運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-12-18 第15回国会 衆議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十八日(木曜日)  議事日程 第十五号     午後一時開議  第一 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した事件  日程第一 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出昭和二十八年分所得税臨時特例等に関する法律案内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案明禮輝三郎君外九名提出)     午後二時三十五分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————  第一 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第一、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律出議題といたします。委員長報告を求めます。運輸委員長逢澤寛君。     〔逢澤寛登壇
  4. 逢澤寛

    逢澤寛君 ただいま議題となりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず本法案の趣旨を簡単に申し上げますると、最近物価横ばい状態でありまするが、国鉄物件費中の大宗を占める石炭及び電力は値上りを示し、さらに仲裁裁定に基く国鉄従事員給与ペース改訂及び緊急とりかえを要する施設並びに車両の復元など、経費の増加に伴いまして、国鉄財政は収支の均衡を失し、このまま推移いたしますれば国鉄の健全なる運営を維持することが困難であると考えられるに至つたのであります。これに対処いたしまするのには、国鉄独立採算制をとつている建前上、運賃値上げによりまして増収をはかるほか道はないのだありますが、現在の経済状態にかんがみ、大幅な値上げは極力避けなければならないとの見地から、償却不足荒廃施設のとりかえのための経費につきましては別途の措置を考慮することといたし、運賃値上げ最小限度にとどめ、一割程度増収が得られるように引上げようというのであります。  次に今回の改正のおもなる点を申し上げますると、旅客運賃並びに料金は、総体といたしまして、おおむね一割程度引上げをしようとするものであります。すなわち、三等普通旅客運賃賃率は、営業キローキロメートルごとに、百五十キロメートルまで一円八十五銭を二円十銭に、百五十キロメートルを越え五百キロメートルまで一円三十銭を一円四十五銭に、五百キロメートルを越え一千キロメートルまで七十銭を七十五銭に、一千キロメートルを越える部分四十五銭を五十銭に、それぞれ改めることにいたし、これに伴い航路運賃並びに急行料金改正することになつております。最低普通旅客運賃及び寝台料金並びに定期旅客運賃割引率は、いずれもすえ置きといたしております。なお現在定期乗車券通勤通学の二種でありまするが、今回普通定期乗車券制度を新設することといたしまして、通勤定期旅客運賃より割引率の低い運賃を定めるため、所要法律改正をいたしております。また船室の特別設備に対する料金の設定につきましては、法的根拠を明確にするため、所要改正を加えたのであります。  次に貨物運賃につきましても、おおむね一割程度引上げをいたすことになつておりますが、この際、従来懸案となつておりました貨物等級表改正する予定となつております。すなわち、運賃負担力及び運送原価に応じ、従来の九等級を十二等級といたし、別に公共性に基く調整措置といたしまして、日常不可欠の消費物資等につきましては特別等級等級を設け、また軽量かさ高貨物につきましては減トン制度を復活する等、相当広範囲にわたる改正を企図いたしておるのであります。  なお、今回の改正は、旅客運賃は一月十五日より、貨物運賃は二月一日より実施せられることになつておることを申し添えておきます。  本法案は、本月六日運輸委員会に付託され、同八日政府より提案理由の説明を聴取し、爾来委員会を開くこと六回、その間、十日には利害関係者労働団体関係者及び学識経験者意見を徴するなど、慎重に審議いたしたのであります。本法案審査あたりましては、運賃値上げ政府の低物価政策矛盾はしないか、運賃値上げ物価国民生活、特に都市勤労者に及ぼす影響減価償却費、特別補充取替費等は多大に過ぎるのではないか、社会政策的、経済政策的要請に基いて著しく原価を割つた運賃減収部分については、政府はこれを一般会計より補給すべきではないかという点について、活発な質疑応答がありました。さらにまた、貨物等級表改正につきましては、きわめて熱心な質疑がありましたが、特に今次改正によつて大幅の値上げにならないように善処すべきである、青函間貨物キロ程は、この際すみやかに実キロ程に是正すべきであるという強い要望に対し、いずれも、政府及び国鉄当局は、これにつき十分研究の上善処するという答弁がありました。なお、その他の質疑につきましては会議録によつて承知を願いたいと存じます。  かくて、本月十二日質疑を打切り、同十三日討論に入りましたところ、河本敏夫君は改進党を代表して反対意見を、關谷勝利君は自由党を代表して賛成意見を、熊本虎三君は日本社会党を代表して反対意見を、永田良吉君は自由党を代表して賛成意見を、松原喜之次君は日本社会党を代表して反対意見を、それぞれ表明せられました。  右をもつて討論を終局し、ただちに採決の結果、起立多数をもつて、本法案政府原案通り可決すべきものと議決いたした次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 討論の通告があります。順次これを許します。臼井莊一君。     〔臼井莊一君登壇
  6. 臼井莊一

    臼井莊一君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま議題となつております国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対し反対の意を表し、かつその理由を申し述べたいと存ずるのであります。(拍手)  まず第一に、政府は、現在の為替レートを維持し、国内物価国際水準さや寄せせんとする、いわゆる低物価政策の方針を表明いたしておりますが、すなわち国内物価を安定せしめて、でき得べくんばこれを安くして行こうという方針なるにかかわらず、今回の国鉄のごとく、全国にわたる厖大なる運輸機関運賃引上げ物価を高騰せしむるがごときことは政策矛盾ではないかということを私たちは申したいのであります。(拍手石炭の例をとつてみましても、ただいま委員長の御報告のありましたように、今回の値上げの一つの大きな理由でありますが、運賃値上げすれば、石炭がまた上る。石炭が上れば、また運賃を上げる。また生活費が高くなればベースを上げなければならぬ。そうなると、また運賃引上げなければならぬということもあるのであります。そこで、生活費引上げるというようなことに対しては十分考えなければならぬ。すでに昨年十一月に旅客運賃を二割五分引上げました。また貨物運賃も三割値上げしておりますが、今回さらに本案実施を見ますと、終戦後実に七回の多きに至るのであります。ことに、昨年十一月の改訂は、物価が相当高騰したときでありますが、今回はそれと異なりまして、先ほど委員長のお話の通りに、横ばい状態でありますのでこの際物価の安定の上に重大なる影響を及ぼす本案実施は適当なる時期でないと信ずるのであります。(拍手)  第二に、国民生活に対する圧迫の問題であります。この問題が一番重要なる問題だと考えます。国民生活水準は、全国指数九二%に対して、都市は八〇%という非常に低位にあるのでありますが、この都市の低い生活水準をさらに低める、そのような都市勤労生活者に対する負担をますます増加せしむるがごときことは、努めて避けなければならないと信ずるのであります。(拍手)  第三に、国鉄運賃は、昭和十一年度の基準から考えますと、現在旅客において百十倍であります。貨物が百六十倍。一般物価の三百二十倍に比すれば安いということは一応認められるのでありますけれども、これは、現在の国鉄推定建設費約二兆余億というこの大きな資産を、国においてはわずかに八百億円という、ただ同然の価格で政府出資しておりますがゆえに、従つて一般物価から比べて非常に安いということは、これまた当然なことであると信ずるのであります。  政府は、資金がないからいたし方がないと申しますが、本案実施しないで、その対策はどういうふうにするかということについて申し述べてみますならば、まず工事費勘定において、借入金が百十億、減価償却が三十七億、特別補充取替費が二百六十七億、そのほか修繕費が五百四十九億円ありますが、このうち特別補充取替費の二百六十七億というものは、年度内の自己資金による経費として支出することは不適当だと考えるのであります。これは、政府国鉄を時価で出資したものと仮定しての償却費ということに意味があるのでありましようけれども、前述のごとく、事実においては安い出資でありまして、再評価も行われていない現在、かような資産に属すべきものであるというふうにも考えられるものに対して償却費として落すということは不適当であるということは、過日の討論におきまして、社会党成田議員が、たしか御指摘になつた通りであります。こういうようなものは、以前は、政府が、財政資金から、また一般会計から支出していたことは、そのとき御指摘になりました。  さらにこの点を繰返してみたいと思うのでありまするが、すなわち昭和二十年度から二十四年度に至る総額五百億円の工事経費のうち、鉄道自己資金によつたものは、わずかに十八億にすぎなかつた。しかるに、本年度は、工事費のうち三百六億、これを自己資金によつておりまして、総工事費の七四%の多きに達しておるのであります。従つて、この特別補充取替費のうちから、本年度約百億をもし営業費のうちにまわすならば、運賃値上げもせず、また国鉄裁定を完全に実施し得るのであります。(拍手)さらに平年度においては、二百十五億を営業費にまわして、そうして工事費の足りないところは、政府財政資金なり、あるいは民間資金借入れによるべきであると考えるのであります。また国鉄債券というようなものを発行することも必要でありましよう。国鉄資産は、先ほど申し上げましたように、二兆一千何百億という資産があると推定されるのにかかわらず、その借入金は現在なお一千億に達しないのであります。従つて十分借入れの余力はあり余つておると考えられるのでありますが、国鉄当局はあまり借金がお上手でないと見えまして——さらにまた政府も、十分これに対して支援を与えて、公共企業対としての国鉄に対して、財政的により一層のめんどうを見てしかるべきであると考えるのであります。  国鉄公社として独立採算制をとるということは、けつこうなことでありまして、経営能率引上げ、資本の浪費を排除し、人事能率向上、あるいは機構の改革、電化の促進、さらにいろいろな機械化等経営合理化によつて採算を有利にするということは、より一層努めていただきたいと存じまするが、しかしながら、単なるそろばんのみにとらわれて、国鉄公共企業体であるということをないがしろにしてはならないと考えるのであります。いかにして独立採算制公共企業体としての公共性との調和をとるか、国有鉄道経営上、国民福利のために、いかにしてはかるかということが、政治的手腕を要するところだと考えるのであります。  そこで、当分は、採算のとれない新線の建設というようなものに対しては、政府出資によるとか、あるいはまた民間資金を借りるならば、その利息を政府一般会計より補充することとする、あるいは通勤通学等定期料金原価を割る部分については、社会政策的な観点から、諸外国においてもその例を見るがごとくに、政府一般会計から補給するのも一案と考えるのであります。その他、国鉄職員の方が、先般のベース・アップの際に例示されたごとく、財源十項目にわたる約二百億円の捻出も可能とされている次第でありまして、帳簿外の財産、これが相当あるものと考える。これによつて処理し得る部面がたくさんあると考えるのであります。  さらにつけ加えたいことは、今回本案とともに貨物運賃等級制改正になりまするが、この内容を調べてみますると、値段の高いものに対しては、むしろ等級を下げておく、しかるに、国民生活に必要なる農産物とか、あるいは水産物等に対しては高率になつております。一応一割の値上げといいながら、その内容を検討してみると、主剤、四割、五割というような値上げがこの中に包蔵されておるということを先見したのであります。昨日本案が一日延期されまして、本日に延べられたゆえんのものも、この点につきまして、できるだけ農林当局運輸当局との折衝によつて、その矛盾なく、できるだけこれを下げたい、従つて、私たちは、委員会におきましては、農産物については等級改正値上げ一割を合せて二割以上の値上げをしてはならぬということを希望条件として付したのでありますが、今回折衝いたしましても、三割以上にはしないということに一応納得したようではありまするが、しかし、これにおいて私たちは満足するものではない。農林当局においては、より一層強腰になつて国民大衆に直接生活上必要なる水産物資あるいは農産物に対しての運賃については十分考えなければならないと考えるのであります。  国鉄運賃法によつて運賃改訂する場合に、なぜそれでは国会承認を要するかということは、単なるそろばんによりて、そのつじつまを合せる、経費がかかるから、ただ上げればいいと言う。それは、国鉄当局独立採算という建前に立つて、そろばんを事務的にやられるでありましようが、しかしながら、これが国民生活にどういう結果を及ぼすかということを考えて、そうしてこれに政治的に考慮を加えて、反省を促し、改訂をさすべきものであるという意味において、国会承認を要することになつているものと私は信ずるものであります。従つて国民生活に対する情ある政治を織り込まなければならぬと考えます。  政府は、何かと申しますと、資金がない、財政資金が足りないと言いますけれども、しかし、過般の補正予算に対する修正案が上程されましたときに論ぜられたるごとく、二千七百億円からの、融通でき得る金があるということであります。すなわち、政府資金がない、金がないと言うのは、資金、金にあらずして、国民に対する愛情がないということを、私たち指摘したいと思うのであります。(拍手吉田総理大臣は、古いことを思い出すようであるが、遺家族に対しても門前払いを食わせて、冬の寒い中を野宿させるとか、あるいは抜打ち解散をやるとか、あるいは選挙の公表まぎわに、同志である石橋湛山氏や河野一郎氏の首切りというがごとき不人情なることをやることが、一貫して政治の上に反映して、池田通産大臣が先般の暴言を吐くがごときことに至るという、その一貫せる不人情なることがすべてに現われたものだということを私は指摘したいのであります。(拍手)  従つて、私は、今回の国鉄値上げ反対し、いま少しく国民に対する愛情を持つべきであるという政府に対する反省を促して、本案反対するものであります。(拍手
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 關谷勝利君。     〔關谷勝利登壇
  8. 關谷勝利

    關谷勝利君 私は、ただいま上程いたされております国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対しまして、自由党を代表いたしまして賛成討論を行うものであります。(拍手)  独立採算制を堅持いたしておりまする国有鉄道が、従業員賃金値上げ石炭代電力料金等の高騰によりまするところの赤字を補填いたしまするために、最小限度運賃値上げをいたしますることは、やむを得ざることでありまして、当然といわなければならないのであります。(拍手野党諸君は、一方におきましては賃金値上げを叫びながら、一方におきましては、その賃金値上げを可能ならしむるための運賃値上げ反対をいたしておるのでありまして、首尾一貫せざるものはなはだしいと申さなければならないのであります。(拍手)  なおまた野党諸君は、運賃値上げを行わずして、一般会計からこれを補充しろと言うのでありますが、かくのごときは、国家財政現状を知らざると同時に、さらにまた国有鉄道法独立採算制の基礎を危うくするものでありまして、もつてのほかと申さなければならないのであります。(拍手)  現在、野党諸君は、日本国有鉄道に対しまして、国有鉄道法の一部を改正しろと言つておるのであります。その言つておりまするところは何かと申しますると、国有鉄道独立採算制を堅持するのであるから、自主性を持たせるというのが、その根本になつておるのであります。それにもかかわらず、この自主性を危うくするごとく、ことごとくを一般会計より繰入れろというのでありましたならば、独立採算制の意義はないのでありまして、公社なつたところの意味を失うのであります。そのようなことになるのであつたならば、野党諸君が称しておりますところの日本国有鉄道法改正は、野党諸君みずからがくずして来るということに相なるのであつて詭弁を弄するもはなはだしいと申さなければならないのであります。(拍手)  ことにまた、鉄道運賃が、今回の値上げで高過ぎると言うのでありますが、昭和十一年度に比較をいたしました際に、一般物価指数の三二〇に対し、旅客において一一〇、貨物において一六〇であります。(「勉強をしろよ」と呼ぶ者あり)諸君の方がもう少し勉強をしてください。(笑声、拍手)いかにこれが安いかということは、よくわかつておるのでありまするが、しかも公共性ということによつて、ことごとくを国民にしわ寄せしろというがごときことは、もつてのほかの議論といわなければならないのであります。  野党諸君はまた、過去におけるところの施設荒廃を今日の利用者負担せしめることが不当であると言うのであります。ところが、この荒廃施設の復旧は、本年一年だけ負担しろというのではないのでありまして、十箇年計画で、二十箇年で支払うことになつておる。これだけの負担を、過去のものは一切今の者は負担するな、こういうことになるのでありましたならば、敗戦日本経済はわれわれの責任ではないのだから復興さすなという議論も出て来るのであります。国家再建等は思いも及ばないことになるのでありまして、暴論もまたはなはだしいと申さなければならないのであります。(拍手)  また野党諸君は、この特別のとりかえ費二百六十七億円は、資産の再評価がしてないのであるから、これは償却すべきものではない、そうしてこれを一般会計から繰入れろというようなことを言つておるのでありますが、再評価などのわずかの手続上の問題にとらわれる、形式的な議論にとらわれるがごとき、国有鉄道現状を知らざるもはなはだしいと申さなければならないのであります。(拍手)  なほまた、社会党松原あたりは、原価以下で輸送をいたしておるものは、ことごとくこれを一般会計負担をしろうと言うのでありますが、このようにいたしましたならば、国鉄独立採算制は、前申すように、根底からくずれて参るのであります。なおまた、そのような特別の安い原価輸送をするものがあるがゆえに、固定資産税ある柱事業税その他の課税を免除いたしておるのでありまして、もし、そのように公共的に安くしたものを一般会計から補充するといたしまするならば、国有鉄道公共性はなくなつて来る。従つて、税金もかけなければならない。そうなつて参りますと、自然に運賃が上つて来ることを知らざる、不勉強きわまる野党諸君の言であると申さなければならないのであります。なおまた、松原あたりは何を申すかといえば、委員会におきまして、三割の値上げなら賛成する、こう言うのであります。しかもまた、運賃値上げをしないために従業員にしわ寄せするなと言うのであります。その内容は、反対討論内容でなくして、賛成討論内容であります。反対せんがための反対をいたしますると、賛成内容を持つた反対討論内容となるがごとき、矛盾もまたはなはだしき討論が出て参るのであります。(拍手)  なおまた熊本君は、新線建設費等一般会計から出しておるから運賃が値上りするのだということを言つておるのでありますが、このようなことは、借入金国鉄新線はできておるのであつて、まさか一般営業費から出しておるのでないことは、熊本君ほどの人は御承知のはずであろうと思うのですが、それを、ことさらそのように言つておりますことは、詭弁を弄しておるものでありまして、国民を欺瞞するものと申さざるを得ないりであります  以上のように申して参りますると、反対する理由は何らないのでありまして、今回の一割値上げは当然であつて参考人等も、ほとんど大部分が、やむを得ざる運賃値上げとして、賛成をいたしておるのであります。なおまた、値上げ等級改正とが同一時期に行われたために、一部相当の値上げとなるものもあるのでありまするけれども、これらに対しましては、割引その他の方法をもつて緩和をいたしてその期待に沿つておるのであります。ことにまた経済産業に及ぼす影響並びに公共性を考慮いたしまして最小限度値上げにとどめ、また北海道あるいは鹿児島等の、遠距離にして、運賃負担の大なるものに対しましては、遠距離割引をいたしておるのでありますさらにまた通勤通学等割引率に対しましては、世界一安い運賃でありまするけれども、運賃率をそのままにすえ置いておるのでありまして、勤労大衆の利益の擁護もいたしておるのであります。  このように考えて参りますると、この法案に対しては、こうも反対する理由はないのであります。野党反対せんがために反対をしておるのでありまして、私はこの運賃値上げに対して賛成意見を申し上げた次第であります。(拍手
  9. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 熊本虎三君。     〔熊本虎三登壇
  10. 熊本虎三

    熊本虎三君 私は、ただいま上程されております国有鉄道運賃値上案に対しまして、日本社会党を代表して絶対反対の主張をなさんとするものであります。(拍手)  まずその理由の第二といたしまして、先ほどから關谷君が盛んに独立採算制を云々しておりますが、すなわち国鉄自体性格というものを検討すべきであろうと考えます。国鉄は、国家産業の発展のための、また国民生活安定並びに文化向上の重要なる機関であることは、いまさらあらためて申し上げるまでもございません。(拍手従つて国家公共見地に立脚して経営されなければならないことも、いまさら言うまでもありません。それゆえに、現在の国鉄運用内容を見ましても、三百線区にわたるその中の八〇%に及ぶ二百六十線が赤字経営であるにもかかわらず、これに対して、採算を度外視して、誠意と熱意をもつて今日運転されておるのであります。さらに新線開発については、完成後何年の後に採算がとれるかとれないかを別にして、百二十五億を投じて、すでに着工中であります。今後さらに進んで、百数十にわたる予定線についても、国家産業開発のために緊要なるものからこれを実行線に移して予算化されるのでありましよう。代つて採算を度外視して、国家社会の必要上経営されなければならない限り、その建設については国家投資をもつて原則としなければ相なりません。(拍手)特に、戦争被害のため補充とりかえ等に緊急を要する費用、一千五百六十億を越える厖大なる負担公社に押しつけられておるのでありまして、しかもこれらの経費より支弁せんとするがごときは無暴もはなはだしく、言葉をかえていえば、従来政府の手によつて生じた借金肩がわりともいうべく、まことに不都合千万であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第二の理由といたしましては、このような国鉄性格論を別にいたしましても、現在の経営方式では絶対に経営は不可能であります。先ほども申し上げましたように、新線工事費百二十五億、補充とりかえ費、すなわち戦災復元費一千五百六十億、これに電化計画実施費六百三十二億、合計二千三百十七億という費用が必要であるのでありますが、さらに各地から求められております新線並びに復線化及び電化実施等を考えまするならば、現在のごとく独立採算偏重の建前では、とうてい経営は不可能であるといわなければなりません。(拍手)さればこそ、先ほども話がありましたように、終戦後といえども、政府が直営の当時においては、五箇年間に五百億の金を一般会計から支出しておるのである。しかるに、本年度の当初予算を見まするならば、損益勘定の収入二千九十九億でありますが、その中に、修理費といたしまして五百四十九億、償却費三十七億、特別補充取替費二百六十六億、計八百五十三億円となつておるのでありまして、総収入の四割二分に当るのであります。さらに、これらに要しまする人件費を加算いたしますならば、優に総収入の五割以上のものがこれに充当されなければならない。かくのごとき不健全きわまる経営内容のものは、他のいかなる事業にも断じて類例のない、危険きわまるものと断言しなければならないのであります。(拍手)  第三の理由といたしまして最近ようやく物価横ばい傾向にありまして、われわれといたしまては、さらに国民生活の安定を確立するため、断じてこれ以上の物価の高騰は抑制すべきであると信ずるのであります。しかるに、今回の運賃値上げは、ただちに他の公営及び民間鉄道等の運賃に累を及ぼすことは、火を見るよりも明らかな事実であります。それは、政府みずからが私鉄その他の運賃を規制いたしておるのでありますから、国鉄自身の運賃値上げ実施しながら、他を押えるというわけには参らないのでありまして、過去七回の国鉄運賃値上げのことごとくの前例がこれを立証いたしておるのであります。さらにこれが一般生活必需物資にはね返りまして、さなきだに国民生活は、いまだ戦前つの八〇%に及ばざるにもかかわらず、ますます逼迫のどん底に追い込み、社会不安を増大する根源となるのでありまして、私どもの断じて賛成し得ざるところでございます。(拍手)  理由の第四は、今回の運賃値上げ内容を見るに、まことに非社会的である、合法性を欠いておるという点でございます。それは、高級車料金はすえ置きといたしまして、定期券に特別高率の引上げを行い、通勤者を初め一般勤労階級に負担を加重し、さらにまた貨物運賃に対しましては、農産物、米麦、わら、パルプ等の輸送に重圧を加えておるのでありますが、特に野菜、青果物等の空トンの生ずるものは四割以上の値上りとなり、まことに反動政策の暴挙なりと断言せざるを得ないのであります。(拍手)  理由の第五といたしまして、特に不都合きわまることは、運賃値上げ理由として、国鉄裁定に基く従業員のべース・アップを取上げておる点であります。これは、事情を知らない国民を欺瞞し、この責めを労働者に転嫁する以外の何ものでもありません。(拍手)この点は、裁定委員会理由書にもありますように、現在の設備がすでに耐用年数を過ぎたるもの概算四千億、危険を予想されるもの一千六百億という老朽荒廃の設備を運用し、しかも、いかなる産業も追随を許さざる作業能率の上昇を示しておるのでありまして、すなわち旅客において戦前の三四二%、貨物において一九〇%という驚異的成績を上げていることは、何人も否定することのできない厳然たる事実であります。このことは、ひとえに国鉄従業員諸君の汗とあぶらの結晶とも言うべきものでありて、この努力に報うるに裁定案をもつてしては、なお安きに失すること、寸毫も疑う余地はございません。(拍手)  理由の第六といたしましては、もちろん、われわれも営利を目的とせざる限りは、公共事業といえども、でき得れば受益者の公平なる負担により収支償う健全経営ができることを希望するものでありまして、その基本的問題を否定するものではございません。しかし、先ほどから述べましたごとく、国鉄現状においても、単に独立採算制の名において、現在の受益者のみに負担を加重せんとすることは妥当ではないのであります。簡単にいえば、政府が責任を負うべき復元費及び将来の利用者が益すべき施設建設費まで、現在の利用者運賃の形で全都を負担するがごときは、苛酷にして不合理なる措置であると断言し、われわれは断じて承認できざるところであります。  なお關谷君が委員会においても言われた、政府一般支出からということでありまして、その支出のできざることは了承しているなどと言つたのでありますが、私は、委員会に特に大蔵省当局の出席を求め、現在の政府の持てる余裕金は何ほどなるかをただし、それが二千数百億に達することは、委員会において大蔵当局が言明したところである。關谷君の言うがごときことは事実に相反するものであることを断言しておく次第であります。(拍手)  以上申し述べましたる六項目を主たる反対理由といたしまして、わが党は本案に絶対反対を主張する次第であります。(拍手従つて政府に対しましては、国鉄追加予算の財源は財政余裕金より支弁するように要求するとともに、国鉄に対しては、国家治安の責任にある公安官の経費国家警察へ組みかえ、鉄道用地の貸付料、高架線下の使用料を時価に改訂し、さらに不要不急の土地建物及び死蔵物品の処分等により数十億の増収をはかり、経営合理化を促進し、もつて健全経営のために最善の努力を要求いたしまして、私の今回の不当なる運賃値上げに絶対反対討論を終る次第であります。(拍手
  11. 岩本信行

    ○副局長(岩本信行君) 正木清君。     〔正木清君登壇
  12. 正木清

    ○正木清君 私は、ここに議題と相なつております国有鉄道運賃改訂法案に対しまして、日本社会党を代表して反対をいたすものでございます。(拍手)  まず、反対の趣旨を述べます前に、現在の国有鉄道の姿の中で、言葉をかえて申し上げますならば、性格の中で、独立採算制を基準とする国鉄経営のあり方がどうでなければならないか、もう一点は、国家的な性格を持つております公共企業体としての国鉄が、いかなる姿でなければならないか、この二つの点を明確にいたしながら、私の反対の論旨を進めたいと思うのでございます。(拍手)  そもそも国鉄運賃法第一条の運賃原則がいうところの原価を償う運賃というのは、公共企業体たる国鉄運賃の最高の基準であると同時に、最低の限度であるといわなければなりません。従つて公共企業体といえども、企業体として独立採算制を原則とする以上、コストを無視して経営すべきでないことは、もちろん議論の余地はないのでございます。健全なる立場から見ましたる企業体としての国鉄のコストたる三割値上げを、政府が一割に抑制いたしましたのは、国家産業政策上の要請でございます。また民生安定、すなわち低物価政策の結果であるとするならば、これより生ずる国鉄経営上の欠損は、当然国家がこれを補填すべき義務があることは、議論の余地がないのでございます。ここにすなわち国鉄公共企業体たるの性格が明確にされておるのでございます。しかるに、政府は、何ら根本的な、具体的な方策を示さず、経営難に苦しみまするところの国有鉄道当面の解決を、一割運賃値上げによつて一時を糊塗せんとするのが今回の値上げ法案であること、議論の余地がございません。(拍手)  一体、国鉄の購買しつつありまする石炭、まくら木、鋼材その他の物資は、ほとんど自由なる経済価格でございます。電力といえども今や採算価格であることは周知の事実でございます。すなわち、国鉄の足は自由価格の上に立つて独立採算制を強制されておるのが国鉄の姿でございます。しからば、その上体はどうかというと、政府政策運賃に縛られまして、実際上どうにも身動きができないというのが現実の国鉄の姿であるということを、われわれは真実に理解いたさなければらないのでございます。こうした不合理と矛盾のしわを、主として従業員の大量整理と低賃金によつて切り抜けて来たのが、いわゆる国鉄企業の合理化の真実の姿であつて、われわれの断じて容認しがたいところでございます。(拍手)現に、国鉄裁定の給与ベースは最低限度のものであると、仲裁委員長みずからが、過日の人事委員、労働委員及び運輸委員の連合審査会の席上においても言明いたしております。国鉄総裁もまた、適当なる裁定であると認めておるのであります。しかるに、政府は、この当然過ぎる最低限度の裁定すら完全実施を拒否しておるのでありまして、従つてこれより生ずるあらゆる事態に対しては、公労法の精神をみずから蹂躙する政府当局が当然全責任を負うべきものであることを、私はこの議場において明確にしておく次第であります。  今回の運賃一割値上げが、政府の言う低物価政策に沿うて、民生安定向上の一助となるかというと、決してそうではございません。現に、運賃改訂の過日の公聴会における各公述人の大多数が反対理由として取上げておることにおいても、また連日の各階層、各業界の、この国会に対する運賃値上げ反対の陳情、請願を見ても明らかではございませんか。すなわち、旅客運賃中、勤労者の生活を脅かすもの、また全国で概算二十万人と推定されておりますところの戦争被害者である行商出荷組合員の通勤定期券におきましては、五割以上、すなわち十割近くも増されるのであります。しかも、貨物料金におきましては、等級改訂によつて二割から三割、極端なる貨物では五割も値上げするものもあるのでございまして、従つて今回の改訂は、政府の意図に反しまして、物価のつり上がりの好材料となります。経済安定の土台を破壊し、勤労国民階層の生活を脅かす結果となりますことは、これは火を見るよりも明らかでございます。  これを逆に国鉄経営より見まして、一割値上げによつて健全経営が確立したかというと、決してそうではございません。国鉄当局の最初の要求でございますところの三割値上げ案は、すなわち補正予算の査定にあたつて政府の低物価政策の名目のもとに一割にすえ置かれ、その結果、国鉄裁定十一月としなければならなかつたばかりでなく、戦災によつてこうむつた国鉄の復旧工事、とりかえ補充費並びに荒廃復元に要する財源については、委員会における大臣の答弁をもつてしても、何ら具体案を示しておらないではありませんか。国鉄の実態を知れば知るほど、国鉄の危機今日にありとの感を深くする次第であります。従つて政府は、失うところいたずらに多くして、得るところきわめて少き今回の改訂案のごときは一応これを中止し、そのために生ずる国鉄財政の欠陥は国家負担としてこれを一般会計より繰入れするという処理を私は心から望んでやみません。  政府は、その財源なしと言う。しかし、これは私どもの是認しがたいところでありまして、われわれ野党三派は、これに要する財源を明らかにいたしておるのでございます。国鉄の根本的な解決、すなわち国鉄の健全な企業体を確立いたしまするただ一つの道は、独立採算制政策運賃との関係、換言すれば、経営運賃政策運賃との関係並びにその合理的処理の問題を抜本塞源的に解決することでございまして、この際国鉄の健全なる恒久対策をすみやかに樹立すべきことを、政府国鉄当局に向つて、ここに強く勧告するものでございます。(拍手)  風上の理由によつて、私は本運賃改訂案に反対をいたす次第でございます。(拍手
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  14. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  15. 久野忠治

    ○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出昭和二十八年分所得税臨時特例等に関する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  16. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  昭和二十八年分所得税臨時特例等に関する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員会理事川野芳滿君。  昭和二十八年分所得税臨時特例等  に関する法律案内閣提出)に関する  報告書   〔最終号の附録に掲載〕    —————————————   〔川野芳滿君登壇
  18. 川野芳滿

    ○川野芳滿君 ただいま議題となりました昭和二十八年分所得税臨時特例等に関する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  この法律案の提案の趣旨は、政府の説明によれば、数次にわたる減税と合理化に引続き、昭和二十八年度におきましてもこの方針を継続し、国民生活向上と資本蓄積等に資するため、税制の一般改正を行うこととし、これを前提として、さしあたり昭和二十七年度補正予算に関連して所得税負担の軽減合理化を行うため臨時特例を設けようというのであります。  次に内容について申し上げますと、昭和二十八年一月から三月までの間に支給される給与所得及び退職所得につきましては、明年度改正予定いたしております控除及び税率によつて計算した源泉徴収税額により源泉徴収することといたしております。すなわち、この源泉徴収税額は、基礎控除の額を現行五万円から六万円に、扶養控除については最初の一人につき現行二万円から三万五千円に、勤労控除の最高限を現行三万円から四万五千円にそれぞれ引上げるとともに、社会保険料控除の制度を設け、さらに税率について、特に低額所得者に対する負担の軽減をはかるため、一部引下げを行つて計算いたしておるのであります。次に、このうち社会保険料の控除につきましては、特に昭和二十七年分の所得についてもこれを認め、本年一月にさかのぼつて控除するというのであります。  以上の諸控除及び税率の改正措置によりまして、政府の説明によれば、所得税の負担は相当軽減されるというのであります。たとえば月収七千円の独身者の場合について申し上げますと、現行の負担額月三百五十六円が九十一円となつて七四%の軽減となり、月収一万五千円の夫婦の場合には、現行の負担額月千三百九十六円の税額が七百八十一円になつて、約四四%軽減され、また月収二万円の夫婦、子二人の場合には、現行月千七百五十円が九百八十一円となつて、約四三%軽減され、これらの改正により、源泉徴収の所得税において約二百二十九億一千百万円、申告納税の所得税において一億二千百万円、合計二百三十億三千二百万円の減税となるというのであります。  最後に、昭和二十七年分の所得税につきましては、申告納税の一層の改善充実に資するため、従来確定申告書の提出期限及び第三期分の納期限が二月末日となつていましたのを、三月十六日まで半月間延期することといたそうというのであります。  以上がこの法律案の提案の趣旨並びに内容でありますが、この法案は、去る十一月二十四日、本委員会に付託せられ、爾来慎重審議を絖けて参りました。その間の質疑内容の詳細につきましては速記録にこれを譲りたいと存じますが、質疑の間において、政府は、この減税を、次の国会において、明年申告所得者にも及ぼし、平年度化することによつて、所得税は約八百億円の減税となるということが明かにせられました。  次いで、本日質疑を打切り、ただちに討論を省略して採決に入りましたところ、本案は起立多数をもつて原案の通り可決すべきものと決しました。  以上、簡単でございますが、御報告申し上げます。(拍手
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 討論の通告があります。順次これを許します。中崎敏君。  〔中崎敏君登壇
  20. 中崎敏

    ○中崎敏君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となつております昭和二十八年分所得税臨時特例等に関する法律案に対して反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)  わが国の現行の租税制度は、国情に沿わないところの模倣の制度であるのであります。自由主義の政策によりまして、中産階級が没落し、大資本家が跳梁跋扈いたしまして、貧富の懸隔がはなはだしくなり、まさに時代逆行の奇現象を呈しておるのであります。特需を除くわが国の産業は萎縮し、貿易は不振をきわめ、金融は枯渇し、インフレは進行いたしまして、憂うべき事態を惹起しつつあるのであります。ことに中小企業者は、まことに涙なくしては見得ないような実情に置かれておるのであります。独立後初の機会において、中央地方を通ずる税制の大改革をなすべきときでありまするが、政府、与党はいたずらに派閥抗争に終始いたしまして、醜を天下にさらし、国民の期待を裹切つておるのであります。  憲法第二十五条によつて、すべての国民は健康にして文化的な最低生活を営む権利があるのであります。その最低生活さえも保障されていないのに、これらの階級に課税することは、きわめて不適当であるといわなければならぬのであります。(拍手)現下の経済事情から見て、一家扶養家族三人を含むところの家庭においては、最低生活費を二万円程度と見ることは決して不当ではないと思うのであります。今回の政府案によりますれば、給与所得の最低限度は、現行十三万円に対しまして十六万五千円程度引上げるのでありますから、その控除率は二割一分にすぎないのであります。これに対しまして、給与ベースは、大体においてこれとほぼ同程度に引上つておるのでありまするから、実質的には何らの減税とならないのであります。一千億円を減税するという政府、与党の公約は、羊頭狗肉の選挙対策にすぎないといわなければならぬのであります。(拍手)今後インフレはさらに進行し、勤労大衆生活水準を引下げざるを得ない見通しにおいて、実質的な減税を行うがためには、少くとも月収二万円程度の家族に対しましては非課税とすべきものであるということを主張したいのであります。(拍手)  政府は申告所得には弾力性がないというが、これは、自由党内閣が多年にわたり中小企業者、農民、漁民等の大衆に対し苛斂誅求の結果、所得の源泉を枯渇せしむるに至つたことを物語るものであります。現に、政府は今回の補正予算編成にあたつて、源泉所得額を当初予算額よりも二百三十三億円の減収と見ておるのでありまするが、これは明らかに中小企業者、農民、漁民等の勤労大衆に対し最後の一銭まで取上げた罪悪の結果だといわなければなりません。(拍手)私は、申告所得者に対しましても、源泉所得者と同様に勤労控除をなすべきものと信ずるのであります。もちろん、中小企業者の育成は、税金対策のみによつて十分だとは言えないのでありまするが、少くとも今回の税制改正によつて、源泉所得者に対しましては二百二十九億円の減税に対しまして、申告所得者に対しましてはわずかに一億円の減税にすぎない点を考えてみますと、中小企業者、農漁民等の大衆に対し正しい理解を持つておるとは言えないのであります。政府与党は、口を開けば減税を吹聴し、過般の総選挙においても一千億円の減税を公約したが、今回わずかに二百三十億の名目的な減税にすぎないということを考えてみるならば、思い半ばに過ぎるものがあるのであります。(拍手)  一方、インフレによる生活水準の引下げの代償として、また申告所得者に対して末端税務官吏の行き過ぎ徴税によりまして、さらにまた不当に高い間接税の増徴によつて自然増収をはかり、その名に隠れて税金を増徴するのが、政府の常套手段であるのであります。あたかも右のほおをなでて左のほおをなぐるの類であつて、羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいといわなければなりません。(拍手)また法人税の場合においても同様でありまして、中小法人のごとく、その資産内容に弾力性がなく、資金調達の道もとざされ、担税力の少いこれらの法人に対し、五割も十割も配当するような大きなる法人並に四割二分の課税をするのは、実に残酷きわまるものといわなければならぬのであります。よろしく中小法人に対しましては三〇%程度に税率を引下げ、大きなるこれらの法人に対しましては、現行四二%の税率をさらに引上ぐべきものだと考えるのであります。  租税は、負担能力のある者からこれを徴収いたしまして、万人にそのところを得せしめ、社会正義と公平の観念を徹底しなければならないのであります。福祉国家の実現のためにも、かくすることによつて初めて目的を達するといわなければならぬのであります。政府は、国家公務員や公共企業体労務者の賃金を値切ることにきゆうきゆうとし、農民、漁民、中小企業者に対し苛斂誅求を事とし、大衆怨嗟の的となるよりも、自由主義政策のそでに隠れて、すくすくと太りつつあるところの大資本家に対して適正課税することこそは、社会正義の命ずるところといわなければならぬのであります。  本来ならば修正案を出すべきでありまするが、本案審議のさ中に補正予算が通過したことと、社会主義政策を織り込んだ労働者、農民、漁民、中小企業者等の勤労大衆に対する課税の軽減と、高額所得者に対しては最高七〇%程度の課税をなすことを提案し、また地方財政の独立と円滑なる運営を期するための中央地方を通ずる全面的税制改革の含みを残しまして、本法案反対するものであります。(拍手
  21. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 淺香忠雄君。 〔淺香忠雄君登壇
  22. 淺香忠雄

    ○淺香忠雄君 ただいま上程となりました昭和二十八年分所得税臨時特例等に関する法律案につきまして、私は自由党を代表いたしまして賛成の意を表するものでございます。(拍手)  本法律案内容については、委員長より報告のごとく、基礎控除並びに扶養家族控除額の引上げ、さらに勤労控除の限度額の引上げ、その他の軽減措置によりまして、さしあたつて今回の補正予算において合計二百三十億円余の減税となるのでありますが、しかも、これらの軽減は来年度一箇年を通じて断行される見込みでありまして、その減税総額は約八百億円と見込まれておるのであります。野党諸君は、よく、税法上の減税はやつても、自然増収を見積つているから減税にはならないなどと言つておられるが、減税ということは、税法上の減税のほかには断じてありません。税を下げても、国民経済が発展し、国民全体の収入がふえれば、それだけ税の収入も多くなることは、これまた当然過ぎるほど当然のことであつて、減税しても国の税収がその割に減らないということは、とりもなおさず生産がふえ、これによつて国民所得の増加を来し、政府経済政策に誤りのなかつた証左であります。(拍手従つて、それだけ国民の暮しのよくなつたことを示すものでありまして、一層喜ぶべきことであります。  特に、今回初めての措置として、国民健康保険及び健康保険等の保険料や、公務員等の共済組合の共済掛金等の支払金、すなわち社会保険料を所得から差引いて免税しようとするのであります。私どもは、国民健康保険や共済組合の制度は、社会福祉制度の大きな一環として、政府の積極的な施策の一つとして今日まで取上げて参つたのでありますが、今回は税制の一面からもこの発展及び促進の方途が講ぜられましたことは、まことに時宜に適した措置と考えます。  わが党は、かくのごとく、公約の通り国民の租税負担の軽減につとに重点を置いて参り、数次にわたつて減税を行つて参つたのでありますが、さらに今回の諸控除及び税率の改正によつて国民の所得税負担は著しく軽減されるのであります。わが党は、野党諸君の言われるがごとき空虚な言論に終始することなく、あくまで現実に即し、公約の一つ一つを堅実に実現せんとするものでありまして、過去の実績はこれを如実に示しており、わが党の態度と実行力とを雄弁に物語つていると信ずるのであります。(拍手)しかしながら、わが党はこれで決して満足しているものではありません。なお今後におきましても、他の施策と相まつて国家財政の許す限り、さらに一段の減税について着々その方策を立てつつあり、ますますその方向に立つて強力に一歩々々その施策を推進して行くことを深く念願しておるものであります。  従つて、今回のごとき所得税について特別の措置を講じ、臨時特例を設け、特に低額所得者に対する負担の軽減をはかろうといたしましたことは、きわめて適切な措置でありまして、本案に対し私は心から賛成の意を表し、討論を終るものであります。(拍手
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 佐藤觀次郎君。 〔佐藤觀次郎君登壇
  24. 佐藤觀次郎

    ○佐藤觀次郎君 ただいまの委員長報告に対しまして、日本社会党を代表して反対するものであります。  現下国民の一番苦しんでおる問題は、政府経済政策の失敗から深刻な不景気に襲われておることでございます。従つて、今や歳末を控え、ゆゆしき状態になつておるのであります。しかも、この不況にあつて、重税に耐えかねて、差押え、倒産のうき目を見ている者は、その数日に日に増し、税の苛斂誅求に国民は泣いておるのであります。このときにあたり政府は七百億円余の自然増収を得て、今日臨時特例を設けまして、常日ごろの公約を果したなどと言つておるのであります。吉田内閲は、口を開けば減税、一千億円の減税ということを言つておるのでありますが、はたして国民がこの減税を言葉通りに受取つておるでございましようか。(拍手)今日われわれのちまたにおいて接する声は、どこに参りましても、税金の苦労と不景気に泣いておることであります。現内閣の施策の失敗は、一部の資本家や政府の御用向きの事業家にはけつこうでございますが、これを支持する者はほとんどございません。当局は、物価高を幸いにして、水増しの国民所得を見積つて、そこから多く取過ぎて、これを返しておるのであります。つまり、多く取過ぎた中から、これを手元に返してやるというような、まことにたわいのない減税でございます。(拍手)  そもそも今回の税法改正の基本線は、かのシヤウプ勧告案を一部訂正したものでございます。わが国の税法に対しまして、シヤウプ勧告案がよい企てと影響を与えたことを私は知つております。しかし、第一に、資本蓄積のために、勤労者、中小企業者を犠牲にして、大資本に奉仕したというところに大きな欠点があります。第二は、日本の特殊事情を考えずに、地方財源の苦しい状態を考えずに、地方財政資金の枯掲を来しておる点でございます。第三は、二百万円以上の高額所得者に対し、あるいは法人税に対して多大の軽減をいたしたために法人の脱税となり、また二百万円以上の累進課税をやめた結果、高額所得者に多大の利便を与えた点でございます。  かかる基本に立つたシヤウプ勧告案を原案として、これを金科玉条にして、すずめの涙ほどの減税をしたのが、今日の減税案でございます。この根本は、中小企業者、農民、勤労者の所得を水増しして、これに多大の高い税金をかけて、税法上の減税で、これを減税だ減税と言われておるのが、吉田内閣のやり方であります。今日の物価高や、俸給生活者の所得増加の関係で、その自然増加を来したのでございまして、決してこれはほんとうの減税にはならないのでございます。これは結局において、取過ぎた税金を返すことによつて減税だ減税だと言うのであつて、これが現在の吉田内閣の公約でございます。  今日、多くの給料所得者あるいは中小企業者が地方税との二重課税に泣いているのをわれわれは知つておるのであります。われわれは、中小企業者、農民に勤労控除を認めなければ、少くとも基本控除を八万円程度引上げる。また物価の高騰しておる今日、扶養控除を一人について五万円、勤労控除は六万円程度引上げてこそ初めてわれわれは給料所得者の生活が助かると思うのでございます。こういう点でこそ初めて減税一千億が事実になつて現われるのでございまして、今日富裕税をやめると言つておりますが、われわれは、こういうような税金をもつととつて、そうして下級の人の税金を減らしてこそ税の公平というべきであると思うのであります。今日、大会社の税のがれの濫費、法人の脱税行為に対して、まじめな納税者は税に対する不平を大いに訴えておるのであります。よろしく税法の改正は、大蔵省の机の上でなくして、明瞭にして抜本的な方法によつてつてこそ真の減税なりと私は考えます。(拍手)  アメリカやイギリスのような国と違いまして、わが日本の国は複雑多岐でございます。こういうような日本の国において、外国そのままの税法も持つ来て、そうしてこの税法を適用するということは、やはり無理な点があり、そして末端の税務署の官吏が、時の事情を知らずして、今日国民に多大の迷惑をかけておるのであります。こういうような点を考えまして、少くとも減税は、真に国民がまじめに税金を納められるような程度に考えてこそ、私たちは減税の目的が達せられると考えるのでございます。  こういう点につきまして、われわれは真の減税には賛成ではございまするが、今日の自由党の減税は口先だけの減税でございまして、われわれ社会党が考えておる減税でないという点において、本案についてわれわれは反対するものでございます。われわれは、かかる税法に対しまして、当局が低額所得者の税金を軽減するために、もつと真剣に考えることを提案いたしまして、本案反対するものであります。(拍手
  25. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
  26. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員長報告通り可決いたしました。(拍手)   ————◇—————  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案明禮輝三郎君外九名提出
  27. 久野忠治

    ○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、明禮輝三郎君外九名提出戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  28. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。厚生委員長平野三郎君。     —————————————   〔平野三郎君登壇
  30. 平野三郎

    ○平野三郎君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申し上げます。  終戦後、軍人軍属が内地に帰還しました場合は、その上陸地において復員手続を終了した後帰郷せしめていたのでありますが、その帰郷の途次において、自己の責めに帰すべからざる事故によつて死亡し、または傷を受け、もしくは疾病にかかるような事例が起つておるのであります。たとえば、済州島第五十八軍隷下を離れて昭和二十年十月二十五日佐世保港に上陸した復員部隊のうち、四国方面へ帰還する二百数十名の軍人軍属が、同年十一月六日尾道から第十東予丸に乗船したところ、愛媛県越智郡六ツ瀬灘において猛烈な突風に襲われ、該船舶は転覆、遂に乗客三百九十六名が遭難溺死するに至つたのであります。これらの人々は、形式的にはすでに復員が完了しているため、戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用がなく、同法の援護を受けることができないのであります。単なる形式的理由によつて、他の一般戦没者遺族等と差別的取扱いを受けているこれらの遺族に対しても本法の援護を受ける道を開こうとするのが、本法律案提案の理由並びにその大要であります。  本法律案は、十二月十七日、本委員会に付託せられ、本十八日、提案者を代表して明禮輝三郎君より提案理由の説朋を聴取した後審議に入り、討論を省略して採決に入りましたところ、本法律案は全会一致をもつて可決すべきものと議決した次第であります。  右御報告申し上げます。(拍手
  31. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案委員長報告通り可決いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会