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1952-12-16 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十六日(火曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君    理事 永井勝次郎君       大倉 三郎君    辻  寛一君       中峠 國夫君    福井 順一君       福井  勇君    宇田 耕一君       高橋 長治君    長谷川四郎君       山手 滿男君    伊藤卯四郎君       山口シヅエ君    加藤 清二君       木下 重範君  出席国務大臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦沢 大義君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      石原 武夫君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十二月十六日  武器等製造法案内閣提出第三一号) 同月十五日  鉱区採掘禁止処分に関する請願(前田榮之助君  紹介)(第九九四号) の審査を本委員会に付託された。 同日  中小企業等協同組合育成助長等に関する陳情  書  (第七八三号)  中小企業行政拡大強化等に関する陳情書  (第七八四号)  電気料金地域差撤廃に関する陳情書  (第七八六号)  四国地方電源開発促進に関する陳情書  (第七八七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案  (内閣提出第三号)  貿易に関する件  化学肥料に関する件     ―――――――――――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  まず、電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案を議題といたします。質疑の通告がありますから、これを許します。長谷川四郎君。
  3. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 けさ、只見川の問題、また開発問題に対しましていろいろな資料をいただいたのでございますが、この資料に関連して一言、昨日の只見川の問題をお伺いしてみたいと思うのでありますが、現在の東京需用量東北需用量、これらを比較するときに、東京東北の二倍に当る消費を行つておる。従つて東北は、逆に未開発水力は、関東比較するとたくさん残されている。たとえば北上、阿武隈、最上、雄物、こういうように只見川以外にたくさん残されておるのでありまして、これだけ残つておるにもかかわらず、昨年の五月に行われた電気事業編成の際の割当が、関東東北比較しますと、関東が九〇%、これに対して東北は一〇六%の割当が行われておるのであります。従つて東京の唯一の頼みとするところの只見川東北強権発動をもつて押しつけた、こういう点において、将来関東全般にわたる電気需給に対するどのような計画を持つているか。現在の関東全般を見——今後さらに電気を起して行かなければならないところもあるにはあるけれども、ほんとうに小規模のもので、需給量東京中心関東全般はますますふえて行つている。これらに対してどういうようなお考えを持つているか。大臣がおらないので、石原さんに、その計画御存じだと思うから、伺うことにいたしましよう。
  4. 石原武夫

    石原(武)政府委員 ただいまのお尋ね、ごもつともでありまして、包蔵水力観点から申しますと、確かに東北地方の方が多く、今の関東に帰属しております電源地帯の方が少いということは言えると思います。しからば本名上田地点東北地方になぜ許したかということになりますと、現在におきましては、関東におきましても、また東北地方におきましても、電力は足らないわけでございます。御承知のように再編成をいたしました当時、各地の電源の帰属と需用とが必ずしもマツチしておりませんので、いわゆる第一融通契約と称しまして、地区間の電力融通をきめておるわけです。  電力会社間に融通をすることにいたしまして、当時は東北から電力をむしろ他地区に出しておるという状況であつたわけでありますが、その後産業の構成といいますか、伸びの関係からいたしまして本年度は、第二融通と申しておりますが、逆に東北が第二融通契約で他地区から電力を買うというような契約になつております。それで現在東北地方におきましても相当電力電給が逼迫しておりますので、関東において電源開発をする必要のあることはもとよりでありますが、東北地方におきましても早期開発をする必要があるわけであります。そこで通産省といたしまして、本名上田地点東北に許しましたのは、公共事業令に基くわけでありますが、公共事業令の定めるところによりまして考えますと、水利権がすでに東北にあるということが一つ前提になつておりますと、東北地方におきましても、現状としては電力需給が非常に苦しい状況でございますので、これを東北に許して早期開発することが、ひいては全国的な意味電力需給バランスの改善に役立つという観点から東北許可をいたすことにいたしたわけであります。  しからば将来の関東地区電力は一体どうするのかというお尋ねでございますが、御承知のように、只見川上流地域におきましては、今後相当大規模電源開発が予定されておりまして、これは一応開発会社開発をする予定になつておりますが、それが完成いたしますれば相当大規模電力が出ますので、これは何も東北にその電力を供給するという建前ではございませんで、東北及び関東需給状況等を見まして、相当大きな部分関東に持つて来ることになろうかと思います。将来の問題としてはその他の地区もありますが、只見川に関しましては、今本名上田より上流地点につきましては、大体開発会社でやることになつておりますので、その開発によつて、将来関東の大きな電力需要の伸びはまかなつて行きたいと考えております。
  5. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 ただいまの答弁の中に融通という言葉があるのだが、白洲氏は、関東には一キロの電気も売らないと豪語しております。新聞を通じてはつきりと発表している。従つて開発会社が今只見川上流に対して計画をしているというが、東北計画と並行して上流にそれが行われているか、いないかをお伺いいたします。
  6. 石原武夫

    石原(武)政府委員 開発会社只見川上流開発するということは、具体的にはまだきまつておりませんが、御承知のように、電源開発調整審議会におきまして、只見川開発調査調査地点としてすでに決定をいたしておりまして、従つて現在着工しているより上の地点につきましては、開発会社にやらせるという前提で、調査地点として現在開発会社調査をしているわけであります。まだ具体的に着工にはもちろん入つておりません。これは御承知のように、いかなる開発計画によるか、本流案分流案というような問題が、ございまして、その辺の決定をまだ見ておりませんので、具体的にはまだ着工いたしておりませんが、目下調査をしているわけであります。従つて並行的に行われているかという御質問に対しては、開発会社としてはまだ調査段階でございまして、開発を具体的にやつているところまでは行つておりません
  7. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そういたしますと、現在東北只見川の二点についてすでに仕事にかかつている。そうすると、これが完成して東北電力が余る場合、融通という点になるのだが、あなたの方の手によつてこれを強制的に関東融通させることができ得るかいなかを伺います。
  8. 石原武夫

    石原(武)政府委員 電力融通は現在でも、先ほどちよつと御説明いたしましたように、第一融通と第二融通二つつておりますが、これは当事者間の話合いで——公益事業委員会当時やられたわけでありますが、できております。ただその間に公益事業委員会が入られて、全体の電力需給バランス等考えてきめられたわけであります。もし将来東北の方が電力が非常にゆるやかになり、関東地区で非常に電力が窮迫しているという実情でございますればわれわれとしては当事者間に勧告なり、あつせんなりをいたしまして、さような融通契約によつて地区需給バランスが著しく破れないようにいたしたいと考えております。現に東北は第一融通契約におきましては、約三億一千万キロワツトアワ—くらいを他地区に出していたわけでありますが、本年度のこれは主として肥料生産等のために、東北地区電力需用が逆に苦しいというわけで、三億一千万キロワツトアワ—だけ融通契約もいたしてそのままでございますが、今度は第二融通契約で、一億六千万キロワツトアワ—逆東北が買うというような契約をいたしております。さようなことで実際の実情に合して電力需給をはかるように指導して参りたいと考えております。なお公共事業令には必要ある場合には政府が命令をするというような規定も入つておるようなわけでございます。
  9. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 その場合に公共事業令によつて、これを強制的にあつせんすることができ得るのだというお話のようでございますが、御存じのような白洲さんがあれほど豪語している点について、石原さんが今の説明のようにやれるだろうと思うぐらいのことで、このあつせんが可能のものでは私はないと思う。そこで少くともこのみにくい闘争を何とか解決したい、させなければならない。政府の犯した大きな誤りではあるけれども、政府みずからもこれに再び乗り出して、この解決をして行くということが政治の上においての当然の仕事でなければならないと私は思う。次官も、きのうも申し上げた通り、この関東の苦しみをよく御存じだと思うので、次官として何とかこれを円満裡解決をして行きたいというようなお気持があるかいなかをお伺いしてみたいのであります。
  10. 小平久雄

    小平政府委員 本問題が円満に解決を見るということにつきましては、ただいまお話通り、私ども衷心からそれを願つておるわけであります。ただ御承知のように本件のこの水利権許可等にあたりましては、当時建設省の方からも、本件に関連して起るであろう問題につきましては、地元の福島県当局等において十分これがあつせんをいたし、円満に解決するようにとい態度であつたようでありますので、通産省としましては、ただいまのところ、もちろん円満解決を希望いたしますが、成行きを静観して参りたい、かように考えております。
  11. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 当時の通商産業大臣として、通商産業省には権限がなかつた。従つてないその間隙をねらつて行われたことなんで、私たちは何も知らぬというのが大臣以下の説明であります。しかしながら閣議において、しかも大臣というものは列席をしておる。代々の吉田内閣なら吉田内閣大臣そのものの名前はかわつても、一貫した流れでなければならない。それをあえて血で血を洗うような闘争を起させる、こういうことにはみずからを振りかえつて見て政治を是正しなければならない。間違つたならばこれを是正して行くというのが政治でなければならないと思うのでありまして、私はこの点についてぜひとも、その新しい構想を持つた大臣のもとにともに働く次官の、大いにこれらに対してはもつと情味のある、あたたか味のある再建という言葉の中に、この再建に先立つ道義が頽廃しているという点もあるので、みずからあえて政府がこれらを起させるというようなことを避けていただかなければならぬ。ぜひとも政府考え方においても誤りがあつたということをこのごろは幾分なりとも知つている、考え直して来ているという観もあります。ですからぜひともこの両者において血で血を洗つている闘争だけを一日も早く円満に解決をつけるべく御努力を願いたいことを希望いたしまして、この問題の質問を打切りたいと思います。
  12. 坪川信三

    坪川委員長 次に先日に引続きまして貿易及び化学肥料に関する件について調査を進めます。永井勝次郎君。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 まず最初肥料の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、肥料国内食糧増産の一環としましてきわめて重要な産業でありますが、今日出血輸出をしなければ経営が維持できないというような瀕死状態にあるわけであります。この重要産業政府はどのようにして維持助長しようとしているのであるか、その方針を明らかにしていただきたい。
  14. 小平久雄

    小平政府委員 お答え申し上げます。ただいまの御質問に対しましては大体御同様の趣旨の御質問が昨日もあつたわけでありますが、肥料工業、特に硫安工業につきましては、御承知通りわが国化学工業のいわば最も大切な地位を占めている、特にそれが原材料等につきましても何らこれを輸入に仰ぐ必要がない、国産ですべて間に合つて行く、こういつた関係からいたしましても、当局としましてはこの肥料工業というものをどこまでも育てて参りたい、これは国内需要に対しましてできるだけ安価でこれを提供するというばかりでなく、一面におきましては輸出産業一つといたしましてもこれを十分育成いたして参りたい、かように考えております。ちようどただいまのところたまたま輸出関係において、いわゆる出血輸出というようなことが起つておりまして、これが話題を提供いたしておりますことは申し上げるまでもないのでありまするが、このこともその原因考えますると、たまたま船賃等が異常にただいま低廉である。そういう関係西欧硫安、特に西独産のものが相当多量に廉価に東南アジア方面にやつてつている、こういうことが一番大きな原因をなしていると思うのであります。そこで国産硫安につきましても、これらに対抗し得るだけの合理化によるコスト引下げということをこの際強力に推進をいたしまして、これらとも十分太刀打ちできるように今後とも努力を重ねて参りたい、かように考えているわけです。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 輸出輸出市場裡において非常な打撃を受けるようになつたのは、主として船賃関係であるということでありますが、船賃だけであるならばそれぞれの経済情勢の変化につれて、対応して行く方法はあろうと思うのでありますが、本質的に企業の内容においてコスト高になつて海外製品に対応できないというような基本的な条件国内にあるとするならば、これは根本的に考えて行かなければならないと思うのであります。外国製品と太刀打ちできないというウエ—ト船賃にだけ置いておるようでありますが、この点について次官は、コスト引下げるにはどういうような方法で具体的にお運びになるつもりであるか、お伺いいたしたいと思います。
  16. 小平久雄

    小平政府委員 お答え申し上げます。ただいま申し上げましたのは、西欧物競争力の強い原因を、決して船賃にだけ帰するという意味で申し上げたのではないのであります。もちろん根本的に生産費そのものが非常に違つておることは争えない事実なのであります。西独などにおきましては、国内価格が大体四十五ドルないし七ドルぐらいだそうでございますが、わが国におきましては大体六十五ドル見当になつております。これの一番大きな原因は、何と申しましても炭価が非常に高いということであろうと思います。さらにまた設備の面におきましても、わが国のものは非常に遅れておる、あるいは生産方式そのものにおきましても、わが国設備コスト高原因になることもございます。その他経営全般につきましての合理化の不十分という点もあるかと思います。かような関係でございますので、当局としましては設備近代化あるいは電源開発等によりまして、電解法による生産の増加あるいは石炭鉱業合理化、ただいま特に取上げておりますのは縦坑方式による炭鉱の合理化、それによる炭価引下げ、こういつたことや、さらにまた硫安工業全般関連産業等における経営合理化、こういつたようなことによりまして、大体十五ドル内外程度価格引下げということは達し得るのではないかというふうに考えまして、これらの面について今後とも努力を重ねたい、かように考えておるわけであります。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 企業自体赤字瀕死状態にある。これらの施設を近代化し、国際的な競争力を増大するということはみずからの力ではなかなかできないと考えます。ことにただいま石炭生産あるいは電力開発による低廉というようなことを関連産業見合つてつて行く、こういう情勢の中におきましては、速急にこれらの問題が解決できる条件はないと考えるのでありますが、それらの条件が何年先かに達成できるだろう、こういうはかない期待のもとにこれらの事業を放任しておく考えであるか、また自力でこれらの問題を解決させるお考えであるか、この点をお伺いします。
  18. 小平久雄

    小平政府委員 お話通り、先ほど来申し上げましたようなことが一朝にして成るとはとうてい考えられないのであります。従いまして、さしあたりどうするかという問題が当然あると思うのでありますが、それにつきましては、先ほど申し上げましたような長期の目標に対しまして政府ができるだけの援助をいたすことはもちろんでありますが、さしあたつてはやはり何と申しましても企業自体努力ということをわれわれ大い期待いたしますと、同時に、あるいは資金の面その他金利面等におきましても、できるだけ業者を援助するということによりまして難局を切り開いて参りたい、かように考えておるわけであります。
  19. 永井勝次郎

    永井委員 金利引下げあるいは資金のあつせん、こういうような程度のことでこれらの企業が自主的に盛り上れる条件というものはない、そんななまやさしい条件段階ではないとわれわれは考えるのであります。一方に出血輸出をやり、企業自体は非常な赤字である。これが何年続くかわからない。こういうような条件の中で企業近代化をはかれ、何をしろと言つたところで、希望が持てるならばこれは自主的に立ち上つて借金してもやるでしようが、先がまつ暗であるという条件の中で、そういうことは自主的には非常に困難である。この問題に対して、政府金利資金の面だけの条件、あるいは船賃というような、そういう外まわりの条件だけを考えて、自主的な、企業の自立的な態勢についての問題の掘り下げが非常に足りないと思うのでありますが、この点について現実条件をどういうふうに把握しているか局長から御説明願いたい。
  20. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいま政務次官から御答弁申し上げた点を敷衍して申し上げることに相なるかと思うのでありますが、現実の事態に対しまして問題点を二、三申し上げたいと思います。  第一点でございます船運賃値下り傾向についてでございますが、ちようど本年の七月、八月ごろから、特に西欧から極東に参ります船運賃値下りが非常に急激でございます。この数字肥料輸出市場として競合しております地点に対します船運賃について比較をいたしますと、この船運賃は急激な、どちらかと申しますと異常な下落であります。これは通常の姿ではない。通常船運賃半額程度になつておるのではないかという考え方が一般でございますので、この点を一応説明いたしたいと思います。欧州から台湾に参りますます最初硫安輸出で破れたのは台湾でございます。この台湾までの船運賃考えますと、昭和二十六年十二月が二十二ドル、二十七年の春十六ドルに下りまして、ごく最近は八ドル五十セントになつております。本年の春から見ましてさらに半分に落ちておるという状況でございます。それから欧州から比島に参ります運賃傾向を見ますと、昭和二十六年十二月が二十一ドル、二十七年の春が十三ドルに落ちております。最近は七ドルという数字すら出ております。最近硫安出血輸出価格を最低として問題を起しましたインドに対します運賃傾向を見ますと、昭和二十六年十二月が十九ドル、本年春が十ドル、最近に至りましては六ドルというような状況でございます。これに対しまして日本からこれらの地域に対します運賃は、どちらかと申すと安定いたしております。台湾に対します関係は、招聘局というものが直営いたしております関係で、マル公考えてよろしいかと思いますが、日本から台湾に参りますものは三ドル五十セントで、二十六年十二月、今年春、最近と同一価格でございます。比島に対しましては、二十六年十二月が四ドル五十セント、二十七年春が三ドル、今日がニドル。インドに対しましては、これはボンベ—でございます。先ほど申し上げましたインド向けと申しますのはボンベ—でございますが、本年の春六ドルであります。最近には四ドル五十セント、二十六年の十二月には、硫安関係輸出問題で運賃の問題を検討いたしておりませんので、明らかになつておりませんが、そういう状況でございます。アメリカ方面から日本に向けた超重量物輸出運賃も、これと似たり寄つたりでございますので、申し上げませんが、大体欧州からこれらの地域に参るものと同様の下落をいたしております。こういうような状況でございまして、硫安輸出が非常に運賃の面から大きな衝撃を受けた、こういう考え方一つの大きな理由でございます。  ただいま御質問の中にもございました、生産コストの面につきましての、二、三の問題を申し上げます。今日の硫安工業生産は、石炭に依存しますコ—クス法——ガス法と通例申しておりますが、ガス法と、電力に依存しております電解法二つございましてこのガス法によります生産は、今日ではいわゆる電力事情が供給上思わしくありませんので、ガス法に重点を置いて生産の増強をいたしております関係で、ガス法は、本昭和二十七年肥料年度は、全生産量の七七・六%という生産計画を立てております。電解法は残りの二二・四%でございます。このガス法生産におきまして、特に西欧比較いたしまして問題を持つております主要点は、主要原料でございます石炭でございます。石炭は大体硫安一トンにつきまして、——燃料炭コ—クスをつくります原料炭と両方ございますが、燃料炭の方はごく一部分でございまして、これを平均いたしまして、大体硫安一トンつくりますのに石炭一トン、正確に申し上げますと一トン強でございますが、比較を簡単にいたします建前で、硫安一トンに対しまして石炭一トンといたしますと、大体日本で得られます石炭工場着値段は、七千円から七千円を上まわる四、五百円見当が通例でございます。西独及びアメリカにおきましても同様でございますが、石炭価格は大体三千円、あるいは三千円をちよつと下まわる価格かと思います。これを比較いたしましても相当の開きがございまして、この点につきましては、先ほど政務次官からも御説明申し上げましたように、今日日本石炭鉱業近代化合理化といたしまして、縦坑開発計画というものが進められておりますが、これが全国平均単価に及ぼす影響は二割前後と承つております。これをコ—クスその他に影響させますと、これが相当大幅に硫安価格引下げに貢献するということに相なるのでございます。  第二点の電力問題でございまするが、アメリカにおきましてはほとんど火力発電、あるいは天然ガス、そういつたものを大いに活用いたしておりまして、水力というものは比較微量でございます。西独についてこれを考えますと、火力が四〇%ぐらい占めております。今日の日本電解法中心考えますと、電解法というものは非常に微量でございまして、大部分水力に依存しておる状況でございます。石炭価格は、西欧におきましては日本比較いたしまして、五割あるいは五割以下という状況でございますが、この電力事情から申しますと、日本アメリカに対して、あるいは西独に対しても、電力料金の方は安いように考えられます。詳しいデ—タがございませんので、大体の見当でございますが、その方は西独あるいはアメリカ物よりも安い、こういう状況でございます。従いまして今日非常に積極的に電源開発の問題が取上げられておりまするが、この電源開発が進むに伴いまして、この肥料工業は特に電源地帯に相当多く分布しておる状況でございますので、こういつた電源開発に伴います電力供給が上昇いたしますことによりまして、硫安工業は今日のガス法から電解法の操業度の上昇というような方面に重点を置きますと、ここにいわゆる硫安工業の全般的に見ましたコストの切下げということが可能に相なるのでございます。大体今日の情勢で、二百万トンの窒素肥料をつくるのでありますが、これを内需だけに限定いたして——内需と申しますと、硫安百五十万トンが一応内需と考えられております。そういたしますと、残り四十万から五十万というものが輸出に向け得ると考えられます。二割あるいは二割五分というものが輸出に向くわけでありますが、これをコストで、操業度を修正して考えますと、二割程度減産いたします。内需だけに限定するといたしますと、コストにおきまして約一割強、固定費と比例費の関係から推論いたしますと、一割強、これを簡単に申しますと、今日の安定帯価格の標準価格が九百円でございまして、これを内需だけに限定するというような建前をとりますと、九百九十円前後になるというのが一つの想定でございます。こういつたような状況でございまして、電源開発ということが推進せられることによりまして、硫安コストが当然引下げられるという結論に相なると思います。  そのほか最近硫安工業自体の合理化というような具体的な問題に触れまして技術的に検討しております。たとえば粉炭をセメントの粉ぐらいに非常に微細にいたしまして、これを利用することによつて炭素効率を非常に高めるという、われわれはこれを粉炭ガス化と申しております。これはコツパ—ス会社がフインランドにおいて、最近自己の得た特許を実際実験いたした発明でございますが、これを日本硫安工業にも適用いたそうと思いまして、宇部興産、日本水素、日新化学、こういつたものがそれぞれ現地に人を派したり、あるいは会社——先般実はこのコツパ—ス会社の有力者が参つたのであります。これと十分検討をいたしましてこれを取入れるというような検討を進めております。この粉炭ガス化という方法を採用いたしますと、約ニドルから三ドル程度、装置によりまして多少異なりますが、その程度合理化ができる。これは今日の日本のような非常にカロリ—の低い石炭を原材料として持つております国柄といたしましては、非常に技術合理化といたしまして妥当なことではないかと思います。こういうものに対しましては、開発銀行の融資、こういつたような国家の積極的援助を行うというような方式で、合理化を進めて参る、こういうように考える次第であります。  それから日本硫安工業としまして非常に外国と異なつております点で注目いたさねばなりませんことは、製鉄でありますとか、ソ—ダ工業、あるいは化学繊維工業、あるいはその他の関連企業とのガスその他の利用関係、いわゆる化学工業の総合的一貫性と申しますか、そういう点が非常に欠けている点が多いのでございまして、この点につきましては、従来もたとえば硫安工業をいたしておる者に対しまして、メタノ—ル工業を兼営させる、あるいは有機合成化学工業をやらせる、いろいろな面においていわゆる関連企業との総合的な意味合いにおきましてのコスト切下げということを、開発銀行の融資その他を通じまして援助して参つておる次第でございまして、こういつたようなことを並行して考えますことにいたしますると、国際競争上の弱点を除去し得るのではなかろうかと考えるのであります。先ほど政務次官からもお答えいたしましたが、大体硫安輸出の見通しということから申し上げますと、日本硫安が進み得る地域的な限度と申しますのは、ちようど西欧日本からの船運賃の競合点はインドでございまして、インドあたりがちようど日本輸出先の先端をなすかと思います。これから近づくに従いまして運賃関係からいいまして、日本に有利なことは当然でございまして、その主力は韓国、台湾、フイリツピン、こういう地帯になるかと思うのであります。この地帯は非常に日本側に有利でございまして、先ほど申し上げましたような合理化——十二、三ドルという目標ではございますが、これが十ドル、あるいはそれ以下でございましても、平常な国際運賃状況というようなものを前提といたしますと、日本硫安輸出というものは可能である、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  21. 永井勝次郎

    永井委員 安定帯価格は、肥料生産の全部をプ—ルしてやつておる、しかも国内事情から言えば相当に上まわつておる、輸出によつて出血をし、出血した分を国内の消費者である農民にこれをかける、あるいは生産合理化がなされてない、非常に脆弱な産業でも、これを助けて行くためにプ—ル価格がきめられて、そうして高いコスト価格がきめられる、当然整理されなければならない企業が生き長らえて行く、そういうことが全部消費者である農民にこれがしわ寄せされておる、ぶつかけられておるという、こういう行き方に対しては、われわれは賛同しがたいのでありますが、安定帯価格をどういう方針で今後どのように持つて行かれる考えであるか、この点をお伺いいたしたい。
  22. 小平久雄

    小平政府委員 国内需要価格の問題でありますが、この点につきましては大臣からも再三お答え申し上げております通り、少くとも来年の春肥につきましては、この出血輸出によるメ—カ—の赤字というものを国内価格にこれを転嫁しないということを申し上げておるのでありまして、当局としてはかような方針をとつているわけであります。また一面におきまして、出血輸出をしておるというので、その赤字というものをいかにも国内の消費者に負担をさせておるというような感を与えまするし、さような関係からしまして、むしろ国内産のものでなく、外国からも硫安を輸入したならば、ただいまの安定価格よりも安くあがるのじやないかというような声も聞くのでありますが、現状におきましても、西欧産のものをわが国に輸入するということになりますならば、その価格は必ずしもただいまの安定帯価格よりも下まわるとは考えられないのであります。そこで今後の安定帯価格の問題でありますが、これにつきましては通産省といたしましては、安定帯価格がもともと全購連との協定価格というような建前からいたしましても、これはあらためて相談すべきものといたしますならば、業者及び全購連との協定にまちたい、かように考えておるわけであります。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 この安定帯価格の設定の性格を、これは非常に疑問に思つておるわけでありますが、もし出血輸出によつてこれを国内消費者に転嫁させないということであるならば、これは最高価格を設定すればよろしい。ところが最高価格をきめ、さらに最低価格をきめておる。最低価格というのは、これはおそらく企業者の擁護の線であろう、こう思うのであります。局長の話によると、先ほど現在九百円という価格は、これは生産者の純生産原価であるというようなお話でありましたが、これは当然利潤も見込んでおれば、出血輸出による国内消費者の負担分もこの中に当然計算として含まれているべきものであつて肥料企業は慈善事業ではないのでありますから、出血輸出してまで国の重要産業であるからこれは維持しなければならない、あるいは食糧増産がきわめて必要であるから、消費者のために慈善事業をやるのだというような、そういう殊勝な考えというものはあるわけがないと思うのであります。従つてこの安定帯価格は、九百円を中心として前後に三十円ずつの幅を持たせておるというけれども、これは最低価格の維持にその性格が置かれておるのではないか、こう思うのであります。消費者の立場から言うならば、最高価格を設定して、下の方はこれは設定する必要はない。上げつぱなしにしておけばよろしい、そのときの国内情勢の推移によつて、そのときどきの情勢に応じて、価格が自然に安定するということ、取引されるということが、自由経済の当然とるべき問題ではないか、肥料価格の面に対してだけ、しかも企業状態にしても、非常にコストの高い、設備の悪いそういうような企業全部を包括して、これだけの価格を維持させようというようなこういう行き方というものは、消費者の立場から言えば納得ができないものがある、かように考えるのであります。最低価格を設定し、こういうふうな価格政策をとつていることは、一体企業の一方的な擁護のためにやつているのか、消費者の利益のために十分考えてやつているのか、この点を明らかにしていただきたい。
  24. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 安定帯価格価格形成の問題でございますが、これは公定価格制度が廃止せられまして、その後におきます経済の方向指導ということを、官のいわゆる官僚統制からはずして、業界の自主的な線に重点を置いて指導して参つておるのであります。昨年の秋国内生産状況が渇水その他の関係もありまして、非常に思わしくなかつたのでありますが、ちようど十月ごろと記憶いたします、肥料の一割増産計画を立てまして、増強いたす方針をその後逐次強化いたしております。本年四月に至りまして、特に豊水時期を迎えますと同時に、本年の夏は非常に水の状況がよくありました結果、肥料工業生産の面において非常に恵まれたのでございます。安定帯価格は昨年の秋から本年の三月ごろまで、非常に国内価格高騰の傾向をとつておりましたので、これが適切なる措置をとりまして価格の安定をはかるという方針で、先ほど申し上げました業界の自主的な協議の線というものを逐次進めて参りまして、その結果今年の三月ごろは九百円を上まわる状況でございましたが、安定帯価格をその後相当長期にわたつて全購連、硫安協会等関係業者間の非常な検討の結果、九百円を中心といたしまして上下に三十円の幅を持たせ、一面取引の安定をはかり、しかもこの価格を一肥料年度通すという趣旨でまとまつたものでございます。  肥料価格の推移を一応御参考までに申し上げますと、統制の廃止直後の二十五年九月は、一袋七百八円程度でございました。二十七年の十月九百円の建値と比較いたしますと、二十六、七パ—セント程度の値上りになつております。これは原材料の値上りから想像いたしますと——原材料につきましては五割、六割というような上昇のものもございます状況で、そういう意味合いにおきまして、安定帯価格を穏当なものじやないかというぐあいに考えておる次第でございます。
  25. 永井勝次郎

    永井委員 一方に出血輸出をやつてつて、安定価格があるから、これによつて国内消費者にはその分の転嫁をしないというふうに政府国内に声明し、消費者にそれを強制する以上、しかも最低価格を設定して、これ以上には下げないんだ、安い肥料を海外から輸入させないんだと、一定の安定帯価格をもつて国内農民に強制する以上は、生産コストがこういうふうになつており、生産原価はこうなつておるのだ、これに対してこれだけの適正利潤をかけて、これだけの価格は妥当なんだ、こういう計算の上に立つた数字で消費者に納得さす線を明確にすべきである。価格の面においてはそういう点を明確にするとともに、生産の上においても、現在合理化できる限度における合理化努力をして、現在はこれだけの価格より方法がないんだという説明がない限り、ただ不健全な企業の実態の上に立つて生産コストがどのくらいかかつておるかを明確に示さないで、これが業者の自主的な安定帯価格だ、出血輸出の分を転嫁させないんだ、こんな空漠なことを言つたつて国内の消費者は納得するものではありません従つてごの安定帯価格設定については、政府生産コストが純粋にどうであつて、これに適正利潤が幾ら含まれておるのか、こういう数字を明確にしていただきたい。
  26. 小平久雄

    小平政府委員 御質問のことはよくわかるのでありますが、先来安定帯価格自体がメ—カ—と全購連との話合いの上できまつたものでありまして、これがまた単に最高ばかりでなく、最低をもきめたということにつきましても、これは両者の話合いの結果、こういつた幅を持たしておくことが消費者のためにも生産者のためにもよろしいということで、納得の上できまつたものでありまして、別段政府がきめたというものでもありません。そういう点から考えましても、特に製造業者だけを庇護するために設けたものでは決してないのであります。さらにまたコントの点につきましても、おそらくかような安定帯価格決定するに至りますまでの間においては、コストがどういうぐあいになつておるかということも十分検討をされたものとわれわれは承知いたしておるのであります。また先ほど申し上げました通り、この安定帯価格が今後はたして適当であるかどうかということにつきましては、両者の考えいかんによりましてはあらためて協議することもあり得ましようし、その際は当然このコストがどうなつておるかも検討されるでありましよう。ただ先ほど来申し上げます通り当局としましては、とにもかくにも二百万トンからの能力があるのであり、またコストの点から申しましても、特に四割からは、固定費から成つておる点から申しましても、相当設備一ぱいに生産をして、できたものをむしろ進んで輸出をはかるためにいろいろの施策を行うということが消費者のためにもよろしいことだ。かような考えのもとにただいま進んでおるわけであります。
  27. 永井勝次郎

    永井委員 出血輸出をすることが消費者のためだとはとんでもない話だ、こう思うのであります。たとえば国内肥料消費者が国際経済界における船賃値下りの圧力の分も背負い込まなければいかぬ。あるいは電力関係も背負い込まなければならぬ。石炭の高いということも背負い込まなければいかぬ。また価格の上における関連産業としてのいろいろな施策の点で、政府の無能の結果、肥料そのもののコストが高くなつているという面までも、国内の農民が背負い込んで、農民の力においてのみ肥料産業というものが維持されなければならないという根拠はどこにもない、理由はどこにもないとわれわれは考えるのであります。純粋な立場に立つて肥料生産価格がそのときの相場において消費者との話合いできまつて行くならば、これは自由経済の原則の上に立つ自由党内閣のもとにおいてはやむを得ないとわれわれは承認せざるを得ないのでありますが、中途半端なこういう統制をし、安い外国の肥料の輸入をさせない。そしてこれは重要産業であるからといつて国内における不必要ないろいろな産業も全部その中に包括して価格をプ—ルし、安定帯価格によつて押しつけ、そうして出血輸出をさせて行く、こういうむちやくちやな話はないと思うのであります。一体こういうやり方は自由経済の原則の上に立つのか、中途半端な統制方式によるのか、あるいは関連産業とのいろいろな綜合的な合理化によつて価格コストを上げるというならば、そういうような方式を自由経済の方式によつて達成できると考えるのか、こういうことを促進するには計画的な方式をもつてやらなければいけないというふうに考えるのですが、当分の間、自然にそうなるのだから、その間は船賃も何も国内の農民は背負い込んでしんぼうしておれ、こういうふうなお考えであるのか。どうも政務次官お話を聞いても、局長の話を聞いても、こういう点はさつぱり了解が行かないのであります。自主的な価格であるから、話合いがついたんであるからというようなことで放任しいおいてよろしいのであるか。そうしてこういうようなコスト切下げとかなんとかいうことの見通しは、大体現在の段階においてどのくらいの見通しを持つておられるか。こういうことが実現できるのは、国際場裡において肥料がほかの外国の商品と競争できるというようなことが達成できる見通しはどのくらいのところに置いていられるのか。これを承りたい。
  28. 小平久雄

    小平政府委員 原則論につきましては、これは各党によりましておのずから考えも違うと思いますので……。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 これが自由経済ですか。
  30. 小平久雄

    小平政府委員 申すまでもなく、根本はわれわれ自由経済の立場でやつて参りたい、かように考えておるわけであります。最後の、どのくらいに合理化の目標を置くのかというお話でありますが、先ほどもちよつと申し上げたのでありますけれども、設備近代化あるいは電源開発に伴う操業度の上昇あるいは石炭鉱業合理化によるもの、あるいは硫安工業経営の改善によるもの、これらのものによりまして大体十五、五ドルの合理化ができるのではないかと考えておるのであります。その内訳は、設備近代化によりまして大体五ドルくらい、電源開発に伴う操業度の上昇によりまして四ドルないし五ドルくらい、第三の石炭鉱業合理化によりまして大体五ドルくらい、さらに第四には硫安工業経営の改善におきましてニドルないし三ドルくらい、合せまして十六ドルないし十八ドルくらい、こういう一応の目安を置いておるわけであります。
  31. 永井勝次郎

    永井委員 どうも肥料の問題については納得が行きません。基本的な方針についてはいずれ大臣が見えてからこれらの問題を論議したいと思うのであります。  次に造船の問題について二、三お尋ねをいたしたいと思います。わが国の造船業は言うまでもなくその技術において、その施設において、国際的にもきわめて優秀な水準にあり、しかも輸出貿易関係においてはきわめて重要な部分を点めておると思うのでありますが、こ原料高のためにいろいろな引上げはいたしましてもほとんどこれをまとめることができないというような状況で、現在船台があいてしまつて遊んでおるというような状況に追い込まれております。この造船産業を、日本の重要な貿易産業として今後大いにこれを助長して行かなければならないと考えるのでありますが、これに対する当局の所見を伺いたいと思います。
  32. 葦沢大義

    葦沢政府委員 造船業がわが国重工業においてきわめて重要な地位にありますことは、お説の通りでございます。従いまして造船業が健全な発達をするために、所要な施策を通産省側として考えておられることも多々あるのでありますが、いろいろな一般的な産業の面から金利が高いとかあるいは税法上税金が高いとかいうような問題は、一般的な産業に共通している問題だと思いますが、何と申しましてもそのほかに造船業として特に指摘されます点は、その所要します資材のうち、相当数の鉄鋼を使用するという意味から、鉄鋼が安定した安い値段で入手できるということは、造船業にとつてきわめて必要なことだろうと思います。こういう面から見ますと、わが国の造船用鋼材がいまだ世界の造船国における造船用鋼材の値段に比較しまして、必ずしも安定した値段でないという現状でございますので、これに対してわれわれの一応考えました考え方といたしましては、鋼材を普通市場価格で買い取りまして、それを造船業の方に売ります場合には、国際価格で売りまして、その差額をある程度国で考えたらどうかというような考え方もいたしてせつかく検討中であるような次第であります。
  33. 永井勝次郎

    永井委員 統計によりますと、明年の一月初めには船台を使うものが二十一、船台をあけてしまうのが三十一、明年四月になりますと船台使用が四、四十八というものがあいてしまうという計算のようであります。こういうような状況から見ますと、日本の造船産業というものはもうほとんど壊滅状態になるのではないか。単に造船が壊滅状態になつて行くばかりでなく、これに関連するいろいろな産業が大きな打撃を受ける、こういう状況にあります場合、半年、一年先の問題として、懸案としていろいろな施策を立てるというのではなくして、緊急これらに対する対策がなければならない。これらの緊急対策としてどういうふうなお考えを持つておられるか、これを承りたいと思います。
  34. 葦沢大義

    葦沢政府委員 造船の需要の方に関します問題は、通産省側としましては一応国内需要が三十万トン、輸出造船二十万トン、大体五十万トンくらいの造船というような考え方を一応立ててみましたときた、それに所要します鉄鋼が、大体トン当り七百キロくらいになりますので、三十万トンか二十五万トン程度の鋼材が必要じやないかと思われるわけでありますが、そういつた鋼材につきまして、ただいま申し上げたような制度の運営によりまして、少くも鉄鋼の価格の面から参りますものにつきましては、外国と同じレベルにしたいという考えを持つているわけであります。
  35. 永井勝次郎

    永井委員 造船の直接の関係は運輸省所管であるかもしれませんけれども、これらの関連産業、あるいは製鉄、造船に要する特殊鋼、こういうものは当然通産関係でありますし、船台が、現在目の先にほとんどあいてしまうという現状におきましては、国の産業として、また重要な貿易産業として緊急にこれに対処しなければならないのであります。ただいま鋼材を国際価格並に切下げてやりたいということでありますが、これにはその価格差に対して、相当の国の助成金がなければならないのでありますが、現在その予算が組まれていない。この価格差に対する助成というような考え方政府におありになるのでありますか。またあるとするならば、どういうふうに、いつから実施されるお考えであるか、これを具体的に伺いたい。
  36. 葦沢大義

    葦沢政府委員 ただいまの鋼材助成金の予算につきましては、御説のように現在は何もありませんが、われわれの考え方としましては、明年度の予算に、ある程度のものを計上いたしまして、施策をいたしたいというふうな考え方を持つておりますが、そのためには、先ほど申し上げましたように、特別鉄鋼価格調整制度というようなものを、特別会計のような仕組みによつて考えてはどうかということで、明年度の予算に織り込むべく検討をいたしておるような次第であります。
  37. 永井勝次郎

    永井委員 さしあたつて、来年の一月には半分以上はあく、四月には船台は四台より使わないで、四十八台はあいてしまうという差迫つた情勢の中にありまして、まだ明年度の予算は査定中であつて、これは通るか通らないかわかりません。こういう不安定な、不明な条件の上に立つて、ただ空漠な期待を将来にかけておるというだけの答、弁でありまして、当面こういう船台があき、そうして失業者ができ、関連産業が全部とまつてしまうというような条件の中で、緊急にこれらの問題に対処する考え方というものは、全然考えられていないのかどうか、これを伺いたい。
  38. 葦沢大義

    葦沢政府委員 造船の船台があきます問題につきましては、これはさらに運輸省の方から説明があるのがしかるべきか思いますが、われわれの考え方によりますれば、単に鉄鋼の価格が国際水準並になつただけで、船台があくという問題が解決するものでないというふうに思われますることは、これは御承認いただけることだろうと思いますが、そういつたような船台があきますについては、さらに、われわれの鉄鋼関係からの考え方といたしまして、鉄鉱石を相当多量に海外から運びます関係上、これの運賃の安定と安値を相当長期にわたつて確保するためには、ある一定の船を建造した方がいいのじやないかというふうな考え方も、目下検討を重ねておりまして、そういつた面から、船台があきますについては、一つ需要関係からいたしまして、国の基幹産業である鉄鋼の価格の安定上も必要であるという見地に立ちまして、若干の船を建造するのがいいのじやないかというようなことで検討をいたしておる次第であります。
  39. 永井勝次郎

    永井委員 船台のあくのは、先ほど申し上げました通り、運輸省の所管でありますけれども、重要な原材料を扱つておる通産省としては、やはり半分以上の責任において、これらの問題を総合的に解決しなければならないと思います。ことに、輸出貿易として、非常に重要な産業であり、造船技術というものを、さらに向上発展させるためには、これらの事業に対して、国はよほどの決意をもつて対処しなければいけないと思うのであります。現在特別鋼材について助成金を出すだけで、造船産業豊されるとわれわれは考えない。これらの造船、機械、あるいは重工業は、やはり鉄につながつている。鉄鉱石をアメリカや遠方から輸入し、あるいは粘結炭を輸入しなければならないという条件の中におきましては、これらの産業が国際競争にぶつかつて行く基礎的条件は、失われておると思うのであります。従つて、助成にいたしましても、単に特別鋼材の造船材としての差額だけを助成するというのか、鉄鉱石及び粘結炭等、製鉄事業の現在当面しているいろいろな不利の条件やアンバランスというものを思い切つて助成して行つて、造船並びに重工業という基礎産業を大いに伸ばして行く。そこに助成金をぶち込むお考えなのか、伺いたい。
  40. 葦沢大義

    葦沢政府委員 重工業の基盤としての鉄鋼の価格を安くすることにつきましては、まつたくわれわれも御説の通りに存ずるのでありまするが、ただこの問題に対しまして、特に緊急やむを得ない現在の状態を一時的に解決する方法と、御説のようにさらに長期にわたつて恒久対策として解決する策と、両方どういうふうに持つて行くかというお尋ねかと思いますが、先ほど申し上げましたような造船用鋼材につきまして一定の助成金を出したらどうかというような考え方は、もちろん一時的な考え方であります。ただ恒久的な考え方としまして、鉄鋼価格を安定いたしますために、長期にわたつて助成金なり補給金を鉄鋼業の上に出しますことは、財政上の負担も相当大きくなるわけでありますから、なるべくそういう道を避けて解決する道はないかということを考えているわけでありまして、その一つといたしましては、すでに昨年出発しました合理化のラインによつて三箇年計画六百四、五十億の資金を投入いたし、設備の改善によりまして、ものによつては多少の相違がございますが、現在の価格よりは大体二割程度コストの低減を来せるのではないかという考え方をいたしております。これはむろん開銀の国家資金が出ておりますとともに、また明年完成いたしますにつきましては、開銀からもまた出るわけでありますが、鉄鋼界の自己資金、鉄鋼界として投入し得る資金をなるべく投入いたしまして、そういう方法一つ現在行つておるわけでございます。さらに問題は、鉄鋼のコストの中に大きな比率を占めておりますものは、何と申しましても、ただいま御指摘がありました通り、遠く海外から鉄鉱石、粘結炭を運んでおりますので、これを安く入手することが非常に大事なことでありまして、コストの大体八割を越すものが原料代になつております。従いましてこれを低減いたしますことが非常に必要なわけでありまして、山元におきまするFOB価格を安く入手するということともに、近い過去の経験といたしましてわれわれがつぶさに体験したことから、運賃が十ドル内外も上つたり下つたりするというような情勢に対処する必要があるという見地から、先ほど申し上げましたような、鉄鉱石を主として運ぶ船をつくつたらどうかというような考え方をただいま検討しておるような次第でございます。この緊急対策と恒久対策と相まちまして所期の目的を達成したいというような立場で検討をいたしておるような次第でございます。
  41. 永井勝次郎

    永井委員 今、局長の話では鉄鉱石を運ぶ専門の船をつくるとおつしやいましたが、これは造船界もいろいろ議論があるところであります。そうでなくても貿易が現在行き詰まつて、船腹が余つておるときに、鉄鉱石を運ぶ専門の船をつくれば、これは片荷になる。鉱石だけを片道運んで、片道はあいてしまうというような非常に不利な造船をわざわざする必要はないのじやないか。国内手持ちの船をもつとフルに活用するような道を開くべきではないかという反対の意見も相当にあるやに聞いておるのでありますが、これに対する所見を伺いたいのと、恒久対策としての点について政務次官に伺うわけでありますが、何と申しましても、日本の重工業の基礎となる鉄鉱石、粘結炭については、現在のような貿易のやり方においては、どのような超人的な合理化を中においてはかろうといたしましても、国際競争にはとうてい勝つことができないと考えます。従つてこれらの問題の解決の基本的な条件は、対中共との貿易関係にあると考えるのでありますが、これらに対して、そういう点からも中共との貿易を拒否しながら、これらの問題の恒久的な対策を確立し、日本の造船事業ばかりでなくて、機械工業その他の重工業を国際場裡において発展させて行くというその名案をお持ちになつて、対中共との貿易を拒否されておるのであるか、そういう名案があるなら、そういう基本的な方針をひとつ示していただきたいと思います。
  42. 小平久雄

    小平政府委員 わが国産業ないしは貿易にとりまして、中共市場というものがきわめて重要であることは御説の通りだと思うのであります。ただこの点も再三大臣からも申し上げております通り、ただいまの朝鮮における事態等を勘案いたしますならば、わが国といたしましては、あくまでも国連協力という立場において対中共との貿易その他の施策を考えなければならない、こういう立場でございますので、その置かれまする基本的なる立場において、最大限の貿易その他の拡大をはかつて参りたいというのが、ただいま当局考え方であります。特に鉄鋼等の問題につきましても、先ほど来お話がありました通り、特にこの原料の問題が非常に大きな課題でありますので、これらにつきましては、インドにおける鉱山の開発、それによる鉄鋼資源の確保というような面につきましても、当局といたしましてはできるだけの努力を払つて行きたい、かように考えておるのであります。
  43. 葦沢大義

    葦沢政府委員 ただいま政務次官ちよつと触れられました鉄鉱専用船の問題について、海運業者から相当強い反対があるではないかという御説まことにごもつともだと思いますが、御承知のように、ただいまの運賃は相当安い船運賃なつ下おります。のみならず、古船を購入しました圧力がただいま船の上にかかつておりますことは、御指摘の通りであります。こういう際に専用船をつくるのはどうかというお話ごもつともでありまして、われわれはそういつた海運界の実情と即応しつつ、運賃の安くかつ安定することを目的といたしておるわけでございますから、現実に即応することが何より大事なのでありまして、その点につきましては、運輸省とも折衝中でございます。ただその前に、御指摘になりましたように、造船の船台のあきまという問題もございますので、そこはおのおの彼此検討いたしまして調整のとれた政策がとらるべきであるというような考え方をいたしておる次第であります。
  44. 永井勝次郎

    永井委員 大臣がお見えになりましたので、大臣一つだけお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど来、肥料の問題についてお尋ねいたして来たのであります。肥料生産国内需要を上まわつて増産され、増産された分を出血輸出する、出血輸出をすることによつて国内にそれらの出血が転嫁されないように安定帯価格を設けて、最高最低の価格を設定したい。外国の安い肥料国内に輸入させない、こういうようなことで、いやおうなしに国内の農民にはこの高い肥料の使用を強制されておるわけであります。こういうような独占的な形においてこれらの肥料国内の農民に強制される以上、この価格が適正であつて、決して肥料会社の一方的な利益擁護ではない、こういうことを納得させますためには、生産費が現在このくらいかかつて、こういうふうになつておる、そうして出血の部分はこれだけの金額になる、これは会社が将来を見てこれだけの出血はあえて忍んでやつておるのだ、適正利潤はこうである、こういうような会社経理の内容を政府が責任をもつて明確にして、これの適正価格であるということを農民に納得させる方法をとるか、そうでなければもつと、安定帯価格というような中途半端なやり方ではなしに、現在は生産過剰でありますから、コストの高くなる不良の工場は整理して、コストの十分合理化した企業内容を基礎としてこれを推し進めながら、安い肥料を農民に供給することを約束するか。そうでなければ、現在のような段階では、最低価格をはずして最高価格を押え、国内の農民に出血輸出の転嫁をさせないという約束をしながら、肥料の適正取引による価格の安定をはかるという方法をとるか。そうでなければ、国内産業を刺戟して、合理化近代化を促進するという意味における自由競争の建前に立つて、海外の安い肥料を輸入させるか。いずれかの方法をとらなければ、現在のような肥料政策というものは、非常に一方的な会社の利益擁護であつて国内の農民はこれを納得いたしません、これらのいずれの道をおとりになるのか。そうして現在の中で、そういう会社の一方的な利益擁護でないという具体的な運営について、大臣から明確に肥料政策を伺いたいと思います。
  45. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は農家に対しましてできるだけ安い肥料を供給するとともに、また国内において肥料が自給し得るということでなければならぬと考えるのであります。これが根本であります。従つて日本の現在の状況について見ますると、永井さん御承知のように、本年の七、八月ごろから国際的に相場が下つて参りましたので、以前はさほどではなかつたのでありますが、今日では国内相場、いわゆる安定帯価格の方が、おそらく国際価格より十数ドル上になつておるような状況にあるかと思うのであります。しかし、日本といたしましては、前に申し上げた通り石灰窒素を入れますと、現在窒素肥料は二百十万トンほどの生産設備がありますが、硫安も約二百万トンほどあります。従いまして今お話なつたような、いわゆる硫安出血輸出を断念さして行こうとすると、二割ほど減産しなければなりません。二割ほど減産いたしますと、これはまたコストが非常に高まつて来る。こういう問題も起つて来るのであります。従つて、どうしても日本としてはある程度輸出考え、また東南アジア市場等の関係から見ましても、ある程度輸出をやらすということでなければならぬ、さらに言葉をかえて言いますと、日本の現在の設備をなるべく動かすことによつて東南アジア方面にもできるだけ輸出をさして行く。そうして多量生産によつて国内生産費を下げて行く、こういうことが根本のねらいでなければならぬと思うのであります。一時的に見ますると、相当食い違いを生ずる場合が起つておるんじやないか。正直に言いまして、現在のところはそういう食い違いを生じておるということになつておると思うのであります。従いまして私どもは、政策といたしましては、あくまで国内肥料の自給をやつて行くということの反面に、他方できるだけ輸出する。それにはどうかというと、やはり生産コストの切下げをやつて行くことが、長い目で見て政策としては一番よい政策ではないかと思うのであります。それには過日もちよつと申し上げましたように、設備近代化をいたすというようなことで、あるいは四、五ドル下るでございましよう。また原材料価格、なかんずく高いのが石炭であります。御承知通り石炭は、ドイツあたりのほぼ二倍以上にもなつておるので、この石炭価格が縦坑の開鑿その他によりまして安くなつて参りますれば、この価格引下げが三、四ドルできると思います。また金利引下げをいたしますとか、あるいは企業経営合理化をいたしますとか、そういうようなこと等で、十ドル見当は一ぺんには行きませんが、二、三年内には切下げができるのではないか、かように見ておるのであります。なお私としては、各肥料会社の経理内容に立ち入つてものを調べるという権利は持ちませんが、いろいいろ調べているところによりますと、御承知のように各会社とも製造方法も違い、また生産条件も違つておりますから、多少違つておりますが、平均いたしますと、現在の安定帯価格の付近が、ちようど若干の収益を見た——何といいますか、私どもが見てモデレ—トと考えられるような利益のところにあるのではないかと考えられるのであります。従いまして、今、出血輸出をしておる分は、会社としては損になる。これは明瞭なんであります。従つてそれをどうするか、それを国内の消費者にかけられるようなことがあつては相ならないのでありますから、現在の安定帯価格——この安定帯価格というのは、御承知通り製造者と消費者とが納得した価格が安定帯価格になつておるのであります。政府は今何も価格を公定する権限を持つておりませんから、需要者と供給者との納得づくの値段が安定帯相場になつておる次第であります。それでこの価格を上げない、少くとも春肥については上げないということについては、私どもはつきりした意見を特つておるのでありますが、それでは出血になつた損をどうするかということになりますと、これはあるいは利害の共通しておる部分を一時たとえばある会社をつくつて、そこに負担させておいて、徐々に今後生れる利益からこれを落して行くということも一つ考えではないかと思います。ただ硫安工業のごとき製造工業については、一時的にのみものを見にくいということがあるのでありまして、御承知通り運賃は西ヨ—ロツパから来ますものは、今ちようど半額になつておりますが、これが正常な状態になりますれば、運賃は今の倍額くらいになる、そういうこと等も織り込みましてしかし、今後いい御意見があればこれを伺いまして、肥料政策を確立いたしたい。現在考えておるのは、そういう程度で私どもは考えておるのであります。
  46. 永井勝次郎

    永井委員 大臣お話では、私は納得できないのであります。出血輸出におけるところの赤字は、どこかにちよつととりおいて、漸次それをなしくずしにやると言いますが、今言つたように生産コスト引下げて、国際価格と競争して行かなければならぬという大きな課題を一面持つておる。そしてそのコスト引下げるところの諸条件は何かといえば、石炭の値段が下ることである。関連産業との総合的な関係によつてこれらの問題が合理化されて行くというような、非常に遠い将来にこれらの課題をかけなければ解決できないというような問題であつて肥料企業自体の中において、これを解決して行くという諸条件は今のところないように見受けられる。しかも肥料企業はどうかというと、コストの非常に高くなるような不良会社までも全部包括して、そうして減産すればコストが高くなるのだといつて、これをフルに生産させて、温存させて行く。合理化条件というものは、自分の企業以外のそとの方にいろいろたくさんある。しかもこういう条件の中で企業近代化をはかり、施設の拡充をやらなければいけないというような、そろばんをはじき、あるいは経済の原則の上に立つて考えますならば、とうてい不可能なことを夢のように期待しておるというのが、大臣肥料政策に対する考え方ではないかと思うのであります。従つてわれわれから言えば、当然出血輸出赤字というものは、慈善事業ではないのだから、どこかにこれは転嫁される。転嫁しなかつたら、政府の助成金でこれを穴埋めする以外には方法はない。それから近代化するにしても、うんともうかる事業ならば投資もありましようし、資金の面も解決できるでありましようが、こういうような前途暗暗澹たる企業に対しましては、そう大きな投資というものはない。近代化というものは、そう簡単にできるものではない。そういうようにわれわれは非常な不安な条件があると思うのであります。解決のできない諸条件というものを現在大臣は述べている。こういう不合理な条件というものは、全部国内の農民にこれが転嫁されて、そうしてその農民の犠牲においてこれらの問題がすべて維持されて行くという、こういう犠牲はわれわれは断固として反対しなければならないと考えておるのであります。従つて私は先ほど申しましたように、この価格が適正であるというならば、これは経理の内容を明白に公表すべきである。もし肥料コスト引下げて、そうして農民に低廉な肥料を提供するというならば、不良な肥料会社については整理をして、そうして近代化をはかるべきである。現在生産が過剰になつているのでありますから、そういう整理の段階というものは可能であります。ほつておけば、自由経済の中では、当然これは没落して行く産業を、こういう形において維持させる根拠はどこにもないのではないか、こういうのであります。従つて企業をもつと整理されて近代化をもつと促進したらよい。そうでなかつたら、外国から安い肥料を入れて、わが国産業——一時的には相当打撃を受けるでありましようが、今言つた合理化の促進が、輸入をすることによつてできる。こういうふうにひとつ思い切つて割切つた、国民が納得できるような政策の筋の通つた線を明確に打出していただきたい、こう思うのでありますが、その点について伺いたい。
  47. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今お話の次第もございましたが、これは私どもは設備近代化その他をやつて参れば、右から左にということはできませんが、しかし数年のうちにはそういうことが行ける。今一時外国の肥料が安いからといつて外国の肥料をどんどん入れて行つたらよかろうというような考え方は、これはやはり日本の自立産業の上から見て、私どもははなはだとらぬ点であります。  それからまた今お話のあつた通り、統制をどんどんしたらいいじやないかというような意味お話でございましたが、これは過日も私が申し上げたように、大体私どもは、もし統制されるならば、自主的に自分がやられるべきものである、こう思うのでありまして、特に物が過剰な状態、余つておる状態のときには、いつも統制は自由経済のもとにおいては自主的に行われておるのであります。従いましてこれを政府の手で、お前のところは設備をどうしろ、縮小しろ、合併しろというようなことは、これは私どもさしずすべきものでない、かように考えております。なおすべて問題を一時的に考えずに、やはり大きい長い目で、国の政策として進めて行くのが穏当である。もつとも永井さんのお考えもそうであると私は信じますが、そこで今申し上げたような、少し方法としては迂遠かもしれませんが、しかし確かな道を歩んで行きたい、こう考えておる次第でございます。
  48. 坪川信三

    坪川委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、本日はこの程度といたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十五分散会