○河本敏夫君 私は、改進党を代表し、
総理大臣以下の
施政方針演説の具体的な
質問に入るに先立ちまして、まず昨日
池田通商産業
大臣が本院において不信任されたことと関連し、
吉田総理が
独立後の
わが国政治を運営せられるにあた
つての、その根本の心構えについて
お尋ねしておきたいのでございます。(
拍手)
思うに、
わが国において、
昭和六、七年ごろより順次軍部の勢力が
増大し、遂にはその独裁となり、
わが国民を無謀な
戦争にかり立て、遂に悲惨な敗戦に追い込んだその原因は、一体那辺にあ
つたか。それは、
昭和四年の
世界的な恐慌の余波を受け、
わが国が不景気のどん底に追い込まれ、
国民が塗炭の苦しみにあえいでいるときに、当時の政党
政治が、まじめにその対策を
考えないで、党利党略を事とし、
国民全体にこのことが非常な不満と相なり、遂にそれに乗じて
わが国に独裁
政治が出現して
しまつたのであります。
吉田内閣は、
わが国経済の現状について、相当の回復と安定を見たと、きわめてのんきなことを言
つておられるが、現状は決してさようななまやさしいものではない。
都会における
生活水準は、先ほど小笠原通産
大臣は、最近上
つておると言われたが、決して上
つてはおりません。
生活水準は、なるほど全国的にはある
程度上
つておるかもしれないけれども、都会だけを統計にとるならば、最近は逆に約一割低下いたしまして、戦前の七五%にすぎないのであります。また貿易は、本年一月
政府が
予算編成をした当時の見込みより三割も減
つておるではないか。物価と
生産は、ようやく操業短縮と滞貨金融によ
つて横ばいを続けておるにすぎないではないか。繊維品その他二、三の商品の暴落は、不況の域を
通り越してまさに恐慌
状態であるとい
つても過言ではない。チヤーチルは、昨年十月政権を担当するや、英国の
経済は破滅寸前にあると
国民に訴え、捨身の挽回策を講じ、ようやく最近好転のきざしを見せるに至
つておるが、
吉田内閣も、かかる謙虚な気持で、これまでの自分の
政治の失敗を率直に認めるとともに、
日本経済の現状と
前途は決して安易なものではないことを
国民に訴えて全力をあげてこそ初めて
わが国の
前途に光明を見出し得るにかかわらず、これまでの失政にほおかむりをして、しかも
中小企業が倒れて、五人や十人の自殺者が出ても万やむを得ぬというような
態度で
政治をやるならば、私は
日本の民主主義の前はまことに暗澹たるものがあり、再び
わが国において、フアシズムや共産主義のごとき議会否認の
考え方が
国民を支配し、遂には国を滅ぼすに至る危険すらありと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
政治の根本は、頭のよしあしではない。小手先の器用さではない。官僚の技術ではない。
政策はもちろん必要ではあるけれども、それよりも、常に
国民の一人といえども、飢える者はないか、また困る者はないかと常に肝胆を砕き、あたたかい愛情と、日夜寝てもさめても国家の将来を思う燃えるような情熱が必要なんだ。(
拍手)私は、先日の
池田前通産
大臣の、あの
国民に対する無礼な言辞と不遜な
態度を見て、このことを痛感するがゆえに、
吉田内閣の
政治に対する根本的な心構えと、また内閣において最も重要な地位を占める
池田前通産
大臣が本院において不信任せられたその
責任を、
憲法第六十六条との
関係において、いかに
考えておられるかについて、
吉田総理にお聞きしておきたいのでございます。(
拍手)
次に、今後の
わが国の基本的な進路についてお伺いいたします。すなわち、
わが国は、
昭和六年の満州事変以来十四箇年にわたる軍部の独裁と、敗戦後七年間になんなんとする占領、すなわち二十年にわたる圧制と支配から初めて解放せられてここに新しいスタートを切
つたのでありまするが、この際まず第一に肝要なことは、複雑な国際情勢のもとにおいて、誤りなくこれに対処して行くことであり、このためには、
世界情勢の正しい
見通しの上に立たなければならぬということは、論をまたないところでございます。
吉田総理は、これまでのたびたびの言明によりまして、
米ソ間の
戦争はまず起るまいとの
見通しに立
つて、すべて行動せられておるようであるが、私は、かかる独断的よりいろいろな問題に対処して行くことは、
わが国の将来にとりきわめて危険であると
考えるものであります。
なるほど、ソ連は昨年来
世界各地で平和攻勢を機会あるごとにと
つておるので、一見
戦争の危険は表面的には遠のいていたようには見えるけれども、これは、
朝鮮に
中共が介入して以来、
アメリカを
中心とする民主主義諸国家の急速な
軍備拡張の速度をゆるめるための、彼らの常套手段にすぎないのであ
つてスターリンも、去る十月三日、プラウダ紙上におきまして
世界より
戦争の危険を取除くためには資本主義を絶滅しなければならぬと明言しておることよりも、彼らの意図が明確にわかるのであります。ゆえに、私は、
総理のごとく、
米ソ戦はまず起るまいとの観点よりすべてのことを決定して行くことはまことに危険であ
つて、現下の
世界情勢と、共産主義者の根本的な
世界観により、あるいは
戦争の起る場合をも予想して、
わが国の基本
方針を決定しなければならぬと
確信するものであります。(
拍手)
わが国の
戦争に対する根本
方針は、あくまでもわれわれはいかなる
戦争にも参加してはならないし、また他国の巻添えを食
つて戦争に巻き込まれるようなことがあ
つては相ならぬということでなければなりません。しかるに、現在安保条約に基いて米国が
わが国に駐留し、行政協定によ
つて全国に六百に余る軍事施設を保有し、しかもそのうち三百に及ぶ半永久的施設の中には、二十余の飛行場が入
つておる。これらはすでにジエツト
爆撃機の
基地として活用中であり、あるいは整備中のごとく了承しております。さらに米軍は、
日本政府の了解を得ずして海外に出動することができますので、
米ソ戦争の起
つた場合に、当然彼らは
わが国を
基地としてソ連に攻撃を加え、ソ連もまた当然これに反撃し来
つてかくしてわれわれの知らない
わが国が
戦争に巻き込まれていたというごとき最悪の事態をも予想しておかなければ相ならぬのであります。かりに一歩を譲
つて、かような事態が起きない場合でも、
朝鮮問題の
解決が長引くときには、米軍が満州あるいは中国本土を
爆撃することをも考慮しておく必要がある。かようなときには、すでに二千機に近い航空兵力を擁する
中共よりの報復
爆撃をもまた考慮のうちに入れておかなければならぬのであります。すでに原子爆弾が広島、長崎当時の十倍の威力を持ち、さらに水素爆弾の実験の成功が伝えられる今日、もしかようなことがあるならば、その惨禍ははかり知るべからざるものがあります。ゆえに、
わが国は万難を排してかような事態の生ずるのを防止するように対処して行かなければ相ならぬと
考え、私は、以下この問題に関連し、三つの点について
吉田総理にお伺いするものであります。(
拍手)
第一に、私は、
政府が米国
政府に対し、米軍は
わが国を
基地として
朝鮮以外に出動しないということを確約させる必要があると
考えるが、
政府の見解はどうか。(
拍手)
第二に、
わが国が民主主義諸国との友好
関係を維持促進して行くことはあくまで必要であるけれども、他面において
わが国は西欧、濠州、フイリピン等とは
歴史的、地理的、人権的に事情も異な
つておるし、
政府の強調するごとく米国を
中心とする安全保障体制のみに依存する策をとらないで、すみやかに必要な
軍備を整えなければ相ならぬと信ずる。かような観点から、現在の安保条約はあくまでも一時的のものでなければならぬと
考えるのであります。
従つて、
戦争に巻き込まれないためには、安全保障条約を改訂し、または
戦争に巻き込まれたくないというわれわれの希望がいれられなければ、これを廃棄する必要があると
考えておるものであります。安保条約が廃棄せられるような場合には、米軍は当然わが本土より沖縄あるいはフイリピン等の後方
基地に撤退することに相なりましよう。米軍が
日本を撤退した場合には、ソ連及び
中共より
わが国が直接に侵略を受けるかもしれぬとしておそれる人もあるようであるけれども、私は、共産主義の理論と
歴史より見て、まずかようなことはないと
考えます。
朝鮮においては、地理的な環境と、北鮮が共産化していたという特殊の事情があ
つたので、現在の
朝鮮事変と相な
つたけれども、普通の場合に、共産主義者の侵略方法は、共産主義国家が直接に侵略行動に出ないで、
植民地あるいは半
植民地においては民族解放運動を起し、また農民を主とするパルチザンを順次組織化いたしまして、また
経済的に発達した国におきましては、
政治的なゼネストによ
つて革命を起し、共産主義国家が間接にそれそぞれの国家もしくは地域の共産主義者を
援助するのが原則であります。
従つて、
わが国においても、
中共やソ連からの直接侵略よりも、むしろそれらよわ
援助を受ける
日本共産党の革命企図に対して万全の備えをいたすことが肝要であると
考えるものであります。(
拍手)以上のごとき卑見に対して、
政府はいかに
考えておられるか、
お尋ねしたいのであります。
第三に、
政府は現在の
わが国の自衛力をさして
軍備にあらずといわれておるけれども、はたしてしからば、この場合に
保安隊員の志気をいかにして維持向上せしめるおつもりであるか。現在のままでは、莫大な国費を濫費し、いたずらに数のみ多くして魂の入らない、無用の長物となるのみか、もし彼らがそのまま将来建設せらるべき国軍の基幹となるならば、あるいはその癌となることすらおそれるものであります。
政府は、この際自衛軍の必要なことを表明し、
国民感情をその方向に指導し、堂々
憲法改正にまで持
つて来るよう輿論に大胆に訴えるべきではないか。この点に関する
政府の見解はどうか。
以上三つの点について、
総理大臣の御意見をお伺いするものであります。
次に、治安対策につきまして
お尋ねをいたします。労働対策と治安対策は、
政府の最も苦手とせらるるところのようであり、本年に入
つて、破防法制定に際し、数度にわたる
政治ストを惹起し、ただいまも、
わが国の産業界と
国民生活に最も
関係の深い電産及び炭労のストに対し、拱手傍観としか思えないような
態度に出ているのであ
つて、これはま
つたく不可解千万といわざるを得ないのであります。先般の
外国人登録に際し、数万の登録拒否者があ
つたが、その大部分は共産系であるごとく聞いておる。かかる
状態では、
独立国家の面目いずこにありやといいたいのであります。(
拍手)さらにまた、共産党は衆議院においてこそその全議席を失
つたけれども、全国においてなお百万の投票を得ておるのであ
つて、しかも二年前のレッド・パージによ
つて主要産業から追放せられた細胞も、その後秘密裡に再建せられ、表面の登録党員のほかに六、七戸の秘密党員を擁し、機会あればゼネストを起して、これを契機として革命を実行すべく着々準備を進めております。特に最近の電産、炭労のストも、彼らの組合フラクの指導によるものと伝えられている。かかる
状態に対し、
政府は、共産党の最高指導部が地下にくぐ
つてからすでに二年半に舌なんなんとするにもかかわらず、一人を除き、他はいずれもこれを逮捕することができないという
状態であ
つて、
国民は
政府の治安対策に対してきわめて寒心にたえないものがあります。
政府は、この際、適切な
財政経済政策の実行に加うるに、社会福祉
政策の徹底に努め、そうして
国民生活の安定をはか
つて、共産主義の温床の絶滅を期するとともに、地方、官庁内部の共産党分子の粛正、各重要産業及び職場よりの再追放や、その防衛をも敢行し、また暴力より郷土を守るための運動を展開し、共産主義革命の計画に対し十分な準備を早急に整える必要があると私は
考えるものであるが、これに対して
政府の意見はどうか。基本的な問題に関しましては
吉田総理大臣、また具体的な問題に関しましては犬養法務
大臣の御
答弁をお聞きしたいのであります。(
拍手)
次に、産業
経済問題について御
質問する。第一に、
大蔵大臣は、
わが国の
経済は
政府の言うごとく安定しているかとのたびたびの
質問に望まして、単に
数字をあげて、あくまで安定していると強弁せられているが、官僚のつくる
数字ほどあてにならないものはありません。先ほどの通産
大臣の御
答弁の、ごとく、
生活水準も都会だけを例にとるならば低下しているにかかわらず、全国的な統計をも
つてこれにすりかえる。このような官僚のつくる
数字は、ま
つたくあてにならないのであります。
私が冒頭申し上げました一連の事実は、
わが国の
経済が
政府の言明とは逆に重大な
危機に立
つていることを示すものであります。この原因は一体どこにあるか。それは、
吉田内閣が従前の
財政経済政策転換の時期を誤
つたことにあります。すなわち、
昭和二十四年一月、第三次
吉田内閣成立以来、
政府は超
均衡財政をと
つて参
つたのであるが、その
目的は、当時のインフレをとめ、対日
援助資金と補助金とによ
つて成り立
つてお
つたところの
わが国の
経済に終止符を打
つためであ
つた。もともと超
均衡財政なるものは、それ自体非常に不景気的な要素を持
つておるものであるけれども、それが表面化しないで、比較的順調に昨年をも
つてその
目的を達したゆえんのものは、
池田財政がよか
つたからではなくして、その後
世界情勢が
変化したためであります。(
拍手)すなわち、一昨年六月の
朝鮮事変を契機といたしまして
世界的な
軍備拡張や軍需物資の備蓄輸入が
増大し、
世界の貿易が
拡大いたしまして、その影響を受けて、
わが国の貿易もまた飛躍的に伸び、加うるに事変による特需が産業界を潤したからであります。しかし、本年に入ると、客観的な情勢は相当かわ
つておる。このため貿易も減り、特需も、直接産業界に刺激を与える種類のものは、相当大幅に
減少しております。加うるに、
わが国は
独立を回復し、自主的な
政策をとることができるようにな
つたのであるから、本年春をも
つて、これまでの
財政中心の
政策より、わが党の主張する産業
経済中心の
政策に転換しなければならなか
つたはずであります。(
拍手)しかるに、
吉田内閣は、従前の
政策を依然として固執し、絶対多数の上にあぐらをかいて、真剣にこの問題と取組むことをしなか
つたがために、現在のごとき憂うべき事態を惹起したのであります。(
拍手)この点につきまして、先日のわが党川崎君の
質問に対する向井
蔵相の
答弁ではま
つたく満足できませんので、もつとわれわれや
国民にもわかるるような御
答弁をお願いしたいのであります。(
拍手)
〔
議長退席、副
議長着席〕
第二に
お尋ねいたしたいことは、
わが国経済の自立、換言すれば
わが国国際収支の正常的な均衡をいかにして達成するかという問題であります。なるほど、現在の
わが国の国際収支は、貿易
状況の悪化にもかかわらず、表面上は一応均衡がとれております。それは輸入超過をカバーするに足るだけの貿易外収入があるからであります。しかしながら、貿易外収入の大部分は正常的なものではなく、それは、いわゆる特需約三億三千万ドル、駐留
軍人及び
家族の消費約二億六千万ドル、合計五億九千万ドルを
中心とするものであります。すなわち、
わが国の現在の国際収支は、
朝鮮事変以来の一時的な、しかも僥倖的な特需と、
わが国にと
つて屈辱的な条件で駐留する米軍及びその
家族の消費、換言すれば
朝鮮人の
犠牲と
日本人の屈辱の上に均衡を保
つておるものであります。(
拍手)しかも、この特需三億三千万ドルは、一例をあげれば、一個十二、三ドルもする砲弾を八、九ドルで引受けるという、いわゆる出血受注が
中心とな
つており、また
軍人家族の消費二億六千万ドルのうち約二億ドルは、
わが国の婦人がその
中心をなしておるのであ
つて、現在における
わが国国際収支の均衡は、ま
つたく
日本人にと
つて耐えがたき不名誉なものであるといわざるを得ないのでございます。(
拍手)
思うに、
日本の
経済が
アメリカの軍事支出に依存しておる間は、真の意味における
わが国の
独立と自由はあり得ない。しかも、
アメリカの軍事支出は、
世界情勢のいかんによ
つて変化するところの、きわめて不安定なものでございます。ゆえに、
日本の将来に思いをいたし、
わが国当面の
財政経済政策の目標を求めるならば、できるだけ早く
日本経済を自立せしめ、
わが国の国際収支の正常的なる均衡を達成するにありと断ずることができます。(
拍手)しかるに、去る二十一日、閣議決定発表の、新内閣の重要施策要綱中には、盛りだくさんな項目が列挙せられておりまするけれども、
経済の自立については一言半句も言及していないのであります。(
拍手)一体、
政府は、米国の軍事支出を当てにしないで、
わが国の国際収支の正常的な均衡を達成する必要をお認めにな
つておるのかどうか。もしその必要をお認めならば、一体今後何年の後においてこれを達成し得るお見込みのもとに
財政経済政策を御立案にな
つておるのであるか。この点を
経済審議庁長官に
お尋ね申し上げたいのであります。(
拍手)
次に、為替と物価の
関係について
お尋ねをいたします。
大蔵大臣は、今後も現行為替レートを維持すると述べられております。現在の
わが国の物価
水準は、国際的に見て相当割高であります。
従つて、現行の為替レートを維持じようとするならば、
わが国の物価は何らかの方法をも
つてこれを引下げる必要があります。しかるに、
総理大臣は、当面の金融
方針について、物価の安定をはかると述べられております。もしこの物価が眼前の物価
水準を意味するものであるならば、現行の為替レートの維持は困難と相な
つて来る。そこで
政府に
お尋ねをいたしたいのは、物価安定の基準を一体いかなる線に置いておられるのか、この点につきまして
大蔵大臣に
お尋ねをいたします。(
拍手)
次には、貿易問題につきまして二、三
お尋ねをいたしたい。現下の貿易不振には、いろいろな原因がありまするけれども、その重要原因の一つは、
政府の
経済外交の怠慢にあると
考えております。(
拍手)すなわち、
独立後すでに六箇月を経過しておるにかかわらず、現在までに通商航海条約を締結した国は七つ、入国関税等の部分的な通商協定のできたものは二十、目下
交渉中のもの若干というありさまであ
つて、なお
世界の主要な二十数箇国とは全然空白
状態であり、ガツトヘの加盟もいまだたな上げせられておる
状態であります。このために、輸出市場も十分開拓せられないのみか、相手国の事情もよくわからないところが多いのでありまして、東南アジアにおいては、華僑あるいは第三国人ブローカーによりまして、不当な中間利潤をかせがれておる例も非常に多いのであります。
政府は一刻も早く
経済外交を活発に展開すべきであるが、特に東南アジアの諸国については、まず賠償問題の
解決に努むべきであります。賠償を
解決せずして、相手国との間に友好的かつ緊密なる通商貿易
関係を打開することは、これを期待し得ないのであります。
さらに、東南アジアの諸国は、
独立を回復したけれども、依然として
植民地的な貧困に悩んでおり、
独立の実質的裏づけをなす
経済建設のために闘
つておるのでありまするけれども、他面、これらの諸国に対する共産主義勢力よりの侵入はすこぶる顕著なものがございます。ゆえに、すべからく
政府は大局的な見地に立
つて東南アジアの諸国の民族感情を洞察し、これら各国の
経済的発展のために
協力し、彼らの
独立の実質的な達成をはか
つてやるという大きな構想のもとに、誠意をも
つて、まず賠償問題の
解決に当るべきものと
考える次第であります。しかるに、
政府は、本年一月以降この問題を放棄し、あまり関心がないようであるが、この点に関し
政府はいかなる用意を持
つておるか、この点、外務
大臣に
お尋ねをいたします
次に、
わが国の輸出貿易不振の重要なる一原因は、
わが国の国際的な物価高にあります。とりわけ、
わが国の重化学工業製品の国際的な割高をいかにして引下げるかは、現下の重大問題であります。
政府は、これに対し、先ほども通産
大臣から、たとえば設備の近代化による企業の合理化であるとか、あるいは綿花借款のごとき方法による米国よりの鉄鉱石の輸入であるとか、あるいは東南アジア諸国との提携によ
つて銑鉄及び鉄鉱石を入手するようなことを考慮しておられる旨御
答弁がございましたが、かかる方法だけによ
つて、たとえば国際的に七、八十ドルも高い
わが国の鉄鋼を早急に国際
水準にまで引下げることは、はなはだ疑問とせざるを得ないのであります。私は、
政府のやろうとしておることは、まことにけつこうであると思うけれども、少くともそれらの諸
政策がその効果を上げるまで、鉄鋼及びその他一、二の重要品目については二重価格制度をとる必要があると信ずるものであります。(
拍手)あるいは、かかる
政策は、不当競争であるという非難を恐れる人もあるかもしれませんが、そもそも自分の国の原料に頼
つておる国と、全部の原料を
外国より輸入する
わが国との間には大きなハンデイキヤツプがあり、そのハンデイキヤツプを合理化によ
つて解消するまで国家が補助をなすことは、一向にさしつかえないところでございます。特に西欧におきましては、輸出貿易に関し、いろいろな国家補助、たとえば輸出産業に対する長期の低利貸付、あるいは輸出品に対する特別の
減税、優先外貨制度の採用その他一連の
政策を行
つて、相当見るべき輸出の実績を上げておるのであります。それでありまするから、
わが国におきましても、西欧のような貿易に関する国家補助制度をこの際真剣に研究し、その長所はこれを取入れるべきである。以上の点に関し、通産
大臣のお
考えをお伺い申し上げます。(
拍手)
なお、一方において輸出伸張をはかりながら、他方において不必要な輸入を
減少せしめて行くことが肝要でありまするけれども、現在の
わが国の輸入品日中、将来これを大幅に
減少する必要があり、またその可能性に富んでおるものは食糧であります。このために、食糧の自給態勢確立の問題に論及するのが順序でありまするけれども、すでに先般詳細な
質問があ
つたのでこれを省略いたしまして、次の問題に移ります。
次の問題は、海運の問題であります。貿易外収入と関連いたしまして、海運の復興、すなわち商船隊の拡充について
お尋ねいたします。国際収支の正常な均衡をはかることは
経済自立の根本であることは先に申しましたけれども、
わが国経済の特殊性より
考えまして、貿易においては将来とも依然入超が続くものと予想せられますので、これをカバーするためには、正常的なる貿易外収入に関し根本的な対策を立てるべきは当然であります。(
拍手)その大宗をなすものがすなわち海運であります。
数箇月前の計算によりますると、
わが国の重要貿易品の価格のうちにおいて、海上運賃の占める割合は、輸入品については二十四、五パーセント、輸出品については六、七パーセントに達してお
つた。現在は、運賃の下落から、右のパーセンテージは多少
減少しておるけれども、なお相当の部分を占めておるのでありまして、しかも現在の
わが国の商船隊をも
つていたしましては、
わが国輸出入品の平均三割しか運んでおるにすぎず、戦前のごとく第三国間の輸送は皆無に近いのであります。これを輸出入物資とも五割まで輸送するようにして外貨を節約するとともに、さらに進んでは第三国間の輸送にまで従事せしめ、積極的に外貨を獲得し、戦前のごとく、これを貿易外収入の根本たらしめなければならないことは、賛言を要しないところであります。(
拍手)
しかるに、商船は純然たる国際商品であり、これを拡充するためには、どうしてもその
経済的競争力を
外国船と同一にしなければならないのであります。ところが、
わが国の物価高のために、船舶の建造費は
外国に比べて三割も高く、しかもその金利たるや、米英その他各国ともおおむね三分前後でありまするけれども、
わが国はその三倍以上にな
つており、また
外国では税金及び資金調達上いろいろな特典を実施しておるに反し、
わが国においては、船舶に対し、逆にいろいろな固定資産税その他の税金を課しまして、重大なる負担とな
つておるのであります。かかる事情のために、
わが国の船舶を運航するコストが、
外国に比べまして二倍以上に達しております。そうして海運復興に重大なる支障を来しておるのみならず、せつかく戦後復興の緒につきかけた
わが国の海運は、このまま放置せられんか、破滅のほかなき
状況であります。
政府は、船舶の重大性と、その特殊性にかんがみ、中途半端な対策ではなくして、
わが国の商船をして
外国船と同一条件で競争させるよう、早急に徹底的な対策を樹立すべきではないか、この点、運輸
大臣並びに
大蔵大臣の御所見をお伺いする次第であります。(
拍手)
次に、
国内経済問題について簡単にお伺いいたします。
わが国経済界の当面する
最大の問題の一つは、企業の合理化と、金利の引下げに必要な資金を大幅に供給することにあります。
大蔵大臣は、これまでのやり方を改めて、過去において蓄積した
財政資金を放出する、かように言われたけれども、産業資金というものは、単に
政府自体の
財政資金の投資のみならず、企業自体の資本蓄積によ
つても調達し得るように対策を立てる必要があろうかと思います。西ドイツにおける最近の目ざましい産業の復興は、企業自体の資本蓄積が容易である点にその大きな原因があるとわれわれは
考えている。このため、
政府は現在の税制制度を根本的に改革する必要があると思うが、これに対し
政府はいかなる具体案を持
つておられるか、あわせてお伺いしたいのであります。以上の産業資金の問題は、
大蔵大臣とともに、通産
大臣に御
答弁をお願いいたします。
最後に、
日本経済の基本構造及び
世界経済における使命についてお伺いをいたします。思うに、
日本の
経済はその基盤がきわめて弱体であり、
世界的にこれを見た場合には、民主主義陣営の
中小企業にすぎないのであ
つて、これが育成強化のためには、自由放任
政策であ
つてはどうしてもいけないのであります。
経済の自由放任は、現下の国際情勢のもとにおきましては、
わが国経済を崩壊せしめ、
経済の自立を不可能ならしめるおそれがあります。それであるから、われわれは、資本主義の基調のもとに、繁栄
経済を目標といたしまして、
わが国経済の基本的構造部分を組織化し、計画化すべき必要があると
考えるのであります。(
拍手)
さらに目を
世界に転ずれば、二大陣営の分裂と対立があるにかかわらず、民主主義陣営内において、米国は
わが国に対して高率の関税主義をとらんとし、英国もまた輸入制限を行い、民主義陣営の二大通貨であるドルとポンドの自由交換は不可能であ
つて、その行き方がま
つたく一貫性を欠いており、プレトン・ウツズ協定や国際貿易
憲章の精神は、民主主義陣営内部においてすら失われんとしているのであります。かかる
世界情勢のもとにおきまして、われわれは
国内経済政策につましては
経済の組織化を企図するものでありまするけれども、
世界経済についてもまた、この原則の具体的実行を強く主張するものであります。
政府は、この際米英その他の諸国を説いて、民主主義諸国家の
国民経済相互間の計画化をはかり、相ともに繁栄する
世界経済の建設を呼びかける等、雄大なる構想をも
つて邁進すべきものと思うが、その熱意と用意ありや。この点、
総理大臣に
お尋ねをいたしまして、私の
質問を終るのであります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君登壇〕