運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-27 第15回国会 衆議院 通商産業委員会農林委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十七日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員  通商産業委員会    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君    理事 永井勝次郎君       有田 二郎君    中峠 國夫君       福井  勇君    南  好雄君      生悦住貞太郎君    高橋 長治君       長谷川四郎君    日野 吉夫君       山口シヅエ君    加藤 清二君  農林委員会    委員長 坂田 英一君    理事 野原 正勝君 理事 井上 良二君       秋山 利恭君    大島 秀一君      小笠原八十美君    木村 文男君       高見 三郎君    中馬 辰猪君       寺島隆太郎君    高倉 定助君       高瀬  傳君    中澤 茂一君       山本 幸一君    中村 英男君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         農 林 技 官         (農林経済局肥         料課長)    長尾  正君         参  考  人         (日本硫安工業         協会会長)   藤山愛一郎君         参  考  人         (第一物産株式         会社常務取締         役)      水上 達三君         参  考  人         (東洋高圧株式         会社労働組合中         央書記長)   野口 富好君         参  考  人         (全国購買農業         協同組合連合会         肥糧部長)   森   晋君         参  考  人         (全国指導農業         協同組合連合会         農政部長)   千石 虎二君         参  考  人         (日本農業研究         所長)     石井英之助君         通商産業委員会         専門員     谷崎  明君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         農林委員会専門         員       藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  化学肥料に関する件     —————————————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより通商産業委員会農林委員会連合審査会を開会いたします。  通商産業委員長であります私が委員長の職務を行います。  本日は化学肥料に関する件について参考人より意見を聴取いたし、調査を進めたいと存じます。本日御出席参考人は、日本硫安工業協会長藤山愛一郎君、第一物産株式会社常務取締役水上達三君、東洋高圧株式会社労働組合中央書記長野口富好君、全国購買農業協同組合連合会肥糧部長森晋君、全国指導農業協同組合農政部長千石虎二君、日本農業研究所長石井英之助君、以上六名であります。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は本連合審査会のために、御多忙中にもかかわらず御出席をいただきまして、私より両委員会を代表し厚くお礼を申し上げます。  申すまでもなく肥料生産、特に価格の問題につきましては、その国民経済に及ぼす影響大なるものがあると存じます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場より忌憚のない御意見をいただければ、本連合審査会といたしまして幸いと存ずる次第であります。  なお念のために申し上げておきますが、参考人の方の御意見の御陳述は、大体お一人十五分程度にお願いいたし、御陳述の順序は、委員長に御一任を願います。御発言なさる際は委員長許可を求めてから御発言を願うことといたし、まず御職業、御姓名をお述べ願いたいと存じます。  なお委員の方に申し上げますが、参考人の三人の方よりまず御意見の御陳述を願い、その後に御質疑を行いたいと存じますから、さよう御了承をお願いします。  それではこれより順次参考人より御意見の御陳述を願います。まず日本硫安工業協会長藤山愛一郎君よりお願いいたします。
  3. 藤山愛一郎

    藤山参考人 私はただいま委員長より御指名を受けました日本硫安工業協会会長をいたしております藤山愛一郎であります。これより委員長お話もありますので、硫安工業現状につきまして忌憚のないところを申し上げたいと思います。十五分でありますから、数字的に詳細にわたりましては、あるいは触れることがむずかしいかと思いますが、できるだけ詳しく申し上げたいと思います。  御承知のように、肥料は戦後、戦時中の肥料行政関係もありますし、また戦争中戦災を受けました関係もありますし、いろいろな関係によりまして、戦後二十万トンしか生産をいたしておらなかつたのでありますが、食糧増産の必要上政府並びに各方面の御援助によりまして、肥料工業確立する方案が決定せられまして、われわれはその方針に基きまして鋭意増産仕事に従事して参つたわけであります。逐次増産が完了して参りまして、昭和二十五年の八月に至りまして肥料統制解除になりました結果は、すなわち国内需給推移と合うだけの生産が完成したということを示していると申してさしつかえないのでありまして、当時百五十万トンの生産をいたす段階に入つて参つたわけでありまして、昭和二十五年の八月一日以降自由販売になつて今日に至つておるのであります。生産数量推移から申しますと、二十五年の八月以降さらに増産が続けられましたし、また一面において国内需要を満たすだけの生産が完成いたしました。以後政府並びに各界の権威者方々の御意見も、東南アジア方面に対する輸出物資として肥料は最も適当な物資であるということが国論として強く推進されて来たのでありまして、そのために国内を満たす昭和二十五年の百五十万トン以上の生産をますます続行して、輸出産業としてさらに確立をして行かなければならぬという段階に入つ参つたわけであります。われわれもその要請に応じまして、肥料増産態勢を整え、今日では硫安におきましてア系肥料—ア系肥料という中には尿素その他も入つておりますが、ア系肥料として二百四万トンの生産をするだけの状態に立ち至つているのであります。政府もまた輸出産業として確立いたすために、電力の特配をいたしておるのであります。ある場合には他産業から肥料工業電力をよけいもらい過ぎているが、自分の方も輸出産業だから、それをわけてもらいたいというような要求の声が高かつたのであります。それほど輸出産業として各方面硫安工業確立すべく努力されて来られたのでありまして、私どももそれに応じて努力して参つた次第であります。  それでは値段がどうなつているかという問題でありますが、昭和二十五年の八月一日から統制解除になつたのであります。統制解除になりました直前の四月から七月までのわれわれメーカー販売価格というものは、七百六十六円であつたわけであります。これは御承知通り統制中でありますから、政府査定をいたしまして、そうしてこの査定によつて買い入れてもらつておる価格なのであります。当時は二百十八円の価格差補給金がありましたのですが、これは農村方面に渡つておるのでありまして、メーカーに渡つておるものではないのであります。従いまして、当初のメーカー販売価格というものは、七百六十六円であつたということを御承知願わなければならぬのでありまして、ともすればこの七百六十六円から二百十八円という農村に渡つております価格差補給金を差引いたのがメーカー販売価格であるというふうにとられがちなのでありますから、その点は明確にしておいていただきたい、こう思うのであります。  今日硫安が高いか安いかという問題なのでありまするが、指数から申しますと、二十五年の統制のときの政府の買入れ価格—われわれの販売価格七百六十六円を一〇〇といたしますと、今日の八百九十円というものは一一六・一なのであります。かりに九百四十円という値段をとりましても一二二・六、当時からわずかこれだけしか上つておらぬのであります。しかるにわれわれが原料といたしておりまする石炭指数を見ますと、昭和二十五年の六月を一〇〇といたしますと、昨年の十一月では一七三・九になつております。またコークスも一七九・九になつております。それから硫化鉱が一三二、電力が一五九・八、こういうふうに非常に大幅に上つておるのであります。それにもかかわらず、今日の八百九十円というのは一一六なのでありまして、これは原料指数から見ましても、われわれが相当生産を増大し、かつ各般の合理化行つた結果今日この程度価格値上りで済んでいると御了承願わなければならぬと思うのでありまして、私どもが主張しておりまする九百四十円前後の値段というものが一二二・六ということを十分御承知願いたいと思うのであります。なお一般的な物価指数にいたしましても、経済審議庁調査課発表等を見ましても、当時を一〇〇といたしますと、大体一五〇ないし一六〇、生産財は一六〇、消費財は一三〇というような値上りを示しておるのでありまして、私どもは今日の硫安価格というものが他物価に比して高いと考えておりませんし、また硫安生産いたします生産資材値上りからいいまして、合理化の結果が今日の価格になつておる、こう思うのであります。ただ原料値上りよりも、いつでも製品の値上りの方がおそかつたのでありますが、一昨年の秋から昨年の春にかけまして、それがだんだん追いついて来たということになる。追いついて来たというのは、値上りは少いけれども、つまり会社経理面において、原料高合理化によつてカバーする程度に追いついて来たというのでありまして、昨年の二月に九百四十五円という値段が出たのであります。当時農林大臣は、硫安価格がかます当り千円以上になるのはけしからぬ、それ以上に上げてもらつては困る。のみならず、輸出をやることによつてさらに国内価格上つてはいけないから、輸出を当分許可しないということを言われたのであります。御承知のように、日本でも肥料は春が需要期であります。東南アジア方面も春が需要期でありまして、春は肥料高値輸出さされる時期でありますから、私どもといたしましては、その時期に輸出いたしたい。輸出いたしても、国内需要需給状態が一致しておりますから、決して上つて行かない。今日まで上つて来たのはまつたく今申し上げたような原材料の値上りから来ているということを説明したのでありますが、お聞き入れがなかつたのであります。当時まだ物価庁がありまして物価庁が昨年の二月御調査になりましたときに九百七十五円という数字を出しておられるのであります。私どもは九百七十五円ではできないのだ、もう少し高くなければと主張しておつたのであります。当時の物価庁の調べ九百七十五円が正当としますならば、後ほど申し上げます安定帯価格の九百三十円というのはそれよりもさらに四十円も下まわつた価格でありまして、その後の石炭の事情その他から見まして、何ら改善されておらないことを考えてみますと、この三年間に、一面では合理化しながら、一面でいかに安い硫安を売らざるを得ない状態にあつたかということが御想像いただけると思うのであります。先ほど申し上げましたように、農林省の発表しておられます国内需給の百五十万トンというものが確保されまして、二百万トンの生産があるのでありますから、なお五十万トンの輸出余力は当然持つておるのでありましてこれは適時に輸出しますことが必要でありますが、昨年そういうような状況からいたしまして、六月まで輸出が許されなかつたのであります。当時もし輸出をいたしておりますれば、七十ドル以上の値段輸出ができておつたことは明らかでありまして、その時期を逸してしまつたわけであります。右のような状況でありまして、われわれ輸出産業として要請されて、しかも輸出できる数量を持つて、それをかかえて参りますことは、硫安メーカーとして困難であり、いたずらにそれをかかえて参りますことは不得策でもあるから、何らかの方法輸出をしたいということで、通産農林経済審議庁方々とも御協議をしました結果、輸出によつて国内価格が乱されなければよいのだ、価格の安い高いは第二である。輸出をすることによつて国内価格が不当に上つたり、不当に暴落しないような状態に置いてくれれば、輸出を許してやるというお話であります。従いましてわれわれは、苦心研究の結果、今日問題になつております安定帯価格を考え出したのでありまして、この幅の中において国内で売つている限りにおいては、輸出は自由にできるのだという考え方を持つてつたのであります。当時は多少石炭の値下りの傾向もあるので、最高値を九百五十円、最低値八百七十円、中値九百十円、前後四十円開きということを主張して参つたのでありますが、どうしても農林大臣並びに政府方面より御了解を得られなかつたのであります。そのために実際の安定帯価格決定いたしたのは十月になつたのであります。十月になつてきまりましたのが、今日問題になつております八百七十円がら九百三十円という安定帯価格なのであります。これがきまるということになりまして、政府は初めて十五万トンの輸出許可をされたのでありまして、その輸出許可をされましたときには、すでに輸出の時期を逸しておつたのであります。これは先ほども申し上げましたように、春肥東南アジア方面でも需要が多い。やはり秋肥需要が少い。また昨年来の経済界の実情を御承知皆さん方は御存じのことと思うのでありますが、船舶界が非常な不況に陥りまして船運賃が非常に低下して参りました。一時から見ますると半分くらいに下つて参つて来ておるのであります。そういうことのために、ヨーロッパ方面から東南アジア方面に来ます硫安も、船運賃関係上安く出せる。しかも一面ではドイツの方から急速に進んで参りまして、多少の余力も出て来たというようなことからしまして、われわれが輸出のわくをいただきまして、これを輸出しなければならぬ時期になりましたときには、国際市場というものは硫安価格が低落をいたしておつた時期なのであります。国内安定帯価格が右のようにきまりまして、まず最初に台湾国際ビツドがあつたのでありますが、これはわれわれの入れました価格が高くてとれなかつたのであります。ドイツ硝安にとられてしまつたのでありまして、当時ドイツ硝安硫安に換算いたしまして五十一ドル幾らかの非常な安値でありました。その次に起りましたのがインドの二万トンばかりの国際ビツドでありまして、これはワシントンにおいて行われたのでありますが——われわれは目と鼻の台湾をとられますし、かつ輸出用の商品をたくさんに抱えているものでありますから、この際市場確保意味からいいましても、またわれわれの経理の上から考えましても、犠牲的にこれを輸出せざるを得ないことになつたのでありまして、一面から言えば多少意地が手伝つたということは申し上げられると思うのであります。それで何としても国際価格に勝つてつてしまうということで、これは非常な安値、FOS四十六ドルで落札をいたしたのであります。その後に続いて参りましたものが韓国の二十二万トンの国際入札でありまして、これはベルギーと競争をいたしたのでありますが、五十一万ドル六十センで全量落札いたしたわけであります。この二つの国際入札から世間に問題が起つたのでありまして、国内でわれわれが九百円以上のコストで持つておるものが、こういう安値で出したことでありますから、われわれとしては明らかに相当出血をしておるのであります。従つて農村方面におきましても、それは出血だろう。従つてその出血したものを国内価格に転嫁されては困るという御議論が出たのでありますが、われわれは安定帯価格があります以上、道義的にも価格を九百三十円以上に上げるわけに行かぬのでありますから、そのために国内に転嫁されることはない。こういうような損を続けて輸出するのであれば、輸出産業としてこれを盛り立てるのか盛り立てないのか、政府の決意も聞きたいものであります。われわれもその方針決定によつて減産をするなり増産をするなり方針をきめて行かなければならぬということに相なつたわけでありまして、農村方面の声をあわせまして肥料対策委員会ができたゆえんだと思うのであります。そうして根本的に硫安工業確立をいかにすべきかという問題が現われて来たと思うのであります。しかるに先般来これらの根本的対策を討議いたします過程において、春肥価格を下げろという問題が出て来たのでありまして、私ども肥料対策委員会にもわれわれのコストを出しておるのでありますが、それからしまして、また今まで申し上げましたような状況からしまして、この上安定帯価格を下げる余地はないと確信いたしておるのでありますが、しかし何としても農村のそういう声もあり、政治的な観点から大局を見て、お前下げろというのが私に対する各方面の御要望であるわけであります。そこで肥料対策委員会に対しましても、私どもは当面春肥価格を下げる対策について、電力を五%特配してもらいたい。開発銀行を通ずる国家資金の利率を一割から七分五厘に下げてもらいたい。この際そういうような処置をとつていただけるならば、われわれは二十円程度生産コストを下げることができるのだから、その程度のことは考慮してよろしいということでありまして、そういうようなことを含みながら全購連とお前の方と安定帯価格交渉をしろということが肥料対策委員会の御決定であつたのであります。そこで私どもは全購連田中会長以下と二回にわたりまして会合をいたしましたけれども、全購連側からは何らの事務的な歩み寄りもできないのでありまして、従つてそれがいわゆる四者会談という農林大臣通産大臣並びに一万田日銀総裁と私との会合なつたわけであります。その席におきまして、私どもは強く現状維持を主張いたしたのでありますが—もしそれらの対策ができるならば二十円だけ下げる。従つて安定帯の九百三十円というのを九百十円まで下げるということを申したのでありますが、どうしてもお聞入れがないのでありまして、最後安定帯価格最高八百九十五円にわれわれはやむを得ず承諾せざるを得ないはめに追い込まれたのであります。そういう状況で、八百六十円を中心として最高価格八百九十五円、最低八百二十五円という安定帯がきまつたのであります。この安定帯価格をきめますと同時に、全購連とその中の実際の取引価格をきめざるを得ないことになつたわけであります。私ども安定帯のできました経緯から見まして、春肥最盛期においては、当然安定帯価格上値をとつてよろしい。春肥秋肥の間、もしくは秋肥春肥の間というような不需要期では、中間帯なりあるいはその下の値段であるべきである、あつてしかるべきとも思いますが、最需要期においては、安定帯価格の一番上値をとつてさしつかえないものと思つておりますので、そういう意味で私ども話合いをいたしたのでありますが、全購連にはその点についてとうてい御了承を得られないと思いますのみならず、私ども協会で今日まで全購連と折衝して参つておりますことが、独禁法違反の疑いありということでありますので、私どもは今日では協会と全購連との交渉をいたすことをとりやめにいたしまして、各社それぞれ全購連と折衝をすることにいたすことにいたしたのであります。  以上が今日までの現況でありまして、御質問等がありますれば詳しいことを申し上げようと思います。御指定う二十分を過ぎておりますのでこの辺で一応終ります。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 次に水上達三君。
  5. 水上達三

    水上参考人 私は第一物産株式会社常務取締役水上達三であります。ただいま委員長お話によりまして、化学肥料に対する私の意見を申し上げてみたいと思います。  私は昭和の初年から三井物産におきまして肥料の自由の時代、それからその後統制時代、それからさらに最近第一物産におきまして統制解除後の化学肥料、大別しましてその三期間にわたりまして化学肥料仕事に比較的多く従事しておつたものでありまして、それで私の申し上げることは、比較的長い間の経験と、それから日本の現在置かれておりまする立場から、最もいいという方法をいろいろ考えおりますので、そういうことに関しまして申し上げてみたいと思います。大体私ども化学肥料を扱つておるものの常識といたしまして、いわゆる三要素の肥料があるわけでありますが、現在日本で特に問題になつておるものは、窒素肥料、特に硫安というふうに承知しておりますので、自然硫安問題が中心になるわけであります。大体世界におきまする窒素肥料系統の総生産高というものがどのくらいあるかと申しますと、大ざつぱに申し上げまして、硫安に換算いたしまして約二千三百万トンぐらいあります。そのうちヨーロッパ—アフリカとかあの付近を全部含めたヨーロッパ区域が五割近く生産しております。それからチリーを含めた北南米区域これが三割強、四割近くあります。その残りが一割あまりになりますが、これが大体アジアの生産高、こういうふうな概念になつておるわけであります。北南米の多いのはチリー硝石があるからでありまして、いわゆる硫安のような化学肥料は非常に少いわけであります。時間がありますれば詳細に申し上げてもよろしうございますが、大体概念といたしましてそういうことになつております。  そこでしからば日本のあります東南アジア状況はどうであるかということになりますと、大体東南アジア日本を除きました需要というものは百二十万トン見当でございます。日本はそのほかにあるわけであります。従つて日本から見ますと、この百二十万トン余り需要するところの市場日本の近くにある、こういうことになるわけでございます。その最も大きいのは朝鮮台湾であります。それから日本以外にそれではどういう生産地があるかといいますと、台湾に最近多少ございます。石灰窒素が主でありますが、台湾に少しあります。それからインドに年間三十五万トンほどつくる工場が最近できております。これと台湾と合せまして、約四十万トンちよつとくらいが、朝鮮と、それから満州中共地区を別にいたしますと、そういうものが日本以外の生産国ということになります。従つて日本東南アジアにおける立場というものは非常に重要な大きい立場になつておる、こういうことになるわけであります。そこで従つて今のことをもつと簡単に要約いたしますと、大体ヨーロッパで九十万トン見当余るのであります。それから北南米区域で約五十万トン見当余るのであります。その余つたものがちようど東南アジア区域を満たしておる、こういうわけであります。従つてそういうふうな点から見ましても、日本立場というものは、東南アジアというところに近く接しておるだけに、非常に有利な立場に置かれてあるということが言えるわけであります。そういうわけで、先般来硫安工業をどうするか、輸出産業にするかしないかというふうな問題が起つておりますけれども、これは私は全然問題にするまでもない問題であつて、当然そういう日本の置かれておる立場から行きましても、また日本食糧政策並びに貿易一般政策から行きましても、当然輸出産業として育成して、できるだけ多くの数量生産し、それを国内には安く豊富に供給して、なおその余り輸出に振り向けるということが当然の道だと思いまして、これには私どもの考えから行きますと、何ら議論をさしはさまないところだと考えておる次第であります。しかしながら実際に日本の最近とられている政策は、ややもしますとこれに反するような場合もあるように感じておるわけでありまして、たとえば昨年の出血輸出といわれている問題などにつきましても、先ほども藤山さんからお話があつたように、東南アジア区域は、特にこの春夏にかけての時期が最需要期でありまして、秋から冬にかけては不需要期で、その不需要期にまとめて大きい数量を一ぺんに出したわけでありますから、ヨーロッパもそのときにやはり売つて来るわけであります。従つて非常に大きな数量が一ぺんに固まつたというわけで、安くなければ売れなかつた。一方日本における製造会社は、金融は詰まり、倉庫の方も詰まつて来るというわけで、とうていこれを春まで持ちこたえるわけにはいかないという事情に追い込まれたものですから、やむを得ずああいう安値で売らざるを得なかつたということでありまして、これは私ども商売の方から見ますと、まことに拙劣なやり方であるといわざるを得ないのであります。これはもう少しつつ込んで行きますと、この肥料の行政が農林省と通産省との両方にありまして、その間の事務処理が非常におそい。従つてそういう結果が日本の損害、硫安会社の損害、ひいては日本の農民が幾らかその負担をしたであろうかもしれないという結果になつたわけであります。非常に遺憾なことだと思います。  それからそういうふうな問題に関連しまして、よく統制の問題が出るわけでありますが、これに関しましては、先ほど私の申し上げました通り、百二、三十万トンの市場台湾朝鮮を初め、すぐ庭先に日本は持つておるのでありますから、しかもヨーロッパもアメリカも、この付近に持つて来るには、日本よりも少くとも五、六ドルのよけいの運賃を払わなければならないわけであります。これは現在船運賃が非常に下つておる際におきましても、なおかつ五、六ドルの高い運賃を払わなければならぬ。そういう立場にあるものですから、非常に日本としては有利な立場にある。そこでそういう方面に対して輸出をして行く、かりにその半分の五、六十万トンを輸出するといたしましても、現在の日本生産力では足らないわけであります。従つてあらゆる方途を講じまして、もつともつと生産をふやし、コストを下げるように、もちろん製造家にも大いに努力していただきまして、コストを安くして、日本国内に安く供給すると同時に、輸出もきでるだけ安値で応じられるようにしていただきたいというのが私どもの考えであります。よく外国から安い値段が出て来て、ダンピングだとかいろいろな問題が起るのでありますが、外国では、先ほども申し上げましたヨーロッパ、特にヨーロッパのうち一番輸出余力の多いのは西独であります。それに次いではイギリスとかオランダとかべルギーとか、そういうふうなところなんですが、そういうふうな各国とも、輸出には非常に力を入れておりまして、これはひとり硫安だけではないのですが、あらゆる貿易政策に非常な力を入れておりまして、ことに税金の面とか、為替の関係とか、価格の面では、ときに二重価格あるいは三重価格をもちまして輸出を奨励しておるわけであります。日本現状を見ますと、わずかに振興外貨制度ということが一般にございますが、硫安に関しましてもその制度は適用されておるのでございまして、特別に何らの措置も講ぜられてないわけであります。しかし私どもの考えから申しますと、硫安のような外国の原材料をほとんど使わないで、日本のものだけでできるものは、やはり輸出にいろいろな方便を講じまして、輸出振興をはかるべき商品の代表的なものではないかと考えております。そういうためには、さしあたり一番簡単にできる問題は、振興外貨の率を上げるというようなことだと思います。これは生糸などについてもやはり一割五分でありますが、こういうものも現状における限りはやり上げて輸出を奨励すべきではないかと思います。  それから最近、今申し上げましたインド台湾におきましては、やはり化学肥料の工場の建設が計画されておるのであります。これは日本には大いにその責任があるわけでありまして、インドのシンドリというところに工場が戦争中から計画されて来たのであります。かつて支那事変の始まる前後だと記憶いたしますが、日本に対して工場建設について引合いがあつたわけであります。これは日本は当時ちよつと小さい考えで、ああいうところに工場ができたら、日本の製品が影響を受けるだろうというような考えも相当ありまして、むしろそういうような理由で見送つたわけでありますが、その後英国の力によつてだんだんと進みまして、最近は年間三十万トン余り出るような状態になつております。台湾におきましては、最近尿素の工場の建設計画があります。こういうようなものも、日本が引続き製品を供給してやるという態度をはつきり示すならば、台湾のようなところでは非常にコストも高くつくのでありますから、あそこで生産する砂糖とか米とかいうものを日本に売ることによつて、そういう工場の建設をある程度阻止することができるわけでありまして、日本の将来の考え方から行きますと、そういう配慮もあわせて持つて肥料政策を遂行して行くべきではないかと考える次第であります。  なお目先の問題につきましては、私はあまり触れませんでしたが、最近安定帯価格というのがきまつたわけであります。私どもはこの安定帯価格というものは、生産者にとつてもまた消費者にとつても一寒われわれこれを取扱う業者にとつても、すべてがいろいろその立場々々によつて希望等はございましようが、大体これが安定しておる価格という意味で、この価格が円滑に行われて行くことを希望しますし、またそういうふうにすでに行われているものと了解して仕事をしておるわけであります。目先の問題につきましては、安定帯価格もきまりまして、あまり問題はないと思いますが、この化学肥料全体の政策について、将来今申し上げたような方向に持つて行くのが当然であるし、またそうすべきであるという考え方から申し上げたわけであります。なおまたこまかい点につきましては、資料も持参しておりますから、御質問がありますれば後刻御返事いたします。  簡単でありますが、以上で終りたいと思います。
  6. 坪川信三

    坪川委員長 次に野口富好君。
  7. 野口富好

    野口参考人 ただいま御紹介にあずかりました東洋高圧労働組合の中央書記長をしております野口富好であります。今回通産委員会委員長の指名によりまして、ただいまから硫安価格の問題につきまして、硫安企業に働く労働組合の立場から意見を申し述べるわけでありますが、まずわれわれといたしまして、第一にこの問題に対して指摘したいことは、硫安価格問題に対して政府及び国会の方で取上げられておることが、非常に単純に現象的に取上げられておる、このように強く印象を受けるわけであります。この硫安価格の問題は、やはり現在行われておるような低米価政策というものを前提としたような、結局米価問題に対して全然触れずして、単に、硫安価格の問題のみを取上げる、このようなやり方は、根本的に日本経済という大きな視野に立つた場合には、この解決策ではないというふうにわれわれは考えております。もつとこのことについてつつ込んで申し上げますならば、まず先ほど申し上げましたように、米価問題にも触れないで、この問題を簡単に解決するというようなやり方は、結果的には農民に対して低米価政策を押しつけ、労働者に対しては低賃金をもつてくぎづけにするような結果となつて、結局は金融資本だとか基幹産業の利潤をふやすだけのものであつて、これはわれわれ労働者や農民を欺瞞する結果を招来する、このように考えております。だからこの問題に対して考えられるときには、むしろまずこの低米価政策の問題に触れまして、これらの諸問題の解決をやるとうことをあわせて考えられるべきである、このように考えております。  それから第二には、このように硫安価格の問題が非常に大きく取上げられておるというような現状は、要するに自由主義経済に基くところの日本の経済が大きな壁にぶつつかつておる証拠である。自由経済の立場をとつておる関係からして、一応硫安自由販売というものを認めておきながら、現実にはこのように大きく政府及び国会で取上げられておる。それが硫安価格を押えるというような立場において単に取上げられておる、このような印象を受けるわけであります。このことはわれわれの側から考えますと、一方において自由経済を標榜し、そういつた立場において経済の発展を考えるという形をとつておりながら、逆に今度は押えるというような立場をまたここでとつておる。このようなやり方というものは、結局きめたことを結果的にはやらないで、押えるというような形をとつておる。これは立法と行政との関係の混同にほかならない。こういうものが現実に露呈されておる。こういうふうに考えております。このようなことから考えましても、安定帯価格というものは単に勧告の形でなされておりまするけれども、これはやはり間接的に統制を裏書きするものであるというような感じをわれわれは受けておるわけであります。一方において米は統制をし、片一方においては基礎産業物価を自由に販売さしておくことによつて日本における自由と統制の矛盾というものがはつきり今ここに硫安価格の問題として現われておる。このようなことを十分考えなければならないというふうに思つております。ゆえにこういう事態が起つたということは、政府が経済政策としての一貫性を欠いており、日本経済に対するところの総合的な施策が樹立されていない結果の現われであつて政策の貧困に由来するものである、このように考えております。  第三点は、この価格の問題の論議にあたりまして、われわれが硫安工業というものをどのように見ておるか、この点について御説明申し上げます。まず硫安工業としての特質でありますが、この特質というものも価格問題とあわせて十分考えなければならない、このようにわれわれは思つております。硫安工業は、皆さんも御承知であると思いますが、化学工業の中でも最も大装置を有する装置産業である。たとえば単に装置の一部分を停止するというような形では生産量を減らすことのできない産業である。どの装置も動かなければ硫安としての最終的な製品が出て来ない。このような工業工程を持つているものである。このことからして、操短ということで生産費を減らしましても、固定費がかわらない。このような点から、操短するということは、結果的にはコスト高を招来する、こういうことが言えるのであります。労働組合としてはこのように考えております。  それからもう一つは、日本の大部分の産業が、諸外国から原料を輸入し、その原料を加工してまた海外と貿易する、このような形をとつた加工産業でありますけれども硫安工業というものは日本における平和産業の大きな役割を果しておると同時に、国内における資源のみをもつて最終的な製品をつくる、そういうふうな条件を持つた工業として数少い産業の一つである、このように考えるのであります。以上二点が特に硫安工業の特質として考えられる。このこともこの問題の討議にあたりまして十分考えなければならない。  次には、このことと関連いたしますけれども、先ほどから硫安市場の問題がいろいろ説明されておりますが、労働組合としましては、海外の市場の問題だけではなくして、先ほど申し上げましたように、低米価の問題を解決することによつてもつと農村の購買力を増しまして、それによる肥料需要量の増大、食糧増産のための耕地の開拓——日本における耕地の開拓の余地はまだまだあるというふうに考えております。この面から行きましても、国内における需要も増大される余地は残されておる。このことも十分考えなければならないと思つております。それから国外の市場の問題につきましては、先ほど東南アジアについて説明がありましたけれども、まだまだ中国その他の広大な土地も有しておる、こういうことも十分考えなければならないし、中国との貿易が推進されれば、もつともつと需要はあるというふうに考えております。このような意味におきまして、まず国内的には平和産業として、特に日本の食糧事情を解決する食糧増産のための大きな役割を果しておるとともに、日本原料をもつて最終的な製品を出す硫安ということを考えた場合に、外貨の獲得に対しても最も好条件を有しており、一つの輸出産業として重要な地位を占めておる。このことも皆さん十分考えていただかなければならないものだと考えております。  以上の点からいたしまして、硫安工業の特質を十分に生かすことはもちろんのことでありますが、平和産業としての日本の経済建設に対する重要な役割も十分考えられるものでありまして、この両面を十分考えられて価格問題の決定に当つていただきたい、このように考える次第であります。  私は今まで、第一点として、硫安価格の問題の取上げ方はもつと根本的な取上げ方をやるべきである。日本経済全体の視野に立つて取上げるべきであるということと、日本経済の中における自由と統制の矛盾ということと、それにあわせて硫安工業の特質、それから日本経済におきる硫安工業の重要性、こういうものについて述べましたけれども、要するにこの硫安価格決定にあたりまして、われわれ硫安企業に働く労働組合の立場から、また労働者の立場から、特に国会及び政府に強く要望したいことは、ただいままで申し上げましたように、日本の経済というものが、自由主義経済政策によつては発展し得ないものを持つておる。このことは、今硫安価格の問題をここで取上げており、そしてこのような事態が起きておるという現実から考えましても、率直に認めなければならない事実である、このようにわれわれは考えております。この問題と関連しまして、経済の計画化をまず早急に確立すべきである。そうして日本全体の経済建設に乗り出すべきである、このように判断いたしております。そのためには、この際われわれが特に要望したいことは、先ほどから申しましたように、労働者や農民の生活を犠牲にするというようなことではなくして、むしろこれらの生活の向上及び国民生活の向上を十分考えられまして、これを前提にしまして、米価の問題や高炭価の問題、あるいは電力の問題、金利の問題、利潤の片寄りを均等化する問題、このような問題に対して総合的な再検討をしまして、日本における経済の総合施策を樹立されたいと要望する次第であります。  硫安価格問題の根本的に解決されなければならない点は、ただいま申し上げた通りでありますけれども、われわれはこの問題に対して、具体的にこのように考えております。まず金融資本や基礎産業中心とする大産業資本の利潤、これは先ほども申し上げましたが、常識的に判断しても、片寄つていることは、はつきり言えると思います。それから諸外国と比べまして金利の水準が高いということもはつきりしております。このようなものの合理化をはかり、金利水準の引下げをはかる。そして炭価の引下げを具体化する。その上に立ちまして、基礎産業物価統制をはかつて行く。そうして米価の適切な決定をなす。このようなものと相まつて硫安価格の問題についても考えてもらいたい。そして硫安の場合は、特に企業の内容、製造の方法、いろいろな面から違つておりますので、こういう点に対しても、たとえば単にガス法や電解法というふうなものではなくして、もつと深く具体的につつ込んだ、できれば個別的な原価計算を基礎にしまして、この価格の問題を、政府の助成金というようなものも含めて考えられ、価格統制や配給販売の統制合理化をはかつていただきたい。それとともに、競争上問題になるところのいろいろな問題、それは具体的に生産設備の合理化、こういうものについても、政府の施策として、政府の援助によつてなすということについて、積極的に考えられてしかるべきである、このように思つておるのであります。そのようにしてこそ初めてわれわれ労働者や農民、国民全体の生活を犠牲にすることなくして、日本の経済がほんとうにわれわれの望むところに発展して行くと確信しております。  以上長々しく申し上げましたけれども、これらの私が労働者の立場から意見を申し上げました諸点につきまして、国会及び政府方々は、十分真剣にまじめに取上げていただきまして、そして硫安価格決定に対処していただきたい。そして根本的にこの問題を、日本の経済的な大きな視野に立ちまして、早急に解決されんごとを切にお願いいたしまして、私の意見にかえさせていただきます。
  8. 坪川信三

    坪川委員長 これより質疑を許します。質疑の通告はただいま六名ございますので、その点お含みの上、質疑の簡潔に、重複なさらないようにお願いいたします。それではこれより通産委員農林委員交互に質疑を許します。今澄勇君。
  9. 今澄勇

    今澄委員 私は藤山参考人に質問申し上げたいと思います。その第一点は、ただいまいろいろ陳述がございましたが、三人の方々の御意見を聞いてこの硫安価格の問題について一番ポイントとなるのは、私は通産委員立場から、少くとも日本の米の値段が、諸外国からは一万一千円見当で買つておるのに、国内の米の値段を七千五百円にきめておいて、その米の値段が絶対妥当であるとして、これらの米価問題のしわ寄せが肥料値段に集中して、肥料の原価計算、肥料工業基礎その他の問題に対する抜本的な対策なくして、肥料値段を急激に問題にしたところに、たいだいま東圧労組の御意見にあつたように、大きな矛盾がありはしないかということを今承つて、なるほどと思います。そこで私は現在の肥料工業が、米価の問題を解決するために、炭価においてどれだけ引下げ、電力においてどのような措置をとる。金利において幾ら下り、総生産高が、二百五十万トンなら二百五十万ト、ンあれば、概略の肥料値段はこうなるというような、具体的な御見解がもしあれば、この機会に承りたい。  第二点は、第一物産の方に伺いますが、今の日本の貿易の中で、ナイロン、ビニロンによつて、絹がだめ、綿製品の海外輸出がだめ、こういうことになつて参りますならば、私は日本輸出工業の大宗としては、もし朝鮮事変が解決して特需関係のものもなくなる時代を予想しますと、将来の日本輸出産業というものは、根本的な考え方をしないと、国民生活が危殆に瀕しはしないか。その意味において輸出関係に当つておられるあなたとしては、将来世界の輸出市場に対して日本硫安が一体どの程度出て行く可能性があるか。しかも輸出工業として、他産業に比べて諸外国に伸び行くいろいろな基礎の中で、硫安というものが特にどのような特徴を持ち、将来の見込みがあるかという点についてひとつお伺いをいたしたいと思います。さらに私は東圧労組の組合長さんに一つお聞きしますが、今あなたの御意見の中で、行政と立法との混同がありはしないかというお言葉がございましたが、このことは今のあなたのお考えからいうと、一体どういう点を指しておるのか、その点が不明確でございましたので、明らかにされたいという意味において御質問を申し上げます。  以上三点を順次お答え願いたいと思います。
  10. 藤山愛一郎

    藤山参考人 硫安コストを抜本的に下げます方策につきましては、ただいま肥料対策委員会ができておりますので、その方面に正確なものを出して参りたいと思つて鋭意準備をいたしております。と申しますのは、硫安工業と一口に申し上げましても、その製造法は非常に多種多様でありまして、一応電解法とガス法とにわけておりますが、ガス法の中にも、直接石炭を使いますウインクラ法と、コークスによります方法とがあるわけであります。また現在の日本の情勢では、電解並びにガス法を併用しておるところもあるわけでありまして総体の平均価格を下げます点について、どういう方策をとることが一番下げ得るかということを総合的にただいま研究いたしております。ただ簡単に申し上げられる点だけ申し上げますと、現状の設備におきましても、ガス法の方は八九%の操業をいたしておりますが、電解法の方は六二%にしか行つておりません。従いまして電解法の操業率を上げますことによつて、電解工場の生産費というものは、相当に下げることができると思うのでありますが、現在のような電気事情ではなかなか困難ではないかと思うのであります。また石炭、コークスの価格が、ガス法におきましては非常に大きなファクターを占めております。硫安コスト一〇〇に対しまして大体原料費が五九%あります。その原料費のおもなものは、石炭電力とそれから硫化鉱なのであります。これらが引下がることによりまして、コストの低下というものが相当に考えられると思います。なお硫安工業は御承知の通り、泰西の新しい進歩した設備等に更新して参りますことによつて製造方式の面においてコストの低下を見ることができるのでありまして、たとえば現在合理化のために各社が使つて行きたいと考えておりますようなコッパースの炉を使つてガス法をやりますれば下ると思うのでありますが、これを装置いたしますためには相当大きな金額がいるのでありまして、これらのものを考えて参りますると、少くとも重要産業として国家資金による金利の引下げということが必要になつて来ると思うのであります。なお硫安工業は、御承知のように春肥秋肥秋肥春肥の間に不需要期があるのでありましてことに安定帯価格ができました以上、その期間におきまする滞貨というものは相当でありまして、流動資金面におけるこの金利というものは相当コストの上に響いております。そういう面から、単に設備資金に対する国家資金の金利の低減ばかりでなく、もし何らかの形におきまして流動資金面のコストの低下ができることになりますれば、これまた相当の引下げができるかと思うのであります。それらのものを総合いたしまして、私どもとしてはただいま案をつくりつつあるのでありまして、できましたらそれぞれ提出して参りたいと思つておるのであります。なおこういうような産業仕事におきましては、生産量の増大ということが非常に大きな引下げになるのでありまして、東南アジア輸出を考えましても、将来の国内需要の増大を考えましても、少くとも現在のア系肥料二百四万トンの生産を二百五十万トンないし三百万トン程度まで上げますれば、それによりましてこれまた相当コストの低下を見ると思うのであります。そういうことによりまして種々の措置を総合いたしまして、私ども実はコストの低下を考えて参りたいと考えておるのでありまして、それらのものはことごとく政府の強力な施策がなければ推進して参らない問題だと考えておるのであります。
  11. 水上達三

    水上参考人 日本硫安輸出が一体幾らくらいまで行けるだろうかという御質問のように承知しておるのでありますが、大体日本の最近の貿易関係から考えますと、一口に言いまして非常に憂慮すべき状態にある。それは日本輸出の大宗といたしておりますところの繊維関係、なかんずく綿製品関係輸出貿易が非常に減少の一路をたどつておるということに基因するのでありますが、これはとりもなおさず日本の進むべき道が繊維工業のようなもの、なかんずく紡績業のようなものだけに依存しないで、その他のもの、いわゆる重化学工業ということが指向されておるわけでありますが、こういう方向に行くべきであるということを示唆しておるものと考えざるを得ないのでありまして、たとえば昨年の十月ころでしたか、アメリカのストライキその他の関係もあつたのでありますが、繊維関係輸出が金属製品よりも落ちたことがあります。そういうことはそういう仕事関係のない方にはあまりぴんと来ないと思いますけれども、いやしくも日本の貿易を考えておる者から見るとたいへんなことであります。常に日本輸出貿易の五割見当のものが繊維産業に占められておるというのが今までの実績であります。そこでしからばその重化学工業の中で何が一番いいということになりますと、高い強粘結炭をアメリカその他から買い、また鉄鉱石の相当な部分を輸入に仰ぐという日本の鉄鉱石の状態におきましては、そういう面では太刀打ちができるという自信はおそらくだれもないだろうと思います。従つてこの硫安工業のようなものは、化学工業の中で最も代表的な、日本が将来力を入れてやつて行くべきものになつて来るのであります。しからばその市場はどうか。つくつても売れなければしようがない。そこで先ほど申しましたように、朝鮮台湾を含めた東南アジア市場というのが約百二十万トンくらいすぐ庭先にある、こういうわけであります。ところがあつてヨーロッパも多少余り、アメリカも余り、アメリカとヨーロッパのものでそれを埋めているのじやないか。日本がそこへ割込めるかどうか、こういうことが問題であります。そこで私は結論としましては、割り込めるという結論を出しておるのでありますが、その理由としましては、大体私がかつてから硫安工業に対して非常な積極政策を主張するゆえんは、普通の状態におきましては、食糧の増加は人口の増加に追いつかないということが一つあるわけであります。そこで東南アジア現状を見ますと、インドとかそのほか、いわゆる民度の低い、未開発のところが最近非常に肥料を使い出したという状態になつております。そこで肥料需要がますますふえて行くという前提に立つておるのであります。そこで今申し上げました百二十万トンは、すぐ日本でとろうというわけではありません。またすぐは日本も出せないのでありますから、それは少し先の話でありますが、それでは今すぐはどうかということになりますと、まず朝鮮で四十万トン、台湾で四十二万五千トンくらいが必要になつております。これは現実に現在向うが切望しておる数字であります。そのうち台湾では七万五千トンほど自分のところで石灰肥料その他を生産しておりますので、輸入数量は三十五万トン、朝鮮台湾と合せただけで七十五万トンある。今日本で問題になつているのは、四十万トンか五十万トンの硫安輸出するかしないかというふうな問題であります。従つて現状におきましてはそういう問題は全然心配しなくてよろしいというふうに考えております。  それからついでに申し上げますと、これは私の方の担当の課長が、つい一箇月ばかり前に帰つて来たのでありますが、パキスタンあたりまでずつと出張をした結果、私はきわめて最近の実情を基礎にして申し上げておるのでありますから、どうかその辺をお含みいただきたいと思います。
  12. 野口富好

    野口参考人 ただいまの行政と立法の問題に関しまして、私の私見は、われわれは過去におきまして統制の撤廃、自由販売というものを賛成したものではありませんが、現実には昭和二十五年八月、立法的な措置に基きまして、自由販売という統制の撤廃がなされたわけであります。それに基きまして行政がなされて来たというふうに考えておりますが、最近に至りまして、この問題だけを現象的に取上げますと、政府の方から硫安価格安定帯価格を設定してほしいという強い勧告があつた。それによつて安定帯価格というものが設定されたということ。これはわれわれの側から感じますところは、結局先ほどから説明もあります通り、間接的にはつきり統制を裏書きするものである、このように強く印象を持つわけであります。そういう意味から行きまして、むしろこのような措置は行政上の措置よりも立法上の措置になるのではないか、このような疑点を持つたので、現在のような民主主義に基くところの三権分立の形態をとつているわが国において、こういうことがやはりわれわれとして一つの矛盾として感じられましたので、その点からこのように考えたわけです。
  13. 高瀬傳

    ○高瀬委員 本日は非常にお忙しいところをおいでいただきまして、非常に有益なる意見を拝聴いたしました。ただ御意見を拝聴して、私はむしろ政府の方に伺いたい点が多々あるのであります。たとえば先ほど水上さんが言われた肥料行政の一元化というような問題について、農林省と通産省と行政の面で非常にかち合つている点がある。こういうような点はわれわれ国会としては非常に重要視し、看過できない問題でありますが、これらの点について有益な意見を拝聴したことを私は非常に喜ぶものであります。なお輸出の問題について約百二十万トンから百三十万トンの輸出余力がある、こういうようなこと。この輸出の問題についても、むしろ私は参考人各位よりも政府にその所見をただしたい。なお価格の問題につきまして、国会としてもこれは非常に重大な問題でありますので、むしろ価格決定の問題について私はいささか参考人各位の所見を伺いたい。先ほど労働組合代表の野口君から御意見がありましたが、この価格決定については、われわれ農林委員としては確かに野口君の言われたように、米価というものを基本にして、この問題を慎重に考えて今日まで参りました。しかるにこの輸出の問題と関連いたしまして、農林委員会では肥料輸出したのは、会社の非常な出血輸出によつてつたという一つの理由のもとに、農民の方には非常に高くなつている。要するに国際価格国内価格のアンバランスが問題になつていると私は考えるのであります。従つてわれわれ農林委員といたしましては、政府方針として原料を外国に仰がない硫安工業に対して、徹底的に輸出を奨励するという、はつきりした方針を立て、しかもその方針のもとに国際価格国内価格とがあまりアンバランスにならないような建値を国内に立てるべきだというのが私の主張であります。従つて今回決定されました安定帯価格高値八百九十五円と低値バ百二十五円の価格がはたして国際市場価格とバランスがとれているかどうか、私はもし生産コストその他が非常に高いために国際価格国内価格の開きがあるというならば、政府電力の配給なり、あるいは金利の引下げなり、あるいは安い石炭の外国から輸入なりを積極的に助長して、結局国際価格国内価格のバランスをとるべきだという考えなのであります。従つて最近のニュースによりますと、硫安国際入札価格が六十一ドルだという話であります。従つてこの六十一ドルという価格を、たとえば十貫目に換算いたしますならば、硫安安定帯価格の八百二十五円から三十円に相なろうと思うのであります。従つて硫安協会の藤山会長に伺いたいのでありますが、これらの国際価格というものを考えまして、国内価格決定する。それをもつて間接的に日本の米価を規制するというところまで硫安協会が行く意思があるかどうか、しかもそれによつてもし生産コストその他が割れるならば、政府に極力外炭の輸入なり、あるいは電力の配給なり、あるいは金利の引下げなり、種々の要求をされる。これについては国会としては何ら協力することを惜しまないわけであります。従つてただ国内価格だけを八百九十五円に高値をきめ、特にわれわれの重大なる関心を持つておりますことは、硫安協会におかれまして建値を一方的にきめた。この点は非常に重大な関心を持つているわけであります。たとえばこの新聞報道が確かであるとすれば、関東と、東北と、東海に対しまして二月に八百九十円、三月、四月、五月には八百九十五円、関西は二月八百八十五円、三月は八百九十円、四月、五月は八百九十五円、九州方面に対しては二月八百八十円、三月八百九十円、四月、五月は八百九十五円、大体アヴェレージ高値に寄つている。最も需要の頻繁なときですから、高値に寄るということは、硫安協会としては当然でありましようが、おそらく全購連その他のお立場からいいますれば、かような一方的な高値に近いところの建値をきめたということは、非常に農民を刺戟し、あるいは国会としてもこれを消費者の立場から重大視するわけであります。なお特に遺憾に思うのは、先ほど藤山会長のお言葉の中に、これは独禁法に触れるかもわからないから、われわれ硫安協会としては、全購連に対してこれらの交渉を打切つたという一点であります。そうなりますと一体結果がどういうふうになるか。私はこの点全購連会長肥糧部長の森さんにもむしろ伺いたい点でありますが、個々の会社、あるいはメーカーと全購連の折衝になつてその結果が肥料値段にどう響き、また肥料の配給にどう響くかという点であります。私はむしろそれも政府当局に、許すのかどうか、こういう点も聞きたいのでありますが、本日は公聴会の性格上、私は政府の方にその所信をただすことはやめます。一体そういうような状態で今度の春の肥料の配給なりあるいは価格が合理的に、消費者に有利な状態において決定することができるかどうか、この点を私は非常に疑問に思いますので、政府に所信をただすことは多多ございますが、この際特に硫安協会会長である藤山氏にその点の所見を伺つておきたいと思います。
  14. 藤山愛一郎

    藤山参考人 わが国の硫安価格を国際水準まで下げて、国内価格国際価格とを同じにするということにつきましては、われわれも努力をいたさなければならぬ。またそれらに対して必要な諸般の方策につきましては、私ども先ほど申し上げましたように、ただいま鋭意努力をして、その案をつくりつつあります。従いまして不日対策委員会の方に提出いたしましてこの程度まで下げるためには、これこれの処置をとつてもらいたいということを申し入れ、また国会等の方面にもそれらのことを陳情して参りたい、こう思つております。大体私どもの目標としておりますところは、現在の状態から参りますれば、大体六十ドルを中心にして生産コストを考えれば適当なんじやないか。それ以上下げることができますればなお仕合せでありますけれども、先ほど申し上げましたように、船運賃がアブノーマルな時代もあつたのでありまして、これがノーマルな時代でありますれば、大体東南アジア方面に対して、生産費が六十ドル程度まで低下して参ればよいのではないかと思います。そうしますと、今から見まして、少くとも百五十円くらい生産費を下げなければならぬと思つております。それらの諸般の方策につきましては、私どもも十分審議をいたしました上、それぞれの方策をとつていただきたいということを対策委員会並びに議会方面に陳情をいたしたい、こう思つております。  それから今回の春肥価格の問題でありますけれども安定帯価格がきめられましたが、これはわれわれのりくつから申し上げますれば、無理やりに政治的圧力でもつてこれが引下げられたといわざるを得ないのです。私どもは現在肥料対策委員会に対して出しておりますコストから、これこれの方策を講じていただければ、これだけの価格が下るんだ、その限度内においてはわれわれは安定帯価格を下げてよろしいということを申し上げたのでありますが、何にしてもとにかくこれこれまで下げなければいかぬということであります。私ども農村方々のお声もわかるのでありまして、内地の自分たちのつくる米は七千五百円で買つて、外国から買う米は一万一千円で買うのだ。肥料は外国には安く売つて、内地には高く売るのだ。その気持はよくわかります。気持はわかりますが、私ども硫安工業の責任を持つております者からしますれば、出血するような値段国内に売りますこと自体がこれまた非常に困難なんでありまして、従つてその意見においてわれわれは、現在とつております、この間きめました安定帯価格は、ある政治的なものによつて下げられたということを言わざるを得ない。それじや春肥は、安定帯価格ができたならば、その中で自由に商売をしろと申されるのでありますけれども、全購連が製品の半分、商人系が半分なんであります。全購連とも価格の御相談を申し上げるのであります。われわれの気持からいえば、政治的圧力によつて下げられたものであるから、その下げたもの一ぱいをとるのはあたりまえであるし、ことに時期として春肥需要期であります。従つて安定帯がきまつて、その上値がとれないということが私どもにはわからない。安定帯がきまつて、それより二十円か三十円下に価格をきめるというのならば、安定帯価格をそこまでお下げになつたらいい。しかし下げたらそれより二十円、三十円下でなければ全購連と話し合つてはいけないという理由がどうしてもわからないのであります。従つてども安定帯がきまつた以上は、その中で自由な取引をするならば、私どもの現在の立場から言えば、これこれの値段で買つていただかなければならぬということをきめますのも当然だと思うのでありまして、それすらいけないということであれば、もう政治的な、あるいは問題によつて官庁のさしずによつて値段をきめて行く以外に方法はないのでありまして、自由取引の立場ではないのであります。しかもそれがそういうことで進行して行きます過程において、硫安メーカーが相談して、どのくらいの値段にしようかということをきめることは独禁法違反であるという、一方では大だんびらをつきつけられて威嚇されておるのであります。私はそういう状態のもとにおいては、ほんとうの商売は立ち得ないと思うのでありましてその点を十分おくみとりいただかなければ今日の事情をおのみ込めになれない、こう思うのであります。
  15. 坪川信三

    坪川委員長 永井君。
  16. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は藤山さんにお尋ねをいたしたいと思います。  肥料産業は単に一私企業としての運営ではいけない。国内産業の面においては、これは農業生産の一環としての性格において見なければならないし、輸出の面においては東南アジアという地区を含めた、日本市場獲得のために重要な貿易産業としてこれをもり立てて行かなければならない。この輸出産業としての面と国内産業としての面の二つを調整して、健全に発達させなければいけないという考え方に立つて肥料産業をわれわれは見ておるのでありますが、これに対する藤山さんの御見解を承りたい。従つてわれわれの考え方から言えば、単に肥料生産すれば足りるのだというのではなくて国内産業としては農業生産の一環としての肥料産業である、こういう立場からいたしますれば、農林省あるいは通産省が、価格の問題についても相当に業者の方々に話合いをつけて行くということは当然の姿ではないか、こういうふうにわれわれは考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。  その次にお尋ねをいたしますのは、安定帯価格の問題であります。安定帯価格は、出血輸出分を国内に転嫁しないという限界が置かれてあると思うのであります。そういたしますと、出血輸出分の赤字はメーカーではどういうふうにこれを処理される方針であるか。国内に転嫁しないとすればその赤字はどういう処理をする計画を持つていられるのであるか、これを具体的に伺いたいと思います。  現在問題なつておるのは、肥料対策委員会が設けられ、国会におきましても農林関係及び通産関係において、去年の暮れからずつとこの問題と取組んでいろいろやつて来おるのでありますが、高いか安いかという水かけ論では問題は解決しないのでありまして、やはり高いか安いかの基準を確立しなければいかぬ。その基準は原価計算であり、生産コストが正直に明確に出されるものでなければならぬ、かように考えております。その意味において、われわれは春肥の問題にいたしましても、現実に幾らに価格を下げるというような数字的な問題ではなしに、生産原価がどのくらいであつて、どのくらいの価格が適正価格であるか、こういうことを客観的に一つも私見を加えないでやつて行けば、計算をし、そういうものをはつきりさせるという立場で問題を考えて行けば、はつきりできるのではないか。それは施設の新旧によつても違いますし、ガス法、電解法によつても違いますし、あるいは立地条件によつても違いましようし、あるいは施設の大小によつてもいろいろ違うでありましようが、それぞれの業態において原価計算をはつきり正直に出して、国民の前にその問題をさらけ出して、さうしてこういう状態になつているが、これをどうするかというようなことで問題を進めて行きますならば、生産原価というものははつきりわかつて来なければならぬ。そういうものが示されない限りにおいては、いろいろ不審が農民の側からも起りますし、まな国民全体の立場からも、どうしたのだ、はつきりしないはずはないじやないかという問題が起つて来るのは当然であると私は考えるのでありますが、安定帯価格についてこれが正しいのだというならば、客観的に信憑性を持つ生産原価というものを明確にする必要があるのではないか、これが安定帯価格に対するお尋ねであります。  それから次は、硫安輸出とバーターで砂糖の輸入が行われている。この砂糖の利益というのは、別口で計算されておるのか。あるいは肥料生産の中でその利益ははじいて、これだけの値段で売つても、砂糖から上つて来るところの利益でこれをちやんぽんすれば、そう大きな赤字にならないという計算でやつておるのか、その点を伺いたい。  それからもう一つは、単に肥料産業の中だけで値段が高い安いということは、私は言えないと思うのであります。硫安産業とこれに関連する産業、こういうもつと広い分野でこの問題をながめて行かなければいけない。たとえばガス法におけるところの硫安生産原価の中に占める石炭の割合は、大体七割ぐらいだと聞いております。そのうち原料炭としてのコークスその他が三割三分を占めておるということであります。ところが石炭の方からいえば、送炭可能原価は大体四千七百五十二円である。これが実際には七千円から八千円の価格肥料メーカーの方に渡つておる。そうすれば、たとえば三井系の工場でありますとか、あるいは三菱系の工場になれば、それぞれ炭鉱を持つてつて、その炭鉱から生産された石炭肥料会社の方へ移して、そこで肥料会社の方では、相当高い石炭を使うりかわりに、炭鉱資本の面においては超過利潤が上つて来る。四、五千円で売れるところを燃料炭として七千円以上に売つておるし、コークス原料としては九千円から一万円の価格に売つておる。そうすると、肥料生産の場においてはそうもうからなくても、炭鉱資本の面においては超過利潤をぬくぬくとふところにためることができる。こういうような関係になるわけでありますから、やはり総合的にこれらの問題を考えて行かなければならない。そういう点において、原料としての石炭の問題を肥料会社の側ではどういうふうにお考えになり、取引の面における合理化の手の打ち方というものがあるのかないのか、これをひとつ伺いたいと存じます。  それからこれは東洋高圧の会社についての問題でありますが、これは価格との関係でありますが、二十七年の三月期には二億六千万円の利益配当をしておる。九月期には二億八千万円の利益配当をしておる。二十八年の三月期は、まだ帳じりになりませんから、わかりませんけれども、従来の展望から申しますと、やはり二億以上の利益をあげられる、二割前後の利益配当は可能である、こういうような状況に相なつておると思われるのであります。また昭和電工の場合、二十七年上期におけるところの生産計画では、十一万トン生産で、国内価格を一俵八百七十五円、輸出価格を七百八十五円という計算で、大体一億四千万円の利益をあげる生産計画が出ておるのであります。これらの問題をあわせまして、どのようにお考えになられるか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  17. 藤山愛一郎

    藤山参考人 硫安市場価格の形成につきまして、ただいまの御意見は、硫安の持つている公共性にかんがみて役所が関与してもいいじやないかというのが第一点だと思うのであります。現在の経済形態が自由主義経済であつて、米以外は統制をしておらぬ。われわれの買いまする石炭価格その他に対して一切役所が関与いたしておりません。われわれは原料を役所の関与なしで買います。そうしてそれは市場の相対売買で買うわけであります。それによつて買いましたものでできたものが、役所によつて価格が指示されなければならぬということは、非常にふしぎに考えるのでありまして、少くとも安定帯という大きな政策意味においてある程度役所の御意見を伺うことは当然なすべきごとでありますけれども、その製品の毎日の売値というものに対して役所が関与されることについては、必ずしも意見を同じうしておらぬと考えております。  それから生産原価から問題を論じなければならぬのじやないか、こういう御説でありまして、これは私どもまことにもつともに思います。従いまして現在肥料対策委員会の方に対して、われわれ総括的なコストを出しております。しかもそれが小委員会にかかり、専門委員の御審議が進んでおるのでありまして、われわれはその決定をまつて安定帯価格の問題を論ずるのが適当と思つたのでありますが、春肥の情勢はそういうことを待つておられぬ。従つてすみやかに春肥の問題を解決しなければならぬという強い御要請がありましたので、やむを得ずそういうものから離れて決定をいたしたのでありまして、その点われわれの立場を御了承願いたいと思うのであります。  バーターによります利益がどの程度あるか。硫安輸出につきましては、全部がバーターでやつておるわけではないのでありまして、ことに軍の調達その他国際入札になりますと、バーターでやらないのが大部分であります。小部分の二千トン、三千トンというものが、バーターでやられておる分があると思います。しかしながら、これはそれぞれメーカーが貿易商社にお願いいたしましてやつておるものが多少あるのであります。このバーターの数量なるや、私はそう大きなものだとは思つておりません。また個々の問題でありますから、それらによつてどう処理されているかということも、私は存じないのであります。  それから石炭の問題でありますが、これは私も大問題だと思うのでありまして、石炭価格が下ることによつて下げ得ると思います。しかしながらただいまお話のありましたように、石炭の部面で利潤を得るからというお説は、ある一、二の会社においては石炭経営主、あるいは連絡した会社があると思いますが、必ずしも大部分の会社がそういう状態にはないのであります。なおこの際硫安につきましてひとつ根本的に皆様の頭に入れておいていただきたいのは、硫安をつくつております会社は、単純に硫安もしくは過燐酸等の肥料だけの仕事をやつている会社ではない。アンモニア合成というものは化学工業の基礎でありまして、アンモニア合成が始まつてから化学工業が進歩して来たということなんでありますが、アンモニア合成の工業は単に肥料をつくるばかりではないのであります。従いまして、そういう意味において硫安以外にも必要な仕事を化学工業会社として持つておるのでありますから、私ども硫安産業コスト計算その他をいたしますときに、硫安だけに投下された資本、硫安だけに必要な流動資本というようなものを計算してコストを出しておるのでありまして、他のある会社においては他の部門から利益を得る、それだから下げていいというような理由は、私どもは不幸にして御同意できかねるような状態にあります。最後の東洋高圧の問題、これは個々の会社の問題でありますから、私としては御答弁できません。
  18. 永井勝次郎

    ○永井委員 もう一つ、出血輸出の赤字分を国内価格に転嫁しないという点について。
  19. 藤山愛一郎

    藤山参考人 私ども安定帯価格ができました以上は、国内価格安定帯価格以上に上げることを考えておりません。従いまして安定帯価格以上に上げて、これを農村に転嫁するということは考えていないのであります。安定帯価格以内で売るごとなのでありますから、それは決して国内価格に影響しているとは考えておりません。
  20. 永井勝次郎

    ○永井委員 転嫁しないとすれば、その赤字はどういうふうに処理するつもりか。
  21. 藤山愛一郎

    藤山参考人 われわれは昨年政府輸出許可が二月におりますれば、春のうち二十万トン以上輸出されたと思う。その値段は七十ドル前後の値段で出たと思うのでありまして、そういう意味においては相当鼓を鳴らして政府を責めていいと思います。しかしわれわれ産業に携わつております者が、いたずらにただ政府にそういう赤字を埋めてくれと言うことは、ふがいないことでありますから、根本的な対策決定によつておのずからこれらのものを自分自身で処理して行くというような考え方であります。それらの実情について、ただいま肥料対策委員会にわれわれはるる陳情をいたしておりますので、それらと並行してどうして行くかということは、各メーカーの一番の悩みの問題であります。ただ単純に農村に転嫁しようとは考えておりません。
  22. 永井勝次郎

    ○永井委員 そこで出血輸出によつて赤字がこれだけできておる。この赤字の各会社負担分はこうである、それから輸出の面においても、砂糖のバーターのない朝鮮に対しては十三社がそれぞれ分担して出荷量をきめてやつておるというような内容について、国民が納得できるようなこまかい数字が出ませんと、赤字は順次こちらの方でやつて行くんだと言つても、会社として経営して行く以上は、今年農民に転嫁しなくても、今後の価格の中に織り込まれるということになれば、やはり農民負担になるということでありますから、今年の赤字はこういうふうにして処理して将来に持ち越さないということでなければ、農民に転嫁しないという筋は通らなくなつて来る、かように私は考えます。  それからもう一つ、先ほどの国内生産の面における肥料の性格は、やはり農業生産の一環としてのものだ、民族産業として、重要な貿易産業としてやつて行かなければならぬ、こういうふうな考え方に立ちますと、この産業は単なる一メーカーの浮沈の問題ではなくして、われわれ国民全体の産業としての立場で考えなければならぬ。そういう立場であればこそ、ただいまここに配付された資料のごときものを見ても、政府から助成金を出してくれという要望もなされておると思うのであります。助成を要望する以上は、おれの方の投下資本の利潤を安定させるために助成してくれ、こういう意味ではなくて、やはり国内産業、貿易産業としてはこういう公共性を持つているのだから、その公共性に対する助成をせよ、こういう要望だと思うのです。そういううことになつて来ると、企業の実態をわれわれがよく話し合つて調べて、これならばこういうふうな助成も必要であろうという問題が出て来ようかと思うのであります。従つて自由経済だからおれはおれの方でかつてにやるんだという考えの上に立つては、もちろん助成金は問題になりません。また国会において農林通産の両委員会がこういうふうにして討議ずる対象にもなつて来ないと思う。討議する以上は、やはり非常な公共性を持つという考え方の上に立つて考えておるわけでありますから、従つてその内容についてももつとさらけ出して、こういう実態だという企業の診断分析をもつと明確にする。そして合理化の過程においてはいろいろなファクターがあると思う。そのファクターに対しては、この分はこういうふうにすればいいじやないかという率直な話合いができることを私は望みますために、かように申し上げたわけであります。その点について伺いたい。
  23. 藤山愛一郎

    藤山参考人 私もただいまの御意見の通り、硫安工業関係いたしておりまして、この工業が非常に公共性の深い仕事とは考えております。ことに食糧増産という大きな日本再建の面から見ても、また農村と長い間つながりを持つて行かなければならない仕事だとして、その責任を痛感いたしておるのであります。ただ十分御了察を願いたいことは、硫安工業そのものを危殆にひんせしめることは、農村のためにもならぬことであります。従つてわれわれとしては、硫安工業を危殆にひんしないように極力やつて行かなければならぬと思うのであります。長い間農村とおつき合いをして、農村に安いものを供給して行くためには、その過程において、ごまかしをやるわけに行かないのであります。ほんとうに硫安工業を堅実な基礎の上に立てて永久に農村の繁栄に貢献して行くという立場でやらなければならぬのであります。従つてどもとしては、今日の硫安工業現状忌憚なく申し上げて、これ以上はわれわれの死活の線だ、死活の線だということは、すなわち農村のためにもならない。また輸出産業として、東南アジア方面の各国に対してもためにならないのだということを感じて私どもはやつておるのであります。従つてどもはふだんから役所方面その他に対して十分な連絡をとつてつて参りますことは当然でありますし、御意見も十分伺つて参るつもりであります。昨年安定帯価格をつくりましたときも、農林通産経済審議庁、三省の事務当局の方々に数回お集りを願いまして、そして隔意なく討論をして、ああいう問題の解決にいたして参つたのでありますから、私どもはそういう意味において御協力をお願い申し上げ、またその心構えでやつております。ただわれわれの守らなければならぬ一線は、硫安工業担当者として当然あるわけでありまして、それが現状においては相当圧迫されておる。その線をくずすことになると、むしろ農村のためにならぬ。もし硫安工業が再び今日の隆盛から脱落して、経営が困難になつて参りますれば、それは必ず農村のためにならぬのであります。そういう意味において、私は言葉をぼかして各方面に今日の立場を強調いたしておるわけであります。その意味を十分御了解いただければ、ただいまの御質問のお答えになるかと思います。
  24. 坪川信三

    坪川委員長 御質疑並びに御答弁は時間の関係上なるべく簡潔に願います。井上君。
  25. 井上良二

    ○井上委員 三点ほどお伺いいたします。第一は、これは藤山さんに伺つたならば一番いいのじやないかと思います。昨年十月きめました安定帯価格は、硫安生産を何ぼと押えてきめたか、たとえば百五十万トンが国内需要であるから、かりに百五十万トンを生産するとすれば、コストはこのくらいになるからこの安定帯価格でいい、こういうことでこの安定帯価格はきめられているかどうか。それとも、二百万トンできるという見通しの上にできた安定帯価格であるか、それを伺いたい。  その次は、藤山さんとの今までの質疑応答によつて伺いますと、今度新しく改訂されました安定帯価格は、メーカーの採算を度外視しておる、何か政治的に圧迫を加えられたがためにやむを得ずのんだ、こういうお話でございます。これは私は藤山さんとしてははなはだ穏やかならぬ発言であると思います。われわれは今日の肥料産業の立つておる重要性から考え、かつその産業の今まで国がいろいろな手当を加えて来ました実績にかんがみ、また現在のわが国の食糧生産の諸般の情勢から考えて、安定帯価格は、この際堅実な会社の運営の上から考えるならば、引上げることを妥当とするという見地に立つて主張しているのであります。決して一方的な圧力を加えてメーカー生産を押えつけるがごとき立場ではおりません。この点は、あなた方事業者側とわれわれの方とは多少立場が違いますが、ただいま永井君からもお話のように、現実に有力な肥料会社はそれぞれ二割以上の配当をしているのです。また社内に投下しました設備においても、相当大きなものがあることをわれわれはにらんでおる。今日の株の相場から考えてみても、決して不健全な経営でない。そういう事実に基いて私どもは主張しておるのであつて、ただ場当り的な、現象的な問題だけでわれわれは議論しておるのではありません。そういう点については、さらにもつとこまかくいろいろ議論をせなければなりませんけれども、時間がありませんから申し上げませんが、われわれはそういう上において考えておる。ところが、一方あなたの方では、安定帯価格をおきめになつてこれを承認された後に、硫安協会として一方的な建値を発表されておる。この一方的な建値の発表が独占禁止の法律に触れるということから、個々の折衝は打切つた、こうおつしやられる。私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の第四条第一項第一号によれば、対価を決定し、維持し、または引上げるような共同行為を事業者は行つてはならない。これに反する者は、懲役二年、三十万円かの罰金に処せられる。さらに事業者団体法第五条の禁止行為の中に、団体を構成する事業者相互の間または得意との間の取引を拘束し、対価を統制する等の契約を行うことは禁じられており、同四号においては、将来の対価、販売条件等の情報の流布その他いかなる方法をもつてするかを問わず、対価の統制決定、対価に影響を与える行為はすべて禁じられております。また第五条第二項において「事業者団体はいかなる名儀をもつてするかを問わず、前項の禁止又は制限を免れる行為をしてはならない。」と規定してあります。この独禁法並びに事業者団体法の規定によりまして、この硫安協会春肥の建値発表は、当然今読み上げました法律に該当すると考えますが、硫安協会ではさようにお考えになつておりますか。もしさようにお考えになつておるとすれば、先般発表されました建値の発表はお取消しになりますか。この点が非常に重要な問題になつて来ますので、この点を明確に伺いたいのであります。  それから次に硫安協会としましては、政府の方に輸出の要請をしておるようであります。またわれわれもそういう意向のあることを伺つておりますが、今度かりに輸出をするとすれば、その輸出価格国際価格によることであろうと考えます。そうしますと、国内価格との較差はどうするつもりでおられますか。これが先決条件で話がきまりませんと、輸出問題の解決はできないと思います。先に行つた輸出が、国内価格との非常な開きがあるというところから問題になつておるときでありますから、今要求されています二十万トンなら二十万トンの輸出をいたします場合は、当然国際価格でありますので、その場合に国内価格との調整をどうするつもりですか。再び会社がみずからその差額は引受けるから輸出を許せというのですか。それとも国家の補償を要求するのですか。その場合の国内価格との較差は一体どう調整されるお考えでありますか、これらの点についてまず伺いたい。  それからいま一つ労働組合側の人に伺いますが、これらの問題は国内価格から言うと出血輸出であります。その場合、労働組合側としてはこの出血輸出を、労働組合の労働条件の維持の見地から妥当な輸出とお考えになりますか、この点を伺いたい。それからあなたがさいぜんから、肥料価格問題を論議する場合は、低米価を論議しなければいかぬというお話でございますが、低米価問題と肥料価格問題とは関連があるようでございますけれども、米価の決定の基本的な条件はパリティ指数によつてつておる関係で、肥料価格がどのくらい値上げになるかということが米価の価格の上に響いて来るのであります。低米価問題はもちろんわれわれは考えなければなりませんけれども肥料価格の問題をきめるのに、低米価であるがゆえに肥料価格云々の問題は、ちよつと私ども理解が行かないのであります。肥料価格が上昇して参りますれば、当然米価もそれに伴つて上昇する建前になつております。その見地から、そういう論議は別の面で私どもも考えておりますが、一応今の出血輸出に関連し、労働組合としてはこれを妥当と見ておりますか、この点を伺いたい。
  26. 藤山愛一郎

    藤山参考人 安定帯価格を、昨年八月から十月の候に設定したのでありますが、そのときには、当然現在の生産でありますア系肥料二百四万トンを対象にして私どもとしては考慮いたしたわけであります。それを考慮しました上で、われわれとしては、先ほど申し上げましたように、当時九百十円を中心にして上値価格四十円、下値価格四十円、つまり九百五十円並びに八百七十円ということで主張いたしました。  それから建値の問題でありますが、私どもは今日まで全購連お話合いをいたしますときに、全購連としては、個個の会社と折衝することはめんどうであるから、なるべく一本にまとまつて話をしたいという御要求があつたわけであります。われわれもそれを相当考えまして、なるべく各社の意向をとりまとめて、全購連に伝達いたしておつたのであります。今回も安定帯価格によりまして引続き全購連との交渉に入るわけであります。各社の硫安担当者から現地のそれぞれの事情を聞きまして、それをとりまとめたものを、私どもとしては硫安価格としてやつて行きたいという希望を持つて、全購連に申し入れるつもりで、そういうふうにいたしたわけであります。その点をひとつ了承願いたいと思います。  それから輸出でありますが、輸出は、御承知のように、私どもは今回輸出のわくを設定していただきたいということを申し上げておるのでありますが、二十万トンの輸出のわくをいただけたからといつて、必ずそれを輸出するかしないかということは別であります。ただ引合いが来ましたときに、輸出のわくがなければそれに応ずることができない。協議するわけに行かないのであります。現在のように非常に困難な状況でありますと、非常に安い価格輸出するなどということは、各社はおそらく考えておらないだろう、そうして再び問題を起さないだろうと思います。しかしながら先ほども申しましたように、国際入札の非常に大きなものは別として、二千トン、三千トン、五千トンというような小口引合いは、現地から相当つております。相当高値のものもありますから、そういうものにはわれわれとしても応じたい。それにはわくをいただきたい、こういうことをお願い申し上げておるわけであります。
  27. 野口富好

    野口参考人 ただいまの出血輸出が妥当なものであるかどうかという質問でありますが、私は今度のこのような形での出血輸出というものは妥当ではないというふうに考えております。われわれは、根本的に言いまして、自由経済というものを否定しております。先ほどから申し上げますように、計画経済をとらない限り、日本の経済建設はできないという立場をとつております。こういう意味から申し上げまして、このような現象が起きたということは、単に硫安メーカーだけの責任ではなくしてやはり全体的な政策の貧困から来たものである、このように考えております。  それから米価の問題と硫安価格の問題は、なるほど確かに米価の問題の中には、硫安価格が部分的に入つておりますが、これが決定的にどうこうということではありません。ただ根本的に言つて、今とられておる米価政策というものについては、もつと改良すべきものがあるという考え方に立つております。そういう意味において、この際肥料問題の解決をなす場合においては、やはり特にこの問題に影響する米価の問題もあわせ考えられて、解決していただきたいという要望をいたしたのであります。
  28. 井上良二

    ○井上委員 ただいま藤山会長から、私の一番重要に質問しておる点について、はなはだ軽い御答弁でございましたが、御存じの通り、安定帯価格のように、一定の幅を持つて、その幅でもつて御自由にひとつお取引を願いたい、こういうおきめであります場合は、独禁法の問題は、また事業者団体法の問題は、問題にならぬかとも思います。しかしながら協会が一方的にこの値で何月々々は売る、こういう申合せをいたし、それを各加盟会社に指示しました場合は、明らかに独禁法並びに事業者団体法に抵触します。だからあえてそれをあなた方が取消さないというこうになりますと、これは当然問題になつて来る。だから私どもはさつきからのお話によつて、どうもそういうように問題になるらしいから、そこで個々の会社と折衝するようにということに今はしておる、こういうお話ならば、この二十四日におきめになりました建値発表は、お取消しになるのが妥当でないかと考えますが、お取消しになる意思はありませんか。
  29. 藤山愛一郎

    藤山参考人 私どもは、先ほど申し上げましたように、今日までのしきたりをずつとやつて来ておりまして、われわれの折衝すべき価格決定して提出いたしたわけであります。全購連にもそれを持つてつたわけであります。そういうことでありますから、それがもし独禁法に触れるのであれば、今日以後そういうことはやりたくないと考えます。今日までの情勢においては、そういうやり方をして来たのでありますから、それが独禁法に触れるとも私どもつていなかつたのであります。独禁法に触れるとすれば、責任を負わざるを得ないと思います。
  30. 井上良二

    ○井上委員 そこが非常に大事なところでございまして、私どもはあえてそんなことは問題にしたくないし、できるだけ両者が円満に話を進めて来ておる過程でありますから、そこでかりにそういうことが末端の方に情報として流され、新聞にまで堂々と三段抜き四段抜きで発表されておりますから、これは完全な情報であります。そうなつて来ますと当然問題が起つて来ようと思います。少くとも私は、国会があなた方に参考人として御出席を願い、肥料価格問題についての御意見を承る、こういう公開の、しかも権威ある機関での発言でありますから、この席上で、協会の代表者としてのあなたが、それが行き過ぎであつたかということがおわかりになりますならば、この際少くともその建値発表のあの価格は、今後各メーカーの自由な取引にまかせる。従つてあの建値発表は取消すということを明確にされることが、協会のためにも、またこれから両者が円滑に取引を行つて行く上においても、非常にいいことではないかと考えますので、お取消しになる意思はありませんか。もう一応伺つて私の質問を打切ります。
  31. 藤山愛一郎

    藤山参考人 ただいま申し上げましたように、今日までのしきたりから言えば、協会の代表者が全購連に出まして、そうして価格のとりきめを今日までやつております。そのとりきめをいたす代表者が出ますときには、ある価格を委任されて参らなければならぬのでありまして、全購連の方からも、そういう価格を委任された方が出て来て話合いをしておると思うのであります。従いまして、今日までの段階において、全購連は独禁法に触れない団体であります。私どもの方は触れる団体であります。従つてそういうことであれば、今日以後は困難であります。従いまして、そういうことを全購連に通告し、かつわれわれはこういうことであるという、当時の情勢から見まして、各方面でそれをいろいろ知りたがつておりましたので、われわれはこういう値段で全購連交渉するということがいけなければ、それはいけないことをやつたのでありまして、そういう意味で個々の交渉に移しましたときに、縛るという意思は持つておりません。
  32. 坪川信三

    坪川委員長 有田二郎君。
  33. 有田二郎

    ○有田(二)委員 最初に藤山さんにお尋ねして、あとで野口さんにお尋ねしたいのでありますが、四年前に私が商工省におりましたときに、肥料部を農林省によこせという話が、農林委員会側からもありましたし、また農林省の側からもあつたのであります。先刻藤山さんが言われたように、当時肥料だけが化学工業ではない、化学工業の一部をなしておるのだから、これは通産省に置くべきである。しかも御存じの通りに、肥料部の中には農林省から課長なり係官が出向しておるのでありまして、私はこの点でいささかも影響ない、かように考えて当時がんばつたものでありますが、その後今日まで四年、その間通産省のあり方を見ておつても、通産省のやり方が非常に手ぬるい。特に金融面におきましての金融界の協力も非常に乏しい。その他の面においても通産省側の手口が非常に弱いと痛感をいたしておるものでございますが、この肥料部が農林省にある方がいいのか、通産省にある方がいいのか。それから通産省に置いておくとするならば、今日まで通産省のやつて来たやり方について、藤山さんとして肥料界を代表して遺憾な点があるか、この点を一つ伺いたい。  さらにまた私は、農林省は肥料部を農林省によこせ、こういうようにおつしやつておられたくらいの農林省が、今日その肥料工業に対して、あるいは農林中金なりその他の農林関係の金融面において、どれだけの援助を肥料工業界にしたか、この点も私はあわせ伺いたい。  それからさらに金利引下げの問題がいわれておりますが、私はまつたく賛成でありまして、これは当然やらなければならぬ。しかるに金融界のこれに対する協力が非常に乏しい。通産省の力も非常に弱い、こういうように考えておるのですが、かりに引下げができたといたしましても、銀行側がこれに対してどの程度の協力があるか。またこれに対する藤山さんの杞憂の点。  それから最後に私はベースの問題を承りたい。今日労働組合との関係において賃金ベースがどの程度になつておるか。  この四点についてお伺いいたしたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    藤山参考人 通産省が今日まで、肥料その他の方面に対してどういう助成をしたかというお話と、農林省が肥料行政に対してどういうことをしたかというお話のようです。私どもとしましては、通産省も農林省も、ともに肥料という問題について熱心に、われわれにふだんから援助していただいている、こう思つております。ただわれわれも、今日のような自由主義の時代でありますから、一から十までことごとく役所にたよらないで、できるだけ自分たちの力でもつて問題を解決したいという立場をとつております。ただいろいろなむずかしい電力の割当その他になりますれば、できるだけ役所に御連絡を申し上げて、われわれの希望を十分に達成するようにお願いしておるのでございまして、電力とかその他の問題につきましては多大の御援助を得ておる、こう思つております。また今後もそういうものが得られると考えておる次第であります。  それから金利の問題でありますが、金利につきましては、先ほど総括的説明の中に申し上げましたように、固定資産に対する金利と、流動資金に対する金利と、こういうことに相なつておるのであります。今日いわれておりますのは、開発銀行を通じて出ております三十二億余の復金融資並びに開銀の融資、国家資金であります。これが一割でありますが、これを七分五厘にしていただきたいということをわれわれも要請をいたしておるのであります。その他一般市中銀行から出ておりますものにつきましては、他業との関係もありますので、私ども全体の金利水準が下らぬ限り、硫安工業に対して何か特段の国家的資金を流動資金の面に流していただくのでなければ、なかなか困難かと思うのであります。われわれ硫安工業が重要な産業であるという立場から、今後も通産農林両省にお願いをいたしまして、それらの処置ができますようにお願いして参りたい、こう考えております。
  35. 有田二郎

    ○有田(二)委員 それから農林中金その他農林関係の金融機関から、どの程度あなた方は援助を受けておるか。また農林省からどういうような手助けを受けておるか。農林委員会側からあなた方いじめられておるが、それに対する農林省側がどれだけあなた方に援助しておるか、この点を承りたい。
  36. 藤山愛一郎

    藤山参考人 大体私どもの売つておりますものの半分は全購連に売つております。全購連に売つておりますものにつきましては、農林中金が大体手形のめんどうを見ていただいておりますので、必要があればそういう意味で、農林中金が日本銀行その他から特別に融資を受けてやつておられるのであります。農林中金には非常によく便宜をはからつていただいております。
  37. 有田二郎

    ○有田(二)委員 それから野口さんにお尋ねしたいのですが、賃金ベースの点はどの程度になつておりますか。
  38. 野口富好

    野口参考人 現在賃金ベースは大体において硫安各社は一万五千円のベースを前後しております。ただここで特にわれわれとしてつけ加えたいことは、硫安価格の上昇に伴つてベースが上つておるということは言えるわけでありますが、この間において給与形態というものが、過去における生活給的な色彩をなくして行つておる。こういうことによつて最低者の生活苦というものは別な形で現われておるということが言える。この点は考えていただきたい。
  39. 有田二郎

    ○有田(二)委員 今度御存じのごとく公務員が二割上つて一万二千八百二十円ベースになつたわけですが、一万五千円ベースを決して私は高いとは申しません。高いとは申しませんが、今あなたのお話の中に、われわれ労働者並びに農民の犠牲において云々というお言葉があつたのですが、今日の段階においてこの通産農林委員会においての言葉としては私は妥当でない。今日は農民の犠牲ということは私はうなずける。米価の問題その他で自由党といえどもうなずけるのであります。しかし私は今日の問題においては、国家公務員の賃金ベースが一万二千八百二十円にようやく先般十一月から上つた。それまでは大体一万円であつたという点から見て、必ずしも労働者の犠牲ということは今日は当らないと思うのであります。もちろんあなた方のベースのよくなつて行くことには大賛成でありますが、今日の段階においては肥料が重大産業であるということをお考え願いまして労働者諸君もよく協力していただきたい、このことを申し上げまして質問を終ります。
  40. 野口富好

    野口参考人 ただいま非常に労働組合側としましては攻撃を受けたように私は考えるのであります。われわれとしては、この硫安価格の問題に対して論議される場合に、われわれ労働者自体の問題、農民の問題を考えてほしいという意味において特に引出したわけであります。先ほど申し上げましたように、この場合考えなければならないことは、それでは公務員のベースが妥当かどうかということまで追究すべきであると私は考えます。それと同時に、先ほど申し上げました給与形態の問題、こういうものも十分考えないと、国民生活、労働者の生活というものは、ただ単に上つらのベースだけの問題で解決されるものでない。それから諸外国の労働者の賃金と日本の労働者の賃金の関係、こういうものも考えていただきたい、こういうことを申し述べておるのであります。
  41. 有田二郎

    ○有田(二)委員 藤山さん、実は外国肥料の輸入の問題がこれから国会で問題になつて来ると思うのです。従つて私はこの問題について、通産省側と農林省側とよくひとつ協力していただいて、いわゆる肥料工業の興隆のために、外国肥料を輸入するというような事態にならないように私はやつて行かなければならぬと考えるのですが、藤山さんの御所見を承りたい。
  42. 藤山愛一郎

    藤山参考人 私どもは、現状におきまして硫安国内需要に対して不足しておると思つておりませんので、量の意味から申しまして輸入をされる必要はないのではないかと考えております。また価格の上からいいましても、現在のこの春において現われております国際価格から申しますと、輸入いたしましても現在の安定帯価格よりも上まわることになると思うのでありまして、おそらくそういう処置は賢明なる農林通産委員会方々はおとりにならぬだろうと私は確信いたしております。
  43. 坪川信三

    坪川委員長 木村君。
  44. 木村文男

    ○木村(文)委員 いろいろ今までこの問題につきましては、農林委員会におきましても非常に大きな問題になりまして、ずいぶん期日がずれて大体の安定帯価格が発表になつたようでありますが、この間において農民の非常なる不満を招いたことも事実のようであります。そこで今まで議論なつたということも、また今日通産農林の合同審査会ができて、そこにおいて論議されたことも、結局これに尽きると思う。ごく簡単に申しますと、第一は、生産コストが明確にされておらない、第二点は、出血輸出の内容が明確にされていない、第三点は、国内販売の状況、あわせて会社経営の内容があまり明確にされていない、あいまい模糊としておる、この三点に論議が尽きると思うのです。そこで私は先般の農林委員会におきまして、農林大臣に三箇条にわたつて強硬にお尋ね申し上げ、方針を明らかにするよう要求したのであります。その際に逃げた口上は何であつたかと申しますと、生産コストをつかむことができないということと、いま一つ政務次官の言つたことは、事務的な行政面における一元化がはかられない、責任の問題が非常にあいまいであるということであつたのであります。そこで論議が尽されたのでありますから、いわゆるメーカー側に対して、これらの点について明確化するということの確約をここに得たい。政府に協力いたし、政府自体もメーカー側に対してきわめて率直なる要求をいたしまして、メーカー側がこれに応ずる用意があるかどうかということをここにおいて明らかにしていただきたい、こういうことを私はお願い申し上げます。
  45. 藤山愛一郎

    藤山参考人 ただいまの御意見は私もまつたく同感でありまして、今回の安定帯価格の問題がとやかく言われますことも、コストが明確になつておらない、その結果としてメーカーはずいぶん一生懸命に正直な値段を考えておるのですが、それはメーカーの言う値段であるから掛引が相当にある、百円や百五十円の掛値はあるだろうというお気持ちが各方面にある結果だと思います。私どもは今回肥料対策委員会に対しまして、現状肥料価格を、生産費を出しております。ただいまそれが検討されておりますから、その検討の結果が出て参りまするならば、この点は明確化すると思います。われわれ肥料対策委員会に御協力申し上げて明らかになるよう努めておるわけであります。決してこの点で協力することにやぶさかでありません。
  46. 木村文男

    ○木村(文)委員 これは蛇足でありますけれども、われわれいわゆる院内側から申しますと、他意がない。要するに日本肥料生産肥料行政の面の円滑化と一面においては実際農民の生活権の擁護、この二つよりないのです。そこで先ほど藤山先生は今回の安定帯価格をきめるにあたりましては、政治的な圧力があつたお話になつたのですが、これはただいま協力すると確約をされた反面、そういう言葉をこういう公開の席上で発表されることは、そういう面を阻害することにもなると思います。そこで先ほどおつしやつたことを、ひとつ率直にそういうことはないならない、あるいはあるならあるというように明確化してもらいたい。
  47. 藤山愛一郎

    藤山参考人 政治的圧力によつてきまつたと申したことがたいへんお気にさわつたようですが、私ども農林通産、一万田さんの四人で会談をいたしておりまして、コストその他についてもこの限度でもつて合理的に下げられるのだという話をしておつたのですが、それ以上下げろという強い御要求でありまして、これはやはり政府からごらんになれば農民その他の心理をつかまえて政治的に考慮されて政治的に下げろということだと思うのです、少くともまだコスト計算のできない前においては。ですから私どもにおいてはりくつはないけれども、そういう意味で政治的な考慮で下げざるを得なくなつたということを痛切に感ずるのでありまして、何もなぐられたから下げたという意味ではありません。政治的に下げざるを得ない情勢にあると私どもとしては考えざるを得ないので、われわれが合理的にコストの計算その他で下げたとお考えなさつてはたいへんだと思いまして、そういうように申し上げた次第であります。
  48. 木村文男

    ○木村(文)委員 そうなると、肥料行政の面が案ぜられることになります。ところが私の調べたところによりますと、先ほどもどなたかからも発表があつたようでありますが、有力会社は大体二割以上の配当をしておる。あるいはまた労働者側からの発表によりますと、有田先輩の言うように一万二千八百円の公務員のベースよりもいい。それは満足なものではないでしようが、そういうような状態にあるというところから推してみても、これは藤山会長がおつしやつた、きわめて大きな犠牲を払つておる、政治的な一つの動きといいますか、そういう面で下げざるを得なかつたというようなことが成り立たなくなる。そこで何らかの形において、そういうようなことでなしに率直に腹を割つた、こういう点でこうなるのだ、今回はこれであるが、将来はもつと下げるつもりだ、こういう発表はできませんか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山参考人 誤解のないようにしていただきたいのですが、現在まで会社が二割の配当をしておりますのは、昨年九月の決算でありまして、今年三月以降の決算にはどういう決算が出て来るか、はたして二割を維持することができるかどうか、私は非常に疑問に思つております。昨年の九月まで、安定帯がきまりましたまではこういう問題はなかつたのでありますから、それまでの成績をもつて今の成績と同じ成績だとお考えにならないように、これは各方面でそういう誤解があるようですから、その点ひとつ了承願いたいと思います。私どもあの安定帯を下げますときは、将来政府としてはこういうことを考えてやる、石炭価格もこういうふうに下げる方法を講ずるというようなお話もありましたので、それを期待しておるようなわけであります。
  50. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 たいへん皆さん時間をお急ぎのようでございますから、一切の前置きを抜きにいたしまして、私、肥料企業の繁栄とお百姓さんの涙をぬぐうということを念願しつつ、二、三質問をいたしたいと思います。  実は肥料価格問題がいろいろ論議されておるやさきに、肥料議員連盟に行きましても、業者の方々との懇談会に臨みましても、いつも思うことでございますが、原価計算書というものがない。これは私の不勉強のいたすところであるのか、そういうものをわれわれに見せるとさしつかえがあるのか、もしさしつかえがなければ、はつきりと原価計算書なるものを見せていただきたい。それから出血してもなお輸出生産をしなければならぬ、こういう場合に、なぜかと聞けば、操短をすればコスト高である、こういうことでございまするが、それでは生産量をどの程度にしたならば、最低価格を保つことができるかという目途をお示し願いたいと思います。  それからもう一つは、コストを下げれば需要量が増大する、逆にコストを引上げれば需要量が低下するということは、これはだれしも考えられることでございますが、これが一体どの程度なつたならばいいのか、こういうデータがあるのかないのか、言いかえれば、操短のわくの決定基準あるいは増産のわくの決定基準というようなものが研究されているのかいないのか、もしあつたとするならば、お示しを願いたい。以上を会長さんの藤山さんに御指示願いたい。  それからどの産業輸出振興をはからなければならぬことは、これはもう当然なことでございまするが、輸出をするにあたつて、今日障害となつている点がありやなしや、たとえば為替とか、あるいは決済上の問題とか、クレームの問題、いろいろあるでございましようけれども、それについて私はまず今日のLC方式でいいのか悪いのか、これをDAの方式にかえた方がいいのではないか。  次に為替相場の合理的な運用ということが考えられるのでございますが、これが現在肥料の方では行われているのかいないのか、将来どういうふうにされたらいいのか。  次に貿易金融の問題で、金利及び為替の手数料が高過ぎると私は考えている。ところがこれについて、一体これでいいのか悪いのか、将来どのようにしたいのか。  次に、通商協定の問題で、まだ非協定国があるはずでございますが、ここへ肥料輸出されるのかされないのか、もしされるとするならば、この協定をどのように希望されるのか、次に、輸出するにあたつては競争国があるはずでございます。その競争国についてさつきちよつとお触れになつたようでございまするが、この競争国の肥料に対する国策と、わが国の肥料に対する国策と比較してみて、わが国の肥料輸出国策に改善すべき点はありやいなや。  次に、市場開拓の問題につきまして、東南アジアが大体主体になつているということは聞きましたが、そのお隣りの中共貿易につきまして、他の産業では、大阪地方の方も、あるいは名古屋地方の方々も、私商工会議所の方方と会つて希望を聞いておりまするが、非常にこれは望んでいらつしやるが、肥料産業肥料輸出の面から考えた場合に、これは一体どうお考えになつていらつしやるか。以上の諸点、特に通商上の為替相場の問題については、その大御所が大蔵大臣になつていらつしやる三井の水上さんにまずこれをお教えを願いたい、こう思うわけであります。以上でございます。
  51. 藤山愛一郎

    藤山参考人 肥料コストにつきましては、先ほども申し上げましたように、元来事業会社としてはコストの計算をして、協会等でいろいろとりまとめることはいたしておりませんので、そういう関係でどこへも出しておらないわけでありますから、今回肥料対策委員会に初めて提出をするごとにいたしたわけであります。それらの御審議の経過によりまして皆様方も了解をされることになると思つております。  それから増産をいたしますことによつてコストがどうなるか、また減産をすることによつてコストがどうなるかということでありますが、現状のままにおきまして、二割の操短をいたしまして大体百五十三、四万トンでございます。そうなりますと、われわれの現状の計算では千十七円くらいにコストがなるんじやないか、こう考えております。とにかく二百万トンつくつているうち四分の一操短でありますから、コストに対して相当響くことになろうかと存じます。今後コストをどういうふうにして下げるかという問題は、先ほど申し上げましたように、いろいろな打つ手によりまして違つて参りますので、それらの点を十分考慮いたしました上で、少くも国際水準に達する価格までわれわれは引下げたいと思いまして、それらについて政府に対して御要望する点を肥料対策委員会にただいま研究して出すことにいたしておる次第でございます。そこに出しました結果御検討をいただきますれば、おのずからその数字がはつきりして参る。それまでは私仮定の数字を申し上げるわけには参りませんので、御了承願いたいと思います。
  52. 水上達三

    水上参考人 ただいまの御質問に対しましてお答えいたしますが、LCベースの問題は、これは現在のような世界情勢におきましては、日本といたしましても、われわれ貿易業者といたしましても、やはりLCベースでやつた方が確実なものですから、各国によつてもちろん事情が違うところもありますけれども、まだLCベースでやつて行かなければならないのではないかというような状態のところが多いようであります。もちろんDAの方式にかえた方がいいところもありますから、そういう点についてはわれわれ詳細に貿易業者の団体などを通じまして意見を述べております。  それから通商協定のあるところ、ないところの問題ですが、これはあるところも、ないところも通商は現実にできております。それから競争国の国策と、日本の国策との比較はどうかというお話のように承りましたが、肥料のみならず、日本輸出に対する政策というものは、いわゆる助成政策というものを基盤にはしておりますが、表面に現われた助成政策が非常に貧弱であります。長くなりますから、簡単に申し上げますけれども肥料だけに対して各国はどんな輸出政策を—今日は肥料問題が主のようですから、その問題だけをちよつと取上げてみましても、まず先ほどもちよつと触れましたが、租税の面、外貨保有の制度の面、それから為替の複数レートを採用しているというようなこと、それから輸出金融保険、それから生産原価を引下げるためにいろいろな施策をしております。それから原料を安く供給するような方法というようなことをやつておりますが、たとえば租税の面では、ドイツではメーカーに対して所得税の三分、それから輸出業者に対して一分を控除しております。それから輸出損失引受けのための特別準備金の設定というような勘定が認められております。これはやはり率は同じであります。メーカー三分、輸出業者一分、それから取引高税の減免をやつております。これはドイツのみならず、フランスも、オーストリアも、イタリアもやつております。それから社会保障金とか、給与税などの払いもどし請求権というものをフランスは認めております。それから外貨保有制度でありますが、外貨保有制度については、ドイツでは輸出の一番大きな問題は四割の輸入権、つまり得た外貨の四割を、ほかのものを輸入する権利を輸出業者に与えている。もつと具体的に言いますと、結局四割の外貨を使つて外国から輸入した商品で利益を得ることができるわけであります。たくさんありますけれども、いろいろそういうふうな施策が講ぜられておりましてこの点に関して日本と比較いたしますと、日本は実に貧困で、何にもしていないと言つてよいくらいである。最近上つても優先外貨がわずかに一割五分です。もちろんこれは日本の置かれている政治的立場がそうさせておるのでありまして、あえて政府並びに国会を非難するわけではありませんけれども、実情はそうであります。  輸出国策に改善の点があるかどうかという御質問でありますが、今申し上げたような点は日本が特に取上げてやつて行かなければならない問題と思いますが、政府におかれましても、昨年末でしたか、特に通産省からドイツに人を派遣いたしまして、ドイツ市場をつぶさに調査されて、今それを実施する段階にあると了解しております。ですから、やがていろいろな政策が出て来ると思いますが、こういう点につきましては、私といたしましてもさらに推進して、日本輸出を増加するような方向に持つてつていただきたいと考えております。  それから市場開拓の問題に関連しまして、中共はどうかというお話でございます。中共の問題は非常にデリケートでありまして、簡単には申し上げられないのでありますけれども肥料につきまして、中共は市場として見れば、無価値ではないけれども大したものではない、こういうことが言えると思います。具体的に申しますと、今中共の地区になつております北鮮には、前に朝鮮窒素の工場があつたわけでありますが、あれは現在われわれの側にはあまり関係がないわけであります。それから大連に一つありましたが、これもわれわれの側には関係がない。南京の付近に一つありましたけれども、その後これはどうなりましたか、これはきわめて小さい工場でありまして、あるいはこれが生産しておりましても、ごくわずかのもので、問題にならないと思います。  それではその地区の輸入はどのくらいのものがあつたか。過去のことを言いますと、最も大きいときで十万トンちよつとくらいのものが、日本あるいは欧米から輸入されておつたと私は記憶しております。従つて硫安市場という点から見ますと、南の方は雨があつて何ですけれども、そういうところは比較的土地が豊穣で、あまり肥料を必要としないわけであります。南の広東、福建付近、港で行きますと汕頭、厦門、香港、あの辺に揚るものがあつたのでありますが、数量的には、ごくわずかであります。今もそんなに大きいものを需要しているとは考えていないのであります。香港を経由して行くのもわずかであります。ですからさつき私が申しました東南アジア百二十万トンないし百三十万トンという数字の中にも、十万トン香港を経由して中共へ行くだろうという数字を想定しておるのでありまして、香港そのものの需要と、香港を経由して中共に入つて行くものは十万トンくらいと見ているわけであります。しかしこれは許可がむずかしいではないかという御質問もあるかと思いますが、要するに中国のことでありまして、適当にやつていればいいわけであります。ですから、中共の市場はどうかということは、硫安については大してお考えにならなくてもよろしいわけであります。むしろ台湾の四十万トン、朝鮮の四十万トンというふうなものが非常に大きな数字になつて来るという形になつております。  それからもう一つ為替の問題を御質問になつたようでありますが、金利、為替手数料、そういうものはわれわれ少い方がよいのですが、大まかに申しまして、貿易に使つておる欧米の国際金利はどのくらいかということになりますと、大体商品にもよりますし、国と国と具体的な場合によつて違いがありますが、三分から五分くらいと押えていただいたらよいではないかと思います。それに比べますと、日本の金利はやや高うございますが、日本の各産業が使つておられる金利よりも貿易の金利は優遇されておるわけであります。ことに最近外貨の多い時代に、外貨での貸付その他特に優遇されているものがありますから、そういう面では相当よい条件に置かれておるわけであります。  それから御質問はなかつたわけですが、あとからまた御質問が出るかもしれないことを予想しましてちよつと申し上げておきたいのは、いわゆる硫安国際価格であります。一口に国際価格とあつさり言われますけれども国際価格はピンからキリまで実に多種多様であります。そして同じメーカーが出す値段も、きようとあすとでは違います。たとい工場は同じ値段で出しましても、海上運賃とか国際情勢その他の変化に応じまして適当に出すわけでありますから、千差万別になつておるわけであります。それで国会の方などに知つておいていただきたいと思うのは、今日本が買えば幾らで買えるだろうかという問題と、それから最近外国はどのくらいの値段で出しているかということでありますが、日本が今買いますと、円に直しまして大体九百四、五十円になると思います。日本の沖着で大体九百十円か二十円見当になるわけでありますから、その程度になりましよう。それから最近私が聞いておるのは、フィリピンにドイツ硫安が売れておりますが、これは少量でしたけれども、非常に安く、五十六ドルくらいで売れております。しかしその陰には、ドイツとかベルギー、オランダ—イギリスもそうでありますが、非常に輸出政策に力を入れているために、現実に金の面の助成があるわけです。ですから、そういうものが入つておりますので、それを表面からおとりになると非常な間違いが起る。たとえばつい昨日私の方のハンブルグの店からの報告によりますと、ドイツの小さい硫安メーカーですが、そこの国内に売つておる値段は五十七ドルくらい、それをフィリピンまで持つて行きますと、大体八ドルから十ドルが運賃相場です。そういう運賃をかけてなおかつ五十六ドルで売つているメーカーもいる。こういうわけでありますから、実に千差万別で、ちよつと御了解できないような実情です。ですからそういう複雑した市場の中で、日本工業はどうあるべきかということを先ほど申したわけでありますが、しかしどつちにしたところで日本の庭に百何十万トンの市場が待つておるわけで、肥料のような輸出工業は大いにやつて行かなければいけない。ことにヨーロッパ、アメリカからは、運賃差だけでも、現在の低い海上運賃を基礎にしまして五、六ドルの違いがあるわけであります。御参考までにつけ加えて申し上げておきます。
  53. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今お答えいただきました中で、私の質問に一つ漏れたのがあるわけです。為替相場の合理的な運用ということが戦前においては行われていた。ところが今日はそれを行うことのできない状況下に置かれている。為替の差額をうまく運用して、輸出ではある程度欠損をしたかもしれぬけれども、別なそのさやとりの面において出血なり何なりを補填したという過去の実例がたくさんあるわけですが、そういうことについて一体どのようにお考えになつておられますか、それを伺いたいと思います。
  54. 水上達三

    水上参考人 御承知のように、日本の外貨ポジションというのは昨年非常によかつたのですが、また最近悪化の一途をたどつているという状態にありまして、非常に憂慮すべきものでございますが、そういうような日本の貿易の先行きの見通しから見ますと、輸入と輸出との為替の操作が貿易業者の手元でできるというふうなことはまず当分考えられない。しかしもしできれば非常にやりやすくはなる。現在そういうものが多少行われるとすれば、バーターというふうな面で行われているわけでありますが、これには為替は全然関係しておりません。要するに、両方の物資の相場が比率をつくつておるのでありまして、為替の操作というものは、余地もありませんし、実際何にも許されていないわけです。
  55. 坪川信三

    坪川委員長 この際、午前中の参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重なる御意見の御開陳をいただき、両委員会といたしましての今後の調査に資するところ大なるものがあると存じます。ここに両委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午前中の会議はこの程度といたし、午後は二時より開会いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時四十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  56. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  まず参考人より順次御意見陳述を願い、次に委員より質疑を行います。それではこれより参考人より御意見陳述をお願いいたします。全国購買農業協同組合連合会肥糧部長、森晋君。
  57. 森晋

    ○森参考人 ただいま御紹介いただきました全購連の森でございます。  私どもとしましてこの委員会におきまして、とりあえずお話申し上げたいことの一点は、国内需要数量、特にこの七月に終ります本年度の、今問題になつております硫安中心としました窒素質肥料需要がどの程度あるかという点でございます。この点は実は午前中来いろいろ御議論がありました、輸出を今後やつて行きます上につきまして、国内の農家の必要量をまず優先的に確保してもらうという建前から、この点が従来しよつちゆう問題になつて来たわけであります。国内のいわゆる有効需要の測定は、六百万戸の農家の買うものでありますから、この測定を的確にすることはきわめて困難であります。経済界の事情なり、あるいは農家のふところぐあいなり、そうしたいろいろな点が、この有効需要に響いて参りますから、幾らの実需があるかという見方が、なかなかむずかしい。むずかしいだけに、そこに常に輸出問題をめぐりまして論議が出て来るわけであります。そういう点で、私どもの考え方をひとつ申し述べさせていただきたいと思うのでありますが、実は農林省の統計によりましても、昭和二十五肥料年度、と申しますと統制解除されました二十五年八月から二十六年の七月までの一箇年の間に、いわゆる窒素肥料硫安に換算しますと、二百二十一万七千五百五十七トンという数量が使われたことになつておるのであります。これはその前年、すなわち統制をされておりました一番最終年度の、農林省が各府県に割当てられました、いわゆる割当配給量というものがありますが、それが二百十一万七千九百六十トンということに相なつております。従いまして、統制解除されました翌年におきましては、その割当量を約十万トン上まわりまして出荷がなされたわけであります。ところが翌年、すなわち二十六年八月から二十七年七月まで、この二十六肥料年度におきましては、百九十五万九千三百十四トンというような数量になつて、かれこれ二十万トン前後のものが落ちておるわけであります。さらに今年になりまして、どの程度消費があるかというような問題になつて来るわけでありますが、こうした統制の一番末期の、昭和二十四年、二十五年、二十六年、この三箇年間の様子を見てみますと、実は統制が終ります最終年度の、しかも四月から七月までの農家の買います価格、といいますよりも、その当時公定価格で、現在の地方卸というふうに考えられます値段が、五百八十七円七十四銭であります。六百円弱になつてつたわけであります。これは午前中藤山さんの御説明にあつたわけでありますが、補給金が二百円ちよとついておりまして、メーカーの皆さんとしましては、政府に補給金をもらつて高く売つて、農家にはそれだけ公団が安く払下げをする、こういう形になつてつたわけでありますが、農家の方から言いますと、とにかく六百円がらみの価格で手に入れておつたわけであります。それがなかなか統制の一番末期におきまして朝鮮事変が起りまして、いろいろ国内の経済状態もかわつて来ますし、それまで割当になつておりましたのが自由だということになつて参りましたために、ただいま申しました二百二十一万トンという需要があつたわけであります。この統制がはずれました直後の値段は、全購連メーカーの皆さんから買いました価格で、一番最初の価格が六百九十三円五十五銭ということになつておりまして大体地方卸としますと、七百円であります。統制解除のとたんの値段は、そこから始まつて来ておるわけでありますが、それが漸次上つて参りまして、二十五年の一箇年間におきまして、一割程度値段上つておるわけであります。そういう価格関係の中に二百二十万トンというものが消費されておつたわけであります。今度は統制がはずれましたその次の年の二十六年度に、これが百九十五万トンになつたということは、これを価格の面から見ますと、実はこの期間におきましては、統制のはずれました直後の状態からいいまして一二割がらみのものが—これは一年間でなくて、一昨年の八月から昨年の今ごろまでに、三割ぐらい価格が急上昇したわけであります。ちようど去年の今ごろと思いますが、農林委員会におきまして、藤山さんが業界の代表者として、硫安一俵千円ということが非常に議論されましたときに、いろいろお述べになりましたが、千円の相場が実は昨年のちようど今時分ごろに実現したわけであります。そういうふうに価格が急上昇しまして、千円を越えるというような段階になつて参りましたから、農家の購買力は逆に縮小して行くというような形をとらざるを得ない方向に向いて行つたと私どもは確信しているわけであります。それから三月以降、需要が非常に減退して行きましたから、価格の方におきましても、漸次反落に転じまして、実はこの肥料年度の始まります昨年の七、八月時分におきましては、一番相場がつつ込みましたのは、八百五十円程度まで落ちて参りました。そういうふうなことで、統制解除の第一年目は、価格が年間を通じまして一割くらいの上昇過程で二百二十万トンという数字が出て来たのであります。第二年目におきましては、急上昇がありましたために、百九十五、六万トンというようなところにとどまつたような経過になつておるわけであります。ことしはすでに肥料年度としましてはちようど半分過ぎまして、今後七月までにどの程度のものが出るかということが、今われわれの方におきましては討議の材料になつておりますが、私どもの考え方としましては、今の農家の手持ちのぐあいを的確に一戸々々調べるというわけに行きませんから、大体われわれの係なり県の連合会の係官が町村巡回の場合に、単協の倉庫等を見ました場合の在庫ないしは農家の手持ちぐあいを調べますと、非常に少い、余分な数量はないわけであります。そういうふうな点から考えまして、今年の需要を測定しました場合には、私どもとしましては、窒素肥料全体としまして、硫安換算二百十五万トン程度のところが大体中心線になるのではないか。もちろん農家一戸が何らかの状況によりまして一俵を先買いをするようなことになりますと、六百万の農家ですから六百万かますということになりますし、トン数にしますと二十四、五万トンという大きな動きになります。一つずつはきわめて小さなもので、庭先にころがすかころがさぬかということは、農家にとつては大したことではありませんが、しかし何らかの経済上のシヨツクがありまして、一俵ずつ農家が買うということになりますと、トータルとしましては二十数万トンの響きになるという点を、一応御記憶願つておきたいと思います。そういうふうな特別な衝撃がなくて、今年の需要見通しという点をわれわれの手元で検討しました場合には、窒素肥料総体としまして二百十五万トンが大体中心線になる。その上下五万トンくらいのところが限界じやないか、こういう考え方を持つわけであります。これがまず第一点でございます。  第二点として申し上げたいことは、これも今後いろいろ論議になつて来る中心点でありますが、先ほども水上さんなり藤山さんからお話がありました通り、輸出の対象になりますいわゆる東南アジアと申しましても、実は朝鮮なり台湾に出て行く品物が多いわけであります。もちろん今度インドに出しましてこうした大問題を引起したわけでありますが、数量の大部分はその二箇所が中心になつて来ようと思います。ところがその二箇所とも、日本国内の気象事情とそう極端に違うわけではありません。また作物も大体水稲なりかんしよが中心でありますから、これまたそう違つた作物があるわけではないのでありますから、施肥期もおおまかにいつておのずから同じ期間ということが言えるかと思います。そういう点からしまして、生産量がどんどん増大して行きまして、輸出相当量認められて行くというような事態が当然今後来るだろうと、われわれは想像もし期待もしておるわけでありますが、その場合に、国内の施肥期と国外の施肥期とが重なりますから、従つて実需期のそうした点に対する操作ということが非常に問題になつて来るわけであります。たとえば前段申し上げますように、年間の窒素質肥料の消費の推定を、たとえば本年度二百十五万トンというふうに考えました場合に、年間を通じての消費量を、秋肥なり春肥というふうにわけまして、施肥期中心にものを考え、さらに外国に出て行きますものも、外国の施肥期もまたそれに重なることになつて来ますと、この間の需給をどうとつて行くかということが非常に問題になり、また価格関係からいいましても、これも先ほど水上さんが指摘されましたが、インド輸出は非常に失敗であつたというような商売上の話をされておつたわけでありますが、とにかくそういう需要期需要期関係で、そこに非常に波動がある。これが今後いろいろ施策をやります場合に、やはり配給上の大きな問題点になつて行くわけであります。そこでそういうものを考慮して、いわゆるランニング・ストックといいますか、潤滑剤としましての在庫をどの程度つて行けばいいかという問題になつて来るわけでありますが、この最盛需要期におきまして、少くともわれわれ国内におきましては、生産量の二十日分くらい、まず大体十万トン程度のものは最低として確保されておきませんと、輸出国内との出荷の競合によるいろいろの困難が今後起つてくるのではないか、かように考えておるわけであります。これが実は今までも問題になりましたし、今後も引続いて問題になつて来ると思いますから、特に国内需要という点につきまして述べたわけであります。  それから安定帯価格の点につきまして、いろいろ世間をお騒がせしたり、また午前中いろいろ論議があつたようでありますが、私どもはその当事者の一人でございますから、簡単に経過に触れたいと思います。昨年のちようど今ごろ、先ほど説明しましたような経過で、千円相場ということでたいへんな騒ぎになりました。これは一面におきましては電力が極端にまずくなり、あるいは電力料の値上げの問題とか、鉄道運賃の値上げの問題というようなものが重なりなりしまして、市場が非常にあふられたわであります。それで千円相場が出るということから、輸出の点につきまして非常にこれがまた問題になつて来たわけであります。そうこうしておりますうちに、先ほど申しますように、今度は三月から反落の段階に入つて来まして、七月、八月の候におきましては八百五十円程度まで値段が下るという逆な場面になつて来ました。そういうことになつて来ますと、メーカーのいわゆる在庫というものは当然その段階においてはふえておるわけでございますから、輸出要請というものがたいへん強くなつたわけであります。私どもとしましては、何さま半年前に千円相場ということで非常に議論なつた問題でありますから、この輸出に対しては相当慎重を期してもらわないと、地方の配給に対して責任が持てなくなる状況がありますから、お役所の方に対しましても強く要望をしたわけでありますが、しかし現に余つているものを国外に出さぬという法はない、こういう結論から、そこにとられました対策が二つあつたわけであります。一つは全購連メーカーの在庫を十五万トンほど肩がわりをしまして全購連が在庫するということ。それからもう一つは、これも藤山さんの御説明がありましたように、政府の方で十五万トンほど輸出のわくを追加なさるということにして、国内価格に対しましては両者の間で何らかの安定線をきめて、輸出をしてもそのはね返りが国内に来ないようにという趣旨から、官庁あつせんのもとに、安定帯価格というものの折衝に入つたわけであります。前段の全購連が十五万トン肩がわりをするということは、メーカーの在庫が非常にふえましたから、その金融上のお手伝いをするというのが一点。これがたまたま当時農林中金におきましても資金の端境期で金がありませんでしたから、これも政府の非常に力強いあつせんによりまして、大蔵省からたしか三十四億と記憶しておりますが、資金のあつせんをしていただきまして、それを農林中金に指定預金をしていただいて、その金を私どもが借り受けて、それでメーカーの皆さんの在庫を十五万トンほど買い取つたわけであります。これが金融面で協力をしなければならぬという場合に入りまして、それに協力したという点でありますが、しかしわれわれとしましては、そういう意味だけでなくて、その輸出というものに、積極的とまで行かないまでも、ある程度官庁として勇敢に判こを押されるようなことになつて来れば、どうしても全購連みずからがある程度の在庫を持つていないと、万一先ほど申しますような仮需要でも起つて来ました場合には、それに売り応じて行くだけの余力がどこにもない。こういうことになりますととんでもないことになつて来るわけであります。そこでわれわれの方としましては、一面はメーカーの皆さんのお手伝いになるし、かたがたわれわれとしては手元に持つてつて、万一市価が急上昇する場合があつたらある程度発動して市価を冷却する、こういう点を考えまして協力というか、対策をとつたわけであります。もちろんそれだけでは事が済みませんから、そこで安定帯価格議論に入りまして、これも官庁の方のいろいろのあつせんのもとに折衝をしたわけであります。そういうところから安定帯価格というものが生れておるということをお含み願いたいと思います。安定帯価格の折衝は実は八月から始まつたわけでありますが、結論が出ましたのは十月であります。二箇月も実はもんだわけであります。なかなか速急にきまらなかつたのは、これまた藤山会長さんのお話にございましたように、業界の方としましては上限を九百五十円にしてくれという意見が非常に強かつた。私どもとしましては、下限の八百七十円というのは高過ぎるから、これを八百五十円か六十円程度にしてくれ、こういう話でかなりもんだわけであります。ところがそれが一応だんだん時間も、日にちも迫つて参りましたから、ここらでということで手を打ちましたのは九百三十円と八百七十円であります。これは原価採算の上に立つてこうだというようなことの結果によつてできた価格では実はないのでありまして、当時の市場の実勢を基本に置きまして両者で話合いをつけたということであります。従つてそういう折衝にたいへんな時間がかかつたことになつております。もう一つ時間のかかりました理由は、当時としまして大体国際価格は八月ごろまでは国内価格をやや上まわるような状況でありましたけれども、いろいろ国外の情報等を聞いてみますと、かなり安くなつて行く傾向が出ておりました。そこで私どもとしましては、国内にそういう安定帯価格をしいて両者協議の上でうまく円滑に運営して行きたいと思つておりましたけれども、何さまそういう国際環境のもとであるから、万一国外から非常に安い値段が出て来て、国内の方でもそれに対抗上売つて行かなければならぬ、いわばダンピングせざるを得ないということになつて、それもわずかな価格つた議論の対象にならぬが、相当値開きがあるということになりますと、やはりこれは腰だめにつくつた両者の合意による価格でありますから、そういう状況がありますれば再協議しなければならぬということ、またメーカーの方でも現在のような国際情勢であるから、いつ鉄砲が鳴るかわからぬような面もあるわけであります。そういう点から、そういう基本がかわるようになつて来た場合には、これまた再協議しなければならぬというような了解のもとにつくつた価格であるわけであります。そういうことでこの十月に一応妥結しておるわけであります。妥結をしましてそう日も経たぬうちに、実はインドの入札が始まりまして、インドの入札に対しまして、メーカーの皆様としてはどうしても市場価格を生むためにこれをとりたいというようなかなりせつぱ詰まつた気持で積極的に入札をなさつたようであります。その前に台湾の入札がありまして、それに失敗されたような経過もあつて相当思い切つて出されたようでありますが、それがたまたま六百二十一円でございますか、四十六ドルというようなことにサなりましてたいへん問題が大きくなるような契機をつくつたわけであります。私どもとしましては国内で出しております、両方納得の上でつくりました価格が、そうした輸出のダンピングの価格の反映としまして、非常に農家を強く刺激するようなことになつて参りましたから、これに対しまして再協議をしまして、妥当な価格に引下げるようにというような話をする段取りにいたしまして、そういうふうな方向に持つて来たわけでありますが、しかしメーカーの皆さんとしましても、先ほどいろいろ御説明がありましたような観点から、ただちにそれに乗つていただくわけには行かなくなりました。われわれの期待としましては、両当事者だけでこの問題の話をつけるというようなことにするには、あまりに問題が大き過ぎる。また値幅もとにかく三百円以上も開いたのですから、なかなかその歩み寄りというのが困難ですから、できたら肥料審議会なりあるいは肥料対策委員会というような、第三者を交えた、あるいはそれぞれの権威者の出ておられる、そういうふうなところで十分検討していただいて、その結果、たとい両者に不満がありとも、それに従つて行く、こういう考え方で行かざるを得ないのじやないかということになりまして、私どもとしましてはこの対策委員会が一日も早くでき、あるいはまた価格問題を一日も早く勧告していただく時期を、実は昨年の暮れ以来待つてつたようなわけであります。
  58. 坪川信三

    坪川委員長 ちよつと森君に申し上げますが、予定の時間がかなり経過いたしておりますので、簡潔にお願いいたします。
  59. 森晋

    ○森参考人 そういうわけで大体現在まで来たわけでありますが、先ほど来問題になつております点の、私の方の側からの点を一言触れさしていただきます。  実は四者会談で、一応価格の原案ができたということで、農林省の方からこの二十四日の日にお呼出しがありまして、私どもの方としましては会長が出かけて参りまして話を承つたわけでありますが、非常にたくさんの構成団体がありますし、また友誼団体もあるわけであります。たいへん問題がやがましくなつておりますから、帰りましてそれぞれ関係の方と協議をいたしましたが、団体の中には実はこのあつせん原案なるものに対しまして、非常に不満をお持ちのところもあるわけであります。私どもといたしましては、すでに昨年の暮れ以来今日まで話がつかずに来ておるわけであります。話が非常に混乱をいたしまして、今後延びるとういことになりますれば、今後は正式にぶつかりまして、いろいろまたそういう意味からも問題を発生する余地もあるわけであります。問題の解決をますます困難にする傾向もありますから、全購連としましてはこの新安定帯価格に対しましては了承するという返答を、実は翌二十五日の日に回答いたしたような経過になつております。なおその後さつそく折衝に入るつもりであつたわけでありますが、そのあとの経過は皆様方新聞ないしは午前中の論議で十分出ていると思いますから、説明を省略さしていただきます。そういうことで現在まで一応来ておる点をお話を申し上げまして、私の話を終ります。
  60. 坪川信三

  61. 千石虎二

    ○千石参考人 ただいま御紹介いただきました農業協同組合の千石であります。  午前中、通産農林、両委員方々の御発言によりまして大体私が申し上げたいと考えておりました問題点は出たわけでありますが、一応農民並びに農業協同組合側の立場に立ちまして、当面の春肥価格をどうするかという問題に重点を置きまして簡単に意見を申し述べたいと思います。  昭和二十七年の米価は、御承知の通り七千三百円でございます。超過供出の奨励金を加算いたしましても八千円ないしそれをわずか越す程度でございます。米の生産費は一体幾らであるかという問題は、これはいろいろ議論があるところでございます。しかし農民の立場におきましては、数年来生産費を基準として米価を決定しろということを強く要求いたしておりまして、それに対する詳細なる調査も持つております。それは昨年の農民大会におきましても、また一昨年の農民大会におきましても、国会その他に対しまして要請しております。一口に申しますれば、一万円というのが農民の米価に対する主張の常識でございます。昨年の米価におきまして、政府は一部一万円というかけ声を出されましたが、これはごくわずかな数でございますから、全体を平均いたしますならば八千円前後、八千円をやや越すというところが現在の買上げ価格でございます。従いまして農民から見ますならば、現在の米価は非常に不満でも、国民経済立場から農民はもちろん生産をいたし、またみずから生活するために米の生産をやめるわけに参りませんから、生産をいたして供出に応じておりますけれども、しかしながら現在の米価が非常に不満であるということは、はつきり申し上げなくてはならぬと思います。  次に肥料と米の価格関係でございますが、これも大ざつぱに、詳細のことは省略いたしまして申し上げるならば、昭和十五年におきましては米一斗で硫安が十貫目買えたわけであります。硫安十貫目より米一斗の方が高かつたわけであります。現在は米一斗で硫安が八貫目くらいしか買えないわけでありまして、そういう関係から見ましても、農民の常識といたしまして、現在米よりも肥料が高過ぎるということが言えると思うのであります。これは米だけでなくて、その他果樹とか蔬菜等をとりますならば、米よりもつとより多く肥料の方が高過ぎるという数字が出るわけであります。肥料価格を考えます場合においても、もちろん肥料生産費であります、いわゆる生産の原価というものが議論になるわけでございますが、不幸にして農民側としては肥料の原価をつかむだけの材料なり、あるいはそういう力を現在持つておりません。また政府自身も、はなはだ遺憾なことでありますが、現在的確な生産費をつかんでおられるとは言えないわけであります。先般のメーカー側の御発表によりますと、大体九百三十四円であります。これが原価であるということを、肥料対策委員会でそういうことが申されておるようであります。ところがその原価でもつて、けさほどからお話がありましたように、出血輸出では大体六百円ないし七百円でもつて輸出をされておるということで、これは非常な出血であります。また国内向けの価格にいたしましても、二十七年度におきましては大体九百円から八百八十円という価格国内に売つておられる。また最近の価格にいたしましても、八百八十円ないし八百九十円というところで売つておりますから、これを見ますと肥料メーカー出血輸出であるだけでなくて、国内に対しても非常な出血をやつておられるということは、われわれ常識で考えるならば、そう判断せざるを得ないのであります。しかもけさほど御指摘のありましたように、現在肥料会社の—十八社でありますが、配当は大体二割四分というものを継続しておられます。もちろん二十八年度の三月の決算はわかりませんけれども、しかしながら伝え聞くところによりますと、最近各肥料会社におきましては、増資を計画しておられる。増資を計画するということは、当然これに配当が伴うということが考えられるわけであります。そうすればその配当分だけは本年度においてもさらにそれだけ利益があるということを予定せざるを得ないわけであります。こう考えますと、メーカー側が発表される九百三十四円と、現在のいわゆる出血した国内並びに国外に対する販売と現在の肥料会社の利益を考えますならば、化学肥料でありますから、化けもののようであるかもしれませんけれども、判断に苦しむわけでありまして、いかなる方法でもつて会社の経営が行われておるか、従つて九百二十四円という原価に対しても大いに疑問を持たざるを得ないのであります。  以上のような状況でございまして、農民といたしましては、米の生産について相当の負担がかかつておる。また常識的に考えて、肥料と米を比べても、現在肥料の方が高過ぎる。しかも会社の経営状況と申しますか、主張される生産コストを考えますならば、われわれは会社の発表される生産費に対して多くの疑問を持たざるを得ないわけでありまして、こういう観点に立ちまして、現在の肥料が農民の常識といたしまして非常に高い。もつと安くする余地があるのではないかということを考えざるを得ないのであります。先般来肥料対策委員会が開かれまして、それに並行いたしまして国会におきましては議員の方々のお骨折りによりましてまた通産農林両省の御努力によりまして、一応安定帯価格の引下げを見たわけであります。しかしながらこの程度安定帯価格の引下げでは農民といたしましては決して満足ができない。これで納得するというわけには参らないのであります。  なおこの際念のために申し上げたいことは、農民といたしましては、ただ単に肥料を引上げてくれ、それによつてただ米を安くしたいというだけでないのでありまして、申すまでもなく、食糧の増産ということが日本の経済自立の重要な要件である。しかも食糧を増産することによりまして、それだけ輸入食糧が減らされるならば、工業の振興にも貿易の振興にも役立つわけでありまして国民経済全体の立場から見まして、この肥料の問題について、また米価との関連におきまして政府の適切なる施策を要望しておるわけでございます。また工業の発展、貿易の振興は、これはもとより望むところでありますが、しかしながら日本現状からいいまして、少くとも農村においてやはり人口の半ば近いところは、これはよかれあしかれその中に包容して食べさして行かなればならぬというのが実情でありますから、そういう場合におきまして、農民生活の安定ということも当然国の政策としては考えらるべきでありますので、そういう見地からもこの肥料の問題について農民の要求を真剣に検討し、取上げていただきたいと思うわけであります。  以上のようでありましてそれでは具体的にどういう対策があるかということになりますと、これはそれぞれ統制経済の立場、あるいは自由経済の立場等いろいろ意見があろうと思いますが、当面の現実の問題といたしましては、現在の肥料対策委員会、ああいうのをもつと法制化して、それによつてほんとうに生産費を把握するような法的な措置を講ずることも一つの方法ではないかと考えるわけでありますが、しかしながらなかなか従来の統制経済の場合におきましても、工業生産費を政府が法律できめてみましたところで、なかなか的確なものはつかめないのが今日までの例でございますので、これははなはだとつぴな考えかもしれませんが、一つの考えといたしまして、政府相当思い切つた助成をして、そして農民の資本と政府の助成によつて一つの肥料会社をつくつてみたらどうか。これは私の単なる思いつきでありますが、化学工業が単純なる肥料工業でなくて、いろいろ広汎な産業であることは承知しておりますが、何らかそういうふうな農民資本の参加した、あるいは全購連諸君になりますか、あるいはその他の形体をとるかもしれませんが、そういうものの参加したところの一つの肥料工業をやつてみて、そこにおいて生産者側、消費者側の方もそういうふうな経験を持つということによつて、お互いに肥料工業そのものに対する理解を相互に深めることも一つの考え方ではないかと思うのであります。いずれにいたしましても、結論といたしまして、農民としては政府並びに国会の御努力によりまして、先般安定帯価格が下りましたけれども、これではまだ非常に納得できないということを申し上げたいのでございます。はなはだ簡単でございますが、考えましたところの要点だけ申し上げて意見にかえたいと思います。
  62. 坪川信三

  63. 石井英之助

    ○石井参考人 私は午前中のいろいろお話しのありましたことを聞いておらないのでありますが、大分今までにいろいろな御議論が出ておるようでありますから、申し上げることもなく、あるいはきわめてあたりまえのことを申し上げる結果になるかと思いますが、考えておりますことを率直に申し上げまして参考にしていただきたいと思うのであります。私は現実の取引の問題には直接の関連を持つておらないものでありますから、ごく筋立つたことを申し上げるにとどまるかと思いますが、この点も御了承を願つておきたいと思います。現在の肥料の問題は、申し上げるまでもなく、国内における農業生産の確保ということと、それから肥料の供給確保ということとは不可分の関係に立つておるわけでありますから、農村肥料工業界とはお互いに相互依存の関係になつておる。どうしてもお互いに堤携協力して行かなければ相互に立ち行かぬ関係にあることは言うまでもないわけでありますが、それと同時に肥料を海外にでき得る限り多く輸出をする、こういうことが国民経済全体の立場からいつてきわめて望ましい問題であるということは論のないところでありますから、結局この三つの関係をいかに合理的に調整するかということが肥料問題解決の目標でなければなるまいと思います。農村に対する供給を確保するためには、国内における肥料生産を確保する、それが企業として健全に成り立つようなものにして、国内における供給をしつかりさせるという問題と、それからその生産物をさらに海外に輸出をする。この三つのものをいかに合理的に調整をするかということが現在の肥料問題解決のかぎであろうと思うのであります。ところが海外に輸出しまする価格が、国内価格よりもはなはだしく低い価格でなければ輸出ができないという現象が起りましたことによつて、この三者間の調整が今の状態のままでは確保することができない、ここで合理的な調整が破綻をしたことを示すものであろうと思うのであります。ともかく三百円というような相当大きな開きのある価格輸出をしなければ輸出ができないということは、何らかそこに調整を必要とする一つの争うことのできない現象であろうと思うのであります。この問題を中心にいたしまして、その次に漸次起つて参りますものが生産費の問題であり、生産費の問題に関連をいたしましてはたして日本硫安工業というものが、輸出産業として成立し得るものであるかいなかということを厳密に検討をする必要がここに起つて来たのだと思うのであります。ところで日本としては硫安のごときものが海外に輸出せられるということは、きわめて経済上望ましいことでありまするから、何とかしてこの硫安工業輸出産業として成り立ち得るものにいたしたいということが考えられるのは当然なことでありまするが、そのためにはしからばいかなる方法をとるべきであるか、またいかなる方法をとればそれが可能であるか、こういうような問題がだんだんとここに出て参ると思うのであります。これらの問題についての見通しを立てるということが当面の問題の解決策であると同時に、将来にわたつて日本肥料問題解決のかぎでなければなるまい、かように思うわけであります。この点はあらたまつて申し上げるまでもなく、もう当然のことと思いますが、そういう前提に立つて現在ここで問題となつておりまする事柄を考えてみますると、第一は生産費の問題と思います。この生産費の問題は、ただいまお話がございましたが、非常に外部からは御承知の通りつかみにくい問題である。つかみにくい問題ではあるけれども、結局この生産費の問題をはつきり解明しなければ、輸出産業の問題にしても、それから国内価格輸出価格との調整の問題にしても、何ら妥当なる解決を期することはできないであろう、かように考えるわけであります。そしてこれは関係者が相互に誠意を持つてと申しますか、その気になつてやりまするならば、必ずある程度の解決は期し得られるものと思うのでありまして、かつて重要肥料統制法が施行されておりました時代には、この生産費問題について、関係者が研究をいたして相当のところまで検討が進んでおつたのでありますから、あの過去の経験から申しましても、これは努力をすれば必ず解決の端緒を得るもの、かように考えるのであります。最近生産者の工業会社において、生産費なるものの御発表があつたようでありまするが、現在の実情について私は知識を持つておりませんけれども、両三年前、きわめて近い過去におきましても硫安生産費については各社によりまして相当の懸隔があつた。さらに突き進んで考えてみますれば、工場によつてその生産費が相当の開きがあるということが現実の事態であつたわけであります。この点は現在においてもおそらくはやはり継続をしておるのだと思いまするから、硫安生産費はトン当り幾らであるといつたような、いわば荒つぽいことをもつて具体的な問題の解決をつけるわけには行かないのじやないか、やはり各社別の生産費というものをすつかり洗つて、そこで真剣に取組むということにならなければ、実際役に立つ生産費というものの研究にはならないじやないかという感じがいたすのであります。しからば現実にどうであるかということはわかりませんけれども、そういう意味においてこの生産費問題というものはもう少し突つ込まなければならないと思うのであります。これに関連をいたしまして、日本硫安工業がその立地的条件その他から考えまして優に海外の硫安工業と競争力があるかどうか、つまり輸出産業として成り立つかどうかということの基礎条件をはつきりとこの際見通しを立てるということは、結局この生産費の問題にまた帰着するわけでありますが、その生産費を下げるために、いわゆる事業の合理化をするために、国としてぜひやるということになりますれば、国家として相当なる保護を与える必要があるという結論がおそらく出て来るのではあるまいかと思われるのであります。その辺は具体的な検討の上でなければ何とも申せないわけでありますけれども、およその見当としては、相当の助成的と申しますか、保護的の措置を必要とするであろう。輸出産業として生産費逓減のために、いわゆる合理化のために、国家が相当な力を入れるということになりますならば、これは全国民的の立場において、いかなる理由で、どういう事情のためにそういう国家的の保護を与えなければならないかということを、明確にいたすことが国家としては当然の態度である。またそうでなければなるまいと思うのであります。そういたしますと、結局そういう保護的な措置の必要なるゆえんというものは、これもまわりまわつて生産費の問題に帰着をするのでありまして、生産費がかくかくであり、また外国の硫安はどういう状況であるからして、輸出産業として成り立たせるために、これこれの仕事をしなければならぬのだということになつて、結局生産費を根拠としたる明確なる説明をしなければならぬ。そういう点から考えましても、やはりここに生産費の問題というものがどうしても中心にならなければならぬ。そうしてこれたさわらないで適当なる解決策を求めるということは、とうていできないことではないかと考えられるのであります。そういうある一つの工業、これは必ずしも肥料工業と限りませんけれども、ある一つの工業が国家的の見地に立つて保護を必要とするものであるというならば、国民全般に対してその保護が妥当であるというゆえんを理解せしむることが必要である。これは当然のことであろうと思います。そういう特権が与えられるについては、必ずそれに伴う義務を当該の産業が持たなければならぬと考えられるのでありまして、そこにまた生産費問題というものはどうしてもさわらなければならぬ問題になると思うのであります。その点がだんだん明確になつて参りますならば、農村の側から考えてみましても、輸出価格国内価格とが現在のごとき大きな懸隔があるということは、どうしても十分に理解せしめるだけの措置をとらなければなりません。何も説明をしないで、これでしかたがないんだということは、どうしても無理がそこに起つて来て、いろいろな紛糾を生ずると思いますから、納得させなければならぬ。その納得させる方法というものは、やはり生産費の問題で、それをきわめて公明に分析するという方策がやはり関連すると思うのであります。そこで生産費の問題だけをいたずらに申し上げるようでありますが、肥料輸出ということは、非常に望ましいことでありますから、ぜひ実現をしたいのでありまするけれども、それにはいかなる方法をとれば可能であるか、肥料工業合理化する方法についての具体的な措置というものが、ここにあわせてとられることが必要である。それが伴わない解決策というものでは、農村の消費者の側から現在の事態についての了解を得ることが非常にむずかしいと思うのでありまして、いかなる方法によつて、いつになればこういう事態が解消せられるかということについての大よその目途を出すことがぜひとも必要であろうと考えておるわけであります。はなはだわかり切つたことのようなことを申し上げて恐縮でございましたが、結局そういうことが今後の問題解決の大筋ではあるまいか、またそうすべきではなかろうかというふうに感じておりますから、その感じておりますことを率直にお話を申し上げて御参考にいたしたわけであります。結論としては、結局ここで何らかの国家的な統制措置が必要になるだろう、そうしなければ、ただいままで申し上げたような見地に立つての解決策というものは生れないだろう、その解決策は、結局国家として何らかの統制的な措置をとる、それがいかなる方法であるかということが今後考うべき問題であるのではなかろうか、かように考えるわけであります。
  64. 坪川信三

    坪川委員長 以上をもちまして参考人よりの御意見陳述は終了いたしました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。永井勝次郎君。
  65. 永井勝次郎

    ○永井委員 肥糧部長さんに二点ほどお伺いしたいと思います。  在庫の底をつくのは大体三月ではないか、輸出が起つて来るのは五月、メーカーの方では三月ごろからその準備に入らなければならない。そうすると、在庫の一番底と輸出の起る条件とが重なつて来る。そこに、需給の調整の上に非常な困難があるのではないか、そこに価格がつり上つて行く条件があるのではないか。ことしの場合そういう条件が出ても、国内需要の面において支障がないかどうか、この点を一つ。  それから商社側の方へ流して行く場合に、全購連へ流すよりは若干高い、そういうようなことで、全購連への流し方が少くて、商社側への流し方が多いというような事実が出ておるといううわさを聞くのでありますが、そういう事実があるかどうか、この二点をお伺いいたします。  それから研究所長さんにお伺いしたたいのですが、これはただいまのお話のように、原価計算がはつきりわからないで、高い安いということで水かけ論をいくらやつて行つたつて解決するものではございませんし、またことしの春肥価格の問題は一応こういう形で納まりましても、これが正当なのか正当でないのか不明確なままに、ただ話合いをつけたということで参りますと、毎年同じことの繰返しであります。ばかが集まつて評議をするような十もので、審議会をつくつても、議会においても、業者同士の話合いにおいても、問題の核心には全然触れないで、まわり遠いなぞのような話をして結末をつけてしまう。こういうことではいけない。われわれがこういう問題に取組んで行く上は、やはり科学的に問題の所在を正しくつかんで持ち上げて行かなければならないと思う。こういう意味で、現在のような自由経済のもとにおける私企業的な性格のものでは、こういうような公共的な性格を持つ産業の構造としては不適当ではないか。もつと民主化した、社会化した国家管理というような線で問題を解決して行く以外にはないのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、これに対する所見をひとつ伺いたい。
  66. 森晋

    ○森参考人 二つ質問があつたわけであります。第一点は、三月、四月のいわゆる実需期に在庫の底をつく、またそのときはこの次の輸出を準備する時期だからさらにきゆうくつになるだろう、そういうことはないかというお話であります。そういうことがあろうと思います。現在あろうと思いますのは、この次の輸出の準備ということよりも、むしろ今までに許可されております輸出の量というものが五月までに逐次出て行くことであります。それと、これから必要な国内需要量の関係が問題になつて来て、六月から七月に行きますと、今度は次の輸出の問題が出ますので、その時期におきましては、国内は漸次不需要期に入つて来ますからある程度の調整がつく。従つてわれわれといたしましては、青、四月というような月におきましては需給逼迫の懸念を持つておるわけであります。この点につきまして、実は同じ窒素肥料としましても、硫安、アンモニア系、尿素でありますとか硝安、そういうもの、それから石灰窒素というのが窒素肥料の全体でありますが、その品目別のバランスというのがあるわけであります。もちろん農家にしてみますれば、硫安が高くても石灰窒素が安ければ石灰窒素を買うことになりますけれども、その品目代替というものは急速に簡単にできるものではなくて、二箇月なり三箇月という時間があつて初めて実現されるわけであります。一つの品物が不足して来ますと、それが自然に運動を起して平行線をたどつて行く。あるいはその間にそういう逼迫事情が価格現象の上へ問題を持ち来す、こういうことになろうかと思います。そういう点で、そういうものを全部ひつくるめて考えますと、需給はそう心配したことはないと思いますが、個々の品目から考えてみますと、多少そういう懸念を持つております。私どもとしましてその対処方法としましては、大勢の農家が不足だがらといつて、一ぺんに皆殺到するような形になりますとますますそういう事態を引起しますから、全購連としましては、各農協、農家に呼びかけまして、予約注文によつて共同計算制というようなことで、全体の人にできるだけ予約申込みをしてもらつておりまして、急ぐ人から順次改札口を出てもらう。こういうふうな行き方でやつて行きますれば、その懸念はかなり減るということで、実は今全国的にそういう運動を起しておるわけであります。こういうことによつて対処しようと思つております。  それから第二番目の、商社の方の値段はよくて、全購連には値段が安い、従つて品物を全購連によこさないようなメーカーがおるのではないか、そういううわさがあるというお話でありますが、今まで実際の事実としまして、日常業務を通じまして、私どもの見ましたところではそういう現象は起つておりません。現在価格はきまりませんけれどもメーカーの皆さんと話をしまして、昨年の暮れ以来いわゆる概算払いというようなことで、品物を各メーカーから円満に出してもらつております。従つて現在のところまでは、そのために混乱を起すというような様相は一つも出ておらぬわけであります。た今後この問題がますます紛糾しまして、だんだん問題がやかましくなつて来ますと、今後どういう事態が起るかわかりませんが、なるべくそういう事態の起らぬように協力してやつて行くつもりでおります。
  67. 石井英之助

    ○石井参考人 主義としてどういうやり方がよろしいかというような問題等は別にいたしまして需要の問題は前々から申し上げたような関係で、何らかの調整を必要とする問題である。ことに輸出の問題が出て参りまして、一層調整の必要が増して来たのじやないだろうか、こう考えますので、その調整のためには、やはり第三者的な統制措置を必要とするのではないか。そうでないと、どうも始終ぎくしやくして物事の運びが円滑を欠き、そのために、全体として考えてみるとそれぞれの面が決して得をしない。ある一時的には一方がよかつたけれども、その次のときにはほかがばかを見るというようなことになりまするから、そごはロングランに考えて三者がともに並立し、うまく行くような調整措置、そういう意味における何らかの統制的措置が必要ではないか、こういうふうに私は考えておるわけであります。国家管理的な方式とか、自由経済的方式とか、そういう問題とは別に、きわめて具体的な問題としてさように考えるわけであります。
  68. 坪川信三

    坪川委員長 井上君。
  69. 井上良二

    ○井上委員 二点ほど伺いますが、一つは、全購連が取扱つております取扱い数量は全体の何パーセントくらいで、あとの何パーセントくらいはいわゆる商社が扱つておるか、それが一つ。それからもしただいま安定帯価格がきまり、各社とのこれからの取引についての話合いがきまりました場合、全国的に春肥の供給に対して支障はないのか、あるのか。たとえば貨車まわりその他において準備は十分できておるというのか、この点を伺いたい。  いま一つは、全購連の取扱います卸価格、たとえば安定帯価格最高限とかりに押えまして、それから末端の農家が手に入れます間の口銭というものはどれくらいになつているか。いわゆる中間マージンが、公団当時の中間マージンと比べてどうなつているかということを、おわかりでしたら御説明願いたい。
  70. 森晋

    ○森参考人 取扱いの割合でありますが、これは年間を通じますと、まず大体半々というふうに御判断いただけば、そう大きな狂いはないじやないかと思います。これは現状でありますが、もちろん時期によりまして、麦肥の場合、春肥の場合、あるいは需要期と不需要期、それぞれによりまして比率というものはおのずからかわつて、大体今までの経過としてはこの線を上下して来ておるわけであります。  それから二番目の、当面これから先、春肥の間円滑に行くかというお話でございますが、生産の点につきましては、各会社個別の詳細の点はわかりませんが、一月の生産実績は、計画に比べましてややふえているようでございます。二月はどういうふうになりますか、私どもとしましてまだ十分に把握しておりませんが、しかし協会の方からいろいろ想定をお出しになつているところを見ますると、当初きめておられます生産計画を若干上まわるようなプランも出ているようでございますから、それが事実としますれば、大体何とか切り抜けがつくのじやないか。もちろん、貨車まわりその他の関係で不円滑の場合があり得るわけでありますが、現在のところ、そうした支障が今後起ろうとは想像されません。ただ、御承知のように輸出が今までにきまつておりますのが、本肥料年度に入りまして全体で四十四万トンというようなことになつて来ております関係上、全体としますれば、先ほど申しますように、大体バランスがとれますが、個個の品目別の問題、それから国内の春の需要との重なる場面で、買う方で一時に殺到して買うというようなことをしないで、計画的にやつて、しかもこれがメーカーの皆さんと協力ができる態勢で行きまするならば、私どもとしては円滑を欠くようなことはなくて済むのじやないかというふうに考えております。  それから三番目の中間マージンでありますが、これは平常の市況の場合の標準は、大体私どもの考えとしましては、全購連段階におきまして、一かますにつきまして五円中心、それから県の段階におきまして十円中心、単協の段階におきまして、これは小売ですが、二十円から二十五円中心のところじやないかと思います。公団当時の手数料に比べまして、もちろん個々のいろいろ扱います単価そのものが四割以上上つて来ておりますから、そのときの手数料に比べましてただちに同じであるとは言えませんが、しかし大体通常の場合はそういうことになつております。もちろん自由経済でありますし、漸次物がだぶつく段階でありますから、非常に競争は激甚でありまして、ときによりましては、この手数料は全然とらないで、いわゆる裸商売と申しますか、無手数料の配給をして行かなければならぬ場合もしばしばあるわけであります。
  71. 坪川信三

    坪川委員長 他に御質疑はありませんか。—他に御質疑がなければ、この際一言参考人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中本委員会に御出席くだされ、長時間にわたりいろいろと貴重なる御意見の御開陳をいただきましたことに対しまして、通産農林委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  通商産業委員会農林委員会連合審査会はこれをもつて終了いたし、散会いたします。     午後三時四十八分散会