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1952-11-11 第15回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月八日       高橋 英吉君    松岡 松平君       小畑虎之助君    石川金次郎君       猪俣 浩三君 が理事に当選した。     ――――――――――――― 昭和二十七年十一月十一日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 田嶋 好文君    理事 松岡 松平君 理事 小畑虎之助君    理事 石川金次郎君 理事 猪俣 浩三君       相川 勝六君    熊谷 憲一君       小林かなえ君    永田 良吉君       福井 盛太君    松永  東君       大川 光三君    長井  源君       古屋 貞雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  委員外出席者         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君         外務事務官         (大臣官房総務         課長)     高橋 通敏君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小林 貞一君     ――――――――――――― 十一月十一日  委員賀谷真稔君辞任につき、その補欠として  永井勝次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求に関する件  平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に  関する説明聴取  立太子礼恩赦に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 田嶋好文

    田嶋委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入る前に御承知願つておきます。すなわち委員席は特別の事情のある場合は委員長において変更いたすこととし、現在御着席の通りに定めておきましたから、さよう御了承を願います。  これより本日の日程に入ります。まず第一に、今国会での国政調査承認要求に関する件についてお諮りをいたします。すなわち衆議院規則第九十四条によりますと、常任委員会は、会期中に限り議長承認を得てその所管に属する事項につき、国政に関する調査をすることができることになつております。この際、一、裁判所司法行政に関する事項、二、法務及び検察行政並びに法制に関する事項、三、国内治安及び人権擁護に関する事項、四、法廷秩序破壊集団暴行等に関する事項、五、接収不動産賃借権に関する事項、六、交通輸送犯罪に関する事項、七、国連軍裁判管轄権に関する事項、八、戦犯服役者に関する事項につきまして、議長に対しその承認要求したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田嶋好文

    田嶋委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 田嶋好文

    田嶋委員長 次に平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関し、政府より説明を聴取することといたします。なお政府側説明が終りましたら、委員の方よりの発言を許すことにいたしますから、あらかじめ委員長のもとまで発言者は御通告を願いたいと存じます。それでは政府説明を聴取いたします。齋藤説明員
  5. 齋藤三郎

    齋藤説明員 巣鴨在所者のことにつきまして、私からもつぱら赦免、仮出所減刑等勧告等のことにつきまして、御説明を申し上げたいと思います。  巣鴨におられるところの戦犯者につきましては、平和条約第十一条によりまして、日本国戦争犯罪法廷の科した刑を受諾し、その刑を執行する。それからこの在所者の仮出所減刑赦免等につきましては、平和条約十一条によりまして、日本国勧告し、関係国、すなわち裁判をやつた国が、それに同意する決定をした場合に、初めて日本政府がそれぞれのさような措置をとり得る。こういう条約に相なつておる次第でございます。かかる条約がございますので、政府といたしましては、平和条約発効後、それらの赦免なり減刑なり仮出所手続に関する法律といたしまして、法律第百三号を国会にお諮りをして御審議を願いまして、成立いたしまして、そうして四月二十九日、平和条約発効の日にそれを施行いたした次第でございます。ただちに政府といたしましては、その勧告に必要な調査を開始いたしまして、同時にまたこの手続について、関係国同意を求めました。調査完了次第、仮出所その他の勧告をいたして参つたのでございます。今日までに仮出所につきましては、仮出所資格を有する人についてはほとんど全部勧告関係国にいたしてございます。その数はお手元に差上げてごらんをいただいております表の三のところにございますように、仮出所適格者総数三百九十六名のうち、仮出所勧告済の者が三百五十八、目下その手続が進んでおり、近いうちにその手続が完了するという者が三十八、こういうことになつております。と同時に先国会において衆参両院におかれまして、政府に対してこれらについての赦免、その他の寛大な措置をとるように関係国勧告するなり、その他あらゆる措置をとるようにという決議がございますし、また国民からの多数の署名運動等もございまして、今日までに全面赦免勧告をいたしております。  まず最初に、表の第四にございますように、六月三十日、これはこの表をつくりましたのが、私の方の局で、その手続についてつくりましたので、結局それが外務省に参りまして、関係国勧告になりましたのはその後でありますが、とにかく六月の末、フランス関係、これは七月の十四日がフランス革命記念日でございまして、フランスとして非常に大きい国家的な喜びごとでございますので、その際にフランス関係戦犯者三十九名全員について、フランス政府に対し赦免なり、赦免がもしどうしても不可能な場合には、できるだけ短い刑期減刑するようにという勧告をいたしたのでございます。と同時に巣鴨に入つておりますところの朝鮮及び台湾の人がございます。これは総数三十人ございます。これらの人々は、平和条約発効によりまして、日本国籍を失い、かつ国内的に朝鮮の動乱その他非常な変動もございますが、巣鴨におりますために、直接行つて家族に会うこともできないというような非常に気の毒な事情もございます。またこれらの人々が非常に赦免を切望し、最高裁判所人身保護法による救済を申し出たというような非常に窮迫した事情も察知せられますので、これら三十人全部について、米、英、濠州に対し赦免勧告をいたしたのでございます。この表の説明に相なりまするが、これは三十人に対して三十五の勧告が出ておる勘定になつております。イギリスが二十名、オランダが十名、濠州が五名、こういうことになつておりまして、三十人に対して三十五の勧告をしたような表になつておりますが、これは実は戦犯者特殊事情といいますか、イギリス関係戦犯者で同時に濠州関係というふうに考えられる、どちらの関係国か、濠州なのか、イギリスなのか、はつきりわからない、こういうものがございまして、それらについては、両方に勧告いたしましたので、結局かような実数よりも多い勧告数におります。ただいま申し上げておりますのは表の第四であります。  次に日華条約発効によりまして、中国関係九十一名の赦免が可能になりましたので、国内法手続として一応勧告をして勧告決定をいたしたのが九十一名でございます。これが表の第四の七月十七日の欄にございます九十一名中国関係、これでございます。これは発効の即日釈放いたしたのでございます。  次に残つております人について八月八日国内の熾烈な赦免の要請にこたえるべく、B、C級全部についてそれぞれ関係国赦免全面勧告をいたしたわけでございます。  次に十月二十日になつておりますのは、今回の立太子の礼にあたり、できるだけ巣鴨におる人について寛大な措置をとつてあげたい、かような意味から赦免勧告決定をいたし、数日前に外務省において関係国にそれぞれ赦免勧告をいたしております。なお八月八日と若干違いますのは、八月八日の際にはBC級だけでございましたが、今回はA級の十二名についても赦免勧告をいたしたのでございます。従いまして重ねてあるいは二度、三度というふうな赦免勧告がなされており、人によつてはたとえば朝鮮の人、あるいはフランス関係の人は七月にも六月末にもいたし、八月にもいたし、また今回立太子の礼にあたりましても勧告いたした、こういうようなことになつております。これらの勧告によりまして、外務省はそれぞれの機関を通じ、あらゆる機会を利用して勧告の進行するように、実効をあげますように努めて参つたのでございますが、最近までその実を得なかつたことはまことに私どもも残念と存じておつたのでございます。ただ幸い十月の二十八日アメリカ政府から初めてアメリカ関係戦犯者二名について、仮出所を許す決定がございまして、ただちに仮出所手続をとつたのでございます。そうしてその後続いて最近まで二回四名、五名全部合せまして三回にわたり十一名の仮出所決定がございまして、それぞれ適当な保護態勢を整え、家族の出迎えとかその他の準備をいたしまして仮出所をいたしております。  なお続いて米国関係においては仮出所決定が来るもの、その点については明るい見通しを持つているような事情でございます。その他の英国オランダフランス等につきましても、アメリカのかような好意的な措置は必ずよい影響を与えているものと存じておりますが、政府といたしましても、積極的に赦免なり、減刑なり、あるいは仮出所なりの決定を得るように極力努力をいたしたい。かように存じております。なお巣鴨在所者にとりまして、一つ大きな問題といいますか、問題は一時出所という制度運用でございます。この法律の第二十四条をごらんいただきたいと存じますが、お手元に差上げてある資料の九ページでございます。これは条約には何も規定はございませんで、私どもの考えといたしましては、刑の執行の一態様として本人の両親やその他密接な関係のある人が危篤であるとか重傷であるという場合には、人道的な見地から短期間その人を仮に一時出所させるという制度でありまして、アメリカもこの制度を実施いたしておりまして、この法律についても同意をいたしておるのでございます。この制度はさような緊急の事態でございまするし、執行の一態様であるというような考え方から、日本側機関だけの決定で実行ができるようにいたしてございます。この制度運用をかような事態に間に合うように適正に実施いたして参つておりまして、その数も相当の多い数になつております。ただこの法律規定がきわめて固定的に書いてありまするために、たとえば両親はないが、両親と同じように自分をはぐくんでくれたおじいさんがある。そのおじさんが危篤であるとか、なくなつたという場合には、この規定だけでは出し得ないような規定なつておりますので、これにつきましては、目下これを適当なる限度に改めたいと考えまして、いろいろと研究いたし、この国会に御審議をお願い申し上げたい、かように存じておるのでございます。  以上きわめて概略でございましたが、巣鴨赦免なり、減刑なり、それらの勧告に関しますことにつきまして御説明申し上げた次第でございます。
  6. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと委員長としてお尋ねいたしますが、相手国が、日本勧告した場合にどういうような手続によつてその勧告をいれるかという状態は、調査、研究されておりますか、資料がございますか。
  7. 齋藤三郎

    齋藤説明員 詳細はわかりませんが、ただアメリカ関係いたしましては八月の八日に全面赦免勧告をいたしました。それが動機になつたかと存じますが、大統領の命令が九月八日に出まして、そして日本側勧告について大統領意見を申し述べる諮問的な委員会ができております。これは国務省、国防省及び司法省からそれぞれの相当の地位の係官がその委員として出られまして、そして国務省委員委員長になりまして、国務省の内部において日本側より提出いたしました勧告を審査いたしまして、それについての可否大統領に答申する、こういう委員会ができまして、それに基いて大統領決定をされておるように伺つております。この委員会は九月の下旬から活動を開始いたしまして、九月の十三日の委員会で若干数の許可の意見が出ました。それが十月の十三日の第三回の委員会において初めて日本側戦犯者のある数を仮出所させるという意見が出まして、それが十月の二十八日の第一回のアメリカから日本に対する仮出所を許す決定なつた、こういうふうに聞いております。
  8. 田嶋好文

    田嶋委員長 そこで相手国状態がわからないとすると、やはりこちらは勧告のしつぱなしで、手ごたえがないということになりますから、その点について関係当局は至急資料を集めてくださいまして、当委員会まで―相手国と申しますと、米国オランダ英国フランス中国極東国際裁判、こういうふうなことになると思いますが、できるだけ資料を集めて当委員会へ出すことを要求いたしておきます。  ただいま説明員といたしましては、ただいま説明いたしました齋藤説明員、それから外務省高橋総務課長、この御両者が御出席をなされております。犬養法務大臣は必ず出席するという通告がございましたから、いずれ参ると思います。御質問に入る前に外務省高橋総務課長から今までの経過説明を願います。
  9. 高橋英吉

    高橋説明員 それでは外務省側から従来までの対外折衝経過を御説明申し上げます。ただいまの齋藤局長お話と多少ダブるところがあるかと思いますが、一応私の方からも御説明させていただきたいと思います。  ただいまの平和条約第十一条の規定法律第百三号の規定に従いまして、まず刑期の三分の一を経過した者につきまして仮出所申請関係国政府になした次第であります。関係国政府と申しますのは、米国フランスイギリスオランダオーストラリアの五箇国であります。まず仮出所申請というのを一番初めにいたしましたのは、これが列国の最も承認しやすい点ではなかろうか。平和条約第十一条にはこのほか減刑及び赦免という規定もございますが、まず仮出所勧告関係列国政府に伝えたわけであります。と申しますのは、仮出所は御承知のように、占領管理時代占領軍だけの手で行われておつた制度でございまして、これが平和克服いたしましてからは、占領軍にかわるに日本側勧告に対しまして関係当局政府がおのおの決定するということにかわつた次第でございます。それで関係国政府に対しましてその勧告を通報いたしまして、極力仮出所促進方を願つている次第であります。しかるに現在までは米国を除きましては、フランス英国、濠州、オランダのいずれよりもこれに対して何ら具体的な回答に接していない状況でございます。米国につきましては、先ほどお話がございました九月四日に初めて戦犯委員会というものが設置せられまして、三人の委員がこれに選出せられました。国務省極東局法律顧問をいたしておりますスノーという人と国務省顧問のケント及び司法省刑務所局長。ベンネツトという三名からこの委員会が構成せられまして、この三名の委員会が、日本側申請しますところの勧告書につきまして、その可否決定いたしまして、大統領勧告し、これに基いて大統領決定をなす次第であります。これにつきましては、まず十月の二十八日になりまして、二名の承認があり、三十一日に四名、十一月四日に五名がおのおの承認せられるということになりまして、ここに米国に関する限りは明るい見通しができて来た次第でございます。その他の国につきましては、まだ何とも回答はございませんが、これが非常にいい影響をこれらのその他の諸国にも与えるのではないかというふうに考えております。従来までそれではどうしてそのほかの国々につきまして何ら回答がなかつたか。思いますのに、まだこれらの国々では、相当戦争のなまなましい体験というのが生きておりまして、相当強い輿論が存在するのではなかろうかというふうに考えております。しかしながら一応米国がこのように動き出しましたので、その他の国々も早晩動くのではないかというふうに考えられております。  以上が仮出所経過でございますが、そのほかただいまお話ございましたように、七月十四日のフランス革命記念日でございますが、三十九名のフランス関係戦犯につきまして、全員釈放を要請したわけであります。これにつきましては、仏国側は、人道的見地日仏国交上の見地から、好意的な取扱いをしようということを明言いたしておりますが、今までまだ具体的な措置がとられていない。これは東京のこちらの大使館に対しまして、また出先のわれわれの大使館を通じまして、盛んに事情調査を督促いたしております。しかしながらフランス側は、この問題は何せ多方面の承認を経なければならない問題であるから、手続としてもなかなか進まないのだというふうなことを申しております。  それからその他ただいまお話ありましたように、この八月におきまして、B、C級戦犯の全部につきまして、関係国に対して全面釈放を要請しましたが、これに対してもまだ回答が来ていない。最近に至りまして、再度繰返して、あらためてまた赦免要求をなしておる次第であります。これにつきましても遺憾ながらまだ何ら回答は入つて来ていない状況であります。以上簡単でございますが、御説明申し上げました。
  10. 田嶋好文

    田嶋委員長 そこで外務省の方にもお願いいたしておきますが、今法務省にお願いいたしましたように、相手国日本勧告受入れ機構がわかりませんと勧告のしつぱなしという形になりますので、相手国受入れ機構はどうなつておるか、これをひとつ至急調査して、資料関係を当委員会に提出することを要望いたしておきます。  これより質問に入ります。松岡松平君。
  11. 松岡松平

    松岡(松)委員 この勧告についてお伺いしたいのですが、十一条を見ますと、赦免並びに仮出所勧告について、もちろんこれは文書相手国にお出しになると思いますが、ただその勧告書相手国機関に出されるだけにとどまつておるのですか、それ以上の交渉経過というものは一向わからない。それから回答が来ないとありますが、ただ文書を出しつぱなしで、それに対する折衝交渉というものが展開されておるのかどうか。それから十一条の仮出所並びに赦免に関する事柄について、国民全般に十分徹底されていないきらいがあると思います。ですから勧告という手続をされる場合においては相手国に対して勧告すると同時に、国民にも知らしめる方法をとつておられるかどうか、これは非常に重大な問題だと思います。ことに家族にとつては、先ほどの一時仮出所の問題にいたしましても、はたして家族関係の人がそういう法律のあることを十分に知つておるかどうか私は疑問だと思う。こういう点はあらゆる機会関係家族に知らしめる方法をとつておるかどうか、この点について……。
  12. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  13. 田嶋好文

    田嶋委員長 速記を始めてください。  それでは犬養法務大臣から戦争犯罪人取扱いに関する巣鴨プリズンの最近の状況はどうなつておるか、それから特に国内普通犯罪人と処遇をどういうふうに異にしておるか、これが赦免、仮出所等にどういうふうに政府努力を払つておるか等について簡単にひとつ犬養法務大臣
  14. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。いわゆる巣鴨プリズンに在所しております戦犯者諸君の問題につきましては、私も任官以前からあすこにあがりまして実情を拝見したこともございますし、まことに胸に迫る思いをいたしておるのでございます。御承知のようにあすこに入つておられる人も講和をきつかけとしてもつと釈放問題が促進するのではないかという期待を持つてつたのでありますが、講和以前は御承知のようにGHQの取扱いでありまして、すぐに同じ東京都内で話がつく。講和後はアメリカ政府大統領直属委員会に移りまして、自然問合せ等も時間もかかる。また同じ東京都内で話を伺うのとは、多少遠隔地のために、率直に申して、問合せ、連絡等の点について歯がゆい点もございます。そんなことで中におられる方々大分心持としてあせつておられるところを私も拝見して参りました。また留守家族人たちも大分生活問題なんかありまして、これは一日も早く何かの手を打たなければならぬということを痛感しておるのでございまして、去る四月講和発効と同時に必要な調査を即刻始めまして、今日までに仮出所資格を認める、許すに至つた方々についてはすべて関係国に対して仮出所勧告をいたしておるのでございます。それをやりました事例について申し上げたいと思いますが、去る七月十四日フランス共和国記念日にあたりまして、フランス関係戦犯の全部に対しまして、赦免または減刑勧告いたしたのでございます。また講和発効に伴いまして、日本国籍を失いました韓国と中国人の戦犯全員ちようど三十名ほどでございますが、これについても、これらの関係国でありますイギリスオランダオーストラリアの各政府に対して、私ども全面赦免勧告いたしました。また八月に至りまして、B、C級全員全面赦免関係国勧告いたしております。その次に、今回の立太子の礼を挙行されるにあたりまして、まことに国民をあげてのおめでたい日でございますから、こういう機会にやはりこのおめでたい日の陰に泣いておられる同胞のためと存じまして、さらにこれを全部勧告をいたしたわけでございます。その次は、A級戦犯全員に対しても、関係国に対して赦免勧告をいたしているのでございます。  こういうようにあらゆる機会をとらえて、外務省を通じて勧告をやつておりますが、なかなか個々の問題がはかどらないので、私ども実は憂慮いたしていたのでございます。ところがアメリカの方の大統領直属委員会でも、全部をいきなり赦免するということについては、そういうような議がまだまとまらないのでございますが、一人一人の方の場合については、私どもの関知する限り、きわめて好意を持つてつておるように存じます。その結果、十月二十八日に初めて二名の戦犯者についてアメリカ政府から仮出所決定通知がございまして、それから引続き二度にわたりまして、九名の仮出所を認めて参りました。ちようど十一名、アメリカ政府の処置による仮出所が行われているのでございます。私どもとしましては、B、C級及びその次はA級戦犯全部を釈放してくれ、こういうことを申しているのでありますが、今の状態におきましては、一人々々の場合を調査して、できる限りの努力をもつて出所を認めるという方針でやつているのでございます。  そういうわけでありまして、遠隔の地で行われていることに対して、戦犯者の御家族方もさぞかし焦慮と憂慮の心持が深いことと思いますが、今後とも全力をあげてこのことに努力いたしたいということをここにお約束申し上げたいと存じます。
  15. 田嶋好文

    田嶋委員長 何か御質疑がございますならば……。
  16. 松岡松平

    松岡(松)委員 大臣にお尋ねしたいのは、現在フイリピンのモンテンルパ、それから濠州のマヌス島にいる日本人の戦犯であります。数は約二百名と聞いておりますが、これらの服役者日本に送還されておりません。それでおそらく服役者並びに家族国民もこれは内地送還されて服役されることを希望しておることと思うのですが、これに対して政府として何らかの勧告手続がとられているかどうか、お伺いしたいと思います。
  17. 犬養健

    犬養国務大臣 これは込み入つている事情がありますから、齋藤局長からお答えいたさせます。
  18. 松岡松平

    松岡(松)委員 それからもう一点、先ほど大臣からもお答えがありましたが、勧告に関する手続というものは、ただ一片の書類を出して要望する程度で、はたして相手国にやはり一つの感動なり同情なりというものがわいて来るでありましようか。勧告を要望せらるる以上、その手続にふさわしい方法がどういうようにとられているか、これを私知りたいと思います。
  19. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまのお話はごもつとも千万でございます。このことにつきましては、アメリカ委員会進行状況を見まして、御必要ならば、また特に人を派遣するなりワシントンにおける日本大使館と打合せして、必要の処置をとりたいと考えております。率直に申し上げまして、今委員会が実は発足したばかりでありまして、しかも私たちの知つておる限りでは、非常な好意を持つてつておるのでございます。発足したばかりの委員会に対して、勧告の仕方によりますと、非常に好意を持つてつてもらつておることに対して不満のようにとられてもまずい点があるし、それからアメリカと万が一にも多少この問題について国民感情の異なる国がありましたならば、これに対する刺激も考えなければなりませんので、これは私見にわたるかもしれませんが、委員会がある程度進みまして、その進んだ総合的な進行状態を見まして、この辺で何かもう一度勧告しても国際的な感情を刺激しない、勧告する方がもう時期としてももつともだというような、一番有効な時期を選びたいと思つております。外部からごらんになると、さぞかしほうつてあるというふうにおとりになるかもしれませんが、委員会も発足したばかりで、しかも相当の熱心さを持つてつてもらつている状況でありますから、ここのところは催促がま上く言わないで、しばらく見送つた方がいいじやないか、しかしあまりほうつておくのもこれは当を得ない、そういう状態で今委員会の進行ぐあいを注目いたしておるわけであります。非常に国際的に微妙なので、今の御注意はごもつともと思いますが、そういう苦心も実はあるわけでございます。  それからさつきの濠州とマヌス島のことは、齋藤局長より答弁いたさせます。
  20. 田嶋好文

    田嶋委員長 この場合、説明員説明はあとにいたしまして、大臣に御質問のある方の方を先にいたしたいと思います。松岡さん、よろしゆうございますか。
  21. 松岡松平

    松岡(松)委員 よろしゆうございます。
  22. 田嶋好文

    田嶋委員長 熊谷憲一君。
  23. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 私の質問も大体委員長あるいは松岡委員から述べられたところと重複いたしますので、簡単に申し上げます。  ただいまいただきました第三の材料、第四の材料を見まして、数回の仮出所並びに全面赦免勧告をされたことにつきましては感謝をするわけでありますけれども、結果から見ますと、ただいままでのところ、十一名しか仮出所の恩典に浴した者がないようでありまして、巣鴨における戦犯者の焦慮、家族の焦慮といいますか、憂慮といいますものを考えますと、将来どういうふうになつて行くか、なかなか憂慮にたえないのであります。大臣並びに説明員からの説明を聞きますと、ごもつともと思わるる点もあるようでありますけれども、何とかこれに対しまして適切なる方途を講ぜられていただきまして、一日も早く赦免になるようにお願い申し上げたいのであります。そこで外務省の方にちよつとお尋ねを申し上げますが、これの米国あるいは英国その他の各国の国民感情が、はたしてどういうふうになつておるか、この仮出所なり、また全面赦免に関する外務省あるいは法務省としての見通しはどういうふうになつておるか、その点をちよつとお聞きしたいと思います。
  24. 犬養健

    犬養国務大臣 熊谷君にお答えいたします。あるいは御質問と多少はずれましたら、また御注意を願いたいと思いますが、その勧告をしたことが、非常に向うにいい感じを与えるという方途と時期を実はねらつておるわけであります。この前わが国内戦犯釈放のことがやかましくなりまして、衆議院の御決議もいただいたのでありますが、一方においては非常に気の毒だという空気も、なるほど列国間にあります。しかしたとえばちようどアメリカに在郷軍人の全国大会がありまして、そういう連中は、日本はまた軍国主義にもどる努力をやつているのじやないかという点で、相当強硬な反発的徴候があつたわけであります。そういういろいろな副産物をにらみ合せてやらなければならないわけでありまして、また諸外国のうちには、まだ国民感情が治まつていないところもありますので、そういう点を十分かれこれ研究、観察いたしてやるものでありますから、あるいは国内の立場からごらんになると、物足らないように見える。そこで一番穏やかな方法としては、今委員会が熱心に審議をやつておられて、しかも発足したばかりであるというので、発足したばかりのところへあまり催促がましいことを言つてもどうか、こういう気持も実は私どもの腹の中にあるわけであります。松岡さんにお答えいたしたように、ある点まで委員会進行状況というものが見きわめられますと、そこにさらに日本として勧告の時期なり手段なりが腹にできて来るわけであります。今ちようど委員会の発足直後でありまして、その様子をある意味で感謝と期待をもつてながめている、こういう時期に立ち至つているわけでございます。
  25. 田嶋好文

  26. 小畑虎之助

    ○小畑委員 今大臣お話によつて承知いたしたのでありますが、少しはアメリカの方から仮出所の承諾の通知があつた、こういうお話でありますが、御承知の通り大部分はその許可がないのであります。先ほど説明員からのお話によりましても、イギリスとかあるいはフランスとかの方面は、こちらから勧告を出しておりますことにつきまして、何らの手ごたえがない、さつぱり返事がない、アメリカ委員会ができたから、これでほかの国々も早晩好転して来るであろう、こうおつしやるのでありますが、早晩ではこれはいけぬのでありまして、こちら側としてはかつてなようでありますけれども、なるべく早くなければいけぬことでありますから、今大臣がおつしやいました少数の仮出所を許されました人たちの適格条件といいますか、どういう条件に当てはまる人が一番まつ先に認められたかということは、われわれ委員会として一番早く知らなければならぬことであると思うのであります。今後の勧告の対策につきましても、非常に参考になることでありまして、勧告をされるにつきましては、それぞれの個人々々の罪質、罪状等よつていろいろ相当のりくつをつけて、政府勧告をなされたと思うのであります。その中でどういう理由の者はアメリカはこれを認めないか、どういう理由の者からまつ先にこれを認めるか、こういうことを承知いたしたいのでありますが、それを簡単にここでお知らせいただきますならばけつこうであります。なお非常にややこしいようでありましたら、後日また資料でいただいてもよろしいのであります。  それからもう一つは、何と申しましてもわれわれ日本人が希案いたします通りに、なかなか容易にこれは参らぬことでありまするので、この法律百三号二十四条の一時出所、この一時出所規定を拡張いたしまして、もう少し弾力のあるものにして、そうしてこれを活用することによつて、いささかなりとも戦犯者本人及びその家族等に慰めと便宜を与えたい、かように思うのでありますが、これにつきまして先ほど齋藤局長お話ちよつと出ておつたように思うのでありますが、政府はこの特別国会に法案を整えてお出しになる準備があるのかどうか、大臣に伺います。  もう一つは、委員長に御相談でありますが、私は大臣がお忙しいので、なるべくこの機会に今議題になつておらない恩赦のことに関しまして質疑をいたしたいと思うのでありますが、都合では次会に譲つてもいいのでありますけれども、どうでありましようか。
  27. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止
  28. 田嶋好文

    田嶋委員長 速記をとつてください。
  29. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御質問留守家族方々が切にお聞きになりたい点だと思いますから、率直にお答えいたします。私どもも、アメリカの方から仮出所をどういう基準によつて認めて来るか、非常に関心を持つてつたのでありますが、今のところでは十一件ですから、今後の戦犯全部について断言するのは早計かと思いますが、とにかく十一来たときの事情を見ますと、大体こちらから勧告をいたしました順序でもつて認めて参つております。少し例外もありますが、大体そういう順序でございます。ただその仮出所を認めて来る速度が、日本国民の期待から見ると非常に遅いというようなことになつております。それから一時出所制度は、多分御承知と思いますが、今のは非常に寛大にやつております。一、二弊害が出たくらい寛大にやつておるのですが、それでも弊害よりは留守家族の喜びの方を主としてやつております。しかしこの規定ももつと弾力性を持たした方がいいと考えとして、この議会に、政府としては何かの処置をとつて、皆様の御協賛をお願いしたいと思つております。この国会に提出いたしたいと思つております。
  30. 小畑虎之助

    ○小畑委員 今の御答弁によりますと、大体こちらの方で勧告したものは、いずれも相当の理由が認められておる、こういうことに承知いたしてよろしいのであると私は結論をつけるのですが、まずこちらから要求をいたし、勧告をしたところの順序によつて先方で許して来ておる。こういうことから見ますと、日本政府勧告の理由といたしましたところは、おおむねアメリカ側においても正当であると認められておるであろうことがうかがわれるわけであります。そういたしますと、つまり先方の決裁の速度が主たる問題である、こういうことになります。それに対しましては、先刻松岡さんのお話と重複するかもしれませんけれども、何とか速度を促進せしむる手がないものでありましようか。当委員会においてもまた懇談会におきまして、特にわれわれも意見がありまして、懇談をしてもよろしいと思いますが、十分この点についてお考えおきを願いたいと思うのであります。それを承りまして、戦犯の釈放については、仮出所赦免については望みがあるということで大分明るくなつて来たと思うのでありますが、速度を促進する、これに拍車をかけるということについては一段の御研究をいただきたいと思います。  それから二十四条のことにつきまして、すこぶる寛大にこれを適用しておるというお話でありましたので、けつこうですが、私が要求したいのは、当国会において立法措置をとる。適当の問題以外に、適当なる改正を行う。このお考えがこの特別国会において実現さるべきである、こういうことを言いたいのです。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまのお話でございますが、つまりこちら側の勧告というものは言うまでもなく同国人同士でありまして、事情が手取り早くわかるわけであります。それから最初にこちらが勧告した順序の最初の順位の中にある人たちは、だれが見てもお気の毒だという簡単なケースからやつているわけであります。それで今までこちらの勧告の基準が正しいと同時に、非常に簡単に解決できるケースでまずやつている、こういうわけであります。向うは国が違いますし、勧告した書類を調べるにしても、同国人が調べますのよりは非常に手間がかかる。それから諸外国に対する反響も、間違つたことをやつたじやないかというそしりのないように慎重にやつている。そういう意味でこちらがすみやかにやつても、あちらの返事が遅いということになります。それではいつまでもこのままでよいか、それを何とか速度を増す方法はないかというお話でありましたが、実は一つの考えを持つております。持つておりますが、これは懇談会か秘密会で申し上げてみたいと思います。めどがなしにやつているわけではございません。またこれを御説明申し上げる機会もあろうと存じますから、さよう御了承願いたいと思います。  それから一時出所の基準に弾力性を持たせるという新しい措置については、この特別国会において皆さんの御協賛を求めたいと存じます。
  32. 石川金次郎

    ○石川委員 大臣ちよつとお伺いいたします。先ほどの御説明の中に、服役者家族の生活が困窮に陥つて苦労しおる、いろいろ御調査をなされた。こういうことをおつしやつておられるのでありますが、実際生活がどのように困窮に陥つておるか、お聞きして、これに対して当局がどういう対策を立てておられますか。できればそれもB、Cとわけて、ひとつ簡単に御説明願いたい。  もう一つ、二十八条の仮出所いたしました方で、刑の軽減、赦免手続申請をいたした人が今までありましたかどうか、あつたならば審査会がどう取扱つたか。今までなかつたならばしかたがございませんが、これから活用すべきものじやないかと思いますから、その点御説明願いたいと思います。
  33. 犬養健

    犬養国務大臣 石川さんにお答え申し上げます。前半の留守家族の困窮については、実は私が承知しておりますのは、巣鴨にお見舞に行つて、その方方から非常に切々たる言葉ではありましたが、自分の家族の収入はこうで、こういう状態だというような説明でなく、非常に留守も困つておるから察してくれというような、そういうお話であります。なおこれはできるだけすみやかに調べて、またお答えする機会もあろうと思いますが、あとの問題はこまかいことでありますから、齋藤局長から説明いたさせます。
  34. 永田良吉

    ○永田(良)委員 このフイリピンであるとか濠州方面にまだたいへんいらつしやつて、お帰りになれぬ気の毒な人方に対して、あるいは政府もしくは親族関係からでも差入れ等については何か御考慮になつたことがありますか。これの話を聞いてみますと――私も先日巣鴨に行つて、いろいろ鹿児島県出身の戦犯者から承つたのでありますが、向うに入つておる者は待遇もあまり芳ばしくないというようなことも聞いたのであります。こういう方に対してはたいへんお気の毒でありますから、何か政府の方からひとつこういう差入れ等については便宜をはかつていただくということが、もしなかつたとすれば――今後あり得るならば、どうかそういう方法を大いに考えていただきたいと思います。これについてお尋ねしたいと思います。  それから第二は、さきに法務大臣からお話がありました通り、アメリカは手ごたえがあつたけれども、他の諸国はほとんど手ごたえがない。これは外交方面等の関係もあつて、各方面に筋の違つた点もあろうかと思います。私はあまりよい経験は持つておりませんけれども、終戦当時多少アメリカ人と接触した関係もありますが、今アメリカ日本相当好意を持つておる際でありますから、さきに少し遠慮した方がよいということをおつしやいましたが、私ども国民のお願いとしては、もう少し強腰で遠慮なしに御要求をお願いいたしたい。そういうことをこれは希望かたがた思つておるのであります。できるならばたいへん皮肉なお願いですけれども、法務大臣、外務大臣の方で、日本に参つておるこういう関係国の大使などをお呼びになつて、書類ばかりでなく、御懇談でもなさつていただくようなことを積極的に―たいへんあつかましいお願いですが、犬養法務大臣にひとつ外務省とも御交渉なつて、もう少し押していただくことを強くお願いして私の質問を終ります。
  35. 犬養健

    犬養国務大臣 永田君の今の御質問の差入れのことでありますが、民間で世話会がありまして、これまで毎月やつてつたそうであります。必ず毎月かどうか私はちよつと承知しておりませんが、大体毎月というふうに聞いております。なおこれは調査の上詳しくお答えいたしたいと存じます。  なお外務省でも、これはおそまきだといつてしかられるかもしれませんが、ただいま真剣にこれを研究しております。  もう一つ、強腰という問題なんですが、実は率直に申し上げますと、私も多少友人がありますので、日本にそれらの友人が来るたびに実情を話しております。多少友人として意見も述べているのでございますが、永田君御承知のように、まだ日本に対して感情のなおつていない国がありますので、そこへがんと強く言つた方が効果があるのか、あるいはアメリカの、まことに好意に満ちた処置をだんだん諸外国に及ぶようにして、その効果の生じたときにまた話をする方がいいのか、いろいろ実際の場合に行きますと、必ずしも非常に勇壮活発にやつた方がいいとも言えない節もあるのであります。しかしもちろんそれを口実にして弱腰になることもよくないと思いますが、その辺は私どもただいまの御注意を十分体しましてやつて行きたいと思います。  それからさつきの御質問でありますが、モンテンルパとマヌス島の戦犯のことでございます。これも実はこちらの勧告の対象になつていないのでありますけれども、別途外務省から十分意思のあるところを伝えておるようであります。
  36. 小林錡

    小林(か)委員 私が大臣にお伺いしておきたいことは、戦犯者全部に関する判決の問題でございますが、この平和条約十一条による云々の法律は、極東国際軍事裁判所及び連合国戦争犯罪法廷が科した刑の執行に関することでありまして、その判決がもとより正しいということを基本にしてつくられた法律でありましようから、あるいは私の質問はいかがかと思いますが、私がいろんな方面からいろいろ開くところによりますると、この戦犯裁判というものは、わが国内における刑事裁判のように非常に厳格な証拠によるというようなことがややもすれば欠けておつた、あるいは全然自己の関与しないようなことが犯罪として認められて刑罰に科せられる、いわば無実の罪によつて判決が下されておるというようなことをしきりに本人が言い、あるいはそうではないかと思われるような事案も相当あるやに私は聞いておるのであります。でありますから、この平和条約ができたときに、あるいはもう一ぺん国内裁判にかけて、その真実であるやいなやを決するということの力がむしろ正しいのではないかとすらわれわれは考えておるのでありますけれども、これは敗戦国という立場から、もとよりこの裁判が正しいものとしての刑罰の執行に関する問題ということになつております。そういうような、戦犯の刑を受けておる者で、本人自身が無実を叫んでおる者が相当にあるのじやないか、このことの正しいかいなかは別でありますけれども、そういうのが相当あるのではないか。もしそういうのがあるならば、外国に対して仮出所あるいは赦免を願うときにもそういうような事情相当に書いて訴えられておるのであるかお伺いしたい。それからまたわが国の仮出所、仮釈放などにはいろんな事情が考えられて、仮出所を許すところの要件というものがきまつておるのでありますが、これらの国々に対してそういう勧告をされるときにどういうような―いろいろな条件を書いて向うと交渉をしておられるのか、ただ裁判の事案だけを述べて、仮出所が正当であるからやつてもらいたいということで、あるいは友人とか親戚などの歎願書的なものが書かれ、そういうようなものが内容に報告されておるのであるかというような、われわれから言えば一々のこれまで勧告書を出されたものに対して、大体どういうような内容をもつて交渉されたものであるかということを知ることができれば非常に幸福だと思います。  それから大臣のただいま言われましたように、国際関係の問題ですから非常にデリケートで強過ぎてもいけませんがしかしながらあまりに卑屈であつても私はいかぬと思う。占領後におけるわが国の政治がややもすれば請負政治、ドイツなどの占領軍に対する態度とは比較にならぬほど弱過ぎる。欧米人というものは正しいことを強く主張して行けば相当わかつてくれるのであります。ただ頭を下げてお願いする、弱いというだけでは私はいかぬかと思います。でありますからあまりに慎重過ぎてこういうことをすればごきげんを害するから、ああいうことをすれば感情を害するからというようなことであつては私はならぬと思います。やはり誠心誠意、誤れる裁判であれば、ほんように誤つておるように心情を訴えて―無実の罪に服して、中には死刑になつたものもありましようけれども、われわれが聞いてみても証拠がなくてついにそこまで行つてしまつたのではないかというようなものがあつたようにも考えられます。この点もし国際関係の上に悪ければ、速記を省いていただいていいと思います。あるいは秘密会でなければいかぬということであれば、そのときに御答弁を願つてもけつこうです。私は相当気の毒な方があるのではないかということを考えますので、抽象的でけつこうでありますから大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  37. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御質問はまことにごもつともと思います。大体基準としましては所内の成績とか本人の心情とか、あるいは家族事情とかいうことが原則として尺度になつておりますが、小林君も言われましたように、私も自分で訪問したときにも感じたのでありますが、本人はとにかく主観であるかどうか知りませんが、無実だと思い込んでおる人も相当おります。そういうことも実は勧告をするときの材料に入れまして、調査の上勧告の件にもそういう気持を含めておるのでございます。そういうように御承知を願いたいと思います。  それからもう一つのあとの御質問の問題でございますが、もちろんただ敵国の感情を害さないということばかりやつておりましてはこれは外交になりません。私ども一つのめどを持つておるのでございますが、そのめどが正しいかどうか、これは別でございます。めどを持つておりまして―これはちよつとここでは申しにくいかと思います。ごく平たく申し上げまして、先ほど申し上げたようにアメリカ相当好意をもつて委員会の発足をやつて日本人の、ことに家族の立場から見れば、速度は鈍いけれども、先月の末から今日までに十一件の仮出所承認して来た、その途端に新しい手を打つ方がよいか、委員会相当進行状況を見て一番適当のときに、さらにこちらが何か考える方がよいか。ここにいろいろな御意見があろうと思います。しかし申し上げておくのは、漫然と、ただむやみと刺激するとかえつて御本人のためにならないとか、そういう無方針ではやつておらないつもりでございます。いずれこれは詳しく申し上げる機会があるかと思いますが、そのとまに率直な御注意も虚心坦懐に承りたいと思います。
  38. 田嶋好文

    田嶋委員長 この場合戦犯問題に対しまして、委員長といたしましての意思表示をいたしたいと思います。幸い法務大臣も御出席のことでございますから、特にそうしたいと思います。  講和条約発効されまして、その後政界から久しく離れておられた方々も政界に再び復帰をされて、この国会が構成されることになりました。特に講和条約発効後、一般犯罪に対する大幅な恩赦も実現せられたのであります。しかし戦犯者に対しましては、いまだ具体的な処置の現われが現実に国民の前に処置されておりませんことはまことに遺憾とするわけでございまして、今日の国民感情からいたしますと、何だか政府のこの方面に対する努力が足らないのじやないか。政府に対する努力の物足らなさすら感じておるような感がないではございません。そこで幸い新しく構成されました当委員会といたしましては、この戦犯者に対する問題としつかり取組みまして、関係当局を十分に督励をいたしますとともに、またできます範囲におきましては支援も惜しまずにいたしたいと思つております。関係当局に対しましては、この問題に対しては政府勧告以外に法的な処置はないのでございますが、委員会といたしましては、そうした法的な措置のみによつてこの問題は結果に達成できるものでないという考えを持ちます関係から、法的な措置以外におきましてとり得る最高限度の方法を研究し、とりまして、一日も早く戦犯者が釈放され、戦犯者家族の悩みを解消する方面に全努力を尽したいと、こう考えるものであります。これは委員長といたしましての意思表示でございますが、本日の委員会質問の空気を察しておりますと、各委員全体の気持ではないかと考えますので、委員諸君におかせられましても委員長の意のあるところをお察しくださいまして、十分なる御協力がお願いしたいと思います。  なお政府当局におかせられましても、この意思表示を尊重され、委員会とともどもに全力をお尽しくださいますよう重ねてお願い申し上げます。
  39. 古屋貞雄

    ○古屋委員 委員長、その前にさつきの関連質問をやりたいのですが……。仮出所に対する各資料を提供せられておるようであり、特にさつき小林さんからも御質問があつたようですが、どんな資料を出されておるか。そうしてアメリカの方では許可になりました者に対する資料ども添付しておるかどうか。そうするとその資料と同じようなものをフランスその他の国に対しても添付して勧告したかどうか。それからフランスその他の国の許可にならなかつた者に対して、政府はその理由などが明確にわかるような状況にあつたかどうか。あるいはわかるような研究をしたかどうか。これに対する今後の対策を具体的にやられておるかどうか。やられておれば、そのやつております具体的事実を御説明願いたいと思います。
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。あまりこまかいことは知らない点もございますから、政府委員の答弁に譲ります。しかしアメリカに対する勧告は一々もちろん理由を付して勧告いたしまして、その結果そのこまかい点を向うが検討をして、そのために時間が相当かかつたのでありますが、それで仮出所承認が来たわけでございます。その他の国は、私の知つている限りにおいては勧告を一括していたしたのでありまして、まだ個々の人の場合には触れていないように承知しておりますが、詳しくは政府委員から答弁をいたさせます。
  41. 古屋貞雄

    ○古屋委員 その申請の理由でなくて、理由と同時に判断をする資料を添付したかどうか。資料はどんなものを添付したか。それからなおその資料に対してどんなものであつたかを知りたいのです。というのは、許可になつたのがたくさんありますので、そういう資料をわれわれがもつとたくさん準備いたしまして出してもらいたいというのが国民要求であり、家族などは痛切に考えております。その点を具体的に御説明ができれば承りたいと思います。
  42. 田嶋好文

    田嶋委員長 大臣に対する質問は時間も参りましたからこの程度で……。
  43. 犬養健

    犬養国務大臣 こまかいことは政府委員から答弁いたさせますが、今のお話の後段の部分、広く国民の間からも資料が集まれば喜んでいただきます。それを調べる煩をいとうというような気持は寸毫もございません。喜んでいただきますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  44. 齋藤三郎

    齋藤説明員 アメリカ勧告いたしました八十件の事案について十一件の決定がございましたので、その他は不許可であるというふうにお考えの方があるかもしれませんが、私どもはさように存じておりませんで、要するにこちらから勧告した順序によつて大体向うの方が審査をして、大体その順序で許可が参つておりまして、また委員会に対しての日本側勧告について納得の行かない点があればこれを却下しないで、一つ一つその理由を十分知らせていただきたい。二度でも三度でも、私の方から十分調査をして御説明申し上げる、こういうことをいたしておりますので、不許可になつたということは今まで全然意思表示もございませんし、要するに出た順で向うからこちらに通知をしておる、かように了承いたしております。そうして勧告の書類の内容につきましては、個々の事案について必ずしも同一ではございませんが、所内の成績等につきましては、巣鴨プリズンの長からの報告並びにその報告のよつて来る基準といいまするか、どういう段階にわけて、どというふうに点をつけておるのかというよりどころ等もつけます。その他家庭の事情についてもそれぞれの責任ある者の証明といいますか、報告と申しまするか、さような書類を添付いたしまして、各国に対して勧告いたしております。但し全面赦免という場合には個々の事情はこれは別でございますので、包括的に関係国に対して日本として要望したい理由を述べましてそうして勧告をいたしております。かようにいたしております。
  45. 古屋貞雄

    ○古屋委員 フランスその他の国に対する問題について承りたいのです。ただいまのはアメリカでございますが、フランスその他の許可にならなかつた分についての処理をどうしておるか。理由がおわかりであれば、政府のおわかりになつている程度をお話願いたい。それに対して具体的な対策を講じられておるか。あればその具体的な事実を御説明願いたい。
  46. 高橋英吉

    高橋説明員 フランスイギリスオランダオーストラリアその他の国につきましても米国に対すると同じような書類でございますが、これを向うに渡しまして、渡すときに個々の出先に渡すと同時に、その個々の説明をいたしております。同時に現地の方にも出先に電報を打ちまして、こういう事情で今般こうこうこれこれの者を審査した。こういうことで現地の方においても、あわせてこちらと同様促進するというふうな手続をとつております。書面につきましては、アメリカの場合とまつたく同じ書類であります。それから先ほども申し上げましたように、まだこれらの国々では、個々についてこれは許可する、これは許可しないというふうなことはまだ何ら言つて来ない状況であります。と申しますのは、それではこれが全然許可しないのかと申しますと、そうでは全然ないとわれわれは考えております。アメリカがこういうふうに発足した以上、これらの国々についても好意的考慮が逐次払われるのではないかというふうに考えております。
  47. 古屋貞雄

    ○古屋委員 その点について政府にお願いいたしたいことは、やがて許可されるだろうというふうなことでなくして、アメリカではこれこれしかじかに許可になつておる、従つて貴国でも許可してもらいたいという積極的な御考慮を願いたいことをお願いいたします。
  48. 松岡松平

    松岡(松)委員 大臣にお願いがあるのですが、先ほどの私の質問に関連するのでありますが、各国に対する勧告手続というのは、個々の人について説明してもなかなか複雑なものであり、また容易ならざるものである。そこで各国にある大使館あるいは公使館において、おそらくこのことのみに専念していただく人をはたして配置されているかどうか、これは大臣の所管ではないと思いますが、これは私の一つの愚案でありますが、心にとどめおきを願いたいと思いますことは、法務並びに外務両省から一名ずつの相当有力な方を配置する、これは嘱託員でけつこうではないかと思います。問題はこういうことに対して熱意をもつて取扱う人――事の折衝に当る人の人柄というものは非常に響きを持つものでありますから、このことについて私からお願いがあるので、ひとつ大臣にお考えおきを願いたい。法務省関係から一名、外務省関係から一名、これは民間から特に嘱託員として各関係国に配置されてもよいのではないか、これは人柄が条件を律するものでありますから、ただ事務だけではありません。ことにこういう戦犯者を釈放してくれという折衝に当る場合に、個々の人について、こういう事情、ああいうわけだといつて説明するということは、その人の人柄が非常に影響する、このことについてぜひお考え願いたいと思います。
  49. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまのお話は十分考慮いたします。
  50. 田嶋好文

    田嶋委員長 この際犬養法務大臣から立太子式恩赦に関する発言の申出がありますから、これを許します。犬養法務大臣
  51. 犬養健

    犬養国務大臣 立太子式のよき日を寿ぐ意味におきまして、特赦並びに特別減刑を行つたのであります。大正天皇の立太子式と今上天皇の立太子式のときには、特赦、減刑は行いませんでした。いろいろ考慮の結果、新憲法に新たに定められました皇室対国民関係、すなわち精神的な象徴の中心としての皇室を今までの意味と違つた角度から、親愛感をもつてこの立太子式のおめでたい日をお祝い申す、そうして喜びを広く国民にわかつという新しい見地から、前例にこだわらずやつた方がよいのではないか、こういう考え方に政府はまとまりまして、そうして行つた次第でございます。従つて十一月十日以前に刑の確定した者に限つたのでございますが、これはこのたびの特赦並びに減刑が皇太子のよき式をお祝い申すという心持ちをできるだけ単純な姿にしたい、こういう意味におきまして、特赦と特別減刑だけに限つた次第でございます。さよう御了承願いたいと思います。
  52. 田嶋好文

    田嶋委員長 この際質問通告がありますからこれを許します。小畑虎之助君。
  53. 小畑虎之助

    ○小畑委員 今私が大臣質問しようと思つたことがすなわち今大臣がお答えになつたことであるのですが、恩赦をなされるにあたりまして特赦と特別減刑に限られた理由を実は伺いたかつたのであります。これはもう恩赦が御発表になりましたのでありまして、今からどういうふうにわれわれが審議をいたしましてもこれはどうにもならぬことでありますけれども、しかし国民をあげての喜びでありまする立太子礼にあたつて日本政府が恩赦を行つた、恩赦の発令があつたということにつきましては、どういうわけで特赦と特別減刑に限られたかということは、国民ががひとしく知ろうと思つておるところであります。われわれ立法府におります者は、もちろんこのことは承知しておかなければならぬことであると、かように考えて伺つたわけでありますが、ただいま大臣の御答弁によりますと、これは新憲法になつてから皇室とわれわれ国民との間における新しき親愛感をなるべく端的に表現したい、こういう意味でこの二つに限つたというお話でありますが、私はこれは遺憾ながらわからぬのでありますが、どういうふうに質問をいたしたらよろしいのでありますか―新しき親愛感の端的な象徴としてこの二つに限つたのである、これがどうにもわからぬのでありますが、何とかちよつと御説明が願いたいと思います。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。先例を重んじますならば、大正天皇の立太子式と今上天皇の立太子式には行わなかつたのであります。しかし新憲法のもとに初めて行われる皇太子殿下の立太子礼に際して、昨日の国民の喜び方を私どもお互いに見聞いたしたのでありますが、ああいう心持でもつて、おめでとうございますと申し上げる形において、特赦、減刑をやろう、こういうことであります。但し基準といたしましたのは、やや似た基準としては、大正天皇の成年式があります。これには特赦、減刑に限つております。新しく先例を開いてここに恩赦をするにしても、恩赦の範囲はなるべくは―同じ程度という言葉は角が立つかもしれませんが、同じ程度の類似の例をもつてやろう、こういうことに議がまとまつた次第でございます。説明がふにおちなければどんどん御質問願いたいと思います。
  55. 田嶋好文

  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは大臣でなくてもいいのですが、ただ大臣がなかなか益んに御答弁をなさるから、やつていただけばけつこうです。立太子の儀式、そういうものは皇室の慶事であるか、国事であるか。もし国事であるとするならば、あるいは皇室の慶事であるとするならば、その根拠はどこにあるのか、それを承りたいと思います。
  57. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。国事と解釈いたしまして行つたのでございます。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 その根拠はどこから出て来ますか。私どものその点明らかにしたいことは、昔は皇室のこと即国事でありました。そこにいろいろな長所もあつたが、また弊害も起つて来た。新憲法においてさようなことが明らかになつたとわれわれは考える。そうして袞竜のそでに隠れるような徒輩が、そういう皇室の慶事と国事とを混淆したところから起つて来る。そこで私どもはこの質問をするのであります。立太子のお祝いそれ自体にけちをつける考えじや決してありません。ただ新憲法の発足に際して大いにやつたのだという法務大臣のお言葉でありますが、しからばその性格、性質をはつきりさして、そして出発していただきたい。国事であるならば、いかなる根拠に基いて国事と認定せられたのであるか、その出所を明らかにしていただきたい。また皇室の慶事であるならば、慶事である根拠を明らかにしていただきたい。それからその御答弁によつてなお御質問申し上げたいと思います。
  59. 小畑虎之助

    ○小畑委員 私は法務大臣に対する質問の継続中であつたのですが、適当な機会にお許し願いたいと思います。
  60. 犬養健

    犬養国務大臣 御相談ですが、私十二時までの……。
  61. 田嶋好文

    田嶋委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  62. 田嶋好文

    田嶋委員長 速記を始めて。次会は二十四日午前十一時より開会することにいたします。  本日の委員会はこれにて散会をいたします。     午後零時三十二分散会