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1952-11-25 第15回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月二十五日(火曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 松岡 松平君 理事 小畑虎之助君    理事 石川金次郎君 理事 猪俣 浩三君       相川 勝六君    熊谷 憲一君       小林かなえ君    福井 盛太君       松永  東君    大川 光三君       清瀬 一郎君    後藤 義隆君       長井  源君    木下  郁君       田万 廣文君    古屋 貞雄君       木下 重範君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国連軍裁判管轄権に関する件     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  前日に引続き、英濠兵自動車強盗容疑事件について調査を進めます。  その前に委員長より警視総監に対してお尋ねをいたします。昨日警視総監お答えの中に検察庁より警視総監あて通達があり、その通達の線に沿うて、警視総監においては本事件処理しておるとの話でございましたが、法務検務第一五九三八号、昭和二十七年五月十七日付刑政長官発検事長検事正あての「外国軍隊将兵に係る違反事件処理について」との通達と、法務検務局検務第二〇二六九号、昭和二十七年六月二十三日付刑政長官発検事長あて在日国連軍将兵刑事事件に関する取扱い基準、」いわゆる清原通達でございますが、この二つが発せられておりますが、昨日お答えになりました検察庁からの通達に基く通達と称するのは、この両者のいずれかでございましようか、それとも別個に検察庁より警視総監あて通達が出ておるものでございましようか、この点を明らかにしておきたいと思います。
  3. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの点につきまして一応明確にいたしておきたいと思います。この二十七年五月十七日の通達に基きまして、東京地方検察庁検事正から東京地検検務第三六九号、昭和二十七年五月三十一日付をもちまして「外国軍隊将兵に係る違反事件処理について」と、こういう件名によりまして警視総監あて通達が参つております。これは大体清原通達とほぼ内容を同じくしておるものでございまして、これに基きまして警視庁においては刑事第一五八号、昭和二十七年六月十四日付をもちまして、刑事部長、警備第二部長連名をもちまして、各方面本部長関係課長警察署長予備隊長あてに、「外国軍隊将兵に係る違反事件取扱いについて」という表題で、先ほど述べました東京地方検察庁検事正よりの通報を伝達いたしておきました。さらにその後、正式ではございませんが、法務検務局検務第二〇二六九号、昭和二十七年六月二十三日付、刑政長官検事長あてのいわる清原通達につきましては、検察庁を通じましてその内容を承りまして、この両通達警視庁といたしましては七月の七日、八日、九日、管内の七十三の警察署長をそれぞれ三回にわけまして、この清原通達内容並びに検事正通達内容につきまして、刑事部長から詳細署長会議の席上説明をいたしまして、指示をいたしておきました。
  4. 田嶋好文

    田嶋委員長 発言通告がありますからこれを許します。古屋貞雄君。
  5. 古屋貞雄

    古屋委員 外務大臣に直接質問したいと思つております。本日御出席になつてから述べさしていただきたいと思います。
  6. 田嶋好文

    田嶋委員長 この場合警視総監から特に発言を求められました。これを許します。田中警視総監
  7. 田中榮一

    田中参考人 昨日私から濠州兵英連葦のおのおの一名ずつを、新宿区歌舞伎町の喜鶴ホテルから、二十二日の午後零時十五分に任意同行によつて四谷警察署に連行して、緊急逮捕したというように御説明申し上げましたが、これは私の思い違いでございまして、二十二日午後零時十五分、喜鶴ホテルにおいて右両名の兵士を緊急逮捕いたしたのでありまして、さように訂正さしていただきます。
  8. 田嶋好文

    田嶋委員長 この場合委員長より法務大臣に対して一言お尋ねをいたします。英濠兵自動車強盗容疑事件について警察での取調べは完了したと思うのでありますが、勾留状処置はいかよ、になつておりましようか、この点をお尋ねいたします。
  9. 犬養健

    犬養国務大臣 今朝九時四十五分でございましたか、とりあえず勾留状請求をいたしました。
  10. 田嶋好文

    田嶋委員長 その勾留状はもう出たのでございましようか。請求だけでございましようか。
  11. 犬養健

    犬養国務大臣 まだ出てはおりません。
  12. 田嶋好文

    田嶋委員長 発言通告がありますから、これを許します。松岡松平君。
  13. 松岡松平

    松岡(松)委員 法務大臣一言お尋ねいたします。新聞などによりますと、いろいろ吉田書簡とそれから清原刑政長官の発しました通達との間に矛盾があるように解釈できるために、いろいろな観測が行われているのでありまして、それでお伺いするのでありますが、現在法務大臣のもとにおいて、この自動車強盗事件犯人を抑留し、ただいまお聞きしますと勾留状請求をなさつたそうであります。その根拠は一体さきに総理大臣から出された吉田書簡に基いておやりになつているのか、それとも清原刑政長官通達に現われている精神に基いて処理されているのか、この点をひとつ明確にしていただかないと、われわれ了解できがたいものがあるように思われるのであります。言いかえて申しますると、吉田書簡で行きますると、その(4)に、「特別の重要な事由がある場合には日本国当局は、犯人を拘置しつつ、前記の(2)のような協議を直ちに行う。のような協議により四十八時間以内に決定が行われない場合には、犯人を、将来日本国当局に引渡すべきことを条件とし、その所属国軍当局に引渡すように努力する。」こうあるのであります。ところが清原長官の六月二十三日付の文書によりますと、「左の各号の一にあたる事件は、日本側において身柄を確保することとし、もし身柄日本側の逮捕に先立ち国連軍側によつて拘束されているときは、軍当局に対しその引渡を要求するものとする。」もう一つ先に「日本側において国連軍将兵身柄を拘束したときは、速やかに当該国連軍将兵の所属する軍の当局にその旨連絡し、なるべく円満な了解を得るよう努力すること。」こうありまして、殺人放火傷害致死強盗強姦の罪にあたる事件は拘束しておつて通告する。さらに国連軍側がこれを逮捕して拘束しておる場合には、この引渡しを要求するということに該当する場合のことになるので、昨日の本委員会における大臣の御説明によりましても、どうも清原刑政長官通達精神によつて処理しておられると思われ三のでありますが、まだ外務大臣も御出席になつておりませんので、私の外務大臣にお伺いしたい点もありますが、その精神は、結局外務大臣は一体独自な見解で交渉しておられるのか、やはり吉田書簡に基いて、その精神で折衝しておられるのか。そうすると、昨日の法務大臣説明趣旨との間に少し了解しがたいものがあるように思われるのです。この点を明瞭にしていただかないと、問題の焦点がここに来ておるために、新案どにいろいろな観測が行われて来ることになる、ある新聞によると、もう引渡すのだというようなことも書いておるし、いろいろまちまちな意見がここに出て来るわけです。出て来る根本はここの二つ精神にあるのじやなかろうかと思われるのであります。  それから身柄引渡した場合に起訴いたしましても、身柄相手方の軍へ帰属してしまうと、行動は自由でありまして、引渡すというのは外交上の約束なんです。はたして日本裁判権が実行できるかどうか、最後までこれを完結できるかどうかという見通しについての御意見もこの際伺わしていただきたいと考えております。大体今のところそれだけ伺つてあとでまた御意見を承りまして、さらにお伺いしたいと思います。
  14. 犬養健

    犬養国務大臣 松岡さんにお答えを申し上げます。私も順を追うてお答え申し上げますが、もし落ちた点がありますならば、御注意によりまして、またさらに答弁をいたしたいと思います。  ただいまの御質問一応ごもつともなんでありますが、この吉田書簡というものは外国にあてて出しましたものであつて清原通達というものは、それを根拠にしまして役所内部に内示したものであります。その両者書類種類の違いから、いわゆる文字ニユアンスが違うというようなことから、いろいろ先般来も御質問を受けていたのでございます。実質としましては、これは吉田書簡清原通達は、黒と白の二つ違つた文書というものではないのでありまして、吉田書簡精神を実際法の運用にあてはめたらどういうことになるかということを省内に内示したものが溝原通達でございます。従つて文字からいうと、後者の方がどぎついようにお感じになる点があるかと思うのでありますが、そごは国外に対して外交的に出したものと、国内で実務に携わつている者に対して注意を喚起したものとの種類の違いなんでありまして、この点は御了承願いたいと思います。先ほどお読み上げになりましたように、吉田書簡の(4)に「特別の重要な事由がある場合には、日本国当局は、犯人を拘置しつつ、前記の2のような協議を直ちに行う。このような協議により四十八時間以内に決定が行われない場合には、犯人を、将来日本国当局に引渡すべきことを条件とし、その所属国軍当局に引渡すように努力する。」というので、一見この方が非常に簡単なようにお感じになるかと存じます。しかし引渡すにしましても、ただ簡単に引渡すというのでないのでありまして、引渡すように努力するというのには、そこに何らかの必要な経緯、事情が所在しなければならないわけであります。当局といたしましては、犯人がまだ十分に犯行を白状しておりません。そのしないまま四十八時間来たから、それじやもう引渡す、そういうふうに私は吉田書簡においても解釈をいたしていないのであります。その点は当局処置を御了解願いたいと思います。この四十八時間以内ということでありますが、相手側でも四十八時間一秒過てももういかぬのだというふうな解釈はしていないようでありまして、そこは大分幅広く解釈しているように存じます。  それから一ぺん引渡してしまつたら、事実上もう一度よこせと言つても不可能なような場合になつてしまうのじやないかというお懸念があつて最後の御質問があつたことと思いますが、私どもの方でもそういうことにならないように、いろいろのケースをあげて、外務省を通じて折衝いたしております。また何か御不審がございましたら、再び答弁いたしたいと思います。
  15. 松岡松平

    松岡(松)委員 今の御説明でよく了解ができたように思うのですが、そうすると、吉田書簡の「当局に引渡すべきことを条件として、その所属国軍当局に引渡すよう努力する」という意味は、必ず引渡すという意味じやない、簡単に引渡すという意味じやない、こういう意味でありますか。そういうふうにおとりしてよろしゆうございますか。
  16. 犬養健

    犬養国務大臣 その点をもう一度お答え申し上げたいと思います。これは吉田書簡沿つてどもは仕事をしなければならないことは明白でございますが、その引渡すについて、ただ引渡すというわけに行かない。引渡すような処置を私どもがするような条件がそこへ整わなければならない。条件が整うについては、まだ犯人がすつかりしやべつておりません。しやべつていないまま向うに引渡すというわけに行かない。しかし目標としては引渡すように努力する、その努力には条件がいる、こういうことになつておるのであります。
  17. 松岡松平

    松岡(松)委員 それからこの吉田書簡に「特別の重要な事由がある場合」ということが出ておりますが、これはどういう意味の場合を想定しておられるのでしようか、清原通達にはこういう文句が出て来ないのです。そしてこの重要なる事由があつた場合というその決定は、具体的の場合にだれが一体するのか、重要な場合というのはどういう事案を一体さすのか、一応この基準をお考えになつておると思うのですが、そういう点についての明瞭な御説明を賜りたい。
  18. 犬養健

    犬養国務大臣 その点が吉田書簡清原通達文書の性質の違いから出ておるのでありまして、吉田書簡には、大ざつぱに特別の重要な事由と書いてありますが、私どもとしましては、それは清原通達に(二)とありまして、その(二)の中に(1)、(2)とありますが、これをさしていると解釈しております。読み上げますれば、「(1) 殺人放火傷害致死強盗又は強姦の罪にあたる事件、(3)その他国民の耳目を惹くか、被害が重大であるか又は犯行が悪質である等の理由から、国民感情上又は事件処理日本側身柄を拘束する必要がある事件」、これに当てはまると解釈しておるのであります。
  19. 松岡松平

    松岡(松)委員 これは結局外務委員会にも関連する事柄でありまして、かなり重大なことだと思うのですが、ほんとうのところ外務大臣におかれて、これはあくまで日本裁判権があると主張しておいでになりますが、これは途中で腰折れをなさるようなことがあるのではないでしようか。これは非常に重要な問題で、裁判権の確認さえ受ければ、身柄はもう引渡してもいいのだというようなうやむやなことで終られますと、国民意向はそういううやむやに終つてもらいたいという意向ではないと思う。この点はよほど法務大臣に私ども期待しなければならぬし、また要望しなければならぬことなのですが、筋を立てられる所存なのかどうか率直な意志表示委員会でしていただきたい。国民がこれを期待していると思うのです。
  20. 犬養健

    犬養国務大臣 御忠告はありがとうございます。これは筋を立てようとしなければ、実はもつと早く済んでしまつておるのでありまして、あくまでも刑事裁判権所在を確保すれば、あとは一切譲つてもいいというのだと、こんなに苦労しないでも済むのであります。刑事裁判権所在プラス納得のできるだけの条件が整わないことには身柄引渡しはできないということのために、この一両日いろいろ事態が延びている刑事裁判権所在について、最後に腰を折るということは私も予想をしておりませんし、そういう国民感情にさからうような処置をいたしたならば、日本のためにも苦労しておる国際連合軍に対して日本国民が心から友好国民として、腹の底からわき出る親愛の情が起らないことになるのでありまして、大局から見てやはり外交にさわりがある、こういうふうに考えております。
  21. 松岡松平

    松岡(松)委員 最後一言法務大臣に要望かたがた申し上げておきたいのですが、先ほども聞きましたし、昨日この委員会田中警視総監が述べらなているところによりますと、パツトンヘツプレスが両氏ともいまだ犯行に対する完全なる供述書に署名していないということは明らかであります。パツトンは述べておるが、まだ署名していないペツプレスに至つてはまだ完全なる供述をしていないというふうに話されておる次第です。本日もこちらで会議の席上ではありませんが、私的に聞きますとその通りだとのお話であります。もう一つ、この二人の共通的な言動の中に日本裁判を希望していない、自分の所属する軍隊取調べには応じたいというような意向が現われておることは明瞭であります。ことにパツトン供述しながら署名していない点、ヘツプレス向うの係官の立会いを要望している点などをみますると、この二人とも日本裁判権というものに服する意思を全然持つていないということは確認できるのです。結局これは日本国民感情国連軍のそういう今犯罪を犯しました人の心の中にも、日本裁判権に服しないという一つ感情が存在している。これが問題の一つの基底だと私は思うのです。結局向うにおいてもすでにそういう将兵のすべての人たちが、日本裁判権には服したくないのだという考えを持つて、また服すべきではないのだという考え方で、日本の領土の中を横行せられますると、今後こういう問題は山のごとく起る。これは私ども国連軍に対しても大いに要望しなければならぬので、遵法精神というものは、世界のどの国においてもその法に服さなければならないというのは、近世の文明国民考えなければならないことなのである。しかるにこの犯人二人について考えるならば、日本において罪を犯しても日本国裁判を受けない、自分の国の裁判は受けるのだという考え方の中に現われている一つ対立感情というものは見逃すことができない。これはひとり現准犯罪を犯した―あるいは犯していないのかもしれませんが、事案は一応犯したとして論議せられているこの二人について考えても、かようなことは明瞭に現われているということになりますと、今後かような問題は頻発すると見なければならない。従つて政府におかれましても―この問題はかなり重大な問題でありますし、われわれも大いに研究なければならぬ問題であります。この問題の協議のいかんによりましては、この問題はやがて大きく展開せられる可能性がありますので、先ほど申しましたようにどうぞ腰折れをなさらないで、現在この委員会で御説明なつ趣旨を貫徹せられて、国民の要望にこたえられることを切望してやみません。
  22. 大川光三

    大川委員 私は法務省当局資料提出を求めたいのでありますが、その前に申し上げたいことは、今や国連軍協定の交渉が進められておる折から、今回の英濠兵強盗事件の勃発を見たのみならず、この種事件がひんぴんとして起つておりますることは、私どものはなはだ遺憾とするところでございまして、現に本日のイヴニング・ニユース及びニツポン・タイムス等の報ずるところによりますれば、一昨日、すなわちこの月の二十三日には、国連軍将兵三名が山梨県下の中野村という村の商店で、ウイスキーをくれと称して家人がその品をとりに行つておる間に、千円を窃取したという事件があると報ぜられております。また昨日二十四日佐世保からの電報によりますればアメリカ兵三名がくつ直し屋西冨隆当三十五才方におつて、金を払わずにビールを飲ませて、その西富を山に連行して金九千円をなぐつて強奪した、しかもそれがために西富に治療一週間を要するの傷害を与えた、すなわち強盗傷人事件が昨日勃発いたして、アメリカ当局とわが方の当局が協力して、その犯人捜査にあたつておるというように報ぜられておるのでありまするが、はたしてこういう二つ事案当局報告を受けておられるかどうかということを伺いたのであります。  それに関連して、私の考え方といたしまして、特に資料の御提出をいただきたい。それは本年の四月二十八日、講和発行以後において、連合軍将兵軍属及びその家族にして、連合軍施設以外において犯した事案について、特に左に申し述べまする事項の調査をしていただいて、その御提出がいただきたい。第一番にはその犯人氏名所属国、年齢、地位、第二には犯行の日時、場所、被害者氏名、第三には事案の大要、第四には右事案に対する処置、すなわちいかなる判決が行われたか、あるいは身柄の処分はどうなつたかというようなことに関しまして、至急資料を当委員会提出されるように望むものであります。
  23. 犬養健

    犬養国務大臣 大川さんにお答えいたします。今お示し事件はまだこちらに報告が来ておりませんから、至急調べましてこの次の機会に御報告いたします。書類提出は可及的に至急提出いたしたいと存じます。
  24. 田万廣文

    ○田万委員 私まず第一に質問いたしたいことは、昨日当委員会におきまして、佐藤検事総長の御答弁の中に、本件取調べが済みましたならば、その場合に保証が十分であるならば犯人引渡しに応じてもさしつかえないと思う、応じたいというような御答弁があつたのでありますが、私どもはこの答弁に対しては多大の不満を感じておる。少くとも国際公法の原則からいいましても、現在の国際慣例からいいましても、本件のような犯罪については、明らかに日本国裁判権があるということは、これは顕著な事実である。しかるにかかわらず検察当局の御大として指揮に当つている佐藤検事総長言葉として、本件取調べが済んだ場合において、保証が得られるならば犯罪人引渡しに応じたい、むしろ応ずるというような意思の積極的な表明をされたことについて、私は非常に遺憾に思つているのであるが、法務大臣の御意見はそれに対してどういうお考えであるか、まずそれを最初に承りたい。
  25. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。私どもは根本的には吉田書簡の線に沿つてこの事件処理しておるのでございます。ただ検事総長がどう言われましたか、私そのときおつたのでありますが、言葉の重さ、軽さ、ニユアンスを覚えおりませんが、検事総長といえども、ただ無条件に渡すという心はないのでありまして、それに確固たる条件が備わらなければ渡すことには反対をしておる一人であると信じておるのでございます。
  26. 田万廣文

    ○田万委員 ただいまの御答弁の中にありました確固たる条件というのはいかなる条件をおつしやつておりますか。
  27. 犬養健

    犬養国務大臣 それはただいま外交折衝中でございますから、ここで公表いたすことは差控えます。しかしたびたび私が答弁に立つております言葉からお察し願いたいのでありますが、いいかげんなことで渡す気は毛頭ございません。さよう御承知願いたい。
  28. 田万廣文

    ○田万委員 国際関係のデリケートな問題があるということは、われわれも了承せなければならぬと思うのでありますが、少くとも従来の国際間の取引というものが、特に吉田さんのお考えは、これはひとしく国民の認めておるところと私は考えるのであるが、独善的なフアツシヨ的なやり方であるということは、これはおおうべからざる事実である。その点から申し上げて、今日こういうような国際間において、あるいは国内的に国の独立がはたしてあるかどうかというような重大な問題にまで発展しておるこの問題について、単に犬養さんのおつしやつたように、国際間の微妙な問題があるから言いにくいということだけで済もされない問題がある。少くとも岡崎外務大臣国民の総意を聞くという意味において公表されたこの問題についてのあの態度は、私どもはまことに尊敬しておるのであります。その趣旨を徹底する場合において特に法務大臣犬養さんとして、そういうなまぬるい考えではなくて、国民にこの際どういう条件であるならばこれは渡していいのだ、あるいは渡さないのだという結論的なものを示すことこそが、真に民主的な外交であると私は考える、またそうでなければならない。その意味からいつて、ある程度の条件というものをお示しくださることが私は一番望ましい今日の大臣態度ではないか、あえて質問したい。
  29. 犬養健

    犬養国務大臣 まことにあなたの御質問はもつともだと思うのです。ただ打明けて申しますと、これは相手方本国政府に請訓して、本国政府意見を聞いたりしておる最中ではないかと思うのです。そのときにどうもこつち側が委員会でその内容をしやべるということは、ちよつとむずかしいのではないかと思います。でき得る限り早くあなたにどういう条件であるかということを申し上げたい気持が私にございます。ただ相手国が今申し上げたようにどうも本国に請訓している最中に発表するということは無理なのではないか、まことに心苦しい答弁になりますが、御了承願いたいと思います。
  30. 田万廣文

    ○田万委員 しつこく食い下るようでありますが、この引渡し条件についてという問題は実に重大な問題である。それだけに慎重に構えておいでになることもわかるのでありますが、少くとも昨日の御答弁によつても、当然日本裁判権があるものとして取調べを進めている、犯人引渡し方請求があつたけれども、これは拒絶したというはつきりした態度をお示しになつている法務大臣としては、答弁がなまぬるいと思う。あくまでも日本裁判権があるという信念に立つて答弁なさるのであれば、私はりつぱなものだと思う。しからばその条件についてもこれこれの条件がはたして得られるならば一応引渡してもいいという御意見があれば、それを率直端的に、明確にここで御発表なさることが、一番望ましい民主政治家の立場でなければならない、あえてそれをくどいようではあるが、最後お尋ねしたい。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。わが方に刑事裁判権があると思えばこそ、二十四時たちまして勾留の請求を今朝九時四十五分にいたしたわけであります。単に外交上円満なことを期したいと思えば、そうではなく引渡すということも、これは友好国間のことでありますからあり得るのであります。それをも越えて勾留の請求をいたしたということは、とりもなおさず今なおお疑いもあるかもしれませんが、私どもがわが方に刑事裁判権所在がある、その態度はかえない、それであればこそ勾留の請求もしておる、こういう態度に出ておるのでありまして、これは御了承る願いたいと思います。それとは別個に、相手国がありまして、こちらの真意が本国政府に請訓中のものは、どうもこれはいかに軟弱だとおしかりを受けても、別に国際礼儀という立場から、申し上げられませんので、軟弱だというおしかりは数日甘んじて甘受いたしたいと思います。
  32. 田嶋好文

    田嶋委員長 この場合、岡崎外務大臣が御出席のようでありますから、委員長から一言お尋ねをいたします。  昨日当委員会で御発言を願いました以後、ただいままでの英濠強盗容疑事件に対する外務省の相手国との折衝の経過を、御説明願いたいと思います。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 昨日午後から今朝に至りますまで、引続きいろいろ協議をいたしておりますが、要するに一つには容疑者がやつたことを早く陳述するという方面の努力、つまり調査を早く進めるようにという努力もありますが、ただいま法務大臣の言われましたような法務省のお考えを、よく協議をして、先方にこれを伝え、また先方からの意見を聞いて、それぞれその間の折衝を行つており、昨日も大分おそくまでいろいろ協議をしたわけでありますが、まだ結論までに到達しておりません。というのは、法務省側の御意見もなかなかはつきりしたものでありますので、先方から言えば、国連協定等でまだ根本的な問題は双方の意見がまとまらないでいる間に、既成事実のようにしていろいろのことを押しつけられては、なかなか受けにくいという立場もあるのだと思いますが、引続き今なお話合いを進めておるような次第であります。
  34. 田嶋好文

    田嶋委員長 なお質問の方々におはかりいたしますが、外務大臣は時間の御都合があるようでありますから、外務大臣に対する質問を先にお願いいたしたいと思います。猪俣浩三君。
  35. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは外務大臣にも法務大臣にも関連があると思います。今身柄相手国に引渡すがどうか。法務省としては相当の条件を出されておるようであります。そこで私はそれに関連して、過去のことでありますが、横浜の地方裁判所の公判に付されたるフイリイピンの伍長であるロレンソ・エスグエーラ、これは巡査に傷害を与えた公務執行妨害事件のようでありますが、これが身柄引渡して必ず出頭するということで保釈になつたにかかわらず、裁判の始まる前にフイリピンに帰つてしまつた、こういう事件一つあつたと思うのであります。この処置がどうなつておりますか、これは岡原刑事局長でもよろしゆうございます。それからそれに対してどういうふうに外務省では交渉なされておるのである  それからいま一点は、これは本日だつたかの新聞にちよつと見えたかと思いますが、呉市における国連軍犯罪について、向うの検察官に身柄引渡してしまつた、こういうことがあるのでありますが、これはどういう条件引渡したのであるか。もし御存じであるならばお教え願いたいと思います。まずその点を一点お聞かせいただいて次に移りたいと思います。
  36. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 猪俣さんのただいまの御質問でありますが、その最初のフイリピン兵のロレンソ・エスグエーラ伍長の事件、これは御承知の通り先般の公判におきまして調べがありました後、保釈になりまして、その後本人が帰国したということが報ぜられましたので、その―十二月の一日か五日かどつちか今ちよつとはつきりした記憶がありませんが―公判の出頭は大丈夫かということを確かめたのでございます。その際本人その他のあれでは、また出て来るというふうなことで帰つたのであるから、そのつもりでいてくれというふうなことでございまして、それではこれは裁判所の問題でもあるし、一応その日まつで待つてみよう、それで向うの方で出て来ればそれでよし、出て来なかつたならば、そのときにまた大いにやろじやないかというようなことにただいま相なつておるような事情であります。  それからもう一つの呉の事件はきようの新聞でございますか、実はまだこちらに詳細の報告がございませんので、至急電報で照会いたしまして、なるべく早く機会にこちらに御紹介申し上げたいと思います。
  37. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお、これも広く犯罪あるいは裁判権に関係する問題だと存じまして、幸いここに外務大臣法務大臣おいでになりますから、御意見を承りたいと存じますることは、昨今新聞紙の伝うるところによれば、国連軍将兵日本の青年を、どういう方法で連れて行きましたか、あるいは脅迫したかもしれない、朝鮮戦線にひつぱり出して、向うの方で戦死をした。これは私は現在のごときデリケートな国際情勢におきましては容易ならざる大事件だと思うのであります。いわゆる中共側、ソ連側から日本の軍人が戦争に参加しておるかのでとき宣伝がされている際でありまして、今まで発表されましたのは、東京の港区にあります平塚重治という人物、これが京城附近で戦死していることは公認されておる。なおまた徳島市の筒井清人という人物、こういうのがほとんど公認されているような状態であります。そこで他にもかようなことがあるのではないかと思われるのでありますが、これに対しまして、外務省からは一体どういう外交交渉をなされたか。かような事態はそのまま放任していいと考えておるか、それをお聞かせ願いたいし、及びアメリカ軍あるいはその他の国連軍の軍というよりも一将兵個人に同道して向うへ行つて戦争に参加するというようなことの国内法上及び国際法上から、これはいかに考えらるべきものであるか、法務大臣から御意見を承りたいと存ずるのであります。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も新聞の報道があるまで実は知らなかつたのであります。その後いろいろ調べてみますると、非常にはつきりしない点はありますが、どうも召使であつたように思います。それが身のまわりのことを忠実にやつておつたものですから、非常に便利だと思つて話合いの上一緒に連れて行つてしまつたのじやないかと思われる節が非常にあります。米軍側でも、そういうことは許可なくしては、もちろん認められないことでありましようし、日本側としては、これは国外に行くのでありますから、旅券その他がなければ行かれないのであります。従つてこれは不法に出国したことになるわけでありますが、残念ながら当時はその事情がわからず、それを取押えることもできなかつて次第でありまして、今後そういうことは、ほとんどあり得ないと思いまするけれども、念のため日本側の法律的な関係とか、あるいはそれでなくても実際上かりに召使であつても種々誤解を招くこともありますので、十分なる注意をしてもらう、また旅券がなければ日本国国民は出られないのであるという点は、さらに米国将兵にも明らかにしてもらう必要があるのでありまして、すでにずつとあの当時から話合いをいたしておりまして、いろいろな点で法律の目をくぐるということは、多分ほかの面でもありますから、絶対にそんなことはないとは申し上げられないかもしれませんが、まず私の見るところでは、今後そういうことはほとんどないのじやないか、こう思つております。
  39. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御質問お答え申し上げます。まことにおかしな答弁になりますが、私の方も事件が起りまして初めて知つたのでありまして、実はそれ以前は、韓国国民の対日感情をよく承知しておりますので、まずあり得ないケースのようにうかつに考えておりました。今後十分気をつけたいと思います。もちろんこれは族券のない不法出国でありまして、帰国後はそういう人は罰することになつております。ただあとから罰するというのでは知恵がないわけでありまして、ただいま外務大臣が言われましたように、関係諸国に対しても厳重にこのことは事前にそういうことが起らないように申し入れてもらうことにしておる次第でございます。
  40. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この問題でありますが、これは第十三国会におきましても私は質問したのでありまして、国連軍に対し日本人が義勇兵として出るようなことは憲法違反ではないかという問題を取上げて論戦したことがあるのでありますが、今あげられました事例は、個人的に向うに渡つたというだけの問題であると思いますが、今後かような義勇兵のごとき形で日本人たちが朝鮮に押し渡つて向うの戦闘に参加するというようなものに対しましては、法務省はいかにこれを処断するのであるか、その御決意を承りたい。これに非常にその危険性がおいく多くなつて来ると思われる節があるのであります。日本のフアツシヨ勢力の擡頭、国際関係の緊張、あるいはアメリカにおける朝鮮派兵の熱望、日本政府が、憲法の関係にからみまして正式な軍隊というものができない、保安隊というような形でごまかし軍隊をやつておる。その間隙を縫いまして、今度はごまかし的な義勇兵というような名前で実際上アメリカの熱望にこたえるというような態度をとるものなきにしもあらず、これに対し法務省はいかなる態度をお持ちになるか、御決意を承りたい。
  41. 犬養健

    犬養国務大臣 これは申すまでもなく容易ならぬ問題でございまして、ちよつとさつきの問題にもどうしていただきますが、いろいろ問い合せました結果、不法出国して朝鮮に行つた日本人は、今外務大臣の申されましたように召使だ。日本人の特性として主人に非常になついてしまう。情が出て連れて行つたというようなケースにすぎないようであります。今お話のありましたように、日本人が何かの便法で韓国に行つてそうしてそれが韓国民にもだんだん奇異に思われないような習慣がついて、また一歩進んで便法的に義勇兵になるというようなくせがついたら、これは一大事だと存じます。国際間の誤解はもとより、日本の軍国主義的擡頭というふうに、こんなつまらないことから誤解をせられましては、外交のたいへんなさわりになりますので、法務当局としては、これらの事件に対しては、事情のいかんにかかわらず、国の根本問題として断固取締る決意でおりますから、さよう御了承願いたいと存じます。
  42. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで取締る御決意は承りましたが、法的根拠がないとこれまた困難になる。そこで、政府が義勇兵のあつせんをするがごときはもちろん憲違反になりますが、個々人が私の資格でもつて国連軍に参加して行くということに対しては、現在取締りの法規があるのかないのか。刑法第四章「国交ニ関スル罪」を見ますと、「外国交戦ノ際局外中立二関スル命令二違反シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金二処ス」とあるが、どうも局外中立に関する命令というものも出ていないように思われるし、そうするとこの国交に関する罪にも当るのか当らぬのか。一体こういうことが好ましくないことはだれも考えることでありましようが、こういう義勇兵となつて渡鮮いたし、わが国を窮地に陥れるような、これはまことに重大なる犯罪行為だと思うのでありますが、現在これに対する制裁法規がどこにあるか、何なら刑事局長から御意見を承りたい。
  43. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまの法規のもとにおきましては、結局それが向うに渡るときに旅券の制約を受ける。従つてそれを犯して行く場合において処罰を受けるという法規がございます。なお私戦の予備あるいはその他のものに、非常に高度に進行した場合には、場合によつて考え得るのでございます。今のお話の程度では当らぬかと思います。
  44. 古屋貞雄

    古屋委員 外務大に御質問したいのですが、国連軍将兵に対する刑事管轄の問題につきましては、日本側では裁判権のある根拠はいずれに基いて御主張になつておるのか。国際慣行に基く御主張だと考えますけれども、いずれに根拠を置いて御主張なされているか。なお同時に、吉田書簡と食い違つておるように考えられますが、吉田書簡との関連性、さらに吉田書簡清原通達との間に―ただいま法務大臣からは、大体吉田書簡精神に基いて清原通達がなされたとおつしやつておりますけれども、私どもは根本において食い違つておる、原則が相違しておる、かように考えておりますが、結局現在具体的になつております犯罪事実の処理について、清原通達によつて外務大臣といたしましては、それを根拠に御主張なさつているのかどうか、それをお貫きになる確信があるのかどうか、一応その点の御質問を申し上げます。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところ先方では、特に法律上の根拠があるから引渡してくれ、引渡すべきであるという四角張つた言い方ではございません。自分の方で裁判をしたいから引渡してくれぬかということでございます。もちろん日本側と国連側との間は長い開議論しておりまして、裁判管轄権についてはまだきまつておりませんから、それを向う側で、国連側に裁判権があるのだからというようなことは言わないわけであります。議論は一致しておりません。従つていろいろの国際慣例、たとえば先方の言い分によりますれば、現在イギリスとの間の慣行とか、フランスとの間、あるいはベルギー、デンマーク、ドイツとの間の慣行あるいは過去において濠洲、ニユージーランド、その他イタリアとかいろいろのところの慣行をあげ、またそれ以前にそういう最近のデヴエロープメントがある前でも、外国軍隊なり軍艦なりの一員が他国において犯罪を犯した場合でも、裁判権はその国にありとしても、実際上引渡していたのが慣行であり、またそれが国際礼譲とされて、現に日本外国との間でもそういう事例が幾つもあるというような説明をいたしまして、裁判管轄権の根本問題には触れずして引渡しを望んでおろのであります。
  46. 古屋貞雄

    古屋委員 これに対する日本側の能度は、どういう根拠に基いてその態度になつておるのでしようか。応じら心ないという態度根拠はいずれにあるか。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 必ずしも応ぜられないといつておるのではないのでありまして、一定の条件が満たされれば引渡しに応ずることも可能であるという建前のもとに話をしておりますが、そのいろいろの内容につきましては、先ほど法務大臣が言われましたように、今しばらくここで申し上げることは御猶予願いたいというのであります。
  48. 古屋貞雄

    古屋委員 先刻外務大臣は、外国の船員あるいはその他の者の刑事事犯について、わが国でも相手方に被告を引渡した、こういう事例はあるというようなことをおつしやられておりましたが、本日の新聞を拝見いたしますると、先刻猪俣君からも御質問があつたようですが、呉におきまする英国軍艦の乗組員に関する強姦未遂事件の被告の身柄相手方引渡した。これは島参事官の談として新聞に載せられておりますが、その軍法会議に対して日本の官憲が出席しておるというようなことがありまするが、かようなことがしばしば行われますると、それが既成事実になつて、ただいま英濠から請求されているようなものを当然に認めるということになるのでありますが、その点に対してかような島参事官の述べられたような事実があつたかどうか。それに対して外務省はどういう態度をとられておるかどうか。この島参事官の書かれておりまする記事によりますると、これを外務省が承認して、今回の事件についてもさようなことにおちつくだろうという疑念を国民に与えているような記事になつております。かような態度で外務省は本件事件についてもお臨みになるかどうか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お断りしておきまするが、私の申した日本及び外国の間の慣行というのは、これは戦争前の当時の慣行であります。つまり日本でも軍隊なり軍艦をもつてつてこれが外国に行つたような場合あるいは外国軍隊軍隊はほとんど来ませんが、軍艦なりが来て日本で同じようなことが行われた場合のことを言つておるのであります。今御指摘の点は、その新聞記事等をよく確かめてみないとわかりませんが、それと思われるような事件はあつたのであります。しかしながらそこがいろいろ話合いの困難なところでありまして、われわれの方としては日本側の立場を保持しつつその間に国際慣行なり、あるいは過去の例なりに合い、また実際さしつかえない程度の国連協力の実を示すように努めております。ところが先方としても根本問題としてはまた議論があつて、こちらは裁判権がこちらにある、向う側は国連側に裁判権を渡されてしかるべきものであるという主張をいたされておりますが、日本側でも強くこちらに裁判権があるのだということを申せば、これは国連協定の問題になるのであります。それを個々の事実でもつて日本側がこちらの主張まで既成事実的に押しつけることも困難でありますが、同時に向う側に引渡しても日本側の立場がくずされるようなことでは相ならぬわけでありますから、その間に個々の事例についてその状況に応じましてわれわれの立場がくずされないだけの用意はずつとして来ている。
  50. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、これは国連軍の協定との関係に根拠があるわけであります。従いまして国連軍との協定に対する日本の主張というものは、外務省の信念は従来の国際慣習に基くのだという御信念ではないのでしようか、その点をお尋ねしたい。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 従来の国際法及び国際慣例に基く、こういう主張であります。
  52. 古屋貞雄

    古屋委員 さように伺いますと、そこで承りたいのは、現在外務省が英濠と御交渉なされておりまする態度並びにさような交渉の経過が新聞などに報道されておりまするが、国際慣行に基くということよりも、むしろ吉田書簡に基いて進められているようにわれわれは承知されるのであります。いずれに基いて交渉をやられておりまするか、その点を承りたい。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田書簡内容二つにわかれております。第一の部面におきましては、裁判管轄権については協定ができ上るまでは国際法及び国際慣行に基いて処理する、こういうふうになつている。第二の点におきましては、その原則のもとに個々の人間の身柄についてどうするかということが規定してあります。国際法及び国際慣行に基いてということと、吉田書簡趣旨とは私は何ら矛盾するものではないと考えております、つまり同じものだと考えております。
  54. 古屋貞雄

    古屋委員 私ども刑事裁判権につきましては、属地主義が国際慣行であると考えている。しかし吉田書簡の第三項によりますると、原則として「軍隊の構成員及び軍属並びにそれら家族を逮捕したときは、次の4に掲げる場合を除いて犯人をその所属国軍当局に、原則として、引渡すように取り計らう。」ということになつております。属地主義から申しまするならば原則は当然に日本側にありまして、捜査並びにこれに対する勾留等も当然に原則として行われる。ところがこの吉田書簡によりますると「原則として、引渡すように取り計らう。」ということになつてつて食い違つているように思うのであります。その点の納得の行く御説明を願いたい。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 つまり今申し上げました通りに、裁判管轄権の問題はその前にあるのであります。第三項、第四項は犯罪者の身柄処理になるのであります。裁判管轄権がありましても、身柄を引渡す場合もこれはしばしばあるのであります。現に戦争前におきましては、日本なり日本の友好国で日本の軍人の犯罪裁判管轄権は持ちながらもこれを裁判に付した例は、一、二の例を除いてはなかつたと思います。日本においても裁判管轄権は持ちながら、実際上身柄は先方に引渡しておりまして、これが国際慣習及び礼譲として認められておつたところと思います。今回のような、第四項のような特殊のものでない場合、つまり軽い罪の場合には裁判管轄権の問題は別であるけれども身柄についてはできるだけ引渡す、これは特に朝鮮において現に戦闘をいたしておる部隊の一員でありまして、政府としてはこの朝鮮の国連の行動というものにはできるだけの協力をいたす建前になつております。またこの将兵が大いに朝鮮で奮闘してくれなければ日本国内の治安、平和等にも多大の影響があると思いますので、軽いものについては身柄は引渡す、こういうつもりで第三項に書いてあるのであります。
  56. 古屋貞雄

    古屋委員 ただいま外務大臣お答えによりますと、管轄権はこちらにあるけれども身柄処置についてかように御解釈のようですが、この字句を拝見いたしますと例外なく引渡すように考えられるのですが、それではその点は相違しておるのですか。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第四項の場合を除きましてと書いてありまして、第四項の場合にはそれぞれ重大と思われる犯罪がありまして、こういうものは別である、こういうことになつております。
  58. 古屋貞雄

    古屋委員 その重要であるという、重要という事項は具体的に申せばどういうような事実でしようか、本件のような……。
  59. 田嶋好文

    田嶋委員長 古屋君にちよつと御注意いたしますが、本委員会は一時で打切りたいと思います。あと質問者も大分ございますから、なるたけ重複しないように、その点は先ほど委員会では発言があり、答弁があつた点だと思います。
  60. 古屋貞雄

    古屋委員 しからば結論を申します。新聞並びに外務省の参事官の発表しておるところによりますと、外務省と英、濠との交渉が数回行われた結果、いかにも当然に相手方身柄を引渡さなければならないような感じをどうもわれわれ受けるのでありますが、その点が先刻法務大臣から、日本の独立に重要関係を持つ刑事裁判権についてはどこまでも遵守して行く、固守するというようなお答えがありましたが、外務大臣もそれと同じようなお考えでどこまでも御主張になつているのかどうか。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど法務大臣お答えなつた通りであります。
  62. 後藤義隆

    ○後藤委員 法務大臣並びに外務大臣にあわせて御質問でありますが、日本警察で逮捕されなかつた、現在エビス・キヤンプにおりますシンクレア一等兵は、この引渡し日本から要求したことがありましようか、どうでしようか、もし要求したといたしましたならば、その日時及び要求した人は何人か、そうして相手方のこれに対する返答をあわせて聞きたいのであります。それからただいまのこのシンクレア一等兵に対して将来起訴する考えがあるかどうか、日本裁判をする考えがあるかどうか、それから吉田書簡の第三、第四に記載されております、相手国犯人引渡しました場合に、それから後にさらに日本でそれを裁判するのか、ただ引渡してその後裁判をしないつもりかどうか、さらに吉田書簡の第四のうちに、相手国協議をしたりあるいはまた引渡しをしたり、条件を付するのに日本国を代表するのは一体だれか、外務省が代表するのかあるいは裁判所がするのか、検察庁がするのか、その他だれが一体代表してこういうことを交渉するのか、代表の資格についてお聞きをしたいのであります。  それからもし条件を付して相手国引渡した場合に、相手がこれを履行しなかつたならばそれからあとは一体どうなるのか、なお本件に関しまして昨日の新聞を見ますと、英国大使館並びに濠洲大使館から日本の外務省に昨日参りまして、いろいろ協議を重ねた結果について島参事官がこういうことを言われたことが新聞に発表されております、五つの条件提出した、被害者に損害賠償を行うこと、取調べにあたり黙秘権をやめること、軍法会議日本側の係官を立ち会わせること、引渡しにあたつて身柄受書に英濠両大使がサインすること、被疑者の経歴書を提出すること、この五つの条件を提示されたように発表されておるのでありますが、はたしてかような五つの条件提出されたのかどうか、されたならば両大臣はこれを了解の上でかような条件提出させたいのかという点についてお伺いいたします。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の関係しておるところだけお答えをいたします。一人のエビス・キヤンプにおる者に対する引渡しを外務省の係官から先方に要求をいたしました。先方ではこれに対して考慮中と了解しております。吉田書簡は元来国連軍協定が成立いたしませんために、その中間的な措置をしなければならぬ、そのために日本の方針はこうであるということを書きものにしたのでありますが、その中に裁判管轄等は国際公法及び国際慣例によるとなつておりまして、先方は必ずしもこれを承服しておりませんために、吉田書簡に対して承知したという手紙もよこさない、こちらから方針を明らかにしたというだけであります。従つてわれわれは吉田書簡沿つてするわけでありますが、先方が常にこれを承服しておるかというと、そうではないのであります。そこでたとえば引渡し条件をつけて向うに渡したときにその条件を守らなかつたらどうするか、もし条件をつけて引渡した場合に向うがその条件を承諾しておつて守らなければこれは約束違反でありますから、その点文句を言わなければなりません、しかし文句を言わなくて―言つてもらちがあかない場合もありましようが、そうすればこれはどうも抗議をいたしておくよりしかたがないのでありまして、この次に事件が起つたときは今度は別の考慮をせざるを得ない、こういうことになろうと考えます。また島参事官が出したと伝えられる五条件のようなものを今読み上げられましたが、必ずしも、私はそういうものがどうということはここで申し上げられないのでありますが、しかしその報道は必ずしも私は正確でもないと考えております。ただ先ほど申したように、今いろいろ話合いの最中でありますので、こちらでどういうことを言つたかということはしばらく御猶予を願いたい、こう考えます。
  64. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。大体外務大臣から申し上げたことで尽きております。シンクレア一等兵の身柄引渡し要求は、私の方で確かに日曜の午後私自身電話で下僚に命じましたから記憶がありますが、その件について外務省にお願いをいたしたわけであります。  それから外務大臣も申されたのでありますが、五項目の条件、大分これは違つておりまして、どういうのが正確かということは、いましばらく御猶予を願いたいと思いますが、その中の、たとえば黙秘権を行使しないようにということは、これはもう済んじやつていることでありまして、おそらく初め警察にとめ置かれたとき、犯人が非常に恐怖心を持つておりまして取調べがはかどらない、そういうことで黙祕権なんか行使しないようにという注意を与えたというようなことが、あべこべになつて伝わつておるんじやないか。大分内容が違つておりますが、どういうことを今条件として要求しておるかということは、これは近いうちに必ず皆さんに御報告いたす時期があろうがと思います。さよう御了承願いたいと思います。  それから向うが履行しない場合、これは主として国際信義に重点を置くのでありますが、しかし全然あとの祭りというのでも、これはこちらの手落ちにもなりますので、そういう場合を予想していろいろ引渡すに足る条件を相談中なのであります。これも後日申し上げる機会があるかと思います。さよう御了承を願います。  あとこまかいことは刑事局長がおりますから答弁いたさせます。
  65. 後藤義隆

    ○後藤委員 これはこまかいことになるかどうか、私はこまかいことだと思いませんが、法務大臣から答弁がなかつたのでありますが、シンクレア一等兵に対して起訴する意思があるかどうか、あるいは相手方引渡した―これは本件に限りません、一般的の場合でありますが、引渡した者を後日日本裁判をするのかせないのか、これは非常に重要なことだと思いますから、法務大臣の御答弁を願います。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 シンクレア一等兵に対しても、もちろん刑事裁判権はこちらにあるといたしまして、その根拠に基いて身柄引渡し要求をいたしております。関連者がこつちに二人おるのでございますから、その必要上からもぜひわが方で調べたいという意思を堅持しております。
  67. 後藤義隆

    ○後藤委員 これは本件のシンクレア一等兵についてもでありますが、一般的の場合に、先ほど外務大臣からもお話があつたのでありますが、吉田書簡を見ると裁判権問題と、もう一つ裁判権の問題を離れて身柄だけをどうするかというふうに二項目にわかれておるように考えますから、それでもつて身柄引渡した場合に、将来それを日本裁判所において、引渡した後といえども裁判をするのかどうするのかということをお聞きするわけです。
  68. 犬養健

    犬養国務大臣 その場合をも含めて今交渉をいたしております。その場合も予想しつつ交渉いたしております。
  69. 木下郁

    木下(郁)委員 大分微に入り細に入つて質問があつたので、重複しないようにしてなるべく簡単にいたします。裁判権の点については、吉田書簡の前段で日本にあるということを言われておる。身柄取扱いの問題が後段で、今かれこれ問題になつておる。でこの吉田書簡というのが、こちらからただ一方的にやつたんだということであります。それでごてごての起らないように一方的にやつて、ただ道義的に責任があるというのありますが、日本も独立し、新しい議会もできておるのでありますから、この後段をあらためて通知する御意思はありませんかどうか、外務大臣にその点をお聞きいたします。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 後段と申しますと、身柄の……。
  71. 木下郁

    木下(郁)委員 身柄を渡す渡さぬという点を、身柄は渡さないでこつちでやるんだ、今後はそういうふうに御承知願いたいというような御通知でもお出しになる御意思はありませんか。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が先ほど申しました通り、国連軍はただいま朝鮮で戦闘をいたしておるのであります。少くとも政府の考えでは、この戦闘の結果は、日本の安全にも直接かつ重大な影響を及ぼすのである。従つてわれわれはあらゆる協力をして国連軍がこの目的を達するようにいたさなければならないと考えておるのであります。従いまして国連軍将兵が一人でも多く、早く朝鮮の戦闘に参加できるようにいたすのは、日本の利益にも関連があると考えておるのであります。従いまして、国内で軽微な犯罪を犯した場合には、これはすみやかに引渡して、そうして先方で処分はむろんいたしましようが、その上で戦列に復帰できるようにいたすのが、日本の利益でもあり、またこれは戦争前に日本軍隊を持ち外国軍隊を持つておつた当時の慣行でもあつたのでありますから、さようできるだけいたしたいと考えておるので、身柄を引渡さないというようなことは、これは特殊な場合はありましようが、できるだけそういうことはいたさないつもりでおります。ですからつまり逆なように私は考えておりますが、そうかといつて裁判管轄権の問題までがそのために変なふうになることは正当でありませんので、この点は十分に注意をいたしたいと思います。
  73. 木下郁

    木下(郁)委員 兵隊の一人か二人、まあこれから先何人か出ましようが、それと、日本国民が、独立した日本が、真に名実ともに裁判権を持つておるという自信をを持つ必要がある。これは日本を再建するためには非常に大事なことであるが、そういうものと天びんにかけられたんでは国民は非常に失望すると思います。そういう意味でこの点は私は岡崎外務大臣の十分な御考慮を煩わしたい。  次にお聞きしたいのは、裁判権に関連することで裏から見たようなかつこうになりまするが、戦争犯罪人として受刑者がまだおる。国民はこれの釈放を熱願しております。政府もそれについて相手国に対して釈放の方途を講じておるというふうに承つておりまするが、それはどういうふうにしてその方途を講じておられますか、お聞きをいたしたいのであります。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お断りいたしておきますが、ただいまの御発言については、私が先ほど申したように、戦争前には、日本裁判権を保持しながら身柄外国の軍人については例外なく引渡しておつたのであります。そのときでも裁判権は当然保持しておつたし、また国民もその点については何ら疑わなかつたと私は考えております。それと同様のことをいたすはずなのでありまするが、戦争後はこちらに軍隊がありませんから、双務的というかつこうになつておらない点がいろいろ苦心のいる点だろうと考えておるわけであります。  なお戦争犯罪者につきましては、平和条約の規定と国内の法律がありまして、更生保護委員の方で勧告をいたします。その勧告に基いて必要ない説明を加えて、勧告の趣旨が達成するように各国に対して話をいたすわけであります。その話は東京において各国の使臣に話をすると同時に、外国における日本の使臣をして外国政府に話をさせる。これはいろいろの関連がありまして、必ずしも同じことを各国に全部言うわけじやありません。趣旨に同じでありますけれども説明の仕方等はいろいろその場合によつて異なるわけであります。たとえばフイリピンの場合には、これに関連するわけではありませんが、賠償その他国交が回復してないという事情もありましようし、またその他の国についても、たとえば戦争中日本に占領せられたために非常な虐待をこうむつた人間をどうしてくれるんだというような話を持ち出しておる国もあります。それには適当な説明を加えなければなりませんし、説明内容は種々違いますが、その趣旨は更生保護委員の勧告に基いたその目的を達成するように話をするわけであります。現在もずつとやつております。
  75. 木下郁

    木下(郁)委員 もう一点………。
  76. 田嶋好文

    田嶋委員長 木下さんに注意しますが、きようの調査事項は御存じのように英濠兵事件です。時間も各党から出た理事会で一時ときめてあります。特にあなたに対しては発言を許しているわけですから、そのつもりで御発言願わないと困ると思うのです。それからなおあなたの方の党の石川さんが特に発言を要望されておりますので、そういう点も御考慮くださつて御協力を賜わりたいと思います。
  77. 木下郁

    木下(郁)委員 協力いたします。その点で戦争被判というものについて、これはいろいろ議論があると思う。日本は戦争前の国際法をたてにとつてつておるし、連合軍の方は今度の戦争の後に国際法が大分かわつて来たというふうに言つていることは御説明でわかりました。今度の戦争の後の戦争裁判犯罪人の受刑者として今服役いたしておりますが、その釈放を願うという外務当局の基本的態度は、今度の第二次世界大戦の後に行われた戦勝国が戦敗国の個人をさばいたあの裁判国際法上有効なものとしての前提の上で、その釈放を求めておるのでありましようか。言いかえれば戦争裁判というものが国際法上有効なものという建前を日本国も承認して、そうしてその受刑者の刑期の前に早く釈放されることを求めておるのでありましようか。その点をはつきりいたしたいのであります。国民もまたこの点については相当関心を持つておると思いますので、外務大臣の戦争裁判国際上の有効、無効いう点についての御見解を承りたい。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際法上というといろいろ議論もありましようと思いますが、少くとも日本はポツダム宣言を受諾いたしまして、その信義にもとるわけにはいかないのであります。そのポツダム宣言の趣旨に基いた戦争裁判については認めております。従いまして平和条約の中に戦争裁判の判決をそのまま受諾する、そしてそれに対する仮出所その他の措置はこうこういうことをやる、こういうことになつておりまして、その平和条約は国家の非常な多数で承認されたのでありますから、私どもは少くとも日本に関する限りは、あの特別の戦争裁判の判決等については、その効力を認めておるわけであります。
  79. 木下郁

    木下(郁)委員 あと一点……。
  80. 田嶋好文

    田嶋委員長 これは議題になつていないのですから、簡単に願います。
  81. 木下郁

    木下(郁)委員 これは政治的なんですけれども、この釈放を一日も早くしてもらうという効果をねらう意味では、向うは原子爆弾を使つた。これは国際法違反だと私は思つております。従つてこの問題について追及することは、反面において捕虜虐待だとかいうようなことで国際法違反として重い刑罰に服しておりますあの受刑着たちの刑をやわらげる一つの政治的効果があると私は思う。国民またそれを考えておると思うのでありますが、その点について、各国の公正な輿論に向つて、原子爆弾の国際違反であることを訴えるお気持がありますかどうか、あればどういう方法でやるか、その御計画でもあれば伺いたいのであります。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御意見としては承つておきますが、私としてもいろいろ考えるところがありますので、これはとてもこの場で即答はいたしかねます。
  83. 木下郁

    木下(郁)委員 外務大臣としてもいろいろ立場があると思いますから、私の質問はこれで終ります。
  84. 石川金次郎

    ○石川委員 刑事局長に簡単にお聞きしたいのでありますが、大臣の先ほどの説明によりますと、勾留を請求せられたと聞きましたが、それは刑訴の二百五条によつて運ばれた手続でありますか、まずそれから伺いたいと思います。
  85. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 さように考えております。
  86. 石川金次郎

    ○石川委員 そうであれば、勾留を請求せられました以上、起訴するという覚悟でおやりになつたのだろうと、われわれ従来の経験から信じておるのですが、その御確信があつておやりになつたのですか。
  87. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 事件検察庁が受けまして、刑事訴訟法にのつとりまして捜査をいたしました結果、いまだ二十四時間の制限時間をもつてして、事件の真相を明らかにすることができなかつたわけでございます。従いまして、刑事訴訟法の手続にのつとつて勾留を請求する手続がなされた、こういうふうに御了解願います。
  88. 石川金次郎

    ○石川委員 それではまだ御確信がないかもしれませんが、それはそれといたしまして、かりに十日間内に先ほど大臣が言つた条件がいれられたとすれば、勾留の取消しを検察庁みずからがおやりになりますか。
  89. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまの段階におきまして、仮定的な論にお答えすることはどうかと思いますが、外交折衝の段階が進みまして、当方の満足すべ事態に立ち至つた場合には、さようなこともあり得るのではないかと存じます。これは私の意見でございますが、その程度で御了承願いたいと思います。
  90. 石川金次郎

    ○石川委員 かりにそうなりましても、起訴はするでありましようね―起訴はしなければならない。外交折衝がどうなるか、とにかくこちらに裁判権があるというあなた方の御確信でこの事件を見ておられるのでありますから、起訴はせられると思いますが、あなたの御意見を聞いておきます。
  91. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 冒頭に申し上げました通り事案内容について若干明らかならざるものがございますので、検察庁におきましては検事をたしか三名つけまして、鋭意捜査を続行中でございます。と申しますのは、先ほど来話の出ました通り一人シンクレアというのがあちら側に逮捕されまして、目下それの捜査もいたさなければなりませんし、それやこれやでただいまから事案が明らかになつたとは申し上げかねる段階なのでございます。従いまして事案が明白になつた以上は、またその段階において事を新たに考えるということにいたしたいと考えております。
  92. 石川金次郎

    ○石川委員 それでは仮定に立ちましよう。先日検事総長刑事訴訟法の規定によつて進めるとおつしやつたのでありますから、仮定に立ちましよう。犯罪事実が明らかだといたしましたら当然起訴せられるでありましような。いかなる事態が発生しましても。
  93. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 仮定論といたしますると、そこに幾つかの条件が加わらなければならぬわけでございます。そこでその条件たるや現在外交折衝中という問題もございましようし、またその事態下におけるこの捜査の進展の模様によりましてこれがわかれて来るわけだろうと思いますので、その条件が詳しく成就した上でお答えする方が妥当ではないだろうかというふうにお答えいたしておきます。
  94. 石川金次郎

    ○石川委員 それではかりに条件が整つた―有罪の事実が明らかだとあなたは確信があつたのでしよう。確信があればこそ問題がここまで大きくなつたと思うのでありますが、その場合に訴訟法にはいわゆる引渡すという保釈という方法しかないのでありますから、あなた方の考えが、結局あなた方が起訴前に引渡すという訴訟法にない手続をとるとすれば、検事局自身が勾留の取消しという方法を裁判所に請求するか、起訴前に保釈するという方法しかないと思いますが、それ以外に何か方法がありますか。
  95. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 訴訟法の建前から言いますと、保釈とか勾留の執行停止とか責付とかいろいろあるわけでございますが、それは要するに勾留をやめるという点において一致しているわけでございます。検事の勾留中に事態が解決した、引渡すということがありましたならば、それは訴訟法的な手続としては勾留の取消しということに相なろうかと存じます。
  96. 石川金次郎

    ○石川委員 重ねてお聞きしますが、結局法務省といたしましては刑事訴訟法による手続をどんどん進めて行くのだ、こう了承してよろしゆうございますね。
  97. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 どんどんというその語句に若干の疑いを持ちつつ肯定いたします。
  98. 木下郁

    木下(郁)委員 私は先ほどの質問を時間がなので打切られてしまつた。この委員会としてお願いしたい。というのは、戦犯の問題それから原子爆弾に対する国際法上の見解、われわれ一般国民意思表示をするということは非常に大事だと思う。さような意味で、戦犯の問題と今次の戦争に現われた主として原子爆弾の問題の法律的な意見、こういうものを法務委員会意見としてひとつまとめて発表する機会を持ちたいと思う。さような意味で、きようの委員会と別な議題のもとに委員会をお開き願いたいと思います。
  99. 田嶋好文

    田嶋委員長 木下君の発言まことにごもつともだと思いますので、理事会にかけてよく処理いたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時二十六分散会