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1953-03-05 第15回国会 衆議院 大蔵委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月五日(木曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 奧村又十郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 内藤 友明君    理事 松尾トシ子君 理事 佐藤觀次郎君       上塚  司君    大泉 寛三君       大村 清一君    小山 長規君       島村 一郎君    中田 政美君       西村 茂生君    三和 精一君       小川 半次君    加藤 高藏君       吉田  正君    久保田鶴松君       坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    泉 美之松君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    塩崎  潤君         国税庁長官   平田敬一郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    石井由太郎君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月五日  委員岡崎勝男君辞任につき、その補欠として三  和精一君が議長の名で委員に選任された。     ————————————— 三月四日  国の所有に属する物品売払代金の納付に関す  る法律の一部を改正する法律案参議院提出、  参法第八号)  旧外貨債処理法による借換済外貨債証券の一  部の有効化等に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第一一八号)(参議院送付)  保険業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一九号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会要求に関する件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四一号)  富裕税法を廃止する法律案内閣提出第四二  号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四三号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四七号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出  第九〇号)  納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第九四号)  関税定率法等の一部を改正する等の法律案(内  閣提出第一〇一号)  砂糖消費税法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇二号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇三号)  有価証券取引税法案内閣提出第一〇四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇五号)     —————————————
  2. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 これより会議を開きます。  本日日程に提げました税関係法案十三件を一括議題として、質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。  吉田正君の御要求になりました中小企業庁長官は、ただいま通産委員会で答弁中でありますので、それが済みますとすぐ出席することになつておりますから、御了承願います。吉田正君。
  3. 吉田正

    吉田(正)委員 渡邊主税局長にお願いしたいのですが、税の大衆化に関する問題であります。最近の税務署税務官吏一般民衆との間が、非常に深刻な対立的な形になつて来ておるのは御承知通りで、まじめな税務官吏が川にたたき込まれたり、雪の上へころがされたという例が私の方のいなかにあるのであります。それで、問題は結局税を納めることに対して、それに協力するために主税局としては一体どういうような方策を立てておるか、いわゆる税の大衆化についてお尋ねしたい。
  4. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 今の問題の直接の執行につきましては、御承知のように現在国税庁がやつておりますので、あるいは国税庁長官の方からさらに具体的に御答弁申し上げた方がいいかと思いますが、結局税務署納税者の間にそうした感情的なもつれが生れるということは、大蔵省といたしましては一番嘆かわしいことだ。これはぜひとも根絶しなければならぬ問題であると痛感しております。何と申しましても、事態が一番険悪でありましたのは昭和二十三年、四年のころではなかつたかと思つております。いろいろな意味におきましてインフレが高進していた過程におきまして、税の負担が現在に比べまして特に重かつた、こういう時代におきまし納税者といたしましては、納めなければならぬという気持はありましても、現実になかなか納めるのがむずかしいというところにいろいろな困難がございましたし、税務署の方といたしましては、やはり税法に掲げられた限りにおきましての税は負担していただかなければならぬ。その場合にさらに調査の点におきまして、税務署の手が思うように届かなかつた、あるいは納税者の数が、当時は基礎控除とかいろいろなものが低かつたせいもありますが、非常に多かつた。また一つ調査の不十分といつたようなことも重なり合いまして、あれやこれやでもつてそこに苛酷な課税だといつたような批判が多分に出まして、その間納税者税務署の間が、あるいは税務署員との間が非常に悪かつたことは非常に遺憾に思つております。従いまして減税の場合におきましても、われわれといたしましては、そうした摩擦の一番大きな中心になります所得税の問題、これが何と申しましても一番大衆負担として強く身に近く響きまして、しかもそこに一番大きな摩擦原因があつたのではないか。従いまして減税が可能である限りにおきまして、やはり減税中心所得税に置く、そして所得税課税対象となる人の範囲というものも、できるだけ小さな所得者はこれをはずすことによりまして数を少くする、そうすればおのずから税務署の手も行き届いて、残つた人に対しましては相当調査ができて行くのじやないか、こういう方向税制改正も実は考えているわけでありまし幸いにしまして、ここ一、二年におきましては、そうした関係から、調査の方も従前に比べれば、はるかによくなつて来ているのじやないか。調査が行き届きますと、納税者の方としましても、税務署の話を聞いて、なるほどと納得していただける場合も多くなるという線に進み得るのではないかと思つております。私といたしましても、現状は決してまだ満足すべきものでもないと思つておりますし、もつもつほんとう意味で大いに税務行政というものを民主化して行くというか、大衆のものにして行くという方面努力して行くべきものだと思つておりますが、従前に比べれば、税務署に対するそうした摩擦が改善されて来ているということも申し上げ得るのじやないかというふうに思つております。現在といたしましては、先ほど申しましたような線に沿いまして、同時に税務行政につきましても、できるだけ納税者によく納得していただいて税金を納めていただくという線に、税務行政を持つて行くように税務官吏として努めるよう指導監督して行く。そういうことによりまして、税務行政ほんとうに、納税者の納得の上に立つて円滑に進んで行くということを目標に、現在努力しているわけであります。
  5. 吉田正

    吉田(正)委員 政府側でも非常な考慮を払つていることはよくわかるのですが、根本的には、大衆にとつて税金が重いということなんで、われわれ社会党といたしましては、月収二万円以下は免税にしろということを言つているのですが、これをあなた方はなかなかおやりにならないので、やむを得ないことなんですが、この問題につきましては、あとで御質問申し上げることにしまして、税の大衆化の問題について一つ問題があるのです。  それは所得税法律を見ますと、非常に文句がむずしかいのです。おそらくわれわれが見てもわからない。一番問題になりましたところの企業組合に関する法案があるのですが、これを読んでみたけれども、何のことか一向わからない。一晩かかつて読んだけれども、ぼくは頭が悪いせいかと思つたのですが、おそらく大蔵省の方は頭がいいからおわかりになるかもしれませんが、われわれは何のことだかわからぬ。企業組合の人が騒ぎ出したから、なるほどそういうこととかいうことでぼくらもわかつた次第で、これは大蔵委員としてまことにみつともないことですが、聞いてみたところが、みな一般の人はわからないというのです。これは要するに法制局も悪いのだろうけれども、大蔵省方々も考えてみたらどうかと思うのですが、文句が非常にむずかしい。そのために何のことだか一向わからない。何だか上から押しつけられるような気がする。今度の改正案は少しいい文句になつているかと思つて読んでみましても、ちつともよくなつていない。通産省とか農林省あたりの最近の法律案は非常にたやすく、民衆にわかりやすくできているが、大蔵省所得税限つて、こういうあいまいな、奥の方のまるで暗いところに置いてあるようなかつこうでわからないから、大衆が聞きに行つて税務署から教えてもらつて、そのついでにどなられるというようなことで、国税庁の方では、税の説明書を書いて税務署に渡して、講習をやつているようですが、そういうことの前に、文句を直すとかしたらどうですか。私が見ても、これは天下の悪文だと思う。わからないものを書いて喜んでいるのは、一体どういうつもりなのかお聞きしたい。
  6. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 われわれといたしましても、法律をつくりますときに、できるだけわかりやすい平易なものにしたいということを大きな目標としてやつております。私も十数年ずつと事務官時代から法案の起案をやつておまして、いろいろ苦労しているわけなりですが、大体こういうふうに考ふております。  一つ法律をつくりますときに、最初すらすらつと書くと、割合に首尾一貫したわかりやすいものができるのです。ところがその場合、何と申しましても、たとえば所得税のような場合でございますと、日本全国に住んでおる人が八千五百万、その中で所得を得る方はその何分の一なんですが、その方の全部にそれが適用されるものでございますから、そういう八千五百万の国民の中の何十人の方、何百人の方というごくわずかの方に必要な幾つかの特殊な例がございます。そういう場合、それでは課税がどういうふうになるのだということを頭に置きまして、やはりそれに対応するような適当な規定幾つか定めて行かなければならないのであります。さらにそれを穴埋めしてみますと、その次に、今度はまたこういう場合はどうなんだろうというようなことが考えられる。法案をつくりますときに一番苦労する問題は、そうした例外のケースがあつた場合にどういう事態になるか、この規定をやはり法律の上ではつきりきめておきませんと、その事態にぶつかりましたときに、非常に不権衡な状態ができるか、あるいは執行官庁裁量でもつて法律の中を離れた適当な裁量をしなければならぬ。こういうような事態にぶつかるものですから、そうした割合に例外的なケース事態を考えたような規定幾つか入つて行くわけなのでございます。たとえば所得税法に例をとつてみますと、変動所得に関する非常にむずかしい規定があります。あれが適用される方は非常にわずかなんですが、しかしやはりああいう規定が必要になつて行く。あるいはみなす配当という場合がございますが、減資の場合とか、そういう場合は、日本国中探してどれくらい一年にあるかといえば、非常に数としては少い。しかしそういう場合を考えての規定がないと、その場合にぶつかりまして、どうして解決するかというむずかしい問題が出て来る。そういう事例幾つか入つて来る場合におきまして、結局ごく原則的な規定と例外的な規定とが同じような大きさの活字で並んでおるものですから、普通の方々にはほとんど必要のないような規定が、かえつて条文としてはむずかしい規定となりまして、大きくのさばつておる。法律を頭から読んで参りますと、ほとんど例外的な規定でありまして、普通の一般の方にはそう必要のない場合でありましても、それが大きく出て来るものですから、そういうむずかしい条文にぶつかつてしまいますと、それから先を読むのはいささかがつかりして、いやになつてしまう。あるいは、どこの条文はそういう場合には必要ないのだという点などが、初めて読まれる方にはわからない。こういうような点が、所得税法のような特に非常に広い納税者対象とした法律でありますと、どうしても必要でもあるし、またそういう問題にぶつかつて来るのじやないかというふうに考えております。  それともう一つは、やはり法律文章正確性を期さなければならぬ。正確性を期さないと、たとえばあいまいな文章で、どちらにもとれるような文章でございますと、争いになつたときに、一体法律としてはどういう意味規定か、これが議論になりまして、そして絶えず裁判所まで行かなければならぬ。これはやはり避けなければならぬ問題だと思つております。国会の方で御審議願います際に、そういう意味においてはつきりした意図をそこへお出し願いますのも、正確性の問題がそこにあるのです。  大体法文の体裁を見て参りますと、現在の法文をわかりにくくしているのは、一つはそうした特殊な事例が織り込まれて行かなければならぬという問題と、それから法文正確性を期すというために、文章自身が何となしにかた苦しくなる。普通の解説めいたものを書く場合ですと、割合にすらすらと書けるものが、法律の場合は、それでは表現が非常に不正確だ。それが大体法文というものをこんなに読みにくくしておるゆえんじやないかと思つております。われわれといたしましても、現在所得税規定というもの全体がどうもややつこしい、もう少し何とかわかりやすい、納税者の頭にすらすらと入るようなものにならぬものだろうかというふうに考えております。もう一つ所得税法昭和二十二年に全部改正がありましたが、その後一部改正、一部改正で進んで来ておるものでありますから、これもわかりにくい一つ原因でもあるのではないかと思つております。シヤウプのああした大きな改正でも一部改正でやつて参りました。従つて、一応国会などが終つたあとという問題になると思いますが、時間を得ましたならば、コーデイフイケーシヨンの問題について全文を検討しまして、どうしたならばわかりやすいものになるだろうか、たとえば例外的な規定むしろ別に離してしまつて、本筋の規定だけまず頭の方にまとめてしまうとか——イギリス税法などは非常にわかりにくいのです。あれは御承知のように、あとからあとから法律をつくつて参りまして、一つ法典になつておりませんから、どうしても解説書がなければならない。それで大分前でございましたが、数年かかりましてコーデイフイヶーシヨンの大きな委員会をつくりまして、内容を審議するというよりも、法文化する方の仕事に相当の精力を費したことがありました。あれがものになつたかどうか、私ははつきり聞いておりませんが、そういう面について、われわれの方としても努力して参りたい。実はできるだけわかりやすくするということは、われわれの念願なんでありますが、今申したようないろいろな関係があるものですから、なかなか思うような成果があげられない。もう一歩くふうして考えてみたい、かように考えております。
  7. 吉田正

    吉田(正)委員 御苦心のところはよくわかるのですけれども、要するに小売店の主人公が見て、ある程度理解ができるようなものでないと、政府だけが一人でもつて喜んで読んでいたのでは大衆化しない。これは平田さんや渡邊さんのような秀才がそろつておられるので、あたりまえの文句と思われるのでしようけれども、私初め一般の人は非常にむずかしいのです。そのために税理士がいつたり、非生産的な人物がよけい入つて来るということになる。こういう点については、いろいろお忙しいでしようけれども、あなた方の頭では私だめだと思うのです。もつと頭の悪い人にわかるように研究してもらつてもつと楽に読めるように簡易化していただきたい。その点ぜひお願いたしたいと思うのです。そういうことでありますと、それに続いて出て来る大蔵省通達、また国税庁通達、その他青色申告の書類などが、これまた恐ろしくむずかしいのです。おそらく青色申告を書ける人はあまりないであろうと思う。私は内容そのものについては、前に平田さんにもお願いしたのですけれども、内容を書くこともむずかしいが、大体書き入れる要項のところに書いてある文句が非常にむずかしいのです。一体何のためにこういうものを通達するのか、全然わからない人にわけのわからぬことを書き入れろといつても、どこに何を書き入れるかわがらぬ。隣近所を飛んで歩いて、五、六軒目にやつと一人わかる人があつたというかつこうの青色申告じや、これは税の大衆化にも何にもならない、そこはよくお考え願いたい。文章簡素化というか、もつとわかりやすくするように、所得税の方を直すのにはおそらく時間がかかるでしようが、せめて今度は、国税庁の方からお出しになるものの言葉とか、通達などについても——これは一番むずかしいです。税務署税金を納めることはつらいけれども、やかましく上から来るからしかたがないという形では、税の大衆化を妨げる、そして国家の義務を果すための納税に対して協力をすることを怠ることになるだろうと思うのです。この点、今度は平田さんがその方の担当者になられたので、ぜひひとつ頭のよいところで、楽にわからせるようにお願いしたいと思うのです。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの吉田さんのお話、まことに御趣旨は私どもも同感でございまして、できるだけそのように努めたい。ただ今主計局長からもお話しましたように、税法規定する事柄自体が相当複雑性を帯びている。それに対しまして、それぞれ妥当な規定なり通達を書かなければならない。もう一つは、何と申しましても、ほかの普通の行政の立法でありますと、ぴしつと話が割切れなくてもよいのですが、税法でありますとと、にかく結論の数字が出なければならぬということでありますので、非常にこまかくなりまして、数学みたいな条文大分出て来るわけであります。それにいたしましてもそういう複雑性困難性をできるだけやさしいものにする努力はまさにいたすべきものだと私ども考えるわけでございます。通達についても、御指摘通り、その場その場の必要に応じまして適当な通達を出しておる、その文章が、専門家が書くものですから、ことさらわかりにくいという点も確かにあると思いまして、そういう点は十分反省してわかるようにいたしたい。さつき主税局長が申しましたように、法典化ということについても、適当な機会に全体を全部ひとつ書き直してみることも必要ではないか。通達等につきましても、通達の種類も幾つかにわけまして、税務署に言つてやる場合でも、活字の大きさを違えてやるようなことも考えてみたらどうか、そういうことをも目下研究させております。そういうことについてもできる限り努めまして、わかりやすいようにいたしたいと考えます。  それから、今御指摘青色申告につきましては、前回の国会で皆さんにお約束いたしましたが、これは必ず実行いたします。もうすでに幾つかのプランも今できております。小売業農業方面においては徹底的な簡素化をはかりたい。それから最初帳面をつけるくせをつけていただきますと、あとは自然に正確なむずかしい方にみずから行かないと済まぬようなことになつて、結局何年かたつと非常に理想的なものになつて行く、こういうふうに見受けられますので、ぜひひとつ思い切つてレベルを下げたものにいたしたいということで目下一応の案もできておりますから、これを練り上げまして、実行に移したいと考えておるわけでございます。先般私も青色申告者の家を見まわりまして、現実にも見て帰りましたが、もう少し時間がかからない簡単な様式を考えなければ、全面的に普及するのはむずかしいということも考えて参りましたので、特に、その点は必ず実行に移しますことをこの機会に申し上げておきたいと思います。  もう一つ税制民衆化に対する一つの案でございますが、いかにせん、所得税だけで二千数百億、納税者の数も大分減つたと見ましても一千万人、その人々のそれぞれの担税力に応じた課税をするという問題がありますので、いかに主税局でよい法典をまとめましても、どうしても内容はむずかしくなる。従つて解説書をあわせてつくりまして、そういう方面からもわかりやすいように持つて行く、こういう点につきましてもできるだけの努力をしてみたいと思います。御趣旨の点はまつたくごもつともでありますので、そういう点に努めたいと考えておりますことだけを申し上げておきます。
  9. 吉田正

    吉田(正)委員 平田さんのお答え、青色申告簡素化されることにつきましては非常にけつこうだと思うのです。税務署の方に移られてからさつそく民間をお歩きになつて、そういうことをされたということは非常に敬服する次第でございますが、一体いつおやりになるか。なるべく早く実行しないといけませんし、それから大略どの程度まで簡素化されるか、私この前に御質問申し上げましたが、農村におきましては、一箇村で二名くらいしか青色申告をやつていないのだ。最近私帰つて聞いてみたところが、あんなめんどうくさいものはだめだといつて投げておる。投げることは悪いことなので、どうしても青色申告をやらせることは私ども必要だと考えます。これをやらせるためには、単式簿記で簡単にできるようなところまで持つて行かなければいけないと思うのですが、簡素化内容、いつやるかということにつきましてお話願いたいと思います。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 時期はこの四月から実行に移すようにいたしたい。大体の方向は、小売業とか農業といつたような方面につきましては、お話通りむしろ単式簿記の方がよい。それから農業につきましては、副収入、付随的な収入なり支出の記載とか、この方はできるだけ簡略化するということをさらに織り込みまして、できるだけ多くの方が記帳できるように持つて行きたい、このように考えておる次第でございます。
  11. 吉田正

    吉田(正)委員 税の大衆化の問題、それから税を納めやすくするためのあらゆるやり方につきまして、いろいろと御考慮を願うこと、非常にけつこうだと思うのです。ただ根本的には、何と申しましても青色申告を妨げ、それから税務署納税者の対立の根本的な問題は、やはり重税だということである。われわれこれを考えてみましても、どうしても下に重く、上に軽過ぎるのではないかとしよつちゆう申し上げておる。これは社会党のわれわれの立場ばかりでなしに、保守党の諸君だつて、あまりこれは下に重過ぎるのじやないかと思うでしよう。組み方をもう少しかえまして、そうしてやはり現在五百万円以上百分の六十五となつているのを、七百万円以上幾らにするということ、そういうことについては主税局では研究されていないかどうか。それから現在あまりに下に重いために、人口のうち九五%近くの者はこれで苦しんでいるということになつて来ますので、この問題につきまして、それを二万円以下免税にしまして、そうして、たとえば現在は一千万も二千万も、あるいは五千万も収入のある人があるのですが、それらの税率を重くして、そうしてバランスのとれるような、大衆課税をもう少し免除してやるような、そういう税体系のあり方につきまして、税収入をあまり減らさずにやる方法がないかどうかということを、ひとつお聞きいたします。
  12. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私も率直に申しまして、現在の税金が、特に所得税もつと軽減されないものだろうか。特に御指摘所得少い人、それからさらに先日も当委員会で御指摘がありましたが、所得が六、七十万円以下の、いわば中の下といつては語弊があるかもしれませんが、中産階級としまして、どつちかといえばまず少い人、その人たち負担が、現行法におきましては相当重いのじやないか。何とか実はこの負担を軽くしたいということは、われわれの念願しておるところでございますが、何と申しましても、現在の日本の各所得高別の階層の姿といいますか、高額所得者、それから中くらいの所得者、あるいは小さな所得者、こういうたような層は当然ピラミツド型になるわけでありますが、そのピラミツドの上の方は非常に細くなつて、そうして百万円以下の者は相当広がつて来て、下の方がぐつと広い、こういうような階層になるわけであります。従いまして、たとえば月収二万円以下くらいの人は税金がかからないようにというふうに持つて行きますと、おそらく所得税としましては、相当大きな減少になるのじやないか。その減収を、たとえば七百万円以上の方の税率を上げることによつてカバーできるか。これは何と申しましても人数が少うございますので、おそらく全額全部税金に持つて行くような姿にしてみましたところで、ほとんど問題にならぬような比率におそらくなるのではないかというふうに思つております。高額所得者の税率を今度六十五に上げましたが、これをもつと上げるべきじやないかといういろいろな御議論があるわけでございます。逆に六十五でもずいぶん高いのじやないか。これは国税としての所得税だけ考えてみますと、六十五という税率も必ずしも高くないといえるかもしれませんが、逆にさらにそれに住民税の問題もございますし、あるいは事業所得の方でございますと事業税の問領もございまして、そういうものを順次加算して行きますと、これまた相当の税率になるわけでございまして、あまりに高い税率を設けることが、はたしていいだろうかどうか。結局所得を得ましても、手に残るのはきわめてわずかで、大部分のものはむしろ税金になるというような姿が、はたしていいだろうか。これは相当政策的に議論がある問題ではないかと思います。従つて大五という税率というものは、われわれとしては、考えようによつては決してそう低い税率ではない。従つて所得率だけを考えてみますと、まだ余地があるように思いますが、地方税の方を考えますと、相当の高いものなら別としまして、よしこれを相当増してみましたところで、税収入というものはそう大きなものにはならない、そうすると、結局財政の規模全体がもつと縮小できる、あるいは日本の経済全体がもつと根強いものになりまして、国民所得が自主的にふえまして、税負担が総体として割合に小さくなつても構わぬ、けつこうやつて行けるという姿になりますと、もつとすつきりした所得税がつくり得ると思いますが、現在のような国民所得の状態であり、現在のような財政需要があるとすれば、われわれも非常に苦心しておりますが、なかなか思うような姿にはなり得ないというのが現状の姿であろうと思つております。
  13. 吉田正

    吉田(正)委員 この問題は、結局財政支出の面でもつて何とかしないといけないということが、根本問題だろうと思います。税の根本的な改正という問題は、ただわれわれの希望するところは、基礎控除の面につきましても、五万円を六万円に引したことは非常に多とするのですが、たといそれは七万円でも、引上げることによつて非常に大衆が助かることになりますので、そういう少額所得者に対する考慮を払つてもらいたいと思うのです。  もう一つは、これは大蔵省というか、国全体の問題なんで、財政規模そのものを考えませんと、このまま言えないことなんですけれども、やはり大蔵省の事務官僚の方々の考え方は相当影響すると思いますので、少額所得に対する減税問題について、さらに御考慮願いたいと考えるわけです。  それから個人の所得税の方は、そういう希望を申し上げるよりしようがない、予算案は通過してしまつたし、これを組みかえるなどといつたつて議論になりますので、皆さん方の今後の協力をお願いするよりしようがないと思うのですが、法人税問の題ですが、一億円なり二億円の資本金の法人税に対しまして、中小企業者の法人税が高過ぎるということがいわれております。しかし理論的には、やはり一本にすることが正しいと思うのですが、日本の現状に照し合せてみますと、四二%の分と、中小企業の三五%の分、この二段階つくるということは、考え直さなければならぬ点だと思う。というのは、この問題もまた議会制度の間違いで、いまさらここへ持出してもどうかと思うのですけれども、しかしこれもこの次の問題として考えなければならぬ問題だと思うのですが、もう一ぺん渡邊さんの御意見をお伺いしたいと思います。
  14. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現在の法人税は御承知のようにイギリスの所得税のような方針をとりまして、法人に法人税として課税しておりますが、それは終局するところ個人に対する課税である、それを法人の段階において課税するのだ、こういうような建前をとつていることは御承知通りであります。従いましてそうなりますと、たとえば資本金の大きな会社におきましても、やはり一株主ないし一株主に近いような株主もいるわけでございまするし、それから資本金がたとえば五十万とか百万とかいう小さな会社でございましても、それがあるいは同族会社的なものであり、従つて一人の人、あるいはその親族でもつて持たれているとすれば、その方に帰属する所得というものはやはりそう小さなものではない。とういう場合が想定され得るのでありまして従いまして、現在のように法人税をもちまして個人に対する課税一つの手段であるというふうに考えて参りますと、大きな法人と小さな法人との税率を区分するというりくつがなかなか出て来にくいのではないかかように考えております。ただ昔の法人税のように、あるいは現在アメリカでやつておる法人税のように、法人は法人として独立した担当税能力を持つているのだ、個人は個人で別個の担税能力を持つている。従つて法人には法人として税金をかける、個人には個人として税金をかける、こういうことでありますと、端的にいえば、現在やつておりますように、個人の所得として配当が入つた場合に、配当の二割五分控除をやつておりますか、あの二割五分控除というのは、先ほど言いましたように、イギリス式の考え方で二割五分控除ができているわけです。あるいは仲人が他の会社から配当をもらいますと、これは益金に算入しないことにしておりますが、こういうのも要するにアメリカ式の考え方だつたら不必要な制度であるわけです。それでアメリカ式のような、あるいは昔日本でやつたように、法人は法人で課税する、こういうような考え方で行くと、この場合におきましても、しかし本質的な姿はかわらないと思いますから、そこに、たとえば個人の所得税におけるようた累税率というようなものは、もちろん考えられないわけですが、そこに多少の累進税率といつたような——これは累進税率といつた方がむしろふさわしいのではないかと思いますが、そうしたものが考え得るか考え得ないか、私はこれは一つの議論の対象になることと思います。アメリカでは小さな法人について多少そういうことをやつておりますが、しかしこの場合におきましても、その差はきわめてわずかでございまして、その間大きな開きはつけていない、二段階くらいにしまして、ごく小さなものについてわずかな累退税率をつけておる。現行の法人税の性格から考えて参りますと、小法人、大法人といつたものの区別は、理論的に出て来ないのじやないか。また同時に、そういうことは現状からしましても、とにかく株が非常に大衆化されているというようなことなどを考えますと、ちよつと無理な議論になつて来るのじやないか、かように考えております。
  15. 吉田正

    吉田(正)委員 この問題は理論的な問題でなしに、現実の問題であろうと思うのです。つまり大法人は、それ自体それぞれの会社の内容も一応整つておる。そして中小企業の法人は、非常によたくしたのが多いのです。それが非常に困つておる状態にある。ところがそういう法人はどこにあるかといいますと、大都会よりも、むしろいなかの中小章会に多いのです。そういういなかの中小都会にある法人は、税金のことで非常に困つておる。それが一億も一億もあつて、大牧益を上げているところと比べてみて、それ自体が非常に弱つているというような状態のものに、それにやはり同じような税金をかけるということは、そのために経営が非常に危殆に瀕しているようなことが多い。ところが地方のそういう小さな法人を擁護して行くといいますか、そういう点からも、この税金が重いためにつぶれて行くのが非常に多いというような形になりますので、現実を見てもらつて、そしてこの現実において、大法人が課税を受けるのと同じような率でもつてやられるのは非常に困るというので、われわれに対しまして各中小業者が、これに差別をつけてもらいたいという要望もあり、われわれももつともだと思つておりますが、もう一ぺん現状に対しましてどう考えるかということを、御答弁願いたいと思います。
  16. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現状におきまして、中小企業の方の中に相当御苦労なさつておる方のあることはわれわれも認めておりますが、法人税の税率を考えます場合におきましては、もう一つ、今度は同じような商売を個人でやつていらつしやる場合の税負担というものも、やはり考えなければいかぬと思います。その場合この関係からいたしますと、必ずしも小さな法人の税負担が重いという結論は、そう簡単に出て来ないと思つております。ただこの点は考えてみたいと思つておりますが、現在の資本蓄積とかいろいろな観点からして、法人税の軽減の制度が青色申告の法人などにはできております。しかしそれが大きな法人ですと、割合に利用しやすい。小さな法人については、制度はできていても、先ほども青色申告の問題が出ましたが、個人の問題に比べれば、法人の方が一応経理も整つておるというのが多い傾向だと思います。しかし青色申告の制度あるいはその他いろいろな軽減の措置が、大きな法人ですと割合に活用できるが、小さな法人だとなかなか活用できないといつたような事実があるのではないかと思つております。従いまして、そういうようなものの運営につきまして、できるだけ小さな法人についても活用できるような措置を考えますことによりまして、小さな法人がいろいろな——たとえば具体的に今検討していますのは退職積立金のようなものでございますが、これは現在の制度ですと、退職金に関する規定を一応労働基準監督署に届け出ることを要件としておりますために、十人以上の使用人がありませんと労働基準監督署へ届け出ることができない。従つてそういう制度がありましても、それだけの人数を雇用していない場合におきましては、労働基準監督署に届け出て活用できないという制限の問題で、これは中小企業庁の方から申出もありまして、われわれとしてもその制限は従来の考え方からすると、事務的にどうしてもそれくらいの制限がないと乱に流れて困るというのでつくつた制限でありますが、しかしそのために中小法人の方で利用できないとすれば、もう一つ何か別の考え方をすることによりまして、中小法人におきましてもああいう制度を利用できるといつたようなことも考えてみたい。これは政令でもつてできる事項でございますから、今回の法案の中には入つておりませんが、今真剣に考えて検討しております。そういうようなことは、中小の法人が制度はありながら手続の関係で利用できないというようなことがあれば、これを活用できる範囲に直すということは考えてみたいと思います。
  17. 吉田正

    吉田(正)委員 この問題につきましては、私は渡邊さんとは見解を異にしております。これをできるだけつぶさずに育てて行くというような観点から、日本の経済が浅くなれば浅くなるほど、中小企業の資本の少いものはなかなか立つて行かないというような現状でありますので、それを税金にとられてしまうと、もうその次の日からだめになるというような状態です。つまり日本経済の浅いという場合におきましては、大企業はまだ振幅がありますので、それに耐え得るのですけれども、中小企業はすぐにそれで参つてしまうというような形になつております。従つてそういう観点から現状をもう一ぺんお調べ願つて、そして大企業と別に特別な法人税を御考慮願いたいということをお願いするわけですが、同時にそういうことができるまでに、中小企業に対して特別な便宜をはかられるというようなお話につきましては、非常にけつこうだと存じますので、ぜひそういうようにお願いしたいと思うのでございます。  それから中小企業のうちの協同組合に関する法人課税の問題でありますが、協同組合というものは、これは中小企業全体のために非常に重要なものであるのです。これは御承知のように企業協同組合に対する問題、それから農業協同組合に関する問題、つまりこの法人税を普通の営利法人と同じように考えて、そうしてこれに税金をかけて行くという点なんですが、これは私はこういうことにお願いできたらと思うのです。これは公益的なものであるために、資本蓄積が非常に困難な性質のものなんです。従つてつまり一定の積立金ができるまでは、法人税を免除するとかいうようなことができないものかどうか。つまり今協同組合では二分の一の積立てをしろということになつているのですが、その二分の一のまたは四分の一の積立をするまで、いわゆる資本蓄積を奨励するために法人税を免除するというようなことができないかどうか、お聞きしたい。
  18. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 協同組合につきましては、私どもの方としても、その性格につきましてずいぶん検討してみまして、そうして過般の法人税を四割二分に引上げました場合におきましても、一応三割五分にすえ置いたということは御承知通りであります。それで協同組合の性格というものをどういうふうに持つて行くべきかという点についていろいろ議論があろう思いまするが、たとえば協同組合が事業量に応じて配当するような場合におきましては、これは組合の利益としてはあわないといつたような制度が現在あるような次第でありまして、協同組合の積立金、それについて一ぺん全部出て来るものか、免税したらどうかというような点につきましては、現在のところとしましては、まだ免税していいという結論は出ておりませんが、今後の問題としましては一応研究してみたいと思つております。現在としましては、特にそういう税率もいろいろかえてあるというようなこともございまするから、特にそういう必要というと語弊がありますが、そういうことは適当ではないだろうというような一応の結論を持つております。
  19. 吉田正

    吉田(正)委員 農業者の生活保護とか、また農業経営を完全にするための協同組合の必要性は、あなたに申し上げるまでもなく御存じだろうと思うのですが、結局それによつてのみ日本農業の発展があり、それによつてのみ食糧増産ができて行く基礎でございますので、その性格というものはあくまでも公益的な性質を帯びているということ、それから一般の協同組合につきましても、それはまずい協同組合はあります。しかしこれを育成しまして、やはり個人の小さな商売人なり小さな企業者は、協同組織によつてそれ自体を守つて行く。日本の産業構造の強力な基盤にするために、また協同組合運動以外に、中小企業自体も生きる道がないように私は考える。従つてその線を生かして行くことによつて、大資本の中においてりつぱな繁栄もすることができるというような私どもは確信を持つています。それに対しまして、ある条件のもとに免税するということを一ぺんお考え願いたいのです。そうして、それによつてやはり協同組合の育成をし、資本蓄積をはかつて、協同組合それ自体をほんとうにみんながたよることができるような健全なものに仕上げる。それを税金をかける場合に、まだ再建整備をしているような貧弱な組合とか欠損組合へ持つて行つて、理由がありさえすれば税金をかけるというようなかつこうになりますと非常に困る。これはある程度の資本蓄積ができれば当然税金をかけてもいいと思うのですが、あくまでも資本蓄積ができるまでは免除するということについて、もう一ぺんお考えを承りたい。
  20. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 協同組合というものが中小企業の将来の発展のためにぜひ必要であるという気持につきましては、私は同じように考えております。但し現状の協同組合の中にはいろいろな組合があるということは、御承知通りだと思つております。従つてこれをいい協同組合としてどういうふうに育て上げて行くかという問題につきまして、またそれに関連しまして税制をどう考えて行くべきかというような問題につきましては、今後の問題としましてわれわれとしましても真剣に研究してみたいと思つております。
  21. 吉田正

    吉田(正)委員 どうも私ばかり時間をとつて済まないのですけれども、もうしばらくお願いしたいのですが、相続税の基礎控除を現行三十万円を五十万円に上げられたということは、非常にけつこうなことなんですが、結局問題は、その財産の評価方法が問題だろうと思うのです。この評価の方法におきまして、財産がよけいあると見積つたならば、基礎控除をいくらふやしてみても全然意義をなさないので、ちようど自由党の言つておる一千億減税問題なども、やつてみると一向減税にもなつていないと同じことなんです。やはり三十万円を五十万円にふやしたところが、今まで五十万円ぐらいに見積つたのを今度は百万円ぐらいに児積れば、上げてみたところで何にもならないので、この例はその他の所得税の基本をなすところの見積りにも非常に多いのです。たとえば昨年の農業課税の問題についてみましても、初年度予算にきめたときよりは五十億もよけいに入つてしまつたというような状態になつておる、そういうふうに入つて行つた理由はどこにあるかといいますと、局問題は、税務署の出先の方かまたは元の方か知らぬけれども、一反歩の収入が非常に多かつたということで来ておる。それで最近の例で申し上げますと、これだけあるとみなすというふうに割りつけて来るようなかつこうだとわれわれのは考えるです。たとえば国税庁の方から、調査の結果何々県は大体一反歩これくらいとれたはずだということでやつて行くというようなかつこうで、各地で大分紛争を起しておるのは御承知通りなんです。結局水増しの見積りをやつて、その結果として収入が多いということになれば、いくら歩合を安くし、基礎控除をいくら上げたいといいましても、それでは減税にも何にもならないので、この問題につきまして、一体その見積りをどういうふうにしておるか農業課税の見積りはどこに標準をとつておるかということをお聞きしたいのです。
  22. 平田敬一郎

    平田政府委員 前回でしたか、農業所得税の見込みについて御質問がありまして、お答えをしたように覚えておるのでありますが、その際にも申し上げました通り、予算というものは大体全体を大きく見まして、将来の動向を考えまして、大きな線で見積つておる。もちろんそれはなるべく細目に出しまして見積るということにいたしまするが、おのずから限界がありまして、そういうような見積り法をやつておるわけであります。それから課税の方は、これも前回に申し上げましたように、税法に従いまして実際の所得をいかに適正に把握するか、それが実は唯一のものさしでございまして、税法に基きまして事実をよく調べまして、所得が幾らになるか、それをできるだけ正確につかんで申告をしてもらう、またそれによつて申告の指導をし、どうしても話がつかぬ場合には更正決定をする、こういうことになるわけでありまして、その線は国税庁といたしましてはあくまでもこれを堅持いたしまして、くずさないでやる考えでございます。一時税務が危機に陥りました際に、努力目標というものをつくつたのでございます。これはそのときの非常事態の対策としてやむを得なかつた節もございますが、弊害が相当多くて、こういうことを長く続けるのはかえつていかぬというので、二十五年度でしたか、それ以後完全にやめております。従いまして所得の査定におきましてはあくまでも個別的に、税法従つて所得を計算する、このラインで行きたい。ただ前にも問題になりましたように、帳面がはつきり書いてないという場合におきましては、どうしても間接的な推定方法で調べざるを得ない。その際におきましては、あるものにつきまして実際の収入と支出を調べまして、そのほかの人につきましては、大体農業でございますと反当り幾ら収穫物があつたか、これを調べまして、それに標準率というのを適用いたしまし  て、所得を計算いたします。その標準のつくり方は、なかなかこれは問題がございますので、その標準はできる限り実情に即応するように、それについては農業関係におきましては、できるりまじめな、公正な意見を聞いた上限できめるようにということで、実行に移しておるような次第でございまして、厳密に論理的に申しますと、予算の見積りと課税は、実は直接関係はない、こういうふうに御了解願いたいし、私どももそのような方針で税務を運用して行くという考えでございますので、御了承願いたいと思うのでございます。
  23. 吉田正

    吉田(正)委員 これは現実に起きた問題なんです。結局地方の税務署から中央へ、これだけとれる、一反歩幾らとれると持つて来る。中央ではそんなはずはない、もうちよつとよけいとれるはずだということでやつておつたということがあります。だから結局現実の問題といたしまして、たとえば水田の収入が幾らとか、または麦作の収入が幾らという見積りを、地方から持つて来たのを、中央でもつと多いはずだと押し返すというようなやり方はやつておるのですか。
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 今申し上げましたように、全部の納税者について帳面で調べるということになると、それだけでザツツ・オールになるわけでございますが、ある程度の推定調査を加えざるを得ない。そうなると、やはりどうしても人の見方その他で差が出て来るおそれがあるわけであります。そこで税務につきましては、税務署がどう見ておるか、その調査をどういう方法でやつたか。それに対しまして国税局で監督を加えまして、ほかの税務署の資料その他に基きまして、それがはたして正しいかどうか、そういう点は当然監督をやつておるわけでありまして、そういう意味での、何か見込みを立てて、それに基いていいかどうかを判断しておるかという御説でございますれば、それはそうせざるを得ませんし、またこれをやりませんとえらい不均衡になる場合が出て来ますので、そういう点については、できる限り実態に即応せしめるように注意しつつ適当な検討を加えて行く、これは当然のことだと私ども考えるのであります。そういうことの問題がありますれば、そういう趣旨でいたしておるということを御了承願いたいと思います。
  25. 吉田正

    吉田(正)委員 一般的な見積りをする場合に、そこの町村とか農業団体とかその他公益的な組織がありますので、それと十分な打合せをされた方がいいと思う。それをされずにどんどんおやりになるということはかえつて弊害があると思う。それからそういうことのために、ある県とある県の県境を調べてみたところが、片方が非常に公平を期しておるのに、片方は非常に少い、また非常に多いという実例があるのです。これは調査の結果なんです。そういうものがだんだん反感を抱いて調査を困難にするということがあります。そういう点については、やはり地方にはそれぞれ公益組織があり、それに関連する団体がありますので、十分お打合せを願つて、さらに全体の目からながめて是正されるのはあたりまえです。あなたのおつしやる通りだと思う。そこの手続をもつと民主的におやりになつたらどうかということを申し上げる。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほど申し上げましたように、標準率をつくります際におきまして、できる限り市町村、それから農業団体等の意見はよくきくように、しかし、責任は税務官庁の責任においてきめるように、責任をつけることになりますと勢いへんなことになるおそれがありまして、一部の人の利害だけ入つたような基準になつて来るというおそれもありますので、意見はよく聞くが、責任は税務官庁できめるように、こういう趣旨で実はいたしておるわけであります。大分最近はそういう点で、一時より見ますと全国的にうまく運用されておると思いますが、一部の地方では、なお若干問題があつたことも耳にいたしております。そういうことにつきまして、手落ちのないようにしろということを注意した例もございます。今後ともそういう点については、十分注意をいたして参りたいと思う次第でございます。
  27. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 小山君。
  28. 小山長規

    ○小山委員 有価証券の取引税について二、三質問をいたしたいのであります。まず最初に伺いたいのは、今度創設されました有価証券取引税と、廃止されました証券譲渡所得税との関連でありますが、これはわれわれの解釈によりますと証券譲渡所得税なるものを廃止いたしましたのは、これはわが党多年の要望であり、そしてその目的とするところは、有価証券の譲渡所得税があることによつて、資本の蓄積が非常に阻害されておる。であるからこの有価証券の譲渡所得税は、理論上から言えばこれは置くべきものかもしれないが、現在の日本の資本蓄積の状況その他を勘案して、こういうものは廃止した方がよろしい、こういう前提のもとに多年要望しておつたことが今度実現されることになつたのであります。この証券譲渡所得税を廃止したから、そのかわりに取引税を設けようとするものではないと私は解釈しておるのでありますが、その点政府の考え方はどうなつておるのでありますか、一応これを確かめておきたいのであります。
  29. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 有価証券の譲渡に対する所得税を廃止したその目的は、今小山委員お話になりましたように、理論的にはいろいろ議論がございますが、何と申しましても、証券の民主化という大事な線から考えますと、どうもこの有価証券の譲渡に対する所得税というものがそれを阻止しておる。しかもその影響は相当大きいだろうという大局的な考え方からいたしまして、それを廃止するということに立案したわけでございます。  なおこの機会に有価証券取引税を課税するということにつきましては、他方でこれを廃止したからその代償だという気持ちはございません。いわば一種の流通税的なものといたしまして、やはり有価証券の取引のあるところには相当の担税力があるという観点からいたしまして、有価証券の取引税の創設を考えたわけでございます。ただしかしこの場合におきましても、税率が高いものでございますれば、おのずからそこにせつかく考えた証券民主化を阻止しないという意図が阻害されるわけでございまして、くずれるわけでございます。そういうような点につきましては十分考慮いたしまして、有価証券の民主化を阻止しない程度においてできるだけ軽度の税率とする、しかしせつかくつくる税でありますので、あまりこれが税収の少い税であるのもおかしいわけであります。そこに一応の税率といたしまして、現在万分の二、あるいは万分の八といつたような税率を考えた次第でごいまざす。
  30. 小山長規

    ○小山委員 取引税を設けた理由というものは、ただいまの主税局長の説明で大よそわかるのでありますが、有価証券に取引税を課さなければならぬという何か必然的なものがあるのでありますか、その点お伺いしておきたい。
  31. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 必然的といつたやかましいものがそこにありまして、たとえばこれを課税しなければすぐにほかにどうこうといつたほどの必然性は、これは必ずしもあると言い切れるかどうか疑問だと思つております。しかしたとえば登録税が課税されておる、印紙税が課税されておる、こういう一種の流通税の体系があるわけでありまして、そこに有価証券の取引というものがあり、ある程度売つたり買つたりという行為が行われている場合におきまして、そこに担税力を認め、そこに証券民主化の阻害にならぬ程度において税を見るということはけつこうではないか、かように考えております。
  32. 小山長規

    ○小山委員 そうすると、この取引税なるものは税収入そのものが目的である、こういうふうに解釈されるのかということが一つと、それからその取引税の税率の妥当性というものは一体何によつてきめるのか、政府のこの税率が妥当なりと考えられる根拠は一体どこにあるのか。あるいはこの程度の予算というものをきめておいて、その予算の範囲内で、現在の取引税をこの程度にきめようとお考えになるのか、そもそもこの税率の妥当性というものの基準を一体どこに置いておられるか、それを伺いたい。
  33. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 税率の妥当性という議論は、数字的はじき出るような性格のものだとは私どもは思つておりません。ただ有価証券移転税というものがかつてありまして、それが廃止されました当時におきまして千分の八、千分の四、千分の二と、これはそれぞれ対象によつてつておりますが、そういう税率で有価証券移転税が行われていた、それをそのまま今度の税収に盛ることにつきましては、これはいろいろな意味において適当でないという点を考えまして、おおむね廃止されたときにおける税率の半額程度ということを一応ねらいとして税率を考えまして、同時に、他面この税率によつてそれでは有価証券の取引が阻害されるかどうかという点を逆に反省してみましたところ、この程度の税率ならば、これが有価証券の民主化を阻害する、うな意味のものにはなるまい、それでは大体万分の八という程度がよかろう、こういう結論になりまして、それによつて大体税収の方を見ましても、平年度三十億程度の負担がいいのではないかといつたような考え方から一応きめたわけでございます。
  34. 小山長規

    ○小山委員 平年度三十億程度が妥当であるという考え方で仕組まれたということになると、取引の分量が減り、あるいは取引の単価が下つて来た場合には、非常に税の負担が重くなるという結果に相なります。でありますからそういう趣旨ではなかろうと私は思う。やはりおのずからこの程度のものでなければならぬという一つ——たとえば各国の事例というものがいろいろあるのではなかろうかと思うのであります。なお日本の過去における税率を調べてみますと、大体最初は万分の四から始まつておる、しかも戦時中においてすらそれは引上げていない、戦後におけるいわゆるあの大インフレーシヨンに対処し、予算の収入が足りないということでいろいろな税率が引上げられるときになつて、初めてこの有価証券移転税というものを引上げておるのでありまして、廃止になつたときの税率を基準とするということはいかにもおかしいのであります。むしろやるとするならば、創設当時の税率を基準として戦後における状況を考えるべきではなかつたか、こう考えるのでありますが、その点に対する御見解はどうですか。
  35. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 廃止されるあのときの税率をそのまま持つて行くというのは、われわれの方も適当でないというので、これを半分にしたことは先ほど申し上げたのであります。創設したときの税率をそのまま持つて来たらという点については、その当時と現在と大分事情が違つておりますことは、たとえば取引の手数料の点についてちよつと考えてみましても、現在は一株二百円の株が取引されました場合には、取引人の手数料は四円になつている、今度の税率は万分の二十を使いましても四十銭と、手数料の一割程度、こういうような税率になつておるわけでありまして、創設当時におきましては、たしかその率ははるかに高かつたと思つております。なお順序は逆になりますが、最初の御質問に対しては、われわれの方としまして三十億の税源をまずきめまして、従つてたとえば取引の数量が減る、価格が減つた場合に相かわらず三十億の税金をそこで確保する意味におきまして、そのときにおいてさらに税率を引上げるというような問題も、すぐには考えておりません。従いまして値段が下る、あるいは取引の数量が減つたときに、税負担が個々の納税者についてすぐに増すというようなことは現在考えておりません。
  36. 小山長規

    ○小山委員 そういたしますと、大体予算の概算もそういうつもりであり、税率も見当をつけたのだ、しいて言えば、廃止の当時の半分程度を採用したということでありますから、この程度の予算收入が確保される見通しがあるならば、必ずしもその税率に遠ざかるものではないという結論になりますか。
  37. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 われわれの方といたしましては、一応予算にその程度の金額を見て、同時にこれはやはり現在の見通しといたしまして、積み上げた数字の上に組んである見積りでございまして、そこにそう違つた数字があるとは思つておりません。従いましてどういう数字をもとにしまして、もつとこの税率で、あるいはこれ以下の税率で予算見積りがとれるじやないか。それだから税率を下げてもいいかというような、そこまではつきりおつしやつたわけではございませんが、お話のようでございますが、われわれといたしましては現状の推移から見て参りますと、われわれの方の見積りはまあ強いといいますか、見積りとしましてはかなり大きな見積りになるというと語弊がありますが、相当有価証券の取引が活発に行われることが多くなるだろうという一応の見通しのもとに税收入が見積られております。これはわれわれが考えております数字以上に、有価証券の取引がさらにそれ以上に活発に行われるというような点については、われわれとしては考えておりません。
  38. 小山長規

    ○小山委員 この予算の見積りの基礎となるところの数字その他についても、われわれの方にも調べたものがありますので、いずれ機会をあらためてまた想を練り、結論を得て、場合によつては修正の動議を提出することを留保いたしておきます。
  39. 島村一郎

    ○島村委員 ちよつと今の御質問に関連して伺いたいのでありますが、ただいまのように市況が大体において好況時代はとにかくとして、この山は当然あるべきものだと思う。そういう場合に、せつかくここまで向上した産業投資の意欲に何か影響がありはしないかという懸念もないではないのであります。これらについて伺いたい。
  40. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 先日来の市況の状況がはたしてノーマルのものと見るべきかどうかということにつきましては、率直に言えば相当私は疑問を持つております。しかし最近は大分市場もおちついて来たような状態でございまして、これがどんなふうに動いて行きますか、その推移はわれわれとしては十分見詰めて行きたいと思つております。それで手数料についてもいろいろな議論があるわけでございます。さらにそういつたような関係から、手数料が先になるべきか、取引税があとになるべきいろいろ議論があろうと存じますが、このたびの取引税の税率なり何なりが高過ぎるということによつて従つて証券民主化の阻害されるというような事態に、証券の価格なり取引の状態なりがなつて来るという場合におきましては、その事態に応じまして、現在提案されておる税率について検討を加えるということは、当然あるべき問題だと思つております。
  41. 大泉寛三

    ○大泉委員 今の法人税に対しては比較的合理的にできているが、個人企業に対しては課税の査定がまことにどうも納得の行かない点が多々ある。それは先ほど吉田さんからも、中小企業の立場から不満の意を相当述べられたのでありますが、近ごろこの小法人が激増しているということは、個人企業があまりにも税負担が重いから、結局八百屋でもお医者さんでもみな法人にしているのであり、これはやはり重税の結果である。そこで、やはり個人に対しても法人の取扱いをする必要があるのではないかと思うのであります。いわゆる企業をやつている以上は、一つの法人と同じような——同じようでなくても、それに近いような性格を持つている企業に対しては、やはりその特典を与えてやる必要があるのではないかと思います。そこで具体的に言うと、家族が事その事業に従事しているというような場合には、やはり法人と同じように給料を払つてやる。どんな小さな子供に対してもそれくらい認めてやるということが必要だと思う。またたなおろしなどにしても、一般法人は、物は売却してしまわなければ利益には計上しないけれども、個人の方は、売らなくても、在庫そのままで値上り利益に対する評価課税をする。かようなことは非常に不合理ではないかと思う。それから際交費などにしても、個人の場合はあまりにも厳格な取扱いをしているが、これもやはり法人と同じように、交際費などは認めてやる必要があるのではないか。また一定の投資額なども、個人には資本金がないのだからこれを資本金と認めて、法人と同じような立場において認めてやるということも必要ではないか。以上列挙したような意見に対してお考えを伺つておきたい。
  42. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現在の法人税の建前は、先ほども申しましたように、法人の所得も終局的には個人の所得になるという建前でできておるのでありまして、一応その中間の段階において課税するという性格のものでございますので、おのずから個人の企業とは性格的に異なる、法人と個人とはかつこうが違うのだというところがやはり見のがせない事実ではないかと思つております。ただ今のお話にちよつとありましたが、個人につきましては、たとえば売却しないものにつきましても値上り利益を課税するということは、これはもしやつておりましたら税法には沿つていないと思います。税法はやはり売却したものについて、必要経費を差引いて総所得を計算し、それに課税するという考え方になつております。税務署の方で、手持ちの品物の値上り利益を課税して行くということはないと思つております。もしやつておりますれば間違いだと思つております。  それから、家族で事業に従事していただいている者について給料を認めたらどうかということは、いろいろ議論のあるところと思いますが、われわれの方といたしましては、ある程度そういう意味合いにおいての主張が受入れられるというような考え方が一つありまして、今度の税法改革にもさらに出ておりますが、青色申告の場合におきましては、専従者につきまして五万円を六万円に上げるとか、あるいは、従来は高等学校卒業者以上を中心にして、年齢十八歳以上の方に限つて認めておりましたが、今度は中学卒業者というような意味におきまして、これを十五歳以上と考える。こういうようなことによりまして、法人と個人を全然同じように見るというわけには行きませんが、両方の間の権衡を適当に考えて行くということについては努力いたしております。なお、そういうことを言つても、青色申告がむずかしいから実際に利用できないじやないかというような議論もあるいはあるのじやないかと思いますが、その点につきましては、先ほど平田国税庁長官からもごひろう申し上げましたように、青色申告の制度ができるだけ大衆化して行くように、制度的に簡略化したものにして、できるだけ皆さんにこれを利用していただくように努力して行こう、こういうようなことを考えておる次第でありまして、とにかく現在の中小企業者が税の負担に困つているという点につきましては、いろいろな意味において、合理的な軽減という線については努力して参りたいと思つております。  なおもう一つ、中小の商工業者の負担において見のがせないのは、国税も国税でありますが、むしろ地方税の方に問題があるのじやないかと思います。たとえば事業税などにつきましては、さしあたりの問題といたしまして、事業税の控除三万八千円を五万円に上げる。これもわずかなものでありまして、年額で三十億くらいの軽減でありますが、そういうことも考えております。  なお近く中央地方、特に地方を中心とする税制改正ということをいわれておりますが、こういう問題をどういうふうに考えて行くべきかという点については、その機会におきましてさらに十分慎重に考えております。
  43. 大泉寛三

    ○大泉委員 それからこれは一般法人ですが、一般法人の中ではいろいろ違つた企業をやつている法人がある。一方ではきわめて利益があがるが、一方ではあまりもうからない、損をするというような企業がありますが、こういう法人に対しては、やはり企業別に税の査定をするのが適当じやないかと思うのです。一方ではもうからないで損をする、それを一方で穴埋めをして行くという場合、これを法人的な一つの行き方でやつて行くというようなことは非常に不合理であるから、やはり事業種別に、企業別に課税するのが適当ではないかと思うのであります。たとえば一方で鉄工業の工場を経営しており、一方では旅館を経営しているというような者があるとすれば、それが一方ではもうかるが一方ではもうからない、しかし将来を見越して一時的にやつているということはいくらでもあると思う。こういう法人に対しては、やはり企業別に課税の査定をするのがいいのではないかと思うが、いかがですか。
  44. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 企業別に法人税の税率を区分して、異なつた税率を使うようにして行つたらいいじやないかという御議論のようでございますが、これはなかなかむずかしい問題だと実は思つております。かつて営業税の時代に、一応外形標準をとつておりました場合におきましては、企業別に税率を異ならした場合がございますが、これは結局のところはやはり所得者に対しては大体同じような負担になるということをねらいにしまして利益の少い場合と多い場合というふうに考えまして、税率を異なつたものにしたわけでございます。同じ所得を持ちながら企業によつてかえるということは、これはそれ自体としては非常に困難だと思つております。ただしかし、われわれの方としましては、資本蓄積の促進というような非常に違つた観点でございますが、そういう点におきまして、たとえば減価償却の場合におきまして、企業合理化に特に役に立つという場合には、五割の特別減価償却を認めるとか、租税特別措置法で、三年間五割増しの特別償却を認めるとかしております。従つて、そういつた手だてによりまして、結局の負担としましては、必ずしも一率になつていない。表面的には一率になつておりますが、実質の負担は必ずしも一率ではないのであります。しかしさらに進んで、税率によつて差等をつけるということはなかなか困難ではないか、御趣旨はそこまでおつしやつていないと思いますが、たとえばある時期において非常に利益の多い会社には、その分については特別な税率にしたつていいじやないかということになりますと、これはいわゆる超過所得税のような問題になつて来るわけでございます。これはかつて御答弁したかと思いますが、最近の状況を見ますと、好景気が続きましても、結局業種ごとに、一年かそこらでまたすぐその景気が落ちて行つてしまう。業種別に言えば紡績業者であつたり、貿易商社だつたり、あるいは鉄になり、最近になると電気機械みたいなものが割合にいい。しかし、その業種はどんどん動いて、全体がいいというわけではございません。あるいはこういう場合に超過所得に対する税金、これはアメリカでやつておりますエクセス・プロフィツト・タツクスのようなものをつくるがいいかどうかということになるかと思いますが、これは問題だと思つております。そういうものをつくれば、一般の法人の法人税の税率をげ下るということも考えられないこともありませんが、そういうことは、どうもわれわれ適当とは思いません。従つてどこかに線を引きましても、終局的負担においては、必ずしも業種ごとに一様になるということではなく、どうしても差がついて行く。しかし税率そのものは差をつけない、こういうような組織で資本蓄積を考えて行きたいと思います。
  45. 大泉寛三

    ○大泉委員 次に勤労所得の源泉徴収について改善をしたらどうかと私ども考えております。今の法人あるいはまた事業所におきましては、いわゆる個人個人が税負担をするのであります。勤労者については、徴収義務者が一切の世話をやいているわけですが、個人個人の詳細な計算をするとなると、なかなか困難である。つまり前年度の納税実額に適するような額でやつて、いわゆる徴収義務者に一切をまかせてやられたらどうか。こういうことは、主税局長としては多分困難であると言われると思う。しかし、これは徴収義務者に一切をまかせて、徴収義務者が自分の事業の能率の観点から、これを三階級とか四階級ぐらいに内部的に区分して行くという、納税についての簡易な計算ができないものか。これは計算上においてもきわめて能率的にこれを活用できるという点もあります。そういうことを個人々々の計算において、扶養控除とか一切そういう計算をさせたらとてもやり切れない。税務署あるいは国税庁がきめて、総括なな納税負担を義務者が負つて行けばいいじやないか、かように思うのです。これは私の改善策ですが、主税局長としてのお考えを伺いたい。
  46. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 源泉徴収課税の徴収事務は、企業に対していろいろな意味で非常な負担になつておることは、私どももお察しする次第でありますが、それではその負担を小さくする意味において、もつと概括的な計算ができないだろうか、そういうお話でございます。結局給与に対する所得課税というようになりますと、どうしても各個人々々の分に行かざるを得ないではないか。たとえば確定申告におきまして最後の締めくくりをつけるといたしましても、甲の人の分としては幾ら税金が払われておるのだ、乙の人の分としては幾ら税金が払われておるのだということがはつきりわかまりせんと、今度は月給をもらつておる人が確定申告をする際に困るじやないかというふうに思いますし、お話のような考え方では、あとの締めくくりがおそらくできないことになるんじやないかと考えております。アメリカなどの源泉徴収の例を見ますと、日本では年末調整で全部片づけておりますが、アメリカでは年末調整をやりませんで、最後の確定申告に全部追い込んでしまつております。大体源泉徴収のときに、少し余分目に税金をとるようなことにしておりまして、確定申告の際にそれの払い過ぎを返してもらうように確定申告を出す。それを税務署は一々チエツクして金を返しておりますが、このためにアメリカの税務署は非常に尨大な人を擁しておりまして、その仕事自身がかなり徴税費の上からいうと負担になつているのではないかと思つております。従つて一面徴税費もあまり大身な負担にならぬようにまた徴収義務者の方の負担もできるだけこれを軽くしたいということについては、われわれも努力しておるのでありますが、結局は給与をもらう方の甲の人、乙の人が税金としてどれだけ払つたかを明らかにしてもらわざるを得ないものでございますから、概括的に徴収しましても、結局はだれの分が幾らということにならざるを得ないのじやないか、かように考えております。
  47. 大泉寛三

    ○大泉委員 元来私は、どうも源泉徴収ということとは望まないのであります。しかし現在は、これが大きな財源になつている以上はやむを得ないと思います。本来ならば源泉徴収は、官公吏の所得納税としてはまつたく意味をなさない。いわゆる歳入歳出に対してお互いによけいな計算をしているだけである。しかし一般産業界においては、個人々々が税を払うというけれども、結局は産業の責任者が負担をすることだというような結果に終つている。そういうような立場だから、私はどうも本来源泉徴収は人格を無視したものであると思う。今日の申告納税の建前から言つたならば、まことにふに落ちないものでありますけれども、その内容において、手段において改善ができるならば、やつてもらつた方がいいのじやないかというわけでお尋ねをしているわけであります。  次にちよつとお聞きしたいのは、査察行政の影響であります。これはどういうような状況になつておりますか。
  48. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 査察行政の点については、国税庁長官がおられますから、国税庁長官からお答えになるかと思います。それで官公吏に片方で給与を払いながら、片方で所得税をとるというよりも、所得税抜きの給料を払つたらいいじやないかというようなお話でありますが、しかし官公吏の中にも、俸給だけでやつている者もありますし、それから親譲りの財産がほかにある人もございますから、そうしますと、俸給だけ見ますとそう差はないかもしれませんが、所得全体として見ますと、やはり相当の差異のある分がございます。そういういわゆる財産収入というものが全部なくなつてしまつている、たとえばソビエトのような制度ですと、あそこには御承知だと思いますが、所得税なんという観念はございませんで、もつぱらある税金は消費税のようなものだけでございます。むしろみんなが所得税引の月給をもらつて、同時にそういう財産収入というものはないのですから、特別な考慮はいらぬ。税金をとるとすれば、もらつた給料から引く。何かぜいたくなものとか、そういうものを使つた人には、消費税をかける。こういう体制がソビエトの制度にはございますが、しかし日本は、ソビエトとは社会組織が全然違います。やはり日本のような組織では、これは欧米どこでもあることなのですが、やはり給料以外にいろいろな財産所得のある人があるものですから、出したり入れたりするようなかつこうになりましても、一応俸給は俸給として払い、所得税所得税としてとるというのがやはり必要であり、適当であると考えております。ただお話のように、できるだけあの手続を簡略化するということにつきましては、われわれとしまして今後努力して参りたいと思つております。
  49. 平田敬一郎

    平田政府委員 査察の実績についてお尋ねがありましたので、申し上げておきます。昭和三十七年の十一月現在の集計でありますが、所得税におきまして調査しましたのが三十八件、そのうち告発いたしましたものが六件、ふえました税額が一億四千八百万円、それから法人税におきましては、調査済みの件数が六十件、告発が五件、ふえました税額が十四億九千三百万円、その他若干ございまして、全体で百六件で、告発が十一件、ふえました税額が十六億五千二百万円、こういう状況になつておる次第でございます。
  50. 大泉寛三

    ○大泉委員 あとの質問はまた後に。     —————————————
  51. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 次に、連合審査会開催申入れの件についてお諮りいたします。  去る二日通商産業委員会に付託されました中小企業金融公庫法案につきましては、当大蔵委員会の所管とも密接なる関連があると考えられますので、本案に関しまして、通商産業委員会に対し連合審査会開会の申入れをいたしたいと存じますが、この点御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 奧村又十郎

    ○奧村委員長 御異議なしと認めて、中小企業金融公庫法案に関し、通商産業委員会に連合審査会開会の申入れをすることに決しました。  なお右連合審査会開会の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  明日は午前十時より開会いたします。本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時四十四分散会