運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-03-10 第15回国会 衆議院 農林委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十日(火曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 坂田 英一君    理事 青木  正君 理事 平川 篤雄君    理事 井上 良二君       秋山 利恭君   小笠原八十美君       中馬 辰猪君    寺島隆太郎君       村松 久義君    金子與重郎君       高倉 定助君    高瀬  傳君       中村 寅太君    川俣 清音君       芳賀  貢君    山本 幸一君       中村 英男君  出席国務大臣         農 林 大 臣 田子 一民君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (畜産局長)  長谷川 清君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 三月七日  主要農作物種子法の一部を改正する法律案(中  馬辰猪君外二十四名提出衆法第四七号)  有畜農家創設特別措置法案寺島隆太郎君外二  十四名提出衆法第四八号) 同月六日  舞鶴市等を海岸砂地地帯として指定請願(大  石ヨシエ紹介)(第三五二三号)  和寒町所在国有林払下げ請願松浦周太郎君  紹介)(第三五二六号)  地方団体営土地改良事業費及び補助費増額に関  する請願足鹿覺紹介)(第三五二七号)  中川村所在国有林野払下げに関する請願松浦  周太郎紹介)(第三五二九号)  農林省林業試験場札幌支場一等級格付に関す  る請願松浦周太郎紹介)(第三五三〇号)  木炭検査費及び生産改良施設費国庫補助請願  (足鹿覺紹介)(第三五三二号)  頓別及び仁達内両原野開発促進請願松浦周  太郎君紹介)(第三五五七号)  新城村地内国有林野払下げに関する請願(永田  良吉君紹介)(第三五八一号) 同月七日  委託林払下げに関する請願岩川與助紹介)  (第三六六六号)  尾久島開拓建設事業促進に関する請願岩川與  助君紹介)(第三六七七号) 同月九日  農村工業並びに副業振興に関する請願熊谷憲  一君紹介)(第三七八六号)  同(遠藤三郎紹介)(第三七八七号)  同(大村清一紹介)(第三七八八号)  早場米供出実務職員に対する超過勤務手当支給  に関する請願井伊誠一紹介)(第三七八九  号)  地方団体営土地改良事業費及び補助費増額に関  する請願吉武惠市君紹介)(第三七九〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  民有林道開設に要する昭和二十八年度予算増額  に関する陳情書  (第一七五六号)  急傾斜地帯農業振興臨時措置法に基く予算増額  に関する陳情書(  第一七五七号) 同月七日  農地法改正及び農業土木事業に関する陳情書  (第一八七〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  主要農作物種子法の一部を改正する法律案(中  馬辰猪君外二十四名提出衆法第四七号)  有畜農家創設特別措置法案寺島隆太郎君外二  十四名提出衆法第四八号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第一一四号)  農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関  する法律案内閣提出第一一五号)     ―――――――――――――
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより会議を開きます。  去る三月五日本委員会に付託になりました、中馬辰猪君外二十四名提出主要農作物種子法の一部を改正する法律案及び寺島隆太郎君外二十四名提出有畜農家創設特別措置法案の両案を順次議題といたし、審議に入ります。  まず主要農作物種子法の一部を改正する法律案趣旨について、提出者説明を求めます。中馬辰猪君。
  3. 中馬辰猪

    中馬委員 主要食糧国内自給度の向上という国家的要請にこたえんとする意図のもとに、稲及び麦類の優良な種子確保をはかるため、第十三回国会において主要農作物種子法が制定され、採種圃整備助成圃場審査制度確立原種生産助成等措置規定されましたことは御承知通りであります。その際の国会審議過程におきまして  (一)対象農作物を稲、麦以外の主要農作物にまで拡大すること、(二)圃場審査ばかりでなく生産物審査をも系統的に行うこと、(三)育種対策刷新強化をはかること、(四)優良種子普及措置を講ずること等が指摘され、これらの点についてはすみやかに調査研究を進め、できるだけ早い機会にこの不備改正するよう希望条件が附せられたのであります。  以上のような国会要望を極力尊重いたしますとともに明年度予算をも勘案いたしまして、ここに主要農作物種子法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  以下、改正法律案内容について概略御説明申し上げます。まず第一は、対象農作物として、稲及び麦に次ぎ重要な作物である大豆を追加いたしたのであります。  第二は、圃場審査に引続き生産物審査を行うことにいたしたのであります。立毛中の他品種混入、病虫害の発生等圃場審査により判定されますが、発芽の良否、圃場審査後に発生する病害種子、異物の混入等は、収穫、乾燥、脱穀等の際の指導及び生産物審査により初めて避けられるのでありますので圃場審査に引続き都道府県技術吏員により生産物審査を行わせる必要があるのであります。このような措置によりまして完全に保証された優良な種子確保され、農家が安心してこれを使うことができる次第であります。  第三は、指定種子生産圃場産種子純正度を保持するため、都道府県が原原種及び原種生産施設整備することを明文化したことであります。御承知通り種子純正度確保するためには高度の技術を要するものでありますので、都道府県が原々種圃及び原種圃設置等によりその生産を行うものといたしまして、都道府県生産した純正な原種指定種子生産圃場種子として使用させることがきわめて肝要なのであります。  第四は、新品種適応地域を決定するため都道府県をして品種適応試験を行わせることにしたことであります。現在新品種の育成については国の機関が組織的、系統的に実施しておりますが、新しい品種都道府県奨励品種として決定するには品種適応試験を行い、適応地域を決定する必要があります。すなわち育種事業採種事業を密接な関連を持たせる必要があるのであります。  最後に、これ等事業実施いたしまする都道府県に対し事業実施に要する経費の一部を国が負担することといたしたのであります。  以上のような措置を新たに加えますことによりまして、一層強固に本法目的の達成をはかろうとするものでありますので、何とぞ愼重御審議の上すみやかに御賛同を得られますよう切望する次第であります。
  4. 坂田英一

  5. 寺島隆太郎

    寺島委員 農家に積極的に家畜を導入して有畜営農を普及奨励して参りますることは、一方におきましては、土地の生産力の維持、増進に資するとともに、農業経営改善と安定をはかることになり、また他方におきましては、動物蛋白質並びに脂肪資源の供給を増大することによつて国民の食生活の改善に寄与することができるのでありまして、このためにすでに御承知のように農林省におきましては、米麦等主要食糧増産計画と並んで家畜の飛躍的な増加をはかりますとともに、わが国の農家の約半数に及ぶ無畜農家にすみやかに家畜を導入いたしますため、とりあえず昭和二十七年度より有畜農家創設要綱によつて家畜導入資金融通とこれに対する国の利子補給を行いまして、有畜農家創設事業を推進いたして来ているのであります。  この点につきましては、一昨年衆、参両院におきまして、無畜農家解消に関する決議が行われておりますることはすでに御承知のことと思います。しかしながら元来有畜農家創設要綱におきましては、もつぱら農業協同組合系統金融による融資が中心となつておりまする関係上、金融機関信用力の低い組合につきましては、思うように融資が受けられない事情が出て参ることは疑いのないところでありまして、これらの障害を除去いたしまするためにも、国が有畜農家創設事業に必要な資金確保に努めまするとともに、現在行われておりまする利子補給のほかに、家畜導入資金融資する金融機関に対して損失補償を行うことによりまして金融機関が安んじて融資することができるようにする必要があると信ずるのであります。かくすることにより融資が円滑に行われ、有畜農家創設事業がさらに強く進められることは聞違いのないことと思うのであります。しかしながらこのような損失補償を行いましてもなお融資を受けることが困難な組合の出ることも現下の情勢上避けがたいことと思われまするので、さような場合には、すでに多数の都道府県実施されておりまするように、地方公共団体である都道府県家畜を購入して、これを貸し付ける制度を奨励いたしますることがより適切な措置であると考えるのであります。なおこの際、たとえば高度の集約酪農地区を建設いたしまするために、新品種の乳牛を集団的に導入する必要があるような場合におきましては、単に都道府県に対する国の補助のみにまかせておくのみでは、十分にその成果を期待することが困難でありまするので、特に国で家畜を購入してこれを貸し付けることができるようにすることが必要となつて参るのであります。以上のような諸施策が行われますならば、この有畜農家創設事業制度的には一応完備いたしまして、最近成立いたしました飼料の需給並びに価格の安定措置確立と相まつて、必ずや十二分に実効をあげることができるものと信じて疑わないのであります。  なお、本法重要点とするところは以下五点であります。第一点、国が有畜農家創設事業に必要な資金融通のあつせんに努めること。第二点、国がこの融資について利子補給をすること。第三点、国がこの融資についての損失補償を助成すること。第四点、都道府県有家畜の貸付を奨励すること。第五点、特に必要があるときは国有家畜を貸し付ける道を開くことであります。  以上のような理由によりまして、この法案提出いたしました次第でありますが、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決賜わらんことを切に御願い申し上げる次第であります。
  6. 坂田英一

    坂田委員長 ただいまの両案に対する質疑次会より行うことにいたします。     —————————————
  7. 坂田英一

    坂田委員長 次に農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案の両案を一括議題といたし、審査を進めます。  この際農林大臣より発言を求められておりますので、これを許します。田子農林大臣
  8. 田子一民

    田子国務大臣 去る二月二十八日本委員会におきまして、金子委員より青森農業共済組合連合会にかかる事件につきまして御質問がありました。これにお答えをいたします。  この事件は二月二十八日の都下新聞に掲載されておる事件でありますが、御質問がありまして、ただちに三月二日担当職員現地に派遣いたしまして、詳細調査をいたしたのでございます。今ここに概要を御説明申し上げたいと思います。  第一に事件の全貌は、ただいま司直の手に移されておりまするので、行政の取調べにおきましては、いまだことごとくは明瞭いたしておるとは思われないのでございまするが、視察員報告によりますると、一部に伝えられました、陳情によつて損害評価の水増しをしたというようなことは、全然事実無根でございます。また右と関連いたしまして伝えられました、農林省職員の収賄または饗応問題は、当方の責任において調査いたしましたところ、本件に関しかような事実を認め得ないのであります。しかしながら司直調査によりまして、かかる事犯が明白になりました場合がありといたしまするならば、当然事の性質上、厳重な措置をとらなければならぬと存じます。農業災害補償制度は、昨年末で実施五周年を経過いたし、今や新段階に入つて一層の発展を期したいと期する際に、かかる事件日の真否はともかくといたしまして、世上に大きな影響を与えましたことは、共済関係者の士気の上に与える影響、また将来本制度の運用の上に一大汚点を示したのでございます。特に私としましても、今後十二分に監視し、厳重な措置をとらなければならぬと存ずるのであります。しかし前申しましたごとく、行政の面においての調べは、以上のような二点にも認める事実はないのでありまするけれども、万事は司直の精細な調べをまつことにいたしたいと思うのでございます。  なお同連合会に対する指導監督についての御質問がございましたが、同連合会につきましては、昨年の五月、本省係官監査実施いたしておるのであります。そのときに経理に不適当な点が多々あるのを認めまして、十項目にわたりまする注意事項を掲げまして、具体的な措置を命じておるのであります。その後も特別の注意払つて参つたのであります。かようなことには十二分に手がつけられておるように考えるのでありますが、ただいまのようなことが、かりにも世間の疑惑を招きましたことは遺憾に存じます。なお本国会には現行制度の補完と、将来の根本的改革の布石を兼ねまして、農家多年の要望でありまする掛金の農家負担の軽減、現段階に強く要請せられる共済団体に対する監督権強化を含む重要改正法案、さらに家畜共済の将来のあり方を方向づける試験法案の二つが提案されておるのでございます。本事件の究明はもちろん徹底的に行うのでございますが、現段階におきましては、前述の三点の言明を了とせられまして、なるべくすみやかに両法案の御審議を進められまするよう、切にお願いしてやみません。
  9. 金子與重郎

    金子委員 去る委員会におきまして、青森県の共済組合の問題で質問申し上げたのでありますが、当時私が質問いたしましたのは、何も新聞紙に一つの問題が出たから、それを種にして食い下るというような末梢的な問題によつて食い下るというような感じで、私は質問申し上げたのではないのでありまして、要するに農業共済ということは非常に重要な問題であり、同時に現在農林省農政関係に支出しておりまする予算の中でも、一番大きなウエイトを占めておる。こういうことから、この問題が青森県に起つたということは、単に青森県に起つただけではない、この種のもの、あるいはこの種に類似したものが、全国的に起つている傾向があるととうことを私は考えておりまするがゆえに、御質問申し上げたのでありまするが、ただいま大臣のこの調査に対する結果の御報告を聞いておりますと、遺憾ながら何だか私にはさつぱり要領を得ない。なぜならば、損害評価に対して運動的な一つの行動をとり、またそれに対して不正なことはなかつた、また農林省職員間において増収賄だとか、あるいは饗応というふうな事実もない。それでは結論としては、これは何もないことになるのでありますが、何もないということであるならば、ただいま説明にありましたように、この災害補償事業のために一大汚点を示したということと矛盾しておるような気がするのでありますが、一体一大汚点を示したということはどこに原因しておるか。損害評価に対していまわしい点もなかつたし、あるいはそれらをめぐつての贈収賄のこともなかつた。実際何でもないならば、別に汚点でも何でもないことでありまして、それは一新聞の下馬評に終ることでありますが、はたしてそういうふうに解釈し切れるかどうかということに対して、まだ今の説明では私には割切れないのでありますが、もう少し詳しく、ほんとうに何でもないものを新聞が書いたのか。そうだつたとするならば、別にこんなことは汚点でも何でもないじやないか、このように解釈するのでありますが、もう少しその点を明瞭に御説明願いたいと思います。
  10. 田子一民

    田子国務大臣 金子委員の御質疑の要点は、青森事件そのものではなかつたという御趣旨でありますが、私の就任いたしましたのは三月の三日でございます。そうしてこの青森職員を派遣しましたのは三月の二日であります。引継ぎの際に前大臣から別にお話はなかつたのでありますけれども、係からこういう御質問があるから、出張させて調べた結果ではこうであるということを報告を受けました。それから新聞記事はいかにもまことしやかに書いてありますけれども、私先ほど申し上げましたのは、速記録をよくお読みくだされば、言葉をはつきりわけて使つておるのであります。行政措置による調査においては二点を御指摘なつたけれども、その形跡はいまだ認めることはできない。しかしながら大臣としてこの新聞記事のようなことがかりにも伝えられるということははなはだ遺憾であつて、これは大きな汚点である、こう申し上げたのでございます。しかして行政措置における調査は、何と申しても同じ役所のものが調べるのでございますから、司法警察とかあるいは検察当局でお調べになるのとはおのずから事柄が違うだろうと思います。その方はないという事実は、報告がありますからこれを信じて申しておるのでございます。
  11. 金子與重郎

    金子委員 そうしますと今度の青森の問題に対しましては、行政的に損害評価の問題その他におきまして、この事業の運営上不正はないとはつきり割切つてよろしゆうございますか。
  12. 田子一民

    田子国務大臣 今日の調査員報告に関する範囲においてはさようになつておるのであります。
  13. 金子與重郎

    金子委員 これは大臣がわざわざ調査員現地へ派遣いたしましても、そういうふうな不正条項はないということであれば、非常に私は安心するのであります。それが一片の新聞の虚偽の報道であつたとするならば、私はそれは喜ばしいことだと思うのであります。それはこの際は了承いたしておきます。しかしこのことにつきまして、大臣が就任が新しいからというふうなことでなく、農業共済の問題は農村問題として非常に大きな問題でありますから、ここでこの問題を契機にいたしまして、二、三あなたのこの政策に対する御所信を伺つておきたいと思うのであります。  先ほど御説明の中にありました第一点の損害評価に対する運動なりあるいはそれを通しての不正があつたかなかつたかということに対しては、ただいまはなかつたということでありますが、一体保険という仕事に対して、個個の損害評価ということをめぐつて、不正だとか不正でないとかいうことができるということに対して、これがこの法律の欠陥であるか、あるいは農業共済そのものの性格というものがここに問題を起す可能性があるのか、その点について大臣はどういうふうにお考えになつておりますか、伺つておきたいと思います。
  14. 田子一民

    田子国務大臣 現行法のこまかい内容についてはよく通じておりませんので、政府委員から答弁いたさせます。
  15. 金子與重郎

    金子委員 それは違います。現行法のこまかいところではないのです。これはほんとうに大きな問題なのです。現行法技術的な問題でないのであります。だから現行法法律不備でやるように考えられるか、法律というものでなくて農業共済そのもの作物共済そのものというように、共済の姿によつて少くするその制度あり方に対して根本的に矛盾があるかどうか、この点に対してあなたはどうお考えになつておるか伺いたい。
  16. 田子一民

    田子国務大臣 お答えいたします。このすべての制度法律だけでは完全に行きませんし、またいかなる規定を設けても容易にその目的を達しないものであります。要するに人と法律と相まつて完全な遂行ができればけつこうなのでありまして、この内容そのものは私はよく調べておりません。
  17. 小倉武一

    小倉政府委員 損害評価の問題から制度根本についてのお尋ねでございますが、御指摘のように、農業災害自体損害評価するということは、技術的に非常にむずかしいことでありますことは、御承知通りであります。しかしながら制度の上においても、なお現在の制度でもつて完璧を期し得ないということもまた否定できないと思います。災害性質から来る評価のむずかしさということについては、これはやむを得ないものがありまするけれども制度で補足できるものにつきましては、私どもだんだんと整備をはかつて行きたいと思つております。現在やつておりますことにつきましては、御承知通りと思いますけれども、昨年から郡単位損害評価基準組合をつくりまして、これをモデル・ケースといたしまして損害評価の適正をはかることにいたしております。二十八年度からは、この評価基準組合の運営がより的確に行きまするように、予算的な措置も講じておるのであります。なお根本的に、現在共済団体がやることになつておりまするのを切りかえて、もつと第三者的な要素を加えるということにつきましても、昨年から私どもいろいろ研究いたしております。自主調査の方の被害統計を、どの程度利用すると申しますか、あるいはそれにどの程度損害評価仕事に参加してもらうかというようなことにつきましても、いろいろ検討いたしております。
  18. 井上良二

    井上委員 関連して……。ただいま金子君からの青森事件についての質問に対する大臣の答弁は、この事件に関して所管の方が現地に派遣されたというのですが、だれが行きまして、どういう機関でどういう調査をして来ましたか、それを御報告願います。
  19. 田子一民

    田子国務大臣 これはここに詳細報告書が出ておりまして、私ざつと読んで、先ほどお答えしたのはその概括を申したのでありますから、政府委員の方からお答えをさせます。
  20. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいまお尋ねの点でございまするが、農林省から現地に派遣いたしましたのは農業保険課長でございます。現地に参りまして青森市の警察署あるいは青森地方検察庁等において事件を聴取いたし、なお県庁におきましても、事件につきましてのいろいろの関係者の話を聞いたのであります。  そこで先ほど問題になつております点につきまして、農林大臣の御説明がございましたが、補足的に申し上げます。一つ損害評価の点でございますが、伝えられるところによりますと、二億一千万円の損害評価を、運動の結果二億六千万円にしたということになつておるそうでありますけれども、私ども調査によりますと、むしろ現地の方の申請は三億六千万円でありましたのを、統計調査その他を参照にいたしまして二億六千万円に削減をいたしておるのであります。従いまして損害評価につきまして伝えられるところは、これは誤りであろうというふうに考えております。  次に私ども職員の問題でございまするが、さようなことと関連しまして、いろいろの醜聞が伝えられておるのではございまするが、これはもちろん私ども重点的に調査するということもなかなかむずかしいのでございますけれども、私ども調べ範囲におきましては、さような事実がないと信じております。しかしながら先ほど大臣からお話がございましたように、司直の手によりまして事実がほぼ明らかになるということがございますれば、それに対応した措置をとらなければならぬ、とるべきであるというふうに考えております。  それから大臣最後にお触れになりました連合会に対する監督の点でございますが、先ほど御説明がございましたように、去年の五月監査をいたしました。しかしこれは御承知通り、去年本国会におきまして規定が入りまして、検査につきましてわれわれ十分その趣旨で努力をしなければならないのでありまするが、予算措置がまだ当時は伴つておりませんでしたので、手不足でありまするが、去年検査いたしまして、事務費の点につきまして非常に遺憾の点があることを指摘したのであります。それから現在警察当局で問題にしておりまするのは、この事務費の使途に関してであろうと私ども存じておりまするし、また捜査の官憲もさように言つておるのであります。その点につきましては、共済連合会監督上の責任のある私ども責任でもありまするから、今後その点につきましては十分措置考え、なお制度の上におきましても、今国会におきまして法案改正方を提出しておるのでございまするが、この中にも、役員の責任の体制を明確にするというような規定だとか、あるいは配置上の監督をさらに厳重にするというような規定も置いておるのであります。なお検査につきましては、幸いにして二十八年度の予算におきましては若干増員がされておりますので、さらに行政上の検査についても、従来よりは一層の精密を期することができるのではないか、かように存じております。
  21. 井上良二

    井上委員 この事件調べるのに、保険課長が現地に出張して、検察庁並びに県庁に実情を調査に行かれたという話でありますが、検察庁へ参りました場合に、まだ取調中でありますから、具体的に事件内容についてどうこうということは申さなくても、およそどういう事件で取調べておるということは、言われたであろうと思います。そういう事件内容も取調べ内容も、全然わからずに帰りましたか。それとも事件内容は、どういうことを中心に調べておるということを聞いてお帰りになりましたか。それから県庁の方においてはどういう答弁をされましたか。その点を伺いたいと思います。
  22. 小倉武一

    小倉政府委員 汚職事件につきましての御質問の点でございまするが、調査の初めのころと現段階では、若干嫌疑と申しまするか、事件の核心はだんたん推移をして参つておるのでありまして、ただいま捜査当局が問題にしておりまするのは、役職員の横領ということであるようであります。
  23. 井上良二

    井上委員 次に伺いますが、今お話になりました、青森県から出した損害評価の水増しの問題でございますが、政府の方へ三億六千万円の損害評価を言うて来て、それが諸般の実情調査の結果、二億六千万円に査定をしたというお話でございます。これは二十七年度の水稲の損害でございますが、二十六年度の分でございますか。その点を一点伺いたいのと、三億六千万円を二億六千万円に査定をしました査定の根拠、たとえば作報の調査でありますとか、また現地の実情調査であるとか、何を根拠にして、査定で一億円の減額をしたかという点を伺いたい。それからいま一つは、昨年五月にこの連合会の経理を監督いたしております。そして十項目にわたる経理上の不行届きがあるとして、これを指摘しております。その後その経理上の不行届きに対して、連合会にいかなる処置をとられておるか。今度の事件が起つて照し合せてみた場合、それについては何らの処置をしてなかつたのか、しておつたのかという点も、伺いたいのであります。
  24. 小倉武一

    小倉政府委員 損害評価の問題の対象となつておりまする被害の問題でございますが、これは二十六年度の水稲でございます。  それから査定の基準でございますか、これはもちろん統計調査によりまする作物報告、それから被害のタイプによつて、このたびの被害はこういうタイプであるということによりまと、一応の目安ができることもございますので、そういう被害のタイプ査定、あるいはさらに疑わしい場合には、現地の野帳を引上げて、その野帳の内容を検討いたしまして、それを積み上げて、申請して来る被害と一体どういう関係があるかというようなことでもつて、査定をいたしておるのであります。数字的に申してもよろしいのでございますが、作物報告によりまする金額被害高は、当時八・六%でございましたが、この保険金の支払いの対象としての損害評価はそれより少し下まわつております。  それから検査の後の結果でございますが、これは検査いたしますと、注意事項をあげて、それを連合会に指示するわけでありまして、その指示の結果どうしたというようなことにつきましては、随時事件によりまして報告を求めることにいたしております。青森県の検査につきましては、実は証憑書類か非常に不備でございまして、金銭の出納につきまして実は疑わしいことがあるのではないかということが認められましたので、そういう点を重点に置いて、警告を発しておつた次第であります。
  25. 井上良二

    井上委員 御答弁はまことに御親切でございますが、内容は私ども満足するわけには参りません。従つてこの際政府は、青森県のこの事件農業共済制度の上に大きな影響をもたらす事件であり、かつまたこれがこの法案審議の上にも非常に重要な参考になると思いますので、今申しまする、三億六千万円のものを二億六千万円に査定をしたという、その当時の必要な資料、たとえば作報の報告書、これは単に青森県だけではなしに、隣県の秋田県、岩手県、これをあわせて出していただきたい。同時に青森県の連合会に十項目にわたる経理上の不行届きについて注意を与えてあるにかかわらず、その注意事項が一向具体的に処理されてないということが言い得られるのじやないかと思います。だからこういう事件が別個に起つておりはせぬかということも想像されるのであります。そういうふうに考えますから、その十項目にわたる経理上の注意事項は、どういう事項であつたかというその内容を、明らかにしていただきたい。それからその前年の二十六年、二十五年、これもあわせて、この県に対する損害補償をどのくらいしたかということの資料を出していただきたい。  その次に、これは委員長にお願いします。この事件は今申します通り農業共済制度の上に大きな問題が投げかけておる事件でありますので、本委員会としてはこれを簡単に見のがすわけには参りません。従つて委員会に、青森検察庁並びに県庁の責任者、県連合会責任者、これをいずれも参考人として出頭するように、手続をとられることをお願いいたします。
  26. 田子一民

    田子国務大臣 御質問でもなし、何でもないことに対して発言していいかどうか、長年の議会生活でもわかりませんが、発言し得ると思いますから、一言申し上げます。井上委員は長年農業問題を研究しておられますが、私たちも凶作の時分に免税、減税で、これは八割減であるとか、これは九割減であるとか、大蔵当局とずいぶん議員時代はやり合つたものです。しかしその損害の程度といえば、ありていに申し上げると、なかなかきめにくいものであります。金子委員からも御指摘があつたように、この共済制度を運用するにも、おそらくその損害の程度というものについては、相当むずかしい問題が起つているだろうと思いますから、今検察問題をいろいろな証人を喚問したりしまして、その日取り等は委員長かおきめになるでありましよう。この問題そのものを究明していただくことは、私も賛成でありますけれども、なるべくこの法案はすみやかに可決されるような心組みで、いろいろな材料をとつておるうちに法案審議未了になつたというようなことのないように、今から皆様の御熱心な御協力を仰ぎたいと思うのであります。
  27. 坂田英一

    坂田委員長 委員長に対しての何でありますが、検察関係の招請の問題でありまするので、理事会で御相談した上で処理したいと思います。
  28. 井上良二

    井上委員 なお私はこの問題に関連しまして、他の各府県のいろいろの損害の見積りの査定をめぐり、あるいはまた保険金の支払いをめぐり、いろいろな事件を私ども耳にしておりますが、そういうことは農林省には一向報告がないのですか。事件はこれ以外に全然ないとはつきり言えますか。あれば、あるということをはつきり言うていただきたい。
  29. 小倉武一

    小倉政府委員 事件の全貌については、私ども詳細を承知しておりませんので、類似の事件と申しますか、この種の事件が全国にどの程度あるか、詳細は私は承知しておりません。なお青森県以外にもこういう疑いのある連合会と申しまするか、県が全然ないというわけには実は参らぬのじやないかというふうに考えております。一、二こういう疑いのあるところもございますので、そういうところもただいま十分厳重な処置を考えておる次第であります。
  30. 金子與重郎

    金子委員 この問題は単に青森県だけの問題ではない。この種のことは、機関そのものができやすい素質を持つておりますので、ただいま小倉局長は、あるかもしれないが、ないかもしれないというまことにはつきりしない答弁でありましたけれども、たとえば最近耳にしております範囲でも幾つかありますが、その中で一体大分県はどういう調査の結果になつておりますか。
  31. 小倉武一

    小倉政府委員 大分県は、連合会全体の問題と申しまするよりも、職員の問題と申しまするか、個人的な一つの刑事問題のように承知しております。
  32. 金子與重郎

    金子委員 どうも今度の青森県の問題も、これは制度の問題ではなくて、個人的な使い込みだ、だから行政的には何ともしようがないというふうに解決してしまえば、まことに簡単に割切れるのでありますけれども、しかしそういうことは、これだけ莫大な農民の醵出金と国家の助成によつて共済事業をやつておるのに、今の共済のやり方が、経済団体としての監督なり指導というもののやり方が足らぬじやないか。そうしてこれに対して監督するというけれども、去年からやるといつていながら——私はおそらくこの問題に対してはまだまだ、たくさん出て来ると思うのであります。そういうことが出て来るということは、何かそこに出て来る原因があるのじやないか。要するに共済という仕事の性格からそういうことがあるのじやないかということを考えるのでありまするが、それに対して今後この法律改正して行く——この事件の性格というものを一ぺん掘り下げてみると、大きな問題ですよ。それで、大臣は就任なすつたばかりで、まだおれにはよくわからぬ、こういうふうにおつしやるのでしたら、局長に伺うのですが、この農業共済を強制加入の形で、国家が大きな予算を出し、年々料率改訂というような末梢的な改正だけでこれをやり通せるかどうかということに対して、あなたはどう考えておられますか。
  33. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいまのお尋ねは、災害補償制度根本につながる問題だと思います。お尋ねのように、この制度はいろいろな点においてなかなか無理がございます。その無理を一体どういうように処置するかということになりますと、一つ一つの問題が、たとえば損害評価の問題にいたしましても、あるいは農家負担の掛金をどの程度にするかという問題にいたしましても、あるいはその団体の組織を普通の経済団体といつたように考えてよろしいかといつた問題につきましても、従つてまた役職員責任を普通の農業団体と同じように考えていいかといつた点につきましても、いろいろむずかしい問題があると思います。特に抜本的にこの際どうこうするということについては、まだ結論は出ておりませんけれども、今回の制度の問題といたしましては、昨年成立いたしました農家単位の臨時特例制度実施を五箇年計画でやつております。それについて大体の結論がつきますと、補償制度についての根本的な改正一つの重要な方針が出て来るのではないか、かように考えております。なお掛金の問題につきましても、掛金の絶対額が農家の負担にたえないという問題がございますが、なお地方的にいろいろ困難の事情があるということになつておりまするので、この点につきましては、被害率の算定をさらに厳密にし、掛金の負担の公正をはかるということとともに、他方、国家の掛金の負担の部分を漸次増額して参るという処置で対処して行きたいと思つております。団体問題につきましては、これはお話のように、国の予算としても相当の金額を費しております。また制度自体も、他の団体に比べてより以上に公共的な色彩が強いのでございまするので、これに関係する特に役員の方々は、そういう趣旨で団体を運用していただくというように期待いたしております。そういう趣旨で、今回御審議つておりまする法案にも、役員の責任を協同組合等と比べては若干重く規定いたしておるのであります。なおいろいろ問題がございまして、恒久的にこの制度でやつて行けるということについては、私ども実は確信がございません。しかしながら現在のところといたしましては、この制度に伴ういろいろの欠点なり弊害なりを是正しつつ、そのうちに根本的な方針と申しまするか、改革の方向が見つけられれば、それに乗りかえるという措置を講じたい、かように考えております。
  34. 金子與重郎

    金子委員 ただいまのあなたの答弁を聞いておりますると、いろいろありますけれども、結論において、根本的に農業共済というものを考えると、恒久的にこれでいい、この制度はやり得るということに対しては疑問を持つと同時に、現段階においては末梢的な改正をして行きたい、こういうことに尽きると思うのですが、私もそれに近い考え方を持つているわけであります。  そこでもう一つ伺いたいのは、農業政策に対して各種の政府の施策があり、同時にそれに対して政府の支出している金、あるいは農民個々の人たちが支出して一つの組織化をし、あるいは一つ事業を行つておるといういろいろなものがあるわけでありますが、その中で一番大きな金額をもつて、そして政府も一番大きな犠牲を払つている仕事であるにもかかわらず、全国の末端の農家の立場からいうと、こういう共済の意義だとかりくつだとかいうことは抜きにして、ただ直感的にこの制度がいいか悪いかというふうに考えたときに、このくらい非難のある制度はないと思うのであります。私の耳に入つている一般大衆から来る声は、そういうふうに聞えておるのでありますが、その一番大きな原因は、一体何にあると思いますか。
  35. 小倉武一

    小倉政府委員 なかなかむずかしいお尋ねで、私に御満足の行くような答弁ができるかどうか疑わしいと思うのでありますが、お話のように、土地改良に次ぎまして、おそらく農林省としても最大の予算をつぎ込んでいるにもかかわらず、個々の農家から見ては必ずしも喜ばれていない、むしろ不平不満が非常に多いではないか、そういう御指摘の事実は私は否定をいたしません。しかしその理由はどこにあるかと申すことにつきましては、これはやはり日本の農家の経営が、非常に零細であるということに根本的な原因があるのではないかと私は思います。末端では保険制度になつておりませんけれども保険制度といつたようなものが、一体日本の農家に適合するか、どの程度の範囲農家に適合するかどうかというような問題が、やはり私は根本にあるのではないか、かように存じております。
  36. 金子與重郎

    金子委員 ただいまの意見では、農業共済が日本の農家の規模に対して妥当であるかどうかということに疑問があるというお話でありますが、これは私は少し見解が違うのであります。一体作物共済というものの性格そのものが、共済という性格に当てはまる仕事であるかどうかということに、根本的な疑問があると思います。なぜならば、生命保険家畜保険のようなものは、生死というものの区別ははつきりしておりますけれども作物共済というものは、どれだけ死んでどれだけ生きておるかという判定が非常にむずかしい。従つてそれが政治的な具になる。だから損害評価に対して、まるで大道のバナナのたたき売りのように、おれの方は三億六千万円だと言い、片方は二億六千万円だと言う、そういうような問題が出て来るのであります。だからそういうふうな査定というものに対して非常な困難性があるということがまずあるということ。第二には、作物災害というものは、日本がこうして細長いところに置かれておりますだけに、気候、風土の関係からして、災害を受ける地域は常に受け、受けない地帯は常に受けないということからして、生命保険家畜保険とはまつたく違つて、掛金の比率を公平にしようしようとしても、とても追いつかないという点が一つ。それからもう一つは、農作物災害というものは、金額が非常に大きいために、それを共済の掛金によつて満足するまでまかなおうとするならば、農民はとうていその掛金の負担には耐え切れない。しからばそれを国家で全部負うとしても、これも困難だ、こういうようなわけで、一般の共済としてやる性格の仕事と、この作物共済というものは別な考え方をして行かぬと、いつになつても解決がつかぬじやないか、こういうことを私ども考えております。そこでそういうことをうまくつづり合せようとするその無理が、結局こういうところへ来る。だからこれは単に青森にたまたま出たことでありますけれども、私は今日の各県の共済内容を見たときに、いろいろな問題があると思う。ことにこれが取扱う金額というものは、非常に大きい金額を取扱つておりますだけに、またその弊害もよけい出て参る。こういうような事情もありますので、私どもとしてはこの問題は、法律改正にあたつては、根本問題に対してこの際もう一ぺん勉強してみたい。そしてこれが補足的な改正でどこまで行けるか行けないかということは、毎年々々改正して来ておるのでありますから、今年度あたりはもう一歩掘り下げて、根本的に検討すべき時期じやないかと思つております。  最後にもう一つ伺いますが、この間青森県の問題をたまたま一つの問題として取上げましたが、きようの報告を総括してみますと、結論は何もなかつたのだということになるのでありまして、あと何かあるかどうかしらぬけれども、それは警察の方で調べているのだから、おれの方じやわからぬじやないか。これでは一体この間の問題を真剣に、これがどこに原因があるか、そしてどうこの結果から将来に対して注意を払わなくちやならぬかという、参考材料には何もなりません。職員が使い込んだというけれども、一体使い込めるような経理組織になつておるかどうかということも問題があるわけであります。従つてこの問題に対して、井上委員が先ほども申し上げましたけれども、もう少し納得の行くところまで掘り下げてみたいと思います。これは単に青森事件に食い下るというわけではなくて、こういうことはどこに原因してそういうことが起つておるか、これはひとり青森だけでなく、その原因というものは普遍性を持つておるのでありますから、もう一段この問題に対して、政府では詳細に調べて、後の機会にもつと精細な報告をしてもらいたい、そういうことをお願いしておきます。
  37. 田子一民

    田子国務大臣 ただいま後段にお示しになりましたことは、承知いたしました。
  38. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現段階における災害補償の適応性ということを考えたならば、当面一番問題になつて来るのは、共済組合の経営の実態というものが、だんだん困難化しておるということが一つの問題になると思います。農家作物に対する損害を補償するということが、あくまでも基本的な要件にはなつておるのであるけれども、これを扱うところの共済組合自体をどういうように経営するかというところに、負担の問題とかあるいは経済的な問題とかいうような、いろいろ困難な要素が一つ生れて来るということは、指摘できるわけであります。それを維持するためには、どうしても農家の反別割とか何とかいうような形における負担を、この共済にかける以外に、共済組合を維持するために農家がまかなうところの負担というものは、だんだん累増されて行くということは指摘できると思うわけであります。それからもう一点は、各連合会を通じて損害を最終的に決定を求める場合の要求が、最終段階においてどういうような形で決定が行われるかというところに、多分に不明朗な点があると思うわけであります。結局都道府県連合会の要求というものと、最終的の決定の差というものは、非常に大き過ぎるわけであります。これをほんとうに科学的に、純粋な立場に立つて末端の損害というものが調査されて、それが累積されて来る場合においては、そういう大きな数字上の差異というものはないわけでありますが、そこに差が非常に大きいということは、この最終段階の決定がむしろ政治的な配慮を込めて行われるというような憂いが、非常に多いわけでありますが、当局はこの損害額の決定に対して、最終段階においてはどういうような科学的な、公平な立場を持してこの決定を行つておるかということの内容について、御説明を願いたいと思うわけであります。
  39. 小倉武一

    小倉政府委員 事務費の問題でありますが、事務費につきましては、昨年の国会におきまして修正になりまして、事務員を置く場合においては、行政庁の認可を得なければならないというような制限の規定が置かれまして、そういう趣旨で、私ども農家の経済が圧迫されないように、特に私ども連合会を厳重に監督して参つております。それから損害評価の最終的な決定のやり方でありますが、ただいまのところにおきましては、県段階におきまして査定を農林省がやつておるのであります。県段階になりますと、作物報告によります被害高ということも発表はされておりませんけれども、ある程度参考資料になりますので、それが一つの有力な資料であります。なお私どもの希望といたしましては、その損害評価の査定の基準を郡段階に持つて行きたい、郡で作物統計によりまして、被害高がある程度客観的に裏づけされるという事態になりますれば、それが有力な損害評価の査定の一つの基準になると考えております。また先ほど申しましたように、農業共済自体といたしましては、郡段階一つずつの損害評価基準組合というものを置きまして、損害評価につきまして模範的なやり方をする、県庁の指導力もそれに集中してやる。それによりまして郡の範囲内の被害の評価のやり方につきましての適正化を期する、こういうことであります。そういう二つの方向によりまして、漸次精密な、また客観的な資料に基いた評価が可能になるようにというふうに考えております。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 なおもう一点お伺いいたしますが、この損害に対して国が相当の支出を行つておるわけでありますが、それが適正に処理されておらぬという点を考える場合において、こういう共済組合あるいは連合会に対して、国が会計検査の適用としてこれをやり得るかどうかを承りたいのであります。
  41. 小倉武一

    小倉政府委員 検査につきましては、連合会農林省でございますが、末端の単位組合におきましては県庁が常例として毎年一回検査をするという建前になつておりますが、会計検査院の検査につきましては、私詳しいことは承知いたしておりませんけれども、役所の補助金が出て参つておりますので、検査院が検査をやろうと思えばできるのではないか、かように思つております。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際農林大臣が御出席されているのでいい機会だと思いますが、大臣は三月三日に就任されたわけですが、その後当委員会に対して新大臣の農政に対する御所見というものはまだ披瀝されておらぬわけです。特に著しい現象は、今特別国会を通じて農林大臣は三たびかわつておるわけであつて、これは歴史的に見ても、一国会の会期内においてこういうような目まぐるしいかわり方というものは特異的なものがあるわけでありますが、そういう中において、農政の基本的なものがそのたびごとにかわるものであるか、あるいは修正されるものであるか、それからこれはまつたく党内の一つの情勢によつてこういうことが巻き起つたのであつて、現在の政府の農政というものに対しては、だれがかわつても、毎日のようにかわつてもいささかもそこに狂いはないものであるかどうかという点についてお伺いしたいのと、それから大臣がこの委員会に来られて、最初簡単なごあいさつがありまして、農政に対してはまつたく一年生であつて、大いに勉強してやりたいというようなお言葉がありましたが、その謙虚さに対してわれわれは敬意を表するものでありますが、現在置かれたわが国の農業の立場というものは、そういう一年生であるとか、謙虚であるとかいうことだけで解決ができない問題が非常に多いわけであります。それでこの際新農林大臣の、もしわが国の農政に対して大臣に就任された一つの信念的な政策とかあるいは御所信があるとするならば、お伺いしたいと考えるわけでありますが、もしございませんければ無理に聞きたいとは思つておらぬわけであります。関連して御質問申し上げます。
  43. 田子一民

    田子国務大臣 ただいまの御質問の第一点は、大臣の更迭によつて農政に関する政策が変化するのかどうかというお話でありました。私は政党政派といつては失礼かもしれませんが、自由党の代議士である、従つて自由党には自由党の長年研究しておる農村政策があるわけであります。従つて大臣がかわりましてもその政党が国民に公約しましたものを実行するのでありますから、政策に変化なし、こうごらんになつて間違いがないのであります。  それから、私は、就任早々であるから何も考えておらないかもしらぬが、何か考えがあるならば言えというお話であります。御承知のようにわが日本の行政及び政治施策というものはきわめて零細なものになりました。われわれ過去三十有余年あるいは官界、政界におきまして、農村問題も農業問題も、洋の内外を問わずいささか研究をしておるのであります。ただ日本は土地が狭くてやせておる、しかも定期的に台風がやつて来る。農業労働者が働くということにおいては、これはデンマークやスイスなどのようじやない、実に涙の出るほど働かれます。朝に星をいただき、夕には月を踏むというようなことは決して形容詞ではありません。実に涙ぐましいほど働かれております。しかしながら自然条件は必ずしもデンマークやスイスのようなものではありません。台風が来襲しますれば、先祖伝来持つておつた田も、一朝にして砂地に化するということであります。また林政を見てみますと、林業の方では営利主義の伐木が盛んであつて、山が荒れる。その方面ではお金はもうかるでしようけれども、同時に農村地帯に流れて来る草とか木の葉とかいうものもだんだん少くなり、堆肥というようなものもだんだん少くなつて農業がすたれて行く。これは日本という林産国であり、農業国であるところは実に困難なる事情に遭遇しておるのです。また最近デンマーク式の酪農を入れますけれども、これは牛そのものだけでは必ずしも家庭を持つて行くことはできません。どうしてもミルクをバターにするとか、チーズにするとかいうことをやつて行かなければなりませんから、なかなか資本もかかる。要するにこの小さな日本の農業というものは非常な悪条件にあるということが私として長年頭にあるのであります。そうして恵まれざるものは農村であるということも申し上げていいのであります。従つて農業労働は非常に難儀するけれども農業経営という農業の企画者としての農民は、世界でも私は水準が低いと思うのです。これは税の関係もございます。文化の至らざる点もございます。また長年の政府の指導にも必ずしも欠陥がないとはいえません。しかし今これを一々論じましても、御承知のように昭和二十八年度予算がすでに衆議院を通過しまして、今や参議院で審議中であります。補正予算というものの想像もつきません。しかして政府のやります行政措置というものがほとんど立法化されておりまして、私も役人を相当長い間やりましたが、昔は予算の執行とか事業の計画とかいうものは大臣限りでどんどんやれたものでございます。今日はただいま問題になつております農業災害共済、これだけの法令も、すべて大臣の働きというようなことは法律で縛られるので、大臣としてやることは、予算を効率的に使う、法律を生かして運用するということ、これ以外には今何を考えるかとおつしやつても、みなあなた方が今まで御相談になつておやりになつたことを遵奉して、その線に沿つてなるべく能率的に、なるべく効率的に、法律を運用するという以外には、二十八年度においてはむずかしいと私は思うのであります。しかしながら予算にもよらず、法律にもよらず、何か大臣考えてやれとおつしやるならば、就任早々でありますけれども、議会もいずれ済むでありましよう。二十八年度においては必ず皆様の御鞭撻によつてやりたい。この前も申し上げましたが、議会の活動の中心は委員会が最も中軸であります。委員会には多年農業政策その他のことを御研究の方がそろつておられるのでありますから、各党各派を通じまして、超党派的に——私は自由党でありますから自由党の農業政策を実行して行かなければならぬ立場でありますが、なお皆さんの御指導、御鞭撻によつてできるだけ国民の要望に沿う、そうして農民その人の幸福をはかり、また農村を振興させることに努力をしたいというようなことを考えるのであります。今後十分な御協力を得て、時代の要求に処して行きたい、こういうような考えを持つております。
  44. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣お話を承つたわけですが、ただ一点お伺いしたい点は、すでに二十八年度の予算も衆議院においては、われわれの立場から見ると実に遺憾ではあつたけれども、通過いたしまして、その農政に関する予算等を見ても、あの予算の中を通じて考えた場合においては、自由党の掲ぐる農政の面における公約というものは、まつたく実質的には骨抜きになつておるような点が多いということを指摘できるわけでありますが、今大臣お話なつた言葉のうちで、日本の農業というものは非常に零細化されておるので、そういうような零細農の中において農民が、社会的にも、経済的にも仕合せになるということは容易ならぬことである。そのためには日本の農民というものは、あくまでも勤労に次ぐ勤労をもつてその生活をささえなければならぬというような意味のお言葉があつたわけでありますが、そういうような考え方、ほんとうにまじめに農民が働くことによつてこの国の零細農がささえられて、その上に日本の食糧生産、食糧増産が行われるということを精神的に分析して大臣が言われておるにかかわらず、大臣大臣に就任なさる前において、例のハイアライ法案というものを議員提出の中の一人として御提案になつておるわけでありますが、このハイアライと、日本農業の上において、ほんとうに刻苦勤勉して農民は働かなければならぬというような問題を二つ対照した場合において、現在においても大臣は、あの法案を提案者としてこの国会を通過させ、成立させて行こうとするならば、それは今後の農政の上において何かのつながりがあるかないか、そういう点について一点だけ参考までにお伺いしたいと思うのであります。
  45. 田子一民

    田子国務大臣 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ところがこの法案についてのいろいろな説が行われておるようでありますが、ちようど御質問でありますからついでにお答えをしておきたいと思います。━━━━━━━━━━━━━━━━ところがはからずも大臣になりまして、大臣は議員立法をした先例は実はないのです。━━━━━━━━━━━━━━━━━。
  46. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の質問の本質をはずれておる。日本の農民は苦しんで毎日働いておるわけなんです。それを脱却するために、あなたの考えておるように、この国を、ばくち国にして、当るか、当らぬかということでやるという、そういう考え方を持つておられるのか。あなたは日本の農業政策を推進するための所管の大臣として、そういう考え方で今後のわが国の農政を推進される意図をいまだに捨てておらぬのかということを聞いておるわけです。これは実に重大な問題なんです。働くよりもばくちをやつた方がいいのだという結論を出して、勤勉するよりもハイアライの券でも買つてやればもうかるのだ、無理に暗いうちから暗いうちまで働くよりも、そういう方法もあるのだというようなことがあなたの考え方の中にあれば、農業政策の上において、勤勉しなくても農家経済がもう少し楽になるような方法をお考えになるのかどうかという点も聞いておるのであつて、憲法上の解釈とか、あるいはアメリカが云々ということを私は聞いておるわけではないのであります。
  47. 井上良二

    井上委員 ただいま農林大臣はその発言中において、きわめて不穏当にして、重大な発言をされております。憲法第八十九条の規定に対して疑義を生ずるがごとき発言をされておりますが、さようなお考えでさしつかえないようにお思いですか。━━━━━━━━━━━━━━━━━━というがごとき印象を与えております。これは実にゆゆしき憲法上の問題でございまして、われわれ速記録調べた上で、私は大臣の所見を十分伺いたいと考える。少くとも政府がこの憲法に対して疑義を狭むがごとき言論を弄することは、この憲法に対する非常な侵犯の言葉であります。われわれはこれは非常に重要な発言と考えますから、私は十分速記録調べた上で大臣の所見を伺い、当委員会としても必要な処置をとらなければならぬと考えます。
  48. 田子一民

    田子国務大臣 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ということを申すので、この憲法を侵犯するとかいう意味は全然ないのです。このことははつきり申し上げておきます。
  49. 井上良二

    井上委員 侵犯することはないというが、あなたのさきの発言によると、憲法によれば公の金をこれこれの事業団体に寄付することができなくなつておるが、ハイアライによればその利益があるのである、こういうのが今のあなたのお話ではないか。そうなりますと、明らかにあなたの解釈は憲法を侵犯しておるのではありませんか。
  50. 田子一民

    田子国務大臣 私は、━━━━━━━━━━━━━━━━━そういう意味で申しておるわけではありませんし、現行憲法を守らないというような精神は毛頭持つておりませんから、ただ言葉の末で何か間違つておる点があれば、それはいつでも私の精神通り訂正いたしますから御承知を願います。
  51. 坂田英一

    坂田委員長 両案に対する質疑はなお次会に続行することとし、本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時十三分散会