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1952-11-13 第15回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月十三日(木曜日)     午後二時八分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 高橋 英吉君 理事 松岡 松平君    理事 小畑虎之助君 理事 猪俣 浩三君       相川 勝六君    熊谷 憲一君       小林かなえ君    永田 良吉君       花村 四郎君    福井 盛太君       古島 義英君    松永  東君       大川 光三君    清瀬 一郎君       後藤 義隆君    多賀谷真稔君       古屋 貞雄君  委員外出席者         検     事         (法務省刑事局         長)      岡原 昌男君         外務事務官         (條約局長)  下田 武三君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ―――――――――――――  十一月十三日  委員永井勝次郎君辞任につき、その補欠として  多賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。     ―――――――――――――  十一月十二日  戦犯受刑者の助命、減刑、釈放内地服役等の  陳情書(第二六  号)  戦犯者釈放家族救済陳情書  (第二八号)  戦犯者釈放に関する陳情書  (第二九号)  同(第三〇号)  同(第三一号)  同(第三二号)  戦犯者福岡千代吉釈放に関する陳情書  (第三三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国連軍裁判管轄権に関する件     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  国連軍裁判管轄権に関する件について調査を進めます。本件につきましては、アメリカ合衆国との行政協定締結前後よりその性質の重大性にかんがみまして、本委員会におきましても、過ぐる第十三国会以来鋭意慎重なる調査を進めて参つたのでありますが、昨今の新聞の報ずるところによりますと、重大なる局面に逢着し、事態は緊急を要する段階に到達いたしましたので、本委員会といたしましては、関係大臣より国連軍側との折衝経過説明を聴取し、事情をただし、これに対する本委員会の態度を決定いたしたいと存じまして、本日特に委員会を開会し、御協議願うことにいたしたのであります。  それではまず政府側より本件折衝経過について説明を聴取し、その後に委員各位より御発言を願うことといたします。政府よりはただいま外務省條局長下田武三氏が出席をされておりますので、下田武三氏よりその折衝経過について説明を聴取することといたします。
  3. 下田武三

    下田説明員 本日はあいにく岡崎外務大臣外国人を招いて、パーテイをいたしておりますので、私直接国連軍協定締結交渉に当つておりますので、私から経過を簡単に御報告さしていただきたいと思います。  国連軍協定締結交渉は、本年七月七日に第一回の正式会議を開きまして、爾来五箇月にわたりまして正式会議十七回、その間専門委員会数十回にわたつて交渉を続けて参つておる次第でございます。協定の包含すべき事項はいろいろ多岐にわたつておりますが、本日は刑事裁判管轄権の問題について報告を求められておりますので、その点に限つてお話を申し上げたいと思います。  まず、私も交渉当事者といたしまして、双方がいかなる案を出しておるかというところまで御報告申し上げる自由を持たないのでございますが、しかしながら双方の根本的な考え方をごひろういたしまして御参考に供したいと存ずるのであります。  御承知のように、国連軍協定より先に行政協定というものが日米間に締結されておりますが、行政協定におきましては、刑事裁判管轄権に関して、米国軍軍律に服する者に対しては一切アメリカ側裁判権を行使する、また日本法令に違反する犯罪も、犯罪者米国軍人であるならばアメリカ側裁判をする、日本側としては、日本の警察は逮捕権を持つておりますが、逮捕しても米軍に引渡さなければならないという建前になつておるのであります。ただ行政協定におきましても、米軍の方で裁判権を放棄するという條項もあります。従つてアメリカ側裁判権を放棄した場合にのみ日本側裁判をなし得るという建前になつておるわけであります。今回の交渉におきまして米国英連邦諸国は、国連軍にも行政協定と同じ待遇を与えてくれということを終始強く主張して参つておる次第であります。  これに対しまして日本側は御承知北大西洋協定方式にならつた案を提出いたしまして、これを今まで主張し続けて参つたわけであります。この北大西洋協定方式と申しますのは、まず原則として派遣国派遣国法令違反の罪を罰する。接受国すなわち日本側日本法令違反の罪を罰する。しかしながら両方法律で罰し得る罪という競合する範囲がたくさんございますので、双方裁判権が競合する場合にはどうするかという点が一番大事になるわけでありますが、北大西洋協定におきましては、大体従来の一般国際法に従いまして、次の四つの場合には派遣国側裁判権を認めております。すなわち第一には、派遣国国家または軍隊の安全に対する罪は派遣国側裁判権を認める。第二に、派遣国または派遣国軍隊の財産対する加害行為派遣国法令従つて派遣国裁判をする。第三に、派遣国軍隊に所属する軍人、軍属の身体に対する加害行為派遣国側裁判をする。第四に、派遣国軍隊公務遂行中に犯した犯罪については派遣国側裁判をする。ただいま申し上げました四つの場合以外のすべての場合には接受国側裁判するということになつておるのであります。  日本側根本的主張は、従来の一般国際法を最もよく取入れておると思われるこの北大西洋協定方式で行きたいという主張で一貫して参つたわけであります。米軍日本国自体の安全を守るために日本に駐留しておるわけであるが、国連軍日本を守るためのものではない。朝鮮において作戦行動をして、たまたま日本休養休暇等のために臨時に来る軍隊である。従つて日本自体を守る使命を持つ米軍と同等の取扱いをなすことはできない。また日本はつい近い歴史上において治外法権の苦しみをなめた。治外法権の撤廃には数十年にわたる困難な外交交渉を経た記憶がいまだ新たである。いやしくも治外法権的な特権外国軍隊に認めることは、国民感情の上からいたしましてとうてい耐えられないところであるという主張をもちまして強くNATO方式北大西洋協定方式に近い案を主張し続けて参つたのであります。  これに対しまして国連軍側主張を御紹介申し申げますと、日本側一般国際法一般国際法と言うが、国際法は第二次大戦を経て非常な変化を来しておる。たとえばイギリスにおいては第二次大戦に数十万、ときとして百万に近い外国軍隊英本国に迎えた。しかしながら英本国におるこれらの外国軍隊に対して派遣国側専属的裁判権を認めて来たのである。またアメリカ自身も、アメリカ国内で大部隊の外国軍隊を迎えたことはないけれども、ミリタリ治トレー・ニングその他いろいろな目的米軍にも少なからざる外国軍隊が来たことがある。また現におる。これらの米国におる外国軍隊構成員に対しては、その軍隊所属国専属的裁判管轄権を認めておる。カナダしかり、濠州しかり、ニユ—ジーランドしかりというわけでございまして、第二次大戦以来この軍隊特殊性に基いて軍隊を送つておる方の国に専属的裁判権を認めるという多数の事例が確立されておつて日本側の言うような国際法というのは、第二次大戦前の時代遅れの国際法になつておるということを先方は言うのであります。また日本側NATO協定北大西洋協定方式ということを盛んに言うけれども、ヨーロツパ事態極東事態とは違うのである。北大西洋協定はなるほどできているけれども、欧州では現案に戦闘行為は行われておらないのである。ところが極東においては現実戦闘行為が行われておる。北大西洋協定におきましても—あれは戦争がないときにつくられた條約でありますけれども、あの協定を見ますと、一旦ヨーロツパ戦争が起つた場合には刑事裁判管轄権に関する規定は再検討するということになつております。従つてヨーロツパでも極東と同じような戦端が開かれるならば、やはり刑事裁判権規定は再検討するということになつておる。それを戦闘のない場合のヨーロツパNATO方式を、戦闘が現に行われておる極東に持つて来ようとする日本側主張は無理ではないかということも先方は申すのでございます。また英連邦側の最も強い主張、これは日本にいる米軍国連軍との間に差別待遇をするということは耐えられないことである。なるほど米軍日本自体の安全を守るための軍隊であり、英連邦軍—国連軍はそうでないという差別があることは事実であるけれども、大きく考えてみると、米軍国連軍とは同じ目的のために戦争をしておるのではないか。朝鮮における共産軍の侵略は、たとえて言えば外ぼりの戦争だ。内ぼりにまで戦争が及んで来た場合には、なるほど米軍は干戈をもつて日本を防ぐであろうが、現に外ぼりの戦争国連軍は多数の死傷者と莫大な経費使つて戦つているのだ。従つて大局的に見れば、極東の安定平和というものは内ぼりではまだ血を流していないけれども、外ぼりでは今血を流している。そういうことを考えるならば、この米軍国連軍との間に差別を設けることはとうてい耐えられないことであるということも先方は申すのであります。さらに先方法律的主張といたしましては、日本平和條約の第五條一つ義務を負つておる。平和條約の第五條は御承知通りでありますが、「日本国は、国際連合憲章第二條に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。」と規定しております。その次の義務の中に、「国際連合憲章従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと。」そういう義務独立の際に日本は負つてしまつているではないか。朝鮮における行動は、とりもなおさず国際連合憲章従つてつた行動にほかならない。この朝鮮における国連行動にあらゆる援助を与えるということは、日本がすでに独立を回復したとたんに、平和條約によつて課せられている義務ではないか。このあらゆる援助という中には、国連軍の立場からする刑事裁判管轄権米軍との均等待遇くらいの援助を与えてもいいではないかというような主張先方はなしておるのであります。また日本側治外法権的な特権ということを日本新聞も言い、輿論も言つておるけれども、これは誤解もはなはだしいものである。過去の治外法権の例を見ると、日本を初め列国が支那の租界その他で地域的に治外法権を持つてつた事例、たとえば上海の租界においては、いかなる犯罪外国人が犯してもその所属国領事裁判権を行使する。あるいはエジプトのごとく、その領域いかなるところで犯罪外国人が犯しても、その所属国領事裁判する。そういうのが治外法権である。日本に来る一般外国人—新聞記者でも、旅行者でも、バイヤーでも、これはことごとく日本裁判権に服しているのである。ただ国連軍休養のため、あるいは休暇を利用して見物のために日本臨時に来ている場合に、これを日本側裁判権に服せしめて長く拘束されるということは、遠い地球の反対側から来る一人々々の兵隊をとらえても、その背後に莫大な経費をかけておる。そのいわば国連軍から見れば非常に貴重な一人々々の兵士の身柄を、日本側裁判権を認める結果長く拘束されるということは、軍事上非常な苦痛である。まつたく便宜の問題である。治外法権でも何でもないのだということを先方は申しておるのであります。  ただいま御紹介いたしましたのが、今日までの交渉におきまして日本側及び国連側双方主張し続けて参りましたおもなる点でございます。日本側は九月十二日に刑事裁判管轄権に関します最後案を出しまして、爾来回答を待つてつたのでございます。国連軍側はこの日本側最後案に対しまして、それぞれ本国政府打合せをいたしまして慎重に討議しておつた模様でございましたが、本国政府の意を体した上で、東京で関係の五箇国の大公使がさらに相談をいたしました上で昨日外務大臣のところに五国の大公使がそろつて参りまして、ただいま御紹介申し上げましたような従来の国連軍側主張を強く外務大臣に再び申し入れて参りました。私ども現実交渉に従事いたしております者といたしましては、あらゆる日本側主張主張し尽したという感じがいたします。先方の言い分も、中にはもつともな点も多々あると思いますが、先方主張もわが方に十分わかり尽しております。問題の重要性にかんがみまして、いずれ今回の五国大公使申入れに対しましては政府におかれまして最高の御決定があることと存じまするが、私ども事務当局といたしましては、政府の御決定に従いまして今後の交渉を進めて参りたいと存じておる次第でございます。簡単でございますが、今までの交渉の経緯を御報告いたします。
  4. 田嶋好文

    田嶋委員長 これにて下田條局長説明は終りました。  発言の通告がありますから、順次これを許します。法務大臣外務大臣はまだ出席されておりませんが、いずれ出席されることと思います。松岡松平君。
  5. 松岡松平

    松岡(松)委員 今條約局長お話の、昨日各国の大公使がそろつて外務大臣に面接されて話された内容がしごく簡単でよくわからないし、またそのときにおけるこちらの外務大臣の話の内容も、もしお話願いたい。この問題についてかなり交渉を続けておられるものと察しまするが、特に急迫して向うが要求を持つて来た、そういう状況についても御説明を賜わりたいと思います。
  6. 下田武三

    下田説明員 昨日の五国大公使外務大臣に対する申入れ、異はこれをそのまま発表いたしまして国民の前に先方主張及びわが方の主張をありのままにごひろうした方がいいのではないかという考えがございまして、それを発表することにつきまして、今先方打合せ中なのでございます。従いまして先方が発表していいということを申すまでは、私といたしましてここで発表いたす自由を持たないのであります。もう一つの急迫した事情とおつしやいましたが、案はそれほど急迫したと申しますか、先はども申しましたように、もう二箇月も前にわが方の最後案を出しまして、それに対して、先方本国政府打合せまして、慎重に審議いたしておりました事態が二箇月続いたわけでありまして、その先方慎重審議の結論が昨日外務大臣にもたらされた、そういうふうにお考え置き願いたいと思います。
  7. 松岡松平

    松岡(松)委員 今のお答えに対しましてこの経過内容を公表せられるのは当然であるし、また国民がそれを希望しておることと思いますが、それを今差控えられるのは、相手国大公使どの話合いの上において、そういう秘密を守らなければならぬ事情があるのでありますか。
  8. 下田武三

    下田説明員 先方覚書にしたためものを持つて参りまして、覚書という外交上の文書は、やはりこれを出しました方の了解を得られませんと、一方的に受けた方で発表いたせない国際慣例になつておりますので、先ほどのようにお答え申し上げた次第であります。
  9. 田嶋好文

  10. 清瀬一郎

    清瀬委員 今松岡君のお求めになつたのは、先方の発表の中にある、八週間前に日本国連軍に提示した最終案でしよう。松岡さん、そうでしよう。これは向うが提示したのではなくして、こちら側が提示したものなんですね。こつちが出したもの、そのことをおつしやらぬと、きのうのやつはそれに対する向う答えだから、答えの方だけ聞いてもよくわからぬ、こういうことなのです。
  11. 下田武三

    下田説明員 一番初めにお断りいたしましたように、双方当事者が出しました具体案交渉の途中でひろうするということもいろいろさしさわりがございますので、詳しくは申し上げられないのでございますが、大体先ほど来御説明申し上げた通り日本側が最も適当と認め、また最も国際法原則に近いと思われる北大西洋方式、それに近いものを日本最後案として提示しておるわけでございます。
  12. 清瀬一郎

    清瀬委員 そのことは松岡君のお問いの補充として私申し上げたのであります。外務大臣司法大臣が来られましたら、なお伺いますが、この時間を利用しまして、少し予備的にあなたに聞いておきたいことがあるのであります。この協定相手は一体だれですか。国連軍という一つのまとまつたものですか、一つ一との国家とやつておるのですか。
  13. 下田武三

    下田説明員 国連軍協定締結相手方は、ただいまのところでは、交渉に現に参加しておりますのは、アメリカイギリス、濠州、カナダ、ニユージーランドの五箇国でございます。しかしながら、交渉はその五箇国と日本でやつておりまするが、できたものにさらに多数の国が参加するかどうかという点は、目下のところまだきまつておりません。
  14. 清瀬一郎

    清瀬委員 この国連軍は、朝鮮では今クラーク大将指揮をして、国連軍という一つのものとしてやつておるのでしよう。だから国連軍協定といえば、国連軍という一つのものとの協定ではないのですか。
  15. 下田武三

    下田説明員 協定の対象となります軍隊、すなわち国連軍一つのものでございまするけれども、国連軍の総司令官クラーク大将だけが調印いたしました文書が、ただちに英連邦その他の外国をも拘束する効力を持ち得るかどうかという点には多大の疑問がございまして、今までの双方見解では、司令官だけが署名しても、ただちに他国を拘束する効果は持たないという見解に一致しております。
  16. 清瀬一郎

    清瀬委員 そうするとどうなんですか。司令官だけが署名しても効力を持たないから、司令官と、及び中隊か大隊かしらぬけれども、かりにもわずかばかりの兵隊でも送つた国と、こういう複合の契約をするつもりですか。
  17. 下田武三

    下田説明員 日本国を一方といたしまして、国連軍構成員たる軍隊を送つている複数の国を他方といたしました協定になると存じます。
  18. 清瀬一郎

    清瀬委員 多数の国と、及び国連軍それ自身も拘束するのでしようね。
  19. 下田武三

    下田説明員 国連軍構成員たる軍隊を派遣している国家を拘束いたしまするから、その国家機関である軍隊に当然その効力は及ぶと思います。
  20. 清瀬一郎

    清瀬委員 国家機関たる軍隊ですが、それを集めて国連軍として一つの、日本の昔の言葉でいえば、指揮統帥のもとにやつておるのでしよう。その意味にも解していいのですか。そこがまだちよつと……。
  21. 下田武三

    下田説明員 ただいまの国連軍法律的地位から申しますと、国連軍司令官はそれだけの権限をいまだ持つておりません。どうしても国家を頭に立てまして、日本を一方とし、多数の国を他方として協定する以外に、法律的に可能な道がない状態でございます。
  22. 清瀬一郎

    清瀬委員 まだよく了解しませんが、国連軍の総指揮官を拘束せぬようなものをここでつくつて何か役に立つのでありますか。一人々々の兵隊は総指揮官指揮によつて動いておる。そうすると、総指揮官を拘束しなければ、それをこちらが勾引したところが、どうもそこに行き届かぬものがあると思います。そこを聞いておるのです。国民もそれを疑つておる。この表題国連軍協定というでしよう。国連軍協定しておるのです。しかし国連軍ではない、ほかの個々国家が出て来て、外務省へ乗り込んで行く、ここがどういうものであろうか、こういうことです。
  23. 下田武三

    下田説明員 普通国連軍協定と申しておりまするが、相手方国連軍でございませんので、正確な表題はまだきまつたわけではございませんが、かりにつけております表題は、日本国における国際連合軍地位に関する協定、そういうことであります。
  24. 清瀬一郎

    清瀬委員 国際連合軍という言葉は長いから国連軍というので、国連軍地位に関する協定、こういうことなんですね。私は、国連軍を拘束するものでなければ、当面の役には立たぬと思います。
  25. 下田武三

    下田説明員 国連軍司令官は単に統帥機関にすぎませんで、停戦協定等権限はございまするけれども、刑事裁判管轄権のごとき重大な立法事項を含む協定締結する権限は、軍の指揮官にはございません。従いまして日本にる国連軍地位を明確に定めるためには、国連軍を構成しております軍隊の主権を持つている個々国家相手として協定締結するほかはないと存じます。また国連軍司令官は、アメリカ人でございまして、アメリカ軍司令官でございますが、アメリカ軍司令官であると同時に国際連合から委託せられた一定の国際的指揮官両方地位を持つておりまするが、このアメリカ人としての指揮官米国政府の下にある国連軍司令官でございまするから、米国がごの協定に参加すれば、当然国連軍指揮官も拘束し得ることになると考えております。
  26. 清瀬一郎

    清瀬委員 そうすると司令官を抱束する力は、アメリカ日本協定をすれば、その反射作用として拘束されるのであつて、その協定自身でただちに一つ単位国連軍という一単位指揮官たるクラーク大将は拘束しない、こう聞いていいのですね。
  27. 下田武三

    下田説明員 仰せの通りであります。
  28. 清瀬一郎

    清瀬委員 その次にこの協定というものはどういうものでありましようか、今の御説明では、協定各国を拘束する。従て日本をも拘束することはむろんであります。前の行政協定とはたいへん違うと思います。どう解釈していいでありましようか。やはりこれは條約と見ていいのでありましようか。
  29. 下田武三

    下田説明員 行政協定はごの場合日米両国間のみの協定でございまして、この行政協定のできます前に安保條約がございまして、その安保條約の規定に基いた細目協定となつております。今度の場合は、国連軍に関してとりきめた條約は、いまだ日本が参加しておるものとしては何にもございませんので、全然新たな国際的の権利義務日本が持つことになりますので、国連軍協定は当然憲法にいいます條約である、従いまして国会の御承認を得てから締結するものと存じております。
  30. 清瀬一郎

    清瀬委員 そうしますると、あなた方が今協定をしますが、結局最後決定憲法にある通り国会承認を得る。そうしますると、いろいろ国会の方でも聞かなければならぬことがあります。この協定不成立なつたらどういうことになりますか、この協定がなければ国連軍地位はどうなりますか。
  31. 下田武三

    下田説明員 その点は、不成立になりました場合には日本におきます国連軍地位に関する何らの定めもないという白紙状態法律上は継続すると思います。
  32. 清瀬一郎

    清瀬委員 白紙といいましても、国際法というものが数百年の人類の経験であるのであります。これがなければ国際法通りに行くのでしよう。そうして外務省の方では国際法原則に一番近い罰則を見越してやればいいという意味でありまするから、どうもこちらからこの條約の成立を必要とする理由はちつともないように思いまするが、どういうわけのものでありましようか。
  33. 下田武三

    下田説明員 先ほど申し上げましたように、平和條約におきまして、国際連合現実に基いてとられる行動には、あらゆる援助を与えるべきことを日本独立のとたんに課せられているわけでありまして、それが今日世界に生いて国際連合がとつております行動で最も重大な行動一つであるのが朝鮮における国連行動でございます。従いまして平和條約の規定を忠実に守ろうといたしますならば、この朝鮮における国連軍行動を容易ならしめるために何らかのとりきめをしなければならないことになります。もう一つ吉田アチソン交換公文というものが平和條約と同時に交換せられておりまして、これは国会の御承認も得ておりますが、その場合に、朝鮮における国連行動に参加する軍隊に対して日本国内並びに日本国の近傍におきまして支持することを容易ならしめるということを日本は約束いたしております。従いまして協定を結ばないで白紙になつても一向かまわぬということは、平和條約の義務吉田アチソン交換公文義務とを照し合せて考えます場合には、さようには、言えないと思うのであります。
  34. 清瀬一郎

    清瀬委員 国際公法は悪いものだという前提の上ならそうでありますけれども、国際公法は何べんも何べんも人類が使つてみて、これが一番妥当であろうということに定着しておるのでありますから、吉田アチソン交換公文によりましても、国際法さえ十分に守つてやれば、国際法といえども外国軍隊を無理にひつぱつて来て厳罰に処するという規則はないのです。それからまた軍の公務として執行する場合については手出しはしないのです。ただ公務でなくて出て来て酒を飲み過ぎたり、女にたわむれたりする場合のことでありますから、そういうものはやはり最もすみやかに各国において処理するということが、処理してもらう軍隊に対しても規律を維持する上においていいのであります。あの公文があるから、また日本各国兵隊の不行儀を取締るということが、何も国際国会軍を妨害するということにはならない。それは悪意に解釈した解釈であろうと思います。こうなりますと、議論になりますけれども、さように考えていることを十分御記憶願いたいのであります。  そこで問題をかえまして先刻のお話から本年の七月から二箇月間やつておる、それでまたけさの要旨としてだれかが発表したものでありましようが、八週間前にというと、ほぼ合うのでありますが、二箇月以前に、五月の三十一日に吉田書簡というものが出ておりますが、これが出ました経緯は一体どういうわけでしようか。
  35. 下田武三

    下田説明員 まだ平和條約発効前において在日米軍につきましては、発効はいたしませんが、すでに行政協定ができております。平和條約発効後、在日米軍を規律する行政協定はすでにできております。しかしながら国連軍をいかに取扱うかというとりきめは何らできておりません。そうしてまだ平和條約が発効する前からさしあたり最小限度のことはとりきめようという見地から交渉が行われております。その交渉がさしあたり刑事裁判権の問題につきまして、日本側の取扱い方針を通報しようということになりまして、あの書簡が出たわけであります。従いまして今度の国連軍協定交渉と全然無関係なわけではないのであります。
  36. 清瀬一郎

    清瀬委員 その交渉はだれとの間に行われましたか。
  37. 下田武三

    下田説明員 やはりアメリカ側及び主要英連邦側だと存じております。
  38. 清瀬一郎

    清瀬委員 あの時分からカナダとか、ニユージーランドとか、濠州とか、あるいは朝鮮へはトルコ兵も行つておるのでしようが、それらがやはり口を出して来ましたが、あるいはまたアメリカ側だけ、マーフイーか、クラークか、リツジウエイですかが代表としてやつたのでしようか、当事者が段階的に違つておりはせかということを聞いておるのです。
  39. 下田武三

    下田説明員 吉田書簡前の段階におきましては、米国先方を代表いたしまして前面に出て来ております。米国の背後で英連邦側と協議はいたしておつたと存じますが、日本に対して直接対して参りましたのは米国が主でございます。
  40. 清瀬一郎

    清瀬委員 前の国会が解散されまして、翌日にあのことについて外務大臣より御発表になりました。しかしながら国会はあれについてはまだ直接に聞いていないのであります。あの発表のうちに、これは日本側から出した書簡でとりかわしたものでないからそれについては責任は発生しない。言葉はたいへん違いますけれども、そういう意味があつたと思いまするが、今でも同様にお考えでありましようか。また私の今言うたのは聞き違いでありましようか、それをひとつ御説明願いたい。
  41. 下田武三

    下田説明員 問題は、あの吉田書簡がはたして国際約束であるかどうかという点だと存じまするが……。
  42. 清瀬一郎

    清瀬委員 約束じやないことは知つておるのです、義務を生ずるかどうかということなんです。
  43. 下田武三

    下田説明員 あの書簡自体で申しておりまするように、日本側はこう取扱うつもりだという日本側の方針を一方的に通報したものでございます。従いまして通報した以上は道義的にはそれを守る義務があると存じます。
  44. 清瀬一郎

    清瀬委員 それで了解しました。通報した以上は先方もそうするだろうという期待を持ちますから、ここで守るべき義務がある。私も同様に考えておるのですが、そうすると一体これを守るだけの措置は、具体的に言えばこれを逮捕するのは警察官であり、検挙するのは検察官であります。その当時これを守らしめるだけの措置をおとりになつておりまするか。
  45. 岡原昌男

    ○岡原説明員 その点お答えいたします。実は吉田書簡なるものが出ました直後私の方でそれを承知いたしまして、その線に沿いましてただちに協議をいたました結果、全国の検察官に対しましてかような基準で事を処理するようにという取扱い基準というものを出してございます。
  46. 清瀬一郎

    清瀬委員 その取扱い基準の写しを御提出願いたいと思います。
  47. 岡原昌男

    ○岡原説明員 それでは近い機会に、ちよつと長文のものでございますから印刷して差上げることにいたします。
  48. 清瀬一郎

    清瀬委員 そうするとその後に不幸にして神戸水兵事件が起つた。神戸における国家地方警察官なり検察官はその基準を見落したのでありましようか。
  49. 岡原昌男

    ○岡原説明員 あの吉田書簡をどのようにお読みになりましたか知りませんが、この点は、大体吉田書簡なるものが、四項目からなつておりまして、最初の一項目は国際法原則に基いて裁判権をきめる。第二項目におきましてそれが不明確な場合におきましては、関係国と協議してこれをきめる。第三項目におきまして身柄のやりとりについて向うにやるのを原則とする。但し第四項目におきまして、こちらへ引取つてまま事件を処理すを場合がある。もし身柄の処置について協議がととのわなかつたならば、それは暫定的に向うに引渡す。しかし裁判権の問題は一、二項で解決しておりますので、起訴云々の点については特に神戸事件が覚書違反という問題にはならぬわけであります。
  50. 清瀬一郎

    清瀬委員 あの規則を読みますと、逮捕はするが、軽微と書いてあります。通常の場合は向うに渡す。ところが六月二十九日に逮捕されて七月二日に起訴されております。先方に渡しておりません。それから解釈がつかぬ場合には、四十八時間おいて、再び必要があればもどすという條件で先方に渡す。これもしておりません。初め二項のことは裁判のことで別として、四項のことは行われておらぬと思いますが、これはわれわれの間違いでありましようか。
  51. 岡原昌男

    ○岡原説明員 その点、実はきよう国連協定関係だと申しますので、神戸事件の具体的な書類を持つて参りませんでしたが、一応記憶にあるままにそのいきさつを申し上げますと、お話通り大月二十九日に事件が発生いたしまして、間もなく逮捕になりました。当時たしか英国のシヨア・パトロール、向うの警察官もその逮捕に立ち会いまして、そうして身柄をこちらに引渡しまして、警察で調べをした上、検察庁で事件を受理いたしました。それが六月三十日と記憶しております。それで翌七月一日にその事件について検察庁で調べをいたしました。関係人その他も捜査いたしました上で、お話のように七月二日に起訴した案件でございます。身柄の処置につきまして、当時神戸の副領事であつたと記憶いたしますが、申入れがありました。ただその申入れがすこぶる簡単な、いわゆる外交折衡というようなものではなくて、本人が呉から向うに出発したいと言つておるらしいが、もし身柄を引渡してくれるようだつたら引渡してもらいたい、というふうな軽い申入れであつたそうでございます。こちら側としては既定方針としてずつと調べて行きたいというふうなことからいたしまして、そのまま上司の指揮を仰いでやつたというようなことになつておるわけであります。それで御不審の、しからばその協議をしたかしないかということになるわけでございますが、これは神戸の領事館においても、実は私どもの方も神戸の領事館が少しうかつだつたと申しておるのでございますが、そのことをこちらの大使館に通報して来なかつたらしいのでございます。従つて外交交渉に移されましたのはたしか七月の八日であつたと思いますが、ずつと還れまして、神戸の領事館から検察庁あてに身柄を引渡してもらいたいという協議が来たそうであります。そのときはもうすでに起訴してございましたので、こちら側としてはそのまま、問題は保釈の問題が残るだけであるというので、検察庁は打切つたというふうなことになつておるわけでございます。
  52. 清瀬一郎

    清瀬委員 まだほかに質問者がございますか。
  53. 田嶋好文

    田嶋委員長 ほかに質問者はありま
  54. 清瀬一郎

    清瀬委員 では簡単に……。今の御説明を聞きましても、向うの要求がなかつたからというふうに聞えますが、協議を始めて四十八時間後に引渡すというので、どうしてもこれは完全に吉田書簡通りにはやつておらぬと私は断定するのであります。これを守るために必要な措置をとられたかという問いに対して、訓示をしたとおつしやるので、その訓示を拝見してから申し上げます。この吉田書簡に書いてあることは書簡でありますけれども、中のことは実は刑事手続が書いてある。刑事訴訟法が書いてある。日本憲法によれば、これは法律でしなければならぬことが書いてあるのです。それを守らそうと思えば、検事だけにそういうことを言わないで、国民全部に急な場合だからして国連協定ができるまではこういうことにしてあるぞと知らせることが、私ども吉田書簡を間違いなく守らせるゆえんであろうと思うのであります。かようなことに対する御所見はまた大臣に別にお伺いしたいと思いますので、この見解に対するお答えは私から求めません。  再び外務省下田さんに聞きますが、こういう吉田書簡といつたようなものを前に出しておきますと、これからの協定もえてしてそれが既成事実になつてそれに引かれやすいという心配がありますが、あなた方はどうお考えでありますか。前に自発的にさえこういうことをやつておるのだから、これだけはもう当然向うがのしかかつて来るように思いますが、どう考えておりますか。
  55. 下田武三

    下田説明員 ただいままでのところ先方吉田書簡を引用して、この通りにしろというようなことは全然申しておりません。先方国連軍協定における態度は、国連軍にも行政協定待遇をしろということでございまして、吉田書簡以上のことを要求しておるわけではありません。
  56. 清瀬一郎

    清瀬委員 今まで以上のことを要求しておるでありましようが、向うが要求しないのに、自発的にさえあれだけのことを吉田は言うておるのだ、日本はここまでは認めるぞという証文をここに預けたということになるのだ、こういうことはわれわれ国民としては非常に残念に思つておる次第であります。  なお他に御質問もおありのようでありますから、私は一旦打切りまして、大臣がお見えになりましてからまた御質問いたします。
  57. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今の続きの問題を第一にした方がよいと思います。これは行政協定締結した際に、1時の法務府関係の方から私は漏れ聞いたのでありますが、どうも外務省は法務府とあまり相談しないでどんどんかつてにやつて非常に困るということを聞かされております。そこでこういう吉田書簡というようなものは、今清瀬委員も申されたように、国政の運用上、ことに裁判権の問題などに対しましては重大な影響があると思います。裁判権の問題のごときは、法務省としては重大な関心のある事案であると思います。そこでこういう書簡を出される前に、外務省は法務府と何か交渉されたのであるかどうか。これは事務官僚であるあなたとしては御答弁できないかも存じませんが、もしその辺のいきさつがおわかりでありましたら、結局法務府とどういう交渉をして吉田書簡というものが出されたのであるか、その点について忌憚ない御意見を承りたいと思います。
  58. 下田武三

    下田説明員 私はそのときにまだ就任しておりませんで、伝え聞きでございますが、何分先方は徹頭徹尾行政協定と同じ取扱いを国連軍に対してもしろということで強く押して来ておつたのであります。平和條約発効後一月になつても何も意見が一致しないということで、とりあえずそれでは吉田書簡のラインで行ごこということがきまりましたのが、書簡発出の直前であつたそうであります。事務当局の下の法務省との協議は省略して法務省の首脳部と外務省の首脳部との話合いがあつたというように聞いているのです。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとそれは伝聞的なことでありますが、あなたのお聞きになつたことでは、法務省の責任者と外務省の責任者とが打合せの上でこの書簡が出されたものであるとお聞きになつているわけですね。それではその責任者に聞くことにいたします。  今清瀬委員からお話のあつたことでありますが、一体吉田外交なるものははなはだ秘密外交でけしからぬということが輿論になつている。これは自由党内部におきましても、いわゆる鳩山四原則一つになり、そういう点からいたしましてこの書簡を出す際に一体法務府の責任者と話合いがなかつたか、検察当局とも話合いがなかつたか、独断的にこれを突然秘密裡にマーフイに渡されたものではないかと私どもが考える点が多々あるのであります。しかしその点についてはあなたは御存じないとするならば他にお聞きいたすことにいたします。  あなたは今度條約局長になられたのでありますが、かような秘密外交的なやり方に対しては事務官僚としても政府に強くその非なるゆえんを説いていただいて、なるべく国民とともに外交をするようにお願いしたいと思うのであります。なおこれは外務大臣に要望しますけれども、事務官僚であるあなた方にもお願いします。どうもなわ張り争いみたいなことがあつて事務官僚同士の連絡もなしに、こういうことが独断的に行われたという心配がわれわれあるのであります。それが原因になりまして、今日のイギリスの水兵事件のような醜態を演じたのではないかと思います。私はこれは醜態だと思うのであります。  次にお尋ねいたしますことは、国連軍の性格と申しますか、国連軍と称しましても法律概念から見るとはなはだはつきりしない。一体この国連軍と称している国の兵隊というものはどこの国とどこの国が現在朝鮮へ出ていわゆる国連軍というものを形成しているか、それを承りたいと思います。
  60. 下田武三

    下田説明員 現在現実に兵力を参加させている国は、先ほど申し上げました五国のほかフランスでありますとか、イタリアでありますとか、エチオピアまでも入りまして十七箇国あることになつております。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると先ほどの説明は、国連軍なるものを一団体とした條約の相手ではなくて、結局において各国日本国との間の協定というふうに承るのですが、そうするとエチオピアに対してもわれわれから見れば治外法権的な條約を結ぶことを彼らが要求して来ていることになる。そこに国連軍の名において実は国連軍というものが相手でなくて十七箇国と日本との條約ということになるのでありますか、結局エチオピアと日本との間の條約ということに理解してよろしゆうございますか。
  62. 下田武三

    下田説明員 もしエチオピアが国連軍協定に参加を欲するならエチオピアも当事国となるのでありますが、日本で軍事裁判所を持つておる国はアメリカのほか英連邦だけでございまして、軍事裁判所を持つていない国が裁判をしようと思つてもできないことになりますから、実際に刑事裁判管轄権について特別な待遇を受けるのは、日本で軍事裁判所を持つておる限られたる少数の国になると思つております。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、エチオピアとの間でも協約はするのだが、実際は軍事裁判所をエチオピアは持つておらぬからそうならぬということになるのですか。そこがちよつとはつきりせぬが……。
  64. 下田武三

    下田説明員 その点は、まだ突き詰めた規定交渉でできておりませんが、当然そういうことになりまして、軍事裁判所がある国だけが軍事裁判権を行使し得るということになると思います。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、エチオピアが軍事裁判所を持つことになれば、やはりエチオピアとの間にもこういう治外法権的なとりきめができる、こういうことになるのですか。
  66. 下田武三

    下田説明員 エチオピアが軍事裁判所を日本に開設しますれば、そういうことになります。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからお尋ねしたいことは、今あなたの発表されたのは、相手方国連軍側と称する国々の主張一つとして日本主張をする国際法上の原則というものはもう今行われないのだ、第二次世界大戦後はあれと違つたものだ、こういうのですか。相手方主張するようなそういう現実の姿というものは、いわゆる国際慣習法、たとえば日本憲法の九十八條ですか、「日本国締結した條約及び確立された国際法規」、こういう国際法規に入つておるという主張になるのですか。向う主張はどうなんですか。現在第二次大戦後に行われている慣行というものは、国際慣習法としてわが国の憲法の「国際法規」に含まれておる、こういう主張になるのですか、ならぬのですか。
  68. 下田武三

    下田説明員 先方は、第二次大戦中に国際法は非常な変化を遂げたと申しておりますが、わが方は、そんなことはない、従来からのオーソドツクスの国際法が行われておるのだということをただいままで強く主張しておるわけであります。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、向う方は、北大西洋條約のある国々は戦闘がないのだし、現在日本には朝鮮事変という戦争が行われておるのだ、そこで北大西洋條約の原則に従われないというような主張をしておるが、これに対して一体外務省はどういう主張をなさつておるのでありましようか。
  70. 下田武三

    下田説明員 外務省は、北大西洋條約が最も正しい現行国際法原則に近いものであるから、これによつて日本における国連軍裁判権をきめるのが正しいという主張をしておるわけであります。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それは最初からわかつておるが、向うの言い分に対してこちらはどうしてはね返しておるかというのです。向うには戦争がない、日本には戦争があるというようなことを言つて違うのだという主張をしておるというから、外務省はそれに対してどういうふうな主張をなさつておるか、それを聞いておるのであります。  ついでにさつきあなたがあげられた向う主張に対してわが方としてはいかなる主張をなさつておるか、われわれに知らしめていただきたい。もしあなた方の知恵が足りなければこの委員会で知恵を出してもよい。向うはこう言うけれどもわれわれはこういう主張をしているという主張をひとつ明らかにしていただきたい。
  72. 下田武三

    下田説明員 ヨーロツパには現在戦火を交える戦闘は行われていない、極東には朝鮮において現実戦闘行為が行われているということは事案でございますから、その事実に対しては事案は事実として聞くだけでありまして、事実を否定する必要はないと思います。  それから先方主張に対してわが方はどういう主張をしておるかということでありますが、先ほど先方主張を紹介いたします前に、わが方の基本的態度を申し上げました。すなわち日本としては一般国際法原則で行くべきである、そうしてもし先例にすべきものがあるならば、一般国際法原則を最も思案に取入れている北大西洋方式で行くべきだというのが日本の第一の根本的な主張であります。  第二の日本根本的主張は、米軍日本自体国家の安全を守るために駐留しておるのである、しかるに国連軍日本の安全の防護という使命を持つていないのであつて、両者を区別するのは当然であるというのがそれであります。  第三の日本側の繰返して申しておりますことは、日本の特殊事情でございます。明治以来日本治外法権の撤廃に非常に苦心さんたんして来た。多年の外交の結果やつとこれを解消することができたのであります。従つて日本国民は治外法権的な特権に対しては非常に敏感であるという国民感情を訴えまして主張しておる。この三つがわが方の主張の最大原則であります。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私がお尋ねしたいことは、向う日本はもう戦争があるのではないかという主張、それをそのまま事実として認めているということに対して私どもは不満がある。これは朝鮮事変ですが、わが方とは関係がない。日本には戦争なんかありません。その朝鮮戦闘に参加している国連軍なるものに対して、われわれが一体日本国としてどういう待遇をするか。戦争があるのだから北大西洋條約と違うというような論拠は、当然日本朝鮮事変の当事国のように彼らが考えておるのではないか、こういうことをそのまま外務省がお認めになつているということは、将来非常に禍根を残すと私どもは思う。私どもは朝鮮事変に関係がない。日本の国には戦闘がないのであります。それを向うがそういうことを口実にして、朝鮮戦闘に参加していることをもつて日本が当然その一員なるがごとき認識のもとに北大西洋條約との違いを指摘して治外法権的なことを日本に迫るということは、私は非常に大きな問題だと思う。それに対して外務省は一体うのみになさつておるのであるか。そうすると、すでに日本朝鮮事変の関係国の一国として、その当事者のような気持に外務省はなられておるのであるか、それをお尋ねしておきたい。
  74. 下田武三

    下田説明員 先ほど事実は事実と申しましたのは、ヨーロツパにおいては現実戦闘行為が行われず、極東においてはつまり日本以外の朝鮮において現実戦闘行為が行われている事案を事実として認めたというのでありまして、日本朝鮮事変の当事者であるというような意味では毛頭ございません。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお平和條約第五條国連協定の協力のことが書いてあるのではないかという論拠に対しては、外務省はいかなることをもつて対抗されておるか、それについてお尋ねいたしたい。
  76. 下田武三

    下田説明員 平和條約第五條義務について法律論を言いますと、いろいろな見解が成り立つのでありますが、先ほど読みました「国際連合憲章第二條に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。」と書いてございますが、この平和條約は国際連合憲章第二條をはさみで切りまして、そうして平和條約の中にくつつけた。つまりこの第二條の義務平和條約の一部をなしておるという見方もございます。それから国際連合憲章第二條に掲げる義務は、これをしさいに点検すればいろいろな義務がございますが、今度の朝鮮における国連行動は、安全保章理事会の勧告に基いて加盟国がとつた措置でございますから、加盟国は勧告に従うと従わないとの自由は有する。朝鮮兵隊を出すことを欲しない加盟国は出さなくてもいいわけであります。加盟国ですらそうであるならば、いわんや日本のような非加盟国は、勧告に対しては従うと従わないとの自由のあることは当然であります。従つてこれはただちに平和條約の一部になつ憲章に掲げる義務が、そのまま選択の自由なくして日本義務としてなつたものであると見ることはできないというのが、私どもの主張であるのであります。
  77. 田嶋好文

    田嶋委員長 他に御質疑はございませんか。—外務大臣は三時半に出席する予定でございますから、ここで十分間休憩いたします。     午後三時二十三分休憩      ————◇—————     午後三時五十五分開議
  78. 田嶋好文

    田嶋委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  質疑の通告がありますからこれを許します。松岡松平君。
  79. 松岡松平

    松岡(松)委員 條約局長にお尋ねいたしたいのですが、先ほど相手国から国際公法は第二次大戦を通じていろいろ変化しておると言つているということでありますが、なるほど多少の変化もありましよう。しかしその変化は條約を通じて変化されておるのであつて、條約なくしての変化ということはあり得ないわけなのであります。これらの主張に対するいかなる反駁的な主張日本政府はやつておるのか。それから援助ということでありますが、およそ援助という観念については、裁判管轄権の問題、ことにアメリカの場合は日本の防衛という立場から明白でありましようが、朝鮮の場合においては、極東々々と相手国が言うておるようですが、極東における朝鮮も世界における朝鮮も立場は別にかわらない。極東のことならば国連関係を持つ以上は世界の朝鮮として関連を持つておるのでありまして、極東にそういう事態が起きておるからあたかも日本を守るがごとく言われておるように私どもには聞えるのであります。そういうことが国連憲章に基く行動に対する援助というものに入るのかどうか。言いかえるならば、連合国軍の軍隊に属する人たちがたまたま、日本の町に出て来て婦女子を犯したり、あるいはどろぼうを働いたり、あるいはその他の人権を侵すような行動をしたら、それを裁判するのは独立国の国権の発動である。それを相手国がそういうものまでも自分の手によつて裁判をしなければならぬという主張を持つこと自体が、それが援助であるという考え方をどういうふうにお考えになつておるのか。外務省当局としてもかなりこれを問題にしていると思う。そういうことまでが援助に含まれておるのかどうか。それに対してどういうふうに反駁的主張をしておられるのか。先ほど外交上の機密に関することは発表できないというお言葉でありましたが、それは別にしても、そういう理論的な反駁の内容は話しても私は一向さしつかえないことではなかろうかと考える。その点について私どもの理解の行くように御説明願いたい。
  80. 下田武三

    下田説明員 御質問の第一点の、国際法はただかわつわつたと言つてもかわるものではなくて、国際法の淵源の一つといたしまして、成文国際法、換言すれば條約ができて初めて国際法がかわるのではないかという御見解、まつたく同感でございます。軍隊特権一つとして、刑事裁判管轄権の行使についてはこれは今まで普遍的な條約はなかつたわけでありまして、万国国際法学会でいろいろな法典編纂の試みはございましたが、でき上つた一般的な條約というものは私どもは承知しているものではありません。それで個別的な各国間の條約でありますが、先方に対して、国際法がかわつたというからにはその証拠を見せろということを言いまして、先方からぽつぽつ送つて来ておりまするが、たとえば一九四二年に英米聞に交換公文をもちまして、英国における米国軍隊裁判管轄権規定したものがございます。これはやはりアメリカの軍法に付する者に対する裁判権は、アメリカ側に専属的に認めるということを規定しております。その他二、三あるようでございますが、まだ完全なるテキストをそろえてはおりません。かように先方は、條約でこのようにかわつて来ておるのだからという実例はあげて来ております。  第二の点は、日本平和條約第五條国連行動に対して援助を与えると言うが、一体刑事裁判管轄権の問題で、便宜の措置をきめてやることがどういう場合援助になるかという点の御質問でございます。先方は軍事的能率ということに非常に重きを置いて話をしておるのでありますが、先方の考え方は、たとえて申しますと先般の神戸の英水兵事件で水兵が数箇月間身柄を拘束されたというような場合、軍艦の乗組員は武器の搭載、弾薬の搭載でできるだけ最小限度の人員を乗せておる。一門の大砲を四人で処理することになつておる場合に、四人のうち一人が欠けたら軍艦の行動自体に支障を来す。軍艦の場合は特にそうでありますが、陸上兵力におきましても、地球の反対側からあるいは船により、あるいは飛行機によつて莫大な経費をかけて送つている一人々々が貴重な存在である。従つてこれを日本側で長く身柄を引きとめるということは、作戦上支障を来すということを言つておるのであります。先方は何も日本が罰しないからといつて向うも罰しないのではないのだ。向うはむしろ日本以上に、軍法会議日本が罰すると予想される以上に厳罰に処しておるのだけれども、作戦軍が罰する場合には、おのずから軍事上の必要に適合した罰し方をしたいということを言つておるのであります。従いまして軍の構成員に対する先方の限られた人員の最も効果的な使用、その使用に便宜を与えてくれという意味先方援助、そう申しておるわけであります。
  81. 相川勝六

    ○相川委員 條約局長にお伺いしたいのですが、そういうふうに向うが言うと、外務省はどういうふうにおつしやるのですか。それはごもつともとしてお引込みになるのですか、それをお伺いします。
  82. 下田武三

    下田説明員 軍隊特権というものは国際法上認められておつて、その国際法上いかなる範囲まで特権を認めるかということは軍隊の性質上から来る作戦の必要と、軍隊を送つておる国の法律秩序の必要との妥協でございます。従いましてわが方としては、あくまで公務に無関係犯罪については日本側一般国際法上の原則従つて裁判管轄権を行使すべきだということを繰返し繰返し今日まで主張しておるわけであります。
  83. 松岡松平

    松岡(松)委員 今までの点でありますが、なるほど軍の作戦用兵上、援助という考え方には多少触れて来るようでありますけれども、しかしながら彼らが用いておる軍隊の中にそういう犯罪者が一体何パーセントいるか、零点零幾つに当るかという問題でありまして、それはほんの言葉の上のあやで、結局これは各国国民としての生存上における一つの自信、いわゆる国家の一員であるという以上は、自己が犯されたる犯罪に対して自国が厳正なる裁判をしてくれるということが国民としての一つの安心感であり、信頼感であろ。これがその裁判権を他国にやすやすと与えるということは重大な問題であります。援助に名をかりて、しかも日本国民に対して一つの劣等感を持たせる、一つの不安を与えるということは、連合国としておよそ意味のないことであると私は思う。しかも作戦用兵上の援助と言われるけれども、その作戦用兵上の支障などというものは、パーセンテージから言えば一体どの程度に当るものであるか。個々の具体的な場合において言うならば、一体どの程度の必要になるのか、私はとうてい考えられない。ただりくつの上だけに現われて来る一つ言葉にしかすぎない。こういう点について外務省当局はほんとうに、先ほど申し上げたようにもつと国民の輿望というものをになつて、あらゆる論証をもつて答えておられるかどうか、どうもまだ私は納得が行かないのであります。その点はなかなか重大な問題でありますから、外務省当局におかれましても簡単な問題ではありますまい。
  84. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは外務当局並びに法務当局にも、質問であるか希望ということになるか知りませんが、先般の文芸春秋だつたと思います。これは山梨県下の事件だと思うのですが、学校の女の先生が進駐軍のために強姦される、そして向う裁判にかけられたところが、これが妙な判決の処置によつて無罪にされた。その先生は実に学校の教員であり、処女であつた人物、これがために婚姻の予約をしておつた相手があるけれども、ほとんどそれを破棄されるような状態にある上、学校の先生であるだけに生徒に与えた影響も甚大である。私どもはあの判決を見まして驚いたのであります。日本の最高裁判所判事をやつた塚崎直義氏も、実に乱暴な判決であるというふうに論じておるのであります。かようなことが、今、公にされておりまして、しかも呉市あたりには国連軍の暴行が頻々とあるということが当委員会の問題にもなり、近く調査団を派遣しようという相談までもある際であります。さような意味におきましてこの裁判権の問題は重大な国民感情と相なつておると存じますので、イギリスの水兵事件については法務省が相当われわれの期待するような態度をおとりになつているやに聞くのでありますが、どうかこういう問題につきましては外務省は法務省と十分なる連絡の上、せつかく盛り上げて来ておりまする国民独立感を阻害しないようにやつていただきたい。その意味におきまして、あなた方が向う主張に対してどういうようなこちらの強固なる態度でもつて応酬せられておるか、その模様を実は承りたいのが各委員の考えだと思うのでありますが、どうも何だかはつきりしないのであります。もちろんあなた方としてははつきりさせるだけの自由がないのかも存じませんが、かような国民感情のあることも十分に認識していただきたい。そうしてこの交渉の過程において、かような女教員の裁判問題などを皆さんが持ち出されたことがあるかないか、それをひとつ承りたい。
  85. 下田武三

    下田説明員 法務省との連絡は、岡原検務局長がうるさいと思われるくらい、私どもの方からいたしております。従いまして最近法務省と外務省との足並は完全にそろつておるわけであります。御指摘の刑事事件に対する考え方も、外務省も法務省もまつたく同じ考えを持つております。御質問の、こういう刑事事件の頻発に対してどういう措置をとつたか。法務省からいただきました資料に基きまして、犯罪の件数、その内容を横文字に直しましたものを先方に与えまして、数回警告を発しております。先方では日本側申入れをもつともだといたしまして、あるいは司令官のサーキユラを流すとか、あるいは呉におけるいろいろな措置、たとえて申しますと、呉のきまつてある飲食店では犯罪が起るというようなところもありますので、これはあまりビールやなんか飲めるところが多過ぎるのだというので、米側の司法官憲と協議して、Aクラスと申しますか、これだけの飲み屋以外は入つてはいかぬというような制限もとりまして逆に日本側から、そうされると、それ以外の飲み屋はあがつたりになるから、何とかもう少しふやしてくれという地元の要求も出て来るような状態で、あるいは軍艦が入港して、兵隊の出入がはげしいような場合には、十一時以後の外出禁止であるとか、交代兵等が大勢来たからといつて、事前に日本側の警察に連絡して来るとか、最近先方の態度は、いかにしても不幸な刑事事件の発生を防止したいという、非常にまじめな気持で、日本側に協力しておる次第であります。それで実際問題といたしまして、刑事事件の数は最近特に減少して来ておるように私ども報告を受けております。
  86. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお、民間側の声をあなた方に通ずることは一つの任務だと思いますので、先般駐留軍の労務に服しておりまする労働組合の執行委員長陳情書を持つて参りました。それは朝鮮へ輸送の任に当つております船員が、釜山沖におきまして、窃盗の嫌疑をかけられ、国連軍のために捕われて、非常な拷問を受けて、身体に障害を受け、遂に内地に送還された。これに対して、まつたく事案無根であるが、とりつく島がない。かような問題に対して一体どうするのであるかということを陳情に参りました。かような事案について外務省調査されておるか。しかもそれに対して国連軍当局に何らかの連絡をとられたか、承りたいと思います。私は今ここに文書を持つて来ておりませんが、輸送の任に当つておつた船の船員であり、朝鮮の埠頭で窃盗の嫌疑で非常な拷問を受けた事件で、外務省の何課だかにも陳情に行つたはずでありますが、あなた方の耳に入つておるかおらぬか、入つておらぬとすれば、調査して善処していただきたい。
  87. 下田武三

    下田説明員 ただいまの件は主管局アジア局の方にはむろん行つておると思いますが、條約局の方では、個々のケースについての処理をいたしておりませんので、私存じませんが、さつそく調べまして、どういう措置をとつたかを御報告申し上げたいと思います。
  88. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務省の岡原さんにお聞きしますが、今の事案のような問題は一体どこへ持ち込めばいいのですか。そういう事案を取扱つておる局が一体どこにあるのですか。これはまつたくの人権蹂躙なんだ。
  89. 岡原昌男

    ○岡原説明員 私どもの直接の所管ではございませんが、いろいろ考えてみますと、賠償問題は特利調達庁ですか、あの方の所管ではないかと思います。
  90. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 損害賠償の問題はそこへ行くかもしれぬが、そういうまつたく無実の罪を着せられて拷問を受けた者に対して、その相手を不問に付すべきじやないと思う。こちらに処罰権がないにしても、何かの機関において、向うの官憲に要請するか何か手続をしなければならぬ。それは一体どこへ持ち込むのが本筋ですか。
  91. 岡原昌男

    ○岡原説明員 ただいま賠償の問題を申し上げましたが、なおこれも刑事関係と見まして、その被疑者が日本人であるか外国人であるかによつてまたわかれて来ると思うのでございます。被疑者が国連軍人で、被害者が日本人であります場合には、その犯罪者米国軍人でありました場合には、例の日米行政協定が働くかどうかという問題が出て参ると思います。それからもしそれ以外の国連軍の将兵でありましたならば、先般来問題になつております直接の協定のない、目下ぺンデイングになつておる国際公法原則の線で、事態を個別的に処理する、かようなことに相なろうかと思います。従いましてその所管は、一応具体的な事案の詳細を私の方で承りまして、御判断といいますか、御鑑定いたしたいと思います。
  92. 古屋貞雄

    ○古屋委員 先刻清瀬委員からお尋ねのあつた相手の問題でございますが、私ちよつと疑念があるので、なお重ねてお伺いしたいと思います。各国との協定だとおつしやつておるのですが、しからば今アメリカ相手にしてやつておるのでありますが、アメリカとの関係はどうでありますか。行政協定で、管轄権はすでにアメリカにあるということにきまつておるのに、この国連軍の今の管轄権の問題の協定交渉に、アメリカの方がお出ましになつて交渉になつておる。しかもアメリカの大使は、日本の要求通りにするならば、いわゆる属地主義の政策をとるならば、上院で北大西洋條約の批准ができないということまで言われておることを新聞に書いておるのですが、こういう点どうも納得が行きません。その点納得の行くような御説明を願いたい。  それからもう一つは、吉田書簡を出さなければならなかつた何か特殊の事情があつたのですか。あればその点の御説明を願いたい。その二点です。
  93. 下田武三

    下田説明員 第一点は、米国はどういう資格で協定の当事国になるかという点でございますが、これは実はまだ未決定なのでございます。先方朝鮮作戦に従事している米軍も、安全保障條約に基いて日本を守るためにおる米軍も、観念的には区別できるけれども、実際日本におる間は同じくクラーク大将の麾下の軍隊であつて朝鮮に行つたからすぐ日本に帰つて来ても、これは国連軍だ、米軍でないと区別することに、観念上は言い得ても、軍隊の実際からは言えないのだ。従つて米軍はすべて行政協定一本で処理すべきだというのがアメリカ主張であります。従つてアメリカ国連軍当事者となる意味は、クラーク大将国連軍の最高司令官で、その統一司令部、ユニフアイド・コマンドというものがありますが、そのユニフアイド・コマンドの当事者としての資格に基いてやるべきもので、派遣国としての資格でやるのではないのだというのがアメリカ主張であります。それに対して日本は、いや朝鮮作戦に従事することを主たる任務とするアメリカ軍も国連軍の一部である。従つて英連邦軍と同じに国連軍協定の対象となるべきだという主張をいたしておるのであります。この点は意見が対立したまま未決定になつております。  第二点の吉田書簡を出さざるを得なかつた事情と申しますのは、私直接関係いたしませんでしたが、聞きますと、先方の当初の要求は行政協定と同じ待遇国連軍協定に与えるように講和発効後してくれということを、講和発効前、占領時代から強く要求しておつたようであります。これをあくまで回避するために吉田書簡が発せられて、国際法一般原則で処理するという大原則を冒頭に立てました吉田書簡というものが発生した、先方行政協定と同じ待遇国連軍に与えろという強い主張を回避するために、ああいうものが出たというように聞いております。
  94. 古屋貞雄

    ○古屋委員 先刻清瀬さんからもその点をお尋ねしておつたようですが、その書簡に書かれた事項が道義的に義務づけられるというような意味のものであるというお答えがあつたようですが、むしろさようなものを出さなくて、現在政府が御主張になつているような国際慣行で行くのだという主張政府は強く出していただきたいというのが国民の要望と考えるのですが、そういう問題につきまして一応出したものを前提して—これはくどいようでございますが、前提として相手方から管轄権に対する既成事実というような、ことになつての反撃を受けているような事実があるように思いますが、その点はいかがでしようか。
  95. 下田武三

    下田説明員 先方は占領時代は非常な特権を持つておりましたが、講和発効によつて日本独立回復後は占領時代の特権はもちろん、国際法に照して不正当と思われるような特権は剥奪すると申しますか、日本側の方がむしろ奪う立場に立つて、攻勢に出て、今度の協定先方の考えで言いますと、非常に日本側主張が強くてたじたじになつておるというのが客観的の事態だと思うのであります。
  96. 古屋貞雄

    ○古屋委員 なお先刻御報告がありましたことについて、外務省のこれに対する具体的なお考えを聞いておきたいのです。その点大臣にも後刻御出席になりましてから重ねて御質問したいと思つておりますが、国連軍が国内において不法行為をなした問題については、被害者は日本国民である。従つてこの不法行為に対する処罰が明確に、国民の納得の行くような方法を講じていただかなければ、国民相手国に対する感情はますます悪くなる。なおそれに対してわれわれから考えますならば、思い及ばないような結果を引起す原因になるということを考えましてお尋ねするのですが、平和條約第五條に対する協力の問題について、相手方国連軍行動に対する裁判管轄権を、行政協定米国に対する関係と同じようにしなければならない。協力の意味がそういう点まで協力をすべきだということをしいられておるようですが、不法行為をした場合に、これに対する事案を明確にして、制裁をはつきりするその管轄権が、属地主義によらずして属人主義的な方式によらなければならないということはいかなる意味の協力か、外務省はこれに対してどんなお考えを持つておられるか承りたい。すなわち日本国連軍に協力をするその協力が、不法行為に対する裁判管轄権相手国に与える、それが協力の意味にもなるという先方の御主張らしいのですが、これに対して外務当局はどういうお考えを持つておられるか承りたいと思います。
  97. 下田武三

    下田説明員 同一の不法行為があつたといたしました場合に、その軍人所属国は軍律による裁判管轄権を持つております。ところがその犯罪日本領土内で起りますと、日本は領土権の当然の結果としてその犯罪に対して裁判管轄権を持つております。二つの主権国家裁判管轄権が競合するわけであります。そこでどこで線を引いていずれに優先的な裁判権を認めるべきかという便宜の問題になつて参ります。領土国としては当然自国領土内で起つた犯罪は、たとい外国軍人が犯したものであろうと自国裁判所が裁判すべきことを主張するのは当然でありますが、軍隊という特殊な性質に基きまして、軍隊派遣国は、軍律に従う者は軍事裁判所で罰したいという主張を持つのもまた当然であります。そこで日本側は、その問題は一般国際法原則従つて行くべきだという主張をしておるわけであります。先方は、日本側主張する一般国際法というものは第二次大戦で條約の明文をもつて多くの変化が行われておる、そういう建前からヨーロツパ諸国が認めた先例をなぜ日本が認めてくれないか、そしてその先例を認めてくれるならば、軍隊所属国は自分の方の軍事上のそれに最も相応した処罰の仕方をする、そうしていかに厳罰に処したかという結果も日本側に御通報いたしましようという態度であります。
  98. 古屋貞雄

    ○古屋委員 今の問題は、相手国の要求をいれるということになりますと、結局日本の主権に制限を加える結果になるのでありまして、国民としては絶対に譲れない線である、かように信ずるのでありますが、との問題は主権に制限を加えることになるかならぬかに対する外務当局の御意見を承りたいと思います。
  99. 下田武三

    下田説明員 いかなる協定国家主権に対する制限であることはかわりないと思うのであります。いかなる條約でありましても、国家に対する主権の制限であるとか、一定の義務を約束するわけであります。しかしその主権の制限をどの程度に受けるかというところで、日本側は確立されておる一般国際法原則に準じた主権の制限の程度でとどめたいということであります。それに対して、日本側の言う国際法は古いので、第二次大戦中の幾多の事例でもつてくつがえされておる、ヨーロツパ諸国がお互いに認めている程度の主権の制限は日本も認めてくれてもよいじやないかというのが、先方主張であります。
  100. 田嶋好文

    田嶋委員 この際小畑虎之助君より本件の取扱いについて御発言を求められておりますから、これを許します。
  101. 小畑虎之助

    ○小畑委員 大臣が御出席にならぬことは非常に遺憾であります。法務大臣ももちろんさようでありますけれども、特にこの際外務大臣が御出席にならぬということは非常に遺憾であります事は申し上げるまでもなく非常に重大な問題でありまして、しかも国会としても急速に研究をすべきものは研究をいたしまして、態度をきめなければならぬことに迫られておるのであります。もちろん次会に大臣が御出席になりましたならば、十分本問題に対する検討を続けなければならぬことはもちろんでありますが、特にこの際急速に意思表示をするところの必要がある、かように考えるのであります。当委員会といたしましての意思表示を急ぐ、かように考えるのでありまして、私どもの考え方から申しますと、今折衝をせられております国連軍との協定に定めるべき、ただいまここで問題になつております刑事裁判権につきましては、結論といたしまして、独立国の本質にかんがみて、まずわれわれは日米行政協定の全面的改訂を求めたいと思つておるのであります。しこうして今回の国連軍側に対する交渉につきましても、伝えられるところの属人主義を排して、一般国際法上の原則に基いて、いわゆる北大西洋條約の線に沿つた協定締結に進むべきものである、かように思つておるのであります。私どもが所属いたしております改進党は、すでにこの態度を決定いたしたのでありますが、各党ともにその主張のとりまとめを願いまして、そうして次回の当委員会におきましては各党の案を持ち寄りまして、適当なる決議を行いたい、かように思うのであります。皆さんの御賛成を願いたいと思うのでございます。  なお一言附加いたしておきたいことは、かかる重要問題で、しかも急速に研究を意思の表示を必要とする場合におきましては、すべての国務大臣諸君は約束を重んじて、そうして前に何日の何時に出るということをお約束になりましたならば、優先的にその時間の御都合を願いますことは当然のことでありますから、どうぞ法務大臣外務大臣に対しましても委員長より厳重にこの趣旨をお伝えを願いたいと思うのであります。
  102. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと委員長として小畑君にお尋ねいたしますが、その取扱いの発言の中に日米行政協定の全面的改訂という言葉がありましたが、それも各党に持つてつて協議する條項の中に入るのでございますか。今回の国連軍との刑事裁判権の問題だけでございますか。
  103. 小畑虎之助

    ○小畑委員 日米行政協定の改訂の問題につきましては、私の意見であり、かつ改進党がその態度を決定いたしておりますことを御参考までに申し上げた次第でございまして、この問題の取扱いについては、各委員が各党に帰りまして、各党の意見をいかにするかという意見をとりまとめて、その上で当委員会において論議の末適当なる御決議を願いたいかように考えております。
  104. 田嶋好文

    田嶋委員長 あなたの議題の中心は何にかかるか。日米行政協定をのけた国連軍との今回の刑事裁判権に対することだけですか、それとも、やはり日米行政協定刑事裁判権の問題にまでわたつて各党で協議して行くのですか。
  105. 小畑虎之助

    ○小畑委員 その問題は各党の御随意でございますから……。
  106. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  107. 田嶋好文

    田嶋委員長 それでは速記を始めてください。  本日議題になつたものについて、各党に持ち帰つて協議する、こう了解していいですね。—それではただいま小畑君の御発言通り委員会においてとりはからうことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認めます。それではさようとりはからいます。  本日はこれにて散会し、次会は明後日十五日午前十時より開会いたします。     午後四時四十二分散会