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1953-03-10 第15回国会 衆議院 本会議 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十日(火曜日)  議事日程 第三十七号     午後一時開議  一 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑     —————————————  第一 海事代理士法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 木船再保険法案内閣提出)  第三 武器等製造法案内閣提出)  第四 健康保険法の一部を改正する法律案(内絹提出)  第五 厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  第六 船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 国民健康保険再建整備資金貸付法の一部を改正する法律案内閣提出)  第八 消費生活協同組合資金貸付に関する法律案内閣提出参議院送付)  第九 医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律の一部を改正する法律案参議院提出)  第十 放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会の承認を求めるの件  第十一 青少年問題協議会設置法案内閣提出)  第十二 厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十三 大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十四 厚生省設置法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案佐藤洋之助君外二十四名提出)  第十五 飼料の品質改善に関する法律案中馬辰猪君外二十四名提出)  第十六 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十七 日雇労働者健康保険法案内閣提出)  第十八 公職選挙法の一部を改正する法律案公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出)  第十九 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二十 米国対日援助物資等処理特別会計法を廃止する法律案内閣提出)  第二十一 設備輸出為替損失補償法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二十二 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二十三 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二十四 国有財産法第十三条の規定に基き、国会の議決を求めるの件  第二十五 国土調査法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二十六 有線電気通信法案内閣提出)  第二十七 公衆電気通信法案内閣提出)  第二十八 有線電気通信法及び公衆電気通信法施行法案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  水産委員長辞任の件  水産委員長補欠選挙  日程第十八 公職選挙法の一部を改正する法律案公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出)  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑     午後二時五十分開議
  2. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) お諮りいたします。水産委員長福永一臣君から委員長辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) つきましては、この際水産委員長補欠選挙を行います。     —————————————
  6. 山崎岩男

    山崎岩男君 水産委員長選挙は、その手続を省略し、議長において指名せられんことを望みます。
  7. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 山崎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 御異議なしと認めます。議長水産委員長田口長治郎君を指名いたします。(拍手)      ————◇—————  第十八 公職選挙法の一部を改正する法律案公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出
  9. 山崎岩男

    山崎岩男君 議事日程順序変更緊急動議提出いたします。すなわち、日程第十八は委員会の審査を省略してこの際これを繰上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。
  10. 大野伴睦

    ○職長(大野伴睦君) 山崎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて日程順序は変更せられました。  日程第十八、公職選挙法の一部を改正する法律案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。公職選挙法改正に関する調査特別委員長大村清一君。     〔大村清一登壇
  12. 大村清一

    大村清一君 ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案について、提案理由とその要旨を簡単に御説明申し上げます。  まず、本案の内容の説明に先だちまして、公職選挙法改正に関する調査特別委員会における調査経過の概要をかいつまんで御報告いたします。  特別委員会は昨年十二月に設置せられたのでありますが、まず、委員会においては、当初数回にわたり選挙法改正に関する委員間の自由な意見の交換を行い、関係各方面から寄せられた資料や意見をも参酌いたしまして、慎重に改正点を選択し、次いで、各派委員より構成せられた小委員会を設置いたし、前後十数回にわたり、きわめて熱心かつ慎重に審議を重ねました結果、去る三日、委員会において改正案要綱の作成を得、これに基いて法文化を行い、昨六日の委員会に付議いたしましたところ、各派よりそれぞれ一部修正意見提出され、討論採決の結果、委員会の成案を決定し、来る参議院議員半数改選のための選挙に備えまして、ここに本案提出を見るに至つた次第であります。  本改正案の眼目とするところは、昨年十月の総選挙の経験にかんがみ、選挙運動適正化をはかり、選挙運動費用に関する規定実情に即せしめ、その他選挙管理執行に関する規定及び罰則整備をいたしたのでありまして、本改正案提案理由はここにある次第であります。  以下、簡単に、改正案のおもな部分につきまして、その要旨を御説明いたします。  第一は選挙運動に関する改正点でありますが、まず、国会議員等選挙におきましては、選挙事務所を表示するために一定の標札を常に選挙事務所の入口に掲示しなければならないものとし、これに違反するときは閉鎖を命ずべきものといたしたのであります。  次は飲食物の提供についてでありますが、選挙運動員及び労務者に対し、選挙事務所または街頭演説及び連呼行為に従事する場合において、弁当料の支給にかえ、一日につき三十人分九十食を越えない範囲内で現物給与ができるものとし、あわせて現行法の湯茶を茶菓に改めることにいたしたのであります。  次は、選挙運動のために使用する自動車拡声機または船舶についての証明書と表示のうち、証明書はこれを必要としないことに改め、自動車についての警察許可もまた必要としないように法定いたしたのであります。  次は文書図画掲示についてでありますが、衆議院選挙特例として、公営により交付せられる個人演説会告知用ポスター枚数を、現行一千二百枚から三千枚に増加するとともに、これを他の一般選挙運動用ポスターにも転用することができるようにいたしたのであります。  次は新聞紙雑誌報道及び評論に関してでありますが、法定以外の一般新聞紙雑誌及び法定以外の政党その他の政治団体機関新聞紙雑誌でありましても、選挙運動期間中、選挙期日その他選挙執行、棄権及び違反防止に関する記事を掲載することができるように緩和いたしました。但し、法定以外の一般新聞紙雑誌に対する規制は、選挙の当日にも及ぼすことといたしたのであります。  次は立会演説会についてでありますが、演説者の便宜をはかるため、従来の方法以外に、班別編成によつても実地することができる旨の規定を新設いたしたのであります。  次は個人演説会制限についてでありますが、六十回の回数制限はそのままといたしましたが、そのほか、次の条件を具備する場合には個人演説会演説を含む)を開催することは自由といたしました。すなわちその条件は、標旗を掲げ、その場所にとどまつて演説すること、公営施設以外の施設を使用する場合に限ること、演説会場外における文書図画掲示は、ちようちん一個及び個人演説会告知用ポスター以外は認めないこと、夜間の時間制限等については、屋内において開催する場合を除き、街頭演説と同様に取扱うことであります。右のようにいたしました結果、おのずから婦人会青年会等の集会、映画、演劇等の幕合いまたは会社、工場等の休憩時間等を利用して行う演説についても、前述の条件を具備した場合には自由と相なる次第であります。但し、これは標旗を掲げて戸別訪問禁止に該当する行為を許す趣旨ではありませんので、その旨を法律上明らかにいたしたのであります。  次に録音盤の使用につきましては、個人演説会のほか街頭演説にもこれを認めるごとといたしたのであります。また、街頭演説の際必要な標旗及び証明書のうち、証明書は廃止することといたしました。  次に、選挙運動用船舶を使用して行う街頭演説及び連呼行為につきましては、船舶の運航に従事する船員は、選挙運動に従事する者の制限、すなわち十五人から除外することといたしたのであります。  次に、立会演説会開催当日、その演説会場から三町以内の区域における他の演説会等制限につきましては、立会演説会開催時間中及びその前後二時間の間に限り禁止するように緩和いたしましたが、一方、連呼行為及び演説についても、新たに同様の禁止をすることといたしたのであります。  次に、一つ選挙運動期間がほかの選挙選挙期日にかかる場合におきまして、選挙当日その投票の終るまでの間は、投票所から三町以内の区域におきましては、演説会演説を含む)の開催街頭演説及び連呼行為禁止することといたしました。また、地方公共団体が所有しまたは管理する建物につきましては、現行法では選挙運動のための演説禁止せられでおるのでありますが、このうち公営住宅を除外することといたしたのであります。  次に、衆議院議員の総選挙において、その選挙運動期間政党その他の政治団体政治活動に関して規制してあるのでありますが、これを参議院議員通常選挙にも及ぼすことといたし、右の場合における有資格政党等所属候補者数政談演説会開催回数自動車の台数、ポスター枚数について規定いたしまするとともに、政党等政治活動規制選挙の当日にも行うこととし、なお、候補者所属につきましては、一つの党派に限る旨を明確にいたしたのであります。迫つて政党その他の政治団体の発行する機関新聞紙または機関雑誌に関する制限もまた参議院通常選挙にも及ぼすこととするとともに、これらの報道及び評論は、一般新聞紙及び雑誌に関する法定条件に該当するといなとにかかわらず、すべて本条の要件に該当する機関新聞紙及び機関雑誌おのおの一つに限り認めることといたしたのであります。  改正の第二は、選挙運動に関する収入及び支出に関してでありますが、まず、出納責任者選任及び職務代行者の就任の届出につきましては発信主義を採用することといたし、また職務代行者職務権限出納責任者と同一であることを明確にいたしまするとともに、その違反行為に対しても、出納責任者と同様の罰則を科することといたしました。選挙運動に関する支出金額の算出の基準額につきましては、経済事情に即せしめるために、衆議院議員選挙につきましては、現行四円から五円にこれを引上げ参議院議員選挙につきましては、衆議院議員の引上率に応じて引上げをいたし、これを法定することにいたしました。  なお、選挙運動のための船舶に要する支出は、自動車と同様、選挙運動に関する支出とみなさないことといたしました。  次に、選挙運動に関する実費弁償及び報酬の額の基準につきましては、これを法定することとし、弁当料現行二百四十円を三百円に引上げ労務者基本日額は三百五十円以内、超過勤務手当はその五割以内、弁当を提供したときは、その相当額を差引くことと改めた次第であります。  第三は、選挙犯罪当選無効についてでありますが、いわゆる連座制に関しましては、特に熱心かつ慎重に論議を尽しました結果、免責規定は一応従来のままといたし、新たに出納責任者買収に関する罪を犯し刑に処せられたときも、免責条項に該当しない限り当選人当選を無効とする規定を加えまするとともに、候補者は、選挙運動を総括主宰する者として選挙事務長一人を選任し、これを届け出るものとし、そのほか、事実上選挙運動を総括主宰した者が買収に関する罪を犯し刑に処せられた場合につきましては従来通りとすることといたした次第であります。  その他、罰則につきましては、禁止規定の新設に伴い所要の整理をいたしました。     〔議長退席、副議長着席〕  第四は、選挙管理執行に関してでありますが、まず、候補者選挙の当日には立候補を辞退することはできないものといたし、次に、立候補制限を受けている公務員立候補した場合には、その届出と同時に何らの手続きを要せずして当然に退職したものとみなし、また、兼職禁止の職にある者が当選告知を受けたときは、その告知と同時に当然その職を辞したものとみなすことといたし、その他各般の規定整備を行いますとともに、選挙公営に関する規定改正に伴うところの選挙管理費用につき所要改正を加えたのであります。  最後に、本改正案施行期日につきましては、本年六月一日から施行することといたしましたが、衆議院議員選挙に関しましては、同日前に総選挙の公示がなされたときは、その総選挙からこれを施行し、参議院議員選挙に関しましては、次の通常選挙から施行することといたしたのであります。  以上が本改正案要旨でありますが、その詳細は、お配りしてあります改正案要綱によつて御承知を願いたいと存じます。  何とぞ御賛成あらんことを切望する次第であります。(拍手
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 本案に対しては、三輪壽壯君外五名及び島上善五郎君外二名から成規によりそれぞれ修正案提出されております。順次修正案趣旨弁明を許します。前田種男君     〔前田種男登壇
  14. 前田種男

    前田種男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました公職選挙法の一部を改正する法律案に対しまして修正案趣旨弁明を申し上げます。  今回提出されました選挙法の一部改正原案は、昨年総選挙前大幅なる改正がなされましたにもかかわらず、その運用の面において、なお数点の不備欠陥があつたのでございます。なかんずく、最も重要なる選挙違反防止には、十二分の効果を発揮し得ないという結果を示したのでございます。従いまして、今回本国会におけるところの再度の改正の必要が各界の要望となり、特別委員会の構成となりまして、委員会は、ただいま委員長報告にもございましたように、慎重審議の結果、結論に達したのでございます。この間において、われわれも委員会において忌憚のない意見を申し上げまして、この委員長報告の中には、わが党の意見も十分反映することになつたのでございましたが、なお左に申し上げますところの数点につきましては、はなはだ残念ではございますが、一致することができ得なかつたのでございます。私は、二、三の修正の点をあげまして、この説明にかえる次第でございます。  まず第一に、選挙違反によつて被選挙権停止された者の選挙運動禁止するという点でございます。現行法においては、被選挙権停止中の者は、選挙運動一般とひとしく認められておりますが、そのため身がわりを立てるなどの方法等によつて、実質的には自己の勢力を十分維持することを可能ならしめる結果となり、被選挙権停止する本来の趣旨と実質的には合致しないものがございます。また一方、公務員その他につきましては大幅に選挙運動制限しておきながら、他方、選挙違反者にこれを認めるということは適当ではございません。私は、選挙違反者限つては、一定期間選挙運動禁止するということは当然なことでなくてはならないと思います。(拍手)しかし、選挙違反者といえども、憲法上に認められました参政権たる選挙権を奪うべきではございません。また、認めても何らさしつかえはないというのでございますから、この点も明確にしておきたいと考えます。  次に連座制強化の問題でございますが、この点につきましても、委員長報告にもございましたが、われわれは、買収などについて、出納責任者連座制強化いたしまして、当選人が、選任、監督につき過失なきときは当選無効にならないとして、過失責任主義をとつております。原案もその方針をかえてはおりませんが、そのため、従来多くの選挙違反も、この点で抜け道を与えておるのでございます。しかも、多くの場合、訴訟が遅延するために、当選無効の制度も、判決確定のときにはほとんど任期が経過しておるというのが今日の実情でございます。そのような弊害を避けるために、連座制の結果を早期に確定する必要があり、のみならず、選挙関係には一体となつて動くものでございますから、当選人の無過失にも責任を認めるとともに、二百五十一条第一項の但書を削除すべきことを要求しておるのでございます。  第三には、選挙違反犯罪者が逃亡した場合の公訴の時効を一箇年から二箇年に延長するということでございます。この点につきましては、現に昨年の選挙の結果、いまなお逃亡いたしまして、時効の日を待つておるというような現実の問題すらございます。われわれは、そうした当選議員が不当にその責めをのがれようとするところの道をふさぐ意味におきまして、この選挙の本旨にもとるものでありますから、従つて、この時効を二箇年に延長し、この間の捜査期間を、できるだけ犯罪捜査のために十分の時間的余裕を与えんとする意味で、この修正の点を主張するものでございます。  以上において、わが党修正案要旨を概略的に説明申し上げたのでございますが、なおこのほかに若干規制すべき点もあるのでございます。  本来選挙は、法規によるところのきゆうくつなる制約を与えるよりも、候補者並びに広く一般選挙人の良識に基くところの、違反なき公正なる選挙が実施されることを理想とするものでございます。あれほど公明選挙が叫ばれたのであるが、昨秋の総選挙におけるところの数多くの悪質違反が跡を断たないという現状では、そのために法的規制が実質的に確保され、現在の段階においてはまた規制されることもやむを得ないと思うものでございます。  わが党の修正案趣旨とするところは以上の点でございますが、われわれは、この趣旨によつてこの修正案提案し、この修正部分を除きますところの原案に対しましては、委員会におきましてわれわれの意見がある程度認められた点でございますから、わが党の修正案以外の部分については賛成いたしますが、今申し上げました点、詳細は修正案において明記された点につきまして、わが党の趣旨を弁明する次第であります。皆さんの御賛同をお願い申し上げます。(拍手
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 島上善五郎君。     〔島上善五郎登壇
  16. 島上善五郎

    島上善五郎君 ただいま上程されました公職選挙法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、私は、日本社会党を代表して、その趣旨を弁明せんとするものであります。  わが党の修正案は、これを大別いたしまするならば、二点に要約することができます。すなわち、その第一は、買収饗応等のいわゆる悪質違反を絶滅するために、これらの事犯に対する厳罰、なかんずく連座制強化であります。第二の点は、公明なる選挙、正しい選挙を大いに振興するために、その要件たる政党及び政治団体政策浸透のための活動自由閣達に行わしむべしとする点であります。  まず、第一の点について述べますが、なぜ悪質違反に対して厳罰主義、特に連座制強化しなければならないか。今日までのわが国の選挙は、はなはだ遺憾なことであり、かつ不名誉なことでありますが、買収饗応等悪質違反がきわめて多く、公明選挙のお説教や啓蒙宣伝などの尋常一様の手段では、とうていこの宿弊を矯正し得ないと考えられるからであります。(拍手)勝てば官軍、当選のためには手段を選ばず、政策、政権に対する共鳴の得票よりも、買収得票の方が手取り早いと考えるような不心得な候補者が多いこと、さらに、現に悪質違反の容疑が濃厚なる者が大臣となつておるようなこの不名誉な事実、(拍手)また、選挙ともなれば、札束をふところにして、投票買収を半ば業として、てんとして恥ずることを知らないような、町や村の悪質ボスが依然幅をきかしている現実、さらに、このような金力による腐敗選挙運動に惑わされて、自己のとうとい一票を軽々しく投じて、それが結局自分自分の首を締めるものであることを自覚しない有権者が多いというこの事実、こういうことを考えまするとき、私どもは、理想としては好ましいことではございませんが、さしあたつての対策といたしましては、啓蒙宣伝もさることながら、これら腐敗行為買収饗応などに対して法による厳罰をもつて臨み、特に連座制強化して、買収饗応による投票を無効にするということが最も効果的であると考えるのであります。(拍手)このことは、昨秋の選挙にかんがみて、このたびの選挙法改正に関しまして、全国選挙管理委員会を初めとし、その他の選挙関係者婦人団体言論機関等が、ことごとく悪質違反に対する厳罰連座制強化を要求している事実に徴して明らかでございます。しかるに、今次の公職選挙法改正調査特別委員会においては、自由党の委員諸君を中心とする多数の意見は、この世論の要求に耳を傾けることなく、厳罰連座制を少しも強化しようとせず、一たびは小委員会において全会一致できまつたところまでも、後に至つてくつがえしてしまつたのであります。  われわれは、このような態度をはなはだ遺憾とし、先ほど大村委員長より提案されました原案に対して、次のような改正を要求するものであります。  すなわち、法第二百五十二条(選挙犯罪に因る処刑者に対する選挙権及び被選挙権停止)の規定により選挙権及び被選挙を有しない者は、その期間中、選挙運動をすることができない旨を追加すること、並びに法第二百五十三条、罪の時効に関しては、犯人が逃亡したときに限り、現行一年を二年に改めること、さらに、いわゆる連座制に関連する事項については、法二百五十一条に、選挙運動従事者買収に関する違反を追加し、運動員といえども買収饗応悪質違反によつて処刑されたときは、その違反にかかわる支出当選人または出納責任者から出されたときは当選を無効とするよう連座制強化すること、さらに、もう一点は、現行連座制をまつたくの飾りものとしておるところのいわゆる免責規定、すなわち法二百五十一条一項後段の但書を全的に削除廃止すること、この修正案提出するものであります。  次に、第二の修正点、すなわち、選挙期間中における政党及び政治団体政治活動を自由闊達に行わしむべしとする点について述べます。一体公明選挙、正しい選挙とは、候補者の属する政党及び政治団体政策をあまねく選挙民に浸透せしめ、これに対する理解と支持を得ること、並びに候補者人物識見に対する信頼を得ること、この投票によつて当選することを根本としなければならぬと存じます。このことについては、おそらく何人といえども異論のないところと確信いたします。もしそうであるならば、政策、政見を浸透せしめるための政党及び政治団体活動を、選挙期間中において最大限自由に認むべきものであると存じます。しかるに、現行法においては、衆議院議員候補者二十五名を有する団体であること、街頭演説用トラツク候補者の数によつて等差をつけていること、演説会衆議院選挙区ごとに一回、ポスター一千枚というような制約の中での活動が認められているのであります。われわれは、今次公職選挙法改正にあたつては、この規制自体、特に弊害ありと認められる点を除いては、大幅に緩和すべきものと期待していたのであります。ところが、悪質違反に対する連座制罰則強化に対してはきわめて勇敢に反対した自由党の諸君は、ここではこの規制をさらに強化改悪して、参議院及び今後の衆議院選挙に適用せんと主張し、遂に多数を頼んで今次改正案に盛り込んでしまつたのであります。特に、この際私は遺憾に思いますのは、われわれの友党であり、勤労者の立場に立つているはずの右派社会党が、この改悪を率先主張したことであります。もしこの改正意見に従うならば、一団体参議院選挙の場合十名以上の候補者を出せない小会派及び労働組合、農民組合、婦人団体、商工団体等の選挙期間中の政治活動はまつたく封殺され、大政党のみその自由を独占する結果となることは明瞭であります。実にこれは小会派、新興政党、大衆団体選挙界、政界から抹殺せんとするものであり、民主主義の発展の芽を踏みにじるものと断ぜざるを得ません。(拍手)われわれは、前に述べた通り、政党及び政治団体政策浸透のための活動は最大限自由に認むべきもの、そうして小会派も大衆団体もその自由が均等に認めらるべきものとの見地に立つて原案に対して次の修正を加えんとするものであります。(拍手)すなわち、法二百一条の五、政党その他の政治団体政治活動規制参議院議員の通常の選挙に及ぼす場合について、有資格政党所属候補者数「十人」とあるを「七人」と改めること、並びに「当該所属は、政党その他の政治団体のいずれか一につき、候補者の選択したものによる。」とあるを削除することの修正を強く要求するものであります。  以上、われわれの修正点とその理由の概略を述べたのでありますが、世論の強い要望と注視のうちに行われる今次公職選挙法改正をして、真に改正の名に値するものたらしめ、世論にこたえ、選挙界の腐敗、汚辱を根絶する契機たらしめるよう、わが党の修正案に賛成せられんことを望む次第でございます。(拍手
  17. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 討論の通告があります。順次これを許します。三輪壽壯君。     〔三輪壽壯登壇
  18. 三輪壽壯

    三輪壽壯君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました公職選挙法の一部を改正する法律案に対し、わが党提出修正案に賛成の意を表し、右法律案中これに牴触する部分に反対し、その余の部分に賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)  第十五国会において、公職選挙法改正に関する調査特別委員会が設置されましたが、これは、昨年十月の総選挙の実績に顧み、独立後の日本の選挙のあり方を審議する重要な使命を託され、さらには、国民の公明選挙への重大な関心と切実なる要望に対し厳粛にこたえなければならぬ任務を負わされておるものと信ずるのであります。(拍手)しかるに、右委員会は、それとは別に、差迫つた参議院議員選挙に間に合わすための若干の改正を行う必要に迫られておりましたので、審議の対象はもつぱらこの点に局限せられ、選草制度全般にわたり再検討を行い、独立日本の民主政治の根底をつちかうごとき選挙制度の確立に向つて最初から労力を傾け得なかつたことは、私どもとしては遺憾にたえないところであります。(拍手)  すなわち、第一は選挙の根本観念の確立について、第二は衆議院議員選挙区制について、これを現行法の通りに中選挙区にするか、あるいは小選挙区にすべきか、あるいはまた大選挙区比例代表制のごときものを採用するかという問題について、第三には、よく言われまする金のかからぬ選挙を実現するためには、選挙運動方法選挙費用の審査、選挙公営の拡充、選挙罰則整備等を総合的にあんばいする要があるのでありますが、それらの問題について、さらに第四には、いわゆる連座制強化の問題について、すなわち、これらの諸点については、それぞれあらゆる角度から検討を加え、慎重審議せられなければならなかつたのでありますが、さきに述べましたような理由で、今日まで、あるものは全然これに触れることなく、またあるものは十分審議を尽すいとまなく、これらすべてを後日に持ち越すことになつたのであります。昨今の険悪なる政治情勢からいたしますならば、これらの諸問題を真剣に討議するいとまがなく、流されて行くのではあるまいかと懸念せざるる得ないのであります。もしそうだといたしますと、国民は失望するばかりでなく、国民は国会の怠慢を非難するのではなかろうかと懸念するのでございます。(拍手公明選挙の声が高まつた過般の選挙におきましてすら、あのようなおびただしい選挙違反を出したことについては、それに関して直接の責任を負うと負わざるとにかかわらず、私ども議員といたしましては、その事実を直視し、その原因を究明し、立法的手段によつてこれを将来に正して行く責任を回避してはなりません。(拍手)それとともに、公明選挙実現のために積極的具体的努力を払つて、わが国の選挙にまつわる悪質選挙違反を一掃しなければならないものと存じます。(拍手)  委員会提出改正法律案には種々不満な点がありますが、わが党としては、委員会審議の経過を尊置いたしまして、その大部分は大乗的見地に立つて賛成いたしました。ただ、わが党としては、いわゆる連座制強化ほか二、三点につきましては賛同しがたいものがありますので、これに対する修正案提出するのやむなきに至つた次第でございます。  連座制と俗に呼ばれておりますものは、御承知の通り、選挙運動の中心人物である選挙運動の総括主宰者が買収事犯によつて罪となりました場合には当選人当選を無効にするという制度であります。これは公職選挙法第二百五十一条の規定するところであります。しかし、この規定には大きな抜け穴があるのでありまして、選挙運動の総括主宰者が買収犯で処刑せられた場合でも、もし当選人が総括主宰者の選任及び監督につき相当の注意をしたときは無効とならないということになつています。自己の当落の運命を託する総括主宰者を選ぶにつき、さらに監督するについては相当の注意を払う。すなわち、判例にいうところの社会通念に従つて、客観的に相当な知識、経験及び誠意を有するものと認むる者の普通に用うる程度の注意を払うことは当然でありまして、それを払つたから責任を免れて当選が有効になるということでは、この連座規定は、あつてもなきにひとしきものでありまして、空文と化してしまつておるのでございます。さらにまた、総括主宰者に違反があつても、当選人が、その総括主宰者があるということを知らぬということを主張して、これを証明いたしました場合、または、ある人が選挙運動の総括主宰をするということを制止した、ところがその制止に従わないでやつたということを証明した場合には、その責任を免除するということになつておるのであります。免れようとするほどの人でありまするならば、こんな証明をするということは、まことに易々たることであるのでございます。かような免責規定があるために、連座規定は骨抜きとなり、死文と化し、いまだかつて選挙法第二百五十一条によりましてその当選を失つた人がないというような実例を見ます場合に、その本質を知ることができると思うのであります。われわれは、右に述べました理由からいたしまして、免責規定を削ることとして、出納責任者も総括主宰者と同様に扱うことといたしたのであります。  連座制に反対する人は、連座制は罪なき人を罪に陥れるものであり、封建的な制度であり、不合理であり、苛酷であるということを主張いたします。しかし、連座制と通俗に呼ばれておりまするものは、何も違反者を処刑するとともに、当選人を巻添えにしてこれを処刑するということではありません。選挙運動というものの特殊性にかんがみまして、不正腐敗の選挙運動によつて当選した者の当選を認めないことは、一種の制裁であるのであります。選挙運動は議員候補者を中心とする集団行為でありますが、その集団の中に腐敗行為があつた場合、すべて当選を無効にするというのでは無理でありますけれども、その集団行為の中心人物に買収違反というような不正腐敗の行為があつた場合、その当選を無効にするということは当然のことでありまして、これをルールにきめないことは間違いであると思うのであります。(拍手)  私はまた選挙運動の体験者の中から聞くのでありまするが、選挙に勝とうとする一念から、スパイ的手段を用いて、相手方を抱き落そうとする不心得な者が現われて、この連座規定を悪用するおそれがある、こういうことを強調いたしまして、免責規定を削除することに反対する人があるのであります。この危険性は皆無ではございますまい。しかし、これは、候補者連座制がどんなものであるかということを十分に心得て、それ相当の注意を払うということでありまするならば、当然に避けられることであります。またかりに裁判になつたような場合におきましても、スパイ行為であり、陥れんがための行為であるということを立証すれば、さようなものは、ここにいわゆる総括主宰者でないということに判定されるでありましよう。要するに、総括主宰者だとか出納責任者だという立場に立つ中心人物は、本来候補者一体となつて誠実にその任務を行わなければならぬ人であり、もしそうした人に不正腐敗の行為がありまするならば、当選してもその当選をだめにするという、そういうような重要な人であるといたしまするならば、選挙運動関係者にかようなことがもし周知徹底させられるということになりますならば、候補者自分の全幅の信頼をかけ得る人を選ぶでございましよう。また選ばれました者も、その重い責任を感じまして行動するでございましよう。かくて、選挙運動のもとが正されて、悪質選挙違反はその跡を断つに至るのであろうと思うのであります。これにつき、イギリスにおける一八八三年の「腐敗及び不正行為防止法」というものがありますが、この法律の制定によりまして、イギリスにおきましての選挙違反買収違反がその跡を断つたというこの事実を、われわれは他山の石として取入れなければならないと思うのであります。私は、以上述べました理由により、法第二百五十一条に関する修正案に賛成の意を表する次第であります。  連座制強化に関する修正案のほかに、わが党の修正案といたしましては、選挙犯罪による処刑者に対し、従来選挙権被選挙権停止いたしましたものを、憲法第十五条の趣旨に基き、被選挙権のみを停止することといたして、選挙権はこれを停止しないということにいたしたのでございます。次に、被選挙権停止期間中は一切の選挙運動をしてはならないということにいたしまして、これに対する罰則を置いたこと。第三には、選挙犯罪の犯人が逃亡した場合の時効期間の一年を二年に延長することとしたこと等があげられるのでありまするが、これについては、すでに同僚前田君から趣旨弁明がありましたので、私はこれについて賛言を加えないのでございます。  最後に、公職選挙法に関連して、一言議員各位に御注意を喚起したいと思うのであります。われわれ国会議員としては、わが国の民主政治の確立、議会政治の正しい発展のために最善の努力を尽すべきことは言うをまたないところであります。これがためには、国会の運営よろしきを得、選挙が公正公明に行われなければならないこともまた、あらためて申し上げる要がないと思うのであります。もしこれに失敗いたしますならば、民主政治にかわり、左右いずれかの全体主義的独裁政治が出現するに相違ないと思うのでございます。(拍手国会の運営につきましては、昨今世論のきびしい批判にかんがみまして、政党として、議員として、深く反省しなければならないと思うのであります。それとともに、選挙につきましても、選挙法改正もさることながら、選挙の腐敗を除くことについては、議員なり政党なりがもつともつと積極的努力を傾けなければならないと思うのであります。(拍手)この点、私は、はなはだ遺憾でございますが、消極的、無関心なきらいがあるということを感ぜざるを得ないのであります。政府にしても同様でございます。たとえば、岡崎外務大臣の用納責任者は、買収違反を犯して逃亡いたしまして、いまだにその所在が知れない状態であります。(拍手)すなわち、さきに申しました連座制の精神は完全に踏みにじられておるのであります。さような場合、岡崎君といたしましては、おくめんもなく国務大臣の地位にとどまつておることは許されないはずでございます。(拍手)また、道義の高揚を看板とする吉田内閣にいたしましても、これを看過するということは、まことに筋の通らない話であると思うのであります。(拍手)しかるに、これを当然のこととして是認しておるのであります。かくては、道義の高揚、公明選挙ということも、政府みずからこれを唱えて、みずからこれを踏みにじるものでありまして、そういう範を国民に示したということでは、国民はついては行けないと思うのでございます。国民の正しい批判をいれ、国民のその批判を十分聞くところの誠意と雅量がない場合におきましては、私は民主政治というものは発達するものではないと思うのでございます。かような意味で、吉田内閣の選挙に関する考え方なり態度なりに対しまして、根本的な是正を要求してやみません。また、政党にいたしましても、議員にいたしましても、選挙の公明化のために、もつともつと真剣な努力を傾け、熱意を持つてこれに当らなければならないのではなかろうかと思うのであります。これらの点につきましては、党派を超越して、お互いに協力いたさなければならないものと信じて疑わない次第であります。  私は、公職選挙法の一部を改正するこの法律案審議にあたりまして、わが党の修正案に賛成の意見を述べ、以上の意見を附加いたしまして、私の討論を終る次第でございます。(拍手
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 森三樹二君。     〔森三樹二君登壇
  20. 森三樹二

    ○森三樹二君 ただいま議題となりました公職選挙法改正案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして、わが党島上善五郎君外二名より提出修正案に賛成し、この修正案に抵触する部分を除きましては原案に賛成の意を表するものであります。  選挙法改正の問題は、前国会におきまして討議せられ、改正せられて参つておるのでありますが、今国会におきましても、来る参議院選挙並びに将来行わるべき衆議院選挙を対象といたしまして、正しい日本の政治を確立するために、われわれ委員は前後一二回にわたりまして真剣なる論議を闘わしたのでございます。その結論を得まして、各派討論採決が行われ、本日、本会議に上程されるに至つたのでありますが、この経過を見ますると、今回の改正案は、昨年十月一日に施行されました総選挙の実態にかんがみまして、われわれの体験いたしましたところの矛盾を是正し、公明選挙を確立せんとするものであります。われわれといたしましても、自動車証明書あるいはトラツク使用に対する警察の許可証、こうしたものの小さな手続等の廃止、あるいはまたポスター、はがきの枚数の増加等をいたしまして、公営選挙趣旨を徹底し、選挙に多額の金銭が用いられないように努力をしたのでございます。  最も選挙を毒するものは、悪質なる買収に使われるところの多額の金銭でありまして、私どもは、法定費用の問題につきましても、できる限り選挙費用を制限する意味におきまして従来一人当りの計算を四円とすることになつておりますが、これを五円とすることにいたしたのであります。これに対しましては、自由党及び改進党の委員の諸君より、これを二倍あるいは三倍に増額することを強く主張されましたが、私どもは、毎回の選挙を見まするに、金のある候補者が大きな違反を起しておるという事実を見のがすことができないのであります。(拍手)私どもは、この本会議の議場を通じまして、岡崎外務大臣の出納責任者違反を起したということは、何回となく聞いたのであります。しかしながら、この要求そのものは、いわゆる選挙違反を起しましたところの出納責任者を持つ国務大臣の地位に対しまして、国民大衆のきびしい批判の声がこの議場にあふれておるものと言わなければならぬと思うのであります。(拍手)私どもは、先ほどわが党の島上善五郎君から提案理由説明がございましたこの修正案に対しましては、これを絶対に譲歩することができない。これだけはぜひ修正したいということを皆様方にお訴えする次第でございます。  その第一といたしましては、連座制強化でありまして、従来は、総括主宰者の買収饗応違反に対してのみ候補者は連座の制裁を受けたのでありますが、諸君も御承知の通り、選挙候補者あるいは総括主宰者並びに出納責任者の逃亡している者は実に枚挙にいとまがないのでありまして、短かい期間逃亡しておれば追究を免れ、起訴されないという考えを持つて、こうした多数の逃亡者が現われたものと考えるのであります。われわれといたしましては、公明選挙を汚し、政治の明朗性を破壊する、かかる逃亡者に対しましては、まことに遺憾しごくでありまして、これらの者に対しましては、どうしても連座制強化しなければならぬと考えておる次第でございます。実際上において、何人が総括主宰者であり、また出納責任者であるかという問題につきましても、事実上金銭を取扱つておる者が多数隠されておりまして、ロボツトが表面に現われておるというような事実が、先般の総選挙においても多数現われておるのであります。私は、ここに法の盲点があると言わなければならないと考えております。従いまして、総括主宰者ばかりでなく、出納責任者並びに選挙運動員が、候補者と意思を通じて買収饗応等悪質違反を犯しました場合には、候補者も当然に連座せしめまして、その当選を無効にすることは絶対に必要であると考えるものでございます。(拍手)かくせざれば、選挙の公明はとうてい実現せられないのでありまして、従来のやり方といたしましては、候補者が、出納責任者選任にあたりまして、内容証明郵便その他によりまして、その選任、監督に過失がなかつたというような手続をあらかじめいたしておきまして、選挙違反が摘発せられました場合には、その書類をもつて自己責任を免れているというのが実情でございます。従いまして、従来の連座規定は、かような手続によりまして、まつたく空文と化しているのであります。従いまして、こうした免責規定そのものを廃止しなければ、選挙の粛正は絶対にできない。かかる立場に基きまして、私どもは免責規定の廃止を強く主張し、これに賛意を表するものでございます。(拍手)  第二に、選挙違反により選挙権並びに被選挙権停止された者が選挙運動に従事するということは、私どもの考えといたしましては、その違反者の反省がなされないのみならず、その違反者の責任をまつたく無視したものでありまして、これはとうてい容認することができないのであります。従いまして、私どもは、その違反者に対しまして、謹慎と責任を果させる意味におきましても、これらの人々が選挙運動に従事することを禁止すべきであると考える次第でございます。  第三に、選挙違反の罪の時効に関してでございますが、犯人が逃亡いたしました場合には、現行法では一年の時効になつております。これは、私どもといたしましては、短かきに過ぎると思う。金のある候補者あるいは選挙運動員でありますならば、一年くらいの期間は逃亡を続けることができるのでありまして、これでは罪の時効の目的を達成することができないのでありまして、この点に関しまして、われわれは二年ということを主張し、この二年につきましても、委員会、小委員会におきましては、一度全会一致できまつたのでございます。しかるにかかわらず、自由党の諸君の多数をもちまして、二年ときまりましたものを、また逆行せしめまして、原案を一年ということにされたのでありますが、私どもは、やはり、各委員諸君のお考えになりましたところの最初の二年という考えは、われわれ議員の真意を端的に委員会に表明したものと考えまして、わが党といたしましては、この罪の時効に関しましては二年ということを強く主張するものでありまして、諸君の御賛成を賜わりたいと思うのでございます。  第四番目といたしましては、政党並びに政治団体政治活動に関してでございますが、私どもといたしましては、民主的な農業団体、労働団体あるいは婦人、青年等の団体に対しまして、できる限り正しい政治運動に参加せしめる機会を与えるべきであると考えておる次第でございます。(拍手原案によりますと、「政党その他の政治団体のいずれか一につき、候補者の選択したものによる。」とありまして、これでは、単独で候補者を出せない小政党及び民主的な大衆団体は一切政治活動を封ぜられてしまう状態であります。御承知のごとく、衆議院選挙につきましては二十五名以上、参議院選挙につきましては十名以上の候補者を擁さなければ政治活動ができないということになりましては、私どもは、民主政治確立のために、かような制限はとうてい是認することはできないのであります。かような状態では、日本の民主主義政治を危殆に陥れるものと言わなければなりません。(拍手)私どもは、小政党や大衆団体政治活動をかように禁止することに対し強く反対し、われわれの修正案に御賛成を賜わりたいと思うのでございます。われわれは、かような意味からいたしまして、大政党にこうしたところの政治活動を許すならば、機会均等を主張いたしまして、小政党にも当然これらの機会を与えなければならない、かように考えるのでありまして、特にこうしたところの政治活動は、政策宣伝の活動でありますから、何らの弊害がないのでありまして、昨年の総選挙の際に行われましたこの政治団体活動実情を見まして、私どもは、私どもの主張が正当であると考えておる次第でございます。(拍手)よつて、われわれは、いかなる政党並びに政治団体活動をも当然認めるべきであると考えるのであります。  私は、以上の理由に基く島上君外二名の修正案に対し賛成し、これに抵触する部分を除きましては原案に賛成をいたすものでございます。(拍手
  21. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず、三輪壽壯君外五名提出修正案につき採決いたします。三輪壽壯君外三名提出修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  22. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立少数。よつて三輪壽壯君外五名提出修正案は否決せられました。  次に、島上善五郎君外二名提出修正案につき採決いたします。同案中第二百五十三条第三項但書修正は、三輪壽壯君外五名提出修正案と同一でありますから、この同一部分を除きます。同修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立少数。よつて島上善五郎君外二名提出修正案は否決せられました。  次に、本案につき採決いたします本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  24. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案原案の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  25. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明に対する質疑に入ります。内田常雄君。     〔内田常雄君登壇
  26. 内田常雄

    ○内田常雄君 私は、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律、すなわち、いわゆる独占禁止法の一部を改正する法律案につきまして、自由党を代表して、国民各層の正しい理解のために、政府に対して若干の質問を試みんとするものであります。  現行の独占禁止法が、終戦後の特殊の環境のもとにおきまして、占領政策の一環として制定された法律一つでありますことは、私どもの記憶に新たなるところでありまして、私は、この法律の目的とするところが、一面におきましては、日本経済の民主化、あるいはまた公正なる自由競争の促進による日本種済の再建という崇高な理想に出発するものであつたことを否定するものではありません。しかしながら、他の一画におきまして、この法律が幾多の優秀なる企業の分割と弱体化を企図しましたところの、あの過度経済力集中排除に関する法律と相並びまして、占領下における日本経済の支配法として特殊の目的を持つものであつたことは、いなめないと思うものであります。このことは、現行の独古禁止法が、米国における立法を除いては、世界のどこにもその類型を見出すことのできないものであつて、一九四八年、労働党内閣のもとに制定されて今日に及んでおりますところの英国の独占及び取引制限取締法でさえもが、わが国現行の独占禁止法の足元にも寄れぬ程度のゆるやかなものであること、また最近連合諸国からその立法を勧告されておりますところの西ドイツの競争制限防止法案が、ちようど今回ここに提案を見ておりまする独占禁止法の改正案と大体似通つた程度のものであることを考えますときに、わが国現行の独占禁止法なるものにつきまして、思いを新たにさせられるものがあるのであります。  わが国の独占禁止法の手本となりました米国のシャーマン法、あるいはまたクレートン法などの反トラスト法が、米国のような爛熟した、かつ超大企業の櫛比する資本主義国におきまして、しかも歴史的には、石油企業における強大なるトラスト化の弊害を防止せんとして立案されたものでありますことを考えますときに、これをそのまま焼き直して、敗戦後の、底の浅い、脆弱なわが国経済に適用せんとしたところに、初めかち無理があるのであります。それゆえに、この法律を、日本経済の実情に即して改正、緩和するということは、本法制定当初から各界からの熾烈な要望のあつたところでありまして、本法と同趣旨のもとに立つところの事業者団体改正の要望と相並びまして、これまで数度に及んで改正の機運が動いたこともあつたのでありまするが、遂に独立後の今日まで持ち越されて、先般の第十三国会においても問題となりましたことば御承知の通りであります。従つて、この法律の緩和、改正ということについては、世論もすでに一般化いたしており、何人といえども、改正そのものについては異論はないのでありますが、ただ、この法律が、いわば経済憲法として経済取引社会全般の根底を律するものでありますがゆえに、今回の改正にあたつての政府の基本的態度、その改正のあり方、あるいはまた改正後の運用方針などにつきまして、各方面から異常な胆心を寄せられており、また誤解と不安をも持たれているのであります。私は、このような見地から、この法律改正案において最も問題の多いと思われる基本点についてだけ、ここに政府の正しい見解をお尋ねいたしておきたいのであります。  まづ第一の問題は、事業者の共同行為、すなわち、いわゆるカルテル容認の問題であります。カルテル容認の条項は一今回の改正案における主眼点でありまして、従つてまた最も多く見解のわかれるところであります。この法律の今回の改正案におきまして、一定制約条件のもとにおいてではありますけれども、カルテル認容の道を開いたことは、日本経済の現状に即して、国民経済全体の強化という立場から考えますときに、私どもは総体的には妥当と考えるのであります。底の浅い日本経済の現状におきまして、一たび特定の事業分野が不況に陥り、需給の均衡を失して、事業の継続が困難となりました場合におきまして、企業が共同してこれを防衛することを絶対的に禁止するといたしますならば、その影響するところは、単にその事業分野にとどまることなく、これに連なります関連産業、中小企業にも波及して、国民経済、国民生活全体の運営に著しい混乱を来しますことは、理解するにかたくないのであります。しかしながら、その反面におきまして、重要産業の分野におけるカルテル行為が濫用されますといたしますならば、中小企業者、農民その他一般消費者大衆の利益を不当に圧迫するものでありますこともまた見やすい道理であります。今回の独占禁止法に対する不安の第一は、このカルテル認容に対する考え方いかんにかかるものであります。政府は、この改正案におきまして、そもそも生産業者の利益を重しとして考えるものであるか、はたまた一般消費大衆の利益を重しと考えるものであるか、この相対する利害をいかに調整せんとしておるものであるか、そのよつて立つ考え方をここに明らかにせられたいのであります。  第二の問題は、国際競争力とカルテルの問題であります。外国貿易に対する依存度の強いわが国におきまして、特に最近わが国商品の国際的割高が問題となつておりまする際に、安易なるカルテルの容認は、企業合理化の努力を停滞させ、従つてまた国際競争力を弱化して、輸出能力を一層減退させる結果をも憂えられる場合があるのであります。もしこのようなおそれを現実に招来することがありまするならば、カルテルの容認は、かえつて日本経済の弱体化をも招来する結果を来すと思われるのであります。さらにまた、このような事態のもとに、ある企業の集団が能率的な操業を維持するために、国内市場に対しましては供給制限ないしは価格協定による独占価格を維持しながら、海外市場に向つてはコスト割れのダンピングを行うというようなカルテル方式が認められるごときことがありまするならば、これは国内的にも国際的にも重大な摩擦を生ずることは明らかであります。カルテル容認の結果、このような心配は起り得ないか、この点について、政府の正しい見解と、カルテル認可に関する今後の方針を明らかにせられたいのであります。  なおまた、この点に関連いたしまして、去る二月二十四日に、硫安工業協会が春肥に対する建値を発表したのであります。このことが、昨年来の肥料のいはゆる出血輸出の問題と関連いたしまして、農民の不安と不満を来しておることは、これは政府においてもすでに御承知の通りであり、国会内の各委員会においても論議されておるのでありますが、このような肥料メーカーの実質的なカルテル化の傾向に対して、誤解のないように、この機会にあわせて政府の処置方針を承りたいのであります。  第三に伺いたいことは、独占禁止法の改正に対する特別法改正の問題であります。今回独占禁止法の改正によつて、基幹産業のカルテル結成が、条件付とはいえ認められることになります以上、これに対応する意味におきましても、中小企業の共同防衛対策として、特定中小企業の安定に関する臨時措置法、すなわち、去る十三国会においてわれわれ議員が立案制定いたしましたいわゆる中小企業安定法の適用範囲の拡張なり、またこの法律によつて設けられまする調整組合の機能の強化拡充を認めることは、私は当然の措置と考えるのであります。この点に中小企業者の希望がかかつているのであります。われわれ自由党の所属議員は、右の見地におきまして、この中小企業の安定に関する臨時措置法の改正法律案を今回提出いたしておりますが、この機会におきまして、この問題についても政府の意向をあわせ承知いたしたいと存じます。  最後にお伺いいたしたいことは、この改正案と国際的反響の問題であります。前来述べて参りましたように、私どもは、この改正案は独立後のわが国経済の特質と実態に照して最小限度の必要なる改正であると存ずるものでありまして、英独等の同種の法規に比較いたしましても、決して行き過ぎの非難あるべきものとは思わないのでありますけれども、敗戦後のわが国経済の自立再建が国際的信頼にまつところきわめて大きい今日、この改正趣旨を誤解なく民主主義友好諸国に理解せしめることが必要であることは申すまでもありません。ことに、米国初め各国との間におきまして、通商航海条約、貿易協定、さらにまたガツト加入の問題などが懸案中でありまする今日、この独禁法並びに別に政府の提案にかかる輸出取引法の改正の企図が国際信用にいささかも影響するところなしと思料せられるかどうか、政府の見解並びにその用意を承つておきたいと考えるものであります。  以上、私は、政府の提案にかかる独占禁止法の改正案そのものにつきまして、基本的事項をお尋ねいたしたものでありまするが、なおお尋ねした事項以外にわたり、事業会社及び金融会社における株式の取得、役員の兼任、合併の制限など、いわゆるトラストに対する予防的規定の緩和、さらにはまた事業者団体法の廃止統合などを含みますところの今回の改正案の構想は、今日の日本経済の実情において、私はおおむね妥当なものと考えるものでありますけれども、ただ、この法律案は、その法文の構成におきましても、用語におきましても難渋なものが多いのとともに、実際の適用についての態様が、必ずしもあらかじめ明確でない場合が多いのでありまして、そのために、一般には十分な理解が困難のままに、いたずらに不安が持たれるおそれもあるのでありますから、以上お尋ねいたしました基本的な諸点につきましては、政府において十分明らかにせられんことを希望いたすものであります。  もしそれ本改正案に対する一部の反対理由として、わが国経済の実情を鮮視し、徹底的なる自由競争原理を謳歌して、企業の共同行為をすべて否認し、需給の不均衡と不況現象の発生を放任することをもつて価格変動作用を通ずる経済の自動的調整過程なりとするがごとき意見があるといたしますならば、これこそわが国経済の特質と実態を知らない小児病的観念論でありまして、わが国の現状においては、消費者は同時に生産者であり、大企業も中小企業も相互に密接に関連して、一つの事業分野における不況の深刻化は、ただちに次の事業分野における不況の発生を招来し、カルテル行為の全面的否定の結果は、とどまるところを知らない破滅的競争を招来して、社会経済の全分野を麻痺せしめるに至るおそれのあることを知らない所論であると私は信ずるものであります。また、このような考え方とはまさに正反対の立場におきまして、独占禁止法の改正にあたつては、カルテルを無条件に容認することとして、その弊害を現実に生じた場合においてのみこれを規制すれば足るべしとする考え方も一部には見受けられ、さらに進んでは、カルテルを容認する以上は、アウトサイダーに対する強制力をも認めるように本法の改正を企図すべきであると主張するものもあるのでありますが、私は、今日の場合、かかる二つの極端なる見解に左袒することはできないものであります。これらの二つの見解に対する政府の考え方をあわせて承ることができますならば幸甚であります。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  27. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  本法を出しましたのは、最近の内外の経済情勢にかんがみまして、民間の企業が自主的協力によつて不況に対処する道を開き、進んでは産業合理化のための企業の共同を認めんとするものでございまして、従つて、国民大衆の生活の安定のためにも、輸出増進のためにも心要な措置であると考えておるのでございます。さつき内田さんが言われた通り、日本のごとき、世界で最も行き過ぎた、こういう立法を持つておるところはございません。従いまして、これをまず世界並にする——まだこれでもイギリスあたりよりははるかに進んでおるのでありまするが、そういうことが主眼となつております。もしこれを放任しますと、業界共倒れの結果として、不況期などには反動的に物価の値上りを招来いたしまして、その結果非常なる財界の混乱等を来しますので、こういつた立法を必要とする次第でございます。  また、最近の貿易状況にかんがみまして、輸出を増進するのには、国際的に競争可能な水準価格を安定せしむることが最も必要なのでございますが、これが自由になつている結果、業者が共同のできない結果として、お互いに競争をやつてしまつて濫売等の弊に陥る、そうして輸出を阻害する等のことがございますので、今回は輸出面に対してそれぞれ共同行為をとり得ることにいたしたのであります。  また、このカルテルのねらいどころは、申すまでもなく、産業の合理化と不況対策でありまして、これによつて価格の引下げということが考え得られるのでございますから、大衆消費者の利益に合致して輸出増進に寄与することは申すまでもございませんが、なおカルテルの協定は事前に許可する、こういうことになつておりますので、御懸念のようなことはないと存じます。  また肥料部門についてのお話でございましたが、これは不況または合理化のためのカルテルが結成される場合におきましても、広く関係方面の意見を徴しまして、農民との利害関係の調整に十分な注意を払うことは申すまでもなく、従つて、誤解のあるようなことは万ないと存じます。  さらに、国外への反響、ガツトあるいは通商航海条約等への加入のお話でございましたが、これは、日本のこの種の改正でも、なお西ヨーロツパ諸国よりも進んでいるくらいでございますので、いわばすこぶる穏健なる改正でありまして、国際的に悪影響を及ぼすようなことは万ないと存じます。  さらに、中小企業安定法の改正法案が今回議員立法として提出に相なつておりまするが、これも調整組合活動の活発化等がねらいになつておりまして、これは独禁法改正の結果当然であると考えているのであります。  なおアウト・サイダーの取扱いにつきましては、今後の経済情勢の推移を注視いたしまして、本法案の運用条項を勘案した上で態度をきめたいと存じております。(拍手
  28. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 生悦住貞太郎君。     〔生悦住貞太郎君登壇
  29. 生悦住貞太郎

    ○生悦住貞太郎君 去る二月二十六日本院に提出されました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対し、改進党を代表いたしまして、以下数点にわたり質問を行いたいと思います。(拍手)  占領政策の是正という政府の大方等は、今度の特別国会冒頭における吉田総理の施政演説によつて明らかにせられたところであります。この一連の施策は、民主日本の前途にいやしくも禍根を残すがごとき方法によつてなされてはならぬことは申すまでもありません。(拍手)今回の独禁法の改正のごときは、商法、会社法とともに、いわげ経済界の刑法ともいうべき基本法であります。一般社会人は、刑法の規定からして、ただちに強盗、窃盗、殺人に対する法の取締りがどの程度のものであるかは、常識的にこれを知つているのであります。しかるに、経済人が本法案の諸点を一瞥して、ただちに自分のものにするためには、実に多くの時間と註釈とを要すると思うのであります。何というむずかしい法律でありましようか。(拍手)これは、法案の整理を急いだ政府のずさんさによるのはもちろんでありますが、英文直訳の本質がその中核をなしているからであります。(拍手)  まず現行法を見て感ずることは、独禁法そのものに対する考え方に、ある種の疑問を持つものであります。すなわち、ここに示されている競争を制限する行為や、私的独占のもたらすその結果が、国民経済的に見てプラスになるかマイナスになるか、そういうことを一切考慮せずして、この行為すべてが社会悪なりとして頭から否定しているのであります。この種の法律が、これほどまでに強い拘束力を持つている傾向は、先ほど通産大臣が自分で言つておりますように、世界中でアメリカを除いては日本にのみ存在している奇現象であります。(拍手)資本主義経済が高度に発展し、爛熟期が過ぎたアメリカとしては、この欠点を是正するために絶対必要であろう。さらに広い国内市場と豊富な資源を持つこのアメリカと、日本のような資源に乏しく国土の狭い、そうして人口の多い、経済の底の浅いところとは比較にならぬのでありまして、このきわめて不安定な経済状態から脱却しようとするためには、この行き過ぎを是正するのが当然でありまして、特に慎重考慮を払うべきであると私は思うのであります。(拍手)むろん、企業の結合が、その力の濫用に陥つて、公共の利益や社会の福祉に反する場合には、産業利己主義を是正する取締りの要あることは論をまたないのであります。といつて、企業の濫立と過剰生産に伴う不況の深刻化がさらに拍車をかけて、業者間の過度の競争による不当の買いあさりや売りくずしが共倒れの危険性をはらんでいる現状では、貿易振興政策の見地からしても、また産業基盤を強化する自助策といたしましても、この程度の改正は当然過ぎるほど当然と思うのであります。(拍手)  さて、緒方官房長官の先日の本会議における提案理由説明は大体この線に沿つたものでありましたが、われわれは、この法律改正することに対しては、以上の諸点よりいたしまして、大体異議のないところであります。ただ問題は、改め方のいかんによると思うのであります。私が本案の欠点として指摘いたしたいのは、いまだに平面の上に立つた改正が行われ、立体的にはこれが行われていないことであります。すなわち、どう改めるべきかについてイデオロギー論に終始したり、現行法の一部を改正するくらいの程度であつて、いたずらに占領下の法令を固執した残滓が残つているのであります。  一体、吉田内閣はどこへ船をつけようとしているのであるか。由来、経済政策の一貫性を欠いて来た現政府に、何ら定見があるとは決して思つていない。(拍手)また十分な期待も持つておりません。しかし、この際カルテルの規制については、公共の利益という点を主眼に置いて、現行のごとく、独占や競争制限行為それ自身を取締るものであつてはならないので、あくまでも、この行為が公共の制益に反するかどうか、こういうことをもつて取締りの対象とすべきであると思うのであります。むろん、公共の利益は、単に消費者の利益だけでなくて、国民経済全般の利益でなくてはならぬと思うが、この点いかに考えておられるか、緒方官房長官の所見をただしたいと思うのであります。  次に問題とするのは、独禁法改正の閣議決定に至るまでの経緯についてでありますが、この点、通産大臣並びに公取委員長よりその見解をそれぞれ表明されたいと思うのであります。今回の改正案は、むしろ政府に対して私は独禁法を適用したいと思うほどであります。実際、各省から利害対立するそれぞれの案が提出され、それがために、一時は未調整のままで閣議に持ち込まれるのではないかと、実は陰ながら心配いたしました。内にあつては、深刻なる党内抗争と、予算審議にからんでのエラー続出に悩んだ政府が、重要法案の山積と、会期の切迫に苦悶を続けつつ、没落への道をフル・スピードで急いでおるこの惨状は、まことに御同情にたえない次第であります。さて、閣議決定に至る経緯において最も意見の対立した点は、認可権の所在であつたと思うのであります。私がすでに申すまでもなく、自分の方でカルテルの認可権を持つと主張した公取委の案と、通産省側の、カルテルの認可は主務大臣が公取委の同意を得て行うという意見は、当初の問題点を示すものであつたわけでありますが、これは明らかに官庁間のセクシヨナリズムを遺憾なく暴露したものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)これが結局、二十日の閣議において、認可は主務大臣が公取委の認定を得て行うということになつたのであります。いわば、苦しまぎれの妥協である。品のよい新聞は、職能の筋を通しておちついたとこれを報じておりましたが、私はカルテル変じてカクテルとなると言いたいところであります。これを要するに、この点は、あくまでもセクシヨナリズムから来た手続上の妥協であつて、いまだに完全に一致したものではないと思うのでありますが、この点、両者の偽らざる御意見を承りたいのであります。  さて、次に今回の改正案によつて、どんな行為禁止され、どんな行為が許されるかというような細部にわたる問題は委員会に譲るとして、きわめて重要な点のみをこの機会に明らかにしておきたいと思うのであります。私は、この問題はあくまでも経済の実情に応じて行くことが大切であると思うが、つぶさに法案を検討するとき、特に注目しなければならない点は、第六章にあります適用除外の件であろうと思うのであります。  まず不況カルテルについてでありますが、この法案では、事業者の相当部分の事業が経営困難となるおそれがある場合に、事業者は生産、販売または設備の制限に関して共同行為をすることが許されている。このうち、生産、販売はともかくとして、設備の制限をこのような不況時のみに限ることは、はなはだしく経済の実情に沿わないものと思うのであります。いやしくも設備の新設や拡張は、ことに近代的な設備においては、着工してから二年も三年もかかるのが常識であります。そこで、設備の二重投資等の濫立を防ぐためには、どうしても不況になつてからではおそいのであります。手遅れとなるのであります。これはすべからく平時から許さなければなりません。従つて、設備の制限は、不況カルテルから除いて、合理化カルテルの方へ入れなければならないと思うが、この点、通産大臣の考え方をお伺いしたいと思うのであります。  なおこの際あわせてお尋ねいたしておきたいことは、第二十四条中に「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」とうたつている点であります。この場合、商品の価格が平均生産費を下まわるというが、自由経済のもとで、その算定を行うことは無理であると思う。この点、通産大臣はどう考えておられるか。しかも、その平均生産費を下まわるとあるが、加重平均と算術平均とでは、平均生産費もたいへん異なるのであります。ここでいう平均とは何を意味し、どこにその基準を求めるのでありますか、その裏づけをお伺いいたしたいのであります。  また、それに付随して、能率の低い会社と能率の高い会社とは当然そこに差別が生じ、その結果は中小企業を圧迫することになるのではないか、この点、政府はどう考えているのであるか。これは通産大臣から答弁を願いたいのであります。また条文中「相当部分」とは、一体当該事業者の何パーセントをさしておるのか、この点、あわせてお答えをいただきたいと思うのであります。  次に合理化カルテルについてでありますが、ここで許されておりますのは、技術、品質の制限、原材料、製品の保管、輸送施設の利用、または副産物、くず、廃物の利用もしくは購入にかかる共同行為だけに限られておるのでありまして、従つて、それ以外のことは何も許されておりません、その範囲はきわめて狭いものとなつておると思うのでありまして、これでは産業界がほんとうに合理化に進んで行くことは、とうてい至難なわざとなるのではないかと危惧するものであります。これは国民経済上非常な損失であると思うのでありますが、通産大臣は、これに対して範囲を拡大する意思があるかないか、この点をお尋ねいたしたいのであります。  最後に、いま一点たけたたしておきたいと思うのは、第十一条の規定でありますが、第十一条には、金融会社が他の事業会社の株を百分の十以上所有することを禁止する規定があります。その禁止規定のすぐあとの但書において、但し、公取委規則の定めるところにより、あらかじめ公取委の認定を受けた場合をうたつたことは、いかなる理由によるのでありますか、それを伺いたいのであります。左の各号に該当する場合云々は、一々列挙してありますので、それに疑問を持つものではありませんが、いやしくも国民の権利義務に関する問題を、但書で、ただ単に公取委の規則に譲つたのは、いかなる意図から出たものであるか。公取委は、小笠原通産大臣の言をかりて言いますと、学者や裁判官が多くて、経済界の実情にうといと、あなたは言われましたが、私は、この但書を公取委規則に譲つたことが爾後に問題を残すことになるおそれがあると思うのであります。(拍手)ことに、綱紀粛正の総本山をもつて任じております政府の所見を、はつきりお伺いいたしたいのであります。(拍手)  以上の諸点は、本改正案に対する総括的な質問であります。わが党は、あくまでも、前段において申し述べたことく、本法案が公共の福祉、なかんずく中小企業に圧迫を加えるものであつてはならないという点を強調いたしたのであります。いずれ、本案に関連いたしまして、中小企業の安定に関する諸法律は、次々に、政府の善意と良識の上に立つたものとして、日ならずして国会提出されることを要望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  30. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。本案は、あくまでもその行為が公共の利益に反するかどうかを基準に置くべきと思うが、この改正案は、競争制限行為それ自身を取締ることになつておる、それはどういうわけかという御質問と承りましたが、自由競争を私的に制限する行為は、自由競争により生ずべき品質の向上、価格の総対的低下、企業の合理化、技術の向上等、国民経済の発展を阻害するなど、公共の利益に反するおそれが強いことは、経済上の経験法則であります。従いまして、独禁法は、その法制上または運用上、私的な競争制限行為禁止の対象とするのが合理的であると政府では考えておる次第であります。     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  31. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 生悦住さんにお答えいたします。  お話のうちには、まことに御同感の点が多々あつたのであります。現行独禁法は、御指摘のごとくに、占領時代に立法された関係もございまして、わが国経済の実情に即しておりません、行き過ぎの点が実に多々あるのであります。従つて、この行き過ぎを是正して、いわばそれを西ヨーロツパ諸国並の穏当な内容にかえるということが、今回改正の根本のねらいであります。特に不況切抜けの合理化推進のためのカルテルを認めますとともに、仰せになつたように、十分に国民経済全体のことを顧慮しつつ改正いたしたものであります。  本改正案の基本的な考え方につきましては、当初から通産省、公取委の間に完全な意見の一致を見ておつたのでございまして、ただ細目の点について、若干事務的な意見の調整を必要といたしたのでございまするが、それも調整をされまして、対立した意見等を表面だけ妥協させたというような事実は全然ございません。  それから不況カルテルについて、設備の新増設の抑制は、不況対策の面から考えればよいと私どもは考えておるのでありまして、仰せになつたような合理化対策の面からは、現在のところ考えるに及ばない、かように私どもは考えておるのであります。  さらに平均生産費のお話がございました。平均生産費の算定が容易でないことは、まことに御指摘の通りでございますが、すでに過去におきまして、公定価格を形成したときの生産費調査の経験等もございまするので、できるだけ実情を調査いたしまして、妥当な計算をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  なお、平均生産費を基準とした場合に、中小企業が圧迫されるのではないかというようなお話もございましたが、原価の高低が企業の大小等に関係せぬことは、今お話の中に能率の有無によつてとお話になつたことでもよくわかる通りであります。従つて、この点は私どもは懸念いたしておりません。  「相当部分」とは何か、こういうお話でございましたが、これは経済常識的に相当部分と見られるもの、何パーセントというパーセンテージでは割出せませんが、経済常識的に相当部分と見られるものをさすのでございます。  さらに合理化カルテルについて、その範囲は、私ども、さしあたり改正法律案程度でよいと存じておりまするが、今後、運用の結果を勘案いたしまして、範囲の拡張をも研究いたしたいと考えております。  なお十一条但書の持株の問題につきましては、公正取引委員長より答弁あることと存じます。(拍手)     〔政府委員横田正俊君登壇
  32. 横田正俊

    ○政府委員(横田正俊君) カルテルの認可権の問題につきましては、立案の過程におきまして多少の問題がございましたが、ただいま通産大臣から申し上げました通り、私といたしましても非常によいところに線が引けたと考えております。  なお十一条の、金融会社の株式の保有につきましては、百分の十というのは、ほとんどこれは禁止的な線なのでございまして、但書は、これは大体大蔵省等の意見もございまして、たとえば保険会社が再保険会社の株を持つというような場合に、あるいは多少百分の十を越える場合があるかもしれない、そういうような場合に、公正取引委員会が大蔵大臣に協議をいたしまして認可をする、こういうことになつておるわけでございまして、公正取引委員会規則の定むるところによるというのは、何も規則に基準をきめるつもりはないのでございます。
  33. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 松尾トシ子君。     〔松尾トシ子君登壇
  34. 松尾トシ子

    ○松尾トシ子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております独占禁止法の改正につき、数点の質疑を行いたいと存じます。     〔副議長退席議長着席〕  昭和二十二年四月この独占禁止法が実施されて以来今日まで、日本における資本主義陣営の中核であつた大財閥は、ひそかに無念の涙をのんで来たことと思います。(拍手)占領政策の行き過ぎを是正するという旗じるしのもとに、彼ら財閥が終局の目的としてねらつているものは、すなわち独占禁止法の改正ないし廃止であります。私どもは、いずれの日にか、財閥の走狗たる保守政権が、その忠実なる番犬として、独占禁止法の改正に必ずや手をつけるであろうことを予期しておつたのでございます。(拍手)はたせるかな、吉田内閣は、ここにこの改正案提出いたしました。まことに当然のことと申さねばなりません。(拍手)しかも、この改正は、禁止条項の緩和であつて、あくまでその骨抜きをねらつたものでございます。  わが国の財界では、独占禁止法自体が日本経済にとつて有害無益なりとし、これを全廃すべきであると力説する者が多いようでございます。しかしながら、独占資本の弊害が、消費者大衆の生活を脅かし、かつまた中小企業に致命的脅威を与えて来たことは、私どもの記憶に新たなことでありまして、日本経済にとつて真に民主主義憲章とも言うべき独占禁止法をみだりに改正することは、国民大衆の犠牲において財閥に奉仕するものと申さなければなりません。(拍手)自由主義経済学者の間においてすら、独占的トラストやカルテルは、経済悪であるとともに社会悪であると言われております。独占禁止法は、この基本的理念の上に立つて立案実施されたものでありまして、これを緩和することは、明らかに立法の精神をくつがえすことになると信じます。私は、まずこの点について政府の根本的所信を承りたいと存じます。(拍手)  第二の点は、国民生活に最も重大な関係を有する生産と消費の公正なる調整に関してお尋ねをいたすものであります。すなわち、敗戦後の脆弱な日本経済は、いわゆる底が浅く、一たびマーケットの不況に直面した場合は、採算を度外視して価格の競争を行い、そのために共倒れとなる危険が多分に内在しているのであります。これを避けるためには、無謀な増産競争をやめて、供給を制限して市価を維持し、もつて業界の安定をはからんとする要望が当然に起つて参りますが、私たちは、この市価の維持とか業界の安定とかいう言葉を、最も厳正に分析して批判を加えなければなりません。何となれば、利潤を求めてやまない資本主義経済においては、需給の原則を無視して、その手段を選ばない場合がしばしばでございます。かつては、その利潤のためには、せつかく生産したところの綿を焼き捨て、あるいは米を海に投じた事実すらあつたではございませんか。(拍手)ある者は、独占禁止法は、日本経済の民主化という美名に隠れて、その実は、戦勝国が敗戦国たる日本の経済力を弱体化せんとする意図のもとに実施されたものであると主張いたしております。しかしながら、過去におきまして植民地と軍需産業によつてささえられて来た日本の資本主義構成を、まつたく異なつ条件のもとに新しい経済に建て直して行くためには、独占禁止法は最も大きな役割を持つべきであると信じておるのであります。  大よそ、国民経済の安定のために生産と消費を調整して自由競争を制するには、二つの方法がございます。その一つは国家権力による統制であり、他の一つはマーケツトの独占による方法であります。すなわち、生産、供給、価格、設備等に制限を加えることを国の力で法的に行うこともできれば、あるいはまた、トラストやカルテルによつて、その従属企業を支配し、拘束することもできるのであります。吉田内閣は、そのいずれの方法によつて生産と消費の公正なる調整を行わんとするものでありますか、政府の信ずるところを承りたいと思います。(拍手)  第三の点は、独占禁止法第四条の共同行為禁止規定の緩和に関する点でございます。すなわち、不況カルテル及び合理化カルテルの問題であります。まず不況カルテルについては、競争を実質的に制限したり、事業活動を不当に拘束しない限り、共同行為を認めることになつておりますが、実際の問題として、業者間の競争を制限しない共同行為はあり得ません。すなわち、価格の協定といい、生産の協定といい、りるいは販売の協定といい、これらはすべて実質的に事業の制限を伴うものであります。かりにマーケツトの悪化に対する自己防衛のために共同行為を認めた場合、一時的に若干の効果がふりたといたしましても、大局的にこれを検討すれば、一国の経済の全体の健全なる発展に真の効果があるかどうかは、はなはだしく疑わしいのであります。  すなわち、一例を共同操短にとつてみますれば、共同操短は、その必然の結果として設備を遊休化し、また多数の失業者を排出することになります。さらにまた、すべての加盟業者が一定の率に従つて経営を維持して行くためには、最も能率の悪い操業短縮の方法をとらなければなりません。従つて、この場合の価格協定は、人為的につり上げられる結果となります。これがために、国内の商品価格が国際的価格に比べまして割高となり、はなはだしく輸出の意欲を阻害するに至るのでございます。その最も著しい例は、昨年の三月以降実施されました綿紡の勧告操短の場合であります。画一的な生産制限の結果は、まず綿糸価格が高騰いたしました。次には品不足が起きて、商社の取引量が制限されました。そのために、綿糸が高くて綿布が安いという逆ざやによつて、中小企業者たる織物業者やメリヤス業者は塗炭の苦しみをなめさせられたのであります。(拍手)しかるに、他方においては、操短による紡績業者は人為的に安定し、過剰設備である錘数はさらに増加を示したのであります。加うるに、国内価格の高騰によつて輸出を阻害し、わが国における輸出産業の花形をもつて任ずる綿紡績が、むしろみずから輸出を梗塞するという矛盾が現われたわけなのであります。  政府は、かくのごとき弊害について、いかなる具体的方策をお持ちになつておいでになりますか。さらにまた、この改正法案の重要な条文は、実質的に云々とか、あるいは不当に云々とか、まつたく抽象的な文字の羅列でありまして、法の運用上、はなはだしく不安を抱かしむる点が多いのであります。いかなる事態が起きたとき、いかなる内容や程度の共同行為を認め、またこれに付随して起るべき弊害の対策について、いかなる具体的方策をお待ちになつておるか、政府当局の明快なお答えを願いたいのであります。(拍手)  第四の点は、貿易に関連してお尋ねいたしたいのであります。貿易カルテルについては、別に輸出入取引法を制定して、これに譲ることになつておるそうでありまするが、不況カルテルにしましても、合理化カルテルにしましても、貿易に重大な関係があります。すなわち、国内物価の人為的つり上げの矛盾によつて対外的にダンピングを可能ならしめることも考えられるのでありまして、たとい業者にダンピングの意思がなくとも、外国から痛くない腹を探られて、ダンピングだとの非難を受けるおそれは多分にあると思われます。(拍手)ことに、わが国の貿易振興にとつて絶対必要であるガツト加入についても、独占禁止法の改正に異常な関心を持つ国々から、ダンピングによる貿易上の不正競争を理由にして拒否される心配があるのではないでしようか。これはまた対スターリング貿易についても特に重大であると思いますので、政府当局の所見を伺つておきたいのでございます。(拍手)同時に、これと関連して、東南アジア方面の貿易に対して、わが国のカルテル緩和の結果がいかなる影響を与えるかにつき、所管大臣の見通しを承りたいのであります。(拍手)  第五の質問は、トラストに対する予防規定の緩和に関連した問題であります。同種企業間における株式の保有や役員の兼任及び営業の譲り受けや合併等によつて企業を結合せしむることは、すなわち財閥の復興を意味し、大財閥の支配権を確立助長いたしますことは、火を見るより明らかなのであります。今回の独占禁止改正の急先鋒は実に大企業者であります。従つて、本法案改正の結果は、すでに今日においてこれを断言することができるのであります。すなわち、基礎産業のカルテル化やトラスト化は、原料資材の割高を招来いたし、中小企業者を非常な窮地に陥れるとともに、経済不況の圧力はあげて経済的弱者に転嫁されて行くことは、まつたく疑いのないところであります。(拍手)さらにまた、その及ぶところは、一般の消費者大衆に重い負担となつて現われて参りますから、この消費者の立場を守る措置が必要となつて来るわけであります。政府は、これに対して、いかなる用意がありまするか、承りたいと存じます。特に、わが国の多数人口を占める農村は、トラストやカルテルの結果として、硫安肥料その他の値上りによる終局の被害者たる運命をになうものでありまして、(拍手)農村における消費者、すなわち農民大衆の生活保護のために、農林大臣はいかなる御見解をお持ちになつておられますか、あわせてお尋ねいたします。(拍手)少くとも、カルテルやトラストの認可については、消費者の代表を含めた一つ審議機関を設けて、その意見を徴す必要があると存じまするので、政府にその御意思があるかないかを承りたい。もし、かかる審議機関を設けないとするならば、公正取引委員会に強力な消費者の代表を加うべきであると信じますので、その法律的処置や行政的処置について政府のお考えをお伺いいたしとうございます。  最後に、第六の質問は、改正法案第二十四条に関するものであります。すなわち、カルテル容認の場合に、主務大臣は公正取引委員会の認定を得た上で認可することになつておりまするが、主務大臣は産業行政の立場から認可せんとし、公正取引委員会は独占禁止法の根本精神に立つて認定せんとするのでありまするから、認可と認定とが必ずしも一致上ない場合が起り得るのであります。ことに、公正取引委員会は、生産者の立場だけでなく、消費者の立場から判断して、共同行為の認定をしない場合があり得るのでありますが、かくのごとき場合には、主務大臣の認可と委員会の認定との調整はどのようにして行われるのでありまするか。認定と認可とどちらにウエートを置かれるのでありますか。この重要な点については、本法案に何ら明確に規定されておりませんので、この際この点を明示していただきたいのであります。  これを要するに、今回の改正案は、その内容きわめてあいまいであり、ずさんであります。しかも、改正の意図するところは、財界の鼻息をうかがう逆コースであつて、わが国経済の健全なる発展を阻害するものと断ぜざるを得ません。(拍手)もし、しからずとするならば、政府当局の確信ある御所見を伺いたいのであります。  これをもちまして私の質問を終りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  35. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいんします。本法提案の根本理由はどこにあるかという御質問でございまするが、政府といたしましては、公正なる自由競争が正しい努力と進歩を促すという独禁法の基本原理は、あくまでこれを維持いたしまするとともに、独立回復後の現下の事態に対処いたしまするため、この際、日本経済の特質と実態に照し、所要改正を加える必要があると考えた次第でございます。本法案につきましては、自由なる私企業の創意とくふうを尊重し、その間の公正な競争を確保することにより、国民経済の健全なる発展を招来し得るよう、公正な運営を期して参りたいと考えておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎登壇
  36. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。  第二にお尋ねになりました、生産と消費に対してどうかというお話でございましたが、私どもは、生産と消費に対して統制経済とか計画経済を行うべきであるという御主張に対しましては、遺憾ながら、現在の段階においては御同意いたしかねます。  その次の、価格協定はどうこうというお話でございましたが、実は、価格協定というものは、価格の安定、切下げを目標として、不況時においては価格の安定、合理化によつての価格の引下げを目標としておるのでございまして、もしも国際的に割高であるというような場合には、さようなことは認可しない考えでございます。お話のございました綿糸のごときは、国際的にも日本の綿糸が最も安いのでありまして、ああいつた操短を勧告したのでございますが、現在もなお国際的に安いのでございます。  さらに、不況合理化の場合にのみカルテルを認める云々、これは、それだけに限つて——不況の場合と、合理化の場合と、さらに貿易の場合の、この三つに限つてこれを認可しようとするのでございまするが、実情に即して認可するのでございまして、もしも弊害がありまするような場合には認可いたさない方針でございます。  さらに、貿易カルテルについて、それはダンピングのそしりを受けるのじやないかというお話がございましたが、貿易カルテルこそは、ダンピングのそしりを受けないことになるのでございます。つまり、チエツク・プライス等までつくつてつても、なおその価格競争をやりますから、そこでダンピングその他のことが言われるのでございまするが、申すまでもなく、貿易には価格の安定が一番必要なのでございまして、価格を安定せしめますから、ダンピング等のそしりは今後は一切受けないことになると確信いたしておるのでございます。  さらに、ガツト加入その他についてのお話がございましたが、もうすでにガツト加入のことはきまつております。さつきも申しました通り、これは世界でまだ最も強いもので、今度の改正案でもまだ相当強いものが入つております。たとえば、イギリスなどに比べますと、はるかに強いものであります。従いまして、何もガツト加入等にさしつかえを生ずることはございません。  東南アジア貿易についてのお話がございましたが、実は、貿易を阻害するのは、価格の騰落がはげしいことでありまして、もしも下ると思えば、なかなか向うは買いませんが、価格の安定がありますると貿易が振興いたしますので、さようなために、こういう対策を講ずるわけでございますから、今後は、ほかの施策と相まちまして、東南アジア貿易等はだんだんと進展させて参りたい所存でございます。  なお、主務大臣と公正取引委員会とのお話がございましたが、これは、実態を把握せる主務大臣と、また法制その他の立場からものを見る公正取引委員会とが、認定と認可とをよく調和させてやりますれば、すべて一切の御懸念は除かれると確信いたしております。(拍子)     〔国務大臣田子一民君登壇
  37. 田子一民

    ○国務大臣(田子一民君) お答えいたします。カルテルと肥料価格についての御質問がございました。普通のカルテルの場合におきましては、価格の引上げが当然伴いまするけれども、本法案第二十四条をごらんになればわかりますように、このカルテル結成を許可しまするのには、公正取引委員会の承認を得、なおかつ主務大臣がこれを認可いたすのでありまして、その認可すべき場合についても詳細に規定をしておるのであります。従つて、普通のカルテルそのものでなくて、きわめて狭く制限された場合のカルテルでありまして、御質問のような御心配はないのでありますが、農林大臣としましては、なるべく安い値段におきまして農民に豊富に肥料を供給することを念願いたしまするとともに、本カルテル結成の場合におきましては、主務大臣としましても協議をいたすことになつております。(拍手
  38. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 下川儀太郎君。     〔下川儀太郎君登壇
  39. 下川儀太郎

    ○下川儀太郎君 夢を現実化することが芸術家であるならば、独禁法の改正を含んだ五大法案の中にフアシズムの夢を盛らした吉田総理も、異なれる意味においての偉大なる芸術家と言うことができるでしよう。ただ、その作品と影響が、人民の怨嗟の的になるか、後世の歴史家の物笑いになるか、未完成交響楽になるか、それは第二として、われわれは、この独禁法に盛られた反動性について、その内容を検討批判しつつ質問いたすものでございます。(拍手)  質問の前に明確にしておきたいことは、われわれ日本社会党が多年主張し来りました社会主義的計画経済をもつてするならば、現行の独禁法も、あるいはまた改正案も、いずれも資本主義柱済の矛盾と破綻から生れた、資本主義末期のあわれむべき変態的立法であると言うことができるのでございます。(拍手)いわゆる資本主義の傀儡政権が、行き詰れる自由主義経済を一時的に糊塗せんとする、あわれむべき手段でもございましよう。従つて、いかなる立法をもつてしても、戦後の弱められたる日本経済の現況を顧みず、営利、私有を最大の目途とする資本家群と連なり、無統制、無計画なる自由主義経済政策のもとにあつては、しよせん、貿易も産業も国民生活も、あらゆる不合理と混乱の中に、巨大な組織と物量と資本による国際的な圧力についえて、自立経済どころか、亡国への一途をたどることは、火を見るよりも明らかでございます。(拍手)この破綻と悲劇を克服し、真の日本経済の自立を確立するためには、すなわち、国民大衆とともにあり、公共と社会性を根本理念といたしました社会主義的計画経済以外に何ものもないということを断言してはばからないものでございます。(拍手)  しかしながら、今日わが党がこの独禁法を支持しているゆえんは、よしんば自由主義経済の生んだものとはいえ、その法の精神、すなわち私的独占と集中的支配力の排除に賛成しているからであります。また、わが党は、現に展開しつつある国際的な景気の停滞現象は、自由主義のアナーキーに基く当然の結果であると判定しているだけに、現実の打開方式がどうあるべきかの根拠については、すでに述べましたことく、計画ある経済方式以外に現状を打開する方策はないと確信しております。従つて、自由競争による国内外の停滞現象は、その都度のてこ入れによつて一時的な解決は得ても、終局的な解決はなし得ないと信じます。あたかもそれは、盲腸の患者に一片の氷を当てるがごとく、きわめてやぶ医者的な応急処者をやつているのが吉田内閣の経済政策と言つても過言ではないのであります。(拍手)  そこで、今次の独禁法の改正に反映した経済的背景については、わが党は次のごとき判断を持つているのであります。すなわち、政府の提出した独禁法の改正案を見ると、今度の改正の主点は、大ざつぱに見て、カルテルを認めること、トラスト制限規定を緩和することの二点が主軸となつております。これをもつとこまかくわけてみると、第一は、国際競争力を増強するため、国内の態勢を整備強化して、国際貿易上に受ける不利益を排除し、対抗的共同行為を容認すること、第二は、不況克服の対策として、企業協定や企業合同等により業界の再編成に役立てるとともに、過剰生産による需給の不均衡を調節して、価格のつり上げをはかり、企業の営利性を擁護すること、第三は、企業合理化の推進をはかるために業者共同行為を認め、コストの引下げ、能率の増進をはかるとともに、その結果として弱小企業の整備を容易にしていること、第四は、底浅い日本経済の脆弱性は資本蓄積の弱さに原因しており、戦後濫立した企業の整備統合が要求されているが、企業合同に対する厳格な規定を緩和しようとしていること等が考えられます。  そこで、明らかにされることは、カルテル容認に至らせた経済的背景は、資本主義経済が自由競争では立ち行かないことを立証していることであります。また営利性と私有性がじやまをして、産業発展に重要な意義を持つている協力共同の理念と行動が法的に抑圧されねばならぬところに、自由競争を基礎理念とする資本主義経済方式に自己矛盾があるのであります。しかも、協力共同をしなければやつて行けないところに問題が残つているし、弱点が露呈し、まさに独禁法の改正は、こうした資本主義方式の矛盾をみずからの必要の前に露出したものであつて、恥も外聞もなく、みずからの生きるための要望を法的に要請したにすぎないのであります。言いかえるならば、計画のない生産の増強は、かくのごとくその弱点を暴露し、いくらいやでも、計画と共同性を取入れなければやつて行けないことが明らかにされたのであります。ここで、もう一歩この改正から前進して計画経済に入らなければ、共同行為と社会的公正の問題——本質は解決されないし、日本経済の健全な発展と自立は容易なことではないと痛感するものでございます。  そこで、質問の第一点は、かかる背景のもとに持たれた現在程度のカルテルの容認等は、はたして当面問題となつている日本経済の困難を打開することができるかどうか。私は、なかなか打開は容易ではない、やがては全面的なカルテルを容認しなければならなくなると思います。まず第一に、貿易のカルテル結成について見れば、輸出取引法が制定せられて、いたずらに国際資本のもとに押えられ、外国商社についてはハンデイキヤツプをつけられて、自由競争の名のもとに、わが国の貿易業者が共食い的な競争をしていることは、これらも生存のために余儀なくしいられた実相であるとともに、これを打開しようとすることはけつこうであるが、逆に、この共同行為の遂行は、大資本の背景を有する大貿易業者に指導権を確立されて、中小貿易業者の生活が大幅に圧縮せしめられる。しかも、それに連なる国内産業の転落と、その傘下の労働者階級の困苦と失業とが生じて来ることは想像にかたくないのでございます。これに対して政府はいかなる対策を用意しておられるか、これらに対して、通産大臣はもちろんのこと、大蔵大臣、労働大臣は、それぞれの立場に立つて、いかなる対策と考えを持つておられるか、伺いたいと思う。  わが党は、この当然予想される不合理を解決する道は、国家による強力なる管理方式の採用よりほかにないと考えております。しかも、貿易カルテルの問題は、当然にその背後に連なる関連産業の合理化にたどりつく問題であるだけに、貿易方式の国家管理形態と、その利潤に対する社会的合理性の付点なしには、カルテル結成がこれから引焼いてかもし出すトラブルを本質的に解決することはでき得ないと思うが、政府はこの点についていかなる見解と対策を持つていられるか、提案者の意見を伺いたい。  質問の第二点は、貿易カルテルと関達して、貿易カルテルの結成はとりもなおさず貿易不振の結果によるものでありますが、単に貿易の不振は現実の経済的諸情勢によるのみではありません。すなわち、経済的情勢とともに、政治的情勢の分析なくしては、健全な発展はなし得ません。まず問題になるのは、貿易の相手国の日本に対する世論を知る必要がございましよう。  小笠原通産大臣は、過般の演説の中におきまして、東南アジアとの経済外交を盛んに力説しておられた。はなはだけつこうなことでありまするが、その東南アジア諸国家の民族感情はどうでございましよう。私の視察して来たところによりますると、日本国民に対しては親日的でありますけれども、政府に対しては鋭い批判を浴びせていることを見のがしてはならない。たとえば、日本政府の講和会議の問題については、こんなことを言つております。日本政府はハムレツトのいないハムレツト劇に参加したと言つております。これを具体的に言うならば、たとえば、吉田内閣の本会議に、スターたる吉田総理が、悲劇をやつても喜劇をやつても登場しないことはおもしろくないということでございます。(拍手)これをもつと掘り下げて言うならば、第二次世界戦争のスターはアジアであり、戦場であつたそのアジア諸国家の参加しない講和会議に何の平和があろうという批判でございます。この言葉こそ、吉田内閣のアメリカ一辺倒の外交政策の批判であり、しかもアジアに砲列を向けるような講和をなし、ふところにどすをのんでいるような取引はまつぴらごめんだという声が盛んでございます。(拍手)すなわち、経済外交に先行し、これを推進するものは、平和と愛情と真実の社会観から出発した政治外交以外に何ものもないのでございます。従つて、アジアの孤児のごとき吉田外交と、東南アジアとの経済外交を力説しておられる通産大臣とのこのギヤツプをいかに解釈し、いかに一致点を見出そうとするか、これは外務大臣、小笠原通産大臣の明快なる答弁をいただきたいと思います。(拍手)同時に、本改正案提案者である緒方官房長官は、昨年東南アジアを視察して来られたが、それらの諸国家との貿易は今後いかにあるべきかについて、貿易カルテルと関連して所見をお伺いしたいと思います。  第三点は、およそ一つ法律または現行法律改正するには、政治が国民生活を基礎としてなされ、将来の幸福を約束する限り、国民大衆の利害得失への考慮と輿論の上に打立てられなければならぬのでございます。現行の独禁法その他の四大法案を見ても、それゆえにこそ、資本主義経済と社会性との矛盾が生んだ醜悪なるうみを一時的に摘出するために、われわれは今日の現行独禁法を支持しておるのでございますが、その独禁法が生れたもう一つのゆえんは、すでに御承知の通り、軍閥と政党と結託して、国民大衆の犠牲の上に今日の日本民族の悲劇をつくり上げた私的独占の財閥への制裁と、その再現への抑制であつたということは、皆様方すでに御承知のことだと思います。(拍手従つて、今次の改正は、その運営のいかんによつては、再び財閥再現のコースとなり、国民大衆の犠牲を伴うのでありますから、この改正案提出する以前に、真に政府が国民生活の輿論の上に立脚した民主的政治を行うなら、あらゆる各層の消費者大衆等との公聴会、懇談会等を開催し、その意見の上に作成さるべきだと私は考えております。(拍手)企業者と政府と官僚とのみによつて作成されたとするならば、まさに国民大衆を無視した非民主的な経済立法である。本改正案は、この点に関し、何ら国民大衆の輿論の集約と基礎づけがなされていない。いわんや、日本経済を左右すべきこの立法を一部の特権君たちによつてつくられることは、まさにフアシズムへの前進である。立法と民主主義政治について、提案者並びにその他の関係諸大臣に対して答弁を要望するものでございます。(拍手)  質問の第四点は、不況のカルテルと合理化カルテルについてであります。不況カルテルの結成は、言うまでもなく、不況に当面しておる資本主義者産業の自己防衛策でございます。企業共同や共同行為によつて企業の営利性を守るための方式であり、それはまた企業集中への一定の段階を示すものでもございます。今度の独禁法改正案では、その範囲が生産部門に属する業者に限定されておりまするが、各部門に広げられることは時間の問題であります。生産数量、販売数量または設備の新設拡張を制限するための共同行為、しかも、やむを得ない場合においては価格協定も許すことになつているのであります。また合理化カルテルも、生産部門に属する事業者に対して、企業の合理化を著しく促進するために、規格統一、施設共同等の共同行為を行う必要があり、販売独占となるおそれがないと認めて、申請したときに許すことになつておりますが、この二つの場合のカルテル要請の必要も、貿易カルテルと同様に、最近の国際景気の横ばい停滞の状況、輸出入貿易の沈滞と制限行為の横行、並びにこれらの諸条件の国内経済への影響、それに、終戦後の諸施設の充実整備が、朝鮮特需の停滞から、過剰設備と過剰生産をもたらして来たことなどの諸条件に押されて、各産業の生きるための当然の必要として主張して来ているのであります。この自己防衛的な資本主義生産方式の発展の要請は他の面でももたらすものであり、それゆえにこそ、中小産業団体が声を大にして独禁法の改正に反対しているゆえんでございます。  そこで、このカルテル結成の容認は、不況下の業者の苦痛を切り抜けさせる反面に、消費者層たる国民大衆に当然相当の影響をもたらすのでありまして、あえて中小企業だけには限られておりません。ということは、やはりカルテル的共同行為の基本概念が、営利性の擁護と私有性の基盤に立つておるからであります。それが社会的公益性、社会化の基盤に立つておるならば、共同行為制約を受けねばならぬわけはないのであります。また、共同行為の結果が社会的に悪影響をもたらすことも、その当初の計画の中に除かれておるはずでございます。従つて、政府は、カルテル行為は現状を打開するためには必要であるが、弊害を防ぐために認可性を置くという自信のない態度をとつておりまするが、その弊害を根本的に取除くためには、経済政策遂行の基本概念を根本的に置きかえる意思はないか、またこの改正案を遂行するとして、そこから当然起る中小企業者へのしわ寄せを防衛するために、いかなる対策を準備しておられるか、それを承りたいと思います。また、不況カルテル結成については、価格協定も許されることになつておりますが、その波及は、当然一般消費者である国民大衆に甚大なる影響を与えると思うが、その点についても、政府ははたして自信を持つて社会的公共の態度と施策を実施することができるかどうか、その方策について官房長官にお尋ねいたしたいと思います。(拍手)  次は、第五点として、カルテル問題と関連して、アウトサイダーの対策をお聞きしたいと思うのでございますが、前質問者と重複いたしまするので、その要点のみを申し上げますると、政府は、アウトサイダーとカルテルの協定との関連について今後いかなる対策をとろうとしているか、またとるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。同時に、アウトサイダーの問題は、カルテル結成と関連して、当然中小企業の対策の問題となることは言うまでもありません。政府は、中小企業臨時安定法を強化して、特定部門から一般中小企業に利したいと言つているが、一体どういうぐあいに強化するのか、具体的に承りたいのであります。(拍手)もともと、中小企業の安定法は、中小企業に対し、調整組合を結成せしめてカルテル行為を容認することにあると承知しているが、今度の独禁法の改正後においては、特別の意味も失われて、大企業家の支配下に従属せしめられるか、採算倒れで自滅するか、それとも、細々と余命をつなぐにすぎない運命が待つているように思われます。従つて現行の安定法がどんな役割を持ち、どんなふうに強化されて役立つのか、具体的に説明願いたいとともに、聞くところによりますると、現在十四種目あるところの調整組合はすでにもてあましていると聞いているが、その実情もあわせて通産大臣にお伺いしたいと思います。  第六点としてお尋ねしたいことは、企業組合、トラストに対する厳格な予防規定の緩和についてでございます。最近、行き過ぎ是正の名において、強力に独占と集中のコースを進もうとしておる。トラストの緩和もこの線に乗つたコースであり、わが党は、かかる特定者の利潤に奉仕する企業の集中並びに私的独占には断固反対するものでございます。(拍手)この意味におきまして、トラスト規制の緩和が自由競争のもとに私的独占と企業集中を促進する役割には賛成できないと同時に、現に白木屋問題等が新聞紙上に載つておりまするが、その背後には外国資本が圧力を加えているといううわさもあり、こうしたことは今後改正された場合当然予想されることであり、やがては独占と集中へ傾いて、日本経済の民主化は根底から破壊されるように私は考えるものでございます。この点に関し、政府は、トラスト、企業合同を今後において助成する方針をとるつもりでいるのかどうか、その点を明らかにしてほしい。また、カルテルの結成容認は企業合同の前段階を用意しているつもりかどうか、提案者から明らかに御説明願いたいと思います。  第七点は、カルテル認可についての所管官庁についてでございます。改正案では、公正取引委員会の認定を得て主務大臣が認可することになつているが、この主務大臣と公取委の関係はどちらが主点となつているか、また公取委の認定の解釈はいかに解釈しているか、その点を明確にお願いしたい。また、権限については、常識的にいえば主務大臣が認可を与えることは当然でありまするが、今日官庁に対する信頼がきわめて薄くなつております。その根本は、やはり官僚の生活不安定から来る結果でありまするが、利権と結び、業者に追随し、腐敗政治家と結託する可能が多分にあるから、国民が信じないのでございます。いわんや、カルテル、トラストの緩和などは、その危険が多分に含まれております。従つて現実の問題として、その公正と国民の利益を守る見地から、現在の公取委を拡大強化して、その中に消費者代表の委員を入れて、国民大衆を苦しめないような民主的な運営をすべきであると思うが、この点について提案者の御意見を承りたいと思います。  第八点は、改正案中に再販売価格維持契約の一項がありますが、これは明らかに消費者大衆の生活への圧迫であり、法において末端にまで価格を維持せしめることは、いたずらに生産者、企業者の利益擁護でございます。これが生活必需品である場合一勢い不況にあえぐ国民大衆の一大脅威であることは必定であります。現に八幡製鉄のごときは、カルテルに会社側としては賛成しながら、その反面、この一項に強く反対しているゆえんは、数万の労働者諸君にこの一項が支障を来していることでございます。消費者側はもちろん、全国の各団体、福祉機関である共済会、厚生部門等が、ひとしくその非社会性、非公共性を指摘しており、政府はかかる悪法はすみやかに撤回すべきであると思うが、その具体的な御答弁をお願いしたいと思います。同時に、提案者並びに通産大臣は本案に対するいかなる見解を持つておるか、厚生大臣は、これによつて受ける厚生関係、福祉関係の影響に対して、これを見のがしていていいのかどうか、厚生省の見解を披瀝していただきたいと思います。同時に、低賃金にあえぐ全国の労働者諸君が、いささかでもその生活を補うための生活物資供給機関は、まつたくその機能を失わなければなりません。いわんや、炭鉱労働者のごときはその影響が最も甚大であると聞いておりますが、労働大臣は、炭労、電産ストの禁止等を画する前に、まずかかる悪法に反対して労働者の生活を守ることが真の健全なる労働行政と思うが、労働大臣はいかなる見解を持つておるか、その点をお聞きしたいと思います。  最後に、第九点としてお尋ねしたいことは、去る二月十五日、日本経済新聞に、「カルテル大幅緩和は問題」「通商提携に支障」という大見出しで、外務省の見解が出ておりましたが、その内容を読むと、明らかにアメリカその他の諸外国の強い意向が反映されております。また、あつたようにも聞いておりますが、もし事実とすると、明らかに内政干渉であり、厳重に追究されなければならぬことではなかろうかと思います。ということは、その法案の内容は第二として、一つ法律一つ改正案の作成にあたつて、一々くちばしをいれられることは、まさに植民地も同様でございます。もし政府が外国の意向に右顧左眄する態度を持つているとするならば、真の独立は永遠に望むべくもございません。(拍手)事実ならば、これもまた吉田媚態外交の結果のしからしむるところでございます。この点に関し、岡崎外務大臣の明確なる答弁を要望いたします。もし、かかることがないとするならば、あの新聞記事は外務省の見解と見ていいか。同時に、この際改正案に対する外務省の見解を明らかにしていただきたい。  なお、ここで、われわれ社会党の立場を鮮明にしておきたいことは、アメリカ、イギリスその他の諸外国が改正案に反対する意図は、カルテル、トラストによる世界市場への日本の進出をはばもうとするものであり、われわれの反対する意図は、今度の改正案は単に独占企業家のみの進出のコースであつてはならない、国家的に、日本の産業と貿易と民族の平和的躍進は国家を背景とした計画経済以外に何ものもない、その方式を用意しておるという、そういう立場に立つての本改正案に対するわれわれのもろもろの意見であることを御承知願いたいと思うのであります。  以上をもつて私の質問を終りといたします。(拍手)   〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  40. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。  独占禁止改正趣旨は、本法をわが国経済の特質及び現状に適合させるためでございます。すなわち、現行法規定中には、形式的、画一的に過ぎるか、または厳格に失する点があり、そのためにわが国経済の発展にかえつて支障を来しておる場合がありますので、これを是正せんとする趣旨でございます。もとより経済施策は多岐にわたるべきものでありまして、政府といたしましても、本改正案のみをもつて現下の経済不況を打開できるものと考えておるのではありませんが、少くとも、本改正によつて不況の乗切り、または産業の合理化、資本の蓄積、健全な企業の整理統合等が促進されるものと考えております。また、わが国経済発展の基礎を自由なる私企業の創意と責任とに求め、その間の公正なる競争を促進することによつて確保することによつて、国民生活のゆたかなる伸長を期するという原則は、民主政治の経済的基礎をなすものでありまして、現下におきまして当を得ておる施策だと考えておる次第でございます。  それから、私が東南アジアに行つた経験から、この輸出カルテルの及ぼす影響はどうかというお尋ねでありましたが、昨年成立いたしました輸出取引法において貿易カルテルを認めた趣旨は、仕向国における買手独占、また仕国際市場における競争、外国商社間のカルテル行為、これによつてわが国貿易産業が受ける不利益を救済せんとするものであります。この点から見まして、たとえば、東南アジア諸国に対しまして、貿易上の不当の収奪を行うというおそれのある貿易カルテルは実現しないものと考えておりますので、これら諸国が特にわが国のみに対しましてボイコツトまたは差別待遇の対抗措置に出るというようなことは想像いたしておりません。     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇
  41. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。多少順序が違つておるかもしれませんが、一括してお答えいたします。  資本主義による限り、独禁法を改正しても国際競争に勝てぬではないか云云、あるいは、貿易カルテルは大資本貿易業者の保護のみではないか云々、こういうお話でございましたが、不況カルテルは競争の行き過ぎによる共倒れを防ぐのであり、また合理化によるカルテルは、製品の改善、価格の引下げを怠たらぬように認可する次第でございますので、さような御懸念はございません。輸出入組合の結成や、貿易カルテルの認可にあたりましては、その構成員の総意を聞きまして、十分民主的に運用いたす所存でございます。  国家による管理方針の長所についていろいろお話がございましたが、これは欠点、弊害の多いことは御承知の通りでありまして、私どものとらざるところであります。  さらに、東南アジアに対しましてどうこうと仰せになりましたが、不当競争を避け、共存共栄を旨として貿易の進展をはかる所存であります。  さらに、カルテルは大企業による集中となつて、中小企業者や消費者にしわ寄せするというようなお話がございましたが、私どもは、不況カルテルも合理化カルテルも例外的にこれを認めるのでありまして、いやしくも中小企業者や消費者にしわ寄せとなるようなことは断じて許さない方針でございます  さらに、不況カルテルを緩和して助成するというようなお話がございましたが、不況切抜け時のため一定条件に合致するものを認可するのでありまして、積極的に企業集中等を助長するような考えは一つも持つておりません  それから、アウトサイダーをどう取扱うか、中小企業安定法の改正はどうかというようなお話がございましたが、中小企業安定法ではアウトサイダーの抑制をいたしておりますが、今度の独禁法の改正では、これをいたしておりません。けれども、私どもは、実際上大企業ではこれで安定をはかり得る、かように信ずるのでありまして、もし施行の結果効果が悪ければ、後日改正を御相談申し上げたいと存じております。なお、安定法を強化し、調整組合を中心として価格協定、設備制限等はやつて参りたい所存でございます。  さらに、調整組合の機能を発揮してないではないかと仰せになりましたが、機能を発揮している部分が相当多数でございます。  さらに、中小企業への影響、消費者への影響等についてお話がございましたが、実は、日本経済は一体でありまして、大企業より消費者に至るまで、今日の経済界はほとんど渾然と一体をなしておるのでありますから、不況または貿易等におきまして、そうそれぞれの区別をすることは当を得ていない、かように考えておる次第でございます。  それから、カルテルは主務大臣の認可と公取の認定とどつちに主点があるのだというお話がございましたが、これは、私どもは、不況切抜け、合理化促進は産業大臣の重大なる責任でございますから、主務大臣の認可といたしたのでございますが、しかし、いずれを重しとする考えは持つておりません。公取委の認定は、主として公正取引確保される、こういうことになつておるのでありまして、私どもは、消費者等が不当に不利益を受けないことについては十分な措置をとる考えでございます。  さらに、何か利益と結びついておるというようなお話がございましたが、さような事実は断じてございません。  それから、カルテルの結成は対外的に支障はないかというお話でございましたが、さらに、支障のないことは、すでにたびたび申し上げた通りであります。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  42. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 東南アジアの諸国との関係はますます親善を加えつつありまして、日本がアジアの孤児でないということは事実が示じております。本問題について、外国がわが国に干渉したような事実は全然なく、またそのようなことを許すわけがないのであります。外務省は、いまだかつて要望事項などを新聞に発表したことはありません。  また、外務省の見解を示せと言われますが、政府の見解はすなわち外務省の見解であります。     〔「労働大臣はどうした」と呼ぶ者あり〕     〔政府委員福田一君登壇
  43. 福田一

    ○政府委員(福田一君) 労働大臣にかわつお答えをいたしまします。  貿易カルテルができますことによつて、中小貿易業者が非常に困難となり、関係労働者が失業に陥ることがないかというお話でございますけれども、(「大臣を出せ」と呼び、その他発言する者あり)しかしながら、公正取引委員会の認定の線は……(発言する者多く、聴取不能)事業者の利益を著しく害するおそれのないことは……(「大臣を呼んで来い」と呼び、その他発言する者多く、聴取不能)さらに……(議場騒然、聴取不能)生じたときには、当該カルテルの認可を取消し得ることになつております。従つて、このようなことはできないと考えておる次第でございます。  次に、再販売価格の問題でございますが、これは消費者あるいは共済組合等が別な価格で販売することができない、こういうことで御心配のようでございます。消費者に対して非常に迷惑がかかると考えられておりますけれども、公正取引委員会は、自由な競争が行われる商品についてのみこの認定を行うことになつておるのでありまして、従つて、この再販売価格の維持契約を認める場合におきましても、別の会社に他の方法によつて販売することかできないことはございません。従いまして、御心配のようなことはないと考えております。(拍手)     —————————————
  44. 山崎岩男

    山崎岩男君 残余の日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  45. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 山崎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十九分散会