○
中村(辰)
政府委員 ただいま
政務次官から御答弁申し上げた点を敷衍して申し上げることに相なるかと思うのでありますが、
現実の事態に対しまして
問題点を二、三申し上げたいと思います。
第一点でございます
船運賃の
値下りの
傾向についてでございますが、
ちようど本年の七月、八月ごろから、特に
西欧から極東に参ります
船運賃の
値下りが非常に急激でございます。この
数字を
肥料の
輸出市場として競合しております
地点に対します
船運賃について
比較をいたしますと、この
船運賃は急激な、どちらかと申しますと異常な
下落であります。これは
通常の姿ではない。
通常の
船運賃の
半額程度にな
つておるのではないかという
考え方が一般でございますので、この点を一応
説明いたしたいと思います。
欧州から
台湾に参りますます
最初に
硫安の
輸出で破れたのは
台湾でございます。この
台湾までの
船運賃を
考えますと、
昭和二十六年十二月が二十二ドル、二十七年の春十六ドルに下りまして、ごく最近は八ドル五十セントにな
つております。本年の春から見ましてさらに半分に落ちておるという
状況でございます。それから
欧州から
比島に参ります
運賃の
傾向を見ますと、
昭和二十六年十二月が二十一ドル、二十七年の春が十三ドルに落ちております。最近は七ドルという
数字すら出ております。最近
硫安の
出血輸出、
価格を最低として問題を起しました
インドに対します
運賃の
傾向を見ますと、
昭和二十六年十二月が十九ドル、本年春が十ドル、最近に至りましては六ドルというような
状況でございます。これに対しまして
日本からこれらの
地域に対します
運賃は、どちらかと申すと安定いたしております。
台湾に対します
関係は、
招聘局というものが直営いたしております
関係で、
マル公と
考えてよろしいかと思いますが、
日本から
台湾に参りますものは三ドル五十セントで、二十六年十二月、今年春、最近と
同一価格でございます。
比島に対しましては、二十六年十二月が四ドル五十セント、二十七年春が三ドル、今日がニドル。
インドに対しましては、これは
ボンベ—でございます。先ほど申し上げました
インド向けと申しますのは
ボンベ—でございますが、本年の春六ドルであります。最近には四ドル五十セント、二十六年の十二月には、
硫安関係の
輸出問題で
運賃の問題を検討いたしておりま
せんので、明らかにな
つておりま
せんが、そういう
状況でございます。
アメリカ方面から
日本に向けた超
重量物の
輸出の
運賃も、これと似たり寄つたりでございますので、申し上げま
せんが、大体
欧州からこれらの
地域に参るものと同様の
下落をいたしております。こういうような
状況でございまして、
硫安輸出が非常に
運賃の面から大きな衝撃を受けた、こういう
考え方が
一つの大きな理由でございます。
ただいま御
質問の中にもございました、
生産コストの面につきましての、二、三の問題を申し上げます。今日の
硫安工業の
生産は、
石炭に依存します
コ—クス法——ガス法と通例申しておりますが、
ガス法と、
電力に依存しております
電解法と
二つございましてこの
ガス法によります
生産は、今日ではいわゆる
電力事情が供給上思わしくありま
せんので、
ガス法に重点を置いて
生産の増強をいたしております
関係で、
ガス法は、本
昭和二十七年
肥料年度は、全
生産量の七七・六%という
生産計画を立てております。
電解法は残りの二二・四%でございます。この
ガス法の
生産におきまして、特に
西欧と
比較いたしまして問題を持
つております主要点は、
主要原料でございます
石炭でございます。
石炭は大体
硫安一トンにつきまして、
——燃料炭と
コ—クスをつくります
原料炭と両方ございますが、
燃料炭の方はごく一
部分でございまして、これを平均いたしまして、大体
硫安一トンつくりますのに
石炭一トン、正確に申し上げますと一トン強でございますが、
比較を簡単にいたします
建前で、
硫安一トンに対しまして
石炭一トンといたしますと、大体
日本で得られます
石炭の
工場着値段は、七千円から七千円を上まわる四、五百円
見当が通例でございます。
西独及び
アメリカにおきましても同様でございますが、
石炭の
価格は大体三千円、あるいは三千円を
ちよつと下まわる
価格かと思います。これを
比較いたしましても相当の開きがございまして、この点につきましては、先ほど
政務次官からも御
説明申し上げましたように、今日
日本の
石炭鉱業の
近代化、
合理化といたしまして、
縦坑開発計画というものが進められておりますが、これが
全国平均単価に及ぼす影響は二割前後と承
つております。これを
コ—クスその他に影響させますと、これが相当大幅に
硫安価格の
引下げに貢献するということに相なるのでございます。
第二点の
電力問題でございまするが、
アメリカにおきましてはほとんど
火力発電、あるいは
天然ガス、そういつたものを大いに活用いたしておりまして、
水力というものは
比較的
微量でございます。
西独についてこれを
考えますと、
火力が四〇%ぐらい占めております。今日の
日本の
電解法を
中心に
考えますと、
電解法というものは非常に
微量でございまして、大
部分は
水力に依存しておる
状況でございます。
石炭価格は、
西欧におきましては
日本と
比較いたしまして、五割あるいは五割以下という
状況でございますが、この
電力の
事情から申しますと、
日本は
アメリカに対して、あるいは
西独に対しても、
電力料金の方は安いように
考えられます。詳しいデ
—タがございま
せんので、大体の
見当でございますが、その方は
西独あるいは
アメリカ物よりも安い、こういう
状況でございます。従いまして今日非常に積極的に
電源開発の問題が取上げられておりまするが、この
電源開発が進むに伴いまして、この
肥料工業は特に
電源地帯に相当多く分布しておる
状況でございますので、こういつた
電源開発に伴います
電力供給が上昇いたしますことによりまして、
硫安工業は今日の
ガス法から
電解法の操業度の上昇というような方面に重点を置きますと、ここにいわゆる
硫安工業の全般的に見ました
コストの切下げということが可能に相なるのでございます。大体今日の
情勢で、二百万トンの窒素
肥料をつくるのでありますが、これを内需だけに限定いたして
——内需と申しますと、
硫安百五十万トンが一応内需と
考えられております。そういたしますと、残り四十万から五十万というものが
輸出に向け得ると
考えられます。二割あるいは二割五分というものが
輸出に向くわけでありますが、これを
コストで、操業度を修正して
考えますと、二割
程度減産いたします。内需だけに限定するといたしますと、
コストにおきまして約一割強、固定費と比例費の
関係から推論いたしますと、一割強、これを簡単に申しますと、今日の安定帯
価格の標準
価格が九百円でございまして、これを内需だけに限定するというような
建前をとりますと、九百九十円前後になるというのが
一つの想定でございます。こういつたような
状況でございまして、
電源開発ということが推進せられることによりまして、
硫安の
コストが当然
引下げられるという結論に相なると思います。
そのほか最近
硫安工業自体の
合理化というような具体的な問題に触れまして技術的に検討しております。たとえば粉炭をセメントの粉ぐらいに非常に微細にいたしまして、これを利用することによ
つて炭素効率を非常に高めるという、われわれはこれを粉炭
ガス化と申しております。これはコツパ—ス会社がフインランドにおいて、最近自己の得た特許を実際実験いたした発明でございますが、これを
日本の
硫安工業にも適用いたそうと思いまして、宇部興産、
日本水素、日新化学、こういつたものがそれぞれ現地に人を派したり、あるいは会社
——先般実はこのコツパ—ス会社の有力者が参つたのであります。これと十分検討をいたしましてこれを取入れるというような検討を進めております。この粉炭
ガス化という
方法を採用いたしますと、約ニドルから三ドル
程度、装置によりまして多少異なりますが、その
程度の
合理化ができる。これは今日の
日本のような非常にカロリ—の低い
石炭を原材料として持
つております国柄といたしましては、非常に技術
合理化といたしまして妥当なことではないかと思います。こういうものに対しましては、
開発銀行の融資、こういつたような国家の積極的援助を行うというような方式で、
合理化を進めて参る、こういうように
考える次第であります。
それから
日本の
硫安工業としまして非常に外国と異な
つております点で注目いたさねばなりま
せんことは、製鉄でありますとか、ソ—ダ工業、あるいは化学繊維工業、あるいはその他の関連
企業との
ガスその他の利用
関係、いわゆる
化学工業の総合的一貫性と申しますか、そういう点が非常に欠けている点が多いのでございまして、この点につきましては、従来もたとえば
硫安工業をいたしておる者に対しまして、メタノ—ル工業を兼営させる、あるいは有機合成
化学工業をやらせる、いろいろな面においていわゆる関連
企業との総合的な
意味合いにおきましての
コスト切下げということを、
開発銀行の融資その他を通じまして援助して参
つておる次第でございまして、こういつたようなことを並行して
考えますことにいたしますると、国際競争上の弱点を除去し得るのではなかろうかと
考えるのであります。先ほど
政務次官からもお答えいたしましたが、大体
硫安の
輸出の見通しということから申し上げますと、
日本の
硫安が進み得る
地域的な限度と申しますのは、
ちようど西欧と
日本からの
船運賃の競合点は
インドでございまして、
インドあたりが
ちようど日本の
輸出先の先端をなすかと思います。これから近づくに従いまして
運賃の
関係からいいまして、
日本に有利なことは当然でございまして、その主力は韓国、
台湾、フイリツピン、こういう地帯になるかと思うのであります。この地帯は非常に
日本側に有利でございまして、先ほど申し上げましたような
合理化が
——十二、三ドルという目標ではございますが、これが十ドル、あるいはそれ以下でございましても、平常な国際
運賃状況というようなものを
前提といたしますと、
日本の
硫安の
輸出というものは可能である、こういうぐあいに
考えておる次第でございます。