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1952-12-25 第15回国会 衆議院 水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十五日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 福永 一臣君    理事 田口長治郎君 理事 松田 鐵藏君    理事 大森 玉木君 理事 日野 吉夫君    理事 山中日露史君      甲斐中文治郎君    宇都宮徳馬君       薄田 美朝君    川村善八郎君       杉山元治郎君    椎熊 三郎君       赤路 友藏君    辻  文雄君       大橋 忠一君    井手 以誠君  出席政府委員         調達庁長官   根道 廣吉君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      山内 隆一君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     川田 三郎君         水産庁長官   塩見友之助君  委員外出席者         専  門  員 杉浦 保吉君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 十二月二十五日  委員愛野時一郎君辞任につき、その補欠として  椎熊三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月二十四日  日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為に  よる特別損失補償に関する法律案内閣提出  第三五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為に  よる特別損失補償に関する法律案内閣提出  第三五号)  北洋鮭鱒漁業出漁計画に関する件     ―――――――――――――
  2. 福永一臣

    福永委員長 これより会議を開きます。  昨日、内閣提出日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊行為による特別損失補償に関する法律案が当委員会に付託になりました。ただいまより本案を日程に追加して審査を進めたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福永一臣

    福永委員長 御異議なしと認めます。それではただいまより本案を議題として審査を進めます。まず政府より提案理由説明を求めます。調達庁長官根道廣吉君。
  4. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま提案になりました日本国に駐留するアメリカ合衆軍隊行為による特別損失補償に関する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて、日本国内及びその付近に配備されたアメリカ合衆国陸軍海軍または空軍によつて防潜網水中聴音器その他の水中工作物設置または維持、あるいは防風林のような防風施設または防砂施設除去または損壊等が行われたことによつて、従来適法農業林業漁業その他の事業を営んでいた者がその事業経営損失をこうむつたときには、国がその損失を適正に補償することとする必要があるのでありまして、これが本法律案提案する理由であります。  この法律案内容につきましては、本法律案の第一条には前述趣旨規定しているのでありますが、補償すべき損失原因となるアメリカ合衆国陸軍海軍空軍行為としては、「一防潜網その他の水中工作物設置又は維持、二防風施設又は防砂施設除去又は損壊」のほかに、「三その他政令で定める行為」を掲げ、行為種類政令で定めることとしております。  なお損失補償を受けるべき事業としては、農業林業漁業以外の事業については政令でその種類範囲を定めることとしております。  この損失補償は、他の法律により国が損害賠償または損失補償の責に任ずべき損失については適用しないこととし、また補償する損失は通常生ずべき損失としております。  次にこの損失補償の手続については第二条に規定し、この損失補償を受けようとする者は、総理府令の定めるところによつて、自己の住所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して、損失補償申請書内閣総理大臣に提出しなければならないこととし、都道府県知事は、該申請書を受理したときは、当該事案に関する意見書を添えて、これを内閣総理大臣に送付し、内閣総理大臣は、補償すべき損失有無及び損失補償すべき場合には補償の額を決定し、遅滞なくこれを都道府県知事を経由して当該申請書通知しなければならないこととしております。この内閣総理大臣補償すべき損失有無及び補償額決定に不服にある者は、前述通知を受けた日から三十日以内に内閣総理大臣に対して異議申立てをすることができることとし、内閣総理大臣はこの申立てのあつた日から三十日以内に、これについて決定の上、申立人通知しなければならないこととしております。  次に補償金の交付については、第四条に規定し、前述異議申立てがないときは、異議申立期間満了の日から三十日以内に、補償を受けるべき者に対し当該補償金を交付し、異議申立てがあつたときは、異議申立てに基く決定通知した日から三十日以内に補償を受けるべき者に対し当該補償金を交付することとしております。  次に第五条においては、増額請求の訴について規定し、この法律により決定された補償金の額に不服がある者は、その決定通知を受けた日から九十日以内に国を被告とする訴をもつてその増額を請求することができることとしております。  次に附則第一項において、この法律は公布の日から施行することとし、同第二項において、この補償事務担当庁調達庁とするため調達庁設置法の一部を改正して、同庁不動産部所掌事務規定している同法第八条に第六号としてこの法律の施行に関することを挿入することといたしまして、さらに調達庁附属機関たる中央調達不動産審議会調達庁長官諮問に応じて、この法律による損失補償についても、その基準その他の一般的事項調査審議することができるようにいたしますとともに、調達局付属機関たる地方調達不動産審議会においてこの法律による損失補償について、調達局長諮問に応じて調達審議ができるように調達庁設置法に所要の改正を加えることとしているのであります。  以上が本案提案理由並びにその内容の概略の説明でございます。
  5. 福永一臣

    福永委員長 これにて提案理由説明は終りました。引続き本案に対する質疑に入ります。田口長治郎君。
  6. 田口長治郎

    田口委員 日本国に駐留するアメリカ国軍隊行為による損失問題につきましては、さきに法律第二百四十三号をもちまして直接被害につきましては補償ができるようになつたのでございますが、間接被害については、法律第二百四十三号だけでは適用ができない関係がありまして、行政協定の第十八条に基く国内法を制定する必要がある、こういう観点からこの法律案を提出されたと思うのでございますが、この法律案間接的の被害補償ができるという根拠はどこにあるのでございますか。その点をはつきりさせていただきたいと思います。
  7. 川田三郎

    川田政府委員 この法律行為原因につきまして規定し、また対象となります事業についての制限法制事項政令事項にわけてございますだけで、直接という字句を特に使つておりませんが、間接まで補償できるということになるのであります。その他政令で定める経営上の損失という点で、その間接となりました場合の範囲の広がり方につきましては、十分慎重に審議会等の議を経まして決定するわけでございます。
  8. 田口長治郎

    田口委員 直接被害の直接という言葉法律第二百四十三号にも使つてないと思うのでございますが、直接被害の直接という言葉使つていないから、間接被害関係ができるということだけでは、何か理由はつきりしないのでございますが、もう一回その点を明らかにしていただきたいと思います。
  9. 川田三郎

    川田政府委員 それでは往来できております法令のあり方とか建前を御説明しますとおわかりになると存じますが、先ほど御指摘になりました法律には行為の方に原因制限がございます。軍の施設について瑕疵があつた場合、何か不都合な、不十分なものがあつた場合ということになります。それから軍の行為につきましては違法な行為、そこで適法なものないしは瑕疵のない施設につきましては補償ができないことにしております。またこれを補う意味合いにおきまして、総理府令によりまして軍の適法、不適法、または施設瑕疵有無にかかわらず補償をする方法といたしまして、見舞金を支給する規定がございます。それに特に直接という字句が入つております。見舞金をもつて処置しようといたしましても、いわゆる間接というものにつきましては補償ができない。この見舞金の扱いをむしろこの法律の方に吸収いたしまして、軍の行為の性質、施設状態いかんにかかわらず、影響のありました経営上の損失については補償する。同時に見舞金からこれを国の債務としての補償に引上げたわけでございます。
  10. 田口長治郎

    田口委員 ただいままでの政府当局の御説明によりまして、本法ははつきり間接被害適用ができる、こういうことに了承した次第でございます。つきましてはこの第一条の三号の「その他政令で定める行為」この行為はいかなるものを規定される御予定であるか、その点をはつきり説明を願いたいと思います。
  11. 川田三郎

    川田政府委員 この政令で定める行為につきましては、今後の各省協議によりまして決定いたしたいと存じておるわけでございまして、現在までに出ました事例につきましては、さしあたり防潜網その他の水中工作物及び防風防砂施設の問題が強く要望されておりました。今後被害状況審査いたしまして、中央不動産審議会のこうした面の特別の部会でも設置いたしまして、政令で定める行為をなるべく合理的に、財政上許す限り取上げて参りたいと存じております。しかし財政上ということは不適当でありますから補足いたしたいと存じますが、むしろそのその被害激甚度の多いもの、影響度の多いものをまず取上げて参りたいと思います。
  12. 田口長治郎

    田口委員 私が今の御質問をいたしましたゆえんのものは、防潜網の問題はこの規定でいいと思うのでございますが、演習地の場合、これを提供しました区域内は補償ができますが、損失をこうむる漁業種類といたしましては、その区域に隣接しておる地帯も現実的に被害を受けております。この被害状況は、ちようど水面に起きた波紋のような状態だと思うのでございます。この区域内はもちろん中心でございますから被害が最も大きいのでございますが、隣接した区域を離れるにつれて被害は少くなりますけれども、少くともこの区域外において、ことに隣接地におきましては、出漁ができない、あるいは非常に不安を感じていけないとか、こういうような問題が演習地設定の各所で起つておる次第でございます。防潜網に関する問題はこの規定でいいと思いますが、ただいま申しました演習地隣接地被害というものにつきましては、いかようにお考えでございますか。御説明を願いたいと思います。
  13. 川田三郎

    川田政府委員 隣接地被害につきましては、政令に定める事業の問題といたしまして、そういう隣接地被害を受ける事業がある場合、経営上の損失をどういうようにするか、そこまでの必要を認めました際には政令のうちに取入れたいと存じます。
  14. 田口長治郎

    田口委員 ただいま申しましたことは現実に起つておる問題でございますから、この三号の政令制定に際しましては、ぜひこの問題を御考慮願いたいと思います。
  15. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまのお考えのように、できるだけ措置したいとかねがね考えておる次第であります。
  16. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 昭和二十七年法律第二百四十三号で規定された法律から行きまして、中央調達不動産審議会メンバーはもう御決定になつておられるのでありますか。またはどういう方々審議会委員にされる御予定でありまするか、それをお聞きしたい。
  17. 川田三郎

    川田政府委員 中央不動産審議会現行定員二十人につきましては全部任命になつております。そのうち十一人が民間における学識経験者でございまして、九人が官庁側関係担当部局の長またはその代理者個々の氏名は省略いたしたいと存じますが、大体その代表されておる面は、民間の方につきましては勧業銀行、または不動産経営者の有識者、それから最近に至りましては開拓農地及び漁業関係代表者を新たに二名お加えいたしまして、そのために政府側委員を従来同数にしておりましたのを一人減らして、民間側をふやしたよう事情でございます。
  18. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 ただいま提案になりましたこの法案を見まして、日本国民すなわち漁民なり、農民なり、その他の被害をこうむつておる方々が非常に悲痛な叫びをあげておる。その状態は先日私ども防潜網調査行つた場合においても同じでありました。ところがこの法律が出まして、この中央不動産審議会委員を構成される人々が一番重要なポイントになるものだと私は考えておるのであります。しかしただいま御説明なつ勧業銀行の頭取とか、金融業者及び学識経験者の中から選ばれておる方々は、人格的にはりつぱな方々であるのであります。しかし私ども国会としての感覚と、その方々感覚というものに相当差異があるのではないかと思うのであります。たとえば国民利益のために漁民ひとり犠牲になつている今日において、全体の国民利益になるのだからというので、漁民のみがその間接被害、または直接な被害に対してあの叫びをあげておる。ところがこの審議会方々がどういう認識を持つておられるかというところに、この問題の解決ポイントがあるのではないか。これが一番重要な問題だと思うのであります。要するに地方都道府県においてはよくその事情を観察いたしまして、いろいろと政令に定めるその法律のもとに調査を進めて参つても、調達庁都道府県とはその被害の額において食い違いがあることははつきりするのであります。この食い違いのあるところを調節するのがこの中央審議会委員であろうと思うのであります。それは国の財政の面からも見なければなりますまい。しかして今日の被害の額というものはどういうふうになつて行くかということもよく調査をしなければなりません。むだな金を出すなどということは、国の財政の上からいけないことでありますが、われわれの政治的な面から見ていつたならば、ここにおいて非常な差異を生ずるものと思うのであります。まず私どもは、二、三日前にあの防潜網の実際を調査に行つて参りました。また前に当委員会において防潜網の問題が議論なつたときも、部長さんがおいでになつてよく私の議論を聞いておられたことでありましよう。実際に見たときの感覚というものは、漁民に与える直接の被害よりも精神的に与える打撃の大なることは、あの状態を見て参つて、まつたく私は涙なくして見ることはでき得なかつたのであります。それらの学識経験者方々はりつばな人格を持つておられる方であり、万遺漏なきを期すことであろうとは存じますが、はたしてその点にわれわれの気持と、こうした法律をきめてやつてもぴつたり行くところがあるかないかというところに一番大きな問題が起きるのではないか、かように私は考えておるのでありますが、調達庁長官はこの点はどのようにお考えになつておられますか。
  19. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまのようなお考えを持たれるのは、まことにもつともでございます。幸いにして現在の委員は、ある種の専門家である場合もありますけれども、社会の各事象に対して相当深い洞察力を持つておられる方々にお集まりを願つておるということでございます。またその委員の中には、漁業関係方面その他農林関係方面代表者、そしてまた特に専門的知識のある者も委員となつてもらつておるのでありまして、それらの意見民間においても十分に反映できるものと存じております。なおかつ私ども日常の業務を扱つておりますときに、そういう漁業関係代表者等がよく陳情に参ることがありまして、私どももよくその事情は直接聴取いたしておりますので、われわれが立案するに際しまして、関係各省専門家はもとより、それらの意見も十分参酌した上で案をつくつて諮問をいたすというふうにしておるわけであります。
  20. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 私は常に考えておることは、中央にこうしたいろいろの審議会ができておりまして、この審議会に対して私ども国会議員の中から委員になるなどということはいけないことだという感覚を持つておるのであります。しかし一番考えなければならないことは先ほど申したことであります。政治的な感覚と、事務的な感覚と、また一般常識から行く感覚の調節をするためには、こうした重大問題を処理するためには、国会議員から審議会委員になることができ得るならば、相当国民要望、いな漁民要望農民要望が到達できるであろうという考え方を持つておるのでありますが、この点に対して長官はどういうお考えを持つておられるか。国会議員をその審議会委員になつてもらおうという考え方を持つおるか、この点を伺いたい。
  21. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいまの御質問はたいへんむずかしい御質問だと存じます。もちろん問題といたしましては、国会においてこれを取上げていろいろな基礎をお定め願うわけであります。また個々の具体的な問題につきましても、請願その他の形において国会においてまた十分に論議されて、政府にいろいろなことを要求される場合があろうかと思うのでありますが、ただいま国会議員方々委員とすることにつきましては、制度上私どもさらに研究を要すると思います。ただいますぐに御返答申し上げかねます。
  22. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 誤解して聞いてもらつては非常に困るのでありますが、私はあらゆる審議会委員国会議員が入るべきじやないという考え方を常に持つておるものであります。この点はよくおわかりだろうと思いますが、しかし事が非常にめんどうな問題でありまして、私の一番心配するところは、この審議会委員感覚であります。これに事務的な感覚、常識的な感覚、政治的な感覚が加味されなかつたならば、国民利益のために漁民農民ひとり犠牲になつておる今日、また精神的に与えられておる苦痛、これらを勘案するときには、あなたの出されておる法律を十分に活用することが一番の重点になることであろう、かような考え方から私はしいて目分の持論を破棄して、国会議員がこの審議会メンバーになれることであつたならば、そうした感覚も十分到達されるのではないかという考え方をもつて、ただいまの長官意見を聞いておるのでありまするが、ここにどのようなお考え方を持たれるかというところを聞いておるのであります。
  23. 根道廣吉

    根道政府委員 誤解したつもりはないのでありますが、私といたしましては、ただいまのところは委員になつていただかない。別に国会の職能におきまして、常時国会あるいは関係委員会委員方々の御意向を十分尊重反映するように、この審議会その他の実際上の運営をやつて行きたい、こう考えております。
  24. 椎熊三郎

    椎熊委員 ちよつと関連してこの際伺つておきたいのであります。実は今ここで私がお伺いすることは、この法案審議の上に適当であるかどうかわからぬのです。けれどもこの機会でないと、あなた方にお目にかかる機会もないし、よくわかりませんもんですから、ちようどこういう法案が出たから、この際特にお伺いしたい。従つて私がこれからお伺いすることはまつたく具体的の事実に基いてのことでございます。場所は北海道米軍駐留地付近月寒という所に、演習地がございます。実弾射撃演習場に隣接している所に西岡開拓農団というものが入れてあります。この農団のほかに二箇所付近にございます。いずれも演習地に隣接しております。毎月数回にわたつて数百名の米軍によつて農地は事実演習地に使われている。二月に一ぺんくらいは一万数千名のものをもつて定期的に演習をやる。そのために、農耕地として非常にいい所でありますけれども、生命の危険を感じ、耕作に十分努力することができない。そういう事実が前々からわかつておりまして、北海道庁としては農林省交渉いたしまして、農林省でも実情調査いたしまして、もつともだ、こういう所にこういう農団を置くことはお互いのために利益でない、北海道庁ではこれを他に別な農耕地を与えて移転せしめるということになつて移転先まで決定しております。ただ長年にわたる苦心開拓土地でありますが、それに対する補償の道がまだ開けておらぬ。農林当局でも、これは当然調達庁で買い上げるべきものだということから、調達庁の方へ陳情すると、調達庁の方でも非常に同情せられて、当然そうしてあげなければならぬだろうと言つておられるし、またそれらに要する金も、国会の協賛した金はずいぶん残つておりますし、実情もわかつている。そうして農林省も同情し、調達庁実情を知りつつ、目体的にはそれを買い上げてくれない。つい昨日のごときも、農団代表者北海道丁の役人を案内として国会陳情参つております。これらはあなた方事情もよく御承知のことなんで、今にしてこれを解決してやらなければ、雪解けから入植して、ほんとうに地地開拓して行くには非常に支障を来すし、非常な不安を感じております。これらの人々は多くは外地引揚者でございまして、引揚者の中でもこの付近にいる人たちは、俗な言葉で言えば、非常にたちのいい方でございます。非常にしんぼうして一生懸命やつている。土地柄も札幌に非常に近い所でございます。そういうものをそのままいつまでもどういう事情で放置しておくのか、解決してあげるお考えがあるのか。解決してやるとすれば、北海道庁あるいは農林省あたりが査定しているところの十分な補償をしてあげてもらわぬと、せつかく数年間にわたつて外地から引揚げて苦労した人たちを路頭に迷わせることになるので、私ども非常に心配しております。ちようど幸いこういう法案が出ている際でありますから、具体的問題をお伺いすることはどうかと思いますけれ機会がありませんし、やがてわれわれは北海道に帰らなければならぬし、あなた方も忙しく、役所へ陳情に行くことも御迷惑だと思いますから、この機会を利用してお尋ねいたします。
  25. 川田三郎

    川田政府委員 ただいまの御質問は私どももその趣旨においてまことに同感でありまして、何とかこの問題を解決したいと存じているわけであります。解決の隘路となつております点を申し上げますと、まずその演習をやつておる地区が、駐留軍に対する提供地区域にきまりませんと、従来の法律から行きますと、買い上げることができないのであります。つまり提供地なつ区域に対しては買上げなり、借上げなり、またその他の立ちのきの補償もいたすことができるわけでありまして、実行もしております。ところで軍の一つの行動が、たまたま中央司令部範囲をわれわれから言いますと逸脱しておるのではないかという傾向もございます。そうした場合にあらゆる次善的な、つまり次の方策としての補償はいたす方法はございますが、実際はその地区農業立入り地区に指定するか、立入り制限地区にしてしまうかという点につきましては、日米合同委員会演習場分科委員会におきまして、農林省も重要なポストにお入りになつて各省協議をしております。その際に個々の問題につきましては条件がなかなかきまらないために地区としての設定が遅れているということでありまして、ただいまの買上げ交渉ができないというのは、おそらくまだ地区決定ができていないのじやないか。これは私ども合同委員会を通じても発言をいたしますし、また外務省と総理府との間の交渉においても常にやつております。これを一日も早くきめまして、買上げすべきものについては、おさしずの通り予算は私どもある程度保有しておりますので、すぐにそれを発動させることになると思います。
  26. 椎熊三郎

    椎熊委員 よく事情がわかりましたが、実は現地を視察して見て来ているのです。あなた方は交渉の際に当然それを指定の区域に入れてもらわなければならぬ。それはここに実弾射撃場があり、丘陵になつておりまして、この丘陵の上に国道がある。そこへ実弾が飛んで来るのです。現に今日まで即死者数名を出しております。そこで農民はここを通行することを恐れて、自分の開拓村内に私設の道路をつくりまして、ようやく国道にかわる不便なる道路を使用している。ところが演習している米軍自体がこの国道を通ることを危険視している。そこで百姓のつくつた私設の道路をタンクが通る。それは非常に脆弱な道路ですから、一ぺん通られるとめちやめちやになるのです。これをちつとも補修してくれない。そのために月に何回となく農民が全部一戸当り何人と人手を出して、これを修理する。この修理費だけでもたいへんなものです。しかもここが当然指定さるべき地区だというのは、現在駐留軍区域であるところでは狭隘で演習不可能なんです。それですから日常の演習は常に農園の中でやつている。それが月に数回です。ところが二月に一ぺん一万数千名がやつて来る。百姓の見た目ですから、数字は的確じやないにしても、一万名にも余る人が来ると、農場全体がだめだ。その数日間というものは農業に従事することができない。これは向うでも必要なのだし、こつちでは非常に危険なんですから、当然その交渉の過程において、こういうものを査定でもする場合にはナンバー・ワンでなければならぬと私は思う。そういう現地の状況等もあなた方頭の中によく入れていただきたい。そしてこれが移転する場合は、他のまつたくの荒地に入つて行くのですから、雪が解けてから入つて行つたのではだめなんです。雪のあるうち、二月、三月のうちに雪の上に移転して行つてつたて小屋を建て、雪解けと同時に荒地を開墾して行くのですから、一月を過ぎてからきめたのでは遅いのです。交渉の経過がどういうふうになつているか私ども存じませんが、まつたくあわれな状態にあるので、そういう実情をよく見て、急速に向うと交渉を重ねられ、適切なる解決をしていただきたい。これは切実なる農民たちの叫びであり、われわれがながめてももつともだと思う点が多いのであります。その点農林省も非常に気の毒だと思つておりますし、北海道庁もそのために一番先に開拓地を探してやつているのがこの農場です。そういうことを頭の中に入れて、私はきようのあなた方の答弁の速記録を送つてやるのですが、あなた方がこれを親切に考えてやつているということを知らせただけでも非常に喜びますから、この問題については特に心にとどめておいていただきたい。
  27. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 ただいま椎熊委員からお話がありましたが、私もときどき調達庁に行くのでありますけれども長官部長も職員の方々も非常に親切なんです。まず役所の中で海上保安庁ほど親切なところはない。次は調達庁だと思うのですが、その仕事は外務省よりものろいので、この点が実際私どもふに落ちない。その点がただいま椎熊委員の言われるようなことに帰着するのではないかと思うのです。親切丁寧にやつておられることにはわれわれは頭が下るし、りつぱな役所だと思う。長官初めみな訓練が行き届いているものと存じておりますが、そののろいことと来たら外務省よりのろいのであつて、常にこういう問題が起るのでありまするが、この点をひとつ迅速にやつていただかなければ、この法律ができたところで何もならぬことだと思うのですが、迅速にやつていただけるようになり得るものか、なり得ないものか、長官から御答弁を願いたい。
  28. 根道廣吉

    根道政府委員 まことに痛い御説でございます。私ども関係の部局に対しまして、実際の補償問題につきましては、被害者の身になつて考えることを第一とせよと申しております。精算というものは国の支出でありますのでなかなかむずかしい。中途において仮払いにならぬ程度の概算をすみやかにやるようにということを示達しておるのであります。またそのつもりで働いておるのでありますが、個々の問題になりますと、ただいま不動産部長から説明いたしましたように、基本の問題がきまらないためにわれわれは足踏みをせざるを得ないという場面もずいぶんあるわけであります。法案に出されました例もやはりそういうことの解決方法の一つであります。また補償の額をきめますときに、その査定の方法、いろいろな証拠の収集、その実際上の認定の問題等が実は非常に煩瑣でございますので、気分だけが先に立ちましても、ずいぶん仕事がおそいことかありますので、この点おわびをしておきますが、今後できるだけすみやかに、被害者の身になつて何か実際上の道が立つようにしたいと思つて、督促監督をして行きたいと思います。
  29. 椎熊三郎

    椎熊委員 私の聞いた具体的な問題では、目下どういうふうに考えておられるか。
  30. 根道廣吉

    根道政府委員 ただいま不動産部長より説明いたしましたように、基本問題につきまして、われわれとしても十分心をいたしてすみやかに元がきまるようにし、元がきまつた以上われわれとしても損失補償を促進したいと思います。
  31. 椎熊三郎

    椎熊委員 その通りだと思います。私の申し上げているのは、元をきめるのに一月一ぱいくらいできまらなければ来年の開拓に間に合わないという実情にあるので、元のきめ方を推進していただきたいということなのです。
  32. 根道廣吉

    根道政府委員 了承いたしました。できるだけそのようにいたします。
  33. 福永一臣

  34. 山中日露史

    ○山中委員 先ほど田口委員から、今議題になつておりまする法律案の、損失補償の点についての発言に対して、間接損害も含むのだという御説明で、立法の趣旨は一応了承できるのでありますが、しかし条文の第一条の第三項、すなわち「第一項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失とする。」という表現になつております。そこで普通、損害賠償の因果関係論から行けば、通常生ずべき損失という言葉は、今まで多くの場合直接の因果関係のある損失ということに解釈される場合が非常に多いと思うのであります。ことにこの法律には、異議申立てであるとか、あるいは訴えであるとかいうことが規定されておりまして、将来やはり裁判所の裁判官の判断にまたなければならぬような結果になることも予想されているのでありますが、普通民間損害賠償責任の具体的な問題については、いろいろその事情によつて間接的な損害にも拡張して解釈される場合もありますけれども、こういうふうに国と国民との聞の損害賠償責任をきめる場合においては、裁判所というものはどうしても狭義に解釈をして、直接にこうむつた損害についてのみ国が補償するというふうに解釈される危険が非常に多いのであります。従つて調達庁長官から、この損害は間接損害を含むのだというお話がありますけれども、裁判所は行政官の解釈にこだわらないで、裁判官独自の考えですべてを判断して行くのでありますから、そういうふうに、間接損害も含むのだということをこの条文の上に明らかにしておく必要があるのではないかというふうに考えているのでありますが、この点についてはどうお考えになつておりますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  35. 川田三郎

    川田政府委員 条文上に明らかにするということにつきましては、今間接損害とか直接損害という観点に立つていたしませんで、私どもはかえつてあらゆる原因結果の結びつきのありますもので、この法律によつて取上げ得る政府の立場を規定したいと存じたわけであります。従つて間接損害を含むという意味の類推は、立法事情から申しますと説明できると思いますが、これが御納得いただけるかどうか。たとえば防潜網防潜網そのものが所在するめの補償ではありません。防潜網影響を受けることを考え、また防風施収につきましても農林委員会におきましても説明をいたしましたが、現在の法政によりまして防風施設を切つた場合は、その立木の値段は補償できます。その立木を切られたために風がひどくなる、その農地の補償をするというのがこの目的でありますから、この法律の立法趣旨自体が間接のものを含んでいる。これは裁判官も法律を解釈する上において必ず反対できないだろう、そういう意味で特に間接という宇をここにはうたわなかつた次第であります。
  36. 山中日露史

    ○山中委員 その趣旨はよくわかるのですが、私の言うのは、つまり「通常生ずべき損失」というような、そういう文字で表現されますと、せつかくあなた方の御心配になつている、また被害者にとつて非常に有利な立場に解釈されていることが、この文字によつて打消される危険がありはしないかということを心配して申し上げたのでありまして、そういうお話の意味を、裁判官の従来の狭い解釈に陥る危険を除去するような意味のことを、この条文の上に何らかの表現で現わす必要があるのではないかということを心配して私は申し上げているのです。
  37. 川田三郎

    川田政府委員 どうも私がここで法律論を申しますことは少し僭越かと思いますが、お許し願えれば申し上げます。通常生ずべき損害というのは、ただいま御指摘になりましたように、民法上は因果関係論の問題でございます。民法四百十五条に規定いたしております通常生ずべき損害と申すのは、いわゆる相当因果関係論に立ちます。相当因果関係はその経済状況事業の実態、行為影響力、こういうものを把握いたしますれば間接と言われるものに対しても相当因果関係を認め得ると存じますので、私どもがこれを補償いたしました場合に、その補償が多いということは、裁判所以外にまず会計検査院から指摘いたします。その会計検査院に対しましても、私どもはそういう法律論はいたさないつもりでありますが、相当因果関係論に立脚した強い信念を持つて国民被害は少しでも補つて行きたいと存じます。
  38. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま論議されております「通常生ずべき損失」の問題は、私はいま少しく明確にする必要があるど考えるのであります。  そこで調達庁長官にお尋ねいたしますが、漁場関係防潜網その他に関係して、どういうふうな基準で損害を賠償されようとするのであるか、その基準を示していただきたい。  さらに第二点は、今間接損害の問題がありましたが、そういう施設によつて、航行がきわめて不自由になるという損害は、どういうふうにお考えになつておるか。たとえばそういう施設によりまして、従来一時間で漁船が航行していたものが、五時間も六時間もかかるという場合の損害、あるいは時間的に一日に数十そう航行できたものが、数そうしか航行できないという場合の損害、そういう場合にはどういう方法をお考えになつておるか。  さらに附則の点につきまして、「公布の日から施行する。」ということは当然でありますが、今までの莫大なる被害についての救済はどういうふうにお考えになつておるか、この点も参考のためにお伺いしておきたいと思います。
  39. 川田三郎

    川田政府委員 第一の補償の基準の問題でございますが、これは重要でございますので、まず中央不動産審議会におきましてこれを審査していただきます。その答申に基いて長官は別に各省協議の線も実行いたしまして、これで慎重になるべく早く決定する所存でございます。また航行を制限されたための被害、これは結果の方の行為でございますが、それにつきましては現在すでに操業制限という面の補償方法もございます。それに取上げられるものは取上げて参る、その他カバーできないものにつきましては、この法律を活用して行きたいと思います。
  40. 井手以誠

    ○井手委員 第二点のそういう航行の制限によつて生じた損害については、これを補償するということを承りましたので了解することにいたしますが、第一点の不動産審議会における答申によつて決定するという御答弁に対しまして、私はいささか不満であります。現在調達庁はどういうふうな基準で審議会にかけようとお考えになつておるか、当然この法律提案される場合には、用意があることだと思うのであります。大綱だけでもお示し願いたい。
  41. 川田三郎

    川田政府委員 不動産の接収及び漁業制限につきまして、すでに本年の七月四日、閣議了解事項といたしまして、原則的な補償の基準と申しますか、基準的法則が定まつております。これをもとにいたしまして、この特別の補償をいたしまする法律を執行するための基準も、実情に合いますように作成するつもりでございます。なお防潜網漁業であります。防風林農業でございます。現在漁業に対する補償基準、また農業に対する補償基準、これもすでに不動産審議会を経まして、各省間の同意を得て決定したものがございますので、それとの権衡を見まして、おそらく内容的にはそれと類似した補償基準が提出されると存じます。
  42. 井手以誠

    ○井手委員 重ねてお尋ねいたしますが、「通常生ずべき損失」とありまするので、この法律上の見解はわかりますが、その場合全額だと解釈してよろしゆうございますか、その点が第一点。さらにこの損害補償について、日本側とアメリカ側と折半の負担であるか、この点をお尋ねしておきたい。
  43. 根道廣吉

    根道政府委員 それは実損額を補償するという建前をとつております。いろいろ計算の壁はございますが、実損額算定の方法はいろいろございまして、たとえばある場合には、一年の総収獲高に対しまして八割の補償をするという例もございます。これは全額といいますと、場合によると過当に失する場合があることを考慮しておるわけであります。調達庁関係といたしましては、国といたしまして補償いたしますときは、まず補償するのであります。米国側の負担区分については直接の所掌ではありません。これはまた別個日米間の行政協定等によるところの交渉にまたなければなりません。とにもかくにも国といたしましては、ただいまの法律案またはすでにできております法律等におきまして、国としてとにかく補償を実施する、こういうわけであります。
  44. 井手以誠

    ○井手委員 もちろん損害賠償は国としてやるべきでありますが、最終的にはアメリカ側も半額負担するということになると了解してよろしゆうございますか。さらに実損害額は全額と承知してよろしいか、その点をお伺いいたします。
  45. 根道廣吉

    根道政府委員 アメリカ側との分担につきましては、まだ協議がまとまつておらないと了承しております。アメリカ側としては、できるだけ負担が少いことを欲しましようし、日本政府といたしましては、当然にアメリカ軍の行為によるものであるということで、アメリカ側の負担の率が大きいことを欲しておりまして、実際のところ、まだ分担の比率は定まつておりません。しかし行政協定上は分担するということだけがきまつております。たとえばNATOによりますと、国の方で二五%、駐留軍関係におきましては七五%というような比率を論議されておるというふうに承知しておりますが、日本側として、やはり同様なことを関係当局の方において希望し、折衝しておるとも聞いております。しかし私といたしまして、この点何とも申し上げかねる次第であります。ただいま実損額を補償するがどうかということにつきましては、不動産部長より例をもつて説明させたいと存じます。
  46. 川田三郎

    川田政府委員 補償という建前になりますと、損害の実損は全部支払うということでございます。八〇%と申しましたのは、実際に仕事をしておらなくても、仕事をしておつたと同様の収入が得られるということは不権衡でございますので、八〇%という点がきまつております。
  47. 井手以誠

    ○井手委員 大体了解いたしました。そこで最初にお尋ねいたしました、法律の公布以前における損害の救済法についてお答え願いたい。
  48. 川田三郎

    川田政府委員 本日提案いたしております法律案は、駐留軍という一つの相手方を想像しておりますので、駐留軍によるものにつきましては、この法律施行以後補償されるわけでございます。またこの法律が施行されます以前の駐留軍行為に基くものにつきましては、行政上なし得る限りの方法をもつて見舞ということをいたすようになるより仕方がないと存じますが、それ以前の、占領下におきます問題につきましては、従来補償または見舞で一応国民の方には納得をしていただくように取進んで来たような次第でございます。
  49. 井手以誠

    ○井手委員 水産庁長官にお尋ねいたします。ただいま不動産部長から見舞金の話がありましたが、その見舞金について、従来のあのすずめの涙ほどの僅少な額では見舞ではないと思うのでありますが、水産庁はどういうふうにお考えになつておるか、御協議があつたならば、その点を明らかにしていただきたい。
  50. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 独立後におけるこの種の見舞金あるいは補償につきましては、これ前と違いまして相当高額になるようです。各種の算定基準について増額できるような形に、私の方としては意見調達庁の方へ申しまして、大体そういう形できまつておりまするし、今後もそういう形でできるだけ、先ほど申しました実損額というようなものが適正であるという点については、漁業者の方の要求を十分に取入れて進めて参りたいと思つております。前とは大分違つて参ります。
  51. 井手以誠

    ○井手委員 重ねて水産庁長官にお尋ねいたしますが、二十七年度の漁場の損害について、公布以前の分については、公布後に支払われる損害賠償にほぼ近いものが見舞金として渡されるというふうに解釈してよろしいのでありますか、お尋ねいたします。
  52. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 独立後のもは従前の計算よりはずつとふえます。独立前のものは、見舞金等で防潜網等のものは出すつもりで、今大体事務的に進めておりますが、独立後のものとは算定基準は幾らか違います。
  53. 井手以誠

    ○井手委員 この程度で打切りたいと思いますが、独立後のものについて、法律施行後のものと前のものとが不均衡に失しないように、極力見舞金増額されるように特にお願い申し上げまして、質問を打切ります。
  54. 田口長治郎

    田口委員 ただいまの井手委員からり遡及の問題に関しましては、法律第二百四十三号を通過させる一つのひもといたしまして、国内法をつくつた場合におきましては、それ以前の被害の問題をどうするかということについて、これは調達庁ではなく大蔵省及び水産庁でございますが、遡及をする、こういうようなことで二百四十三号を通過させた次第でございますが、少くともアメリカの駐留軍が来てからの問題は、この法律制定前でありましても、私どもは当然見舞でなしに補償すべきもの、こういうふうに考える次第でございますが、この法律の条文が遡及するということをはつきりしないといたしますれば、少くとも附則でその点をはつきりしなければならぬと思うのでございますが、この点に対しまして調達庁はいかようにお考えでございますか。衆議院としては今までの行きがかり上、修正でもしなければならない、こういうような行きがかりもあるわけなのでございます。
  55. 川田三郎

    川田政府委員 この法律が施行いたされますまでの暫定措置といたしまして、年内に防潜網関係につきましては、何とかしてこの特別法が施行されることを予想し、希望いたしまして、これができるまで見舞金をもつて防潜網被害と推定される金額の概算をお払いする、こういう措置をとつております。その対象となります期間は、駐留軍が存在した期間と解釈することになりますと、駐留軍の性格というものがまた問題になるので、調達庁といたしましては、講和発効後、すなわち四月二十九日以後の損害についてまず見舞金を出す。それからこの補償が行われます場合には、その補償額並びに見舞金は内払いでございますので考懸する。こういう案を現在閣議に提案をしておる次第でございます。従つて補償は、駐留軍というものを、国民の立場から見ますれば、むしろ有利に解釈をいたしまして、われわれといたしましては四月二十九日以降の防潜網被害に対してはこれを補償する。しかも年内に内払いをする。こういう二本建の態度で現在臨んでおる次第でございます。
  56. 田口長治郎

    田口委員 四月二十九日までさかのぼることはまことにけつこうと思うのでございますが、少くとも漁業者は今回交付になる金については、見舞金という意味でなしに、補償金の内金だ、こういう意味において受取る意向なのでございますが、今の不動産部長のお話でも、何かお話の中に補償金の内金だという意味に解釈される言葉もありますし、また見舞金であるような表現のところもあるのでございますが、これはあくまでも四月二十九日以降の分、本法施行前の部分につきましてもやはり補償する、こういうことで今回交付される金はその一部である、内金であるという解釈にならなければいかぬと思いますし、また従来どうかいたしますと、見舞金、いわゆる包金というようなことでごまかされては困るというような気分が、漁業者一般に横溢しているような実情から、官庁ではごまかさないつもりでおるのに、受取る方ではさような感情でおるということはつまらないことであると思いますから、何か附則に四月二十九までさかのぼるということを加えて、名実ともに補償金の一部である、また補償するのだというふうに修正すべきものと思いますが、その点いかようにお考えですか。
  57. 川田三郎

    川田政府委員 先ほど見舞金と申し上げましたのは、財政上の基礎がそうしなければ支出できないものですから、見舞金という名称になるわけでございますが、これはまさにこの法律が施工されました場合の補償金の内金でございます。ただ政府といたしましては、まだ国会にかけないうちに補償金の内金であるというのは申しにくいので、さように申し上げたのでございます。
  58. 山中日露史

    ○山中委員 関連してごく簡単に一点だけお伺いいたします。これは調達庁にお聞きしてはどうかと思うのですけれども、先ほど損害についてはアメリカ側と日本側と協議してその問題をきめるのだというような御答弁であつたのですが、私はさようには理解しておらない。安全保障条約で、アメリカ側と日本側とが損害を分担する場合に、防潜網設置その他のこういつた損害について、日本には、日本政府がそれを負担するというような国内法がないために、行政協定の十八条に載せることができないのだ、従つてこういう国内立法ができれば、これから協議してきめるのではなしに、当然にアメリカはその条約に舞いて負担しなければならないということになるのであるというふうに私どもは理解しておるのですが、先ほどの御答弁とはちよつとそこが食い違つておるのですが、その点はどうですか。
  59. 根道廣吉

    根道政府委員 国民に対して国が補償いたしますのには、法律によらなければならぬのでありますが、行政協定によりまして、行政協定十八条等の範囲内における事項に関しまして、日本国政府日本国民等に損害を払います場合には、米国はこれを分担するということだけがきまつておる、こういうことでございます。損害そのものの額をきめますということにつきまして、米国と相談するわけではございません。あとで米国側が日本にそのうち何分の一をよこすか、たとえば向うは半々を主張するかもわかりませんが、それは別の外交交渉によるものである、ということを申し上げたわけであります。
  60. 福永一臣

    福永委員長 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、なお次会より継続することといたします。     ―――――――――――――
  61. 福永一臣

    福永委員長 この際松田鐵藏君から発言を求められておりますので、これを許します。松田鐵藏君。
  62. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 実は終戦後における日本の水産漁業者が非常に行き詰まる状態になつておるのでありまして、水産庁においてもいろいろと漁民の経済更正のために努力され、われわれ委員会においてもこの問題が常に論議されているのでありますが、私ども昨年以来日本国民の今日の国情から行きまして、海外に移民ということもなかなか取上げることができ得ない状態にあり、日本の人口の調節というものが日本の政治の重点であると信じておりますが、なかなかこれが調節でき得ないという観点から、何らかここに水産業者を通じて海外の移民に匹敵するような方法考えて行かなければならないではないかという議論も常にされておつたのであります。しかして昨年来私ども二、三の者の考え方から、アルゼンチンに対する漁民の進出ということを論議しておつたのであります。たまたま前国会に席を置いておつた永田節先生から、永田君の友人である伊東信介という人を介し――この人はアルゼンチンと相当密接な関係を持つておるので、そのわれわれの構想を常に論議しておつたのでありますが、今回その話が非常に急速に進捗いたしまして、たまたまアルゼンチンには日本におけるすけそうたらと、たらのあいのこのようなたらがおる。またかにがたくさん棲息しておる。しかして日本漁民をあそこに入れて漁業会社をつくることによつて日本の移民と同様な役割を果すことができ、しかして外貨の獲得にもなることであろうという意味の交渉がされておつて、私と委員長に対してその話をされたのでありますが、これはわれわれといたしましても非常に考えなければならないことでありまして、何とかこうした問題をわれわれは国会を通じて完全な調査をし、しかして日亜親善のくさびにもしたいと存じておる次第であります。委員長においては、もしでき得ることならば当委員会に特別の委員会でも設定されて、この問題を論議されるようにしていただきたい。同時に水産庁長官においても、この辺の事情をもし御調査なつしおるといたしましたならば、簡単でけつこうでありますから、御意見を披瀝していただきたい、かように考えるものであります。
  63. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいまの松田委員の御説は、独立後の日本としてはまここに当を得た方向であると思つておりまして、私どもの方もできるだけ民間の方と協力しながら、その方向をとつて行くようにやつております。ただいまお話のありましたところのアルゼンチンの問題は、過去においては日本水産が出ておつた所でありまして、ある程度のデータはございます。戦後も大洋漁業の方の貿易部長がずつとまわつて参りまして、やはり大ざつぱに見たところ採算的にはやつて行けるだろう、こういうような見通しをつけておるような状態であります。その外国を根拠としまして、どういうふうな経営形態で、どういうふうな採算関係で行くかという点については、まだ詳細な報告はもらつておりません。まだできておらぬ、調査中であると思います。しかしこれは非常にいい仕事であると考えておりますので、資料の方は今のところその程度以上には出ておりませんけれども、できるだけわれわれの方でも協力をして、こういう進出を助けて行きたい、こう考えております。
  64. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 たいへりありがとうございます。     〔委員部退席、田口委員長代理着席〕 そこでこの場合、永田節君に対してアルゼンチン大使の顧問をしておる伊東信介氏から来た書簡を、私は簡単に読みたいと思います。「拝啓昨日亜国大使ドクターキロス氏と会見の内容は、貴下お立会いの席上左の通りでありました。大使いわく、現在亜国ブエノスアイレスには日本の二大漁業会社(大洋及び日水)の駐在員が滞在して、亜国における漁業及び将来日本漁業会社が亜国において漁業をなすことにつき調査中であることは承知しておりますが、その後の経過については知りません。彼らが日本を出発前、三社の漁業会社の代表者が亜国大使館へ来訪せられ、調査員派遣につき便宜供与方の申入れがありましたから、私は本国政府へ連絡をとつた事実はあります。本日永田氏の来訪により、将来永田氏が利益本位でなく、日本と亜国の親普及び共同の利益金を受くるという基礎のもとに、日亜合併による漁業会社設立の目的をもつて計画を立てられ、亜国へ渡航せらるる趣きに対して双手をあげて賛成いたしますとともに、何時でも本国政府に対して積極的に永田氏の目的が達せらるるよう公式に報告するとともに、あつせんいたしますから可及詳細御報告に接したいと思います。また一日も早く永田氏が亜国へ行かれ、亜国ペロン大統領並びに政府当局と開始せられんことを切望する次第であります。以上が昨日貴下と亜国大使との交渉内容であります。」こういう書簡が参つておるのであります。どうかこの点に対して水産庁においても十分なる御援助を願いたいと同時に、また当委員会においてもこの問題を論議して、公海漁業の小委員会がありまするが、幸い委員長はアルゼンチン通でありますから、委員長を主体とした特別委員会でもつくられて論議してみたらけつこうかと私は思うのであります。委員長においては、各委員に対してお諮りを願いたいと存じます。
  65. 田口長治郎

    田口委員長代理 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  66. 田口長治郎

    田口委員長代理 速記を始めてください。ただいまの松田委員からの提案につきまして、海外漁業の開発という点からいいましても、日本人の行くべき道という点から考えましても、きわめて重大でございますから、これを公海漁業委員会に付託いたしまして、可及的すみやかに結論を得られるようにいたしたいと思いますが、いかがでございますか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 田口長治郎

    田口委員長代理 それではさように決定いたします。
  68. 井手以誠

    ○井手委員 公海漁業に関連して水産庁の長官にお尋ねいたしたい。実は昨日緊急に質問いたしたいと考えておりましたが、いつまで待つてもお見えにならなかつたのであります。水産委員会は非常にうるさいので避けておるといううわさが飛んでおつたのでありますが、本日は幸いお見えになつておりますので、明確な御答弁をお願いいたします。まずそれを冒頭にしてお尋ねいたします。  以西底びき網のことにつきまして、現地では以東の船を七十そう許可してあるといううわさが飛んで、非常な不安と困惑をかもしておるのであります。そこで昨日出席しておられた次長に対して許可した事実があるかどうかということをお尋ねいたしましたところ、手続は進めておるけれども許可はしていないということを、重ねてお尋ねしましても、はつきりと明言されたのであります。間違いはないと存じまするけれども水産庁長官に、非常に重大な問題でありますので、許可されていないということを重ねてひとつここで御言明を願います。  第二に許可がなくても従来もあつたようで非常に紛議をかもしておりますが、どんどんと以東の船が入つて来て、血なまぐさい事件まで頻発いたしておるのであります。この実情に対してもし、許可がないとするならば、それに対してどんな厳重な取締りをお考えになつておるか。この点が第二点。  さらに昨日の委員会におきまして、水産委員全員の総意として、今日以西底びきの問題について法案が提出されておるのでありますが、その法案を提出されておるときにかかる問題が起ることは非常に遺憾であります。従つてこの審議がいかようにか決定されるまでは、農林省、水産庁において許可その他の手続きは進めないようにという申入れを文書によつてつたのであります。この点について水産庁長官はいかにお考えになつておるか。以上三点を明確にお答えを願いたいと思います。    (田口委員長代理退席、委員長    着席〕
  69. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 昨日参りませんでした理由は、実は先ほど問題になりましたところの防潜網その他間接被害のことを次官会議にかけ、明日閣議にかけませんと年内に間に合わないわけであります。それを非常に急いでおりまして、漁政部長が病気で出て来れなくなりましたので、それで私大蔵省その他との交渉をずつとやりまして、昨日夜までかかりましてやつときめた、こういう事情であります。明日の閣議が年内最後の閣議でありますので、時間的にどうしても出られなかつたわけであります。別にこの委員会を避けていたわけではありません。御了承を願います。  それから今御質問の第一の以東底びきのあの海区認可の問題は、まだ許可はいたしておりません。  それからあの水域における取締りにつきましては、本年の秋から取締船を強化いたしまして、数はいずつと出してやつてつて、その取締り状況を見守つておる状態であります。以東底びき船だけではなくて、小型底びきというのが、県の知事の許可でございますが、それらも相当つておる状態であります。それらに対しましては、そういう違反をやつたものについては、現在も厳重に処分をしております。  それから第三の点で今提出されている法案決定までは処置をとめろというふうなお話でありますが、これは農林大臣の権限内の問題でありますので、農林大臣とよく打合せた上でないと、ここでは私限りではちよつとお答えいたしかねます。
  70. 井手以誠

    ○井手委員 第一点の許可していないという言明に対しては了解いたします。間違いないと思います。  そこで第二の取締りにつきましては、秋から取締船を強化して現地を見まわつておるというお話でありますが、現地の話によりますと、依然として密漁船が横行しておるということを承つております。いつも取締船については、取締つておる取締つておると言われながらも、現実にはさようになつていないのが普通でありますので、後日取締りが非常に至らなかつたという非難がないように、格段の取締りの強化についての御配慮を願いたい。この点を特にお願い申し上げておく次第であります。  第三の法案についての本委員会の申入れ、これについては農林大臣と打合せてやるということでございまするが、どうもこの点私は気に食わないのであります。いやしくも国家最高の意思機関である国会の申入れに対しまして、農林大臣と打合せなくては御返事できないということは、はなはだ本委員会を軽視したものではないかと思うのであります。承るところによりますと、農林大臣は自邸において何か許可をしたとか、あるいはどうしたとかいううわさが流布されております今日、打合せて御返事するということは、私は簡単には承知できないのであります。この委員会の申入れに対しましては、十分尊重されるのが水産庁として、農林省として当然であろうと私は考える。この点について、もう一回水産庁長官の役人としての良心あるお答えを願いたいと思います。
  71. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいまの問題は、とにかく法律によつて農林大臣の権限内の事項になつております非常に重要な問題でもありますので、こういう重要な問題に対しては、私限りでどうこうというお答えはちよつといたしかねるわけです。前にこういうふうな、やはり農林大臣の権限にある事項について、委員会で農林大臣と相談しないでそういう話をしたこともあつたようでございますが、私は役人としてはそういうことはちよつといたしかねます。
  72. 井手以誠

    ○井手委員 それでは重ねて次の二点をお尋ねいたします。水産庁長官はこの申入れに対してどういうお考えを持つておられるかということが第一点、それからこの委員会の申入れに対して尊重されるというお言葉は全然聞かれなかつたのでありますが、その点について水産庁長官は、そういうふうにこの水産委員会の意思はあまり考えていないというお態度であるか、重ねてお尋ねいたします。
  73. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 これは長い間私の方でも検討し続けておる問題でございますし、それについては私の方としましては入れたいという意見は持つておりました。今もその点は理由を詳細伺いませんとはつきりはいたしませんけれども、それは農林大臣に十分相談した上でないと、やはり意見というものは申し上げにくいのです。
  74. 井手以誠

    ○井手委員 この法案が出ておるのに入れたいという腹があるならば、自然休会中に許可するというおそれを私どもは感ずるのであります。私どもはこの水産委員会の総意としてあの申入れをやつたのでありまして、当然これを尊重してもらう義務があると思います。その申入れに対しまして、ほとんど尊重するとかいうような言葉がないということは、私は水産庁長官の腹の中に、そのうちに許可をするかもしれないというお考えがあるのかもしれないと思うのであります。私はこの問題を軽々に打切ることはできないのであります。あくまでも追究したいと思いますが、水産庁長官は、私どものこの申入に対して尊重される意思があるかどうか、お尋ねいたします。
  75. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 もちろん委員会の御意見ですから、十分検討して行きたいと思います。
  76. 井手以誠

    ○井手委員 法案が出ておる際であるから、特にそういう申入れをしておるわけでありますが、その申入れに対して委員会の審議が決定されるまで、農林省は許可その他の手続をお進めにならないという約束を、この際水産庁長官からしていただきたい。これが国会の意思を尊重する第一の道だと私は考えております。農林大臣等に打合せ云々ということをおつしやいますが、これは当然ここで約束されるべき責任があると思います。この点についてお約束を願いたいと思います。
  77. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 そのお約束は、先ほど申し上げました通りいたしかねます。
  78. 田口長治郎

    田口委員 ただいまの井手委員からの話でありますが、水産庁が百三十度線というものをどんなふうに考えておられるかということによつて、この問題がきまつて来るのであります。今の漁業法では、東経百三十度以西における五十トン以上の機船底びき網を以西機船底びき網という、こういう定義になつております。従つて法律上から申しますと、百三十度線以西はすべて以西底びき網の漁場だというふうには解釈できないのでありますけれども、反面解釈といたしまして、当然以西底びきは百三十度以西で五十トン以上の漁船だ、こういうことになりますし、今までそういう方向でやつて来たのであります。それについて中型底びきに対する漁場の制限規定がたまたま法律にない。非常に古い法律であるために、その点がはつきりとしていない。このはつきりしていないところを利用いたしまして、そうして通念的に、漁業法で百三十度線以西ということで以西底びきを規定しておるその漁場にでも、どこへでも、漁場の制限がないから中型底びきを許可してもよろしい、こういうことは私は違法だとは申しませんけれども、少くとも漁業法の精神を無視しておる。しかも中型底びきに対して漁場の制限がないために、どこへでも中型の底びきの許可はいいのだ、こういうことになると、以西底びきなどの定足数をきめるとかなんとかいう規定も全部死んでしまうのでございまして、漁業法の精神を無視してしまうと私は考えるのでございます。今回水産庁から提案しおりますところのあの法律案は、少くとも中間で働いておる百八隻を以西に入れる、こういう目的でございますから、法律的に考えますと、結局中間漁区における百八隻は現在五十トン以下であるけれども、当分の間この海区に入れる、こういうような法律の解釈か、あるいは中型底びきの漁場は百三十度以東の海面だというように明確にするか、そういうような行き方で行かなければならないと考えるのでございます。何かあとに中型を入れるというような不純な考えがありますから、あの法律の改正案を見ましても、盲点をくぐつて行くようなかつこうになつておると思いますが、われわれはあの法律に対しましては、すつきりしたいわゆる漁業法の精神を蹂躙しないような修正を必要とすると考えておる次第でございます。もしさような修正が国会でありました場合におきましては、いわゆる以西の漁場に以西でない底びき網を許可されたようなことになるのでございますから、これは以西底びき漁業者との関係におきまして、非常に複雑なものになります。また以西底びきを、漁場が狭いからというので非常な出血をして減船整理をした、これはマッカーサー・ラインがあつたからだというような理由もありますが、その当時からマッカーサー・ラインを越えて操業しているような漁船が非常に多かつた事実――またマッカーサー・ラインがあつたために、ラインに違反したということで許可を取消されているこういうような連中で、現在は許可をみずから返上した者もおりますし、取消された者もおりますが、その後司法裁判によりまして無罪になつた連中もおるのでございますから、もし百三十度以西におきまして新たに漁船を入れる能力があれば、何も関係のない中型底びきを入れられるよりも、これらの、いわゆるマッカーサー・ラインによつて取消された者が優先的に考慮されなければならないと考えるのでございます。今戦犯者にいたしましも、とにかくすべてが解除されておる時代におきまして、漁業だけが占領中にわずかのひつかかりがあつたために、権利を取消されたその復権ができないということは、はなはだおかしいのでございまして、今の百八隻を入れるためには、法律の立て方としましては、今提案されておる方法は非常におかしい、こういうことも考えておる次第でございます。かような意味から、昨日委員長から強く農林大臣及び水産庁に対して、この法律がきまるまでは措置をされないようにという申入れをいたしましたことに対して、今までの長官の返答では、結局国会を軽視しているように解釈せざるを得ないと考える次第でございます。政府部内でいかにきまつておりましても、これは内輪の問題であつて国民全体が大騒ぎをしており、また行政上からも非常に疑問があるような場合におきましては、少くとも法律改正がきまるまでは、さような措置をされないということが普通の行政であるし、またほんとうに国会と協力してすべてのものを進めて行く、こういうようなお気持だろうと思うのでございますが、その点に対しまして、水産庁長官はいま少しく明確なる御答弁ができませんかどうか、重ねて私からもお伺いをする次第でございます。
  79. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 ただいま井手委員のお話で御答弁した程度以上のことは、ちよつと申し上げかねるわけでございます。われわれの方としましても、十分検討して大臣とも御相談した上できめたいと思います。
  80. 赤路友藏

    赤路委員 ちよつと今の田口委員と井手委員質問に関連して、もう一度長官にお尋ねしたいと思います。先ほど来の長官の御答弁では、大臣と話し合わなければできないのだという一本で来ておられるのですが、実は昨日当委員会で、田口委員が次長にお尋ねしたときに、次長は、一月の中旬までに許可をする方針で進めて来ておるのだというようなことをおつしやつたと私は記憶しております。そういうことになりますと、田口委員が今質問され、あるいはまた井手委員質問したことに対する明確なる御答弁がないということは、そうしたことがあるという含みがはつきり出て来るように思うのであります。この問題は非常にやつかいなリンチ事件等があつたものであつて、たびたび本委員会でも問題になつておりましたので、本委員会といたしましては、昨日も、こういう緊急を要するやつかいな問題があるから、委員会としては、一応現地を調査して、これに対する一つのはつきりとした委員会の線を出そうというような申合せまでやつたわけでありまして、当然来春早々委員会としては現地調査ということになるかと思いますが、少くともそういうような現地調査が当委員会においてなされて来るまでの間、許可をするということのないような処置をおとり願うことを、もう一応何とかお考え願えぬでしようか。
  81. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 同じような御質問なんでございますが、この席で今すぐにはつきりとしたお答えはいたしかねるわけであります。     ―――――――――――――
  82. 福永一臣

    福永委員長 次に、公海漁業に関する件について議事を進めます。母船式北洋さけ、ます漁業出漁計画について発言を求められておりますので、順次これを許します。川村善八郎君。
  83. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 去る十月二十三日に廣川農林大臣の私邸におきまして、廣川農林大臣と長官と、北洋漁業さけ、ます母船式漁業について、詳細なるお話合いがあつたということを承つておりますが、そのお話の内容をまず少し詳細に本店で御説明を願いたいと思います。
  84. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 大臣のところでお話したのは、その事項もちよつと聞かれましたが、しかしながらほかの方の防潜網の問題であるとか、その他の懸案が三、四ありましたので、その行政措置をしなければならないという問題が主体でございます。ことにまだ伏せておられる最中でございますから、特にそういうふうな詳しいお話をしたということはございません。私の方としましては、大臣の御質問に答えて二、三お答えしたわけです。これは漁場が非常に広いという話であるけれども、それについてどうかというお話があつたので、私も、あの漁場につきましては、過去においては三つの資源しかないということ、それからその資源では三尾くらいとれる場所あるいは五尾とれる場所があり、一回試験操業をやつて本年度出ました成績等を十分検討した上で、とにかく採算的にとれる漁場というのは非常に狭い、これはデータ及び各船団長等の意見も徴しましたが、そういうふうな意味で、どうしても漁場は狭いから調査はしなければならない、抱擁力としてはある程度のものがあるという点をよく御説明しておきました。
  85. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 御承知の通り、今年は試験操業として三船団五十隻、その他七、八隻参画して北洋漁業のさけ、ます流し網をやつたのでありますが、その成績は決して悪くないというところから、日水、日魯、大洋等すでに本年の母船より大きな母船を使い、しかも独航船等を相当数獲得して出漁の準備を進めておるし、それぞれ出漁もしておると思います。そのほかにも大体五船団の出願があつたはずでありまするが、長官は今日までまだ措置をしておらない。これにはいろいろ理由がございましようが、その理由をこの際赤裸々に御説明を願いたいと思います。
  86. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 前半期の漁業につきましては、昨年度は計画の半分に満たないような漁獲しかございませんでした。それで約一箇月近く漁期を延ばしてカムチャツカ寄りの方に行きまして、それでカバーしてやつて来た。そのカバーも、魚価が当初の予定よりは二割以上も高く売れたということと相まちまして、独航船においては大半は大体採算はとれた。採算のとり方は、いろいろ計算のやり方、資材の償却の見方で違つて来ると思いますけれども、大半はその採算は立つたと思います。三万尾を割つたような漁船については、これは疑問ですけれども、そういう漁船はそうたくさんございません。そういうような関係で、本年度は大体五万尾くらいないと、ちよつと彩算的に言うと不安だというのが、魚価等とも見合いましての大体の見通しじやないか、こう見られるわけでございます。そういう関係から、漁場の方は私の方は狭いと見ておりまするし、それから川村委員等の意見では、漁場は広い、だからもつとふやせという意見がございますが、そういう点について一番今のところ大臣とは話し合つておるわけでございまして、これにつきましては、一番基本になりますところの、採算的に操業できる漁場というものの見方、あるいはある意見によりますれば、先般の小委員会等でも出ましたけれども、もつと露領海近くまで入れないかというような問題等と関連して、大臣は現在考えておられる状態だと思つております。
  87. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 これは漁場が狭いということと、さらにちよつとだけの資源しかおらないというような長官意見と、われわれとは非常に見解が違うのであります。単なる区域を見ますと、御承知のように北海道の五倍、全国の地域の約二倍といつたようなことで、昭和二十八年度の許されんとする漁場は相当広うございます。長官の言うのは、広い地域でありますから、局部には魚がいるけれども、その他にはいないというようなお話であります。魚のいるところの漁場が小範囲だとするならば、ただ単にそのほかに漁場を広げることは何も意味をなさないじやないか。水産庁においてもおそらく魚のいない所を無意味に広げるわけではないと思う。長官はこの許可について何かしら裏に考えておるところがあつて、すなわち本年の三船団、日魯、日水、大洋より許可をしないという腹であるから、魚はある局部にしかいない、漁場が狭い、こういうようにかこつけておる。魚がいないのに、ただ単に図面の上だけで広げるのならば、むしろ漁場を狭めて、そこで操業させる方が効果的ではないか。そこで長官にさらにお尋ねいたしますが、長官考え方は、今後三船団以上に、――すなわち独航船が八十五隻、調査船が十五隻という発表の通りに操業させる意味で漁場が狭いといつておるように思うのであります。しかし業界はそういういうふうには参りません。いずこへ行きましても、もちろん魚の厚い薄いはあるけれども、全漁場に魚がいるという考え方で、相当数の母船経営の許可の申請があるのであります。この申請に対していかなる処置をもつておきめになる意思か、この点をお伺いいたします。
  88. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 あの広い地域に一定の漁場以外にいないというお話ですけれども、私の方はいないとは言つておらないのであつて、採算的に操業できる、すなわち船団長あたりの意見を聞き、魚価等を見合いますと、一反当り大体四尾くらいはかからぬと採算がとれない。そういうような漁場は非常に狭いということを言つておるのであります。また、それなら初めから漁場を広げる必要はないじやないか、狭めてやつた方がかたいではないかというお話でございますが、百七十五度と百七十七度との間の二度の線、ここにもいい漁場があるかわかりません。そこのところは初めから広げていなかつた。それですから今年度はそこをどうしても調査をやる。またここは暖寒流の交錯関係として、舌状にある程度水温の高いいい漁場があるかわからない。こういう想定をされておるわけでありまして、もちろん一つのねらいでございます。もう一つは、七月以降広げた漁場も相当の広さがございます。従つて海流その他の関係から見て、そのところにはあまり自信は持てないけれども、これだけの広さがあれば、あるいはどこかに潮目等があつて、いい漁場があるかもわからないので、どうしても調査しなければならない。これは操業を安全にやれる水域でございますので、その調査もやりたい。二箇所の広げたところの前半期の漁場は、おそらく調査船をもつて一番先にずつと調査すると思います。そこに採算のとれるいい漁場があれば、今年も操業をやつてもよろしいわけでございます。その漁場に相当確信が持てれば、来年度も隻数をふやすことができるかもしれない、こう考えておるわけでございます。相当広い漁場で時期々々によつて移動するわけですから、そういう点も調査したいし、松田委員からもお話がありましたように、何本かの道がカムチャツカに向うだろう、そこらのところも押えなければならないという考えを持つております。調査の方はしつかりやりたいと考えておるわけであります。船団の問題その他を当初から腹組みをしておるかということでございますが、私の方はそういうことはなくて、船団が帰つて参りました直後から、大体独航船何ばいくらいが採算的に行けるかということを、船団長の意見も十分聴しまして、約二箇月かかつて、過去の資料や本年度の資料等を、今年監督官で参りました技官が検討した結果、隻数の見当をつけたわけでございます。当時どれくらいの母船が出るとかどうとかいうことはもちろんわかつていないときでございますので、そういう意図は全然なしに、漁場の価値から見て、私の方は大体判定をして参つたわけでございます。なお今後の処置としましては、船団の方はそれを前提としましてきめて参りたいと考えております。
  89. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 魚がいるとかいないとか、漁場が狭いとか広いとかいうことは、おそらく判断のしようで幾多わかれると思つております。長官の見解と私の見解とはまつたく相違しておるのでございます。これは他の委員方々からも御質問があると思いますが、今のお話を承りますと、前の実績に照して、しかも栃内技官がデータをつくつて、これによつて水産庁案を発表したということになつておりますが、長官は、今後のいろいろな動きによつて船団をきめたいということで、船団がまだきまつておらないようなお話でありますが、聞くところによると、前に行きました日魯、日水、大洋の三船団より出さないという前提で、それぞれ出願者に対していろいろの意見を吐露しておるということであります。北洋漁業の再開に伴つて非常な熱意を持つておるこのときにあたつて調査も十分できておらない、漁場に入れることが採算的にどうとか、あるいは漁業経済にとつてどうとかいうような考えが慎重を期することはけつこうでありまするけれども、意欲に燃えておる漁民を押えていいのか悪いのか、非常な疑問であります。漁業者は、もちろん役所の調査にも基いてそれぞれ漁業計画を進めますけれども出漁された方々意見も聞き、また過去に、あの漁場でないとはいたしましても、北洋漁業出漁されている方々意見も聞いて、その意見が一致して、すなわちあの漁場にはさけ、ますがいるのだ、採算がとれるのだという確信のもとに他の船団も出そうということで、出願したものだと思いまするが、長官はこれをどこまで押えて、三船団より出さない、極端に言うならば、日魯、日水、大洋等だけより船団を出さないという腹なのかどうか、その点を明確に御答弁願いたいと思います。
  90. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 業界と申しましても、専門的な意見を持つておるところと、それから全体の規模といようなことを考えないような意見と両方ございます。それで昨年度もやはり行きたいという意欲の非常に旺盛な方々からは、百五十ぱい、あるいは意見としては、場合によると二百ぱいというふうな要望も出たのであります。しかしながら昨年はわずかなデータではございますけれども、三つの試験調査のデータから、私の方でも大体推定をいたして、技術的にあの漁場価値を総合的に検討した上で、大体五十ぱい、これでも赤であろう、こういうふうに思いながら出したわけであります。その五十ぱいは、現実にはキスカの南ではちよつと無理なので、網の関係で海上で少し紛争も起つた、こういう状態にあるわけでございます。昨年度かなりの希望がありましたが、その希望を全部いれて出すというやり方をしないで、ある程度試験調査という点が重点であるというような意味で隻数を限りましたのは、私は当を得た措置であつたと思つておるわけでございます。本年度も希望を募れまかなりな数があると思いますが、その点につきましては現在不況な状態にありますし、赤字を出すということは、漁民の経済から見ても、また日本の水産界全体のいろいろな信用、銀行から金を借りたり何かする点から見ても、一ぺん積極的に出て赤字を出すと、たちまちほかの方の企業にまで大きな影響を及ぼすのが実体でありますので、その点はある程度かたく考えながらやらなければならぬ。われわれの方としては、先ほども申しましたように、二箇月くらいの間慎重に検討した上でもつて、船団としましては八十五はい、調査船十五はいというところが適当であろう、こういうようにきめたわけなので、大体昨年にくらべますと、七割増しですけれども、大体その見当がいいと思つておりますので、それを前提として進めて参る。そのためにはやはり業界から非常に大きい要望もありまするが、これは採算的に見て、あの漁場全体を大体計算してわれわれの方は行つておるわけであります。いろいろ希望を持つ来る方もあられるわけですけれども、あの漁場価値全体に対しての科学的な技術的な判定を基礎にされて来られないために、われわれの方としては、そういう人たちのとれるというような意見を、そう確信をもつてそのまま飲み込むというわけに参らないわけでございます。
  91. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 長官は私の質問のほんとうの要旨に対するお答えがないのであります。私はそうした問題についてはすでに長官意見の交換を尽しておりますので、その問題には触れません。ただ要は八十五隻の独航船と、十五隻の調査船で、大体昨年は三船団、こうなつてつたのですが、それを基礎にして行くというような方針であつて、船団をふやす意思がないかどうかということを私は質問しておるのであります。そこで船団ですが、第一回の水産庁の発表は、船団は明らかにしておりません。要は船団はあとで検討した上で数をきめる、独航船と調査船だけは、絶対にこれで行きたいという希望で、しかも私の質問に対しまして関係官は、これは確定的のものじやない、いろいろ業界からも意見があるだろうし、その他いろいろな事情の変化もあろうから、最終決定はまだしないが、大体こういう方針で行きたいということだけ私には発表しております。ただ私が先ほどあなたから承りたいと思つたのは、三船団よりふやさないのかということと、さらに、三船団となると、おそらく日魯、日水、大洋のみだと私は推察するのでございますが、そうした腹で一体今後の漁業出漁を進めておるのか、他の希望をどうするか、こういうことを聞いておるのであります。どこまでも資本擁護の立場において、資本会社三社よりやらないというつもりか、他の出願者を一体どう処理して行くかということを私承りたいのでありますが、この点についてもう一ぺん明確にお答えを願いたい。
  92. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 八十五はいというものを前提として私の方は母船の数をきめて参りたいと思つております。大体の見当といたしましては、母船は三千トン前後のものが割合に適当だと思つております。まあ四千トン以上もけつこうでございますが、そういう点から見ますと、大体今お話のあつたように三つくらいになると思います。それに対しましては準備の状態、経験等そういう点も十分考慮した上できめて参ることにして行く予定で、これは大臣に今相談中でございます。
  93. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 大体三船団というような腹があるようでありますが、昨年はなるほど三船団であります。しかし内訳をしてみますと、母船の三千三百トン級が大洋、それから五百トン級が日魯、日水で、当時長官も御承知の通り、特に永野現生産部長が日水、日魚に対して、業界からも相当意見も上るのであるし、われわれとしても五百トン級の母船では実際にたよりがない、貴重な人命を救済するためにも、漁民が安心して操業する上においても、五百トン級ではどうしても小さいから、日水には現在南方まぐろに行つておる二千八百トンかの船があるそうでありますが、それを出せということで、日魯にもその要求をしたのであります。ところがそれを一蹴して五百トン級の船を出した、ついにあの当時、水産庁が負けたかつこうになつて、五百トン級の母船が二隻行つた結果が、どうでしよう、もうすでに小さいということは明らかになつて、今日魯会社へは四千トン級の船を改装しておられるといううわさも聞いております。さらに日水が南方まぐろの方に持つて行きました二千何百トンかの船をその方にまわすということになつておるそうでありますが、このことを長官は準備云々といつてこじつけるのだろうことは想像にかたくないのであります。三船団を出すことについては、いろいろな角度から議論もありましようけれども、昨年水産庁が要望したことや、独航船が要望したことを一蹴して、五百トン級の船を持つてつて漁民に迷惑をかけたということであるのに、その会社の船を大型と認める、そしてその一船団をやるという意思が明らかに私らには想像できるのであります。私から言わしめるならば、水産庁の言うことや業界の言うことを聞かなかつた日水、日魯等の船は、二そう集めても一千トンでありますから、むしろ両方を合せて大きな船を建造して、その船を母船とするならばまだ話はわかるのでありまするけれども、そのほかに五船団も出願しておるものを、長官はあの手この手で押さえつけておつて、一方ではどんどん準備を進めさせておるというようなことについては、何かその裏に、あなた方の操作があるのじやないかということは想像にかたくないのであります。私をして言わしめるならば、資源量が一年の調査でははつきれしないことは、あの広い漁場のことであるから当然でありますけれども、四船団なり、極端に言うならば五船団なり出して、各所にその船団を配置して、そうしてあの漁場をくまなく調査も進め、操業も進めることによつて、あの漁場にはさけ、ますがどの程度いるのか、企業化してどの程度に引合うのか、あるいはほんとうに損になるのかがはつきりするだろうと思います。こうしたような方法を講ぜずして、まだ船団はきめないというあやふやな答弁であり、八十五隻の船を基礎にして、そうしてこの船団をきめたいということであるのでありますが、その八十五隻をかりに三船団にしますると、どの程度の母船のトン数が必要なのか。この点を承つて、さらにあなたに質問申し上げたいと考えております。
  94. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 昨年の日水、日魯の五百トン級の母船は、私の方もいたし方ないとしてがまんしたわけでございまするが、昨年当初許しまするところの漁場は、御存じの通りに非常に狭くて、予定の半分もとれないくらいな漁場でございました。ソ連との関係等がどうなるかということは、独立後未定であつたので、あとの漁区の拡張は、腹には納めておつたけれども、それができるかどうかという点には見通しがなかつたわけでございまして、あとの漁区の拡張があそこでうまくとれなかつた場合には、三社も独航船もたいへんな損害になつて帰らざるを得ないというような状態にあつたわけであります。試験操業の成績も、わずか三つの試験しかございませんし、そういうふうな関係からして、それから魚価の方ともにらみ合せまして――昨年は予定より二割方高く売れたわけですけれども、それ等もにらみ合せますと、数千トンの母船が一番適当だと思います。その当時も思つてつたし、せめて千トンくらいにはしたいということは、たびたび希望したわけでありますけれども、なかなか適当な船がない。冷凍して持つて来なければならないし、船が入らないというふうないろいろな関係からして、やむを得ず五十ぱいという隻数とも関係させまして、それで五百トンでがまんしたわけでございまするが、私は前年度の経験から見れば、これはわれわれの当初考えていたように、そういうふうなトン数では大体小さ過ぎることがわかつたのであります。それでトン数としましては、一応どんなものであつても千トン以上はなければならないと思いまするが、やはり魚を売る関係から申しましても、また現場でもつていろいろ検討した関係からいつても、あるいは処理をする関係からいたしましても、冷凍設備を持つていないと、現在の状態ではとても腹を裂いて塩づけにするということはできない。独航船側の要請にこたえられない。とにかくそれだけの量はとてもさばけないということは明瞭でございまするので、やはりトン数についていえば、そこのところは実際は二千トン以上が必要である、こう考えます。そこらを勘案して考えますると、大体総トン数においては、先ほど申しましたけれども、平均して三千トンくらいと見まして、三つで行くとすれば、大体一万トン前後というふうなところが適当なところだと考えております。
  95. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 大体本筋のことはわかりましたが、今出願の三千トン級の船がおそらく四、五そうあるはずであります。そうすると、その中から一体どの船を適当なものとして母船に選ぶかという問題が、かかつて議論の焦点になり、それによつて許可が云々されるだろうと私は考えております。要は水産庁長官は、漁業法の精神とか、あるいは協同組合の精神とか、あるいは漁業条約の精神とかはおわかりになつておると思います。しかも漁業法においても、協同組合法においても、あるいは漁業条約におきましても、水産庁長官は、以前水産局の室長として、協同組合法並びに漁業法の立法の骨子をつくつた人である。あの当時の精神から行きますと、漁民は平等であり、海は総合的にこれを活用して、漁業生産の増強と漁民の福祉をはかることが目的である。そうしますと当然公海漁業もその趣旨にのつとつて、ひとり資本漁業家ばかりでなく、漁民が態勢を整えて出漁するというものに対しましては、できるだけ国家の援助もして出漁をさせるべきであると考えるのでありますが、長官はその点についてどういうお考えを持つておるかとういうとが一つと、松田君も常に育つておられますが、北洋漁業に対する魅力というものは、北海道と東北であります。東北も北海道も、南方のかつお、まぐろがあります。これに関心のないことはありませんけれども、おそらくそれに行こうとする準備はほとんどないだろうと思います。幸い今度北太平洋の漁場が開放されたので、これに全部集中して行つて漁業生産の増強をはかつて漁民の福祉と漁村の再建をしたいという熱意でおることは、私が申すまでもないと思うのであります。そうした意味から北海道におきましても、母船の経営をぜひやりたい、すなわす母船、独航船、調査船を一環として一隻をぜひとも出したいという願書が出ており、しかも北海道の道議会においても、その趣旨に対してぜひ許可するように議決もしております。また北海道出身の水産委員の大半はそれに同調いたしまして、農林大臣に陳情をしておる。今やもう引くに引けないはめになつております。これに対して長官は、一体どういう考えをもつて進んでおるかという問題と、しかも北海道におきましては、御承知の内地の入会底びきを当初許した経緯、それからさらにさけ、ます流し網におきまして相当の隻数が入会をしておる。それから旋網にいたしましても、資本漁業家も行つており、内地からも相当の入会がございます。いつかつり漁業に関しましては六、七県から千数百隻の入会もしておる。これについて今までは、北海道と水産庁とはいろいろ摩擦を生じて参りましたけれども、われわれがその仲介の労をとつて、大体水産庁案を堅持して入漁させて来たのであります。今回もし北海道の出願に対して不調に終つた場合には、北海道側としていかなる処置に出るかは想像にかたくないのであります。長官は、極端な言葉で言うと、北海道をなめてかかつているかもしれませんけれども、おそらくそうはなめられないはずであります。もしこういうことから最悪の事態が起きた場合は、水産庁長官ははたしてそれをまとめて行けるかどうか、やはりわれわれが仲介の労をとつて、水産庁案の入れるべきものは入れて、内地の漁民とともに北海道漁業経営せしめるということは、すなわち漁場を総合的に利用するという漁業権の一端の現われである。私はかように考えておるのでありまして、今度の北洋漁業の問題についても、北海道は十分態勢を整えております。もちろん長官の目から見たならば、北海道の出願に対しまして、あるいは損をさせたらたいへんだということも考えているかもしれませんけれども北海道自体は昨年も三千万円もの損失補償をしております。しかも本年の五月に函館をはなばなしく出航するときには、函館はもちろんのこと、北海全道をあげて期待を持つて見送りしたのであります。その結果が非常によかつたので、北海道でも母船、独航船、調査船を一貫した一隻を出したいという強い熱望からわいた出願をしておるのでありますが、このことについて一体長官はどういう処置をとられるか、明確に御答弁願いたいと思います。
  96. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 漁業法の精神でございまするが、これは私も当初の立案に参画いたしました。そのあと国会審議その他のときにはやつておりませんでしたけれども、協同組合によりまするところの経営につきましては、旧漁業法ではこれを禁止しておつたわけでございます。その理由としましては、漁民のための共同施設等をやることが、また漁業権を保有してそれに危険を及ぼさないことが協同組合のねらいでございまして、漁業というような非常に危険性のある事業等に手を出すと、組合が赤字でも出したときには、組合本来の仕事ができなくなるというような点等も考えまして、それによつて共同施設が他の手に渡るとか、漁業権にまで影響が及ぶようなことがあつてはならないという意味からして、漁業経営は禁止しておつたわけです。これはそのときにも村ぐらい、漁村の部落ぐらいで共同するものはいいじやないかという意見等もありまして、あの漁業法改正のときには、そういう意味で漁村で漁業経営することによつて組合員の多数が助かる、またその漁業経営によつて助かる者は組合員が大多数でなければならぬというふうな建前かして、現在ありますところの法律では、漁業経営しますときには、従事者のうちの三分の二以上が組合員または組合員の家族でなければならぬという形になつておるわけでございます。そういうふうな関係からして、昨年度も北洋出漁組合のようなものでという話もありましたが、従事者の三分の二が組合員または家族でなければならないし、それは出漁のすぐ前でないと従事者は決定いたしません場合が多いので、法規的に申しまするとこの種の船団の経営については、組合というふうなものを予定しないでつくられておるわけでございます。それで法規の手続その他から申しますると、出漁直前に従事者その他のうちの三分の二が何とか組合員にならなければならぬ、出資もしなければならぬという、非常に大きな変更もあるような手続上の不便がたくさん存しておるわけです。法律的には絶対できないという形にはなつておりませんけれども、大体その部落または村々によつて漁民の三分の二以上が従事し、または組合員の三分の二以上が同意するというような性質をもつて規定をしております関係からして、そういうふうな形になつておるわけでございます。これは先々の立法の方向としましたは、組合というようなものが一歩々々健全に進み、またそれによつて経営的にも十分な実力を備え、漁業においてもそう危険性がないというふうな形になつて、今のような法規の形のままに置いておくかどうかという問題はございますが、今の法規では、そういうふうな大きいものでは予定しておらないわけであります。これは先々南氷捕鯨でも何でもやれるようになるのだというふうなところまで立法されれば別ですけれども、現在の法律ではそういう程度になつておるわけであります。そういう観点から、大きい母船式な経営というものは、必ずしも組合優先とかどうとかいうふうには法律ではきまつておりませんし、また一方、組合が自分で経営するという点では不便な法規になつておるわけであります。  それからもう一つ、北洋の魅力というふうな点については、これは北海道、東北の漁民が非常に大きく感じておるということは私も存じております。また沿岸における、ことに底魚資源の不足というような点から考えて、できるだけ北洋の方でその問題を解決するというのは、われわれとしてもどうしてもやりたい方針でございますが、これは鮭鱒のみならず、北洋の底魚が相当問題でございまして、われわれの方としては、北洋の底魚を企業的に経営できれば――これは資源的に見た関係からも、とつた方があとよくなるくらいの状態においてたくさんあるわけでありますから、非常にいいわけでございます。それで私就任当初から、この問題の計画をずいぶんさせてみました。これは鮭鱒も同様でございますが、母船というふうなものは、夏場だけは何とか北洋で使えますが、冬場の間はどうしてもほかの仕事をやらなければならぬ。そうするとと冬場の間にいわしの資源でも、昔に近いところにまで回復して来てこれをしぼるというふうなことがある程度可能でない限りは、どうしても採算的にはむずかしい。採算的にむずかしいならば、これは政府で補助してやらなければならぬ。こういう意図でいろいろ計画してみたわけでございますけれども、どうしても冬場の母船の使い方がうまくできません限りは、フイツシユ・ミール工船というようなものは成立しにくいし、また一年ぽつきりの政府の補助では大きい船はもちろん買えませんので、来年度の出漁に対しては涙をのんであきらめたのでありますが、北洋の方ならば、過去の試験成績を見ますと、たら等の相当密度の高い漁場もあるわけで、そういうものに対しては今年度は試験操業といたしまして、政府の予算を組んでぜひやらしたい。それによつてまたフィツシユ・ミール工船における採算の可能性があるかどうかという点もあわせて検討したいと考えておるわけでございます。鮭鱒につきましては、先ほどから申し上げたように、沿岸にさけが着いて、それから岸をずつとつたつて動く、その一番確実な十二尾から十四尾かかるような漁場が、現在向うの主張する領海内に入つておりまして、できないというような関係からいたしまして、隻数の方は、先ほど申し上げましたように八十五ぐらいというので検討しておるわけであります。この北洋の開発の問題は、北海道ももちろん非常に重要な部分を占めておりますが、東北の漁民においても劣らない威力を示しております。そういうふうな関係から見まして、来年度出る試験的な操業としましては、私どもの方としましては、それらを勘案しまして、必ずしも協同組合を優先させるという意見ぱ持つておりません。現在出ておりまするところの、北海道からの出願にいたしましても、これは函館を中心にしましたものも出ておりまするし、北海道一円のものも出ておりまするが、あとのものはやはり資本会社一社と共同で希望されておりましたので、組合だけの自営というような形はとつておりませんし、またこういうような経営は、組合だけで経営するというのは、あとの半期の母船の使い方等も考えますると、どうしてもこれは組合だけではやりにくいものと考えられますので、それらを彼此勘案しまして、また準備の状態、経験、そういうふうな点、また母船の適格性等も十分検討した上でこれをきめて参る必要があると考えておるわけであります。
  97. 椎熊三郎

    椎熊委員 議事進行について……。長官のお話を聞きましても、私しろうとのせいかまだ納得行きかねる点がある。これは大臣の決裁の上に非常な政治力を要する問題にまで今日は来ております。そうすると、私はどうしても大臣の意見を聞かなければ、この問題の判断がつかないのです。聞くところによると、大臣はかぜを引いてお休み中だということですが、たいへん気の毒ですけれども国会がこの段階ではきよう一日よりないのです。どうか委員長の方から委員会の意思として、本日夕刻でもこの問題のために出席してもらえることができないかどうかを問い合せてもらいたい。  それともう一つ、今本会議が開会されております。私はこの重大な問題をもつと継続して承りたいのだが、私の国会内における仕事の上からは、この席におられないのです。これは皆さんもそうだろうと思うのですが、どうか本会議に支障を来さない程度で結末をつけておいていただきたい。休憩するなり何なりして後刻また、きようの本会議はごく簡単ですから、本会議後でもひとつゆつくりとお話を聞きたい。私はこう思うのです。いかがでしようか。
  98. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 ただいま椎熊委員から議事進行について御発言がありましたか、私も集は先日の委員会で、この問題は非常に重要な問題であるから、休会中といえども、その必要に応じて時に委員会を開いて、最後の結論を出すようにという申入れをしたのであります。従つてきようは本会議もあることでございまするし、まだ私も細部にわたる質問は尽されておりません。でありますからきようは休憩にしておいて、大臣が来られるならば大臣の答弁を聞き、さらに水産庁長官に対して、私からだけでなく、各委員からも相当深刻な質問があると思いますので、委員長の方でそのようなことを勘案して、本委員会の取運びをされることを私も希望いたします。実はまだ私質問が残つておりますけれども委員長がそのようにとりはからえば、私の質問は一応これで中止しておきます。
  99. 椎熊三郎

    椎熊委員 なお関連して申し上げますが、国会の自然休会というものは、休会してしまうのでなくして、本会議を開くに至らざる状態を俗に自然休会と言つている。これは国会法にも何にもない言葉で、国会内における通俗語です。ですから委員会を開くごとにおいては何らさしつかえない。理事会においていつ何日委員会を開くということを御決定になつて委員長にその意思があれば、国会召集中でございますから、御自由です。参考までに。
  100. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 最後に一言長官に申入れしておきます。この問題につきましては、これから相当論及しなければならぬし、もし資本企業の方につくことになりますと、おそらく北海道における出願に対して、水産庁と道との波濁というものを予想しなければなりません。先ほど私申し上げた通りであります。いろいろ出願の内容については、長官の言われたように、損害をこうむつた分はどうというようなこともありましよう、あるいは協同組合の方につきましてもいろいろございましよう。この点は私らも長官と同感であります。しかしそうした点は内容において是正すればいいのであつて、その内容の是正によつて適格性のあるものは順次許して行つた方がいいのではないか。今年あたり三船団であつたものならば、来年は四船団にする、その結果がよければ、五船団、六船団にするというようなことも考えて行くことが必要ではなかろうかと思います。従いまして北海道と内地との利害を中心といたしまする行政の面においても波瀾の起らないような処置に長官が持つて行くことは、水産行政の最も妥当な処置だと思いまするので、長官におきましては、その意味を十分体されまして、北海道の出願に対しては十分の御考慮を払われんことを希望いたします。大臣の腹も大体私は聞いております。大臣ともよく相談をして、しかるべき処置をお願いすることを一応長官に申入れをいたしまして、きようはこれで私は、残余の質問は保留いたします。
  101. 福永一臣

    福永委員長 先ほど椎熊君から動議がありましたが、一旦休憩にいたしまして、再び開会するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 福永一臣

    福永委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。休憩いたします。     午後一時四十八分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた