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1953-03-10 第15回国会 衆議院 地方行政委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 青柳 一郎君    理事 鈴木 直人君 理事 雪澤千代治君    理事 森田重次郎君 理事 門司  亮君    理事 横路 節雄君       阿部 千一君    相川 勝六君       生田 和平君    加藤 精三君       河原田稼吉君    黒金 泰美君       佐藤善一郎君    谷川  昇君       辻  寛一君    中井 一夫君       舘林三喜男君    古井 喜實君       大石ヨシエ君    平岡忠次郎君       赤松  勇君    西村 力弥君       川村 継義君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         国家公安委員長 青木 均一君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林與三次君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      武岡 憲一君         総理府事務官         (自治庁財政部         財政課長)   奧野 誠亮君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁保安局長 山田  誠君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 三月九日  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第一五六号)  古物営業法の一部を改正する法律案小林英三  君外八名提出参法第一二号)(予) 同 日  地方自治体警察維持存続に関する請願池田禎  治君紹介)(第三七七一号)  狩猟者税軽減に関する請願長野長廣紹介)  (第三七七二号)  町村合併促進法案に関する請願黒金泰美君紹  介)(第三七七三号)  名古屋市内新設有料橋反対請願春日一幸君  紹介)(第三八〇九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察法案内閣提出第一一二号)  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第一五六号)     —————————————
  2. 青柳一郎

    青柳委員長 これより会議を開きます。  この際御報告申し上げます。すなわちただいまお手元に配付いたしましたように、厚生委員会から地方税法の一部を改正する法律案について、また電気通信委員会より通信線盗難防止措置に関して、それぞれ本委員会に申入れがございましたので、この点御報告申し上げます。  警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括議題といたします。  まず警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案について、政府より提案理由説明を聴取いたします。犬養法務大臣
  3. 犬養健

    犬養国務大臣 今般提案いたしました警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案提案理由を申し上げたいと存じます。  本法律案提案理由は、さきに提案いたしました警察法案と関連いたしまして、関係法令規定整理し、これに伴い所要経過措置を定める必要があるためでございます。  この整理の方針といたしましては、関係法令中の関係事項について、警察法案規定上当然に整理改正を要するものだけを改めることといたしました。経過措置につきましては、警察法案附則中の経過措置に対応して必要な規定を設けることといたした次第でございます。  何卒御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 青柳一郎

    青柳委員長 次に政府委員より補足説明を聴取いたします。
  5. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案内容について、その概要を申し上げます。  まず第一条におきましては、警察法施行に伴い、当然不要となります三法律廃止規定いたしました。第二条以下におきましては、関係法令をその制定順に掲げ、必要な整理改正を加えております。  第二条では、民事訴訟法中の「警察吏員」を「警察官」に改めました。  第三条では、関税法中「警察吏員」の語を削りました。  また第四条では、遺失物法第十五条中の、交付を受ける者のない物件の帰属先を、都道府県警察及び市警察設置に伴い、当該地方公共団体に帰属させるのが当然と存じ、「国又ハ」を削りました。  第五条から第八条までは、国税犯則取締法狩猟法公益質屋法及び死産の届出に関する規程の改正で、「警察吏員」の語を整理いたしました。  第九条は、裁判所法中の警察官派出要求についての規定中の語を読みかえ、かつ整理いたしました。  第十条では、地方自治法改正し、従前都道府県国家地方警察及び市町村警察に関する規定を、警察法案内容従つて都道府県警察及び市警察に関する規定改正するため必要な加除を行い、あわせて、副知事または助役が公安委員会委員を兼ねられないとの第百六十六条第一項の規定改正いたしております。  第十一条では、道路交通取締法について、警察法案内容従つて整理するための所要改正を加えました。  第十二条及び第十三条では、最高裁判所裁判官国民審査法及び海上保安庁法中必要な読みかえのための改正を加えました。  第十四条は、国家公務員共済組合法中、従前国家地方警察職員組合の一単位組織しているものが国家公務員たる警察職員組織することにかわる整理上の改正であります。  第十五条では、警察法案の第三十一条の規定に関連して、地方財政法中該当の第十条に一号を加え、第十二条及び第三十三条中不要となる規定を削つて整理いたしました。  第十六条では、国家行政組織法国家公安監理会警察庁設置についての必要な改正を加えました。  第十七条では、風俗営業取締法中必要な読みかえの改正をいたしました。  第十八条では、刑事訴訟法司法警察職員指定及び協力に関する規定中必要な読みかえの改正をいたしました。  第十九条では、警察官等職務執行法警察官職務執行法に改め、その第一条について警察法案第一条の趣旨による所要改正を加えました。  第二十条は、へい獣処理場等に関する法律改正で、現行警察法改正に伴う所要改正を加えました。  第二十一条は、検察審査会法中の審査員の資格についての規定中必要な読み替え規定を置きました。  第二十二条から第二十四条までの少年法少年院法消防法の一部改正はいずれも読みかえ上の改正であります。  第二十五条では、司法警察職員指定応急措置法中、皇宮護衛官司法警察職員指定についての所要の読みかえ上の改正規定いたしました。  第二十六条から第二十八条までの郵政省設置法古物営業法たばこ専売法改正は読みかえ上の改正規定いたしたものであります。  第二十九条は、国家公務員のための国設宿舎に関する法律中、国家公安委員会廃止に伴う不要規定を削除したものであります。  第三十条は、総理府設置法の一部改正で、総理府内国家公安監理会及び警察庁設置されることに伴う改正規定であります。  第三十一条から第三十三条までの犯罪者予防更生法大蔵省設置法水防法改正は、いずれも必要な読みかえの改正規定であります。  第三十四条から第四十条までの特別職職員の給与に関する法律警察用電話等処理に関する法律漁業法公職選挙法精神衛生法火薬類取締法質屋営業法改正は、いずれも公安委員会警察吏員等に関する必要な読みかえ上の改正であります。  第四十一条の地方公務員法改正は、従前自治体警察の場合と今般の都道府県警察及び市警察の場合とで任権命者が変更されますための規定整理であります。  第四十二条から第四十八条までの銃砲刀剣類等所持取締令農業委員会法高圧ガス取締法出入国管理令平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律外国人登録法破壊活動防止法改正は、いずれも警察庁都道府県警察市設警察設置のためと、警察吏員に関する規定整理のための規定であります。  第四十九条の警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律改正は、警察法案内容に基き、題名を変更し、あわせて、警察法案関係規定に適合するよう必要な改正を行つたものであります。  第五十条から第五十二条までの保安庁法海上公安局法法廷等秩序維持に関する法律改正は、いずれも警察庁等設置に伴う必要な改正及び警察吏員規定整理であります。  次に附則でありますが、第一項でこの法律は、警察法施行の日から施行することとし、第二項及び第三項で都道府県公安委員会等の許認可の効力これらに対する届出等効力について経過規定を設け、第四項から第六項までは、警察法案附則第二十三項の規定により、なお存続する市町村公安委員会等に関する経過規定を置き、第七項から第十一項までは、それぞれ、遺失物共済組合災害給付地方財政に関する本則中の改正についての、昭和二十八年度中の経過規定を定めたものであります。  以上、この法律案の主要な点につきまして概要を申し上げました。  どうぞよろしくお願いいたします。
  6. 青柳一郎

    青柳委員長 それではこれより両案に対する質疑を行います。門司委員
  7. 門司亮

    門司委員 今の両案でありますが、警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案は今説明を聞いただけでありまして、案の内容その他をよく検討いたしておりませんので、これに対する質疑は私あとに保留いたしておきたいと思います。  今日は他の同僚委員質問の順番になつておりますので、私はこの前の委員会犬養法務大臣その他関係者から十分意見を聞くことのできなかつた問題に限りまして質問をいたしたいと思うのであります。  第一に聞いておきたいと思いますことは、公安委員長にお聞きをいたしますが、今度の警察法改正におきましては、非常に大きなかわり方をいたしておりまして、現行警察法を根本からくつがえしております。現行警察法には御承知のよう前文におきまして、「国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序維持し、法令執行を強化し、個人と社会の責任自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。」こう書いてあります。ところが、この改正されました法案では、法務大臣意見を聞いてみますと、この前文法案の中に全部織り込んであるというお話でありますが、私どもが見て参りますと、法案の中にはいろいろ字句は使つておるようでありますが、その精神が実は織り込んでないのであります。その精神の織り込んでない一つの大きな問題としては、現行警察法における公安委員会あり方が非常に大きくかわつたという点であります。この点につきましては、この前の委員会でもお聞きをいたしましたが、現行警察法における公安委員会の職権といいまするか、地位というものは非常に高いものであつて国家地方警察本部長官任免権を実は持つておるわけであります。ここに時の政府いかようにかわりましようとも、政府任期と別の任期を持つた公安委員会が、日本警察官の総元締とは申し上げませんが、少くとも国家地方警察本部長官任免権を握つておるということ、ここに民主警察あり方がはつきりしておつて政党に利用されない最大のものがここにある、私はこう考えておるのであります。ところが今回の改正法案を見てみますると、これが監理会というようにかわつて参りまして、当該国務大臣でありまする長官に対しては、いろいろ必要な助言をすることができる、こう書いてあるだけであります。現在の職務執行いたしておりまする国警長官任免権を持つておりまする委員会が、今度は、当該長官総理大臣任命によつてきめられた大臣であります。従つてこれに対しては単なる勧告権だけしかない。ここに私どもは一抹の不安を持つのでありまするが、公安委員会委員長としてのお考えをこの際、私は率直に聞いておきたいと思うのであります。こういう現行のきわめて民主的にできて、警察何ものにも利用されない公正、厳正な立場で行われる制度から、これが時の政府に動かされるよう可能性を非常に持つておる非民主的の警察になろうとする際における公安委員会立場というものは、非常に微妙なものがあると思いまするが、ひとつ委員長は率直に、大胆に、こういう警察制度改正する方がいいんだという意見がございまするならばその意見を、もし現行警察法国家公安委員会制度がいいというお考えでございまするならば、それをひとつぜひ率直にお答えを願いたいと思います。
  8. 青木均一

    青木政府委員 青木であります。ただいまのお話につきまして私の意見を申し上げたいと思います。現行警察法は、治安維持国民各自の責任にある、そして、これが一番民主的であり、かつ大切な問題であるという考えのもとに国民の間から公安委員任命しまして、そうしてそれを政府任命しますことによつて政府責任も生ずる。国民の間から選ばれることによつて国民責任が生ずる。さらに現行の六十一条の二によりまして総理が重要な問題についての指示権を持ちますので、一層深く政府責任が浸透しておる。かような形において国家公安委員会というものが設けられまして、当面の治安責任の衝に当つておるのであります。この考え方は、私どもははなはだ適切であると考えております。単なる刑法犯ような問題でなく、国家組織を破壊しようとするような大きな活動は、おそらくこれは全国的に関連を持つたものでありますし、また組織を持つたものであります。こういうような暴動あるいは策動というようなものが成功することは、国民がそれに賛同するかあるいは完全に傍観者の態度をとるか、さような形でなければ成功するものではありません。従つて国民が直接批判し、直接責任を持つような形が最も望ましいと思うのでありまして、その考えから現行法が生れたものであります。今度の改正案を拝見いたしますと、政府が直接責任の衝に当りたいという意欲に燃えておるために、現実には政府責任の衝に当る、しかしながらその間、作文上できるだけいろいろ緩和した手段がとられておりますが、私どもが実際にただいままでの経験警察を扱つております立場から申し上げますと、これはやはり政府警察になるというおそれが多分にあります。政府警察を持つということになりますと、どうしても治安取締るという対策において考えやすいのであります。国民の批判とか、国民自覚ということよりも、主として取締つて治安維持ようという考えに傾きやすいのであります。国民またさよう考えることは免れないのであります。過去において、あるいは各国においても多々例があることでありますが、取締つてなかなか治安維持できるものではございません。なお私どもが非常に憂えておることは、今日の民主政治においては議会最高地位を占めております。議会の上に何ものもない。さよう議会議員を選出する選挙というものは公正、厳粛でなければならぬと考えております。不幸にしてずつと過去の、議会が始まりまして以来の日本選挙の実際の状況をわれわれの経験で見ますと、常に政権を握つておるところで警察を動かしまして、選挙干渉といいますか、選挙に対して相当の力を加えており、公正であり、厳正である選挙が行われなかつた例が多々あるのであります。今日わが国民主主義を完全に発達させるためには、議会政治を完全に伸ばさなければならぬとわれわれは考えておりますが、その議員の選出についてはできるだけ公正で、中正でなければいかぬ。国民もそういう信頼感を持つ形でなければいけない。そうなりますと取締りの一番直接の衝に当ります警察というものは、やはり中正の形において置かれた方がいいのではないか。かりに現政府におきましても、あるいは将来興る政府におきましても、干渉するような意図は毛頭ないといたしましても、不幸にして過去の例がさようにわれわれの脳裡にあり、またさような心配もあるとすれば、いましばらくさようなことを避けて、中正の形に置いた方が実際においていいのではないかと私ども考えております。なお国際的に見ましても、政府警察を握つたという形をとりますことは、過去において警察国家として非常に誹謗された日本を、そのままの形で再現させるのではないかという疑いを国際間にも起させるのではないかという懸念もありますし、決してこれは得策でないような気がいたします。さらに民衆に対しましても、警察を直接国家が握つて、そうして何かこう弾圧的に出て来るような感じを与える。これはさようなことがなくても、さような形を与えるということは、官権力闘争といいますか、さような気分になりやすい気がいたしまして、これも決して得策ではないような気がいたします。さような形から考えますると、私はただいまの警察法改正しまして、直接の責任の衝を政府がとるために、実際は政府警察になるような形に組みかえることは、はなはだ好ましくない。むしろ公安委員会制度におきまして運営した方がよろしいのではないか、かように私は考えておるのであります。お答えいたします。
  9. 門司亮

    門司委員 大体公安委員長さんの御意見は伺いましたので、もう一言お聞きしておきたいと思いますことは、ただいまの御意見は単に国家公安委員会だけでなくして、地方にありまする自治警察制度の上にも重要な問題でありまして、今回の改正法によりますると、都道府県公安委員会は置きまするが、しかしこれも政府と同じように、やはり警察職務執行いたしまする地方長官に対しましては任命権を実は持つていないわけであります。現行警察法によりますると、自治警察警察長任免公安委員会がこれを行うようになつておるのでありまして、これも国家公安委員会組織と何らかわらない組織に相なつてつておるのであります。従いまして私は公安委員長にお伺いしておきたいと思いますことは、こういうふうに制度が非常に大きくかわつて参りまして、条文の変更というよりもむしろ基本的の問題として——住民の中から出て参つておりまする、一般の人の信頼を得た公安委員会任命する警察長あるいは警察署長というようなことによつてのみ、私は地方自治警察という言葉が使えると思うのでありますが、政府答弁によりますると、これもやはり自治警察だ、こう大臣は仰せになつておるのでありまするが、これが自治警察というものであるとするならば、やはり国家公安委員と同じように、地方公安委員会もその警察職務執行いたしまする長の任免権を握らなければ、私はほんとうの意味の自治警察にはならぬと考えるのでありますが、この点に対する公安委員長さんの御意見を、この機会にもう一応聞かせていただきたいと思います。
  10. 青木均一

    青木政府委員 今度の警察法によります府県単位警察が完全な自治体警察とは私は実は解釈しておりませんが、かなり自治を加味された警察と私は解釈しておりまして、その点もし政府側のお考えと違えば、私の考えがさよう考えておりますことを御了承願いたいと思います。完全なる自治体警察とは考えておりません。われわれも多年警察に関係いたしまして、最近痛感しておりますことは、自治体警察は理念といたしましてまことにけつこうな考えから出ておるので、先ほど私が申し上げました、いわゆる治安責任国民各自にあり、従つておのおのお互いのまわりから、まず固めて行かなければならないという考え方から自治体警察が発生する。英米におきましてはさよう歴史過程をとつておりまして、まことにけつこうな考えとわれわれも考えておりますが、ただその考えをそのまま、長年自治経験のないわが国にいきなり当てはめまして、千六百も警察ができましたことは御存じの通りでございます。その結果警察機能が分断されてしまいまして、非常に警察機能が劣悪なものになりましたために、特に最近の国際情勢に照しまして、どうしても適当にこれを集結できるような形、言葉が悪いかもしれませんが、できるだけ一本化に近い線にして、そうして能率をあげなければいけないという考え、これは私の方もさよう考えを持つておるのでありまして、政府におかれましてもそういう考えのもとに今度も立案いたしたのだと思います。そこで地方には自治体の性格をできるだけ与えまして府県単位警察にしましても、機能はやはり、一本化されて動くようにならなければいけないのじやないかと、われわれも考えておるのでありますが、そこでもしただいまお話ように、警察本部長地方自治体公安委員会任免するところにまかせまして、中央は一切これに関係しないということになりますと、組織は一本化される形に組織されましても、実際の機能は発揮できないという非常な矛盾に陥りやしないかと思います。私ども経験から申し上げますと、なおこれは国家公安委員会いろいろ話合つて、皆一致した意見でありますが、せつかく現在のように一本化する方向で行くのならば、地方警察本部長はやはり中央の方から任命するという形にしないと組織が動かなくなる、こういう懸念を持ちまして、われわれはやはり中央で選任すべきものではないかと考えております。
  11. 門司亮

    門司委員 私の聞いておりますのは、警察組織の問題と離れておりまして、実は公安委員長さんとしての先ほどの御答弁をいただきまして、警察自体はやはり国家公安委員会のもとにあつて、そうして警察行政というものが、時の政府に何ら動かされることなく、厳正に公平に行われることが正しいという御意見を拝聴いたしましたので、これが地方にもやはり同じようなことになる、ならざるを得ないと思う、のであります。地方自治体の長といいましても、これもおのおの公選されております。従つて政党色がないといことは言えないのであります。しかも、私はここまできようは言うつもりはなかつたのでありますが、内容を申上げますと、御存じように今までの、同じ政党に所属する者が一名以上おつてはいけないという公安委員会制度が破れておりまして、これに知事の推薦する者あるいは副知事あるいはその議会の互選した者ということになつて参りますと、実質上——知事も先ほど申し上げましたように公選されておりますので、政党色が私は必ずついておると思います。その政党色のついております者の副知事でありまする以上は、政党色はむろんなければならない。さらに議会から互選されて参ります者も、議会の多数党から出て来る人に間違いはないのであります。そういたしますと、現行法の、政党に災いをされないように、公安委員三名の中で二人以上は同一の政党に所属してはならぬという厳正、公平な建前がくずれて参りまして、勢い地方政治色にこれが左右されるだろうということは当然であります。従つて私が聞いておりますことは、こういうものを内蔵いたしておりまするので、政府はこれが自治警察であるという断定を下すというように言われておりまするが、われわれはこれは自治警察であるとして承認するわけに参らぬのであります。そこで自治警察であるかないかということの最も大きな基礎になりまするものは、やはりこうしたものを内蔵すると同時に、その長官が時の政府任命を受ける、先ほどお話のありましたように、時の政府任命を受けた大臣が主管して、さらにその大臣任命した者がその下の者を任命するということになつて参りますると、上から下まで一貫した政党色が必ずここに出て来ると思う。こういう場合に、これを自治警察と認めるというわけにはわれわれはなかなか参らぬのでありまして、今日の自治警察制度維持ようといたしまするなら、やはり地方におきましても公安委員会制度というものが現行ように厳存しておるということによつて初めて自治警察ということが言い得ると考える。この点を実はお聞きをいたしておるのであります。現行警察法における制度においてのみ、私ども自治警察ということが言えるのであつて任命権を他に奪われて、それが自主的な自治警察と私どもは言い得ない、こう考えておりまして、ちよう国家公安委員会立場と、地方公安委員会立場と同じような形になりますので、この点をもう一応御答弁を願いたい。
  12. 青木均一

    青木政府委員 解釈の相違もありますかもしれませんが、先ほど私ちよつと申し上げたと思いますが、今度の地方警察が、完全な自治体警察とは私は解釈いたしておりません。自治警察の要素を入れたことは認めておりまするが、これが自治体警察とは私は解釈しておりません。従つて政府のお考えとは多少違うと思います。
  13. 門司亮

    門司委員 今の最も治安に重要な関係をお持ちになつておりまする公安委員長さんの御意見と、先ほどの法務大臣意見とは、完全に対立をいたした形になつておりますので、私といたしましては、これをさらに大臣に一応意見を聞かなけばならぬようになつて来たのでありますが、大臣はそれでも、一体これが国家警察ではない、地方自治警察であるということを、もう一度はつきりここでどつちかということをお答え願いたい。
  14. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。青木公安委員長はきよう初めておいでになつたのでありますが、府県の警察の性質について、青木委員長門司さんの通訳で聞いていらつしやるのであります。私の言語でお聞きになつたのではないのであります。本人の、国語でもつてひとつ聞いていただきたい。そうして判断をしていただきたい。こういうわけであります。そこで私は道府県の警察自治体である道府県の機関である、こう申し上げた。ところがたびたび申し上げますように、平生の軽犯罪あるいは強盗なども入りましよう。あるいは交通事故などは従来の自治体警察にまかしてよろしい。しかしまかせられない部分がある。それは国家治安に関する職務である。これは警察法第六条、第二条できめまして、これこれのことは中央警察長が指揮命令権を持つ、こういうのでありますから、その限りにおいて、青木さんが完全な自治警察ではなく、自治のよいところを取入れた警察だと言われる解釈と少しもかわりはない。まことにわが意を得た御答弁と思つておるのであります。青木さんの御意見をたびたび傾聴しておるのでありますが要するに中央組織がどぎつい。国務大臣警察長に当るのはどぎつい。しかも警察という本来の職務を分解してみると、完全に地方自治体、道府県が警察長を選ぶということは、どうも今日の警安の本質上おもしろくないのであつて、これは政府の言う通り、中央任命するのが、長年の自分の経験からいうと適当であるというのであつて政府意見が違う部分が半分、合う部分が半分であつて、根本から背馳しておるというふうにとれないのでございます。これは御意見の相違でございましようか。
  15. 門司亮

    門司委員 どうも、今の大臣のお言葉でございますが、われわれが考えてみますると、公安委員長さんもかなり御遠慮した意見だと解釈するのであります。それは中央における公安委員会制度はいいがということをはつきり申されておりまする以上は、やはり地方においてもこの制度が当然とらるべきでありまして、私は公安委員長さんの御意見は、犬養さんの言われました自治警察ではないという意見に、ほぼ近い方の意見だと解釈してもちつともさしつかえないと考える。同時にまた、これはこの場合少し言い過ぎるかもしれませんが、犬養さんはこれこれこういうものを制約しておるというお話でありましたが、もしそういうことがあるとしますれば、運営の中でやれるはずでありまして、何も警察長任命権政府が握らなくても、私は運営の中で十分やれると思う。公安委員長さんが心配しておられるのは、警察の主導権というか、実権を握りますものが国家任命であつて、それ以下の実務につきますもののみについて多少、ごまかすというと言葉が過ぎるかもしれませんが、カムフラージユするために自治警察のにおいのするようなものを少し入れたというだけでありまして、この点はさらにあとで同僚各位の質問もあると思いますので、この程度で私は一応とどめておきたいと思いますが、先ほどの公安委員長さんの御意見を承つておりますと、犬養さんの御意見とはあくまでも対立した心情であり、御意見であるということを、はつきり看取することができるのであります。  今木村さんがおいでになりましたから、この機会に木村さんにこの前の答弁の残りというわけではありませんが、犬養さんの方からお答えできなかつた点について、ごく簡単に一つ二つお聞きしたいと思うのであります。それは保安庁が設置されまして、保安庁長官としておいでになります木村さんは、これから保安隊を使うということになりまするが、これの出動、あるいはこれの機能を発揮されようとするのは、一体どういう事態あるいはどういう事犯について、木村さんのお持ちになる陸海軍——少し行き過ぎかもしれませんが、これを御使用なさるお考えがあるのか、この点をこの機会に承つておきたいと思います。
  16. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私が常々申し上げておるところでありますが、保安隊は私は容易に出動すべきものではないと考えております。要は非常事態、これを裏から申しますると、普通の警察力ではとうてい処置のできないような大きな事件の起つた場合、このときに初めて保安隊は出動すべきである、こう考えております。
  17. 門司亮

    門司委員 問題はそこにあるのであります。木村さんも御存じように、保安隊の前には警察予備隊というものがありまして、今木村さんのお答えになりました警察制度だけでは、これの鎮圧その他ができない場合に、警察予備隊が出動するということに実はなつておつたわけであります。これがやはり警察制度の中に含まれておりまして、従つて警察予備隊令の第一条には、明らかに国家地方警察並びに自治体警察の足らざるところをこれは補うものであるということが書かれておる。従つて今木村さんのお言いになつような事犯については、警察予備隊が大体これに当ればいいという考えのもとにあつた。その警察予備隊をなくして、そして保安庁というものができて、今のような重装備を持つ一つの制度ができたのでありますが、木村さんは現下の日本の国内情勢のもとに、あの警察予備隊の装備、いわゆるせいぜい持つておりましても、機関銃程度の装備しか持ち得なかつた、あの警察予備隊の装備では間に合わないので、二十トンの戦車を使い、飛行機を使い、さらに大砲を持たなければ、日本治安というものは確保できないような事態にあるかどうかということ、同時にそれの対象になるものは一体何であるかということを、この機会にひとつ御説明願いたいと思います。
  18. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御説ごもつともでありますが、われわれ治安の任に当る者といたしましては、あらゆる角度からそれを検討して参らなくてはならぬ。ただいまはきわめて平穏無事の様相を呈しておるのでありますが、これを一たび外国の事例に徴しましても、容易ならざる反乱なり擾乱が起り得ることは事実であります。現在の国際情勢、国内情勢にかんがみまして、われわれといたしましては、国家の平和と治安維持する上におきまして、十分な手当をする必要があるのであります。事なきにおいて事あるときを十分考えておかなければ、一たび事変が起りましたあかつきにおいて、ほぞをかむような事態を生ずることは、これは歴史の示すところであります。従いまして当局といたしましては、現在の保安隊の組織をもつて十分な手当をしたい、こう考えております。なるほど今仰せになりました保安隊の持つておりまする装備、これなんかも現在は日本の国内で手当はできませんから、やむを得ずアメリカ駐留軍から一時使用をさしてもらつております。必ずしも適当なものであるとは私は考えておりません。保安隊独自の性格に順応いたしました装備だけは、日本においてぜひこれを製造して持たしたい、かよう考えております。
  19. 門司亮

    門司委員 きわめて抽象的で、私の質問の答えにならないように私は考えるのであります。警察法改正いたしまする根本の問題は、はつきり申し上げますると、左翼並びに右翼の今日の地下運動が相当熾烈である。従つて警察制度というものを一本化しておかなければいけないというのが、大体今度の警察法改正の趣旨のように、私は大臣からも聞いておるのであります。それから今までの私ども質問に対する当局の御答弁も、大体そういうふうにわれわれは拝聴いたしておるのであります。従つて私はこれとの関連性を大臣に聞いておるのでありまして、保安庁の長官として、今申し上げましたように左翼並びに右翼の地下運動が、保安隊の出動を必要とするような事態にまで発展し、さらにまた現在でもそういう事態が起りつつあるという具体的の説明が願いたいのであります。われわれから考えて参りますると、せつかく日本の国内にありました一つの制度としての中にあつた警察予備隊をなくして、重装備をされておりますので日本治安というものが重装備をしなければならないほど重大性があるかどうかということ——大臣のお答えでは事なきにおいて事あるときに備えることが一つの兵法の常だということであり、これは大臣のお言葉の通りだと思いますが、しかしその事あるときというのを想定いたしまするに、先ほどから私が聞いて参りました共産党並びに右翼の団体の地下運動というものが、今のような重装備を持つた対象にはならないと私は考えておる。具体的に言いますならば、一体日本のどこで内乱が起つて二十トンの戦車の必要があるのか。あるいは大砲の必要があるのか、あるいは飛行機でこれをたたかなければならないようなものがあるのか。海上におきましても、同じことでございましようが、こういうものをわれわれには十分見出すことができません。警察法改正について、そういう意見が当局から述べられておりますので、保安庁の長官としてのそういう具体的な意見をこの際聞きたい、こう考えておるのであります。ひとつ具体的に、どういう事犯、どういうときにこれを使うのだということを、もう一度お答え願いたいと思います。
  20. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 現在のいわゆる共産党の地下運動、それから右翼の活動、これらの手当につきましては、むろんある程度までは今御審議を願つておりまする警察制度改正によつて、まかなつて行けることだろうと考えております。しかしながら御承知の通り外国の事例を見ましても、あるいは仏印の反乱の例もありまするし、あるいはマレー半島における共産党のあの大きな騒擾事件もありますし、ビルマにおいてもまたしかり、あるいは過去においてはスペインにおける反乱のごとき、これは初めはもちろんだれも予想していなかつた、単なる地下活動にすぎなかつたのでありますが、これが一たび外国との結びつきにおいて大きな事態を引起したということは、現実の事実であります。今門司さんの言われるように、それでは現在そういうような具体的の事象が起る可能性があるかということになりますと、われわれ必ずしも現在即時においてそういう事態が発生するものとは考えておりません。しかしながら当局といたしましては、この国際情勢の変転きわまりないときにおいて、十分な手当はぜひとも必要であろうと考えております。申すまでもなくわれわれの考えといたしましては、直接侵略とあるいは間接侵略と申しましようか、これは同時的に起るものと考えておるのであります。そういうような事態が起つた場合に、国内の情勢判断でもつて、われわれはぜひとも保安隊を十分整備いたしまして、それらの万一の場合対処できるだけの不断の準備はどうしておかなければいけない、こういう信念のもとにやつておる次第であります。
  21. 門司亮

    門司委員 大臣の御答弁は、警察法改正はそれらのものを事前に多少防ぎ得られるよう改正にするのだ、それで今の警察法改正は必要だというふうに聞きとれたのであります。その中でわれわれがちよつと聞きのがすことのできないのは、さつきの大臣の御答弁の中に直接侵略と間接侵略が結びついて、同時に行われるものであるというようお話があつたのでありますが、われわれといたしましては、直接侵略があるといたしますならば、これは私は明らかな国際的の紛争であると解釈してもさしつかえないと思う。日本の憲法には御存じよう国際紛争解決のためて軍隊は使わないと書いてある。私はここで保安隊が軍隊であるかないかということについての議論をしようとは考えておりませんが、そういう大臣の御答弁でありますならば、警察法改正については、保安隊の制度はまつたく関知しない建前にあるのではないかと一応考えられる。そこで大臣にもう一言最後に聞いておきたい。大臣は今間接侵略という言葉をお使いになりましたが、間接侵略でありましようとも、あるいは右翼の暴動でありましようとも、そういう治安の撹乱はこの警察法改正によつては鎮圧ができないのだ、どうしてもやはりそういう装備が必要だというよう大臣はお考えになつておりますか。
  22. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今回の警察法改正は、要するにいろいろな問題が起つた場合に、いわゆる普通の犯罪の捜査より高度の、あるいは治安を乱すというような場合に十分な手当ができる、つまり平たく申しますと、警察機能を能率的に発揮できるようにしたいという構想のもとにこの法案が作成されたと考えております。そこで保安隊との結びつきでありますが、この警察はさような場合に常時能率的にこれを動かせるよう組織であります。しかして保安隊は先刻も私し上げましたように、どうしても警察では手当のできないような大きな事態が生じた場合に、初めてこれを出動させるという建前になつておりますので、要は国家の平和と治安維持する上におきまして、両両相まつて万全を期したいという所存である次第であります。
  23. 門司亮

    門司委員 今の大臣の御答弁によりますと、間接侵略、さらに直接の侵略が同時に行われるということになつて参りますが、国内における一時多発的のたとえば左翼の運動にいたしましても、この間接侵略に対しては、やはり警察がこれに当るべきであるというようにお考えになつておりますか。
  24. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もちろんさような場合においては、警察も出動いたしましようし、保安隊も出動いたしましようし、また民間の人たちもこれに協力を与えてくれるものと私は考えております。
  25. 門司亮

    門司委員 それなら、その次にもう一つ聞いておきまするが、間接侵略その他重大な国家的の騒擾、あるいは内乱等が一応予想されるといたしましても、その当時にありましたものは、御存じよう警察予備隊の制度であつたのであります。この警察予備隊の制度がなくなつて、そして一方に保安隊ができて、さらにせつかくできた日本民主警察を、また警察国家にもどそうとするものの考え方、この一連の関連性でありますが、あなたのお考えといたしましては、どうしてもこの民主警察では治安維持ができないというようにお考えになつておりますか。
  26. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今度の警察法改正は、決して警察万能主義に基いたものではないと私は考えております。これまでのよう自治警察国家警察の二本建でありましては、警察機能が十分に発揮できなかつた。これは当面の法務大臣から十分御説明があつたでありましようが、われわれ従来の経験によりまして見ても、この連絡、調整が制度上きわめてまずかつた。大きな事件につきましては十分にその機能を発揮できなかつたことは、これは現実の事実であります。たとえて申しますると、大阪の吹田事件のごときは、私は、その生々しい例だと考えております。ああいうことであつて、はたしてほんとうに警察の力が発揮できたであろうか。ほかにも実例は幾らでもあるのであります。そういう場合において、現在の警察制度のもとにおいては、どうしても治安の面で欠陥を生ずる。そこで改正法によりまして、それらの点の欠陥を十分に補正して行こう、事態が起つた場合にばらばらではいかぬ、よくその間の調整をとつて、その機能を能率的に上げて行こうじやないか、このねらいであるものと私は考えております。決して民主警察を一挙に国家警察万能に持つて行こうという趣旨ではないと、私は確信いたしております。
  27. 赤松勇

    ○赤松委員 委員長、ちよつと関連質問を……。
  28. 青柳一郎

    青柳委員長 簡単に願います。
  29. 赤松勇

    ○赤松委員 実は先般来犬養法務大臣からもあるいは国警方面からも、盛んに吹田事件をとらえて説明されておるのであります。これは実は治安状況のときに質問ようと思つておりましたが、これの総括的な質問はあとですることにいたします。吹田事件その他全国各地云々というのがありますけれども、木村さん、その他の事件というのは、確かにみんな御存じなのですか。
  30. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は大きな事件では、名古屋の大須事件のごときもその例であると存じております。
  31. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは、木村さんに名古屋の大須事件の内容をひとつ御説明願いたいと思います。
  32. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は所管大臣でありませんから、この際は御遠慮申し上げたいと思います。
  33. 赤松勇

    ○赤松委員 それならば、吹田事件その他各所においてという言葉は取消していただきたい。あなた十分御存じないのに、その他と言われるのは……。
  34. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 取消せと仰せになれば、取消します。
  35. 赤松勇

    ○赤松委員 ただいまの木村さんの御答弁は、私は非常に委員会を侮辱するものだと思う。吹田事件はよく御存じになつているならいいけれども、その他という言葉を使われて、あたかも一般的に治安状況が非常に乱れておるような印象を国民に与えるということは、間違つておる。と申しまするのは、名古屋の事件は実は私も関係しまして、現に私の演説中火焔びんが飛んだのです。私も攻撃された一人なんです。あの場合だれがあの事件を防いだかといえば、これは名古屋市警と、それから私どもの指導しておりまする愛知県労働組合議会の諸君が、あの共産党の火炎びんの事件を押えたのです。これは治安状況に関するわれわれの対策の中では、非常に大きな問題です。名古屋の大須事件なんかは、国警やあるいはその他の検察庁あたりが、これに対応して防備したようなことをもしお考えになつておるとすれば、これは大きな認識不足である。あの場合に第一にあの事件を防いだのは、労働組合の力である。すなわち共産党の暴力行為に対して敢然と戦つたのは、あの地区の民主的労働組合であるということを十分御認識願いたい。従つてそこから生れて参りまする問題は、この警察法改正に非常な重大な関連がありますから、私は後ほど十分自分の意見を開陳したいと思いますが、ただこの点だけを明白にしておきたい。  それからあの場合、名古屋市警の例の事件に対応する対策は、非常に民主的でありまして、私自身この目で見たのでございますが、非常に民主的で、もしあれが保安隊なり、あるいは今度でき上る国家警察が動員されますならば、あの事件の十倍ぐらいの悲劇が生れたのではないか。これはまた逐次私の意見を十分申し上げまして、当時の概要を御認識願いたいと思います。そういうわけでございますから、十分大臣も御発言なさる際には御注意していただきたい。
  36. 横路節雄

    ○横路委員 議事進行に関して……。先ほどから保安庁長官から国内の治安について一応お話がございましたし、犬養法務大臣からも先日来、たびたび国内の治安状況について御説明がありました場合に、同様に大阪の吹田事件を取上げておるわけです。しかし本件に関しては、国警側の一方的な説明だけでは、はたして吹田事件が自治体警察であつたために、あの事件がうまく行かなかつたのかどうか、判定ができませんので、先般の委員会においても、この吹田事件の関係者をここに参考人として呼んでやることに決定しております。また保安庁その他からも同じよう説明だけで、国内治安状況が悪いのだという前提で、これに対する総括質問の審議は、私はこれ以上不可能だと思う。そこでさつそくこの吹田事件に関するそれぞれの関係者を呼んで、はたして吹田事件に関しては、自治体察警が弱体のためにああいう事件が起きたのであるかどうであるかという点について、ここでただした上で、その後大臣から国内の治安状況について聞くというのでなければ、いつでも大阪の吹田事件だけを取上げて、これがあるから国内の治安状況が悪いのだという前提のもとにやることについては、これ以上審議を進められませんので、さつそく委員長はそういうようにとりはかつていただきたい。従つて吹田事件に関するそれぞれの関係者を参考人として呼んで、本委員会においてわれわれに質問を十分さしてもらつて、その上で、政府の言うように、国警長官や保安庁長官の言うように、はたして自治警、国警が二本になつたためにああいう事件が起きたのであるか、これをこの委員会において明らかにした後において、さらに総括質問を続行するようにとりはからつていただきたい。それでなければ、いつまでも大阪の吹田事件だけを取上げて、国内の治安状況が悪いのだという認定のもとに審議を進めることについては非常に遺憾だと思う。ぜひそういうふうにしていただきたい。
  37. 青柳一郎

    青柳委員長 参考人などの意見の聴取に関しましては、本日理事会を開きまして決定いたしたいと存じます。
  38. 門司亮

    門司委員 この前の委員会で吹田の事件につきましては、参考人をぜひ呼んでいただきたいという要求をいたしておきましたので、そのときにはまたさらにわれわれの意見を申し述べるのでありますが、今の大臣のお言葉でありますので、私はそれならもう一つ聞いておきたいと思います。それは治安状況が非常に悪くなつておるので、前の警察予備隊の制度では間に合わない。どうしてもああいう重装備のものでなければならないということで、われわれには実は考えられないのであります。従つてこの重装備のものがどうしても必要だということについて、今までの大臣答弁では、私どもそういうものは見出すことはできない。もう一応私はこの点を明確にしておきたいと思いますが、大臣といたしましては、前の軽装備を持つ警察予備隊では、どうしても日本の国内の治安が保てないから、結局重装備にするんだ。しかもその重装備は国内で、あるいは仮想される間接侵略並びに直接侵略が同時に行かれるものであるという大臣の断定のもとに保安庁の設備が必要だ。こういうふうにはつきり解釈しておいてよろしゆうございますか。
  39. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 繰返すようでありますが、われわれ当局といたしましては、あらゆる場合を想定いたしまして、国家治安の完璧を期したいこう考えておるのであります。
  40. 門司亮

    門司委員 あとにほかの委員の方の質問が残つておりますので、私はいつまでもこういう問題を繰返したくありませんが、先ほど私が聞きました中に、例の国内における——今までの国警その他から聞きましたものについては、実際の問題としてわれわれがほんとうに国内に同時多発的な暴動が起るという情勢を見出すことができないのであります。もしかりにできたといたしましても、国内におけるそれらの問題は、私はかつての軽装備を持つた——何度も繰返しますが、警察予備隊の制度で十分間に合うのじやなかつたろうか、一体大臣はこれでは間に合わないというふうにお考えになりますか。もう一応はつきりした根拠をこの機会に示していただきたいと思います。
  41. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは国内情勢ばかりではなしに、国際情勢から判断いたして、また歴史の示すところをすべて取入れて完璧を期したい、こう考えております。
  42. 門司亮

    門司委員 そうだといたしますれば、今の保安隊は警察力の及ばないような事案が起つたときと、これを使うんだという最初の御答弁でございましたが、警察力というものは治安の関係を持つておりまして、大体国内に限られた仕事だと私は考える。そこで外国との関連の場合におきましては、もう警察力ではなくなつて来はしないかと考える。これはそれぞれの認識の相違は多少あろうかと思います。従つて今の保安隊はどこまでも警察の足らないところを補つて行く一つの制度であるというように解釈しておいてさしつかえございませんか。
  43. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 そうであります。警察力をもつてしては、とうてい対処できないような大事変が勃発した事態のあらかじめの手当として設置されたものと考えております。
  44. 門司亮

    門司委員 その問題をもう一つ聞いておきますが、これは国内であるか、あるいは国外から来たときであるか、一体どちらなのですか。
  45. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 申すまでもなく直接侵略に対しては、ただいまのところ日本ではこれに対処する戦力というものは、遺憾ながら持つことはできないのであります。従いましてこれは日米安全保障条約によつて、アメリカの駐留軍の手にゆだねておるわけであります。しかし国内の大事変に対しましては、政府責任を持つてこれに対処しなければならないのであります。さような大きな事変の勃発したときに対処すべき、いわゆる警察のうしろだてといたしまして、保安隊がそういう場合に出動することになつております。
  46. 西村力弥

    ○西村(力)委員 議事進行について。木村長官答弁をだんだんお聞きしておりまして思い出すことは、昨年の破壊活動防止法提案した場合、あなたの所管大臣としての言明が、非常に重大な問題になつて来ていると私は考える。その点の釈明をはつきりいたして、後にこの答弁をやつてもらわなければならぬと考えて、議事進行を申し出たわけなのです。それはどういうことかと申しますと、今、国際情勢、国内情勢云々の問題が出ました。国内情勢が非常に危険な状態にあることは、秘密会を開いてその情勢をお聞きしたのですが、われわれは納得するわけに参らない。ところが新しく国際情勢が加わつて、そして大臣責任をもつて言われているのですが、それを赤松委員から指摘されて、簡単に国内情勢の問題については取消しておる。こういうことはあなた自身が国民に非常な不安を与えて、破防法にひつかかる行為をやつておるのではないかと思われる。しかもその破壊活動防止法を制定する場合においては、あなたはこの法案は、少くとも同時多発的な暴動を阻止するという最低限度の法律として、これを提案するとはつきり答弁している。そういう場合にあつて法案が通された。今危険な状態にあると言われていることと、去年の言明とは大きな齟齬をしておるわけであります。破壊活動防止法をつくつたそのことが、あなた方にそういう情報を提供して、むしろそういう情勢を醸成しておるのではないかというような結果も言い得るわけなのでございます。私がはつきり釈明していただきたい点は、昨年破壊活動防止法提案した際において、この法案提出するのは、同時多発的な暴動を阻止する措置をする、かように言明された立場と、今の答弁されている立場と、どういうぐあいにあなたはお考えになつているか、それをはつきりしていただきたいと思います。
  47. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知の通り破壊活動防止法は、いわゆる国内の反乱、大騒擾を起すような原因をつくる扇動、それから一連の犯罪行為、これらに対する手当をするためにつくつた法案であります。現在この法案が実施されまして、相当の効果をわれわれはあげているものと考えております。保安庁の設置とこの破壊活動防止法とは直接の関連性はないわけであります。保安庁のことは、今申し上げます通り、国内で警察の力をもつてしても、とうてい阻止のできないような大きな事態が生じた場合に、保安隊をいかにして出動させるべきかということでありまして、法の趣旨とはまつたく異なるものであることを御不承願います。
  48. 西村力弥

    ○西村(力)委員 国内の治安の問題は、取締りだけではできないということ、すなわち経済問題、社会問題さまざまあることはあなた自身が認められている。いろいろあるけれども最低限度としての法律をやらなければならぬ。このことは隠密政治になる。隠密権力政治の非常な危険な状態になるであろうことは、私から見ましてもそのことは了承できる、こういうことを木村長官答弁された。しかしながらそういうことはいろいろありまするけれども、結局危険な国内情勢を、最後的に同時多発的なそういう状態に追い込まないためには、隠密政治とは知りながらも、これをやらなければならないとあなたは答弁せられておる。政治家としては単に取締ることだけを喜ばない、ほんとうに楽しく暮せる政治というものを望んでおる、そういう心境にありながらも、私はやむを得ずこれをやるのだ、こういうことを答弁せられておる。かつてそういう答弁をなされたときの立場と、今答弁をされておるそのことを、どういうぐあいに自分で割切つていらつしやるか、こういうことなんです。ただいまの御答弁でありますると、そういうことは言つたことはないというようなぐあいにも聞えるのですが、言つたことはないということは、速記録を見ればはつきりわかることでありますから、そういうことじや許せないことだと思うのです。それで昨年言われたその立場と今の立場について、釈明をひとつ誠意をもつて願いたいと思います。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御質問の趣旨が私にはちよつとのみ込めないのですが、私は心境として、どこまでも日本を平和な国家につくり上げたい、これであります。そこで破壊活動防止法におきましても、これはむやみにその思想を統一したり、あるいは言論を抑圧すべきものではない。ただ国家の基本的構造を破壊するような反乱とか、暴動とか、大騒擾を起すようなことを扇動するようなものを取締らなければならぬ、これが根本であります。これなくして日本治安維持できないのであります。かるがゆえに破壊活動防止法によつて、さような不祥事が起らぬように、いわゆる扇動というようなことをどこまでもなくして行こう、これであります。御承知の通り当時この法案については幾多の非難がありました。あるいは治安維持法の再来じやないか、言論を抑圧するものじやないか、あるいは思想を統一するものじやないか、出版の自由を剥奪するものじやないか、こういう非難があつたのであります。しかし私はそれに対して、さような意図は毛頭ない、決してこの法案というものは、さような意図をもつてつくられるものではないのだということを、私繰返し繰返し説明したのです。幸いにしてこの法案が成立いたしまして約十箇月、今日に至るまで、この法案によつて言論が抑圧されたとか、あるいは出版の自由を剥奪されたというような非難は、まだ私は耳にしておりません。きわめて私は仕合せなことと考えております。さような次第でありまして、私はどこまでも日本治安維持して、平和なる社会をつくり上げたいという信念にはかわりはないのであります。
  50. 門司亮

    門司委員 今大臣言葉を聞いておりますと、どうも承服できない。この前の委員会で実は日本治安状況がどうであるかということを、国警だけではわかりませんので、例の公安調査庁の諸君も来ていただきまして、そうして破壊活動防止法の対象になつておる団体、あるいはそれらのものについてどういう措置をとつて来たかということについてお聞きをしたのでありますが、そのときも国警の報告とほとんど似たような報告であつて、同じようなものであつた。私はここでもう一つ大臣に聞いておきたいと思いますが、大臣は、間接侵略並びに直接侵略というようなものがあるかもしれない、騒擾事件があるかもしれない、従つてそれにこたえるために今の保安隊があるのだ、いわゆる警察のうしろだてに保安隊があるのだというふうに私は解釈をしてさしつかえないと思いますが、もしそれが正しいという大臣意見だといたしますならば、それらの問題を事前に防ぐというために、非常に大きな非難を受けておりました公安調査庁ができておるのであります。公安調査庁はしかもその費用の中で、本年度におきましては一億四千万円というたくさんの金を使つておる。これはスパイに使つておる金であります。いわゆる公安調査庁の千七百幾らですか約千八百人以外の者に報償金として出されておる。これは予算の上にはつきり書いてあるから間違いないと思う。この間もその内容を聞いたのでありますが、こういう施設が日本にはちやんとできておる。あるいは言論を抑圧したり、あるいは集会その他に対して弾圧をしやしないかという危険性さえ持つておるといわれる組織ができておつて、しかもそれらの国内の治安を乱すものに対しては十分の手当ができておるので、これだけ警察力がありまするならば、私は何も保安隊が警察のうしろだてになるほどの要はないのではないか。国内治安維持することのためには、われわれは悪法として非難をいたし、これを認めてはおりませんが、政府がこれを是なりとして認めておりまするから、かりに政府答弁をそのままわれわれが受入れるといたしましても、日本にはそういう国内治安の確保に対しましては、十分な手当ができておると私は思う。その上にこの警察法がさらに改正されて、国警一本になつて、さらに保安隊といううしろだてがいるというようなことは、現在の日本治安状況から、さらに治安に対しまする処置の関係から行きまして、私はどうも承知するわけに行かない。従つて大臣といたしましては、それでもなおかつ日本は非常に危険だ、警察も今の警察制度では怪しいのだと思つておられるかどうか。先ほど吹田の事件がちよつと出ましたが、これも私どもから考えて見ますると、一つの仮定でありまして、御存じように、ある一つの制度ができて、その制度規定するいかなる法律でも、絶対に完璧とは言えません。法律ができても、それからの世の中の移りかわりにつきましては、多少の行き違いもありましようし、あるいは処置の間違つた点もございましよう。これらをとらえてただちに、こういう事件が起つたから、これは現在の警察力が弱いためだといつて、これを育てて行くという努力をしないでおいて、そうしてこれをただちに改正して行くというような行き方に対しては、私ども承服するわけには参りませんが、大臣は、日本のそういう現行警察制度のもとに、さき申し上げましたような公安調査庁がちやんとできておるこの制度でも、なおかつ日本治安は不安であるというようにお考えになつておるのかどうか。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これはものの見方によりましようが、われわれとしては、国際情勢の変転きわまりなきさ中において、各国の例を見ましても、十分の手当はしておかなくちやいかぬ、こう考えておるのであります。警察法改正でありまするが、この警察法によつても、別に人員をふやすとかなんとかいうわけじやないのでありまして、ただ単にいかに能率的に警察機能を発揮せしむるかというところに重点があるのでありまして、われわれといたしましては、やはりこの警察法改正いたしまして、治安の完璧を期すべきであろう、こう考えておる次第であります。
  52. 門司亮

    門司委員 もうこれ以上大臣にお聞きいたしませんが、今の大臣のお言葉は、私どもそのまま受取るわけに参りません。それはなぜであるかといいますと、大臣はこの警察制度について、問題は能率的に警察制度をかえる方がいいというお考えだと解釈いたしますが、説明にもそう書いてあります。しかし警察制度というものは、能率的にやろうとすれば、そこには必ず無理ができるのであります。この警察法前文にも書いてありまする通り、日本警察は民主化しなければならぬ。しかし警察行政というものは、大臣も御承知のようにむずかしいのでありまして、権力と威圧だけでは治安は保てない。国民が恐怖の観念にかられて参りまするならば、かえつて私は犯罪がふえて来ると思う。従つて国家権力のもとに一切の警察行政をおさめてやつて行こうとするところに、政府のものの考え方の違いがあるのではないか。こういう制度になつて参りますると、治安に対しましてますます住民が協力をしなくなつて来る。住民が協力をしなくなつて来れば来るほど、地下運動というものは盛んになつて来る。もし日本警察が真に民主的の警察であつて、そうして日本の住民全体がみずからの治安をみずから守つて行くという正しい観念のもとにいることができるならば、今地下にもぐつておりまする共産党の八幹部がもし悪いとするならば、これらの逮捕もやはり住民の協力でできるかもしれない。あるいはその他の選挙犯罪等についても、そこらに逃げていてつかまらぬのがたくさんおります。これらも住民がほんとうに警察に協力するという気持があれば、完全につかまると私は思う。ところがこれらの問題について、やはり警察とかかかり合いになればうるさいから、できるだけ警察に対してはこれとかかり合いにならぬように、知らぬ顔をしておつた方がいいという国民警察に対する恐怖感がまだたくさんあると思う。この恐怖感をなくしまして、正しい民主的警察とするには、現行法を育てて行くということの方が、木村さんの言われる治安を非常に不安に陥らせる原因ではなくなつて来やしないか。こういう保安隊が一方にある、しかもそのことのために、一方にはさらに警察国家権力のもとに集約して、能率だけを考える、住民の協力を得られないような権力警察にして行こうというものの考え方につきまして、私ども非常におもしろくない気持を持つておりますが、これは一応私の意見として、ひとつ聞いておいていただきたいと思います。  それからもう一つお答えを願いたいと思いますことは、繰返して申し上げるようでございますが、大臣の御答弁では、直接侵略という言葉がございましたが、大臣は今でも、保安隊は直接侵略に対する一つの対処するものだというようにお考えになつておるかどうか。
  53. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまお話の、国家治安維持するについては国民の協力を得なければならない、これは同感であります。国民の協力なくしては、警察法がうまく運用できるものではない、まことに同感であります。ただ警察法改正につきまして、いかにも国家警察力を一手に集中するようにお考えになつておるようでありまするが、私はそうではないと思います。これは県単位警察であります。しかも今公安委員会制度を設けまして、これをきわめて民主的にやろうとしておる。昔の警察ようなことは、夢にも考えていない次第であります。この公安委員制度をうまく入れておるところを見ますると、運用の面において全きを期せば、これは民主的にりつぱにやつて行けるものと私は考えております。もとより政府といたしましても、この警察を一手に納めて権力の集中をはかろうなんということは、夢にも考えていないのであります。公安監理会におきましても、勧告もでき助言もできる。りつぱにこれを運用して行けば、きわめて民主的に事を運んで行くことができるのであります。  次の点でありますが、直接侵略に対しては、先刻申し上げました通り、われわれは遺憾ながらこれに対してただちに対処すべき実力も持たなければ、制度としても、さようなことはでき得ないのであります。しかしながら考えるべきことは、各国の例によつて見ましても、大きな内乱、大騒擾というものが同時に発生することは、往々にしてあることであります。それらについての手当は、ふだんからしておくことが国家の平和、治安維持する上において、きわめて必要なこととわれわれは考えております。
  54. 門司亮

    門司委員 私が先ほど念を押しましたのは、大臣は、最初に言われたのは、直接侵略と間接侵略とは同時に起るから、これを鎮圧することのためには警察の力では足りない、もう一つ善意に解釈すれば、警察予備隊のような軽装備では間に合わぬから、重装備にするのだというふうに私は解釈したのでありますが、その場合にも、今の保安隊が警察力を補うものであるという大臣のお答弁は、私どもはしばしば聞いております。そうだといたしますると、さきに申し述べられた外国の例、その他において、直接侵略はあり得るというようお話でありましたが、保安隊の性格は、どこまでも外国の直接侵略には関係がないのだ、いわゆる国内の治安に対してのみこれを使うのだというように解釈することがいいのじやないかと私は考えておりましたので、実は大臣にその点の心境について、今でも直接侵略に対して今の保安隊が出動するのだという心境でおられるのかどうか、つい三十分ぐらい前にお聞きしましたら、大臣のそういうお言葉でありましたから、あなたはお忘れになつておらないと思いますが、今でもそう思つておられるかどうか。
  55. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより保安隊というものは、直接侵略に対する備えとしてつくつたものではない、これははつきり申し上げます。どこまでも内地の平和と治安維持するためにつくつたものであります。この建前はあくまでも堅持して行きます。しかし直接侵略のあつた場合においては、もとより現在においては駐留軍の手によつて対処することになつておるのであります。しかしそのような場合において、しからば警察も保安隊もおめおめとして事実上それに対処しないかということになりますれば、われわれ国民としてもこれはやらなくてはならぬ。警察であろうが保安隊であろうが、不法な侵略に対してはこれは当然であると考えております。われわれ個人としても立たなければならぬ。(「興奮するな」と呼ぶ者あり)しかし建前としては、どこまでもこれは国内の治安維持するためにやるのだということを考えております。
  56. 赤松勇

    ○赤松委員 ちよつと議事進行について。木村さん、これは重大な問題ですから、あまり興奮しない方がよいと思うのです。総理は憲法を守つて再軍備はしないということをしばしば言つておる。そのことが始終国会で問題になつているわけですが、あなたのおつしやるのは、論理的にいえばこういうことなんでしよう、憲法第九条の関連においてはこれは戦力ではない、従つて外国を侵略する性格を持つた軍隊じやないのだ、しかしながら、向うから侵略して来れば、駐留軍と一緒になつて戦わなければならぬ、但しその場合の法的根拠は憲法第九条でなくて行政協定第二十四条で、それによつてやるのだ、こういうことじやないのですか。まるで私はあなたの答弁を助けるようなことを言うのですが、そうではありませんか。
  57. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 繰返して申しますように、保安隊の性格はもちろん少しも直接侵略を目当としてやつているのではない。保安庁法第四条によつて、国内の平和と秩序維持することを目的として、非常の場合に初めて行動するものであると考えておりますが、この建前はどこまでも堅持しなければならぬ。ただ事実上の問題として、今申し上げましたように、かりに不幸にして外国から不法な侵略を受けたような場合におきましては、国民も、保安隊も、警察も、これに対しては対処するであろう、こう申し上げたのです。
  58. 赤松勇

    ○赤松委員 どうもそういう御答弁だとやはり憲法違反ということになつて来るように思います。しかし私は質問はあとでやることにいたしますが、もう少しそれを論理的に明らかにするようにしておかないと、行政協定の二十四条、憲法第九条、現行警察法、それから保安隊関係、そういうものがどうも一貫しないのです。たとえば先ほどあなたは破防法のことをおつしやいましたけれども、この間公安調査庁の連中が来て、ここで答弁したこととまるで違うのです。あの連中は、幸いにして今のところ調査の対象になる団体が非常に少いことを喜んでおりますという答弁をしておる。あなたはそれをつくつたからまるで少くなつたのだというような御答弁です。政府部内でいろいろ答弁の不統一がございますので、こういう点をもう少し御研究なさつて、一貫した御答弁をいただきたい。これは委員会で重要法案を審議する上に重大な問題ですから、よけいなことですが、一言忠言をいたしておきます。
  59. 青柳一郎

    青柳委員長 門司君、自治長官に簡単な御質問があると聞いておりますが……。
  60. 門司亮

    門司委員 木村さんに対しましては、次に非常事態の布告の場合が現行法と少しかわつておりますので、その場合の木村さんの保安庁長官としての立場を聞きたいと考えておりましたが、本多国務大臣はいらつしやらぬようですから、事務当局でもよろしいのですが……。     〔「いなければ休憩にしろ」と呼ぶ者あり〕
  61. 青柳一郎

    青柳委員長 今の趣旨がちよつとわからぬそうで、聞き漏らしたと思いますから、もう一度お述べ願います。
  62. 門司亮

    門司委員 私は自治長官に対して、この警察法の財政的処置について、少し聞きたかつたのであります。数字上の問題はあるいは事務当局でもわかるかもしれませんが、この地方財政法改正その他については、やはり私は大臣に来てもらわなければならぬと思う。これは現行警察法の八条のときと同じよう法務大臣はお考えになつておるようでありますが、しかしその事態とは少し違うと思いますから、やはり自治庁の長官意見を聞いておきませんとぐあいが悪いのです。もし自治長官がおいでにならなければあとにまわしていただきます。
  63. 青柳一郎

    青柳委員長 それでは休憩いたします。午後二時から再開いたします。定刻にぜひ御参集願います。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  64. 青柳一郎

    青柳委員長 再開いたします。  休憩前に引続き、警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括議題とし、質疑を続行いたします。門司君。
  65. 門司亮

    門司委員 私は本多国務大臣に対してお尋ねをいたしたいと思いますが、大臣警察法改正に対する概念をまず先に聞いておきたいと思います。それは、さきに大臣も御承知のように、この警察法改正に対しては、地方制度調査会の意見を徴さないで国会に提案されて審議されたことは、非常に遺憾であるという声明書を出しておるのであります。このことは、警察行政が明らかに地方行政の中で教育と相並立したきわめて重要な問題でありますので、地方制度調査会が当然政府から諮問を受けております地方制度全般に対する機構の中で、十分検討すべきであつたと考えておつたのであります。しかるに、地方制度調査会の意見をまたないで、しかもこれに対する正式の諮問が行われませんで、突如としてこれが国会に提案されて参りましたので、先ほど申し上げましたようなきわめて遺憾であるという意思を表示したのでありますが、このこと自体に対して大臣はどうお考えになりますか、まず大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  66. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方制度調査会に対する関係におきましては、義務教育制度の改革と同じでございますが、確かに両制度とも地方行政に関することでございますので、地方制度調査会に地方制度の一般に関しまして御諮問申し上げておるわけでございますので、こうしたことは御諮問を申し上げて答申を得てからやるという順序も考えられるのでありますけれども、ただこのことは、今回の治安確保の責任の明確化ということが来年度まで待てない、今年度内にぜひ実施しなければならぬ、その実施の案につきましての政府意見も決定いたしましたので、これは政府責任において断行することになつたわけでございます。
  67. 門司亮

    門司委員 政府責任においてなしたわけだ、こういうお話でありますが、もとより政府責任であることに間違いございませんが、一方において地方制度調査会ができておりまするので、これの答申を待つてもおそくはなかつたのではないか。政府の要望いたしますのは、御承知のように、本年七月までに大体意見を出してもらいたいというあらかじめの注文もついておりますので、七月まで約半年はないのでありまして、それくらいの間を私は当然待たるべきであるというよう考えておりますが、この点について私は後ほど総理大臣がおいでになりましたら、総理大臣にその心境もあわせて聞かなければならないと考えておるのであります。  その次に大臣に聞いておきたいと思いますることは、現行警察法に対しまして、憲法の本旨に沿うようにこの警察法を制定するということが書かれていることは、前文で御承知の通りであります。憲法の趣旨に沿つてこういう警察法を制定したということは、とりもなおさず憲法第九十二条の自治の本旨に沿つてこしらえられたものだと私は解釈するのであります。従つて大臣といたしましては、自治の本旨というのは何を指さすかということであります。今度の警察法改正の問題が一番重要な問題は、ここにかかつておりまして、現行警察法に「日本国憲法精神に従い」こうはつきり書いております。さらにその次に「地方自治の真義を推進する観点から」と書いております。従つてこれは明らかに憲法第九十二条をさしたものだとわれわれは解釈するのでありますが、この憲法第九十二条の自治の本旨の解釈について、一応この場合大臣から御意見を伺つておくことがいいと思いますので、ひとつお答え願いたいと思います。
  68. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 憲法の九十二条の、地方自治の本旨いかんというお尋ねでございますか。
  69. 門司亮

    門司委員 そうです。
  70. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 憲法九十二条の地方自治の本旨につきましては、御承知のごとく、学者の間にもいろいろ説があるわけでございますが、要するに、地方の公共の仕事については、その地方の住民の自治によつてこれを行わしめて行く、こういうことが基本の建前であろうと思うのであります。
  71. 門司亮

    門司委員 憲法九十二条が今の鈴木次長の答弁ようでありますると、現行警察法は明らかに憲法九十二条の本旨に基いて自治警察が正しいとして、一応こういうことが書かれたと解釈することがいいと私は考える。しかるに今度の警察法は、御存じように、法案内容の中に織り込んであるとは言われておりまするが、実際においてはそういうことがほとんど書かれてないのであります。従つてこの警察法自体は、地方自治の本旨に沿つてこしらえている警察法とは違う、憲法九十二条の自治の本旨に基いてこしらえられた警察法ではないのではないかという気分が私は十分するのであります。このことは法務大臣に各委員から聞かれるのでありますが、法務大臣は、憲法九十二条の自治の本旨に基いて現行警察法ができている、その警察法と何らのかわりがないんだ、しかもそのことは条文の中に織り込んである、こう言われておりまするが、今の鈴木さんの御答弁ように、現行警察法がこの九十二条に沿つてできたものであり、さらに改正されようとする法律案は、私ども考え方から見まするならば、この憲法の趣旨に沿わざる一つの警察制度ではないかと考えておりまするが、この点に対する自治長官の御見解をお願いしたいと思います。
  72. 本多市郎

    ○本多国務大臣 警察制度の性格上、国家的性格の必要なことも御承知の通りでございます。これをいかにして地方自治の本旨に反せざるように取入れて、能率的な警察制度を確立するかということは、相当その調整に苦心を要する点でございますが、今回の改正警察制度は、地方自治団体たる府県の機関として設けられるのでありまして、その運営についても、地方機関である都道府県公安委員会等が管理機関として設けられることでございますので、これこそまさに地方自治国家性を取入れた能率的な制度に改まるものと考えますので、そうした精神に反しないものと考えております。
  73. 門司亮

    門司委員 私は今の大臣答弁はまつたく承服するわけには参りません。この憲法に書いてありまする自治体の本旨というものは、現行自治法の中に、都道府県並びに市町村が普通地方公共団体であるということがはつきり書いてあります。しかし自治の本旨というものは、やはりどこまでも地方住民の自覚責任において行つて参りまする行政が、地方自治の本旨でなければならないと考える。そう考えて参りまするならば、必然的に地方自治体の本旨に沿うようにこしらえるということは、いわゆる市町村の自治が主としてこれに当てはまるべき言葉ではないか。従つて今日の府県行政というものが、どこまでも補完行政であり、連絡調整の機関であり、さらに広域行政が今日の府県行政のあり方であつて自治の本旨というものはどこまでもその基礎は市町村に置くべきであるとわれわれは考えなければならない。しかるに今度の警察法は、その自治の本旨であり、さらに自治の本体でありまする市町村警察をやめて、これを府県警察に持つて行こうとするのである、いわゆる補完行政あるいは連絡調整の行政機関でありまする府県にその主体を置くわけではございませんで、多少ひつかかりをつけられたよう法案をこしらえるということは、明らかに現行警察法の憲法の精神にのつとりという言葉と、相反した警察法の制定だと私は考えておるのでありますが、この点についてもう一度自治長官としての御答弁をお願いいたしたいと思います。
  74. 本多市郎

    ○本多国務大臣 地方行政と申しましても、その中には警察制度のごとく、国家的性格を持たせなければならぬ性格の行政もあるわけでございます。これをただいま改正案に示されましたよう制度に改めるということにつきまして、私は憲法の本旨に反するものでないと申し上げたのでございますが、自治の本旨に反せざる警察制度自治警察のみであるという制約されたものではないと考えておりますので、今回のごとく府県の機関として警察を設け、同時に国家的性格を加味した制度を取入れて運用して行くということで、これはその本旨に反するものではない。ちようど民主的、能率的な機構に改まるものである、かよう考えております。
  75. 門司亮

    門司委員 大臣のお言葉でありますが、現行警察法におきましても、地方自治体の市町村の全部が全部、財政その他の関係からこれを置く必要はないように、ちやんと書かれております。国家機能でありまする分については、国家地方警察という一つの制度があるのであります。従つて大臣お話になつておりまするように、国の制度というものについては、私は警察法が全然これに関係しないというわけではないと考えております。  従つて、その次にもう一つ聞いておきたいと思いますることは、今度の警察法は、御存じように、自治警察大臣は言われておりまするが、私ども自治警察ではないと考えております。この間において当然地方治安に対して、地方自治体責任を負うということが一応考えられて、これを自治警察であるかのごとくカムフラージユしたいわゆる県に公安委員会を置いて、そうして警部以下の給料を府県が支払つて地方公務員としての制度をとつてつて、いかにも地方自治警察であるかのごとき観念を与えておるのでありますが、大臣に聞いておきたいと思いますことは、この警察が、もし法務大臣の言われまするよう自治警察であるといたしまするならば、その自治警察である警察の主軸になつて参りまする地方警察長、並びに警察署長までが、地方公安委員会においては任免権を持つておらない、中央がこれらの任免権を持つておるということは、明らかに私は自治権の侵害であると考えるが、大臣はこれをどうお考えになりますか。
  76. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今日まで市町村に設けておりました純然たる自治体警察、それとは性格の異なつたものでありますけれども、今回の制度は、今日までの市町村単独の自治体警察を廃し、国家地方警察を廃して、この二つの性格を調和して、民主的、能率的な制度を立てようというので、今回改められることになつたのでございます。これは警察行政国家的性格を持たせ、しかも地方の府県にも担当してもらつて運営して行くことが、国家のために適当であるという見地から来るわけでございます。たとい警視以上の者が国家公務員となり、また府県の警察長任命されるといたしましても、おのおの責任を分担いたしまして、府県の機関である公安委員会がこれを管理し、さらにまた中央からの指揮、命令ということは国家責任をもつてやるわけでございますから、これをもつて自治権の侵害ということは、当らないと思います。かくして初めて警察制度の性格に沿う制度が打立てられるのであつて警察の能率を上げることもでき、さらにまた治安確保に対する責任の明確化もできる。こういう点から考えて行かなければならないと存じます。
  77. 門司亮

    門司委員 せつかくの大臣の御答弁で、自治権の侵害でないというお話でありますが、もしこれが自治権の侵害でないとするならば、当然地方公安委員会が、府県の警察長任命権を持たなければ、私は穏当な筋の通つた自治警察ではないと考えておる。警察は、いわゆる階級性を非常に強く持つた制度であります。ことに中央任命し、その任命された者が地方治安の当該責任者になつて来るということになつて参りますと、地方自治警察も、公安委員会がこれを運営、管理はするかもしれませんが、それに対する最後の責任を背負わないわけであります。いわゆる任命権を持つておりませんから、治安に対する最後の責任というものは持つわけには行かない。もとより国の治安全部の責任総理大臣にありますので、現行警察法におきましても、非常事態その他の場合には、総理大臣が一切これを掌握するようになつております。しかしこのことは別にして、地方自治体の立場から考えて参りますと、地方公安委員会地方警察長任命権を持たなければ、完全な自治権というものが守られないのではないか。ここに私は明らかに自治権の侵害ではないかというように解釈いたしておりますが、任命権はなくても、一体自治権は守れるというようにお考えになつておるのかどうか。
  78. 本多市郎

    ○本多国務大臣 さいぜんから申し上げました通り、国家的性格を有する行政事務であるという性格から、かくすることが地方のためにも、国家全体のためにもよいことである。さらにただいま申し上げました通り、今回の改正におきましては、地方機関に管理権を認めておるのでございますから、純然たる自治警察の場合における制度とは性格がかわつて参りまするけれども、総合的に考えますと、今までの警察よりもむしろ民主的に進歩したものではないかと私は考えております。それは同じ警察行政でありながら、今日まで国家地方警察の担当区域におきましては、町村の警察国家地方警察で担当しておつたのでありますが、それに対しましても、何ら地方自治権の侵害であるというような非難も受けておらないのであります。今回こうした折衷した制度を設けることは、警察行政の性格から、まつたく改善であつて地方自治の侵害にもならない、憲法の精神にも反しない、私はかよう考えております。
  79. 門司亮

    門司委員 大臣はそうお答えになりますが、今度改正されまする警察法の中において、明らかに現行法と違いました点は、警察に対しまする給与の面が、非常に大きく違つて来ておるのであります。現行警察法におきましては、御承知のように、国家警察はございましても、任免権が全部国家地方警察の本部にありますとともに、費用の面も一切これを国家が支払つております。今度の警察法改正によりますと、警部以下は地方が負担することになつておる。命令し、指揮、監督をする警視以上は国が任命権を持ち、さらにこれの給料を支弁をしておるのでありまして、ここに自治警察は二元化されておる、しかも、二元化されておる形を示しておりますと同時に、警部以下の者に対してでもやはり県の公安委員会は何らの任命権を持つておらない。ただその行政を管理するという名前だけで、実質の権限はまつたく何も持つておらない。従つて地方公務員として地方自治体が給与を支払つておりながら、その実体の権限は国に握られておる、こういう形でありまして、この点、自治権の侵害でなくて一体何であるかということであります。地方の住民が地方公務員としての生活を保障しておりながら、それの任免権国家から一連のつながつたものであるということであります。警部以下の任免権地方公安委員会が持つておるわけではございますまい。そうすると、どうもこの辺の考え方におきまして、私は大臣答弁をそのままに信用するわけに行きませんが、これでも一体大臣地方自治権を侵害しないとお考えになりますか。
  80. 本多市郎

    ○本多国務大臣 門司さんのお話によりますと、月給さえ中央でもらえば今までの国家地方警察のごとく、まつたく中央の管理で警察行政をやつていた場合でも自治侵害ではない。今度は給料を地方で持つて、府県の機関としてやるのであるけれども、警視以上の給料を国家が持つだけだから、地方公務員と国家公務員とのつながりで運営するものであつても、これは自治権侵害になる、こう言われるのでありますけれども、こうした制度を立てなければならないのは、まつたく警察行政の性格から来るものでございます。もちろん財政措置ということにつきましては、直接払うと、また間接に府県に負担せしむるとにかかわらず、国の責任において講じて行かなければならぬのでございます。
  81. 門司亮

    門司委員 私は今の大臣答弁は非常に問題だと思いますが、直接と直接でないにかかわらず、国の責任においてと言われますが、それはその通り、国の責任においてでありますが、その給与を支払つておりますものがやはり当然主体にならなければならぬということであります。たとえば今度の義務教育費の問題にいたしましても、義務教育費を国が払うから、これは全部国家公務員にするのだというのが大きな理由でありましよう。そういたしますならば警察法の場合におきましては、警察官任免権は国が持つておる、給料だけは警部以下はそつちで支払えということは、いかに警察制度の上におきましても、自治権の侵害でないとは私は言えないと考える。これは地方公共団体の方から考えてみますと、給料だけは支払うが、その身分その他については国家でつよいように自由自在にされるということで、一体承服ができるかどうか。しかも大臣答弁によると、地方財政といつて国家財政といつても、国が財政措置をして行くのだからさしつかえないのだということになれば、明らかにこれは中央集権である。地方分権などということは毛頭考えられない。われわれは日本の民主化をするために、新しい憲法のもとに、新しい自治法のもとに民主政治施行して行こうとするならば、そういうけじめをはつきりしておかなければならぬ。国に責任があるから、一切国が握つて何が悪いのだという思想になつて参りますれば、明らかにこれは中央集権であります。その点について私は大臣にもう一度お答えを願いたいと思いますことは、もし大臣の言われることが正しいとするならば、地方自治体に対しましては、十分なるそれらの財源措置が当然講じられなければなりませんが、現行御存じように非常に赤字をたくさん出しておる。財源措置をはつきり講じておりません。これは〇・二五の問題もまだ解決しておりませんが、この〇・二五の問題だけでも解決していない時代に、大臣は国と地方との財政関係において、当然国が責任を背負うべきであるから、これは自治の侵害にならぬと言われておりますが、もし大臣がそういう言葉であるならば、先ほど申し上げますように、地方自治体に対する財源を十分に大臣はお与えになる御意思があるかどうか。
  82. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今日の国家財政でございますから、ゆたかにというわけには参りますまいけれども、国会にもお諮りいたしまして、不可欠の費用はこれはどうしても措置して行かなければならないと考えております。
  83. 門司亮

    門司委員 それでもう一つ、二つこれから聞きたいと思います。財政処置の問題について、現行警察法によりますと、二十八年度一年だけは国家地方警察警察官の給与と、地方の今の自治体警察官の給与とは、そのままこれが支給されるようになつております。従つて私は給与の面で非常に開きがあると考えておるが、こういう財政措置において一体大臣地方自治体の財政に対して、これをそのままでいいというようにお考えになつておるかどうか。何とか財政調整しなければならないというようにお考えになつておるかどうか。
  84. 本多市郎

    ○本多国務大臣 二十八年度におきましては、それぞれ国家地方警察組織系統は国家で負担しまするし、自治警察系統はその地元で負担するということになつております。これは現状通りの双方の負担でございますから、二十八年度において特に財政調整という問題は、実施前にすぐに必要であるという関係は生じて来ないと存じます。しかし二十九年度からは、それぞれ平衡交付金の算定におきましても基礎がかわつて参りまするし、そうなれば財政調整ということを並行して行うことが地方の財政均衡化と申しますか、その上から必要であると考えますので、二十九年度におきましては財政措置を講じた上に、この平衡交付金制度というものを運用して行くようにいたしたいと考えております。
  85. 門司亮

    門司委員 私はその次に大臣にお聞きをしておきたいと思いますことは、現行警察法で支給されておりまする給与を、そのまま国の公務員になりまする者に対しましても、当然支払うことに私はなると思う。いわゆる警視以上の者については、これは国家公務員になりますから、それは当然支払うことになると思います。国家公務員に対して地方自治体が給与を支給するということが、法律の上では一応便法として認められておりまするが、自治体立場から考えてみまするならば、これは単なる一片の法律ではございまするが、支給をする何かはかに法律的根拠がなければ、私はそう自治体ではこれを見るわけには行かぬと思いますが、これについて何らの措置が必要でないというようにお考えになつておりますか。
  86. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今回の改正におきまして、暫定措置として自治警察の系統の警察の経費は、その自治警察維持していた市町村の負担であるということになります関係で、法的根拠は明かになつて来ることと存じます。しかし今まで自主的な負担でありましたものが、今度はこの改正法律によりまして義務的負担になりますから、負担の性格の変更はあるのでありますけれども、現状通りであれば、財政措置が講じてございますから、財政措置も伴つているということができます。
  87. 門司亮

    門司委員 私は国の財政措置の講じてあります平衡交付金に織り込まれている分だけはそれでいいと思いまするが、自主的負担のものが相当あると考えている。一体この自主的負担になつておりますものがどのくらいの額に上つているのか、一応数字をこの際示してもらいたいと思います。
  88. 本多市郎

    ○本多国務大臣 今日まで自治警察を持つておりましたところは、その全額が自主的負担になつているわけでございます。特に政府から命ぜられて特別の施設をいたしましたもの以外のものは、全部が自主的な負担になつていると言うてよかろうと存じます。
  89. 門司亮

    門司委員 今の大臣答弁は、違いはしませんか。警察費の負担区分は、平衡交付金の中に当然織り込まれております。従つてそれだけは明かに国が支出しているのでありますが、しかし平衡交付金をもらつていない都市が、四百二十二の現在の自治体警察の中に、大体九十くらいありはしないかと私は考えておりますが、それらのものは警察の費用として特に国から何らの手当も受けておりません。みな自主財源でやつております。残りの三百幾つの自治警察につきましても、一部分はむろん平衡交付金をもらつて、その中で処置しておりますが、大部分は私は自治体の負担になつていると考える。そこで問題になつておりますのは、給与の問題については、あるいは大臣お話ように一応処置をするかもしれません。しかしその他の警察設備の問題に対しましては、私はこれまで法律で制限するわけには参らぬと思う。そうなつて参りますと、地方自治体が二十八年度において警察行政執行いたしますことのために、装備その他の費用を二十八年度の予算の中で削除するということになつて参りますと、警察機能というものは非常に落ちて来ると思うのです。警察機能の脱落して参りまする欠陥は、何によつて穴埋めをしようとするのか。これは治安に対しまして非常に問題がある。そこで大臣お話ように、今まで通りに支払えばいいのであるからというだけでは済まないと思う。自治警察といたしましては、装備の点等も当然予算の中に組んで、初めて治安の全きを期せられる。この予算だけをもし自治警察が二十八年度の原案に組んでおります予算措置の中でとつてのけたら、警察の機構というものは非常に弱体化しはしないかと考える。この費用までも今度の法律地方に負担させることができますか。
  90. 本多市郎

    ○本多国務大臣 警察というものの充実ということは、その地元市町村の治安確保のためでございますから、地方の人たちにとりましても、まことに大切なことでございます。そうした関係にありますので、私は治安の確保のための経費を、従前通り、この切りかえの間負担してくれということで、新たな経費の増加はないのでございますから、その限度においては、必ず今度の法律通り負担していただけるものと考えております。さらにまた自主的負担云々という問題について、平衡交付金をもらつておるところともらつていないところを区別して論ぜられたのでありますが、平衡交付金も地方の自主的負担の一般収入として交付するのでありまして、もらつているところでももらつていないところでも、すべて一般会計からの自主的負担でございます。さらにまたただいまの問題につきまして、それは今度の法律が結局根拠にはなりますけれども、やはり地元治安確保のためという観念から円滑に負担していただけることを考えております。
  91. 門司亮

    門司委員 私は円滑に負担していただけると考えておるというだけでは済まないと思う。たとえば施設をいたしますと、この改正される法律によりますと、それがもし今度新しくできた警察に必要な場合は、大体無償で使うことができると書いてあります。従つて無償で使うことができ、あるいは無償でこれが国に没収されるということになつて参りますと、地方自治体は今日でも非常な赤字を持つております。法律をこしらえてかえまする以上は、それらの点については国が負担をすべき義務があるということである。その負担すべき義務のあるべきものを国が怠つておいて、これまでの通り地方自治体に背負わせて、経費その他についても従前通り予算を組んで持つて来いということは、一体できるかどうか。百歩譲りまして、昨年度の予算をそのままここに計上するといいましても、私は警察の今日の現状におきましては、おのおの自治警察を持つておりますところは、自治警察の充実のために、年々警察費をふやして参りまして。そうして装備あるいは施設の充実を期して参つておるのであります。前年度の予算よりも本年度の予算は、必ずふえるということである。そこまで地方自治体は、みずからの治安を確保するための努力をいたしておりまするときに、もしそれらの財産が全部国に使用されて、しかも財政的の措置は講じない。法律をこしらえさえすれば、地方自治体はそれでやつてくれるであろうというようなあいまいなことでは、国の治安をまかしておくわけには行かぬ。当然これらの面に対しては、やはり国が責任を持つて、これを支弁するという建前でなければならぬと思う。重ねて大臣に聞きまするが、これらの問題を決定する権限を持つておりまする地方議会に対して、大臣はそういう指示をされることができるかどうかということであります。
  92. 本多市郎

    ○本多国務大臣 財政措置なしに負担を命ずることは無理だと存じます。それはいかに法律をもつて命じたといたしましても、無理だと存ずるのでありますが、御承知の通り現状通りの警察維持する財政措置は講ずるのでございますから、たといその警察市町村警察から府県警察にかわりましても、その警察のやつてくれる仕事は、その地域の住民の治安の確保という大切な仕事でありまして、今日までも政府から財政措置いたしました以上に、治安の重要性にかんがみまして市町村におかれては力を入れていただいておるのでございますから、財政措置が講じてありますので今度法律がきまりましたならば、地元の負担でやるという大事な治安の確保という経費については、これは必ず守つていただけるものと期待いたしております。もしただいまのような御質問がありまして、いろいろ誤解の点がありますならば、十分了解を得るようにわれわれ推進をいたしたいと考えております。
  93. 門司亮

    門司委員 私はその点が非常に気になるといいますか、懸念されるのであります。大臣はそういうことのないように推進するという御言葉でありますが、地方自治体におきましては、それでなくても赤字で非常に困つております。やりたい仕事はたくさんあります。従つて警察制度に対しまして、政府が手当をしておるというのは、平衡交付金の中に若干出しておりますものと、それから平衡交付金を支給しなくてもいいバランスのとれる町村に対しましても、やはり一応国の手当として考えてもいいんだという大臣のお言葉だと私は解釈いたします。それだけでなくして、地方自治体といたしましては新たなる仕事として、たとえて申し上げますならば、ことし自動車を一つよけいに買いたいとか、あるいは警察維持するために交番を一つふやしたいとか、いろいろな施設の拡充がある。これらを施設いたしましても、これが本年十月一日になればただちに帰属がほかにかわる、責任の所在もほかに移るんだということになつて参りますると、責任の所在がほかに移るものに対して、私は大臣が言われることは望ましいこととは思いますが、実際の面においてそういうことは容易に行われないのではないか。もし行われなかつた場合に、やはりそれだけ警察力はにぶるのじやないか。従いましてこの点について、大臣はそういうことは断じてない、今地方自治体で必ず装備その他に対して十分の予算を組むであろうという確信を持つた御答弁ができるかどうか、それを伺いたい。
  94. 本多市郎

    ○本多国務大臣 私がそういうことはないと言つても、いやあると言う人が出て来れば水かけ論になるのでありますが、しかし治安確保の重要性にかんがみまして、地元の人たちは地元警察のために、いろいろ御協力をいただいておるのでございます。自治警でない国家警察に対してさえ、種々御援助をいただいておるのでありますから、自動車を買うにしても、装備を充実するにいたしましても、それがほかに使われるのでなく、その地元町村の治安確保のために使われる、この点でぜひ御了解を得なければならないと考えております。
  95. 門司亮

    門司委員 いつまでたつても水かけ論でありますから、私はこのくらいにしておきます。  その次に伺いたいことは、それらの施設に対しまして負担いたしましたのは、従来は自分の警察であるから自分で処置するということで費用を出しております。これが今年度は従来の観念と違いまして、十月一日から警察の所管が移つて自分たちの権限以外になるということである。もしそれらのものを負担いたしまするために、起債その他でこれが設けられておりまする場合においては、それらの費用は当然国家が見るべきだと私は思うが、自治庁においては、それを来年度の予算あるいはことしの補正予算で組まれる御意思があるかどうか。
  96. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは警察が公用で使つていた施設に対して負債がついている場合、つまり起債でそれが調達されていた場合、建物などが建築されていた場合の御意味かと存じますが、そうした際は十分協議することになつております。
  97. 門司亮

    門司委員 もちろん協議をすることになつておりますが、私の聞いておりますのは、協議はいたしましてもそれは当然財政的の措置がされなければならないと私は考えておる。財政的の措置をされまする場合に、国はそれの補償をはつきりされるかどうかということであります。これは無償で使う場合におきましても、地方とちやんと協議しなければならぬようになつておる。無償で使うことがいいというお互いの了解ができまするならば、それでいいかもしれませんが、もしできなかつた場合には国が補償しなければならぬと思う。それの財政措置について、大臣は確信を持つて必ず補償し得ると、ここで言い切れるかどうかということであります。
  98. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいま御指摘の、警察の庁舎等を市町村で建設いたしました場合の負債の問題でございます。これは市町村といたしましては、その負債の償還をいたします財政需要があるわけでございますが、それが協議の結果結局府県の方に債務が移るということになりますると、その財政需要は今度は府県の方に移つて行くわけであります。そこで平衡交付金の計算の上において、あるいは財政計画の計算の上におきましては、市町村から府県の方にその計算の基礎を移して、府県の財政需要にそれを見込んで行く、こういうことになるわけでございまして、ただ計算の主体を市町村に置くか府県に置くか、それを変更するだけの結果になるわけであります。
  99. 門司亮

    門司委員 変更するだけだと言われておりますが、私ども考えておりまする考えから言いますると、必ずしもそう行かないのではないか。これは警察法の中で、たしか昭和二十五年ごろだつたと記憶いたしておりますが、警察に使つておりまする財産を、国に没収することのできる法律をこしらえたことがあります。私はそういう法律がまた必ず出て来はしないかと考える。大臣はここに、そういう法律を一切こしらえないという言明ができますか。私はそういう一つの実例がありますので、ここで聞いておくのであります。
  100. 本多市郎

    ○本多国務大臣 御指摘になりましたのは、自治体警察を認めたときの措置かと存じますが、(門司委員「国警ですよ」と呼ぶ)その場合、国警の区域におきましては、府県の公用建物等を物償で国に譲渡させたというあの例だろうと思います。今回はこの制度の改革によりまして、自治体警察を持つていたものが府県警察に性格がかわりますので、今度は国へではありませんけれども、府県へ同様の措置で移管をされるということになります。
  101. 門司亮

    門司委員 これは非常に大きな問題です。国の一つの制度がかわりますることによつて地方自治体にそういう負担をかけてはならないということが、地方財政法にはつきり書いてあると私は思う。都道府県警察の主体が移つて参りまするので、現在市町村で持つておりまする自治警で使つたものが、無償で都道府県に移管されるということになつて参りますると、自治体といたしましてはこれは明らかに無償の没収であります。しかもこれは国の制度の上においてこういうことがなされて行く。私は地方の町村にはそういう制度を設けてはならないと考える。憲法の個人の権利を侵害されることがないというのとは、自治体でありますから多少考え方が違うかもしれませんが、やはり自治体といえども法人であることに間違いはございませんし、一つの法人格を持つた自治体の財産を、無償で国または府県というようなものがこれを没収するようなことは、一体憲法に対して抵触しないかどうかということであります。大臣は抵触しないというふうに、はつきり答えができるのかどうかお聞きしておきたいと思います。
  102. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは先刻御指摘になりました現行警察制度が確立せられたときも、府県のものを自治体警察へ無償で譲渡する、あるものは府県のものを国家警察の方へ無償で移譲するということが行われております。これも他の目的に使うのでなくして、やはりそこの警察治安確保の用途に供することでございますから、そこに了解もつきやすいものと考えております。それでは憲法に抵触するかという点でございますが、これは公用に供しているそうした財産というものは、私有財産とは違つた性格を持つておると考えられますので、憲法に抵触するとは考えておりません。
  103. 門司亮

    門司委員 私はさつきも申し上げましたように、もちろん憲法の問題として個人と法人とは違うと考えておりまするが、自治法には地方公共団体といえども、明らかに法人とする、こう書いてあります。これも一つの法人格を持つております。従つて財産の譲渡につきましては、やはりこれを無償でとるということは、憲法の条章からいいますると困難ではないかと私は考える。この点についてもう少し詳しく御答弁を願いたいと思う。地方自治法に、「地方公共団体は、法人とする。」こうはつきり書いてありますので、従つて法人格を持つておりますものは、なるほど個人と違いまして、たとい公の用に供するものであるといたしましても、おのおの財産の負担区分というものは明確にしておかなければならない。国のものは地方がかつてに使つてもいい、地方のものは国がかつてに取上げてもいいというようなあいまいなことであつてはならないと私は思います。その点について、憲法に対しては今の大臣答弁では承服ができないのでありますが、もう少し明確な御答弁をこの際願いたいと思います。
  104. 本多市郎

    ○本多国務大臣 先ほども申し上げました通り、現行警察制度の確立の際に、府県から自治体警察へ、あるいはまた府県警察から国家警察へと同じ措置によつて移譲されたのでありますが、いまだかつて憲法違反であるという議論は聞いておりません。また法人であると仰せられましたが、法人格であることは間違いないのでありますけれども、民間の会社のような人と違つて地方公共団体である。この地方公共団体が公共の用に供していたものであつて地方団体の財産でも公共の用に供せざる財産と、公共の用に供している財産とは、また性格が違つて来ると思うのでありまして、こうした性質のものについて憲法の私有財産権侵害の規定というものに私は抵触するということはないと考えております。
  105. 門司亮

    門司委員 憲法論もあまり長くなりますが、私は大臣のお考えようなわけには実際は参らぬと思います。しかもこの前の警察法のときには、警察法自体の中に一応国の使うものは国が全部使う、国の使つた残りのものがあれば、地方自治体警察に譲渡することができるということになつておつたと私は考えます。ところが財産を没収いたしましたのは、国の使うものについてはその権限の譲渡をすることができるという法律をあとでこしらえたからであります。これは警察法と違つた法律を出しておるのであります。従つて先ほど来申し上げておりますように、今度も違つた法律をこしらえなければこの法律の中だけではできないのじやないか、こういうことであります。もしそうだといたしますならば、明らかに法人格を持つております地方自治体の財産というものが、一片の法律で国に取上げられるというような形になつて参りますので、この点を憲法に抵触しはしないかといつて聞いたのであります。     〔委員長退席、鈴木(直)委員長代理   着席〕  その次に私は財産の問題でお聞きをしておきたいと思いますことは、地方自治体の現状から見ますと、現実にある問題でありまして、これは一応齋藤国警長官に聞いたのでありますが、はつきりした答弁がなかつたので、もう一応主管であります自治庁にお聞きをするのであります。たとえば一つの都市に参りますと、その都市におきましては、その地区を受持つ国家地方警察ができております。しかも国家地方警察は、その地区にありました従来の警察署を占拠しております。占拠というと言葉が悪いのでありますが、警察法によつて国が使うのだからといつてまず国が先にとつておる。そういたしますと、その都市におきましては新たにその都市の自治警察を建てなければならぬのであつて、今日では五年たつておりますから、ほとんど全部の都市という都市がそういう処置を現実にとつております。そういたしますと、今度の警察法改正でまた府県警察の形に戻つて参りますと、ちようど以前の警察と同じような形になつて参ります。その地方の所管の中に含まれて来るということになりますと、明らかに警察が一つあき家になる形ができて来ると思う。そのあき家になつ警察はその地方の財産であるから、そつちでかつてに使えばよいということになつて参ると思うのでありますが、もしこれが先ほどから申し上げておりますように、起債その他でできておるといたしますならば、地方自治体制度のかわつたことにおいて、無用な一つの建物を所有することになり、しかもそれは借金をして建てておるものである、この場合、これの返済方法が今度の警察法には何も書いてない、これらの問題をどういうふうに地方自治体は処置して行けばよろしいのですか。
  106. 本多市郎

    ○本多国務大臣 政府委員から補足してもらおうと思いますが、お話の通りのような場合もあろうかと存じます。国警と自治警とが同じ町の中に二つ建物があるという場合もあろうかと存じます。今回の改正法におきましては、不必要になつたもので、さらに府県警察で必要とするものということになつておりますから、不必要になつたが必要とするものは地方団体のその所有者の任意にできることと考えておりますが、詳しくは政府委員から説明を補足していただきます。
  107. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの、都道府県警察にいたしました結果生じました不要になる警察庁舎をどうするかということ、それに伴う負債はどう処理するかというような点のお尋ねでございますが、それはなるほどそのような事態も起ろうかと思いますけれども、その当該の町なり市といたしましては、公用が結局なくなつた庁舎でございますから、それをいわば一つの財産といたしまして、あるいは売却処分をするなり、他の用途に転換をいたすことによつて、その間の調整をいたすほかはないと思うのであります。しかしながら実際問題といたしましては、物価の状況等から勘案いたしまして、当初の相当程度の起債というものは、今日におきましてはそれほど大きな負担ではなくなつておるのではなかろうかと思うのでありまして、売却処分とかあるいは他に転貸することによりまして、その負債の処理は何とかまかなつていけるのじやないかというふうに考えております。
  108. 門司亮

    門司委員 私は今の答弁は非常に不親切だと思うのです。あき家になつたものをお前の方でかつてに処分せよという、しかも今の鈴木さんの答弁ように、建てたときよりも物価の指数が違つて来ておるから、損はしないであろうというようなことで済まされる筋合いではないと思う。少くとも地方自治体に迷惑をかけないようにするには、地方自治体に対して国は公債その他の支弁の方法を認めてやるべきだと思う。これは地方財政法の十三条に書いてあると思います。国の新たなる施設によつて地方自治体に経済的な迷惑をかけてはならないというこの地方財政法規定は、守つていただきたいと思う。従つて私の聞いておりますことは、もし起債等で借金をしておるなら、それを国が肩がわりをしてやるという御意思があるかどうか。売払つてつてにいいようにせよ、あるいは貸家にしてこれを償えということは、政府のやり方としては行き過ぎじやないかと思う。行き過ぎというよりむしろ行き足らぬのだと思います。この点はもうひとつ親切な答弁をしておいてもらわぬと、地方自治体といたしましては、こういう制度のかわるときは、非常に困るのでありますから、何とかひとつもう少しはつきりしたことを言つておいてもらいたいと思います。
  109. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 御指摘のように、国の制度の転換によりまして、地方団体に不測の損害を与えるということは、もとより好ましくないことでございます。先ほど申し上げましたことは、そのような自主的な処置によりましても、ある程度の調節は可能ではないかという意味で申し上げたのでございます。しかしながら、それらの処置によりましても、何とも処置のできないような特殊な事情がある場合におきましては、平衡交付金制度の中のいわゆる特別平衡交付金の運用等によりまして、さような気の毒な事情の多数町村につきましての処置は、可能であろうというよう考えております。
  110. 門司亮

    門司委員 それでは念を押しておきますが、私はさつき建物を例にとりましたが、これは建物ばかりではありませんで、その他の施設についてもいろいろ問題があると思う。たとえば自動車にいたしましても、一台あればいいものを両方で持つておるからということで、いろいろ問題が出て来る。そういう財産の処置に対しては、特別平衡交付金等で、地方自治体に損害をかけないということを、自治庁ははつきり委員会で言明したということに解釈してよろしゆうございますか。
  111. 本多市郎

    ○本多国務大臣 ただいま次長から御説明申し上げました通り、現在の見通しといたしましては、大体起債の償還の残りがあるにしても、その建物を処分することによつて損害をかける心配はなかろう、こう考えておりますので、特に財源の措置は考えておりませんが、具体的にそういう問題が起きましたときには、御趣旨に従つて善処したいと思います
  112. 門司亮

    門司委員 御趣旨に従つて善処したいという言葉でありますが、ここで言明できないとするならば、それらの通達を地方に出すべきだと思う。そして地方で安心してこれの処分ができるように、財産の移譲その他ができるように処置をすることが当然だと私は考えておる。従いまして、自治庁におきましては、それらの問題で地方の団体に迷惑をかけないという処置を十分とつていただきたいと考えるものであります。  それから最後にさつき聞きました数字の問題でありますが、一体どれくらいの数字が今日自治体として支払われておるか。いわゆる平衡交付金を受けない都市の警察費の総額であります。
  113. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 平衡交付金を受けている団体と受けない団体と、大体金額的には半々じやなかろうかというふうに考えておる次第であります。金額的には、総体の決算額は出しておるのですが、交付団体と不交付団体とには、その決算は分離していないわけであります。ただ基準財政需要額を計算いたします場合には、交付団体と不交付団体とわけておりまして、交付団体は全体の四七%、不交付団体が全体の五三%であります。そして決算見込額の総額が、二十六年度では二百四十九億八千五百万円になつております。
  114. 門司亮

    門司委員 そうすると、今二百四十何億と言つておりましたが、それだけの負担は、地方の財政の中から平衡交付金によらざるものとして負担しておるわけですね。それはその数字ですか。
  115. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 私が今申し上げました数字は、平衡交付金を受ける団体と受けない団体を合せて、警察費の決算額がその通りになつておるということを申し上げたわけであります。平衡交付金を受けない団体の部分は、基準財政需要額で計算して参ると、五三%に当つておるわけであります。決算額によりますと、そのような分離した計算がございませんので、それから大体推定していただきたいというふうに考えるわけであります。
  116. 門司亮

    門司委員 そうすると今の数字は、地方財政平衡交付金の算定の基礎を中心とした数字であつて、実際に警察費として支出した額じやないのです。
  117. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 私が申し上げました数字は、二十六年度の決算見込額であります。平衡交付金とは別な金額であります。
  118. 門司亮

    門司委員 そういたしますと二十八年度において、今の二百数十億に、さらに物価のスライドしただけの分をこれにかけて行かなければならないと思いますが、大体三割ないし四割をこれにかけて行くということになつて参りますと、大体三百四、五十億のものが、二十八年度では地方の負担になるのじやないかと考えられます。そのくらいに考えてよろしゆうございますか。
  119. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 二十六年度の数字は、自治体警察の整備の面から、庁舎費でありますとか、あるいは装備の充実でありますとかいうようなことから、割合実質的な経費がよけいにかかつておると思います。大体基準財政需要額というものは、決算見込額の八割くらいに当つておるのじやないかというようにごく大まかな見当をつけておるわけでありますが、二十八年度の基準財政需要額は二百二十五億程度になると思います。
  120. 門司亮

    門司委員 そうしますと、これを八割といたしますと、それに約五十億ばかりのものを加えた二百六、七十億というものを本年度の警察費と見てさしつかえありませんか。
  121. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 さようでございます。
  122. 門司亮

    門司委員 そういたしますと二百七十億くらいのものが、現在自治警察が負担しております。警察費であつて、これが自分の主管しない府県警察、あるいは国家公務員に給与として支払われるということになつて参りますと、この分だけはやはり地方公共団体にとりましては、治安の確保であるからこれを地方に負担させることは当然だというのではなくして、もしこの法案が通りますれば、十月一日以降の費用というものは、何らかの形で地方自治体、市町村にこれを交付すべきではないだろうかというふうに考えられますが、この点について、自治庁は特別平衡交付金か何かでこれを支弁する考えはございませんか。
  123. 本多市郎

    ○本多国務大臣 私がしばしばお答えしております通り、府県警察に性格がかわりましても、自治警察当時と同じ状態で維持されるわけでありますから、経費についても大差はないわけでございます。それに現状通りの財政措置が講じてありますので、その財政措置をもつてまかなつてもらわなければならないと考えております。
  124. 門司亮

    門司委員 最後に一点聞いておきますが、そういう処置は地方財政法の第十二条、第十三条に明らかに抵触すると思うのでありますが、法律をもつてこしらえば、こういう抵触したものもさしつかえないというよう大臣はお考えになつておりますか。
  125. 本多市郎

    ○本多国務大臣 この点につきましては、確かに今まで自治警察として自主的に負担して来たものが、今回の改正法で、二十八年度の暫定措置によりまして、責任負担、義務負担に性格がかわるわけでございます。かわりますけれども、現状に対応する財政措置が講じてありますので、これは地方財政法には反しないと考えております。国が新たなる負担を課した場合には、必要な財政措置を講じなければならないというのが財政法の趣旨であると思いますが、その必要なる財政措置が講じてあるのでございますから、これで運営していただかなければならぬと思つております。
  126. 門司亮

    門司委員 必要な財政措置が講じてあると言われますが、先ほどからずつと申しておりますように、これは必要なる財政措置ではないと私は考えております。地方の財政負担の中で、装備の完備であるとかいうようなものは自治的に出しておると私は考えております。大臣は、何でもかでも中央集権でやればよいのだ、地方財政に対して国が与えておるのだから、あれは国の財源であるというようにお考えになつておると思います。この点は私どもと非常に意見が違つておりましてわれわれといたしましては、少くとも国がそういうような措置をとりました以上は、国において財政処置を講ずべきであると思う。しかも私の今聞きたいと思いますことは、これは年度半ばではございません。この前の警察法改正いたしまして、警察法附則の第八条でそういう措置を講じておりますが、しかしこの場合におきましては年度半ばである。しかもその八条には、御承知のよう地方財政の十分完備するまで、これを従来通りにやるということになつておる。ところが今度は現在予算の編成期であります。予算の編成期には当然私は今年度の予算の中に、これが入れられなければならないと思う。この点は時期的に非常に問題が残されると思います。この前の改正法附則の八条に書いてありますのは、さつき申しましたように年度半ばでありまして、そういう財政措置が講ぜられておらなかつたと存じます。同時に地方自治体の方は財政改革が行われておりませんで、財源措置はまつたく講じてなかつた。それで国から出すものは国が出す、都道府県で出すものは都道府県で今まで通り支払えということは、一応あてはまつているかもしれませんが、警察法改正では、予算編成期にあたつております。従つて当然財政措置というものは、国が負担すべき建前から予算の方で私はとるべきだと思う。予算の方でとらないで、そうして治安の関係だから、地方がこれを負担すべきである、義務的に出せばいいのだ、自主的から義務的にかわつただけだと言われますが、私はこれでは国の義務というものを怠つておると思いますが、自治長官としてその点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  127. 本多市郎

    ○本多国務大臣 警察自治体警察から府県警察にかわるわけでありまして、その暫定措置といたしましては、こうした現状をなるべく動かさない状態のもとに切りかわつて行くことが適当であるとも考えられますので、これで円滑に移行できるものであると考えております。
  128. 門司亮

    門司委員 そんなことで円滑に行かない。だんだん悪くなる。やはり予算編成期でありますから、予算の中にこれを繰入れて、そうしてさつき申しましたようないろいろないざこざのないように財政措置を当然国は講ずべきだと思う。この点について本多大臣は、閣僚の一人としてはどうも今の措置はいけなかつたということは言えないかもしれませんが、自治庁の長官としては私はあまりいい措置ではないと考える。従つて当然これは予算の措置をすべきであつたというふうに、大臣は内心お考えになつていると思いますが、その点率直に話していただきたい。自治庁の長官として、そういう制度でよいのだというような無責任なことが言えるかどうか。
  129. 本多市郎

    ○本多国務大臣 政府の方針に反した御答弁を求められることは御無理だと思います。さいぜんから申し上げております通り、これは切りかえの暫定措置といたしまして、これでやつて行けると考えております。
  130. 門司亮

    門司委員 どこまで話をしましても並行線をたどつて行くと思いますが、もう一つ聞いておきたいと思いますのは、先ほどから私が懸念いたしておりますように、地方議会がこれを十分了承することができないで、そうして予算を削るといつたような場合も一応生じないとも限らない。そういう場合におきましては非常に地方に迷惑をかける。このことはなぜ私はそういう心配をするかといいますと、自治体警察を持つておりまする地方自治体は、みんなこの法案に反対であります。みずから賛成した案でございまするならば、大臣の言うことも一応聞くかもしれませんが、しかし現状は大体自治体警察は全部これに反対の意思表示をしておるということはご存じの通りであります。府県知事も反対の意思表示をいたしておりますし、全国公安委員会の連合会もこれに反対の意思表示をいたしております。従つて全部のこれに携わつております機関が反対をいたしておりまするときに、その反対を押し切つて、そうして希望的観測のもとに、大体これでやつてくれるであろうということでは、私は治安の確保は完全にできないと考える。従つて大臣といたしましては、そういうことでなくしてひとつ自治体に迷惑をかけないようにするということ自体を、予算の中に私は織り込むべきであつたということぐらいは答弁が願えると思いますが、その点の答弁はやはりできませんか。
  131. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは何回答えても同じことですが、二十八年度の暫定措置はこれで完備していると考えておりますので、これで支障なく運営できると思つております。
  132. 門司亮

    門司委員 これはくどくなりますからそう長く聞きません。私の心配しておりますのは、こういうことが治安の上に非常に大きな影響を及ぼすであろうということが一つで、もう一つは制度であります。大臣としては、義務教育費の国庫負担に対しては、国が給与を支給するから、義務教育に携わつている者の身分は国家公務員にするということで、義務教育に携わつておる職員に対する今度の法律案が出ております。ところが警察法の場合は、国家公務員に対しても、あるいは同じ地方公務員であつても、自分の自治体から離れた諸君に給与を支払うことになつておりまして、この間には非常に大きな矛盾があると思いますが、この矛盾に対しては大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  133. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これはこうした制度がよいか悪いかということを論ずれば、意見の相違であると存じますが、警察国家性という点から考えてとられた制度でありまして、この制度の性質からさようなことがとられたのでありまして、これによつて初めて中央地方との連繋ができ、しかも府県の機関としての自治体警察国家的な性格をもつて運営することができ、これで治安というものが一段と強化されると考えております。
  134. 門司亮

    門司委員 私は今そういうことを聞いておるのではありません。二つの相異なつた処置が現在の政府でとられているということであります。小学校、中学校の先生に対しては、これは十分ではありませんが、とにかく定員定額であろうと何であろうと、国が支払うから身分は全部国家公務員にしなければならないというのが、あの法律の建前であります。今度の場合は、国家公務員に対しても地方自治体から給与を支払つておりますが、これが昭和二十八年度一年間現状のままということになつて参りますと、警視以上の者にはやはり地方の費用で払われると思う。そうすると国家公務員に対して地方が給与を支払うことになり、同時に同じ地方公務員でありましても、市町村の公務員であつた者で県の公務員になつた者に対して市町村で給与を支払うことになる。給与を支払つて参りますその主体は非常にかわつて行くにもかかわらず、身分がそれに相付随しないという関係であります。片方では、おれの方で給与を払うから全部これを国家公務員にしてしまうのだということで取上げておいて、片方では、身分はかわるが財政負担はお前の方でやれということでは、政府のやり方としてはかなり矛盾があると考えております。この点に対して、大臣は矛盾がないとお考えになつておりますか。     〔鈴木(直)委員長代理退席、委員   長着席〕
  135. 本多市郎

    ○本多国務大臣 一部地方費負担の国家公務員というものを取入れることになると思いますが、これで初めて今回の新しい警察制度の性格に適合する調和のとれた制度になると考えておりますので、矛盾を生ずることはないと思います。
  136. 門司亮

    門司委員 実におかしい答弁を聞くものです。国家公務員の給与を地方から払つて国家地方とが均衡がとれるなんていうばかばかしいことは考えられません。任免権を持たざる者が給与を支払つてどうなりますか。地方自治体は、自分の血税で地方公務員というものを置いているのである。その地方公務員は、憲法にも住民がこれを罷免することができると書いている。また地方公務員法あるいは地方自治法の中にも、地方の公務員に対しては住民は罷免権を持つている。この罷免権を持つているということは、給与を支給しておるからということが原則であると考えている。にもかかわらず給与は支給するが罷免権は他人が持つているというようなことが調和がとれてよいのだとは考えられない。これは明らかに地方自治権に対する大きな侵害であり、地方住民に対する一つの権利の侵害だと考えている。この点に対しては大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  137. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これも同じお答えをするよりほかはないのでございますが、警察行政の性格から来るものと思います。もちろん国家公務員地方費負担ということは例外でございます。かくのごとき例外を設くることが、今回の警察制度といたしましては調和のとれたいい制度になるのである。かよう考えております。これは、義務教育教職員については全額国庫負担にしたから、全額国家公務員にするという制度をとつておりますが義務教育行政と警察制度の性格の相違から来るわけでございます。
  138. 門司亮

    門司委員 私は警察制度と教育制度の性格の相違ということには承服できません。どんなに性格が違いましても、国の基本の方針というものを絶えずはつきり立てておいてもらいたい。地方国家公務員に対して給料を支払つてもいいのだというようなことは、一体どこの法律にはつきり書いてありますか。警察法でただそういうものをこしらえさえすれば、そういうことがやれるのだ、要するに国が法律をこしらえさえすれば、どんなことでもやれるのだというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  139. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは法理論になりますと私は専門ではありませんけれども、特にこれを禁止した法律がない限りできないことではないのであります。従来も地方費負担の国家公務員というのはあつたのでございまして、そういうのは例外であるとは存じますけれども、その例外的なものを設けることが、今度の警察制度改正につきましては、適当であるという考えでございます。
  140. 門司亮

    門司委員 従来と言われますけれども、旧憲法のもとにおける日本自治体あり方というものは、大臣も御承知の通りでありまして、これは明らかな中央集権でありまして、そうしてそのころの自治体の長というものは単に名誉職で、その事務を執行するのが自治体だということが、ちやんと法律に書いてあつたのであります。そういう時期におきましては、あるいは大臣ようなことが言えるかと思いますけれども現行憲法のもとにおいては私はそういう矛盾したことはやれないはずだと考えておる。そういうことを禁じた法律がないから、法律さえこしらえればいいのだということになりますと、少し私は暴言だと思います。大臣はやはりそれでもそれでいいというふうに、もう一度答弁できますか。私は暴言だと思いますが、お取消しになつておいた方がいいのじやないかと思います。
  141. 本多市郎

    ○本多国務大臣 抵触する法律がなければ、新たな法律で何してもよろしい、そういうふうには考えておりません。それにはおのずから国家的にどうする方がいいかという理想がなければならぬと思います。この警察制度の性格から考えまして、地方自治制の性格も持たせ、さらに国家で一元的に機動力を発揮することができると申しますか、連絡もとれ、有機的関係も密になる機構をつくろうという場合、かくすることが国家のためであるという見地から、こういう制度法律できめることはさしつかえがないと思つております。
  142. 門司亮

    門司委員 私はもう大臣答弁には承服ができないのでありますが、大臣にもう一つお願いをしておきたいと思いますが、この地方財政法のここに少くとも国の計画のもとに行われた制度は、地方に負担をかけてはならないということが書いてあります。これは従来のそうした行き方を改めて、新しい制度のもとに義務と負担の関係を明確にする制度が、やはり民主的な行き方ではないかと思う。お前の方で財政の負担はせよ、おれの方で任免権は持つているんだというような行き方は、たとい今度の便法でありましても、私はこれは行き過ぎだと思う。従つて国家公務員でありまする者に対しては、国がこれの財政処置を講ずることが私は当然だと考える。従つてこの点をもう一応、私の考え違いであるのか、大臣考え違いであるのか、はつきりしておいてもらいたい。
  143. 本多市郎

    ○本多国務大臣 警視以上の者につきまして地方費負担となりますのは、これは二十八年度限りの暫定処置でございます。制度にはもちろんそれぞれ理論的な裏づけが必要であると存じます。今度の警察制度につきまして、警察行政の性格をしばしば申し上げております通り、この性格から考えてかようなことも考えられる、ましてや二十八年度の暫定処置であるということで御了承願いたいと存じます。
  144. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、暫定処置であるという御意見でございますなら、これはいずれこの方面を担当いたしておりまする人事院総裁の淺井さんにでも来ていただいて、暫定処置でもできるのかどうかということをよく確かめたいと思います。それからもう一つ聞いておきたいと思いますことは、警視以上の国家公務員になりまするものの給与は、一体どのくらいであるかということを、一応概算しておいてもらいたいと思います。これはこの次の委員会でもよろしゆうございますから、この概算をお願いしたい。  それから委員長に対しましては、先ほどから私、本多さんにいくら聞いてもわからぬのでありまして、便法ではございましようが、国家公務員に対して地方の公共団体が給与を支払うということが一体できるのかどうか、この点を人事院の淺井さんに一応聞いてみたいと思いまするので、この次の会議には人事院総裁の出席をひとつ委員長から促しておいてもらいたいと思います。
  145. 青柳一郎

    青柳委員長 承知いたしました。他に御発言はありませんか、御質疑はありませんか。
  146. 横路節雄

    ○横路委員 議事進行に関して。実はなお続行すべき質問は多々あるのでございますけれども、本会議がただいま定足数が欠けて——先ほどの議運の理事会でも、本会議のきようの採決にあたつては、各委員会は全部休んで議場に入るようにきまつておりますので、質問はありますが、ひとつ明日に続行してもらいたいと思います。
  147. 青柳一郎

    青柳委員長 本会議のある間、委員会を開催してはならぬというような通告は、私はまだ受けておりません。従いましてでき得る限り続行いたしたいと思いますが、いかがでしようか。
  148. 赤松勇

    ○赤松委員 議事進行について。もし委員長がそういうことを言うならば非常に角が立つて来る。実はぼくは今本会議場で議運の連中に、きよう地方行政委員会で大いに勉強したいから、これから地方行政委会員に行くからと言つたら、さつき議運の理事会で、議長が選挙法その他の採決をやるというから、野党の方で定足を欠いておつたら採決をやらないぞと言つたもんだから、議長は、それならば採決のときに委員会を休んで、人を集めるということを言つておるんだそうだ。しかし休まなくてもいいんなら、それで本会議の方を休んでもらうんだから、どつちでもいいんです。われわれは別にそんな引延ばしをするとかいうのではなくて……。
  149. 青柳一郎

    青柳委員長 わかりました。休憩いたします。本会議でやる採決が済みましたら、また御参集願いまして、再開いたします。     午後三時五十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた〕