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1953-03-12 第15回国会 衆議院 内閣委員会厚生委員会連合審査会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十二日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員   内閣委員会    委員長 船田  中君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 大矢 省三君       大西 禎夫君    岡田 忠彦君       富田 健治君    橋本 龍伍君       森 幸太郎君    町村 金五君       粟山  博君    片山  哲君       吉田 賢一君    井手 以誠君       辻  政信君   厚生委員会    委員長 平野 三郎君    理事 野澤 清人君 理事 堤 ツルヨ君    理事 長谷川 保君       新井 京太君    勝俣  稔君       加藤鐐五郎君    永山 忠則君       吉江 勝保君    亘  四郎君       高橋 禎一君    山下 春江君       岡部 周治君    只野直三郎君  出席政府委員         内閣官房長官 江口見登留君         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君  出席公述人         日本退職公務員         連盟会長    野本 品吉君         官庁労働組合協         議会福祉対策部         長       亀山 坦二君         日本労働組合総         評議会法規対策         部長      参谷 新一君         日本教職員組合         中央執行委員調         査部長     矢田 勝士君         日本中小企業団         体連盟理事   遠藤九十九君         全国農民連盟幹         事長      中村吉次郎君                 鈴木 良三君  委員外出席者         内閣委員会専門         員       龜卦川 浩君         内閣委員会専門         員       小関 紹夫君         厚生委員会専門         員       川井 章知君         厚生委員会専門         員       引地亮太郎君         厚生委員会専門         員       山本 正世君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  恩給法の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 船田中

    船田委員長 これより昨日に引続きまして内閣委員会厚生委員会連合審査会公聴会を開きます。  私が連合審査会委員長職務を行います。  開会にあたりまして公述人各位にごあいさつ申し上げます。目下内閣委員会において審査中の恩給法の一部を改正する法律案は、国民的関心のきわめて深い法案であり、内閣委員会としましてはこの重要なる法案について公聴会を開き、広く国民各界の御意見を聞きまして、今後の審査の参考に資したいと存ずる次第であります。なお本法案ときわめて密接な関係にあります厚生委員会の御希望によりまして、連合審査会といたした次第であります。公述人各位におかれましては御多忙中のところ貴重なる時間をおさきになり御出席をいただきまして、委員長として厚くお礼申し上げます。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は、議事の都合上、失礼とは存じますが大体二十分見当にお願いいたしまして、公述人方々の御意見開陳が一通り済みましてから質疑を行いたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、発言内容は、意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならぬことになつております。また委員公述人に対して質疑をすることができますが、公述人からは委員質疑ができないことになつております。さよう御了承を願います。それではまず日本退職公務員連盟会長野本品吉君より御意見開陳をお願いいたします。野本品吉君。
  3. 野本品吉

    野本公述人 ただいま御紹介にあずかりました野本でございます。旧軍人軍属及びその遺族に対し、恩給支給の道を開くことにつきまして努力されました特例審議会各位、及びその建議を尊重いたしましてこれを予算化し、所要の法律措置を講じようとして本改正案提案されました政府当路者の誠意に対しまして、まずもつて敬意を表するとともに、幾十百万関係者要望にこたえ得る日が一日も早からんことを祈つてやまない次第であります。  さて、このたびの恩給法改正は、わが国現在の国力、新憲法精神近代社会思潮等に照しましてきわめて重大な問題として、学者政治家、ジャーナリストはもちろん、一般大衆に至るまでその成行きについて関心の深いものがありますので、私どもはあらゆる角度から総合的に検討を加えまして、この問題が一般の納得の行くような結論に達することを念願する次第でございます。この案を通覧いたしまして感得させられますことは、個々の問題に関する具体的内容のほかに、すなわち、旧軍人恩給を支給するという当面の問題のほかに、恩給制度一般の根本に触れる重要な問題がひそんでいるという点であります。私はまずかような観点からの所見を述べたいと思うのであります。  第一の点は、旧軍人恩給の問題を、恩給法の一部改正という方式によつて取扱われたことが適当でないと思うのであります。なぜかといえば、私はこの問題は、軍人恩給文官恩給とは本質的に違うものであるという認識の上に考えられなければならないと思うからであります。どこが違うかといえば、一般的に申しますならば、軍人恩給戦闘行為に伴つて起ります不慮の災厄としての戦死、戦傷病等に対しまして、国家賠償責任を負うところにその主たるねらいがありますことは、わが国恩給制度の先駆をなしております軍人恩給の歴史から見て明らかなことでありまして、これを近代的立法体系に当てはめるならば、災害補償法の範疇に入るべきものと思われる節があるのであります。軍人恩給にかつて納金がなかつたのはこの間の消息を語るものと思うのであります。後になつて、いわゆる職業軍人が生れて参りましたので、今の恩給制度に取入れたのであつて、もともと災害補償が主で、老齢年金としての恩給はつけたりであるという見方もできるのでございます。  第二の点は、将来の文官恩給は、国家公務員法に明記してありますように、健全な保険数理に基く長期財政計画の上に考慮さるべきものでありましてこの考慮が十分に尽されますならば、いわゆる恩給亡国の憂いを必要としないのであります。保険数理に必要なことは、公務員在職期間退職状況等に関しまする科学的に正確な基礎的統計に基く実態の把握と、これを通しての的確な推論、推計であります。ところが、軍人はその任務の特殊性から過去現在の事実を通しまして今後を推定する保険数理対象たり得ないのであります。今提案されておりますこの法案が、われわれの夢想だにしなかつた大戦の生んだ厖大な機軸者問題解決のために苦しんでいるこの一事が、一般公務員恩給との著しい相違を最も雄弁に物語つておると思うのであります。要するに、根本的に、本質的に違つておる軍人恩給と、文官恩給とは、それぞれの性格に応じて別個に考慮して施策よろしきを得るようにしなければならないと思うのであります。これを外国の例に徹しましても、米英等におきましても、明らかに両者を別建てとしておりますし、軍人からの納金をとつていないのであります。  次に、提案の形式が再軍備前提として理解されやすい。恩給制度公務員制度の一環といたしまして考えられなければならない問題でありまして、このことは社会保障制度が広汎に実施されておりますイギリスその他におきましても、厳として存在している事実に徴しまして明らかなことであります。退職公務員現職公務員、さらに将来の公務員をも含めた一連公務員対象とする恒久立法であるべきはずであります。従つて、今次旧軍人恩給のように、あとから続く者のない退職者だけを対象とする恩給措置と混同して考えることを許されないのであります。かような根本的に建前の違いますものを、恒久性を持つている現行恩給法の一部改正という方式で措置しようといたしますのは、いわば現職軍人存在、ひいて将来軍人存在前提としているものと理解されてもしかたがないのであります。少くとも現段階におきましては、軍隊もなければ軍人もない日本であります。憲法精神からいいましても、吉田総理が終始一貫して言われている再軍備否定論とも歯車が合つていないのであります。  以上のように、軍人恩給文官恩給本質的相違からいいましても、軍隊を否定している日本の現段階から見ましても、このたびの恩給法の一部改正という扱い方は当を得ていないと考えるのであります。これを旧軍人恩給臨時措置法とか、特別措置法という形におきまして現行恩給法からはつきりと切り離して扱うことが、一つには軍人恩給に終止符を打つたという印象から世論がおちつき、一つには再軍備ヘの前提であるというようなもろもろの批判を避けることができるのであります。  次に私は政府及び国会は新恩給制度制定に乗り出すべき段階に来ているということを申し上げたいのであります。国家公務員法第百八条には、「人事院は、なるべく速かに、恩給制度に関して研究を行い、その成果国会及び内閣に提出しなければならない。」と規定しているのでございますが、この法律が公布されましたのは昭和二十二年十月二十一日でありますから、それから実に五年半の年月を経ておるのであります。しかるにもかかわらず、人事院はいまだにこの重大な法律義務を果していないのであります。まさに怠慢のはなはだしいものといわざるを得ないのであります。またこの怠慢を内閣国会とが漫然として看過いたしまして、何ら鞭撻促進することなく今日に至つておることも、私といたしましてははなはだもつて理解に苦しむ点なのであります。  さらに言いたいことは、今度の改正は単に軍人恩給に属する事柄だけでなく、文官恩給に対しましても相当重要な事項に手をつけているのでありますが、国法によりまして、一方におきましては公務員の新恩給制度研究を義務づけられている人事院と、国会におきまして緒方官房長官等が言われますように、鋭意新恩給制度研究中でありますにもかかわらず、何ら連絡協議することなく、一方的に文官恩給に手をつけられたのは、これは官庁のセクショナリズムから来るのか、それとも政府政治的意図から出ておるのかわかりませんけれども、かようなところに施策総合性一貫性を欠く根源があると思うのであります。総じて現行恩給法は旧時代に生れたものでありまして、その後そのときどきの必要に応じまして部分的に修正あるいは改正を加えられて来たものでありまして、大正十二年の大改正以来実に十六回に及ぶ改正を加えて今日に至つておるのであります。従つて各所に不公正、不均衡あるいは矛盾を生じておるのでありまして、政府及び国会人事院を督励いたしまして、人事院研究成果の提出を求め、この機会におきまして新しい時代の新しい恩給制度制定確立に乗り出してほしいのであります。  次に具体的な問題につきまして若干申し述べてみたいと思うのであります。今度の法案のうちに恩給権を担保とする金融の道が開かれておりますことは、私どもといたしましてはまことにあたたかい政治のあり方として感謝いたしておるのであります。終戦恩給権によります金融の道がとざされましたために、受給者目当の好ましからざる金融機関各地に簇生いたしましてまじめな受給者が不当な搾取を受けていたのであります。四国の某所には専門会社ができまして、すでに全四国を風靡いたしまして、瀬戸内海沿岸各府県に手を延ばしております。新潟地方におきましてもこの種の会社のために実害を受けておる者が相当多数おるのであります。その他各地にこういうものが生れて参りましたので、私どもは前々から、あるいは恩給局あるいは郵政省等に対しまして監督を厳重にいたしまして、そしてこれらの人を十分に保護するようにしてほしいということを警告して参りましたし、かつ一日も早くその道を開くことを絶えず要望して来たのでありますが、このたびこの事柄が取上げられましたことはまことに喜ぶべきことであると思うのであります。ただここでこのことに関しまして希望しておきたいと思いますことは、貸付事務をできるだけ簡素化すること、それから恩給金融のためのわくを設けるような考慮がほしいということであります。手続が非常に煩瑣でありますために、せつかく開かれた道が十分に利用されない場合がたくさんあります。それから受給者の力は他の生産部門等に携わる者に比較いたしまして非常に弱いので、従つてわくづけがありませんと資金が他に流れまして、ほとんど受給者にまわつて来ないというようなおそれなしとしないのであります。  次に恩給ベースアップの問題でございます。特例審議会建議にはその仮定俸の備考に、「右仮定俸給年額昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律が実施されたものとした場合の昭和二十七年十月現在の公務員俸給給与水準基準としたものであつて公務員俸給給与水準が改定された場合には、それに応じ改められるものとする。」このことは昭和二十三年の七月に初めて文官恩給ベースアップをしたとき以来、退職給与制度としての恩給国家公務員法に明らかに示されております退職者が相応の生活を営むことができるような恩給を給することを目的とするものでなければならないという精神に出ておるのであります。しかるにこの考え方が捨てて顧みられていないのはどうしたことでしようか。おそらく財政上やむを得ないと言われるでありましよう。しかしかりに一応その点を了解するといたしましても、この事柄はやがて当然の結果といたしまして、将来次のような問題の起つて来ることを予想しなければならぬと思うのであります。それは国家公務員法の第二十八条に、給与原則とでもいいますかいわゆる情勢適応原則によりまして、給与減額の必要を生じたときに、恩給減額の論拠を失うことになるのであります。増額すべきときに増額することと、減額すべきときに減額いたしますことは表裏一体のものと考えなければなりません。増額はできるだけ押え、減額は手放し、これでは筋が通らないのであります。私は建議に盛られてありますスライド・アップ原則国会の皆さんによつて確認されますことを心から要望してやまない次第であります。  次にこの法案提案理由を見まして、私の感じております点は、その一つ国民感情等考慮してという言葉がそこここに散見いたすのでございます。これは無理もないこととも思いますけれども、はたしていわゆる国民感情というものが、恩給の何ものであるかという本質の上に立つての結果として生れております国民感情であるか、あるいはいわゆる恩給本質というようなものについて、深い考慮検討のない——たいへん失礼な言葉でありますけれども、俗論が国民感情の主流となつているのではないか、かような点から考えまして、政治国民感情を尊重しなければならぬということは当然のことでありますけれども、その国民感情のよつて来たる根源等につきましては、できるだけ冷静にこれに批判検討を加えなければならぬ、かように考える次第であります。  さらに法案のそこここに見えるのでありますが、軍人恩給の取扱いにおきまして、あるいは階級差圧縮あるいは上に薄く下に厚くということがしきりに考えられております。無理もないことであるかもしれませんけれども、このことは純粋な恩給理論の上に立つて考えます場合に、いわゆる社会保障制度恩給制度との混乱を起すのではないか、かように考えます。恩給は長年公務に従事した者に対しましてその在職年及び退職当時の俸給基準として支給されなければならぬということは、これは恩給の鉄則であると私は考えております。従つて最近の給与問題に対する考え方が、終戦後のいわゆる生活給という考え方から職務の難易あるいは責任の重大さ等に応じまするいわゆる職務給といいますか、身分給といいますか、こういうものに切りかえられておりますことも、これは私が申し上げるまでもございません。そういうようなものと比較考量いたしますときに、いたずらに階級差圧縮であるとか、あるいは上に薄く下に厚くという考え方を振りまわしますことは、考え方基準に動揺を来して来るのでありまして、この点につきまして、私どもはきわめて慎重な態度をとらなければならぬというふうに考えておるのであります。  その次に加算年の問題でありますが、軍人方々加算年のことにつきましては、これを認めまして、実役による金額の算出という方式をとりますことが適当ではないかという考えを持つております。それから在職年の問題でありますが、引続き七年という、この引続きという言葉は、多くの旧軍人の方にとりましては相当深刻な重要な点であろうと思います。私は引続き七年というのを、通算いたしまして七年という考え方に切りかえますことを希望しておる次第であります。  それから問題になつております第七項症ないし第四款症等の問題につきましては、軍人各位希望をもつともなこととして、これを尊重したいという考え方を持つております。  以上きわめて雑駁でありますが、私の感じております点を申し上げた次第でございます。要するにこの問題は委員長からもお話がございましたように、国民的に大きな関心事でありますので、この問題が合理的に適正に処理され、解決されますようにということを心から念願いたしまして、私の公述を終ることにいたします。
  4. 船田中

    船田委員長 次に、官庁労働組合協議会福祉対策部長亀山坦二君にお願いいたします。
  5. 亀山坦二

    亀山公述人 私は、非現業官庁に働いておる公務員をもつて組織しております官庁労働組合協議会を代表いたしまして、今回提出されております恩給法の一部を改正する法律案に全面的に反対をするものであります。  その理由の第一点といたしましては、労働組合として平和憲法を守り、再軍備反対しています基本的立場から反対するものでありますが、吉田内閣政治的方向防衛力の漸増という名のもとに事実上の再軍備行つており、しかもその地ならし工作仕上げとして、旧軍人恩給復活が意図されておるということであります。  第二点といたしまして、憲法はつきりうたわれ、全国民要望である社会保障制度確立方向に逆行するものであるということであります。第二点の反対理由を少しく説明いたしたいと思います。戦争はいやだ、再び戦争はしない、軍隊は持つまりと、七年前全国民は、日本歴史始まつて以来の敗戦という冷厳な事実の上に立つて、焼け跡をぼう然と見詰める農民、市民、労働者、荷物を背負つてつて来る兵隊、頭をざん切りにして、着のみ着のままで帰つて来られた引揚者の方々、それぞれこういう方々が胸の中にしつかりとこの言葉誓つたと思います。ところが世界の二大陣営の対立の中に、日本アメリカ世界政策の中で徐々にアメリカ一辺倒政策を押しつけられ、講和条約締結前後よりその傾向が露骨に現われて参りました。講和条約につきましては、このことが予想されましたので、われわれ労働者全面講和締結を強く主張して参つたのであります。講和の持つ意味につきましては私が論ずるまでもなく、一つの例を引用させていただきたいと思います。ヘツセル・テイトルマンが最も端的に一九五一年六月二日のネーシヨン誌において次のように言つておるのを読ませていただきたいと思います。「対日講和においてワシントンは二重の目的を目ざしている。すなわち日本を西太平洋における強力な反共のとりてとすること、およびアジアの工場としてその定められた役割を再び始めることを可能ならしめる保証——それは日本自身の再武装とアメリカ軍日本の島島に引続き駐留することによつて—を与えることである。日本の超保守的支配階級にとつて講和は常態への、すなわちマツクアーサーの改革の改善および他の改革の否認、日本労働運動の去勢、すべての左翼政治家抑圧処置に対する連合軍最高指揮官のブレーキの除去を意味する。日本工業家にとつて講和はさらに多くのアメリカの援助、アメリカ及び日本の経済が組み合わされて、日本の事業により多くの利益をもたらすことを意味する。それはまた無制限な廉価な労働に対する権利という神聖なる権利を従前通り保有することを意味する。」講和予備隊保安隊となり、増員され、装備国内治安維持以上の重装備になつて来つつあります。沿岸警備軍艦が、アメリカのかつて上陸用舟艇であり、しかも軍艦でないと言い張つております。戦車を特車と称しておるのであります。これらの事実は、国民の知らぬ間に既成事実としてつくられており、労働組合民主陣営弾圧政策の進展とともに、仮面をはいで来ていることは、驚くべきことであると思うのであります。学者文化人労働者などの反対にもかかわらず、破防法を成立させることによつて、言論の抑圧をほのめかし、労働三法の改悪を行つて労働運動を押え、人事院勧告、国鉄、専売裁定をも無視する公務員給与をきめることによつて、低賃金政策を行い、中共その他の貿易制限によつて平和産業軍需産業出血特需に切りかわらざるを得なくさせ、低米価、肥料の出血輸出による国内価格の高価などにより、農村の二男、三男は保安隊に志願するようにせしめるなど、一連政策が巧妙に行われているといわざるを得ません。この傾向は本年度においてはますます顕著になりつつあります。
  6. 船田中

    船田委員長 亀山坦二君に御注意申し上げますが、発言内容は、意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならぬことになつておりまするので、御注意をお願いいたします。
  7. 亀山坦二

    亀山公述人 警察中央集権を行い、強力な弾圧機構内閣が持つことができる警察法改正義務教育費全額国庫負担法といいますが、その実体は義務教育に従事する教員給与を負担するだけでありまして……(「恩給のことを言え」と呼ぶ者あり)この問題は、私の言わんとするいわゆる再軍備の総仕上げという意味であります。(「恩給のことを聞いているので、そういうことを聞いているのではない」と呼ぶ者あり)そういう背景を申し上げたのでありまして、もう少し言わしていただきたいと思います。  義務教育に従事する教員給与を負担するということだけでありまして、これが意図するものははつきりと教育中央集権化であり、現在最も熱心に平和問題と取組んでおります……(「恩給問題と関係ない」「やれやれ」と呼ぶ者あり)日本教職員組合弾圧であるということがあまりにも見えすいております。義務教育学校職員法をとりますと、この法案とそれから軍人恩給復活、今回の恩給法の一部改正がこのたび現われました最も重大なるものであると思うのであります。また昭和二十八年度予算を見ましても、軍事的費用は、前年度二三・六%に対し、二四・六%となつており、社会保障制度関係費は前年度七・八%に対し、六・五%と減少しているのであります。われわれ官庁予算におきましても、軍事的に関係あると思われますものは、その予算が増額され、人員も増員されておるのであります。この事実を隠し、吉田内閣行政整理機構改革を喧伝しており、このことはとりもなおさず、民生、教育保健衛生の縮小を意味するものと言えましよう。また吉田内閣社会保障制度に全然熱意を示さず、二十五年十月に勧告されました社会保障制度勧告を、二回にわたる国会議員全員の決議にもかかわらず、現在までほとんど実施されていないというような状態であります。  以上のような政策を強行しようとしている吉田内閣のもとにおいてなされる今回の恩給法改正、すなわち軍人恩給復活が何をもたらすかは、よくおわかりのことと思います。しかも今改正されようとしております恩給法は、大正十二年に体系が整えられており、明治憲法のもとにおける天皇の任命する文武官としての恩給であり、その改正昭和八年、十三年、十四年、十六年に二回、十七年、十八年と侵略戦争の進行につれて行われているのであります。ここにおいて私は、吉田内閣が再軍備のための地ならし工作仕上げをするために、憲法違反を犯してまで、軍人恩給復活という形をとつたということに、反対する第一点の理由があるのであります。今次戦争で死歿された旧軍人約百六十七万余の遺家族、傷痍軍人方々に対しては、われわれは恩給復活という形でこそ反対はいたしますが、社会保障制度を実現することによつて、その中で当然特殊な立場が認められることを否定するものでなく、このことをわれわれは切望するものであります。  今回の法律案社会保障制度確立に逆行するものであるという理由は、きのう末高先生が述べられておりますので、公務員恩給制度の現況を若干申し述べてみたいと思います。われわれ公務員は、政府の調査におきましても、現在約二十一万三千人が恩給の支給を受けております。また恩給法の適用を受ける公務員と、恩給法の適用を受けないで、長期共済制度による適用を受けている公務員とが、現在の国家公務員の中にあるのであります。これは現業の場合もございますし、現在の保安隊もこのようになつているのであります。この長期共済制度の適用を受けている者は、千分の四十という非常に高額な掛金を払つている。ところが文官恩給の方は千分の二十という掛金であります。このほかに、数の上だけ、また予算上だけの行政整理を行うということで、実際は公務員ではありますが、恩給も、長期共済も、健康保険の適用をも受けられない臨時職員が六十七万人いると、人事院の調査では発表されております。われわれ官庁労働組合は、組合運動の目標を、最低賃金の確立社会保障制度確立、軍国主義を官庁から抹殺する、官庁の民主化のため、平和を守るためにというスローガンを掲げて、現在まで行動して参りました。このゆえをもつて文官恩給に対しましては、官吏のみでなく、雇用人も含めた年金制度、社会保障制度の中における総合的年金制度の完備を目標とする考え方に立ちまして、大幅に改正することを強く主張して来たのであります。このわれわれの声を押えるために、特権官僚は自分たちに有利な恩給を温存し、千分の四十五の掛金をとる年金制度を昭和二十三年制定したのであります。低賃金であるにもかかわらず、下級公務員からかくも高額の掛金を天引き徴収することに反対し、その掛金を現在は千分の四十としており、また積立金を厚生福利事業に利用し、その運営については、われわれ公務員の声が十分反映するような運営にしておりますが、同じ公務員でありながら、事務官であるということによつて恩給の適用を受けることができ、国庫納金は千分の二十であるということに非常な不満が出ております。また現在の公務員の低賃金の状態は、こういう年金制度の差別に対しても大いなる不満を持つているのであります。上に厚く、下に薄いという職階給与、これは昨年末のベース・アツプを見ましても、吉田内閣では二千円ベース・アツプだと言つておりますが、実際は最低八百円から最高一万六千四百円に及ぶ幅があり、大多数の公務員は千円から千三百円しか賃金が上つておりません。しかも特権官僚である本省の課長以上は、二五%の手当を俸給の一部として、予算を計上せずにやりくりで支給しているのであります。このために良心的な局課長は、この手当をわれわれ公務員部下の前に出しまして、みんなで分配するようにという局課長さえ出ているような状態であります。このように侵略戦争を推進した官僚機構は、パージの解除を契機としまして着々体系が整えられ、軍人恩給復活、いなそれ以上のお手盛り保障がつくられつつあると言わざるを得ないのであります。われわれはこのような機構や制度に甘んじているものではありません。  以上のような理由でわれわれは今回の恩給法の一部を改正する法律案に全面的に反対するとともに、社会保障制度審議会が昨年十二月二十三日吉田首相に提出しました厚生年金保険、公務員恩給軍人恩給等、年金問題に関する意見書を全面的に支持するものでございます。この意見書の線に沿つて広く輿論を問うて本法律案を全面的に再検討されんことを、官庁労働組合員十五万名を代表して強く要望いたすものであります。  これをもつて公述を終ります。
  8. 船田中

    船田委員長 次に日本労働組合総評議会法規対策部長参谷新一君にお願いいたします。  なおこの際委員長より申し上げますが、午前に予定しておりました日教組の調査部鈴木勝見君は都合により出席できないので、同日教組調査部長矢田勝士君が見えております。同君を公述人と認めまして、矢田勝士君より御意見開陳を願うことといたしたいと存じます。なお同君には午後の部の最初に御意見開陳をお願いいたしたいと存じます。御了承をお願いいたします。参谷新一君。
  9. 参谷新一

    参谷公述人 私総評代表の参谷であります。私どもは素朴な労働者の集まりでありまして、政治家でもない、学者でもない、ただ素朴な意見を、私どもこの旧軍人に対する恩給復活の原案を一覧いたしまして、その中からくみとり得たものを卒直にここに開陳いたしたいと思います。  私ども恩給制度そのものに対しましては、少くとも資本主義社会におけるところの前期的なものでありまして、これは今日のような近代社会におきましては社会保障制度の中に解消されてしかるべきである、こういうふうにまず考えるのでございます。恩給制度内容につきましては各種各様の意見が現在までいろいろ述べられておりますが、私どもといたしましては、あくまでもこれは賃金の分割支払いといつた性格を持つておるように考えます。そこでこの分割支払いは停年後におけるところの生活を維持するためのあと払い的な賃金である、そういうふうに考えられます。そういたしますと今次政府の上程されておりますところの恩給法の一部を改正する法律案、こういう案件につきましては、先ほど申しましたような恩給制度そのものに対する基本的な考え方から、恩給制度のいかなる復活をも反対するものでございます。今回出されておりますところの案で一番強く考えられる点は、ことさらに恩給法のうちで特に旧軍人軍人のうちでも職業軍人だけを対象とした、しかもその軍人の中のいかに健康体であり現在社会的に相当向上した位置を持ち財産を持つておる者でありましても、この法を適用するという内容であると解釈いたします。そういつた点からも少くとも私どもの考えますところの、社会保障制度そのものを今度、近代社会の中に樹立して行こうという意図からは、まつたくはずれた方向にこの案ができ上つておる。そもそも先般の大東亜戦によつて受けたところの被害は、決して職業軍人だけではなしに、多くの国民的な規模において被害をこうむつておるのでございます。戦場はすでに国内におきましてもあらゆる空襲による甚大なる被害を受けております。こういつた点からも、また軍人でないところの在外邦人、ことに鮮満あるいは中支、北支にかけての邦人は非常な困苦の中に生命を賭してわが国に帰つて来た。しかもそれらの人々は一切の在外資産を放棄して、たつたリユツクサツク一つを持つてわが国に帰つて来たのが当時の実情であつたのでございます。しかも私どもはよく知つておりますが、満州から北鮮へ渡り、北鮮から南鮮へ渡り、南鮮からわが国に到着するまでには、これは見るも悲惨な、わが子をみんなのために殺してまで帰つて来たような現状であります。特に最近におきましては、多くの新聞で騒がれておりますように、自分の子供を放置してまで帰らねばならなかつた実情があの中にあつたわけでございます。こういつた実情と、それからわが国の国土におけるところの少くとも原子爆弾による被害を受けた広島とか長崎といつたところは、ことのほか甚大な精神的あるいは肉体的な打撃をこうむつております。特に経済的な打撃に至つては、つぶさに御調査願えば克明におわかりかと思いますが、非常な辛苦の中に今日まで生活に耐えて参つておるというような実情であつて、ひとり職業軍人のみがこういつた打撃をこうむつたものではないと考えるのでございます。そういつた点から国民的な規模において、少くともこういつた戦争による被害者あるいは戦傷病者、その遺家族、それらの人々の対策を考えるべきだ、このようにまず考えるのでございます。ことに今日におけるところの国民の貧困と疾病の現状は、戦争というものが社会政策一つの害悪として起りまして、その被害を国民として受けたわけでございますが、そういつた国の行う施策によつてこうむつた被害と同じように、現在の社会政策というものが十分行き届かないために多くの人々が傷つき、あるいは病気のために倒れておるのが現状である。なお貧困のために親子心中をするという件数を見ましても、年々刻々ふえておるような実情であると見ねばならないと思います。そういつた点から、やはり戦争による一つの被害も、また平和の時代におけるところの疾病という一つの被害も、ともども同じような見地に立つて、もつと広い大きな見地に立つたところの施策を講ぜねばならない内容を持つており、ことさらに戦争の被害だけを切り離す理由にはならないと考えるのでございます。しかしながら私どもは現在電車の中か、あるいは道路のわきでいろいろの人に遭遇いたしますが、特に目のない人とか、あるいは片手のないといつた人が非常に窮乏を訴え、ほんとうにこじきのような形で国民に訴えている実情を毎日のように見るわけでございます。こういつた人々に対しては、わが国の現在の経済情勢から一挙に社会保障制度といもうのをいくらつくり上げましても、取残されるという面がないでもないと考えます。こういつた人々のためには、特に別途に方法を講じまして元気な者をも含んだ軍人恩給復活というようなことではなく、そういつた実際に困つた人の事実の調査の上に立つて、この人々の救済に当る立法措置をつくつていただきたい、こう考えるわけでございます。また具体的な数字にわたることは、時間が限られた関係上申し上げることはできないと思いますが、少くとも私どもは、非常に素朴な労働者らしい意見をもつて、今日まで再三社会保障制度審議会、あるいは社会保険委員会、あるいは米価、あるいは住宅の問題について、あるいは政治に参与の幾らかでも許された範囲内におきまして最大の努力をいたしまして、私たちの実情を訴えるとともに、これに対しての社会施策の、少くとも社会保障制度を基調とした政策を推進するべくいろいろ努力して参りましたが、不幸にしてそれらのわずかな部分がいれられたのみで、ほとんどのものが放置されているような現状でございます。しかしながら現在多くの法ができ上つております。それは健康保険につきましても、あるいは、国民保険におきましても、あるいは都道府県の恩給条例にいたしましても、あるいはまた国家公務員に対する災害補償、こういつた多くの法案がございます。こういつた法案を少くとも内容を充実すると同時に、現在あります遺家族に対する援護法、あるいは傷病、特に戦争で傷つきました傷病の方々に対する援護法、これらのものを拡充強化すれば、必ずやこういつた不幸な人々は、公平に一般国民の被害者と同様に救われて行くと確信するものでございます。  なおこのように職業軍人のみに恩給を適用するという意図の中には、先ほど来の公述の方も申し上げましたように、軍人恩給の問題ではなしに、少くとも広く一般国民生活をまず安定させるという基本的な立場から、戦争遺家族や傷病兵に対する生活の保障も当然優先的には扱われるであろうかと思いますが、考え方としては、同じ基盤の上に立つて推進すべく政府あるいはあらゆる機関に要請して参りました。そういつたことがこの際受入れられずに、先ほど申しましたような、こういつた法案の提出という方法を見るについて、われわれが特に考えさせられる点は、現在行われておる警察法、あるいはスト制限法、あるいは住宅法、あるいは教育法、こういつたそれぞれの法案の中に一貫して流れる線がこの中にも含まれておるように疑うのでございます。そういつた疑いは、現在までの国会内における政府の答弁にも、いろいろりつぱな言葉が使われておりますが、それと同じようにこの法案につきましても、当該大臣は、社会正義のために軍人恩給をつくるべきだ、こういうことを言つております。しかし私どもこそ真に社会正義のためにいろいろな活動をして参つておるのでございまして、社会正義という立場から行けば、もつと広い、もつと大きな意味からの政策がとられねばならないと考えております。しかしながら先ほど来申しましたような各種法案の立法化につきましては、すべて私どもが苦しめられる方向方向へと前進いたしております。今日においては相当な活動の制約と発言の機会さえも失いつつあるような現状でございます。そういつた一連の流れから、私どもはこの法案も、何か特定な軍人に対して適用することによつて戦争経済樹立へ向いつつある現政府政策をこの中にも織り込んでおるのではないか、こういう疑いを持つわけでございます。どうか議員諸公におきましては、私どもが必ず安心できるような政策をこの中に具体的に——数字の上にも政策の上にも私ども労働者のみならず、中小企業者もあるいは一般国民もすべての人々が納得する法案をきめていただきたい。特に社会保障制度審議会の中に織り込まれております基本的な態度が、私どもの態度とほぼ一致いたしております。こういつた点と、昭和二十五年以来提出いたしております社会保障に対する意見と、昭和二十七年十二月二十三日付で出しておる審議会の案を十分御解読願いまして、私どもが先ほど述べましたような危惧を持たなくて済むような法案をぜひとも樹立していただきたいと思います。  時間の関係上具体的に数字にわたつて述べることができませんでしたが、先般来の議員の院内における討議その他をいろいろ見ておりますと、具体的な数字がそれぞれの議員から提示されておりますので、そういつたことでことさらに数字的な論拠につきましては省きましたので、どうかわれわれの意をくんで御賢察の上今後ともこの恩給法を一切下げまして、それこそ社会正義の上に立つた施策を進めることを切にお願いいたしまして私の意見を終りたいと思います。
  10. 船田中

    船田委員長 これより以上の三公述人に対しまして質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。山下春江君。
  11. 山下春江

    ○山下(春)委員 野本公述人に二点ばかりお尋ね申し上げます。野本公述人の御公述は、たいへんよく御研究になつてお呈して、われわれの大体意見を同じうするものでありますが、野本公述人のお話の中に、軍人恩給法の一部改正という法律提案の仕方でなく、現在日本軍人もいないし、あるいは吉田総理の言をもつてすれば、再軍備はしない、従つて憲法改正しない、こういう建前からいうと、将来も軍人がないであろう、そういうことから考えて、これは軍人恩給法の一部改正ではなく、特例法をもつて処理すべきだ、これは私どもも同感の点があるのでありますが、そういたしますと、最後のお話の階級差圧縮、要するに上に薄く下を厚くということは恩給法の根本原理に反する考え方であつて、将来さらにこういうことをやることにおいて困ることができるんじやないか、こういうことでございますが、その前段の御説明と後段の御説明とに、私ども聞いておりましてちよつと矛盾を感ずるのでございますが、その点に対する野本公述人の御見解を承りたいのです。  それからもう一点は、この法案軍人恩給証書を担保にしての金融措置を考えてくれたことは、非常にあたたかい措置であつて感謝すると言われておるのでありますが、実際問題としましては、私どものところに、国民金融公庫で扱うというので国民金融公庫へ行つて見たところが、——これは時間のずれがあるので行つた方が無理であるのでありますが、そういうことは扱つていないということで非常にがつかりしてしまつたがどうだろうという間合せがたくさん参つておるのでありますが、この国民金融公庫でこれを扱うことがはたしていいかどうか、御承知のように軍人恩給を持つておる人が、社会的に、あるいはすべての意味において非常に弱い地位にあるということは公述人の仰せの通りであります。法律にも「別二法律ヲ以テ定ムル金融機関ニ担保ニ供スルハ此ノ限ニ在ラズ」とございますが、野本公述人は、今の国民金融公庫で扱うということで、あなたの全般の御研究ということは、軍人恩給を受ける方々の総意であろうと思いますが、これでさしつかえないとお考えかどうか、その点の二点をお尋ねいたします。
  12. 野本品吉

    野本公述人 お答え申し上げます。最初私は、この法案の提出の形式につきまして、切り離して、旧軍人恩給善後措置法とか特別措置法とかいう形におきまして行われることが適当であると申しました。その理由は、そうすることによりまして、この問題に対する見方、考え方国民の受ける印象というものがすつきりして来るのでありまして、その点からその方が適当である、こういうふうに申したわけであります。  それから階級差の問題でありますが、私は、少くとも恩給法の一部改正ということになりますれば、恩給理念の上にこの問題が考えられておるのであろうし、また法案の表題から言いましても、そういうものでなければならぬと考える。そこで、恩給の理念から考えますと、長く勤めた者、それから責任の重い地位におつた者等は、短かく勤めた者、責任の軽い地位にあつた者と同一であつてよろしいという結論は出て来ない、かように考えます。  それから金融機関の問題でありますが、「国民金融公庫及別ニ法律ヲ以テ定ムル」ということでありまして、私どもは、国民金融公庫を利用いたしますことは、全国的に普及しております機関でありますから、一応それも考えられる。しかしながら、国民金融公庫というお役所的な金融機構で扱うだけでなしに、国が冷静に公平に判断しました一般金融機関を利用することが最も望ましいという考え方を持つております。ただこの場合問題となりますのは、その機関が全国津々浦々に普及しておるかどうかということ、それが実際にこの金融機関を利用する上からいつて考慮されなければならない大事な点であろう、かように考えております。
  13. 山下春江

    ○山下(春)委員 重ねてお尋ねいたしますが、金融機関については、今の御説明は御研究の結果と思いますから、それはお尋ねいたしませんが、前段の方は、仰せの通り、大将も一兵卒も同じでいいとはわれわれも毛頭考えませんが、今の特例法で処置することの方が、国民感情もすべてのものがすつきりする、一緒であつては不都合なんだ、一緒でいいという話はないじやないかということとの、そこの見解を重ねてちよつとお尋ねしたいのです。結論を申しますと、たとえば傷痍軍人の場合でも、大将の足一本も将兵の足一本も、なくなつたそのつらさ、生活に与える打撃というものは同じだと思う。そういう意味で、いいとは考えませんが、がまんをしてもらう、いわゆる特例法という考え方からがまんをしてもらう。こういうふうにわれわれに考えられるのですが、もう一度そこのところを重ねて御回答願つておきたいと思います。
  14. 野本品吉

    野本公述人 最初別個にやれと言つたことについて、まだ私の気持が十分おわかりにならないようですから申し上げるのですが、今度の恩給法の一部改正は、現在もあり、将来も続く公務員制度というものと大きな関連を持つている問題なんです。そこで、軍人の場合といいますと、少くとも今の段階におきましては軍隊もないのだし、軍人もおらぬのだから、現在及び将来に永続しております公務員恩給を規定する恩給法と、すでにその存在がなくなつている軍人恩給というものを同じ法律で扱いますということはどうも感じの上においてすつきりしないということを申し上げたわけです。  それから階級差の問題でありますが、大将の足一本と兵卒の足一本の値打の問題でございますが、これはだれが考えましても、大将の足一本でも兵卒の足一本でも値打が違うという考え方はできないと思うのでありますが、そこに、私が最初から申し上げておりますように、恩給という基本理念の上にものを考える考え方と、そうでない考え方との違いがあるのでありまして、今度の軍人恩給に対する措置は、私に言わせますならば、率直に言うならば、いわゆる社会保障制度とそれから恩給制度のあいのこのようなものだ。従つて社会保障制度的な感覚におきましては、今お話のございました大将の足一本も兵卒の足一本も同じような考え方をされてもさしつかえない、かように考えます。
  15. 山下春江

    ○山下(春)委員 御説明はわかるのでありますが、いわゆる国家公務員のうちの文官恩給でありますが、この文官恩給をグラフにいたして見ますと、非常に顕著な階級差がございます。そこで、これは将来どうしても再検討しなければならない段階にもう来ておると思うのであります。しかし政府は、この文官恩給の差を縮めるということは、なかなか勇気がなくてようおやりになれないところが現状であろうと思うのであります。そこで、この特例法というような考え方をもつてこの軍人恩給というものを考えるときに、あるいは非常に荒手術のようにも考えられるのでありますけれども、そういう点をある程度国民の納得できるような姿にしておくことが、文官恩給をおもらいになる多数の方の将来において、——たいへん恐縮な言い方でありますけれども、その方が若い方たちの叫ばれますところの、いわゆる社会正義というものにもやや沿うような、線の整えられたものが生れるのではないかということを前提にして私は今お尋ねをしておるのであります。その点に対して、野本公述人の非常にお苦しいお立場かとも思いますけれども、本心をひとつお聞かせ願つておきたいのであります。
  16. 野本品吉

    野本公述人 私が今申し上げましたことが、軍人恩給を圧迫するかのごとき印象をもし皆さんに与えたといたしますならば、それは私の考え方、気持と全然違つているわけであります。要するに、先ほども申した通りに、分離してやつた方が不必要に世論を刺激したりすることもないということと、それから、不必要な誤解を生ませることによつてこの問題の解決が渋滞するようなことを少くしたい、そういう気持ちから出ているのでありまして、もし必要ありとしてこれを文官以上に優遇されても、その必要がすべての者に認められる必要であるならば、われわれは何ら異存はないのであります。私の申し上げましたことを、軍人恩給を押えるというようなふうにお聞取りになられましたならば、その点は私の考えとまつたく違つておりますから、はつきりと申し上げておきます。
  17. 山下春江

    ○山下(春)委員 以上であります。
  18. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 野本さんにちよつとお伺いいたしたいと思います。私は、野本さんのお説に共鳴すべき点が非常に多いものですから、なおお考えをはつきりとお伺いいたしたいという趣旨でお尋ねをするわけであります。  まず第一に、国家正義あるいは社会正義という問題を考えますときに、現行の恩給法のもとにおいて、既得権とでもいいますか、恩給権を持つておる人たちの中に、今度の改正法でその既得権を失う者がある場合、これはあるなしについてはまた意見もあるところと思いますけれども、私は現行法のもとにおいて恩給権を持つている人が、改正法によつて既得権を失う者がある、こういうふうな見解を持つておりますが、その点について野本さんはどのようにお考えになるかということ、もしも既得権を失う者があるという前提に立ちますと、そういう既得権を失わさすような法律制度というものが、社会正義、国家正義ということを考えますときに、どういうふうな影響を及ぼすか、それらについて一応御所見を伺つておきます。
  19. 野本品吉

    野本公述人 既得権の問題でありますが、私は既得権に対して、一般的にいいますと次のように考えておるのであります。既得権が既得権として百パーセントの主張する権利を認められるということは、社会国家が平静な状態にあるときだ。従つて激動混乱の時期におきましては、かつて尊重されました既得権が、既得権でなくなる場合がある。これは恩給だけでなしに、いわゆる既得権ということに対しましてこのような考え方をふだんしておるのでありますが、今度の恩給法の一部改正によりまして、既得権を失うという人が、どういう場合であるかということを、私ちよとまだ頭にはつきり出て参りませんが、たとえば年齢の繰上げによつて、完全支給が受けられないような者がかりにあつたというような場合、それからいろいろな年数計算等によりまして、それが満たない者があつたというような場合、いろいろな場合があろうと思うのですが、これは国が本人を使用するとき、使用する者と使用される者との間におきます証文はとりかわしませんけれども、暗黙の契約がそこに成立しておる。従つて国といたしましては、国のあとう限りにおきまして、その契約履行に忠実でなければならぬというふうに考えます。たいへん抽象的でございますが……。
  20. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私は恩給法改正案内容を見ますと、これは現行恩給法の規定から見ますと、既得権というものを全面的に制限する形だ、こういうふうに考えますので、それはすなわち既得権を一部失うものだ、こう考えておるのでありますが、そういうふうに今私の考えておりますこと、それから先ほど野本さんのおつしやつた言葉等から、既得権を失う場合、あるいはその制限を受ける場合に、これがまた公平でなければならぬということを考えるわけであります。それを公平の観念から考えて参りますと、たとえば七項症の人たちが、今度恩給が全然受けられなくなる、それは傷病賜金という形で出ますけれども、これはそれを受ける人たちを全体の公平の観念から考えて、非常に不利な立場に追いやるものだ、こういうふうに考えます。また第一款症ないし第四款症の人たちが、これまで傷病年金を受けておつた、これがまた年金を受けられなくなつて、傷病の賜金を受ける、こういうことになることについても、既得権を制限されもしくは失うのが公平であるというふうに思えない、自分たちだけが不公平に、大きな犠牲を強制されるのだというような考え方が起ると私には思えるのです。その点についてはどういうふうにお考えになりますでしようか。先ほどそれはこの改正恩給法に入れなければならぬのだというふうなお話もございましたから、大体の御趣旨はわかりますが、全体から公平の観念に照してどうであるか、その他特にこれを入れなければならぬという理由を、なお一層明確にしていただけば幸いだと思うのです。
  21. 野本品吉

    野本公述人 ちようどいい機会でございますから、先ほど私が公述いたしましたときに、間違いがありましたので、ただいまお話のございましたように一款症、四款症、七項症の問題でありますが、私はこれは確かに既得権の侵害、制約であると考えております。従つてこの点はこれを修正しようとする御意見に対しましては、私も賛成しておるのであります。但しその理由等についてでありますが、公平、不公平ということになりますと、個々の人について議論をして参りますと、あくまで尽きない議論でありまして、大体一つの線を引いて、その線を境としての扱いをきめるということ以外に、こういうもののきめ方はないと思うのであります。個々人の比較論になりますと、どこまで行つても尽きない問題になつて参りますので、一般通念といたしまして、ここで一線を画す、そうしてその線の上に出たものと下に出たもの、これはもうやむを得ない運命的なものであるというふうに私は考えておるのであります。非常に抽象的な申上げようでありますが、御納得が行つたでしようか。
  22. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 先ほどのお話の際に、国家公務員法の第八条の規定を御引用になつての実に傾聴すべき御意見があつたのであります。この国家公務員法の規定の趣旨から申しますと、現行憲法のもとにおいては、国家公務員法の第百八条で恩給制度確立について努力するということは文官だけのことである、武官ないしは軍人という問題はこの中に入つていないことは明瞭なのでありまして、そういう御趣旨でお話になつたわけであると思いますが、そうしますと国家公務員法では、文官に関する恩給制度というものは確立して行かなければならぬという思想がここに見られる。軍人恩給の問題は、憲法改正後は制度上は考えていないわけです。ところが恩給法の建前からいいますと、先ほど私の意見を申し上げましたように、すでに戦争に敗れたといつてもやはり既得権があるわけですから、これを全然無視することはできないというように、私はやはり国家正義、社会正義の観念に照して考える。ところが恩給制度というものの本質からいたしまして、先ほど野本さんもおつしやつた、もはや制度として存在しないもの、恒久的な制度でないものについては、今度は考え直さなければならぬということも、また私は同感なのであります。そこに大きなむずかしい問題が起るわけでありますが、戦争のために軍人だけでなく一般国民も大きな犠牲を払つて、何とか処置しなければならぬという問題はたくさんあると思うのですが、しかし何といつて軍人はやはり国家のために生命を賭して戦つて、そのために命を失い、あるいは病気にかかり、障害を受けた人たちがあるわけです。恩給法の建前からいつて一つの既得権があり、そして現実の問題から考えてもこれを放置することはできないということは、これまた社会正義に照して私は当然だと考えるわけなのであります。ところが恩給制度という点から考えると、日本憲法のもとではもはやこれは解決するのに困難な状態にある。しかしこれは放置しておけないということになると、戦争犠牲者救済の問題もあるけれども軍人に関する問題を中心に解決をつけようという場合に、一つの特別な独立立法をもつて、既得権の問題、社会保障制度の問題も加味して解決をつけて行くべき法制ができなければならぬと思いますが、その場合、今の第七項症あるいは第一款症ないし第四款症の人たちが今までは恩給なり年金なりを受けておる。国家財政その他の事情から支払う額は少くとも、そういつた立場にある人たちだから、それを尊重して行くことが社会正義の上から見て当然だと思う。野本さんは、独立立法をやるにしても、七項症及び第一款症ないし第四款症の人たちに対する恩給なり年金といつた制度を残して行くべきものであるとお考えになるかどうか。
  23. 野本品吉

    野本公述人 私の考え方は、旧軍人恩給措置に対しましては別なわくをつくつて、そのわくの中で今お話のありましたような点を尊重して行くべきである、かように考えます。
  24. 船田中

    船田委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ暫時休憩いたしまして、午後一時より再開いたします。  公述人各位に対し委員長より厚くお礼申し上げます。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  25. 船田中

    船田委員長 これより再開いたします。  午前に引続き、恩給法の一部を改正する法律案についての公聴会を続けます。  公述人の皆さんには貴重な時間をおさきくださいましてわざわざおいでをいただき、かつ長くお待たせいたしまして恐縮に存じます。  議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は、議事の都合上、失礼とは存じますが、大体二十分見当にお願いいたしたいと存じます。公述人方々の御意見開陳が一通り済みましてから質疑を行いたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、発言内容は、意見を聞こうとする案件範囲を越えてはならないことになつております。また委員公述人に対して質疑をすることができますが、公述人からは委員質疑をなし得ないことになつております。さよう御了承願います。  まず日本教職員組合調査部長矢田勝士君より御意見開陳をお願いいたします。
  26. 矢田勝士

    ○矢田公述人 日教組の矢田でございますが、恩給法の一部を改正する法律案に対しまして、少し意見を述べさしていただきたいと存じます。  まずこれに対しまして私ども前提事項として次の五つの考え方を持つておるわけでございます。  第一の前提条件は、社会保障制度審議会が昭和二十五年十月に勧告いたしました。また昨年の十二月に意見書を出してございますが、この二つを原則的に支持してやはり全国民対象にした社会保障制度の一環として、統一的な国民年金制度とも申すべきものを確立しなければならないのではないかと存じます。従つて現在公務員恩給法にいたしましても、他の民間に適用されております年金の諸制度におきましても、老齢年金的な要素と、退職金的な要素が渾然として存在しておる。私どもは現在の公務員恩給、あるいは共済組合、民間の厚生年金保険、船員保険等、ばらばらに、従つて不統一に諸制度があるということについては、やはりこれは新しく進んだ理念のもとに統一する必要があるのではないかというように考えております。このようにして統一的な国民年金制度を確立するということと相まちまして、公務員あるいは公社職員、あるいは民間の被用者に対しまして、それぞれの特殊事情、労働条件あるいは雇用の特殊性というようなものを考慮して、これに適応するように合理的な退職金制度を実施する必要があろうかと存じます。また公務員給与が現在民間賃金とバランスがとれていないという点も事実でございまして、この点はやはりすみやかにできますことならば、やはり最低賃金制度というものの上に新しい制度が打立てられることを希望するのでありまして、この最低賃金制度の前提の上に立つて国民年金制度というものが打立てられるならば、公務員、民間、ばらばらに年金制度をつくらなくて済むのではないか、このように思います。  またこのたびの恩給法改正の中で大きな問題でございますところの軍人恩給復活という点でございますが、これは後ほども申し上げますが、もちろん私ども日本国民全体として反省しなければならない戦争のみじめな被害を、ひとり軍人方々にしわ寄せしようと思うものではございませんけれども、現行の憲法に照しまして、再軍備促進の懸念がうかがわれるような軍人恩給復活政策に対しては、反対をしたいと思うわけでございます。  以上のような大前提にのつとりまして、一部改正になります恩給法に対する意見を少しく申し述べたいと思います。  このたびの恩給法改正にあたりまして、大きな点として八つの点があげられておるようでございますが、その第一にあげられておりますところの加算制度の廃止という問題でございます。これは政府側の御説明によりますと、架空の在勤年数というものをいかにも実在年数のようにしてあるということはよくないので改めるんだということが言われておる模様でございますが、この対象になつております三十八条から四十条の関係公務員と申しますものは、たとえば結核関係あるいは癩病関係あるいは地下産業関係あるいは蒸気機関車の乗務員の方、いずれをとつてみましても、また特に官署の都合上僻遠の地にあるというような場合においても、普通の状態における勤務の一年と同じようにするということは、現在でさえそういう方面の希望者が乏しくて、特に結核関係あるいは癩病関係の療養所その他に勤務される方は、手不足を大いに来しておるような状態でございますので、この点はいろいろな財政上の考慮もあろうかと思いますけれども、人事行政上の考慮も特にお願いいたしまして残していただきたい、かように存ずるわけでございます。これは非常に強い要求でございます。  また第二の点になつております加給制度の削除という問題でございますが、これも大体似たような主張が全公務員において行われておるわけでございます。私が教職員でございますので、教職員関係の例を引いてみまするならば、すでに先生方御承知のように、義務制関係では四十年の最高のところで六四%保障され、高等学校関係で五六・三%の保障率であるものが、一律に四八・六%に下るわけでございます。このような六十二条の制度を設けましたゆえんのものは、当時の提案理由を調べてみますと、教育職の特殊性にかんがみて、有能な人材を教職に集め、長くその職にとどめる必要が特にあるから、この加給制度を設けてあるのだということになつております。またこれは非常にふかしぎに思うのでございますが、本国会提案されております重要法案一つでございます義務教育学校職員法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案というのがございますが、その中を見ますと、当分の間は従前の例によるということになつてつて、母法では削ろうとされておりますこの加給制度を、今新たにつくろうとする法律案においては、当分の間従前の例によるということを規定してある。これは矛盾であり、不統一を同じ政府のもとで法律案として出すということについてどうも割切れないわけでございます。このような意味で、その法案上の矛盾という点はともかくとしまして、このような前提でやはり加給制度というものは、この際存続をお願いしたいと思うわけです。  また第三の点で、若年停止の問題が出されておりますが、その理由によりますと、公務員退職時の年齢が上昇しておる、また同じように国の財政上の理由国民の生存年齢自体が、今までは人生五十年とか申しておりましたものが、最近の統計では六十二歳、六十三歳と延びておるというようなことも事実であるかと思うのでございますが、現在における統計上では、公務員退職後に恩給を受ける平均年数は五箇年でございます。従つてこのたび若年停止の年齢を五歳ずつ引上げるということになりますならば、おそらく退職公務員の平均恩給受給年限は、二年あるいは三年足らずの平均になつて、一時金なのか年金なのかわからないような姿になつて来るのではないかと思います。また英米等の実情を調べてみますと、公務員制度のもとにおきましては、民間の場合と違いましてやはり五年ずつ年金受給の資格を下げて若くしてあるわけでございます。人事行政面でやはりこの点も現状において考慮を願いたいと思うわけです。教職員の場合は、四十歳から五十歳の間に退職する者が、退職者のほとんど九〇%にも及んでいるのであります。そこで今後やはり停年制等との関係はあるかと存じますが、若年停止を一挙に引上げるということは、実情に即さないではないか、これは全官庁公務員の要求でもございます。  次に第四点の問題でありますところの恩給年額の一部停止については、さして意見がございません。  第五点の公務疾病恩給と扶助料の点でありますが、これは従来の戦闘等に関係する特殊傷病と普通傷病というようにわかれて参つておつたのを、このたびは一つにそろえるということのようでありますが、この点については平和国家としての実情に即する意味でそういう特殊公務による傷病疾病というものはあえて規定として残す必要もないかと思いますので、この点は特段の意見はございません。  第六点の増加恩給に対する点も取立てて申すことはございません。  第七点もです。  第八の点は、公務傷病の増加恩給の点でございますが、この公務員恩給制度は、現在の建前から申しますと、文官と警察監獄職員というものが恩給法対象としての公務員であります。この文官の公務員の中に、かつてのあの非常な犠牲をこうむりました戦傷病者の方々をのつけるということについては制度上私は肯定できないわけでございますが、その方々に対する特別の補償という意味内容の面では落されております七項症とか四款症というような問題については、実際的には補償する必要があろうかと思うのです。そこでこの恩給法の中で落されておるという点について異議を申し述べたいと申すよりも、むしろ他の制度のもとにおいて、職業軍人でなかつたが応召されあるいはやむを得ず軍人という肩書をいただいたような人々に対しては、たとえば現行法におきまする戦傷病者、戦没者遺族等援護法等の中においても補償ができるような措置はとり得るのじやないかと思うわけです。このような点では忘れてならないと思いますが、内容としてそういうところを補償していただきたいという気持と制度との区別という点であります。特に私どもは、前提で申しましたように恩給ということ自体あまり好ましく存じませんし、またここにありますように、年金を賜金というようにかえたという点においても、いかにも元天皇の官吏であるというようなにおいがする言葉でありますので、この点についてもあまり賛成でございませんが、先ほど申しました五つの前提条件をもし実際的に実現して行くとするならば、まず国家公務員法の百八条の規定にありますように、合理的な保険数理前提にして、やはり年金制度というものに切りかえて行くというのが第一過程、そして賃金その他の諸制度の前提条件が確立いたされて、国民年金に統一されるような、いわゆる確立された社会保障制度時代になりますならば、その際は公務員恩給とか、あるいは民間の何々年金といつたようなものはなくしてもいいではないか、一本にすることが可能であろう、そういう段階をふんで行つていただきたいと思うわけであります。現在日本の場合において社会保障制度自体が非常に軽視されておるようでございますが、特に医療制度の問題とともに、老齢者に対する保障という点が少いのが日本社会保障制度における一番の欠陥であろうかと存じますので、軍人に限らず、一般国民においても、やはり老齢者の老後の生活を十分にささえるに足るだけの年金制度というものは、諸外国の例に徹しても早く整備する必要があるのではなかろうかと考える次第であります。  またこれは直接今回の改正案の中にはないわけでありまするが、冒頭で申されますように、もし講和成立に伴つて新制度を整備するという前提条件でございますならば、昨年四月に独立いたしまして日本に帰属が明確になつた、たとえば北緯二十九度以北の十島村であるとか、そのほかまあこれは外交上の問題として残される点かもしれませんけれども、奄美大島そのほかの西南諸島等に在勤する公務員に対する年金制度というものの復活——現状の名前では恩給になりますが、これの復活がやはりここで取上げられていいのではないか、このように思う次第でございます。  以上要点のみにつきまして大要日本教職員組合意見を申し述べた次第でございます。
  27. 船田中

    船田委員長 次に日本中小企業団体連盟理事遠藤九十九君にお願いいたします。
  28. 遠藤九十九

    ○遠藤公述人 日本中小企業団体連盟理事の遠藤でございます。私の話は恩給を出す方の話であります。私たちは恩給をもらうということもありますし、私のせがれたちももらうのもございますが、今日はただ税金を出して恩給を差上げるという側から意見を申し述べたいと思います。戦後義理人情がボロボロになつてしまつた、日本の国はどうなるかわからぬということを私たちは心配いたしました。それがだんだん復興いたして参りまして、ここでひとつ軍人にも恩給を出そうかというようなことになつたということは、個人的に考えて進歩だと思います。私の申し上げたいことは、第一番に約束は守らなければいかぬ、それが第一であります。恩給国家が約束したのですから、支払えるようになつた今日、恩給をやらなければいけない。また私たちが兵隊を送る場合に——もつとも兵隊といつて日本国民皆兵でありましたが、私たちはからだの都合上、職業の都合上兵隊に行かなかつただけであります。一度はならなければならぬ。それを送つたときには、本人は勝つて来るぞといつて、大いに元気よくたつた、われわれはあとのことは心配するなといつて送つたのであります。このときの気持を忘れてはいかぬ。今日軍人に御苦労さんでしたと言う人がまことに少い。軍人恩給なんかそれほどもらいたと思わないと考えます。中には恩給をよこせよこせといつて大騒ぎをするが、ほんとうはどうも御苦労さんでしたと言つてもらいたい。戦犯だ戦犯だ、戦争に負けたのは兵隊さんのおかげだと、とんでもないことを考えて錯覚に陥つていたりする。それからまた遺家族、これも実に悲惨なものがある。ちまたには白衣の軍人が手風琴を鳴らして人に同情を求めている。われわれは見るに忍びない。また政府としても国民の福祉をはかるのが政治であります。こういう困つた人たちを幸福にしてやるということはけつこうであると思います。ですから、私たちは税金をどんどん出してこういう人たちを満足させたいと思います。そういう点からいつて、旧軍人恩給恩給の形式で今日復活するのは当然である、むしろおそ過ぎたと思うのであります。現在の私たちは少くてもいいから早く出してやりたい、こう思つております。ただそこに少し考えなければならないことがある。現在日本の国の経済がやみに面しているか、それとも光明に面しているかといいますと、いろいろのことを考えてみると、日本の経済は大きなやみに面しているということを考えなければならない。私たちが事業をしておつても、わずかなことに金に困る。品物はちよつと何か理由があると、必要以上に上つたり下つたりする。これは日本の国の経済の基盤が弱くてもろいからだと思います。ですから、現在ではどうもたくさん出すことができない。それではどうするかというと、できるだけ軍人さんたちにもがまんしてもらつて、階級制度というものは、昔は大将から兵卒まであつたけれども、今度はそういう階級制度はできるだけ少くしていただきたい。そうして働ける者や、富める者はできるだけ御辞退するようにしていただきたい。私は働ける者や、富める者が進んで恩給を辞退するというようなことが世の中に聞えたら、われわれはこういう気持で出す税金は、実にうれしく出せる、そう思いますから、まず救貧という含みを強く打出していただきたい。  これが出すことについての考えでありますが、一つ非常に心配になることは、私たちは恩給亡国ということをたびたび聞いておりました。軍人がはなやかなころ、日本もまたはなやかなころ、いろいろなぐあいに恩給というものはどんどん出ている。でありますから、旧軍人恩給は一応ここで一段をつけて今申し上げるような線で、少くてもできるだけがまんしてもらう。将来はどうしても社会保障制度に切りかえるべきものだ。こう思います。日本国家財政とにらみ合せてみますと、本年度の予算は、大体この法案に対して四百五十億、国民八千万一人当り六百円弱に当ります。これを私たちは出すのであります。それからこれを無制限に今までの法規通り野放図に出したら、千五百億あつても足りない。一人当り二千円以上もかかるというようになるとしたらたいへんなことになる。そういうことをよく考えて、恩給亡国にならないように、われわれの気持をくんでがまんしていただきたい、こう思うのであります。とかく与える者は旦那になり、もらう者はこじきになるというたとえがある。与えるものはできるだけ少く、そしてたくさんやつたような顔をしたい。もらう方は、何とか哀れなようなかつこうをして、よこさなかつたらば、おどかしてでもたくさんとりたいというのが、旦那とこじきの気持であります。そういうところまで行つてはならぬと私は思います。今日の財政の実情で、やるべきことは日本にはたくさんあります。旧軍人に報いるには、政府の原案を私はよく読んでみましたし、知合の方にもいろいろ伺つてみたが、現在の日本でできる最大のものらしい。要するに権利義務でなく、とる、やらぬというのでなく、両方があたたかい気持で、日本の現状をよく見詰めて、少くてもよいから、軍人には一日も早く、心から御苦労さんでしたと言つて、なお白衣の軍人がちまたにさまよわないように、そうして戦没遺家族が飢えないようにしていただきたいというのが、私たち税を負担する者の考え方であります。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
  29. 船田中

    船田委員長 次に、全国農民連盟幹事長中村吉次郎君にお願いいたします。
  30. 中村吉次郎

    ○中村参考人 恩給のことにつきまして私ども農民の立場から考えますと、恩給は旧軍人あるいは官吏に対して与えられるものでございまして、その性質は退職手当とか、あるいは年金、それに恩典といいますか、名誉といいますか、そういうものも付与されて設けられたんじやないかと思います。今日言うまでもなく、日本国民法律のもとでは平等に処遇されなければならないと思つております。すべての日本の職業人が自由になつている今日、農民だけが権力をもつてきめられた、引合わない米価で強権供出をしいられている現状であります。しかも私どもは根本的には、こういう恩給制度よりも、社会保障制度国民すべてが平等に国家の恩典に浴するようにこいねがつているものであります。すでに社会保障制度も一部分は実現しておりますが、そのいずれも農民には何らの恩恵を与えておらない現状であります。そういうことを私どもは念頭に置きまして特に旧軍人恩給復活について所見を申し述べたいと思います。  私どもは、旧軍人、旧軍属の人たちが現在生活に困つておられるということに対しては深い同情を持つております。これは食えるか食えないかという問題でございまして、過去のいかんを問わず、これはすべてが同情に値する人道上の問題だと思います。ことに戦傷者あるいは戦歿者の遺家族に対しましては、ほんとうに気の毒に存じておる次第であります。しかしまた一方、今度の太平洋戦争軍人だけが戦場にさらされたのではなくて、多くの国民が体験した通り、すべての人が戦闘に従事したと同じような境遇に置かれたのであります。そこでこの戦争の犠牲者はひとり軍人軍属のみではない。都市においては、家を焼かれ、生命をなくしたたくさんの犠牲者がおります。そこでこれらの人たちを救済するには、軍人といわず、民間人といわず、平等に戦争犠牲者に救済の手を差延べていただきたい。そこにもやはり社会保障制度を充実しなければならないという議論が出て来るのであります。たとえば旧軍人の人たちが、自分たちは司令部の命令によつて文官より以上に軍人恩給だけ剥奪された、この既得権を取返すのだというお考えならば、私どもはやはり反省をしていただきたい。司令部の命令だと申せば、農村においては、たくさんの地主の人たちは、一片の司令部の命令によつて、占領政治下に軍事的に先祖伝来の土地を取上げられて、政府にほとんどただ同様に買い上げられてしまつております。しかしそれすら、この地主の犠牲は農村の民主化、日本の再建のためにやはり耐え忍んでもらわなければならないことでございまして、講和発効して独立国になつたから古い権利を取返すという考え方よりも、私どもは現状においてやはり救うべきものは救う、そういう政治をとつていただきたいと思います。もちろん私どもは旧軍人や軍属、そういう人たちのみが戦争責任者であるとは毛頭思つておりません。文官にしろ、あるいは政治家にしろ、当時の日本政治をとつていた政治家のすべての人が戦争責任者だと私は思います。そこでやはり旧職業軍人と文官とは対等に扱わるべきだと思うのでございまして、文官の恩給復活しておりますから、旧軍人恩給復活せよということは当然そこから起つて来ると思います。そこで私どもは、恩給法特例審議会の答申の冒頭にございます、その在職中の給与が非常に悪かつた、在職中は生活を維持する程度のものだけにとどまつて軍人生活は非常に悪かつた。であるから、そういう当然の権利として国家に損害を要求するということでは納得が行かない。私どもは旧軍人とその遺家族は、少くとも戦争中においては決して一般国民よりも低い生活をしたとは考えられない。ことに赤紙によつて召集を受けました兵隊は、人間以下の生活を強制されております。ここに大きな問題があつたのではないかと思うのであります。  またこの改正法律案提案理由の説明には、国家財政の現状と国民感情の動向などを勘案してと書いてあります。この恩給法改正国家財政国民感情ということを考慮に入れておりますことは当然だろうと思いますが、国民感情にはいろいろのものがあると思います。新聞の投書欄などにも、いろいろこの軍人恩給復活については出ておるようでありますが、少くとも私どもは傷痍軍人、戦傷病者あるは戦没者の遺家族に対する国民の感情というものは、非常に同情的であり、国家財政が許す最大限の支出をしてこれを救済するということは、むしろ国民感情としては望んでいるのではないか。そうして、先ほど申し上げましたように、列車内や街頭において、生けるしかばねをさらして募金をされている白衣の戦傷君たちの姿が、この日本の社会からなくなつて、りつぱな手厚い保護を受けられることを望んでいるのではないかと思います。また昨年できました戦傷病者戦没者遺家族等援護法などはやはりもつと徹底して、こういう気の毒な方々に救済の手を差延べていただきたいというのも、国民感情ではないかと思います。また国民感情と申せば、軍人のみならず、一般官吏に対しても、私ども農民の立場からいえば、やはり反感は持つておるのであります。このことについては詳しくは申し上げられませんが、そういうのが日本の社会の現実ではないかと思います。従いまして、国民感情考慮に入れて法律改正されることは、私どもからいえば、たいへんけつこうなことではないかと思います。また一部には国民的な感情というものは、単に個人的に出るのではなくして、その社会の環境によつてそういう感情が生れて来るのでございますから、そのために、社会の環境というか、やはり政治の力で国民感情が健康な方に向うように制度をつくつていただきたいと思うのであります。また私どもは、こういう旧軍人や官吏に対する恩典的な制度について国民が反感を持つておるというそのためにも、やはり社会保障制度を充実していただきたいと思うのでありますが、今日の社会保障制度は、いずれにしましても徹底を欠いておりまして、非常に不十分であります。そういうところからも恩給制度をなお存続されておるのではないかと思いますが、できることならば私ども恩給制度をなくして、社会保障制度という新しい制度によつて、すべての国民が平等に国の恩典に浴するようにしていただきたいと思うのであります。  次は国家財政上のことを問題にされておるのでありますが、国家財政といえば、先ほども申されましたように、恩給亡国という言葉がございますが、この恩給亡国という言葉は、とりもなおさず恩給という制度はある限り、恩給の金は減ることはなくして、だんだん——ほとんど無制限にふえて行く。国の歴史が古くなるに従つて、この官吏のための恩給が無制限にふえて行くというところに、恩給亡国があると思うのであります。今日国家が支出する最大限の恩給を支払うならば、来年の支出も、さらに最大限になり、減ることがないということで、恩給亡国といわれておるのではないかと思います。  そこで戦前から恩給亡国反対言葉として、恩給返上という言葉もございました。先ほどの公述者の方から非常にりつぱなことを申されました通り、恩給返上という言葉もあるわけでありますが、ただ私どもは、軍人に対する恩給は自然消滅の姿になつてだんだん減つて行くものだろうと思いますが、一方において文官の恩給はふえる一方でありまして、私ども少くともこれを機会に、文官の恩給制度に対しても根本的な改革を加えて財政支出を合理化していただきたいと存ずるわけであります。  国家財政といえば、現在私ども日本の国を再建するために食糧の増産に励んでおりますが、本年度の農林省の予算では、五箇年計画で来年度二百二十三万石を増産するために、六百二十億の予算を計上されておりますが、それも半分に削られておりまして、農民の増産意欲は減退しております。さらに災害復旧などは少しも手がつけられない。こういう状態におきまして、今後国家の再建を根本的に打立てるこの食糧増産の施策すら、十分に行われておらない現状において、私ども恩給制度について国会の皆様方が根本的の検討をされることを希望申し上げる次第であります。  さらにまた引合わない米価を農民は押しつけられており、消費者に対しては高い米価を押しつけておる。そこで二重米価政策が要求せられておるのでありますが、これらの生産者米価、消費者米価について無理をしいられておるのは、財政的な理由一つでございます。従いまして私どもは、もつと積極的にこれらの政策に対して国家財政をつぎ込んでいただきたいと思うのであります。  またこの法律改正案を見まして私どもが非常に遺憾に思いますのは、先ほど申しましたように、軍人は官吏と同じように取扱わるべきだと思いますが、ことにその軍人の中には、職業軍人と、応召によつていやいやながらひつぱり出された兵隊がおるのでありますが、できればこの職業軍人のみに厚いような恩給制度は、やはり国民感情からいつても、よい結果をもたらさないのではないかと思うのであります。  八つの改正要綱の中の第一点は、先ほど日教組の方から指摘されましたけれども、この加算制度でございますが、最も多く農村から出ておる兵隊の立場からしますならば、この加算制度のおかげで恩給をもらえる人たちが相当おるだろうと思いますが、この加算制度の廃止によつて、兵隊は何らの恩典に浴せないのではないかと思うのでございます。また戦没者遺家族あるいは戦傷病者の援護につきましては、もつと今日よりも手厚くしていただきたい。先ほど七項症、四款症の話もございましたが、前の公述者と同じ意見でございます。ことにまたこの戦傷病者に対しましては単に恩給制度やあるいは援護法によつてこれを救済するのみでなく、すでに戦傷病者の人たちが要求いたしております強制雇用法といいますか、相当の企業体が義務的にこれらの気の毒な人たち、就職のためのハンデイキヤツプを持つておる不具の人たちを、義務的に収容して、不具は不具なりの勤労によつて、尊い勤労を通じて生活を打立てるということを考えていただきたい。少くともこういう制度は戦後七年間、今日までの間に実現されておらねばならなかつたように思うのであります。またこの旧軍人恩給復活につきましては、十七階級は多過ぎるという議論もあり、これは輿論の一致したところでありまして、私どもはやはりこれは先ほどの公述者が申されました通り、恩給制度は、昔の恩給制度と新しい社会保障制度の中間、両方を加味した意味におきましてもこの十七階級をできるだけ圧縮して、下の方に少しでも厚くこれが均霑されることを望むわけであります。  最後に私どもはこの恩給制度改正の機会に問題になりました社会保障制度を充実していただきまして、農民にも少くとも国民年金制度がしかれまして長い間刻苦精励して国家のために尽した農民に対しては、国家財政の許す限り国民年金制度その他の制度によつて報いるようにしていただきたい。また健康保険制度にしましても、農民はまつたくこの保険制度から見放されておるのでありますが、すでに長い歴史を持つ国民健康保険制度が少くとも今後農民にも利用できるような制度をつくられまして、健康にして老後を楽しみ得る農民生活をひとつ皆様方の手によつて実現していただきたいということを最後にお願いいたしまして私の公述を終ります。
  31. 船田中

    船田委員長 鈴木良三君。
  32. 鈴木良三

    ○鈴木公述人 失礼いたします。このたびの政府軍人恩給復活に伴う恩給法の一部を改正する法律案の趣旨には賛成でありますが、次の四項について改正または条項の加入方を希望いたします。  その一つは、改正案によりますと現恩給法よりは支給年齢が五歳引上げられましたが、ただ現に普通恩給を受けている者及びこの法律施行後六箇月以内に退職する者につきましては従来通りの停止をいたそうとするというのでありますが、軍人の場合にも昭和二十一年勅令第六十八号施行前の裁定済恩給証書を持つております者で、改正案施行当時満四十才以上の者にも支給していただきたいと思います。  それから一時恩給は勤続七年以上でなくても通算して七年以上の者にも支給していただきたいと思いますが、これは人員が多く、予算関係もありますので、国力の回復に伴つて善処していただきたいと思います。  次は、特に軍人の方で非常に生活に困窮しておる者があります。それで四十五才未満の受給権者すなわち若年停止者で、終身恩給を放棄して一時恩給をもらつて、何とか生業資金にでもしたいという方もあるようでありますので、そういう方には実在勤務年限を勘案しまして支給していただけるようにお願いしたいと思います。  次は昭和二十一年勅令第六十八号施行前、すなわち軍人恩給廃止前に恩給証書をもらつておる者で、勅令六十八号施行前の分をもらつておらない方がおりますが、その方は同年の閣令第四号によつて同年四月三十日まで支給することになつておりまして、その期間はもらえなくなりました。いろいろな事情でもらつていない方がおりますので、そういう方にもこの際支給していただけるようにお願いいたしたいと思います。以上であります。
  33. 船田中

    船田委員長 これより以上四公述人に対する質疑を行います。御質疑はございませんか。
  34. 大矢省三

    ○大矢委員 私は矢田さんにちよつと一つだけお尋ねいたしたい。昨日来の公述の中でたくさんあなたと同じような意見、すなわちもつと徹底した社会保障制度をここに打立つて、今度の戦争は総力戦で、国内が戦場であつたので、軍人軍属にあらざる人もこういうような大きな被害をこうむつておるのであるから、それをも含めた徹底したいわゆる社会保障制度をここに打立てる、こういうことが述べられ、また私どももそういうことを考えておるのであります。ところが、この長い間の日本の、何というか、教育がしからしめたというのか、制度がそうしからしめたというのか知りませんが、われわれはいわゆる社会保障制度のもとにおける救貧、防貧、いわゆるお慈悲、お情けでもらうのではない、われわれは国家の要請によつてこういう悲惨な目にあつたのであるから、国家みずからの手によつて国家からこれを補償すべきである。いわゆる国家補償でなければならぬという——武士は食わねど高ようじで、金の多寡は言わぬけれども、少くとも国家がこれに責任を持つべきである。そういう恩恵的ものではこれは断じて承服できないということを私はしばしば聞くのであります。そこでこれは社会保障制度内容についての理解というか、そういうことが国民に十分徹底していないことが原因でありましようけれども、そういうつまり長い間の慣習から来るもの、あるいは遺家族のりくつで解けない感情というもがあつて、われわれはほんとうに国の要請によつて親を失い、子を失つたのであるから、それに対する補償というものは、社会保障制度精神によらずして、あくまでもいわゆる国家補償のこの精神でなければならない。こういう強い要求があるのではないか。それについてどういうふうにこれをマツチさせるか、内容はそれぞれ一緒であるか、さらによりよいものになつても、その精神的な満足というか気分というものは、これはどうしても満足得られない問題で、その点をどういうことによつてあれするか。従つてこれは私の意見になるかもしれませんけれども、これは単独法をつくつて国家保障によるいわゆる援護と申しますか、戦傷者あるいは戦没者あるいは軍人、軍属その他の人にもそういう国家保障の形においてなすのだという、単独法をつくればその点が幾分私は緩和できるんじやないか、こう思つておりますが、そのいわゆる社会保障制度によつてこれをやるということについては、まだまだ一般に十分に納得が行かないのじやないか、こういうことを心配しておりますが、それについて何かお考えがありますならばお聞きしたいと思います。
  35. 矢田勝士

    ○矢田公述人 お答えいたします。私どもが社会保障と申します場合のその規定が、先生の御意見のように問題かと存じます。生活環境を取巻く普通の概念における社会とかいろいろございますけれども、私が申しますのは、日本憲法で申しますと第二十五条にありますように、また諸外国が二十世紀において新しい進んだ理念とされております国民生活権は、国家がこれを最終的に保障する。単に救貧、防貧といつたような生活扶助的な考え方でない、進んだ理念のもと心おける社会保障制度というものはあり得る。そうしてこの場合の社会はやはり最高の整つた社会という意味における国家というものを意味しておるというわけでございます。そこで私も前提事項として申し上げましたように、一挙に現行制度を改めるということは、雇用の条件、賃金制度その他の特殊条件もございますので無理があるかと思いますけれども、やはり暫時時をかすということは必要でございましようけれども、先生の御意見のように整つた、国民を平等に扱う意味における立法制度というものは必要ではなかろうか。これは公務員といえども単に既得権であるとか、あるいは期待権だからという意味で、私どもは先ほど申し上げましたような恩給法改正内容等について考えておるわけでございませんで、そのようなものができない現状においては、やはり給与等の関係、老後の生活という関係で、現行の恩給法の中で保障を願いたいという意味でございまして、恩給亡国の御意見もございましたけれども、昨年の公務員に対する恩給国家予算は九十三億程度で、今年はそれが百億をちよつと越したという程度でございまして、この印象が非常に強いのはやはり一挙にここに軍人恩給復活しなければならないという要請があつてか存じませんが、四百五十億、それがさらに来年は六百億になる、そういうように印象づけられるところから来るのではなかろうかと思うのであります。私どもは基本的な考え方としては、国家が最高の社会として国民生活を保障するという意味における年金制度を期待申し上げる次第であります。
  36. 船田中

    船田委員長 他に御質疑ございませんか。——質疑がなければ公聴会は終りたいと思います。  公述人各位におかれましては御熱心に御意見をお述べくださいまして委員長として厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会