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1952-12-13 第15回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十三日(土曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 松岡 松平君 理事 小畑虎之助君    理事 石川金次郎君 理事 猪俣 浩三君       小林かなえ君    佐治 誠吉君       花村 四郎君    福井 盛太君       松永  東君    清瀬 一郎君       後藤 義隆君    木下  郁君       田万 廣文君    古屋 貞雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 十二月十三日  委員久野忠治君辞任につき、その補欠として松  山義雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十二日  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二〇号)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二〇号)  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第二一号)  人権擁護に関する件(鹿地亘関係事件)     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  国連軍裁判管轄権に関する件に関連政府より発言を求められております。これを許します。  その前にちよつと政府に申し上げますが、清原通達内容を本委員会において政府資料をもつて発表いたします中に未発表の分がありまして、これが取扱いに対してきのう当委員会理事会においてお諮りいたしたのでありますが、理事会におきましては政府の悪意のない点を認め、また事情もこれを了承いたしたのでございます。しかし今後の取扱いに対して何らかの政府の意思を聞いておきたいという意見が出ておりますので、この点についての大臣からお答えを願つておきたいと存じます。犬養国務大臣
  3. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題につきましては、当初、今日もあるいは秘密会をお願いしようかとも存じましたが、秘密会なんというものは、なるべくしない方が民主主義政治に沿うゆえんであると存じまして、あえて公開の席で御説明をいたしたいと存じます。  昨日この問題につきまして、当委員会理事会を開いていただきまして、お手数をおかけして、まことに恐縮に存じております。問題は、本年の六月二十三日にいわゆる第二清原通達刑政長官清原氏から各検事長あてに発しました通牒の内容でございますが、本文の全文はすでに当委員会諸君に御配付をいたしたのでございます。問題の前書きの点なのでありますが、その前書きには、この基準は特に外交上の理由もあるので秘扱いとし、国連軍側に対してもこれを内示しないこと云云ということがありまして、これは当時の情勢を判断いたしまして、私の政治責任において、御配付の中からこの前書きを除いたのでございます。率直に申し上げまして、秘密会をお願いいたしまして、その前書きを明示いたしたいということも考えたのでございますが、当時は英濠兵事件のまつ最中でありまして、秘密会法務当局がお願いすること自体が社会の注目、少し大げさに言いますと、国際的な注目を浴びる結果、当世は言論機関方々も非常に腕もよろしく勘もよろしくてかねがね尊敬しておるのでありますが、秘密会を開いたところで、一種の国際的広告にもなり、内容も必ず記者諸君の敏腕によつて抜けるという判断を私の責任においていたしまして、あえてこれを省いたわけであります。これもあとからの御報告で済まないのでありますが、何かもう一つ秘密会をお願いするような場合に、あわせて一本という形でこのことも率直に申し上げ、謙虚な態度をお示しいたしたい、こういうふうに次官及び検事総長と打合せていたわけでございます。できれば、あの事件が済みました直後において、秘密会をお願いして発表することが、法務当局として最も妥当な態度であり、かつ委員会を尊敬するゆえんであると思つたのでありますが、それが遅れましたことは、まことにこちらの法務当局として相済まないことと考えております。今後長い年月の間に同じようなことが起らないとも限りませんが、そのときには、率直に委員長並びに理事諸君とまずお打合せをして、どうやつた機密を保持しながら、国の最高機関である国会委員会を尊敬するゆえんになるか、虚心坦懐に御相談して、再びこういう手違いのないように心がけたいと存じております。この点、委員会委員諸君に対しても、いろいろお手数をかけたことを虚心おわびを申し上げ、今後の私どもの戒めといたしたいと存じております。
  4. 田嶋好文

    田嶋委員長 ただいまの犬養法務大臣発言に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     ―――――――――――――
  5. 田嶋好文

    田嶋委員長 次に検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案並びに裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、両案を一括議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたします。犬養法務大臣。     ―――――――――――――
  6. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま議題になりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由を便宜一括して御説明申し上げます。  政府は、最近における生計費及び民同の賃金の変動その他の事情にかんがみまして、国家公務員給与を改善する等の必要を認め、今国会一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしまして、現に御審議を仰いでおりますことはすでに御承知通りであります。  そこで、裁判官及び検察官についても、一般職職員等の例にならいまして、その給与を改善する必要を感じましたので、この両法律案を提出した次第でございます。  次に、この両法律案におきましては、新たに一般職職員に支給されることとなつた宿日直手当を従来の夜勤手当等同様裁判官及び検察官に対し支給しないことを定めるほか、他の法律改正に伴う法文の整理のための規定を設けております。  なお、附則におきましては、一般政府職員の例にならいまして、この法律案報酬または俸給月額改正に関する規定を本年十一月一日にさかのぼつて適用すること等の必要な経過規定を定めました。  この両法律案におきましては、右の趣旨に従いまして、裁判官及び検察官報酬または俸給の額を増加するために、両法律の各別表改正するとともに、裁判官報酬等に関する法律第十五条と検察官俸給等に関する法律第九条に定める報酬または俸給の各月額改正することといたしましたが、改正後の別表及び右各条に定める報酬または俸給の各月額を、現行のそれに比較しますと、その増加比率は、一般政府職員俸給月額増加比率と同様でございます。  以上がこの両法律案提案理由でございます。何とぞよろしくお願いいたしたいと存じます。     ―――――――――――――
  7. 田嶋好文

    田嶋委員長 次に人権擁護に関する件のうち、鹿地亘関係事件について調査を進めます。  伊関局長がまだ見えませんから、しばらくお待ちください。外務大臣はもう見えます。――外務大臣が参りましたので外務大臣にこの場合人権擁護に関する件のうち鹿地亘関係事件について調査を進めるのでございますが、今までの外務省としての経過、おわかりになりました事実を御報告願いたいと存じます。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 事実の調査の方は主として国警なり検察庁なりにお願いしているのであります。私の方は当委員会で行われた証言であるとか、その他の材料あるいは国警等で収集しました材料先方に渡しまして、そうしてこの材料についての正否を至急調べるように、またこれに関連してその他の真相究明に役立つような資料を至急提出するように要求いたしております。なお占領中のことはともかくとして、占領後におきまして、かりに不法監禁等の事実が明らかになつた際は、これに対して日本政府としてとるべき措置もいろいろあると思いまするが、これにつきましては、あらかじめ先方にも事の重要性をよく認識するように話しておきました。その結果、アメリカ側でもすでに発表いたしました通り、もしかかる事実があつた場合には、責任者に対して必要なる懲罰その他の措置をとるということを発表いたしております。が、いまだ真相というものが非常にはつきりいたしておらない現在の場合におきましては、まずこの真相をきわめることが必要である、こう考えまして、アメリカ側にはもちろんのことでありますが、国警側にもアメリカから連絡のあつたことは伝えるが、国警側も直接いろいろ調べております。事は急を要するものですから、非公式にはアメリカ側にも連絡して、国警側でも材料の収集に当つておる、こういうふうにやつております。
  9. 田嶋好文

    田嶋委員長 ただいま伊関国際協力局長が出席されております。先般伊関国際協力局長から、鹿地事件に関しまして、鹿地氏がスパイ行動をしたことを齋藤国警長官が確認したという御発言がございました。その後齋藤国警長官の当委員会における質問に対するお答えには、スパイを確認したという事実はない、こう答えて、両者の間に何か発言の齟齬を来しておるように見えるのでございますが、この件に対して伊関局長から何か御発言があれば、この際発言を許します。
  10. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 私が申し上げたいと思いましたのは、米側発表は、鹿地氏がスパイである、この事件の詳細については国警当局に通報して、国警当局が目下調査中である、というのでありまして、これが国警当局に通報されて、そして国警当局調査中であるということは国警長官が認めておる。そこでこの発表に同意しましたというふうに私は申し上げたかつたのでございますが、言葉が足りませんのでそういうふうに間違われた、こう考えます。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 外務大臣にお伺いいたします。外交交渉に移られておることはわかりますが、アメリカ側にいかなる調査要求をせられておるのでありますか。その調査要求内容をお漏らし願いたいと思います。どういう点について報告を求められておるか、報告を求められておる事項について御報告願いたい。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の方で関係いたしておりますのは、主として、十一月でありましたか、そのときの鹿地を逮捕した理由、状況、その後の本人に対する待遇、特に四月二十八日以降における不法監禁の事実の有無、こういう点が調査の対象になつております。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 それらの点につきましては、中間的な報告も何もアメリカ側からないのでございますか。実は本日の新聞を見ると、UP電か何かで、アメリカ大使館の談というものが出ておるようでありますが、ああいうことは、日本外務省には正式に向うから何とも言つて来ないわけなんですか。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ正式には言つて参つておりません
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 その交渉経過におきまして、向うがどうも不法監禁のような状態があるらしいというようなことを認める動静もないわけですか。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは正直に申しますと、ただいまのアメリカ大使館人たちには、やはり寝耳に水のようなことであつて、知らなかつたらしいのであります。従いまして、そういうらしいというような知識もないのであつて、むしろアメリカ大使館側でも事実を全然承知していなかつたことについては、はなはだ内部の連絡が十分でないという点について、アメリカ大使館としても、いろいろ考えさせられておる点があるようであります。ただいま私の想像するところでは、強く各方面に対してその材料の提供を要求しておるようであります。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお外務省としては、もしかりに不法監禁があつたといたしますならば、その責任者、その人物の属しておる機関としての位置、さようなものについても調査するよう要求されておるのでありますか、その点を承りたい。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは正式の申入れといたしましては、本件に関するすべての事実を調査して報告するように、特に先ほど申しましたような不法監禁関係について特に要求をいたしております。正式の要求の中には、一々こまかく何月何日どうであつた、どうであつたというようなことは書いておりません。それは別に当委員会資料であるとか、国警の持つておる材料であるとか、こういうものをすべて先方に渡しまして、これについて一々調査して知らせてくれということをやつておりますが、正式の公文の中には一括して鹿地事件に関する調査、特に不法監禁に関する調査、こういうことで要求しております。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 交渉経過はわかりましたが、そこでこれは当法務委員会における調査におきましても、ほぼ不法監禁をしておつたという事実は明確になつたと思うのであります。アメリカ側のいろいろの情報も、ほぼそれを認めるに傾いておるように考えるのでありますが、もし、かような不法監禁があつたといたしますならば、それに対する対策は、今すでに外務省としてはお考えになつておるはずだと思うのであります。そこで向うの回答によりまして事実の真相がわかり、不法監禁状態にあることが認識されましたならば、どういうふうな要求アメリカ政府になさるお考えであるかを承りたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは事実に基いておのずから要求の限度も違つて参ります。しかしながら普通に、これは個々の具体的事実ではなく、普通にこういう事件があつた場合、たとえば今の場合なら日本側アメリカ側要求するような筋道は、第一にはアメリカ政府謝罪、第二にはかかる事件再発を防止するだけのアシユアランス、保証でありますか、それから第三には責任者処罰、第四には関係者に対する損害の補償、それから第五には、もしそういうことがあつた場合ですが、たとえばそういう不法なことを行つた機関国外退去、こういうようなことが普通の筋道要求事項になります。しかしながら、具体的事実にそれを当てはめて、その中のどれをやるべきであり、どれは必要ないというようなことは事実によつてきまるわけです。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の点はよくわかりました。そこでなおお確かめいたしたいことは、法務関係の方が主として御意見を承る相手かもしれませんけれども外務大臣としての心構えをお聞きいたしたいのは、鹿地亘なる人物が今国警が宣伝いたしておりますがごとくかりにスパイ事件関係ありといたしましても、われわれの見解から言うならば、四月二十八日以後は日本に引渡さるべきものであり、アメリカがこれを軟禁しておくことは、鹿地がいかなる行動をやつた疑いによつて抑留したものでありといたしましても、不法監禁である事実にはかわりがないと考えられるのでありますが、その点についていかなる御所見をお持ちであるか承りたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も鹿地氏がいかなる行動をとつてつたかということと、かりに不法に監禁しておつたとすれば、その事実とは直接の関連はないと考えております。もつともこれは御承知のように平和条約におきまして、占領中の占領軍なるものは平和条約発効と同時にその存在はなくなりますけれども残務整理、船待ちその他の関係で九十日間はその一部の権限を依然として保有できるととになつております。その関係が何らか本問題に関連があるかどうか、これは法理的には別問題でありますが、原則的に言えば、平和条約発効後は、少くとも鹿地氏にいろいろの行為があつたとしましても、それと監禁しているという事実とは別問題として考えなければならぬ、こう思つております。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおこれはとつぴな質問かもしれませんが、たとえばわが国会におきまして事実の真相をきわめたいために、アメリカ側証人を呼んで事実を調べたいと思うような場合におきまして、外務省においてさような証人出頭をあつせんし得るものなりやいなや、それをお尋ねいたします。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今とつさで私も法律関係その他を調べてみないとわかりませんが、あつせんをするかと言われるならば、法律上できることならばあつせんはいたします。ちよつとその根本的なところがはつきり私にはわかりませんが、できるだけ当委員会要求については御希望を満たすようにという原則的な心構えは持つております。
  25. 小林錡

    小林かなえ委員 一点だけ外務大臣にお伺いしたいのです。鹿地自白手記といいますか、それを向うに書いて渡したのが、昨日伺いますと、今国警長官手元にあるというのでありますが、これは外務省を経て国警長官手元渡つたんだと思いますが、どういう機関を通つて向うからこちらの外務省に来ておるのですか。またおそらく向う大使館方面だろうと思いますが、その手記を手に入れた機関からどういうふうにして大使館方面渡つたのか、その詳細の径路がわかりましたならばこれをお答え願います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど猪俣君にお答えしましたように、正式には外務省を通じてアメリカ大使館に話をし、アメリカ大使館から各アメリカ機関連絡を求めるのでありますが、事が急を要しますのと、いろいろ機密のこともありまするので、国警等は必要に応じて直接先方連絡をいたし、先方と話をいたしております。今おつしやいました自白の書類ですか、そういう種類のものは、私の記憶では外務省を通じて来たものでないので、直接国警の方に渡つておるように考えます。
  27. 小林錡

    小林かなえ委員 それでは国警長官にその点についてお伺いいたします。
  28. 田嶋好文

    田嶋委員長 外務大臣お急ぎですから、田万君。
  29. 田万廣文

    ○田万委員 ただいま猪俣氏から外務大臣質問がありましたが、あつせんという言葉を使われたのですが、私どもの見るところでは、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定、この協定精神をよくかみわけて考えてみますると、鹿地亘氏の事件関連したアメリカの国籍を持つておる方々は、当委員会真実発表するために当然出席せられる国際的な義務があろうと私は考えるのでありまするが、岡崎外務大臣はこの私の意見に対してどういうお考えを持つておいでるか、その御意見を承りたいと思うのです。あつせんというようなものでなくして、条約上の精神から考え義務があろうと考える。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私には、ちよつと今行政協定を持つておりませんのでわかりませんが……。
  31. 田万廣文

    ○田万委員 ここにあります。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その関係のところを御説明願えませんか。
  33. 田万廣文

    ○田万委員 ただいま申し上げました行政協定前文の末尾に「また、日本国及びアメリカ合衆国は、安全保障条約に基く各自の義務を具体化し、且つ、両国民間の相互の利益及び敬意の緊密なきずなを強化する実際的な行政取極を締結することを希望する」という文句があるのです。この精神を私どもが深く考えるときに、ただいま申し上げたような結論が出て参ると考えるのです。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 三条ですか、何条ですか。
  35. 田万廣文

    ○田万委員 前文です。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はこの前文は、その目的日本国内及び付近に駐留するアメリカ合衆国軍隊の配備を規律する条件をつくるものであつて、それについてはアメリカ側日本側も、いずれも義務があるわけであります。その義務を具体化し、そうしてそれを具体化するにあたつては、相互の間に緊密なきずなを強化するという一般的な規定でありまして、これから直接にそういうことは出て来ないと考えます。これは今当座のお答えで正確でないかもしれませんが、私にはどうもそういうふうに思われます。
  37. 田万廣文

    ○田万委員 なおさらにお尋ねいたしたいのは、行政協定第十六条をごらんになつていただきたいという思うのです。その条文によりますれば、「日本国において、日本国法令を尊重し、及びこの協定精神に反する活動、特に、政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊構成員及び軍属並びにそれらの家族義務である。」、こういうふうに明文もあるのです。外務大臣の御答弁のごときことがあるならば、またそれが正当であるとするならば、鹿地亘氏のような、かりに不法監禁というような事件が起きた場合、両国間における国際協力義務というものは、まつたく抹殺されてしまう結果になろうと思います。そういう点も思い合せていろいろ考えた場合に、この行政協定明文のみならず、行政協定の根本に横たわつておる精神というものから考えて、当然私は鹿地亘氏に対する不法監禁をなさつた方々を当委員会に呼び出して、これを取調べる権限があろうと考えるのですが、もし外務大臣において、ただいま即刻お答えが、法律的にあるいは外交問題の立場からむずかしいとすれば、よく研究して答えていただいてもけつこうですから、その点あわせて申しておきたいと思います。御答弁をお願いいたします。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本法令を尊重する義務は、当然駐留軍構成員とかその家族は負つております。従いまして、もし駐留軍構成員なりその家族なりがこの事件関係しておつて、そうしてこれが不法監禁であるというような事実が明らかになりますれば、義務違反ということになります。義務違反となつた場合に、行政協定では先方にその犯罪の裁判をせしめ、その判決を正当に下させるようにとりきめております。従いましてこちら側が、これは軍人軍属その他家族に限ることでありますが、その場合に、行政協定趣旨から当委員会出頭を命ずるということが妥当であるやいなやは、研究してみませんと私は即答いたしかねますが、ただいま猪俣委員にも申しました通り、もしそういう事件真実であるということがはつきりいたしますれば、この義務違反でありまするし、また一般的にいつて、かりに軍人軍属あるいはその家族でないほかの人がやりましたとすれば、日米国交一般的な関係からしまして、たとえばアメリカ政府から謝罪要求するとか、あるいはそういうことの再発を防止する保証を得るとか、あるいは本人処罰要求するとか、そういういろいろの種類のことが出て来るのであろう、こう申したのであります。
  39. 田嶋好文

    田嶋委員長 岡崎外務大臣は、先ほど申し上げましたように時間が来ておりますから簡単に。
  40. 田万廣文

    ○田万委員 私どもはこの鹿地亘氏の事件調査いたしております目的は、真実がどこにあるかということを取調べたいためにやつておるのです。公平な立場でこの事実をきわめたいというのが目的でありますからして、その立場からいつても、この委員会によつてどもが取調べをいたしておるのは日本人側だけでございます。従つて公平に真相を打明ける機会をアメリカ側にも与えて、その結果において調べたいという考えから、私どもはこれを申し上げておるということを、外務大臣は深く認識されまして、外交交渉によつて、この委員会当該関係者出頭せしめるというような協力をせられるお考えがあるかないか、これを最後に承つておきたいと思います。
  41. 田嶋好文

    田嶋委員長 国際的な関係もございますので、この点は先ほど田万君からも外務大臣に発議がありましたように、研究してということでありますから、研究してお答え願いたいと思います。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今行政協定条項に基いてそういうお話がありましたが、行政協定の各条項については、今申したようにこちらで裁判をするという趣旨になつておりませんが、いろいろこれは国際的の含みもありましようし、アメリカ側としても日米国交ということを非常に重要視しておりまして、この真相はつきりさせることについては全力を尽しておるのであります。どういう処置が妥当であるかということは、今後さらに十分研究いたしまして、その上でお答えをいたしたいと思います。
  43. 古屋貞雄

    古屋委員 関連して……。
  44. 田嶋好文

    田嶋委員長 一言だけ許します。
  45. 古屋貞雄

    古屋委員 ただいま国警長官に対するアメリカ側から交付された鹿地の署名の書面、外務大臣は自分の方の手を経過してなかつた、こうおつしやつておりますが、国警長官の方からさような文書がアメリカ側から渡されたという御報告なり連絡があつたかどうか、その点を外務大臣にお聞きしたい。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 聞いております。
  47. 古屋貞雄

    古屋委員 しからばアメリカ側に対する事実調査要求について、かような要求があるからこの点についても調査をしてもらいたいという申出の交渉があつたかどうか。これは具体的にアメリカ側から鹿地の署名の書面が国警長官の手に来ておるという事実がありますれば、当然アメリカ側からこれを所持したという人間がすぐ明確になるはずである。さような最も具体的な調査のできるような方法を相手側に申し入れて調査をしていただくことが、外務省の当然の義務であると私は思う。さような手続をとつたかどうか。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私は常識的に考えまして、国警長官がかりに直接にアメリカ側からそういう書類をもらつたとすれば、調査してみるまでもなく、だれが持つてつたかということは、国警長官自身がよくおわかりのことと思うのであります。従いましてこういう事実があるということはアメリカに通報してありますが、この点について特に調査してくれということは言つておりません
  49. 古屋貞雄

    古屋委員 そういたしますと、外務省では単なる抽象的な調査の申出にすぎないのでございますか、私はそれでは国民は納得しないと思うのです。特別に相手方が安易な方法で調査し得られる方法を外務省が御承知ならば、それを指摘して、こういう事実があるから特に御調査を願いたいという申出が、本件の真相を明らかにする早道だと私は思う。それからなおもう一つは、さような事実がわかるならば、明確に鹿地の書類の所持者がわかりますので、ただいま猪俣君なり田万君から申したように、その所持者について、提出者について、当委員会出頭を求めることに対しての御要求を具体的にしていただく確信があるかどうか、お尋ねします。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど私が猪俣君にお答えしていたのをお聞きにならなかつたのかもしれませんが、初めの御質問についてはかなり詳しくお答えをしたのであります。繰返して申せば、われわれの正式の要求は、鹿地事件についての全部の調査であるけれども、特に重点は不法監禁のところにおいて調査を進めるように要求をいたしておる。しかし同時に当委員会の証言や、その他鹿地氏の声明といいますか、発表したものや、その他国警の有する材料のほかはすべてこれを先方に提出して、これに基いて具体的な調査をするように要求いたしておる、こう申したのであります。でありますから、決して抽象的にただ調査をしてくれと言つたのではなくして、一々具体的に事実を示して、この点はどうであるかというふうに調査要求しておるが、正式の調査要求の文書は一々のことでありまするから、そういうことを書いてない。先ほど申したように一般的に調査要求すると同時に、特に不法監禁ということについての事実の調査を重点的に調べるように要求している。他の材料はそれぞれその都度入手次第先方に渡して、それに基いて具体的な回答を求めておる、こう申したのであります。――なおこの文書の所持者等につきましては、これは私は国警等の取調べについて、いろいろ関連する事項もございましようと思いまするから、国警長官等のいろいろ調査の結果に基きまして、そういう点はきめられることと考えております。
  51. 田嶋好文

    田嶋委員長 岡崎外務大臣に対する質疑はこれで打切ります。  先ほどの小林君の質問に対して、齋藤国警長官から……。
  52. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 お答え申し上げますが、小林さんのお尋ねは、鹿地氏の自白書をどうして手に入れたかというお尋ねでありましたか。
  53. 小林錡

    小林かなえ委員 そうです。それがどういう機関を通つてどういうふうにあなたの手に入つたか。
  54. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 鹿地氏の自白書は先般私の方である事件で送致いたしております者の取調べに関係いたしまして、必要があると考えましたので、私はこういつた資料はお前の方にないかということを関係機関の者に尋ねたのであります。尋ねました理由は、さきにアメリカ大使館を通じまして、鹿地氏は昨年末当方の機関において取調べた事実がある。しかしその後釈放したという発表がありましたから、そのときの取調べの内容の中に、必要なる事項として、あるいは資料がどこかにまわつておりはしないか。それから鹿地氏の声明書でありましたが、心ならずも自白をした、これは本心ではないということがございました。私の今国警の方で取調べておりまする事件は、そのことと関連をいたしまするので、そういつた書類があれば私の方の取調べに非常に便宜があると考えましたから、さような資料もまわつておるであろうと考えるところに私は照会をいたしたのであります。そこで向うでは相談の上で、じやその資料を渡すから、お前の方の事件の参考の資料にしたらよかろうということで私は報告を受けたのであります。そういう次第でございます。それはどういう機関であるか、これは向うのいろいろな調査機関がありまするが、どんな機関があつて、どこのだれということは、私は申し上げるわけには参りません
  55. 小林錡

    小林かなえ委員 そうしますと、鹿地氏の手記を取寄せるということにお考えがついたのは、今お取調べ中の某事件の被疑者からそういうもののあることを言つたので、あなたが取寄せられる考えをつけられたのか、あるいは当委員会において猪俣委員鹿地氏の自白手記があるということを言つたので、あなたが取寄せるようになられたのか、それはどちらですか。
  56. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま申しましたように、必要は私の方の事件の取調べから、今申しました自白書なるものがあれば非常に便利である、これをほしいというのが動機であります。なぜそこにそういうものがあるかということを気づいたかということにつきましては、向うが取調べをしたということを発表しておりますし、鹿地氏は告白書を心ならずも書いた、こういうことでありましたから、あるいはそういうものが私の希望する資料に一致しておれば幸いであると思つて取寄せた次第であります。
  57. 小林錡

    小林かなえ委員 そうするとただいまお調べ中の――先日某スパイ嫌疑事件と言われましたが、その調べの方面から鹿地氏の手記というものが出て、そうしてお取寄せになつたのですか、この委員会からではなく、その者から鹿地氏の名前が出て、あなたがお取寄せになるようになつたのですか。
  58. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 鹿地氏の名前が出たか出ないか、ちよつとこれは今捜査中でありまするので、その点は差控えさしてもらいたいと思いますが、この書類があればこの事件を取調べるのに非常に都合がいい、こういうことに基いて、私はそういうものはないかということを聞いたわけであります。
  59. 小林錡

    小林かなえ委員 そうするとその手記をお取寄せになるあなたの動機は、当委員会猪俣氏が言われたことによるか、あるいは某事件の被疑者から鹿地氏の名前が出て、そうしてこの手記の話が出たためであるか。これは今捜査の秘密であるから、ここで申し述べるわけにはいかぬ、こういうことになりますか。
  60. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その点はつきり申します。私の方の取調べ中の事件関係をして必要を生じたのであります。そこでそういう資料がここにありはしないかというヒントをアメリカ側の声明と鹿地氏の声明というものから得まして、そこに行けば私の欲する資料があるであろうというので、向うに依頼をしたわけです。
  61. 小林錡

    小林かなえ委員 それは両方ですか。
  62. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 一方はどこにあるかということを考え出したのはヒントです。私の取調べておりまする事件の被疑者が、向うの方にそういう資料がありましようというようなことを言つたのではありません。被疑者を調べて参りまするとこの事件関連をいたしまするので、この関係の書類があれば被疑者を取調べるのに非常に都合がいい、かように考えた次第であります。
  63. 小林錡

    小林かなえ委員 それではお伺いしますが、その手記の日づけはいつになつておりましようか。
  64. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この日づけもただいま私はちよつと明瞭にいたしかねるのでございます。
  65. 小林錡

    小林かなえ委員 それでは日づけを答えていだたくわけにいかぬというのでありますが、それは昨年の十二月の釈放される以前であるか、あるいはことしに入つてからであるか、そのくらい広い意味の御答弁は願えませんか。
  66. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その自白書は、ちよつとそれも差控えさせていただきましよう。(「去年か今年かくらいははつきりしたらいいじやないか。」「日付くらいはいいじやないか。」「アメリカ協力するな。」と呼ぶ者あり)私は、場合によれば鹿地氏にそれはいつお書きになつたのかを聞きたい、聞く必要があるわけであります。従つてただいま私の持つておる資料は、いつごろのどういうものだということを先に申し上げることは、取調べ上どうかと考えるのであります。そういつた捜査の面から、いつ書いたものだということを、ちよつと私は申し上げかねるのであります。     〔「国警長官はもう少し誠意をもつてつたらどうだ、日付を言つても捜査上何の関係もないじやないか。ここはみな商売人ばかりなんだから……。」と呼ぶ者あり〕
  67. 小林錡

    小林かなえ委員 私の考えからいえば、その手記が昨年の十二月以前の日付になつておるならば、その手記というものが長い間向う機関であるか、だれであるか知らぬが、その人の手元に今日まで保存されておつたということになる。そうすれば向う不法監禁をしておつたということの信憑力が非常に強くなる。それがもし最近に至つてできたものであるということになれば、これもまた引続いて監禁されたという証拠が非常に深くなるのでありますが、しかしこの事件はすこぶる怪奇な事件で、私は両方を疑問を持つて見なければならぬ事件だと思いますから、そこでその日付というものが非常に重要な意味をなすものだと思うのであります。それを打明けていただきたい思うのですが、捜査の秘密上しかたがないと言われるならば、これ以上追究いたしません。  最後にお伺いしたいことは、その日付がありまか、ないですか。ただ名前だけで日付がないのですか。
  68. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 その点もまず鹿地さんに、一体自白されたという内容はどういう内容であるか、いつごろどういうことを自白されたのか、これを私は捜査上伺う必要があると思いますので、それまでは一応差控えさせてもらいたいと思います。
  69. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと委員長から申し上げますが、齋藤国警長官一昨日の委員会にお見えになつていられない席上での事柄でありますから申し上げるのでありますが、一昨日の委員会の席上で、ただいま御出席の外務省の井関国際協力局長から発言がありまして、アメリカの出先当局より鹿地氏のスパイ関連した書面があなたのところへ届けられ、あなたがその書画を確認して、そしてアメリカの出先機関もあのスパイ事件の公表をするのだ、こういう発言がありました。だから書面の経緯というものは一応説明された形になつておるのでございますが、その範囲で小林君の質問に対してもお答えが願えればけつこうだと思います。なお当初鹿地氏を逮捕したのだということは、占領中でございますが、鹿地氏を逮捕したことがあるということはアメリカ軍当局においても確認いたしておる事実であります。そうしてなお鹿地君からはスパイの調書に対する反駁文も新聞を通じて出ておるわけでありますから、それらを勘案して、答えられる範囲でもう少し答えていただきたいと思います。
  70. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま委員長の御注意がありまして、今までの答えを考えてみたのでありますが、やはり私が今申し上げたことに尽きるのでありまして、鹿地氏が区反駁をしておられますのと、少し違つた点もこちらにありまするので、私はこの目白書を受取りましたのは十日の夕刻で、それははつきり申し上げて何ら捜査上支障はございません。その内容を申し上げますることは一方の事件の取調べに関係もありますし、また鹿地さんの方にも伺わなければならぬことがございますので、先ほど申し上げます通り、これは差控えさせてもらつた方がいいと思います。
  71. 猪俣浩三

    猪俣委員 鹿地の自供調書がアメリカから渡されて、あなたの管理下にあるということは明らかになりましたが、その日付を明らかにされないところに、私ども多大な疑惑を持つておる。と申しますのは、この事件に対しまして私ども不法監禁があつたことを確信してかかりました。これが公にされましたときに、アメリカ側がいかなる手を打つかということも想像いたしました。その想像の筋書通りな手を打つて来ておるのです。そこで私どもアメリカの打つ手に国警の皆さんが協力しておるのじやないかという疑いを濃くして来ておる。何がゆえに日付を発表できないか。発表すれば、あなた方のトリックが暴露するからであります。これは鹿地氏が新聞の発表スパイとされたことに対しまして抗議文を正式に発表しておる。これは鹿地の直筆でありまして、あなたも鹿地の筆跡はおわかりのはずであります。アメリカの提出されたものが鹿地自白調書であることを確認されたのであるから、これをごらんになればはつきりする。昨年の十二月二日に自殺未遂をやつて、その後間もなく、十二月の半ばだと思うころにキヤナンという少佐に、自分が瀕死の状態であつて頭がもうろうとしておる際に無理に書かせられたということをはつきり言つてつて、これは新聞にも公表されております。鹿地にあなたがお聞きにならぬでも、鹿地の書いたという自白調書の日付は鹿地自身が告白しておる。それを根拠にして御答弁をしていただけばいいのではないか。私がお聞きしたいことは、この三橋某なる者の電波法違反事件というものは一体いつさようなことがあつたというのでありますか。鹿地は二十六年の十一月二十五日以来アメリカ軍に監禁せられておつたのでありまするから、それ以前だと思われますが、いつのことでありますか、それをまず第一に飼いたいと思うのであります。
  72. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 それ以前から最近まで続いておつた事件でございます。
  73. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、鹿地自白したりと称するのは昨年十二月の話であります。それがその後ずつと継続して今日まで三橋某なる者がさような活動をやつてつたとするならば、これに対してしかもアメリカ軍が知つてつたとするならば、何らの処置をとらずして放任し、今鹿地が釈放いたされましたる直後にかような捜査を進めて、そうして鹿地スパイの嫌疑をかつけておるということに対しましては、私ども多大の疑問がある。あなたは一体、一年以前から継続して活動しておつた、これがスパイ活動であるとしますならば、どういうわけでアメリカ軍の機関がこれに対して処置しなかつたのであるか、それを今日急に逮捕したり、監禁したりと称するのはいかなる理由であるか、その点について明らかにしていただきたい。
  74. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 スパイ活動と申しますか、その一部分をなす活動と申しますか、これは捜査の技術上いつやつたらいいかという問題が、非常に私は多い事件だと思います。ただいまの検挙をいたしておりまする三橋某が、電波法違反でございまするが、これを取調べてみたところが、大分以前から今日まで続いて来ておつたということでありまして、三橋がこういう電波法違反をやつてつたということを私の方が知つたのは、そうらしいといううわさを聞いたのはごく最近でありますが、確実にこれを知りましたのは、本人を検挙し、本人自白によつてわかつてつたのであります。今これは取調べ中でありますので、その取調べを進めるに従いまして、私は鹿地氏の書かれたという自白書の内容が――内容としいいまするか、その事実が真実であつたかなかつたかということがはつきりして来るだろうと思う。私は鹿地氏をスパイ事件に仕立てようと思つて考えておるのではありません。現在あげ、現在本人が自供しておる事柄が事実であるかどうかというその真実を求めようとしておるのであります。これがはつきりして参りますならば、あるいは鹿地氏はそういう嫌疑はかけられたけれども、詳細な捜査の結果、そういう嫌疑は全然なかつたのだという結果になるかもしれません。私はただいまの段階ではそういう心境で真実を発見したい、これに努めておるのでありますから、先ほど国警鹿地氏をスパイスパイだと宣伝しておるとおつしやいましたが、これは私は非常に心外に存じております。真実の発見が私は警察の務めだと考えております。
  75. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が国警が宣伝に努めておると言うたことに対して、あなたは憤懸を感ぜられておるようであるが、われわれから見ると、あの発表なるものは奇怪である。なぜならば本日もその日付さえ発表できないという。捜査の過程である、すべてが発表できない。ことに三橋なる人物の名前についても、発表なさらない。しかるにそれに関連ありやいなやほとんどまだ疑問に属する鹿地亘の名前だけを出されたのはどういうわけか。もし捜査中で名前が出せないというならば、鹿地亘の名前だけを出されたことに対して私どもは疑問がある。しかもアメリカ大使館発表いたしましたと同時に、さような発表国会でなされておる。主犯者の名前も明かさず、日付を言うこともできず、すべてが疑問に包まれておりながら、鹿地亘なる人物関係しておることだけを新聞にアメリカ大使館と同時に発表されたというその心情を承りたい。
  76. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は自発的に発表いたしたことは一つもございません。御質問がありましたので、御質問お答えいたしただけであります。ただいまも鹿地氏の自白書はどうして手に入れたかとおつしやいましたから、これに答えるのには、鹿地氏の名前が出ざるを得ない。
  77. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、あなたが参議院の外務委員会鹿地の名前を出されたのは、委員質問において出されたのであるか、委員質問において出されたならば、ほかのことについても三橋なる者の名前を言われたのであるかないか。しかるに主犯者の名前を言わずして、関係の薄い鹿地の名前だけを、こういうデリケートの際に発表なさるその心情を承りたいのです。
  78. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 参議院の外務委員会の私の答弁を、速記録によつてお調べをいただきたいと思います。
  79. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおあなたはもう鹿地亘なる人物関係しておるやの発表をなさつておるから、私どもはあなたにもつと内容を明らかにすべき責任があると思うのであります。鹿地の名前だけぽつと出して、あとはもう秘密だ秘密だということは、鹿地にとりまして実にこれは心外千万のことである。名前を出した以上はある程度のことは明らかにしていただきたい。その意味におきましてお尋ねをするのでありますが、この鹿地の自供調書の中に、三橋正雄なる者の名前が書いてありますか、ありませんか。
  80. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほど申しましたように、これは取調べの済むまではその自白書の内容の公開はごかんべんを願いたいと思います。取調べが済みましたならば、あるいは公開ができる事態もあろうと思います。
  81. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はしいてあなたに公開を迫るのじやないけれども鹿地亘の弁護人としての立場から考えましても、鹿地亘の名前を出されました以上は――そうして鹿地はそれに対して非常に憤激をもつて抗議をいたしておるのであります。それに対しましては、あなた方が明らかにしなければならぬ、さように明らかにできない事情であるならば、何ゆえに鹿地亘の名前を出したのであるかそれを聞きたい。
  82. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は鹿地亘の名前を自発的に出しておるようにおつしやいましたが、けさからのここにおける答弁にいたしましても、参議院の答弁にいたしましても、この名前を出さないでは、私は答えができないのじやないかと思うのであります。いわゆる鹿地亘氏に関係をしてお聞きになつておられまするから、その名前が出ざるを得ない。今検挙しておる事件はどういう事件であるかとお聞きになれば、これはその名前は出ません。私は出す必要はないのであります。無用に出しておるようにお感じになられまするが、ただアメリカ大使館発表に、鹿地亘の逮捕はこういう容疑で逮捕したのだということの発表はいたしました。私の方としては、ちようど関連事件があるから、その真相を究明している。これが事実であるかないか、その事実を明らかにしたいと思つている。そこで私はこれが白らしいということを申し上げるのも、黒らしいということを申し上げるのも、今捜査の段階中でありますから、かえつていろいろな予断を起させるようなことを申し上げるのはおもしろくないのじやないか、こういうように考えまして、捜査の内容にも支障を来すのではないかと思うのであります。
  83. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは速記録を調べましてからいずれまた質問いたすことにいたしますが、あなたがさようなデリケートな心づかいでなされたとするについては釈然たらざるものがあります。かようなデリケートな事件に対して、鹿地亘の名前を出してスパイの嫌疑があるということを言われたら大衆にどういう印象を与えるか、そのくらいのことをあなたがわからぬでおいでになりますか、それは捜査中であるから答えられないとおつしやつてすべてのことを否認なされている以上は、鹿地亘の名前を出さなければならぬ道理は私はないと思う。しかしこれは速記録の一間一答を調べましてからなお尋ねいたすことにいたします。
  84. 花村四郎

    ○花村委員 関連して。ちよつと国警長官にもう少しはつきりさせたいと思います。初めにスパイ事件関係のある某と言うたのは、ただいま問題になつた三橋正雄を意味するものですか。
  85. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 電波法違反で検挙したというのは三橋正雄であります。昨晩か今日検事局に送りました。
  86. 花村四郎

    ○花村委員 その前にスパイ事件関係のある某と言われた被疑者とは違うわけですか、同じですか。
  87. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 前にとおつしやいますが、この前の委員会でありましようか
  88. 花村四郎

    ○花村委員 そうです。
  89. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 違う人間ではありません。同一人であります。
  90. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、身柄をいつ拘束して、そうしてその拘束するときの逮捕状はいかなる裁判所で出されて、どこに勾留されておるか、その点を明確にしてもらいたいと思います。
  91. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 本年本月十日に令状を執行いたしました。本人は都下の北多摩郡の保谷町の人間でありますから、それの所属をいたしまする裁判所の令状を受けまして、立川署に勾引をいたしました。
  92. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、八王子の裁判所ですね。
  93. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さようでございます。昨日の夕刻検事に引継ぎ検察庁に渡しました。
  94. 花村四郎

    ○花村委員 そういたしますると、その被疑事件の問題になつたのはいつですか、被疑事件が問題になつて、そうして逮捕状を出すという段取りになつたわけでしようが、その被疑事件を警察で被疑事件として取扱うに至つた日は、何日ですか。
  95. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察で取扱うに至りましたのは、その前日に本人が、自分は身の危険を感じたと称して自首して参つたのであります。当日は任意に取調べをいたしました。そのうちに電波法違反事件がありましたから、それによつて令状を執行いたしました。そうして今日の状況になつております。警察権を発動いたしました直接の動機は本人の自首であります。
  96. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、これは少くとも最近の被疑事件として扱われるに至つたことは明瞭でありますね。
  97. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  98. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、先ほど小林君から質問があつたのでありますが、逮捕令状が出て、そうして三橋というのを逮捕して調べた結果、鹿地のその被疑事件に牽連性があるということを認められたわけですか。
  99. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  100. 花村四郎

    ○花村委員 そうしてそれを認められたのは、もちろんこの三橋正雄の供述によつて、この鹿地関係があるということが認められたわけですか。
  101. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 本人の供述によりまして、先ほど申し上げますような自供書というものがあれば、その本人を調べるのに非常に都合がいい、こういう状況を私は判断したのであります。
  102. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、この三橋の供述の上から鹿地関係があるということを発見したのでなくて、鹿地の衆議院における取調べ等の関係を見て、それで鹿地の言うておることがこの三橋の事件関係があると認められたわけですか、それはどつちですか。
  103. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 三橋の自白内容から関係がある、三橋の取調べによりましてそのことをはつきりと知つたわけであります。
  104. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますと、この鹿地については何らの被疑事件はないわけですね、ありますか。
  105. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまのところ、被疑事件はございません
  106. 花村四郎

    ○花村委員 そうしますと、鹿地の供述によつてこの三橋の事件関係がありそうだという考えを持たれたように解釈できるのですが、そういうことであるならば、鹿地の供述書といいますか、自白調書といいますか、そういう書類は別に秘密にすべきものでもなし、また秘密にしなくてもいい書証じやないですか。いわんやその書類がいつ成立したかというような日付まで挿査に関係があるというのは、どうもわれわれには納得ができないのですが、何らの関係はないじやないですか、もう少し冷静に考えられたらどうですか。
  107. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 やはり本人の自首して話しております事柄とそれが一致をするか、本人の供述をさらに他の方面からも裏づけをして行く必要もありますので、内容につきましては当分発表は差控えたいと考えております。
  108. 花村四郎

    ○花村委員 その点がよくわからないのです。三橋の被疑事件に少くとも関係を持つておるということが、三橋の事件の取調べの上ではつきりしたということであるならば、これは鹿地の調書を事件に援用するということは当然なことでしようが、しかしながら、三橋の事件調査の上からは少くとも鹿地という者がその被疑事件のうちに現われて来ないという捜査の過程において、全然別関係鹿地が供述した調書が関係があるとかつて国警本部の方できめて、そうしてその調書を援用するということであるのですが、少くとも鹿地は何ら被疑事件には関係ないのですから、そういう関係のない人の自供書にしても、あるいは供述書にしても、あるいは調書にしても、国警発表するということには何らさしつかえもないことであるし、また法律上もその発表を拒むいわれはどこにもないわけじやないですか。それは一体刑法の何条によつて言われるのですか、その条文まではつきりしてもらいたい。
  109. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 鹿地氏は、私の方の今の取調べの段階では、これは被疑者というような考えでは見ておりません。今の事件といたしましては……。しかし現在の被疑者の被疑事実と関係を持つておる――場合によりますと、どう発展するかわかりませんが、そういうことを言いますと、また妙な思わせぶりをすると言われますから私は申しません。ただ今調査中である、しかも私の借用いたしましたのは、私の事件を固めるため、また真実を明らかにするために借りましたのであつて、これをただいま公表してどうか、向う機密文書でありますから、向うの許しも得なければならぬ ただそういうもをのお前の方に貸したということを向う発表いたしましたし、私の方も借りたということを発表いたしておりますので、その内容の詳細は今しばらく御猶予をいただきたい、いずれ向うの許可も得、また発表する段階になりますれば自然発表するということもあり得ると思います。相当の時期をお貸し願いたいと思います。
  110. 古屋貞雄

    古屋委員 重なるようですが明確にしたいのですが、三橋の自首はいつ何時ごろ行われたのでしようか。
  111. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 九日の夕方ですか、夜と承知しております。
  112. 古屋貞雄

    古屋委員 八王子の裁判所の逮捕令状が出ましたのは、長官は九日か十日と言われますが、明確にしていただきたい。いつでしようか。
  113. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 逮捕令状は十日の午後であります。家宅捜索の令状ももらいまして、同日家宅捜索もいたしました。
  114. 古屋貞雄

    古屋委員 それから後に取調べに着手されたのでしようか。
  115. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 自首して参りましたときに、即刻任意取調べから入つております。身柄を拘束いたしましたのは十日の午後になつております。
  116. 古屋貞雄

    古屋委員 そういたしますと、鹿地は被疑者ではない。しかるにアメリカ側に要望いたしました書類の参りましたのが十日の夕刻、時間的にまことに私どもはふしぎに思うのですが、さような捜査方法が行われるのでありましようか。われわれは三十年でも弁護士をやつておりますが、さような捜査方法は、されたことも聞いたこともなければ、さような捜査をした事実を承つておりませんが、あまりに早いようでありますが、時間の点はどうですか。すなわちアメリカから強要されて、そういう問題にくつつけようというようなことに利用されておるんじやないですか。
  117. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私の方は、逮捕をいたしましたら二十四時間以内に検察庁に送らなければなりませんので、なるべく早く事実を固める必要があります。九日の晩に自首いたしまして夜通し自供をいたしました。その証拠固めとして、一方は家宅捜索をし、本人を逮捕し、一方は資料の収集をいたした、さようなわけでありますから、早過ぎるといつてしかられるわけはないと思います。
  118. 古屋貞雄

    古屋委員 何がゆえに鹿地の書類――これは重要な国際関係を持つておる書類だと思うのでありまするが、先刻小林委員からその点については御質問があつたようですが、本件の書類を取寄せるに至りました動機があまり明確になつていません。まことに私ども納得行かないのです。相当の期間の御調査を遊ばされてから後に、直接鹿地関係があるという事実を発見されてから取寄せるか、あるいは照会をするというなら納得が行くのですけれども、捜索し、逮捕し、即刻外国側に向つてさような証拠はございましようかという照会をするというような、その心境、捜査にどういう必要でやつたのか、この点は小林委員からも質問されましたがはつきり申しておられぬようですが、明確に承りたいのであります。
  119. 犬養健

    犬養国務大臣 これは猪俣委員のお言葉もありましのたで、最後に総括的に当局の態度を申し上げようと思いましたが、それを申し上げませんと、御議論がだんだん深刻になつて参りまするので、委員長のお許しを得まして、この際総括的に鹿地氏並びに検察庁に昨夜まわしました被疑者の問題についての心構えを申し上げたいと思います。  猪俣委員鹿地氏の弁護人として、鹿地氏の名前だけが出て、あとのことがあいまいであるというお感じで義憤を発せられる気持もよくわかつております。また古屋委員の今言われた根本の意味も私はよくわかつているつもりでございます。この事件が起りまして以来、連日鹿地君をスパイに仕上げるというような方針でやつてならないことは、互いに戒め合つている次第でございます。日に何度となくそのことを念を押し、また当局ももちろん同意の上にそうやつているのでございます。三橋という被疑者が、身辺の危険を感じて自首して参りまして、いくばくならずしてアメリカ側にある関係書類を取寄せる方がいいという感じを早くも持つたのであります。同時にこの問題は、よほど当局が説明を慎重にいたしませんと、先刻猪俣委員が仰せられましたように、鹿地氏の人権にかかわることでありますので、その点、私どもはこの戒めからあいまいな感じを花村委員に与えたと思うのであります。申し上げ得ることは、身辺の危険を感じて自首した、なぜ危険を感じたんだという尋問になりまして、どうも関係書類を取寄せてはつきり裏付けをした方がよい、また三橋正雄なる者の人権にも関係することでございますから、それで至急取寄せたのでありまして、まことにこれは思わざるところによいかもが来たというようなそういう態度でやつているのではありません。そういう態度でやつたら、この事件が済んだあといずれ真相がわかることでありまして、当局として正しい道でなかつたことはもう必ず暴露する。私も就任中そういう政治をとつたという足跡を残したくないので、昨日もここにいる刑事局長と、できるだけそういうようなことにならないように十分に冷静にやろうじやないかと言つて、夕方特に国会内の部屋に来てもらいまして、私は注意を喚起した次第でございます。心構えば最後に申し上げようと思いましたが、これを申し上げませんとなかなか議論が活発になりますので、委員長のお許しを得て中途で申し上げる次第でございます。
  120. 古屋貞雄

    古屋委員 ただいま法務大臣から心構えを承りました。ただ最後に一点だけ。本日の毎日新聞を見ますと、UPの支局長の記と書いてこういう記事があるのでありますが、これで私どもは最初に日本側鹿地の拘禁をしたときに通告があつたのではないかという疑いをこの記事から受けるのでありますが、こういうことを書いております。「〔UP特約(東京)ポーツ東京支局長十二日記〕 十二日夜記者(ポーツ東京支局長)が確かな筋から得た情報によれば、米中央諜報局(C―A)は鹿地亘氏をスパイ容疑で日本側国警の承認を得て昨年末から去る七日夜まで拘禁していたといわれる。」かような記事がございますので、ただいま私ども質問いたしましたのは、国警連絡があつて承知しているので、非常に早く捜査あるいはこの書類の取寄せに着手したという感じを持つておりましたので、実は質問したのであります。ただいまの法務大臣心構えで大体その点は了解しました。
  121. 猪俣浩三

    猪俣委員 今古屋君からの質問がありましたが、国警長官にもう一度お願いしたいのであります。今向うの情報では、鹿地を監禁したことは国警に通報があつた、あるいは了解があつた、あるいは了解の上でやつたというようなことになつておりますが、あなたはさようなことを了解したことがふりますかどうか
  122. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 UPの通信は私はまことに意外としたのでありまするが、鹿地を逮捕するあるいは拘禁するについて、国警が了解をしたあるいは国警に通告があつたということは絶対にございません。私は全然承知いたしておりません。従いまして、UPの東京支局長に私は抗議を申し込むつもりでいるわけであります。真相を釈明してもらおうと思つております。
  123. 猪俣浩三

    猪俣委員 実はこの問いをあなたに発したのは、多少私ども調査にも疑惑があるのであります。それは鹿地亘氏がずつと岩崎邸、川崎、茅ケ崎、それから最後の代官山、四箇所を転々として軟禁されたのでありますが、それに終始ついて歩いていたのは光田軍曹と称する二世のアメリカ軍人で、鹿地君が言うたのでは、この男がときどき、警察には連絡してあるから心配ないということを言つてつたそうでありますが、山田善二郎という証人に聞きますと、警察はまあ連絡してあるからいいが、これが現われると新聞社がうるさい、こういうことを数回漏らしておつたということを私は聞いているのであります。そこでさようなことがもしあるといたしますと、はなはだ遺憾と存じまして、念を押したわけでありますが、間違いありませんか。
  124. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は存じませんし、鹿地氏の捜索願いが出まして以来あらゆる情報を集めているのでありますが、どこの警察からも、どの自治警からもそういつたことがあつたという報告は接しておりませんから、さようなことは私はなかつたものと信じております。
  125. 猪俣浩三

    猪俣委員 私もさように信じたいと思います。ただ向うかうさかねじが出せない、出されないように、あなたの方のさような事実のないことの立証をよくやつておいていただきたい。最後になつて実はあつたのだ、向う不法監禁したのじやなかつたのだというようなことにされましては私どもはなはだ迷惑です。また向う側の態度がどうかわつて来ないともわかりませんので、これは念を押しておきます。  それからなお、妙な質問になりますけれども、三橋正雄なる人物は確かに、あなた方が逮捕したと称し任意出頭したと称する人物は三橋正雄なる人物でありますか。それは間違いありませんか。
  126. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまの取調べの段階では間違いはなかろうと思つております。なお検察庁でもお調べになつていると存じます。
  127. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは法務大臣もおいでになりますから、とくとその点を御調査願いたい。ある場合によりますと、これは仮名であります。これは例のキヤナン中佐から出た名前でありますが、この鹿地を監禁いたしました二世の軍人は、光田に橋本に福本正、それから野村何雄、この四人が関係している。光田のミツに橋本の橋に、正の正に、野村何雄の雄、これをくつつけて三橋正雄というのをつくつたんじやないか、こういう疑惑もあるのであります。そうしてこれは彼らの傀儡である。これを多少私は疑つて考えになつてよろしいと思う。なぜならば七夕の夕刻出て、八日に鹿地が釈放されたことか発表になる。九日に任意出頭している。いわゆる短波を使つてスパイをやろうというような人物が、恐れ入りました、生命の危険でござんすと言つて任意出頭したということは解しかねる。十日には鹿地スパイしたものであるという大使館発表が奉り、国警長官国会における発表がある。伊関政府委員は、国警長官は確認したと法務委員会で証言している。これは伊関さんにあとでこの心情を承りたい。ここには奔易ならざる心情を含んでいる。国警外務省アメリカ大使館、どうもこの三者の連絡があまりにつき過ぎている。私ども多大の疑惑を感ずる。最後のよりどころは法務省でありまするがゆえに、犬養国務大臣の試金石だ。これはあまり常識に法律をマツチさせたような常識論を振りまわされてはいけませんが、高度の文化人としての人道主義に立つて、あなたが決定的に究明されことを希望いたします。
  128. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと猪俣さんにお聞きしますが、この問題の起りは鹿地君がこの前の当委員会証人に出たとき、当然触れなければならないこの問題に触れなかつた。そこでスパイ発表が後に起つて委員会のこうした発言も起きているわけなので、どうしても鹿地君にもう一度来てもらつて、これらの点を究明する必要が生れたのじやないかと思うのですが、どうでしよう。出られますか出られませんか。
  129. 猪俣浩三

    猪俣委員 鍵は当法務委員会においてわれわれが取上げましたのは、人権擁護立場からで、軟禁されておつたことがあるのかないのか、不法監禁であるのかないのかという点で私ども調査に乗り出したのです。その結論がないうちにこのスパイ問題が出て来たのであります。私は鹿地氏の健康状態が回復するとともに極力出席をさしたいと思いますが、これはどうも当法務委員会の職責上適当であるかどうか疑問であり、これは警察から調べていただきたいと私の方では考えておりまして、当法務委員会に出る前に、なるべくすみやかに警察に調べていただきたいと私考えております。なおその間にも大体の輪郭につきまして当委員会に証言することは、私極力させたいと思います。あの日は二十分というのをそれでも一時間近くになりましたので、帰つてから三十八度三分の熱を出しまして、二日間絶対安静になつてしまいました。これは怪奇な事件でありますので、なかなかあれだけのことでは真相はわからぬ。  なお最後に犬養大臣にお尋ねするが、犬養大臣鹿地の証言を見て峰から峰だけわかるが、谷間々々がわからぬと仰せになつている。あるいはそうかもしれない。但しあなた方に伺いたいことは、一体アメリカ軍の発表アメリカ大使館発表は峰や谷がわかつているのかどうか。これに対してあなた方が疑問的な言葉を発せられたことを聞いたことがない。われわれがこれだけ具体的の事実を出して、国会活動して相当の事実が明らかになつているにかかわらず、あんな実に簡単きわまる、逮捕したがすぐ釈放したということを言つております。しからばいつどこでだれが釈放したか、それくらいのことを発表する義務があるわけなのですが、一切それを発表しない。そうして今度は大使館発表として、鹿地スパイ事件関係があつて逮捕したというようなことを発表した。この内容も明らかでない。これは一体峰なんだか谷なんだか、峰も谷もさつぱりないじやありませんか。これに対してあなたは疑問を持たれないかどうか、この発表で満足せられておるかどうか、あなたの御所見を承りたい。
  130. 犬養健

    犬養国務大臣 先日、今お話のように参議院の外務委員会に私と国警長官と呼び出されまして、いろいろの委員から質問を受けました。御承知のように老練な委員でありまして、先ほどの齋藤長官の話に触れるのでありますが、いろいろの質問が急でありまして、いろいろ御返事をしている間に、今検察庁に送りました被疑者と鹿地君の問題が答弁に出て来たわけでありますが、そのときも長官と私とは、できるだけ鹿地君の人権を尊重するようにやつて行こうと言つて、私語をしながら答弁に立つていた次第でございます。今猪俣委員から御指摘の、鹿地君の話は真実であろう、しかし山の峰と峰ははつきりしたが、そのつなぎについてどうもふに落ちない点もあると私が答えましたのは、委員の曾祢君の、何かふに落ちぬことはないか、全然ないのかという御質問を受けて立つた次第でありまして、アメリカ大使館の声明と比較して片方には谷がない、片方は大ありだというふうに言つたわけではないのでありまして、ここでは国際関係にも関連いたしますのでいろいろのことは申し上げかねますが、根本としてはあらゆるものについて念のためもう一度考え直すという態度をとつております。実は昨日も、押収いたしました物的証拠についても、念のためこうした方がいいじやないかという話を私自身から申したくらいでございます。あらゆる方面からの材料について、一応念のためこちらの認定において検討し直すというくらいの自主的な態度がなければ、この問題については公正と言えない、こういう信念をはつきり持つておりますから御了承願いたいと思います。
  131. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は伊関さんにあとで伺いたいと思います。
  132. 後藤義隆

    ○後藤委員 ちよつと国警長官にお尋ねします。本件は鹿地不法監禁されたかどうかということが事件の本筋でありまして、途中からスパイかどうかというふうな問題で横道に入つてつたわけでありますが、鹿地不法監禁されたかどうかということで重要な関係がありますのは、岩崎邸に鹿地が行つてつたかどうか、それから川崎に行つてつたかどうか、あるいは茅ケ崎に行つてつたかどうか、それからまた代官山の方に行つてつたかどうか、何のためにだれのさしずによつてそこに行つてつたか、いつからいつまでの期間そこにおつたかというようなことを調査するのが必要なことだと思いますが、そういう点について調査は行われておりましようか、どうでしようか。
  133. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 一応今まで山田氏の手記なりその他が出ておるのでありますが、これらの裏づけの捜査をいたさなければなりません。この地域が警視庁、茅ケ崎自治警、藤沢市警にまたがつておりますので、まず警視庁が中心になりまして他の自警ともよく連絡いたしまして、国警がその連絡の中心になつて調査を進めております。せつかく今警視庁でやつてもらつておるのであります。警視庁といたしまして一番大事なのは、やはり鹿地民に一切の事情を聞く、どこでどういうような人相のどういう人にどうされたかということを聞くことが必要であります。従つてまず警視庁で近く鹿地さんの健康の回復を待つてそういう段取りができる。一方ただいままでの材料によりまして裏づけのできる点は裏づけしたいと考えております。
  134. 後藤義隆

    ○後藤委員 重ねてお聞きしますが、鹿地に聞くこともちろん必要でありますが、鹿地は先日当委員会におきまして証言しているし、それから山田も証言しておりますが、なお関係アメリカ大使館の方にはそういうことを調査する気持はありませんかどうですか。
  135. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 それは外務省を通じまして、外交交渉アメリカ側調査をお願いしておられますことは、先ほどから外務大臣お答えになつてつた通りであります。
  136. 後藤義隆

    ○後藤委員 そういたしますと、国警としては、アメリカ大使館に対してはそういうことについて直接照会はしてないわけですね。また将来そういうことをする気持はありませんか。
  137. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 大使館に対しましては、国警が直接交渉するというつもりはございません
  138. 後藤義隆

    ○後藤委員 わかりました。
  139. 小林錡

    小林かなえ委員 法務大臣に簡単にちよつと一点だけお伺いしておきます。三橋某が非常に身の危険を感じて自首したというのですが、その身の危険は、どういう方面から来る危険を感じたのか、アメリカ方面からか、あるいはソビエト方面から、あるいは考えによつて鹿地関係方面というふうにもわれわれは想像つくのですが、身の危険を感じて自首したという、その危険はどういう方面から起つているか、その点をお伺いしたい。
  140. 犬養健

    犬養国務大臣 これもはつきり申し上げられると非常にいいのですが、それはなぜお前危険を感じているのかということになつて来まして、アメリカ側にある書類を読んでみる必要が出て来るので感じた、こういうことなんです。それをはつきり申し上げられるといいのてすが、これはみんな人権を尊重しなければならない関係がございまして、うつかり申すと名誉に関係いたしますから、もうしばらく御猶予願います。
  141. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は伊関政府委員にお尋ねいたします。あなたは昨日法務委員会で言つたことを御訂正になりましたので、人間いかなる場合でも失言もあり、言い違いもありまするから、それをあまり追究する意味じやないのですけれども、ただあなたの頭脳の中心において私どもどうも疑いを持つ点がある。それはきのうの発言というものは、ただ言い違いたという内容じやないのであります。それから米側発表いたしました後段の「鹿地氏がある国のスパイであつたという事実は、国警当局においても確認いたしております、これには間違はございません、それで国警当局と打合せた上でこの発表に対し同意を与えたということであります、」かようにあなたは非常にはつきりおつしやつた。取消す余地がない発言をなさつた。これはあなたはいかなる材料に基いてかような発表をなされたのであるか、アメリカ側からさように承つたのであるか、国警側から承つたのであるか、あるいは国警アメリカ大使館とあなた方三者の打合せの結果こういう信念を得られたのであるか、それを伺いたい。
  142. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 先ほども申し上げましたように、アメリカ側の、鹿地氏がスパイであつたという書面を国警長官が受取つたということを確認した、そう申し上げようと思つてつたわけでありますが、それが少し言葉が足らなかつたわけであります。
  143. 猪俣浩三

    猪俣委員 そんな言葉が足りないということじやないと思う。あなたはまだ前途有為な外交官であられますから、日本外交出目であることをお忘れ願わないようにしてもらいたい。元来外交官というものは、いわゆるフアツシヨ団体が攻撃するように軟弱々々ということは、私も当らぬと思う。外交団というものはフアツシヨ団体の連中よりも軟弱であるのは当然であります。しかし限度がある。かような、今日本人の一人の生命が抹殺せられるかどうかという運命のきわに立つてアメリカ大使館の面目を尊重することが大切であるか、わが民族の将来の生命の安全を保障することが大切であるか、これは重大な問題であります。その際にあなた方が、ただいたずらに外交官的頭のもとに――われわれの考えておりまする人権擁護、生命尊重、個人の自由尊重、これが民主主義の根本でなければならぬ。かようなことを犠牲に供してまでも他国のごきげんを伺う必要はない。ぼくはあなたのこの証言は、この鹿地スパイ問題が外交上非常に有利になつたような頭で、雀躍してこの発言をされて、少し言い過ぎてしまつたのではないかと思う。ほんとうに鹿地のことを考えるならば、かような発言があなたの魂から出て来ないはずである。私はそれを遺憾に存じます。しかもわが同僚の古屋君はあなたに念を押しておる。やはり同じ答弁をしておる。もう鬼の首をとつたような態度答弁をしておる。この答弁の中に躍動いたしておりまするあなたの魂に対して、私どもは反省を求めるのであります。デリケートなこの問題について、いやしくも政府委員として、国会の正式の委員会においてかような発言をし、翌日はこれをまるきり取消してしまう。これではいけないと私は思います。どうぞ日本の国の外交官、日本人の外交官だということをお忘れなきよう御努力願いたいと思います。以上であります。
  144. 田嶋好文

    田嶋委員長 他に御発言はありませんか――他に御発言がなければ、本日はこの程度に止めます。次会は来る十七日午前十時より、電源スト等に関する国内治安問題について参考人を呼びますから、御了承願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十六分散会