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1952-12-04 第15回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月四日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君    理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君    理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君    理事 勝間田清一君       相川 勝六君    淺利 三朗君       石田 博英君    植木庚子郎君       植原悦二郎君    岡本  茂君       加藤常太郎君    北 れい吉君       重政 誠之君    田子 一民君       塚原 俊郎君    永田 亮一君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       原 健三郎君    本間 俊一君       南  好雄君    森 幸太郎君       山崎  巖君    川崎 秀二君       北村徳太郎君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    中曽根康弘君       古井 喜實君    松浦周太郎君       宮澤 胤勇君    石井 繁丸君       河野  密君    西尾 末廣君       西村 榮一君    平野 力三君       伊藤 好道君    稻村 順三君       上林與市郎君    成田 知巳君       八百板 正君    山田 長司君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 藏 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         宮内庁次長   宇佐美 毅君         保安庁次長   増原 惠吉君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 十二月四日  委員片山哲君及び伊藤好道君辞任につき、その  補欠として西尾末廣君及び山田長司君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十七年度一般会計予算補正外二案を一括議題として質疑を継続いたします。稻村順三君。
  3. 稻村順三

    稻村委員 昨日に引続いて、総理に対して、本日は自衛力漸増について二、三の質問をしたいと思います。  総理はしばしばこれまでの警察予備隊、現在の保安隊軍隊ではない、こう言つております。ところが外国の有力なジャーナリズムなどでは、さような総理の言明を全然信用しておらないという事実を、総理知つて答弁になつているかどうか、それをまずお伺いいたします。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は外国通信員が何と考えておるか存じませんが、しかし政府としてはこれを軍隊とは認めておらないことはしばしば申した通りであります。
  5. 稻村順三

    稻村委員 わが国の中央公論という雑誌の中にも、エコノミストからの抜萃にこういう文句が出ております。「ところが首相吉田憲法のこの条項を変えようという危い仕事から逃げを打つために、警察予備隊はただ局地的な警察力に過ぎないというような天外の奇想にしつかりとしがみついている。これでは曲射砲を持たせてあるのも交通整理の実験に使うつもりだと言い出しかねない有様である」こういう批評をしているということが、抜萃の中に書かれておるのでございます。こういうふうに、外国通信員あるいは外国ジャーナリストたちが、誤解しているということは、やはりその外国の輿論、その外国政治、その外国外交関係に、非常に大きな影響を持つものであると思うのでありますが、これに対しても総理大臣軍隊でないというのならば、軍隊でないということを十分に理解させて——私は必ずしも誤解だとも思わぬのでありますけれども、総理から言えば誤解でしようが、この誤解を解く努力をなすべきであると思うが、総理の御見解はどうでございますか。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 いづれにしても日本に対する誤解は、外務省その他が極力その誤解を解くべきことは当然のことであります。また政府としてもさような場合は努力いたします。
  7. 稻村順三

    稻村委員 それならば、その誤解を解くために、まず日本国民に対して、はつきりとした軍隊でないという観念を植えつけなければなりません。そういたしますと、ただ軍隊でない、軍隊でないといつて、主観的にいくらさわいでも、ほとんど用をなさないのでありまして、はつきりと軍隊でないという条件軍隊でないという理由を、ことに明言していただきたいと思うのでございます。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは政府としてはしばしば明言いたしております。保安隊性格を明らかにしておる法律の中にも、その性格は明確にいたしております。これを信用するとしないとは別でありますが、政府としてはこれまでできるだけの説明はして来たつもりであります。
  9. 稻村順三

    稻村委員 それならば、軍隊でないという最も主要だと思われるような条件を、ここに述べていただきたいと思うのであります。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 便宜私から申し述べます。ただいま総理から答弁いたしましたように、保安隊軍隊でないということは、この性格上当然のことであります。つまり保安庁法第六条によつて、きわめて明確に保安隊性格を明記しておるのであります。すなわち保安隊わが国の平和を維持し、人命財産保護するため、特別に必要のある場合に初めて行動するということが明記されております。つまり法律によつてその性格を十分に明記しておるのであります。しかしてこの保安隊装備はこの範囲において必要なる限度にとどめておるのであります。つまり日本内地の平和を維持し、人命保護するために心要限度にとどめておる。これは財政的に見れば、予算において国会の審議を経て、そうしてこれは内部の充実だけはかつて行こう、これから見ましても保安隊というものは決して戦争目的のために使用すべきものでないということが明瞭であろう、こう考えております。
  11. 稻村順三

    稻村委員 これでますますわからなくなつて来た。なぜかというと、内地の平和と人命財産を防衛するためということは軍隊でもそううたつております。そうしますと、これはこれを守るというだけでは軍隊ではないという論証にはなりません。また装備は必要な限度というが、それはどういうことなんですか。一つの例をとつてみれば、外国軍隊が攻めて来たとき、平和と人命財産を守るために必要な装備考えられるのでありますが、そういうようなことは軍隊というものとどう違うか、この点明瞭にしていただきます。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。軍隊と申しますものは、いわゆる戦争目的、つまり軍事上のためにこれを装備し、編成する部隊であります。保安隊はさような軍事上の目的を少しも有しておらないのであります。ただただ、今申し上げました通り内地の平和を維持し、人命を擁護するための目的組織されたものであります。いわゆる軍事上の目的は毫もこれを有していないのであります。
  13. 稻村順三

    稻村委員 そうすると、木村国務大臣のお話からすれば、もし外国軍隊が攻めて来た場合には、これと戦争することはしない、こういう建前でつくつているものであるかどうか、これをお伺いいたします。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 外国戦争をするためには有しておりません。従いまして、かりに外国宣戦布告をしてわれわれに戦いをいどみましても、これはわれわれは平和的に解決いたそうと考えている次第であります。しかしながらここで特に申し上げたいのは、突如として不法侵入して来た場合におきましては、私は木村個人といえども、これは防戦いたします。また日本警察におきましても防戦いたしましよう。あるいは保安隊においても、必ずや外国不法侵入に対しては防戦することは当然のことと私は考えております。
  15. 稻村順三

    稻村委員 そこにそろそろ本性が出て来たような感じがする。なぜかといえば、われわれはもし保安隊が、日常秩序を維持するための警察というようなものと同じような訓練組織を持つておるならば、木村個人が戦うと同じ意味で戦うということで納得できるのであります。ところが日常秩序を維持するための訓練ではなくて、一朝事ある——つき木村さんが言いました通り、攻めて来たときに、これと戦うためにのみ訓練しているというのであれば、これは戦争のための訓練だといわれても、少しも抗弁する余地がないではありませんか。そのために戦うための組織といえば、一体軍隊とどこが違うのか、これを私もう一度お伺いする。この非常事態に処するための組織訓練だというのであれば、軍隊とどこが違うか。もしこれが単なる日常の平和と人命財産保護であるというならば、日常秩序維持のための訓練が主でなければならぬはずです。一体警察予備隊は、日常警察と同じ仕事をするための訓練が主であるかどうか、これをお伺いいたします。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。日常のいわゆる人命保護とかいうようなことに関しては、今の警察、いわゆる国警においてこれを担当させるのであります。しかしながら御承知通り、いわゆる外国の干渉あるいは教唆によつてどういうような大きな事変、いわゆる騒擾事件あるいは内乱が起るかもわかりません。そのときに初めてこの保安隊というものは役に立つべきものであります。あなたの仰せになりますような日常のことについては、保安隊はやりません。現にソビエトにおきましても、大きな軍隊があります。しかも普通、あなたの仰せになるような日常の生命、財産保護するためには、警察を持つております。その中間において大きな防備隊を持つていることはおそらく御承知通りでありましよう。これは戦争をするためでもなし、またふだんの警察のためでもありません。いわゆる内乱騒擾に備えた大きな防備隊というものを持つておるのであります。わが保安隊におきましても、ただ日常人命財産保護するということは、これは第二次的なものであります。内地の大きな騒擾事件とかいうことに対しまして、初めてこれが特別の必要ある場合として出動する、それに備えるものが保安隊であります。
  17. 稻村順三

    稻村委員 私は内乱といえども、また外戦といえども、ともに戦争行為というようなものに対する組織目的を持つて訓練を受けている。こういうものが軍隊でないといくら抗弁したつて、私は常識をもつてその抗弁は通らないことは明らかでありまして、今日のあなたの答弁の速記を新聞にもし出されたら、それを読んだ国民の大部分は、なるほどこれは軍隊だということを言うだろうと思います。軍隊でないと言うこと自身が奇妙だと、人は理解するだろうと思います。  そこで私はさらに別な立場からお尋ねしたいのでありますが、木村国務大臣は、装備がどんな装備であつても、たとえば軍艦のようなものであつても、また大砲のようなものを持つてつたとしても、これが人命財産保護のために使われるものであるならば、これは軍隊ではない。また組織戦争目標としておらなければ、これは軍隊ではない。要は戦争という目的のために使う、外国との戦争目的のために使われている、こういうときにのみ軍隊である、こういうふうに星島さんの質問に対して答えたように記憶しております。こういうような創立した目的だけでもつて軍隊であるかないかという区別をするというのが、木村国務大臣考え方のようでございますが、この点総理も同じ意見を持つておるかどうかをお尋ねいたします。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一応先に私からお答えいたしておきます。御承知通り保安隊は今申し上げましたように、いわゆる国内の平和を維持し、人命財産保護するために設けられた隊でありますが、その装備もおのずから限度があるのであります。ただいま仰せのように、大きな装備を持つたときにどうなるか。これは御承知通り憲法第九条において、いわゆる近代戦を遂行するような大きな能力を持つことになれば、これは一つ戦力と見られるのであります。これは憲法において否定されておるのであります。しかしながら保安隊におきましても、その性格上おのずからその限度があるのであります。ここに軍隊はつきりした区別があるだろうと私は思います。
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 木村国務大臣の言われたことが私の考えであります。
  20. 稻村順三

    稻村委員 そこでそれならばお尋ねいたしますが、現在世界に弱小国がございます。たとえば中立国などという弱小国がございます。この中立国装備は大体において今日の警察予備隊装備と大差がないように私考えておりますが、そうすると、その装備の点から言いまして、これら中立国といわれておるような弱小国軍隊は、あるいは名前は軍隊だけれども、実質は保安隊だ、あるいは警察の毛の生えたものだ、こういうふうに木村国務大臣解釈しているのかどうか、その点お伺いいたします。
  21. 木村篤太郎

    木村国務大臣 他国と日本とはおのずからその置かれた環境が違うのであります。ここをはつきり区別していただきたい。日本の今置かれておる地位はどうであるか、あるいは日本差迫つた国内事情がどうであるか、これによつて判断すべきでありまして、あなたの言われるように、どこを弱小国と言われるか知れませんが、おのずからそこに区別が生ずべきものと、私はこう考えます。
  22. 稻村順三

    稻村委員 これはどういう意味でおのずから区別をするというのか、その具体的な条件をここで明示してください。たとえば私はスイスのような国の装備警察予備隊装備とはどれほど違つておるか、はつきりわかりませんが、しかし大体において似たようなものだと私は考えております。そうしますと、スイスの場合は軍隊であつて、そうして日本の場合は保安隊だという、そういう国の情勢により、その国の置かれておる地位によつて違うというふうに区別する国際情勢は何であるかを、ここではつきり言つてください。
  23. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私の知る範囲におきましては、スイス軍隊日本予備隊のようなものじやない、もつと実力のあるものと私は信じております。しかしてスイスにおきましては、いわゆる中立国であるといえども、中立を堅持するために、おのずからかの国柄として戦いを用意すべき軍隊を持つておるのであります。日本においてはまだそこまでは行つておりません。保安隊はどこまでも内地治安を維持するために置かれたものであります。
  24. 稻村順三

    稻村委員 どうも抽象的で、ただ量相違ばかり言つて、質の相違一つ言つておらぬようであります。木村国務大臣が星島氏に答弁したときに言つた、要は保安隊外国戦争のために使うものじやないが、しかし軍隊というものは、ある国との戦争のために使うという目標をもつてつくられている。これが区別する大きな条件だ。スイス外国から攻めて来た場合に戦うということを前提としている。しかし保安隊外国から攻めて来たときに戦うということを前提としてつくつたのではない。スイスつて内乱が起れば、これは鎮定するために出動するのにきまつておる。そうすると、スイス軍隊日本保安隊との区別は、要は日本保安隊戦争放棄憲法の中につくられているんだから、外国との戦争は全然目標にしておらぬ。今日の憲法の続く限りにおいてはそういう目的は持つておらぬということによつてのみ区別されるんだ、こう解釈してさしつかえありませんか。
  25. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は先刻来から申し上げます通り軍隊というのは主としていわゆる戦争目的とするためであります。いわゆる軍事力であります。保安隊軍事力じやないのであります。その点ではつきり区別されております。ただ憲法第九条第二項において、いわゆる戦力日本は保持することはできません。そこにおいていわゆる戦力ということになれば別問題であります。しかし日本保安隊というものはどこから見ても戦力に至らざるものであろうと思われるのであります。
  26. 稻村順三

    稻村委員 そこで私はまだ問題になることがあると思う。それは保安隊目的というものを戦争をしないということでささえているのは、これは憲法であるということなのであります。そうすると、この憲法によつて戦争目的としないところの保安隊が、必要に応じて装備を拡充する、そうしてまた組織も整備して戦うところの、いわゆる愛国心を中心とする精神作興もなされて行くという、こういう形で行けば、これは戦うという目的法律的に持つておらないから——実質的には知りませんが、法律的に持つておらないから軍隊ではない、こういうことになりますが、しかし一度この憲法改正されると、その瞬間からただちに手品でも使つたように、突如として軍隊になるという性格のものであるかどうか。また今日の保安隊は、もし憲法改正すると、これから軍隊をつくるなどというめんどうな手続なしに、ただちに軍隊に切りかえることのできるものだ、こういうふうに解釈してさしつかえありませんか。
  27. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの御質問の要旨は、結局この保安隊憲法改正したときにただちに軍隊となるかどうか、こういうことであります。しかし憲法改正して日本軍事力を持つことにいたしましても、その保安隊がただちに軍隊とかわるべきじやありません。保安隊性格保安庁法第五条によつて明確に規定されておるのであります。憲法改正して日本軍隊を持つことが必要だということになれば、これはまた国会においてその手続をしなければ、保安隊がただちにもつて軍隊になるということはないのであります。
  28. 稻村順三

    稻村委員 それでこの問題と関連して総理大臣にもお尋ねしたいのでありますが、マンチェスター・ガーデイアンの十一月号に、五月七日にマツカーサー元帥アメリカ上院において証言をしたと報じておる中に、こういうマッカーサーの言葉を引用されております。日本警察予備隊はいつでもすきなときにりつぱな歩兵隊に切りかえることができるものである、こう報じておるのであります。この点を総理大臣知つておられるのですか、知つておられないのですか、その点お尋ねしたいと思います。
  29. 吉田茂

    吉田国務大臣 議会においてマッカーサーがどういう説明をせられたか私は存じません。しかしながらマッカーサー将軍は、日本の再軍備については、反対意思を私にしばしば言つておられる人でありますから、切りかえることができるかできないか、その辺の証言は知りませんが、日本警察予備隊がただちに軍隊になるという、あるいはするというような気持は、私の承知しておるところでは元帥意思ではなかろうと思うのであります。これは私の想像であります。
  30. 稻村順三

    稻村委員 マッカーサー元帥が、日本警察予備隊に対しては、覚え書をもつてつくつた創設責任者であることは明らかなのでありますが、そのマッカーサー元帥がこういうふうな証言をしたということが報ぜられて、これに対して否認しているという記事も載つておらないところを見ると、これは事実だろうと思うのであります。そうしますと、私たちはやはりこの警察予備隊というのは、今憲法改正することができないが、もしも憲法改正する条件が生じて来れば、ただちにこれがめんどうな手続を要せずして、簡単な手続で、準備を要せずして軍隊にすることができるという意味が相当含まれておると思うのであります。そこで私は総理大臣にお尋ねしたいのでありますが、総理大臣も今のところは軍備は持つ必要はない、いや持つことに反対だ、今のところとこういうふうにいつも言つているのでありますが、そうすると近き将来においては軍隊は持たなければならない、こういう意見であると解釈してさしつかえありませんか。
  31. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、あなたの御解釈はかつてでありますが、ただいま政府としてとつておるところは、国の治安維持については保安隊をもつてこれに当る。しかしながら集団的攻撃に対しては、すなわち戦争については安全保障条約によつて集団的防衛の方法を講ずる建前で参つておるのであります。百年後、二百年後は存じませんが、ただいま政府考えておるところはそのような構成で国の独立安全を守る考えであります。
  32. 稻村順三

    稻村委員 そうすると、今のところという期間は、相当長い期間であると解釈してさしつかえありませんか。
  33. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は今のところと申すものではないのであります。ただいまの構成はすなわちこれだ。しかしこれはいつかわるかとおつしやれば、それは期限は私は付しません。必要に応じてすることがあるでありましようが、今日は国力がこれを許さないのであります。再軍備せんと欲してもこれはあたわないのであります。その建前で参つております。
  34. 稻村順三

    稻村委員 国力が回復したと解釈すれば、そうすれば軍備を持つてもよろしいという考え方なんですか。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは現在の憲法は、これを許さないのであります。ゆえにこの憲法下政治としては再軍備は毛頭考えておりません。
  36. 稻村順三

    稻村委員 これはきわめて大事なことでございます。憲法改正軍備の問題でありますが、国力が回復すれば軍備を持たなければならないと言えば、これは憲法改正するということなんでありますが、星島氏の質問に対しても総理大臣は、現在のところ憲法改正意思なしとこういうことを言つております。そうしますと、この軍備を持つ国力が回復したときには憲法改正する用意ありという含みを——これは私がとるのじやない、すべての人間はそういうふうにとるのじやないか。いな私は選挙のときに立会演説などに行つてみますと、自由党の代議士の諸君は全部こういう演説をやつておりました。(「そんなばかなことはないよ、全部とはどこから判断するのか、よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)それは私の選挙区の話であります。そういうようなことを見ますと、あなたの政党の中においてすらもがそういう解釈をしている。そうすれば、現在のところ憲法改正する意思ないというが、しかし将来は憲法改正しても軍備を持つ必要あり、こういうふうな解釈がもしも通念として通つておるならば、総理大臣は、そうでないならばそうでない旨をここではつきりと言明していただきたい。
  37. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の説明あるいは党の一政策について、世間あるいはあなたがどういう解釈をするか存じませんが、政府及び自由党はあくまでも憲法を支持するつもりであります。従つてその憲法下において再軍備は毛頭考えておりません。
  38. 稻村順三

    稻村委員 そうすれば、憲法改正ということも毛頭考えていないというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはしばしば申しておりますが、再軍備のために憲法改正考えておりません。
  40. 稻村順三

    稻村委員 さらに自衛力漸増ということについてもう一つお尋ねしたいと思うのでありますが、自衛力漸増というのは、総理大臣は、日本経済力に応じて次第々々にこれをふやして行くという考え方のようであります。ところがもしもその反対に、日本経済力が、恐慌なり何なりの影響を受けて、低下しつつある場合には、その自衛力は漸減するものと考えてさしつかえありませんか。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは当然であります。また議会も、その保安隊に関する経費の削減を要求せられるであろうと思います。
  42. 稻村順三

    稻村委員 そうすると、日本経済が今年あたりから大分不況に陥つて行くであろうといわれ、二月危機説まで財界方面ではいわれておるのでありますが、この条件は、やはり自衛力を漸減する一つ条件であると考えてさしつかえありませんか。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 経済危機の話は今日ばかりではないのであります。年々三月危機、十月危機ということは申しておるのであります。一時の状態によつて判断いたすわけには参らないのであります。
  44. 稻村順三

    稻村委員 それからもう一つ自衛力漸増の問題であります。日本経済力に相応して自衛力を持つということになるのであります。ところがもしも日本戦争の危機など——日本自身が戦争をやらなくても、たとえて申しますれば、集団安全保障、ことに地域的集団安全保障などというような場合に、その地域に戦争の危機が全体として迫つておるというようなことになりますと、この際にはわれわれとしては経済力を越えた自衛力を持たなければならないという立場に追い込まれるというのが、これまでの歴史が示すところでありますが、そういう事態も起り得るということを総理大臣はお考になりますか。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは、先ほど申した通り、集団攻撃に対しては集団防備の方法を講ずる考で参つておるのであります。ここに日米安全保障条約が存するゆえんなのであります。
  46. 稻村順三

    稻村委員 どうも答弁が的をはずれておるようであります。私の言うのはそういうのでなくて、地域安全保障というようなものがつくられておるときに、その地域の中に、日本ばかりでなくて——日本ももちろん入つておりますが、日本ばかりじやなくて、その地域を中心としての戦争の危機が迫つて来るというようなことが、予想せられておるときには、日本がこの地域安全保障条約の中に加盟している限りにおいては、われわれとして経済力以上の国防力を持たなければならないような立場に追い込まれうということを考えておるかどうか。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまの御質問の趣意が私にはわからないのであります。的をはずれた答弁であるならば、これはあなたの質問に対して私が了解できなかつた結果であります。いわゆる地域的……。
  48. 稻村順三

    稻村委員 それじやもう一度申します。地域的安全保障というものの中に日本が参加しておる場合に、その地域を中心として戦争の危機が醸成されたと予想された場合、そのときに、日本という国が自分の経済力目上の自衛力を持たざるを得ないようなことになりはしないかということを聞いているのです。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 そういう予想はただいまございません。またあなたのおつしやるのは、太平洋同盟条約等を考えに置いていらつしやるのではないかと思いますが、この同盟には今参加する考えはございません。また国の独立はいかなる方法をもつても守るべきであつて、国が危険になれば、これは国力が足りない、経済力が足りないといつて降参するわけには参りません。
  50. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、ここで総理大臣はつきり国民の前に言明しておかなければならないことは、すなわちわれわれは今日の経済力を主として自衛力考えているのであつて国際情勢のいろいろな進展は、これは今日のところわれわれ自衛力の中心として考えているのではないという、こういう結論が出ると思うのでありますが、その点どうですか。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 その結論は少々無理であろうと私は思います。いずれにしても外国の侵入に対しては、つまり集団的攻撃に対しては、安全保障条約によつて国を守る、この方針であります。
  52. 稻村順三

    稻村委員 すなわち国際情勢の変化によつて侵入の危機というのは、さつき言つたように集団安全保障条約にたよる、この総理大臣考え方から申しますと、日本自衛力の大きさとは無関係のようであります。そうしますと、日本自衛力の大きさは、日本経済力にのみ依存するというのですから、これは国際情勢の変化から来るところの戦争の危機は、日本の防衛力とは無関係に集団安全保障にたよつている。そうしてまたわれわれはただ経済力に応じたところの自衛力を持てばよろしい、結局こういうふうに解釈されるのでありますが、この私の解釈が間違つてつた総理大臣自身の解釈をもう一度述べていただきたいのであります。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 あなたの論理が私にはよくわからないのであります。私の言う日本保安隊は、日本国力に応じて漸増するか漸減をするか、いずれにしても国力に応ずべきものである。もし外国の侵入その他国外の事情が変化した場合にも、降参はできないのであります、すなわち安全保障条約によつて守る。それで日本経済力日本の自衛とは関係いたしておりません。経済力があろうがなかろうが、日本の安全、日本の安全、日本の独立を守らなければならぬ。これはいかなる方法かによつて守らなければならぬ。保安隊の力で守り得る範囲保安隊で守りますが、それ以上のことは安全保障条約の集団的防禦の方法によつて講ずる以外に方法はない。
  54. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、保安隊日本経済力に相応してつくるのである、それだけでとても防ぎきれないからして、外国からの脅威に対しては集団安全保障の立場をとる、こういうことになりますと、さつき私が言つたように、外国からのものはそれに依存する、だから日本保安隊のようなものは、国際情勢の変化に応じてこれを増強するというようなことはあり得ない、こう解釈してよろしいかというのであります。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 繰返して申すようでありますが、自衛隊を持つ、それは国力による増減にあらざれば、国力に応じない保安隊をつくることはできず、また国力これを許さないから、安全保障条約によつて集団防禦のはからいをなすというのであります。
  56. 稻村順三

    稻村委員 言葉をかえて言いますと——少しくどくなるようですけれども、念のために申しておきますが、それならば現在のところいかなる国際的な情勢の変化があろうとも、われわれが保安隊をふやすという条件は、われわれの国力のみに依存している、こう解釈してさしつかえありませんか。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 安全保障条約には日本自衛力——何と書いてありましたか忘れましたが、とにかく保安隊漸増といいますか、自衛隊の漸増ということは規定してはあります。しかしながらこれは日本国力が増加することを前提としておるので、つまり将来は日本国力経済は発達するであろう、ということを前提といたしておるのであります。もし日本が破産しつつあるにもかかわらず、条約によつて漸増を迫ろうということは、常識において、外国、つまり米国政府考えるところではないかと思います。またそういう要求を現に受けておりません。ところで国際状勢が変化したその場合にどうするか。保安隊を増さないか。——増すかもしれませんが、これは日本国力の耐えない保安隊を維持することはできないのであります。これは当然であります。ゆえに安保条約なるものをもつて集団的攻撃に備えるというゆえんであります。
  58. 稻村順三

    稻村委員 大体私がなぜそういうことをくどくど申すかといえば、もし国際情勢の変化によつて外国の脅威が増したからという意味保安隊を増加するというようなことになりますと、これは国力以上に増強しなければならないということが起るのであります。そうしますと日本のような、今日国力の弱くなつている国においては、その負担が大きくなると、国民のこれに対する不満が起きます。そうすると、政治は必然的にまた独裁政治にもどつてでも自衛力を増強するという、こういう方向に向わざるを得ないのであります。この問題はすでに現実の問題として考えなければならない事態になつているのじやないか。すなわち国際状勢の変化から、日本自衛力を増強するために、国民生活を犠牲にしなければならないという考え方が、日本政治家ないしは指導者の頭の中に置かれ、そのために日本政治というものが、再びフアッショ化して行くという傾向をたどるのではないか。前にわれわれが経験したことを再びここに繰返すのではないかということから、それを考えるであります。現に戦争の危機が日本になく、日本が直接戦争の当事者だという意味でなくとも、国際戦争の危機が迫つて来ておる。冷い戦争でも拡大するというようなことになつて来ると、それにつれて日本の防衛力が問題になる。そしてまたこの防衛力のために、現に国民の生活がある程度耐乏を要求されるという方向に向つておるのでありますし、そしてまたそのためにいろいろな逆コースをいわれているような現象も、ここに生れて来ておると思うのであります。こういうような点について一々質問して行くことはできませんが、こういうふうな事態の中に置かれておつて日本の講和条約と国連協力の問題、ことに武力協力等の問題について、ひとつ質問してみたいと思うのであります。  それは講和条約第五条の二項に定められているところの国連協力の問題、これには武力協力もおそらく国連憲章第二条に基くのであるから、武力協力も含められていると思うのであります。ところがもしも軍隊日本が持つた場合に、日本は講和条約と安全保障条約といものによつて、国連憲章の第二条を服膺する義務をわれわれは負わされているのであるけれども、しかしそれと同時に国連に加入しておらないから、国連の第四十三条ですか、加盟国が自主的な立場においてあの武力協力を語るということを、われわれが適用されなくともよいという、こういうふうな解釈も成立つのであります。そうしますと、われわれがもし戦力を持つたと国連の主要国から考えられたその際には、条約の条章をそのまま解釈すると、その際にわれわれが自動的に国連に武力協力をしなければならない義務が発生するように考えられるのであるが、この点当局としてはどういうふうに考えておるかお尋ねしたいのであります。
  59. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま私国連の憲章を持つておりませんので、条文を指摘することはできませんが、たしか五十条前後のところだと思いますが、安全保障理事会が武力制裁を決定した場合に、自動的に武力を出す義務がある国は国連との間に特別なる協定を結んだ国だけであります。それ以外の国は自動的には武力の供出をする必要がないのであります。自発的にやるのは、これは別であります。そこでそれでは国連との間に今特別の武力を出すという協定を結んだ国があるかといいますと、今までのところは一箇国もありません。従いまして、ただいまのところは国連加盟国といえども、安全保障理事会の武力制裁の決定がありましても、自動的に軍隊を出す義務を持つている国は一つもないのであります。従いまして、日本がかりに国連に加盟した場合で、しかも日本軍隊があるという場合を仮定いたしましても、特別の協定ができない限りは、自動的に軍隊を出すという義務は発生いたしません。
  60. 稻村順三

    稻村委員 今のは日本が国連に加入した場合のことを考えての御返答だと思う。私は国連に加入しておらないという立場に立つと、国連協力というのは、国連憲章によつて国連協力をするのでなくして、日米安全保障条約なり、講和条約なりに従つて、国連に協力するという、こういう形になるだろうと思う。そうしますと、こういう立場から言えば、国連憲章の四十三条による協力の規定というものは適用されないで、日米安全保障条約建前で行くということになると、日米安全保障条約なる条約を結んでいる当事者の解釈いかんによつては、自動的に日本に協力の義務が発生すると解釈されるような危険はないかどうかということをお尋ねするのであります。
  61. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 協力の義務は、日米安全保障条約ではなくして、私は平和条約第五条で考えられると思います。平和条約の第五条は、国連憲章の中の文字をほとんどそのままとつております。従いまして、国連に対する協力の義務といいますか、そういう種類のものは、国連加盟国以上のものを負うわけはないのでありまして、どんなに大きく見ても、国連加盟国と同等、あるいは加盟していないのだからそれ以下、こういうことにならざるを得ない。またあの五条の文字から申しましても、決して国連加盟国以上の義務を負うような文字は使つてありません。従いまして一番多い場合で、加盟国と同等の義務、それ以上のものはあるはずがないと考えます。
  62. 稻村順三

    稻村委員 たしか行政協定の二十四条かと思いましたが、ここに、日本区域内における敵対行動及びそれの急迫なる行動云々という中に、われわれはアメリカに対するところの協力の義務というか、共同措置の問題が規定されておると思う。こういうようなものと関連して考えてみると、国連憲章の義務、第二条にきめられた義務を、講和条約の第五条第二項によつてわれわれは一応その義務を負わされている。それをさらに行政協定の二十四条のあの規定というようなものとの関連において考えると、われわれはややもすると、もちろん二十四条は両方の協議という形をとつておりますが、しかし今日の日本政治力などから考えてみますと、どうもその協議が一方的になりがちなような感じがするので、実質的にはこれから自動的な武力協力という解釈を、押しつけられるという危険があるのではないかということをお尋ねしているのであります。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 行政協定の二十四条は、安全保障条約に基きつくつたものであります。これには二つの意味がありまして、その当時いろいろ議論になりましたが、つまり極東の平和という問題と日本自身の安全保障、こういう問題であります。つまりその当時よく言われましたように、極東の平和を維持するために、日本におりまするアメリカの軍隊が、何かの措置をとらなければならぬという場合も出て来ますので、その点においても、日本はこれに対して協議をした土で決定するということになつておりますが、その二十四条の主たる趣旨は、日本が急迫したような危険に襲われた場合に、どういうふうに国を守るか。これはどうしても、一緒に、共同で守らなければならぬわけで、その詳細はあらかじめどういう危険が起るのかわからないのに、きめておくわけに参りませんから、主として国の守りを固めるという意味で、アメリカ側とも十分協議をして、その時に応じた適当な処置をとる、こういう趣旨であります。
  64. 稻村順三

    稻村委員 私はこれと関連してお尋ねしたいことがあるのでありますが、たとえば日本を基地としておるところのアメリカ軍が、満洲を爆撃するとか、あるいはいろいろな行動によつて日本——日本を基地として飛んで行つたものがそういうことをやるということは、戦乱が日本にまで及ぶという危険があるのでありますが、そういう行動に関して、アメリカ軍が行動する場合には、あらかじめ日本政府と協議してなすべきものであると解釈してさしつかえないどかうか、その点の御見解を伺いたい。
  65. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 もちろんアメリカ側としては、日本政府と協議するつもりでおりまするし、われわれの方も、そういう場合には協議をいたして、十分こちらの意見を述べることにいたしております。
  66. 稻村順三

    稻村委員 水豊ダム爆撃なども、そういう非常に大きな契機になつたのでありますが、水豊ダムの爆撃前後などについて、あるいはこれに準ずるような大攻勢のようなものの場合には、あらかじめ日本に対してその点の打合せがありましたかどうか、その点をお尋ねします。
  67. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 水豊ダムの爆撃というものは、これは全然別問題であります。これは朝鮮内部の問題であります。今までもしばしば三十八度線を越えたところで戦闘が行われております。これは全然私は別問題だと考えております。
  68. 稻村順三

    稻村委員 そうすると北鮮以上に出た場合に、戦乱が日本に及ぶような問題は、これは全部日本に対してあらかじめ相談があるものだ、こういうふうに日本政府解釈しておると解釈してさしつかえありませんか。
  69. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは安保条約等の条文をごらん願いたいのでありますが、要するに極東の平和を維持する必要上、駐留軍が行動を起す場合には、日本政府との間に十分なる協議をする、こういうことになるのであります。
  70. 稻村順三

    稻村委員 次に軍人恩給のことについてお伺いしたいのでありますが、閣議で了解事項というか、閣議でもつて日本の軍人恩給を復活するために、八百億の予算を組むだろうというような意味のことが出ておりました。これは今度の補正予算に老齢軍人給与として頭を出しておるのではないかと思われる点があるのであります。もつとも私は老齢軍人の恩給復活に対して反対をするものではございませんが、しかしこれが軍人恩給復活全体の頭だとすれば、非常に重要な問題なのでございます。私はなぜ軍人恩給というようなものが重要かというと、昔の軍人の恩給をそのまま復活するということは、かつての軍人制度というものをそのまま承認することになる。しかも上級軍人が一種の特権意識を持つて、最近いろいろな方面で活躍をし出しておるときに、この旧上級軍人の特権意識を合理化するということになるのであります。元帥だの、大将などにたくさんの恩給をくれてやつて、兵隊には少ししかやらぬということになれば、これは当然にこれらの特権意識に対するところの合理化になる。これは今日戦争問題ということがやかましくいわれておるときに、私はこういうことをするというのは一個の逆コースである。民主主義とは逆行するところのコースであるというふうに考えるのでございますが、これに対するところの政府の御見解、はたして軍人恩給の復活ということをほんとうに考えておるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  71. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。軍人恩給の問題につきましては、恩給法特例審議会において研究されまして、去る十一月二十日にその結論が総理大臣に建議されました。目下この建議について明年度の財政の状況をにらみ合せまして、慎重に研究を加えておるのでございますが、政府としては財政の状況を勘案しつつ、旧軍人たる戦没者の遺族、傷痍者、老齢者の生活の現状、他の一般戦争犠牲者の立場等も考慮しまして、善処いたしたいと考えておるのであります。補正予算に出ました老齢軍人に対する給与ということもありましたが、これはまつたく別の話でありまして、頭を出したのではございません。
  72. 稻村順三

    稻村委員 その軍人恩給の復活を考える場合には、やはり大体元帥、大将というような順序でもつて、あのままの恩給を復活するという構想であるかどうかということをお尋ねいたします。
  73. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 そういう点についてはまだ少しも構想を持つておりません。
  74. 稻村順三

    稻村委員 それからもう一つ、これは総理大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、政府は立太子礼の場合に、これをきつかけに恩赦をいたしました。私は恩赦をするということに対して反対するものではないのでありますが、しかし恩赦は恩赦として筋が通つていなければなりません。しかるに皇太子というものは、日本憲法を見ましても国の機関ではないのであります。これは天皇一家の相続人をきめるというのでありまして、国の機関ではないのであります。しかも、国の機関でないものを、国の政治において恩赦の理由とすることは、これは今後の日本政治にとりまして、実に重要な悪例を残すものだというふうに考えます。天王一家の問題だとして、今度は皇太子が結婚した、子供が生れたというように、そのたびごとに、国のお祝いだというので、恩赦をするということになつたら、恩赦が政治的に利用されるという危険も出て来るのであります。従つて、われわれは、皇太子を尊重しなければならないことはもちろんでありますが、しかしこれは国の機関でない、従つて、立太子礼は国の行事ではないということが明らかである以上、こういうことを口実にする恩赦というのは、私は筋が通つておらぬ、こういうふうに考えるのでありますが、総理大臣は、これをどうお考えになりますか。
  75. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私から一応お答え申し上げます。申すまでもございませんが、皇太子というものについては、国法でありますところの皇室典範の中に、その特殊の地位がきめてあるのでございます。たとえば成年に達するのは十八歳というようなことが、はつきり法律できまつておるわけでございます。今のお話にも出ましたように、将来象徴たる地位をお継ぎになるお方であるという意味の重要性もございますし、かたがたそのお祝いは、皇室内部のみのお祝いではなく、国としてのお祝いということで、国事の形で行われたのであります。従いまして、その機会に、ある種の恩赦を行うということは、これは適当の措置だというふうに考えるわけであります。
  76. 稻村順三

    稻村委員 これは妙なことをおつしやる。皇室典範にあるから、日本国の機関であるという解釈は非常に誤りだと思うのであります。なぜかというと、昔の皇室典範と新憲法下における皇室典範とは違うはずだ。昔の皇室典範は、これは国の全体に関するところの、国民がこれを守るべき義務を持つてつた。しかし、今の皇室典範というのは、天皇一家の内部における規律を定めるところの法律ではないかと私は思うのであります。従つて、あたかも会社が法によつて、社部をつくり、重役をつくるのと、この皇室典範の中において、皇太子の地位をきめるということに、国民によつては同じ立場にあると考えておるのであります。もつとも。われわれとしては、将来、日本の象徴のあとを継ぐという意味において、尊重しなければならないが、この皇太子礼は、国民全般の民主的な立場における尊重であつて、これを国事と、して扱うべき性質のものでない、こういうふうに考えるのであつて、皇室典範を基礎としてこれを国事であるというようなことがあるとすれば、それは昔の皇室典範を考えたのであつて、今日の皇室典範を考えたのではないというふうに考えるのでありますが、それをどういうふうにお考えになりますか。
  77. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまのお話は、ちようど逆になるのでありまして、昔の旧憲法時代におきましては、皇室典範は、皇室御一家の家法であるというふうに、伊藤博文さんも言つておるのであります。ところが、新しい憲法になりましてからは、これは皇室一家の面ではなしに、国家的の面だけを取上げてその内容とする。しかもそれは憲法に明らかでありますように、国会の議決によつて皇室典範をきめるということが書いてあります。それに基いてできておる国法たる皇室典範であります。
  78. 稻村順三

    稻村委員 これはまた非常な誤りだと思います。私皇室典範の、国家に関するものの規定ということには、天皇一家と国との関係ということから、ある程度、国の規律に従うべきものも規定しているものである、こういうふうに考えておるのであります。この点だから国民との間に、十分な関連性を持たして規定してあることは事実でありますが、しかし、この皇室典範にきめられた義務、あるいは皇室典範にきめられた条章に、国法として、国民がただちにこれに服従しなければならないという義務は、規定されておらぬと私は思うのです。私は詳しいことを調べてはおりませんが、しかし、新しい憲法のもとにおいて、そうあるべきである。これは建前からいつてそうあるべきであります。その点、皇室典範というものを、あたかも、日本の一般国民が服膺しなければならない一般法と同じように考えていることは非常な誤りじやないか、こういうように考えるのですが、それはどう思われますか。
  79. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは詳しくお話しますと、なかなかきりがございませんが、法律というものは、常に一般国民に関係あるものとは申し得ないのでありまして、たとえば内閣法でありますとか、行政官庁の組織法のごときは、直接国民の権利義務をきめるものでございません。しかしながらこれは国家的の見地から見ますと、内閣組織をどうするか、あるいは各省の組織をどうするかということは重大でございますから、国会がそれを取上げになつて法律でその仕組みをおきめになつておるわけでございます。今のお話に出ております皇太子の地位というようなものは、先ほども触れましたように、象徴たるべき天皇というものは、憲法第一条にはつきり書いてあるわけでございます。それについてのお仕事もあるし、そのあとを継がれるべき地位も、国法であるところの皇室典範でこれを重大事項として取上げておるわけでございます。その成年に達せられる時期につきましても特例を設けておりますし、あるいは攝政たるべき第一順位になるというようなこともきめてございます。これは国家的に見て、非常に重要なことであると思います。従いまして憲法にもはつきり法律できめるということが書いてございますし、ただいまの皇室典範も、これは憲法を審議されました議会が制定されておるのでございます。
  80. 稻村順三

    稻村委員 そうすると皇室典範は国民をも対象としてつくつたものと解釈していいわけでありますか。
  81. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 哲学的意味におきましては、もちろんすべての国法は一般国民を対象といたしております。但し先ほど触れましたように、現実的に罰則を設けますとか、あるいは許可を要するというような権利義務の関係をきめた法律と、先ほど触れた内閣法とか、あるいは国会法というように、直接国民の権利義務というものに触れない種類の法律もございます。いずれにいたしましても、国家として重大なる関心を寄すべき事柄を、法律の形で国会が御制定になつた、これは一言にして尽きることと思います。
  82. 稻村順三

    稻村委員 どうも法政局長官は、新らしい憲法の精神というものを、全然没却してお考えになつておる。なぜかというと、憲法制定の場合に明らかにされていることは、天皇も国民の一人である。この点は金森法制局長官も話したのであります。従つて象徴というものは天皇一人であります。従つて憲法建前からいつて、天皇一人につながつておるものは、象徴としては法律的にありようはずがないのです。そうすれば、これは要するに、これとつながつている天皇一家を対象とするものが皇室典範である。これは常識的に新しい憲法の上から見れば、当然そう考えてさしつかえないことなんです。この点を混同すると、皇室一家というものを絶対化する、神聖化するというような問題が起きて来て、そこからまた逆コースが発生して来る。私たちはこういうことを、民主主義の立場から十分考えなければならないと思うのであつて、こういうことを真剣に考えない人は、単なる伝統に生きて、昔の日本に対して郷愁を感じている人間である。私はそう考えてさしつかえないと思う。しかしこの点を押問答しておつてもしかたがないので、次の問題に移ります。  最近科学技術の問題が非常に重要視されて来ておるにもかかわらず、案外科学技術に対して冷淡であるというか、いろいろな点で無視されているようなかつこうになつておるのであります。これは国民所得との関連からいつても、日本は各国に比較して、きわめて少い費用しか出しておらぬようでありますが、それにもかかわらず、最近は保安技術研究所というようなものがつくられるという案があつて、これに相当の費用が投ぜられるものとしたならば、日本はますますこの科学技術の方面が虐待される危険がある。ことに国防という名前でもつて技術研究所などをつくりますと、とかく昔の陸海軍の技術研究所のようなものになつて行く。そうしてほしいままにむだな費用を使うというようなことがしばしばあるのであつて、そのために一般科学技術の研究がおろそかにされるのではないか。また民間の方でも、こういうように国が科学技術の研究に対して、冷淡であるということの結果といたしまして、民間の科学技術研究というものも非常に振わない。主として外国から特許を買つて間に合せるというような傾向にすでになつておるのであります。そればかりではなくて、最近は、日本で非常に研究費が少いという状態のもとにおきまして、アメリカでは移民法を改正して、百八十人ばかり日本から科学者を帰化させることを考えているということを、私は聞いているのでございます。すでに日本の学者の中には、こういうような条件のいいアメリカヘの移民を承諾するというか、その腹でいるという人もあると聞いているのであります。百八十人も日本の有力な科学者がひつこ抜かれるなどということになつたならば、日本の産業及び学問にとつては、重大事であるというように考えられるのでありますが、この点どういうふうにお考えになつているか、お尋ねしておきたいと思います。
  83. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。日本の科学水準は、御承知通り世界に劣らぬところの科学技術を持つております。ただ問題は、科学技術研究費といたしまして従来も出しておりますけれども、十分とは申せません。しかし十分と申せないということは、結局すべて財政においてどれもみな同じで、今年度は五億六千万円出しておりますけれども、来年度はいま少し科学技術に力を入れまして、十分なりとは申せませんけれども、できるだけ科学技術振興のために予算をとりたいと考えております。
  84. 稻村順三

    稻村委員 さつきのアメリカの移民法のあれというのはわかりませんか。
  85. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう説をなす人もあるようでありますが、まだ全然具体的には何もありません。
  86. 太田正孝

    太田委員長 稻村順三君の質問は終りました。植原悦二郎君。
  87. 植原悦二郎

    ○植原委員 申すまでもなく、今や日本は独立国である。今国会は独立後初めての国会であります。従つて国民の代表者たるわれわれは、今国会において、民主政治の運営について、その範を国民に示すべきであると思います。進駐軍下における政治運行の形を、本国会において継続されてはならないのであります。国会における質疑応答は、すべて国民に納得せしむるようにしなければならない。政府にもし悪いことがあつたならば、徹底的に国家、国民のためにこれを糾弾してもよろしい。しかしただ政府を攻撃せんとするがための質問は避くべきであるし、また政府としても、ただその場のがれの答弁をしておればよろしいということであつてはならない。(「その通り」と呼ぶ者あり)たとえて言えば、国会の解散についての問題でも、去る国会の解散は憲法第七条違反ではない。政治を理解する者ならば、だれが何と言おうと、政府憲法第七条によつて国会を解散してさしつかえないのだ。されなければ民主政治は行われない。けれども、国会の開会中に政府が解散する場合に、国会においてその理由を説明して、そうして国民が納得するようにして国会を解散しなければならないのに、去る国会において、国会開会中であるにもかかわらず、突如これを解散したということは、何といつても非民主的であるといわなければならないのであります。(「ヒヤヒヤ」、拍手)こういうことは、日本の民主政治の上において、繰返してはならないことであると思います。そこで私は、今国会においては質問いたさずして、なるべく野党の方に事実を究明させて、政府の政策を国民に徹底せしむるように、納得せしむるようにいたしたいと思つておりました。けれども、同僚諸君からの質問したらよかろうというお勧めに従つて私は質問するのでありますから、私の質問政府攻撃のためでも何でもありません。政府の政策を究明するためであります。国民に知らしめるためであります。政府の施政方針などの演説を聞いておりますと、現在の政治の事実はよく御説明なさつておりますが、これを説明するだけで、実行する方法、言葉をかえていえば、政府の施政方針演説は平面的であつて立体的でない。政府の政策はすべからく平面的であるとともに立体的であるべきだと思います。そこで重要と思われます三、四の質問をして、なるべく一般の疑惑を解きたいと思います。  政府の重要なる政策といたしまして、国連加盟のことを申されております。これはまことにごもつともなることで、現在の国際間の空気は必ずしも平安でありません。また事の起るべきことを希望いたしませんけれども、起らないとも言えないのであります。そうして現在の国際情勢考えますときに、攻むるにも守るにも単独ではあり得ないのであります。攻めるにも守るにも、集団的攻撃であり、集団的防衛であらねばならぬ今日の国際情勢において、中立などというものの存在はありようがない。そこで日本が独立した以上は国際連合に加盟しなければならない。これば国民全体の要望があろうと思います。日本が国際連合に加盟する場合においては、国際連合に対するオブリゲーシヨンを果さなければなりません。言葉をかえていいますれば、国際連合は、世界の平和を維持するために、国際警察権として軍隊を整えることを主張いたしております。そこで日本も国際連合に加盟する以上は、ある軍備をいたさなければならないという結論に到達するのであります。もちろん国際連合に加盟することが軍備をするという前提ではありますまい。また国際連合に入つたから、必ずしも世界中のどこの戦争にも参加しなければならないということもありますまい。けれども日本は、今日御承知通り世界でもおそらく認めておるだろうし、日本国民もみずからその考えがなければならない。極東の平和においては、日本がかなり安定勢力の首位を占めるものであるということを考えなければならない。そうなりますれば、日本は国際連合に入るとすれば軍備を持つ用意をいたさなければなりません。しかるに総理大臣は、きわめて慎重を期するためでもありましよう、軍備を持つためには、あるいは憲法改正するためには、物心両面において用意がなければならない、また国民の愛国心がわいて起らなければならないということを御主張なさいます。なるほど占領下におきまして、日本の学校において歴史も地理も教えることを禁止せられた、修身の教科書もなくなつてしまつた、それだからして道義の頽廃はほとんどその極度に達するという状態であります。こういう場合に、愛国心のわき上ることを希望されるというのはごもつともでありますけれども、愛国心といつたつて、そういう漠たるものじやわからない。実は平和を維持するためには、ガンジーのごとき無抵抗の愛国心を有することが、一番強い愛国心であるという主張も出て来るのであります。それと国連に入つて日本が国連のオブリゲーシヨンを果さなければならないという面とは、同じ愛国心につきましても矛盾撞着するおそれがあるのであります。従つて私は一国の総理大臣であります方が、ただ物心両面において最善の努力をする、その方で力ができるまで待たなければならない、愛国心がわき上るまで待たなければならないということであるならば、国連に入ることをやめなければならない。国連に一日も早く加盟することが、極東の平和のためにも、日本保全のためにも一番よろしいということであるならば、その準備をいたさなければならない。私はこういう立場から、短波通信をとつて、そうして政府が一番必要だと思うものを国民に知らしむるなどということよりは、民主国家の総理大臣なるものは、国民を指導するために、やがて日本は国連に入らなければならない、そのためには憲法改正しなければならない、軍備も用意しなければならない必要も起る。今日の状態においては軍備はもちろん持てないし、今日の状態において今の政府憲法改正するということもできますまいが、国家の将来を思う責任ある政治家であるならば、津々浦々まで行つてこの問題を説き、国民を指導し、その方向に向つて国民をリードすることが、何よりも必要であると考えなければならない。輿論のごときは、これは自然にまかせ、民主国家においてはプレスの自由ということよりは、大切なことがあるそれに対してある政府がいろいろの意見を用いようとすることは、これは民主主義に反することである。そこで政府は、現在におきましては憲法改正しようとしてもできますまい、また現在においては日本の物心両方面において、希望するところの軍備の用意もできますまいが、日本が極東において集団防衛の一責任を果さなければならない地位に置かれる、その立場にならなければ、日本が独立して国家再建を唱うる必要はないのであります。日本は何と申しましても極東における有数なる有力の国家である。そこで私は総理のいろいろこれまでお言いなさることも一応うなずけますけれども、やがては日本国民を極東における有力なる地位にし、国連に加盟して集団防衛に当るべき責任を持つために国民を総指導する、自分から日本の津々浦々をまわつて、この国際情勢を説くという覚悟になつていただきたいと思うのであります。もし総理がこれに御同意くださるならば、私は非常にけつこうなことで国民全体の喜ぶことだと思います。
  88. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。国連加盟の条件については、いまだ何ら国連側から示されておらないのであります。従つて軍隊を持つことが前提条件であるように言わるるが、また国連加入の準備のために、今日から憲法改正の用意をなし、また軍隊を持つような用意をすべきであるというお話のようであるが、私はこれに対しては遺憾ながら同意するわけに行きません。  また国民を指導しろと言われるが、むしろこれは指導することがおかしな話で、輿論政治である以上は、政府としても、政治家としても、輿論の帰趨を考えて、その輿論の帰趨に従つて政策をきめるべきである、これが民主政治だと思います。但し、国民は事実の真相がどこにあるか、事実の真相を知つて、その知つておる事実の、あるいは知識の基礎において国民が自然に向うところを決定する、これが民主政治であるべきものであつて政府が、あるいは政党が輿論を指導しなければならなぬという気持は、むしろフアッシヨ政治であると私は思うのであります。ゆえに過日も申した通り政府としては事実の真相を伝えるために機関を持つ、広報機関というか、情報機関というか、内外の事実の真相を国民に伝えること努める。これがいろいろ誤り伝えられて、思想の統一とか指導とかいうことになつておりますが、政府の企図するところは、しばしば申す通り、内外の事実の真相を広く国民に知らしめて、その正確な知識の上において国論が定まることに持つて来ることが、民主政治と私は考えておるのであります。
  89. 植原悦二郎

    ○植原委員 私はここで総理と議論を闘わせる意思はないのでありますが、両者の言を私は国民に判断してもらえばよろしいと思います。ただ国連加盟はこれは国民大多数の希望するところである。国連に加盟すれば、少くとも国連は集団的の行動によつて世界の平和を維持しようとする建前におりますから、日本もその一翼をかつがなければならないのではないかということであります。のみならず、現在東洋における現状におきましても、日本安全保障条約をつくつて、ただいま外務大臣の申されました通り一つ日本の外から来るところの問題に対して平和を維持し、二つは内において国民の安寧秩序を保つている。安全保障条約の第三条に基く行政協定の第二十四条においてはそれが規定されておる。私は外国軍隊が長い間国内に駐屯することはよろしくないと思います。(「同感同感」と呼ぶ者あり)これはできるだけ早くそういう必要のないようにすることが、独立国の国民のなすべきことだと思います。実は好意でもつて軍隊を駐屯せしめても、また向うの好意を受けて軍隊を駐屯せしめるようなことがあつても、多数の軍人がおりますれば、最近オーストラリアの軍人が起したようなこと、また神戸においてイギリスの兵隊の起したようなことが起りまして、せつかく御同様に親善関係を保ち、緊密なるところの関係を維持するという目的であるにもかかわらず、ささたる事情のために国民の感情を害することは多大である。真に日本とアメリカとの関係を、現在のいい関係を永久に持続しようとするならば、日本ができるだけ早く用意いたして、アメリカの軍隊におつてもらわぬでもよろしいようにすべきだと思います。  これは質問でありませんけれども、私は国民誤解を解くためになお一言この場合に申し述べておきたいことは、神戸における英兵の問題でありましても、私は政府がこういうふうに国民に告げさえすれば何でもないと思います。日本において起つた——特定の地域以外に起つた軍人の犯罪行為に対しては、日本が裁判権を持つておるのは当然だ。しかし国際公法は多くは慣例によるものでありますし、目的は各国間の親善関係を持続せしめようとするものであります。ドイツ法などを研究した人は、法律をもつて人間に当てはめる。しかし英国の法律解釈によれば、皆さん方御承知通り法律の立法の意義をただし、法律自体の解釈をする。さらに問題とすることは、その法律をどうしたら一番社会、国家のために便宜かエキスペデンシーの問題を考える。そうすると、裁判権はこつちにあるのだ、しかし今日の日英間の状態、日本の極東における状態、国際間の日本地位、世界情勢を見て、その裁判権を認めてこれを返すのだと言えば、国民は納得すると思います。ただそれを法理論ばかり闘わしておるからとんでもないことになると思いますが、そういうことに対しては国民を納後せしむるようにしてもらいたいということが、私の今日ここに立つた理由であります。政府と議論を闘わせるという意味ではありません。  そこで次に私がお尋ねしたいことは、ただいまも保安隊の問題に対して、軍備であるとかないとかという議論があり、それが憲法上どうなるとか、あるいは保安隊が野砲を持つて訓練すれば、それは軍隊でないかというような御議論がありますが、これは実に私から見ればシンプルな問題だ。軍隊であるかないかということは、それを使用する目的によつて決するのだ。今の警備隊がたといアメリカからフリゲートを借り受けるにしても、フリゲートでありますから武装の装備があるかもしれませんが、あつてみたところがこれは日本の沿岸を巡邏警備するところの目的のもので、戦争に用うるものでない。従つて軍備ではない。たとい巡洋艦がそのままでも、これを病院船として兵隊を送る場合にはこれは軍艦じやない、病院船だ。だから目的によつて決するので、それ以外に軍備軍備でないかということを決するものはない。政府はこうきわめて簡単に答えておりさえすれば、この問題は実に雲散霧消すると思うのに、あまり言葉を多くしてお上手に答弁なさろうとして、かえつて問題を起しておる。  それからただいま問題になつた自衛の問題であります。自衛の問題は、たといフリゲートが武装しておつても、日本の国が攻撃される場合に、大砲を撃つたつて何を撃つたつて軍隊でない。——人間は人間ばかりでなく国家でも、すべての生物は生存しておる権利がある。その生存の権利を守るために腕力を使つたつて竹やりを持つたつて、それは何でもない。それがために今のフリゲートが形がかわつて軍備になるというばかなことはない。どこまでもフリゲートは向うから来たらやるのである。そこで問題となるのはいつでも憲法第九条の問題でありますが、憲法の第九条を見てもこういうふうに解釈されればちつとも問題にならないのを、かえつて事をしげくしておるというように私には見えるのであります。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる」——自衛は国権の発動ではありません。やむを得ずにするところの防衛である——「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」こういうことであります。自衛のために防禦する場合において、人間が何も持つておらないやつをたたき殺したつて、これが自己防衛のためならば刑を受けることはありますまい。そうして武力であるか戦力であるかという問題も、始終議論になるようでありますが、兵器を用うれば武力でありましようけれども、自衛のために、防衛のために武力を使つたつてそれは何も軍隊ではない。戦力という場合には国権の発動によらなければならないし、戦力というものは海軍や陸軍や空軍ばかりでないと思います。今日の戦争に用いる戦力とは、経済力、人的資源もすべて包括するものでありますがゆえに、この点もはつきりなすつて答弁していただけば、国民は納得できる。どうか国民の納得できるように私はしていただきたい。あまり長くお上手に説明なさると、かえつてごたごたするから、目的によつて軍隊であるか、軍隊でないかを決するのである。フリゲートや保安隊は決して用いない。ただ自衛のためにはこれはしかたがないことである。自衛のために用いたつて軍隊とは言わない、こういうことでどうかはつきりしていただくことを私は希望して、この場合に保安長官の御答弁を得ておきたいと思いますが、いかがでありましようか。
  90. 太田正孝

    太田委員長 一言植原君に申し上げますが、岡崎外務大臣は外国使節との会談のために、零時三十分退席したいとの申出がありますが、御質問の関係がありましたら、さうお含みの上でやつていただきたいと思います。
  91. 植原悦二郎

    ○植原委員 よろしうゆございます。
  92. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答いたします。植原委員の御説は私も賛意を表します。憲法第九条第一項にいわれております、いわゆる国際紛争解決の手段としては武力の行使とかあるいは武力の威嚇をしない。また国権の発動たる戦争はこれはしない。これをはつきり明確にしておるのであります。これは自衛力を否定したわけではごうもありません。従いまして、外国から不法に侵略されるということに対しましては、われわれは総力をあげて防衛するのは当然のことであります。これは何も戦争でありません。私は戦争と見ない。ただ国権の発動たる戦争はやらないのでありますから、その点において戦争は否定しております。ただ第九条第二項において戦力を保持してはならないというのは、戦力は往々にして戦争目的に利用されるおそれがありますから、戦力は保持しない。それでありますから戦力に至たらざる自衛力の行使ということは、憲法においては否定していないとわれわれは解釈しております。
  93. 植原悦二郎

    ○植原委員 なお、中曽根君も幾らか時間がほしいということであるし、政府もお急ぎのようでありますから、私は一つ一つ質問を避けまして、私の意見全体を述べて、政府の所見をただすところに対してお答えを願つて、きわめて時間を節約して中曽根君の機会をつくりたいと思いますから、どうかそのおつもりでひとつお願いいたします。  政府はアジア諸国と、きわめて緊密な親善関係を持続し、これを強化する方針であることが、日本の今日の状態で最も必要なることとして、政府の重要なる政策の第二項とするくらいにされております、全然同感であります。但し、そう言つただけではだめで、これをどうするかということを、国民に示していただかなければならない。私が平面的の政策では困る、立体的にしてほしいというのは、この意味であります。そこで支那は共産主義の国である、中共は共産主義の国である。それのみならず、日本の平和条約を成立せしめる間において、吉田首相とダレスの間の何もありましようから、支那とすぐ貿易する道を講じろとか——これはなるほど講じても幾らの利益もありますまいが、支那とは同文同種の国民でありますから、英国でもこれを承認しておつて、依然として朝鮮に兵を出しておるような建前でありますので、もし日支両国が地理的に見ても、文化の上から見ても、また人口の数から見ても、重要なる場所であるとするならば、私はダレス・吉田の了解もありましようけれども、それにしてもここに対して、日本国民と支那の国民と何か了解するいい道をお考えになつてはどうかと私は考えるのであります。これに対して政府の御意見があれば伺いたいのです。  さらに朝鮮の動乱であります。これは日本影響するところきわめて重要なるものがありますがゆえに、これに対しては深甚なる考慮を費さなければならないし、国民もその将来の成行きに対して、非常な心配をされておると思います。その立場にありながら、ここに兵を出しておる朝鮮や国連に対して、日本が講和条約の第五条によつて、あるいは日本の外交上の必要として、最善の援助を与えることを考慮しなければならない。これを常に支援し援助することが、日本と朝鮮の問題を考えれば当然なのです。朝鮮はある意味において日本の防衛の第一線である。これを日本国民が知らなければならない。それほど重要なところでありますならば、これに最善の援助を与えて、それで政府が米国一辺倒だなんて非難を受けることは、これは政府としてお考えなさらなければいけない。ここに国民に民主主義を徹底せしむる私は意義があると申すのであります。御承知通り、朝鮮事変が起りました六月二十五日——私は二十七日にアメリカの評論界の第一人者、「ヨーロッパの内幕」や「アジアの内幕」、「マッカーサの謎」等を書きまして有力なジヨン・ガンサーと六月二十七日の晩に私と友人二、三と話しておりました。ただちに話題は何が出たかといえば、朝鮮の問題が起りました。アメリカは朝鮮に干渉するだろうかという私は質問をしましたところが、ガンサーは、しないと思う、アメリカは第一次世界戦争に参加して何も得していない。第二次大戦は日本がしかけたからというので受けて立つたけれども、これによつてアメリカは何も利得しようと思つておらぬのだ。ただ太平洋の平和が乱れた。その跡始末に苦心しておるだけだ。アメリカの元来の防衛線というものは千島、日本、そして台湾を入れるとか入れないとか議論があつて、これに火を吹いてそれが飛んで朝鮮に動乱が起つた。三十八度線が共産党に侵されたからといつて、アメリカはこれに軍隊を出さないと思う、というのが、ガンサーの意見だ。もしアメリカの国民の全体の意見をヴオートに問うたならば、あるいはこうなるかもしれないとガンサーは言いました。私はその場合にこう言いました。アメリカは実は第二次世界大戦で日本にまで来たほど世界の共産主義に対して、両方の大洋を守つて、自由国家を強く出して、世界をして民主主義を徹底せしむるようにしなければならないというのがアメリカの政策であり、アメリカ国民の希望ではないか。しからば、もしせつかくつくつたあの南鮮の共和国をアメリカが見殺しにして、ここで北鮮の共産軍に自由に蹂躪されるようなことがあつたならば、アメリカは言うこととすることと違うぞという非難がある。そればかりではなく、アメリカがもし朝鮮問題に対して、干渉しなければ、アメリカはアジア十億の民族に対してプレステイジを失う、私はアメリカはこれに干渉すると思う。民主主義を擁護するため、アジアの自由国家を防衛するために、ここで共産主義を食いとめ、共産党の侵略政策をとめるために、私はアメリカは必ず朝鮮問題に干渉すると思うというたら、その夜が明けてみると、アメリカはそうきめた、国連の政治委員会においてもこれに賛成したということがありました。ガンサーが立つ前に、私はどうだつた言つたら、この点はあなたに負けましたと言つて立ちましたが、そういう状態ですよ。アメリカが何も進んでアメリカの国益のために朝鮮を防禦しようという必要はない。太平洋におけるところの自由国家を防衛しようとする建前からいつて、兵を出しておるのだ。その自由国家たる一国の日本が、これに対してできるだけの援助をし、好意を持つてすることは当然のことである。のみならず、日本はアメリカに戦争をしかけた、にもかかわらず、アメリカは今日対日援助物資も送つてくれる。今日日本国内治安を維持するために、東洋の平和を維持するために、国民の税金をしぼり出して、日本に駐留軍を置くことさえ同意していてくれるのであります。それに比較して、中共やソ連は何をなしたか。せつかくつくつた共和国を滅ぼそうとして三十八度線を破つて来たではないか。ソ連のごときは、日本が原子爆弾にやられて足腰の立たないそのあとに持つて来て、大兵を満州に送つて、そうして百数十万の日本の捕虜を連れて行つた。血の一滴も流さずして千島、樺太をとつたではないか。この国と日本はどう手を握ろうとしてもできないではないか。そういう実情であることを国民全体に知らしたならば、日本の今日の外交政策が、アメリカ一辺倒だなんという誤解を、私は一切雲散霧消せしめることができると思う。なぜそういうことに政府はより多く御努力なさらないか。もちろんそういうことを知らせるために、外務省の役人の方などは、日本の各地へ行つて御講演なすつて、おりますが、なぜそういう場合に議員をお用いなさらないかと私はこう言う。今日四百六十六名の衆議院議員、国民と一番よく接触しておるその議員を用いて、たとい外務省のお役人が事実を知つておるとはいえ、それが講演するならば、それらと連絡をとり、提携するようにして、なぜ国民をして日本の国情、極東の実情を徹底せしめ、日本の外交政策がアメリカ一辺倒だなどという誤解を除くようになさらないのか、これが私の考えであります。  さらに日本の人口問題や経済問題を解決しようとする場合に、ブラジルの移民などは大した問題でない。遠くして、船もなし、なかなか簡単には行けない。向うで一年に九千家族を受入れてくれても自由にはならない。そこで日本経済発展を考えましても、人口問題の解決を考えても、東南アジアに何としても目を注がなければならない。この春、アメリカのトルーマン大統領は、東南アジアに対して、アメリカはかなりの資金を投資する用意があると言うておるじやないか。それに対して、日本は東南アジア、フィリピンにせよ、その他ジャワにせよ、スマトラにせよ、あらゆる方面に人を派して——なるほど国交が回復しておらないけれども、私は日本国民を代表する国会議員が行つて、向うの人と自由に接する機会を持つても、向うは歓迎して、これを拒否するものではないと思う。また日本ではお役人といえばたいへんいいように思いますけれども、フイリピンなどは四十年間アメリカの民主主義の政治に教育された国でありますがゆえに、日本の代議士だつたら尊敬するが、お役人だつたら案外尊敬しないかもしれない。実はフイリピンの問題も考えて、最近において賠償問題を解決しようとして、その準備を進めておる。これはけつこうであります。しかしこれはどろぼうを見てなわをなうようなことで、早くやらなければならないといつて、今になつてあわて出すようなことではない。日本の独立はことしの四月二十八日実現されております。それから今日までどういう手をお打ちになつたか、これらに対しても、ほとんどなさつたことは私はないと思います。また日本の実業家があつちへ行つて、ずいぶんいろいろな経済的の連絡をとつたこともありましようが、それを政府知つておるだけではいけない。そういう人をなるべく利用して、そういう人の報告を聞いて、それを国民に宣伝するように御努力をなさつたかといえば、一つもしておらない。東南アジアの開発はアメリカでは歓迎いたしております。日本の人口問題に対しても、日本がこれに手をつけることに同情をいたしております。日本の原料資材もこれから得られることが少くありません。技術や労務者をやつて日本の人口問題の一部の解決ができることも、これにあります。ただ問題は、インドネシア、フイリピンは、日本が侵略してはいけないと、日本の再軍備に対しては非常に恐怖の念を感じておることも事実であります。そういうことを解くについては、NATOと同じく、日本が太平洋におけるアジア全面における安定勢力として、みずから主唱して、太平洋の集団共同防衛機構をつくるぐらいなことを——今計画したつて実行できないかもしれないけれども、そういう方向に御準備をなされてはいかがかと思います。しかるにただいまは、日本を守るために、日本において安全保障条約に基き、アメリカの駐留が行われておる。フィリピンとアメリカの間では特殊な防衛協定ができておりましよう。またアメリカと濠洲とニユージーランドの間でも、三国のある協定ができておりましよう。ばらばらじやないですか。太平洋の前面におつて、東洋の前面におつて、アメリカも日本の将来の安定勢力たらんことを希望する。日本国民も、少くもアジア諸国の中においては、うぬぼれるわけではないが、ちよつと他と比べると、群を抜いておる国民でありましよう。しからばこの国民が独立になつたならば、それらの国の誤解を解くこと。その誤解を解くには、私はこういうことが一番いいと思う。日本国民は好戦主義者だ、あるいは日本に再び軍備を持たせれば危険であるというような考えを起すのは、過去における日本の歴史を知らないからである。日本国民は好戦国民でもない。軍国主義者でもない。これを日本国民をかくあらしめたものは、明治三十一年に山県公が、日本の陸海軍大、中将にあらざれば、陸海軍大臣たることができないという規定を設けたことであります。最初はこれを陸海軍の省令として、後にはこれを勅令として、ほとんど国民をごまかして、憲法違反であるにかかわらず、これをもつて日本の中心勢力とした。その結果、陸海軍の大、中将が結束さえすれば、どんな内閣でもつぶすこともつくることもできた。そのために軍人はやがて日本の政権を壟断するようになつた。そうして大それた、日本国民の希望せざるところの太平洋戦争のようなものを引起して、そうして日本を今日のようなみじめなことにしたのである。これがはつきりしたならば、どうです、特別の人を送つて、濠州やニュージーランドに講演さしたりいろいろして、日本国民は好戦国民でない、過去において日本が誤つたのは、こういう法制、制度が日本国民をここまで引きずつたのだということを、親切にこれらの国々に納得せしむる方法をおとりになりましたならば、こういうことも氷解して、日本が再軍備をいたしても、日本は御同様に共産主義の防衛をしてくれるので、日本が再び侵略主義を繰返すようなことの心配は絶対にないと、フイリピンにおいても、インドネシアにおいても、濠洲においても、ニユージランドにおいても、私は納得してくれるものと思います。なぜ政府はこういうふうな方針をおとりなさらないのか。  また御承知通り、アメリカは将来は太平洋の平和を守るためには、何としても日本国民と提携しなければならない。アメリカ人は口に同盟などということを言うことをきらつた国民でありますが、近ごろはアメリカにおいても、どうもやがて日米同盟でもするくらいな密接な提携をしなければならないというようなことを、アメリカ人みずから言つております。極東における日本人というものは、どうも他の国民とは違つた国民だ。この国民がなぜこんなになつたろうというので、アメリカではどの大学においても日本語を教えない大学はない。そればかりでなく、英国における東洋通の一番偉かつたジヨージ・サンソン男爵を、コロンビア大学が聘して、東洋研究の講座を持たしておる。「羅生門」などは、アメリカのような進んだ映画国でほとんど興味を持たれないと思つたが、あれを、少数でありますが、アメリカの芸術家、識者たちは非常に認めておる。なぜこういうものを至るところで上演しておるかといえば、アメリカ人はこう言う。これによつて日本国民を理解できるのだ。ある加州大学の教授のごときは、近松の「紙治」を訳した。これから近松のものをみんな訳して、アメリカに紹介するつもりだとさえ言うております。こういうほどアメリカ自体が日本に手を伸ばしております。これに対しては、日本はどうしてアメリカ人を日本国民にもつと徹底せしむるようになさらないのでありましようか。アメリカ国民には、領土の野心なんか歴史の上においてはありません。アメリカが朝鮮において、ただアメリカの利益のために兵を出しておるなどと考えるのは、アメリカの国民に、一人もありません。ただ極東における共産主義の侵略行為、共産党の進出をどうして防衛するか、ここの第一線で食いとめなければならないという、ほんとうに東洋の平和を愛し、自由国家の提携をし、民主主義を世界の各国民に普及せしめたいという一念にほかならないのであります。ここにおいて日本国民の中に、アメリカ一辺倒の外交政策だと非難の声を上げさせるということは、いかにも政府が私は不用意ではないかとこう思うのであります。これらに対しても、私は日本国民をしてもつとアメリカ人というもの、アメリカの歴史、アメリカの現状というものを徹底的に理解せしめて、ちようど大西洋において多数の意見の違いはありましても、最後には英米が提携して、NATOのような共同の条約をつくるように、太平洋のこなたにおいて、日本が重要なる地位を占むる国として、国民をしてよくアメリカを研究させ、アメリカを理解せしめて、もう少しアメリカに対する誤解を解いて、ほんとうに日米水入らずの親善提携のできるような方策を、なぜもう少し積極的にお立てにならないか、なぜそういう行動をおとりになららないか、こういうことが私の質問の要旨であります。  さらにまだこまかいことがありますけれども、私は質問することが目的でないから、ただひとつこの場合大蔵大臣にも伺つておきたいことがあります。大蔵大臣は御承知でありましようけれども、今までの補正予算というものは、十五箇月予算とか、十八箇月予算とかいつて、相当補正予算を見れば、明年度の予算計画がわかるようになつてつたのでありますが、今度の補正予算はほんとうのサプリメンタリ・バジェットで、それが何もありません。そしてすでに御承知通り、米価の問題もきまつております。また公務員の給与の問題もきまつておるし、鉄道の運賃も定まつております。これらの見通しから明年度の予算は、どういう方針で編成するつもりであるかというようなことも、御説明ができはせぬかと思う。またそればかりでございません。進駐軍に対する五百何十億の問題も、これは国民にはどうもわかりにくい問題でありますが、これらの問題も、ただ数字を並べるばかりでなく、なぜこういうことになつたか、これをどうするか。さらに私は大蔵大臣としてお考えを願いたいことは、池田大蔵大臣はよくおやりくださいました。最も困難な時期にアメリカのドツジの政策に対応してよくやりました。けれども池田大蔵大臣のやりましたことは、あまりにインフレーシヨンを抑制せしめたいということの一方と、根が租税だけの、大蔵省におるときに知識を持つた人でありますがゆえに、生産方面や経済方面に対して、どうも徹底的の知識がなかつたためか、それで先生が気の毒だけれども、中小商工業者の問題を起すようなことになつたと思います。独立の日本としては、もう少し中小商工業者を活発に働かせるような金融政策を講じなければ、日本の貿易を振興せしめたい、日本の産業を振興せしめたいと申しても、日本の大規模な工業は紡績工業、繊維工業くらいなもので、まことに微々たるものであります。何といつて日本の貿易を振興するにも、日本経済を堅実に引伸ばして行くにも、中小商工業者が主体であります。これをよく考えなかつたところに、池田財政に対する非難が盛んに行われたのであります。向井大蔵大臣は幸いに税をとることや銀行のことには、あまり経験を持つよりは、通商貿易や産業のことに御経験のある方で、仕合せだと思いますが、そういうことを考慮して、明年度の予算をいかに編成するか、どういう目的でやるか、重点をどこに置くかということを、この機会において御説明なされば、国民が向うところを知つてかなり安心されると思いますが、きようでなくもいいが、どうかひとつそういうことのために御努力願いたいと思います。  これだけで私の質問を打切つて、あと中曽根君に時間をお譲りしたいと思います。
  94. 吉田茂

    吉田国務大臣 一応私から植原君のお尋ねに対してお答えをしますが、政府はあくまでも善隣関係、特に東南アジアあるいは隣国の朝鮮、中国等についての親善関係を打立てたいと努力しておるのであります。いかなることをなしたかについては、外務大臣から委細お話をいたしますが、一言私から触れておかなければならないことは、私とダレス氏との間に、あたかも中国と親善関係に入ることを禁ぜられたような約束をしたかに考えられておられるようでありますが、そういう約束は断じてないのであります。
  95. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろの御意見傾聴いたしました。今後も御意見のようにできるだけ努力をいたすつもりであります。なおこまかい点につきましては、これは非常に時間を要しますので、外務委員会等でさらに詳細に申し上げますが、太平洋同盟はNATOのようなかつこうのものという御意見がありましたが、これは先ほども総理が言われましたように、まだいろいろの関係でそういうものは、日本はもちろんでありますが、ほかの国の関係でも、機が熟していないように考えております。  東南アジア方面の誤解を解くための努力は、従来もいたしておりまして、民間の人にも行つてもらいましたし、政府の方でも努力いたして来ておりますが、なかなか十分な結果はまだできておりません。しかしできます国に対しましては、たとえば文化講座を設けるとか、あるいは講演をするために特に人を派するとかいうことも、話合いを今進めております。すでに適当な講演をするために、その人選を進めておるようなところまで、ある国とは来ておりますので、いずれ結果が現われますれば御報告いたします。  なお東南アジア方面の各国との間に、賠償問題その他の問題もありますが、平和条約発効以来かなり時がたつておりますが、これらにつきましても、断続的にはずつと話を進めて来ておつたのであります。ただいろいろの関係で機が熟さないというような事情もありまして、延び延びにはなつおりますが、しかしずつとやつて来たのであります。今後とも、できるだけ御意見の趣旨に沿いまして努力するつもりでおります。
  96. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答え申し上げます。特に中小産業について注意しろというお話でございますが、その通りに私も考えております。インフレーシヨンを押えるというために、前の大蔵大臣はずつと努力されたので、これは幸いにある点で食いとめることができた。これからはインフレーシヨンを押えるというふうな意味でなく、インフレーシヨンにならないように心がけてそして財政の均衡をはかりたいと思います。弾力のある予算というような、抽象的の言葉を用いて恐れ入るのですが、それははめをはずすということは断然できないので、入る金の見当をつけて使つて行くよりしようがないのですが、とにかく産業を助けるということは大事ですから、その保護に、できるだけ今までの蓄積した金を大事に使つて助けて行きたい。そういう考えを持つております。
  97. 太田正孝

    太田委員長 植原君の質問は終了いたしました。たいへん時刻も過ぎておりますが、総理大臣が午後公務のため御退席になりますので、その関係上次の中曽根さんに一時ごろまでひとつ進めていただきたいと思います。中曽根康弘君。
  98. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 たいへん時間が限られておりますから、私は断片的なことを総理大臣にお尋ねいたしまして、国防、財政、外交方面の基本的な問題については、あらためてお尋ねいたしたいと思います。  本日お尋ねいたしたい第一は、皇室の問題であります。先般皇太子殿下の立太子の式にわれわれは招かれまして、皇居を拝観したのでありますが、日本の象徴たる天皇陛下の皇居としてははなはだ手狭で、外国使臣を接見したり、あるいは外国使臣といろいろ御交際をなさる関係から見ても、非常にそまつである思います。われわれはこれを見まして非常に恐縮に存じまして、何とかしなければならぬと思つたのでありますが、現在国会の保管になつておる赤坂離宮が今図書館になつております。これを図書館に使うのは非常にもつたいない。むしろこの際皇室用として外国使臣の接見やあるいは賓客の応待やあるいはその他の行事にお使いになつた方が、この際適当であろうと思うのであります。国会におきましてもこのような動きがすでにあるのでありますが、こういうやり方に対して、政府は御同意をなさるかどうか、まずお尋ねいたしたいと思います。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。現在の皇居の状態と申すか、この間の立太子式等においてごらんの通り、臨時的の設備しか出来なかつたのでありますが、しかしこれはなるべく国費を使わないようにというおぼしめしもあり、またおぼしめしを体する宮内庁としての意見もあり、なるべく経費のかからないようにという意味で一応何したのでありますが、われわれの希望としてはあなたの意見通り、まさにその通りであります。どうか国の財力が許し、かつまたおぼしめしもそこにあるということになりますれば、ぜひ相当な設備をしたいと思つております。赤坂離宮のことについては現状は私よく存じませんが、これは現在いろいろな不便があるようであります。お話のようにこれを国会図書館に使う目的で初からつくられておらないのでありますから、これを国会図書館に使つておるということは、これは図書館自身としても不便でありましよう。同時に図書館にかわる建物がない以上は、ただちに移転することもできますまいが、財政の模様を考えて、国会としては国会図書館をつくり、従つて赤坂離宮は初め建築されたときの目的に使われた方が一番いいと思いますが、今のところはただちに図書館をよそに移すということもできない。そうしてまたお住まいになるとしても、あるいはまたその他儀式用に使うとしても相当いろいろな欠点あるというふうに承知いたしております。なおその点は考えておきます。
  100. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 第二の問題は、皇太子殿下の御教育の問題であります。皇太子殿下も立太子の式をあげられまして、次の世代の国家の象徴となられる方でありまして、御教育のことはわれわれ国民全体として関心を持たねばならぬところであります。そこで立太子の式を終えられた今日とその前とは、御教育の内容も違うと思うのであります。そこで総理大臣にお尋ねいたしますが、皇太子殿下の御教育の基本方針をどういうところに置いてこれからおやりになるのか、いかなる人物を当ててこれを今おやりになつておるか、いかなる機構で皇太子殿下の御教育のことを心配してやるか、この三点につきましてお尋ねいたしたいと思います。もし総理大臣が詳細御承知なければ、宮内庁の者が来ているはずでありますから、詳細は宮内庁の方から承つてもよろしゆうございます。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 一応私が知つておる限りにおいてお答えいたします。皇太子殿下の御教育については、従来も当局として十分な注意を用いておるのであります。すなわちヴイニング夫人を招聘するとか、あるいは小泉信三君が主任と申しますか、御教育の責を負うてその地位についておる。その他の御教育については当局としては十分留意を払つております。また今後立太子後におかれて、あるいは英国その他におまわりになるということにもなりますし、またその節には殿下の御見聞を広めるために、外務省としても、また宮内庁としても、相当の用意をいたしまして、御旅程等については目下慎重に審議いたしております。万遺憾なきを期したいと思つております。
  102. 太田正孝

    太田委員長 宮内庁の政府委員は今来られておりませんから、さようお含みおき願います。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは政府委員答弁は追つてお聞きいたします。  先般立太子の式典に参列されました中でわれわれが注目を引きましたのは、東大の矢内原総長の印象記であります。この中に次のような言葉があります。「いちばん著しい印象は、宗教的色彩が全然ないことであつた。このことは、日本の将来の在り方について、深い問題を持つているように思う。」「戴冠式とか、立太子のような儀式に、宗教的色彩を持つことは、憲法に保障する信教の自由を少しも抵触するものではない。日本の天皇が人間であることを明かにせられたのは、宗教を無視することは、全然ちがうので、むしろ、神の前に自己のけんそんな人間としての地位を自覚し、国王としての責任を感ずることこそ、最も人間宣言の主旨にそうものと私は考える。」これがその要旨であります。矢内原総長は自由主義者として尊敬せられておる方であります。この方ですら儀式についてさようなお考えを持つておられます。この所見に対して政府はいかにお考えになつておられますか、お答え願いたいと思います。
  104. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま御指摘の矢内原先生のお書きになつたもの、私も拝見いたしましたが、ただそれについて私ども申し上げたいのは、矢内原氏の述べられることも一応ごもつともでございましようが、私どもとしましては、やはり憲法の第二十条の趣旨というものがございますからして、できるだけその方向で処置した方がよいであろう、また適切であろうというふうに考えた次第でございます。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政府は今後ともそういう方針をもつて進むつもりか、あるいはその他の方針を持つておるのか、お尋ねいたします。
  106. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 このことは、今の憲法が制定される際に、いろいろ当時の帝国議会の質疑応答に出ております。従いまして今回の措置も大体そういう趣旨を念頭に置いてやつたことでございますから、今後その考え方を切り改めるというところまでは考えておりません。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば総理大臣にお尋ねをいたしたいと思います。皇太子が国家の象徴として次にお立ちになるときには、もちろん御人格がごりつぱでなければならないと思いますが、その一番中心になるのはやはり宗教的信念というか、人生、あるいは宇宙とか、そういう哲学的な、宗教的な御信念において、りつぱに御成熟がなさらなければならないとわれわれは思うのであります。そこで皇太子個人の宗教的信条という問題と、国家の機関と申しますか、そういう公の立場におられる方のその場面におけるものとはもちろん違います。そこで問題になりますのは、今まで皇族あるいは皇室の宗教というものは神道でありました。しかし今日におきましては皇族も信教の自由を持つておると思うのであります。そうすると、キリスト教であるとか、あるいは仏教であるとか天理教であるとか、いろいろ宗教があります。過去におきましては、天皇の中で仏教に帰依された方もあります。しかし伝統的には神道というものが皇室の宗教であつたように思います。しかし単に神道だけにとらわれない、あらゆる自由な観点からする宗教的御信念を獲得する、これが皇太子の御教育に一番重要なことであると思いますが、この神道ほかの宗教と、それから皇室の宗教との関係、皇太子の御教育との関係、この問題はどういうふうな基本方針を持つておやりになるか、これは法制局長官ではなくて、総理大臣の御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  108. 吉田茂

    吉田国務大臣 法制局長官からお答えいたします。
  109. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 宗教的情操を養つていただきたいということはまことにその通りであると思います。そういう方向でまたあるべきだと思います。その宗教的情操を養われる、あるいはそれと並行して皇室御一家の宗教としてどういうものを御信仰になるか、これはもう全然別の問題でございまして、その点については皇室の御自由ということに考えておるわけであります。
  110. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば現在皇太子殿下は御自身の自由意思において、あるいは教育を担当せられる者の配慮において、どういうような宗教的な修行なり学問をしておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  111. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 詳細は宮内庁の方からいずれお答えすると思いますけれども、私の承知しておりますところでは、宗教的情操の涵養という面が一応表に立つてのことであつて、さらにその裏づけとして、ただいま申し述べましたように、皇室御一家の宗教的信念というようなものが出て来ておるのではないか、これは私の推測でございますが、さように考えております。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題は単なる技術論や法制論ではないのでありまして、総理大臣にお聞きいたしたいのであります。次の世代の象徴としての皇太子の御資質に非常に重要な関係を持つと思います。その意味におきまして、総理大臣の御方針をぜひ承りたいと思います。
  113. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま法制局長官の申された所説といいますか、方針は、私においても是認するところであります。
  114. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一向に要領を得ない御答弁でありまして、お考えにないことを聞かれたので、御答弁の方法がないような印象であります。あらためて私は宮内庁の長官にこれはお聞きいたします。  その次にお尋ねいたしたいと思いますことは、皇太子殿下が外国へいらつしやいますときに、勲章をたいへん持つて行かれるということを新聞で拝見いたしました。二千くらいの勲章をお持ちになるということであります。しかしわが国にはまだ栄典制度も確立しておりません。新聞にはいろいろなことが散見しておりますが、どういう種類の勲章をお持ちになるか、栄典制度と関連して、政府の方針を示していただきたいと思います。
  115. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまお尋ねの点は、新聞にもちよつと出ておりましたがそれはおそらく、現在の天皇陛下でありましたか、前に皇太子殿下が外国にいらしやいましたときに、そのくらい御用意なさつて、そうして実際贈呈されたのはそのうちのまた一部分だという話がございまして、その話が新聞に出たのでございます。今度渡英せられるにつきまして、勲章をお持ちになるかどうか、あるいはどのくらいお持ちになるかということは、全然まだ未定の問題でございます。
  116. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に総理大臣にお尋ねいたしますが、これは方針だけ伺えばけつこうです。太平洋戦争において、日本は東南アジアや中国その他にずいぶん現地政権を樹立いたしました。その現地政権の要人が、戦争に負けてからは非常なみじめな生活をやつておるのであります。ある者は中共に虐待され、ある者は国府に虐待され、あるいは香港に逃亡し、あるいは日本に来ている者もあります。しかしこれらの日本の国策の具に供せられて、それがために現在悲境にある人たち、少くとも日本にいる人たちを、日本人が放任しておくということはよろしくないと思います。われわれが知つている範囲では、英国政府はこういう亡命生活者の保護につきましては、非常に十分な措置をやつておる。そのために英国の国際的地位も高くなるし、英国人の心情というものも非常によく理解されておるようであります。日本におきましても、主として中国関係の亡命者が相当おるようです。特に汪兆銘政権の関係の亡命者は相当おつて、しかも毎日の生活にも困るような者が相当多いと聞いております。政府の関係の中にも御承知の方も多いと思います。これらの政治的亡命者に対して日本政府としては、どのような愛情を振り向けられるか、総理大臣の御方針を承りたい。もし本年度あるいは来年度において予算的措置を講ずる用意があるならば、そのこともあわせて伺いたいと思います。
  117. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをしますが、私の承知しておるところでは、亡命者といいますか、日本に好意を持ち、あるいは日本との間に親密な関係を過去において持つた中国政治家に対しては、おのおのその懇意な日本の友人から相当の援助を受け、また私どもも援助をしておる向きがあります。日本国人の個人から相当の援護を受け、保護を受け、あるいは支援を受けておる現状にあると考えます。しかし政府がただちにこれに対してどうするかということは、私はまだ早いのではないか、今のところは考えておりません。
  118. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君、先ほど申しましたように、大分時間が過ぎましたが、もう一点だけでございますか。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 もう一点だけ。ただいまの総理大臣のお考えにわれわれは反対であります。もう政府がそういう人たちに対して、あたたかい待遇を与えなければならない時代が来ておる。占領下ならいざ知らず、独立した日本でありますから、将来の百年の計も考えてみて、日本が過失によつて現在悲境に陥れた人たちに対しては、十分報ゆべきだろうと思います。この点私の希望意見として申し述べておきます。  最後にお尋ねをいたしたいと思いますが、保安庁法あるいは船舶貸与協定がもし憲法に違反しておるという場合には、総理大臣は責任をおとりになる決心がありますか、決心だけをお示し願いたい。
  120. 吉田茂

    吉田国務大臣 憲法に違反するような行為は、政府としては断じていたしません。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は違反しておる事実を発見しております。もし違反しておる事実があつた場合には、政府は責任をとられるか。
  122. 吉田茂

    吉田国務大臣 事実を承知いたした後に申し上げますが、事実はないと思います。
  123. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 事実があるかないかは追つて私から申し上げます。もしあつた場合に責任をおとりになるか。そのもしあつた場合の御覚悟をもう一回お示し願いたい。
  124. 吉田茂

    吉田国務大臣 仮定の問題にはお答えはしません。
  125. 太田正孝

    太田委員長 午後二時半から開くことといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後二時五十二分開議
  126. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。中曽根君。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先ほど総理大臣に対しまして、皇太子殿下の問題についてお尋ねいたしましたが、その際宮内庁からはたれもお見えになりませんでした。宮内庁次長がお見えになつているはずでありますから、先般の質問についてお答え願いたいと思います。
  128. 太田正孝

    太田委員長 御質問の趣意は向うへ通じていますか。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それではもう一回やりましよう。  質問の第一点は、皇太子殿下の御教育の方針であります。皇太子殿下はいよいよ国家の象徴となられる方でありますので、立太子の式の前とあとでは、御教育の内容その他に変化があつたと思う。その教育方針及びいかなる人がこれに当られておるか、いかなる機構でこれをやつておるか、これが第一の質問であります。
  130. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 お答え申し上げます。皇太子殿下の御教育につきましては、従前のように特別な御学問所等の機構を設けませず、同年配の青年とともに御勉学になりますことが最も適当であるという趣旨のもとに、現在大学の課程にお進みになつておるわけであります。ただ特別に今後の御教育のために必要な補講相な講義がある次第でございます。  立太子の前後につきましては、現在大学の課程にお進みになつておりますので、根本的に大きくかわるということはないと存じますが、御成年後におきましては、多少公的な御活動もふえるかと存じますので、そういうような場合に対する補講的なことは、十分細心の注意をいたして参りたいと考える次第でございます。現在は大学を中心にしていたしておりますが、特別に学界の学識の高い方の講義をお願いしている次第でございます。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 第二の点は、皇室と宗教との関係であります。先ほども申し上げましたが、立太子の式典に参列した矢内原東大総長の印象記の中に次のような言葉がある。「いちばん著しい印象は、宗教的色彩が全然ないことであつた。このことは、日本の将来の在り方について、深い問題を持つているように思う。」「戴冠式とか、立太子のような儀式に、宗教的色彩を持つことは、憲法に保障する信教の自由と少しも抵触するものではない。日本の天皇が人間であることを明かにせられたのは、宗教を無視することとは、全然ちがうので、むしろ、神の前に自己のけんそんな人間としての地位を自覚し、国王としての責任を感ずることこそ、最も人間宣言の趣旨にそうものと私は考える。」これが趣旨であります。自由主義者として有名であつた矢内原氏ですらこういうことを言われております。御存じのように皇室には神道というものがありました。しかし皇太子殿下はまだお若いのでありますから、いろいろな御学問をなさると思うのでありますが、皇室伝統の神道と、それから自由な見地から宗教というものを御研究になる立場と、それから将来国の象徴としての敬虔な信仰を持つた、信条といいますか、真の哲学的な宗教の御信念を体得せられる方が最も望ましいと思うのでありますが、こういう点について宮内庁ではどういう所見を持つてお取扱いになつておられるかお尋ねいたしたいと思います。
  132. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 皇室におかれましても御承知通りに、賢所を中心とする御信仰をお持ちになつておるわけでございます。しかしながら御引例になりました立太子式等のような儀式のときにおきましては、憲法第二十条の趣旨を厳格に解していたしましたと同時に、立太子式、成年式というものは、日本古来の礼におきましては宗教的色彩が全然ない儀式でございますので、そういう点も加味していたしたわけでございます。  皇太子の御教育につきまして、宗教的なものが重要であるということにつきましては御同感に存じますが、特定の宗教を目ざして御教育申し上げるというのではなく、やはり宗教的な情操を十分におとりを願い、だんだん御自身の御判断を成長さしていただくということが、現在におきましては適当ではないかと考える次第でございます。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 皇太子殿下は完全に人間として自由にならなければならないと信じます。そういう意味で、もし殿下が神道以外の別の宗教に対して御熱心になり、あるいはその宗教に帰依せられる、たとえばキリスト教ならキリスト教というものに帰依、御信仰を持たれるということに相なるかもしれませんが、そういう点もまつたく人間として自由にお扱いになつて、従来の日本の伝統の神道であるとかそういうものに拘束されない御教育をなさる御方針でありますか、いかがでありますか。
  134. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 ただいま申し上げました通りでございまして、現在の御教育におきましては、宗教的な情操をつけていただくということを主眼にいたしております。もちろん個人として信仰の自由という点につきましては、皇室におかれましても同様ではなかろうかと現在は考えております。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に、もう一つの点は、皇太子殿下が今般天皇陛下の御名代として渡欧される件でありますが、勲章を持つて行かれるという話でありますが、一体どういう勲章を持つて行くかという質問です。そこで宮内庁の次長に特にお尋ねいたしたいと思いますことは、御名代としていらつしやるのでございますから、先方へ着かれたら天皇陛下並の待遇を受けるのだとわれわれは承知いたしますが、イギリスあるいはアメリカその他の国においてどういう御待遇を受けられるものか、お尋ねいたします。
  136. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 お答えいたします。イギリスからの招請は天皇陛下の御名代ということでざいますで、文字通りに天皇陛下の御名代としてお扱いをいただけるものと考えております。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 御名代という意味は、天皇陛下のお取扱い、天皇陛下と同じようなお取扱いを受けるかどうかということが一つと、もう一つは、フランスやアメリカ、イギリス以外の所に行かれた場合に、どういう待遇を受けられることになるのか、その点をお尋ねしておるのであります。
  138. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 前回の例等に見ましても、各国の元首の中に当然お入りになることと存じます。  それからイギリス以外の列国に万一御訪問になります際のことにつきましては、目下その御資格等につきまして研究中でございまして、ここで御報告申し上げる程度に進んでおりません。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは宮内庁に対する質問を打切りまして、外務大臣に対して御質問を申し上げます。  まず第一の問題は国連協力の問題であります。日本は平和条約あるいは交換公文等によりまして、国連に対する協力ということを約束しております。しかしそれに対してわれわれの見るところによれば、政府には国連対策というものは全然ない。現在政府にあるのは、対米政策あるいは向米一辺倒政策であつて、国際連合そのものを対象にした大きな国策というものは、何ら見当らないように思うのであります。やつているのは国連協会を府県につくつて、多少のパンフレットを配ることくらいのことしかしておらぬ。このことについては、植原氏もさきに触れられた通りであります。労働問題についても、あるいは文化問題についても、教育問題についても、あらゆる面から国連というものを対象にした政策というものが出て来なければ、国連政策があるとは言えないと思うのであります。その国連政策というものを明確にする一番の基本は何であるかというと、一体日本人は国連に対しでどの程度の協力をしなければならないのか、加入前においてどの程度の協力をする必要があるのか、加入後においてどの程度の協力をする必要があるのか、その限界を明確にすることです。これが明確でないから、朝鮮へひつぱり出されるのだろうという端摩臆測すら行われておる。一番のキイ・ポイントは、日本の協力の限度を明確にすることだと思う。この加入前と加入後の協力の限度について、もう少し岡崎外務大臣より説明していただきたいと思います。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 大体申しますと、加入前と加入後の協力の差異というものはほとんどありません。今でもわれわれは平和条約の第五条で国連協力ということを言つております。加入後においても、原則的には同じであります。ただ多少違いますのは、たとえば分担金がどうとかという種類のものは、加入後でなければ出て来ません。こういう点では違う。精神的に、いつたら同じであります。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しかし日本は加入すれば権利を得るわけです。ある程度の権利が出て来ます。しかし日本は加入前は、なるほど権利義務は同じだというようなことは書いてあるけれども、実質的には同等の権利が発生しているとは言えません。これは国連総会に入つて何もできない、安全保障理事会でも何も発言権がない。これですら大きな差異があるではありませんか。こういう点について岡崎外務大臣は何ら触れられませんが、日本の義務だけを言つているのじやない。あなたの頭の中には義務だけしか入つていない。大事なのは権利の点を言つているのです。権利の点はいかがですか。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 加入前におきましては、特に権利として申し上げるものはありません。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大いに違うじやないか。しからば伺いますが、先般来問題になつておる国連協定の問題です。私は時間がありませんから、今岡崎外務大臣が交渉しておる国連協定の内容について明確にお答え願いたいと思います。  まず第一に、国連協定をやつている相手はだれであるか、だれが代表者になつて、どういう資格でやつておるか、これが第一番目であります。  第二番目は、六月二十八日に日本側の案を提出したという話でございますが、大体どういう項目の案を提出したか、まずこの点をお伺いいたします。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国連協定の相手方は、いわゆるユニフアイド・エマンドであります。このユニフアイド・コマンドの中でだれが代表者となるかは先方でその都度きめればよいのです。今までのところはスポークスマンのような形で話しておりますのがアメリカ大使でありますが、同時にイギリスの大使も、あるいは濠洲の大使も参加しております。  六月に提出したこちら側の案と申すのは、おそらく裁判管轄権についてのことを言われたものだと思いますが、これは大体において大西洋条約に基く軍隊地位に関する協定案の趣旨にのつとつたものであります。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その案を後日文書で一つ提出していただきたいと思います。  その次は日米行政協定と違う様相が出て来ていると思うのでありますが、家族の関係をどうするか、軍人軍属だけでなくて、家族の関係をどうするか。それから施設の関係で私有財産と国有財産に対する補償の関係、これも大きな差のある問題です。  第三番目は税の関係であります。国税、所得税、消費税、行政協定においては大幅に免税されている。この点はどうなるか、まず三点についてお尋ねいたします。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 家族につきましては北大西洋条約に関する軍の地位に関する協定においても、まだ発効しておりませんから正確なことは言えませんが、今の案に基けば、家族は軍の所属員として取扱うような模様であります。従つてわれわれの方もその趣旨で取扱つております。  施設、私有財産については、話合いによつて賃貸の契約等を結ぶ、これは当然でありまして、普通の私契約と同じでございます。国有財産等につきましては、これに対する使用料をとるとかとらないとかいうことは、まだ決定いたしておりません。その他の税についてもまだ話合いができておりません。できてないというのは、意見が一致しておりません。しかしながらわれわれとしては、国連協力という趣旨からいつて、できるだけこの線についても国連軍側の便宜をはかろうと思いまして、いろいろ今話合いを進めております。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういう意味は行政協定の線と同じ線に持つて行く見込みであるかということですか、それとも中間のラインを出すという意味でありますか。
  148. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まだ話合いの最中でありますから、それについてどうこうということは、ここで申し上げる段階になつておりません。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は外務大臣の方針を聞いているのであつて、結果を聞いているのではありません。
  150. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 方針と申すものは、交渉の際にこちら側でもつてこの方針で行くのだといつて、先方に対して交渉のこちらの方針を明らかにするということは、決定してこれ以上一切引けないという場合は別でありますが、こういう税の問題は要するに程度の問題であります。どうするかということは、実際にどの程度のさしさわりがあるかということ、その他いろいろなことを考えてやる程度の問題でありますから、ここまではいいけれども、これ以上は絶対に引けないというようなラインは、明確にできないのでありますから、行政協定と同様になるかもしれぬあるいはそれよりは少し低いものになるかもしれぬということであります。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それを称して岡崎その都度外交と称するのだろうと思います。大体政府に方針がないなんというはずがない。日本国民全部が要求しておることは、国際法にのつとつてやれということなので国際法の線をはずれるということは、よほどの場合でなければやつてはならぬ。せいぜいはずれるとしても、事実の取扱いとしてはずれるのはいいだろう。その程度までは国民として認めるでしよう。たとえば身柄の問題なんか……。しかし税の問題あるいは法律的な措置の問題については、国民は譲れなんという考えは毛頭ない。また妥協しろなんという考えは毛頭ない。そういうあいまいな態度を岡崎外務大臣がとつておられることに対して、非常に私は不満を感ずるものであります。  時間がありませんから、その次に移りますが、民事裁判権の問題であります。それから損害賠償の分担の問題が一つ、中心の問題です。この問題はいかに取扱つておられますか。
  152. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 民事裁判につきましては、大体において、普通の国内法でさしつかえないと思いますが、これも詳細な点はまだ結論に達しておりません。  損害補償の分担金につきましては、これは先方で全部払うというやり方もあるし、先方で七割五分払い、こちらで二割五分払うというやり方もある。また特別の場合には、半分ずつ出すというやり方もあるわけであります。これらにつきましては、行政協定の分担の割合ともにらみ合せて、適当なところにきめようと思つております。これも一定して、これでなければならぬという国際法もなければ、国際慣行もないのであります。われわれの方からいいますれば、行政協定がここにありますから、これと関連をとつて適当なところにきめよう、こう考えております。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 行政協定の場合は、それではどういう割合で分担しておりますか。
  154. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまだ割合について意見が一致しておりませんので、きめておりません。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 行政協定がきまつておらぬのに、どうしてきめられるのですか。それがその都度外交というのです。そういう不誠意な答弁はやめていただきたい。NATOは幾らになつておりますか。北大西洋条約の場合は、損害を与えた場合の補償はどうなつておりますか。たとえばジープが民家に衝突して、民家に損害を与えた場合の分担のやり方は、NATOではどうなつておりますか。
  156. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私が行政協定との関連においてと言つたのは、両方一ぺんにきめようという話であります。片方がきまらなければ片方もきまらないのは、当然のことであります。NATOの場合は私もここでまだ正確に——材料を持つておりませんが、記憶では二五%、七五%ということになつておると思つております。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それがNATOです。二五%と七五%です。従つて日本政府としては、NATOの線は当然守らなければならぬ。あなたも大体原則として北大西洋条約の線で行こうと言つておられるじやないか。この問題についてもそれをやらなければいけないのじやないか。なぜそんなふうにごまかして、ここで言わないのですか。当然のことをなぜ言わないか。それが誠意がないやり方だと私は言うのです。  その次に承りますが、刑事裁判権の問題については、すでにずいぶん議論がありましたから申しません。その次は調達契約の紛争の場合であります。この紛争の問題については、まだ行政協定の場合はずいぶん長い交渉があつたようです。アメリカの慣行としては公訴しないということであるために、結局裁判にならない、取上げない、こういうことになつておるようでありますが、国連協定の場合はどうなるか。
  158. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと誤解をただしておきますが、先ほどの質問は裁判管轄権についての質問でありましたから、これはNATO協定の線で行つておる、こう申しておるので、それ以外の問題はお聞きにならないから御返事を申し上げなかつた誤解のないようにお願いしたい。  紛争の問題につきましては、アメリカの場合はいろいろ大きな施設を持つてつて、大きな註文があるわけであります。ところがその他の国連に参加しております軍隊の過去の実績から見ますと、ほとんど大きな、つまり日本経済影響を及ぼすような問題はありませんので、これは純然たる紛争の場合の処理ということになります。従つてこれは普通の国内のやり方をできるだけ加味した方法で解決したいと思つております。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本の行政協定の問題については、あとでゆつくりお尋ねいたします。最後にこの問題でお尋ねいたしたいと思いますが、一体政府ではいつまでねばるつもりかという問題であります。NATOその他の関係もあると思います。アメリカ上院のNATOに対する態度の関係もあると思いますが、一体いつまでこれをつくり上げなければならぬとお考えでありますか、時期をまずお尋ねいたしたい。
  160. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 できるだけ早くつくりたいと思つておりますが、われわれの方では、国連協力ということを国民の間から強く盛り上るようにいたしたいと考えております。それには、必ずしも先方の要求に応ずることが、国民全般の国連協力を促進するゆえんとも言えない、こう考えておりますので、われわれはわれわれの考えを主張しておるわけであります。従つて先方の考えとわれわれの考えが一致しなければ、いくら早くやろうと思つてもできないわけであります。従つて相当延びることもやむを得ない、こう考えております。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しかし会計法その他の関係があつて政府として支出を要する問題が出て来ます。そうすると会計年度の終り、あるいは支払い猶予期間、そういう会計法上からの制約が一つは出て来るのじやないか。本年度予算で支払うものがある、それは延ばせるものか、延ばせないものか、その辺は政府はどう処置するのであるか、繰越しを認めるように、予算の修正でもやるつもりであるか。
  162. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま実際の問題としては、こちらで特に負担すべき大きな項目もありませんから、会計法上の、そういう種類の問題は、今のところは起らないと思いますけれども、しかしでき得る限り、こういうフアイナンシヤル・アレンジみたいなものは、実際に、必ずしも協定が成立しなくても、話合いがつけば、先方でも払うべきものは払うようにいたしますから、そういう点はできるだけ早く実際上の解決をはかりたい、こういうふうに思つております。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に、国連協力の問題でも二つ承りますが、一体現在の段階において、日本はどの程度の国連協力をしなければならないかという問題である。過去日本が占領中、国際連合軍に協力した最大のケースは何であるかといえば、元山に米軍が敵前上陸するとき、日本の海上保安隊が掃海をやつた、戦闘行為の一部を負担したということすら現にあつた。これは国連協力であるかどうか。占領中であるから性格が違うかもしれませんが、行為としてはそういうことをやつておる。今後といえども国連協力という名前で、海上警備隊とかあるいは海上保安庁の船が、掃海とかあるいは海上護衛とか、その程度のことはやらされるのでないかという疑問があります。一体日本が海上において、国連協力をやる場合には、どの程度でストップできるか、外務大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  164. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 こたは少くとも戦闘自身に参加することがないことは当然であります。従つてわれわれが見て平和的な仕事と思われるものであるならば、後方の仕事、その他弾薬等の特需に応ずること、それから港のフアシリテイを利用させること、輸送の問題その他種々のものがありまようが、でき得る限り普通の、いわゆる戦闘に参加しない範囲仕事で、でき得るものは協力いたしたい、こう考えております。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 国連協力の問題で、日本が朝鮮との関係で一番誤解を生じやすい、あるいは日本人の意思を無視してやられる可能性があるのは、海上の問題です。兵員を持つて行くということは、今のところは当然考えられない。しかし海の問題というものは、隣接しておりますから、これがきつかけになつて、われわれが火中のくりを拾う危険なしとはいえぬ。たとえば防衛水域いうものがある。防衛水域に日本の商船が出入する、そうしてその船がアメリカの占領しておる、あるいは韓国の港に軍需品を揚げる場合が出て来る、機雷が出て来る。そこで自分の掃海力を持つてつて掃海するということも考えられる。あるいは海上護衛をやるということも考えられる。それは国連協力の中に入るのか、私は具体的にお答え願いたい。一つ一つのケースであなたに質問しないというと逃げられますから。今申し上げた、日本の船が向うの港に入つて軍需品を揚げる、海上護衛をやる、掃海をやる、これは国連協力の中に入るか入らないのかお答え願いたい。
  166. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは、そういうふうにお考えになると、ちよつと誤解が起ると思いますが、韓国と日本との間には何も軍需品を揚げるだけの船が行き来しておるのではなくして、韓国の必要とする物資、韓国民の必要とするいわゆる民需物質をこつちからも送つておりますし、向うからもこちらの必要とする物を送つて来ることもあります。つまり両国間の民需物資の交換ということが、一番大きな輸送の問題になつております。そしてそのほかの物資も入るのであります。従つてその間にもし機雷があるとすれば、これはどこの機雷かは別としまして、これを掃海することは普通の輸送路を安全に保つという意味で必要でありますから、場合によつてはすることがあり得ると思いますが、具体的には別にどこをどうするということまだないわけであります。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 海上防衛はどうです。
  168. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ここに今保安庁長官がおられますが、海上防衛というようなことは、日本の船は日本の警邏、警備に当つておるのでありまして、それ以上のことはないはずであります。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ないというのか、やつてはならぬというのか、どちらです。私が質問しているのは、朝鮮戦線がもつと苛烈になるかもしれぬ、そうすると民需品を向うの港へ揚げる、そう場合に敵の飛行機が来て機銃掃射をやるかもしれぬ、そういう場合に自分の船を守るために日本の警備隊が、あなたが借りたフリゲート艦が行つて、それを防戦するということもあり得るわけです。これはアメリカが、どんどん苛烈になつて来て日本にやれというかもしれない。そういうことがきつかけになつて、ずるずる入るおそれがある。そういう具体的なケースは、やつていいのか悪いのか、あるかないかじやなしに、やつていいのか悪いのかということを明確にしていただきたい。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 海上保安隊は、たとえば日本の沿岸の警邏、警備に当つておるのであつて、その場合の自衛の措置はあり得ると考えますけれども、あなたのおつしやるようなところまでは行かないものと思つています。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 やつてはならぬと私は解釈いたします。よろしゆうございますね。——それでは、返事しましたから、いいものと思います。
  172. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと中曽根君に申しますが、文部委員会で木村国務大臣の出席を要求しておりますので、あなたのお答えをしてから向うへ行くという申出がありました。そのことをお含みいただきたいと思います。
  173. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 わかりました。外務大臣の方を簡単に済まして……。もう一つ、国連協力の問題で大事な問題は、在日米軍の活動であります。私は具体的に聞きますから、具体的に答えてください。現在あるかないか知らないが、イギリスの飛行機が爆弾を持つてかりに朝鮮の上空へ飛んで行つて爆弾を落すとする、これは国連軍としての行為である。ところがアメリカの飛行機が同じように、九州かあるいは西国から立つて、爆弾を持つて朝鮮戦線へ爆弾を落しに飛んで行こうとする、ところがそのアメリカの飛行機が墜落して、民家を焼いたという場合が出て来る、そのアメリカの飛行機が向うの攻撃に行くために準備したり、あるいは飛行したり、あるいはそれによつて損害を与えたというようなケースは、当然これは国連軍としての行為だと思う。イギリス空軍がやつていることが国連軍の行為ならば、在日米軍のやつていることも同じく国連軍の行為でなくちやならない。そう思うが、外務大臣はいかに思いますか。
  174. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。
  175. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、日本が負担している防衛支出金、アメリカの軍隊が駐屯するために出している六百五十億円という金があります。しかしその金の大部分は、アメリカの軍隊日本にいてくれるために出しているのじやない。国連軍としての行為にほとんど出している。少くとも空軍についてはそうであり、あるいは港湾関係もそうであるだろうと思う。あの国連協定からする分担金というものは、そうすればもつと大幅に減つていいわけだ。今岡崎さんが認めたならば、空軍が活動しておるいろいろな施設関係であるとか、あるいは給与関係、あるいは雇用関係、全部これは国連軍の経費であつて、在日米軍が日本を防衛するための経費とわれわれは考えない、従つて当然防衛支出金は減らなくちやならぬ、と思うが、いかがでありますか。
  176. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国内の飛行場等は、日本の国を守るに必要なものをつくつておるのであります。これはどうしてもなければならないものであります。従つてこれは行政協定に基いてつくつて行く。しかしそれを朝鮮に飛んで行く飛行機が、国連軍だからその滑走路は使つてはいかぬとか、一ぺん使つたたびに使用料を出せとか、そういうようなやぼなことは言わぬでもよかろうと考えておるわけであります。
  177. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 木村保安大臣にお尋ねしますが、日本国内治安力というものは、大体において今の保安隊で十分ですか。
  178. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。今の情勢においては、現在の保安隊でどうやら行けるものと私は考えております。
  179. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると保安庁の保安隊日本国内治安は大体大丈夫だ、米軍の威力を借りる必要はない。そうすると問題は外敵の侵入である。外敵の侵入という可能性も今はそうはない。そこで今来ておる駐屯軍の機能の大部分というものは、朝鮮戦線に活動するために出て行く、少くとも現在来ておる駐屯軍の機能の八〇%は国連行為であつて、在日米軍の行為ではないと私どもは考える。現に九州やあるいはその他における飛行場の動き、東京近郊の飛行場の動き、あるいは海軍の動き、これを見れば七、八十パーセントは国連の行為である。私はそれであるからといつて、一々勘定書きをつきつけて金をとれというけちなことを言つておるのではない。しかし問題は明確にしなければならぬ。国民が心配しているのは、どこまでが国連協力であつてどこまでが在日米軍の行為であるか、その限界を明確にすれば、われわれはこれだけサービスしているのだ、これがほんとうの国連協力の分なのだという意識が出て来ます。それがほんとうの国連協力だ。在日米軍の行為であるか、国連軍の行為であるか、何だかわからないものを、かつてにずるずると協力させられているのが今の状態なんだ。それが岡崎その都度外交というものだ。これでは国民承知しません。国民精神は起きません。愛国心も起きません。これをなぜ明確になされないか。岡崎外務大臣にもう一回お尋ねします。
  180. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれはできるだけ国連軍に協力しておるのでありますが、しかし今の飛行場を使用するとか、どの程度朝鮮の国連軍の活動に寄与しておるかという判定は、これはなかなかむずかしい問題であります。たとえば朝鮮事変がなかつたとする、その場合でも空軍というものは一日も訓練しないわけには行かないわけであります。この訓練には方々へ飛んで行くでありましよう。そのために飛行場を使うでありましよう。朝鮮にたまたま行くことは行くにしましても、それはやはり日本を守るための空軍の維持については必要な訓練であります。その他ほかの兵種についても同じことであつて、何も事変がなければ、国内にただ何もせずにじつとしていていいかというと、そうは参らないと私は信じております。それから今朝鮮にたまたま軍隊を使つているから、それでは朝鮮事変がなくなれば、今朝鮮で使つておる部隊を引いた残りのごく小部隊が日本におればいいのかというと、私はそうも考えておりません。それはふだん何もないときには、不必要なたくさんの部隊があるようにお考えになるかもしれない、けれども、何か一朝問題がある場合に、もつとおれば日本の国が侵略されずに防ぐことができたという場合もあり得るのでありまして、これは一種の保険でありますから、相当な部隊が国内にいなければならぬ。ただそれが今朝鮮でいろいろの国連軍の行為に参加しておるのでありますから、それが間接には、いつも言う通り日本治安維持影響があるものであります。私は決してふだんならばごく少数の部隊で、何もせずにいていいというわけではなくして、やはり今程度の部隊は必要である。これは今ただちにそれが動かなければならぬということでなくして、それがいることによつて、もし、よその国に侵略の意図があつた場合には、事前にそれを打砕く。そだれけの兵力を日本国内に置くことは必要ではないか、こう考えております。
  181. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 岡崎外務大臣の言葉を聞いておると、日本の外務大臣の発言ではなくして、アメリカの国務長官の発言を私は聞いておるような気がする。日本の外務大臣は日本人の利益を守らなければならなぬし、国民に対してこれまでは協力、これ以上はサービスとちやんと限界を明確にしなければならぬ。現にアメリカの予算を見てごらんなさい。現在国連軍で使つている費用はどんな費目で出しておるか。アメリカの予算では朝鮮事変特別会計というのをつくつて、外務大臣御存じのように、その中に朝鮮作戦地経費というのがある。その中に、第一は朝鮮直接戦闘用、第二は日本の基地整備用、第三番目が韓国軍装備強化用、第四番目は韓国民需用、第五番目が沖縄空軍基地整備用となつている。そうするとアメリカは少くとも会計法上においては朝鮮事変費という特別会計でこれを払つておるのだから、大部分の行為は国連行為です。政治論は別ですけれども、法律的にはアメリカはそういう意図でやつておる。そういうふうな立場すらあるのに日本の外務大臣がなぜ向うの代弁をする必要があるのか。アメリカですらこれだけのことをやつておるということを主張するのが、日本の外務大臣の立場じやないか。この点について私はきわめて遺憾に思います。その点はいかがですか。
  182. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は別にアメリカの代弁をしておるわけではなくして、自分の考えを申しておるのです。また今の御指摘の部分は、日本の側でも準国連行為としての場合もあるからして、日本の防衛に必要の施設と、それ以上の施設の場合を区別して、国連用として特に日本防衛以上に使う費用については、先方でこれを持つという話で予算をとつておる。それ以外に安全保障条約に基く駐屯軍の費用というものを別に計上されておるわけです。
  183. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 安全保障条約に基く駐屯軍の費用はどこから出ているかというと、大部分はここから出ておる。日本に関する部分はここから出ておる。基地の整備用であるとかあるいは戦闘用であるとか、こういう準備行為はほとんど日本内地でやつておるわけです。  もう一つお伺いしたいことは、先ほど木村保安大臣は、治安は大体大丈夫だと言つておられる。従つてもし日本を外から守るとすれば、空軍と海軍があればこれは大丈夫です。アメリカが持つている装備やあるいは機動力、火力を見れば、空軍と海軍があれば、敵前上陸も空襲もできません。従つて陸軍なんかそんなにいらないはずです。それがいるのは何がいるかというと、主として兵站がいる。それは朝鮮に対する後続部隊として、アメリカでは歩兵一人に対して五人ぐらいの後続部隊がいる。それが日本にいるのです。それの経費ですよ。住宅でも何でもほどんどそれに使われている。国内治安が不十分で、国内治安用に使われているのなら別です。あなたは保険だと言つたけれども、保険の要素なんかありはしません。朝鮮事変という目的に使われておる。そういう点では外務大臣として明確に心得ておいていただきたいと思います。  時間がありませんからその次に移りますが、日韓関係の問題です。日韓関係というものは、将来もきわめて重大な問題でありまして、実に憂慮している次第であります。漁船の問題にしても、防衛水域の問題にしても、あるいは新聞記者の取材拒否の問題にしても、あるいは伝えられるアイゼンハウアー元帥の韓国行きの反響も、きわめて対日感情が悪い。しかしごく近々にある国に対するこのような間ができておるということは、われわれ民族の将来にとつて根本的に考えなければならぬ問題です。なぜこういう問題が起つておるのかということを考えると、岡崎さん御承知のように、日韓交渉をやつておる。それが妥結しないということに対する牽制もあると思う。日韓交渉はどういうところが行き詰まつて、今どういう状況にあるか。具体的問題として、あなたの交渉の区域分担は、基本関係の樹立、それから国籍の問題、財産請求権処理の問題、それから漁業協定の問題、船舶問題、こういうものがひつかかつておるはずです。これらについて具体的に今の状況と、ネックを教えていただきたい、また日本側の政策も同時にお示し願いたい。
  184. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今問題となつている一番解決のしにくいのは、請求権の問題であることは御承知通りで、そのほかにいわゆる李承晩ラインの問題がありますが、これはほかの問題が解決すれば、おそらく実際的には解決できるのだろうと考えます。他の三つの問題はほとんど実際上の解決の見通しはついております。  請求権の問題については、先方も日本側に対していろいろの種類の請求権を出しておる。こちら側も私有財産尊重という意味から請求権を出しておる。ところが新聞にも伝えられておるように、もし日本人の前に持つてつた私有財産る全部を韓国から取上げるということになれば、これはほんとうかどうかわかりませんが、とにかく韓国の八〇%の財産が持つて行かれることになる。はなはだけしからぬという意見が向うにあるわけです。しかしながらわれわれの方はそんなこと言つておるのじやなくて、請求権というものは私有財産尊重の意味からいつて、どうしてもこれは権利としてはなければならぬと考えておる。ただそれを実際にどう取扱うかということは、韓国が独立してわれわれと友好関係を結ぼうという、しかも隣合せた国であつて、韓国の経済を困難に陥れさせるようなことはするはずもなし、またしようと思つても、力でもつて韓国から財産を持つて来るなんということはできないから、そんな心配はないということを再三説明しておりますが、不幸にしてまだ先方の了承を得るに至つていないわけであります。この点はさらによく理解を深めなければならぬと思つております。このための会談は、正式のは本年の五月に一応打切りになりましたが、その後も断続的にしばしば話合いを進めておりますが、今日までのところまだ先方の理解を得るに至つておりません。しかしわれわれとしても、もし今言われたような今までの反目的な感情が、一に請求権の問題にありとすれば、これはもつと具体的に先方の心配のいらない程度のものであるということを、よく理解させるための方途を、さらに講じたいと思つて研究しておる最中であります。
  185. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、外勝大臣の方針は、アメリカの軍政庁命令第三十三号というものの解釈は、日本側は国際法にのつとつて日本人の所有権にある、日本憲法第二十九条から見ても、政府はそれを擁護しなくてはならぬ、従つてそれは確認する、しかし具体的な取扱いについては手心を加え善行する、こういう立場であると解釈してさしつかえありませんか。
  186. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 大体お説の通りでありまして、この軍命令——ヴエステイング・デイクリーといつておるものは、戦時国際法からいつて、占領軍がそこにある私有財産を処分し得る権能は認めておる。しかしながら私有財産の権利を移すということは認めておらない。従つてかりに処分されたものがあれば、その売上げ代金とか、そういう種類のものは、まだ日本側に所有権がある。われわれは処分の行為は認めるけれども、その私有財産権の移転というところまでは、国際法も認めておらないのであるから、われわれも認めるわけには行かないという立場をとつております。但し今言わ言われたように、韓国の経済が運用出来ないようなことを日本側が主張することは、これは理不尽であるし、また実際できないことでありますから、実際上の解決は、もつとお互いに話し合えば、適当なところにおちつくものと信じております。
  187. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 外務大臣にもう一点お尋ねいたしますが、最近賠償の問題がやかましくなつております。しかし賠償の問題について政府が一貫してとつて来た態度は、対日経済援助との見合せにおいてこれを考慮するということを言つておる。ところがアメリカから来た対日経済援助の処理については、政府は何ら方針を示さない。そして一方においては賠償ばかりは払う心がけがある、まじめにやる、こういう宣伝をしておる。これは今まで政府国民に対してなして来た言葉と違う言葉である。われわれの立場からいえば、先に対日経済援助の額が幾らであるか、これを一体いつまでに払うのか、どういうことで払うのか、それを明確にした上で、賠償問題というものにとりかかるのが、条約上の筋でもあり、国民に対する約束でもあります。この方針をかえなさつたのかどうか承りたい。
  188. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は今まで政府が対日援助の解決を賠償と一緒にやらなければならぬと言つておりはしないと思います。それはおそらく日本の対外債務の総額がはつきりしなければ、どれだけ払わなければならぬという勘定が立たないから、その中には対日援助の額もありましようし、あるいはイロアとか、あるいはその他の軍需品の売却代金もありましようし、またこの間話合いの大部分につきましては、外債の処理の問題もありましよう、その他こまごましたものも多少ありましようが、これらの対外債務を全部見合せて、そうして一年に日本はどれだけの支払いをすることになるかということがはつきりすれば、日本の対外債務とかあるいは日本国内経済機構と見合せて適当なところに入り込めるわけだというので、そういうことを最も希望しておつたわけであります。しかしながらそうやつていましても、いつまでたつても、それでは全部のものが出て来なければということになれば、延び延びになる。他方東南アジアとのいろいろの経済の交流等につきましても、賠償問題がひつかかつておるために思うように行かぬというような事情もありますし、すでにその対外債務の一部である外債は相当程度解決したのでありますから、今度はひとつ賠償の問題を取り上げてやつて行こう、しかの常にこの対外債務全部のにらみ合せで行きたい、こういう希望は持つておりますが、一ぺんに全部解決するというわけに行きませんから、対外債務、賠償をこの際取上げよう、こういうつもりでやつております。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 対日経済援助の額をきめるということが私は一番重要なことだろうと思います。伝えられるところによると、二十億ドルにわたつておるといわれる厖大な債務です。また池田大蔵大臣は、前に債務と心得ておると言つておる。しかも平和条約の賠償に関する条項を見れば、日本外国に持つておるそういう債務を疎外してはならぬ、たしかこういうような条文があるのであつて日本の立場は擁護されておるはずだ。従つて賠償問題にとりかかる前には、少くとも日本が持つておるほかの債務について一応明確にして、その後に国民に判断を求めなければならぬと思う。それが筋です。そこで一番大きな対日経済援助の額は一体幾らか、内容はどういうものがあるか、この点を明確に示していただきたいと思います。
  190. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 額につきましては十九億ドルとも言うし、三十億ドルとも言うし、ある人によつては二十三億ドルとも言つておりまして、これは双方できちんと数字を出してチエツクしてみなければまだできないわけであります。そういう数字もこちらの数字がないものもあり、先方の方はまだそういうものを正確にチエツクするところまで行つておりません。従つて総額についてまだ決定的なものは出て来ておりません。またこれにつきましては、いろいろ処理の方法があるのであつて、たとえばイタリアの例であるとか、ドイツの例であるとか、いろいろ考え方がありますので、この方も研究して行かなければならぬと考えております。いずれにしましても、この際賠償を取上げて、できるだけ解決をはかるということが必要であるという結論に達しましたので、対日援助の額の処理の方もなるべく早く具体的にはやりたいと考えておりますが、この際はさしあたり賠償の方に力を入れてみよう、こういうことにいたしておるのであります。
  191. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君に申し上げますが、大体申合せの時間が尽きつつありますので、しかるべく端折つていただきたいと思います。そのお含みで……。
  192. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは外務大臣にもう少し援助の内容についてガリオアやイロアやあるいはSIMその他の内容についてお聞きしたいと思つたのでありますが、時間がありませんからやむを得ません。今の政府答弁はきわめて不要領である。かつ下誠意であります。それだけの厖大な債務があるならば、なぜこれを明確にしないか、まだに確にする時期でないのか、時期でいならば時期ではないということを明瞭にする必要がある。国民は、債務と心得といるというのだから、えらい借金を背負つておるような気持でおるわけです。従つて賠償問題の前にこれを明らかにしておかなければならぬということを、あなたに強く申し上げておきます。  しからば木村保安庁長官にお伺いいたします。これは非常に重大な問題ですから、明確にお答えを願いたいと思います。保安庁法というものをこの間つくられましたが、あの保安庁法の中で船舶安全法と職員法の規定が除外されておる。なぜこれを除外されましたか。まずお尋ねいたします。
  193. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この保安庁法のいきさつにつきましては、詳細に事務当局の方から申し上げる方が適当だと考えております。
  194. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は大臣から承りたいと思つておる。なぜかというと、この職員法と安全法を除外したということが憲法違反の疑いがある。少くとも国際条約違反をやつておる。そういう重大な問題です。あなたはお考えにならないかもしれないが、そういう重大なことをやつておることについては、何か深いお考えのもとにやつたと思う、そこで大臣から承りたいと思います。これは属官から聞くことではない。
  195. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この保安庁法の詳細な制定関係については、当時私は国務大臣として、主管としては関係しておりませんので、その当時の事務当局において答弁するのが適当だろうと考えるのであります。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは政府委員から承らさしていただきましよう。   (「早く答弁しなさい、時間がもつたいない」と呼び、離席する者多し〕
  197. 太田正孝

    太田委員長 中曽根君に申しますが、今の御質問に対する御答弁で、一応打切ることにいたしたいと思います。
  198. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 いやそれはいけません。私はきようは非常に重要な問題を持つて来たのでありまして……。
  199. 太田正孝

    太田委員長 重要、不重要は……。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 事務局の方で時間の観測をわれわれの計算したのと誤つおつたのです。もしわれわれの方が間違いであるか、それはあらためて理事で相談しますが、この問題は憲法違反の疑いがある問題であります。
  201. 太田正孝

    太田委員長 ものの重要性は、各委員みな認めておるところであります。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これは少くとも明らかにしたい。返事ができなくなつて、そういうことを言うのは卑怯です。
  203. 太田正孝

    太田委員長 それですから、中曽根君に申し上げますが……。(発言するもの多し)静かにしてください。重要、不重要は各委員みな持つておるところであります。しこうして時間の点につきましては、理事各位が、しかもあなたの属する政党の方も参加いたしまして、正確に計算したところでございます。しかし私は、中曽根さんの質問に対する答弁がありませんので、この答弁をしたところで一応切りたいという常識的の判断をしたのであります。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それはいけません。     〔発言する者、離席する者あり)
  205. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの中曽根君の御質問に対する答弁については、後刻十分に精査した上でお答えすることにいたします。     〔中曽根委員「ただいまの……。」と呼ぶ〕
  206. 太田正孝

    太田委員長 まだ発言は許しておりません。ただいまの木村国務大臣のお話の通り、返事ができないのを待つてもしようがございませんし、問題の重要性は私もよく承知しております。けれども各委員そろつて、この委員会を円満にやつて行こうという申合せのもとに、各理事のお方が克明に時間の点等を考えられてやつたのでございますから、重要な点はとくと承知しておりますが、この際はお譲りを願わなければなりません。     〔「次の発言者」「私語を禁ずる」と呼び、その他発言する者多く、離席する者あり)
  207. 太田正孝

    太田委員長 それでは中曽根君。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それでは私はこれから、私の質問の趣旨を木村保安庁長官に全部申し上げますから、それをよく聞いて行つて答弁を用意していただきたい。後日御答弁の際に、その御答弁に不審の点があつたら、再質問を留保させていただきたいと思います。  政府は今般保安庁関係法というものをつくりまして、御存じのように船舶安全法及び職員法という二つの法律をこれから適用を除外いたしました。従つて保安庁関係の船舶については、安全法も職員法も適用できないのです。ところが日本は御存じのように、一九四八年の海上における人命の安全のための国際条約という条約に入つています。これは御存じの通りです。もう一つは国際電信電話条約という条約に入つています。ところがこの一九四八年の海上における人命の安全のための国際条約によるというと、第三規則に適用除外というところがあります。この適用除外に何と書いてあるかというと、「別段の明文規定がない限り、規則は、次のものに適用しない」。と書いてある。何に適用しないかというと、まず第一が軍艦及び軍隊の輸送船です。適用しない第二番目として、総トン数五百トン未満の貨物船、第三番目が機械で推進されない船舶、第四番目がダウ、ジャンク等の原始的構造の木船、第五番目が運送業に従事しない遊覧ヨット、第六番目が漁船、これについてはこの国際条約は適用されない、こういう明文があるわけです。ここで一番重要なのは、軍艦及び軍隊の輸送船であります。軍艦または軍隊の輸送船でないものは、すべてこれが適用されるわけです。従つてもし保安庁のこの間借りたフリゲート艦が、軍艦または軍隊の輸送船であるならば除外してもよろしい。しかし今は軍艦でもないし、軍隊の輸送でもないと言つておる。五百トン未満でもないと言つておる。当然これは適用されなければならぬ。安全法及び職員法は適用されなくちやならぬ。なぜ安全法や職員法があるかというと、国際航海やその他いろいろ航海をやつた場合に、外国船がすれ違つたりいろいろな問題が起る。保安上の問題も起る。そういうところから一定の規格を要求しているわけです。軍艦や軍隊輸送船については、機密があるから、臨検検査もやらなくてもいいことになつている。これは軍艦としての特権です。しかしそうでない一般の船舶については、国際条約をもつて一定の水準を確保するためにこの条約ができている。従つて当然保安庁の船舶といえども、安全法及び職員法は適用されなくちやならぬ。それを適用しないで除外したということは、フリゲート艦が軍艦または軍隊輸送船であるということになる。日本の今までの法体系は、御存じのように船舶法という法律がある。この船舶法という法律によつて、船舶法の適用を受けないのは軍艦だけです。あとは警察船でも、あらゆる船が適用を受けている。軍艦あるいは軍事関係だけのものが船舶法の適用を受けないが、それ以外の、それは警察船であろうが、あるいは海上保安庁の船であろうが、運輸省関係の船であろうが、これは全部適用を受けている。これが今までの法体系であります。そこでこの間木村さんは、だれかかの質問に対して、保安庁の持つている自衛力というものは、これはポリス・フオーセス、つまり警察力だと言つておる。そして戦力じやないと言つておる。警察力であるならば、今までの日本及び世界の法体系に従つて、当然この安全条約のわく内になくちやならぬ。警察であるならば、当然安全法やあるいは職員法の適用を受けなくちやならぬ。これは条約違反を犯している。日本政府が公然として条約違反を犯している。おそらく政府はそういうことを気がつかないで、まあアメリカから借りたのだから、大体軍艦の用をなすから、一般の国際条約によるそういう水準や何かはやらぬ方がいいというので、安易に除外したらしい。私は保安庁の内部から運輸省から全部調べて、確信を持つている。現にあなたは知らないけれども、専門家は言つている。運輸省でも言つている。そういう事実がある。もう一つの問題は、国際電信電話条約違反をやつている。なぜかというと、あれに乗つているオペレーターというものは、国際電信電話条約によつて一定の資格を必要としている。従つてその資格を持つていない者が同じく職員法によつて除外されて、かつてな保安庁の関係だけで入れられるということはあり得ない。従つて明らかにこれは条約違反である。条約違反であるだけではない。というのはフリゲート艦が持つている構造であります。フリゲート艦が持つている構造は、人命安全のための国際条約の規格に合わない。これには非常に詳細に、一般的に適用される船の水準が書かれている。まず居住区において合わない。それは軍艦用につくつたから、居住区は無理している。それをこれからはずしている。あるいは救命施設、ブイ、一番重要なのは船の安定性です。軍艦は非常にスピードを早めるために安定性がない。商船は安定性がある。その安定性について一定の水準をこの条約は要求している。その安定性が不適格になつている。しかも日本はこの条約を適用されている。そういう点において本質的に合わない軍艦をそれに準じて持つて来たから、こういう間違いができて来ている。日本憲法第九十八条によれば……。     〔「約束が違うぞ」と呼ぶ者あり〕
  209. 太田正孝

    太田委員長 簡潔に願います。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と書いてある。従つてこの条約を日本は守らなければならぬ。守らなければならぬとすれば、保安庁法改正したのは間違いである。間違いでないというならば、あなたが借りたあの海防艦は軍艦であるということになる。軍艦であるか、国際条約違反をやつているか、どつちかです。これに対して明確な御答弁を願いたい。
  211. 太田正孝

    太田委員長 河野密君。
  212. 河野密

    河野(密)委員 私は総理大臣並びに外務大臣、大蔵大臣に御質問しようと存じたのでありますが、総理大臣お見えになりませんから、明日総理大臣お見えになりましたら質問さしていただきたいことを留保しまして……。
  213. 太田正孝

    太田委員長 御趣旨はよくわかつておりますが、かねがね時間の関係もありますから、そのお含みをもつてお進め願いたいと思います。
  214. 河野密

    河野(密)委員 問題がせつかく高潮に達したときに私が横合いから入つたようで、興味をそぐこと、はなはだ多大なものがあると存じますが……。
  215. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと皆さんに申し上げたいのですが、重要、不重要は各議員において判断されるところですが、いろいろ時間の関係もありますから、重要と思うところを先におやりになるような方法をおとり願いたいと思います。
  216. 河野密

    河野(密)委員 私は大蔵大臣に対して御質問をまず申し上げたいと存じます。今回提出いたされました補正予算案は七百九十八億でございまして、これを当初予算に合計いたしまして、普通に九千三百億の予算である、こういうふうに言つておりますが、一体予算の全貌は九千三百億と見るべきであるか、それとももつと大きく考えるべきか、これが私の第一に疑問とする点であります。  御承知のように、この予算の中で資金運用部に背負わせておるところのものが入つております。さらに、いわゆる外国為替特別会計の借入れ限度を拡張することによつて予算のつじつまを合せておる面もあるのであります。それから専売公社あるいは電々公社、国鉄等の特別会計にまたがつておる点もあるのであります。そこで私は日本予算全体を考える場合において、単に一般予算のみを対象として九千三百億なるがゆえに、これはまだインフレにはならないとか、あるいはこの程度は国民所得とどうであるとかいうようなことを論議することは、いささか的はずれであると思うのであります。御存じのようにこれに対して特別会計を加え、政府機関を加え、さらに地方財政を加えて、私は予算の全貌を考えなければならないものと思うのであります。こまかい数字を申し上げて恐縮でありますが、これを加えますと、昭和二十四年度において一兆七千九百七十八億であります。二十五年度におきましては二兆九百七十一億であります。二十六年度においては一兆九千百八億であります。二十七年度においては二兆二千十五億、この補正予算を加えますならば、おそらく二兆三千億を突破するであろうと思うのであります。この天文学的な数字ともいうべき厖大なる予算に対して、われわれはいかなる態度をとらなければならないか、これがこの予算を審議する上の中心課題であると私は思うであります。  そこで私は大蔵大臣に御質問をいたしたいのでありますが、昭和二十四年度をかりに一〇〇として、予算のふえて参りますのを計算いたしてみますると、大体昭和二十七年度の予算は一二二に達しておるのであります。すなわちこの予算の数字そのものを見ただけでありましても、もういわゆる均衡予算というものの考え方とつくの昔に飛んでいると思うのであります。大蔵大臣は健全経済とかいうようなことを言われておりまするが、一体大蔵大臣の言われる健全経済、健全財政というものはいかなることを意味するのであるか。この厖大なる予算に対して、いかなる態度をとられようとするのであるか、これをまず私は承りたいと存じます。
  217. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 国の経済の膨脹発展ということは、国力に比例して行なわれるものであります。今おつしやる通り、二十四年度を一〇〇としますと今年度は一二二となる、それは厳密なる均衡財政とは申されませんが、国の発展の途上におきまして、資金を運用するという意味の財政の処置は当然行わなければ、財政、金融どつちも行き詰まるだろうと思いますから、この点はいわゆる収支がバランスしませんでも、必ずしも、均衡を破つているとは言えない、ただ弾力ある財政の処置と私は考えております。
  218. 河野密

    河野(密)委員 私はそこでお尋ねを申し上げたいのでありますが、今申し上げました数字によつて昭和二十四年度を一〇〇として、昭和二十五年度は一一七であります。それから昭和二十六年度になりますと一〇六に減つておるのであります。ところが昭和二十七年度の予算になりますると、にわかに一二二と数字をふやして来ております。これは私の調べたところによりますと、地方財政の膨脹もむろん入つておりますが、主たる原因をなすものは、いわゆる再軍備々々々と称する自衛力増強の費用が、昭和二十六年度以降ににわかに増大して来た、そこに原因があると私は存ずるのでありますが、大蔵大臣はいかにお考えになりまするか。
  219. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私は過去の数字との比較はいたしてみませんが、しかしあなたのおつしやる通り、そういう自衛力ですか、防衛力ですか、そういう点に今の財政膨脹があるということはいなまれないだろうと思いますが、そういう点については私といたしましては、極力冗費を省き、また冗費といえませんでも、金のいらないように努めますつもりでおります。
  220. 河野密

    河野(密)委員 大蔵大臣もお認めになりましたように、昭和二十七年度の予算がふくれて参りましたのは、中央地方を通じて、いわゆる防衛関係の費用というものが、相当額地方財政の上にも影響を与えておる。そういうことからこのふくれ方をいたして参つたのであります。今私が数字を読み上げましたのによつてもおわかりの通り、二兆何千億という中央地方を通ずる財政の規模というものは、大蔵大臣は日本国力に相応して財政は膨脹すると申しておられますが、私は日本国力に相応した財政の膨脹にあらずと考えるのであります。従つて私はこの意味から、これ以上財政をふやして行くということになりますならば、いかに大蔵大臣は健全財政とか健全経済とかいうことを言われましても、インフレーシヨンになることは免れがたい点であると思うのであります。そこで大蔵大臣としては、その間に何らかの施策をお持ちになつておるのか、お持ちにならないとするならば、大蔵当局として、これ以上防衛費というものを支出することはできないのだ、いわゆる自衛力漸増に対しても、すでに財政的には一定の限界に来ておるのだということを、はつきり私は言明なさるべき筋合のものであると思うのであります。この点をお伺いいたします。
  221. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。大蔵大臣は元来、何十年前からでも、金を使わない方を賛成のものであります。それで、ただいまのお話の通り、この上使うものがふえては、私としては実に困るのでありまして、防衛費と言わず、何と言わず、金のいらないように極力努めております。(笑声)
  222. 河野密

    河野(密)委員 大蔵大臣が金を節約なさるのはけつこうでございますが、私の言う趣旨は、大蔵大臣が、最も予算膨脹の原動力をなしている再軍備の費用に対していかなる考え方を持つか。再軍備というのが悪ければ、自衛力漸増でけつこうでありまするが、自衛力漸増に対して予算の面から見て、一国経済の面から見て、なお余裕ありと考えておるのか、それとももうこの程度で打切らなければならないと考えておるのか、あなたの信念のほどを承りたいと、こう申し上げておるのです。
  223. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私の信念は余裕があるとは思つておりません。
  224. 河野密

    河野(密)委員 それでは次にお尋ね申し上げます。これはいろいろ多くの方から質問されたことでありますが、昭和二十八年度の予算をわれわれが頭に入れただけでも二兆三千億の予算はさらに、大きくなつて、中央地方を通じておそらく三兆の線に近づくのではないかという感じを持つのであります。一般会計のみをもつていたしましても、私はおそらく一兆の線を守ることは困難ではないか、こういう感じを抱くのでありまするが、大蔵大臣はこれに対してどういうお見通しを持つておるか。これが一つ。その場合、一兆を越えるような予算を組まなければならないときに、財源として一体何をお考えになつておるか。現在私たちはいろいろの点において財政余裕金というものを計算いたしておりますが、今日大蔵当局においてはこの財政余裕金がどれだけあると考え、これをどういうふうに使おうと考えておるのか、これを承りたいと思います。
  225. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その点につきましては、政府委員から返事をいたさせます。
  226. 河野一之

    河野(一)政府委員 河野さんのおつしやいます財政余裕金というものはどういうものか、私にも解しかねるのでありますが、たとえば今までやりましたインヴエントリーでありますとか、あるいは食管におけるリプレース方式による利益とか、あるいは外為における外貨、そういうものを計算いたしますれば、大体二千五百億程度あるだろうと思います。
  227. 河野密

    河野(密)委員 私はこの財政の余裕金として一番中心の問題は、冒頭にも申し上げましたように、今度外国為替特別会計において、借入金の限度を一千億円ふやした。ここのからくりに一番大きな財政余裕金というものを見出して来られるものではないかと思うのであります。そのいわゆるインヴエントリー・フアイナンスというものを、来年度においては財政余裕金として、これを相当に予算の財源としてお考えになるつもりであるかどうか、こういうことを承りたいと思います。
  228. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私はそういう考えは持つておりません。
  229. 河野密

    河野(密)委員 私は、大蔵大臣は一方においては財政はだんだん膨張する、いわゆる自衛力漸増の線もだんだんふえて行く、しかも自由党の公約に従つて減税をおやりにならなければならない。大蔵大臣は自由党でないかもしれませんが、少くとも自由党の政策を実行するためには、減税をやらなければならぬ。減税はやるわ、自衛力漸増するわ、そのほかにいろいろな給与ベースの引上げもあるでありましよう。あなたのおつしやるように、財政投資もやらなければならぬ。その金を一体どこからお出しになるか、私が今ここに数え上げただけを計算しても、私の計算だけでも一兆を優に越える計算になるのだが、その財政的な手品を一体あなたはどうしておやりになるのだ、それを伺つておるのであります。
  230. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。手品ができるといいと思うのでございますが、それはあいにくできませんで、(笑声)私も実は非常に頭を悩ましておりますが、しかしながら限られました一般財政、一般経済、運用をし得る財源が限られておるところで、使う方をだらしなくやつて行くわけには参りませんので、歳出はあくまでも圧縮するつもりでおります。
  231. 河野密

    河野(密)委員 私はそれでは別の方からお伺いをしてみたいと思います。終戦後のわが国経済を大体通観してみまして、私は三つの段階があつたと思います。一つは、終戦直後の混乱期にあたつて、いわゆる革命的な騒乱をいかにして食いとめるかということが、当時の課題であつたと思うのでありますが、それは食糧の確保がそのときの一番大きな問題であつたと思います。その次の第二の段階は、インフレーシヨンをいかにして食いとめるかという問題であつたと思うのであります。これはいわゆる超均衡財政と申しまするか、ドツジ財政によつて一応の牧東をみたという形になつておるのであります。第三番目には、朝鮮事変以来、ある特殊なものに限つて急速に生産力の拡充をしなければならないという要請に従つて、いわゆる生産拡充という問題が第三の課題として取上げられたと思うのであります。今日はこれらのものを経て、第四の段階に到達しておると思うのであります。この第四の段階に到着しておる経済政策の根本は一体何か。これは向井大蔵大臣の考え方を率直に承りたいと思うのであります。私の考えるところによれば、これは平和的にして均衡のとれた経済のとれた経済、平和的にして均衡のとれた生産拡充、こういうことを行うのが、第四の今日当面しておる経済上の課題であると思うのであります。この平和的にして均衡のとれた生産拡充を一体どうしてやるかということが、私は今日の問題だと思うのでありますが、大蔵大臣はこれに対してどういうふうにお考えになるか。同時に、今申し上げました対策というものは、裏を返せば、今日当面しておる滞貨の山積、あるいは金詰まり、貿易の不振、あるいはその他のものによつて起されておるところの経済不況に対する対策でもあると思うのであります。ところが今日この経済不況に対する対策として世間往々にしていわれておりまするのは、特需関係、いわゆる兵器産業に日本の産業を切りかえるならば、安易にこれを切り抜けることができるではないかという考え方、さらにいま一つは、貿易に依存して、飢餓輸出でもかまわないから、貿易を積極的に振興するならば、これによつてこの経済不況が打開されるのではないかという考え方、こういう極端なる議論が横行しておるように見えるのであります。そうしてこれらの議論を裏づけるものとして、財政投資をやれということがしきりにいわれておると思うのであります。私はこの方法によつて今日の不況が打開されるとは考えられない、いかにして平和的にして均衡のとれた生産をやるかという課題にこたえるものではないと思うのでありますが、大蔵大臣のこの点に対する見解を承りたい。
  232. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 平和的な事業を発達させる、また生産の拡充をやるといらのですが、生産拡充と申しても、生産数量をふやすだけではあまり適当でございませんので、もうすでに分量においては生産は十分に行つているものが多い。これから品質の向上ということに努めなくちやならぬということは考えておるのでございます。しかしそれも分量でなく、物をよくするということか生産の拡充といえると存じます。そこで今おつしやつたような、特需方面によつて不況を打開しろということは、私もあまり望みをかけておりません。世上で往々にしてそういうことは申しますけれども、これはいつまで続くものか、またそれが業者にとつて有利な仕事であるかないか、よく研究を要します。特需によつて行くということは、たよりにすべきものではない。それから飢餓輸出などはむろん論外の話で、あまり潤沢でもないこの国の品物を、安く外国に売つて、そして外貨を得る。そういうふうなことでは長続きのするものでもありません。そういう意味の輸出を奨励するということはやるべきことでない。そういたしますと、どうすればいいかと申しますと、輸出は日本の産業の一割何分くらいの金高に当るものと思うのですが、それにしても、外国から物を買うときの引当てとして、輸出をぜひやらなくちやならない。やるにつきましては、外国の事情がまだよくわからないために、販路の点でも不十分なことがございますし、また値段の点でも著しいひけをとつておると私は存じております。それでできるだけ外国の事情をじかに日本の人が知つて、そして適当な値段で物を売り、あるいは物を買う。そういうことで日本の今の貿易上の立場は相当改善できると思います。まあ、そういうことでもつて当分の勉強をいたし、そのほかに、一般の人の考えが、戦争後のまだ占領軍がいるときに、割合に日本の状態をいいように日本にも言い、また自分の本国にも報告が行つたというふうなことで、大体非常に苦しい立場にいるということを日本人に知らせるという点の努力が、今まで足りなかつたと思うのであります。ですからどうもお金の使い方が荒つぽい人が多い。それから貯蓄などはつまらないというような気分があつたりして、その貯蓄の不十分な点などが日本の産業の資本を形成する上に非常なひけ目になつていはしないかと思いますので、そういう点を大いに勉強して、しかも蓄積を多くするというふうにして行かなければ、日本の国がここ二、三年はどうか知りませんが、長く産業経済でもつて世界に伍して行くということは、不可能になりはしないかと思います。明治の初年において、日本がどこの国にもあまり助けられずに、世界の事情にうとくても、それを自分の勉強でもつて今日のような——今日と申してもなんですが、十年前、二十年前くらいまでの長足な進歩をしたというのは、みな勉強をして倹約をしたせいだろうと思うのでございます。実に平凡な考えでございますが、どうしてもそれをもとに置いてこれから進んで行かなければならないと存じております。
  233. 河野密

    河野(密)委員 大蔵大臣の信念の片鱗というようなところを伺いましたが、残念ながらそれが私たちと根本的な考え方の違う点なんでありますが、そこのところをこれから御質問申し上げたいと思います。大蔵大臣は財政投資にはあまり熱心ではないのでありますか。財政投資を積極的におやりになるつもりでおるのでありますか。この点を伺つておきたい。
  234. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 基本の産業、ごく簡単に申しますと、電源開発とか、あるいは石炭の掘り方とか、その他重要と思われる産業に対して財政の投資をしますことは、もちろん賛成でございます。
  235. 河野密

    河野(密)委員 先日もこの席上において問題になりましたように、過去における財政投資は私は決して少くなかつたと思うのであります。御承知のように、政府からいただきました資料によりましても、見返資金からの貸付、日本開発銀行の貸付、復金関係の分、合して二千三百八十一億の貸付が今日残つております。日本輸出入銀行からの貸付が十月末で五十四億あります。さらにこの二十七年度の予算において当初予算と合して三千百六十七億の投資をして、うち民間投資が千七百二十億計上をいたされておるのであります。これをもつて見ますならば、民間投資というものは、私は決して今日まで少くはなかつたと思うのであります。それにもかかわらず今日の事態をして経済の不況を来し、滞貨の山積を来し、いわゆるオーバー・ローンの名のもとに金詰りを来したという、この理由は一体どこから来たかということをわれわれは検討してみなければならない、こう思うのであります。いろいろな見方があると思いますが、私は一言にしてこれは何がこの事態を引起したかと申しますならば、政府が民間からの零細なる金、あるいは資金部運用資金といい、一般会計からの投資といい、あるいは見返資金からのものといい、大体において零細なる人々からの資金を政府に集めて、政府自身がその金を投資した。その投資そのものが何に役立つているかということに問題の重点はかかると思うのであります。今日の経済を資本主義と申しまするが、確かに資本主義の経済には違いないのであります。しかしその日本の資本主義の経済は資本のない資本主義経済、一体資本家はどこにいるのだ。資本家のいない資本主義経済、これが私は戦後におけるわが国経済のあり方であつたと思う。その資本のない資本主義、資本家がいない資本主義、一体どこが資本家であり、何が資本主義であるか。国家資本と国家である。その国家がそういう事態の中において何をやつたかというと、その国家資金、財政投資によつて一生懸命になつて資本家を育成して来たというのが、今日までのやり方であつたと私は思うのであります。そこに今日財政投資をこれだけやつてもなおかつ経済の下況が導かれ、滞貨の山積を来し、オーバー・ローンによつて金詰まりを嘆かなければならないという根本的な理由があると私は思うのであります。大蔵大臣が明治初年以来の、いわゆる経験を生かして、自由主義はなやかなる時代における経済理論をもつてこれからの財政経済を指導なさろうとするならば、これはもつてのほかのことであつて、的はずれもはなはだしきものであるといわなければならぬ。これだけの国家の資本を投じて何をやつたか、資本家を育成するという方向に今日まで一生懸命になつてつて来たのである。その資本家を育成するという方向、たとえば昭和二十四年において国民総生産の中で資本の蓄積に充てられたものが二%、昭和二十六年においては二二・九%というように、民間資本の造出というものをこれによつて盛んにやつて来たという点、一兆数千億の資本の蓄積というものを、これを国家投資によつて私は育成して来たというところに、今までの根本的な政府の政策に誤りがある。これを是正してこの財政投資の方向を根本的に改めなければ、私は今日の不況対策、経済対策にはならない、こういうことを考えるのでありますが、この点についての大蔵大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  236. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 財政投資のやり方につきましては資本家を助けるとかいうふうなことは、必ずしも適当でないと私は思います。それから民間投資にしましても、この二、三年の趨勢を見ますと、もうかる仕事に設備を急いで増しましたというふうなことが、いろいろの部門に現われておりまして、それがいわばこの一時的の景気に乗じて長く働く設備に金を入れ過ぎて、それが働くために物ができ過ぎたというふうな現象もあるのであります。それはやはり戦争中、あるいは戦争後の十数年間のきゆうくつな経済活動を脱しました事業家が、反動的に産業活動を活発にやろうとした意欲から起つたものとも思うのであります。やはり最も慎重に投資をしなければならないことを、多少慎重を欠いていた点があつて、そのとがめが今現われたのではないかと思います。
  237. 河野密

    河野(密)委員 どうも抽象的になりますが、私はドツジ財政によつて竹馬の足を切つたつたといろいろいわれておりますが、私はドツジ財政で竹馬の足を切つたのではなくて、国民の足を切つたのだという感じがするのであります。国民大衆の足を切つたので、竹馬をはいているいわゆる資本家と申しますか、そういうものの足はちつとも切られていない。そこに財政投資がこれだけふえて来ているにかかわらず、この経済的な不況というものが到来している根本の原因があると私は考えるのであります。そこでこれらの店はまた別の機会にお尋ねすることがあると思います。  そこでも一つお尋ねしたいのでありますが、ドツジ財政に対する非難はすごぶるあがつておりまして、均衡財政を是正しろという声がしきりに起つておりますが、ふしぎなことにはそれと一緒になされたシヤウプ勧告に対して、税制改革というものについては、それほどの非難があがつていないように思うのであります。私はこの今日の税制制度ほど不適当のものはないと思うのであります。御承知のように、今日の税制の大宗をなしているものは所得税であります。しかもその所得税のうちで普通勤労所得といわれる、源泉徴収によつて徴収せられる所得税が今日の租税の大宗をなしているのでありますが、しかも税収入を見ますのに、ほとんど法人税にいたしましても、あるいは申告納税のごときは最もはなはだしきものでありますが、予算の七割あるいは八割程度にしか納税が上つていないにかかわらず、この源泉によつて徴収されるところの所得税、勤労所得税のみは、場合によれば一〇〇に対して一一〇、一二〇というような程度に増収されておる。日本の財政は、これを見るのに、勤労所得税を中心として立てられておるという現状であります。私はこれはもつてのほかのことだと思うのであります。戦争中に分類所得税が設けられた当時の事情も私は承知しておりますが、その分類所得税が設けられた当時の趣旨というものは今日まつたく滅却されてしまつて、便宜によつて最もとりいいところからとるんだということによつて、大衆の購買力の源泉を断ち切るという意味におけるシヤウプ税制案というものがそのままになつておるのであります。私はこういうものをそのままにしておいて、一方において財政投資をどんなにおやりになつても、それはさつき私が申し上げたような、足を切られるのは国民の足であつて、竹馬の足は全然切られていないという点であるのであります。ことに中央地方を通ずる税制のひずみというものは、いわゆる平衡交付金の名において陳情団を日夜東京に押し寄せさしておるという現状である。私はこれは前の配付税にむしろ還元した方がはるかに合理的であると思うのでありますが、政府は中央地方を通ずる税制の根本的改革に対していかなる考え方を持つておるのであるか、現在の少くともシヤウプ勧告によるこの税制制度を根本的に改めるべきものだと思うのでありますが、この点に対する大蔵大臣の所見を承りたいのであります。
  238. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。はなはだささいな点でございますが、自分も税の重いのに苦しんでおる。ことに私は東京以外の所に住んでおりますので、地方税というものの重いことも切に感じておる。これは小さな話ですが、だれにしても同じだろうと思います。そこでまだ私は日が浅うございまして、今おつしやる根本的の税制の改革というふうな度胸を持ちませんですが、しかし税制はかえなきやいけないということは感じております。
  239. 河野密

    河野(密)委員 ただ抽象的に税制をかえなければならぬということでなく、どういう方針でおかえになるか、これは政府委員でもけつこうですから御答弁願いたいと思います。
  240. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 私からも申し上げますが、申告所得税がうまく集まらないということは、これは私見でありますが、税務署としての手不足とか、あるいはその他戦後の混乱の結果、収入の調査というふうなことが十分に行かないために、申告という便宜の方法を続けて行かなくちやならないんだと思います。これを調査を行き届かせましたならば、申告税の収入はまだふえるだろうと思います。
  241. 太田正孝

    太田委員長 大蔵大臣に申しますが、河野君の御質問は税制の根本改華について政府委員からでも聞きたいというのでございますが、いかがいたしますか。
  242. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 その後段の点につきましては、政府委員から……。
  243. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 税制につきましては、今河野さんのお話のように、昭和二十五年度に実は根本的改革をいたしまして、その後若干の改正を加えまして今日に至つております。でありますが、最近におきましても、二十五年度に改正を加えましたものの中で、所得税に少したより過ぎるというところが、私どもといたしましても、日本の実情にも合わぬのじやないかという点を考えまして、二十六年、七年と軽減し、今回もさらに所得税につきましてできる限りの減税をはかろうということでいたしておるわけであります。なかんずく源泉所得税につきましては大幅の軽減をはかりたいということで、今回の減税の大部分も源泉所得税でございます。来年度におきましても、所得税につきましては、今回出しておりますものを本格改正をして参りたいと思つております。その際におきまして、これは概算でございますが、今出しております補正予算の案を平年度化しますと、源泉所得税におきまして約六百億、申告所得税で約二百億合せまして八百億円程度の所得税の減税になる。それを来年度におきましてはぜひ実現するように努力いたしたい。  それからその他の税の問題につきましても、いろいろございますが、これにつきましてもいろいろ検討を加えております。すでに先般大蔵委員会におきましても、大臣からお話になりましたが、たとえば富裕税の問題、これはどうも日本の実情に即しないのではないか、むしろ富裕税はやめまして、所得税の最高税率を引上げた方がいいのではないか。それから譲渡所得の課税におきましても、どうも日本の所得に即しないところがございますので、有価証券の譲渡所得税をやめたり、あるいは山林の譲渡所得税とか、不動産の譲渡所得税を緩和する等の方法を講じたい。また相続税その他におきましても、日本の実状によりよく即応しますように改正を加えたいと思いますが、一番問題は地方税との関係かと思います。この問題はなかなか利害も錯綜いたしておりますし、二十五年度の改正で相当な目的を達しておる部面もございます。しかし一方におきましては財源が相当でこぼこになつておる面もある。それから平衡交付金に依存し過ぎておるきらいも確かにあると思います。でありますから、この問題は地方制度の改革その他にも関連するところが大きいので、われわれといたしましても目下いろいろの方面から検討いたしまして、これもまたでき得る限りわが国の実情に応ずるように改正を加えるように努力いたしたい、そういうことで検討中でございます。なお徴税方法その他につきましても、問題はいろいろあろうかと思いますが、そういう点につききしても、でき得る限り検討いたしまして、もう少し日本の実際に即応するような税制にかえるということで勉強いたしておるわけであります。
  244. 河野密

    河野(密)委員 ただいま説明を伺いますと、大蔵省にも、腹案があるようでありますので、私はこの予算委員会の終了いたしまするまでに、大綱について明確に予算委員会に大蔵省の税制改に対する方針を方針を発表していただきたい。腰だのものであつてもけつこうであるが、それをできるだけ詳細に発表が願いたいということを委員長から確かめていただくようお願いしておきます。
  245. 太田正孝

    太田委員長 大蔵大臣、いかがでございますか、今の意味においての腹案を御発表できるお見込みでございますか。
  246. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 来年の予算を組んでみないと、まだ当分……。
  247. 太田正孝

    太田委員長 地方財政関係もあるし、かたがた各方面との話がまだついておらぬように内報がありました。河野君の言われるのはその程度のものでもいいというのであるか、今のところどつちにしてもまだきまつておらぬようです。
  248. 河野密

    河野(密)委員 発表し得るものだけで発表してもらいたい、こういうことを申し上げておきます。
  249. 太田正孝

    太田委員長 御趣意の点だけ政府の方へ申し伝えておきます。
  250. 河野密

    河野(密)委員 次に、私はただいま提出されております補正予算案について、少しこまかくなりますが、二、三の点をだめを押しておきたいと思うのであります。私はこの七百九十八億円の二十七年度の補正予算を拝見いたしまして、この中にわれわれとして賛成し得る部分と、どうしてもマイナスである考える部分と、これは検討を要すると思われる部分と、三つのものが含まれておると思うのであります。中小企業の融資の増あるいは国民金融公庫に対する出資金の増額、住宅金融公庫に対する出資金の増額というようなものは、これはわれわれも賛成し得るプラスの面であります。しかしマイナスの面は、人事院勧告を一部実施しておる、国鉄裁定、専売裁定、全電通裁定を十一月の一日から実施しておる、米の消費者価格の引上げを行つておる、減税政策がきわめて不徹底であるというような点は、われわれの納得のいかない点であります。地方財政平衡交付金の問題、公共事業費の増額の問題は、これはさらに検討を要すべき問題である。この三つに私はわけることができると思うのであります。  そこで政府にお尋ねをするのは、この人事院勧告を一部実施することにし、国鉄裁定、専売裁定等々も一部分実施することに実施の期間を繰下げて実施することになりましたのは、これは財源の関係であるのか。それともインフレーシヨンとの見込みであると、先般お話のありましたCPSは、大体において一五%程度の増加であるから、これと見合つて二〇%の増加を見込んだのであるという、そういう数字によるものであるのか。それらの点を明確にしていただきたいというのが一点。  それからもう一つは、財源がいよいよ枯渇して参りまして、非常に苦しい予算の組み方をしておると思うのであります。自然増収をもつて主たる財源にしておるという苦しい組み方をしておりますが、先般承つたところによりますと、いわゆる防衛費の残り、あるいは安全保障費のごときものは五百六十億のうち、使つたものはわずかに四十億で、五百二十億というものは未使用となつておるのであります。将来使うものを加えたとしても、これはわれわれの承知するところによれば、非常な金が残るはずであります。こういうものの処置を政府はいかにされるのであるか。この際単に与えられたる組みかえをするだけでなく、そういう年度の半ばを過ぎてすでに不要なりということが明確になつておるところの予算に対しても、勇敢にこれを組みかえられて、新しい財源として、こういう新しい要求に応ぜられる用意ありやいなやということを承りたいと思います。
  251. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。給与の問題につきましては、本委員会の冒頭におきまして御説明申し上げました通り、人事院の勧告を十分に尊重いたしたのでございまするが、財源等の関係もあり、また昨年の給与改訂以来の物価の足取り、CPSといつたようなもの、すべての事情を勘案いたしまして、この程度が適当であろうと考えた次第でございます。人事院の勧告をそのまま実施いたしまして、これにバランスをとりましてほかの政府職員——特別会計はもちろん、政府関係機関の職員も同じようにやりますと、平年度において千七百億円ばかり金がいりますので、ほかに波及するところが非常に大きいと考えまして、そういつた点もあわせ総合勘案いたしまして、平均二〇%程度の引上げにいたした次第でございます。  安全保障費あるいは防衛支出金の未使用があるのではないかということでありますが、これは先般も御説明申し上げました通り、将来においても、現在計画のきまつているものも相当ございますし、また今後具体化するにつれまして、これを金額使用いたすつもりでございますので、これを減らすつもりはありません。
  252. 河野密

    河野(密)委員 安全保障諸費は、私の承知しておるところによれば、最初からきわめて漠然たる金で、使途明白でないままに、かつての、たとえば臨時軍事費とかいつたように項目だけきまつておる金であると承知しておるのであります。しかもそれは、政府説明によれば、進駐軍の移動等に要する経費という漠然たるものであつて、しかも現在までに四十億しか使つておられないで、あとにまだ五百二十億というものが残つておる。先般私たちがここで政府説明を聞いても、納得が行かないのであります。議会の問題になつたから急いで使うというのであつては困るのでありまして、これは大臣からそういう点について、もし余つた金があるならば、これを必要な方に振り向けて予算の組みかえも辞さないのだという意見を、ひとつ明確に御発表願いたいと思うのであります。
  253. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 この点は、今まで使いましたものは別といたしまして、これから後もあわてて使うということなどは決していたしません。それから余りました場合には、これを繰越して行きまして、あとの費用を少くて済むようにいたしたいと考えております。
  254. 河野密

    河野(密)委員 どうもはつきりしないのですが、それではもう一ぺん大蔵大臣にお尋ねしますが、来年度の防衛費、いわゆる自衛力漸増の金は、一体どのくらいにお見込みになつておりますか。
  255. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいまのところは、まるで私は見込みを持つておりませんが、先ほども申しましたように、こういう金は極力少くするように努めます。
  256. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと大蔵大臣に申しますが、先ほど河野君が言われたこの金を今ほかに振り向ける気があるかということは、この補正予算を論議する上の一番中心問題であると思いますので、その点もう一ぺん河野委員はつきりお答え願いたいと思います。
  257. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 これは、ただいまのところでは全部使つてしまうのと思いますので、残らないと思います。
  258. 河野密

    河野(密)委員 大蔵大臣が使つてしまうとおつしやるならば、私はそれで一応了承いたしますが、そうすれば来年度はできるだけ減らしたいと思うのですが、私は、この実情を見て、来年度の自衛力増強に要する費用は、相当程度減るものと考えるのでありますが、大蔵大臣はこの点どうお考えになつておりますか、これをはつきりと述べていただきたいと思います。
  259. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。私は減るということについての自信は持つておりませんが、極力減らすように努めます。
  260. 河野密

    河野(密)委員 私の計算したところによりますと、人事院の勧告、国鉄の裁定、そういうものをその装定の通りに実施いたしまして、今日労働団体等で要求しております年末手当のものをそのように繰入れたとしても、会計上されておる三百二十二億にもう三百三十億程度のものを加えると、大体この補正予算においてはつじつまが合うように考えておるのであります。その三百三十億程度のもので解決をするならば、さつき私が申し上げましたように、いわゆる財政投資という名前において、先般来炭鉱融資でもあれだけ問題になりましたような、そういつた財政支出がある半面において、私はこの財政余裕金があるとするならば、この際そういうものをもつて三百三十億程度のものを私は計上してもさしつかえないと思うのでありますが、この点大蔵大臣はどうお考えになりますか。財源がないために、財源がないということでもつて今の人事院勧告、国鉄裁定等を実施されないのであるか、それともインフレーシヨン、あるいはいろいろな諸般の経済施策を勘案してこういう予算を組まれたのであるか、そういう点をはつきりとひとつ答弁が願いたいと思います。
  261. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。インフレーシヨンを恐れるというようなこともあるいはあるかもしれませんが、そういうことはおもでございませんで、やはり財源がないということと、それからほかの民間給与とかあるいは物価、CPSの騰貴程度、それから今財政におつしやる通りの余裕があればいいのですが、そういう余裕はありましても、それは金でなくていろいろの物になつているとか、外貨になつているとかいうもので、これを金として使うわけに行かないものでございますから、そういう点から考えましても、裁定の通りに給与して行くわけに行かなかつた次第でございます。
  262. 河野密

    河野(密)委員 以上をもちまして私の質問を終りますが、大蔵大臣いろいろな経済政策の面について抱負を持つておられるだろうと思うのでありますが、今まで国会を通しては一ぺんもそれを伺う機会がないのであります。私は最後に、ひとつ大蔵大臣が、一体今日の経済財政政策を自分はどういう覚悟を持つて——覚悟でもよろしいが、どういう気持でこれをやつて行くのだ、このむづかしい時代をどうして切り抜けて行くのだという点だけを、披瀝されることを要求いたしまして、私の質問を終ります。
  263. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 仰せ通り今は非常な困難な時期でございまして、これを克服して行きますためには、そう短い間に実を結ぶとは思いませんが、やはり産業を振興させる、それ以外に方法はないと思うのでございますが、その振興の方法につきましては、先刻も申しましたように、基本産業、動力を低廉に供給できる方法とか、あるいは原材料を安く手に入れる方法を講ずる。それについては広い意味における交通機関を整備する、そういう方針で参ります考えでございます。
  264. 太田正孝

    太田委員長 御質問総理大臣の分だけ留保でございますか。
  265. 河野密

    河野(密)委員 そうです。
  266. 太田正孝

    太田委員長 河野君の質問は終りました。成田知巳君。
  267. 成田知巳

    ○成田委員 総理大臣と法務大臣に対する質問は留保いたしまして、外務大臣と大蔵大臣、通産大臣について質問いたしたいと思います。  最初に外務大臣にお尋ねいたします。問題は船舶貸借協定でございますが、この協定の前文に「アメリカ合衆国政府及び日本政府は、ここに、この協定に定める期間中及びこの協定に定める条件で、附属書Aとしてこの協定に添付される表及び将来船舶所有者と船舶借受者との合意によりこの協定に添付される表に掲げる船舶を、それぞれ、貸し、及び借りることに同意する。」こうあります。     〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕 この協定に添付されました表を見ますると、外務大臣御承知のように、フリゲート艦七隻のみなんです。ところが本年七月、米国議会を通過しました日本に貸与する船舶に関する法律によりますと、フリゲート艦十八隻、上陸用支援艇五十隻、計六十八隻となつております。といたしますと、あとの六十一隻はいつ借り受けられる予定でおられるか、まず承りたい。
  268. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 あとの船は今整備を急いでおりますので、これは将来のことでありますから的確には申し上げられませんけれども、今の予定では明年の五月末日までに全部の借入れを終る予定になつております。多少遅れることはあり得るかもしれません。
  269. 成田知巳

    ○成田委員 そうすると、あとの六十一隻を借受ける場合でございますが、この提案理由には六十八隻以内借入れるということが書いてあります。また前文に、米国と日本政府の合意によりこの協定に添付される表に掲げる船舶云々と書いておることは、何だか行政措置のみで、日本政府とアメリカの契約だけで、国会の承認を得ないで残余の六十一隻は借りるというようにも解釈できるのですが、政府はどのように御解釈になりますか。
  270. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは当該委員会で詳しく説明しておりますが、要するに十八隻のフリゲートと五十隻の上陸用支援艇といいますか、この範囲内で借りるのでありますけれども、相手方の都合もありまするしいたしますので、確実にそこまで借りられるかどうかはまだわからないのです。しかし国会において承認を求めるのは、それ以上のものは決して借りられない、最大限度十八隻のフリゲートと五十隻の上陸用支援艇を借りるのであるから、それをひとつお認め願つて、とりあえずは七隻を借ります。その後も修繕ができたり整備ができたりしましたら、三隻借りたり、五隻借りたりして、始終この範囲で準備が整い次第借りるつもりであつて、最後は、でき得れば五月末日までに全部を借り受けたい、こういう意味で、国会の御承認は、協定の中には何隻ということは書いてありませんけれども、これは委員会等の説明で申しておりまして、またアメリカの法律もそうなつておりまするから、これ以上のものではない。そこで議事録等にはつきり十八隻と五十隻ということを書きまして、この範囲内で御承認を求めたい、こういうことにいたしております。
  271. 成田知巳

    ○成田委員 アメリカの法律でそうなつているというのですが、日本日本の立場で考えなければいかぬ。もし七隻だけ承認する、あとの六十一隻は政府の一方的な意思でできるということになると、ちようど政府にこの協定を承認することによつて白紙委任状を与えることになつて、問題は非常に重大だと思うのですが、この協定を国会の承認を求めて来られた理由、これはどこに根拠があるか承りたい。
  272. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 重ねて申しますが、実は協定の中に十八隻と五十隻と書いておけば一番よいわけでありますけれども、それにはまだ準備の整つていないものもありますし、先方も必ずしも十八隻と五十隻という責任を負えない立場にある。この範囲で、できれば最大限度まで行く、できない場合にはその範囲内でできるだけそれの最大限度に近いところまで行くということが大統領としてもできる範囲でありますので、正確な数を書いておきませんけれども、最大限度はこれだけということは申し上げて、それで承認を得たい、こう考えております。なおこれを国会に提出しました理由は、協定の中にありますように、万一これが何かの過失で沈んだというような不可抗力は別としまして、過失で沈んだというような場合には、日米両政府の間で協定しました適当な補償をするということになつております。これはまだそういう過失が起るかどうかわかりませんし、またかりに沈んだ場合でも、両国政府の協定でどれだけの補償になるか、あるいは協定で全然これは補償しないという場合もあり得るわけでありまして、不確定な債務でありますけれども、いずれにしても、ある場合にはそういう種類の債務は負うということになりますので、これは日本政府がある種の不確定なる債務を将来において負う場合があるわけでありますので、国会の承認を求めた次第であります。
  273. 成田知巳

    ○成田委員 不確定的な債務を負う場合があることを予想して国会の承認を得られたというのでありますが、私たち解釈からしましては、これが戦力であるかどうかの論議は別といたしまして、国民の権利、義務に重大な関係があると思うのです。予算の損害賠償の問題もその一つだと思いますが、国民の権利義務に重大な関係があるから、国会の承認を得なければいけないと思うのです。この問題に関連しまして、武器の貸借契約でございますが、これは聞くところによりますと、国会の承認を求められないような方針らしいんですが、これは将来損害賠償がない、こういう解釈のもとに、武器貸借契約については国会の承認を求められないのですか、あるいは求める意思があるのかどうか承りたい。
  274. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまだそういう協定になつておりませんから、私が答弁するのも越権だと思うのであります。これはまだ保安庁長官の所管になつております。
  275. 成田知巳

    ○成田委員 外務関係としては……。
  276. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 つまり協定になれば私の方になるわけでありますが、協定にならない前は保安庁長官の仕事であります。ですから私は正確でない場合があるかもしれませんが、知つている限りでお答えしますと、今の保安隊に対する武器は借りてはおりますけれども、もちろん無償でありますし、損害の補償等は何もいたしておりませんから、財政的には、日本政府はただいまのところ、債務または将来における債務のようなものを何も負つておりません。従いましてこれは行政府限りで借り得る、こういう解釈と了解しております。
  277. 成田知巳

    ○成田委員 財政的な関係で国会の承認を得なくてもいい、こういう御解釈のようでありますが、私たちからしましたら、今申しましたように、やはり国民の権利、義務に重大な関係があると思う。たとえば武器をお買いになるとか、あるいはフリゲート艦を借りられる、その目的国内治安を維持するためだ、こう言われている。もし不幸にして動乱が起きたという場合には、当然これらの武器は使われると思います。そうすると日本人が艦砲射撃をやられたり、あるいは戦車でひき殺され大砲で射ち殺される、これは国民の生命財産に重大な関係がある、こういう意味においても当然国会の承認を得べきだと思う。単に予算関係ではないと思うのですが、いかがでしよう。
  278. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう点について外務大臣がお答えするのは少し筋違いだと思いますから、あらためて保安庁官にお聞きを願いたたいと思います。
  279. 成田知巳

    ○成田委員 次に、先般の本会議で西村榮一議員が質問された問題でありますが、平和条約第六条で、効力が発生後九十日以内に、別に協定の定めないとき、すなわちアメリカの軍隊でも撤退しなけばならない。この質問に対して外務大臣は、平和条約と同時に、国会の承認を得た吉田・アチソン書簡によつて国連軍の駐屯を認めた、こういう御答弁つたのです。ところがアチソン・吉田書簡は、御承知のように、国際連合軍を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し、かつ容易にすること、また日本の施設及び役務云々とあるのですが、この支持するということは、それでは駐屯という権利を含んでおるのかどうか、御解釈を承りたい。
  280. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまことに、お話のように言葉が日本語としては適当でないと思いまするけれども、実はそういう言葉がなくて、英語ではサポートという字があるのであります。これは駐屯の場合もありまするし、それから沿海に入つたり、出たりする船の場合もありまするし、飛行機の場合もありまして、昔はこういう言葉はなかつたのであります。ことに飛行機ができましてから、こういうような言葉が使われるようになりまして、それに対しては的確な言葉がありませんけれども、要するに国内に駐留する部隊もありまするし、その駐留する部隊に関連して、飛行機が外から入つて来る場合もあり、また出る場合もある。あるいは船が沿海に入つて来る場合もあるし、出る場合もある、こういうものを含めたものをサポートと言つておりまして、これは外国でも新しい言葉ですが、それに合せてこの字を使つておるわけであります。
  281. 成田知巳

    ○成田委員 それでは駐屯という権利を含んでおるという御解釈らしいのですが、そうしますと、国連憲章の四十三条に「国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要求に基き、且つ特別協定に従つて、国際の平和及び安全の維持のために必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益に通過の権利が含まれる。」こう書いてあります。この前の本会議の席上でも、通過の問題と駐屯の問題との論議があつたと思うのですが、特にこの便益には通過の権利が含まれると断わつておることは、他国の軍隊が一国に入るということは、その国の主権に重大な関係がある。従つて特に通過の権利があるんだということを断つておるのです。これを反対解釈いたしますと、駐屯の権利はないと解釈するのが常識じやないかと思いますが、どういうお考えを持つていらつしやいます。
  282. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま御指摘の条章は、これは特別協定であります。この特別協定はある国連加盟国と国連との間に結ぶ特別の協定であります。これとは別個に、われわれは吉田・アチソン交換公文で、今朝鮮に発生している事変は、日本政府から見れば、日本の安全に直接かつ重大な影響を及ぼすものであるから、そこで日本国内あるいは日本の周辺において、国連軍の一部があるいは駐留しあるいは入つて来るという、そういう権利を認めたものでありますが、これは国連憲章にいう特別協定ではないのでありまして、それはもちろん日本は加盟国になつておりませんから、そういう特別協定を結ぶ立場にもありませんから、まだそういうおつしやるような意味の特別協定はどこの国とも結んでいないのであります。
  283. 成田知巳

    ○成田委員 午前中の外務大臣の答弁で、アチソン・吉田書簡の協力の義務というものの内容を、だれかが質問しましたときに、国連加盟国の義務が最大限の意味で、この程度までは負わなければいけないという御答弁があつたのであります。その御答弁から考えまして、この特別協定というものは、最も大事な問題でありますから、特別協定にしまして、しかも御承知のように、国内手続で批准さえもしなければいけない、こうなつております。しかもこれは最も嚴格に解決すべきものであります。この厳格に解釈すべき特別協定の内容について、特に通過の権利というものを便益の中に含むんだと断つておることは、当然駐屯の権利というものはないのだ、こう解釈すべきだと思います。外務大臣自身が、国連加盟国の義務が最大の義務であつて、それ以上の駐屯の権利を与えるということは、先ほどの御答弁から言つて、矛盾しているのじやないかと思いますが、いかがでしようか。
  284. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほどの答弁は、平和条約の第五条に基きまして、国連に対するあらゆる便益を供与するというこの第五条の解釈を問われましたから、これは加盟国の義務以上に出るものではない、こう説明をいたしました。それからこの吉田・アチソン交換公文というものは、一般の国連に対する義務というものでなくして、国連の総会の決定に従い、今朝鮮でもつて活動を開始しておるこの特定の国連軍に対して、日本の特殊なる朝鮮との間の地理的関係その他から見まして、日本が特別の便益を供与する——これは朝鮮事変が終ればまた別になりますけれども、これと五条とは性質が違うのであります。
  285. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、外務大臣の解釈では、国連加盟国が国連憲章に基いて安保理事会に提供しなければいけない義務以上の義務を、吉田・アチソン書簡によつて日本は負つたのだ、こう解釈しなければいかぬと思いますが、それでよろしいでしようか。
  286. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はそれは多少違うと思います。たとえばかりにその御意見によつても、国連加盟国が——これは特別協定があつた場合ですが、特別協定がありますと、軍隊を出すということもしなければならない。その他そこに書いてあるいろいろなことをやらなければならぬ。われわれの方では、全然義務が同じような種類でもつて、あるものはこの程度、あるものはこの程度、こういうのじやなくして、いろいろな義務がありまして、そのうちの一部をやるかやらぬかという問題でありますから、加盟国以上の義務と必ずしも言えないのであります。これはしかし、要するに日本国内に国連軍が軍隊を一時的にもせよ置くというのでありますから、特に交換公文を作りまして、これを国会の承認を求めるために提出した、こういうような事情であります。
  287. 成田知巳

    ○成田委員 この問題については時間がありませんので、外務委員会その他でまたお尋ねいたしたいと思います。  次に、海外同胞の引揚げ問題についてお尋ねしたいと思います。敗戦以来七年を経過しまして、解決されていない一つの重大な問題として、海外同胞の問題がある。留守家族は生活苦と闘いながら帰還を待つているわけです。たまたま一日の北京放送で、約三万人の日本人が在留しているという報道があつたわけですが、今まで——と申しますのは、解散前の当委員会でありますが、政府委員質問したところ、未帰還者に約三十四万、それから生存見込みは七万七千、死亡見込——死んだと推定される者が二十三万四千、消息不明二万八千、こういう答弁をされております。そこで、どこで死んで、どこで残留者は生きているのか、こういう質問をいたしましたら、政府委員は国際関係上まだ発表できない、こう言われた。ところが北京放送がありまして、政府は参議院なんかの答弁で、約五万九千の人が中共地区に残留しているはずだ、その姓名もわかつている、こういわれたのでありますが、そういたしますと、現在生存見込みで未帰還の人は何万人いるか、その内訳はソ連に幾ら、中共に幾ら、あるいはその他に幾らか、もうわかつているはずだと思いますが、その詳細を承りたい。
  288. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今私資料を持つておりませんから、正確なことはあとに願いたいと思いますが、五万九千というのは、われわれが中国から満州を含めて中国に、とにかく終戦以来いつか自分がいるんだということを友人から伝えて来たり、あるいは手紙をよこしたり、とにかく何謀という者が、ある一定の時期にはどこにいたということがわかつた人であります。それが五万九千という数であります。もちろんその中にはその後なくなつた人もあるでしよう。また移動した人もあるだろうと思いますが、それはそういう意味の五万九千であります。従つて七万幾らかそれを除いたものが、私の想像ではまだソ連地区に残つている生存者だと思います。
  289. 成田知巳

    ○成田委員 大体何万人ぐらいですか、ソ連地区は。
  290. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 何万人ということは、ちよつと、今、間違つたことを言うと……。
  291. 成田知巳

    ○成田委員 万という数字ですか、それとも……。
  292. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 万という数字です。とにかくまだそういう数がほかに残つておる。中国関係は五万九千ある。それをなぜ発表できないかといいますと、それはかなり多くの者がひそかに手紙をよこしたり、あるいは何かのつてでひそかに手紙を托したりして来た人でありましで、そういうことが許されない状況のもとにやつた人がたくさんありますので、これを出しますと、まだ残留している人にたいへんな迷惑がかかる、こういう気持で言つておるのであります。
  293. 成田知巳

    ○成田委員 この引揚げの問題でございますが、ソビエト地区からの引揚げについては、当時占領治下にあつたものですから、総司令部がソ連代表部と送還協定を結びまして引揚げを行つた。だから国際法上、交戦中といえども抑留者の送還については、当事者間において送還協定を結ぶことができるわけである。現在総司令部がなくなつた今日、当然日本政府としては中共政府に対して、留守家族のことを考えるならば、また抑留されて苦んでおる人のことを考えるならば、送還協定締結の申出をするのが政府の義務だと思います。今までおやりになつたかどうか、今後もどういう方針で進まれようとしておるか承りたい。
  294. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは一つには、国交が現在御承知通りでありますから、なかなか困難だと思います。しかしながら先方がもしこの特殊の問題だけについて協定を結ぶ意思があれば、もちろん日本政府は何ら異存がないわけであります。しかしながら今回のように、日本のある団体の代表者のようなものをよこせというような、これは放送でありますけれども、そういう意向であつて、かりにそれが不規則なやり方といたしましても、それをやることによつて抑留者が帰れるというならば、それでもわれわれはよかろうと考えております。とにかく抑留者の帰れるような方法をとればいいのでありますから、その点に主眼を置いております。
  295. 成田知巳

    ○成田委員 中共政府がそういう希望があり、また申出があれば、日本政府としても考えるというのはまつたく逆なのでして、日本政府の方から送還に関する協定の申出をしなければいかぬ。まつたく逆だと思います。今まで外務大臣の御答弁によりますと、一度もそういう努力をされたことがないいようですが、今の発言で、もし民間団体から代表者が行つても、これは効があるようならば考えてみようというような御意見があつたのですが、御承知のように、未帰還者の引揚同胞促進の全国協議会はすでに十名の代表を送る、こういう決議をしておる。もし十名の代表を送るという決議が実行に移されて、送る段階になりましたならば、政府は今まで中共に対しては旅券下付なんかやらなかつたが、旅券下付をお認めになつて、積極的にこれに援助されるか承りたい。
  296. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 さつき言い落しましたが、いろいろの方法であつて、直接ではありませんけれども、中共側に抑留者の引揚げの問題は促進方を試みてみたのであります。あるいはそういうことの一つの現われかとも思つておるわけでありますが、これはわかりません。それからこれをもつと具体化してみないと、今ここでそういうことを言つて意味があまりないのでありますが、とにかく具体化して参りまして、この特定の目的のためにということになりますれば、これは国内の非常に多くの家族のためになることでありますので、できるだけの障害に取除いて抑留者の帰れるようなふうに努力をいたしたい、こう思つております。
  297. 成田知巳

    ○成田委員 今までもある種の方法をとつて、促進方をやつて来たと言われるのは、あるいは国連だとか、赤十字を通してやつて来たことだと思いますが、なぜ中国の実際の実権を持つており、しかも抑留者がその支配下にある中共政府を相手にして送還協定の申出をしないかと言うのです。国交が回復していないと言いますが、先ほど申しましたように、戦争中でもできるのです。これをなぜやらないか。それは結局政府は、あの一地方政権、亡命政権になつておる蒋介石を、正式政府と認めたアメリカ外交に追随した、アメリカに対する気がねなんだ。アメリカに対する追随外交、気がねの結果数十万の留守家族を悲嘆のどん底に陥れた、これが今の外交方針だと私は考えますが、これ以上この問題については時間がありませんから申し上げません。  次に大蔵大臣にお尋ねしたい。中国の実業家の謝南光はこういうことを言つておる。日本経済は駐留軍の落し金、日本娘の貞操の切売り、それから朝鮮民族の流血の惨を基礎にしたところの特需景気、この三つでささえられておるまことに不名誉な、不完全な経済だと言つておる。これはまことにその通りだと思う。そこでこの不健全な不名誉な、日本経済を健全なものにして行く、そのためには、何と申しましても平和産業の育成が必要だと思うのです。今特需景気から兵器生産経済体制に移つている。戦争中の経済体制に移行しようとしておりますが、これはあくまでも排除して、平和産業育成の方向をとらなければいかんと思うのですが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  298. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 兵器生産でもつて日本が興隆して行くとは私は存じません。あくまでも平和産業で行くべきもと思います。
  299. 成田知巳

    ○成田委員 ところが現実はどんどん防衛生産体制に移つているのですが、大蔵大臣は平和産業でやると言われます。それではその平和産業を振興さすためには、その一つとしては、労働者のはつつたる生産意欲と労働者の協力がなければいかぬと思うのです。他の一つは、やはり安い原材を買うそしてできた製品を外国の市場を求めて売つて行く、こういう二つの条件が満たされなければ、平和産業は興らないと思うのです。このうち労働者の生活安定の問題ですが、先ほど河野議員も言われましたように、政府は人事院勧告、あるいは国鉄裁定あるいは全電通の調停、こういうものを無視して、労働者の生活の安定をはかろうとしているとは私たちは思えないのです。いまさつき財源の問題で河野議員が指摘されたように、また政府自身の説明にもありましたように、安全保障諸費は五百十五億残つているのですね。使用見込みはその後二百六十億と政府答弁された。先ほど大蔵大臣は、最初はこれは繰越して使用される、次の答弁では全部使つてしまう、こう言われたのです。全部使うというのは、次年度に繰越せば全部使えるのはあたりまえですが、全部使うと言われるのは、今年度中に残額の五百十五億というものは全部使うはつきりした方針をお持ちになつているかどうか、それを承りたい。
  300. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 お答えいたします。私が初めに繰越して使うと申しましたのは間違いでございまして、全部使われる見込みでございます。
  301. 成田知巳

    ○成田委員 五百十五億というのは今年中に全部使う御方針である、こう解釈してよろしゆうございますね。
  302. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 政府委員に詳しいことを答弁させます。
  303. 河野一之

    河野(一)政府委員 申し上げましたように、目下着々具体的な計画が進行いたしておりますので、支出負担行為、つまり契約がだんだん年度内に来るのではないかと思います。しかし現実の金の支払いということになりますと、あるいは明年度に行くものがあるのではないかと思つております。
  304. 成田知巳

    ○成田委員 私たち解釈では、当然最初言われた繰越してお使いになるのが政府の腹だと思うのです。それからまだ財源はあると思うのです。たとえば昨年度の剰余金四百六十億、これがことしその半額まで使つていいのです。二百三十億使える。インヴエントリーが三百五十億ある。これだけでも、たとえば人事院勧告を実施するためには私たちの計算では五百十五億でいいのですから、十分財源があると思うのです。そういう財源を隠しながら財源がない、財源がないと言つているのは、最初繰越してお使いになるといつた答弁にも現われているように、来年度一挙に保安隊を増強する、こういう含みがあると私たち解釈しているわけですが、この問題も時間の関係でこれで伏せておきます。  次に通産大臣に承りたいのですが、平和産業を興すためには、先ほど申しましたように、貿易の振興をはからなければならぬ。特に私たちは中国を中心にしたアジア貿易の促進が必要だと思つておるのですが、最近までの政府の方針は、御承知のように、あらゆる物資の輸出を禁止しておる。バトル法以前の状態です。ところが最近アメリカの強い反対があつたにもかかわらず、パリのココム委員会に日本は加入を認められた。そういたしますと、当然ココム委員会のパリ・リストの線まで輸出禁止というものは緩和しなければいかぬ。これを具体的に申しましたならば、非戦略物資です。これは当然輸出を認めていいと思うのです。その点について通産大臣はどういうお考えを持つておるか。
  305. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 日本の対中共との輸出関係を西欧諸国と同一の点まで持つて行け、バトル法の線まで引上げろ、こういう成田さんのお話だと承知しております。これは私どももぜひそういたしたいと思つて、アメリカ及び西欧諸国と話合いを進めておるところでございます。その結果かどうかまだわかりませんけれども、日本の現在までの統制が、これが幾らかずつ緩和される方向に向つていることは事実であると思います。私どもは、原則としてはあくまで日本は西欧諸国と対中共貿易に対しては、同様の取扱いを受けたい、こういうふうに今後の外交の展開を切に望んでおる次第でございます。
  306. 成田知巳

    ○成田委員 緩和の方向のきざしありと言われたのは、現在は、御承知のように、紡績機械、絹、羊毛製品、その染料、この四品目のみで、ほとんど全面的な禁止をしておるが、これよりも相当大幅な緩和が期待されるという意味解釈してよろしゆうございますか。
  307. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 大幅の緩和をしたいと思つて、今全力を尽しておるところでございます。
  308. 成田知巳

    ○成田委員 見込みはどうですか。
  309. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 見込みは、私は理の当然であるから相当緩和されるものと考えております。
  310. 成田知巳

    ○成田委員 具体的に品目はおわかりになりませんか。大体こういうものが緩和されるという……。
  311. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 まだ話の途上でございまして、品目については詳しいことを承知しておりません。
  312. 成田知巳

    ○成田委員 どういう品目について交渉中でございますか。——それじやよろしゆうございます。
  313. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 成田君の質疑について関連質疑の申出があります。この際これを許します。山田長司君。
  314. 山田長司

    山田(長)委員 ただいまの質問に関連いたしまして、貿易についての問題を主務大臣に御答弁を願いたいと思います。     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕 その内容は、通産省の内部に起つておる問題でございます。その問題は砂糖の取引を通して起つておる問題でございます。生活に必要な砂糖については、戦争後台湾を失つて以来、当局がいろいろ苦労されておる点については、十分認めるところでございますが、この貿易問題は国際通商に関係のある問題であるばかりでなく、外交上にも非常に大きく関係がありますので、当局の所信を伺いたいと思うわけでございます。  第一にお伺いいたしたい点は、砂糖に対して政府はまつたく無策であるのではないか。すなわち割当放任にしておくのか、それとも自由放任にしておくのか、この点第一点として伺いたい点でございます。  第二点は、放任しておくことによつて政商の活躍——顔をきかしている商人が、通産省の中にいて許可書をとつて、これで仕事をしておるというような人がある事実を持つておるのであるが、この点について、あるかないか。第三点、上十七年度のスイッチの残高はあつたかもしれないが、二十八年度にはまつたくないので、今のうちに活躍して、高くなる砂糖を買いつけておこうというので、商人が個々ばらばらに台湾の商社に向つて働きかけをしておるという事実があるが、この点はどう思われるか。  第四点でありますが、台湾政府に交渉して買いつける手順をとつている製糖工業界が大メーカに意見が出されたために、難航しておるということでありますが、この事実はあるかないか。  第五点は、特定の外国商社、丸の内の中七号館、オリエンタル・エキスポーターズ商会が、オランダの原産であると称して、日本政府を欺き、税関でつかまつた事実があるかないか。トン数は二千トンであります。  第六点でありますが、これをまねして、正月用の砂糖を東京に入れて一もうけしようとする意図のもとから、中央区日本橋江戸橋二の三、加商、これが同様な手段で持つて来た砂糖が、現在陸揚げできずに港にあるという事実があるが、これについて政府はどういう取扱い方法をとろうとしておるか。この六点についてお尋ねをしたいと思うわけでございます。
  315. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 砂糖につきましては、外貨のあり方及び価格等をにらみ合せまして、たとえば今キューバで買えば百ドルで買えるが、台湾から入れると百五十ドルというようなことであつては困ると思いますので、それらに関する根本方針につきましては、通産省と農林省及び外貨関係で大蔵省等と打合わしておりますが、ただいま御質問のありました六点につきましては、私は承知いたしておりませんので、説明員に答弁いたさせます。
  316. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 お答えを申し上げます。まず第一点ございますが、第一点は第二点とも関連を持つかとも思いますが、現在砂糖はキューバからドルで直接買いまする分は、砂糖工場に対しまする資金割当をやつておりまして、商人の暗躍する余地は実はないわけでございます。工場そのものにドル資金の割当をいたしております。その他の地域、たとえば台湾、あるいはスターリング地域、フランス等のオープン・アカウント地域から入りますものは、自動承認制をやつておりますので、これも特定の商社に割当をするということをいたしておりません。予算のある限り、他の商品と同様に、自由な許可の方法をとつておりますので、先ほど第二点として御指摘のありましたような、政商が暗躍するというふうな問題は——政商という意味がよくわかりませんが、そういう事実はないと思います。  それから第三点の台湾の砂糖の問題でありますが、現在台湾の砂糖は若干国際価格より高うございますので、実は台湾から輸入する外貨予算との関連もありまして、目下政府が中に入りまして、価格の引下げの交渉をいたしております。普通ならばこれは業界がやつていただくのが本筋かと思うのでありますが、業界ともいろいろ相談をしました結果、ながなが業界で足並のそろいにくい点もあるので、ひとつ政府で交渉してくれぬかというお話しでありますので、今台湾から砂糖公司の経理の揚さんといの方も見えておられまして、それと目下交渉いたしておりますが、今かなりまだ意見相違がありまして、妥結には若干のひまがかかると思います。数量は目下五十万程度を予想して、交渉をいたしております。  それから第四点は、大メーカーによるやや出過ぎた行動があつたかなかつたかというお尋ねのようでありましたが、ただいま申しますように、確かに高い価格で一部買付ける進めた商社もありましたがためにもう少し価格を引下げ、統制のある足並が望ましいということで、目下引下げの交渉をわれわれの方でいたしておるような次第でございます。  それから第五点、第六点の問題、特定の外国人商社、あるいは日本商社が、やや不都合な砂糖の入れ方をしておるのではないかというお話でありますが、実はまだ私詳細存じませんので、いずれ調べました上で、お答えを申し上げます。
  317. 山田長司

    山田(長)委員 第三点の問題でありますが、どのくらい数を入れようとしておるかという点であります。値段は幾らで入れるかという点です。
  318. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 数量は、一応五十万トン程度を考えております。それと価格の問題は、これは契約でもありますし、まだ話合い進行中でもありますが、われわれといたしましては、できるだけ国際価格に近い価格で買うべきではないか。しかし台湾と日本との間の特殊関係もありますから、国際価格そのものというわけには行きませんので、若干色をつけた価格できめようということで、折衝しております。
  319. 山田長司

    山田(長)委員 第六点の加商の問題と、それから第五点のオリエンタル・エキスポーターズ商会の問題につきましては、詳しく材料が実はわかつておるのですけれども、なおこの問題については、当局で調べていただいた上で、さらに照し合せて御質問申し上げたいと思いますから、その点十分ひとつ御了承願いたいと思います。
  320. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 関連して……。私は政府に警告する意味で、御質問いたしたいと思います。砂糖の問題は、非常に重要な問題でありまして、また利権や何かの対象になつておるようです。砂糖は御存じのように、キューバ産のものはトン百ドルくらい、台湾糖は百五十ドルといつております。この間政府は自動承認制を開いたために、たまたま承認制を受けた会社は、五万トンでありましたか、二つの会社が百五十ドルで台湾糖を入れる契約をして、すでに船が入つておる。そのために内地の砂糖の値段がぐつと上つた。これをやられると、子供のキャラメルの値段が上るということになる、あるいは赤ん坊の練乳の砂糖が上るということになるので、家庭の生活にすぐ響く問題であります。現に砂糖価格は国内価格が高過ぎるということで、業者はもうけておるわけであります。それがこれ以上高く持続するということは、家庭の主婦や子供の名前において私は黙視することができない。そこでなぜそう高くなつたかといえば、台湾側が足元を見たからである。今までは政府か介入して調節をとつて一本で出たわけです。ところがそれをはずしたために殺倒した。だから足元を見て、五十ドル以下では売らない、そういうことで百五十ドルになつた。今あなた方が入つて、百三十何ドルに下げようとしておる。ところが数量と値段が問題である。五十万トン入れようとしておるけれども、五十万トンなんて台湾から入れる必要はない。キューバからこの間使節が来て、百ドルの砂糖を円で積んでもよいと言つているではないか。もしなんならば、円で積んでもらつておいて、日本の品物を見返りにやるということも考えられる。こうすればずつと下るわけです。台湾にのみ集中しておるとどうしても足元を見られるから高い。高い砂糖を入れざるを得ない。そこで政府としてはこの際キューバ産の砂糖をある程度のドルを犠牲にして——向うも相当日本側に有利な条件を持つておるということを聞いております。従つてキューバ産の安い砂糖で牽制しながら台湾糖の値段をたたく、それがためには政府でどうしても一本にまとめるという措置が必要なんです。五十万トンなんという厖大な砂糖を入れる必要は絶対にないでしよう。年間百万トンですら多いというくらいですから、台湾からそんなに多くとつたら足元を見られるだけです。そういう意味政府日本の子供や母親の心配を少くする意味において、絶対に安い砂糖を入れなければならぬ。そのためには小刻みにやるということと、キューバ産で牽制して安く入れるということです。これが政府の使命でなくちやならぬ。もうかるから業者がおそらくかつてなことをやつて暗躍する、その間にいろいろ政商が飛びまわるでしようけれども、この点について政府はどういう所信でやられるか、私のやり方に賛成かどうか、これをお尋ねいたしたいと思います。数量と値段を明確にして、ちやんと予定を立てさせなくちやいけません。小笠原通産大臣に一つお尋ねいたします。
  321. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政府委員より答弁いたしますが、私としては今伺つておるところでは、まことにごもつともな点が多々あるように思いますので、善処することにいたしたいと思います。   (中曽根委員「思惑の余地をなくす   ということが一番大事です。」と呼   ぶ)
  322. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 台湾から輸入する量が実は多いか少いかという問題ですが、大体この需給の関係等いろいろありますが、業界の大体希望された数字は、百万トンということに実はなつておりまして、われわれはドル地域からの輸入は確かに安いことには違いないのでありますが、できるだけドルを節約するという観点から、ドル地域以外の砂糖の輸入をするという方針で輸入を処置しておるわけであります。一応今五十万トンというのは、話の目標ではございますが、これも合理的な価格がきまり商売をなさるのはいわゆる製糖業者が中心になつての話でありますから、そんなにいらぬということであればあるいはできないかもしれないのであります。これはわれわれ直接政府貿易でやる商品でもございませんので、業界が自律的にお考えになればけつこうかと思つております。ただ今の目標といたしまして五十万トンという数字でございまして、これも今中曽根さんからお話がありましたが、業界からは非常にけつこうだ、合理的な値さえきまれば、五十万トン大いに買おうというお話が実はあるわけでありまして、砂糖の価格等につきましても、先ほど来のお話はちよつと事実と少し私は違うのではないかと思つております。それによつて値が上つたというようなことは——百五十ドルで買おうというようなことを業者が言つて値段が上つたということは実はございません。年末を控えまして、(中曽根委員「大日本製糖で入れているものは百五十ドル」だと呼ぶ)現在の価格も商社の方では百五十ドルで引合う向きもあるようでありまして、やはり合理化されてい工場においては引合うということでありますので、ただ一社、二社がそういうことをやりますと、ほかがそれにつられるというような意味で、われわれはできるだけ安く買わせるように、実は大日本製糖にも忠告をして安く買わせつつある状況であります。
  323. 太田正孝

    太田委員長 これで本日の質疑を終ることにいたします。  この際申し上げたいことがございます。午前中の理事会における御相談によりまして、明五日午前十時よりの委員会に、午前中質疑を行うに際しまして特に現在問題となつております電産、炭労の労働争議を中心として議事を進めるという申合せをいたしました。右御了承をお願いいたします。  本日はこの程度にいたしまして、次回に明五日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会