○笹森
委員 先ほどのお話で、従来あるいは現在存在しておりまする
栄典制度と、この
法律ができた後における
栄典に対する
考え方とは、全然新しいものの
考え方によ
つて移行されるのだ、こういうようなぐあいに
考えてよろしゆうございますか。つまり言葉をかえればこういうことです。たとえば特権を伴わないということを申されました。前には高い位を持
つておる人が、低い位を持
つておる者よりも自分は位が高いのだというような、特別の社会的な
一つの強制力と申しましようか、あるいはまた自覚と申しますか、そういうものを過去においては多分に持
つていた。それが今度の案では特権を伴わないということに
なつて来た。つまり国家に対する功労のある人を表彰する、あるいはまたその人の楽典をみんなで喜んで、
政府も
国民を代表してこれを認めるというような方式をとることについては、私はそういうことなら何らの異存はないのですが、そうではなくて、過去におけるある時代においては、特殊なる
階級が不当に、といいますと語弊がありますが、
国民一般の
感情に必ずしも迎合しない、具体的にいうならば軍人、
官吏、公吏など、別に功労がないにもかかわらず、年中定期的な陞叙があるといつたぐあいで、しかも支配者が被支配者に対する
一つの権威としてこれを悪用したという例が必ずしもないではない。これは
国民感情として何とか直してもらいたい。主権在民の精神において、
国民の象徴であり国家の象徴である天皇から授与せられるといこうとに対して、喜びを感ずるであろうけれども、これは
国民のためのものでなければならぬというこの思想が、ややともすると過去の
栄典を持
つている者のために、その新しい
制度が蹂躙されるという憂いがあるから、実はそのことを、お尋ねしているわけであります。そういう点において今度の位も、実際にすべての
国民感情なり、あるいは古いものを存続しているものが新しい
制度にそのまま切りかえ得るかどうかということの心配が、大体
公聴会などにおいても
反対的な否定的な議論の中心に
なつているようでありますので、その辺の懸念がまだ残
つている。あるいはそれが尚早論が出て来たり否定論が出て来たりする重大なる原因ではなかろうか。御承知のようにこの
栄典制度は現内閣において御
審議に
なつたばかりでなくて、すでに二回、三回の内閣において
審議した問題であ
つて、突如としてこの位のことが出て来たということに対して、今の時代的なずれを非常に感ずるから、それで今の
官房長官の立場なり感覚をはつきりしておきたいというのもその辺にありますので、これは法的な上からも実際の政治社会情勢の上からも、一体どういう感覚でこういうものをお出しに
なつたかということを明確にしておきたいために実はお尋ねしているわけであります。