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1952-12-11 第15回国会 衆議院 通商産業委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十一日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君 理事 今澄  勇君    理事 永井勝次郎君       大倉 三郎君    首藤 新八君       辻  寛一君    中峠 國夫君       福井 順一君    南  好雄君       宇田 耕一君    高橋 長治君       長谷川四郎君    山手 滿男君       伊藤卯四郎君    山口シヅエ君       加藤 清二君  出席国務大臣         通商産業大臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜男君         農林事務官         (蚕糸局長)  寺内 祥一君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君         通商産業事務官         (繊維局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      石原 武夫君  委員外出席者         専  門  員 矢崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十二月十日  琵琶湖電源開発に関する請願(矢尾喜三郎君外  二名紹介)(第五四六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案  (内閣提出第三号)  貿易に関する件     —————————————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  本日はまず貿易に関する件について調査を進めたいと存じますが、まず政府委員より、貿易の最近の事情並びに貿易振興対策等先日通産大臣説明補充的説明を願います。通商局長牛場君。
  3. 牛場信彦

    牛場政府委員 先日大臣から御説明申し上げましたことを補足いたしまして御説明申し上げます。  最近の貿易事情のうち、非常に目立つておりますものは輸出の停滞ということでございまして大臣の御説明のうちにもございましたが、昨年に比べて本年は年間にいたしまして約三億ドル近くの輸出減退ということになるのではないかと考えられる次第でございます。七月以降、毎月一億ドルを割つております。十月になりましてから認証の面で一億ドルちよつと突破いたしましたが、十一月はまた下りまして、この調子で参りますと、おそらく船積み統計にいたしまして、約十二億ドルくらいのところにとどまるのではないかと思われる次第であります。この原因はいろいろございますが、これを地域的に見てみますと、一番目立ちますのはスターリング地域に対します輸出減退でございます。スターリング地域に対しましては、昨年支払い協定を締結いたしましてから後非常な勢いで輸出が伸びたのでございますが、今年になりまして英側輸入制限強化によりまして、七月以降日本から見ましてむしろ輸入超過になつて来ております。これは実際受払いの面におきましても、また信用状の面におきましても、七月以降は輸入超過ということになつて参りました。従つてスターリングバランスもかつて一億三千万ポンド出したのでございましたが、現在では一億一千万ポンドを割る程度まで下つて来ておる次第であります。ドル地域に対しましては、最近割合に好調でありまして、十月は戦後最高と思われるような数字を示しております。従いまして、各地械闘の比較をいたしましても、最近はドル地域が一番多いという状況になつて来ております。オープンアカウント清算勘定地域に対しましては、本年の初めごろ、主としてインドネシア等との交渉がうまく行きません関係上、非常に減退しておつたのでございますが、その後タイ国とかインドネシアとの協定の成立によりまして、最近は回復いたして参りまして、大体月間にいたしまして二千五百万ドル程度輸出を続けておる次第であります。それから輸出不振を物資的に見てみますと、やはり一番減つておりますのは綿糸類輸出でございまして、昨年は十億平方ヤードを突破いたしたのでありますが、本年はおそらく七億ちよつとというところにとどまるのではないか。しかしそれでも日本は依然として世界一の綿布輸出国ということになつておりますが、これは主として世界的な綿布貿易量減退ということに大きな原因があると思われる次第であります。そこで今後の輸出をどうして行くかという上におきまして一番問題になりますのは、地域的に見ればポンド地域との貿易、それから物資的に見ますと、綿糸布関係繊維関係輸出の増進をはかる必要があるということになりますが、ポンド地域との間におきましては、例の日英支払い協定がございまして、これは本年の末に期限が切れることになつております。ところが英側におきましては、ただいま御承知通り連邦首相会議を行つておりまして、ここでポンド問題についていろいろ論議をいたししておる様子でございます。これらが済まない限り、先方といたしましてもはつきりした態度を表明し得ないという状況でございます。従いまして、おそらくこの支払い協定につきまして、今年十二月末に切れるのでございますが、一応暫定的にこれをさらに延長するということは避け得られないのでははいかと考えられる次第であります。しかしながら現在の支払い協定運用につきましては、私どもといたしましても非常に不満を持つておるのでありよす。ことに昨年の交渉中の話合いと異なりまして、英側が一方的に輸入制限をして来ているということにつきましては、再三抗議をしております。この問題は、輸入制限緩和という問題を中心として今後英側交渉して行かなければならないと考えております。そのほかオープンアカウント諸国につきまして、今年中にインドネシアタイブラジルというような国との協定ができまして、そのうちタイ国との協定は、これは主として米を確保するというところに重点を置いたのでありますが、その後の運用を見ておりますと、これは輸出の面でも非常に効力を発揮して参りまして、十月のごとき綿小布輸出は、各国別に見ましてタイ出向け輸出が一番多かつた、いまだかつてなかつたような状況を呈しております。これは非常に協定締結が成功した一つの例だと考えられる次第であります。インドネシアブラジルにつきましては、これは先方の物資が非常に割高なためになかなか輸入が促進できないという共通の問題がございます。それから、ことにインドネシアにつきましては、六千万ドルにも上るようなこげつき債権がございまして、これをどう処理するかという問題があるわけでございます。しかしながら協定締結後、インドネシアに例をとつてみますと、大体毎月五百万ドル程度の対日輸入許可をおろしておる状況でござまして、昨年は一年に一億一千万ドル以上も輸出したのでありますが、その後向う側輸入制限で、ほとんど輸出がとまつておる状況でありまして、年間六千万ドル程度インドネシア向けに大体安定した輸出ができるのではいか。但しこれと相殺しますために、どうしても向う側のものを相当程度買わなければならないので、現在のところでは、一応年間四千万ドルという目標を立てております。それにさらに年間一千五百万ドル程度の、いわゆるスイッチ貿易をいたしまして、大体においてバランスを合せて行くという考え方でございます。四千万ドル買付にはいろいろ問題がございまして、最近二回にわたりましてインドネシアにミツションを派遣いたしまして、具体的な交渉に入つております。だんだん状況が改善されて来ておるということは申し上げられると思います。  それから物資的に見まして、日本輸出の今後の構成ということでありますが、繊維品輸出は、明年度におきましてもそう急激な進捗はどうしても望めないのではないか。もちろんこれは主として英連邦との交渉に力を注ぎまして、安定した輸出量を確保したいということはわれわれも考えております。ことに最近パキスタンとの間にいよいよ積極的な交渉を行いたいと思つております。先方から十二月の二十日ごろに代表が参りまして話をすることになつております。パキスタン綿花買付と引合いに、こちらからも相当程度綿糸布輸出数量を確保したいということを考えております。しかし何分にも世界的に綿糸布貿易量が減つて来ておる状況でございます。この際日本といたしましても、繊維類輸出のみに頼らずに、やはり鉄鋼でありますとか、さらに進んでは、機械類プラント輸出というようなものに力を注いで行く必要があるのではないかと考えておる次第でございます。鉄鋼輸出は昨年に引続きまして、本年は非常に好調でございまして、輸出品割合から見ましても、十月は綿布をしのいで第一位ということになつております。ただこれは非常に安売りを余儀なくされておるという事情もございます。さらに将来世界の鉄鋼需給状況考えますと、決して安心はできないのでございますが、とにかく金額的に見ますと、今のところではまず第一位を占めておる。これに反しまして、機械類プラント輸出日本の一番希望し、期待しております技術の輸出という面におきまして、なかなかまだ思うように進捗を見せておらない状況でございます。これにつきましては、いろいろ政府といたしましても奨励策考えておるのでありますが、ことに最近日本と一番競争相手になつておりまするドイツでありますとか、イタリアなどの国国、これが相当程度思い切つ輸出奨励策をやつておることが判明して参りました。たとえば輸出品に対しまして、ある程度の税の払いもどしをする、また特別に安い金利で出す、あるいはいわゆる優先外貨などを非常に大幅に認めまして、しかもそれの自由転売を認めることによつて相当程度のプレミアムを事実上輸出業者に与えておるというような状況でありますので、これは正常な貿易という観点から見ますと、やや邪道に陥つておるようにも考えられるのであります。しかし日本といたしまして、今後どうしてもプラント輸出的なものを促進して行かなければならないという観点からいたしまして、少くとも西欧諸国がやつておる程度のことは、日本でもただちにやりたいという考えで、ただいま鋭意調査をいたしておるところでございます。  それから輸入の面でありますが、輸入につきましては、現在のところ外貨面においてあまり制約はございません。大体におきまして必要とするものはみな買つておるという状況でございます。最近炭鉱ストライキの結果として石炭が不足いたしました。これにつきましても、手当といたしまして、ただちに外国から約八十七万トン買うという計画が今できております。もうどんどん買付にかかつておる状況でござすまするが、ただ依然としてドル地域からの輸入が非常に多い。そしてポンドオープンアカウント買付が思うように進まないという状況があるのであります。これは本年初頭からドルの節約、さらに非常にたまりましたポンドの消費、さらにオープンアカウント地域、これは主として日本輸出超過になる国が多いのでありますが、そのバランスをはかるという意味におきまして、輸入市場転換ということをやつて参つたのでありますが、現在になつて参りますと、さらにもう一つ市場転換意味が加わつて参りました。と申しますのは、日本輸出を伸ばすために、どうしても向うからの輸入もふやさなければならないという状況が最近非常に出て参りました。結局輸出しつぱなしでもつてほうつておくということは、どうもできないような状況になつて来たのであります。従いまして、市場転換には、もう一層輸出を伸ばすというまた一つ重要な目的が加わつて来た次第でありまして、今後その意味におきまして、さらにこれを促進して行きたいと考えております。先ほども申し上げましたパキスタンとの交渉におきましても、結局日本綿花を相当量買わない限り、向う日本からのものを買わないということをはつきりして参つておる次第であります。しかしこれは産業界のことなども考えまして、もちろん限度はあるのでありますが、何とかして合理的な限度においてこれを促進したいというふうに考えております。  それからもう一つ輸入に関しまして、別口外貨貸付指導ということによりまして、これは産業転換を促進いたしますと同時に、主として鉄鋼を原材料としてそのコストの低下をはかるということを行つておりまして、最近非常な効果を上げて来ております。それと相並んで、輸出面におきまして、輸出入銀行金利引下げということが行われておりますし、また銀行法そのものの改正によつて、さらに金融を楽にする。それから現在日銀で考究しておられます期限付外貨手形、あれらの操作によりまして、貿易金融というものが、一つ内地金融とは離れたものになつて金利も安くなつているという傾向になつて参りましたことは、私たち非常にけつこうなことと思つております。さらにまた輸出入銀行金利等につきましては、もう一息引下げをしていただいて、国際競争場裡において、日本の品物が不利をこうむらないようにしたいと考えておる次第であります。  それから前にも御説明がありましたが、貿易商社の恐慌ということにつきましては、これは非常に重大なことと考えております。さしあたり今の短期の債務長期債務への切りかえでありますとか、ないしはいろいろな海外支店の開設、あるいはキャンセル準備金というものの積立て制度を認める、そのようなことを通じまして何とか貿易商社強化して行きたい。ことに東南アジア諸国は、御承知通りやや国家貿易的色彩の強い国が多いのでありまして、これに対しまして、わが方において弱小業者がたくさんおつて競争をするということは、どうしても不利になりがちである。かと申しまして、この際またその国家貿易的な色彩を強くするということは、私どもどうかと思うのであります。何とかいたしましてこの商社自体強化ということによつてこの情勢に対応して行きたい。また輸出組合等につきましても、妥当の範囲内でこれの強化をはかつて行きたいというふうに考えております。簡単でございますが、一応御説明申し上げました。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 これにて政府側説明は終了いたしました。  この際、大臣が出席されましたので、船舶問題を含む貿易に関する件、並びに電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案、並びに先般保留となりました繊維に関する件を議題といたしまして、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。長谷川君。
  5. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 ただいま優先外貨お話がございましたので、これについてちよつと承つてみたいと思います。優先外貨、たとえば生糸に対して優先外貨は、今どのくらいを占めているか、お答えを願いたいのであります。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 生糸については、現在第二類として扱つておりますから、一〇%、一割であります。
  7. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 一割、そういたしますと、たとえば五十二年の一月から九月まで、また昨年度の輸出の総額から見て、一割というのは、アメリカ、英国、フランス、あるいはインドとかオランダとかいうものがたくさんありますが、そういうような地域にも出ておるのでありますか。アメリカならアメリカにのみ対しての一割でございましようか、承りたいと思います。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ドル圏だけに対して一割ということでございます。
  9. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そこで私はお願いを申し上げたいのですが、この優先外貨を私が何ゆえに、生糸に対してよけい認めてもらいたいかというと、すなわち生糸は御承知通り太陽と水さえあればただで、あと人手、だけでつくられて行くのでありまして、従つて日本の従来の慣例から見ても、生糸というものがいかに重点的に輸出されておつたかということは御承知通りであります。従つてこの優先外貨を少くとも、半分、輸出価格に対するところの五割程度のものを認めて、そして国内の、すなわち保護政策と申しましようか、それで増産をさせ、さらにこれらを海外に対する宣伝費市場開拓のための調査費、こういうものに充てて行つたなら、より以上の増産ができ得るのではないかと考えるのであります。従つてこれらに対して、桑園対策等と相マッチして、これらをさつそくそのような方向に向けていただけるようなお考えはあるかいなかを伺います。
  10. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今外貨が大体ドルに換算して十億ドル以上あることは御承知通りでありますが、そのうち純粋なドルというものは六億ドルばかりでございまして、それにはそれぞれ予定があるので、従つて全体をよく見合せまして、このドルの割当をいたさなければならぬのであります。しかし長谷川さんが今仰せなつたことは、私どもも今の生糸貿易の重要さから見て、きわめて必要だと考えられますが、仰せ通り五割を向けるということは、実情許されませんので、とりあえず第一類、つまり一割の分を一割五分のところに持つて行くということで、過日来話を進めておりましたが、話は大蔵当局とつきましたから、今後さようにとりはからいたいと存じております。但し御趣意はよくわかります。
  11. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 私の申し上げたのは、なるほど一割五分というお話合いは、ついたかつかないか、私はその方の関係は別にございませんが、ただ承りたいのは、つまり政治を行う上から見て、かくすべきものではないかという考えから申し上げておるのであります。一割五分程度話合いもつくでしようし、強制的にやらせられる方法もあるし、多々あるでしようが、少くとも大臣の御体験からいつても、これらはもうちよつと多く見てやらなければならぬのではないかと考えるのであります。それに関連をいたしましてお伺いをいたしたいのでありますが、横浜取引所でございます。横浜取引所というものができたのだが、この基本の精神というものは何からつくられているかということを、蚕糸局長にお伺いしたいのであります。
  12. 寺内祥一

    寺内政府委員 横浜及び神戸の取引所におきましては、生糸価格変動を、ある程度業界の需要と供給とをバランスさせて、価格を安定させるという意味一つ含まれておるのでありますし、また輸出商輸出によりまする操作によりまして、これをヘッジングいたしまして、かれらの利益を均衡させるというような方面効力もねらつて取引所をつくつておる次第であります。
  13. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 その基本理念に立脚したところの価格の安定というこの面に対しまして、あなたのお考えで、現在横浜取引所がはたしてこの理念に基いて行われているかいなかをお伺いいたします。
  14. 寺内祥一

    寺内政府委員 取引所ができましてからの価格変動と、取引所を開設いたしません前の変動では、取引所ができましてからは大体安定の傾向に向つてつたというふうに考えられますし、御承知通りただいま禁止価格二十四万円を設定いたしておりますが、この方針に順応いたしまして、取引業界においても自粛して二十四万円以下の取引をやつておるということで、価格安定に対して協力してもらつておると私は考えております。
  15. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 局長さんははたして現場へ行つて見ているかいないかわからないが、現物がないのに思惑的な取引がたくさん行われており、価格もまたオーバーしておる。こういう引渡しの現物のないものに思惑的な取引を認めておるかいなかを伺います。
  16. 寺内祥一

    寺内政府委員 本年は春繭以来価格がこれほど上ると思つておりませんでしたが、御承知通り七月以来急に生糸価格が上昇いたしましたので、製糸家方面におきましても生糸ひき急ぎをやりまして、非常に先物取引が多くなつたのであります。最近の横浜における取引を調べて参りますと、たとえば十月におきまして現物取引をいたしましたのは、十月の取引の総体のわずかに二七%くらいでありまして、あとは全部先物取引であります。そういう状態現物が非常に払底いたしておりますので、現物価格がいつも禁止価格二十四万円ぎりぎりの天井にくつついてしまつておるというような情勢であります。これは取引所があるがためにそういうことになつておるのではなくて、現在の製糸家見込み生産と申しましようか、生糸の将来の価格は下ると思つたのが案外上つて来た。そこで上つておる間にひき急がれるというようなことで、先物取引が非常に多かつたという情勢が、現在現物の不足及びその価格の騰貴という現象となつて現われておるとわれわれは考える次第であります。
  17. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 思惑の価格の値上りが突然出たので、そういうことになつておるのだというようなお話でございます。しかしこれは蚕糸局長としても見のがすことのできない大きな問題でなければならないと私は思います。従つて海外価格は、今の規制されたときの価格最低十八万円、最高二十三万円、さらに禁止価格の二十四万円という価格、これは日本国内状況だが、これをおきめになる当時と、海外価格というものは、あなたの見た目ではどうでございましようか。
  18. 寺内祥一

    寺内政府委員 ただいまの生糸最高価格最低価格をきめましたのが今年の三月でございまして、その当時はアメリカへ出ます価格が二十万円前後でございました。そういう状態がずつと続いて参りまして、従いまして大体二十万五千円というところを中心値考えまして、その上値二割二十三万円、下値約二割と考えまして十八万円というのを、最高価格最低価格ときめたわけでございます。それで当時ただいま申し上げましたような状態でずつと輸出が続いておりましたが、これは六月、七月ごろまでは大体アメリカへ出ます価格が二十一万五千円からせいぜい二十二万円程度でございましたが、御承知通り六月の末から急に価格が暴騰いたしまして、七月の末に二十三万円を突破いたしました。そこで農林省といたしましては、繭糸価格安定審議会を開きまして、二十四万円の禁止価格をつくつたわけでございます。その後ずつとそういう状態が続いて参りまして、アメリカ日本生糸価格禁止価格以上に上らないということになりましたので、最近九月あるいは十月ごろから、アメリカ買付が二十三万円を突破いたしまして、ただいまは二十四万円で申込みがあるわけでございます。従いまして、ニューヨークの生糸相場も五ドル四十二セント、これはちようど日本横浜のFOBに換算いたしまして、二十四万円という数字取引されております。
  19. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 海外情勢も御承知通りでございますし、この最高、つまり規制された価格を変更するお考えはございましようか。
  20. 寺内祥一

    寺内政府委員 ただいま申しましたように、アメリカがここまで二十四万円で買い付けて参りましたのは、日本におきまする繭糸価格安定法効果が現われまして、牛系価格が安定した、ことに二十四万円以上には上げないというので、アメリカは当時七月以前は二十一万円から二十二万円程度でなければ買つて来なかつた。それから昨年ちようど二十六年度は生糸価格が非常に暴騰、暴落いたしました時期でありまして、最高は三十万円に上り、最低は十四万円に下つたというような、あの当時高くなりました点でも二十三万円まではついて来ましたけれども、それ以上はもう見放されてしまつたのであります。従いましてわれわれは二十三万円ではアメリカ輸出できないと考えておりましたものが、今年になりまして安定法効果が上りまして、二十四万円以上は上げないという政策を信頼いたしまして、アメリカが二十四万円で買い付けて参りましたから、農林省といたしましては来生糸年度におきましても禁止価格は上げない。最高をこのままですえ置いておくという考えであります。
  21. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 私は価格をかえなければならない、上げなければならないという問題でもないと思います。従つて養蚕にいたしましても、現在の価格価格は引合わないかというと、決して引合わない問題でもないと私は思う。しかし取引所にあまりにも思惑的な取引が盛んに行われて来るという点について、非常に生産する者たちの、何ものか心の中に動揺を来しておると考えておるのであります。従つてこういうような点についてあなたはこれをこのままで見のがして行くお考えなのか、それとも何らかの手を打つてあまり思惑的のことのないようにおやりになるお考えがあるかないかをお伺いします。
  22. 寺内祥一

    寺内政府委員 ただいま申し上げました通り二十四万円の禁止価格を堅持するということにつきましてたびたび声明もいたしておりまするし、先日安定審議会の委員の懇談会を開きまして、今申し上げましたような方針についてみんなの協力を得たのであります。こういう方針を各方面へ徹底させまして、そうして生糸価格は当然二十四万円の禁止価格を堅持するという政策であるから、思惑によつてこれを無理に上げるというようなことをしないように各方面に了解を求めておるのであります。
  23. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そこで優先外貨の問題をもう一度振り返つてみなければならないと思うのですが、なるほど一割から一割五分、全部の、たとえば十月から九月までに幾ら出ているかというと、二千八百万ドル、全部の価格では出ておる、こういうようなことから考えて、全部から見ると、零点何パーセントというパーセントしかないのだけれども、これを大体最低二割くらいの程度まで引上げて、そうして海外の需要というものがそれほど旺盛であり、局長がおつしやる通り非常に日本の現在の価格では優待されておるというような安定を持つておるということ、これに引きかえて生産が伴わなければならない。であるから私はぜひともこれを二割くらいまでどうしてもやつていただいて、そうして国内の桑園の対策に、また政治の上から見た保護政策に充てて、そうして増産をはかることが緊急の問題ではないであろうか、かく考えるのでございます。ぜひともその点を御了解の上、大臣においては特別のお考えをもつて御審議をいただいて、そうしてこれをその程度まで引上げて、桑園対策の方へまわしていただきたい、こう私は念願するものであります。ぜひともその方向に進んでいただきたいと思うのであります。  そこでポンド向けの繊維、すなわち東南アジア向けの繊維が非常に下つて行く上に取引が少くなつて、そうして各機械業地は非常に参つて来ているのだが、これに対して御説明を受けますと、そう心配することもないようなお話でございますけれども、現実はお話のようなわけのものではないじやないかと思うのです。そこでこれらに対する輸出の対策の根本に触れてお考えなつたら、どうやつたらこの滞貨を一掃し、そうして生産意欲を向上させる、機業者にも損をさせないような方向に進んで行くことができるか、こういう根本的な指導の面に何かお考えがございますか承りたいのであります。
  24. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 こまかいことは政府委員より答弁さすことに願いたいと思いますが、今の繊維事情につきましては私ども相当苦慮しておるのであります。従つて過日も申しましたようなぐあいに、まあ向う輸入制限等に対する措置に対して、適当な緩和策について、いろいろな方面から外交的にやつてもらつているのであります。まあ都合によつてはこちらで先からいろいろのものを買い付けることによつてそういうことができるようにする、それも一つの方法じやないかと考えまして、外貨のあるときでありますから、特にポンド貨が余つているときでありますから、何かそういう方法はないかということを具体的にもいろいろ考えておるのであります。  なお根本策としましては、これも率直に申し上げておきますが、昨日来紡績連合会の方々が見えておりますので、私どもよく相談をいたしまして、ああいう老練な人々がどういうふうに持つて行くのが一番いいか、こういう問題について御意見を聞いた上で方針をきめたいと、かように考えている次第であります。長谷川君の仰せのごとく、現状についてはこのままではいかぬということは私ども痛切に感じております。
  25. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 議会の初めに総理大臣から、ソビエトとアメリカとの関係を見て、とりあえず非常に重大な段階に速急に行くようには思われないという意見が本会議で発表されたのであります。それで私は共産圏国との関係が平和裡に推移するというのを前提として、最近ヨーロツパにおいては非常に共産圏国に対するところの貿易政策を各国ともに具体的に処置をしようという傾向が現われて来ておると思う。従つて私は最近におけるそういうふうな諸外国の状況に照して、先ほど局長からもお話がありましたように、輸出マーケットの確保ということを苦慮しておられる、こう言われるのですが、たとえば中共等に対する貿易政策について具体的なお考えがあるかどうかお聞きしたい。
  26. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 昭和二十五年末の中共地区向け輸出制限強化以来、中共地区に対する輸出は激減し、同時にこれの見返りとなる輸入もほとんど停滞し、わずかに香港を経由して多少の物資の交流が行われるにすぎない現状となつているのであります。わが国は戦前より中共地区に鉄鉱石、強粘結炭、大豆及び塩のごとき主要物資の輸入を仰ぎ、同時に繊維製品、雑貨類等の軽工業品を中心に相当量の輸出を行つてつた従つて朝鮮動乱後のブームが去りますとともに、中共貿易の再開を望む声が、特にアメリカからの輸入品のコスト高と輸出不振に悩む民間業界に強いのでございまするが、政府としては国連協力の線に沿いまして、戦略物資の輸出制限を続行する方針であります。ただ従来の輸出制限品目は、御承知のごとくバトル法に比べまして、若干こちらの方が広いのでありますので、その点につきまして輸出制限緩和方をいろいろ向うと話合つておる次第であります。さきに宇田さんも御承知のように、染料、紙類、紡織機とか、その他多少緩和されたものはございまするが、これも西欧に比べますると実はまだ十分緩和されておらないので、もう少し緩和してもらいたいという考え方で交渉をいたしておるのであります。しかしこれも率直に申しますと、中共貿易について決済方式の点だとか、あるいは日本の船の出入りの点とか、いろいろ問題もありまするので、これらの問題については今後外交的にいろいろやらなければなりませんが、いずれにしても一番中心になるのは、国連協力という線をそらしてはいけませんので、この点が日本外交の中心課題になつておりますから、従つてこの線のもとでできるだけのことをやるというのが、中共貿易対策になると考えておる次第でございます。
  27. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 国連協力の線で中共貿易考えられるというお話は当然と思います。最近、先月の十四日にロンドンで発表され、十五日にパリのUP電で発表されておるのですが、日本が対共産圏国の輸出統制委員会、ココムに入つたということが発表になつております。それについて政府はどういう具体的な加入前後の処置をとられたか、それをお聞きしたいと思います。
  28. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 中共あるいはソ連圏への貿易のある種の非公式な委員会がございまして、それに日本も参加いたしまして、ほかの国連諸国と共同して、同じ歩調で足並をそろえたいということが目的でございまして、先ほど小笠原大臣からおつしやいましたでこぽこがないようにしてやつて行きたいというのが、この加盟いたしました眼目でございます。
  29. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 そうすると加盟せられたということですが、要するに共産圏国に対する非戦略物資を各国が輸出をしておるわけでありますが、各国がどういう商品を輸出しておるということの品目はおわかりになつておるのですか。
  30. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 戦略物資は出さない。非戦略物資は出そう、そういうリステイングの区別をちやんとつけるのが議題の一つでございました。品目はたくさんございまして、今どういうものがどうだということを手放しに申し上げることは私できないのであります。一定のものをどつちに振りわけるか、それから振りわけた場合にも一定量を出すことができないかどうかということに関して協議いたしておるのであります。
  31. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 要するに国民の知りたいことは、輸出貿易が行き詰まつたので、何らか打開策を講じたい。それについては国連に加入する国々と同等の待遇を得たい。繊維関係だけ申しましても、イギリスとかイタリア、フランス等の競争相手国がはたしてどれくらいの商品、どれくらいの品種を共産圏国に対して非戦略物資と認めて輸出を許しているかということをわれわれは聞きたい。国民はそれを聞きたいと思う。それを十分にわれわれが知らないと、当然出し得る力のある品物も、出すことができない品目に入つているのじやないかと思つて、われわれは無知のために、輸出に努力を払うきずながないということになつている。従つて私はココムのような国際会議に加入したということは、国民にすみやかに知らすべき義務が政府にあると考える。そしてその内容を発表して—要するに貿易は国民をのけての貿易はありませんから、われわれは国民とともに一緒にその貿易内容を知つて、世界の他の国連加盟国並に推進すべきものであると考えます。その点についての政府の所見を伺いたいと思います。
  32. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 宇田さんの仰せはごもつともでありますが、実は委員会の存在すらそのものが秘密になつているのだそうでございます。従つて中身のことを公表することは参りかねるということでございます。
  33. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 委員会そのものが秘密であつて、そしてそれに加盟をするというその手続が、どうも今の説明では納得できたいのですが、そういうものに対するところの実際の加盟の取運び方というのはどういうことですか。
  34. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは実は委員会というような形のものでないのでありまして、各国が集まつてただ相談しているというだけなのです。そういう相談をやつているということはもちろんみな知つているわけでありますが、委員会というようなかつこうになつているかどうかということについては、一切言わないということで話合いができている次第であります。ですから加盟と言うとちよつと言葉があるいははつきりし過ぎるのでございますが、そういう相談に日本が加わつているということでございます。  それからただいまお話のありました繊維品につきましては、今一切輸出制限はしておりません。これは中共へでもソ連へでも全然自由に売れることになつております。従いまして現実に少し出ていることもあります。ドイツとかイタリアに比べて全然不利な取扱いは受けておりません。  それからどういう品物を出せるか出せないか、みな知らないということでありますが、これは輸出管理の別表というのがありまして、それに載つているわけであります。その他の実際のこまかい取扱いにつきましては、通産省の通商局の輸出課で全部とりまとめて皆さんにお知らせいたしております。中には政府から特に進んで公表することをはばかるようなこともあるのでございますが、しかし業者に対しましてはできるだけ詳しく説明いたしておりまして、その点についてはあまり疑問はないものと私どもは存じております。
  35. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 私は事務当局の事務の扱い方を問うているのではないのです。ココムへ日本が加盟するということはだれが加盟するのか。国の責任で加盟するのか、その他の身分をもつて加盟するのか、その点をお聞きしたい。—一切言わないと言うが、しかし日本が加わつている、それはどういうことですか、具体的にそれを聞きたい。
  36. 坪川信三

    坪川委員長 ちよつと速記をやめて。  [速記中止〕
  37. 坪川信三

    坪川委員長 速記を始めて。
  38. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 それでは今のはそういうことにいたしまして、西ドイツの経済省の中にオースタン、東方委員会というのができて、これは共産圏国に対する貿易を取扱うところの政府の機構になつておるということが発表されております。どうしてドイツがこういうふうに積極的に、東ヨーロツパの共産圏国に貿易を必要とするかというと、世界的にマーケットが狭小になつたことに対する打開であります。そうしてドイッの一番ねらつておるのは、ウクライナやその他の方面の麦その他の食糧を安価に輸入したいというのがねらいである。その見返り物資として薬品その他のもの二億五千万ドルくらいのものを出すということを発表しておる。私は西ドイツの今度の世界戦争によるところの地位というものは、日本と相似たものが非常にあると思う。その西ドイッですら、政府の内部にこういう組織をつくつて、そうして重要な食糧その他をすぐ隣国のソビエトその他からとろうという政策を軌道に乗せて、そうしてその見返り物資を出すことによつて自分らのマーケットを、自由国家群との競争外において新たに求めようという努力をいたしておる。日本においてはそういう努力を払つておるということは聞いたことがない。今のお話のように、事務当局と民間とがはつきり話をするというチャンスのないようなことが多いのであります。従つて大臣にお聞きしたいことは、ヨーロッパ諸国において、現在そういうような積極的な手をどんどん打つているということに対して、大臣としてそういうふうな政策をもあわせておとりになるお考えがあるかどうかお伺いしたい。
  39. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は私どもよく調査いたしまして、さつき申し上げた国連協力の線に沿つての範囲でこれを行うことにいたしたいと存じますが、実はまだ私率直に申し上げますと、そういう点の調査が不十分でありますので、調査した上、やれますことは—私も貿易の盛んになることはぜひひとつやりたいと思つておるものでございますから、もう少し時をかしていただきましたら、その方を進めることにいたしたいと考えております。
  40. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 十一月十七日に、ニューヨークに第三十九回のアメリカの外国貿易評議会がありまして、それの宣言の中に、特にソビエトとの貿易政策についての項目がありますが、その終りの方に、日本と中国との貿易をチエツクすべきでないということがうたわれております。従つて私は、アメリカ貿易業者それ自身も、日本のマーケツトを狭小にすることによつて他を圧迫するということは避けるべきであるということを考えておると思うのであります。従つてわれわれはその線に沿つて新たに貿易政策考えるべきであろうと思います。そしてその具体的処置としてはいろいろ考えられると思います。それで先日の大臣の御答弁の中にも、新しい考えがあつたらおれたちに教えてくれ、相談しようじやないかというお話がありました。それで最近中国との貿易交渉してみて一番痛感することは、個人々々でもつて別々に行つてはもうだめであつて、相手はまとまつた計画経済のもとに貿易をやろうとする考えが強い。従つて西ドイツが東方委員会を経済省の中につくつてつているように、政府の責任においてこれをまとめて世話をし、あつせんをするということが一番必要であろうと思う。これについて大臣の御意見を伺いたい
  41. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今仰せの点はまことにごもつとものように思います。今のように向うドル貨、ポンド貨を持つておるときでなくて、どうしてもやるとすれば、一種の物々交換になつて行くだろうと思います。従いましてどこかで一つにまとめた、いわゆる計画的なものをやらなければ、貿易の進展と申しますか、取引増加ははかられませんから、この点から申しますと、今仰せなつたようなことはしごくごもつともだと思います。至急ひとつ考えてみます。
  42. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 先ほど局長からもお話がありましたが、タイとかインドネシアパキスタンに対して、政府または民間の代表者を送つて貿易交渉をせられた。ところが中共のような重要なマーケットに対しては全然パス・ポートを出さない。パス・ポートを出すととろの法制上のりくつは別問題として、戦後における中国というものは計画経済でありまして、その国民の生活水準の上つた原因は、従来の資本主義的な経済社会の場合とは非常に違つておりますから、彼らの国内における生活必需品の内容あるいは彼らの獲得したいと思う原材料の品目というものは、従来と非常にかわつた点があるということを、われわれはいろいろの通信で見ております。従つてこれに対して実情を調査するためには、旅行の制限をかなり大幅に緩和をし、自由なものにするという政策をとつていただかなくてはならぬと考えます。そういう点について政府はどういうふうな対策をお立てになるか、聞かしていただきたいと思います。
  43. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは実は外務省の所管でございまして、ちよつと私の口から御答弁をいたしかねます。
  44. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 局長のさきのむずかしい委員会等のお話もありますが、本年の七月十六日にアイゼンハウアーが—ヴンデンの記事が出ておりましたが、日本という国はアジアと経済の取引をさせなければならない、もしこれをさせなければ日本は冷い戦争に入つて行くであろう、さらにこれを強制的にさせないというならば、カナダ、英国、アメリカ日本に対しての責任をとるべきであるということを唱えておる。その後、この委員会等の会議において、アイゼンハウアーの唱えたこれらの言葉に幾分か沿つた曙光が見出されているかいなやをお伺いいたします。
  45. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 アイゼンハウアーが、先ほどおつしやいましたようなことを言つてくれましたことを私どもも新聞で読みまして非常にありがたいと思いました。まことに喜ぶべきことだと考えております。それは別にいたしましても、日本を自分の足で経済自立させなければならぬということは、これはもうだれが見ましてもその通りでありまして、そのためには何らか大きな手が打たれなければならない、これも万人が認めているところだろうと思います。ヨーロッパの方におきましても同様な考えが非常に大きな勢いを持つておるということも、これも先ごろ来の英連邦会議等においても明らかにされておるところでございます。さてしからば、それが具体的に今どういうふうに現れつつあるかと申しますと、具体的にどうだと現実に認め得るような事例はまだただいまのところはございません。
  46. 坪川信三

    坪川委員長 委員各位に申し上げますが、時間の関係上、大臣に対する質疑を集約いたしまして、政府委員に対するものはあとまわしにいたしたいと思いますから、その点御了承の上御発言願いたいと思います。
  47. 宇田耕一

    ○宇田(耕)委員 さつきの結末をつけます。大臣にお尋ねしたいことは、貿易は、いずれにしても直接向うへ行つて向うの責任者と商取引の具体的交渉をしなくては事が運ばない。電報ではとても話にならない。従つて民間のエキスパートが直接向うへ行くことができるように、通商産業省としても考慮を払つて、外務省とも折衝していただきたいのであります。
  48. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 東南ア地方に対しましては、できるだけそういう措置をとつておりますが、中共の問題はちよつとここで私の方からはお答えいたしかねます。しかし宇田さん仰せなつ通り、エキスパートを送つてやらなければとうてい貿易は盛んになるものではございませんから、その趣旨はよく体しまして、今後措置をいたしたいと思います。
  49. 坪川信三

  50. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ただいま上程されております、私どもが審議を求められております電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案の審議について(委員長も大分その能率化を求めておられるようでありますから、これに協力をしたいと思つております。つきましては、この法案審議の基礎的条件ともいうべき公益事業のあり方について、通産大臣の信念、あるいは通産行政の方針を明らかに承らぬと困るのでございます。そういう点についてひとつ大臣にお伺いします。電力事業の公益性についてでありますが、さきに電力会社が九つに分割をされまして、分割後の公益事業としてのあり方が完全なものであると認められておるかどうかということでございます。その使命を十分果しておるかどうかということでございます。先日私がこの件について大臣にお伺いをいたしましたところ、もちろん本会議のああいう折からでございますから、十分な答弁もできなかつたと思いますが、あの答弁では理解することも納得することもできません。従つて、きようはこの委員会でございますから、その点について十分大臣のこの公益事業に対する信念を伺いたいのでございます。電力事業の全益性、その使命のあり方というものは、今後の日本の産業の基礎構造の上に非常に重大な関係がある。従つて今後の電力事業の平和的な維持、あるいは国民に対するサービスを十分果し得る公益事業、そういうことに対して大臣のお考えになつておる点を、おれはこれで行くのだということを、ひとつ明らかに伺いたい。
  51. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電気事業が公益事業であることについては、さきに公共事業令できまつておりましたようなぐあいで、私どもも最も強い公益事業であるということを考えておるのであります。従いまして、電気事業につきましては、現在伊藤さんも御承知のように、九分割されてはおりまするが、しかしこれらにつきまして、会社になつておるから、一部は強い公益性と、またこの会社経営上の営利性というものを認めなければなりませんけれども、しかしあらゆる角度から見て十分な監督をして、今御指摘になつたように、日本の基幹産業としての大きな役目をさすとともに、また国民のために十分な奉仕をする機関であるべきであると考えておる次第でございます。
  52. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今度の電産ストが長期化して、非常に日本の工場、事業場、国民が迷惑と損害を受けておることは、大臣承知通りであります。新聞などでは、日本国家全体から行けば五十億くらいの損害を一日にこうむりつつあると言つております。これについてはいろいろ言つておりますけれども、少くとも一日に三、四十億円の損害をこうむつておることは、事実であると言われておるのでございます。このような厖大な損害を毎日々々受けて行きつつあるこの電産争議は、今なお解決をいたしません。そのために国家としても大きな損失を受けておることは御承知通りであるが、これらに対して一体大臣はどういうような手を打つてこれを処置しようとしておられるかを伺いたい。
  53. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お話になりました通り、この電産ストが非常な大きな損害を与え、また各企業が非常にこれがために困つておる、また国民も困つておるということについては、まつたく私どもも憂いをともにいたしておるのであります。しかしながら争議の問題につきましては、伊藤さんも御承知通り、私どもがこれに立ち入る権限を、通産省としては持つておりません。従いまして、私どもは労働大臣の所管のもとに、一日も早く労使双方がお互いに互譲の精神で円満妥結を希望する、こういうことを過日申し上げましたが、このことはなお今も強く、一日も早く解決せんことを私は熱望いたしておる次第でございます。
  54. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 需用家は、特に定額需用家というものは、電熱が薄くなろうとも、弱くなろうとも、あるいは停電させられようとも、その料金というものは会社からきちきちとられておる。しかるに需用家の方が何かちよつとした過失というか、あるいは小さな盗電というか、そういうようなことがあると、ただちにそれは六箇月前にさかのぼつて追徴金なり罰金をとられる。今度のように、この電産争議のために、あるいは工場など、あるいは事業場など、あるいは国民が、非常な損害を刻々にこうして大きく受けつつあるのであるが、これらの損害というものを一体だれが弁償するのか。もしこれが民間同士の間の私契約の関係にあるならば、当然損害を与えた方に賠償を請求し、これがとれるのであります。たまたまこれが公益事業なるがゆえにこれらがとれないということが、非常に問題になつておるようであるが、政府は何人がこの損害の賠償をすべきものであると考えておられるか。あるいは政府が何とかするのか。あるいは政府が電力会社に命じて何とかさすのか。この迷惑、損害に対してどのように一体行政措置をしようとしておられるかを明確にしてもらいたい。
  55. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは現在行われておる法律のもとで処理される以外にないと存じます。
  56. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたの今の御答弁であるならば、一体それは行政官庁として、しかも公益事業というものはあなたのもとにおいて監督指導をされておるのでございます。公益事業なるがゆえに、国民はこれに非常な犠牲を払い、国家も多大の協力をしております。しかるに公益事業などというその名のもとに、消費者だけがその損害、迷惑を受けるのに、行政官庁であるところの通産大臣がそれらに対して、このきわめて重大な今日の現段階において、明らかにされないということは、はなはだ私は遺憾であると思うが、この点に対してもう一度明らかにしてもらいたい。
  57. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 通産大臣は、現在行われておる法規のもとにすべて処理される以外に、いたし方がないと存じております。
  58. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは需用家を保護するということは、公益事業としては全然認めないでよろしいのかどうかを明らかにしていただきたい。
  59. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在の法規のもとにおいて許すだけの保護はいたします。
  60. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今のような公益事業に対するお考えであるならば、私どもは今上程されてありますところの法案の審議に対しても、重大な考えを持たなければなりません。いま少しこの公益事業に対して、政府はこのような考え方を持つて、国民の受ける損害、迷惑に対しては、今後臨むつもりであるというような点を明らかにされなければ、公益事業として国民はこれを承知することができません。そういう点に対して今大臣の御答弁されるところを見ますと、公益事業に対して一体監督指導というものをしておられるのかどうか。少くとも公益事業であるならば、あるいは監督をする、あるいは命令をする、あるいは取締りをする、そして国民に対するところの公益事業の奉仕の精神を十分尽させて行くということが、公益事業の使命でなければならぬと思うのであるが、こういう点に対しても、民間私企業と同じように、放任的な態度で臨んでおられるかどうかを明らかにしてもらいたい。
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在の電気事業は、伊藤さんも御承知のように、各種の多数にわたる監督規定や聴聞制度等があるのでございまして、私どももこの今出しておる立法につきましても、その公益性と、それから会社の営利性といいますか、それの調整を基本原則として、この案をお願いしておる次第でございます。
  62. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも大臣とはイデオロギーの違いか、考え方の違いか知りませんが、私はこの問題をイデオロギー的に今あなたと論争しておるのではありません。ほんとうに国家国民の公益事業に対する考え方を明らかにせなければならぬ。今いろいろ、そういう機関の協力を得てというとようなことを言われておりますが、従来からの公益事業委員会というものは、一般国民はこれを電気委員会と言い、電力会社委員会というほど極論をしております。それほどこの公益事業委員会というものは、従来ほんとうに消費者の立場に立つて考えてやつておらぬことを国民はよく知つております。そういう点から、むしろそういう一つの事業のやり方は、私企業団体のやり方と同じである。そういうように考えております。公益事業委員会とかなんとかいつて、名こそ公益でありますが、それはほとんど電気委員会であるというように極論をされておるのでございます。そういう点に対して、従来のやり方にそのまま政府としては、あるいは通産大臣としては、それに期待されて、そのままやつて行かれるつもりであるかどうか。それであるならば、私どもはこの電気事業のあり方に対して、私ども自身から非常な重大な考え方を持ち出さなければならぬと思うのであります。従来のそうした機関というものが、百パーセント公益事業委員会として、機関として使命を果しておると思つておられるかどうか、こういう点をひとつ伺いたい。
  63. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 過去の委員会には若干遺憾の点があつたかわかりません。けれども今度私どもがこの電気事業委員会と申しますこの委員会をつくります場合には、消費者代表なども入れまして、そうして今の公益的な意義というところを強く打ち出して参りたい、かように実は考えておる次第でございます。米穀側でもやはり審議会には消費者代表などが入つておりますので、そういつたことによつて、今伊藤さんが仰せなつたような、電力会社の委員会であるというふうなことはないように措置いたしたい考えを持つておるのであります。
  64. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 電力会社が今のストライキの問題を解決することを非常にしぶつております。というのは、私先般も本会議大臣に質問をいたしましたように、会社は今後一割五分の配当をするだけの事業の内容ができて来ておると言つております。一割五分の配当をする。株は三倍に高くなつて来ております。こういう状態に電力会社が恵まれて来ておるということは、これは国民の犠牲と国家の協力の力によるものでございます。たとえば電気料金の値上げにいたしましても、一応そういう委員会にはかけておりますけれども、その大部分は、電力会社が意図しておる点が、順次これらが実行されて来ております。そういう点から、さきに申し上げるように、この公益事業委員会電気委員会というふうに、新聞や国民などもそう考えておるのであります。そういう点から電力会社は名を公益事業にかつて、実は自分の資産、自分の事業の基礎、自分の株の三倍の値上り、一割五分の配当をする。そうして消費者には迷惑をかけつぱなし。消費者はその損害を訴えるところもない。しかるに今度のストライキにおいても、会社はこれらを解決するところの経営内容を十分持つておることを、ここに明らかに知ることができております。こういう点に対して一体大臣は、この争議解決になぜもつと積極的に乗り出されないのか。労働問題であるから労働大臣の所管であるとお考えになるかしらないが、一日に五十億円の損害を受けておつて、これはあなたの行政監督下にあるところの事業の損害でございます。こういう点に対して私はもつと真剣になつてもらいたいと思うのでございます。今申し上げるようなことで、会社のそういう内容というものは非常に充実をして来ておるのであるが、これらに対して大臣として、これだけの実力を備えた会社は、これはだれのおかげでこれだけの実力が備わつておるとお考えになつておるか。もし私が今申しますように、国民の犠牲と国家の力によつてこれらが充実して来ておるとするならば、このストライキ解決についても、私はおのずから解決の結論の出しどころというものが明確になると思う。さらにまた公益事業に名をかつて、私企業以上の殿様のお通りというようなことを一面やつておる。これらに対してこのままでいいとお考えになつておるか、こういう点を私はもつとつつ込んで明確にしていただきたい。
  65. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電力会社は過去長らく配当しなかつたのを、ようやく昨年の成績で一割五分の配当をするのでありますが、あれは御承知のごとくそれぞれの資本を集めてできておるのでございまして、それもございますから、従つて将来の資本蓄積とか、あるいは自己資金を調達するとか、こういう面から見て、現在の経済状況から見れば、一割五分程度の配当は私は妥当であると考えておるものであります。  それから今非常な損害を日々受けつつあるということについては、まつたく伊藤さんと同様に私も憂いをともにしておるものでございます。しかし日本の法制の上におきまして、私どもはいろいろ懇談はいたします。絶えず私ども労働大臣と懇談をいたしますが、私は争議に立入る権限を持つておりませんので、私としてはたびたび懇談をして、一日も早くこの争議の円満妥結を見ることを希望しております。特に、すでにもう経営者側では中労委の案をのんでおるのでありますから、さような点も私ども考えまして、できるだけ早く円満妥結を見まするよう、衷心からこいねがつておる次第でございます。
  66. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣は分割当時にさかのぼつて政府の責任を御承知でないから、私は答弁が責任の上に立つての答弁でないように思うのでありますが、この分割が行われますときに、吉田内閣において、たとえば今外務大臣をいたしております当時の岡崎官房長官、その当時の通産大臣等は、国会に対しまして、また国民に対しまして、こういうことを当時強く、分断の条件ともいうべきこととして約束しておりますことは、値上げをしない。それから地域差をつけない。あるいは電力はお互いに交流し合つて迷惑をかけない。サービスは監督指導のもとに百パーセントやらすことができます。こういうことを当時約束になつておるのでございます。ところが政府が当時約束をいたしましたこれらの約束というものは、一つも実行されておりません。こういうことを私はもつと通産大臣は、当時の責任者でありませんけれども、お調べを願いたいと思うのであります。こういうことを約束して分断したのであるが、約束は実行されておらないからして、公益事業の性格論について論じなければならぬということも起つて来るのでございます。こういう点に対して、私はさらに大臣は、一体おれの時代じやないからおれは知らぬと言われるかもしれないが、しかし自由党吉田内閣の継続でございますから、あなたの時代じやありませんけれども、行政の引継ぎはそのままでございますから、こういう点に対しましていろいろ疑惑を持たれている点もございますから、そういう時代の約束について、今後も忠実に果そうと考えておられるかどうか。おれの時代じやないから知らぬというようにあつさりされるつもりであるかどうか。その辺をもう少し明確にしてもらいたい。
  67. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 よく調査いたしまして、実情に即して、できるだけのことをいたしたいと考えております。
  68. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも大臣のその答弁はまるつきりのれんに腕押しのようなかつこうであります。従つてのれんに腕押しのようなことでありますと、この出ております法案につきまして、私ども考えなければならぬ点がございますから、この点はひとつお含みを願いたい。私どもは公益事業としてこれを理解し、納得できる上に立つて、これらの法案が審議され、扱われるということでなければならぬと思うのであります。従つて基礎的なものは、一つもわれわれが審議の過程において了解することができないということでありますならば、これらの枝葉ともいうべき問題についても、私どもは今この法案を審議してつくる必要があるのかどうか、つくつてまたどれだけの意義があるのかどうかという点も、あわせて考えなければなりません。私は大臣が時間の点を言つておられるようでありますから、もう一、二点だけできようはやめます。しかしなお質問は残します。  私が次にお伺いしたいと思いますことは、大臣は、公益事業はあくまで自由放任主義の立場に立つての公益事業の考え方であるか。公益事業である以上は、国家の統制と管理と指導のもとに置こうとされるのであるかどうか。この点は私は公益事業のあり方の上において一番大事な点であると思いますから、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  69. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今法案を出しておりますが、この法案は皆様の御了解によりまして、通過せんことを熱望いたしておる次第でございます。私どもといたしましては、電気事業は公益事業でありますから、これは今後も十分な監督をいたしたい所存でございまして、大体今仰せなつたような、自由放任にするという考え方は持つておりません。
  70. 坪川信三

    坪川委員長 伊藤君に申し上げますが、大臣は、たいへん恐縮ですが、万やむを得ない用がありますので、なるべく簡潔にひとつお願いいたしたいと思います。
  71. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは委員長にお伺いいたしますが、もう二、三点重要な問題を持つております。この点はどうも大臣がそわそわくしておつて、逃げ腰で答弁をしておられるのではちつとも急所に触れることができません。従つて私は、そのような態度で重要な法案審議に答弁をされておつたのでは、はなはだ迷惑至極でございますから、ひとつ次会に大臣に対する質問は留保いたすことにいたしますが、そのように委員長おとりはからいくださいますか。
  72. 坪川信三

    坪川委員長 承知いたしました。
  73. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは大臣に対する質問は、次会に留保いたします。
  74. 坪川信三

    坪川委員長 通産大臣は所用のために退席いたしますが、他に政府委員に対し御質問はありませんか。—速記をやめて……。     〔速記中止〕
  75. 坪川信三

    坪川委員長 速記を始めて……。本日はこの程度といたし、次会は明後十三日土曜日午前十時より大臣に対する質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時十分散会