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1953-03-07 第15回国会 衆議院 文部委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月七日(土曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 伊藤 郷一君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 田中 久雄君 理事 坂本 泰良君       永田 亮一君    長野 長廣君       水谷  昇君    井出一太郎君       菊地養之輔君    細野三千雄君       辻原 弘市君    山崎 始男君  出席政府委員         文学事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 三月五日  教育職員免許法の一部を改正する法律案辻原  弘市君外二名提出衆法第四六号)  勤労青年教育振興法案矢嶋三義君外十九名提  出、参法第一一号)(予) 同月六日  高等学校定時制教育振興法制定に関する請願(  坂田道太紹介)(第三五〇九号)  同(竹尾弌君紹介)(第三五一〇号)  学校給食法制定等請願外五件(大村清一君紹  介)(第三五一二号)  教育委員会法の一部改正に関する請願外四十八  件(高瀬傳紹介)(第三五一三号)  同(福田赳夫紹介)(第三五一四号)  老朽校舎改築費国庫補助等に関する請願高瀬  傳君紹介)(第三五一五号)  著作権法の一部改正に関する請願佐藤觀次郎  君紹介)(第三五七三号)  義務教育費全額国庫負担制度に関する請願(楢  橋渡紹介)(第三五七四号)  同(並木芳雄紹介)(第三五七五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  義務教育費国庫負担に関する陳情書  (第一七三〇号)  義務教育費国庫負担制度に関する陳情書  (第一七三二号)  義務教育費全額国庫負担制度に関する陳情書  (第一七三二号)  義務教育学校職員法案に関する陳情書  (第一七三三  号)  同(  第一七三四号)  義務教育学校職員法案反対陳情書  (第一七三五号)  公立学校災害復旧費国庫負担制度に関する陳情  書(第一七三六  号)  公立義務教育学校職員の身分及び給与の負担  に関する陳情書  (第一七三七号)  教育委員会制度改正陳情書  (第一七三八号)  同外七件  (第一七三九号)  同外二十一件  (第一七四〇号)  地方教育委員会諮問機関とすることに関する  陳情書  (第一七四一号)  地方教育委員会制度改悪反対等陳情書  (第一七  四二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第八九号)  教育委員会及び教育公務員特例法の一部を改正  する法律案田中久雄君外二百二名提出衆法  第三七号)     ―――――――――――――
  2. 伊藤郷一

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  教育委員会法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
  3. 細野三千雄

    細野委員 審査に入る前に委員長にお願いを申し上げておきたいのです。委員長の顔を見るとあまり強いことを言えないのですけれども、開会のときに人数がそろわなければ、せめて終るまでに一応の定足数をやはりそろえていただきたいと思います。聞けばやはり前国会のときの文部委員会が非常にだらけておつたというのですけれども、その余勢かどうか知りませんけれども、今度の国会におきましてはひとつそういう悪い癖があつたならばぜひ直していただきたいと思います。  それに関連しまして、実は会議録についてですが、今度の国会の第二号の十一月十四日の会議録に、私が出席したことになつておる。当時私は手術のために病院におつて出席なんかできるはずがありません。これは一体だれがこういうふうに出席、不出席の原稿をおつくりになるのですか、その点をお尋ねしておきます。今後はそういうことのないように、会議の終りまでに委員がそろわぬならば、そろわぬように、出ただけの人を正直に書いていただきたい。  それからたしかこの前定足数のことを非常にやかましく言つた二月二十八日の議事録を見ますと、そのとき出席された人の名前が載つていない。たしかあのときは大橋武夫さんも、大久保留次郎さんも見えましたがそれが出席委員の方に載つておりません。出席しない者の名前が載つてつた出席した者の名前が落ちておつたり、それは一体どこにその責任があるのですかお尋ねしたい。なお今後はひとつ厳正にやつていただきたいという希望を申し上げておきます。
  4. 伊藤郷一

    伊藤委員長 ただいま細野委員からの御注意がありましたが、私の不徳でまことに申訳ないと思つております。次からは定足数を守ると申し上げておつたのでございますが、御承知のごとき党内事情で、幹事長にも対策委員長にも今朝も申入れておるのですけれども、現在までにまだ定足を欠きまして申訳ありません。来週からは御期待に沿うようにいたしたいと思います。  なおふなれの点もありまして、出席した人を出席しないとか、あるいは出席しなかつた人をしたように書かれておるそうでありますが、これは事務当局から後刻御説明いたさせます。いずれにいたしましても、自分の不注意と私は認めます。
  5. 坂本泰良

    坂本委員 今のことに関連して……。実は文部委員会につきましては、十二国会、十三国会におきましては、非常に出席が悪かつた。ことに教育委員会法の一部を改正する法律案が出ました。この法律案審議にあたりましては、ほとんど内容審議はせずに、これの採決にあたりましては、野党側は総退場をして、そうして自由党だけの委員で決定されたような事情もあつたわけであります。従いまして当時の文部委員会におきましては、著作権法その他超党派的に文部委員会権威を持ちまして、内容を慎重審議すべきものが、審議がされずに、最後はほんとう文部委員として委員会出席して法案内容審議に当らなかつたその日だけの委員がいまして、この法律案を可決する、否決するという態度に出たわけでございます。これは国民負託を受けております文部委員会といたしまして、まことに残念の至りだと思つておるのであります。総選挙後の今回の文部委員会におきましても、ただいま国立学校設置法の問題も出ておりまするが、教育委員会法改正の問題並びに教育学校職員法の問題が出まして、政治的にのみ取扱われる法律案に汲々といたしまして、真に日本文教対策といたしまして、当然やらなければならない法律案並びに今後出て来ようとする法律案のこの審議にあたりましても、それが内容ほんとう審議ができずに、あるいは予算が通過したからぜひこの法律案を通さなければならない、こういうような情勢のもとにおいて内容審議もせずに、一気呵成これを解決する、こういう情勢が非常にただいま出て来ておると思うのであります。この点におきましては、もう少し文部委員はその委員の責務を考えまして、そうして出席もその通りでありまするが、法案内容につきましても真剣に取組んでやらなければ、国民負託にこたえることはできないと存ずるのであります。かような意味におきまして、これは委員長も非常に御苦労とは存じますが、御配慮をお願いするし、さらに与党委員理事の方にも御配慮を、お願いいたしまして、かりそめにも政治的の影響を受けて法案が云々されるということのないようにせなければならないと思うのです。その点を私は委員長、特に与党の方にお願いいたしておきます。従つてまた国立学校設置法その他につきましても、これは文部省から出て来たのに、単に予算が通過しておるからというような問題で内容審議を怠つて、そしてこれを通過するようなことは、文部委員会権威にかけて回避しなければならない問題だと思いますから、この点もあわせて、議事進行並びに文部委員会の運用につきまして、万遺憾なきを期していただきたいということを御要望いたしておきます。
  6. 伊藤郷一

    伊藤委員長 野党各位にはまことに申訳ありませんが、党内事情もここしばらくではつきりすると思いますので、来週から私は個々委員に当りまして出席するのかしないのか、できるのかできないのかということを明らかにいたしまして、善処いたしたいと思います。  質疑を許します。坂田道太君。
  7. 坂田道太

    坂田(道)委員 今回野党三派より御提案に相なりました教育委員会法の一部改正案に対しまして。質疑をいたしたいと存ずるのございます。こまかい点につきましては逐条審議に譲ることといたしまして、本日は全体的に総括的な質問を、しかもそれもその一部をごく大まかにいたしまして、そして私たち態度決定の参考にいたしたいと存ずるでございます。  今度の改正案を包んでおりまする雰囲気は、一体教育委員会制度、特に地方教育委員会というものをどういうふうに考えておられるのか、実はこの点が私には非常に疑問であるのでございます。一体この教育委員会を今後育てて行かれるおつもりなのか、あるいはもうこれでもつて殺してしまうおつもりなのか、あるいは自然にこれを放置されて、見殺しにされて行くおつもりなのか、この法案を見ますると、その点がきわめて漠然といたしておると思われるのでございます。私どもから見まするならば、どうも野党方々は、せつかくできました教育委員会見殺しにされる意図のように思われてならないのでございます。しかしながらよくこれを私考えてみますると、どうもこれはかねがね野党方々のよくおつしやる時代逆行ではないか、あるいは地方分権に反するのではないか、そしてまたむしろ中央集権を深める結果に陥るのではないか、教育民主化と逆行するような改正ではないか。どうしてふだん教育民主化であるとか、あるいは民主主義とか言われる野党方々が、こういう時代逆行的な、民主化に反するような立法をこの重大なとき、民主化をやらなければならないときに御提案になつておるのか、実はわれわれとしてわからないのでございます。せつかくおろされました民主化一つの基盤あるいは地盤、せつかく株をおろさんとしているこの民主化一つ方向教育民主化方向というものを、むしろ破壊せんとするものではないかというふうにさえ、実は考えられるのでございます。この法案改正の必要があるかないか、それをきめまするのに、あまりせつかち過ぎはしないだろうか。百歩譲りまして、もし万一理論的に改正の必要を認めましても、現在生れたばかりの教育委員会を何ら育てることもせずして、これを見殺しにするということはせつかちではないか。御承知通り教育委員会全国一万有余市町村に設置されましてからまだ半年もたつておらない。このような状態において地方教育委員会がいいか悪いのか、欠陥があるのかないのか、これはまだきめられる段階ではないと思うのであります。一年や二年育ててみて、そうしてその結果改正すべき点があるならばこれを改正するのが至当ではないか。それを半年もたたないうちに、その経過的な過程において若干欠陥があるからというて、ただちにこれを改正するということは、当を得たものではないのじやないかというふうに私は考えるのでございます。御承知通り現に五千人の教育長全国一万有余市町村教育長の中の半分、この五千人の教育長の講習も行われておる。教育に対して非常な意欲と希望とを抱いておられる人が少くないのでございます。中には相当の年輩の方々もありまするが、若い人たちに負けないように、教育長としての資格をとるべく努力をしておられる方々もあるのでございます。また教育委員につきましても同様であると思います。非常な希望と理想とをもつて立候補をし、そして選挙に当選され、これから教育委員会が設置されたそのほんとうの精神にのつとつて日本教育民主化のために、また子供教育のために、特に郷土の地型的社会における教育をやるべく、努力をしておられる方々が非常に多いと思うのでございます。これらの人々が立候補された過程をつぶさに検討いたしてみますると、いまさら市町村長でもない、あるいは議員でもない、しかしながら事教育に関するためならばというような気持から立候補され、当選されて、その職についておられる方々がたくさんあられるように見受けられるのでございます。宣伝されておりましたように、全体として質も悪いとは、決して申されないのでございます。中には元参議院議員であつたり、元県会議長であつたり、あるいは市長であつたり、裁判官であつたり、博士であつたり、学者であつたり、医者であつたり、著述者であつたり、そしてまた、いわゆる世の中に目立つた地位にある人ではないけれども、しかしながら教育という問題につきまして、非常なる関心と熱意と誠意を持つた、いわゆる常識人が出ておられる。その中にはお百姓さんもあります。あるいは商人の方もあります。あるいは会社員の方もある。こういう国民のあらゆる階層の人々が、その地域地域の直接選挙によつて選ばれまして、特色のある、その郷士にふさわしい委員会をつくつて、その中の子供たち教育について、どうあるべきかということまでも考えて行こうというのが、今後の教育のあり方であると私は考えるのでございます。従来のごとく一方的に文部省なりあるいは文部大臣が、画一的、統制的、中央集権的に、個々の末端の教育運営までもするということは、間違いである。ことに今後の教育の場としましては、社会教育の面につきましては、この教育委員会運営をおいて、ほかにはないと考えるのでございます。  こういうような観点からいたしまして、私はまず第一にただしておかなければならないのは、提案者が抱いておられまするところの教育に対する根本的、基本的、原則的な考え方でございます。言葉をかえて申しますならば、提案者教育観がどういうものであるかということでございます。もちろんこの法案は、野党三派より共同の御提案となつております。従いまして、何らかの共道した改正すべき点を認められたればこそ、この改正案提出されたのであることは、論をまたないところでございます。しかしながら各党には各党の確回たる教育観がございましようし、その教育観あるいは世界観に基きまして、一党の教育政策が生れて来ると思うのでございます。従いまして表面に出て参りました法案法文そのものは共通でありましても、あるいは同じ法文でありましても、そのものは共通でありましても、あるいは同じ法文でありましても、その底に流れておる思想、イデオロギー、教育観あるいは世界観というものは、おのずと異なつて来る場合もあり得ると思うのでございまして、真剣にこの法案を検討いたしまする場合は、どうしてもその点まで掘り下げてみないと、法案内容ほんとうにわからないと存ずるのでございます。逆に申しまするならば、異なつ思想、異なつた教育観、異なつ世界観から出発いたしまして、一つ法案をまとめ上げるということは、なかなかむずかしいことでございまして、ともすれば共通であるように見えましても、実は違つたものであつたり、あるいは矛盾撞着をしたりする場合が非常に多いので、あるいはそういう矛盾撞着がこの法案に出てはいないかというようなことも一応検討しなければなりませんので、場合によりましては、提案者各党のおのおのの教育観、いかなる教育観を持つてこの改正案を出されたか、そのよつて来るところの教育観はいかなるものであるかということをつまびらかにしていただかなければならないのではないかと思うのでございます。たとえて申しますると、改進党は過日の新聞でございましたが、政策審議会で、国定教科書を採用するというようなことを見たのでございます。ところがこの法案によりますると、その検定権というものは、府県段階において検定をするということになつておるのでございまして、この国定教科書を進めて行こうとするこの考え方と、府県検定権を持たせるということは相矛盾するものではないか。また聞くところによれば、社会党左派はこの府県検定権を置くということに御賛成のようであるし——社会党右派はこれには反対である。しかしながら国定教科書についてはまた反対である、こういうようなことも伝え聞いておるのでございまして、こういう点から考えましても、私は一応提案者教育観というものが、どういうものであるかということを、まず承つておきたいと思うのでございます。
  8. 田中久雄

    田中(久)委員 坂田委員からきわめて丁重な、きわめて真剣な御質問がありましたことは、まことに私どもとして喜びにたえません。いろいろあまり長い御質問で、なれておりませんので、一々についてお答えをするということはできかねますが、また部分的にお尋ねをくださればけつこうであります。  この改正案提出いたしましたのについて、改進党と両派社会党共同提案である、しかもその共同提案をしておる各党が、それぞれ教育観を異にしておるではないか、あるいは教科書撰択権についても別々ではないかというようなことが、非常に重大なことのように受取れましたが、これは当然なことでありまして、それだから政党を異にしておるのであります。もしこれが一致しておるのなら合併すればよろしい。同じ自由党の中においてさえも三つにも四つにも割れておるのであります。いわんや天下の公党として、われわれは異なつ政策、異なつ主義をもつてつておるのでありますから、これが割れておることは、この改正案を出すことに何ら支障にはならぬと考えております。私どもがこれを提案いたしましたことは、二つの大きな考え方を持つております。一つは、先般も吉田総理大臣が本会議で声明せられました通りわが国占領を受けておりました七箇年間の行政面には、国情に沿わないことがたくさんある。しかしながら当時は占領下でありますから、日本としていくら希望しましても、これは先方が許さなければいたし方がなかつたことは当然であります。そこでこの占領下における教育行政の面におきましても、かなりな行き過ぎがあつたことは否定できないのであります。そのために国内的に非常な混乱と苦しみを受けたことも、これまた御承知通りであります。六・三・三制の問題のごときもその一つであります。各県、各市町村において、これくらい苦しみを受けた問題はありません。これは何ら波の立たない村に波が起り、村長が犠牲になり、首をつり、悲惨なことまで起つて、これはほとんど血の犠牲払つた六・三制でありますが、ようやくこれは校舎も建ちましたし、教員もそろいましたし、一応の方向が決定しております。そこでわれわれとしてもこれに対して別に現在異存を考えておりませんが、しからばどれだけ教育の実際がよくなつたか。六・三・三制をアメリカにしいられて実施した今日、どれだけわれわれの子弟の教育が向上しておるかということを考えると、これはいろいろ議論もありましよう。よい面もありましようが、そうありがたがつてばかりおるわけには参らぬと思います。同じような問題の一つとして起つておるのが、この教育委員会法の問題であります。教育地方分権ということはまことにけつこうなことで、自主性独立性はわれわれもけつこうであると思いますが、市町村に至りますまで、一々府県単位教育委員会と同じ組織、同じ権限のものを置くということは行き過ぎではないか、ことに市町村の財政その他の面から見ましても、これは現在の日本として非常な行き過ぎではないか。現に文部大臣も、先般自治庁の長官当時には、自分はこれは反対であると明らかに言うておられる。もつ日本市町村の規模が大きくなつて、四、五箇町村を合併して一つ行政区域ができる。こういう場合においてはこういうものは必要であろうけれども、現在のように村によつては生徒の数が百二、三十人しかない村にまでも、教育委員会を置くということは、これは行き過ぎであつたと当時考えておつた。しかしできたからこれを今すぐつぶすわけにも行かぬと思つておる、育成したいと思つておるということは、偽らざる文部大臣の告白である。私はまことに正直でけつこうだと思つておる。われわれは各市町村の現状をながめ、これは確かに占領下行き過ぎであると考え、また各方面から何とかしてほしいという要望を聞いておる。もう一つ地方教育委員会をつくるときに、政府においてもあるいは自由党及び改進党、社会党各派が、これを一年間延ばしてもらいたいということで、現に総司令部の了解を得て一年間延ばしたということは明らかなる事実である。このことはわが国の現在の市町村組織の程度のものに、都道府県教育委員会と同じような組織の、同じような権限を持つたものを置くということは不適当であるということを、各党が考えたのでありますから、これは日本人全部が考えたと見てよろしいのであります。幸いに去年独立をしたのであるから、もう一年延ばそうということで、延びることになつておつた。もし去年の八月の第十四通常国会解散さえなけば、これは当然一年延期せられて、そうしてこれはさらに十分検討を加えらるべきはずのものであつたのでありますが、これは解散がありましたためにその手続ができなかつた手続ができなかつたために、法律が生きておりますから置かざるを得ないということで、やむを得ぬ結果置いたのでありまして、国民の迷惑これより大なるものはないと私どもは考えておる。しかしながら百歩譲りまして、御説の通り地方教育委員の中にもりつばな方が出ておられる。またせつかく国民選挙をして、あやまつたりといえどもここに法律が生きて、そうして教育委員会ができたのでありますから、われわれとしてはこれをただちに廃止するとは考えませんけれども、しかしながらこの四月一日からはいよいよ専任教育長を置かなけたばならぬということになつておる。三月三十一日までは、町村においては助役が兼任をしてやつておるのが大部分でありますが、四月一日からはいよいよ専任教育長を置かなければならない。ところがこれに対して文部省としてはそれだけの予算が見積れないので、一万の教育委員会の中で五千人だけ教育長をようやく置くという実情である。そういうことで、これはもとより完全なものはできません。教育委員会の完全な運営をはかろうとするならば、これは約六十億の経費がいると聞いております。しかるに二十億余りの経費では、もとよりこれは育てるどころかなま殺しである。これはむしろ各市町村気持にまかして、そうしてこの法律は強制して設置させておる法律でありますから、私どもは置きたいところは置いておいてもいいが、置きたくないところまで財政的な負担をかけて、半端な教育委員会を形だけ置いておくというなま殺しのやり方に反対をするために、設置してよろしい、設置しなくてもよろしい、任意な制度にするというのでありまして、このことはすでに自由党各位の大半は、大体なるほどいい考えだと思つておられますけれども、残念ながらすでにわれわれの手でやつたのだから面子がある。だから何としてもこれは反対しなければならなぬと言われることは、ごもつともでありますけれども、どうぞ高い立場に立つて全国市町村が非常に苦しんでおる、悩みの種である占領下行き過ぎ一つでありますから、どうぞ党派の立場もありましようが、国家のために私どもとしては御賛成を願いたいと思うのであります。
  9. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいま御懇切なる田中委員お答えでございましたが、しかしこれはおそらく私の問い方がまずかつたためだと思います。私の聞かんといたしましたことは、この教育委員会ができたその経過ではございません。なるほど御提案なつ理由は、先ほどすでに御説明がございましたので私も承知をしておる一人でございます。そうでなくして本質的にこの教育委員会というものをどういうふうなものであると認識しておられるか。そうでなければこれを改正するという場合において、私はその理由がはつきりしないと思うのでございまして、この教育委員会というものをどういうものであるかという認識、そうしてその前提となるべき教育観——率直に申し上げまして、御提案になりました田中委員教育に対する原則的な、根本的な考え方、これなくしては、私は改正ということは出て来ぬというふうに実は考えておるので、本質的なその問題をお尋ねしておるのでございます。
  10. 田中久雄

    田中(久)委員 私は学者でありませんので、ことに文部省の各権威のおられる前で私の教育観を述べろとおつしやいますことは——当然かもしれませんが、私どもは現在の教育委員会がすでにできておる、できておることが間違いないにもせよ、とにかくできてしまつた。そこで六十億いる経費を二十億そこそこ出して市町村を苦しめ、しかも中途半端なことをして教育委員教育委員会法に盛られた活動も、権限も行えないというままにしておいても、これを置いておく方がよいかどうか、そういうことはいけないという立場に立つてこの改正をしておるのであります。われわれは教育観がどうであるとか、教育委員会に対する理念がどうであるとか、そういう頭のてつぺんの理論闘争よりも、現実に全国一万の市町村が苦しんでおる。教育委員教育委員として与えられた使命に忠実たらんとする。そうすればかなりな経費を要する。経費市町村当局へ持つてつても、これは出ようがない。国では三分の一も出してくれない。ここに間葉ある。われわれはこういう意味から、この教育委員会というものを、市町村が置きたくないものを無理に置かしておいて、そして市町村内において教育委員会と当局及び議会とが対立をして、抗争を演じ、平和な村にこのために大混乱が全国的に起つて来ている。しかも教育長の題問は専任教育長が置けない。そこで校長などをしてすでにやめておつだ人を今度は頼み込んで、日露戦争当時から先生をやつておる人、あるいはもう教育民主化とかなんとかいうことは今から教えても間に合わぬ人を頼んでやつている。それはなぜかといえば、教育長になれば恩給がなくなつてしまう。四十台、五十台の血気盛りな教職員は、恩給をほつてあしたつぶれるかわからぬ教育委員会教育長にはなりません。従いまして教育長だといつて、おばあさんがおしろいをつけたようなかつこうの教育民主化をやつたつて何にもならない。  もう一つは校長が教育長を兼任するのやむなきに至つている市町村が多い。助言や指導を受ける側に立つのが校長及び職員であつて教育長教育に対して指導と助言をする立場である。指導と助言をする者が、指導と助言をせられる方の立場に立つという実にややこしいことになつて来て、校長の事務は教頭やあるいは教員の一人がやつておる。実に洋服と着物を一緒に着せるような結果がここに現われて来ておる。その必要がどこにあるか。これが全国の責任ある市町村の行政をあずかつている職員、あるいは教育委員自身の悩みとなつて現われて来ておるのであります。これを解消しようというのがわれわれの考えであります。どうぞそういうふうにお考えになつて坂田委員もまつたくこの通りだと思つておられることと存じますので、どうぞごかんべんを願います。
  11. 坂田道太

    坂田(道)委員 私の質問に対してお答えにならないので非常に遺憾に考えるのでございますが、現実にいろいろの問題があるからといつて、それでは何を基本にして改革をするのか。それはやはりその前提となるべき教育観なり、あるいはまた教育委員会というものを、どういうふうに考えておるかということから出発しなければ、私は改正はできないと思うのであります。たとえば教育長の問題につきましてお話がございましたが、今後教育長の講習をやり、あるいはまた現在教職員の中には五万人の有資格者もあるわけでございまして、この中から兼任をしても私は一向さしつかえないと思うのでございます。それこそ山村僻地におきましては、むしろそこの小学校長なり中学校長なりが兼任をしてやられることがいいのであつて経費の面におきましても節約できるし、そしてまたその地域社会の一つの指導的な教育もできると私は思うのでございます。日本人は、何か一つの改革をやる、たとえば教育委員会をつくつたのであるから教育長もこうなくちやならない、事務局もこうなくちやならないというので、県教育委員会の事務局あるいは教育長というものを頭に置いて、そうして小さい町、山村僻地の教育長あるいは事務局を考えて、それで経費は幾らかかる、だから足りないのだ、そうでなくて、その村、その町に応じた規模の方法があると思うのでございます。極端な言葉を申しますならば、山村にお身ましては、むしろ今までのPTAの役員の方々が四、五人集まつて、法的根拠を持つて学校の社会教育の部面にタッチして行かれる、町役場の一室でもよろしい、学校の一室を借りてもよろしい、こういつたやり方で日本社会教育を進めて行けば行ける。何も事件の教育長を無理につくる必要はない。問題はこの法をどう生かすか生かさぬかの問題であります。魂を入れるか入れぬかの問題であります。この法に血を通わせるかどうかの問題であると思う。田中委員及びその他の提案者の考えとは違いますけれども、私はこの教育委員会制度そのものは、決して悪い制度ではないと思う。運用さえうまくやるならば、非常に教育的な、非常にりつぱな制度であると私は思うのであります。それならば正しくないとか、間違つておるとかいうことを何によつてきめるかという場合において教育委員会制度がどうして出て来たか、アメリカにおいてどういう欠陥があるか、いいところがあるか、イギリスにおいてはどうか、そこまで考えまして、この教育委員会制度の精神を、日本の土地、風俗、習慣、伝統、そういつたものに制約されつつも、どうやつて生かして行くかということをわれわれは考えなければならない。考えるとするならば、そのよつて来る基準は、教育観、あるいは教育委員会制度についてどういう考えを持つておるか、あるいはまた日本のこれまでの教育のあり方がどういうものであつたかということから考えて来なければ、正しいか正しくないかということはきめられないと思うのでございます。従いまして、田中委員にお尋ねを申し上げますのは、今度の戦争の結果、われわれはみじめなる敗戦を招来したのでございますが、この歴史的な大変革、大変動を体験いたしまして、その期間を通じ、その体験を通じまして、われわれはいろいろの制度の変革をやりました。しかしながらわれわれ国民の生活に最も深い関係があり、しかもわれわれが現在生きておるこの期間でなくして、われわれの子孫、われわれ国民の百年の大計を打立てるべき、この必要なる教育のあり方につきまして、確固たる教育観が生れて来ると思う。経済関係の諸法律よりも概して普遍性を持ち、恒久性のあるものであると思う。しかも国家及び日本民族の根本的な底流をなすところの問題でございますので、私たちは慎重にこれを検討して行かなければならないと思う。そういうわけでございますから、教育観ということをもう少し縮めまして、一体今までのわれわれが歩んで来た、あるいは学んで来た教育のあり方が、どういう欠陥を持つてつたか、そうしてまた、現在どういう理想を掲げてわれわれは歩むべきであるか、この問題につきましても、私と野党三派の方々とあるいは違うかもしれない、そこでその点をしぼつてお聞きをいたしたいのでございます。
  12. 辻原弘市

    辻原委員 再三にわたり非常に御熱意のある御質問に対しまして、私たち提案者としては非常に感激をいたしておるのでありますが、るる御質問の中で述べられておりますところの、この法案提出するについて前提となる教育観をどう考えているかという問題でありますが、この問題につきましては、ただいま提案いたしております直接の問題は、教育行政をどう扱うかという点について、われわれは少くとも現状に立つてかように考えるという点からの提案をいたしておるのでありまして、万般にわたる教育観につきまして触れる時間のいとまはありませんけれども、端的に申しまして、今坂田委員が申されております点は、かような点にあるのじやないか。というのは、敗戦に至るまでのわが国教育を考えてみた場合に、教育制度自体としては、他国に比してそう劣つておらなかつたけれども、その教育の結果によつてもたらされたものは、国民が現実に直面をした数々の悲惨な状態であつた。このよつて来るゆえんが一体何であつたかということをよく考えて、新たなる教育観を樹立しなければならぬということを指摘せられておるものと私は考えるのであります。その点についてはまことに同感の意を表し上げたいのであります。同時に教育委員会制度についいて、委員会制度日本教育民主化に対する重要な意義を強調せられておるのでありますが、その点も私たちといたしましては同じ考えを有するものであります。従つて特に教育行政を中心といたしまして私たちが考えております教育行政のあり方、それに基く教育観と申しますか、それは少くとも教育基本法に定められております「教育は、不当な支配に服することな」くという大原則に立ちまして、この不当な支配というのは、ただいま坂田委員が後半において申されました通りわが国教育の不当な支配の大なるものは、いわゆる中央集権的な一つの権力が大きく災いしたということを深く考え、しかも同時に、教育をただ国という主体において行われたところに、住民の意思を十全に反映することができないという大きな欠陷を残しておるへかような意味において、地方においてやつてしかるべきであると考える教育の主体につきましては、少くとも地方分権の姿においてやるということをこれは規定いたしておるのであります。そのことは現在の教育委員会法の第一条に明示されております教育の中立性ということ、すなわち不当な支配に屈することなくして教育を行うということ、地方の民意を十全に反映せしめるというこの二つの目的に合致いたしますように、教育行政のあり方を規定いたしました。従つてその前提をもつて現在実施されておりますところの教育委員会制度そのもの教育委員会制度の本質的なあり方については、私たちは何らこれを否定するものではありません。ただここで私たちが申し上げることは、先ほども田中委員からるる申し上げましたように、この制度につきましては、日本行政区域の単位において、またその行政区域のそれぞれの末端の地方公共団体が現に有しておるところの財政規模において、すべてにわたつてただちにこの制度を実施しようとしたところに、いわゆる現実の問題とのぶつつかりがあつた、ここにおいて、私たちは最もこの教育委員会制度の目的が果され得るような単位において、先ほどから申し上げましたこの教育行政のあり方を実現して行くことが最も望ましいのではないか、かような意味におきまして、市町村教育委員会ということは、これは単に私たちのみならず、国民全体、さらに直接教育行政を担当しておるところの文部省なり、あるいは都道府県教育委員会等におきましても、この問題については種々検討いたしました。一たびはこの法律が施行されました当時においては、二十五年以降において市町村教育委員会を設置するということを規定いたしておりましたのを、さらに延期して昨年の十一月までに至つてつたわけであります。かような点からも、との点については日本の地方公共団体の財政規模なり、また公共団体の行政区域というものとの関連において、十分検討を進めなければならぬということは、論をまたないところであります。しかしながらそういう検討が終結いたさないままにこれが設置されましたので、その設置されたという現状に立つて、私たちはこれをどうするかという点から、ただいまのような提案をいたしておるのでありまして、少くとも私たちは目的を果すということが、ただすべてにわたつて置くということと同意義にはならない、そのような観点で教育委員会そのものについては、これをなお育成をして十分教育民主化の目的を果し得るような、そういう十分な国家の財政的補助も与えようし、あるいは委員諸公が働きやすいような幾多の身分保障も確立しようし、委員会そのものが国の中央集権的な不当な支配に屈しないような、そういう万般の措置もいたしましようし、こういうことについては十分考えて行きたい、しかしながら市町村教育委員につきましては、これは必ずしも言葉でいうところの教育民主化地方分権と同一用語になるとは断定できない幾つかの事例もありますし、また困難な面が現状においてすらあります。なお今後においてもこれは考えられるのであります。特に先ほど坂田委員がどのような貧弱な施設内容においても、また実際市町村教育委員会運営するいわば事務局の主体となる教育長について、これが兼任であつても置く方が是であるということを述べられておりますけれども、私は学校教育の中における学校という単位、校長という任務と、それらを包括して行政にあずかり、助言と指導を与えるいわゆる教育委員会制度というものは、これは別個な形でなければならないと思う。と申しますのは、いわゆる校長の任務というのは、これは少くともその学校を単位とした学校運営の衝に当る、教科内容の指導に当る、さらに地域社会の社会教育について、社会と学校との協力についてその任務を遂行する、こういうふうないわゆる直接行政というよりも、地域社会の直接の教育指導という面に対する責任の方がより主体である。しかしながら行政はそれよりもはるかに広域性を持つた、しかもただ教育内容の取扱いといつたような面にとどまらない幾つかの実際上の事務を持つている。そこに校長の任務というものと、いわゆる行政をやるところの教育委員会なり教育長の任務というものが齟齬いたしました場合においては、ここに責任の主体というものがおのずから不明確になる、かえつて学校行政が円滑に行かない、学校運営が円滑に行かないという面が出て参りまするし、同時にまた先ほど社会教育の面を指摘されましたけれども、校長においても社会教育に対する十分なる責任を持つべきである。これが少くとも現在における教育考え方である。学校教育の中にとじ込められない。従つて校長であつてその任務を十全に果したならば、地域社会の社会教育は行われる、なおかつその上に教育長というものをかぶせなければ、社会教育が行われないといつたような考え方においては、これは屋上屋を重ねる何ものでもない。従つてたちはそういういわゆる屋上屋を重ねる不必要な部分についてはこれを排除いたしまして、十分そういうことを必要とする、またそれを置かなくては、教育行政全般が円滑に行かないという単位においてはぜひ必置といたしまして、そたは財政的困難を排除して、それに対して育成保護を加えて行くという、こういう考え方に立つて、少くともたびたび総理も言われておりますように、日本の現状に立つたそういう行政制度、しかも民主化をはずさないような立場においてこれを実施して行こう、実に私どもとしては我田引水ではありませんが、これは現在の日本国民の大きな希望であり、私たちとまつたく同一な考え方に立つている。もしこういう考え方に立たないとするならば、それは私は日本教育現状を知らざる者の考え方ではないかとさえ極言いたしたいのでありまして、先般いろいろ御質問のありました点については、私たちの絶えず考えております教育委員会制度の本質的のものとまつたく同一であるという点について、非常に私たちは喜んでいる次第でありまして、他の法案におきましてもかような考え方においてぜひ終始せられるように熱望しておきたいと思います。
  13. 坂田道太

    坂田(道)委員 ただいま辻原委員からお答えをいただいたのでございまするが、原則としては教育委員会制度というものを認められたようでございます。この点につきまして先ほど田中委員の考えは、実は非常に不明確であつたのでございます。終戦後占領行政の行き過ぎを是正するのだ、それもこの教育委員会制度をやめるのだというように実は聞えたのでございます。そういたしますると、田中委員の考えと辻原委員の考えとは、そこに相当の実は開きを私は感ずるのであります。従いまして、現在ここに現われておる法案そのものは共通しておりましても、それが田中委員の方は、将来においてはこの教育委員会制度というものを全然なくして行く方向へ進むのである。それからまた辻原委員考え方は、そうでなくしてとにかく現状のそぐわないところだけを今改正をして、将来はこの原則を推し進めて行くのだ、こういうふうに感じられるのでございます。最近占領行政の行き過ぎについてのいろいろの改正の立法が出ておりますが、私は敗戦後とにかくアメリカの占領行政下にあつて非常に行き過ぎた点も感じないではございません。しかしながらまた一面において、民主化のために非常ないいこともやつておることを認めないわけには行かないのでございまして、れとえば終戦後の農地改革の制度、あるいはまた財閥の解体、あるいは労働三法の制定、しかもその三法のうち労働基準法その他の行き過ぎについては、若干改正すべき点はありまするけれども、しかしながら今日日本のおかれておる——ことに世界の情勢の中における日本のあり方、進むべき方向ということから考えるならば、何人といえども今日労働三法をやめにしてしまうというようなことは考えられないと思う。またわれわれ自由党としても考えない。同時に労働三法なりあるいは経済力集中排除、財閥の解体あるいはまた農地改革、この三本の柱に加えまして、もう一本の柱が教育民主化、しかも地方教育委員会制度というものがこの一つの柱の内容であると私たちは考える。従いまして、この原則をもし田中委員のごとく、将来においてこれをやめるという方向に進むものであるならば、非常に私は問題がある、こう思うのでございます。そういうような意味合いにおいて、田中委員はどういうふうに考えておられるか、承りたいと思うのであります。
  14. 田中久雄

    田中(久)委員 まことに熱心な御質問でありますが、提案趣旨の説明をいたしました場合も、本改正案をお読みいただけばわかります通り、この改正案を出しております現状においては、私どもは、ただいまただちに教育委員会を全廃するとは書いてもありませんし、申してもおりません。私どもは現状に適さない、しかも政府が財政的保障をしない場合において、しかも市町村を代表しておる市町村議会においてその必要なしと認めた場合は、強制的に国が設置させることはいけないのであつて、設置しなくてもよい条例をつくることができるというのが、改正の眼目であります。どうぞあまり先の先までお考えにならなくても、現状やついて御検討願うことが私は正しいのではないかと思います。
  15. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 関連して田中委員にちよつとお尋ねしたいのでありますが、坂田委員からの質問に対する田中委員の御答弁のうちに、占領行政の是正についてお話があつたのであります。そのお話を聞いておりますと、六・三制の新しい学制度の実施に関しまして、日本がアメリカからこれを押しつけられて非常に困つた。しかし今日はどうにか設備もできたというふうにお話になつたと承つておるのでありますが、その通りに私がこれを聞き流すと、日本がまつたくアメリカの言いなりになつたとか、あるいはアメリカから押しつけられたなりになつたというようなことになつて日本はまつた自主性もなく、何らの見識もないように誤解せられるということは実に遺憾千万である。また事実と相違しておりますから、この点は田中君もよく御承知のことであると思いますから、言い直してもらいたいと私は考えるのであります。その理由はどうかと申しますと、この六・三制の新しい学制度を実施いたしますについては、もちろんアメリカの教育使節団から助言と勧告があつたことは御承知通りでありますが、この助言と勧告に対し、日本では教育刷新審議会というものがあつて、この教育刷新審議会は、教育学者もおれば、教育評論家もおる。そうして過去の教育の学制度とこれとを十分ににらみ合せ、終戦後の日本教育をいかにすべきかということも十分検討いたしまして、自主的に、この六・三・三・四の新しい学制度が、これからの日本教育をやるのにはまことに適切であるという確信のもとにこれを実施したのであります。でありますから田中君の言つたような、簡単な言葉では私は非常な誤解ができ、また事実と相違すると存じますから、この点について田中君の確かな御意見を伺つておきたいと思います。
  16. 田中久雄

    田中(久)委員 水谷委員の御忠告まことにごもつともな点でありますが、私があの言葉を申し上げますのは、そのためにあれだけの騒ぎを起して、村長が首をくくつたりやめたりするような大混乱を起して、はたしてどれだけ教育内容において向上を見たかわからぬということを言いたかつたので申し上げたのでありまして、もしその点において私の言葉が足らなかつたところがあれば、どうぞ御了承願いたいと存じます。
  17. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 それでは私の質問に適切な答弁にはならないのでありまして、私の申し上げるのは、田中君の言うたことだけをそのまま聞き流しますと、日本の国の学者やあるいは教育者やあるいは日本国民が、まつたく見識がなく、また自主性もなくアメリカの言いなりほうだいになつたとか、あるいはアメリカから押しつけられたとか、こういうようになつてしまつてはまことに遺憾であるし、また事実と違うから、その点を田中君からはつきり答弁をしてもらいたいと申したわけであります。それからこれは決してアメリカから押しつけたものでないということも、私は確認をしておりますから、その点をひとつお答え願いたい。
  18. 田中久雄

    田中(久)委員 根本的には別に相違はないことと考えます。末端におきましては、相当押しつけた事実はたくさんあります。それは最初において各市町村に新制中学を設置せよということで、あわてて校舎を建てたり、教員をそろえたのでありましたが、途中からどういう都合でありましたか——これは日本の国内がかつてにやつたのか、司令部から命令したのか知りませんが、途中からそれではいけないということになつて、組合立の学校を独立して校舎を建築せよ、これが大問題を起して混乱を来した。しかも何年何月何日までにこれをやれというので、末端におきましては、相当各府県にあります司令部の出店が呼びつけて、県会などへ乗り込んで、そうして非常に強制した事実はあるのであります。根本においては、そういう審議会を設けて自主的にやられたことと思いますが、各末端に学校を建築するとか、そういう場合におきましては、期日まで督促してやつた例が全国的にあるのであります。私はそのことを引例いたしまして、それほど騒いだけれども、はたして効果がどれだけあるかということは、今日明らかではないということなのであります。根本において全然押しつけたとは申しませんが、事実末端においては、御承知通り、そういうことは幾らもあつたわけであります。
  19. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 私の質問とちよつとそれているのでありますが、私はその根本を聞いておるので、根本を間違えてもらうと、とんでもないことになるということを申し上げたのであります。同様に教育委員会の問題でも、この教育委員会を実施するにあたつての根本的な基礎になる考え方を、田中君はどういうふうにお考えになつておるのか。さきに坂田君が御質問申し上げた点も、そういう趣旨なのだと私は考えます。これをはつきりしておかないと、ただいま田中君がおつしやつたように、田中君は出先のことや末端のことを現実からお考えになつてこの改正を出されたと思うのであります。その根本と十分比較いたしましてお考えをいただかぬと、先ほど坂田君のおつしやつたように、田中君のお考えは、教育委員会はもうこれを廃止するのだということも疑われるのでありますから、この点ひとつ十分に御弁明を願いたいと思います。もつと詳しく申しますと、教育委員会町村にまで置いて効果がないのか、お金がたくさんいるから、それでこの際は実情に合わないというのか、あるいは教育委員会というものは、市町村にはまつたく効果がないものであるかどうか、こういつた点も十分お考えの上に御答弁を願いたいと思います。
  20. 辻原弘市

    辻原委員 田中委員から再三再四お答え申し上げております点で、私たち提案者の側の意見に何らの食い違いはないのでありまするが、いま一度この提案にあたりましては、そういう根本的な問題につきましても、ともにそれぞれ各党各派の政策はありまするが、一応私たちが調整でき得る点につきましては、調整をはかつた上で提案をいたしております。先ほどから指摘されております。六・三・三・四制の教育制度に対する考え方につきましても、われわれとしてはさきに田中委員の方からお話がありましたように、いわゆる占領行政下におきましてこの制度を実施するについて、占領当局が種々地方においては末端の行政に、直接とは申しませんけれども、間接的にいろいろ混乱を来すようなサゼスチョンがあつた。そのことによつて混乱を来しておる。根本的に六・三・三・四制の制度は、日本の財政状態とかそういつたものには無理はあつたけれども、この制度自体が誤りである、そういう前提に立つて、ただいまの教育を決して考えておらないということを申し上げておきたいと思います。  同時に、教育委員会制度そのものにつきましても、いわゆる地方教育委員会についてはなお検討の余地がある。ただいまは一応任意設置という形において提案をいたしておりますが、これについてはなお検討の余地があることは、これは先ほど田中委員のお話があつた通りでありますが、委員会制度の本質をわれわれは決して否定してはおらないということを申し上げておきたいと思います。  同時に単にこれは経済的な立場からのみ私たちが取上げておるという観点も、あるいは本質的な立場に立てば問題が出て参ると思いますので、これにつきましても付言をいたしておきたいと思うのであります。単に財政的な保障の面が少いからこれは困るのだ、だからやめるのだというふうな、単純な論理の組立てによつて、私たち提案をいたしておるものではございません。それのみの理由ではございません。いわゆる日本のような弱小規模の町村の多いところにおいて、はたしてこれが教育上プラスになつて行くのであるかという点についての検討を進めた結果、民主化といふ形式論理ではあるけれども、そのことが必ずしも教育のぽんとうの意味の民主化なり、ほんとうの意味の教育水準の向上に対して、大きな裨益をもたらすとは考えられない。これは今日提案されております義務教育国庫負担法の提案理由の中にも、あるいは質疑応答の過程においても、問題は違いますけれども、たびたび国庫負担法を提案し、教職員を国家公務員とするという理由の中で、大臣がしばしば述べられおります。人事の運営について、現状においては運営が非常に円滑に行かない。いわゆる人事は広域性を持たなければならないのに、甲の村にのみ固定をいたしておつて全国的に飛んで歩けるようなことはできない。国家公務員であるならば、それが非常にできるというようなことを、しばしば述べておられるのであります。私たちはこの点については、いわゆる義務教育の小学校や中学校の先生たちは、そう南のはてから北のはてまで飛んで行く必要はないが、少くとも都道府県内の自由な人事の交流ということは望ましい。しかしながらただいまのように市町村教育委員会がすべて任免をやつて、その中において人事が固定化されて行くようなシステムのもとにおいては、人事行政、少くとも義務教育という相当広域性を持つた、しかも地方の実情に即したような、そういう人事運営というものは、困難であるのみならず、どうも運営の面においてかえつて弊害が生ずる。かような点も、私たちは行政上の問題点といたしまして、ここに弱小規模の町村には、これはかえつて不適当ではないか。このことは、私たちが考えるばかりでなく、多くの市町村において同時に悩んでおられる点でもありますので、この悩みの程度に応じて、いけないとされる町村は廃止をされて、そういう面について広域性を持たれるような人事配置をやり得るような余地を残すために、かような任意設置といたしておるのであります。かような観点でございますから、ただ財政的な理由でないということも申し上げておきたいと思います。
  21. 伊藤郷一

    伊藤委員長 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたしていかがですか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  22. 伊藤郷一

    伊藤委員長 それではさようにいかします。     —————————————
  23. 伊藤郷一

    伊藤委員長 これより国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引続き審査を進めます。質疑を許します。細野委員
  24. 細野三千雄

    細野委員 この法案提案理由の中に、「昭和二十八年度予算に定められた定員に合致させるため、国立学校設置法の一部を改正するものであります。」となつておりますが、これは予算が先にきまつたから、そのあとで定員がきまつて来るように受取れます。実際国立学校に必要とする定員は一体どのくらいなのか、まだまだうんと不足なのか、これが第一点であります。  それから第二の点は、国立学校の先生方は今度六百八十二名の増加となつておりますが、こういう先生方の給与は平均して一体どのくらいのものか。教授の最高額はどのくらいなものか、最低額の先生はどのくらいもらつておるのか、お伺いしたいのであります。  第三点といたしましては、これはきようでなく次会にでも大臣から直接お聞きしたいのは、先ごろ、今政府からもらつておる給与では食つて行けぬと言つて大学教授をやめた先生がある。こういう問題について文部大臣はいかように考えておられるか。この点をお伺いしたいのであります。  以上三点についてお答えを得て、またお尋ねいたします。
  25. 稻田清助

    ○稻田政府委員 第一点の国立学校職員の定員はこの限度でよろしいか、あるいはさらに増員を要するとすれば、どの程度まで増員を要するかという点の御質疑でございます。御承知のように、国立学校各学部は本年をもつて完成度に達しておるわけでございますので、一応現定員をもつて教育、研究の目的を果し得るのでございまするけれども、その中に個々的にいろいろな理由がございます。たとえばこのたび増員の原因となりました大学院の設置の問題は、二十八年度に第一年を発足いたしますので、将来学年進行に伴いましては、さらにその関係職員の充実を必要とするであろうと思うのであります。またたとえば学部の増設につきましても、広島の医科大学の合併等につきましては、年次計画をもつて県立学校の職員たりし者を移すという計画にいたしておりますので、これはまた後年の増を予想されます。そのほかいわゆる学年進行に属しまするもので付属学校でありまするとか、その他の教育研究施設で既定計画の充実というような問題は、後年度に問題を残しております。それ以外におきましては、ただいま予見せられまするような新しい事実が、明年度以降の増員の原因となるであろうとは思われないのであります。  第二の御質疑でございます、現在国立学校の教員の最高俸給、最低俸給につきましては、はなはだ恐縮でございまするが、材料を整えまして後刻報告をいたしたいと思います。  第三の点は、大臣に対する御質疑でございますので、しかるべき機会に大臣からお答えするようにとりはからいます。
  26. 細野三千雄

    細野委員 次にお尋ねして参りたいのは、県立医科大学を広島大学の医学部とするという点でありまするが、こうなりますると、医科大学の先生は従前は地方公務員であつたわけでありまするが、今後は国家公務員となる。その場合給与の面においてどういう違いができて来るかということ、これが第四点であります。  さらにこの場合の医科大学の合併は、これは寄付を受けたものでありますか、あるいは買収という形をとられたものであるか、こういつた点を御答弁願いたい。
  27. 稻田清助

    ○稻田政府委員 最初の年次におきましては、職員の約四分の一を国家公務員に移しまして、移す場合においては現員現給で移すことにしております。  第二の寄付の点でございますが県立大学の土地、建物、敷地その他設備一切を、県から国が委譲を受けるという形になるわけでございます。
  28. 細野三千雄

    細野委員 俸給等の点については、他の委員希望しておられますから、ぜひ出していただきたい。それから大臣の答弁は次の機会にお願いいたします。  これで私の質問は打切ります。
  29. 坂本泰良

    坂本委員 私質問でなくして資料を要求いたしたいと思います。昨日の委員会で、国立大学管理法の問題が松本委員からも指摘されたのでありますが、局長の答弁では、中央教育審議会がまだ決定していないから資料が出せないということでありました。しかし中央教育審議会というものは、基本的な重要施策についての調査、審議をして、文部大臣に建議をするとなつておりますから、少くとも中央教育審議会にかける前において、文部省に資料その他まとまつたものがあるはずであります。従つて国立大学管理法並びに公立大学管理法についてのまとまつた資料の提出が第一。  第二は、大学院を設置します十二の大学、並びに早稲田大学、慶応大学、中央大学、明治大学、日本大学の五つの私立大学につきまして、機構、定員、教科内容についての資料を提出してもらいたい。と申しますのは、国立の大学院だけでなく、私立の大学院につきましても、いかなる関係になつておるかという点を、文部委員会において慎重に調査、審議をいたす必要があると存ずるからであります。  第三は、今度五つの短期大学が設置されることになるのでありますが、短期大学の設置につきましては全国的の関係があるのでありまして、従つてこの五つの短期大学を設置することを文部省が承認して法律案を今日出したことにつきまして、この五つを選ばれたという点を調査するために、全国から短期大学申請のあつた大学並びにその申請の内容従つて今回の五つの短期大学も含まれると思いますから、やはり機構、定員並びに敷地、校舎その他の寄付の点、こういうことについての一切の関係資料をぜひ出していただきたい。この資料を出さなければ、文部委員会としましてはその権威におきましても、文部省が出したこの法律案に対して、単に予算が通つておるから通過させろということはできない。従つて教育委員会法改正の問題あるいは義務教育学校職員法の問題もありますが、やはりわれはくこの最高学府である大学の問題についても、十分なる調査、審議をしなければ、いかに予算が通過いたしましても、これをうのみにすることはできない。従つてかような資料の提出がない以上、われわれはこの審議には政党政派を超越して、文部委員会の名において、こういうことの通過はできないと思いますから、ひとつ文部当局はできるだけのわれわれの要求する資料を提出して、その上で審議できるようにしていただきたい。
  30. 稻田清助

    ○稻田政府委員 ただいまお話のありました諸資料につきましては、私ども極力御要望に沿うように調製いたして、御検討に供したいと思つております。  しかしながら第一点につきましては、昨日の委員会におきまして申し上げましたように、御要求のような法案の構想がきまつてないのでございます。そういうような点から申しまして、まことに申訳ない次第でございまするけれども法案提出しろという一点につきましては、その事実がございませんので、御要望に応じかねる点を御了承いただきたい思います。  それから第二の大学院の点につきましては、詳細な資料をお目にかけたいと存じておりまするが、そのうちの教科内容と仰せられまするのは、大学院の教育研究指導の性質上、これはあらかじめ文部省において調査してお目にかけるような教育指導の内容のないことを、御了承をいただきたいと思つております。  それから第三の短期大学につきましては、御承知のように国立大学でございますから、文部省と大学当局と相談いたしまして、諸種の予算要求の原案を作成いたします。従いましてお話のような、文部省が認めたとか、認めないかという事実はないのでありまするけれども、多少地方の要望等もあり、大学において漠然と短期大学を置いてみたいなというふうに考えたような事実はあります。しかしこれは国会において御検討を願うような正確な資料がございませんので、その点につきましては、できるだけ御要望には沿いたいとは思いまするけれども、どういうふうにとりはからいますか、なおまたよく承りたいと思います。
  31. 坂本泰良

    坂本委員 その点は一応資料を出してもらいまして、それを調査した上でいたしたいと思います。  もう一つは、短期大学を設置すれば、地方団体からの寄付とかいうような点もあると思います。その点もあわせてお願いいたします。中央教育審議会にかかつていないから国立大学管理法の原案も何もないとおつしやるのですが、しかしこれは、中央教育審議会は文部大臣の諮問に応じて、教育、学術または文化に関する基本的な重要な施策について調査審議し、及びこれらの事項に関して文部大臣に建議をする、こういうことになつておりますから、審議会が積極的にその資料その他を私は調査審議するのではないと思います。従つて国立大学管理法というようなものを、この審議会にかける以上は、それに対するところの相当綿密なる原案があるはずである。その点を要望いたしておるわけであります。
  32. 稻田清助

    ○稻田政府委員 まことに申訳ございませんが、事実ないのでございます。その点は事実を申し上げております。審議会に、いろいろな教育に関しまする基本問題をお諮りいたします。あるいは向うから御建議があろうと思います。国立大学管理法につきましては、こうした中央教育審議会が総合的な基本的問題を取扱う性質から見て、おそらく法それ自体を御答申いただくようなことにならないのじやないか。ごく大綱の、国立大学の管理はかくあるべきものだというような点について、御意見が出て来るものだと期待いたしております。また私どもが中央教育審議会に期待いたします点は、そうした大所高所に立つてお教えを受けたい、そういう気持でおるようなわけでございまして、まだ中央教育審議会は発足して間もございませんので、大学管理の問題については御意見を聞きたいということはお願いいたしておりまするけれども、いまだ経過を御説明申し上げておりません。またそれについての御論議もないのでございます。そういうような次第で、今日その点についての資料をお求めの点につきましてはどうかひとつ御了承をいただきたいい思います。
  33. 坂本泰良

    坂本委員 中央教育審議会の問題につきましては、ことにこの大学管理法については、ただいまの局長の御答弁ではわれわれ満足できない。従つてこの審議会にかけるかかけぬか、かけてみなければ、どれだけの準備があるか、そういう点については次の委員会でもう少し討論をいたしまして、その上で処置いたしたい、かように考えます。
  34. 伊藤郷一

    伊藤委員長 ほかに御質疑はございませんか。——本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十六分散会