○
中村(辰)
政府委員 ただいま
政務次官から御
答弁を申し上げ、私が補足して詳しく申し上げるほどの点もございませんが、
肥料工業に対する
通産省の助成問題はどうかということでございます。
電力の問題が非常に論議されておりますので、従来の、
肥料工業に対します
電力の
配慮の概略を申し上げたいと思います。
肥料工業を、
輸出工業として
育成するという
方針が、一昨年の秋と記憶いたしますが、当時非常に
渇水期でございましたが、
政府は、
閣議決定をもちまして、当時の
暫定計画に対する一割の
電力増配を行いました。そうして
東南アに対する
輸出の第一歩を踏み出したのでありまして、本
肥料年度並びに昨
肥料年度の後半におきましては、非・常に豊水に恵まれまして、
計画に対します増産が、著しく高度に達しておる
状況であります。このような
状況で、
肥料工業を
輸出工業化いたすという、現在はちようど過渡的な、きわめて大切な段階でございまして、この際に、
輸出工業化ということをさらに一歩を進めたいという心境にございまして、その際、特に
考慮いたします二、三点、
電力問題に対し
通産省が努力いたしておる点を、数学的に申し上げますと、
化学肥料は、
昭和二十七年度の
計画で、全国大口
工場の総
割当量百二十億キロワツト・アワーのうち、約二七・五%に相当する三十三億キロワツト・アワーの
電力を
供給いたして、最大の部門を占めております。この
電力は、もちろん化学
肥料工業の
コストを低くするという建前から、
標準料金を原則として
供給する建前にいたしておるのでございます。
昭和二十七年の一月から十二月の実績を見ますと、
化学肥料部門全体として、その
生産のほとんど全部を安価な
標準料金のみで行
つておる
状況でございまして、特に
化学肥料のうち、電解
硫安は、火力料金を全然使
つておりません。ガス法
硫安は一・二%、石灰窒素につきましては一・一%、このような火力料金の少い部門は、他に類を見ない
状況でございます。こういうような
電力料金における優遇措置ということが、今日の化学
肥料工業を培養した、著しい
政府の
施策の現われであろと思うのであります。この点につきまして、もし
硫安工業界その他において、
政府の
電力配当に対する
態度が不十分だとお感じにたりますれば、私は、この
電力配給の
状況から判断いたしまして、
政府の
電力に対します努力は、非常な努力であろということを、ぜひ理解していただきたいと
考えるのでございます。今後、
電力量の増加ということが、もちろん
考えられておりますが、
一般産業需要からいたしますと、
電力の自然増、開発
計画の進捗に伴います自然増を上まわる
状況であることは、御
承知の
通りでございます。かりに大口
産業の約二分の一を占めます
化学肥料に、さらに
標準料金分を五%追加いたしますならば、他
産業に対しまして二・五%の追加
電力料金を強制するような結果になると思うのであります。
標準料金、追加料金、特に火力料金との平均の数を申し上げますと、安価な
標準料金は、地区により違いますが、最低〇・八八円、最高二・七五円で。ございますが、これを追加料金で
考えますと、最低七円四十銭から最高十円五十銭になるのであります。追加料金の二・五%の他
産業べの影響ということは、全
産業の観点からいたしましても、相当慎重に
考慮いたさなければならぬ点かと思うのであります。もとより、今日の
肥料工業を推進いたします
関係で、
通産省は、これらの
状況をも
考慮に入れて、できるだけ
電力の配当をふやそうという努力をいたしておることは、従来とかわらないのでございます。ただいま
政務次官から申し上げた点も、これらの諸般の
情勢を
考慮いたしまして、化学
肥料工業の
電力の増強あるいは
割当の増加ということを、さらに検討中でございます。
第二の点といたしまして、
肥料工業の
合理化、特に
設備の
近代化でございます。終戦後の
わが国の
一般産業界も同様でございますが、化学
肥料工業が特に農村の経済と密接不可分であり、
日本の経済の基盤をなします農業の回復という観点から、終戦後
肥料工業の再興ということに第一目標を置きまして、逐次
財政資金の放出をいたしまして、
設備の拡充、
近代化ということを推進して参
つておるのでございます、今日
財政資金の貸出高は五十億にな
つております。もちろん今後におきます
財政資金の放出も、特に化学
肥料工業の割高と
考えられる
部分に対し、集中的にや
つて参りたい。特に当
委員会においても先般申し上げましたように、
わが国の化学
肥料工業、特に
硫安におきまして、電解法並びにガス法の両法が併用されておりますが、割高でありますコークス法の
コスト引下げのために、西独で最近実施に移りましたコツパース法による粉炭ガス化、これは相当大幅の投下資本を要するのでございますが、これを推進するというようなこと、そのほか先ほ
どもございましたが、脆弱なる企業に対する
コスト引下げ、
個々の
会社の名前を申し上げることははばかりまするが、か
つて物価庁の
価格統制時代がございましたが、当時三グループ制と申しまして、
コストの基準によりましてA、B、Cクラスをわけまして、それに対する
価格補給金制度でこれらの企業の
育成をはかつたことは顕著な事実でございまして、その三グループ制におきまして、Cのクラスに属するものの操業度の上昇と
合理化、特に、単独なる
硫安工業が、化学
工業として総合企業としての欠点がありまするので、これらの企業に対しては他の有磯合成企業をもあわせて行い得るよう指導して、これに対して開発
銀行の融資をいたしておる
状況でございます。これらの企業の上から申しまして、弱体であると
考えられる企業に対する特殊の
考慮と、これの指導については、従来も行
つておるところであり、現在も行
つておるところであります。
肥料工業に対する
国家助成としては、私はこの
方法は間違
つておらぬと思うのでございます。またこの
方法をさらに推進いたしたい
考えでございます、
次に第三点として、
硫安コストの
国際競争力の培養の問題でございます。これは先般当
委員会においても、
通産省の最終の目標ということ、長期にわたるいわゆる総合経済の
合理化を含めまして、これを推進する、その必要のあることはもちろんでございまして、その線で
日本の、安
工業の割高であると
考えられるコークス
石炭法の
コスト引下げのためには、特にこの
基礎をなしております
石炭鉱業の
合理化、縦坑開発
計画による冬季ロスト高の
引下げ計画、並びに
石炭鉱業に対する
金利の
引下げ等、そういつた
意味におきましての基本的な線を進めております。これは
肥料工業自体の
合理化というものと相まちまして、逐次効果を現わす部面と
考えるのであります。
石炭法、ガス法と電解法との
コストの差は、豊水あるいは
渇水期において操業度の異なることから、当然この間に異動がございますが、純
技術的に申し上げまして、電解法とガス法との差は、おそらく一トンについて二千円あるいは三千円の開きを持つというのが、
一つの型でごいます。今日では
電力の
不足の
状況にかんがみまして、
重点をガス法に置いておりまするが、電源開発の推進に伴いまして、これを電解法に
重点を漸次移行するという
方向に至りまするならば、この点におきます
国際競争上の利益というものは、ただいま申し上げました数字から想像いたしていただきたいと思うのであります。
さらに、これらの
合理化と伴いまして、
肥料工業が
国際上どういう立場に置かれる結果に相なるであろうかという問題に相なりますが、もちろん今日の
肥料工業の操業度は、
硫安工業において大体二百万トンと
考えられるのでございます。この二百万トンのうち、同内の
需要、これはもちろん
価格その他の異動から、多少の異動は起ると思いますが、おおむねこれを百五十万トンと想定するのが現在の常識でございまして、しかる場合におきまして、さらに
輸出でき得るものは四、五十万トンでございます。もしこのような
輸出が着実に行われますならば、
日本の
東南アに対します、特に
日本に近い韓国、フイリピンあるいは台湾、そういうものに対する
需要の、全部とは
考えられませんが、相当大きな
部分を
供給し得るのでございます。
この地域に対します欧州
硫安との
競争関係を数字的に申し上げますと、昨年の秋の終りごろでございます。最も
日本が船運賃の上において非常な不利に陥つたときでございます。このときの
状況を前提といたしまして、数学的にこれをはじきますと、欧州特に西独から
東南アジアに参りますドイツのF
○B
硫安価格ガ、四十五ドル見当でございます。これが当時船運賃は八ドルないし十ドルでありました。従いまして、
東南アに対しますCIFの
価格は五十三ドルから五十五ドル
程度、
わが国の当時のFOB
価格が六十五ドルと想定いたしております。
安定帯価格の九百円に船積みの費用と
国内運賃プールとの差を加減いたしまして、FOB六十五ドルというものを想定いたしまして、
東南アに対する船運賃は、当時三ドル
程度で、CIF六十八ドル、これらの想定をいたしますと、その差は相当大きいのでございます。十三ドルから十五ドルに相なるのでございます。当時の欧州からの船運賃の八ドルから十ドルというものは、異常に低額でありまして、普通に
考えるときの約半額とも称せられたのであります。もちろん
日本からその地域に対する船運賃は、ほとんど当時それ以前と異動ございません。今日も異動ありません
状況であります。このような
状況でありますが、特に韓国、台湾、フイリピン、こういう地域に対するものは、欧州からの船運賃はインド、パキスタンに比べてさらに高くなりますので、十ドルの
価格上の
引下げができるならば、これらの
日本ときわめて経済的に緊密であります地域に対する
輸出は敢行し得る、こういう見通しが立つのでございます。先ほど申しました
通り、
石炭鉱業、あるいは電源開発、化学
肥料工業自体の
合理化によりまして、十ドルの
価格低下を期待することは、これは明瞭なことでございまして、こういう
意味合いにおいて、化学
肥料工業、特に
硫安の
国際競争力の培養ということは実現し得ると
考えるのであります。
〔
委員長退席、
高木委員長代理着席〕
昨年十一月、インドに対しまする
輸出価格が非常に割安であつた、こう
考えられたのでございますが、当時私たちが一番懸念いたしたことは、この
輸出をやめるか、あるいは
硫安の操業度を落して操短するかという岐路に立つたのであります。私はこのときに、
輸出工業として
硫安工業を伸ばすという
見地から、操短の道を選ぶのは不適当でないかという結論をいたしまして、インドに対する
輸出を敢行いたしたのであります。それから、その後韓国向けの
輸出その他につきましては、もちろん
国内価格に対する
関係で、いろいろな論議を生んでおりますが、経済の歩みとして、当時の
価格の推移が今日どのようにな
つておるかということを数字的に
考えますると、その後、現在
わが国に
硫安の
輸出引合いをいたしておる国の引合い
価格を一、二申し上げますと、韓国はCIF六十七ドル引合いをいたしております。台湾は一六十五ドルに引合いをいたしております。フイリピンはやや下まわ
つておりますが、これらの大口と
考えられます地域についての
輸出引合いはすでに上昇の道をたど
つております。これらの
輸出引合いの
状況を捕捉いたしまして、適正
価格による
輸出ということを遂行することが
硫安工業の生きる道と
考えるのであります。私は今日の
生産状況からいたしまして、こういつた適時適宜、適正
輸出ということを今後特に
考慮して参りたいと
考えるのであります。
さらにごの事態を明らかにいたしますために、
肥料の
生産状況を申し添えますと、
硫安工業の今日のいわゆる
価格引下げという問題もございますが、むしろこのような問題を業界としてはできるだけ
国際価格に調整して行くという気持を表わしまして、このような適正
輸出の機会をとらえるといつたような経済全体としての円滑な運営を期待するのがむしろよいのではないかと思うのであります。そういつた点を特に明らかにいたすために
硫安の
生産状況の数字を申し上げます。
本
肥料年度、すなわち昨年八月から本年の一月まではすでに実績は明らかにな
つておりまして、九十八万八千トンでございます。一月の
渇水期といわれた時期におきましても、
政府は
電力の特配について非常な努力をいたしまして、十四万一千トンの
計画に対して二万トンの上まわりを示した
状況でございます。二月におきましては十二万三千トン、特に
質問者の御指摘にございました脆弱な企業に対しては
電力を増配いたしております。二月の
生産実績もおそらく一万トンを上まわるであろうと
考えられておる
状況でございます。かりに二月以降本年七月までの最初の
計画がそのまま実現いたしたと
考えますと、百九十八万一千トンになると
考えられますので、これを現在までの
輸出の四十数万トンを
輸出いたしましても、本年七月末の在庫は四十万トン
程度になりますので、私はこの際こういつた趣旨で
肥料工業の安定をはかりたいと
考えます。