○櫻内義雄君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま
議題と
なつております
政府提出の
昭和二十七
年度一般会計予算補正等三案に対し反対の意を表し、
野党各派より提出の同
修正案及び
動議に対して賛成の意を表するものであります。(
拍手)
今回の予
算補正は、総選挙後の
最初の
国会に
提案せられたということと、
独立後の
政府によつて独自の見解による予
算補正が行われたという点に重要な意義を有すると思うのであります。しかるに、
政府は、はたして
独立国家にふさわしい、自主
独立の気魄によつて
補正を行つたでありましようか。また、選挙に際する
公約の実行に誠意があつたでありましようか。これらの点について、はなはだしく疑問を持たざるを得ないのであります。(
拍手)
最初に、
歳入面についてわれわれの見解を述べてみたいと思います。
政府原案の
歳入については、
租税及び印紙
収入の四百七十一億円と、雑
収入百十二億円及び
専売納付金一百億円等、七百九十七億円を元といたしたのでありますが、われわれといたしましては、先ほど
修正案の際の
説明にありましたように、前
年度剰余金の二分の一の二百二十六億円、あるいは
財政と
金融の
区分を明確化して、農村漁業
融資、
中小企業融資、住宅
金融公庫への
出資等の
政府案六十億円をすべて
資金運用部資金によつてまかないたいのであります。
特別会計への繰入れ中止とか、あるいは防衛
支出金、
安全保障諸費の余裕金の一部を
歳入に計上すべきであると主張するものであります。ただいま、西川君より、この防衛
関係費の
歳入計上につき、主義主張の違つた党派が協調するのは矛盾するとの御指摘でありますが、現に、
政府の
説明によつて、防衛
支出金におきましては二百億円余、
安全保障諸費におきましては五百十五億円余というものが残つておるのでありまして、主義主張とは
関係なく、
財源として計上できることを指摘しておるのであります。(
拍手)しかして、以下申し上げます諸施策のために
支出いたし、
独立後の
最初の予
算補正に際し、国民の期待に沿うべき努力をいたしたいのであります。特に年末を控えての実情からいたしますならば、依然として
ドツジ・プランによる
国家財政偏重の
財政政策にとらわれることなく、これを打開して、
金融逼迫を緩和し、
日本経済の衰弱を救わねばならぬと存じます。(
拍手)まず
食糧政策に触れてみたいと思います。申し上げるまでもなく、わが国の
食糧不足は、このまま放置いたしますならば、年に百二十万人に及ぶ人口の自然
増加と、年間七十万町歩といわれる耕地の壊廃により、憂慮すべき現象の起ることは当然であります。現在、年間米麦の輸入量は三百五十万トンにならんといたしておりまして、米だけでも百万トンの輸入を必要とするのであります。
政府は、このために
食糧増産の五箇年計画を立てて、
明年度より年間八百二十億円を投じ、米麦千七百下十五万石の増産を達成せんとしておるのであります。かかる事情のもとに、
政府のとらんとする
米価政策は、予
算補正に際して、米の生産者価格を石上千五百円とし、
消費者価格は従来の十キロ六百二十円を六百八十円に値上げせんとするのであります。
本年の米の収穫実情は、十月十五日の予想で六千四百八十二万石であるといわれ、平年より二百三十七万石の増収であります。価格は昨年より四百七十円を
引上げたのでありますが、供出意欲はまことに低調であります。現在二千百万石程度の供出量であり、最小限度の目標、二千四百万石へはまず及ばないのであります。これはなぜかというと、超過供出についてはボーナスがついており、
買上げ価格が一万円であります。従いまして、各都道府県はでき得る限り供出量を少くし、超過供出に持つて行きたいという考え方に立つておるのでありまして、これがため供出量の確保が困難視されるのであります。現行米の配給量は一箇月十五日間でありますが、現在の供出
状況では、はたして十五日分を確保することができるかどうか、まことに疑わしいのであります。しかも、消費者は、従来十五日分以外の米につきましては、何とかいろいろとやりくりをいたしております。超過供出価格の一万円は、この場合のやみ価格に大きな影響があり、消費者にとりましては、
米価の
引上げと、やみ価格の高騰によりまして、大きな生活上の圧迫を受けざるを得ないのであります。われわれは、
食糧、農産物の価格安定の方途として、
一般市場価格に左右されない、すなわち、これとは絶縁したる生産者価格を確立るべきことを主張するのでありまして、この
意味から、米麦の二重
価格制度をとるべきであると考え、
消費者価格を十キロ六百二十円にすえ置きいたしたいのであります。一方において多量の
輸入食糧を必要とし、
地方、人口世加、土地壊廃に対応する
食糧増産計画を実施せんとするならば、現
政府のとらんとする、自由販売に移行するためとも見られる
米価政策は、いたずらに消費者大衆に対して困惑を与えるものであるといわなければなりません。(
拍手)
次に
地方財政の困窮につきましては、われわれはそれぞれの
関係府県の
財政実情を十分承知しておりますので、いまさら贅言を弄する必要はないと存じます。
人事院勧告に従つた場合の
地方公務員の
給与べース改訂に要する
支出、あるいは地域給や、その他の手当等についての
歳出増、また
地方税法の
改正と、経済情勢変化による
地方の
歳入減あるいは
歳出増は、十分考慮の必要があると存じます。すなわち、
平衡交付金の
増額や、
地方債のわくの拡充は、当然のことといわざるを得ないのであります。
政府原案は、
平衡交付金二百億円、他に
起債百二十億円と
なつておりますが、われわれといたしましては、
平衡交付金を五百五十一億円とし、
起債は二百四十億円といたしたいのであります。
政府は、
独立後におきましても、なお
財源が許さないとして、
人事院の
勧告や、中労委の裁定に対して不誠意であるということは、まことに遺憾しごくであります。(
拍手)
政府が最も関心を払い、協力を得なければならない
政府職員並びに
関係機関である
国鉄、
専売等の職員に不安感を与え、その支持を得ざるがごときは、まことに愚策といわなければなりません。(
拍手)われわれは、
人事院の
勧告あるいは中労委の裁定を誠意を持つて実現すべきであると考え、
給与ベースの改訂は
勧告通り八月に遡及して完全に実施するよう
予算措置をいたしたいのであります。わずか三箇月前の選挙期間中に、
自由党の
諸君は、高能率、高
賃金を説き、
公務員の
給与改善をはかることを主張したにもかかわらず、予
算補正を通じて、その積極性の見るべきものがないのでありまして、
自由党の面目いずれにありやといわざるを得ません(
拍手)
また
社会保障政策につきましては、欧米の先進国に劣り、英国が
歳出総額に対して三八・一%の
予算を計上しておるのに対し、わが国は本
年度において八・七%であることは、御承知の通りであります。今回の
補正に際しまして、わが党といたしましては、自由労働者に対する失業対策費、
国民健康保険医療費の計上を主張し、あるいは公営住宅建設費の補助や、旧軍人、遺家族の
援護費については相当額の
増額をなすべきであると考えるものであります。
次に申し上げたいことは
減税についてであります。
政府の行つておる
減税は、私どもが日常経験しておる通り、すべて
税法上の
減税であります。
減税は言うまでもなく実質的な
減税で初めて効果があるのでございます。今回の
補正に際しまして、源泉徴収の
所得税は、自然増、
ベース改訂のはね返り、
減税を総合いたしまして、四百三十一億円の
歳入増が予想せられております。
法人税はすえ置きであり、申告
所得税は二百十四億円の
歳入減と
なつております。間接税の
関係は二百三十六億円の
歳入増でありますが、これは国民所得の増大に伴う消費の
増加によるという御
説明でございました。
法人税はすえ置きであり、申告
所得税は減収であるといたしますならば、源泉徴収を受ける国民大衆層のみが所得が
増加すると
政府は見ておるのでありまして、この階層の
負担による間接税の増徴を見込んでおるといつても過言でないのであります。(
拍手)本
補正予算によりますれば、
給与ベースの改訂と
減税が行われるのでありますから、本来でありますれば、国民大衆の生活向上が望める次第でありますが、その実態は、ただいま御指摘申し上げた通り、大衆層に対する増税であり、
米価改訂、運賃値上げ並びにこれらに伴う物価高によつて生活が圧迫せられることは明らかであります。(
拍手)さらに
減税による影響を受けない
庶民大衆にとつての生活上の脅威は恐るべきものがございます。
吉田
内閣は盛んに
減税を主張して参りましたが、最近三箇年間の国民総所得と
租税負担率を見れば、実際は
減税を行わなかつたことが明らかでございます。すなわち、
昭和二十五
年度の国民総所得は三兆六千八百億円余であり、国税、
地方税を合計した
租税負担率は二〇・六%であります。
昭和二十六
年度はどうかと申し上げますと、所得は四兆八千五百億円に上り、
負担率は二〇・五%であります。
昭和二十七
年度は、所得五兆三千二百億円余に対し、
負担率は二〇・八%と
なつておるのでございます。所得の
増加に伴い、税金も比例して
増加せられ、ここ三箇年間は実質的な
減税はなかつたのであります。
中小企業者、勤労大衆が税金の過重に悩む根本原因はここにあります。(
拍手)先般、
中小企業の緊急
金融対策について、本
議場において満場一致決議せられた次第でありますが、予
算補正によつてとられておる
措置は、わずかに商工中金へ
出資二十億円、農林漁業
資金への五億円、
国民金融公庫へ三十億円、その他で合計五十億円の
財政投資が行われたにすぎないのであります。
中小企業に対する深き理解により、少くとも今回の
補正に際し、
一般会計より
国民金融公庫への八十億円の
出資、
資金運用部資金より商工中金に対しては六十億円の
出資、また農林漁業
資金へは十億円、あるいは
政府余裕金の預託を大幅に実行すべきであると考えます。
本予
算補正審議に際しまして明らかにされたのでありますが、現
政府は、はたして国民の負託にこたえる資格ありやいなやを疑わざるを得ない問題があるのであります。(
拍手)それは、
独立後のわが国といたしまして、
世界各国間に伍するに、まず国際信義を尊重せねばなりません。しかるに、現に
審議中であります艦船貸与協定に関連いたしまして、
政府は国際条約に違反しておるということを遺憾に思うのであります。七月三十一日、保安庁
関係法を施行いたしましたが、その中で船舶安全法及び職員法の二法律の適用を除外いたしたのであります。これは明らかに、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約及び国際電気通信条約の二国際条約に対する違反であります。すなわち、船舶が航海をする上に、
外国船舶との
関係や保安上の問題が起るので、船舶に対して一定の規格を
要求しておるのであり、また船舶に乗り組むオペレーターについては一定の資格を必要としておるのであります。この両条約による国内法が、
一つは船舶安全法であり、
一つは職員法なのであります。もし
政府の考えるがごとく、両法の適用の必要なしとするならば、今般米国より貸与せんとしているフリゲート艦は、船舶ではなく、軍艦でなくてはならない。(
拍手)軍艦でありますれば、機密保持の上から適用を除外されることは申し上げるまでもありません。もし、しからざれば、人命の安全のための条約第一条に「締約
政府は、人命の安全の見地から船舶がその目的とする用途に適合することを確保するように、この条約を充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての
措置を執ることを約束する。」とあるのでありまして、七月三十一日より本日まで五箇月間余、国際条約に違反し、憲法第九十八条に違反しておつたのであります。(
拍手)わが党の痛烈な指摘に、
政府も遂に我を屈して、議員提出の形で
法律案を出す方途に出られたようでありますが、このことは、
独立後の
日本が
世界各国に対する信義にもとる問題であつて、その責任の大なることは言うまでもありません。(
拍手)
また、吉田首相が五月三十一日にマーフイー・アメリカ大使にあてた国連軍の犯罪取扱いについての、いわゆる吉田書簡につきましては、しばしば論議せられたところであります。すなわち、吉田書簡においては、軍人、軍属のみでなく、家族の犯罪まで、国連側の
要求があつた場合は、その身柄を引渡すことに
なつておるのに対して、刑政長官による司法部内の通達、いわゆる清原通達は、家族の場合は身柄の拘束について
一般の在留外人と同様の取扱いをすべきことを規定しておるのであつて、吉田書簡と
まつたく相矛盾しておるのであります。最近に至つて、さらに驚くべき事実が暴露されたのであります。ただいま申し上げた清原通達は、その取扱いについぞ極秘扱いとして、その前文に、国連軍側に対してはこれを内示しないことにいたしております。しかも、
国会でこの通達を発表するに際しては、問題点である前文を故意に省略しておるのであります。吉田書簡と清原通達が矛盾したばかりでなく、清原通達なるものは、国連軍側に極秘に指示した外交上の不信行為であり、加うるに、
国会に対してけ、事を避けんとして前文を省略発表した、まことに卑怯きわまりない態度に出たものであります。その陋劣、不信義、まさにきわまれりといわなければなりません。
最後に申し上げたいことは、すみやかに積極的に
ドツジ政策を
修正して、
政府が従来とつて参りました、過重なる税金によつて
政府が国民資本を吸収し、所要に応じて
財政投資を実行することを中止すべきであると考えます。このことのために、
政府みずからが強大なる
財政投資家となり、その資本力を取扱う官僚と、国内の種々なる勢力が結びついて、目をおおうがごとき不正事件が惹起せられ、しかも、それらのことが、ひたすら隠蔽されておるのであります。
最近予
算補正にからんで問題となりました一、二の例を申し上げますならば、まず炭住
資金の問題でありますが、本年三月、選挙前の閣議決定により、炭鉱労務者住宅
資金に対して、貸出当時の
昭和二十二年に遡及して、
平均九分五厘の金利を五分五厘に引下げ、払いもどすことにいたしだのであります。その結果、今回の予
算補正に際して金利代二十三億円を計上しておるのであります。当時の復金、公団の貸出は、御承知のように、電力、造船、鉄鋼、石炭の基幹
産業に重点的になされておつたのであり、その
資金は見返り
資金の放出に大半を求めておつたのであります。見返り
資金の金利は七分五厘でありまして、六年も遡及して石炭業にのみ五分五厘に引下げる、その
理由の了解に苦しむのであります。終戦後の石炭
事業の経営の困難であつたことは承知しておりますが、その後事情は好転いたし、昨
年度のごときは非常な好況に恵まれたことは、世間周知のことであります。今回、選挙前に、閣議で金利引下げを決定いたし、銀行局長通牒により、
日本開発銀行に対し、本
措置は炭鉱労務者住宅
融資に限るものとし、類似ケースまたは他
産業に波及しないものとするとの条件つきで金利引下げ、払いもどしの挙に出たのであります。このような
措置を講ずることは、
政府が国民全体の希望や意思に反して一部の営利会社に便宜を供与し、国民のふところに大きな影響のあることを閣議決定により強行したものであります。まことに偏した行政
措置であつて、政治上の責任を免れることはできないと思います。(
拍手)
見返り
資金の
運用計画で問題となりましたのは、只見川筋の水利権の問題でありまして、この問題についての
政府の態度は、まことに極端な横車押しであります。
昭和二十五年の電力
事業の再編成に際して、その水利権は東京電力株式会社に帰属いたし、その後公益
事業委員会の勧奨で、東京電力、東北電力の両社の共同会社で開発せんとする方向にありましたが、本年三月に、東北電力は、福島県知事あて、東京電力の所有する上田、本名両地点の水利権使用の許可を申請し、知事はこれに許可を与えんとして建設大臣、公益
事業委員会に稟伺し、七月二十五日の閣議ではこれを取上げ、東北電力に対して水利権使用の認可を決定したのであります。東京電力の既得水利権を取消し、当時存続中の公益
事業委員会を無視し、電源開発
調整審議会が発足するにもかかわらず、これに付議することなく強行いたしたのであります。
さらに奇々怪々なることは、東京電力が八月二十五日に行政処分執行停止の申立てをしましたが、吉田総理の
異議申立てで、これが却下と
なつたのであります。また許可に際しましては、両会社の係争の結果、東京電力が勝てば、これにもどすという条件を付したり、目返り
資金の当初計画にない
融資が、油田元蔵相の指示により、上田、本名二地点のために十二億円
追加計上せられて、十一月二日には
融資が実行されているのであります。この許可により、東北電力は、前田組、間組の二土建
業者にこの工事を匿名入札で請負わしめ、上田、本名及び他の三発電所の合計で百五十五億円に上る工事が、この二土建
業者によつて施工せられております。
只見川水利権の問題は、古今未曽有の強権行為により、
〔副
議長退席、
議長着席〕
一会社の水利権は強奪せられ、他会社に与えられ、かかる
関係より莫大なる政治
資金が流れておるといわれておるのであります。かくのごとき醜悪なる
内閣によつて国政担当が継続せられることは、われらの正義感によつては断じて許さざるところであります。
以上各般にわたつて申し上げましたように、不誠意、不信義、陋劣、その
言葉を知らないのであります。今や天誅は吉田
内閣に下らんとしています。われわれは、本予
算補正の
政府原案に断固反対し、
野党連合提出の
修正案並びに
動議に賛成するものであります。(
拍手)