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1953-02-20 第15回国会 衆議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 熊谷 憲一君 理事 富田 健治君    理事 大矢 省三君 理事 井手 以誠君       大西 禎夫君    岡田 忠彦君       砂田 重政君    田中 萬逸君       笹森 順造君    粟山  博君       吉田 賢一君    原   彪君       武藤運十郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (大臣官房賞勲         部長)     村田八千穂君         行政管理政務次         官       中川 幸平君         総理府事務官         (行政管理庁統         計基準部長)  美濃部亮吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         法務政務次官  押谷 富三君  委員外出席者         総理府事務官         (保安庁長官官         房法規課長)  麻生  茂君         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 二月二十日  委員山本正一君辞任につき、その補欠として周  東英雄君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事武藤運十郎君の補欠として井手以誠君が理  事に当選した。     ――――――――――――― 二月十六日  保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  五五号) 同月十七日  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五八号) 同月十八日  統計法の一部を改正する法律案内閣提出第六  三号) 同月七日  軍人恩給復活に関する請願三和精一紹介)  (第一五六八号)  同外五十一件(寺島隆太郎紹介)(第一五六  九号)  同(伊東岩男紹介)(第一五八七号)  同(倉石忠雄紹介)(第一五八八号)  同(小金義照紹介)(第一五八九号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一六〇三号)  同(植原悦二郎紹介)(第一六〇四号)  同(川野芳滿紹介)(第一六〇五号)  同(岡田忠彦紹介)(第一六〇六号)  同(古井喜實紹介)(第一六二四号)  同(宮澤胤勇紹介)(第一六四八号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一六四九号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第一六五一号)  元軍人遺族扶助料復活に関する請願(中野四  郎君紹介)(第一六五〇号) 同月十二日  軍人恩活復活に関する請願田中彰治紹介)  (第一六七三号)  同(今村忠助紹介)(第一六七七号)  同外二件(池田正之輔君紹介)(第一六七八  号)  同(逢澤寛紹介)(第一六七九号)  同外十二件(井出一太郎紹介)(第一六八〇  号)  同(西村直己紹介)(第一六八一号)  同(荒木萬壽夫紹介)(第一七八三号)  同(松岡俊三紹介)(第一七八四号)  同(小林絹治紹介)(第一七八五号)  同外一件(鈴木正吾紹介)(第一七八六号)  同(内藤友明紹介)(第一七九四号)  元軍人遺族扶助料復活に関する請願外二件(  江崎真澄紹介)(第一六七四号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一六七五号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第一六七六号)  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  (古井喜實紹介)(第一六八二号)  同(青木正紹介)(第一六八三号)  同(森幸太郎紹介)(第一六八四号)  同(床次徳二紹介)(第一六八五号)  同(西川貞一紹介)(第一六八六号)  同(受田新吉紹介)(第一六八七号)  同(栗山長次郎紹介)(第一六八八号)  同(岩本信行紹介)(第一六八九号)  同外二件(熊谷憲一紹介)(第一六九〇号)  同(山本粂吉紹介)(第一六九一号)  同(關谷勝利紹介)(第一六九二号) 同月十六日  軍人恩給復活に関する請願(阿部千一君紹介)  (第一八四四号)  同(逢澤寛紹介)(第一八四五号)  同(江崎真澄紹介)(第一八四六号)  元軍人遺族扶助料復活に関する請願中峠國  夫君外二名紹介)(第一八四七号)  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  (船田中君紹介)(第一八四八号)  恩給権回復に関する請願松本七郎紹介)(  第一八四九号)  本別町に保安隊設置に関する請願伊藤郷一君  紹介)(第一八五〇号) 同月十八日  公務員給与改訂に伴う恩給改訂に関する請願  (木暮武太夫紹介)(第一九八八号)  同(保利茂紹介)(第一九八九号)  同(坪川信三紹介)(第一九九〇号)  同(秋山利恭君外二名紹介)(第一九九一号)  軍人恩給復活に関する請願山本正一紹介)  (第一九九二号)  同(小坂善太郎紹介)(第一九九三号)  同(坂田道太紹介)(第一九九四号)  同(井出一太郎紹介)(第一九九五号)  同(中曽根康弘紹介)(第一九九六号)  同(石坂繁君外三名紹介)(第一九九七号)  同(三宅正一紹介)(第一九九九号)  同(山崎巖紹介)(第二〇〇〇号)  同(井出一太郎紹介)(第二〇〇一号)  同(福井勇紹介)(第二〇〇二号)  同(越智茂紹介)(第二〇〇三号)  同(關谷勝利紹介)(第二〇〇四号)  同(今松治郎紹介)(第二〇〇五号)  同(菅太郎紹介)(第二〇〇六号)  同(岡田忠彦紹介)(第二〇〇七号)  同外三件(早稻田柳右エ門紹介)(第二〇〇  八号)  同外十三件(丹羽喬四郎紹介)(第二〇〇九  号)  同外二十九件(村上勇紹介)(第二〇一〇  号)  同(古井喜實紹介)(第二一八三号)  同(辻政信君外一名紹介)(第二一八四号)  元軍人遺族扶助料復活に関する請願河野金  昇君紹介)(第一九九八号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月六日  軍人恩給復活に関する陳情書  (第  一〇〇一号)  軍人恩給加算制度に関する陳情書  (第一〇〇二号) 同月十一日  伊万里湾に海上警備隊基地誘致陳情書  (第一一〇一号)  元軍人恩給復活に関する陳情書  (第一一〇二号)  旧軍人恩給復活に関する陳情書  (第一一〇三  号)  同  (第一一〇四号)  同(第一一〇  五号)  同(第  一一〇六号)  旧軍人軍属及びその遺族等恩給に関する陳情  書  (第一一〇七号)  教職員恩給制度に関する陳情書外二件  (第一一  〇八号)  同外一件  (第一一〇九号)  遺族扶助料に関する陳情書外一件  (第一一三九号)  同外九件  (第一一四〇号)  同(第一一  四一号)  同  (第一一四二号)  同  (第一一四三号)  同(  第一一四四号)  同(  第一一四五号) 同月十二日  保安庁航空機発注に関する陳情書  (第一二〇一号)  恩給法改正に関する陳情書  (第一二〇二  号)  同(第一二  〇三号)  文官恩給スライドアツプに関する陳情書  (第一二〇四  号)  教職員恩給制度に関する陳情書  (第  一二〇五号)  同外三件  (第一二〇六号)  同  (第一二〇七号)  同外一件  (第一二〇八号)  旧軍人関係恩給復活に関する陳情書外三件  (第一二〇  九号)  同(第一二  一〇号)  旧軍人恩給復活に関する陳情書  (第一二一一号)  同  (第一二一二号)  遺族扶助料に関する陳情書  (第一二四九号)  同  (第一二五〇号)  遺族扶助料に関する陳情書  (第一二五一号)  同  (第一二五二号)  同  (第一二五三号)  同(第一二  五四号)  同外一件  (第一二五五号) 同月十七日  保安庁航空機発注に関する陳情書  (第一三〇一号)  旧軍人恩給復活に関する陳情書  (第一三〇二  号)  遺族扶助料に関する陳情書  (第一三〇三号)  同  (第一三〇四号)  同  (第一三〇五号)  同  (第一三〇六号)  同  (第一三〇七号)  教職員恩給制度に関する陳情書  (第一三〇八  号)  同  (第一三〇九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  栄典法案内閣提出第三三号)  保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  五五号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五八号)  統計法の一部を改正する法律案内閣提出第六  三号)     ―――――――――――――
  2. 船田中

    船田委員長 これより内閣委員会を開きます。  本日の議題は公報をもつてお知らせしておきました通り栄典法案内閣提出第三三号、保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出第五五号、法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提出第五八号及び統計法の一部を改正する法律案内閣提出第六三号でございます。なお調査事件といたしまして、行政機構並びにその運営に関する件について調査をいたすはずでありますが、最後国政調査につきましては都合上延期いたします。  まず統計法の一部を改正する法律案議題といたし、政府提案理由説明を求めます。行政管理庁政務次官中川幸平君。
  3. 中川幸平

    中川政府委員 ただいま提案になりました、統計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨説明いたします。  昨年八月に行われました行政機構改革によりまして、統計委員会は廃庁されて行政管理庁に新たに設けられた統計基準部がその事務を継承いたしました。従いましてこの統計法も昨年の八月以降行政管理庁の所掌の法律なつておりますが、この法律に三箇所修正をいたす必要が断りますので、この法律案提案するごとにいたしたのであります。  この法律案によつて改正される第一の点は、第十三国会で成立いたしました統計報告調整法の施行に伴つて、その附則第三項により、統計法第八条第一項に挿入された但書のうち「統計委員会」という字句を「行政管理庁長官」に読みかえることであります。これは統計報告調整法と並行して第十三国会提案されておりました行政機構改革に伴う行政管理庁設置法の一部を改正する法律案が、統計報告調整法よりも先に施行されましたために、統計報告調整法か施行されまして、その附則によつて別に述べました但書統計法第八条に挿入されましたときには、統計法中の統計委員会字句はすべて行政管理庁長官または行政管理庁と読みかえられてしまつていたために、この一箇所だけに統計委員会字句が残されることになりましたので、これを行政管理庁長官に読みかえる必要が生じておるのであります。  改正いたします第二の点は、第一の点と同じ統計報告調整法附則第三項の但書により挿入されました統計報告調整法字句の次に法律番号を加えることであります。これは同じ統計報告調整法附則第三項により、統計法第六条の二の旧統計委員会権限規定中に、統計報告調整法に基いて統計報告の徴集について承認を行う権限を挿入することになつておりましたので、その際法律番号の入つた統計報告調整法字句を入れることになつておりましたところ、統計報告調整法が施行されましたときには、機構改革に伴う行政管理庁設置法の一部を改正する法律がすでに施行されて、その附則の第六項により統計法第六条は全文削除されておりました。そのために統計報告調整法附則第三項により統計法第八条にただ一箇所だけ統計報告調整法字句法律番号なしに入る結果となりましたので、ここに法律番号を加える必要が生じているのであります。  第三の点は統計法第十条第六項中の各号列記以外の部分中「官吏又は」という字句削除することであります。これは、整理漏れによる単なる字句削除であります。  このたび統計法改正を行おうとするのは以上の三点でございます。  以上統計法の一部を改正する法律案提案理由につきまして概略を御説明いたしましたが、何とぞすみやかに御審議の上御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 船田中

  5. 美濃部亮吉

    美濃部政府委員 簡単に補足説明をいたします。内容的には全然問題がございませんで、統計法中に今は全然ございません「統計委員会」という字が一箇所ございますので、第一の点はそれを「行政管理庁長官」に直していただきたいという提案でございます。  これがなぜそういうことになつたかと申しますと、行政管理庁設置法とそれから統計報告調整法附則とどちらが先に第十三回国会において審議決定されて公布されますか、初めは行政管理庁設置法の方があとで公布される予定なつておりました。従つて報告調整法附則による統計法改正が先に行われまして、統計法条文がかわつてあと行政管理庁設置法がきまりまして、行政管理庁に全部読みかえられるだろうという予定で進んでおりましたところ、行政管理庁設置法の公布の方が先になつてしまいましたので、報告調整法附則統計委員会という字句統計法に挿入されます。前に、行政管理庁設置法によつて全一部が読みかえられてしまいましたので、報告調整法に基く統計委員会という字句の挿入があとなつてしまうということになりましたので、このたびこれを読みかえることをお願いする次第でございます。  第二も、やはり同じことから生じた法律技術上の問題で、内容の問題ではございませんが、やはり行政管理庁設置法が先に公布されることになりましたので、その設置法によりまして統計委員会権限は全部行政管理庁に移されたわけでございます。そのために第六条の統計委員会権限をきめました条文全文削除なつたわけでございます。それでお手元の資料にございますように、統計調整法附則統計報告調整法という字が二つ出ておりまして、その最初に出ておりましたところに昭和一十七年法律第四八号という字を入れておいたのでございますが、それは削除されました第六条に入るべきでございましたので、第六条の全文削除とともに、この法律番号も当然削除されてしまつたわけでございます。そこで法律番号のない統計報告調整法一つ統計法の中に取残されるということになりましたので、その法律番号を新たに一つ出ております統計報告調整査法の下につけ加えていただきたいというのが第二のお願いであります。  第三は、統計法第十条第六項の中に「官吏又は吏員」という字がございます。従来は吏員の方は、一定の資格を備えますと、統計主事というものに補職されますし、官吏の方は統計官というものに補職されることになつておりました。それでありますから、統計主事になりますのは、現在においては吏員だけに限られておるのでございますが、そこに「官吏」という字が整理漏れで残つておりますので、それを削除していただきたいというのが第三のお願いであります。  簡単でありますが、以上補足申し上げます。
  6. 船田中

    船田委員長 本件についての質疑次会に譲ります。     —————————————
  7. 船田中

    船田委員長 次に法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたし、政府より提案理由説明を求めます。法務政務次官押谷富三君。
  8. 押谷富三

    押谷政府委員 ただいま上程になりました法務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  この法律案趣旨は、少年院法第二十一条第二項の規定による経過措置といたしまして、従来少年刑務所の一部を特に区別して特別少年院に充てておりましたが、本年四月一日以降この措置を法制上継続することができませんので、かねてその対策につき準備を進めて参りましたが、四月一日をもつて、新たに少年院を設置し、少年刑務所等少年院に転用し、及び分院を本院に昇格させることといたしまして、少年院の増設を行おうとするものであります。これを個々の施設について申し上げますと、奈良少年院大分少年院盛岡少年院千歳少年院及び松山少年院は、いずれも新たに施設を設けて設置いたすものであります。また現在その一部を特別少年院に充てております久里浜刑務所石切刑務支所愛知少年刑務所及び新光学院少年矯正教育に適当な施設でありますので、これらを少年院に転用して、それぞれ久里浜少年院河内少年院愛知少年院及び新光学院を設置するものであります。神奈川少年院はさきに工事未了のため一応分院として設置いたしたものでありますが、その完成も近くなりましたので、これを本院とすることとし、また和泉少年院は、現在の浪速少年院の分院共善学寮を拡充してこれを本院に昇格させますとともに、この際その名称を改めたいと存ずるのであります。  その他少年院の位置について、行政区画名の変更による所要の改正をいたしております。  以上が、本法律案提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。
  9. 船田中

    船田委員長 次に補足説明を求めます。高橋政府委員
  10. 高橋孝政府委員

    高橋(孝)政府委員 ただいま政務次官から御説明になりました通りでございますが、なおこのたび新設されます施設につきまして、御参考までに二十八年度における収容定員予定を申し上げますと、神奈川少年院、これは種別中等としまして、収容定員は三百四十四名の予定でございます。久里浜少年院につきましては種別を特別といたしまして、その収容定員は五百名といたしたいと考えております。河内少年院につきましては種別を特別、その収容定員を三百名と予定しております。次に和泉少年院につきましては種別中等収容定員は二百四十四名といたしたいと考えております。奈良少年院につきましては種別を特別、収容定員を二百八十名と予定しております。次に愛知少年院につきましては種別を特別、収容定員を三百一十二名と予定しております。新光学院につきましては種別を特別と医療、収容定員を六百十二名と予定いたしております。大分少年院につきましては種別を特別、収容定員を四百名と予定いたしております。盛岡少年院につきましては種別を特別、収容定員を二百四十四名と予定いたしております。千歳少年院につきましては種別を特別、収容定員を百六十二名と予定いたしております。最後松山少年院につきましては、種別を初等及び中等収容定員を百六十名と予定いたしております。ほかに特別に申し上げることはございません。
  11. 岡田忠彦

    岡田(忠)委員 この問題に関係するかしないかしれませんが、私は岡山ですが、岡山少年院をつくるとかつくらぬとか、以来やかましくぼくのところへも陳情に来て、何か言つて来ておりますが、その見込みはどうなりますか。本年度に設置するかどうかということを伺いたい。
  12. 高橋孝政府委員

    高橋(孝)政府委員 現在のところで申し上げますと、来年度の実行計画ができますれば、それによりまして岡山少年院を設ける予定考えております。
  13. 岡田忠彦

    岡田(忠)委員 ありがとう、頼みますよ。
  14. 船田中

    船田委員長 質疑次会に譲ります。
  15. 船田中

    船田委員長 次に栄典法案議題といたします。質疑の通告がありますからこれを許します。吉田賢一君。
  16. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 前回の審査の際に質疑をいたしましたが、その続きで一、二点尋ねたいのであります。  第一にこの位の問題ですが、わが国におきましては、新しい憲法以後は従来の皇族も多数皇族を離脱されております。それから華族なる称号身分も一切なくしております。憲法のそういう国民身分関係に関する根本的な考え方がかわつておるわけであります。これは御承知の通りであります。しかるにまた位を正一位から従八位まできめようとするのがこの法案の要綱であります。しかも政府委員説明によりますと、従来の位はそのまま有効であり、現に位を持つている人はそのまま位の称号並びにこれに伴う礼遇があるようであります。これは憲法の精神から考えてみましても、また国民感情から見ましても、新しく制定するというのはまつたくふに落ちません。ことに従来の位の趣旨とはまつたく違つております。政府委員説明では、趣旨理由も全部違うという御説明なつておるのでありますが、こういうようなものを新たに制定する積極的な理由があるのかというのが前会における私の質疑要旨であつたのですが、積極的な理由についてどうも御説明ができぬのであります。ことにこの間の公聴会でも、武者小路公述人一人これに賛成せられて、その他は全部反対であります。こういうようなわけでありますから、国民のほとんど大多数は位の新しい制定には反対をしておると見ていいのじやないかと思います。こういう問題に対しまして官房長官の隔意なき御意見を伺いたいと思います。
  17. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 旧来の位をそのまま存続するのは——旧来のと申しますか現行のと申しますか、それは勲章と同じように考えておるのであります。それから新たに栄典法を制定するについて、どういうわけで位を存置するかというと、これは積極的の理由ということに当るかどうか知りませんが、これを存置することによつて栄典制度潤いを持たせるといいますか、栄典を与える場合に便宜がある。特に過去の功労者等を顕彰いたします場合に贈位というようなことを従来ももやつておりますが、どうもそれを勲章でやるわけにも参りませんし、そういうときにも便宜であろう。これを要しまするに、栄典制度一つの幅と潤いを持たせるというだけの理由でございます。
  18. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やはり新しい日本を創造して行くという意味の段階でありまするので、国民感情の大多数が新たに位という制度を設置しようということには私は反対しておると見ていいと思うのであります。こういうように本委員会国民の各階層から意見を求めるということはやはり国民の持つておる感情なり、この法案に対する率直な意見国会に現われて来さすためでありまするので、これはやはり相当尊重すべきでないかと思います。ことに新しく国民階級ができるような感じも投げ与える制度になると思うのであります。勲章潤いを持たすというようなことで新たに国民階級をつけるというような感じを投げ与えることは、どうしても合点が行かぬのであります。それをしもしいてこれを制定するということは何か時代逆行の感が深いのであります。こういう点についてはどうお考えになりますか。
  19. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 いろいろ意見を立て得ると思います。今の御意見のような見方もあるかと思いますが、政府は先ほど来申し上げましたような理由でこれを存置いたしたいという考えでおります。
  20. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでありますると伺いますが、在来位階令による位と、この法律による位とは同じですか違うのですか、それを明らかにしていただきたい。これは前会に事務当局からはすでに意見が出ておりますが、どうもよくわかりませんので、責任大臣の責任あるお答えを願いたいと思います。
  21. 緒方竹虎

    吉田(賢)委員 それでありますると伺いますが、在来位階令による位と、この法律による位とは同じですか違うのですか、それを明らかにしていただきたい。これは前会に事務当局からはすでに意見が出ておりますが、どうもよくわかりませんので、責任大臣の責任あるお答えを願いたいと思います。
  22. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 意味が違う、趣旨が違う、そうして名称は同じ、形は同じといつたようなことでは紛淆を来し、まぎらわしいことになるわけでありまするが、そういうようなまぎらわしいものを新たに設置しなければならぬのでしようか、もし百歩譲つてその必要があり、あるいは適当であるといたしましても、何らかの区別をすべきではないかと思うのですが、そういう混淆を来すということは百害あつて一利ないように思うのですが、混淆を来すという点についての御所見はいかがですか。
  23. 村田八千穂

    村田政府委員 お話のように従来のものと今後授与しますものとは同じ名称でございまするから、一時まぎらわしいということもあると思いまするけれども、その弊害という方を考えますると、さほどのこともないのではないかと考えられる次第でございます。と申しますのは、現在位階を持つておられる方と、将来新しい方針のもとに授与される位階を持つ方との権衡の問題だろうと思いますが、この点は新しい授与方針が、従来授与したものと比較して劣らないようにいたしたい、こういうふうに考えております。大体の線においては、従来授与したのよりもむしろいい位といいますか、それが授与されるようになつて行くと思いますので、そうしますればさほど弊害はない、こう思つております。もちろんごく少数の方で、従来ある地位につかれていい位を持つておられる方はしばらくの間残りまして、そういう方との間にいろいろ比較すると、新らしい制度のもとに出す位の価値について批判の余地があるかと思いますけれども、これも長い期間の問題ではない、こういうふうに考えております
  24. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 なお根本的な面について大臣の御答弁を願いたいのですが、それは前会の公聴会に現われておりましたいわゆる時期尚早論であります。これはやはり傾聴すべき一つの所見であろうと思います。今まだわが国といたしましては、根本的に改革をしなければならぬ国内の諸制度であるとかあるいは調整しなければならぬ各般の社会問題が山積いたしておりまするし、また外交上、内政上におきましても、問題山積の際でありまするので、こういつた際に、そういう方面に全力を傾注いたしまして、——むしろ栄典制度は根本的には憲法規定してあるのですけれども、ただちに制定する必要の有無ということはまた別問題でありますので、いましばらく社会のおちつきを待つて、その上で出すということも考え方の一つかと思うのであります。そういう面に対する御所見を伺つておきたい。
  25. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国が占領期間を経まして平和条約ができて独立を回復いたしましたことにつきましては、できればなるべく早く国の骨格をきめて参りたい。栄典のことにつきましては、憲法にもあることでありまするし、その立て方についてはいろんな意見、批判もあろうかと考えまするが、一応独立ということで国の立場もおちついて参りましたので、政府といたしましては、この際その骨格の一つといたしまして、栄典制度をきめたい。それに対して国会でどういう御意見があるかは別といたしまして、政府の立場はそういう考え提案をいたしたような次第でございます。
  26. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 納得できませんが、次に問題を進めます。審議会の構成、運用の点でありますが、かりにこれを全面的に認めるとしましても、やはり運用ということが重大なことになるわけでありまして、これも前会私が質疑いたしましたが、はつきりしないので大臣の御答弁を求めるわけであります。たとえば、これはやはり国民の総意を代表しておる両院の議長とかあるいは各界の代表の意見とか、そういうものが比率とか数とか何か相当具体的に現われておるということになつて来ませんと、この審議会の運営は非常にへんぱになる危険がありはしないかと思います。これはやはり私の私案としまして、両院の議長などは当然入れてはいかがかと前金にも尋ねてみたのですが、各階層の代表的な意向をよくくむというようなことで、相当な用意を持つてしませんと、従来の勲章とか褒章とかいうものは、極端にいえば社会的ないわゆる有力層がこれを独占する傾向にありまして、いろいろと非難をされましても、要するに有力層がこれを独占して行くという結果になつておりまして、時代もすつかり移りかわらんとするときでありまするので、やはりどういう立場であろうと、どういう無力であろうにかかわらず、漏れなくそれぞれを表彰せられ、功労は功労として審査の対象になる、あるいはある者は功労ではないと有力な反対意見も出る、こういうようなことがほんとうに審議の機会に論議されることになりませんと、運営の実を失つてしまい、目的を達しないことになる危険がありますので、構成につきましては、各方面の意向を十分に反映し得るような具体的な規定をすること、国会等の意向は、その議決であるとか、あるいは代表を入れるとか、何らかの方法でできるだけ審議会の中にこれを反映せしむる、こういうようなことについて相当な用意をもつて望まねばならぬと思いますが、いかがでしよう。
  27. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまのお話は私どもも全然同感で、同じような考えを持つておりまして、この審議会の構成につきましては、公正で良識のゆたかである人であることはもちろん、それが各界の一流の人であるかどうかということ等につきましても、何か偏見にとらわれないようにできるだけの注意をして、非難のない、世間から見ましてこれはまことにもつともな人選という信頼を得ることが、こういう制度の運営につきましては一番大切なことと思いますので、その点につきしましては十分の注意をいたすつもりでございます。
  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もう一点で終りたいと思います。勲章の種類に産業勲章というのが承ります。また功労章があり、あるいは褒章ということになつておりまするが、公聴会でもいわゆる技術勲章を新たに設けてはどうかという意見が出、あるいは農村のために、篤農と申しまするか、農業上の功労者を表彰する特別な何か方式を組み入れてはどうかというような意見も出ておつたようであります。こういう相当多くの人の意見をわれわれも世上聞くところであります。そこで何らかいわゆる産業という範疇に入りにくいような技術文化的な面、これは別に文化勲章とかあるいは、功労章などに入るべきかわかりませんけれども、そういつた将来の日本の、ことに立国の大きな根幹といたしまして、特に技術文化的な方面の急速なる、大いなる発達をこいねがわねばならぬ国でありますので、こういう面から見ましても、やはり少し物足りないのではないか。言いかえますると、名前はどうでもよろしゆうございまするが、そういつた技術とかあるいは農業とかいうような面につきまして、特に表彰する何らかの制度をこの中へ組み入れて行くということの必要がありはしないかということについてひとつ御意見を求めておきたいと思います。
  29. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 まつたく同感でございます。そういう勲功の選考のいたし方につきましても、一般の良識とかけ離れたことがあつてはまずいのでありまして、ただいま御意見のありました趣旨はよくわかりますので、すべての産業の——文字の含む意味に非常識なことのないように、その点は十分注意をいたしたいと思うわけであります。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これで終りますが、私は位に対する政府の答弁はまつたくふに落ちず、了解に苦しむのであります。これだけを申し上げておいて質問を打切ります。
  31. 船田中

    船田委員長 次に笹森順造君。
  32. 笹森順造

    ○笹森委員 最初に官房長官にお尋ねしたいのです。この栄典制度の旧憲法下における考え方と新憲法下における考え方との根本的の相違があると私どもは思うのですが、その根本の違いを概略どういう考えでこの新しい法案に盛り込んでおられるか、その点をお尋ねします。
  33. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 根本的と申しますと、すべての独立後の制度考え方がそうでありますように、民主的な選考の仕方をしてもらいたい、そういう気持でいるわけであります。
  34. 笹森順造

    ○笹森委員 たいへんお答えが漠としている。質問もあるいは漠としておつたかもしれませんが、ずつとこれを通覧してみまして、どうも新しい憲法の息吹きが十分にこれに覆り込んでおられないから、こういういろいろな疑問が出るのじやないかと思うので、実はお尋ねしたわけであります。申し上げるまでもなく、現在の憲法審議されました当時、この問題を取扱つておりました金森国務大臣の答弁の中に現われておりますことも、私どもにこのごろ配付されたものの中にも書いてあるのでありますが、従来は天皇の栄光を賜うというような思想が多分にあつたようでございます。従つて叙賜というようなことが常に行われた。この思想において天皇自身の特権としてこれが行われていた。今民主的という官房長官のお話がありましたが、新しい憲法については、これをどう取扱うかということについて、あの当時も相当議論があつて、この憲法がきまつたと記憶しているのであります。すなわちこれは天皇の行われる国事として残つていることの一つに、この第七条の七号がある。ですから依然としてこれは政治でなくて国事だということであることは御承知だと思うのであります。ところがそれにしてもやはりこれは天皇が国民のためになさるんだということもまたはつきりしている。この点において、これは内閣がどれだけの責任を持つて国民に対するか、あるいは立法府であるこの議会が、どういう立場でこの問題を処理すべきかということについて、やはり当時の思想の関連として、今日も新しい法律一つくる以上は、相当当時の考え方が織り込まれておらなければならぬと思うわけでありますが、その点に関する根本の考え方がわからなければ、私は議論しても根本的に意見の対立を持つのではないかと思いましたので、この点をお尋ねしたわけであります。
  35. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私が民主的と申し上げましたのは、はなはだ漠としておりました。今の天皇の国事の中に入つておりますことは、ただいま笹森さんのおつしやつた通りでありますが、政府と天皇の両方の関与のウエートが、旧来のものとは非常に違つてつておると思うのであります。考え方といたしましては、国が独立をいたした、この新しい国を再建して行くその功労ある者に対しまして、将来国民の志気を高めて行きます上に、また直接その功労に報います土にも、こういう栄典が新しい日本として必要である、そういう考え方をいたしまして、その選考につきましては、今までももちろん内閣がやつたのでありますが、今度は内閣が天皇に強い助言をいたしまして、その助言に基いて天皇がこれを行われるということでありまして、そういう意味から、考え方が従前とはまつたく違つた民主的な考え方になつておると存じております。
  36. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいまのお答えで方法論はわかつたようでありますが、根本論にまだ触れておられないのではないかというような気がいたします。根本論の明確になるためには、やはりこの問題に関係しております憲法第十四条の後段のことが相当問題になろうかと思つております。常に私どもが問題にいたしますのは、御承知の通り、いかなる特権がこの栄典に伴うかということをやはり根本の思想として私どもは討議をして——結局するところ、第十四条に「いかなる特権も伴はない」ということが出ておるのでありますが、旧来の叙賜の思想においては、大きな特権が政治的にも経済的にも社会的にも、あるいはまたその人間の身分を左右する上において伴つていた。このものが、私どもはこの新しいものの中に、栄典栄典として、私どもは肯定をしておるわけでありますが、内容について根本的な相違があると私どもは認識しておるのです。この点についてどうお考えなつておるかをお尋ねしておきたいと思います。
  37. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 まつたくお説の通りでございます。
  38. 笹森順造

    ○笹森委員 それでは引続き先ほどの御質問なされた方のことに多少関連がありますので、重複になるかもしれませんけれどもお尋ねをしたいのでありますが、旧来勲章を残す。あるいはまた旧来のこういう栄典制度を、あるものは廃止になりましたが、あるものは相当大幅に残しておくということが、この御提出になりました案の中にありますが、この旧来のものをそのまま残しておくということと、今まつたくその通りだと仰せになりましたお答えの間に、矛盾をお感じになる点はまつたくないのでありますか、お尋ねしておきます。
  39. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 旧憲法下の国家と新憲法下の国家とこれはまつたく違つたものと考えることのできぬ点もありまして、そういう意味から、旧憲法下の栄典もそれを佩用することを許すということは、私はそれほど不自然を感じておりません。
  40. 笹森順造

    ○笹森委員 それではお尋ねいたしますが、旧栄典における栄典を叙賜せられた者に対しましては、特権がいろいろ伴つておつたわけであります。この新しいものの中には特権がないということになるのでありますが、その間には何ら継承するものが残らないということになりますか、お尋ねしておきます。
  41. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 旧憲法下に授けられました栄典に伴いまして、何ら今日では特権がございません。
  42. 笹森順造

    ○笹森委員 それではさらにお尋ねいたしますが、この特権を伴うということはどういうことなのか、これもただ言葉で特権を伴わないというだけでは理解しにくいので、どういうことなのか、その辺をもう少しはつきりとお尋ねしておきたい。たとえば前には特別な栄典を持つている者は、特別な政治的な地位についたり、あるいはまた特別な経済的な、金銭なり物品なりを国家の費用において与えていたということがあるのでありますが、それが全然ないというのが原則だとわれわれは考えているが、これがどうかわつて行くか、お尋ねしておきます。これは新法律において、憲法十四条との関係において、一切の特権を伴わないというのは、具体的にどういうことになるのですか、お尋ねしておきます。
  43. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 憲法が新たになれば、その限りにおいて国が新たになつた、従いまして旧憲法下の特典はこれを認めないということは、新憲法下において自然だと考えております。
  44. 笹森順造

    ○笹森委員 これは前にも問題になつたことでありますが、文化勲章というものが後にできた、それに国家の費用をもつてある一定額の金を賞与として与えるということは違憲なりという議論が起つて、それを授けるためにいろいろ考えた。ところが今度この法律の中に、やはり金を伴うようなことが現われている。これは思想的に自家撞着ではないか、憲法第十四条の違反ではないかというような疑いについて、一体どう御答弁なさるのか、その御答弁をお伺いしたいと思います。
  45. 村田八千穂

    村田政府委員 お尋ねにつきまして、少しこまかい問題がございますので、私から答弁さしていただきます。文化勲章に年金をつけているという問題につきましては、文化勲章受章者は必ず年金をいただく、文化勲章に伴う権利だと、こういうような建前になつておりませんので、文化勲章は国家の栄典として選考れさる、別に政府の方から、政府限りにおきまして、文化功労者に年金を授与する、こういう制度が別にございまして、たまたま文化勲章をいただいた方で文化功労年金を一緒にいただいている方ができているというだけで、結果的にはそういうことになつておりますが、建前は文化勲章をいただいた者には文化功労年金を授与するということになつていませんので、憲法十四条に違反しているとは考えていないのであります。  それからこの栄典法の方で一時金を授与することができるという規定もございますが、一時金はそのときの情勢によりまして、たとえば孝子節婦のような方の表彰につきましては、この案で行きますと、緑綬褒章ということになるのでございますが、緑綬褒章のほかに一時金をつけた万が実際に適合しているという場合もあるのではないか、こういう場合の一時金につきましては、憲法にいう特権でない、こういうように解釈されております。
  46. 笹森順造

    ○笹森委員 あとの方が憲法にいう特権でないと解釈すること自体が、どうも思想的に撞着なり矛盾なりがありはせぬかということを憂えているから、先ほど文化勲章の例を申し上げたのであります。この孝子節婦にせい、褒章にせい、あるいはまた功労章にせい、すべてこれは国家に対する功労の顕著なる者、あるいはまたそれについての、量的なりあるいは質的なりにおいて同様なものではあるが、そのほかの勲章をあげるほどのものでないが、やはり国家としてこの栄典を与えようという思想でありますから、思想的に一貫したものでなければならぬ。そのものが思想的に一貫しておられるなら、この栄典法に出るわけはないと考える。従つてそれは、量的に、あるいは質的に、少いといつてもいいし、軽いといつても、表現はどうでもいいのですが、そうでない者には金をあげてもこれは何でもないと言われるけれども、どの点までそれが伸びて来るのか。そういう一つの点を考えて、ここに挿入すること自体が矛盾でないか、こういうことを考えたのでありまして、これが本法の思想の自己撞着であり、自己分裂であるというようなことを考えましたのでお尋ねするのです。それは今の政府委員説明通りに、これが一貫した一つ栄典法案の中のものでないならばお話は別です。ただいまお話のごとく特別に科学の奨励をするとか、または善行をした者に対して、国家が別にそういうような法律を設けるということであるならば、これまた別の審議一つの対象に私どもはしたいと思います。しかしこの法律の中にそういうことを入れておくということ自体に矛盾を感じないか、こういうお尋ねであります。
  47. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 一時金は、いわゆる憲法の第十四条にありまする特権と考えていない、そういう解釈をとつておりますので、今仰せられました矛盾を感じていないのでございます。
  48. 笹森順造

    ○笹森委員 しからばただ褒章ばかりでなくて、あるいはまた功労章ばかりでなくて、普通の勲章を与える者についても莫大なる一時金を与えるというようなことがかりにあつたとしても、思想的には矛盾をお感じなさらないのかお尋ねしておきます。
  49. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまお話になりました莫大の一時金というようなことは考えておりません。従いましてそれと憲法趣旨と矛盾を生ずる場合があるということも予想しておりません。
  50. 笹森順造

    ○笹森委員 それ以上は議論になりますから、いずれ議論するときに申し上げることにいたします。  その次の問題でありますが、大体先ほどの質問者の中にもお話があつたようでありますけれども、位を残す、あるいは位を潤いのあるものにして置くという問題について、もう少し私ども納得の行くように御説明を願つておきたいと思います。栄典を実際に授与するについて、潤いのあるようにという言葉をお使いになりますが、常識的に潤いのあるということは、法的に一体どういうことになるのですか。どうも事がめんどうになると、常識的な問題になつて法的にはつきりしなくなるのですが、潤いがあるというのは、法律的にはどういうことになるのですか、はつきりしていただきたいと思います。——どうも私の尋ね方が悪いようでありますが、これを実際適用される上においてたとえば勲章とともに与えるのですか、あるいは位だけ与えるということがあり得るのですか、あるいはまた勲章が少し低過ぎると思うときに高い位をやるというのですか、あるいはまた位だけ高いものをやつてまつたく勲章をやらないとか、勲章の上り下りをきめるというのか、一体何を基準としてそういうことをするのか、さつぱり基準も示されていない。つまり法律となるとこれについての附属法規もできるでしようし、いろいろ適用されるものが出て来なければならないでしようが、潤滑油的なことをお話になりますけれども、何が何だかさつぱり話がわからぬ。だからそのことをお尋ねしておるわけであります。
  51. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 勲章による栄典と位による栄典とを並行して参りまして、補助と申す言葉はこの場合不適切であると考えますが、実際栄典の授与にあたりまして、便宜の場合が経験からありますので、位の制度の本質は違いますが、これを存置した方がいいように考えておるのであります。それならばどういう場合に位を与えるかということにつきましては、審議会において、その場合々々につきまして十分検討する以外にないと思います。
  52. 笹森順造

    ○笹森委員 いずれ別の機会にまたこのことはお尋ねしたいと思いますが、先ほどの質問に対して、やはり根本的に解明されておらぬようですからお尋ねいたします。この位というものと勲章というものとがまつたく違う。今度は、先ほどの御質問者のときにもありましたように、あるいは新しい憲法でも示されておりますように、爵位というものがなくなつておる。ところが位を残そうと言う。元来位は身分に関係するものであつてつまり人間の序列をきめる宮中席次から起つて来たことは私の申し上げるまでもないことなのでありますが、今日宮中席次というものが、昔のようなものとして存在していない。しかも身分というものに上下あるいは貴賤の別をする、こういう昔から使いならされた人間の身分を決定する貴賎、上下の別というものを明らかに段階的に置くということは、いかに今の便宜がいいとか、あるいはプラクテイカルに都合がいいとか言われましても、われ、文の国民感情とし、あるいは新しい、さつきお話になりました民主主義の時代における法律の、非常に時代的なずれを私どもは感ずる。この感じ方は感じなければそれまでの話でありますけれども、そういうものをもう一度持つて来るということは、先ほどお話のありました通りに、公聴会においてもたつた一人を除いて全部が反対であつたということに対して、やはりぜひこれを設けなければこの栄典というものが都合よく、円滑に行かない、こうお考えなつておるのですかどうですか。そこまで強くお考えなつておるのかどうか。しかもこの人間の貴賎、上下の別を置くということは、先ほど官房長官が一番先にお述べになりました民主主義的な制度を国家が設けることに対して、何らの矛盾を、お感じにならないと仰せになるのですか、これをお尋ねいたします。
  53. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 位の制度は、今笹森さんの言われましたように沿革的に何か身分の上下を示すような感じが残つておりますけれども、この新しい栄典法におきまする位は、そういう身分の上下をきめる考えは毛頭ないのでありまして、その功労によつてこれを授けて行きたいという考えなのであります。たまたま表わし方が旧来の位と同じであるために、やはり今の沿革から来る連想を伴いやすいかと思いますが、これを栄典法の中に存置したいという考えは、勲章ほどではありませんけれども、やはりこの栄典の授与を完璧にいたしまする上に、経験からもやはりほしい。それからもう一つ理由は、先ほど申し上げましたように故人の日本の歴史の上に功労のあつた人に対して位を贈る場合もあります。そういう場合がそうたびたびあるとも考えませんが、そういう意味におきまして、幅とか潤いとか申しますのはそういうことを表現しておるつもりでございます。
  54. 笹森順造

    ○笹森委員 先ほどのお話で、従来あるいは現在存在しておりまする栄典制度と、この法律ができた後における栄典に対する考え方とは、全然新しいものの考え方によつて移行されるのだ、こういうようなぐあいに考えてよろしゆうございますか。つまり言葉をかえればこういうことです。たとえば特権を伴わないということを申されました。前には高い位を持つておる人が、低い位を持つておる者よりも自分は位が高いのだというような、特別の社会的な一つの強制力と申しましようか、あるいはまた自覚と申しますか、そういうものを過去においては多分に持つていた。それが今度の案では特権を伴わないということになつて来た。つまり国家に対する功労のある人を表彰する、あるいはまたその人の楽典をみんなで喜んで、政府国民を代表してこれを認めるというような方式をとることについては、私はそういうことなら何らの異存はないのですが、そうではなくて、過去におけるある時代においては、特殊なる階級が不当に、といいますと語弊がありますが、国民一般の感情に必ずしも迎合しない、具体的にいうならば軍人、官吏、公吏など、別に功労がないにもかかわらず、年中定期的な陞叙があるといつたぐあいで、しかも支配者が被支配者に対する一つの権威としてこれを悪用したという例が必ずしもないではない。これは国民感情として何とか直してもらいたい。主権在民の精神において、国民の象徴であり国家の象徴である天皇から授与せられるといこうとに対して、喜びを感ずるであろうけれども、これは国民のためのものでなければならぬというこの思想が、ややともすると過去の栄典を持つている者のために、その新しい制度が蹂躙されるという憂いがあるから、実はそのことを、お尋ねしているわけであります。そういう点において今度の位も、実際にすべての国民感情なり、あるいは古いものを存続しているものが新しい制度にそのまま切りかえ得るかどうかということの心配が、大体公聴会などにおいても反対的な否定的な議論の中心になつているようでありますので、その辺の懸念がまだ残つている。あるいはそれが尚早論が出て来たり否定論が出て来たりする重大なる原因ではなかろうか。御承知のようにこの栄典制度は現内閣において御審議なつたばかりでなくて、すでに二回、三回の内閣において審議した問題であつて、突如としてこの位のことが出て来たということに対して、今の時代的なずれを非常に感ずるから、それで今の官房長官の立場なり感覚をはつきりしておきたいというのもその辺にありますので、これは法的な上からも実際の政治社会情勢の上からも、一体どういう感覚でこういうものをお出しになつたかということを明確にしておきたいために実はお尋ねしているわけであります。
  55. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ごもつともな御意見でありますが、従来の位階制に伴う、たとえば具体的に申しまするならば、宮中席次というようなものに始まる階級的な考えは、全然これに伴わせないつもりでございます。これを授与されました者が、勲章と同じように社会的に自然に尊敬を受けることは別といたしまして、この栄典伴つて何か階級的なものは、この案を立案いたしまするに際しましても、全然そういう考えは持つておりません。
  56. 笹森順造

    ○笹森委員 次に別の問題で、審議会のことは先ほどお尋ねがあつたのですが、大体あれで精神はわかつたようですけれども、やはりこの法案審議する上において、もう一回お尋ねしておきたいと思います。それはここで十一名の委員の構成ということになつておりまして、文字はいかにも非常に公平で、また十分心して各界からお出しになるという御答弁でありましたが、公正で識見のあるものの中から総理大臣が任命するというだけになつておりまして、これをもう少し——これは今の時代の内閣はそれでよいかもしれませんが、法として残る場合には、制度としてやはり何々からこれをどうするということはもつとこまかくした方がよいのではないか。そういうような内規のようなものや、あるいは一つの基準をこれからつくるつもりか。あるいはまたこの場合において、吟味するならば、その吟味をしてほしい。たとえば学界からとか、あるいはまたこの国会からとか、あるいはまた産業代表者からとか、あるいはまた労働団体からとか、あるいはまた民間の諸団体代表からとか、あるいはまた地方自治体の代表者からとか、何かしらそういう明確な基準を設けておけば、内閣がいかにかわりましても、そのときにつくられた法律が生きて行くことになるのでありますが、ここでただ公正で識見のあるものの中から内閣総理大臣が任命するということであれば、これはそう考えたといえば内閣総理大臣の一手で考えられることになるのであつて、今の官房長官の言明されたことが記録に残つてつても、それは法的な力とはならぬ。それでこれはあまり簡潔過ぎはぜぬか。そこで内規を設けるつもりか、あるいはまた何かの方法で明確なものがあるのか、その辺をはつきりとしていただけば、先ほどのお尋ねをもつと明確に私たちは了承し得ると思いますからお尋ねします。
  57. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この審議会の構成は、この新しい栄典を私が先ほど申しました民主的に運営する上におきまして、一番大切なものだと考えますので、この委員の構成につきましては、政府としてできるだけの慎重さをもちまして、いわゆる公正な人、良識の高い人を選ばなければならぬことはもちろんでありますが、ただいまのところその選び方について、内規を設けてというところまでは考えていないのであります。結局どの内閣もどの総理大臣も何らかの個性傾向を持つことは免れないので、結局世論の批判にまつて、その選考の仕方がはたして公正であるか、良識の最も高い者を選んだかということをきめる以外に方法はないのではないかと思いますが、その間に内規によりましてそれを規正する、あるいは一層公正を期し得る方法が考えられましたならば、そういうことも考えてよいのではないかと思つておりますが、今のところはまだそこまで考えておりません。
  58. 笹森順造

    ○笹森委員 まだそこまで考えておらぬとすれば、私どもは不満足であると考えられますが、それは議論のときに申し上げます。  それからこの法案を提出なさつた現内閣の態度として、ひとつお尋ねしておきたい点がありますが、公聴会においてもこの栄典制度を適用する範囲を厳選したらよかろうという意見と、できるだけこれを寛大にして、広く多くやつたらよかろうという二つの説が対立しておつたようであります。それからまた、審議会の委員身分を非常に厳粛にこれを守つて行かなければならないというのと、できるだけこれを頻繁に交替して、そうして遺漏なからしめることがよいだろうということと、こう一つあつたようでありますが、もしも内閣にきまつた心づもりなり方針があるなら特に聞いておきたいことは、厳選主義でこの栄典をやる方がよいと考えているのか、できるだけ広く一般にこれを適用したらよいと考えているのか、その点をお尋ねしておきます。つまり平たく言えば勲章やら何やらをもらう人は、ごく少い方がよいのか、あるいは広く多くやるのがよいのか、公聴会でも意見が二つにわかれておつた。たくさんやれというのと、ごくわずかでよいというのと意見があつた。これは事務当局でもよいのですが、方針か何かめどがあるのか。これは過去におけるところのいろいろの問題にも関係して参りますし、どういうような心づもりか。なかつたらなかつたでけつこうです。
  59. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは新たに構成されます審議会の考え方にもよりますが、政府考え方といたしましては、やはり言葉で表わしますれば、厳選して、社会一般に見て、これはもつともな栄典の授け方だというふうにいたしたいと思つております。
  60. 笹森順造

    ○笹森委員 それからもう一つだけお尋ねしておきますが、それは勲章の種類が四つということになつておるので、これも審議会でいろいろ議論があつて、もつと多い方がよいじやないかという考え方と、あるいはまたこれは二つのものを一つにしてしまつた方がいいではないかという考え方といろいろあつたので、多分提案された提案者はこれでいいとして提出されたと思うのでありますが、勲章の種類をできるだけ多くして勲章に等級を設けないという考え方が、一般の輿論調査の上でも、あるいはまた一般輿論常識の上でも相当あるようであります。つまり、文化勲章というものができたが、これには別に等級というものはない。今後産業勲章をつくろうとしておるが、科学勲章というものなり、あるいは労働勲章というものなり、いろいろそういうものを考えて種類は多くして、それを五等級とか、大中小とか、特別な飾りの大きなものとかいうことをせずに、同じ功労があつたならばそれにまた副賞をつけるとかなんとかいうことは別にして、つまり階級的にあまり差別を置かないということで種類を多くした方がいいのじやないかという考え方があるのです。今お尋ねしますと厳選主義だということでありますが、私は、厳選主義でなくて、できるだけ種類を多くして、しかも等級を少くして、重なるものは重なるものとしての措置をした方が、むしろ民主的な栄典制度の趣意にかなうのじやないかという気持から、実はお尋ねしているわけであります。その点についてのお答えを願つておきます。
  61. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今のお尋ねは、勲章の種類を栄典法案にありますよりもふやした方がいいのじやないかという御意見も含まれておるのですか。
  62. 笹森順造

    ○笹森委員 そうです。それをお尋ねしておるわけです。
  63. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この栄典法案をきめるにあたりまして審議会をつくり、これは相当慎重な人選を、いたしまして、大体今日良識の高い人々を選び得たと思うのであります。政府は何と申しましても、一つの政治的、政党的な傾向を持つておりまするが、こういう栄典法というものは、事の性質上、その審議会に選ばれた人たちの意見をそのまま尊重する方がいいと考えまして、実はほとんどその意見のままにこれを入れておるのであります。その審議会におきましてあらゆる角度から検討して相当慎重に研究した結果、今の勲章の種類でいいだろう、あるものについては段階を設けるが、この勲章は段階がない方がいいだろうというような結論を出して、それを骨子といたしましてこの法案をつくつたような次第で、今政府といたしましては、この法案以外の考えは持つておりません。
  64. 笹森順造

    ○笹森委員 今の御答弁では明らかになりませんからもう一度お尋ねしたいのですが、文化勲章は一本でありますが、ほかの勲章は五等級くらい設けるものがあるのですね。そういうことは、根本的に考えてみると整理した方がいいのじやないかと思うのです。つまり一本にして種類を多くした方がいいのじやないか、そうすると法の建前としてもすつきりしていいのじやないか。もしも等級を置くなら、文化勲章も一から五までこれまた置かなければならぬと思う。ところがあるものは一本で、あるものは一本でないというところに制度上矛盾撞着あるいはまた不自然がありはしないか。何もしやくし定規に考えるわけではないけれども、この階級を置くということについて輿論があるならば、すべての勲章階級を置くがよろしい、階級を置かないことに異論があるなら、すべての勲章階級を置かないがよろしい。置かないがよろしいなら、今言つた四種類ということでなくして種類を多くすればカバーできるのじやないか。厳選主義とおつしやいますが、国民大衆は職業的に見て今二万からの職業を持つておるのです。こういうようなことを考えますと、単なる産業勲章ということでもつて、今までカバーしていない今後の国の経済なり産業なり社会生活なりをして行く上においてのすべてをカバーするに足りるかという点もあるのです。だから私が今お尋ねしておるのは一本で行くならば一本で、階級や等級を設けずに種類を多くする方が、この栄典制度の完全なる適用十期するゆえんではないか。審議会においてどういう議論があつたか知りませんが、つまりこういう気持でお尋ねしておるわけであります。
  65. 村田八千穂

    村田政府委員 勲章の等級と種類の問題でお尋ねのようでありますが、少し技術的なことについて私からお答え申し上げたいと存じます。  勲章は功労のある者に授与するということになつておる関係上、功労に大小があるということから、それに等級があることもこれはある程度やむを得ないのでありまして、当然ではないか、こういうふうに考えておるのであります。しかしそれならば、それが五等級がよいか三等級がよいかは別として、そういう等級一本で済むかということになりますと、これは理論的にはそれでも済むわけでありますが、実際問題として人の功労をそうはつきり測定できるものでもございませんので、必ずしも等級があるということが万能ということにはならなくなります。といいますのは、等級があるためにそのいずれの方を授与したらよいかということは、実際問題として判定に苦しむような場合が起つて参ります。そこで補助的と言うと語弊があるかもしれませんが、補充的な意味で等級のない勲章も必要だということになりまして、これは外国でも大体同じようなふうになつております。そこで今度立案しましたのも、諸外国の例を見まして、等級のある勲章を一種類も三種類も持つておる国もありますが、一種類だけつくりまして、そのほかに実際問題として等級のない勲章のあることが必要と考えられる面として文化と産業を考え、単一級の勲章をつくつたわけであります。
  66. 船田中

    船田委員長 大矢省三君。
  67. 大矢省三

    ○大矢委員 私は重複を避けて事務的にお尋ねしたいと思います。  菊花章と旭日章を残すことになつておりますが、現在それはどのくらい存続しておりますか、その数を伺いたい。それから旧官吏、軍人にどのくらい行つておるかということもお聞きしたい。  それからこの栄典法伴つてこういう勲章がつくられることになつておるが、聞くところによりますともうすでにつくられておるということであります。その予算はどういうことになつておるか、また現在実際つくつておるのかどうか、この点をお聞きしたい。
  68. 村田八千穂

    村田政府委員 第一のお尋ねの、菊花勲章を授与されて今持つておる人の数の問題でございますが、これは外国人にも相当授与しておりまして、外国人につきましては、その方が生存しておられるかどうかの調査が今十分にできておりませんので、はつきりした数は申し上げられませんが、大して多い数ではないと思います。それで国内で菊花勲章を持つておられる方は十二、三人だと思つております。  それから旭日勲章の問題でございますが、これは非常に数が多くございまして、授与された方はある程度私の方の記録にあるのでございます。授与された方が引続いて生きておられるかどうかという問題については、私の方に全然資料がないために推定になります。が、旭日勲章を現在持つておられる方は、おそらく百五十万から二百万ぐらいの間じやないかと思います。この大部分は太平洋戦争は関係ございませんから、その前の事変関係で軍人として出征された、しかも兵隊として出られた方が非常に多数を占めておられます。  それからこれはお尋ねでございませんでしたが、これは過去の旭日章でございまするが、今度の旭日章は過去の旭日章と全然同じものではないのでございます。リボンのあるものにつきましては、リボンの色に差をつける。リボンのないものと申しますると、従来でいいますと二等の正章、一等の副章、今度できますと大綬章の正章と重光章、これは章の性質に差をつけよう、こう考えております。  それからすでにつくつているかとのお話でございますが、品物は全然つくつておりません。ただ大きな石膏細工を初めつくりまして、それを小さい型にするのでございます。その石膏細工の方は試作として造幣局の方にたのみました。まだ私の方に持つて来ておりませんが、つくりつつあるのではないか。石膏細工はつくつております。石膏細工は直径が一尺五寸ぐらいの大きなものでございますが、それによつて形をきめまして小さい型に直すつもりでございます。  予算は前年度よりこういう物件の製造費の増額が六百三十万円ほどになつております。前年度より六百三十万円ほど増額の予算でやつて行くつもりでおります。物件費以外の栄典法施行に伴う費用といたしましては、栄典審議会を置く費用と、それから今の物件費の増額と、その他若干の職員の増額、合せまして約七百八十方円ほどが栄典法施行に伴つて増額になるようになつつおります。
  69. 大矢省三

    ○大矢委員 今答弁にありましたように、この菊花章は十二、三人ということであります。それから旭日章は新しいものは違うけれども、旧のもので約百五十万から二百万くらいで、主として軍人、官吏だ。この法案附則によりますると、この旭日章並びに菊花章はこのまま効力を有するということになつておりますが、笹森さんも言われたように、こういう主権在民の新憲法における今日の国家として、国民みずからが、特に国家に功労のあつた者を表彰するという新たに出発した今日において、わずかに、これは多分皇族と思いますが、十人ぐらいの人をなぜ残さなければならないかということは、私どもはわからないのであります。附則の第三項に「旭日章、宝冠章、瑞宝章及び記章は、この法律の施行後も、なお効力を有するものとし、」とありますが、旭日章と菊花章をどうして残したか、これはひとつ官房長官にお聞きしたいのです。  それから特に儀礼的に、国際的にこれを用いるためにこういうものが必要だ、現にこの規定にもありまするが、これももちろん儀礼的に、国際的な関係上必要があろうかと思いまするが、これを区別する必要がある。国際的な問題と国内的にこれを授与するものと区別する必要があるのではないか、こういうふうに私ども考えるのですが、この点で官房長官にお聞きしたいのであります。
  70. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 菊花勲章は、国際的にこれを贈呈する必要があり得るということから残したのでございます。旭日勲章の方は、勲章の形は似たようなものでありますが、従来と全然違つた考えで新しい民主的な国家の功労者に与えるということで、この勲章はやはり主たるものとして存置したいという考えでございます。
  71. 船田中

    船田委員長 大矢君に申し上げます。午後二時にまた官房長官が見えますので、そのときに譲つていただけませんか。
  72. 大矢省三

    ○大矢委員 その存置する理由をお聞きしたい。新しく出発するためには、特に菊花章とか旭日章というものは必要はないと考えておりますが、それを存置した理由をひとつ伺いたい。
  73. 村田八千穂

    村田政府委員 私から旭日勲章のことについて申し上げたいと思います。これは従来は旭日、瑞宝、宝冠の三種類ありましたのを、今後新しいものにしたいという考えでいろいろ検討したのであります。その結果新しい勲章の方がよいが、それはどういう図案を採用したならばよいかということにつきましては、結局現在としては日本の国旗なんかは従来のものが認められているということから、旭日という従来の図案は非常にすぐれておりますのでこれを採用したい、しかし前と同じものでは前のものをそのまま残したということになると思つて、さつき申し上げたように図案の一部を変更して前のと違つておるのだ、こういうことにしたのでございます。  それから菊花勲章の方は、さつき長官から申し上げましたように、国家に一つの最高勲章があるということがいろいろな点で必要であるというふうに考えて残したのであります。
  74. 大矢省三

    ○大矢委員 従来百五十万ないし二百万の軍人、官吏に付与したこの旭日章をどうして一体残さなければならぬのか、その理由官房長官にお聞きしたいと思います。笹森さんも言われたように、新しく出発する民主国家としては、主権在民の国民みずからが、国家のために功労のあつた人に対して、審議会の決定に基づき国民の代表である内閣の助言によつてこれを行うというのでありますから、一体前に功労のあつた人のこういうものをどうして残さなければならぬか。国家機構、組織がかわつたのに、どうしてそういうものを残さなければならぬか。
  75. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今のは、旧憲法下に授与したものを今日でも佩用させるのはおかしいという御意見ですか。
  76. 大矢省三

    ○大矢委員 そうです。
  77. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは先ほども笹森さんにお答えした中でも触れたように思います。旧憲法と新憲法のもとでは非常に国の立て方が違つておりますが、また違つていないものもありまして、旧憲法下に与えられましたものも、国民感情として佩用ぐらいはさせてもいいじやないかというのが審議会の判断であつたように私は思いまするし、政府といたしましてもその考え方を受継いで、それを是認したわけでございます。
  78. 大矢省三

    ○大矢委員 私ども憲法がかわつたからといつて一切捨てよというのじやないのです。そういう功労のあつた人にはあらためて審査をして、そうしてそういう人にも大いにこれを授与するということには異議はないのですが、そのまま継承するということには私どもはどうしても納得が行かない。笹森さんも言われたように、新しく出発する栄典法というものは、そういう従来のことにとらわれずに、新しい観点から、功労のあつた人に功労のあつた人として授与されることが私は最も法の精神にかなつたことである、かように考えております。旧国家に功労のあつた人、しかも天皇の名において授与された勲章をそのまま残すということについては、私どもはどうしても納得が行かないのです。しかしこれはまた考えの相違というならばいたし方ないのでありますが、褒章の中に、「私財又は労力の提供により公益のため著しい貢献をした者」、こういうのがある。この私財というのは——金を寄付して勲章をもらつた、勲章を買つたという問題がしばしば起きたのですが、こういう私財を出したために褒賞をもらうという規定をここに明らかにするということはどうか。こういう言葉を使わなくても、功労のあつた人ということになれば、おのずから審議会によつて決定されると考えます。この私財ということを入れたということは、多分にいわゆる唯物史観的な、資本主義的な金を中心とした表彰の仕方であると思う。在来これがこういうことに災いされたことがありますが、こういう字句をどうしても入れなければならぬのでしようか、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  79. 村田八千穂

    村田政府委員 ただいまの私財寄付に対する褒賞の問題は、これは旧褒賞というか、現行褒賞条例から引継いでおるものでございまして、公益のために私財を提供するということは国家として奨励すべきものである、こう考えて制定せられたものでありまするが、この点は依然としてかわりないではないか、こう考えまして、従来の制度を踏襲したいという考えでおるのでございます。
  80. 船田中

    船田委員長 大矢君の御質疑はまだあるようでありますが、次にお願いすることにいたします。     —————————————
  81. 船田中

    船田委員長 この際保安庁法の一部を改正する法律案議題といたします。政府提案理由説明を求めます。木村保安庁長官。
  82. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま議題となりました保安庁法の一部を改正する法律案提案理由を申し上げます。  保安庁の職員の定員は十一万九千九百四十七人でありますが、今回これを十二万三千百五十七人に、すなわち三千二百十人を増員しようとするものであります。  この三千二百十人のうち二千七百三十三人が警備官、残りの四百七十七人が保安官及び警備官以外の職員であります。  警備官の増員については、わが国の海上警備力を増強するため、先般国会において承認を得ました日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定に基き、政府は、当初の予定に八隻のパトロール。フリゲートを追加し総計。パトロール。フリゲート十八隻及び大型上陸支援艇五十隻の貸与を受けたいと考え、追加八隻分のパトロール・フリゲートを運航する等のため必要な海上員を増加するほか、第二幕僚監部に勤務する警備官を増員し、警備隊の部隊、学校その他の施設を新たに設け、または充実するため必要な職員の増加をはかろうとするものであります。  保安官及び警備官以外の職員で増員されます四百七十七人は、保安研修所及び保安大学校の教育訓練を開始し、技術研究所の研究、調査の充実をはかり、かつ、保安庁の調達、施設その他の業務遂行の円滑を期する等のため必要な職員であります。  以上、本案の要点を申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  83. 船田中

  84. 上村健太郎

    ○上村政府委員 ただいま大臣から御説明がありました提案理由に補足いたしまして、御手元に配付申上げておりまする表につきまして簡単に御説明を申し上げたいと思います。  警備官におきまして二千七百三十三人を増員いたしたいと思うのでありますが、その内訳といたしましては、第二幕僚監部の八十六名、これは本部でございます。その他の陸上員と書いてございますのは、横須賀、舞鶴各地方総監部の要員増とそのほか各地にあります基地の要員その他通信所、総合術科学校、それに今度予算に計上してございまする航空機関係の搭乗員、整備員等を合計いたしまして七百二十一人の増となつております。保安研修所と保安大学は、新年度におきまして教育訓練を開始いたしますので、この教育に当る要員でございます。技術研究所の五人は造船関係でございます。船舶の乗組員は、大臣から御説明がありました通り、PF八隻分の増とそれから廃船になりまする減員とを差引して出た数であります。同上予備員とございますのは、一般乗組員が事故を起しましたり、あるいは陸上訓練等に充てる必要が出て参りまするので、定員の二割の予備員を考えておるわけでございます。  次に保安官及び警備官以外の職員の四百七十七名の内訳は、保安庁本庁の各局の二十九人、これは守衛、交換手、雑役手等の雇用人でございます。第一幕僚監部関係の百二十八人は施設関係と調達の要員でございます。第二募僚監部関係、これは偶然数字が一致して百二十八人でございますが、地方総監部及び術科学校、通信所等の要員でございます。保安研修所、保安大学校は、前に御説明申し上げました通り教育訓練に当りまする職員及び教官の増でございます。技術研究所は造船、飛行機、そういうような関係の技術者でございます。これを合計いたしまして三千二百十人になる次第でございます。
  85. 船田中

    船田委員長 質疑次会に譲ります。
  86. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちよつと資料についておはからいを願いたいのです。それは保安庁の機構並びに人員、職員の給与、こういうものを資料として次会までに提出をおはからい願いたいと思います。
  87. 船田中

    船田委員長 ただいま吉田君より御要求の資料の御提出をお願いいたします。  午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後二時二十二分開議
  88. 船田中

    船田委員長 これより内閣委員会を再会いたします。  休憩前に引続きまして栄典法案質疑を行いますが、質疑に入ります前にお諮りいたします。武藤運十郎君より理事辞任の申出がありますので、これを許しまして、井手以誠君理事に御指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 船田中

    船田委員長 御異議ないようでありますから、さよう決定いたします。  それでは栄典法案質疑を行います。井手以誠君
  90. 井手以誠

    井手委員 大臣に若干お尋ねいたします。すでに質問された点となるべく重複を避けたいと考えますが、事きわめて重要な法案でありますので、場合によつては重複する場合も出て来ますが、お許し願いたいと思います。  今回新たに栄典制度を設けることについては、その時期と国民の納得が一番大事だと考えるのであります。政府は、独立の名に隠れて幾多の旧制度復活しようとされておるのであります。そのうちでこの栄典制度がその内容において最も露骨に旧制度復活の傾向が強いと感ずるのであります。そこでお尋ねいたしたいのは、国民生活もまだ安定していない、日本の民主化も徹底していない、むしろ逆コースをたどつております今日、しかも異郷にある遺骨はまだ引取られず引揚げも完了してない今日、急いで栄典制度を設けるということは時期が早いと考えられるのであります。この点については公聴会でも述べられたところでございます。時期について大臣はどのようにお考えであるか、お尋ねしたいと思います。
  91. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答え申し上げます。政府はいろいろな旧制度を改めつつあるにかかわらず、栄典に関してはかえつて制度に返りつつあるではないかという御意見でありまするが、今政府が政策として取上げておりまするのは、占領中に行われました諸政策のうちに、占領軍の善意の行き過ぎではあろうと思いまするが、国情に必ずしも適切でないもの、あるいは時間の経過とともに国情に適切でなくなつたものというようなものをかえておるのでありまして、今度の栄典法制定についての考えと、その点政府自身といたしましては矛盾があるとは思つていないのであります。戦争後今日社会的にまだいろいろなおちつかない問題があるにかかわらず栄典制度に手をつける時期ではないという御意見も、一つの御意見として尊重いたしまするけれども、政府としましては、同時に日本は、やはり新しい日本として、新しい独立国として再建を急がなければならない。 その再建にあたりまして、功労のある者に対しては国としてそれを顕彰する道を考えるべきであろうというようなことから、事の先後順序ということよりも、何とか少しでも再建に役立つならばというような気持で栄典の整備を急いでおるような次第でございます。
  92. 井手以誠

    井手委員 栄典制度は、国民がその人の功績をたたえる意味におきまして、国民の納得が一番大事だと考えられるのであります。そこに栄典制度の価値があるものと思うのであります。ところが出されました栄典制度の内容は、まだ国民にほとんど知らされていないのであります。その上に、この内容を大体承知した者は、公聴会でも明らかにされておりまする通りに、従来の位階勲等を復活存続しようとすることに対してほとんど反対している。この事実を考えますときに、国民感情反対を無視してこれを強行してはたして栄典制度としての値打ちがあるかどうか、私どもはこれに非常な不安と危惧とを持つているものであります。そういう国民反対、納得のない場合にあくまでもこれを押し切ろうというお考えであるか、対抗しようというお考えであるか、その点を念のために伺つておきたい。
  93. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 民主政治の上におきまして、すべてのことを国民の納得の上に進めて行かなければならぬことはまつたく御説の通りでありまするが、この栄典制度につきましては、先ほど申し上げましたような趣旨から、できるだけ早く整えたいという意味で、すでに公聴会等のおとりはからいもあつたのであります。しかし国民の納得ということにつきましては、今日の制度といたしましては、やはりその国民を代表しておられる国会の批判を請い、国会によつて判断をしてもらうこと以外に実際上のやり方はないと私は思います。別にこれを強行するという意思はございませんが、国会の御判断、御審議にまつてこれをきめたいという基本的な態度でおるのでございます。
  94. 井手以誠

    井手委員 大臣は午前中の答弁で旧憲法と新憲法は根本的に違つておるけれども、また同じ点もあるという話があつたのであります。ところが一番違つておりますことは、旧憲法と新憲法との違いは軍国日本が戦争放棄をして、平和日本になつたことだと私は思うのであります。日本が主権在民のもとに新たな出発をしようといたしております今日、従前の位階、勲等を生かして百五十万から二百万人の多数のうちの九割を占める旧軍人の功績を今あらためてたたえようとすることは、平和憲法の精神に反するのじやないかという考えを私どもは持つておるのであります。この点が非常に大事な点だと思うのであります。ほかの方からも質問がありましたが、たくさんの、百何十万人かの旧軍人の功績をたたえる——全部が侵略戦争にということまでは申しませんけれども、そういうやり方を一蹴した平和憲法のもとにおいて旧軍人の功績をたたえようとすることは、私は平和憲法趣旨に違反するという考えを持つのであります。非常に重大な点でありまするので、大臣のお考えを承りたいと思います。
  95. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 旧憲法と新憲法の間にその建前におきまして根本的にかわつておりますことは、ただいま仰せの通りであります。ただ国民感情は必ずしもかわつていない点もありますので政治の上におきまして、国民感情というものも相当考えるべき要素であることは申すまでもありません。それほど積極的な考えに基くのではありませんけれども、旧憲法下に授与されました栄典、それをそのままただ佩用を許す、すべての特典はこれを廃止して佩用を許すということは、今日の日本の現実から見ましてさほど私は矛盾した扱いではないと思います。これはあるいは考え方の違いかもしれませんが、百五十万の旭日章を持つておる人らも、必ずしも太平洋戦争に関係した人だけではないので、その前までさかのぼつてすべての帯勲者を無視する必要もなかろうというのがこの栄典制度に盛られました根本的の考えであるのであります。
  96. 井手以誠

    井手委員 旧軍人の功績をたたえるということにつきましては、私今の御答弁に不満でありますが、これは意見にもわたりますので、後日に譲りたいと考えております。  次にお尋ねしたいのは、わが国の賞勲制の最も大きな目的は軍隊にあつたことは周知の通りであります。法案の第八条の功労章に「自己の危難を顧みずに勇敢な行動をなし、」云々という条項がありますが、保安隊に対してはどういうふうにお考えなつておるか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  97. 村田八千穂

    村田政府委員 保安隊につきまして特別の、保安隊特有の章というものは考えておりません。御指摘になりました八条三項の章は、警察官、消防その他工場、鉱山等において特別勇敢な行動をして災害を防いだというような場合に適用するつもりでありまして、数は多くないかとも思いますが、そういう職務にいる人のほかに、一般人でたまたまそういうところに出くわして協力した人たちにも授与する、こういう考えでございます。
  98. 井手以誠

    井手委員 それでは重ねてお尋ねしますが、この第三項のことについては、消防その他という御答弁でありますが、それでは保安隊については、別にやる対象には、この法案においてはなつていないのでありますか。
  99. 村田八千穂

    村田政府委員 保安隊の職員で功労のある方は、もちろんこの対象になります。ただ保安隊の職員を特別に目的とした章はつくつておりません。こういう意味でございます。
  100. 井手以誠

    井手委員 この法案はきわめて大まかに条項をつくつてあります。すべては総理大臣の考えでどうにでも適用されるような内容になつているようであります。しかもこの審議機関も総理の任命ということになつているのであります。いわゆる大権委任のようなかつこうになつております。大臣は民主的と、言われておりますが、この法案そのものが、きわめて私どもは非民主的な感をいたすのであります。ただ運用に慎重を期するだけでは、どうしても私ども承服しかねるのでありますし、また国民もすべて総理大臣一個の考えで慎重を期するとはいうものの、それだけでできるということであれば、国民も納得しないだろう、こういうような考えを持つているのであります。また先般の公聴会におきましても、公述人は口をそろえて、産業勲章はどういう方面にやるのである、またどういう人を委員に選ぶのである、そういうことははつきり銘記すべきである、それが民主的であるということを強く要望されたのであります。従つて政府国民のこれに対する不安あるいは危惧を解消して、真に民主的に運用するためには、その基準を先刻も質問がありましたが、委員人選の基準であるとか、あるいは産業勲章はどういう方面にやるとか、その基準を少くとも本委員会において公約されることが必要であると考える。先刻の笹森委員の質問に対する答弁において、政府考えていないというような御意見でありましたが、私は今までは考えていなかつたかもしれないが、こういう重要な点については当然考えるべきだと思うのであります。委員会審議中にそういう基準を示される用意はないか、この点をお尋ねいたしたいのであります。
  101. 村田八千穂

    村田政府委員 勲章の授与の基準ということにつきましては、審議会の方にかけまして、それからきめようと思つております。従いまして、ここ何日かの間にごらんに入れるというわけに、ちよつと行きかねると存じております。
  102. 井手以誠

    井手委員 基準を示すことはできかれるというお答えでありますが、各委員ともそういう要望が強いのであります。ほんとうに政府国民に納得さしてこの栄典制度を価値あるものにしようというお考えであるなら、私はここにある程度の基準は示されるのが正しいことではないか、また当然の任務ではないか、かように考えるのであります。産業勲章はどういう方面に——功績の特に顕著な労働者にやるとか、あるいは多収穫の功績があつた農民にも与えるというようなことを、はつきり言明されることが必要だと考えるのであります。この点について、特に大臣のお答えを願いたいと思います。
  103. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 すべて政府のいたしますことは、輿論の批判の前に立つと申しますか、国会に責任を負つて、その当つておるかいなかをきめらるべきものである。ただいまお話の承つたようなことは、実際に人選をいたしまする上に当然に考うべきことではあると思いまするが、今この栄典審議会の構成につきまして、そういう基準をこの中に入れようという用意はいたしておりません。
  104. 井手以誠

    井手委員 大臣の答弁に不満の点がありますが、根本的に意見が違つておるためにそういう結果になるだろうと思うのであります。事務的にはさらにいろいろとお尋ねしたいと思いますが、大臣に対する質問は、一応これで打切ります。
  105. 船田中

    船田委員長 大矢省三君。
  106. 大矢省三

    ○大矢委員 この統計を見まして、旭日章が陸海軍将校に実に多いことが明らかであります。こういうものを残さなければならぬという先ほどの答弁がありましたが、しからば一体瑞宝章のごときものをどうして削つたか。瑞宝章もそのまま残すべきではないか。これだけを削つて、旭日章と菊花章を残した理由を伺いたい。
  107. 村田八千穂

    村田政府委員 今のお尋ねでございますが、旭日勲章は残す、私らはこういう観念でおらないのであります。従来の旭日章も瑞宝章も宝冠章も、すべて同じ取扱いである。従来それにくつついておりました勲等というものは廃止して、ただその勲章をつけ得るという点で有効としておる、こういうふうに考えております。そこで、新しく今後授与するものは旭日勲章を用いますが、これは従来の旭日章と違うものである。意匠は似ておりますが、観念的には違うものである。そこで瑞宝章は削る、旭日章は残す、こういうふうに考えておりません、旭日、瑞宝、宝冠従来のこの三章は、勲等というものを切り捨てて着用できるという点で有効にしておる。そして新しく今後授与する勲章は、たまたま従来の旭日章と意匠の似ているものを用いる。こういうふうに御了解願いたいのであります。
  108. 大矢省三

    ○大矢委員 これを最も公平に厳選するという意味で、審議会が設けられておりますが、あらゆる審議会で、決定事項というものはこれを尊重しなければならぬということを、たいてい加えている。これにはその規定がない。従つて審議会で六名以上の賛成があつて決定しても、総理大臣がこれを拒否することが、これではできるのではないか。せつかく審議会で厳選をして決定したものが、当然授与すべきであるにもかかわらず、単なる諮問機関として、それが拒否できるような規定というものは、審議会の権威の上に、あるいは決定の上に、非常に欠陥があるのではないか。委員会はたいてい決定を尊重すべしとか、しなければならぬとか書いてあるが、これには単なる諮問機関として委員会を設ける。しかも六名以上の賛成があれば、これを議決しなければならぬ。その議決がしかも諮問機関であるから、内閣総理大臣は尊重してもしなくてもいい、あるいはこれを拒否することも、この法文からできますが、そういうことは、審議会の権威の上にも、これを決定する上にも、これは当然明記すべきじやないかと思います。これに対する御意見を承りたい。
  109. 村田八千穂

    村田政府委員 法律条文の問題でございますので、私より答弁さしていただきたいと思います。勲章につきましては、ここに審議会の決定を尊重するというふうな字句は使つておりませんが、勲章の授与というものは、憲法によつて内閣の助言と承認が必要であり、従つて必ず閣議にかけなければならぬ。その閣議にかけるには、前に栄典審議会の議決を経なければならぬ。こういうふうになつておりますから、議決を経なければ総理大臣は閣議にかけられないのでございます。それですから、単なる諮問という以上に、内閣総理大臣を栄典審議会は拘束する、こういうふうに考えております。二十三条の方で、その他重要な事項や何かについては諮問の方になりまして、これはほかの諮問機関と同じような性格だと思いますが、勲章の授与の決定ということについては、単なる諮問機関以上の権限栄典審議会に持たせておる、こういうふうに考えております。
  110. 大矢省三

    ○大矢委員 それではこういう、かうに解釈してよろしゆうございますか。審議会で決定することは、これを閣議にかけるためにかけるのであるから、これはそのまま閣議で決定するというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  111. 村田八千穂

    村田政府委員 憲法で、閣議というものが栄典授与については規定されておりまして、閣議を栄典審議会が拘束するということになると、憲法違反ということになるのでありまして、そこまでは法文ではつきりはいたしておりません。事実問題としては、おそらく栄典審議会の決議、たとえば何のだれそれに三等という決議をして来たのを、これを二等にするとか四等にするということは、閣議では容易に行われることはないだろうと思いますけれども、それは絶対にいかぬということになると、憲法規定と矛盾するものですから、そこまでは法律で要求できない、こういうふうに考えて、この案を書いたようなわけでございます。
  112. 大矢省三

    ○大矢委員 これは午前中にもあり、今また質問があつたようですが、この位階、これを八階級にわけたのは、一体どういうわけでございますか。この審議会の答申は、いまだ一致を見ておらないと私どもは聞いておるのであります。これをこしらえる前に、立案するにあたつて審議会においてこういう答申がなされたか。言いかえると、審議会ではこれを決定したか。その点をひとつ……。
  113. 村田八千穂

    村田政府委員 おつしやる審議会というのは、この制度をつくる審議会のことでございますか。
  114. 大矢省三

    ○大矢委員 そうです。
  115. 村田八千穂

    村田政府委員 そうでございましたら、これは栄典制度調査する非公式な審議会でございまして、この法案には関係のない審議会のことでございます。その方でしたら、位につきましては、これは審議会ではつきり決議したわけでございませんけれども、あまり御賛成の方はございませんでした。
  116. 大矢省三

    ○大矢委員 この審議会でまだ意見がまとまつていない、答申もないものを、特にこういうものを設けたについては、先ほどから答弁がありましたが、これは質問者の方にもありましたように、これは宮中の席順をきめる制度でありまして、今日それがないのに、どうしてなおかつ置かなければならぬのであるかということをちよつとお伺いしたのですが、私どもはよく了承することができないのであります。いま一度、審議会の意見もまとまらない、しかもそれをどうしてもここに七条として規定して、こういう制度を設けたことについての経過を、お伺いしたいと思うのであります。
  117. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは午前中にも申し上げましたように、栄典授与の経験から、こういう制度を併用することが便利である——という言葉ははなはだ当らぬかもしれませんけれども、やりやすいということがありましたので、審議会と別に政府において考えたような次第であります。
  118. 大矢省三

    ○大矢委員 それから第八条の三項に「特別の功労章を授与する。」とありまするが、この前段のいわゆる功労章は銀章、金章、これ以外にあるのですか。これを五つもらつた場合に加算する。その五つの中にこれが入るというので、三項はいわゆる国家、公共に対して、「自己の危難」ということがあるからこれを出すのだということですか、これは特別にやるのか、あるいはこれを前項にかかわらず出すというのか、この点が法文ではよくわからぬのですが、これをひとつ。
  119. 村田八千穂

    村田政府委員 第八条の功労章は、これは大きくわけますと二つになる、こういう観念でございます。その一つは、一項の功労章でございます。もう一つは三項の特別の功労章というふうに、それぞれあります。二項の功労章は金章、銀章の二色になる、こういうふうに考えております。そこで実際問題としまして、ある功労を立てた人がある、それは第八条の一項に該当する。そうしますと、その場合にその功労についてさらに検討しまして、その功労が自己の危難を顧みずにやつた功労であれば三項の功労章を出しまして、二項の功労章は授与しない。そういう勇敢な行動なしに立てた功労でありましたら、二項の功労章だけを授与する、こういうふうに考えております、そうしまして、同じ人が重ねて功労章をもらうような功労を重ねた場合に、前に二項の功労章をもらつた人が、さらに次に重ねた功労がやはり勇敢な行動でない功労であつたら、前のが功労銀章でありましたら金章に進む。功労金章でありましたら、その上がありませんから杯というふうになると考えます。それからその方が前は普通の功労であつたが、二度目は勇敢な自己の危難を顧みずに立てた功労である、こういう場合には、前の功労銀章をそのままにしておきまして、そのほかに三項の功労章を授与する、こういうふうに運用するつもりでおります。
  120. 大矢省三

    ○大矢委員 この産業勲章、それから文化勲章ですが、これは一定でありまして、ほかのものはたいてい五階級ぐらいになつておりますが、同じ勲章でも一般の観念というものは、旭日勲章並びに菊花勲章ですか、こういうものが非常に上位にあるという考え方を持つのではないか。従つてこれはこういう階級をつけずに、対等のものであるという感じを持たすためにも、私は旭日勲章をこうした五等級にわけるというのはどうかと思いますが、それについてそういう心配はないとお考えになるかどうか。
  121. 村田八千穂

    村田政府委員 旭日動章と比較しまして、文化勲章、産業勲章の方が低く計価されるかというお尋ねでございましようか。——これは、勲章としましては別級になりますので、必ずしもどちらが高いとはつきりは言いかねるということになると思います。それが実際問題としまして、旭日勲章はこらんのように五等級ありますので、相当功労の高い人から、それほど高くない人まで出し得ることになつておりますが、文化勲章と産業勲章は単一級でありますし、さらにその章のかつこうから行きまして、相当体裁のいいものでありまするから、文化なり、産業なり、その方面の功労の相当高い人だけに限られる、こういうことになると思つております。  それからさつき基準は非常に立てにくいと申しましたが、基準の意味でございますが、たとえば産業勲章の中には、農業も、それから産業上の技術改良というようなもの、あるいは労働というようなものが入るかという程度のことでございましたら、これは含んでいるものと考えております。
  122. 大矢省三

    ○大矢委員 この間公聴会でもありましたが、技術勲章というようなものをこしらえたらどうか、特に産業勲章というのでは、貿易その他の非常に産業としての名前に合致上ないような功労者があつた場合に、非常に困難ではないか、従つて新しくこの中に含まれるとするならば、名前が適当でないという御意見もあつたようですが、今言つた技術勲章をこしらえるということと、貿易なんかに貢献した人は一体どの産業勲章に入るのか、この点二点です。
  123. 村田八千穂

    村田政府委員 産業という言葉が非常に適切な言葉とも思えませんで、いろいろ検討したのですが、結局こういうようなことにおちつきましたが、よい言葉がほかに見つからなかつたからでございまして、そこでお尋ねの貿易と技術ということになりますと、貿易は少くとも産業に入ると思つております。それから技術ということになりますと、それが学問上非常にむずかしい研究の結果のものであるとすれば、それはあるいは文化勲章の方に入るかと思います。それからその技術が産業の発展に効果をもたらしておりますれば、産業勲章が授与できる、こういうふうに考えております。
  124. 大矢省三

    ○大矢委員 これは大臣あるいは政府委員にお尋ねするのはどうかと思いまするが、市町村長がこれを推薦するということに相なつておる。もちろん都道府県知事を経由してこれを推薦するということになつていますが、その他政府関係、たとえば先ほども質問がありましたが、保安隊、警備隊そういうものを推薦をするというのは当然長官だと思います。午前中木村長官にお尋ねしようと思つたけれどもいなかつたのですが、これは特に陸海軍の現在までにもらつている百六十万の勲章をそのまま佩用することができるという意味附則がついております。軍隊でないと政府はこう言つておるけれども、私ども軍隊だと思つている。それにひとしい保安隊、警備隊、それらの人にも、こういうものを大臣として今の官房長官が推薦する御意思があるかどうか。つまり市町村長が表彰をする手続をするのですが、結局それは長官によつてやられると思いますが、官房長官のお考えはどうですか。推薦されるのですか。
  125. 村田八千穂

    村田政府委員 ちよつと先に私から条文意味を御説明させていただきます。第二十一条では、表彰の申出が、市町村長または都道府県知事ということになつておりますが、その趣旨は市町村長とか、都道府県知事がこういうことをなし得る上、またむしろ義務を持つということは法律ではつきりしなければ、今の立法の建前でいかぬ。こういうことになつているために、ここに特に入れてあるのでございます。従いまして、ほかの方面でそれぞれ表彰の申出をされることを排除しているわけではないのでございます。特別の官庁、たとえば会計検査院というものであれば会計検査院長、両院事務局職員については事務総長から、こういうことはもちろん排除してないと思います。たださつきのような自治法との関係から、市町村長とか都道府県知事だけを、ここに書き出しております。
  126. 大矢省三

    ○大矢委員 これは法文に明らかでありますからその程度でよくわかります。そこでほかの今の保安隊とか警備隊——この法案にありますように、百六十万かの旭日章をもらつたものはその効力を有するのですから、保安隊並びに警備隊に対してもそれとひとしいこういうものを、保安庁長官はおらぬのですが、官房長官として今後出す御意思があるかどうか。
  127. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この栄典法制定の趣旨に基きまして功労を顕彰すべきものであると考えました場合には、保安隊でありますと保安隊でないと、いかなる職階におきましても区別なく授与したいという考えでおります。
  128. 大矢省三

    ○大矢委員 私はこれに対して相当意見がありますが、意見にわたりますので、質問はこの程度で打切ります。
  129. 笹森順造

    ○笹森委員 せつかく官房長官が見えておりますので、あるいはほかの委員から質問が出るだろうと思つて期待しておりましたが、一、二点落ちているようでありますから、私もこれは明確にしておきたいから、若干質問させていただきます。それはこの前に同僚の委員の一人から、金鶏勲章は廃止、旭日章は残すという問題についての質問があつて、その質問者は官房長官の御出席のときにお尋ねしたいということを言い残しておつたことを記憶しております。その後そういう質疑応答が、あるいは私の欠席中にあつたのかもしれませんけれども、その点についてもう一ぺんはつきしりと御説明願います。言葉を補足して申しますと、新憲法が戦争放棄となりましてから、特に金鶏勲章をやめてしまつたということは御承知の通りであります。ところがその当時に、金鶏勲章と同時に旭日章が与えられておる、あるいはまた非常な功労の高い者には金鶏勲章を出して、その次に位するものとして旭日章その他のものを与えていた。ところが非常に功労の高いものの金鶏勲章というものがなくなつて、同時にあわせて与えられたその勲章だけを残すということは不公平ではないか、こういうような議論があつたわけです。それに対して、これは同時に与えられたのだから、片一方旭日章が残つているからいいじやないかというような、そのときの政府説明員の答弁があつたことを記憶しております。ところが根本的には、やはりこれを残すということであれば、そこに戦争放棄となつたということはそれはそれとして、戦争の結果によつて旭日章も与えるのですから、そういうようなことに対する非常な功労のあつたものは認めずに、その次に位するものだけを認めるということに矛盾を感じないか、また欠陥がないかという質問があつたときに、政府説明は不十分であつた、その点を指摘されて、官房長官の御意見を伺いたい、こういうことであつたのでお尋ねいたします。
  130. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたします。金鶏勲章は明らかに戦争の勲功に対する栄典でありまして、今日戦争放棄の民主憲法が出ましたときにこれを廃止する、その佩用も認めないということははつきりしておるような気がいたすのであります。旧制度の旭日章は、その制定されましたときの由来を多少聞き及んだこともありますが、これははつきりと戦争の勲功というものに限つたものでありませんので、その間金鶏勲章に対するわれわれの感じとは相当逕庭があるように思います。そういう意味から、きわめて明快でないということはある特殊の場合に言い得るかと思いますけれども、特にこれをはつきりさせなければならぬほどのものではないように考えております。
  131. 笹森順造

    ○笹森委員 どうもさような答弁ははつきりしないのですけれども、しかし私はあえて追究しようと思つているのではない。金鶏勲章を認めないということに対して、私はこれ以上ここでは議論を申そうとは思いません。ただしかし、金鶏勲章というものが戦争の結果であることは著明であるということだけはお話の通りでありますが、戦争に協力したというその一点において表彰せられ、あるいはまた初めてこれを授与せられたという明らかなものもあるはずです。そういうものを残しておくということであるならば、そこに今のお話がいよいよあいまいになりはせぬか。戦争に協力したことによつてもらつた金鶏勲章でないものがあるのですから、それをこういうふうに残すということであるなら、おかしい。徹底的に全部これを認めないということであれば、理論が透徹するが、非常に功労の高いものだけはやめてしまつて、その次に戦争に協力したことによつて——もとよりそれのみでないことはお話の通りですけれども、それで表彰せられ、あるいは初めて授与せられたものは残しておくということを否定する論拠が出て来るので、お尋ねしているわけです。
  132. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは私は瑞宝章の場合も言い得るのじやないかと思うのですが、戦争協力ということでありますれば、直接武器をとつての協力でないまでも、戦時に戦争目的遂行のために協力した意味において、瑞宝章をもらつている人もあるのです。一応新憲法のもとに、旧制度勲章は旭日草、瑞宝章ともに廃止されました。その間の区別ははつきりした線はどうも引けないのじやないかと思うのです。
  133. 笹森順造

    ○笹森委員 ですから結局私どもとしては、以前の勲章は一応御破算にして、できるならばこれは政府としては非常に煩わしいと思いますので、また取扱上問題になりますけれども、ほんとうの理論から申しますならば、今までの勲章を与えられました者を、もう一ぺん過去の業績を洗いざらいしてみて、再審査して、過去の勲章を持つている者はこれこれに該当するのだといつて与えるならば、これはまだ話がわかる。しかしそれは非常にめんどうだと思います。事実何百万人というものがいます。そこをこの立案者が御都合主義で、どうもめんどうだからやめておごう、そういうようなことで、一方的なことですつきりした線が出ていないような感じがする。ですから結局あいまいな答えが出るのじやないかと思う。そういうお話を聞けば聞くほど、過去における栄典は一応ここで御破算にする方がいいのじやないかという考えが出るので、実はお尋ねしたわけです。しかしこれ以上お尋ねしても、あいまいなお答えしか出ないでしようから、この点はそのままにして、次の問題をもう一つ明らかにしておきたいと思います。それは何であるかというと、敗戦、降伏、占領となりましたために、そうでなかつたならば、この栄典制度によつて当然与えらるべきであつたものが、この制度の極端なる局限によりまして、排除せられているものがたくさんございます。つまりその以前に当然これはもらつているべきだ。たとえば戦死した人であるとか、あるいは非常な功労を立てた人であるとか、この制度が生きている間にはちようど間に合つてもらつた人が、その後行動が不明であつたために、当然もらうべきものをもらつてない人がたくさんあると思う。この点についてまず政府委員からどういうようなものがどれだけあるか、もしそういう調査があるならばそれを一応聞いた上で、そのお答えによつて、あるいは官房長官にもお尋ねしたいと思います。
  134. 村田八千穂

    村田政府委員 お尋ねの点につきまして十分な資料を持つて参りませんのですが、多分今度の太平洋戦争の戦死者その他戦没者の関係と思いますけれども、私の方で取扱いました件数が約三十万、三十万人にならなかつたかと思つております。結局戦死者と申しますか、戦没者の総数は幾らになりますか、私もはつきりつかんだものを持つておりませんが、百数十万だろうと思います。従いまして百万以上のものが、もし引続き旧制度、旧観念でおりますれば金鶏勲章とかあるいは旭日章とか、瑞宝章をいただけた。こういうふうに考えられます。それに対する考え方については終戦後、当時はまだ陸海軍が残つておりまして私の方といろいろ議論したのであります。これは敗戦によつてもうそういう功労はすべてなくなつたのだから表彰はここで打切るという議論も出ましたし、これは功労というよりも、やはりなくなつたということに対する国家の一つの弔意の方法であるから続けるべきだという議論も出ました。結局議論をしておりますうちに、総司令部から旧軍人関係の者に勲章を授与することはやめろ、こういうことになつてやめてしまつて今日に至つておるわけであります。それで戦没者の方の氏名の調査などはおそらく相当整つておると思います。しかしその方にどの程度の功労があつたかということになりますと、これは十分な資料がないと思つております。そしてまた今になりまして、甲の方は功労が大きかつた、乙の方はそれほど、功労がなかつたというような区分をして、死んだ方の弔意を考えるということも適当でない。こういうふうに考えられるわけであります。結局私どもは一部の二、三十万の方だけが勲章授与という恩典と申しますか、それを受けて、あとの方は受けなくて、不均衡であるとは思つておりますが、今になりましては適当な方法もないのではないか、こういうふうに考えております。
  135. 笹森順造

    ○笹森委員 もう一つ官房長官お答えの前にお尋ねしておきたいのですが、今のはおもに戦没者あるいは軍人、軍属に関するお答えですが、この制度が極度に制約せられましてから、この栄典法が古い制度において適用されたものはきわめてわずかであります。ところが極度に局限せられなかつたならば、軍人、軍属以外においても当然陞叙、あるいは新しく叙せらるべきものが、この長い期間には相当あつたのではないか。ただ占領中でとめられておつたからやらなかつただけの話である。今度これが復活して古いものだけが生きて行くということにぜひするということであるならば、そのでこぼこなんかも問題になる。そういう点から今の御指摘になりました軍人、軍属以外の人で、当然旧制度があつたならば、それに浴しておつたと思われる件数なり、あるいは状況なりが、今までどれだけ当局で調査しておるかをお伺いいたします。
  136. 村田八千穂

    村田政府委員 ただいまお尋ねの問題は主としていわゆる定例叙勲とか叙位とかいうものがありますが、それを継続しておればどれくらいの方が恩典に浴しておるか、そういう方面の調査をしておるかという意味考えられます。この問題につきまして私の方では十分の調査はいたしておりません。おそらくそこはある程度不公平といいますか、でこぼこができると思いますが、定例叙勲なり叙位の制度を打切つたまでの方はこの栄典法では有効としてありますが、それからあとの方については新しい尺度でといいますか、栄典審議会で検討した上、功労があれば出す。新しい尺度の上で功労がなければ授与されない、こういう取扱いになると思つております。
  137. 笹森順造

    ○笹森委員 そこで官房長官に御方針を伺いたいのですが、この前の制度が極端に制約せられました後の期間にさかのぼつてこの制度の適用をもしもこの法律が通過するならば考えるのか、この法律が通過したならばその後から実際のものを考えるのか、これによつてでこぼこ調整のことが多少かわつて来るのです。その点をお尋ねいたします。
  138. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そういういろいろな問題がありますので、栄典審議会をつくりましてそこで十分な審議をしてもらう。従いましてこの栄典審議会の委員の人選等は慎重にかつ平衡を得たものでなければならぬと思うのであります。あるいは占領期間中の功労に関しては、一切これを排除するという意見もあるようでありますが、そういうこともひつくるめまして栄典審議会の良識にまつということにいたしたいと考えております。
  139. 笹森順造

    ○笹森委員 そうするとまだ態度としては、占領中における功績は——日本の民主化のために功労のあつた者、日本の文化のために功労のあつた人、それも一切排除するという意見の人もあるという御説明がありましたが、現に文化勲章ごとき戦争中もいろいろ考えておられるにもかかわらず、今のお話は矛盾を感じられますが、今のお話を一切カバーして伺つてよろしゆうございますか。つまり今のお話はどうも否定的なようなお話で占領中の功績は一切認めないという意見もありますということで、それがお答えの全部になつておりましたから、それがそうでなくて占領中であつても文化的なあるいはまた日本の民主化のためにあるいは産業のために功労があれば、さかのぼつてこれをもう一度考えるというようなこともあるのか。この法律が何年何月からというならば、その後に起つた功労だけを考えるのか、その間のことがどうなるか。こういうことの取扱い上のことについて内閣官房長官としての御判断を伺つておるわけであります。
  140. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今の占領期間中云々ということはきわめて一部のことでありまして、もちろん全部のことをカバーしておることではありません。ちよつと私が答弁の間に思い浮べましたのは、とかく栄典というものが役人と結びつけられやすいので占領中の政府のことが頭に浮んだのでありますが、もちろん今の文化勲章による栄典というようなことは国の立場がどうありましようとかわりはないことでありまして、それらを含みます栄典の授与方針につきましては、すべて栄典審議会の諮問の結果にまつことになると考えております。
  141. 笹森順造

    ○笹森委員 これは私の不勉強かもしらぬので政府委員にお尋ねしたいのですが、さつきの委員のお尋ねで、この栄典制度によつて栄典にあずかれるものを申請すると申しましようか、認めたものは市町村長から云々ということがありまして、そのほかのものは排除規定がないということなんですが、それは積極的にだれがどこからどうやるというのは何条でございましたか、それをちよつとお知らせ願います。
  142. 村田八千穂

    村田政府委員 これは各官庁の関係では上官が一切人事を持つている。その一環として、栄典についても発動ができるのではないか、こういうふうに考えまして、この法律に入れてないのでございます。その意味で、市町村長都道府県知事だけのことを書いておりまするが、ほかの官庁では自分の所属の者について推薦することが当然できる、こういうふうに考えて申し上げたわけであります。
  143. 笹森順造

    ○笹森委員 どうもこれは少しやかましいかもしれませんけれども、発動し得る規定がこの法案趣旨になければ、一体何条の何によつて発動するかということは、この法案ではわからぬわけでございますね。つまり内閣総理大臣がその所管の各長官をして申請せしめるとか何とかいうことがなくてもいいわけですね。どこかそれをやるところがなければ発動できそうにないように考える。先ほどの市町村長のことはわかりましたが、そのほかの積極的な規定はこの規定上ないのですが、それでは法案が不備ではないのですか、それは私わからぬから特にお尋ねするわけなんです。
  144. 村田八千穂

    村田政府委員 それは各省の設置法等に栄典に関することというような権限が全部入つております。それに基いて各省大臣が所管のことについて栄典の推薦ができる、申入れができる、こういうふうに考えております。
  145. 笹森順造

    ○笹森委員 このごろの法律の建前は、すべて羅列的で重複的であることは御承知の通りで、これがために私ども勉強の足りないものも、国民も非常に便宜を受けております。ところが今のような御説明で行くと、どうもそういうものが今までの法律の建前と歩調が合つていないような感じがしますので、これもやはり一項加えないと下値ではないかという感じがしたものですからお尋ねしたのですが、それでは今のお話のように、あらゆる他の省の設置法栄典に関する規定が全部入つておる、そう理解してよろしゆうございますか。すでに入つておるのだ。だから今後この内閣委員会でも別にそういうことは考えなくてもいいのだ、こういう御説明ですか。
  146. 村田八千穂

    村田政府委員 栄典について推薦するとか、申出するとかいうことは入つておると思います。それでここには必要がないと思います。
  147. 井手以誠

    井手委員 笹森委員の質問に対して官房長官は、占領中の功労についてはあまり考えていないような御答弁でございました。聞くところによりますと、総理大臣は占領期間中のことについてはこれを顕賞する意思がないということを私ども承つておるのです。ところが占領中とは言いながらも、平和日本のために、また日本の民主化のために相当貢献した功労のある人もあつたと思うのです。先刻もお尋ねしましたが、かつて侵略戦争に大いに協力した人も、今度は位階を受けて、そういう制度復活する。片方、民主化のために尽したものは考えない。そういうことは非常な矛盾だと思う。そこでお尋ねしたいのは、占領期間中の日本の民主化、平和などについて功労のあつた人についてどういうお考えがあるか、政府のはつきりした所見を承つておきたいと思うのであります。
  148. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは今仰せられる通りでございます。私が申し上げましたのは、むしろ占領期間中に総司令部の旨を受けて仕事をやつておつた直接の責任者が、その栄典を避けたいという謙遜な気持を聞いただけでありまして、日本の民主化、その他文化上に功労のあつた人が、審議会の議を経て栄典の対象になることは、これは言うまでもないと思います。
  149. 井手以誠

    井手委員 議事進行について。この間の理事会で、今週一ぱいに質疑を終りたいという話合いがあつたのでありますが、この法案は内容きわめて重要でありまして相当研究せねばならぬ箇所が根本的にも、あるいは個々の点についてもあるようであります。私の方でもいろいろと意見が多いのでありますし、また研究の途上に、政府にもいろいろとただしたいことが出て来るのであります。おそらく各派ともそういうことであろうと考えますので、先日そういうとりきめは一応あつたようでありますが、さらにひとつしばらく審議期間を延ばしていただきますように特にお願い申し上げたいと思います。
  150. 船田中

    船田委員長 ただいまお申出につきましては、理事会によく諮りまして、善処いたして参りたいと思います。  他に御質疑がなければ本日はこの程度といたしまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十七分散会