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1953-03-03 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月三日(火曜日)     午後一時五十三分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 永井勝次郎君       大倉 三郎君    河合 良成君       首藤 新八君    中峠 國夫君       福井  勇君    福井 順一君       牧野 良三君    南  好雄君      生悦住貞太郎君    高橋 長治君       加藤 清二君    木下 重範君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦沢 大義君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         議     員 淺香 忠雄君         通商産業事務官         (重工業局航空         機課長)    井上  亮君         専  門  員 谷崎  明君     ————————————— 三月二日  委員有田二郎君及び久保田鶴松君辞任につき、  その補欠として河野一郎君及び田中織之進君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二日  火薬類取締法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三七号)  中小企業金融公庫法案内閣提出第一三八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  武器等製造法案内閣提出第三一号)
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日は、先日に引続きまして、武器等製造法案審議を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。生悦住貞太郎君。
  3. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 この武器等製造法案の目的というものが、どうもはつきりしないように思うのであります。それは先日来しばしば通産大臣は、この武器等製造法案成立によつて出血受注その他のものがなくなつて、非常に業界のためにはいいのだというお話でありますが、またそれとうらはらのことを言うのは、この産業を発展させ、育成させようとする気持はないのだ、ただ見守つているだけだ、こう言つております。こんな煮え切らないことはない。それを助成しよう、この仕事を大いに助けて行こう、そしてこれが輸出産業として、しかもこれにたよらなければならないといつたような今日の情勢下において、そういうたよりない話ではわれわれは納得しかねるので、この法案精神がどこにあるかをはつきりおつしやつていただきたい。あるいはこういう質問に対しては、それは実際は発展させたいのだが、これが軍備の方向に持つて行くかのごとく見られることが困るのだというような、つまらない、小児病的な、女学生的な考え方であるとするならば、これは大きな誤りである。どこまでも育成して、この仕事が完全にできるようにするのが、通産省としての建前でなかろうかと思います。これについて御答弁を願います。
  4. 小平久雄

    小平政府委員 本法案を御提案申し上げました趣旨があまりはつきりしない、こういうお言葉と拝聴いたしました。この点は、再三申し上げております通り現実武器生産が行われておるのでありますが、世上ややもするとこれが濫立の傾向にありまして、いわゆる出血受注といつたようなことも非常にやかましく論議されておることは、御承知通りであります。そこでこれをこのままに放任するということは、業界自体のためにも適当ではない。許可制度をしくことによりまして、生産分野等もこれを整理をいたし、確定をいたしまして、その間における無用の競争を排除いたして行く、そのことが業界のためでもあろうということであります。それからまた武器製造事業というものが、何と申しましてもいわゆる生産的な事業ではなくて、非常に消費的なものであるという点から申しまして、あまりこれが過大になるということは、国民経済の全般から見まして適当ではない。そういう面から、どうしても一つの規制が必要であるという点も考えておるわけであります。さらにまた武器自体が持つ特異性と申しますか、さらに危険性と申しますか、そういう面から申して、この武器製造事業というものに対して、必要な保管規程等も設けて行きたい、こういうことでございます。もちろんお話の中にありました特需産業として輸出に準ずる取扱いをいたして行くということは、ただいまの当局考え方でございますが、目下情勢といたしまして、それがどこまで将来にわたつて続くものか、そういう点につきましては、あまり明確な見通しを持つわけにも行かぬという状況でもございます。しかしながら現実の問題として、輸出に準ずる産業として日本経済、特に外貨の獲得という点で相当貢献いたしておりますことは、これは事実でございますので、そういう面から見まして、先ほど申しましたこの企業自体濫立の防止とかいう方法によつてこの事業を助けるとか、あるいは従つて必要な固定設備機械設備等につきましても、できるだけの融資のあつせん等をやつて援助もいたして参りたい、このような考えでおるわけでございます。
  5. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 どうもはつきりした答弁のように思いませんが、結局武器等製造という大事な仕事が、単に通産大臣が言われたように、どういうふうにするか静かに見守つて行くのだというだけでは、これがりつぱな事業として育成されない。なお昨日でしたか、一昨日でしたか、重工業局長から、これに要する機械に一億円を投じて補助をする、こういう補助金を出して、こういうものを研究さしておる。こういう武器の全金額について調べますと、何百倍もの多量受注をしなければならない今日、たつた一億円くらいの機械を、それを研究の資材とするというようなことでは、積極的にこの事業を援助しよう、めんどうを見よう、そういう気持が薄いのではないかと心配しておるのです。その点について、もう少し積極的な御意見を、今度は局長から伺いたい。  それから今日この武器等に関して、爆弾にいたしましても、その他のものにいたしましても、相当な出血をしておることは、これは業者のひとしく困つておるところでございまして、先日通産大臣から、いや、あれはもうかつているんだというようなお話もございましたが、そういう話は、その衝に当る官庁としては、まことに信じられないことを信じたような行き方でありまして、ここでの答弁としてはいいかもしれませんが、およそ経済界の実情を知らざるものといわなければならない、かように私は考えます。そこでこの法案によりまして、大メーカーは保護されますが、中小企業に属するメーカーはほとんど下請になつてしまつて、相当の設備を有しない企業濫立を防いで、これを保護するのだということでありますが、かえつてこれがために、中小企業は育成されない結果になる。この法律を推進いたしますときには、必ずこうした方面における中小企業は脱落してしまう、かように私は考えるので、この際そうした中小企業を統合しながらめんどうを見るというような、積極的な考え方を持つておるかどうか。かりにイタリアの例を申しますと、中小企業、ことに自動車工業について、小さなメーカー濫立しておりました。それを戦後特に統合いたしまして、そうして中小企業が全部寄りまして、フィアツト自動車会社に全部結集いたしました。そうしてこの企業世界市場フィアツトなる自動車を送り出すことができた。こういうふうな行き方も、当然通産省としては考えてもらわなければならないことではないか、かように思いますので、これもあわせて御答弁を願いたいと思います。
  6. 葦沢大義

    葦沢政府委員 お答え申し上げます。武器製造業に対して積極的な助成方法を講ずべきではないかという趣旨お尋ねは、まことに現在の武器製造業に対する対策として、一つの重要な課題で、御指摘通りいかにするかということが大きな問題でございますが、大臣が申されました、見守つておるというお考え方内容といたしましては、ただいま特需として輸出産業に準ずるという程度が、現在の状況として適合するものだという見解になるものだと思われるのでありますが、何と申しましても、武器製造は、従来禁止されておつたものから立ち上つて行くわけでございますので、そういう設備資金等所要のものがいるわけでありまして、その所要設備資金調達につきまして、政府においても必要に応じたあつせんをするという方法を、まず考えて行かなければならないわけであります。また武器製造設備につきましては、現在いまだ耐用年数がきまつていないものもあるわけであります。こういうものを今後きめるわけでございますが、これをきめます場合に、これに対する償却につきましては、特に現在の発注状況にかんがみまするときに、経済的な判断をいたしますと、やはりある程度特別償却を必要とする状況に判断されますのでこの償却につきまして、適当な措置を講ずるように、大蔵省とも目下協議をいたしておるような次第でございます。なおこの特需につきましては、手形において貿易手形に準じまして取扱いをいたすような方法もとられております。そういつた程度の、一応産業の進展というものに対する見守りという内容を持つておるわけでありまして、それ以上に、いかなる具体的な政策を打つかということは、やはり今後の情勢に応じて参るものであると思いますし、またそれは法律上の措置以外に考えられることも多々あろうと思いますので、事態に即応してお考えになるのが適切であるというように考えておる次第であります。  なお中小企業武器発注に伴う生産において脱落して行くのじやないかという趣旨、一応ごもつともな点もあろうかと思いまするが、ただいま発注者から発注を受けますと、これをやはりその企業系列のものに下請させるということになるわけであります。中小企業自身がその技術経理等の優秀さにおいて受注を受けるという場合もございますが、さらに大メーカーが受けましたものを、その大メーカー下請として、相当広範囲に仕事をするという可能性が出て参ります。また現にそういつた例もあるわけでございまして、中小企業武器製造につきまして、全然らち外に出てしまうということはない。従つてそういつた系列内における中小企業の育成につきましては、通産省としては、十分留意して参りたいというように考えておる次第でございます。
  7. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 この武器等製造に関しての出血受注の問題につきましては、しばしば各委員から論ぜられて来たところでありますが、私はこの出血受注につきましては、ただ武器だけの問題でなくして、ドルを獲得する上からいつても、現在のすべての受注出血である、こういうことについて政府は、どういうふうな方法によつて業者出血を防いだらいいか、積極的に政府自身業者の中に割込んで、お前たちのこの赤字をどうすれば解消できるかという親切さがなければならないと思います。出血出血だと言つているが、それは普通世間で言うことであつて、その実はもうけているんだろうというような、甘い考え方でこれを見守つてもらつていては、この事業はとうてい発展するものではない。そこでこれについて先日葦沢局長から、武器生産審議会というようなものをつくりたいとかつくるとかいうお話でありましたが、こうしたような経営面における問題も審議するのであるかどうか。そうしてこれは諮問機関としてでも相当な力を持つものであり、発言権を持つものであるかどうか。そういうふうなことについて積極的にこれを推進することによつて、この事業内容が著しく好転するであろうというようなこともわれわれは考えますので、この点について、この武器生産審議会というようなものが発足しておるのか、これからつくるのか。つくるとすれでどうした内容を持つものであるかというようなことについてお答えを願いたいと思います。
  8. 葦沢大義

    葦沢政府委員 出血問題は、御指摘のごとくこれもまた現下の非常に重要な問題でございまして、ただわれわれは公権的にコスト内容について申し上げる段階になつておりませんので非常に遺憾といたすのでありますが、御指摘のごとく重要な問題であるだけに、この本法案においても生産審議会というものを設置いたしまして、こういう重要問題の基本事項につきましては、朝野の方々にお集まりを願いまして、衆知を集めた成果に基きまして問題の解決に向つて参りたいというように考えておる次第でございます。現在のところまだそういつた審議会と申しますか、委員会というものを持つておらないのでございますが、本法案に規定しておりまする武器生産審議会は、法案成立いたしましたならば、さつそく出発をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  9. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 それじやこの程度にしましよう。
  10. 坪川信三

  11. 中峠國夫

    中峠委員 この武器等製造法案につきましての大体質問も論議も尽されたような感じがありますし、そうしてまた私がここで御質問いたしますことがあるいは重複のきらいがあるかと存じますけれども、私のぜひお尋ねしたいことがございますので、重ねてお尋ねしたいのでございます。  出血受注という言葉がずいぶん今ごろ叫ばれております。実際にあるメーカーたちはこの出血受注のために非常に苦しんでおる会社もあるようでございます。しからばこの特需の面におきまして、日本全国で大体何工場くらい特需を受けた会社があるか、あるいは工場があるか。そうしてそれのうちで出血をする工場が大体何工場くらいあるか、ちよつとお尋ねいたします。
  12. 葦沢大義

    葦沢政府委員 従来発注を受けました武器工場は十五工場くらいになつておりますが、そのうち出血をしておる工場はどうかというお尋ねでございますが、これは新聞紙等の伝えるところによりますと、お話のように非常に出血問題がありますので、われわれもじかにそういつた問題になつておる工場の方にお尋ねするのでありますが、当事者としては出血でないというふうに言つておられます。そうでないところでは、あれは明らかで出血だという議論がありますので、われわれとしても実際に公権的に調査をすればはつきりするのでありますが、現在そういうことにいたしておりませんので出血しておる工場が幾つかというお尋ねについては、現在われわれとしては明確にどうこうということを申し上げることができないような状態でございます。
  13. 中峠國夫

    中峠委員 そういたしますと、その出血した会社が大体何年くらい続けて出血しておるかということ、あるいはまたその出血のパーセンテージが何パーセントくらいであるかということも、これはむろんわからないでございましよう。
  14. 葦沢大義

    葦沢政府委員 発注を受けましてから一年になるかならない程度でございますから、今お尋ねのようなことについてはわからない状態であります。
  15. 中峠國夫

    中峠委員 そういたしますと、大体この特需でもうけておる会社の方が多いということになると存じますけれども、そう考えてよろしゆうございますか。
  16. 小平久雄

    小平政府委員 特需がはたして出血受注されておるかどうかが不明であるという点は、先ほど局長から御答弁申し上げました通りであります。従いまして逆に申しますと、はたしてもうかつておるのかいないのかわからない。率直に申してそういうことになると思うのです。ただ常識的に考えまして、そうひどい出血ならば、長い間これをさらに生産を続けて行くということは、これはどの企業にとりましてもなかなか困難なことは申すまでもありません。しかしながら当局としましては、世上非常にこの問題が大きく取上げられておりますので、なるべくそういうことがなくて済むように、指導という言葉はあるいは適当でないかもしれませんが、対処して行きたいというので、このよりどころとして本法案を御提案申し上げ、これが成立の上におきましては、この契約届出等もやらせまして、そういう点についても注意いたして行きたい、こういうつもりでおるのであります。
  17. 中峠國夫

    中峠委員 日本経済新聞の今年の二月二十六日付に、石川経団連会長大阪の方で話した談話が載つております。それによりますと、「出血受注回避兵器審議会設置」という見出しが出ておりまして、「経団連防衛生産委員会は六ヶ月前から日本各種防衛生産能力調査中であつたが、大体資料がまとまつたので、これを米国側調査書と照合して訂正した上、米国関係筋へ提示する、この結果米国計画発注は軌道に乗るものと期待できる」、もう一つの方は「特需出血受注業者間の不当な競争を防ぐため、兵器審議会のようなものを設けこの機関業者生産能力、品質の管理など発注者に答申するようにしたい」、といつておりますけれども、この兵器審議会というものは通産省と何らかの関連性を持つものでございましようか。
  18. 小平久雄

    小平政府委員 民間におきましてただいまお話の出ましたような動きのあることは承知をいたしておりますが、その兵器審議会といつたような組織は当局とは何らの関係はないものであります。但し、もちろん通産行政行つて行きまする上におきまして、そういつた団体の御意見等を尊重いたしまして善処いたして行くことは当然だと考えております。
  19. 中峠國夫

    中峠委員 これはまた特需とは関係が違いますけれども、やはり日本のある官庁の方の仕事のことでございますが、たとえば金額の面におきまして約九百万円くらいな価格でできるという予算を立てましたものが、大体業者入札の結果が約四百万円くらいに落ちたというのがあるそうでございます。そういたしますと、今度二番目は大体四百万円ぐらい開きがあつたということだそうでございますが、これは業者自分入札の結果でありましていろいろなことから考えまして、今この仕事をとつて置く方が将来非常にためになるという考えからやつたものと思いますけれども、これではほかの業者が非常に困つて来ると思われるのでございます。従つて何か会計法を改正するとか何とかいたしまして、こういうような入札のあやまちと申しますか、入札の弊害を除表するようなお考えがあるのでございましようか。
  20. 小平久雄

    小平政府委員 入札の実際につきましては、ただいまお話のように将来の発注を見越して一時的に非常に無理をして入札をするというような場合もあるいはあるかとも思います。しかしながらそれが同種の他の業者に対しまして非常に迷惑になるということも御説の通りだと思います。そこで従来から見ましても、特需におきましては、駐留軍のやります入札制度等につきましても、ただ無制限にたれでもが入札できるというのではなくて、適格者を推薦して、その間で入札を行わせるといつたような方向に努力をいたして参つたわけであります。しかしこの法律ができまするならば、おのずから生産分野も確定いたして参りまするから、こういつた無用な競争ということも相当防げましようし、さつきも申しました通り、あまり不適当な契約をいたしまするならば、それに対して戒告もできる、こういうふうに本法がなつておるわけであります。従つてあまりむちやな入札は防げるようになるとわれわれ期待いたしておるわけであります。
  21. 中峠國夫

    中峠委員 大体よくわかりました。そういう御精神でおやりになりまするならば、かなり業者が救われるのではないかと思つております。意見の相違はほかの方たちからあるかと存じますけれども、私だけのこの質問に関連いたしまして、ちよつと申し上げ、またお伺いしたいと思いますのは、ごく最近の例から申しましても、先月二十六日のやはり日本経済に載つておるのでございますけれども、「朝鮮向けセメント特需九社に発注決る」という見出しで、「米軍調達部(JPA)では二十四日セメントメーカー各社を招いて、朝鮮向け特需セメント十二万トンの入札を行い、その結果次の通り九社に発注した(単位トン)。日本セメント二万八千トン、小野田セメント二万八千トン、大阪窯業セメント一万三千トン、磐城セメント一万三千トン、宇部興産一万三千トン、豊国セメント七千トン、産業セメント七千トン、徳山曹達七千トン、敦賀セメント四千トン」、こういうように出ております。これが特需を受けたというのでございます。次に今年二月二十七日の同じ新聞に八幡製鉄大量特需橋げたなど二十五億円受注という大きな見出し八幡製鉄では約二十五億円の受注をしたということが書いてあります。これを読んで見ますと、八幡製鉄そのものは鉄材をつくる工場でございまして、従つて自分のところでは橋げたとして組み立てる技術を持たないのでありまして、これは下請に出すのでございます。その下請三菱造船日本鋼管、日立製作所、日立造船、播磨造船、新三菱重工、横河橋梁、松尾橋梁、汽車製造日本橋梁東京鉄骨宮地鉄工、太平工業桜田機械など十四の鉄骨橋梁メーカー橋材を供給し、組立て加工を依頼することになると書いてありまして、全額も書いてございます。こういうことから考えてみましたときに、これが出血受注でありましたときには、八幡製鉄は今回だけではなく、将来もしばらく出血受注が続くものがあると思うのでありますし、また八幡製鉄そのものがそれだけ大きな出血に悩むといたしますならば、今も申し上げました下請工場の十四社も同じく出血に悩むのではないかと思いますし、初めに申し上げましたセメント工場におきましてもやはり出血に悩むのではないかと思います。かくのごとくいたしましたときに、日本工業は日ならずして壊滅の状態になるのではないかと思いますし、こういうことを考えてみましたとき、やはり出血受注ということも実際にはあるわけだが、しかしわれわれが心配せぬでもいいのではないか、またこれによつてある程度利するところがあるのではなかいと思いますけれども、この点に関しましてどのようにお考えでございましようか。
  22. 小平久雄

    小平政府委員 ただいま御指摘のように、特需に関連しまして各方面出血受注があるいはあるのかも存じませんが、御承知のように昨年度においても約八億ドルからの特需もございましたし、金額において非常に日本産業立場から考えて大きな販路であることは申すまでもありませんし、また産業によりましては、いわゆる多量生産と申しますか、特に輸出等の多い産業においては、量産をやることによつてコストを引下げるということもあるわけでありまして、どの業種が出血であるかということにつきましては、個々に調査をしなければ詳細にはわからぬ問題だと思いますが、いずれにいたしましても、御指摘のように日本の各分野において出血が事実行われるといたしますれば、これはほんとうに大きな問題でございます。従いまして通産省といたしましても適正なる方法によつて、また適正なる手段によつて受注が行われる方向に向つて業界を指導いたしたいと思います。買われる向きからいたしましても、そう出血というものは長く続きません従つてこれは粗製濫造ということにもなりがちであります。買われる立場の側になつてみましても、適正な手段でやることがやはり望ましいことだろうと考えておるわけであります。
  23. 中峠國夫

    中峠委員 よくわかりました。次に今度は工作機械についてちよつとお尋ねいたします。この間工作機械外国から六十台ほど輸入したと仰せになりましたが、この六十台は実際に使用する分でございましようか。あるいは研究用でございましようか。
  24. 葦沢大義

    葦沢政府委員 輸入しましたものを土台にしまして、日本国内でさらにそれに基いて生産をしたいという見本的なものであります。
  25. 中峠國夫

    中峠委員 そうしますとこれは大体研究用になると私は推察いたします。日本が戦争このかた十数年にわたりまして外国との鎖国状態になりまして、日本生産技術というものは非常に落ちて来たと思うのでございます。特に一番もとになります工作機械方面におきましても、これはおそらくアメリカに絶対太刀打ちはできないと思うのでありまして、従つて六十台の機械を輸入いたしまして、これを一つ研究用とすることは、非常によいことであると私は存じております。しかし機械というものは非常にいろいろな条件を備えなければならないものでありまして、特に日本機械外国機械に比べましたときに一番困るのは、寿命という問題でございます。寿命とはどういうことかと申しますと、たとえばここに一つ旋盤がございまして、その旋盤をもつて物を削りますときに、百分の一ミリ、あるいは千分の三十ミリとか、そういう一つの許容誤差を許しまして、そうしてその範囲の誤差は認めるけれども、それを何年間くらい続けて仕事をいたしましたらその誤差を越して行くものであるか、これが一つ寿命でございます。日本の今までの機械は、外国の、あるいはアメリカ、イギリスの機械に比べてみますときに、この寿命が非常に短かいのであります。極端なものになりますと、日本機械寿命が、一箇年たてばその百分の一の誤差をもう越える、こういう状態でありまして、アメリカの機械、あるいはイギリスの旋盤で削つてみますとき、大体これが十年くらいの寿命を持つておりますのが、今までの例におきましてもずいぶんあるのでございます。そのほかの機械におきましても、こういうのがあるのでありまして、向うの中古の機械を買つて来てこちらでやりましても、それはなかなかこわれない。日本の新しい機械は、それはいかに外見上よいからと申しましても、その新しい機械を使つてみますと、一年もすればこわれて、修繕すればまたすぐこわれる。そこでやりつぱなしておく、そういうことが官庁方面でもあると思いますし、私もその例も聞きましたし、また民間の方面でもあるのでございまして、機械一つ分解いたしまして、それを精密にさしでもつてはかりまして——これは百分の一ミリ、詳しいのになりますと千分の一、ミリくらいは正確にはかれるのでありますから、それをはかつて行けば、幾らでも外見上のまねはできるのでございますけれども、しからば寿命は何によるのかと申しますと、私はその材質によるのが一番大きな原因であると考えております。従つてこれは学者及び生産技術者を動員いたしまして、できるだけすみやかにアメリカ方面等の先進国の水準にまで達していただきたい、かようにお願い申したいのでございます。  それに関連しまして、武器等製造法案審議にあたりまして、ずいぶんと私もお話を承りましたけれども、あたかもこの武器を奨励するような言葉もときどき耳にいたしたのでございますが、この武器等製造法案は、そういうように奨励するのではないと私は考えておりますし、また私の今申し上げましたのは、この武器とかいうことを離れまして、日本生産技術、これを向上させたいという希望でこのように申し上げたのでございます。  次に質問いたしますのは、法案の第二条第一項第三号「爆発物」という言葉でございますけれども、この爆発物について私は少しお尋ねしたいと思うのでございます。この第五条におきまして「通商産業大臣は、第三条の許可の申請が左の各号に適合していると認めるときは、許可をしなければならない。一、当該武器製造のための設備が通商産業省令で定める技術上の基準に適合すること。二、当該武器の保管のための設備が通商産業省令で定める要件を備えること。」こういう言葉がございますけれども、この一におきまして「設備が通商産業省令で定める技術上の基準に適合すること。」という省令は、将来出す省令でございましようか、あるいは現在ある省令でございましようか。
  26. 小平久雄

    小平政府委員 ただいま御指摘の省令でありますが、これは本法が成立した後において出す省令であります。
  27. 中峠國夫

    中峠委員 そういたしますと、この省令の大体の内容はどのくらいの程度でございましようか。大体の腹案が今ございましようか。
  28. 小平久雄

    小平政府委員 まだ実ははつきりしたものができておりません。と申しますのは武器生産審議会というものが本法が通ればできます。特に生産設備あるいは技術等につきまして、どういう基準をきめるかということは非常に重要な問題でございますので、この審議会等にも諮問をいたしまして省令を出したい、こういう考えでまだまとまつたものができておらないのであります。
  29. 中峠國夫

    中峠委員 今度第九条に入りまして「武器製造事業者は、当該武器製造のための設備を第五条第一項第一号の技術上の基準に適合するように維持しなければならない。2武器製造事業者は、当該武器の保管のための設備を第五条第一項第二号の要件を備えるように維持しなければならない。」こういうように書いてございまして、初め申しました第五条のこの条項は、厳密に守らなければならないものであると私は考えております。従つてこの省令をおつくりになりますとき、たとえば爆発物の製造の許可あるいは保管の貯蔵の許可なんかを与えますときにおきまして、一番注意しなければならない。われわれに一番大切なものは、何と申しましても人間の命なのでございます。この命をほとんど損耗することのないような状態に置かねばならない。絶対に損耗することのないような状態に置かねばならないと私は思うのでございますけれども、この点に関しましてよく陳情が来るのでございます。この陳情政治がよいか悪いか別でございますけれども、この陳情ということはその内容におきまして非常に身に迫つた状態があつて陳情に来るものと私は思うのでございます。従つてたとえば香里の火薬庫の問題でございますけれども、この香里の火薬庫におきましても今ずいぶんと陳情が来ておるのでございます。たとえば初めにおきましては、ずいぶんその近くには家はなかつた。七百六十二軒しかなかつたのが、今日では大体六千軒ぐらいにもなつておるというのでございますし、その人口も大体これが約七、八万から十万に近くなつておるというのでございます。こういうときにおきまして、もしそこに火薬庫をつくるとか火薬製造所をつくるとか、あるいは貯蔵所をつくるとかいうことになりますならば、これはまた大きな事件が起るかもわからないというのでやつて来ておるのでございまして、昭和十二年三月にあそこに大爆発が起りました。そのとき私はちようど京都帝国大学の学生でございましたので、それを私は見ました。大体午後の二時ごろではなかつたかと思いますが、そのときに一大爆発が起りまして、私は図書館で勉強しておつたところが、ぐらぐらつとガラス窓がゆらいだのでございます。上へあがつて見ますと、もうもうたる煙が出ておりましたが、大体夜の十一時ごろまでも間歇的にごうごうと音がして響いて参りました。そのときの死者は百三十四人というのでございますが、これはずいぶん身にしみているのではないかと思つております。その陳情団のおつしやいますのは、そこで兵器をつくつてはいけないとか、あるいは日本中で火薬を絶対につくつてはいけないとかいうのではなくて、どこかほかの適当なところでつくつていただきたいというのでありまして、現在の状態では人家が非常に密集しておるので、今つくつてもらつたならば、ここの者が全部立ちのかねばならないという状態が起るかもわからないし、ここでは安心して生活ができないという状態になつておるのでございますが、今度その省令をおきめになりますとき、そういう点を御考慮なさるのでございましようか、ちよつとお尋ねいたします。
  30. 小平久雄

    小平政府委員 ただいま御指摘のように、爆発物等の製造をする工場につきましては、特に安全ということを尊重してやらなければならないことはもう当然だと思うのであります。お話に出ました旧火薬廠等の問題につきましては、各方面からのいろいろの御覧を拝聴いたしておりますし、ただいま御指摘のように香里等の場合におきましても、以前とは大分周囲の事情も異なつておるということも万々承知をいたしております。従いましてそういう面も当然全体として考慮され、要するに工場の安全という点からはあらゆることを総合的に考えてやつて参りたい、かように存じておる次第であります。ただいまの法制におきましても、この火薬類につきましては、御承知通り火薬類取締法によつて取締りが実施されておるわけであります。それから省令によつて安全に関する規定を設けるのかというお話でございましたが、その点は今申す通り、火薬類につきましては火薬類取締法によつてやるわけでありまして、先ほど御指摘の省令は技術の基準を定める省令であります。
  31. 中峠國夫

    中峠委員 まだお尋ねしたいことはありますけれども、次の質問者が控えておられるようでありますから、私の質問はこれで終えさせていただきます。
  32. 坪川信三

  33. 永井勝次郎

    ○永井委員 今、中峠委員から火薬類に関する発言が続けられたので、これに関連して二、三お尋ねいたしたいと存じます。簡単でありますから、はつきり御答弁をいただきたいと存じます。  第一点は、旧火薬製造所を民間に払い下げる方針をとるのか、払い下げない方針であるのか、この点を伺います。
  34. 小平久雄

    小平政府委員 旧火薬廠の処分の問題につきましては、目下関係大臣の間におきまして協議中でありますが、私の承知しておる限りにおきましては、大体民間には払下げいたさない、こういうふうに承知いたしております。
  35. 永井勝次郎

    ○永井委員 払い下げないとしますると、国がこれを所有して、国がみずからこれを経営するという方針であるのか。国が所有して民間に経営させるという考えであるのか。
  36. 小平久雄

    小平政府委員 これも先ほど申しました通り、まだはつきりきまつておるわけでございませんが、大体民間に貸下げをいたしまして、民間に経営をいたさせよう、こういう方向にあるように承知いたしております。
  37. 永井勝次郎

    ○永井委員 火薬工廠跡の利用に関しましては、政府調査委員会を設けて具体的に調査をし、結論を出すという方針のようでありますが、そのような事実があるのかどうか。調査団は現在どのような事務的な進捗状態にあるのか、その段階を明確にお示し願いたいと存じます。
  38. 小平久雄

    小平政府委員 調査委員会とか調査団とかいうようなお話でございましたが、そういうことにつきましては別段あらたまつてそういう機関をつくつたことはございません
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 香里火薬廠跡の利用に関しましては、これが払下げの事務的な取運びはどのような段階にあるのか。それから地元における反対の陳情運動というものを、この取運びの上においてどの程度にしんしやくせられておられるのか。それからもしこれを利用するというようなことになれば、もと利用したような火薬充填の作業を再開するというお考えであるのか、この点を伺いたい。
  40. 小平久雄

    小平政府委員 火薬廠の問題につきましては、先ほど来申し上げました通り、民間に貸下げをしてやつて行こうという大体の方向だけは私も承知いたしておりますが、それより先の、しからばどことどこをどういう会社に貸下げるという具体的な問題につきましては、まだ各省間の方針も決定をいたしておらないようであります。従いまして、どの工場においてどの程度までの作業をやるとかいうことにつきましては、まだ一切未定であります。現在わかつておる点はその程度でございます。
  41. 永井勝次郎

    ○永井委員 この問題はしばしばこの委員会でも述べたのでありますが、府中の火薬爆発の状況といい、名古屋の場合といい、惨害が起つております。この惨害は、立地諸条件を考えないでこれらの作業を継続したところにあると考えられますから、新たにこの企業を行おうという場合には、それらの環境をよく良識をもつて判断し、地元の岩の生命の危険ということも十分に考え、その安全のために善処せられんことを望む次第であります。  次には武器等製造法案につきましてお尋ねを進めたいと存じます。この法案の第五条の一の「当該武器製造のための設備が通商産業省令で定める」、それから二の武器の保管のための設備について通商産業省令できめるということがここにあるのでありますが、もうこの法案と並行しまして省令の内容が明らかであると思うのでありますが、どういう具体的な内容のものであるか、省令の内容を明らかに承りたいと思うのであります。
  42. 小平久雄

    小平政府委員 その点は先ほどもお答えいたしたのでありますが、この技術の基準をどうきめるか、あるいは保管の施設をどうするかというようなことは、今後この業種につきまして非常に重要な問題でもございます。また実際この仕事に当つております業者の意向等も十分しんしやくをいたしたいと考えますし、さらにまた本法が成立いたしました上におきましては、武器生産審議会もできることになつております。この審議会等にも諮りまして、要するに各方面意見を尊重、総合いたしましてつくりたい、こういう建前からいたしまして、まだ遺憾ながら成案を得ておらないわけであります。     〔委員長退席、小金委員長代理着席〕
  43. 永井勝次郎

    ○永井委員 この法案は、アウト・ラインだけをきめてあるのであつて、この法案だけではどういう基準でどういうふうにやるのかということが少しもわからないのです。しかしこの法案が通つて、すぐ具体的に発動しますためには、これらの省令が伴つて来なければいかぬ。そういう具体的な事柄が省令として成文化したものがないにしても、大体考え方は一応まとまつていなければいかぬ。具体的な制約がこの省令できめられるのでありますから、もしできますならば、現在考えておられる構想の具体的な内容を一応承つておきませんと、これらの問題は審議上非常に支障がある、かように考えるのであります。
  44. 井上亮

    ○井上説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。大体の技術上の基準につきましての省令は、先ほど政務次官から御答弁いたしましたように、民間のエキスパートも含めまして現在審議中であります。審議方法といたしましては、この法律によりまして、兵器の種類ごとに、具体的に申しますと、砲弾とか、あるいは砲弾をさらにわけて弾体、それから完成品としての砲弾、さらに銃の関係につきましては銃身というようなもの、それからさらに爆発物の投射機、その種類、それらの設備の台数、設備の種類、さらにはその設備の精度、そういうものを武器の種類別に現在おのおの適当な配列で考案しておるわけでございます。さようなことをいたしまして、合理的な調整がとれるような研究を現在やつておるわけであります。まだ成案には至つておりません。いずれこの法案通りますならば、そのころまでを目標に現在研究中でございます。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 この法案武器の定義をしているのでありますが、この定義は非常に狭い範囲のものである。しかも非常に原始的な武器の種目の限界である。今後近代産業としての重化学工業、及び近代産業の総合されたものとしての武器生産という上におきましては、非常な支障が来るのではないか。たとえば車両も武器の中に入りましようし、戦車も入りましようし、航空機も入りましよう。政府は、この武器等製造法以外に、こういう戦闘用機についての製造について別の法案を用意する考えであるのかどうか、この法案一本で行く考えであるかどうか、これをひとつ承りたい。
  46. 小平久雄

    小平政府委員 ただいまのところでは、本法に定める武器だけを対象といたしておるわけであります。将来において非常に事態がかわつてつたというような場合におきましては、またあらためて本法の改正なり何なりを御提案申し上げ、御審議を願う予定であります。
  47. 小金義照

    ○小金委員長代理 お諮りいたします。本案に関連して、委員外の、議員淺香忠雄君より発言を求められておりますが、簡単であるそうでありますから、この際お許しいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 小金義照

    ○小金委員長代理 それでは御異議がないようでありますから、発言を許します。淺香忠雄君。
  49. 淺香忠雄

    ○淺香忠雄君 非常に重要な法案が上程されておりますのに、委員外の者が参りまして、この貴重な時間を私にお与えいただきますことを非常に感謝をいたしておる次第であります。私はこの前の委員会にも委員外発言を許されまして質問をいたしたのでありますが、どうもお答えがはつきりしないところがありまして、再度質問をさせていただくわけであります。  先ほど中峠委員並びに永井委員から、上程されております兵器等に関する法律案に関しまして、今後爆発物の取扱いについての御質問があり、また旧工廠等について今後どういうふうにこれを処理して行かれるかという政府の方針についてお尋ねになりましたところが、政務次官のお答えは、爆発物の取扱いに関してはきわめて愼重にやる。しかも今後においては全体的に総合的に考えてやるという、相もかわらぬ慎重論でありまして、その慎重を期さなければならぬということは、私どもよくわかるわけであります。香里に関しましては、今日まで数回、数十回にわたつて、地元の方から反対の陳情に押し寄せておりますことは、御承知通りであります。先般の委員会におきましても、婦人団体を代表されまして、身重の婦人会の代表の、この身重をもつてまで陳情をしなければならない不安な状態をすみやかに善処していただきたいという陳情に対しましては、私ばかりでなく、本日御出席の委員の皆さん方は、あとで実際胸を打たれたということを漏れ聞いておるわけであります。地元といたしましては、かつて二回の大爆発を見まして、はだしで逃げ出しております。私の家はこの旧工廠の跡から一里半ほど離れておるのでありますが、ガラスも建具も人の手ではどうにもならないように、まるであめ玉のように曲つたのであります。こういうことを体験いたしました人々は、今度政府が香里の旧工廠を火薬の装填場に許可するかのような話が飛びますために、今日非常に大きな不安動揺を来しておるのであります。政府には政府としてのお立場があることは、私どもよく承知はいたしておりますが、しかし、これだけ人心を不安に陥れ、しかもそれがますます拡大されておる今日、政府としてはすみやかにその点について善処していただきたい、こう思うのでありますが、ひとつ政府の御意見を率直にお漏らし願えればけつこうだと思います。
  50. 小平久雄

    小平政府委員 火薬廠の問題、特に香里の問題につきまして、地元の方々から熱心な、また胸打たれるような御陳情が再三にわたりましてございましたことは、当局もよく承知いたしておるところであります。また淺香議員あるいは永井議員等におかれまして、この問題について非常に熱心に大臣等にも直接地元の声をお伝えになつておることは私も承知いたしておるのであります。従いまして本問題の全般的な方向は、先ほど永井委員にお答え申した通り実情もよくわかつておりますので、そういう点を全体的に、総合的判断をなさいまして、今日の段階におきましては、そう遠からず各省間の協議もまとまることかと考えております。但し先ほども申しましたが、まだどことどこを貸し下げるとか、あるいはそれをたれに貸し下げるとか、そういつた点までは今日においては決定を見ておらない次第でありますので、決して私隠しておるわけでも何んでもありません。本問題の全体に対する進行状況を率直に私の知る限りにおいて御答弁申し上げておる次第でありますから、御了承願いたいと思います。
  51. 淺香忠雄

    ○淺香忠雄君 ただいまは小平政務次官から非常に御誠意ある御答弁をいただきまして、私はその点満足でございます。しかしてお聞き及びの通り、今日まで当委員会委員福井勇先生、福井順一先生、永井勝次郎先生、中峠國夫先生の四人が現地を視察になつております。この四人の皆さん方がどうおつしやつておられるかわかりませんけれども、せつかく現地を視察されたこの四人の方々の意見をも政府は胸襟を開いて聞いていただく、またこれだけ問題が大きくなつておりますので、政府側におきましても進んで局長も、次官も、大臣も現地に行かれまして、地元の声が事実かどうかということをさらに掘り下げて実地の視察をしていただきたいということを心から希望するわけであります。なおまた通産委員の皆さん方も、非常に御多忙中恐縮でありますが、こうして四人の皆さん方のお見えをいただきましたので、おひまがございましたならば、さらに各党からなお現地の御視察をお願いでさましたら非常に仕合せと考えるのでございます。  そこで中峠委員からも言われましたように、この一点だけは特に今後処理する上において注意をしていただきたいと思いますことは、香里の旧工廠をかつての十年前の状態と同じようにお考えになりまして、これをいずれかにきめようとなさいますことは非常に危険があるわけであります。そういつたことは、いまさら私が言うまでもなく、今日数十回にわたるところの陳情によつてよく御承知だと思うのですが、今日の枚方の香里は、先ほどのお話にもありましたように、かつては七百軒くらいの人口であつたものが、今日では六千何百かになつておる。またその中にはすでに学校も三つ設置され、病院もある。大学の一部もある。しかも旧工廠の周囲は人家で囲まれておると言つても過言でない。従いまして皆さん方の頭の持ち方が、十年前の旧工廠の跡を思い浮べられましてこれを処理なさろうといたしましたならば、ここに非常に無理があるわけでございます。  いま一点申し添えたいことは、非常に僣越かと思いますが、京都の近くに祝園というところがございます。これも旧工廠の跡でありまして、漏れ聞きますれば、一部がインド人の、国連軍の方で管理をしておられるだけで、その大半はあいておる。その工廠の中には引込線もある。しかもその周囲には買収しようと思えば、坪三十円で幾らでも買収できる土地がある。立地条件におきましては、香里よりまさるとも劣らないようなところがあることを私どもは調査をいたしまして発見いたしておるのであります。もし火薬工廠のようなものを今日の時代においてぜひともやらなければならぬようなことになりました場合は、文化都市、衛生都市のどまん中にこういう危険なものを設置するのではなくて、この京都府下に人家二、三十軒というような絶好な場所がありますので、あげてその方に持つて行つていただきたいと思うのであります。祝園についてはすでに御調査つておることと思うのですけれども、今日まで御調査ができておりましたならば香里と祝園との比較論を一応軽工業局長から承ることができれば非常に仕合せであります。
  52. 中村辰五郎

    ○中村(辰)政府委員 香里の火薬廠払下げの問題につきましては、昨年の夏ごろからいろいろ問題が起りまして、私としては地元の空気と申しますか意見を重要視しております。大体従来火薬廠の設置につきましては、第一に地元の意見を非常に重要視しまして、まず第一に地元の意見を聞くということから始めております。香里の問題につきましても、昨年の夏ごろから非常に地元に火薬廠として再開することに反対のあることを了承いたしております。その後十一月ごろですか、賛否両論があるような意見を伺いましたので、地元の意見を十分聞き取るということで話を進めており、地元の反対の空気、また反対いたしますお気持、問題の重要度につきましては、事務当局と、いたしましても遺憾なきを期しております。またただいまの御質問の中にございました、十年前の環境と今日との相違につきましても、係官を派遣いたしまして、十分調査いたしておりまして、環境その他については了承いたしております。祝園の問題につきましては、いろいろ駐留軍方面意見も聞きつつ、なお御説のような点のあることも了承いたしております。現在考えておりますことは、これら諸般の情勢を考慮いたしまして、ただいま政務次官からもお答えいたしましたように、今日まだ最終の結論が出ておりませんから、事務当局といたしましては、ただいま御質問に取上げられました種々の問題を非常に重要視して、愼重に検討いたしておるという状況であります
  53. 福井勇

    福井(勇)委員 武器製造法案が非常に急がれておりますし、他の党派の方方もそういうふうに申しておられますので、淺香議員のお話も重々ごもつともでありますが、他の委員会のときに譲つていただきまして、武器製造法案の方を促進されるように希望いたします。
  54. 小金義照

    ○小金委員長代理 淺香君どうですか。
  55. 淺香忠雄

    ○淺香忠雄君 たいへん貴重な時間を飛入りをいたしました私にさいていだだきましたことを、重ねて厚く御礼を申し上げます。なお当局の皆さん方に、これは愼重を期さなければならぬことはわかつておりますが、愼重もずいぶん日にちがたつておる問題でございまして、だんだんデマが乱れ飛び、不安が増大し、非常に困る問題が次から次に起つて来るわけでございます。この点もよく御承知だと思いますので、できるだけ早く善処方を特にお願い申し上げます。委員長に厚く御礼を申し上げ、また皆さん方に厚く御礼を申し上げます。
  56. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は今までいろいろ尋ねて参りました。この法案が取急ぐ状況にあることもよく承知しておるのでありますが、今までお尋ねいたしましたことは、私のこれからお尋ねしようとすることの前提条件としての調べであつたわけであります。これからお尋ねいたしますことは、日本産業の将来にわたる、あるいは武器生産に対する基本的な問題になりますので、これは政務次官では無理だと言つては失礼でありますが、こういう問題は実は大臣お尋ねいたしまして、国の政策としての立場で論議を重ねたいと考えたのであります。しかし何かいたずらにこの問題を延ばすというような印象を皆に与えてもいかぬと思いますのでお尋ねいたしますから、それぞれの発言に対して政務次官に責任を持つていただくとともに、具体的な答弁を煩わしたいと思うのであります。     〔小金委員長代理退席、委員長着席〕  この法案は、武器製造について許可制をとることによつて企業の安定が確保できる、こういう立場において提出されておるのであります。そうしてその具体的な運営の内容にわたりましては、省令その他で定めることになつておりまして、今日まだ明らかに承知する段階に至つておりません。許可制によつて武器製造という企業の安定ができるかどうか、こういう問題、それからこの武器生産輸出産業であるという点、こういう点において大きな矛盾を本質的に持つておるのではないか、かように私は思うのであります。そこで第一にお尋ねをいたしますことは、輸出産業としての武器生産、それは許可制度によつて企業の安定を期し得る、こういうふうに考えられるならば、具体的にどういうふうにしてこれは安定が期されるのか、こういう日本の現在の産業構造の上に立つて日本の現在の経済活動の現実の地盤に立つて、どういうふうにこれを認識されているのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  57. 小平久雄

    小平政府委員 武器製造事業を許可制にすることによつて、はたして業界が安定するかどうかという御趣意と伺いましたが、その点は、現在の状況から見ますと、ややもすると濫立の傾向にあり、しかもそれは将来の発注ということを見越している、そういう傾向が起つている面ももちろんあるのでありますが、いずれにいたしましても非常に濫立の傾向にある。それがまたいわゆる出血受注のもとをなしておるではないかという点を当局としては非常に憂えておるわけであります。従いまして、許可制をしくことによつて生産分野等を画定いたし、またそのことによつて無用の競争を自然排除することもできる、そういう心持においてこそ、初めて適当なる資格を備えた生産者が、適当なる生産行つて行け、こういうことによつて業界の安定が期し得られるのではないかと考えているのであります。と同時に、また一方契約の届出制も規定いたしておるわけであります。これと分野の画定ということが相まつて業界の安定が期し得られるものとわれわれは信じておるわけであります。
  58. 永井勝次郎

    ○永井委員 たいへんおめでたいものの考え方で、われわれは了承しがたいのであります。たとえばアメリカにおける軍需産業は、第一次世界大戦の場合には軍需産業投資が全額で七十三億ドル、そのうち九二%の六十七億ドルが民間投資、八%の六億ドルが国家投資、こういうことであつたために、第一次世界大戦後施設が過剰となつて、過剰となつた襲撃案どんどんやつて行きましたためにあのような第一次世界大戦後における。パニックがやつて来た。そこでアメリカは第一次世界大戦後におけるこれらの経験にかんがみまして、第二次世界大戦後においては、民間投資によるこれらの施設拡充ということをやめて、第二次世界大戦中には、軍需産業への投資は総額二百六十億ドル、このうちの七二%に当る百八十七億ドルが政府投資で、そうしてそのうちの六十億ドルが工場の拡充に向けられ、百二十七億ドルが工場新設に向けられた。そこで終戦とともに、政府が投資したこれらの産業政府がこれを留保して、そうしてこれらの施設の活用によつて生産過剰という事態ができないように、あるいは世界の需給のバランスをあんばいするように、あるいは一部は民間に払い下げたでありましようが、その施設は政府がこれを留保して、需給の正常な経済活動をはかつて行く。こういうようなことによつて第二次世界大戦後の措置はしておるのであります。ところがこの武器等製造法案によると、国家的な目的によつて政府の責任において、需給のバランスをとるというような計画もない、ただ許可をして、そうして契約を届出すれば、それで需給のバランスが可能であるというものの考え方というものは、非常に浅薄ではないかアメリカのような、ああいう厖大な経済力を持ち、購買力を持つ、あるいは世界の経済を大きく押えておるというようなところにおいてさえ、こういうような配慮がなされておる。それが日本のような浅い経済の基盤の上に立つて、ことに輸出産業というものが全部八方ふさがりのような状態の中において、企業の安定をはかるということがこの一本の法律によつて可能であるかどうか、こういうことを伺いたいのであります。
  59. 小平久雄

    小平政府委員 アメリカにおきます武器あるいは兵器の生産の事情というものは、お話通りと存じますが、アメリカの場合におきましては、申すまでもなくアメリカ国自体の軍事目的のためにやることであり、またアメリカの国自身が発注をいたしてこれをやつておるのであります。しかし現在のわが国の当面せる武器生産というものは、わが国みずからが国家として武器製造し、これを保有しようというのではないのでありまして、この大部分が駐留軍発注であり、いわゆる輸出に準ずる産業であることは、もう御承知通りであります。従いまして政府がこれを計画的に発注するということは、望むべくと言つてはあるいは語弊があるかもしれませんが、純産業的に考えて、望むべくしてでき得ないところであります。ただ政府ができますことは、輸出に準ずる産業として、なるべく安定性を持たせますために、本法に規定するような手を尽しますと同時に、発注者である駐留軍等の情報をできるだけ正確に入手して、これを参考とし、業界濫立等を防止して行くということが、ただいまでき得る最大のところと、われわれは遺憾ながら承知をいたしておるのであります。
  60. 永井勝次郎

    ○永井委員 私の言うことは、結論から言えば、輸出産業として、あるいは平和的な産業として、兵器産業というような企業が安定する条件はどこにもないのだ。そういうような考え方でこの法律が出発するならば、本質的にうそであるか、あるいは大きな失敗をするか、どつちかである、こういうことであります。ですから武器産業の安定のためには、たとえばアメリカのごとく、所要原材料の確保、生産設備の整備改良、製品売却の特別便宜、あるいは損失の補償、融資あつせん及びその保証、それから可速度減価償却制度というような、もろもろの国家的な至れり尽せりの保障のもとにおいてその生産が進められれば、その企業は安定せざるを得ない。そういうような国家的な援助なくしては安定できない本質的な産業である。そういう何らの保障がなくて、そうして武器生産をこの一本の法律によつて安定せしめるのだという大それたものの考え方というものは、非常に間違いではないかということなのであります。日本のこのような浅い経済の中において、それをしも可能であるというならば——国の保障がなくても、あるいは施設改善がなくても、あるいは融資あつせんの問題がなくても、あるいは原材料の保障がなくても、あるいは税における特別の措置がなくても、そういうことが可能であるというならば、あなたの言うところはあまりに抽象的で漠として、いて、私には了解できないので、私も具体的に問題を提起しているのでありますから、政務次官ももつと具体的にこれを答弁していただきたい。
  61. 小平久雄

    小平政府委員 ただいまアメリカにおいて兵器の生産に対して国家がいろいろの手を打つておられるということをお示しになりましたが、本法におきましても、直接的に国家が保障いたすということはもちろん規定いたしておりませんし、また本法以外の手を通じましても、直接保障しようということはただいまのところ考えておりません。しかしながら先ほども御説明しました通り、たとえば償却等の面におきましては、早期の償却もできるように大蔵当局目下交渉中でありまするし、あるいはまた資金のあつせん等につきましても、できるだけのあつせんをいたす考えでありまするし、そういつた面ではできるだけの努力をいたして業界の安定を期して参りたいと考えておるのであります。何と申しましても、元来がアメリカにおける軍需産業というものと、ただいま問題になつておりますわが国の武器製造とは、いわばその本質が違うのでありまして、今日の日本におきましてアメリカと同様にやるということは、実際問題として不可能なこととわれわれは考えておるわけであります。
  62. 永井勝次郎

    ○永井委員 アメリカの武器生産日本武器生産とが性質において異なることは、政務次官の御答弁をまつまでもなく十分に承知いたしております、ただ武器産業というものの本質的なもの、特異なものというのは、これは普遍的な条件と特殊な条件と二つあろうと思う。武器生産としての普遍的な条件はどこでも同じである。常に品種がかわつて来、進歩して来る。従つてそういう性質のものであるから、工作機械あるいはこれらの施設は短期償却にして行かなければならぬという条件になつて来ようと思うのであります。内容としては秘密性ももちろんある。こういう性質のものであつて、それらの事柄については政務次官の答弁を要しない。私の常識の限界内において十分それは了承しておる。ただ日本が、もう軍備を持たない、それから一切の戦力を保持しないという憲法の条章に従つて、平和なことをやるのだということはわかるのでありますが、その中において、そういう一つの基盤の上において、武器生産を安定させることが可能な条件があるかどうかということを、今課題にして論議しているわけであります。ですから国の中で、たとえば大蔵省と折衝して短期に減価償却をやるということは法律一本出せばできるでありましようが、ぐんぐんと常にかわつて行く施設に対して短期に償却して行く、それから原料としての鉄、石炭あるいは工作機械技術等の生産コスト考えれば、日本の兵器産業は各国と競争する条件は非常に弱い。そこへ持つて来て何らの保障もなしに——減価償却を短期にやるなんてことは法律一本で何ぼでもできるでありましようが、価格の面において各国と競争できるかどうか。それから主として外国発注に依存する産業として、法律があるからといつて償却ができるのかどうか。もし採算上償却できないとしたら、産業としてもう没落して行く以外にない時代遅れの鉄砲をつくつたつて、時代遅れの機関銃をつくつたつて役に立たぬのでありますから、そんなものはできない。一体そういうような条件の中で安定条件があるかどうかということを、具体的にひとつ承りたい。
  63. 小平久雄

    小平政府委員 武器生産の安定条件があるかどうかということでありますが、当局の見るところといたしましては、将来これが期間的にいつまで続くか、あるいはその量がどの程度まで出るかというようなことは、毎々申し上げております通りはつきりわかりませんが、しかしここ当分は少くも駐留軍発注あるものとわれわれも見ておりまするし、また業界もそう判断するからこそ相当積極的に本事業に乗り出しておるものとわれわれは思うのであります。なるほど生産条件は、少くとも現状におきましては、先進国と申しますか、特にアメリカあたりと比べましては相当劣つておると思いまするが、しかしそれにもかかわらず現在受注をいたしておる。それが出血であるかどうかは存じませんが、とにかく受注をいたして、相当積極的に乗り出そうという気構えにあるということ自体が、業者がすでに将来を見通してこれをやつておることなんでありまして、われわれとしましては、ただそれがあまり濫立になつては困る、国民経済全体から考えて、あまり厖大になることは好ましくないというので、国民経済全体のためにも、また業界のためにも、本法によつて処置をいたして行きたい、こういうことであります。
  64. 永井勝次郎

    ○永井委員 委員長お尋ねしますが、私は決して議事の引延ばしをやつているのでも何でもない。一体武器生産というものを今後やつて行くのに、どういう環境の中でどういうことを考えてやらなければならぬかという、もつともつと内容考えおるのです。それから各国の状況も調べております。それの結果としての日本産業構造がどういうふうにかわつて行かなければならぬか、そういう構造のかわつた基盤の上に兵器産業というものが最も進んだ形において打出されなければいかぬ、そうしてそれにはどんなことをしても国家の助成なしには、単なる民間の平和産業として安定する条件なんというものはどこにもありません。こういう問題を究明しないで、委員長はこの法案をただ時間だから通せというような考えではないだろうと思いますけれども、そういうようなものの考え方ではこれはとても責任ある審議を尽したとは言えないと思う。そこで私はきよう大臣が出られないというならば、一日、二日待つたところでこれは決してこの法案審議の過程において重大な結果にもならぬと思います。私は委員長に非常に協力して、この法案の促進には努めるつもりでありますから、どうでしようか、これをいろいろまだほんとうにまじめに論議したいという条項を持つておるので……。
  65. 坪川信三

    坪川委員長 お答えいたします。私も永井委員とまつたく同一意見であります。従つて永井委員に対しましてかなりの時間をお許しいたしまして発言を続行願つておるような次第であります。大臣はまだおいでになりませんが、御案内のごとく本会議に出席されておりますので、それにかわるべき政務次官並びに関係当局政府委員が御出席になつておられますから、質疑を続行していただきたいと思います。
  66. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほどから私質疑を繰返しておるのですが、論理はちつとも発展しないのですこういう答弁では、政務次官は専門家でありませんし、政治家としての毒でいろいろ答弁される、決して私は政務次官の答弁だから物足りないとかあるいは拒否するとかいうのではありませんが、責任ある大臣とこれらの国策の問題を論議したい、こういう考えでありますから、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。
  67. 坪川信三

    坪川委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  68. 坪川信三

    坪川委員長 速記を始めてください。
  69. 永井勝次郎

    ○永井委員 これは局長に伺うのですが、大体今のところは、武器生産については、一箇年くらいの展望、見通しというものがつくのです。アメリカからの受注について、アメリカのことし一箇年の大体の注文の種目と予算額、それはこういうものだというような見通しをもつて一年くらいはやれるのですが、あるいはもつと二年、三年というような見通しが持てるのですか、どうですか。
  70. 葦沢大義

    葦沢政府委員 駐留軍発注量の見込みについてのお尋ね、これは最も重要な点で、再三各委員から確かめられたところで、ごもつともなお尋ねでございますが、ただいま六月までの発注量としましては、約三千万ドルくらいあるとわれわれは一応の推定をいたしておりますが、それ以後になりますとアメリカの予算として国会の承認等というような問題がありますので、明確にその内容を知ることができないことは当然だと思いますが、われわれの見込みとしまして、現状にして変化がなければ、やはりことしくらいのものはあるのじやないかというふうに考えておるのでございます。内容は銃弾、砲弾、迫撃砲というような種類でございまして、その種類別の金額につきましては、一年間どうというようなことは、まだはつきり申し上げられない段階でございます。申し上げられないというのは、何も知つていることを申し上げられないのではなくて、まだわれわれが承知できないという趣旨でございますので、御了承願いたいと思います。
  71. 永井勝次郎

    ○永井委員 大体武器生産というようなことについては、アメリカ自体でも、国際情勢のいかんによつては、これが伸びたり縮んだりして、見通しがつかないのが武器生産の特質だと思うのであります。いわんや外国で見通しが必要だからぜひその計画を示してくれと言つたつて、何箇年間の見通しなどというものが、現在アメリカから示される理由はないと思うのでありますが、これはわからないというのか、わからないのが本質だというふうに了解されておるのか、これを伺いたい。
  72. 葦沢大義

    葦沢政府委員 わからないというのが本質でございます。
  73. 永井勝次郎

    ○永井委員 わからないのが本質だとするならば、日本業者の現在の切なる要望は、計画的な生産をさせてほしい、その計画を示してほしい、こういうことなんです。つまり企業の安定をはかるためには、計画性がなかつたら安定できぬのだということなんですが、これは本質的にそういう計画がはつきりしないものである、こういうことになつたらいつまで行つたつて、これは安定性というものがないじやありませんか。
  74. 葦沢大義

    葦沢政府委員 業界発注量を計画的に確定してもらいたいという希望は、もとより通産省といたしましても、最もそれを期待するのであります。これは朝野をあげて期待するところでありますが、今申し上げましたように、明確にこれを知り得ない。これは輸出につきましても、御承知のように、大体輸出計画というものをつくりまして、一応外貨計算その他の基礎等はありますけれども、これも相手国の発注がどうなるかということを明確にすることは非常に困難であります。しかしながら、やはりそれは事態の見通しと申しますか、あるいは輸出相手国の情勢に対する判断というものに基いて製造するというこになるわけでありますので、明確なものを持ちたいことは何人といえども持ちたいのでありますが、それを持ち得ない。持ち得ないけれども、そこにやはり一つ現実における判断に基いて製造なり商売をして行くという、現実の事態を直視するというところに出発するより以外にないというふうに考えておるわけでございます。
  75. 永井勝次郎

    ○永井委員 局長の言う現実の事態の直視ということは、結局貿易産業としての発注ということではなしに、今の兵器生産ということは、向うからの教育時代であり、指導時代である。これがやがて本格的な日本の再軍備が出発して、そうして外国の注文によつてこの企業が安定するのではなくして、国内の防衛態勢を強化する一つ生産として安定条件があるのだ、こういう見通しを直視して、そうして安定の可能性があるのだ、そういう面でプラス・アルフアーを考えながらこの企業を安定させよう、こういうような一つ現実の直視をしておるのではないか。つまり直視の内容をひとつ明確にしていただきたい。
  76. 葦沢大義

    葦沢政府委員 現実と申しましたのは、駐留軍発注が現在行われておる。この委員会において御審議いただきました当初予算によりましては約二千万でありましたが、最近一千万の発注が行われました。現に駐留軍からの発注が三千万ドルある、それはドルで支払われるのでありまして、準輸出産業的な重要な地位を持つておるということ、この現実を申し上げておるのでありまして、それ以外の何ものの現実も私は申し上げていないのでございます。
  77. 永井勝次郎

    ○永井委員 たとえば三千万ドルにいたしましても、どういう種目がこの中にあるか、あるいは砲弾ばかり来るのか、何もわからないということでは、企業の安定性というものはあり得ようがない。しかし私は、ああだこうだ、言葉のやりとりをするだけが目的ではないのでありますから、それ以上追究しなくても、兵器生産というものは、大体自国内でも計画が立たないのだ、従つてそれには政府の保障というものが裏づけにならなければならない。企業を起す場合、拡張の場合には助成があり、損失の場合には補償があるという基盤の上に立つて行われる。従つて日本の貿易産業として兵器生産をするということは不適当だ、それをやるに助成とか補償とかなければやれない性質のものだ、計画性はないものだということ、この点において了承すればけつこうだと思うのであります。そこで今のところは三千万ドルか四千万ドル、多くても五、六千万ドルというところだからいいのでありますが、これがもしアジアに風雲が起つてあらゆる犠牲と、あらゆる努力をもつて、こういう武器生産に拍車をかけなければならぬという事態に来ました場合における資材の関係、他産業との関係、国民生活との関係、こういうような問題が起つて来ようと思うのであります。そういうような事態も予想できるかどうか。予想できるとするならば、これらの兵器産業に対する資材関係なりその他について、アメリカとの間にどういう話合いがあるか、全部やはり国内の資材でこれを受けなければならぬのか、あるいは注文に対して向うから裏づけとして原料が来るのかどうか、これをひとつ伺いたい。
  78. 小平久雄

    小平政府委員 アジアに戦乱等がさらに拡大をいたした場合に、わが国内の武器生産はどうなるのか、こういうことですが、そういう点は本法の提案にあたりましては何ら予想いたしておりません。のみならず本法では、現在ただいまの状況をもつていたしましても、あまり大きくなり過ぎることを、むしろ国民生活の確保という点から考えて規制いたそうといたしておるのでありまして、さらに現在と非常に異なつた事態が起きたことまでも予想しては、何ら考えておらないのであります。
  79. 永井勝次郎

    ○永井委員 これは考える、考えないでなくて、当然そういう事態を予想しなければならないと思います。またアジアに風雲が起らなくても、再軍備が本格的に出発するというような場合には、国内で軍備の装備の充実ということが当然なされなければいかぬ。ことに現在アメリカから余りものを頂戴している鉄砲などは、身長その他の関係から日本人の体格には不適当であるし、機関銃にいたしましてもその通り。それから道路その他の橋梁の状況からいたしましても、現在日本の保安隊の持つている特車という戦車は、重量が重くて橋梁から直さなければ十分な活動ができないというような、こういう状態からいたしまして、こういうものがやがては国内受注によつてこれらの問題解決の生産方向へ進まなければならぬ。あるいは飛行機にいたしましても、全然今までこの武器の方では考えていませんけれども、飛行機にいたしましても、二十八年においては百機が予定されておる。ヘリコプターにおきましても五十機ですか予定されておるというようなことで、そうして国内の生産態勢が整備いたして参りますれば、当然これらの問題ができて来ますことは、もう明らかな事実であります。こういう明らかなる事実がすでにある。単にその武器等製造法の問題ではなしに、保安隊あるいは警備隊の艦船等の建造等も始まるでありましようし、そういうような方面からの資材の需要というものが非常に起つて来ておる。もう少し先へ行きますと、当然資材の面におけるところの計画性を持たないと、につちもさつちも動かなくなつて来ると思うのでありまして、そういう展望を持たないで、単に押えて行くのだ、三千万ドル程度ならばこれでいいのだというような、非常な浅薄なものの考えで、こういうことを出発していいのかどうか、そういう根本の国内需要の展望、見通しというものをどう思つておるか。外国の見通しは一応伺いましたが、一体国内需要の面における見通しはどういうふうに思つておるか。そうしてこれに対応するところの日本生産態勢というものはどういうふうに考えておるか。
  80. 小平久雄

    小平政府委員 駐留軍発注の予想につきましては先ほど来申し上げた通りでありますが。国内の関係と申しましては、従来はゼロに近かつたのでございますが、二十八年度におきましては保安隊関係におきまして大体三億数千万円の武器発注がある予定であります。特に御承知通り、わが国では機械工業方面は非常に不振でありまして、現に遊休設備等も相当あるわけでありますから、将来の見通しというものがはつきりせぬで始めてよろしいのかというお尋ねでありますが、このような遊休設備の活用という点からも、現に一部においては生産を始めておるわけであります。また国民経済を阻害しない程度には、むしろこれをやることが業界のためにも、国民経済全体の立場から申しましても、われわれは適当なものだと考えておるわけであります。
  81. 永井勝次郎

    ○永井委員 アメリカのような物資の豊富なところでも、国防生産法によつてそれの管理助成の道が講じられ、資材その他の優先配給の順位がちやんと計画的になされておる。きのうそういう点について、この法案には何もそういう問題が付随していない、資材配給の点は何も付随していないし、今後の武器生産についての計画的な生産態勢というものが何らこの法案に盛られなくて、実際的な運用の面においても何ら現在考慮されていない、それから先日小笠原大臣は、三千万ドルや五千万ドルの発注というものでは、日本産業構造の転換とか変資とか、そんなものはてんでつめのあかほどで、問題にならないのだ、こういうようなことを言つておられましたけれども、これは大きな誤りでありまして、アメリカにおけるところの国防生産におけるいろいろな助成順位、どういうふうな特典を与えており、順位がどうなつておるかというと、第一が工作機械器具類、第二が銅、鉛、亜鉛鉱、第三が銑鉄、第四が硫黄、第五が軍需品、第六が塩基性アルミ、こういうふうに軍需品はもう第五位です。それよりもつと基礎的なものに第一、第二、第三という順位を与えて、そういう基礎産業の基盤の上に、一つの組立てとしての軍需産業というものを起しておる。従つてほんとうに武器生産というものを外国貿易として発展させる、あるいは内需が起つて、それに対応して行く、あるいは飛行機生産もやつて行く、戦車もやつて行く、こういうぐあいの見通しを持つて出発いたしますれば、基本的に日本産業構造というものがかわつて来なければならない。そうしてそこには基礎産業というものがほんとうに国際的に対応できるような態勢をととのえるような形において、広汎な計画性を持つて来なければいかぬ。このほかに無電の関係もありましようし、あるいは電気の関係もありましようし、ガラス産業もありましようし、そういうような広汎な一つの計画性なくして、ただ武器なんだ、これだけなんだ、こういうような出発の仕方でありましては、大きな誤りを起しますし、当局はそれくらいのことはちやんと持つておるでしよう。そういうものを水面以下に隠して、そして氷山の一角だけをただ出して、そしてやがて、今は準備時代で、だんだん行つて、あつと、国民が知らない間に軍需産業というものが本格的に始まつて、やがては局長なんかも通産省でなくて軍需省に移つてしまうというような事態に発展するかもしれない。看板さえ書きかえればいつでもそういうことができる。こういうような態勢を隠しながら、こういう問題をわれわれのところへ出して、そうしてばかにしておる。こういうことに対してはわれわれは承知ができないのでありまして、やはり国政審議の責任に立つわれわれは、この問題の中に何があり、どういうところが現在の段階では隠されておるのだ、こういうことを明白にしながらわれわれはこの問題の討議をしなければならない、こう思うのです。ばかみたいに、ああそうですかというわけに私は参らぬ、かように思うので、先ほど来論議しておるわけです。これは産業構造の本質的な転換の時期に、もう来ているのだと思うので、さらに時間をかけてこれらの問題について質疑を繰返して行きたいと思います。ちようど約束の時間の四時ですから、これでやめておきます。
  82. 坪川信三

    坪川委員長 本日はこの程度といたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時五十九分散会