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1952-12-16 第15回国会 衆議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十六日(火曜日)  議事日程 第十三号     午後一時開議  第一国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)     午後五時四十六分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)  昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)
  3. 久野忠治

    久野忠治君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十七年度特別会計予算補正(特第1号)、昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)、右三件を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  4. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程追加せられました。  昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)、昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)、有二件を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。予算委員長太田正孝君。     〔太田正孝登壇
  6. 太田正孝

    太田正孝君 ただいま議長から報告を求められました昭和二十七年度追加予算補正外二件について申し述べます。第一に、編成方針を申し上げます。第二に、予算の骨組みと、歳出の中に見積られました項目の大要及び減税について申し述べます。第三に、歳入財源はどうなつているかという順序によつて述べることにいたします。  今回の補正予算は、当初予算に対する追加にすぎないものであります。追加予算であります。これまで行われました、いわゆる十五箇月予算というごとき、次の年度予算へのつながりを持つたものではありません。従つて自由党公約というごときものは、減税のほかには目ぼしいものはないのであります。その減税は、本年度二百三十億円、平年度になりまして七百九十三億円、ざつと八百億円となるものであります。政府としましては、公約など新規事業の実施を昭和二十八年度予算に表わそうというのであります。もつとも、財政当局は、戦後における経済界回復は認めますが、将来の見通しとしては、財界及び国民生活現状、これによる租税等収入見込みについては相当きびしい予想を持つていることを表明しています。  次に、本補正予算は単純なる追加予算ではありますが、世にいわゆるドツジ・ラインなるものはどうなつているかということであります。大蔵大臣は、財政演説において一般会計収支均衡は完全に保持されているのでありますと申され、さらに健全財政及び通貨安定の方針を堅持すると言つています。この意味では、ドツジ・ラインは続けられているというのであります。さりながも、委員会における政府、特に政府委員理財局長説明によりますれば、国庫民間収支関係は、当初予算のときは均衡を考えていましたが、資金運用部関係で三百六十億円の金融債引受をいたしましたり、本補正予算におきまして二百億円の運用増をしておりますので、この意味、すなわち厳粛なる意味ドツジ・ラインはすでに破れておるのである。ただ、一般会計だけの予算上の数字ドツジ・ラインのからを守つているということになるのであります。なお、財務当局委員会における説明は、以上申し上げたことに加うるのに、食糧管理特別会計外国為替資金特別会計の分まで合せてみますると、八百八十億円の放出超過になるというのであります。こうして、国庫からの融通によつて民間金融とのつじつまを合せておりますので、言葉をかえて申しますれば、形式的な一般会計上の予算において均衡を得ているにすぎないのであります。さらに、大蔵大臣の注目すべき言葉として経済施策を行うのに弾力性ある運用をはかると言つておるのであります。健全財政の線は、弾力的運用で動くということになりますと、もはやドツジ・ラインの本質はかわりつつあり、またかえて行くということになるのであります。さらに言葉をかえて言えば、今後経済施策として積極方針をとるにしても、それは財政健全性を保つて行くという根底においてやつて行くということになるのであります。  以上の補正予算編成方針に次いで、幾らの予算追加されたかということであります。端的に申しますれば、主として自然増収などによる千二十八億円をもつて、減税に二百三十倍円を振り向け、残りの七百九十七億円を公共事業給与改善などに向けているのであります。大まかに申せば、千億円の自然増収などで、二割見当減税に、八割見当給与改善などに白けているということになります。そして予算は、総額において、歳入歳出ともに九千三百二十五億円、やがて一脈億円に手が届くということになつたのであります。  しからば、事業などの大要いかん。以下六つにわけて申します。  その一つは、公共事業費で五十一倍余万円を計上していますが、この点につき、特に老朽した学校の建物を復旧することに努力すべきではないかという野党側質疑があつたのであります  その二は、食糧関係で、一月からやる消費者価格引上げまでのずれのために、食糧管理特別会計赤字を埋めて行くということ、輸入食糧に対する補給金、これら合せて二百二十四億円に上るものを計上しております。この点に関連しまして、二重価格制度を実施すべきこと、供出割当米政府買上げ基本価格引上ぐべきこと消費者価格を十キロ六百二十円にすえ置くべきではないかということにつき質疑が行われました。  その三は、金融調整のための資金であります。農林漁業関係中小企業関係中小漁業関係住宅金融関係国民金融公庫関係につきまして、出資をも含めて九十億円を増し、もつて経済力の充実と国民生活の向上をはかろうというのであります。しかし、これでは目的を達するのに少額過ぎるではないかという質疑が少からずあつたのであります。  その四は、給与につきまして、ベース・アップのため十一月から平均二割を増し、勤勉手当など〇・五箇月分を埴加することにして、百二十八億円を計上しております。この点について、人事院勧告中心として質疑が行われ、特に争議権のない公務員に対して八日にさかのぼり支給すべしと説かれた委員の方々がありましたことを御報告しておきます。  その五は、国家公務員給与改善に関連いたしまして、地方公務員もこれに準じた取扱いをいたしますために、地方財政平衡交付金を二百億円増し、別に地方財政窮乏を救うために百二十億円の起債を認めようとするのであります。この点につきましても、地方財政現状から、平衡交付金増加と、交付金制度の根本を考うべしとの質疑がありました。その他、老齢軍人特別給与金として一億八千万円を見積つておりますが、戦争遺家族などの援護に範囲を広め、増額すべしとの質疑がありました。なお、情報機関問題が繰返し論議されましたが、補正予算中にある内閣調査費六百五十万円はこれと関係がないということが判明したのであります。  その六として申すべきは、いわゆる減税二百三十億円、平年度八百億円に当るものであります。それは主として低額所得者に対するものであります。税制の一般的改正明年度に行う予定であり、さしあたり所得税負担を軽くして、理詰めに合うようにするために、所得税法の特例として、一月からの給与所得退職所得源泉徴収税額につき減額するというのであります。たとえば、所得月一万五千円の夫婦者で四割四分、二万円の夫婦と子供二人で四割三分になるという程度のものであります。これに対し、野党側からは、いわゆる税法上の減税にすぎないという政府財政施策の非難を加味する質疑がありました。  以上、第一の編成方針と、第二の提案された事業減税に次いで、第三の財源について申し述べます。この財源自然増収によつておることは、先に申し述べた通りであります。それは、税で七百一億円、専売益金で百億円というのであります。しかも、税の自然増収は、この数年来のように法人税に期待することができませんので、その大部分は勤労所得による源泉課税によつているのであります。それは注目すべき事実であります。こうした財源につき、大きい問題が二つあります。質疑中心も、ここ数年来巨額自然増収の見積られたることにつき、財政技術として拙劣であり不当であること、それがとりやすい源泉課税に集中されているという点にあつたのであります。  なお、質疑といたしましては、予算委員会の例により、多方面にわたつたことは言うまでもありません。いわゆる炭住問題、武器と保安隊及び憲法改正問題、只見川問題、日米船舶貸与協定問題、炭労、電産などのストライキ問題などがありました。このうち補正予算関係のある炭住問題につきまして一言いたします。予算には、日本開発銀行納付金の減収二十六億円の形で現われておるのであります。炭鉱業者に貸し付けた利子を引下げ、利子の差額をさかのぼつて返すというにあります。かかる措置に対する質問は、これを炭鉱業者に限ることや、すでに決算まで済んでいるのに、いまさらさかのぼつて返すことや、ほしいままにする国庫収入の減額は財政法規違反ならずやというのであります。これに対し、政府は、昭和二十二年当時の石炭増産至上命令の線に沿つて業者の意思に反して強制的につくられたものであり、融資金利等は当初に考えるべきであるのに、それが行われなかつた点などに顧みまして、さかのぼつてこの利下げをするということは当然のことであり、何ら財政法規に抵触しないというのであります。詳しいことは速記録に譲らせていただきます。また特別会計及び政府機関予算についても報告を省略させていただきたいと思います。こうして質疑は終りました。その間に学識経験者をお招きして、いわゆる参考人会を開きました。  本日討論に入るにあたりまして、改進党及び左右社会党の三派による修正案が提出されました。それは、一般会計の分を予算方式により、特別会計政府機関の分を予算組みかえ要求動議方式によつてなされたのであります。いずれ本議場において申し述べられることでありますから、ただ要点だけを申し述べます。それは、第一に、給与については人事院勧告案による八月にさかのぼらしめること、次に、米の買上げ価格引上げ並びに二重価格制を実現すること、地方における給与改善地方財政窮乏とを救う意味において、地方財政交付金及び起債額増額すること、中小企業などの融資額増額すること、新たに国民健康保険医療費補助等として十九億五千万円を加えんとするものであります。そのために、総額において政府案より差引三百三十四億を増すことになりますが、これによつてインフレーシヨンにならざることを述べられつつ提案理由を説かれたのであります。しかして、その財源としては、剰余金の繰入れや、平和回復処理費や、安全保障諸費の未使用分専売などの自然増収によつて歳出を埋めて行こうというのであります。この修正案に対し、自由党側は、防衛問題に対する三派の意見の調整に疑わしきものがあること、インフレの危険を包蔵すること、後年度財政計画に好ましからざる影響があるではないかということを指摘しつつ反対されたのであります。  採決に入りましたところ、修正案は否決されました。組みかえ動議もまた否決されました。それから政府案に対する討議が行われたのであります。野党側は、修正案における主張のもとに、ドツジ財政を攻撃しつつ反対論を繰り広げられました。これに対し、与党側は、補正予算に不満があるが、年の瀬を前にして、この案成らざる場合のことをも深く考慮しつつ、附帯決議を出して賛成したのであります。その附帯決議、すなわち、現下の諸情勢にかんがみまして、公務員給与改善地方財政堅実化中小企業金融改善等に対して、すみやかに適切な措置をとるとともに、昭和二十八年度以降の巨額に上るであろうと思われる新しい財政需要国家財政力とを厳密に検討して、将来の財政方針を確立すべし、というのであります。かようにして、政府案に対する討論は終りました。  採決に入りました。原案は可決されました。与党附帯決議は可決されました。これに対し、向井大蔵大臣は発言を求められたのであります。すなわち、政府は、ただいまの附帯決議につきましては、今後予算運用などにより、できるだけ御趣意に沿うよう適切なる措置を講じて行く考えであります、というのであります。  以上が、私の本委員会における経過及び結果の報告であります。不行届きな私が、委員会各位の御協力と、陰に陽に議員各位の御支援を受けつつ、ここに本報告をするに至つたことを感謝するものであります。(拍手
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 三件中、昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)に対しては、北村徳太郎君外二十二名から成規により修正案が提出されております。また、昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)及び昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)の両件に対しては、北村徳太郎言外二十二名から両件の撤回を求めるの動議が提出されております。この際修正案趣旨弁明を許します。早川崇君。     〔早川崇登壇
  8. 早川崇

    早川崇君 私は、改進党並びに社会党両派を代表いたしまして、二十七年度政府提出補正予算一般会計分に対する野党三派の共同修正案趣旨弁明をいたさんとするものであります。  昭和二十七年度の本予算は、占領治下まつたく自主性なき時代につくられた予算でございます。このたびの補正予算は、独立最初の、みずからの手によつて編成される予算であるのであります。しかるに、政府提案原案を見ますると、依然としてドツジ・ラインドツジ池田方式の単なる事務的踏襲にすぎないのを、心から遺憾と存ずるものであります。(拍手)もし、みずからの力によつて予算補正せんとするならば、当然占領治下に強圧されましたこのドツジ池田方式——わが国情沿つて不況打開庶民大衆の生活安定のため、ドツジ・ライン修正する勇気と決意を盛つた補正予算でなければならないと私は確信するのであります。(拍手)  しからば、ドツジ均衡財政は、いかなる点において独立後の国情に合わないのでございましようか。第一は、中央地方財政の極端なアンバランスでございます。第二は、中小企業者農民勤労者を犠牲にした安定政策だということであります。第三は、一般会計の超均衡財政主義をとる結果、生産事業に関するものまでも、たとえば建設公債、あるいはまた金融によつてまかなうべき生産資金に対しましても、租税の直接収入による一般会計財源によつてこれをまかなおうとしておる、この超均衡財政が、第三の欠点でございます。最後に第四の欠点は、資本主義的、経済的合理性を追求するの余り、社会的合理性を極端に無視いたしまして社会保障に関する経費を極端に圧縮しておるということが、最後ドツジ・ラインの根本的な特色であり、欠点であると思うのであります。(拍手)われわれ野党三派は、かかるドツジ均衡財政修正を目途といたしまして、以下各項にわたりまして、われわれの修正要点説明せんとするものでございます。  第一点は、生産米価引上げでございます。諸君、現在世界各国において、外国から輸入して来る輸入米よりも五千円も低い食糧生産費を持つておる国は、遺憾ながらわが国以外にけないのであります。さらに、政府みずからがつくりました米価審議会答申案は、石当り、都市の勤労者平均賃金をもとにいたしまして、一万四百円という数字が出ておるのであります。にもかかわらず、この補正予算に組まれましたこの食糧生産米価は、わずかに七千五百円にすぎないのでありまして、かようなことでは、いかにして農民勤労意欲生産意欲を増大せしめ得るかということを、私け心配せざるを得ないのであります。(拍手)われわれは、少くとも平均農家限界生産費といわれておりまする石当り八千五百円の米価、むろん最低の米価でございまするが、この一千円米価引上げを、この補正予算において実現いたしたいというのが、第一点でございます。同時に、われわれは、この米価引上げによつて生ずる一般庶民大衆の生活安定、物価の値上りを抑制するために、当然現在十キロ当り六百二十円の消費米価をそのままにすえ置く。庶民大衆の生活安定と、これによるインフレ助長の根源を絶滅する意味において、消費者米価をすえ置き、二重価格制をこの補正予算修正に盛らんとするものであります。  次の改正要点は、公務員給与改善でございます。われわれの修正案によりますると、人事院勧告べースを八月にさかのぼつて実施しようという、人事院勧告尊重立場に立つておるのであります。これに伴いまして、国鉄専売その他の仲裁委裁定案を、完全にこの国会においてのまんとする修正でございます。皆さん政府は、あるいけ炭労スト、あるいはまた電産ストに対して、中央労働委員会の調停をのめということを盛んに申しております。しかしながら、みずからの財政において、この中立的な人事院勧告と、国鉄専売その他の仲裁委裁定を、みずからこれを破つて実施しないということで、どうして一般の電産ストその他を解決することができようか。(拍手)われわれは、現在の政府が、日本労働秩序の確立ということを、この補正予算においてみずから不可能にしておるというこの態度を難詰しなければならないのであります。(拍手)  次に、修正の第三点ば、平衡交付金増額でございます。最初に申し上げましたように、ドツジ・ラインの最も大きい悪い欠点一つは、国家財政は非常な超黒字財政でありながら、地方自治財政は火の車の赤字危機にさらされておるということでございます。知事会議町村会あるいは市長会の結論を総合いたしますと、現在における地方財政赤字は千二百億円にも達しておるのであります。しかるに、現在政府補正において組んでおる額というものは、わずかに一般会計において二百億に満たないのでございます。これでは人事院勧告あるいは政府の二〇%給与引上げ地方公務員給与改善すらできないということを皆様はおわかりかどうか、私はお聞きしたいのであります。少くともわれわれは、一般会計において三百五十一億の政府案に対する増額要求し、あわせて起債において百二十億政府案に対して増加要求をせんとするのが、われわれの修正の第三点であります。  第四点は、中小企業対策でございます。政府補正予算を見ますると、わずか中小企業に対して九十億円——国民金融公庫中小企業の振興のための金融を全部合せまして、わずかに九十億円より計上されておらないのであります。諸君昭和二十七年度の本予算におきましては、八千五百億円という厖大一般会計予算の中で、ずかに中小企業のための財政投融資は七十五億円であつたということを、私は先般この壇上で申したことがあるのであります。従つて、われわれは、このように非常に等閑視されております中小企業に対して、少くとも一般会計運用部資金を合せまして百九十億円の支出中小企業特別金融救済のために充てたいと思うのであります。先般、自由党星島二郎君が提案者となりまして、中小企業年末金融促進に関する決議案がこの議場で採択されたのであります。この決議案によりますと、中小企業のための国民金融公庫政府補正予算三十億の出資はあまりにも少な過ぎる、少くとも政府原案に対して七十億円の増額決議案が満場一致採択されたのであります。しかるに、かような中小企業に対する単なる宣伝のための七十億の増額では、われわれは全国の中小企業に対して国会が十分なる予算措置をとつておるということはできない。まつたくごまかしといわざるを得ないのであります。(拍手)われわれは、口先のごまかし中小企業対策を好みません。今日ただいまから、補正予算を通じまして、国民金融公庫の三十億の出資に対して、さらに五十億円の国庫支出修正案に組まんとするのでございまして、私は、この点に関する限り、自由党諸君もおそらく御異存なかろうと存ずるのであります。(拍手)次に、われわれは、社会保障費文教費に対して若干の補正修正をせんとするものであります。社会保障費の重点は、戦争遺家族老齢軍人に対する援護費、さらに現在危機に瀕しておりますところの国民健康保険危機を打開するために医療費の二割国庫負担を計上し、さらに国民健康保険の全般的な危機救済のために十億円を追加しておるのであります。さらに老朽校舎に対しましては、文教尊重立場で、この老朽校舎を修築するための緊急の経費といたしまして十七億五千万円を計上しておるのであります。  次にもう一点、私は、この財政金融区分を明確にする意味におきまして、産業投資に対する一般会計支出をできるだけ運用部資金その他の金融措置に転換する措置を講じておるという、財政金融区分をもつて修正の第六点とするのであります。以上が、支出に関するわれわれの修正案のあらましでありまするが、これの財源をいかにするか、私は二点にわたつて皆さんに御説明いたしたいのであります。  第一点は、既定経費節約ということであります。現在国家一般会計におきましては、たとえば平和回復処理費を二百億円も使わずにおいておるのであります。さらに保安庁の経費は、十二月一日現在におきまして五百億円を残しておるのであります。さらに安全保障経費はどうかと申しますと、これまた現在五百十五億円をそのままリザーヴしておるのであります。防衛費はどうか。これまた二百億円をリザーヴし、遊休せしめておるのであります。諸君、これほど地方財政赤字に苦しみ、一般中小企業者金融に苦しみ、農民勤労者は低米価、低賃金に苦しみ、不況のどん底に陥つておる現在において、このリザーヴされた金が、ただいま三つ、四つ皆さんに御説明いたしましただけでも、合計千四百億円も遊んでおるということは、まことに奇々怪々のことといわなければならないのであります。(拍手)われわれは、国家資金効率的活用という見地に立ちまして、とうてい二十七年度末までに使い切れない、厖大な、かかる費用の中において、最小限政府も使用することができないと言明しておる金額、すなわち平和回復処理費において四十億円、安全保障費において百三十五億円、外為特別会計——インヴエントリー・フアイナンスにおいて二百八十五億五千万円を、今日ただいま必要な部面の財源に、節約をいたしまして、充当いたしたいというのが、われわれ野党三派の修正案の内容でございます。(拍手)  以上の財源をもつて支出全体を締めてみますと、政府原案補正予算に対して三百四十四億円の支出増加になるのであります。これに対しましては、われわれは、歳入の面においては、公務員その他のベース引上げ、あるいは米価引上げに上るはね返りの財源自然増収予備費支出財政法上認められました予備費の年末剰余金の二分の一をこれに充てまして、差引二百六十六億四千九百万円というものを税法上の減税に充てることになつておりましてこれは政府原案に比べてなお三十六億円の増加になるということを皆さんに申し上げたいのであります。  最後に、一部の人たちは、かような野党修正案インフレの懸念なきやいなやということを御危惧なさつておるのであります。これに対して、私は、以下三点にわたつて、簡単にその不可の理由を申し上げたいと思うのであります。  第一の理由は、現在の日本経済状況は、滞貨金融をしなければならないような状況なつておる。産業は操短を余儀なくされておる。貿易は不振である。さらに中小企業者一般は、金詰まりで、購買力が枯渇しまうとしておるのであります。かような病気の日本の経済状態に対して、今申し上げました、われわれの補正予算修正案程度の財政支出というものは、断じてインフレにならないのみならず、むしろ病気のからだにビタミン注射を与える効果こそあれ、インフレの懸念なしと私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第二は、この補正予算に対する三派の修正案は断じて赤字財政ではございません。収支の均衡は、一般会計において完全に保たれておるのであります。なお政府の余裕金が、先ほど皆さんに申し上げました三つ四つの防衛関係だけを取上げましても、千四百億円もリザーヴされております。さらにこの補正予算によつて支出される面は、農民中小企業者勤労者という、直談生産に携わる人の生活安定のためでございまするから、この予算修正案をもつてインフレの要因なりという議論は、木を見て森を見ざるのたぐいと私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手諸君インフレの危惧が現在の経済界なり日本の国内にありとすれば、これはわれわれの修正案がその理由ではなくして、むしろ現在政府のとつておる金融あるいは産業に対するあまりにも無計画な、自由放任の浪費経済政策こそ、インフレを助長する根本の原因であるといわなければなりません。(拍手)いないな、現実において、現在の政府のとつている労働政策の誤謬によつて、あるいは電産スト、あるいは炭労ストによつてこうむつておる厖大な生産の減退こそ、インフレの有力な要因ではございますまいか。これこそ、政府みずから、与党みずからが静かに反省して、インフレ要因をなくとなければならない。最大の義務であるということを私は申し上げたいのであります。(拍手)  さらに最後に、この予算修正をもつて次年度財政規模の拡大を云々する人がございます。われわれは、現在の自由党あるいは政府の、ドツジ・ラインによる池田財政引継ぎの財政政策をもつて臨んだならば、あるいはこの財政規模は若干拡大するかと思うのでありますが、最初に申し上げましたように、われわれはドツジ・ラインというものの超均衡財政均衡財政に移し、本来生産になつて帰つて来る、悪性インフレの要因のないものは、一般会計から、あるいは建設公債、あるいは金融の方にこれを肩がわりして行て考えでございまするから、財政規模の大幅な拡張ということは、自由党政府現状のまま財政をやつて行く限りにおいては、あるいは危惧されるのももつともでございますけれども、われわれの考えておる財政方針をもつてするならば、断じて大規模な予算の拡大はあり得ないということを、私は皆さんに申し上げたいのであります。(拍手諸君、現在まで政府の提出いたしました補正予算に対して、真に良識ある国会議員であるならば、大蔵事務当局、大蔵官僚がつくつた、あの厖大予算に対して、一指も修正できないということは、この新憲法下——予算は立法でございます。われわれ立法に携わる国会議員としては、いかにも情ないことであり、われわれは、かかる意味において、国会の権威の立場から、大蔵事務当局、大蔵官僚の提出いたしましたこの官僚予算に対して、立法府としてけ良識ある修正をなすべしということを、私は諸君に訴えたいのであります。(拍手)  私は、そういう意味において、諸君の御協力を得たいのでありまするが、最後に、新たに加えるべき項は、この修正案が通過した場合においては、その項の順位については議長に一任するということをつけ加えまして、私の補正修正案に対する説明を終りたいと思うのであります。(拍手
  9. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 動議趣旨弁明を許します。成田知巳君。     〔成田知巳君登壇
  10. 成田知巳

    ○成田知巳君 私は、改進党及び両派社会党を代表いたしまして、昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)及び昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)について、政府は撤回し、これを組みかえ再提出すべしとの動議を提出し、その趣旨弁明を試みんとするものであります。(拍手)なお、組みかえ要求の内容の詳細については、すでに配付された議案について御承知願いたいと存じます。  本動議を貫く基本方針は、これを端的に申しますと、日本経済復興のにない手であります労働者、農民、漁民、中小企業者の生活の安定をはかつて、これら勤労者の発刺たる生産意欲のもとに、日本経済の再建を一日も早からしめんとするところにあるのでございます。  まず第一に、政府は口を開けば中小企業振興を説きながら、そのなすとこうは、まつたく中小企業を破壊と混乱に陥れる以外の何ものでもございません。われわれは、日本経済に占めております中小企業の重要度にかんがみまして、政府の無為無策により、まさに破滅の一歩手前に追い込まれんとしておる中小企業救済のために、政府原案国民金融公庫そのほかに対する一般会計支出分六十億を、資金運用部資金融資によりまして百十億に増額せんとするものであります。  次に米価につきましては、政府買上げの基本米価を一千円引上げ八千五百円とすることにより、不十分ではありますが、再生産を償うに足る米価設定の一助となして、食糧増産に日夜懸命に努力する農民の労に報いんとするものであります。と同時に、われわれの年来の主張でありますところの米価の二重価格制度を採用いたしまして現行消費者価格をすえ置き、都市生活者の生活の安定をはかろうとするものであります。  なお、インヴエントリー・フアイナンスたる外為特別会計より二百五十億円を一般会計に繰入れることは、政府の超均衡予算修正し、真の均衡予算の確立をはかるものであると同時に、一般会計における安全保障諸費、平和回復善後処理費の削減と相まつて、隠し財源によつて来年度一挙に再軍備への道を進めんとする政府の政策に反対するわれわれの主張の具体的な現われであります。(拍手)  最後に、今回の補正予算中心問題でありますところの給与改善については、一般会計における国家公務員給与改善のための修正案の趣旨によりまして、組みかえを要求いたします。申すまでもなく、国鉄専売、電信電話公社の職員の労働関係が公労法によつて規律されているゆえんのものは、憲法に規定する労働基本権である罷業権を公社職員から奪うかわりに、これら職員の生活を権威ある仲裁委員会、調停委員会の働きにより保護すること、すなわち政府がこの裁定、調停に服することを前提としております。しかるに、従来政府はこの法律の精神を無視し、一方の手で労働者の罷業権を剥奪し、一方の手で公労法の精神を蹂躪し、政府みずから法律違反をあえていたしておるのであります。法治国家における憲法その他の法律は、治者と被治者の勢力関係の緊張の上に立つべきものであり、もしこの力の対抗的緊張、このバランスがいずれか一方の蹂躪するところとなるならば、他方は実力をもつてみずからの利益を守らざるを得ぬことは当然であり、この実力行使は是認さるべきであります。従つて政府並びに与党が、今回の補正予算において、国鉄専売裁定、電信電話公社調停案を無視するの結果、職員側が実力行使に出るという不幸な事態が発生するとしても、その非、その責任はあげて法律を無視した政府並びに与党たる自由党にあると言わざるを得ないのであります。(拍手)われわれは、民主主義政治のルールにのつとりまして、かくのごとき最悪の事態の発生を防止するとともに、日本経済復興のにない手である勤労者に最低限度の人間らしき生活を与えんとして本動議を提出し、予算の全面的組みかえを要求するものであります。  予算委員会における質疑応答により明らかにされたことく、裁定案、調停案は、公社の経理内容も考慮した、最低限度の、つつましやかな決定であります。国鉄についてこれを見るに、仲裁裁定案は、生計費、賃金はいずれも昨年に比し二五%の上昇を見ておる、民間賃金の上昇率は二一・六五%である、これを勘案して一万三千四百円ベースと定め、しかもこの新賃金ベースは、本来ならば四月より遡及して実施すべきであるが、国鉄の支払い能力を考慮し、特に八月実施ときめられておるのであります。  しかして、国鉄の支払い能力については——国鉄経理で最も注目すべきことは、戦災に伴うところの復旧、復興、戦時中の酷使並びに修繕不足によるところの老朽荒廃に対する修繕の要求が非常に強い点にあります。戦後、国鉄が公社となるまでは、工事経費財政資金でまかなわれて参りました。すなわち、昭和二十年から二十四年に至るまでの工事経費五百億のうち、国鉄の自己資金によるものは、わずかに十八億にすぎません。しかるに、公社として発足以来、自己資金でまかなう方針がとられたため、本年度は工事費全体の七四%に当る三百六億円という巨額の金が運輸収入から充当されておるのであります。ここに問題の一点がある。次に、国鉄の資産は、再評価すれば一兆八十一億円といわれ、これは帳簿価格に対しまして一七・七倍であり、この数字を基礎として償却を行うことは、私鉄の三・五倍に比しましてはなはだしく過度の償却であります。もし他産業並に償却を行うならば、本裁定実施に必要な経費百二十億円をはるかに上まわるところの百五十億円の金が浮び上つて来るのであります。企業体としての事業を運営するためには、物件費と同じく、必要な人件費は当然確保さるべきであり、物件費のみを優先せしめんとする政府方針は、断じて公正ということはできません。(拍手)  次に専売裁定について見るに、昨年十一月の仲裁裁定に去りまして一万四百円が決定され、当時労働委員会でも裁定実施の決議がなされたのにもかかわらず、政府は、二十七年度当初予算において、この決定を無視して予算編成を行つておる。そのために、現在一箇月分の年末手当を先食いして、ようやく一万四百円の平均賃金を維持しておるのであります。従つて、もし今回の仲裁裁定が拒否されるならば、専売公社職員は、年末を控えて、他官庁、公社職員の受くるわずかの年末手当さえも受くることができないという、まことに不公平なる結果になるのであります。しかして、この裁定実施のための経費は六億円余にすぎない。秋山総裁の予算委員会における答弁によつても明らかなごとく、タバコ売上代の増加は、二百十七億円である。うち百億円を一般会計に繰入れるといたしましても、なお裁定実施のための経理能力は十分あることは申すまでもありません。最後に電信電話公社の調停案について見まするに、本件の場合も国鉄専売の場合と大同小異であり、決して調停実施のための財源がないのではなくて、政府並びに公社側に調停案実施の誠意がないのであります。(拍手)特に指摘したいことは、さきに電信電話公社法案が本国会提案されたとき、政府は、電信電話事業中、採算のはなはだしく有利な国際電信電話事業は、かの利権法案ともいうべき国際電信電話株式会社法案を提出して、この営利会社に一切の事業を行わしめ、採算困難なる国内の電信電話事業のみを切り離して公社の事業といたしておるのであります。もし政府の言うがごとく、公社の経理内容が調停案をのむを困難ならしめておるといたしますならば、その責任は政府にある。よろしく政府一般会計よりの繰入金または借入金を認め、その政治的責任を果すべき当然の義務があるといわなければなりません。(拍手)以上論じ来りました通り、仲裁裁定、調停案はまことに妥当である。一万、公社の経理内容は、予算上、資金上、これが実行は可能であります。もし政府並びに与党諸君にして、生活苦に悩む勤労者の生活安定を考慮する一片の良心さえあるならば、虚心坦懐に本動議に賛成すべきであります。(拍手)  従来、政府は、国の産業を興すために、労働者は耐乏生活をやるべしとか、超過労働、低賃金にも耐えなければいけない、あるいは労資協調、労資休戦を説いて参りました。これが今までの政府のやり方であり、現吉田内閣の労働政策もまた同様であります。しかしながら、今度の戦争で苦杯をなめざせられ、政治の本質を知つた現代の労働者は、決してそんな政府並びに資本家に都合のいい理論にはだまされません。(拍手)労働者は、吉田内閣の労働政策の本質が、外国資本の下請によるところの兵器生産、防衛生産体制確立のための低賃金政策、労働者弾圧政策であり、戦争に通ずる政策であることを、労働者みずからの体験により、その皮膚を通して知つております。もし政府並びに与党が、仲裁裁定案を拒否し、公労法蹂躪の暴挙に出るならば、全労働者は実力をもつてこれにこたえるという最後の事態が発生するでありましよう。その責任はあげて政府与党にあることを再度指摘するとともに、さきの予算委員会において付帯決議により、公務員給与改善地方財政堅実化中小企業金融改善自由党は要望し、政府はこれが善処を約したのでありますが、もしこれが一時のごまかしでなく、真に附帯決議の趣旨実現をこいねがうならば、百尺竿頭一歩を進め、本動議に全面的に賛成すべきであるということを指摘いたしまして、動議提出の趣旨弁明を終る次第であります。(拍手
  11. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 石野久男君から質疑の通告がありますが、先刻議院運営委員会において、あらかじめ本日の本会議の発言につき決定をいたし、それにより議事を進行することになつておりますので、遺憾ながら、その決定通り議事を進めるため、この発言は御遠慮を願います。(「議長々々」と呼ぶ者あり)  これより討論に入ります。西川貞一君。     〔西川貞一君登壇
  12. 西川貞一

    ○西川貞一君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま上程されました昭和二十七年度一般会計特別会計及び政府関係機関予算の補正案に対しまして、委員長報告の通り附帯決議を付して賛成の意を表し、改進党及び日本社会党両派共同御提出の修正案並びに特別会計及び政府関係機関補正予算案組みかえの動議に対しましては反対の意を表するものでございます。(拍手)  本補正予算案は、先刻委員長報告のごとく、当初予算に計上された歳入自然増収財源といたしまして、二百三十億余円の減税を行うとともに、公務員給与ベース引上げ、それに伴う地方財政需要の増加に応ずるための平衡交付金増加、仲裁裁定の実施に要する国鉄その他政府関係機関の給与改善の諸費について予算上の措置を講ずるとともに、食糧管理特別会計の不足金補填、公共事業費増額、農林漁業、中小企業金融対策その他に関し、真に緊急やむを得ざる経費を計上したものであります。二百三十余億円の減税は、これを平年度に直しますと八百億円に近い金額となる計算でありますから、わが党がさきに総選挙において公約した一千億円の減税が、まさにその緒についたものでありまして、われわれの欣幸とするところであります。(拍手)同時に、われわれは、二十八年度においては国税、地方税を通ずる税制の根本的改革を行い、この減税を恒久化すとともに、現在極度の窮迫状態に陥つております地方財政の確立をはかることを期待するものであります。  歳出の方面におきましては、政府原案に対して国民の間に多くの不満のあることを、われわれは承知いたしております。従つて、われわれも、もとよりこれをもつて十分であると考えるものではありません。しかし、現在のわが国の経済は重大なる転換期に立つておりまして、将来における歳入の前途は必ずしも楽観を許さないものがあります。その反面、国家独立に伴つて、二十八年度以降においては巨大なる財政需要増加が必至となつております。従つて、この両面に厳密なる検討を加え、将来における財政方針の根本を確立することが何よりも急務であります。しかして、今日問題となつている多くのものは、その根本方針を確立した上で、新たなる構想のもとに解決さるべきものであります。但し、公務員給与改善地方財政の窮迫に対する措置並びに中小企業金融改善等については、本補正予算に計上されているものの上に、なおすみやかに解決を必要とするものがありますので、われわれは本予算案に委員長報告のごとき決議を付して政府の考慮を求めるとともに、一日も早く本補正予算案の成立を期するために、多少の不満はこれを忍んで賛成いたすものであります。  三党御提出の修正案は、その歳出にあげられておりまする項目中には、われわれとしても御同感の点が少くないのであります。しかしながら、この修正案をしさいに検討いたしますと、これはただに二十七年度における財政の規模を拡大するのみでなく、後年度に大なる尾を引いて、将来の財政計画に圧迫を加えるものであります。すなわち、これによりますと、二十八年度の基準予算は一兆数千億の巨額に上りまして、普通歳入の見積りをはるかに上まわるものと考えられます。よつて、かかる予算は、われわれの提出した附帯決議に示すがごとく、二十八年度以降における巨大なる財政需要増加国家財政力を厳密に検討した上で、確然たる基本方針に基いて考慮さるべきでありまして、今日補正予算審議の途上、軽率にこれを成立せしめるがごときことがあつたとしたら、国家財政の将来にまさに百年の悔いを残すものであると申さねばなりません。(拍手諸君、われわれが財政の前途について検討したところによりますと、明年度以降の租税収入には多くの増収を期待することができないのであります。すなわち、数字についてこれを見れば、二十六年度においては、法人税は当初予算非に対して一三五%の増額補正をなし、さらに決算においては二三%を上まわるほどの増収となり、結局当初六百三十六億余でありました予算が、決算においては一千八百三十八億八千余万円という、実に三倍にも近い空前の増収と相なつたのであります。しかるに、その増収の趨勢は前年度においてすでに停止し、本年度においては自然増収は全然計上されておりません。一方、所得税の申告納税分は、前年度以来すでに減少の趨勢を現わし、補正予算において五%の減額を行つたにもかかわらず、決算においてはその補正予算額の七三・八%にしか達せぬという大幅の減収を見て、本年度はさらにこの補正予算において二〇%を上まわる減額補正を行わざるを得ない状態と相なつております。これは要するに、国民所得の母体である法人及び個人の事業所得が減少しつつあることを明瞭に反映しておるものであります。かかる状況の中にあつて、給与所得を主とする源泉徴収分のみが増加し、さらに酒、タバコの消費の増加による酒税及び専売益金の増収を見つつあることは何を物語るものでありましようか。これは、日本経済界がすでに景気の下降期に入りながら、過去の蓄積を食いつぶして、不健全なる消費を続けつつあることを示すものであります。しかしながら、諸君、国民所得の源泉が枯渇しながら、給与所得と末端の消費のみがいつまでも増加し得る道理はありませんから、二十八年度以降の歳入には警戒を要するものがあると言わなくてはなりません。しかるに、一方歳出の面におきましては、外債並びに賠償の支払い、その他国家独立を維持し、国際社会に生きて行く上において避けることのできない支出が多々あります。     〔しきりに拍手する者あり〕
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 赤松君、御静粛に願います。
  14. 西川貞一

    ○西川貞一君(続) 内政費におきましても、戦没者、遺家族の扶助料など、戦争犠牲者に対する補償のごときは、超党派的の公約でありまして、相当巨額支出を要するものであります。しかるに、修正案には、かかる将来の財政事情が十分に考慮されてはおりません。特に二十七年度予算中の平和回復善後費及び安全保障諸費中の百七十五億円は、政府説明によりますと、施行の時期に若干のずれがあるにいたしましても、年度内における使用、あるいは後年度への繰越し使用の必要が確定している費目でありまして、決して不用額ではないのであります。特に字全保障に関する諸施設は、国家独立後最も重要な問題として、国民が重十なる関心を持つておるところであります。また国際的にも大なる関係があるのであります。しかるに、これに対し、日本安全保障の問題、保安隊の問題に関し、まつたく立場を異にされる改進党と社会党左派の諸君とが、この予算の取扱いに対し同一の結論をとられましたことは、きわめて注目すべき事実であります。(拍手)  従来、社会党左派の諸君は、警察予備隊、保安隊に対しまして絶対に反対をせられ、これを憲法違反なりとして、最高裁判所に提訴されたこともあるやに承つております。従つて、その予算は、これを根本的に否認されていたのであります。そして、そのことは同派の最も重要なる政策と申すよりも、むしろ同党の立党の綱領より発したものであると国民は解しておりました。しかるに、この修正案においては、転用以外の保安隊に属する部分は承認されたことになりますが、これはいかがでございますか。(拍手)たとい内面的にいかなる事情があるかは知りませんけれども、客観的な事実としては、この修正予算案が三党の提案によつて通過いたしましたならば、残余の部分の保安隊経費を社会党左派の諸君が承認されたということは、厳として動かすべからざる事実となるのであります。(拍手)これは主義、綱領の変改と解してよろしいのでございますか。あるいは単なる戦術でありますか。また戦術のためにはそれは変改されてもいい程度のものでございますか。このことは、つつしんで社会党左派の諸君説明を求めたいと存するものでございます。(拍手)  われわれは、同じことを改進党に対しても申さなくてはなりません。堂々と自衛軍の創設を主張されて、安全保障の問題については、およそ社会党左派と対蹠的の立場に立つておられる改進党は、何の目的のために、いかなる大義名分をもつて、社会党左派と妥協苟合されるのか。(拍手)これまた天下に明らかにされる必要があります。かかる矛盾こそは、この修正案の性格をきわめて端的に表明したものでありまして、われわれの賛成し得ない根本のゆえんがそこにあります。  また外国為替特別会計に対する繰入金中二百五十億円のもどし入れが計画されておりますが、これはすでに使用済みのものであります。またすでに相当負担の重くなつている預金部資金にさらに大なる負担を加えることは、インフレの危険を蔵するものとして、言論界が一致して警告を発しておりますことは、諸君御承知の通りであります。本来、われわれは、常に産業界の発展と国民生活の向上を念とし、積極進取の財政政策をもつて国民の信頼を得て来たものでありまして、決していたずらなる消極退嬰の政策を好むものではありません。特に占領下のドツジ・ラインを墨守する政策に対しましては、国民の間にも批判があり、現内閣においても、財政経済政策の弾力性のある運用を声明されております。しかして、委員長報告にも示唆されておりまする通り……。     〔発言する者多し〕
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) お静かに願います。
  16. 西川貞一

    ○西川貞一君(続) 厳密なる意味においては、すでにドツジ・ラインは漸次脱却されつつあると申してもよろしいのであります。しかしながら、この修正案のごとく、不用意にインフレの危険を冒すことは、わが国産業の実情と内外の経済情勢に照して、容易に賛成することはできません。  思うに、近年のわが国の産業は、朝鮮事変の影響によつて異常の好景気をもたらし、ために法人、個人の事業所得は急激に増加して、一般給与もまた向上し、そのために財政も年々巨額なる自然増収をもたらしたために、あらゆる方面において安易なる気分を生ぜしめておるのであります。しかるに、その朝鮮事変による好景気は昨年上期において頓挫し、今日においては、事変のわが産業経済への影響は禍福まさにその地位を転倒して、先年大なる好影響をもたらしたように見えたものが、今や重大なる災いとなつていることを、われわれは声を大にして叫ばなくてはなりません。なぜかと申しますと、わが国においては、国民の多くが事変による好況になれて、安易な気分のもとに不健全なる消費をなし、いたずらに商品のコストを高からしめているとき、諸外国、特に西ドイツ等におきましては、挙国一致、労資一体、祖国再建の意気に燃えて企業の合理化と能率の増進をはかり、労働生産力を向上して、優秀なる商品を安価に生産し、これを世界の市場に送つております。しかして、日本の商品は、コストの高いために国際市場の至るところにおいて敗退し、今や国内においてすら外国品の輸入が産業界の重大なる脅威となつております。輸出振興に関しては種々の方策を考えられておるようでありますが、要するに、水の低きについて流れるがごとく、商品は価格の安いところより高いところに流れるのが自然の法則でありますから、この際輸出を振興し、国内産業の基礎を安固にして、失業を防止し、民生の安定をはかるためには、政府の政策と国民の努力を結集して商品のコストを低下し、国際市場における競争力を回復することが絶対的の要件であります。  われわれは、必ずしも予算の規模の拡大と、それによる通貨の増発そのものを憂うるものではありません。しかし、周到なる注意と綿密なる準備をたさずして、率然としてインフレの危険を冒すことは、商品のコストを一層高くして、産業界をますます苦境に追い込み、失業者増加して、国民生活を一層不安に導く結果となりますがゆえに、われわれはこの修正案には反対せざるを得ないのであります。(拍手)  われわれは、政府財政が国民経済の調整の上にもたらす作用を重大視するものであります。     〔離席する者あり〕
  17. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 赤松君、御書席を願います。
  18. 西川貞一

    ○西川貞一君(続) 従つて政府が禍去において蓄積した財政余裕金のごときは、将来財界が不況に陥り、政府歳入が減少し、国民の購買力また減退して、国民経済の萎縮を来し、生活の不安を増大するがごとき場合においては、むしろ財政は積極政策をとつて、この財政余裕金を動員活用し、産業の振興と国民生活の安定をはかるべく努力しなくてはなりません。その場合におきましても、その使途について百厳密にこれを検討し、あくまで商品の  コストを切下げて物価を低下せしめ、企業採算の成立を助けることのできる方向に使用されなくてはなりません。そうして、かかる政策を行うためには、政治経済に対する究極の理念を同じくする同志の結集による強靱な政治力が前提とならなくてはなりません。われわれは、この点を深く内に省みて、あらゆる努力をなし、二十八年度予算において、党の公約たる十大政等の実現を目途として周到なる準備と線密なる用意のもとに、堅実なる積編政策を展開しようとするものであります。(拍手)  特に食糧の輸入が国際貸借に重大なる圧迫を与えている点から見ましても、食糧の増産は、あらゆる見地から優先的に扱われなくてはなりません。現在、あらゆる商品が自由販売制度となつている中に、ひとり米のみが供出制度によつて農民の自由を拘束していることは、金銭によつて償うことのできぬ苦痛を農民に与えているものであることを深く考えて、特段の措置を講じ、農民の増産意欲を喚起しなくてはなりません。  また、現在あらゆる商品のコスト中、運賃、諸掛の占める割合がきわめて大であるのにかんがみ、鉄道、道路、港湾の改良によつてこれをが軽減をはかること、住宅の建築による民生の安定、その他勤労者の福利施設を拡充強化することにより、企業の人件費を膨脹せしめることなくして勤労者の生活の安定向上をはかるの方策を講ずることも必要であります。また社会保障費のごときも拡充強化されなくてはならぬことはもちろんでございます。  諸君、今や電産、炭労の二大争議は、紛争六十余目日にわたつて今なお解決せず、事態は最悪の段階に突入し、国民の不安はその極に達せんとしております。しかるに、年末まさに迫るのとき、万一本予算案が今期議会において不成立に終るがごときことあらんか、いかなる事態が起るでありましようか。われわれは深く思いをここにいたしまして、本予算案のすみやかなる成立と、その円滑なる実施を期待して、多少の不満はこれを忍び、ここに本案に賛成の意を表するものであります。政府は特に附帯決議の趣旨を尊重して、すみやかに適切なる措置を講ぜられるように希望いたします。念のために附帯決議の全文を朗読いたします。   政府は現下諸情勢に鑑み、公務員給与改善地方財政の健実化、中小企業金融改善等に対して速かに適切なる措置を講ずると共に、昭和二十八年度以降において予想される巨額なる新財政需要国家財政力とを厳密に検討して将来の財政方針を確立するごと。   右決議する。
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 櫻内義雄君。     〔櫻内義雄君登壇
  20. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま議題なつております政府提出の昭和二十七年度一般会計予算補正等三案に対し反対の意を表し、野党各派より提出の同修正案及び動議に対して賛成の意を表するものであります。(拍手)  今回の予算補正は、総選挙後の最初国会提案せられたということと、独立後の政府によつて独自の見解による予算補正が行われたという点に重要な意義を有すると思うのであります。しかるに、政府は、はたして独立国家にふさわしい、自主独立の気魄によつて補正を行つたでありましようか。また、選挙に際する公約の実行に誠意があつたでありましようか。これらの点について、はなはだしく疑問を持たざるを得ないのであります。(拍手最初に、歳入面についてわれわれの見解を述べてみたいと思います。政府原案歳入については、租税及び印紙収入の四百七十一億円と、雑収入百十二億円及び専売納付金一百億円等、七百九十七億円を元といたしたのでありますが、われわれといたしましては、先ほど修正案の際の説明にありましたように、前年度剰余金の二分の一の二百二十六億円、あるいは財政金融区分を明確化して、農村漁業融資中小企業融資、住宅金融公庫への出資等の政府案六十億円をすべて資金運用部資金によつてまかないたいのであります。特別会計への繰入れ中止とか、あるいは防衛支出金、安全保障諸費の余裕金の一部を歳入に計上すべきであると主張するものであります。ただいま、西川君より、この防衛関係費の歳入計上につき、主義主張の違つた党派が協調するのは矛盾するとの御指摘でありますが、現に、政府説明によつて、防衛支出金におきましては二百億円余、安全保障諸費におきましては五百十五億円余というものが残つておるのでありまして、主義主張とは関係なく、財源として計上できることを指摘しておるのであります。(拍手)しかして、以下申し上げます諸施策のために支出いたし、独立後の最初の予算補正に際し、国民の期待に沿うべき努力をいたしたいのであります。特に年末を控えての実情からいたしますならば、依然としてドツジ・プランによる国家財政偏重の財政政策にとらわれることなく、これを打開して、金融逼迫を緩和し、日本経済の衰弱を救わねばならぬと存じます。(拍手)まず食糧政策に触れてみたいと思います。申し上げるまでもなく、わが国の食糧不足は、このまま放置いたしますならば、年に百二十万人に及ぶ人口の自然増加と、年間七十万町歩といわれる耕地の壊廃により、憂慮すべき現象の起ることは当然であります。現在、年間米麦の輸入量は三百五十万トンにならんといたしておりまして、米だけでも百万トンの輸入を必要とするのであります。政府は、このために食糧増産の五箇年計画を立てて、明年度より年間八百二十億円を投じ、米麦千七百下十五万石の増産を達成せんとしておるのであります。かかる事情のもとに、政府のとらんとする米価政策は、予算補正に際して、米の生産者価格を石上千五百円とし、消費者価格は従来の十キロ六百二十円を六百八十円に値上げせんとするのであります。  本年の米の収穫実情は、十月十五日の予想で六千四百八十二万石であるといわれ、平年より二百三十七万石の増収であります。価格は昨年より四百七十円を引上げたのでありますが、供出意欲はまことに低調であります。現在二千百万石程度の供出量であり、最小限度の目標、二千四百万石へはまず及ばないのであります。これはなぜかというと、超過供出についてはボーナスがついており、買上げ価格が一万円であります。従いまして、各都道府県はでき得る限り供出量を少くし、超過供出に持つて行きたいという考え方に立つておるのでありまして、これがため供出量の確保が困難視されるのであります。現行米の配給量は一箇月十五日間でありますが、現在の供出状況では、はたして十五日分を確保することができるかどうか、まことに疑わしいのであります。しかも、消費者は、従来十五日分以外の米につきましては、何とかいろいろとやりくりをいたしております。超過供出価格の一万円は、この場合のやみ価格に大きな影響があり、消費者にとりましては、米価引上げと、やみ価格の高騰によりまして、大きな生活上の圧迫を受けざるを得ないのであります。われわれは、食糧、農産物の価格安定の方途として、一般市場価格に左右されない、すなわち、これとは絶縁したる生産者価格を確立るべきことを主張するのでありまして、この意味から、米麦の二重価格制度をとるべきであると考え、消費者価格を十キロ六百二十円にすえ置きいたしたいのであります。一方において多量の輸入食糧を必要とし、地方、人口世加、土地壊廃に対応する食糧増産計画を実施せんとするならば、現政府のとらんとする、自由販売に移行するためとも見られる米価政策は、いたずらに消費者大衆に対して困惑を与えるものであるといわなければなりません。(拍手)  次に地方財政の困窮につきましては、われわれはそれぞれの関係府県の財政実情を十分承知しておりますので、いまさら贅言を弄する必要はないと存じます。人事院勧告に従つた場合の地方公務員給与べース改訂に要する支出、あるいは地域給や、その他の手当等についての歳出増、また地方税法改正と、経済情勢変化による地方歳入減あるいは歳出増は、十分考慮の必要があると存じます。すなわち、平衡交付金増額や、地方債のわくの拡充は、当然のことといわざるを得ないのであります。政府原案は、平衡交付金二百億円、他に起債百二十億円となつておりますが、われわれといたしましては、平衡交付金を五百五十一億円とし、起債は二百四十億円といたしたいのであります。  政府は、独立後におきましても、なお財源が許さないとして、人事院勧告や、中労委の裁定に対して不誠意であるということは、まことに遺憾しごくであります。(拍手政府が最も関心を払い、協力を得なければならない政府職員並びに関係機関である国鉄専売等の職員に不安感を与え、その支持を得ざるがごときは、まことに愚策といわなければなりません。(拍手)われわれは、人事院勧告あるいは中労委の裁定を誠意を持つて実現すべきであると考え、給与ベースの改訂は勧告通り八月に遡及して完全に実施するよう予算措置をいたしたいのであります。わずか三箇月前の選挙期間中に、自由党諸君は、高能率、高賃金を説き、公務員給与改善をはかることを主張したにもかかわらず、予算補正を通じて、その積極性の見るべきものがないのでありまして、自由党の面目いずれにありやといわざるを得ません(拍手)  また社会保障政策につきましては、欧米の先進国に劣り、英国が歳出総額に対して三八・一%の予算を計上しておるのに対し、わが国は本年度において八・七%であることは、御承知の通りであります。今回の補正に際しまして、わが党といたしましては、自由労働者に対する失業対策費、国民健康保険医療費の計上を主張し、あるいは公営住宅建設費の補助や、旧軍人、遺家族の援護費については相当額の増額をなすべきであると考えるものであります。  次に申し上げたいことは減税についてであります。政府の行つておる減税は、私どもが日常経験しておる通り、すべて税法上の減税であります。減税は言うまでもなく実質的な減税で初めて効果があるのでございます。今回の補正に際しまして、源泉徴収の所得税は、自然増、ベース改訂のはね返り、減税を総合いたしまして、四百三十一億円の歳入増が予想せられております。法人税はすえ置きであり、申告所得税は二百十四億円の歳入減となつております。間接税の関係は二百三十六億円の歳入増でありますが、これは国民所得の増大に伴う消費の増加によるという御説明でございました。法人税はすえ置きであり、申告所得税は減収であるといたしますならば、源泉徴収を受ける国民大衆層のみが所得が増加すると政府は見ておるのでありまして、この階層の負担による間接税の増徴を見込んでおるといつても過言でないのであります。(拍手)本補正予算によりますれば、給与ベースの改訂と減税が行われるのでありますから、本来でありますれば、国民大衆の生活向上が望める次第でありますが、その実態は、ただいま御指摘申し上げた通り、大衆層に対する増税であり、米価改訂、運賃値上げ並びにこれらに伴う物価高によつて生活が圧迫せられることは明らかであります。(拍手)さらに減税による影響を受けない庶民大衆にとつての生活上の脅威は恐るべきものがございます。  吉田内閣は盛んに減税を主張して参りましたが、最近三箇年間の国民総所得と租税負担率を見れば、実際は減税を行わなかつたことが明らかでございます。すなわち、昭和二十五年度の国民総所得は三兆六千八百億円余であり、国税、地方税を合計した租税負担率は二〇・六%であります。昭和二十六年度はどうかと申し上げますと、所得は四兆八千五百億円に上り、負担率は二〇・五%であります。昭和二十七年度は、所得五兆三千二百億円余に対し、負担率は二〇・八%となつておるのでございます。所得の増加に伴い、税金も比例して増加せられ、ここ三箇年間は実質的な減税はなかつたのであります。中小企業者、勤労大衆が税金の過重に悩む根本原因はここにあります。(拍手)先般、中小企業の緊急金融対策について、本議場において満場一致決議せられた次第でありますが、予算補正によつてとられておる措置は、わずかに商工中金へ出資二十億円、農林漁業資金への五億円、国民金融公庫へ三十億円、その他で合計五十億円の財政投資が行われたにすぎないのであります。中小企業に対する深き理解により、少くとも今回の補正に際し、一般会計より国民金融公庫への八十億円の出資資金運用部資金より商工中金に対しては六十億円の出資、また農林漁業資金へは十億円、あるいは政府余裕金の預託を大幅に実行すべきであると考えます。  本予算補正審議に際しまして明らかにされたのでありますが、現政府は、はたして国民の負託にこたえる資格ありやいなやを疑わざるを得ない問題があるのであります。(拍手)それは、独立後のわが国といたしまして、世界各国間に伍するに、まず国際信義を尊重せねばなりません。しかるに、現に審議中であります艦船貸与協定に関連いたしまして、政府は国際条約に違反しておるということを遺憾に思うのであります。七月三十一日、保安庁関係法を施行いたしましたが、その中で船舶安全法及び職員法の二法律の適用を除外いたしたのであります。これは明らかに、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約及び国際電気通信条約の二国際条約に対する違反であります。すなわち、船舶が航海をする上に、外国船舶との関係や保安上の問題が起るので、船舶に対して一定の規格を要求しておるのであり、また船舶に乗り組むオペレーターについては一定の資格を必要としておるのであります。この両条約による国内法が、一つは船舶安全法であり、一つは職員法なのであります。もし政府の考えるがごとく、両法の適用の必要なしとするならば、今般米国より貸与せんとしているフリゲート艦は、船舶ではなく、軍艦でなくてはならない。(拍手)軍艦でありますれば、機密保持の上から適用を除外されることは申し上げるまでもありません。もし、しからざれば、人命の安全のための条約第一条に「締約政府は、人命の安全の見地から船舶がその目的とする用途に適合することを確保するように、この条約を充分且つ完全に実施するのに必要なすべての法律、政令、命令及び規則を公布し並びにその他のすべての措置を執ることを約束する。」とあるのでありまして、七月三十一日より本日まで五箇月間余、国際条約に違反し、憲法第九十八条に違反しておつたのであります。(拍手)わが党の痛烈な指摘に、政府も遂に我を屈して、議員提出の形で法律案を出す方途に出られたようでありますが、このことは、独立後の日本世界各国に対する信義にもとる問題であつて、その責任の大なることは言うまでもありません。(拍手)  また、吉田首相が五月三十一日にマーフイー・アメリカ大使にあてた国連軍の犯罪取扱いについての、いわゆる吉田書簡につきましては、しばしば論議せられたところであります。すなわち、吉田書簡においては、軍人、軍属のみでなく、家族の犯罪まで、国連側の要求があつた場合は、その身柄を引渡すことになつておるのに対して、刑政長官による司法部内の通達、いわゆる清原通達は、家族の場合は身柄の拘束について一般の在留外人と同様の取扱いをすべきことを規定しておるのであつて、吉田書簡とまつたく相矛盾しておるのであります。最近に至つて、さらに驚くべき事実が暴露されたのであります。ただいま申し上げた清原通達は、その取扱いについぞ極秘扱いとして、その前文に、国連軍側に対してはこれを内示しないことにいたしております。しかも、国会でこの通達を発表するに際しては、問題点である前文を故意に省略しておるのであります。吉田書簡と清原通達が矛盾したばかりでなく、清原通達なるものは、国連軍側に極秘に指示した外交上の不信行為であり、加うるに、国会に対してけ、事を避けんとして前文を省略発表した、まことに卑怯きわまりない態度に出たものであります。その陋劣、不信義、まさにきわまれりといわなければなりません。  最後に申し上げたいことは、すみやかに積極的にドツジ政策を修正して、政府が従来とつて参りました、過重なる税金によつて政府が国民資本を吸収し、所要に応じて財政投資を実行することを中止すべきであると考えます。このことのために、政府みずからが強大なる財政投資家となり、その資本力を取扱う官僚と、国内の種々なる勢力が結びついて、目をおおうがごとき不正事件が惹起せられ、しかも、それらのことが、ひたすら隠蔽されておるのであります。  最近予算補正にからんで問題となりました一、二の例を申し上げますならば、まず炭住資金の問題でありますが、本年三月、選挙前の閣議決定により、炭鉱労務者住宅資金に対して、貸出当時の昭和二十二年に遡及して、平均九分五厘の金利を五分五厘に引下げ、払いもどすことにいたしだのであります。その結果、今回の予算補正に際して金利代二十三億円を計上しておるのであります。当時の復金、公団の貸出は、御承知のように、電力、造船、鉄鋼、石炭の基幹産業に重点的になされておつたのであり、その資金は見返り資金の放出に大半を求めておつたのであります。見返り資金の金利は七分五厘でありまして、六年も遡及して石炭業にのみ五分五厘に引下げる、その理由の了解に苦しむのであります。終戦後の石炭事業の経営の困難であつたことは承知しておりますが、その後事情は好転いたし、昨年度のごときは非常な好況に恵まれたことは、世間周知のことであります。今回、選挙前に、閣議で金利引下げを決定いたし、銀行局長通牒により、日本開発銀行に対し、本措置は炭鉱労務者住宅融資に限るものとし、類似ケースまたは他産業に波及しないものとするとの条件つきで金利引下げ、払いもどしの挙に出たのであります。このような措置を講ずることは、政府が国民全体の希望や意思に反して一部の営利会社に便宜を供与し、国民のふところに大きな影響のあることを閣議決定により強行したものであります。まことに偏した行政措置であつて、政治上の責任を免れることはできないと思います。(拍手)  見返り資金運用計画で問題となりましたのは、只見川筋の水利権の問題でありまして、この問題についての政府の態度は、まことに極端な横車押しであります。昭和二十五年の電力事業の再編成に際して、その水利権は東京電力株式会社に帰属いたし、その後公益事業委員会の勧奨で、東京電力、東北電力の両社の共同会社で開発せんとする方向にありましたが、本年三月に、東北電力は、福島県知事あて、東京電力の所有する上田、本名両地点の水利権使用の許可を申請し、知事はこれに許可を与えんとして建設大臣、公益事業委員会に稟伺し、七月二十五日の閣議ではこれを取上げ、東北電力に対して水利権使用の認可を決定したのであります。東京電力の既得水利権を取消し、当時存続中の公益事業委員会を無視し、電源開発調整審議会が発足するにもかかわらず、これに付議することなく強行いたしたのであります。  さらに奇々怪々なることは、東京電力が八月二十五日に行政処分執行停止の申立てをしましたが、吉田総理の異議申立てで、これが却下となつたのであります。また許可に際しましては、両会社の係争の結果、東京電力が勝てば、これにもどすという条件を付したり、目返り資金の当初計画にない融資が、油田元蔵相の指示により、上田、本名二地点のために十二億円追加計上せられて、十一月二日には融資が実行されているのであります。この許可により、東北電力は、前田組、間組の二土建業者にこの工事を匿名入札で請負わしめ、上田、本名及び他の三発電所の合計で百五十五億円に上る工事が、この二土建業者によつて施工せられております。  只見川水利権の問題は、古今未曽有の強権行為により、     〔副議長退席、議長着席〕 一会社の水利権は強奪せられ、他会社に与えられ、かかる関係より莫大なる政治資金が流れておるといわれておるのであります。かくのごとき醜悪なる内閣によつて国政担当が継続せられることは、われらの正義感によつては断じて許さざるところであります。  以上各般にわたつて申し上げましたように、不誠意、不信義、陋劣、その言葉を知らないのであります。今や天誅は吉田内閣に下らんとしています。われわれは、本予算補正政府原案に断固反対し、野党連合提出の修正案並びに動議に賛成するものであります。(拍手
  21. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 福田赳夫君。     〔福田赳夫君登壇
  22. 福田赳夫

    ○福田赳夫君 ただいま議題となりました補正予算三案について、委員長報告に賛成の意を表し、野党三派共同の修正案及び撤回の動議に反対するのであります。(拍手)  現在の財政状況を通観いたしてみますると、国家財政はなおきわめて不安定な状況にあるのであります。すでに本補正予算案におきましても、国庫収支の均衡は破れ去ろうとしておるような状況であります。この上国家支出が大幅に膨脹いたしますことを考えますると、これはますます国民の生活を圧迫する。安定の緒を見出そうとしておるところの日本の経済を再び逆転させる。勤労者中小企業者などの、世の中の小さい者、弱い者の立場を非常に苦しくするのであります。この意味におきまして、国家経済を動かす力であるところのこの財政の処理におきまして、健全財政の線を堅持し、国家経済の秩序維持に懸命の努力をするところの態度に対しましては、私どもは全幅の協力をいたしたいと思います。(拍手)  しかしながら、本補正予算案を見ますると、給与問題におきまして、政府職員に対する処遇に一考の余地はないか。また、さきに本院において成立いたしました中小企業年末金融促進決議案、この決議の実行は、中小企業の国民各位が鶴首して待つておる。これに対して、何らかの措置をとる必要はないか。いずれも年末に臨みまして緊急処置を要するところの問題であります。  ことに国家公務員の手当につきましては、政府案によりますると、最小限の年越し資金にも足りぬ状況である。わが国の長い間の慣習といたしまして、国家公務員に対しましては、年末手当数箇月分を支給し来つたのであります。占領下におきましては、わが国の伝統、慣習を無視した給与制度に切りかえられて参りまして、年末手当制度は一時廃止せられたのであります。わが国の長い間の伝統から見まして、かかる制度がはなはだわれわれ国民生活の実際とふつり合いなものであることは、いうまでもないと思うのであります。本年度予算は占領下において編成されたものであります。一般職員に例をとりますならば、年末資金は半月分が計上されております。今回の補正予算でさらに半月分、合計一月分、税引きにいたしますと一万円であります。この一万円の越年資金で、はたして越年ができるかどうか。議論の余地はないではないか。財政は非常に苦しいのです。これに私どもは何らの異存はない。その苦しい財政の中で、何とか切盛りして、些少でも、できる限りの心尽しの措置をとらるべきであります。かくしてこそ初めて、この貧しい生活と闘いながらも、公務員が祖国再建のために真に挺身しよすとする公僕精神というものが出て来るのであります。私は、この意味におきまして、政府におきまして、可能最大限の措置として、年末一時金の支給につき、何とかできる限りの措置をとつてもらいたいのであります。  同時に、この年末、年の瀬にあえぐところの中小企業に対しましても、真摩な態度をとつてもらいたい。いくら財政が苦しい、苦しいと申しましても、百億円や二百億円の金がどうにもならぬことはありません。する意思があるかどうか、する意思があれば、必ずこれだけのことはできるはずであります。  実は、私どもといたしましては、政府案に対しまして、中央地方を通じ、公務員等の給与改善に一段の努力を払う、次に中小企業の年末金融対策のために、さらに強力、真摯な措置を講ずる、この二つを骨子といたしまして、修正案の提出を企図したのでありますが、修正案を提出いたしますことは、年末を控えまして、急を要する公務員給与の支給、また中小企業金融対策、これに重大なる支障があることを考えまして、むしろ政府案のすみやかに成立するにしかずというふうに考えたのであります。しかしながら、さきに申し述べました給与問題並びに中小企業の問題につきましては、本補正予算の一環といたしまして、最後までこれが実現を主張する考えでありましたが、委員会におきまして、大蔵大臣から、この点につきまして適切なる措置を講ずる旨の言明がありましたので、私どもといたしましては、今後政府のこの言明の実行を国民とともに厳重に監視することといたしまして、政府案に賛成いたしたいと思うのであります。(拍手)  なお野党三派案につきましては、独立国として、今後日本経済の向うべき方向について貴重なる示唆を多々含んでおるというふうに考えておるのであります。しかしながら、財政経済の基礎が今日のごとくきわめて不安定なる今日といたしまして、平年度二十億を越え——年度において二千億を越えるというふうな財政負担を来すところのこの急進的な案に対しまして、にわかに賛成しがたい。ここに反対の意を表明するものであります。(拍手
  23. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 川島金次君。     〔川島金次君登壇
  24. 川島金次

    ○川島金次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になつております一般会計及び特別会計を通じての政府補正予算原案に反対をいたし、野党三派の提示いたしております一般会計修正案並びに政府関係機関、特別会計の撤回動議に賛成の意を明らかにしようとするものであります。(拍手)  私は、本論に入りまする前に、本議場において、野党三派の立場において、予算委員会における審議に参加をいたしました一人といたしまして、ぜひとも明らかにいたしておきたい事柄があります。そのことは、われわれ野党三派がそれぞれ異なるところのイデオロギーを持ち、それぞれ独自の主張を有するにかかわらず、ここに相譲り合つて一個の確たる修正案を決定いたしましたのは、ひとえに現下の中央並びに地方を通じての公務員及び地方公務員の生活の現状、及び年末を控えて金融難にあえぐ、しかもその経過いかんによりましては、またしても破産、倒産のうき目を見るような中小企業者が続出するであろうという経済不と、この現状に対し、あるいはまた日本経済の再建の上に立つて、きわめて重大な基盤を持つところの農村経済の安定のために、ぜひとも米価引上げは緊急欠くべからざるものであるとの観点に立ち、あるいはまた、今日の地方の極端なる財政危機に当面いたし、これら一連の事柄を打開しなければならないという一念のもとに立ちまして、野党三派はともどもに譲るべき事柄を譲り合つて、修正案をつくり上げたのであります。しかも、この修正案と相並んで原案を上程いたしまする本会議は、本来でありますれば、昨日この議場において行わるべき筋合いのものであつたのであります。しかるにかかわらず、遂に二十四時間、一日の上程を遅らさなければならない事態に立ち至りましたる真相というものは、ひとり実に醜悪なる自由党内における紛争と対立の結果でありましてその責任は自由党にありということを、ここに明らかにしておきたいのであります。(拍手)  およそ今日の国民があげてひとしく要望いたしておりまする事柄は、何といいましても、平和憲法のもとにおいて、わが国の平和と安定とを求めるという事柄であるのであります、しかるに、吉田内閣の施策中、ことにその財政経済政策の基本をなすものは、実に平和憲法を無視し、戦争への参加という不吉な予感をすらも感ぜざるを得ないところの、いうところの再軍備にあらざる再軍備を軸心としてその政策を強行いたしておるものであります。従つて、国内における民生費の圧迫となり、国民生活の安定というがごときはまつたく絶望視されており、均衡財政の美名のもとに、まさに国の財政は富むといえども、国民大衆は窮乏の底に追いやられておるところの財政経済政策が強行されておるという事柄であります。かくのごとき財政経済政策の及ぼすところは、国民生活の不安となり、さらにひいては社会生活の一大不安を助長するの現象が、今やわれわれの目の前に現われておるのであります。すなわち、吉田内閣の物価政策を中心とする労働政策の無為無策は、遂に炭労における五十日の長きにわたる争議となつて現われ、電産のごときに至りましては、これまた一箇月有余の長きにわたる争議となつて現われ、しかも、この間における政府の態度は依然として無為無策に終始し、この重大なる争議に対しまして、何ら積極的に打つ手を知らずして、いよいよ事態を重大化せしめ、そのなすところを知らざる結果、遂に自己の無策をおおい隠さんがために、緊急調整という権力の発動によつて労働争議の解決をはかろうとするがごとき、大よそ労働争議に対する何なの理解と誠意と熱意なく、権力的手段に出たということは、いかに吉田内閣が労働政策に対して無能であるかということを暴露したものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  われわれは、前段に申し上げましたごとく、われわれ国民が政治に望みますところのものは、日本の平和と国民経済生活の安定であるということは言うまでもありません。従つて、いやしくも責任ある政府は、この切実なる国民の要望にこたえて、あらゆる力を傾注して日本の平和の確保と国民経済生活の安定に努力を傾けなければならないのであります。すなわち、わが党の主張である、再軍備よりも国民生活の安定に向つてあらゆる施策を集中することが、政府に与えられたる最高の責任であり使命であると、われわれは断ぜざるを得ないのであります。(拍手)しかるに、吉田内閣は、今回の補正予算におきましても、相かわらず前通産大臣にして大蔵大臣でありました池田勇人君が抱いておりました動かすべからざる考え方、すなわち貧乏人はすべからく麦を食え、金持だけは米を食つて暮せと言い、あるいは遂に池田君の命取りとなるに至りました中小企業の倒産と破産、その結果するところにおいて、中小企業者の五人や十人の自殺者が出てもやむを得ないなどと放言をするこの考え方が、今度の補正予算の中にも一貫しておるということを見のがすことができないのであります。(拍手)  さらにまた、吉田内閣が第一次内閣組閣以来、これまた総理自身がかたく信じておりまするところの、労働者が憲法に保障されだストライキを行つた場合に、その労働者に対しては不逞のやからと呼び、また、つい最近における電産、炭労ストライキに対しては、今日の日本において労働争議を行うがごときは実にぜいたく千万であると放言するに至つておるのであります。この吉田総理の考え方が、これまた補正予算の底の中に流れておるということも、われわれは断じて見のがすことができないのであります。すなわち、国鉄裁定を初めとし、専売公社に対する裁定及び電電公社に対する調停、さらに人事院勧告に対してとりました政府の態度は、労働者に対するいささかの理解も熱意も積極性もないことを明らかにしておるということを言わなければなりません。前段の演説者からも申された通り、わが国の労働者に対しては、憲法の保障するところにより、まず第一には団結権、第二には交渉権、第三には争議を行うことのできること、これが三大権利として与えられておるのであります。しかるに、中央地方を通じての、公務員を初め、国鉄の労働者諸君及び専売公社の従事員諸君等に対して争議権を剥奪いたしましたその代償として、いわゆる人事院勧告、あるいは国鉄並びに専売公社に対する仲裁委員会の設定を見ておるのであります。しかも、この仲裁裁定委員会の裁定に対しては、労使双方が服従しなければならない旨は、公労法第三十五条に明白に規定をされておるところのものであるのであります。従つて政府は、この裁定に対しては、公労法第三十五条の原則的な規定にかんがみ、これを絶対に尊重するということは、政府の当然なさなければならない責任であると、われわれ信じて疑いません。(拍手)しかるにかかわらず、政府は、みずから設定をした人事院勧告はもとはり、公労法第三十五条に明らかに規定されておりまする、労使双方が服従しなければならない旨の精神をば、みずから蹂躪するがごとき態度に出るということは、断じて労働者の承服せざるところであると言わざるを得ないのであります。(拍手)われわれ野党三派は、この政府の、給与改善の問題に対しきわめて冷淡であり、かつ消極的な態度に対し、勤労階級の名において、これを糾弾しなければならないのであります。(拍手)  さらに、今日日本経済再建の大きなる基盤をなしておるものに、全国六百五十万戸を有する農民諸君のあることは言うまでもございません。この人口の半ばにも達せんといたしておりすする厖大な人口構成を持つ農民経済の安否は、実に日本経済の再建の上に重大なる要因をなすということも、これまた言うまでもございません。しかるに、吉田内閣の農村対策の一例をあげますならば、農民に対しては実に言語に絶するの低米価を強行し、その反面におきましては、農民の最も必要といたしておりまする、また生産増強に必須欠くことのできない肥料等の工業生産品の物価政策に対しましては、いわゆる手放し政策でありまするがために、肥料のごときは、戦争前の基準に比較いたしまして、実に四百倍とい多大なる暴騰を見ておるのであります。しかるに、米価は、かりに今回の政府原案である七千五百円をとるにいたしましても、戦争前に比べてわずかに二百三十倍という低米価に押しつけておるのであります。かくのごとき低米価政策であり、一方には野放しの高物価政策である上に、さらに農民負担いたしまする税金のごときは、最近幾分か緩和されたとは申しながら、いまなお、農民が戦争前に納めました税金に比較いたしまして、地方税を加えまするときには実に三百倍という高税金であるのであります。かくのごとく、米価が二百三十倍であり、税金は三百倍以上であり、物価はまた三百倍以上であるといたしまするならば、いかで農民の経済の安定を期することができるでございましようか。  この意味において、わが日本社会党は、農村対策にも重大な関心を持ちつつ、まず農村経済の安定の第一条件として、農村の生産費を償うに足る生産米価の設定を強調して参つたのであります。(拍手)この立場において、われわれは、さきに米価審議会政府に答申をいたしました生産米価石当り一万四百円を支持し、これが実現にあたつて全力を尽すの決意を示して参つたのでございまするが、今回の補正においては、野党三派の協調を保ちまするためと、当面の米価対策の解決の一端といたしまして、やむを得ず、政府引上げ七千五百円に対し、石当り生産米価の一千円の引上げにわれわれも同調をいたすことになり、これが予算措置を講ずるための修正案を作成いたした次第であるのであります。  さらに第三には、今日地方財政における窮乏の実情は、政府の、地方財政の確立に対する無責任と無策とからいたしまして、まさに文字通りの危機に直面しておると申さなければならないのであります。われわれは、日本経済再建と国民生活安定の見解に立ちまして、この地方財政危機をすみやかに打開することの必要を痛感し、また全国各地方から、ほうはいとしてわき上つて、切実な要望となつておりまする地方財政危機打開のために要する地方財政交付金の大幅の増額並びに地方起債の大幅な増額の要望にこたえんがために、これまた三派共同の修正原案を作成いたしたのであります。  さらに第四番目には、現下年末を控えて、中小企業の逼迫した金融難を打開し、日本経済再建のこれまた重要なるにない手でありまする中小企業の育成と助成とに対し積極的な施策を講ずるの必要をわれわれは痛感いたし、これまた三党協議の上に、可能な範囲において政府原案を大幅に修正するの案を作成いたしたのであります。  さらにまた、政府は、現下の戦争犠牲者の救済、あるいは国民健康保険の実情にかんがみ、選挙あるいは施政演説等においては、とれまた国民健康保険中心とする社会保障制度の拡充と確立のためにも全力を尽して闘うとの旨が公約されておるにかかわらず、この問題につきましても、今回の補正予算の中に何ら積極的なものが織り込まれておらないのであります。この社会保障関係に関する吉田内閣の冷淡な態度に対しましては、われわれ野党三派は、国民の名において、これまた断じて承服することができないのでございます。(拍手)その意味において、われわれは、今日の国民生活の安定を期する重大なる一つの問題として、社会保障の確立の緊急性を確認いたしまして、あえて政府社会保障に関する消極的な予算案に対し、これまたあとう限りの増額修正案に盛り込んだゆえんであります。かくして、われわれ野党三派が今日作成し、ここに上程いたしました、一般会計並びに特別会計及び政府関係機関を通ずる一連の修正案は、むしろ政府与党みずからが過ぐる総選挙において公約をいたしました大きなる政策の一つが、われわれ野党の努力によつて、ここに結集を見たのでありまするから、当然に政府与党といえども、この野党三派の修正案に賛成することこそが、国民に対する公約実現の責任であると私は断ぜざるを得ないのであります。これに賛成できないということは、いたずらに議論を構えて国民生活の難局を無視し、ただただ眼中にあるは党利党略あるのみと断じても何ら弁解の言葉なしと、私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  母上、私は、日本社会党を代表いたしまして、ここに政府原案に以上の立場に立つて強く反対を宣言し、あわせて野党三派の修正案並びに撤回動議に対して心から賛成の意を表するものであります。(拍手
  25. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 伊藤好道君。     〔伊藤好道君登壇
  26. 伊藤好道

    ○伊藤好道君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府補正予算案三案に反対し、野党三派共同提出の修正案並びに撤回、組みかえの動議に賛成せんとするものであります。(拍手)  政府補正予算案は、要するに昭和二十七年度当初予算のしりぬぐいをするということだけをねらつたものでありまして、まつたくその場しのぎの、弥縫糊塗の態度を露骨に示しております。この補正予算案の骨格とも申すべきものは、申し上げるまでもなく、官公吏、公共企業体労働者の給与水準の引上げ、新たなる米価の決定、地方財政平衡交付金増額、名目だけの税期上の減税でありまして、その他になお若干の融資もあるようでございますが、そのいずれを見ましても、対象とされている官公労務者の諸君農民地方自治体、中小商工業者諸君、要するに国民大衆のすべてが、政府補正予算案に対して深刻にして重大なる不満を持つているのであります。(拍手)本院に充満している陳情の人々のあの大半は、この問題に対しまして、生活と経営の安定のために政府案修正してくれという陳情をいたしに参つているものであります。政府お得意の二百三十億円の減税も、七百億円の自然増収差引きますならば、四百七十億円だけわれわれ国民全体のふところから増税として吸い上げられておる次第でございます。従いまして、これで納得する国民があろうはずはないと私は信じます。私は、この政府予算案が、電産、炭労の二大ストライキが二箇月にもわたつて行われているという大衆生活の深刻なる不安を背景とし、また当り来る年の暮れをどうして越そうかと苦しんでいる商工業者諸君がちまたに満ちているという事態に直面して編出されましたことに対しましては、あまりにも政府当局の時局認識の浅薄さ、低調さに対しまして憤りの念を禁ずることができません。(拍手)そこで、私は、簡単に政府補正予算案の内容立ち入つて批判してみたいと存じます。  まず第一に、補正予算案は、人事院勧告国鉄専売の裁定、電通の調停を無視し、少くとも蔑視してつくられたものであることは明らかでありまして、私は、この点におきまして、まず政府案に反対するものであります。申すまでもなく、人事院政府機関の一部であり、この機構をつくり、その勧告が行われることを前提にして、官公声は争議権を剥奪されております。それにもかかわらず、政府人事院勧告を尊重いたしませんならば、一方では政府機関の間に意見の不統一という事態が起りますし、他方では法律が無視ないし蔑視されているという恐るべき事態が発生して参るのでございますが、この責任はあげて政府にあるのであります。  公共企業体の裁定、調停は、公労法によつてその権威を認められておるのでありますから、その拘束力は厳たるものでなければなりません。政府補正予算がこれを蹂躪しておりますことは申し上げるまでもありません。しかも、このような不条理を政府があえて犯します結果、一切の犠牲を強要されるものは結局勤労大衆でありまして、しかも彼らは憲法の保障している団結の力を奪われております。これは、法律によつて官公労働者が手や足を縛られ、しかもその法律をつくつた政府によつてひつぱたかれている状態であると称しても過言ではございません。財源がないという政府の態度は誤つております。財源はないのではありません。出そうと思えばあるのでありますが、ただ政府には勤労者の生活安定をさせるという熱意と誠意がないために財源が出て来ないのであります。(拍手)要は、政府にやろうという意思がないということだけが明白でありまして、私は、これこそ現吉田自由党政府の本質を暴露したものであろうと存じます。(拍手)問題の財源につきましては、私は後刻明らかにしたいと思いますから、ここではやめます。  第二に私が問題にいたしたい点は米価の問題であります。補正予算は、御承知の通り、生産者に対しては一石七千五百円、消費者に対しては十キロ六百八十円と、現在より六十円の引上げを行つております。この点につきまして、生産者価格と消費者価格の間に差が生じておりますと同時に、食管特別会計においても赤字がふえて参りまして、政府はこれを補うために一般会計から特別会計に金を繰入れることになつております。すなわち、政府補正予算案は、差は大したものではありませんが、生産者米価消費者米価との間に差異を認めますと同時に、その結果食管特別会計赤字一般会計から埋めるということでございまして、これは政府当局は否認しておられますが、自由党の従来の政策と異なりまして、二重価格制もしくはそれへの前進と事実上示しているものでありましてただそのやり方が、いかにもおつかなびつくりの態度であり、また怪しげな態度であるというにすぎないのであります。これは、申し上げるまでもなく、いかに自由党諸君と吉田内閣があつかましい方であるといたしても、わずか二箇月前に約束した選挙の公約を、この国会でそうそう破るわけには行かない結果であろうと私は思います。  自由党と吉田内閣は、米の自由販売を盛んに唱えて、農民諸君の関心を買おうとされました。世界的に農産物の過剰生産の傾向が起つて参りまして、農産物価の安定政策が要望されております今日、この政府自由党の政策がどれだけ役立つたか、私は疑うものであります。(拍手)現に、選挙の結果は、自由党の党員の当選者の方は減つたようでありますが、とにかくこの二重価格制度への前進は、補正予算におきまして、政府与党が選挙の最も重大なる公約を破つているのでありまして、しかもこの補正予算案は、生産者、消費者のいずれに対しても満足を与えておらないのであります。(拍手政府自由党諸君は、よろしく米価に対し、米の販売問題に対し、国民の納得のできる明確な態度、反省を示すべき重大なる責任と義務がありましよう。  さらに、第三に私が指摘しなければなりません問題は、政府補正予算案は一体何を目ざしておるのであるか、さつぱりはつきりいたしません。予算としてのねらい、目的、性格がないという点であります。申し上げるまでもなく、予算は国民経済全般に対して大きな影響を与えるものであります。従つて、わが経済がインフレーシヨン的である場合には、それを食いとめることが大きな目的となりましようし、反対にデフレーシヨンを示し、不景気であるという場合には、これを緩和し、不景気を打開することを大きな目的とするでありましよう。向井大蔵大臣は、日本の国民経済は今日調整の過程にあるというような説明をされておりますが、調整というのは、おそらく朝鮮動乱によるブーム傾向が調整される意味でありましようが、日本の経済の現状は決してそんな簡単なものではないと私は信じます。国際的な関係、アメリカの再軍備政策の停頓、英仏の再軍備経済の非常な危険な状態、さらに進んでは日本の輸出貿易が至るところで不振であるというような、いろいろ重大な内外の原因があると思いますが、しかし、かりに調整されるといたしましても、その結果、はたしてどうなるのか、不況はひどくなるのかならないのか、私はここに問題があると思います。  最近の経済の状態は、申し上げるまでもなく、貿易はひどい。繊維は悪い。もう新三品どころではありません。肥料も過剰生産です。鉄も悪い。造船も、次第によつては、来年の春はたいへんです。勤労者農民や中小業者に至つては、いまさら申すまでもないのでありまして、現状はまさに部分的な恐慌状態とも言うべきほどでありまして、しかも新年になつ回復する見通しはありません。こういう状態に対しまして、補正予算とは申しながら、政府案には、これに対する何らの対策が示されておりません。(拍手政府の当初の案に対しまして、その後各方面から要求が出て参りましたので、それをちよびちよび取り入れまして、結局七百九十七億円の補正予算ができ上つてしまつた。こういう状態でありまして、私どもは、とうていこれを再認することはできません  第四の問題といたしましては、この補正予算が何ら来年度財政と関連がなく、来年度財政に対する見通しを与えておらないということであります。しかも、大蔵大臣は、本会議予算委員会におきまして、来年度の構想を述べてもらいたい、せめて大わくでもいいから、大体の見当予算の規模を承りたいと、野党側からしごく当然のことを要求したのでありますが、きまらない、わからないの一点ばりで、とうとう通してしまわれました。しかし、実際はどうです。現実は、すでに来年度予算の規模などはわかつているはずだと私は思います。この二十日ごろからは、各省と大蔵省の交渉が始まるだろうということは、だれでも知つております。新聞や雑誌などにも各省の要求が発表されておりまして、それを合計いたしますと、一兆七千三百五十六億円という厖大数字が出ておるのであります。そうして、大蔵当局は、これに対しまして、明年度租税収入を七千億余見積りまして、これに専売益金や雑収入を加えて、結局来年度の当初予算を一兆という数字のうちにとどめたいという意向であるというのは、世間周知の事実でございます。もちろん、これに対して、問題は大きく残つているようであります。最大の問題は、いわゆる再軍備関係の費用が未定のようでありまして総理のいわゆる自衛力の漸増方針も具体的にきまつていないようでありますから、ほんとうのところはまだ確定せぬでございましようが、それにいたしましても、大蔵大臣としての態度、方針、信条ぐらいは披瀝されるのが当然でありまして、それを示されないところに補正予算のその場ふさぎの本質があるのでありまして、国民は、深刻な経済不況、政局の不安の中にあつて、これでは五里霧中に迷わざるを得ないと存じます。  しかも、来年度こそは、もしまた現政府の手で予算がつくられるといたしますならば、いわゆる自衛力の漸増が行われなければなりません。太平洋のかなた、アイゼンハウアー氏のアメリカ大統領就任、その朝鮮訪問が日本の自衛力漸増に密接な関係があることは疑いありません。私の予算委員会における質疑に対しまして、総理は、朝鮮問題をめぐる事態に対しては情報を得ておる、つんぼさじきなどにいるものではない、しかし、それは言うことはできない、こういうお答えでありました。この結論から推定いたしますと、もしアイゼンハウアー氏がこれまでのアメリカ政府方針をそのまま継承されるものであるといたしますならば、総理が答えられないはずはないと私は思います。しかし、這般の事情から何らかの変化があると想像されますので、総理が公開の席上で申し述べられなかつたものであると私は考えざるを得ません。(拍手)もしそうでありますならば、この問題は重大であります。今やアメリカにおきましては、アジアではアジア人を戦わせよと主張している共和党の大統領政府ができるのでありますから、私は何よりも日本人の自主的立場から国土と民族の平和を守るために絶大な注目をこの問題に払わんとするものでございますがここで特に申し上げなければなりませんことは、その結果は、いわゆる自衛力の漸増が急増になり、これからいよいよ露骨、大規模な再軍備費の計上が行われるのではないかということであります。もつとも、政府は、これにあらかじめ備えまするためでありましよう……     〔発言する者多し〕
  27. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 御静粛に願います。
  28. 伊藤好道

    ○伊藤好道君(続) 二十七年度予算において厖大関係経費を使い残しておりますにかかわらず、この補正予算で少しもこれに手を触れようとしておりません。そうして、これをできるだけ本年度内に使いながら、しかも本年度内に使えない部分、当然に残る経費を来年度に持ち越そうとしておるのでありまするが、それにいたしましても、われわれは、関係経費の急増は避けがたいであろうと思います。  これに加えましてこの本会議で総理がはつきり申されておりますように、愛国心を高揚して再軍備をはかりますために、明年度は軍人恩給の復活も行われそうであります。恩給制度審議会の答申案通りに行われるかどうかはわかりませんが、数百億円の経費はそのためにいりましよう。ベース・アツプの経費も当然にいります。これに対しまして、財源の方はどうでしよう。今日の経済界状況からいたしますならば、政府得意の自然増収も、そう期待されそうもございません。向井大蔵大臣は、この点は率直にそう認めておられます。私どもは、もとより自然増収だけに依存しようとする政府従来のやり方に反対です。それはきわめて不健全でありますし、しかも自然増収は主として源泉所得税からとつているのでありますから、勤労者階級の負担は非常に増大します。もし、政府補正予算案のように、これをもつて財政投資の財源に充てることになりますならば、勤労者から税金をしぼつて大産業に投資するということになるのでありまして、私はこの点からも政府補正予算案に反対せざるを得ませんが、とにかく政府とつて置きのこの自然増収は、二十六年度には千四百億円でございましたが、二十七年度では政府は半分程度計上しております。しかも、その内訳は、法人税の自然増がほとんどなく、もつばら源泉所得税増加によることは皆さん御承知の通りであります。  そこで、明年度予算を大観いたしましますならば、歳出がふえて歳入が不振を来すことになるものと見られるのでありまして、われわれは、減税どころか増税の懸念も抱かざるを得ない。(拍手)場合によつては、公債発行政策がこの点からとられるのではないかとも思われるのであります。向井蔵相は、いわゆる池田構想の貯蓄公債のことにつきましては、再検討を加えると申しておられます。しかし、私は、貯蓄という冠がつきましようとも、またいわゆる石橋構想の建設という冠がつきましようとも、それは大した問題ではないと思うのでございまして、今日の日本金融状態のもとにおきましては、結局まわりまわつて同じことに帰着するのであります私、究極するところ、それはいずれも再軍備費の増加にあらかじめ備えまして、うまい口実を設けたり、体裁を整えながら、日本財政を公債、発行政策に移行させようとするものであると考えざるを得ないのであります。(拍手)そうして、こう考えて参りますと、私は、日本財政の将来はまことに重大であると考えるものでありまして、その前前途に対して深い不安を覚えざるを得ません。この点からだけども、一切再軍備費に手を触れない補正予算案に対しましては、われわれは反対せざるを得ないものであります。  ただいま申し上げましたように、政府補正予算案は、まことにふらふら腰で、その場しのぎのものでありまして、目的もはつきりせず、性格もなく、将来に大きな不安を与えるものでございますが、ただ、たつた一つ、この補正予算案を一貫して流れているかたい線があることを、私は見のがすことができません。それは何かと申しますと、給与ベースは、人事院勧告国鉄専売の裁定、電通の調停より千円低くくぎつけしておく、米価は七千五百円に押えつける、地方財政平衡交付金はふやさないという反面におきまして、いくら余ろうが、いくら残ろうが、再軍備関係の費用はびた一文も補正予算に使わないということであります。(拍手)これを言いかえますならば、政府は、勤労者農民地方人、要するに国民大衆の犠牲におきまして、いわゆる再軍備費を確保しようとしておるものと、私どもは考えざるを得ません。(拍手)そうして、これこそが、われわれが多年反対して参りましたドツジ政策の真髄でございまして、われわれは、それを、去年の九月の講和条約後、厖大な再軍備の要請として体験したのであります。しかも、政府は、この大衆生活の悪化に追打ちをかけて、運賃を値上げしたり、米の消費者価格引上げて、さらにこれをひどくしようとしております。私は、このような国民生活を蹂躪せんとする態度、方針には、まつたく承服することはできません。われわれがかねてから主張して参りましたように、今日の世界、日本現状をもつてしましては、大砲かバターか、そのいずれかを選ぶより道がないのであります。自衛力も漸増するし、国民生活も安定させるという手品は、どんな名人がお出になつてもできません。(拍手従つて、吉田内閣が、この補正予算におきまして国民生活を犠牲にして、いわゆる自衛力の漸増をはかる方針を、そのふらふら腰にもかかわらず、終始一貫して堅持して参わましたことは、われわれのこの主張を裏書きする、あまりにも当然なことでありますが、それだけに、われわれは、そこに現政府自由党の毒々しい、恐しい姿を国民の前に明らかにしなければならないと信ずる次第でございます。(拍手)  そこで、私、この際、いわゆる再軍備関係の費用がどれだけ計上されて、どれだけ使用されないまま残つておるかということを、はつきりさせたいと思います。防衛支出金あるいは安全保障諸費、平和回復善後処理費、保安庁予算だけの、予算委員会に断片的に出されました四つのものをとつてみましても、防衛支出金は、当初六百五十億円、十一月末二百二十一億、安全保障諸費が五百六十億、それがわずか四十五億しか使われないで、五百十五億残つております。平和回復善後処理費は、二十六年度よりの繰越しを合せて二百十億、それが十一億しか使われておりませんで、二百億円近く残つております。保安庁の予算は、本年度五百七十七億円、前年度の繰越しを加えまして七百二十九億円、これが五百億円残つております。諸君、これが再軍備費の使い方であります。現在残つている状況でございます。実に驚くべき状態でありまして、(拍手)これを合せると一千四百二十五億円、これは、これらの経費の当初の予算総額の六六%、すなわち三分の二という経費が十一月末現在残つていることになるのでございます。(拍手)もちろん、政府は、これに対しまして、今後の使用見込みをいろいろ陳弁されておりますが、要するに、再軍備関係費用の計上が厖大過ぎたこと、組み方がずさん千万であつたことは、一点疑いの余地がないのでございまして、(拍手補正予算案がこれに何ら手を触れないという態度は奇怪しごくと申さなければなりません。(拍手)しかも、この結果といたしまして、国民の血の出るような税金がおそらく相当濫費されていることも当然想像にかたくないところでありますし、(拍手)われわれはこれを見まして、戦前における日本軍部のあの秘密独善、でたらめの軍事費を想起せざるを得ないものでございます。(拍手)しかも、これがため、国民生活安定と国民経済再建に必要なる幾多緊要な経費が、財源がないという政府の冷酷にして偽りの口実によつて削減されてしまいまして、その結果、今日のような日本経済と国民生活のさんたんたる危機を招来いたしましたことは、われわれの痛憤おくあたわないところでありまして、政府の責任は重大であると私は思います。(拍手)  こういう補正予算案に対しまして、われわれ野党三派の共同提案にかかる修正案は、もちろん完全なものではありませんが、それは給与べース、米価にしましても、地方財政平衡交付金文教費、中小商工業者金融につきましても、要望したい点はございますが、しかし補正予算のことでございますから、多くを望むことはできません。それにもかかわらず、修正案は、人事院勧告給与ベースは実現できます。国炊、専売の裁定、電通の調停は完全に実施しております。消費者米価はすえ置きすることができます。農民の生産者米価は、とにかく千円上げることができました。地方財政平衡交付金も、給与引上げの線に沿つて増額することができましたし、文教費あるいは中小商工業者金融も幾分の増加をはかることができました。(拍手)しかも、他方、この経費増額をまかなうために、不十分ではございますが、再軍備関係費に手をつけ、これを削減することができたのでありまして、(拍手)われわれは、ここから断固日本の将来のインフレーシヨンの道を防ぐ糸口を見出すことができたと思うのは、御同慶にたえないと存ずる次第でございます。(拍手)どうか満場の御賛成をお願い申し上げます(拍手
  29. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず北村徳太郎君外二十二名提出、昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)に対する修正案につき採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。北村徳太郎君外二十二名提出の修正案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  30. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  31. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 四百三十六   可とする者(白票)  百九十七     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百三十九     〔拍手〕     〔発言する者多く、議場騒然〕
  32. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 静粛に願います。  右の結果、北村徳太郎君外二十二名提出の修正案は否決されました。(拍手)     —————————————     〔参照〕  北村徳太郎君外二十二名提出昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)に対する修正案を可とする議員の氏名   秋田 大助君  荒木萬壽夫君   有田 喜一君  安東 義良君   伊東 岩男君  石坂  繁君   石田 一松君  五十嵐吉藏君  生悦住貞太郎君  宇田 耕一君   臼井 莊一君  小川 半次君   大麻 唯男君  大川 光三君   大森 玉木君  岡田 勢一君   加藤 高藏君  金子與重郎君   川崎 秀二君  菅  太郎君   菅野和太郎君  北村徳太郎君   清瀬 一郎君  楠山義太郎君   栗田 英男君  小泉 純也君   小島 徹三君  小畑虎之助君   河本 敏夫君  河野 金昇君   後藤 義隆君  佐伯 宗義君   佐藤 芳男君  櫻内 義雄君   笹森 順造君  笹山茂太郎君   志賀健次郎君  椎熊 三郎君   重光  葵君  白浜 仁吉君   鈴木 正吾君  園田  直君   田中 久雄君  高岡 大輔君   高倉 定助君  高瀬  傳君   高橋 長治君  高橋 禎一君   武部 英治君  竹山祐太郎君   舘林三喜男君  千葉 三郎君   床次 徳二君  内藤 友明君   中島 茂喜君  中曽根康弘君   中野 四郎君  中山 榮一君   中村 寅太君  中村庸一郎君   長井  源君  楢橋  渡君   長谷川四郎君  早川  崇君   平川 篤雄君  廣瀬 正雄君   古井 喜實君  町村 金五君   松浦周太郎君  松野 孝一君   松村 謙三君  松本 瀧藏君   三浦 一雄君  三木 武夫君   宮澤 胤勇君  粟山  博君   森田重次郎君  森山 欽司君   柳原 三郎君  山手 滿男君   山本 粂吉君  吉川 大介君早稻田柳右エ門君  淺沼稻次郎君   井伊 誠一君  井上 良二君   伊藤卯四郎君  池田 禎治君   石井 繁丸君  石川金次郎君   今澄  勇君  受田 新吉君   大石ヨシエ君  大矢 省三君   岡部 周治君  甲斐 政治君   加藤 勘十君  春日 一幸君   片山  哲君  川島 金次君   川俣 清音君  河上丈太郎君   菊川 忠雄君  菊地養之輔君   木下  郁君  熊本 虎三君   河野  密君  杉山元治郎君   鈴木 義男君  田原 春次君   田万 廣文君  竹谷源太郎君   辻  文雄君  堤 ツルヨ君   土井 直作君  冨吉 榮二君   中崎  敏君  中澤 茂一君   中村 高一君  西尾 末廣君   西村 榮一君  日野 吉夫君   平岡忠次郎君  平野 力三君   前田榮之助君  前田 種男君   松井 政吉君  松尾トシ子君   松岡 駒吉君  松前 重義君   松本 七郎君  三宅 正一君   三輪 壽壯君  水谷長三郎君   門司  亮君  矢尾喜三郎君   山口シヅエ君  山下 榮二君   吉川 兼光君  吉田 賢一君   吉田  正君  足鹿  覺君   阿部 五郎君  青野 武一君   赤路 友藏君  赤松  勇君   伊藤 好道君  井手 以誠君   稻村 順三君  猪俣 浩三君   小川 豊明君  加賀田 進君   加藤 清二君  勝間田清一君   上林與市郎君  大原津與志君   久保田鶴松君  小松  幹君   佐々木更三君  佐藤觀次郎君   坂本 泰良君  志村 茂治君   島上善五郎君  下川儀太郎君   鈴木茂三郎君  多賀谷真稔君   田中織之進君  田中 稔男君   楯 兼次郎君  辻原 弘市君   永井勝次郎君  成田 知巳君   西村 力弥君  芳賀  貢君   長谷川 保君  原   茂君   原   彪君  福田 昌子君   古屋 貞雄君  正木  清君   松原喜之次君  森 三樹二君   八百板 正君  八木 一男君   安平 鹿一君  柳田 秀二君    山口丈太郎君  山崎 始男君    山田 長司君  山中日露史君    山花 秀雄君  山本 幸一君    横路 節雄君  和田 博雄君    渡辺 惣蔵君  川村 継義君    中村 英男君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  阿部 千一君    相川 勝六君  逢澤  寛君    青木  正君  青柳 一郎君    赤城 宗徳君  秋山 利恭君    淺香 忠雄君  淺利 三朗君    麻生太賀吉君  新井 京太君    新井 堯爾君  荒舩清十郎君    有田 二郎君  安藤 正純君    伊藤 郷一君  伊能繁次郎君    飯塚 定輔君  生田 和平君    池田  清君  池田 勇人君    池田正之輔君  石井光次郎君    石田 博英君  石橋 湛山君    犬養  健君  今松 治郎君    今村 忠助君  岩川 與助君    岩本 信行君  宇田  恒君    宇都宮徳馬君  上塚  司君    植木庚子郎君  植原悦二郎君    内田 常雄君  内海 安吉君    江崎 真澄君  遠藤 三郎君   小笠原八十美君 小笠原三九郎君    小川 平二君  小澤佐重喜君    緒方 竹虎君  尾崎 末吉君    越智  茂君  大石 武一君    大泉 寛三君  大上  司君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大島 秀一君  太田 正孝君    大西 禎夫君  大野 市郎君    大平 正芳君  大村 清一君    岡崎 勝男君  岡田 五郎君    岡田 忠彦君  岡野 清豪君    岡本  茂君  奧村又十郎君    押谷 富三君  加藤 精三君    加藤 宗平君  加藤常太郎君    加藤鐐五郎君 甲斐中文治郎君    河合 良成君  河原田稼吉君    勝俣  稔君  川島正次郎君    川村善八郎君  川野 芳滿君    菅家 喜六君  木村 武雄君    北 れい吉君  久野 忠治君    倉石 忠雄君  栗山長次郎君    熊谷 憲一君  黒金 泰美君    小金 義照君  小坂善太郎君    小平 久雄君  小西 寅松君    小林かなえ君  小林 絹治君    小山 長規君  木暮武太夫君    河野 一郎君  近藤 鶴代君    佐々木秀世君  佐治 誠吉君    佐藤 榮作君  佐藤善一郎君    佐藤虎次郎君  佐藤洋之助君    坂田 英一君  坂田 道太君    迫水 久常君  重政 誠之君    篠田 弘作君  島村 一郎君    首藤 新八君  周東 英雄君    薄田 美朝君  鈴木 善幸君    鈴木 直人君  砂田 重政君    砂原  格君  關谷 勝利君    田口長治郎君  田子 一民君    田嶋 好文君  田中伊三次君    田中 角榮君  田中 彰治君    田中 萬逸君  高木吉之助君    高木 松吉君  高橋 英吉君    高見 三郎君  竹尾  弌君    谷川  昇君  玉置 信一君    中馬 辰猪君  塚田十一郎君    塚原 俊郎君  辻  寛一君    綱島 正興君  坪川 信三君    寺島隆太郎君  東郷  實君    徳安實藏君   富田 健治君    内藤  隆君  中  助松君    中井 一夫君  中田 政美君    中峠 國夫君  中村 梅吉君    中村 幸八君  中山 マサ君    仲川房次郎君  永田 良吉君    永田 亮一君  永野  護君    永山 忠則君  長野 長廣君    灘尾 弘吉君  南條 徳男君    丹羽喬四郎君  西川 貞一君    西村 英一君  西村 茂生君    西村 直己君  貫井 清憲君    根本龍太郎君  野澤 清人君    野原 正勝君  羽田武嗣郎君   橋本登美三郎君  橋本 龍伍君    花村 四郎君  濱田 幸雄君    濱地 文平君  林  讓治君    原 健三郎君  馬場 元治君    日高 忠男君  平井 義一君    平澤 長吉君  平野 三郎君    廣川 弘禪君  福井  勇君    福井 順一君  福井 盛太君    福田  一君  福永 一臣君    福永 健司君  船田  中君    保利  茂君  星島 二郎君    本多 市郎君  本間 俊一君    前尾繁三郎君  前田 正男君    牧野 良三君  益谷 秀次君    増田甲子七君  松浦 東介君    松岡 俊三君  松岡 松平君    松田竹千代君  松田 鐵藏君    松永  東君  松野 頼三君    松本 一郎君  松山 義雄君    松村 光三君  三池  信君    三木 武吉君  三和 精一君    水田三喜男君  水谷  昇君    南  好雄君  宮幡  靖君    明禮輝三郎君  村上  勇君    村松 久義君  持永 義夫君    森 幸太郎君  森   清君    森下 國雄君 山口喜久一郎君    山崎 岩男君  山崎  巖君    山崎  猛君  山村新治郎君    雪澤千代治君  横川 重次君    吉江 勝保君  吉田  茂君    吉武 惠市君  大橋 忠一君    荻野 豊平君  大下 重範君    只野直三郎君  武知 勇記君    福田 赳夫君  坊  秀男君    石野 久男君  岡田 春夫君    黒田 寿男君  館  俊三君    久原房之助君     —————————————
  33. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 次に、昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)につき採決いたします。本件の委員長報告は可決であります。本件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  34. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 起立多数。よつて昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  次に、北村徳太郎君外二十二名提出、昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)及び昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)の撤回を求めるの動議採決いたします。北村徳太郎構外二十二名提出動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  35. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 起立少数。よつて本動議は否決されました。(拍手)  次に、昭和三十七年度特別会計予算補正(特第1号)及び昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)の両件を一括して採決いたします。両件の委員長報告はいずれも可決であります。両件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  36. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 起立多数。よつて昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)及び昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1号)はいずれも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  これをもつて補正予算三件は議了いたしました。     —————————————
  37. 久野忠治

    久野忠治君 日程第一は延期し、明十七日定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  38. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 久野君の動機に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 大野伴睦

    議長(大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決ました。  本日はこれにて散会いたします。     午後九時四分散会