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1953-02-03 第15回国会 衆議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月三日(火曜日)  議事日程 第二十四号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     午後一時五十九分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。小畑虎之助君。     〔「定足に足りない」と呼び、その他発言する者多し〕
  4. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 小畑虎之助君。     〔「定足数がない」と呼ぶ者あり〕
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 定足はあります。小畑虎之助君。     〔小畑虎之助君登壇〕
  6. 小畑虎之助

    小畑虎之助君 改進党を代表いたしまして質問演説を行います。   首相は、その施政方針演説において、道義高揚を強調せられたのであります。(「それがどうした」と呼ぶ者あり)それがどうしたかということをこれからやります。(拍手)もし御希望ならば、自由党諸君がその場におれぬところまでやります。(拍手)——道義高揚は究極において教育の作振にまつのほかはないと前提せられまして政府が今回義務教育費全額国庫負担を決意し、教職員国家公務員とする措置をとるのはこのゆえにほかならぬと申されたのであります。あたかもこの措置道義高揚の要諦であるかのごとく宣言せられたのであります。政府は、今回の施策によつて義務教育の面目の一新を信ずるものであるとも申されたのであります。吉田内閣道義高揚を説く資格ありやいなやのこの毒舌はしばらく差控えることといたしまして、吉田内閣義務教育費国庫負担及び教職員国家公務員とすることの措置のねらいが道義高揚にある、しかもその効果として義務教育面目一新を信じているという点について、私は政府のお考えを伺いたいのであります。いずれにいたしましても、不徹底なる作文であるとは思うのでありますけれども、この措置によつて道義高揚ができるというのであるが、どういうふうに一体吉田さんが道義高揚をなさろうというのであるか、画一的な教育方針によつて国民道徳を指導せよというのであるか、まずこの点を明らかにせられたいと思うのであります。  質問の第二点は、これによつて義務教育の面目が一新されるというのでありまするが、政府はいずれの方向に向つて義務教育の面目を一新しようといたしておるのであるか。右であるか、左であるか、政府の意図するわが国文教政策根本方針をお伺いしたいのであります。この点は、岡野君から伺つてもよろしゆございますけれども、首相演説に対する質問でありますから、吉田総理大臣からもお答えを願いたいと思うのであります。  義務教育費国庫負担は、わが党がかねてから提唱したところでありまして、私は原則としてこれを認むるものであります。言うまでもなく、憲法第二十六条に規定する義務教育無償原則は、これを尊重しなければならぬのであります。地方自治体を教育費の悩みから解放する方法としては、平衡交付金飛躍的増額でもない限りは、義務教育費全額国庫負担が最も適当なる策であると思つたからであります。  以上の理由によりまして私どもはこれを原則として是認するものでありますけれども、われわれの最も遺憾といたしまするところは、この問題につきまして、今回政府及び政府与党のとつた不可解きわまる態度であるのであります。すなわち、半年前の国会において、義務教育費半額国庫負担するというところの現行法が成立して、今や四月一日の実施期を前にいたしまして、大蔵省はその実施を一年延期したと申されるのでありますが、その実施期を前にいたしまして、与党諸君、あるいは政府諸君が、半額国庫負担どころか、一躍全額国庫負担に大飛躍をなさなければならぬということに至りましたその理由は、いまだこれは明らかにされておらぬのであります。ことに、半額国庫負担法律案が成立いたしまする際、この審議をめぐつて当時文部省地方自治庁の間に立つて文部省側国庫負担要求を押えておられましたところの岡野文相が、今度は豹変して全額国庫負担主張者なつたということは、その実況はまことに一場の喜劇であると思うのであります。今、この問題と文相態度は、党略のために神聖なるべき義務教育をもてあそぶものとして、きびしき世の指弾を受けているのであります。吉田内閣道義高揚の資格なき一例として、かつまた政党政治信用を傷つくるものなりとして、ほうはいたる世論の非難が集まつておりますことは、文相も御承知のことであると思うのであります。(拍手文教の府をつかさどる岡野さん、あなたの面目のためにも、政党政治信用のためにも、勇敢にこれらの経緯について御説明を願いたいと思うのであります。  世上疑いの的となつておりますのは、教職員国家公務員とすることによつて教職員政治活動を禁止する内意を包蔵しておるのではないかということであります。この疑義は、前に述べました通り、本法案要綱成立の当時の不可解なる経緯とその目的を、道義高揚教育面目一新という怪しげなる作文に求められたる点に生じたものであると私は思います。教職員政治活動を禁止しようという底意であるならば、地方公務員法の第三十六条の改正によつて、あるいはその他の立法措置によつて、表門から正々堂々とこれをなさるべきはずであると思うのであります。(拍手吉田内閣一流ごまかし政策は、道義高揚という美名に隠れ、あるいは教育面目一新という美名に隠れてもつてこのことを断行するというのでございましたならば、われわれは吉田政府態度つて痛撃を与えなければならぬと思うのであります。(拍手義務教育の権威のために、政府の御見解を承りたいと思うのであります。  首相は、本年年頭の記者会見において各省経費節約の一端といたしまして行政整理を強調せられ、また去る二十五日の自由党大会においても、この趣旨を力説せられたと承つているのであります。由来、各省経費節約重点行政整理に置かれることは当然でありまして、しかも老首相のきわめて御熱心なる再三の宣言に対して、私は敬意を表するものであります。しかしながら、過去何回かの行政整理が、その都度与党たる自由党議員諸君によつて骨抜きにせられて来たことを思うと、実際問題として、国民が期待するがごとき行政整理吉田内閣政治力でできるかどうかということについて、一片の危惧なきを得ないのであります。自由党行政整理国民に公約して来たし、その総裁である吉田首相が強硬にこれを果そうとしているのに、一向実現せられないということも、これは天下の奇怪事であります。  首相は、この国会施政方針演説において、今回はふしぎにも行政機構合理化という言葉をお使いになつている。こういう表現をなさつている。現内閣閣僚諸君も、よく合理化という言葉をお使いになる。あるいは経済合理化といい、生産合理化といい、先般の演説におきましても、蔵相も、外相も、小笠原さんも、みんな合理化合理化と言われたのでありますが、これほどあいまいな言葉はないのであります。合理化というのは一体何であるか。これを文法上の動詞で言うならば、いわゆる善処するということであるのであります。また、ずいぶん便利な言葉であります。行政機構合理化とは一体どういうことであるか。首相の言われる行政機構合理化は、かつて行政機構改革といい、行政整理といわれて来た従来の言葉がありますのに、特に今回これを避けて、行政機構合理化と表現せられましたことは、この問題に対する首相の熱意が、周囲の実情に押されて、あるいは後退したのではないかというところの疑いを起させるのであります。(拍手)貧弱な国家財政現状で、国民に耐えがたい負担を押しつけているところの原因は、国民経済に比べて過大なる行政機構を維持しているがためであるのであります。行政整理行政機構改革は刻下きわめて重大な問題であることは申すまでもないのであります。よつて、ここに、首相のかたき決意を国民とともに再確認するために、御抱負を伺いたいのであります。  行政機構改革は、中央地方を通じてこれを行わなければ徹底しないのであります。しからざれば、首相のいわゆる有機的行政機構とはならぬのであります。よつて中央機構改革と府県、市町村の機構改革は、同時にこれは行われなければならぬと考えるのであります。地方制度につきましては、地方制度調査会に季託し、その成案を待つておられることは承知いたしております。ひとり適正規模町村合併のみ引離してこの際実行せられるという意思があることを聞くのでありますが、いかなる理由によつて適正規模町村合併を急がなければならないというのであるか、この点を伺いたいと思うのであります。(「論理がわからぬぞ」と呼ぶ者あり)論理がわからぬのは君の頭が悪いからだ。(拍手笑声)われわれが真剣に国政と取組んでいたしているところのこの議論、おそらく自由党諸君にはわからない。(拍手笑声自由党諸君がわからぬから、自由党にわからしてやろうと思つて、おれは声を張り上げておるのである。(発言する者多し)黙つて聞け。黙つて聞けないなら、何時間でもこの壇上でがんばるぞ。わが改進党には、諸君のやじによつて倒れるような議員は一人もおらぬのである。(拍手笑声)  二十八年度予算案について大蔵大臣質問いたします。財政規模の問題につきましては、先般来各党の議員諸君から質問をいたしまして、散布超過にからんで、いろいろな角度からすでに論じられ、結局意見の相違であるという結論が多かつたようであります。私は、前の諸君質問との重複を避けたいと思うのでありまするが、財政規模の問題それ自身としては、その膨脹がこの程度であれば、無条件にはインフレ要因となるものではないと思つておるのであります。(「何を言つておるかわからぬじやないか」と呼び、その他発言する者多し)お前らは知つておるか。(発言する者多く、議場騒然向井さんも、この程度ならインフレにならぬと申されておるのであります。少くとも国会はさように申されております。九千六百億だからインフレになるならぬというように簡単に片づけられるものではないのであります。  わが改進党は、かねてから公債政策主張して参りました。インヴエントリー・フアイナンスの廃止も提唱して来ました。投資特別会計の設定も、一千億減税とともに、わが党が唱え来つたところであります。向井財政と申しますか、自由党財政と申しますか、二十八年度予算案を通じて見ると、財政政策については、以上述べました通り、わが党がかねてから主張をいたしておりました右四項目が新しき特徴として認めらるるのであります。一見、これはわれらの勝利であつて……。     〔発言する者多し〕
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御静粛に願います。
  8. 小畑虎之助

    小畑虎之助君(続) 自由党内閣をしてわれわれの主張を行わしめるの感があるのでありますけれども、実は、似て非なるものがあるのであります。(拍手)ついては、わが党が以上のことを実行いたしたいと考えましたことにつきましては、絶対必要なる条件があるのである。この条件が満たされておらないから、この予算はだめだと言うのである。(拍手)  第一に、各省経費節約であります。行政整理のことにつきましては前に申し述べましたが、現在の行政機構をそのままにいたしておきましても、相当額節約ができることは明らかである、しかるに、予算案には、この点何らの配慮も努力もないのであります。     〔「水を飲め」「しつかりやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  9. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御静粛に願います。
  10. 小畑虎之助

    小畑虎之助君(続) 君は亘四郎か。くんで出せ。——首相演説中、行政機構簡素化行政運営能率化は、前内閣以来の宿題として、政府欠員補充措置を引続き強化し、配置転換等によつて事務能率を上げておると言われたのでありますが、予算案を通じて見るに、一向その措置の跡が見当らないのであります。(拍手欠員補充措置を強化すると申されておりますが、一体これはどういうことでありますか。われわれの常識から考えまするならば、欠員補充ということは、欠員ができても補充をしないということであろうと思つておるのであります。(「その通り」)それを強化するということは、どういうことであるか。今まで欠員補充原則を徹底的に実行しておらなんだということであると私は思うのであります。(拍手)われわれは気休めの演説で満足するものではない。節約の実が盛られていない予算案に対して遺憾の意を表するものであります。  第二は、長期計画性が必要であるのであります。予算は、事務の性質上からも、便宜上からも、一会計年度を限つて組むのでありますが、国民経済には一年限りの区切りはないのである。すべての事業について長期計画性がありましたならば、かりにその進行過程において多少インフレ的傾向を示すことがありましても、結局は国民経済力培養ということになるのでありますから、財政投資におきましても、絶対この長期計画性が必要なのであります。しかるに、本予算を通覧いたしまして、その跡が一つも見られないということは、はなはだわれわれは遺憾であるのであります。(拍手)  第三は、支出に重点性を与え、しかもこれを生産活動の面に用いることによつて、いわゆる散布超過の弊を克服することができるのであります。しかるに、本予算案は、消費予算傾向がはなはだしく、従つて生産裏づけなき資金の放出が充満いたしておるのであります。また、各省要求を羅列して予算総額の九千六百億に計数を合せた総花予算であつて重点性を欠くところの予算であるのであります。そこで、私は、大蔵大臣心境についてまず伺つておきたいのであります。  昭和二十八年度予算案を編成せらるるにあたりまして、大蔵大臣は非常に御苦労をなさつたようであります。貯蓄国債反対投資特別会計反対、イソヴエソトリー・フアイナンスの廃止反対、——これらはみな健全財政を破壊するものであるとして、ずいぶんがんばつ反対をせられたようであります。日本金融資本は、一斉に蔵相緊縮方針を支持したようであります。難航の上、いよいよ九千六百億円ができ上つたときに、蔵相は涙をもつてこの予算案をのむと言われたとか言われないとかの話が伝わつておるのであります。とにかく大いに慨嘆せられたと聞いておるのであります。国家財政は、予算規模や構成にもちろん留意しなければなりませんけれども、結局は、これを運用する人が自信を持つておらねばならぬのである。今大蔵大臣考えておられる構想で、インフレなどは絶対に起さないという御自信があるのであるかどうか、大蔵大臣心境を伺いたいのであります。自信がないけれども、自由党から押しつけられてやるのだ、涙をもつてやるのだということならば、今のうちにあなたがやめて、自信のある人にかわつてもらうのが、国家経済のために適当であると思つておるのであります。(拍手)  諸君自由党諸君、これは重要なことであります。諸君国家のために良心をもつてお聞き願いたいと思うのであります。諸君は、私が演説すればするほど、おもしろがつておりますけれども、それでは国家のためにならぬのである。これは重要なことであります。ドツジ方式がよろしい、それでなければならぬと考えておるような大蔵大臣があつたといたしますならば、弾力ある有機的な財政は行えないのであります。申し上げるまでもなく、財政政策遂行手段であり、政策遂行手段たる財政は、常に流動発展しなければならぬのであります。従いまして、財政財政のための財政であると考えて、収支の均衡だけを第一に考えねばならぬ人たちにこの予算の実行をまかすことは危険であります。大蔵大臣は、国民貯蓄心を振起し、資金の還流を期することによつてインフレの招来を防ぐと申されておりますが、もし大蔵大臣が、この予算の本質がインフレ予算であつて、外部からインフレ抑圧手段を別に考えなければならぬとお考えになつておるようなことがありましたならば、国民貯蓄心は決してよくならぬのであります。インフレになることを知つて貯蓄をしようとする者のないことは申すまでもないところであります。私は、この点につきまして、大蔵大臣のお気の毒な心境と、ほんとうの心構えを承りたいのであります。(「君の演説はわからぬじやないか」と呼ぶ者あり)君の頭が悪いからわからない。そういうかつこうの頭は、このりくつがわかるものではない。頭のかつこうが悪い。(笑声)  重点計画性ある財政投資として、私は農業生産を第一に掲げだいと思うのであります。外国食糧玄米換算で二千九十万石輸入し、その代金千五百億円を払わなければならない現況におきまして生産拡充のための資材購入もできない。生活の向上はもちろんあり得ない。私は、この問題を解決することは、貿易振興とともに、現下、日本経済の二大問題であると思うのであります。かりに食糧自給ができて、しかも貿易が戦前の程度まで達しないまでも、平常に返つた状態を想像してみまするとき、私は愉快に満ちたところの祖国の状態が目に映るのである。伝え聞く農林省の食糧増産五箇年計画ということは、どういうことになつたか、その行方が知りたいのであります。廣川君の怪力によつてこれが実現させてもらえることだと私は思つてつた国民も期待しておつたかもしれない。廣川君、せつかく怪力を発揮するには念仏が少し足りなかつたのである。(拍手)  農業生産に向つて財政投資は、農村に向つて行われるのであります。財政投資行つても、決してインフレを起すものではないのであります。従来から所得率の低い農民に貯蓄を奨励するとともに、適当の購買力を与えることになりまして、ひいて中小企業も繁栄することになつて、心配はないと思うのであります。こういう投資は、ある程度公債財源でまかなつても、原則として間違いではないと思う。歳出と歳入のつじつまが合わぬから、その分を赤字公債で補おうというところの公債政策は、われわれのとらぬところであります。生産過剰で操業短縮を行わなければならぬところの現状におきまして農村に向つて財政投資を行うことがインフレ要因にはならぬと思うております。この点、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。  貿易振興について外務大臣貿易規模の拡大を説かれ、子の手段として、小笠原国務相は、経済外交と、国際競争力培養と、貿易商社の強化を提唱せられておるのであります。商品市場開拓のため経済外交の必要でありますることは申すまでもない。特に国民は、東南アジア地域との親善関係を回復いたしまして、もつて市場開拓をはかりたいと要望いたしておるのでありまするが、先日の首相の御答弁によりますと、アジア諸国との外交については、過去五、六年にわたつて死闘を続けた間柄であるから、一朝にしてその損害を埋め合せることは、いくら誠心誠意でやつてもできるものではない、外交には誠心誠意が必要であるけれども、また忍耐が必要であると言われて、これらの国々との親善関係一朝にしてならざる見通しを、明らかにせられておるのであります。しかるに、昨日の御答弁によりますると、首相の御答弁からも、あるいは外務大臣の御答弁からも、小笠原さんの御答弁からも、ますます親善関係が増して来て、だんだん了解を得ることになつて、見込みがついて来たというような御答弁伺つたのであります。政策もでたらめだが、議場における答弁もでたらめであるというのが、この吉田政府特徴であります。(拍手)終戦後すでに七年を経過し、講和条約も成立いたしている今日において、首相からなおこの言葉を聞くことは、すこぶる心細いのであります。今や親善回復の好機が至つておると思うのであります。この際、積極的なる親善外交に、あるいは経済外交に力を集中すべきときであると思うのでありますが、この点に関する外務大臣経済審議庁長官の御意見を伺いたいのであります。  経済外交の成功によつて商品市場開拓せられましても、貿易打開根本国際競争力培養であります。これについて、首相経審長官も、ともに安い原料を確保して生産コスト引下げることを力説せられておるのでありますが、首相アジア諸国との親善関係が容易に回復しないという見通しである。目下向米一辺倒貿易が行われている際、安い原料を確保するということはなかなか困難であります。コスト引下げは数年来持越しの懸案であつて、ふくれ上つた人口を擁し、資源に乏しい日本として、貿易立国が叫ばれてすでに久しいものがあります。これを解決することは、農村対策とあわせて最も重要な問題であるが、それが今日なお数年前そのままの課題として、政府の口からこれを聞かなければならぬということは、いかにひいき目に見ましても、自由党政策の貧困と言わなければならぬと思うのであります。(拍手)  コスト引下げは基本的な要請である。しかし、それは個々の産業対象考えただけで解決する問題ではない。日本の全産業、全経済対象として根本的に考え直さなければならぬ問題であると思うのであります。安い原料を入れることもむろん必要だが、日本経済全体の機構なり生産性なりを考え、また労働力だけあり余つておるところの現状をどうするかを根本にわたつて検討しなければならぬところの必要があり、これは深き考慮を要する点であろうと思うのであります。この点に関する小笠原経審長官の御意見を伺いたい。(拍手)  政府は一千億円の減税をすると言うのであるが、これはいわゆる税法上の減税終つて自由党の伝統であるところの、ごまかしによつて、やがては自然増収の名において苛斂誅求がなされるのであろうということを、われわれはおそれるのであります。(拍手国民所得五兆六千億の裏づけについて、私はすでに確信を持たぬのでありまして、巷間、過大見積りの声もしきりであります。よつて、二十八年度において、実質上自然増収というものはほとんどあり得ないと思うのであります。しかるに、末端の税務署におきましては、課税標準であるところの所得見積りを増加することにきゆうきゆうとておりまして、課税の成績を上げることに専念いたしております現状において、政府末端機関に命じて徴税上の増収をはかろうと思えば、容易になし得るわざであるのであります。  二十八年度予算につき補正予算の必要が生じましたときに、その財源は、国債によるか、しからずんば法律上の増税によるか、またしからずんば陰に隠れて、自然増収の名において事実上の増税をはからなければならぬということに立ち至るのであります。(拍手大蔵大臣は、国債はこれ以上発行したいと申されております。しかしてまた、補正予算は出さないと申されております。しかし、世上常識補正予算必至と見ております。首相演説をせられまして、占領行政行き過ぎを是正する、その他経済面においても百年の大計を立つべき年であると申され、警察制度改革を行うということを申されたが、それが今期国会法律案となつて出ておらないのであるけれども、もし首相の申されるがごとく、占領治下における行き過ぎを改正するところのもろもろの事項が法律案となつてここに提出せられた際、警察制度改革首相の意図せられるがごとき法律案となつて出たときに、予算措置を伴わずしてこれが行えるのであるか。世論補正予算必至とこれを見ておるのであります。しかるにもかかわらず、二十八年度の予算について補正予算があり得ずと言うがごときは、児戯に類する欺瞞と言わなければならぬのであります。(拍手)われわれは、かくて政府が窮境に立つたときに、禁を破つてまた国債を増発するか、あるいは苛斂誅求を行うか、その二途いずれかを選ぶに至らざるかをおそれるのであります。国税減税しても地方税で上る。国税地方税も、同じ国民のさいふから出るのである。それでは千億減税は馬脚を現わしたものだと、地方からどんどんわれわれのところ通信が参ります。国税地方税を通じて、国民の税負担はどうなるのか、前年比でもつてこの際明らかにしておかれる必要があると思うのであります。(拍手)  大体私の演説はこれをもつてつたのでありますが、(「もつとやれ」と呼び、その他発言する者あり)御希望ならばやります。諸君は私の演説中において——目が見えないが、君はだれだ。そのめがねをかけた男はだれだ。自由党の者だ。(笑声拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  11. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  義務教育費国庫負担についてまずお答えをいたしますが、道義高揚は、単に国庫負担だけではその目的を達することができないことは当然であります。各種の施策の総合された結果が道義高揚となるのであります。しかしながら、各種の施策と申すが、そのうちでも教育は大事であり、義務教育はまたそのうちの大事な要件であります。この義務教育に対して国家が全額負担して、もつていかにこの義務教育の重要であるかを政府は示さんといたすものであります。  次に行政整理合理化でありますが、なぜ合理化と言つて行政整理と言わないか。しかしながら、その実体においては同じものであります。行政整理は、あたかも一家のすす掃きのごときものであつて、年々整理をなし、合理化をなす必要があるのであります。ゆえに、政府は年々これをいたしており、将来も年々これをいたす考えであります。過去において何らの行政整理ができなかつたようにお話がありましたが、すでに二十何万以上の行政整理を過去においていたしております。今後においても、ますますこの問題に注意を払つて、支出の節約をはかり、行政の能率化をはからんとするものであります。  その他の問題については主管大臣からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣向井忠晴君登壇〕
  12. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 今回の予算は、あくまで健全財政の方針によつて編成いたしましたので、わが国経済の状況、財政金融の情勢等から見ますと、この際はインフレを生じない範囲で蓄積資金の活用をはかつたり、市中消化の可能な限度内で公債を発行することは、むしろ時宜に適した措置考えております。  一般経費が減つていないということでございますが、これは極力節減を努めました。また経済力の充実発展と国民生活の安定とに重点を置いて編成いたしたものでございます。昨年末実施しましたベース・アツプを平常化することによる歳出の増加を考慮に入れれば、その内容において極力節減を努めていることは、おわかりだと思います。補正予算も出しません。また公債も出しません。苛斂誅求もやらずにずつと参りますつもりであります。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  13. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 東南アジア諸国との貿易の増加は、お話のごとく一朝にしてならないことは申すまでもございませんが、しかし、ドル物資の輸入転換市場としての重要性からも、輸出市場、ことにプラント輸出の主力を占める市場としての重要性から見ましても、きわめて重要な市場でありまして、この開拓はわが国にとつて緊要でございます。従いまして、これが市場開拓を促進するために、通商協定の更改ないし適切な運営によりまして、貿易規模の拡大振興をはかり、フランと輸出及びこれを中心とする民間別の経済提携並びに投資を促進するために、本国会に輸出入銀行法及び設備輸出為替損失補償法の改正をお出しいたしまするし、重機械技術相談室新設等の諸施策を実施し、また外貨予算及び別品外貨制度の適切な運営によりまして輸入の促進をはかるようにいたしたいと考えております。  さらに、商品のコスト引下げについて、一々の産業でなく、全産業対象としなければならぬという意味のお話がございましたが、この点はまことにごもつともであります。商品のコスト引下げが急務であることは、これは日本の商品の対外競争力を高め、輸出を振興するためにぜひとも必要なことでございまするので、政府におきましては、まず各種産業の基礎となる石炭及び鉄鋼について、これが価格引下げのために、その合理化促進に努力いたしまするとともに、エネルギー源たる電力につきましても、電力の供給増加を目標として電源開発を促進いたしたいと考えておるのであります。また、右以外の一般産業につきましても、機械設備の近代化、経営管理の合理化、企業組織の合理化等による産業の全合理化促進に努力いたしまして、漸次、仰せの通り、全産業の商品価格の引下げをはかりたいと考えておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
  14. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 食糧の増産の大事なことは御指摘の通りでございます。この食糧の増産につきましては、農林省といたしまして、総合的にこの増産計画を立てているわけであります。しかし、その骨格をなすものが土地改良にあることはお話の通りでございます。そこで、土地改良について、予算が、あるいはそのときの国家財政によつて制約さるることはあるでありましようが、しかし、われわれといたしましては、長期的、計画的にこれを実行しなければならぬのであります。さような見地からいたしまして私はこの国会に案を具して御審議を願う考えでおるわけであります。(拍手
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 今澄勇君。     〔今澄勇君登壇〕
  16. 今澄勇

    ○今澄勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、吉田内閣財政経済政策、とりわけ自立経済達成の方途と、貿易並びに経済外交について、政府の所信を問わんとするものでございます。(拍手)  昨年下半期以降、日本経済最大の希望でありました貿易は極度の不振に陥り、当初十七億ドルと予定せられました輸出を十一億ドルに修正しなければならなかつたことはきわめて重大な問題であり、全国民経済自立達成のための抜本的政策を待望しておるのであります。思うに、独立の基礎は経済の自立であり、日本経済自立の中心は、一つは貿易振興であり、一つは国内市場の拡大でございます。  現在の日本経済と戦前の日本経済とを比較してみるときに、貿易指教と生産指数との関係において大きな相違を示しております。経済審議庁は、昭和二十八年度経済指数について、鉱工業生産一四〇%、輸出総額十一億五千万ドル、特需三億二千万ドル、国民生活水準八八%と発表しておりますが、このことは、生産指教は戦前を上まわつたにもかかわらず、貿易規模だけが戦前の四割にも達しないで、一応の均衡が実現したということであり、戦後のわが国の経済機構が大きく戦前に比して変化したことを物語つております。(拍手)すなわち、戦前の軽工業中心の産業構造が重化学工業に重点を移して来たのでありますが、今やその重化学工業が、コスト高のために輸出競争力を失つたところに、現下の重大問題があると存じます。(拍手)他面、世界の貿易市場は、今次大戦の結果、東ヨーロツパ諸国や中国の世界市場よりの離脱となつてますます狭まり、加うるに深刻なるドル不足と世界各国の輸入抑圧政策は、まさに日本経済の活路たる貿易を窒息せしめんとしつつあるのであります。日本経済の現段階は、かくのごとき一瞬の楽観をも許されざる情勢でございます。  そこで、私は小笠原経済審議庁長官に伺いたいのでございますが、率直に申上げまして、政府はこの停滞したわが国の経済回復にどういう手段をとろうとしておるのか。かつてルーズヴエルトは、一九二九年来のあの大不況に際し、ニュー・デイール政策をとり、公共事業投資の増大と農産物価の引上げをなし、国内購売力を増加させて成功いたしております。現下の西ドイツは、国家の総力を輸出貿易に注ぎ、免税措置を初め、あらゆる政府の助成策によつて、これまた成功しつつあります。一体、吉田内閣は、そのいずれを選ばんとしておるのであるか。小笠原長官の貿易振興計画は、苦心のあとも見られまするけれども、残念ながら予算的な裏づけがございません。積極的な国際市場開拓の助成案もなく、さりとて国内市場開拓に対しても計画的な対策が見られません。この際、政府は、このいずれの対策をとるかというその基本的態度について、明確なる御答弁を願いたいのであります。(拍手)  次に、日本経済の将来をどう建設するかという設計がなくては、経済政策というものの樹立はございません。その青写真の中で、今年度、来年度と工事が進むわけでありますが、大蔵省当局が承認をいたしまして、政府として責任を持つべき経済再建の設計図があるのかどうか。内閣の諮問機関にすぎない経済審議庁の計画などではなくて予算裏づけある政府長期経済再建計画があるならば、小笠原、向井両大臣から伺いたいものと存じます。(拍手)  今回の政府の施政演説を承つて、まことに奇異にたえないのは、小笠原、向井両大臣の食い違いであります。それは本年度予算の上にも明瞭に現われておりますが、その一例として、通産省の自立経済達成予算中、外航船舶、自動車、輸出向けプラントなどに出す鉄鋼補給金二十六億円は、全額大蔵省によつて削除されております。また、二十八年度分七十万八千キロワットの電源開発を行うための財政投資所要額は、当初三百五十億円と言つておりましたが、二百五十億円に押えて出した通産省の計画は、百五十億円にこれまた減額、さらに二十八年度から五箇年間で、石炭コスト引下げ用の七十三本の採炭用縦坑に対する、五百億と計画せられた長期金融が、大蔵省の産業資金計画によれば、せいぜい三十億の開銀の融資になつております。なお運輸省が出しました新造船四箇年計画の二十八年度三十万トンも、財政資金の圧縮で二十万トンに切り下げられており、金融資本生産経済が隷属いたしておる現吉田内閣のもとにおいては、輸出増進のための具体的な予算はほとんど見ることができない状態でございます。(拍手)施政演説において小笠原長官が文字通り大声叱咤されましたけれども、二十八年度予算に関する限り、自立経済達成の基礎は崩壊しておるものといわなければならぬ。(拍手)  吉田総理の関心薄い商工行政は、ときに文部大臣の通産大臣兼務という、常識では考えられぬこともございましたが、今や通商は外務省に、資金は大蔵省に押えられておりまする今日の商工行政においては、担当者として努力を傾けつつある小笠原長官の経済自立対策も画餅と帰したところに、吉田内閣の基本的な性格がうかがえると思う次第でございます。(拍手)この八方美人予算から、どうして自立経済を達成するのか。私は、資金運用部が持つておりまする国債数百億すらも日銀に売却、現金化してまで投資しようとしておりまするインフレ財政投資を、何がゆえに重点的に自立経済達成に使わなかつたかということを、大蔵大臣並びに通産大臣に伺いたいと存ずるものでございます。(拍手)  次に、私は、政府貿易第一主義で行くからには、政治外交とともに通商経済外交が活発に動かねばならないと思います。その意味において、貿易に重大関係を持つておりまする外交について岡崎外務大臣質問いたします。わが国は、ただいま米国を初めイギリス、イタリアなどと通商条約を結ぶべく折衝中でございますが、これらの経済外交の結果は、ただちに日本経済の運命を決する重大要素であるにもかかわらず、とかくその協定内容が、わが国に常に非常に不利に定められておるということは、遺憾にたえざるところでございます。  まず、私は、日米通商航海条約について、日本経済の死命をアメリカに押えられないよう、次の諸点をお伺いいたしたいと思います。一、銀行の貸付業務に対し、外人にも内国民的待遇を与えるのかどうか。一、第七条、外国業者が取得した円貨によつて既存株式を取得することも含むのかどうか。一、さらにまた、同条の既得権については、占領中における不平等の既得権を認めるが、ごとぎ態度に出るのかどうか。一、政府独占の業務と同業種の業務に従事せんとする外国企業に対し、政府企業と同等の待遇を与えることを要求せられておるが、これに対しては同意するのかどうか。以上の諸点は、日本の国内資本を擁護し、経済自立のための最低線でありますが、交渉の経過並びに政府の所信を伺いたいと思います。(拍手)  次に、ガットの加入について、外務大臣は、ロンドンで開かれている委員会で、今回は加入でき得る見込みであると答えておられますが、わが国に対しては相当大幅なる制限がつけられることを、われらはほのかに承つております。なおアメリカ新政府が、ガット機構を通じて西ヨーロッパと日本の通商をいかに調整せんとしておるか、外相の見解を伺いたいと思います。  第三には、現在中共向け禁止物資を各国で協議するためと称せられるココムのことでございます。これが内容、性格並びにそこで決定されておる事項などは、きのうのお答えにまると、秘密にするという申合せであるとのことでございましたが、一体だれの許可を得てさような申合せをしたのか。吉田内閣交代の際は、政府はどうするつもりであるか。かつまた、日本は加入したか加入しなかつたかくらいのことは発表できないはずはございますまい。(拍手国会にも発表できない国際協定を結んだということは、国会の権威を無視するものではないか。一体、だれが代表者として臨んだのか、ひとつ御答弁を承りたいと思います。もしこれが答弁できないとするならば、文字通り岡崎外交は秘密外交とのそしりを免れないものと存じます。(拍手)  第四には、近く再開されまする日韓会談、特に李承晩ラインについて、業者代表の民間外交のみにこれをゆだね、なすところなき外務省の態度は、まことに無為無策と申さなければなりません。わが国は、李承晩ラインの撤廃と引きかえに請求権を放棄する方針であるなどと伝えられておるが、事実かどうか、外相の信念をお伺いいたしたいものと存じます。(拍手)  さて、次に貿易振興策でございますが、問題は、世界の貿易市場として残された東南アジア、中国、南アメリカ、その他の後進諸国が、消費植民地経済から計画的な年次生産計画を遂行しつつあることでございます。日本をはるかにしのぐ、綿紡千二百万錘といわれるインド、四箇年計画のビルマ、パキスタンなどは、必然的に相手の計画に合致する貿易でなければ取引は不可能でございます。わが国が無計画に買付に出れば、手元を見られて値段がつり上り、反対に輸出の際は、国内業者が相争つて安売りをしておる現状では、国家の責任において管理貿易を断行し、市場相互の総合調整を行う態勢確立の必要を認めまするが、これに対する通産相の見解を求めます。特にアジア貿易については、これら諸国の生産計画に対応した貿易計画を立てるために、アジアの経済会議を開き、貿易の促進をはかり、抜本的な対策を政府みずから積極的に展開すべきものであると思うが、これに対する見解を承りたいのであります。(拍手)  第二点は中共貿易でございますが、私は、ソ連圏に編入せられた中国との貿易に、戦前の経験をもつて過大な期待をかけるものではございません。しかしながら、これを最小限度の軌道に乗せるためには、西欧諸国のパリ・リストの線、すなわち硫安、亜鉛鉄板、苛性ソーダぐらいまでは輸出を認むべきであると存じます。中共向け輸出入申請手続処理の不円滑、保証料率の高率問題、銀行金融のあり方など、中共貿易に介在する不明朗なる姿を一擲いたしまして、石炭と鉄鉱石の輸入ぐらいは、吉田内閣としても最低限やるべきものであると思います。(拍手)かくすれば、バーター・システムで年間二億ドル見当を期待できると思うが、これに対する政府の所信はいかがでございますか。  第三点は、東南アジア開発であります。ただいま、通産相から、抽象的な東南アジアに関する開発構想が述べられましたが、私は、英国のコロンボフラン、米国のポイントフォア、国連のエカフェなどの後進国開発計画が急速に推進されるとともに、米国の過剰ドルを、政府みずから経済援助の方式で、急速にアジア開発に投入されることが必要と思います。アジアは、人口総数十二億五千万人、世界人口の五三%を示しながら、総国民所得は一〇・五%にすぎない五百八十億ドルという低水準であります。米国の海外援助による開発計画が促進されるならば、ドル投資のアメリカ、経済復興の東南アジア、輸出市場を求めている日本並びに西欧、この三者の間に、アジアを中心とする物資の交流が行われ得ると存じます。われらは、市場であるアジア国民の生活を高め、その購買力を高くいたしまして、開発のための技術と生産財の提供を通じ、東南アジア市場の開拓と組織化をはかることが、わが国当面の急務であると考えます。アメリカ新政府は、スタツセン氏を通じて東南アジア開発に手をつけさせるといわれておるが、外相並びに通産相は、強力なる意思のもとに経済外交を行うべき絶好のチヤンスであると思うが、その見通しやいかに。(拍手)  第四点は、貿易不振の原因であるコスト高についてお伺いをいたします。ただいま、コストは全般的に引下げに努力するという御答弁でございましたが、安くてよい品をつくるために、現在最大の隘路となつているのは、石炭と鉄鋼の価格が国際価格に比し高過ぎるということでございます。すなわち、石炭はコストの中の半分がきわめて低い労務費であるにもかかわらず、わが国において、七千カロリーのものがトン当り二十一ドル三十セントであるのに比べ、米国においては九五ドル、イギリスにおいてはハドルである。実にわが国の石炭は、米英に比して三倍強の高炭価を示しております。  次に鉄鋼も、その生産コストに占める石炭の比重の大きいことを考えるとき、鉄鋼価格の引下げも、石炭価格を引下げることによつてのみ達成できると存じますから、輸出振興の最大眼目は石炭コスト引下げにあるという結論に相なるのであります。(拍手)にもかかわらず、このようなわかり切つた問題を、現在に至るも政府があえて実施しない理由がどこにあるのか、疑わざるを得ません。しかも、高い高いといわれている石炭が、きわめて低い労務者の賃金によつて、この程度で押えられていたことを忘れてはなりません。(拍手政府は、この炭価の引下げに、いかなる具体策をお持ちになつているか、通産大臣の明確なる御答弁を望みます。(拍手)  伝えられております政府の消極的施策によつて今すぐどのくらいの値下げが可能か、縦坑やカツペ採炭などの施策による成果は、三年先か五年先かに現われることで、ございまして石炭価格の引下げは、今すぐ、あすからでもやらなければならない、きわめて緊急を要する問題であります。この逼迫した現状を打開するために、石炭の価格を国家統制することが一番よろしいし、またこれ以外に方法はないと思いますが、政府は石炭価格を統制する考えはないか。(拍手)  石炭鉱業資本家にあらゆる支援を送ることはできても、国家経済死活の要請に彼らを従わせることのできないような政府は、何と弁解しようとも、石炭業者に致命的な弱みを持つておるものといわなければなりますまい。(拍手)また、どうしても石炭の価格統制ができないとするならば、現在GIF十五ドル程度の外国炭を、輸出用の物資を生産しておる面に優先的にまわすために輸入してはどうでしようか。さらに、私は、わが国の石炭産業日本経済の要請にこたえるためには、すでに私企業としてその限界に来ておると確信しておるものであります。(拍手)われらは、石炭の持つ国家性を考えるとこに、この際、政府は、イデオロギーとらわれない日本民族の自立経済のめ、石炭を国家管理にするような意志はないか、これをお尋ねいたしたいと思うものでございます。(拍手)  次に、現在鉄鋼が国際価格に比して二割強の割高のため、最近プラント輸出はほとんどストツプになつております。この実情を打開するため、輸出用鉄鍋に補給金をつけようとした小笠原予算は、向井氏に一蹴せられておりますが、通帝相は、一体化のいかなる方法でプラント輸出の促進を考えておられるか。鉄鋼は、最近の国際情勢ではますます輸出困難で、ベルギー、西独などに比して太刀打ちできない日本は哀れな情勢でございますが、通産大臣の対策いかん。(拍手)  第五点は、貿易に伴う海運の振興策であります。せめて特定航路を命令航路として、国の助成策によつて外国海運と対抗するくらいな政策を樹立すべきものであるが、どうか。新造船計画資金計画についても、新しい本年度予算に対する石井運輸相の計画並びに三十万トン既定計画は遂行できるかどうか、御答弁を願いたいと思います。(拍手)  次は国内資源の開発でございます。電源開発と食糧増産は、資源開発の中核をなすものであります。豊富にして低廉な電気があれば、動力として石炭も必要なく、それだけでもわが国の製品価格が安くなるにもかかわらず、現政府は、これに全力をあげないで、その責任をあげて九電力会社にゆだねておることは、いかなる理由によるものか、了解に苦しむものでございます。  去る十三国会において、電源の早期開発を理由にして電源開発促進法を立案し、本法によつて行う電源開発には外資の導入も可能である、開発コストは安くつくと答弁されましたが、電源開発のための外資の導入は、今やまつたく見込みのない状態で、開発コストの安くなるといわれた低金利資金見通しも困難である。二十八年度財政投資も半額に削減せられておるような状態であります。政府は、電源開発計画にどの程度重点を置いておるのか。少くとも重点が置いてあるならば、予算財政投資も集中的に使うべきではないか。利権の争奪に重点を置くような電源開発で、経済再建は断じてできません。(拍手)ポツダム政令で、再編成令のもとに九分断されました電気事業形態のごときものこそ、占領政治行き過ぎの最大のものであるとして改むべきでございましよう。もし、政府は、この電気事業の形態については、現在の私企業のままおやりになるとするならば、元の所有者から電力復元の要求が起ることは当然でございまして、この際これらの地方公共団体並びに元所有者の復元に対する政府の明確なる答弁を求めるものでございます。(拍手)  次に、私どもが最も留意し、監視せなければならない政策は、兵器の生産でございます。経済審議庁の資料を見るまでもなく、昭和二十七年度の貿易が辛うじて均衡を保つたのは、八億二千四百万ドルの特需並びに新特需があつたからでございます。このいわゆる米国の特別発注によつて辛うじて日本経済が維持せられておるところに、わが国経済根本的な弱点があります。政府の行き当りばつたりの財政経済政策で、基幹産業は不安となり、商品コストは高く、貿易は不振、国内市場も余力なき現在、たといそれが出血受注でも、雨だれ発注でも、生きんがため必死になつて、血に飢えた資本家がこれに殺到する姿は、まさに吉田内閣経済政策失敗から来るところの大きな悲劇であると申さなければなりません。(拍手)兵器の生産は、目下教育発注の段階でございますが、本格的な受注近しと見通した業界は、出血受注を強行して、実績の確保と受入れ態勢確立のため狂奔いたしております。  昨日、アイゼンハウアー大統領の一般教書により、わが国に対する再軍備の要請は必至であり、これがわが国の兵器生産の本格化を推進することもまた明らかなところでございます。政府が、総理の言明のごとく、真に再軍艦はやらないというのであるならば、軍需消費から国民生活を守るべき基本的な対策をこの際樹立すべきではないか。(拍手)さらに航空機の製造を通産相は強力に主張しておるが、わが国産業構造中における兵器産業規模と、航空機も含めた軍需産業計画をどの程度に規正するのか、通産大臣の懇切詳細なる説明を私は求めるものでございます。(拍手)  以上申し述べました自立経済達成の矛盾が、人口問題も包含しながら集中的におおいかぶさつておりますのが中小企業の問題でございます。私は、前大臣に比して、率直に、新通産大臣が中小企業対策に熱意を示しておることを認めます。しかしながら、吉田内閣の弱肉強食の基本的な性格と、財政金融政策がすべて中小企業の犠牲の上に打立てられておる現状のもとにおいては、小笠原通産大臣は、麻酔をかけることはできても、断じて中小企業を救うことはできないのであります。(拍手)すなわち、金融対策これ中小企業対策というがごときは、中小企業振興根本方策を慮れたものでございます。私は、日本経済全体の有機的な発展が民主的に行われ、その中で中小企業の立場が守られて行くことこそが抜本的な対策であると存じます。占領政策是正の名のもとにおいて、逆コースと財閥復活の日本経済、しかもこれが自立の道を指導し得ずして自由放任する現政府のもとでは、断じて中小業者の活路はございません。いわば鬼の念仏的なる中小企業救済対策について、私は簡単に以下の諸点をお尋ねいたしたいと思います。(拍手)  一つは、通産省は今もなお中小企業庁については廃止の方針であるのかどうか。一つは、設備の近代化と中小企業関係の貿易振興対策があるのかどうか。一つは、協同組合化促進の具体的な指導方針と、経営経理指導機関の確立対策及びこれらの予算措置について伺います。新たにできた中小企業金融公庫は全中小企業金融機関の統合的機関たらしめて、個人金融は国民金融公庫、組合金融は商工中金、相互金融は信用協同組合等々の既存機関の機能を整理体系づけて、これらの総合的なトンネル機関として新たな公庫ができるというのが理想的な姿である。当初三百億の一般会計の中に別に特別会計も設けて中小企業金融をなさんとした政府が、にわかに金庫に変更した理由は、巷間相当とりざたされておるが、その理由を伺いたいと思います。(拍手)  最後に、私は、吉田総理に以下四点の質問を申し上げます。重複するかもしれませんが、特に総理のために、私はこの四点については御答弁を願いたいと存じます。  第一点は、第二次吉田内閣以来、日本経済再建の中心を、総理は外資導入に置いておられたものと存じます。元日銀総裁たりし新木氏の駐米大使としての布陣も、再度にわたる白洲特使の派遣も、いちずに外資導入のためでなかつたのではございませんか。しかるに、きのう、総理は、外資は入りつつあると御答弁なさいましたが、われらの調査によれば、とるに足る外資導入はどこにも見当りません。(拍手)われらは、総理の責任ある答弁と、今後の外資導入に対する見通しを承りたいと存じます。(拍手)  第二点は、かくて、今や総理は、日本経済再建の中心を、やむなく貿易振興に求めておられることと存じます。しかるに、政府の通商外交は、イギリスに対しては特に事ごとに苦杯をなめさせられております。このときに、皇太子殿下が戴冠式に渡英されることは、経済外交の絶好のチャンスであるにもかかわらず、国民の代表者たるにふさわしき人物を同行せしめないで、宮内庁式部官以下数名のみで出発をされるということは、国民外交の何たるかを知らざるものと評するのほかはございません。(拍手)武器なき日本のひのき舞台は外交であることを思うならば、私はこの際特に首相の考慮を要望して、その見解を求めます。(拍手)  第三点は、日米通商条約を初めとして、中共貿易、ガット加入等、一連のこれらの締結条件は、極端に西ヨーロッパの諸国に比べてわが国が不利でございます。わが国が対等なる条件を独立国として当然与えられなければならないと考えるのに、何ゆえ総理は、あらゆる条約にわたつて、かかる一定の原則的な不利なる条件に服従されておられるのか、私は総理がアメリカと秘密協定をしておられるものとしか理解することはできません。おそらく、米国は、日本の再軍備実現まで、この不平等なるいばらの道を日本に歩ましめるのではないか、私は総理に伺いたいと思う次第でございます。(拍手)  第四点は、政府の外資に対する期待がはずれ、貿易についても自立経済を達成できない状態なつたとき、総理は日本経済再建の中心を一体何に求められんとするでございましよう。もし貿易が伸びなければ、国民は死するのか、それとも再び軍需産業の勃興によつて最後の活路を求めるのかどうか、これが政府財政経済政策を通じてながめた率直な私の感想でございます。私は、経済を通じ、産業構造の変化を通じ、国民の生活を通じて、死するか、それとも再軍備して特定国の言うことを聞くかという関頭に日本国民を追い込んで行くような勢力に対しては、断固として屈服することはできません。(「その通り拍手)このことが、国内に共産党の脅威をますます増大せしめる真の原因であり、私は常に共産主義と対決する国民の一人として、この現実を心から憂うるものでございます。(拍手)  今や、アイゼンハウアー米国政府の強硬な巻返し政策は、極東における戦争の気構えを濃厚にいたして参りましたことは、本日の新聞紙上にもこらんの通りであります。今や、国民は、対岸の朝鮮事変に加うるに、樺太、千島についても無関心たり得ない状態となりました。総理はいかなる解決策を持つておられるのか。ただに樺太、千島のみならず、それらを含む東洋の北辺は、力と力の対立という憂うべき形勢となつて参りました。これまでの総理の答弁では、国民の危惧と不安はますます増大するばかりでございます。私どもは、国の自衛力は認めるけれども、再軍備については断固反対でございます。願わくば、総理は、日本の運命のわかれ道となりまするこれらの国際情勢の見通しと、兵器生産と再軍備について、良心に恥じざる御答弁をいたされんことを御期待申し上げまして、私の質問を終る次第でございます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私に対する御質問に対して答弁をいたします。  外資導入がわが国の経済復興に最も重要であることは、これは申すまでもないのであります。このために政府としてはできるだけの努力を払つており、昨日、この衆議院においてと思いますが、大蔵大臣から説明をいたした通り、現に外資は入りつつあり、将来も入ることを私は確信いたします。なおこの交渉は続けて参ります。  皇太子殿下がこのたびイギリスの戴冠式に御招待に応じて御渡英になりますについて、この際国民外交ということでありますが、皇太子殿下の御使命は戴冠式に列席せらるるというのであつて、これに乗じてというのもおかしくありますが、国民外交をもつて云々ということは、これは御渡英の趣意に反しますから、私はただちに御提議には賛成はできません。  アメリカとの間に何らの秘密条約もないことは、しばしば申した通りであります。しかして第三次大戦争とか、いろいろ国際の危機とい皇とを言われますが、私がしばしば申した通り、アイゼンハウアー大統領にしても、またチャーチル総理大臣にしても、絶えず、戦争の危機は薄らぎつつあり、遠のきつつありということを言つておるのであります。私は、この両国の首相もしくは大統領が言わるるについては、相当の理由があつてのことと確信いたします。すなわち、今危機ありということは、これは一種の宣伝ではないかと私は疑うのであります。ゆえに、日本がこのために再軍備を強要せらるるということはないと思います。軍備を持つか持たないかということが、日本国民の自由意思にありということは、しばしば米国政府が言つておるところであります。ゆえに、日本政府としては強要せらるることもなく、かりに強要せられても、独立国である限りは、ただちにこれを受入れなければならぬということはないと考えます。  以上お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  18. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 今澄さんにお答えいたします。今澄さんの御質問はきわめて多数でありましてあるいはもう少し他の機会に申し上げさしていただく方がよいかと思う点もございまするが、大体御質疑にお答え申し上げたいと存じます。  第一に貿易振興策についてお話がございましたが、これにつきましては、先般来、経済外交の促進、それにわが商品の国際競争力の強化並びに取扱い商社の強化等につきまして、すでに相当御説明申し上げましたから、これらの個々の詳しい事柄については委員会等を期したいと考えます。  次に、経済審議庁の方の長期計画について、予算裏づけがないではないかというお話でございましたが、長期的な経済計画の作成につきましては、経済審議庁発足以来、鋭意研究を進めておることは進めておるのでございまするけれども、今日の国際情勢の推移等で、なかなか長期的な見通しを立てることは困難で、ございまして、いまだ正式に決定したものはございません。但し、先般ワールド銀行——世界銀行の調査官が参りまして電源開発資金の外資の借入れ方について交渉しています際に、現在の状況で一応五箇年を見通してということでありましたので、そういつたすべての仮定のもとに一応の見通しを立てたものを差出したのでございまするが、あれは過日も申し上げました通り、正式に審議庁として決定したものではございませんので、さよう御了承を願います。  なおこの機会に、忘れるといけませんので、ちよつと申し上げておきます。電源開発に対する外資導入は、相当確実なる見込みありと信じております。なおこの予算措置についてのお話がございましたが、昭和二十八年度におきましても、産業資金重点的確保をはかりますために、食糧増産、公共事業等で約二百七十億円前年より増加いたしまして、一千五百十三億、さらに電源開発、造船、鉄道等のために前年より約二百五十億円を増加いたしまして、三千五十五億円の財政投融資を行予定でありまするから、さよう御了承をお願いいたしたいと存じます。  なお、ちようど電気のついででありまするから、電源開発のことをちよつと申し上げておきます。電源開発資金について、先刻、百五十億で、前年より減つたではないかという御質問がございましたが、前年は電源開発会社に関する分は六十五億でございまして、それを本年は、これは見返りでありますが、無利息になる、いわゆる資金としての支出が百五十億と、さらに五十億預金部等より融資を受けることになつており、二百億に相なつておるのであります。従いまして本年の電源開発に関する資金は大体千五百価円に達するのでありまして、その内訳をちよつと申し上げますると、電力会社に千 百五十億円、公営事業に百億円、自家用に七十五億円、それと今申し上げました電源開発に二百億円でありまして、前年に比し約三百億円の増加に相なつておりますので、電源開発は着々と緒についておるということを御了承願いたいと存じます。  なお、この日本が、資源と産業構造の上から、通商にその活路を求めなければいけないと思う、それについて国内市場振興をはかることに重きを置くのかどうか、こういう話がございました。これにつきましては、まつたく今澄さんに私は同感でありまして、貿易振興に重きを置かなければならぬことは当然であります。しかし、国内市場振興をはかることも何ら矛盾するものではございませんので、これは日本経済の上から見ますと、両者を一体と考えて持つて参りたい、かように考えております。  なお、東南アジアについていろいろ御質問がございましたが、だんだん向うの国民感情も好転して参りまして、外務大臣から先ほど説明がありました通り、賠償問題などももう交渉の緒についておりますし、今後も誠意を傾けて、これらの友好的通商の発展をはかることにいたして参りますれば、相当有望であり、前途が開けるものと考えておるのであります。しかし、お話がございましたように、私どもは東南アジア諸国との間に緊密な協力態勢を確立いたしたいとは考えておりまするが、しかし、今、日本の立場で東南アジア諸国との経済会議を開くように主唱したらどうかというお話に対しては、これはひとつ十分研究さしていただきたい、かように考えておる次第であります。  それから石炭価格の引下げについてお話がございました。これは石炭ばかりではありません。鉄鋼その他について一貫的にお話がございましたが、一番重要なものが石炭価格のようでございましたので、この一つをお答え申し上げておきます。石炭価格の引下げに対しましては、私どもも、税制の上からできること、財政の処置をとり得ること、その他諸般のことをやりますとともに、業者の協力のもとに石炭価格を引下げたいと存じており、私はあまり遠くないうちに相当引下ると考えております。しかし、それでは輸入炭等をやることによつて引下げたらどうかというお話に対しましては、それも一つの考え方ではございまするが、やはり日本産業に占める石炭の重要性にかんがみて、一ぺんに荒いこともやりにくいので、徐々に業者の協力のもとに石炭価格の引下げを促進して参りたいかように考えておる次第でございます。従いまして、合理化とか、各種の問題につきましての資金、あるいは税制等の措置は十分にとる考えであります。なお鉄鍋産業につきましても、御承知のごとく鉄鋼合理化三箇年計画というものをすでに進めておつて、本年で一ぱいになりますから、相当効果があると思うのでございますが、その他各種鉄鋼価格引下げについての措置は、税制あるいは金融その他の面についてこれをとりたい、かように考えております。  さらに兵器産業についてのお話がざいましたが、これは今澄さんもよく知つておられる通り、ほとんど全部、九割九分までが駐留軍の発注でありますので、特需産業の性格を持つてつて政府としては、この観点からドル獲得のための輸出産業に準ずる取扱いをいたしておる次第であります。現在国会に提案いたしておりまする武器等製造法案におきましては、これは公共の安全を確保するための措置を講ずるだけではなく、武器製造事業が濫立いたしまして、不当な競争を行うとか、国民経済とのバランスを失して過大な生産設備をするといつたようなことを防止したいという配慮から出ておるのでありまして、何も政府は別段軍需産業計画を持ち合せたり、樹立いたしておるわけではございませんので、さように御了承願います。なお航空機工業につきましては、航空機の平和的用途としての将来の有望性も考えまして、かつまた、いわゆる高度の総合工業である点に重きを置きまして、これは漸次育成して参りたい、かように考えておる次第でございます。  次に、中国貿易についてちよつとお話がございましたが、中国の貿易は戦前のわが国貿易上非常に大きな比重を占めておりましたし、いろいろ回復は望ましいのでございますけれども、戦後におきまする中国側のあの経済事情、また日本が国連協力という基本政策に沿う必要があります等の関係で、私どもといたしましては、その大幅な再開は少しむずかしいと考えております。しかし、輸出する品目につきましては、でき得るだけ緩和するという考え方で、いろいろ関係方面とも打合せまして、すでに数日前九十数品目にわたつて緩和いたしましたことは御了承の通りであり、さらに今後もこれを進めて参りたいと思つております。しかしながら、今具体的にお話になつたブリキ、鉄板というようなものは、今の国連協力の線から見て、ただちにはいかがかと実は考えておる次第でございます。  それから中小企業対策についていろいろお話がございまして、まつたくごもつともでございます。私どもも、中小企業に景気変動のしわ寄せが来ては困りますから、それにならないように、あらゆる施策をとつておるのでございます。金融措置は、ただその一つでありまして私どもは、金融措置さえすれば、これをもつて足れりとは考えておりません。従いまして、まず協同組合を育成強化すること、中小企業の後進性といいますか、非合理性といいますか、そういつたものの、いわゆる企業診断をやりまして、これに対する対策を講じて、すでに約九千の工場が診断を遂げておるのであります。これらに基きまして、もう少し根本的の対策を立てたいと考えております。なお、地方庁等に中小企業の指導機関の整備充実等もいたしておりますし、また共倒れ防止のためのいわゆる安定法を出して、この活用をいたしたいと思つており、下請代金の支払い促進等もはかつておることは、これは今澄さんも御承知の通りであると思うのであります。いずれにいたしましても、経済活動分野における中小企業の性質にかんがみまして、これの育成には最大の努力をいたしたいと考えております。  それでは金融についてどうかということのお話もございましたが、それは今度中小企業金融公庫をつくります。これは国民金融公庫、商工中金等と相まつて、それぞれの金融面の働きを果すためにつくつておるものでございます。たとえば中金について申しますれば、商工中金は組合だけの金融でありますが、今度の企業金融公庫の方は、長期の個人に対する設備資金等を比較的低利に——政府の出資分は無利息でありますから、供給いたしたい、かように実は考えておる次第であります。また、中小企業の弱い部分については貸せぬではないかというお話もこの間出たのでございます。今もその意味のお話がございましたが、これは中小企業信用保険制度というものを漸次利用する。これがだんだん活発にもなつて参りますので、その点でだんだんと機能を発揮し得ることと考えております。  なお中小企業庁を廃止するかどうかというようなお話が、ございましたが、現在のところは、やはりこれも相当大きな役割を果しておりますので、廃止する考えは持つておりません。  なお非常にたくさんお尋ねの点もございましたが、足らぬ点は委員会等適当な場合に御答弁をさせていただきたいと存じます。     〔国務大臣向井忠晴君登壇〕
  19. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 電源開発のようなものに財政投資重点を置くのかというお話でございましたが、その点は今小笠原さんから詳しく申されたので、私の申し上げるところはなくなつてしまいました。  貿易振興根本は、私の考えでは、何よりも先に各企業が合理化能率化を一段と進めて、品質の改善とコストの切下げにたゆまざる努力を続けることにあるというふうに考えます。従つて、輸出奨励金とか輸出補助金というような安易な貿易振興策は真の国際競争力培養するゆえんでない、ひいては対外信用をも落すということになるので、とるべきものでないと考えております。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  20. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日米通商条約については、外国人の事業活動及び財産取得の程度が問題でありますが、これは、アメリカ人が日本におけると同様、日本人がアメリカにおける活動にも関連するものでありますので、目下研究中でありましてまたいろいろ折衝中であります。まだ成案を得ておりません。なお既得権については、占領中に得たものが含まれないのは当然であります。従つて、これは日本に特に不利なというようなものは別にないと考えております。  日韓会談につきましては、先般も申した通り、ただいま空気が非常によくなつて来ておりますから、会談再開について具体案を研究中であります。  ガットの加入につきましては、ただいまわが国のガット加入を討議する会期間の委員会が開催されておりますので、そこで諸国と話合いを行つて、加入に対する障害の除去に努めております。  自由諸国の間で非公式に協議しております輸出統制機構につきましては、先般も申した通り、これは関係国でもつて相談の上発表することにきまつた以外の情報は出さないことになつておりますので、遺憾ながら、その内容は申し上げることを差控えます。  スタツセン氏のお話がありましたが、相互安全保障本部では、従来も東南アジアの開発につきまして、日本の商品の買付を行つて来ております。今後とも、かかる買付が継続せられるように折衝をいたしております。  なお、先ほど総理が申されましたが、再軍備の問題につきましては、アイゼンハウアー大統領の演説等には決して日本の再軍備というようなことは言及してないのでありますから、念のため申し上げておきます。     〔国務大臣石井光次郎君登壇〕
  21. 石井光次郎

    国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。  船舶の特定航路を命令航路として援助し、日本経済発展に資したらどうだというお尋ねでありました。御承知のごとく、外貨獲得とか貿易伸張のために日本の海運を発展させなければならないのでありまして、政府の海運政策根本も、対外航路、なかんずく定期航路の整備拡充に置いておるのでありまするが、特定航路を指定しまして政府が直接補助をする方策をとることは、いたずらに世界の海運市場を刺激するばかりでありまして、得るところはかえつて少いと今日は思われますので、私どもは、そういう方策をとらないことにいたしたいと思うております。但し、移民を輸送すべき航路というような特殊なものにつきましては、これはその必要も考えられまするので、研究を続けて行くつもりでおるのであります。  第二の、二十八年度の造船計画は、今後四箇年間毎年三十万トンの外航船をつくるという案であるのに、実際は二十万トンしかつくれないではないかというお尋ねであります。しかし、これは予算の上におきまして大体三十万トンの計画を遂行し得るつもりでございます。と申しますのは、建造いたしますのは貨客船、貨物船、タンカーというようにいろいろありますし、その政府資金の出す率も違いますので、これらで大体三十万トンやつて行けると思うのであります。但し、船価の高い高速船の建造が予定以上になりますと少しく困難になりますが、これらは開発銀行の資金の運営措置によりましてその目的を達し得るだろうと思うて、そのつもりでまた努力をいたします。
  22. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 只野直三郎君。     〔只野直三郎君登壇〕
  23. 只野直三郎

    ○只野直三郎君 私は、憲法の改正問題、再軍備の問題、日本外交の基本方針に関しまして吉田総理大臣、その他関係閣僚に対して御質問をしたいと思います。  まず第一に憲法改正の問題であります。吉田総理大臣は、過般の施政方針演説において、占領中の施策の行き過ぎはこれを是正するとお話をされたのでありますが、その態度には、私まつたく同感であります。賛成であります。そこで、その占領中の行き過ぎ政策として、一番の行き過ぎは今の日本憲法ではなかつたかと私は思うのであります。従つて、この憲法の基本の問題に関して、吉田総理大臣はこれを再検討し、あるいは時機によつて国民の輿論に訴えて、これが改正を提案するか、少くも何らかの措置をとることが、今日の難局を処理する総理大臣としての当然の義務ではなかろうかと思います。そこで、何のためにそれでは今の憲法が行き過ぎであるか、これについて、私の行き過ぎであるという理由を御説明申し上げます。  まず第一は、この憲法が制定される当時、その憲法制定にあたつて日本民族の本質に対する究明が十分でなかつたではないか。第二審目は、現憲法は、その制定の方法に、その民族個性に最適な制度機構のくふう、研究が足りなかつたではないか。ほんとうに民族個性に合つた制度を今の憲法が考えたであろうか。それから第三番目は、今の憲法は、その制定当時、はたして日本民族の自主性が完全に発揮されておつたかどうか。民族個性の把握と、その個性に適応するところの制度機構のくふうと、それから自主性をもつてすること、この三つの点は、少くも憲法制度における重要な条件であります。この重要な条件が完全に果されていなかつたとするならば、われわれは、今の日本憲法に対して、国民とともに再検討することが当然ではないかと思うのであります。その意味で、私はまずもつて総理大臣に、そのことについての御態度をお聞きしたい。  そこで、このような条件のもとにつくられた現在の日本憲法の内容を検討した場合、実は四つの場所に欠点があります。これから、その四つの場所の欠点を、ごく簡潔に御説明いたして総理の御参考に供したいと思うのであります。  まず第一は、憲法第一条であります。憲法第一条には、天皇は象徴であるとうたつてある。私は、この天皇象徴という考え方は誤りであると思つております。私は、天皇は元首であることが正しいと思う。わが国の天皇は、開闢以来終戦の目に至るまで、日本国家の元首であらせられた。元首ではあつたが、政治上の権力事項はこれを国民にゆだねられて、みずからは象徴的態度をとられて来た。そこで、私が考えますのは、その象徴的態度をもつて象徴なりときめたことは、一体どういう理由に基くか。結局、これは、民族的自主性を失い、民族の伝統を軽んじ、そうして、いたずらに形式民主主義に迎合した結果、権力主義的に天皇を解釈した結果が象徴論になつたものだ、こう私は考えております。そういう意味では、天皇を元首にすることが日本の歴史の伝統の上から正しい、こう思うのであります。  それから、これは憲法理論になりますが、天皇主権と民主主義が矛盾するという考え方が通念のように言われております。けれども、私は、主権の所在を決定するものはその民族の個性である、主権所在を決定するものは民族の歴史、伝統である、民主主義の本質は主権の所在ではない、その自治権が国民にあるかないか、それが民主主義の本質だと思います。かりに主権在民の国であつても、その国民に自治権がなければ、これはデモクラシーの国家ということはできません。主権在民で、自治権在民である場合は、いわゆるモデル・デモクラシーであります。けれども、日本民族が天皇に主権を持つていただいてしかも政治の運営に関して国民に自治権が与えられたとするならば、これはりつぱなデモクラシーではないか、そういう国柄を日本民族が欲するならば、それでよろしいではないかという感覚において、私は天皇主権と民主主義が矛盾する観念ではない、この考え方に立つております。  そこで、私は、天皇制というものは、要するに、日本民族にとつては、家族制度的な性格を民族生活の上に実現しようという民族理想の上に天皇制が立つておる。従つてこの天皇制の確立のために、日本民族が三千年の歴史を費した。その三千年の歴史が、一度の敗戦によつて根本からくつがえされるということが、はたして現代の昭和の民のとるべき態度であろうか、私はそう思いません。そういう意味において、天皇制に関する限り、私どもは日本民族としての信念を失つてはならぬということを、まず総理大臣に申し述べたいのであります。  そこで、しからば実際上はどうか。今日の日本国民が、天皇制をどう考えておるか。私は、今日の日本国民は天皇制の確立を要望しておると信じます。昨年の秋の立太子礼の際に、吉田総理大臣みずから「臣茂」と申された。私は、あの「臣茂」という言葉を聞いたときに、天下第一等の発言であると思つた。(拍手「ヒヤヒヤ」)今日の時勢において、あれだけのことをはつきり言い切つた総理の態度を私は賞讃したい。決してこれはいたずらに言葉を飾るのではない。その証拠に、多少の批判はあつたけれども、八千万国民は、「臣茂」という言葉に対して疑問を持たなかつた。  本年一月二日の宮中の国民参賀の日に、五十万人の人が参賀しておるのであります。これは一体命令されたのでありましようか。国民の至情である。私は、こういう意味から、日本民族の国民感情は、天皇を元首とすることに対して少しも恐れてもいなければ、ただそれを要望しておる。ことに、世界に対して天皇元首論を唱えることがはばかりあるというようなことを考える人があるならば、これは民族の自主性のない証拠である。君主制にするか、民主制にするか、天皇制を立てるか立てないか、これは日本民族独自の見解によつて決定すべきことであると私は信じます。(拍手)そういう意味から、われわれが、かりに天皇制を完全に確立して、そうして民族の基本の決定をすることが、今の日本の最大の課題ではなかろうかと思うのであります。その意味において、憲法第一条に対し再検討する必要があるかないか、このことをまず申し上げてみたいと思うのであります、  次に憲法第六十七条であります。憲法第六十七条、内閣総理大臣の国会指名は、はたして正しい方法であるかどうか。私は、実は、日本の今日の政治を行き詰まらせている最大の禍根が、憲法第六十七条の総理大臣国会指名あるのではなかろうかと思つております。私がなぜこのようなことを申し上げるかというと、最近の各政党のいわゆる派閥抗争、あるいは各政党内の対立抗争、この動きの陰を流れているのは一体何であるか。結局これは政権を中心に動くためではなかろうか。何となれば、政党及び政治家の活動は常に政策が中心でなければならぬはずであります。それはみな心得ておる。心得ておるにかかわらず、いざ政治の課題に直面すれば、人事問題に狂奔せねばならぬ立場になつて来るということは、要するに議会と政府が直結しているところにあると私は考える。そこで、私は、この憲法第六十七条を根本的に改めて、総理大臣の国会指名権を八千万国民に譲るべきである。そうしたならば国会の権威が必ず高揚されるであろうということを感じておるのであります。  かつて特権階級が政治を支配しておりました当時、当時の特権階級が総理大臣の指名を行つた。当時の議会は、総理大臣には関係がなかつた。だから、当時の国会議員政策の研究に専念せざるを得なかつた。ところが、これが国会において指名するとなれば、両方の仕事をするのでありますから、どうしても忙しくなる。先ほど言うた政権というものが魅力を持つ。そこに大きな誤謬が生じて来るものであると私は思います。そういう意味で、すべての政治は一つの安定勢力の上に最高政治責任者の指名権を持たせなければならぬ。国会は安定勢力ではありませン。国会は常に変動する場所であります。そこで、私は、八千万国民に政治的安定勢力を求めて、国民の手によつて政府の首班を選ぶならば、議会と政府とが対立抗争するようなことなく、まつたく純粋に国会がその本分を尽すことができるのではないか、初めて国会国家の最高機関たる性能を発揮するに至るであろうということを申し述べたいのであります。  第四番目でございますが、現憲法の第九十二条以下九十五条までの地方自治に対し再検討する必要があると思うが、どうか。今の日本の政治の実体は、中央集権の政治であります。そして陳情政治であります。官僚統制をしまいとしても、陳情が多くなれば統制せざるを得なくなつて来る。官僚統制と陳情政治は表裏一体をなして参ります。そこに政治のやみ取引が行われ、いわゆる政治のやみ会同が行われ、日本の政治が行き詰まる原因となつておると私は思います。私は、中央集権の政治を根本的に改めて地方分権にするために、徹底的な行政の再編成が必要ではないか、こういうことを考えております。  その方法といたしまして、今の府県制度を根本的に改めて、これを再編成するために、現在の府県を自給自足のできるわくに広げて州制度をつくる。そうして州政府を置き、州議会を置いて、一般政治の問題は州政府に完全にまかせて中央政府が大綱を決定するという方式をとつたならば、必ず陳情政治にかわる民力活用の政治が生れて来るのではなかろうかと思うのであります。その一つの例としまして、もし地方分権政治をやつたならば、民力活用の政治がこのようにうまく行くではなかろうかという一つの案を申し上げてみたいと思います。  たとえば、今日の米の生産の問題に関して、農家の供出問題、あるいは供出後の自由販売の問題、こういうことが非常に叫ばれております。ところが、実行ができません。これを実行するにはどうしたらよろしいか。これを実行するためには、私はこういうことを考えておる。一つの州の中において、ある程度の供出はしなければなりません、絶対量が足りませんから。供出しますが、供出後の米は自由販売にする。わくの中は自由にしておく。ところが、現実はどうかというと、実はみなやみという名前によつてつておる。やみという名前においてある程度の地域の中は自由販売が行われておる。それを制度的に認めて、そのかわり、東京、大阪のような大都市の場合は、自由販売をされては間に合わないために、そこで東京あるいは大阪という大都市の消費地は、そこの土地の代表の知事がその各州に行つて自由販売の米を自由販売価格で買い上げて来て、それを消費地において平均にまた配給するという方法をとつたならば、これは非常に簡単に、しかも米が二重配給制をもつてうまく行くのではなかろうか。  これは、現在のような府県制度のもとにおいてはできない。そういう意味で、もし府県制度でできないとするならば、府県の連合体をくふうしてやるとか何とかしなければ、農民の活動意欲を増すことはできないと私は思う。たとえば、今日の農民は価格の決定権がない、買うにも売るにも、自分の意居てやることかてきないそうであるならば、今日の農民は、ある意味においては経済的な奴隷的境遇に置かれるかもわからぬ。そうだとするならば、これは非常に危険なことだ。つまり、民力が萎縮する以外に道がないのではなかろうか。このことに関しましては、廣川農林大臣の御意見を承りたいと思うのであります。  以上は、私の地方自治に対する基本的な考えを申し上げたのであります。  次に、これは非常に重大な課題でございますので、私としましても十分慎重に研究をした結果を申し上げるのでありまするが、実は現憲法第九条の戦争放棄の規定に関する私の意見を述べてみたいと思います。この戦争放棄の規定は、人類の現実を無視したもので、従つて、これは憲法に載せるべきものではない。そういう意味において、この第九条は削除すべきものではないか、これを総理大臣にお尋ねしたいのであります。  そこで、なぜ戦争放棄と規定を削除するかという理由を申し述べれば、戦争放棄の考え方は、これは一つの宗教的な考え方である。だれだつて戦争を好きな者はありません。私も戦争はきらいである。けれども、戦争放棄を憲法で定めてみたところで、戦争というものには相手があるのであります。一方的に戦争を放棄しても、相手がある場合に、おれは戦争を放棄したということを述べてみたところで始まらないのであります。一方的な行為ではいけません。そこで、私の申し上げたいのは、戦争放棄の思想は心の中に各人が持つべきものである。憲法に定める必要のないものである。憲法において定めることは、政治的な現実課題でなければならぬ。私は、戦争放棄の規定は当然に削除すべきものであるという理由の一つに、それをあげているのであります。  さらにもう一つ言いたいことは、戦争放棄の思想が、本来は平和追求のために実は設けた規定であるかもしらぬけれども、結果においては、正邪にかかわらず戦争というものを拒否する結果が、人類をして正しいことのために立ち上るという勇敢なる精神を失わしめる。そういうようなことがあるとするならば、これは民族を堕落させるものではなかろうか。人類正義のためには、実にわれわれは勇敢でなければならぬはずである。そういう意味において、この戦争放棄の規定に対して、われわれは十分に検討せねばならぬ、こういうふうに思うのであります。  それから、吉田政府が、再軍備問題に関して、再軍備しないしないということを申されておる。その気持はわかる。気持はわかるけれども、私どもから見れば、国民は、再軍備はもうされておると、一人々々がそれを承知しておる。再軍備はされておると見ておる。再軍備はされておると見ておるけれども、憲法には戦争放棄の規定があり、再軍備は絶対しないというその裏づけが出ておるとするならば、その考え方のどこに一体国民のたよるべきところがあるか。民主主義の本質は法治主義である。その法治主義の本質は法を遵守することである。ところが、一方において、憲法には戦争投棄の規定を認めておいてしかも、それと同時に再軍備は絶対しないという裏づけがあつて、しかも一応の態勢は整えねばならぬという政府の立場があるとするならば、これは吉田さんならずとも、再軍備はしないと言わざるを得ないのである。  そこで、私は、この問題に関しては、どうしても法をたつとぶという精神の意味においては、再軍備するしないは別として、このような現実に即さない規定を憲法に置くということは、これは日本の国のためばかりではなく、世界のためにもならぬ、むしろ戦争放棄の規定は完全に削除しておいて、その上で融通無擬の国民の活動のできるような方法にすることが正しいと、こう思うのであります。  それから、最後に私が申し上げたいことは、戦争放棄の規定の削除がただちに戦争を惹起したり、あるいは侵略戦争を肯定するものであるなどと考えられる方があつたならば、それは憲法理論に対する理解のない人の言辞ではなかろうか。要するに、この戦争放棄の規定の削除は、戦争するしない、再軍備するしない、そういうことには関係がないのであります。純粋なる憲法理論として、これは世界に向つて日本民族が主張すべきではなかろうか。今日の世界のどの国に戦争放棄の規定を憲法に書いておる国がありましようか。私は、そういう意味において、憲法のこの第九条は、占領施策中における最大の行き過ぎであるということを申し上げたいのであります。  以上、私の憲法改正に対する所見を述べたのでございまするが、この問題を実現することは容易でないということも私心得ております。けれども、今日このときほど、国民がこの憲法の問題に関して関心を寄せているときはないと思います。今のままで、日本の国の政治が、はたしてこの国の百年、千年の計をなすかどうかということに関しては、国民ひとしく憂えております。政治の信頼は、国民の憂いを取上げることである。そういう意味においては、現政府はもちろんのこと、われわれもまた勇気を持つてこの憲法問題を再検討し、これが正しい改正を考察、くふう、研究するということが大事なことではなかろうか、こう思うのであります。吉田総理大臣に対しましてこの重要な課題に関して、私の質問を申し上げた次第でございます。(拍手
  24. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 時間がもう五分も超過いたしております。簡潔に願います。
  25. 只野直三郎

    ○只野直三郎君(続) 時間が超過しようでございますから、それではごく簡潔に基本的な問題だけを申し上げてみたいと思います。(「君の意見ではなく、質問をしろ」と呼ぶ者あり)質問でございます。岡崎外務大臣に対しての質問でございます。  政府は、日本外交の基本方針について、先般の施政方針演説の中で述べこれたのでありますが、実は私は、その方針について多少の異議があります。その異議というのは、私がお尋ねしたいのは、日米完全提携というものは日本外交の基本方針として当然でなければならぬ。そして、そのことは、日本民族の自主外交である。多少そこに混雑が生ずることがあつたとしても、今日の日本の国情において、日米完全提携以外に日本の進む道は断じてないと私は信じます。(拍手)そのことに対して政府主張するところはなまぬるいと思う。なぜもつとはつきりと主張なさらないか、それが一つ。  それからもう一つは、東亜民族に対する日本の責務というものは、民主主義陣営に対する日本の強力なる参加以外にはない。この東亜民族に対して、日本民族がほんとうに信頼をかち得て、そして日本としての東亜に対する責務を果したいとするならば、日本民族が民主主義陣営に対して強力なる参加をすること以外にはない、これが私の考え方でありまするが、これについてはたして現政府はそこまで徹しておるかどうか。今までの日本は、ややもすれば利害によつてのみ行動する場合があつたのであるが、民主主義という正しい世界の思想のために、敢然として立ち上る勇気を持つてつて、初めて日本民族に対する信頼が出る。さらに、アジア諸民族との友好関係は、民主主義陣営における友として積極的に結ばれるものでなければ本物ではない。そういう意味におきまして、私は政府根本的な態度をさらにお尋ねしたいと思うのであります。  なお、自衛中立論あるいはその他の中立論もございまするが、それは結局は反米、反ソ的になり、結果においては日本の国の将来を危うくする、そういう意味において、日本民族は今後あくまで確実な方策をとつて行かなければならぬ、こういうふうに思うのであります。  大体の私の意見は申し上げましたので、非常に簡略にいたしましたけれども、吉田総理大臣並びに外務大臣、それから農林大臣に御答弁をお願い申すものでございます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。憲法制定の淵源と申しますか、憲法制定の場合には、その国の歴史とか、あるいは民族の個性とか、あるいは自主権とかいろいろな考え方がある、そうであろうと思います。しかしながら、もう一つ私がつけ加えたいことは、制定の当時における国内外の状況ということも考えに入れないと、憲法の精神及び憲法の実施においてあやまつところがあると考えられます。御承知のごとく、現憲法ができた当時においては、終戦直後の事態である。しかも、日本の将来がどうなるか、また列国も日本国民考え方がどうであるか、日本の歴史、日本の過去から申してみれば、ずいぶん危険な道を歩んで来て、世界の平和を脅かす。世界の平和の観点から申すと、日本の制度、日本国民性をあやまつて考えてみれば、これまた危険な国民性を持つておるものであるという誤解を与えておつたのであります。かかる誤解、かかる環境のもとに新憲法はでき上つたのであります。そこで、新憲法の中には、誤解から生じ、もしくはその当時における国際環境、あるいは国の内外の状態からでき上つたものがあるのであつてこの観点から見ますと、この憲法が日本の国情に適せず、日本の民族の個性に適しない、あるいは日本の歴史、日本の慣習に適しないということが生じたということは、今日から見れば、むしろ当然のことであるのであります。ゆえに、これを改正すべしという議論も、これまた一つの議論であります。しかし、憲法がすでにできた以上は国の基本法である憲法ができた以上は、これを改正するのは軽々に考うべきことではないと思います。よほど慎重に考えて再び改正をする、にわかに改正をする、軽々しく改正をするというようなことは、国の基本法として、つとめて避けなければならないのでありますから、改正する場合においては、慎重な態度はもちろんでありますが、国民輿論の指示するところ、向うところ及び要求するところを静かに考えて、その結論として改正の方針をきむべきものであると思うのであります。  憲法の改正ということは、ただいま申した通り、当時の事情から申して行き過ぎたところ、御指摘のような点があるでありましようが、しかし、現憲法の由来するところは、かくのごとき状況のもとにでき上つたのであつて、その状況から、憲法の精神、あるいは戦争放棄というような条項を加えた理由も、自然おわかりになるであろうと思います。しからば、これをどう改正するかということは、日本が独立してわずかに一年に足らざる今日において、日本憲法をこう改正する、ああ改正するということは、軽々しく決定すべきものではないので、八千万の国民が静かに日本百年の将来から考えてみて、りつぱな憲法をつくり上げる。そのためには、よほど慎重に考慮をいたすべきものであつて、一時の感情、一時の議論によつて支配さるべき問題ではないと考えます。憲法改正の御趣意はよく承りましたが、これについては慎重な御考慮を私は切に希望いたすのであります。(拍手)     〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
  27. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 自治制を改正しての前提に立つた米の集散につきましては、よく御意見を拝聴いたしておきます。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  28. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) わが国の外交政策の一つの重要なる基調として、日米の間の完全なる提携を強く実施する、この御意見にはまつたく同感であります。(拍手)また東亜民族との友好関係も、わが国が民主主義陣営に対し強力に参加することに始まる、これもその通りでありまして、私は外交演説において、この両点を力説したつもりでおりますが、もし言葉が足りませんでしたならば、今後ともさらに強くこの点を唱道いたします。(拍手)  中立論に対する反対の御意見、これは私まもつたく同感であります。(拍手
  29. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 石野久男君。     〔石野久男君登壇〕
  30. 石野久男

    ○石野久男君 私は、吉田首相ほか各大臣の施政方針演説に対して労働者農民党を代表して質問を試みんとするものであります。  過日来の施政演説を聞きますると、独立と平和に対しては非常な危険を感ずるのであります。それと反射的に、日本の隷属的な立場がますます痛感されるのでございます。この機会に、独立と侵略に関してまず政府の所信をただしたいのである。  アメリカ帝国主義者は、自己の世界支配実現の道具として、国連、そして地域的国際集団を巧みに使いこなしておるのである。それと同様に、彼らは、日本においては自己に忠実な買弁的な勢力を培養し、強化して議会、政府一切の権力を握らせ、日本国民と民主主義の名において彼ら自身の政策を行いつつあるのであります。駐留軍部隊は、これを実力的に裏づけているものと思われます。共産主義の侵略の脅威はその合言葉であるが、このような米国の政策は、現在世界的に破綻を平しておるのである。先ごろヨーロッパを旅行して後、アジア太平洋地域平和会議に出席し、日本代表の副団長として活躍された、東京商科大学の南博教授は、西欧では、常識を持つ普通人は、今日もはや、ソ連の侵略など、まじめに信用しなくなつた、そのように帰朝談で言つておるのであります。政府は、岡崎外相をして、ことさらなる反共演説をさせたのであるが、今もなお共産主義の侵略の脅威というデマ宣伝が国民を欺瞞するために役立つと思つておるのであるかどうか。今日、日本国民は、その一切の生活経験を通じて、あるいは土地の取上げ、農地の取上げ、漁場の収奪、そのような経験を通じて、現実に祖国を侵略しているものは、ほかではない、アメリカ帝国主義者以外の何ものでもないと、そのように信じておるのである。はたして政府の所見はどのようであるか承つておきたいのであります。  同時に、政府は、鹿地亘氏事件に代表的に見られるがごとく、アメリカ軍の破廉恥きわまる不法行為の頻発に対して、かつまた今日、世間一般にいわゆるマーフイー工作として知られている米大使館の国内各界に対する宣伝、諜報あるいは組織活動に対して従来どの程度の注意を払い、調査をして来たか、また将来日本国民の名誉と権利を侵すこれらのアメリカ諸機関の不法行為と国内政治活動に対して、いかなる態度をもつて臨む用意があるのか、特にこの際明らかに答弁をしてもらいたいのであります。  米国新政権の巻返し政策は、その従属国を選手としてやらせるのであつて日本の独占資本家、これを結ぶ一切の勢力は、最も忠実に米支配者のこの政策に協力し、追随しつつ、彼ら自身の再建、すなわち日本帝国主義の買弁的再起を夢みつつあるのであります。アメリカにかたく結びつけられ、これに奉仕させられておるところの日本経済は、国民の窮乏による国内の市場の制約と、対中国貿易遮断の政策によつて、今日安定市場といえるほどのものはどこにも見当らないのであります。東南アジア開発を言い出してから二年の後、今日においても、政府はあるいは友好関係が芽ばえて来たとか何とか言つておりますけれども、先ほど小笠原通産大臣も言われておりまするように、日本が主催して東南アジア地域における経済会議主張することは、まだできないのである、それは研究させてもらいたいという、その程度のものしかないのであります。気休め以外に日本経済の前途を語ることはほとんどでき得ない状態である。独占資本家と政府の現在のこの市場に対するあせりと不安は、アメリカ帝国主義者のつけ込むところとなつておるのである。米国新政権の「アジア人にはアジア人をもつて」というスローガンのほんとうの意味は、まさに「アジア人には日本人をもつて」ということなのである。(拍手)この巻返し政策は、必ず中国本土反攻攻勢となり、朝鮮戦争の拡大となることは明瞭であるのである。吉田政府と独占資本は、心ひそかにそのことを期待しておると思うのであるか、はたして吉田首相は、日本国民は巻返し政策に協力しないと世界に向つて言い切れるかどうか、明確に御答弁を願いたいと思います。また、米共和党の対外政策二十六項目について、もし政府に批判の自由があるならば、この機会にその見解を承つておきたいのである。  首相は、例によつて、朝鮮出兵はしないと言つておるのである。しかしながら、行政協定の第二十四条をどのように理解しておられるのであるか。すなわち、同条には、日本区域に緊迫した事態が起り、もしくはその危険あるとき、米軍当局と政府が協議して措置する旨が規定されておるのである。しかも、日本区域とは、日本本土及びその周辺を意味しておるのであり、かつ急迫事態と危険の有無の判断はだれがやるかについては、政府はこれをことさらに明らかにしていないのである。政府は、その直前まで出兵せずと言いつつ、最後には行政協定第二十四条を理由として出兵する考えを持つておるものと思うが、はたしてどうか、その意見を承りたいのである。  米国のこのような政策吉田政府は現実に協力するために、戦争準備態勢に血眼になつて狂奔しておるのである。このことは、昭和二十八年度予算案を見れば明瞭に現われておるところなのであります。吉田政府の戦争準備政策の第一点は、再軍備の強化と拡充、憲法改悪の陰謀であるといわなければならない。今日、直接兵力は、保安隊十一万、海上警備隊七千六百、海上保安隊六千三百とされているが、これらの装備、施設を強化し、さらに増員することを当面の目標としておるのである、予算案では、保安庁費八百三十億円のうち、兵力維持のために四百五十億円を、使つているほかは、航空機、軍艦を含む装備、施設の費用であつて、兵力増員のためには、本年度予算使い残りである九百億円を当てにしておるのである。政府は、公表していないけれども、秘密の軍拡計画を持つており、伝えられるところの四箇年計画では、陸軍十五個師団、三十万で、経団連筋の資料では、これは明年末となつておるのである。さらに海軍三十五万トン、艦艇三百隻、空軍二千機となつておるのである。アメリカは、日米艦船貸与協定によつてフリゲート艦と上陸援護艇を供給しつつあり、他方では急速なる兵力の増員を要求して来ておるのであることは、日本国民はもとより、世界のたれ一人として知らない者はないのであります。  一方、現実の再軍備と憲法のみぞを埋めるための憲法改悪の準備が着々と行われつつあることは周知の通りである。最近成案を見た憲法改正国民投票法案はすなわちこれである。  来るべき補正予算案の編成は、いわゆる防衛関係費が中心になると思うのである。蔵相、保安庁長官の見解はどのようなものであるか、明確にその意見を承りたいのである。軍事援助について、見込みをどのように立てておるかも、この機会に承りたい。昨年五月ごろから始まつた兵器特需は約二千五百万ドルといわれ、その大部分は軍事援助として保安隊等に引渡されると伝えられているけれども、はたしてその通りであるか、御意見を承りたいのである。  政府の戦争準備政策の第二点は、軍国主義復活の政策であります。今日、軍歌と軍国調のレコード、映画、新聞、雑誌等が、まるで免許を得たような顔で、全国各地に行われているのである。吉田首相は、いわゆる立太子礼に際して、自分のことを「臣茂」と言い、天皇制再興の陣頭指揮ぶりを発揮したのである。同じ意図をもつて、修身、地理、歴史科等の教育を復活しようとしたり、青年学級の官制化を企図したり、また産業開発青年隊を育成し、これへの農家の二、三男の吸収と組織化をねらつているのである。義務教育費国庫負担の名目で教員の国家公務員花をねらい、平和運動に熱心な日本教職員組合に攻撃をしかけているのであります。(拍手)さらに、遺家族援護の口実で戦争犠牲者を扇動し、旧軍人に対する昨年末の手当支給に次いで、軍人恩給復活に四百五十億円を予定し、また戦犯の全面的釈放を準備しつつあるのである。それだけではない。内閣調査室の拡充という形で、戦時中のような情報機関を復活することによつて、軍国主義宣伝を最も効果的に統制し、強化拡張しようとしているのである。かくして新しい傭兵日本軍の精神的支柱と、その社会的基盤を打立てようとしているのである。政府は、軍国主義と一切の戦争宣伝を禁止する勇気があるかどうか、明確に承つておきたいのであります。  戦争準備態勢の第三は、労働者階級に対する攻撃を中心にフアシズム態勢の強化を進めていることである。日本国民から収奪し得るだけ収奪したあげくに、これを戦火にぶち込み、大もうけしようとたくらんでいる、米日独占資本と吉田政府にとつて一審恐しいものは、労働者階級が強固な組織に統一され、広汎な大衆の支持のもとに、ゼネストをもつて一切の社会活動を停止させ、彼らの政策をやめさせるために蹶起することなのである。だからこそ、政府は、さきに破防法をつくり、労働諸法を改悪したのである。だが、炭労、電産両労働者の英雄的な闘争に驚いたところの政府は、みえも外聞もなくして、ストライキの完全なる禁止を目的とする労働三法の再改悪を準備しているのであります。日経連は、出労委の存在さえも無視した、最も直接的なストライキ禁止法を政府要求しようとしているのである。  他方では、保安隊の強化と相まつて、国警が人員、装備ともに増強せられ、また刑事訴訟法の改悪が企図されていることは、すでに知られているところである。新内閣調査室が、労働者農民に対するスパイ活動をその任務としていることも自明の事実である。いくら弾圧を強化しても、政府が現在の一切の反国民政策をやめない限り、労働者階級と広汎なる大衆はあくまで抵抗をやめないであろうとわれわれは信じている。政府は、弾圧すれば労働者は黙り込むとでも思つているのか。弾圧すればするほど、いよいよ国民から吉田首相は孤立し、アメリカのほかはだれをも信ずることができないような李承晩と同じ道を吉田総理は動いて行くということを、はたして政府は確信をもつて否定し得るかどうか、この機会に明確にその所見を承りたいのである。  戦争準備政策の第四点は、現在の恐慌を利用して平和産業中小企業をつぶし、日本経済の整理を行い、資本集中を進めて、産業軍事化のための合理化を推進しようとするところにある。基幹産業の拡充強化策も同様で、その目的は軍需生産太格化への準備でありまするそのためには、一般的な景気政策はあえてとらないで、インフレを絶対に避けねばならないと、独占資本と政府考えているのである。だから、一方では今日のこの不況を認めていながら、他方では、盛んにインフレの危険を宣伝しているのである。すなわち、そのねらいとするところは、金融引締め政策を強化する、あるいはまた合理化し、正当化すること、国民の積極的な民生安定予算要求を押えることにあるのであります。しかしながら、今日の国民は、向井蔵相や一万田日銀総裁、経団連や全銀協等の財界指導部の期待と思惑にもかかわらず、このような企図に対しては、決してだまされもしないし、また協力もしないでありましよう。なぜなら、インフレの現在の危険を避けるための犠牲を国民大衆だけが負わなければならないという理由は、こうもないからであります。すでに、国民は、予算案編成の際に、自由党に圧力をかけて当初独占資本家が支持した大蔵省原案をぶち破つているのであります。それゆえにこそ、二十八年度予算案は、一般に理想なき予算とか、ごたごた予算案とかいわれるようなものになりさがつてしまつたのである。  この予算案は、独占資本家はもとよりのこと、アメリカの支配者にとつても、決して最善のものでもなければ、またよきものでもないのである。蔵相は、国民反対要求に逆行して、あくまでも金融引締め政策を強化し、予算に対する国民要求を無視する態度を貫こうとしておるのであるか、またその恐慌の一切の犠牲を、平和産業中小企業、労働者、農民大衆に一方的に押しつけようという考えでおるのかどうか。また、そのようなことが実際に貫け得るかということについての蔵相の所信を承つておきたいのである。われわれは、インフレの最大の要因が、いわゆる防衛関係費にあることを信じている。国民もまたそのように信じているのである。蔵相は、むしろこれを削除して、国民要求にこたえる意思はないのかどうか、明確な御答弁を承つておきたいのであります。  今日、経済恐慌下にあえいでいる平和産業中小企業は、対中国貿易の促進と、その完全自由化による平和経済要求しているのであります。中国側もまた、これに応ずる意向をしばしば明確にしていることは、周知の通りであります。本第十五国会におきまして、中日貿易促進議員連盟が三百余名をもつて結成せられた。この議員連盟は、自由党諸君の中から約七十名に及ぶところの議員を出しているのであります。しかも、その議員団は、すべて中日貿易の一日も早からんことを望んでいるのである。しかるに、政府は、それに対しては、むしろいやいや首を横に振つておるのである。先日、中日貿易に対するところの品目の若干の解除はあつたけれども、政府は決してそれをもつて中日貿易のすべてであるとは考えていないのである。むしろ、船舶の問題、決済の問題等において、特に岡崎外務大臣外交方針は、この中日貿易を阻害する方向をとつているとさえ思われるのである。ただいまでは、中日貿易を阻害する唯一のものは、政府に明確な態度と方針とが出ていないという、そのことだけなのであります。われわれは、日本の国の生きて行く姿、日本の自立するその姿を、アジアの地域の中に求めなければならないと思つている。日本人が最も欲するものは、アジア人にはアジア人をもつて対抗させるというアイゼンハウアーの言葉ではなくして、アジア人はアジア人とともにというアジア民族の血の言葉であるということを、明確に政府はその胸にたたき込まれなければならないと信ずる。(拍手政府の明快なる中日貿易に対する見解を承つておきたいのであります。  投資特別会計の新設と、公債政策への移行は、当てにしていた米国の援助に見限りをつけなければならなくなつた結果であります。この政策ば、見返り資金の停止と、これにかわる新たなる援助の絶望という事実に基いて、日本経済の内部蓄積から資金を調達しようとするものであつて、もし政府がいうように、この政策インフレにならないとすれば、それは平和産業中小企業に対するはげしいデフレによつてのみ実現されざるを得ないのであります。この政策は、明らかに産業軍事化のための投資統制であり、金融統制であると思うが、蔵相並びに通産相の所見はどのようであるか承つておきたいのであります。  さらに、戦争準備政策の第五点は、職場、工場、経営と農村におけるところの大衆支配のための政策の積極化であります。独占資本家と政府は、職階賃金制を推し進めることによつて職制強化をはかり、また職場防衛隊を組織して労働の軍事動員態勢の確立をねらつているのである。強化された職制は、今日労働者が目で見ることのできる米日支配者の権力であります。職制は、単に工場と経営内のみにとどまらないで、労働者の居住地域にまでその監視の目を光らして、労働者を押えつけておるのであります。憲法にいう最低生活と基本的人権が蹂躪されるところの職階賃金制は、労働者を奴隷にするものであると思うが、労働大臣の所見を承つておきたいのである。資本家の職場防衛隊は、私設暴力組織であると思うが、はたしてこれをどのように見ておるか。またこれを政府が認めるとするならば、職場防衛隊に対する防衛隊ができても、それを認めようとするのか、はつきり労相の所見を承つておきたいのである。  政府は、農村では旧地主、富農的勢力の復活強化を策しておるのである。農林省の農業動態調査によれば、五反未満の農家の減少と、五反以上の農家の増加が二十七年度の特徴となつておるのである。しかも、経営減少の三割五分は小作地を取上げたことによつてなされておるものであります。これは戦後の欺瞞的農地改革によつて一時自作に待避した旧地主階級が復活しつつあることを物語るものであり、政府のいわゆる農業団体再編成の真の意図は旧帝国農会の復活であると思うが、はたしてその意図があるかどうか。現在、日本の農家の三分の一は借金を背負つており、そのうちの二割五分は高利貸しを含む個人借りであります。貧農は、あくまで土地を手離すまいと借金に借金を重ね、遂に自分の娘を売る状況にあるのであります。東北、北陸を初め、全国各地で、人身売買は、その摘発件数のみで、昨年は一昨年の二倍になつておるのであります。このような犠牲の上に、政府と独占資本家は、旧地主、富農層の強化政策をやつておるのであります。  戦争の準備政策の第六は、いわゆる保守安定政権の工作であります。要するに、議員の多数を一まとめにしようというものである。
  31. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 石野君にちよつと申し上げます。申合せの時間が経過しておりますから簡潔に願います。
  32. 石野久男

    ○石野久男君(続) これは、日本国民を——民主主義の名のもとにおいて戦争準備政策を行うための多数派工作であります。国会で多数を占めさえすれば何でもできるという政府考え方が、このような形になつておるのだと思います。はたして政府の見解はどうであるか、承つておきたい。  最後に、私は、労働者農民党とともに、平和と独立と民主主義と生活を守つてつている全日本の労働者、農民、漁民、中小企業者、すべての日本国民が、米日独占資本家と吉田政府によつて進められているところの一切の戦争準備態勢に対して一致してあくまでも反対していること、従つて侵略拡大の陰謀は必ず失敗させられるであろうということを、あらためて警告して、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 質問の各項については、外務大臣その他所管大臣からお答えいたしますが、一言私から申し述べます。  マーフイー米国大使は、国際慣例に反するような行為はごうもしておられませんから、政府としては、これに対して抗議その他は考えておりません。(拍手)     〔国務大臣向井忠晴君登壇〕
  34. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 国庫収支の状況等をにらみ合せまして、今後金融面の施策の適当な運営をはかる所存でありまして、一概に金融引締めを行う考えはございません。来年度も健全財政の方針をとることはもちろんでありますが、わが国経済現状等から見て、財政及び金融を通じて施策の弾力ある運営をはかることが適当な段階に達しているものと考えます。今回の予算からはインフレにならないものと確信しております。  中小企業や平和産業がはげしいデフレに直面するという点でございますが、今度の予算では、金融面の施策と相まつて経済の運営に必要な資金の確保には十分意を用いる所存でございます。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  35. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 石野君は、ただいま、政府が秘密裡に再軍備の計画をしておるのじやないかと言われましたが、さようなことは断じてありません。石野君は、いかなる根拠をもつてさようなことを申されるのか、まことに不可解に存ずるのであります。政府は、ただいまの保安隊、警備隊の内容を整備充実いたしまして、国内治安の確保に万全を期したいと思つております。  なお、行政協定第二十四条は、決して外国出兵を規定したものではありません。保安隊は断じて外国に出兵はいたしません。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  36. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) お答えいたします。  昨年春以来、国際的な経済情勢を反映して、日本の景気も停滞ぎみにありますので、各企業ともこれが切抜けに苦心しておることは仰せの通りであります。但し、国内の需要が比較的旺盛であるにかかわらず、輸出の深刻な現状にかんがみて、政府といたしましては、輸出の振興貿易量の拡大のために、あらゆる措置をとつておることは、先ほど来申し述べた通りであります。すなわち、私どもは、産業政策の目的は、経済の自立と国民生活の向上にある、そのゆえにこそ輸出を振興し、生産力の増大を期しておるのでありまして、健全な平和産業の発達こそ、わが国経済の発展の道であると考えてあらゆる障害の除去に全力を尽しておる次第であります。  中国貿易に関する方針につきましては、先ほどすでに申し述べましたが、最近、十二月以降、政府の努力もありまして、相当活発化して参りました。その理由といたしましては、中共当局においても若干の政策転換があり、香港を通じての決済方法等も立てられ、特に最近も発表した通り、本邦よりの輸出品目等が緩和せられておること及び輸出先行を認めたことが、この原因としてあげられるかと思います。     〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕
  37. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。  賃金の問題は、労使間の自主的にきめるものでありまして、職階制、賃金制が労働者を奴隷化するものとは考えておりません。  なお職場防衛運動についてでありますが、労使が自発的にその企業及び職場を破壊分子の撹乱工作から守ろうとするものでありまして、暴力組織とは承知いたしておりません。なお、防衛隊に対する防衛隊ということは、ちよつと考えられぬと思います。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  38. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 石野君は、共産主義の侵略の脅威などということは欧州ではだれも信じないと、南博という者が言つたと言つておられますが、南博なんという人の言葉こそ、日本人はだれも信用しないと思います。政府は、共産主義の脅威についてさらに十分国民の認識を新たにするように努力するつもりでおります。  鹿地事件に関連しまして、米国政府ないし軍等の活動について、目下のところ何ら不法のものはないと考えております。  共和党の新政策二十六項目と言われまするが、米国政府の方針は米国新大統領の教書等で明らかでありまして、米国の雑誌などに現われたものはこれと別と思います。従つてこの米国の雑誌に現われました二十六項目について、批評の自由はもちろんありまするが、批評するに値しないと考えております。  米国の政策が巻返し政策であるかどうかは別といたしまして日本としては、米国との間に最も緊密な提携をいたそうと考えております。  なお政府は、米国はもちろん、世界の自由主義諸国と提携する方針で進んでおりますが、その成果は着々上つておりまして、日本が孤立するなどということは、とうてい考えられないのであります。(拍手
  39. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二分散会