○渡部
政府委員 鉄道貨物運賃の問題は、
二つの問題を含んでおるのであります。給与ベースの値上げに伴う収入、増加をはかるための運賃の一割値上げ、それが第一なのであります。もう一点は貨物の等級を
改正する点であります。これは
鉄道の独立採算制の採用に伴いまして、収入をも
つて支出をまかなうという建前を貫徹するためには、最近の貨物の価格と従来の価格とのバランスがかわ
つて来たこと、それから他の運輸機関、つまりトラツクが非常に発達しまして、現在の貨物運賃の等級の立て方では、トラツクとの競争ができない。そういうふうな点から、この等級をこの際直して行こうというので、運賃の一割上げの方は運輸審議会にかけて、旅客は来年の一月、貨物は二月から実施する法案を出すことにな
つておるようでありますが、等級の方は、国有
鉄道公社の中に、
関係官庁、
鉄道を利用する荷主の代表者を寄せて貨物等級審議会というものをつく
つて、それによ
つて等級の
改正をして行こうということになり、一応の案がまとまりつつあるのであります。貨物等級の
改正の方は、実は運賃値上げとは別に、相当長くかか
つて、要するに貨物運賃の負担を公平にはかり、かつ他の輸送機関との競争に負けないような等級の仕組みをやろうというので、それには場合によ
つては輸送形態とか輸送距離とか、あるいは一定の貨車にどれだけ積めるか、つまり減トン制度をどういうふうに
考えるか、十五トンの貨車もわらであれば実量としては半分も積めない、あるいは木材も長さがいろいろ切り方にな
つておるので、貨車の種類によ
つて積める
実情が違うのであります。そうい
つたものも精査した上でこの等級を合理的にしよう、こういう意図で、貨物等級審議会は七月ごろから発足して、そういう点をつぶさに審議してお
つたのでありますが、急に運賃値上げと一緒にやらなければならぬということになりまして、時間的には相当余裕をとることができませんで、まだ折衝を重ねておるような
状態であります。
その内容を申し上げますと、等級別価格の基準というのを見ていただきたいと思いますが、従来貨物の基本等級は一級から五級であ
つたのでありまして、それのほかに六級から九級までがいわゆる政策割引で、品物の種類によ
つて割引を
考えてお
つたのであります。さらに十級から十一級までを減トン割引ということで等級は十一級であ
つたのであります。これを今度は貨物の実重量一トン当りの価格を基準にして一級から十二級にわける。さらに生活必需物資、その他この級にはめたのでは運賃の負担がよけいになるもの、こういう点を考慮に入れて特別等級を三等級つく
つたのであります。それを便宜二十一、二十二、二十三というふうな級にわけております。結局今度の等級では十五等級にしようというのであります。その等級の中の運賃の指数を見ていただきますと、従来の一級は指数二五〇、平均六級、指数九五ということにな
つてお
つたのであります。そして最低が十一級で指数五三ということにな
つてお
つたのであります。今度は、最高の指数がそんなに高くてはみなトラツクその他の運輸機関に流れて行くので、一級の指数を二〇〇、それからまた最下級の指数は十二級七五、これは
鉄道で輸送する場合の管理費とか利子等を含まない直接の経費をまかなう費用は何ぼかということを算定して、その指数を七五としたのであります。そういうふうな指数のきめ方にし、かつこの実重量一トン当りの価格のランクを、一級は、従来は百二十万円以上だ
つたものを百三十四万円に上げる、最低が従来は四万円以下であ
つたものを、こまかく貨物の実重量一トン当りの価格によ
つて十二級にわけておるのであります。こういうわけ方によりまして、全体の貨物につきまして、実重量一トン当りの価格を、荷主側の団体並びに
関係官庁にはかりまして、それによ
つて貨車載せの価格を算定します。それは地方によ
つて違うものもありますので、大体おもなる産地別の価格とその数量を加重平均しまして、貨物一トン当りの価格を出したのであります。それに基きまして逐一新等級に基く貨物別の指数を出したのが、貨物等級
改正案、
農林関係、
農林省
農林経済局
経済課、こういう縦の表と横の表とありますが、縦の表で申しますと、一番上の鮮魚下級というのは大衆魚のことであります。昔は鮮魚甲類とい
つておりましたもので、従来の等級で七級でありますが、今度は生活必需品として扱うので、特別等級の二十一級にする。そうすると指数は八五と八五ということであります。そういうふうにすれば、先ほど申しましたベース・アップに基く運賃値上げの一割を見なければ従来と同じということになるのであります。これはちよつと例が悪いのですが、その表の下から七行日あたりにわかめ、ひじき、てんぐさとありますが、てんぐさのごときは、従来の等級では七級、指数八五であ
つたものが、
改正等級では三級にな
つて指数が一三〇になる。従来の等級にはこの中にやはり減トンがありましたので、それに相当する今回の等級
改正に基く減トンを
考えると、指数が一三〇のものは一〇四になる。そうするとこの一〇四の指数で運賃を払わなければならぬということになります。従来八五の指数で運賃を払
つたものは一〇四になるので、従来に比べて二二%の増になります。最後の右の欄のA分のBで見ていただきたいと思います。
現在
農林省と運輸省の間でまだ交渉が全部できておりません。運輸省の方は非常に急いでおりますけれ
ども、われわれの方ではそう簡単に応ぜられないというので、お手元に「二月一日実施予定の貨物運賃等級に関する
農林省の申入」という一枚紙がありますが、係争にな
つておる点はその中に書いてある点であります。第一点は木材で、これは「貨物等級
改正案」という資料で最後から二枚目の表を見ていただきますと、下から十三行目に「原木その他」という欄がございますが、現行の等級は七級で指数が八五であります。これが
改正では七級で指数九五のものを約一トン減トンをつけて八八になる。これは木材の
実情から行きますと、中型貨車を使うのは全体の輸送量の四割ないし五割、小型貨車もそれ相当あります。大型貨車も二割内外あるのではないか。こういう点を
考えますと、この表だけでは指数はあまり上らない。つまり三%の上りであるというふうに見えるけれ
ども、貨車の利用状況から見ると実はもつと上るので、それでは満足できない。そこで木材の原木のその他、坑木、パルプ用材、不工製材のその他——不工製材というのは次の紙の一番上の欄にございますが、それらのものにつきましては、貨車のいかんにかかわらず従来の指数と同じ八五にしてくれという要求をしておるのであります。もしそれができなければ今のように貨車別、それから木材のいろいろな形態、すなわち長さとかかつこうに関連しての輸送量をもう少し詳しく調べて、どういう減トンをすべきか、また小型にも大型にも減トンがあるはずじやないか、そういうことをもつとはつきり調べてから二十一級でいかぬというならばかえるように、もう少し合理的にしてくれ、こういう要求をしております。それから魚類につきましては、先ほどの一番上の欄に返りまして、野菜が二十三級にな
つておりますので鮮魚の下級の分がそれと同じように、つまり生活必需物資の最重要なものの
一つであるという
意味で二十三等級で指数七五に、従来より運賃を安くせよという要求をしております。この点もまだ係争中であります。それからそのほかの物資につきましては、運賃の一割上げを
考えまして、それを含めて従来の運賃よりも三割以上になるものは三割にとどめてくれという要求をしておるのであります。この縦の表で見ますと、一番右の欄にA分のBというところがあります。そこでこれが一二○以下でありますれば運賃一割上げを見ても二二〇以下にとどまる。これはちよつと正確でありませんが、百十八、九ならば一三〇以下になるわけですが、この表で運賃一割を見ても一三○以上の結果になるものは一三〇になるように指数をかえて、その該当する指数の等級をつけろ、こういうわけであります。その品目はてんくさ、食料塩、生かんしよ、生ばれいしよ、たくあん(野菜塩づけ)、生野菜、茱類、荒茶、副蚕糸、牧草、ふすま、米ぬか、てんさいかす、魚かす、大豆かす、ほしさなぎ、鶏、薪、造林用苗木、桑苗木、脱穀機、落花生、そのほかこの表に載
つていない全体の貨物につきまして一々それをやりまして、今の基準に合わないものはこの方針にする、こういうのでこの点もまだ話がついておりません。
鉄道の方は、等級表は現行通りにして一年間この趣旨に合致するような運賃割引をや
つて、一年間た
つてからこの等級表の通りにしてくれ、こういう要求でまだ話がついておりません。なお特別等級に入れる品目につきましては、われわれの方でその四に書いてあります
農林省案として、たとえば調味料については、みそ、しようゆ、すを現在二十二と言
つておるけれ
ども、二十三にしてくれとか、あるいは牛馬は三級で、それに減トンを加えて指数が九一にな
つているが、これを特別等級の二十一にせよとか、以下鳥卵その他のものについてもそういう交渉をしておりますが、まだ話はついておりません。それからこの貨物等級とは直接
関係がございませんが、従来や
つております遠距離割引につきましては、みかん、りんごその他、特産地と中央市場との距離を勘案しまして、従来よりもより合理的な遠距離割引をしてくれということで交渉しております。この点は大体
鉄道の方も、たとえば千二百キロ以上を一割引とし、五百キロ以上を五分引にするというふうな案にな
つておりますが、具体的の荷物とその中心市場との
関係で距離を千キロにしたらいいか、五百キロを二百キロにしたらいいか、こういう問題でまだ最後の案はできておりませんが、大体この点はわれわれと意見が一致する、こういうふうに
考えております。等級の内容は非常に
技術的でおわかりにくか
つたと思いますが、今までの貨物等級
改正の作業折衝の進行状況は以上の通りでございます。