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1953-02-16 第15回国会 衆議院 電気通信委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十六日(月曜日)     午後二時二十七分開議  出席委員    委員長 橋本登美三郎君    理事 中村 梅吉君 理事 本間 俊一君    理事 有田 喜一君 理事 松前 重義君       岩川 與助君    貫井 清憲君       羽田武嗣郎君    松村 光三君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       三輪 壽壯君    山田 長司君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 高瀬荘太郎君  出席政府委員         郵政事務官         (大臣官房電気         通信監理官)  金光  昭君         郵 政 技 官         (大臣官房電気         通信監理官)  庄司 新治君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     梶井  剛君         日本電信電話公         社副総裁    靱   勉君         日本電信電話公         社理事         (電気通信研究         所長)     平井  始君         専  門  員 吉田 弘苗君         専  門  員 中村 寅市君     ――――――――――――― 二月十六日  委員石橋湛山君辞任につき、その補欠として羽  田武嗣郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十二日  御坊電報電話局局舎新築等に関する請願(早川  崇君紹介)(第一八二七号)  電話整備拡充計画促進に関する請願綱島正興  君紹介)(第一八二八号) の審査を本委員会に付託された。 同日  京都放送局の再免許に関する陳情書  (第一二七八号)  同外二十二件  (第一二七九号)  同(第一二八  〇号)  同  (第一二八一号)  同(第一二  八二号)  徳島放送局存続に関する陳情書  (  第一二八三号)  佐賀放送局存置に関する陳情書  (第一二八四号)  同(第一二  八五号)  同  (第一二八六号)  国際電信電話株式会社設立及び運営に関する陳  情書(第一  二八七号)  北海道下電気通信施設整備拡充に関する陳  情書(第一二八八  号)  浦和電報電話局施設拡張に関する陳情書  (第一  二八九号)  川口市の電信電話施設整備に関する陳情書  (第一二九〇号)  小諸町の電話設備拡充に関する陳情書  (第一二九一号)     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  有線電気通信法案内閣提出第四九号)  公衆電気通信法案内閣提出第五〇号)  有線電気通信法及び公衆電気通信法施行法案(  内閣提出第五一号)     ―――――――――――――
  2. 橋本登美三郎

    橋本委員長 これより開会いたします。有線電気通信法案公衆電気通信法案並びに有線電気通信法及び公衆電気通信法施行法案一括議題といたします。  質疑に入ります前にお諮りいたします。ただいま審査中の三案について、来る十九日参考人の意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 橋本登美三郎

    橋本委員長 御異議なしと認め、さように決します。  なお参考人の選定につきましては、委員長並びに理事に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 橋本登美三郎

    橋本委員長 御異議なしと認め、さよう決します。氏名は明日の理事会を経て委員会に御報告申し上げます。     —————————————
  5. 橋本登美三郎

    橋本委員長 質疑に入ります。通告順に従いこれを許します。松前重義君。
  6. 松前重義

    松前委員 この前に公社総裁より事業の大要についてお伺いをいたしたのでありますが、きようは政府側がお見えになつておらぬようでありますから、その公社側に対する質問を続けてみたいと思います。  この前のお話の中で、電信電話の将来の見通し、すなわち通信網計画につきまして、この計画大要を口頭をもつて説明いただいたのでありますが、もしこれができましたならば何か書いたものでいただければ非常に幸いだと思います。これに関連しまして少し最近のこれらの計画の基礎的な資料でありまする、ことに通信工業界にとつて非常に重要な問題だと思いまする公社計画しておられる技術的な計画の思想の根本について、少しばかり伺いたいと思うのでありますが、まず第一に市外線計画として、いわゆる有線の無装荷ケーブル、あるいは無線におけるマイクロ・ウエーヴを基幹とするような御説明伺つたのでありますが、最近におけるマイクロ・ウエーヴ日本における研究の内容について、少しばかり御説明を願いたいと思います。
  7. 平井始

    平井説明員 ただいま御質問がございましたマイクロ・ウエーヴ日本における研究の現状についてかいつまんで申し上げます。マイクロ・ウエーヴ研究につきましては、市外回線に、これは主としてテレビと電話両方が通るというために、現在世界的に進歩がはかられつつあるわけでございます。すでに欧米先進国におきましてはマイクロ・ウエーヴによる回線網ができ上つて、良好な結果を生んでおるわけでございます。公社といたしましても、マイクロ・ウエーヴと、これにかわるべき有線通信方式としまして同軸ケーブルというのがございますが、この二つを俎上にあげまして、いろいろと比較検討いたしたわけでございますが、技術的にはマイクロ・ウエーヴ同軸ケーブルと比較いたしますと、同軸ケーブルの方が現在においては安定性において若干まさつておるということが申し上げられると存ずるのでありますが、これを建設費の面から比較いたしますと、相当大きな開きが出ておるのであります。たとえばこれは非常に概算でありまして、申し上げるには適当でないかもしれませんが、一応私どもがはじき出しました東京大阪間千五百チヤンネルほどの電話を通すという計画で、マイクロ・ウエーヴ同軸ケーブルを比較した結果によりますと、同軸ケーブルが大体四十億円くらい、マイクロ・ウエーヴによりますと大体二十五億円くらいというような結果が出ております。このような面から見まして、マイクロ・ウエーヴが長距離の大群の回線網として、将来非常に有望なものであるということが言い得るのであります。そこで公社におきましてもマイクロ・ウエーヴによる回線網をつくるために、諸外国のいろいろの文献に出ました点を参考といたしまして、二年ほど前から実用化にとりかかつております。現在におきましてはマイクロ・ウエーヴに関する多重通信方式、これが完成に近づきつつあるのでありまして、東京大阪間において今年末ぐらいには開通できるであろうというような見通しが現在立つておるような状況であります。私ども研究いたしましたマイクロ・ウエーヴに関しましても、非常に広汎なフイールドを含んでおりまして、たとえばマイクロ・ウエーヴ送信機受信機そのものの問題、それからそれに使います真空管の問題、それからマイクロ・ウエーヴ伝播の問題、それからマイクロ・ウエーヴに使います空中線測定器、そういうようないろいろな品物あるいは事項が関係するのでございますが、これらをパラレルに進めまして、ただいま申しました今年末に完成し得るというところまで来ておるのであります。これを諸外国のものと比べましてどの程度かと申しますと、現在マイクロ・ウエーヴで最も優秀なアメリカ電信電話会社施設を私ども目標にしておるのでございますが、大体それに近い性能を得られるであろうと今考えておるわけであります。いずれ今年の四、五月ごろに詳細な性能試験計画しておりますが、それらが施行されましたあとで、もう少し詳細にマイクロ・ウエーヴ回線としての特性を申し上げられると思いますが、現在のところでは大体そういう状態であります。なお言い漏らした点があつたかもしれませんが、御質問がありましたら私の知つておる限り申し上げます。
  8. 松前重義

    松前委員 非常に御丁寧な御答弁でありましたけれども、どうもまだかゆいところに届かない感じがいたしますので、もう少しお尋ねしたいと思います。諸外国マイクロ・ウエーヴ研究並びに現在の施設目標として御研究になつておられるということでありまして、本年中には十分見込みが立つという話でありますが、この間伺いますと、マイクロ・ウエーヴ装置日本のものだけでなく、外国からも輸入して並行にやりたいという御説明がございました。もし日本側で十分の自信があられるならば、わざわざ外貨を払つて入れる必要はない、こういうことも一応考えられますし、同時にまたただいまの御説明の中で伺いますと、東京大阪間に何チヤンネルおとりになるか、そういうことも問題でありますし、もう一つ回線安定性などにつきまして、一番重要な問題であると思うのであります。外国におきましてはすでにテレビジヨンに使つておることは、これは当然これによらなければならないと思うのでありますが、テレビジヨンの場合と多重の通話の場合との安定性、すなわち公衆通信に使う場合においては相当な開きがあるのでありまして、これらに対しましてはたして今年中に十分実用に供せられるだけの自信があるかどうか。真空管その他の問題について御研究のことは非常にけつこうだと思うのでありますが、回線網基本的な問題としての安定性ということについて、またそのチヤンネルの数が多いということについて、もう一つマイクロ・ウエーヴ装置は山の上に建設するのでありますから、相当な経費をふだんに必要とする。水もないところで、風の強いところで、多くの従業員がそこにおらなければいかぬというようなことから、いわゆる経営費に相当の金がかかる、こういう点から見ましても、少くともマイクロ・ウエーヴに対しましてはもう少し本質的な用心深い検討の上に、もしもそれらの安定性がなく、確信がないとするならば、なさなければならないということも考えられますし、そこまで十分自信があるというならばどんどん実施して可なり、その辺のことについて見通しと、今までの計画に対する自信のほどを伺いたい。
  9. 平井始

    平井説明員 最初御質問のございました並行にやることの可否の問題でございますが、これはあとの方を申し上げまして、その結果として申し上げた方がよいかと思いましては、順序をちよつと変更させていただきたいと思います。マイクロ・ウエーヴ回線安定性につきましては、私どもも一番関心を持つているところでございまして、現在の無装荷ケーブル程度安定性を得られればりつぱなものでございますが、正直に申しまして、ただいまのところ安定性におきまして万全を期しておりまするが、できた結果、あの無装荷と同程度安定性を得られるかどうかということについては、大体得られるであろうと考えておりまするが、はつきりした自信はございません。
  10. 松前重義

    松前委員 外国ではどうですか。
  11. 平井始

    平井説明員 外国におきましては、アメリカで現在やつておりますTD2という方式、非常に安定した方式でございますが、それも使用を真空管ライフが短かい点からまだまだ同軸ケーブルほどの安定性を得ておらないと聞いております。それでただいま計画しておりますものは、大体真空管の寿命にいたしまして七千時間、二十四時間つけつぱなしで約一年ということになりますが、これを目標にしております。その他の部品の安定性につきましても、われわれとして及ぶ限りの手を尽しております。また伝播におきまして、これは季節の変動によつて電波の通路が非常に曲つたりしますので、伝播から来る不安定性が一番大きいのでございますが、局の位置をきめますのに、私どもは大体フエーデイングによつて電波が減衰するのを二十DB程度に押えております。押えるというのは言葉が足りませんが、大体二十DBくらいになるような位置を選定しております。機械の方は三十DBフエーデイングに耐えられるように設計してございまして、そこに十DB安定度を見まして、極力安定になるように万全の策を講じておるわけでございます。  それから経常費の問題につきまして、私どもが現在やつておりますのは、無人までまだ参りません。保守者を置いてやるシステムでございます。しかし保守員をそうたくさん置く必要はないと今考えております。これには安定度ももちろん関係して来る問題でございますが、将来は引続きまして無人化方向に当然向つて行くべきものであろうと考えて、そちらの方面研究をパラレルにスタートを切つております。無人化につきましては、まずVHFについて無人化をやり、続いてマイクロ・ウエーブの無人化をやる、こう考えて、これは安定度方向と相まつて無人化方向に進みまして、ただいま御指摘のありました経常費の問題もそれによつてより安く、より安定な回線をつくつて行くように考えております。  もう一つ、輸入してマイクロ・ウエーヴ並行にやるのはどういうわけか、こういうお話がありましたが、ただいま私どもとしては、万全を期しておるということを申し上げましたが、これで絶対に大丈夫であるという確信はございません。従つて欧米における先進国技術を取入れる。これはペーパーに出ている程度では、技術が取入れられたということにはなりません。私どもがいろいろ苦労いたしました点は、向う機械を手にとつてみますと、それによつて、あすこはこういうふうに解決しておつたというようなことがわかりまして、私どもの今後の計画における技術も非常に上つて来る。また私ども技術向う技術と比較するためにもなるというような意味で、マイクロ・ウエーヴのもう一ルートを輸入しよう、こう考えておるわけでございまして、これは先ほども申しましたように私どもが絶対の自信があるということでございませんので、そういうような方途をとつたわけでございます。  それからチヤンネルの件に関しましては、ただいまのところマイクロ・ウエーヴ・ルートにテレビジヨンならば一つ電話ならば四百八十六チヤンネルを乗せようと考えておるわけでございまして、これは現在世界的に使われております。CCIFの標準周波数アロケーシヨンからは違つておるのでありますが、私ども松前先生が始められた無装荷ケーブル、この基本の六チヤンネルが、日本中に非常に基本的な通信網として張りめぐらされております。この六チヤンネル基本にいたしまして、それの三倍の十八をとり、それをさらに三つ合せて五十四、それを九つ合せまして四百八十六チヤンネル、こういうような標準周波数アロケーシヨンを使いまして、これは無装荷に使つております二十四チヤンネル方式、結局六と十八を加えたものでありますが、この無装荷標準の十八チヤンネル基本群といたしまして、それによつて日本電送網を、あるいはチヤンネルの割当を全部統一して行こう、こう考えて現在は四百八十六チヤンネルのグループを考えておるわけであります。従つて一つの単位が四百八十六になりまして、これはトラフイツクの要求によりまして、それを二つあるいは三つというふうにマイクロ・ウエーヴの局と同時に増設して参りまして、将来の回線網をつくつて行きたいと考えております。  蛇足をつけ加えますと、マイクロ・ウエーヴ回線が無装荷と同じように安定な時期に到達いたしましたならば、日本市外通信網というものは、その大きな束で、マイクロ・ウエーヴで大都市間を通す。そこから押しまして無装荷ケーブルにそのチヤンネルが入つて行く、そしてさらにそこから装荷ケーブル、あるいは裸線というふうにわかれて、市外通信網ができ上るものと考えておる次第であります。
  12. 松前重義

    松前委員 大体のところはわかりましたが、心配が多少残るのは、日本で一生懸命にはおやりになつておられるけれども、必ず成功するという自信がどうもない。このように聞えるのです。もう一つ外国品物をお買いになつて比べてみなければ、日本優秀性はわからぬというお話であります。私は皆様よりも少し前からそれらの仕事に携わつたものの一人として感じますことは、由来日本外国技術に依存いたしましたために、長い間外国技術的な植民地になつてつた。これは結局工業的な植民地であり、この工業的な植民地ということは、日本の国内以外に輸出するということを阻止されておつた従つて東南アジア貿易などということをいろいろいわれておりますけれども、そもそもそこの根本において東南アジア貿易などはできないように、日本工業というものが仕組まれておる部分が多いのであります。われわれのこの電気通信の立場においても、たくさんにその問題があるのであります。外国にもしそういう品物を輸出しようとするならば、アメリカのいわゆる親会社に税金を納めて、利益はたんまりとられてその許可を得てのみ海外に輸出できるというような状態にあつたのであり、また今日もあるのであります。このような状態になつておるときに、ただいまマイクロ・ウエーヴを通じて伺いました電信電話公社研究所のお気持に対して、少しばかりわれわれとして不満を持つのであります。と申しますのは外国のものとの比較、こんなものをおつかけて歩いていたのでは、いつまでたつてもなかなか追つつくものではありません。どうしてもここにもう少し確実な指導力、意気をもつてこのマイクロ・ウエーヴ研究その他が、ほんとうに確実に通信網の根幹となり得る確信を持つてお進みになり、確信があつても、もしもできぬときはというような懸念を持つて進むときは、なかなかその仕事前進をしないものであります。公社経営において、マイクロ・ウエーヴの、ごときがほんとう安定性のあるものができ上つたといたしまして、これが津々浦々までやられるようなことになつたといたしまするならば、これは経済的な一つの大きな貢献であり、日本通信網にとつて、わずかな金で電信電話拡張をしておるものを、より経済的にこれを建設することができれば、国民全体の幸福になるのでありますから、この点について不退転気持をもつて研究をやつていただきたい。同時にまた外国まねばかりしないように、外国特許やその他を買い入れて、それを使わなければできないようではだめです。もちろん全部が全部外国特許を使つていけないとは申しませんけれども、とにかく海外にも輸出できるような実力のある技術として育て上げられるときには、アメリカは買いませんでしようけれども東南アジアその他の未開発の方面への輸出は当然できるのであります。一、二の例を申し上げますれば、パキスタンでありましたか、先般日本ケーブルの注文に来たところが、日本では二十四チヤネルぐらいしか通していない。西ドイツケーブルは百二十チヤネルでしたか、はつきりした数字は忘れましたが、そごまで行つている。日本でもやればできるようになつているのでありますが、その後あまりこの方面に対する進歩がなかつたというようなことから、これはドイツの方が進んでおるからドイツから買う、こういうような話だそうでございます。少くとも外国しりばかりおつかけておつて日本自体のものを失い、そして海外との競争に負けるようなことは、すなわちわれわれが今日貿多々々と言つているその裏づけが、ここにおいてすでに敗北をいたしておるというふうに考えられるのであります。これらの点は、通研のような厖大なる施設と予算をもつてつておられます公社研究でございますので、もつと確信不退転気持を持つて前進をしていただくと同時に、日本通信に関する工業力のすべて、すなわち技術者を初め施設に至るまでこれを総動員する態勢をもつて、もちろんおやりにはなつておられましようけれども、より以上にやつていただきたいということを強く感ずるのであります。公社基本計画大要については総裁から伺いましたけれども、ただいまのマイクロ・ウエーヴの問題については、一日も早く、もつと確信ある言葉をもつて語られるような御答弁をお願いできるように、各方面不退転努力を期待してやまない次第であります。このことは私は何もマイクロ・ウエーヴだけについて申し上げるのではなく、全般的な問題として、技術の母体であるところの公社研究所を、アメリカドイツまねばかりしてあとをおつかけることを業としないで、いわゆる日本的な姿に置いていただきたい。日本技術屋が長い間外国崇拝ばかりして、外国のものを持つて来れば何でも新しがつて日本のものは片つぽしから否定して歩くような状態にありました過去の事実が、終戦後においてより濃く日本に生れて来、またもし公社設備計画方向にこれが巣くつておるといたしますならば、今後のわが国の非常な損失であり、またわが国海外貿易その他を必要とする今日において、非常に重要な問題であると思うのであります。これらの問題について、公社側から御抱負並びに今後の御方針について承りたいと思います。
  13. 梶井剛

    梶井説明員 今の御質問に対してお答えします。公社そのものの将来の研究に対する抱負ということについてお尋ねのように思います。これは日本が敗戦してから後、終戦後の混乱期を経て、ようやく正常な状態に立ちもどりつつあるのでありますから、従つてこの影響がやはり研究方面にも相当あることは避け得られないのであります。ただいま松前委員からお話の通り、従来のごとくアメリカドイツ技術しりをおつかけまわしていることをやめて、日本独特の研究をすべきであるという御趣旨は、たれも異議ないことでありまするけれども、何分にも戦時中における研究相違というものは、終戦後においてこれを見まするに、かなりの差異が生じたようであります。従つて今ただちに欧米技術日本技術を比較いたしますると、その間には相当の相違があるのでありまして、これを同じレベルまで持つて行くというためには、かなりの年月と努力を必要とするのであります。それに追いついてから、またさらに進んで行くということになりますると、ますます隔たりが大きくなるだけであります。そういう観点から見まして、もし欧米において日本よりもすぐれている点があるならば、これをあえて取入れるべきではないだろうか。そしてさらにその上に研究を進めて行くべきではないだろうか。しかしさりとて、欧米に心酔して、欧米研究を何もかも取入れて、われわれが全然自己独特の研究をしないという意味では毛頭ないのでありまして、もちろん欧米の長を取入れると同時に、独自の研究をいたしまして、その両方を合せて進歩発達をはかる方針をとるということは、現在の情勢においてはやむを得ない状態になつておるのではないかというふうに考えるのであります。ただいまマイクロ・ウエーヴについていろいろ御質問がありましたが、マイクロ・ウエーヴそのものにつきましても、もちろん現在通信研究所研究しておりまするもの、必ずしも欧米よりすぐれておらないという点ばかりではないのであります。先ほど平井説明員から申しましたように、向うでやつておりますTD2の四百八十チヤンネルマイクロ・ウエーヴ三極真空管を使つておりますが、その三極真空管ライフが不幸にして短かいのであります。従つて回線が安定しておらないのでありますが、現在通研が使つておりまする真空管は、むしろその三極真空管よりもまさつております。将来アメリカにおきましても、日本が今使いつつあるところの真空管にかえつつあるという状況でありまして、こういう点におきましては、むしろ日本研究の方が正しかつたと言い得るわけであります。しかしマイクロ・ウエーヴのすべての部分について日本の方が立ちまさつておるかと申しますると、まだそうあえては申せないのでありまして、ただいま平井説明員から四百八十六チヤンネルを理想として、目標としてやつておるということでありまするが、しからば本年度内においてできますマイクロ・ウエーヴチヤンネルは四百八十六チヤンネルをかけられるのかといつたら、これはちよつとかけることは困難だろうと思います。そういう点においては、たとえば三極真空管ライフが短かくても、ニユーヨーク、サンフランシスコ間に四百八十チヤンネルを現実にやつておるATTにおいて、こちらにもまさつておる点があるのでありまして、要するにわれわれが終戦後における状況から勘案いたしまして、欧米の長をとり、日本研究をそれに合せて将来の研究方針といたしたいという考えでおる次第であります。
  14. 松前重義

    松前委員 大体のお気持はわかりましたが、公社の事業を今後運営なさるのにつきまして、最も重要なただいまの技術進歩、その他に即応させることによつて経済的な、また優秀な施設ができることになりまするので、これらの研究の一番重要な問題と、指導方針についてお伺いいたしたいと思います。
  15. 梶井剛

    梶井説明員 指導方針と申しましても非常にむずかしいのでありまするけれども、ただいまお答えいたしましたように、一言にして尽せば欧米の長をとり、日本日本で独自の研究をあわせて行いまして、それを総合して将来の技術進歩をはかりたいという意味であります。
  16. 松前重義

    松前委員 ちよつと意味が違います。重点をどこに置いて、どういう問題についてこの計画をお進めになるのかということであります。所長からお願いいたします。
  17. 平井始

    平井説明員 ただいま総裁から申し上げました言葉で尽きると私ども存じますが、私どものただいま研究しております事態を冷静に諸外国と比較してみますと、相当の遅れがございます。戦争中のブランク、あるいは私どもの能力の足りない点もあるかと存じます。いかにしたらば一体世界レベル以上になり得るか、こういう問題は私ども日夜頭を悩ましておるところでございます。たとえば外国から技術をとる、そうするとそれによつてそこのレベルに達したかと申しますと、必ずしもそう申し上げられないのでありまして、私ども研究をやつております途中においていろいろのむだがございます。むだと申しますと語弊がございますが、研究をやりました過程においての多くの失敗があるわけであります。その失敗の積み重なりというものが、次の飛躍に対して非常に大きな役割をしているのであります。これは私どもの周囲を見渡しましても枚挙にいとまがないのでありまして、ちよつとお時間を拝借しまして実例を申し上げますと、たとえば私どもで四号電話機という電話機をつくります。これが私どもとしては現在のところ精一ぱいの努力であつたのでありますが、これができましてから、簡単なことではありますが申し上げてみますと、たとえば夜、暗がりで電話をかける、そして受話器を元へかけます。電話をかけたあとで相手からかかつて来て、出て電話をかける。この場合に私どもの今の電話機は、ダイヤルと送受器受けの間に受話器がかかります。そうすると永久につながりつぱなしの状態になつて、元の状態に返らないというようなことがあります。また送受器受けの片方にコードが一本はさまりますと、半分切れたような状態になるわけであります。こういうような欠点が私どものただいまの電話機にあるわけであります。私どもはそれを今欠点として感じているわけでありますが、それがウエスタンの電話機ではどうなつているかと申しますと、これは握りの形がちよつとかわつておりまして、どんなにひもをかけても半切れの状態にはならないようになつております。またダイヤルの面は電話機の面よりひつ込んでおります。従つて受話器をそこへかけようと思つてもかからないというようなことをやつているわけであります。おそらくアメリカも全然発表しておらぬと思いますが、いろいろとやつてみて現場でそういうようなことが起り、失敗が起つて、それによつて電話機が今のような形にかわつて来たのであろうと私どもは了解するわけであります。これは非常に卑近な例でありますが、多くの研究が失敗の積み重りの上にこそ、ほんとう技術の確立ができるであろうというように私どもは考えたのであります。従つてども技術レベルを引上げるために無批判に受入れるということは、決して日本技術を伸ばすゆえんにはならない。私どもが苦労いたしましてある解決策を見出したものにつきまして、外国から輸入したときに、初めてそこで私ども技術が飛躍的に上る。私ども技術外国から輸入せぬでも十分太刀打ちできることが理想でありますが、たといそれができませんでも、私ども一つの形をつくりまして、その上に輸入したときに初めて技術が上るもの、こういうように考えている次第であります。これは松前先生が先ほどおつしやいました研究根本的な考え方というものにつきましてお答えを申し上げるのであります。  ただいま御質問がございましたいかなる目標をもつて現在研究を進めているかという点でございますが、私どもはこれに対しまして五項目ほど基本的な題目を掲げているわけであります。  その第一項目は、現在の通信方式を安定化するための研究、これが最重点の項目に現在しております。と申しますのは、現在の電信電話サービスはまだまだ設備の不安定のために、多くの利用者に御迷惑をかけているのでありまして、これは一日も早くいい通信が安定した状態で得られることが望ましい。しかしこの関係は非常に広汎なかつこまかい問題を多く扱わなければなりません。従つて現在特に研究所で扱つております問題のほとんど大部分のものが、この目に見えないこまかい問題を扱つているのであります。  第二の項目といたしましては、不足資材あるいは不安定資材の対策であります。これは戦時中も日本においてやられた問題でございますが、現在の変転きわまりない国際情勢のもとにおきまして、通信事業は非常に多くのいわゆる軍需物資、あるいは軍需的に非常に重要な物資を不可欠の要素として含んでいるのでありまして、これらに対して日本の国内に産しないものもたくさんあるのでありますが、その輸入がとまるという場合に、私ども通信事業がたちまち死命を制せられるということになりますので、これに対する研究を第二の項目として選んでおります。  第三の項目は通信網の、あるいは通信方式無人化の問題であります。安定化と相まつてそれを機械化して行くという方向に現在向つております。  第四項は、新しい周波数の開拓であります。これはただいまお話もございましたマイクロ・ウエーヴもその一つの例でありますが、あるいは無装荷ケーブルにおきましても、ただいまドイツの例としてV六〇というような方式お話がございましたが、そういうふうにわれわれの無限に使い得る資産であります周波数をできるだけ広げて、経済的に考えて行くという方向研究を向けて行くわけであります。  五番目に、それらに伴います基礎的な研究でございます。研究というのは、私ども実用化という名前で、製品をあるいは成果を事業の中に適用しておりますが、その基礎をなすものは私どもが過去において蓄積した技術力でございます。この技術力を将来に向つてより発展せしめるという意味におきまして、その基礎研究というものは私どもの将来への経過として一日もゆるがせにできないところでありまして、これを重点として取上げましたゆえんであります。  ただいま研究所が当面しております技術の将来に向つて方向は、ただいま申し上げましたような五つの項目に向つて集約されるのでありまして、ただいま研究所はそれらの目標に向つて研究に邁進しているというふうに申し上げ得ると思います。
  18. 松前重義

    松前委員 大体わかりましたけれども、もう一言伺いたいと思います。それはメーカーすなわち製造工業と、実際製造されたる品物が実用に供せられる電電公社施設との関係、つまり製造工業施設との関係において、どういう体系で御研究をお進めになつておられるか、伺いたいと思います。
  19. 平井始

    平井説明員 施設と製造業者と研究所、この三つの関係という御質問と存じまして、現在とつております方法を申し上げます。研究所である一つの事項を研究する場合に、まずそれらに対する基礎的な事項から、所内に試作部というのがございますが、ここでモデル機を試作いたします。これは多くの場合所内で試作するわけでございます。それによりまして、研究所の中でそれを縦から横から、あらゆる角度から検討いたします。多くの場合、第一次試作機、第二次試作機くらいまで研究所の中で試作いたしまして、それを検討するわけでございます。大体この程度で現場へ出してもよかろうということになりまして、それからそれに対する規格をきめ、体系を整えて外部の製造業者にこれを発注いたします。そうして現場試験用の機械をメーカーの手元でつくつてもらうわけですが、その場合に、研究所が現在までバラツク・セツトで、あるいは自分のところでつくつたモデル機で試験したいろいろな結果が、全部メーカーに移されるわけであります。そうしてそこでメーカーでできた品物が現場にとりつけられます。そうして通研の手において、現場でその機械の実際のサービスに供した成績が徴せられるわけです。大体こういうような経過をたどりまして、現場で使つた経験がそこに入り、いろいろな改善意見が加わりまして、最終的な形がまとまり、これが仕様書化するための資料として施設の方へ移されるわけであります。その施設に移されます場合には、研究所でこういうものができ上つた、これはこれこれの特長を持ち、これこれの欠点を持つというような点がつけ加えられまして、施設局に移るわけであります。それからあと施設局がその仕様書に基きまして、実際に採用するかしないかということをきめ、メーカーに発注が行われ、現場について行く、大体こういうような経過をたどつて実用化が進められているわけでございます。簡単でございますがお答えといたします。
  20. 松前重義

    松前委員 ただいまのお話で感じますることは、大体技術進歩というものは、ことに近代工業を背景とした近代科学を基礎として生れた技術進歩というものは、どうしても総合的な力によらなければならない。一人か二人あるいはまた一箇所か二箇所の人たちが、みずからの狭い経験によつてこれを完成することは非常に困難な様相を呈しておるのでありまして、大体米国などにおきましてもウラニウムの研究を完成いたしますのに、あれだけの学者を、しかも単なる物理学者だけでなく、あらゆる方面技術者を動員いたしております。そうして初めてああいうものができ上つたのであります。時代が進めば進むほど、その姿は複雑に、しかも広汎にこれらの人を動かさなければならないと私は思うのであります。ただいまのお話を承りますと、どうもまだ動員の範囲が、——動員というと戦争のようでありますけれども、いわゆる働いていただく人たちを動かす範囲が非常に狭いのであります。ことに製造工業等に対して相当優秀な技術者通研にはおいでになりますが、おられるそれらの方々の能力を百パーセント発揮せしめるような体系をおとりになつて、民間と申しますか、それらの総合的な指導に当られまして、できるだけ早く今のマイクロ・ウエーヴあるいはその他あの四号電話、あれは非常に優秀でございました。そのほかにまだたくさんの単なる個人の能力による発明でなくて、総合的な協力による金字塔ができ上つて日本の輸出工業への大きな役割を演ぜられる、それくらいの意気込みをもつてやられんことを希望するのであります。ややもすれば、はなはだ口が悪いようでありますが、電電公社品物だけ少しばかりよくして行けばよろしいとは思われないかもしれぬが、そういうことでありますので、南方の市場においても争つて負けないような特長のあるものを日本から生産せしめる意気込みをもつて公社研究の指導に当つていただく。なぜこういうことを申し上げるかと申しますと、日本は資源が貧弱でありますから、どうしてもそういう技術の力をもつて、資源の少い、材料の少いもので、値段の高いものを海外に出すというよりほかに方法がないのであります。外国から輸入した生産設備などで、何とかコストを安くして、海外への輸出を促すなどということをよく大臣さんあたりから伺うのでありますけれども、あんなことはできないのでありまして、すでに特許その他製造機械の輸入のときに条件がつけられておるので、できぬことをただ口で政治家たちが言つておるということに相なると私は思うのであります。こういう意味からいたしましてあなた方のおやりになつておられる事業は、非常に大きな国家的な意義を持つており、しかも材料が少くて優秀なものをつくる、その一番大事な心臓部においでになる研究所の方でありますので、どうかこれらのことを御督励になりまして、外国に依存することなく、日本自体の力によつて外国のものも参考にしながら、新しい特長あるものをここに生産されるように、私ども過去においてその事業に携わつた者として願つてやまない次第であります。これを希望いたしまして、私の技術に関する質問を打切りたいと思います。
  21. 橋本登美三郎

    橋本委員長 この際ひとつ委員各位にお願いしておきますが、御承知のように当国会も三月末をもつて終了さすといいますし、かつ参議院の方からできるだけ審議を急いでもらいたい、こういうような非公式な希望もあるのでありますから、できるだけ回数は重ねて続行したいと思いますが、各委員においても、三法案に対する質疑については、手まわしよくひとつ十分に御審議あらんことをお願いいたします。  次会は明十七日午後一時より開会いたします。なお御参考までに委員会開会予定日取りを申し上げますが、十九日、二十一日、二十三日、二十四日、こういうところを最近の機会で予定いたしております。  本日はこの程度にいたしまして、これをもつて散会といたします。     午後三時二十一分散会