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1953-02-13 第15回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十三日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 奧村又十郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 川野 芳滿君    理事 内藤 友明君 理事 松尾トシ子君    理事 佐藤觀次郎君       上塚  司君    大泉 寛三君       島村 一郎君    中田 政美君       西村 茂生君    小川 半次君       加藤 高藏君    笹山茂太郎君       中崎  敏君    吉田  正君       小川 豊明君    久保田鶴松君       坊  秀男君  出席政府委員         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    塩崎  潤君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 二月十日  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四七号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号) 同月十二日  酒税保全及び酒類業組合等に関する法律案(  内閣提出第五三号) 同日  煙火類に対する物品税撤廃請願塚田十一郎  君紹介)(第一七〇六号)  税制改正に関する請願大石ヨシエ紹介)(  第一七六三号)  宮城県下に日本専売公社たばこ試験場設置の請  願(只野直三郎紹介)(第一七六四号)  鞄嚢類に対する物品税撤廃請願川野芳滿君  紹介)(第一七六五号)  鏡台に対する物品税撤廃請願西村直己君紹  介)(第一七六六号)  家具等に対する物品税撤廃に関する請願西村  直己紹介)(第一七六七号) の審査を本委員会に付託された。 同月十一日  外国技術使用料に対する課税実施延期陳情書  (第一一二四号)  所得税法中年調整条項改正に関する陳情書  (第一一二五号)  年度特別融資に関する陳情書  (第一一二六号)  陶磁器に対する物品税撤廃に関する陳情書  (第一一二七号)  北海道に国民金融公庫の支所増設に関する陳情  書(第一一二八号)  在外資産国家補償に関する陳情書  (第一一二九号) 同月十二日  在外資産国家補償に関する陳情書  (第一二二九号)  同  (第一二三〇号)  所得税法中の勤労所得控除増額陳情書  (第一二三二号)  遺族国債現金化予算大幅増額陳情書  (第一二五六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四〇号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四一号)  富裕税法を廃止する法律案内閣提出第四二  号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四三号)  酒税法案内閣提出第四四号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四七号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号)  酒税保全及び酒類業組合等に関する法律案(  内閣提出第五三号)     ―――――――――――――
  2. 奧村又十郎

    奧村委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず去る十日本委員会に付託されました登録税法の一部を改正する法律案揮発油税法の一部を改正する法律案及び昨日付託になりました酒税保全及び酒類業組合等に関する法律案の三税制改正案一括議題として政府当局より提案趣旨説明を聴取いたします。愛知大蔵政務次官。     —————————————
  3. 愛知揆一

    愛知政府委員 ただいま議題となりました酒税保全及び酒類業組合等に関する法律案外二法律案について、その提案理由説明いたします。  第一に、酒税保全及び酒類業組合等に関する法律案について、申し上げます。政府は、さきに酒税法改正案国会に提出いたしまして、御審議を願つているのでありますが、酒税国税収入のうちに占める地位に顧み、酒税保全酒類取引の安定をはかることが肝要であると存ぜられますので、この際、酒類製造業者等組合を組織し、酒類の自主的な需給調整を行うことができることとするとともに、酒税保全のため必要な場合には政府が必要な措置を講ずることができるようにするため、この法律案を提出した次第であります。  その大要について申し上げますと、まず酒類製造業者または酒類販売業者は、大蔵大臣認可を受け、原則として税務署管轄区域をその地区として、酒類種類別、卸売、小売別に、それぞれ法人格を有する酒造組合または酒販組合を組織することができることといたしているのであります。組合は、政府の行う酒税保全措置に協力するほか、酒類需給が均衡を失したことにより酒類の代金の回収が遅れる等のため酒税納付が困難となり、または困難となるおそれがあると認められる場合においては、組合員に対し酒類製造石数販売石数あるいは価格に関する規制等をも行うことができることとしているのであります。この規制を行うにつきましては、独占禁止法事業者団体法等との関係もありますので、大蔵大臣認可を必要とすることとし、その内容が消費者の利益を著しく害する等適正を欠くと認められる場合においては、大蔵大臣認可をしてはならないこととしております。さらに、大蔵大臣は、右の認可をするにあたりましては、あらかじめ公正取引委員会の同意を得なければならないこととする等、規制実施については充分慎重を期している次第であります。  単位組合は、都道府県ごと連合会を、連合会は、さらに中央会を組織することができることとし、おおむね単位組合事業に準じ、その総合調整等を行うこととしております。  以上のほか、現行酒税法による酒類種類等表示義務を規定する等、政府酒税保全のため必要な措置を講ずることができることとしているのであります。  なお、この法律は、酒税法改正と同様、来る三月一日から施行したいと考えているのであります。  第二に、登録税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  登録税につきましては、最近における不正印紙使用状況に顧み、登記所等において登録税納付使用された印紙が偽造等不正のものであることを発見したときは、これを税務署に通報することと、これによつて国税徴収の例にならない、登録税を追徴することができることとする等の改正を行うこととしておるのであります。  第三に、揮発油税法の一部を改正する法律案について、申し上げます。  揮発油税につきましては、直接国税の場合と同様に、指定納期限までに揮発油税を完納しなかつたときは、その翌日から納付の日までの日数に応じて日歩四銭の利子税を徴収することとする等規定の整備をはかつております。  以上三法律案大要を申し上げた次第でありますが、何とぞ、御審議の上すみやかに賛成せられるよう切望する次第であります。     —————————————
  4. 奧村又十郎

    奧村委員長 次に税関係法案一括議題として質疑に入ります。  質疑は通告順によつてこれを許します。佐藤觀次郎君。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 渡辺主税局長酒税のことにつきましてお伺いしたいと思います。  今度の改正で酒が二割か三割下るわけでございますが、これを引下げるために実際の財源はどういうふうになるか。あらかたの数字でけつこうですから、それを引下げたためどれだけの減収になるかということをひとつお伺いしたいと思います。
  6. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答え申し上げます。結論的に申し上げますと、今度の改正税率引下げによりまして、酒税収入につきましてはおおむね増減なしということを実はねらつておるのであります。何でそういうことができるのかという点がすでに御疑問になると思うのでありますが、何と申しましても現在の酒の税率は、去る二十五年の十二月から実施されました改正によりましてある程度引下げられましたが、現在の税率従つてそれによつてできております現在の酒の価格によりましては、もうそろそろ消費も大体一ぱいになつて来るのじやないかということが一応予想されるわけでございます。従いまして、私の方でまず現行法の場合と改正法の場合との一応の見積りをつくつてみたのでございますが、まず現行法の場合におきまして考えましたところでは、今度米が昨年度の七十四万石の配給から九十四万石の配給になつて、二十万石ふえます。それに応じまして、これは大部分が清酒の方の増になるわけでございますが、清酒造石が相当ふえるわけでございます。ただ、最近におきますしようちゆう合成酒等売れ行きを見て参りますと、清酒造石がふえまして、もし価格が現在のままでございますと、しようちゆう合成酒売れ行きが相当詰まるだろうということが一応予測される次第でございます。従いまして、現行法の場合におきましては、清酒がふえた、しかしそれだけまるまる税収がふえるわけじやなくして、大体清酒が十ふえれば、合成酒、しようちゆうの中でも十でもつて九ぐらいは減るだろうということを一応前提にいたしまして、そうして現行法税収見積りました。この場合におきましては、その十ふえた場合と九減つた差額の増分と、それから税率の差がございますから、この分が増収になるわけであります。これで大体現行法税収見積つてみたわけでございますが、それでは改正法の場合におきましてはどうなるか。結局改正法の主たる目的は、酒の値段を下げることによりまして消費の増加をそこに期待するというのが一つと、それから密造酒がこれによつて正規の酒に置きかえられることを期待しておるわけでございます。従いまして、税収見積りの場合におきましては、現行法の場合に大体酒にどれだけの消費金が使われるか、その消費金程度は、今度改正法によつて値段が下りましても酒に使われる金は同じだろう、ただ量がそれだけふえる。この値段を下げるということをもとにいたしまして、多少そこに消費の増が——先ほど申しました密造酒関係でありますが、密造酒の高がどれくらいあろうかということは一応推測できますが、一応この方から五十万石程度清酒の方に振りかえられて行くだろう、こういうことを前提といたしまして、今度の改正法税収見積つております。それだけでありますと少し税収が減りますが、三月に値下げを断行いたしますと、値下げ前に買控えが、これは初年度だけでございますが予想されるわけでございます。これが三月になつてずつと出て行くだろう、この分が二十万石ぐらい一応予予想される。従つて、これは来年度だけのものでございますが、この分だけ今年の分が減つて年度における税収がふえるということが予想されます。その分も加算いたしますと、税制改正を全然しなかつた場合に比べまして、そこで一億六千万円ですか、ややふえる。大体この辺の予想を立てまして見積りを立てております。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まあわれわれの立場からすれば、酒は安いに越したことはないし、戦争後一番税金の高いのは酒とタバコでございます。ともかく今度清酒の二級酒で四、五十円ということになつておりますが、これは昭和十年当時の酒の比率にするとどのくらいになるかということと、いくら下げるといつて限度がありますが、どのくらいの程度に下げたら現在の千四百六十二億円だけの税収が持てるかどうか、腹案がありましたら主税局長から御説明願いたいと思います。
  8. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 昭和十年ごろの酒の値段はどれくらいかというお尋ねでございます。われわれが普通よく昔を振り返りますとき、戦争前の昭和九、十年の当時をとつてみますと、その時分、現在二級酒と考えられます普通の酒は一円ぐらいであります。そうしますと現在は五百二十五円ですから五百二十五倍、今度政府が考えております案は、先ほどおつしやいましたように四百四十五円見当でございます。そうすれば四百四十五倍。他の物価の方は大体三百倍ぐらいというのが普通の常識になつておりますので、それから比べますと、まだこれでも下げ切らぬというふうな御議論もあるのじやないかと思います。ただ税収関係からいたしますと、今度はまた逆に幾ら税金を下げてもそうどんどん飲むかというと、これに一応の限度がございますし、それから税金だけで酒の値段ができてないで、そこに別にコストもあるわけでございますから、税金が安くなれば、量がふえましても税収の方としてはそんなにふえ切らぬという問題もございます。ですから大体現在の税収を落さないということを一応の目安にいたしまして、その限度において、酒の税金が最大限下るとすれば大体どれぐらいまで下げられるであろうかというようなことを目安にして一応つくりましたのが、現在提案されている税率でございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように、酒は米からつくる清酒が一番いいのでございまして、農林省との交渉で、どれくらいまで増石が可能なのかといら限界主税局長は知つておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  10. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答えいたします。清酒につきましては、御承知のように蔵はまだずいぶん大きな建物が残つていますから、おけさえ入れるならどまだまだつくれると思つておりますが、しかしもう木のおけは能率上非常に悪いというので、最近大分タンクに転換しておることは御承知の通りでございます。そういうような点からいたしましてタンク——おけの方でも、実はもうそろそろ詰まつて来ております。従いまして現状をもつてすれば、米の百万石ということになれば、業者の方においては現在の設備で十分やつて行ける方もあろうかと思うのでありますが、現在米の割当制度ができています、あの制度でもつて一応割当てて行くとすれば、百万石になれば相当タンクを買い入れなければならぬとか、新しい設備をしなければならぬとかいう問題の出て来る方も相当あるんじやないかと思つております。現在九十四万石でしたらそういう心配は大してないが、その辺新しい施設をしない限りにおいては、そろそろ一ぱいじやないか。ただしかしタンクの問題でございますから、タンクさえもう少し入れればまだつくれる余地はある、こういうふうに考えております。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは少し部分的な問題でございますが、今みりんが私の郷里愛知県の蟹江付近、大治村付近で出ておるのでございます。これが現在非常に売上げが悪い。今度は大分税率を下げてもらつたのでございますが、このごろ売上げの調子が悪いということを郷里で聞いております。みりんというのは、御承知のように必ずしもぜいたく品ではないのでございまして、われわれの郷里ではこの産業が非常に重要な産業になつておりますので、みりん業者も非常に困つておるわけでございます。そういう点で、今大体一級酒ぐらいの値段になつてあるようでございますが、もう少し下げられないかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
  12. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 みりん、特に今佐藤さんのおつしやいました、われわれは旧式みりんと呼んでおりますが、古い醸造のやり方でやつておるみりん業者の方が、仕事が非常にやりにくい面があることはわれわれも承知しております。いろいろな原因があるのじやないかと思います。みりんの使い道におきまして、みりんにかわるようないろいろな調味料がたくさんできて来たということも一つ理由じやないか。たとえばうなぎのかば焼などは、これはみりんでないとぐあいが悪うございますが、その他の場合には、必ずしもみりんでなくてもいいといつたような場合もあると思います。ただ一番大きな理由としましては、やはり税金が高い、従つてみりんはぜいたくだといつたような観念から、値段が高いということがみりん売れ行きの悪い原因ではないかと思います。そういうようなこともございますので、今度の改正におきましては、みりんの方の税率下げ方といいますか、それは他の酒類に比べましては比較的高くいたしまして、そうして特にみりん売れ行きが悪いという面につきまして、これで全部解消できるかどうか知りませんが、税の方としましても相当の考慮を払つたつもりでございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つビールの問題ですが、ビール業者からいろいろ陳情が来ております。ビールについてもつとこういうふうなものは下げてもいいではないかということですが、一体今度のビールと酒の比率は、この点で穏当であるかどうかということが問題になつております。それについて主税局長の考えを承りたいと思います。
  14. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 ビール税率につきましては、実はいろいろな議論があるところでございまして、一面の考え方からしますと、何といつてビールを飲む人はしようちゆうを飲む人よりはたとえば所得が大きいとか、まあぜいたくとは申しませんが、しようちゆうに比べれば高級だとか、従つてビールをそんなに安くする必要もあるまいという議論もございますし、といつて現在のビール税率が相当高いというのも、私は一つの事実だと思つております。今回の改正におきましては、大体下級といわれておる酒類を一応重点にいたしまして税率をきめておりますが、ビールにつきましては、大体清酒二級と同じくらいを目標に、清酒二級につきましては御配付の資料でごらん願うとわかると思いますが、二割二分四厘、ビールにつきましこも二割二分四厘、まあこの程度ならそうバランスを失つた改正でもあるまい、かように存じておる次第であります。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後にもう一点密造酒の問題につきまして伺いたい。大蔵当局密造酒の問題に対していろいろ対策を講ぜられることはわれわれも注目しておりますが、この清酒ビール値段で、はたしてこの密造酒が退治できるほどの程度に至るかどうか、同時に最近密造酒の状態は、二、三年前よりはふえておるのかどうかという見通しも主税局長に伺いたいと思います。
  16. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答えいたします。密造酒状況は、われわれの方では現在なお相当行われておると思いますが、一時に比べますれば、逐次減りつつあるのではないかと考えております。特に都会において行われました販売目的としたしようちゆう密造などにつきましては、これはやはり漸次減つておるのではないかと思つております。密造対策はなかなかむずかしい問題でございまして、単に取締りだけでこれを退治しろと言われましても、これはおそらく百年河清を待つにひとしいものではないかと思つております。結局片方におきましては税率をある程度下げまして、そうして値段を安くする、片方では取締りをやかましくやつて行く、この二つが兼ね備わりまして密造酒が漸次駆逐され得るものではないか、かように考えております。今度の税制改正におきましても、それを頭に置きましては、しようちゆうにつきまして大体三百円見当というのを目途に一応つくつております。なお臨時措置法改正として、お手元にございます酒税法案の附則の方についておりますが、二つ制度を考えております。一つはいわゆる二十度しようちゆう、これにつきましてはいろいろな御議論を伺いまして、ごもつともな点もございますので、われわれも一応やつてみようかと思つておるのであります。それは主として地方のお話なのですが、密造のしようちゆうは度数が十八、九度で二百円見当から二百二、三十円で売られているというようなお話を伺つておるわけなのです。それでそういう地域を中心にいたしまして二十度しようちゆうを出してみたらどうだろうか。今私の方で計算しておりますところでは、この分は普通の二十五度分のしようちゆうよりもちよつと税率を安くしてございます。それでまあ二百三十円見当、あるいはコスト関係で多少上るかもしれないと思つておりますが、その程度の二十度しようちゆうというものをひとつ出してみよう。これでございますと、大体密造のしようちゆうの分とほぼ見合うのじやないだろうか。二十度しようちゆうにつきましては、実は内部でも非常に議論があるのでございますが、とにかくこれも一つ手段としてやつてみよう。それからもう一つ配給酒制度でございます。これはいろいろな議論がございますが、これも一応現在すぐやめることにしないで、とにかく一年くらい制度を置いてみよう、私のつもりといたしましては、もしこれを続ける必要があれば、さらに続けることも次の国会で御審議願いたい。配給酒税率につきましては、酒、合成酒ビールにつきましては、普通の税率の七掛——三割というところです、それからしようちゆうにつきましては八掛という税率を考えでおります。この税率は大体現在の配給酒税率に比べますと、現在の配給酒加算税が入つておりませんが、そのしようちゆう、酒、全部を込めまして大体三割から三割四、五分の引下げ、こういう割合になつております。これらの手段をあわせ用いる酒全体の値段を下げるということと、二十度しようちゆう、それから配給酒の問題を使うということとあわせまして、片方取締りを強化して行く、それらの措置によりまして、密造酒を逐次駆逐して行くということに努力して参りたい、かように考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 戦後御承知のように密造酒が非常に蔓延をしまして、今日農村におきましても、密造酒のために自分の生命を失う人もあるわけであります。そういう点から、国民の衛生上の立場からと、もう一つ酒税というものは国の財源の大きなポイントを占めておりますので、ぜひひとつ大蔵当局もさらに密造酒に対しましては一層の注意をせられまして、ぜひこの密造酒のできないような方法をもつて善処されんことを期待いたしましてきようの私の質疑はこれで終ります。
  18. 内藤友明

    内藤(友)委員 ちよつと議事進行委員長にお願いしたいと思うのですが、この委員会には実はずいぶんたくさんの法律案が出ておるのであります。きよう議題になつておりますものだけで十二であります。ところがこの委員会審議ぶりを見ておりますと、自由党皆さんの御出席がまことに悪い。委員長を除きますと、自由党委員は十三名、そうでない者が十二名なんですが、自由党皆さんでも御出席は今四人、八人の欠席です。こちらの方が十二人で二人だけの欠席。こういうことでは、本気になつてまじめになつてつておるということではないと私は思います。自由党皆さんにも税金は大事な法律なんです。皆さんもこれは軽々しく考えてはならぬ。だからぜひこれは委員長から御注意願いたいと思うのです。(「同感」と呼ぶ者あり)法律が十二もあるのです。どうかひとつよろしく頼みます。これで委員会を責められても、私ども責任はありません。よろしくひとつお願いいたします。
  19. 奧村又十郎

    奧村委員長 ただいまの御発言につきましては、委員長もよく了承いたしました。善処いたしたいと思います。加藤高藏君。
  20. 加藤高藏

    加藤(高)委員 ちよつとお尋ねしたいのですが、本年度酒類別課税石数、これを大体でよろしゆうございますが、お尋ねいたします。
  21. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答え申し上げます。加藤委員のお手元に「租税及び印紙収入予算説明」というのが差上げてあると思いますが、それの二十二ページをごらん願いたいと思います。そこに一応の数字が載せてございます。改正後における酒類造石見込みでございますが、そこに自由販売酒配給酒、合計といたしまして清酒は全体で二百二十一万石、合成酒が一級、二級合せまして八十一万石、しようちゆう——これはみりんも入つておりますが、みりんが四万八千石、その両者を合せまして百六十二万石、それからビールが百九十一万石、雑酒が十八万石、全部合せまして六百七十九万石、なおその他に先ほど申しました買控えによる分等が約二十万石、この両者を加えますと約七百万石を見込んでおります。
  22. 加藤高藏

    加藤(高)委員 全酒類を通じまして七百万石の造石を見ておるようでありまして、前年度に比較いたしまして百五、六十万石の消費増政府といたしましては見込んでおるようでありますが、私ども業界立場、いろいろの観点から見まして、この消費増は相当困難と思われる感じがありますが、政府の見解を伺いたい。
  23. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答えいたします。本年度の酒の造石数としましては、一応予算で見積つておりますのは五百七万石でございます。それでわれわれの方では先ほど申しましたように、米の配給が多少ふえますが、もし現行の税率であり、現行の値段でございましたならば、大体五百二十九万石程度にしかふえないであろうということを一応考えているわけでございます。それでこの五百二十九万石の場合の税収を新しい値段によつて確保したいということで、今度の税率がきまつているわけであります。従いまして私は業界の者ではございませんが、多少いろいろ過去において酒の売れ行きなど見ておりますと、新しい値段になりまして七百万石、もつともそのうちの二十万石はちよつと異常なものでございますが、六百八十万石ぐらいのものがはたしてどういうように消化されて行くかということにつきましては、不安がないわけではございませんが、しかし酒の値段も相当下りますし、先ほども申しましたように、われわれの考え方としまして、現行の場合に酒に使われる消費資金ぐらいは大体酒に使われるのではないだろうかというようなことを一応前提にいたしまして考えておりますので、その程度の歳入は何とか確保できるのではないかというふうに思います。
  24. 加藤高藏

    加藤(高)委員 大体の見込み石数は、戦前の昭和十二年前後の数量に達すると思われるのでありますが、当時の経済状況並びに酒税率というようなものを考えましたときに、この完全消化というものは非常に困難ではないか。また万一予定の消化ができなかつた場合においてはどういうふうに考えておりますか。
  25. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答えいたします。あまり消化がむずかしいと、実はこれだけ税率を下げるわけに行かないわけでございまして、どうも税率を何とかして下げたい、価格も下げたいということで、消化については実は別途酒屋さんの方にも大いに御努力を願い、われわれも側面的にもし協力する点があれば協力したいというふうな考え方で、実はこの予算を組んでおるわけであります。配給酒制度とかいろいろな制度がございまして、これは別の目的でできておるものでありますので、これがすぐに消化のためのものだというふうに考えるのは、少し私は違つた考え方じやないか、筋が通らない考え方じやないかと思つております。何とかこの程度の酒の消化につきましては、業者の方に御努力を願いたい。また事実先ほど申し上げましたように、前提がそうでたらめな前提とも思いませんので、もちろん密造酒を正規の酒のルートに乗せるということにつきましては、これはわれわれの方の取締りが非常に大きく物を言いますから、これにつきましては、われわれもせつかく国税庁で努力してもらうということに考えております。そのようなことによりまして、何とかこの程度税収は確保したい、かように考えておる次第でございます。
  26. 加藤高藏

    加藤(高)委員 昭和二十八年度酒税法改正を見ますると、酒類の小売価格はそれぞれ予算が組んであるわけでありますが、酒税の引下げの金額との間に差額があります。清酒二級の例をとりますと、小売価格の値下りが八十円で、税の引下げが大体六十五円、差額が十五円、合成酒も同じく二十三円、しようちゆう十八円、ビールで五円七十銭、このような差額につきましては、生産者、卸売業者、小売業者、いずれもはどのようにこれを負担する考えであるか。
  27. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 先般御説明の際に申し上げましたように、その小売価格につきましては、実は目下研究を続けております。従いまして税率の方につきましては、一応政府の案が成立すればそれでもうはつきりするわけでございます。小売価格がその程度にそのままきまるだろうかどうかということにつきましては、目下検討を続けておりますが、あるいはある程度かわるかもしれぬ。しかしその幅は五円以上の幅にかわることはないということは、はつきり申し上げられるのじやないかと思つております。従いましてその数字は、私どもとしてはまだ最終的なものとお考え願いたくないつもりでございます。  それからもう一つの問題につきまして、たとえば清酒が十五円下る場合におきまして、製造者がどれぐらいそれを負担し、それから卸、小売がどれぐらい負担するだろうかという点につきましては、われわれの方は、初めから十五円ときめてそれをわけているわけでもございませんが、実は必要な計数を整理しておりますところでありまして、一口に言えますことは、最近におきましてアルコールが値段が下つておりますので、清酒につきましては、米の方は多少上つておりますが、添加のアルコールの値段が相当下つている。合成酒につきましては、その一番主要な原料であるアルコールの値段が下つておるといつたようなところからいたしまして、酒のコストの値下りは相当期待できるのではないだろうかということは言えると思います。  それから卸、小売のマージンでございますが、何と申しましても酒の値段が全体として下るのでございますから、現在の絶対額がそのまま維持されなければならぬというのもちよつと納得できない問題であつて、ある程度はやはり下げるべきではないか、但し現在のマージンの割合は相当実は渋く切つてございますので、割合としてはある程度上げるということも考えてよいのではないか、かように考えておりまして、内訳をどうということにつきましては、もう少し考えさせていただきたいと思います。
  28. 加藤高藏

    加藤(高)委員 その原価計算その他の点について、ちよつとお伺いしたいのであります。酒類のうち、清酒を除きましては割合に原価計算はただいまのところ簡単にできると思うのでありますが、清酒は目下仕込みの最盛期でもあり、製造過程にあります関係上、特に慎重に御配慮を願いたいと思うのであります。その点よろしくお願いしたいと思います。
  29. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 清酒はもちろんでございますが、あらゆる酒について、コストを計算するにつきましては最も慎重にやるつもりでございます。
  30. 加藤高藏

    加藤(高)委員 次に提案理由の御説明にあたりましては、特に大衆的酒類に重点を置くということがあるのでありますが、現行法におけるところの雑酒の四級に対してのみ引下げの率が特に少いように感ぜられるのでありますが、これはいかなる理由によるのか。
  31. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 雑酒の四級についてのお尋ねでございますが、われわれはこういうふうに考えております。雑酒四級の制度は、昭和十八年にできた制度であります。その当時におきましては、雑酒四級の税率はほかの酒に比べますとむしろ高目にできていまして、かえつてビールなどより税率が高かつたという時代がございました。その後終戦後におきまして相当税率が引下げられました。というのは、こういう原因があるかと思つております。戦争中あるいは終戦後において特にその傾向が強かつたのでございますが、原料が非常に貧弱になつて参りまして、酒の原料として、たとえば菊いもを使う、どんぐりを使うといつたような調子で、アルコール分にでき得るものはあらゆる原料を全部動員するといつたような時期が一応あつたわけであります。従いましてそうした場合におきましては、やはり品質も相当悪いというので、品質の悪い酒を雑酒四級という中に入れまして、従つて税率が相当低くなつて来ているというのが現在までの実情ではないかと思つております。最近の状況は、先ほども申しましたように、幸いにして米の配給も相当多くなつて来たし、いもからのアルコールもずいぶん多くなつて来たのであります。こういう時代におきましては、あまり粗悪な酒をつくつて、それを特に税率の上で奨励する必要はもうないのではないか、その時期はもう過ぎたのではないだろうかというふうに実は考えております。その意味におきまして、今度の税制改正案におきましては、雑酒につきましては三級と四級を一緒にしまして、そうして従来四段階になつておりましたのを三段階にわかちまして、特級、一級、二級というふうに改めました。従いまして従来三級であつたものを今度の二級ですか、一番最下級のものに比べますと、その引下げはかなり行つておりますが、従来四級であつたものと今度の二級、いわば三級といつてもいいのですが、引上げられたものの税率の引下げの率につきましては、一割ちよつとという姿になつておりますが、主たるねらいが今申しましたように、現在あります四級の税率自身が、どちらかといえば一時の窮乏時代における粗悪酒をねらつた税率である。現在としましてはそういう粗悪酒は、それをつくつていた業者の方にもいい原料が使えるようにだんだんなつて来たのですからいい原料を使つたいい酒をつくつていただくという意味におきまして、もう四級という特別な税率はやめた方がいいじやないか、その関係からしまして、従来の四級の税率に比べますと、今度の三級の税率の下り方は少い、こういうわけでございます。御了承願いたいと思つております。
  32. 内藤友明

    内藤(友)委員 関連して渡辺さんにお伺いしたいのですが、今度税率をかえられましたのには、やはりこれは何か深い根拠があるのだろうと思うのでありますが、私どもしろうとなものですからわかりませんので、ひとつそういう根拠を、はなはだ恐縮でありますが、資料としてお出しいただきたいと思います。たとえて申しますれば、清酒二級二万九千円のを二万二千五百円にどういう根拠でしたのか、それから一級五万四千円を四万六千五百円にしたのはどういう根拠でこうしたのだ、これはおそらくいいかげんなところで、ここでやろうじやないかというのじやないだろうと思いますが、それをひとつ私はお聞かせ願いたいと思うのでありまして、はなはだ恐縮でありますが、資料として、この根拠をこうなんだ、これはおそらく酒の税金の基本のことになるだろうと思いますので、はなはだ申訳ありませんが、われわれのようにこういう方面に知識のない者にひとつ親切な取扱いとして、そういう資料を出していただきたいと思います。
  33. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 資料といいますより、あるいは説明というのが当つているかもしれませんが、確かに全然理由なしに税率をきめたということはいたしておりません。ただ考え方の線といたしましては、下級の酒の税率は下げる幅を大きくしよう。それから現在の特級清酒にしましても、特級、一級のようなものですと、これは何と申しましても相当所得の大きい人が飲む酒だという意味で、これは下げる幅は小さくした方がいいのじやないか。それからしようちゆうの問題でございますが、しようちゆうは何と申しましても一番所得の少い人の飲む酒であろう。それから現在しようちゆう売れ行きとか、しようちゆう需給関係から見ましても、一瞬供給過多になつている。飲まれる方もそういう関係もあろう。従つてこの場合における下げ方は大きくしております。それから合成酒はその中間に入るわけでございますが、酒の値段合成酒値段というものの一応のバランスを考えまして、そうして大体現在の値段の幅というものを保つくらいのところで合成酒値段をきめるのがよかろうと考えて、実は業者の方の御意見もずいぶん伺つてみました。それでもそろばんをはじいたようなぴしつとした根拠がなかなか出ません。しかし大体しようちゆうが三百円くらいというところになれば、まあしようちゆうとしてもよかろうじやないか、たとえば三百円にするためにはどれくらいの税率にしたらいいだろうかというような点で、一応の税率をはじいて行きまして、それが税収全体としてどんなふうに見合つて行くか、そうすれば、それじや下げ過ぎになるとか、あるいはまだ下げ足りないとか、こういつたような関係で大体現在の税率をきめたわけでございます。御了承願いたいと思いますが、何かそれ以上、今私の申し上げたような点を説明として、あるいは書いて出すなら一応出せると思いますが、根拠といいましてもちよつと説明ができにくいのじやないかと思います。
  34. 内藤友明

    内藤(友)委員 そうすると、やはり見当か勘でおきめになつたのですか。
  35. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 見当、勘だけできめたとは決して思いません。ただ一応清酒全体としては現在程度が維持できる。それでその場合については、たとえば平均税率だけで全部同じように下げるとすると、何割程度下げ得るという数字がまた片方に出ます。その場合に、今度は、それはそんなに下げなくてもいいじやないかというのが幾つかあるかと思います。そのものについての下げ方を少くする。大体値段を中心に考えておりますが、そうするとその数字は、そこでどれだけの余裕財源が出て来る、そうすると清酒はどのくらい下げられる、ビール清酒とバランスをとつてよかろう、しようちゆう清酒より下げ方を多くする、その場合にしようちゆう値段はいくらぐらいになる、そうすれば全体としてはこのぐらいの値段でよかろう、まあ業者の意見なども聞きまして、たとえば清酒が四百四十五円になるときは、合成酒なら幾らの値段がよかろうか、あるいはしようちゆうなら幾らぐらいの値段がよかろうというぐあいにやはりそこに勘が多分に入るわけであります。そういうふうなところでは、この辺なら酒類全体として大体バランスを得ているのではないかというので、一応の結論を出した次第であります。
  36. 内藤友明

    内藤(友)委員 それではひとつ裏からお尋ねしたいと思います。政府は今度千四百六十二億を期待しておられるわけですが、それを一応押えて、そうしてこういうふうに割当てられたのですか。
  37. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 税収全体につきましては、特に酒の税率において減収するということは実はわれわれの方は考えておりません。従いまして税収全体としてあまり増減がないというところをおつしやる通り一つの線にしております。ただその範囲内において、今度は酒がどれくらい売れるだろうかということについても、あまり極端な数字に広げるのも危険でございますから、それでこの程度なら、大体値段が下れば売れるだろうという一応の見当があるわけでございます。それは先ほど申しましたように、どうして出すかとおつしやられれば、現在の税率のままでもつて酒として消費される額を一応出しまして、その程度消費金は、大体値段が下つても酒に使われるだろう、消費増でもつてまかなえるだろうという一応見当をつけまして、そうしてそのほかに密造酒の方が五、六十万石はこちらの方にまわつて来れるだろう、これで一応酒の全体の消費量というものの見当をつけまして、そこでその場合においては、税率をどのくらい下げたら現在の税収が確保できるか、これの一応の見当をつける。そのあとで今度は各種の酒類の間において、それではどういうバランスを保つて行けば、清酒業者の方も合成酒業者の方もしようちゆう業者の方も、全部御満足とまでは行きませんが、まあまあ、どうせ自分の酒は下げても、人の酒はあまり下げならということを各業者の方がお考えになるのは当然な話でありますから、従つて、その業者の方の狭い立場ですと、それはいろいろ不満もあると思います。しかし同じ業者の方でも、やはり全体的に物を考えてくださる方なら、この辺ならがまんができるというようなお話などを伺いまして、それで一応のバランスをとつてきめたわけであります。
  38. 内藤友明

    内藤(友)委員 やはりお伺いすると勘がかなり働いておるのですが、勘でありますと、私どもも勘でありますから、これを修正しても、これに御応じなさるのですか。
  39. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 正直に言つて、私どもの方も勘が全然働いていないとは申し上げません。酒の値段、酒の税率が全部そろばんだけではじけて来るものとは私も思つておりませんし、そうも申し上げておりません。しかしその場合に、われわれの勘が、少くとも税金についてはしろうとの勘だとも思つておりません。長年の経験もあります。それで業者の方の御意見につきましては、これはわれわれの方も十分伺つて、そうしてその方々のいわば勘も十分考慮しておるわけでありまして、従つて内藤先生の勘がわれわれをして納得せしめるものであれば、さらにわれわれはそれによつて修正ができるということも、国会の御賛同があればやむを得ない、かように存じております。
  40. 加藤高藏

    加藤(高)委員 次にお伺いしたいのは、基本税と加算税を一本にするという今回の改正の趣旨についてお尋ねします。
  41. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 お答えいたします。先日も申し上げた通りでありますが、御承知のように基本税、加算税制度は、配給酒が全体の酒の大部分でありまして、そして多少酒にゆとりが出て参りましたときに、少し自由販売酒をつくつたらいいじやないかというような時代に、配給の酒は安く、しかし自由販売の酒は高くてもいいだろうというのでできたのが、現在の加算税制度でございます。最近の状況は御承知のように、自由販売酒がむしろ普通の状態でございまして、配給酒制度は、農村その他きわめて特殊な事例になつたわけであります。これが一つでございます。それと税率が相かわらず高い時代でございますと、一応の基本税率加算税率、それに伴いまして御承知の小、卸のような制度もできておりまして、急に一本にするというのは困難な問題があろうと思いますが、税率全体がだんだん下つて参りまして、たとえば減税した分を、加算税だけでもつて減税したというふうに仮定いたしますと、しようちゆうのごときはほとんど加算税がなくなつて、基本税だけになつてしまう、こういうような姿になるわけであります。従いまして基本税、加算税の二本建は、何と申しましてもわれわれの見方からいたしますと、配給酒自由販売酒のあつた時代の一つの変則的な制度ではないだろうか。そういう考え方からいたしますと、この際としては税率も下りましたし、それで、それも全部加算税で落す考え方がいいかどうか、これはいろいろ異論があると思いますが、しかしたとえば全部加算税で落したとすれば、加算税がなくなつてしまう種類もございますから、従つてこの際としては一本の税率にするのがよかろう。ただ現在の二本建の税制のゆえに、たとえば地方においての小、卸協同組合とかいろいろな制度もございます。従いましてあまり突発的にこの制度がなくなつて、その仕事の跡始末等につきまして、御用意もできない間に全部なくしてしまうというのもいかぬ。従つて一応一年間というゆとりを置きまして、その間に新しい制度への御用意を願いました上で、この制度はやめてしまつたらどうか、かように考えておる次第であります。
  42. 加藤高藏

    加藤(高)委員 指定卸機関の問題については、明日またお尋ねしたいと思います。ただいまの基本税と加算税を一本建にするという御意見に対しては、私は次の点から御当局に御反省を促したいと思います。  御承知のように、酒税の本質は消費税でありますので、これはできるだけ消費に近い部分からとるのが本来の姿ではないか。あえてこれを廃止しなければならないというような徴税上の理由がどこにあるか。清酒におきましても合成酒におきましても、いずれも生産費に比べて税金が一一〇%以上になつておるのでありますが、現行法上におきましてこれほど重い消費税はないと思うのであります。この重い負担を、生産者のみにかける必要がどこにあるか。従来のように二本建にしてその危険を分散させるのと、一本建にするのとどちらがよろしいか。私は二本建にして危険を分散した方がよろしいというふうに考えておるのでありますが、この点に関して当局の御意見を伺いたいと思います。
  43. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 消費税は、できるだけ消費に近い場所において課税すべきものだという御意見につきましては、理論的には私は全然同感であります。しかし同時にそれによつて徴税が非常に困難になる、あるいは脱税が多くなるということになりますと、これは取締りのための経費が非常にふえますから、結局は徴税費がふくらむといつたような関係で、ちよつと考える必要があろうというふうに思つております。酒の税金は、何と申しましても非常に高い税金でございます。従いまして酒の値段の中で占める酒の税金が非常に多いということからいたしまして、これが取締りあるいは確保につきましては、特に慎重を期さなければならぬという性格のものだと思つております。その意味からいたしますと、何と申しましても、やはり製造の過程から漸次取締つて行かなければ確保ができないし、取締りが十分に行かないという性格のものだと思つております。昔は御承知のように造石税という制度もあつたわけでございますが、できるだけ消費に近いところで課税しようということで、現在の庫出税の制度ができておるのでありまして、加算税分だけを卸のところでとつたらいいじやないかということが加藤さんの御主張のようでありますが、現在の小、卸の制度というものは、今言いましたように、何と申しましても自由販売酒の時代に、卸の中で特に選ばれたといいますか何といいますか、特定の人だけが卸になつておるというのが現在の制度でありますが、これもまた卸の人たちの議論からしますといろいろ意見があるのでありまして、といつて現在の加算税を卸のところでとつてよろしいということにつきましては。とてもわれわれ自信がございません。結局卸の過程においてとるというのは、よほどある特殊な方々だけですとまだいいですが、その特殊な方々だけについてそうすることについては、他の卸の業者にいろいろ異論があるわけでございまして、かれこれ考えまして、何と申しましてもこれが自由販売酒ができた時代から生れたものであるということと、現在は自由販売酒が一般的である、税率が下つた、先ほど申し上げましたような理由からして、この際としてはやはり製造業者の方から納めていただく、製造業者の方々にはどちらにしても御迷惑をかけているわけでありますが、まあ製造業者の税一本にするのが一番いいんじやないかという結論を、われわれとしては持つている次第でございます。
  44. 中崎敏

    ○中崎委員 愛知政務次官は、二十八年度予算編成においては相当苦労されておるようでありまして、その点を多とするのでありますが、大体私は予算全般等についてもお聞きしたいのでありますが、この場合においては税金を中心といたしまして、必要な範囲において質問してみたいと思います。  まず税体系の問題でありますが、政府の方では二十八年度においては、中央、地方を通ずるところの大幅の税制改正を考えて来ておられるようでありまして、国税中心の法案は一応われわれの手元に出ておるのであります。ただここで問題になりますのは、最近における地方の財政が非常に行き結まつておりまして、ほとんど破産とでも申しますか、非常に重大な危機に立至つておるように考えておるのであります。今地方税において考えられておりますのは、ほんの暫定的な事業税の一部改正程度のことというふうに了解されておるのでありますが、いずれにいたしましても、そういう姑息的なことでは、とうていこの緊急、行き詰まつたところの地方財政というものは解決がつかないのではないかと思います。私は島根県出身の者でありますが、最近県からもたらした話によりましても、二十七年度の不足分が四億三千万もここにあるのだ、どうしてもこれは平衡交付金なり、あるいはつなぎ資金なり、さらにまた適当な財源政府の方からもらわなければやれないというような状態でありますが、これは一応何らかの形において糊塗することができるとしても、二十八年度以降においては、とうていこういう状態では県政が運営できないということを明らかに申し上げることができると思うのであります。  そこでまず中央、地方を通ずるところの税体系を考えます場合において、地方には中央からどういうふうな財源をやることが最もいいのか、こういうふうな点についてひとつお聞きしておきたいと思います。
  45. 愛知揆一

    愛知政府委員 まことにごもつともな御意見でございまして、私どもといたしましては、実は中央、地方を通ずる税制の改正につきましては、大蔵省としては一応の研究案ももちろん持つておるわけでございます。ただしかしながら、これは非常に根本的な問題で、単に税利あるいは中央、地方の財政制度というだけの問題ではございませんで、非常に総合的な大きな問題でありますので、ただ大蔵省だけの見解から案を推進するということは困難でもあり、不適当でもあると考えておるわけでございます。幸いに地方制度調査会というものができましたので、政府全体といたしましもは、その調査会の研究等の意向も十分聞きまして、二十九年度以降において抜本的な改正をすることに考えておるわけでございます。そ  こで大蔵省としては、それならば、どういう程度のことを考えておるかというと、これは未熟であり、かつ私見でございますが、申し上げまするならば、たとえば地方税といたしまして、現に行われておりまするもののうちで、たとえば遊興飲食税、入場税というようなものは、国税に移管した方がいいのではなかろうかということを研究の対象にいたしております。同時に国税のうちで酒税でありまするとか、あるいは専売益金でありますとか、そういうものにつきましては、たとえば二割というようなものを機械的に地方に還付をする、いわゆる還付税制度の一環を取上げるということも適当ではなかろうかというように考えるわけでございまして、これを要するに現在の地方税の問題としては、富裕な都道府県が非常に有利な立場に立つておる。全体としての国民所得と申しますか、全体としての立場から見れば、いわゆる貧弱府県といいますか、経済的な立地条件の悪いようなところにもう少し財源を与えるようにしなければいけないということを中心の構想にする必要があるかと考えておるのでございます。先ほどお話の、たとえば島根県を初めといたしまして、二十七年度年度末に際しても相当の赤字で苦しんでおられる。これに対しては適宜処置を講ずるつもりでおりますが、二十八年度といたしましては、事業税等について若干の手直しをするだけに一応とどめまして、従来の平衡交付金制度を踏襲するわけであります。今申しましたようなことも一案でありますが、二十八年度中に徹底的な検討を加えて、シヤウプ税制というようなものの根本的な改正案をつくりたいと考えておるわけであります。
  46. 中崎敏

    ○中崎委員 ただいま大蔵政務次官から御意見のありました中で、中には納得し得るものもあるかと思います。ことに酒類、そのほかタバコ等の専売益金の還元といいますか、こういうふうなことについては、私もこれは一つ財源として、最もまんべんなく敷衍されておるので、割合公正な状態においてこれが運営できるのではないかというふうに考えておるのであります。これはまた地方財源としては大きな財源にもなるのでありますから、大体こうした線に沿うて、ひとつ大蔵省の方で強力に推進してもらいたいと思います。  それから遊興飲食税、入場税等を国税にするのが適当であるかどうかは、これはまた検討の余地があると思うのでありますが、いずれにしてもまず二十八年度においては、先ほどの専売益金等の地方還元ということを考えてもらうということが一番早道ではないかというふうに考えておるのであります。それとまた平衡交付金の現在の予算に組まれておる範囲においては、とうていこの行き詰まつた地方財政をこれをもつてまかなえないというふうに考えておるのであります。これは予算にもすでに組まれておるのでありますから、大体において方針は、平衡交付金中心にやられるのでありますが、将来、二十九年度以降において平衡交付金制度を全面的にやめるというような考え方を持つているかどうかということも聞いておきたいのです。
  47. 愛知揆一

    愛知政府委員 平衡交付金制度については、根本的な税制改正と一貫する問題でありますから、今私が申し上げましても、これは私見にとどまるわけでありますが、その私見程度のことを申し上げますならば、先ほど申しましたような中央、地方を通ずる税制の改正を抜本的にやることと、それから国のやるべき事務と地方公共団体がやるべき仕事との明確な分界をつくることが第二に必要だと思いますが、それに照応して、なおかつ地方としてはやはり税源の不足なところも出て来るかと思うのでありまして、そういう際に処しまして、平衡交付金制度というよりは、むしろ地方の財政調整資金というようなものを特別な制度として補完的に考えることが私は必要であると思うのであります。しかしすでに平衡交付金制度については、義務教育費の全額国庫負担の問題に関連いたしまして二十八年度の予算におきましても多少従来と異なつた組み方もしているようなわけでございますので、私は現在のような平衡交付金制度改正する必要がある。むしろこれはやめた方がいいのではなかろうかということを、私見としては持つているわけであります。
  48. 中崎敏

    ○中崎委員 大体において私も次官と同じような考え方をしておるのでありますが、さて今度の予算におきまして、政府が突如として義務教育費国庫負担を大きくクローズ・アップしまして、各方面において十分な態勢の整わないままに、これだけをぐつと天くだり的にやられたということについて輿論はごうごうとしております。中央、地方を通ずるところの財政の取扱いの上に大きな問題が見受けられると思うのでありますが、これらの問題をいかに調整されようとしておるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  49. 愛知揆一

    愛知政府委員 義務教育費の全額国庫負担の問題については、他の大臣なり政府委員からお答えすることが当を得ておると思うのでありますが、大蔵省側といたしましては、現在考えられておりまする義務教育費の全額国庫負担をとりあえず二十八年度から実施するということについては、その限りにおいては中央、地方を通ずる税制改正、あるいは平衡交付金制度に根本的な改正を加える必要のない程度である、こういうふうに考えておるわけでありまして、従来の方式で計算したところの平衡交付金、これに諸般の情勢を加味して、今年度よりは二十八年度の方が、従来の計算方法でいえば、二百数十億でしたか増額することになつております。その通りの計算をいたしまして、そのうちから全額負担に必要とする分を文部省の方に移しがえをしたわけでございます。それによりまして大体二十八年度はやつて行ける。一方において、御案内の通りに、従来平衡交付金をもらつていなかつたようなところに対しては、暫定的に二十八年度に限つては、予算上全額負担をすることができないわけでございますが、そういうことをやつておりますから、二十八年度におきましては、全額負担をやることが、すなわちとりもなおさず全体の制度改正を必要とするということにはならないように調整措置を加えておるわけでございます。
  50. 中崎敏

    ○中崎委員 いずれにいたしましても、こうした義務教育費の全額国庫負担の問題がやや半ばから突如として出て来たというような関係もありまして、相当に混乱を来し、これがため今次官の言われますように、各府県等においては相当に困つて来ておるというふうなことも出て来るばかりでなく、全体として見まして、各都道府県の二十八年度の予算というものが、国の予算とにらみ合せつつ、これから漸次具体化して来ると思うのでありますが、いずれにしても相当不足するということは、明らかに申し上げることができると思うのです。そこで政府の方でできるだけの努力をされるとしても、なおかつ足りない分はつなぎ資金等によつて特別の措置をされなければならぬと思うのでありますが、それに対する政府の資金的な用意はどういうふうに考えられておるのか、それをお聞きしたい。
  51. 愛知揆一

    愛知政府委員 今のお尋ねは二つにわけてお答えしたいと思うのでありますが、従来も御承知のように年度末になりまして、地方公共団体では非常に資金繰りに苦しいところがあるわけでございまして、この年度末の特別な措置ということにつきましては、政府においても十分善処しなければならないと思いますし、これは二十六年度末、あるいは二十五年度末と同様な措置をとらなければならないと考えておるわけであります。  それから第二の二十八年度において全額負担をやるから、それによつて地方の逼迫がなお深刻になるという趣旨のお尋ねでございますが、これは私どもはそうは思わないのでありまして、事務的にも自治庁当局とも十分協議を遂げまして、現在予算に組んでありまするところの平衡交付金と、それから全額国庫負担にいたしますための文部省に移しかえた予算、これの合計額と、さらにいま一つはこれに照応した地方債の計画、その地方債の資金運用部資金特別会計における運用計画あるいは公募の計画、これらを総合して合せますれば、二十八年度はこの全額負担が起るからというて、そのために特になお一層地方を貧窮にすることは私はないと考えておるわけでございます。
  52. 中崎敏

    ○中崎委員 まずこの全額国庫負担の問題は、それが各府県の財政全体に影響するという問題でなしに、それらの問題が相当県の財政のやりくり、運営の上に一つの大きな支障を来すということは当然考えられることだし、さらにそればかりでなく、全体としてこの各都道府県の財政というようなものが漸次インフレの高進、あるいは給与ベース等の問題、諸般の施策等によつて予算の膨脹を来すということは容易に想像し得るところであります。そういうふうに漸次地方財政の膨脹に対処する心構えとして、こうした平衡交付金のこの程度の額をもつてしては十分にまかない得ないということばかりでなく、さらにまたこの平衡交付金制度そのものが今次官の言われるように再検討を要するものだということは同感でありますが、いずれにしても県財政が行き詰まつておるというふうな事態の上に、この二十八年度においては中央、地方を通ずる税制改正の上にできるだけ考慮を払つてもらう、たとえばわれわれとしても、この予算に対してどういうふうな態度をとるかということは今後さらに検討を要するのでありますが、それはそれとして、かりにこれが通過するといたしましても、たとえば補正予算等において還元金の制度を考える、こういうふうな問題について特別の御配慮をされたいということを私は念頭において質問をしておるようなわけであります。  次に少し税法の内部に入りますが、所得税が大体税の体系の中心をなしておるものであります。これはいかなるときにおいても、いかなるところにおいても、大体こうあるべきものだというふうに考えておるのでありますが、これに関連して、かつて所得税が中心になつて、地租とかあるいは営業税とかいうようなものがその補完的な役割を果して国税の体系をなしておつたのであります。ところが今度税の方では、富裕税を廃止するという考え方で提案されておるのでありますが、この富裕税は、政府の計画において本年度かりに実施するとすれば、十八億程度収入になるものだというふうに一応予定を立ててやつておられるようであります。この金額は、そのままの税法をもつて現在のような運営の仕方、徴収の仕方をやつて行くならば、あるいはそうかもしれないのだけれども、さらに最近におけるところのいわゆる富の不均衡といいますか、著しく貧富の懸隔が激しくなつて、富める者は著しく大きく富んでおる。しかも所得税法があり、あるいはそのほかの税金が実際にとられておつても、なおかつそれだけの懸隔が現実に大きくできて来ておる。一つはそういうふうな点から考えてみて、これをむしろ徹底して励行して、そうしてむしろ補完的な意味において大きな役割を果さすということこそ必要であると思うのでありますが、それを逆に、富裕税を今回廃止されるという点については、勤労階級としては著しく不満だというふうに私は考えるのであります。これこそ時代逆行だというふうにさえ考えられるのでありますが、この点につい御意見を承りたい。
  53. 愛知揆一

    愛知政府委員 これは率直に申しますと、公式論的には、富裕税を廃止すると、いかにも社念観念に反するように考えられる点もあるかと思うのでありますが、実際は今度の税制改正案においては、大額の所得者に対する所得税の税率を非常に高くしておりますような関係で、これは実際のいわゆる富裕階級というか、大所得者にとつて相当手痛いところだろうと私は思うのであります。一方、富裕税につきましては、一つは収益を生まない財産の元本が富裕税においてだんだん食い減らされて来るということが、税制として非常に難点のある点だと思うのであります。これもざつくばらんに申し上げるのでありますが、富裕税といううものが問題になりました当時、やはり大蔵省としては、当時の考え方として、富裕税というものは非常に悪税ではないかという点でずいぶん頭を悩ましたわけでありますが、あの当時の諸般の情勢上、やむを得ざるものとして国会提案をしたような次第もございまして、独立国になりました日本としては、疑問のあるような税制はこの際やめて、社会的にむしろりくつの立つ、国民的な納得のより多く受けやすいようなものにかえるという意味で、高額所得者に対する所得税の税率を引上げる、一方、理論的にもいかがかと思われ、また実際問題としても調査が非常に困難であるというような税はやめるということで、富裕税をやめたわけでございまして、私どもの考え方からすれば、実質的にこれは中崎さんの御意見の線に沿うようなものであるというふうに考えておるわけです。
  54. 中崎敏

    ○中崎委員 所得税は累進の限度がある程度引上げられまして、この点については政府の方でもわれわれの主張するいわゆる社会主義の政策の線に漸次歩み寄つて来られたという点について、大いに多とするものであります。ことに千万円も一億も一箇年の所得のあるようなものが六五%程度税金を払うのは、これは当然と思うのでありまして、そういう意味においてこれを多とするものであります。なおかつ私たちは、一億も二億も所得のあるものに対しては、もう少し高い税率であつていいのじやないかというふうな考え方を持つておるのでありますが、一応これとして、富裕税についてでありますが、収益を生まないところの財産に税金をかけることは、どうかと思うという考え方は、一応成り立つと思うのであります。ただしかし、必要以上にたくさんの財産を持つておるというものが、しかもその源泉をからさない程度において——いいかえれば税率の問題だと思うのです。また刻み方の問題だと思うのです。財産を根こそぎ持つて行かれるということでは、これは共産主義みたいになつて非常に好ましくないのでありますが、その源泉を著しく枯渇しない範囲内において、しかも財産があるから何らかの収益を生むのであつて、それは所得税ではとられるのでありますけれども、なおかつ担税力のある範囲内において税金をとるということは、私は一応正しいことだと思うのです。そういう意味において、現在あるものをなおかつ廃止する、いわんや富の均衡が著しく不均衡になつている状態で、今後においてもそういうふうな傾向になりつつある、自由主義によつてうまくやる者はだんだん太つて行く、所得税があるにかかわらず太つて行く、そういう事態を見詰めて行つたときに、この富裕税というものは補完税の意味においても当然これは残しておくべきだというふうに考えておりますが、もう一度次官の御意見を伺いたいと思います。
  55. 愛知揆一

    愛知政府委員 先ほどもちよと申し上げましたように、御趣旨はごもつともな点も多々あると思うのでありますが、ただ収益を生まない財産であり、同時に調査の面から申しましても、いわゆる表現財産と非表現財産と申しますか、表に現われる財産と現われない財産、これの評価の問題、あるいは捕捉の問題等からいいまして、調査上も非常に手数がかかる、また先ほど申しましたように理論的にも相当疑問がある、こういうものはむしろやめて——繰返すことになるのでありますが、所得税の高額の所得分に大きな税率をかけるという方が実際的に社会観念にも合うのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。富裕税というものは、やはり理論的にいえば財産税の一種だと私は思うのでありますが、財産税というようなものは経済の安定を期待し、またわれわれとしては自由闊達な経済活動の創意くふうを発揚するというふうな、基礎的な考え方から申しましても、こういつたような財産の元本に食い込むようなものはとらざるを可とするという意見をわれわれとしては持つているわけでございます。
  56. 中崎敏

    ○中崎委員 もう一つお聞きしたいのでありますが、実は政府で今度提案されようとしております物品税の中で、貴金属製品について、これを小売課税にしようということになつております。これは私は捕捉の面からいつても徴税費の面からいつても、現在の製造の元課税に比較して非常に困難を伴い、費用もかかる、無理もあるというふうに考えますが、そうした点をあえて押し切つてやろうとされる一面、富裕税みたいな非常に余力のある——少々のものはのがれたとしても、だれが見てものがれられないものも相当ある。これは不動産なんかはもちろんでありますが、不動産でなくても、あるいは証券にしても、そのほかの目ぼしいところの資産、預金は無記名なんかでなかなか調べにくい面もありますけれども、いずれにしても相当の部分というものは、その富裕の程度において調査し得るものであります。しかもこれは割合に数が少いと思う。そういうふうなものには徴税費がかかり、煩瑣であるというふうなことで目をつぶろうとして、そうして今の小売課税というふうな点については思い切つてやられようとしておるが、その決断力をもつて、やはり両方の立場が合うようにやつてもらつた方が社会正義の上においても正しいのではないかというふうに考えておるのでありますが、この点をひとつお聞きしたい。
  57. 愛知揆一

    愛知政府委員 ただいまの物品税の問題は、実は慎重に考えた上で、とられる方の納税者の立場からいいますと、貴金属、宝石類については、小売課税にした方が全体の納税者の関係からいつてよろしいという意見が多いのでございまして、その趣旨に沿うたつもりであるのでありますが、なお両者の比較、利害得失については主税局長からお答えいたすことにしたいと思います。
  58. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 貴金属等の製品につきましては、大体小売課税という方針で今検討しておりますが、近く提案した上で、さらに御審議願いたいと思つております。そういう結論にわれわれが考えておりますのは、過去において、物品税が一番初めに行われました当時におきましても、実はこういうものが小売課税であつたのでありまして、その後、終戦後に製造課税へ一応持つてつてみたわけなのでございますが、実際上やつてみますと、どうも製造課税ではうまく行かない点が多々ある。特に宝石のようなものになりますと、一体それがいつどういう時期の製造なりやといつたところに疑点もございますし、指輪等につきましても、そういう問題が多々あるわけでございます。従いましてこういうものにつきましての製造をつかまえるということは、小売をつかまえるのと同じように、実は困難があるわけでございます。時計などにつきましては、あるいは製造でつかまえた方がいいのではないかという議論もございまして、これは場合によつてはそういう考え方も成り立ち得るのではないかと思いますので、もつと検討してみたいというふうに思つております。しかし普通の指輪だとか首飾りだとかというものになりますと、どちらかといえば、小売の方が数は多うございますが、表へ現われる機会が多いので、数の上ではふえましても、かえつて課税の上ではつかまえいいというか、変なことにならないのではないか。しかしこれはいずれ法案が提案されましてから御審議願いたいと思つております。  富裕税の問題は、政務次官からるるお話した通りでございますが、結局われわれが当つてみまして、第一線などにおりましても一番気持の悪いのは、無収益財産というような財産なら、簡単に処分したらいいではないかという議論が成り立たないとも限りませんが、先祖伝来の大きな家を持つていらつしやる方は、そう簡単にそれを処置できない。固定資産税がずいぶんかかつて来る。そういつたような税法ですから、時勢によりますとそれを施行しなければなりませんが、実行上立法的に課せられないものではないだろうかといつたような場合にぶつかることが多々あります。それから山林をたくさんお持ちの方におきましても、そう山をしよつちゆう切るわけでもございませんので、切る時期が来るまで富裕税がかかる。これについてもずいぶん困難な場合があるわけでございます。もう一つ、調査の面におきましては、われわれは不表現財産と言いますが、現金とか預金とかいつたようなものについての捕捉が非常に困難であります。過去において財産税をやりましたときに、臨時財産調査令によつて非常に大がかりな調査をしたことがありましたが、ああいうような調査でもすれば、十分とはいえませんが、ある程度つかまえ得るかと思います。それもしない限度においては非常に困難がある。シヤウプ勧告でございますと、富裕税の資料によつてかえつて所得税の方がつかまえよくなるのではないかというわけで一応できているのですが、実際やつてみますと、所得税でもつてつかまえるのと同じ苦労をしないと、実は富裕税の方もつかまらぬわけでありまして、そのために係がまた別にいる、というよりも、その係の人員をむしろ所得税一本に集中した方が能率が上るのではないだろうか、かような見解を持つておる次第でございます。
  59. 奧村又十郎

    奧村委員長 中崎君に申し上げますが、あすも、大蔵大臣なり政務次官を要求して質疑を進めることにいたしますから……。
  60. 中崎敏

    ○中崎委員 この問題はいずれまた検討することにしまして、もう一つ聞いておきたいのです。中小企業に対する課税をできるだけ考えて行くということについてでありますが、その中で法人税に関連のある部分だけお聞きしておきます。  中小企業に対しましては、現在その資力、収益状況等から勘案してみましても、大部分四二%の税率だけでも重いというふうに考えておるのであります。これらの人は政治力もなくて、税務署の方でも見えたらふるえ上つて青くなるというようなかつこうで、実際以上に疑念を持たれて困つておる面もあるし、税法が四二%そのままに運営されると、相当無理があるのが実情だと思う。そこでこの前、税法改正で四二%にされたときに、少くとも中小法人に対してはすえ置きすべきであるという主張を私たちはいたして参つたのでありますが、これは少数で破れた。それで今回税制改正の機会において、しかも最近における中小企業者状況等をよく考えて見て、さらに四二%を減税する考え方はないかどうか。また全体として、たとえば四割も五割も配当しておるような大きな会社がたくさんある。こういうふうなものに対して、超過所得というような制度を設けて——これはかつてあつた制度だと思いますが、さらにそうした行き過ぎというか、あまりもうけ過ぎておるものに、さらに超過に対する法人税をとつて行くというような考え方があつていいではないかと思うのでありますが、この点を伺いたい。
  61. 渡辺喜久造

    渡辺(喜)政府委員 中小法人に対する法人税の税率を下げたらよいではないかという御意見は、私は一つの御議論としては、確かに成り立ち得ると思つております。よその国の事例はあげてもしようがないかもしれませんが、アメリカでは中小法人に対して税率を少し下げております。ただ法人税の性格に一つ問題があるのでございます。現在の日本の法人税は、シヤウプの勧告によつてできた法人税でありまして、法人として課税はしておるが、実際は個人に課税しておると同じつもりである。それの表わし方としましては、配当に対して二割五分控除しておるわけでございます。この関連からいたしますと、中小企業、大きな企業といつても、結局その裏におる株主に対する課税の関係でございますから、そこに区別する理由があるかないか。大きな会社であつても小さな株主がたくさんいるではないかというので、別な議論が出て来るのではないかというふうに思います。ただ、現在の法人税の制度がこれでよいのだろうか。それは何といつても現在の四二%の税率は、私も決して安い税率とは思つておりません。できれば全体として引下げたい税率だと思つております。大蔵大臣もそういう御意見のようですが、ただ財政全体の関係からして、なかなか下げにくいというのが現状でございます。従いまして、いろいろな関係から考えて参りますと、あるいは法人税というものの姿は、昔の法人税のように、個人と法人とは別だ、法人は法人に対する課税があつて、個人は個人で別に課税があるのだという姿の方が、かえつて日本の実情に合うのではないかという考え方も、私はあり得るのではないかと思つております。そういうふうに、法人税が個人と独立したものだということになると、また大きな法人、小さい法人という別な考え方がそこに出て来てよいじやないかと考えております。この問題は、今すぐの結論としましては、私は今回提出した程度改正案だと思つておりますが、将来の問題としましては、さらに検討を重ねて行くべき問題だと思つております。  それから超過所得税の問題でありますが、確かに一つの考え方をして、御説の点は私も考えられると思います。ただこういう点をひとつお考え願いたいと思いますのは、最近の景気の動きを見て参りますと、たとえば綿紡が非常によかつた時代がございます。それから鉄のよかつた時代がございます。その前に貿易商社が非常によかつた時代がございますし、紙パルプが非常によかつた時代もある。現在はそれがみなかなり赤字になるようなものもあれば、大体ノーマルな姿に帰つて最近は景気が別の業種にかわつて来ている。ずつと見て参りますと、特別なばかもうけをしておりますのは、せいぜい一年か、長くて一年半、そういうふうで、結局あとはならされてしまう。長い目で見ますと、業者の方が特に大もうけしたかどうかは疑問であるという感じもあるのじやないかと思つております。従いまして、こういう時代において超過所得税をつくりますと、よかつた時代にはうんと税金で持つて行かれてしまつた、悪い時代にはどうなるか、現在は、法人税ですと繰越し欠損の制度などがありますが、超過所得税の場合はなかなかそういう制度もつくりにくいだろう。そうしますと、全体としての企業がよくなつて行くとか、あるいはよくなつたのが相当長続きするのですと、超過所得税も、われわれの目から見てですが、相当魅力があると思つております。しかし、その業種がよい時代は、大体一年くらいで去つてしまつて、あとになると、今度は損失繰りもどしで、逆に政府から金を返してもらわなければならぬ時代が来る。そういう時代において、はたして超過所得税がよかろうか、実は私はこの点については現在のところでは消極的に考えております。
  62. 中崎敏

    ○中崎委員 いろいろこまかくさらに検討したいのでありますが、時間の関係がありますからこれは省略いたします。ただ一つ、超過所得の考え方について、たとえば実際景気は著しく跛行的でありまして、非常によいかと思えば、次の年度は悪いとかいうことは、現在の経済状況においては確かにあるわけです。この点はわかるのでありますが、たとえば資本蓄積の面については、税法の中でも毎年々々相当改正されて、あなたの御心配になるような面が漸次よくなつて来ておる、これはけつこうなのです。私はそれをやつてはいかぬということは言わない。内部資本の蓄積のために、さらにそれらの健全化をはかる意味において、貸倒れ準備金を設けるとか、あるいは償却率を大きくするとか、いろいろな方法においてこれが考えられておる、これはけつこうなことです。ただ、四割も五割も配当するということは、社会通念から見てもおかしいと思う。五十円の株が八百円もする、こういう気違いじみた状態があるということは好ましくないと思うので、配当制限というかそれについては今の税法によつてある程度の是正をする、こういう考え方は、むしろ資本蓄積助長の意味においても必要だと思う。だからそれらの点をもう一度御検討願つて、ほんとうに公平の観念の上に日本経済を堅実に発達せしめて行く意味において、しかも中小企業と並行的に全体の日本産業をいかにやつて行くかということを考えてもらつて、税制全体を考えてもらいたいという希望を申し上げて、終ることといたします。
  63. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど同僚中崎議員から質問がありました物品税の問題でありますが、実はまだ法律が出ておりませんので、今いろいろ問題になつておると思いますが、先ほど渡辺主税局長からちよつと触れられた時計の問題であります。業者の方が先刻来られまして、いろいろ話を聞いたのですが、実際は今のままでよい、むしろ小売課税にしてもらうと、大きなメーカーだけが得をして、小さい業者が非常に困るというような陳情がありました。まだいろいろ検討されるというお話でございますが、そういう点について、特殊なものは全然なくするならばけつこうであるけれども、なくさない限りにおいては、一律にということでなく、今まで通りの方がむしろよいという意見があるわけです。こういう点について、大まかな貴金属というような形でなくて、個々の問題については、このために別段税が減るわけではないのでございますので、そういう点について御配慮願えるかどうか、ちよつと簡単でございますがお答え願いたいと思います。
  64. 愛知揆一

    愛知政府委員 今の問題につきましては、実は私どものところでもいろいろとお話を承つております。それから同時にメーカーの方からも非常な御陳情があつて、実情ははたしてどちらがいいかという点について慎重に研究をいたしております。そのために非常にあせつておりますが、物品税法の改正案が遅れてまことに申訳ないのでありますが、われわれといたしましても、なおできるだけ慎重に実情の捕促に努めまして、至急ひとつ法案を提出いたしたいと考えております。
  65. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 希望といたしまして、中小工業者を優先的に、大きなメーカーは苦しくないのですからぜひそういうな御配慮を願いたいと思います。
  66. 奧村又十郎

    奧村委員長 本日はこれをもつて計会いたします。明日は午前十時より開会いたします。     午後零時四十一分散会