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1953-03-09 第15回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月九日(月曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 船田  中君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 大矢 省三君       大西 禎夫君 理事 岡田 忠彦君       周東 英雄君    砂田 重政君       橋本 龍伍君    山下 春江君       粟山  博君    片山  哲君       吉田 賢一君    井手 以誠君       武藤運十郎君    辻  政信君  出席政府委員         総理府事務官         (大臣官房賞勲         部長)     村田八千穂君         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審査課         長)      城谷 千尋君         総理府事務官         (恩給局審議室         次長)     中嶋 忠次君         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ――――――――――――― 三月七日  委員大麻唯男君及び三浦一雄辞任につき、そ  の補欠として町村金五君及び山下春江君が議長  の指名委員に選任された。 同月九日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  井手以誠君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月七日  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  (甲斐文治郎紹介)(第三五九八号)  同(甲斐文治郎紹介)(第三五九九号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第三六〇〇号)  同(山下春江紹介)(第三六八一号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第三六八二号)  同(有田喜一紹介)(第三六八三号)  軍人恩給復活に関する請願外一件(松永東君外  一名紹介)(第三六〇一号)  同(坪川信三紹介)(第三六〇二号)  同(木村武雄紹介)(第三六〇三号)  同(東郷實紹介)(第三六〇四号)  同(尾崎末吉紹介)(第三六〇五号)  同外一件(高橋禎一紹介)(第三六五一号)  同(中馬辰猪紹介)(第三六八四号)  同外二件(荒舩清十郎紹介)(第三六八五  号)  同(坊秀男紹介)(第三六八六号) 同月九日  軍人恩給復活に関する請願灘尾弘吉紹介)  (第三七〇七号)  同(熊谷憲一紹介)(第三七〇八号)  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  (石井繁丸君外一名紹介)(第三七〇九号) の審査を本委員会に付託された。 同日  北海道総合開発予算大幅増額に関する陳情書  (第一八〇一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第一  一一号)     ―――――――――――――
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  前会に引続きまして、恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第一一一号につきまして質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。吉田賢一君。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法律内容について少し伺いたいと思います。  若年停止の件でありますが、これは他の年金法、たとえば厚生年金保険法等に比較いたしてみましても、同法律によりますと、命がけで作業に従事する炭鉱夫などにおきましても、大体が五十五歳の者であります。特別の場合が五十歳なんであります。これに比較いたしましていま少しく若年停止年齢引上げることが妥当でないか。また一般のわれわれの日常生活の実例に徴してみましても、四十五歳と言いましたならば、まだ十分に働く能力を持つております。言いかえますると経済を獲得する力がいまだ喪失されてない年齢とわれわれ常識的に解するのであります。従つてこういう点から見まして、政府の立法の若年停止に関する理由にもかんがみまして、これを厚生年金等に比較いたしまして少しく引上げるということが、国民的な今日の常識でないかと考えるのであります。こういう点について、どういうわけで四十五歳とおきめになつたのか。他の類似の年金等について十分に比較をなさる議論も行われたと思いまするが、恩給局長の所見はいかがですか。
  4. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 ただいまの御意見のことも十分に考えまして、若年停止年齢をきめたのでございます。最近におきまする恩給法上の公務員のやめました場合における退職時の年齢平均は、大体四十五歳前後でございます。警察、監獄職員にありましては四十歳前後になつているのでございます。従いまして、今お話のございました五十五歳未満退職する公務員相当数あるものと考えられるのでございます。これら公務員の中にはまつたく自己の便宜でもつて退職する者もあるかと思われるのでございまするが、また官庁事務都合によりまして——官庁事務都合と申しますと、いわゆる官庁人事新陳代謝といいますか、そういうような都合から退職して行く者も少くないように察せられるのでございます。しこうしてこの人たちは長い間民間言葉で言いますると役所勤めをしている人でございまして、いわゆる役人上りのつぶしのきかないような人が多いのでございます。従つて一旦官庁をやめまして民間に職を求めるにいたしましてもなかなか容易ならぬことでありかつまた職を得たといたしましても、その職で得られる収入だけで生活を維持して行くということもなかなか容易ならぬことと察せらるるのでございます。実情と申しましては、今給せられておりますわずかばかりの恩給と、新たに得た職から得る収入と両両相まつて生計を維持しているような実情じやないかと思うのでございます。そういうようなことを考えて参りますると、今お話のごとく年齢相当高く引上げて参りますれば必然的に官庁人事をかたくしてしまい、新陳代謝も十分に行えなくなるようなおそれがあるのじやなかろうかということを懸念するのでございます。この若年停止年齢をきめるにあたりましては、実際における官庁人事が一体どういうふうに行われているか、退職者年齢はどういうふうになつているかということを十分に考えてきめたわけでございまして、そういうことを考えますると、この年齢を高く引上げるということは、結局恩給制度におきまして、実際の人事の活溌なる行政を拘束するような結果になるおそれが出て来るのでございます。そういうことを考えまして、実はこの程度年齢でも少し高過ぎはしないかと懸念する向きもあつたのでございまするが、この程度のところに押えまして、一面におきましては今吉田委員の仰せられまするような要望に沿いつつ、かたがた一方におきましては実際の人事行政を拘束しないようなことを考慮した次第でございます。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 四十五歳を引上げると人事が停滞するというような御意見でありますが、これはいろいろな面から考えられるのでありまして、別の観点から人事の停滞しないような措置行政上講ずるのが至当であります。この法律はそれよりももつと根本的に、たとえば答申案恩給に関する建議理由記載に徴してみましても、老朽とか傷病とか、あるいは死亡等によります経済的獲得能力喪失従つてそういうものに対する国家使用者としての立場から、これを十分に補いたいというのが恩給制度精神であるというふうな記載もされております。この点につきましては、当初の恩給法建議が本委員会にかかりましたときの恩給局長の御説明も、大体そういうふうなものであつたのであります。これはやはりそういう人事の交流とか新陳代謝とかいうような派生的な結果から見れば、そういうこともあり得ると思いますけれども、やはり恩給という制度の本来から来る必要あるいは妥当性から、若年停止の線を引くのがほんとうでないかと思うのであります。われわれはやはり老朽とかあるいは傷病とかその他の遺家族といつたような人々つまりそういう気の毒な人々に対する社会保障的な精神を十分に織り込んで行くことが今後の恩給法一つのあり方であり、立場でなければならぬと考えまするので、そういう本来の立場からいたしますと、やはり今の恩給局長の御意見というものは、それは偶然発生するであろうところの問題からこれを論議されて、若年停止の線を引こうというお考えで本末転倒ではないかと私どもは思います。従つてその点はどうしても修正することが穏当ではないかと思うのです。また今警察官とかあるいは監獄職員の問題もありました。つまり他の文官の問題になりますが、文官の問題にいたしましても、やはり年齢については今日は再検討する段階に来ておるのではないかと思います。文官とその他の旧軍人遺家族等につきましても、これは恩給制度根本に触れる問題として、お互いに適当に調整すべき段階に来ておると思いますのでいたずらに過去の制度にとらわれることなく、この恩給法改正をきつかけといたしまして、いま少し社会の常識の納得し得る線で若年停止年齢をきめることの方が穏当ではないかと思うのであります。重ねてそれについての御意見を伺いたい。
  6. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私がお答えいたしましたのは文武を問わず考えまして今退職しまする公務員を中心にしてお答えをいたしたのでありますが、今のお話を承つておりますと、旧軍人に給する恩給につきましては、文官すなわち今の公務員がやめる場合に給する恩給とは違つた取扱いをしていいじやないか、こういうような御意見のようにも受取れるのでございますが、その点につきましては、いろいろ論議がございまして検討いたしたのでございますが、旧軍人の方と、それから今在職する公務員退職する場合との取扱いにつきましては、原則といたしまして差をつけないようにして行くべきではないか、こういうような見地に立つて考えて申し上げておるのでございます。従いまして今のお話のごとくに、旧軍人恩給を給しまする場合におきまして、若年停止年齢相当引上げる、そうして一般公務員退職する場合におきましては、少ししか引下げない、こういうような措置をすることもいかがなものか、こう考えておるのでございまして、ただいまの御意見にはにわかには賛成しがたいところでございます。しかして今お話のございましたように、いやしくも恩給を給する以上は相当年齢の人に給するようにすべきではないかこういう御意見につきましては私も同感でございます。しかしながら相当年齢に達した場合に限つて恩給する、いわば恩給初給年齢法律できめてしまうということになりますと、その年齢以下でおやめにならなければならない人も少くないと思いますので、そういう人に対しますところの恩給措置をしておかなければならない、こういうことになるのでございます。そういうことを考えまして、現行恩給制度におきましては五十歳でございますが、今度は五十五歳に年令を改めるわけでございまするが、五十五才未満でやめる場合におきましても、若干の恩給を給することにしておるのであります。すなわち恩給を給せられない者と給せられる者との間における断層と申しますか、それをなめらかにしておるのでございます。こういうような措置をすることは実際の人事行政に即した措置ではないかと思うのでありまして、五十五才になれば恩給を給する、五十五才をちよつとでも欠ければ全然恩給を給しない、こういうような措置をする方がいいかにつきましては、よほど検討を要することではないかというように考えておるところでございまして、現在とつておりますような措置の方が望ましいのではないかと考えます。今のお話にございました如く一般的に考えまして相当年をとつた者恩給を給するように考えて行くべきではないかという考え方につきましては、私も同感でございますけれども、それは人事行政の実際の裏づけ等をも考えつつ、漸を追うてそういうふうにして行きたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 次に加算廃止の点でございますが、三十八条ないし四十条が削除されております。そこで辺陬の地もしくは不健康の地域に在勤したる公務員もしくは不健康業務に従業したる職員についてお尋ねしたいと思うのでございます。とりわけ不健康業務でありますが、不健康業務従業員は非常に多数には上るまいと思うのであります。しかしながらこの三十八条の四に列挙してございます各不健康業務につきましては、これはこの際特段のくふうをいたしまして、やはり加算恩給を受くるというふうにするのが公平ではないであろうか。やはり恩給というものは公平の原理もぜひとも持つておらねばなりませんし、また条件の悪い業務に従事しておる者は相当に保護して行くという趣旨を含めまして、適当に年齢加算をして行くということの方が筋が通るのでないかと思います。私は三十八条の四に列挙してあります、たとえば「二 鉄道事業ニ於ケル蒸気機関車乗員トシテノ現業勤務」これは御承知の通りに石炭で走る汽車のことでありまするが、機関士というものの一日の仕事の苦痛は想像以上であることは御承知であろうと思います。特に年中八十度以上というふうにもいわれ、あるいはまた前後、左右、上下の振動に、からだは心身ともに消耗いたします。あるいはまた前方等に対する注意力集中のために、耳だとか、目だとかあるいは脳神経が消耗されて行く酷使されて行くこともはなはだしいのであります。従つて統計の示すところによりますと、機関車に乗務いたしておりまする現業の諸君は、五十五歳までは絶対にというほどに勤務は継続しないとまでいわれております。退職しましてから二年ないし十年で死亡しておりますし、平均寿命退職後四箇年であるということが医学的に調査せられて、統計にも出ておる次第であります。数字にいたしますと、従業員が三万五千ほどあるはずであります。これをなぜ一体削除なさるのか。削除するならば、これにかわる何らかの方法を考慮しておられるのか、この二点についてひとつ詳細な御説明を伺いたいのであります。なお運輸省から鉄道監督局長も見えておるようでありまするから、いずれからなりともひとつ詳細に御説明及び御意見を伺いたいと思います。
  8. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 ただいま吉田委員から仰せられました現行恩給法の第三十八条の四の第一項の第二号に掲げてありまする「鉄道事業ニ於ケル蒸気機関車乗務員トシテノ現業勤務」につきまして、加算の設けられていることにつきまして、その制度の設けられましたときにおきましては、それ相当理由のあつたことと思いますし、今吉田委員の仰せられましたようなこともあるいは理由一つになつていたかと思うのであります。ところでこの加算程度を考えてみますと、旧軍人があるいは戦地に行きました場合につけられることになつておりました加算程度に比べますと、ずいぶん低い程度加算でございます。すなわち戦地行つて戦闘勤務に従事した者にさえも加算を認めることのできないような現在の国家財政現状から考えてみますと、この加算制度を残しておくことは条理のつじつまが合わないことになるのではないかというような感じがするのでございます。また今までのお話によりまして、鉄道職員勤務の問題につきましては、とりあえず給与の面において十分考えなければならぬことでございますが、機関車乗員につきましては、従前に比較いたしまして、現在におきましても決して悪い給与が行われているわけではございません。私の方でいろいろ申し上げるよりも、ここに鉄道局の方が来られておりますから御説明願う方がよいかと思いますが、それ相当給与はされているものと思います。もちろん加算をがまんしてもらうということは、できれば避けたいと思うのです。しかしながら一方におきまして、旧軍人方々に対しましては非常に酷だといわれるような措置さえもとらなければならないような国家現状でありますことを考えますと、この加算につきましても、この程度措置をすることもやむを得ないのではないか、こういうふうに思つているところでございます。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 運輸省の御説明の前に局長に伺いたいのですが、財政上の理由がおもな根拠になつて削除したような御説明でありますが、しからば三十八条の不健康業務に従事する人に加算を認めるということにすれば、何ほど財政支出がふえることに計算上なるのか、その辺をひとつ御説明を願います。
  10. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私が今申し上げましたのは旧軍人方々に対しましても、あるいはその遺族あるいは傷病者に対してさえも十分な恩給が給せられない現状である、従つて生存せられているところの旧軍人の方で戦地に行かれた方でさえも加算をつけられない。しかもこの加算は今引用されました業務に従事された方々に比較しますと、それ以上の程度の高い加算がつけられておつたのであります。にもかかわらず、その加算さえも認められなくなつている現状から考えてみますと、条理上この制度を存置することはいかがかと思われる、こういうことを申し上げておるのであります。この加算だけを認めるということでございますならば、これはわずかな金額で足りると思いますが、私は制度全体の筋の問題として申し上げておるわけであります。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういうような御説明も一分の理由は成り立つと思います。成り立つと思いますが、この三十八条の四を削除しました根拠財政上の理由というふうな御説明でありまするので、それなら、ほかの戦地における加算廃止の問題を一応たな上げにいたしておきまして、三十八条の四を生かすことによつて、何ほどの財政上の支出が増加するのか、これをお伺いしたい。
  12. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今私はそれに対しましての明らかな計数資料を持つておりません。大した金額じやないことだけは申し上げられると思います。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大した金額でないのならば、財政上の理由というのは少し筋が通らなさ過ぎやしないかと思うのであります。大した数字でないのならば、やはり実情に適したような改正措置に出るべきであつたと私は思うのです。運輸省側の御意見を伺いたい。
  14. 植田純一

    植田政府委員 国鉄機関士恩給加算の問題でございまするが、機関士仕事性質は、ただいま御指摘になりましたように、健康上から申しましても非常にいろいろと問題の点がございます。またいわゆる責任という点から申しまして、非常に注意力集中を必要とする業務でございます。そういうような見地から申しまして、恩給加算が認められておるわけでございます。国鉄自体におきまする機関士の数は相当多くございまして、またその志気という点から申しましても、従来認められておりますところの恩給加算というものは、でき得べくんば存続いたしていただきたいというのが私ども気持でございますが、この加算制度を全般的に廃止するという政府の大きな方針に基きまして、全部加算制度を廃止しようということになつたものと承知いたしております。加算制度というものがもしも存続しまするならば、ぜひひとつ機関士恩給制度というものについても、ぜひそういうことに認めていただきたいというのが私ども気持でございます。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 恩給局長にお尋ねしますが、この三十八条の四を削除するにあたりましては、たとえばこの中には厚生省関係もあり、あるいは通産省関係もありますが、これらの利害関係を持つておる各方面の省当局といろいろ御相談があつたのか、そういうことなしにこれは立案されることになつたのか、その辺の事情をひとつ伺つておきたいと思います。
  16. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 この恩給法改正各省に関係することでございますし、従いまして、ただ単に私だけの一存でやれることでございません。もちろん今のお話のように、関係各省幹部の方とは十分に打合せをいたした結果に基いておるのであります。
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今運輸省鉄道監督局長は、幹部であるのかないのか存じませんが、あまり御存じでないようなことを承つたので、私はあなたに伺つたのでありまするが、これはやはり各省とよく緊密に御連絡をとりつつ検討なさつたら、私はもし削るとすれば第二の何らかの措置があつてしかるべきではなかつたかと思うのであります。御相談なつたような今の御説明でありまするけれども、どうも少し納得行きかねるのであります。しからば運輸省の方におきまして、これが削除されるならば第二の何らかの対策措置を講ずる必要はないのか、存続せしむるならばともかく、なくするということになれば、やはりこういう非常に重大な任務を持つた機関車に従事する乗務員立場を考慮せられて、何らかの措置を講ずるのでなければいけないのじやないか、私はこう思うのでありまするが、その辺について国鉄内部において何らかの御用意でもあるのか、御説明を聞きたい。
  18. 植田純一

    植田政府委員 機関士待遇につきましては先ほど来お話がございますような非常に特殊な勤務性質上、いろいろの面におきまして、先ほど恩給局長から話がございましたようにかねて待遇につきましては考えておるわけでございますが、今度この恩給加算制度がなくなりましたあかつき、これに対する何らかの方策につきましては、目下国鉄当局におきまして検討いたしておる次第でございます。私、実はその詳細につきまして承知いたしておりませんが、国鉄当局におきまして、共済関係あるいはその他とにらみ合せまして、何らかの対策を考えなければならぬ、また考えておるというふうに承知いたしております。
  19. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 何らかの対策措置を講ずるようなふうに承知しておるということでありまするが、この新しい恩給法は来月一日から発効して行くのであります。もちろん予算措置ということになれば、また別途考慮しなければ——予算案政府から国会に提出されておるのであります。だからそういう辺は何らかの措置なり、対策があるだろうという程度では、これは結末がつかぬのであります。運輸省の方ではこれを存置せしむることが相当だという御意見であれば、存置しないことになる形勢に対しては相当責任のある御答弁を願いませんと、半年、一年先になるということであれば、非常に不公平な結果に陥ることになる。この辺につきましては、もつと責任あるその意思なり、用意なり、あるのかないのか、準備中であるのか、検討中であるのか、具体的な内容を御説明願いたいと思います。
  20. 植田純一

    植田政府委員 何らかの対策と申しましても、具体的に目下国鉄検討中でございます。実施のある程度猶予期間もあるようでございますので、この実施までにはもちろん具体的な対策をきめると思いまするが、現在国鉄当局におきまして具体的に検討中であります。
  21. 井手以誠

    井手委員 関連して運輸省植田局長にお尋ねしたい。ただいままで吉田委員の質問に対して、お答えがはつきりしないようなので御質問いたしたいと思います。この機関車乗務員に対する加算がなくなつて乗務員志気影響するのかしないのか、その点を第一点としてお伺いいたします。それからそういう内輪からぜひ存置してもらいたいという要望があつたかどうか、第二にお伺いをいたしたい。第三には監督局長として、いわゆる監督省としての立場から、この改正について恩給局に対してどのように交渉なさつたか、具体的に承りたい。以上三点を承つてから、さらにお伺いいたします。
  22. 植田純一

    植田政府委員 第一点の志気影響するかどうか。もちろんこの恩給加算の存続につきましては、関係従業員より要望もございますし、その意味におきましては志気——志気という言葉の解釈によりますが、全然影響ないということは言えないと思います。ただ全般的な恩給の改革の根本趣旨等から見まして、あるいは納得していただけるかどうかという点はあろうかと思いまするが、全然志気影響はないということは言えないと思います。  第二点の要望の点でございまするが、これも先ほど申し上げましたように、従業員の方からは強い要望がございます。また恩給局に対してどういう交渉をしたか、こういう点でございまするが、この恩給法改正案につきましては、実は次官会議にこの案が出まして、次官会議相当検討なつた、かような状況で、先ほど御説明がありましたように、政府としましての大局的な見地から、その結果この案が政府案としましてきまつた、かような経過をたどつております。
  23. 井手以誠

    井手委員 重ねてお尋ねいたしますが、ただいまのお答えによりますと、機関車乗務員を持つておる関係のある運輸省としては、特別の交渉はなさつていないように考えるのでありますが、関係のない省も一緒にして、次官会議で了承したというようにとれるのでありますが、さように解釈してよろしいのでありますか。
  24. 植田純一

    植田政府委員 もちろんこの恩給法の問題につきましては、かねていろいろと話は聞いておつたのでございますが、その恩給法のほんとうの改正案というものにつきましては、はつきりとした線では実は承知してなかつたわけであります。次官会議におきまして、相当いろいろと議論が出たようでございまするが、大体この線で政府としての態度はきまるというふうに承知いたしております。
  25. 井手以誠

    井手委員 どうも国鉄その他不健康業務に従事する者を多数持つておられる運輸省局長としては、特別の努力を払つておらないことがはつきりいたしたわけであります。先刻来の答弁によつても、具体案というものもあまりお持ちになつていないように考えられるのであります。意見は別にいたしまして、志気に幾らか影響があるということですが、それではここでお伺いしたいことは、運輸省としては政府の案がこうきまつたからいたし方がないというお考えであるか。またこうなればいたし方がないとしても、別に幾らかの考慮を払うというお考えがあるのか。国鉄がやつておられるように承わつておるということではどうも私は了承しかねるのであります。監督局長としてどういうお考えを持つておられるか、この点をお尋ねいたします。
  26. 植田純一

    植田政府委員 加算制度を残すか残さぬかにつきましては、政府の最高方針としてきまりました点でございますので、先ほど申しましたように加算制度というものが残るようでありましたならば、当然乗務員もぜひ考慮していただかなければならぬという気持はあくまでも持つております。しかし最高方針がいいか悪いか、これは国会の御審議にまたなければならないわけであります。なおもしもこの加算制度が廃止になりました場合、国鉄従業員に対する対策としましては、共済組合の関係等をあわせまして、これに対する対策はぜひ考えなければならぬ、かように私たちは考えております。ただ具体的にどういうことを考えておるかということにつきましては、先ほど来お話申し上げましたように、目下国鉄でその案について検討中でございますので、今ただちにどういう方法で、どういう話合いが進んでおるかということにつきましては、まだ申し上げることができないのでございます。
  27. 井手以誠

    井手委員 もうこれ以上私はお尋ねいたしません。監督局長の熱意のほどがよくわかりましたので、関連質問を打切ります。
  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 三十八条の四に、総理大臣がきめまする不健康業務がたくさんにあります。これは主として厚生省関係でありますが、厚生省の政府委員は今日は何かさしつかえで来ないようでありますので、不健康業務並びに不健康地域、非常に辺陬な地に従業する人のはあとに保留いたしたいと思います。ちよつと委員長にお尋ねしますが、お答え願える政府委員は見えておらないのでしようね。
  29. 船田中

    船田委員長 厚生省の政府委員は目下のところおりません。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから燈台その他の辺陬の地、幾つもないのでありますけれども、北海道とかあちらこちらにありますが、そういう燈台などの所在する辺陬の地、そういう辺に従事する職員に対する恩給関係の加算廃止ですが、この辺も御答弁願える方は見えておらないのですか。
  31. 船田中

    船田委員長 おりません。
  32. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 じやこの次に譲りたいと思います。それから今の運輸省の方におきましては、ひとつ特段の御考慮と、しかるべき対策を大急ぎでお立てくださらんことを御希望申し上げておきます。  それから仮定年俸の階級の差の問題でありますが、これにつきましては、私どうも納得しがたいのは、今日、日本では事実上大将も中将もなくなつておると思つておりますのにかかわらず、その職名でありまするかを麗々とお書きになつて、そこへ仮定年俸の階級差が定められておるようでありますが、これは何か別のくふうで、国民感情や、いろいろな情勢に即しまして、何か所得を標準にいたしまして、階級差をもつと圧縮するという方法で、これは修正するということにする方が非常にすつきりするような感じがするのですがこれにつきましてはいかがでございまよしう。世論もそういう方向にだんだん動いて来ているように考えられますので、御所見を伺つておきたいと思います。
  33. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 この仮定俸給をつけます際におきましては、今お話のようなこともいろいろと考えに入れまして検討いたしたのでございます。ところで根本になりますことは結局、旧軍人の方やまた旧軍人の遺族の方や、旧軍人傷病者方々に出す恩給と、一般文官に給するところの恩給根本的な態度として差別してかかるかどうかということに帰着する問題ではなかろうかと思います。もしも旧軍人の遺族の方やあるいは傷病軍人方々あるいは老齢軍人方々に対しまして、一般文官に給される恩給と全然違つた差別的態度をとるならば、いろいろな案が考えられるかと思うのであります。ところでそうではなくして、原則としてそういう差別をしないということを目途としながら、やむを得ない事情から来る要請に限つて若干の差別あることはやむを得ない、原則としましては差をつけないということを目途として行きますならば、どうしてもこういう仮定俸給をつくらざるを得ないことになるのではないかと思うのであります。今のお話のように、階級による差を圧縮するということは、結局はたとえば、極端なことを申し上げますならば、上等兵なら上等兵、あるいは伍長なら伍長のところの俸給に全部合わしてみたらどうかということも一応の案としては考えられるのでございます。そういうことをいたしました場合には、一体どういうことになるかということを考えてみますと、かりに少尉の方でありますと、七十五円の俸給をもらつてつたのでございますが、そういう俸給をもらつてつた文官やその遺族の方が今もらわれておる恩給金額よりも少い金額恩給を少尉の遺族の方や、また少尉の傷病軍人の方に給するような結果になると思います。そういう差別をするような考え方に立ちますならば、この仮定俸給はいかようにもつくりかえられると思うのでございます。昔文武官肩を並べまして、そして同じように恩給を給されておつた者に対しましては、同じような恩給を給することを目途として考えました結果、こういうような仮定俸給になつて来たのでございます。
  34. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはしばしば伺う御意見でありまして、根本的に少し見解が違つておりまするから、何ぼ言つても平行線であると思いますので、私はこれ以上は触れないことにいたします。  しかしただ今後公聴会も開けることでありまするので、各方面の意見が出ると思いまするが、世上だんだんと私の申しましたような線へ意見が高まつて行きつつあるということも事実でありますし、新聞の論調を見ましても、世評覚ましても、だんだんそういう方向へ向きつつありますので、委員会が終了しまするまでに何らかの修正案が本委員会において用意されることになるかもしれませんので、その辺もお含みの上なおそういう修正にも応じるような御用意をひとつお顔いしておきたい、こういうことを御希望申し上げておきたいと思います。  それからこれは何か新しい法律が出たようにちよつと聞きますが、手元に法案は持つておりませんが、船員の問題であります。これは御承知の通り、戦時中船も人も全部管理してしまいまして、国家総動員法による応召となり、それから陸海軍の輸送船に配属せられました瞬間に、国家総動員法による応召身分がなくなり、事実上軍属として扱われて行つた、こういうことになつておるのであります。これは国家総動員法による応召として扱うのが至当であるのか、あるいは至当というよりも、そういうふうな扱い方の方が公平になるのかどうかということは議論があるといたしましても、今のところは事実上、遺家族援護法によつても十分な救済をせられず、また軍属として扱われずに来た様子であります。これが解決策として何か新たに立法措置が国会に提案されたようにも聞くのでありまするけれども、私は、今申したように、その原本を持つておりませんので、はつきりいたさないのでありますが、これに対してどういうふうな恩給法上の処分をなさるつもりであるか。援護法によつて依然としてこれを扱つて行かれるのか、その範囲、その理由、あるいは新しい立法が今提案されたとするならば、その名称だけでもいいですから、その辺につきまして局長に御意見を伺つておきたい。
  35. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 ただいま御質問がありました船員の問題につきましては、恩給法上の取扱いをしますることは困難な事情がございまするが、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案というのが国会に提出されております。この法律案によりまして、今お話になりましたような問題も取上げて援護の措置を講ずることになつておるように承知いたしております。
  36. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この船員は実に大きな犠牲を払つて来た人々でありまして、御承知と思いますけれども、大体四万五千の数のうち四割は死没しておるのであります。従つてこの遺族も厖大な数に上るわけであります。これは恩給法の範疇で措置ができないということは私どうも納得行きかねるのでありますが、これはやはり陸海軍の船に配属された以上は、その瞬間に軍属の身分を大体において取得したものでないかと思うのであります。その辺はどういう理由恩給法の適用を受けることに支障があるのか、軍属ということを認めることに何か故障があるのか、その辺をひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  37. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給法の対象となつておりまするものは、恩給法上の公務員として恩給法に規定されているものに限られているのでございます。今お話の船員はこの範囲の外になつておるのでございます。戦争前からもその範囲の外になつておるわけでございます。従来恩給法の適用を受けていなかつたものでございます。従つてもしもこれに恩給法を適用することになりますと、特別の立法措置をいたしまして、恩給法に準じた取扱いをするということにならざるを得ないことになつて来るのでございますが、そういう取扱いをすることがいいか悪いかにつきましていろいろ議論があるかと思います。そこで恩給法の対象になつていなかつたものをひつくるめまして、援護の措置を要するものについて、援護法で制定されて来ているわけでございまして、今のお尋ねの恩給法の対象とできなかつたということは、今申し上げましたような事情によるものでございます。
  38. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますとその前提としまして、今申し述べましたような船員にもいろいろあるのですが、大部分は私の今申し上げましたような条件を持つておる船員であります。これは少し抽象的な言葉になるかもしれませんけれども、陸海軍の輸送船に配属された瞬間に、大部分は軍属の身分を取得しておるものと思うのですが、その点はどうでございますか。
  39. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 お話のように軍属の身分は大体取得されている方が多いと思いますが、軍属にも、いわゆる一般に軍属といわれている中に、恩給法上の公務員である軍属と、そうでない、その外にある軍属とあるわけでございます。一般に軍属々々といわれておりますものは、恩給法上の公務員たる軍属よりも範囲が広い、こういうことからいたしまして、今申し上げましたような事情になつて来るわけでございます。
  40. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうでありましたならば、本法が立案されるときに、当然これに含めるということも可能ではなかつたのか。むしろそうすることが船員に報いる道であつたのではないだろうか。その遺族にも報いる道であつたのではないだろうか。この中へお入れになつて恩給を支給する対象にすることの方が妥当でなかつたのか、この点はいかがでしようか。
  41. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給法上の公務員でなかつたものを、新たに恩給法上の公務員として取扱うということにつきましては、ただ単に今お話のような船員だけに限つていいものであるか、あるいはその他いろいろの人のことも考えざるを得ないのではないかという問題があると思います。また恩給制度というものは恩給制度として一つのシステムをもつて動いております関係からいたしまして、今のお話のような、いわゆる軍属、恩給法上の対象となつていない軍属を恩給法上の対象として取上げ得るかどうかにつきましては、よほど検討を要する点が少くないと思うのでありまして、そういう点からいたしまして、私たちは恩給法上の公務員として取上げることを避けたのでございます。
  42. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはやはり恩給審議会におきましても、またこれを立案されるときにも、いろいろ議論になつたかと思います。今後の財政上の関係でありまするが、このたび一応九箇月分の予算が組まれたのが四百五十億円、それから遺家族援護法の予算が五十億円、文官の方が百億円余、そういうことになりますると、全体といたしまして平年には七百億円を超えるように思うのであります。私どもは、これが過去の恩給の復活というよりも、もつといろいろと社会情勢の変化に応じまして、社会保障的な趣旨相当織り込まれたのではないか、局長の御説明をいろいろ伺つてみましても、また官房長官の御説明を伺つてみましても、やはりこのたびの法律によつて保護を受けるものは、むしろ遺族が大部分である、こういうような御説明もありましたので、しからば一層社会保障的な見地から立法をされる理由が表に出て来ておるのではないかと思うのです。社会保障的な線に沿つた立法措置制度をあちらこちらに散見いたして参つたのでございますが、これは大蔵大臣に伺わねばならぬ問題かもしれませんけれども一応伺つておきたいと思いますが、日本の財政上こういう性質を持つた恩給に、どれほどの割合を振り充てることが相当であろうか。五%とかあるいはそれ以上とか言われるような、国民所得ないしは一般会計上において占むる割合は、どれほどが相当であるということになつたのでしようか。御意見を伺つてみたいと思うのであります。
  43. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の御質問に対しましては、私が答弁いたしますよりも、財政当局関係者から御答弁する方がいいと思いまするが、私が折衝いたしましたときには、この程度恩給であるならば、国家財政上まあさしつかえはないのじやないか、こういうことで話を承つて来たのであります。従いまして今の御質問に対しましては、関係政府委員出席の上において、あらためてお答えするようにとりはからいたいと思います。
  44. 船田中

    船田委員長 なおこの際委員長より申し上げますが、政府委員の出席御要求がありましたならば、あらかじめ委員長まで御申出くださるようにお願いいたします。適当に連絡してお知らせいたします。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の財政のことにつきましては、たとえば一時金につきましても、何回かに割つて支払うということになるらしいのでございますので、国家財政との勘案上やはりそういうふうになさつたものかと思いますが、大蔵当局からそれについての御意見をぜひ伺つておきたいと思いますので、その点につきましては留保さしていただきたいと思います。  それからこれも厚生省に伺う方がいいのかと思いますが、一応恩給局長に伺つてみたいと思います。最近のいわゆる白衣の兵隊さんでございますが、この方々に対しまして私どもは直接いろいろ身分、境遇あるいは生活実情、何を要望しておるかということもひとわたり聞いてみたのでありまするが、これらの人々に対しまして、関係各省とも御連絡の上、何らか生活の明るくなるような措置が考えられなければならぬのじやないかと思うのであります。ある白衣の兵隊さんいわくには、私は旧制中学校の先生の資格を持つておるのだけれども、腕が動きにくいとかいうのできらわれて、就職ができないというように就職まではばまれておりますので、単にこれは職業補導とかそういう問題じやなしに、二千か三千しか今おらぬだろうと思いますが、こういう人を抜本的に国におきまして恩給生活をやめさせまして、それらの人の生活の道をつくつてあげる、そういう大きな受入れ態勢を用意するということが非常に大事な問題でないかと思いますので、やはり戦争によつて受けました犠牲者のうち、一番街頭に現われた悲惨な人々に違いないのでありますので、これは何らか相当思い切つて、街頭からああいう姿がなくなつて行くように、それぞれ適切な生活を保護する措置がどうしても講ぜられなければなるまいと思うのであります。これも局長お答え願うのは少しはずれるかもわかりませんけれども、いずれいろいろと審議の途上におきまして、これも重要な議題になつて論議されたと思いますので、この際一応御意見を伺つておきたいと思うのであります。
  46. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今吉田委員の仰せられますようなことは、この恩給法の一部改正法案を審議し、相談いたしまする際に取上げた問題でございまして、決してこの恩給を給するだけでもつて白衣の方々に対しまする、私たちとしてやらなければならない施策の全部であるとは考えていないのでございまして、今お話のありましたごとくに、できるだけの方法を講じまして、生活保護の措置を講ずるようにいたしたいと考えております。及ばずながら努力いたしたいと思つておる次第でございます。
  47. 砂田重政

    ○砂田委員 議事進行について。私は恩給局長に伺う以前に、恩給法と社会保障制度との関連性、その他戦犯に対する政府根本方針、これらのものを大体きめてかかつて、この質疑を進行しませんと、これは進行しないのじやないかと思うのです。大蔵大臣を初め、総理大臣が故障があるなれば、官房長官及び厚生大臣、これらの人が直接おいでになつて、その根本をひとつきめてもらわなくては質問がうまく進行しないのだろうと思います。こまかいところへ入つて行きますといろいろあるでしようけれども、その前に、まずもつて根本方針を、これらの人が出て見えてきめていただかなければならない、私は公聴会の前にこれを聞きたいと思います。いろいろ気の毒な人もたくさんあることはわかり切つたことで、ことに心ならずも刑死された人があるのです。この人々に対してすら恩給を与えられない。こういう人が百八十九名ある。これはいわゆる敵によつて処刑されておる。これらに対してどういう方針で進むのかということを、根本的にひとつ政府責任ある御答弁を願うことが先決問題じやないかと思いますので、委員長から総理大臣、官房長官及び大蔵大臣、少くとも厚生大臣——今政府を代表して一人じや答弁ができないような憲法になつておるのですから、この人々がみな来て、責任を持つて答弁をしていただきたい。こういうふうに私は委員長でおはからいを願いたいと思います。
  48. 船田中

    船田委員長 ただいま砂田君の御発言は、まことにごもつともでございますので、理事会にも諮りまして、十分善処いたして参りたいと存じます。     —————————————
  49. 船田中

    船田委員長 なおこの際委員長よりも申し上げますが、厚生委員会の方からは合同審査の申入れがございますので、そのようにとりはからいたいと存じます。皆様の御異議がなければそういうことにいたしたいと思います。開会の日時の点につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。厚生委員会と協議の上きめたいと存じますが、御了承をいただきたいと思います。  なお十一、十二の二日間にわたる公聴会には、厚生委員会の希望もあり、連合審査会で行いたいと存じます。御了承をお願いいたします。  吉田君まだ御質疑を続けますか。
  50. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 まだありますけれども三橋さん一人にいろいろ伺うのも無理だと思います。できるだけ重複を避けまして、ほかの方もいろいろ御質疑の時間もあることと思いますので、その辺のことは私自身も考えつつ、いま少し質疑をさしていただきたいと思います。
  51. 船田中

    船田委員長 委員長の希望といたしましては、できれば本日午後もいたしたいと思うのであります。なお本委員会にかかつております栄典法案、保安庁法の一部改正法律案等につきましての取扱いについて、懇談の機会を得たいと考えております。できれば暫時休憩いたしまして、しばらく懇談をいたしたいと思います。
  52. 砂田重政

    ○砂田委員 この前、私栄典法案の金鵄勲章の人に対して、運輸省意見を聞いていただきたいということを願つておきましたが、返事はありましたか。
  53. 船田中

    船田委員長 先般砂田重政君より御意見のお述べがありましたので、さつそく石井運輸大臣に連絡をいたして、その趣旨の徹底を期するようにいたしてあります。いずれ御返事があることと存じます。
  54. 粟山博

    ○粟山委員 議事進行について。前会議事進行について希望を申し上げておいたのですが、毎日公報に審議される項目については御指示になつておりますが、栄典法案のごときはその初頭に掲げておられるけれども、いろいろ議事の進行上、それが次会に繰越されておるというようなありさまで、この栄典法案のごときは、なお審議を尽すべき多くの余地を残しておると思うのであります。かつまた伝えられるがごとくに、各派においての試案もあるといたしますならば、相当の時間を要すると考えます。従つて議事の取扱い方は、それぞれ片づけるものを片づけつつ、時間を多く要するものはそれを取残して、ある期間を見込んで十分審議を尽される機会を与えられるようお願いしたいと思うのであります。私は委員長のお取扱い方に対して私の考えを申し上げます。
  55. 船田中

    船田委員長 それでは暫時休憩いたしまして、しばらく懇談いたしたいと思いますから、どうぞよろしくお願いします。  暫時休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後二時二十六分開議
  56. 船田中

    船田委員長 これより再開いたします。  午前中に引続き、恩給法の一部を改正する法律案につきまして、質疑を行います。山下春江君。
  57. 山下春江

    山下(春)委員 私は、本日から本委員会に入りましたので、あるいは質問が重複するおそれがあるかと思いますが、一応私としても確認をしておきたいので、その点は御容赦を願つて、質問をさせていただきたいと思います。  まず軍人恩給復活の問題でございます。これはせんだつて会議でもお尋ねいたしたのでございますが、必ずしも納得の行く御回答をいただけなかつたのであります。総司令部の覚書によつて停止されました日本の軍人恩給というものが今回復活することになりましたが、その根本義についてお尋ねいたしたいのであります。これを復活させるにあたつて、既得権の復活というふうに考えてよろしいものか、あるいは戦争犠牲者に対する国家の補償というふうに考えてよろしいものか、恩給局長のその点に対する根本の考え方についてお尋ねをいたしたいのであります。
  58. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今のお尋ねは、軍人恩給を給するのは、既得権の復活なのかという御質問であつたように承つたのでございます。御承知のように、旧軍人軍属及びその遺族と一口に申しますが、これは昭和二十一年勅令第六十八号第一条に規定されておる軍人軍属及びその遺族であります。こういう軍人軍属及びその遺族の方々に対しましては、連合軍の命令によりまして恩給が廃止されておるのであります。しかし恩給法の規定をごらんいただけばわかるのでございますが、昭和二十一年勅令第六十八号を制定いたしました際には、恩給法の中に軍人及びその遺族には恩給を給するという規定がございまして、その規定はそのままといたしまして、別に恩給法の特例を制定いたしまして、そうして恩給法の中におきましては軍人軍属及びその遺族には恩給を給するという規定があるにかかわらず、特例法におきましては恩給を給しないという規定を設けたのでございます。そういうことからいたしまして廃止されたような状態にはなつておるのでございますが、その恩給法の中の軍人及びその遺族に恩給を給するようないろいろな規定は、昭和二十一年に法律第三十一号をもつて恩給法の一部を改正いたしました際に全部削除いたしまするとともに、——これは連合軍からのさしずによつて削除いたしたわけでありますが、いたしますると同時に、その法律の附則の第二条におきまして、旧軍人及びその遺族の恩給法上の取扱いにつきましてはそのままの取扱いにするという趣旨の規定を設けたのでございます。その規定が、今日までは恩給法の特例によつて発動を押えられておるような状態になつておるわけであります。従いまして今申し上げまするような事情でございますので、恩給を受ける権利そのものは全然廃止されておりまするので、既得の権利があるとは言いかねるのでございますが、しかしながらそれかといつて全然法律上の地位というものがないものとは言い切れないような状態にあります。そこでこういうような実情にあることを考えますと、旧軍人及びその遺族の方々に対しまして、講和条約の効力が発生いたしまして、そうして恩給法の特例の存続が問題になる今日におきましては、従前のごとくに恩給を給するわけには行かないにいたしましても、若干内容はかわるにいたしましても、旧軍人及びその遺族の方々恩給を給するような措置をすることが、法律上も当然なことじやなかろうか、こういう見解に立つておるのでございます。
  59. 山下春江

    山下(春)委員 恩給局長お話によりますれば、既得権があるとは言い切れない点もあるようだが、しかしないとは言えないということでございますれば、既得権をある程度復活したいと思つてもさしつかえないのではなかろうかと思います。そうなるとたいへんこの法律が困つて参りますことは、恩給局長軍人という御定義についてお尋ねしなければ、この問題がちよつと解釈できないのでございます。軍人とは一体どういう方を言うのかということを、まずお尋ねしなければならないようなことになるのでございます。これはあとで御答弁願うとしまして、その既得権を復活するのだというお考えに立ちますれば、その軍人の中で、必ずしも既得権がないとは言えないという、その心持も中に入つて来るたくさんの人が権利を失つておりますが、しかも予算の面から言いましても、それらの人を全部救済いたすとしますれば少くとも一千二、三百億円を必要とするはずでございます。それを四百五十億という三分の一に減らされましたことにおいて、当然復活しなければならない権利を持つておる人たちが全部削り落されたことになつておりますが、その間のいきさつは、どういうふうなお考えからおきめになつたのでございますか。
  60. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私が今申し上げますのは、厳密な意味におきましては既得の権利ということは申し上げかねるのじやないか、しかしながら一種の法律上の地位というものはあるんじやなかろうか、そういうことでこのような措置をすることが妥当である、こんなふうに考えておると申し上げたのでございます。それから次に、次の質問でございましたが、その点はおそらく今の既得の権利ということに立つてのお考えのことだろうと思うのです。すなわち既得権を持つておるものであるとするならば、その既得権を侵害するようなことになりはしないのかというような御質問じやないかと思うのでございますが、それにつきましては先ほども申し上げましたように、厳密な意味におきまする既得の権利ということは申し上げかねるのじやないかと思いまするので、従いまして既得権の侵害があるというようなことにはならないんじやないか、こういうふうに考えておるのでございます。
  61. 山下春江

    山下(春)委員 そこが考え方の相違だと思うのでございます。もし局長の言われるような考え方といたしますれば、これは恩給法の一部改正ではどうしても私どもには納得できないのでありまして、既得権を認めての前提に立つてお前は質問をしているのだ、そうなれば、なるほどそういう人たちは既得権を持つてつたのが消滅したという形になるとおつしやるのですが、しかし、局長の言われますことにおきましても、必ずしもそれは権利を剥奪したのではないと仰せられますけれども、そこのところが肝要でございます。たとえばこういう場合に局長はどういう回答をしていただけるでございましよう。日支事変の始まりましたしよつぱなに行きました者で、三年あるいは三年三箇月ぐらいを戦地勤務いたしまして帰つた者は、その当時加算制度がございましたので、これは既裁定者でありまして、今度の一部改正によりますと、この人はその該当者になるのであります。ところが同じころに召集を受けましても、これがずつとおそくまで戦地勤務をいたしまして戦地で終戦にあいまして、そうして二十一年ごろになつてつて来て、通算してこの人は六年五箇月戦地勤務をした、ところがこれは終戦後のことでございまして、恩給法がいわゆる政令によつて停止された後でございますから、既裁定を受けておりません。こういうふうに、三年三箇月の者は既裁定者で該当者、六年五箇月を勤めた者は既裁定を受けておりませんからその該当者になれないというような場合には、非常にそこに不合理を感ずるのでありますけれども、そういうときにはどういう御説明をしていただけるものでありましようか。
  62. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 それは旧軍人恩給を給する措置をいたしまする場合におきして、終戦前すなわち昭和二十一年の二月一日前に恩給の裁定を受けておつた人も、また受けなかつた人につきましても同じような状態に置いて、同じような取扱いができ得るという前提に立つてものを考えて行きますならば、この間において差別をつけることは私は無理だと思います。しかしながら同じように取扱いをすることができないような状態になつておるときにおきましては、その間において差別をされるようにすることも私はむろんやむを得ないことではないかと思います。今お話の終戦後の方の云々の問題でございますが、この方々に対しまして恩給を給するがためには、恩給を給するに必要なる条件を証明する書類が整理されていなければならないのでございます。ところでその条件と申しますのは、あるいは履歴書とかあるいは公務傷病に対するこまかい書類とか、そういうようなものがどうしても必要なのでございます。ところが終戦の前後におきまする混乱の事情からいたしまして、必ずしもそういうような書類は整理されておりません。従つてやむなく若干の違うような措置をせざるを得なくなつて来たのでございます。これはほんとうにやむを得ない事情に出て来た結果でございまして、差別をせんがために差別をする、そういう趣旨から来ておるものではございません。
  63. 山下春江

    山下(春)委員 差別をしようとしてかまえてやつたのではない。それからその恩給を受ける権利を持つ人のそのときの状態ということでございますけれども、それはもう法律上の御解釈でございましようと私は思いまして、実際問題としましては、ただいまの恩給局長の御説明では、それは困るからがまんしろというのは、これはむちやな言い方でございまして、その間のがまんする方の身になつてこの問題を考えますと、どうしても解決のつかない気持の問題が出て来ると思います。少くとも一兵卒でありましても、もつと上の軍人でありましても、あの当時の気持にまつたく差異のなかつたことをわれわれは信じて疑わないのでありますが、そういう場合に事務上の、たとえば証明書がいると仰せられますが、証明書を持つておる者もたくさんおります。私どもの知り及ぶ限りでも、軍歴書あるいはそのときの上官の証明書あらゆるそういうものに必要な証明書を所持しておる者もたくさんございますが、所持しておつてもなお今度の法律から申しますと、これは恩給を受けることのできない人の中に入つてしまうのでございます。そういうものを持つておれば、その中に入れてやるというようなゆとり考えておつくりになつていらつしやいましようか、どうでしようか、その点をお伺いしたい。
  64. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の山下委員の仰せられました証明書というものの公的なものは一体どういうものであるかというところから、私たちは問題にしてかかつておるのであります。そこで個人的に考えますといろいろな事情があることは十分お察しできます。ところで制度として考えまする場合においては、公平なる恩給給与のでき得る範囲のところから、考えて行くべきが至当じやなかろうか。御承知のように、あるところにおきましては、戦時名簿を全然焼失してしまつたところさえもあるのであります。そういうようなところにおきましては、今のお話のように、あるいは上官の証明書を持つておる人も幸いあるかもわかりませんし、あるいはそういうものを持たない者もあるかもわかりません。いずれにしてもある者はたまたま持つているしある人は持たないから損をするというようなことのないように、でき得る限り公平なる措置のできる制度は考えられるだろうか、そういうようなことを考えて来たわけであります。そうして今のところ考え得るぎりぎりのところがこの法案に示されているところでございまして、今のお話のような、個人的にある種の証明書を持つておるゆえに、そういうような証明を持つておる人については特に特別なとりはからいをするというような個人的な取扱いをするというようなことは、この制度の中には取入れておりません。
  65. 山下春江

    山下(春)委員 ここが非常に考え方の相違するところでございますが、先ほども申し上げましたように、恩給法の一部改正という考え方でなく、ここをひとつ何とかして切り開いていただきたいと思います。私はこの委員会及び政府に、ほんとうに人情のある、恩情のある気持でここを考えてもらいたいという、むしろこれはお願いになるのでありますけれども、そういういろいろな考え方から見ましても、局長も切捨てたことは気持よくはないと思うのです。おそらく私は気分よくさばさばと整理してこれをお切捨てになつたとは考えられないのであります。やむを得ない事情の上に立つて、いろいろ御説明はなさるものの、局長自身も非常に気分のいいこととはお思いになるまい。このことによつて非常に思想を悪化するというおそれもないとは考えられません。政府がこの程度以外には予算もちよつとゆとりがない、これも了承いたしましよう。大体わく内におきまして旧恩給法にありました加算を認めまして——この加算を認めるという場合は、一体どこが戦地か。あの場合は内地といえども戦地でございましたから、内地勤務をいたしておりました者もあるいは外地の戦場にありました者も総括して、戦時中の旧恩給法に認められている加算の方法、しかしながらそれも私は厳密にここで言うことは非常に煩雑になると思いますので、大ざつぱな言い方でございますけれども、大体三倍くらいな加算率をもちまして、要するに恩給の権利を確保する線までその加算を認めまして、全部を権利の取得者にいたしまして、実際に支払う恩給は実役年限によつて支払うということの操作をいたしますれば、大体政府が予定されている金額のわく内で、これらの人々に不公平なく支給することができると思うのですが、これに対して局長はどういうふうにお考えか、お見通しを聞かせていただきたいと思います。
  66. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の山下委員の御意見は三倍くらいの加算をつけるという話でございますが、それは一箇月おりました場合におきましては四箇月として計算をする、しかもそれは戦地にあると内地にあるとを問わない、こういう御趣旨のように解したのでございますが、そういたしました場合において、はたして実役計算で支払われるところの金額が、今お話のような金額の範囲でまかなえるものであるかにつきましては、ちよつと私は自信がないのでございます。
  67. 山下春江

    山下(春)委員 非常に精細な計算とは申し上げられないのでございますが、ただいまの加算をかりに採用されたといたしまして、初年度に要しますものが大体五億円程度でまかなわれるのではないかと思うのであります。もつと正確に申し上げますれば、六億四千九百七十万円になるのでありますが、しかしながら私の計算では、この増加をまた一面に扶助料とあわせ考えなければなりませんので、この扶助料との見合いをいたしましたときには、相当金額ふえるのでございまして、初年度は大したことはございませんが、五年後くらいを予想いたしますると、大体十億内外扶助料の方がふえるのではないかと思います。そういたしまして合計十五、六億ふえるという計算を私どもは一応出してみたのでありますが、恩給局長はそういうことをお聞及びではないかと思うのです。実はこの問題がきまりますときに、恩給局長はできるだけ単価を上げたい、大蔵省の方ではなるべく人数をたくさんやりたいというようなことで、その間の兼ね合いで、大蔵省では人員に相当水増しの余裕があると聞いております。もしそうであれば非常に幸いに思うのでありますが、これが決定されますときの恩給局と大蔵省との間の御折衝中にそういうことが出たかどうか。その経過についての御感想を聞かしていただきたい。
  68. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今山下委員の御質問によりますと、大蔵省において非常に水増しをしたがごとく聞えるような御質問でありましたが、そういうことは全然ございません。もちろん一昨日ここで御説明申し上げました人員につきまして、御承知の通りに恩給法特例審議会の建議の際の人員と比較いたしまして戦没者の軍人の遺族に給されるところの扶助料受給者の人員の数は、確かに予算の方はふえております。これは特に大蔵省におきまして水増しをしたというのではなくて、恩給法特例審議会におきまして審議をしましたときは、昨年の二月現在で推計を  いたしておつたのでございますが、ことしの一月におきまする援護の実績を考え、将来の見通しをした結果、大蔵省と相談の結果修正した数でございまして、決して特に水増しをしたというわけじやございません。従つてこの提出されております予算につきまして、予算上の特別なゆとりをとつておるというようなことは全然ないのでございまして、ぎりぎりのところの予算として御承知願いたいと思いまる。
  69. 山下春江

    山下(春)委員 ぎりぎりでは私どもちよつと困るのでございまして、多少の余裕がないと困るのでございます。  もう一つ、権利の問題で、これはむろん話題になつたことだと思いますが、七項症、それから一款症から四款症、これは純然たる既得権でございまして、恩給法特例審議会におきましては、この程度の軽微な傷はがまんしてもらおうじやないか。それもごもつともな意見ではあります。六年も七年も、とぎどきに十年も行きました者ですらこの恩給権から削り落される今日、軽微な負傷者はそういう考えから言えばがまんしてくれで治まつてしまうのでございます。どうもそれでは困るのでありまして、これらの人々もからだが健康でもなかなか今日の社会は容易でございませんけれども、どこかに故障を持つておりますとどうしても一人前の働きができません。労働委員会あるいは、その他のところで強制雇用などという声も起りますけれども、雇用された本人も雇用した方も決して円満なものではないと思いますので、そういうことの道を別途に開くからここでがまんをしろということでなく、これこそぜひとも復活を認めてやつていただきたいと思います。その金額ども今回御決定になりました人数よりもわずかにふえる程度でございまして、大した金額でないと思うのです。そこで金額をそつちで言うのと、こつちで言うのとたいへん違うと仰せられましようが、私は全部認めて行きましても、大ざつぱな計算で六億五千万円あればこれが間に合うのでございますが、何とかこれだけはぜひともお認めを願つて恩給局長は少しの人に気持悪くやるよりは、やはり額は安くてもいいから多くの人に満足させてやりたいと思つていらつしやるに違いございませんので、どうか局長気持の底をひとつ御吐露願いたいと思います。
  70. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今山下委員から増加恩給の第七項症の症状の人に対しまして、従来通り増加恩給の年金を支給したらどうかというふうな御質問でございましたが、この問題に関しましては、傷病年金の受給者であつた人々につきましても、やはりそういうような取扱いをしてもらいたいという要望がおありのことと思います。従いまして増加恩給七項症の年金だけの問題でなくして、傷病年金を含めましての問題として考えなくちやいけないのではなかろうかと思つておるところでございます。この増加恩給の第七項症の症状以下の従来傷病年金を給せられた人人に対しましても、年金を給するという措置をいたしまする場合におきましては、どうしても私は十億円を下らぬ金額を年々要することになるのじやなかろうか、こういうふうに想像をいたしておるのでございます。もちろん少い金額でもよろしいから出せということでございますれば、また考え方はあるかと思いますけれども、一応秩序あるつり合いのとれた年金を出すということになれば、それくらいの金を要することになるのではなかろうかと推察いたしておるのでございます。ところでこの問題を考えます際におきまして、私のところには、遺族の方からも何とかもう少し考えてもらえないだろうかという要望があるわけでございます。そこで増加恩給の第七項症の制度が設けられたときのことを考えてみますと、増加恩給の七項症の制度が設けられましたのは、昭和十三年でございまして、そのときには戦没者の遺族に給される金額相当多く増額されたのでございます。今度の改正案におきましては、その当時と比較いたしますれば、その程度に及ばないところの金額に相なつておるのでございます。もちろん傷病者のことも考えなければなりませんが、また一面におきまして戦没者の遺族のことも考えてあげなければならぬということで、結局限られた予算の範囲内におきまして、恩給制度全体としてつり合いのとれた制度として考える場合におきましては、この際はこの程度にするよりほかに方法はないのではないか、こういうような結論に到達した次第でございまして、山下委員の仰せられるようなお心持はよく察せられるどころでありまするし、私も山下委員の御趣旨の通り実行できるならば、してあげたいと思うのであります。
  71. 辻政信

    ○辻(政)委員 ちよつと関連して。ただいまの山下委員の御所見と私はまつた同感であり、それに対して恩給局長から、この際はこれでがまんをしてもらうという御答弁があつたのでありますが、しからば将来七項症及び第一款症——第四款症に対して考え直すという含みを持つている御答弁と解してよろしうございますか。この際はこの程度でとおつしやるそこを私は申し上げておるのです。将来は財政の許す場合においてはこの既得権益を復活なさる含みを持つての御答弁と解してよろしうございますか。
  72. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私から将来のことをかれこれ申し上げることは差控えたいと思います。しかし私は今日の国家財政その他の事情を考えまして、ベストの案として全力を尽してつくつた案であることを表明したにすぎません。
  73. 辻政信

    ○辻(政)委員 これはまことに深刻な話になりますが、せんだつて私のところへ一項症、二項症の両手のない人あるいは両眼のない重い人たちが来られまして、述懐されたことは、戦線では一本のタバコを十人の戦友たちがわけてのんだことがある。この中の一人が重傷になり、一人は七項症になつた、自分は一項症でこういう手厚い年金をもらうけれども、一本のタバコをのみ合つた部下なり戦友なりが七項症で捨てられるということは見るにしのびない。願わくは政府は重症者の年金を削減してもいいから、一率に少しでもいいから七項症以下の戦友にも恵みをわけてもらいたい。こういう深刻な話を聞いたのである。予算のためにどうしてもできないと仰せられるならばやむを得ないとしても、将来において国家としてはこれらの傷ついた人に何らか報いるという意思表示をしていただきたい。私は若年停止年齢を切上げて、われわれ年輩の五十歳くらいの者も若年停止してもかまわない、ひとり者はかまわない、生きている者はかまわない、そういう感じがするのであります。財源がなければ生きている者は、自分のからだを切つてでも、傷ついたものを救いたいというのが私どもの考えであります。この際はこの程度とおつしやつたが、その程度を総理大臣の御答弁にまで持つてつていただきたいということを切にお願いいたします。
  74. 山下春江

    山下(春)委員 今辻先生からも特に強く御要望されましたが、私くどいようでありますが、この問題は先ほど恩給局長がおつしやつた大体十億くらい、私もまた十億二百万くらいと計算してみたのであります。そこで実際軍人であつた辻先生が、今御自分の御心境をも多分に入れての御意見の御開陳であつただろうと思いますが、これはだれしも軍人であつた者は、みんな同じような気持でそう思つておるものと思います。この傷痍軍人の十億、それから切り捨てられた七項症の大体七億という金は、これは四百五十億という予算の上からいえば相当金額かもしれませんけれども、しかしながらこれらのことによりまして、非常に不平不満と、何とも解釈のつかない、要するに政府を信頼することのできない、国を愛することのできない気持に追いやられる人ができるということは、これは国としてはほんとうに真剣に考えなければならない問題だと思うのであります。そこで私は新たな問題を提案いたしたいのでございますが、そういつたような軍人の方たちのお気持、だれしももらうものは多い方がよろしゆうございますが、そこのところをひとつしんぼうしていただきまして、この俸給の仮定表を見ますると、これは大将が五十六万四千円で二等兵が五万八千五百円でございますが、その差は五十万五千五百円でございます。そこで先ほどお話がありました、若年停止を五年引上げますことにおいて出て来る金額と、この階級の差をもう少ししぼつていただいて、下はこれ以上しぼりようがございませんので、下の二等兵は幾らの違いでもありませんから、こういうものもむしろ気分の問題でございますから、三階級上げて兵長くらいのところに一番下をしていただいて、上の方をずつとしぼつていただくと、しぼり方にもよりますが、大して無理のないしぼり方で、四億くらいを完全に浮かすことができるという計算ができると思います。それと今の年齢を五年引上げますことによつて、大体この気の毒な方をまかなう十七億に相当足しになる金額が出ると思うのでございますが、そういう方法によつてこれらの気の毒な、しかも捨てておけば決して国のためにならないと思うので、非常な憂慮をいたすがゆえに申し上げるのでありますが、そういうふうに計算をし直してみるという御意図はございませんか。
  75. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今の若年停止年齢をさらに五年引上げるということにつきましては、けさほども吉田委員から御質問がございまして、それに対してお答えいたしたところでございますが、文官、つまり今在職しております公務員がやめます場合と、それからまた今やめて恩給をもらつている一般公務員退職者と、それから旧軍人恩給を給する場合のその旧軍人との間におきまして、差別した取扱いをするかどうかということが一つの問題になつて来るわけであります。けさ吉田委員には、私はさらに五年引上げまして若年停止するということは、旧軍人に対してだけ特別の取扱いをするということでありますならば別といたしまして、一般文官もまた旧軍人も同じような取扱いをするということでございますならば、なかなか困難なことではないかと思うということを申し述べたのでございます。従つて年齢をさらに五年引上げるということにつきましては、愼重に検討を要することでございまして、にわかに賛成しがたいような気がするところでございます。  それから、今の仮定俸給の下の方を引上げて、そして上の方は上の方で圧縮したらどうかというお話でございますが、上の方といいましても、将校以上の数とそれから准士官以下の数とは非常な違いがあるのでございます。従いまして、少尉以上の数はおそらくわずかな数でございますために、今のように上の方を圧縮しましたがために浮き出て来る金というものは、そう大した金ではない、こういうふうに私は考えているところでございます。今定められております仮定俸給の号俸を、これを一般文官の俸給等に引き直して考えました場合に、一号俸を上げるだけで公務扶助料だけでも十三億円前後の年額を要するように私は承知いたしておるのであります。それが少尉以下の下士官以下だけ一号上げても、十二億円くらいの金を要すると私は考えております。従いまして今のお話の下の方を、すなわち兵長以下の方を兵長のところに引上げました場合におきましては何億円の金がいり、それから上の方を圧縮した場合には幾らくらいの金が出るということにつきまして、こまごましい数字は覚えておりませんが、上の方を圧縮して生ずる金はごくわずかでありまして、ほとんど言うに足りない金額になりはしないかと思つております。もし文官とそれから旧軍人の間における恩給取扱いにつきまして、思い切つた差別をする取扱をしてしまうならば、話は別でございます。少尉以上の者にいたしましても伍長クラスと同じような恩給をやる、また少尉でなくなつた人の未亡人に対しましても、判任官の伍長に相当するところの人がもらう額の程度の扶助料をやるというように、文武官の間におきまして思い切つた差をつけることを目途とするような措置をしますならば、私はこの方面から相当金額が捻出できると思いますが、そうでなければ大した金額は捻出できないじやないか、こういうような気がするのでございます。
  76. 山下春江

    山下(春)委員 私はむろんしろうとでございますから、私の計算が間違つていると言う方が、あるいは早いかとも思いますが、ただいまの二等兵を兵長に上げるということでございますが、何億ということにはならなくて、私の計算からいたしますれば、二等兵を兵長に上げましたその差が二千万円しか出ないのでございます。非常に大きく出れば、私もそういう乱暴なことはもちろん申し述べないのでありますが、二等兵を兵長に直しますことにおいて、わずか二千万円でまかなえるとすれば、幾らもふえませんけれども、非常に気分がよろしいと思うのであります。それから上の方も、そう乱暴なことを申してもそれは通らない議論ごでざいますが、かりに将官、佐官、尉官あるいは准士官、下士官というふうにわけて見ましても、大将を少将でがまんしてもらう。大佐を少佐でがまんしてもらう。こういうふうな計算をいたしまして、大体私の計算では四億一千万円出ることになつております。これは計算の仕方がいろいろあろうと思いますが、大体の人数は私も調べて見たのでございます。たとえば大将四十名、中将九百五十名というような数字も調べました。大佐五千四百人、中佐四千三百七十人、こういうものを調べてみました。そういうものの数字によりまして計算いたしまして大体四億一千四百万円ばかり、上の方を少しがまんしていただくことにおいて出る計算をしてみたのでございます。それにいたしましても現在の予定のわくよりも一銭も出ないということは、これだけの人数をふやすのでございますからできませんけれども、しかしながら先ほどからるる申し上げますように、これらの切り捨てられる人々の身になつて考えますと、これはちよつと解釈ができないと思います。軍人恩給特例審議会の委員の方に私がいつかこういう問題を——不平等な考え方によつてコンクリートされた今度の案というものに対してどうも納得行かないものがあるが、そういう納得の行かない人たちにはどう言つて答弁すれば一体みなが納得してくれましようかと申し上げましたところが、火事があつて隣りまで焼けておれは助かつた、こういう気持でひとつがまんしてくれ、これでは何としても私どもはがまんができないのでありまして、この計算が私どもしろうとで多少ずさんであろうと思いますけれども、二千万円くらいな差でまかなえるのでございましたならば、これはまんざら架空な数字ではございません。私も大分勉強してこれは計算を出したのでございます。二等兵を兵長に引上げるということにおいての差は大体二千万円そこそこで間に合うと思うのでございますが、それよりも何よりも私、局長にまずもつて最初に申し上げた点なんでございますが、こういう問題をきめますときに恩給法というものを頭の中に描いておいていただくと、どうしても私ども納得の行く返事ができないし、またしたのではおかしくなるのでありますが、吉田総理は今日でもなおかつ保安隊は軍隊ではないと言われるのです。そうすると日本には将来軍人はできないと思います。そこで保安隊員が将来軍人になるだろうという仮定に立つて私は御苦労なさる必要はないと思う。従つて恩給法の一部改正でなしに、旧軍人恩給の特例法案、あるいはその他の適当な名前をもつてこれらの人々をほんとうに救済——救済という言葉でさえ私はいやなんで、何とか国としては感謝し、補償してあげる気持でなければいけないと思うのでございますが、重ねて恩給局長にひとつ恩給という気持を離れて、非常にいい案があつたらそれに妥協して考え直そうというお気持があるかどうか、ぜひひとつほんとうの腹の中を言つていただきたいのであります。
  77. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 実はこの案をつくります際におきましては、今山下委員が仰せられましたように、特別の法案として考えるかどうかということももちろん考えたのでございますが、いろいろ関係者の間におきまして検討検討を加えました結果がこの法案におちついたのでございます。今この案以上にいい案があれば、これにお前賛成するかというお話ですが、いい案があれば賛成しなくちやいけないのはあたりまえのことでありますが、ふつつかなものではございますけれども、私たちの今までいろいろ検討しましたところでは、こういう案が一番いいということに相なつておるところでございます。
  78. 山下春江

    山下(春)委員 一番いい案と仰せになりますと何をか言わんやでございますが、私は決して一番いいとは思わないのでありまして、私自身のことに触れてははなはだ恐縮でありますが、私の父親も内閣の恩給局におじやまをしておりましたが、そういうところにいる人の頭というものは私どもの考え方とはたいへん違うのでございまして、恩給局長としては御無理のない答弁と思いますが、どうかここは一番いい案だなどということを速記録にお残しにならないで、よりいい案が出る道をあけておいていただきたいと思うのでございますが、その問題はどこまで行きましてもしかたがありませんから、これは私どもの方でもつと正確な計算をし、局長をこういうりつぱな案があつたらと動かすように、私ども勉強して計算し直さなければならないと思いますので、これは至急にやりたいと思つております。  その次の点は戦犯者に対しては、私どもの同僚栗山委員からるる御質問申し上げたはずでございますが、なお一言私も確認しておきたいのであります。平和条約十一条によつて、今日の身分にある戦犯者というものに対しては、ただいまは恩給を支給することに該当しておりましようか、おりますまいか。
  79. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 ただいまのところは恩給は給されないことになつております。
  80. 山下春江

    山下(春)委員 それはやはり十一条の影響でございましようが。
  81. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給法の特例に関する件という昭和二十一年勅令第六十八号がございます。その第八条には、公務員もしくは公務員に準ずべきもの、またこれらのものの遺族が連合国最高司令官の命令によりまして抑留逮捕されて有罪の刑に処せられました場合におきましては、恩給を受ける権利または資格を失うということになつているのでございます。この恩給法の特例に関する件のこの条文のところは、恩給法の特例に関する件の措置に関する法律というのが昭和二十七年法律第二百五号で出まして、それによつてその効力をそのまま継続して今日に至つているのでございます。こういう関係からいたしまして、今お話になりましたような方々に対しましては恩給が行かないことになつているのでございます。
  82. 山下春江

    山下(春)委員 その法律の扱い方は私も了承いたしておるのでありますが、それでは戦争犯罪人というものはそもそも国内法でございませんので、その法律に当てはめてさしつかえないでございましようか。ただ法律があるからといつて恩給局長が簡単に気持を整理しないままほんとうに当てはめてさしつかえないかどうかということをもう一度御説明願いたい。
  83. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 連合国最高司令官の命によつて逮捕抑留せられたものは連合国からの命令によつて恩給を給せられなくなつて今日に至つているのでありまして、そのことをきめたのが二十一年勅令六十八号恩給法特例であり、それが今日まで続いている、こういうのが実情でありまして、今のお話はそういう日本の国内法によつて刑に処せられたものでない人に対して今後もなお恩給を給しないような措置をすることが妥当であるかどうか、それはどう考えるか、こういうような御質問だろうと思うのであります。この点につきましてはいろいろと検討いたしたのでございますが、国内法の取扱いでございますると、三年以上の刑に処せられた場合におきましては、恩給権を有する者も恩給権を失うことに法律できめられてあるのであります。ところで今の連合国最高司令官の命によつて逮捕抑留せられて、有罪の刑に処せられた方々に対しましては、今度の法律案によりましては恩給権そのものは与えよう、これを給しないということにはしない、こういうように恩給を給する措置をいたしたのでございます。しかしながら現実に恩給を支払つた方がいいかどうかにつきましてはいろいろと考慮をし、検討をいたしました結果、拘禁中だけはその支払いを控えるような措置をすることになつたのでございます。その措置をすることが妥当であるかどうか、こういうことが今の山下委員の御質問だろうと思うのでありますが、それにつきましてはいろいろと御議論のある点でございますが、諸般の情勢にかんがみまして、かかる措置をする方が妥当であるというような結論に政府といたしましては到達いたしたのでございます。
  84. 山下春江

    山下(春)委員 そういたしますと、諸般の情勢を勘案して、ただいまのところ給しない方が妥当であろうという結論だといたしますると、これらの戦犯者の方が釈放されれば、今の法律のままでただちにその該当者になるということに了承してよろしゆうございますか。
  85. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給権そのものを与えてございますから、拘禁が解かれればすぐに支払いを開始いたします。
  86. 山下春江

    山下(春)委員 きよう私が主たる質問の中心に置こうと思いましたのは、今の加算の問題でございますけれども、これはどうも、局長も本心から反対ではなさそうに見受けましたけれども、御賛成でもないようなふうに見受けたのでありますが、この問題は、どうしても本委員会意見として何とかこれは局長がどういうふうに御計算をなさいましても、私は大した金額でないと思います。五年あるいは十年後になりますと、この扶助料の問題等で、必ずしもこれはやはり私の満足する線には到達しないようでもございます。しかしながら、ここのととろはどうかこのままでいいんだとおつしやらずに、私どもはこのことによつて思わざる大きな損を招くことがきつとあることをも予想できるのでございますから、この点はぜひひとつ御考慮願いたいと思うのであります。  その次には、今の巣鴨に抑留されておる人たちの身分を、とりあえず恩給の外で、未帰還者留守家族等援護法というものの中で救済しようとして、そういう新たな法律が今厚生委員会に出たようでございますが、これらの問題も、本委員会と合同審査が行われるというのでございますから、そのときにまたいろいろな御意見を承りたいと思つております。先ほどの文官恩給ということでございますが、文官恩給とのにらみ合いということを再三おつしやいますが、文官恩給のあり方というものに対しては、恩給局としれはどういうお考えをお持ちでございましようか、将来の見通しについてお尋ねしておきます。
  87. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 恩給制度につきましては国家公務員法の規定によりまして、人事院におきまして新たなる制度を研究して、そうしてその成案を得ました上で国会と政府に勧告されることになつておるのでございます。従いまして、恩給局長といたしましては、その勧告があり、新しい制度ができるのを待つというような態度をとつておるのでございます。
  88. 山下春江

    山下(春)委員 新しい制度ができるのを待つてということでございますが、先ほども私がお尋ねいたしましたが、これをどうしても恩給法の一部改正の中へ入れておかないと都合が悪い、あるいは恩給局長の気分が釈然としないということがあれば、ひとつ聞かしておいていただきたいと思います。それを軍人恩給だけを切り離して操作することとが可能なりやいなやについての御見解をお聞きしておきたいと思います。
  89. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 旧軍人の方に対しましても、今の一般文官と同じように、統一的な恩給制度のもとにおいて恩給が給せられておりましたことは、山下委員も御承知の通りでございます。ところで、現在におきましては、傷病軍人以外の方には恩給は給せられていないのでございまして、傷病軍人に対しましてだけ恩給が給せられております。その傷病軍人恩給が給せられておるのは、恩給法の規定と恩給法特例のこの二つの法令によつて恩給が給せられておるのでございます。言いかえますると、一般の老齢軍人とか、それからまた軍人遺族の方々に対しましては恩給法の規定は動いておりませんけれども傷病軍人方々に対しましては、恩給法の規定と恩給法特例の規定が渾然と一緒になつて動いて、そうして今まで増加恩給傷病賜金が給せられておるのが実情でございます。この現実を押えて恩給法の一部改正法案の形をとつて来たのでございます。もしもこれを改めて恩給法からはずしてしまつて、そうして旧軍人軍属及びその遺族に対する恩給法の特別措置といいますか、そういう特別の法律をつくるということになりますれば、それは、今申し上げまするように現行恩給法の中から軍人に関するものを結局省いてしまつて、特別な単行法をつくらざるを得なくなる。つくつた場合におきましては、一体どういうものができ上るかという問題に今度はなつて来るわけであります。大まかなことを申し上げてたいへん恐縮でございますけれども、そういうふうな措置をいたしました場合に、根本的に考えなくてはもらないことは、旧軍人軍属及びその遺族に給するところの恩給というものは、全然文官と異なつたものであるというならばこれは別であります。しかしながら、大体原則は同じような建前で行つて、そうしてやむを得ない事情のものだけ取扱いをかえようという趣旨で行きますると、特別立法をいたしたといたしましても、結局は恩給法令が大分動いて来るということにならざるを得ないのであります。そう考えて行きますると、旧軍人方々やまたはその遺族の方々に対しまして、ことさらに恩給法から特別な扱いをして悪くするような印象を与えるがごときことはなるべく避けた方がいい、自然なる形として、恩給法の一部改正法案という形で出せるものならばそうした方がいい、こういうふうに考えて来た次第であります。
  90. 井手以誠

    井手委員 恩給法の一部改正につきましては、いろいろとお尋ねがあるのでゆつくりと時日をかけてやりたいと考えておりますが、それは公聴会なり、あるいは総理その他に対する質疑が終つてからいたしたいと思うのであります。ただここでお願いを申し上げたいことは、政府も申しておりまするように、五大重要法案の一つになつておりまするので、いろいろと飼料を出していただきたいと私は希望する次第でございます。この改正案によつて恩給をやる範囲、あるいは人数、金額等を具体的に項目別にした資料を出してもらいたい。かつて政府が、お燈明料といつて遺家族に対する援護の金が二百三十一億だと世間へは発表しておりましたが、実際は、厚生大臣の言によると百四十四億だけしか出していないということを承つております。従つてそういうことのないように、確実なはつきりしたことはつかめないにいたしましても、相当信頼できる最新の具体的な資料を出していただきたい。さらに、午前中からいろいろと質問がありました三十八条の四でございますか、不健康業務の該当者並びに金額、あるいはただいま山下委員からいろいろとお尋ねになりました数字、その他政府におかれては、この軍人恩給復活についてはいろいろと批判されておりまするので、いろいろ質問も予想されて、当局では矢でも鉄砲でも来いというような材料が必ずあるだろうと私は信じております。それをそつくり明後日の公聴会くらいまでに御提出願いたいことを特にこの際要望しておく次第でございます。  なおこの機会に、山下委員の質問に関連してお尋ねしたいことは、先刻軍人恩給については既得権ではないが、資格はあるという御答弁があつたように記憶しております。さらに昭和二十一年の特例によつて軍人恩給は廃止された、しかし恩給法はそのままだという御答弁もあつたようでございます。私はしろうとでよくわかりませんが、それでは恩給法のどこに軍人恩給ということがついておるか、先刻からずつと見ておりますけれども軍人恩給という言葉が全然載つていないようにも考えられる。何条にそれが載つておるか、資格があるという意味がよくわかりませんので、お尋ねしておきます。
  91. 船田中

    船田委員長 ただいま井手委員より御要望の件は、委員長からも善処方を要望しておきます。
  92. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 ただいま井手委員から御質問がありました点についてお答えいたします。お手元に昭和二十一年四月一日現在、恩給法及び同法施行令というのがあるはずでございます。この中に軍人に関する規定がございます。たとえば第二十一条のところに、「軍人トハ左ニ掲クル者ヲ謂フ」ということで、定義を下してあります。それからまた普通恩給軍人に給する場合の規定もこの中にあるわけであります。昭和二十一年四月一日現在の恩給法の中には、こういうように、恩給を給する規定がそのままあるわけであります。しかし現在におきましては、この恩給法の規定は、先刻申し上げましたように、恩給法の特例が昭和二十一年二月一日制定されまして、その恩給法の特例によつて、発動を押えられておつたのでございます。恩給法の中の軍人に関する規定は、昭和二十一年法律第三十一号の規定によりまして、全部削除されてしまいました。その結果、恩給法の本文の中には、何もなくなつたわけでございます。その削除の措置をした際に、その法律の附則のところに規定を設けたのでございます。その規定といいますのは、お手元に、昭和二十七年五月一日現在、恩給法関係法令集というのがあるはずでございますが、その法令集の二十五ページの下の段の終りのところに、附則といたしまして、昭和二十一年法律第三十一号というのがございます。これは昭和二十一年法律第三十一号の恩給法の一部改正法律の附則を引抜いて来ておるのでございます。この附則の第一条が二十五ページにございます。そのページの裏のところに第二条、第三条、第四条という規定がずつとございますが、その第二条の規定のところに「従前の規定による公務員又は公務員に準ずべき者についてはなお従前の例による」こういう規定があるのでございます。この第二条の規定は、軍人、準軍人等を削除いたしました際に設けた規定でございまして、恩給法の規定からは軍人、準軍人に関する規定は削除いたしましたけれども、従前のこういう軍人、準軍人に関する恩給法上の取扱いについては、なお従前通りの取扱いをするということをこの第二条に規定いたしたのでございます。従つて井手委員の仰せられますように、現行恩給法には明らかに軍人という言葉は書いてございません。しかしながら法律的には今申し上げますところの昭和二十一年法律第三十一号の附則第二条の規定によりまして、従前に軍人に関する規定があつたと同じように、恩給そのものとしては取扱われるようなことになつて来ておるわけでございます。しかしその規定というものは、恩給法の特例というものがありまして、発動は押えられてしまつた。こういうのが法律的な私たちの解釈でございます。
  93. 井手以誠

    井手委員 大体わかりました。なおこれについての質疑は後日にいたします。そこで私はせつかく大事な恩給法質疑中にほかの問題に移つて恐縮でありますが、調査を照会されましたから、お尋ねしておきたいと思います。  北緯二十九度以南の南西諸島所在の元官公署所属職員で、恩給証書を持つている既得権者に対して、恩給証書の増額改訂はなされておるかどうか。第二に恩給金の支払いはなされつつあるかどうか、まずその二点をお伺いしたいと思います。
  94. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今お尋ねのありましたような方々に対しましては、連合軍総司令部からのいわゆる行政分離に関する覚書によりまして、恩給の支払いができなくなつているのが実情でございます。ところが講和条約の効力の発生しました今日でございまするので、今度は今仰せられました方々にも恩給を給するような措置をすべく関係者の間に打合せを了しまして、近くこれに関する法律案をこの国会に出す予定になつております。その法律案が通りますれば、今仰せになりましたようなことも、全部措置ができることになつております。
  95. 井手以誠

    井手委員 あとの部分がはつきりわからなかつたのですが、この部分については、この国会へ法律案を出されるというのですか。
  96. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 そうです。
  97. 井手以誠

    井手委員 それでは続いてお尋ねいたします。分離以後、奄美大島政府やまた琉球政府官衙に勤続し、または勤続している年数も、分離前の勤務年数に通算されるのであるかどうか、その点を承つておきたい。
  98. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 この問題につきましては、特に南方事務局という特別な局が設けられ、その局長が中心になりまして、いろいろの問題を処理しておるのでございます。単に恩給の問題だけでなくて、その他諸般の問題をひつくるめまして、処理いたしておるのでございます。今日はその関係の政府委員が来ておりませんが、いずれその政府委員が出ました上におきまして、今の問題、あるいはそれに関するいろいろの問題もあるようでありますから、お答えをするようにさせていただきたいと思います。
  99. 辻政信

    ○辻(政)委員 山下委員の質問に関連して。恩給局長の御回答によりますと、今度の恩給取扱いについては、同一原則のもとに扱うということでございます。それは当然でございますが、どうも必ずしもそうなつていないように私は感ずるのであります。その一つの例として、増加恩給の額を文武官によつて比較してみると、私の調査によれば、第一項症という一番重い負傷をした者は、それが軍人でありますと、兵隊さんは年に十一万六千円、大将は一年に十三万九千二百円、一兵卒と大将との間に一年間に二万三千三百円の差があります。下士官、準士官、尉官、佐官はその中間を行つております。要するに非常に階級差がないのでありまして、これはまつたく卓見であると私は思う。私どもとしましては、われわれよりも兵隊により多くしてもらいたいという気持で一ぱいでありますが、われわれの気持政府が大胆にとつていただいたという点に敬意を表する。しかしながらこれに反して文官の公傷における増加恩給額は、これはまことにひどい差があるのであります。兵に相当する文官は同じ病気で一年に四万二千円。それから尉官に相当する文官は一年に七万九千八百円というふうになつております。将官に相当する文官は一年に二十七万円の増加恩給がつきます。武官の増加恩給は今申したように、一年に一兵卒と大将が二万円しか違つていない。文官の場合は、兵に相当する文官に対して将官に相当する文官が六倍半以上という高率を支給されるように私は計算しておるのでありますが、その点について私の判断が間違つておるかどうか承りたいのであります。
  100. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 ただいまの辻委員の御質問は、現行恩給法文官に適用した場合と、それから旧軍人方々に対しまして今度の改正法案を適用した場合における金額の差を御指摘になつていることだと思うのであります。お話の通りそうなります。ところで今度の改正案は旧軍人の方も、また文官の方にも同じように適用しようというのが建前でございます。従いまして文官に例をとつて申しますならば、今指摘されましたごとく、上の方の今後該当する方につきましては旧軍人の方と同じように割悪くなり、また下の方の文官につきましては、おそらく今までよりも若干割よくなるように措置されることになつております。ただ過渡的な措置といたしまして、今現に文官でもつて増加恩給をもらつている人がおります。そういう人たち金額は、今度の改正案と比較いたしました場合におきましては、現在もらつている方が多い人も少くないのでございます。そういう現在もらつている方が多い人につきましては、これをあすから下げて少くしてしまうということも現実の問題としていたしかねるものでございますから、これはそのままにして、改定は行わないということにいたしまして、ただごく下の方の人で、今度改定いたしまする際に若干ふえるようなものが出て参ります。それは改定する、こういうふうな措置を講じておるのであります。一挙に旧軍人の方と文官の方と同額の恩給に持つて行くということは、事実問題として困難でございまして、やむなく過渡的な措置といたしましては、差はつきますけれども、おそらく今後あるいはベース・アツプとか何かの場合におきまして是正されて行くものだと考えております。従つて今辻委員が仰せられますように、旧軍人の方も文官の方も、いずれは同じように公平な金額になるものと考えておるのでございます。
  101. 辻政信

    ○辻(政)委員 公務扶助料は、いわゆる戦死した場合の文官との比較を検討いたしますと、兵長の公務扶助料はいわゆる死んだ人の遺族に対しては年に二万六千七百円、下士官が二万八千三百二十円、それに対して将官が十一万五百円、こうなつて、これはけがをした者よりも多少率が違つておるのであります。これに対し、いわゆる兵に相当する文官は四万四百円、下士官に相当する文官は四万七千二百円、こういうふうになりまして、大体軍人の一倍半です。また将官に相当する文官の場合は二十六万で、将官の十一万に対し二倍半という高額が扶助料として遺族に與えられる。この計算ももちろん現行法を基礎にするのですが、その通りで間違いないと思うのですが、いかがでしよう。
  102. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 今仰せられました金額がぴたり合つているかどうかにつきましては、私はちよつと明言いたしかねるのでございますが、現行恩給法と、それから今度の改正案を比較いたしました場合におきましては、それは若干の差ができるということは今の御意見の通りでございます。ただ先ほど増加恩給の場合に申し上げましたごとくに、これは過渡的な措置としてやむを得ないのでありまして、今後給与事由の生ずるものにつきましては同じような取扱いをするということにつきましては、増加恩給の場合におきまして申し上げた通りでございます。
  103. 辻政信

    ○辻(政)委員 今後の問題は別といたしまして、軍人の遺族もしくは傷病者というものは過去において起きたけがであり、戦死なんであります。これから起きようとするものに対して今規定しようというわけではない。そうしますとあなたのりくつは成り立たぬと思います。過去において死んだ人が、過去において同時に死んだ文官の遺族よりも武官の遺族の方が少いということは、将来死ぬ者の遺族は別問題ですけれども、この点はどうでございますか。
  104. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 一昨日も申し上げましたごとくに、戦没者遺族の公務扶助料というものは莫大な金額になつているのでございます。従いまして、お話のようにできるだけの措置をして現行恩給法において給されている程度の扶助料でも給し得るとしますならば、これは仕合せなことでございまするが、その程度の額の恩給を出しますことはとうてい現在の国家財政では許されません。従つてやむを得ない措置といたしまして考えました場合には、今辻委員の指摘されました通りに、まことに遺憾なことでありますけれども、この程度において措置するよりほかしかたがないような事態になつて来たのであります。それならば一体文官の方にはどうしているか、こういう問題になつて来るわけであります。文官恩給の問題につきましては、今給されているものを軍人の新しく給される程度まで引下げた金額にあすから減らしてしまう、こういう問題になるのでございますが、それをすることもいかがなものかと考えるのでございまして、それはそのままにし、そうして今回は、普通でありますならば、公務員の給與のベース・アツプに伴いまして、恩給の増額もされるところを差控えるような措置を講じて来たのでございます。
  105. 辻政信

    ○辻(政)委員 でありますから私の申し上げたいのは、政府は文武同様に扱つておるということはあまり大きく言つてもらいたくない、厳密に言うと同様じやない。また現在もらつている文官をわれわれ並に引下げよということは申し上げたくない。そのかわり国家の財源が許す場合においては、現在認められていないところの過去に軍人の持つてつたものを文官同様の線まで上げるということです。それはりくつに合つているのです。水平運動ではなくして、当然りくつに合つたことを政府はお認めにならなければいけない。そこで文武同額ということを先ほどから数回言つておられますので、敬意を表しながら見ると、厳密には同等になつていない。そこをひとつ念を押しておきたい。もしあなたのおつしやる通り文武同額に扱うというならば、今回予算の関係上減らされている武官の扶助料、負傷者に対する手当というものは、将来文官並に上げるという一つの含みを持たなければ、そのことは成立たないと私は考えるのであります。
  106. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 私が先ほどから申しておりますのは、旧軍人やその遺族の方々恩給を給するにあたりましては、文官恩給との間に差別をつけないことを目途としつつ、現在やむを得ないことから来る若干の差というものは、やむを得ないものとして御了承願つて、そうして今申し上げますように、一つの目途を置いて今度の措置はされておるものである、こういうことを申し上げておるのでございまして、現実の問題として考えました場合におきましては、お話の通りにきちつと文武官の間で恩給金額が同額になつているというわけではございません。
  107. 辻政信

    ○辻(政)委員 でありますから、それはやむを得ぬとして認めますが、そのかわり将来はそういう方向に持つて行くということをぜひお認めにならないと、それは片手落ちです。一つ国家が文武によつて差別をするということは片手落ちです。それを私は申し上げたいのであります。予算がないならば同時に下げるべきものです。若年停止をどんどんやつてよろしい。文官といえども、またわれわれといえども、五十五歳まで停止していい。そのかわり負傷者と傷病者に対しては国家が約束した通りやる。これを私は強調するのであります。われわれはもらつても辞退します。
  108. 山下春江

    山下(春)委員 文官と武官との問題を先ほど御質問いたしましたのは、ちようど今辻先生から御質問になつた点でございまして、今までの御説明で了承いたしましたが、この点は今お返事ができたらしていただきたいのですが、先ほどから局長の言われる通りの考えで軍人恩給というものを考えられたとすれば、やはりこういうふうにひどく差がついておるということはおかしいのでございまして、国家財政の許すときが来れば、ぜひともこの均衡をとつてていただきたいと考えるのでございます。  それからもう一つ私が承つておきたいのは、今度の軍人恩給の中で拝見いたしますと、どうも死ぬ者貧乏に見えてしようがないのです。たとえば増加恩給の一等兵と、死にました少佐の扶助料が大体同額くらいのようでございます。そういうことから考えますと、近ごろはまたどういうせいか、靖国神社に白衣の人々がたくさん出て来ておりますが、この前も申したようにお母さんが連れていた子供に対して、お気の毒だから入れてあげましようと言つたところが、子供は、手がなくても足がなくても、目がなくても、お父さんは生きて帰つてもらいたかつたと言いました。実際十くらいの子供でございましたが、何かこの間の事実を如実に物語る言葉のように思えて、私はどうもこの法案が死ぬ者貧乏にできているように思えてしようがないのですが、この点はどういうふうな考え方でおつくりになりましたか。基礎になる点をちよつと御説明願いたい。
  109. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 この法案をつくります際に基礎になつたものを知らせてもらいたいということでございますが、金額を定めましたいきさつにつきましては、土曜日御説明しておきまたのですが、今のお話は、おそらく戦没者の遺族と戦傷病者と比較いたした場合において、もう少し戦没者の遺族に手厚く遇することは考えなかつたかということが御質問の趣旨ではなかつたかと思います。そういう見地に立つての御質問だと思いますので、それに対してお答えすることにいたします。戦没者の遺族の方々に給しまする扶助料につきましては、できますならばもう少し多くの額が給せられるようにいたしたいというふうに考えて努力をして参つたのでございますが、何と申しましても今度の恩給の額の中で大部分を占めるものは、公務傷病によつて死亡した者の遺族に対する扶助料の額でございます。従いまして、私どもは努力いたしたのでありますが、どうも思うようにならないで、結局その金額が非常に少くなつたような次第でございます。  それから根本的なものの考え方といたしましては、戦没者の遺族のことも考えなければいけませんが、しかしながら戦傷病者の方のことも考えなければいけないのでありまして、私といたしましては、どちらかを重く考えて恩給を多くやるようにするということについては、にわかに判断いたしかねる点もないではございません。ものの考え方でございますが、従来恩給法ができましたときからずつと恩給法の沿革をひもといてみますと、戦傷病者に給せられます恩給金額は割合によくなつてつたように見受けられます。これはおそらく国家のために自分の身を傷つけたその人個人に行く恩給ということに重きを置いて考えられているのではなかろうか。それからまた遺族に給せられるところの扶助料については、国家に身をささげたその人の余徳が遺族に及ぶというような考え方もあつたのではなかろうか。これは私の推測でございますが、こういうような気もしないではございません。いずれにいたしましても、昭和八年前後のことを考えますと、扶助料と増加恩給のところは大体この法案の程度でもつて大まかなつり合いがとれるように一応考えられるのでございます。特に戦没者の遺族の方を軽く扱うという考え方は毛頭ないのみならず、でき得ればもう少し何とか措置いたしたい、かように考えております。
  110. 山下春江

    山下(春)委員 この問題は確かに局長だけを責めましてもいたし方のない話で、傷ついて生きてこのせち辛い社会で闘つておる人に薄く、死んだ人に厚くというわけにも行かないし、さりとて死んだ方が死ぬ者貧乏というような待遇を受けられることに対してそれがいいとも考えられない。これは局長とまつた同感ではありますけれども、しかし考えてみますと、局長は遺族扶助料が相当大きな金額だと仰せられるのですが、なるほど金額は大きうございます。しかし人間が七五%に対して遺族扶助料は八五%出ているといつてもそれは少しも大きい中に入らないのでありまして、一・何倍にしかならないのであります。増加恩給の方は人員が二%に対して五%の金額ということになればはるかに率がいいのでありましてこういう率を出してみますといろいろむずかしい点がありましようが、しかしながらさつき辻委員も言われた通りに、これから起る事態に対処することではなく、きようまでにすでに起つてしまつた事件に対して国が厚く報ゆる、償うという気持からいえば、これではまつたくいい措置ではなかつたと思うのでございますので、この点に対して、将来もう少し国家財政にゆとりができて、扶助料を受けております実態をもよく調査し、これらの問題に検討を加え、なおこれに対する処置についてどういうふうにしようかということについて、何か今からお考えがあれば聞かせていただきたい。
  111. 三橋則雄

    三橋(則)政府委員 一般的なことを申し上げるならば、将来におきまして世の中の移りかわりともにらみ合せながらできるだけの努力をいたしまして、今の御要望に沿うように努めて行きたいと考えておりますが、今さしあたつてすぐにどういうふうな措置を考えているというような具体的な案の持合せはございません。
  112. 山下春江

    山下(春)委員 政府は一旦法案を出しますれば、あまりつつ込まれないようにお逃げになることが、一番法案を早く片づける意味においていいと思うのですが、この問題だけは政府も与党も野党もなく、国の先頭に立ちます者が誤つた措置をもつてこれを解決してしまいまして、せつかく国民の血税でまかなわれる五百億に近い金が思わざるところに失敗を残すようなことにならないように、政府は原案を出したら何でもこれを通せばいいんだ、あるいは野党だからいろいろな難くせをつけるとかいうことを一切抜きにして、私どもは謙虚な気持でこの問題を解決して行きたいと思いますので、なお衆知を集めましてできるだけ不公平のないように、あまり予算措置をいじくりまわさないで、可能な範囲におきましてなおよく検討して、あやまちなきを期したいと思いますので、どうか政府におかれましては、そういうことがございました場合には、喜んでこれを受入れるというお気持になつていただきたいということを要望いたしまして、一応私の質問を打切ります。
  113. 船田中

    船田委員長 他に御質疑がございませんか——なければ本日はこれまでといたしまして、次会は明後十一日水曜日午前十時より厚生委員会と連合にて公聴会を開きます。本日はこれにて散会いたします。     午後四時一分散会