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1952-12-12 第15回国会 衆議院 地方行政委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十二日(金曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 青柳 一郎君    理事 鈴木 直人君 理事 雪澤千代治君    理事 床次 徳二君 理事 門司  亮君    理事 横路 節雄君       阿部 千一君    生田 和平君       加藤 精三君    河原田稼吉君       黒金 泰美君    佐藤善一郎君       中井 一夫君    中村 幸八君       前尾繁三郎君    牧野 良三君       中野 四郎君    森田重次郎君       山本 粂吉君    大石ヨシエ君       平岡忠次郎君    西村 力弥君       川村 継義君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君  委員外出席者         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 十二月十日  特別賞じゆつ支給条例に対する財政的措置に関  する請願植原悦二郎紹介)(第五二八号)  世知原町自治体警察国家地方警察移管の請  願(綱島正興紹介)(第五三〇号)  小浜町自治体警察国家地方警察移管請願  (雪澤千代治紹介)(第五三一号)  佐々町自治体警察国家地方警察移管請願  (雪澤千代治紹介)(第五三二号)  地方税法の一部改正に関する請願武藤運十郎  君紹介)(第五六三号)  同(小川平二紹介)(第五九三号)  公職選挙法の一部改正に関する請願鈴木善幸  君紹介)(第五九二号) 同月十一日  地方税法の一部改正に関する請願小平久雄君  紹介)(第七〇七号)  地方起債わく拡大に関する請願白石正明君  紹介)(第七〇八号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  町村警察維持に関する責任転移の時期の特例  に関する法律案栗山長次郎君外三十四名提出、  衆法第七号)     ―――――――――――――
  2. 青柳一郎

    青柳委員長 これより会議を開きます。  まず町村警察維持に関する責任転移の時期の特例に関する法律案を議題といたします。本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより本案に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。床次君。
  3. 床次徳二

    床次委員 本案につきまして二、三質疑をいたしたいと思うのでありまするが、元来、自治体警察に対しまして、必要なる経費国家において平衡交付金として計上していないというところに、自治体警察維持の困難な大きな理由があると思います。元来弱小自治体警察は、弱小なるがゆえに、能率が上らないために、整理統合するということも、実際警察力強化の上からやむを得ないところがあるのでありますが、自治体警察維持しようという希望を持つておるにかかわらず、財政的に市町村が窮迫するというゆえをもちまして自治体警察廃止するということは、はなはだ遺憾に思うのでございますが、将来自治体警察に対して十分な経費政府が認めるかどうか。この方針をこの機会に承りたいのです。もしも自治体警察というものを、いつまでも財政的に窮迫に陥れておつたならば、財政面からして、せつかく自治体警察というものができたにかかわらず、この民主的な警察制度は破壊せられることを懸念いたしておるのであります。前会におきましてもこの点は問題になつたのでありますが、この点政府の将来に対する所信を明らかにしていただきたいと思うのであります。大臣が来られてから重ねてお尋ねしたいと思いますが、一応事務当局から承りたい。
  4. 谷口寛

    谷口政府委員 お答え申し上げます。ただいま御意見のありました通り、現在の警察制度のもとにおいて国家地方警察自治体警察の二本建の建前が現存いたしておりまする以上、その自治体につきましては、その自治体が完全なる機能を果し得まするように、財政面その他あらゆる面において適切なる援助助成をなすべきことは、これは必要なことと考えるのであります。財政上の問題につきましては、全体の財政計画等の問題もありまして、必ずしも十二分のものとはなつていないことは、われわれも承知いたすのでありますが、一般的基準による交付金以外に、必要のありまする支出につきましては、特別交付金を支出するとか、あるいはさらに必要なる経費につきましては、別途国庫補助の方途を講ずるとかいうような面につきまして、われわれ、警察当局といたしましても、財政当局と十二分に連絡いたしまして、今後とも尽力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 床次徳二

    床次委員 ただいまお答えがありましたが、今日自治警察に対する基準財政需要額、これと国警において実際支出いたしておりまするところの職員に対する経費との間に相当の差額がある。前年度におきまして少くとも五、六万円の差があると思いますが、現在幾らの差があるのでありますか。この点お答え願いたいのであります。
  6. 柴田達夫

    柴田説明員 二十七年度予算について申し上げます。国警の一人当り予算の単価を申し上げますと、これは府県本部以下、つまり中央の組織は別といたしまして、自治体警察比較し得るうな形においての府県本部以下の予算額を申し上げますと、一人当り二十八万八千二百二十九円ということに、これは本年度予算でございますが、なつております。これを自治庁におかれまして平衡交付金測定をなさいます参考にせられます場合におきまして、自治体警察に当てはめて計算一をされておるのであります。つまり国警予算自治体警察に当てはめて計算をしました額が、警察官一人当り二十四万七千二十四円ということになつております。本年度から平衡交付金の方の測定単位は、御承知通り人口単位といたしておりまして、人口十万の市町村単位といたしまして、人口一人当りが御承知通りに二百四十一円六十八銭というものが単位費用なつておりますので、このままではただちに比較ができないわけでございますが、かりに警察費基準財政需要額を、現在の自治体警察警察吏員で割りますと、二十七年度は二十二万一千四円十三円ということになつております。従いまして一応この表面におきましては二十四万と二十二万の比較ということで見ることが、一番実際に近いのではなかろうかと存ずる次第でございます。
  7. 床次徳二

    床次委員 ただいまの御答弁にもありましたように、相当開きがあると思うのであります。この分は自治団体の負担であり、なお実際の自治体警察活動状況を見ますと、さらにそれ以上の経費を出しておるのでありまして、これに対しましては当然政府におきましては考慮しなければならぬと思うのであります。この点に対しましては、将来におきまして自治体警察というものを存続せしむる以上、この自治体警察における活動におきまして支障のないだけの経費を確保することに対して、政府所信あとでひとつ述べていただきたいと思うのであります。  なおこの機会に重ねて関連してお伺いしたいと思うのでありますが、ただいま次長の御答弁では、特別交付金あるいは国庫補助も考慮したいという御答弁でありましたが、これは当然考慮すべきであると思うのであります。最近各地に国連軍の駐屯の状態も出ておるのでありますが、かかる駐在費が、概して自治体警察のところに対しまして、自治体警察の所要の経費と認められないところの、当然国において負担すべき経費相当かかつておると認められるのでありまして、これに対しましては特別な平衡交付金の形において、別個わくを増加して与えるのが適当じやないかと思うのであります。あるいは国庫補助金において支出することも当然必要となつて来ておるのであります。なお反面におきまして、大都市におきましては最近の治安の状況から見まして、単なる自治体警察の負担すべき事件でないものが、多々続出しておるのでありまして、これがために自治団体におきましては相当多額の警察費を現に使つております。これを放任しておきまして自治体警察制度の十分なる運営を望むことは困難である。自治庁は考慮したいというお話がありましたが、この点は当局として、政府として相当はつきりとした態度で御答弁をいただきたい。法務大臣が見えましたならば、この点をはつきりとしていただきたいと思います。  次に伺いたい問題といたしましては、今回提案せられました内容において見ますると、十月の末までに申請いたしましたものが五十七箇町村、さらにその後におきまして申請して参りましたものがここに五箇町村あるのであります。本来法律建前からいいますると、十月末までに議決を要すべきものでありまするが、何ゆえ十月一日以後においてかかるものが出て参つたか。私どもは本来法律の条文から見まして、十一月以後におきましてかかる議決の行われることは予想できない。もしも町村事務当局あるいは町村民というものが警察権威に対して十分なる了解を持つておりましたならば、当然これは法律において認められましたところの十月末までにおいて議決を行うべきだ、かように考えておるのであります。しかるにもかかわらず十月一日以後におきまして、かかる町村が出て参るということは、これは町村事務当局の手落ちもあろうかと思いまするが、その間にまことに私ども割切れないものがあるのであります。この点に関しまして、私は国警は大体こういう問題に関して、少し深入りしているのではないかという疑念も持つものでありますが、すでに前年の際におきましても、当然所定されたところの期日以後におきまして議決をして参りました。これは事実上やむを得ないとしまして、手続上においては、はなはだ感心はいたしませんでしたけれども、実情に即して地方要望と見ましてその実現を見た例もあるのでありまするが、本年引続いてさらに五箇町村もこういう町村が出て来るということは、私ははなはだ適当でないと思うのであります。この点に関しまして、どういうわけでもつてこういう期日以後において議決して参つたか。これに対して国警としてはどういう態度をとるかということについて、御説明ができるならば御説明を願いたいと思います。
  8. 谷口寛

    谷口政府委員 お答え申し上げます。ただいま御意見に出ました通り、現行の警察法によりますると、町村警察がその意思において廃止を決定いたしまする場合に、毎年十月三十一日までに廃止を決定いたしたものは、翌年の四月一日から国警編入せられるということになつておりますることは今の御説の通りであります。ただこれは申すまでもございませんが、十月末までに廃止意思を決定すれば翌年四月一日から国警に入るということが規定せられておるにすぎませんので、町村警察廃止する意思決定を十月末までにしなければならないという意味ではございませんことは申すまでもないのであります。従いまして町村が自警を廃止いたしまする意思決定につきましては、別に時期の制限はございません。ただ十月末までに廃止を決定すれば、翌年の四月一日から国警になるということがきまつておりまするようなものでありまするから、個々町村事情によりましては十月三十一日以後に廃止の御意思を決定する場合もあろうかと存ずるのであります。ただいま御指摘になりました五箇町村廃止個々の書については、われわれといたしましては特別につまびらかにいたしていないのでございまするが、二、三聞きましたところによりますと、たとえば琴平町のごときにおきましては十月三十一日までに、一応町村廃止意思を決定しようとする議案が町村議会に出まして、それが全然可否同数で議長の決するところになつて、その結果一応否決をせられた。それで住民請求が出て参つて十月三十一日には間に合わなかつたというような事情も聞いておるのであります。その他個々事情につきましてはつまびらかにいたしませんが、今のような趣旨から申しまして、十月三十一日以後に廃止意思が決定する場合もあろうか、かように考えるのでございます。  なおそれに関連しての国警深入り云々というおしかりもいただいたのでございまするが、この点は申すまでもなく町村の自由なる意思において決定するものでありまして、われわれといたしましてはその点について何らの関与もいたしていないことを、私からはつきり申し上げておきたいと思います。
  9. 床次徳二

    床次委員 ただいま次長からの御答弁がありましたが、規定にもありまするごとく、いつ議決してもいいのでありまするが、期日以後において議決いたしましたならば、実施の時期は非常にずれるということは明らかであります。従つてここに五箇村ばかり出ておりまするが、これが相当先において実施することを予想して決議しているかどうか。この点に関しましては私ども多少疑いなきを得ない。ある程度まで特例が開かれるのではないかということを予想して、こういうことをやつたんじやないか。実は前会われわれそういうふうな疑いを持ちましたところの該当の一箇村もあつたのでありまするが、重ねてかかる問題が起るということははなはだ適当でない。そのときにおきましても当委員会において非常にこれは議論になつた。法律に対する取扱いといたしましてやかましく言うならば、法律の精神に対して法律権威を軽んずるものであるということも、私ども考えておつたのであります。再び同じようなケースが繰返されるということは、これはある意味においてはなはだ遺憾な点であると思うのであります。町村長といえども警察法規定というものは読めばたいがいわかるので、この警察法規定せられましたものに対しまして、こういう議決をして参つたということは、事務の進行が遅れたためにやむを得ないものもあるかもしれませんが、何となしにその点は釈然としないものがあるように思うのです。私はかかることは警察法の運営上すこぶる適当でないと思う。警察にいたしましても警察の構成をと申しまするか、行政権に対しまして、警察というものがまつたく別個の立場にあるということを確立いたしまして、こういう問題を扱いたい、現在のような事件がここに五件出ておりまするが、これはいずれの原因か知りません。国警が全然関知しないというお言葉がありまするが、私はやはりこういう事務に対しましては、十分かかることの起らないように、ある程度まで国警自体としてもわかる問題だと思うのです。もつと適切な連絡もできたんじやないかということを感じまして、この点は遺憾の意を表するものであります。  次にお尋ねいたしたい問題は、今回の補正予算におきましては、昨年度編入の決議になりましたところの二十五箇所の自治体警察編入に関する必要なる経費として、一億二千八十六万円の補正予算が計上せられておるのであります。しかるに今回新たに五十有余、六十に近いところの警察国警編入いたしました場合に、さらに補正予算を必要とするのではないかと思うのでありまするが、あるいは予算に残があるという問題になるかと思うのでありますが、予算に残があれば補正予算は要しないじやないかということも考えられるのでありまして、この点は予算の処置上はなはだおかしいということを感ずるのであります。大体今回の移管によつて所要する経費というものが、幾らであるかということをお尋ねすると同時に、この予算上の措置に対して、提案者並びに政府といたしましては、いかように取扱われるお考えであるか、その点を明らかにしておきたいと思います。
  10. 谷口寛

    谷口政府委員 お答え申し上げます。御指摘通り前回特例法によりまして、六月一日付で二十四箇町村国警編入せられました。それに関連いたしまする予算として補正予算に約一億二千万円が計上せられておりますることは御指摘通りであります。今回の特例法案における関係町村が六十二箇町村職員数といたしまして千二百余名を数えておるが、これに関連する予算措置はどう考えておるかという意味の御質問であつたと考えるのでございます。その点につきましては今回の特例法が御審議をいただきまする結果、もしこれが成立をいたしまして、繰上げて来年の一月一日から国警編入せられるという場合の予算概算の見積りは、われわれの事務的な計算といたしましてはおおよそ五千万円という見当をつけておるのであります。この点は繰上げに関連する経費でございまするがゆえに、ただちに予算上の措置を講じませんで、来年の四月から正式の当初予算として編成をいたし、その間の三箇月につきましては、現在の国警予算の経理のやりくりにおいて、一応これをまかなつて行ける事務的な見通しをつけておる次第でございます。そういう余裕があるのはけしからぬじやないかという御意見も必ず出て参ろうかと思いまするけれども、この点につきましては御承知のように国警の現在の総人員が約六万五千人程度に相なつておりまするが、この六万有余名警察官運用をいたして行きまする場合において、われわれは極力努力をいたしまして、欠員のないように諸般の補充計画あるいは補充の基礎になる警察官採用募集訓練計画を実施いたしまして、でき得る限り欠員のないように努力はいたしておりますけれども、実際問題といたしまして、警察官欠員補充のために採用して教養いたしまする場合においては、六箇月の期間を要します。従つてこれらの採用計画につきましては、一応減粍補充見通し等も立てまして、予測に基いて募集をいたし、採用をいたし、六箇月の訓練配置につける、こういうことにならざるを得ないのでございまして、その間の運用上の若干の時間的ずれによりまして、やむを得ず約六万有余警察官といたしましては、平均いたしまして一%弱程度欠員が出て参つておることは、はなはだ遺憾に考えておるのでございまするが、それは今申し上げたような意味のやむを得ざる運用上の欠員であるのでございます。それが約一%と考えました場合において、六百人前後というものが出て参りますので、これを三箇月予算の財源に引充てまする場合においては、非常にへんな話でありますが、十分に余裕が出て参る、こういうふうな事情なつておりますので、先ほど申しました通り事務運用といたしましては補正予算を組まないで、つなぎをつけて行くことができる、かように考えておる次第でございます。
  11. 床次徳二

    床次委員 予算の問題につきましては、一応お答えがあつて事情は了といたしますが、しかしつじつまといたしましては、一方において補正予算を要求し、これだけの残があるということにつきましては、現在の人事の配置上やむを得ないこととは思うのでありますが、できるだけ早くこの欠員補充して行くというのが建前であろう。この建前だけは守るべきであろうと思つておる次第であります。しかしこれはこの程度にしておきますが、なおあと大臣からさらに伺いたいと思うのですが、過般警察制度に対する政府所信をお伺いしましたところ、理念といたしましては自治体警察国警との間の調整ということを取上げておられるのでありますが、いかようにしてこれを解決するかという解決の方針につきましては、民主的なかつ能率的なという方角については、その程度お答えがあつたのみでありまして、具体的な意見を伺うことができなかつたのであります。今回議員提案の形におきまして、自治体警察の弱小なるものが国警編入されることになるのでありますが、政府はかかる傾向をそのまま黙認しておいて、これでもつて警察法の将来に対する改正に当るつもりかどうか。あるいはかかる修正を行つて、漸次自治体警察を少くして、そうして問題を解決しようというようなことになりましたならば、これは警察法改正に対する正しい態度ではないと、私ども考えておるのであります。今回政府におきましては、あるいは事務当局におきまして、警察法改正に関しまして今日いかようなことを考えておられるか、事務当局の御意見を伺いたいと思います。いずれ大臣から政府としての所見をあらためて伺いたいと思うのでありますが、事務当局といたしましてどの程度のことを考えているか、この機会に伺いたいと思います。
  12. 谷口寛

    谷口政府委員 警察制度根本的な改革に関する事務当局意見は、どうかという御趣旨の御質問でございますが、この点は非常に根本的な大きな問題でございまして、政府で慎重に御研究をいただいておる問題と考えますので、われわれといたしましては現在の段階において事務的に考えておる要点を申し述べる時期ではないではないかというように思つておる次第でございまして、その点は御容赦をお願いいたしたいと考えるのでございます。ただ御質問の中にございました今回の特例のようなのを続けて、なしくずしで制度をだんだん国警にして行くんではないかというような御質疑の点につきましては、これは町村警察の自由なる意思において廃止意思を決定して、その決定しました町村警察について、地元要望等が結集いたしまして、時期の繰上げをするという特例法案が出たのにすぎませんので、この点はわれわれ政府側といたしましても、非常にその法案が通過いたしますことを希望いたしておるのでございます。その点と根本改正の問題とは、全然別個の問題として検討して参りたい、かように考える次第でございます。
  13. 床次徳二

    床次委員 根本改正の問題につきましては、いずれ大臣からお答えがあろうかと思いますが、現在当面の取扱われておりまする自治体警察、これが国家警察移管せらるる空気が地元において濃厚になりましたならば、もちろん警察官といたしましては、このまま自治体警察として勤務するということは、能率上にも適当ではないのではないか、職務の執行上にも悪い影響があるだろうと思います。従つてなるべく早く、これはこの方針従つて国警に入るということにつきましては、やむを得ないことと私ども思うのであります。しかしながら政府警察法に対する根本的な改正方針というものを明らかにせずして、現在の自治体警察が漸次国家警察に移されて行くという事実を見ました場合におきましては、自治体警察に勤務いたしまする他の一般職員は、早晩やはり国警に移されるのではないかという疑念を抱く者もないではない。だんだんそういう者か出て来るのではないか。この点は政村が根本方針を明らかにしないために起るところの大きな欠陥だと思う。現在の政府所信を明らかにしないために、いろいろ反面においてこういう現象か出て参りますると、世間に疑いを生ずる。なお新聞紙上等におきましても、政調案等におきまして、あるいはそれぞれの試案におきまして、漸次自治体警察国家警察編入されそうな意見がだんだん出ておるのでありまして、従つて自治体警察に勤務する職員は、相当精神的な影響を受けるのではないか。なお自治体警察に対する地方住民態度にも影響があるのだろうと思いますが、かかる悪い影響を生じないように、私どもは防止しなければならぬと思つておるのでありまするが、現状のごとく推移いたしましたならば、相当これは欠陥が出て来るのではないかということをおそれるのでありまして、この点に関して事務当局としていかようにお考えなつておりまするか、伺いたい。
  14. 谷口寛

    谷口政府委員 警察に従事いたしまする者といたしましては、それが国家警察に従事いたしまするわれわれで承りましても、また自治体警察警察業務に御奉公いたされまする自治体警察の諸君といたされましても、制度がいたずらに動揺するというような事態がありまするならば、はなはだ不安を覚えますることは御指摘通りでございまして、われわれ事務関係者といたしましては、制度につきましては相当明瞭な方針が樹立せられて、はつきりした目標を持ちたいと希望をいたしておる次第であります。その根本的な改革の問題につきましては、先ほど申し述べました通り、大きな国策でございまするから、政府方面においてお考えが固まりました場合においては、われわれ事務当局として、これに対して必要なる事務の役割を果して参りたいと考えまするが、われわれ自身が警察制度についていたずらに不安動揺の状態にあるということは、好ましくないという気持を持つておりますることは御指摘通りでございます。ただ今回のような特例が出て参りますることは、現行の落ちついた警察制度のもとにおいても、一応予定をしておる問題でございますので、この点を先ほども申し述べた通り、別の問題として研究御審議をいただきたいと、かように考えておる次第でございます。
  15. 門司亮

    ○門司委員 まず提案者にお聞きしたいと思いますことは、私がこういうことを聞きますことの前提として一応申し上げておかなければなりませんことは、第十三回国会にちようどこれと同じ法案が出て参つたのであります。そのときの状況は御存じのように、最初の考え方は、昨年の十月三十一日までに議決並びに諸般の手続が終えなければならないはずであつたものが、何かの手違いで、わずか一日、あるいは時間的にいえば数時間しか違つていないものが二つある。従つてこれだけは救済したらどうかという最初の意見があつたのでありますが、これらの問題は単なる事務上の手違いと見れば、救済策が講じられないでもないというようにわれわれは考えておつたのでございます。ところがこの問題が出て参りますると、そういうことが出て参りますと同時に、そこに次々にこういう問題がずつと出て参りまして、そうして最後には法案が国会に出るということが、おおよそ見当がついて、しかもその法案の内容が、いかなる状態かわかりませんが、地方に漏れて参りまして、本年の五月二十日くらいまでに議決したものは、大体年度内に廃止ができるのではないかというようなことが考えられます。こうなつて参りますると、この問題は出て来る前のものは別といたしまして、その後にそういうものを予算措置で、各町村警察廃止の決議をしたのがあるのであります。  さらに、その次に出て参りましたもう一つの大きな問題は、今日の地方自治法の建前からいいますると、当然市になつた場合は一つの条件として、自治体警察を持たなければならないようになつておるにもかかわらず、町のときに自治体警察を返上したものが、市になつてもなお自治体警察維持しなくてもいいという考え方が出て参る。そうしなければ、現在町でごく最近のうちに市になるというような様相を持つておるところでは議決ができませんので、そういうことが考えられて、第十三回国会においては無理押しにこの法案は通つております。これは明らかに自治制度に対する一つの大きな破壊行為であると私は思います。少くとも自治法の建前の上において市の資格条件というか、そういうことが規定されておるにもかかわらず、警察法においてそれを破ろうということである。私は少くともこういうことはなさるべきではないと考えておりましたが、時の多数を頼んだ与党は、これを無理に通しております。こういういきさつを持つておる警察法である。そうして今回また突如としてそれが現われて来ておる。そしてこの廃止の年月を調べてみますと、その後における廃止を決議しておる。五月二十日以降の決議であります。当然町村におきましてはこの決議をいたしまする場合においては、町村長説明は、おそらく来年四月一日からこれを廃止するということが、その説明の中に必ず私は加えられておると思う。おそらく十五国会が始まつてこういう法案を出して、そして来年の一月一日からこれを廃止することになるから、今のうちに決議をしておこうというような提案者説明は、私は各町村にはなかつたと思う。そう考えて参りますると、町村は必ず来年の四月の一日から、これは廃止されるものであるという是認のもとにこれを議決されたものであると断定しても、決してさしつかえはないと私は思う。のみならず警察法に設けました一つの原因は、明らかに年度を越えなければ結局予算の関係でそういうことが不可能である。従つて予算とにらみ合せまするならば、当然十月三十一日に議決して五箇月の余裕を置いて、そうして国家予算の編成が大体十二月の初旬に通常国会が召集されますならば、それ以前における国家予算を編成する場合に、十一月以降にこれが国家予算に組まれるような十分な事務上の処置の上から考えられた、きわめて妥当な案と私ども考えております。従つてこれが四月一日ということに現在の法律はでき上つておるのであります。どこから見て参りましても、われわれそういうことが如実に考えられるのでございますが、提案者においてこの議決された六十二の町村における自治体警察責任委譲に関する当時の議会のおそらく町村長の提案だろうと思いますが、町村長がそういう提案をした事実が、私の言うようなことであるかどうかということを、まず最初に私は提案者に聞いておきたい、こういうように考えております。その点御承知なつておりますか。
  16. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 ごもつともな御質問でございまして、傾聴いたしたのでありますが、実はこの法律を立案するに至りました動機は、この国会におきまして二十八の請願がそれぞれの紹介議員を経まして提出されておりました。この請願を見ますと、もうすでに町村としては自治体警察廃止して、そうしてこれを国家に転移したいという意思決定をしておるのであります。私一一知りませんが、その際におきましては警察法を十分検討して意思決定をすれば、来年の四月一日から国家警察に移行されるものであるということを承知の上で、決定されたものであろうと考えております。そういうようでなくして、ただ漫然とこういうことが決定されるはずは警察法上から見てありませんから、おそらく来年四月一日からやりたい、こういうふうに考えて、その上において国民投票を行われたのであろうと思うのであります。しかしながらその後におきましてこの請願を見ますと、そうはなつておりますが、前の国会等の例を聞いてみて、なるたけ早くやる、結婚式はもう終つたけれども、同居はまだされない、もう少し早く同居できないものかというようなものでありますから、この請願が行われたのではないか、こういうふうに考えまして、その国民の意思をわれわれがなるたけ尊重することによつて予算もさしつかえないし、また制度においてもさしつかえないというようなことであるならば、前例もあることであるからして、この法律を出した方が、全般的にいいじやないかというきわめてまじめな考え方から、実はこれを取上げた次第であつたのであります。その経過につきましては、実は提案者の一人として、多くの人は御存じだと思いますが、私自身は前に参議院の地方行政委員をしておりましたが、この十三国会におきましては、内閣委員会の方に移つておりました関係上、この衆議院におけるいきさつにつきましては承知いたしませんでした。そういうことで提案いたしましたところが、門司さんその他の方面から、実はこれは十三国会において非常に問題になつたものである。これにおいては相当政略的なこともあつた。いわゆるすべり込みといいますか、法案ができるということを聞いて、あるいは指導者が早く合併しろ、そうすれば、今衆議院において、あるいは参議院を通過せんとしておるところの法律の中にひつかかつて、すぐ自治体警察国家警察に移行することができるのだから、早くやれというようなことを教えた向きもあつて、それが非常に混乱のうちに多数をもつて採決された事実があるということを実は聞きましたのは提案後でございます。そういうことからいたしまして、ただいま御質問になりましたことについて検討をいたしたわけであります。問題は五十七の十月三十日のものにつきましては、御意見はないようでありましたが、十月三十日以後本月の二十日までにおいて住民投票が行われんとするところの、この五つの町村につきましては、どうであつたかということも検討をいたしたのでありましたが、提案者といたしまして、一々詳しいことを具体的に調査するところの余裕は、実はございませんでした。そういうことから国警の方々にもお聞きしたりしますと、この第一に掲げてある琴平町のごときは、これは議決なつておらないで、請求になつている。これは一応、一票の差で廃止が否決されたそうです。今聞きます通り、議長採決で否決されたそうですが、そのうち町民が三分の一の多数の、何といいますか、署名をもつて議会に請求したような事情にあるようです。そういうことからして、琴平町につきましては、十月三十一日までに住民投票をやつてしまいたいという意図のもとに、議会等において進んでおつたのだけれども、今のような事情のために請求となりました関係からして、これは間に合わなかつた。そうして結局十二月十四日ということになつているということでありますから、おそらくこの点は十月三十一日ということを目標としてやつておつたということが想像できるのであります。その他の四つにつきましては、実はおそらく再来年の四月一日から移行されるという法律のもとにおいて進められたものでありますから、おそらくそういうつもりで、これは住民投票が行われるようになつているのではないかと考える次第であります。そこで、しからばこの五つにつきましては、この町村がはたして一月一日から国警に転移してもらいたいという強い意思を持つておるか、あるいは再来年の四月一日でよろしいという意思を持つておるかということにつきましては、実は私今調査をしておりません。ただ提案をしているところの法律の中には、この町村のうちで、もしこの一月一日からやつてもらいたいという意思があるならば、この二十日までにその意思を総理大臣のところに出せ、もしその意思がなかつた場合には再来年の四月一日から転移されるものである、こういうふうにどちらをとつてもよろしいように、この法律の内容として規定してある次第でございます。そういうような経過でございまするから、御了承を願いたいと思います。
  17. 門司亮

    ○門司委員 今の非常に親切な御答弁でございましたが、私は今の御答弁について、これはちよつと討論めいたようなことになりますが、私のお聞きいたしましたのは、もう一つその次を聞かなければわからぬのでありますが、住民投票が行われ、さらに議決をしたことが、来年の四月一日から国警に移譲するということが趣旨でありまして、住民もその通り考えておつたと私は考えて、妥当だと思います。そうしますと、今ここに請求があるということでありましたが、これがはたして住民の意思であるかどうかであります。来年の四月一日に警察を移譲するということは、住民の意思決定であることには間違いございません。しかしそれを早くしてもらいたいということが、必ずしもその当時の住民の意思決定では、私はないと考える。おそらく理事者その他の人たちの考え方で、そういうことが行われたと考えておる。従つてこれは住民の意思決定とただちに結びつけるわけには私は行かないと思います。この間の事情は、あとでまたもう一応お聞きするといたしまして、今の鈴木さんのお答えの中に、経費その他の関係でというお話がありましたので、国警の諸君に聞くのでありますが、先ほど床次委員からのお尋ねに対しては、私どもも大体千二百あるいは千三百近い――千二百三十九名でありますが、両方合せてこれだけのものが移譲されても、五千万円くらいあればよろしいというお話でありますが、一体国警予算は一人頭二十三万円ということではありませんか。一人頭二十三万円組んでおるということになりますと、当然これは三箇月分の予算をこれに計上して参りますと、大体七億の金がいるという計算がつくでしよう。それを五千万ということは、一体どうしてそういう数字が出て来るか。当初予算国警予算を見てごらんなさい。大体二十三万円という予算が出ておる。国が査定した自治体警察のあれには二十八万円予算が組んであるが、国警はたしか二十三万円組んである。私はそういうつじつまの合わない答弁は承服するわけには行きませんが、しかもそれを提案者の方から政府に提出になつたときに、さしつかえがなかつたというような今の御答弁がありましたので、重ねて国警に聞いておきますが、一体給料はどこからお払いになるつもりかということ、その点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  18. 谷口寛

    谷口政府委員 経費の関係につきましてお尋ねでございまするので、お答えを申し上げたいと思います。  先ほど床次委員の御質問のときに、今回の編入に伴つて国警に来る職員の必要予算は大体約五千万円であるということを申し上げたのでございまするが、これはもちろん申すまでもなく三箇月間の経費でございまするので、年間にいたしますると、約二億円を要するこういう計算に相なります。御指摘国警の全体の経費を、警察官一人当りに引直しました場合において、約二十三万余円になりますることは門司委員の御指摘通りでございます。今回の編入に関連いたしましては、その編入職員に必要な俸給、それから扶養手当、勤務地手当さらに人に伴う最小限度の必要経費というものを予算として考えておるのでございまして、一応これだけの経費考えまするならば、この六十二箇町村自治体警察職員国警に引継がれましても、十分に俸給、給与等も出して参れますし、全体の活動については、これは支障がない、かような考え方で計算をいたしておるのでございます。その結果は、先ほど申し上げましたように、約五千万円、正確に申せば五千四十二万円という数が出ますが、こういう計算に相なる次第でございます。
  19. 門司亮

    ○門司委員 それで私、もう一つその次に聞いて置きたいと思いますことは、そうして編入しますと、その移譲された警察官の給料が大体どのくらいに一人頭なる予定なのか、支払われる給与の総額であります。  もう一つ最後に私は両方にお聞きして置きたいと思いますが、問題は今警察官が入つておる建物であります。それから調度品であります。こういうものは、提案者の方では議決の内容が、ことごとく国に無償でこれを寄附するような形になつておる。あるいは無償で貸与する形になつておるが、当局はさらにその問題が無償になつていないといたしまするならば、これを有償で引取る準備があるのかどうか。この点を私が聞いておきたいと思いますことは、かつて国警は、いつかもお話しましたように、警察法改正のときに、国警の使う分は全部都道府県の財産でありましたものを、無償で没収した実例があります。この額は大体百億内外だと私ども考えておりましたが、そういうことがありますので、この際あらためて私は聞いておきたいと思いますが、市町村が非常に財政上困つて警察を移譲しようというときに、町村が持つておりまする財産を国が無償で没収するということになると、これもいかがかと存じまするので、そういうことについての当局の心構えは一体どうであるか。さらに提案者はこの決議文の内容の中には、そういう自分の財産は国にそのまま引継ぐという決議がなされておるのか、あるいはこれを無償で貸与するというような決議がなされておるのか、その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  20. 谷口寛

    谷口政府委員 今回編入せられる予定の職員給与でありまするが、これは警察官が一人当り一箇月一万三千七百十三円、これは一応ベースアップを見込んでおるわけであります。一般職員は九千十四円この金額を積算の基礎にいたしております。それから編入せられる場合に、当該の自治体警察の庁舎その他物件に関する引継ぎの問題でございまするが、この点は警察法六十七条の二の三項によりまして、「国家地方警察又は市町村警察の責任の転移があつた日において、当該区域内で、国家地方警察又は当該市町村警察が他の機関と共同している国又は地方公共団体の建物は、前二項の例により、それぞれ当該市町村警察又は国家地方警察が無償でこれを使用することができるものとする。」という法律の根拠によりまして実施をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  21. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 ただいまの御質問に対しまして提案者といたしましては、過去におきましてこのような法案が二、三回出たような例もございまするし、従つて現在の法律のうちにおきまして、こういう際における建物その他のことについての規定がございます。また先ほど門司さんが言われましたように、相当いざこざがございまして、ただ国家警察だけの一方的意思によつて地方自治体の財産が無償で国家の方面に移行されるということをなくするような法律もまた国会に提出されて修正された例もございます。両方とも平等の力のもとにお互いが折衝を遂げて、そうしてどちらも納得した上において、適当な処置がこれらの町村において具体的にとられるということを期待をいたしまして、この提案をいたた次第でありまして、それ以外に何ら新しい意図を持つてこの財産の委譲について考えておる次第ではございません。以上のような従来の法律ないし慣例をそのまま受継ぎまして、町村側が喜んで委譲できるような具体的措置を期待して提案をした、こういうわけであります。
  22. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁で大体はつきして参りましたが、五千万円内外の金というのは給料だけにしか当てはまらぬものです。そのほかに維持費がかなりいるはずです。これらのものがほとんど警察の中に含まれていないで勘定されたということについては、私どもただいまの国警のお話では承服するわけには参りません。それは数字の点から申し上げましても、これだけの警察が入るということになりますと、ある程度の機動力を持つておりましようし、警察維持というものが給料だけでないということは当局も御存じの通りであります。従つてさつき申し上げましたような数字がおのおの見込まれておつて、そうして仕事をされておることは事実であります。ところが俸給だけを支払う金さえあればそれでいいんだという当局の見方については、私はそれをそのまま承認するわけには参りませんし、またそういうことでいいとも考えておりません。  それからもう一つ、これは当局の両方にお聞きをしたいのでありますが、問題になりますのは警察法の前文であります。警察法の前文は、御存じのようにこの制度を設けるについては、どういう建前であるかということがはつきりと書いてある。憲法には前文がありますが、日本の法律の中で前文を持つておりますのは、憲法と警察法くらいのものじやないかと私は考える。なぜ警察法に前文を設けたかというと、これはきわめて重要な問題でありまして、本文の解釈だけではその趣旨を曲げて解釈されるおそれがある。従つてこれに前文をつけて、間違いのないようにするためにこの前文は書かれておるわけであります。警察法のできましたときに立ち会つた者といたしまして、私はそう記憶しておる。そう考えて参りますと、この法律の内容を動かそうとすれば、やはりこの警察法の前文が十分考えられなければなりません。この警察法の前文に照して、ただちにこれを国警に移転するということがいいか悪いか、長くは書いてございませんから一応朗読いたしておきます。警察法の前文「個人と社会の責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。」こう書いてある。従つてこの警察法自身の建前は、これを従来の権力警察にすることを極力避けておりまして、どこまでも個人の権利と自由を保護するということ、しかもそれは個人と社会の責任の自覚のもとにおいてこれを行う、こうなつております。警察自治警察を主体とするということが、この警察法に流れておる一つの精神であります。従つて国家警察といいながら、その運営には国家のあらゆる制肘を受けない公安委員の制度がちやんと設けられ、警察自身はあくまでも権力警察にならないような処置がとつてあるのが、この前文から来た警察法であることには間違いないと私は考える。そういたしますと、警察法を多少なりとも改正しようといたしますには、やはりそれだけの大きな根拠がなければならないはずであります。この根拠についてはいずれ大臣に聞かなければならぬのでありますが、事務当局としてはこの前文に対してどういうふうに大体お考えなつておるか、一応事務当局の見解をお聞きしておきたいと思います。
  23. 谷口寛

    谷口政府委員 お答えいたします。ただいま門司委員から御指摘がありました通り警察法の前文の精神によりまして、現在の警察制度は人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に関する民主的権威の組織を確立する目的をもつてでき上つておりますことについては、われわれといたしましても十分承知もいたし、またその精神によりまして運用に当つておるのでございます。この点は御意見の中にもございました通り自治体警察についても、また国家地方警察についても言える根本精神でございまして、われわれといたしましても、この気持において運用に当つておるような次第でございます。当面の特例の問題に関連いたしまして、この前文の精神から、よほど大きな理由がなければこういう法案は提案さるべきじやないかというような御趣旨につきましては、先ほどの門司委員の御意見にございましたように、もともと市町村警察国家警察に移転いたします場合においては、一応その年の十月三十一日までにその意思を決定して、翌年の四月一日から編入するというようになつておりましたゆえんのものも、予算の関係が基本的な問題であつて予算編成の都合の上で、一応十月三十一日までの分を締め切つて、翌年の四月一日から編入するようにするというのが、根本の精神であつたように承知をいたしておるのでございます。それがその後の警察法運用と、市町村自治体警察の推移によりまして、当初約千数百存在いたしました町村警察が逐次減少いたしまして、現在におきましては約二百余りという程度に相なつたのでございまして、そのうち今回編入を予定せられておりまするものが六十二箇町村出て参つたのであります。従つて当初の考え方からするならば、相当自治体警察の数が多くございました関係上、予算の編成につきましても、いろいろとくふうを凝らす必要がございますので、翌年の四月一日から十月三十一日までにきまつたものを入れるということになつておりましたけれども相当数が少くなつて参りました今日におきましては、一応その時期を四月一日から一月一日に繰上げましても、予算運用についてはさしたる支障はない、曲りなりにも予算運用の上でやつて行けるというような見当がつきますので、ただ意思決定のありましたものを時期を繰上げるということを目的にした法案が提案されたものである。かように私は理解いたしておる次第でございます。
  24. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 提案者としてお答えいたします。ただいまの察警法の前文は民主国家としてきわめてふさわしいと考えておりますが、私も第一国会の当初この制定に参与した者でございますが、その前文はそのまま尊重いたしまして、そしてその前文のあと規定されておるところの各論の警察法でありますが、その各論的に規定されておる警察法が、四月一日から実施されるというのを三箇月繰上げて一月一日からやろうというだけの考え方しかないのであります。その三箇月間を繰上げるというのは、請願相当ございまして、そうしてこの合併決議をいたした町村はなるべく早く自治体警察をやめて、どうせきまつたことなのであるから、早くひとつ国家警察に持つて行つてもらいたいというような住民の意思があることを尊重いたしまして、三箇月繰上げたにすぎないのであります。従つてこれは警察法根本的な改正という場合におきましては、これは別の考え方がありましようが、現在の前文を最も尊重した警察法のもとにおいて、ただ単に三箇月繰上げる、こういう町村民の声を尊重したつもりで事務的に規定した法律である。こういうふうに考えておる次第であります。
  25. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 谷口さんにお聞きしたいのですが、日本の民主化は警察の民主化にあると私は常に思つております。ところがだんだんと逆コースになつて、また日本は内務省の直轄時代に転換しそうになつておるような状態で、それを私たちは非常に悲しいことであると思つておるようなわけなのであります。そこで十三国会で、これは非常な重大問題として論ぜられましたことは、あなたもよく御存じのことだと思います。それでこれは日本を元の国警一本にするか、それとも民主主義のもとに自治体と二つにわけるか、この大いなる根本問題に立脚しておるものであると私は信じておるような次第であります。それで十三国会で逗子でああいうふうになり、そしてここに非常な問題になつて、またしてもこれが問題になつて、次から次とこうして特例を設けて、こうやつて自治体警察国家警察に今ならんとしておる。そうしてしまいにはまた元の通り日本は警察国家になる、その前提であると私は思つております。あなたはこれをどういうふうに考えられておりますか、御所見を承りたいと思います。
  26. 谷口寛

    谷口政府委員 非常にごもつともな御意見でございまして、非常に御同感の意を表する次第でございますが、現在の警察制度が民主的な精神を根本といたしまして立てられておることは御指摘通りでございます。われわれ日常その運用に当る者といたしましては、警察法根本精神に基きましてあくまで民主警察の実をあげまするように、配意をいたしておるつもりでございます。いろいろと最近に逆コースのような声も出ておりますが、少くとも警察制度といたしましては、これは大臣からも申されております通り、かりに改革がございましても、民主的な考え方を前提にしながら能率化を考えるという意味で、改正考えて行かなければならないのではないかというような気持で、事務のわれわれといたしましても考えておるような次第でございます。今回の提案は御承知通り、委員の方々のうちから御提案になつ法案でございますので、私がいろいろと申し上げる点も蛇足でありますけれども、われわれ事務の者といたしましても、今回の法案そのものは、今御指摘になりましたような警察の民主化に逆行するものあるいは国警一本化の前提の法案、かようには考えていないのでございます。申すまでもなく、現在の警察法におきまして町村警察がその住民の意思によつて国警に転移をするという道は開かれておるわけでございまして、その開かれましたものを、決意を一旦やつた以上は、若干早目にその転移をしたいという趣旨法案でございますから、繰返し申しまするように、これが国警一本化の前提というような考え方を持つた法案とは考えていない次第でございます。どうぞよろしく御了承を願います。
  27. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 いなかの人は何も知らずに、その地方の町長さん、村長さんなどはこれはもう国警にした方がよい、自治体警察は赤字で困る。そうすると何も日本の民主化ということを知らずして、上の人の言いなりになる、ボスの言いなりになる。要は平衡交付金制度地方制度根本問題になりますから、あなたに申し上げても何もなりませんが、ほんとうに国民が目ざめて自治体警察をみずから投票して、国家警察にしようなどというほんとうの意思はないのであります。みな何も知らないでただ赤字、赤字、赤字がこわい、自分たちの税金がたくさんになる、住民税がかかつて来る、それが恐しいばかりで、ただボスに引きずられてこの人民投票をするということを、あなたは御存じございませんでしようか、どうですか、それをお聞きしたい。
  28. 谷口寛

    谷口政府委員 自治体警察の中の町村警察が、住民の意思によつて廃止を決意する前後の事情につきましては、私といたしまして具体的に一々の町村事情について承知をいたしておるとは申し上げかねまするので、非常に一般的な答弁に相なりまして恐縮でございまするが、いろいろと御決意をされる経緯につきましては、今大石委員の御指摘になりましたような議論が、いろいろと巷間せられたことと私は考えるのであります。その最後の結論といたしましては、正式の手続により、また合法の手続によりまして、当該の町村の住民の意思が住民投票の結果によつて廃止せられました上は、現在の民主主義の制度のもとにおきましては、それを尊重して参るのが一応の道かと考えておるのでございます。なおこれはまた議論の種に相なつては、はなはだ恐縮でございますが、先ほども指摘ありました通り編入せられて引受けて参りますわれわれ国家地方警察も、民主警察といたしまして運用いたしますように心がけておるつもりでございます。今後もそういう点につきましては、十二分の御指導をいただきたいと考えておる次第でございます。
  29. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 谷口さんも御承知通り、日本を今日かくのごとき敗戦のみじめなものにしたのは国家警察であつた。すなわち警視総監、警保局長がボタン一つ押せば日本の警察が動員できた。そして特高警察があつた。そういうようなものが軍閥と一緒に日本をつぶしたことは、あなたも御承知でございましようか、その点をお伺いしたい。
  30. 谷口寛

    谷口政府委員 日本の過去の警察につきましては一応承知しておるつもりでございます。戦争の結果元の警察制度がなくなりまして、マッカーサー元帥書簡に基きまして、現在の警察法ができ上り、その警察法のもとに国家地方警察自治体警察が、現在治安維持のために活動しております事情につきましては、一応承知しておるつもりでございます。
  31. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 この前文に国民の権利を守り、国民を保護するということがございますが、今の警察はまた昔の警察と同じようになつて、国民の税金から自分たちは俸給をもらいながら、国民を保護するどころの騒ぎではなくして、国民を一つの権威でもつて断圧しようとしておるのが現在の警察で、昔の通りなつて、おい、こらになろうとしておる。昔の通りにならないで、だんだん民主化するにはどういう方法をとつたら一番よろしいか、それを私は聞きたいのです。
  32. 谷口寛

    谷口政府委員 現在の警察の実際の活動面、あるいは第一線の個々警察官の動き等におきまして、若干非民主的な動きが現われておるという点の御指摘につきましては、全体の警察官の気持はあくまで正しい民主警察官として、言いかえますれば国民によつて治安維持を負託せられた、国民の公僕の自覚で日夜治安維持のために奮闘しておると私は信じておる次第でございますが、ときに第一線の方で間違つた動きがありますことは、ときどき耳にいたすのでございまして、その点は御指摘通りはなはだ遺憾なことであり、またわれわれといたしましても監督統制の不十分なことを恥じておる次第でございます。どうすれば民主化の実が上るかということにつきましては、一言で申せば絶えず上も下も一緒になつて、民主警察の真意を体得しながら、国民の公僕の意識をはつきりと持つて個々の執行務に当るという心構えを続けて行きますように訓練する、指導する、教養する、あるいは相互に検討し合う、そういう機会を絶えず持つて行くということが、内部の問題としては相当大事な点だと考えまして、教養、訓練につきましては格段の努力をいたしておるつもりでございます。なお国民の警察でございまするから、国民の皆様方の絶えざる善意の御指導、御忠告というようなものをいただいて、それをわれわれといたしましては謙虚に受入れて警察の改善のために努力して行く、こういうことが積み上つて参りまするならば民主化の実も上つて参ろうかと、かように思いまするので、今後ともその趣旨によりまして努力をして参りたい、かように思つておる次第であります。
  33. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 谷口さんは民主化のために努力しておるとおつしやいましたが、努力しておるどころの騒ぎではありませんではないですか。大体あの管区本部は何ですか。毎日々々遊んでいるのではありませんか。あれをあなたは一体必要と思いますか、どう思いますか。私がいつも管区本部に行つて見ると、毎日々々茶を飲み、タバコをのんで何も用事をしておらぬ。私は管区本部の必要を認めない。あなたはどういうふうに思いますか。
  34. 谷口寛

    谷口政府委員 管区本部の問題が出たのでございますが、現在御承知のように全国の地方警察を六つにわけまして、そして管区本部で一応地方的な統轄をとりまして、国警本部で全国の統轄をとつておる、こういうふうな関係に相なつておるのであります。管区本部と申しますものは、その六つにわけた区域内の数府県、場合によりましては十数府県になるところもございますが、そういうふうな広い地域を一応指導監督をしておる役所でありまするし、またそれに関連いたしまして、その管区の区域内の現任あるいは新任の警察官を教養するための管区学校を付設しておるような場所であります。その意味から申し上げますと、第一線の府県あるいはもつと現場になりまする署というものと比較いたしますと、現場を持ちませんから第一線の警察活動とは、やや趣の違う場面もあろう、かように考えておるのでございます。なお御指摘になりましたような点につきましては、十分にひとつ実情を調査把握いたしまして、御指摘のようなことがあれば十分戒飾をいたして行きたい、かように考えております。
  35. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 私は谷口さんにちよつと注意しておきたいと思います。各府県の隊長とそれから県知事、府知事と非常に仲の悪いのは、一体これはどうなんですか。いつもけんかしておる。日本の警察が真に民主化されているならば、知事と提携して仕事をやつて行かねばならぬのに、絶えずけんかしているのはどういうわけなんでしよう、私はお尋ねしたいと思います。
  36. 谷口寛

    谷口政府委員 お言葉でございまするが、私は大体各府県の隊長さんと知事さんとの間がけんかばかりして、皆非常に仲が悪いというようには実は考えておらぬのでございまするが、中にはしつくり行つていないところもあるのかもわからぬと思います。今御指摘で、もしそういうことがありますれば、これはいろいろ事情もありましようが、隊長といたしましてもはなはだ見識の足らぬところでありますから、十分に注意をいたしたいと思いまするが、まあ全国どこでも仲が悪いというようにも私思つていないのでございますが……。
  37. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 大体ですね、各府県の隊長を監督するのは管区本部の長がするのですか、どうなんですか。
  38. 谷口寛

    谷口政府委員 さようでございます。
  39. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 それからちよつとお尋ねしたいのですが、鈴木先生。私たち十三回国会におきまして、四月一日から数箇所の警察自治体警察に移すということを、ここで起立できめたのでございます。それをまたぞろ、総選挙が済んで一月もたたぬ間に、またぐるぐるかえる。そうすると、今たださえ民衆がわれわれ国会議員をばかにしておるのが、何とあれが、きようはつくつた、あしたはかわつた、あれらのする仕事は一体何であるかといつて、私たち代議士を小ばかにすると思うのでありますが、あなたはどういうふうにお考えなつていますか、お聞かせ願いたい。
  40. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 先ほど谷口さんからお話があつたように、まつたくこれは技術的な問題でありまして、警察法の本質には何ら私は関係を持たないものだと考えておるのであります。四月一日から転移するという法律ができましたのは、これはその当時のいきさつも御存じと思いますが、原則といたしまして、住民投票によつて自治体警察廃止するということが、かりにきよう決定したとするならば、その翌月の一日から国家警察に移る方がてつとり早くていいのではないかという考え方も相当ありました。また実はこの法律を実施する場合に、もう一つの法律案提案者のうちにございましてどつちかをとるようにというお話がありました。このもう一つの案というのは、翌月の一日に当該市町村警察に関する責任の転移が行われるということであつたのであります。私は提案者の一人としてそのうちのどちらかをとるようにということをまかせられたのでありますが、この案によりますると、今大石さんの言われましたように、今後永久に住民投票が行われると、その町村についてはその翌月から国家警察行つてしまうということになりまして、これは警察根本的な考え方の違いになりますからこれをやめまして、そうして今提案したようなきわめて事務的な、すなわち町村においては、もうすでに町村民の投票が終つてしまつたという事実があることが一つ。もう一つは、今月の二十日までの間に、来年の一月一日から自治体警察廃止したいという町村議会の決定があつた場合、こういうことでありまして、住民投票が行われているここの表にありまするところのものにあつても、来年の四月一日からやりたいという町村がありましたならば、その町村は必ずしも強制的に来年の一月一日から国家警察になるのではないのであります。でありまするから方針といたしましてはやはり四月一日からやりたいということで始めたのだから、四月一日からやることが妥当であろうが、もしその町村が一月一日からやりたいということでありましたならば、そのものだけについて一月一日から転移することがよろしい、こういう内容でありますから、この六十二のうちで六十二の町村が全部住民投票を終つたけれども、しかしながら私たちは一月一日からやりたいのだという意思ならば、これは一つも適用されないで済むような内容になつておりまして、どこまでも町村民意思によつて行われるような内容にこれはなつておるわけでございまするので、私はそういう考え方からいたしまして、決してこの内容は、国会が町村なり国民から侮辱されるような内容を持つものではなく、むしろ国会は国民の意思を極度に尊重した、きわめて民主的な、わかりのいい国会である、こういうふうに思われるだろうと思つて、実はこれを提出しておる次第でございます。
  41. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 谷口さんにお聞きしますが、しからばこれを通過さしたら、もうあとは一切自治体警察国家警察になさらないですか、どうなんですか。
  42. 谷口寛

    谷口政府委員 この点につきましては、まだ町村警察が百四十九ばかり残つておりますので、その百四十九の町村警察がいかなる決定をいたしまするかは、まつたく当該の町村民の自由なる意思によつてきまることと考えております。
  43. 青柳一郎

    青柳委員長 お昼も大分過ぎましたからこれで休憩いたします。午後は二時から再開いたします。     午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十七分開議
  44. 青柳一郎

    青柳委員長 再開いたします。  休憩前に引続き、町村警察維持に関する責任転移の時期の特例に関する法律案を議題として、質疑を続行いたします。質疑を許します。
  45. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 谷口政府委員にお伺いいたします。先ほど同僚大石さんの、警察警察法の前文に示すような民主警察として行くために、いかなる方策をお持ちかという質問に対しまして、あなたは、日々警察に職を奉ずる者が民主警察の実をあげるように精神的に訓練をして、その趣旨に沿いたい、かように精神面を強調されたのでありますが、その精神面のことは、私はあえて争うことはない、その通りだと思うのです。しかしわれわれ政治の座にある者は、その精神をいかに制度の上に現わすかということについて関心がある。そうした点から、警察制度の上に自治警察の非常に大切なことが強調されて、今までこうした制度がとられて来たと思うのです。そこであなたの今言うところの精神的なそうした行き方が制度の上に現われて来た場合に、自治体警察を非常に尊重しなければならぬと思うのですが、あなたが所属しておるところの国家地方警察の立場を離れて、もつと大乗的な見地から、むしろ国家地方警察以上にそうした制度が保たれなければならぬというお考えをお持ちかどうかをお伺いします。
  46. 谷口寛

    谷口政府委員 現在の民主的な警察法のもとにおきまして、国家地方警察自治体警察が併存いたしておりますことは、御意見通りであります。われわれもこの警察法建前を尊重いたしまして、国警、自警相協力して、治安維持の万全をはかつておる次第であります。従いまして、われわれといたしましては、自治体警察自治警察として、十二分に機能を発揮いたしまするように、国警側といたしましてもいろいろと協力、援助をいたす気持につきましては、やぶさかでないのでございます。あるいは運営の面において、あるいは活動の面においてないしは財政的な面において、でき得る限りの協力、援助をいたしておるつもりでございます。御質問の要点は、国家地方警察よりも自治体警察の存在をこそ擁護すべきじやないか、そういう意味合いの点について、私がどういう見解を持つかという点の御質問であつたと思うのでありまするが、私は率直に申し上げますと、現行法の建前国家地方警察自治体警察との二本建になつておりまして、その間の関係につきましては上下、軽重の関係はないもの、お互い平等の立場におきまして、それぞれ自主権を尊重し合つて協力いたして参るというのが、今日の警察法の精神であろう、かように考えておる次第でございます。
  47. 青柳一郎

    青柳委員長 大臣予算委員会の方から呼ばれておられますので、大臣に対する質問をなるべく……。
  48. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 なるたけそうします。  本日上程されておりまする法律案というものは、技術的な面に限定すれば大した問題はないわけです。それは住民投票がすでに決定しておる、どうせ決定しておるので、維持の点で非常な難点とか混雑を起さぬために、これを予算的に無理をすればつじつまが合うんだから、何とか一月一日からいたしてくれ、その方が民衆に迎合することになるじやないか。こういう技術的なことだけからいえば、大したことはないだろうが、朝からホット・デスカツシヨンになつておるゆえんのものは、そうした技術的なことでなくて、それに反対する根拠というものは、むしろ警察制度の反動化を憂うるところから出発しておると思うのです。中央集権的な一連のものとして、こうした動向が現われておりはせぬか、この点を皆さんが危惧しておると思うのであります。私も率直に申し上げてその点を危惧するものであります。たとえば今の国警に移せば財政的に軽くなるということは、これは地方というものが、平衡交付金というような点で非常に尊重されていない証拠です。私が質問すると、自分の顔につばが返つて来るようなことになると思うのですけれども、こういうことが一つあると思うのです。住民の投票をやつたが、住民の真意を十分突き詰めた人がいないのです。たとえば犬を訓練するときに、腹をすかしておいてビスケツト一つやつて訓練して行くと同じように、そこに馴致して行くという傾向がないとは言えないのです。私は一例を申し上げますが、名前を申し上げていいかどうかわからぬのですが、埼玉県の隊長さんが非常に張り切つておつた。この方は埼玉県においては八市に自治警察を残して、あと自治警察は総からげになくしたというえらい力価を発揮されたので、兵庫県に栄転されたようです。私は悪意を持つて申し上げるのではなく、客観的に申し上げておるつもりであります。それから昨年の九月飯能町に起つた例を申し上げますと、いよいよ存廃について町の議決がきまりまして住民投票にかけた。そのときに、国家地方警察の方で住民の自由な意思を束縛し拘束するようなインフルエンスを与えてはいかぬはずです。ところが投票所は小学校にありまして、ちようどその小学校の入口に警察がでんとして控えておる。その警察庁舎から今の自治警察廃止せよということを公然とやつた。これは事実なんです。ですから私はそういうふうな住民投票の結果自身を尊重せよということを一概にうのみにできぬ。そういうふうに持つて来ておるのは、それは先ほど言つた財政上の貧困という点からの圧迫と、もう一つには国家地方警察が本庁で考えておることをはき違えて、そうしたインフルエンスを与えておることが皆無とは言えない。ここに技術的に見てきわめて簡単な問題が論議されるゆえんのものは、そうした点を非常に危惧しておるからである。ですから、私はまず大臣にそうした点についての政治的な判断、自治体警察に表徴される民主警察というものを、名実ともに尊重されるかどうかについての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  49. 犬養健

    犬養国務大臣 平岡さんにお答え申し上げます。私もまつたく御同感でありまして、地方自治警察国家警察移管される、地方からの要望だからしかたがないというような返答で終れりとは思つておりません。さような不誠意な返事は私も恥だと思つております。先般床次委員からいろいろ詳しいお話もあり、ある意味で御警告もありまして、私ももつともだと思いました。私もちよいよい耳にいたすのでありますが、平岡さんの御指摘なつたような露骨な話は初耳であります。もしもそれがほんとうとすれば、明らかに行き過ぎであります。それほどでなくても間接的に、国家地方警察移管されれば、橋が一つふえるんだがなというような、暗示のような話があつたとかいろいろ聞きますので、私はそれではどうもおもしろくないと考えまして、先日よい機会地方の公安委員に集まつてもらいまして、きようは率直に苦言を呈してということで、無礼講の話を聞きました。ただいま御指摘なつたようなはげしい程度のは今日が初めてでありますが、類似の話をちよいちよい聞きます。私は地方自治警察国家警察に移つて行く傾向が著しくなつて来た自然の経緯から、これは国家警察へ統一するのだというような、そういうなしくずしの何といいますか、公明でない政治をやりたくないと考えております。実は私は内外の情勢に照しまして、ここで警察制度能率化という一面を加えたいと思つておりますが、もしその成案ができましたならば、表口から正々堂々と政府の意のあるところを御審議願いたいと思います。なしくずしにそういう方向に漸次移行して行く政治というものはとりたくないと考えております。また御指摘のような実例は今後ないように、さつそく通牒を発したいと考えております。また先ごろ新内閣の声明の中にも警察組織の再検討、改革ということを入れました。これは能率化ということを主にはしておりますが、実は率直に申し上げて、私の就任のときに警察国家にしたのだというような足跡は残したくございません。能率化と同時に、あくまでも地方の庶民生活に根をはやした自治警のよさというものをどう残して行くかという、一見なかなか両立しにくいところをどうやつて行くかということが、目下の苦心の重点でございます。さらに率直に申し上げまして、国家警察自治警察も、学校でいえばそれぞれ愛校心みたいなものを持つておりまして、つい競い合う。この愛校心を捨てろといいますと、また非常に能率が下りますが、さりとて過度の愛校心はよくないと同じように、国家警察自治警察のおのおのの誇りが過度に働きますといろいろな摩擦が起る。現に御指摘の問題なども、そういう一種の愛校心の過度な現われだと思います。そういうことはこれから厳に慎しむように通牒を発し、もつと朗らかな国家警察自治警察の関係をつくつて行きたいと考えております。
  50. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうした大臣の信念を、この際下部に浸透せしめていただくようにお願いします。話のついでですが、飯能におきまして、非常に競合した結果自治署を廃止することにきまりました。そのとき二十七名ほどが自治体警察署員であつたわけであります。ところがその選挙と申しましようか住民投票の期間中に、国警に媚態を示した四、五人だけがとどまつてあとの二十何名は全部左遷――非常に住宅に困るのです、左遷というような点で。昔と違うのですから。それが左遷されております。具体的にはそのときの遠藤末吉という署長は草加町に左遷、それから梅本嘉正、これは次席だつたのですが、詰め腹を切らされたのです。警部補です。それから藤波部長、署長と同じ名字ですが遠藤部長、馬橋警部補、こういうのは全部梅本の詰め腹を切らされたのに同情しまして、連袂辞職しております。ところが警察官ですから現在生活の安定を得ていないと思います。それでこの梅本次席は、町民が非常に気の毒に思つて図書館に拾い上げた、こんなふうな実情にあるわけです。ですから今の赤字という一つのそれですらも影響があるわけです。そこへ持つて来てなお国警の圧力が加えられて来ておるというようなことは、これはたいへんな間違いだと思うのです。そういう事例は非常に異例であることを私として、も衷心願うのでありますが、こうした行き方が国警のとつている全豹の一斑であることを希望してやまぬのであります。それからこれは蛇足ですが、そうした問題が今の飯能事件の遠因をなしていると思うのです。これは余談でございますが……。要するに平衡交付金の寡少が町村財政を圧迫し、飢餓に瀕した犬を捨てるような立場が確かにあると思います。そこに加えて今のような国警の意識的なそうした行き方はきわめてぐあいが悪い。多かれ少かれ多少ニユアンスが違つている。ここに現われて来た五十何箇所の警察移管問題が、背後のそうした影響力によつて――形の上では住民投票の決定によつて来たには違いないのですけれども、そういう点に私どもは思いをいたす必要があると思います。こういう点につきまして、大臣並びに今の政府委員としての谷口さんに今後の善処を特に要望申し上げておきます。
  51. 犬養健

    犬養国務大臣 結局これはお互いに、あなたたちも私たちも同じだと思いますが、文化国家建設ということの水準が低いか高いかということに響いて来ますので、私どもの政治の名誉にかけても、そういうことのないようにいたしたいと思います。
  52. 青柳一郎

    青柳委員長 横路君、大臣質問ありますか。
  53. 横路節雄

    ○横路委員 ありません。
  54. 青柳一郎

    青柳委員長 それでは床次君。
  55. 床次徳二

    床次委員 すでに先ほどからたびたび意見が交換されておるようでありますが、本案を採決することになりそうでありますから、最後に締めくくりとして大臣にあらためてお伺いしておきたいと思います。  これは今回の提案に関連いたすのでありますが、往々にして自治体警察に対する政府の積極的な熱意はあるいは少いのではないかという疑念を持たれておるのであります。先ほど大臣のお話にありましたことく、政府警察法を再検討してその能率化とともに、自治体警察のよいところを残して行きたいということをお述べになつておりますが、この気持が実際面においてなかなか現われておらないようでございまして、一番必要と認めますことは、自治体警察に対して警察費を十分に与えるということであります。とりもなおさず、平衡交付金におきまして、基準財政需要額を少くとも国家警察と同じ、それに準ずる程度にまで財源を与えておきますことが、自治体警察として十分な活動のできるゆえんだと思うのであります。現在はこの点国家警察比較いたしますとはるかに下つておる。従つて自治体警察維持が困難であるという実情を呈しておるのでありまして、この事実を放任しておきますと、自治体警察維持するということは、口ではけつこうでありますが、実際においては困難であるということも言えるのでありまして、この点に関しまして大臣から、将来において自治体警察経費については、増額に努力するという御所見を伺いたいと思うのであります。  なお現在取扱われておりますような法律案が実情に便宜だからという立場において実施せられましても、このために自治体警察を漸次廃して国家警察に移して行くのだというような印象を一般に与えることになりましたならば、今日多数の自治体警察職員は士気上におきましてまた、その活動におきましても影響を受けることが少くないので、従つて、私ども政府におきまして、自治体警察に対するはつきりとした態度を示していただきますと同時に、一日も早く政府警察法に対する所信を明らかにしていただきたい。政府が取上げんとする目標点はわかるのでありますが、いかにしてこれを取上げるかということに対しまして、できるだけすみやかにその方針を示していただくことが必要ではないかと思うのであります。これによりまして自治体警察がほんとうに安んじて職務に精励できるのではないかと思うのであります。治安の確保の必要な現在におきまして、この点は大臣から特に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。自治警察を尊重すると口で言いましても、結局内容というものの主たる部分はやはりお示しの通り私は経費だと思います。これは財政当局に今後も、ことに積極的に意のあるところを述べまして努力いたしたいと思います。先ほども申し上げましたように、私は実は警察組織の根本的な改革ということを今考えております。その便宜のためになしくずしに自治体警察を減らしておいて、その土台の上でそういう案をつくるということを恥だと思つております。また事実さつき平岡委員の御指摘なつたようなことがもしありとし、またそれの小型のことが方々にあるとするならば、警察組織をかえても自治警察が愉快でなかつたら決して動くものではありません。これは第一線が動く仕事でありますから、第一線がよくもこんなふうなやり方に改革したという不平があつて困るのは国民なんでありまして、その点の心理の機微というものは十分心得て行きたいと存じておりますから、その意のあるところを御了承願いたいと思います。ですから消極的に言えば、さつき御指摘のような強制的に国家警察に繰入れるというような挙動のないようにし、積極的には財政当局が相手で、十分に行かないかもしれませんが、自治警の経費というものを十分努力して仕事のできるようにせめてしたい、こう考えております。
  57. 門司亮

    ○門司委員 私この際大臣にちよつとお聞きしておきたいと思いますことは、今の大臣の御答弁を伺つておりますと、結論として自治警察に対しては、やはり自治警察としてやつて行けるような裏づけをしてやつて行くことが正しいのであつて、これの裏づけがなくして、そうして無理な形で国警編入するということは、あまり賛成のできないような御趣旨のように私承つたのでありますが、もしその通りだといたしますと、先ほども申し上げておりますような国警の一人当り予算と、それから平衡交付金考えられております単位の基礎数字というものは、かなり大きな開きを持つておるのであります。従つて地方自治体では警察維持財政的に困難な面が当然出て来ると思う。この面がもし解消されますならば、私はこの国警委譲の問題は、今日ほどたくさんはないと考えます。今請願書をちよつと見ましても、請願書の主たる文章は、やはり財政的のという言葉が使つてありまして、その他ということが書いてありますが、問題になるのはやはり財政的であります。従つて財政的に窮迫するからこれを国警に委譲するということでは、この警察法の精神とはまつたくもとるのであります。警察の運営の上に、あるいは行政面から見て、どうしてもこれでは警察としての本来の建前から適当でないという議論の上に立脚したものであるならば、これは私どもはある程度了承しなければならない立場に置かれるのでありますが、現行のこの委譲しておりまする現状というものは、いずれの請願書、いずれの地帯におきましても、ただ赤字に悩むから、財政的に困るからというのが、一番の大きな表面的な理由のようである。従つて今の大臣のようなお考えであるとするならば、これを解消する方法が講じられれば、私は今日こういう問題は割合に解決できるのではないか。ここに初めて私は国家警察地方警察並びに自治警察のあり方等について、根本から政府並びに国会も議論をする余地が残されておると思う。現状のままでは、なし崩しに財政的に行き詰つて国警に全部これが集約されてしまつて、それで今後に再びそれでは自治警察をどうしようかというような問題が起つて参りましても、これはせつかくある制度を一応国家に集めておいて、そうしてやり直しをすることは、きわめて私は非能率的であると思う。従つて大臣がそういうお考えであるとしますならば、私はこの際に大臣のお考えとして財政的の十分の裏づけをすることによつて自治警察自体の維持のできるようにするということが、大体大臣の意向としては正しいのであるというようなことが、確言がおできになりますならば、ここでしておいていただきたいと考えます。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 原則的には御趣旨はまつたく賛成であります。これは国警としましては、もう御承知かと思いますが、機動警察力というものが内外の情勢から見て必要だと思います。ある地域に固定した警察力だけでは、どうもむずかしい時代に入つております。従つてそういうものに対しては、あるいは自治警よりも一人当り経費が多くなるところの装備、あるいはトラックとかジープとかいう、多少ぜいたくなものを使うようになるかもしれません。ですから全然自治警と国家警察との一人当り経費が同じというわけにも参らぬかもしれませんが、逆に申してこういうことは申せます。つまり飢餓戦術で自治警の腹を減らして、かなわないからというので国警に入れて行く、こういう政治は私は恥だと考えております。従つて自治警察の方では、だれが見てもこれは必要だと思うような経費については、極力財政当局にその必要を述べ、予算獲得に努力いたしたいと考えおります。たびたび申します警察組織の能率化とか再検討とかということは、そういう土台の上に置きませんで、政府の責任における政策としてまた御審議を願いたい、こういうふうに考えます。
  59. 門司亮

    ○門司委員 それが一応大臣の御意見として承ることができましたので、次に私聞いておきたいと思いますことは、今提案されておりまする町村警察維持に関する責任転移の時期の特例に関する法案であります。その法案提案理由説明の中には、単に議決したものがあるから、これを時期的に早くしてもらいたいということだけしか書いてありませんので、同時に提案理由説明の中にもなぜこれを国警に委譲しなければならなかつたかという具体的の問題が、提案理由説明にも書かれておりません。従つて私はこの点は提案理由説明をされた方に聞くことが当然でありますがしかしこれらの同じ廃止をしようといたしまする各地方の公共団体の連盟の陳情書の内容を見て、それから請願書の内容を見て参りますると、さつきも申し上げましたように、いずれも財政的の窮迫ということが強く訴えられております。そこで今の大臣の御言葉がそのまま受取られるといたしますならば、私は大臣といたしましては、この特例を築こうとする趣旨に対しましては――取扱いの問題は別でありますが、趣旨自体といたしましては、反対であるというふうに解釈してさしつかえございませんか。
  60. 犬養健

    犬養国務大臣 それはちよつとお言葉が過ぎる点があるんじやないか。これは議員提出でございますが、提案者理由づけに不足があつても、その不足は私が今申し上げましたような信念でもつて補足する。この提案の理由が不足しておるから、提案そのものに反対だという態度はとらないつもりであります。国会の多数で議決せられたものを受取りまして、これを具体化するときに、私の政治責任において提案理由に足らざるところを埋めて行きたいと考えております。
  61. 門司亮

    ○門司委員 今少し突つ込み過ぎたというような大臣の御答弁でございますが、問題は大臣もやはり政党人でありますし、同時にこれがもし裏から申し上げて参りますと、それなら国会はいかなるものでも決議したものは、将来必ず政府はそれを行わなければならないかということになるのでありますが、これは非常に微妙な問題であります。国会が最高の決議機関であるから、何でも国会がきめたものは政府はのまなければならないということにおいては、私は行政の運営の上からいつて、きわめて危険があると考えます。少くとも一国の権威ある大臣として、国会の意思に対して批評がましいことをすることはどうかというようなあるいは御遠慮かもしれませんが、しかし担当者としての考え方というものは当然なさるべきだと思う。これは明かに警察法の一つの修正であります。原案に対する特例ではありますが、事実上は修正であります。この特例を設けようとするその趣旨に対して、行政府が国会さえきめてくれれば、おれの方は何でもやつていいというなら何をか言わんやでありますが、私はやはり一国の国務大臣としての大臣意見を、この際承りたいと思うのであります。
  62. 犬養健

    犬養国務大臣 釈迦に説法でございますが、国会政治は表決できめられまして、それと正反対なことをいたさないのはもちろん、それに沿つた線で政策を実現いたしますが、しかし提案者理由事務的にただ自治警が弱つて国家警察に入つて来るから受取つてくれ、はいと、そういう意思がないということは、先刻来るる申し上げている次第であります。提案理由に欠けているところは、私の政治責任においてこれを埋めて行きたいと思つております。
  63. 門司亮

    ○門司委員 それではその次に聞いておきたいと思いますことは、この問題と非常に大きな関連を持つものでありますが、御承知のように先ほども提案者並びに事務当局には一応聞いたのでありますが、警察法の前文をそのまま解釈いたしますと、民主警察にすることのために国民の持つております自覚と責任の上に、みずからこの自治警察運用して行つて、そうして民主警察にするということが書いてあると同時に、人権をきわめて尊重しなければならない建前から、この法律はできているのでありまして、そういうふうに考えて参りますと、今の警察行政の中で最も私が遺憾に今日まで考えておりますことは、この精神から行きますならば、当然これは政府の従来の国家警察的の考え方でなくして、あくまでも国民の自覚と責任の上において治安というものを保つて行く。従つてこれはあくまでも民主的でなければならないという警察法の精神をそのままくみとつて参りますと、法にあります通り国家公安委員というものが非常に重要な地位にあるということは、大臣も御承知通りだと思います。ところが従来治安問題が内閣で考えられます場合には、ほとんどと言つていいほど公安委員会意見が尊重されておりません、聞かれておりません。大体この内閣で治安問題が研究されれば、斎藤国警長官が行くか、あるいは警視総監が招聘されるか、いずれかでなつているように私も承つているのであります。大臣といたしましては、今までのようにそういう警察法の前文に書かれております精神と相反したような、一つの内閣に所属した警察制度のような取扱いを将来されるかどうか、これを念のために聞いておきたいと思います。
  64. 犬養健

    犬養国務大臣 ごもつともな御質問でございます。どうも私も警察能率化ということを考えると同時に、警察国家というものをつくつてはならぬ、こういうことでいろいろ考えてみますと、結局重点は公安委員だ。私就任いたしましてから、国家公安委員も地方の公安委員も機会あるごとにお目にかかつております。国家公安委員に対しては、いつでも私の部屋はあけつばなしである。どんなときでも来てください、こう申して、現に国家公安委員長も二、三度にわたつておいでになつて、かなり長いお話を承つております。そこで能率化ということになると、これはとかくつきまとうのがめんどうになる心理は人間につきものでありまして、そういう心理を非常に助長して行きますと、公安委員なんかめんどくさい。あそこにかけるひまにもつとてきぱき男らしい政治ができるのだというふうに考えやすいものであります。私もそういう考えを心に持たないように、みずから戒めてかかつているつもりでございます。あれがやはり警察国家にならない一種の安全弁ではないか、こう考えております。また従つて公安委員の欠員が他日あります場合には、できるだけりつぱな、庶民の心理も心得、また私どもに対してもにらみもきき、多少苦言も言える、ちよつとうるさいところだという感じを残した方が、かえつてよいのではないか、こういうふうに思つております。これは率直なお話でございます。
  65. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁を聞いてやや安心をしたわけでありますが、従来この関係はきわめて公安委員会が粗末に扱われておりまして、私ども非常に不満に思つてつたのでありますが、幸いにして大臣がさようなお考えであるといたしますならば、十分にひとつ公安委員会の権能というものを発揮できるようにしていただきたい。そうしてやはり民主警察に尽力をしていただきたいと思うのであります。  その次に大臣に聞いておきたいと思いますことは、これは非常に大臣に対しては不遜な言葉であつて、あるいは怒られるかもしれないと思いますが、警察行政というものの見方をずつと検討して参りますと、公安委員会制度がありまして、そうしてこうした場合におきましても、ほんとうは公安委員の意見を聞くことが正しいと私ども考えております。主管といいますか、担当大臣といいますか、その大臣意見はもちろん行政の責任者でありますから私はお聞きするのでありますが、これが運営の責任者であります公安委員会意見を十分われわれは聞いて、その上で、この種の問題はやはり処置する方が正しいと考えております。そこで問題になつて参りますのは、運営の管理の問題と行政的の関係とさらに検察関係の問題であります。大臣承知の、というよりも大臣自身が検察庁の大臣であることに間違いございません。従つて検察関係と、こういう警察の行政面までも、一人の大臣が両方おやりになつておるということは、私は法律建前から、組織がどうのこうのというわけじやありませんが、私どもから考えてみますと、一面においては検察権を持つている、一面においては警察権を持つている、いわゆる行政警察権まで持つているということになりますと、少し行き過ぎができるきらいがないわけではありませんが、こういう組織の上で、大臣はどういう心構えで、この警察行政を行つておられるのか、その点をひとつ聞いておきたいと思います。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 一役にしていただくと非常に私も助かるのでありまして、実はこれは内明け話でありますが、就任のとき二つでない方がいいのではないかということを申した。しかし検察関係と警察関係がとかくいろいろな露骨な話でありますが、うまく行かないことが多い。気分の違いが多い。それを両方かねて、融合して、仕事ができるようにしてくれ、――あなたも選挙をなさつてよく御承知のことと思いますが、なかなか地方の第一線へ行くと気分が違つております。同じ大臣が就任して、両方のほんとうに融合した気分をつくるということも一案ではないか、こう考え直して、実はその職にあえてついているのでありますが、率直に私の人間としての気持を言えば、一役になれば非常に助かる。しかし就任している以上は両者の融合、円満な双方の意見交換、連繋ということに全力をあげたいと考えております。
  67. 門司亮

    ○門司委員 大臣も非常に忙しいでしようから、私はこれ一つだけ聞いておきたいと思います。それは警察法特例に関するこういう法律案が出ておりますが、これはもう大臣も御承知のように、さつきからも大分議論になつたのでありますが、十三国会にもこういうものが出ております。そうしてこれは二回目であります。わずか一年の間に、こういう特例法が二度も出て来る。これは同じものであります。そういうことが今日の警察法の中に、実はできるように警察法には書いてはありませんが、特例を設ければ設けられないことはないわけであります。そうなつて参りますと、この警察法の第四十条の文章というものは、ほとんど死文にひとしいものになつて参りまして、せつかく十月の三十一日までに廃止するすべての手続を終了したものは翌年度からできるという、これは地方の行政の面にも予算に関係いたしておりますきわめて重要な問題である。中央におきましても、やはり予算に関係する問題である。行政的の見地からこういう警察法が出ておりますが、これも昭和二十六年に、こういう改正をいたしましたときにも、ただ行政上からそういうことがいいのであろう、そういうことでこの改正が行われて法律なつております。ところがこれが悪用されると言うと、少し提案者に対して悪いのでありますが、悪用されたような形で、とにかく廃止することができるという条文ができたのだから、廃止することについては、本文がどうあろうと、こういう特例法ならやれるのではないか。そこまで言うと私は少し言い過ぎますけれども、立法に関係する者のある程度の行き過ぎではないか。あまり情実があり過ぎはしないか。陳情があつたら、困るだろうから、法はこうなつているが、特例を設けて救つてやろう。これは少し行き過ぎではないか。しかもこれが一年のうちに二回もやるということになると行き過ぎもはなはだしいと思う。そこでこういう問題に対して、大臣といたしましては、先ほどもちよつとお話の中に警察法に対するお考えはあつたようでありますが、警察法に対して根本から検討して、これを改正するという御意思をお持ちになつているかどうか。もしお持ちになつているとすれば、いかなる構想で大体いつごろそういうものが、国会なら国会に示されるようになるかということを、これは少しつつ込んだようでありますけれども、もしお考えがありますなら、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  68. 犬養健

    犬養国務大臣 御趣旨根本には全然私は賛成でございます。ただどうも議員提出案ではあるが、提案の理由が不足だから六十二箇町村国警移管は反対であるという立場は私はとりませんが、移管なつて来た理由がそういういろいろ複雑な要素があれば、今後はその国警移管の運動とかそういうことは一切とめたいと思います。自然にほんとうの地方の庶民生活の結果として、どうしても国警移管せざるを得ないという庶民の声ならば受取れる。ある一つの人工的なものがあつたときは、わかり次第それは通牒をもつて防止したいと考えております。  第二の警察法改正でございますが、これは実はなかなかいろいろな考え方があるのです。今私ども考えておるものには、やはり人間の考えでありますから、どれにも欠点がある。その欠点をどうやつてなくし、先ほどからるる申し上げたような趣旨に沿うかということで、まだ正直なところいろいろ考えておるのでございます。その考えの途上において申し上げると、これはすこぶる民主的でよいのでありますが、そうなりますとまたこれは非常にごつた返すようなことになりますので、秘密政治ではありませんが、もう少し成案ができるまで構想を申し上げることを御猶予願いたいと思いますが、次の国会になるべく間に合せたいと思つております。そういうような程度でひとつ御了承願いたいと思います。
  69. 門司亮

    ○門司委員 これもちよつとつつ込み過ぎておりますが、もう一言だけお聞きをしておきたいと思いますことは、警察制度改正にあたりましては、今こういう問題は多少問題ではありましようが、一番大きな問題は今の日本の治安対策をどうするか、いわゆる警察力による治安対策であります。警察予備隊でありました場合には、第一条の目的の通り国家地方警察自治警察の足らないところを補うのが、警察予備隊であるとはつきり書いてありますが、大体警察力における治安の対策は、私ども一応よいと思う。あれは御承知のように保安隊にかわつて参りまして、その性格がなくなつて来まして、単に国家の秩序を保持するためということになつて来まして、性格が全然かわつて来たように思います。そういたしますと当然警察力による治安の確保ということが、次に大きな問題として浮び上つて来ると私は思います。そういう問題に対しまして、大臣といたしましては今の国警の組織だけで、警察力による治安対策が完全であるとお考えになるかどうか、あるいは何らかの改正を加えなければならないかというようなことをお考になつておりましようか、この点をもう一点だけひとつ……。
  70. 犬養健

    犬養国務大臣 御承知のように予備隊の時分は手が足りないときは出てもらいました。お互いのめざしているのは文化国家です。ちよつと事があると今の保安隊が飛び出すというようなことは、極力避けなければならぬし、保安隊も御指摘のようにかわりました。そこでその埋合せをどうするかという問題でございますが、やはり先ほどちよつと申し上げましたように、機動警察力というものを持たなければならたい。固定的にある地域に置いているだけでは、どうも最近のいろいろな事件の――名前は申し上げられませんけれども、お察しの通りでありまして、あれじやだめなんです。機動警察力を持つ。それから警察の職務に属すべきいろいろな騒擾事件、これの程度が非常に近代化して高まつて参りました。また知能化したと言つてもいいでありましよう。それに対処するだけの装備も考えなければならない。また輸送力も高度化しなければならない。なかなか金がかかります。それから写真とかいろいろなこともいるでしよう。ですからその意味からいつて、先ほど申し上げましたように、地方の自治警は一人当り経費相当多くなると思います。これは御承知願いたいと思います。その他内外の情勢に照して、もつと機動力を持つた警察並びに装備力の高度化した警察ということを考えております。
  71. 青柳一郎

    青柳委員長 大臣予算委員会から呼ばれていますから、そのおつもりで願います。
  72. 横路節雄

    ○横路委員 私大臣にお尋ねしたいのですが、今度の自治体警察編入に伴いまして必要な経費の一億二千八十六万円が今度計上されておりますが、先ほど私政府委員の話を聞きまして、この一億二千八十六万円の金は、計上する必要がなかつたというように私は考えたわけです。これは計数上非常に大事な問題ですから、大臣にぜひお尋ねしたいのですが、先ほどこういう説明を私たちは受けたのです。今度、今議案になつておりますところの自治体警察をこちらに移す、それについては十月三十一日までに五十七箇町村がきまつた、あと日曜日あたりから投票になるのが五箇町村、計六十二箇町村で約千二百名で月に五千万円になるが、これはいろいろやりくりでできるのだ。そのやりくりの話を私はお聞きしていたわけです。そうしましたら、現在国家警察は六万五千人あつて、いろいろ充当したいと思つて補充について努力したけれども、どうしても平均一%の欠員が生じている。六万五千名の一%というと六百五十人ですね。十二箇月というと七千八百人の欠員が生じているわけです。そうするとただいま議案になつている六十二箇町村のものが、かりにこれが通らないということになれば、どういうことになるかというと、一億二千八十六万円の提案の内容は、自治体警察から国警編入された二十五の自治体警察の六百八十七人と、それから鹿児島のところの一部十一人、合計人員にいたしまして六百九十八人の九箇月分です。そうしますとその合計は六千二百八十二人になりまして、先ほど政府委員は年間通して七千八百人欠員が充当されない、こういうふうに言つているのです。そうすれば一億二千八十六万円を計上した、その人員の六千二百八十二人という点は、もしもこの議案がここで可決をされなければ、一億二千八十六万円については計上する必要はない。まさかこの予算を組んだときに、こういう特例法でもつて、こういうふうに議決になるかどうかわからぬ、そういうものを組んでいるのに一億二千八十六万円を組まれたことについてはどうも政府委員の答弁では、一億二千八十六万円は当然削除してしかるべきだ。大臣は先ほどお聞きにならなかつたようでありますが、政府委員は私に先ほどそういう答弁をしておる。政府委員の答弁に間違いがないのか。大臣がこの一億二千八十六万円に組まれたときの基礎的な数字はどうなつておるか。その点ひとつお聞かせいただきたいと思います。いらないものを無理に組んだのではないかと思います。
  73. 犬養健

    犬養国務大臣 これはずるく逃げれば政府委員の言う通りだといつてそれでおしまいなんですが、そういうことは言いたくない。ただ私金勘定はあまりうまくないので、何ならよく調べまして御返事いたします。ずるいようなごまかしをしたくございませんから、十分これを検討いたします。
  74. 横路節雄

    ○横路委員 それでは大臣からはひとつよく調べて答弁をしていただくことにいたします。この点につきましては私は、自治体警察が強硬で、五十七箇町村プラス五箇町村の六十二箇町村について与党側から出されていますが、当然これに伴うところの財源措置はあるものと考えておつたのです。ところが政府委員からは、その財源措置はいらないのだ、それはやりくりでできるのだ、こういうので私はやりくりの内容を聞いていたわけです。ここに千二百人に対する三箇月分の財源措置を見るというならば話はわかる。ところが既定の経費でやりくりできる内容が、年間通して約七千八百人欠員が生じておる。これに対しては本年度は充当できないから、千二百人の三箇月分、五十万程度は既定経費でやれるというお話なんです。どうも政府委員の答弁は少しおかしいのですが、政府委員、それは間違いございませんか。この点は何でしたら、私の方であとでまた予算委員会の方で、私たちの関係の予算委員からお聞きしてもいいのですが、政府委員に間違いがないかどうか、もう一ぺんあなたからお聞かせ願いたい。
  75. 犬養健

    犬養国務大臣 私はごく大ざつぱな人間で、金勘定はうまくないのですが、私の知つている範囲では欠員充当をがまんして、地方要望のこれを入れてその方に金をまわすのだ、こういうふうに心得ておりますが、しかし御指摘の点についてはもう一ぺん調べて、誠意をもつてお答えをいたします。
  76. 横路節雄

    ○横路委員 私は大臣質問とあわせて希望も申し上げますが、決して国家警察について欠員なつたものをがまんしていただかなくてもいいと思います。どうかひとつ治安対策の上で国できめたものはやつてもらいたい。そうでなければ一般の地方公務員については、あるいは行政整理を五%ずつ全部人員を落しているのです。もしもあなたの方でこれががまんができるとすれば、当然一般の公務員並びに地方公務員並に五%落すべきだ。しかしそうではなしに、当然あなたは責任をもつて、がまんできるではなしに、欠員に対しては補充すべきなんだが、その点はがまんをしておるという答弁では私は納得ができない、だから予算上ぜひ――大臣はおとなりにすわつておる政府委員からの答弁をお聞きにならなかつたと思う、お聞きにならなかつたからそういうように答弁されて、担当の方をかばう気持はわかりますよ。政府委員の方は基礎的な数字でおやりになつたので、私は非常に解せない話だ、当然財源措置について話があつたのだと思つたがない。そういう説明で、あなたの基礎的な数字に間違いがあつたのだ、間違いがあるなら後刻と言わないで、聞違いを率直に話してもらつた方がいいと思う。
  77. 犬養健

    犬養国務大臣 ごもつともであります。十分打合せを惜しむものではございませんが、一点ここを御了解を得たい、がまんするのはけしからぬというのですが、それはひとつ大蔵省に激励して言つていただきたいのです。一例を言いますと入国管理庁管理局になりまして私の所管に移つたのでありますが、いろいろの外国の人が密入国して来る。あんな始末ではだめじやないかといつて閣議でしかられるのです。それを取調べる要員が実に不足している。大蔵省は、今申し上げたように、欠員補充というものは原則的にしない。そこでどういうことをしているかというと、日雇い勤務の形でもつて密入国の取締りをやつている。そういう無理をしているのです。この点でも、今度は六十二箇町村移管する、だからふやせといつても、事実上はなかなかそれはできない。できないから、国家警備力から言うとおしかりがあるかもしれませんが、やりくりをして、欠員補充はまた次の予算でやつて行こう、その間は何とか人の能力、勤勉力で埋めて行こう、こういうことで実は私はこれを了解いたしたのであります。しかし数字の根拠については、もちろん虚心坦懐、打合せとか調査を惜しむものではございません。
  78. 横路節雄

    ○横路委員 私のお話申し上げたのと、大臣の御答弁と、ちよつとその趣旨が違うのでございますが、それはやはり事了算上のことでございますから――現実に政府委員の方から、年間通して七千八百人程度は充当できない、こういうふうに言われておるのでございます。そうしますと、今ここで特例に関する法律案を議題に供されておりまして、補正予算を組むときには、このことは別に議題になつていなかつたのです。だから私の申し上げるのは、それだけの欠員があれば、今ここで一億二千八十六万円を組んだことは、これは必要ないのだ、逆に言えば、かえつてこれは大蔵省をつつつけば、大蔵大臣は、ああそうか、それはいいことを教えてくれた、それではひとつ国の経費の足りないときだから、一億二千八十六万円落そうなんということになつて来るのではないかと思いますので、基礎的な数字に誤りがあるのでないか、そう思いまして、それならばあとで適当なときにお知らせをしていただきたいと思います。私の大臣に対する質問はこれで終ります。  私は提案者鈴木さんにお聞きをいたしたいのですが、それは鈴木さんが代表になつて提案されました今の特例に関する法律案の、警察法第四十条の三第八項の規定によるところの十月三十一日までに警察維持しないことに決定した旨の報告云々、これは当然四月一日に行われるのを、何とかひとつ特別に一月一日からやろう、こういう趣旨なんです。ところが問題は、こういうように決定された五十七箇町村のほかに――住民投票が十二月十四日というと、あさつてなのです。それが香川県の琴平、その次に十五日、十七日、十八日、十九日と、これから住民投票をやるものをひつくるめて御提案なすつているのです。自治体警察から国家警察移管する場合の問題はいろいろあろうと思います。たとえば治安の問題であるとか、あるいは能率の問題であるとか、しかし町村として一番大きい問題は、だれしもが考えておりますように、町村財政との間にバランスがとれないのでやるわけです。それで私は鈴木さんにお尋ねいたしたい点は、この住民投票をやりましたときには、十月三十一日までに住民投票をやりました五十七箇町村については、この法の建前に準拠して、来年の四月一日から全部国警移管になるかどうかということで投票をやつているわけです。ところが、あさつてから行われる五箇町村については、もしもお前たちが廃止に賛成すれば、この特例法で一月一日からやるのだぞ、こういう前提条件をここで打出されて、この住民投票というものはそこにいろいろな条件が付されておつて、十月三十一日前にやつたところの住民投票と、これから行われるものとの間に著しい違いがあると私は思うのでございます。従つて住民投票は、今回これを廃止すれば、これは来年の……再来年の……ということは、百も承知でやるわけです。さらにこの点については、請願書の形で十一月十日付でわれわれ地方行政委員のところに来ているものの中にこれは当然入つております。一体あさつて以降十九日までに、しかも住民投票でどうなるかわからないものに、前もつて一つの既成の事実をつくつておいて住民投票をやらせるということについては、十月三十一日以前にきめたものと、今後のものと二つ画然と区別をして、警察法第四十条の三第八項の規定、あるいは法の精神というものを生かしてやることが必要でないか。私は何もむちやに反対しているわけではない。やはり筋を通して行かなければならないじやないか、その点をお答え願いたいし、それからこの十二月十四日以降の五箇町村については、期日についてはこの特例法の中に私はお考えをいただきたいと思うのです。その点は私は決して無理は言うていないつもりですが、ひとつ提案者の方でも私どもの意のあるところをくんで、親切なといいますか、われわれに理解の行くようなお答えをいただきたい。
  79. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 ただいまの御質問はもつともだと一応考えるのであります。私、提案者の一人といたしまして、この法律案を提出しておるのでありますが、私がこの法文を書き、また提案している気持は、いつもこの住民投票をやつている町村の上に思いをやりつつ、現実に即したような法律をつくつて便宜をはかつてみたいという考え方から出発しておるわけであります。そこでただいま法律的にお話になりました通り、五十七につきましては、確かに十月三十一日までにすでに住民投票は終つてしまつておるのでありまして、その当時におきましては、来年の四月一日に国警移管されるであろうということを考えつつ、住民投票をしたのではないかと想像するのであります。従つてそのもののみを取上げてこの特例法の中に入れることは、法律的な理論から見ますと、確かにその通りやるべきだと思うのであります。ところが解散などがありまして――解散がなかつたならば、おそらくその通り行つただろうと思いますが、御承知通り解散がありまして国会も遅れて、そうして二十八年度予算が幸か不幸かまだ決定しておらないことになつたわけであります。もし解散等がなかつたならば、すでに二十八年度予算の大体の方針は決定するような運びになつておりますから、十月三十一日で打切るという警察法の基本的考え方は当然であると思いますが、そういうように現実が移行されておるのを考えますと、その以後において調べてみましたところが五つでありますが、その五つは、すでに十月三十一日以後私ども法案を提出する前に町村から請求かあり、また町村会において議決が終つてしまつたという報告が国警の方にあつたわけです。それが五つなんでありまして、すでに矢は放れてしまつておる。ですからして、議決した以上は必ず住民投票というものは行われるという段階になつておるわけでありますから、すなわち議決即国民投票と考えてもいいのでありますが、その国民投票がまだ行われてはおらないけれども議決はされておる、こういうものが五つあることを知りましたので、それで、はなはだあれでありますが、この五つを一緒にいたしまして、この二十日までに住民投票が行われたものについては、法律そのままで行きますと再来年の四月一日から転移されることになるわけでございますが、それを希望するならば来年の一月一日からでもよろしいということにいたしたわけであります。その希望がなければ――しかもその希望は町会の議決による希望でございまして、その町会の議決によつて希望をしなかつたら、それは当然再来年の四月一日から転移をするし、希望をしたら一月一日にそれを切りかえる、こういうようにその町村意思を尊重した法案をここに出すということがいいんではないかという考え方からしてこういうものができた次第であります。その当否は別として、そういう気持からいたした次第であります。  そこでしからば今後行われるところの五つの住民投票は、どういうようなことを村民、町民に訴えるかということでありますが、五十七につきましては、来年の四月一日から転移するという法律建前においてやられた。ところがそれにもかかわらずその後一月一日になるということで、これはおそらく住民投票のときに考えていた地方民の考えとは少し違つたことにこの法律なつて、三箇月繰上げられることになるのでありますが、その五つにつきましては、この法律を知つておるか知つてないかまだわかりませんけれども従つて現実の場合においては、この法律を知らない場合には再来年からと考えるでありましようし、知つている場合においては、この法律の適用を受けるということを考えつつ投票に行くということも行われるだろうと思うのでありますが、なるたけ私たち提案者といたしましては、この決定を早くして、そうして町民投票の際には、この法律案が成立してはつきりした形において投票をしたい、こういうような考え方でございます。  そこでそれじや少し軽過ぎるんじやないかと言われますが、法律は国会がつくるのであつて基本法でありましようが、特例法でありましようが、法律の効果は同じでありまして、これは決して軽いのではございませんから、この法律が国会を通過した限りにおいては、基本法を修正したりつぱな法律である、私はこう考えておるのでありまして、決してこの法律を軽く見ておらない考え方から提案をいたしておる次第でございます。
  80. 横路節雄

    ○横路委員 私は鈴木さんにお尋ねしたいのですが、今の鈴木さんの御説明の中に、私ちよつと無理があるんじやないかと思うのです。それは実は町村議会議決を五つやつたので、今回あわせて提案したものだというのですが、私たちのところに参りました議案提出の内容は、十二月八日に議案を出して来ておる。ところが長崎県の三つの町は十二月七日に議決が一つ、十二月八日に議決が二つなんです。だから今のお話から行けば、長崎県の十二月七日の一つ、それから十二月八日の二つを合せた三つは除かなければならぬということになる。その点は今の鈴木さんのお話をそのまま率直に受取つておれば、当然長崎県の三つは除外すべきであると思う。そこでないと、十二月八日に与党側で議員提出にきまつたということは、お互いに選挙区に基盤を持つておる国会議員ですから、当然それぞれの町長なり町議会に話が通じないわけはないのであります。もしもそういうことをこれで今きめておけば、特例法でもつて一月一日からなるぞということになると、さきの犬養国務大臣の話じやないけれども、これは人為的に抑制したことになる。人為的に抑制したことになれば、何らかのさしずをもつて併合させることになるのじやないかということをさつきも質問したばかりであります。そういう点から、鈴木さんの今の御説明の御趣旨から行けば、当然長崎県の三つをここで除外されて提案されることが妥当だと私は思います。  それから次に、鈴木さんのお話を聞いたがまだ納得できない。十月三十一日でやつた、しかし実は衆議院の総選挙があつたから遅れたんだというのだが、それであれば、十月三十一日までのものが実は十一月五日になつた、あるいは十一月十日になつたというならば話がわかるのです。ところが十一月二十四日に一つ、次は十二月四日、次は十二月七日、十二月八日となつては、どうも今のお話がはつきりしないのです。その点が一つ、それからもう一つ一番問題になるのは住民投票だと思うのです。これは警察法の中に、自治体警察廃止あるいは廃止された後において置くことについては、住民投票が最高の意思決定機関になつておるわけであります。それに対して、住民投票が行われない前にこのことについてやることは、鈴木さんは国会でこれをきめたつて、向うの投票には関係しないとおつしやるけれども、そうではございません。自治体警察廃止するか廃止しないかという住民投票は、各町村においては、御承知のように賛成、反対派両方とも必死になつてやるわけです。そのときに、国会で通つたこの法律案を、廃止賛成派がだまつておるわけはないのです。当然住民投票の先頭に立つて、マイクをつけて、何月何日に国会においてはこの通り議決なつた。これに反対する者は何々町の財政に過重な負担をやらせるといつて反対派をやることは当然なのでありまして、これを、それぞれの町村は、おそらく国会で議決しても知らないだろう、知つても大したことはないだろう、住民投票に対して横からそういう力は加わらないだろうというお考え方は、私は何としても了解ができないのです。その点は、やはりここで決定する以上は、筋の通つたことでやるべきではないかと思うのですが、その点鈴木さんは提案者としてつらい点もあるだろうけれども、住民投票に対して、やはり住民が賛成反対をそれぞれの立場で公平にやれるように、国会の決定が不当な力にならないように、また犬養国務大臣も言つておりますように、この点については提案者として再考できないかどうか、この点ぜひお願いしたいと思います。
  81. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 るるお話がございましたが、長崎県の分が、何か国会関係の方との連絡でもつて行われているようなふうにお考えなつておられるのでありますが、これはまつたくそういうようなことはないのでありまして、先ほど私から御説明申しましたように、五十七その後も住民投票を行うことを議決または直接請求のあつた町村が出て来ておる。こういうことからして、この方々も一緒に希望するならば一月一日から移行することができるようにした方がいいのではないかという考え方から、これが行われたのであります。そこで実はこれにひつかかる町村は、どういう町村があるかということを国警を通じて調べましたところが、この五つがあることが実はわかつたのでありまして、その点は前の十三国会においていろいろなことがあつたそうでありますが、そういういきさつとは全然違う内容を持つておるものであるというので、もし正直でなければこれをお示ししなくてもよかつたかもしれない。そんなもの知らないということで行くかもしれない。ただそれでははつきりしないからというので、国警を通じまして調べてみたところが、こういう報告が現われたということになつておる事実を御了承願いたいと思います。  次に投票の点でありますが、この法案がなかつたならば、この五つにつきましては当然再来年の四月一日から転移されるという法律を頭の上において投票することであるから、この法律が通過した場合と相当違うではないか、従つて警察法の原則に従つて自由に投票させることが、警察法の原則を尊重するゆえんではないかというお考えもごもつともだと思うのであります。従つてもしこれがなかつたならば否決されるかもしれないし、可決されるかもしれないが、この法律が通つたならば可決の方向に行くのではないかという想像もあるようでありますが、この点は先ほど申し上げましたように、法律は原則に対する特例でありますから、その法律は最高の権威をもつて住民に示されるのでありまして、これを幸いに通していただけば、国会の意思になるわけでありますから、その点についてはちつともかかわりはないと私は考えておるわけであります。ただ法律的な効果は別としまして、現実の場合の想像でございますが、この点についてはこの法律の中をよく関係者に了解していただきまして、来年の四月一日でもできるのだし、再来年の四月一日にしてもよろしいのだし、来年の一月一日から移行してもよろしい、どつちをとつてもよろしいのだということをはつきり訴えるならば、その点については決して強制するようなことがない、こういうふうに私は了解しております。
  82. 横路節雄

    ○横路委員 今御説明を聞きまして、私も鈴木さんのお話のように善意に解釈したいのです。善意に解釈すればするほど、提案者にこういう意思があるかどうかお聞きしたいのです。実はこういうものがあるかどうか知らないでやつたということであれば、十月三十一日までに公平な立場において賛成、反対の立場をそれぞれ主張して住民投票をやられて、十月三十一日までに決定したものだけを、ここで当然取上げるべきでございまして、ことに今回の国会でこれが提案されて、もしも原案のまま、修正されないで決定されたとすれば、十四日以降の住民投票は、だれが何と言おうとも廃止賛成派はそれでもつてやることは当然なのです。この点は、国会の権威をお互いに言うならば、これはなお十月三十一日までにして、爾後のことについてはまた爾後に考えればいいのでありまして、私は法の建前は法の建前として生かすべきだ、こう思うので、この点は再考していただきたい、私はこういうようにお話申し上げる。これは私の方が無理でないと思うのですが、鈴木さんもう一ぺんあまりこだわらないでひとつ……。
  83. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 十月三十一日というものを法律根本的な基礎のようにお考えなつているようですが、今まで国会において可決されました特例法、昭和二十七年法律第百四十三号は附則で廃止されるものです。その廃止される法律の内容も十月三十一日というものを動かすべからざるものとしてつくつたものではありませんで、このときもまた昭和二十六年十一月一日から昭和二十七年五月二十日までに住民投票があつたもの、こういうふうにいたしまして、五月二十日までにやつたものを転移をせしめた、こういうような形になつているのであります。いつでも十月三十一日だけを固執してそれをやらなければならないというような前例も実はなかつたものですから、そういうふうにいたしたわけであります。すなわちこの前にかわりましたのは、本年の五月二十日までに住民投票のあつたものが救われたのでありまして、今度は十二月二十日までに住民投票をやつたものに適用しようというわけであります。だから十月三十一日というふうに強く考える必要は何もないので、この法案の通ることを見通しをつけて十二月二十日ということにしたわけです。その点は私の方から御了承をお願いしたいと思います。
  84. 横路節雄

    ○横路委員 提案者にもう一度お考え願いたいと思いますことは、まだ住民投票が終つていないのですから、やはり国会できめたものがその住民投票について大きな影響を与えるので、そういうことでなしに、公正な立場で住民投票が行われるためにも、ぜひこの点は修正されるべきものであると私は考えております。何でしたら与党側の方で休憩でもなすつて、ひとつ御相談していただければ非常にいいのじやないかと思います。
  85. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 実は私ここに長くおりますが、この法案はこれで三回出て来たのです。くるくるかわつて法の権威に関することを歎くのです。それから第二点は、この委員会で、今警備隊になつておりますものを保安隊として審議したのですが、そのときにこの席上で大久保長官は、こういうものは軍隊とは何も関係のないものであつて、ただ警察と同じ仕事をしているものであるということをおつしやつたのです。ところがそれがだんだんと軍隊化しつつある。これを私は非常に歎くのです。それからもう一つ、この委員さんの中に元の内務省が復活することを望んでいるということを言明せられた委員さんがおります。名前を言うてもよろしい。それから元の郡役所が復活することを望んでいるというような、旧体制依然たる頭の古い、われわれとセンスが違うような代議士が自由党におる。それでいいか。こういうような代議士がおつて、日本の国をだんだん右翼化せんとするからして、私たちは声を大にして言うのです。女と思つてばかにしたらだめです。だんだん民主警察になるのであるとおつしやつておるが、私たちをごまかして、特例々々で自治体警察国家警察にしている。これで三回です。それでこの前のときに野党の者は声を大にして叫んだら、そういうような法案はもう出しませんとおつしやつた。それでよろしいかと言つて私たちは皆誓つたのです。その誓つたものが、ここにこうして三回も出て来た。そうして元の内務省になり、だんだん右翼になろうとしている。そして日本の民主主義が遂に元の封建制になることを憂えて、私たちは一生懸命に叫んでいる。私は鈴木さんに対しては敬意を表しておる。ゆえに私は鈴木さんに対して反対せんがために言うておるのではありませんから、鈴木さん、その辺は御承知を願いたいと思います。それで、私は何とかしてこれをまとめようと悪戦苦闘しておるのでございます。要は、私たちは日本が右翼化することを歎いているのでございますから、もう一度よく御相談くださいまして、ここに公安委員を呼んでいただきたい。  それから私は谷口さんにお尋ねします。教育委員ですら公選をなさいますのに、なぜ治安の重鎮である公安委員を公選になさらないか、この点を私は聞きたい。
  86. 谷口寛

    谷口政府委員 お答え申し上げます。ただいま大石委員さんからの御質問は、教育委員は公選になつておるが、治安の最も大事な管理をする公安委員が選挙になつてないということは、いかなる理由によるかという御質問であつたと思うのであります。御指摘通り、現行の警察法におきましては、国家公安委員並びに各都道府県、市町村の公安委員は、直接公選の方法はとつでおりません。議会の承認した者を、あるいは総理大臣、あるいは都道府県知事、あるいは市町村長が任命するというような形をとつておるのは、御指摘通りでございます。これは今御意見にありましたような制度をとるのも、一つの考え方とも存ずるのでありまするが、治安維持の性質から見まして、法律の制定といたしましては、かような方法がとられたものとかように考えておる次第でございます。
  87. 青柳一郎

    青柳委員長 暫時休憩いたします。     午後三時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後四時十七分開議
  88. 青柳一郎

    青柳委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  本日はこの程度で散会いたします。明日は午前十時半より会議を開きます。     午後四時十八分散会