○北
委員 憲法はそういう不都合のものならばかえる準備をして、それがために国会の三分の二の賛成を得て、国民投票できまる、昔の明治憲法のような天皇に改正の発案権がある千載不磨の大典ではない。どうせアメリカが
日本にこしらえてくれたのだから、
日本に不都合ならどんどん直すのがあたりまえである。これをいつまでも守
つておる気持が私にはわからない。現に共産党も憲法審議のときに、野坂君は国防力のない国は独立国ではないと反対しております。社会党の
諸君も今日では、平和憲法を守れと金科玉条に言
つておるが、社会福祉をうんと取入れた英国の労働党のやり方を憲法に盛り込んで、修正案を出して、決戦で負けて、やむを得ず次善の策としてこれに賛成した以上は、社会党もやはり憲法改正の義務があり、権利があると思う。いまさらアメリカ憲法というわけに行かぬから、平和憲法を守れ、平和憲法の一箇条にたよ
つて再軍備反対論をや
つておるのは、私はどうもわからぬ。共産党も初め軍備に賛成した。それは
日本の軍隊を扇動しなければ革命ができない。今度アメリカの軍がお
つて、
日本がそれを少し幇助しておるから、革命をやれないから、軍備撤廃と戦術転換をや
つただけである。元来は憲法改正にはみな反対した。だから私は社会党の
諸君は堂々と憲法改正論を述べるべきであると思う。国民の厭戦思想に乗じて平和憲法を守れ。私は攻めるというつもりはありま
せん。軍備は相当持
つてお
つても攻めないのが値打がある、金持が金を使わないで倹約してこそ値打がある、貧乏人が倹約するというのは何も値打がない。醜婦の貞操論と同じように、ほかの者が相手にしていない者が、自分は貞操堅固だと言
つてもそれは相手にしま
せん。相当の国力を持
つてお
つてそれを侵略に行使しないのが値打がある。
日本は道徳を昂揚するならこれくらいの道徳を昂揚したらよろしい、手足を縛られてから、無抵抗主義を唱えてガンジー派にな
つてしまうのと同じじやありま
せんか。私は国防は国力に応じて、ことにアメリカの援助によ
つて相当に増してよろしい。しかし急にやれというのは当らない。憲法をかるえだけの準備をしなければならぬ。そのほか私はアメリカの原案を修正して悪くな
つた点を少し申し上げます。アメリカは大統領が閣員を任命するときには、アメリカの上院の過半数の承認を要すると同様に、
日本でも
総理大臣が閣員に任命する際に、衆議院と参議院の過半数の賛成を要することにな
つていた。私はそれをかえるに非常に
努力いたしました。ちようど社会党の一年生議員の鈴木義男君や森戸君が、いつでも野党のつもりで極力反対した。それで私は片山君と水谷君にお願いして、君方も政権をとるときにそういうことじや不便だろうと懇請して、ようやく原案を訂正し、
総理大臣が閣員を自由に任命してよろしいことにした。吉田総理は少しその権力を濫用して、か
つてに首を切
つたり、か
つてに任命している。これは私の
努力の結果でありましたが、
努力のかいのないことにな
つてしもうて、いささか後悔しております。そういう点からい
つても何とかかえなきやならぬ。それから国会は国権の最高
機関だといいながら、
総理大臣の一存で
内閣をつく
つていつでも解散し得ることは少々変である。これな
ども憲法上
内閣が衆議院をか
つてに解散する権利はあります。そうして解散して負けた場合にまた解散することもできる。どうせ金のない政党は負けて、金を使う政党が一番勝
つて、絶対多数はできるけれ
ども、それは政治道徳では許されない。国の最高
機関がか
つてに
政府によ
つて解散されるならば、最高
機関ではないから、古島一雄、山田三良、山川端夫の三氏は、国会は最高
機関という規定はやめろと言
つていた。また国会で制定した法律が違憲とな
つて最高裁判所で判決して無効になる。この規定からも、国会は国権の最高
機関じやありま
せん。アメリカのような議会を国権の最高
機関としないにもかかわらず、解散はできないものである。米国ではすなわち議会には立法権があるとだけ規定している。こういう点からも
日本の憲法は不都合です。また誤訳を指摘すると一時間や二時間はかかりますが、次の議会までに私は詳しいリ
ストをつく
つて、十五箇条くらい指摘いたします。憲法草案は金森君に聞いたら、外務省の下つぱの官吏が訳したとい
つて責任をのがれておりますが、外務省は由来誤訳の名人で、「人民の名」事件でも誤訳から出発したのであります。岡崎外相のもとには弱卒はないと思いますが、誤訳は私どんどん指摘して御参考に供しますから、どうか訂正してもらいたい。その点からも薄ぎたない中華民国人の
日本語のような
言葉で、そうして誤訳だらけの憲法です。たとえばここに一例をあげれば、「
内閣の助言と承認により」とあるが、これは誤訳じやないか、助言と
勧告によるということにしなければならぬ。それから
内閣は「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」とあるが、
内閣総理大臣なら総理でよろしい。英語じやコンダクト・ゼ・ステート・アフェアーズとある。これは国務を処理するというのです。総理ならスーパーヴアィズである。コンダクト・オブ・ゼ・ガヴアメントなどいう用語は幾らでもあります。こういう誤訳だらけのものを、私は相当直したけれ
ども、仮縫いの悪いものは本裁ちも悪くなる。あなた方は誤訳の
責任感を解除する
意味においても、率先改正に
努力しなければならぬと私は考えます。これは警告を発する
意味であります。
最後に岡崎国務
大臣に簡単に
質問します。岡崎国務
大臣は、いろいろ非難もあるようでございますが、議会の
答弁は用心深く、私は敬意を表する一人であります。ただ吉田総理が米ソ戦争の危険がないということばかり言
つておりますが、これは危険があるという説と、ないという説があるから、相当に危険ということを言わなければ、国防に対する
熱意も起きないし、国民道徳も高揚しま
せん。現に昨日の
日本タイムズのうちに、ウォルター・リップマンという評論家が――よく
御存じでしようが、こういうことを言
つておる。ロシヤは西ヨーロツパにおいてはあまり刺激しないように、そうして今度は、フランスやイギリスに対し、アメリカがあまり国防のことをやかましく言
つて困るからというので、アメリカとフランス、イギリスを仲悪くするために、戦争がないことく宣伝利用しておる。もう一つは、ドイツと
日本とにアメリカに対する不満を起させる。もう一つは、西欧諸国と植民地の不満を起させるという
政策を用いて、いわゆる資本主義国同士の摩擦を目的としておる。それに乗
つてはならぬ、大いに危険があるということを書いております。米ソの緊張が薄らいでいるというのは、ロシヤの宣伝におのずから乗
つておる。私はいつや
つて来るかわからぬと思う。現に朝鮮でも共産国側は実にしつこいのです。
もう一つ参考までに述べておきますが、共産党の復且大学の教授で林彪の参謀を長くしてお
つた朱天森君が
日本に亡命して来て、共産党の内情を暴露いたしておりますが、中共とソ連の密約に
日本占領計画がちやんとある。十年戦争が起きたときにはどうするという部署まで発表しております。私は張群君のところに行
つて、これはどう思うと言
つたら、この朱というのは相当の共産党の幹部であるから、ある
程度まで信頼すべきものじやないかと思う。
日本人は共産党が攻めて来ないからまだぼんやりしておるが、非常に憂うべきことだと言う。
政府がちつとも危険がないことく宣伝するから、国防の必要があ
つても国防の熱はない。木村保安隊
長官が熱心に
主張するだけであ
つて、無援孤立の
状態でお気の毒である。やはり国際
状態が緊張したときには緊張したことをはつきり知らさなければいかぬ。情報局が今度できて、
緒方君あたりが総裁になるかしれぬが、か
つての小磯
内閣の当時のように、サイパン奪還を宣伝したり、レイテが天目山だと宣伝し、レイテが陥ちたら今度はルソンが天目山だという。そういうようなことで再びや
つてもら
つては困るのであ
つて、やはり真実は真実として語
つて、国民に
決意を促さなければいかぬと思う。岡崎国務
大臣の御
所見を問います。