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猪俣委員 私も
三橋を呼ぶことには反対でありません。ただそれは別なテーマでやりたい。と申しますのは、今実は私の方でも
相当調査しておるのです。そこで、
アメリカのやり方等についてこの全貌はわからぬ、この真相はわかりません。諸君が
三橋の言うことを聞き、それで結論が出ると思うと、これは真実と違
つた結論が出ると思う。私はそれをおそれるのです。
スパイ事件についても、ほんとうのことを明らかにしたいならば、これは徹底的に
調査しなければならない。というのは、私ども今まで
調査した中間的な感じですけれども、
スパイの嫌疑をかけてこれを留置して、それが何かの都合の悪い場合の用意はちやんとしておいて、そうしてお前はのがれられないのだ、ここに証拠があるのだというと、そうなると軍法
会議で銃殺されるだろう。銃殺されるか、
自分の方の味方になるかということで
スパイに使う。
三橋がその手にひつかか
つたのではないかと思われる。それから自殺した佐々木という大佐もそうであろうと想像される。他にまだあるのです。
名前は出しませんけれども。そういう全貌が明らかにならぬで、そうして
不法監禁事件について
アメリカ側の
証人がない、こちらだけということに
なつて、そういうこちら側の
調査によればということになるし、
スパイ事件だけは、
アメリカと両方の
調査の結果こうだということになりますと、非常にぼくは不公平な
判断が生れて来ると思う。そこで
三橋を
調べることによ
つてこの
スパイ事件の全貌がわかるという御確信があるならば、それは私は反対はしないのですが、それでは真相は出ないのです。ですから、これは別問題として、もつとわれわれも周到な
調査をして、そうしてこの
アメリカの諜報機関
——これはソ連にも
アメリカにもあることで、当然なことだと思うのです。それ
自体は悪でも善でもないが、これが今までどういう
活動をや
つて、どういうふうな
日本の人
たちがそれに使われてお
つたかということがだんだん出て来るのです。その全貌が、全部でなくても、ある程度の輪郭がわからぬと、この
鹿地事件の真相というものは出て来ないと思う。単に今
三橋だけを
調べる、単に
鹿地の自供書だけを頭に置いて
判断するとなると、これは非常に不公平な
判断が出て来ると思う。そこでその
アメリカ側で逮捕した理由は、
スパイの嫌疑をかけて逮捕したということは、
アメリカ側でも認めているのです。
鹿地もまた
スパイの嫌疑によ
つて監禁せられたと
言つているのであるから、逮捕の理由については明らかに
なつておる。彼がほんとうに
スパイをしたのか、しないのかという問題が残
つておるだけで、
スパイの嫌疑をかけて逮捕した。何もしない者を逮捕したのではないということは明らかなんです。ほんとうに彼が
スパイをや
つたかどうかという問題に
なつて来るが、それは今言
つたようになかなか全貌はわからない。そういう
意味におきまして、私は
不法監禁事件の
報告を書くにしても、何のために彼らが逮捕したかという向うの言い分は認めてもさしつかえない。
スパイの嫌疑があ
つて逮捕した。それが
スパイがあるか、ないかは後の問題だけれども、そういう嫌疑だけで逮捕して、不法に、ただでたらめに逮逮したのではないということは認めてよい。けれども、ほんとうに
鹿地が
スパイをしたということは出て来ません。もつと全般的の
アメリカのやり口を研究しないと、私は出て来てないと思う。
三橋を今
逮捕監禁せられた。
三橋を
監禁していることに対しても私は問題があると思う。
三橋が保護的
意味で留置されているならあれですが、
電波法違反事件のごときことで起訴後の勾留を続けていることについて、私は疑問があると思うが、聞くところによれば、
三橋は一切の弁護人を断
つているということであります。そうして、でき得るならただちに簡易の裁判でも
つてけりをつけたいような考えを
三橋自身が持
つているということを、ある
情報で聞いている。それはそれといたしましても、それだけによ
つて真相をつかもうというお考えであると、少し無理があるのではないか。だからこれは先の問題にしておいていただいて、
不法監禁事件だけにしてもこの辺で結論を出すべきではないか。なぜならば、私どもは初めから
アメリカ側の
証人を出してくれということを
法務委員会のたびに
外務省にも
言つて今日まで来た。しかるに今日発表されましたような
答弁をしておる
アメリカ側が、
証人を出すなんということは考えられません。それをわれわれのほほんと待
つているということは、ますます私どもはばかにせられることになる。
アメリカ側も責任をも
つてそういう
回答をして来たのでしようから、それはそれとして、われわれの
調べた範囲においての結論、われわれの
調べによればこうだという結論を出して、もしこれに不服であるならば反認を出してくれという
態度をとるべき時期ではないかと思う。検察当局にしても、外務当局にしても、とにかく衆議院の
法務委員会ではこういう結論を出している。違うなら、あなた方から違う証拠を出してもらわなければ困るというふうに
交渉しやすいと思う。われわれはその時期に来ていると思う。そこでそういう
意味におきまして、
三橋の喚問
——これは
三橋を呼んでみたところが、興味をそそるだけの問題で、真相は出て来ない。これはまだ裁判前のことであります。そしてなるべくならば
鹿地と対決をしていただかぬと真相は出て来ない。ところが
鹿地は、きのう
警察と結核
療養所の青木博士立会いでも
つて診断しましたが、向う一箇月間は絶対安静を要するという診断に
なつておるのであります。そこで
鹿地の方の
取調べが困難に
なつて来ているのであります。
三橋の方だけ
調べる、そうして結論に入られるということは、私としては不服であります。さようなことは、
アメリカ政府が故意かどうか知らぬが、そして
日本の
国警が、これも故意かどうかわからぬが、とにかく
スパイ事件、非国民という印象を与えるような報道を今までや
つておられる。
鹿地は当
委員会に対してその点についての釈明を徹底的にやる用意をしておりまして、今
調査をしております。きよう私が申し上げました大阪裁判所の事実も私は
調査したのですが、徹底的にこれは当
委員会に明らかにしていただきたい。これは将来にわたりまして、大切なことだと思
つて調査しているのですが、今
鹿地の
調べができずに、一方的に
三橋だけをここに呼んで、そうしてあの自供書をつきつけて
調べられて、はたして公正なことが出るか、どうか。私はそうい
意味におきましても、これは真実といたすべきにあらずと思う。
三橋が出る際に、最も興味あることは、これは
アメリカの諜報機関との打合せの上で出たということが、先ごろ朝日
新聞にも出ておりました。それはある事実も私どもはわか
つております。これは私どもは信用しませんけれども、
国警長官もその会合に出てお
つたという
報告があるのです。こんなことを私は信用しませんし、先ほどもだから申しませんでした。さような点がもし明らかにできるならば、これは実に有利だと思いますけれども、おそらく
三橋なる者は完全に
アメリカの
スパイに
なつておる
人物であると思う。そういうようなことは
委員会に出ても言わぬと考えますし、また言わしめないように取巻きがやると思います。その
意味において、結局へんぱな印象を皆さんに与えたまま結論を出すことがあると思います。私はそういう
意味において賛成いたしかねるので、この程度でもう決心をして、各党の
意見を徴して、結論の草案にかかるべきものじやないかと思う。