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1953-03-03 第15回国会 衆議院 文部委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月三日(火曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 伊藤 郷一君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 田中 久雄君 理事 松本 七郎君    理事 坂本 泰良君       北 れい吉君    永田 亮一君       長野 長廣君    水谷  昇君       井出一太郎君    笹森 順造君       菊地養之輔君    辻原 弘市君       山崎 始男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         文部政務次官  廣瀬與兵衞君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     福田  繁君         専  門  員 石井  勗君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 三月二日  教育職員免許法及び教育職員免許法施行法の一  部を改正する法律案内閣提出第一四一号) 二月二十八日  へき地教育振興法制定に関する請願高木松吉  君紹介)(第三一八六号)  同(横路節雄紹介)(第三二八三号)  同(松浦周太郎君外三名紹介)(第三二八四  号) 三月二日  学校給食法制定等請願三宅正一紹介)(  第三三二三号)  同(塚原俊郎紹介)(第三三六三号)  老朽校舎改築費に関する請願長野長廣君紹  介)(第三三二五号)  義務教育費全額国庫負担制度に関する請願(山  崎巖紹介)(第三三六四号)  盲、ろう児就学奨励法制定に関する請願(杉山  元治郎君紹介)(第三三六五号)  大学院奨学生制度確立に関する請願田中久雄  君紹介)(第三三八六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  義務教育学校職員法案内閣提出第七三号)  義務教育学校職員法施行に伴う関係法律の整  理に関する法律案内閣提出第七九号)     —————————————
  2. 伊藤郷一

    伊藤委員長 それでは開会いたします。  義務教育学校職員法案義務教育学校職員法施行に伴う関係法律整理に関する法律案、右両案について、地方行政委員会より連合審査会の申出がございます。衆議院規則第六十条により、連合審査会を開くことに決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊藤郷一

    伊藤委員長 それではさよう決します。  なお開会日時については、理事と協議いたしたいと存じますので、理事諸君の御参集を願います。ちよつと速記をやめて。     〔速記中止
  4. 伊藤郷一

    伊藤委員長 速記を始めて。ただいま理事諸君と協議いたしましたが、地方行政委員会との連合審査会日時は、あらためて理事会を開いて期日を決定することにいたします。御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊藤郷一

    伊藤委員長 さように決しました。     —————————————
  6. 伊藤郷一

    伊藤委員長 これより義務教育学校職員法案、及び義務教育学校職員法施行に伴う関係法律整理に関する法律案の両案を一括議題とし、質疑に入りたいと存じます。質疑順序等について協議いたしたいと存じますので、理事諸君のいま一度の御参集をお願いいたします。ちよつと速記をやめて。     〔速記中止
  7. 伊藤郷一

    伊藤委員長 速記を始めて。これより質疑に入りますが、審査方針といたしまして、関連質疑は、関連質疑範囲を逸脱しない程度でこれを許可いたすことにいたしたいと存じますので、さよう御了承をお願いいたします。なお特に委員長からお願いいたしたいことは、同一質問を重複しないようにお願いする次第でございます。  これより通告順に従いまして質疑を許します。井出一太郎君。
  8. 井出一太郎

    井出委員 本国会における最重要法案一つでございまするただいま上程中の両案に対しましては、全国国民がひとしくその眼を集めておるところでございまして、当文部委員会の今後の審議こそきわめて重大であろうと思うのでございます。すでに本会議におきまして一わたりの質疑応答があり、さらにまた先ごろ予算委員会においても相当つつ込んだ論議があつたはずでございます。しかしながらこの両法案審議する実態的な委員会は本委員会でございますので、ただいま委員長は重複をせぬようにというお話でありまするが、この委員会としては一わたり触れざるを得ないのでございまして、以下私の申し上げる点が、すでに出ました議論とあるいは重複する点はお許しを願たいと存じます。  最近の世論の動向にかんがみまするに、一たびこの法案が、政府部内において構想が固められつつあつた当時から非常なる反響を巻き起しまして、今や有力なる新聞論調を見ましても、幾たびかこの法案を取扱う論説等が現われております。われわれ議員の手もとへも、各地から陳情請願等が山のごとく積まれて来ておる状態である。あるいは各都道府県において、教育会であるとか、公聴会であるとか、教員組合であるとか、PTA、こういつた諸団体が一斉に反対運動を展開しつつある。こういうような世論文部大臣のお耳にもすでに入つておるであろうと思いますが、もしここで全国的なレフエレンダムをやつた場合には、私は非常に大きなパーセンテージを反対部分が占めるのではないかと思う。こういう世論の一斉反撃に対して、文部大臣はどのようなお考えを持つておられまするか、まずこれを伺いたいのであります。
  9. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。この法案内容並びに趣旨は、よく徹底しておりませんのでいろいろ誤解もございましようし、陳情なんかも私の方にたくさん来ておりまして、よく存じております。しかし何を申しましても重要法案でありますから、よく世の中の人におわかりをいただきたい。その意味におきましては、国家の最高機関たる国会において御質疑並びに御論議くださいまして、それを通じて国民皆様に知つていただきたい、こういうことを私は念願しております。
  10. 井出一太郎

    井出委員 全国知事会議におきましても、大体においてこの法案に対する反対の結論を打出しておるようでございます。二月二十一日の日付をもつて義務教育学校職員法案に関する決議書なるものが出ておりまするし、また同法案に関する質問書なるものが政府に提出されてあるはずでございます。この事実を文部大臣は確認されておられまするやいなや、また質問書でありますから、それに対する回答を発せられておりまするかどうか、これを承りたい。
  11. 岡野清豪

    岡野国務大臣 そういうこともございましたし、答弁書も二月二十七日付で事務次官から出してあります。
  12. 井出一太郎

    井出委員 その答弁言われわれ質疑関係上非常に参考になるのではなかろうかと思いまするが、本委員会へ配付される御用意はございませんか。
  13. 岡野清豪

    岡野国務大臣 さつそく差上げることにいたします。
  14. 井出一太郎

    井出委員 委員長のおはからいで、いずれ逐条審議をするような時間も与えられてあるはずであります。従つてこまかな問題はさらにそういう際に譲るといたしまして、本日はごく大ざつぱに諸問題をお尋ねしてみたい。  そこでこの法案が出るにあたつてのバツク・グラウンドとでも申しましようか、そういうたものを少しく明らかにしておきたいと思うのでございます。この法案世上幾多反撃を生んでおることに対して、文部大臣はただいま、まだ説明が徹底しないので誤解に基くところも非常に多かろうというお話でございます。あるいはしからんと私は思う。聞くところによると、文部省はそれに対して文部広報などを大増刷して、平常の配付先以上にこれを配られたということも伺いますが、そんな程度ではとても世論を納得せしめるというわけには行きますまい。そこでこの疑惑を生んだ一つの理由の中には、この法案文部大臣の御意図の中においてある程度固まり、それが閣議に提出され、法案化されたものと思うのでございますが、われわれの聞くところをもつてするならば、昨年できましたいわゆる全額国庫負担法、と申しましても、これは半額負担するにとどまつておりますが、これが四月一日から発足をするにあたつて予算措置、この際に大蔵当局との間において意見の食い違いが出て参つた。大蔵省は従前通り平衡交付金の方式をもつてこれを流そうというふうに考えておつたと、当時われわれは伝え聞いたのであります。しかるところそれが一転いたしまして、全額国庫負担法を文字通り行うという線が出て来た。しかもそれは半額ではなくて全額をやるのだ。この間予算委員会における大臣の御答弁では、自分は従来から全額国庫負担論者であつたんだ、だから幸い文政の最高地位にすわることができたので、その初志を貫徹するんだというようなお考えを漏らされましたが、そういう形で全額国庫で出そうという線が生れて参つたように伺います。ところがこの全額内容をよく調べてみると、給与費教材費の一部にとどまつて、いわゆる義務教育無償というような原則には大分ほど遠いものがある。そこで羊頭狗肉であるという非難が一方から出て参つた。こういうように二転、三転した経過というものが、何か不明朗なものを残しておるのであつて、これが世人に大きな疑惑を与えておるのじやなかろうかと思うのであります。従つて本案を周知徹底せしめる上においては、この間の経過というものを、文部大臣が詳しく本委員会を通じて御説明になられるならば、これはいわゆる世論に対する文部当局側説明を尽すことにも相なると思うのでありまして、この点を詳しく伺いたいと思います。
  15. 岡野清豪

    岡野国務大臣 この点につきましては、ほんとうに私といたしましては、よく弁明をしなければならぬと思つてつた際でございまして、御質問を受けましたことは、私としては立場上非常にありがたい話でございます。と申しますことは、御承知通りに、もしこの法案が出ませんでしたら、四月一日から発効いたしますところの義務教育費国庫負担法というものが、当然実施されるということになつておるわけであります。  そこでまず第一に申し上げたいことは、予算作成いたします際の閣議のいろいろの話合いから、半額義務教育費国庫負担法を四月一日から実施するのには非常にむずかしい財政措置がいる、こういうことで一年延期したやどうかというような内談があつたのでございます。ところが御承知通りに、この半額国庫負担というものは国民の大多数の御支持を得、同時に議員提出として国会に出されて、これが通りまして、この四月一日から発効せんとしたときに、いよいよその実行期に入りましてこれを一年延期するということは、世間に対しても相済みませんし、またその当時御支援を受けた国民の各位に対しても相済まぬことですから、どうしてもこれは実施したいと私は考えた次第でございます。ところが御承知でもございましようが、全額全額ということが世間で言われますが、この義務教育費国庫負担法というものは半額国庫負担法とはなつておりませんで、義務教育費国庫負担法なつております。でございますから、内容を読んでみなければ半額であるか、全額であるか、三分の一であるかわからない。そこで昨年たいへん騒がれましたところの国庫負担法が、半額というような意味で打出されて来ておつたものでございますから、今回私が全額にしたいという希望を起しまして、その方向に進みますのには、どうしても一般に常識的に了解していただくためにも、全額国庫負担する、義務教育費国庫負担をするにしても、内容の一番大事な、半額じやない、全額であるというようなことを打出すために、全額国庫負担という意味ができたわけでございます。そこで私どもといたしましては、この全額にするのに、いかにも豹変したというようなことを仰せられるお方もあるのでありますが、しかし御承知通りに、私は自治庁長官時代におきまして、半額ではどうしても不徹底だという意味のことはよく申し述べておきました。全額ならばすぐ賛成ができますが、半額ではどうも賛成しかねると言つて、半年ほどいろいろ議論をしたいきさつもございます。できるならばその当時全額にしていただきたかつたのでありますが、そういうふうに参りませんでした。そこで私は、文部大臣になりますし、昨年熱心につくられましたところの負担法が一年延期されてはならぬ。一年延期されては永久に延期になるかもしれないということをおそれまして、何とかこの際実行に移さなければならぬ。実行に移すと同じ非常なめんどうな手続を経ますならば、全額に直しておいた方がいいだろうというふうに思いまして、今回全額なつたわけであります。ところがこれは閣議決定のときに、その意味をはつきり言いますために、義務教育費全額国庫負担制度に関する件ということで出してはおりますけれども、その当時のほんとうの表題としまして、公立義務教育学校教職員身分及び給与負担特例等に関する法律案要綱ということで出しているのでございます。こういうことが世間にあまり伝えられないで、実は疑いを起しておりました。この点は皆様方の御了承を願い、同時に国民皆様にも御了承を願いたいと考える次第でございます。
  16. 井出一太郎

    井出委員 今大臣公立義務教育学校教職員身分及び給与負担特例等に関する法律案というばかに長い名前で言われましたが、世間には全額国庫負担法と伝えられ、しかも総理大臣施政方針演説において、道義の高揚を大いに強調せられると同時に、義務教育費全額国庫負担を決意しという表現をとられておつたと記憶をいたします。これらと関連いたしますときに、全額国庫負担という形で法案が固まつた過程があつたのではないかと、私は推察をするのでありますが、この間の経過はいかがでありましようか。
  17. 岡野清豪

    岡野国務大臣 総理がそういうような声明を出しましたゆえんのものは、ただいま申し上げましたように、義務教育国庫負担をしよう、それも半額でなしに全額をやろう、こういうことから通俗にわかるように言つたわけであります。しかし私の考えといたしましては、閣内ではよく申しておる次第でございますが、ただ昨年義務教育費国庫負担法という大きな名前で出ておりますにかかわらず、教員給与費教材費の一部ということに限定されております。しかし憲法の二十六条に義務教育無償とする、こういうことが出ております。この前半額国庫負担がいろいろ議論されましたときに、無償とは何ぞや、こういうことを私に御質問なつたことがございました。当時私はまだ閣議で十分その点は検討いたしておりませんから、十分閣議で検討いたしまして御弁申し上げますというように、たしか御答弁したはずでございます。今回この法案を出しますにつきましては、やはり総理には、閣内ではできるだけこの憲法無償の法則を拡充して行つてもらいたい。ただ単に教員給与とか、教材費の一部ばかりでなく、できますならばただいま一年生だけにしかやつておりませんものを、全学年にもやろう。それからまた学校給食も一昨年以来変なことになつておりますけれども、これもやはり国民教育の一番大事な点でございますし、また一面には食生活の改善という非常に大きな目的もございますから、もう少ししつかりした法制のもとにやつて行きたい。それから問題は校舎でございますが、これは長年の間市町村負担設置、経営をしておるのでございますけれども、これは学校ばかりではございませんが、学校は特に戦争中、また戦後におきまして荒廃の度が多くて、危険校舎と称するものもたくさんあるわけでございます。六・三制をしきまして以来、その六・三制を急速に拡充するために、今まで市町村負担学校設置に加うるに、国庫補助でこれを整備して来たのでございますが、一旦建てた後にいたむとかなんとかいうことに対しましては、どうも国庫補助が足りない。また国庫がこれを助けて行くという制度がなかつたのでございましたが、昨年補正予算のときには、その性格を変更することができなかつたので、実は補正でようとらなかつたのでございますけれども、二十八年度におきましては、危険校舎に対しては国がやはり補助金を出す、こういう性格の基礎をつくつて、そしてわずか十二億でございますけれども、まず第一年度の予算といたしましては十二億とりまして、危険校舎もこれは国が手足しをしてお助けして行く、こういうことにしたい。そういうふうにいたしまして、行く行くは大きく義務教育というものを拡充して行きまして、そしてただいまいろいろ世間で問題になつておりますところの、PTAお方が、いわゆる寄付金によりまして、子弟の教育のために税金以外に出しておられるお金がたくさんあるそうでございます。そういうことはなくして、父兄の方は子供さんを学校へやつておきさえすれば、義務教育は完全に行われて行くものだ。こういう方向に実は進めて行きたいという理想を持ちまして、その第一着手といたしまして、まず本年度から実施する義務教育費国庫負担法内容をかえまして全額にし、そして教材費を付して、同時に先ほど申し上げましたような、教科書とか、給食とか、学校の修繕とかいう方向に漸を追うて、財政の許す限り進んで行きたい、こう考えております。
  18. 井出一太郎

    井出委員 ただいま文部大臣は、単に給与あるいは教材費の一部のみならず、老朽校舎であるとか、学童の給食であるとか、その他義務教育費無償原則にできるだけ近づけて参りたい、そういう御意見を開陳せられました。これらを打つて一丸として、名実とも義務教育費国庫負担、今度の職員法というような中途半端な出し方ではなくして、これらを打つて一丸とした一本の法制にまとめる、そういうことはただいまお考えなつておられますか。
  19. 岡野清豪

    岡野国務大臣 まことにこれは広汎な仕事になるわけでございますが、教科書無償法律単独で出ております。それから今後給食法単独で出さなければならぬ状況でございます。そしてそういうふうにして、私の理想を実現しますように、手のつくところから始めまして、そうしてどんどんやつて行きまして、それが全部できましたならば、今度ほんとう意味における義務教育費国庫負担法というものに総まとめいたしましてやつて行きたい、これが私の理想であります。しかし理想に近づくためには、初めから大きな網をかけまして、それを一時にでつち上げようといたしましても、それはできない相談でございますから、一つ一つくいを打立てまして、そのくいをあとから継ぎ合せて一連のものにしよう、こういう考えでございます。
  20. 井出一太郎

    井出委員 そこで伺いたいのは、文部当局とされましては、そのような意味の広汎な義務教育費用憲法第二十六条に基くような意味における義務教育費用というものは、一体どれくらい見積つておるか。これは国の負担もございます。府県市町村負担もございましよう。あるいはPTA負担もあろう。こういうような義務教育関係費用というものをどれくらいに見積つておられるか。これは数字があつたら、この際承りたいのであります。
  21. 岡野清豪

    岡野国務大臣 たしか調べたものがあると思いますから、政府委員から申し上げさせます。
  22. 田中義男

    田中(義)政府委員 義務教育に関しまする給与物件費につきまして、国と地方で直接負担いたしておりますその数字で、ただいま手元にございますのをひとつ御報告申し上げたいと存じます。昭和二十六年度からの統計がございますから参考に申し上げますと、昭和二十六年度には教育給与費として国で負担をいたしておりますものが三百八十二億八千九百万円でございます。地方負担をいたしておりますものが四百二十五億九千九百万円でございまして、それを合せますと計八百八億八千八百万円となります。それから物件費でございますが、物件費について国は百十七億九千万円、それから地方が四百五十九億一千三百万円でございまして、計五百七十七億三百万円、その教育給与費物件費とをさらに合計いたしますと、昭和二十六年度が一千三百八十五億九千百万円となります。それから昭和二十七年度でございますが、教員給与費について国は四百七十七億一千六百万円、地方が五百二十五億二千百万円、計一千二億三千七百万円、それから物件費につきましては、国が百五十一億一千六百万円、地方において四百六十九億四千二百万円、計六百二十億五千八百万円、総計いたしますと二十七年度が一千六百二十二億九千五百万円となります。さらに二十八年度、これは推計でございますから、推計として御了承いただきます。教員給与費において国が九百一億九千七百万円、地方において二百七十九億八百万円、計一千百八十一億五百万円、それから物件費につきまして、国が百四十九億五百万円、地方が五百八億八千六百万円、計六百五十七億九千百万円、二十八年度の総計が一千八百三十八億九千六百万円、かような数字をただいま手にいたしております。
  23. 井出一太郎

    井出委員 ただいま御発表の数字は、今後の審議参考になりましようから、ひとつプリントにしていただきたいと思います。
  24. 田中義男

    田中(義)政府委員 差上げます。
  25. 井出一太郎

    井出委員 それから、資料の話が出ましたからついでに申し上げたいのは、先週の木曜日でございましたか、田中委員からこの給与費を、定員定額制と申しましようか、二十八年度において文部省は各府県別にどのような割当を考えておるか、これを二十七年度のいわゆる現員現給と比較した表を出してもらいたい。こういう要請があつたはずでありますが、この資料はいかがに相なつておりますか。
  26. 田中義男

    田中(義)政府委員 実は二十八年度におきまして、各府県に対して幾ら配分をいたすかという問題でございまして、それについては先般資料の御要求がございました際に、前後いたしまして、予算委員会においてもその資料の御要求ちようどございまして、それでそれとあわせて資料作成をいたしまして、お届けするつもりで用意をいたしました。その結果予算委員会に対しましては、先般一応の案を得ましてお届けをいたしたのでございまして、それを本委員会におきましても差上げますことが適当かと存じますから、後刻さつそくお届けいたすことにいたします。ただ二十八年度各都道府県別幾らこれを配分するかということになりますと、大体従来御説明を申し上げておりますのは、全国の規模において幾らになるかという総計の金額を申し上げておるのでございまして、それを各府県配分いたします場合には、特に来年度におきましては、各府県現員現給をも特に勘案をいたしまして、その上に山間僻地の多い、すなわち小さい学校が多いところでございますとか、あるいは教員資格構成の点で、教員数が助教諭の数に比較して非常に率が多いところ、あるいは逆に少いところ、その他先生方の数なり生徒、児童の数といつたようなものを十分よく実態をつかみました上に、客観的な比率配分を得まして、そうして実情に合うように、できるだけ正確な配分をいたしたい、かように考えまして、目下その基準の作成を進めておるところでございますので、ただいまにおいてお答えできる範囲資料について差出したわけでございますので、そのおつもりでひとつごらんいただきたいと思います。
  27. 井出一太郎

    井出委員 ただいま問題になつております資料は、この法案審議する上においてはきわめて重要な材料であろうと思う。いわゆる定員定額制というものがこの法案における論議の山でありまして、従来の現員現給を確保したいというのが各都道府県の要望でございます。従いましてその現員現給の確保がくずれる、そこに教員の待遇を低下せしめる、あるいは首切りが行われる、こういうことを実は憂慮しておるのでございまするから、その資料が配付されない限りは、実を申すと、この委員会審議には非常にさしつかえるということになります。従いまして、その資料は、この委員会の進行とにらみ合せて、本委員会においてこの法案を仕上げするまでには間に合いますかどうか、これを伺いたい。
  28. 田中義男

    田中(義)政府委員 ただいままでに私どもで作成し得まする材料につきましては、後刻ただちにお手元に差上げることにいたします。ただ定員定額と現員現給の関係につきましてお答え申し上げますならば、御承知のように来年度の臨時措置といたしましては、給与費について従来通り都道府県負担といたしておるわけでございます。それに対しまして国は一定額を交付して行く、こういう建前でございまして、これが職員法案の附則の第十一項にはつきりこれを規定してございます。その建前のもとに加えますに、附則第二項におきまして、個々の先生方につきましては、現在受けておる級並びに号俸によつて、そのまま横すべりをして国家公務員として任用されたものとみなす、こういうことになつておりますから、法文の上におきましても、はつきり現員現給は確保されておるわけでございます。  なお財政校置の上から申しましても、国の教育についての規模といたしましては、一応来年度一千百五十五億と算定いたしまして、その中からいわゆる富裕県等についての交付しないか、または減額し得る額の二百五十四億を落しまして、九百一億をそれぞれ配付することに計画を進めております。これを来年度の財政計画から申しますと、かりにこの制度施行しなかつた場合における国の財政措置として考えました場合と、今回平衡交付金からこれをとりはずして、そうして給与費として別途配付いたします場合と、総合的に国の財政措置考えます場合には差引差異はないのでございまして、従つて国の財源措置として別にかわりなく、そのために新たに財政負担を命じておるわけでもございませんし、地方においては、従来通り現員現給をまかなつて行くべきものでございますし、そのための減員なりあるいは減俸が行われるものとは実は考えておらぬわけでございます。
  29. 井出一太郎

    井出委員 ただいま田中局長の御答弁、これは今後相当問題になる点だろうと私は思うのであります。つまり附則の十一項でございますか、二十八年度に限つて都道府県がこれを負担するのだという一種の経過措置でこれを逃げていらつしやる。でありますから、私の先ほど来要求しておる資料の問題についても、おそらくは二十八年度については国としては府県負担にかかるものであるから、そこまでつつ込んでこまかな府県配分表というものは、国の責任においてはつくれないのだ、こういうふうなことにお逃げになるのではないかと思うのでありますが、いずれこの問題については触れる箇所があろうかと思います。そこで定員定額制ということがこの法案の大きな山だと私はさつき申したのでありますが、これについては、今局長は、要するに横すべりをするだけであつて現員現結はそのまま確保されるのだ、こういう御答弁であります。さらに先だつての本会議における文部大臣の御答弁を見ましても、たとえば既得権は必ず尊重する、こういうふうな言辞を述べられておりまするし、さらにまた東京のまん中の国立学校教員のもらつていると同じものをどこの教員ももらえるということになりますから、待遇は適正になるわけであります。というような意味のことも述べられておる。これに対しまして本多国務大臣はきようはここに見えますか、まあいずれ岡野さんと本多さんとを対決していただかなければならぬ場面もあろうかと思いますから、きようはあえて本多さんにお越しを願わなくてもいいんですが、本多さんの御答弁の中には、もし漫然と実額にこれを改めるということになりますと、また地方団体間におきまして、高いところと低いところで不均衡を生ずるわけであります云々、こういうふうなことを言つていらつしやる。あるいは、これは今速記録を持つておりませんが、せんだつて予算委員会教育費問題が取上げられて、夜遅くなつて大もめにもめたことがございます。局長が五十三万人と五十一方人という数字を申し述べられた、あのときでございますが、議場が混乱になつて、その日は要領を得ないで、翌日野党側の要求に応じて総理大臣が出席して、内閣側の考え方をまとめて申し述べられたことがございます。そのときにたしか定員定額という言葉を使つておられると私は記憶するのでありますが、こういうふうに考えて来ますと、総理の言われたこと、本多自治庁長官が言われたこと、文部大臣の言われたことで、どうもその間にちぐはぐな、統一を欠いておる点があるのでございます。これをひとつはつきりしていただかねばならぬと思いますので、あらためて文部大臣の御所見を伺います。
  30. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は既得権は尊重するということを申しております。そのためにこの法案につきましては、現在各府県教員が受けておる現員はむろんのこと、現給をそのまま確保しまして、その現給のままで国家公務員として任命せられたものということにする次第でございますから、今までもらつておるものを減らすとかなんとかいうことはないはずであります。  それから定員定額ということは、これはわれわれの言葉が足りませんで誤解があつたかと思いますけれども、いわゆる定員法による定員をこの際きめるわけじやございませんで、大体においてどのくらいいるものだろうかということで、たつぷりと余分をとりまして、地方へ交付する算定基準にするために、定員定額という言葉を使つているわけでございます。と申しますことは、全国の児童数を五十人で割つて、それを一学級とすると一応仮定しまして、その小学校におきましては、一学級に対して先生がどのくらいいるだろうか、これを一・五人ということに考えます。それから中学校はどうかと申しますれば、中学校は一・八、すなわち十学級には十八人いるということになる。こういうことにしますれば、全国を通じまして少くとも現員よりはよけいな算定基準になるはずでございます。ということは、いろいろあちらこちらででこぼこもございましようし、いろいろなことをならしもしなければならぬと思いますので、十分なる予算をとるために、一・五、一・八というものを確保しまして、それを総括して算定基準とし、その交付金を出すということになつたわけでございますから、定員と申しましても、定員法にいうようにちやんときめてやるりではなくて、国が地方に交付するためにどのくらいの額を交付したらいいかという算定の基準のために、そういうような定員定額ということを打出したわけでございます。
  31. 井出一太郎

    井出委員 しからばかように解釈してよろしいかどうか伺います。いわゆる定員定額、ことに定員という文字は、定員法における真の意味の定員ではないんだ。従つてこれは国庫負担にかかわる分を配付するための便宜的な措置として、一つの目安として定員定額というものを設定するんだ。従いまして現員現給というものが確保されることは間違いない。これはよろしゆうございますか。
  32. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お説の通りでございまして、実際から申しますれば、ただいま教職員が受けております待遇に、そのまま現給で国家公務員になる。それから定員定額と申しますことは、いわゆる定員法をつくつたりなんかするときの定員じやございませんで、国家が地分団体に限り交付いたしますところの金をいかにして算出するかという算出の基準を定員定額と称してやつておる次第であります。
  33. 井出一太郎

    井出委員 そういたしますと、一応の目安として定員定額というものを設定された。しかもそれにいわゆる理論学級数とでも言いますか、生徒数を一学級五十人と割当てて、小学校は一・五、中学校は一・八でございますか、そういう一応の基礎数字に基いて府県配分をきめる。そういたしますと、ならした府県配分の額とその各府県における現員現給を積算したものとの間に過不足が出て来るというおそれがありはしないか。これはどういうふうにお考えなつておりますか。
  34. 田中義男

    田中(義)政府委員 ただいま定員定額の御説明大臣からございましたが、いわゆる定員定額と申しますのは、国において地方へ交付いたします総額を算定いたします場合の算定基準の問題と、さらにこれを各府県別に、先ほどちよつと申し下げましたようないろいろな基準をきめまして、その基準に基いて各府県に交付いたします場合とございます。そこでいわゆる現員現給と定員定額によつて配付された場合の過下足が出るかというお話でございますが、私どもはことに貧弱県等につきましては、できるだけ実情をよく勘案いたしまして、その基準をきめたいと思つておりますし、およそまかなえるものと考えておりますけれども、ただ非常に富裕県等で、他に比して非常に高い基準でもつて支給されておるような県等に対しましては、あるいは少し不足が出るかもしれないのであります。
  35. 井出一太郎

    井出委員 そうなると、今局長の言われますのは、大臣がおつしやつた現状のままで横すべりをする、現員現給は確保されるというお言葉に対して、特に富裕なる府県において教員給与の質的構成が非常に高いものであつて給与の水準の高い府県においては、除外例が出て来る、こういうふうに解してよろしいのでございますか。
  36. 田中義男

    田中(義)政府委員 大臣の言われたのと実は別に齟齬はないのでございまして、定員定額によつてただちに現員現給が確保されるという意味ではございませんで、国と地方との財政措置において、法律に規定いたしておりますように、現員現給が確保される。ただその現員現給に対して、定員定額が場合によつて府県等において不足を来すことがあるかもしれません。その場合には、地方において負担をしていただく、これが法の附則の趣旨になつておるわけであります。
  37. 井出一太郎

    井出委員 どうもそのところちよつと了解に苦しむわけですが、いずれにしましても、今の田中局長のお話によると、何か少し除外例が設けられるというような感じがするのです。局長はこの間予算委員会のあの現場にいらつしやつたが、文部省考え方としては何らかの弾力性を持たせておいて、今問題になつておる定員定額で算出をして行くと、そこに含みがあるんだから、そこから捻出したものでもつて現員現給は確保されるのだ。たとえばあのとき幽霊人口だという言葉が出たように、実際は現在五十一万人そこそこの教員の数しかおらないが、今あなた方が考えておられる定員定額の定員の方は、五十三万何がしを予定していられる。この二万何がしの幅があるから、そういう意味で各府県とも、今度の文部省の交付額をもつてすれば、各府県現員現給というものはその弾力性をもつてまかなえるのだ、こう私は理解しておりますが、それでよろしゆうございますか。
  38. 田中義男

    田中(義)政府委員 二万人の弾力性によつて全部が完全にまかなえる、こういうふうには私、はつきり申し上げかねるのでございまして、ただどこまでも従来、現員現給は地方財政においてまかなつて来ておるわけなのでございます。それに対しまして二十八年度におきましても、その前提のもとに国としての財政措置をいたしたわけでございまして、従つてそれをそのまま今回一部さいて、平衡交付金から給与費としてこれを支給をいたすだけでございます。財政措置としては別に新たな負担を課するわけではなく、また増減があるわけではございませんから、従つて法案が成立いたしました場合に、その法案施行いたしますならば、減俸なりあるいは減員というものは起らない、かように申しておるのであります。
  39. 井出一太郎

    井出委員 どうも非常にずるい御答弁だと私は思うのです。要するにこの二十八年度の経過措置というやつが、私はくせものだと思うのです。四月一日を契機にして、はつきり切りかえてしまえば、今のようなやつかいな問題は起らないのだが、要するに二十八年度というものは何かやるがごとくやらざるがごとく、今までの状態を引きずつて二十九年度へ問題を繰越して行く、こういう感じが私はするのであります。  そこでもう一つ、これもせんだつて予算委員会で問題になつ現員現給を、数字にはじき出すと八百七億になる。ところが国庫負担の額は、これに見合うものは七百八十七億だ、約二十億不足である。この二十億は地方へしわ寄せをして地方負担にまかせる以外にはない、こういうふうに私は予算委員会の際に理解をしておるのです。そうすると、このことは二十億の差額というものが出て、地方費にそれだけよけい食い込む。国が全額負担するという建前が貫徹できなくて、二十億地方へ食い込んでいるということが、どうも羊頭狗肉だと言われる一つの箇所じやないかと思うのですが、この点はどうですか。
  40. 田中義男

    田中(義)政府委員 私は実はありのままに申し上げているつもりなんでございまして、二十九年度からは、これはもうそのまま給与費についても全額負担なつておるのでございまして、二十八年の臨時措置としては、全額角担ということにはなつておらぬのでございます。従つてそれに対しては国は定員定額を交付して行くのだ、こういうことでございます。従つて国と地方と両方の財政措置からして現員現給は確保されるのだ、こういう御説明を申し上げているのでございます。なお八百七億と七百八十七億のお話が出ましたが、これはただいまの実は推計でございまして、御承知のように来年度の規模を一応教育費について千百五十五億といたします。その中から、東京、大阪を初め八府県につきましてのいわゆる財原偏在の額いかんの計算の問題がございまして、ただいまではそれを一応二百五十四億と計算をいたしておりますけれども、この二百五十四億の実際に出て参りますその計数いかんによつては、この八百七億に対しまするその額も動いて来る可能性が相当あるのでございまして、ただ現在から申しますと、それだけの地方負担というものは起り得るだろうと思うのでございます。
  41. 伊藤郷一

    伊藤委員長 辻原委員に関連質問を許します。
  42. 辻原弘市

    ○辻原委員 今後この法案審議するにあたりまして、いろいろな言葉の解釈をある程度はつきりしておいていただきませんと、それによつてこの法案内容に対する私たちの見方も相当かわつて参ります。と申しますのは、本案法についての本会議あるいは子算委員会のいろいろ御質問の過程に、これは私たちの印象でありますが、言葉の解釈というものがかわつて来ておる。そういう点で先ほど大臣から御説明をいただきました定員定額という言葉に対する解釈であります。これは実はこの法案に対して、予算委員会審議を通じて初めて明らかになつたことでありまするが、二十八年度の暫定措置というものが、この法案が提出される当時においては、あまり重要視せられておらなかつた。二十八年度の暫定措置というよりも、法案自体が二十八年度から即時発効される。もちろんそれに対する経過措置はあるけれども、法律の根本趣旨、目的と全然異なつたようなことはおそらくそれが経過措置であろうと、なかろうと存じておつたのでありますが、いろいろ聞いて参りますと、それは法律の根本趣旨にのつとつているのだというふうに政府の方ではお答えになつておられます。どうも私たちの受ける印象では、二十八年度のものは別段全額国庫負担でもなければ、あるいは従来やかましく言われておつたような、いわゆる財政の確立に基くそういう一つ財政法でもなさそうに思うのです。そういう経過もありますので、先ほど説明をいただいた定員定額という言葉についても、今後暫定措置だとか、あるいはいよいよ法案が本格的に施行される二十九年度以降だという区別なしに、いわゆる定員定額という言葉は、先ほど大臣のお言葉にあつたように、定員法によるものではなくして、ただ一応の定員あるいは定額と申しますか、人件費を計算するにあたり、基本給を計算するにあたつて国が定める一応の基準であつて、何らこれには法律的な拘束力はないというふうに伺つたのでありますが、そういうふうにずつと私たちは受取つていいのかどうか。これは一応の基準である。定員を先ほどの大臣の御説明の言葉をかりて申しますと、大体のところたつぷりとるための基準を一応国が定め、その基準に基いて地方に配るという一応の基準にすぎない。こういうことに相なりますと、これははなはだもつて実を申しますと、定員定額というものの実際の運用効果は経験済みの問題でありまして、平衡交付金制度が実施される二十五年以前約一年半にわたつて定員定額が実施せられ、その実害は実際の面に現われて来ておる。そこで定員定額に対する廃止運動というものが全国的に展開されて、ほとんどこれが撤回され、廃止されようというその時期に、いわゆるシャウプの勧告によつて交付金制度が実施されて、この問題が消えてしまつた。こういう経過をとつております。私たちが大臣から御説明いただいたような、そういう単なる基礎であるならば、それは従来だつて一・五あるいは一・八というものは、予算の計算の基礎にあたつて、それが平衡交付金であろうとあるいは従前の半額国庫負担の場合であろうと、精算方式による場合以外は一応の基準というものがあつたはずです。しかしそういうものと同一視していいということになれば、これは法案に対する見方が相当かわつて来ると思うのですが、私はその点についてはつきりしておいていただきたいと思う。先ほどのお答え通りであるかどうか、私はその点を最後に念を押しておきたい。
  43. 田中義男

    田中(義)政府委員 今回の措置は、言葉が現員現給だとか、あるいは定員定額とか、ないし全額負担という言葉についていろいろ質疑がございますから非常に誤解を招きやすいのでありますが、しかしこの全額負担という言葉を、現行法は実支出ということになつておりまして、その半額を国が負担したのだ、その半額という観念を全額に持つて来たのだ、こういう意味ならば全額負担ということが言い得るわけなんです。  そういう意味においては、ここに非常に積極的なはつきりした国の保障があるわけでございまして、これはそういうふうな意味でひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからただいま大臣がたつぷりというお言葉を使われたからというお話でございますが、これは御承知のように従来の一・五と一・八、これらの財政計画上の算定基準というものは、国の予算の算定としての基準とはいうものの、いわゆる実際には相当上まわるような程度に持つて行くために、文部省も長年苦心をし、努力をして参つて曲る基準でございまして、定員から申し上げますならば、実際の定員よりも定数は相当上まわつた線を確保しておることは御承知通りであります。なおその額から申しましても、基準財政需要額から申しますと、これは資料として差上げたのでありますけれども、来年度においても約六百七十四億、こういう額になるのでありまして、その六百七十四億というのは八百七億の現員現給に対し八四%の保障率になる。ところが食われわれの計算いたしました国庫負担の七百八十七億というのは、現員現給に対して九七・五%だ、それほど基準財政需要額等における計算よりも十分に見てございます。こういう意味でございますから、御了承いただきたい。
  44. 辻原弘市

    ○辻原委員 一応の意味はわからないこともないのですが、私はこういう点についてはつきりお聞かせ願いたいと思うのです。いろいろ今田中局長の方からお話のありました点は一応お話として了解いたします。というのは、定員定額という言葉と現員現給という言葉と二つの言葉がありますが、これがいろいろちぐはぐに使われております。そこで実際法律的にもその言葉が出て参つておりますので、その解釈を統一していただきたいと思つて私は言つているのですが、いわゆる定員定額というのは、二十八年度における暫定措置においても、一応政令なら政令で定めて、同時に二十九年度には法律並びに政令で定める、こういうことになつている。その場合にも二十八年度の定員をきめる、あるいは定額をきめるという、その定員定額というものの考え方と、それから政府の言葉を借りて申しますと、二十八年度から実施するのだと言われておりますが、本格的な給与全額負担ということを実際にやる場合にきめる定員定額というものとの考え方は同一に解釈してよいものかどうか、この点をひとつはつきりお聞かせ願います。
  45. 田中義男

    田中(義)政府委員 二十八年度の場合におきましては、これは附則にもそれぞれ規定してございますように、一応国としての総数を出します場合にはこれを政令で定めることになつております。さらに各政県にこれを配分いたします場合の基準については、その政令で定められた範囲に率いて、さらに文部大臣文部省令で定める、こういうふうにそれぞれ規定をもつて定めることになるわけでございます。それが二十九年度以降になりますと、総数については法律で定めるというふうなことになつて参りまして、それぞれ規定等もはつきり法律に一層根拠を持つことになるのでございますが、ただ考え方としては、二十九年度以降は給与法そのままの施行を受けますから、従つて定員といつても、これはいわゆる定員法による定員になつて参ります。ところが二十八年度におけるその定数はそういうふうな意味でございませんで、国において負担をいたしますその負担範囲を示したものになりますから、俗に申しますまるがかえの場合と、国が一定額を負担する場合との算定基準の差が出て来るわけなんです。
  46. 辻原弘市

    ○辻原委員 少しわかつて来ました。アルバイトと常勤と違う、こういう御説明であります。そこで大臣にお伺いいたしたいのでありますが、そういたしますと、先ほど井出委員の御質問に対してお答えになりました言葉は、二十八年度までに限つての定員定額の解釈ですか。
  47. 岡野清豪

    岡野国務大臣 その通りでございまして、定員定額と申しておりますのは二十八年度の経過措置のときの算定基準でございます。二十九年度からまた別なものになります。
  48. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで私は先ほど申しましたように、これは法律上の言葉でございまして、定員定額という一つのはつきりした定義があると私は思います。そういう場合に、その年によつて使われ方が異なるというようなことでは、はなはだ私どもは了解しがたい。だからそういう場合に、定員定額というものをはつきり指摘せられたように、総理予算委員会において政府を代表しての言葉において使われておる、定員定額により二十八年度は実施いたします、と言つております。そういたしますと、この定員定額というものは現員現給と結びつけて考えてみてもさしつかえないということにことになる。二十八年度は現員現給によつてやる、附則第二項でこれは横すべりをする、従つてその財政措置としては現員現給でやる、その財政措置のやり方については幾多の案がありますが、一応考え方としてはそういう考え方でやつて行く、そういうことを定員定額でやるということになつたとすると、二十九年度の定員定額というものとは著しく内容的に違つて来る。だから定員定額についての解釈はどつちをとつたらよいのか。本格的にやる場合において定員定額というのを考えるのか。二十八年度の暫定措置においても含まれるものについて国が一応の基準をきめる、これを定員定額というのか。これは先ほど御説明なつたのですが、そういう二通りの解釈が定員定額にあるのか。この点は今後のために私ははつきりしていただきたい。私は何も言葉じりをつかまえて申し上げるのではなくて、すでに大臣も御承知かと思いますが、各界の反対意見を見てみましても、全国知事会議あるいは全国教育委員会協議会、あるいは全国PTA、各種の団体がこの法案に対して非常に重要な関心を寄せておられる。団体なり地方においては、定員定額によるから困るのだということを言つておられるわけです。その場合に定員定額について二通りも三通りも解釈があつたならば、これは私はそういう地方に対して一つの欺瞞性を与えると申しますか、的確な判断を地方に与えないことになると思います。従つてこういう重要な焦点になつているような言葉については、いやしくも総理が声使いになり、大臣がお使いになり、政府委員がお使いになる場合においてそれぞれ不統一があるというようなことでは、はなはだもつて私は困ると思う。また年度によつてその言葉が違うというようなことでは、私は日本の国語用語においてはあり得ないと思う。年によつて言葉の用語が違つたり、雨が降つた場合にはこういうふうになるというようなばかな話は、私はおよそ常識上あり得ないと思います。だからそういう言葉については、今後のこともありますから明確にしておいていただきたい。従つていま一度その点については、二十八年度の場合には定員定額の本来の意味はないならないとはつきり申していただきたい。
  49. 田中義男

    田中(義)政府委員 定員定額と申しまする言葉はいろいろ沿革がございまして、これはもう辻原委員も御承知のような意味で定員定額という言葉を使つて来ておるのでございまして、いわゆる現員現給に対する定員定額であつて、そして国が負担といたしますのは、定員定額で負担をいたします。それ以上の過不足については、極端に申しますならば、ひとつ地方においてやつていただきたい、こういう意味の定員定額でございますから、従つて定員定額という言葉を総理答弁でお使いになりましたのも、財政措置としての言葉としてお使いになつておるものと私は考えるのでございます。それが二十八年度でございまして、従つて二十九年度からは、いわゆる定員定額にはならない建前なのでございます。
  50. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、今の御答弁によりますと、これは二十九年度からは定員定額ではないということですね。それでは二十九年度ではどうなるのですか。
  51. 田中義男

    田中(義)政府委員 定員定額でないと申しますのは、ただいま申しましたようないわゆる定員定額ではない。予算を組み、そしてそれぞれ職員が設置されるのですから、それについては定員というものは当然つくられるわけでございます。同時に、それに対して給与幾らという、これも予算が当然出て来るわけです。それについて、国としてこれを国家公務員として使用いたしますときにこれが足りない場合しには、当然国が責任を持つて、すべてこれは国で措置すべきものです。そういう意味においては、まるがかえにいたしました場合にはいわゆる定員定額ではございません。これは全部国において精算負担すべきものでございますから、従つてそこの食い違いはないのでございます。それを二十九年度以降もいわゆる定員定額だというならこれはたいへんなことでございまして、そういうふうにはなつておりません。
  52. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の点は、裏を返して言えばそういうことも言えるでしよう。しかしこの問題は、拘束力を与えるか、与えないかという点において、定員定額が実害があるとかないとかいうことが一般的にいわれておるわけです。そうすると、二十八年度は定員定額で、二十九年度から定員定額にならないとおつしやる意味は、それはそういうふうな一応の基準だと考える定員定額ではない、一応の基準ではなくして、定員法にいうようなそういう定員定額が二十九年度からのいわゆる給与を組む場合の考え方だ、こういうことなんですか、その点を話していただきたい。
  53. 田中義男

    田中(義)政府委員 もう二十九年度以降、定員定額という言葉で言わない方がいいと思います。
  54. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは定員法に基く考え方と同じような考え方ですか。
  55. 田中義男

    田中(義)政府委員 そうです。定員法にいう定員になるわけであつて予算算定基準の定員ではありませんから、二十九年度以降について定員定額かどうかというようなことでそういう言葉を使いますと、また非常に一般に誤解が来ると思いますから、そうでないといつた方がよいと思います。
  56. 辻原弘市

    ○辻原委員 私はこの意味だけに限定いたしまして、そこから先の問題については触れませんが、この際いろいろ疑問が出て参りましたので、資料要求をいたしておきたいと思います。先ほど来井出委員が追究されております点は一番重要な点だと思います。またただいまの定員定額についていろいろお話がありました中からも、この現員現給という問題と、定員定額、それから定員法に基くようなやり方の定員といつたこの三者の関連の間に、実際の予算運命あるいは定員の配分というようなときにいろいろな問題が出て来ると思いますので、ここでひとつ資料を御提出願いたいと思います。  大体各府県においてはおそらく十二月末には現員現給をとられておると思います。すでに今は三月でありますから、その資料は私は可能だと思いますので、昨年十二月末における現員現給調べ、これをひとつ御提出願いたい。その際にあわせて、単に予算上の出納見込みであるとかいうものでなしに、実支給額についての現員現金の資料を提出していただきたい。同時に結核体職者の数がその中には何ぼあるか、それから女子教員のお産の代替教員としてどの程度を各都道府県において実施いたしておるか、それからその際における各県の学級定員の平均を出していただきたい。それからこれは暫定措置でありましようとも、また来年実施いたすにいたしましても、非常に関連のある問題でありますが、各県におきまして従来一応の建前として、地方の実態に即するようないわゆる定員の配分基準というものを設定いたしておるように聞いておりますので、どういうふうな定員の配分方法をしておるか、その各県の定員の配分方法、それからその際における実学級数はどの程度であるかということを出していただきたい。いま一つの重要な問題は、二部教授と複式学級はどういう状況になつておるか。それから定員と実員との差の問題で重要な欠員の状況はどうであるか。これは三月末を予想いたしても非常に困難であると思いますので、でき得べくんばさきに申しましたように、十二月の現員現給調べの際においてその点を明らかにしていただきたいと思います。以上お願いいたしておきます。
  57. 井出一太郎

    井出委員 定員定額で大分時間を食いましたが、ただいま辻原君の言われる通り文部省としては用語を厳密なる意味において統一していただかなければならぬと思います。由来文部省は国語審議会によつて、現代かなづかいを定め、当用漢字を制定した役所であります。定員定額がいわゆる定員定額、言葉の真の意味の定員とあつたのでは、これは審議に支障を来しますから、今の辻原君の発言については、ひとつ深甚なる御考慮を払つていただきたいと思います。  そこで私は問題を元にもどすのですが、先ほどこの法案が固まつて出て来るまでの経過大臣から伺いました。この法案の山の一つは定員定額だとさつき申し上げましたが、さらにもう一つの山は、教員身分を国家公務員にするという点にあろうかと思うのであります。法案が出て来る過程において、国家公務員の身分問題というものは一体当初から予定せられておつたものか、それとも義務教育の立場から給与費負担をするのだ、こういうことでずつと参つて、途中から身分問題が出て来たのかどうか、その点をひとつ承りたいと思います。
  58. 岡野清豪

    岡野国務大臣 実は私文部行政はしろうとでございまして、よくわかりませんでしたが、これまでにいろいろ聞きましたところによりますと、各市町村に教員がくぎづけされまして、そうして昇給とか、また昇格とかいうようなものが地方的に非常に差異があるということを伺いました。また転任なんかいたしますときに、他の地方団体に行くと恩給が継続されていないということも聞きましたし、それから二十四年以前から勤めておる教員は恩給法が続けて行かれておりますけれども、二十四年以降に入つた教員の方は恩給法が何かうまく行つていない、そんなことを聞きまして、義務教育に従事する教員というものは、国として非常に大切な聖職についておるお方ですから、身分の安定をしておかなければ、安心して大事な基本教育をするわけに行かぬ、こういうことを考えまして、国家公務員にした方がいいということが出て来たわけでありまして、国家公務員にするということは、義務教育というものを非常に尊重いたしまして、そうしてその義務教育に従事していられるお方は、自分自身の転任とかもしくは異動とかによつて、今までの恩給の持権を十分いただけないとかいうようなことではよくないから、やはり公立学校教員がもらつていると同じような待遇、身分を保持さしてあげたい、こういうことから国家公務員にするという考えを起したわけでございます。
  59. 井出一太郎

    井出委員 今おつしやることはわかるのですが、この法案における二つの柱と申しますか、給与を国で負担する、同時に身分を国家公務員にする、この二つの柱は、初めから一体同時並行的に問題として論議され、法案化されたものか、まず給与の問題が去年制定した国庫負担法の実施にあたつて論題になつて来て、それに付随して身分問題が起つて来たものかどうか、この点をもう一ぺん伺いたい。
  60. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私が昨年文部大臣になりまして、義務教育の状況をいろいろ事務当局から伺いましたときに、先ほど申し上げましたような、教育職員の身分が安定していないということを聞きましたものですから、それがまず第一番です。それからまた半額国庫負担は、昨年の夏以来私自身が半額よりは全額の方がいいということで、私の頭といたしましては昨年中にこの二つの柱ができておつたわけでございます。
  61. 井出一太郎

    井出委員 今伺いますと、その二つの柱は同時に建てられた、こう了解をいたします。  そこで、大臣は文部行政にはまことにしろうとだと、こう言われまするが、考えようによつては、しろうとなるがゆえにきわめて勇敢なる立場をとられてこういう案を出されたとも考えられるのであります。この法案は、現内閣が企図する占領行政の行き過ぎを是正する、こういう一連の考え方がおありのようでありまして、たとえば警察法でありますとか、あるいは独占禁止法の修正でありますとか、ストライキに対する考え方であるとか、いろいろ出て来て参つております。従来占領軍によつて日本の教育制度というものは非常に大きな変革を受けた、これは事実であります。あるいは日本の国情に適さないという批評も十分間かされる。この今議題になつている法律も、大きくは、占領行政是正の一環という建前からお取上げになつているかどうか、これはいかがですか。
  62. 岡野清豪

    岡野国務大臣 これは先ほど申し上げましたような意味からこの学校職員法を出したわけでございまするけれども、占領行政の行き過ぎという点におきましては、私は平衡交付金制度というものが検討を要するのではないか、これは自治庁におつたときから考えておつた次第であります。と申しますのは、二十五年平衡交付金制度施行されましてから、なるほど地方分権はしごくけつこう、同時に地方財政的に自由自在に活動ができるようにという意味において、国といたしましては、金を交付いたしますにつきましても、警察費を幾ら教育費を幾らとかいうように勘定をして地方団体に差上げるのでございますけれども、地方ではその通りには十分尊重されないで、その後たびたびいろいろな陳情が起きましたことく、平衡交付金で金をもらつてもやはり各地方公共団体の御都合によつて、これが目的通り使われていない。ことに教員給与というものは、教育というものが長い目で見なければ結果が出て来ないので、いや川が荒れたとか、いや家が倒れたということに使いがちなものであるから、そんなことがあつて教員給与というものは確保してもらいたい。それには平衡交付金教員給与を出してもらうよりは、やはりひもつきで、国家がこれだけ出したら地方公共団体はそれを給与に使わなければならぬというようにしてもらいたいという要望は、平衡交付金制度ができまして以来の要望でございます。そこで私は占領行政の行き過ぎということは—行き過ぎであるかどうかは御判断にまかせますけれども、一般の考え、同時に私の考えといたしましても、義務教育というものが非常に大きなものと思う以上は、その義務教育に従事してくださる教員には、そういうような平衡交付金では勘定されておつても、地方財政の都合上その方に十分にまわされないでほかへまわすというような制度は、現状としては行き過ぎではないか、こう考えておりまして、元へもどすという考えでございます。
  63. 井出一太郎

    井出委員 今私の質問に対してこれをまともに受取つていらつしやらない観があるのであります。つまり大臣平衡交付金の問題のみを取上げられましたが、これは教育という角度からよりも、いわばシャウプ税制の改変といいましようか、そういう中央地方を通じての税制の改革というような面がむしろ主題になつたことと思うのであります。あなたは文部大臣として、六・三制教育、これはあくまでも堅持されておやりになる方針でありましようか。
  64. 岡野清豪

    岡野国務大臣 六・三制の問題も大分いろいろ問題が起きまして、六・二制にしたらどうかというような意見も、私が文部大臣になる前からもございました。私はその当時から地方公共団体の方のお世話をしておつたものでありますから、あの財政の、国家も地方も非常に困難な時期に、六・三制を成立させるためには、中には市町村長の方で首をつつてなくなられたとか、辞職をしなければならなくなつたというような非常な犠牲を払つて、今日までとにかく押して来られて、大体完備の方向に進んで来られたというふうなことを聞きまして、そういうような過去の先輩が犠牲を払われて、そうしていい制度ができた以上は、これはどうしても堅持して行かなければならぬということを考えておりました。ただいま六・三制は絶対にくずさず、これをできるだけ補完して行きたい、こう考えております。
  65. 井出一太郎

    井出委員 自由党の内部において六・二制というようなものがあるやに聞いたことがございます。ただいまの大臣の御答弁で、六・三制をあくまでも堅持される、どうかこの信念はまげられないように強く望むものであります。先ほど来あなたの御答弁を伺つておりますと、だれかれからこういうことを聞いて、これは非常にけつこうだと思つたというような、いかにも文部大臣はしろうとでいらつしやるという御表現をお使いになつていらつしやるが、今の六・三制の問題などに対して、まただれかが六・三制の方がけつこうだと言うた場合に、あなたの信念がぐらついては困りますよ。そういう点はひとつ信念的であつてほしいと思います。  最近逆コースないしは復古調という言葉がはやりものになつております。せんだつて予算委員会において文部大臣は、たとえば北玲吉委員との論議の際に、日本人は非常に優秀な民族である、かつて四年間世界を相手にあの大戦争を継続し得たことは、日本人の優秀性を物語る、こういうふうなお言葉を述べられたと思う。私はただその片言隻句をとらえてどうこう申すのではありません。日本人の潜在意識の中には、私はこういう気持があることをあえて見のがすものではない。けれどもこれは一国文教の首長でありますあなたの立場において発言なされると、ゆゆしい問題と思うのであります。民族のプライドをわれわれはとりもどさければならぬ、こういう点においては私も大臣に同感なのですが、引例としてはどうもまずかつたと思う。こういうことが、岡野さんという人は—私はあなたは非常に進歩的だと思うのですが、にもかかわらずこういうことが何かあの方は逆コース、復古調の典型的な人ではないかと言われるおそれがあるので、本委会を通じてひとつその間のあなたの御心境を伺いたいと思うのであります。
  66. 岡野清豪

    岡野国務大臣 あれはなるほど仰せのごとく引例がまずかつたということを自認しております。と申しますことは、あの当時道義の頽廃ということが出まして、その道義の頽廃は、日本がさんざんたたきのめされたこの敗戦の結果であるということからきつかけになつたわけであります。そうすると、敗戦の結果道義が頽廃したとか何とかいう結論になつたように私は考えておりますが、そこでちようど手近かにすぐくつつくものは大東亜戦争であります。戦争に負けたということに関連しますので私の頭に浮んだわけでして、ああいう大東亜戦争のことを申しますと、ただいまのところではすぐ八紘一宇の優秀な神格化した天皇をいただいて、神様の子であるというようなことに関連することは私は気がつかなかつたのですが、しかし私の考えますことは、この前成田君の再質問に際して申し上げましたように、日本人が優秀でないということは私は—むろん最優秀の民族であるかどうかは疑問でございす。その当時でも日本人はまねをすることは上手だけれども、独創的なことはあまり得手じやないということも言つておりますが、ただ問題は、これとはやはり戦争のことになりますけれども、あそこで浮かびましたことは、ゼロ・ファイター、海軍にあつたあの機械はだれがつくつたか、日本人がつくつたのだ、それからまた軍艦大和とか何とかいうもの、これは世界に類のないりつぱな造艦技術を持つておりまして、そういうことでやはり日本人は決して他国に劣つていない、こういうことを実は申し上げたいつもりで言つたのでございますけれども、大東亜戦争において四年間も戦えたという結論だけにしまして、その内容をはつきり申し上げませんでしたから、いろいろ誤解が起きたと思います。しかし先般も申し上げましたように、私を何か超国家主義者とか何とかいうような頭をもつてごらんになれば、大東亜戦争を品にするからそういう頭を持つておる人間じやないかという誤解を受けますけれども、私の申し上げましたのは、もともと敗戦ということを原因とした問題に触れまして、そうして日本人が何か非常に虚脱状態になつておるとか、生気がないとか、元気がないとか、自信を失つておるとかいうことに触れたものですから、そう自信を失う必要はないのだ、われわれはこうだということは、湯川博士は世界中の人でなかなかもらえもしないところのノーベル賞をもらつたのは、やはり日本人のすぐれたところであるというような意味におきまして、私は決して日本人は劣つていないということをはつきり申し上げたわけでございますけれども、戦争というものにくつついて私は考えたわけではないので、ただその当時話の連絡が敗戦ということから、大東亜戦争の四年間に日本人のつくつたものがいかに優秀であつたかということを礼賛したわけであります。
  67. 井出一太郎

    井出委員 引例がまずかつたということを認められれば、これ以上はもう追究いたしません。私はやはり日本人は敗戦の底から立ち上るのには、謙虚な立場を率直にとつて、ドイッチユランド・ユーバーアルレスというような、これに類したようなことでもつて民族の意識を回復して行こうというような考え方は私のとらないところであります。少し問題の本論からずれても参りましたので、一応この程度で打切つて、午後に両案に対するもう少しつつ込んだ論議をいたしたいと存じます。
  68. 伊藤郷一

    伊藤委員長 これにて休憩し、午後は二時から再開いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後三時九分開議
  69. 伊藤郷一

    伊藤委員長 休憩前に、引続き、会議を開きます。  久しぶりで廣瀬文部政務次官も元気でお見えになつております。井出君の質疑を続行いたします。井出君。
  70. 井出一太郎

    井出委員 午前中に引続きまして、もう少しお伺いをしておきたいと思います。今回の法案がいろいろ論議をされておりますが、その中で一点、中央集権的なにおいが非常に強いではないか、こういう批判でございます。従来義務教育のあり方というものは、その地域社会と密接不可分な関係があるものでありまして、いわば地方自治の中における大きな部分を占めた仕事である、こういう考え方が強かつたように思うのであります。これは教育の特殊性といいましようか、それぞれの郷土に根ざしたその環境の中で幼いが時代過される。郷土と結びついた、たとえばハイマート・クンデというような言葉もございますように、そういつた教育のあり方が一番けつこうだという感じを持つておるものであります。たとえば萩の城下を訪れるならば、あの海と山に囲まれた環境から、そこに長州藩の英才がはぐくまれて出ておる。また鹿児島のあの桜島を前にした宏壮な風光の中から、薩摩の浚渫が生れ出たように、それぞれの郷土と密接不可分の関係において教育というものを考えたい。しかも若き魂をはぐくむ初等、中等教育というようなものは、私はぜひともそういうものでありたいと思うのであります。そこには郷士に根ざしたおのずからなる特徴というものが生れ出るはずでございまして、たとえば学校の教職員にいたしましても、そういつた地域社会に深く根ざしてそのあり方がきめられるべきだ、こう考えるのであります。今回の法案によりますれば、何か中央で一つの画一的な身分のきめ方にいたしまして、鋳型の中へはめ込んだようなものになりはしないかという懸念を深くいたすのでございます。これも私は教育における非常に根本的な問題だと思うのでありますが、その点についての文部大臣の御所見を伺いたいと思います。
  71. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。義務教育地方においてもむろん非常に重要なる行政でございますし、同時にまた国としても非常な責任を持つた事業だと思う。むろん私の考えといたしましては、人間であれば、地方市町村の住民であると同時に、やはり日本の国民である、こういうような相関関係でありまして、そこで教育の基本の方針とか、また教科内容とかいうものにつきましては、やはり中央である程度の指導をしなければならない。それでただいままででも、いろいろ指導要綱とかいうようなものを、監督官庁たる文部省で一応の案をつくる。同時にその手引とかなんとかいうものをつくりまして、そうして中央でこう考えておるということにしまして、地方では今仰せのごとく地方のローカル・カラーを生かすために、地方でまたそれに準拠して行くということが、義務教育理想のあり方だと思います。そこで、中央集権化というような仰せもございますが、国家公務員にいたしますことが、多分に中央集権化が強く感ぜられることと思いますけれども、御承知通りに、国家公務員にいたしますにつきましては、任免権を文部大臣が持つことに原則的にはなつておりますが、昨年十一月以来発足いたしましたところの市町村の教育委員会というものに、これを全面的に法律上の委任をいたしまして、そうして自由に動かして行くことになつているわけであります。その点におきまして、私はただいまお話のごとく、地方における教育の実際上の運営というものは、地方の公共団体並びに教育委員会にまかしておきまして、それからまた国家的の事業であるから国家がやはりある程度の指導もし、その助言もし、同時に根本の義務教育の方策を地方に流すというようなこともしまして、相関関係にあるものと思います。ただ問題は、任免権を文部大臣が持ちますにつきましては、何か違法なことをするとかいう場合には、文部大臣がそれに対して教育委員会に指導監督の権限を行うこともできますけれども、大体において地方の自治にまかしておる、こういうことになつておりますから、私は今回の措置としましては、地方分権を侵害したということにはならぬと思います。  なお、国家が今まで義務教育に対してどういうように国家的事業として仕事をしておつたか、また地方分権は十分尊重され、同時に昨年できましたところの市町村教育委員会が、地方分権的に、地方の実情にあつたような教育運営をするということにつきましては、政府委員から詳しく申し上げさせたいと思います。
  72. 田中義男

    田中(義)政府委員 御承知のように、義務教育は大体その学校設置し、経営をいたして行きます場合に、管理いたしますものが同時に費用負担をするということが原則にはなつております。しかしその費用については、すでに国がそれぞれ特別な方途をもつて負担いたしておりますことも御承知通りでございます。なお今回の改正によりまして、その管理権のうち特に人事権につきましても、一部国がこれを国家公務員として、国の権限の中に取入れる形にはいたしましたけれども、ただいまお話のように、これは全部原則としてそのまま地方に委任をして参ります。従つて実際には地方教育委員会が民意を反映いたしまして、その下に地方の実情に即しました学校の経営運営をいたすことになるのでございまして、この点については、今回の措置によつてごうも侵害をすることにはならぬのでございます。従つて地方教育委員会を通じて、国と地方とがそれぞれの立場を守りながら、地方自治を侵すこともなく、同時に国家的教育としての大綱をも維持して行く、ことに府県間の問題になりますと、どうしても国がその中に入りませんと、その水準の維持向上ははかり得ないのでございまして、さような意味におきまして、先ほども申し上げられましたように、学校教育法なり、あるいは教育内容になりますと、学習指導要領等の大本も国が示し、それに基いてそれぞれ地方の実情に即するように、その運営は地方教育委員会においてやつていただく、こういうことになるのでございまして、一般に危惧されておりますように、今回の措置によつてただちにこれが中央集権となり、地方自治の侵害になるというふうなことはないと考えますし、なお運営の問題につきましても、当局としては十分その一ような点について遺憾のないように実施して行く考えでございます。
  73. 井出一太郎

    井出委員 私の申したいのは、ただいま御答弁の中にあつたように、中央である程度の基準を策定して、これを地方に流してやる、こういうことのためには、この法案に含まれておるほどに直接的でなくても、従来やつてつた間接的な姿で十分事が足りるのではないか。どうも国家権力というものが、地方自治の大きな部分を占めておる教育行政の中に、必要以上に介入して行くという感じがいたしてならぬのであります。今教育委員会お話が出ましたけれども、教育委員会法の第一においては、「公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うために、」云々、こういう表現が第一条の目的の中に記されておるのであります。このことと、今回の法案の中にありまする「義務教育に関する国の責任を明らかにするため、」という言葉と、私は直接背馳しておるとは言いませんけれども、教育委員会法ができましたときの根本精神というものは、やはり地方の実情に即して、それぞれ民意に応じた自主的な教育のあり方を強調した点から発足しておると思う。ところが、この法律によれば、特に第五条、六条のごときは、文部大臣教育委員会に関する指揮監督権が非常に強く出ておる。その一部を教育委員会に委任をする、こうは申しておりますものの、どうも文部大臣の権力的なにおいが、この法案には非常に強いのではないかと私は思うのです。ここのところが最近政府の方針がまるで豹変をした。教育委員会というものを各市町村にまでおろしてこしらえて、そうして民意に即した、地方の実情に基いた教育をやらせよう、こう一方でしておきながら、それから半年もたたずに、こういうような強い中央集権的なものを出すのはけしからぬ、こういう批評が多いようでございます。これに対するお考え文部大臣から承りたい。
  74. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。この教育委員会法の第一条の解釈でございますが、私は先ほども申し上げましたように、しろうとでございまして、はなはだ恐縮でございますけれども、しかし私はこの法律の第一条に、「不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきであるという自覚のもとに、」ということが書いてございまして、むろん地方でローカル・カラーを生かして各地方々々に合つた教育をすることが、教育委員会の本旨でございますので、そこで忘れてならぬことは、やはり国民全体に対して責任を負い、それをかわつてやるのが文部省だと心得ているわけであります。その文部省でかわつてやるということは、文部省設置法とか、いろいろのもので出薫りまして、文部省国民全体に対してやらなければならぬというようなことは、あちらこちらに方々に出ております。その意味におきまして、中央と地方とが相共同し、分担し合つて運営して行くものと私は解釈いたしております。
  75. 井出一太郎

    井出委員 今大臣の言われる教育委員会法第一条の、「教育が不当な支配に服することなく、」こういう文句を引合いに出されましたが、この「不当な支配」ということの内容は、一体どういうふうに御理解になつていらつしやいますか、承りたい。
  76. 岡野清豪

    岡野国務大臣 この教育が「不当な支配に服することなく、」ということは、やはり学問の自由ということを認めたことと思います。でございますから、問題は、一党一派に偏するとか、もしくはほかの勢力に服するとかいうことなく、全般的に、常識的に考えますれば、不偏不党—教育の基本法に書いてありますように、中立性を尊重してやる、こう私は解釈しております。私のおもに申し上げましたことは、「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきであるという自覚のもとに、」ということでやはりやらなければならぬことと考えております。
  77. 井出一太郎

    井出委員 その次に、「国民全体に対し直接の責任を負つて」云々とございますが、国家が義務教育における最終責任者という意味で、そこに手を差延べることは、私はあえて否定しないのです。けれども、現在の国家権力というものは、日本の政治の組立てからいたしまして、政党政治である。当然一つの政党のカラーが時の政治権力の中に強くにじみ出て来ることは否定できないと思う。今大臣の言われる一党一派に偏することなくというふうなお話、これは本来なら、文部行政というものは、その中立性を維持する上からいたしましても、政党人ならざる大臣の方があるいはいいじやないか。私は天野さんと岡野さんを引合いに出すつもりではありませんけれども、一般的に言うて、大臣自身も教育の中立性と言われ、一党一派に偏することなくとおつしやつておられるのでございます。そういう点からいたしまして、この「不当な支配に」云々ということの中には、時の政治権力—これが当であるか不当であるかということは、しばらく問わないとしても、最近の文部行整をわれわれが見まするときに、朝令暮改といいますか、非常に論理が一貫しない、筋が通らないという感じを強く持つのであります。こういう筋の通らない、時の権力にまかせるということは、非常に危険ではないかという懸念を持ちまするがゆえに、あえて伺うのでありまして、この不当なる支配というものの中には、そういつた時の政治権力が含まれておると、あなたはお考えになりますか、これを承りたい。
  78. 岡野清豪

    岡野国務大臣 この点におきましては、お説のように、私のような党人が大臣になるよりは、学者がなつた方が公平だろうと考えます。ただ問題は、やはり学問の自由とか、内容とかいうものについてはそうでございましようけれども、教育行政というものが一つの政治でございますから、政党内閣であります以上は、政が党人文部大臣なつてもあまりおかしくないと考えます。そこで私の考えといたしましては、そういうような御非難、御批判が出やせぬかということをいつも心配いたしまして、みずから常に反省しながらやつておる次第でございます。実はもう御承知でもございましようが、昨年教育委員会を市町村におろすという議論がありましたときに、私は党人でありながら、自分の所信としましては、今まで市町村に置くのには、市町村の規模とか、地方制度の改革とかいうものとあわせて再検討をして実施するようにしたらどうかというような所信を持つておりますものですから、党の決定にかかわらず、敢然として文部大臣としてこれに反対をしておつたような次第でございます。ただ非常に残念なことは、もう解散になりまして、それを修正する時期がございませんでしたので、法律の規定通り十一月一日から実行することに移つたのであります。しかしながら実施いたしました以上は、しかもその法律が二、三年前にすでに発布されて、施行期日が二十七年の十一月一日ということになつておつて、法文通り実行したのでございますから、これはやはり天下の御意思に従つてできたものと、置いた以上は、私は考えたいのでございます。そこでこの教育委員会というものを地方に置きました以上は、地方分権、ことに教育の独立性というものが十分地方的に確保されたということになるのですから、今回の職員法を出しましても、これが中央集権化にもならないだろう、こういうような安心感を持ちまして、今度の職員法を出したわけでございます。
  79. 井出一太郎

    井出委員 私どもは、地方教育委員会というものに対して、大臣の御見解ほどに決して安心をしていないのであります。事実地方の現状を見ますると、教育委員会というものは、その市町村においてやつかいもの扱いにされておるのが実際でございます。その市町村当局と予算財政の問題において対立をしている例もたくさんございます。その市町村議会と教育委員会とが相対立しておる事例もございます。四月一日からいよいよ本格的にこれが発足をしなければならぬのでございまして、それがためには、教育長というふうなものも正式に設置をしなければならぬ。ところが、教育長になり得る資格を持つた人材を得られないという点もございましようけれども、それを置くか置かぬかという点においてしり込みをしておるというのが、実は市町村の現状でございます。政府がいやしくも一たび決したこの市町村教育委員会において、教育長を設置し得るだけの十分なる予算の配賦をしておれば別問題でありますけれども、本年の予算では、地方負担にしわ寄せせられておる分も非常に多いのであります。従つて大臣が楽観せられておるがごとくに、この四月一日からはたして軌道に乗つて文部大臣がもろくの権限を移管した、その重大任務に当り得るほどの態勢が整備されておらない、こう私どもは見るのであります。これは大臣と大分違逕庭がありますけれども、これをどうお考えになられましようか。
  80. 岡野清豪

    岡野国務大臣 教育委員会も発足早早でございまして、完備いたしておりませんことはお説の通りであります。同時に、これをなるべく早く完備したいと思いまして、今研修なんかやりまして、教育長の養成をしております。  それから予算の点につきましても、二十八年度で実行し得るだけの金額二十五億ほどを平衡交付金の中に組み込んでございまして、それでやつて行くつもりでございます。これは今不完備じやないかと仰せになりますれば、私もその通り考えております。しかし何を申しましても、制度が切りかわつて参りますときには、初めから十分完備したものとするというわけには参りませんから、置かれましたら、その置かれたものを十分育成して行きまして、なるべく早く完全なものにしたいという考えをもつて育成をしたいと考えております。
  81. 井出一太郎

    井出委員 二十五億の予算を配賦されたと言われますが、私どもは教育委員会ほんとうに運営せられるためには、五、六十億の金がいるのではないか、こう考えております。従つて地方に対する非常に大きな負担の増加である、こう思うのでありますが、これは文部当局の方でどうお考えになるか、あとで承ります。  先ほど大臣の言われるのには、昨年、一年延期という線がくずれて、自由党の諸君の強行突破によつて地方教育委員会というものが市町村に設置をされるに至りましたが、その際大臣は、個人としては反対の御意見を有しておられたようでございます。今私ども野党は、やはり昨年秋の見解を今日に至るまで堅持しておりまして、野党三派共同提案のもとに、教育委員会法の修正案を出しておる。この内容は、任意設置ということが大体の骨組みでございます。大臣の従来の御見解からいたしますならば、むしろこの際これに御賛成を得たいのでありますが、いかがお考えに相なるか、これを伺いたい。同時に、すでに一たび法律として天下の公器に従つて発布されておる。その上は、どうしてもこれはやつて行かなければならぬものだというお考えのようでありますが、悪法といえどもまた法で証ある、こういう考え方も、なるほどあるでございましよう。往昔ソクラテスはそう言いながら毒杯をあおつてみず品からの命を断つたこともございます。そういう観点から、実は悪法といえどもまた法であるという考え方を今日の世代においてそのまま信奉していいのか。むしろあやまつたならばこれを改むるにはばかることなかれ、一刻も早くこういうものは改廃した方がいいと思うのでありますが、これらの諸点についての大臣の御見解を伺いたい。
  82. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私の考えといたしましては、この教育委員会というものは、地方制度の規模とか、あり方というものと非常に関係が深いのでございます。それで自治庁の方の考えといたしましては、先般地方制度調査会にいろいろの案を具して諮問しておられるようでございます。そこで教育委員会も、その地方制度のいかんによつてはあるいは変改をしなければならないということもある。もう一つは、われわれが一年延期してこれを十分再検討して—こう思いましたことは、これは実を申しますれば、空理空論といわれてもしかたがない、こういうこともありはせぬか、こういう不便がありはせぬかというようなことを考えて、もう一度再検討しようと考えているのでありますが、しかし一旦これが実行に移されました以上は、今度は実績が日に日に月に月に出て来るはずでありますから、むしろ置かなければともかくも、置いた以上は、その実績をある期間見まして、そうして現行法においてどういうふうに改正すべきものか、是正すべきものかということをつかんで行きたいと存じます。同時にそのつかんで行きますにつきましては、並行的に、地方制度がいかに改正せられるかという方向もやはりにらみ合せて考えなければならぬと思いますから、地方制度の改正とか何とかいうことをまるで抜きにし、同時に現在の市町村の税制、財政、またその地域の規模なんかのあり方も現状のまま前提のもとにすぐ変更するということには、遺憾ながら私は御賛成申し上げかねます。
  83. 井出一太郎

    井出委員 昨今の政治情勢はきわめて険悪であります。台風は一応昨晩一過いたしましたが、まだあとからあとからと不連続線は続くでありましよう。そういたしますと、野党提出の教育委員会法修正案があるいは通るかもしれない、そういう可能性も大分出て参りました。そういう際におきましては、この二法案というものは骨抜きになる。もつて大臣はいかにお考えになりますか。
  84. 岡野清豪

    岡野国務大臣 私は新憲法における議会主義でございまして、政府として提案をいたしましたものにつきましては、この案を具して皆様方の御審議を願うところまでは全力をあげてやつて来ております。しかしながら、国会はやはり最高機関でございますから、国会において御審議の上、政府の案に対してこれはいかぬじやないか、直さなければならぬということでおきめになれば、政府としては執行機関でございますからそれに服します。それから、政治情勢のいかんによつてはいかがなものか—これもやはり国会の問題でございまして、私政府の当局者といたしましては、できるだけそういうことのないようは希望いたしますけれども、そういうことになれば、これもやはり国会の御意思を尊重するという意味で、いたし方ないものと考えております。
  85. 井出一太郎

    井出委員 あなたの上司でありまする吉田総理大臣は、由来国会軽視をもつてつております。岡野文部大臣は幸いにして国会を大いに尊重される。これは非常にけつこうでございますから、これ以上は追究いたしません。  そこで一体学校教職員をなぜ国家公務員にしなければならないのか。これは一ぺん予算委員会でも論議せられた問題であります。ここはひとつ文部委員会としてむし返すようではありまするが、一通りその理由を伺いたいと思います。
  86. 岡野清豪

    岡野国務大臣 国家公務員にするということは、結局義務教育というものは、日本の一番大事な教育のうちでも一番大事なものである、こう私は考えます。それにつきましてはやはり安心して教職員が義務教育に没頭していただきたい、こういうのが私の念願であります。それにつきましては、やはり都市と非常に財政のゆたかでない貧弱県との間に基本給などの差がありますことはおもしろくないことである。それからまた転任とかなんとか、ただいまのところは、実質上は大体府県条例によつて、県内における移動というものが調整できるようになつております。また府県条例がないところでございましても、実際としてはそういうことになつておりますけれども、もし国家公務員にして身分を明確にすれば、日本全国を移動するようなこともないでしようけれども、隣の県へ行くとか隣の府へ行くとかいうことも自由自在になりますし、またその動くときに恩給の継続とかなんとかいうこともできましようし、また恩給にしましても、国家公務員としてこれを日本全国貧富の差なく均一に与えることもできましようし、国家公務員とすることにつきましては、義務教育に従事されるお方が、少くとも地方差というものは、これは地域給とか何とかいうことで違いましようけれども、基本給においては国立学校の職員と同じようなレベルまで押し上げて行くということで、安心して身分を託することができ、また専念し得る、こういうことから国家公務員にしたわけでございまして、ほかに他意はないわけであります。
  87. 井出一太郎

    井出委員 ところが身分の規制を受けまする当の教職員をして言わしめれば、これは何も特にラジカルな意識を持つておる人のみを言うのではありません。私の接する範囲の多くの教職員諸君は、あえて国家公務員でなくてもいいのだ、地方公務員けつこうである、その地域社会に即した立場というものにかえつて誇りを感じておる。こういう人の方がむしろ私は多いようにも思うのであります。当面の相手がきらうことをあえてわざわざ無理をしてまで国家公務員にする必要はないと思うのですが、これはどうお考えでしようか。
  88. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お耳に入りますいろいろの声は、またいろいろ種々雑多でございましよう。しかしながらそれほど関心を持たなければ、今度は地方公務員にぜひ残つておらなければならぬという強い意欲もないのじやないかと私は思います。おそらく今まで非常な陳情とか請願とかいうものがありましたのは、結局待遇というものが安定して、身分の保障がしてもらえるということが、一番大事な陳情なり請願の趣旨であつた。その身分を安定するについては、先ほども申し上げましたように、国家公務員にして、国立学校と同じの待遇で、全国に基本給が一律に支給されるということの方がいい、こう考えてやつたわけであります。
  89. 井出一太郎

    井出委員 どうもその点が、国家公務員にしてからが、たとえば基本給の問題、恩給の問題、転任の便等、数々従来よりは有利であろうということを先ほどは指摘されましたが、これは程度の問題でありまして、現在の地方公務員の身分を持つた教職員といえども、それほど身分が不安定であるとは私は思わないのであります。文部当局は、これはどなたか知なぬけれども、地方公務員と国家公務員とを比べて、国家公務員の方が何かよりプライドを持ち得るような、高い地位にあるやのごとき説明をされておるというふうなことも聞いております。一体そういう見解を持つていらつしやるのであるか、それを承りたい。
  90. 岡野清豪

    岡野国務大臣 国家公務員になつたら、地方公務員が誇りを感ずるというようなことがどつかで話に出たということでございますが、それは私はこう解釈しております。大体人間というものは自由を欲するものでございまして、民主主義の自由が一番大事なものでございます。地方におりまして地方に跼蹐して、昔の時代に岡山藩におつたら鳥取藩に行くことができないというような、非常に生活の自由を束縛されたということよりは、明治維新以後のように、全国に行つてもどの藩でござるというようなことを言わなくてもよい。日本国民である以上はあつちこつち移動することができる。そこで地方公務員でございますと、地方の分権が一万何百にわかれておりますので、何か動きがとれない圧迫を感ずるとか、一生そこで住まわなければならぬというような—やめてしまえばそうでもないでしようが、しかし国家公務員になりますれば、その資格においてやはり全国自由にどこへでも行けるという感じが私は出て来るだろうと思います。そうすれば自由を欲するという  一つの—それが事実行われるかどうかわかりませんけれども、人間の本性としては、やはり私は自由に全国を歩ける人間だという感じを持つのではないかと思います。
  91. 井出一太郎

    井出委員 全国を転勤するにあたつての自由、こういう自由も確かに一つの自由でございましよう。しかし私は人間の自由というものはもつとスケールの大きいあのであつて、一種の全人—全人教育などと申しますが、そういう意味において自由人即全人、こういうふうに私は考えたいのであります。まして教職員というものは子供を預かる。われわれの大切な子弟を預かる。次の日本の国を背負つて立つ大切な若い世代を教育するわけであります。その教育者がやはり自由人であるということ、全人であるということを私は要求をしたいのであります。ことさらにこれを国家公務員というようなことにいたしまして、その一番大きな当の本人に対する拘束は、政治的な自由というか、政治活動が禁止せられるということはやはり非常に大きな問題だと思うのでございます。われわれの子弟を預ける先生は、やつぱり、ほんとうに自由な空気を呼吸し得るように、何か政治活動が禁止されていて、人間の資格の一部が損せられておるような、かたわの人間というような立場に教員を追い込むというと、これこそ最も大きな自由の侵害であつて大臣の今考える、全国を無料切符で歩けるような、そういう自由よりは問題が大きいと思うのでありますが、これはどうお考えでありますか。
  92. 岡野清豪

    岡野国務大臣 政治活動の問題がいつもこれに対して触れますけれども、しかし、教育基本法にもありますように、教員というものは中立性を保たなければならぬ、一党一派、もしくは政治にあまり巻き込まれて、そして教育に専念ができないということはよくないと思います。でございますから、義務教育に従事される方は、むろん活動してもよろしいけれども、やはり法の許す範囲内においてやるべきであつて、そして教員の中立性を侵される、巻き込まれるというようなことからは、救つて差上げなければならぬ、こう考えております。
  93. 井出一太郎

    井出委員 今、救つて差上げるという、えらく大きく大臣は構えられましたが、片一方からいうとこれは困る。(笑声)私はありていに申しまして、日本教職員組合の活動というふうなものが、確かに行き過ぎであるというふうな点をも認めないではありません、これは日教組自体にももちろん反省を促さなければなりませんけれども、いやしくも教育者である。普通の人々よりも知識の水準の高い人々である。私はこういう人々の良識に訴えて、一党一派に偏した政治活動というふうなものが、反省の結果是正される。こういうことを強く望んでおるものなのであります。少し自分の田に水を引くようでありますけれども、私長野県の出身でありますが、長野県は、信濃教育会というものの七十年の伝統を持つております。全国で月給百円の小学校長を置いたのは長野県が最初であつたのであります。そういうふうにともかく教育という点では、長野県人は一つの誇りをもつておるかのようでありますが、私は長野県の教員の活動を見ておりますときに、非常に冷静であり、非常に合理的である、こういうふうに思うのであります。これは日教組の諸君などから見ると、長野県というのはむしろ非常に遅れておる。こういうふうな見方をされるかもしれぬが、私は今の日教組のああいつた活動を一ぺん濾過して、その次に到達するものが長野県のような形でなかろうかとさえ思うのであります。それだから、これをいたずらに国家公務員にすることによつて押えるということは、かえつて角をためて牛を殺すゆえんになりはしないか、やはり良識ある教育者を信頼して、その人々の自由権を絶対的なものとして保持してやる、このことが教育効果の上に好影響を及すのではないか、こう考えるものでございますが、これはいかがでしよう。
  94. 岡野清豪

    岡野国務大臣 お答え申し上げます。  私も長野県の教員組合というものは、非常にいいということを聞いております。もしああいうふうになつて行くならば、われわれは心配しないのでございます。しかしながら長野県もそうでございますが、各地方の末端の教員に行きますれば、ほんとうに純朴なんでございまして、おそらくわれわれが東京で見聞きするようなことはないのでありますが、ただ問題は、話が飛びますけれども、日教組の今の幹部を何か濾過して、そして良識を持つようにして行くということは、私はなかなかただいまの情勢ではむずかしいしいやないかと思います。これも今の制度でございますからいたし方がありませんが、私自身といたしましては日教組の幹部が東京で活動をしておられるというようなことは、私としては教職員として少し行き過ぎじやないか、こう考えております。
  95. 井出一太郎

    井出委員 こういう点については、私よりもさらに整然たる議論を展開する議員諸公があとに控えておりますので、その諸君に譲るといたしまして、次に伺いたいのは、これは本会議で笹森議員が指摘をせられていた点でありますが、現在の国立学校の教職員は、まさしく国家公務員である。今回市町村のいわゆる義務教育職員がこれまた国家公務員になる。この場合にその中間にあります高等学校教育職員は、相かわらず地方公務員として残らなければならない、これはおそらく文部大臣は、あえて高等学校を軽視するわけではない、やがてその方まで及ぼすものとして、とりあえず義務教育を尊重するのだからという御答弁つたと記憶をいたします。しかしながらすでに現実の問題として、そこには地方公務員として残されます以上、先ほど大臣があげられた数々の恩典といいますか、国家公務員になつた方が都合がいいんだというような点には、高等学校教職員は均霑されないことになる。あるいは人事の交流というような問題などを考えましても、六・三制の教育制度は、教員の資格においては、小学校、中学校、高等学校にあえて差があるわけでないはずであります。そういう場合の人事交流等にも、非常な不便を来すのではなかろうかと思うのでありますが、こういう点に関連いたしまして、私は質問をなるべく簡単にする意味において、この高等学校教員に陥没地帯ができるということに対しては、これ以上弁を用いたくありませんので、今のしぼつた質問を申し上げましたから、御答弁の方は、ひとつその問題に関連して、すつかり解明が行くように御答弁を願いたいと思います。
  96. 岡野清豪

    岡野国務大臣 今回義務教育の職員に関して、こういうような処置をとりましたのは、義務教育は国の教育の基本であるということからまず手をつけ始めたことであります。第一に義務教育の職員に対して、早く身分の安定をして行きたい、こういうことから考えついたことであります。それから高等学校は今おつしやつた通りに、義務教育と同じように各地方にあることは御存じの通りであります。これはのけものにしたということですが、のけものにしたのではなくて、ほかの観点からまたわれわれは手をつけなければならない。また六・三・三・四の学制に対していろいろ研究し、再検討しなければならぬこともございますが、そういうようなことはいずれあとにしまして、最も重大であり、最も必要である義務教育に対する措置だけを今回したわけであります。今回の職員法におきましては、高等学校の人の共済組合とかなんとかいうものもやはり均霑をされるようにしてございます。これはついでと申しましてははなはだ失礼でございますが、できるだけその方にも及ぼしたいというようなことでやつておるわけであります。六・三・三・四という大きな分野のどこから手をつけたらいいかといいますと、やはり一番大事な根幹からやつて行きたいと考えて、義務教育職員法をまず取上げたわけでございます。
  97. 井出一太郎

    井出委員 この問題は論議し出しますと、なおたくさん問題を含んでおると思います。きようは私のみ独演をしておることも、いかがかと思いますからあと一、二点で切り上げますが、今回の予算によりますると、九百一億を給与費にお出しになつておる。十九億を教材費の一部に充てておられるようであります。この教材費内容はどういうふうになつておりますか一、これはひとつ詳しくお聞きしたいと思います。
  98. 田中義男

    田中(義)政府委員 教材費配分内容についてお答えを申し上げます。総計において十九億円となつておるのでございますが、それを中学校、小学校、盲学校、聾学校にそれぞれ配分をいたします。そのうち小学校について申し上げますと、一番小さい学校でも、少くとも、一校当り単価を二万円にいたしまして、順次学校が大きくなりますにつれて数段階を設けまして、最高を十一万円、かように考えました。そういたしますと、小学校については、所要額が十一億六千二百万となるのでございます。なお学校数等さらにこまかくこれはプリントして差上げたいと思います。それから中学校について申し上げますと、最低を二万五千円ととりまして、ひとしくこれを数段階にわけまして、最高を十三万円と押えます。それで総計が、中学校については七億二千五百万、こういう数字になります。それから盲学校につきましては、最低五万円といたしまして、三段階にわけて最高を十五万円、こういうふうにいたしました。これは学校数が非常に少うございますので、総計で四百万円、それから聾学校につきましては最低を四万円といたしまして、これに四段階を付しまして、最高を十七万円、聾学校総計が九百万円、総計が十九億円、こう計算をいたしております。
  99. 井出一太郎

    井出委員 そういたしますと、これは各学校へ何万円というぐあいに大づかみにやることであつて、その使用向けはどういうふうなものに限定せよというようなことはございませんか。
  100. 田中義男

    田中(義)政府委員 これは教材費として配分をいたしますので、教材費に使つてもらうわけでございます。
  101. 井出一太郎

    井出委員 どうもこの点が少しくずさんな、申訳的な感じがいたします。もしかりに義務教育学校で使うところの児童生徒の教科用図書を全部国でまかなうとしたならば一体いかほど必要でございますか、これを伺いたい。
  102. 田中義男

    田中(義)政府委員 数字はひとつあとで印刷したものを差上げたいと思います。
  103. 井出一太郎

    井出委員 もちろん詳細な数字はあとでよろしゆうございますがいやしくも、今度のこの義務教育費国庫負担法とはあえて言いませんが—この職員法による給与と教材の一部が今回の法案の主たる内容でございます。従いまして、その教材費十九億というのは、今伺いますと、別に合理的な根拠も何もない、腰だめで出て来た数字だと認定せざるを得ませんが、それにしても教材費というものがこれだけ大きく取上げられている際に、教科用図書をもし全額国家で持つたならばいかほどになるかくらいの計数が—詳細を私は要求するのではない、大ざつぱの見積りが文部当局にないということは、ずさんきわまると言いたいのであります。
  104. 田中義男

    田中(義)政府委員 教科書は、実は教材費とは全然別に考えておるのでございまして、従つて教材費の中には、いわゆる無償配付の教科書代は入つておりません。従つてここにはただちにその数字を合せて考えておりませんでしたが、しかし教科書を全部無償にするなら総額幾らになるかという数字はございますから、ただちに取寄せましてお答えをいたします。
  105. 井出一太郎

    井出委員 それでは小学校、中学校にわけまして、場合によつたら各学年別も御提出願いたいと思います。これくらいの数字が今ここで即答できなければ、文部当局の黒星であるとあえて私は指摘いたします。一体この重大なる法案をお出しになるにあたりまして、地方制度調査会の審議におかけになりましたかどうか。さらにまた中央教育審議会でありますか、この方に相談をされたかどうか、これを伺いたい。
  106. 岡野清豪

    岡野国務大臣 地方制度審議会には、本多国務大臣から一応のお話があつたことと思いますが、何さま半額国庫負担法案を今回の法案に直しますには、予算等の関係が非常に密接でございまして、まず予算をとらなければこれを確定し得ないということになりまして、予算閣議最中に大綱をまとめましたものですから、そのひまがなかつたわけであります。それから中央教育審議会の方は、いろいろ遅れまして、やつと一月十一日に発足したようなことでありまして、即刻その会議に諮問をしてございます。けれども、その答申を待つことができませんでした。なお中央教育審議会では検討中でございます。
  107. 井出一太郎

    井出委員 財政的な理由等もありまして、地方制度調査会にはおかけにならなかつた、中央教育審議会では目下審議中である。これでは一体何のためにこれらの機関をつくつたのかと私は言いたい。吉田内閣は従来とも何々調査会、こういうものをつくることはまことに得意でおやりになつたけれども、その結論と申しましようか、勧告と申しましようか、そういつたものを尊重しないことまたこの内閣よりはなはだしきはございません。そういうわけで、今の二つの調査会、審議会にこの大問題をかけないということは—こういうものをかけるための委員会、調査会だと私は思うのです。そういう点もまことに準備不足でございまして、この法案はその意味からいつてもずさんきわまる、未完成交響楽にもなつておらぬ、そういうふうな感がするのでございます。まだ大分ございますが、私はきようは三番隻ということにいたしまして、委員長におかれてはこの程度をもつて打切られたいと思います。
  108. 松本七郎

    ○松本(七)委員 委員長ちよつと議事進行について伺つておきたい。委員会は、本会議が重要な審議のときはなるべくやらないで、本会議に入るという申合せになつておつたのですが、本会議の間は絶対にやらないということをわれわれは固執するわけではないのですが、今日は与党の議員の本会議の入場が非常に悪いのです。野党は大部分入つてつたにかかわらず、自由党は二十名ぐらいばらばらとおるにすぎない。従つて定足数が途中から問題になつて来て、私も文部委員会をやつておるからという委員長からのお達しでしたけれども、今本会議でこういう状態なんだから、委員会をしばらく待つてもらいたいという御返事をしたはずです。それから議長からも全部委員会はやめて入場してもらいたいという正式な通達が来たはずです。委員長はこれをどういうふうに取扱われたか。
  109. 伊藤郷一

    伊藤委員長 義務教育学校職員法審議の日程に非常に制限がありますので、お説はよくわかりますが、私としては午前午後を通じまして、井出委員一人の質問ではとうてい審議の見通しがつきませんので、松本委員の質疑をまた次会にもいたすことにして、とにかく本日はしていただきたい、かように要望する次第でございます。
  110. 松本七郎

    ○松本(七)委員 いや、私は少しはいたしますけれども、先ほど議長からそういうあれがあつたにかかわらず、そのまま継続してやられておる。そこに何らの処置もなさらなかつたと思いますが、どういう処置をなされたか。議長からは特に委員会はやめて本会議に入つてもらいたいという達しがあつたはずです。
  111. 伊藤郷一

    伊藤委員長 文部委員会を尊重しておるわけであります。
  112. 松本七郎

    ○松本(七)委員 非常に重要なんで、急がれて尊重されるということはわかります。けれどもいやしくもわれわれは本会議場に入つておるわけなんです。議長はこれじやいかぬ、委員会はやめて入れという達しを各委員会に出したのですから、われわれはそれを知つておるから、委員会が開かれておるのを知つておるにかかわらず、本会議場にとどまざるを得ないのです。それを特にこの委員会は継続してやらなければならぬ事情があるならば、それを委員長みずからわれわれに徹底するように、実は議長からこういう話があつたけれども、委員会はどうしてもやりたいから、ひとつ来てくれ、こういう措置をとられなければ、われわれは、議長がそういう措置をとつているのですから、本会議を離れるわけにいかぬ。それを今後十分注意していただきたい。
  113. 辻原弘市

    ○辻原委員 実はそのことを私も発議して、本会議がある場合には大体原則としてやらぬ、こういう話もこの間ありましたが、特に委員長の方から、審議日程の問題もあるので、本日はぜひ予定通り質問に入る。定足数の問題もありましたが、一応われわれはそれに参加したわけですから、その場合に、おそらく私は、あるいは議長の了解を求めて委員会は開かれたものと考えたので、実は私どもは本会議には顔を出さなかつた。そういうことになれば議長の命に服しなかつたということになるので、それを委員長が文部委員を代表して議長に了解を求められておつたと、かように考えるのですが、そういうことであるならば、実は詳しいことはわかりませんけれども、本会議がある場合には委員会は開会しないことになつておるのじやないか。しかし慣例としてはやつておるだろうと思いますが、おそらくその場合には委員長が議長の了解を求めるか、議長の許可によつてこの委員会を開くというのが、委員会の建前じやないかと思うのですが、そういう点の手続をやつて行かぬと、これは後日それぞれ本会議委員会との関係で問題になりますから、本日のところはそんなことでいろいろなことを言つても始まりませんけれども、もしそういう手続等に怠りがあつて、後ぼどそれぞれ各派に帰りまして問題になつた場合に、非常にわれわれその点で困る場合があり得ますから、あまりそういう点では無理をされないで、十分ひとつその点他の委員会との振合いも考えられて、文部委員会だけ先にとつとことこ顔を出さないように十分……。
  114. 伊藤郷一

    伊藤委員長 本日は私が責任を負います。今後は衆議院議長とよくはかつていたします。
  115. 田中久雄

    田中(久)委員 ちよつと議事進行に関して、すでに時間も過ぎましたし、しかも一方ではあの通りブザーが鳴つております。私どもは無理にこの議事を引延ばす気は微塵もありませんので、おちついてよく審議をするのがよろしいので、松本委員の質問ちよつとくらいで翌日にまわすということはどうかと思いますから、次会に譲つて、できれば三十分でも本会議に入る方がいいと思います。五時までなら私はまだ関連質問があるのだが、私は引つ込めて、本会議に入つた方がいい。そうしましよう。
  116. 伊藤郷一

    伊藤委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十五分散会