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1952-11-26 第15回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月二十六日(水曜日)  議事日程 第五号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時三十一分開議
  2. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) これより会議を開きます。      ————◇—————  一 国務大臣演説に対する質疑
  3. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります。重光葵君。     〔重光葵登壇
  4. 重光葵

    重光葵君 諸君、過般総選挙が行われて、その結果自由党が多数を獲得したのでありますから、政権を担当することは当然であり、改進党が野党としてその義務を尽すこともまた当然のことでございます。(拍手)この総選挙の結果を尊重することが民主政治出発点でございます。従つて、わが改進党は、この国民の意思を尊重し、健全なる野党として、国家的にこの難局打開のため懸命な努力をいたす決心であり、かくして民主政治の正しき運用貢献せんとするものであります。この立場に立つて新日本建設に関する重要点について吉田総理大臣の御所信を伺いたいのでございます。  新しい日本が、その発足にあたつて置かれている国際的地位は、決して安全なものではございません。しかし、国民の望んでおるものは平和である。平和を維持しつつ国運を開拓したいということが国民決意であります。その決意にこたえるためには、確固たる信念に基く政府積極的施策が必要でございます。(拍手)  最近、一般には、第三次世界大戦勃発の危険はやや減少したといわれております。私もこれを肯定するものでありますが、それは主として、ソ連早期決戦方針を捨て、長期の冷戦によつて民主陣営を破壊せしめることに方針を切りかえたためであつて、これは先月モスクワで開かれた第十九回共産党大会を通じても明らかに看取せられるところでございます。共産陣営の力の政策に対しては、民主陣営は、北大西洋条約を起点として、まず欧州方面から、次いでバルカン及び近東方面においてその陣容を整備し、冷たき戦争の第一期において一応成功したのであります。しかし、今後の形勢は、民主陣営欧州以外の他の方面においても防衛力の強化に成功するやいなや、さらにはまた民主陣営内の経済的調整及び心理的結集に成功するやいなやにかかつておる次第であつて、その結果に至つては、なお前途遼遠の感なきを得ないのであります。とりわけ、各国間の経済、特に貿易調整の問題は、日本国民日常生活に重大なる関係があるのであるから、わが正当なる主張に対しては民主陣営諸国積極的協力を得るに努めなければならぬと思うのであります。(拍手)新たに大統領に選ばれた米国指導者は、いわばこの冷たき戦争の第二期に直面して、急速に有効適切なる対抗策を講ずることと思われるのであります。特に今後ますます重要となるアジアの問題に対しては、施策重点が向けられるのではないかと思われるのであります。  日本は、かような世界情勢のもとに占領政治から解放されたのでありますが、それと同時に日本国際的方向がきまつたのであります。日本にとつては、思想上においてはもちろん、政策上においても、共産民主陣営間に中立的立場をとる余地はあり得ないのであります。(拍手)何となれば、日本民主諸国よりは平和を得たけれども、共産諸国よりは平和を拒否され、ために民主陣営諸国と共同の安全保障態勢に入ることを余儀なくされたからであります。ソ連は、日本民主陣営に入つたと見るや、わが国を対象として、中共支那攻守同盟を締結したのみでなく、共産軍は現に日本の赤化をも終局の目標として、朝鮮において国連軍相手にはげしく戦つており、冷たき戦争日本内部にまで遠慮なく進められておる実情であります。すなわち、日本は明らかに民主陣営の前衛たる困難なる地位に立たされておるのであります。日本国民は、この間に処して、もとより国際義務をいとうものではありませんが、ただ日本人は、ひたすら自由と秩序とを基調とする平和を欲し、戦争を嫌悪するのである。それゆえに、冷たき戦争原子爆弾戦争とならぬように、民主陣営内にあつて、あらゆる努力を傾けんとするものであります。(拍手米国を初め、民主諸国も、この点については感を同じゆうすることと信ずるのであります。  私は、以上のごとき国際情勢の中における日本地位国民が十分に理解し、これに対応するだけの決意を固め、努力を払うことが、新日本建設根本条件と思うのであります。(拍手)しかるに、政府は、これまで国際情勢について国民理解を進める手段はほとんどとることなく、秘密外交を事として国民の目をおおい、国論の帰趨をいたずらに共産党などの宣伝に放任して、民心を混濁せしめておるありさまであります。(拍手政府は、この際この態度を改め、秘密外交を一擲して、外交に対する国民納得を求め、外交国民的背景において行う国民外交基調として、国際情勢に対する的確な判断をもつて国論を導くことが何より肝要と存ずるのであります。(拍手政府現下世界情勢をいかに観察しておるのであるか、世論啓発に対する政府用意いかん、それを承りたいのであります。(拍手国際情勢に対して国民に正当なる理解を与うることの緊要なる、今日のごとく急なるはないのであります。これが私の質問の第一点であります。  敗戦によつてすべてを失つたわが国民が、ただ一つ得た貴重な収穫はデモクラシーであります。民主主義の採用によつて日本は安定し、進歩し、これによつて日本民族の心は解放せられ、再び国際社会に顔出しができるに至つたのであります。戦争には負けたけれども、この点からいえば大きな獲物があつたのであります。われわれは、この貴重なる収穫より健全なる日本的民主主義を発展せしめて、新日本の将来を大きく開拓せねばならぬと思うのであります。(拍手)しかるに、現実に吉田内閣やり方はいかがでありましようか。政治は庶民の生活と遊離して独善を事とし、国会はこれを軽視して議会政治根底を危うくし……(「ノーノー」「その通り」)ために、民主政治前途国民をして非常なる不安を感ぜしめておる実情であります。(拍手吉田総理大臣は、はたして従来の態度を改められ、民主政治の完成に向つて誠実に努力する決意用意とを有せられるのであるか、この点について総理確固不動信念を承つて国民に安心を与えたいと考えるのであります。(拍手)これが私の質問の第二点であります。  占領治下にあつては、占領軍が最高の権威者であつたために、日本政府は実は占領軍の一行政機関にすぎぬ観がありました。占領下においては完全なる自由はなかつたので、民主主義は教えられたけれども、実在はしていなかつたのであります。民主主義根底独立不覊の自尊心に存することは、その発祥の地たるアングロ・サクソンの歴史を見ても明らかでございます。(拍手独立自尊精神があつてこそ初めて、内においては国力を伸展し、外に対しては国際信頼をかち得るのであります。占領時代に与えられた民主主義を、独立後に真に自分のものとすることは、容易ではございません。自由を回復した日本は、まず独立自尊不撓不屈、みずからのことをみずから処理する自主的精神をもつて事に当らねばなりません。民主主義は、過去におけるがごとく、いたずらに外国に追随することではないのであります。この際、占領治下外国依存の惰性はこれを一掃し、過去の条約法令等について必要な改訂を加うることは当然でございます。政府もその意図を明らかにせられておるが、はたしてしからば、政府意図の存する改訂の内容について具体的に方向を示していただきたいのであります。(拍手)  占領政策行き過ぎは、もとより是正すべきであると思うのであります。日本独立国として条約上の義務を果し、国際間において独立国たる地位を主張せんとするならば、日本国民独立自主の覚悟と準備とがなければなりません。それでなければ、冷たき戦争の渦中にある日本は、国際的にまつたく落伍して、国を保つことも、平和を維持することも困難になるのであります。(拍手かくして、自衛軍備の問題の解決が、内外形勢より押し迫られて来るのは必至でございます。軍備はもとより国土防衛自衛を旨とすべきものであつて、ひとえに平和を維持するのがその使命であることは、言うをまたぬのであります。軍備のごとき国家基本的問題は、あくまで国民全般理解納得とによつて処理することが民主主義根本原則であります。(拍手)しかるにもかかわらず、吉田内閣は、これまで不可解きわまる論理と、欺瞞的ともいうべき態度とをもつてこの重大な問題を取扱い、あるいは保安隊軍隊にあらずとなし、あるいはこれと反対に、予備隊建軍の基礎であるとも言い、故意に国民思想を混迷に陥れておるとしか思えないのであります。(拍手政府は、虚心坦懐に国民と協議して、その良識に訴うるために、内外諸般情勢について一般理解を深め、この問題について国民の明察を求めるべきではないか。(拍手政治にごまかしがあつては相なりません。もしこの点に誤りがあれば、百の施策を羅列するとも、まつたく無益のことである。私は、かような誠意なき態度は、内、民主政治基本を害し、外、外交政策の信用をそこなうものと思う。政府は、この点について国民を信じ、国民とともに、国民納得し得る政治を行う考えはないかどうか、これが私の質問の第三点であります。(拍手)  新日本建設には、全国民一致協力を要することは言うまでもありません。そのためには、まず物心両面にわたる国民生活の安定が必要であります。(拍手)文教の一大刷新をはかるとともに、広汎なる社会保障制度確立する必要を痛感するゆえんでございます。(拍手)いまだに一家心中はその跡を絶たぬ。政治はこれを救わねばなりません。そういう意味において、この際戦争の残した国民的創痍をいやすことほど緊急事はないと思うのであります。換言すれば、戦争犠牲者援護補償の問題がそれであります。吉田内閣は、本問題にかなりの関心を示し、戦犯釈放に関する外交交渉を開き、また旧軍人恩給の問題にも手を染めておる模様であるが、政府の従来の態度にかんがみ、われわれは熱心にその結果を注視している次第でございます。(拍手戦争犠牲者の問題は、なおほかにもございます。ポツダム宣言によつて約束せられている日本人の送還の問題のごとき、今なお十分に解決を見ておらぬことは、真に断腸の至りでございます。(拍手)これらの問題を解決することは新日本前進の第一歩たるべきもので、戦争の痕跡を洗い去つて初めて国民的協力態勢がつくられ、国際親和の大道が開かれるのであります。(拍手)私は、この意味において、戦争犠牲者全般の問題について、政府は一層の努力をなし、国民納得する具体的説明を与えられんことを切望する次第であります。(拍手)これが私の質問の第四点であります。  現下世界情勢において、資源に乏しい国が過剰人口に悩む場合には、経済組織は十分に先見の明をもつて企画されなければならぬ。(拍手)もし、しからずして、経済自由放任にまかせられるにおいては、社会秩序なき弱肉強食のちまたとなり、政治特権階級利権争奪の場となるおそれがあるのであります。現に、都市に、農村に、生活の不安におびえる弱き人たちの数は増すばかりで、今日国民生活は、どうも安定いたしてはおりません。私は、日本よりも不幸な地位に置かれたドイツが、終戦後ただちに立国の根本方針計画的に立てて、生産貿易とにその重点を置き、国民安易感を払拭して、不急の消費をあとまわしにし、道義を高揚し、生産の興隆に死力を注いだ結果、今日の驚異的復興を見つつあることは、われわれとしても大いに考うべきことと思うのであります。(拍手)工場の整備が遅れて非能率的なるままに、一部不健全なる国民歓楽境が至るところに出現しておるわが国の現状は、ドイツと奇異な対照をなすものであつて、はたして政府指導において欠くるところなきやいなや。(拍手日本経済がいたずらに朝鮮戦争による特需を僥倖し、将来軍需景気を夢みるような軽薄なものであつては、根本的の立て直しはとうていおぼつかないのであります。(拍手吉田内閣は、遅れたりといえども、自由放任経済方針をお改めになつて、新日本経済建設に対し長期総合計画を樹立し、生産の増強と国民生活の安定とをはかる用意なきや、御所信を承りたいのが、私の質問の第五点であります。(拍手)  国民は、今や祖国再建意気に燃えておる。政府はよろしく慎重なる企画を立てて、この国民的意気にこたえ、日本前途希望と光明とをつながしむる挙に出ずべきものと思考する次第であります。私は、吉田総理大臣独立後の困難なる政局にみずから当られるその御労苦を多とするにやぶさかではございません。(拍手)しかし、国民の不安もまた大きいのであつて総理大臣責任はきわめて重大であります。われわれもまた国家的野党として十分に政府批判、鞭撻せんとするものであります。  以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 重光君にお答えをいたします。  国民理解のもとに外交をやれという第一の御希望のようであります。しこうして秘密外交秘密外交と言われますが、今日のこの憲法あるいは民主政治において、秘密外交は実はできないのであります。(「やつてるじやないか」と呼ぶ者あり)それは……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)秘密外交と言われるけれども、何を秘密外交をいたしたか。すべて議会に報告をいたして、議会の協賛を経て外交を推進いたしておるのであります。(拍手)いずれの国においても、かつては、ソビエトはいわゆる公開外交をやつて、遂に公開外交の目的を達せずに、再び秘密外交に入つたのであります。外交がある以上は、すべて公開でやるということはこれはむずかしいが、同時に秘密々々と言われますが、現内閣は、私の外交秘密をもつて終始いたしたのではないのであります。終始をしたというのは、野党諸君が現内閣を誹謗する言葉と御承知を願いたいと思う。(拍手)  その次、民主政治確立、これはまことにその通りでございます。民主政治確立国民理解、これはともに相表裏をなすものでございます。私がただいま考えておりますことは、あるいは現内閣考えておりますことは、日本事態あるいは外国事態真相国民に伝わらず、外国に伝わらないことを、すこぶる遺憾といたしておるのであります。ゆえに、今後政府としましては、あえて情報機関とは申さないが、国内事態真相を伝える機関、同時に外国真相を集めて、そして国内にこれを弘布するという機関内閣に置きたいと思いまして、ただいま官房長官のもとで、その計画を立てております。(拍手民主政治の基幹は、国民事態真相を知るということであります。国民事態真相を知らずして、民主政治の実行はできないのであります。また、その事態に対していかに国民判断するかが民主政治基本であります。政府としては、できるだけの方法をもつて事実の真相国民に知らせ、また国外に知らせることがまず努むべきものであり、これによつて外交基準もでき、またこれによつて国民の輿論の基準もできると思うのであります。要は、政府指導をして国民思想統一をしたというがごときことは過去のことであります。今日は国民の最も理解ある良識に訴えて事態の正確なる判断をなすということが民主政治基本であります。ゆえに、政府としては、できる限りの方法をもつて事態真相を伝える、事態真相を把握する、これを国の内外に知らせる、また外国に対しても、よつてつて日本に対して誤解を持つがごときことのないように、政府には外交機関もございますが、さらに日本における外に出る情報等については最も正確を期したいと思うのであります。かくして、日本に対する外国批判と申しますか、正確なる判断、同時に国民国際関係において正確なる判断を持つということが民主政治基本考えますので、ただいま申すような機関を新設いたす考えでございます。これに対しては、政党あるいは国民全体から、この機関運用が全きを得るように御支援を願いたいと思います。  また民主政治——過去の占領中における諸法制行き過ぎ、これは政府もつとに認めておるところであります。ゆえに、行き過ぎを是正するために行政審議会を設けまして、爾来着々、どの点を改むべきか、どの点が行き過ぎであるか、どの点が民主政治に適せざるか、法律制度その他各般にわたつて政府は最も慎重に審議をいたしております。その結果によつて判断が願いたいとともに、また得ました結果は、今後の法律、あるいは制度予算等に自然現われて参りますから、各位におかれてよく点検せられて、行き過ぎの改正の足らざるもの、あるいは法制の足らざるものについては、諸君批判を仰ぎたいと考えておるのであります。(拍手)  ただいま軍備についてのお話がありましたが、政府は決してごまかして軍備をいたす考えは毛頭ありません。政府所信は終始一貫いたしております。政府方針といたしましては、いわゆる自衛力の漸増であります。国力の増加とともに自衛力を増加する、これが政府所信であります。またお話通り国民理解を持ち、国民の盛り上る力をもつて——もし軍隊を置く、あるいは再軍備をいたすというような場合においては、国民の盛り上る力で再軍備をいたすということにならなければ、再軍備なるものの効能は現われないのであります。(拍手)しかるに、ただいままでの状態においてどうであるか。御指摘もありましたが、戦争責任はすべて軍人に課して、国民は知らざるがごとき顔をしておつたのであります。従つてまた、軍人に対する恩給も停止した。遺族扶助料もこれを与えなかつた。かくのごとくして、再び国家のために犠牲になれと申しても、これは国民承知ができないのは当然であります。(拍手)特に最近までは、東洋のスイスになれ、いわゆる中立国になれということを宣伝しており、また野党諸君も、ことに共産党諸君も、中立論を振りかざしておつたのでありますが、今日中立論を振りかざして、もし外国が侵入したならば山の中へ逃げてしまえというような極端な議論をなす者さえある。そのときに再軍備をいたしたところで、国民精神軍備の中に入らなければ、とてつもないことになる。まず国民愛国心の何ものかを知ることが大事であります。しかるに、今日まで日本歴史を教えず、日本の地理を説かず、日本の国語を説かず、日本の国体の優秀なること、日本民族の優秀なることを少しも説かずして、しこうして再軍備をいたす——愛国心のない軍隊のごときものは、まことに恐るべき軍隊であります。ただちに共産党化する軍隊であります。(拍手かくのごとき軍隊を組織いたしましたならば、これは国家百年の災いを残すものであります。(拍手)かつ兵隊は募集する、しかしながら士官あとから入れるというようなことであるならば、ますます危険しごくであります。まず軍隊を置くのであるならば、いかなる軍隊を置くか。これはあくまでも民主主義軍隊を置くということにしなければならぬと思います。この民主主義軍隊は、まず士官民主的教育を受けなければならぬものであると思います。再軍備は一日にしてならざるものであります。急速に軍備をいたしたならば、たいへんなことであります。ゆえに、順を追うて、国民に対して国民愛国心が盛り上るようにいたす、あるいは過去の国家に対する犠牲者に対しては政府は相当の補償をなす、あるいはまた軍隊の根幹をなす士官等の養成には十分力をいたすということを、順を追うていたすのでなければ、急速に、ただ軍隊々々と申して、再軍備々々々と申して、再軍備を急ぐならば、これは国家百年の災いを養うものであります。(拍手ゆえに、政府は、あくまでも国民の了解をもつて国民の盛り上る愛国心のもとに、もし再軍備をいたすならば、そうした時期にいたすべきであり、さしあたりにおいては、これをいたすべきものでないと確信いたすものであります。(拍手)  それから国民生活安定、社会保障制度についてお話がありました。私も大体同感であります。またそのためにこれまで尽したつもりでございますが、その結果、国民生活は相当安定して参つたと思います。但し、これをもつて十分とは考えておりません。ますますこの安定に努むべきでありますが、終戦直後の状態から考えて参りまして、今日の国民生活は確かに安定いたしております。また社会保障制度は、これは財政全般の兼ね合い、財政と均衡を保つべきものであつて社会保障制度に力を尽した結果、財政破綻に瀕しておる国もございます。よほどこれは財政全体あるいは国民生活の全体と相呼応して考うべき問題と考えるのであります。しかしながら、御趣意は賛成でございます。  次に、引揚者もしくは未引揚者の問題についてお話がありました。これは政府も今日まで懸命の努力は払つて来たのであります。また今後も懸命の努力を払うつもりであります。しかし、これは相手があるのでございます。相手がある以上は、その同意を得なければ、諸君がかり外交の衝に当られても、それはできないことはできないのであります。  また、日本経済前途には企画性がないということの御攻撃でありますが、これもごもつともであります。しかしながら、政府といえども、ただ自由放任をいたしておるものではないのであります。但し、企画経済がいいか、自由経済がいいかと申すと、これは議論があると思います。私は自由経済をとるべきものであらうと考えております。(拍手)過去においても、企画経済をなして失敗した国は多々ございます。日本もその一つであると思います。今後は企画経済必ずしも捨つべからざるものがあります。しかしながら、これに偏倚いたしましたならば、日本経済はとまると考えます。企画と自由との間において妥当な方策を考えて参りたいと考えます。しかしながら、企画経済をいかぬと申したのではないのであります。企画経済のみに偏してはならないと考えておるのであります。  以上お答えいたします。(拍手
  6. 大野伴睦

    議長大野伴睦君) 河上丈太郎君。     〔河上丈太郎登壇
  7. 河上丈太郎

    河上丈太郎君 独立後最初に行われました総選挙あとを受けて出現いたしました吉田内閣に対しまして、私は日本社会党を代表いたしまして、現下日本国民の最も知らんと願うておるところの重要なる問題について二、三お尋ねいたしたいと思うのであります。  第一は、吉田内閣がいかなる政治方針をもつて今後の政治をやつて行くかということであります。第二は、重大なる現下国際情勢に処して、いかにわが国前途を打開せんとするか、吉田内閣外交方針であります。特に自衛力漸進の名に隠れて着々実行しつつあるところの再軍備に対して、その責任を問わんとするものであります。(拍手)第三は、独立完遂のために絶対の要件ともいうべき経済の自立と国民生活の安定に対しまして、吉田内閣はいかなる施策を持つておるか、その大綱を伺いたいのであります。独立後の重大なる政局を進んで担当する以上、吉田総理の胸中には当然期するところがなければならぬはずであります。従つて、私の以下質問することに対しまして、吉田総理信念を持つて率直にお答えあらんことを望む次第であります。(拍手)  第一に質問せんといたしますることは、吉田総理は、いかなる憲法條章によつて、いかなる政治的意図をもつて国会解散を断行したかということであります。吉田総理の行わんとする政治的構想のほどを聞かんとするものであります。周知のごとく、吉田総理は、去る八月二十八日に抜打ち的なる解散を行いました。早期解散を主張し切つたわれわれであつたのであります。従つて解散そのものについては私たち反対をいたしません。けれども、あの際の解散やり方が、新憲法精神を無視していると私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)新憲法のもとにおいて、衆議院の解散権の所在がどこにあるかということは、いろいろ議論のあるところでありまするけれども、いずれにせよ、内閣に無制限の解散権を付与するということは、それは天皇の大権に隠れて軍閥官僚の独裁を強行した旧憲法の昔に返るものであり、民主主義の実体を否定することになるであろうと私は考えるのであります。(拍手)それはわが国政府が断じて再び歩いてはならない道であると私は考えるのであります。  現に憲法第七条には、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」とあるのであります。その一項といたしまして衆議院の解散があげられておるのであります。これは、内閣の助言と承認とが国民のために行わるべきことを明確に義務づけたものであると考えるのであります。(拍手)さきに第十三回国会において、憲法第七条と第六十九条との解釈に関し、わが国政治運営の円滑化をはかる具体案として、衆議院において解散決議案を議決して解散することに両院法規委員会で話合いがまとまつたのであります。これは、衆議院解散という重大なる政治的行事を、主権者たる国民の前において公然と行おうとするものであつて国民の選良として当然とるべき態度であります。  しかるにかかわらず、吉田総理は、かかる公明正大の道を歩もうとせず、首相並びにその側近の二、三の者を除いては、ここにおいでになる大野衆議院議長も、自由党の幹部にも、寝耳に水の抜打ち解散という暴挙をあえてしたのであります。(拍手)これは明らかに、憲法第七条の規定する国民のためという条件を無視して、国事を曲げたものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)私は、首相の政治責任はきわめて重大と思うのでありまするが、その所存いかんとお尋ねいたしたいのであります。しかも、総選挙の結果は、周知のごとく不安定な政局を生み出したのであるが、吉田総理は将来懲罰的な解散をもつて議員を恐喝するおそれなしともいたさないのであります。(拍手)よつて吉田総理のこの点に関する真意は那辺にあるのか、所信のほどを伺いたいのであります。これが第一点であります。  第二に問わんとするのは再軍備の問題であります。われわれは、現下情勢において、再軍備を行うべきにあらず、再軍備反対なりとの見地に立ち、過ぐる総選挙においても、再軍備よりも国民生活の安定なるスローガンをもつて国民に訴えて来たのであります。しかるに、吉田首相は、口には再軍備をしないと言いながら——ただいまもそうおつしやつておるのである。しかしながら、自衛力漸増の名のもとに着々として再軍備を実行しつつあるということは、公然の秘密となつておるのであります。(拍手)また吉田総理が、国民の前では再軍備せずと言明しながら、ダレス氏あての書簡においては再軍備を約束していることも、今や隠れもない事実であります。(拍手)  そこで私は吉田総理に問わんとするのでありまするが、吉田総理は、現行の憲法のもとにおいて、再軍備をすることはさしつかえなしとの見地に立つて保安隊を増強し、フリゲート級艦船の貸与を受けるなどの処置をとりつつあるのでありますかどうか。それとも、タンクを持ち、飛行機を持ち、上陸用舟艇を持つとも、名称を保安隊と称し、警備隊と称するものは軍隊にあらず、従つて憲法違反にあらずとの見解をとりつつあるのでありますか。(拍手)この点を私は承りたいのであります。私は、吉田総理が以上二つのうちいずれの見解をとるとも、それには反対であつて、現行憲法の条章が厳として存する以上、再軍備は絶対に許されないと考えておるのであります。(拍手)たとい保安隊、警備隊の名称を付するとも、タンクを持ち、飛行機を持ち、艦船を有するものは、憲法第九条にいうところの武力であつて、ほおかむりして通すことは絶対にできないとの見解に立つておるのであります。吉田首相の明確なる御答弁を承りたいのであります。(拍手)  およそ民主主義政治は、遵法の精神によつてのみ守られるものであります。遵法の精神においては、憲法の条章を恪守するより大なるものはありません。しかるに、吉田総理は、みずから憲法の明確なる規定を蹂躪して軍備をなしつつあるのであります。春秋の筆法をもつてするならば、吉田総理みずから民主政治破壊の素地を開きつつあると称しても、一言の弁解の余地もないと思うのであります。最近新聞の伝えるところによりますならば、木村保安庁長官は、みずから閣議の席上、公然と再軍備を打出すべきことを主張したとのことであります。この方がはるかに正直だといわなければなりません。(拍手)私は、吉田総理の猛省を促すとともに、その態度を表明せられんことをここに特にお願いをいたすのであります。  さらに私がこの場合に承つておきたいことは、朝鮮戦乱の関連におけるわが国の再軍備の問題であります。アメリカの大統領選挙において、アジア人をしてアジアを守らしめよと叫んだアイゼンハウアー元帥が当選した結果、再軍備の重圧が日本に加えられるのではないかとの危惧の念が国民一般に瀰漫しつつあるのが今日の現状であります。現に八月二十一日、アメリカ陸海軍連盟は、外人部隊と称して百万人の日本人義勇兵を募集すべきことを決議しておるのである。私は、かくのごときことが、日本憲法民主主義のルールに反して行わるべしとは考えておりません。けれども、私は日本の不安におびえておるところの国民をして安心せしむる意味においても、吉田総理の口を通じて、かかることのあり得べからざるゆえんを発表せられたいと願うのであります。なお、この点は、専門的に申しまするならば、サンフランシスコ講和条約第五条の義務条項と日本憲法との関係の問題になるのでありまするが、第五条は日本憲法を承認するものと解してよいかどうか、この点も承りたいのであります。(拍手)要するに、われわれは吉田内閣がその内閣政治的生命をかけても、たとい出兵の要求がアメリカからあつても、日本の青年を出すようなことはできないとの線を守り抜かんことを希望して、総理の明確なる答弁を求むるものであります。  第三には、私は吉田内閣外交方針を問わんとするものであります。過去における吉田内閣外交政策は、先ほど重光君も言われたがごとくに、遺憾ながら失政の連続であつたのであります。ことに吉田書簡と称する一連の奇怪なる文書によつてわが国外交的進路が秘密裡に定められたことは、実に日本外交史上の汚点といわざるを得ないのであります。(拍手)われわれは、かかる秘密外交を打破するとともに、向米一辺倒の外交方針を是正しなければならなぬと信じておるものであります。そこで私は吉田総理に問わんとするものがあるのであります。  第一は、現在の日米安保条約並びに行政協定は、形式的にも、実質的にも、占領政策の継続であります。従つて、本条約が真に自由と民主主義とを守る相互援助条約であるならば、幾多の不平等条約を改むべきであると私は考えておるのであります。その改訂に関してどんな所信総理はお持ちであるか。また改訂する必要性がないのであるか。そういう点をお尋ねいたしたいのであります。  第二は、政府は、国連軍との駐留協定に関し、さきにその経過を発表いたしまして、国民の協力を求める態度に出ましたが、日米安保条約並びに行政協定の是正なくして、国連軍との駐留協定にわが国の主張を貫徹しようとしても困難であると思うが、どうか。(拍手)すでに今日に至るまでこの問題に対する交渉を遷延しておきながら、世論の硬化に恐れて、にわかに国民の協力を求めた態度そのものが、怠慢かつ不誠意なりといわざるを得ないのであります。われわれは、この際、政府の本協定締結にあたつて決意責任とを問わんとするものであります。(拍手)  第三には、いまだ講和を結ばざる未参加国及び米調印国との外交について、吉田総理はいかなる所信を有せられるかをお伺いしたいのであります。われわれの知る範囲においては、それらの諸国に対しては何らの外交的措置をとられていないのである。政府はいかなる交渉をせられているかをお伺いしたいのであります。  これに関連いたしまして、現内閣は中ソ両国に対しいかなる方針をとられているか、過日の演説にも、この問題について何ら触れていないのであります。     〔議長退席、副議長着席〕 われわれは、中ソ両国に対し国交の回復に努力を傾注しなければならないと考えているが、政府方針はどうであるか、お尋ねしたいのであります。  さらにこの際申し添えたいことは、先ほども重光君が質問をされ、総理が答弁をされましたけれども、未帰還同胞のことである。これはまことに重大な問題である。総理相手があるからといつて御答弁をされたのでありまするけれども、いかに相手のあることであつても、政府努力次第でこれは解決できると私は考える。(拍手)われわれは、今後の努力政府にお願いいたして、政府所信を承りたいのであります。  次に、日本の国連加盟の問題であります。日本国民が国連に加盟したいという熱烈なる意欲に満たされていることは、いまさらいうまでもないのであります。さきに行われたる九月十九日の国連安全保障理事会において、自由民主主義諸国の圧倒的なる賛意にもかかわらず、日本の国連加入に対する決議案が、ただソ連一国によつて拒否されたことは、まことに遺憾であり、かつ理解に苦しむところであります。ソ連は、最近、なおその平和攻勢をもつて世界を牽制しております。独立と平和を叫ぶソ連、国連憲章の精神を遵守すると称するソ連日本の国連加入に反対しつつある今日、吉田総理日本の国連加盟にいかなる方法をもつて対処しようとするのでありますか。先日の岡崎外務大臣の演説の中においても、政府は今後加入のためにあらゆる努力をする所存だと言われておるけれども、ただそう言うだけであつて、そこに何らの見通しと抱負のないことを私たちは遺憾とするものであります。(拍手)この国連加入に対して、政府が今後いかなる方法によつてこれを打開するかということをお尋ねいたしたいのであります。  わが日本社会党は、民主自由諸国との協力を緊密にして世界の平和と民主主義を擁護することは立党以来の精神であります。しかしながら、ここに明確にしておかねばならぬことは、協力と協調ということは、追従と隷属ということとは本質的に異なるということであります。(拍手)しかるに、従来吉田内閣外交方針は、口に協力、協調を唱えつつ、その行うところは追従と特定国家への隷属以外の何ものでもありません。(拍手従つて、そこに独立国家としての自主的外交は存在せず、あたかも特定国家の植民地か、軍事基地の提供国であるがごとき印象を与え、遂に国民の疑惑と反感は民主自由諸国との協力を阻止するという危険なる状態が発生しつつあることを、われわれは憂うるのであります。(拍手)われわれは、かかる態度を容認し得ざるものでありまして、吉田内閣外交方針にわれわれが断固反対するゆえんであります。私は、政府独立後の外交方針を定めるにあたつて、自主独行の方向にその方針を大きく転回する用意決意があるかをお尋ねするものであります。(拍手)  第四に、私は日本経済の再建と国民生活の安定に関する吉田内閣施策を問わんとするものであります。  現在、わが国経済は、貿易の不振と、国内購買力の減退と、異常なる金詰まりによつて経済的不況は次第に深刻化し、慢性化しつつあるのであります。この不況をカバーしつつあるものは、特需と変態的なる駐留軍費の散布とであります。しからば、この不況は不可避のものであるかというのに、私は、不況の一部は国際経済の影響によるものであるとはいえ、大部分は自由党内閣多年にわたる経済政策によつてしわ寄せされたる人為的の不況なりといわざるを得ないのである。すなわち、過去四年間の日本経済の安定目標は財政金融に重点を置き、生産国民生活を軽視して来た。従つて、超均衡財政により、わが国はかつて財政史上その先例を見ざるところの厖大なる国庫財政の余裕金が発生している。これについて金融資本の制覇が確立され、その結果、滞貨の増大、輸出の不振、操短の続出、雇用の減少等にわが日本経済が直面するに至つたのでありますが、従つて、今日の不況は、人為的な自由党内閣政策によること大なるものがあるのである。(拍手ゆえに、経済財政政策の転換によつてこれを救済し得るものなりと私は考えるのであります。吉田内閣に、これを明察するところの叡知があるか。叡知があつても、実行するの能力と勇気とがあるかを、私は深く疑うものであります。(拍手)  吉田内閣は、本国会に対し、七百九十七億円の補正予算案を提出いたしましたが、これは補正予算であるけれども、独立後の財政経済政策の根本を表明するものとして注目されて来た。われわれもまた非常なる期待をもつてこれに対したのであるが、一言にして申すならば、期待はずれであり、失望を感ぜざるを得ないものである。現下の不況を打開すべき何らの方策がこれに示されていないのである。  そこで、私が政府に問わんといたしますることは、政府現下経済不況を打開するがために、先ほども申したところの財政余裕金二千五百七十億円を、生産の増強と貿易振興のために計画的かつ効果的に活用する意思を持つておらるるかどうかということである。(拍手)われわれは、この財政資金をもつて、一は生産の高度化に資し、一は特殊産業の培養に資して、もつてわが国産業の国際競争力を増大するがために計画的に使用すべきであると信ずるが、政府の所見はどうかということを承りたい。  次に、経済問題の根本であるところの生産力増大の問題でありまするが、この点に関する自由党政府の致命的な誤りは、国民生活犠牲の上に生産力の増大をはかつて来たということであります。(拍手政府の発表する統計によりましても、鉱工業生産力の指数は戦前に比較して今日一四〇以上に達しておるけれども、生活水準が特に都会においては七〇というところに停頓するところの矛盾は、まつたく自由党内閣政策の致命的欠陥であると私は考えざるを得ないのである。これらの問題を解決するには、生産の飛躍的増大をはからなければならない。生産の飛躍的増大は、国民勤労意欲の高揚なくしては行われ得ない。しかして、国民の勤労意欲は生活の安定向上を確保することによつてのみ得られるのである。(拍手従つてわれわれは、経済不況の打開をはかるにあたつても、まず国民生活の安定向上を考えなければならないと信ずるのである。  先ほど重光君も言われたことく、今日世界の脅威の的は、西ドイツにおける生産力の増強の実態であるのであります。これはもちろん西ドイツにおけるところの精密なる計画性と生産の高度化のみによるものではないのである。労働者住宅の建設を初めとする労働者生活の向上ということが重大なる意味を持つておると思うのである。(拍手)ことに、西ドイツにおける産業の一つの傾向、労働組合の経営参加という産業民主化の徹底をはかられておるという事実は見のがすことができないのである。(拍手)われわれは、真の生産の増強というのは、労働組合の経営参加がその根本の一つであるということを、西ドイツにおけるところの生産増強の事実から判断することができるのである。(拍手政府は、こういう事実をどういうふうにごらんになつておるのか。吉田内閣は、この経済的に重大なる段階に処しても、依然として十九世紀的な自由放任政策に膠着せられておるのであるか。その所見を私は承りたいのであります。(拍手)  国民生活の安定の一つの方途は減税問題であります。政府は、さきの総選挙にあたつて、一千億の減税を国民に約束いたしましたけれども、その約束の具現が補正予算案のどこにも現われておりません。なるほど税法上においては二百三十億の減税をするということになつておりますが、しかし、予算上においては、昭和二十七年度において六千三百八十一億円の税収を六千八百五十三億円と見込んでおることによつて、四百七十億もよけいに徴収するところの減税がどこにあるのでありましよう。わが国は、昔より、重税と貧乏の国として世界に冠たる名をはせております。一九五一年度の各国一人当りの国民所得においても、米国は千七百九十ドル、英国は七百ドルに比して、日本はわずかに百五十ドルであるのであります。その上、所得の内容またきわめて悪条件であり、エンゲル係数の比重は高い。われわれは、戦前の年額千二百円、月収百円まで免税の趣旨と今日の物価水準とを比較して、即時実施できる可能性の限界である月収二万円まで免税という線を打出し、高度累進課税の方法をはかつたのであります。(拍手かくのごとき減税に対するところの大方針を樹立することによつてのみ初めて国民生活安定への一歩があり、これが重税から中小企業者、一般勤労階級を救い出し、国民購買力を増進させる一つの道であると信ずるが、政府の所見を承りたいのであります。  さらに、吉田政府政治計画性を欠く最も顕著なる例証として、地方財政平衡交付金の問題をあげたいと思うのである。今回の補正予算にあたつて政府みずから自治庁の要求四百億を削つて、二百億の交付金、百二十億の起債拡大をもつてこれにこたえた。しかし、これによつて地方財政は救われるものではないのである。いまなお東京に全国からの陳情が詰めかけられておる。私は政府に問わんとするのであるが、政府は何ゆえに中央地方を通ずる税制の根本的改革を断行し、地方財政確立をはからないのであるか。(拍手)国土の総合開発計画を立て地方自治の完成を期さないのであるか。抜本的な解決をすることなく、陳情政治を許容し、これを自由党の党勢拡大の具に供しておる現状が続く限りは政界の浄化は期し得ないと信ずるが、政府の明確な答弁を要求するものであります。(拍手)  最後に、社会保障の問題であります。今や各政党とも、社会保障制度の拡充を唱えていることは、まつたくわれわれの多年の努力の結果といわなければならないのである。しかし、社会保障費の全予算に対しての比率は、いまだ八%にしか達していないのである。イギリスはもちろん、西欧諸国の平和国家は、今や社会保障にその主力を注いでおる。全予算の約四割に近いところの財源をここにぶち込んで、社会保障に主力を注いでおるのである。われわれは、働く者の社会保障制度のよりよき拡充を待つこと久しいものである。この社会保障をもまた生産増大の意味において意義あるものであつて、働いて働きがいのある社会保障制度つてこそ平和にして文化的なる国家であるのである。われわれは、日本の勤勉が、よりよき世界平和のために用いられるがごとき社会保障の実施を心から願うものである。政府のこの点に関する所見をお尋ねしたい。  以上、私は政治外交財政経済の広汎にわたる政府根本方針をお尋ねしました。私の念願とするところは、独立後の日本政治をして、独立にふさわしい、りつぱなものにしたいということにほかならないのである。(拍手)しかるに、吉田内閣方針は、依然として占領治下の屈辱と安易から抜け切れず、国民の期待を裏切ること甚大であるのである。(拍手)ことに、吉田内閣が公明選挙を口にしながら、独立後の最初の総選挙を冒涜し、あまつさえ選挙違反容疑者を閣僚に加えるがごとき、国家最高の行事たる選挙の厳粛さをいかに考えておるかを疑わしむるものである。(拍手)私は重ねて言う。民主主義の根本は、遵法の精神と道義の高揚にある。吉田総理は、みずから省みて、民主主義の名に恥ずることなきやいなや、国民の前に厳粛に答えられんことを要望する次第である。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  河上君は、衆議院の抜き打ち解散やり方憲法第七条にいう国民のために行うという規定に反するということですが、この判定は社会党がせられるものではなくて、国民が与えるのであります。(拍手)すなわち、総選挙の結果、もしこれが国民のためにあらざる抜き打ち解散であつて、それが民意に反するものであるならば、国民は自由党を支持いたさなかつたろうと思います。(拍手)しかしながら、総選挙においては、自由党はいまだかつてなき得票数を集めておるのであります。(拍手)その結果、再び自由党内閣が出現いたしたのであります。すなわち、国民はこの解散をもつて憲法第七条による正当なる解散と判定したものだと思うのであります。(拍手)  また再軍備については、しばしば申し述べましたが、これはいたしません。また保安隊の名に隠れて、そして再軍備をいたしておるような事実はないのであります。またダレスあての書簡にも、再軍備は約しておりません。いわゆるフリゲートは何のためであるかというと、これはパトロールのためであります。ヘリコプターは何のためであるかといえば、ヘリコプターはいわゆる機械水雷等の浮遊を発見するために用いるのであつて、これは軍備ではないのであります。これを軍備と言うならば、これはいわゆる軍備なるものの観念を御承知ない者の判断であります。(拍手)再軍備は、かつて考えてもおりません。米国政府も決して日本に対して再軍備は強要いたしておりません。また朝鮮出兵も強要いたしておりません。  また秘密外交についてお話がありましたが、これは先ほど申しました通り民主政治のもとにおいては秘密外交はないのであります。  また安全保障条約、行政協定は国連加入を妨げるものなりとの御判断でありますが、事実はそうではございません。従つて改訂は必要といたしません。  平和条約未調印国その他に対しては、極力その調印を済ますように尽力いたしております。ソビエト、中共政府等は、これは相手方が承知せざる間は調印はできません。  未帰還者の問題については、先ほど申しました通り政府は、従来、これまでとも、何年もの間、懸命にその釈放に努力いたし来りたのであります。これも相手のあることでありますからして、簡単に参りません。  外交は追随外交なりとおつしやるが、もしはたして追随外交であり、しかも再軍備を強要されておるとするならば、すでに再軍備ができ、もしくは再軍備に黙従いたしておつたでありましようが、かつて、かかる強要もないのみならず、政府は再軍備はいたさない決心で参ります。  その他は所管大臣からお答えいたさせます。(拍手)     〔国務大臣向井忠晴君登壇
  9. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 日本経済の現状は、国際的景気動向が正常化の方向にあるのに対処しまして、国際的にも国内的にも新しい適応状態をつくり上げる調整の過程に入つておるものと考えております。一部に唱えられるように、不況が全面的に深刻化しているということはないと考えます。従つて財政金融政策運営の基本は、あくまでも長期的かつ全般的な見通しのもとに健全な基調を持続することに努め、若干の苦痛を耐え忍んでも重要基幹事業に財政投資及び融資をなして、経済の基盤を樹立することに努めなければならないと存じます。しかしながら、まだ底の浅いわが国経済におきましては、この調整過程の摩擦があまりに大きいときは、それがひいて社会的不安にまで拡がるおそれがありますので、そのような事態に立ち至りませんように、財政蓄積資金の放出、国庫余裕金の適切な活用等に留意しまして、財政金融の短期的景気調節の作用は十分に働かせる用意をしております。  財政余裕金二千五百七十億という御説でありますが、いわゆる財政余裕金のうちには、一時的な余裕金、その他長期資金として活用できないものも含まれていますので、財政余裕金の全額を一度に活用するわけには行かないし、また資金運用部資金、見返り資金につきましても、それを一時的に放出活用することは、通貨、金融事情に急激な混乱を与えることにもなり、適当でないと考えます。政府としては、健全財政方針を堅持しつつ、経済の自主性に即するよう、財政及び金融を通じて総合的な調整をはかつて行く所存であります。  外資資金についても、この基本的な線に沿いつつ、生産の増強、貿易の振興等、わが国経済力の充実発展のため、外貨貸付等の時宜に応じた活用をはかつて行きたいと考えます。  今回提出いたしました補正予算においては、租税及び印紙収入において約四百七十億円の増収を計上しているのでありますが、これは決して増税によるものでなく、現行税法のもとにおける租税の自然増収に基くものであります。減税であるかどうかの御議論はたびたび承りますが、同じ収入の家計について、法律改正の前とあとの租税負担額を比較していただけば、まさに減税であることは明瞭でございます。政府は、かねてより減税による国民負担の軽減には特に意を用いており、今国会にすでに減税案を提出しておりますし、来年度におきましては、この減税を平年化するほか、さらに若干の減税を実施いたしたい考えでございます。  地方財政確立については、地方財政に関する現行の制度は、その運営の実情等より考えて検討を要するものがあることは御指摘の通りでございます。政府は、地方制度調査会を設置してその審議をいたすとともに、平衡交付金制度の改正、地方税制の改革等、当面の重要問題について慎重に考究をいたしております。     〔国務大臣池田勇人君登壇
  10. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  御質問のうち、国民生活水準の引上げの点についてでございます。われわれは、政治の根本は国民生活水準の引上げにあると考えて、鋭意これに努力いたしておるのであります。御承知通り日本経済の復興に伴い、わが国民生活水準は相当引上つて来たのであります。二年前あるいは昨年は、昭和三十一年に九二の生活水準を予定しておつたのでありまするが、昭和三十一年をまつまでもなく、すでにただいまにおきまして九十三、四まで生活水準は上つて来たのであります。(拍手)今河上君が、国民生活水準は七五というお話でございました。しかし、これは都市における生活水準でございまして、全国的に見ますと、大体九十三、四まで回復いたしておるのであります。これも今年に入つてからでございます。なおドイツとの比較をおつしやつておられました。これは西ドイツとの比較につきましては、いろいろな見方があると思います。まず第一、戦前の状態を比較しなければなりません。私は、先般メキシコにおきまして、ドイツ経済大臣、大蔵大臣と会いましたが、決して日本はただいまのところでは生活水準に負けていない。人口は同じように終戦後三割ふえましたが、生産も大体一三五ないし一四〇と、同じ傾向をたどつております。ただ違いますのは、日本は毎年減税ができるということがドイツと違つておるのであります。私は、この点は国民努力でございまして、お話の減税は毎年やつて行き、来年もやることにして、そうして国民生活水準の引上げをはかつておるのであります。(拍手
  11. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 鈴木茂三郎君。     〔鈴木茂三郎君登壇
  12. 鈴木茂三郎

    ○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、総理の施政方針に対して質問をいたしたいと存ずるものであります。  日本国民の一人々々のだれでもが、ただいま心配しておること、だれでもが心を痛めておりますことは、第一に、政府独立と平和のための講和だと、こう国民に言つた。その講和は成立いたしましたが、講和によつてほんとうの独立が与えられておらないことを国民は知つて、そこに不安があるのであります。(拍手)連合国の占領軍は、講和以前のそのままの姿で依然として駐屯をしておる。そうして、裁判権まで要求をしておる。国民の目には、アメリカの植民地ではないにしても、アメリカの衛星圏内の忠実なる従属国であるとしか見えないのであります。(拍手)その姿がどうして独立国家と言えましよう。しかも、独立が与えられないだけではありません。平和も与えられておらない。平和のかわりに、戦争のための再軍備外国から要求され、扇動され、政府自衛力漸増という理由で、憲法を踏みにじつて保安隊と称する軍隊を、陸に、海に、空に、ますます強化拡大しようといたしておる。この現実は、最高裁判所が何と擁護しようといたしましても、明らかに憲法違反である。こんなことをしておると、やがてはアジア人同士で戦争をやらせたいというアメリカの思うつぼにはまつて朝鮮戦線にまでおびき出されて、いやおうなしに戦争に引込まれて、外国の山河に同胞の若い血を流させなければならないことになるのではないか。(拍手)すなわち、ほんとうの平和と独立の、富士山のような毅然とした姿は、日本全土のどこにも見られないということが心配の第一点である。  第二は、国内資源の開発、平和産業の復興と相まつて、安い原料の輸入をはかり、製品を輸出する海外の市場を確保いたしまして、いつまでも外国の援助によらない自立経済をどうして樹立するか。小さい四つの島に八千五百万人の人口をかかえ、毎年百万人から百四十万人ふえて行くこの人口、——失業者がなく、だれでもが喜んで働いて、健康と文化の保障された最低生活を営むことのできるようにどうしてするのか。これができなければ、国家独立も平和も望みがたいのであります。これがため、自立経済の基盤をどこに置いて、どうして樹立するか。政府のなすところは行き当りばつたりで、どうなるかということが、国民の心配の第二点であります。(拍手)  私は、岡崎外相や向井蔵相については、みじんの期待も持ちません。吉田総理は、老躯をここにひつさげて第四次内閣を組織されたのであるから、国民のこうした心配をいくらかでもやわらげるように、外国の圧力をはね返すような、せめて気魄でも示されるかと思いましたのに、総理の施政方針を聞いて、国民はいよいよ心配を深くいたしたものと存じます。(拍手)  私の質問は、大まかにわければ、この二つの国民の心配、これを中心といたしまして、以下順次お尋ねをいたしたい。しかし、外交と内政、国際問題と国内問題は、切り離すことのできない一体の問題でありますから、主として吉田総理にお尋ねいたしたいのであります。  第一点は平和憲法の問題でありまするが、この憲法は、ここで申し上げるまでもなく、第二次世界大戦において、二百五十三万人の戦死傷者と、三百万戸に及ぶ家屋の損害と、四割三分五厘の領土の喪失という莫大な犠牲の上につくられた憲法であります。また、世界の歴史つて以来初めてわが広島と長崎の同胞の生命に一瞬にして加えられた残虐な犠牲の血で色どられてできた憲法であります。(拍手)この憲法ができた過程がいずれにいたしましても、国民がこの平和憲法をあくまで擁護することが、日本の安全を確保する道であると考えております。(「その通り拍手)  しかし、この問題は、総理はあくまで平和憲法を守つて行くという意思を明確にされておりまするがゆえに、私はこの問題は、この憲法と最も重要な関係にあります再軍備の問題に関して第一にお尋ねをいたしたいのであります。これは、私は、自衛力漸増という理由によつて、これまですでに行われ、またこれから拡大強化されようとする警察予備隊の発展した保安隊軍隊であるか、いわゆる、かえるであるか、おたまじやくしであるかという問題について、総理を前にして無用な論争をここで繰返そうと思いません。名称がいかようであろうとも、警察予備隊から発展した保安隊の実体が軍隊である、かえるであるということは、国民良識と世界の輿論の一致した見解であるのであります。(拍手)これが軍隊でないと強弁しているのは、私の見るところでは、世界でも日本でも、吉田総理ただ一人のようでございます。(拍手)こうして世界を欺瞞し、国民を瞞着しようとする吉田総理が、施政方針において道義の高揚や愛国心の涵養を口にされたことは、まつたくこつけいと申すほかはありません。(拍手)  戦力でない、自衛力であるという、かような保安隊を、こうして着々と強化されて、再軍備は着々とわれわれの眼前において実行されておる事態は、これは吉田総理自身の道義の問題だけではありません。軍事費のために国民生活犠牲になるという財政上の問題だけではありません。再軍備のために、国民が一番心配している、日本が米ソの紛争や戦争に引込まれることになる。また外国の援助を受けない自立経済建設が不可能になる。ここに問題が私は所在すると思います。言いかえれば、再軍備の漸増は祖国日本の危機を漸増することになるということであります。(拍手従つて、わが党は、断じてかような自衛力に名をかる再軍備を許すわけに参らないのであります。(拍手)  しかも、かような再軍備は、日本人によつて主張されるよりも、主としてアメリカによつて宣伝され、扇動されて来たことを見のがすことはできないのであります。特に、アジアではアジア人に戦わせよと言つたアイゼンハウアー氏がアメリカの大統領に選ばれ、再軍備日本にやらせるために講和を行つたダレス氏が国務長官に就任された事実を、われわれは重大に考えなければならないのであります。(拍手)私は、アジア人同士で戦うようなことは断じてしてはならないと思う。それがための保安隊のような再軍備を断じてやらしてはならないということを、かような国際的な事態を前にして、われわれ国民は、新たに日本のために決意しなければならないと信ずるものであります。(拍手)  私は、かような観点から、最近日本を訪問されたアメリカのアリソン国務次官補が重要な発言をされておる、それに関して三点のお尋ねをいたしたいのであります。  先般来朝しましたアリソン国務次官補は、十一月十日の日米協会主催の会合において、重要な意見を述べられておる。主として三点にわたつておりますが、一、安保条約の前文からアリソン国務次官補の引用された日本の防衛の責任に関する問題につきまして、これは私は、アメリカ側が期待したという一方的なものであつて、この防衛の責任日本側がアメリカ側と同じような意思表示をしたものではなく、またこの安保条約の前文によつて日本側が何らこれに拘束されるものでなく、またこの意味は再軍備意味するものでないと理解すべきであると思うが、これに対する総理の見解を承りたい。  二、アリソン氏は、日本の現在の情勢は、自衛力実現に発足すべき段階にあるとの情勢判断を持たれたのであるが、これに対する総理の見解を承りたい。  三、次は、きわめて重要な問題でありまして、アリソン国務次官補によれば、当面の日本情勢のもとにおいて持たれた軍事力は、国民のしもべになつて、主人になるおそれはないと、こう言われておるが、私がお尋ねいたしたい点はここであります。私はこれとまつたく反対であつて、現在の情勢下におきましては、日本の軍事力は次のようになるおそれが多分にあると考えるのであります。それは、一、独立国とはいえない日本にアメリカの力でできた軍隊は、国民のしもべになるのではなくて、アメリカのしもべになり、(拍手)アメリカのために奉仕する軍隊になるのではないか。二、万一そうではなく、日本軍隊になつたとしても、民主主義に反する軍国主義の復古的な傾向の顕著な最近の政治上、経済上、社会上の情勢から見て、国民のしもべとなる軍隊ではなくて、東條内閣時代のように、軍隊国民の主人となる危険があるのではないか。(拍手)三、かような保安隊の軍事費によつて国民生活犠牲になります結果、特に中小商工業者や勤労大衆の生活がその結果窮乏化しますために、できた軍隊は極左党や極右党、とりわけ最近の政府施策から見て、極右党によつて権力を奪取する力に利用される、いわゆるクーデターに利用されるおそれがあるのではないか。すなわち、再軍備は独裁や戦争と内乱に通ずる危険が多いと思うが、これに対する総理の明確な見解を承りたいのであります。(拍手)  次に治安と治安対策の問題でありますが、保安隊の任務に関しまして、私は、わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護し、海上の警備、救難等の特別な必要がある場合行動するものである、かように理解しております。この理解は、保安庁法を審議した際の政府の説明の言明の言葉そのままであります。ついては、今日までかような保安隊の行動を必要とする事態が起つたかどうか。また、こうした保安隊の行動を必要として、内閣総理大臣が命令し、あるいは都道府県知事が要請するといつたような非常事態の起ることが当面見通されるような事態情勢があるかどうか。総理は、施政方針演説において、危険性は依然として大なるものがある、こう言われております。私は、重要な問題でありますから、抽象的でなく、具体的にどういう危険性があるか、あればそれを承りたいのであります。(拍手)  ついでに承知いたしたいのは、行政協定の第二十四条に基く、日本区域に敵対行為または急迫した脅威が起るおそれがあるかどうかという問題であります。これは、朝鮮戦線へ保安隊の海、空、陸のいずれかを出動させる根拠をこの第二十四条に求めるおそれがありまするがゆえに、この際お尋ねをいたしておきたいのであります。  さらに、警察力を強化したり、保安隊という軍隊をつくるほどの治安上の不安がどこにあるか。私はないではないかと思う。政府は、破壊活動という治安に名をかりて、警察力の国家的統一を行つて、権力主義を再現しようと意図されておるのではないか、(拍手政府は、暴力主義に対する治安に名をかりて再軍備を行つて、軍国主義を再現しようとしておるのではないか。私はこれをお尋ねいたしたい。当面の治安確保の対策として、政府がとろうとされておる警察力や保安隊、すなわち警察や軍隊の力にたよろうとする治安対策に対しまして、かような対策は本末を転倒するだけであつて、かようなことは、かえつて暴力と破壊を激発することにもなるということを指摘いたしたいのであります。(拍手)  英国について見ますと、暴力主義に対して、勤労階級はこれを批判する広い知識と高い文化の水準を持つておる。さらに、英国労働党によつて、勤労大衆は健康と文化を楽しむ生活のできるように、生活の向上と安定が保障される政策がとられて参りました。ために、英国においては、暴力主義の政治勢力は、極右であれ、極左であれ、成長する余地がないのであります。政府は、こうした英国について学びとらなければならないのではないか。日本の勤労大衆が暴力主義に対して批判する広い知識と高い文化を保持しておることは、先般の総選挙において、投票を通じて、いみじくも実証したところであります。  ところが、ここで今後の一つの問題は、勤務大衆の持つております広い知識と高い文化の水準が引続き維持されて、暴力主義に対する批判の目を曇らせることのないような生活の向上と安定が保障されるかどうかということ、これが一つの問題として、われわれの前に横たわつております。問題はここにあるのであります。治安対策の問題はここにあるのであります。  治安対策は、警察力を拡大することではありません。軍事力を強化することではありません。しなければならないことは、勤労大衆の胃袋の真空を満たして、暴力に対する正しい批判の目を曇らせないように、生活の向上と安定をはかることであります。(拍手)そうではなくて、警察力や軍事力をつくつて、力に対して力をもつてすることを唯一の対策とする結果、かえつて暴力と破壊を誘い出して、治安を乱すおそれがあるのであります。私は、警察や軍隊に使う、治安のための、むだな、かような巨額な経費をもつて、勤労大衆の胃袋を満たす、生活の向上安定をはかることに使つてもらいたいのであります。これが治安確保の要訣であると考えまするが、総理はいかに考えられるか。  第三は、どうして独立を確保して行くかという問題について、二、三のお尋ねをいたします。日本独立のないことは、講和後に起つた外交上のどの問題を取上げてみても明らかであります。保安隊の問題はもとより、軍事基地に関して各所に起つておる広汎なあらゆる問題や、台湾政府の問題、裁判権の問題、艦船協定の問題、朝鮮水域の問題、中共貿易の問題等、最近起つたどの問題を取上げてみましても、外国側の要求によつて政府は余儀なく行わせられておるのか、あるいは政府みずから進んで申し出て、外国のきげんをとろうとされておるのか。いずれであれ、政府のかような卑屈な、屈辱的な態度に対して、国民の不安と不満は今や頂点に達しておるということであります。(拍手)  国連の問題にいたしましても、政府の施政方針にただ一つ明確にされたことは、全幅的に国連に協力するという御意見であります。国連に対する援助義務の規定は、この義務づけによつて、いかなる協力をするかということは、日本側の自由意思によつてきめらるべき問題であるのに、政府外国から押しつけられた義務だけを負わされておるように見受けられるのであります。本来ならば、ポツダム宣言や平和条約によつて、九十日以内に占領軍日本を撤退すべきであるのに、日本が関知せずして起つた朝鮮問題のために、全国的に軍事基地や労役その他の便益を提供する義務を負うことを余儀なくされております。これがために、日本の国土は、朝鮮の動乱に直接参加しておると同じような事態の中にさらされております。本土を、国土を朝鮮戦線の軍事基地に提供しておるような重大な義務を負つておる国が、世界のどこにありますか。(拍手政府は、この上さらにどのような義務を負わなければならないとされているのか。一方、国際関税協定参加は、英国その他の反対によつて、いつ加入できるか見当もつかない状態ではありませんか。義務だけは背負わされたが、日本の国連参加はどうなるのか。米ソの対立によつて、いつ加入できるか、まつたく見通しがないではありませんか。吉田総理のこれに対する所信をただしたいのであります。  次は賠償の問題でありますが、かように見て参りますると、吉田総理外交のどこを見ても、自主外交の片鱗をさえ見ることのできないことは、日本のために遺憾であります。(拍手)中共問題にいたしましても、台湾の蒋介石政権を選ぶか、それとも中共政権を選ぶか、または両政権を同一に取扱うかというような決定は、いずれにせよ、日本のまつたく自由であつたはずである。しかるに、吉田総理は、さきの国会終了の直後という時期に、一片のダレス氏あての書簡をもつて、アメリカの要請の前に屈服して、中国の本土とその民族との経済的、友好的な国交を回復して、経済的自立と平和を確保する日本のための唯一の道を政府みずから破壊するようなことをしておる。その結果、現在、アジア大陸との友好関係はますますむずかしくなつておるではありませんか。先般来朝いたしましたアリソン国務次官補の勧めによつて政府は、施政方針にも示されたように、まずフイリピンとの賠償の解決を急ごうとしておるようであります。賠償を解決しなければならないことは申し上げるまでもありません。賠償問題は、被害を与えたすべての国と公平な話合いをして、賠償国日本と、これを受取る諸国家が、相互の民族の利益と繁栄の基礎となるような条件によつて解決されなければならないのであります。わが党は、ビルマ内閣の基盤であるビルマ社会党との間に、ビルマに対する技術の援助をする計画を進めております。賠償問題のごときは、こうした友好関係が進められて初めて相互の利益と繁栄のために円満に賠償の解決をすることができると信じます。(拍手)  アリソン国務次官補が日本に来られた目的の二つのうちの一つは再軍備の促進、他の一つは日本のフイリピンに対する賠償の解決にあつたことは、アリソン国務次官補の談話によつて明らかであります。アリソン国務次官補の意図したところは、単なるフイリピンとの賠償の解決ではないと思います。賠償に次いで、アリソン国務次官補は、フイリピンと日本との軍事的な同盟の実を結ばせる橋渡しと見られる。私は、問題はここにあると思います。さきにダレス氏が吉田総理に台湾の蒋介石政権を承認させたと同じ巧妙な外交上の手口であると思います。その手に乗ると、アジアにおける日本は、韓国、台湾とともにフイリピンを加えて、中ソに対する太平洋軍事同盟に引き込まれたり、または自主中立の方針をとつておるアジア大陸の諸国を向う側に追いやつて日本はアジア大陸につながるかけ橋を自分みずから引きはずして、アジア大陸から孤立する危険がますます加わつて参るのであります。(拍手吉田総理は、韓国、台湾、フイリピンとともに、日本は太平洋同盟の前衛になろうとするのであるか。賠償問題と関連して、総理所信をただしたいのであります。  次に、総理は、マーフィー・システムという言葉が国民の中に使われておる事実を承知されておるかどうか。これは、マツカーサー並びにリツジウエイ両司令官に次いで日本を支配する外国勢力の象徴はアメリカのマーフィー大使であると、こう国民がながめておるところから起つた間違いのように、私には感じられるのであります。私は、マーフィー大使は、他の諸国の大使、公使と同じように、外交の交渉並びに自国民の保護監督を職務とされ、一般国際慣例の上で認められておる外交使節の特権免除以外の特別の自由または権限を持たれるものではないと承知をいたしております。ところが、外交交渉または自国民の保護監督を職務とされる外交使節たるマーフィー大使が、今日まで、あらゆる機会において、日米の友好のためとして発せられた言動の中には、外交使節としての職務を逸脱せられて、一国のための一方的な宣伝とも聞え、または日本の内政に干渉するかのごとき印象を与えるものがあつたのではないか。(拍手)マーフイー大使に対する誤解が、かようなところより起つたといたしますならば、事態はいずれにいたしましても、日米の平等の上に立つた、日米の友好的な国交の樹立が、国際関係の樹立が特に強く国民から要求されております今日、私は、マーフィー大使に対する国民の誤解をただすことは、正しい日本の国交を樹立するために日米の関係を円滑にするために必要ではないかと考えますが、これに対する総理の所見をただしたいのであります。  私は、ここで私の質問方向をかえて、自立経済国民生活安定の問題について二、三のお尋ねをいたしたいのであります。  真の独立、真の平和という問題は、外国の資本に依存し、または従属しておつて独立国家、自主外交を裏づける経済の自立がなければ、むずかしい問題であると思います。何と申しましても、国内の資源を開発して産業を振い興し、そうして安い原料を輸入して、安い、よい品物をたくさん輸出して自立経済を立て、働く人たち生活水準を引上げて、その生活を安定向上させなければならないことは当然であります。しかるに、世界の情勢を見ますと、西欧民主主義側の軍備拡張第一主義の軍需生産計画が今日停滞をいたしましたために、世界的不況はここに起つております。これは総理といえども、すでに承知されておるところと存じます。今後、世界がどのような努力を払うといたしましても、一九五三年末を頂点として、その後は漸次下向く、下降線をたどることは疑いなく、来年下半期において、重大な軍需生産の行詰まりから起る世界経済の危機がおそれられておるのであります。現在のかような軍需生産の停滞から起つた慢性的な世界的不況の中で、西欧資本主義国家陣営は、再びブロツク経済化の傾向を顕著に見せて参りました。なかんずく、軍需第一主義を捨てて、貿易第て主義をとるに至つたイギリスは、連邦主義のブロツク経済のかきねを強化し始めております。日本商品の中共への進出をはばんでおりますアメリカも、日本商品に対して関税の障壁を引上げようとする状態であります。  こうした世界情勢の中にあつて、現在の日本経済は、不況を続けながらも、どうにか横ばいの均衡を保つております。この横ばいの均衡は、朝鮮の特需や、お気の毒な婦人のドルかせぎによつてささえられておるのではありません。わずかに現在の横ばいの不況をささえておる主たる力は、長年にわたつてドツジ・ラインの不景気政策と闘つて来た勤労大衆のたまものであることを、われわれは知らなければなりません。(拍手)ドツジ・ラインの低賃金の重石を、勤労大衆の必然の要求による賃上げでじりじりと押し上げ、国民全体の生活水準をここにようやく幾らかでも引上げて、国内の消費力を次第に高めて、大衆的な購買力が横ばいの不況をささえておるのであります。勤労大衆の労働による生産とその報酬によつて横ばいの景気が主としてささえられておる事実について、私は国民政府にその注意を呼び起したいのであります。しかしながら、この横ばいの均衡も、もはやくずれ始めました。かような軍需生産第一の経済の行詰まりから起つた慢性的な世界的不況と、国内の横ばいの破綻という状態に対して、政府の見通しと、どういう対策をとられようとするのであるか、軍需生産か、貿易の発展か、ともかくどうするのか、具体的な対策をまず大蔵大臣にお尋ねいたします。  次にお尋ねいたしたいのは、慢性的な不況対策とも関連する問題でありますが、私は当然政府建設的な長期計画を持たなければならないと存じます。しかるに、政府は、何らこうした建設的な長期計画、どういう方面に、どうしてやつて行くか、基本的な方針政策を何ら持たれておらないようである。ただアメリカの指示のもとに、行き当りばつたりの財政経済をやつておられるにすぎない。寄席の落語に、ちんばの馬と、めつかちの馬に乗つて道中するお話がございます。(拍手)私は、政府財政経済は、ちようどこの落語の話のように、ちんばの馬と盲の馬に乗つた財政経済ではないかということを遺憾に存じます。  現にここに提出された補正予算案を見ましても、この補正予算は、当然政府長期計画の一環として、昭和二十八年度一般予算案の前提となる性質のものであるにかかわらず、ただ政府の来年度の軍事費をまかなうために財源を蓄積したというだけの、まことにおそまつな、行き当りばつたりの補正予算案をわれわれが見ることは、はなはだ遺憾でございます。政府は、一体いつまで、かようなアメリカの軍事援助に依存しておるのか。いつまでも軍事援助に依存をしないで、国家独立を保障することのできるように自立経済を立て、長期にわたる建設的、基本的な方針政策をどうしてお立てにならないのであるか。あるならば、お示しを願いたい。(拍手)  最近、アメリカの国務次官補、あるいは相互安全保障本部副長官、あるいは世界銀行の調査員の一行が来朝された際、政府は、国際収支の見通しや、産業状況の推移と関連して、五箇年または十箇年の長期計画に関する資料を提出されたと聞いております。その資料は、政府がそういうものをあいにく用意されなかつたために、あわてて一夜づけの資料に基く計画書を提出されたということであります。あわててつくつたといたしましても、外国人に渡す計画や資料があるなら、私は国民国会にお示しを願いたいと思います。(拍手)同時に、この資料は十箇年にわたつてアメリカの軍事援助に依存をしておるものであると伝えられておりまするが、池田通産大臣にお尋ねしておきます。  次は、同じようにこれと関連いたしまして、いかようにりつぱな計画をお立てになろうが、その計画施策が、現在やられておるように、大産業本位、大資本家本位のものであつては、それは実現性のない、机上の計画といわなければなりません。日本のような劣悪な経済条件の国土において、アメリカのように資本主義王国を築こうなどという、かつての自由主義をもう一度日本本土に再現しようということは、空中楼閣をつくるか、うのまねをするからすのような、ばかげたことである。劣悪な経済条件のもとで、各国との競争に耐えて堅実な経済を立て、産業を興して参りますには、産業の生産者たる労働者や農民その他の勤労大衆が、健康的で、文化的で、安定した生活を営んで、だれもが喜んで働くことができるように、生活の安定を第一にすることでなければならないと存ずるのであります。(拍手)  私が特に政府国会の注意を呼び起したいのは、何といつても、日本の現在と将来の運命を背負つて立つ生産の担当者として、租税の負担者として、国の柱である勤労階級の生活の安定向上を第一に計画施策基本にしなければならないということであります。こうした勤労大衆は、生産は戦前の一四〇%にふえておるが、蓄積資本率も、企業利潤も、それにつれてふえておりまするが、勤労者の生産性も高まつておるが、ただ生活の水準が、政府の資料によりますれば、戦前に比べてわずかに八〇%にすぎないのであります。(拍手)当然払わなければならない年末の手当も、賃金の引上げも、ストライキをやらなければ上げないというようなこの事態に対しまして、私は米価を石一方円にして、消費者の価格をすえ置いて、国庫で補償する二重価格制度をとつて、働く農民を保護する、あるいは中小企業に歳末にあたつて思い切つた対策をとるとか、勤労大衆が健康で文化的な生活ができて参りますように、生産に挺身できるように、政府はその最低生活を当然保障する問題を法制化すべきであると存じますが、これに対する政府の所見をただしたいのであります。(拍手)  私の最後のお尋ねは、自立経済の基盤をどこに置くかという問題、これはきわめて重要な問題であると思います。政府外国の特需や再軍備を裏づける軍需工業の兵器生産と、アジアの貿易の発展、この二つの面をその基盤に求めようとされておるように見受けられます。そういたしますと、軍需生産ということと貿易の発展ということは、私は現在の条件のもとにおいては両立しない二つの対照的な命題であるということを政府に知つてもらわなければならないのであります。(拍手)ちようど再軍備生活の安定が両立しない、大砲とバターが両立しないで、軍備拡張と再軍備のために国民生活犠牲にされておる。このことは、ヨーロツパにおいても、アジアにおいても同じでございます。両立しない両面に経済の基盤を置こうとするところに、今日の政府のとつている経済政策の誤りがあるのではないか。  なぜ両立をしないか。一方において貿易の発展に重点を置くといたしますれば、電力、海運、造船の平和的な基幹産業を拡充強化して、次いで輸出商品の生産を第一にしなければならない。それと同時に、安い原料と広大な市場を、中共を含めたアジア大陸に求めなければならないことは、これは当然でございます。(拍手)これは、外国の人が何と申しましようとも、日本の自立経済国民生活安定向上の必須条件であるということは、われわれ日本人が、外国人に教えられなくても、一番よく知つておるところであります。(拍手)他方、兵器生産重点を置くとなると、財政上、国民生活だけではなくて、商品としては平和産業、企業形態としては中小企業を犠牲にいたさなければならぬことは、現在特需を中心とする軍需生産のために、すでに繊維は恐慌状態に入つておるではありませんか。  その他、あらゆる輸出の平和産業が兵器生産犠牲となつておるこの事実、こういう両立しがたい二つの面に対しまして、特に現在の日本外交と内政が切り離しがたい一体の条件に制約されておるという現実を、われわれは無視できないのであります。(拍手政府外交政策をどのように粉飾し、おめでたい宣伝をされて参りましても、日本がアジアにおいて孤立して、みなし子となりつつある現状、これは政府より国民が一番よく知つておるところであります。(拍手)米ソに対して中立の外交方針を堅持するインドやビルマ、インドネシアの東南アジアや、中共、北鮮は言うまでもなく、アジア大陸のどこの国、どの民族とも心から解け合つた友好関係がない。アメリカの衛星圏の中の韓国、フイリピン、それさえ、現在の日本政府施策に対して疑いの目を持つておるというのが、今日アジアにおける日本の置かれた、みなし子の実態であります。(拍手)これは、軍需生産第一の経済体制をとつて朝鮮の特需と再軍備を進める経済政策を推進するアメリカ一辺倒の日本の屈辱的な外交の結果、どこの国とも、アジアにおいて相入れないために、アジアにおける孤立に陥つておるのであります。同時に、アジアにおいて、アジア大陸との関係がよくないために、安い豊富な品物をつくつてアジアに輸出する品が少いために今日の事態が起つておるということを、われわれは見のがすことはできないのであります。(拍手従つて、こんな状態で進むと、韓国と台湾とフイリピンと、それに日本が加わつて、アメリカ衛星圏だけがアジア大陸から切り離されて、しよんぼりと太平洋に取り残された、みなし子となり行くことを覚悟しなければなりません。(拍手)  政府は、かような事態に対して、自立経済の基盤を軍需生産に置くのであるか、貿易の発展に置くのであるか。政府は、米ソの対立に対し、アメリカ一辺倒の外交から、自主中立の独立国日本外交を立てて、現在の貿易の発展に対する外交施策を行う意思はないかどうか。軍備第一主義を捨てて、貿易第一主義に進みつつある英国の、賢明にして著名な一政治家は、こう言つている。イギリスがアメリカの兵器を製造している間に、アメリカは海外市場を広げて行つている、しかも、この海外市場を犠牲としているイギリスの兵器生産は恐るべき戦争に直結している、こう言つている。  私は、国民国会に、この演壇から宣言する。地球から戦争を断ち切ること、そうして祖国日本国民生活をほんとうに安定させて人類に平和をもたらすこと、その道は日本社会党政府のもとに社会主義を断行する以外にないということであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 鈴木君にお答えをいたします。  アメリカとの安全保障条約等は、これは国会の議決を経たものでございますことは、御承知通りであります。その結果、米国軍が駐留いたしており、保安隊が設けられたのであります。これは憲法違反ではございません。  また再軍備及び朝鮮派遣をしきりに言われましたが、これは先ほど申した通り政府としては、ただいま再軍備をする意思はない、また朝鮮派遣の考えはないのであります。しかしながら、朝鮮事態から考えてみまして、日本の近くにおいて戦争が行われておる、共産軍との間にいくさが行われておる、このために日々支障がある以上は、これは日本の安全に少からざる影響を与えておるものであります。ゆえに、国連と協力する方針は決して誤つておらないのみならず、これはやがて日本の安全を保障するゆえんであります。(拍手)  またアリソン氏が見えて演説をした。演説をしたことはありましようが、私は存じません。アリソン氏が私に対しての話の中には、再軍備をせよとかいうような話は、ございません。またフイリピンその他との賠償問題に関する交渉は、これはアリソン氏来朝以前においてすでに着手せられたものであり、またこれは条約に明記せられておるところであります。アリソン氏と何らの関係はないのであります。  また、朝鮮において戦争が行われておる。その結果、日本が脅威を感ずる。ゆえ保安隊を強化する、あるいはまた保安隊の名において軍備をするとか、あるいは日本を再び警察国家にするとかいうような考えは、政府において毛頭ないところであります。  また民生安定は、もちろんわが政府として欲するところであります。極力懸命にこの安定に尽力いたしております。また国民の胃袋の充実についても、政府としては極力懸命に施策を練つております。(拍手)しかしながら、これがために保安隊は必要でないとは言えないのであります。現に暴力は、昨年、本年においても行われておるのであります。暴力破壊の行為は、諸君の目の前に行われておるのであります。ゆえに、保安隊の必要はないとは言えず、治安のためには、政府はあくまでも力を尽さなければならないのであります。  マーフイー大使の行為について、いろいろ御指摘がありましたが、私としては、マーフイー大使が内政干渉の事実あり、もしくはその権限を逸脱した行為ありとは考えられません。また一度もそういうことを感じたことは、ございません。これは何かのお間違いであろうと考えるのであります。  一応お答えをします。     〔国務大臣向井忠晴君登壇
  14. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) ただいまの御質問のうちで、前の河上丈太郎氏の御質問と同じ性質のものがございました。私は御返事を繰返すことはいたしませんが、世界各国の経済情勢の影響を受けて、わが国が現在横ばい景気となつておりますのは事実でございます。わが国経済は主として平和産業によつて立つたものでございまして、これを増強するによつて、ただいまの不況から脱出すべきものと存じます。それは結局生活水準の向上、貿易の振興の源になります。これに資するため、金融的並びに財政的の措置を大きくし、特に基幹的重要産業には長期的な投資、融資をはかり、そのためには外資導入にも努めるつもりでございます。     〔国務大臣池田勇人君登壇
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  鈴木君は産業長期計画に非常に御熱心のようでございます。われわれも、その点につきましては研究はいたしております。しかし、何分にも今の日本は昔とは違いまして、アジアにおける経済権力もほとんどございません。四つの島にとじ込められた、経済的にはごく脆弱な国であるのであります。われわれが、ひとりよがりの計画を立てたつて、なかなかその通りに行くものではないのであります。まず計画を立てるのには、世界の経済政治情勢の見通しが必要であります。しかもまた、今の場合としまして、日米経済協力の程度、見通しも当然のことでございます。また東南アジア、ことにコロンボ計画の推移も見なければ計画は立ちません。また国内的に申し上げましても、来年度の予算は一応見通しがつくといたしましても、再来年度、その次の年度、こういうことを考えますと、全体の計画というものは、一応はわれわれの心組みとしては持つております。二つも三つもありますが、権威ある皆様方に政府として発表する程度のものではございません。従いまして、総体の産業計画ということよりも、個個の重点産業につきましては計画を立てております。たとえば電力開発にいたしましても、鉄鋼、石炭、造船にいたしましても、こういう基幹産業につきましては計画を立てております。いずれこの点については委員会等でお話申し上げます。こういう事情でありまして、ただいま来ておりまする世界復興開発銀行の職員二人に対しましても、個々の産業の計画につきましては話しておりますが、全体としての長期計画はないのでございますから、見せておりません。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  16. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) アジアの孤児だというお話でありますが、われわれは決してそうは考えておりません。決して韓国、国府あるいはフィリピンと特別に関係をとつておるのではなくて、インドとも、インドネシアとも、ビルマとも、いろいろの国と、できるだけの密接な連絡をとるように努力しております。ただ中央につきましては先般の外交演説で申し上げた通り国連軍朝鮮で戦つておる限りは、その反対側の戦力を増強すべきものでないと確信いたしまするから、これに対しては必要な措置を列国と協同でとつております。  なお将来の外交政策につきまして、米国一辺倒ではないかというお話でありまするが、私もやはり日本人でありまするから、日本の正しい利益を擁護するために努力するのは当然であります。     —————————————
  17. 久野忠治

    ○久野忠治君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十七日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  18. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十六分散会