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1952-12-15 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十五日(月曜日)     午後二時三分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君    理事 永井勝次郎君       大倉 三郎君    中峠 國夫君       福井 順一君    福井  勇君       南  好雄君    村上  勇君       高橋 長治君    長谷川四郎君       山手 滿男君    伊藤卯四郎君       山口シヅエ君    木下 重範君  出席国務大臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      石原 武夫君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君  委員外出席者         建設事務官         (河川局次長) 伊藤 大三君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十二月十三日  織物消費税法の廃止に伴う特別措置に関する法  律案境野清雄君外五十四名提出参法第二  号)(予) 同日  中小企業に対する金融対策確立に関する請願(  小川半次君紹介)(第八一八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案  (内閣提出第三号)  肥料に関する件     —————————————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議開きます。  本日はまず化学肥料に関する件について調査を進めます。まず政府委員より化学肥料に関する現状について説明を求めます。中村軽工業局長
  3. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 化学肥料生産状況につきまして最初に御説明を申し上げます。肥料生産状況のうち、特に昨年の秋以来生産について問題のございました窒素系肥料生産状況を御説明いたします。  昭和二十六肥料年度は本年の七月末をもちまして、三十八万トンの繰越しをもちまして終了いたしました。本年の八月から来年の七月までの来昭和二十七肥料年度窒素肥料生産状況説明いたしますと、八月から十一月までの実績をとりまして、その後の十二月以降、来年の七月までの生産予定数量をそのまま実現いたしますものと仮定いたしまして、窒素肥料系主力をなします硫安系は、おおむね百九十七万トン程度生産を見るものと思うのであります。本年八月から十一月までの生産状況は、生産計画を大体五%ないし一割程度上まわりをいたしておりまして、生産状況はきわめて好調であると申し上げることができます。なお石灰窒素につきましては、年間五十万トン生産計画を立てましたが、本年八月から十一月までの実績は二万トン程度生産が上まわつておる状況でございまして、来年の七月までの二十七肥料年度におきましては、約三万トン程度計画を上まわり得るかと思うのであります。以上両窒素肥料におきまして二百五十万トン程度生産を期待し得る状況でありますが、これが内需に対します関係を見ますと、硫安系百五十万トン石灰窒素において五十万トン、おおむね二百万トン程度内需考えられますが、昨肥料年度の三十八万トンの在庫繰越し等から勘案いたしますと、いわゆる硫安系肥料輸出問題につきまして、通産省は昨年の秋輸出主力を注いで参つたのでございますが、このような生産状況でございますので、肥料対外輸出につきましては、おおむね四十万トン、あるいはそれ以上のオーバー輸出をなし得るのではないかと数量的に考えておるのであります。もちろんこの数量等につきましては、経済審議庁あるいは農林省方面と具体的に輸出わくを設定いたしまして、今日まで内需に対してできるだけ影響のないよう措置いたして参つた状況でございます。  今日までの輸出状況につきまして説明申し上げたいと思います。肥料特に硫安系肥料生産が順調になりましたのは、本年の四月の豊水期を迎えてからで、ございまして、その当時の生産状況からいたしまして、輸出わく相当長期にあらかじめきめておきまして、輸出にさしつかえのないような、商機を逸しない、あるいは長期契約ができるような態勢にいたしまして、昭和二十六肥料年度で十五万トン輸出額を設定いたしました。その後二十七肥料年度に入りまして、八月と記憶いたしますが、十五万トンわくを新たに改定いたしました。その間輸出の成約を見ましたものは、十二万五千トン程度でございまして、その残は二十七肥料年度に繰越して輸出をいたす建前であります。その後韓国からの輸入引合い相当大幅に、ございました。これに灯しておおむね十二万五千トンの仮わくを設定いたしまして、今日までの残りわくは、おおむね三十万トン程度に相なるのであります。これに対します引合い状況を申し上げますと、インド向けMSA買付によります硫安の二万六千トン韓国向けのJPAの買付によります二十二万五千トン、そり他フイリピンに対しまして一万二千トン程度、その他三千トンないしは数日トンという引合いが今日ございまして、目下この輸出引合いについて価格その他詳細交渉中でございます。生産並びに輸出状況につきましての説明は以上の通りであります。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 以上をもつて政府説明は終了いたしました。よつて質疑の通告がありますからこれを許します。今澄君。
  5. 今澄勇

    今澄委員 この化学肥料の問題を御質問申し上げる前に、これは私は政務次官なり大臣にお伺いしたいのでございますが、基礎的な日本産業構造に対する政府見解と、もう一つは将来の貿易の中で重化学工業は一体どのような地歩を占めるかという基本的な問題をまずこの際検討しないことには、今遭遇しておる化学肥料の重要な問題を取上げて結論を出すのに、基礎的な政府の態度がきまらなくては、そういつた問題は非常に曖昧模糊として、農林委員会が明日も経営者側工場側を招いて肥料に関する意見を聴取するし、そのまた次の日は、使用者側を招いて聴取する。しかもなお外肥十五万トン輸入などというような見解も出て、肥料工業の今日の段階から見ると、政府産業構造軽工業中心主義なりや、あるいは化学工業を従来通り産業構造の主要な部分として行くのかどうか、将来の輸出貿易について化学工業が占める地位と、肥料工業輸出産業として認めるのかどうかというような基本的な大きい問題について、私はまず政務次官から通産当局見解を聞きたいと思います。
  6. 小平久雄

    小平政府委員 わが国化学工業か、将来わが国産業の構成の上においてどういう地位を占めるべきかというお尋ねと思いますが、通産省といたしましては、化学工業、特にただいま問題になつておりまする肥料工業におきましては、御承知のように原材料等もすべて国内産で間に合うという状況から考えましても、将来ともこの肥料工業はあくまでも育成をいたして参りたい、それによつてひとり国内需要を満たすばかりでなく、重要なる輸出産業といたしましても育てて参りたいと考えております。
  7. 今澄勇

    今澄委員 少くとも東南アジアの、植民地的な消費経済から、計画的な軽工業的対策を立てて、おのおの技術を導入して立ち直つておる現状から見ると、一部繊維業者の言うような、繊維の軽工業による日本貿易立国ということは、私をして言わしむれば、すでに時代は過ぎ去りつつあるという感じがいたします、さらば、わが国内におけるその地の輸出工業考えてみると、国内の水と石炭といつたものからできる化学工業のごときは、輸出産業としてはむしろよろしいんじやないか。しかるに最近、特にドイツあたりで非常に安い肥料のダンピングが行われ、これに対してメーカー出血輸出をいたしておりますが、今のメーカー出血輸出は、将来はメーカーがつぶれるか、あるいはこれを農民負担に帰するか、ともあれ政治的な国の問題になるのであるから、これらのメーカーが何ゆえにこういう実情を国会に反映しないで、おのおのつて自己の所存でそういうことをやつたのであるかということが、私どもの非常に大きな疑問とするところで、これらの輸出許可を与えた政府は、こういう将来の問題並びにこれらの出血輸出については、今後どのような対策をとるという見通しで許可を与えたのかどうかという点について、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  8. 小平久雄

    小平政府委員 先ほども申しました通り通産省といたしましては、この肥料工業は、輸出産業面から考えましても、どこまでも育てて参りたいという考えを持つておるのでありますが、ただいま御指摘もありました通り、最近特に西独等の産の硫安が低価格であるという面から、これと競争関係上、いわゆる出血輸出が非常に問題になつておるのであります。そこでわが国肥料工業につきましてもいろいろな手を打ちまして、どうしてもコスト低下を進めて参らなければならぬと考えておるわけであります。ただ現在のところで非常に目立つておりますことは、原料である石炭価格の問題ももちろんでございまするが、これと同時に船賃が非常に低落しておるという関係もありまして、西独方面の産の硫安が特に進出しておるという面もあるのであります。そこでコスト低下につきましては、製造設備近代化ということもしなければなりませんし、あるいはまた電源開発に伴いまして、操業度を高めるという方面も当然考えなければならぬと思います。さらにまた石炭価格を引下げるという面からいたしまして、石炭鉱業合理化近代化という面にも政府としましては特段の意を用いておるわけであります。さらにまた硫安工業自体経営が、御承知通り多角的なものでもありますので、これらを総合的に合理的にやる方法を奨励いたしまして、これによつてコスト低下をいたしたい。以上の諸施策につきまして、通産当局としましては研究を進めておる次第であります。
  9. 今澄勇

    今澄委員 小平政府委員の御説明で、大体通産省肥料工業の将来に対しての考え方はわかりましたが、政府としての基本的な方針については、あと大臣がお見えになつてから、もう一ぺんお伺いをさせていただきます。  そこで次には局長さんに具体的の問題についていろいろお答えを願いたいと思います。本来ならば農林委員会と当通産委員会とは、この肥料問題については合同審査会を開いて、通産省なり農林省の担当の方々が両委員会に出て、おのおのの面からいろいろ追究せられるというお立場を何とか解消したい、かように私実は思つておりますが、いまだ委員長の方でそういう手配がついておりませんで、私どもは党内においてもおのおの見解をひとつ持ち寄つて、これらの重大な問題を処理すべく、各党とも党の一致した一つ見解で進みたいと思つておりますので、一応それの資料とするためにも、ぜひざつくばらんな御答弁をお願いしておきたいと思います。  第一点は、今日の輸出市場において、非常に割安なものが出ておるとすれば、日本硫安工業は、メーカー出血輸出だけでは持たないのであるから、国家がこれを将来何とか補給金をつけるというような政策で進んだのがいいか、それとも共販会社のごとき統制機関をつくつて、これによつていま一度マル公を設定して、二重価格制輸出国内との操作をやる方がいいのか、それとも肥料公団のごとき根本的なものをつくり上げて、新たな見地から肥料における統制を根本的にやり直すかというような問題がいろいろ出て参りますが、局長はこれに対してはどういうような御見解を持つておられるか。お答えを願いたいと思います。
  10. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまいろいろと根本的な肥料対策に触れましての御質問でございましたが、これに関連いたします関係で、政務次官から御答弁をいたしました点につきまして、なお数字的に二、三申し上げて、通産省肥料に対しまする見解を一言申し述べさせていただきたいと思います。肥料国際価格推移に関しましてでございますが、肥料国際価格が、日本の従来の価格から見まして、二十ドル程度にも下つたという状況につきましては、この状況は大体本年の七、八月ごろから生じました現象でございますが、そのうちの非常に大きい部分が、船賃影響によるところ多大でございます。たとえて申しますると、先ほど一番国際価格が下まわつたという意味におきまして問題になりましたインド向け輸出価格でございますが、このインド市場は、ちようど日本西独とが船賃におきまして分水嶺と申しますか、ボンベイで申しますと、日本側が一ドル有利の態勢になります。西側にまわりますと日本側が一ドル不利になるというような状況でありまして、このインドにおける状況が実は西独硫安工業日本硫安工業とが最も激烈な競争をやる地点でございます。従いましてこの当時の入札価格は、日本側においては空前絶後と私は考えておりますが、五十ドル三十三セントでございます。これはCIFであります。これをFOBの形に直しますと、西独FOB日本側FOBが大体四十五ドルから四十六ドルの線でございます。その後台湾におきます入札価格あるいは韓国その他の取引形態を見て参りますると、このような価格はすでに底をついておりまして、西独あるいはイギリス、イタリア等東洋市場に対しまする入札価格も、これを数ドルないしは十ドル近くを上まわつた価格のように、公表されておりませんが推測いたしております。このような国際価格推移に対しまして、日本側としましては、とにかく硫安化学工業国内資源にほとんど全部を依存しておる産業でございまして、原料的に海外に依存する点は全然ございません状況で、これを輸出産業として伸ばすことは、先ほど今澄委員の御意見の中にもございましたように、非常に重要なる問題でございまして、コスト出血という点をできるだけ早期に排除して参りたいという建前におきまして、硫安工業合理化目標をどの程度に置いてこれが対策を練つたらよろしいかということを検討いたしておるわけでございます。これの荒筋を申し上げますると、欧州硫安FOBが大体四十五ドル、これが東南アに参りまする現在の船賃は十ドルないし八ドル程度であります。従いまして欧州硫安東南ア市場に参りますと、五十三ドルないし五十五ドルという線でございます。わが国硫安FOBは六十五ドル、今日国内価格は六十七ドルでございますが、輸出する場合と国内販売いたしますところの運賃の差を二ドル程度考えますから、硫安輸出価格FOBはおおむね六十五ドル見当考えるのであります。東南ア市場に対します船賃は現在三ドルあるいは四ドルでございます。そういたしますと東南アジアに対しまするCIFはおおむね六十七ドルから八ドルという見当に相なるかと思うのであります。もちろんパキスタンからインドネシアにおきます線と、台湾韓国あるいはフイリピンに対しまする関係では、この船賃の差はもつと日本側に有利でございます。これはあとから申し上げますが、このようなコスト差を見ますと、おおむね十三ドルから十五ドル見当に相なるのであります。しかし現在の船運賃と申しますものは非常に異常に安いのでありまして——最近は船運賃がやや高くなりつつあるという状況を聞いておりますが——特に西欧から極東南アに参ります船運賃が異常に低いのでありまして、通常の運賃半額程度と称せられておる状況でございまして、そのような状況を勘案いたしますと同時に、日本硫安輸出市場の重点を韓国台湾フイリピン、こういつた地帯に求めますならば、この両者の十三ドルあるいは十五ドルという差は十ドル以下になし得るのではなかろうかと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、硫安工業コスト引下げをおおむね十ドルあるいはそれをちよつと越える程度で、この国際市場に対処し得るのではなかろうかと思うのであります。こういうような合理化目標をとりまして、設備近代化あるいは電源開発に伴う電解法操業度を引上げるというようなこと、あるいは最近石炭鉱業縦坑開発計画というような石炭価格に対します影響、あるいは硫安工業総合経営に欠けております点をもつと総合化する、そういつたような対策考えますと、この十ドル程度コスト切下げということは技術的に可能でもございますし、またいたさなければならない重要問題と、こういうぐあいに事務的に考えておるのであります。こういつた線で、今日の硫安工業の苦しい立場を、長い目で見て根本的に解決して参りたいと思うのであります。ただいまの御質問価格問題あるいはさらに一歩を進めて共同販売組織はどうかという根本問題につきましても、事務的には、肥料の過去の経緯、今日の状況等を勘案いたしまして、いろいろな角度から具体的にこれが適切な方策を検討いたしております。この問題に関しましてはもちろん関係方面が非常に多いのでございまして、経済審議庁あるいは農林省と私の方と、従来も緊密な連絡をとりましてやつて参つたのでありますが、このような根本の問題を解決するために、協議会あるいは審議会というような組織的なものをつくりまして、根本的に検討を加えて参りたい、こういうぐあいに考えております。
  11. 今澄勇

    今澄委員 それでは農林省の方はどなたがお見えになつているか存じませんが、小笠原さんが農林大臣時代に、わが党の井上良二君の質問に対して、肥料審議会でもつくつてこれらの問題に対して検討したいというような御答弁がございましたが、農林関係の方から、これらの肥料配分並びにそれらの審議会等の問題について、できる限り詳しく御説明を願いたいと思います。
  12. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいまお尋ねの、肥料問題に対します審議会設置のことでございますが、御指摘のような肥料、特に硫安中心としたむずかしい問題に対しまして、ここでやはり相当学識経験者の御意見を拝聴いたしまして、根本的な対策考えなくてはならぬではないか、あるいはさしあたりの問題をどうするかというような問題も考えなければならぬじやないかというような御趣旨におきまして、前の農林大臣審議会設置考えておるということでございましたので、私どもも事務的にどういうことをしたらいいかということを、ただいま考えております。まだ通産省あるいは経済審議庁の方と御相談をする段階にはなつておりませんが、この一両日中にお話合いをいたしまして、研究を進め、あるいは至急対策を講じたい、かように存じておる次第であります。
  13. 今澄勇

    今澄委員 そこで、農林省局長さんにお聞きをしますが、農林省としてはいろいろ農民関係の要望もあるし、出血輸出の責任とその負担が全部農民にかかるということでは、農民諸君も反対するでありましよう。これは私は当然だと思う。一体この肥料については、かつてあつた配給公団並びにその後漸次統制を解いて参りました吉田内閣のいわゆる自由経済のもとにおいても、肥料に関する限りは、消費者が何しろ公共的な立場に立つ農民大衆であるから、これが自由な価格でないことは、安定帯などということがいわれておることでもわかつておりますが、農林省がこの肥料配給と、これらの統制について、もし事務当局で何かお考えになつておることがあるならば、この際聞かしておいていただきたいと思います。
  14. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいま私ども考えておりますところは、実はもう少し前の段階でありまして、相当硫安——過燐酸も一時ございましたが、在庫数量がだんだんふえて参りまして、輸出もなかなか伸びない。そこで、肥料を購買する業者団体等相当の資金を融資しまして、それでもつて需要期需要に備えると同時に、メーカーの方の金融のカバーの措置を考慮したらどうか、こういつた案を考えておつたのでありますが、ただいまの情勢はそのときよりもつと深刻に実はなつて参つたような次第でございまして、その案に固執しませんで、ただいま申しましたような審議会、あるいは協議会といつたようなものができますれば、こういうところで案を練つていただきまして、でき得ればそういうところの結論に基いて事務的な処理をしたい、かように考えておる次第であります。
  15. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は局長さんにちよつとお伺いしたいのは、どうも農民方面意見によると、肥料単価には非常に疑問がある、私ども石炭について、西ドイツとこれを比べれば、大体三千円ぐらい高い、それから硫化鉱含有量見当からすると、これも相当開きがある、金利においても相当開きがありまするし、コークスの面においても開きがあるが、こういう開きと、わが国肥料工業の機械の能率並びに合理化の線を見て、農民諸君は、非常に肥料単価は安いのだけれども赤字赤字だといつおつて、実際は七百円ぐらいでできるのじやないかというような声もあがつておりますが、われわれが検討したところでは、日本肥料コスト相当にこれは割高なものである、かように見ておりますが、通産省からながめた肥料トン当り価格は、大体妥当なところは現在どういうところが、原価計算から行けばコストになるかという点を、ひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  16. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの、硫安肥料生産価格に対します御質問お答えいたします。御質問の中にもございましたように、現在の硫安工業は主体をガス法に置いておりまして、現在の生産ガス法が七七・六%、大体七七%を越えるものを——超重点的にガス法によりまして、電力に強く依存いたします電解法は、電力事情もございまして、能力に対しましては非常に下まわつておりますが、ただいまの七七・六%の残りの二二・四%が電解法によつておる次第でございます。そしてこのガス法生産コストの特に重要な部分を占めます原材料の点につきまして、西欧ないしはアメリカとの比較を一応申し上げますと、硫化鉱につきましては、国内の最も品質のいいといわれます棚原鉱山価格と、ドイツではスペインから硫化鉱を買つております関係で、スペイン硫化鉱輸出価格はわかりませんが、カナダが非常にこれと相類似した関係にございますので、カナダから日本がかつて輸入いたしましたときのFOD価格と、柵原価格と対比いたしますると、その値段の差はきわめて微量でございまして、品位の落ちます柵原以外のものにつきましては、日本側がやや割高と申し上げられるのであろうかと思いますが、柵原に関する限り、大体硫化鉱においては国際並価格だ、こう考えてよろしいのじやなかろうかと思います。従いまして次に最も重要な原料でございますコークス、これにつきまして、この原料でございます石炭価格を比較いたしますと、大体硫安トンに対しまして石炭は一トン——ちよつと上まわる関係もございますが、結論をはつきりいたします関係で、硫安トンに対し石炭トン、こういうようなぐあいに概論いたしますと、日本石炭価格は大体七千円から七千五百円見当と思うのでございます。もちろんコークス原料炭でございますので、国内におきましても優良な石炭であることは言うまでも、ございません。これに対します西独、あるいはアメリカ石炭価格は、三千円を下まわる価格でございます。このような状況からいたしますと、その石炭価格の相違からいたしまするコスト上の差というものが、すでに十ドルを越えるかとも思うのであります。その他電力等につきましては、これは自家、火力、水力その他の関係がございまして、アメリカあるいはドイツと比較いたしますると、日本側が高いということはございません。むしろ水力に関しては下まわつておるという状況でございます。以上硫安工業の今日の生産主力をなしますコークス法中心とするものからいたしますと、これを電解法数量的加重平均でもいたしますと、おおむねトン当り二万四千円見当に相なるのじやないかと考えております。これを、統制廃止の直後かと記憶いたしますが、硫安価格は約八百円を下まわる数字でございましたが、今日一袋九百円という建値を立てております。この間の値上りを、その原材料の値上りの面から想定いたしますと、原材料の面は五割、六割というような引上げになつておりますが、硫安価格については二割強かと思うのでございます。こういうような状況で、大体今日考えております安定帯価格の標準の価格は、おおむね妥当ではなかろうかというぐあいに私は考えております。
  17. 今澄勇

    今澄委員 大臣がお見えになりましたので、今まで私は化学工業、特に肥料について、政務次官並びに軽工業局長にお伺いをしたわけでございますが、単価の面を今いろいろ伺つたところ、大体日本肥料工業では、今日の原価計算でいつて二万四五千円ぐらいのところであろうという答弁を今聞いたところであります。そこで私は大臣にお伺いしたいのは、この際肥料工業のあり方については、抜本的な考慮をめぐらさなければならない重大な段階に来ておる、かように思います。今日微温的な措置を講じておいたのでは、将来の日本産業構造並びにわが国貿易国策の中心に大きな悔いを残すようなことになりはしないか。肥料の問題は私は使う農民の面からと、国の産業構造の面からと、二つ見なければなりませんが、常に消費者が消費するものの経済なり、それらのあり方を管理するという姿に邁進しますならば、これはおそらくは米を全国民が消費するからというて厚生省が米の生産にも関与するということになつて来ると大きな問題が出るように、農民が消費するからというて農民肥料——肥料工業全般に大きな行政的発言を漸次これは持つて参つたのでありますが、こうなつて来ると、私は日本産業中心であるところの通産省としては、わが国輸出工業並びに国内産業構造化学工業の将来等もにらみ合せた毅然たる態度が必要なのではないか。この問題は内閣としてもちろん大きく取上げて解決をする必要がありはしないか、さように私は思うのであります。そこで将来日本輸出貿易は軽工業中心——大蔵大臣産業構造も軽工業がいいと言つておりますが、そういうような姿で参るのか、それとも従来通り重化学工業中心として、東南アジアその他の軽工業の復活する輸出市場に対しては、重工業製品をもつて臨むのか、重工業で臨むとすれば、アンモニア系工業とソーダ工業しかないが、ソーダは輸出産業として大体やつて行けるかどうかということは、もう論ずるまでもなく、私は国内原料を持たない日本のソーダ工業というものが、大きく輸出産業で伸びようとは思わない、こう考えて来ると、輸出産業中心をなすアンモニア系の工業について、政府重化学工業産業構造の基礎に置き、しかもそれが輸出の中においても重点を占めるものとすれば、こういう化学工業の苦難な現状においては、大きな対策を示すべき必要がありはしないか、通産大臣はもと農林省関係もございましたので、ひとつあわせて御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今後の日本輸出産業の重点をどこに置くかという最初のお尋ねに対しまして、軽工業は御承知のごとく日本が国際的競争力を一番持つておるものでありまして、従つて日本繊維というものは相当多くの世界市場に雄飛することができたのでありますが、今澄さん御承知のごとく、最近は向うが制限するとかいろいろありまして、国際競争力を持ちつつ、だんだん不況にある状況は、御承知通りであります。今後それではどうかといいますと、やはり東南アジア方面におきましては、比較的軽工業が起りやすい。こういう事実というか、趨勢等から考えますると、軽工業に重点を置くという貿易政策のみでは足らないと思うのでありまして、従つてども東南アジア地方の開発その他について政策を進める上におきまして、重化学工業が今後きわめて重要なるフアクターになる、こういうふうに私ども考えておる点は、今澄さんとまつたく御同感であります。ところでそれならば日本肥料工業をどうするかという問題なのでありますが、これは御承知のように、大体今日本では、ごく大ざつぱに言いまして硫安工業が二百万トンくらいであります。国内で百六十万トン程度の消費ではないかと考えるのであります。従つて四十万トン程度輸出力を持つておるのであります。それではひとつこの輸出力をそぐことにしまして、二割でも減産することにいたしますると、国内生産価格は著しく上つて来る。こういうことにもなりまするし、従つてどもは何としても輸出をして参らなければならぬと思うのであります。もつと多額の輸出ができることになれば、それだけ日本硫安コストを下げますから、そういうふうに持つて参るべきであると思うのであります。しかし今一番日本の市場としておる東南ア方面で、入札をすると負けるのです。その原因はどこにあるかというと、何と申しましても一面では日本硫安が高い点にあります。しかし一部には船賃が安くなつて来まして、遠く西ヨーロツパから来るものがなお大きく対抗力を持つておるという点にあると思うのであります。船賃は、こういう状況は私は変態——少くともノーマルな状態ではない、こういうふうに考えるのであります。そこで大体船賃がノーマルな状態になつて来たときに、それでは日本硫安工業ドイツあたりと比べてどれだけ高いだろうかということになると、まず米ドルに直しまして十二、三ドル高いのじやないか。その十二、三ドルをどうして切下げを行つて行くか、そうして競争力を持つようにするか、こういうことが、今後課せられておる大きな硫安工業の課題ではないかと思うのであります。従いまして、それについて私どもは今いろいろ考えておる点は、今政務次官に伺いましたら、政務次官としてもお返事を申し上げたようにも聞きましたが、私どもといたしましては、設備近代化をひとつやる。設備近代化によつてどのくらい行けるかというと、大体約五ドル行けるのじやないかと思うのであります。それから電源開発に伴いまして、操業度がだんだんふえて参る。それによつてどれだけ行けるかというと、四ドルないし五ドル行けるのではないか。石炭鉱業合理化によりまして、これは値段によりますが、三ドル、あるいはうまく行けば五ドル見当行けるのではないか。硫安工業経営の改善、そんなところであるいは二、三ドル行けるのじやないか。そういうことを考えますると、大体これだけのことをやり遂げて行きますれば、国際競争力を持つように考えるのであります。但しこれは一ぺんにやれません。電力についても、そこで電源開発五箇年計画というものが早く軌道に乗つて来ぬと困るのであります。それからまた石炭鉱業にしましても、縦坑の開鑿、そういつたものが順調になつて来なければ困るのであります。そういうことをぜひいずれもあわせ行うことにしますれば、大体この見当で国際競争力を加えて来るように考えるのでありまして目下この硫安コスト引下げの目標に向つて進んでおる次第でございます。
  19. 今澄勇

    今澄委員 通産相の硫安工業に対する見解は、非常によくわかりました。第一点は、輸出産業として今後大きくこれを助成し、大きく維持する。そのコストの高いものはそういう方法で引下げるということで、化学工業を相かわらず重点的にとらえて行こうという政府の態度は、まことに私どもも妥当であると思います。しからばそれが実現するまでに、本年の八月から今日までに見られる急激な国際市場の下落から来る硫安国際価格低下というものは、日本農民をしてそれらの重圧をかぶせられてはかなわぬという要望がされて、通産大臣はこれに対して、これらの出血輸出分は農村の犠牲においてカバーするようなことは絶対しないというような答弁がされております。しからば硫安工業の各会社がこれらの出血分を全部背負うということになると、私は硫安工業の、濫掘とこれは同じような結果になつて来ると思う。それでは具体的に当面どういう対策をお持ちになつておるか、ひとつ聞きたいと思います。
  20. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは目下硫安製造会社の方におきまして、それぞれ自主的にどう持つて行くかということについて、相談をいたしておるようであります。たとえば一部は共同計算のもとに負担をわけ合うあるいは一部は一時それが買入れまして、そこで買つておいて、そして売つたものとの差額が出たときの勘定を、数年間、つまり長い年月の間に、これを負担をだんだんと償却して行くような建前をとるというような案が進行しておるようであります。あるいは事務的にはもつとほかにいい案があるかもしれません。それについてはあとから政府委員説明させますが、そんな案が進行しておるようであります。従つてまあ私どもとしましては、これらの考え方のうち、多少金融面とかその他でお手伝いのできるものはお手伝いをしてあげよう。あるいは租税面でも減免できる点にはお手伝いのできる点があるかもしれませんが、それはしてあげることにする。そんなようなことを実は考えておるのでありますが、これは今澄さんにはつきり申し上げておくように、春肥の価格にこれを織り込むようなことは絶対に同意しません。けれども承知のように、硫安価格というものは実は価格統制ができておるわけではございません。それで実情は、例の全購連その他がいわゆる安定帯価格というもので、両者の話合いをつけることになつておりますから、その点国際価格とにらみ合せて相当なところへおちつくのではないか、かように私ども実は考えております。これは率直なお答えです。
  21. 今澄勇

    今澄委員 それで大体硫安工業というものは、過燐酸その他いろいろ肥料があるけれども、アンモニアの含有量の上から行くと、その使用量から見ても、圧倒的だから、私は硫安工業はやはりこれはマル公制をどうしても復活した方がいいのではないかと思う。その理由は、イギリスも御承知のように硫安マル公システムになつてつて経営者に邦貨で三千円程度補給金が出されておつたが、本年六月からこの補給金は農家に切りかえて大体出されておる。ドイツを見ると、これも大体マル公で、邦貨に換算してはるかに多に一万五千五百円くらいな値段になつている。イタリアもマル公で、邦貨に換算して大体一万六千円くらい。ベルギーも四十五ドルというマル公がついている。諸外国の肥料工業は、いずれもマル公によつて農民の要望を達成し、かつその国の化学工業の維持をいたしておるのに、日本だけが今日自由販売にして、しかも話合いの中でこれを解決しようとしたところに、大きな矛盾があつたのではないか。この点について農林省局長から、肥料価格体系、並びに日本の今の打合せされている全購阪連との申合せの安定帯の値段で、今後スムーズに行けるのかどうか、あるいはこれに関するもつと具体的な政策の用意があれば、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  22. 小倉武一

    小倉政府委員 第一点は、硫安肥料の公定価格制度でございますが、統制価格が自由になりまして間もなくであり、硫安につきまして自由経済がどのような作用をするかといつたようなことにつきましてもまだ十分検討いたしておりませんので、現在すぐマル公制度を復活するということはただいま考えておりません。それならば価格制度についてどういうことを考えておるかということでございますが、ただいま御指摘のように、さしあたりといたしましては、これは業界ないし消費者の両方が価格をある程度協定いたしまして、これを行政庁がある程度仲介するといつたような形で持つて行くのが私はいいのではないかと思つております。もつともこういう状態がいつまで続き得るかということになりますと、これは御指摘のように疑問があるのであります。と申しますのは、輸出に向ける部分がだんだん想像以上になつて参つたわけであります。昨年、一昨年から比べますと、輸出量が相当の量になつておる。その輸出価格国内価格よりもまた相当開くということになりますと、国内価格につきまして、ただ業界だけが申合せをやつてそれを守つて行くといつたことも、実際問題としてなかなかむずかしいのではないか、こう実は思つておるのであります。そこでその点をどうするか、それならばすぐマル公になるかということになります。が、必ずしもそうでなくて、そこは先ほど申し上げましたような、ただ当事者だけでなくて、そこに第三者も入る、あるいは役所も入つて、いわば行政的な指導価格といつたようなことで当面やつて行くのがいいのではないか、かように存じておるのであります。
  23. 今澄勇

    今澄委員 そこで担当の局長から聞きたいのですが、もう一つ大臣に聞いておかなければならぬことは、イギリスの農民に対する補給金の三千円程度のものを考えてみると、私どもはやはり現在の経済機構の上において、公共的産業を国有国営的な一つの姿にして、それから消費者立場を守ることができなければ、ここに私企業の自由競争的な長所を利用して、コストを引下げるために大量生産をやつて、能率の増進と大量生産コストを引下げる、これから来る矛盾を補給金制度で補うという社会保障制度的な物の考え方が今の産業にも適用されてしかるべきではないか。日本の産金鉱業につきましても、あるいはまたわが国の今日の肥料工業についても、イギリスにおいてかような例があるとすれば、政府はこの際、肥料工業国際価格が一万五千円として、日本価格が二万四千円とすれば、この間に八、九千円開きがありますが、これをもつと縮める、そうしてこれらの点は合理化によつて切り詰められるところが幾ら幾らという厳重な計算を各肥料会社に対して政府はやつて、そして何がしかこれに対する補給金的な政策を打出すか、あるいは財政投資をして設備近代化を思い切りやるか、あるいは単価の下るものはそれに対して何らかの補給金をつけるということなくしては、今日の肥料工業が国際的のこの模様のもとにおいて太刀打ちをして長く続いて行けるかどうか、私はまことに疑問であると思うが、これらの抜本的な政策について、通産大臣は何かお考えはございませんか。
  24. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今いろいろお話も、ございましたが、私どもとしてはこれを国営にするといつたような考えは持つておりません。しかしながらできるだけ安い肥料、しかも国際的競争力を持つ硫安価格が製造価格になることを希望しますので、その点に対する努力は今後も十分続けて参りたいと存じます。なお今澄さんも御承知のごとく、ほんの数箇月前までは日本硫安も決して国際的に高くなかつたような事情もありますので、これは一時的に今のような現象を来しておる、あるいは目先を見ますと、なお相当そういうふうにも考られますが、これがさらに数年でも続きそうな模様が見えますれば、そのときは別に対策考える必要があると存じますけれども、ただいまのところはこれを今のような方針のもとに指導して参つて、国際競争力をつけるというところに持つて参りたい、こういう考え方をしておるのであります。
  25. 今澄勇

    今澄委員 もう一つ私は大臣にお聞きしたいことがある。なるほど紡績はアメリカから三百六十円という為替の割で原料の綿花を仕入れておつて、そうしてその綿花からできた製品をインフレ傾向にある東南アジアに出しておるのでありますから、現実の今のドルのやみ相場をわれわれが五百二、三十円と算定をしてみると、こういうドル相場の高騰、いわば円貨の下落がもたらしておる実際経済市場における利潤、そしてこれらの軽工業において輸出の採算が大体合うという現実からするならば、私は見方を為替操作の上に求めて、日本の二万四千円の硫安といえども、これの原料がそういうふうな三百六十円の割で入つて、しかも三百六十円の割で出るならば、十分それは引合うのではないか。しかるにその原料国内生産のものばかりであるというところに問題があり、将来化学工業中心にして日本貿易を打立てようという政策を、当初述べられたように、政府が根本的に持つておるものとするならば、かかる為替操作の上から来る大きな打撃で今日悩んでおるところの肥料工業のこの現状からは、将来といえども日本の円貨がそう強まるとは私は思われない。私は新しい日本の経済政策が打出して来る日本の円貨の趨勢というものについては、どちらかといえば、これはやはり下落する態勢をたどるであろうと思うし、国際情勢その他特需の情勢から見ても、円貨の強材料はあまりない。さすればこれらの為替状況から勘案しても、政府としては恒久的な対策をこれらの化学工業輸出産業に対して持たなければならぬということになるが、為替から見たそういう操作についての対策は何らか政府としてないかどうか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  26. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 日本が一ドル三百六十円の為替レートをかえるというわけには参りません。国際信義の上からも、また国際信用の上から見ても、どうしても為替相場は堅持しなければならぬと存じます。従いまして、私どもとしては今お示しのようなやみ相場のような数字が出る点があることもございましようが、しかしあくまで為替相場を堅持しつつ、日本の国際競争力をそこに持つて行くように努めたい。今澄さん御承知のように、イギリスも昨年初めくらいまでは、ポンドは実勢に比べれば公定相場は、これはやみですから一割五分とまでは行かないかもしれませんが、一割から一割五分くらいの差があつたのでありますが、ああやつて耐乏生活に努め、またいろいろ適切な政策をとりました結果、今日はたれもポンドが切下げになるだろうというようなポンドに対する不安を持たなくなつて参りました。私どももこの例にならつて日本もこの為替相場をぜひ堅持しつつ、日本産業に国際競争力を持たせるようにあらゆる努力をいたしたいと考えている次第であります。
  27. 今澄勇

    今澄委員 今の御答弁は私が質問した焦点からはずれておりますけれども通産省もいろいろお立場がありましようから私もあまり追究しませんが、要は軽工業輸出不振である。しかしながらその軽工業産業計画的ないわゆる輸出市場との打合せをしなければ、向うが軽工業繊維をつくつているから輸出不振なのだ。そうすれば化学工業品を出すのだが、化学工業は軽工業のような材料の面における為替の含みというもがないからこんなに苦しいのだ。そうすれば重工業を伸ばすためには、為替の面から来るさような点は国が一時これを助成をしてこれらの発展を期するということでなければ、日本化学工業の将来の発展はあり得ないというのが私の質問の要旨でございます。この点はひとつ十分御検討願つて、一時的な操作にしろこれは講じなければなるまい。  なおもう一つ私が御質問申し上げたいのは、これは過ぐる第十二国会で、私は時の通産大臣高橋さんにるる御説明をしておいたと思うのですが、日本輸出市場というのは、軽工業がだんだん締め出しを食い、スターリング・ブロツクからの許可品目がだんだんとふえるし、いろいろ制限されるとすれば、東南アジア並びに中共、朝鮮、台湾等の市場に日本肥料が早く入り込んで、そして日本肥料の信用とマークをなれさせるということが必要ではないか。肥料が純然たる農業工業で、日本国内農業に対する供給だけで日本肥料はけつこうであるというなら、これらの市場を捨てて、肥料は国家的な支持のもとに、日本国内肥料だけを今の操作により生産をして、そして外国からの肥料を押えて、日本肥料工業を守るという政策をとるべきである。日本輸出工業としての肥料工業というなら、こういう農民の要望を満たしながら、かつこれらの海外市場を押えておかなければ、将来の肥料輸出については、大きなほぞをかむことがあるであろう。現にドイツにおいても肥料は安くなつておる。台湾にも肥料工場ができたという情勢を私が申し上げておいたところ、善処するということでございましたが、遂にそれは善処にならないで、暴落した肥料の国際相場のもとに、日本肥料工業がかなえの軽重を問われるという段階に実はなつておるのであります。だから私どもは、もし通産省が、肥料工業に対する確たる見通しが、国家的見地において立てられるものとすれば、先般私が通産大臣に御希望申し上げたように、農林省の意向もあるでしよう。貿易に関しては外務省の意向もあるでしよう。金については大蔵省の見解もあるでしようが、日本産業中心的な役所であるところの通産省が、閣議においてもどこにおいても、他省の要望によつて基本的な日本の商工行政の大綱が立たない。そしてしかもそれが常に妥協的であるというところに、私は将来の日本産業の構造というものを、実は大きく憂えるものであります。特需なら特需、軍需工業なら軍需工業というものが、大きな期待を持てない日本の現在の段階においては、今のソーダについても、原塩の問題その他の政策が必要であり、アンモニア工業についても、抜本塞源的な対策が必要なのであつて、今大臣が言われるように、何とか為替もそのうちもどるであろう。肥料の国際相場もそのうちまた上るであろうというようなことでは、現在の肥料に関する限りは、打開策はおそらくなかなかなく、雑なところまでこれは参るのではないかと、かように思いますので、通産当局はひとつこれらの問題に対する基本的な日本貿易政策、それから産業構造等の見地から、至急やはり対策を打ち出されることを私は希望いたします。  なお農林省局長にひとつお願いしたいのは、この際これだけ輸出しておる日本肥料について、輸入を懇請すべきであるというような輿論も一部には出ておるが、農林省はもし国際価格をうんと下まわる安い肥料が出るとすれば、輸入をしてこれをひとつ農民に配るというような見解があるのかどうか、この際ひとつこれも聞いておきたいと思います。
  28. 小倉武一

    小倉政府委員 御指摘のように、国際価格がそんなに安いならば、この際輸入をしたらどうかといつたようなことを言う向きがございます。但し農林省といたしまして、硫安につきまして外肥輸入するという方策でもつて、問題を解決するという見解は持つておりません。
  29. 今澄勇

    今澄委員 そこで、通産大臣お聞きのように、肥料出血輸出をやつて国際市場をとらなければならぬというときに、肥料輸入をしようという見解もある。これは農林委員会の速記録に明らかであります。こういう現状は、当通産委員会としては、通産省がいかに一貫した政策が立つておらないかということの弊害であると思う。いかに日本輸出貿易の根本的な対策が立つておらないかということの結論であるということを、御指摘しなければならぬわけであります。幸いにして農林省はかような肥料輸入して、日本農民に提供するような考えはないというお話でございますが、私どもはこれらの政策については、どうか政府は一貫した一つの政策の上に立つて日本輸出工業の基礎と、そして農民に与える肥料相場の問題については、もう少し確固とした御見解をこの際お伺いできれば伺つておかないと、いろいろ農林委員会でも議論が出ておる通り、率直に申し上げて非常に大きな困難があるのじやないかと思うので、通産大臣の御見解をできればもう一度聞いておきたいと思います。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほども申し上げました通り、やはり私ども日本肥料工業というものは、国内需要をまかなうのみならず、東南アジア方面に対する一つ輸出産業としても、これは十分取扱つて行かなければならない、かように考えておるのでありまして、この点で肥料工業の確立ということは、一番大きく私ども肥料政策としては打出さなければならぬ問題であると考えておるのであります。ところでこれは今澄委員も知つておられる通り、今は一時的な過剰状態でかようなことが起つておるのであります。その過剰なときに行われる——多分今澄さんの言われる意味は、こういうときには統制でもやつたらどうかという強い意味じやないかと思いますが、過剰のときに行われる統制というものは、大体自主的統制であります。それから物が足らぬときには、これは公平な分配等を必要としますので、自然いわゆる官僚統制といいますか、政府統制が起つて来るのでありますが、過剰な場合における物の統制は、大体自主的統制というのが、今までのやり来りの原則となつております。従つてどもは現在でも、業者の自主的統制のもとに、いわゆる出血輸出と申しましようか、輸出その他の操作が行われることを実は希望しておるのであります。しかしそれが農民の肩にふりかかつて来ると困るから、過日来申し上げた通り、それによつて春肥等の価格を引上げることをしてはいかぬということを申しておるのでありますが、今後いろいろな政策を進めて参りまして、一時的な——これは私はそうノーマルな状態とは考えておりませんので、先ほど申しましたように、各方面からの政策を進めて参りますれば、やはり肥料工業としての確立は期し得られる、かように考えている次第であります。なおそれでも、いわゆる政府による統制を必要といたしますならば、これはそのときにさらにあらためて考えたい、かように考えております。
  31. 今澄勇

    今澄委員 今の大臣答弁で、大体当面の模様は、自主的な統制によつて切り抜けるということですが、私ども共販会社的な一つ統制方式を、過剰であるところの今日の肥料については打出して進んで行くということについてはいいと思います。だがしかしながら、根本的な問題は、為替の面から受ける制約、あるいは国内原料石炭その他から受けるコスト高というようないろいろの問題について、政府は恒久的な対策とともに、応急的処置をとる必要はないか。これが私のねらわんとする要旨でありまして、少くともこの際産金鉱業なり、あるいは肥料工業なり、あるいは造船工業なりといつたような日本の基礎産業で、外国の工業に太刀打ちをするためには、何らかの支えがいるようなこれらのものに対しては、財政投資の具体的な構想なり、あるいはこれに対する国家の補助的な政策なりというものを至急明らかにして、国民の前に示す必要があるのではないか、かように思います。  もう一つ過燐酸、石灰窒素等いろいろありますが、石灰窒素だけお伺いしておきます。これは担当の局長さんにお願いしますが、石灰窒素も非常に最近滞貨が多くて、硫安の滞貨による圧力で、これまた非常な苦境であるが、これらの石灰窒素についても五万ないし七万程度輸出をこの際考えるということは、時宜に適したことではないか。あるいはそういうことは将来の日本国内石灰窒素に大きな影響を与えるかどうか。これらの石灰窒素に対する通産省生産の見通し、並びに農林当局の配給に対する御見解をこの際承つておきたいと思います。
  32. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 石灰窒素につきましては、硫安に対します関係と、基本的な考え方はやや異なりまして、石灰窒素については、終戦この方国内農民のこれに対する需要、あるいはこれの取扱い等について、ようやく普及の段階に入りました肥料でございまして、逐次国内需要増加に対応いたしまして、石灰窒素の増産を、電力の供給の許す限りこの特別の農村におきます無硫酸系肥料と申しますか、新肥料生産増強という線で進んで参りますが、これが硫酸と異なる需要の点は、輸出産業として伸ばす段階にまで行つておらない。要するに国内需要をまずこの際充足して、農村におきます肥料需要に応じて参るというのが基本の線でございます。従来考えられておりました石灰窒素需要量は、今日年によつて逐次ふえて参つておりまするが、昨肥料年度は大体四十万トン程度と心得ております。本肥料年度に入りまして、特に農林省の強い御要望がございまして、五十万トン生産計画を立てておるのでございます。しかしこれは国内の耕土培養その他積極的に農林側で進めております政策とタイアツプいたしまして、この五十万トンはさらに上まわるのではないか。たつての御要望もございまするし、同時にこの新肥料は御承知通り農民がなれるという点が特に重要でございますから、そういつた面からいたしまして、今日の生産状況、先ほど申しました五十万トンに対しまして、約二万八千トン程度生産計画を上まわつておりますが、石灰窒素については御承知のように電力の減退がきわめて高いのでございまして、今日の電力事情等を勘案いたしますと、この程度生産状況では、輸出に対しまして、硫安と同様、あるいはそれまで遠く及びませんが、輸出一つの重点を持たせて政策の転換をいたしてはどうかという御意見に承るのでありますが、今日その段階にないと考えております。
  33. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいま軽工業局長からお話があつた通りでありまして、特別補足する必要はないかと思いまするが、御指摘のように硫安の滞貨の影響も多かろうと思います。それから一つ石灰窒素は元肥でございますので、一般でも今ごろは滞貨がふえる事情でありますが、大体五十万トンというのは本肥料年度需要される見込みでございますので、それ以上相当生産が上るということがありますれば、これは当然考えられると思いますが、ただいまのところ特に石灰窒素輸出ということは考えておらない次第でございます。
  34. 今澄勇

    今澄委員 これで大体私の質問を終ります。ただ政府へ希望しておくことは、今後肥料についての大きな配給部面に関する施策についても、政府が計画してやる場合においては、当通産委員会にも一応お諮りを願いたい。なお議員側から肥料需給調整法その他これに類する法律ができる際においては、通産、農林両委員会合同審査の上で、これらの問題を国策的な見地から善処して行くということを委員長に要望いたしまして、質問を終ります。
  35. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 私はただ一言大臣に伺いたい。大臣の御答弁の中で、設備近代化しなければならぬ、あるいは経営合理化というような施策も今後将来に向つてつて行くという行き方については了解ができるのですが、海外の値下り、すなわち運賃まで入れたものが変態的な値下りであり、一時的な値下りだというお話があつたのでありますが、変態的、一時的な値下りだということについては、海外の情勢のどういうところからそのようにお答えになられるのか、お伺いしたいと思います。
  36. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はさつきそう申しませんので、実は今は向うが四十五ドルならこちらが六十五ドルくらいになりますので、二十ドルの開きがある。その中には運賃も含まれておるが、運賃は変態的だ、一時的だと申したのであります。従つて私が申しましたのは、十三ドルぐらいのものを日本の方でコスト切下げに向つてつて行くと国際競争力を持つだろう、こういうように申し上げたのであります。それは今澄さんに申し上げたのでありますから、よくおわかりだと思います。決してこれは一時的、変態的なものとは申し上げない。それは運賃だけの点でありますから、それはそういうように御了承願いたい。
  37. 坪川信三

    坪川委員長 肥料に関しまして他に御質疑はありませんか。——なければ、次に電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案を議題といたし、質疑の続行をいたします。
  38. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大臣には二日間にわたつて電力事業の今後の公営事業としてのあり方についてお尋ねをしたのでありますけれども、どうもその点が、自由党と社会党の政策の相違か、大臣と私の思想的な相違か、どうもまことにこれははつきりいたしませんが、これは後日討論の際に述べることにいたします。  そこで私は公益事業局長にお伺いをするのでありますが、御承知のように電産ストが長く続いて、それぞれ需用者が深刻に困つておりますところから、保安用の電力とはどんなものであるかという点に相当議論が起つて来ておりまして、解釈が明らかにされておりません。さらにまた法律的根拠は何によつてつておられるのかということも明らかになつておりませんので、この点についてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  39. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまお尋ねのいわゆる保安用電力という問題でございますが、これはお尋ねのうちあとの方にございましたように法的根拠というものは、別に法律にきまつているとかいうような意味での根拠はございません。ただ普通に保安電力と称しておりますのは、生産の方におきまして、電力の供給を停止いたしますと、工場の設備に損害を生ずるとかいうような趣旨のものを言つておるわけでありまして、どの限界までが保安電力であり、それを越えた部分が保安電力でないというのは、必ずしも明確ではございません。これは個々の場合によつてもちろん違いまして、厳密に言いますれば、その電気の供給を切り得る最小限度以上に食い込んで行きますと、設備等に非常に重大な影響を与えるというところが最小限度の保安電力だろうと思います。それからもう少し広く言いまして、少くとも突発的に切られると生産上非常に大きな損失を与えるというようなところまでのものを保安と称しておる場合もあるようでございます。現に今までの争議におきまして、保安電力は原則として切つておりません。これは専用線がそれぞれございますので、従来の停電ストの場合の実例を見ましても、それらの工場に対しましては、最低限度まで使用を抑制してやつてくれということでやつておりまして、その限界は今のところ必ずしも明確でないようでございますが、個々の工場につきましては、大体ここが最小限度——たとえば昭和電工で申しますと、三万キロ以上は切れない、これ以上切ると非常に問題が起るというようなことで、個々の工場につきましては、おのずから当事者間に一つの限界点がありますが、一般的に見まして、はつきりした根拠はないのであります。
  40. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 局長の方でもその点について明確でないようでありますが、それだけに、今日では非常に不公平であるということが論議をされております。今後そういう不公平の点についてはどのようにして明らかにされるつもりであるか。あるいはまた法的根拠をどういうようなところに定めようとされるのか。そういう点はやはり明らかにされなければならぬと思うのでございます。たとえば最近論ぜられておるのは、保安電力を持つておるところはよろしいが、持つておらないB級というかC級というか、そういうところの工場などでは、全生産のわずか七%ぐらいしか電力生産者としては使つておらないのに、それを切られたために九三%の生産は休んで損害を受けてしまわなければならない。こういう点で相当不平、不満があります。こういう点などがありますから、やはり今後の処置としてどういうふうにされるかということを一応明らかにしていただきたい。
  41. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまのお尋ねの点でありまするが、保安電力のありますところと保安電力のない工場におきましては、確かに従来の例を見ましても均衡はとれておりません。と申しますのは、保安電力がありますもので一本の専門線を全部切ることができません関係から、今までのストにおきましても、保安電力のある工場については抑制を頼んでおるような状況であります。ただ保安電力の抑制を依頼いたしましても、まつたくこれは当事者間の自由意思で抑制してくれということになりますので、当事者間で了解のついております場合におきましても、必ずしも保安電力が抑制されていないという実例が間々ありますので、お話のように非常に不公平になる場合があります。その場合に電力の供給力が非常に少く、ことに一般線はぜひ確保するという方針の場合には、どうしても保安電力ぎりぎりまで抑制してもらわぬと、さような措置ができませんので、一時的にごく短時間、大して設備に被害を与えない範囲におきまして警告的な停電をやつて、保安電力まで抑制するという協力を求めている事例もございます。ただ何と申しましても、保安電力まで下げましても、生産がまつたくなくなることはございません。保安電力の範囲内におきましてもある程度生産か行われますので、さような意味におきまして、まつたく保安電力がない工場と保安電力のある工場におきましては、その当該工場が受けます経済的な打撃というものは、どうしても多少のアンバランスが出ることはどうもやむを得ないと思います。ただ御指摘のように、今までの実際の例を見ておりますと、保安電力のある工場は保安電力の最小限度以上を使うという例が間々ございますので、保安電力の限界を明確にするというような点は、いろいろ争議等でも問題になり得るかと思いまするが、現在までのところ、当事者間に保安電力の限界が問題になりまして、トラブルが起きているという事例は実は私は聞いておりません。この問題は個々の工場あるいは生産関係によつてまちまちでございまして、私の現在の考えといたしましては、その工場の最低限度は大体ここまでだ、いかなる場合でもこれ以上を切ることは困るというように、個別的に当事者間の話合いで具体的にきめていただいたらいかがか、これはなかなかむずかしいとは思うが、個々の工場については当事者間の話合いで私はきまることと思つております。現在のところさような方法がとられておるというように考えております。
  42. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 そうすると、今後そういう点を法的に定めるということでなくて、電力会社と需用者との間に契約の上で定めたらうまく行く、こういうようなお考えで、監督官庁としてはこの点に対して深入りをしない、こういうお考えでありますか。
  43. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 これは当事者間で契約ということになりますか、当事者間の了解ということになりますか、そういうことで私は具体的に今のところ問題なく行くだろうと考えております。従つて特別に問題が起らなければ、当事者間の話合いできめて行つてもらつて適当だろうと思います。
  44. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 そういうお考えでありますと、うまく行かないということを申し上げなければならぬのであります。局長もすでに十分知つておられる通りでありますが、ストにあらざるときでも低い電圧であるとか、あるいは低いサイクルである、こういうものについての監督、取締りの方法を従来どういうようにしておやりになつておつたか、また今後こういう点をどういうふうに立法化してやろうとされるか、こういう点がからまつて来るわけでございます。いわゆる公益事業というものは、国家産業、国民生活にきわめて重大な関係を持ちますので、こういうものはごまかしちやならぬ。たとえば度量衡のようなものをごまかせば、これはすぐ罰を食うのでございます。ところが電力の方だけは名は公益事業といいながら、低電圧、低サイクルあるいは電力会社がかつてに不都合をしても、これらに対して何ら監督官庁から取締る、そうして需用者を保護するものがない。それを私契約に今後もまかしておくのであるということであれば、今までの多くの矛盾、間違いというものが改まることなく、電力会社が一方的に保護され、そのまま継続するということになる。これでははなはだ片手落ちであると思うが、こういう点を公平にお考えになつておるかどうかを明らかにしてもらいたい。
  45. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまお尋ねが、ございましたサイクルあるいは電圧の問題は、ちよつと保安電力と違う問題ですが、その点お答えいたします。保安電力につきましては、たとえば今のような電気の供給停止をする場合に、最低限度どこまで以上切るかという問題でございます。それから今お話がございました電圧、サイクルの問題は、一応これとはまた別の問題で、今御指摘ございましたように、電圧、それからサイクルにつきましては、現在法的にそれを電力会社に義務づけておる法規はございません。それでこれは確かに御指摘のように、電力会社の公益性にかんがみ、またサービスという点からいつて、不十分だと私は考えております。かようにそうした法的根拠が現在ないわけでありますが、どうして今の公共事業令等においてさような根拠法規がないかという点は、私は詳しくは知りませんが、私の承知しておる範囲内におきましては、現在あるいはその公共事業令制定当時のような電力事情下におきまして、非常に需給のアンバランスがひどいために、間々電圧あるいはサイクルが下るというようなことは、実際問題としてやむを得ないじやないかという考えからしまして、法的にきちつと義務づけなかつたというふうに私は聞いております。今のような状況で、ことに渇水期等で非常に電力の需給が逼迫いたしますと、電圧が下る、サイクルが下るということは、まつたく故意でなくて事実上起るという可能性は確かにあると思いますが、それにいたしましても、ある程度の幅を設けて義務を課するという考え方も成り立ち得ると思いますので、その点は至急に再検討いたしまして、今お示しのように需用者の保護をはかるような措置を講じたいと考えております。
  46. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 その点については、今後の立法化の上に十分需用者の保障というか保護を認めることを考慮するというような答弁でございますから、そういう点についてはひとつ熱心にお考えをいただきたいと思います。  それからさらにお伺いしたいのは、地域独占の可否の問題、あるいはこの復元の問題、火水力の調整金制度の延長の可否の問題、こういう問題について明らかにしていただきたいと思います。
  47. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまお尋ねの問題はいずれも非常に大きな問題でございますので、法律の改正の審議会ができましたあかつきには、各方面、ことに需用者でございますとか、あるいは学識経験者とか、いわゆる第三者的な立場の方の御意見等十分参酌して決定いたしたいと考えております。第一点の電力供給区域の独占の問題でございますが、御承知のように現在は独占ということになつております。これは公益事業の事業者の運営が非常にうまく行つておりますれば、独占でありましても弊害がないということは理論的には成り立つかと思いまするが、やはりある程度競争を導入したらどうかという意見もありますので、これをまつたく供給を自由にしてしまう、昔に行われましたように、数社の電力会社が大規模な競争をやるというようなことは、現在の日本状況でなかなか認めがたいのではないかと考えております。しかしながら御承知のように、今、電力開発をしておりますのは公営の電力開発相当多くございまして、この方面からも独占の弊害を認めてくれという希望がございますが、その辺の問題につきましては、今後われわれの方としても十分検討いたしたいと思うし、審議会でも十分御意見を承つた上決定いたしたいと考えております。  そのほかの水火力調整金制度をどうするかという問題につきましても、先般ちよつと私個人的な意見を申し上げましたが、これもいろいろ非常に問題でございまして、これらの点については何も今の制度がそのままいいんだというふうにも考えておりませんので、今後十分再検討いたしたいと考えております。
  48. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 御答弁のように、こうした数々の今後残された重大な問題については、そうした審議会等の専門権威者の意見を聞いてということでございますから、私どもも十分私ども意見を申し述べておいて、法案審議の資料にしてもらいたいと思つております。  次にお伺いしたいのは、この九分割のときに、政府側は分割するごとによつて外資導入が円滑に行くのだということを相当強調されておるのでありますが、その後の電力開発用の外資導入の状況と今後の見通し、こういう点について具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  49. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電源開発の問題につきまして外資導入をいたしたいという考え方から、ちようどワールド・バンクのガーナー総裁が見えておるので、過日来数回お目にかかりましていろいろお話をし、また説明も十分に申し上げたのであります。今、希望しておりまするのは、電源開発で大体三億二千万ドルほどでありますが、これはいわゆる電源開発五箇年計画をやつて参りますのに、財政投資とか一般の資金とかいうもの以外に、そういうものを必要とする点からお話をしておるのであります。これが見通しについて申しますると、昭和三十二年までにはこれができ上ることによつて日本産業が、たとえば鉱工業生産で申しますると、昭和九—十一年を標準にしまして一七〇ぐらいに持つて行く、それから国民所得の方も大体二割ぐらい増加する、また貿易その他についてもみな増加する、こういう案になつておりまするが、そんなぐあいに持つて参りたいというので話をしております。向うの方でも説明は一応わかる、しかしながら、率直に申し上げておきますが、日本の現在の段階では、少し金額が多くないかというような話がありました。ワールド・バンクとしては、二十八箇国に対して、これまで十五億ドルしか金を出していない。日本電源開発のために三億二千万ドルというのは少し大きいように思う。それならどれくらいがモデレートと考えられるかという話に対しては、自分は調べに来たのであつて金を貸しに来たのではないから、その答弁は差控えたい、しかし、できるだけのことはしたいと思つておるというような話でございました。これは私が御説明するまでもなく、すべての計画がそういうふうになつておるのでありましてそのうち幾つかを取上げて重点的にやるとすれば、もう少し金額も少くて済むことに相なりまするので、先方の意見等も考えまして、またこちらの方でも大体可能と思われるものに圧縮ができますればそれを圧縮して外資導入に努めたいものだと考えておる次第であります。ただいまのところは、まだ私としましては二回、事務当局としても数回向うに御説明申し上げた程度でありまして、話が固まるまでは参つておりません。けれども向うの意向も大体わかりましたから、これに基いて、今後具体的に話を進めて参りたいと考えておる次第であります。
  50. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 外資導入が敗戦日本産業経済の再建をはかる上に非常に重要な意義を持つということは申し上げるまでもないのでありますが、国民が危惧するのは、外資導入の条件がどうであるか、導入されることによつて、こういう基幹産業というか、そういうものの実権が強く握られるということになれば、経済支配を受けるような状態が起つて来やせぬか、従つてそれから上る利益などもつて行かれるという状態が当然起つて来やせぬか、外資導入に対する条件の問題で相当危惧するのでありますが、通産大臣はそれらに対する先方の条件というか、もちろんまだ具体的のものはおわかりにならないかもしれませんが、大体においで日本が外資導入をする場合、この程度の条件はつけなければならないであろう。あるいはまた先方はどういう条件を持つて来るだろうという、そういう条件の問題についてお伺いしたいのであります。
  51. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は、まだそういう条件というところまでには入つておりませんが、しかし私どものこの間申し上げておるのは金を借りたいというのでありまして、事業に対する向うの支配権の問題とか、今伊藤さん御懸念になつたような点は、私どもは何も懸念なしというふうに考えておるのであります。ただ、話はまだ進めて参つておりませんが、ちよつと話のうちに一つ出たのは、日本では金利は非常に安いように思つているが、ワールド・バンクでもやはり五分くらいになるというような話はありました。そういうような点はありましたが、各種のこまかい条件等については、まだ何も話は進めておりません。従いまして、今後こちらから提出しました資料その他に基いて向うも考えて参りましようし、こちらの方も、それに基いて話をだんだん具体的にして参るのでありますから、まだ日にちは相当かかるであろうと実は考えております。
  52. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 これは希望になりますが、外資の入つて来るのはけつこうであるが、それによつてのど首をあまり締められないようにひとつ御注意願いたい。  それからお伺いしたいのは、電源開発会社のその後の状況というか、そういう点について伺いたいのであります。
  53. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまのお尋ねの点は、できれば資料にして、この次の委員会までに御配付申し上げてもけつこうでありますが、大体を申し上げますと、開発会社は九月十六日に設立登記をして発足いたしております。それでまず陣容の点を申し上げますると——これは大体十一月末ということでお聞き取りを願いたいと思いますが、役員としては七人でございます。総裁、副総裁が各一人、理事三人、監事二人ということで七人。現在までの職員の合計が百三十人くらいおります。かようなことで現在仕事をやつておるわけでありますが、資金の方の問題といたしましては、御承知のように当初の株式の払込みが五十億でございます。この十一月末で締め切りまして、利息等が約一千二百万円でございます。それが財源でございます。現在までに支出をいたしました数字は約四億円でございます。そのうちおもなものは工事関係で約三億六千万円でございます。このうち大口のものは東北にございます猿ケ石、胆沢の開発工事、この二箇地点でございますが、これは従来北上川は岩手県でやつておりましたが、その電力分担分を従来岩手県が約三億立てかえておりましたのを、今度引継ぎましたので、それを払いましたのが三億であります。約三億六千万円のうち三億は岩手県に支払つておるわけであります。それ以外に糖平等につきましては、一千三百万円、あるいは四百万円程度の金を払つておるのが現状であります。開発会社として開発することに決定いたしました地点は、北海道の十勝川の糖平でございます。それからもう一つ石狩川の幾春別、それから北上川、これは猿ケ石と胆沢の二箇所の、ただいま申しました点であります。それから関西の方に参りまして庄川、西吉野の十津川、それから天龍川というような地点を開発することに決定になつておりまして、これらについてはすでに現地に建設事務所の設置をおおむね終つております。今終つておりませんのは、最近十一月の末に決定をいたしました石狩川と、天龍川のうち、秋葉地点というのがございますが、この二箇地点は目下準備をしておりますが、それ以外の地点につきましては、すでに現場に建設事務所を設置いたしまして、それぞれ準備工事を進めておるという状況でございます。
  54. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 この点は非常に厖大な将来に対する事業でもありますから、次会までに資料を御提出願いたいと思います。  さらに関連をいたしますが、今後この開発会社を発展さすためにどういうように指示指導して行こうというお考えを持つておられるか、そういう点に対して根本方針についてひとつお伺いしたいと思います。
  55. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 どうも御質問の趣旨が十分にのみ込めませんので、御質問の趣旨に合いませんでしたらあらためて御質問いただきたいと思いますが、ただいま開発会社は先ほど申しましたようなことで発足いたしておりますが、さらに今後開発すべき地点を追加する予定でございます。これは御承知のように経済審議庁にございます電源開発調整審議会の決定をまつてこの開発地点がきまるわけでありますが、今まできまりました以上に、さらに何箇地点になりますか、まだ決定いたしておりませんが、ただいま至急にそれの追加を経済審議庁中心になつて打合せ中でございまして、今後さらに開発地点を追加するということに相なろうかと思います。なお職員等につきましても、現在百三十人と申しましたが、これはすでに現在きまつております地点の開発事業にも少いのでございまして、現在のところこの三月末までに三百数十人くらいまでに増員する予定を立てております。なおこれらの点につきましては、今後の開発状況によつて多少の変更なり、あるいは将来もつとふえるかと思いますが、今のところ三百数十人くらいのところまで一応順次人員の拡張をやつて参りたいと考えております。それから来年度どの程度の工事をやるかということは目下計数等を整理いたしております。先ほど申しましたように、今後の開発地点をどう決定するかによりまして多少異なりますが、今大体私ども見当といたしましては、来年度の所要資金につきましては、大体二百五十億円前後になろうかと考えております。御質問の要点と離れておるかとも思いますが、一応お答え申し上げます。
  56. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 私はもう少し具体的に申せばよかつたと思うのでありますが、お尋ねしようといたしておりました点は、電源開発調整審議会のその後の運用状況と、今後の開発の基礎計画というか、そういうような点についてお伺いしておるのでございます。この点につきましても、なお御答弁だけで十分でないという点もありましようから、そうした点に対する書類等の資料ができましたならば、これもあわせて御提出を願いたいと思います。
  57. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまの御要求の資料は、開発会社の分、なお今後の一応の案でございますが、五箇年計画といわれておるようなものもございますので、あわせて資料として、次の会までに間に合わすようにいたしたいと思います。
  58. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 他に同僚の各位からもそれぞれ質問される点があるようでございますので、私だけが時間をあまりとりましてもどうかと思いますから、いま一点だけお尋ねすることにきようはいたします。  それは、今度の炭労ストによる今後のガスの供給、それから火力用石炭の需給の見通し——先般来から通産省の方では、外国石炭を入れて補いをするつもりだ、あるいは五万トン、七万トン入れるというようなことなどもしばしば聞いておるのでありますが、そういう点についてどのように扱われておるかという点をひとつお尋ねいたします。
  59. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまのお尋ねガスにつきましては、炭労のストが長期化いたしまして、御承知のように各地で相当制限いたしておる状況でございます。現在、御承知のように東京ガスでは、朝、昼、晩、家庭等で最もガスを使います時間に、六時間の供給をいたしております。関西におきましては、午前中の制限をたしか四時間か五時間やつておると思います。名古屋におきましては、二時間半の制限をいたしております。この三つの都市が、ガスとしては七割くらいを占めると思いますが、一番大きなところでありまして、その他の地方におきましても、全国で七十余のガス会社がございますが、時間供給をしておるところは、ほかに十県近くございます。一番問題の大きな東京、大阪、名古屋について申し上げますと、まず第一に、できるだけ国内におきまする原料炭を、今炭労ストから除外されておる山から手に入れるとともに、輸入炭を先般来手配して、逐次実際の契約も進んでおりまして、第一に十二万トンの炭を入れることにし、次に第二に十七万トンの手配を済ましております。さような状況で、現在のところ東京におきましては、現在以上に制限を強化しないで切り抜けられる見込みであります。ことに年末年始にかけては数日に限りまして完全供給をするということを考えておりまして、なお現在以上の制限強化はしないで切り抜け得る見込みでございます。大阪、名古屋につきましても、大体同様でございます。ただ名古屋につきましては、今二時間半でございますが、これを多少強化をする必要があるということで、目下検討中でございます。その他につきましては、輸入炭その他の手配によりまして、これ以上強化をしないでやつて行けるというふうに考えております。
  60. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 これは局長も御承知のように、ほとんどガスは一般には燃す設備があつても、実際はガスはたけないという状態です。そこでだんだんガスの問題に対しては、電気とあわせて非常な不安を持つております。寒くなつて来るのにだんだんガスはたけなくなつて来る。燃料の点を見ても、非常に不安を感じておることは御承知通りであります。そこでこれらに対して、やはり政府としてもこういうような計画を立てて、ガス使用者に対しては不安はないのだ、あるいは原料炭は内地からまかなえないものは外地炭を入れてこうするのだ、こういう点などについて、やはりその使用者に対して不安を取除くために、私はあなたの方の計画、見通しというものを国民に知らしめる必要がある、こういう点に対して何らかの方法でそういう点は知らせる必要が、私は今日実際問題としてあるのじやないか。というのはだんだん不安は不安を呼ぶという状態が起つて来ております。さらに一般の工業などでも、石炭が足らぬというところから、これがまた不安が不安を呼んで、しばしば申したことでありますけれどもトン当り三百円、五百円と値下りするであろうと思われておつたものが、逆にトン当り五百円も七百円も千円も、このごろ値上りをしなければ契約ができないという状態が起つておる。こういう不安の結果、そういう状態がいわばやみというか、そういう問題が非常に横行しつつある現状であるから、私はこういう点に対して石炭使用者なりガス使用者なり、そういう人々に対して不安なからしめる方法を当局としては十分国民にとられる必要があると思つておるのであるが、その点に対してどのようなお考えを持つておられるかということと、それから輸入炭に対してどういうような状況で今日入れつつあるかを、いま一点伺いたい。
  61. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えを申し上げます。前段の点につきましては、われわれとしては、一応ガス会社もその都度将来の供給量を発表いたしております。政府輸入炭等の場合に発表いたして、新聞等にも出ましたので、一応これで大体需要家のおわかりを願つたと実は考えておるのであります。ただいまもお話が、ございましたので、さらに検討いたしまして、もう少し明確な見通しというものが至急に立つて、できればそういうことを政府見解としても発表することを考えさしていただきたいと思います。  第二点は、輸入炭につきましては先ほど御説明いたしましたように、二回にわけて手配をいたしておりまして、大体早いものは一月から入つて参りますし、ガス用炭だけの問題でございますが、先ほど申しましたように、十二万及び十七万と、二回にわけてすでに契約が全部済んでおりまして、早いものは一月から入つて参ります。なお輸入炭につきましては、先般緊急輸入をいたしました分は、どうしても一月になりますが、ガス関係で年間五十万トンくらい輸入計画を立てておりますので、従来から計画にございましたものを繰上げて、十二月中に入るような手配をいたしております。先ほど申し上げた年末年始については、完全供給というようなことも可能な見通しになつているのであります。できるだけの手配はやつているような次第でございます。
  62. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 輸入炭の価格は、内地工場まで入れて大体どれくらいの価格になりますか
  63. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 今私全部を知つておりませんが、東京ガスに入つておりますのが十八ドル五十セント前後と存じます。その次に最近外貨予算で組んでありますのは、トン当り二十ドルまでを組んでおりますが、個々の契約で今までのところは大体十八ドル台で契約ができているような次第でございます。
  64. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 他の同僚の関係もございますから、私の質問は本日はこの程度にいたします。
  65. 木下重範

    ○木下(重)委員 これは伊藤委員からの質問に対する関連質問であります。さつきの保安電力の限界に対する解釈であります。最初の御説明によりますと、いわゆる設備それから機能の破壊あるいは損傷の起らない限度までが、いわゆる保安電力の限界だということをちよつと言われまして、別に法的な根拠は全然ないから、もしもそうしたことに問題が起きた場合は、いわゆる使用者との間の話合いで、大体の限界はきまるだろうというお話でございます。私は少くとも公共事業法関係にその規定がない以上、すべての産業関係につきましては、労調法第三十六条の規定に基く解釈が、この解釈の基礎になるのではないかと考えております。すなはち電力の保全の限界のみならず、一般産業生産部面における限界は、おのずから専門家あたりが判断しまして、社会通念によつてこれ以上に及んだならば機能の破壊損傷を来すという限度が、すなわち保全の限界でございまして、電力関係におきましても、これはかわりはないのであります。現在法的な根拠が全然ないということでこれが放置されるということになりますならば、現在の非常に急を伝えております電産あたりについても大きな問題が起るのではないか、従つて私はその根拠は、他の法令にない以上は、労調法三十六条の規程に基くべきものであるというように解釈いたしますが、その点はどうでありましようか。
  66. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 私の先ほどのお答えはあるいは不十分であつたかと思いますが、私は先ほどどの程度電力を供給しなければ——保安電力というのはどの程度電力を言うのかという問題は、個別的に考えなければ、どこまでが保安電力だということはなかなか出て来ない。これを具体的に、たとえば昭和電工の川崎工場の保安電力は三万キロだ。これ以上切ると保安を切ることになるのだというような意味で、どこに限界があるかということは、具体的に判断しなければならぬ。それは当事者同士で各個にお話合いを願つて、供給を停止する場合にも、そこまでは確保するというように話合いをきめて行くことが適当じやないか。かような意味で申し上げましたので、どういうものを保安電力というかという点につきましては、今労調法の御関係で正当な争議行為として認められる範囲外は、お話の通り労調法にもどるから、そういう意味で労調法の問題として、最小限度正当な労働行為として考えた場合に供給をしなければならぬ電力というものは、当然労調法から私も出て来るんじやないかというふうに考えております。
  67. 木下重範

    ○木下(重)委員 そうしますと、ただいまの御説明でわかりましたが、これはもちろん個々の供給されておる会社において、その設備によつて限界が違います。その具体的な施設々々によつて、これはおのずから判断しなければならぬ。この判断はやはり技術面から、だれが見ても通念上この程度までは云々という観念でやるものであることは間違いないのであるが、ただいま私が申し上げました労調法関係は、争議関係に関連しますから、何かちよつとピントをはずれたような質問であるかもしれませんけれども、少くともほかに求むべき法規の限界がないといたしますれば、私はここに一つの保安電力の限界を各産業について求むべきじやないかと考えておりますが、この点の御見解はいかがでございますか。
  68. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 なお先ほどもちよつと申しましたが、保安電力の実際の解釈について保安上行われております点が、今お話のように最小限度ぎりぎりのところで設備がすぐ損壊してしまう。従つて労調法の規定で申しますと、最小限度それ以上やれば不当労働行為になるというぎりぎりのところが労調法の解釈であります。しかし実際の行われておりまするところを見ますると、必ずしもそこまで行かない。もう少し手前と申しますか、相当の被害が起るということで、必ずしも労調法にひつかからない程度でも保安電力としてある程度供給をされている使用電力のことでございます。従いましてその辺のところは、ただいまお示しのように理論的に申しますると、最小限度ぎりぎりのところは労調法というものになると思いますが、今実際的に電産等でストライキが行われます場合の保安電力として認められております点を申しますと、供給しているところは必ずしもぎりぎちのところまでということではないようであります。その辺はもう少し弾力性のある運用が実際上行われておりますので、その辺はぎりぎりまで行かないである程度確保できるということであるならば、それでけつこうじやないかというような趣旨からいたしまして、一律的にぎりぎりに追い詰められたということでなくて、具体的なことで労使間で話合いがついてそれを確保することが最も適当じやないか、そういう趣旨であります。
  69. 木下重範

    ○木下(重)委員 ただいまの説明でよくわかりましたが、私の方は最小限度の法的根拠を求めた質問でありましたから、ただいまのようなお答えが出ましたが、私の希望しますことも、少くとも保安電力の限界と申しますものは、労調法にいわゆる正当の争議行為云々の限界まで持つて行かなくて、需給の関係を十分考えられて、そうしてこの程度まではという線に持つて行かれるというような法的措置を講ぜられることを先ほど伊藤委員からもちよつと同様趣旨のお話がありましたが、希望しておるのであります。従つてその旨を十分御了承願いまして、今後審議会等で十分御検討願いたいということを申し上げまして私の質問を終ります。
  70. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 大臣が口をすつぱくして電源開発わが国の経済自立のために最も喫緊な課題であるということを述べられており、またわれわれもそうでなければならないと考えているのであります。そこで再三問題になつているところの只見川の問題について二つ三つお伺いしておかなければ納得の行かないところがあるのではないかと思うのであります。なぜ私があらためて聞かなければならないかということは、政治の本質すなわち政治は八千三百万国民がひとしく幸福にならなければならない、その上に立つた政治であり、その政治のもとに行われる行政が、あまりにも平等を欠いていませんでしようか。この点について私はお伺いをするのでありますから、自由党の方も関東からはたくさん出ております。自由党が東北だけで構成されておるというならまた考え方は別でありましようが、関東、関西を全部通じて自由党の党員が出ておられるのでありますから、そこで不平等であつてはならないという観点から、私はお伺いするのでありますから、野党であるから聞くのだろうというようなお考えでなく、御答弁をお願いしたいのであります。  そこで河川局長さんはもうあくびをしなければならぬほどお待ちでありましたから、まず河川局長さんにお伺いいたしますが、あなたの方の法案にある河川法の二十条の「三河川ニ関スル工事ヲ施行シ又ハ許可ヲ与ヘタルモノノ外ニ工事、使用若ハ占用ヲ許可スル為ニ必要ナルトキ」というこの解釈をわかりやすく御説明願いたいのでございます。
  71. 米田正文

    ○米田政府委員 河川法第二十条三項の御質問でありますが、昔の法律でわかりにくく書いてございますので御説明をいたします。只見川の水利権の問題に関連いたします意味は「河川ニ関スル工事ヲ施行シ又ハ許可ヲ与ヘタルモノノ」と書いてありますが、それは河川に関する許可を与えたるものであります。前の水利権は許可を与えたるものであります。それでその「許可ヲ与ヘタルモノノ外に工事、使用若ハ占用」と書いてありますが、これは占用でございます。今度新しく占用許可をいたすのでありまして、許可を与えておつたもののほかに、新しく占用を許可するために必要になつたとき、こういうふうにこの条文は解釈しておるのであります。
  72. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 どうも局長さんもたいへんお答えしにくいでしようが、まあ大臣にしろ、局長にしろ、御就任になりました前のことで、あの人たちがやつたことを何とかうまくカバーして行かなければならぬので、それは御苦労だと思うのでございますけれども、私どもはそれを明らかにしておかなければならない。そのために法律ができておる以上は、もつとはつきりしなければならないと思うのですが、そこでここにある公益上とか優先する場合とかいうようないろいろなお言葉もございましようけれども、この公益つまり今までのありきたりからいつて、こういう場合にはどういうことをやつて来たかということ、両者の話合いでそれではあなたの方へこれだけの補償をするから、こうしようじやないか、こういうようなことを伝統的にやつて来ておるかどうか。従つてこの解釈からいつても、公益という言葉、優先しなければならないというのは、同じような会社が許可をもらうのに、先にお前のところに与えるぞと言つてあとから出て来たものにも、お前のところにも与えるぞと言つて、同業者が相争うように、この法文ができているので、ございましようか、お伺いいたします。
  73. 伊藤大三

    伊藤説明員 私からあらためてお答え申し上げます。長谷川委員からの御質問の趣旨は、今のように河川使用の問題、河川占用の問題を許可しておいて、それを取消す場合におきますその公益の判断というものが、こういう場合に今まであつたかという御質問だと承知いたしまして、違いましたら、あとでまた御答弁申し上げようと思つております。  従来におきまして、電気の水利権の問題が起りました場合におきましては、なるべく両者間の話合い、並びに知事なりその権限を持つ人が入りまして、調整いたしまして、そうして補償額をきめて、円満なうちに解決してもらつたのでありまして、今回の処置は実はいろいろなことでやつたのでありますが、今回その公益判断といたしましたところは、実は上田、本名の地点の問題でございますが、上田、本名に関しまして、最近の電力事情というものを勘案いたしまして、まずできるだけ、少くとも電気を一般に供給するように、早期開発をできるだけ早くやりたいという見地からいたしまして、この問題を取上げて参つたわけでありまして、この早期開発の理由にはいろいろございます。閣議に出しまして御審議を願いました理由は、ここにあげておるようなわけでございますが、そういうような見地から、実はこの場合におきまして急いでやろうという関係から、こういうような措置をとつたわけでございます。
  74. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 やはり次長さんも答弁が非常に苦しいようですが、どなたがお聞きになつても、これで納得の行く御答弁だというふうには感じられません。それはもとから法文によつたやり方をしないところに無理があつたので、非常にあなた方には申訳ないけれども、しかしこういうようなことが、再三今後も行われるようなことになりますと、非常に大きな問題になるのでありまして、政府みずからが法律を無視するというようなことは、これは悪口を言えば、自由党の方は政府がたびたびやつてつたのだから、自由党や政府にすれば何でもないかもしれませんが、事この問題になりますと、関東と東北の電力の相違からいつても、これは非常な矛盾があるのじやないか。次官でもおそらくこれは賛成はできまいと私は思うくらいでございます。おそらく自由党の皆さんは、一応納得しなくともついて行かなければならないから、了解してもしなくてもついて行くでしようけれども、非常に御無理な問題だと思うのであります。  そこでもう一つ聞きたいのは、公共事業令の五十九条に、「都道府知事は、発電水力の利用について河川法第十七条から第十九条までの規定による許可又は認可の申請があつたときは、意見を附して通商産業大臣に報告し、通商産業大臣意見を求めなければならない。」とある。そこの第二項に「通商産業大臣は、前項の規定により意見を求められたときは、建設大臣に協議するものとする。」こうあるのでございます。従つてこの事業会から行くと、どうしても一応通商産業大臣はこれに規定された通りの行動をとらなければならないと思うのですが、はたしてとつたかいなかを承りたいのであります。
  75. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいまお尋ねの公共事業令の五十九条の関係の問題でございますが、ただいま問題になつておる本名、上田につきましては、水利権の閣議決定がきまりましたのは七月二十五日でございます。従つてその当時は、通産省電力関係の権限がございませんでしたので、ただいま御指摘の公共事業令五十九条に、通産大臣とただいまなつているところは、公益事業委員会でございます。その当時におきましては、七月末までは、この条文は公益事業委員会という規定になつておつたわけであります。八月一日からその規定を通産大臣に直したわけであります。従つて本名、上田の件につきましては、福島県から当時の公益事業委員会に、この五十九条の一項による伺いが出ておつたわけでございます。それでその伺いに対しまして、公益事業委員会が回答する場合におきまして、建設大臣に協議をしなければならぬ規定になつておりますが、これはまだ何らの措置をとられずに公益事業委員会は解消してしまつたというのが事実でございます。
  76. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 そうなるとかえつて石原局長の御答弁はおかしなことになりはしないか。公益事業委員会があるのにもかかわらず、政府は強制執行した。従つて公益事業委員会があるのにもかかわらず、これを無視した事実はありませんか。
  77. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 実はただいまのお尋ねの点は、建設省の方にお尋ねを願つた方がいいかと思いますが、七月二十五日当時は、通産省としては一応関係がなかつたものでありますから、この辺の事情は私はよく存じませんので、公益事業委員会と建設省との間の関係は、建設省からお答えつていただきたいと思います。
  78. 伊藤大三

    伊藤説明員 ただいまのお話は、私から公益事業委員会考え方もそんたくして申し上げたいと思います。この問題は、公益事業委員会から意見の申達をすることになつていますから、公益事業委員会とせられましては、いろいろと検討せられておつたことと思いますが、建設省に対しましては、意見の表示はなかつたのであります。なお建設省におきましても、この強権の発動をやろうという最後の線が出たのは、七月の下旬の話でございますので、それから閣議にお諮りして閣議の了解を得たというのが実情でございまして、そのために公益事業委員会に、われわれの方から御意見を伺う筋ではありませんけれども、公益事業委員会の一応の意見を、進んで承るという措置をとれば妥当であつたかと思いますけれども、時間的にその余裕がなくて、遂に公益事業委員会は消滅いたしましたようなわけであります。
  79. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 まつたく何のために本委員会をつくつたのだか、すべてが無視されている。すべてが無視されるということになると、これは容易ならない問題だと思いますが、大臣はこの問題の当時にはおらなかつたのだけれども大臣ちよちよいかわる。かわるたびごとに決定されたことがかわつた大臣によつて破棄されるというようなことが、今後も行われてはならないと思うので聞いておくのですが、昭和二十四年の十二月に、日本発送電に向つて政府から、信濃川発電所付近及び東京付近の超高圧変電所の建設を計画するとともに、将来只見川方面開発による超高圧送電所を考慮するようという指示が、これは時の稻垣通産大臣ですか、こういうものが出ている。さつそくこれによつて二十七万五千ボルトの送電線を建設した。そしてでき上るとすでにこれが不必要になつている。そこで先ほどの次長さんのお話のように、緊急を要するので間に合わないからその方にやつたのだということが、納得が行かなくなる。しからば東北と東京とでどれだけのその間に違いがあるか、汽車に乗せて機械を送るだけの違いしかないのじやないか。これを政府の命令でやるとするならば、まつたく二日か三日間の違いで完成をすることができる。それほど政府の熱意があるとするならば、行えるはずじやないかということも考えられる。そこで伺いたいのですが、こういうような御指示を政府大臣名をもつて出して、その責任を履行しないということに対して、現在の大臣はどういうお考えでございましようか。
  80. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまのことはよく私存じませんが、しかし長谷川さんにちよつと申し上げておきますが、長谷川さんも御承知のように、只見川の問題は、七月二十五日の閣議で決定しており、七月二十五日は通産省は何も関係がないのです。その問題のときには、建設省に水利権の許可の権限がありまして、それでその問題については、公益事業委員会に相談する、こういうことになつている。公益事業委員会はどうかというと、七月一ぱいあつたのでありまして、従つてその只見川の水利権の問題は通産省に何も実は関係がない。ただその後におきまして、水利権を持つた人間に発電の許可をする以外に、ございませんので、そのときに話がございまして、七月二十九日公益事業委員会がなくなつて、その仕事を引継いだものですから、従つて八月一日から引継ぎましたから、それで水利権の問題を持つておる者に条件をつけて、通産省としては許可をしたわけであります。ですから、そのときは水利権の問題は、通産省関係がないということをはつきりと了解していただかなければなりません。
  81. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 そうなると、大臣に伺わなければならないのですが、この計画をしろ、即時にやれ、こういう御指示を出したのは通産大臣である。閣議決定したのは大臣である。閣議というのは通産大臣はお入りになりませんでしようか、お伺いいたしましよう。
  82. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 そういう通知が出ておることは全然承知しておりません。
  83. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 ですから一応大臣は指示を出した場合には、大臣がかわるたびに指示は取消されて、新しいものになつて行くのでしようか。それから承つて行かないと、これはわからない。
  84. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どういう趣旨でそういうものが出ているのか、実際私にわかりかねる。もし出ておるものがありますれば、それは内閣がかわつたからといつても当然引継ぎますけれども、そういうものが出ておることは全然承知しておりません。それからまた、長谷川さんに申し上げた通り、何もその時分権限がない者がそういう通牒を出すのはおかしな話です。何かそこは間違つておりはしませんか。
  85. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 きよう大臣産業構造を伺つておりますと非常に納得が行くし、これでなければならないというように私は共鳴した一人であります。しかし大臣の御計画の産業構造というものは、あしたあなたがいなくなると全然御破算になつてしまう。それでもいいのかというようなことと同じようなことに考えられるので、たとえば大臣名をもつて指示したものを知らなかつたということでは、これは大臣通らないのじやないでしようか。
  86. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま申し上げました通り、もし権限を持つておる大臣がそういうものを権限の中で出しておれば当然引継ぎます。しかし私は全然知らない。聞きましても、みな一様に知らぬという。何もそんなものは知らない。これは稲垣さんの時分にさかのぼつて、稲垣さんを出して来なければわからない。けれども政府が出したものにつきまして、あとの者が知らぬということはこれは毛頭ございません。ただそのことが、私が考えて、今の公益委員会があるときに、何で権限を持たない人間がそういうものを出したかわからない。従いまして私は、そういうものが出ておるかいなかを取調べた上でお返事申し上げますから、どうぞ……。
  87. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 もちろん現在の大臣も知らないことで、前大臣が閣議に列席したわけですから、大臣も次官もおそらくは御承知ない。また河川局長さんも御承知ないのが当然なんだけれども、どうも大臣がかわるたびにその指示が取消されたり、一貫したものに進んで行かないということになると、大きな問題であるから承つたのですが、ただいま私が申し上げましたこういうようなことははたして出ているか出ていないか。そして閣議にそういうことが出ているのだということを、時の前大臣が閣議にかけたかかけないかというようなこともお取調べを願いたいと思うのであります。そうして御返事をいただかなければならないのです。冒頭に私が申し上げた通り、どうもこの問題については非常に世間が騒がしい。何だか自由党がたいへん莫大な利権をあせつている。それがためにそうやつたのだという風評が多い。私がそう考えているのじやありません。関東が、今の電力事情でどうなつて行くであろう。将来東北だけが恵まれて国の中心である関東は電力を補うことができないというような、そういう厚いところと薄いところのある政治であつてはならない。こういうことに対して私は御質問を申し上げておるのでありまして、決して野党だからというのでも何でもないのでありますから、率直に大臣の御答弁を承つて行きさえすれば解決がつく問題であろうと思います。たくさん質問したいことがあるのでありますけれども大臣も時間の都合がありますから、申し上げるのは控えまして次に譲りますが、いずれにしてもこの問題に対しては、この対立を何とか解決をつけて行かなければならない。これは大臣としても責任があろうと思うのであります。一方東北に渡したのだから、もうおれの方は知らぬぞという御態度ではなくして、何とか両者の意見をまとめて、そうして相互に立つて行かれるような方針を樹立してやりたい、しなければならない。そうしてそれを指導するのがすなわち大臣の今の大きな役目でなければならないと信ずるのでありまして、大臣に対しましてお伺いしたいのは、これらに対して許可を与えたんだから、それでもうかまわないのだというようなお気持か、これらが対立抗争をしているのを何とか妥協の道を開いてやるというような御意見があるか、ひとつお伺いしたいのであります。
  88. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それはよく研究していますが、もう一ぺん繰返して申し上げますが、長谷川さんによく了解していただきたいのは、私ども通産省の方へ移つて来たのは、二十七年八月一日以後のことなんです。そこでよその省がいろいろきめたことに対して今後どうするかと言われても、実は私率直に言いますが、やりようがないのです。よその所管でやつたことですから……。けれども八月一日以後、通産省の所管に移つたことでありますれば、これは私完全に責任を負いまして自分の職責を果します。
  89. 河野金昇

    ○河野(金)委員 今になりますと大臣は知らないし、水かけ論になるわけなんですが、大体ポツ勅で電気事業の再編成をやつて公益事業委員会をつくつた。吉田内閣としてはこれに言うことを聞かせるつもりだつたけれども、その公益事業委員会が松本蒸治さんやら松永安左エ門さんなんかがいて、なかなか吉田総理大臣の言うことを聞かない。だから公益事業委員会を七月一ぱいでつぶすつもりで、それで実際はこの関東と東北ともめているやつが公益事業委員会へ出て来ている。けれども公益事業委員会としては、これは今までずつと明治何年からのしきたりで、東北に渡すべきものでないといつて、言うことを聞かない。そこで七月二十五日の閣議でかつてにきめておいて、そうして公益事業委員会が七月一ぱいでなくなるのを見ておつて、八月になつてからやつたところに政治的の含みがあるのが今度の問題のがんなんです。だから私たちは何も小笠原さんを責めているわけでも何でもない、あなたが知らぬなら知らぬでいいけれども、あなたの前の人たちが、自分のつくつた公益事業委員会というものをやつかい視して、その切りかわりのすき間にやつた、それに対して新潟とか福島とかいうのが、べらぼうな金を使つて運動をやつた、そこに世間の疑惑があるわけであり、もちろん小笠原さんがどうしたとか、建設大臣がどうしたとか言わないけれども、今までのしきたりを破つて、こういうむちやなことをしたところに政治的なスキヤンダルがあるのじやないかということが今度のみなの疑問になつておる点だろうと思う。だから七月二十五日の閣議でこうきめておきながら、八月になつてから発表した。一体建設大臣あるいはその仕事を実際扱つておられた建設省側としては、こういうようなことを正しいやり方であると思つておられるかどうか、閣議できめたことだからやれと言われたらやるという、おそらく無責任なことであろうとは思うけれども、一体こういうやり方というものは公益事業のためにいいかどうか、今後のことにも関連して来るのでありますから、その見解を聞いておきたい。
  90. 米田正文

    ○米田政府委員 この問題は、今のお話のように時期的に見て非常に急いでやつた事務でありますので、私どもその内容を見ましても非常に異例なことに属する、従来かような電気に関する水利権の取消しというようなことは、私の調べたところではまだ今までそういう例がないのでございます。そこでこれははなはだ異例のことに属する、従いまして建設省自体としても、閣議の意見を求めるというようなまた異例の措置をやつたのでございまして、この問題についてはなはだ異例であるということだけは申し上げておきます。
  91. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 誤解があつてもいけませんから、なおもう一応申し上げておきますが、これは建設省の権限の問題でありまして、通産省が何も逃げるのでは毛頭ありません。事実を明らかにする必要がありますから申し上げるのでありますが、この八月四日のときも建設大臣野田卯一というので、こういうふうな許可になつておるのでありまして、その時分とにかく七月二十五日で、七月三十一日までしか公益事業委員会がないのですから、ないことについて何か処置をとらぬかと長谷川さんが言われるので、それはどうも自分の方の権限がないことには処置がとりにくいということを申し上げておるわけなんで、私は物について十分誠意を持つているつもりでありますが、人のやつていることについて、自分がこういうことをやりますということは言いにくいので、率直に実は申し上げたのです。
  92. 河野金昇

    ○河野(金)委員 小笠原さんは心配せなくても、あなたを責めているわけでも何でもないわけです。ただ只見川なんかは、水利権を当時持つておつた東京電力が、将来当然開発する予定のもとに、送電線なんかまで途中までいろいろ用意をしておつた。おそらくこれは何十億、今の金に見積ればあるいは百億というような金をかけていると思う。それを今度東北に水利権を譲つて、東北にやらせるから、これが結局むだになつてしまう。国としてこういう公益事業のような一つのものに設備をさせておいて、それがむだになるようなことを、世間の疑惑に思つているような政治的な何かがあつて、もしもやつたとしたならば、これはたいへんなことである。何もわれわれは東北電力がどうの、東京電力がどうのというわけではないけれども、これは普通のものと違つてこういう設備というものは、これはした以上はたいへんなことであろうと思う。それをむだにするような取扱いをしたところに無理がある。それからこれはあとで移つたわけですが、電源開発わくなんかにしても、この今度東北へ移したところの本名、上田の予算というものは、わくの中に入つておらなかつたはずなんです。それを別に見返り資金か何かでそこへ特に出す。それでわれわれは委員会なんかにも、政治的の動きをした白洲君を呼び出そうと思つたけれども、外資導入に名を借りて、実はアメリカへ逃避行をしておる。ここに実は問題があるわけであります。いずれ白洲君が帰つて来たら、帰つて来てからこの問題は徹底的にやるつもりであります。これは決して小笠原さんには迷惑は及ばないから、これは見物をしておつていただけばいいのであります。徹底的に今後この問題はこの委員会でやります。
  93. 坪川信三

    坪川委員長 本日はこの程度といたし、次会は明日午前十時より開会いたし本日に引続き法案の審査並びに貿易に関する件の調査を行います。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時三十三分散会