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1953-02-06 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月六日(金曜日)     午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 永井勝次郎君       河合 良成君    首藤 新八君       辻  寛一君    中峠 國夫君       福井  勇君    福井 順一君       南  好雄君    宇田 耕一君       高橋 長治君    長谷川四郎君       山手 滿男君    伊藤卯四郎君       山口シヅエ君    加藤 清二君       木下 重範君  出席国務大臣         通商産業大臣 小笠原九郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 二月六日  委員村上勇君辞任につき、その補欠として青木  孝義君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二日  軽目羽二重スカーフ規格存続に関する請願(松  井政吉君紹介)(第一五五二号) の審査を本委員会に付託された。 同日  アジア貿易促進に関する陳情書  (第九七二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  通商産業政策基本方針に関する件  昭和二十八年度通商産業省関係予算及び政府提  出予定法律案に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日はまず通商産業大臣より通商産業政策基本方針に関し説明を求めます。通商産業大臣小笠原九郎君。
  3. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 わが国経済現状及び見通し等につきましては、国会再開会の劈頭の経済演説におきまして申し述べた通りでありまして、ここには当面の問題につきまして私の見解を申し上げさしていただきます。  通商産業政策重点は、第一に貿易量拡大して生産水準を向上し、国民所得の増大をはかり、第二にこれがため産業基盤を強化いたしまするとともに、産業合理化近代化を徹底し、科学技術を振興して、諸外国と同水準に到達させるということによりまして、生産費切下げ商品品質向上をはかり、第三に、戦後の経済民主化精神は尊重しつつも、その行き過ぎ経済の円滑な発展を阻害している点を是正いたしまするとともに、第四に景気変動のしわ寄せられがちな中小企業地位を強化いたしましてその健全な発達を助長するにあると考えております。米国共和党政権貿易拡大方針を明らかにし、英連邦もまた旧臘の首相会議におきまして世界貿易拡大を希望しております。わが国といたしましては、このような情勢に対処し、通商航海条約通商協定の締結、ガツトヘの加入等経済外交を推進して障害の除去に努めますとともに、わが国の受取り超過と相なつておる諸国からの輸入をを促進するため、貿易管理上及び別口外貨貸付等方法によりまして、これが優遇措置を講じ、輸出市場の開拓につきましても、特にドル地域及び東南アジア中南米等重点を置くこととし、相互経済協力を推進し、貿易あつせんを円滑ならしむるため、来年度予算につきましても所要の経費を計上してございます。これらの諸施策と相まちまして、輸出競争力を培養するため貿易金融を円滑化し、輸出信用保険制度改善し、対外信用を強化するために輸出品取締法改正し、輸出組合育成強化をはかりまするとともに、貿易商社についても、税制金融上の優遇措置をとること等によりまして、その強化育成をはかつて参りたいと考えております。  わが国商品、特に重化学工業製品が、国際的に見まして相当割高でありますることは、朝鮮動乱以後特にその傾向がはなはだしいのでありまするが、これはわが国産業合理化近代化の立遅れに基因するところが大きいと存じます。しかしながら、今後諸外国との輸出競争がますます激化いたしますることは必至であり、わが国価格水準国際価格さや寄せを余儀なくせられることは明らかであるから、政府といたしましては、これらの価格水準引下げ一つ重要施策として考えておるもので、資本蓄積のため必要な税制改正を行いまするとともに、電力、石炭鉄鋼等基盤産業に対しましては、特に重点的に政府資金を投じまして、資源の開発設備近代化及び原料入手条件改善をはかる等の方針をさらに強く推進いたしたいと考えております。  石炭及び鉄鋼が国際的に割高でありますることは、重化学工業製品対外競争土著しい不利を招く一大原因と相なつておるので、まずこれら主要原材料価格引下げることが必要であると考えております。もとよりその根本には、わが国の置かれました自然条件の不利という要素もありまするので、このような引下げ策が一朝一夕にして成功することは不可能でございましよう。必ずや相当な日時をかけ、官民が一致協力して漸次成果を上げて行かなければならないのでございまするが、石炭につきましては、根本的若返り工事を実施する必要がありまするので、四百九十億円の資金をもちまして、五箇年間に七十九本の縦坑を開鑿し、約三割のコスト切下げを行う案を検討いたしておりまして、その他中小炭坑等機械化を推進する等の諸施策を実施いたしまして、五年後には平均炭価で三割以上の切下げ目標として努力いたしたいと存じております。  鉄鋼につきましては、圧延部門を主とせる機械設備合理化計画が、昭和二十八年度をもつておおむね完成いたしまするが、原料の取得につきましても、東南アジア地区開発をさらに促進し、輸送設備改善を行うこと等によつて、銑鉄四%、鋼材二七%のコスト切下げを第一次の目標といたしたいと存じております。  企業経済力の弱化は、景気変動に対しまして著しく抵抗力を失い、無用な競争を招くこととなり、昨年春以来の貿易不振に伴う景気停滞の結果、綿糸布を主とせる市価が不安定となり、輸出をさらに阻害することと相なりましたので、昨年三月以来政府綿紡操短勧告を行い、ようやく市価の安定を得るに至つているのでありますが、今後の需給価格変動をにらみ合せまして方針を定めたいと思つております。硫安につきましても、昨年七月ごろから滞貨が増大し、しかも国際価格の下落によりまして輸出も困難と相なりましたので、昨年秋、インド、朝鮮等に対し、国内価格を下まわる価格をもつて輸出することを余儀なくされました。この困難な事情を打開する、がために、旧臘経済審議庁肥料協議会を設けまして、肥料に関する基本方針を確立することといたし、民間有識者委員に委嘱いたしまして、すでに審議を開始いたしておりまするから、至急に結論を得まして実施に移る予定でございます。  これらの状況は、多くの産業において多少の差はありましても存在するものでありまして、このような景気停滞あるいは輸出不振の時期におきまする企業弾力性の欠如が、特にわが国においては独禁法等のいわゆる経済民主化立法によつて禁止されているカルテル等の問題についての反省を必要として来ておると思います。財閥等の支配を排除し、公正自由な取引を促進することによりまして、国民経済の円満なる発展を期そうとする独占禁止法精神は、これはあくまで経済憲法として遵守すべきものでございまするが、わが国経済現状は、先進資本主義国に比べまして構造的にも違つておるし、また資本蓄積を失い、さらに細分化された各企業競争激等のおもむくところは、自立の力を失つて共倒れになる危険もありまするし、法の行き過ぎがかえつて国民経済発展を阻害するおそれ等もありますので、今国会には同法の改正を提案し、不公正なる競争等予防的措置についてはこれを削除し、不況の切り抜け、貿易の振興、産業合理化等に必要な場合にはカルテルを認める等の措置をとりたいとも考えております。特に貿易につきましては、国際競争力強化のために輸出取引法拡大いたしまして、輸入についても適用するため輸出入取引法に改め、貿易を阻害しておる事情を排除するためには輸出入とも協定及び組合の結成を認める等の提案をいたしたいと考えております。  このような景気停滞期にありまして、とかくしわの寄せられがちな中小企業につきましては、年末金融についても応急格段措置を、とつて相当の成績を上げることができましたが、さらに組織化系列化の指導を徹底するとともに、金融面におきましても、新たに中小企業金融公庫を設けまして、中小企業が最も渇望しておる合理化設備資金及び長期運転資金の融通を円滑ならしむるようにいたしたく、法案及び予纂案を提出することに相なつております。  このほか零細企業に対しましては、国民金融公庫に対し政府出資を三十億円増加いたしまして、資金運用部から五十億円を貸し付ける等によつて資金をまかない、商工中金につきましても、引続き商工債券資金運用部引受けを推進し、その資金運用についても円滑に行うよう配慮し、また中小企業信用保険法改正し、対象範囲拡大担保金額引上げ等中小企業関係取引を円滑ならしむるよう努力いたしたいと存じております。  政府はこのような行詰まりぎみ現状の打開に対し、あらゆる努力を借上まないところでございまするが、本来政府のの行うべきことは、企業の置かれておる客観条件改善し、その障害を除去することにあるのであります。産業そのもの発展というものは、企業者各位の創意と責任とによつて解決さるべきものであることは申すまでもございません。しかも企業合理化し、生産コスト切下げて、戦後の変則的な企業経営を是正すべき要請の強いこと今日にしくものはないのでございますから、経営者は単に政府救済等に依存することなく、労使協力し、将来の発展に備えて、苦しい時期を乗切る覚悟を新たにしてもらいたいことを切願いたしまして私のごあいさつといたします。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 質疑の通告がありますからこれを許します。永井勝次郎君。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 この場合二、三の問題について簡単にお尋ねをいたしたいと思いますが、ただいま大臣の御説明の中にありました通り肥料の問題については審議会を設けて、目下結論を急ぎつつあるようであります。春肥の問題が当面差迫つてつて、これの価格の問題が問題になつておるわけであります。さらに本年の春肥の問題を中心といたしまして、将来にわたる肥料産業政策が関心を持たれておるのでありますが、春肥に対する価格見通し安定帯価格がくずされるのかどうか、あるいはもつと会社事情によつては、この価格引下げることができるのであるかどうか、この問題について大臣のお答えを願いたいと思います。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま永井さんのお尋ねの点につきましては、肥料審議会、これは生産者消費者とこれを取扱つておる流通業者及び学識経験者を入れまして、一万田日銀総裁のもとに、今せつかく審議を急いでおりまするから、今ここで私は結論的なことを申し上げることは少し差控えさしていただきたいと存じます。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 結論的なことは言えないでありましようが、当面の春肥価格見通しというようなことは大体のことはおわかりだろうし、結論がどうあろうと、これらの問題についての扱い方というものは、従来からずつと続いておる問題であり、この議会においても、大臣幾たび答弁をされて公約されておる問題でもありますので、これらの問題については大臣答弁の限界だろうと思うので、お尋ねします。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今その問題について特に結論を急いでいただいております。従いまして、その前に私が意見を申し上げることはちよつと差控えさしていただきたいと存じまするが、ただ春肥は昨年の肥料よりも高くしないということだけははつきりと私は申し上げ得ると思います。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 今までの大臣答弁の中で、輸出の面は相当出血がある、しかしこの出血内需用価格にはこれを転嫁しない、輸出分内需分とを区分してそうして安定帯価格協定されているのだ、こういうことで内需価格には輸出分出血転嫁されていないんだということを幾たび言明されて来ておるわけであります。確かに転嫁されていないのかどうか、これは会社がそう言つておるということを大臣が代弁されるのでなくて、今までの答弁は、大臣がその責任において、転嫁されていないと、こういう言明であつたので、この点をひとつ重ねてお尋ねいたします。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはたびたび申し上げました通り輸出によつて生じまする損失を国内消費者価格転嫁するという考えはございません。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 現実に輸出分について出血があるといたしますれば、その出血国内価格転嫁しないでどういうふうに今後処理される方針であるか、この点をお伺いしたいと思います。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはたな上げその他各種の方法もございまするので、ここでちよつと具体的の方法について申し上げにくいが、私の言明を御信頼願います。決してそれを転嫁させることはいたしません。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 肥料につきましては、われわれは国内需要分については、これは単に肥料産業としての性格においてこれを見るべきではない。やはり国内農業生産の一環としての肥料産業である。こういうふうな農業生産を主体にした肥料生産というものの考え方に立たなければならないと考えておるわけであります。また一面アジア東南アこの方面に対する輸出の面における肥料地位というものは非常に高く評価しなければなりませんから、これは国内需給関係たけによらないで、拡大生産政策方針のもとにこれを拡大し、輸出の分については、輸出産業として特別に考慮して行かなければならぬ。切り離して考えて行かなければいかぬ。ただ国内産業の面だけで、消費量の面だけで、この問題を左右すべきものではないとわれわれは考えておるわけであります。その意味におきまして、われわれは輸出におけるところの出血については、相当国としても、国民経済的な立場においてこれを取上げて、その産業が成り立つて行くような方向に助成して行かなければならないと考えておるわけであります。そこで国内消費の面から現在騒がれておるわけでありますが、農村がこのような騒ぎになつて来ておることは、輸出出血国内転嫁される。直接の転嫁でなくても、間接的な転嫁もありましようし、なしくずし転嫁もありましようし、あるいは企業計算の上から相当上手に転嫁しているというようなこともありましよう。そういう面において、相当肥料企業者も裸になつて、これらの国内の問題については考えて行かなければならない、こう思うのであります。それが聞くところによると、審議会において、肥料会社の方からは、原価計算を出すといつて、その数字を出した。ところがそれが安定帯価格の最高一かます九百二十円をオーバーするような数字が出ておるというようなことを漏れ聞いておるのでありますが、そのような形で、そういうようなものの考え方に立つて業者が行くならば、この問題は一層混乱を来すであろう、こう思うのでありますが、大臣はこの肥料政策について、具体的な結論はとにかくとして、一つ考え方としてどういう考え方を持つておるのであるか。国内輸出産業の面において、どういうふうなお考えを持つておられるのであるか。この考え方、この産業に対する一つ扱い方、これの基本的な御方針を伺つておきたい。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまお話の点には、まことに御同感にたえぬ点が多々承るのでありますが、ただ私としては、せつかく各方面権威者にお願いしておる途上に、通産省をお預かりしておる者として、通産省はこういう意向だということを言うことは、この肥料審議会を御委嘱申し上げた趣旨にもそむきますので、この際は差控えさしていただきたいと存じます。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 肥料の問題は、そういう事情でおれば、まあ委員会結論をまつて、もう一度これを討議に取上げたいと存じます。  その次にお伺いをいたしたいのは、二十八年度の通産省関係予算を見ますと、予算の中にアルコール工場払下げ予定されておるようでありますが、このアルコール工業に対する考え方払下げ予算に大体見込まれておるようでありますが、この内容について、払下げるとすれば、どこの工場を払い下げようとしておるのであるか、この点を伺つておきたいと思います。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 政府委員より答弁いたさせます。
  17. 石原武夫

    石原(武)政府委員 予算におきましては、二工場アルコール工場を本年度内に払下げ予定にいたしております。場所等はまだ決定をいたしておりません。
  18. 永井勝次郎

    永井委員 官営工場払下げて行くというようなことは、どういう理由に基くのか、その理由を示していただきたい。
  19. 石原武夫

    石原(武)政府委員 アルコール官営工場につきましては、前々来、政府として閣議決定である程度これを民営に移して行こうということになつておりまして、従来から一部民営、一部官営であつたのですが、官営工場をある程度順次民営に移したいという趣旨で、従来から、二十七年度においても同じでございますが、さような方針で来ておるわけでございます。
  20. 永井勝次郎

    永井委員 払下げ価格については、どういう取扱いをされる方針であるか。
  21. 石原武夫

    石原(武)政府委員 ただいまお尋ねの、今回の払下げ価格は、別にどうということをきめておりませんが、従来払下げておりますのは、その当時の簿価でございますとか、いろいろなその後の物価の移動でありますとかいうような点を検討いたしまして、大蔵省とも協議して払下げ価格決定いたしております。
  22. 永井勝次郎

    永井委員 前回のアルコール工場払下げにつきましては、北海道北見帯広の二工場払下げられたわけであります。この工場払下げについては、北海道北見と申しますと私の地元であつて、しかも帯広北見の三工場は私の選挙区でありますから、その経過はよく承知しておるわけであります。最初は帳簿価格指名払下げをするという方針で進んでいたようでありますが、途中でしようちゆう会社その他からのいろいろの横やりが入つて、札を入れさすというようなことで払下げをしたようでありますが、この二つの工場を加えて七千万円内外で払下げた。ところが私の地元北見アルコール工場一つが一億円以上の価格で処理されて帯広工場はまつたくそれだけ浮いておるというような払下げの仕方であり、払下げ当時においては、払下げを受けてから五年間ないし十年間は現状の姿に置いておく。そしてアルコール関係あるいはしようちゆう関係の仕事をしなければならないという制約をして払下げたにもかかわらず、途中からそれらの一切の条件というものを御破算にして今度パルプ工場にこれを転用するのだというようなことになつておるのであります。こういう払下げのやり方については、地元でも従来相当問題にしておつたものでありますが、またこういうような形で参ります場合には、アルコール生産の上において、官業でやるよりは払下げでやつた方がいいのである。あるいはアルコールのいろいろの需給状況が変化したのであるというような、客観的な諸条件を整備して、そうしてそれをわれわれの納得できるような条件払下げるというならばわかるが、何かひもつきにしておいて、それに理由をつけて払下げるというような従来の行き方であれば、相当問題が内在するとわれわれは考えるのであります。この点について、従来の払下げ経過に対して、当局はどういう考えを持つておるか。妥当であつた考えておるのであるかどうか。その基礎の上に立つて、今後の扱いについてはこういう点を十分に考えて行かなければならぬというふうな考えを持つておるのか。それからアルコール需給状況、そういう企業の客観的な諸条件というものを、どういうふうに判断して民間払下げようとしておるのであるか、この点をはつきりと承つておきたい。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまの実例を私は今後よく調べまして検討いたしてみますが、今後さような措置なきように十分監督いたします。
  24. 永井勝次郎

    永井委員 次は大阪における香里火薬工廠払下げ問題でありますが、これは休会中通産委員会から派遣されまして現地を見て来たわけであります。この払下げ取扱いは現在どういうふうなお考えに立つておられるのか。地元相当反対等もあるようでありますが、当局はこの問題の処理を今後どういうふうにお考えになつておるのか、大臣に承りたい。
  25. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 火薬廠の問題については、相当早い期間に解決をいたしたいと存じておりますが、ただいまのところまだ最後案を得ておりません。従いまして、これはまだ大蔵省その他とも相談を要する点もあり、確案を得ておりませんので、ひとり杏里に限らず、すべて火薬廠に関することはまだ御返事をいたす段階に参つておりません。
  26. 坪川信三

  27. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 アイゼンハウアー政府が最近台湾中立を解除するということを宣言し、実行に移しております。これによるところのわが国東南アジアに対する貿易、特に海運界の不安というものは非常に大きいものがあります。これに対して貿易政策大臣はどういうお考えを持つておられるか伺いたい。
  28. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は個々の問題のことについてはまだ考え及んでおりません。これは率直に申し上げます。けれどもアイゼンハウアー演説を読みまして、その演説の中にある言葉は、これは念のために申し上げますと、「われわれは米国の持つている物質力にもかかわらず、われわれですら農場や工場でつくり出す余剰の生産物を処分すべき世界市場を必要としている」云々と言いまして、「相互依存の法則は、戦時においては千倍にもその強さを増してあてはまるものである」云々ということを育つて非常に市場のことを強調しておりまするし、さらにしまいのところで、「明らかに自由世界の友好国と判明している国々の必要と能力を、実際的に見定めた上で、われわれは彼らを助けて自身の安全と福祉を成就させることに努力するであろう。それと同時に、われわれは彼らがその資力の許す範囲で」云々と言いまして、さらにそこのところで「われわれは健全な経済が、軍事力自由世界にとり必要欠くべからざる基盤なることを認め、世界至るところで、生産と有利な通商を奨励する政策を助長し、またわれわれ自身もこれを実行するように努力するであろう。なぜなれば、世界のある一国を貧困に陥らせることは、他のすべての国の福祉に対する危険を意味するからである」云々と言つております。これはよくお読みになつただろうと思いますが、私は念のために申し上げておるのであります。それから英連邦首相会議も、戦後これまた貿易拡大方向に進んでおるように考えまするので、私どもは、今まで貿易縮小方向にのみ行つてつたのが、今後貿易は何も無条件には楽観しておりませんが、どこの国も、縮小傾向で行くと、結局自分たちも損だということがよくわかりましたから、いわゆる相互依存考え方が強くなつて行くのではないか。従いまして今後の東南アジア等貿易につきましても、今までよりよほどよくなるのではないか。実はこういうふうに考えておる次第であります。
  29. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 台湾中立が解除されるということによつて特に国民政府大陸反攻の機運が盛んになる。またそれの端的な現われといたしましては、国民政府軍による中共に対する海上交通の妨害ということは当然考えられるところです。そういたしますと、われわれが現在の貿易不振を打開するためにとらんとしておる、昨年末通産大臣から許可のありました戦略外物資共産圏内への輸出等のことは、とうてい不可能に陥るのではないかと心配されますが、それに対してどういうふうな保護政策をとられるのか、通産省の御意見をお聞きしたいと思います。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実はまだそこまでよく見通しを立てておりませんが、それは宇田さんのお話のように、主として香港等通つた分が、台湾が今度のように中立地帯から離れる、それから第七艦隊が去ることになりますと、そういつた懸念は相当ふるように私どもは考えます。けれども具体的にどういうようになるのかは、まだちよつと見通しを立てかねておりますので、その点あしからず御了承を願います。
  31. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 最近におきましては、保険価格の引上げ、配船に対する船運賃の高騰等が相次いで伝えられております。香港を経由して参る場合には、トン当り三十ドルというふうな話もあります。従つて私はここで最近起つた事件を取上げて、過去のことを申し上げてもしかたがありませんから、申し上げませんが、そういうふうに、実際に貿易を行わんとする場合に、保険あるいは配船等についてわが国商品を向うへ円滑に持つて行くことが非常に困難な事態が起ることをお含み願つて対策を考えていただきたい。そう申し上げまして、その点は打切ります。  その次に貿易政策上今の年度の大きい問題は、何と申しましてもガツトヘの加入だろうと思います。ガツトへの加入、要するに世界各国との差別待遇を受けない、独立国並の貿易政策を実施に移したいというのがわれわれの考えでありますが、それにつきまして二点私はお聞きしたい点があるのです。ガツトに関する世界的な事務のセンターは何といつてもジユネーヴだと思います。ところがジユネーヴにおけるわが国の出先当局の組織というものは非常に貧弱だと私は思います。フランスに大使館がある、イギリスに大使館があるという国単位別の施設は多いのでありますが、ジユネーヴのごとく世界的な大きな国のブロツクを代表する意見の闘わされるところにわが国の代表組織が行つておらないというのは、私は自分らの目的を達成する上において非常に不都合が起るのではないかと思います。従つて私はガツト加入等を通じて見たときに、ジユネーヴにおける出先官憲を強化する必要があるのではないかと思います。それに対する大臣の御意見を伺いたいと思います。
  32. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ガツトヘの加入につきましては、私どもも衷心から熱望しておりまして、あらゆる機会に努力いたしております。最近は日本の事情等を説明して、以前よりややよくなつておると思いますが、またできるだけこれがすみやかに加入し得るように今後とも努力を怠らないつもりで刈りますが、実はこの問題は私の方の所管といわんよりは、むしろ外務省の所管に属しておるのでありまして、外務省の方には私どもたえず申入れをしておりますが、そこで今の御答弁は、通商局長が両方たえずやつておるからそれがいいかと思いますが、私ではちよつとどの程度まで申し上げてよいのか、まだ御返事をいたしかねますので、どうぞあしからず御了承願います。
  33. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 私はこれは基本中の基本だと思つているのですが、ガツトへの加入ということは、日本の経済上の地位世界的なレベルに上げるということですから、これは今年中の非常に重要な産業政策の問題だと思います。それで今申し上げましたように、ジユネーヴにおいて主として事務は取扱われるし、それからジユネーヴにわれわれの代表がおつて、年中世界各国と折衝をするということをやらなくては、会議の直前にたれかを送つて、それによつてわれわれの希望が達せられるというようななまやさしいものではないと思います。従つてフランスとかイギリスに大公使を送る以上に、スイスにおける組織を強化する必要がある、そういうことを小笠原大臣にお含みを願つて関係各省の御連絡をお願いしたいと思います。それは今の御答弁でよくわかりましたから、これ以上申し上げる必要はないと思います。  その次にわが国国内の関税政策に対する所管大臣は、まず関税に関する限りは大蔵大臣通商に関する限りは通産大臣外国との関係においては外務大臣というふうに三つにわかれて所管されておるおように思われますが、それの責任代表者はどういうところにあるのかということが、われわれははなはだ明確でない点が多いのです。従つてガツトに加入する問題等の事件が起つた場合に、はたしてだれの責任においてこれが失敗に終つたときに、これをわれわれは国民にどう訴えるのか、あるいはたれの責任においてこれの前進がはばまれているのか、はなはだ疑問に思われる点が多い。それは通産省大蔵省と外務省との三つにわたつた所管事項であつて、しかもわが国産業政策上の国威を上げなくてはならぬ重要な案件が多いのでありますから、中心をきめて、ガツトに対する責任当局を明確にきめなくてはならぬと私は思う。それに対する御所見を承りたいと思います。
  34. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お話の点はまことにごもつともであります。但し関税に関する問題につきましては、最終の責任者は大蔵大臣であります。しかしたとえば関税をかえますとか、輸入品についての問題等についてこういうふうに措置してもらいたいという通商政策から見ましての申し入れば、今ちようど関税改訂の問題が起つておりますが、これは私の方からすでに申し入れまして向うと交渉した結果そういうふうに措置してもらつております。その他今お話のように、この問題に限らず、私どもも率直に言うと、いろいろな点において三本のものを一つにしたらもつといいじやないかと思われる点がありますが、現在の機構では最終責任者は、貿易そのものに関する限りは通産大臣、関税に関するものは大蔵大臣、それの外交交渉に関することについては外務大臣、こんなぐあいに私ども解して動いているわけであります。
  35. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 本年度の外務省の予算を見ましても、外国との会議費というものは非常に莫大な予算は出ております。それの内容を見てみますと、その重要な部分は、産業政策貿易政策に対する会議予算のようにうかがいます。従つてそれの旅費等もかなりに計上されておりますが、それに代表して行く方々がわれわれから見まして必ずしもエキスパートと思われない。むしろこれは教育、見学のために外国へ行くのではないかと思われる点が非常に多い。そういう点は事務当局だけではなかなかわからぬでしようが、われわれから見たら、民間のエキスパートを抜擢してあの会議費を国家のために有益に使つていただきたいと思います。その点について小笠原通産大臣の御研究をお願いしたいと思います。  ガツトへの加入はそれくらいにいたしまして、次に本年の九月十四日にILOの世界労働連盟の大会が日本において開かれるはずであります。ILOに出席する者は政府の代表と資本家の代表と労働者の代表となつているはずであります。このILOに対する対策を政府の立場あるいは経営者の立場あるいは労働者の立場からうまくとつていただくということが、ガツトへの加入に対する影響が非常に大きいことは御存じの通りであります。それに対する対策を、どう考えておられるか、聞かしていただきたいと思います。
  36. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 関連はきわめて深いのでありますが、実は直接の関係でもございませんし、私はまだそれに対してよく研究いたしておりませんけれども、御指摘のように重大なる関係を持つておりますから、今後研究いたしたいと存じます。
  37. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 日本がガツトへ入れないという重要な日本の弱点としてあげられているのは、日本が労働ダンピングをやるのだ、日本の労働条件世界的のレベルに行つていないのだということです。それを世界的に認識せしめるチヤンスはILO大会を竹本に開くということにあるのだろうと思われます。従つてその点については、所管は労働問題に関しては違うかもしれませんけれども、それは日本の世界的な貿易政策を伸ばす上において、日本の労働条件が悪いから世界的な仲間に入れないぞという声は何とかして打破しなければならぬ。これは日本の国内において、現場において各国の政府の代表、経営者の代表、労働組合の代表と協議をするのですから、その点については、所管が違うどころじやない、どうぞ一生懸命にやつていただきたいと思います。
  38. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 宇田さんのたいへんよい御注意で、これは私どももさつき申した通り所管が違うのでありますが、関連はきわめて深く、あるいはむしろ日本の貿易には最も大きな関係を持つと申してもよろしいと存じますから、御注意によりまして、十分私どもも研究することにいたします。
  39. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 それからもう一点、今までのことと全然別ですけれども、最近渇水によるところの送電停止というものは、従来のわれわれの経験以上に大きな停電でございます。従つて私は渇水による送電停止はストライキによる送電停止の場合よりも、もつと政府ないし経営責任者の責任は重いと思います。何べんもこの席で申し上げたことですが、対応政策といたしましては、水力発電所のヴオリユームの大きいものを一挙に開発しようとしても、その処理はなかなかつくまいから、現在計画中の百五十万キロくらいの火力発電所の増加設備をまず優先的に取上げてすることにして、各電力会社が自分の責任においてやると、金利コストが高くなるから困るということでしたら、それに対するところの長期低利金融の財政の裏づけ措置をとつてでも、それをすみやかに軌道に乗せる必要があると思います。国民全部に及ぼす送電停止によるところの悪影響、生産コスト引下げを不可能ならしむる重要条件一つがここにあると思われますから、これに対する大臣の御所見を伺いたい。
  40. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 宇田さんの御意見まことにごもつともであります。そこで私どもが具体的に知つておる例は、中部電力が四日市で今火力発電所を設計し、機械をアメリカから入れることに相なつております。それは外資の導入にも役立つておるわけであります。それで二十八年度は大体百二十万キロワツトほど増加することに相なつておりますが、火力発電が今まで少しゆるがせにされておつたので、今後は火力発電をもう少し奨励するという方針はとつております。従いまして、今の渇水によつてこうしばしば停電をしなければならぬことは、まことに申訳ないことだと存じておりますけれども、来年はことしよりもよくなる、これだけは確実に申し上げ得ると思います。
  41. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 来年はことしよりよくなるということは、もう大臣の御所見によつてよくわかりました。私はよくすることを、もつと能率よく、そのわくを大きくよくする方法は、火力発電を優先して徹底的に軌道に乗せるということで、その点特別にお考えを払つていただきたいと思います。
  42. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 宇田さんのおつしやることはよくわかつておりますので、火力発電に対しましても十分但しことしすぐには間に合わぬかもしれません。こう言うとまた笑われるかもしれませんが、来年のことになります。十分注意いたします。
  43. 宇田耕一

    宇田(耕)委員 それでは私の質問はこれで打切ります。
  44. 坪川信三

  45. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ただいま通産大臣から通商産業政策に対する抱負をお述べになつたのですが、お伺いしておると、おつしやることはまつたく賛成です。けれども、それをどうして具体的に実践して成果を上げるかということが問題だろうと思うのです。ところがその点においては、どうもちつとも納得の行くような抱負を述べられておりません。だんだんそれは今後進行するに伴つて、多分大臣が納得の行くようにお述べになる自信をお持ちになつておるのであろうと思いますけれども、ただいま宇田君の電力問題を伺つておると、まだ昭和二十八年は一月ちよつと越したばかりのときに、来年なんと言われると、非常に時間のかかるような気がするのです。どうもそういうのんきなことではなかなか許されないのではないかと思う。それで私はいずれ多くの問題については漸次政府考え方をただして行きたい。また自分らの意見を述べて行きたいと思つておりますが、今問題になつております石炭価格鉄鋼価格、この二つの問題は非常に緊急な問題になつておるわけでございますので、この二つの点について伺つておきたいと思うのであります。  去年のあの炭鉱のストライキの済むころだつたと思いますが、吉田総理大臣外国炭が安いから外国炭をうんと入れたらいいじやないかということを言われておつたようであるし、またそういう意見を持つておられたようでございます。ところがそれを小笠原通産大臣が何かとめさせたようでございますが、その点の食い違いというか、その辺の事情について少しお聞かせ願いたいと思います。
  46. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまお話の点は、昨年は一番多量の石炭を実は輸入いたしたのであります。のみならず、そのとめたということはむしろ反対でありまして、非常に輸入をいたしたのであります。上半期で輸入しましたのが百六十九万五千トンでありましたが、下期になりまして二百七万二千トン、合計三百七十六万七千トンを輸入いたしたのであります。もつとも今船で来つつあるのもあります。これは三月末までの分であります。伊藤さんのお話ですが、何も私のところでさしとめておるのではない、必要なものは入れておるのであります。
  47. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そうすると、通産大臣政府方針として、今後二十八年度においても外国炭を輸送の可能なる限りはどんどん入れようというお考えでございますか。
  48. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どんどん輸送の可能なる限り入れようとは考えておりません。これは石炭が日本における産業の重要なるものでございますので、やはり石炭行政をお預かりしておる私どもといたしましては、石炭業者も健全に立ち行つて、日本産業一つの負担をしてもらうことは必要であると考えております。しかし現在の価格がいかにも国際的に高いのでありますから、政府の方でも減税、金融その他各般の措置をとるととともに、業者の方にも今私があらゆる呼びかけをして炭価引下げに努力いたしておるのであります。しかし日本の需給関係を見ます。と、大体におきまして本年はまず五千万トン出るものと推定されます。従つていわゆる需給状態から見れば、そう外国炭を入れないでもいい事情のもとにありますので、外国炭にあらざればまかなえない分については外国炭を入れる考えを持つております。特に原料炭といいますか、粘結性の石炭は入れる考えを持つておりますけれども、もしまた、価格引下げ等についてかえつて石炭業者がわれわれの意向に協力せずに、石炭価格が下らぬということがありますれば、これはまた別の措置を講じなければなりません。ただ私は石炭価格を右左に一朝一夕に動かすのではなくて、やはり漸次これを引下げるというふうに持つて行きたい。特に石炭産業は御承知のように五割五分が労賃でありますから、そういつた産業についての配慮は特別に必要であろうと考えておる次第であります。
  49. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 昨年の夏ころは重油による石炭圧迫というか、そういう点は百万トン程度くらいだと言われておつたのでありますが、その後急激に重油を使う工場が多くなりまして、今重油に代替されるものが七百万トン以上になつておるとわれわれ見ておるのであります。このような状態で外国炭も入れようと考えておられるか、あるいは油もどんどん入れて石炭を切りかえて行くということになりますと、いやが上にも外国石炭と油によつて日本の石炭というものは圧迫されるというか、あるいは破産、倒産状態が起らざるを得ないと思うのです。御承知のように油会社外国資本がほとんどでございます。従つて切りかえて油を使つて行くことになりますと、外国資本は御承知のように一定の利潤額、一割五分なり二割を手をつけずに彼らは持つて行つているようでありますから、そういうことになつて来ると、これは日本経済の上から見ても見のがすことのできないような結果もできて来ると思うのでありますが、この油の問題についてもそういうようにどんどん切りかえて行くことを、通産行政の方針としてお考えになつておるかどうか、こういう点をお伺いしたい。
  50. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その点は実は私どもは総合的にものを見ておるのでありまして、現在のところ油が安いので、安い重油た入れて行くことを阻止する権限は、私ども何ら持つておりません。しかしその事業の合理化の上に必要なものほこれを認め、無理に他を圧迫するようなことについては、干渉するといいますか、勧告するといいますか、そういうことをさせないようにいたしたいと思つておるのであります。今お話の七百万トンというのは少し大き過ぎやしませんか。そんな大きな数字になつていないように私は承知しておりますが、いずれにいたしましても、私どものそういつた動力に対する一つ政策は、やはり総合的にものを見て行く。また電力の石炭等にかわる分が出て参ります。汽車が電化される、これですぐ石炭に影響いたします。影響いたしますが、これを阻止するというわけには参りません。進んで行くところは進めて行かなければなりませんが、但し私は通産行政をお預かりしておるのであるという観点から、最も穏やかなと私が思いますものを、重要なものは閣議等に諮かつてこれを施行しておるのであります。重油がどうだ何がどうだというように、一方的にのみものを考えてはおりません。
  51. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣は炭鉱業者政府考え方に協力しないということであれば、その処置について相当強いお考えを持つておられるようでありますが、大臣も御承知のように、昨年の暮れには炭鉱労働争議があのように深刻化して結末をつけたのであります。ところが炭鉱労働者の要求再に対して七、その程度でしか解決しておらぬ。従つてこの不平、不満は依然として強くあることは明らかでございます。こういう状態のところに今度炭価を相当引下げなければならぬということが一面迫りつつある。その引下げに協力しなければ、通産省としても、また大臣としても相当強い処置をする考えを持つておられるようであるが、ただ強権的なことだけでこの問題は解決をするものじやございません。先ほど言われました石炭単価を引下げるための四百九十億円は、あるいは縦坑であるとか、あるいは採炭の方式とか、設備の改良、改善であるとか、そういう点に使われて行くものだと思うのでありますが、ところがその計画は五箇年計画ということを言つておられる。五箇年後に二割下げるというのでありますが、今日の日本の現状はもうことしの四月以後になつて来ると、二割下げなければならない状態が客観情勢として迫つて来ておる。五年先どころじやない。現実において非常に緊急を要する、政府の計画は五年後の話である。これでは私はとうてい今日のこの深刻化して来る石炭単価の問題、炭鉱経営の問題等複雑なる問題を解決することはできないと思いますが、これらに対する具体的な一つの計画というか、実践成果というか、そういう点をもう少しつつ込んでお聞かせを願いたいと思います。
  52. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 はなはだ相済みませんが、伊藤さんのお話を伺つておると、炭価は下げるなというぐあいに伺えるのでありますが、日本のあらゆるものの国際競争力をつけるためには、炭価引下げをきわめて必要としておる。国際価格まで下げるということは困難にしても、炭価引下げについて可能なところについては、われわれの最善を尽さなければならぬという考え方からしかし縦坑にいたしましても一挙にはできませんので、それで五箇年先にはこう持つて参りたいという順序の、いわば階段を踏んでおる次第であります。けれども、ひとりそればかりの処置をとつておるのではなくてたとえて申しますならば、今度の税制改正につきましても、生産推進のための追加投資であるとか、坑道掘進の損金容認、こういう問題についても考えておりますし、また荷役能力の増強についても、室蘭とか苅田港なのどの重点的工事の問題も取上げておりますし、そのほか各種の金融措置についても、政府としてできるだけの措置をいたす考えでおります。しかしお話のごとくに、政府が何もせぬでも四月以後になれば二割も下るんだ、それでも国際市価よりはなはだ高いのでありますから、私どもは二割は下るときには、決してそれに対して補助その他の対策を講じようとは考えておりません。
  53. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は石炭単価を下げるなとは言つておらぬのであります。今日の客観情勢は五年後を待たずとも、この四月以後になればすでに千円なり千円以上の炭価の引下げが起らざるを得ないという必然的なものが今日迫つておることを言つておるのでございます。そこでこれらに対して炭鉱労働者の方ではさきの賃金要求の点が不満の状態に押えられておるし、そこへ炭価は下つて来る、さらに炭価の引下げが経営の上から進行せられて行きますと、おのずからそこに問題が再び起つて来るという危険性もあるのであります。そこで政府は国際情勢から見、日本の産業の米であるところの石炭単価を引下げなければ、日本の産業再建、経済復興の上にとつて重大であるから、炭価を下げるにあたつては下げ得るような状態を政府方針としてやらしめる、この方針に協力せないということであれば、大臣が強く考えておられるという点を主張されることもあり得るであろうけれども、具体的なそういう点を示さないで、強い処置をするといつたところで、その強い処置というものはとうてい徹底せないと私は思う。だから問題を起さないようにして避け得る可能性についての具体的な計画というものがあるはずであるから、この四百九十億も使うというのでありますから、これについては漸次年次的にそれぞれ大中小炭鉱に対する計画というか、そういうものが必ずあるはずであります。大臣がここで御答弁が時間的にできないとするなら、それの計画に対するところの具体的な資料を提出をしていただきたい。
  54. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまの四百九十億、これは五箇年間にやる縦坑七十九坑に対する分であります。そのほかいろいろやつておりますが、私どもがやつておることは今申し上げた通り金融措置税制措置、その他いろいろな点で政府のやる点に限度があるのであります。そこでどうしても民間の協力を求めなければならぬ、何か私が強くやると言つたのをどういう意味におとりくださつたかわかりませんが、何も私どもは強くやる法的権限は持つておりません。さつき輸入炭の話が出ましたから、なぜ輸入炭を下げないかという意味の御質問のようでありましたので、それは輸入炭については需給関係等から見て私どもは今特にそういう需給関係で当業者を圧迫するような考えは持つていないということを申し上げておるのでありまして、このうちには、もつと輸入炭をやつてどんどん下げたらどうかというお話も私ども伺つておるのでありますけれども、そういうことは、多数の石炭業者をお預かりしておる私どもとしては、やりにくいのだということをさつきお話申し上げた。しかし協力をお願いして、どうしても協力が願えぬときには、輸入炭その他のことによつて措置することも考えられぬでもないという意味でお話した次第でございますから、その点をひとつよく御了承願いたいと思います。
  55. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 さつきから私要求しておりますこの四百九十億、あるいはまだこのほかにも多分資金をまわそうとお考えになつておると思うのでありますが、この資金計画と事業計画と、さらに炭価をどういうように段階的に下げて行くという計画があるはずでございます。その計画の資料を至急出してもらいたいと思いますが、その点委員長政府とのお話合いをしてもらいたい。いかがでございますか。
  56. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今後検討してみまするが、今の縦坑開鑿とか、所要資金等につきましては、一応いろいろな案を立てておりまするが、炭価を段階的にどういうふうに引下げて行くかということについての計画は全然立てておりません。たとえば伊藤さんのお話が、ことしの暮れにはなんぼ下げるのだ、来年の六月にはなんぼ下げるのだ、来年の十二月にはなんぼ下げるのだという五箇年計画を立てておるかというお話でありますれば、さようなものは全然立てておりません。もしまたそれを立てましても、そういうことがあることがわかりましたら、おそらく市場はそういう数字に従わないでありましよう。私どもはただ五箇年後に需給その他の関係でこういうふうになる。しかし、縦坑開鑿はこうやつても、五箇年後にこうなるということを言つておるのでありまして、毎年々々ここでこれだけ下げるのだという目ぼしをつけて言つているのではございません。
  57. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この点は相当見解の相違になつて来て議論になるようにも思いますから、これは後日に譲ることにいたします。  さらにあと伺いたいのは、同じく製鉄の問題でありますが、これも御承知のように、鉄鋼価格が高いから船がつくれない、戦前には外国の船を相当注文をとつて日本の造船所はつつていたのでございます。ところが今日では鉄が高いために、外国の船を注文をとつてつくるどころでなくて、造船所は、足らざる日本の船をつくることができないでおる。これは今日の鉄鋼価格の高い関係でございます。そこで船が足らないために、外国の船賃かせぎの輸出入品が犠牲になつていることも大臣御承知の通りである。従つてこの鉄鋼価格をいかに引下げて、あるいは船をつくるか、そして日本の輸出貿易関係発展さすかということは、日本の今日の非常に重大な問題となつておるのでございます。ところが今の製鉄会社の状態を見ると、値下げはできない。値下げのできなくなつておることは、今日の経営状態を大臣御承知の通りである。そこで経営がやつて行けないという赤字の状態のところに、さらに鉄鋼労働組合の方では、物価の値上りで、生活難で賃金値上げの要求をしております。この問題も今度大きく鉄の関係に起つて来るのでありますが、この鉄の関係に対する複雑なそういう問題の起つて来ようとしている点、あるいは鉄鋼価格をどういう方法で値下げをして行くか、あるいは又経営の赤字状態をどういう方法でカバーして日本の鉄を引下げて行くことをお考えになつているか、こういう点を少し具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  58. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 鉄鋼が基幹産業でありまして、今お話のような造船その他にもみな大きな影響がありますし、またこれでは国際競争力を持ちませんので、私どもも鉄鋼価格引下げについて、鉄鋼価格相当の部分を占める石炭等の値下げをまずやろうということと、御承知のごとく政府鉄鋼合理化三箇年計画というものをやりまして、二十八年度には一応これが完成するのであります。けれどもこれだけでは足りませんので、二十八年度は第三年目でありますが、そういうふうに合理化等もやつて推進して参つておりますし、またこれらに対する各種の措置もとりまして、政府が可能と思われる点は全部やつて鉄鋼価格も下げて参りたいと存じておりますが、今御指摘のように、私は鉄鋼が赤字になるべき趨勢にあるかとは存じますが、現在のところまだ赤字になつているようには承知いたしておりません。現に鉄鋼会社相当の配当をいたしておりますし、また造船会社等も配当いたしておるので、その辺どういうふうになつているか、もう少し私に調べさせていただきたいと存じます。しかし、鉄鋼関係の労務問題等についても十分な考慮を払わなければいかぬではないかという御意見でございますならば、まことにごもつともでありますから、これらに対しても十分考慮することにいたします。
  59. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣が時間がすでに来て立たれなければならぬということは伺つておりますから、この問題については非常に重要でありますので、次会に私相当質問しようと思つておりますが、ただいま大臣答弁中に、鉄鋼会社はそれぞれまだ赤字にはなつておらぬようなことたおつしやつておりますが、私はその考え方についてひとつここで言わなければなりません。各事業会社、そういうところを政府関係でお調べになる場合に、表だけをお調べになつております。もちろんこれは経営会社も実は内輪の問題を言うておらぬ点があります。それは経営が赤字であるということになれば、社債発行の点とか金繰りの点がうまく行かないから、とことんまでこれは祕密にしております。これは私が言わなくても御承知と思います。そういう点をやはり十分お調べにならないと、政府の方に、赤字であることがわかつて来たときには、もう倒産せざるを得ない、につちもさつちも行かなくなつているということは、すでに御承知の通りだと思う。われわれがひそかに調べるところによると、それぞれ鉄鋼関係、製鉄関係においては月々尨大な赤字を出していることを私は知つております。しかしこれを表に明らかに出しますと、社債の関係あるいは金繰りの関係にさしつかえるから、これを出せない。こういう点を相当お調べにならないと、政府方針というものはほんとうにつつ込んだものが立たないのではないかと私は思う。この点については次会に私は大臣との間に少し話合いをいたしたいと思います。大臣お急ぎのようでありますから、本日はこの程度にとどめておきます。なおあとで電力の問題について質問いたします。
  60. 坪川信三

    坪川委員長 次に、通産省関係の提出予定法案、並びに通産省関係予算について政府より説明を求めます。石原官房長。
  61. 石原武夫

    石原(武)政府委員 通産省から今国会に今後提出を予定いたしておりまする法案の概略について御説明いたします。お手元に「第十五国会(休会後)の提出予定法案の内容について」というのがお配りしてございますが、これについて順次御説明をいたします。  初めの目次にございますように、一応現在のところ予定をいたしておりますのは十三でございますが、まだ通産省として多少未確定の点も残つておりますので、その一点は個々について御説明をいたしますが、さような意味でお聞取りを願いたいと思います。  第一番目は、通産省設置法の一部改正でございますが、これの主たる内容は、通産省に新たに通商審議会を設置いたしたいという趣旨改正でございます。これは通商関係政策につきまして、十分民間意見を聞きたいという趣旨で、通商審議会を新たに通産省に設けたい、その根拠規定として設置法を改正いたしたいという趣旨であります。  第二番目は、輸出品取締法の一部改正でございますが、これは御承知のように、現在輸出品取締法におきまして、輸出品の声価の維持、品質の向上を目的といたしまして、輸出品について検査制度をしいておりますが、現在の検査制度が、その実績におきまして、必ずしも十分でないと考えられる点がございますので、それらを改善いたしますために、一部その法律を改正いたしたいというのが、法案の趣旨でございます。  第一は、この輸出品取締法におきまして規定しておりますのは、輸出品の  一部のものを指定いたしまして、その輸出をいたします場合に、その等級等を明示しろという規定がございます。それからさらに、そのうち一部のものにつきましては、最低標準というのをきめまして、それ以下のものについては、輸出をさしとめております。なお限られたごく一部のものにつきましては、政府機関または政府に登録をされました検査機関の検査を受けなければ輸出ができない、かような三段構えで実はやつておりますが、そのうち二番目に申しました最低標準をきめております規定の、最低標準に関する条件が保健、衛生、安全、純度、それだけについて最低標準がきめられておるのが、現在の制度でございますが、今申しました四つの項目のほかに、さらに品質全般について、最低標準というものをきめたいというので、その点の範囲を拡張したいというのが、第一点でございます。  第二点は、現在の最低標準、包装条件等は、各商品について一様にきまつておりますが、これを輸出仕向地別に考えまして、特に必要な条件をきめるのが適当だと考えた場合には、異なつた最低標準、包装条件をきめられるということにいたしたいというのが、第二点でございます。  それから第三点は、本法の例外の規定を新たに置こうということでございまして、ここにございますように、外国公館が送ります貨物でございますとか、その他省令で定めるというのは、現在予定しておりますのは、積みかえの荷物でありますとか、中継の貿易として出て参りますような貨物、それから主務大臣輸出品の声価を害するおそれがないと認めた貨物、たとえば沖繩等に救恤品として出す場合には、必ずしもその検査を厳格にする必要はないというような場合がありますので、これらの場合には特にこの取締法の例外扱いをしたいというのが、第三点でございます。  第四点は、先ほど申しましたように、数品目につきましては、現在検査をパスしなければ輸出をしてはいかぬということになつておりますが、それの登録検査機関の規定が非常にゆるやかでございますので、非常に多数ございます。しかもメーカーの自己検査という制度が認められておりまして、その検査が非常にルーズで、必ずしも十分検査の目的を達しておらぬという実情もございますので、今回その条件を厳格にいたしまして、必要な設備と十分の検査人及び事業所を有しておるとか、公正な表示の業務を行い得るものということにして、ある程度兼業の制限をいたしたいと思います。いわゆる自己検査等を制限いたしまして、この検査機関の質の向上をはかりまして、今後検査の目的を十分達成いたしたいという趣旨であります。五、六はごく附帯的な問題でございまするが、現在の被登録著たる検査機関の監督をもう少し十分に行うように規定いたしたいというのと、現在不合格等の処分に対しまして、不服の申立を認めておりますが、国の機関がやつた場合に限つておりますのを、今後は民間の登録の検査機関に、同じような申立制度を開いて行きたいという規定でございます。  第三番目は輸出信用保険法の一部改正に関する法律でありますが、これは新たに輸出手形保険という制度を設けたいというのが一点でございます。これは御承知のように、信用状を用いない代金決済等による輸出取引というものが、中南米等において相当行われております。これは標準外決済になりますので、為替管理法上の許可がいりますが、現在におきましては、さような例外的な処置をして標準外の許可をいたしまして信用状のない取引が行われておりますが、これが現在保険の対象になつておりませんので、これを保険の対象に取入れようというのが第一点でございます。  第二点は、現行の規定の改正でございまして、現行のいわゆる乙種保険と申しております部類に属する輸出の場合の保険でございますが、現行はその対象になりますのは、輸出いたしましたプラントの回収代金だけに限つておりまするが、今回これに伴う技術提供の対価にも広げようというのが第二点であります。  第三点として、(ロ)の名称の変更と申しますのは、現在甲乙丙丁というような名前を使つておりますが、わかりにくいので、たとえばプラント輸出については、設備保険というような適当な名称をつけようという規定でございます。  第四番目は、不正競争防止法の一部を改正する法律であります。これは御承知のように、現在不正競争防止法におきまして不正競争を取締つておりますが、一つの態様として、原産地の虚偽表示を取締つておるわけであります。ただ現在のこの規定によりますと、原産地の地方の名称が入つておりましても、その名称が普通の名称になつておる場合には、原産地の虚偽表示に該当しないということになつております。たとえばコニヤツクとかシヤンペンとかいうのは、これは原産地の名前でございますが、日本におきましては、普通商品名として通つておりますので、こういう名称を商品につけましても、現在の法律によりますと、不正競争に該当しないということになります。これは原産地の地名ではありますが、普通商品名になつておるという理由で、不正競争の今の日本の法律によりますと対象にならぬわけでありますが、御承知のように、平和条約の場合におきまして、今後日本はマドリツド協定に加盟することになつておりますので、その加盟をいたしますについては、マドリツド協定におきましては、ぶどう酒類等に関しましては、普通名称になつておる地方名称といえども、これは使つてはならぬ、それを使うと原産地の虚偽表示になる、こういう趣旨の規定になつておりますので、日本もそれに加入いたしますにつきましては、日本の法律もさように直さなければならぬので、先ほど申しましたように、原産地の地方名称を使うことは、一般的には普通名称である場合には、例外として認められておりますが、それがぶどう酒類に限つては、さような場合も認めないということで、条約に合せる改正をいたしたいというのであります。  なおこの際念のために申し上げておきますが、もしかように法律を改正いたしますと、現在たとえば日本でコニヤツクとかシヤンペンとかポートワインという名称が使われておりますが、それがいかになるかという問題がただちに起るわけであります。先般来いろいろ打合せをいたしまして、さような名称を使いましても、日本の商品であるということを明示してあれば、かような商品名は使つてもよいということになつております。ポートワインということになつておりましても、それが日本で生産されたということが明らかになつておれば、その名称を使つてもいいということになつておりますので、実害は起らないと考えております。  それから第五番目は、鉱業法の一部改正の法律でございますが、これは現在の鉱業法におきまして、鉱業権の出願がありました場合は、三十五条で、これこれの場合は許可をしてはならぬという規定がございます。たとえば鉱業権に価値がない、それから保健衛生上害がある、公共の施設を破壊する場合、それから農業、林業、その他産業に害を及ぼす、そういうことによつて公共の福祉に反するという場合には、鉱業権を認めてはならぬという規定になつておりまして、今申しました四つの場合に限定的に書いてありますが、それ以外に、ここにも例示で書いてありますように、観光とか文化のための、鉱業権を認めることが公共の福祉上不適当だという場合もありますので、今回その不許可の基準の規定を広げまして、例示的にいたしまして公共の福祉に反すると認められる場合は、鉱業権の設定を許可しないということに改正をしたいというのが第一点であります。第二点は鉱区の減少とか鉱業権の取消しの要件の場合におきましても、今のような条件を広めるとともに、これらの行政処分によりまして生じました損失は国が補償するという規定を新たに設けたのでございます。第三点は、これらの第二項で国が損失補償をするということにいたしましたので、それらの場合の処分を愼重にいたしますために、地方鉱業協議会というものを設置いたしましてそれらの処置の場合にいろいろ意見を聞くということにいたしまして、それの規定を整備しようというのでございます。  第六番目は輸出入取引法でございまして、これはさきに十三国会で制定された法律でございまするが、この法律におきましては、いわゆる独禁法の例外規定になつておりまして、輸出組合法の根拠が与えられておりまするが、今回、先ほど大臣からお話がございましたように、輸出だけに限らず、輸入の場合にも規定を設けようということで、この法律を廃止しまして、新たに輸出入取引法というものを制定いたしまして、輸出の面における特例を認めて行く、輸出組合の強化等の措置を加えるというのと、輸入取引面におきましても特例の道を開きたいというのが趣旨でございまするが、どの程度をやるかということについては、これは独禁法の例外規定になつておりますので、独禁法の改正とうらはらになると申しまするか、それと見合つて改正をする必要がありますので、現在御承知のように、独禁法を政府部内で検討いたしておりますので、それと同時にこの内容を決定いたしたいと考えておりまするが、現在輸出取引法におきましては、輸出業者間における組合なり、協定なりを認めているわけであります。それを輸出の場合にはメーカー、販売業者輸出業者というように商品の販路、縦の系列の範囲までこの協定範囲拡大をしたらどうかという点が一点でございます。今ならば輸出業者だけの協定なり輸出組合でございまするが、場合によつてはメーカー、販売業者輸出業者というような縦の範囲にまで協定を認めたらどうかというのが一点でございます。第二点はアウト・サイダーを縛るような根拠規定を置くかどうかという点が問題でございます。これらは先ほど申しましたように、独禁法の改正と同様に検討中でございまするが、通産省といたしましては、何らかその辺の措置を講じたいということを考えております。それから輸入につきましても同じようにこれは輸入カルテル、または輸入組合という制度を新たに設けたいということで、研究をいたしておるわけでございます。  それから第七番目は、中小企業金融公庫法というのでございまするが、これは先般中小企業金融を円滑にいたしますために、特に設備資金及び長期の運転資金の供給をいたしますために、政府資金をもちまして特別の金庫を新たに設置することに決定いたしましたので、それの根拠となるべき公庫法でございます。公庫の内容につきましては、第二に書いてございますが、一般会計からの出資が二十八年度予算として五十五億。なお見返り資金特別会計から二十六億、これはすでに貸付済みのものでございまするが、さしあたりは貸付として、将来出資に振りかえるというような予定になるかと思います。それから資金運用部から、本年度五十億の貸付がございます。なお従来開発銀行から中小企業に貸し付けておりまする分も、ここに承継をいたす予定になつております。金額は大体百億前後かと予想しております。ただ今一般会計から五十五億と言いましたが、そのうち二十億につきましては、二十七年度補正予算で一般会計から商工中金にすでに貸付済みのもので、ございまして、同金額は出資と同時に、公庫から商工中金に当分の間貸し付けるという規定を置きまして現状をそのまま認めて、行こうというふうに考えております。第三点はこの公庫法の運用に関しまして、中小企業者の貸付対象となる範囲をきめることになりますが、その範囲をここに書いておるわけでありますが、一番問題になりますのは、初めに書いてございますように、今回は資本金なら一千万円、従業員なら三百人以下、いずれの条件に該当する場合でも中小企業として扱おうということにいたしております。今までの中小企業扱いはいろいろ区でございまするが、これよりもう少し低いところできまつておりますが、この際は少し拡大をして、資本金でいえば一千万円以下、または従業員三百人以下ということで、法人、個人、各種の組合等をこの対象にいたしたいということで考えております。四番目として業務の委託につきましては、これは既存の金融機関に委託することができるという根拠規定を置くことにいたしておりまするが、その後の問題は運用でございます。現在通産省といたしましては、この公庫は直接貸付をいたしませんで、窓口は既存の金融機関を通じて行いたいというふうに考えております。従いまして、もちろん公庫の金でございまするから、公庫の責任に帰することはもとよりでございますが、自分で直接審査をし、折衝をして貸すということは避けて、既存の金融機関を通じてやつて参りたいというふうに考えております。  八番目は中小企業信用保険法の一部改正でございますが、これは概略的に申しますと、現在の制度、適用対象の範囲その他を拡大しようという案であります。第一点は中小企業者の対象になる範囲を、先ほど公庫の場合に申しましたように、多少現状より広めるということでございます。第二番目は、中小企業者に調整組合及び医療法人を加えて範囲を拡張しようということでございます。第三点は金融機関が、自己資金でなくて、開発銀行、国民金融公庫、中小企業金融公庫等を代理して行う貸付を付保の対象に加えるということであります。第四番目は、相互銀行及び無尽会社の給付金も貸付と同様に扱うということでございます。それから五番目は、保険関係が成立する中小企業者に対する貸付の限度額でございますが、ここに書いてありますように、個人としては一千万円まで拡大をして行くということでございます。六番目は、保険金支払請求権の行使の時期は、現在は事故発生後六箇月となつておりますが、これを短縮いたしまして、なおそれに伴いまして除斥期間についても三箇月間短縮をいたそうということでございます。七番目は保険金を支払いました後の特別会計の回収の規定でございます。従来は代位ということで政府が直接回収するような規定になつておりましたが、金融機関が回収した金額のうち、政府の負担した分を金融機関から納めさせるという規定に改正をいたしたい。第八番目は、これは信用保証協会が保証をいたしました場合の保証の範囲を填補率五〇%から六〇%に引上げようというのが趣旨であります。九番目は、国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置改正でございます。これは御承知のように、一年限りの法律でございまして、いわゆる稀少物資の統制の根拠規定でございます。現状におきましては一箇年間に大分状況がかわりまして、国際的にも国内的にもかわつておりますので、大部分のものについてはすでに必要はないかと思いますが、一部物資等につきましては、なお別際割当が存続されておりますし、品質の関係から一部輸入せざるを得ない状況でございますので、これは一応もう一年延長して行きたいということで検討いたしております。  十番目は、繊維製品の品質表示でございますが、これは趣旨とするところは繊維製品の品質の内容を表示するということによりまして、使用者に選択の指針を与え、取引の公正、使用の合理化をはかろうという趣旨でございますが、適用の対象といたしましては、たとえば綿織物、毛織物等につきましては、その混用度及び染色堅牢度等につきまして表示を義務づけまして、また特に必要な場合においては検査を行うというような考え方でございます。ただこの法律は今内部で検討いたしておりまして、これは趣旨としてはとにかく、実効ははたしてどの程度に、どうやつて確保するかという問題もございますので、なおこれは提案自体について目下検討中でございます。  十一番目は木材防腐特別措置法案でございまして、これは先般国会で議員提出として御提案が考慮されておつた法案であります。その当時法案としてはすでに完成しておつたというふうに承知しておりましたが、それを今回は政府提出として提案をいたしたいという考えでおります。これは木材の資源の確保のためにと申しますか、木材の消費節約をはかるために、ある特定の木材について防腐の措置を講ずるわけでありまして、枕木、電柱等については、防腐をせざるものを使用することを禁止いたしまして木材の消費節約に資しようという趣旨の法律でございます。  それから十二番目は火薬類取締法の一部を改正する法律案でございましてこれは現在火薬については火薬類取締法が施行されておりますが、打揚げ花火、仕掛け花火につきましては、従来ボツ勅で規定されておりまして、この法律の適用対象になつておらなかつたわけであります。ところがボツ勅が失効いたしましたので、現在打揚げ花火、仕掛け花火等は法的規制がないわけでありますが、これは災害の防止という見地から、まつたく自由に放任することはいかがかというので、府県知事の監督を受けしめる程度の改正をいたしたいと考えております。  それから十三番目は工鉱業地帯整備促進法案というので、これは建設省、運輸省、通産省等の三省の共同提案になる予定で、ございまして、目下三省間で打合せをいたししおります。これの趣旨は、工鉱業の適正な立地を促進するため、整備を必要とする工鉱業地帯について整備計画をつくつて、それを政府が助成して行こうという趣旨でございます。特に通産省関係といたしましては、工業用水の問題がございます。これはすでに御承知のように、上水道については厚生省で所管をしてやつておりますが、工業用水についてはほとんど放置されておるような状態でございますので、これらを、法的に根拠を与えて整備に力を入れて行きたいという趣旨で目下検討中でございます。  以上が、ごく最近までに考えております法案でございまするが、なお実は独禁法の改正について政府部内でいろいろ検討されておりますが、それと関連いたしまして、中小企業の安定法についても改正をするかどうかという問題もございますので、これはまだもとの方がきまつておりませんので何ともきめておりませんが、それとの関連があるいは生ずるかとも考えております。  それからもう一つこれもまだ未定でございまするが砂利の採取権について、何か採石法と同じような権利を認めるかどうかという問題がございまして、これも目下検討いたしておりますし、建設省等とも今話合いをしておりますので、まだこれもまつたく未定でございますが、今それらは研究の段階にあることをあわせて御報告さしていただきます。  次に、通産省の二十八年度予算について簡単に申し上げたいと思います。  お手元に昭和二十八年度通産省所管一般会計歳出予算主要事項一覧表というのがございますが、これの一番目が貿易振興対策、それから二番目が資源開発対策、三番目が技術向上対策、四番目が中小企業対策、五番目が自動車及び自転車工業振興対策、六番目がその他という項目にわけまして、主要な項目だけにつきまして二十七年度と二十八年度を比較いたしまして、備考の方にその要領を書いたのでありますが、最終の合計欄をごらん願いますと、二十七年度は九十一億六千二百万円、これは先般の補正を含みました額でございますが、二十八年度は五十八億二千三百万円、従いまして、この合計でごらん願いますと、三十三億四千万円ばかり減少になつておりますが、これが減少いたしましたる主たる理由は、貿易の項目のところでうたつてありますように、二十七年度は輸出信用保険に対して十億出資をいたしましたが、それが今回はなくなつた。それから中金に対する貸付金、これは補正でもつて二十億がきまりましたが、それが今回は載つていない。もう一つ中小企業信用保険への出資五億がない。このように特別出資の関係が三十三億ほど今回はないので、これを二十七年度の予算から差引きますと、ほぼ本年度の予算に近い数字に相なるのであります。この三十三億に対応するものといたしましては、三ページの中ほどに括弧して、中小企業金融公庫に対する出資五十億と書いてございますが、これは本年度は通産省予算でなく、大蔵省予算に載つておりますので、本年度は予算の面におきましては、三十三億くらい減少という形になつております。  ごく簡単に主要な項目について御説明をいたしますと、貿易振興対策のうち一番目の海外市場調査会の補助、これは三千万円で、前年度とほとんど同じように補助をする予定であります。二番目の海外貿易斡旋所補助、これは新規の項目であります。ドル輸出の促進をはかるため、常設の日本商品の展示及び貿易斡旋機関を設置しようとするもので、これはニユーヨークに設置をいたす予定であります。三番目は、東南アジア技術協力団体の補助でありましてこれは東南アジア地域の資源開発及び工業化計画に協力するため、これらの地方に技術者を派遣し、また向うの技術者の受入れ関係の仕事をする団体に対して補助をいたそうとするものであります。四番目は、国際商事仲裁委員会補助、これは現在御承知のようにアメリカとの間に協定ができておりましてやつておりますが、本年度はそれをさらにイギリス、フランスその他の数箇国につくりたいということで、そのため多少金額がふえております。五番目は、海外見本市参加補助、これも四千万円で、前年度と大体同様であります。六番目の海外広報宣伝費は、いろいろパンフレツトその他をつくりまして、海外に商品の紹介、宣伝をいたしますためのもので、これも前年と大体同様であります。七番目の重機械技術相談室設置補助、これは本年度新しく設けた項目でありまして、プラント輸出の促進をはかるために、現地における機械設計、工場立地等の便宜をはかるために東南アジアあるいはアメリカに常設の相談室を設けようとするものであります。  次は、第二の資源開発対策であります。金鉱探査の補助につきましては、金額は、ここに書いてありますように本年度は一億であります。これは前々から非常に問題になつておりましたが、今回は多少従来り金の扱いをかえまして、従来は三分の二は国庫で買上げ、三分の一は売物として五百十五円かで売らしておつたのですが、今回はその比率をかえまして、三分の一だけは従来通り四百何円かで政府が買上げまして、あとの三分の二は業者に自由に販売させる。従いまして金鉱業者の収入は相当増加する予定であります。それとも見合いまして、一億の探鉱奨励金を交付することになつたのであります。従来は非常に赤字経営ということで、従来通り扱いでありましたのでは、とても一億の探鉱補助金くらいでは足らなかつたと思いますが、今回はただいま申しましたような措置とあわせて、この程度の金額を出そうということになつたのであります。次の新鉱床探査補助、石油試掘費等補助は、金額その他ほとんど従前通りであります。四番目は、試験炭鉱の設置、これは新しい項目でございますが、炭鉱保安の確保をはかるために試験的に炭鉱の開発を行わんとするものであります。これは現在志免炭鉱でかようなことを実施いたしたいということで計画を進めております。それから第五番目は、電源開発株式会社の出資でございまして百五十億、これは見返り資金投資特別会計を通じてここに出資される予定でございます。開発会社といたしましては、このほかに資金運用部から五十億の資金の借入れを行いまして、本年度としては一応二百億の資金ということに相なつておるわけでございます。  それから第三番目は技術向上対策、項目としてはほぼ同じでございまするが、第一の工業化試験補助の二億五千万円が本年は三億円になつております。二番目の応用研究補助、これは前年とほとんど同様であります。三番目の工作機械試作補助、これは項目としてはまつたく同じでございます。あとにありますように、去年はいろいろな補助金を出しておりましたが、それをとりやめるかわりに、工作機械の国産化を奨励いたしますために、その補助費を一億円計上いたしております。なお、四番目が発明実施化試験補助、五番目の発明実施化試験費貸付金、これらは前年とまつたく同様でございます。ただ前年の工作機械の輸入補助金が二億五千万円ございましたのが削減されて今年はゼロになつております。  次が四番目の中小企業対策でございますが、第一の中小企業協同組合共同施設費補助は二億円で、これは前年とまつたく同様でございます。その二以下、いわゆる中小企業の指導あるいは相談所指導員等につきましては、三つ合せて五千六百万円で、約二倍くらいになつておるかと思いまするが、それくらいの予算が計上されております。それから商工組合中央金庫の出資は本年はなくなります。その一次の中小企業信用保険特別会計の繰入れも本年はございません。その次は、先ほどちよつと御説明いたしました中小企業金融公庫の五十五億円の出資でございます。それから昨年ございました中小企業金融貸付金、これは先ほど申しました公庫へ出て参ります貸付金でございます。前段の七番目は公庫の出資に相なりまするし、八番目にあります五十億円は貸付ということに相なるわけでございます。  それから五番目は自動車及び自転車の関係でございますが、この項目につきましては、括孤内に書いてございますのは、自転車につきましては今までのほかの費目に入つておる部分でございます。自転車の項目に出るのでございますが、ほかの項目に人つております費目を合計すると、こうなるというわけであります。括弧外で申しますと、一は自転車産業振興費で四億七千万円が八千五百万円になりますが、二十七年度の四億は貸付金でございますが、今回は中小企業金庫の方に入つております。自動車産業振興費につきましては、多少減つているという程度でございます。  以上が大体おもな項目でありますが、定員といたしましては、六番目のその他人件事務費等に入つておりますが、通産省といたしましては、人件費年間二十三億くらいでございますが、人員で申しますと、二十七年度定員が一万四千二百五十人、それで減員が三百六十人、これはアルコール工場払下げ予定いたしまして、一応この分も含めて計算をいたしてございますが、三百六十人、それから純粋に増加をいたしますのが三十一人、これは特許の審査の関係でございます。従いまして定員といたしましては、一万三千九百二十一人というのが本予算の人件費から出て来る人数であります。  以上取急ぎまして簡単でありますが、一応御説明をいたします。
  62. 坪川信三

    坪川委員長 以上をもちまして政府側の説明は終了いたしました。  他に御質疑はありませんか。         ————— 他に御質疑がなければ、本日はこの程度といたし、次会は来る十日火曜日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後三時二十五分散会