○巽
証人 値段は、先ほど申し上げましたように、決して故意に安くということは考えておりません、それから、これが国内へ全部一どきに出されるというようなことが、もしか、うわさにでも出ますと、われわれ業者は自滅するのではないかと思います。そういうことになりますと、あんなにたくさん出れば、今あわてて買わなくても、安く買える、—お客さんが皆さんそういうお考えを持たれますと、売れなくな
つてしまうわけで、われわれはむしろ自滅してしまいますので、先ほど
お話がございましたように、これを安く評価して、幾らでも安く売られるのでありますならば、われわれ
自分で首を締めているようなものだと思います。それから同時に、値段という点におきましては、これはとうてい国内でこれだけのものが敗戦後の今日ではさばき切れないと思います。今も申し上げましたように、こういうものが、たといわずかずつでも出て参りますと、それだけでも気分的に一せひ必要な、これがないと暮して行くことができないという
品物でないものでございますし、お買いになる方は、あ
つてもなくてもいいものなんでございますから、それで、お買いにならないと思います。そうしますと、それが出て来るだけでも、われわれ業者は自滅するのでございまして、そうして同時に、先ほど、それによ
つてもうけようというつもりでや
つたのではないかという
お話がございましたけれども、とうていわれわれの小さな力で、それをどんなことをしても引受けることはできません。ただ、われわれのこいねが
つておりますことは、これをでき得るならば外国の方へ
出していただきたい。それについて、外国に、ただ値段がついているからとい
つて、それでしろうとの方がお売りにな
つて、めちやめちやに安くとられてしまうと、国家の損害であるし、それからまた、これを調節せずに無制限に
出してしまうと、いかに各国が金があ
つたとしても、適当な価格にやられてしまいます。それで、これは相なるべくは国内に
品物がなくな
つてもらうことを私どもは希望いたしておりまして、これが国内に出ますということは、われわれとしてはむしろ迷惑でございまして、先ほど仰せになりましたような気持は、私には全然ないのでございます。そして、こういうものは需要供給の
関係で——国内に生産するものでないものでございます。今国内に残
つておるものをや
つておるので、多少の維持はしておりますけれども、これが一ときに出ますと—各自営業上これを持たないわけに行かないので、多少持
つておる。それが下
つてしまう。店頭にあるのも売れなくな
つてしまいますと、たとい半年、一年先によくなりましても、その間維持ができませんので、業者はみな自滅してしまう。そんなふうでございますから、願
わくば、できるだけ外国に
出していただきたい。その際に、ただ外国人に踏み倒されないようにという考えを持
つておりました。
それから、先ほどから、適正についておるかという
お話でございましたけれども、これは、何分、今度のにしましても、わずかの時日でございますし、それから、あれだけたくさんのものを、
一つ一つ全部、
自分が営業しているほど熱心に見るわけに行きませんし、それから天候の悪いときもございますし、それから、ことに申されましたことは、日本銀行に部屋を借り入れておる予定も一月一ぱいしかないから、できるだけ早く
鑑定をしてくれ、こういうわけでございます。それから、
鑑定の方も、全員が毎回そろ
つて行くわけではありません。仕事のあいまに参りますので、多少そのときの調子で高いのも安いのもございまして、これが絶対に正確であるかということ言われましても、われわれとしまして、そんなに確言はできないのでございます。大体において
自分たちは誠心誠意確実に踏んだつもりでございます。そうして、これはでき得る限り外国へ
出していただく。しかし、中にどうしても、大半と申し上げてよろしいと思いますが、手入れをいたしませんと、そのままでは、ま
つたくのところ古物でございますから、いわゆる中古の洋服でも、クリーニングしないと、できませんように、あれも、やはり専門の工場ができまして、相当手入れをいたしませんと、なかなか踏むのは困難ではないかと思います。そういうようなことで、私どもの考えは、決して皆さん方がお考えにな
つているように、あれでもうけようというような考えは全然ございません。ただ
自分の営業を擁護したい—これが一どきに出て参りますのならば、むしろ私どもは、その価格を高くつけて、市場に出ても売れないような値段ですと、かえ
つて安心なのですが、それですと、やはり不正確になる。また処分をいたしますとぎに、個人ではありませんから、これが八万円
とついているのを五万円で売
つてしまうわけに行かないのです。ですから、でき得る限り外国に
出しますときのことも考慮いたしまして、
自分としましては、もうそういうようなお疑いをも
つて見られますことはまことに残念なのであります。正確に見たつもりでございます。