運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-26 第15回国会 衆議院 文部委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十六日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 伊藤 郷一君    理事 坂田 道太君 理事 田中 久雄君    理事 松本 七郎君 理事 坂本 泰良君       江崎 真澄君    永田 亮一君       長野 長廣君    井出一太郎君       笹森 順造君    菊地養之輔君       細野三千雄君    辻原 弘市君       山崎 始男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君  委員外出席者         文部事務次官  剱木 亨弘君         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 二月二十日  委員周東英雄辞任につき、その補欠として山  本正一君が議長の指名委員に選任された。 同月二十五日  委員菅野和太郎君及び平川篤雄辞任につき、  その補欠として笹森順造君及び三木武夫君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十九日  義務教育学校職員法案内閣提出第七三号) 同月二十一日  義務教育学校職員法施行に伴う関係法律の整  理に関する法律案内閣提出第七九号) 同月二十三日  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第八九号) 同月二十日  旧海軍工廠工員養成所卒業生文部省資格認定  に関する請願永野護紹介)(第二二九〇  号)  公立学校施設災害復旧立法化に関する請願  (坂田道太紹介)(第二二九一号)  同(林讓治君外三名紹介)(第二二九二号)  同(村上勇君外一名紹介)(第二三三二号)  高等学校定時制教育振興法制定に関する請願  (山崎岩男紹介)(第二三三三号)  学校給食法制定等請願山崎猛君外二名紹  介)(第二三三四号)  同(田子一民紹介)(第二三三五号) 同月二十一日  新制大学院設置に伴う設備拡充教職員増加に  関する請願松本七郎紹介)(第二四四八  号)  奨学資金増額並びに奨学生定員増加に関する請  願(松本七郎紹介)(第二四四九号)  理科教育振興に関する請願原茂紹介)(第  二四五〇号)  らい療養所内高等学校設置に関する請願(松  野頼三君紹介)(第二四五一号)  青年学級振興に関する請願赤城宗徳紹介)  (第二四五二号) 同月二十四日  六・三制教育施設整備費国庫補助に関する請願  (鳩山一郎紹介)(第二五四八号)  学校給食法制定等請願外三件(吉川兼光君紹  介)(第二五五三号)  同(福井順一紹介)(第二五七八号)  同(山村新治郎君紹介)(第二五七九号)  同外三件(川島正次郎紹介)(第二五八〇  号)  同(江崎真澄紹介)(第二五八一号)  同外七件(山崎始男紹介)(第二五八二号)  同(岡本茂君外三名紹介)(第二六二五号)  同外五件(千葉三郎紹介)(第二六二六号)  同(臼井莊一君紹介)(第二六二八号)  大学院奨学生制度確立に関する請願松本七郎  君紹介)(第二五八三号)  老朽校舎改築費に関する請願長野長廣君紹  介)(第二六二七号) 同月二十五日  小中学校校員公務員として待遇の請願(楢橋  渡君紹介)(第二九〇五号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十三日  義務教育費国庫負担に関する陳情書  (第一四二六号)  義務教育費全額負担に関する陳情書  (第一四二七号)  公立義務教育学校教職員身分及び給与の負  担に関する陳情書  (第一四二八号)  同  (第一四二九号)  教職員定員定額制度特例設定に関する陳情書  (第一四三〇号)  教育施設整備に関する陳情書外一件  (第一四  三一号)  同  (第一四三二号)  同  (第一四三三号)  同  (第一四三四号)  同  (第一四三五号)  同  (第一四三六号)  同  (第一四三七号)  国立大学施設費等増額に関する陳情書  (第一四三八号)  教育委員会制度改正陳情書  (第一四三九号)  紀元節復活に関する陳情書  (第一四四〇号) 同月二十四日  義務教育費全額国庫負担制度判定に関する陳情  書(第一五二九  号)  義務教育費国庫負担に関する陳情書  (第一五三〇  号)  同(第一五三一  号)  公立義務教育学校職員身分及び給与負担  に関する陳情書  (第一五三二号)  老朽校舎改築促進陳情書  (第一五三三号)  教育委員会制度改正に関する陳情書  (第一五三四号)  教育委員会法一部改正反対に関する陳情書  (第  一五三五号)  教育委員会制度に関する陳情書  (第一五三六号)  地方教育委員会諮問機関とすることに関する  陳情書  (第一五三七号)  勤労青少年教育振興法制定に関する陳情書  (第一五三八号)  名古屋城跡二の丸庭園修復保護に  関する陳情書(第一  五三九号)  日本開国百年記念事業費国庫補助に関する陳  情書  (第一五四〇号)  日本道徳会結成に関する陳情書  (第一五四  一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  義務教育学校職員法案内閣提出第七三号)  義務教育学校職員法施行に伴う関係法律の整  理に関する法律案内閣提出第七九号)  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第八九号)     ―――――――――――――
  2. 伊藤郷一

    伊藤委員長 これより開会いたします。  義務教育学校職員法案義務教育学校職員法施行に伴う関係法律整理に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより政府より提案理由説明を聴取いたします。岡野文部大臣
  3. 岡野清豪

    岡野国務大臣 今回政府から提出いたしました義務教育学校職員法案について御説明申し上げます。  戦後わが国教育制度が、新憲法にうたわれている民主主義基本理念に立つて教育機会均等とその水準維持向上とをはかるため、諸種改革を経て来たことはすでに御承知通りであります。いわゆる六・三・三・四の新学制実施教育委員会設置を初め、教科内容の諸改革等は、いずれも民主主義基本理念教育機会均等、その水準維持向上とを目的として漸次その成果を収めて参つたのであります。しかしながら、これらの諸施策は、短かい期間に早急に行われましたがゆえに、その是正を必要とする事項もありますことは、また申すまでもないところであります。政府は、目下それらの事項について再検討を加え、真に独立後の国情にふさわしい制度を確立いたしたいと努力を重ねておるのでありますが、何と申しましても、義務教育は、国家として最も意を注ぐべぎ国民基礎教育であり、これが振興をはかりますことは、わが国文教基本でありますがゆえに、この義務教育についての必要な改正をまず第一に取上げようといたしているのであります。この法案提出いたしましたゆえんもまたそれにほかなりません。すなわち、この法案は、義務教育に対する国の責任を明らかにし、義務教育に従事する教職員国家公務員とするとともに、あわせて、その教職員給与を直接国が負担、支給し、もつて義務教育水準維持向上をはかることを目的とするものであります。  御承知のごとく、義務教育に従事する教職員給与は、現在都道府県負担とされております。昭和十五年以前には、市町村負担とされていたのでありますが、市町村財政の窮乏により、昭和十五年都道府県負担と切りかえられて以来、現在に及んでいるものであります。しかしながら、この教職員給与費は、相当な金額に上るものであり、地方公共団体にのみ、その負担をゆだねることは困難であると考えるのであります。  現に、昭和の当初以来、国は実質的にその給与費半額程度負担し、昭和十五年給与費負担が、市町村から都道府県に切りかえられた後も、国がその二分の一を負担するという制度がとられて来たのであります。ところが、右の義務教育費国庫負担金は、シヤウプ勧告に基く地方財政平衡交付金制度実施により、昭和二十五年度以来、地方財政平衡交付金に吸収され、その結果、教職員給与費都道府県一般財源によつて、まかなうこととされたのであります。この給与費義務教育の進展に伴つて逐年増大し、実に都道府県一般財源中ほぼその半ばを占めるに至つております。このため、財政的に恵まれない府県にあつては、給与費がその財政を圧迫するところ大であり、ひいては、国家的事業たる義務教育機会均等、その水準維持向上という、義務教育基本的要請の実現にさえ支障を来すのではないかと憂慮されるに至つたのであります。  昨年国民多数の御支援を得て、教職員給与費半額を国が負担するという義務教育費国庫負担法が制定されましたのも、かかる実情を考慮したものと考えるのでありますが、今回政府は、義務教育に従事する教職員給与費についてのかかる経緯にかんがみ、さらに一歩進めて、その教職員国家公務員とし、その給与全額を国が直接負担し、支給することといたしたのであります。  ただ、何分にも、千百余億円に上る給与費都道府県負担から、国の負担に切りかえますことは、国及び地方税財政制度に影響するところ大であり、その調整に若干の時間を必要といたしますので、とりあえず、昭和二十八年度は従来通り都道府県負担、支給するものとし、国は一定額義務教育費国庫負担金都道府県に対して交付することといたしたのであります。  なおその際、地方財政平衡交付金制度との関係上、基準財政収入額が、基準財政需要額を越える富裕都府県に対しては、一定調整を加えて、国、地方を通じての財政にむだの起らないよう措置することといたした次第であります。  次に、この法案は、義務教育に従事する教職員身分国家公務員に切りかえようとするものであります。さきにも申し述べましたことく、義務教育国民基礎教育であり、国家的事業として営まれているものであります。現実に個々学校は、市町村設置経営に当つているのでありますが、しかし、義務教育そのものは、あくまでも、最終的には、国の責任において行われるべき国家的事業であることは、わが国学制制定以来一貫してかわらないところと考えるのであります。今回、義務教育学校教職員国家公務員にいたしたいと考えますのは、義務教育に対し国の有する右の責任にかんがみ、その教育に従事する教職員国家公務員といたすべきであると考えたからであります。  義務教育はまさに国と地方公共団体とが相提携して、その振興に尽力すべきものと考えるのでありますが、その際国は義務教育機会均等とその水準維持向上という義務教育基本的事項を確保し、市町村には、個々学校具体的経営を託することが望ましいあり方であると存ずるのであります。かかる観点から、義務教育教育活動に従事する教職員身分国家公務員とし、一方その給与を国が負担して、義務教育に対する国の責任を明確にしようといたす次第であります。  次にただいま義務教育学校職員法案提案理由と、その趣旨を御説明申し上げたのでございますが、同法案によつて義務教育学校職員身分国家公務員とし、その諸給与を国が負担支給いたしますことは、諸種法律に関連するところ多く、それら関係法規との調整をはかる必要がございますので、ここに所要規定をとりまとめて、法律案提出いたした次第であります。  この法律は、右の趣旨にかんがみほとんど関連規定との技術的な調整整理にとどまるので、その詳細については説明を省略させていただきたいと存じますが、ただ恩給法に関する部分につきましては、実質的な内容を有するところがございますので、以下その要点を御説明申し上げます。  義務教育学校職員国家公務員にいたすにあたり、これらの職員現行恩給法上いかに取扱うかにつきましては、諸種方法があろうかと存じます。政府といたしましては、今回次のような観点に立つて、現在恩給法適用なき助教諭等について、その勤続期間の二分の一を恩給法上、文官に準じて扱う等の措置をとることといたしたのであります。すなわち、現在義務教育学校職員のうちには、昭和二十四年一月以前からの在職者、すなわち、現に恩給法準用を受けている職員が、相当数含まれております。これらの職員が現に有する恩給法上の地位は、これをできるだけ尊重することが望ましいと考えられまするし、また現に恩給法準用のない職員も等しく国家公務員となります以上は、その準用を受けていた職員取扱いを異にすべきでないと考えるからであります。義務教育学校職員に関する恩給取扱いをかくのごとく、助教諭恩給法上の文官に準ずるものとしての取扱いを認め、それらの職員身分地位の安定に資するところ大であろうと期するものであります。  以上、簡単でございますが、この法案提案理由とその内容概要を御説明申し上げました。何とぞ、義務教育学校職員法案とあわせて、慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。
  4. 伊藤郷一

    伊藤委員長 補足説明政府委員より聴取いたします。田中政府委員
  5. 田中義男

    田中(義)政府委員 ただいま文部大臣から両法案についての提案理由説明がございました。私から法案の概要につきまして補足説明申し上げます。  本法案目的は、義務教育における国の責任を明らかにするため、義務教育に従事する教職員身分国家公務員とすること及びその給与を国が負担することの二点でありまして、その必要なるゆえんにつきましては、ただいま大臣から説明申しあげた通りであります。  義務教育に従事する職員国家公務員といたしました場合に、職員は、国家公務員法その他国家公務員人事に関して規定する諸法令によつて当然規律されるわけでありますが、実際にはこれらの職員が、地方公共団体の維持経営する公立学校に勤務する公務員であるという点と、さらに教育職員としての職務とその責任特殊性から考えてこれにふさわしい諸規定を設ける必要があるわけであります。そこで、本法案においては、これら教職員身分定員、任免、給与分限その他必要な事項を定めるため、総則、定員職階制任用給与、研修、分限、公務災害補償、雑則の九章と、この法律施行に必要な規定及び昭和二十八年度に限り、給与都道府県負担とするための必要な経過措置等規定する附則とを設けたのであります。  以下章を追つてその要点を説明いたします。第一章においては、この法律目的義務教育学校職員範囲身分教職員に対する法令の適用任命権の行使の方法等総則的事項について規定を設けてあります。  まず、この法律適用される義務教育学校職員範囲でありますが、原則として国がその設置を義務づけている義務教育学校とこれに準じて、財政上特に措置を加えて参つた学校とを限定し、これらの学校教職員のうち、校長、教諭以下直接、義務教育を施す者と、盲学校聾学校に置かれる寮母並びに一定の範囲事務職員といたしました。なお事務職員につきましては、政令でその範囲を定めることとなつております。第二に、義務教育学校職員国家公務員としての身分を有する旨を定めました。これにより、本法の制定施行後は公立学校に属するこれらの教職員は、国家公務員となるわけであります。第三に、これらの教職員の任免、給与、分限その他人事に関する事項について、この法律特例を定めたほかは、すべて国家公務員法その他国家公務員人事に関して規定する法令の適用を受けることを定め、この法律国家公務員法等特例であるとの地位を明らかにしております。第四に、国家公務員たるこれらの教職員についての任命権給与決定権の行使は、その教職員の属する学校を所管する教育委員会に行わせることといたしました。  国家公務員たる教職員である以上それらの職員任命権及び給与決定権は、文部大臣責任において行われるものでありますが、全国五十万余に及ぶ教職員人事を中央において処理いたすことは、実情に沿わないことでもあり、また都道府県及び市町村教育委員会は、それぞれ義務教育学校を維持管理し、その他の教育事務を管理執行しておりますので、これに任命権及び給与決定権を行わせるのが民意を反映させ、地方実情に即さしめる上にも当を得たものであると考えられるので、そのことを規定いたしました。このことにより、教職員人事行政を円滑かつ迅速に処理し得ると考えるのであります。また、教育委員会任命権等を行使する場合、すべて教育長の助言に基いて行うこととしておりますが、この点は、教育委員会制度の建前から、当然のことであり、現在におきましても、このように運営されております。  このようにして、教職員の属する学校を所管する教育委員会教職員任命権等を行使するについて、教育委員会が、法令の規定またはこれに基く、文部大臣の命令に違反したときは、これを是正する方法を講じております。すなわち文部大臣は、このような場合において、あらかじめ、文書をもつて教育委員会の行うべき事項を命じ、なお、そのことの行われない場合には、みずからかわつて行うことを規定しております。かかる規定は、国家公務員たる教職員任免権等が成規に従つて行わるべき保障を与えることを目的としているのであつて教育委員会に委任した権限について、みだりに干渉を加えるがごときは、もとより予想しないところであります。その他、文部大臣は、一般的にこの法律に基く教育委員会権限に属する事務の管理または執行について、教育委員会指揮監督し、または、その指揮監督権限の一部を都道府県教育委員会に委任して行うことができる旨を規定いたしました。  第二章は、教職員定員に関する規定であります。定員は、学校種類ごとに別に法律で定めることといたしました。その都道府県ごとの定数は、法律によつて定められた定員範囲内で、政令で定める基準に従い、文部省令で定めること、市町村ごとの定数は、都道府県教育委員会市町村教育委員会意見を聞いて定めることといたしました。  第三章は、職階制に関する規定であります。国家公務員の官職の格付は、国家公務員法規定により人事院がその規則により行うことになつておりますが、本章においてその特例を設け、文部大臣がこれを行い、文部大臣政令の定めるところによりこの権限の全部または一部を都道府県教育委員会に委任し得るようにいたしました。このような特例を設けました理由は、官職の格付はでき得るかぎり、実情に即し迅速簡易に処理する道を開いたものであります。  第四章は、教職員任用方法に関して規定を設けております。義務教育学校職員についての人事行政の円滑をはかるため、その任命権を原則として教育委員会に行わせることについては、先ほど申し上げた通りでありますが、この場合に、人事行政の統一を確保する観点から、都道府県教育委員会市町村教育委員会の行う任用に関して適切と認める助言または勧告をし、またその任命方法について一般的基準を定め得る権限を与えました。教職員人事行政の運営に関し、その円滑と水準の維持をはかるためには、まず、都道府県範囲において、調整を行うことが必要と考えるのであります。  その他、市町村教育委員会教職員任用しようとする場合に必要な若干の手続を規定しております。第一は、校長任用については、あらかじめ、都道府県教育委員会意見を聞かなければならない点であります。これは、校長人事異動等は、少くも、都道府県の段階において、考慮することが、教職員人事行政の上から必要であるからであります。第二には、校長以外の教職員任命については、その教職員の職の属する学校校長意見を聞かなければならない点であります。その趣旨は、校長は校務をつかさどり、学校における教育活動主宰者でありますので、学校の運営の一体性を確保する観点から、その意見を尊重すべきものと考えたからであります。第三には、市町村教育委員会は、教職員任命しようとするときにあらかじめ、当該市町村長に協議しなければならない点であります。これは、市町村長は、市町村一般行政をつかさどる責任者であり、一方また学校市町村行政の中で重要な機能を有することにかんがみ、市町村設置する学校の運営上、適当であると考えたからであります。なお、万一その協議のととのわないときは、文部大臣政令の定める手続により裁定することといたしました。校長及び教員の採用及び昇任の方法については、免許状制度により資格を定められていることと、その職務の特殊性から競争試験によらず、すべて選考によることとし、その選考は、校長及び教員の属する学校を所管する教育委員会教育長が行うことを規定しておりますが、この点は教育公務員特例法に定められているところと同様の制度を本法に取入れたわけであります。その際、新たに採用を志願する者に対する便宜を与え、かつ任命権を行使する教育委員会が人材を得ることを容易にするために、採用志願者名簿都道府県教育委員会で作成すること及びその作成、運用について必要な規定を設けたのであります。  第五章は、給与に関し必要な規定を設けてあります。前に申し述べましたように給与決定権は、教職員の属する学校を所管する教育委員会に行わせる建前でありますが、給与決定権の行使が市町村ごとに区々に行われますときは、給与費に関する予算の執行に支障を来すおそれもありますので、都道府県教育委員会が必要な基準を定め、市町村教育委員会は、これにより教職員給与の決定をすることといたしました。なお職務の級の定数の設定または改訂についても特例を設け、都道府県教育委員会がその権限を行うことといたしました。都道府県教育委員会は、文部大臣指揮監督を受けて、これらの事務を処理するのであります。  第六章は、研修について、第七章は、結核休職について、教育公務員特例法規定されているところとほぼ同様の規定を設けております。  第八章は、公務災害補償に関し、その実施機関文部大臣とし、文部大臣は、政令の定めるところにより、その権限の全部または一部を都道府県教育委員会に委任できる旨を定め、その事務処理簡易化をはかることといたしました。  第九章は、以上のほか、教職員の兼職、人事記録統計報告等について特例を設けるべき事項についての規定国家公務員法等適用する場合に必要な規定その他を設けております。すなわち、教職員教育に関する他の職、他の事業、事務に従事する場合においては、任命権を行う教育委員会限りで、これを許可することを認め、教職員の持つ資質を教育上の見地から活用する趣旨であります。人事記録統計報告については、国家公務員法規定されているところでありますが、その送付、保管等について必要な規定を設けました。以上のほか、義務教育学校職員国家公務員法等適用する場合には、教職員任命権または給与決定権教育委員会をして行わせる関係から、必要な読みかえを行う必要があり、また本法に特例を設けました関係上、適用を除外することとなる規定を明確にして、この法律が所要の特例規定したものであることを明らかにいたしました。  最後に、特別区の設置する学校に属する教職員人事に関する特例を定めました。すなわち、特別区の設置する学校のこれらの教職員人事は、都の教育委員会権限に属することといたしました。この点は、現在教育委員会法地方自治法に認められている特例と同様であります。  以上、説明申し上げましたほか、附則といたしまして、次の内容規定が設けられております。この法律施行期日昭和二十八年四月一日といたしまして、新年度からこの制度が実施せられるようにいたしました。その際、この法律規定する義務教育学校職員に相当する公立学校教職員は、現にその者が属する職務の級及びその受けている号俸に相当する号俸をもつて国家公務員として任用され、引続いて現にある職に相当する官職についたものと定め、その他休職、懲戒、不利益処分の審査、公務災害補償に関し身分切りかえに伴い必要な経過措置を加えました。これによつて二十八年四月一日に在職する義務教育学校職員は、同日以後国家公務員となり、給与も国から支給されることとなるのでありますが、現在都道府県負担とされている給与費をただちに国の支給に切りかえますことは、国及び地方財政関係するところ大でありますので、昭和二十八年度においては、従前通り給与費都道府県負担し、支給するものとし、国は都道府県に対して一定額負担金を交付するということにいたしたのであります。  これに伴い、さらに定員給与負担金の交付の方法について所要の規定を設けました。すなわち、定員については、学校種類ごと昭和二十八年度に限り政令で定めることとし、都道府県別の定数は、その定員範囲内において政令の定める基準に従い、文部省令で定めることといたし、市町村ごとの定数は、都道府県教育委員会市町村教育委員会意見を聞いて定めることといたしました。また教職員の俸給その他の給与負担に対し、国が都道府県に交付する金額は、学校数、学級数、児童及び生徒数、教職員数、職員給与額等を基準として政令で定めるところによつて算出することといたしました。ただその際、地方財政平衡交付金制度との関係上、基準財政収入額基準財政需要額を越える都道府県に対しては、政令で定める基準により算出した額を差引いて交付することといたす旨の規定を設けました。  以上がこの法案内容の概要でございます。  次に義務教育学校職員法施行に伴う関係法律の整理に関する法律案について、概要御説明を申し上げます。  この法律で整理をいたしております法律は、九つに及んでおります。いずれも義務教育学校職員法案内容と関連する事項調整し、または、同法の施行に伴い新たに附加すべき事項規定いたしたものであります。  まず第一に、学校教育関係を整備いたしました。同法第五条には、学校は、学校設置するものが、その維持管理にあたり経費を負担するという原則が掲げてあります。従来この原則に対する大きな例外としては、市町村学校でありながら、教職員給与費都道府県が支弁するという経費の負担に関する例外がありました。学校教育法第五条はかかる観点から、設置者が管理することの例外を経費の負担についてのみ予想した規定となつているのでありますが、今回、義務教育に従事する教職員国家公務員とし、その人事を国の責任において行いますことは、同じ教育委員会が現実の人事事務を処理するといたしましても、なお設置者が管理するという原則に対する例外を規定することになります。従つて、経費の負担についてのみでなく、学校の管理そのものにも、例外のあり得ることを明瞭にいたす必要があるのであります。  本法第二条においては、教育委員会法に必要な調整を加えました。現在の同法には、教育委員会が、国家公務員たる教職員人事を処理することは規定がありません。今回の法案により、教育委員会を国の委任を受けて、小、中学校教職員人事を処理することとなりますので、所要の調整を加えた次第です。  次に同法の関係では、都道府県教育委員会教育長任命を行う場合、文部大臣意見を聞くことといたしました。これは、都道府県教育委員会文部大臣の委任を受けた場合において、市町村教育委員会に対し、その人事に関し指示、監督を行うほか、必要な調整を行うことになりますので、その事務をつかさどる教育長の人選につき、国として関心を持つ必要があるからでございます。  第三条では、教育公務員特例法に所要の規定を加えました。まず義務教育学校職員には、同法を適用しないことといたしました。同法は、国家公務員法に対する例外をも規定してありますが、義務教育学校職員国家公務員にするにつきましては、さらに各種の規定を必要といたします関係上、それらとあわせて義務教育学校職員法案にまとめにするためであります。  第四条では、国家公務員共済組合法に必要な調整を加えました。義務教育学校職員国家公務員となれば、共済組合に対する経費の負担は、一般の国家公務員同様国庫で負うべきものであります。しかし、共済組合の組織等はことさらに変更する必要もなく、また変更しない方が、かえつて実情に適すると考えられますので、そのように取扱つたものであります。  第五条では、恩給法適用するため必要な規定を加えました。すなわち、校長、教諭または養護教諭は新たに恩給法上の文官とし、同法を適用させることとし、国立学校の教官を含む普通の国家公務員と同様の処遇をいたすことにいたしました。しかし義務教育職員中には、すでに恩給法の準用を受けている職員も少くないことにかんがみ、さしあたつては、次のごとき措置をとつたのであります。  第一に、現に恩給法の準用を受けている職員については、当分の間なお従来通りとし、その既得の利益をできるだけ保護することとしております。次に、昭和二十四年一月十二日以後採用の者で都道府県の条例によつて措置されるべき者については、その地方公務員としての在職期間については、原則として恩給法上の文官として在職したものとみなしまして、在職年を通算することといたしました。第三に、従来の制度にならつて、当分の間、助教諭、養護助教諭、常勤講師が引続いて文官たる校長、教諭、養護教諭となつた場合には、助教諭等としての在職年月数の二分の一を文官としての在職年に通算することとしました。また、助教諭等及びその遺族には、従来の制度にならつて、当分の間増加恩給等を認めることとしたのであります。なお、助教諭等は、昭和二十四年から国家公務員共済組合法による給付を受けていることにかんがみまして、恩給法による在職年の通算または給付と、共済組合の給付との重複を避け、いずれをとるかを各人の選択にまかせることといたしました。最後に、恩給負担及び裁定は、昭和二十八年度に限り、一般給与都道府県負担することにかんがみ、国、恩給局長にかわつて、それぞれ都道府県及び都道府県知事が行うこととし、納金も同様都道府県に対して行うものとしたのであります。  次に第六条は、義務教育費国庫負担法に関する改正であります。同法に規定した給与費の半額負担に関する部分の規定は、義務教育学校職員法案規定で不要となりますが、教材費の負担に関する部分は必要でありますので、同法を教材費の国庫負担法に改正いたしました。同様第七条におきましても、義務教育学校職員市町村学校職員給与負担法の対象から削除いたしました。  第八条で地方自治法の一部を改正してございますが、これは実質的には何らの変化を加えるものではなく、別表に義務教育学校職員法に基く事務の概要を表示したものであります。  最後に、文部省設置法の改正は、義務教育学校職員法によつて文部大臣に与えられた権限設置法にも明示して、その担当部局を明示したものでありますが、それに伴い担当部局たる初等中等教育局に次長一人を加えることと予定したものであります。  以上が義務教育学校職員法施行に伴う関係法律の整理に関する法律の概要であります。     —————————————
  6. 伊藤郷一

    伊藤委員長 次に国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。提出者より提案理由説明を聴取いたします。岡野文部大臣
  7. 岡野清豪

    岡野国務大臣 ただいま議題になりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、国立大学の学部、本学院、附置研究所及び教育施設又は研究施設の新設並びに国立短期大学の新設等について所要規定を設けるとともに、国立大学に置かれる職員の定昌を昭和二十八年度予算に定められた宗員に合致させるため、国立学校設置法の一部を改正するものであります。  改正の第一点は、国立大学の学部の分離独立と新設とでありまして、北海道大学及び大阪大学の法経学部を法学部と経済学部に、奈良女子大学の理家政学部を理学部と家政学部にそれぞれ分離独立しますとともに、富山大学の文理学部経済学科を経済学部に、又広島県立医科大学を広島大学の医学部とするものであります。  改正の第二点は、国立大学の大学鷹の新設でありまして、十二の大学にこれを設置するものであります。  改正の第三点は、国立短期大学の新設でありまして、五つの短期大学を静置するものであります。  改正の第四点は、附置研究所の新設でありまして、東京大学に応用微生物研究所を、岡山大学に従来の研究施設を農業生産物研究所として新設するものであります。  改正の第五点は、国立大学の共同利用の研究施設として、東京大学に宇宙線観測所を、京都大学に基礎物理学研究所を新設いたすものであります。  改正の第六点は、国立大学の学部附属の研究施設又は研究施設の新設でありまして、北海道大学ほか十五の大学に、それぞれ学部の附属として、臨海実験所、農場及び家畜病院等を新設するものであります。  改正の第七点は、国立大学に置かれる職員定員を二十八年度予算に合うように改正したことであります。改正後の定員は、国立大学合計六万一千二百九十四名となり、前年度当初に比し六百八十二名の増加となつております。この増加は主として学年進行に伴うものでありますが、このほかに大学院の設置及び広島大学医学部の設置に伴うものも含まれております。  以上申し上げましたのが本法案提案理由及び内容概要であります。どうか十分御審議の上、すみやかに可決くださるようお願いいたします。
  8. 伊藤郷一

    伊藤委員長 政府委員より補足説明を聴取いたします。稲田政府委員
  9. 稲田清助

    ○稲田政府委員 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案概要を、私から補足してご説明申し上げます。  改正の第一点は、第三条の大学学部の表の改正であります。これは旧制の課程の廃止と学部の新設に関するものでありまして、まず、東京工業大学附属高等工業教員養成所を削りますのは、これまで旧制の学生が在学しているために、新制の東京工業大学に包括されて課程として残つておりましたのが、学年進行により昭和二十七年度限りで最終卒業生が課程を修了いたしますので、廃止するものであります。同じく第三条の表中で、五つの大学について学部の新設をいたしておりますが、これは、既設の学部の学科の充実に伴い分離独立するものと、公立大学の合併とによるものとでありまして、まず学科の充実に伴い学部として分離独立いたしますものに、次の七つの学部があります。すなわち、北海道大学及び大阪大学の法経学部は法学部と経済学部に、奈良女子大学の理家政学部は理学部と家政学部に、富山大学の文理学部経済学科は経済学部にそれぞれ分離独立することといたしました。次に、公立より国立に移管いたしますものとして、広島県立医科大学を広島大学に合併してその医学部といたしました。  改正の第二点は、新たに第三条の次に第三条の二を設け、国立大学に大学院を新設することといたしました。大学院を置く大学は、北海道大学、東北大学、東京大学、東京教育大学、東京工業大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、広島大字及び九州大学の十二の大学であります。改正の第三点は、短期大学の新設に関するものであります。短期大学に関する規定は従来第三条の二でありましたが、第三条の二に大学院に関する規定を設けたためにこれを第三条の三とし、この第三条の三において次の五つの国立短期大学の新設について規定いたしました。すなわち、群馬大学工業短期大学部、電気通信大学短期大学部、静岡大学工業短期大学部、滋賀大学経済短期大学部及び山口大学工業短期大学部の五つで、いずれも夜間に授業を行うもので修業年限は三年となつております。  改正の第四点は、大学附置研究所の新設に関するものでありまして、東京大学に応用微生物研究所を、岡山大学に農業生物研究所を新設するため、第四条の表の一部を改正いたしました。この農業生物研究所は、これまで岡山大学農学部附属の農学研究施設でありましたのを充実して大学附置の研究所としたものであります。  改正の第五点は、第四条に第二項を新たに加え、国立大学の共同利用の研究施設として、東京大学に宇宙線観測所を、京都大学に基礎物理学研究施設を新設することとしたことであります。後者の基礎物理学研究所は、湯川記念館に設置するものであります。なお共同利用の研究施設と申しますのは、特定の大学に附置してその大学の管理下に置くものでありますが、その利用関係は当該大学のみならず広く同一学問分野を専攻するものの共同利用に当てようとするものであります。  改正の第六点は、第五条の学部附属の教育施設または研究施設の新設に関するものでありまして、これを列挙いたしますと次の通りであります。 牧  場    北海道大学農学部     東京大学農学部 2農  場    広島大学水畜産学部 3家畜病院    北海道大学獣医学部    帯広畜産大学農学部    岩手大学農学部    東京大学農学部    東京農工大学農学部    岐阜大学農学部    鳥取大学農学部    山口大学農学部    宮崎大学農学部    鹿児島大学農学部 4診療エックス線技師学校    東北大学医学部 5脳研究施設    東京大学医学部 6農村厚生医学研究施設    東京医科歯科大学医学部 7臨海実験所    新潟大学理学部    高知大学文理学部    九州大学理学部  改正の第七点は、別表第一の改正であります。これは、国立大学に置かれる職員定員を二十八年度予算に合せるための改正でありまして、改正後の定員は六万一千二百九十四名で、前年度に比し六百八十二名増となつております。六百八十二名の内訳は、昨年度以前に設置した学部、短期大学、附属学校等の学年進行によるもの、大学院設置によるもの、広島県立医科大学の合併によるもの、その他研究施設の設置によるものなどがそのおもなものであります。  最後に、この法律は、施行期日昭和二十八年四月一日といたしております。これは、この法律が、国立学校及びその部局の設置廃止について規定するものであるため、ぜひとも四月一日から施行する必要があるからであります。
  10. 伊藤郷一

    伊藤委員長 予算委員会の分科会もありますので、以上三案に対する質疑は次会に譲り、本日はこの程度にとどめます。  なお今後の委員会運営等につきまして協議いたしたいので、午後三時から三階の委員長室におきまして理事会を開きますので、理事の諸君の御参集をお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午前十一時四十四分散会