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1953-03-11 第15回国会 衆議院 地方行政委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十一日(水曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 青柳 一郎君    理事 鈴木 直人君 理事 雪澤千代治君    理事 床次 徳二君 理事 門司  亮君    理事 横路 節雄君       阿部 千一君    相川 勝六君       生田 和平君    加藤 精三君       河原田稼吉君    黒金 泰美君       佐藤善一郎君    谷川  昇君       辻  寛一君    中井 一夫君       菅  太郎君    古井 喜實君       森田重次郎君    大石ヨシエ君       平岡忠次郎君    赤松  勇君       西村 力弥君    川村 継義君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         人事院総裁   浅井  清君         国家公安委員長 青木 均一君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部 警 視 正         (総務部会計課         長)      中原  靖君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林与三次君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君         総理府事務官         (自治庁財政部         財政課長)   奧野 誠亮君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 三月十一日  委員舘林三喜男君及び中野四郎君辞任につき、  その補欠として床次徳二君及び菅太郎君が議長  の指名で委員に選任された。 同日  理事森田重次郎君の補欠として床次徳二君が理  事に当選した。     ————————————— 三月十日  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六九号) 同日  地方自治体警察維持存続に関する請願水谷昇  君紹介)(第三八四〇号)  同(加藤清二君外一名紹介)(第三八四一号)  同(生悦住貞太郎君外一名紹介)(第三八四二  号)  同外四件(小林かなえ君外二名紹介)(第三八  四三号)  同外一件(五十嵐吉藏紹介)(第三八四四  号)  同(田中久雄紹介)(第三八四六号)  同外一件(山手滿男君外二名紹介)(第三八四  七号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第三八四八号)  同(黒金泰美紹介)(第三八四九号)  同外二件(小川平二君外一名紹介)(第三九〇  七号)  同外三件(羽田武嗣郎君外一名紹介)(第三九  〇八号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第三九〇九号)  同外三件(早川崇君外四名紹介)(第三九一〇  号)  営業用トラックに対する自動車税軽減請願(  中峠國夫紹介)(第三八五〇号)  同(永田良吉紹介)(第三八五一号)  同(關谷勝利紹介)(第三八五二号)  同外三件(植木庚子郎君紹介)(第三九一一  号)  同(廣瀬正雄紹介)(第三九一二号)  同(江崎真澄紹介)(第三九一二号)  高級旅館遊興飲食税率引上げ反対に関する請  願(大石ヨシエ紹介)(第三八六三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  警察法案内閣提出第一一二号)  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第一五六号)     —————————————
  2. 青柳一郎

    青柳委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。すなわち理事森田重次郎君より理事を辞任したい旨の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青柳一郎

    青柳委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  つきましては理事補欠選任を行いたいと思いますが、これは投票の手続を省略し、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 青柳一郎

    青柳委員長 御異議なしと認め、床次徳二君を理事に指名いたします。  次に、小委員補欠選任についてお諮りいたします。すなわち委員の移動に伴い競犬に関する小委員に欠員を生じておりますので、その補欠選任を行いたいと思いますが、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  5. 青柳一郎

    青柳委員長 御異議なしと認め、加藤精三君、黒金泰美君及び床次徳二君を指名いたします。  休憩いたします。午後は一時より再開いたします。     午前十一時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  6. 青柳一郎

    青柳委員長 再開いたします。  警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。門司君。
  7. 門司亮

    門司委員 私がきよう人事院総裁に来ていただきましたのは、この法案臨時措置といたしまして、実は給与関係で例の国家公務員警視以上がなるわけでありますが、それについては二十八年度に限つて給与自治警察を持つております当該市町村から従前通り支払うようになつております。その関係において、国家公務員であるものに地方自治体から給与を支払うということは、現在の国家公務員法建前から参りますと、当然国家公務員に対しては国が給与を支払うべきだ、いわゆる任免権給与を支払いまするものとが相一致しないと、人事関係については非常に無理が来やしないか、私はこういうふうに考えるのでありまするが、この点についてひとつ人事院総裁の御意見を聞かしておいていただきたいと思います。
  8. 浅井清

    浅井政府委員 お答えを申し上げます。まことにお示しの点は重要だと思つております。国家公務員ならばその給与国家が負担すべきもの、地方公務員ならば地方公共団体が負担すべきもの、これが筋でございます。でございまするからただいまのお尋ねのようなことが起るんだと思いまするが、この警察法も本筋としてはさようになつておるのでございまして、ただ二十八年度において特別のこういう異例措置が講ぜられておるのだろうと思つております。その特別の必要があるかどうかは、人事院から申し上げるべき筋合いではないように思つておるのでありますが、これはいわば経過措置でございますから、人事院といたしましてもこの点に関する限りやむを得ないもの、かように存じております。
  9. 門司亮

    門司委員 私か聞きますのは——大体私どもはそういうことになると思いますが、問題になりますのは国家公務員法警察法との関係であります。国家公務員法施行は二十三年の七月の一日でありまして、警察法施行は同じ二十三年の三月七日であります。従つて三月七日にできた法律の中で、今まで当局意見を聞いてみますると、これは現行警察法附則の八条にかつてこういう措置をとつたことがあるのであります。大体これが当局意見でありまして、警察法を最初に施行いたしまする場合に、附則の八条には地方公共団体財政の確立ができるまで従前通り負担区分をする、こういうことになつてつたのであります。その当時は御存じのように国家公務員法がいまだ施行されない前であります。従つて国家公務員地方公務員というはつきりした区分がわけられていないときでありまして、同じように従来の警察制度におきましては、国がある程度支給しておつた人もないわけではないのであります。府県におきましては課長級くらいは国の支出の警察官がおつたわけでありまして、そのほかは都道府県支払つてつた警察官がおつたのであります。こういうことで従来の警察法制定当時においては、私は附則の八条のようなのを一応承認することができたと思います。その後におきましては、先ほど申し上げておりまするように警察法あとから国家公務員法施行されておりますので、私は当然この国家公務員法を重要視すべきであつて現行警察法の第八条の特例は、この場合当てはまらぬというように大体解釈をするのであります。従つてもう一応この点についての人事院総裁の御所見をお伺いしたいと思います。
  10. 浅井清

    浅井政府委員 まことにごもつともでございまするが、かつてこれと同じような経過的措置をいたしましたのは、お示しのように国家公務員法施行前のことであります。これは国家公務員法施行後に起つたのであるから、その点はいかがであろうかとのお尋ねでございまするけれども国家公務員法施行後におきましても、筋としてはこの警察法もちやんと国家公務員法制度に合せているのでございまして、ただこれは一時的の措置でございまするから、これはかまわないじやないかと思つております。もしこれが恒久的にかような複雑なることがあるといたしまするならば、これは私どもとしても何か考えなければならぬと思いまするけれども、これはすぐに消滅する一時的のやむを得ない措置だと、かように考えております。
  11. 門司亮

    門司委員 そうしますと人事権の問題でありますが、人事権が御承知のように国家の手に実は移るわけでございます。そういたしますと人事異動国家警察関係異動が行われる、現在施行しておりまする市町村自治警察範囲外に、もし人事異動が行われました場合におきましては、その人に対する給与は、あるいは給与を受ける人は違つて来るかもしれませんし、給与の額もさらに違うかもしれない。しかしそういうものについての支給をやはり地方公共団体がやる、そういうようにこの法律をそのまま解釈いたしまするとなるのでありますが、しかし現行地方公務員になつておりまするものが国家公務員になつて、そうしてそれが他に転勤した場合においても、人事異動があつた場合においても、なおその地方自治体人事異動があつた人に対して給与を支払うということが、この法律建前から行つて正しいかどうかということについて非常に疑問を持つておるのであります。雇つておる人が減つたりふえたりすると思う。こういう関係についてもやはり自治体はどこまでもその責任を負わなければならないか。
  12. 浅井清

    浅井政府委員 人事権給与との関係の問題に帰着するように思つております。これは国家公務員でございまするならば人事権国家にあるであろうし、地方公務員であるならば地方公共団体にある。また給与国家公務員ならば国家が負担し、地方公務員であれば地方公共団体が負担するのでありますから、給与支払者人事権と合致するのが筋だろうと思つております。しかしながら異例といたしましてはそうでないのも現行制度上にはあるにはあります。たとえば地方自治法附則の八条の公務員、これは国家公務員ではございまするけれども、その指揮監督地方都道府県知事がやるというような人事権給与とが離れることが異例としてはあるようでございますから、この場合におきましても人事権給与とは必ず合致しなければならないということ、それは望ましいのでございまするが、これはいわば経過措置でございまするからやむを得ぬかと思つております。
  13. 門司亮

    門司委員 ちよつと私の質問と違うようでございますが、私はややこしく申し上げたのでわかりにくかつたと思いますが、こういうことであります。たとえばAの警察におります者が国家公務員になる。そういたしますと、それがそのまま一年間そこに居すわつておればいいのでありますが、しかし任命権者が違つて参りますので、人の異動が私は必ず行われると思う。異動が行われた場合においても、なおかつそれについてその地区が支払わなければならぬかということ、これを具体的に言いますと、予算の面で給与が必ず同じならばいいのですが、予算の面で給与が違うことが起ると思う。その場合の予算の執行に対しては非常に迷惑しないか、こういうことができるかどうか。
  14. 浅井清

    浅井政府委員 これは国警の方からお答えを申すのが筋だろうと思います。
  15. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの点は、今度の改正警察法では、従前組織に属するものについては、従前のまま負担する、こうありますので、たとえば市警区域の中に現在奉職しております者が、制度改正の後において、今年中に国警区域の方に転任したという場合には、これは国の方で給与を負担いたします。従つて人についているものではございませんので、その点誤解のないようにお願い申し上げます。
  16. 門司亮

    門司委員 そう長くは聞きませんが、人についているものでないということは私も承知しておりますが、予算の面で、これは当該予算でやれ、こう書いてありますので、もし人間がかわつて参りまして、給与の額に変更ができて来る場合についても、地方公共団体が支払わなければならぬ義務があるのかどうか、予算範囲外に出てもやつていいかどうか。
  17. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 それは予算範囲でなければ人事異動はできませんので、予算がないところへ転任を命ずるということは、事実上できませんから、いたしません。さよう御了承願います。
  18. 門司亮

    門司委員 大体それでわかりました。私の意見あとで申し述べることにいたしますが、結局地方追加予算を組まなければならぬことが必ず出て来ると思う。  次に、これはちよつと総裁に聞くのが適当かどうかわかりませんが、一応人事院の人の関係でありますから、聞いておきたいと思いますことは、この法案によりますると、現行の町村の公安委員会——これは市町村の市を除くと書いてありますが、市町村公安委員会は、この法律施行されますと、都道府県公安委員会下部組織になるという文字を使つております。これは非常に重大な問題でありまして、地方自治体で選任いたしましたものが、他の自治体の選任いたしたものの下部組織になるということが、組織の上において適切であるか、そういう人事行政ができるかどうかという問題について伺いたい。
  19. 浅井清

    浅井政府委員 これは行政組織自体の問題でございまして、人事院といたしましては所管外と思いますので、そちらの関係の方からお答えを願いたいと思います。
  20. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これはこの法律施行によりまして、国家公安委員会の性格が変更するわけであります。この法律案施行前までは、市町村公案委員会として現在の公安委員会職務権限を持ちまするが、この法案施行になりますると、その職務権限がかわつて来る、この法律によつてかえるわけでありますから、その点はさしつかえないと思います。
  21. 門司亮

    門司委員 私はそんなことを聞いているわけじやない。行政組織上こういうことがいいか悪いかということを聞いている。斎藤君に聞いているのではないのであつて、また斎藤君に答弁ができるはずはないと思う。従つてこれは委員長にお願いするのでありますが、私は行政組織に関する関係大臣なりあるいは自治庁長官でもよろしゆうございますが、ひとつ出してもらいたい。この問題は非常に重大でございまして、現在の自治法によりますと、第六条並びに第七条に書いてあります通り、普通の地方公共団体というのは、都道府県並びに市町村であつて、その間には何らの差別がないのであります。都道府県は必ずしも市町村監督官庁ではございません。昔の組織とは非常に違つて来ておる。しかるにこの場合におきましては、都道府県公安委員会がその組織の下に市町村公安委員会を置くということになると、明らかに都道府県上級官庁の様相を示して来ております。私はその点を聞いておるのでございます。こういうことがいいか悪いかということであります。現行自治法には、御承知通り地方公共団体あるいは普通公共団体としては、都道府県並びに市町村ということがはつきり書いてあつて、しかも現在の思想上から申しますならば、市村町が、憲法九十二条に書いてある地方自治体の本旨に基いてやるとすれば、地方自治体のその基本単位というものは、市町村であるということに大体意見は一致しておる。その場合にその基本単位でありまする市町村が選んだ公安委員が、連絡調整の機関であり、さらに補完行政である、府県公安委員会下部組織であるということがはつきり書いてあるということは、私は自治法に対する大きな侵害であり、自治権に対する大きな侵害であると思う。従つてこの点を聞いておるのでありまして、委員長におかれましては、この点の答弁のできる、たとえば行政管理庁の長官でありますとか、あるいは自治庁長官に出ていただきまして、この点の答弁をしていただきたいと思います。今おいでにならなければ、答弁あとに保留いたします。
  22. 青柳一郎

    青柳委員長 承知いたしました。
  23. 門司亮

    門司委員 それから立つたついでに、もう一つ申し上げます。これは先般要求いたしました吹田事件参考人の問題であります。これにつきましては、人選その他について、今申し上げてもよろしゆうございますが、できるだけ委員長においては広汎にこれを呼んでもらいたい。私がこういうことを要求いたしますのは、委員長も御承知通り、今日までの説明の、警察法改正の必要があるということの最も大きな事例として、吹田事件が出されております。従つてわれわれはこの吹田事件を最後まで究明することによつて警察法改正が是なりや非なりやということの判断を下すべきだと考えておる。従いましてどうしてもできるだけ大勢の人を呼んでいただきまして、これを参考人として意見を徴することが、この警察法を審議する上に非常に便利であると考えます。この前私要求いたしておきまして、委員会では一応了承されておりますが、その人の範囲につきまして、今私の方から申し上げましようか。
  24. 青柳一郎

    青柳委員長 その問題は、また理事会で諮つて、どの程度呼ぶかということについて決定いたしたいと思いますが、いかがでございましようか。     〔「今はつきり言つたらいい」と呼ぶ者あり〕
  25. 門司亮

    門司委員 それでは私の方から要求してもよろしゆうございますが、一応申し上げて、この範囲で呼んでいただきたい。それはこの問題で、当時大阪国警本部におられまして、警務部長でありました三宅という警視の人であります。もう一つ国警関係におきましては、大阪三島地区地区署関係駐在巡査の方を一人呼んでいただきたい。これは径路が、国警の管轄内を通過いたしまして、この暴徒の諸君吹田に集合したことになつておりますので、その間の事情を聞きたいと考えておるのであります。それからさらに吹田市の市警察署長日野章一君を呼んでいただきたい。それから大阪警視庁福島署長さんでありますが、この人も当時これに最も密接に関係のあつた人だと考えておりますので、ぜひ呼んでいただきたいと考えておるのであります。それから豊中の市の警察長であります。これらの諸君は、いずれも吹田事件に対して、応援その他の関係で密接な関係を持つておる人であると考えるからであります。さらに毎日新聞の人でありますが、当時の新聞報道その他が正確であるといたしまするならば、やはり私どもは、毎日新聞に当時これについて最もよく書かれておりました畑山博という人を、ぜひこの機会に呼んでいただきたいと考えておるのであります。それからさらに大阪市の警視庁警備課第二係長であります大南という人がおるのでありますが、この人も呼んでいただきたい。当時大阪市警応援を受けました関係から、その当時の状況を十分知りたいと考えておるのであります。さらにできまするならば、これらの問題を総合いたしましてこれを判断するための大阪管区警察学校の教官でありまする中間氏、大体これくらいの人のお集まりを願えば、この事件の究明はできるのじやないかというように考えておりますので、ひとつ委員長におきましてしかるべくおとりはからいを願いたいと思います。
  26. 青柳一郎

    青柳委員長 次に古井君。
  27. 古井喜實

    古井委員 私は警察法の問題につきまして犬養大臣その他御関係の方に予算委員会あるいはその分科会である程度質疑応答を重ねまして、説明伺つた点も多々あります。同時に重要な点について、いまだに得心の行く御説明を伺わない問題も残つております。またその後における本委員会における同僚委員諸君の御質問によつて、前後疑問を生じた点もあるのであります。つきましてそれらの点について御質問をいたしたいと思います。  その前に人事院総裁かお出ましでありますので、簡単なことを総裁にお伺いしたいと思います。同じ種類の行政事務について、国家公務員地方公務員両者を組合せて人事組織をつくる、こういう体系人事組織体系としてすつきりした好ましいものである、合理的なものであるとお考えになるかどうか、この問題であります。少し説明を加えたいと思います。昔官吏と地方自治体の吏員との間に差別観念があつたのであります。今日この数年の間にそういう差別観念というものは幸いにしてなくなつたと思つておるのであります。両者を組合せ、かつまた上級の者に国家公務員の身分を与える、こういう体系をつくつた場合には、私は再びここに差別観念を呼び起すということを憂うる一人であります。そういう同じ行政の仕事のために、上は国家公務員、下は地方公務員というような組合せの制度を設けることを合理的とお考えになるかどうか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  28. 浅井清

    浅井政府委員 政府委員といたしまして、政府の提案いたしておりまする法案の批判をいたすことは、ちよつとできかねるように思つております。しかしながらお尋ねの点の、一つ組織の中に国家公務員地方公務員とが入りまじつておるということは異例であろうと思つております。何がこのような異例を必要とするかは、これは私から申し上げる筋ではないように思います。
  29. 古井喜實

    古井委員 異例であるということは普通でないということであつて当然でありますが、これに伴う恐しい弊害があるということをお考えにならぬかどうか。そういう体系は合理的であるとお考えになるかどうか。異例であつても合理的だとお考えになるのか、不合理だとお考えになるのか、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  30. 浅井清

    浅井政府委員 現行制度異例と申しましたのは、私が政府委員としてお答えし得る限界であろうと存じております。
  31. 古井喜實

    古井委員 それでは人事院総裁としては不合理であるという御見解と了承してよろしゆうございますか。
  32. 浅井清

    浅井政府委員 さようなことは私は速記録にとどめなかつたつもりでございます。
  33. 古井喜實

    古井委員 それならば合理的だというお考えだと了承してよろしゆうございますか。
  34. 浅井清

    浅井政府委員 それもまた同様でございます。
  35. 古井喜實

    古井委員 人事院総裁意見のないお方だということになるのでございますが、私は今の警察法について、この案をどうかということを伺つているのではありません。そういうこともあり得ると思うのでどうかということを伺つておりますが、これは御答弁の限りでなければけつこうであります。多分奥歯に物のはさまつたような御答弁は、おかしい、これはどうも妙な体系だという御意味と解釈するよりほかありませんが、念のためにもう一ぺん伺つておきます。
  36. 浅井清

    浅井政府委員 国会法上、政府委員国務大臣を補佐するように相なつておりますので、その限度においてお答えを申し上げることができるばかりでございます。
  37. 古井喜實

    古井委員 おそらく説明がつかぬ、りくつが通らぬのでお逃げになるのであるということは十分想像がつきますから、この点は確かに不合理であると了承いたしましよう。  そこでもう一つ、あまり人事院総裁に御迷惑をかけてもいけませんが伺つておきます。府県公務員というものは府県に対して勤務義務を持つておる。これに対応して給与を請求する権利を持つておるはずであります。そこでもしこの給与が十分に与えられなかつた場合、これについて異議があれば争訟の方法まで保障せられておるのであります。そこで府県に対して勤務義務を負い、給与の請求権を持つておる公務員が、かりに市町村の経費でもつて給与を支払われるという異例な暫定的な措置があるからといつて府県に対する権利と義務を失うかどうか、この点であります。市町村が支弁するからといつて府県に対する権利を失うという結論にはならない。両方に対して請求権を持つということもあり得るのであります。のみならずこの市町村があやふやな、安心のつかぬ相手である場合においては、府県に対して給与請求権を保障しなければ、公務員は安心して勤務ができないのであります。それで市町村が支弁義務を負うからといつて府県に対する請求権がなくなるかどうか、この点であります。またその場合に市町村だけしかないということであるならば、この給与が適正に与えられなかつたという場合は争いができるかどうか、これは他の政府委員からお答えつてけつこうですが、人事院総裁から大筋の点だけ御答弁を伺つておきたいと思います。
  38. 浅井清

    浅井政府委員 これは経過措置の問題で、一つの盲点になつておるのではないかと考えております。私は実は御質疑の点まではよく考えておりません。何となればこの経過措置は、人事院として相談にあずかつていないのでありますから、さように仰せられますとちよつと窮するのでございますが、それはやはり給与を支給する方に請求すべきものであろうかと思つております。なお考えまして不適当であるならば変更いたします。
  39. 小林与三次

    ○小林(与)政府委員 ただいまの御尋ねは、法律上大分疑問の点もあるかと思うのでありますが、結局給与について異議の申立てのできる法律上の根拠は、地方自治法の二百六条に書いてあるわけでございます。二百六条によりますと「給与その他の給付に関し、異議のある関係人は、法律に特別の定がある場合を除く外、これを普通地方公共団体の長に申し立てることができる。」とあります。そこでこの規定の解釈上「普通地方公共団体の長」というのは、今の場合にたとえば市から現実に給与支払つておるものに対して府県が入るか入らないか、こういう解釈論になろうと思うのでありまして、解釈としては非常にむずかしいことになると思うのでありますが、単に給与の負担団体と、それから給与の決定権が今の場合だと県にあると考えざるを得ませんから、そうすれば県に対して申立てができるのではないか、一応そう考えざるを得ないのではないかと考えております。これは非常にむずかしい問題でありますが、ちよつと今の私の答弁に少し誤解があつたようでありますが、警察法附則では、給与の決定権が給与条例の定めるところによつて市にある、こういうふうに警察法附則二十五項で、給与についてはすべて従前の例にならつて市町村の条例によるものとする、こういう建前になつておりますれば、市町村の長を意味するものだと考えるのが妥当な解釈ではないかと考えております。
  40. 古井喜實

    古井委員 これは事務的な問題になりますから、あまり深く論じたくはありませんけれども自治法異議を申し立て得る相手は、その身分の所属する団体であるというのが、すなおな読み方だろうと思うのです。それで身分は府県に属しているが、市町村に対して異議を申し立て得るということのためには、おそらくこの争訟のための規定がいるのではないかと思う。さもなければ市町村に対して異議の申し立てができないことになるのではないかと思うのです。私はこれは小さいようで実は大きい問題だと思つておる。給与が不安定だということであるならば、多数の警察官の大動揺が起ると私は思つておる。半年の間多数の警察吏員というものを不安の状態に置くこのような暴挙を、どうしてしなければならぬかということが私にはわからない。この点が私はおそらく欠けておるのではないかと実は思つておるのであります。しかしこれはなお時日もありましようから、はたしてそうかどうかは御研究の上で、また御答弁を願いたいと思います。  次に青木公安委員長にひとつお伺いしたいと思います。今度の警察法法案によりますと、中央には国家公安監理会というものができるのでありますが、これは諮問機関になつております。そこでこの諮問機関になつた場合に、人事の問題について意見を聞かれる。しかし人事の決定権は警察長官が持つのであります。こういう立場のもので不当な人事が行われる場合に、十分これに対して抑制して、不当な人事を行わせないようにできるとお考えになるか。つまり警察法を見ますと、第二条、第三条に不偏不党、公平中正ということを繰返し書いてあります。なぜこう二度も書いてあるかということを見ると、よほどこの法案によれば不偏不党、公平中正が乱れるおそれがあるということを心配しておられるに相違ないのであります、言葉で書いておいてこれを補おうということでありましようけれども、まさにこの法案の欠陥の一つは政党の警察になるという恐ろしい危険をはらんだ法案です。それに対してさすがに気がとがめると見えて、不偏不党、公平中正ということを繰返してお書きになつておる。書いたからといつてそうなるものでもないのであります。  そこで今日の段階は政界もいわゆる内紛時代であつて、政党対立、政争の時代まで入つておりません。ごらんの通り内紛時代であります。占領時代にはロボット時代であつて政府といい、あるいは国会といつても、とにかく司令部が実権をにぎつてつたのでありますから、ことごとくロボットでありましよう。その余波を受けてか、まだほんとうの政党政治あるいは議会政治になつておらぬと思う。とりあえずの段階は、率直に言えば内紛時代、やがて来るべき時代は政党と政党との相当激しい抗争時代であると思う。そういう段階に来ました場合には、この法案をもつてしては、全国の警察が与党の警察になる、与党の走狗になつてしまうということを私は憂えておる一人であります。これはとうていこの法案では免れぬ重大な欠陥だと思つているのであります。ここでお伺いしておきたいと思いますのは、青木委員長はこの法案における公安監理会の制度をもつてして、警察の不偏不党、公平中正、これを保証できるとお考えになるかどうか、この点を御経験からひとつお伺いしたいと思います。
  41. 青木均一

    ○青木政府委員 ただいまのお話は、私自身はこのたびの国家公安監理会というものは、今までの国家公安委員会と性格が非常に違いまして、これによつて万全は期せられないというので、実は反対の気持を、あるいは賛成しがたい気持を持つておるものでありますから、その案の内容について聞かれますと、はなはだ立場上自分も良心的に苦しいのでありますが、私がまず考えましてお答えすれば、おそらく立案の当事者におきましては、国家公安監理会という今度の新たな制度によつて、十分御疑念の向きが払拭できる、心配はないとお考えになつて立案されているのだと思います。しかしながら私の経験と私の常識ではさよう考えませんので、先ほどちよつとお話がありましたように、公安監理会というのは、文書で拝見しますと諮問機関といいますか、あるいは監察機関、民間の言葉で言いますと監査機関のような形になつております。どつちかと言いますと、事後的にものを判断する機関の要素が多分にあるように思うのであります。人事権その他につきまして当該長官から御相談を受けまして、さような機関が積極的にそれはいけない、これはいけないと常識として言えるものかどうか。当該長官が相当の責任を持つて事を遂行して行こうとするときに、監査的の立場におるものが一々くちばしを入れるものではない、これは常識であります。従つて多少の異論はありましても、御注意はするかもしれませんが、まずその当該長官考え通りやらせる。それで間違つてつたときに初めて口を出すというのが普通の行き方ではないかと思います。そうしますと、どうしてもただいま御心配のように事が起きてしまつて、あれは不適任であつたというようなことを発見するというおそれが多分にあるのではないかと私は思います。なおその事前に何とでも注意できるじやないかというお考えもあるかもしれませんが、人事は広汎にわたりまして民間から出ました公安監理会の委員諸君は詳しく知つておる人はほとんどありますまいと思います。多少欠陥を耳にしましたところで、先ほど申しますように、それをもつて長官の推薦を阻止するということはなかなかあり得ない。従つて文章の上では非常に簡潔を期しておるようになつておりますけれども、はたして実際にやりました場合に、事前にそういう問題についてまず責任を果し得るかということについては、私の常識経験等から申しますと、かなり困難ではないかと思います。
  42. 古井喜實

    古井委員 遠慮しながらのお言葉でありますけれども、要するにこの公安監理会の機構では保証しかねるという御趣意のように拝聴いたしました。  そこで関連してお伺いしたいのでありますけれども国家地方警察公安委員連絡会というものが、昭和二十八年二月二十一日にこの法案要綱に対する意見を決定しておるようでありますが、この意見は御承知でありましようか。御承知であるならばこの意見には御賛同なさいますか、どうでありますか。その点をお伺いいたします。
  43. 青木均一

    ○青木政府委員 よく存じております。その意見は私どもも賛成いたします。
  44. 古井喜實

    古井委員 この意見によりますと、「最終的に閣議決定を見た警察法改正要綱は、根底において、民主警察の精神を否定せんとするものであり、われわれの絶対に容認し得ないところである。すなわち、該要綱は民主警察を育成するの意図を示しつつも、その実質において、警察の中央集権化を来し、警察の政権従属化をもたらすものであり、警察国家復元の兆が濃厚に織り込まれているものと推断せざるを得ない」云々とありまして、今次の改正要綱は「いかなる改正構想に基く成案なるや、まつたく理解に苦しむものであり、これを各項目にわたつて検討することはきわめて困難である。」という意見であります。この意見に青木公安委員長は御賛同ということであります。  そこで私は、今日青木委員長にこの問題をこれ以上御質問を重ねることはいたしません。ただ問題は、今日おいでになつておりますのは、公聴会の公述人としておいでになつたのではありませんので、政府委員としておいでになつておる。そこで政府部内、つまり大臣を補佐する政府委員という立場でおいでになつている中に、かかる意見があるということは明らかな事実である。政府委員の所見というものに対して、政府は責任をお持ちになるはずであると思う。またそれあるがゆえに先ほど人事院総裁はまことに逃げ腰でもつてはつきりしたことを言わずにお帰りになつた政府の部内にかかる意見があるということは、政府自体がお認めにならなければなりますまい。政府部内の意見の不統一ということは明瞭であると思うのであります。これは私は青木委員長に伺うのではありません。政府を代表される責任の立場の方にどうお考えになるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  45. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。この問題に限らず、財政の問題、公債の問題、あるいは社会福祉の問題について政府ではそれぞれの立場からいろいろの意見を活発に申します。また活発に自己の信ずることを言つてくれなければ政治に活気がつきません。しかしその最終の判断は、国務大臣の責任においてやるのでありまして、それが責任政治のよいところであると考えます。
  46. 古井喜實

    古井委員 議論の活発なことは部内でおやりになればよろしいことである。国会に対して二、三の異なつた意見が現われるということは、国会に対して政府の見解が区々であるということである。この点は政府部内で御論議をなさることは、いかに違つた意見を持つて活発におやりになつてもよろしい。しかし国会に対して意見が違うということは、犬養大臣がどう弁明なさつても筋が通らぬのじやございますまいか。
  47. 犬養健

    犬養国務大臣 青木国家公安委員長の御意見は、平生つぶさに伺つております。古井さんも多分国家公安委員長がここでお述べになつた意見を御聴取なさつた一人であると思いますが、そのうち国家公安委員会に関する意見が私どもと異にしております。地方警察長の任命はやはり中央から一本に任命した方がよい、この方が命令の貫徹、組織の一本化についてよいという御意見については、十分に尊重してこれを採用しているつもりであります。
  48. 古井喜實

    古井委員 ただいまの点につきましては、私はこの機会にさらに論及することは一応お預けにしまして、後日のことにいたしたいと思いますので、青木委員長には私の質問はありません。  犬養大臣にお伺いいたしたいことは、その後この警察法案に対する輿論の空気はまことに不利であると思います。これに対して賛成しておる者は、今のところほとんどないのであります。知事会も反対であります。市長会も反対であります。全国自治体公安委員会連絡協議会いわゆる自公連も反対であります。加うるに国家地方警察公安委員会連絡会いわゆる国公連というものも反対であります。ジャーナリズムその他一般輿論方面の意見もことごとく反対であります。現にわれわれいただいた警察制度改革に関する世論というこの資料によりましても、賛成の論は遺憾ながら見つからぬのであります。かかる状況にあるのであります。私は警察制度の現状というものは、改革を要すると思つておる一人であります。やまく欠陥がある、改革を要すると思つております。しかるにかかわらず何ゆえにどれもこれもこぞつて反対の空気になつてしまつたか、これは言うまでもなく政府の提案の内容が悪いからであります。私は今日討論をするのではございません。質問をいたすのでありますけれども、この政府の案は少し飛躍し過ぎている。またあいまいでごまかしが多い。またそう申しては悪いけれども、ずさんであります。そこでせつかく必要な改革を、政府の案のゆえにはばんでしまうのであります。実にこれは残念なことだと思います。内容においていろいろ論じたい点もありますし、今日までも論じた点もございます。今日も基本的な点についてなお伺つて明瞭にしたいと思いますけれども、この警察法案に対する空気というものをお考えにならないと、せつかくの改革というものがだめになつてしまう。これは深刻にお考えになる必要があると私は思うのであります。他の方はどうお考えになるかわかりませんが、私は改革必要なりと思います一人でありますがゆえに、改革問題が暗礁に乗り上げて行くということであれば、残念でたまらないのであります。質問をいたします意味も、ことさらに私が野党でありますからあげ足をとつてみよう、反対をしてみようという、そんなけちな気持は持つておりません。しかし欠陥とする点を明らかにして、政府にも与党にも考えていただかなければならないという気持から私は申すのであります。従つてまずい点はまずいと、十分に御反省になつた方がよろしい、そういうつもりからであります。  そこで今度の新しい法案による警察の性格ということについては、何べんか論議を重ねましたけれども、いまだに私には明らかでないのであります。府県における警察は一体府県自治体警察であるかのごとくおつしやるのでありますけれども府県自治体警察でありますか、自治体警察でない別個のものでありますか、違うものならば違う、そうならばそうということを、ひとつはつきりおつしやつていただきたい。
  49. 犬養健

    犬養国務大臣 古井さんのだんだんの御意見をつつしんでよく伺いました。またあなたが警察組織を最良のものであれかしと平生から念願しておられまして、決してあげ足をとるために、野党であるからどうのこうのと言われるような方でないことは、十分私にもわかつております。非公式ながらあなたの御意見を伺いましたときにも、十分な敬意をもつて拝聴したつもりであります。しかるに不幸にして考え方が違うのでございますか、先ほど御指摘のごとく、いろいろの公共団体その他反対の陳情があることは、十分私も承知しておりますし、それらの団体の人たちには長くて二日間、短くて数時間、ゆつくりお目にかかつて、その陳情の御趣旨の重点を伺つているのであります。大体あなたは一番よく御承知と思いますが、この陳情の文書というものは、最大公約数を集めたものでありまして、その意味で公の値打ちが一方においてあるのであります。十分に文意に尽せないところをひざを突き合せて、私は親しく伺つておるつもりであります。たとえばここにおいでになつて御迷惑とは思いますが、国家公安委員会連合会のお読み上げになつた文書を拝見いたしますと、警察法改正というものは、文書を見るのもいやだ、もう手のつけようがないというふうに拝聴いたしたのでありますが、ここに親しく御臨席になつての青木公安委員長の御意見を伺いますと、中央の公安監理会については、御反対の意見でありますが、あなた方が一番御心配になつておられます地方警察長の任命は、中央の方でした方がよろしいのだというような率直な御意見の開陳が、昨日ここでありまして、どうも印刷物と少し違うところがある。そういうように、印刷物というものは、十分に私も尊重して、これは輿論の反映として拳々服膺する心持においては劣つておらないつもりでありますが、親しくお目にかかりますと、反対陳情の重点というものがおのずからわかりまして、その重点については大々的にこれを汲み取つているつもりなのでございます。これは経験の深い古井さんはよく御体験のことがあつたと思います。  次に、府県警察がぬえのようでわからぬじやないか、一体これは何物なんだという御質問でありますが、たびたび申し上げますように、これは自治体である府県の機関でありまして、府県知事が任命をした道府県公安委員会の管理のもとで警察長が働くことになつております。それでは完全自治警察か、さにあらず、ということを本会議でも申し上げたのであります。と申しますのは、改正をいたすに至つたどもの心持が、現在の国警はあまりに国家警察的であつて、自治的潤いに乏しく、今の自治警察はあまりに完全自治に過ぎて、国家的性格を含んでいなすぎる、こういうことを目頭に私は申し上げたわけでありまして、それを全部白紙にかえして府県の色の濃い警察をつくる、府県の機関である警察をつくるが、但し一点国の治安に関しては、国の中央から命令、指令する範囲法律に厳然と定めて、そのわく内において、この暴力主義的破壊活動なんという昔夢にも思わなかつた地下運動が起る現在において、そういうことは中央から指令をする。しかしその指令というものは、ふだんの町の強盗とか軽犯罪とか、交通事犯、そういうことは地方の自治にまかせよう、しかし暴力主義的破壊運動、火炎びん的破壊運動というものは、やはり中央から指令をして、同県の警察、済まないが隣の県にすぐ出動してくれというようなことを、国家的立場から言う余地を残したい。但しその余地が無限大に広げられては弊害があるから、この警察法第六条第二項において政府はつきり言つて、この国家的出動の範囲というものをみずから縛ろう、こういう意味において国家的性格を含んでいるが、大体のことは府県にまかせるという意味で、府県公安委員会の管理のもとに警察長が働くという形が表わすがごとく、それは府県の機関である、こう申し上げておるのであります。古井さんのように非常に論理に透徹した方の頭からいうと、割切りたいというお気持があるように拝察いたすのでありますが、またそれは確かに尊いことだと思うのでありますが、それじや自治警察百パーセント、国家警察百パーセントのどつちかにしてしまえということになりますと、どつちもおもしろくないという点が、どうも御意見の相違ではないか。大体のことは府県警察という地方自治の反映したものにしたいけれども、全国的な暴力主義的破壊活動を防ぐ体制としては国家的性格を一方に帯びる、こういうふうな考え方をしているのでありまして、そういうことはりくつの上で算術のように割切れないものであります。割切れないということがまたイギリス的に考えると味があるのじやないか、こういうふうに私は考えるわけであります。
  50. 古井喜實

    古井委員 法務大臣は少しお言葉が多過ぎる。私は文学青年ではありませんから、(笑声)言葉はたくさん伺わぬでも、筋を伺えばけつこうであります。それをいろいろなことをおつしやるから、つい聞いてみねばならぬことも起つて来る。筋を進んで行きたいと思つているのに、脇道にそれざるを得ぬように誘導されるので困ります。それで青木委員長にはもう伺わぬつもりでありましたけれども犬養大臣から聞けと言わんばかりのお話であるから、伺わざるを得ないのでありますが、地方警察長を中央で任免するということはいいことだと青木公安委員長もきのうお話になつたということであります。そこで中央の監理会を国家公安委員会のごとき独立機関にした場合に、その独立機関が任免するという場合と、今度は国務大臣たる警察長官が任免するという場合とでは、たいへんな違いがあると思うのであります。そこできのういいことだとおつしやつたというのは、この案のごとき警察長官が任免する場合でも、やはり中央で任免することはいいことだとおつしやつたのでありますか、そこはどうでありますか。犬養大臣のお話によれば、この案のごとき体系においても、中央が任免することはいいことだとあなたがおつしやつたように伺つたのでありますが、そこは前提の違いがないのでありましようか。この点をひとつ青木公安委員長に伺いたいと思います。
  51. 青木均一

    ○青木政府委員 私はいずれの場合でも中央が任免するのがよろしいと考えておりますが、ちよつと間違いがあるといけませんから、私の考えを述べさせていただきたいと思います。先ほどから自治体国警かの性格の御議論がありましたが、確かに法務大臣の言うように、百パーセント自治体であり、百パーセント国警であるとすることはなかなか無理であります。世の中の事態、お互いの周囲においても、ことごとくあらゆる要素が結合して成り立つているのが、最近の世の中だと私は解釈しております。従いまして百パーセント自治体警察でなければいけないということにはならずに、また百パーセント国警ということにならずに、何かいいことがあるのではないかということは私も賛成であります。私の解釈で行きますと、地方の特に府県単位の警察というものは、きのうも私申し上げたと思いますが、完全な自治体警察とは私は解釈しておりません。しかしながら完全な自治体警察でなくてもいいか悪いかという議論になると、これは別にあると思つております。完全な府県自治体警察をもしここに置くとしますと、どうしても国家的事犯その他の事犯については、国を一貫しての何らかの機関がまた必要になると私は思います。たとえばアメリカにおけるFBIのようなものが必ず必要になると思います。そうしますと、完全な府県自治体警察がそこに存在し、さらにFBIのようなものが存在しなければ、警察の機能は発揮できないという形しか考えられませんが、さようなことになりますと、やはり二元的になりますし、そうして日本おいては特にいろいろの問題、たとえばFBIのようなものが存在するということが、昔の特高の復活に考えられ、あるいは日本における国家的事犯と普通の犯罪との結びつきといいますか、もつといいますと日本の国内における共産党的な破壊勢力のパーセンテージがイギリスやアメリカに比してずつと大きいというような事実、さようなもろもろの点を考えてみますと、FBIのようなものを県自治体警察の別に置くということはやはりなかなかむずかしい。しかもそのFBIは府県警察の上に君臨するような形になりまして、警察官の士気の上にもおもしろくないのじやないか、そうすると何かここに適当な結合したものを考えなければいかぬ。私が政府の原案に対して最も反対しております。のは、古井さんが先ほど指摘しました政府警察になつて非常な弊害が出るという点において、私は反対いたしておるのでありますが、独立した完全な自治体警察でなければいけないのではなくて、このような自治体警察がある程度変貌しまして、そうしてたとえば今のFBIと自治体警察とを結びつけた機構というものができないものかどうか、できてもいいのじやないかという考え方においては、ただいま犬養さんのおつしやつたことに実は私も賛成しております。従いまして人事権の問題は、先ほど御指摘のように完全な自治体警察として存在するときには、その自治体公安委員会なり何なりが人事権を持つのは当然であります。そうして別に国家的のFBIが存在すればそれでけつこうなのですが、今私が申しましたように、私の考えでは多少ゆがめますが、しかしながらこれを効率的にし、譲り合つて、そうして自治体警察長あるいは本部長といいますか、これは中央で任免するという形になり得れば一本の警察の形ができまして能率的になるのではないか、かように考えております。
  52. 古井喜實

    古井委員 尋ねているところだけ言つていただけばけつこうです。
  53. 青木均一

    ○青木政府委員 しやべつていて忘れてしまいましたが、恐縮ですがどういうことでしたか。
  54. 古井喜實

    古井委員 まことに御懇篤な御教育を受けまして痛み入りますが、私はそこのところを公安委員長に伺つているのじやなかつたので、犬養大臣の言葉によると、きのうの話では青木さんも中央で地方に対する人事権を持つということはけつこうだ、そういう御意見だと伺つたのであります。そこでそうおつしやつたときに中央とは何であるか、つまり大臣たる今度の新しい案による警察長官が任免をしてもいいという意味でおつしやつたのか、それとも公安委員会というあの制度が中央にもあつて、それが地方人事権を持つ、こういうことだからさしつかえないという意味でおつしやつたのか、どつちの場合でも中央に行つていいという考え方をはつきり伺つてつたのです。
  55. 青木均一

    ○青木政府委員 劈頭にちよつとお答え申し上げましたが、私はいずれも中央で持つべぎだと考えております。
  56. 古井喜實

    古井委員 青木公安委員長に押問答をする必要はありませんが、つまり警察の中正を保つという点からいうと、公安委員会任免権を持つということと、それから閣僚の一人である国務大臣警察長官となつて任免権を持つということとは全然違うのであります。まつたく違つて来るのであります。そこを違いがないという程度のお考えで、こういうものを考えておいでになるのであれば、まことにこれは奇妙なことだと思います。つまり自由党内閣なら自由党内閣の閣僚である一人が任免権を持つ、それでも警察の中正が保てるというふうにお考えになるのか、さしつかえないという御意見であつたのかということを聞いているのであります。
  57. 青木均一

    ○青木政府委員 私昨日もちよつと申し上げたつもりでありますが、このたびのこの改正案については、私は賛成していないのであります。特に今御指摘の政府警察を支配する形にあることは困るのだということを申し上げて、ただそれを前提としまして内部の条文についての御質問お答えしたつもりであります。それは今日においてもかわらないのでありまして、私は国家公安委員会人事権を一切持つておる現在の制度がよろしいと考えておりますが、かりに一歩譲りまして私の意見を離れましても、自分の経験から見まして、かような現在の条文にあるような制度になりましてどつちがいいかという場合には、やはり中央が持つ、それでないと組織が持たないのではないかということを申し上げたつもりであります。
  58. 古井喜實

    古井委員 そうすると、閣僚である一人の大臣が、地方警察長任免権を持つというふうなことであつても、警察の中正が保てるというお考えですか、与党の警察にならない、こういうふうにお考えになつている意味でありますか、その点です。
  59. 青木均一

    ○青木政府委員 ただいまの御質問の趣旨は、私の今お答えしているのとは全然違つて、ただ任免権の問題を今申し上げたのであります。警察法をかように改正しまして、それで与党の警察になるかならぬかというようなことは、私ただいま申し上げているのではないのであります。前回申し上げた通りであります。
  60. 古井喜實

    古井委員 それならばこの案に賛成なさつたらいいじやありませんか。反対だという理由にならない。反対とおつしやるのは、公安委員会制度がなくなつてしまつて警察の中正もあぶないということをお考えになる意味ではないかと思うのであります。そこのところが少しあいまいだ。それならなぜこれに反対だとおつしやるか、わからないのであります。
  61. 青木均一

    ○青木政府委員 私は昨日この案には反対だと申し上げたつもりであります。
  62. 古井喜實

    古井委員 それではこの案には反対だとおつしやるのであるから、先ほどの犬養大臣の青木公安委員長も話し合つてみると、よくわかつて賛成であるという御答弁は、まことに奇妙しごくなることになつてしまいました。しかし先を急ぎたいと思いますので、奇妙だということを申し上げて、やめておきます。  さつき残つておりました警察府県という自治体警察であるかどうか、こういう点についてまことに多くの言葉をもつて、しかしはつきりせぬことをおつしやつたように思う。どういう行政事務でも一方に国家的な性格があに地方的な性格もあることは、これは事実であります。しかし建前がどつちかということを言つているのであります。建前府県自治体行政としての警察であるか、あるいはそうではなくて国の事務としての警察であるかということを伺つておるのであります。府県警察という建前であつても、中央がある程度関与するということはあり得るのであります。建前がどつちかということを伺つておるのであります。この出発点がはつきりしないとすつきり通つて来ないのであります。この点はどちらでありますか。
  63. 犬養健

    犬養国務大臣 建前という言葉はどういうことか知りませんが、府県警察は、たびたび申し上げますように、自治体たる府県の機関であります。道府県の知事が道府県公安委員会を道府県の議会に諮つて任免しまして、警察長はその管理の下で働く、従つて府県の機関であります。
  64. 古井喜實

    古井委員 そういたしますと、府県における警察は、府県という自治体警察でありますか。機関はとおつしやいますが、府県における警察事務というものは、府県という自治体の事務でありますかどうでありますか。
  65. 犬養健

    犬養国務大臣 その通りでございます。ただ警察という特殊な仕事の意味合い上、国家からの命令貫徹権をそこに持つという組織において、古井さんの御満足でない点でありますが、国家からの連絡がついているわけであります。
  66. 古井喜實

    古井委員 そういたしますと、府県の自治事務である、府県という自治体行政事務であるということであります。そういたしますと、府県という自治体行政事務のために国家公務員を置く、また国家公務員任免権を、府県にあらずして中央政府が握る、こういうことはさしつかえないということになりますか。どうでありますか。
  67. 犬養健

    犬養国務大臣 たびたび申し上げますように、警察という任務の特殊性のゆえにさしつかえないと考えております。
  68. 古井喜實

    古井委員 この自治体という独立の人格の行政事務に対して、国家がある程度監督をする、あるいは統制をするということはあり得ることであります。しかしながらその事務の中心をなす人事、これについて人事権を握る、あるいはその身分を府県公務員にあらずして、国家公務員というものにしてしまう。こういうことが自治を尊重する建前で成り立ち得ることでありましようか。自治という建前から行くなら、限度を越しているのではありませんか。これは何とおつしやつても、私は明瞭に限度を越していると思うのであります。府県の自治を認めながら、そこまでのことを国家はできるというお考えでありますか。それならば、府県に対して国家は何事といえどもなし得る。憲法に地方自治の本旨を尊重しなければならぬという意味の規定があります。それはまつたく没却される。これは必要であるということではありません。一体自治というものに対する国の態度として、そういうことはできるかできぬか、これを伺いたい。
  69. 犬養健

    犬養国務大臣 どうもお話が極端になるように思うのでありますが、何事をしようとたれも思つていない。警察法の第六条第二項に限定せられた仕事だけ、国家国家の治安の必要のゆえに、府県に命令権を持つ。どうもそれがおもしろくないというお考えのように拝聴しておるのでありますが、これは現代における警察の特殊性、国の行政というものに対してそれほどしなくていいじやないかというのと、いや、それはしなければならぬ、やむを得ないという考えと、意見が違つて来るのじやないか。
  70. 古井喜實

    古井委員 私は、ある範囲警察事務について中央が指揮監督権を持つという、その点を論じているのではありません。この府県における警察機構の根幹に対して、機構そのものを握つてしまうような制度が、府県の自治を認めるという前提において成り立ち得るかどうかということを言つておるのであります。
  71. 犬養健

    犬養国務大臣 機構を握つてしまうのでなくて、警察長は任命せられた翌日から、道府県の議会に諮つて任命された公安委員会の管理のもとに置かれる。従つて公安委員会の命にそむけば、公安委員会はいつ何どきでも罷免、懲戒の勧告権を発動することができる。それが非常に国家警察的であるというふうには、私思わないのでありますが、さらに教えを請いたいと思います。
  72. 古井喜實

    古井委員 本多大臣に伺わなければならぬようになりましたが、すでに府県という自治体警察である、府県の自治事務であるという建前であるということであります。府県自治体の事務であるにかかわらず、その事務を行う警察の幹部を国家公務員にしてしまう、また任免権を中央政府が握る、これは、自治というものの本旨に反するものとお考えにならぬかどうか。私はここまでのことが自治といいながらできるというならば、自治は破壊されると思います。これは地方自治の方の所管の大臣としてどうお考えになるか。つまり府県の事務だという前提が誤つているのではないかしらと私は思うのであります。しかしあくまでこれは府県という自治体警察である。しかし今のようなことは一向かまわないということに、一体自治という建前上なり得るかどうか、御所見を伺います。
  73. 本多市郎

    ○本多国務大臣 法務大臣からお答えいたしております通り警察行政の性格から来ることでございまして、地方事務と申しましても、まことに国家性のある地方事務でございまして、この性格に適合する制度を立てようということでございまして、またその適合する制度を立てることが国家のためであるという見地から改正が行われるわけでございます。従つてこの国家性の要請から必要な程度の国家公務員を配置して、しかも府県の機関としてこれに溶け込まして、府県の機関である公安委員会の管理下においてやつて行く。その警察自体も、特に中央からの法律で定むる事項以外は自主的にやるのでございますから、この点において自治の本旨、すなわち住民自治の精神も取入れられているわけでございますので、この自治法の精神に反するものというふうには考えないのでございます。これはまつたく折衷した制度がとられるということは、国家警察でも弊害があるし、純然たる今までの自治警察でも弊害がある。この国家地方警察自治警察とを廃止いたしまして、警察行政の性格に適合する制度を立てたいというところから出ているのでありまして、国家性と住民自治の精神とを取入れられた制度であると考えておりますので、自治の本旨にも反しないと考えております。
  74. 古井喜實

    古井委員 ここまでとぼけたことがおつしやれるようになれば問題はないかもしれませんが、自治法第二条の第三項の第一号に普通公共団体の権能に属する事務の事例として、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全を保持することということがありますが、今度の案による府県警察は、この自治法の第二条第三項第一号に掲げた仕事をする機構でありますか、別の方からひとつ伺つてみたいと思います。
  75. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは警察行政の内容に入る問題であると存じます。
  76. 古井喜實

    古井委員 そうすると、今の御答弁はこの自治法に掲げてあるこの仕事であるとおつしやるのでありますか。
  77. 本多市郎

    ○本多国務大臣 さようであります。
  78. 古井喜實

    古井委員 そうすると、本多大臣府県の自治事務である。その自治事務に対して国家国家公務員というものを置いてこれに当らせるということは、これは自治の本旨には少しも抵触しないというお考えでありますか。
  79. 本多市郎

    ○本多国務大臣 二条の二項、三項に列挙してあります事務でも、法律をもつて別段の定めをなすことはできるものと考えております。そうして現行警察法におきましては、その事務を国家地方警察一本でやつている町村もあるのでございます。それから見ますと、今度の改正警察制度は、都道府県の機関として設け、しかも公安委員会によつて管理されるのでありますから、むしろ純然たる国家地方警察一本でやつていた場合よりも——場所におきましてはそういう場所があつたのでありますが、そういう場合よりもさらに自治の精神が取入れられて来るんじやないかという解釈をいたしております。
  80. 古井喜實

    古井委員 今日国家地方警察警察事務を行つている地区があることはおつしやる通りでありますが、これは国家警察であつて自治警察ではないはずだと思う。今度は自治警察というものである。この自治警察であるものに対して、国が今の程度まで干渉する、こういう違つた問題になつて来ておるのであります。国家警察ということもあり得ると思うのであります。国家警察事務として構成するということもあり得ると思うのです。しかし自治警察というものでやつておる場合に、一体そこまでの干渉ができるのか。これは法律だから何でもできると言わんばかりのお答えでありますけれども法律といえども自治の本旨に反すべからずということは、憲法に規定しているところであります。この辺は国家地方警察をもつて論ぜられるのでは説明がつかないのではないかと思うのでありますけれども、いかがなものでございましようか。
  81. 本多市郎

    ○本多国務大臣 このことは、すでに今日まで国家地方警察が町村の警察を担当いたしまして、憲法上の問題、法律違反等の問題も起きていないように思います。国家警察一本建でやる制度と比較いたしますと、今度の府県機関として設けられる府県警察は、自治という点から言いますと、むしろ自治を重く見て来る方向にある、かように考えております。
  82. 古井喜實

    古井委員 この国家地方警察国家の事務なのであります。国家の事務を国家が自分でやることは、一向さしつかえないわけであります。自分の機構を設けてやることは一向さしつかえないわけであります。これは国家警察事務であつたと思うのであります。さらばといつて自治体のその区域の町村が、この自治法に言う警察権を失つたかどうかは、別の問題であります。事実必要なしとしてやらないのかもしれない。しかし国家が、国家として警察事務を行うという権能は国家にありましよう。これは別の問題であります。そうではなくて、自治体警察事務に対して干渉しているのが、今度の法案なのであります。そこまで干渉できるというなら、警察以外の仕事として国家公務員法律府県市町村に置いて、国家で任命するということもできるはずである。そうすれば自治体とは何であるか。独立して自治体が自分の区域内の行政を行うということは、容易に破壊されてしまうのであります。これは事柄が違うと思うのでありますけれども、いかがなものでございますか。
  83. 本多市郎

    ○本多国務大臣 自治警察を持たないで、国家地方警察でやつて来た町村は、警察はいらないという自主的な考えで持たなかつたのかもしれないという御意見でございます。私はそうは思わないのでありまして、警察は治安の確保のためにぜひ必要であつたろうと思うのでございますけれども、この警察行政の特殊性から、国家地方警察でもさしつかえがないと、理論的にも、法律的にも容認されて来たものであると存ずるのでございます。
  84. 古井喜實

    古井委員 国家地方警察のことをおもに伺つているのでございません。それでは話が違うという意味において申し上げておるだけで、今度の府県自治警察とおつしやるものに対して、ここまで干渉することができるのかできぬのかということであります。それならば他の行政の仕事について、府県国家公務員を置いて中央政府が任命しても、一向自治の本旨から言つてさしつかえありませんか。府県のどういう行政事務についてでも、必要ありとすれば国家公務員を置き、これを中央政府が任命する、これは自治としては一向さしつかえないのでありますか。
  85. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは警察行政の特殊性を考慮していただきますために、私も国家地方警察の例をとつたのでございます。警察行政がいかに国家的な特殊性があるかということは、国家地方警察一本でさえも容認されておつた。この国家性のあるところを自治制にうまく調和をさせて行くためには、これは容認されるべき理論的根拠があり、これを法制化することはさしつかえがないと考えております。
  86. 古井喜實

    古井委員 そうしますと、そつちにそれたくないと思うのでありますけれども国家地方警察という従来のものは、自治体の仕事を国が取上げてやつてつたという意味になるのでありますか。自治体の当然行うべき仕事を国が取上げてやつてつた、つまりそういうふうに国が全部自治体の権能に属することを巻き上げてしまつてつてつた、それもさしつかえないことであつたのだ、こういう先例をお出しになるのでありますか。
  87. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方自治法に列記してありますのは、警察制度そのもののみではないと思います。この公安を保持し、あるいは秩序を維持するというようなことは、それ以外にもいやしくも市町村が団体生活をして行く上においては重要なことがございますので、警察制度そのものがその中に含まれておるとは思いますけれども、これは非常に広義のものであると考えております。その地方団体において今日まで自治警察をやらないでいたところは、警察行政に関する限りは取上げておつたのかというお話でございますが、それは法律によりまして、こういう制度を用いることが適当であるということから、そういうふうに容認せられておつたものと思います。これはまつた警察制度の特殊性、すなわち地元の自治行政としても必要なことであるが、国家行政としてまた重要なものである、こういう点から容認せられたものと思うのであります。
  88. 古井喜實

    古井委員 この国警の問題について、自治体の事務を国が巻き上げておつたのだというような御見解のようであります。そういうことも自治の本旨に抵触しないという御意見のようであります。これはそういう御意見で間違いありませんですか。
  89. 本多市郎

    ○本多国務大臣 現行制度は、国家警察一本でやつている町村もございますが、これは警察行政の特殊性から考えまして、本旨に反するものではないということで法律的にも、理論的にも容認せられて来ておるものと思います。
  90. 古井喜實

    古井委員 自治体所管の大臣のお説として、まことに驚き入つたのであります。つまり自治体の事務を国でもつて巻き上げてしまつても自治の本旨に反しない、自治権を抹殺しても自治の本旨に反しない、こういう御議論のようであります。つまり自治体の事務を片つぱしから巻き上げて行く、からにしてしまう、抹殺してしまう、それでも自治の本旨に反しない、こういう暴論をなさつておるのでありますか、今の御議論はそういう御議論に伺えるのでありますが……。
  91. 本多市郎

    ○本多国務大臣 そういう極端な議論をせられますとまことに恐縮いたすのでございますが、国家のため、さらに国情から考えて、それが国家のためであるというりつぱな理論というものが伴つて、そしてそれが法制化された場合、これは私はさしつかえがないと考えております。
  92. 古井喜實

    古井委員 そうすると自治体の仕事を半分くらい、あるいは大半巻き上げてしまつても一向自治の抹殺にならぬ、こういう驚くべき御所見を拝聴しました。私はこういう議論が通る話だとは思いません。通るのだというお考えかもしれませんが、そういう議論が通るはずがないと思うのであります。いやしくも自治体というものを設けて、自治体の独立を尊重しようということであるならば、自治体に対する国家の干渉は限度がなければならない。自治体警察であるならば、任免権まで持つて行くということは限度を越すと私は思う。なぜかといえば任免権までとられてしまつては、自治体としては自分の事務について責任が負えないのであります。警察の中心機構である警察長に対する任免権人事権がない、それで一体警察事務に対して府県というものが責任がとれるでありましようか。責任はとれないのじやないですか。責任がとれないところまでやつて、なおかつこれはさしつかえないというのはどう考えても通る話でないと思うのであります。これはおそらく自治体警察であるということを言いたいために、とんでもないことをおつしやつておるのだと思う。この政府案における警察自治体警察ではないのであります。自治体警察でないという建前で読めば実にすつきりわかるのであります。それをしいて自治体警察とおつしやろうとするから、今のような無理な御説明をなさらなければならないのではないのですか。もし府県自治体警察であるということで、今のようなことをおつしやるならば、これはまことに驚くべき御見解だと思います。これは国会のことだからいいようなものですが、今おつしやつたこの速記を他の方面に批判をさせたら、一体どういう判断を下すか、これは問う必要もないくらい明瞭なものだと思います。何か補足されることでもありますかどうですか、伺つておきます。
  93. 本多市郎

    ○本多国務大臣 私もそうでたらめな答弁をした覚えはないのであります。古井さんのお話を聞いておりますと、国家警察でやるものは国家警察一本でやつていいのだ、そして府県警察になれば自治体警察であると言つておるじやないか、自治体警察ならば中央の制約を受け過ぎるじやないか、こういうふうな御意見のようでありますが、今度の府県警察自治体警察である、こういうふうには申し上げておらないのでありまして、今日までの自治体警察国家地方警察を廃止して、その両様の性格を取入れた、すなわち自治体たる府県の機関として設けるのである、こういうことを法務大臣も言つておられるのであります。今までの純然たる自治警察とかわらないというふうな見解ではないのであります。
  94. 古井喜實

    古井委員 法務大臣の先ほどおつしやつたことと大きな食い違いがあるように思いますが、自治体警察ではないのですか、自治体警察なのですか。法務大臣にもう一ぺん念を押しておかないと、まるで反対になつております。
  95. 犬養健

    犬養国務大臣 何度もお尋ねでありますが、何度でもお答え申し上げます。たびたび申し上げますように、道府県警察自治体たるの道府県の機関である。但しこれもたびたび申し上げたかと思いますが、警察の特殊性にかんがみまして、国家の治安に関する限り中央の警察庁から指令が行く建前になつております。その指令を無制限にしては警察国家になるから、みずからこの法律で厳然と幅を定める。従つてその範囲において国家的性格を含んでおることはやむを得ない。ただいまの国警国家的性格が強過ぎて、自主的な潤いがなく、今の自警は完全自治に過ぎて国家的性格を欠如しておるから、これを一切白紙にもどして、府県警察というアイデアでつくりました、こう申し上げておるのであります。
  96. 古井喜實

    古井委員 行政法の講釈のようなことを申し上げては悪いのでございますけれども、これは身分上の関係と職務上の関係と二筋あるのであります。行政機構では身分権をどこで持つか、持つところが身分上の上官である。身分はどこにあつても職務上監督するまた一つ関係もあります。職務上の上官と称する面であります。犬養大臣は職務上のことをおつしやるけれども、私はこの根幹をなす身分のところからいえば、国家公務員でもあるし、中央が握つておるのであるから、その身分の体系は、これは国家体系ではないかと思います。しかしそこで少しあいまいな点は、府県の機関として置くのだというふうなこともおつしやる。そうすれば国家の事務のための国家の機構を、府県という自治体に置かしておるという意味になるのでありますか。それとも府県の固有の自治体の事務というものに対して、国家がそこまで干渉することになるのであるか、これはどつちかに相違ないのであります。国家の事務に対しての機構を自治体に置かせる、こういうことも一つであります。それでなくて自治体の固有の仕事に対して国家がある程度干渉する、これも一つであります。これは右か左かなんです。行政法のりくつみたいなことを言う気はなかつたのでありますが、そこの辺が混雑するのでありますけれども、そうはつきり問題を出せばどつちになるのでありますか。
  97. 犬養健

    犬養国務大臣 どうもまたおしかりを受けて教えを請うことになると思いますが、非常に割切りたがる御議論であります。干渉とか、侵すとかいう字はたいへん使いたくていらつしやるようでありますが、そういう字を使いたくない警察にしたいというふうに考えておりますことを御了承願いたいと思います。なるほど広く人材を適所に置いて、火炎びんなんかが飛んでも手をこまねくような、国民の感心しない警察でないようにしたいために各府県警察長は中央で任命しますが、しかしそれには地方自治体の意思の制約があります。どういうところにあるかと申しますと、気に食わなければ罷免懲戒の勧告権を発動できる。そういう完全な国家公務員というものは私はないと思つております。これはこの点で国家的性格と地方自治のよさとの融合であつて、どつちかにぜひ割切つてくれという御注文は、私たちが今度府県警察をつくるという元の精神と食い違いますので、これだけはひとつごかんべん願いたいと思うのであります。
  98. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 関連して犬養法務大臣にお伺いします。ただいまの議論を拝聴しておりましたが、結局ウエートがどつちにあるかということを古井委員お尋ねのことと私は解釈します。それから前回同僚の門司委員がいみじくも指摘いたしております通り政府案では表面上府県を単位といたしてはおります。しかしながらその府県警察の実態は、自治体警察ではなくて、国家警察地方単位である、かようにしか考えられないのであります。どうしてかと申しますと、中央に閣僚を兼ねるところの警察長官がおりまして、この方があらゆる高等人事を行う、急所の人事を行うわけであります。そこで一方には公安委員会というものがいわば骨抜きにされております。中央におきましては、国家公安監理会となりまして、非常に権限が少くなつておるのであります。単なる諮問機関に落ちておるわけであります。結局高等人事について中央集権化をやつておきながら、府県の条例でその組織とか基準を定め得るから、これが府県単位の自治警察であるということはできないと思うのです。結局実質的には中央指令に追随するところの画一的な国家警察地方組織になり終るであろうことをわれわれは心配いたしておるのであります。争点がそういう点にあると思うのであります。その点に対して御意見をお伺いしたいと思います。
  99. 犬養健

    犬養国務大臣 御心配はよく承りました。私どもこの点はずいぶん考えてみたつもりでございます。従つてこれはちよつと二、三分余談になりますが、ごめんをこうむつて説明をいたしたいと思います。平岡さんの御賛成になるような完全なる府県自治警察を置いて、火炎びん騒ぎなどに対するFBIみたいなものを考えた時期があります。しかしここにおられます青木公安委員長などの経験者も同じことをおつしやつたのでありますが、どうも日本人は違う二本の命令系統から同じ仕事をするときに必ずうまく行かない特性があるということを残念ながら信じているのであります。そこで考えつきましたのが二本建ではいかぬ。しかしさればといつて完全自治警察ではこれからの暴力主義的破壊活動の同時多発、A県とB県とC県と起るという場合も考えなければなりませんので、そのA県からB県に応援に行ける指令というものが、同等のものが譲り合つたり、相談し合つたりしただけでは不安だというのが、私たちの考え方の中心になつております。従つてその場合には中央から指令が出せるという形だけはとつております。しかしそれは何でもかんでも指令したのでは警察国家になりますから、国家の治安に関係するような、そうして国家的な問題だけに限ろう。それは口で限るのではなくて、法律に書いて皆さんに御批判を仰いで、みずから束縛を受けよう、こういう考えになつたわけでございます。そこでどうも政党の大臣が世論なんぞは何とも思わずに、どんどん任命すればそれつきりじやないかということは一応ごもつともであります。ところがその警察長というものは始終大臣の部屋にいれば強いのでありますが、これは府県にもらいつ子に行つてしまうのであります。そうして今度は府県公安委員会とうまを合せなければ、罷免懲戒の勧告を受ける身分になるわけであります。平たく言えば養子になるわけであります。いくら実家がいばつていてもやはり養家は家風に合わなければ養子になれないのであります。その政治的作用を大きく見るか、その政治的作用なんというものは大臣のわがまま一つですつ飛ぶとお思いになるか、ここが意見の相違じやないか、こう考えておるのでありますが、さらに御意見を伺いたいと思います。
  100. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 今の罷免勧告の件でございますが、実際には今の公安委員会にしてもあるいは公安監理会ですか、それは事務局も手足があまりないです院ね。そして実際上の勧告をするような資料というものはないわけであります。ですから私は政党内閣が行う今の警察権力というものを、ジヤステイフアイする一つの言訳の口実になる、そのような点を恐れておるのであります。ほんとうに懲戒任免の勧告権が実際上は行えないであろうということを私は心配します。  それからもう一つ今の警察庁の任務を一応第六条におきまして十二項に限つております。限つておるというと体裁がいいのであります。これは拡張解釈でほとんど全面的なものであります。いわゆる限つておるという表現に私はどうも賛成しかねるのであります。実質的には拡張解釈です。とても広い分野に及び得ると思いますが、この点の御意見をお伺いします。
  101. 犬養健

    犬養国務大臣 この二点の御意見は、私も一応ごもつともと思つて拝聴いたしました。その罷免勧告なんていうものはきき目がないのではないかということで、これも大分私ども議論はしてみたのであります。しかし罷免勧告権を発動すれば新聞にも出ますし、一警察長が中央の大臣から遠く離れた土地でなかなかやつて行けないことになる。事実上一警察長でありましてそう偉い者ではないのでありますから、その作用というものを私は相当大きく見ております。また事務局がだめであつてうまく行かないのではないかということですが、これはまたいくらでも御相談に応じて、大いに煙たい存在の事務局になつてもらいたい。お体裁だけつくつて議会の済むのを待つているような気持では毛頭ないのであります。御忠言は十分聞きたいと思います。  それから六条の二項でありますが、法律というのはいつもうつかりすると拡張解釈をされるということですが、御心配ならば、当委員会において一々これはどういうことを意味するのかといつてお互いに議事録にとどめて、さらにもつと何か権威のある方法で、喜んで私は制約を受けたいと考えております。どうも法律家が書きますと、文句が何となく拡張解釈されそうだという御心配のあることはごもつともだと思いますが、その点は、十分ここで議事録にその内容をとどめることを、私からむしろお願いしたいと思つている次第であります。
  102. 床次徳二

    床次委員 関連して。府県警察の意義はまことにあいまい模糊たるものであります。自治体警察国家警察と両方の性質を持つているというふうに御答弁になつておりますが、新しい警察法の規定から見て参りますと、府県警察地方自治法の第二条の二項、三項一号によるところの府県の自治の事務である。但し警察法案の第六条の方は純然たる国家事務でありまして、六条の範囲内におきまして国が府県に事務を委任するのだというふうに解すべきだと思いますが、政府のお考えはそうでないように思いますけれどもいかがでありますか。
  103. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 行政法上の解釈は、先ほど大臣から御説明がありましたようにむずかしいと存じます。従いましてただいま床次委員のおつしやいますように、第六条二項に書いてあります事柄を国家事務と解し、それからそれ以外の点を地方事務と解するのも一つの方法かもしれません。そういたしますと府県においてやつている事務は、本来の地方事務と国から委任された事務と両方ある、こういうようにも解されるかもしれません。私は、府県警察の行います仕事は、地方自治法の第二条第何項かに書かれておる仕事ばかりとは思わないのであります。また警察法案の第六条二項に書かれている事務と、自治法に書かれておるいわゆる治安維持の事務の二つ、それにさらにプラスをいたしまして、国家的な性格は持つているけれども第六条の二項では干渉しないで府県にまかせているというものもなお若干あるのではないかと考えております。
  104. 床次徳二

    床次委員 ただいま斎藤政府委員からお話がありましたが、純然たる六条の事務でなくても、府県にまかせてあるものは大体自治事務に入るベきものだろう、さように解釈できるのではないかと思いますが、この点自治事務でなく純然たる第六条に入らない事務は実際上においてどういうものをお考えになつておりますか。
  105. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 たとえば第六条二項は直接運営について指揮監督をいたしますのは国の治安確保に必要な事事柄であります。しかもそれは第六条の二項に非常に限定をいたしております。これは国としてどうしても指揮監督までやつて確保をしなければならぬという点に限定をしておりますのでさようになつておりますが、それ以外は府県にまかせてある。しかしその仕事は純然たる自治事務であつて国の利害に関係しない。あるいは自治体本来の仕事というよりは、国の法律によつて命ぜられて、その利害は自治体よりも、むしろ国全体に影響があるという事務があるのであります。たとえば密貿易あるいは経済法令の違反、これは本来の自治事務とは考えられないと私は思います。密貿易あるいは経済事犯について、府県があるいはそういつた条例をつくり得るかもしれませんが、通常の状態におきましては、これは国会が国の事柄として法律をつくる。その施行警察にまかせるわけでありますから、これは国の仕事であろう、かように私は考えます。しかしその運営についてこまかいところまで指揮監督をする必要がないというので、六条の二項からははずれておりますけれども府県公安委員の責任において、みずから処理するという建前はとつておりますから、それは自治法第二条二項にあります府県の固有事務というものではないであろうと、かように考えております。
  106. 床次徳二

    床次委員 御答弁で大体わかつておりますが、しかしただいまの御答弁によりますと、これは当然警察の本質から出て来る問題だと思うのであります。いわゆる行政警察に入るべきものが仰せの例に入るのだと思います。ただいま問題になりますのは都道府県警察に対しまして、国家がいろいろ発言権を持つために人事国家みずから持つというところに大きな問題がある。むしろ国家といたしましては第六条の仕事をやらせるために、指揮監督権を持つておればよいので、人事をも握らなければ第六条の仕事が警察の能率上できないとこれを固執せられるところの理由がないと私は思う。必ずしも人事権を持たなくともただいまの両方の調和はできるのではないか。どうしても人事権を持たなければそれがうまく行かぬということを、政府があくまでも固執せられることがいかにも無理である。大臣も言われましたことく自治体警察国家地方警察との両者を折衷したような形になつておりますので、その短所を補いつつ長所を生かすためには任免権を持つ以外に適当な方法があるのではないか。なぜ政府はそういう方法をお考えにならなかつたか伺いたいのであります。
  107. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 いろいろ考えたのでありますが、少くともこの程度の人事権、それもただ自由な人事権ではありません。相当制限された人事権でありますが、この程度を確保いたしませんと、国の治安という点から、国として十分な責任をとることが困難であるということに尽きると思うのであります。どうしてそうなるかというこまかい点を申し上げますといろいろございますが、人事異動が非常に疏通を欠いてしまうとか、そのことによつて府県警察人事全体が非常に沈滞してしまう。いろいろ派生的な問題はございますが、大きな点はただいま申し上げましたところであります。
  108. 床次徳二

    床次委員 ただいまの点はやや意見の相違になりますから、この程度にいたしておきます。
  109. 古井喜實

    古井委員 実は私は自治法法律論をやるつもりではなく、質問の段階ですから意見を聞く方のつもりで聞いておつたのであります。つまり今床次君も言われたように国家非常事態の場合には、非常事態の布告によつて全国の警察力を動員して動かすという制度がすでにある。こういう制度を新しい警察法も承継しておるのであります。それからまた国家的な特殊の意義を持つた治安事務については、すでに指揮監督権も認めようという案になつておる。それであれば国家的な必要というものは十分満たせるはずであると思うのであります。なおかつその上に身分まで国家公務員というものにして、任免権を中央に持たせなければならぬかというところが、非常に飛躍し過ぎておる問題ではないかということなんであります。かつまたそういうことをするから、そこまで行くならば自治の本旨に反することになりはしないか、そこまで行つては自治の本旨に反するということは明瞭だと思う。何と言われてもこれは度を越しておると思う。のみならず私はそれだけを言つておるのではない。そういうふうにして人事権を持つから政党の、与党の警察になつてしまう、中央が人事権を持つてしまうから、それでもつて人事というものを通して、全国の警察が与党の警察になつてしまうではないか。こういうことになつてしまうというところに、政治的に大きな問題があると思うのであります。そこでなぜ自治体警察という建前から越えてはならぬ限度は越えないことにして、つまり警察長任免権自治体に持たせる、自治体と申しましても公安委員会に持たせるという建前をとつて、それで心配ならば中央にせいぜい同意を求めるという程度にするとか、余儀ない場合に罷免権を持つとかそういう限度に置くことはできないのか、それで十分足りるではないか。それ以上は自治の侵犯になると思うのであります。そこで自治体警察論からおつしやるならば、この案は確かに行き過ぎだと思う。むしろこの案を本筋から見ると、国家警察になつてしまつておるというくらいに思われるのであります。ここのところが建前の筋も通らないし、また弊害もあると思う。恐るべき弊害もあるというところをどうしてお考えにならぬかということを意見として言うならば言いたいのであります。それを右左の方面から論じておるのでありますけれども、さらけ出して言えばそういうことなのであります。この点はそれをなおかつこういう形でもつて粉飾をして、下手な女のお化粧のようにすればするほど醜いかつこうになつてしまつて、その結果一体その性格はどうなるのか。それからまた責任の所在はどこか、責任の所在も不明確になつてしまう。自治体警察とおつしやるけれども警察長任免権を持たないでおつて府県警察の責任を負えないと思うのであります。そういう責任の不明瞭という問題にもなつて来る。かたがたもつて政府案はあいまいであるのみならず害があると思うのであります。この点は心ならずも意見を言つてしまいましたけれども、やまやま欠陥があるということが尋ねたかつたのであります。同じ問題に膠着してもいけませんから、他の問題に移つてみたいと思います。  そこでこの附則のことについてちよつと伺つておきたいと思います。この附則の中に警察用財産移転の問題があります。従来警察の用途に供しておつた財産が今度市町村から府県に移る、あるいは国に無償で移るという規定がありますが、この規定についてであります。この規定については先例があるということをもつて唯一の弁明となさつておるようであります。この従前の先例というものは内容においても違うと思います。上の団体が下の団体に財産を無償で与えるということはやまやまあると思います。下の団体のものをいかに法律によるといえども、上の団体に無償で持つて行くということは、先例としてもないであろうと思います。それよりもむしろいかに先例があるなしにかかわらず、憲法との関係がどうなるかということなんです。憲法第二十九条によりますと、これは読み上げるまでもない条文で、財産権の不可侵を書いてある。そうして「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」これは自治体の私有財産についても当然適用になるはずの規定であります。自治体は公の行政権の主体でもありましようけれども、同時に私法上の財産権の主体でもある。これは疑いのないことであります。このことはまた憲法の中の自治体に関する規定、憲法第九十四条に「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、」云々と書いてあります。財産権の主体であるということは憲法自体も認めておる。これはまた従来の学説、だれ一人異論のない問題であります。そうするとこの財産権を無償で奪われてしまうということは、いかに法律をもつてしても憲法に抵触する。かりに先例があるとしても、その先例自体が憲法に抵触しておる。一体こういつた違憲立法はできるものではない。およそいかなる学界の人に意見を聞いても、これは憲法第二十九条に抵触するという意見に異論のある者はないと思います。私はこれは明瞭に違憲立法だと思いますが、どういうふうな御解釈をとるか、これを伺いたい。ことにこれは経過措置といえども憲法に抵触することはできないと思うのであります。御説明を願いたい。
  110. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自治庁からも御答弁があると思いますが、われわれといたしましても、その点は十分研究をいたしたのでありますが、まず憲法で保障されておる私有財産そのものとはたして言えるかどうか。これは公共の用に供しておる財産であります。しかも将来同一目的に使われる。そうしてこの法律は譲渡の形式をとるものでありまして、譲渡契約が成立しなければ、これは譲渡いたさないのであります。もちろんそこに協議が十分整わないときには、内閣総理大臣の裁定がございまするが、根本問題といたしましては、公共団体の純然たる私有財産ではなくて、公共の用に供しておる財産であつて、これにつきましては、憲法の規定に抵触するものではない、かような解釈をとつておるのでございます。また下の機関が上へ無償で譲渡するというのは、やはりこの前の新警察制度制定の際に、府県の財産を無償で国に譲渡したという先例があるのでございます。
  111. 古井喜實

    古井委員 ただいまの公共用の財産は、私法上の財産権の主体とはならないという御見解でありますが、公共の用に供しておりましても、私法上の財産権としてその所属はあるはずであります。公共の用に供しておるというのは、一つの使用形態である。しかしその使用の形は、公共の用に供しておるというものであつても、これは私法上の財産権の客体になつておる。これは明瞭な問題であると思います。その私法上の財産権の客体になつておるその関係を今論じておるのではないのである。これは憲法第二十九条の適用を受けないことになるのでありますか、これが一つの点。これは明らかに誤りであると私は思いますが、とにかくその点が一点。それから従前の例のことをお話になりましたが、かりに従前例があつても、憲法に抵触する例は先例にならない。のみならず、府県の財産が国に移つたということを内容においてはおつしやつておる。当時の警察というものは国の警察であつた。けれども国の警察であるけれども経費も府県で負担すれば、これのための設備も府県でやるというのが当時の建前であつた。国の事務であるけれども、経済的な関係はすべて府県が受持つてつたのが、当時の警察体系であるのであります。そういう場合と今回の場合とは違うのであります。この点は私は事柄としても違うと思う。特に第一の点について、そういう御説明のようなことが一体成り立つかどうか、今の点を御参酌の上で御答弁を願います。
  112. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの点は、実は私が申し上げましても権威がないのであります。私は法制局長官の御意見をそのまま受売りをしておるのであります。国の法律の最終の解釈といたしましては、法制局長官答弁をせらるべきものだと考えますが、私はその御意見をそのまま受売りを申し上げておりますので、御了承を願います。
  113. 古井喜實

    古井委員 どんなりくつでもつけ得る法制局長さんがきようはおられないので、そこのところは困るのでありますが、これは出てもらわぬとどうにもならぬのでありまして、きよう議事を妨げてもいけませんから、後日でもいいですけれども、ぜひ出ていただきたいと思います。なおまたこれほどのことをなさるならば、学者等の意見もお聞きになつたはずだと思う。何か意見をお聞きになつたかどうか。お聞きになつたとしたら、どういう人の意見をお聞きになつたか。私は若干の学界の権者の意見も聞いております。これは問題にならぬと言つております。これはただあめのようにりくつを引伸ばしたり、縮めたりする政府のお役人の法律解釈だけで、この案を提出なさつたか。他の方の御意見も御参酌になつておるか、この点もひとつ伺つておきたい。
  114. 犬養健

    犬養国務大臣 せつかくの御意見でございますが、法制局長官というものは、自分の独断で法制意見をきめるものではなく、もちろん各学界の意見、または新しい解釈というものを咀噛しての上の意見でなければ、義務の万全を期しがたいのでありまして、そういう意味で古井さんには非常に信用がないようでありますが、私どもは信用して、これも見解の相違に相なりますが、私もこの点は非常に慎重を期しまして、御指摘のごとく、憲法第二十九条との抵触関係をしばしば相談したのでありますが、ただいま御指摘の財産は純然たる私有財産とは異なりまして、一種の行政財産である。従つて純然たる私有財産の場合と異なるという意見を、法制局長官は持つておられます。いずれ本人が来た方がなおはつきりすると思います。かりにそう言つても二十九条の第二項に十分釈解があります。その上に、これは国警長官からも申し上げましたが、いきなりぶんどつてしまうというのではないのでありまして、不必要か必要かは、その当該市町村がきめる。ただ不必要だと言いつぱなしでも不十分でありまして、それを市町村の議会で議決を経る。その上になおいろいろ解釈の違いがあれば、これは内閣総理大臣が判定する。その判定に不服であつたならば、当該市町村が司法手続に訴えることができる、こういうふうになつておりまして、いきなりやみから棒にさらつて行くということは考えておらないのでございます。これはひとつ法制局長官からもお聞き願いたいと思います。
  115. 森田重次郎

    ○森田委員 今の問題は私も少し調べてみたのですが、ここに私有財産は云云と書いているのですが、これはだれが所有権を持つているかという主体の公、私の違いによつて起るものではなくて、その所有権を持つている作用あるいは形態が私法的性質を持つているかどうかによつてきまつて来ると思うのです。現に国有財産で、たとえば山林なら山林があつて、その所有権の争いが起つたというときに、一体だれが判定するか、今日でははつきりと司法裁判所で決定するのでありまして、決して国家がかつてに権力を振つてああでもない、こうでもないと言うことはない。それから国有林の境界査定の問題が起るような場合は、大体元は営林局に一方的な境界査定権というものがあつて、そしてかつてに一定の境界をきめて、この通りきまつたからと言うて通知しつぱなしにしてしまう。そうすると民間側で不服であれば、行政裁判所へ提訴して、判定してもらつた時代があつたのです。ところが今日、アメリカが日本へやつて参りまして、これははなはだ越権なやり方だというので、全部この境界査定権というものを営林局から取上げてしまつて、そうしてこういうようなものの争いは全部私法的な意味において解決すべきものであつて国家行政権力の発動でやつちやいけないというので、全部司法裁判所で解決するということになつているのであります。これらの点から考えましても、今後具体的な問題として起つて来る自治警察の設備が現にその市の所有に帰しておるという場合は、これはやはり私法権の所有対象と認むるのが至当なんです。ですからどうしてもこれは無償で取上げるというようなことはあつてはならない。これは明らかに憲法違反だと私は考えます。前にそういう前例があつたとしても、あつたそれ自体が憲法違反なんですから、それがあつたからと言うて、今回のものが正しいのだという根拠にはならないということが一つ、それともうしつお尋ねしたいのは、こういうようなものの考え方で立法するところに警察の元の潜在した意識があるのだ。ここで無償譲渡するのだといつて、きめてしまつて法律できまりましたからといつてそこの市役所でやつたときに、いやそれはそうではありません、どこまでも争いますというほど、まだ日本人の自治意識というものはそう発達しているとは考えられない。これで押しつけようとすること自体が、すでに私らの心配している元の官権の濫用の一つの現われだとしか考えられないのです。ですからこういう点は、聰明な大臣はなるほどとこうお考えになられて、こういうようなものはおやりにならぬ方が私はいいのだ、こう考えるのです。その点を一つ……。
  116. 犬養健

    犬養国務大臣 純粋の法理論解釈については、私の範囲でございませんから、法制局長官に来てもらいます。しかしどうもお聞き落しになつたのじやないかと思うのでありますが、憲法二十九条に抵触しないから、何がしかの市町村からその建物をよこせというようなことをだれも言つていないのであります。あとの半分が大事なことでありまして、必要か不必要かは当該市町村の判断にまかせるのです。判断にまかせるだけでなく、その判断を公式化するために、当該市町村の議会にかけて議決してもらう。それまでこつちはしんぼう強く待つのです。それでなおごたごたが起つたら、内閣総理大臣が判定するが、内閣総理大臣といえども神でないから、欠点の多い人間だから、それでその判決に不服ならば、当該市町村は司法手続によるというわけで、ちつとも警察国家的な思想を持つていないように思うのでありますが、いかがなものでありましようか。
  117. 床次徳二

    床次委員 ただいま大臣は、必要、不必要を当該市町村の議決によつて考えさせるから、決して警察国家的でないとおつしやるのですが、この事柄を当該市町村が必要だから不必要だからということによつて解決しようというところに私は誤りがあると思う。これを御説明申し上げますと、今日の自治体警察ができ上りましたときに、各市町村の団体は非常な犠牲を払つて、この警察の庁舎その他をつくつておるのであります。あの当時は起債もろくろく認められなかつた。やむを得ず多大の市町村費を使い、場合によりましたならば寄付金をもつてこれに充てておつたのであります。非常に苦しいところをつくつてつたのでありまして、これは過去において都道府県の建物を自治警ができましたときに譲るという場合とは非常に状態が違うのであります。都道府県から自治体警察に渡すのはそう困難ではないが、この問自治体警察をつくつたときの苦労した建物その他を今日譲り渡すということに対しては、市町村民が非常な犠牲を払つており、この点は地方財政の状態がまるで違つた環境にあつたということをひとつ前提としていただきたい。かような見地から考えると、これが必要だとかあるいは不必要だというのでなしに、いかなる犠牲を払つたか、その代償を国家としては考えてやるべきではないか、あるいは都道府県といたしましても考えるべきではないかということを私ども考えておるのであります。従つて犠牲の多かつたものに対しましては、もちろん相当の補償をすることが建前であります。その考えなくして、必要だとか不必要だとか、現に使つているとか使わないとか、そういうことだけで判断しようとするところに誤りがあるということを私ども考えておるのであります。
  118. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 まことにごもつともな点もあるのでございますが、御承知のように府県警察から市町村警察にかわりました際に、自治体において相当庁舎等も新設されたのでありますが、この移りかわりの際、いわゆる市町村で新たに庁舎をつくらなければならぬというときには、国の半額の補助と、それから半額は元利国庫補給によりまして新設をいたしたのであります。もちろんその後そういつた国庫補助、国庫補給がなくなつておつくりになつた所もありますが、大部分はただいま申しました国庫補助と国庫補給でできているのであります。その総額は昭和二十三年、四年におきまして十八億くらいだつたかと考えております。しかしその後につくつたものは、これはあるいは国と市町村とのいわゆる財政の調整の中において行われたと考えております。大部分が市町村の自主的負担であつたというものもあるかと思います。しかしこの財産を市町村の予定していない警察以外の他の用務に無償で使つてしまうということではなくて、依然その地方警察の用務に充てる施設でありますから、私は実質的にさように乱暴なものではないのじやなかろうか、もし当該のところに警察のそういつた庁舎なりそういうものがなければ、その地方も非常に不安に思われるわけでありまするから、今後それらの施設を維持管理をして行く、あるいは修繕費を出して行くというものの所有にしてそうして維持管理を全うすべきだということで、私はそう無理ではない、むしろその方がいいのではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  119. 床次徳二

    床次委員 ただいまお答えになりましたが、政府委員はあの当時、市町村がいかなる犠牲を払つてつたかという実情に対して認識が足らないと思うのです。国の補助あるいは起債その他が順調にありましたならば、あるいはお言葉のように考えることもいいと思いまするが、実はそれ以上の犠牲をして、その後自治体警察の発展に努力をしておるのです。この住民の気持を政府は十分尊重せられるべきだと思うのでありまして、特に各市はその後さらに引続いて大きな経費を払つておることは、単に俸給ばかりの問題ではありません。あらゆるものにつきまして大きな犠牲を払つておるのでありまして、今回法律改正によつてそれがなくなろうとしていることに対しましては、国もまつたく無関心であつてはいけないと思います。この気持を十分尊重することが今後警察を円満に動かし得ることだと私は思つておるのであります。何もわずかな金にこだわるわけではありませんが、あの当時の警察存置に対する経費というものは、実は学校の経費その他に対してさえも優先するくらいの気持でやつてつたというこの事実は十分ひとつ考えてもらいたい。従つてこれに対して政府は相当の御考慮をいただくことが、行政上は適切な方法でありまして、ある程度の補償を当然考えるべきだと私は考えておる。この点特に大臣に対して再考を促したい。負債がありますときは、もちろんその負債の処置については協議されるようでありますが、負債でなくても、負債と同様な形において市町村がずいぶん負担したのがあるのでありまして、なお今後といえども警察につきましては、往々にして実は予算上見えないところのいろいろな寄付金が強要されておる、これは自治法上から申しましてもはなはだ遺憾でありまするが、相当の寄付金が実際上行われておるのでありまして、この実情もよく察せられて善処される必要があると思う。かかることに対して深い同情のないお考えは、はなはだ不都合だと思うので、大臣にもひとつ考えていただきたいと思います。
  120. 犬養健

    犬養国務大臣 これは自治庁の方の政府委員からもお聞きとり願いたいと思いますが、何でもかんでもほうりつぱなしというような考えを持つておりません。非常に気の毒な事情のわかりました場合は、特別平衡交付金というようなことも考慮しておるようであります。委細は自治庁の方から要すればお答えをいたします。
  121. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 この財産を自治体警察が維持しなくなつた場合、警察庁または都道府県警察の用に供する必要のあるものは無償で与える。自治体において必要なものは、自治体の方に返すという原則がある。それはしかも地方議会の議決を経るから民主的だと大臣はおつしやつたわけでありますが、ところが附則の十五には、昭和二十九年四月一日以降のことだとうたつてある。ところがその前の十三においては二十八年度のものは今の自治体の方で必要があるとかなんとかということは問答無用である。いきなり自治体警察の用に供せられている財産及び物品で引続き警察庁または都道府県警察の用に供する必要のあるものは、二十八年度に限り警察庁または当該都道府県警察は無償で使用することができる、こうなのです。私は占有が所有を決定すると思う。要するに、二十八年度で先にぽかんとやつておいて、二十九年になつたら緩和的に自治体で必要なものは自治体の方にやらせる。すでにここで先手を打つている、こういうことはぐあいが悪いと思う。私は大体頭の悪い方で、この法文というものはよくわからない。ところが何か知らぬが、警察の財産の問題が出て来たときに、私の方の政調会で、これは憲法違反だと言つたときに、ちよつと待つてください、警察法にあつたような気がする。というのは私が警察法を読んでみると、六十七条の二というのが、いかにけしからぬ法文であるかということが頭に残つてつた。だからわれわれがこういう枝葉末節にわたつていろいろ議論しているとわからなくなるんですが、国会以外の人は、実に六十七条の二というものが、とんでもない憲法違反的なものだというふうに思つていると思う。こういうものはやはり心をむなしくして、是正していただいた方がいいと思う。もちろん野党の攻勢にあいまして、今の予算は不完全予算である、それに対して完全予算だということで力みかえつているのあまり、相当無理があると思う。こういう予算は直したらいいんですよ。ですからむしろ特別平衡交付金とかそういうことで、ほんとうに実態に即するようにやつた方がいいと思う。セカンド・ソート・イズ・ベストである。政府は面子にとらわれず、実情に即して処置すべきだと思う。一つのうそをジヤステイフアイするために、次のうそをつくということがある。こういうような意見を持つております。
  122. 犬養健

    犬養国務大臣 今の平岡委員の御意見は、ちよつと誤解があるようでございますから、国警長官から説明いたします。
  123. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この十三号は、二十八年度はそのまま府県警察という形になるけれども、今までの市町村警察国家地方警察そのままの形態で、ただ人事権とか形式上のものだけは与えるけれども、実質は与えない。かような趣旨からこの法律施行になりますと、府県警察ということに形式上はなる。なりますが、依然今までの自治体警察自治体の建物を使つてそのまま執務をして行く、国家地方警察はそのまま国家地方警察の今までの施設で仕事をして行くということを、書き直したにすぎないのであります。財産権の処置は、四月一日現在以後においてつける、こういう考え方をとつたのであります。
  124. 森田重次郎

    ○森田委員 さつきの問題は大事な問題で、なかなか割切れない問題を含んでおりますから、お伺いするんですが、斎藤長官のお話ですと、大体国家から相当補助をやつているじやないか。そういうふうな順序で建てられたものだから、まあ、無償で渡してみたところで、そう異議はないだろうといつたようなお話で、これでは政治論と法律論とまるで混同したような御答弁だとしか考えられない。一体自分が金をもうけたときに、ある特定の人にその金をわけてやつた。そうしてその人はそれで相当もうかつた。こつちが貧乏なときに、前にやつたんだから、お前の財産をこつちに渡せというような法律論は成り立つものではないと思う。くれるときは、くれてもいい。補助を出すなら、出したでいい。国家の仕事ですから、何の事業をやるにも国家から相当の助成が出ている。一定の助成が出て、それでその人の所有権というものは確定してしまつたものを、今度は、前に助成してやつたんだから、無償で渡せということは、どう考えても、法律的には成立しない議論である。ですからここをはつきりけじめをつけなくてはならない。今の斎藤長官のお言葉は、言うてしまつたから何ですけれども、そういうお考えのもとに、あなた方がこういう法律を実行なさろうというところに、非常に大きい権威的警察精神というものが頭の中に潜在しているものとしか私どもには考えられない、ということが一つ。そこで法律は、あなた方来ますとき、相談の上でと言うけれども、大体法律で無償でと書いていると、それじやしかたがないというので、それを無償で渡すということになりますよ。けれどもそれではほんとうの実情に合わないじやないか。あれほど無理して警察署を貧乏な町あるいはその他の市に建てさしておいて、いまさら都合が悪くなりました、国家建前がかわりましたからそれを無償で渡せ、こういうようなことでは、これは何と言いのがれしようと、この法律で無償で没収すると同じようなことで、共産党のやり方と何もかわりはない。ですからどうかその点ははつきりとけじめをつけてもらいたいと、こういうふうに私は考えるものなんです。いかがでございましうようか。
  125. 横路節雄

    ○横路委員 関連して……。今の市町村自治体警察が持つている財産の処分の件ですが、先ほどの斎藤国警長官答弁では、十月一日を目途として今日の市町村自治体警察都道府県警察に形式的にはかわつても、実質的にはかわりはないのだ、従つて二十九年の三月三十一日までは市町村自治体警察従前使用していた財産に関しては、これを当然無償で使うことができるのだとこう言つている。この点は私は非常に重大だと思う。斎藤国警長官は、市町村の自法体警察都道府県警察にかわつても、実質的にはかわりはなくて、形式的にだけかわつたと言われる。一体そういう説明では、今まですでに十日以上にわたつて審議して来た都道府県警察の性格というものがはつきりして来ない。私どもは明らかにその内容、実質がかわつて来ていると思う。なぜならばこの附則の第二十三項にも、明らかに市町村公安委員会都道府県公安委員会の下部機構として昭和二十九年三月三十一日まで存続するとなつている。下部機構なんだ。今までは市町村公安委員会が、それぞれ市町村自治体警察署長を任命していた。従つて斎藤国警長官の言われる、実質的にはかわりはないから、二十九年三月三十一日までは無償で使うことができるということは、はなはだおかしい。なおあなたは、先ほどのわれわれに対する答弁の実質的にはかわりがないということを、今でもそう思つているか。これは先般来の都道府県警察の性格についての斎藤国警長官並びに犬養法務大臣の話を聞いても非常にあいまいなのだが、なお一層あいまいになつているので、はつきりしておいていただきたい。この点が第一点。  それから二十九年の四月一日から、市町村自治体警察で使用していたものが、都道府県警察のものになる場合の、附則の第十五項の件について、先ほど犬養法務大臣から、「当該市町村に不必要で」という点については、市町村議会の同意を得るということになつていると言われた。私がここでお尋ねしたいことは、市町村議会で、これは市町村で必要であるというように全部議決した場合においてはどうなさるのか。この点はこの附則の第十九項に「前六項の規定の適用について争があるときは、長官又は都道府県知事若しくは市町村長の申立に基き、内閣総理大臣がこれを決定する。」とある。そうするとこの場合、市町村が必要であると議決をしても、長官並びに都道府県知事異議の申立てをすれば内閣総理大臣がこれを決定するということは、明らかに市町村自治体警察従前使用していた財産については、ただでもらいたいということで、そういうことがここに書いてある。この点が間違いないかどうか。市町村の議会において必要であると議決をしても、長官あるいは都道府県知事異議の申立てをしないのか。都道府県知事並びに長官が、必要がある場合に内閣総理大臣に全部異議の申立てをして、内閣総理大臣がこれを決定するということになるならば、初めからそれは、手続だけが、いかにも無理やりとらないという形式的なものにしかならないと私は思う。この点が第二点。  第三点は、御承知のように地方財政法の第十三条に「地方公共団体地方公共団体の機関又はその経費を地方公共団体が負担する国の機関が法律又は政令に基いてあらたな事務を行う義務を負う場合においては、国は、そのために要する財源について必要な措置を講じなければならない。」と書いてある。その次の第二項に「前項の財源措置について不服のある地方公共団体は、内閣を経由して国会に意見書を提出することができる。」第三項は「内閣は、前項の意見書を受け取つたときは、その意見を添えて、遅滞なく、これを国会に提出しなければならない。」とある。従つてこの附則の第十九項は明らかに地方財政法第十三条の違反なのである。  さらに附則の第十四項については、地方財政法第二十四条に「国が地方公共団体の財産又は営造物を使用するときは、当該地方公共団体の定めるところにより、国においてその使用料を負担しなければならない。但し、当該地方公共団体の議会の同意があつたときは、この限りでない。」と書いてある。そうすれば当然これは明らかに市町村自治体警察が、都道府県警察にかわつたのであるから、従つて今まで市町村の持つていた営造物に対して、これを使用する場合においては使用料を払わなければならぬ。そうすればここに書いてある附則の第十四項は明らかに地方財政法第二十四条の違反なのである。  この四つの点について斎藤国警長官から明確に答弁をしていただきたい。まず第一は非常に重要ですからしつかり答弁をしてもらいたい。     〔委員長退席、鈴木(直)委員長代   理着席〕
  126. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 まず森田委員お答え申し上げます。私は、現在の市町村警察用財産がかつて府県のものであつたからとか、あるいは一部国の補助その他のものが入つておるから無償で譲渡さしてもいいのだ、かように考えておるのではありません。ただ先ほど床次委員から、府県のものについては相当国の金も入つてつたからというお話がありましたから、その点については、今度のものもそういうものがあるという例に申し上げただけであります。主眼の点は、とにかく当該市町村が自分の警察のためにというのでりつぱな設備、装備をせられた、これはその通りでございます。しかし都道府県警察になりましても、その市町村警察の仕事のために依然それを使われるのでありますから、私は市町村のつくられた意思がそのまま通つている、かように考えるのであります。これは府県のものになつたから、自分のところにある署はもつとまずいものでもいいのだ、かような感じには私はおなりにならないのが通常じやないかしらん、同じ市町村にある警察署で、今までは自分のものだつたからりつぱにしたけれども府県警察になればもう小さなものでよろしい、ここに署がなくてもよろしいという感じには私はならないのではないかと思う。やはり依然として自分たらのつくつた警察を、府県警察になつて当該市町村のための警察事務をやるのでありますから、そのままに、あるいは府県においてもつとりつぱにしてでも維持してほしいという感じでおられる、かように私は信じておるのであります。しかしたまたま他の用途に使うために建物をつくつた——警察は当分ここに入れておくけれども、この建物は他の用途のためにつくつたのだというような場合には、都道府県警察になつた場合も依然いつまでもそれを使うとか、ことに無償で譲渡するということはいけないと考えますが、そこは私は、市町村がそういつた施設装備をつくられた意思は、その方が十分達せられて行く、かように考えているのでございます。現在におきましても、国家地方警察区域内におきましても、国が一切の費用を負担するという建前になつておりましても、地元とされましてはりつぱな署をつくつてほしい、あまり狭くなり過ぎておる、あるいは腐朽しかけておるから、寄付金を募つてでもりつぱなものをつくりたいという御希望を聞くのであります。かような点から申しまするならば、市町村にできておるものが今度都道府県警察になつたから、これは使わせないぞ、そういう水くさい感情になられることはほとんどない、その善意を私は信頼しておる次第でありますので、その点をあしからず御了承願いたいと思います。  なお、横路委員お答え申し上げますが、先ほど実質的にはかわつつていないと私が申し上げましたのは、経費負担といつた面においては実質的にはかわつていない、ただその市町村警察府県警察になつたわけですから、そういう意味の性格の変更というものは、まさしくあるわけであります。これは私は否定はいたしません。明らかに性格は変更いたしまするが、財産関係、費用関係、そういうものは二十八年度中はそのままというわけで、実質的には変更がない。従つてその市町村の財産をそのまま使うという関係が出て来ますから、その点を法律上救済するために十三項を設けた、かように申し上げたのであります。それから市町村に不必要で、また当該都道府県警察の用に供する必要がある、この認定の相違は、これは両方あると私は考えます。ことに、これは警察のために建てた建物ではない、ほかに使う建物だけれども、当分警察が入つておるというような場合には、まさしく起るであろうと考えます。そこは先ほど申し上げた府県市町村の間において、その市町村にりつぱな警察を依然置いておく、このお互いの善意の気持から、適当な妥協というか、協議というか、これが行われるものと確信をいたしておるのでございます。ただいままで、府県警察国家地方警察自治体警察になりました場合も、またその後自治体警察国家地方警察に編入された場合におきましても、そういつた両者の善意の了解によつてうまく事柄が運んでおるのであります。おそらく今後府県もそんな無理なことを市町村に言うことはないであろうと考えます。市町村もまた府県に対して非常に無理だということは主張されないのではないか。万一どうしてもその調整ができない場合には、やむを得ませんから内閣総理大臣が裁定をする。しかしその裁定が不当であるという場合には、今大臣がおつしやいましたように、裁判所にも訴え出るという道があるわけでありまするから、救済の余地も残つておるのであります。要は、法律上こういう規定は設けましたが、われわれとしては過去の例にかんがみまして、市町村府県警察をりつぱに維持して行くという両者の善意を信頼いたしておる次第でございます。なお、地方財政法の関係地方自治庁の方からお答えを願いたいと思います。
  127. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 地方財政法第二十四条の問題でございますが、これはお示しのように、国が地方公共団体の財産あるいは営造物を使用するときは、その団体の定めるところによつて使用料を負担しなければならないという一般的な原則を示したものであります。警察法案の第十三項におきまして特に無償使用ということを規定しておりまするが、これは昭和二十八年度の暫定的な措置として、ただいま国警長官からお話のように、国と関係市町村における負担の関係、財産的な関係においては現状のままで行きたい、こういう前提に立つて規定をせられておりますので、特にその使用の関係についても現状通り無償で使用するという特別な規定を設けられたものと思うのであります。それから地方財政法の第十三条と附則第十九項との関連の問題でありますが、附則第十九項の方は、これもただいま御説明がございましたように、財産に関するいろいろな決定をいたさなければならないので、その間に争いがあつた場合にこれを裁定する行政的な手続を規定いたしたものでございます。財政法第十三条の方は、法文にも明らかなように、国が地方に対して新しい義務を課して、しかも財政的な裏づけと申しまするか、財源措置を講じてない場合の一つの救済的措置として意見を提出することができるということを規定いたしておるのでありまして、別にこの規定の発動を阻止しておるとは考えないのであります。
  128. 横路節雄

    ○横路委員 斎藤国警長官に私はお尋ねしたいのですが、あなたは今私に対する答弁の中で、今度市町村自治体警察は明らかに性格がかわつて都道府県警察になつた、性格がかわる、こう言つておる。性格がかわつたということはどういうことであるかというと、今までは、地方自治法第二条によつて市町村のなすべき当然の義務であつたが、今度は市町村義務ではなくなつて、今までの自治体警察ではない性格のかわつたものになつた市町村は、今まで市町村の当然の義務としてやつてつたればこそ、いわゆる昭和二十八年の九月三十日なら九月三十日までこれを払う。しかし十月一日から全然性格がかわつて別な性格になるな、らば、国あるいは都道府県が当然これをやらなければならない。それを別な義務として市町村にやつてもらうわけです。そうすればこれは当然十月一日以降の俸給についても払わなければならないし、十月一日以降におけるところの、それまで市町村自治体警察が使用していた建物、財産等に関しても、地方財政法第二十四条の建前に立つて使用料を払わなければならない。自治庁財政部長は原則だといつて、何かあとから自由にかえることができるような印象を与えるような答弁でありますが、これは原則ではなく基本です。当然地方財政法第二十四条によつて払わなければならぬ。その点は、斎藤国警長官からの答弁で、全然性格がかわつたのだ、こう言いますから私はお尋ねをしておるのです。その点についてさらに御答弁をしていただきたい。
  129. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この法律施行によつて性格がかわると申し上げましたのは、その通りでありまして、市町村警察府県警察という性格にかわることは当然であります。しかしながら二十八年度中は暫定的措置として、財産の所有関係あるいは給料の支払い関係といつた点はなお従前の例による、従つてその面においては、つまり財政的な面においては、性格がかわつていないとも申し上げられるかと思います。
  130. 横路節雄

    ○横路委員 私は斎藤国警長官お尋ねしたいのですが、地方財政法その他ではどういうように規定してあつても、今度の新しい警察法経過措置としてさえきめておけば、前の法律はどうあつてもかまわないのだ、こういう考え方ですか。あなたは今そういうように御答弁なすつておりますが、このことをはつきり承つておきたい。前に地方財政法なり地方自治法なりで何をきめても、経過措置として、今回の法案の中で経過的にこうしますとさえうたつておけば、前の法律には何も抵触しないのだ、そういう法はつつてつても、そんなものは関係ないのだ、こういうようにおつしやるのか。これは今後の審議をして行きますのに非常に大事ですから、その点ひとつお尋ねしておきます。
  131. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は、この警察法措置地方財政法に抵触をしておる、従つてその例外規定であるのだとか、あるいは抵触をしていない、ただ補足の規定であるのだとか、こういうことは、地方自治庁の方におまかせいたしておるのであります。私の申し上げておりまするのは、これは、妥当な措置であるということを申し上げておるのであります。これが前の地方財政法とどういう関係になるかという点は、自治庁から御答弁を聞いていただきたいと思います。
  132. 横路節雄

    ○横路委員 私は、今の斎藤国警長官の御答弁ははなはだどうも了解しがたい。地方財政法でどうなつておるか、それはおれの知つたことじやない、それは自治庁に聞いてくれというようなことを言う。約八万四千三百幾人かにわたるいわゆる市町村自治体警察の職員を十月一日から都道府県警察の指揮下に入れて、そうして、この市町村自治体警察が持つている財産を無償で使用する法律をつくつておきながら、おれは知らない、そういうものは自治庁に聞いてくれというようなことでは、あまりにも不見識だと思う。こういうことであれば、私は自治庁長官の本多さんに答弁してもらうよりほかしようがないですね。
  133. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 地方財政法の解消釈を私が申し上げましても権威がないと思いましたから、地方自治庁から御答弁願いたいと申し上げたのであります。地方自治庁の方はこれでさしつかえない、こういうことを私の方に御回答いただいておりまする上は、法律上しようがないと私ども考えております。そうして、実態上非常にこれは無理かというと、私の方では無理だとは思つておりません。こういう措置が、妥当ではないかと考えておりますと、かように申し上げておるのであります。私の方で申し上げまするならば、地方財政法の特例であろうと解釈をいたしておりますが、しかし地方財政法の本旨を没却するようた特例だとは考えておりません。
  134. 横路節雄

    ○横路委員 自治庁の方から答弁してください。
  135. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 先ほど私から申し上げましたように、もちろん地方財政法の二十四条で申しますれば、一つの基本的な原則としては、国がそういう団体の造営物、所有物を使用する場合には使用料を払うのが建前でございますけれども、この附則の第十三項は、昭和二十八年度に限る。すなわち、この警察法施行の暫定的な措置といたしまして、国と団体との間の財政的な関係と申しましようか、経費の負担関係、それは二十八年度に関する限り現状のままで行きたい、こういう建前ででき上つておりまするので、その使用等の関係につきましても、地方財政法自身から申しますると、一つの特例を設けたものだ、かように解釈をいたしております。
  136. 横路節雄

    ○横路委員 ちよつと今の点どうもおかしいですよ。地方財政法の特例を設けたものであるならば、明らかに地方財政法の二十四条のところにそれを修正するか、改正するかして出さなければならぬ。あなたは今、これは地方財政法の第二十四条について特例を設けたものと思うというようなことを言うが、そういうようなことはない。  それからもう一つ地方財政法第十三条に、これは何べんも読みますが、「地方公共団体地方公共団体の機関又はその経費を地方公共団体が負担する国の機関が法律又は政令に基いてあらたな事務を行う義務を負う場合においては、国は、そのために要する財源について必要な措置を講じなければならない。」となつておる。国警長官は性格がかわつておるのだと言つておる。性格がかわつたということは、新たな義務を負つたのだ。そうすれば、これも地方財政法第十三条の特例なんだ。特例であるならば特例のように、昭和二十八年度に関する地方財政法第十三条何々、第二十四条何々の特例に関する法律案というものをちやんと出さなければならぬ。特例と思うということはないだろう。はつきりしてもらいたい。
  137. 武岡憲一

    ○武岡政府委員 地方財政法に一つ改正をして、新しい特例を設けるということを申し上げたのではないのでありまして、この附則十三項の規定の性質は、地方財政法二十四条の基本原則から見まするならば、一つの特例的な場合であるということを申し上げているのであります。
  138. 横路節雄

    ○横路委員 だから私は先ほど聞いたのだ。地方財政法にどううたつておいても、地方財政法に基本的な原則がどうあつても、法律がどうあつても、その他地方自治法がどうあつても、あなたの方で出したこの法案にさえ載せておけば、前の基本原則は全部はずれて、これが本則である。だから前にかりにどういうように書いていようと何しようと、この法案にさえうたつておけばいいのだ、そういうことに解釈できるが、それでさしつかえないかと私は聞いているのですよ。あなたの今の答弁はその通りだ、ぼくの言う通りにあなたは答弁している。
  139. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それでは私からとりあえずお答え申し上げます。ただいまの問題は、地方財政法とこの法律の一部分との矛盾関係におそらく主眼があると思うのでありますが、申すまでもございませんけれども、今お話に出ましたように、たとえば憲法と普通の法律との間の矛盾関係というものは、これは許されません。憲法の方が上位であり、普通の法律がその下にあることは当然でございますからこれは当然許されませんけれども法律法律との間の矛盾抵触関係というものは当然あり得るわけであります。その場合を律する原則としていわゆるピタゴラスの定理みたいなものがございまして、先にできた法律は後にできた法律によつて打破られるという原則と、一般法は特別の規定によつて破られるという原則と、二つの原則があるわけであります。その点から申しまして、今回の場合は一般法である。あるいは、前法であるところの地方財政法の一部分に対して経過的に特例的のことをきめたというわけでございます。しかもそれが地方財政法の精神には反していないだろうということでございます。
  140. 横路節雄

    ○横路委員 あなたの今の説明で非常に大事だと思うのは、いわゆる憲法と今の法案との間においては絶対に抵触してならぬということですね。それでは私はあなたに、あなたは専門家なんでしようからひとつ聞きたい。憲法の第九十二条に、「地方公共団体組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」となつている。そうして地方自治法の第二条の第三項に、地方住民の秩序の維持、いわゆる公共の福祉の増進という点が明らかになつている。そうするとこの点は、憲法の第九十二条から地方自治法の第二条の第三項に来ている。そうして警察法の前文には、明らかに、日本国憲法の精神に従つて地方自治の真義を推進するとなつている。従つて地方自治の真義は何だ、いわゆる民主政治の基盤は何だというと、地方自治はその単位は明らかに市町村である。そうすれば、市町村自治体警察を廃止したということは、これは憲法九十二条の津反ではないか。あなたの解釈からして、憲法に関する抵触は絶対許されないということになれば、この警察法は明らかに憲法違反だ。この点に対するあなたの解釈を聞きたい。
  141. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お話の精神はまことにその通り御同感申し上げます。但しこの今回の法案が憲法に抵触しておるかどうかということ、これは絶対に抵触しておらないと存ずるわけであります。さらにこまかいことはおそらく前々から大臣その他が御説明申し上げたところと重視いたすでございましようから述べませんけれども、たとえばかりに憲法に言う地方公共団体というものが市町村であるということになれば、現在国家地方警察というものによつてある町村はまかなわれておりますが、これは憲法違反ではないかという問題も連想されるように思います。しかし私どもはもつと大きなところから見ればこれは決して憲法違反ではない、現行法も今度の改正案も憲法違反ではない、こういうふうに信じております。
  142. 鈴木直人

    鈴木(直)委員長代理 横路君、質問に対する答弁が一応終りましたから……。
  143. 横路節雄

    ○横路委員 それでは私はこれでやめます。
  144. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 ちよつと関連質問で簡単に申しますが、斎藤国警長官にお願いします。私の言わんとするところは全部の委員がみなおつしやいましたが、今回のこの警察法は実にずさんきわまる財政措置で、あなたは現在市町村が赤字財政で困つておるということは御存じでございましようか、いかがでございましようか、これが第一点。  それから第二点は、御参考までに申し上げておきたいのでございますが、日本に九十九の国立病院がございます。この九十九の国立病院を、全部厚生省が三千万円なり四千万円なりの金をつけて、その地方へ払い下げてやる、こういうふうな親切さを持つておる。それを今回のこの警察法限つて、なぜそういう独善的なフアツシヨ的な財政措置をなさいますか。これをもつてしても国家警察であるということを如実に物語ることができるではないかと思いますが、それを斎藤国警長官質問いたします。
  145. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 各公共団体財政上非常に困窮しておられるということは、私よく承つております。来年度の昭和二十九年度におきましては、そういつた点から市町村府県あるいは国との間に、財源調整と申しますか財政調整を政府において今真剣に御考慮になつておることも私は聞いておるのであります。ただいま国立病院を払い下げる際に金までつけてやつた、その親切さはないかとおつしやいますが、その点は本年度は国家地方警察に所属するものは全部国費でまかなう。それから市町村のものは先ほどから御説明しておりますように、本年度は従前通りで、来年度府県のその財源をどうするかということは、これは二十九年度におきまして、府県が十分財源のまかなわれるように財源調整が行われるものと信じておるのであります。本年はまだ地方税法の改正も目下研究中でございまするから、関係当局におきまして本年中にこれを実現できませんので、本年だけは従前通り、かようにいたしたのでございます。地方が国立病院の経営をいたしますについて、なかなかこれはむずかしい、赤字を生ずるかもわからぬという場合には、一時に金をつけておやりになつたのであろう、その親心も私は察せられるのであります。今度の警察法改正によりまして府県が新たな費用を要するということになりますれば、これは税法、平衡交付金あるいは国の負担金におきまして、年々これを措置して参るつもりでおります。その原則は本法に書いてあるのでございます。
  146. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 もう一点。私は斎藤さんに一言申し上げたいのですが、警察は非常に雑費がかさみます。ところが病院経営は、金を払つて診察してもらう病人によつて成り立つている。それにもかかわらず厚生省はそれに何千万円か金をつけて地方へくれてやる。それを御存じなくして、なぜこんなフアツシヨ的なことをなさるか。この一事を見ても、いかにこの法案がずざんでありフアツシヨ的であるかがわかる。だからしておいこらと言うて私のしりをたたいたことく、そういう暴力を振う警察になるということをあなたは御承知であるかどうか、その点をあなたにもう一言お尋ねするから、どうぞこれに答えてちようだい。
  147. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私どもはただいまおつしやいますようなフアツシヨ的な考えで決して立案いたしておりません。警察はもちろん国民全体の公僕でありまして、暴力を振うというようなことはもつてのほかだと考えております。われわれその運営の面に当りましても、その点は第一の要件といたしておると考えておるのであります。この法案の立案にあたりましても、さようなつもりで立案をいたしておるのでございます。
  148. 古井喜實

    古井委員 法律の大家である法制局長官がお見えになつておりますから、さつきの残つておる問題をお尋ねいたします。いずれ憲法違反の法律だとか、間違つておる法律だとかいう説明をされるはずはないので、問題はいかに巧妙な、妙ちきりんな議論を展開されるかということを伺つてみたいと思うのでありますけれども、その前に一点、今の関連質問みたいなことになるのですが、伺つておきたいと思います。  それはこの附則二十四項によつて経過措置でありますけれども都道府県警察に要する経費を市町村が支弁するという規定がある。これに関連してでありますが、一体この府県行政事務についての経費を市町村が負担するということは、自治の本旨に合つておることでありますか。また国の行政事務に関する経費を府県あるいは市町村が負担させちれる、こういうことは自治の本旨に合つておることでありますか。本旨に合つておるならば、国あるいは府県行政事務の経費をいくら府県なり市町村に負担させても、一向自治の本旨には反しないのだからさしつかえないということになると思うのでありますけれども、これはどういうことでありましようか、御意見を伺います。
  149. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 自治の本旨に反する実例というものを私存じませんけれども、ただいまおあげになりましたような事柄は、これは申すまでもなく、たとえば警察ということで申しますれば、地元の市町村の治安といいますか、そういうことにも深い関係のあることでありますし、府県としても深い関係のあることではないか、あるいは場合によつては国の関係もあると思いますが、これは別問題といたしまして、それぞれ地元の村、町の安寧ということに非常に深い関係のあることでありますからして、それを持寄りでお互いに協力してやるという頭から申しますれば、一向自治の精神には反しないと思います。たとえば、これは自分の記憶するところを申し添えて悪いと思いますけれども、現存教育の関係のことはそうだと思います。たしか私の記憶では、市町村の先生の給与府県が持つておるというようなことも、やはりそういう趣旨からのことだろうと考えておるわけであります。
  150. 古井喜實

    古井委員 教育の方の関係は、市町村の学校に勤める教員の給料を、上の団体の府県が負担する、こういう場合でありますが、私の伺つておるのは、上の団体の業務の経費を、下の団体が負担する、そういうことの場合であります。またさしつかえないかのような御説明でありますけれども、それならば暫定的な措置でなしに、永久に負担させても一体さしつかえないものかどうか。従来経費を負担しておつた市町村に対しては、永久に従来負担しておつただけ負担させる、こういうことを法律できめても本旨からいつてさしつかえないものかどうか。暫定的だからさしつかえないとおつしやるのかどうか。それから地元の市町村にも利害の関係ありとおつしやつたけれども、そこに勤めておつた警察職員は、まつたくその市町村関係のないところに勤務するかもしれない。なおかつこれは負担しなければならぬという御説明でありますが、これは少し御説明では通らぬように思う、その辺についてはどう御説明になりますか、お伺いしたいと思います。
  151. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の役割といたしましては、暫定的だからいいとか、恒久的であるべきだというようなことは、全然念頭に置かずにお答え申し上げます。そういうことは政策の問題として、何がよいかということは、そちらで御判断いただいてけつこうだと思います。私どもは憲法に違反するかしないか、自治の精神に反するか反しないかという観点からお答えするわけでありますけれども、さような観点から申しますならば、今申しましたようにいろいろな方法がございます。その中の適当なものをお選びになつて、目的を達成するには何が一番スムースに、完璧に行くかということを御理解いただけばけつこうだと思います。
  152. 古井喜實

    古井委員 そうしますと附則第二十四項の規定は、昭和二十八年度に限るということでなくして、そこをとつてしまつて永久に負担するんだ、こういう規定にしても、法律論としては地方自治の本旨に反しない。従つて憲法上さしつかえないということになりますか、どうでありますか。
  153. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 臨時であるから憲法に違反しないとか、永久ならば違反するというような性質のものではないと考えております。
  154. 古井喜實

    古井委員 そうすると御説明によると、こういう規定を年度を限らないでやつてもさしつかえないという御意見のように了解いたしますが、それでよろしいのでありましようか。
  155. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 憲法論なら、その自治の本旨というような大所高所からの御議論から行きますれば、そういう方法も考えられると申し上げた次第であります。
  156. 古井喜實

    古井委員 つまり若干自治の本旨からいうと適当でないことであつても、やむを得ない経過的の措置であるからという理由で、そういう弾力性を持たして、自治の本旨に反するか反しないかということを論ずることも一つ考え方だと思うのであります。しかしそうでなくて、こういう規定を設けてもかまわないのだという御見解かどうかという意味なんです。
  157. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 かまわないと申しますのは、決して憲法に違反いたしませんということであります。
  158. 古井喜實

    古井委員 そうすると永久立法でもかまわないという意味のようでありますが、ここに至つては、さすがにじつくりごらんになれば、通らぬ御説明であろうと思うのであります。そういつたからといつて、これは憲法に違反する立法だという意味におつしやるはずはないのでありますので、私は二十四項の「二十八年度分に限り、」ということを削つても、なおかつさしつかえないのだという解釈をお持ちになるということで、この御見解の妥当性ははつきりしたように思うので、この点はそれでおしまいにしておきたいと思いますが、お伺いする点があるなら伺つておきたいと思います。
  159. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 念のために申し上げておきますが、やり方として二十八年度分に限りとした方が適切であるのか、これをのけた方が適切であるのかというような問題は全然別にいたしまして、純粋な蒸溜水のような法律論を私は申し上げておるだけのことでございます。     〔「蒸溜水とは何だ、代議士をばかにするな」と呼ぶ者あり〕
  160. 古井喜實

    古井委員 法律文学の大家に近来なつておられる佐藤さんだけあつて、比喩で御説明になりましたが、私はぎりぎりの問題は、平常の形においてはおもしろくない。しかしごく一時のやむを得ない処置だから、その程度のことは自治の本旨に反する反しないという論議の余地があるかという点においては、二十四項は議論の余地があると思うのです。これをそうでなくて、手離しでもつて自治の本旨に反しないという御見解であるならば、私は驚くべき見解だと思うのです。それならば府県の事業に対する経費を幾らでも市町村に全部負担させてもかまわぬことになる、これは私も承服できないし、おそらくそういう議論は公平に言つて通らぬものだと思うのです。
  161. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 蒸溜水は蒸溜水でございますけれども、この法律案関係といたしましては、昭和二十八年度分に限りとあるのがもつとも適切であると考えて私は賛成しておるのであります。
  162. 床次徳二

    床次委員 ただいま二十四項に関連して、第三行目の「それぞれこれを支弁する。」これを支弁するのは、義務があるというように考える、当然そうだと思いますが、—それでは伺いたいのでありますが、市町村が現在支弁しております費用の内容は、市町村が基準財政需用として認められました数字、それ以外に自治負担として負担しておりますのが少くありません。特に自治体警察におきましては、待遇を改善するために市町村は特別な経費を負担しておるのでありますが、その経費をも今後引続いて負担することになるのであります。しかしながら二十八年度におきましては、当然これは予算には計上しておるのでありますが、その裏づけというものは、実は国の方からもらつていない、基準財政需要の中には入つていない数字が若干入つておるのであります。私はそれをもこの二十四項の規定によりまして、今後支出の義務ありとすることは、地方財政上違法である、また同時にこれは当然平衡交付金におきまして、考慮すべき金額であると思いますが、この点に対して政府の御見解を伺いたいと思います。
  163. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまのお話の点は、地方財政計画あるいは基準財政需要額の基礎として、警察費として算定しております分以外の分があるのではないか、その分についての支弁が、現に市町村に依然として残るかどうかということでございますが、これは二十四項によりまして、それぞれこれを支弁するということで、支弁の義務が生ずるわけでございますけれども、本来府県警察の経費を市町村が負担をするというのは、なるほどそのこと自体としては異例でございますけれども、二十八年度分に限つてさような措置をとるという暫定的なことは、地方財政の実態についてはさほど影響を与えませんので、やむを得ない措置であるというふうに考えておる次第であります。
  164. 床次徳二

    床次委員 地方財政の実態からやむを得ないとおつしやるのでありますが、これは地方財政法から申しますと適当じやないじやないか、当然その差額は国が負担するなり何なりしなければよろしくない、市町村におきましては義務があると法律に書かれましても、心よく負担したくないものであろうと思うのでありますが、この点各市町村の意向というものを十分尊重するかどうか、この点は先ほどのものの場合と全然違うので、これは全然市町村の意思というものを無視してありますから、はたしてこれは義務ありとして一方的にやつてよろしいかどうか、私ははなはだこれは遺憾だと思う、むしろ違法ではないかという見解を持つておるのであります。当然これに対して、国家としては相当な措置を講ぜらるべきではないかということを考えますので、重ねてお伺いする次第であります。
  165. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 現在の市町村自治体警察といたしましては、市町村の事務でございますから、従つてその必要な経費を市町村が支弁をするのは当然のことであります。しかしそれは自治法のさような根拠の規定に基いて支弁の義務が生じておると思うのでありますが、この改正警察法におきまして、二十四項で特に市町村がそれぞれこれを支弁すると書きましたことによりまして、市町村といたしましては府県警察の経費を支弁するという義務が今度生ずるわけであります。従つて支弁義務の根拠が自治法とこの二十四項と違つてはおりますけれども、その実態の内容におきましては、今までと二十八年の今後とにおきましてはかわりはない。要するに財源措置という面から申しますと、これは市町村にそれだけの負担を今後課して参りましても、それだけの財政需要というものを見込んでおるわけでございますから、特にかわりはないというふうに考える次第であります。
  166. 床次徳二

    床次委員 市町村予算を計上しておりまして当然出すつもりであつた、その点は事実でありまするが、しかし今までは市町村はこれは当然出すつもりでやつてつたからよろしいのでありますが、市町村の意に反して本法が改正せられました場合に、引続いて今度はそれを第二十四項だけでもつて義務づけるということははなはだ不当ではないか。もつとこれに対しましては、国家としては適切な措置を講ずべきであつて、二十四項のこれを支弁するというだけでもつてやりますことは、いかにも私ども納得が行かないのであります。この点ひとつ十分大臣はお考えをいただきたいと思います。
  167. 古井喜實

    古井委員 さつきの問題をもうちよつと質問したいのですが、地方財政法の第十二条によりますと、「地方公共団体が処理する権限を有しない事務」つまり府県警察であれば、市町村としては「処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、法律又は政令」云々とありますが、「国は、地方公共団体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない。」そこで附則第二十四項が恒久立法としてさしつかえないという御見解であるならば、地方財政法十二条は抹殺しなければならぬ。根本的に十二条のこの規定自身がいらなくなる。あつてはおかしいことになる。暫定的だというならまだしもでありますが、そういうことになると思う。かつまたその十二条の規定は、地方財政法の本旨である憲法の趣旨を展開して、地方自治の本旨を全うさせるためにできておる地方財政の基本法だと思うのです。その基本法で示しておる一つの原則的な規定を改変しなければならぬ。これはやはり憲法の精神にまで触れて来る問題だと思う。そこで暫定立法であるからという意味でなしに、さしつかえないとおつしやるならばこの点をどう御説明なさるか伺いたいと思います。
  168. 横路節雄

    ○横路委員 今の点に関連して、私は法制局長官お尋ねしたいのですが、先ほどから古井委員長官との間のいろいろな問答の中で、あなたは地方自治の本旨には反しない、こういうことを言つておるが、地方財政法の第二条の第二項にはこう書いてある。「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」さらに第二条の第一項には「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」とある。この地方財政法は明らかに地方自治法と相並んで地方自治の本旨を明確にこの中にうたつてある。あなたは先ほどのお話の中で、いわゆる臨時立法であれ、恒久立法であれ、市町村の職員に対する給与その他について、あなたの話によれば従前通り永久に払つて地方自治法の本旨に反しないようなことを言つているが、これは明らかに地方財政法第二条の違反だと思う。この点古井委員質問に関連してぜひ答弁をお願いします。
  169. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 最初に申し上げました通りに、今の場合はかりにその負担する方の市町村の利害に関係のないことについて負担させたということになれば別でありますけれども、この警察法の場合については、やはり当該市町村といえども、大きな利害関係を持つのでございますから、ということを最初に申し上げたわけでございますが、その趣旨から申し上げまして、今も大上段から憲法には違反しませんということを申し上げたのであります。ただ私は言葉使いがへたでございますから、非常にへたな言葉で申し上げるのですけれども、たとえば今鈴木君が答弁しているところを聞いておりますと、たとえばこれは異例のものでございます、とこう言つております。常例であるか、異例であるかというようなことで言えば、この二十四項でございますか、これはまさしく異例なものでございますと、私は申し上げればよかつたことであると、今後悔をしておるのでございます。
  170. 古井喜實

    古井委員 たいへん腕曲に御説明をなさつたが、御趣意はわかつたので、要するにこれは暫定立法であるから考えるということに期するようであります。そこで暫定立法としての問題になるのでありますけれども、なぜこういう暫定立法をつくるか。正々堂々と国も予算の組みかえをし、それから地方予算の組みかえをしさえすれば、こういう無理な経過的措置をしなくても済んだのであります。そこで暫定措置といえども、いわばこういうふうにおつつけてしまつたのであります。こうならざるを得なかつたのではないのであります。そこで附則二十四項というものは、まことに妥当性の乏しい規定になると私は思うのであります。しかしこれはこの問題だけでなしに、昭和二十八年度にはとにかく予算をかえぬのだということを先に言い出したものだから、それをだんだん詰めて行つてこういうことになつてしまつたようなうらみもあると思う。いまさら政府としては引けない問題だろうと思いますけれども、実はここにも馬脚が現われておると私は思つておるのであります。これは他の方からなお重ねて御質問があるならばそれはそれとしまして、私はそれより前に、問題にしておつた無償で市町村の財産を府県に譲渡させるああいう法律の規定が、憲法上さしつかえないのだという巧妙な御説明をひとつ伺いたいのであります。
  171. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その問題は、仄聞いたしますとたびたび他の方からお答えしておるかと思います。しかし私は私としてとにかく信念を申し上げたいと存じます。重複するかも存じませんけれども、結局問題は憲法二十九条の第三項の問題になつて来る。議論がそこから初まるのではないかと私は思うのでございますけれども、申すまでもなくここに「私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と、まずございますし、そこで一体この公共団体の持つておるような財産というものは、憲法にいう私有財産というものだろうかという問題が第一の疑問になるわけであります。私ども憲法について考えておりますところは、特に国民の権利義務におきましては、公の権力によつて個人が侵害されないようにというところを重点に置いて組み立てられておると私は信じます。従いまして、この財産権の保障の問題で申しますれば、国の権力あるいは公共団体の権力というような公の権力によつて、個人々々の財産が侵されてはならないということが保障されておるものでありますから、そういう建前から私有財産という言葉も出ておるのだろう、公共団体は侵す方の側として、むしろ防禦されておる侵される方の側としては扱つていないのじやないかという気持が第一にあります。これは今の文字からもはつきり出て来るのじやないかということで、おそらく二十九条そのものの問題になつて来ないのじやないかと思います。しかし憲法としては、むしろ侵す方の公共団体考えておるのですけれども、侵される場合について考えられないことはないわけです。そこで、ではこの憲法の精神からいつてこの法案はどうだろうかというところまで百歩退いてこれは考えなければならないことだと思います。しかしそうやつて考えて参りますと、前々からの古井さんとのやりとりといつては失礼でございますけれども質疑応答の中に出て来ましたような問題にも触れますけれども、この問題は、むしろ二十九条にあてはめて考えるとするならば、かりにあてはまるといたしましても、第三項の問題じやなくて、第二項の問題だ。そうすれば、財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律で内容を定めるという方向で参りますから、保障の問題がなくなつて来るのじやないか。そこで今のように百歩退いた議論から申しましても、この法律に書いてあるところでは憲法違反にならないのじやないか。かてて加えてさきの警察法の場合に、終りの方に同じような条文がございましたし、昭和二十四年にも同じような先例が法律をもつて規定されておるにもかかわらず、何らそれが争われずに今まで来ておるということは、おそらく皆さんが憲法違反ではないというお考えで処理していらつしやるのではないかということで安心しておるのです。
  172. 古井喜實

    古井委員 そこで憲法違反にあらずという御論拠は、憲法第二十九条の第三項の私有財産というものに当らないのじやないかというのが第一点であります。その点においては公共団体といえども、私有財産の主体であるということは御承知通りでありますし、先ほど指摘しました憲法九十四条にも、地方公共団体はその財産を管理するということも、わざわざあげておるくらいであります。やはり財産権の主体になり得るということは、これは問題にならない明白な事実だと思う。そこで財産権の主体になつた場合に、地方自治体ならば、その財産権を国がどんなにかつてに巻き上げても、奪つても、さしつかえないことであるというりくつが一体あるか。そういうことであれば、自治体というものは一面では私法上の人格を持ち、財産権の主体であるが、それはもう一つも保障されないで、地方自治体であるがゆえに、人格の独立というものは少しも保障されないということになつて自治体の独立性は破壊されてしまう。自治体建前からいつても不合理でありまするし、また自治体が私法上の財産権の主体であるというれつきたる事実からいつても、これを除外する理由にはならないということで、これはとても承服できる議論ではないように思うのです。なおまた財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定めるということは、これが財産権の内容の問題であるというふうには考えられない。財産権の帰属の問題であり、財産権自体を奪うか奪わぬかという問題である。私は、この「財産権の内容は、」云々と書いてあるこの内容の問題であるという御見解は、まことに突然伺つて見当もつかぬ御見解のように思う。なおその先例があるとお話になつておりますが、この先例があるかないかは憲法に違反するかしないかということには少しも関係がない。憲法の先例ならともかくとして、法律の先例では、憲法違反かどうかということを解決する先例にはならぬと思う。問違つておるなら先例も間違つておる。従前に無償で移転された財産権を今取返してもよろしい、それは違憲立法で無効であるならば、今取返すこともできると思うのであります。これは私は、そういう点についてとても説明がつかないのじやないかと思いますが、それともまだうまい説明がつきますものかどうか。なおまたあなたのおつしやるような御議論は、あなた独自の御見解というだけではなしに、他の方面の意見等も徴せられた結論であるかどうか、これもひとつ伺いたいのです。私はこれについて有力な公法学の権威者の一人の意見も聞いておりますが、これはあなたの御意見と遺憾ながらまるで相反しております。そこでその辺について御答弁を願いたいと思います。
  173. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の先ほど申しましたことは、これは私は私で信じておりますから、それ以上は、あるいは古井先生は私に賛成のお気持かもしれませんが、かりに反対のお気持を持つておるとすれば、それは見解の相違と申し上げるほかないと思います。他の人の意見云々というお話もございましたけれども、われわれの関係した範囲内においては他の人の意見も聞いて、—これは前の先例を立案いたしたときの話でありますが、したこともあります。今の二十九条の関係の財産権というものは、これこそ釈迦に説法で申訳ございませんが、一つ一つの持主のきまつた財産権という意味ではないのでありまして、これは一般の財産権というものの内容、限界を示しておるものであることは申すまでもないことだと思いますから、個人の場合であろうと公共団体の持つものであろうと、同様に二十九条第二項の問題として処理されて行かなければならぬというような気持でおるわけであります。
  174. 古井喜實

    古井委員 これ以上は議論にわたるのでこの程度にとどめたいと思いますが、今のように二十九条第二項を御解釈になるならば、およそ財産権に関する事項は法律でこれを定めるということと同じことになる。第三項のごときものもこれに含まつてしまうと思います。つまり財産権に関するものは、財産権を奪うことでも財産権の内容なりとして規定し得るというのであれば、三項はいらないと思います。これはいかにも強弁だと思います。この点の議論は、私はいわば審判のついておる問題とさえ思うのであります。ただいままでの御説明ならば、これは判断を必要とする段階に来ておるように思いますが、それでは御不服であるとおつしやるならば、なおお考えを弁明されたらよかろうと思いますので、その点を念のために伺つておきます。
  175. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 さらに重ねてでありますから申し上げますが、いろいろな学説というものがたくさんございます。これはむしろ古井先生の方がお詳しいことと思いますが、私どもの目に触れておる学説なども参考にしての私の結論は、この二十九条の三項というものは、結局ある特定の人を名ざしてその人の財産を取上げる場合で、一般の不特定の関係で一般的の基準によつて財産権を制約するという場合は、二項の関係であるということを言つておる学者がございますが、私もそれにまつたく同感しておるわけであります。そういう立場から御説明申し上げておるわけであります。
  176. 古井喜實

    古井委員 特定の場合と、不特定のものを対象にする場合とで、二項と三項の振りわけになつて来るようなお話でありますが、それならばある一つの町村の住民の財産を全部無償で国が奪う、こういう法律をつくることは、第二項にのつとつておるのだからして一向さしつかえないということにもなりましようか。
  177. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それはここにありますように、公共の福祉に適合するかしないかの判断に私はなると存じます。
  178. 古井喜實

    古井委員 むろんそういう前提であればさしつかえないことでありますか。
  179. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 公共の福祉に適合するように財産権の内容としてきめる、そういう観念に該当します場合には、もとよりそれによつてなし得ると思います。
  180. 古井喜實

    古井委員 それではますます奇異で、ますます怪であると思つて説明を伺つておるのでありますが、この辺でむしろやめておく方が双方のためであるかもしれないと思いますので、あとは各人の判断におまかせするほかはないと思います。
  181. 門司亮

    門司委員 関連して。一言だけ聞いておきたいのですが、これはこの前も私大分聞いてみたのですが一向はつきりしない。やはり今もはつきりしない。憲法二十九条の「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」こう書いてありますが、これは財産権の内容は公共の福祉に適合するという文字自身が、この内容の規定でありまして、必ずしもこの規定は無償でとつてもいいという規定ではないと私は思う。要するに譲渡の関係をここに現わしていると思う。財産権というものは非常にむずかしいのでありまして、その次の三項に書いてありますものは、私有財産に対してこれを公共の用に供する場合においては、御承知のように道路収用法その他で、強制的にこれを没収するわけではありませんが、とることがあるのであります。この三項を裏づけるために私は二項があると思う。道路法によつてたとえば強制執行いたしまして、これをとるにいたしましても、それはやはりやたらに没収してはいけないという一つの保護規定である。従つて前項の二項を保護規定と見るのが私は正しいと思う。そういたしますと、たとい公共団体でありましようとも、これを無償でとることは憲法にやはり抵触しやしないかと思います。これは保護規定であるかどうか。
  182. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 最初にもう一度お断りしておきたいと思いますのは、実は私が最初申し上げましたところによりますと、本来この法案関係の問題は、二十九条の問題にはならないと私思つておるわけであります。ただ特に敬意を表しまして、百歩譲つて、この精神が適用になるとしても、こういうことでございましようということを申し上げましたので、かりに百歩譲つた場合のことを非常に深入りしていただくことは、実は僭越でございますけれども私の本旨ではございませんから、その点ひとつよく御了承の上でお聞き取りを願いたいと思います。  ただいまの御疑問は私ごもつともだと思いますけれども、私ども考えておりますところは、土地収用のように、ある特定の地域を名ざしで取上げる、これは飛行場のための地域だというので取上げるということは、確かに三項の問題になると思います。ただ二項の問題として、乏しい例でございますけれども、たとえば薬品の衛生の関係法律で、店先に並んでおるものの一部をとつて行つて試験のために持ち去ることができるというようなことが、一般的にきめられている先例があるわけであります。それは補償をいたさないで取上げることがあるのであります。そういう場合の規定は、むしろ第二項の精神から財産権一般のものとしての問題であろうとわれわれは考えております。いずれにしてもこれは百歩譲つたときの問題であります。
  183. 門司亮

    門司委員 私はそれを聞いて、おるのではない。今の答弁はおかしい。財産は没収するということでありますが、公共の安寧秩序を害するような特殊のものと同じようにされては困る。第三項に書いてありますのは、第二項を受けて、そういう財産の内容については公共の用に適合するように法律で定めるが、しかしその場合はなお念のために私有財産については無償でとつてはいけないという第三項の規定だと思う。従つてこの規定は二十九条にはつきり書いてあります。財産を侵してはならないという保護規定の内訳だと思う。従つて私はそれが保護規定であるとするならば、当然これは自治体のものであろうと何であろうとこれを無償で取上げるということには疑問がある。ことに地方自治体に対しましては、地方自治法の第一条の中には、地方自治体自治体自身を定義することのために、普通地方公共団体のほかに特定の公共団体として財産区という制度が設けてあるのであります。この財産区という制度は、同じ町村の自治体の中で、一つの部落等が共有の財産を持つている場合においては、これも一つ公共団体として認めているということである。財産権をいかに保護するかについては、自治法の中に、財産権を管理すると同時に、同じ自治体の中でも財産区という特別の区域を設けておいて財産を管理させている。これは今のあなたのお考えから行きますと、その区域内にあるところの公有財産にもひとしいものでありまして、町村が合併する場合には、その財産は引継がれるべきである。しかし財産であります以上は、特に財産区という制度を設けて、その地方住民の利益を擁護している。従つて私はこの規定は保護規定であるかどうかを聞いておるのであつて、その解釈をはつきりとしておいていただきたい。
  184. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 財産権を保護してやろうという趣旨の二十九条であることはおつしやる通りであります。ただ問題は、今の二項と三項との読み方の問題であります。確かにいろいろなお考え方はあろうと思いますけれども警察法関係では二十九条の問題にはならないと考えております。
  185. 古井喜實

    古井委員 最後に一点だけ伺つておきたい。これは前会も伺つてどうも得心の行かぬ点であります。大都市の警察を独立する規定の問題であります。第五十条によれば「人口七十万以上の市」としてあります。この前提としてかりに人口七百万以上の市という規定を書いたといたしますと、その規定は一つ公共団体だけに適用される特別法ということになるかならないか。人口七百万以上の市と書けば東京一つであるが、その場合にそう書きさえすれば地方特別法になるのかならないのか、これを前提として伺つておきたいと思います。
  186. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは古井さんの方が権威者であろうと思いますが、御承知のようにアメリカにも判例がありまして、人口別による特別な扱いは憲法違反にはならないという判例を方々でやつております。脱法はいけませんけれども、人口による一般的基準による差別は憲法には違反しないと考えております。
  187. 古井喜實

    古井委員 憲法第九十五条で、一つ地方公共団体のみに適用される特別法は、住民の一般投票を経なければならぬ。そうすると今のように人口七百万以上の市というふうな規定を書きさえすれば、一般投票はしないでもさしつかえないという憲法の解釈になるのですか。
  188. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この原案のようになつておりますれば、一般投票は必要はないと思つております。
  189. 古井喜實

    古井委員 この原案は人口七十万とありますけれども、かりに人口七百万と書いてあつたらそれでも一般投票はいりませんか。
  190. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほどお答えした通りでございますが、原案はさように相なつておりませんのでこれは絶対に大丈夫であります。
  191. 古井喜實

    古井委員 答弁を避けておるが、結局その場合ならばそういうことであつて、それは地方特別法としての扱いをしなければならぬという、裏からいえばそういう御説明になつてしまいました。そうすると人口四百万以上と書いたらどうなるか。順次下つて人口七十万以上と書けば市は特定してしまうのであります。特定してしまえば、一つ公共団体というのはむろん単一というわけではないでしようから、特定のということでありましようから、人口七十万以上の市というのは特定された五大市、こういうことになつてしまうと思う。そうすればかかる立法をつくるについては、憲法九十五条の適用があるのではないか、あるはずであると思う。しかしこの点は、そうでないという御見解に相違ない、そういうつもりでおつしやるだろうけれども、どういうふうに御説明になるかお伺いしたいと思います。
  192. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 前に予算委員会お答えしたと存じますけれども、一般基準として、人口を持つて来るということは、仰せのように一つ一つつてみれば、それにあてはまるものは規定するわけです。そういうことになれば、たとえば現在の警察法といえども、市と書いてある。市は必ず最初は置けるということになつております。その場合の市もやはり洗つてみればわかるということで、私はこれはきりのないことだろうと考えております。従つてこの法案に言つて、おる人口基準というものは、一般的の基準であるからして憲法には違反しない。かつ公職選挙法といい、その他四つか五つ先例がございますけれども、五大市のみを目指しての特別の立法規定があることは、前に申し上げた通りでございます。いずれも住民投票に付して決定しております。
  193. 古井喜實

    古井委員 前回伺つた自治法の場合はちよつと話が違うと思つて、実は前回も申し上げたと思います。しかし脱法であるならばという限定がありましたが、それではここに何市々々と、人口七十万以上の市を書いたらどうなりますか。そうしたらこれは住民投票を要する規定になりますかどうですか。
  194. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 実はその例があるのであります。たしか国会で立法されたものの中に一つありまして、五大市を列挙しておる。しかし私はほかのものに書いて、ごらんになつたと思いますけれども、これはおそらく自治法百五十五条第二項の市という意味でお書きになつたものであろうというふうに了解して、たまたまそれは名前が出たというふうに、私はむしろ弁解しておるわけであります。おそらくその例も百五十五条の二項の市という意味で御立法になつたというふうに考えております。
  195. 古井喜實

    古井委員 そうすると市を具体的に並べたのは怪しい。百五十五条二項の市といえばのがれられるという意味で、好意的に解釈して行きたいという意味のようにおつしやつたのでありますが、百五十五条二項の市というのは、私は事情が違うと思う。あれは区を置ける市、そういう一つ制度をきめておると思う。問題はその市の指定が問題になつて来る。市の指定を政令でするということになつておる、ここに実は問題がある。昔の法律を承継して不用意につくつておる立法だと思う。これも私は山々議論の点がある。これは先例ということにおいても疑問もあるし、私は脱法的に憲法を免れている法律であつて、憲法違反だと思う。七十万以上の市というならこれはきまつておる。市を並べないから助かるというなら脱法である。これは私はどうも通らないと思う。但しそういつたからといつてこれは憲法にぐあいが悪いので、おつしやらないにきまつていましよう。そこでもう一つ、この規定でどうしてもりくつが通らないと思うのですけれども府県から市が独立する場合に、市会の決議だけで独立するというりくつが一体どこにあるか。府県単位の警察になつておる。それを市が独立して独立の警察になるというときに、市会だけの決議でこれが独立できるというりくつは一体どこにあるか。どう考えてもこれは乱暴じやありませんか。おそらく法律施行前に大体議決で独立させるつもりでしようし、なるべく独立させたいという考えかもしれませんが、立法の上では法律施行になつた後に独立するということも当然含んでおるし、いずれにしても県と対等な行政単位ができる。しかも従前は県が包括して処理しておつた仕事について、独立するのに県の意向が一つも関与しないうちに、市だけが独立すると言えば独立できる、こういう乱暴きわまる立法はそれこそ前代未聞だと思います。これはどう御説明になるものか、お伺いしたい。ことにこのために、今度は県の警察私有財産が市に移つてしまう。財産まで移つてしまうのです。一体こういう乱暴なことができるものかどうか。七十万以上の市というのを、さつきのようないわば強弁によつて、こういうふうに書いても特別法にならないということであるにしても、それならば私は、独立するということをきめるときには、住民投票という手続をとるのがむしろ至当だと思う。それをかりに譲つても、市だけということはない。府県の意思が関与しないわけに行かぬ。府県の機構なんである。府県の事務なんである。それを奪つて逃げるというのである。こういうことはどう説明がつくものか、これはどうも私は納得行かない。いくら質問を控えようと思つても、これはがまんができないのであります。どう御説明されますかお伺いしたい。
  196. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは私がお答えする筋かどうか、私は法律的な頭でかちかちになつてお答しておるわけでございますからして、法律でこういうことをおきめになつて、こういう条件を法律てきめられて、こういう条件に該当する場合に独立するということは、一向おかしくも何ともない、私の立場からお答えするとそうなるのですが、法律以外の観点からお考えになつたら、今お上げになつたようないろいろな方法はあると思います。それだけのことであります。
  197. 古井喜實

    古井委員 そうすると憲法に違反するかどうかという点には、しないということである。そうであるならば、どんな乱暴な法律をつくつてもいいというか、あるいは少くとも法律としてはりくつが通らぬ法律であるという御見解のように聞える。こういう法律法律としては妥当性を欠いた法律であるということには少くともなりそうに思う。御関与にならなかつたかどうか知りませんが、政府の提案でありまして、しかも政府の十大政策に属する提案でありまして、どうも御説明が十分納得できないのでありますが、このごろ法務大臣法律にたいへんお詳しいようですが、何か御答弁はありませんか。
  198. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 七十万以上の市は三分の二以上の多数の決議をした場合には市警が持てる、この三分の二の手続でやることはけしからぬじやないかという御意見かと存じますが……。
  199. 古井喜實

    古井委員 いや、そうじやない。市だけでやるのはいけないということです。
  200. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようだと思いますので、その御説明をいたしたいのでありまするが、現在七十万以上の市はすでに警察を持つております。その実績を尊重するということ、しかもこれは府県と同じ程度の力を持つた警察であつた従つてその実績を認めるということは、警察が民衆に接着するという意味からも適当であろう、かように考えまして立案をいたしたのであります。従つてその場合の手続といたしまして、これを住民投票にかけるかどうか、しかもその県その市の所属する県全体の住民投票にかけるかどうかということは、現在すでにそういう実績で、しかもよく運営されておるという、それを認めるわけでありまするから、市民を代表されておる市会において三分の二以上の議決をされれば、それで足るじやないかということで規定いたしたわけであります。ところが今後七十万以上の市ができて来た場合にどうするか。それが現に府県警察になつているものを、七十万以上の市になつたから、その市だけの決議でどうであろうかという点も、これは御指摘の通り、その点になりますと問題があるかもしれません。しかし現在七十万以上の市というものの手続が、三分の二の議決でやるのが一番至当だ、かように考えましたので、従つて今後七十万以上の市ができて参りましたときにも手続を異にするということはいかがであろうかというので、現状に引ずられてかように立法したのであります。
  201. 古井喜實

    古井委員 私は新しい七十万以上の市ができる場合はあまりなかろうと思う。それをあげたわけではありません。つまりこの法律施行前には独立の手続をしないで、施行後に独立の手続をする場合だつてある。法律もそれを予定しておる。事実何かの事情によつてそういうことがないとも限らない。独立をその以前にしなければ当然府県警察になつてしまう。府県警察になつてしまつたものを再び独立する—再びではなくて独立するという場合も市だけでできる、こういうことはそれでもよいのですかということを言つておるのであります。のみならず法律施行前に独立する場合でも一体県は一本の警察で行くか、県の中の大きな市と、それ以外の郡が別にあるということは、これは県というものが行政の基本的な単位になつておる以上、県としても発言権を持つ、へきことだと思う。そういう意味で市だけの意思できめるということは、いかにも間違つておりはしないだろうかと思われるのであります。これが普通の場合ならば、どうも妥当を欠くかもしれない。普通の場合でなくとも、今回でも妥当を欠くと思うのです。まあ似たり寄つたりの御答弁ではしようがないけれども、もし御答弁が伺えるなら伺つてみたい。
  202. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の御説明ではとうてい御満足が行かないと思いますが、この法律施行の際に七十万以上の市に該当しているところで、警察を持つか持たないか、これは重大なことでありますからその市全体とされては、非常に慎重に考慮されると存じます。従いまして本法施行の際に該当するところは、将来も続けて持たれるか持たれないかという判断は、実際上はそのときにきまつてしまうと私は考えております。今年はやめたけれども来年になつて持つことにしようということは、りくつの上では考えられますが、実際行政の面におきましてはなかろう。従いましてこの立法におきましてもさような事態は起らないであろう。かように考えております。
  203. 古井喜實

    古井委員 この法律施行前に七十万以上の市は態度をきめるであろうということでありますが、そうであるといたしましてもやはり問題は残るのであります。つまり今日特別市制という大きな問題が残つておることは御承知通りであります。そこでこれは警察についての特別市制なのであります。警察について特別市制を行えるぐらいならば、他の行政部門についても特別市制が行えないはずはないのであります。そうすると警察に関する限りであるけれども、特別市制を行うということを市だけできめさせるという、そういうことが妥当を欠くのではないか。これは警察について五大都市が独立しますれば、他の行政についてどうして独立できないでしようか。しかもその運命、方角を決するものは市会だけの意思なのであります。私はそういう意味も含んでおるから、市だけの意思では穏当ではないではないかということを言つておるのであります。本多大臣はおいでになりませんけれども鈴木次長がおいでになりますので、私は特別市制問題を目の前に置いて論議しておるが、これをどうお考えになるか、御見解を伺いたいと思います。
  204. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自治庁の次長の方からもお答えになると思いますが、われわれ警察の方面から立法いたしました点をさらに敷衍して申し上げておきます。白紙で市の警察、県の警察というものを考えて、新しいこういう制度をつくろうという際には、まさしくおつしやるような点はよほど考慮に入れなければならないと考えますが、今回の立法は現在の警察のあり方をもとにして立法いたしましたので、従つて七十万以上という府県同等のものは現に持つておりますから、その実績をもし市が欲するならば、優先的に認めてよろしいじやないか。それはまた警察の本旨にももとらない、むしろ適正である、かように考えた次第でありますので、従つて今後新しく特別市制を設ける、六大都市を特別扱いにするという観点とは違つた意味で、私の方は立法をいたしております。私どもの方の立法の趣旨はさように御承知を願いたいと思います。
  205. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 市の警察の問題につきまして、特別市と関連をしてのお尋ねでございますが、特別市の問題につきましては、御承知のごとく現行地方自治法の中に、制度が定められておるわけでありまして、人口五十万以上の市に特別市制をしくかしかないかということは、結局関係都道府県の住民投票によつて決するようになつておるわけであります。これは沿革的に申しますと、市の区域だけの選挙人の投票というような規定の置かれた時代もあつたのでありますが、それがさような改正の経過になつておるのでありますけれども、立法の問題といたしましては両論あると思いますが、ただいま国警長官から御説明のありましたように、人口七十万以上の市として規定せられる市におきまして、従来市自治体警察を維持しております。これを今回の市警察としてその団体が希望するならばこれを置くようにしよう、こういう趣旨がこの制度政府として考えられたわけでありまして、従つてこれもかりに市なりあるいは府県なり両方の議会において、あるいは関係府県の住民全体の投票というようなことになりますと、実際の設置の問題として非常に複雑な事態が生ずるかもしれないのであります。さようなことからこのような立法の案を政府としては用意いたしたのであろうと思うのであります。ただ特別市制問題自体につきましては、これの制度があるのでありますけれども、実際問題としては今日まで実現をしていないわけでありまして、またその実現につきましては、御承知のごとくいろいろなまた別の意見もあるわけでありまして、これらの点は結局ただいま地方制度調査会に諮問をしておるわけでありまして、その結論を得た上で政府としては最終的な案を用意いたしたいと考えておるわけでありますが、警察の問題につきましては、一応さような問題と切離してかような立法をいたしたわけであります。
  206. 古井喜實

    古井委員 大分時間がおそくなりましたからくどく伺いませんが、大都市が自治警察を持つてつて実績を相当納めておる、こういう点からいうならば七十万以上の市に限らないのであつて、その次に位する市も相当成績をあげておるところがある。横浜市は成績をあげておるけれども、川崎はあげてないということではないと思う。福岡はあげてないということでもないと思う。これが七十万というと、いかにも実際問題として特別市制というものとからんでおるようなところが、特に問題点になるようであります。なおまたいまひとつの点は、いよいよ特別市制の問題になれば事重大であるから、住民投票をやるんだという法律になつている。それならば、警察についても、特別市制をやつていいならば、あの自治法の規定も改正して、当該市の市会の三分の二以上の決議でやつてもいいというりくつになりませんですか。あの特別市制にはあれほどむずかしい手続をきめている。この第一歩である外ぼりを埋める。いわゆる外ぼりの警察の特別市制についてはかかる軽い手続をとつている。これで私は一歩方角が違つて来ると思うのであります。この辺が平仄が合わぬ点がいかにもあるように思われてならぬのでありますが、これはどうお考えになるか。さしつかえないというお考えなのかどうかお伺いいたします。
  207. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 現在の制度の中におきましても、先ほど御指摘のありましたような地方自治法の百五十五条第二項の市といういわゆる五大都市につきましては、他の市町村と違つた扱いをいたし、府県市と同じような建前で規定をいたしているものもあるわけでございます。それをなるほど古井先生の言われますようにその事務についての一つの特別市であるというような表現もできなくはないと思いますけれども、私どもはさようには考えませんので、さような特殊な事務については、五大市につきましては市の実力から申しましてこれを府県並に見ているという例が現にあるわけでございますし、それらに応じたような考え方として、警察についてそのような考え方をとりましても、そのことのゆえをもつて、ただちにこれは特別市制をそのまま断行するのであるという政府考え方をきめたものではないと考えているのでありまして、この問題は先ほど申しましたように、地方制度調査会に政府といたしましても諮問いたしているわけでありまして、一応この問題とそれとは別個であるというふうに考えている次第であります。
  208. 古井喜實

    古井委員 この点はいかにも手続として私は穏当を欠くと思つているのでありますけれども質問の第一段階としてはこの程度だと思いますので、これでこの問題はやめたいと思います。なお総括質問は、保留した事項を除いて、これで打切りたいと思います。
  209. 青柳一郎

    青柳委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後六時十五分散会