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1953-02-23 第15回国会 衆議院 本会議 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十三日(月曜日)  議事日程 第二十九号     午後一時開議  一 義務教育学校職員法案内閣提出)、義務教育学校職員法施行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑  第一 酒税法案内閣提出) ●本日の会議に付した事件  本院法制局長任命につき承認の件  義務教育学校職員法案内閣提出)、義務教育学校職員法施行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑  日程第一 酒税法案内閣提出)  酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案内閣提出)     午後三時三十分開議
  2. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) お諮りいたします。本院の法制局長西沢哲四郎君を議長において任命したいと存じます。これを御承認願いたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて承認するに決しました。(拍手)      ————◇—————
  5. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 義務教育学校職員法案義務教育学校職員法施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明に対する質疑に入ります。坂田道太君。     〔坂田道太登壇
  6. 坂田道太

    坂田道太君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま提案になつております義務教育学校職員法案について若干質疑をいたしたいと存じます。  この義務教育学校職員法案について国民は非常なる関心を持つておるにかかわらず、その内容が今日まで発表されなかつたので、正しい理解も正しい判断も下し得ない実情にあるのであります。また、この法案反対論に、おおよそ三つ反対の種類があると思います。その一つは、内容がほんとうにわかつて反対されておるのと、いま一つは、政府の決定が遅れたため、説明が不十分なため誤解に基いて反対されておるのと、いま一つは、故意に何らかの政治的意図をもつて反対されているのと、この三つがあると思います。(拍手)従いまして、政府は、この際きわめて率直に、大胆に、不明確なる点を明らかにし、善良なる国民誤解を一掃する必要があると存ずるのであります。(拍手)  質疑の第一点は、教職員給与全額国庫負担して、その生活を安定せんとするのであるが、一部に悪宣伝されておりまするように、首切りや、あるいはまた給与引下げは絶対に起らないのであるかどうか。  第二点は、地方教育委員会との関係でありまするが、これによつて昔のように中央集権的画一教育が行われるおそれはないか。  第三点は、身分国家公務員となつて政治活動禁止される結果となるが、文部大臣教職員政治活動についてどういう考えを持つておられるか。  主として以上の三点につきまして、文部大臣の所信をたださんとするものでございます。  申すまでもなく、教育は、個人の人格の完成を目ざし、真理と正義を愛し、平和的な国家及び社会の形成者として、自主的精神に満ちた、心身ともに健康な国民育成をはかることと存じます。本法案は、その提案理由にありまするように、第一に、憲法義務教育無償原則への第一歩であり、国家義務教育に対する責任を明確にし、さらに義務教育水準維持向上をはかるものとして、大なる意義を持つものであると存じます。第二に、教職員身分確立をはかり、その給与全額を国が負担して、その生活を保障し、いかなる不当なる支配にも煩わされることなく、一意専心子供教育に没頭できるようにしてやるということであり、それでなければ日本教育の再建は不可能であるとの決意に立つて提案されているようでございます。第三に、教職員給与費が、地方財政平衡交付金から切り離されまして、独立して国の直接の負担金となりまする結果、地方財政明確化を来すものであり、われわれが多年要望いたして参りました教育財政確立に一歩を踏み入れたものと確信いたすものであります。教職員給与全額国庫負担、換言すれば、地方財政平衡交付金の中から教職員給与を取出して国の直接の負担とし、教育財政の基礎を確立すべきであると、こういう議論は、野党を問わず、与党を問わず、全教育界多年の要望であり、これに反対される理由はないと存ずるのであります。(拍手)第十三回国会教育費半額国庫負担法審議の際も、半額ではだめである、全額にすべきであると、強く野党諸君はわれわれを鞭撻されたのでありまして、今回提案されておりますところの義務教育学校職員法案は、むしろ野党諸君要望と全教育界の熱望にこたえたものとして、私は原則的に政府の勇断に敬意を表するものでございます。(拍手)  質疑の第一点は、これによりまして給与費全額負担するというが、経過的に二十八年度はあくまで定員定額によつて国負担するのでございまするから、財政措置が伴わない場合は、山村僻地の三十人とか四十人とかの学校定員は、一体確保できるかどうか。教職員方々父兄方々の心配は、これによつて首切りが行われたり、あるいは現在支給されておりまする職員給与引下げられるのではないかの一点にあると思います。世間に流布され、宣伝され、反対されているのもこの点でございます。もし、首切りはない、給与切下げはない、むしろ今後国庫負担制度に基いて給与なり恩給がよくなり、従いまして教職員待遇も著しく向上して来るのであるということがはつきりいたしますれば、ただいま反対されておられる人々も欣然と賛成をして来られるものと私は確信いたすのでございます。(拍手文部大臣は、首切りはない、給与切下げは絶対にないと断言できるかどうかをお伺いいたしたいのでございます。  憲法では、義務教育費無償にするということがうたつてございます。この解釈につきましては、いろいろ議論があると思います。私は、一面においては、この憲法無償原則から今回の義務教育費全額国庫負担という考え方も出て来たのだと思うのでありまするが、そうだからといつて教職員給与はもちろんのこと、教材費教科書費学校給食費建築費等、一切合財を国が負担すべきであるかどうか、一つ地方公共団体に迷惑をかけずに、義務教育に必要なるものは一銭一厘といえどもすべて国が負担するのが適当であるかどうかということにつきましては議論の余地があると私は考えます、と申しますのは、憲法のいう無償原則とは、国が払おうと、地方公共団体が払おうと、とにかく学校に行く子供たちの経費がかからぬ、それが無償であるという考えでございまして、国が持とうと、地方公共団体が持とうと、それは問うところではない。憲法においては、一面、地方自治を非常に強調しておる。だから、その点から考えまして、全部が全部国で持つことは、それこそ自治制度を破壊し、これに干渉するものであります。むしろ、その一部は地方公共団体負担することが、その地方住民あるいは自治体の教育に対する関心なり熱意を高めるものでありまして、国が負担する対象はおのずからそこに限界があるのではないか。  そこで、その限界はどうかというならば、まず私は、義務教育に携わつておる教職員給与全額教材費給食費なりの一部は地方公共団体負担することが筋ではないかと考えるわけでございます。この点につきまして、文部大臣は、国庫負担限界をどのように考えておられるか。やはり理想としては、地方公共団体には全然負担をさせずに、一切合財全額国庫負担すべきものとお考えであるか。それとも、地方自治精神から申しまして、教育に対する地方関心をさらに高める上から、一部は地方公共団体にも負担させることが理想であると考えておられるか。また、この法案が成立すれば、かえつて父兄負担が増大し、憲法義務教育無償原則にも背馳するし、全額国庫負担という名前を偽るものであるとの議論もあるが、政府はいかなる見解を持つておられるか。今回の義務教育学校職員法案が通過すれば、国の義務教育に対する責任は倍加され、むしろ必要なる建築費は増大し、子供の学びの場は質的にも量的にも向上拡大し、父兄負担は将来漸次減額されこそすれ、加重されることは絶対にないと考えておるが、文部大臣の所見はどうか。  費疑の第二点は地方教育委員会との関係でありまするが、去年全国地方教育委員会を設置いたしまして、いわゆる教育地方分権化と、教育民主化をはかりました。しかるに、今回の法案では、教職員身分国家公務員となり、最終の任免権者文部大臣となつておるのでございまするから、また昔のような官僚的、中央集権的画一教育に陥る危険はないかという点でございます。これによりまして教職員国家公務員になり、従つて形式的には明らかに文部大臣任免権を持つが、個々の職員の一々を知つているわけでもなく、またこれらの任免文部大臣みずからが行うことは実際上不可能であるから、この権限行使地方教育委員会に委任するという建前に立つておる。もし地方教育委員会がない場合において、文部大臣任免権を持つということであるならば、いわゆる中央集権化の危険があると私は思うのであります。しかしながら、直接選挙によつて選ばれました地方教育委員会全国に一万もできておる今日の段階において、また、それらの指導と育成とを心がけ、教育民主化教育分権化徹底さえいたしますれば、昔のような中央集権化はあり得ないと考えるのであります。  イギリスの場合でも、教育委員会がございまして、地方分権化が非常に徹底をしている。ところが、地方分権化はいいのであるが、ある委員会は非常な活動をし、その住民教育に対し熱意を持つがために、教育水準は高まつて、成績も上つた。ところが、その反面、ある地区においては、教育予算を減額することばかり考えて、一向に教育の成果が上らなかつた。教育上の非常なアンバランスを招来した。いわゆる機会均等を失した状態が出て来た。そこで、第二次大戦中からこの是正を考えまして、一九四四年に、いわゆるバトラ・エデユケーシヨン・アクト——教育法をつくつたのでございますが、それも、ある程度中央集権的管理権文部大臣が持つという立場に立つて、その足らざるところ、あるいは水準維持ができないところに対して、その水準維持向上させる役目を持たすために、文部大臣権限を強めたのであります。こういう例から考えましても、地方教育委員会が健全に発達して行く限り、中央分権化を心配する必要はないのではないかと思うのであります。  教職員国家公務員にすることは教育中央集権化ではないかという場合、中央集権という言葉は、自治を否定して全体主義的、圧制的権力の集中という意味に使われているのであるが、自治が強化されればされるほど、これを統一し、総合するところの作用がなくては、国家は分裂する。であるから、自治を強化すればするほど、統一総合するところの力を保持するの必要が生ずるのでありまして、遠心力に対応する求心力の働きがなければ、物体も安定をしない。従つて、昨年立法化されました地方教育委員会が強化され、自治目的を貫かんといたしますれば、他面、これを統一総合する作用が必要となると思うのであります。義務教育は国の責務である。だから、その運営については、国と地方公共団体が相助け合つてその振興に当るべきで、従つて、一方国家的な要請を満たしながら、一方住民民意を反映させることが肝要であるので、こういう点から申しまして、住民民意の反映する教育委員会教職員任命権行使をゆだねんとしているのであると思うのであります。でありまするから、民主主義一つ原理でありまするところの権力の分散と統一がここに実現されることとなるのであるから、従つて、これをもつていわゆる教育中央集権化と言うのは当らないと思うが、これに対して、文部大臣は、この法案によつていわゆる教育中央集権化になる危険があるとお考えになるか。また、この法案と密接不可分な関係にあるところの地方教育委員会をあくまでも育成して行くおつもりであるかをただしておきたいのでございます。  最後に、質疑の第三点は、身分国家公務員となつて政治活動禁止をされる結果となるが、教育基本法教育中立性という精神からして、現在のごとき教職員の野放しの政治活動文部大臣はどういうふうに考えておられるか。これによつて教職員政治活動禁止をされる、だから反対だという声を聞くのであるが、教育基本法の中にありまするように、教育というものはやはり中立性でなければならないということから言つて教職員政治活動禁止は当然なことであると私は思う。(拍手)  たとえば、西ドイツ、フランスでも、公立学校教職員国家公務員である。西ドイツでは、政治活動制限が存在をしておる。すなわち、官吏は全体の奉仕者たる地位とその職務にかんがみ、政治活動を自粛抑制しなければならない、従つて、公然、特定政党または特定政策、綱領を積極的に支持する行動をしてはならない、とあります。ただ、アメリカ、イギリスでは、地方公務員というか、あるいはその地方公共団体の使用人という形になつているが、実際の実情は、日本日教組のようなやり方をやつていないがために、こういう、いわゆる禁止という、はつきりした制限もないけれども、あくまでも、その根本におきましては、教育というものが中立性であることは当然なものとして、国民がこれを認めておるのではないかと思うのであります。  わが国におきましても、教職員政治活動は、全面的には禁止されておらない。しかし、教育根本原理たるニユートラリテイを侵害してまで政治活動をしてもよいと言えるのであろうか。最近の日教組の動きは、これは形式的には何ら不当な政治活動をやつておるのではない、法の許す範囲内においてやつておるのであると言われても、これが行き過ぎた政治活動であることは、国民が知つているだろうと思う。  たとえば、かつて新潟大会におきまして、反動吉田内閣打倒あるいは民主政権樹立——たちからこれを考えるならば、明らかに憲法で保障され、また、いわゆる公正なる選挙のもとに選ばれましたる内閣ならば、それが吉田内閣であろうと、社会党内閣であろうと、はたまた改進党内閣であろうと、民主政権であることは間違いない。それを、ことさらに民主政権樹立というスローガンを掲げましたのは、共産党の目標にしておりまするところの、いわゆる革命的な人民民主政権樹立のために、あの日教組という組織が利用されておるのではないか。(拍手)いな、私は、一九一九年、コミンテルンの指示いたしました、あの人民政府樹立への道としての政治革命への扇動という指令と完全に符節を一にするものと考えるのであります。  組合を牛耳る者が常に容共左派政党員であり、その運動方式が、全国にオルグを派遣し、反対運動署名運動を強要し、あるいは人事院規則に反して組合員給料から百円以上の金の天引きを強制し、四、五千万円の金をばらまいて参議院選挙を有利に展開し、ひいては人民民主政権樹立へかり立てているこの実情は、子供教育を守る上から、断じてわれわれの黙視し得ざるところであります。(拍手父兄会を通じ、あるいは何の批判力もない子供使つて反対ビラをまいたり、署名運動をしたり、しかも、聞くところによるならば、その運動資金について、中共のいわゆる国民救援委員会より七十四万円の闘争資金を仰ぐに至つては、数名の容共幹部が、みずからの政治的進出の足場として日教組組織を悪用し、善良なる大部分の教職員政治の道具として踏みにじるに至つては、われら日本民族として許し得ざるところであります。(拍手)  あるいは五十万のうち九九%は、このようなはげしい政治運動には心から賛同していない教職員であり、そのおのおのの人たち良心に照すならば、こういうことにはおそらく反対である、私はそう思う。にもかかわらず、あえて良心の命令にそむき、一部の極端なる、いわゆる容共的な考え人たちから指令を受けて、それをうのみにして、内閣をつぶすために運動をさせられているということは、教育中立性から考えて、決して教職員のあるべき姿ではないと思うのであります。(拍手)善良なる大多数の教職員方々を、この不当なる支配から解放いたしまして、はげしい政治運動の渦中から救い出して、真に教育を守り、子供を守ることこそ、政府の本法案提出の眼目の一つであると考えるのでありまするが、文部大臣の率直なる御意見をただしたいのでございます。(拍手)     〔国務大臣岡野清豪登壇
  7. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) まず、第一点からお答え申し上げます。世間一般に、首切りが出て来るであろう、給料引下げがあるだろう、こういうようなうわさが飛んでおりますが、絶対にそういうことはございません。(拍手経過措置を、ごらんになれば、今の現員現給のまま国家公務員として引継ぐことになつておりますから、その間に一人の減員も出て来ないわけであります。(「その負担はだれがするのか」と呼ぶ者あり)国家がいたします。  次に無償原則でございますが、これは、今までいろいろ議論があり、はつきりしておりません。しかしながら、私の考えを申し上げますれば、国は、教育基本的な機会均等水準維持ということの大きなところをつかんで、これを全国津々浦々まで施行して行き、同時に、これをやります教育運営は、地方分権によりまして、これを地方にまかすという建前でございます。でございますから、養務教育に関する限りは、国と地方公共団体とが一緒になつて運営すべきものであろうと思います。そこで、われわれといたしましては、でき得るだけ機会均等に沿うような方策を講じなければなりません。そこに今度国家公務員にいたしました理由が出て来るのでございます。地方に一万何百にわかれますと、その給与待遇恩給とか、いろいろなことで、みな非常に差別がございます。富裕県貧弱県とは差がございます。これに一様に国家公務員としての待遇を与えて行く。すなわち、どんなところに勤めておる教員でも、東京のまん中で国立学校教員が受けておるのと同じような待遇を受けて、安心して大事な義務教育に従事するということを目的としておるのでございます。でございますから、無償といたしましても、それは教材費とか、教科書無償配布とか、そういう分、また今までもやつております通りに、学校の校舎を建てますのに国庫が補助する、そういう程度にいたしまして、また半面におきましては、地方公共団体はこれを充実して行くところの責任を持つているべきでありましよう。手近な仕事地方公共団体がやる点においては、責任はやはり地方公共団体にあるわけでございます。それから、われわれの理想といたしましては、先ほどお述べの通りに、父兄負担はだんだん軽くして行きたいと思います。伝わるところによりますれば、全国においてPTAが百億くらい義務教育のために負担しておるということを伺います。その数字が正確であるかどうかは存じませんけれども、相当の負担父兄がしております。私は、今後そういうことのないように進んで行きたいと存じます。  それから、地方教育委員会というものを育てるつもりか、どうするつもりかという御質問でございますが、これは、地方実情合つた教育地方でして行くためには、やはり地方教育委員会というものがあるべきであつて、そうしてこれに十分なる仕事をし、ローカル・カラーを生かして行つてもらいたい、そう考える次第でございます。でございますから、中央集権化になるとかなんとかいうことを仰せになりますけれども、今まででも、やはり教育基本内容とか、また水準とかいうものは国が指導しますけれども、地方における個々別々の教育教育委員会にまかせてやつておるのでございますから、教育委員会と今度の法案一緒に実施しますれば、中央集権化どころではなくて、地方教育委員会がなおより強く経営に当ることができる財政的の裏づけがついたと思つていただいてけつこうでございます。(拍手)  それから、政治活動につきましてはこれは、るるお話がございましたが、私のただいま考えておりますことは、国家公務員のうちでも教職に身をまかすところの人が、一党一派に偏し、もしくは一部の者の利益のため、もしくは一部の者を倒そうとか、そういうような意見を発表するのは、もつてのほかでございます。(拍手)とにかく、われわれといたしましては、今回国家公務員にいたしました以上は——今までの日教組というものは任意団体でございます。しかし、任意団体でありますが、今回もし国家公務員法施行されますならば、国家公務員法上の、公法上の保護を受けるところの団体になるわけでございます。むしろ日教組としては非常に強力になるわけでございます。しかしながら、これは必ずしも政治活動をしろというのじやありません。勤務時間とか、厚生福利の施設とか、いわゆる待遇改善のために当局と交渉し得る、正々堂々の団体となるわけでございます。しかしながら、その団体は、国家公務員でも、教職員でも、やはり全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではありませんから、ただいまの日教組活動というものは、われわれはまことに好ましくない運動だと思います。(拍手
  8. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 笹森順造君。     〔笹森順造登壇
  9. 笹森順造

    笹森順造君 義務教育学校職員法案関係法案内閣から提出せられまして、文部大臣から提案理由説明があり、ただいままた坂田君からの質問に対しまする答弁がありましたが、これを聞けば聞くほど疑問を深くするのであります。(拍手従つて、私は、この幾多の疑問点を明確にし、審議の進捗をはかる必要上お尋ねをいたします。改進党を代表いたしまして若干の質問をいたしますから、この大綱につきましては責任ある法案提出者たる吉田総理大臣より、教育行政関係につきましては岡野文部大臣より、さらに地方行財政関係につきましては本多国務大臣より、財政関係につきましては向井大蔵大臣より、それぞれ明快なる御答弁あらんことを求めるものであります。  まず第一に、総理質問をいたします。本法案義務教育費全額国庫負担原則に背馳するものではないか。ただいま、ここで坂田君の議論を拝聴して、これに対して、私は今論議をする機会ではございませんから、意見は述べませんが、吉田総理大臣は、第十五国会施政方針の演説におきまして、教育尊重文教刷新建前から、義務教育費全額国庫負担でなければならないように述べておりまするほかに、自由党といたしましても、本年の一月二十五日に、大会政策としてこれを決定して、国民の前に公約をしているのであります。私がこれだけ申し上げると、今の答弁のまつたく的はずれであるということが明らかでありましよう。(拍手)しかるに、本法案をつぶさに検討してみますると、まつたくこの精神に背馳しており、実体を備えておらないと思われるから、財政的の裏づけの計数についてまたお尋ねをしなければならない必要を感ずるのでございます。具体的なる御説明ができるものであるならば御説明を願いたい。  次に、本法案は、ただいま岡野文部大臣が申しましたように、単に義務教育学校職員国家公務員として移して、その政治活動禁止することを本来の目的とするものであるならば、その身分関係の変更だけでありまするならば、国家公務員法というものがあり、一連の法律がほかにあるのでありまするから、これを改正すれば足りるのである。私たちは、教育財政の充実をはかる法案として最初は義務教育全額国庫負担法が出るだらうと思つて予期しておつたのでありますが、いつの間にかすりかえられて、こういう職員法というものになつていた。すりかえを事とするのは私は共産党と思いましたが、表裏すりかえは吉田内閣の新しい手であると考える。(拍手)これを明確に、そうでないならばそうでないということをはつきりしていただけばよろしい。これは奇怪しごくの立法ではないか。  次に、本法案裏づけとなつておりまする内容では、かえつて教育を低下し、これによつて高揚しようとした首相の道義が、かえつて阻害されるではなかろうか。この財政の内容は、満足にこの目的を達していない。従つて、公約不履行ということである。政府責任をとるものである。責任をとり得ないような法案を出して、まつたく羊頭狗肉の策である。これがはたして道義の高揚に適するかどうかということを明快にされたい。(拍手)  次に、義務教育学校職員政治活動の特権を法の力によつて奪取しようとしている。しかして、教育家の正常な政治関心を失わせ、あるいはまた反感をさえ激発させて、民主政治の発達を停滞させ、純真なる学童に対しまして非常な不安、不信を抱かしめる結果にならないか。坂田君の説明によりましても、おそらくは九九%まではこれに反対だらうということすらここで言つておるではないか。何の必要があつてこういうことをするのか、これを総理大臣から明確に答弁をしてほしい。  その次にお尋ねしたいのは、本法案の取扱い方についてであります。当然これは事前において、あるいはこれに伴うて財政、税制の調整をなすべきはずであつたではないか。地方制度調査会において、地方行財政根本的改正の一環として本法案を策定すべきものであるとの意見から、本法案はいまだ協賛を得ていない。さらにまた、この委員会においては、議題として取上ぐべき時期でないとさえ言つておるじやないか。それにもかかわらず、これを法案として強行したのは、一体何事か。しかも未熟、ずさんなる内容を持つておるのであるから、この際すべからく、いさぎよくこれを撤回して、他の一連の法案を調整、整理した上で出すのがあたりまえではないか。(拍手)この辺でこの法案を撤回するのがよかろうと思うのだが、その意思があるのかないのか、まずこれを総理お尋ねしておきたい。  次に、文部大臣に対して若干お尋ねをいたします。本法案を提出するに至つた心境をまず聞いておきたい。第十三国会において、私たち義務教育費国庫負担法を論議いたしました際に、岡野大臣は、当時文部大臣ではなくて地方財政あるいは地方制度に関する責任者であつた。そのときに何と言つたかというと、この国家の大事な義務教育の費用に対しては、一部負担させるような法律には反対である、こういうことを何べんも繰返して言われた。しかし、その際に、これが徹底的に全額国庫負担であるならば、理論が通り、賛成をするのであるが、実際は、それでも賛成をしない、こういう態度を示しておられた。幸い、今日岡野大臣は文部大臣に進級されて、心境の変化を来して、君子豹変したものと私は考えた。しからば、そのごとくにこれが全額国庫負担でありまして、内容が充実したものならば、すこぶるけつこう。ところが、これは、先ほど岡野大臣が仰せになりましたように、単に給与についての全額を述べているだけであつて全額国庫負担というのは羊頭狗肉である。この点を明確にされたい。(拍手)  さらにまた、後段において私はお尋ねしたいと思うのでありますが、この給与においても、決して全額負担の結果になつていないのが二十八年度の予算の組み方ではないのか。この内容を明確にするにあらずんば、坂田君に対するお答えに私が満足するわけには行かないと思うわけでございます。単にその人事権を大臣が握ろうとする敵本主義であるならば、また何をか言わんや。そのことであるならば、そうと率直に答えるがよろしい。先ほどのお答えで、大体そうらしい。しかし、この人事権を義務教育学校職員全部について握らなければならない理由が一体どこにあるか。先ほど言われましたように、市町村の末端にまかすということの方がよい。そういう最終の権能をも握らないのがよいのではないか。かりに、これを例外として、何かの方法があるとして教育に介入しようというならば、これは国家公務員地方に委譲することについて、今まで法の前例があつたか、あるいは異例として困ることを生ずることではなかろうか。この点に対する所信を述べてもらいたい。  次に、二十八年度の文教予算が査定されまする当初から、本法案岡野文部大臣は予定していたのかどうか。それがなかつたために、すなわち予算の大わくができた上で急いで本法案を出したから、本法の実施にこういう困難を生じて、暫定的な本年度のやりくりをしなければならないようなものになつたのではないか。この食い違いを来したのは、そこに非常な文部大臣の手落ちがあつたのではないかという点をお尋ねしておきたい。  次に、教職員国家公務員とするのは、国庫から給与全額支出するのであるからということを申されておりますが、これは真実性がないのであります。     〔議長退席、副議長着席〕 このことを、明確に、計数によつて私どもは承知しておきたい。さもなければ審議が進まないことになる。定員定額によつて算出いたしました総額が地方自治体に配付せられますると、その給与支払いの最終の責任地方が負わされるということになりはしませんか。しかも、それが必要な全額の支払いであるならばよろしいが、ここに大なる財政的な欠陥を私どもは発見している。この財政の責任地方に負わしめるという点が、私どもが審議して明確にしなければならない大事な点であります。つまり、ある差額を地方に負わしめながら、人事権だけを握るというところに、この法案が無法なものであると言わなければならない理由がある。この基準財政の点から考えてみまして、富裕なる八都府県にはまつたく配付せぬとか、もしくは調整をすることになつている。そうすれば、国庫の金を出さなくて人事権を握るということになる。しかも、その金は、二十八年度においては今まで通りやるというのでありますから、それならば、人事権はただちに今握らないのか。それとも、自由党参議院選挙対策の必要上、人事権を握ることが忙しいので、これをぜひやるというのであるか。この点を明確にしなければ納得が行かないのであります。  ここで、本法関係財政措置内容が明確にされなければならないと思います。定員定額制による算定は、一千百五十四億円から、八都府県分百八十五億円を差引き、さらにまた地方公務員国家公務員給与差四十九億円、計二百三十四億円を差引いて、九百二十億円と私どもは見ておるのでありますが、その中の九百一億円が給与費でありまするから、先ほどお答えがありましたように、もしも給与を下げないというのであるならば、一人当り三百四十五円の不足がそこに出て来る。これが大体四十九億円と私どもは算定しておる。その金が、その通り減額をしないのならば、それは地方費の負担になるのが当然であります。もしそうでないとするならば、どこからこの金が出るのか、明確に御答弁を願いたい。これが最も大事な点として考えられるのであつて、もしもそうでないとしたならば、これが地方費の負担になることは言うまでもない。さなきだに地方財政の困難なときに、一層これに困難を加えるという結果になりはせぬか、それを明確にされたいのでございます。教材費は十九億円ということでありますが、これは文部省で算定したところでも百億あるいは二百億になつております。少くとも五十億いる。その点においても、決してこれが一ぱいになつていない。こういう内容を隠しておいて、これで全額国庫負担に近づいた、水準上つたと言うことは、私ども、どうしても納得が行かないのでありますから、計数について、はつきりしていただきたいのであります。  次に、国立学校教職員及び付属学校職員は、従来国家公務員となつておりますが、この法案が成立しますと、いわゆる義務教育学校職員が全部国家公務員ということになる。ところが、公立高等学校職員身分だけは地方公務員として残るのであります。こういう陥没地帯を私どもは見出すのであるが、この理想を遂げるために、この問題をどう取扱うのか。このことは、質問にも出ておらず、答弁にも出ておらないのでありますから、この点を明確にされたいのであります。  さらに、先ほどの坂田君の質問に対する文部大臣の答えの不満足な一点は、教育委員会運営に関して、りつぱにできるというお話でありますが、私どもの算定によりますと、大体六十四億なければ一年の経費がまかなえない。にもかかわらず、この予算の内容は、半分にも足らない二十五億くらいしか出ておらないではないか。もしもこの費用が完全に運営されることがあるとしたならば、その点を明確にするのでなければ、先ほどのお話はほごになるのであります。この点を明確にされたい。いずれにしても、義務教育費全額国庫負担総理の公約に、本法の内容はまつたく合致しない、相背馳するものでありまして、これは単に人件費が全額国庫負担でないばかりでなく、さらに、先ほどもお話に出ました教材費なり、あるいは給食費なり、あるいは教科書費なり、あるいは建物などにつきましては、まつたくこれはこの要求に合わない。結局するところ、これは羊頭狗肉の案であつて、はたして文相としてその責任がとれるかどうか、明確な御答弁を願いたいのでございます。(拍手)  次に、本多国務大臣に対して若干簡単にお尋ねいたします。本法案は、地方財政系統を混乱せしむる憂いがあるとして、以前岡野大臣は反対をしておつたのでありますが、そのあとを引受けられました本多大臣においては、この法案がすこぶるけつこうな、地方財政確立するものという確信があるかどうか、理由があるならば、これを承りたいのであります。  次にお尋ねしたいのは、本法案が実施せられると、地方費の負担が、岡野大臣の言いまするように、給与費委員会の費用、あるいはその他の費用がそのまま行われるとするならば、われらの算定では約八十八億円が不足するのであります。もしも給与を減ずる、人員を減らすというなら、これまた何をか言わんやであります。そうでないということを言明された以上、この金は当然地方自治体の負担とならなければならない。こういうところに非常な困難を地方自治体が感ずるのであります。これを危惧しておるのであります。この点に対して、その責任にある本多国務大臣から、どう一体これを調節されるのか、この点を明らかにせられたいのであります。(拍手)  次に、具体的なことでお尋ねいたしたいのでありますが、いつでも、この教育に対する大事な一つの課題として、五十年、四十年たつた老朽学校の新築改築が非常に迫られて、毎年々々この地方自治庁あるいは地方財政の担当者に、あるいは補助金であるとか、あるいはまた地方の起債であるとかいうことが要望せられておる次第でございます。ところが、この法律によつて少しもこれが改善強化せられる見込みを私は感じない。これによつて、かえつて困るのではないか。もしもそうでないとするならば、どういう心得で、どれだけこの方面で配意を持つておられるか、この点を本多大臣において明確に答弁せられたいのであります。  最後に、きわめて簡潔に向井大蔵大臣お尋ねいたします。これは、ありのまま率直にお答えを願いたいのであります。本法案は、二十八年度予算を決定するために、文部省関係予算、文部省関係地方財政平衡交付金考えられた当初、その当時から考えられておつたものであるか、並行して考えたものであるか、あるいはまた突如としてその後にこの法案が出たものではないか、これがために大蔵大臣は非常に困つたのではないか、正直なところを御答弁願いたいのであります。(拍手)  次に、本法案の完璧を期するためには、国家地方ともに、財政と税制の根本的な改変調整をしなければならないのではないか。そういうことをしないから、この法律の理論と財政収入、支出において適当に合致しないということにもなる。これを継ぎはぎするために、基準財政の建前から特に考えた、入府県等において例外を設けるというような、こういうぶざまなことをしなければならないことになる。いずれにいたしましても、こういう、はなはだ不手ぎわな、未熟な、まつたくずさんきわまるところのものを背景とした、財政的措置のできていない法案だと大蔵大臣は考えないかどうか。具体的に第三にこれをお尋ねしたいのでありますが、税制の改正をするならば、地方税を国税に引上げろというものが若干出るだろうということが論議せちれるのが当然であります。たとえば、都道府県の入場税とか奢侈税のようなものを国税に引上げようというようなことも論議になつて、その反対運動が今あちらこちらに起つている現状であります。これは、この政府の態度が明確でないから、そういう疑義の念が起つて、そういうことになるのでございます。(拍手)  これを要するのに、本案は、まつたく羊頭狗肉の法律であり、未熟、ずさんであり、単に私どもがこれに対して疑念を抱くばかりではなく、全国的にほうはいたる不評判の悪法としてのこの法律案を通そうというところに、私どもは、現政府のやり方に非常な間違いがあると考える。(拍手)もしもそうでないとするならば、その明快なる御答弁をくださるなり、さもなければ、すみやかにこれを撤回せられる意思があるかないかをお尋ねして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  10. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 総理大臣が病気のため出席できませんので、私がかわつてお答えをいたします。  笹森君は、総理大臣の過般の施政演説中に義務教育費全額国庫負担とあるのにかかわらず、この法案全額負担ではない、これは羊頭狗肉であるという御批判でありますが、全額国庫負担と申しますのは、通俗に半額国庫負担に対して申しておる言葉でありまして、義務教育費全額国庫負担と申しておりますものは、この法案にありますように、教職員給与並びに教材費の一部分を負担することを申しておるのであります。その意味におきまして、決してこれは笹森君の言われますような羊頭狗肉、欺瞞ではございません。すなわち、本法案は、義務教育学校教職員国家公務員とし、その給与全額国庫負担いたしまして、その身分を安定し、もつて義務教育における国の責任を明らかにし、その振作をはかりたいというのが趣旨でございます。従いまして教職員政治活動を封鎖することを特に意図したものではありません。国家公務員とすることによりまして副次的にその政治活動に関しまして従前と多少異なる規制を受けることはありましても、決してそれを封鎖するというようなことではないのであります。これは国家公務員としての身分の保障の確保に伴う裏づけのことでありまして、当然の結果であろうと考えております。  以上お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣岡野清豪登壇
  11. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 今の副総理からの御答弁について、もう一つつけ加えまして御説明申し上げたいと思います。  昨年できました半額国庫負担の問題ですが、あれは、御承知の通りに、義務教育費国庫負担法となつておりまして、半額とも何とも書いてはございません。しかしながら、それは半額の意味なんでございます。内容を見ればわかります。ところが、それを全額国庫負担しなければならぬという考え政府が起しまして、世間に打出すためには、やはり全額、すなわち半額じやない、全額だ、こういうことなんであります。でありますから、もともと義務教育費国庫負担法というその法律内容をかえるということをはつきり打出したわけで、当時閣議の決定といたしましても、いわゆる表題といたしまして、しかしその次には正式な名前がついて、今回出しました法案と同じ名前が書いてあつたのであります。この点は、一般の方は誤解なさるから、私からはつきりと申し上げておきます。  それから、自治庁長官のときに全額反対しておきながら、全額にしたじやないか、こういうようなことをおつしやいますが、これは、もう一度、昨年の五月十六日の文部委員会の速記録、五月二十六日の文部委員会地方行政委員会の速記録をとくとごらんくだされば、これは氷解するはずでございます。私は、その当事から、義務教育費国庫負担ということを主張して来ておるのでございます。  それからもう一つ国家公務員にして、そうして人事権だけを掌握せんがためにこうしたのじやないかという御批評がございますが、しかし、皆様方がそうおとりになつても、われわれの意思といたしましては、先ほども、また数回も申し上げました通り山村僻地における教員も、東京とか大阪におる教員も、大事な義務教育を引受けておる以上は、やはり待遇水準を同じようにしてそうして、教育機会均等を与えたいというのが国家公務員にしたゆえんでありまして、国家公務員である以上は、人事権は任命権者たるところの文部大臣にあるのは当然であります。(拍手)しかしながら、それでは地方分権に対してよくないから、法律委任として、地方教育委員会にこれを委任したのでございますから、何ら中央集権でもなければ、人事権を握らんがために国家公務員にしたのでも何でもありませんから、それはよく御了承願いたい。  それから、高等学校の先生がこれに含まれておらぬ、これはその通りでございます。しかし、われわれとしましては、まず義務教育というものは国家が大責任を持つてやるべきものだから、その義務教育に関する限り、国家公務員にしておいてやつて行きたい。あと高等学校の先生を国家公務員にするかせぬかは、これは根本的性質の差であります。(拍手)     〔国務大臣本多市郎君登壇〕、
  12. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 今回の制度の改正によりまして、地方自治行政あるいは教育委員会権限等に制約、影響のあることは、これは若干の影響はあるのでございますが、今回の制度改正の目的が、義務教育に対する国家責任明確化する大きな目的の線に沿うことでございますので、これはやむを得ないと考えております。  それでは、今回の改正が地方行政にどういうふうに影響するかと申しますと、これは、二十八年度における暫定処置に伴う影響、もう一つは、二十九年度からの平常化して行つた場合の影響という、二つにわけて考慮してみたいと存じます。御承知の通りに、二十八年度におきましては、現員現給で、はたして地方財政がまかなえるのかという問題が起きたのでございますが、これは二十八年度の財政計画といたしまして、現状をもとにして、二十八年度分の自然増を加算して地方財政計画を立てておりますから、現員現給の程度ならば、特に財源措置におきまして圧迫を受けるとかいうような点はないわけでございます。さらに二十九年度におきましては、これは相当の財政調整を行うことが適当であると考えております。なぜかと申しますと、二十九年度の分につきましては、実は義務教育職員給与の規模を一千百五十五億円、こういたしまして、それから不交付団体に交付しない金額、制限を受ける団体制限を加えて減少する金額、合計いたしまして二百五十四億円、一千百五十五億円から二百五十四億円を平衡交付金の中に留保いたしまして、差引残りの九百一億円を義務教育職員給与費のわくとして分離いたしたのでございますから、地方財政といたしましては、残る八百億円をもつて地方団体間の財政調整を行う財源にはかわりがないということが言えるのでございます。しかし、ただ平衡交付金一本でありました時分には、義務教育学校の経費も、これを一つの会計に受入れて、彼此流用することができたのでございます。その点が、今回は、この九百一億というものは教員給与費ということに特定されてしまいますので、仮此流用のつかぬという不便はございます。しかし、その不便を感ずるところはどういうところであるかと申しますと、この基準財政需要額で見積つたところの経費を、その基準財政需要額以下にしか使つておらなかつた、食い込んでいたというようなところにひどく不便を感ずるわけでありますが、今回の義務教育費全額国庫負担にして国の責任を明確にしようという見地から、この点もやむを得ないと考えておるのでございます。二十九年度の財政措置といたしましては、このままの制度でいたしまするならば、御承知の通り、不交付団体あるいは交付金の制限を受ける団体にも全額交付するという建前をとらなければなりませんから、今日の状況でも二百五十四億円の不足財源を生ずるのでありまして、これだけのものをそのまま交付するということは、平衡交付金をふやさなければなりませんから、国家財政としても非常な負担の過重であるし、さらにまた、地方団体間におきましては非常な財政力の不均衡ということになつて参りますので、このためには、国、地方を通じての財政調整が必要であると考えられます。この財政調整につきましては、国税、地方税を根本的に検討してみなければなりませんので、地方制度調査会の御審議をまつて政府の方針をきめたい考えでございます。  さらにもう一点、危険校舎に対する起債の問題があつたのでございますが、これは、今日までの危険校舎の起債等には重点的に考慮を払つて来たのでありますが、いかんせん、国家資金のわくの絶対量が足らないという点から、思うにまかせなかつたのでございます。今回は、危険校舎に対しまして国家の補助金もあることでございますので、その補助等の対象になりましたものだけでも、地方団体におかれましても、その起債を優先的に私の方に申請して来られますならば、ぜひこれに善処いたしたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣向井忠晴君登壇
  13. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 予算編成の過程では、各種の場合を仮定しまして審議検討したのでございまして、その場合において、当然この法案による教職員給与費の全額負担も予定されておりました。二十九年度以降におきましては、国、地方を通ずる財源の調整を必要とすると認められますので、地方制度調査会の審議等をまちまして、中央、地方を通ずる税制の改正等により財源の調整を実施いたしたいと考えます。
  14. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 松本七郎君。     〔松本七郎君登壇
  15. 松本七郎

    ○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつております義務教育学校職員法案に関します基本的な点につき若干質問を申し上げたいと思うのでございます。  今まで御答弁を聞いておりますると、この方律案の欺瞞性がいよいよ明らかになつて来ておるように思うのでございます。(拍手)今度のこの法律案は、波及するところは相当広範囲に及びます。また、その内容におきましても重大な問題を多数含んでおるのでございまするから、私どもは、政府がこの案を最終的に決定するまでに至るその取扱いにおきましても注目を払つてつたのでございます。  吉田内閣は、民意を尊重するために、そういうことを建前にいたしまして、たくさんの審議会を設置いたしております。もちろん、私どもは、民意を尊重するために審議会を活用するという根本的な趣旨にはまつたく異存はありません。しかし、問題は、この審議会の構成と運営にあるわけであります。最近のこの審議会の運営を見ままと、まつたく民意尊重というのは看板だけであり、世間を擬装する機関と化してしまつておるのであります。先般問題になりました米価決定にあたりまして、米価審議会を無視したやり方、これはこの間の事情を端的に物語つておると言えるのでございましよう。今回のこの法律案にいたしましても、地方財政、税制、地方行政一般に広く関係して来る重要な問題なのでございます。従いまして、政府としては、その案を閣議できめるにあたつては、当然地方制度調査会あるいは中央教育審議会にこれを諮問すべきものではなかろうかと思うのであります。本日参議院における官房長官の答弁を聞いておりますと、それは占領政策の行き過ぎの是正のために、時間がなかつたから、やむを得ずかけることができなかつた、こういう答弁をしておるのであります。ところが、この行き過ぎの是正と言つておりまするが、はたしてこれが行き過ぎであるかという判断は、だれが一体しておりますか。私は、こういう重要な問題は、この判断を含めて審議会に諮問すべきものであると思うのであります。(拍手)これをするだけの余裕がなかつたならば、むしろ延期すべきであります。そのくらい慎重にこれは取扱うべき問題であると考えるのでございますが、総理大臣の所信を伺いたいのであります。  また岡野文部大臣は、昨年教育委員会全国の市町村にまで設置されて、そうしてこれをどのように円滑に運営するかということが国会で問題になりましたときに、この教育委員会は非常に重要な問題であるからして、近くできるところの地方制度調査会に十分研究してもらつてからその案をつくりたい、こういう答弁をはつきりされておるのであります。それならば、今度の法案にはつきりしておりますように、この教育委員会権限と重大な関係のある今回の法律案を、なぜ地方制度調査会なり、あるいは中央教育委員会にかけることを岡野文部大臣は強調されなかつたか。この点を明らかにしていただきたいのでございます。(拍手)  総理大臣は、施政方針演説におきましても、道義の高揚ということをこの全額国庫負担と結びつけて述べられました。先ほどから官房長官の答弁を聞いておりましても、ますますその欺瞞性がはつきりして来たようでございます。私は、道義の高揚の根本は、まず政府が欺瞞性を払拭して、政府みずからが道義を確立することが先決問題であると考えるのであります。(拍手)  本法は全額国庫負担でないことは明らかでありまするが、先ほどの答弁によりますと、昨年できた義務教育国庫負担法は半額負担である、それが今回は全額なつた、こういうふうな印象を与える答弁をされておるのでございます。ところが、実際は、昨年できました義務教育費国庫負担法におきましては、実際に支出しておる、現実に払つておる給料半額負担するという建前になつておるわけでございます。今回の分はどうか。今回の分は、実際に払つておるものの全額を払うのでなしに、定員定額政府できめて、その分だけを全部払おうというのであります。ここにみそがある。これが、ふたをあけてみれば、全額負担でも何でもない。実は減額負担であるということをはつきり暴露しておるのでございます。(拍手)その証拠には、政府は長い間全額国庫負担と宣伝しておきながら、今回出て来た法案の名前は、義務教育学校職員法とすりかえられておるのであります。この法案の名前自体がそのことをはつきり物語つておるのであります。問題は、法案の名前がかわつたということ自体よりも、これが今まで国民全体にいかような誤解を与えておつたかということが大切だろうと思うのであります。  政府は、いやしくも国の政策を実行する上におきましては、国民に疑惑や不安や誤解のないように懇切丁寧な説明をして、その趣旨を徹底する責任があると思うのでございます。それが、全額国庫負担全額国庫負担と宣伝されております。そこで、最近も私のところにはいろいろな質問が参りますが、今度国会義務教育学校職員法というものが出て来たが、全額国庫負担法というのはいつ出るのか、こういう質問が来るのであります。現に議員の中からでさえこういう質問が来ておるのであります。いかに国民政府のやろうとしておる全額負担——ただに給与費ばかりではない、学校の施設費あるいはその他の教育費が国庫負担になつて、そうして今苦しい中から負担をしておるところのいろいろな教育費が負担せずに済むようになるのではないか、こういう期待を国民が持つてつたのは当然でございます。その期待をまつたく裏切るのであります。それでありますから、私は、この機会に、総理大臣の口から本議場を通じまして、今まで宣伝されておつた全額負担というのは決して全額ではなかつた、実はこの義務教育学校職員法に盛られた定員定額による負担にすぎないのであるということを明言されまして、国民に陳謝されるべきが至当ではないかと思うのでございます。(拍手総理大臣の所見をお伺いしたいのであります。  岡野文部大臣にいたしましても、この義務教育費国庫負担法が昨年問題になりましたときに、委員会ではつきり答弁されております。先ほどの御答弁でも、みずからそう言つておられる。自分の速記録を見てもらえばわかるとおつしやいましたが、あの当時、先ほども指摘しましたように、実際に払つておる給与費半額負担するというのが、昨年問題になつ義務教育費国庫負担法でございました。そのときに、岡野文部大臣は、半額ではいけない、全額なら自分は賛成だ、これが自分の信念であると言われたのであります。しかしながら、当時その全額というのは、定員定額による全額だということとは一言も言われておりません。あの義務教育費国庫負担法で問題になつたとき、現実に払つておる給与費半額負担する、これは半額ではいけないのではないか、全額にすべきであるという主張に対して、岡野文部大臣は、全額はよろしい、自分は全額——当時は文部大臣ではございませんが、地方自治責任者として、全額ならいい、半額だから反対だ、こう言われておつたのであります。それが、今日は定員定額制による負担を出して来られた。一体、今までの信念がかわつて定員定額ということを新たに考えて来られたものか、あるいは当時から定員定額ということを頭に描いて来られたのか、そうだとすれば、これは当時からわれわれを欺瞞したことになる。また信念がかわつたとするならば、これははなはだたよりない信念と申さなければなりません。(拍手)もしも信念が依然としてかわつておらないとするならば、こういう定員定額による全額負担法はすみやかに撤回すべきであると考えるのでございますが、文相の見解を明らかにしていただきたいと思うのでございます。  さらに、先ほどから文部大臣は、首切り給与引下げ等は絶対に起らない、こういうことを言つておられるのでございますが、一体何を根拠にしてそういうことが言えるのであろう。先般の全国知事会議の席で、全国知事会において調査いたしました結果が発表されております。それによりますると、二十八年度に実際に支出さるべく予定されている額と、今回の法案によつて負担される額との間には百三十七億円の差額があると言われております。この差額は、結局地方公共団体が自己財源でまかなわなければならない、こういうことが言われているのでございますが、一体文部大臣は、この全国知事会で出した数字は間違いであると言われるのか、この点を文部大臣並びに本多国務大臣からはつきり御答弁願いたいのでございます。もしも、こういう不足分があるとするならば、どうやつて補填されるか。また中国、四国のブロツク知事会議の申会せでは、給与費には都道府県費を計上しない、こういう申合せまでしているわけでございます。こういうことになりますと、結局は給与単価の切下げをするか、それでなかつたら、あくまでも単価を維持しようとすれば、首切りをやらざるを得なくなるのであります。こうなれば、教職員の地位と待遇を保障するというこの法律目的は、まつたく反対の結果になつてしまいます。教育は混乱と破壊に瀕することになるわけでございますが、文相の数字をあげての明確な御答弁を煩わしたいのでございます。  このように、この法案の実際に及ぼす影響というものを、それぞれの責任ある団体その他の調査に基いて考えてみますると、これは混乱を来すおそれが多分にあるわけでございます。よく世間では、給与費だけで不十分だが、まあまあ完全な全額負担に行く一歩前進として、がまんしてもらおうではないかという主張がなされるのでございますが、完全な国庫負担に行くことを目標にしながら、一歩でも近づこうという考え方は、もつともこれは了解できるところであります。しかしながら、それを容認するためには、現実にそのために弊害が起らないかどうか、この点をやはり勘案しなければならぬ。弊害や混乱の方が多いということになりますならば、かりに一歩前進の姿が多少ありましても、それはもつと慎重に考え直さなければならぬということになるわけであります。こういう点から考えましてなぜこの法案がこうも急いでやらなければならないか、その理由がもう少しはつきりわかるように、文部大臣から御説明をお願いしたいのであります。  こういう点を考えてみますと、そのときにこれから疑問が起つて参りますのが、結局は身分の問題でございます。私どもの考えでは、これは現在の日本の国の地方財政の現状からいたしまして、結局は国家義務教育の費用というものを負担する以外に道はない。そういう地方の財政が困窮しているという現実から、私どもは全額国庫負担というものを終始主張して来ているわけであります。そういう現実に立つ限りは、理論はいろいろ言う余地はございましようが、現実から教育を守つてこれを維持発展させようという建前に立つ限りは、給与費ばかりではなしに、やはり教材費教科書費用、あるいは施設費、給食費維持費、そういつた財政負担国家がする必要が現実にある。従つて国家が財政的な負担だけをやろう、そのかわり、実際の教育行政はあくまでも府県の教育委員会を中心にして、自主的に地方実情に沿つたものでやるべきである、従つて義務教育教職員身分地方公務員でさしつかえないというのが私どもの考え方でございますが、今回の法案によりますと、その身分国家公務員になる。先ほど、地方公共団体の設立にかかります高等学校、あるいは大学の教職員地方公務員になるという矛盾も指摘されておつたようでございますが、こうなりますと、教育行政、人事行政というものが一貫性を欠くことになるのでございます。教育行政、人事行政にこのような二元的な立場を許してさしつかえないものであろうか、この点も重ねて文部大臣の御答弁をお願いしたいのでございます。  文部大臣は、一昨日のこの提案理由説明にあたりまして、義務教育は最も必要なものである、従つて国が責任を負わなければならない、こう言つて、それがゆえに教職員国家公務員にするのである、こういうふうに、義務教育に対する国の責任国家公務員にするということを結びつけて説明されたのでございます。ところが、一体法的な根拠というものはどこにあるでございましよう。ただ、国が義務教育に対して責任があるから、身分国家公務員でなければならないというのでは、これは文部大臣の独善的なこじつけといわなければなりません。国の責任については、憲法二十六条にはつきりと明記してあるわけでございます。すべての国民は、その子弟が全部義務教育を受けるようにしなければならない。これは義務は規定してございますが、その義務に対して義務教育無償である、無償でなければならない。この義務教育無償にするということが、憲法の規定による国の義務教育に対する一番大きな責任ではないかと考えるのでございます。(拍手)そこで、こういう点から考えますと、私どもは、ただ国家義務教育に対して責任があるから国家公務員にしなければならぬというようなことでは、納得することができません。そういうことで説明されますと、結局これは、身分保障という美名に隠れて、政治活動禁止し、そうして先ほども御指摘になりましたように、来るべき参議院選挙を有利に展開させようというような下心があるのではないかという疑惑を国民の間にますます植えつけることになるわけでございます。(拍子)従いまして、文部大臣及び本多国務相より、一体憲法あるいは教育基本法のどの条項によつて国家公務員にしなければならぬ結論が出て来るのか、この点を明らかにしていただきたいのであります。  この身分の問題と関連いたしまして見のがすことのできませんのが教育委員会権限でございます。本法第六条によりますと、教育委員会を指揮監督する権限文部大臣に認めております。また第十条の第五項におきましては、市町村の教育委員会は、教職員の任命にあたつて、市町村長と協議しなければならぬということになつております。しかも、その次の六項におきましては、協議がととのわない場合には文部大臣に裁定権を与えているのであります。これは明らかに教育委員会根本精神を蹟翻するものであると考えます。政府はしきりに行き過ぎの是正ということを言つておりますが、これはすでに是正ではない。教育行政の官僚化、中央集権化、あるいは画一教育への逆コースであるといわなければならないのであります。(拍手教育基本法の第十条には「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つで行われるべきものである。」と規定してある。また教育委員会法第一条の後段におきましては、公正な民意により、地方実情に即した教育行政を行うために、教育委員会を設けると規定されておるのでございます。何人もこの教育行政の根本を否定することはできないはずでございます。文部大臣は、その権限を都道府県や市町村教育委員会に一部委任できるようになつておるのでございますが、これでは人事権というものは三元化されてしまう。その上にさらに市町村長が加わるということになりますと、一層人事というものは複雑化して来る。そうして、市町村長を通じまして、地方のボスがこれに介入するということになりますと、一層人事が不明朗になる危険をはらんでおるわけでございます。このように、給与の決定権というものは中央で握る、あるいは身分国家公務員として縛つてしまう、任命権は最終的には事実上文部大臣に吸い上げるということになりますならば、一体教育を不当な支配から守り抜く保障はどこに求めたらよいものか、これらの点につきまして、文部大臣並びに地方自治確立責任者であるところの本多国務相の御答弁を願いたいのである。  以上の数点を考えてみましただけでも、国民の疑惑と不安の生ずることは当然でございます。岡野文部大臣地方自治庁長官をされておつたこともございますが、本来ならば、義務教育関係というものは、地方行政と密接不可分であります。それでありますから、今度のような法律案を担当されるのには適任者であるはずでございます。ところが、事実は遺憾ながらこれと逆である。岡野文部大臣は、日本が四年の間戦争を継続できたことをもつて国民に自信を持たせようと考えたり、あるいは「臣茂」という言葉を、これは主権者である人民に対して臣であるというような、国民を愚弄した答弁を平気でやつてのけておるのである。こういつた時代感覚ずれのした文部大臣の下では、国民の不安がつのるのは当然であります。(拍手)この機会文部大臣は真剣な反省をする必要があると思うのでございますが、文部大臣の所見をお伺いしておきたいのである。  最後に、今回の法律案経過措置によりまして、二十八年度に限つてこの経過措置を規定しておるようでありますが、この法案を円滑に運用するためには、どうしても地方税制、あるいは地方財政、また地方行政全般にわたつて、国税との調整とも関連した全面的な改革を伴わなければ実現できないことは当然でございます。現に自治庁におきましては、都道府県税のうち、遊興飲食税、入場税を国税に移管するのでなければ、これは実現することが不可能であると主張しておつたのであります。それでありますから、二十九年度からは完全にこれを実行するにつきましては、相当大蔵当局にも、あるいは地方自治庁におきましても、具体的なこういつた地方制度改革の意見があるはずでございます。先ほどの答弁におきましては、本多国務相は、地方制度調査会に十分諮つて研究するというような答弁をされております。しかしながら、そういつたことをやらないで、地方制度調査会に諮らないで、この法律案を出されているのである。従いまして、この法律案関係のあるそういつた地方制度の改革については、当然政府にも具体的な案があるはずでございます。すでに諮問機関である調査会にかけないで出された以上は、これらに関係するところの具体的な改革についての構想を本議場においてわれわれに示していただくのでなければ、われわれは納得することができないのである。(拍手)  以上の諸点につきまして、従来のようなおざなりな答弁でなしに、明確にして、国民によく理解できるような、懇切丁寧な答弁をしていただきまするよう、特にこれを求めまして、私の質問を終ることといたします。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  16. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。義務教育制度というような重要な制度を、何ゆえに地方制度調査会にかけなかつたかという御質問のようでありますが、政府といたしましては、根本におきまして、地方制度の改正はすべてこれを地方制度調査会の答申をまつという建前をとつていることは、私ここに申し上げるまでもないのであります。しかるところ、昨年総選挙の結果、現内閣組織されまして、七年の占領政策のあと初めて独立国としての予算を組み、また制度を考えます際に、占領政策の行き過ぎ、その他この際に独立国としてその自主性を高める上になすべき諸施策、それを考えますにあたりまして、教育制度につきましても深く慎重な検討をいたしたのでありますが、義務教育費につきましては、半額負担法案がすでに成立いたしておりましたので、その研究をさらに重ねました結果、半額負担ではどうも不徹底である、ここを何とかして全額負担にいたしたいという念願から立案を急ぎまして、地方制度調査会がありまするにかかわらず、十分にそれに諮問することはできませんでしたけれども、しかしながら、調査会の委員の各個の意見は相当よくこれを聞きまして、その意見も参考にいたしまして、この全額負担案を決定いたしたような次第であります。そういう点につきまして、御指摘のように、いやしくも地方制度の改正である以上、これを調査会の答申にまつということが常道ではありますけれども、今回のこの義務教育学校職員法案を案画いたしますにあたりましては、そのいとまがなかつた次第であります。そういう意味で答申を求めなかつたことを御了承願います。     〔国務大臣岡野清豪登壇
  17. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申し上げます。  教育委員会のことにつきまして、何か諮問をしたらいいじやないかと————いう話がございましたが、ところが……。     〔発言する者多し〕  全額という問題につきましては、技術上の問題、財政上の問題がありますので、私が半額並びに全額ということを申しましたことは、大きな立場から言つておるのでありまして、その技術上、財政上の問題はあとから考えることでありまして、今回定員定額にしたわけであります。  それから、今度現員現給というような問題が出て来ました。これはむろん今までの既得権は必ず尊重するという意味におきまして、現在受けている通り給与定員をそのまま横すべりして国家公務員にするということでございますから、御安心を願いたいと思います。  それからもう一つ義務教育費国庫負担法というものがございまして、それには御承知の通り半額給与費を出す、それから教材費の一部を出す、こういうことでございまして、私ども、やはり全額と申しましても、その給与費がおもなるものでございますから、今回はやはり給与費ということでございますが、将来はだんだんといろいろの方面におきまして、義務教育無償理想に直進したいと思います。  それから高等学校の先生をのけるのはけしからぬというようなお話でございますけれども、私の申しますことは、義務教育というものが国家基本教育として一番大事なものであるから、まずそれからひとつ拡充して行きたいということで、義務教育という一種のりつぱなわくのはまつた、憲法上保障されたその教員について、まず今回身分、地位の安定保障をしたい、こういうことでございます。  それから指揮監督の点でございますが、むろんこれは国家公務員なつたということは、私の考えますことは、御承知の通り、その教員というものを、どうしたら地方によつて差別なく、同じようなレベルで機会均等を与え、水準維持して行けるかということから打出したのが国家公務員であります。国家公務員なる以上は、これは監督者たる文部大臣が指揮監督するのはあたりまえの話であります。しかし、それもほとんどたいていのことは全部教育委員会に委任してあるのでございますから、地方分権に対して何ら干渉することはないと私は思います。  それから、私の個人の問題についていろいろ反省しろということでございますが、よく御意見として承つておきます。     〔国務大臣本多市郎君登壇
  18. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 御指摘になりました中央と地方との公務員の給与額の差の問題でございますが、これは地方公務員給与国家公務員に準ずるという法律の根拠に基きまして、実は年々財政計画は中央の公務員の給与に準じて立てておるのでございます。このことが、府県市町村における実際の給与額との間に相当開きがありまして、いろいろ論議されていることは、御承知の通りでございます。しかし、今日の国家財政をもつていたしましては、法律で定めてありまする国家公務員給与に準ずる、このことをもつて臨むほかはないのでございまして、もし漫然と実額にこれを改めるということになりますと、また地方団体間におきまして、高いところと低いところで不均衡も生ずるわけでございますから、政府といたしましては、来年度の地方財政計画におきましても、地方公務員給与は中央の公務員の給与に準ずるという根拠に基いております。これに基きまして府県の財政措置をしてありますから、結局教職員につきましても、府県負担という義務が府県に生じますので、文部省から受けますところの地方財源と、さらに政府から受けますところの平衡交付金の財源、さらに自主的な財源とあわせて考えますときには、現状通りの状態でありましたならば、自然増加分をも含めて財政措置は整つているものであると考えるのでございます。  次に、文部大臣より教育委員会任免権の委任を受けて、その任免に、この場合、市町村長が協議にあずかるということをもつて、はなはだしく教育の域を侵すものであるかのようにお話があつたのでございますが、この際ぜひ御理解を願わなければならぬと思いますのは、義務教育学校等、市町村の中学校、小学校はすべて——もつとも私立の学校は別でありますが、今日市町村の行政の中で、やはり総合的な行政の責任主体は市町村でございまして、その市町村立の学校教員任免につきまして、市町村長がその協議にあずかるということは、まことに自然のことではなかろうかと私は思います。今日まで、ややもすると、教育委員会との間に連絡が不十分で、市町村の行政を円滑に運用することが困難であるというような非難があつたのでございますが、そうしたことも解消できる。さらにまた、今回は、その小学校教員諸君国家公務員となり、任免権を委任するとはいいながら、文部大臣——政府が掌握するのでございますから、この任免を実際行う教育委員会と市町村長と協議して行うことによつて、私はこの点は地方分権の趣旨にも沿い、また民主化の趣旨にも沿うものであると思うのでございます。  さらに二十九年度以降の財政措置についてでございますが、これはさいぜんもお話申し上げました通り、二十九年度以降平常の形でこの制度を実施いたしますにつきましては、今のままで自然増加がないにいたしましても、二百五十四億円は不足するのでありましてこれを平衡交付金にたよつて分配することは、富裕団体と貧弱団体との間の財政の不均衡を一層はげしくすることにもなりますので、ぜひ国と地方を通じての財政調整が必要であると思います。国税、地方税を通じて考慮しなければならない問題でありまして、こういう問題は、私どもといたしましては、せつかく地方制度調査会で御審議中でございますから、いま少しく御審議を経た上で政府の方針を決定する方が適当であると考えております。  そのほかに、さらに憲法教育基本法について御質問があつたのでございますが、法律を改正いたしまして、義務教育教職員国家公務員にするということは、憲法にも教育基本法にも反するものではないと存じております。(拍手
  19. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) ただいまの文部大臣の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当な処置をとることにいたします。  坂本泰良君。     〔坂本泰良君登壇
  20. 坂本泰良

    ○坂本泰良君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されておりまする義務教育学校職員法案——これは単なる職員法案と申しましても、平和憲法のもとにおきまして、日本の文教政策根本をかえるものでありまするから、私はこの見地に立ちまして、さらにまた、この法案が、自由党諸君の五月の参議院議員選挙を有利にせんがため、その場の急ごしらえの法案であるということを指摘いたしまして、四、五点御質問を申し上げたいと存ずるのであります。(拍手)  質問の第一は、本法案は文教政策基本をどこに置いておられるのであるか、総理大臣にお伺いいたしたいのであります。政府は、義務教育費全額国庫負担法案という、まぎらわしい言葉を使いまして、全額国庫負担という魅力ある言葉を、窮乏した国民に、鳴りもの入りで宣伝をいたしたのであります。そうして、修正に修正をいたしまして、ここに提出いたしましたのが、この職員法という法案であるのであります。身分法案であるのであります。その内容は、教育費の全額負担はたな上げにいたしまして、学校職員給与だけを機械的に定員定額をもつて切り下げまして、これを国庫負担しよう、こういうものであるのであります。なお、本法案は、教職員任免権並びに給与の決定権を文部大臣が掌握いたしまして、さらにまた文部大臣教育委員会の指揮監督をすることによりまして、教育中央集権化教育国家統制を実現いたそうとするのであります。  政府は、さきに教育地方分権徹底民主化のためであると申しまして、全国市町村にことごとく教育委員会を設けたのであります。しかるに、今回の法案が、教職員任免権教育委員会の指揮監督権を文部大臣の手に収めて、教育中央集権化をはかろうとするのは、矛盾もはなはだしいといわなければならないのであります。(拍手)これは、政府並びに自由党の、文教政策に対して何らの見識なきことを暴露したものでありまして、さらにまた、昨年国会で通過しました義務教育費国庫負担は、教育費の半領負担を可決して、この四月一日から実施することになつておるのにかかわらず、準備を怠りまして、大蔵省との関係で一年延期しようとしたり、今回さらにこれを一転いたしまして、全額国庫負担制度と称しまして、半額負担よりもさらに劣るところの財政措置によつて当面を糊塗しようといたしておるのであります。政府並びに自由党の、この欺瞞的な文教政策の推移を見ますときに、彼らに、教育に対する愛情と理解の上に立つところの教育機会均等教育水準維持向上、これをはかろうとする考えがどこにあるのであるか、全然ないのであります。いな、むしろ、これは政府並びに自由党が、義務教育費国庫負担の美名に隠れまして、教員国家公務員にし、全国六十万の教員政治活動禁止しまして、五月の参議院議員選挙を有利にせんとするものにほかならないのであります。(拍手政府並びに自由党は、昨年の総選挙には、世論の反対を押し切つて、無理に市町村教育委員会選挙をいたしたのであります。今また参議院議員選挙において、教員を圧迫して有利な選挙に臨まんとするのは、神聖なる教育を党利党略の具に供するほかの何ものでもないのであります。これは教育の軽視と民主化の逆行でありまして、わが党は、国民とともに、教育擁護のため憤激を禁じ得ないのであります。吉田総理大臣は、この点をいかに考えておるのか、はつきり御答弁を伺いたいのであります。(拍手)  責問の第二は、教育国民のものであります。国家のものではないのであります。国民自身のものであります。しかるに、この法案は、教職員国家公務員として、その政治活動禁止するものであります。これは教職員をして時の政府政治権力に屈服させるものと考えるのでありますが、この点に対して総理の見解を承りたいのであります。教員が直接国民全体に責任を負うということは、教育基本法に明らかにしておるのであります。おわかりにならぬ方があつたら申しますが、第六条に「教員は、全体の奉仕者であつて自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員身分は尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」と、かように定めてあるのであります。また第十条には、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」、かように規定しておるのであります。(拍手)すなわち、教員は単なる公僕ではないのであります。国民の将来に対して重大なる責任的存在であるのであります。一般地方公務員は、公共団体の行政の補助者でありますから、その機関の意見政策にさからうことはできないのであります。しかしながら、教員はそうであつてはならないのであります。国家公務員は、政府意見政策を行政面で具体化する任務を持つておるのでありますが、教員はそうではないのであります。教育は、政府意見政策に奉仕するものではなく、科学的な真理と理想とを有するものでなければならないのであります。(拍手教員国家公務員にいたしまして、これを政府の意のごとく動かそうとするのは、道理を引込ませて特定政治勢力の無理を通すことでありまして、国民の正しく向うところを誤まらせるものであるのであります。(拍手)  戦前の教育が、教育勅語により、さらには東条内閣における軍人の教育統制が未曽有の敗戦となりましたことは、われわれの記憶に新たなところであります。物を言つてはいけない、物を見るな、お前たち教員仕事さえしておればよいのだ、先生たちをかように縛り上げて、政府権力のもとに行われる目隠しの教育がどんな結果になつたかということは、われわれは忘れてはならないのであります。戦争という人間最大の悲しみを味わつた国民が、近ごろ、醜い、むき出しの支配欲と野望におどらされようとしているのであります。敗戦後の決心は次第に音を立ててくずれて行き、道に聞えて来るのは、独立という名のもとに隠れた古い思想の再現であるのであります。(拍手)この法案は、このよい例であるのであります。一見しますると福音のようでありますが、内容は御都合主義でありまして、支配者みずからの利益のみを考えて急ごしらえをした防波堤のようなものであります。国民の向上や幸福は少しも考えないところの悪法であると考えまするが、この点に対する首相の御見解を承りたいのであります。  質問の第三は、この法案は、教育基本の三原則でありまするところの教育地方分権教育民主化教育の自主性を破壊するものと考えるのでありまするが、総理大臣並びに文部大臣に所信をお伺いいたしたいのであります。敗戦後の日本は、義務教育を公の教育といたしまして、公の機関がその行政並びに財政の責任者となることは当然であるのであります。しかしながら、いずれが責任者となるかは教育民主化と重要な関係がございますから、十分慎重に考えなければならないのであります。今日の行政能率の上から見まして、市町村がその責任の主体となることは無理であるのであります。そこで、地方自治建前からいたしまして、また民主教育考えからいたしまして、都道府県がその中核的存在となることが最もよろしいのではないかと存ずるのであります。  国家が全面的に教育を統制するのは、民主主義に反し、教育の本質に反するところの目隠し教育をやることになるのでありますから、時の権力者が、教員に対しまして、お前たち仕事だけをやればよろしいのだと先生たちを縛つてしまいましたならば、現在の米ソの二大陣営が双方から圧迫をいたしておるこの日本の社会情勢下におきまして、教育国家支配の強行は、一種のフアシズムであり、平和に対する国民の切なる願いを破壊するものであると考えるものであります。(拍手)主権在民と戦争放棄の平和憲法のもとにおきまして、今こそわが国の教育のあるべき方向を確立しなければならないのであります。それは、教育が社会の平和的発展にとつて積極的な役割を果しつつある社会的、歴史的事実の上に立つものであるからであります。吉田首相と岡野文相に、この点に対して所信をお伺いいたしたいのであります。(拍手)  質問の第四は、今回の政府の措置によりますると、教育予算の管理者は文部省となるのであります。文部官僚の地方教育に対する支配権が増大されるのであります。中央集権の危険がここにも存するのであります。従来の経験によりますると、文部官僚は、地方からの陳情等に対しましては不必要に尊大であり、いばつておりますが、反面、政府部内における発言力はきわめて弱いのであります。文部予算が、いつも財政難のしわ寄せによつて削減せられるということは慣例になつているようでありまするが、この教職員給与につきましても、文部官僚にまかせておきましたならば、必ず教育財政上の破綻を来すおそれがあると存ずるのであります。  さらに、本法案は、教員給の実績主義を放棄いたしまして、定員定額制を施行しようとするものであります。政府のこの法案に伴う財政措置を見ますると、本年度の地方財政計画に算定されました員数、単価、基準にのつとり、すでに決定をいたしましたところの平衡交付金のわく内から移しまして、算定基準のまつたく異なるところの定員定額式によつて配分せんとするものであります。これは、朝に平衡交付金の方式を改め、夕にはその平衡交付金制度による財政措置を踏襲して、その配分において実績方式を放棄いたしまして、地方実情を無視した定員定額方式によらんとしているのであります。この難点は、総額が不足する場合は、定員を確保しようとしますると給与切下げを行わなければならないのであります。給与を確保しようといたしますると、教員首切りを行わなければならないということになるのであります。従つて政府がいかに詭弁を弄しましても、これによる教員の質の低下と混乱は免れないと存ずるのであります。  次に、本年度の教育予算措置はまつたくでたらめであるのであります。本年度の国庫負担金は、教育給与費及び共済組合費を合せまして九百一億円であります。教材費十九億円、計九百二十億円を都道府県に交付しまして、都道府県は、義務教育学校教職員給与負担して支給することになつておるのであります。これは、現行交付金制度にかわることがなく、地方自治の自主性を奪つて画一的な統制のもとに置き、政府財政措置の不足を都道府県に転嫁しようとするものであります。しかるに、財政の窮乏した都道府県は、教育費に自己財源の捻出を好まないのは自明の理であつて、これを強行しようとするとき、小学校教員給与は一箇月千七百五十二円、中学校教員は千四百二十円のベースの引下げとならざるを得ないのであります。これで、はたして第一条に示しておりまする学校教員の地位と待遇の保障ができるのでありましようか、断じてできないと存ずるのでありますが、文部大臣並びに自治庁長官の御所見を承りたいのであります。(拍手)  質問の第五は、教職員給与負担について、十七日の閣議決定では、当分な間、都道府県の負担とすることになりましたが、前日には、自治庁の要求によりまして、二十八年度に限りと限定しておつたものであります。かように二転、三転いたしましたのは、全面的の税則改革がこの二十八年の一箇年にできる見通しが困難であることを暴露しておるにほかならないのであります。その結果は、東京初め富裕八都府県に対しましては、当分の間、国庫負担金を全部または一部交付しないことになつております。そこで、今回の財政措置では、八都府県の分二百五十四億円が除外されているのでありますか、このように府県によつて取扱いの差異を設けることは、全額国庫負担制度の趣旨に反するものであります。さらに、これら富裕都府県の教員給与国庫から負担されないにもかかわらず、身分国家公務員とされるところの矛盾と相なるのでありまするが、岡野、本多両大臣はいかようにこの点を解しておられるか、お伺いいたしたいのであります。次に、政府は、さきに地方制度調査会をつくりました。本法案のごとき地方税の全面的改革を招来するものに対しましては、調査会の答申をまつべきであります。この調査会に対して、岡野文部大臣は故意に出席されない。それは説明ができないからであると聞いておるのでありますが、調査会では、このような重大問題は答申をまつてやることを決議しておるにかかわらず、これを無視したことは、政府みずから必要機関をつくりながら、これに従わない、違法を犯しておるのでありますが、この点に対して、本多国務大臣はいかように考えておられるか。また、中央教育審議会に対しても、これを諮問いたしまして、十分検討した上に、その決議をまつてやるべきであります。しかるに、中央教育審議会は、去る十一日総会が開かれ、審議会が初めての仕事として本法案を取上げて審議しましたところ、反対の強硬意見が続出いたしまして、文部省側と意見の対立のまま散会いたしたのであります。政府は、日本の文教政策について、平和国家にふさわしい、りつぱなものをつくり上げるために中央教育審議会をつくつて、そうして各方面から有力なる委員を任命して発足したばかりであるのであります。これと意見の対立のままに、この法案を強行するということは、これはやはり、みずからつくつた概関を無視した、違法の、独善的のそしりを免れないのでありまするが、この点について文部大臣はいかように考えておられるか承りたいのであります。(拍手)  かようにいたしまして、日本教育行政、財政制度、ひいては地方自治の上に大きな転換を招来するこの重要法案が、無準備のまま強引に提案される目的は、教員身分国家公務員に縛り上げまして、教育中央集権教育国家統制を復活する意図以外の何ものでもないのであります。岡野文相は、給与の不足類は地方から負担してもらうから給与切下げにはならないと申しておるのであります。本多自治庁長官は、都道府県に対し負担をさしずする権限はないから、出さなくてもよろしいという意味を申しておられるが、この点に対して、両大臣のはつきりした御答弁をお願いいたしたいと存ずるのであります。  最後に、この法案は、要するに義務制学校教職員国家公務員に縛り上げまして、そして給与だけを国家が定額に引下げ負担する、こういうものでありまして、全額国庫負担はまつ赤なうそであります。教育費の全体は大幅に削られて、減額負担になつておる。この事実は、前質問者も申し上げた通りであります。二十八年度の予算におきまして、軍事費が総予算の二三%であるに比しまして、教育費はたつた二%であるのであります。これがために、六・三校舎の建築は進まず、あぶない、こわれたところの校舎と、一ぱい押し詰まつた教室の中で、手不足の先生によつて行われる教育はどうなるのでありましよう。やがては、金持の子供は上級学校へ進み、貧乏人の子供は兵隊へというようになるのでありましよう。かくして、国家教育統制は行われ、再び教育政治権力の手段にまかせることになりまして、青少年に取返しのつかないような大きな不幸をしいることになるのであります。そして、遂には教育機会均等は破壊され、民主教育は根底からくつがえされるのでありましよう。(拍手)このようにいたしまして、父兄子供教員政治権力に屈服いたしましたときに、再軍備と戦争への道が開かれるのであります。(拍手)われわれは、第二次大戦における悲惨な敗戦は何がこれを引起したのか、これよりも、なぜこの大戦が予見され、防止され得なかつたかということを考えるべきであります。われわれは、戦争の犠牲を悲しむと同時に、再び戦争に巻き込まれ、悲惨な犠牲を引き起さないように、全力を尽さなければならないのであります。  私は、今国会におきまして、一連の悲しむべき流れの現われを見出すのであります。警察法の改正は、本質は現警察を廃止して、新たな国家の手に帰一するところの治安警察の中央集権化であります。そして、国内治安のためと称した保安隊は、純然たる軍隊にするのであります。スト禁止、独禁法の改正は、産業動員計画の障害を取除くためであります。義務教育学校職員法に現われました教育中央集権化は、警察の中央集権化と呼応いたしておるということをここに総合して考えまするときに、日本の新しい国軍設置の土台が、進軍ラツパとともに、ここに現われると存ずるのであります。(拍手)このことは、日本の問題であると同時に、アメリカの極東政策のテンポを早めるかどうかの問題でありましよう。日本に再軍備をさせようとするところのアメリカの欲求に応ずるには、アメリカにおいて七月に始まる新予算の編成に際して、日本の軍事援助の材料を供せんとするものでありましよう、けさのニユースで、この国会国民を侮辱して、不信任決議で大臣を罷免された池田君が、何の目的でアメリカに行くのでありましようか、かようにして、日本の軍備は整い、自衞のためとか、反共連盟とかの美名のもとに日本の青少年は動員され、国連協力と称しまして、アメリカ軍の尖兵を承るのでありましよう。貧民と労働者は画業計画に動員され、低貸金、低米価は、病気と栄養失調と飢え死にするどころか、水素爆弾のもとにおいて、日本の山河とともに、日本国民はめちやめちやになつてしまうのでありましよう。(拍手)  吉田、岡崎のブレーンは、アメリカ日本州化に狂奔しております。閣僚と自由党諸君は、竹やりを持つて右往左往しておるのであります。文部大臣は、吉田総理の道義の高揚というお託宜をもつて、神聖な教育を犠牲にしている。日本教育を戦争へ戦争へと持ち込んで行くのでありましよう。文部大臣は、その功労によつて、今審議されておる栄典法によりましてポンネツト帽子をかぶつてフロツクを着て、胸に勲章をさげた、正二位勲一等岡野清豪でも考えておられるのでありましよう。しかしながら、われわれは断じてこれにはだまされないのであります。日本教育を守るために、断固われわれは反対して、この法案の撤回を要求するものであるが、吉田総理並びに文部大臣は撤回する勇気を持つておるかどうか、ここではつきり答弁を願いたいと存ずるのであります。(拍子)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  21. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  義務教育学校職員法案が、何か強権国家の初めであるかのような御批判でめりましたが、そういう意図は毛頭持つておりません。この法案目的といたしまするところは、義務教育に対する国の責任明確化し、また義務教育水準維持向上に資しようというだけでありまして、なるほど文部大臣が仕免権を持ちまするけれども、その運営にあたりましては、市町村教育委員会に委任いたすのでありまして、私は、その間に、実情に適した、いい学校運営ができることを期待しておるりであります。  さらにまた、この法案の提出が、何か参議院選挙をねらつた政治的の意図があるかのごとき御批判でありましたが、他人心あり、われこれを付度す、という言葉がありますが、まさにその御批評はこれに値すると思うのであります。     〔国務大臣岡野清豪登壇
  22. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申し上げます。  るる御熱弁を伺いましたが、結局問題は、国家公務員にするのは、参議院選挙のために教員を縛つておく、こういうことだろうということに壱是尽きておりますが、しかし、私どもといたしましては、平衡交付金ができまして以来、とにかく地方財政の現状からして、どうしても教員給与だけはひもつきにして国家が補助してくれ、そうしなければ、せつかく平衡交付金で勘定してもらつているけれども、給与がもらえないからというのが、二十四年以来の輿論であつたのであります。その通りわれわれは実現しつつあるのでありますから、私は、文部省が、とにかくこれを把握してどうしよう、こうしようとかいうことでなくて、むしる教員のお方が、なるべくちやんときまつたその定額をもらいたいのだという、その輿論に追従しただけであります。  それから、待遇の適正ということをお出しになりましたが、今度こそ待遇が適正にできるのであります。今までは、一万有余の地方団体でみな待遇が違つてつたのです。これを国家公務員といたしますれば、東京のまん中で国立学校教員がもらつておると同じものを、どこの教員ももらえるということになりますから、待遇は適正になるわけでございます。  それから、不当の支配とおつしやいますけれども、われわれは決して不当の支配はいたしません。それは、教育委員会と、それからわれわれとのこの関係をごらんになれば、よくおわかりのことと思います。  それから、定員定額で、将来必ず首切りが出て来る、切下げが出て来るというお話でございますが、われわれは、国家教育を十分やつていただきたいという熱意こそ持つておれ、その教員に不遇を与えることはいたしません。その意味におきまして、首切りもせず、切下げもしないように、定員定額の方策を実行して行きたいと考えておる次第でございます。  それからまた、これをやらないところに国家公務員の資格をやるのはどうもおかしいじやないかとおつしやるけれども、しかし、これは、二十一年から二十四年までは、平衡交付金で国家が補助しなくて、国家の金で出さなくても、やはり国家公務員であつたのでございますから、その意味において、資格は問題にならないと存ずるのでおります。     〔国務大臣本多市郎君登壇
  23. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 二十八年度の予算的措置といたしましては、この給与費負担を都道府県負担といたしますが、結局政府から都道府県に交付いたしまする——都には交付しないのでありますが、府県に交付いたしまする平衡交付金も、それから文部省から交付いたしまする今度の負担金も、合せて財政調整の財源になるのでございまして、これを合計いたしますと、二十八年度の財政規模を策定し、そこに算出いたしました平衡交付金の額と一致するのでございます。でありますから、現行通り負担を府県が負担して行きます分には無理は生じない、かように考えておるのでございます。  さらに、地方制度調査会について御質問があつたのでございますが、地方制度調査会には、地方制度の全般について御諮問申し上げておりますので、今回政府がいかように教育制度を改革いたそうとも、それに拘束されることなく、その上に立つて自主的な意見の御答申があるものと考えております。  また、今回のこの二十八年度の措置につきまして、非常に地方団体問に財政的の無理があつて、理解されないのではないかというような御意見もあつたのでございますけれども、さいぜんから申し上げました通り、特に今度の改正のために財政的に負担の増加ということがないのでございますから、私は、法律が制定公布されましたならば、必ず理解、遵法されることを信じております。
  24. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  25. 山崎岩男

    ○山崎岩男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、日程第一とともに、内閣提出酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案の両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  26. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 山崎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  日程第一、酒税法案酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長奧村又十郎君。     〔奧村又十郎君登壇
  28. 奧村又十郎

    ○奧村又十郎君 ただいま議題となりました酒税法案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告を申し上げます。  この法律案は、今回税制改正の一環として酒税の税率を引下げるとともに、この機会において酒税法の全文を改正いたそうとするものであります。  その内容について簡単に申し上げますと、まず税率につきましては、さきに昭和二十五年末に政府はひとまず軽減措置をとつたのでありますが、なお相当高率であり、酒類密造の弊害も著しので、今回特に大衆的酒類に対しまして二割ないし三割程度引下げることといたしておるのであります。次に、現在の基本税と加算税の二本建の制度を一本の税率に統合することといたしておるのであります。さらに、酒税を滯納した場合においては利子税をあわせて徴収するこことし、また酒税の保全をはかるため新たに証紙制度を採用することとするほか、製造免許、監督等に関しまして所要の規定を整備いたしておるのであります。  本案につきましては、当委員会に付託せられまして以来、慎重審議を軍ねました結果、一昨二十一日質疑を打切りましたところ、自由党の淺香委員より各派共同の修正案が提出されまし  その内容は、まず第一点といたしまして、配給酒の制度が、原案では向う一箇年とありますのを、当分の間存続と修正いたします。第二点は、指定卸売業者に対する加算税の制度を、原案では今後一箇年とありますのを、今後二箇年間存続と修正いたします。第三点は、免許の取消要件の中で、国税もしくは地方税の滞納処分を受けた場合とありますのを削除いたしまして、酒税の滞納処分の場合に限ると修正いたします。第四点は、雑酒二級の中で、主としてかんしよを原料とする特定のものにつきましては、今後一箇年間を限り、雑酒二級の税率よりも、さらに一割程度引下げた税率を適用する。以上の修正点であります。  次いで、修正案及び修正部分を除く原案を一括して討論に入りましたところ、自由党を代表して川野委員、改進党を代表して内藤委員、日本社会党を代表して平岡委員、日本社会党を代表して佐藤委員及び同友会を代表して坊支員は、それぞれ希望を述べて賛成の旨討論せられました。続いて修正案及び修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、いずれも起立総員をもつて可決され、よつて本案は修正議決いたしました。  次に、酒税の保全及び酒類葉組合筆に関する法律案について申し上げます。  酒税が国税収入の中に占める地位にかんがみまして酒税の保全と酒類の取引の安定をはかることが肝要と思われますので、この際、酒類製造業者などが組合組織し、酒類の自主的な需給調整を行うことができることとするとともに、酒税の保全のために政府が必要な措置を講ずることができるようにいたそうとするものでありまして、その大要を簡単に申し上げますと、まず、酒類製造業者または酒類販売業者等は、原則として税務署の管轄区域をその地域として、酒類の種類別、卸売、小売別に、それぞれ法人格を有する酒造組合または酒販組合組織することができることといたしております。組合は、政府の行う酒税の保全措置に協力するほか、酒類の需給が均衡を失するおそれがあると認められる場合におきましては、組合の特別の議決によつて、酒類の製造石数、販売石数あるいは価格に関する規制等を行うことができることといたしているのであります。この規制を行うにつきましては、独占禁止法、事業者団体法などの関係があるのでありまして、大蔵大臣の認可を必要とするといたしております。また大蔵大臣は、右の認可をするにあたりましては、あらかじめ公正取引委員会の同意を得なければならないことといたしております。単位組合は、都道府県ごとに連合会、連台会はさらに中央会を組織することができることといたしておりまして、おおむね単位組合の事業に準じてその総合調整等を行うことといたしているのであります。  本案につきましては、慎重審議の結果、本二十三日質疑を打切りましたところ、自由党の川野委員より各派共同の修正案が提出されました。その内容を簡単に御説明いたしますと、この法律案の第三十八条の規定では、組合が特別な議決をする場合には、総組合員の半数以上出席し、その議決権の三分の二以上の多数による議決を経なければならないこととなつているのでありますが、原案のままでは、業界の現状並びに将来にかんがみまして、組合の円滑なる運営を期しがたいと思われますので、これに対し、石数を加味し、特に定款で定められた場合には石数の三分の一以上の議決を要することとすることができるようにいたそうとするものであります。  次いで、討論を省略し、ただちに修正案及び修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、いずれも起立総員をもつて可決いたしました。よつて本案は修正議決いたしました。   右御報告を申し上げます。(拍手
  29. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時散会