及び炭労諸君の受けております賃金、今日の待遇が妥当であるかどうか、この点は通産大臣といえどもお答えができると思いますが、その点はいかがですか。
  19. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は労使双方が良識ある結論に到達することを希望しておるのでございまして、従つて経営者側でこれを許し得るものかどうかという点が妥当、不妥当を決定する点だと考えております。
  20. 川島金次

    川島(金)委員 続いてお伺いしますが、私の申し上げていることは、電産及び炭労諸君が今日受けております賃金が、生活を保障するに足らないという立場から要求を出しております。その要求の額の妥当か妥当でないかは別といたしまして、要求をしなければならない現実であるかどうかという問題についての通産大臣見解を伺つておきたいというのであります。
  21. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答えいたします。すべての要求するのは相手方が聞き得るということも必要なのでございまして、自己の生計のみをもつてこれを判断することはできぬと考えます。
  22. 川島金次

    川島(金)委員 通産大臣言明はわれわれにはすなおに受取ることができません。いやしくも通産大臣である責任上から行きまして、ことに日本産業基幹部でありますところの産業に携わるこれら労働者生活実態賃金実情、これらのことについては常に平素から重大な関心を払うべき立場にあり、責任があろうかと私は思うのであります。その立場に立つて日本労働政策政府としては考えなければならぬ。また賃金政策をも政府としては考えて行かなければならぬ責任があろうと私は存ずるのであります。そこでしつこいようでありますが、私は重ねてお尋ねするのでありますが、先ほどの通産大臣言葉ではわれわれには了承ができない。繰返して申し上げますが、今現に電産と炭労要求いたしております額の問題は別といたしまして、今日の炭労と電産の諸君の受けているところの賃金が、これで憲法や、あるいは労働基準法に明記されておりますところの妥当なる労働条件であるかどうかという問題なのであります。この問題について、しつこいようでありますが、もう一ぺん通産大臣見解をお知らせ願いたい。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私も繰返して申し上げますが、私どももこの産業に従事されている方々の福祉は、心から念願しておるものでございますが、しかし相手のあることでございますので、今お話通りにこれを妥当と認めると申しますれば、こちらはどうだということに率直に申し上げればなるのでありまして、これ以上の答弁は現在の私ではできかねるのでございます。
  24. 川島金次

    川島(金)委員 そこが私は吉田内閣の性格の本性だと思う。吉田内閣はややもすれば、またあるいは露骨に、大資本家のためには奉仕することに勇敢であり、やぶさかでない政策が往々にしてわれわれの目には映るのであります。たとえば先般もこの委員会で問題になりました炭住の問題にいたしましても、炭鉱業者から一方的に陳情があれば、財政法違反その他の疑いさえ起りやすいような処置をとつて、あえて二十三億円の利子を返還するというような、勇敢な積極的な対策をも行つておる内閣です。しかるに一方、この重要な産業に携わるところの労働者に対しては、さらに愛情と理解と積極的の熱意というものをわれわれは見出すことができない。今のような通産大臣答弁にいたしましても、私は同断であろうと思うのであります。これはひとり通産大臣考え方ではないのでありまして、吉田内閣全般を通ずるところの根底的な考え方だと思うのであります。  そこで緒方官房長官にお伺いを申し上げてみたいと思います。緒方官房長官は本日は総理大臣代理として本委員会に出席されたように私は承知いたしております。この重大な争議に対しまして、ただいま私が申し上げましたように、炭労及び電産の労組側現状労組諸君の受ける賃金生活実態、こういつたものがはたして現状で満足せしめ得べぎものであるかどうか。満足でないからこそ要求を強くいたしておるのでありますが、こうした問題について炭労、電産の現状に対して、いかなる見解を持たれておるか、この点について通産大臣に続いて私は緒方官房長官総理大臣代理としての見解を伺つておきたいと思うのであります。
  25. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。その問題につきましては、以前賃金調停をいたしましたときには相対的に妥結いたしておつたのだと思いますが、その後経済情勢社会情勢の変化に伴いまして、双方の見方、双方の意見に相違を来しておる。それが今争議になつて現われておるのだと思います。その双方主張に対しましては、先ほど労働大臣から申し上げましたように、ここで批判は差控えます。
  26. 川島金次

    川島(金)委員 さらに通産大臣にお伺いいたしますが、労組側要求いたしておりますところの額の妥当、妥当でないということは第二の問題といたしましても、一歩譲つて、今日の電力会社経営状態あるいは炭鉱業経理状態から行きまして、労組側に対して今日以上の賃金を支払うという能力がないのか、そういう実態について通産大臣調査をしたことがあるかどうか、また調査いたしたといたしますならば、そういう能力というものがまつたくないのか、あるいは若干あるという見解を持たれておるか、その点について通産大臣の御答弁を願いたい。
  27. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 双方の円満なる妥結を希望する点から、そういうことについての御答弁はちよつと私として今いたしかねます。
  28. 川島金次

    川島(金)委員 通産大臣答弁、まことに抽象的で要を得ません。この重大な問題に差迫られております政府といたしましては、もう少し積極的な熱意を持つてこの問題に取組むという決意をせられることが必要であろうと思うのであります。その意味は、緊急調整を出してはどうかという意味ではございません。少くとも政府においては、この種の問題について、できるだけ早期に解決をしなければならぬ、あるいはこの種の争議はできるだけ防止をしなければならぬという一つの義務規定労調法に明記されておるのであります。そういう観点に立ちまして私は質問を申し上げておりますので、その意味を十分に了承の上で、私の質問に十分な具体的な答えをしていただきたいと思うのであります。いやしくも今日の炭鉱業内部経理状況あるいは電力会社経理状況等については、逐一政府にわかつておらなければならぬ。またわかつておらないとすれば政府の怠慢である。そこで当然わかつておる政府立場において、炭鉱並びに電力会社が、今日以上の賃金を支払うことができるかできないかくらいの見解は、持つておるべき筋合いであろうと私は思うのであります。この支払い能力の問題について、具体的な金額を示せなどと私は決して無理は申し上げません。ただその間の政府見解を、この議場でひとつ明確にしておく必要があるのではないかと思いますので、重ねてお伺いをする次第であります。
  29. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これらの支払い能力その他につきましては、個々の会社実情も今日研究を要すると存じますが、大体の考え方といたしましては、そこにまとまる線が出て来るところが支払い能力の点ではないかと私は考えておるのでございます。なお今後これに対する調査でございますれば、私も熱心に調査いたしたいと思うのでございます。
  30. 川島金次

    川島(金)委員 これはついででありますが、この委員会に通産省の方から、九電力会社並びに主たる全国炭鉱業界経理状況を大づかみでもよろしゆうございますから、報告をしていただきたいと思うのであります。  さらに続いてお尋ねをいたします。まだ通産大臣経済審議庁長官も兼任をいたしておるのでありますが、労働基準法の第一条については、私から申し上げるまでもなく大臣もよく御存じのことと思うのであります。要するに労働条件というものは、労働者人たるに値するところの生活を保障する、こういつた立場に立つべきものである。これが私は労働法一大根本原則になつておると思うのであります。今日の日本労働階級生活実態というものは、この労基法に定めてあります人たるに値するところの生活が保障されておるかどうか、こういうことについて、経済審議庁長官たる立場においてあなたは一体どうお考えになられるか、その点をひとつ伺いたい。
  31. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 十分と私は考えておりませんけれども、今日の日本経済状態または各方面賃金等状態から見ますならば、やむを得ぬところだと思つております。
  32. 川島金次

    川島(金)委員 それではお伺いしますが、まず国鉄裁定あるいは全電通の問題あるいは専売裁定、官公労の一般的人事院勧告に基くところの給与ベースの引上げ、今日政府みずからが、内容の是非は別といたしまして、これを実施いたすことに補正予算ではなつておる。この事態を見ましても、今の審議庁長官言明はまことた矛盾ではないかと私は思う。官公労組現状にかんがみまして、政府はまことにわれわれの立場からといえば、不満足きわまるものでありますけれども、あえてこれを行おうとしておる。しかるに一方において一般産業に携わるところの労働階級生活実態については言明ができかねるような態度をとるということは、われわれの納得できないところであります。もう一ぺんそういつた問題について審議庁長官としての立場から言明を願いたいと思う。
  33. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答え申し上げました通り、私どもは十分と考えておりませんので、これはできるだけのこと、はいたしたいと思いますが、それはやはり経理関係等がございますから、ここでそれを十分やれというふうなことには、私どもはまたそういうべきものでもございませんので、すみやかに自主的解決に到達することを希望しておるのでございます。
  34. 川島金次

    川島(金)委員 政府答弁はまことに、われわれの納得のできるような答弁がありませんことを遺憾とするものであります。  そこで私は大蔵大臣にこの際お伺い申し上げておきたいと思う。大蔵大臣労働関係のもちろん専門家ではございません。しかし大蔵大臣が懇意にいたしている間柄である経団連石川氏でさえも、吉田内閣の諸政策を見ておると、もう少し政府経営者側労働階級農村のためにはからなければならぬ、もう少し農村のためや労働者のために考えなければならぬというようなことを、最近しばしば経団連会長たる石川君でさえも言われておる実情であります。そういう関係から申し上げましても、資本家階級代表者と目されておる経団連代表者さえもその言をなしておる。その意味におきまして一体大蔵大臣はこの政府を通して、あるいは政府の施策を通して、もつと積極的に農民並びに労働階級のために、はかつて行くという積極的な今後の方針を持たれておるかどうか、その点について大蔵大臣方針をまずお聞きいたしておきたいと思うのであります。
  35. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。その点はもちろん私は労使協調という点からいいまして、労働者ないし農民立場をよくするということは大切なことと存じております。方針としてはその方面に行きたいと思います。
  36. 太田正孝

    太田委員長 川島君に申し上げますが、例のお約束の時間の関係がございますので、皆さん、理事の方もお約束した通りだというのですから、そのお含みをしていただきたいと思います。なお郵政大臣が他の委員会に参りたいので、あなたの質疑が終了後退席いたしたいと申しております。しかるべくそこらの切上げをやつていただきたいと思います。
  37. 川島金次

    川島(金)委員 時間がありませんから端折つてお尋ねを申し上げたいと思うのであります。大蔵大臣にそこでお伺いいたすのでありますが、今度の国鉄裁定の問題、あるいは専売公社の裁定の問題、あるいは全電通の問題等、さらにまた人事院の勧告問題等を含めまして、今度の補正予算におきましては必ずしもその線に沿つておらない。財政上資金上という単なる明文のもとに、その線に沿わない、沿うことができないと称しておるのでありますが、私は政府がさらに積極的にこれらの問題に対して、体当りで当るのだという熱意を持たれて、財政上の勘案をいたすならば、必ずしも私は財政上質金上不可能ではないと考えているのでありますが、大蔵大臣はもはやこの問題につきましては、これ以上のことはどうしても不可能だという立場を固守されて行くものであるが、この点についてまずお伺いしておきたい。
  38. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。御趣意はよくわかりますが、ただいまといたしましては、これ以上の方法はございません
  39. 川島金次

    川島(金)委員 もしこの問題について本委員会が修正等を行つて、人事院の勧告に基く一般公務員の給与の問題、あるいは国鉄裁定その他の裁定の問題について、われわれがそれに即した修正案等を出すようなことがあり、かりに予算委員会がそれを通過するような事態になつた場合に、一体大蔵大臣はいかなる処置に出られるか、その点についての大蔵大臣としての見解をあわせてお尋ねしておきたいと思う。
  40. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。財源の点から言いましてもほかに余地がございませんから、適当に私は皆さんのお考えを尊重して参ります。
  41. 川島金次

    川島(金)委員 重ねてお伺いいたしますが、それではもしかりに予算委員会が修正をいたしました場合には、その修正した修正案に服するということを考えておられるか、そういう意味での答弁であるかどうか、重ねてお伺いしておきたいと思う。
  42. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまのお話は仮定のことをおつしやるのですが、仮定の点は返事ができません
  43. 川島金次

    川島(金)委員 河野主計局長の入れ知恵の答弁であります。先の答弁と入れ知恵されたときの答弁とはまるつきり違う、まことに心もとない大蔵大臣といわなければならない。いやしくも一国の財政を担当する大蔵大臣としてはそういう無方針、無策では困ります、国民が迷惑をいたしますので、どうぞ今後十分に勉強していただきたいと思う。そこで元へ返りまして御質問をいたすのでございますが……。
  44. 太田正孝

    太田委員長 川島君、もう時間が来たのでございます。
  45. 川島金次

    川島(金)委員 そこで時間がないそうでありますので、私も終りまして他にお譲りいたしたいと思うのであります。政府は電産並びに炭労との問題について、万一このままさらに相当の時日を経過して、なおかつこの問題の解決に至らないような事態になりました場合には、何らか政府としての別な積極的な考えを持たれておるのかどうか。具体的にいえば、緊急調整などを発令するというような心組みでもあるのかどうか、この点についてまず率直に伺わしておいてもらいたい。
  46. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 争議が今後荏苒続いて行く場合を予想して、政府がどういう処置をとるか。緊急調整の発令をするかというお話でございますが、御承知のように緊急調整ということは、現実に条件が備わるような場合でなければ考えられないことと思つております。今のところさようなことに考えてはおらないのでございます。
  47. 川島金次

    川島(金)委員 そこで最後に念を押しておきますが、この種の重大な争議を発生せしめた一面の責任は、私は政府にもあるという見解をとつております。その意味におきましても、政府が権力をもつて行うような行為にひとしいところの緊急調整の発令などは絶対にやめることとして、もつと政府が積極的な熱意をもつてこの問題に当り、早期の解決を期するという方策を明らかにすべきであろうかと私は思うのでありますが、その点についてどう考えておりますか、もう一ぺん具体的な御答弁を願つておきたいと思う。
  48. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 争議発生については政府責任を持てということでございましたが、政府はつとめて各般の努力をいたして参つてつたのにかようなことができたので、遺憾ではございますが、必ずしも政府のみの責任ということには考えられないと思います。また緊急調整は先ほども申し上げましたように、現実の事態そのものによつて判断をすることでありますので、今ここであらかじめ申し上げることはできないと思います。
  49. 川島金次

    川島(金)委員 郵政大臣も見えられ、文部大臣も見えられております。運輸大臣も見えられておりますので、最後にこれら所管大臣に対しまして、目下目の前に差迫つておりますところの年末の組合におけるところの各省責任者に対する要求の運動について、それぞれの所管大臣はどのような見解を持たれ、どのような解決を求めようという努力をされておるのか、その点について最後にそれぞれお伺いを申し上げまして、私の質問を打切りたいと思います。
  50. 石井光次郎

    石井国務大臣 運輸省に関するお答えを申し上げます。仲裁案が今国会に提出されておりまして、その方でいろいろ相談をしておるのであります。政府といたしましては政府の意向を予算に盛つて、十一月から基本賃金裁定通りに実施する、そのほか二項、三項、四項にわたりまするいろいろな年末手当等の問題はなるべく速急にこれを負担行為によつてきめるようにということでありますので、特に申し添えておきます。
  51. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 お答えいたします。郵政省の特別な関係としては、電信電話公社の問題だと思いますが、これについては御承知のように調停案が出ております。しかしこれは現在の電信電話公社の財政状態から見まして、実施が困難であるという見解を持つております。公社もその方針でまだ折衝を行つておる状態ではないかと思います。
  52. 向井忠晴

    向井国務大臣 専売公社の点も同様に二割を上げるということにしております。
  53. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。われわれといたしましては、労働者と申しますか、いろいろございますが、誠意をもつてこれを検討しております。
  54. 太田正孝

    太田委員長 西川貞一君。
  55. 西川貞一

    ○西川委員 時間の制限につきましては、ただいまの先例に従わせていただきます。
  56. 太田正孝

    太田委員長 やはり初めのお約束通りに三十分でお願いいたします。
  57. 西川貞一

    ○西川委員 私は現在の争議に関します政府の態度につきまして、少し異なる方面からお尋ねいたしたいのであります。  わが国の労働運動は、敗戦以来占領軍の治下におきまして急速に発達いたしました。爾来毎年のように大規模な争議が起り、ストライキが行われたのでありますが、その都度多くの場合占領軍当局の命令もしくはその強力なる調停によつて解決を見ていたのであります。従つて今春講和条約が発効いたしまして祖国が独立いたしました際に、国民が深く懸念いたしましたことの一つは、独立後におけるところの労働争議がいかなる形をとつて行くかということであつたのであります。日本の労働組合と雇用者とがよく節度を守り、互譲と協調の精神を発揮して紛争を平和的に解決して、産業界の平和を保つことができるかどうか、この点を最も深く懸念したのであります。しかるに現在石炭電力の二大産業争議が、一は紛争三箇月にわたつて今なお解決せず、国民大衆の生活を脅威しておりますことは、全国民の最も遺憾とするところでございます。今や占領軍の強権的な支柱を失つた日本産業界が、あくまで自主的な立場において平和的秩序のもとに、その困難なる問題を解決し得るかいなかは、実に日本の民主主義の試金石として世界の注目するところであると思うのであります。よつて争議解決は、あくまで当事者の自主的な協調にまつことが望ましいのであります。そうすることによつて、われわれは民主主義に対する国民の信頼を、あくまで強化して行かなくてはならない。しかしながら、あまりにもその争議解決が遷延して、はなはだしく社会公共の利益を害し、一国産業の根底を危うくし、国民の生活を脅がすに至る場合は、政府におきましても、国会におきましても、また深く考慮せざるを得ないことになります。そうしなければ国民は満足しないと思うのであります。政府におかれましてはこの現実の事態に対しまして、どういうふうにこれをお考えになつておられるか、争議は今後早期に解決して、これ以上あまりにも国民に迷惑をかけることのないような結末がつけられるというお見通しがあるか。何らか特段の措置を講ぜざれば、社会公共の不安を一掃することができないというふうに見ておられるか、この点に関しまして、私は副総理の御答弁をお伺いしたいのであります。
  58. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。事態の重大でありますることは、ただいま御指摘の通りであります。ただ労働争議というものの性質上、できるだけ当事者双方の自主的な解決が望ましいので、政府はこれによつて起ります影響に対しまして、いろいろな場合を想定いたして万全の策を研究しながら、当事者同士の解決のつくことを待つて、今のところ静観をいたしておるような次第でございます。
  59. 西川貞一

    ○西川委員 第二は電気産業の本質と性格より見て、その労働関係の規定が、他の一般産業と同一であつてよろしいかどうかという点であります。電気産業ストライキは、直接に民衆の生活を脅威するところ、すこぶる大なるものがあるのに対しまして、当事者たる経営者と労働組合は、いずれも大した損害を受けないような状態にあります。そういうふうに国民は解しております。従つて国民は争議の起つた事情のいかんにかかわらず、争議当事者に対しまして深刻なる怨嗟の声を放つております。一体電気産業のごとき、きわめて強大なるエネルギーを集中いたしまして、これを少数の者に掌握せしめているような産業に対し、その従業員の争議権が、他の一般産業のそれと同一に取扱われてよろしいものでありましようか。国民はこれに対して多大の疑問を持つております。特に占領下におきましては公共事業令なるものがございまして、これらの事業に対しまして特別の規定をしておつたのでありますが、独立後これが失効して以来、この国民生活に重大な影響を与える産業が、まる裸のままに置かれております。しかして公共事業令にかわる立法措置は、前国会において審議途上国会が解散されたため、現在空白状態に置かれているのでありますが、その空白をねらうがごとき態度をもつて、電源スト、停電スト等の争議行為が行われたことに、国民は極度の憤懣を感じております。特に中国地区におきましては、先般広汎なる職場放棄が行われたために、産業の施設と人命が重大な危険にさらされたのでありますが、消費者たる関係産業方面の従業員が生命を賭して出動いたしまして、辛うじてその危機を脱したような次第であります。しかし、かりに公共事業令が生きておりましても、今回の争議に対して多くの影響は持ち得なかつたかもしれませんが、占領時代におきましては、万一の場合は背後に占領軍の強権命令があるということが、国民に一つの安心を与えておつたということは、動かすことのできない事実であります。しかるに独立後の今日においては、いま少し消費者を保護するための強力なる立法を必要とするのではないか、この点は国民大衆の間に切実なる要望があるということを、私は当局にお伝えしておきます。  次にストライキによつて受けている国民の損害と不安についてお尋ねいたします。停電ストは、一般国民大衆全般に大なる不利、不便を与えて、その生活を脅威するのみでなく、病院等におきましては、直接患者の生命を危険に陥れる場合がしばしば起つているのであります。厚生大臣は、かかる事実に対しまして、実情調査しておられるかどうか、またかかる場合におけるところの対策について、考えられておるかどうかをお伺いいたしたい。  次に農林大臣に、停電ストが米の供出に大なる悪影響を与えていると思いますので、その実情についてお伺いをしたいのであります。停電に対して最も強い憤懣の念を抱くものは農民であります。なぜであるかと申しますれば、農民が現在政府の強権によつて、つまり法律によつて強制的に供出せしめられておりますところの米は、農民の労働の結晶物であります。米の供出は農民にありては労働の供出と同じであります。しかもそれは政府が一方的に定めた価格と条件によりて法律をもつて供出を強制されている。しかるに電気は自然が与えたエネルギーであり、あるいはその多くの部分は他の産業の労働によつてつくり出されたエネルギーであります。そのスイッチを預かつている者には、きわめて重大なる社会的義務が伴うておるはずであります。しかるに電産の従業員がその任務を放棄することによつて農民に対し脱穀調製等の作業とその生活に多大の支障を与えることは、米の供出に対しまして事実上において多大の支障を与えるとともに、感情的に非常な悪影響があると思いますが、その実情はどうでありますか。また対策についてお考えになつておられるかどうか、この点につきまして両大臣から御答弁を承ります。
  60. 太田正孝

    太田委員長 西川君に申し上げますが、厚生大臣は、御要求もなかつたのでまだ出ておりませんから、あとにお譲り願います。  なお政府お尋ねいたしますが、農林大臣はやはり小笠原君が現在なつておられるのでございますか。――それ、では小笠原農林大臣
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 米の供出に電産ストが大きな影響をいたしておるということは、実は苦慮しておるのでございまして、農林省といたしましても、供出の影響等は詳しく調べたものがございます。私ここにちよつと持つておりませんから、後刻これは新しい農林大臣からお答え申し上げたいと存じます。
  62. 西川貞一

    ○西川委員 米の供出に関する御報告は後刻承ることに了承いたしました。  次に炭鉱争議についてでありますが、大手の十七社の従業員がストを始めましたのは十月十三日でありまして、十七日より長期ストに入りましてすでに五十日間、ストライキの関係者は中小炭鉱を含めますと二十万人に上るのであります。その減産は五百万トンであります。その損失は大体百五十億円に上つておると推定されます。まさに日本石炭産業に致命的な打撃を与えんとしております。しかしてこのストライキのために、第一に直接生活に最も大なる苦痛を感じております者は、二十万の炭鉱従業員とその家族であります。これはまことに悲惨なる実情にあるのでございますが、その実情に対しまして労働省は御調査になつておられますか、その御調査がございますならば承りたい。  第二に炭鉱を中心に成立いたしております町村の関係産業、一般商工業者は、年末を控えて非常なる窮乏に陥り、市町村の税収入の激減は、自治体の運営を困難ならしめております。自治庁はこれらの実情に対しまして調査しておられますか、また対策についてお考えになつておるかどうか。  次に炭鉱の保安状態は逐次悪化いたしまして、切羽の崩壊の危機に瀕せるものが続出しております。一昨日は三菱の高島炭鉱の双子坑におきましては、自然発火をいたしまして非常な危険に瀕しておるのでございますが、他にもこれに類似のものが多いと思います。その実情を承りたいと思います。  ガスの制限によつていかに国民が苦しんでおるかは、われわれが家庭において朝夕経験しておることでございますが、最もわれわれが憂慮いたしておりますことは、石炭の欠乏のために列車の運行に支障を生じておることでございます。次から次へと運行休止が増加して行きつつあるようでございますが、将来の見通しについて運輸大臣はどう考えられておりますか、なお列車の運行休止によりまして、国庫の収入減はどのくらいになるお見込みでありますか。また歳末輸送に支障を生じて、年末の経済界に混乱を生ずるのおそれはございませんか。なお貯炭の乏しい工場は、すでに休業の余儀なきに陥つておりまして、ガラス工場、製鋼工場も、休業しつつあるものが続出しております。北海道におきましては、すでに暖房用炭の欠乏によつて、厳冬期を前にして非常な不安を感じておるという情報を受けております。これら石炭の欠乏によるところの国民生活の不安に対し、政府はいかに考え、いかなる対策を用意されつつあるかをお伺いしたいのでございます。
  63. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お答えいたします。争議が激化して参つたために、炭鉱等の家族の生活状態がどうかというお尋ねでありますが、平素からそうした方面の一般的な状態については常に調査をいたしております。また現在の状況につきましては、情報等はだんだんとつておりますが、現在の状況について、ただちに政府があまりに詳しく調査に行くというようなことは、かえつて争議そのものに関係する点もありますので、現在のところでは十分なる調査はいたしておりません。  それから炭鉱保安、その他各種の工場、あるいは暖房用炭等にいろいろな影響がある、まことに遺憾に存じておるところでありますか、先ほど来も申し上げましたように、現在の建前といたしましては、自主的ないしは中労委のあつせんによつて、少しでも早く解決せられることを熱願いたしておるような次第でございます。
  64. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 西川さんにお答えいたします。高島炭鉱の自然発火の問題等につきましては、鉱山保安の問題については、基本的には争議が起りましても経営者と労組側の話合いによりまして、二割程度の保安隊が残つて保安の確保に努めておるのでありますが、しかしだんだん争議長期化するに従いまして、今お話のような切羽の崩壊とか、あるいは自然発火等が起つておるのでありますが、これらにつきましては、地方鉱山保安監督部を督励いたしまして、坑道の密閉、坑内残炭の排出等、所要の処置をとらしめまして、災害の発生を防いでおるのであります。高島炭鉱につきましても、坑道の密閉を今、作業中でございます。それからどういう処置をとつたかということにつきましては、こういう重大な産業でありますから、炭労ストなどの問題は、これこそ双方の良識に基いて、一日も早く和解を見ることを心から希望しておるのでございますが、しかしこういう事態が起つておりますので、多少供給力を緩和する必要を認めまして、スト以来緊急輸入をいたしておるのであります。その分が原料炭で二十五万トン、発生炉用炭で八万トンを十二月、一月、二月に入れることになつておりますが、さらに第二次の追加輸入といたしまして、ガス向けの原料炭十七万トンの輸入を決定いたしました。これで今後の輸入予定数量は、一般炭の分も加えますと、一――三月の間に百六十六万三千トン輸入することになつておるのでございます。しかし今後なおストが続くような場合がございますと、もう少し追加輸入をいたさなければならぬかと考えております。なおガラス工業等につきましての西川さんのお話はその通りでありますが、ガラス向けの分については、アメリカの強粘結炭であるとか、インドの粘結炭、こういうものを入れる。これも今の計画のうちに入つております。
  65. 石井光次郎

    石井国務大臣 石炭の欠乏によりまして、すでに北海道では十一月の二十一日から運行を減らしました。また第二次の手配といたしまして、十一月二十八日から全国的に旅客で約八%、貨物で一〇%ほどの輸送力を減じたわけであります。もしこのままの状態が続きますと、石炭の貯蔵量が非常に減つて参りまして、十月末までに五十三万トンほどに、これも九月よりは減つて来ておつたのでございますが、十二月一日現在では二十八万トンという状態であります。全国的に保有量としては大体二十五万トンから三十万トンぐらいは冬は特に貯蔵しておるのでありますが、各地に散在しております関係上、ぜひこれだけは年中保有しておきたい。また、そういうふうな建前から行きますと、今は一日に一万トンくらいずつ石炭が入る状態でありますので、この状態がそのまま続いて行きますれば、十二月十一日からは、さらに列車を減らさなければならない、あるいはそのときになりますと、今のままで推移しますと、旅客で二九%、貨物で三三%減にしなければならない状態になるのであります。さらに、それから進みまして年末近くになりますと、半分近くの旅客並びに貨物の輸送を減らさなければならないという状態になります。これはただ国鉄の収入の上のみならず、国民生活の上、あるいは治安の上に非常に大きな影響を持つことだと思つて、いろいろと解決の早まりますことについてお願いいたしておる次第でありますが、私どもの方といたしましては、だんだん輸送関係が悪くなりますと、第一に輸送の順位等について十分考えなければならなくなりますので、主食、野菜、大衆鮮魚、みそ、しよう油、石炭というようなものについて、優先的に運ぶことをいろいろと考究いたしておるわけであります。石炭の入手につきましては、ただいま通産大臣からもお話があつたようでありますが、何とかして国内で早く出ることが一番望ましいのでありますが、こういう状態でありますから、もし、できるならば外国から少しでも入れてもらいたいということで、今手順をいたしておるような次第であります。  なお収入のことですが、これは今までのような程度でありますと、どのくらい減るか、あまりはつきり見当がつきませんが、貨物の収入は、さつき申しましたように、もしこのまま続いて三分の一ほども減るようなことになりますと、貨物輸送量だけでも一日約十五万トン輸送が不能になる。値段の点は、今ちよつとはつきりいたしませんが、これだけのものが輸送できなくなると、年末を控えて非常な問題でありますので、ほかの方法、たとえば船の輸送あるいは自動車の輸送というようなことによつて、何とかしなくちやならないと思つております。かような点は、なお研究いたしたいと思います。
  66. 西川貞一

    ○西川委員 ただいまお伺いいたしまして、特に運輸関係の将来について、われわれは非常な不安を持たざるを得ないのでありましてこれでは国民生活の上にたいへんな混乱が来るということを非常に憂慮するものであります。(「その通り」)特に炭鉱は保安要員が入つて保安に努めておりましても、時日が長くなると、加速度的に坑内事情は悪化して来るのでありまして、たといストライキが解決いたしまして入坑いたしましても、早急には出炭の復活を見ることはできないのであります。相当長期にわたつて石炭の供給が非常に減少するという見通しの上に立つて、運輸当局におかれましては、国民生活に大なる混乱を与えないように、列車を運行する計画をしつかりと立てていただきたいということを特にお願いいたしたいと思います。  私は最後にこれらの基礎産業に対しまするところの政府の根本対策をお伺いしておきたいのであります。日本の石炭鉱業は、過去における悪条件の堆積によりまして、そのコストが非常に高くなつております。従つてその価格の高いことは、あらゆる商品のコストを高からしめる重大なる要素となつておりますので、一般産業界からは、その価格の引下げを切実に要望されておるのであります。今日一般商品のコスト高によつて、すべての商品が外国市場において非常な困難に陥つておるばかりでなく、このままでは内地にどんどん外国の商品が入つて来るのであつて、国内の産業は非常な危険に瀕しておる。このコストを切り下げるためには、その大きな要素をなしておるところの石炭価格を引下げるように要望されておるのでありますが、同時にまた石炭鉱業のみの問題から考えてみましても、ただいまのようにすでに価格の点において輸入炭の大きな脅威を受けておる。また今回のストライキが動機となつて、外国炭がどんどん入つて参りますと、ストライキが解決した後におきましても、価格の関係で外国炭がどんどん入つて来まして、国内の炭鉱業が非常な圧迫を受けることが予想されるのであります。また一方にはあまり石炭の価格が高いために、工業燃料を重油に転換するものがどんどん出て参りまして、そういう方面からも石炭企業の脅威を感じているのであります。しかもその石炭のコストは五〇%が労働賃金であります。現在賃金は大手の平均から見ますと、現金給与は一万四千円でございまして、そのほかに燃料等の現物給与、住宅その他の福利施設の供与によりますものが二千五百円を合しまして、一万六千五百円のベースとなつておりますが、組合要求は御承知のように大体これを二倍に増額するものであるのでございます。私は炭鉱労働の実情を詳しく知つており、みずから坑内の生活を体験している者といたしまして、地下数千尺の暗黒のもとに、きわめて苦痛なる労働をいたします炭鉱労働者生活が、さらに一層改善向上されることを切に望むものでございますが、同時に人件費の膨脹によるコストの騰貴は、現状のままにおきましては、石炭鉱業をして危殆に陥らしめるのおそれがございます。そのことはひいて一般産業を一層苦境に陥らしめまして、終局においては労働者生活を不安ならしめるのでございます。電気につきましても、同じようにその料金の高いことが、一般商品のコストの高い重大なる原因をなしており、特に電気におきましては、会社ごとに料金の地域差の高いことが重大な問題になつているのであります。今回のストライキが起らなくても、これらの状況にかんがみまして、何らかこれらの基礎産業に対しまして、根本的な対策が新しき構想のもとに立てられなくてはならない段階に立つていると思うのでございますが、このストライキはさらにその必要を一層促進せしめているのであります。この根本の対策に対しまして当局の御所見を承りたいと思います。
  67. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 石炭及び電気が基幹産業としてきわめて大切であり、また特に石炭につきましては、これが高いことがひいて各種の産業影響して、日本の各種の製品のコストを高からしめている。こういうことにつきましてはまことにお示しの通りでありまして、どうしても石炭をばもつと安く供給し得るようにしなければ、日本のあらゆる製品は国際競争力を持ち得ないと思うのであります。従いまして、いかにして石炭を増産するかといいますと、よく御承知のように、どうしても経営を合理化して参つて、あるいは特に科学を取入れ、あるいは機械化をいたして、科学化し機械化することとさらに相まちまして縦坑というようなものによりましての生産費の低減をはかる。こういうことが、少し時間を要しますけれども、根本の問題としてこれを進めて参るほかないかと考えまして、その方面には多少財政投資をも必要としますので、前大臣のとき以来大蔵省方面にその話を進め、ほぼ了解を得ているような次第でございます。  なお電気の問題につきましては、これはどうしましても水力発電を盛んにする以外にないので電源開発を急速に進める。何と申しましても早く電力の供給をできるようにということで、急速に電源開発を進めるということが、一番最初のこととなつて参ろうと存じますので、従つてこれについても財政投資を必要とする点は財政投資をなし、さらに外資等につきましてこれを入れ得る分はできるだけその方面に入れまして、こういうことを完成して参りたい。そうやつて日本の動力源をできるだけ安くしますことが、結局各種商品の生産コストを安くし、日本の商品の国際競争力を持たすことによりまして、日本の貿易その他を改善するもとになろうかと考える。私どもといたしましては、ただいま申し上げたようなことを、でき得るだけ効率的に早く促進いたしたいと考えている次第でございます。
  68. 西川貞一

    ○西川委員 委員長の御指示に従いまして、約束の時間が来たようでございますから、残余の質問を打切つてこれをもつて終ります。
  69. 太田正孝

  70. 井出一太郎

    ○井出委員 前に立たれた両君によりまして、ほとんど荒筋の大きな問題は尽されているようでございます。私はなるべく重複を避けて、与えられた時間を御質問申し上げたいと思います。  まず最初に緒方国務相から伺いたいことは、占領下労働問題というのは、一つの絶対不可侵の強権が常に働いて、時には二・一ストの禁止となり、あるいはマッカーサー書簡となりといつたようなことで、ともすれば安易に解決をされて来たと思うのでありますが、独立後はまさしく大ぎな試練に立つている、こう思うのでございます。ことに電産、炭労、この二大ストは、日本の動力源を麻痺せしめ、これが基幹産業全体に大きな影響を与えて、特にそのしわ寄せは中小企業に寄つて来ている。一般の家庭の消費経済もきわめて暗い現状である。こういう一連の何か切迫した危機、こういうものを感ずる点においては、私どもよりも内閣諸公御自体が、痛切に胸を打たれていらつしやるところだろうと思うのであります。このことは考えようによつては、政治に対する不信というようなことにもなりかねない。ここで何とか手を打なたければならぬ。こう考えるのでございまして、その頂点に立つておられる現内閣立場といたしまして、従来吉田内閣のやり方は、労働問題に対してはきわめて熱意が薄かつた、愛情が欠けておつた。吉田さんの労働問題に対する感覚は、御承知通り労働者というものはうるさいものだ、こういうような感じであつた。私は緒方さんはこの労働問題に対しては、もつとスマートな感覚を持つていらつしやると思う。そういう意味でひとつこの一連の問題、われわれが今危機感に立つているこういう問題をあなたがどのように受取られておられるか、これをまず冒頭に伺つてみたいのでございます。
  71. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。御指摘のように、占領下と独立後の今日と、客観的な情勢が違つていることも十分に認識しております。この労働問題の根本解決ということは、なかなかむずかしいのでありますが、政府は今後一層この対策につきまして、今お話のような深い理解と愛情とを持つて十分に検討して参りたい、そういう考えを持つております。
  72. 井出一太郎

    ○井出委員 世上伝えるところによりますと、ただいま問題になつている二大ストのみでなくして、あるいは日通においてはこの十五日からストに入るべき指令が出ていると聞いております。また私鉄は関西がこのごろ中騒いでおりましたが、関東がこれに呼応しようとしている。あるいはけさほど円満妥結に参りますればこれは非常にけつこうでございますが、そういう状況である。国鉄はすでに超過勤務を拒否しよう、こういう状況である。あるいは官公労はすわり込みを始めている。定時退庁も始まつておる。こういうような状況のもとにおいて、この一連のストが一種の政治ストという性格を持つて年末攻勢を盛り上げて、吉田内閣を打倒しよう、こういう意図のもとに動いておるやにも聞き及ぶのでありますが、政府はそういう点どのように認識されておりますか、もう一ぺん伺いたいのであります。
  73. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 このストの政治的、社会的影響につきましては、深い関心を持つてただいま見守つておるとこるでございます。
  74. 井出一太郎

    ○井出委員 なかなか慎重にお答えになつていらつしやいますが、そこで次は労働大臣にお伺いいたします。今次争議の性格を見ておりますと、一方においては労働攻勢という形、他方においては資本攻勢という形、この両者が激突をしておるという感じを抱くのであります。もちろん労働攻勢は総評というものをその背後にしておる。一方資本の側においては日経連が直接指揮しておる、こういう感じでございまして、両者の主張の開きというものは非常に大きいようであります。中山中労委会長は先般来日夜をわかたない努力をされておるようでございますけれども、私の見るところをもつてすれば、中労委もどうも問題を投げているのじやないか、非常に解決が困難のようでございます。従つて、これは私は独立後の新しい型だというふうにさえも思うのでございまして、この点、労働大臣はどう認識をされておりますか、まず承りたい。
  75. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お答え申し上げます。ただいま二大ストが容易に解決の曙光が見えない、中労委も投げておるのではないか、独立後の特殊な形であるというようなことのお話であります。申し上げるまでもなく、従前はGHQの圧力というものが非常な影響をした時代があつたのであります。独立後の今回はこの圧力なしのもとで、しかも自主的の交渉あるいは中労委の会在によつて円満なる妥結をはかる、またそうした慣行ができて行くことが、今後の日本の労働問題の上にいいことだ、かように考えて政府としては進んでおるわけでありますが、事実ただいま御指摘もありましたように、GHQの圧力がなくなつた。またこの際お互いにはつきりした主張をしなければならぬというような双方の考えもありましよう。それがためにかように長引いているということも十分想像されるのでありますが、たびたび申し上げますように、しかしながら、それでもなお政府としてはほんとうのあり方と、双方自主的解決あるいは中労委のあつせんによつて解決することをこいねがつておるようなわけでございます。また中労委が投げておるというお話がございましたが、双方主張に相当強いところがあるものでございますから、ただいまのところ中労委会長がはつきりした線を出しているところまでは行つておらぬようでございます。しかし中山会長熱意を持つて何とかこれを打開して行きたいということで、ただいま骨を折られているように私は承知しております。
  76. 井出一太郎

    ○井出委員 まあ中山会長のみならず、戸塚労相も非常な苦悶をされていらつしやる、これはお察しをいたします。あなたは昨日は遂に熱を出されて休まれたということも伺いました。けれども、もつと今困つておるのは需要者の立場でございます。一般消費者はこういうばかな目にあつて泣寝入りをしなければならぬのか。ストをやる側においては、たとえば電産のストなんぞは、これは申し上げるまでもなく、経営者側においても、ストをやる側においても大した被害はない。料金はちやんちやんとつておる。あるいは電源のごく一部の連中がスイッチをとめるというだけの職場の放棄をしさえすれで、それで残余の大部分の連中は賃金をもらつておる。だからこのストは五年でも十年でも続くだろう、こういう放言さえも世上ではとりざたされております。これでは需要家はたまつたものではありません。私はむしろこの際大きな声をあげなければならぬのは、需要者の立場であろうと思うのであります。先ほど来、たとえば中小業者の立場ども話題になつておりますが、実際今日東京都内をまわつてみると、ちつぽけな印刷工場はみんなとまつております。あるいは洗濯屋も休んでおります。とうふ屋も休んでおります。ちつぽけなモーターでろくろをまわして一家をささえ、あるいは職工何人かをかかえている町工場の姿はまつたくさんたんたるものだと思う。こういう人たちは一体どこへ苦情を持つて行けばよいのか。この人たちは損害賠償を請求できるでありましようか。また主婦連合会なども大きく声をあげて、スト中の電力料金は払わない、こういう叫びを出しました。電力会社は容赦なくこの場合は断線をして電気をとめる、こういう武器を握つておりますからこそストをやる側のものが非常に強い。こういう点を戸塚さんはどうお考えになり、どう需要者の立場を処理されて行かれようとされるのか、これを伺いたい。
  77. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 争議双方よりも、一般の影響を受けるところが非常に大きいということは、まことにお説の通りでありまして、私もこの影響がいかに大きいかということについてはまつたく同情し、遺憾に存じておるところであります。ただ先ほども申し上げましたように、双方の自主的交渉ないしは中労委のあつせんで、争議が妥結せられて行くようにということが、今日のわが国の制度の建前であつて、これがためには、もちろん被害を与えておる双方当事者は十分に反省をしなければいかぬと思います。また社会の方も、これに対してどんどん批判をなさるのがほんとうではないか、現在の制度ではそれが筋である。私はあえて政府が――私は無能でありますが、政府そのものが無策でおるのではなくして、本来の筋がそういうふうになつておるということをはつきり申し上げたいと存ずる次第であります。なお被害を受けた者の損害の賠償等のことについてでありますが、今の法律では、正当なる争議行為によつて受けた被害に対しては免責の規定がございます。ただ御指摘になつた主婦連合会のような場合で、会社に対して損害の賠償を請求したような場合は、はつきりと申し上げますが、いまだに慣例ができておらぬようでありまして、これは実際問題として争い得ることではないかというようにも考えます。
  78. 井出一太郎

    ○井出委員 無策の策という言葉がございまして、最近自由党の幹事長などはよくお用いになるようでありますが、どうも今回の労働大臣のお立場は、何かそうらしい感じがいたします。私はこれも一つの形式だと思う。あなたがきわめて慎重であつて、民主的に労使双互が円満妥結の道を選ぶ、こういうことを期待されておるのはまさしく本筋だと思うのですが、しかしたとえば炭労争議の問題をとつてみれば、経営者側においてこの争議における損失が一日三億円だと称しておる。あるいは労働者側においても一日一億円だといわれておる。非常に大きな生産のマイマスであるばかりでなく、国富の消耗であります。それを今のあなたの考え方で、ただむなしく日を送つて行くことは、筋はその通りにいたしましても、何かこれはわれわれ見ていられない。あなたもおそらく十字架を背負つた気持だろうとお察しするのです。そこで労働省においては中労委とも打合せていらつしやるでしようが、何かスケジユールをお持ちになつていらつしやいますか。一定の目安をどこに置くか。年内なら年内に何とか行くというようなお見込みの点はただいまどうでありましようか。
  79. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お答え申し上げます。今見通しに見当がつくというようなことは私困難だと考えます。しかし何とかして解決するように、介入にわたらざる程度中労委会長ともよく打合せまして、少しも早く妥結ができるように努めて参りたい、かように考えておるのであります。ことに年内というようなお話がございましたが、そういう点については今ここで明確に申し上げることは困難だと存じます。
  80. 井出一太郎

    ○井出委員 もう日ならずして年の瀬でございますよ。そこでこのままの形では、ただ暗澹たる状況のもとに推移をしなければならぬ。これは吉田内閣の根底を震憾させるどころの問題ではございません。非常にこの点憂慮にたえないのですが、そこで先ほど川島君の質問にもありましたように、緊急調整をどうするか。あなたはきわめて慎重のようでございます。伝家の宝刀、これはみだりに抜くべきものではない。けれども刀は抜かないでおくとさびのつく場合もある。先ほどの御答弁によりますと、ある一定の条件が熟さない限りにおいては、これはみだりに発動してはならぬとおつしやる。しからばあなたの言われる必要なる条件が熟する、これは具体的にいえば一体どういうことであろうか、これを伺いたい。
  81. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 年末も迫つておりますし、決してゆるがせに考えておるわけではございません。先ほども緊急調整についてちよつと申し上げましたが、私は条件が備わり、緊急調整に合致する事態というふうに申し上げたのであります。法文にありますように、国民経済に著しく影響を及ぼし、または国民の生活に非常な危害があるというようなことがこの点でありますが、これは寸法ではかることのできるものでもありませんし、一にそのときの判断によるほかないと思うわけでございます。今日から予想して、いつそういうことができるだろうかというようなことは考えられない。こういう意味でしばらく時機を見ておる、かように申し上げたつもりでございます。
  82. 井出一太郎

    ○井出委員 あなたの御判断ではまだそういう段階ではない、こういうことですな。ただ緊急調整言葉が出ましたからちよつと関連して伺いたいのは、今度の争議などの場合にあたつて緊急調整というものがあるがゆえに、こういうものがあるからこそ、労使双方とも最後の段階にはこれに依存すればいいのだとでもいうような、何かたよりにする気持がありまして、これが解決をさらに延引さしているのだ、こういう見解があるのでございますが、これをあなたはどうお考えでありますか。
  83. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 緊急調整制度があることが、かえつて争議解決を遷延させる、また緊急調整そのものにたよると申しますか、そういうようなきらいがあるのではないか、こういうお話でございますが、緊急調整制度は私の承知いたしますところでは、たしか前国会に開始せられたもののように承知いたしております。ただちにその制度そのものについて私は批判がましく申したくないのでありますが、現在の制度についてはできるだけこれに沿うような方法で進んで参りたい、かように考えておる次第であります。
  84. 井出一太郎

    ○井出委員 あなたとされてはそういう御答弁以外にございますまい。そこでこの緊急調整の問題で、労調法の第四十条だつたと思いますが、罰則として、政府がそれを発動した場合においても、二十万円の罰金さえ納めればそれで一応不問にされる。従つて組合側あたりは、もし緊急調整というような場合が出て参つても、罰金を納める腹でどこまでも争議を続け、解決がつかない、こういう心配はございませんか。
  85. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 緊急調整についての罰金、これがお話ではあるいは安いというような意味にもとれます。またほかの処罰の方法があるかというようにもとれますが、現在の制度は現在の制度で、これに従つて行くよりほかないと思います。この罰則がはたして正しいかどうかということについては、私、私見としては多少の考えがございますけれども、あまり批判がましく申し上げたくないと思います。
  86. 井出一太郎

    ○井出委員 大分お苦しいようですから、これ以上は申し上げません。時間の都合で犬養さんお見えでございますが、先ほど西川委員質問にもありましたように、高島炭鉱ですでに自然発火の状態が起つておる。この保安要員を引上げることによつて、そういう配備が手薄になる。そういうことから、炭鉱等に事故が起る懸念もあると思うのです。私の聞くところによれば、普通は保安要員は全体の労務者の一二%ぐらいであるそうでございますが、今ではそれをぎりぎりにしぼつて四%ぐらいにしてしまつておる。そういうことから、もし不測の事故が起つた場合は、これは法的にはどういうことに相なるか、これが一点。それから今度のストにあたつて、地下における共産党はどんな対策を講じておるのか。たとえばきようの新聞あたりにVノート第百十七号というふうなものが出ておるように聞くのですが、これに対する一連の対策をどのように講じていらつしやるか。これを伺いたい。
  87. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。高島炭鉱の場合はまだ情報がまちまちでございますから、これは別としまして、一般論として申し上げます。炭鉱労働者が坑内の特に必要な保安設備をかつてにとめたり妨げたりした場合は、鉱山保安法という御承知通りのものに附随しました政令としての石炭鉱山保安規則というものがあり、これに、坑内で特に必要な保安設備を妨げたりこわしたりしますと、あるいはとめたりしますと処罰せられることになつております。第二の御質問でございますが、いかにもVノート第百十七号というものがございます。これは十一月三日に共産党の中央軍事委員会から軍事ノートが出まして、その中に第十二号というものがある。これには、特に電産と炭労ストに対して力を集中しろという意味のことが書いてございます。今お尋ねのVノート百十七号というのは、この中央軍事委員会の指令を受けまして、東京都のビューローが東京都の事情に当てはまるように出した指令のように思われます。それにはどういうことが書いてあるかと申しますと、大体申し上げますならば、第一、このストで非常な打撃を受ける中小企業者、これの不平に対して力を集中しろ、それから婦人会、病院、さつきお話が出たと思いますが、とうふ屋、洗濯屋、印刷業というようなものに対しても力を集中しろ、第二には大衆が停電に対して不満を持つようにしろ、第三には電気労働者、ことに東電労組に対して工作をして、たとえば具体的に申せば集金人とかそれからメートルを調べる検針人と申しますか、ああいうものがサボタージユをやつたストをやつたりするように持つて行け、こういうことが今わかつている範囲でございます。一般的には共産党の方は資金カンパをやつておる、あるいは労組に共同闘争を申し込んだりしておるように思われます。ざつとこういうことでございます。
  88. 井出一太郎

    ○井出委員 時間が参りましたのでこれをもつて打切りますが、最後に私は政府に強く申し上げたい。この際政府は火中のくりをお拾いなさい、こう私は言いたいのです。これは何も緊急調整をいきなり引抜けというのではございませんが、従来労働攻勢は自由党の鬼門だつたのです。それで、おつくうがらないで戸塚さんも十字架を背負つた以上は、ひとつ身を粉にして、そうして何とかこの危機を打開すべきだ、私は熱意をもつてやられれば、これはある程度打開の道が開けて来ると思う、ことに公正なる世論を喚起する、これが何よりも必要だと思うのです。せんつて電産などはある博期には、両者があつせん案をのみそうな段階ができたことがございました。あれなどは、私は、労組の方などは確かに世論の動向に押されたのだというふうに見てとつておるのであります。でありますから、政府がひとつ積極的にこれをやるのだという意気込みを示されれば、公正なる世論はついて参ります。どうかそういう意味で戸塚労相以下――先ほど私は緒方さんから、従来の吉田さんの感覚とは違つた労働問題に対する御見解の片鱗を伺いました。そういう意味でひとつ大いに馬力をかけていただきたい、これを申し上げて質問を終ります。
  89. 太田正孝

  90. 青野武一

    ○青野委員 私は、主として通産大臣労働大臣に、二、三点官房長官に御質問申し上げたいと存じます。  炭労争議と電産の争議につきまして、こんなに予想外に争議が長引いておりまする問題の相違点はどこにあるか、この争議解決についてどこに無理があるか、あるいはだれがその責任を負わなければならないか、そういう点を明確にしてもらいたいために、私は、二つの争議についてできるだけ具体的な問題でお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  去る二日の労働委員会で、炭労委員長の田中君がこういうことを言つております。炭鉱労働組合諸君賃金は、昭和二十一年、二十二年、二十三年の三年間は他の産業に比べて大体二割高かつた、二十四年には平均した、現在は大体において二割下まわつている。二十七年の八月現在では基準給が七千二百三十八円、基準外を含めて大体一万九百六十二円であります。しかも連盟側は、今度の交渉にあたつて、標準作業量を二割引上げようとしている。こういうことになると、今もらつている賃金か事実上一六%賃下げの結果になる。しかもよその産業と比べまして、純八時間の労働とするはずが、炭鉱労務者は事実上九時間四十二分働いている。これを度外視して、労働省あたりは統計の上では、一般民間産業賃金と比べて二千円程度高いなどという統計を出しておりますが、実働時間が、八時間に比べて九時間四十分働いている。しかもよその産業に比べて非常に生命の危険率の高い所である、暗い所である、重労働である。そうしてほかの産業に見られないところの、一年間に十二万人程度の死傷者を、地下産業労働者諸君は出しているというこの現実、従つて、ほかの産業に比べて二割低いから上げろ、こういうことが大体建前になつているのではないかと私は思いますが、要求している賃金が厖大であるかないかは別といたしまして、こういう問題が五十日の長きにわたつて解決ができないという点については、政府当局にも鉱業連盟にも大きな責任があると思います。     〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕  第一点としてお伺いいたしたいと思いますことは、通産大臣に対してでございます。石炭鉱業連盟の諸君は、貯炭に関しては心配することはないということを常に宣伝している。でありますならば、貯炭数量と、現在の石炭が一日にどの程度の出炭量を示しているか。大手十七社とその他の中小炭鉱を加えまして、大体私の承知しておりまする範囲では、一日の出炭量は全国で十五万六千トン、作業しておりまする常盤が一日に五千九百トン、目鉱を含めましても大したことではございません。今どの程度に貯炭があるか、そうして、現在動いておりまする炭鉱労働者が掘り上げている一日の出炭量が、どの程度にあるかということをお伺いしたい。  関連しておりますから、もう一つお伺いしておきますが、政府は貯炭減少に対して、外国炭を輸入することによつて調節をする、こういうことをあたかも鉱業連盟と言葉を合せて、炭労諸君が五十日か六十日ストライキを続行しても、それは結果においてはだめだ、石炭の操作は外国の輸入炭によつて操作するし、また各所にいろいろな問題を引起して、連盟はそう大きく打撃を受けておらないといつたようなことで、いろいろな宣伝をしておるように私どもは聞いておりますが、今申しました貯炭の数量と、現在の石炭一日の出炭量と、輸入石炭の数量と操作の具体的な方針を私はお伺いいたしたいと思います。
  91. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答えいたします。現在の貯炭数量は、原料炭、発生炉炭、一般炭、無煙炭等を合せまして、合計二百五十万余トンでございます。それから一日の出炭量は五万トンないし六万トンであります。さらに輸入のことは、先刻ちよつと申し上げましたように、百六十六万三千余トンを今後輸入することになつておりますが、全体として申しますと、年間に約百六十六万三千トンでございます。そのほかの詳しい事柄につきましては、御承知のごとく、私もまだ日が浅いのでありますから、政府委員をして答弁をいたさせます。
  92. 青野武一

    ○青野委員 同じく通産大臣に重ねてお尋ねをいたしますが、貯炭の点について、大体連盟側も、心配はない、また輸入炭によつて操作をすると言つておりまするにもかかわらず、たとえば東京都の例をとりましても、すでに数日前からガスが時間制限をやつている。鉄道は三割のいわゆる操車制限をやる、このために九州方面の急行が二本ぐらい減じられるということが新聞で報道されております。貯炭が減少するに従つて、一日十五万六千トンというものが減つておる。そのうち五万トンが現在出ておるとしても、十万トンというものは毎日々々使われて行く石炭が出て来ない。こういう状態が続いて行けば、鉄道関係にいたしましても、ガスの制限にいたしましても、起つて来ることは必然である。ところが政府はなるべく自主的解決という言葉を使われて、事実上今日まで放任されて参りました。私はこういう点について、二日の労働委員会で、鉱業連盟の早川専務理事お尋ねをいたしましたときに、中労委が出て来て、職権あつせんをしようと、調停をしようと、連盟といたしましては年末資金として五千円の貸付をいたします。賃金は現行横すべりを一歩も引きません。だれがどう言うても、この線は守ります、こういうことを労働委員会に出て参りましたときに言つておりました。私はこのときにも質問をいたしたのでございますが、現行賃金をすえ置かなければならないほど、日本炭鉱業者――各炭鉱会社ではそれほど経理上赤字が出ておるかというと、そうではないと思う。私は端的に労働大臣通産大臣お尋ねいたしたいと思いますのは、早川専務理事が言つておりますように――これは日経連が言わしておる、またもつと掘り下げると、朝鮮動乱に関係がある外国の勢力が言わしておると考えておるが、この現行賃金横すべりで炭労争議解決は決してできないと考えておる。この解決のかぎはどこにあるか、政府はどこかに歩み寄らせるか、解決のためには何らかの手を打たなければ解決はいたしません。この現行横すべり、五千円の貸付、ここで話が行き詰まつておる。この点についてひとつ労働大臣通産大臣との御所見を承つておきたいと思います。
  93. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お答えいたします。炭労争議の行き詰まりが横すべりにあるというお話でございまして、ただいま中山会長があつせんに努めておるのでも、その点が非常にむずかしいところになつているようであります。しかし私はまだそこに会長努力をもう少し強めてもらいたいという気持を持つておるのでありますが、ただ内容につきましては、この際どうこう申し上げることは御遠慮申したいと思います。
  94. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お示しの通り、これが続きまするとだんだん減つて参りますので、この点はなはだ憂慮いたしておる、従いまして中労委のあつせんによりまして、すみやかにこの妥結を見んことを心から念願いたしておるものでございます。但しこの問題につきましては、直接通産省が介入すべき立場にありませんので、労働省の方のおはからいをお待ちしておるわけであります。
  95. 青野武一

    ○青野委員 通産大臣の今の御答弁によりまして、私はここが一番炭労争議に対して重大なところだと考えておりますので、申し上げますが、では通産省といたしましては、大臣といたしましても、この争議になるべく介入したくない――労働委員会その他連合審査会で労働大臣は、なるべく自主的に解決してもらうためには、緊急調整は今のところ発動したくない、もつと模様を見る、自主的に解決してもらうためには、あまり政府権力が介入したくないといつたような、答弁は合つておりまして、この点は了解いたします。しかし炭鉱各社で、大体大手筋十七社のうちのおも立つた会社が、二十六年度あるいは二十七年度にどれぐらいの利潤を上げておるかという経理状況を、通産大臣は、いくら御新任でも、おわかりになつているはずである。その点をひとつ明確にここで説明していただきたいと思います。
  96. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答えしますが、分社の経理状況につきましては、通産省としてこれを調査すべき権限は持つておりません。しかしながら客観的に見まして、一時のような赤字でなくて、相当好況にあることは認めますが、しかしこれがはたして安定して、この好況が続くものかどうかということについての見通しは、今ちよつと申し上げかねますので、この問題はもう少し安定――ただいまのところはそういう利益を上げていることは私も認めますが、客観的に見て、この情勢が、たとえば今の運賃が非常に安くなると、外国炭等の入ることも考えられますので、この点からもこれが続くかどうか、つまり安定したものかどうかという見通しがありませんので、その後の見通しが立つてからにいたしたいと存じます。
  97. 青野武一

    ○青野委員 これを調査する権能がないという御答弁でございますが、全国的に見ますと、国鉄裁定にいたしましても、専売裁定にいたしましても、全電通の調停案にいたしましても、人事院の勧告による国家公務員のベース・アップの問題にしても、電産の争議にいたしましても、私鉄の争議にいたしましても、金があり余つておるから給料を上げてやるというのではなく、働いておる労働者生活が、物価騰貴その他の理由によつてぎりぎりの線に追い込まれておる。働く労働者の労働力を高く評価するためから行きましても、会社が、生活に困窮しておる働く者のために、いろいろな手を打つてでも、多少無理して、赤字をつくつてでも、ベース・アップをしておるときに、日本炭鉱業連盟の諸君は日経連と連絡をとつて、金がないから今のベースは横すべりだ、五千円の貸付金だ、標準作業量は一〇〇%を越した分だけについては八〇%に引く、これによつて現行賃金一六%の賃下げになるというような行き方をして、だれが出て来ても、だれが調停しても、あつせんをしても、この線を一歩も引かないというのが鉱業連盟の言い方である。これは明瞭に公文書で言つておる。労働委員会の速記録に載つております。早川専務理事が日経連を代表して、鉱業連盟を代表して言つておる。では炭鉱会社がもうかつておらないかと申しますと、これは相当権威のある資料でございますが、現行賃金横すべり、五千円の貸付金、標準作業量は今撤廃しましたから一応問題にならないといたしましても、石炭大手筋二十六年度下半期の決算は、三井、三菱、北炭、日本炭、太平洋、雄別、日本鉱業、宇部、古河、明治の十社が、二十六年十月三十日に決算し、住友が二十六年十月三十一日にこれを発表いたしました。これは下の方のけたであるいは誤つておる点があるかもわかりませんが、この資料は日本経済新聞の所載で、各社の決算報告書を載せております。住友は東洋経済新報所載の数字でございますが、一応念のために読み上げてみます。三井鉱山は、一口に三井鉱山創業以来、数字がわからないくらいべらぼうにもうけておる、こういうことを一口にいわれておる。炭鉱争議にいたしましても、三井が一番労働組合が強い。来年になつてもがんばり抜くといつているのは三井鉱山の労組の諸君。一体にそういう連絡をとつてつて来ており、非常に強固で、政府や鉱業連盟が思うほど炭労諸君は弱くはない。戦力はまだ充実しておると私は考える。ところが一面三井鉱山は、二十六年度の下半期に十億一千一百六十二万六千円、現行賃金を払つて、これだけもうけておるということを考えていただきたい。三菱鉱業が九億一千四百五十万二一千円、住友石炭が大体四億円、古河鉱業が七億八千二百九十一万五千円、北海道炭砿が十五億一千四百三十二万一千円、日本鉱業が八億六千八百四十九万二千円、太平洋炭砿、これはこまいのですが、一億四千四十六万八千円、雄別炭砿鉄道が二億七千九百八十一万五千円、宇部興産が八億二千九百六十三万三千円、明治鉱業が四億一千二百七十七万三千円、大日本炭砿が四億二千百九十三万五千円、今の給料を払つて、二十六年度の下半期に――東洋経済新報あたりに堂々と載つておる。これだけの利潤を持つてつて、一銭もベース・アップをしないという鉱業連盟の行き方が、炭労争議をここまでひつぱつて来た。これは明瞭なる事実なんだ。早川君にいたしましても、鉱業連盟にいたしましても、ほんとうに労働者の信頼を得、労働力を頼みにするなら、この基幹産業であり、重要産業である石炭産業の発展を考えれば、もうけるときには、これだけもうけて、しかも給料はすえ置きだ、そういう行き方は、これは冷酷無情というよりも、無理解きわまると私は考える。この点が炭労争議をここまでひつばつて来て、そうして常磐炭鉱に行つては、ダラ幹をひつぱつて、札びらをまいて、いわゆる労組の切りくずしをやり、各社別交渉だ、炭労脱退だ、あるいは中小炭鉱に対しても手を入れる。九州にも手を入れる。そうして炭労組織をばらばらにして、炭労の戦闘的な労働組合を骨抜きにすることによつて、外国勢力のもとに頭を下げて、近代戦争兵器、朝鮮に必要なところの武器あたりをつくるところの資本家の非常に高い利潤を守り抜くために、戦闘的労働組合のぶちこわしのために、ここまでひつぱつて来ておることは、この数字が私は明瞭にこれを証明しておると思うのでありますが、こういう、現行賃金を支払つてなお莫大な利潤を上げておる。私は今回の争議を機会に経理を公開すべきだと思いますが、政府所見を承つておきたい。これは官房長官通産大臣に私はお尋ねしておきます。
  98. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答え申し上げます。ただいま御指摘になつた決算報告によりますと、これは相当な利益であるようでございますが、しかしはたしてこの利益が、あるいは金になつておるものか、いわゆる貸借対照表上の利益であるのか、これらの点から言いますと、利益につきましても、金にならないものもございますし、個々に経理内容が違つておることは、青野さんも会社をお調べになればよくわかると思います。従つてどもは最初に申しましたように、両者が良識をもつてこの問題を円満妥結に持つて参るよう、心から念願しておる次第でございます。
  99. 青野武一

    ○青野委員 通産大臣のお言葉は、まるで鉱業連盟を代表しての御答弁のようでございますが、政府として、これだけ二十六年度下半期に利潤を上げて、しかも賃金を支払つておりながら、今度の争議責任を持つてここまでひつぱり込んだのだと私は推定いたしておりますが、こういつた炭鉱会社経理の内容をただちに公開すべきである、こういう考え方を持つておる点に、あなたは御答弁をお忘れになつておるように思いますが、あらためてひとつ御答弁を願いたい。     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答え申し上げます。商法に基いて考課状を発表する以外に、経理内容を公開せしむべき権限を持つておりません
  101. 青野武一

    ○青野委員 炭労争議に関しましては、最後にもう一つお尋ね申し上げたいと思います。時間が制限されておりますので、相当項目を持つておりますがこまかい点は省略いたします。  最後に炭労争議に関しましては、これだけ長期にわたりましたのは、結局私どもは鉱業連盟の無理解による。しかもいろいろな意味で、今予算委員会等で問題になつておりますが、これだけの利益を上げておきながら、炭住問題については、利子の引下げ二十三億、こういうように大きな保護を受けておる。あるいは、ある政党には一千三百万円の献金をやつた。あるいは私どもも個人的には知つておりますが、五百か六百の労働者を使つておる福岡県田川郡の炭鉱業者が、長者番付十名の中に親子兄弟が五、六名も顔を連ねておるといつたようにもうけておる。こういう諸君が、利益を追求するためには、労働者生活を考慮のうちに入れないような諸君が、日本の重要産業である石炭産業の中心をなし、実権を握つておる間は、日本産業の発展などということは考えられない。そこで自由党内閣になつて一応廃止されましたが、将来の労使紛争、日本産業の発展あるいは石炭産業の発達のために、この機会に国家管理をやる意思はないかということを、私はお尋ねしておきます。
  102. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまのところ、さような考えは持つておりません
  103. 青野武一

    ○青野委員 電気産業労働組合の問題につきまして、私は二、三点通産大臣お尋ねを申し上げたいと思います。これも電産の争議の焦点は、労働時間の切下げにあると思いますが、政府はどういうお考えを持つておるか、これは通産大臣お尋ねいたします。調停案には、御承知通り、一万五千四百円、今までの三十八時間半を四十二時間にすることによつて、三時間半の延長である。この延長に対しましては、切り下げるということになれば、時間割に延長分を加給することが当然である。ここがやはり私は大きな紛争の焦点になつておると思いますが、監督官庁としての通産大臣の、この点に関する御所見を承りたい。
  104. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは重大なる争点になつておると考えます。しかし、これにつきましても、両者の自主的な解決を希望いたしております。
  105. 青野武一

    ○青野委員 第二点は、九電力会社の企業格差の有無を私はお尋ねしたい。これは御承知通り、九電力会社は、経費から統一賃金、期末手当、配当、役員手当等を含めまして、これは一本にまとまつておる。ところが労働組合と賃上げ問題について話し合うときには、企業別の交渉あるいは企業別の賃金ということを指定して、問題を紛糾させて来たのでございますが、この点について九電力会社の企業格差の有無を私は通産大臣お尋ねしておきたい。
  106. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 わかれておりまする九社の各地の出水状況とか、あるいは実際の経営いかんによりまして収益に差異が生ずることは、これは免れぬと思います。従いましてその賃金について一律がよいかどうか、私どもは異なることもあり得ると考えておる次第でございます。
  107. 青野武一

    ○青野委員 私の質問に対してあまりはつきりした御答弁がございませんので、これは納得が行きませんが、水に対しては、御承知通り八箇年平均の統計をとられて、渇水準備金などというものは七〇%が積み立てられ、またそのほかに水火調整金等もございまして、この電力会社の格差が非常に問題になつておる。御承知のように、電力会社は国家の大きな保護のもとにあつて、地域的な独占産業である。そういう点から考えまして、今問題になつておりまするこの争議は、ねらいどころの一つとして、電力会社が将来自分たちが国家保護のもとになおかつ自由企業に持ち込もうとする一つの計画の現われが、いわゆる企業別交渉、企業別賃金というものを指定しておるのではないかと私どもは考えておりますが、この点についてはどういうお考えを持つておられるか。
  108. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電力料金について認可制をとつておることは、御承知通りでございます。私ども電力のような性質にかんがみまして、全然自由企業とするという考えはただいまのところ持つておりません
  109. 青野武一

    ○青野委員 電力行政に対して国家監督を今のままで行かれるか、あるいはゆるめられるか、もう少し厳重にやつて行かれるかということをお尋ねしたい。この点につきまして、今料金の認可制をやつておることは、御存じ通りであるという御答弁でございますが、国の保護下にある。それから電力会社の株が大体五百円しておつたものが八百円になつておる。電気事業は四倍の増資をしておる。五月以来団体交渉を始めて、電産の諸君は熱心に、しかも六箇月間平和的にやつて来た。しかも昨年は三千名、年々大体三千名程度減員をやつて、補充あるいは新規雇用をしていない。昭和九年から十二年の戦前の生活水準に復帰したいという希望のもとに、電産の争議が始まつたのでございまして、こういう条件が備わつているにもかかわらず、いわゆる電力会社諸君の無理解によつて炭労争議と同じようにこんなに長引いておる。こういうようなことについて将来の電力行政に対して国家監督をゆるめるか、現状維持か、厳重にするか、それをこの際ひとつ明確にしておいてもらいたい。
  110. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 目下のところ、電力行政について国家監督を緩和する考えは持つておりません。ただ公共事業令が失効しておりますので、これにかわるべき臨時措置の法律がこの国会に出ることになつておりましようが、これが通ります場合にも、電気ガスの恒久法を立案するために審議会の設置を実は予定している次第でございます。この審議会におきまして十分検討いたしまして、電力事業の公益的性質にか、んがみまして、その面から必要な行政的監督は存続いたしたいと考えております。
  111. 青野武一

    ○青野委員 通産大臣に対し最後にもう一点お尋ねを申し上げて、私の質問を終りたいと思います。私は去る二日の労働委員会でも関係者に申し上げたのでございますが、停電、送電制限等に関して、争議中非常な損害を受けたことは、私ども率直に認めます。これはだれの責任であるかないかは別といたし、私に言わせますれば、現在は別といたしまして、今までの間、報道機関の一部が誤つた報道をして、いつの場合でも、電産の争議が起ると、労働組合諸君がスイッチを握つてめちやくちやに無統制のままに停電する、あるいは送電の制限をするといつたような宣伝が行われたということを聞いておりますが、今まで十割の送電をしておる場合に、二割の電源ストがあれば、あとは八割しかない。そのうちの七割を軍需産業に向つて、今まで通り送電をするから、一般の家庭には一割の送電しかできない。これが中小企業を苦しめ、一般家庭に迷惑をかけている。そういう宣伝が飛ぶから、電気産業労働組合諸君が、七割の送電をしている軍需産業、特需産業に対して、自分たちの手で大口の送電を停止して、われわれがしたのではないという証明をしたのでございます。だから大きな争議をやつても、一般家庭は比較的このごろは打撃を受けない。そこで私どもは、この七割の送電をしているのを、せめて四割五分か五割にとめて、一般の家庭の送電を継続すれば問題はない。それを一方的に、電産が争議をするから停電が続くのだ、送電の制限が起るのだ、こういう宣伝を電力会社諸君が先頭に立つていろいろな手を通じてやつてつた。そういうことによつて中小企業は倒れた所もありましよう。注文を受けたものが非常に期限が遅れて打撃を受けた所もありますが、そういうものに対してはまた別に考慮いたすとして、メーターをつけてない一般家庭が、この停電や送電の制限によつて不当な料金を徴収せられている。これを株主配当の方に持つて行くことを黙認するのか、電力会社のこの不当利益を需用者に割りもどすのか、これは全国的に大きな問題である。この点について監督官庁としての通産大臣の御意見を、私は最後に承つておきたい。
  112. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答えいたします。規程に基きまして、そういう場合には料金の払いもどしをいたさせます。なおこまかいことは政府委員より答弁いたさせます。
  113. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えいたします。電気が家庭、その他工場につきましても同じことでございますが、供給を停止いたします際におきましては、供給規程に基きまして割引をいたすことになつております。従いまして、今回の場合もその規程の適用があるものと考えております。
  114. 太田正孝

    太田委員長 それでは労働争議問題についての質疑は一応これにて終り、午後二時半から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時九分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十七分開議
  115. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。北れい吉君。
  116. 北昤吉

    ○北委員 私は吉田・幣原連立内閣時代に自由党憲法改正委員長を勤めておりまして、憲法改正に関する質問を第一党の代表者としてやりましたし、成立の際も賛成演説をやりました。私は今顧みて忸怩たるところがあるのであります。御承知のごとく、ポツダム宣言も残酷きわまるものでありますけれども、これを取入れなければ陛下の御詔勅にある通り日本全国が焦土となり、民族が滅亡する危険があつたから、涙をのんでこれを受諾したと同様に、マッカーサーから与えられたいわゆる平和、民主、自由の憲法も、これを取入れなければ講和成立と独立は不可能であると考えましたので、独立の第一歩としてこれを承認しただけであります。ところが独立国になつた以上は、占領政策の行き過ぎを訂正すると総理も言い、緒方副総理も述べたのでありますが、占領政策の行き過ぎは、まず憲法改正から出発しなければならぬと考えますが、当局のお考えはどうでありますか。
  117. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。憲法の改正につきましては、総理大臣からしばしば申し上げましたように、事柄が国家構成の基本法でありますので、輿論が改正に向つてもつと盛り上つて参りましたときに政府として考慮すべきである、かように考えておりまして、今政府が率先して改正を主張する意思はございません
  118. 北昤吉

    ○北委員 私は、ポツダム占領下における憲法でありますから、日本憲法はポツダム政令の一種と考えざるを得ないのであります。御承知のごとく、独立とともにポツダム政令は片つぱしから廃止されたのでありますから、厳密にいえば憲法も廃止すべきなのでありますが、憲法を今廃止したならば国政の運用を不可能でありますので、一時これを認めておきましても、政府としては、これが改正の準備にさつそく着手しなければならぬのでありまして、マッカーサーが憲法を日本にしいたときには、マーク・ゲインの「ニッポン日記」にも暴露してある通りに、わずか二、三週間で書き上げて、十五分間で取入れろと強制したのであります。マーク・ゲインは信用できぬというならば、一昨々年マッカーサーからアメリカの政府へ憲法制定の前後の事情を報告いたしております。この報告文は昨年六月の「国家学会雑誌」に翻訳されて、学界に見せてもよろしいというので出ております。そのうちにも事情を詳しく書いております。そうして、言いかえてみれば矛盾のようでありますが、日本は自由たるべく強制された観があるのであります。西ドイツにおきましては、占領下の憲法は暫定憲法とみなす、独立をした場合においては新たにつくるという方針であつたのでありますが、日本はアメリカの占領政策の継続としてこれを是認して、このまま荏苒日を費さんとするのでありますか、御所見伺いたい。
  119. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 マーク・ゲインの書物は私も一読いたしまして、いろいろな考えを起したのでありますが、国民の代表者の審議を経まして制定せられました憲法であります以上、やはりよほど慎重に考えざるを得ないと思います。
  120. 北昤吉

    ○北委員 私は、慎重に審議しなければならぬから、今から準備をやりなさい。単に再軍備のために憲法を改正せよというのではありません。今の憲法においては日本の国情に少しも適さないものもありますし、また私が今日指摘いたしましても十数箇所の誤訳を指摘し得るのであります。私は「早稲田大学学報」五月号に誤訳を指摘いたしまして、学界に相当のセンセーシヨンを与えております。現に草案の中に非常な誤訳がありまして、私は憲法小委員会でこれが訂正に努めまして、大部分訂正いたしました。ところが憲法小委員会の議事録は当時は秘密会でありましたが、今日はマッカーサーが米本国憲法成立の経過を報告いたしまして、これを日本の学界に限つて翻訳を許した。そうして昨年六月の「国家学会雑誌」に出ております以上、小委員会の憲法審議の経過を発表してはいかがでありましようか。これは法務大臣でよろしい。あるいは法制局長官でも、緒方副総理でもよろしいから御返事願いたい。発表すべきものであると私は確信いたします。
  121. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。憲法制定の経過に関連して小委員会お話がございましたが、小委員会と仰せられますのは、もしも当時の帝国議会における小委員会のことでございますれば、これは国会のことでございますから、政府として別段申し上げるべき筋合いではないように考えております。
  122. 北昤吉

    ○北委員 私は法制局長官がかつてに発表できないことはわかつておりますが、アメリカでも秘密裡にホイットニーに命じて調査させたのに、今日ではその経過を発表しておる以上は、日本も発表すべき政府責任があると考えますが、いかがでございますか。緒方副総理にお願いいたします。
  123. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私から一応お答えさせていただきますが、御承知通り新憲法の草案の関係では、政府関係における手順の場面と、それから国会の御審議の場面と、両方あるわけであります。政府関係における手順の場面は、案は御推察の通り司令部関係の報告が、ある程度の消息を伝えております。あるいはこれに対する間違いといいますか、向うとこつちとの考えの違いというようなことを訂正すべき場面も、これは起り得るかとも存じますけれども、むしろ先生のおつしやるのは、この衆議院における、北先生が大いに御活躍になりましたあの小委員会の場面というものが、私は重大な場面だろうと思います。ところが、これは御承知通りに、衆議院の中にできました小委員会でございますから、実は政府からも私が事実上のお手伝いとして入らせていただいたくらいでありまして、あれは実は政府には関係のないことでありまして、国会の方で御判断願うべき事柄ではあるまいか、かように思いましてお答えを申し上げたわけであります。
  124. 北昤吉

    ○北委員 これは国会に請求いたしておきますから、どうぞよろしくお手続を願いたい。ことにその当時ホイットニー民政局長から幣原さんに非公式に話した点は、三つの点は、質問も相ならず、訂正も相ならず、タブーのごとく伝えられた。第一点は、国民主権、天皇象徴の点であります。第二点は、日本の戦争放棄、無防備、第三点は、貴族の称号廃止、皇室財産を全部国家に帰属せしめる。これは質問してはならぬということでありましたから、私は国防のことについては一言も述べま、せんでした。しかしながら、これは事実であることは、マツカーサーの国務省への報告が「国家学会雑誌」に出ております。マーク・ゲインの記録とまつたく同じものが出ておりますから、これは御承知のことと存じます。すでにマッカーサーが本国政府へ報告し、日本の学界に翻訳を許した以上は、それくらいのことは当然日本国民が知らなければならぬ権利があると私は考えますから、政府の方も発表について御協力を願いたいと思います。さらに当時の貴族院と別々に審議に入る前に、貴族院と衆議院側と意見の協調を保ちたいと思いまして、私は貴族院の要望に応じまして、法律学界の泰斗山田三良博士、山川端夫博士、古島一雄さん、元貴族院議長徳川家正氏の四人とわれわれ同士が七、八回会合いたしまして、一定の協調点に達しました。これが山田三良手記として私の手元にあります。その中で実現に努力してある程度まで実現ができたのでありますが、実現のできなかつた点が相当あります。訂正の第一点は、第一条天皇は国の元首であり国民統合の象徴であるとすること。一体象徴ということを二つ用いるのは用語例としても悪いから、私はこれは質問いたしました。天皇を元首といつたところが、天皇の権能は憲法にちやんときまつている。権力がふえるわけじやない。国民統合の象徴という言葉は、少くとも私の研究では、ピーター・クロポトキンのフレンチ・レボリューシヨンにある。これはフランス時代にはやつたので、金森さんにあとで話したら驚いておつたのですが、天皇は単なる認証の役目、そうしてときどき投票権を与える。シンボル・オブ・ナシヨナル・ユニテイという出典もあります。しかし、シンボル・オブ・ステートということになると、アメリカあたりでは多く国旗になるのであります。しかるに日本の憲法にこういうものが入つておるが、これもけしからぬと思う。それからまたこの山出三良博士の手記には、例の憲法第九条の問題について、侵略戦争はやれないが、国防を禁ずるという第二項を取除けということでありました。当時私もそれを主張したかつたのでありますが、国際情勢上不可能であつた。けれども国家として国防力のあるのが当然であるということは、アメリカの独立当時の憲法の前文にこう書いてあります。当時は孤立主義で、侵略主義も何もないときでありますが、「吾人合衆国人民は、一層完全なる連合を組織し、正義を確立し、国安を保持し、国防に備え、衆庶の福利を増進し、吾人及び吾人の子孫に、この自由の慶福を保障するの目的をもつて、この憲法をつくる」と書いてある。世界に国防のない国はほとんどありません。私の考えでは、国家というものの定義が普通の社会と異なるところは、国内においては、法律を励行するに背景に力があり、外からの侵略に対して守るべき力がある。この二つの力は、社会をして国家と異ならしめる要件であります。有名な宗教哲学者トレルチ教授もそういう結論を下しております。日本がまる裸である限りは、国家としては不完全国家と私は考えますが、緒方副総理はどういうお考えでありますか。
  125. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。国が独立いたします以上、自衛力を持つことは当然であると考えます。
  126. 北昤吉

    ○北委員 そこで自衛力の問題に移りますが、今までの議会の質問応答を聞いておりますと、戦力ということに議論が集中しておるようでありますが、戦力についての木村保安庁長官お答えがどうもはつきりしない。現に、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」について、戦力には原子爆弾があるとかないとかいうことを言つているが、戦力というのはここではそんな問題ではない、陸海空軍を持つてはならない。その他の戦争濳在力、言いかえてみれば、戦争に役立つすべての力が戦力です。せんつても法制局からも出したようですが、私はふに落ちない。これはポツダム宣言において軍需産業を禁じております。ポツダム宣言の有効下であるから軍需産業まで禁じております。言いかえてみれば、その他の戦争潜在力でありますから、保安隊の名でもつて軍隊の補助行為をやる保安隊を禁ずること、もう一つは、軍事訓練を禁ずること――現にドイツは、第一次世界大戦後におきましては、ヴェルサイユ条約で軍隊を十万に制限された。ところがドイツはジッヘルハイツ・ポリツアイをつくつた。ジツヘルハイトは保安を意味し、ポリツアイは警察隊です。ちようど日本の保安隊と警備予備隊をチャンポンにしたような名前です。初めは警察隊で、それを何万とつくつて、いつ何どきでも正式の軍隊に繰り込めるようにした。それを禁止する意味のねらいであります。それでありますから、保安隊をつくる目的が、純然とした国内の治安を維持するならばいいけれども、軍隊の補助となる性質を持つものならば、日本の憲法は禁じております。ところが吉田総裁あたりの御説明では、軍隊の補助ではないと言つておりますから、私は憲法の忠実な解釈だと思います。しかしながら戦力というものは、戦争に役立つ目的でこしらえておる警察予備隊、軍需工業、軍事訂練だと思います。この点について、保安庁長官、あるいは法制局長官の御答弁を願いたい。陸海空軍を除いたその他の戦力です。あなた方は誤解しておるようです。
  127. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 憲法制定に御関係の先生からの御質問で、お答えする方もむずかしいと思いますけれども、私どもの当時から了解しておるところを一通り申し上げたいと思います。今お話で兵器工業その他いろいろのものをおあげになりました。またポツダム宣言の実行というようなお言葉もございましたが、私どもの了解いたしておりましたところでは、この憲法の前にポツダム宣言というものがあつたことは事実でございますけれども、この憲法とポツダム宣言とのつながりは、少くとも今日におきましては、そこは遮断されていると見なければならないと思います。なお当時におきましては、御承知通りにポツダム命令の形で、司令官の方のさしずに基きまして、兵器生産は絶対に禁止するとか、あるいはまたわれわれがその家に保存しております刀のごときでさえも、全部向うの指令で取上げられたのでありますけれども、われわれといたしましては、憲法そのものと、それらについてのさしずというものは、二元的に考えておつたわけであります。いわんや今日におきましては、この第九条はすべてこれらの因果関係が切れておるのでございますから、独自にこれを考えなければなるまいということで、先般来政府で御説明申しておりますように、第九条というものは、第一項が本体であり、その第一項の目的を達成するために、第二段の備えとして侵略戦争に役立つべきような一切の戦争上の力というものの保持をここで禁止しておるという建前に読むべきことは、当然であると存じますので、その第二項によつて禁止されております力というのは、これは総合的に観察して、それに役立つかどうかということを判定されなければならない。従つて個々の軍需工場とか個々の兵器とかいうもののみによつては、その判断ができないのではないかというように、ずつと考えて参つておる次第でございます。
  128. 北昤吉

    ○北委員 どうも今の答弁では満足いたしません。おそらくこれは何人も満足せぬと思います。これは目的から来るので、目的をそこへ置かないならば、いわゆる戦力となり得るものであつてもかまわぬと思うのです。ところが政府は戦争をやる道具に使わないというのですから、私は政府説明に賛成しているのです。それは平和産業でも戦争になればすぐ軍需産業になります。硫安工場は火薬工場になります。すりこぎは、みそをするすりこぎでも、人をなぐることもできる。平和的のものは全部戦争の武器になる。しかしその目的でつくらぬということが根底であります。それでこういうことはふらち千万だというので、当時の貴族院の山田博士や、それから山川博士、吉田総理の政治指南番といわれた古島一雄翁も、この第九条の二項はとつてもらいたいという注文をして、私のところへ書面が来ております。マッカーサーの命令でこういうものをつけた。それであるから、私はこういう軍備の全廃というものは講和条約できむべきもので、憲法の中に入るべきものではない。この憲法そのものがポツダム政令の一種で、戦勝国に対する一種のわが証文と私は考えている。今独立国になつた以上は、わが証文は徹底的に訂正すべきがわれわれの権利であると思います。木村保安庁長官の御答弁を求めます。
  129. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま法制局長官からお答えいたしました通りでありまして、憲法第九条第二項の規定は第一項を受けております。もとより独立国となつた以上は自衛力を持つことは当然であります。これは禁止しておりません。御承知通り、国権の発動たる戦争と武力による威嚇、武力の行使は、国際紛争解決の手段としてはこれを永久に放棄する。従つて法制局長官の言われたような、侵略戦争に使うような力を持たない、これであります。外国から不当に侵入された暴力行為に対しては、これは自衛力の行使をして何ら妨げないと考えております。ただ第二項において戦力を保持しないというのは、大きな近代戦争を遂行するような力を持つと、これは侵略戦争の具になるのでありますから、その点においてそういう大きな戦争に役立つような力は持たさないぞという規定にすぎない、私はこう考えます。
  130. 北昤吉

    ○北委員 どうも説明が不十分です。目的の差で戦争に使うつもりでなかつたら何をやつてもよろしいのです。ところが使われることは事実です。使われるものはいくらあつてもよろしい、私はそう思います。ただこれは徹底的の非武装の条項であると認めなければならぬのは、別項に「交戦権は、これを認めない。」交戦権を認めなければ攻めて来たのを守ることもできぬ、こちらから攻めて行くのももとよりいかぬ、双方とも出て来て出会い頭の遭遇戦もいかぬというのであるから、これは絶対非武装、絶対戦争放棄の条項であると私は承つております。それ以上は意見の相違でありますが、これはマッカーサーは当時は日本とドイツをまる裸にすれば、ソ連と提携して世界の恒久平和ができるという空想から出発したので、日本の憲法の前文も何とかという軍人が書いたので、世界の信義と公正に信頼するとある。ところが世界は二つにわかれて冷たい戦争をやつているから、憲法の前提がかわつたから安全保障条約を結んだのであります。すなわち世界が二つにわかれたからこの条項はたな上げされた。そこで憲法の最高法規に条約を遵守すべしというのがあるから、それで日本の自衛力を増してもさしつかえない。たとえば今では国家に完全独立という国はありません、インデイペンデンスというのはありません。インデイペイデンスがなければデイペンデンス、従属だといつて左派の諸君は攻撃しますが、私は中間のインターデイペンデンス、相互助け合つて行くという事実がある。現に第一次大戦において英米は統帥権をみずから制限しました。フオッシユ元帥を総指揮官にした。当時疑問がありました。けれども主権の自発的制限としてフオツシユ将軍を終戦の年に総指揮官にした。今度も同じことで、初めはアイゼンハウアーが総指揮官で、今はリッジウエイです。そこで相互援助条約、集団保障というのはインターデイペンデンスの概念から生れたものである。せんつて張群が来たときに私はたびたび遊びに行きましたが、張群はさすがに言葉がうまい。今は合作時代であると言つた。ちようど合作というのはインターデイペンデンスに当つている。日本人は頭が単純だから独立か従属というが、今日は合作です。それは合作の会社をやつても、向うが七割でこつちが三割で弱いです。これは現実の問題だ。私は最高法規のうちの、日本国は締結したる条約及び確立せられたる国際法規は、これを誠実に尊重するという項を注意したい。これは私は非常に大事な規定であつて日本一国で自国を守れないことはわかつておるから、国際情勢がかわり、国際間の信義と公正に信頼することができないから、安全保障条約を結ぶ、そうして国内規定と矛盾する点はありましても、横田喜三郎博士も言つておる通り、こういう弱小国は国際条約に優先的の地位を与えろと、私はその論者であります。現にこの憲法も世界普遍の道徳的、政治哲学的原理に立つて制定されておる。その道徳的政治哲学的普遍原理を基礎として憲法が立つておる以上は、今日は国際法、あるいは国際条約の優先主義時代であります。主権の制限時代であります。それを政府がはつきり説明しないで、ごまかしばかり言つておるから、われわれ学究はどうしても満足できない。それでアメリカの要求は、日本の実力に応じてやればよろしい。しかし貧乏なので軍隊を持つというわけには行かぬ、アメリカは日本を裸にした責任があるのだから、アメリカがうんと金を出せば、多少持つのもよろしい。アメリカが出さなければ持つことはできない。一体ソ連に何らの脅威がないという彼らの錯覚から生れたのだから、錯覚を訂正する意味において日本に武装が必要であり、そうして互いに民衆国の安全を保つためには、元の戦勝国が弁償すべきものである。弁償しなければこしらえないでよろしいと私は考えている。いかがでありましようか。
  131. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。今のお尋ねにつきましては、結局この条約関係ということに重きを置いて考えれば、諸般の事態はきわめて簡潔に解消しはしまいかというお考えだろうと存じます。さような考えを述べておられる学者もおりますことは、先生の御指摘の通りであると思います。が、政府は先ほど來申し上げましたような立場から、実は今まで説明しておりまして、またその説明方法は間違いではないと存じます。ただ先生のお考えが悪いとかいいとかここで御批判は決して申し上げません
  132. 北昤吉

    ○北委員 国内規定としての憲法では絶対国防軍はできない、それは危険だから国際条約で日本を守つてくれる以上は、その趣意に従つて応分の努力をするのは当然で、常識的のものである。現に国際条約尊重の規定はドイツの旧憲法にはなかつた、それをモデルとした明治憲法にもなかつた。アメリカの憲法では最高法規の一部として国際条約は尊重すべしという規定があります。ドイツも第一次大戦に負けた後は、ワイマール憲法をつくらされたのであるが、これには麗々しく思い切つて第四条に「一般二承認セラレタル国際法規ハ独逸国法ノ一部タル効カヲ有ス」とある。条約尊重の規定は近代的な憲法にはどこにも入つておる、日本は日米安全保障条約を賛成しなければよろしい。憲法の国内規定と矛盾するから否定すればよろしいが、すでに賛成した以上は、私は条約に従つて応分の国防力を持つてよろしいと考えておる、これは政治問題になりますから、緒方副総理からお答えを願いたい。
  133. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 憲法の解釈に属しますので、法制局長官からお答えいたします。
  134. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど申しました通り、さような考え方は有力な考え方として世間にございますけれども、その考え方を推して参りますと、実は私ども懸念いたしますのは、条約の形をもつてすれば憲法の違反ができるのじやないかという方に、だんだんとその結論が行きはしないかということをおそれるものでありますから、われわれ条約といえども、やはり憲法のわくの中にあるという建前でおります関係上、にわかにその方へ便乗をいたしておらないというのが実際でございます。
  135. 北昤吉

    ○北委員 憲法はそういう不都合のものならばかえる準備をして、それがために国会の三分の二の賛成を得て、国民投票できまる、昔の明治憲法のような天皇に改正の発案権がある千載不磨の大典ではない。どうせアメリカが日本にこしらえてくれたのだから、日本に不都合ならどんどん直すのがあたりまえである。これをいつまでも守つておる気持が私にはわからない。現に共産党も憲法審議のときに、野坂君は国防力のない国は独立国ではないと反対しております。社会党の諸君も今日では、平和憲法を守れと金科玉条に言つておるが、社会福祉をうんと取入れた英国の労働党のやり方を憲法に盛り込んで、修正案を出して、決戦で負けて、やむを得ず次善の策としてこれに賛成した以上は、社会党もやはり憲法改正の義務があり、権利があると思う。いまさらアメリカ憲法というわけに行かぬから、平和憲法を守れ、平和憲法の一箇条にたよつて再軍備反対論をやつておるのは、私はどうもわからぬ。共産党も初め軍備に賛成した。それは日本の軍隊を扇動しなければ革命ができない。今度アメリカの軍がおつて日本がそれを少し幇助しておるから、革命をやれないから、軍備撤廃と戦術転換をやつただけである。元来は憲法改正にはみな反対した。だから私は社会党の諸君は堂々と憲法改正論を述べるべきであると思う。国民の厭戦思想に乗じて平和憲法を守れ。私は攻めるというつもりはありません。軍備は相当持つてつても攻めないのが値打がある、金持が金を使わないで倹約してこそ値打がある、貧乏人が倹約するというのは何も値打がない。醜婦の貞操論と同じように、ほかの者が相手にしていない者が、自分は貞操堅固だと言つてもそれは相手にしません。相当の国力を持つてつてそれを侵略に行使しないのが値打がある。日本は道徳を昂揚するならこれくらいの道徳を昂揚したらよろしい、手足を縛られてから、無抵抗主義を唱えてガンジー派になつてしまうのと同じじやありませんか。私は国防は国力に応じて、ことにアメリカの援助によつて相当に増してよろしい。しかし急にやれというのは当らない。憲法をかるえだけの準備をしなければならぬ。そのほか私はアメリカの原案を修正して悪くなつた点を少し申し上げます。アメリカは大統領が閣員を任命するときには、アメリカの上院の過半数の承認を要すると同様に、日本でも総理大臣が閣員に任命する際に、衆議院と参議院の過半数の賛成を要することになつていた。私はそれをかえるに非常に努力いたしました。ちようど社会党の一年生議員の鈴木義男君や森戸君が、いつでも野党のつもりで極力反対した。それで私は片山君と水谷君にお願いして、君方も政権をとるときにそういうことじや不便だろうと懇請して、ようやく原案を訂正し、総理大臣が閣員を自由に任命してよろしいことにした。吉田総理は少しその権力を濫用して、かつてに首を切つたり、かつてに任命している。これは私の努力の結果でありましたが、努力のかいのないことになつてしもうて、いささか後悔しております。そういう点からいつても何とかかえなきやならぬ。それから国会は国権の最高機関だといいながら、総理大臣の一存で内閣をつくつていつでも解散し得ることは少々変である。これなども憲法上内閣が衆議院をかつてに解散する権利はあります。そうして解散して負けた場合にまた解散することもできる。どうせ金のない政党は負けて、金を使う政党が一番勝つて、絶対多数はできるけれども、それは政治道徳では許されない。国の最高機関がかつて政府によつて解散されるならば、最高機関ではないから、古島一雄、山田三良、山川端夫の三氏は、国会は最高機関という規定はやめろと言つていた。また国会で制定した法律が違憲となつて最高裁判所で判決して無効になる。この規定からも、国会は国権の最高機関じやありません。アメリカのような議会を国権の最高機関としないにもかかわらず、解散はできないものである。米国ではすなわち議会には立法権があるとだけ規定している。こういう点からも日本の憲法は不都合です。また誤訳を指摘すると一時間や二時間はかかりますが、次の議会までに私は詳しいリストをつくつて、十五箇条くらい指摘いたします。憲法草案は金森君に聞いたら、外務省の下つぱの官吏が訳したといつて責任をのがれておりますが、外務省は由来誤訳の名人で、「人民の名」事件でも誤訳から出発したのであります。岡崎外相のもとには弱卒はないと思いますが、誤訳は私どんどん指摘して御参考に供しますから、どうか訂正してもらいたい。その点からも薄ぎたない中華民国人の日本語のような言葉で、そうして誤訳だらけの憲法です。たとえばここに一例をあげれば、「内閣の助言と承認により」とあるが、これは誤訳じやないか、助言と勧告によるということにしなければならぬ。それから内閣は「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」とあるが、内閣総理大臣なら総理でよろしい。英語じやコンダクト・ゼ・ステート・アフェアーズとある。これは国務を処理するというのです。総理ならスーパーヴアィズである。コンダクト・オブ・ゼ・ガヴアメントなどいう用語は幾らでもあります。こういう誤訳だらけのものを、私は相当直したけれども、仮縫いの悪いものは本裁ちも悪くなる。あなた方は誤訳の責任感を解除する意味においても、率先改正に努力しなければならぬと私は考えます。これは警告を発する意味であります。  最後に岡崎国務大臣に簡単に質問します。岡崎国務大臣は、いろいろ非難もあるようでございますが、議会の答弁は用心深く、私は敬意を表する一人であります。ただ吉田総理が米ソ戦争の危険がないということばかり言つておりますが、これは危険があるという説と、ないという説があるから、相当に危険ということを言わなければ、国防に対する熱意も起きないし、国民道徳も高揚しません。現に昨日の日本タイムズのうちに、ウォルター・リップマンという評論家が――よく御存じでしようが、こういうことを言つておる。ロシヤは西ヨーロツパにおいてはあまり刺激しないように、そうして今度は、フランスやイギリスに対し、アメリカがあまり国防のことをやかましく言つて困るからというので、アメリカとフランス、イギリスを仲悪くするために、戦争がないことく宣伝利用しておる。もう一つは、ドイツと日本とにアメリカに対する不満を起させる。もう一つは、西欧諸国と植民地の不満を起させるという政策を用いて、いわゆる資本主義国同士の摩擦を目的としておる。それに乗つてはならぬ、大いに危険があるということを書いております。米ソの緊張が薄らいでいるというのは、ロシヤの宣伝におのずから乗つておる。私はいつやつて来るかわからぬと思う。現に朝鮮でも共産国側は実にしつこいのです。  もう一つ参考までに述べておきますが、共産党の復且大学の教授で林彪の参謀を長くしておつた朱天森君が日本に亡命して来て、共産党の内情を暴露いたしておりますが、中共とソ連の密約に日本占領計画がちやんとある。十年戦争が起きたときにはどうするという部署まで発表しております。私は張群君のところに行つて、これはどう思うと言つたら、この朱というのは相当の共産党の幹部であるから、ある程度まで信頼すべきものじやないかと思う。日本人は共産党が攻めて来ないからまだぼんやりしておるが、非常に憂うべきことだと言う。政府がちつとも危険がないことく宣伝するから、国防の必要があつても国防の熱はない。木村保安隊長官が熱心に主張するだけであつて、無援孤立の状態でお気の毒である。やはり国際状態が緊張したときには緊張したことをはつきり知らさなければいかぬ。情報局が今度できて、緒方君あたりが総裁になるかしれぬが、かつての小磯内閣の当時のように、サイパン奪還を宣伝したり、レイテが天目山だと宣伝し、レイテが陥ちたら今度はルソンが天目山だという。そういうようなことで再びやつてもらつては困るのであつて、やはり真実は真実として語つて、国民に決意を促さなければいかぬと思う。岡崎国務大臣の御所見を問います。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お説はその通りでありまして、私も実は演説の中では、決して楽観をしたつもりで言つておるのじやないのでありまして、平和条約もでき、日本では国内体制は万事平和のようになつておるけれども、目を転ずれば、必ずしもそうじやないということを述べております。ただ、ただいまのところは北大西洋条約とか、その他民主主義国家の軍事力とか、あるいは軍事力を今形成せんとしておるが、それと経済的の力、あるいはその他の方面の力が、共産圏の力よりもまさつておるようであるから、一時戦争は遠のいておる観があるけれども、決してコールド・ウオーは減るものじやない、こう考えておるのであります。私どもは、やはり民主主義国家の団結を強くすることができさえすれば、それだけ戦争の危険が防げると考えておりますが、今お説のように、いろいろの意味で足並を乱そうという方法をとつておりますからして、これに乱されないだけの強い決意をもつて対処しなければいかぬ、こう考えておるわけであります。
  137. 北昤吉

    ○北委員 実は私は憲法小委員のときに、臨時法制調査会の第二部長を勤めて、国会法と参議院法とをやつていました。草案をアメリカ側へ持つてつたけれども、みな最後には無視されまして、これでやれと言われた。これは命令ですかと言つたら、ストロング・レコメンデーシヨン――強き推薦だというので、どうにもならぬから泣寝入りしたが、私の目から見ると、陸軍の大尉か少佐くらいのチンピラの連中でありましたが、やはり占領軍の背景の威力があるためかしこまつて聞きましたが、この国会法などは、さつそく改正してもらわぬと困る。われわれのつくつた国会法はこんなものじやない。これは古い代議士は同感だろうと思うが、今は各分科にいろいろの法案を出すが、これは衆議院の本会議で第一読会のときに説明するようにせぬと、みんな小さい事にとらわれてしまつて、政治の大局がわからぬ。これもかえるべきだ。また参議院法のごときも、これは貴族院でこういう要求を出して来た。当時の国会は衆議院及び参議院の両院からなる、参議院の規定をかえて参議院は参議院法の定めるところによるとすべきであつた。ところが参議院と衆議院はともに国民代表となつたものだから、二重代表ができてとんでもないものができた。当時の芦田委員長も、第二院は各国に歴史がある。英国の貴族院、アメリカの上院はそれぞれ歴史があるが、日本において二院を今から設けることは、歴史的に背景がなし、意味があいまいである。初めての試みであるから弾力性を持たして、いつでも訂正の余地がなければいかぬ。ところが国会は衆議院及び参議院からできておる。どちらも国民代表だと規定してしまつたから、現在は参議院の性格は当初の目的とはそむいて非常に国政の運用を妨げておる。これを直すには憲法を直さなきやならぬ。国会法も直さなきやならぬし、憲法も参議院に関する点だけでも直さなければならぬ。これはどなたか、緒方さんはその時分にはしろうとでわからなかつたでしようが、犬養君は知つておるでしよう、犬養君ひとつ答えてください。
  138. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。当時小委員として北君と毎日研究して参りましたことは事実でございますが、ただいま法制意見は――こういう事務的のことを申し上げてはしかられますが、法制局長官の方にまかせてありますので、さよう御承知願いたいと思います。
  139. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私では申訳ございませんけれども、私の承知しております範囲において申しますれば、憲法の制定に伴いまして、国会法その他参議院の制度、選挙法等々は、今お話にございましたように、先生方を煩わしまして、実は政府で審議会をつくつて研究いたしました。ところがその憲法が実施になりましてから、国会の制度というものは、むしろ国会の方御自身で御研究になるという建前が確立しつつございますので、そういう点も考えまして、政府からとやかく申し上げるのはかえつて差出がましいことになりはしないか、それをおそれる次第でございます。
  140. 北昤吉

    ○北委員 現にマツカーサーの憲法制定時代の最高顧問をしておつたノース・ウエスタン・ユニバーシティのコール・グローヴ教授が、一昨年八月にぼくに手紙をよこしている。その手紙は、私は初めから日本の憲法の軍備禁止条項は乱暴だと思つているから、早い機会に訂正したらどうですかとあつた。これを私は吉田総理に――私は追放中でありましたが、高瀬大臣を通じてごらんに入れた。こういうコール・グローヴ教授は侵略ずきの人かというと、そうじやない。大山郁夫君がアメリカに亡命したときに、非常に保護いたしまして、大山郁夫君がアメリカに安全に暮せたのはこの先生のおかげです。私もアメリカで会いました。こちらに来ているときには、マッカーサーの憲法最高顧問です。その最高顧問すらこの憲法をかえたらよかろうと言つて来ております。それほどになつているのに、いまだに改正の意思なしとは不可解である。元来参議院制度などという事実正体のわからないものをこしらえた。これは御承知のごとく米国側では一院制にしろと言つたのである。日本側では二院制にしてくれと頼んだ。そうしたところが、国民代表ということを忘れぬならという条件をつけられて二院制になつた。国民代表が二重になるわけはない。私はむしろ参議院は間接選挙の方がいいと思う。いろいろ案をつくつてつたけれどもだめだつた。そうして参議院は全部一般投票にすると言つたときに、向うの連中が、ハイ・フアー・ゼ・ベスト・アンド・ゼ・シンプレスト、最上でかつ最簡単であるといつてほめたのであります。けれどもこんなことでは金がたくさんかかつて、大金持か、天理教の信者の団体か、あるいは労働組合の者しか出せない。一流の学者など出られません。山田三良博士、山川端夫博士などの学士院出身、一流の芸術家とか、画家とか、文学者とか、いやしくも文化国家である以上は、一流のそういう者を出さなければならないのに、出す余地がない。演説して当選するような学者にろくな者はありません。文化国家の本来の面目を損じているのは、今の参議院制である。この参議院制度をかえて――衆議院と同じ国民代表にしたというところに憲法の欠陥がある。金ばかり使つて能率の上らぬものは参議院だ。これを改正しなければならぬ。それを改正しなければ、私は一人でも改正を叫びます。そして党議にそむいたといつて除名するなら、私は除名されてもかまわない。これだけ申し上げる。
  141. 太田正孝

    太田委員長 福田赳夫君。――福田君に申しますが、農林大臣は引継ぎ等の関係で今日は出ることはむずかしいということでございます。御了承願います。
  142. 福田赳夫

    福田(赳)委員 農林大臣に対する質問は後日またお許しを願います。  まず私は大蔵大臣お尋ねしたいと思うのですが、今度の予算案を見ますと、最も重大なる問題は給与の問題である。給与のこの予算を見ますと、その背後には人事院の勧告でありますとか、あるいは国鉄裁定だとか、電通の調停であるとか、さような国の制度として存在する機関勧告調停というものが横たわつている。しかも本予算案においては、その全額を承認しないで、一部を承認しているのでありますが、これはまず政府委員でもよろしいのでありますが、もしこれらの裁定調停、また勧告を全部承認するといたしますれば、さらに本年度において幾ら金がいるか。また平年度において幾らいるか。これを御説明願いたい。
  143. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。人事院の勧告は五月から三〇%アップということでございまして、人事院勧告に応じまして、おのおの国鉄あるいは専売、地方公務員、そういうふうに全部バランスを見ますと、八月にさかのぼつて実施いたしますと、中央地方を通じまして、千二百二億円要すというわけであります。従つて政府案に比較いたしまして、五百六十七億を増加する次第でございます。これを十一月からということにいたしますと、八百四十四億円でございまして、政府案に比較いたしまして二百九億円ということに相なります。国鉄裁定は二〇・三%アップで、八月に遡及するという裁定でございます。年末手当は団体交渉ということになつておりますので、この金額はまだ未決定でございます。八月まで遡及するということにいたしますと、約四十億円を要する見込みであります。専売裁定につきましては、これも年末手当についてまだ裁定が出ていない点がございますが、大体六億円程度を要すると思われます。
  144. 福田赳夫

    福田(赳)委員 これは大蔵大臣でも総理でもよろしいのですが、一体人事院の勧告でありますとか、あるいは調停であるとか、裁定、かようなものはいかなる性質のものであるか。これを政府が取扱うにあたりましては、どういう態度でこれを扱つているか。この点について明快なる御答弁を願いたい。
  145. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。人事院勧告とか、その他の裁定につきましては、十分これを尊重しております。
  146. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私は今大蔵大臣からお答えになつたようなことを伺つたんじやない。国法上どういう性質のものとして扱うおつもりであるか。こういうことを勧告調停また裁定について、個々別々にお答え願いたい。
  147. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。人事院の勧告された給与につきましては、これは一般職の国家公務員について出されるわけでございます。一般職の国家公務員につきましては、能業権を禁止せられておりますので、その代償として人事院が適正と認められる給与を勧告されるという建前になつているわけでございます。いわゆる公共企業体につきましては、これは団体交渉権を持つている。従つて労使間において給与その他について交渉権を持つているのでありますが、こういつた公共企業体の性質にかんがみまして、公共企業体労働関係法におきまして、調定あるいは最後的にはその仲裁裁定を出す。その裁定なりは十分尊重いたすべきものでありますが、他面国民経済その他に及ぼす影響ということを考えまして、公共企業体労働関係法の十六条第一項で、予算上資金上不可能なものは政府を拘束いたさない。政府といたしましてはそういつた点を考え合せまして、給与の問題を考えておる次第でございます。
  148. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そういたしますと、この勧告にいたしましても、あるいは裁定にいたしましても、調停にいたしましても、非常に重大な意味を持つておる。ことにただいまの御説明によりますと、勧告のごときは罷業権にかわる措置として認められておるものである。これをその裁定または調停勧告によらず予算を編成するにつきましては、非常に大きな理由がなければならぬ。この理由につきまして一つ一つ御説明願いたい。これは政府委員でよろしゆうございます。
  149. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。国家公務員につきましては罷業権を禁止せられておるのでありますが、給与につきましては職務の性質、あるいは責任程度に応じてきめるというのがその原則であろうと思います。また国家公務員法にもそれに類似した規定もございますし、一般の生計費、民間の賃金その他の事情をしんしやくして人事院がこれを勧告する、こういう建前になつております。もちろん人事院自体としていろいろな考え方はおありになると思いますが、私ども政府立場としていろいろ考えましたことは、昨年十月実施せられました現行水準の現在までを考えてみまして、CPIは大体物価の関係を見まして一・五%程度であり、また民間給与の上昇も二〇%以内であるというようなことを考えまして、また一方財政の面からも考えて、これが国民経済に及ぼす影響、つまり結局は国民の租税負担になる、あるいは運賃の負担になる、そういつた点をかみ合せ、財政の許す限度といつたような点とも総合勘案いたして、この問題を考えた次第でございます。裁定につきましても同様な考え方をいたしておる次第であります。
  150. 福田赳夫

    福田(赳)委員 昨日どなたかの質問に対しまして、大蔵大臣裁定等の線に寄れなかつたという理由につきましては、これは財政上の理由であるというふうにお答えがあつた。ただいまのお話によりますと、そうではない。民間の給与とかいろいろな要素を考慮してという話でありまして、そこに事務当局と大蔵大臣で少し考え方の違いがあるのじやないかと思いますが、その点はさておきまして、この勧告また調停裁定は非常に重要な意味を持つておる。これはただいまの御説明で非常にはつきりいたしました。この重要なる意味を持つておる制度の扱い方、これは私は大蔵大臣の扱い方に対して非常に遺憾に思うのです。というのは、大蔵大臣は全官庁勤労者の親である、またその世帯の主人であるというふうにも考えられる立場にあるのであります。それが子供からねだられて、その額がねだられた通りに十分子供に与えられない。この与えられないという事態に対しましては、大蔵大臣として非常に苦しかろうと思う。また子供といたしましても非常に不満であると思う。この事態に対しまして、単に紙の上で、予算をぽつとほうり出して、これだけでほつておくというのでは、これは大蔵大臣としての思いやりが足りないのじやないか。こういうような重大な国の制度に基く諸制度から離れた予算を要求するにあたりましては、みずから率先して大蔵大臣は――大蔵大臣ばかりじやない、総理大臣までも、これはこういう事情でどうしてもこの線に寄れないのだという理由について、明快なる説明がなければならぬと思うのです。大蔵大臣が理解されるところによると、これは財政上の理由であるとのことである。財政上の理由であるとすれば、いろいろ想像し得る財源というものもあるはずである。あるいは自然増収がもつとあるかどうか。あるいは前年度剰余金をどういうふうに扱うかということも考えられる問題じやないかと思う。あるいは防衛支出金というようなことも問題になつておる。あるいはインヴエントリー財政を廃止するというような考え方をとなえる人もある。あるいは他の政府会計から借入れをするというようなことで、特別会計の場合は出せるというような議論をする人もある。いろいろ議論の余地がある。しかも大蔵大臣の見るところによりますと、来年は一千億の減税をするのだというようなことまで言つておるから、それだけの余裕があるならば、このくらいの金は出ないはずはないじやないかと思う子供心は、これは無理はないと思う。よろしく大蔵大臣は、こういう国の制度できめられた事項に背反する措置をやむななくとるという以上におきましては、国の財政経済全般の問題について、ほんとうに腹を打明けて国民と話し合う機会を持たなければならぬ。予算委員会は非常にそのいい機会だと思いますので、率直なる大臣の信念をお聞きしたい。
  151. 向井忠晴

    向井国務大臣 給与をよくしたいということは私の願望でございますが、これはやはり国民全体の負担になりますので、無理はいたすべきものでないと存ずるのであります。それから剰余金とか、安保の使い残りとか、いろいろおつしやいますが、安保の使い残りというのはただいまのところないはずでございます。それからインヴェントリーというのも、これは金になつていないので、これを金にするにはまた別の操作を要して、それがまた金融に圧迫を加える。それから給与の増加は一時でなく、これから長く続くものでありまして、財政上国民の負担ということを考えますと、どうしても今の程度でがまんしてもらわなければならぬ。それから減税でございますが、減税はやはりただいまの給与を受けている人にも及ぶので、間接には救済の一つになるだろうと考えております。
  152. 福田赳夫

    福田(赳)委員 非常に平面的なお話で、まことに私は不満でありますが、これはひとつ大蔵大臣に要望しておきたい。こういう重大な問題を扱うにあたりましては、ぜひあたたかみのある、血が国民と通い、また全官庁職員と通つた立場をとつてもらいたい、これをひとつお願いいたしたいと思います。  次に私は予算編成の上におきましてとらるべき根本的な問題一、二について、私の意見を申し上げ、それに対して大臣の御意見を承りたいと思うのであります。昨日どなたかの御質問に対して大蔵大臣は、私は手品師じやないと言うて非常に御謙遜でありましたが、私は大蔵大臣は手品師だと思う。というのは何か大きな予算――ここに大きな予算があります。七百九十七億円という大きな予算がある。こういう大きな予算が出る場合におきましては、その財源が必ずいるのです。その財源というものはだれが出すか。国民が払う。国民のふところに相当痛く響く問題であります。ところが今度要求した七百九十七億円の予算を見ますと、これは間接的には国民に響きますが、直接の当りというものが国民にない。手品の種がそこにあつた大蔵大臣は一方において予算の要求をする。七百九十七億円の要求がある、それに対しまして普通の場合でありますれば、またどこの国でもそうでしよう、これは増税とか国民の負担にかかわる財源増置というものがつきまとうわけであります。ところが今度の予算を見ると、これが非常にかわつておる、そういう七百九十七億円の予算を一方において要求しながら、他面においては減税をしておる。こういう手品は私は日本大蔵大臣でなければできないと思う。非常にお器用なことをされておると思うのでありますが、その器用な種が何にあるかと申しますと、これは自然増収という問題であります。今度の補正予算を見ますと、大体自然増収というものが千億円くらいある。その千億円を財源といたしまして七百九十七億円の予算を要求する、余る二百何十億というのはこれを減税に充てる、こう言うのです。この自然増収というのが、すなわち私は手品の種であると思う。これが非常に大きな芸当のできる種であるというふうに考えておるのであります。本年度は千億円というふうに政府においては計算されておりますが、しかしながら昨年度においては実にこれが二千億円あつたのであります。昨年秋の国会において政府説明するところによりますと、約千六百億円の自然増収があつたわけであります。これを財源にして、あの重要な問題であるところの再軍備の卵ともいうべき警察予備隊の増強の予算を計上した。これは非常に大きな問題です。警察予備隊予算は、日本の再軍備のきざしを求めるかどうかという大きな問題です。その財源といたしましたら、これは普通の場合でありますれば、必ず国民にその負担を求める増税措置をとるべきだ。ところが千六百億円の自然増収がある。そこで国民は腹が痛くない。もうすでにとられておる。そういう事態で、あの問題もその審議が非常にぼやかされてきめられたというふうに感じておるわけであります。本年度におきましてもまつたく同様、千億円の自然増収がある。この自然増収について大臣の御意見を承りたい点があるのです。自然増収というものが一年間に何%かあるという程度でありますれば、これは見のがし得る。またこれはあつた方がいい。ところが昨年のように二千億円もある。ことしもさしあたり千億円ある。この先また幾ら出て来るかわからない。そういうようなことでありますと、これは予算審議の神聖、権威、こういうものはつぶれてしまうのです。国民もこの予算の歳出に関する関心というものをちつとも持たない。非常にぼやけてしまいます。どうしても初めから適正に財源を見積つてかからなければならない。ここ数箇年におきましてさような悪い風潮が続けられておつたのでありますが、私はこれを向井大臣が今度は直してくれるだろうということを期待しておる。今度というのは、すなわち来年度の予算、これはぜひお願いしておきたいのであります。これが昨年におきましても、本年におきましても、私は金融を非常に圧迫しておると思うのです。昨年度におきまして金融の梗塞が非常に叫ばれた。その重大なる原因は、予算以上に二千億もよけいにとつてしまつて、そうして一方においてまつたく使わないんだから、これではどうしても金融が圧迫を受ける。もつともそれはあとで補正予算の財源として使いましたから、この問題は解消いたしたわけでありますが、本年におきましても、自然増収、政府は予算に歳出予算として計上しておる。ほかに千億円もよけいとるのですから、これは金融を非常に圧迫する。これに対して日本銀行が調整をとればいいじやないか、これはそう簡単に行くものではない、どうしても自然増収をさように放漫に見積るという制度は、私は向井財政において改めてもらいたいという熱望を持つておるのであります。この点に対して御所見を承りたい。
  153. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまのお話はしごくごもつともで、私は全力を注いでそういう方向に努めるつもりでございます。
  154. 福田赳夫

    福田(赳)委員 自然増収と関連して問題になつて来るのは減税であります。今度の予算を見ますと、自然増収の未収分を使つて減税をするというのです。この減税というのは、私は非常に注意していただきたいので、意見をお聞きしたいのでありますが、減税減税と言われる。減税々々と言うものですから、国民はふところからとられる金が少くなるかという印象を与えられる。昨年におきましては約一千百億円の減税というものが行われた。昨年春の国会におきましては七百億円、秋の国会において四百億円。春の国会の七百億円という減税案を見ますと、七百億円はなるほど国税においては減税したのです。ところが地方税の方で七百億円増徴しておる。とんとんなんです。その七百億円の国税の減税だけを減税々々と言うものですから、国民はたいへん負担が軽くなるかと思うけれども、そうではない。地方税の方でよけいとられてしまう。秋の国会もそうです。秋の国会は四百億円の減税、所得税の控除を三万円から五万円に引上げるというのです。しかし三万円から五万円に引上げるというのは、これはあたりまえなことなんです。この三万円の基礎控除がきまつた当時から比べてみると、物価が逆に上つておる。物価が上つたからそれに調整をとるのであつて、減税ではないのです。さらにどうも私の遺憾とするのは、減税減税と言いながら、それと同時に郵便料のごときは、はがきを二円から五円に上げておる。その他鉄道運賃を三割上げる。いろいろな値上げをしておる。これで減税が千百億円だと非常に喧伝されたのでありますが、今度の補正予算の減税案を見ますと、それに比べるとまだましです。まあ大体においていわゆる法規上の減税案であるということは私は申せると思うのです。でありますが、減税ということをあまり言われると――これはその反面におきましては、あなたがここに計算されているような自然増収というものは、国民がとられておる金で、国民は減税をされながらしかも多額のものをとられておる。来年一千億円減税するというようなことをおつしやいましたが、これはひとつよほど大蔵大臣としては言いまわしを気をつけてもらいたい。今後の財政の前途を考えますと、あなたはどう思つておられるかしりませんが、非常にむずかしいと私は思う。来年の予算は一体無事に編成できるかどうか、きわめて寒心にたえないところでありますが、その折に、来年は一千億円減税してやるんだというような言いまわしは、きわめて警戒を要するし、また大蔵大臣としては慎重に取扱つてもらわなければならぬ問題だと思います。安くしてやる安くしてやるといつて、あとでよけいとられるよりは、現下の情勢ではこうなのだ、税は重くなるかもしれないが、その際にはがまんしてくれといつておいて、あとで少くとられてよかつたという方が国民としてはよほどいいのです。その通り正しくまつすぐとやつていただきたいのでありますが、そういうお考えはあるかないか、ひとつ御意見を承りたい。
  155. 向井忠晴

    向井国務大臣 原則的には、ただいまのお言葉通り、まつすぐに正しくやつて行くつもりでおります。
  156. 福田赳夫

    福田(赳)委員 予算編成上の問題として、歳出方面にも私は同じ問題があると思う。今国会を傍聴しておりましても、安全保障費というような問題が非常に論議される。これはもともと私は今年度予算を編成する場合におきまして、内容がきまつていなかつたのじやないかと思うのです。まだ内容がきまつておらない、内容をきめずにこれを予算にとつて、予備金式にとろうとした費途が、今日一割も金が使えなかつたという事態に、現われて来ておるのではないかと思いますが、もう安定した独立日本の財政でありますから、さような組み方はやめてもらいたい。来年度におきましては、かような使途不明なる予算は絶対に計上することがないかどうか、ひとつ御所見を承りたい。
  157. 向井忠晴

    向井国務大臣 使途不明の歳出ではないつもりでおりますが、なお政府委員から御説明を申し上げます。
  158. 河野一之

    河野(一)政府委員 昭和二十七年度は占領から独立への過渡期でありまして、なかなか事態のはつきりしないものが相当あつたのでございます。原則的にはそういう経費の起り得べきことが見込まれながら、この内容が具体的に決定しない予算が編成され、それが実行の当初になるまでわからないというものが相当ございましたので、おつしやいますように、安全保障費でありますとか、平和回復善後処理費とかいう経費を置いたのでございます。しかしその後におきまして、相当事態がはつきりいたしまして、計画も具体的に着々進行して参つて来ておるのでございます。安全保障費につきましても、先般大蔵大臣が御説明申し上げたのでございますが、たとえて申しますると、施設の関係四百二十億円のうち、現在設計その他に着手しておるものが百九十億ということを申し上げたのでございますが、これらはいずれもその具体的な場所がすでに決定いたしておるのでございます。陸軍関係で七十億というようなことを申し上げたのでございますが、旧陸軍の相模工廠跡に建設するものが二万四千坪とか、あるいは群馬県の大田の旧中島工場跡に建設のもの二万坪、あるいは朝霞のキャンプに一万六千坪とか、そういつたものを合計いたしまして約八万坪程度のものが、すでに決定いたしております。海軍の関係におきましても、京浜地区の各種の施設を横須賀に集中する関係で、約六千坪の計画が立つておるのであります。その関係において、これはいろいろございますが、約一万坪の施設が明くということになつておるのであります。佐世保についても同様な問題がございます。また空軍の関係において、先般百億ということを申し上げたのでございますが、東京地区における各種の施設を接収いたしまして、あるいは三鷹の家族の宿舎であるとか、あるいは福岡県の芦屋の飛行場方面であるとか、あるいは立川の空軍司令部の問題であるとか、あるいは千葉県の白井の施設であるとか、府中の施設であるとか、そういつたところで約七万坪というものが、すでに具体的に決定いたしております。同じく空軍の関係で、名古屋地区におきましては、約一万五千坪というものが具体的に計画ができております。これによつて解除を受ける施設も現に決定いたしておるような次第でございます。ただ米軍の関係において、二百三十億円がまだ最終的に確定いたしておらないということを申し上げたのでございますが、これも実は敷地その他の関係から、まだその確定的な段階に至つておらないのでございまして、大体東京、横浜、大阪、名古屋、神戸等の各都市において、現在米軍が一時使用中のものが五十六万二千坪ほどございます。このうち先ほど申し上げました各種施設で明くものが、二十三万九千坪に上ります。残り約三十二万坪でございますが、そのうち施設を要すると思われるものが、大体二十三万坪ほどあるのでございます。これは今後米軍といろいろ交渉いたしまして、敷地の選定等に今後着手して行く段階になると思うのでございます。通信関係の施設二十五億ということを大臣が申し上げたのでありますが、福岡、甲子園、横浜、奈良、横須賀、相模原等における市内、市外のケーブル関係で約七億円を現在使用しております。その他のものにつきましては、これからできます施設及び今後確定するであろう施設のために、充てられるものであるのでございます。道路及び港湾の関係につきましても、まず道路の関係におきましては、第一次のものといたしましては、富士山麓、礼幌―千歳間、東京―座間の間、第二次には大高根演習場であるとか、片貝町であるとか、あるいは佐世保方面、八戸といつた方面を約三十九路線をすでに着手いたしております。それから港湾の関係におきましても、救難艇の基地といたしまして、大阪、八戸、塩釜、宇島、室蘭というところをやつております。大体施設といたしましては八戸、川崎、久里浜、博多、そ他の各種の施設があるのでございます。先般道路港湾の関係で、未確定の分が約五十億あるということを大臣が申し上げたのでございますが、その後十二月の二日に大体決定いたしまして、第三次分といたしましてすでに二十億予算をつけております。これは非常に多数の府県にわたりますが、演習関係で約八億円、航空基地の関係で四億七千万、キヤンプあるいは鋪装費等に充てられて、現在経費を出しておる次第でございます。防衛支出金につきましても、これは御承知のように、五百七億でございますが、この経理の方法といたしましては、各四半期の三十日前に、米軍から割当要求書というものを出しまして、それを政府において審査いたしまして、当該四半期の開始後十日以内にこの金を合同支出官の勘定に振り込むということになつておるのでございます。その関係で第一・四半期に九十四億七千三百万円、第二・四半期と第三・四半期でそれぞれ百三十八億三千三百万円、合計三百七十二億ほどがすでに交付しておりまして、残り百三十五億円ほどを、明年の一月十日までに振り込むということになりまして、これは全額支出になる見込みでございます。それから施設その他の借上げなんかにつきましても、すでに確定いたしておるものもございますし、それからその後の状況によりまして、現在無期限使用しておるものにつきましても、着弾区域にあるとか、あるいは滑走路になつておるとかいうようなことで、農地等につきまして相当買収をいたさなければならぬものがあるのでございます。約七、八百町歩ほどのものは買収を要するのではないかと計画を立てておりますが、現地の農民その他と、その金額の折衝等につきましてまだ折合わない点がありますので、支出の段階に至つておらないのでございます。大体こういつたものについては、年度内において支出負担行為、つまり契約なり指令なりができると思つているのでありまして、現在のところ安全保障費、防衛支出金その他の経費の全体を通じまして、不用が出る、余るということはないものと考えておる次第でございます。
  159. 福田赳夫

    福田(赳)委員 まあ気をつけて使つてもらいたいと思うのでございます。大臣は貿易方面の大家として認められておられますが、これは御所管の問題じやないのでありますけれども、財政統轄の立場とは非常に関係のある問題でありますから、大蔵大臣からひとつお答え願いたい。  昨今の貿易不振の問題であります。今貿易が昨年あたりに比べますと非常に不振である。輸出品の滞貨が一千億円ある、こういうふうにいわれておるのであります。しかも国の生産力は政府の統計によりましても、戦前の四割増しというところまで来ておる。貿易だけが非常に下つておる。戦前の四割にもならぬという非常な不振な状況にありまするが、これは私は世界の経済情勢というものが非常に災いをなしておるというふうに思うのであります。昨日小笠原通産大臣から、中共貿易につきましては大転換があるんじやないかというふうに受取れるところの答弁があつたのでありますが、向井大蔵大臣は、その道の権威としてどういうふうなお考えを持つておるか。
  160. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。私は貿易通だと思われましても、それほど通でもございませんが、中共貿易につきましては、昔の中共貿易と今の中共貿易とは大部性質が違うものと存じております。ただいまでも香港との商売には幾分中共貿易の片鱗が現われていると思うのでございますが、ただいま中共はやはり政治的な不安定とか、産業の不振というふうなことで、出す物もそうたくさんはないようですし、同時に購売力も減退しておるようでございます。それからもう一つ、日本として原材料をとるのに、中共はわれわれの求める相手として都合のいい国でございましたが、今では中共としてはやはり世界の状態をよく知つてつて、必ずしも自分の国でできる値段で外国に売るというふうなことはいたしませんで、国際的の値段でよそに売ることに努める関係上、そう安易に向うから物をとることができない事情があると私は推察しております。それで中共貿易をかりに大いに振興するつもりでおりましても、さほどの望みがかけられないのではないかというふうに考えております。
  161. 福田赳夫

    福田(赳)委員 大家の御意見として非常に傾聴いたしたのでありますが、次に英帝国領域との貿易でありますが、英国は昨年保守党内閣ができましてから、オタワ協定の線によつて、いわゆる英帝国主義経済政策というものをとつておる。その結果日本にも相当大きな影響があるのであります。このオタワ協定の線を乗り越えて、英帝国領域に日本の貿易というものが大いに今後進展し得る見込みがあるかどうか、これについてはいかなるお考えでありますか。
  162. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。英帝国のやり方は、私は近年存じませんが、以前には英帝国またはその関係諸国が、日本の物をなるたけ入れないようにというふうにやつた例もございますが、その土地の人たちはそれにもかかわらず、日本の物が安い、またはそういう国に適している品物があるので、買いたいという気持と相牽引といいますか、いわゆるバランスしまして、国の施策にもかかわらず相当に仕事ができたのでございます。今度は日本の物を、あるいは外国の物を、なるたけ買うまいという国の方針が英国関係にはできておる。ところがそこに住んでいる人たちも昔ほど力を持たないために、それに順応するという意味でなく、やはり購買力が減つておると思うのでございます。そこでこういう状態に加うるに、日本はポンドが欲しくないというふうな気分があつて、つい半年くらい前までは、日本の通商貿易上にも非常にそういう考え方が勝つていた。両々相応じてどうも英領との商売が減退したと思うのであります。今ではポンドを欲しくないという気分が日本としてはよほど薄らいで来て、ポンドで物を売つても別に心配はないというふうになつて来たと考えます。将来はわかりませんが、そういう事情で今後販路の研究及び品質の厳選というふうなことをやりまして、今までよりは、こちらからの主観的に見ました状態は、よくなるものと思うのであります。ただ先方の事情がますます悪化でもすればやむを得ないのでございますが、それもイギリスの保守党の施策で、向うの状態も漸次改良して行くようでございます。今後は幾らか改善の方向に行くものじやないかというふうに考えております。
  163. 福田赳夫

    福田(赳)委員 敗戦日本の経済というものは非常に沈滞し、ことに最近の経済というものは非常に不況でありますが、結局この活路として貿易の伸張に求めるという政策が今までとられて来た、こういうふうに私は思うのです。明治、大正、昭和と、日本の経済力というものは非常に伸びた。その伸びた過程というものは、貿易の伸張の波に乗つて伸びたというふうにまで考え得られるのでありますが、ただいま大臣お話を承りますと、中共の方はなかなか見通しは困難である。また英帝国方面におきましても、主観的には希望は持てるが、先方次第だというところもありますし、また東南アジア方面といたしましても、私はなかなかこれは購買力の問題で、そう日本の商品が出て行く余地もなかろうかというふうに考えるのであります。そこで私は、この敗戦日本の経済をどういうふうに持つて行くかという根本的な考え方の問題といたしまして、貿易一点張りという政策というものについて、少し反省をしなければならぬ時期に来ているのじやないかというふうに考えるのであります。もとより貿易の進展にも努力しなければならぬけれども、同時に外国から買うならわしのものでありまして、しかも日本ででき得るものを大いに国内において生産するという政策、これをひとつ大いに考えて行かなければならぬ時期に来ているのじやないか。経済政策のかじのとり方を、この方向に大きく持つて行く必要があるじやないかと考えるのであります。大蔵大臣はいかなる御見解を持たれておりますか。
  164. 向井忠晴

    向井国務大臣 お答えいたします。福田君のおつしやいましたことは、ちようど戦前第二次欧州戦争前に、特にドイツの人が外国におるときのやり方を見ておりますと、今おつしやつたような精神が横溢しておつたと思うのです。たとえば日本でドイツ人が物を買いますのに、文房具のようなもの、これは日本の物を買う方がはるかに安いのはわかつておるのですが、わざわざドイツの物を買つておる。実にそろばんからいいますと、迂遠きわまるようでいて、腹の底には非常に大きな考えを持つていると私は思つたのでございます。それでこれは政府に言われてやつているとは私は思わない。やはりドイツの人の愛国心が経済上に現われているというふうにとつたのでございます。そういうふうに外国から物を買うことを防いで、ある場合には自分の国のもので間に合わせる、あるいは外国の物に劣らないものをこしらえて自分で使う、そういう精神をもつと活用するということが日本の経済を助ける上に非常に大切なことだろうと存じます。
  165. 福田赳夫

    福田(赳)委員 この意味からいたしますと、食糧問題というのが私は非常に大きな問題じやないかと思う。日本の経済政策のほんとうに第一位の問題として、食糧増産問題というものと取組んで行く必要があるのではないかというふうに考えておるのでありますが、この問題は農林大臣が見えましてから追つて伺うことにいたします。  最後に、これは政府委員でいいのでありますが、今度の予算に常々問題になつておりまする陸軍共済組合というのがあります。陸軍共済組合の職員にして四十五歳未満の人がその恩典に浴しなかつたという問題があるが、これは非常に私ども気の毒に思つておる。ことに私ども陸軍の予算を長く担当いたしておつた者といたしまして、非常にじきじきに感ずる問題でありますが、これが予算に入つておるかいないか、ちよつと見たのですけれども、わからないから御教示願いたいとともに、もしなければ来年度の本予算においてはぜひ考慮してもらいたい。
  166. 河野一之

    河野(一)政府委員 陸軍共済組合の四十五歳未満の者に対して、年金をやるかどうかという問題だと思います。これはよく御存じ通りに、海軍関係におきましては四十五歳までは停止条件でありまして、その後において四十五歳を過ぎて年金が給付せられる。陸軍におきましては四十五歳未満であつた場合には、一時金をもらつて、そこでおしまいになつて、四十五歳になつても年金はもらえない、こういうもともとの制度に違いがあつたわけであります。すでに消滅した権利を新たに復活するという問題については、非常に各方面関係するところが多い関係上、現実には非常にお気の毒な方も多数ございますので、目下検討をいたしておる次第でございますが、できるだけ近い間に解決をつけたいと思つておるのでございます。従いましてこの補正予算にはその金は計上いたしておりません
  167. 福田赳夫

    福田(赳)委員 それでは、農林大臣に対する質問を留保いたしまして、私の質問を終ります。
  168. 太田正孝

    太田委員長 尾崎末吉君。――ちよつと尾崎君に申し上げますが、ただいま外務大臣は渉外関係にて会談中でありますので、出席できぬとのことであります。よろしゆうございますか。
  169. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それではあとに残します。  大蔵大臣にまず伺いたいことは、数字上の問題でありますから、もしおわかりにならなければ政府委員でもけつこうであります。二十八年度における国民所得の見積額は、大体何ほどくらいか、もしそれがまだはつきりわかるところに行つておりませんならば、二十七年度よりは相当ふえるかどうか、これについて伺いたい。
  170. 河野一之

    河野(一)政府委員 二十八年度の国民所得につきましては、目下経済審議庁を中心といたしまして検討をいたしておる段階でございまして、その計数を申し上げる段階には参つておりません。しかしいろいろな情勢からいたしまして、今年度の国民所得よりは、ある程度はふえるであろうというふうに推測いたしております。
  171. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 まだ見通しはつかないが二十七年度よりは相当にふえる、こういう考えだ……(「あの程度だ」と呼ぶ者あり)それでもけつこうです。ある程度も相当も大体似たようなものだ。そこで伺いますのは、二十六年度には画期的の減税だといわれた減税に成功をいたしまして、その二十六年度の予算は、超均衡予算といわれたほどのものであつたのでありますが、それにもかかわらず、国民所得と予算との割合は大体一七%程度であつたのであります。さらに二十七年度当初予算におきましては、しばしば議論をされておりますように、防衛支出金の六百五十億、安全保障諸費の五百六十億、警察予備隊費並びに海上保安庁費中警備救難費等を合せまして、六百十三億、合計一千八百二十三億円というものが、この二十七年度の予算の中に計上せられたのであります。もつともその前年度までの終戦処理費というものがいらなくなつたのでありますから、これらを差引きますれば、九百億余円の計上にすぎないことにはなつたようでありますが、ともかく一千八百二十三億円というものが計上された、他面これらの経費ににらみ合せまして、経済力充実のためにも必要と思われる諸経費が、二十六年度よりははるかに多く組み込まれておつたのでありますが、こういうことによつて八千五百二十三億円という、かつて前例のない巨額に達したのであります。これをもつてしましても、国民所得の見積額五兆三百億に比しまして、やはりその二十六年度に似た一七%弱という程度の予算であつたのであります。そこで二十八年度予算編成の方針をこういうところから考えますならば、細部にわたつての成案はもとよりまだできてないということでありましようが、この二十六年度、二十七年度の予算編成の方針から考えますならば、大蔵大臣の今までの御説明伺いましても、均衡財政は堅持いたして行く、こういうことのようでありますから、そういう点から考えてみますと、二十七年度並びに二十八年度、この国民所得に見合つた一七%前後の予算の編成がなされるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、これらの予算編成に対する大体の方針を伺えますれば、幸いだと思うのであります。
  172. 向井忠晴

    向井国務大臣 国民経済に対しまする負担と申しますか、財政上の負担をかけます程度は、決してそれをふやして行こうという考えはございませんで、やはり国民経済の規模において、今後の予算を組んで行きたいと存じております。
  173. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大体前年度及びその前年度に似たようなやり方で編成なさる、こう了承してよろしゆうございますか。
  174. 向井忠晴

    向井国務大臣 規模はそういうふうにいたしたいと存じております。
  175. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そういたしますと、その二十八年度予算なるものと、自衛力漸増という問題とに関連しての質問でありますが、自衛力漸増ということがいわれますと、この漸増ということは、あたかもこれに要する予算を一年ごとに年々漸増して行くかのような印象を、国民に与えておるのであります。野党の諸君でも、そうした議論をいたしておる人があるのであります。でありますから、これをはつきりするために、御質問申し上げるのでありますが、本年春の通常国会の再開冒頭の一月三十日と三十一日に、私が自由党から総括質問をいたしました際に、大蔵大臣がこういう答弁をいたしておるのであります。それは野党の諸君から盛んに論難をせられた一千八百二十三億円というものの、その論難の可否は別といたしまして、ともかく一千八百二十三億円という予算よりも、次年度、すなわち二十八年度以降幾らかずつでもふえて行く見込みなのか、一千八百二十三億円という限度内で、二十八年度以降においてもこれをまかなつて行くのであるか、こういうことの質問に対しまして、いわゆる内外情勢の特殊な変化があるか、物価等に著しい大きな変動があつた場合には、多少の変更があるかもしれないが、そうでない限りは、この一千八百二十三億円というものを下まわることがあつても、これより上まわるような防衛費というものは計上しない方針である、こういう答弁をいたしておるのであります。このことをその翌日の三十一日に、吉田総理に対しまして重ねて質問をいたしましたところ、吉田総理も当時の池田大蔵大臣方針と同じである、こういう答弁をなさつておるのでありますが、二十八年度以降におけるこの自衛力漸増ということにつきまして、この経費は前に池田大蔵、吉田総理両大臣が御答弁になつたような、そういう方針でおやりになるつもりであるかどうか、これをはつきりお尋ねいたしたいのであります
  176. 向井忠晴

    向井国務大臣 自衛力という点につきましては、国民経済の発展とか、国民生活の維持向上という点を勘案しまして、あくまでも健全な財政をやります上からいつて、ただいま申されました通り、来年度の予算編成の場合に、総理ないし池田前大蔵大臣の言われた通り、ふやして行きませんような考えでおります。
  177. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうしますと、吉田総理や政府がしばしば言明をせられました通りに、再軍備ということは、今はその時期ではない。やろうとしてもできないのだ。何よりもまず国民経済力の充実向上が第一であるのだという、このことを頭に置いて判断いたしますと、自衛力漸増ということは、保安隊の装備を強化するとか、訓練その他においてこれを強化するとかいうことが、いわゆる自衛力の漸増であつて、予算の漸増ではない、こういうことがはつきりいたして来るのであります。  そこで伺いますのは、二十八年度予算が、今向井大蔵大臣の言われた通りであるといたしますならば、先に伺いましたように、国民所得が二十七年度よりもある程度増加するという見込みであるというのでありますから、この治安防衛費の増加が二十七年度よりもふえないといたしますならば、相当多額の減税を行うといたしましても、経済力充実のための諸費に、二十七年度よりは相当大きな予算が有効に使い得られる、こういうように了解してよろしゆうございましようか。
  178. 向井忠晴

    向井国務大臣 来年度におきましては、軍人恩給というふうなものがありましたり、またベース・アップもございますので、幾らかそういう点において金高の増加を見ると思いますが、電源開発とか食糧増産、土地改良、その他経済地盤の充実強北に資するようなものに、財政投資の拡充もはかりたいと考えております。
  179. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大体今の御答弁でおよそのことは了解ができるのでありますが、この中で特に伺つておきたいと思いますことは、この前の、同じ吉田内閣でありますが、その内閣におきまして、過年度災害を三年間に復旧するという計画を立てて、その第一年度分が、この前の予算に計上せられておつたのでありますが、この過年度災害は、必ず三年以内に復旧せしめる、こういうことについてもかわりないものと了承してよろしゆうございますか。
  180. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。今後の災害復旧につきましては、できるだけその方針で進みたいと考えております。
  181. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そういたしますと、大体大蔵大臣の御答弁は、いわゆる食糧の増産のためや、その他産業経済の開発のために、できるだけの経費を使いたい、こういうふうに了承いたしたのでありますが、今の災害復旧の問題とあわせて、特に伺つておきたいと思いますことは、――運輸大臣はまだでしようか。
  182. 太田正孝

    太田委員長 四十五分に来るということでありますが、まだちよつと……。
  183. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それでは運輸大臣が見えましてから、この問題をあわせて伺いますが、なおその前に大蔵大臣に伺つておきたいと思いますことは、昨日河野君の御質問に対しての御答弁に、鉄道や船やその他交通方面に関する事柄については、特に政府の強い施策を加えたい、こういう意味の御答弁があつたのでありますが、私がここに特に伺つておきたい問題は、鉄道や、港湾や、船や、それらに関する重要な施策については、十分の御尽力をなさるというふうに了承いたしたのでありますが、特に鉄道について伺つてみたいと思いますことは、鉄道は公共性を持つということにおいて、他の公共事業とかわらないというよりは、もつと公共性の強いものだというふうに私は思つておるのであります。ところが今の国有鉄道公社を見ますと、公共性を持つということと、一方独立採算制をとらなければならないということとの、相反した二つの性格が一緒になつていることは御承知通りであります。従つて、これは国有鉄道公社ができまして以来、いつの国会でも論議せられておることでありますが、公共性ということを主として運営をやろうといたしますと、新線の建設等におきましても、採算の成り立たないところでも建設をいたしてもらいたい、また独立採算の上からいうならば、やめてしまつた方がよさそうなところでも、ぜひともなお増発をしてもらいたい、こういうような要望、要求というものが、引続いて各地から出て参つておるのであります。ところが反面、独立採算を主としてやつて行かなければならないということになつて参りまして、その両者の調和をするために困つておるというのが、現在の国有鉄道であります。現在行われておるいわゆる国有鉄道の争議等も、こういうところに大きな原因があるように私は見ておるのであります。でありますから、この相反した二つの性格というものを、どこかで政府が調節いたして行かなければならない、こう私は考えておるのであります。この二つの相反した性格のものを調節をいたして参りますには、独立採算の成り立たないような路線、その他の鉄道の事業から生ずる不足の経費、赤字、これに対しては政府が一般会計の中から繰入れて、この相反した二つの性格を調節して行くべぎものだ、こういうふうに私は思つておるのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  184. 向井忠晴

    向井国務大臣 公共事業のような性質を持ちます点からして、鉄道には赤字が出る場合がある。それを一般会計から助けて行くということは、ある場合は必要やむを得ないことと存じまして、これを行うつもりでございます。またそれによりまして生産増強に資することもあると存じますから、国家全体といたしましては、結果は良好になると見てよろしいと存じております。
  185. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大蔵大臣の非常に理解のある御答弁を伺つたのでありますが、なお強調いたしておきたいと思いますことは、ただいま御答弁になりましたように、直接には採算が成り立たない路線がありましても、いわゆる経済と産業の開発のためには、まわりまわつてこれが非常に大きな役割を果しておる。このことは大臣が御答弁になつたと同様に、私どもも考えておるのであります。こういうのでありますから、鉄道が赤字を生じ、あるいはまた経費が不足だというのに対して、ある程度の補助なり助成なりをやるということでなしに、さきに申しましたように、性格の違つた二つのものを調節するために、足らないものは一般会計の方から与えてやる、こういう方針をはつきりきめるお考えはないか、これをあわせて伺つておきたいと思います。
  186. 向井忠晴

    向井国務大臣 それはお考えとしてはいいのでございますが、とかく金を使うのに、適正な方に使わずに、その金が思いがけない方に使われるというふうなことがありますので、それを行いますのは非常に危険をも含んでおると存じますので、簡単に御同意はいたしかねるのであります。
  187. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 一般会計の方から与えたそういう金が、正しくない方面に使われるようなおそれがある、こういうようなことも一応私どもはわかるのでありますが、そういう点はもとよりそういうことのないような方法を立てておいて、原則としては今言うような公共性と独立採算制との調節をどこかでやるということをきめなければ、今のままの国鉄では、私は年々やりにくくなるだろう、これはしばしば論議いたしたところでありますが、こう考えられますので、何としても相反する性格の間をどこかで調節するということは、しつかりした方針をお立て願わなければならない、こういうふうに考えておるのでありますが、先ほどの御答弁以上の御答弁はできないでしようか。
  188. 河野一之

    河野(一)政府委員 尾崎さんのおつしやいます点は、ごもつともな点もありますし、過去においては、一般会計から、国民の租税負担におきまして、損益勘定の経費の不足を補つたということもございますが、最近におきましては、何といつても鉄道の収支も改善して参りまして、おつしやるような独立採算制と公共事業との間におけるいろいろ調和の問題はございますが、これはやはり第一義的には利用者が負担するべきものであつて、国民の一般的の税金で負担するということは、現在のところ考えておらない次第であります。ただしかし、それかと申しまして、政府がこの公共的な事業に対して野放しでおるというのではないのでございまして、今年度の補正予算におきましても、損益勘定の赤字として三十億円を資金運用部から貸し付けており、その他新線の建設あるいは腐朽設備の補修改良等につきましても、一部財政資金からこれを補つて、積極的に援助をいたしておるという次第でございます。
  189. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 御答弁に全部ではなく大体同意するのですが、ただ違つた点は、今の御答弁の中の、本来からいえば利用者が負担すべきものだという考え方は、独立採算制の考え方であつて、さつき申しましたのは、公共性という上から、採算の成り立たないところもやれというのであります。そこらのところは非常にむずかしいと思いますので、この問題は大蔵大臣もなお一層御研究を願つて、私が御質問申し上げましたような趣意に向つて進んでいただくように強く要望いたして、次に移ります。  ただいま河野政府委員の御答弁に、鉄通の新建設と補修改良の問題とが出たのでありますが、この建設と補修改良とに関しまして、新線の建設については公債でまかなつたらどうか、これは数年来の私の持論であります。そのいうところは、他の方面のことに公債を発行いたしますと、インフレになりがちの要因が生じて来るようでありますが、古くからの歴史を見てみましても、鉄道の建設に関する公債の発行等によつて、経済を圧迫し、インフレ等を助長したというようなことは、ほとんどその例を見ないようであります。いわゆる産業と経済の開発になるという積極的の意味だけでなく、その建設される路線がそれらの地方々々に限られておりますために、国民経済の全体に影響するということが生じて来ていないのであります。でありますから、この建設については原則として公債を発行せしめる。だたしこれにはもう一つつけ足しがあります。さき申しましたように鉄道は公共性を持つものでありますから、建設には公債を発行せしめるが、その公債の利息は政府の方でこれを補給してやつたらどうか。これが一点と、補修改良の問題につきましては、鉄道の益金によつてこれをまかなつて行く。今日私どもが実際見聞いたしておるところを見ましても、あの駅舎あるいはあの駅の付近の荷揚場、そういつたものをもう少し補修改良し、もう少し便利にすれば、もつと貨物も多くなり、旅客もふえて行き、すなわち収入が非常にふえて行く。こういう見込みがあるにもかかわらず、補修改良等ができなくて、そのままにいたしておる。こういうことを私どもはたくさん見受けておるのであります。でありますから建設の方には公債を発行せしめるが、利息は政府の方でこれを補給してやり、改良につきましては鉄道の益金をもつてこれをやらして行く。こういうことを強化いたして参りますれば、いわゆる交通事業というものがりつぱに発展して行く。従つて国の産業経済の開発になる、こういうことになつて来るのでありますが、この建設と補修改良に対する私の質問に対しての御答弁伺いたいのであります。
  190. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまでも預金部の資金から金の融通はいたしておるのでございます。金利を政府で持つという点までは行つておらないのでございます。よくそういう点は考えまして、できますことならばいたしますが、ただいまはそれを実行するというまでにはいたしかねます。
  191. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ただいまも政府の方から建設の費用等は若干出していらつしやることは承知いたしておるのでありますが、さつき申しましたように、建設公債等を発行いたしましても、これは国民経済をひどく圧迫するというようなことにはならないのでありますから、積極的に公債を発行せしめるか、または今までよりも、もう少し大幅の一般会計からの支出をやる、こういうことについての御決意はまだ出ないかどうか、これを重ねてお伺いいたします。
  192. 向井忠晴

    向井国務大臣 できます限り、一般会計からの補助をいたさないというふうに持つて参りたいと思つております。
  193. 太田正孝

    太田委員長 石井運輸大臣が出席されましたから……。
  194. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そこで大蔵大臣に対する質問をちよつと間を置きまして、石井運輸大臣にお伺いいたしたいのであります。おいでになるまでの間に大蔵大臣に対しまして主として伺つてつたのでありますが、この際運輸大臣から伺つておきたいと思いますことは、日本産業と経済の開発に最も大きな力を持つ交通事業、いわゆる鉄道あるいは船舶、港湾、航空、そうした方面に対してどういう御計画を持つておられるか、このことをあらかじめ伺つておきたいのであります。
  195. 石井光次郎

    石井国務大臣 鉄道につきましては、今後の政府の重要施策の中にも掲げてありますように、老朽を直すこと、あるいは新線を敷くというような問題について、特に力を入れて行きたいと思つております。老朽施設が非常に多くございまして、戦後努力をして国有鉄道当局がやつてつたのでありますが、幹線は一応かつこうがついたのでありますが、まだまだ地方鉄道などになりますと、不完全なものばかりであります。これをぜひ来年度から始めまして、ずつと引続きしつかりやつて行きたいと思つております。  それから新線は本年度に十二線ほど二十億の予算をもつてかかつたのでありますが、さらに補正によりまして約十線を始めるということであるのであります。これにつきましては、このごろの鉄道建設審議会の答申もありますので、なおこれを研究いたしまして実施に移したいと思つております。こういうことによりまして、本年度の補正も出していただいたわけであります。一番計画的に仕事を進行するためには、今までの十二線と今度補正によつて出て来るものと合せますと、どうしても百億近くの資金が来年度はいるのではないかと思います。この問題につきましては、財政当局その他とよく打合せて、できるだけのことをやつて行きたいと思います。
  196. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これも質問が中途半端でありますが、木村保安庁長官が他に御用件があつて時間の都合で出られるということでありますから、木村保安庁長官に一つお伺いいたしておきます。  防衛の問題につきまして、今まで論議せられたところを見ますと、これが再軍備であるとかないとか、あるいは防衛力が十分であるとか、ないとか、こういつたことだけが論議をせられて、かんじんの現在の保安隊等の実際の状況はどうであるか、その実情等についての質問がまだなかつたようであります。同時に、一体今の保安隊の志気というものは、どういうような状況であるか、こういうことについての質問がまだ聞かれなかつたのでありますから、今の保安隊の現状と、それからその志気、この点についてできるだけ詳細な御説明伺いたいと思うのであります。
  197. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいまの保安隊は、御承知通り警察予備隊を組みかえたのであります。前の警察予備隊は七万五千、現在保安隊は十一万にしようとして今せつかく努力中で、定員はまだ満ち足りておりません。警備隊は九千七百ぐらい、これは定員であります。現在まだそこまで行つておりません。来年の四月ごろに全部定員が満たせると考えております。われわれといたしましては、この定員だけは、ぜひ早く埋めたい、こう考えておる次第であります。  今お尋ねの志気の問題、これは私は非常に重要な問題であろうと考えております。御承知通り、わが国が独立国家として将来発展するにつきましては、まず何をおいても内地の治安確保が急務である、私はこう考えております。内地が平和に行くように、治安の面から見て、どうしてもこれだけは確保しなければならぬ。そこで御承知通り保安隊は、内地の平和と秩序を保持し、人命と財産を保護するために、特別に必要ある場合において行動する部隊、こうなつております。この重要な職責をになつておるのが今の保安隊、かつ警備隊であります。そこで保安隊、警備隊に対しましては、われらこそは、日本に最も必要なる治安確保の任に当るべき重責を負つておるのである、この自覚と責任感を十分持たせたい、その上にこれを基盤といたしまして、いわゆる愛国の精神を涵養、教育いたしますれば、志気は十分高場して来るものと考えております。現在私の視察した範囲内におきましては、志気は相当あがつております。これをいやが上にも、今申しまする重大なる責任感と自覚を持たせますれば、保安隊、警備隊員としての素質は向上して行くものと私は考えております。せつかく今後とも努力いたしたいと思つております。
  198. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 なお第二問でありますが、この夏に元の警察予備隊ができましてから二年の期間が過ぎて、隊員の中から相当に帰つた者があります。その期限が来て帰つた者の数と、残つた者の数、それから帰つた者は大体どういう理由で、警察予備隊、今の保安隊にいたくない、あるいはおられない事情になつたのか、その数とそれらの事情を参考のために伺いたいのであります。
  199. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安隊員、昔のいわゆる警察予備隊の隊員でありまして、期限が来て帰りました者は、大体におきまして総員の四割であります。これだけが帰つたのであります。その帰りました理由は、ごく少数のいわゆる自分たちは性格上予備隊員として不適当であると考えるからというものがあります。これはごく少数であります。大多数におきましては、家事上、家庭上の都合であります。この際特につけ加えて申し上げたいのは、新たに募集いたしました数であります。その比率でありますが、大体におきまして、一人募集するに対して応募者が約三倍であります。これはぜひとも一人の募集に対して少くとも五倍ないし七倍に持つて行かなければならぬと考えております。これらの点につきましても、保安隊、警備隊のあり方をよく理解していただきまして、その応募者の数を相当数引上げたいとわれわれは考えております。
  200. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 お急ぎのようでありますから、もう一つでとめておきます。アメリカから船艇等を借用いたすことになつておるようでありますが、これらの借用いたした借賃と申しますか、こういうものは全然無償でありますか、あるいは多少有償なのであるか、それとつけ加えまして、破損等をいたした場合にはどうするのか、沈没等をいたした場合にはどうなるのか、この三点についての御答弁をお願いしたい。
  201. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。アメリカから借り受けます船舶、いわゆる海上警備の任に当る船舶は、これはまつたく無償であります。全然アメリカの好意によるものであります。そうしてこれを返すときには原状に復すということになつております。しかし自然消耗した場合には、消耗品とかいうようなものはある程度は補償いたしますが、船の装備なんかについては自然消耗したものはそのままであります。そうしてこれが沈没した場合にはどうかということであります。もちろんこちらの故意過失によつて沈没いたした場合には、これは補償しなくちやなりません。しかし不可抗力によつて沈没したというような場合でも、これは双方の妥当なる点を見出して、そうしてその条件なり額なりをきめるということになつておるのでありますから、大体におきまして私はかりにそういう賠償をするといたしましても、ごく名目的なものであろうと了解しておるのであります。実情はつまり無償でそのまま貸してやる、返すときには返すときの原状ということが本来の趣旨だろうと、こう私は解釈しております。
  202. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 それでは保安庁長官に対する質問は大体これでおきまして、できるだけさつき申しました保安隊等の志気の高揚のために、各段の御努力を願うように御要望申し上げまして、時間の関係質問をこれでおきます。  次に先ほど中途でありました運輸大臣に対する質問の継続であります。先ほどの御答弁で一応御方針を伺つたのでありますが、その中で航空事業に対しましては、どういう方針を持つておられるか、いわゆる講和条約発効後、初めて日本の航空事業というものが許され、運航の方の事業も、航空機生産の事業もここに許されまして、国際社会にまみえるための第一歩のときでありますので、特にこの航空事業に対しましては、強い第一歩、基礎を築いてもらわなければならぬことは当然でありますが、これに対しましてどういう方針を持つていらつしやるかを伺いたいのであります。
  203. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。独立いたしまして、この十月から初めて日本航空――これは唯一の日本の航空会社でありますが、これも自分の持つている飛行機、外国製ではありますが、日本会社で持つ飛行機で飛ばすことになつております。国内はこれによりまして、今大きな飛行機が四台動いておるのであります。これがさらにそのうち二台加わりまして、北海道・東京、東京・九州福岡の間は一日に二往復、それから大阪はその間にさらに二往復というものが運航し得るような形になります。しかしこれから先の問題は、国内のもう少し拡充はもちろん、国際的に進出する問題の二つにわかれるのでありますが、国際的には今連合国側であつた国々からは、随時契約には許可書は出すのでありますが、乗り入れることが今できて、各国から日本に入つて来ております。これに対しては、同じ数だけの航路に向つて日本も飛行機を出していいことになつております。残念なるかな、今まではそういうことになりましても、日本側から飛んで行く飛行機の会社がないのでありますから、先月の中ごろに航空審議会の答申も得まして、それからまたいろいろ出願しおる団体も会社もあるのでありまして、近くこういうものを検討いたしまして、国際的にもまた国内的にもどうしたらいいか、また一つの会社がようやく羽を伸ばしただけでありますから、幹線はそれ一つにするか、あるいはもつと許すか、あるいは地方ローカル・ラインは、日本を全体として見るか、あるいは地方を二つくらいにわけて会社に許すか、航空審議会の答申では、ローカル・ラインは二つくらいに日本をわけて飛ばしたらいいだろうということが出ております。こういうふうな問題を比較検討して、はつきりと政府方針をきめて進行いたしたいと思つております。それは航路の問題でありますが、それをやるにつきましても、飛行場の整備ということが、非常に大きい問題になつて来るのであります。幹線のところは、飛行場が、アメリカ側の飛行場等によりまして、使えておりますし、空の設備も十分あるのであります。かりにローカル・ラインを許すといたしましても、ローカル・ラインに対するそういうふうな空中の設備等もまだないのであります。こういうことを来年度の予算で要求いたしたいと考えております。そういうものがきまりませんと、ローカル・ラインは許せないだろうと思つております。国内線は今現在日本の所有になつております飛行機につきましても、乗員は、アメリカ人でありますが、目下養成中でありまして、来年の夏ごろからは日本の飛行士が現われて来ることになると思うのであります。この乗員の養成、それから航空交通幹線の要員の養成というようなもの等が、非常に重要な問題になつて来ますので、これもだんだん始めたい、こういうような状態であります。
  204. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 時間が非常に切迫して参つたようでありますから、急いでもう一問運輸大臣に申し上げるのでありますが、造船用とか車両製造用とか、こうした種類の特殊鋼材に対しては、政府は何らかの補助、助成の方針を立てておられるかどうか。このことは運輸大臣大蔵大臣とに御質問を申し上げたいのであります。
  205. 石井光次郎

    石井国務大臣 鋼材の補給金問題は、これは私ども取上げてしきりに研究もいたしておるのでありますが、特に造船問題につきまして、国際市場に活躍をしてもらわなければならない日本の海運業、それからまた船そのものの輸出の問題、こういうことを考えますと、国際戦に勝てるにはどうしたらいいか。一番負ける点はどこかと申しますと、造船のごときは鋼材が高い。特に造船には、特殊鋼材と申しますか、ほかのものと違つた規格のものをつくるための費用というものが、外国と比べますと非常な大きな差であります。  そのためには、トン当り二万円くらいの補助を政府が出さなければ、国際戦には耐え得ないのではないかというようなことさえ言われておるのであります。しかしこういうことを直接やつたがいいか、あるいはそのほかの方法がいいかというようなことで、盛んにまだ研究がされておりますが、私の考えといたしましては、日本の鋼材をつくる技術が高度に進歩いたしまして、外国と競争し得るようになるまでの期間――これがどのくらいになるか、今ちよつと見当もつかないのでありますが、そのある期間は、相当な補助をしてでも造船の道を開く、そうして外国に輸出をし、また海運を盛んにするということが必要ではないかと思つております。その線に沿いまして、それぞれの役所とも御相談いたしたいと思つております。
  206. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまの鉄鋼に対する助成金とか補助金というようなことは、一応は有意義なことではございますけれども、やはり製鉄所が勉強をして、こういうものを安くできるようにしてくれませんことには、安易なる助成でもつて会社があたりまえの成績を上げて行こうというのは、あるいは無理ではないか。また造船の方でも、ほかの点でもつて合理化をして、鉄鋼がことに規格品を製造する上に多少高くつくというのを補つて行く精神が必要ではないかというふうに考えております。、
  207. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大蔵大臣のただいまの御答弁は一応わかるのであります。御趣旨の通りに、製鉄所等が特に研究、勉強をいたして行かなければならないことは当然でありますが、そういうことが実現をしますまでの間の過渡期と申しますか、その間はある程度やはり政府の方から強い助成の方法をとらなければ、現在の国際情勢から見て、この方面の仕事に間に合わない、こういうふうに思われることが強いのでありますが、そういう点についてのお考えを、簡単でけつこうですから、もう一ぺん伺つてみたいと思います。
  208. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまの御要求と申しますか、御意見につきましては、今急にそういう点の補助を出そうというふうに行きませんが、造船の仕事に対して利子の補給をするというふうな、多少まわり遠い仕事でございますが、業者を助ける意味のことは考えておるのでございます。
  209. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 受持の時間があと少しになりましたので、副総理、農林大臣通産大臣等に対する質問は後日に譲りまして、最後に大蔵大臣と本多国務大臣とがお見えでありますので、一つの御質問を申し上げたいと思うのであります。  それは税制改革ということはどうしても必要でありますが、この税制改革についてどういう基本的な構想を持つていらつしやるかということと、そのうちで、特に平衡交付金の制度をやめてしまつて、かわるに地方に財源を与える、強い税源を与えてやる、こういうようなことについてのお考えがあるかどうかということと、それから大きな会社等が東京や大阪に本社を持つてつて、地方に営業所がたくさんあるにもかかわらず、国税が東京や大阪等の中央にばかり流れて来て、地方の方にせつかく工場や営業所等があつても、地方は何ら潤うところがない。こういう現実を私は見ておるのでありますが、これに対して国税の上から、いわゆる現地税とでもいう考え方で、その国税の一部を何らかの方法で地方に与えてやるような方法は考え得られないかどうか。この二点と、さつき申しました税制改革についての基本的の御構想がありますれば、これを両大臣から伺つておきたいのであります。
  210. 向井忠晴

    向井国務大臣 税制の改正につきましては、政府は数次にわたる減税を実施して参りましたが、わが国の租税負担の現状はやはり相当重いものと考えますので、この負担軽減をはかるとともに、現在のわが国の経済にとつて、最も緊急の急務である資本の蓄積を促進する等の配慮のもとに、税制の改正を行いたいと考えまして、目下具体案を研究中でございます。中央、地方を通じての税制の調整もこの機会に実施したいと思うのでございますが、その点は政府委員から補足説明をいたしたいと思います。
  211. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 国税と地方税を通じます改正の問題は、昨日も申し上げました通り、なかなか関係するところが多くて、問題が実は錯綜いたしておるのでございます。主として地方税につきましては自治庁の方でやつておりますが、もちろん国税に関係するところが深いので、私どもの方といたしましても、慎重な配慮をいたしまして、目下いろいろ検討中でございます。昨日も申し上げましたように、どうも現状では財源が団体によつて少しでこぼこに過ぎる点がありはしないか、それから平衡交付金の制度がはたして今のような方法でいいかどうか、これはかえるといたしましても、それでは簡単に名案があるかということになりますと、これはまたなかなかやつかいなことがございまして、にわかに結論を下しがたい要素があるようでありますが、私どもといたしましては、できる限り国民全体の負担を増加しないで、しかも地方団体が、ある程度貧乏なところといえども、何とか財政がやつて行けるような行き方はないものか、そういうようなことを考えて行きまして、その際にはお話のようになるべく独立の税源を与えるのがいいというふうに考えておりますが、ただ課税を認めましても、貧乏なところはあまり入つて来ない、富裕なところはよけい入つて来るということになりますので、その辺の調整が実はなかなかむずかしいところがあるように思います。しかしこの点につきましては、よく地方庁と連絡しまして私どもとしても勉強してみたいと思います。  それからなお法人の課税を何か地方にわけてやつたらどうかというお話でありますが、現在におきましても法人の事業税それから法人に対します市町村民税は、これはそれぞれ各事業所ごとに実は課税いたしております。現在のところは特に中央に集中するおそれがないように、全体の利益を配分します際におきまして、本店の方に必ずしもよけい行つていない。それぞれその工場に働いております人の頭数で総体の利益を配分いたしておりますので、法人の事業税と市町村民税に関する限りは相当現地にも行つている。実際調べてみますと、大きな工場のある比較的小さい町村になりますと、法人の市町村民税だけで、会社の景気のいいときには、非常に厖大な収入になつているというような実例もあつて、これはかえつて財源の偏在を来しているというような例もございます。従いましてこの点につきましては、現在の地方税においてもそのようになつておりますし、国税の方をわけてやるというふうになりますれば、それはむしろ平衡交付金とか分与税とか、そういつたような考え方に相なるかと存ずる次第であります。
  212. 本多市郎

    ○本多国務大臣 すでは大蔵省の答弁答弁の余すところはないと存ずるのでありますけれども、地方財政の確立という見地からいたしましても、できるだけ平衡交付金による地方財政の不足額の補填を少くして、税源を与えて行くということが望ましいことであると存じます。しかし全然平衡交付金をなくするところまでその原則を押し通すことができるかと申しますと、今日実は府県の中におきましても、地元の徴税額はわずかに全予算の一、二割にすぎないというものさえあるのでございますから、これを全般的な税制として税源で満たすようにということは困難だと思います。またただいまの御質問にもありました通り、国税をもし地域別に分割して補填するという道でも講ずるならば、これはできない話ではありませんけれども、そうなりますと、税制というものを非常に混乱させることになりまして、これまた困難だろうと考えております。御趣旨の、できるだけ税源で与えて行くという方向には今後も研究努力いたしたいと考えております。
  213. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 もう三分残りましたから、最後に大蔵大臣にちよつと伺いたい。米の超過供出に対する支払い等についてはもう相当の準備ができておりますか、どういう段階にただいまなつておりますか、これを伺つておきたいと思います。
  214. 河野一之

    河野(一)政府委員 おつしやる意味がちよつとわかりかねたのでございますが、概算払いの意味でございましようか。
  215. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そうでございます。
  216. 河野一之

    河野(一)政府委員 概算払いができるように目下準備中でございます。
  217. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これでけつこうです。
  218. 太田正孝

    太田委員長 本日の質疑はこの程度にいたします。明日十時から、かねて申し上げました通り参考人の意見を聞くことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十五分散会