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1953-03-04 第15回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月四日(水曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 荒舩清十郎君 理事 高木 松吉君    理事 中野 四郎君       佐々木秀世君    中田 政美君       丹羽喬四郎君    羽田武嗣郎君       明禮輝三郎君    大森 玉木君       栗田 英男君    田万 廣文君       木下 重範君  委員外出席者         証     人         (閉鎖機関交易         営団清算人)  黒瀬 勘一君         証     人         (鑑定人)   巽  忠春君     ————————————— 本日の会議に付した事件  接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  前会に引続き接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について調査を進めます。  ただちに証人より証言を求めることにいたします。ただいまお見えになつておる方は黒瀬勘一君ですな。
  3. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 はい。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について証言を求むることにいたしますが、証言を求むる前に、一言証人に申し上げます。宣誓趣旨につきましては、前回御出頭を求めた際委員長より申した通りでありまするが、偽証等の場合には罰則の規定があることを念のため申しておきます。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人黒瀬勘一君朗読〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 内藤隆

    内藤委員長 それでは、宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人黒瀬君は再喚問でありますので、委員長においては本日は尋問することがございません。ただちに委員諸君発言を許します。中野四郎君。
  7. 中野四郎

    中野(四)委員 先日お尋ねをする時間が足りなかつた関係と、それから、あなたが資料を持つて来られなかつたと言われた御趣旨沿つて、きよう新たにおいでを願つたわけです。前回書類提出のできてないものはすみやかに書類出していただきたいということをお願い申し上げてありますが、まだその書類の来てない分がありますし、さらに、こちらから調査員が伺つた際に、新宮という第二部長が非常に冷淡な、しかも国会の尊厳をば傷つけるような態度で接しられたという点を、はなはだ遺憾に思つておりますが、私がお尋ねして行く過程において、黒瀬証人よりお答えを願つて参ります。  第一番に伺つておきたいのは、この前お尋ねした鑑定人名前です。どういう監定人をお連れになつてお行きになつたか、伺いたい。
  8. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 お答えいたします。ちよつと私、その点わからないのでありますが、今随行が来ておりますので、わかると思いますが、聞いてよろしゆうございますか。
  9. 中野四郎

    中野(四)委員 よろしい。
  10. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 鑑定人名前古川一郎君、ちよつと住所はこれに出ておりませんが、あとで荻野さんのところに出しておきます。
  11. 中野四郎

    中野(四)委員 この古川君という人は、従来交易営団とはどういう関係を持つておりますか。
  12. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は承知しておりませんが、これは私の想像でありますが、新宮部長が元の交易営団の人と相談をして連れて来たものと思います。私の聞いておる範囲では、本人息子ということでありまして、本人でなくてもいいだろう、これは単に秤量をするだけであるからというので、息子が来たように聞いております。
  13. 中野四郎

    中野(四)委員 息子というと、おそらく古川伊三郎君の息子でしような。—そこで、あなたのこの間の御証言を少しお読みした方がわかると思うが、「私の方では別に請求しておりませんが、私の方のリスト宝石類が幾らということが載つておりますから、現場へ鑑定人を連れて行きまして、その立会いのもとにカラットから数量から全部私の方のリストと照合しまして、それで私は受取つてつて来たのです。」とおつしやつていらつしやる。当時未経験の古川鑑定人が、いかなる根拠に基いてあなたの方の宝石であるということを御鑑定なさいましたか、これを伺いたい。
  14. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 古川君にやらしたのは、単なる数量でありまして、この所有が交易営団のものであるやいなやということについては、全然鑑定さしたのではありません。それは、私の方に宝石類ということがありまして、その一部が帰つたものだということで、一応受取つておりました。
  15. 中野四郎

    中野(四)委員 証人前回における証言との間に食い違いがあるのです。すなわち、あなたの方は鑑定人を連れて行つて自分の方のリストと合せて、自分のところのものだということが間違いないから受取つて来たということを証言しておられる。今のお話を聞きますと、単なる数量だけを合せるということで、それなれば鑑定人を連れて行く必要はないのです。これは、だれかが向うでやつてくれても、話はつくことでありますが、ことさらに当時鑑定に当つた古川伊三郎君の御子息を連れて行かれた。そうして自分のものと認定する過程が明確でない。してみると、自分のものではないけれども、大体のカラット数あるいは数量等合つたから、もらつて来たということになるのですか。この前の御証言とは根本的にその点が食い違つておりますが、どういうわけでありましようか。
  16. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私が、鑑定人鑑定によつて受取つたと、もし申しておりますれば、それは取消しをいたします。鑑定人は、今申しましたように、単に数量を調べまして、何カラットあるか—なぜそういうふうに何カラットあるかということを秤量させたかといいますと、日本銀行の中には秤量の設備がないというお話でありまして、私の方にもそういうこまかい、敏感な秤量器もありませんので、秤量だけをやり、また石はどういう石であるかという数も数えさせました。そして、リスト部長及び関係者、それから財務局関係者—大蔵本省から一人参りまして、こちらのリスト向うリストを合せまして、受取つた次第でありまして、もし今申し上げたことに、前のことと違いがありますれば、前のことは間違いでありますから、取消します。
  17. 中野四郎

    中野(四)委員 だから私は、この前も、—速記録ごらんになるとわかるが、あなたの方の鑑定人がどういう方で、しかも数量はどれだけで、どこから入つたもので、それがお宅のものだということをどうして断定することができたかということができたということを重ねてあなたに聞いておるのです。ところが、あなたは、リストに照合して私のところのものだということを鑑定人鑑定をいたしたからもらつて来たと言うから、私は鑑定人名前を明らかにせよ、こう申し上げたのです。重ねてこれは念を押してある。取消しとか云々という問題でなく、根本的に食い違つております。あなたが当時立ち会われたのかどうかは知りませんが、そのリストというのをお合わせになつて、どこの品物とどこの品物をお受取りになつていらつしやいましたか。
  18. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は立会いをいたしましたが、現物は紙に包んでシールがしてありまして、番号がついておりまして、こちらにありますリスト貴金属及び小装身具引継授受証書明細書と、財務局からリストが来ておりますが、そのリストと照合いたしまして、受取つたわけであります。
  19. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、あなたの方に保存してあるリストにあらずして、財務局の方から出たりストでもらつていらつしやつた、こういう結果ですか。  そして、もう一点聞いておきますが、この品物は、管財局長証言によりますれば、恤兵品として昭和二十六年の五月二日、石田理財局長当時移管を日本政府に委嘱されたものであるということが明らかになつたのでありますが、恤兵品というものは明らかに国の所属であります。その国の所属のものが、どうして交易営団のものだというリスト食い違いを生じて来たか。あなたが曲兵品とは全然知らずに、交易営団のものと断定する根拠はどこにあつたか、これを伺いたい。
  20. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の方の受取りました理由は、ここに宝石というので、その宝石の数が千百三十九個、恤兵品であるかどうか存じませんが、それは交易営団のものであるということが、こちらの政府リストの中に出ております。それによつて、このうちのものが返つたものだと思いまして、一応受取つた次第です。
  21. 中野四郎

    中野(四)委員 結論は、あなたの方のリストに合せて、すなわち名古屋で買い上げた中にあつたとか、どこで買い上げたものであるということは明細ではないけれども、ただ古川という鑑定人を連れて行つて数量をはからしめただけで、財務局提出リストに基いて二百七十一個をもらつて来たというのが事実ですか。
  22. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その通りであります。
  23. 中野四郎

    中野(四)委員 後にこの問題は詳しくお聞きもしますし、お話もいたしますから、疑点だけを伺つておきます。  それから、もう一つ伺つておきますが、清算貸借対照表の中に、先日来あなたは、ダイヤモンド買上げ金額は書いていないという御証言でありましたが、これは間違いありませんか。
  24. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 十一月末現在の清算状況清算貸借対照表の中に、—今のお尋ね意味が、どういう意味かわかりませんが、残高として一億九千六百五十万円という金額が載つております。これは買い上げた金額であります。
  25. 中野四郎

    中野(四)委員 なぜ、それをこの前おつしやらなかつたのですか。このことについては三回も念を押してあります。田万委員が、確かに載つておらぬかと聞いたら、載つておらぬと言つた。きのうこここへ喚問しました福田証人も、いかなるところからそういう情報を得たか、載つていないと口をすべらしておる。何がゆえに、当時質問をしたときにそれをお答えにならなかつたのですか。重ねて伺いたい。
  26. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の記憶するところによりますと、清算終了見込み数量を申し上げましたが、その数字の中には、ダイヤは含んでおらないと申し上げたつもりなのでございます。
  27. 中野四郎

    中野(四)委員 食言をしてはいけないですね、黒瀬さん。この問題については、私も明禮君も田万君も、重ねて聞いているのですよ。速記録をお読みになつてごらんなさい、速記録をお貸ししますから。あなたは、何と言つても、これはないとおつしやつていらつしやつたのです。ところが、阪田管財局長が来て証言をしてから、初めてこういうような問題が出て来たのです。  一億九千六百万円が載つておるということを明らかにした。根本的に食い違つておるから、あなたを再喚問しなければならなかつたのですが、私の方では、証言を求める上において重大な問題であるから、清算人として間違いないかということを、私みずからも三回、明禮君からも田万君からも質問しておるにもかかわらず、あなたはないとおつしやつていらつしやる。そうして今日になつてから、そういう詭弁を弄されることは、私は納得いたしません。しかしながら、この問題はここでは申しません。すなわち、速記録によつて、私の方では、清算人としての違法があれば、これに対して、宣誓に基いて告発の手続をとります。  さらに伺います。交易営団中央物資活用協会との関係を先日私が伺いましたときには、ここではわからぬから、後日お答えをするとおつしやいました。本日おいでになりましたから、交易営団中央物資活用協会関係を明らかにしていただきたい。
  28. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の了解しておるところによりますと、交易営団がその業務規程に基いて重要物資買付、売却ということをやりまして、中央物資活用協会は、あの重要物資買上要綱軍需次官通牒によりますと、その代行機関として、活用協会が七府県以外を受持ち、それから七府県百貨店が受持つたというふうに私は記憶しております。
  29. 中野四郎

    中野(四)委員 代行機関として七府県以外の全国の買上げをやつたわけですな。交易営団代行機関ですね。間違いありませんか。
  30. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、あの通牒読みまして、そういうふうに了解をしております。要綱読みまして……。
  31. 中野四郎

    中野(四)委員 要綱をお読みになつてということであれば、もちろんそれでけつこうですが、これは証言食い違いがあります。交易営団では代行機関でないと言つておるのです。そこで、要綱をあなたがごらんになり、あるいは交易営団清算人として、中央物資活用協会の当時の状況から見て、それが代行機関だということがはつきり言えますか。これは、あなたがおつしやつていただけばけつこうです。
  32. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これは、十九年七月二十一日に出ましたダイヤモンド買上実施要綱の第七項、買上機関というところに、一、交易営団本部及び支所、二、代行機関、そのイとして中央物資活用協会というものが出ております。私はそういうふうにこの要綱を読んでおります。
  33. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、中央物資活用協会で買い上げて持つてつたものは、自動的に交易営団のものになるというふうに解釈してよろしゆうございますか。あなたはどういうふうな立場をとつておいでになるか。代行機関であるならば、当然中央物資活用協会金銀運営会等によつて買い上げたものは、自動的に交易営団に来るべきものだと思いますが、あるいは清算人は、どういうふうな清算状況をとつておられますか、伺いたい。
  34. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、事務的の移行の状態がどういうふうになつてつたかということは、当時の関係者でありませんし、わからないのであります。代行機関ということになると、少くとも代理業務あるいは委任事務ということでやつてつたというふうに解される。
  35. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしてみますと、黒瀬さん、要綱従つて解釈して行く当然の帰結としては、中央物資活用協会金銀運営会というものの品物は、交易営団ですべての清算処理に入る、こういうふうになるのが当然じやないかと思いますが、いかがですか。
  36. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 そこのところは、私はよくわかりませんが、品物活用協会から交易営団に流れておるということになろうかと思います。私はよくその事実を承知しておりませんが……。
  37. 中野四郎

    中野(四)委員 清算人として伺つておるのです。清算事務の中にこれが入らなければならないと思いますが、どういう取扱いをしておられますか。
  38. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点は、清算人としては帳簿を見なければわかりませんが、やはり活用協会から物を買つておらなければならぬだろうと思います。
  39. 中野四郎

    中野(四)委員 私が言うのは、そうではない。聞き違いをしているといけません。金銀運営会交易営団代行機関として要綱には載つておりますから、従つて、これらの買い上げたものは、当然交易営団一つわくの中に入らなければならない。交易営団清算事務に入れば、当然その清算過程になくてはならぬと思いますが、どういう取扱いをしていらつしやいますか、と聞いておるのです。
  40. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 物資活用協会のは、私今承知しておりませんが、もしそういうことであれば、当然活用協会状況も、私の方で調べなければならないと思います。書類ができて来ておりますかどうですか、ちよつと聞いてみたいと思います。—活用協会との物資及び金銭の授受関係書類はあるようでございますが、お尋ね活用協会清算そのものは、私どもの方には載つておらぬように思います。
  41. 中野四郎

    中野(四)委員 もう少し具体的に申しますと、ダイヤモンド白金、金を買い上げさせましたね。要綱に従えば、代行機関で、委任行為でありますから、その買つた品物は、現存しておるとすれば、ただちにこれは交易営団わくの中に入るものでしよう。中央物資活用協会自分私有物として持つておる理由はあり得ないと思うのです。これを伺つておるのです。どういう立場をとつておいでになりますか。
  42. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ただいま申し上げましたように、活用協会から物を受取つて、これは百貨店と同様の立場でありますから、それに対して金を払う、こういう関係になろうかと思います。ただ、活用協会そのもの清算は、何もやつておりません。なぜかといいますと、活用協会に対しては、私は清算人の任命を受けておりません。その範囲においては、活用協会関係がございましようが、清算に対しては私は関係がないのです。
  43. 中野四郎

    中野(四)委員 むろんそうです。それは物体が違うのですから。その対象になるものが中央物資活用協会といと個性を持つておるのですから。ただ、ダイヤ白金金買上げ委任行為代行機関としてしたのですから、その取扱つて品物は、当然自動的に交易営団のものになつて来なければならない。従つて交易営団のそのわく内において清算対象とするのは、あたりまえだと私は思うのです。中央物資活用協会清算人は、おのずから別にあります。けれども、委任行為に対するところの清算事務というものは、あなたの方で当然しなければならないと思いまするが、この点に対する取扱いは、どういうふうになつておりましようか、先日、中物交易営団関係は調べてこの次のときに明確に言うとおつしやるから、きよう伺つたのですが、いかがでしようか。
  44. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ただいまの御質問の要旨は、よく何ですけれども、戦時中買上げをやつてつたときは、代理行為としてやつておりました関係上、それを売買した事実があるようですが、終戦後何か引継いだとか、いろいろな事実は、ないようであります。
  45. 中野四郎

    中野(四)委員 終戦後は買い上げていないのです。戦争中に買い上げたのです。要綱従つて、一月は延ばしましたけれども、買い上げたのです。買上げという行為は、代行機関として委任行為なんです。従つて委任行為によつて買い上げたものだから、当然あなたの方に自動的に入つて来なければならぬ。たとい現在どうあつても、そのあり万は、交易営団清算の中に入らなければならぬから、中央物資から報告をせしめ、それぞれの清算事務として取扱つておいでになるかどうかということを聞いておるのですが、私の質問の仕方が、どこかまずいでしようか。  それから、ついでにもう一つ要綱従つて代行機関であり、委任行為であるということだけは、はつきりしておるのですね。この二つを……。
  46. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今のお話は、私はまだそこまでいろいろ調査をしておりませんから、よくわからないのですが、どういうふうになつておりますか……。この要綱をすらすらと読んだところでは、私は代行機関であるというふうに解釈しております。
  47. 中野四郎

    中野(四)委員 清算人として、こういう問題はもう少しはつきりしてもらわなければ困ると思うのです。国家の大事なものをお預かりになつていらつしやる、特に清算事務にお入りになるのだから、なかなかややこしいことはよくわかりますけれども、ダイヤ、金、白金というものは、そうどこにもころがつておるものではないのです。いわんや、このように世上注目の的になつておる問題ですから、もつと研究をして、そうして、こういうところに証人に呼ばれて、二度もおいでになつたのですから、明らかに答弁をしてもらわなければ困る。ただ裏面でいろいろ打合せばかりやつておることでは、まことにどうも納得できませんが、その代行機関であり、委任行為であるということを伺つておいて、今のあなたの御証言は、それとしておきましよう。  それから、先日お伺いいたしましたが、買上げ数量についてお尋ねをいたします。資料をお持ちになつておいでになつたと思いますが、第一に、名古屋における買上げ数量を、証人清算人として、一万百六十三カラットと本委員会報告をしておいでになります。しかるに、証人法律に基いて大蔵省報告した文書の中には、一万三百四十八カラットとあります。この差が百八十五カラットでありますが、どちらが一体真実数字か、私の方では納得いたしかねます。しかも、この分は二十年の十月十八日東京三井において魔法びんに入れて接収せられたとしておるが、これもほんとうかどうか。この二点を伺います。
  48. 内藤隆

    内藤委員長 証人に申しますが、委員からの尋問に対して、そう一々あちらと相談しなければ答えられないような、さような準備に手抜かりのあるということは、あなた少し国会軽視の傾きがありませんか。もつと熱心に、どういうところから質問されても答え得るだけの頭をつくつて来てもらわなければ困りすまね。大体一々相談するのを許すのは違法なんですが、数字に関する問題等だから委員長はこれを許しておるのです。
  49. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 お答えします。今の点は、私よくわかりません。はなはだ勉強が足らないのは恐縮に存じます。
  50. 中野四郎

    中野(四)委員 わからないのですか。もう一ぺん申し上げましようか。名古屋における買上げ数量は、証人清算人として、国会の方にお出しになつた数量と、大蔵省の方に報告した文書の中にある数量とは、百八十五カラットも違うが、どつちがほんとうだと言つておるのです。しかも、この分が二十年十月十八日にキャッツ大尉魔法びんに入れて接収された分か、それがほんとうなのか、うそなのか、聞いておるのです。きわめて簡単なんです。清算人として国会出したのと大蔵省出したのとに数量の違いがあるから、それをまず伺つておるのです。私の方は、あなたのお出しになつた資料に基いてお尋ねをしておるのですから……。
  51. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今の点については、私、もう少しよく調べてみなければ、わかりません。
  52. 中野四郎

    中野(四)委員 これは重大なことで、この前もあなたにお尋ねしたのです。問題はなかなかややこしいところへ来るのです。だから、この前一回延ばしてわざわざお聞きをしたのです。もう一つ重ねて伺いますが、証人は、昭和二十一年二月十五日名古屋帝銀から三千四百十七カラット接収せられたと、大蔵省に対してもこの委員会に対しても報告をしておられる。私の方で調べたのでは、これだけの数量名古屋にないはずである。すなわち、名古屋における買上げ数量は一万百六十三カラットを超過すること三千六百二カラットとなるのであつて、この数字買上げ数量報告に間違いがあるのか、接収数量報告に間違いがあるのか、それとも、ほかから名古屋帝銀に移動したものなのか、これに対する証人の説明を伺つておかなければならぬ。万一それが名古屋帝銀にほかから移動したせのとするならば、どこから、何年何月幾日に何カラット移動したのか、御証言を願いたい。
  53. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どうも、名古屋の問題につきましては、私当時の事情も全然わかりませんので、お答えできかねるのであります。また、それらの事情を、私今までこまかく調べておりません。
  54. 中野四郎

    中野(四)委員 そうではないのです。最近お出しになつた書類がどうも納得ができないのです。国会の方で要求した資料大蔵省の方の資料と食い違つておる。その食い違いが生ずるからには、一体どこから生ずるかということを私の方で伺うのです。私の方の調査によると、名古屋の方にそういうものはないはずです。それがあなたの方の帳簿に現われて来たのだから、現われたとするならば、これはどこから移動されて来たのか、この点はわからぬことはないと思うのですがね。お打合せになつてもいいのですよ。根本さんにお聞きなさい。こんな間違いが一体行われることがあるのかどうか。国会報告大蔵省報告とまつたく違う。どこからそういう間違いが生じたのか。資料がいいかげんで、でたらめなものであつたのか、ないしは、はつきりした資料を持つておいでになつてごまかそうとするのか、この点をはつきり聞きたい。
  55. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今の点は、重要な問題でありますから、あとで十分調べまして、文書お答えいたしたいと思いますが、よろしゆうございますか。
  56. 中野四郎

    中野(四)委員 文書で答えなくても、きわめて簡単にわかる問題なんです。一体あなたは、何の資料国会にお出しになりましたか。大蔵省出し資料国会出し資料は違いますか、これを伺えばわかります。同一のものなら、これだけ食い違つて来るわけがない。しかも、このことをお尋ねする根本は、先日のことを重複するのはいやですから、やめましたが、あなたの方は、国会からの要求に対して全然応じて来ない。書類がない、焼けたというような御答弁であつたから、国会では、手数であるけれども、全国の百貨店、銀行、買上げ機関に命じて、ことごとく証拠書類をば集めた。その証拠難からわれわれが割出してみると、どうしても納得できないような数字が現われて来たから伺うのであつて国会に御報告になつた数量はむろん黒瀬さんのお名前でお出しになつていらつしやる。あなたはどういう資料によつて国会に御報告になり、大蔵省に御報告になつたか、これを聞いておるのです。資料に二いろも三いろもあるのですか。証人として言えば第二帳簿、第三帳簿という帳簿がおありになつてたまたまこういうものが出て来たのか。同一書類であればこういうものが出るわけがない。書類で御答弁にならなくても、資料の点はおわかりになると思いますが、どうでしよう。
  57. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どこかに間違いがあるということは、はつきりしております。どの点からその間違いが起きたか、私にはちよつと今納得行かないのです。この席ではお答えできないのであります。
  58. 中野四郎

    中野(四)委員 まつたく不可解ですね。これは不勉強なんという言葉ではあてはまらないと思うのです。先日こちらの調査員が参りましたときに、新宮第二部長という人が、えらいことをおつしやつたそうです。近いうちに私も行つて、その方から詳細に聞くつもりですが、とにかくこれは、国会を軽視したなどという問題じやない。あなた方の代表が集まつて構成しておる国会を侮辱することは、みずからを侮辱するものであつて、いわんや官選の清算人として御就任になつたあなたがそういう態度をとることは、納得できません。しかしながら、この数量の間違いが那辺から出たかということは、書類にしてとおつしやるならば、一応私はそういうことで納得しましよう。  さらに聞かなければならぬことは、接収せられたダイヤは、全部各百貨店等の買上品かどうかということです。証人からの報告によると、昭和二十一年二月十九日、大阪の帝銀の西支店から三千七百六十三カラット接収せられたことになつておるが、このダイヤは一般の買上品かどうか。この中には海軍から送致されたダイヤがあるはずだ。これはどういう性質のものであるか。あなたのお出しになつたこの書類の中にありまするから、御証言を願いたい。
  59. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 当時の買上げ事情をよく調べてみないとわかりませんが、何しろ私は十九機関の清算責任を持つておりまして、その辺の勉強がまだ足りないだろうと思つております。しかも就任いたしましたのが昨年の四月からやつておりますので、これからまた大いに勉強してやらなければならぬということを考えております。
  60. 中野四郎

    中野(四)委員 まつたくあなたはわからぬですね。今から数字をあげて、十数点にわたつてつて行こうとすることは一つも……。この間のときにもお伺いしたら、帰つて、今度書類を持つて来るとおつしやつた。先ほど委員会が始まる前に、私はきようは必要な書類をお持ちくださいましたか、こう言つたのです。清算人の責任の上から当然証言しなければならぬことであります。従つて、私が今から聞こうとする点が一つも答えられないというならば、あなたは怠慢千万と言つていいで、すね。十九も二十も持つていらつしやるか知りませんが、これほど大きな問題になつておるダイヤモンド事件について、しかも国会証人として喚問される段階において、その資料も持たずに来て、わからぬから、わからぬからと言つて、一事務員にお聞きになつていらつしやるということは、私は不見識だと思う。国会へも大蔵省へも報告してある自分のつくつた書類が、自分でわからないということはない。あなたは盲判を押していらつしやるのですか。先日田万君、明禮君らか聞いた清算の貸借対照表上においても、ダイヤの残高がはたしてあるのかないのか、買上げ当時のあれがあるのかないのかと、三度も四度も私らが念を押して聞いておるのです。あなたはないとおつしやる。しかも、阪田管財局長証人に喚問して、初めて、一億九千六百万円というものに入つておることを言明されましたので、根本的に食い違いが生ずる。そこで、私があなたに、この前やつた宣誓に誓つて間違いないかと聞いたら、間違いないとおつしやつた速記録には三回も私が質問をしておる。だから、こういうような態度は断じて許すべきでないと、昨日も、証人に対して偽証の疑いがあれば、本委員会の名において告発するという段階まで決定をしたのです。今私がお尋ねしておることが一つお答えになれない。そんなばかなことがあるわけはないと思う。これほど重大な問題を、数字をあげてお答えになれない。私の方がわからぬことを言つておるのじやない。一つ一つあなたのお出しになつておる書類大蔵省の方の書類、そういうものを対照して、全国から集めた資料に基いて、これはどうなんだ、この間違いはどうなんだと聞けば、清算人は、即座に、これに対しては清算過程においてこう、これはこういうと答弁があつてこそ、清算人としての資格があるのだ。あなたがどんな会社におかかわりになつていらつしやるか知らないが、そういうような十九も二十もの清算人をやつてつては、みんな不案内じやありませんか。耳かきをもつてしやもじの役に立だせるようなもので、そんなべらぼうなことはない。しかしながら、あなたがこの数量について今どうしても思い出せぬというならば、これは、もう一ぺん書類として、正確に、急速に出していただきたい。ところが、下調査に行くと、新宮第二部長という者が、実に言語道断の言葉を吐いておるわけです。本委員会調査員の面前において、まるで反抗的な態度をとつて、証拠書類を要求すればこれに応ぜず、まつたく言語道断と言わざるを得ない。閉鎖機関の清算人として、あなたに資格があるかないか、私はまつたく疑わざるを得ないと思う。
  61. 内藤隆

    内藤委員長 その新宮という人は……。
  62. 中野四郎

    中野(四)委員 この方の部下ですけれども、荻野調査員調査に行けば、非常に言語道断な言葉を弄し、しかも、いかにも恫喝するかのごとき態度をとり、こちらの要求する資料に対しては一つも応じておらない。私は、後ほど項を追つてこの責任をあなたに聞こうと思つたのですけれども、そういう態度で、閉鎖機関に行つて調べようとしてもわからず、そしてその責任者である清算者が全然わからない、これでは調査のしようがありません。これは調査拒否です。こういう態度は、私ら、まつたく納得が行かない。
  63. 内藤隆

    内藤委員長 清算人に申し上げますが、さような者がおると、国政調査の一環としてわれわれ誠心誠意やつておる者のじやまをしておると同様ですが、さような者は一体……。
  64. 中野四郎

    中野(四)委員 交易営団に元からおつたのです。
  65. 内藤隆

    内藤委員長 そういう者は、それでいいのですか。
  66. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、そういう話を荻野氏からむ再々承りまして、これは清算上非常に困る、ことに国会からそういう重大な御調査に見えているのに、いろいろ何か暴言を吐いたりすることは、私の使つております職員として、はなはだ困る、私の職務遂行上にも支障を来しますので、そういう態度ではいけない、できるだけ国会の御調査に御協力するようにやつてもらわないと困るのではないかと、再々注意しておる次第でありますが、もし非常に不適当であるといたしますれば、これは適当の措置を考えなければならぬと、実は私も考えておるような次第であります。
  67. 内藤隆

    内藤委員長 どうせよとは、私は申すわけではないが、清算人として、清算事務がスムーズに行くように、またわれわれの調査も十分進むように、さような障害になる者は、ひとつ何とか善処してください。
  68. 中野四郎

    中野(四)委員 特にここにおられる根本という人などは、大分いろいろなことを言うているようです。何か後ほどいろいろ牽制をするようなことをかすかに聞いている。御本人は私知りませんが、今日あたりでも、国会黒瀬ざんが出て来れば、清算責任者ですから、これとこれだけはこう言うのですよといつて、協力的に教えるのがあたりまえで、また本人がその資料を持つて来れぬというのは、おそらく清算人の中にそういう支障を来すような者がおるのです。しかも、十一人いる中に、交易営団関係の人たちが大部分を占めている。従つて、本件を審査する上においても、交易営団中央物資の端的なる国内法における権益だけを主張し、これを擁護する。そして国会の審理に支障を来すというようなことを平気でやつておる。私は、何としてもこれ、は納得が行きませんから、黒瀬清算人は適当なる時期に適当に善処された方がいいと思います。  そこで、速記録にさらに残して置きます。そして、あなたが速記録ごらんの上、はつきり数字お答えなさるように、もう一、二点、要点だけ伺つておきます。証人が接収ダイヤとして本委員会にも大蔵省にも報告しておる二十一年二月十九日大阪帝銀船場支店から接収された三万六千六十四カラットは、全部一般から買い上げられた装飾用ダイヤであるかどうかという点であります。これはおわかりになりますかどうか。
  69. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 大阪の帝銀の船場支店ですか。
  70. 中野四郎

    中野(四)委員 大阪の帝銀の船場支店から接収された三万六千六十四カラットが全部装飾用であるかどうか。証人大蔵省報告した等級付のダイヤがちやんと書いてある。
  71. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の手持ちの材料では、みがきダイヤとしてあります。
  72. 中野四郎

    中野(四)委員 ところが、この中に、等級付のダイヤが全部で三万一千八百七十八カラット、工具製造業者から買い集めたダイヤの砕石が九十四カラット、それから千八百四十三カラット、工具製作用のダイヤが二千二百四十七カラット、同じく百九十一カラットあるのです。これは一般買上げではなく、また工業用であつても、これを差引けば、一般買上げ装飾用ダイヤは三万一千百七十八カラットと見るべきである。四千百八十六カラット分は差引かねばならぬと思うが、一体これはどういうふうに処理して報告をしたのか、聞きたいのです。これはおわかりになりますか。
  73. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは、よく内容を調べて見ませんと、わかりません。
  74. 中野四郎

    中野(四)委員 もう一点、証人は、東京の銀行、それから信託、こういうところの買上げ数最を九千三百六十万カラット報告をしておるのだが、証人大蔵省報告した書類の中には、銀行、信託買上げ分として三井で接収せられた数量をば、一万一千二百三十八カラットとしておるが、どつちが真実なのか、この数量の差があるのはどういうわけか、説明していただきたいのです。まつたくこれはでたらめな報告がしてある。おわかりですか、これは。
  75. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今ちよつとわかりません。
  76. 内藤隆

    内藤委員長 中野委員に申し上げますが、さいぜんからの中野委員の尋問に対する証人の答弁を聞いておりますると、全部わからないのです。かようなことを継続いたしておりましても無意味であります。むしろ理事会を開いて、かような清算人の答弁ぶりであるということに基いて、一応協議をした方がいいじやないかと思いまするが……。
  77. 中野四郎

    中野(四)委員 それでは、数字でない分を一、二聞いてそのあとの点は、ずいぶんありますけれども、委員長の仰せのように、理事会を開いて協議をすることにして、ちよつとここで証人に聞いておきますが、清算事務過程において、この交易営団は利益が八億三千七百二十三万七千五百四十五円五十一銭となつておりますが、これは収支対照の結果これだけの利益が一体出ておるのですか、一応伺つておきたい。
  78. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 二十七年十二月三十一日の清算貸借対照表の中に、八億三千七百二十三万七千円余りと出ております。その上の方の閉鎖前欠損金というものが十七億四千三万余計上してありますから、これは当然差引きにならなければならぬものだと思います。
  79. 中野四郎

    中野(四)委員 間違いありませんか。
  80. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 間違いございません。八億三千七百二十三万余円です。
  81. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに証人に伺いますが、先般の証言によりますと、政府の出資金は二億五千万円、全額公債であるとあなたは述べられておるが、これは間違いありませんか。
  82. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 政府の出資額二億五千万円というのは、これは設立当初払込み済みは一億八千八百九十五万五千円になつております。私の持つている資料では今ちよつと見当りませんが……。
  83. 中野四郎

    中野(四)委員 先日のあなたの証言で、ここでお述べになつたのです。つまり、政府の出資金は二億五千万円全額公債である、こう言つておられるので、間違いじやないかと言つておるのです。これは、あなたが営団のものだという、ことを前提にして言われたから、その営団の内容を明らかにする上において伺つておる。あなたは現金は出ていないと言つておりますが、現金はたしかに出ておりませんか。
  84. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 第一回と第二回と払い込みになつておりまして、第一回は一億七千五百万円、これは公債額面です。それから、そのほかに二千万円。第二回に払い込みの現金がありまして、これが六千百四万五千円。その点は訂正いたします。
  85. 中野四郎

    中野(四)委員 だから、軽々な証言をなさることが根本的な間違いなんです。あなたの方では、このダイヤモンド交易営団のものだということを前提にして、そして営団の内容を見た場合においては、三億万円の出資金のうち、政府出資は二億五千万円、あとの五千万円は民間出資であつて従つて二億五千万円というものは全額公債だと言つておるが、私の方ではもうとつくに調べてある。書類はここにちやんとありますけれども、まず清算人としてのあなたの証言を聞くべきだと考えて、先日も念を押したところ、仰せの通りなんです。昭和二十三年一月十六日、残額はあなたの方にたしかに六千百四万五千円というものが現金で入つている。あなたの方では現金のことについては全然言わず、公債ばかりだろうというような言葉を吐いておつたから、私はあらためて聞いたのです。あなたが最初に営団のものなりと断定しなければ、かようなことは聞かなくて済んだのですけれども、あなたの清算人としての能力をいささか疑わざるを得ないと思つたから、今あらためて聞いたのですが、証人の先般の証言によると、営団の資金は主として銀行の借入金であつて、資金的に政府の援助を得ておるような形跡はないという証言に対して、委員長が、帳簿に載つておるのか、こういう質問をしておるのですが、あなたは、ええ、と言つておるだけで、答えておりません。もう一ぺん伺いますが、いいですか、銀行借入金であつて資金的に政府の援助を得ておる形跡はないと言つておられるところが、委員長は、これに対して、帳簿に載つておるか、こういう質問をしておるのです。あなたは、ええと言つておられますが、事実帳簿に載つておりますか、これは。
  86. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 資金的に援助を得ておらぬという意味が、私は言葉が足りなかつたと思いますが、事業資金として銀行から借り入れておりますし、資本金は、六分の五になりますか、大部分政府の援助を受けておる、こういうことになると思います。
  87. 中野四郎

    中野(四)委員 すると、あなたの方は、—営団は、金利、倉敷料というものをもらつておりませんか。十七、十八、十九、二十年度というような総計で、金利、倉敷料というものをもらつておりませんか。あるいは補助を受けておりませんか。
  88. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 金利、倉敷料というようなことで多少の補助を受けておるという話は聞いておりますが、はつきり今申し上げる資料を持つておりません。
  89. 中野四郎

    中野(四)委員 多少ではないのです。大きな金額ですよ。大蔵省の決算書をごらんなさい。営団は金利、倉敷料としては、十七、十八、十九、二十年度合計二億八百七十余万円の補助を受けておる。僅少どころではない。当時の金額にすれば、営団の全出資金にふさわしいような二億万円をもらつておられるのだが、これはどうです。その事実があるのですか、ないのですか。
  90. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これは、はつきり帳簿を調べてお答えをいたします。
  91. 中野四郎

    中野(四)委員 まあ、よろしゆうございます。どうせあなたに聞いてみたところで、この内容がわからぬで、結論だけがあなたにわかつておるので、私らには納得できませんが、たとえば、証人の先般の証言のときに、軍需省と営団との間の法律関係について伺いましたね。軍需省と営団とのことについて、あなたが、営団が命令を受けまして、民間から買い入れて、民間に対してはすつかり金を払つたと述べられております。これは、政府の一方的な命令でやつたのであるか、それとも民法上の契約でやつておるのであるか、どういうようにお考えになつていますか。
  92. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 買上げ要綱によりますと、形式は自由供出というかつこうになつておりまして、但しその裏には、当時の情勢からいいまして、心理的にほとんど強制的のようなことになつてつたかと思いますが、要綱の中には、買上げ対象は一般人及び販売業者を対象とし、任意供出の形式による、こういうふうに書いてあるので、形式はやはり任意供出ということであつたものと私は思つております。
  93. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは日本人なのか、少々国籍を疑うのですが、たとえばですよ。当時の要綱ごらんなればわかりますが、白金を買い上げるについても、ダイヤを買い上げるについても、なるほど任意供出の形をとつております。昭和十九年の八月、九月といえば、日本にとつては戦争の熾烈なときであります。であるから、一般国民の財産の尤たるものであるところの金、白金ダイヤを買い上げて、それを戦力化しようとした。必勝態勢を確立しようとした。従つて、その買上げ要綱の中に、軍需次官命令としては、はなはだしい言葉が使つてあるのですよ。当時は、各政府機関、都道府県知事等がこれに協力し、婦人会、隣組、町会等が協力しました。この強い言葉を発した端を発するものは何かといいますと、軍需次官の命令の中には、こういうことを国民に言うておる。場合によつたら、一時お前らが金や白金ダイヤモンドを持つことを国家として許さなくなるぞ、そういうことを国民に示唆してよろしい、恫喝してこれを出さしめてよろしいということが書いてあるのです。このことは、書類が残つておりますから、明らかになつておる。なるほど形式は任意供出ではあるけれども、戦争に勝ち抜くという一点に集中をせしめるために、かしこくも陛下はみずからのダイヤモンドや、あるいは自分のお持ちになつていらつしやる装飾品を御下賜になつて、これを奨励あそばした。従つて、日本国民も、この御意志に従うと同時に、政府の意図するところ、いわゆる強制的に買い上げる、任意供出というのは名前だけなんです。それから、今あなたのおつしやつたような、字句だけを読めば、なるほどそういう言葉も出るかもしれません。ところが、先日営団のものだとおつしやつたから、その営団のものとするところの法律根拠を述べよと言うたら、売買だとか、あるいは今おつしやつたような言葉なんです。東大の我妻教授は、この点について明確に言つております。とんでもない、政府委任行為交易営団がやり、交易営団委任行為中央物資活用協会がこれを買い上げ、国家が必要として国民に命じ、国民は国家のためにとしてダイヤモンド、金、白金を売つたものである。—一般装飾品とはいいますけれども、中には悲壮にも金歯を抜き、自分のめがねをはずし、時計をはずして供出した国民の多数あることを知らねばならぬのであります。従つて、国民は、交易営団を太らせるために、中央物資活用協会にもうけさせるためにやつたものではなくて、あくまでも、戦争を勝ち抜いて国家民族のためにと出し品物である。それが、国家の当時の当該役人の怠慢により、買上げ機関としてあなた方が—あなたはそうではないが、買上げ機関のそれぞれの担当者の怠慢より、せつかくの国民の愛国心は途中において蹂躪され、壟断され、これが完全に戦力化せず、そうして今日日本銀行の地下室に集まつて来れば、今度は、これをわがものなりとして、みずからの権利を主張して、これをとろうとする。その一貫した流れと申しましようか、大蔵省の役人なり、交易営団、あるいは中央物資活用協会鑑定人、業者の間に、共通した一つの目標に進んでおるような考え方が見えるのであります。だから今私は、あなたの御証言の営団が命令を受けて民間から買い入れて、民間に対してはすつかりその金を払つたから、営団のものだという言葉に対して、あなたの意見を聞いたのです。これは間違いないかどうか。民法上の契約でやつたのかどうかといえば、全然ないじやありませんか。営団と国家の間には何もない。営団と中央物資活用協会の間にも何もない、もしその契約があつたら、お出しなさい。何もありはしない。何をもつて交易営団のもの、中央物資活用協会のものと断言ができるか。あなたの心境を疑わざるを得ない。当時の状況を思い合すとき、あなたの国籍を疑わざるを得ないと言うのです。  さらに私は伺いますが、証人は、先般の証言で、交易営団中央物資活用協会とは直接何も関係はないと証言しておる。あなたが先ほどおつしやつた言葉とは大分食い違つておる。中央物資活用協会は、営団の代行機関として、七大府県以外は全部中物が買い上げて、これを営団に引渡しておるのでありますから、これは最も深い関係がある。この点は、先ほど証言されたように、営団と中央物資との間は、中央物資活用協会は営団の代行機関であるということについては間違いないことをあなたが認められるかどうか、もう一ぺん伺つておきます。念のため。
  94. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、この買上げ要綱従つて代行機関であるというふうに解しております。
  95. 中野四郎

    中野(四)委員 続いて伺いますが、証人が被接収貴金属の中から一部の宝石大蔵省から先日引渡しを受けた折に、現場に鑑定人を連れて行つて、その立会いのもとに、カラットから数量から、全部私の方のリストを照合しまして、それで私は受取つてつた証言をしておられます。証人が照合したリストには、各宝石ごとにカラツト数、特に特徴というようなものがあつたはずですが、これがなければ、リスト宝石受取つた現物の宝石とが、はたして同じであるかどうかということがちよつと断定できませんが、あなたは先ほど、財務局の方から出たいわゆるリストに従つたとおつしやいましたが、先ほど、後に伺うと言つておきましたが、この点はどうですか。あなたの品物である、私の品物であるということが、リストと合せてみて、合つたのでしようかどうか。
  96. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これがはたして、先ほども申しましたように、はつきり—ただ、こちらでは、向うの台帳に宝石ということが載つておりまして、そうして向うの台帳に交易営団のものだということがついておりまして、こちらでは、その宝石の一部として……。
  97. 中野四郎

    中野(四)委員 それでは、こちらから申し上げましよう。あなたのところのリストは詳細なもんじやないのです。単なるリストです。ことに、エメラルドというのがありますが、これは五十八個あなたの方で受取つておるが、営団のリストの中には三十一個しかないはずです。所有権の有無も十分に確認できず受取つたことは、清算人としては、すこぶる不当なる行為だと思うが、どうです。あなたのところで買い上げたのは三十一個しかないはずなのに、受取つて来たものは五十八個ある。これはどうして受取つて来たのですか。リストと照合して受取つたものならば、ちやんと合つていなければならない。エメラルド何個、翡翠何個、瑪璃何個と、ちやんと合つていなければならないが、合つていないのはどうしたわけです。
  98. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その詳細なことは、もう少し調べないと、わかりませんが間違つておれば、お返ししなければならぬと思つております。
  99. 内藤隆

    内藤委員長 証人の今の言葉は、少し軽率じやないですか。間違つておれば、返せば、それでいいのですか。
  100. 中野四郎

    中野(四)委員 どろぼうをして、つかまつて、検事局へ送られて、いよいよ裁判所へ送られるときに、「どうも、刑事さん、これは返します」で、かんべんしてくれますか。私はどろぼうとは言わぬけれども、これは、ことごとく恤兵品ですよ。アメリカが、日本の恤兵品なるがゆえに、これは適当に処理せよといつて返してよこした。その恤兵品が、なぜ交易営団のものでありましようか。第一番にこれを私は疑う。あなたの証言を聞けば、あなたは、大体リストに合せてもらつて来た、カラット数が合つているからもらつて来た。—そのリストには、何が何個、何が何個と、ちやんと書いてなければならない。営団のあなた方が買い上げた数量は、この帳簿によれば三十一個しかない。それを、あなたは五十八個ももらつて来ておる。間違つてつたら返しますと言うが、先日の大蔵省管財局長も、あれは間違いだつたから取返しますと言つておる。一体こんなことができるのですか、どうですか。あなたは、ただくれたから、この際もらつて来た方が得だといつてもらつて来たのですか。どういう根拠があつてあなた方はもらつて来たのか、わからない。これは国家国民のものですよ。一大蔵省の役人が交易営団とつう  つうになつて、こういうものをかつてに処分する権限はない。営団が何ゆえにこういうものをもらつて来たのか。あなたは、先日の証書でも、これは明確に言つておられる。詳細なリストに照して、鑑定人を連れて行つて、これはどこのもの何個、これはどこのもの何個ときめて持つて来たと言う。鑑定人を連れて行つて、しかもリストに合せて持つて来れば、買上げ数量にないものが一体どこから出て来るか。そんなでたらめな鑑定人があるのか。そういう鑑定人をひつぱつて来て国民をだまそうとするところに大きな間違いがあるので、これはどういうふうな処理をされるつもりでありますか、伺つておきましよう。
  101. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 もし、お返しになつたことが間違いであるとしますれば、これはお返ししなければならぬと思つております、
  102. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは、間違いではないと言うのですか。あなたがリストに合せて来たのだから、間違いであることはおわかりになるでしよう。リストほんとうにあるのですか。あれば合せて来たはずでしよう。買い上げたところのものはエメラルドが三十一個しかないのですけれども、どうして五十八個もらつて来たのですか。これは値がいいからもらつて来たのですか。私にはこれがわからない。これは調べてというようなことじやない。あなたが実際行つて、もらつて来たのは、まだ先月じやありませんか。一体なんでもらつて来たんですか。どういう形でもらつて来たんですか。これはあなたが行つておるのですから、あなたがはつきりおわかりになつていらつしやるはずです。
  103. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ……。
  104. 内藤隆

    内藤委員長 その点明瞭にお答えになつた方がいいでしよう。これは大きな問題ですから、当委員会はこの点は徹底的につきますよ。
  105. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたがそう言うならば、ついでにもう一点伺いましよう。この無償払下げについては、大蔵省に重大な手落ちがあるのですよ。昨年の十二月十八日に要求書をあなたの方で大蔵省出しておられる。その前にあなたは係官と打合せしておるでしよう。どうですか、打合した事実はないとおつしやいますか。十二月十八日にあなたの方で要求書を出す前に、大蔵省の係官とあなたの方の打合せがあつたはずです。しかも大蔵省の方の係官は、十二月十八日の一週間前の十二月十日の日に、すでにちやんとこれに対して起案しておるじやありませんか。そんなばかな話がどこの国にあります。一体どうしてこういうようなやり方を清算人としておやりになつたのですか。納得できませんね、黒瀬さん。この点もあわせて伺いたい。
  106. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、清算人立場、責任上、清算を促進するためには、この問題がひつかかつておりますから、これは私の解するところによれば、営団の方のものだというふうに考えておりますので、これをやらないことは私の職務の怠慢になると私は考えまして、大蔵省に対して、これは返還の要求をいたしたいということを申入れをいたしました。それについては、いろいろ研究をいたしまして、この前申し上げましたように、返還の要求をいたしましたのに対して大蔵省の回答を得ておるのであります。私の心境は、そういう意味においてやつたのでありまして、これが政府なりあるいは国会においていかなる処置をおとりになるか、それは私にはわかりませんけれども、私の清算人立場としては、いつも申し上げるように、この問題が片づかないと交易営団清算が進行できないという状況でありますから、私は、自分の考えに従つて大蔵省に対しまして要求をいたしたような次第であります。
  107. 中野四郎

    中野(四)委員 善意の悪結果ということもあります。悪意の悪結果ということもあります。しかしながら、私が今日まで調査をして参りました過程においては、先ほど申し上げたように、大蔵省交易営団中央物資活用協会鑑定人、業者の間には、どうも一連の関係がある。たとえば、ここに来て証言をするにあたつても、大体の打合せをする。—けつこうなことです。いろいろ打合せをし棄ても、こちらに事実を立証するところの物的証拠があるのだから、これをあげてあなたの方に質問をする。あなたの言うように、なるほど営団の清算をする事務の渋滞を免れるためにこのことをなしたということは、たいへんけつこうなことです。しかし、営団の清算人として、あなたがかつてこちらで証言をなすつたこと、すなわちリスト従つてこの品物鑑定せしめ、されを受取つて来たというあなたの言葉ですが、リストには事実上、三十一個しかないものを、五十八個もらうというような不当なことをあえてしておるから、私は聞くのです。いわんや、あなたの方で無償払下げを受けるにあたつて、先日の証言では、全然知らなかつた、突然にとおつしやつたが、あなたの方では要求書を出していらつしやる。その要承書を出した日にちよりもさかのぼつて一週間前に、あなたの方では大蔵省の係官とも緊密な連絡をとつてつておいでになる。してみれば、当然このリストが合わぬものであつて、この品物受取つたことが営団のために不当なことであるということがわからなければならぬ。大蔵省の役人といえども、恤兵品ということは公文書に明らかになつておる。その品物交易営団に渡すのみならず、交易営団が、自分のものにあらざるものを、鑑定人を連れて行つて、ことさらに自分のものとしてこれを受取つたというような行動は、断じて許すべきでない。だから私は聞いておる。けれども、この処置は、あなたの方でもとらなければならぬ。国会もとよりこれを看過するわけはありませんから、この問題については新たに追究いたします。  さらに私は、時間を食いますから、かんじんなところだけを聞いておきます。問題のダイヤを営団に対して、帳簿価格一億九千万円余、これを払い下げる旨をば二月二十六日の次官会議できめた、そうして二十七日の閣議で検討する旨を、朝日新聞が伝えたのです。小さいところで伝えた。それより以前に、すでに清算事務所の新宮部長は知つてつたが、どういうわけですか、次官会議とか閣議とかいうものは秘密会議です。この次官会議があることをば知つてつた、これらについて、清算人初め新宮部長は、大蔵省の役人と会つたあとなんですか、どうなんですか。この問題について、こちらから調査員を派遣したときに、新宮部長は言うておる。もう今時分は次官会議で問題になつている最中である。—一体次官会議で問題になる最中ということを、あなたのところの一使用人がわかり得るわけはない。次官会議にこうしてかけられるということがわかるならば、あなたの方と大蔵省の方とでは、もうつうくで話をしておるということは明らかなんだ。われわれでも次官会議の内容は知らなかつた。にもかかわらず、調査員が行つたときに、次官会議の内容をば新宮部長とかあなたの方は知つてつた。驚くべきことではありませんか。こういうようなことがわかつておるということは、一体どこからわかつて来るか。あなたも察してみればいいが、一体あなたは、こういうことで大蔵省の役人と会つているんですか、どうなんですか。これは、宣誓をして万一虚偽の陳述をすれば、責任があることを特に申し添えておきたい。大蔵省の役人と新宮部長やあなたの方とでは、事前に連絡のあることが私の方では明らかになつておりますが、あなたの方では、会つた覚えがないとおつしやるのかどうか。宣誓に基いて真実を述べていただきたい。
  108. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ただいまの、次官会議の内容があらかじめわかつてつたんじやないかというお話でありますが、私は全然関知いたしません。はつきり申し上げますが、私は朝日新聞の記事によつて、けさ新聞にこういうことが出ておつたということを承知して、帳簿価格の範囲にということが書いてあるが、これはどういう意味であろうかということを話した記憶がありますが、それ以前について全然私は知らなかつたのであります。
  109. 中野四郎

    中野(四)委員 新宮第二部長はどうですか。荻野君が—本人がおります。荻野君が行つて話をしておる最中に、今時分は次官会議にかかつておるだろう、こう言つておるのですが、これはどうですか。
  110. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 新宮部長が会つたかどうか、あるいはそういう連絡があつたかどうかは、私は新宮部長からは全然聞いておりません。
  111. 中野四郎

    中野(四)委員 では、別の方面から伺いましよう。ダイヤに関する問題について、証人並びに新宮部長は、大蔵省の役人や旧営団の関係者、あるいは旧軍需省の当時の係官と面接したり、会食した事実があるかないか、ひとつこれを伺いましよう。もし会食した事実があるとすれば、いつ、だれと、どこで打合せしたか、幾ら使つたかもわかつておりますれば、この点も伺いましよう。
  112. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、清算の必要上、当時の事情をいろいろお伺いする必要がありますことは当然のことだと思つております。また、清算をするについて、監督官庁たる大蔵省といろいろ協議をする必要もあります。従いまして、そういう必要に基きまして、いろいろ、こういう資料がありませんかとか、当時の事情はどうでありましたかとか、係のおわかりになる方に来てもらつてお話を聞くという機会は持つたことがあります。そのついでに簡単な食事をしたという事実はあるようでありますが、明確に何月の何日にどこでどういうことで会つたかということは、今はつきりしておりません。
  113. 中野四郎

    中野(四)委員 こちらにわかつておるから、いいのですが、一体軍需省や営団の関係はどうなんですか。大蔵省はいいのですが、旧軍需省の関係はどういうわけなんですか。一体これは何の関係で面接したり会食したりなんかしたのですか。そうして、大蔵省の役人はだれでしたか。
  114. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 申し上げますが、旧軍需省の方は、当時のその方の係であります。
  115. 中野四郎

    中野(四)委員 坂部技官ですか。坂部君でしよう。
  116. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 橋本さんですか、経済往来か何かにちよつとダイヤのことを書いております。今ちよつとはつきりしませんが……。
  117. 中野四郎

    中野(四)委員 大蔵省はだれですか。
  118. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 大蔵省の方は、そのときには一緒に来ておりませんでした。
  119. 中野四郎

    中野(四)委員 営団はだれですか。
  120. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 営団は福田さんと加藤さんですが、これは、当時の状況だとか、資料だとか、いろいろなことをお聞きする、またこれから後もそういうことをしなければ事情がわからないものですから、あるいはダイヤを取扱つた実際の取扱者その他にいろいろ聞いてみませんと、私どもは……。
  121. 中野四郎

    中野(四)委員 大蔵省はたれですか。
  122. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 大蔵省はそのときは来ませんでした。
  123. 中野四郎

    中野(四)委員 その前は……。
  124. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 大蔵省とは再々会つて……。
  125. 中野四郎

    中野(四)委員 ダイヤのことで大体だれとお会いになりますか。
  126. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ダイヤのことでは、監督官庁の首席の責任者の清島調査官というのが、閉鎖機関の監督責任者でありますから……。
  127. 中野四郎

    中野(四)委員 清島君でなく、ほかの方がダイヤでやつておいでになるでしよう。女中の証言もありますから……。
  128. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の方の担任の事務官は、玉井事務官が主たる事務官でありまして、その上に本間事務官というのがございまして、その上に清島調査官というのが、大体閉鎖機関全部の清算の監督をされております。閉鎖機関の清算は、私のところと、あと方々でやつております。
  129. 中野四郎

    中野(四)委員 毎月何回くらい会食されるのですか。
  130. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 会食といいましても、大体事務所でお弁当を食べる程度でありまして、月に一回ぐらいは清算促進会議というものをやります。これは各清算事務所がかわり番こでやつております。大体隔水曜日—水曜日に定例をやりまして、次の水曜日を抜いてやるということで、今定例的にやつております。
  131. 中野四郎

    中野(四)委員 先般大蔵省から引渡された宝石類に対して、阪田管財局長は、違法であつたからこれを取消して返還させると証言しておりましたが、これを返還しましたか、どうですか。
  132. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 違法であるということでありますれば、そういう行政処分の間違いであるという取消しが来ますれば、私の方は当然返還しなければならぬと思いますが、今のところ、まだ来ておりません。
  133. 中野四郎

    中野(四)委員 阪田管財局長はここで証言しておるのです。恤兵品であつて、営団へやつたのは間違いであつたということになれば、あなたの方は返す御意思があるんですね。用意があるんですね。
  134. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 そうなれば、当然お返ししなければならぬと思います。
  135. 中野四郎

    中野(四)委員 それでは伺いますが、新宮部長は、この引渡しが違法であつたということを承知しておる。いいですか。二十七日に本委員会の事務局の調査員新宮部長のところに行つた面前で、残りの宝石に対してもさらに請求せよ、要求せよと、第一課長やここにおる根本係員に対して大きな声で命じておりましたが、証人は、さらに要求すべく命令を発したのですか。新宮第二部長の虚勢ですか。たとえば、調査員行つておる前で、何だ、もつと要求しろと言うのは、あれはどういうことですか。
  136. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 そのことにつきましては、荻野調査員が来られたときに、そういう話を聞きまして、一体新宮部長は何を言つておるのですか、私が命令したわけでもないし、そういうことを言うのは穏やかでない、それはそういうことをやつたつて私は判こつきませんよと言つたわけです。部内の事務の統制といいますか、そういう点について遺憾の点があるということについては、はなはだ私ども責任上申訳ないと思つております。
  137. 中野四郎

    中野(四)委員 新宮部長というのは、そういうふうに置かなければならないという深い関係があるのですか。私の方で委員会から調査のために清算事務所へ調査員を派遣することが今までに十数回ありましたね。その都度新宮部長はすこぶる非協力的なんです。関係書類帳簿なんかでも、桐生、大阪の帳簿のごときは、数箇月も経過するにかかわらず、いまだ全部を提供しない。買上げ台帳のごときも、八月中にすでに発見されているのにかかわらず、本年一月、数人の補助員をして買上げ数字調査せしめました折も、提供せず、まことに不可解であるのです。聞くところによると、新宮部長は、営団に在職しておつた関係があつて、この調査の進行上、清算書類とか帳簿等、何かいろいろな形において非協力的な態度をことさらにとるような形跡があるのです。一体こういうような人間をどうしても置かなければならないのですか。何か置かなければならぬというコネクションでもあるのですか。
  138. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 全然そういうコネクションも何も、もちろん大蔵省にもそういうものはないと私思いますが、ただ一つは、あるいはこれは私の想像でありますが、何か感情的にそういうふうな態度をとつておるのではないかということを私感じまして、再々本人に対して注意を促しまして、十分に調査に協力しなければいかぬぞということは促しておるような次第であります。
  139. 中野四郎

    中野(四)委員 どうも、従来から、こちらが調査に参りましても、不便でしかたがない。営団にほんとうに利害関係がないというならともかく、本来ならば持つておるのです。少くとも政府機関としての公平なる清算事務をとる上において、補助者として私は不適格者であると思うのです。もちろん、よその人間を、右にしろ左にしろという権限は私にはありません。しかし、今日あなたがここにおいでになつてもそうなんです。あなたの証言の立証となるものを全部ここへ整えて、清算人である黒瀬さんをして満足せしめるということで持つて行くのがほんとうなんです。そういう協力しない人間があなたの下におつては、国会も困るし、あなたも困るのじやないか。いつそのこと、総務部かどこか、他の方に、この問題に関する限り移したらどうですか。お移しになるお考えはありませんか。
  140. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 もう少し十分に考えてみなければなりませんが、そのほかにこの仕事をやらせるしつかりした人間がおらないと困る。十分にもう少し考えを練つてみなければならないのですから……。
  141. 中野四郎

    中野(四)委員 考えを練る余地はないと思うのですけれども、何かよほど深い関係があれば別ですが……。  そこで、証人清算人として大蔵省に対してダイヤの所有権を主張してこれが返還を要求しておる書類の中に、旧営団理事者よりの請願云々と述べておられる。総裁事務執行代表理事加藤徳善、同副理事福田廉三署名の書類を添付しておりますが、営団職員は政府が任命するので、そうして加藤、福田ともに、理事就任期間は二十二年の二月二十日限りであつて、今日は営団とは何の関係もないはずであります。ことに総裁事務執行とか、代表理事とか、副とかいう職は、当時の営団の定款にもないが、これはどういう関係でさような書類大蔵省にお出しになりましたか、伺いたい。
  142. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 別にどういう関係ということもございませんが、当時の責任者でありますこういう民間の方々からも、こういう陳情の次第もありますということで、これを出しました。
  143. 中野四郎

    中野(四)委員 変じやないですか。福田君をきのうここに呼んだら、営団に一切関係しておらない、そういう事実はないと言つておる。ところが、あなたが関係のない福田君や加藤君の名を出しておる。もつとこちらから申し上げてもいい。この書類を出す前、十二月十六日の日に、銀座裏の、名前は申しませんが、某料亭において、あなたの方では相当な金を使つて、この二人と新宮第二部長と、それから現職の高級官吏とが会食しておられる事実があるのですが、これは認めますか、どうですか。場所を申し上げてもよろしい。時間も申し上げてもよろしい。しかし、こういう事実は、何のために会われたのか。この書類を出す直前の十二月十六日の日です。どういうわけでこういう会合をやつたのですか、これを伺いたい。大蔵省の高級官吏と、あなたのところの第二部長と、しかもこの加藤、福田の両人、関係がないと福田君は証書しておる、その人間が、何がゆえにそういうような会合をし、そうしてその直後にこういうような書類をお出しになつたか。どこに意図するところがあるか、これ一点だけでも明確だと思うのですが、どういう意図でおやりになつたか、伺いたい。
  144. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 大蔵省の役人は、そのときには入つていなかつたと思います。いろいろ営団の清算について、営団には今福田、加藤というような人は関係はありませんが、しかし営団時代の最高の責任者でおられますから、いろいろ営団の仕事の内容その他をお尋ねするには、こういう人が必要であります。そういう意味におきまして、ときどきおいでを願いまして、会食することもありますし、御意見を聞くこともありますし、これは清算の進行上どうしても私としては必要だと考えております。
  145. 中野四郎

    中野(四)委員 詭弁はやめていただきたい。なぜかといえば、きのうここへ福田君を呼んだのです。いろいろ福田君は詭弁を弄しましたが、しばらく営団に行かない、営団の人とは会つておらぬ、—いいですか、きのうの速記録ごらんに入れてもいいのです。しばらく会つてない、営団の方にどういうことがあるか知らない、—知らない者がこういう数字をあげるわけはないじやないかというて、やかましく言うた。ところが、こういう事実をあなたは認める。その節どういうお話が出たでしようか。書類をお出しになる直前ですよ。この打合せをしないで、何の打合せをなすつたか、清算事務の遂行上おやりになつたはずはない。ほかのお話をしていらつしやるはずなんだ。どういうお打合せをいたしましたか、はつきり伺いたい。
  146. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どういう打合せをいたしましたか、今どうもはつきりしませんが、橋本事務官からいろいろな話が出ておつたようですし、いろいろ雑談いたしまして、簡単に食事をして、それでわかれました。
  147. 中野四郎

    中野(四)委員 これ以上証人に聞いてもしかたがないと思う。そこで、委員長に対してお願いをしたいことは、旧交易営団の出資金は大部分が国費であつて、ことに接収解除のダイヤモンドとは密接なる関係を持つておるのであります。先ほど来の黒瀬清算人の陳述では遺憾ながら満足することができないのであります。黒瀬証人の陳述を中心として、これが真偽と、旧交易営団清算過程における清算事務状況、こういうものについて引続き事務局をして調査せしむるとともに、必要な帳簿書類等を提出せしむるように御手配をお願いしたいことが一つ。二は、接収解除のダイヤモンド大蔵省が再調査した折評価した台帳写しを見ると、その評価額、カラット、あるいはサイズ等、疑いを持たれるところがすこぶる多いとともに、これが再調査に当つた鑑定人についても納得が行かぬ点があるのにかんがみて、これが将来の処置はきわめて慎重を要するので、これが取扱いについては、本趣旨文書をもつて大蔵大臣に申し入れるとともに、大蔵大臣を本理事会または委員長のもとに招致して、口頭をもつても、十分徹底せしむるよう申し入れられたいと思うのであります。この二点をお願い申し上げたい。
  148. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの中野委員の要求は、書類をもつて出しつて理事会でその書類に基いて善処したいと思います。  他に御発言がなければ、黒瀬証人に対する軒間は本日はこの程度にて一応終了いたしまするが、後日再出頭を求めるような事態になると思いまするので、一応さよう御了承をお願いいたしておきます。証人には長時間御苦労さまでありました。  午後は二時より再開し、鑑定人巽忠春君より証言を求むることにいたします。  暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  149. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。委員長あては次の書面が参つております。松屋本店長金子角太郎君より答弁書、宮内庁次長宇佐美毅君よりお下渡し品に関する件の報告、外務事務次官より連合軍、占領軍等の軍事・裁判記録入手の件報告、及び大蔵省管財局長阪田泰二君より資料提出、以上でありますが、これらは長文でありますので、朗読は省略いたします。しかし、これは本件調査の上にきわめて重要なものと考えますので、これを速記に掲載したいと存じまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 内藤隆

    内藤委員長 御異議がなければ、さようはからいます。     —————————————
  151. 内藤隆

    内藤委員長 これより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について調査を進めます。  ただちに証人より証言を求むることにいたします。ただいまお見えになつておられる方は巽忠春さんですな。
  152. 巽忠春

    ○巽証人 はあ。
  153. 内藤隆

    内藤委員長 この際証人に一言申し上げますが、戦時中多数国民諸君より供出されましたダイヤモンド、金、白金等は、平和条約発効と同時に接収解除となりまして、現在日本銀行地下の倉庫に収納され、大蔵省によつて保管されておるのであります。このダイヤモンドの収納、保管の経過、処理の方法等につきましては、世上大いに疑惑を持ち、関心を抱いておるのでありまして、これが真相を明らかにすることはきわめて意義のあることと考え、本委員会は本件の調査に漕手した次第でありますので、証人におかれましては率直なる証言をなさるようお願いしておきます。  それでは、ただいまより接収解除貴金属及びダイヤモンドに関する事件について証言を求めることにいたしますが、証言を求める前に、証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祭祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人巽忠春君朗読〕    宣 誓 書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  154. 内藤隆

    内藤委員長 それでは、宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓者に署名捺印
  155. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  巽忠春君の経歴を簡単に述べてください。
  156. 巽忠春

    ○巽証人 大阪商業学校を四年で病気のため中退して、それから昭和五年から交の業務でありました貴金属—当時はあまり宝石はやつておりませんでしたが、大体貴金属宝石の卸商を手伝つておりました。それから十一年に独立をいたしまして、それ以来、戦争中の七・七禁令の間だけはやめておりますが、あとはずつと営業しております。
  157. 内藤隆

    内藤委員長 証人ダイヤモンド鑑定するについて、基礎的な研究などをしたことはありますか。
  158. 巽忠春

    ○巽証人 ダイヤモンドには、基礎的というようなものは習慣上ありませんで、ただ見ましたときに、つまり経験によりましてやつておるのです。別段それに対する機械もございませんし、それから、何もほかに研究するような材料もございません。ただ宝石に対する本を読むぐらいの程度でございます。
  159. 内藤隆

    内藤委員長 経験によつてダイヤモンド鑑定をする、こうおつしやるのですが、その経験は何年ぐらいやりましたか。
  160. 巽忠春

    ○巽証人 昭和五年から十五年までいたしまして、十五年の七月七日の七・七禁令によりまして営業を廃止いたしました。廃止を届け出ましたのは九月二十五円ごろだと考えます。とにかく三箇月の猶予期間の前に廃業届を出したのであります。それから、その後途中において鑑定の業務を命ぜられまして、それをやりました。
  161. 内藤隆

    内藤委員長 大体において十箇年ほどの経験を持つておるわけですね。
  162. 巽忠春

    ○巽証人 もう少しございますね。それから終戦後いたしておりますから……。
  163. 内藤隆

    内藤委員長 証人は、軍需省の嘱託となつたのはいつごろでありますか。
  164. 巽忠春

    ○巽証人 これは、買上げの始まりましたときにやりました。たしか昭和十九年の九月ごろだと思いますが、辞令をいただきましたのはもつとあとでございました。
  165. 内藤隆

    内藤委員長 辞令はもらつたのですね。
  166. 巽忠春

    ○巽証人 いただきました。
  167. 内藤隆

    内藤委員長 松屋における再鑑定の期間は、何年から何年まででありましたか。
  168. 巽忠春

    ○巽証人 たしか、あのときは、八月の月中ごろから始まつたと思いますが、途中で、その当時の国民兵の教育がございまして、それでたしか休んだと思います。その後でございますから、ほんとうに始まりましたのは九月の月中ではないかと思いますが、それははつきり覚えておりません。たしか七日か八日ごろまで軍事教練があつたと思います。これも記憶が薄らいでおりますから、はつきりわかりません。たしかそんなふうに思つております。
  169. 内藤隆

    内藤委員長 そうして、終つたのは何年ですか。
  170. 巽忠春

    ○巽証人 松屋でございますか。
  171. 内藤隆

    内藤委員長 松屋です。
  172. 巽忠春

    ○巽証人 三月でございます。
  173. 内藤隆

    内藤委員長 翌年の三月ですね。
  174. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。二十年の三月たしか十日か月中ごろではないかと思います。
  175. 内藤隆

    内藤委員長 松屋の再鑑定室における再鑑定状況、あるいは毎日一人で何カラットぐらいを鑑定いたしましたか、その鑑定の方法等を詳細にお述べを願いたい。
  176. 巽忠春

    ○巽証人 方法と申しますのは、品物は大体、最初のうちはデパートの何が来ておりまして、大体一週間分ぐらいの買い上げたものが包みになつていたのであります。それを営団の事務員の女の子が出してくれまして、それを、布を張りましたお盆の上に載せまして、そうしてピンセットでそれをはさんで、ルーペで見て、とれを伝票と比較いたしまして、数量、価格、量目というようなものを調査いたしました。それで、その包みが全部完了いたしましたときには、これを伝票の集計と実際の品物の集計とを合せまして、そうして整理をしまして、お渡ししただけであります。
  177. 内藤隆

    内藤委員長 紙の袋へ入つて来たでしよう。
  178. 巽忠春

    ○巽証人 ええ、一つ一つ封筒に入つておりました。それで、中に買い上げました伝票がございまして、その伝票のところに一緒に、紙に包みましてダイヤが入つておりました。それで、その紙からは営団の女の子が出してくれまして、そうして伝票の上へそれを載せてくれまして、それを私が自分でお盆の上へ載せまして、そうしてそれと照し合せまして、すべての点において相違ないかどうかを見まして、それが合つておりましたらば、判をつくようにいたしておりました。
  179. 内藤隆

    内藤委員長 判をついて、その再鑑定したものを今度はまた元の袋へ入れたのですか。
  180. 巽忠春

    ○巽証人 いいえ、それは別にいたしました。一週間分、一週間分を、一つにまとめました。
  181. 内藤隆

    内藤委員長 ごつちやにしてしまつたのですね。
  182. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  183. 内藤隆

    内藤委員長 それは、ごつちやにせいという指令でもだれか出したのですか。
  184. 巽忠春

    ○巽証人 たしか、そういうふうにやるようにというふうに聞いておりました。だれから言われたか知りません。係の方から……。
  185. 内藤隆

    内藤委員長 聞いておつたというのだが、係というのはだれですか。
  186. 巽忠春

    ○巽証人 それは、名前はよく存じませんです。
  187. 内藤隆

    内藤委員長 久米鑑定人じやなかつたですか。
  188. 巽忠春

    ○巽証人 とにかく、そういうふうに—いずれにしましても、調べましたものを元へ入れておりますと、片づけようがないもんでございますから、伝票全部合計いたしまして、それとこれと引合せまして、一緒にしたのでございます。ですから、数も目方も調べましてお渡したわけであります。
  189. 内藤隆

    内藤委員長 ともかくも、再鑑定したものはごつちやにしてしまつたということは間違いないわけですね。
  190. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。一緒にしませんと、わからないと思います。一緒にしませんと、これが合つているかどうかということがわからないと思いますので、一緒にしておりました。
  191. 内藤隆

    内藤委員長 一日の鑑定能力というか、何カラットでしたか。
  192. 巽忠春

    ○巽証人 それは記憶がございません。これは、ときによりまして、多いときもございますし、少いときもございますし、それから、当りました品物によりまして、ただかまわずとるのでございますから、非常に大量に出て来るデパートと、それから、あまりたくさん出ないデパートとございます。それで、その当りましたときによりまして、量が多いときと少いときとございますが、大体どのくらいしたかは、ちよつと記憶にございません。
  193. 内藤隆

    内藤委員長 現在どうです。ちよつと考えて、一日どれほどやれます。
  194. 巽忠春

    ○巽証人 さあ、これは今ちよつと自分でも考えがつきませんでございます。
  195. 内藤隆

    内藤委員長 再鑑定において、軍需省は、ダイヤの基準を十階級に分類して、そうして各階級。ことに価格を定めておつたようでありますが、証人はその基準によりましたか。
  196. 巽忠春

    ○巽証人 基準でやりました。
  197. 内藤隆

    内藤委員長 十階級の基準によつたのですか。
  198. 巽忠春

    ○巽証人 十階級でしたかどうかは、よく記憶がございません。とにかく階級がございまして、それから、大体窓口の方もそれによつてつたと思います。
  199. 内藤隆

    内藤委員長 ある証人のごときは、三階級ぐらいで片づけたと言つておるのだが……。
  200. 巽忠春

    ○巽証人 それは小さいものじやないかと思います。小さいものは三階級にいたしました。ごくこまかいものでございます。非常にこまかいものでございまして、これは整理ができませんので、A、B、Cと三段階にいたしまして、やりました。それの間違いではないかと思います。三階級というのもございます。
  201. 内藤隆

    内藤委員長 この点がちよつと大切ですが、要するに、再鑑定をしたダイヤをまた元の袋へ入れて、そうして伝票をくつつけるならよくわかるが、再鑑定してしまつたら、こつちやにしたということは、どうも合点が参らないのでございますが、どうですか。
  202. 巽忠春

    ○巽証人 そうですが。買い入れましたものは、窓口へお持ちになつた品物でございますから、いいものもございますし、悪いものもございますし、いろいろのものがございました。それで、それが選別してあるわけでも何でもないものでございますから、そのときに処理しました一口々々を、全部一緒にいたしませんで、これを元へもどしますと、まただれかが処理しなければならぬ。元の伝票につけてもどしましても、これは選別できていないのでございますから、—一緒にしましても、元へもどしましても、選別ができていないのでございます。ですから、これは一緒にいたしまして、私どもが聞いておりましたのでは、工具に使うのですから、工業の方がおやりになると思つて、ただきめられました価格で間違いなく買われているか、—数量、個数、量目でございますが、これが間違いがないかということを検査いたしました。それで、整理上全部のものを一緒にいたしまして、そうして伝票の集計と実際の品物の集計とよく照し合せまして、そうしてそれをその都度、一口整理がつきますと、営団の方にお渡しするというふうにいたしております。
  203. 内藤隆

    内藤委員長 その再鑑定中の十九年ごろは、空襲が最も熾烈をきわめたのだが、空襲などがあつたときは、鑑定中どうしましたか。
  204. 巽忠春

    ○巽証人 結局、はなは、そのままで元にもどすようにいたしましたけれども、それですと危険を生じると思いましたので、小さな箱を持つて参りまして、これには表にガラスが張つてありますが、それに全部整理いたしまして、とりあえずその中に入れまた、ふたは別についてございますが、空襲になりまして警報が鳴りますと、そのふたをして、そのまま元の包みに包んでお渡しする、空襲が終りますとまた始めるということにいたしました。
  205. 内藤隆

    内藤委員長 それはだれに渡したのですか。
  206. 巽忠春

    ○巽証人 それは、その都度営団の女の子が整理したと思つております。それは、女の子がみな一人ずつぐらいついていたように思います。
  207. 内藤隆

    内藤委員長 その女の子がどこか安全なところに……。
  208. 巽忠春

    ○巽証人 それはまた女の子が営団の人に渡しまして、整理していたようでございます。私どもは、ただあてがわれましたものを鑑定しただけでございます。ただ、空襲などの際に非常に危険に思つたものですから、そういう箱に入れてやつておりました。
  209. 内藤隆

    内藤委員長 証人は桐生の再鑑定室の主任であつたようですね。
  210. 巽忠春

    ○巽証人 主任ということはございませんでした。別段そういうふうに言われたことはないのでございますが、ただ、あちらに参りましたのは、最初の松屋の鑑定室において最初から鑑定しておりました者では、私だけが残つておりました。それで、あるいはそういうふうに思われたかもしれません。別段にお前を主任にするということを言われたわけでもございません。
  211. 内藤隆

    内藤委員長 松屋の鑑定室の主任はだれだつたのですか。
  212. 巽忠春

    ○巽証人 別段主任ということは聞いておりません。ただ、年配なりいろいろなことからいたしまして、久米さんを立てていたようでございます。別段主任とかなんとかいうことは何もきまつてはおりませんでした。
  213. 内藤隆

    内藤委員長 桐生の再鑑定室におつたのは何年からですか。
  214. 巽忠春

    ○巽証人 戦争の終りました年、二十年でございます。
  215. 内藤隆

    内藤委員長 何月。
  216. 巽忠春

    ○巽証人 二十年の三月と覚えております。何でも、参りましたあと、翌日か翌々日に空襲がございまして、たしか三月の十日ごろではないかと思いますが、これははつきりわかりません。
  217. 内藤隆

    内藤委員長 それは桐生のどこでした。
  218. 巽忠春

    ○巽証人 桐生の交易営団の桐生支所でございます。
  219. 内藤隆

    内藤委員長 どういう建物です。
  220. 巽忠春

    ○巽証人 洋式の建物でございまして、そこの三階でやりました。
  221. 内藤隆

    内藤委員長 洋式の建物で、鉄筋コンクリートか何か……。
  222. 巽忠春

    ○巽証人 たしか金善とかなんとか言つておりました。詳しく覚えておりませんから、わかりませんが、金善とか、何かそういうビルをもともと営団が使つておりました。その三階で事務を行いました。
  223. 内藤隆

    内藤委員長 桐生にもやはり鑑定人が、あなた以外におつたはずですが……。
  224. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  225. 内藤隆

    内藤委員長 その姓名等御存じですか。
  226. 巽忠春

    ○巽証人 詳しくは存じておりません。とにかく七、八人おりました。
  227. 内藤隆

    内藤委員長 七、八人。そのうち知つた者は……。
  228. 巽忠春

    ○巽証人 中村謙一、岡田信孝とかいう人、それから、それの弟で岡田智禮とかなんとかいう人、—名前はよく存じません。それから杉浦孝一、田村柳吉、まだほかに何人かあつたようでございますが……。
  229. 内藤隆

    内藤委員長 桐生の鑑定室において鑑定した品物は、どこの品物つたのですか。
  230. 巽忠春

    ○巽証人 これは、はつきり覚えておりませんが、地方のようでございました。
  231. 内藤隆

    内藤委員長 地方。それは営団が集めたのですか、また他のものが集めたのですか。
  232. 巽忠春

    ○巽証人 それは、私らにはちよつと記憶がございません。はつきり覚えておりませんが……。
  233. 内藤隆

  234. 巽忠春

    ○巽証人 そういうことも聞いておりました。これは、直接来たのか、営団の方に来たのか、私の方はわかりませんけれども……。
  235. 内藤隆

    内藤委員長 桐生の鑑定室では、カラット数でどれほど鑑定しましたか。
  236. 巽忠春

    ○巽証人 そういうことは、私どもには全然わからないのでございます。これは、全量もわかりませんし、その都度やりますので、それに自分が一人でやらないものでございますし、これに対する記録もこしらえませんから、ちよつとわかりかねます。
  237. 内藤隆

    内藤委員長 証人は、終戦後占領軍の嘱託となつて、日本銀行で整理に当つたようですが……。
  238. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  239. 内藤隆

    内藤委員長 そのときの事情を少し述べてください。
  240. 巽忠春

    ○巽証人 やりました事情でございますか。
  241. 内藤隆

    内藤委員長 ええ。
  242. 巽忠春

    ○巽証人 私が栃木の方に疎開しておりますときに、警察の方から呼出状が参りました。それで、外務省の渉外課の古谷という方のところへ出頭するようにということで、そこで、そこへ出頭いたしましたところが、アメリカン・クラブへ行け、こういうわけで、アメリカン・クラブの、向うの佐官でございますか、尉官でございますか、何かそういう程度の方にお目にかかりまして、結局は、鑑定をするように、こういう命令でございます。自分といたしましても、東京にまだ在住しておりませんし、それに、それをやりますれば、自分としてもからだを縛られてしまうと思いまして、お断りを申し上げたのでございますけれども、どうしてもやらなければいけないという命令でございますので、それでお引受けをいたしました。それは二十一年でございましたか、これはちよつと記憶がございません。たしか終戦の翌年でございますから、これはお調べくださればわかると思います。二十一年の六月、ころにその業務に携わりました。そうしまして、日本銀行の地下室へ出頭いたしまして、中で向うの隊長から品物を出されまして、それを初めに洗いまして、それから後、大きさによつてわけられまして、それをその後日銀の三階で、明るい所でこれを検査いたしました。
  243. 内藤隆

    内藤委員長 そのときの鑑定人は、あなた以外に何人ほどおりましたか。
  244. 巽忠春

    ○巽証人 私と、久米さんと、松井さんと、城谷さんでございます。この四人です。そのほかに、アメリカからフオーシャグという者と、ヘンダーソン、この二人でございまして、六人でございます。
  245. 内藤隆

    内藤委員長 それから、接収解除後、さらに大蔵省の嘱託になつて、日本銀行で再調査に当つておられたようですな。
  246. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  247. 内藤隆

    内藤委員長 大蔵省の嘱託となつて調査をやつたものと、終戦後占領軍の嘱託となつてつたものと、同一品でしたね。
  248. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。同じものです。
  249. 内藤隆

    内藤委員長 そうして、同じような方法をもつて調査をやつた、こういうわけですね。
  250. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  251. 内藤隆

    内藤委員長 委員長の尋問はこの程度にとどめて、委員諸君発言を許します。門禮輝三郎君。
  252. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 おかけになつていてください。証人は、松屋におきましても再鑑定のお仕事をやつておられたとのことでございます。そういうお話をさつき承りましたが、再鑑定主任というのはあなたじやなかつたでしようか。あなたが主任で再鑑定をおやりになつてつたように聞いておるところもあろのですが、いかがですか。  それから、再鑑定の場合に、さつき委員長から聞かれました点について、一日にどのくらいのカラット鑑定をすることができるかということで、記憶がないとのお答えでありましたが、大体どのくらいできるかということは、十年も十五年も鑑定をおやりになつておるあなたとして、経験者として、十分にその点はおわかりになると思うのであります。そのときの記憶がないといたしましても、今日あなた方が再鑑定をされるといつた場合のやり方としては、およそどのくらいできるだろうかということは、経験に基く証言ができると思うのであります。この点についてお尋ねいたします。
  253. 巽忠春

    ○巽証人 発言してよろしゆうございますか。
  254. 内藤隆

    内藤委員長 どうぞ。
  255. 巽忠春

    ○巽証人 最初は、松屋の……。
  256. 内藤隆

    内藤委員長 主任かどうか……。
  257. 巽忠春

    ○巽証人 主任ということはございません。年齢から申しましても、すべての点で私の方がずつと後輩でございまして、ことに主任とかなんとかいうようなことはきまつていなかつたと思います。ただ寄つて鑑定をいたしましただけであります。それでよろしゆうございますか。
  258. 内藤隆

    内藤委員長 それから、もう一つの、どれほどのカラットを一日鑑定できるかということ。
  259. 巽忠春

    ○巽証人 それは、どうも自分にも記憶がないのでございます。どう申し上げてよろしゆうございましようか、自分にもほとんどそれに対する記憶がないのでございます。あれば申し上げたいのでございますけれども、それに、その都度、—先ほども申しましたように、割合に量が多かつたデパートもございますし、少いデパートもございましたし、後ほど相当に出るようになりましたデパートでも、最初のうちはあまり出ませんでした。それで、量も一定しておりませんので、これは、品物をたくさん置きまして、それを鑑定するのでございますと、これはまた相当できるのじやないかと思いますが、伝票と照し合せてでございますから、これははつきりいたしません。ちよつと自分にもこれだけはわかりかねると思います。
  260. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 松屋における再鑑定の主任は先輩がおつた、そうすれば、その先輩はだれでございますか、そして久米という人じやなかつたですか。
  261. 巽忠春

    ○巽証人 久米さんも喜多村さんも私より先輩でございまして、ただ、一番のお年がしらであり、経験者ということでは久米さんでございますから、無理にいたしますれば、そうなるかもしれませんが、別段に主任とかなんとかいつてきめられたわけではございませんで、みな同じであります。年齢は違つておりましても、顔見知りの友だちでございますから、別段主任とかなんとかいうことはきめていなかつたのではないかと思います。
  262. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そこで、われわれは、何日もここに証人に来てもらつて、調べて、非常に不思議に思えるのは、先ほど委員長からも尋ねておりましたが、店の方から買上げしたものを状袋に入れて持つて来たものを、再鑑定する場合に一緒にしてしまう、一緒にしてしまわなければわからないということをさつき言われましたが、一緒にすることが、かえつてわからなくなるのじやないかとわれわれは思うのでありまして、あなた方の言われるような、一緒にしなければわからないということは、どういう意味でありますか。われわれは、わからなくするためにわざわざ一緒にしておるというふうにしか思われないのでありますが、その点について、われわれが納得できるような説明をしていただきたい。
  263. 巽忠春

    ○巽証人 これは、現物をごらんに入れて説明申し上げれば、一番よくわかるのでございますけれども、伝票と品物と参りまして、調べたものをまた元の状袋へ入れますと、これをまたあとの人が調べなくてはなりませんし、一包み一包みになつておりますものですから、それをやりますと、いつまでたつても整理がつきません。これを、あるいは買い上げたものの伝票の入つているのがもうすでに選別のできたものというお考えかと思いますけれども、これは、ただ買い上げました記録がついておりますだけで、中には、それに附属しておりました金とかプラチナとかいつたような、どういう地金がついておるかという、その地金までもたしか書いてございました。そして、地金の方はたしか伝票が違つていると思いました。とにかく、出しまして伝票と引合せたものを、一まとめにいたしまして、その数量とこちらの数量と合うようによく見まして、そして合つておりましたら渡すというようになつております。これは全然間違いはございませんでした。これは、コストと目方とを調べまして、現物の方もコストと目方とを調べまして、また伝票の方もコストと目方を集計いたしまして、それを一緒にしてお渡ししております。それから、一週間々々々で各デパートなりほかのところの分が集まつて参りますから、これでもたいへんな量だと思います。そういうふうな整理でないと整理ができ得ないのではないかと思いますが、これはどういうふうに申し上げたら了解していただけますか……。これは、ことさらにわからなくするというような意味は全然ないのであります。
  264. 内藤隆

    内藤委員長 証人に申しますが、こういうのじやないですか。大きなカラツトのものを、良質なものは別にとつたのじやないですか。
  265. 巽忠春

    ○巽証人 そういうことはございませんでした。
  266. 内藤隆

    内藤委員長 よいものも悪いものも……。
  267. 巽忠春

    ○巽証人 一緒でございました。
  268. 内藤隆

    内藤委員長 小さいものもごつちやにしたら、整理にならぬのじやないのですか。
  269. 巽忠春

    ○巽証人 整理ではございません。私どもがやりましたのは、買上げが適正に買上げられているかどうかということの再調べをいたしましただけで、私どもは整理はいたしません。整理は後ほど工業に適するものの上下によつて、工業の方がおやりになると伺つております。私どもは整理をいたしたのではございません。ただ、品質が間違いなく買われているかどうかということを調べましたのです。
  270. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、鑑定人は、だれかの指示がなければ、それをこつちやにし得る権限がないはずだが……。
  271. 巽忠春

    ○巽証人 それは、もちろん営団の方から、そういうふうに整理をしてくれと言われたのじやないかと思います。
  272. 内藤隆

    内藤委員長 だれだつたか、記憶ありませんか。
  273. 巽忠春

    ○巽証人 自分でも記憶がございませんし、係の方も何度かかわつておりまするから……。初めのうちは、どの人が軍需省の方で、どの人が営団の方か、わかりませんので、ただやつておりまするうちに、こういうふうにしてやつてくださいというので、あとはそのしきたりでやつておりました。
  274. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは、あとからお尋ねするとよくわかつて来るのでありますが、そういう、まぜてしまつたということがどういう意味つたかということが、あとでわかると思いますが、われわれが考えると、そういう場合には、再鑑定なら再鑑定をしたというので「再」という字をつけるとか、何か状袋にしるしをつけておけば、どれだけのものがあつて、どれだけの値段で買い取つて、どういう質のものだといえことが、はつきりそこにある程度のメモができるはずなんだ。そうすると、あとから整理しなくとも、一番よくわかる。ことに、工具なら工具向きとか、あるいは不向きのものなら「不」とか作んとかつけておけば、相当整理ができると思うのですが、その点は、あなたはどう思われますか。
  275. 巽忠春

    ○巽証人 それは、もう一度手数をかけまして整理をすることになれば、これはもちろんその方がよろしいかと思います。ただ、それですと、もう一度袋から出して、また数を調べたり目方を調べたりしなければならぬことになると思います。
  276. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 松屋の再鑑定室には、だれか軍需省からも出張していたのではないか。それからもう一つは、先ほど委員長からの質問つたと思いますが、今までの証人が、ここに来て、三階級くらいにわけておつたと言うのでありますが、あなたは、三階級じやなく、大分詳しくわけておつたように今言われたと私は思うのだが、証人が出て来るのに、順々にあとから出て来る人が、前の人よりは都合のいいようにかわつて行くような傾きがありはしないかと思うのであります。三種類にわけておつたということを何べんも今まで証人がここに来て言うておるのに、あなたはそうじやないと言われるのは、ほんとうにそうですが。もう一ぺん詳しくその点をひとつ……。
  277. 巽忠春

    ○巽証人 それは、やはり直接におやりにならない方の記憶違いではないかと思います。三階級になつておりましたものは、俗に私どもで言つておりますメレーといいます小さいものであります。ごく小さいものは別に使われておりますが、これはたしか、最高七百五十円、中間を五百円、下を二百五十円、この三段にわけたと思います。それから、大きいところは、何階級でありましたか、ある程度の階級をこしらえてございまして、ことに同じ品質でも、また大きさによりますと値段がかわつて参りますので、非常に段階がたくさんついていたのであります。これはもちろん、私は自分の記憶ではそう思つておりますので、決して都合のいい証言をしておるのではないのでございます。これは、その当時の新聞をごらんくだされば、いくらかこれが載つているのじやないかと思います。その規格については、大体当時の新聞に出ているはずだと思います。三段階ではなかつたと私は思つております。これは、おつしやつた方の記憶違いではなかつたかと思います。  軍需省の方が鑑定室においでになりましたかどうかは、私にはちよつと記憶がございません。
  278. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなた方は、軍需省の嘱託で鑑定をしたのじやないですか。そうすると、軍需省の嘱託で鑑定した人が、軍需省の人が来たか来ないかということを知らぬということは、一体どういう意味でありましようか。
  279. 巽忠春

    ○巽証人 それは、私どもはただ、初めに、軍需省の嘱託であるか、営団の嘱託であるか、それさえもよくわかりませんでした。ただ鑑定をしろということでございまして、そして命令を受けまして、ただ場所は交易営団に出てやるようにということで、出ました。それで、その品物の方は見ておりますけれども、そのお顔は初めての方で、どの人が軍需省で、どの人が営団の方かは存じません。ただ最初に私ども一緒に言われまして参りましたのは、—いろいろのことを直接に言われましたのは田中さんという交易営団の課長の方でございます。それで、その方と一緒に最初にデパートを一回見て歩いたことがございます。
  280. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どうも、おかしいですな。あなた方は、一応軍需省に呼ばれまして、嘱託になつて、辞令をもらつて、それからこの鑑定を引受けたものであると私どもは考えておるのでありますが、あなたは、月給なんかもどこからもらつてつたのですか。やはり軍需省ではないかと思いますが、そういう点からすると、どうもあなたの言われることがわからない。おそらく軍需省の人がちやんと監督されておつたはずなんだが、実際軍需省の人が寄りつかなかつたのか、こういうことが非常に本委員会の問題になるのであります。隠さないで言つてください。
  281. 巽忠春

    ○巽証人 別段に隠しておるわけではないのでございますけれども、ただ直接営団の方へ参りましてやりますだけで、ただいま辞令のお話もございましたが、辞令の出ることも私どもは存じませんでした。よほど遅れてから辞令をいただいたのであります。もうほとんど松屋において鑑定が終るころに辞令をいただいたように思つております。それで、給料の点なども、たしか営団の方へ出席いたしますと、出席した判を押しておりまして、それによつて渡されておつたように思つております。たしか営団からいただいたと思つております。これは、どちらの方からお金が出ておりますか、私はわからないのでございますけれども、営団のその方の係の方からお金をいただいたように思つております。
  282. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうすると、あなたは一体だれから—今まで出て来られた鑑定人は、軍需省の嘱託で、軍需省から頼まれてやつた言つておるのだが、そう言われると、あなたはだれから頼まれて、だれがやれと言い出したのですか。偶然そこへ現われてやつて、判を押したら月給をくれて、鑑定をやつたのですか。だれから頼まれて、だれの仕事をやるつもりでやつたのですか。ダイヤというものは、国民が非常に大事にしておる宝で、これを戦争に勝つために犠牲的に出しておるのでありますから、そう軽率にあなた方が取扱われるはずはないと思われますが、あなたはどういうつもりで、だれから頼まれたのか。どこの仕事かわからないような状態でおやりになつたのでありますか、その点をお尋ねします。
  283. 巽忠春

    ○巽証人 最初に、たしか業者の寄合いがどこかであつたかと思います。それに、命令があつて寄り合つたように思いますが、そうして、こういうことをやることになつた買上げが始まつたというのでして、その記憶がどうも薄らいでおりまして申訳はないのでございますけれども、ちよつと、どういうように申し上げてよろしゆうございますか、別に隠しておるわけではないのでございますけれども、どこかで寄り合いまして、クラブかホテルでしたか、何かそういうところへ呼ばれて参りまして、そこへ軍需省の方も営団の方もおいでになつて、そこで規格をこしらえたと思います。買い上げるいろいろな規格でございます。そうして、それが先ほど申し上げました五段階か十段階か存じませんが、こまかな段階でございます。それで、初めにはこまかいところもついておりましたけれども、それがあまりこまかいと、とうていそれはやりきれないものでございますから、小さいところは三段階になつたと思つております。そこで、どこでだれに言われたかは、自分でもそのはつきりした記憶はないのでございますが、ただその前に、参謀本部ですか、何か昭和通商を通じて来て、鑑定をいたしました。その私ども鑑定をやつておりました関係で、そういう話があつたのだと思います。それから、業者のものを集めるつもりでおりましたのが、中止をいたしまして、一般の買入れということになりました。ですから、そのときに全然何もやつていないところに急に言われたものでなく、そういつたことでございましたから、だれから言われたということは、自分でもよくわからないのでございますけれども、その点は、やはり久米さんあたりが御存じなんではないかと思います。私には、それがよくわからないのです。
  284. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうすると、きわめてあいまいな、どこでどういう仕事をするのかわからぬような状態でやつたんですな。しかし、あなたは桐生において再鑑定の主任をやつたんではなかつたのですか。
  285. 巽忠春

    ○巽証人 先ほども申しましたように、別段に主任ということは、いつのときでもきめられてございません。ただ、先ほど申し上げましたように、最初の松屋でやつておりましたときの久米さんだの喜多村さんだのが、もうおいでになりませんで、私だけになつてしまつたので、あるいはそういうふうな感じを持たれておるのかもしれませんが、別段に主任だから特別にどうという何はございません。集まつておりますのは、みな友達でございます。
  286. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうすると、何人おつたんですか。そうして、あなたはその中でのやはり古参であつた、という言葉ならいいのかもしれんが、古参とか、どうですか。主任という報告が来ているのだけれど、あなたはもうなるたけそうじやないような立場に話をした方がぐあいがいいという気持もあるのだろうから、ここではそうじやないというふうに承りますがね。結局あなたが古参であつたということでもいいのでしよう。
  287. 巽忠春

    ○巽証人 別に主任でもさしつかえたいのでございますけれども、何もきめられておりませんでしたし、それは、先ほど申し上げましたように、営業では別段に古参ではございませんが、私ども年の順から、あるいは営業の順から行きますと、下から三、四番目くらいの順位であつたと思います。私より年の行つた人が何人かいらつしやいますけれども、ただ営団としましては、私が松屋の営団から続いておりますので、その意味では古参でございます。これは、主任となりましても、別段に私ちつともさしつかえないのでございますけれども、ただ、そういう役目をつけていただいておりませんので、ただみんな寄つて、やつておりましただけでございます。主任ということになりましても、別段に私は一向さしつかえないのでございます。
  288. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 東京からダイヤを運びましたね。
  289. 巽忠春

    ○巽証人 はい、運びました。
  290. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 何回に、どういうふうな方法で運んだのでしようか。そのときの状態を話してください。
  291. 巽忠春

    ○巽証人 それは、空襲もはげしくなつて参りましたので、松屋ではやりきれませんので、地方でということになりまして、そういうことを言い渡されまして、桐生へ行くからという命令でございました。それで、先ほども申し上げましたが、二十年の三月十日か十二、三日と思います。1これは記憶がございません。その時分に、営団の方と、それから鑑定人が、たしか全部一緒でなかつたかと思いますが、上野発の汽車で参りまして、そしてその間に品物の方は営団の方がすつかり整理をなすつてお持ちのようでございました。そのときに来ておりましたのは、警視庁でございましたか、上野の警察の方でございましたか、刑事さんが一緒に乗つてくださつたと思います。そうしまして、駅に着きますたびに、警官の方が大丈夫かどうかということを聞いてくださいまして、それで桐生に着きましたときは、たしか桐生の方の警察から迎えに来ていただきました。そうして運んだものと思つております。これは、私どもただ便乗いたしましただけでありまして、自分たちは何にもいたしておりません。
  292. 明禮輝三郎

    ○明禮委員  一回だけですか。
  293. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。一回だけでございます。
  294. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それから、桐生から東京の方へまた帰つて来ましたね。そのときには一体どういうふうにして運んだのか、桐生から東京に帰るとき、何回に運んだのか……。
  295. 巽忠春

    ○巽証人 私は、東京へもどつておりません。それでどういうふうにして運ばれましたか、これは私は全然存じません。これは営団の方がおやりのようでありまして、これについては、私どもは全然一緒に行つたこともございませんし、この仕事のために東京へもどつたということはございません。
  296. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 実は、今伺つているのは、桐生の方へ疎開したものはよかつたけれども、それから東京の方が空襲がひどいので、東京の方へ帰つて来るのは非常に危険があるというので、東京の方へ一応返した形に途中でなつたけれども、実際は桐生の方にダイヤは相当残つてつたのじやないかと思われるのでありますが、その点は証人は知りませんか。
  297. 巽忠春

    ○巽証人 その点は、私には全然わかりません。ただ私は鑑定をさせられましただけで、その運搬ということにつきましては、どこにどういうふうにしてあるかということに対しては全然関知いたしておりません。業務外のことでございますし、これは私どもの全然知らないことでございます。
  298. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それはわからないかもしれないけれども、あなたは知らないと言われたのだが、大体あなたが古参で、ダイヤを全部調べて桐生へ送りつけたのであるから、あとから帰つたときに、全部あつたかどうかということを調べたことはないのでありますか。
  299. 巽忠春

    ○巽証人 そういうことは全然ございませんです。ただ私ども鑑定人品物鑑定いたしますだけで、数量とかすべてのことは、—自分鑑定したものだけは、その都度都度はやりますけれども、全体の集計とか、あるいはまたこれを終つたものの整理とかいうことは、全然タッチいたしておりませんので、これは営団の方において……。私どもにはわからないのであります。
  300. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 桐生で保管されました倉庫ですね。東京から疎開して、ダイヤを保管されましたり、帳簿その他を保管されました倉庫は、証人は見たことがございましようか。その倉庫は焼けたでしようか、焼けなかつたでしようか。そういうことについては証人は知つておられますか。
  301. 巽忠春

    ○巽証人 存じております。これは、最初に警官の方と一緒に参りまして、たしかあの交易営団のところを少し通り過ぎました、同じ左側の安田銀行何支店でございましたか、安田銀行の倉庫に入れていただいたと思つております。そして、桐生は空襲がございませんので、—一、二回あつたようでございますが、火災を起すような空襲はございませんので、その後はどうか存じませんが、戦争では焼けておらないと私は思つております。
  302. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうしますと、そこに入れた書類なんかも、全部保管してあつて、焼けなかつたはずでありますが、ところが、松屋における営団本部の重要書類は、松屋が焼ける前に、これは桐生に疎開したのでありますから、書類はまつたく完全な姿で全部この倉庫の中にあるわけだと思うのでありますが、証人は、松屋から引越しをした今のダイヤはもちろんのこと、重要書類も全部その倉庫にあつて、焼けなかつたものだということを御承知ではないでしようか。
  303. 巽忠春

    ○巽証人 その倉庫は焼けておりませんけれども、松屋から書類を運ばれましたか、あるいは整理したものを松屋の方に運ばれましたか、そのことにつきましては、私は全然存じません。そういうことには全然タッチを許されておりませんし、またタッチいたしておりません。ただ品物鑑定をしておりましただけで、それ以上のことは全然、私にはまつたくのところわからないのでございます。
  304. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そういうことはないでしよう。自動車に乗つて警官が送り迎えに来て、その書類を持つてつたのです。そして、その中にあなたは入られて倉庫に格納したということが、ちやんとわかつている。その書類が全部そこに入つたことまでは見ているはずです。そうすると、その後にこの安田銀行の倉庫が焼けたことがない、空襲を受けなかつたという以上は、そこにあるところの書類は全部焼け残つているということをあなたは知つておられるはずだと思いますが、いかがですか。なるほど、あなたはダイヤ鑑定する役であつたかもしれないが、一緒について行つて一緒に行動をしている以上は、そういうことはわかつているはずじやないですか。いかがですか。
  305. 巽忠春

    ○巽証人 それは、私どもの存じておりますことは、梱包されておりました箱でございましたかどうか、それに入れたものを届けるまで一緒について参りましたけれども、中に何が入つておりますか、書類が入つておりますか、未整理のものが入つておりますか、整理したものが入つておりますかということは、私はまつたくのところ知らないのであります。全部整理の済んだものが疎開をされ、もしかお持帰りがなかつたならば、確かにその箱にあつたわけでございますが、それは、私どもはその中を見ておりませんので、その内容がどういうものであるということは全然知らないのでございます。これは、まつたくのところ自分としても知らないのであります。
  306. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 しかし、常識で考えてみて、あなたは一緒に乗つて行かれたのだから、これはダイヤだ、これは帳簿だというくらいのことは、わかりそうなものですが、あなたは、ここにある箱にダイヤが入つておるのか、帳簿が入つておるのか知らないので、箱を載せて行つたということになりますが、その点は……。
  307. 巽忠春

    ○巽証人 私は、そういうことは伺いませんでございましたけれども、入つておるものは、もうすでに整理のついた書類はわざわざ運ぶ必要はないので、未整理のものを運んでおられるのだと存じておりました。内容の点に至りましては、箱が幾つであつたかも、自分では二つ、三つあつたのではないかと思いますが、そういうことの内容は全然聞いてもおりませんし、全然知らないので、これは何と申されましても、まつたくのところ私にはわからないのでございます。
  308. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ちよつと、私の質問とあなたの答えとは違つたようなのです。私がお尋ねしたのは、自分がついて行つたときに、この箱の中にダイヤが入つておるかいないか、この中には書類が入つておるかいないかは全然わからないような状態で、ただついて行つたとおつしやるのですかということを尋ねておるのです。自分でついて行つたときに、これにはダイヤが入つておる、これには書類が入つておるということの見わけがついたのか、つかないでただぼんやり箱を積んだのに乗つてつたのかという点を聞いているのです。
  309. 巽忠春

    ○巽証人 それは、私にはわかりません。ダイヤだと思つておりまして、それに何が入つていたかは、これは外部の者には全然わからないようになつています。
  310. 内藤隆

    内藤委員長 証人ダイヤだと思つてついて行つたんでしよう。
  311. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  312. 内藤隆

    内藤委員長 それでいいんですよ。
  313. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ダイヤだと思つてついて行つたことは間違いないが、それに附属した帳簿も一緒にあるんだという認識があつたはずだと思うのですが、それはなかつたということなら、ないでよろしいんです。そこで、証人は現在神田でダイヤの卸をやつておりますが、あなたはどのくらいのダイヤを現在手元にお持ちですか。ダイヤをどの方面からお買い入れになるのでございますか。あなたのお店のダイヤはどういうふうになつておりますか、そこを説明していただ史たい。
  314. 巽忠春

    ○巽証人 そんなにたくさんのダイヤはございません。ただ、ダイヤばかりでなく、いろいろな細工物や、ほかの宝石などもまじつておりまして、これはお仲間の方からわけていただくようになつております。それから、手持もというのは、いろいろなものをまぜまして、はつきりわかりませんが、百万前後ではないかと思います。そのときによりまして多い少いがございますので、わかりませんが、今そんなものではないかと思います。
  315. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 昭和二十七年の一月当時にはどのくらいお持ちでございましたか。そしてその当時一番大きなダイヤは何カラットくらいのものでございましたか。
  316. 巽忠春

    ○巽証人 量は同じようなもので、いくらか多かつたかもしれませんが、どのくらいのものが一番大きいかということは、ちよつと今記憶にございません。
  317. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どのくらいの額ですか。
  318. 巽忠春

    ○巽証人 ちよつと今記憶にございません。
  319. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 大蔵省調査されているものに、あなたの昭和二十七年一月のダイヤモンド等貴金層類は一千百三十二万七千九百円となつておりますね。その点は違つておりますか。
  320. 巽忠春

    ○巽証人 私はそれだけ持つておりません。どこでお調べになつたか、私にはわかりません。
  321. 内藤隆

    内藤委員長 証人に申しますが、預かつたものでもあるんですか。
  322. 巽忠春

    ○巽証人 ときには預かることもございます。
  323. 内藤隆

    内藤委員長 預かるときは、預かり証でも出しますか。
  324. 巽忠春

    ○巽証人 この商売は、預かり証というものは出しておりません。
  325. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 二十七年一月に、あなたのところで一千百三十二万七千九百円という報告大蔵省から来ているが、そのときのダイヤモンドの一番大きいものはどのくらいであつたか。
  326. 巽忠春

    ○巽証人 そんな調査があるといいますが、私には覚えがないのでございます。
  327. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうすると、そういうものはどういうところからあなたの手に入つて来るんですか。先ほどは、どうもあいまいでしたが、預かつたものがどのくらいあるとか、あるいは、どこから買つたとか、そういうことはどうですか。
  328. 巽忠春

    ○巽証人 それはお仲間でございます。
  329. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 仲間と言つてもわからないが、どういうお仲間ですか。
  330. 巽忠春

    ○巽証人 古物を買つている方とか、それから、売買する方でございます。
  331. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どういう方ですか。
  332. 巽忠春

    ○巽証人 結局、三越の中島さんとか、東横の緑川さんとか、その他いろいろな方から買つております。それは御調査願うとわかると思います。
  333. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 預かるものには、あなたの商売では預かり証は出さぬと言いましたが、そうですが。
  334. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。大体そういつたものは、自分たちでも、万一、そういうときでございますと、いただくようにはなつておりますけれども、顔見知りの方でございますと、預かつた方の側では何も出しておりません。
  335. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは百万、二百万くらいのものでも出さないんですか。
  336. 巽忠春

    ○巽証人 もちろん預かつたという何を出したことはございません。私どもは顔見知りの方が多いのでございますから……。
  337. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 私がお尋ねしておるのは、百万、二百万円くらいのものでも預かり証は出さないようになつておるんですかと聞いている。
  338. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  339. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 われわれの常識では、時計一つ直すにしても、デパートでみな預かり証をもらうんですが、百万、二百万円のものを預けて、預かり証ももらわないで、預けた人はずいぶん心配で、帰つて眠られないだろうと思う。このダイヤが接収されたときに、営団の連中がアメリカヘ、ダイヤ受取り証をもらわないで渡してしまつたというのは、これは拳銃で今にも狙撃するぞというような調子であつたもんだから、もらわないで渡したと言うが、ところが、あなたの今の預かりは、平常の時分でありますから、こわいことも何もなかつただろうと思うが、受取りをとらないで預ける人も、ずいぶん気のいい、度胸のいい人だし、それを預かる人も、非常に度胸のいい、信用のある者だと思うのですが、われわれの常識から言うと、どうもあなた方業者のそういうことをおつしやるのは理解できぬのでありますが、一体みんながそうですが。どの商人もそのようなことをいたしますか。
  340. 巽忠春

    ○巽証人 これは、品物を渡しまして間違いの起る方には、自分らとして渡しません。金を払つていただけない方には渡しませんで、わかつている人だけでやつておりますので、昔から商習慣として、ほとんどそれに対する受取りというものはいただいておりません。
  341. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その預かつたときに、あなたの方には台帳があるでしようから、預かり台帳とかなんとかいうものにでもつけるのですかということを尋ねるわけです。
  342. 巽忠春

    ○巽証人 私ども、全然知らない方からはお預かりしたこともございませんし、わけていただいたこともないので、預かりましても、別段何もつけておりませんし……。
  343. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 預かり台帳なんとかいうものもつけないのですか。
  344. 巽忠春

    ○巽証人 つけません。
  345. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうすると、あなたの取引は古物なんでしよう。古物だとすると、古物営業法違反になつておりやせんかということです。いかがですか。
  346. 巽忠春

    ○巽証人 それは、そう申されますと、あるいはそういうことになるかもしれませんが、習慣でそういうふうになつておりまして、預かりましても、売れる場合もございますが、売れればつける場合もありますけれども、売れなければ、預かつてつても、すぐまた返してしまうということになるのです。
  347. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは度胸がいいですね。
  348. 内藤隆

    内藤委員長 巽証人の話は、知らぬ者から預からぬというのです。しかし、銀座の丸嘉なんかは、名前も所も知らぬ者から百万円くらいのものを預かつておる。そういう場合も受取りを出さぬ、こういう……。
  349. 巽忠春

    ○巽証人 これは、私にはわかりません。
  350. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの店にはない。しかし、銀座の丸嘉というところは、日本的な代表的な店でしよう。
  351. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  352. 内藤隆

    内藤委員長 そういうところが、そういうことをやつておる。だから、明禮委員はその点をお伺いしておるのだと思いますが……。
  353. 巽忠春

    ○巽証人 私の方は、しろうとの方とか、全然知らない方とのお取引がございませんで、そういうことを全然やりませんですから、もう知つた方以外はやつておりません。
  354. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 証人が占領軍から嘱託をされ、日銀で接収ダイヤの整理に当るときに、ダイヤの入つておる袋の中に、ダイヤと一緒に砂が入つてつたことがありはしなかつたかどうですか。
  355. 巽忠春

    ○巽証人 砂と申しますと、それはわずかの砂やごみは入つてつたと思います。
  356. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 証人はへんなことを言われちや困る。それは、ごみはどうか知らないが、砂というのは、ダイヤと同じくらいに見られるような砂が大分入つてつたということを今まで言つておる者があるのでありますが、証人はそれをごらんになつたことがあるかということを尋ねておる。
  357. 巽忠春

    ○巽証人 さあ、入つていないと思いますけれども、私、見たときには、砂などは入つていなかつたと思いましたが……。
  358. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 阪田管財局長証言のときに、砂が入つてつたものがあつたということを言われたように聞いたのでありますが、あなたは、ダイヤの包みを整理したものを保管したことがありはしませんか。今のあなたが保管しておつたものの中に、ダイヤと一諸に砂が入つてつたものを保管しておつたことがありはしませんか。あなたは大蔵省で再鑑定したときもあるでしよう。
  359. 巽忠春

    ○巽証人 お答えいたします。それでございますと、紙包みに、砂ですか、ダイヤの粉ですか、わかりませんものが若干ございます。それのことでございましようか。私はダイヤの保管などは一度もしたことはございません。それでよろしゆうございましようか。
  360. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 今の、あなたが砂と見られるようなものが入つてつたというのは、一体どこで入つたとあなたはお考えになりますか。それをお尋ねします。
  361. 巽忠春

    ○巽証人 これは、私にはわかりませんでございます。とにかく、最近にその鑑定しました中に、砂のようなこまかいものでございますが、これはダイヤの粉か、砂なのか、そのまじつているような粉の包みが一包みございます。それは中に入つております。それはどこで入りましたか、どういう状態でそういうようになつておりますか、私にもわかりません。
  362. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 証人はひとつ隠さないで言うてください。きようは衆議院にあなたは証人として来て、何事をも隠さないということになつておるはずだが、あなたは鑑定を十年も十五年もやつたダイヤについて相当見識のある人である。その人が、ダイヤか砂かわからないようなものがダイヤの包みの中にあつたということは、一体あなたはどういうことを言われるのか、あなたの目で見て砂かダイヤかわからないのでありますか。そういうことが今日疑惑の的になる。先ほど言つたように、あなた方が鑑定をして、—みんなから松屋で買い上げて、初めのうちは安く買つて、おしまいには順々に高くなつて、一ぺん持つてつたら、持つて帰るわけには行かなかつた、みなばかに安いと思つても、取上げられて、それを再鑑定というて奥に持つてつたら、一緒こちやにしてしまつて、だれが持つて来たのか、どういうものかわからぬようにして、おしまいには、こうやつて方々で調べているうちに、ダイヤか砂かわからないものがダイヤの包みの中から出て来る、こういうことで世間の疑惑が強いのだ。われわれ調べておるのは、そこにある。一体あなたが、今日、十分な経験者、鑑定人として、どこから頼まれたのか、どういう立場かわからないようなお話をなさるのも、みなここにある。再鑑定をするときに、一緒にしなければ区わけがつかぬとか言うが、一緒にしておいたら、あとで砂とまぜるのに非常にぐあいがよくなるから、こういうことをやつたのではないかという疑惑が多い。一体どういうように思いますか。あなたが、鑑定人として、砂かダイヤかわからないということはいけない。はつきりここで、砂が入つてつたことを見た、こういうことを言われるか、それは砂じやない、ダイヤの粉だと言われるか、あなたのようなダイヤについての権威者がここで証言をするのに、砂かダイヤかわかりませんなどという証言はないと私は思うが、いかがでありますか。
  363. 巽忠春

    ○巽証人 私は装身具しかやつておりませんので、粉になつてしまいまして、しかもそれが黒くよごれておりますと、何か化学的な試験でもやりませんと、肉眼では、まじつておるかもしれませんし、砂ばかりかもしれないのでございますが、これは装身具の方の鑑定人にはわからないのでございます。装身具には砂などはございませんから、これは工業の方の方でないとわからないと思います。それで私には、その中にダイヤの成分が入つておりますか入つておりませんかということも、ちよつと見た目にはわからないのでございます。装身具でございますと、宝石に類する方のダイヤでございますと、かなり小さなものでも、すべて手が入れてございません、完全にカットがしてございます。これの方はわかりますけれども、ダイヤの原石なんかになりますと、あらかたはわかりますが、完全には私にはわかりません。それで、私どもの扱いますものは、昔から装身具になりましたものしか扱つておりませんので、買い上げしましたときも、そういうものを対象に買いましたので、私は何にも隠しておりません。その辺をひとつ御了解願いたいと思います。
  364. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 御了解はできません、そういう話では。そこで、私がお尋ねしたいのは、それじや、あなたはそのときに、自分の責任として、これは砂であるかダイヤであるかを鑑定させるなり何なりしたことがありますか。もう一つは、そのときに大蔵省の係官はだれであつたか。その係官は、その砂は捨ていと言つて捨てさせたそうたが、その捨てたのはどこに捨てたか、あなたはそれを知つておられるはずです。こういう点で、あなた方のやられた鑑定人の職責がどこまで果されてあるか。もしあなたの言われるような事情であつたならば、その品物が、はたしてダイヤがそうなつたのか、砂が入れてあつたかを鑑定さしてまでもはつきりして、責任を問われないようにしておくのが、あなた方鑑定人としての国民に対する大きな義務であると思う。そういうことがやつてあるかどうか。あなた方は、ただ月給さえもらつたらよい1月給たつて、月に一千円くらいもらつたという話であるが、その時分の一千円というものは、今の金にすると大きな月給だと思う。この点について、あなたは、この衆議院において証人として、隠さないで実際を証言していただきたい。
  365. 巽忠春

    ○巽証人 先ほどから私は何にも隠しておらないのでございますけれども、どういう点で誤解を受けておりますか……。砂を捨てよとおつしやつたことも今お話がございましたが、私はそういうことは存じませんことでありまして、大体前にはそういうものは見ておりませんが、後には焼けたものがたくさんございきて、いろいろな品物ダイヤの焼けたのもございますし、宝石の焼けたものもございます。そういう焼けたものまでも一緒にとつてございますから、その中に、あるいは集められたときに砂があつたのではないかと思つております。それで、その点は、どういうふうになつておりますかは、全然わからないのでございます。それで、砂のようなものに、かりにダイヤがまざつておりましても、現在でもこれはとるに足らないものでございます。粉になつて、あるいは砂などまざつておりますと、価値は幾らもないものであります。しかし、私の見ましたのは、まだとつてあると思います。私は、どういうふうに誤解を受けておりますか知りませんが、自分としては、何にも隠していないつもりでございます。どういうふうに申し上げるとおわかりになつていただけるかと思つて……。
  366. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 今お話をした、その砂を捨ていと言つたということがわからぬといたしますれば、そのときの大蔵省の係官はだれでありましたかということと、今あなたの言われるように、そういうものは砂であるか、焼けたときのごみであるか、どういうものであるかということを、鑑定というか、詳細にどういう方法によつて鑑定するのか知りませんが、そういうことをやつたことがあるかということをお尋ねしたいのです。その二点をおつしやつてください。
  367. 巽忠春

    ○巽証人 係の方は、そのときどきにかわつていらつしやいますので……。根本さんという方のお名前を知つております。それから、係長さんじやないと思いますが、我妻さんという万のお名前も知つております。あとはそんなに名前を伺つておりません。ただ大蔵省の方がいらつしやいまして、そこへ出張してやりましたので……。  それから、砂がどれだけまじつているかということを試験をいたしますには、工業の方がおやりになるのでないと、できませんし、おそらく日銀の中へはその道具を持ち込んで調べることが困難なのじやないか、持ち出さないと調べられないのではないかと私は思うのでありますが、この点は、私には装身具以外のことはあまりよくわかりません。ちよつと同じように見えましても、工業と装身具の方とは全然違うのでありまして、これは私には全然わからないのでございます。
  368. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 もう一つ。そういう試験をするにいたしましても、その砂が入つてつたものを試験したことがあるかどうか。あなたがそういうことを大蔵省の人に注意したことがあるかどうか。それは何にもしなかつたとして、その砂は捨てられたと思うか。—まだ今保存してあると思うと言われたが、もう一ぺんはつきりその点を伺つておきたい。
  369. 巽忠春

    ○巽証人 そういう試験をしてくださいということを言つたことはございません。それから、どういうお話でございますか、私にもちよつとわからないのでございますけれども、砂のようなものは—一応砂と記録はとつてこざますが、おそらくダイヤの粉でないかと思います。包みになりまして、その包みは、たしかまだあの中に封印されてちやんと入つておると思います。
  370. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 砂と書いてある……。
  371. 巽忠春

    ○巽証人 たしか砂と書いてあると思います。しかし、これはダイヤだと思います。
  372. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 わかりました。
  373. 内藤隆

  374. 中野四郎

    中野(四)委員 大体お話を聞いておると、買上げ当時の鑑定人としての巽さんは、日本人として、当時の熾烈なる戦争を勝ち抜こうというので、日の丸精神に基いておやりになつたということは想像できるのです。これは、だれしも日本人であれば、戦争に勝ち抜きたい、国民の愛国心の結晶であるから、でき得るだけ国家のために多く集めて、必勝態勢を確立したいという気持は持つてつたのです。ただ、まずいことがあるのです。戦争中、買上げ当時には日の丸精神であつたけれども、戦争が済んでしまつたら、もうけの方に考え方がみんな振りかわつたことなのです。つまり、戦争中に携わつた経験をうまく利用して、商売に有利な方に転換せしめようという傾向が見える。これが納得のいかぬ点なんです。私、後ほど順を追つてつて行きますが、お買上げになつて、日本銀行の地下室にあるダイヤモンドを、あなたらが再鑑定をなさいました。その再鑑定したものは、見受けますと、えらい値段が安いですね。あなたは商売人なのだから、先ほどのお話を聞いておつても、経歴を見ましても、相当深い経験者なのだから、今ダイヤモンドが一カラツト四万円や五万円で買えることがないことは御存じでしよう。一月、二月の業界新聞によれば、特級は、—あなた方のいうAAは一カラット三十五万円とか、あるいは一級が三十万円、二級が二十八万円、三級が二十二万円ないし悪いものでも二十万円。装飾用のダイヤの値段は、大体業者であろうと、しろうとであろうと、少しはもちろんもうけがありますから、しかたがないと思うのですけれども、日本銀行の地下室でつけたこの値段だけを見ますと、とても安いのですね。私が今つぶさに書類を見てみますと、大分大きいカラットのものもあるようですが、これを処分する場合に、どういう形になるか知りませんが、結局十六万一千カラットダイヤが国内へずつと出て参ります。そうしますと、これは業者にとつては大恐慌ですね。たとえば、自分の持つておるダイヤが値下りをするおそれもあります。一面においては、これを安く買つて大きな利益を得たいという考え方もわいて来る。そこで、私が納得ができぬのは、こういうような値段をつけた人の気持がわからぬのです。戦争中は確かに日の丸精神ではあつたけれども、戦後の今日になつては、何とかあの当時の品物によつて利益を得たいという考え方を持つのは、ひとり巽さんばかりでなく、これは人情です。商買人の人情です。それで、私は、どうもこれは、近ごろの商人と、それから当時鑑定に従事されたあなた方、ないし交易営団中央物資活用協会大蔵省の一部の役人、こういう人たちが、一つの共通した考え方の上に立つていろいろと操作をされているように思える節が多多あるのであります。中には、大蔵省の役人で、現職中に大いにあなた方に徳を施しておいて、やめたら一ぺん参議院議員にでも立候補しようかというやつが、あなた方に献金を求めるような過程に行くかもしれません。そんなことはおそらくないと思うが、そういうことも言えると思うのです。  そこで、私は、あなたに対する疑点を五、六点にわけて伺いたいと思いますが、第一番に、先ほどから委員長からも質問がありましたし、明禮君からもありましたが、あなたは、軍需省の任命を受けて営団の鑑定人となられ、そうして中央物資活用協会の買上品を鑑定したのでありますか、軍需省の任命のまま鑑定をなさいましたか。
  375. 巽忠春

    ○巽証人 お答え申し上げます。軍需省の命令で、松屋の交易営団へ出張するようにということで参りまして、あとは、先ほども申し上げましたように、そのお顔を存じませんので、よくわかりませんが、交易営団の係の人が直接に、こういうふうにしてください、ああいうふうにしてくださいと言われまして、それでいたしました。
  376. 中野四郎

    中野(四)委員 従つて、あなたの方では解任書はもらわずに、軍需省の辞令をもらつたままで桐生の方で鑑定を続けられたというようなわけですな。
  377. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  378. 中野四郎

    中野(四)委員 それは間違いございませんね。
  379. 巽忠春

    ○巽証人 はい。軍需省の辞令というものは、先ほど申し上げましたように、ずつとあとになりましてからいただきましたので、その当時は、ただ軍需省から言われましたが、これは嘱託でやつているのか何かわかりませんでした。先ほども申し上げましたように、自分で申し上げますのは何でございますが、自分は栃木県に疎開をしておりまして、それで、そこへ通いますにはもう非常な困難でございまして東武などはほとんど立ち通しでございました。帰る途中で西新井で空襲にあいまして、三時間も四時間もあそこで立往生したことがあります。どうかいたしますと、通勤いたしますのに全然通えなかつたこともございますし、また帰りに三時間、四時間とかかりまして、非常な困難でございました。先ほど多額の鑑定料をもらつているのではないかというお話がありましたけれども、これは、もしか企業の形でやりましたとすれば、たいへんな欠損でございます。決して、それだけのものをいただきまして、それで……。
  380. 中野四郎

    中野(四)委員 私の言つているのは、そうじやないのです。軍需省から、後ほどでもけつこうですが、辞令をもらわれましたね。それで交易営団の再鑑定はずつと続けておいでになつて、空襲がはげしくなつたので桐生へおでかけになりましたね。
  381. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございます。
  382. 中野四郎

    中野(四)委員 それで、桐生へおでかけになりましてからも、軍需省からは、お前は解任したぞという解任書はもらいませんね。引続いてそのままやつておりましたね。
  383. 巽忠春

    ○巽証人 そのままで終戦になつてしまいまして、何にもいただいておりません。
  384. 中野四郎

    中野(四)委員 それがわかればいいのです。  そこで、桐生で鑑定をしていらつしやつたのは、交易営団のものをおもにやつておいでになりましたか、中央物資活用協会で買い上げたものをおもにやつておられましたか、どちらでございましようか。
  385. 巽忠春

    ○巽証人 これは、別段書いてなかつたと思いますので、交易営団ですか、中物ですか、それはわかりませんが、中央物資活用協会のものが相当多かつたと思います。東京でやつておりますときは、ほとんど東京とか横浜というものが多うございましたが、あちらでやりましたときは、地方の方が非常に多かつたようでございますから……。
  386. 中野四郎

    中野(四)委員 もう一ぺん伺つておきたいのですが、先ほど桐生の営団の支所とおつしやつたのですが、桐生には営団の支所はないように思うが、金善というのは臨時に借りたのではありませんか。だれが一体桐生がいいということをきめたのですか。これがちよつと解しかねる。空襲は必ずしも桐生にないとは言えないが、比較的桐生が安全だということは言えますが、そういう発議はだれがしたのでしようか。
  387. 巽忠春

    ○巽証人 これは営団の方がおきめになつたと思います。
  388. 中野四郎

    中野(四)委員 営団のだれでしようか。
  389. 巽忠春

    ○巽証人 それは私にはわかりません。それで、私どもが参りましたときには、お借りになりましたかどうか存、じませんが、営団の支所がございまして、そのときの支所長は、金井さんとおつしやる方が支所長をしていらつしやいました。そのときに、あるいは三階をお使いになつていたかどうか存じませんが、われわれが参りましたときは、三階がきれいに片づいておりまして、営団の方は二階をお使いになつておりました。私どもは三階でいたしまして、参りましたときに、すでに営団はございました。ですから、これは、私にはあつたとしか思えないのであります。
  390. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで、続いて伺いますが、当時三階で鑑定していらつしやつたのですね。鑑定人は、あなたのほかに古川伊三郎、杉浦孝一、田村柳吉、中村謙一、竹内栄一、岡田有弘、文蔵騰、岡田智礼というような方々がおいでになりましたね。
  391. 巽忠春

    ○巽証人 おりました。
  392. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは当時宿屋にとまつておいでになつたはずですが、何という宿屋ですか。それから、先ほどあなたは、私は主任ではないとおつしやつたけれども、これは、主任であるとかないとか言わずに—宿帳を見ましたり、宿屋の支払い状態を見ましたり、当時の宿屋におられた状況はつぶさに調べておりますが、あなたが主任でなければ、主任格という地位においでになつたことは疑いない事実だと思う。何も主任になつたからどうというわけではありません。大体あなたが主任的の格でおいでになつたことは事実だと思うが、どうですか、当時の宿屋の状況は。
  393. 巽忠春

    ○巽証人 営団としましては、あるいはそういう目でごらんになつていたかもしれません。別段主任という名前をいただいておりませんでしたけれども、ややその傾向はあつたと思います。—私は存じませんが。それから旅館は、あの通りの少し駅へ寄りました、本町通りですか、そこの金手といいましたか、大きな旅館でございました。それにとまりまして、それから、空襲がはげしゆとございましたし、私は栃木におりましたので、とまつたときもございますし、帰つたときもございます。
  394. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで、このあなたのほかの鑑定人は、だれが推薦したのでしようか。他の八名の鑑定人はどういう過程において桐生の再鑑定室に勤めるということになりましたか。
  395. 巽忠春

    ○巽証人 だれがすすめましたか、私にはわかりませんけれども、その中で何人かの方は、もうすでに松屋のときにおいでになつておりました。それから、あとからふえましたのは、岡田智礼という人くらいのものです。その人は三越の窓口で鑑定しておりまして、それで、手があきましたものですから—これは、岡田有弘といつておりますが、私が先ほど信孝と申しましたのと同じ人でございまして、名前をかえておつたようでございますが、その方の弟でございまして、兄さんよりはその人の方が鑑定が完全なものでありますから、その人の手があいていたので、岡田智礼さんもということで、別段だれが推薦したということはありませんが、そういうふうになつてあとからその岡田の弟が来ました。
  396. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで、桐生での鑑定ですが、まああの空襲の最中ですから、無理はないと思いますが、どうも少し取扱いが乱暴のようでしたね。そうして、その鑑定人もしろうとのような人がいる。そして素行のたいへん悪い人がおつたようですが、あなたは主任格としてどういうふうに感じておられたか。全部りつぱな鑑定人としての資格を備え、素行もりつぱで、桐生疎開中の再鑑定も万遺憾なかつた、こういうふうに断定できますか。あなたの気持はどうですか。これは率直にお尋ねするのですから、あなたも御遠慮なくお話してくたさい。
  397. 巽忠春

    ○巽証人 自自では、たいへん一生懸命やつたつもりでございます。
  398. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたの場合はわかります。
  399. 巽忠春

    ○巽証人 その点は、金井さんという支所長さんにそのとき初めて会いましたが、その方に聞いていただきましてもよくわかると思いますが、自分は誠心誠意一生懸命にやつたつもりでございます。そしてほかの方もなかなか一生懸命おやりになりまして、自分としては、鑑定には支障はなかつたのではないかと思います。
  400. 中野四郎

    中野(四)委員 素行においてどうですか。
  401. 巽忠春

    ○巽証人 さようでございますな、素行においては、絶対に完全ということの言えない人もあつたようであります。
  402. 中野四郎

    中野(四)委員 いや、たいへん巽さんは正直でよろしいのです。あなたがまじめにやられたことはわかりますけれども、当時東京の鑑定室の再鑑定の方法というものは、軍需省から出した十階級にわけて買い入れるというても、実際上の科学的な鑑定をしていないのです。あなた方の勘ですね。目で見、それから適当にサイズをはかりあるいははかりにかけるというふうなやり方。しかしながら、それはあの当時として、しかたがないと思うのですが、空襲がはげしくなつて桐生へいよいよ疎開してからのダイヤ取扱いに非常に遺憾な点が多いのです。たとえて言えば、あなたは、なるほど今の場合そうおつしやるけれども、この九人の鑑定人の中には、私らの調査資料によりますれば、当時はなはだいかがわしい素行不良の人もあれば、あるいは鑑定人として妥当でない人がある、と申し上げると、あなたも思い当るでしようが、この八人の人はまつたくの経験者ばかりですか。どういう経歴の人ですか。あなたはもう長くつき合つておいでがから、わかると思いますが、どうですか。
  403. 巽忠春

    ○巽証人 経験のある方ばかりだと私は思うのであります。古川さんは……。
  404. 中野四郎

    中野(四)委員 それは商売人です。
  405. 巽忠春

    ○巽証人 それから中村さんというのも、これも相当営業をやつていた方です。それから杉浦さんと田村さん、杉浦さんは五十何年服部に勤めた方で、もちろん経験があります。田村さんも同じく服部に勤めた方で、これも経験があります。それから竹内栄一という人は、古川さんの店で長年たたき上げた人、それから岡田知礼、これは弟ですが、これも古川さの店でやつた方で、経験があります。それからあと岡田の兄さん、それから文蔵さん、岡田さんは私よく存じないのですけれども、文蔵さんは人形町に元ございました沢田という貴金属屋さんに、やはり長年お勤めになつていたと聞いております。それから文蔵さんという方は古川さんのお兄さんの店に長く勤められた方です。だから、どなたもこの営業を大なり小なりおやりになつた方で、しろうとの方はいらつしやらないと私は存じます。これは間違いない事実です。
  406. 中野四郎

    中野(四)委員 経験者ばかりが集まつてやりますと、はかり—御承知のように一カラット百分の一というはかりですね。あなたは大体はかりにかけられましたか。
  407. 巽忠春

    ○巽証人 かけております。
  408. 中野四郎

    中野(四)委員 どんなはかりですか。台ばかりですか、あるいは両方でやるはかりですか。
  409. 巽忠春

    ○巽証人 下げる小さなはかりです。
  410. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、百分の一ですね。そうすると、はかりの目は、一カラット点を打つて二三と出る場合は、二けた出ますね。百分の一だつたら二けた出る。しかしあとのこまかい微細なものは出ませんね。
  411. 巽忠春

    ○巽証人 それは出ません。
  412. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、これが一つの場合はそれでよろしいが、全国からたくさん買い上げて来ることになると、結局そのはかりの目に出なかつた出目というものが相当出て参りますね。紙でいえば、ちよつと切つたきれつぱし。—はかりの目方が出て来ないものがある。これは当然専門家としておわかりになると思う。それから、私も、専門家に来てもらつて意見を伺うからには、顧問のような方に聞いておるのですが、デパートからあなたの方へ持つて来るには辛い甘いがある。業者の場合には辛くとか、あるいはこういう場合には甘くということもある。そうすると、あなたは関係はないが、営団の方では、そのはかりをはかつていらつしやるうちに、あなた方専門家の間で、相当な出目が出るな、こういうことは考えられますね。
  413. 巽忠春

    ○巽証人 それは、その誤差でございますと、多少のものはあると思います。しかし、これは、必ずしも上とはきまつておりませんけれども、大体自分の扱いました範囲では上の方が多かつたように思います。
  414. 中野四郎

    中野(四)委員 出目の方がですか。
  415. 巽忠春

    ○巽証人 そうでございます。これは、どちらにしましても、つまり百分の一よりまだ下の単位でございますから、わかりませんが、幾らでもないと思いますが、多い場合の方が多かつたと思います。少い場合も多少はございました。
  416. 中野四郎

    中野(四)委員 これは、専門家としての御意見を聞いたのです。あなた方、勘で、一目見ればわかる。これだけたくさんのダイヤが集まつて来る。一応は、とにかく十六万カラット近く集まつておる。そうすると、数にしますと相当な数ですから、その中には買上げよりもむしろ出目が相当たくさん出なければならぬ。これを一体営団がどう処理したかということは、あなたに聞いては無理でしようが、専門家として、出るという御証言は正しいと思います。  そこで、重ねて伺いますが、日本銀行の三階へ米人が二人乗ましたね。これは博物館の館長と次長で、専門家として来ました。当時あなたは、久米君の推挙によつて鑑定人としてお立会いになつたわけですね。その中で、ドイツのダイヤ鑑定しておられますね。これは、久米君は鑑定をしたと言つておるのですが、どういうふうでしたか。
  417. 巽忠春

    ○巽証人 それは、こちらにいたドイツ人のつまり取上げた分でございますか。
  418. 中野四郎

    中野(四)委員 そうです。
  419. 巽忠春

    ○巽証人 それでございますと、こちらにおりましたドイツ人とか支那人とか、そういう方のもので戦争終了後に取上げられましたようなものがいろいろございまして、そういつたものは鑑定いたしました。
  420. 中野四郎

    中野(四)委員 なるほど。それはどのくらいのカラット数つたですか。それからもう一つ、ついでに伺いますが、我妻という人がほとんど毎日来ていましたね。これはほとんど毎日でしようね。この二つ。
  421. 巽忠春

    ○巽証人 これは、ドイツ人のものは何ほどあつたか、私にはちよつとわかりかねます。そのときにただ鑑定するようにという命令でやりましたので、わかりません。それから、我妻さんというのは、課長さんでなく、たしか事務の方だと思います。この人は毎日来ておつたと思います。私は毎日行つておりませんので、毎日いらつしやつたかどうか、わかりませんが、私の知つている範囲では、いつもいらつしやつたように思います。
  422. 中野四郎

    中野(四)委員 それから、もう一ぺん桐生の方に返つて聞くのですが、桐生では、営団の福田雑貨部長、あれは一ぺん来たはずですが、お会いになりましたかどうか。
  423. 巽忠春

    ○巽証人 私は、福田さんはおいでにならないと思いますが、ちよつと記憶がございません。
  424. 中野四郎

    中野(四)委員 それでは、営団の方の一番偉い責任者はだれが参りましたでしようか。
  425. 巽忠春

    ○巽証人 だれがお見えになりましたか、細さんという方がおいでになつたか、それもよく記憶はありません。もしか、いらつしやつたら、そんな方ではないかと思います。福田さんのような、営団でも相当な地位の方がいらつしやつたかどうか、私にも記憶がないのですけれども……。
  426. 中野四郎

    中野(四)委員 いや、よろしい。それから、さつき委員長からちよつと質問したのですが、空襲の場合の用意、もし桐生に空襲があつたらどうするかということは、考えておかなければならぬ。これはどういうふうにして処置しておられたでしようか。あそこで魔法びんなんかに入れたことはありますか。
  427. 巽忠春

    ○巽証人 空襲の場合は、先ほど申し上げましたように、ガラス張りの、上から見える、小さな箱を用意して参りまして、これは全然営団の方に提供してしまいました。ただ、やりましたものを全部これへ入れておいて、空襲になれば、ふたをするというようにしました。桐生では、ほとんど空襲とか警報とかいうことは幾らもございませんでした。たしか二、三回ございましたでしようか。あまり桐生ではございませんでした。それで、そういうこともあまりやりませんでした。ことに警報が出ましても、何となく、東京と違いまして、気分的に安心感がございまして、わずかのことですと、そのまま続行してしまつて片づけたときも、ほかの者はどうかしれませんが、自分ではございます。たくさん残つておるとやりませんが、わずかのことですと、逆もどりするよりと思つて、そのままやつたことがございます。桐生の方は東京と違いまして、その点では疎開の価値が十分にあつたと思います。それで、安心して仕事につけました。  それから、ただいま魔法びんというお話がございましたが、これは全然存じません。
  428. 中野四郎

    中野(四)委員 そうでしよう。桐生に空襲警報が鳴つても、非常にのんびりしておつたことは、あなたの方の鑑定人の素行調査をしてもよくわかる。空襲が熾烈なら、あんなばかなことはできないはずです。ダイヤモンドを扱つてつた人間が、ばか騒ぎをして飲んだりすることはできないはずです。よほどのんびりやつてつたに違いないと思います。  そこで、もう一つ伺いたいのですが、日本銀行で再調査をなさいましたが、再調査に行かれて、一番大きいのはどのくらいのがありましたか。
  429. 巽忠春

    ○巽証人 これは終戦後……。
  430. 中野四郎

    中野(四)委員 そうです。この間終つたところでしよう。大蔵省から頼まれて再調査をしたその結果……。
  431. 巽忠春

    ○巽証人 米軍の管轄のときも含めまして……。
  432. 中野四郎

    中野(四)委員 どちらでもよろしうございます。
  433. 巽忠春

    ○巽証人 それでしたら、五十二カラツトと三十三カラットと、二箇大きいのがございます。これは、何ですか、返還されたと聞いております。
  434. 中野四郎

    中野(四)委員 五十二カラツトというと、どのくらいの大きさがありますか。たとえば、今あなたがつけていらつしやる記章ぐらいですか。
  435. 巽忠春

    ○巽証人 こんなにはございません。五十二カラツトというと、この中の赤いところぐらいでございます。しかし、あまりまるいものではございません。
  436. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで、今度日本銀行の地下室で再調査をなさつた中で、一番大きいのはどのくらいでした。
  437. 巽忠春

    ○巽証人 これは、私は隔日に参りましたので、あいにく大きなのを見ませんでした。毎回行つたわけではないのでございます。
  438. 中野四郎

    中野(四)委員 けれども、商売で、大体わかるでしよう。
  439. 巽忠春

    ○巽証人 それで、聞いておりますのは、この前のマレーの事件のときに私ども見ましたが、十八カラット四十幾つという石が入つてつたそうでございます。それが一番大きいのでございます。
  440. 中野四郎

    中野(四)委員 十八カラット四十四というのは、CBという格付をしてございますね。単価九万円ですね。
  441. 巽忠春

    ○巽証人 はい。
  442. 中野四郎

    中野(四)委員 百六十五万九千六百円という値段がついております。それから、小さいのは、十カラット以上のものは数は大分ありますね。しかしながら、単価九万円とか八万円というような、最高十万円というような価格は、あなた方が相談してつけたものだと思うのですが、どこから割出してつけました。
  443. 巽忠春

    ○巽証人 これは市場価格をもつて考えまして、相談してつけたものでございます。私は、今度の格付には立会つておりませんが、大体それは適切な価格だと思います。
  444. 中野四郎

    中野(四)委員 適切な価格だと思いますか。こういうような値段であなたは売りますか。
  445. 巽忠春

    ○巽証人 そういうものは、私どもの手にとうていおえないものでございますし、それに、今の日本の市場でございますと、非常に市場が小さいのでございます。外国は、大きいものは割合高いのでございますが、日本は、あまり大きいのはまだ売れないのでございまして、その価格も、あれは相当に色けがございますから、程度から行きますと、それは大体妥当な値段ではないかと思います。
  446. 中野四郎

    中野(四)委員 これを見ますと、大分Aの特級クラスがありますね。このAAというようなのが相当なカラット数がありますが、ABというのもありますね。一体あなたは格付に参画しないのですか。格付あるいは評価のときに、あなたは立会わなかつたのですか。
  447. 巽忠春

    ○巽証人 立会つております。
  448. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると評価をするのに相談にあずかつておりますね。
  449. 巽忠春

    ○巽証人 あずかつております。
  450. 中野四郎

    中野(四)委員 どこを標準にこの評価をおつけになりました。
  451. 巽忠春

    ○巽証人 それは、いろいろと、久米さんなど外国の記録をお持ちでございます。それからまた、日本での値段などをいろいろ参酌いたしまして、格付をしたつもりでございます。
  452. 中野四郎

    中野(四)委員 買う場合はいいのです。安く買つた方が得ですから。あなたの方が売る場合に、こんな値段で売られますか。あなたの方でこういう扱いができるかということを、専門家としてのあなたに私は聞いておる。値をつけるからには、ロンドン相場とかニューヨーク相場、あるいは日本の相場を勘案いたしまして、これが妥当だ、こういうのがあたりまえです。これは後ほど伺いますが、伝えられるところによると、第三国人が目をつけて、これをニューヨークヘ持つて行いうとか、あるいはフランスに持つて行こうというので、非常に安く値をつけたというのだが、あなたが妥当だと言う根拠は、どこにありますか。ロンドン相場、ニューヨーク相場、日本の相場を勘案して、もしあなたの家に特級を買いに行つたら、いやおうなしに三十五万はとります。四万や五万で売りつこはないでしよう。そうすると、現段階として考えて適正な値段をつけなければならぬが、何を根拠にしてこういう価格をつけたかということを私は聞いておるのです。久米君だけではない。あなたも参画しておる。
  453. 巽忠春

    ○巽証人 特級などは、四万とか五万とかついておりません。二十何万、一番いいのは三十何万というのがございます。AAのニカラツト………。
  454. 中野四郎

    中野(四)委員 それはいいのです。私の言うのは、平均値が四万円、五万円になつておる。全部で六十一億円という値をつけておるのです。どう考えても、私らには納得が行かない。ここに資料が全部とつてありますが、あなたのつけた値段が適正かと言つておる。間違いないかと言つておる。何もダイヤ商はあなたのところだけじやないのだから、それ以外の—あなた方のつくつた東美会とか、いろいろ組合員ばかりじやない。場合によれば相当の専門家もおります。外国のこともわかるし、日本のこともわかる。そういうことは全部こちらで調査してあります。だから、あなたのつけた値段が正当だという根拠はどこにあるのか、あなたが正しいと考えた評価は何を標準にしてやられたかということを聞いておるのです。
  455. 巽忠春

    ○巽証人 では申し上げますが、その中には、工業の価格に近いような悪いものが非常に多いのです。それが、平均いたしますとそういう価格になるかもしれませんが、一般の価格でも、一万円や一万五千円でも買つていただけないようなものもたくさんございまして、もちろん三千円とか五千円とか一万円とかいう値段に評価したものもたくさんございます。その方が多いくらいです。かりにそういうものが出て参りましても、おそらく私どもでもあまり扱いたくはないくらいの品物でございまして、値段の格づけということは、もちろん一個とか二個とかを扱う値段よりは幾分安くなつておりますけれども、しかし、これは決して不当に安いとは思わないのでございます。これは相当正確に見たつもりでございます。
  456. 中野四郎

    中野(四)委員 あなた方は、私は先ほど言うたのですが、取扱いをして買い上げておるときには、日の丸精神でおいでになつた従つて、ごまかそうとすれば幾らでもごまかせるけれども、当時の日本人としては、そんなことはできないということもわかるのです。終戦後の気持は、まつたくかわつて、おちついているのです。今度は、長年の自分関係した経験を生かして、自分の財産を維持し、あるいは多くしたいというのが人情だということは、私も最初から申し上げておる。従つて、あなた方の中で、価格はなるべく低くしようじやないかという、打合せ言つては悪いが、そういう打合せが共通の意思としてあつたと、この結果を見れば断ぜざるを得ないと思います。これが適正の価格ならば、何か根拠がなければならぬでしよう。久米君がかりに外国の例を引いて来れば、それをあなたは、いやそれについてはこうだとか、あるいはほかの方が、これについてはこうだというので値段をきめるのですからね。第一番に、この品物がどういうふうに処理されると思いますか。これを一ぺんに十六万一千カラットをずつと日本政府が払い出すか、あるいはどこが払い出すか知らぬが、どんなにな形つて流れて来ると思いますか。あなたは、商人として、流れて来たらどういうふうに一体取扱うべきものだとお考えになりましようか。
  457. 巽忠春

    ○巽証人 値段は、先ほど申し上げましたように、決して故意に安くということは考えておりません、それから、これが国内へ全部一どきに出されるというようなことが、もしか、うわさにでも出ますと、われわれ業者は自滅するのではないかと思います。そういうことになりますと、あんなにたくさん出れば、今あわてて買わなくても、安く買える、—お客さんが皆さんそういうお考えを持たれますと、売れなくなつてしまうわけで、われわれはむしろ自滅してしまいますので、先ほどお話がございましたように、これを安く評価して、幾らでも安く売られるのでありますならば、われわれ自分で首を締めているようなものだと思います。それから同時に、値段という点におきましては、これはとうてい国内でこれだけのものが敗戦後の今日ではさばき切れないと思います。今も申し上げましたように、こういうものが、たといわずかずつでも出て参りますと、それだけでも気分的に一せひ必要な、これがないと暮して行くことができないという品物でないものでございますし、お買いになる方は、あつてもなくてもいいものなんでございますから、それで、お買いにならないと思います。そうしますと、それが出て来るだけでも、われわれ業者は自滅するのでございまして、そうして同時に、先ほど、それによつてもうけようというつもりでやつたのではないかというお話がございましたけれども、とうていわれわれの小さな力で、それをどんなことをしても引受けることはできません。ただ、われわれのこいねがつておりますことは、これをでき得るならば外国の方へ出していただきたい。それについて、外国に、ただ値段がついているからといつて、それでしろうとの方がお売りになつて、めちやめちやに安くとられてしまうと、国家の損害であるし、それからまた、これを調節せずに無制限に出してしまうと、いかに各国が金があつたとしても、適当な価格にやられてしまいます。それで、これは相なるべくは国内に品物がなくなつてもらうことを私どもは希望いたしておりまして、これが国内に出ますということは、われわれとしてはむしろ迷惑でございまして、先ほど仰せになりましたような気持は、私には全然ないのでございます。そして、こういうものは需要供給の関係で——国内に生産するものでないものでございます。今国内に残つておるものをやつておるので、多少の維持はしておりますけれども、これが一ときに出ますと—各自営業上これを持たないわけに行かないので、多少持つておる。それが下つてしまう。店頭にあるのも売れなくなつてしまいますと、たとい半年、一年先によくなりましても、その間維持ができませんので、業者はみな自滅してしまう。そんなふうでございますから、願わくば、できるだけ外国に出していただきたい。その際に、ただ外国人に踏み倒されないようにという考えを持つておりました。  それから、先ほどから、適正についておるかというお話でございましたけれども、これは、何分、今度のにしましても、わずかの時日でございますし、それから、あれだけたくさんのものを、一つ一つ全部、自分が営業しているほど熱心に見るわけに行きませんし、それから天候の悪いときもございますし、それから、ことに申されましたことは、日本銀行に部屋を借り入れておる予定も一月一ぱいしかないから、できるだけ早く鑑定をしてくれ、こういうわけでございます。それから、鑑定の方も、全員が毎回そろつて行くわけではありません。仕事のあいまに参りますので、多少そのときの調子で高いのも安いのもございまして、これが絶対に正確であるかということ言われましても、われわれとしまして、そんなに確言はできないのでございます。大体において自分たちは誠心誠意確実に踏んだつもりでございます。そうして、これはでき得る限り外国へ出していただく。しかし、中にどうしても、大半と申し上げてよろしいと思いますが、手入れをいたしませんと、そのままでは、まつたくのところ古物でございますから、いわゆる中古の洋服でも、クリーニングしないと、できませんように、あれも、やはり専門の工場ができまして、相当手入れをいたしませんと、なかなか踏むのは困難ではないかと思います。そういうようなことで、私どもの考えは、決して皆さん方がお考えになつているように、あれでもうけようというような考えは全然ございません。ただ自分の営業を擁護したい—これが一どきに出て参りますのならば、むしろ私どもは、その価格を高くつけて、市場に出ても売れないような値段ですと、かえつて安心なのですが、それですと、やはり不正確になる。また処分をいたしますとぎに、個人ではありませんから、これが八万円とついているのを五万円で売つてしまうわけに行かないのです。ですから、でき得る限り外国に出しますときのことも考慮いたしまして、自分としましては、もうそういうようなお疑いをもつて見られますことはまことに残念なのであります。正確に見たつもりでございます。
  458. 中野四郎

    中野(四)委員 それから、日本銀行の地下室で宝石—当時買い上げたものや、恤兵品がありますね。こういう宝石は、あなたが再調査のときにごらんになつたはずですが、何個くらいですか。記憶にあるだけでけつこうですから、言つてもらいたい。
  459. 巽忠春

    ○巽証人 あまりにたくさんはありませんでした。記憶はないのでございますが、あまりこれには関心を持つておりませんでしたし、そうでございますな、個数ですと、あのエメラルドの小さなのもかなりございましたし、これはどう申し上げてよろしゆうございますか、いずれにしても、全体から見て、ほんの微々たるものだつたと思います。
  460. 中野四郎

    中野(四)委員 およそどのくらいということがおわかりだろうと思うが、わからなければいいです。ごらんになつたことはごらんになつたのですね。
  461. 巽忠春

    ○巽証人 拝見いたしました。
  462. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで、あなたにひとつ聞きたいのだが、今あなたの気持は、なるほど述べられたように感じますが、人は主観によつて考え方が違いますね。あなたの今おつしやつたように、なるほど、こういうダイヤが一ぺんに出てはお互いの財産を脅かすから困るという気持はわかります。それで、外国にやればなおいいことはわかります。そこで、私は疑いが起つて来る。今度東美連合会というのができましたね。あなたはその役員をしておられる。しかも鑑定人であつた方は大体役員です。古川君にしても、これは顧問ですが、鑑定人です。どういう意味でこの東美連合会というものをつくりましたか。
  463. 巽忠春

    ○巽証人 これは長尾さんという人がおつくりになつたのであります。これは、お届けをしてやつております美術倶楽部の会がございまして、この倶楽部の経営がなかなか立ちにくいものでございますので、それで、あの屋上へ私どもの専門の会場をつくりませんと、—いつも使つておりますのは三階の広間を使つておる。ときどきこれが、呉服屋さんの陳列会ですとか、あるいはメリヤス屋さんの陳列会ですとか、いろいろな催しがございまして、その都度、まん中にありますと、全館が使えないのでございます。それで、ときどき狭い部屋へ無理に入れられたりすることがございます。それですと、色がわからないものですから、よく営業ができません。それで屋上へ建物を建てたい。それについても、美術倶楽部の方にはそれほどお金がないから、あなたたちの専門のものをこしらえてあげるから、幾らか寄付をしろ、こういうわけで、われわれが株主になつているわけであります。それで、それを集めますにしましても、なかなか集まりませんので、毎月の会費を幾らかずつよけいにしまして、その分でこしらえまして、これを入れました。そうして寄付をいたしまして建物の補助にいたしました。それから、中で、やはり光線のぐあいや何かで、壁が茶色でぐあいが悪いために、白い幕を張りますとか、台がこわれて来たから台をつくり直すというようないろいろな場合に、これは各会個々に相談しているとしようがないから、これをやろうじやないかということで、長尾さんがおつくりになりました。それで、会の幹事がそれぞれ役員になりまして、—役員と申しますか、連絡係と申しますか、結局役員という名称でやられまして、私もその役員としてお願いしました。ですから、別段何も他意はございません。
  464. 中野四郎

    中野(四)委員 それはそうでしよう。そういう筋合いでなければできぬわけです。しかし、ここにものを関連させて考えますと、十六万一千カラットダイヤが、一ぺんに払い下げられるか、どうなるか、わかりませんよ。とにかく、日本銀行の地下室に現在しまつてあれば、あなたの方の資産は維持できるのです。場合によつては、これをどういうふうに処分するかわかりませんね。十六万カラット一ぺんに出さないで、あるいは五千カラット出すかもしれない。一万カラット出すかもしれません。こういう場合も想像されますね。それから、今まで縦横の連絡が十分でなかつたものが、こういう東美連合会というものをつくつて、清和会とか貴石会とか、いろいろの会が集まつて一つの連合会をつくる。その場合、ものは考えようですが、将来日本銀行の地下室にあるダイヤモンドが町に流れて来る、それの受入れということも考えられる。それは、あなたは御存じないとおつしやるが、考えようによつては考えられる。一ぺんではなく、どういうふうに処置するかわからないが、この受入れ態勢もできるはずなんです。東美連合会でお互いに出し合えばよい。そういう組織をつくつておけばどうにでもなる。従つて、将来買い受ける立場にあるあなた方が値段の評価に当つて、適正であつたかどうかということを管財局長にも聞いておるのです。ですから、これはどうもまずかつたということを聞いておるのです。あなた方がこういうものの幹部にならなければよかつたのですが、当時の鑑定に関連しておられる方々がこういう会を率先してつくるということは、あなたは、縦横の連絡を緊密にし、宝石会の特別な部屋を一つつくるという理由を言われる。それはわかります。しかしながら、考えようによつてはふしぎにも思える。この問題が起つたのはいつか、あなたは御存じですね。このダイヤモンド事件が、御承知のように、昨年の七月、八月議会で問題になりました。そして、あなた方の方で連合会をつくろうじやないかという話をしたのは、業者の言によれば、昨年の暮れではありませんか。それで、一月十三日、東京の美術倶楽部に、夜五時からあなた方の総会を開いて、会長、顧問をきめられたはずではありませんか。そうしますと、どうもここの話が、ダイヤモンドの問題が起つて動いて来たので、これもやはり、そのあおりで、あなた方が早期受入れ態勢としてこの組合をつくつたともとれる。しかも、その組合の中心人物は何人なりやといえば、古川伊三郎君初め、あなた方も全部この中に入つておる。久米君は表面に出ておりません。出ておりませんが、あなた方は全部幹部としてこの中に入つておられる。ここに一点疑惑が生じて来るのです。それから、先ほどあなたは、これは外国にやつてよろしい、日本ではとうていこれだけのものを買い入れるだけの力がないとおつしやる。だからこそ、この組合で、フランス人とか中国人とかに対して、いろいろ一部の者が—あなたは知らぬかもしれないが、一部の大幹部の連中が第三国人との間に関連を持つて、この受入れ態勢についておるというふうに伝えられるのです。これは憶測であるかもしれません。しかし、全国の業者は、それをよく知りませんが、大幹部の連中がそれを知つておるというのが疑惑の生ずる第二の点であります。そこで私は、東美連合会というものがどうしてここに生れて来たかということを聞いておるわけです。  最後に、私はあなたにお聞きしておきたいのですが、戦争中からダイヤというものは輸入禁止になりましたね。そうして、当時軍需省が、戦争に勝ち抜くためにどうしても必要だといつて、一般国民の愛国心に訴えた。法律ではありません。任意供出ではあるが、その裏面には、県庁を督励し、警察、憲兵を督励し、隣組あるいは町会、婦人会というようなもので宣伝啓蒙をやりまして、あなたも御承知でありましようが、一部白金等は、一時持つておることを許さぬというて、おどかして買い上げてもよいということが、軍需次官命令に書いてある。このような状態下において取扱つたダイヤですから、日本人ほんとうの愛国心があるならば、ことごとく国家に吸収されておらなければならないわけですね。当時二万カラットと考えたものが、九倍の十六、七万カラット来たのですから、そうしますと、相当日本の国内のダイヤは吸収されておるわけでありまして、今日日本に流れておるダイヤは、そのときに愛国心が足らなくてダイヤを供出しなかつたものか、あるいはその後不正密輸入のルートを経て入つたものか、または交易営団が買い上げる。中央物資活用協会等が買い上げる途中において、こういうものが横流れをして流れておるものか、お宅の店にあるものがそうだと言うのではないのですが、たとえばこの三つのルート以外には、日本の国内に今日ダイヤモンドが散乱しておるわけはないと思いますが、そのほかにどつかからダイヤが入るようなルートがありますか。
  465. 巽忠春

    ○巽証人 東美連合会のことは、私から申し上げましても、たいへんな誤解を受けておると思います。決してそういう目的でなくて、ただ単にそれだけでいたしましたので、もしかそれでしたら、わざわざその時期を選んでやるようなことはしなかつたのではないかと思います。
  466. 中野四郎

    中野(四)委員 しかし、これは時期を逸してはできないことなんです。あなたの方の主観と違うことです。
  467. 巽忠春

    ○巽証人 これは、ごらんになる方の観点によつて違うのであります。われわれは、そういうことではございませず、またこういうことでございましたら、私らは決して同調するようなことはないので、これはぜひ誤解を解いていただきたいと思います。私は、そういう考えは全然ございません。
  468. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたの説明はそれでいいのであります。
  469. 巽忠春

    ○巽証人 それから、今お話のありましたのは、自分としてもまことに遺憾でございますが、戦争中に全部お出しになつておると思いません。これは相当お残しになつたものと思つております。それで、その当時は、やはり富豪の連中は、幾分はお出しになつたけれども、全部のものはお出しにならない。それで、おさしつかえないものはお出しになりましたが、終戦後は、財産税とかいろいろな問題のために、万やむを得ないために出すというようなわけで、大なり小なりあると思います。その当時でも、むしろ逆に買つた人があつたのではないかと思うほどに私は考えております。大体最初に二万カラットくらいという計画をお立てになりましたかどうか、これは私存じませんが、なかなかそんなわずかなものではありませんし、これが入りましたのは、私ども生れるより以前からのものでございます。これをいかに督励いたしましても、二月や三月では集め切れないのであります。そうして、地方の方は中央物資の方で大分お集めになりましたけれども、中心部の方は、三箇月やりまして、そのあと一箇月の延長で、しまいになつてしまいました。それから、中には疎開していて出せなかつた方もありましようし、また承知して出さなかつた方も相当あると思います。私は、これはそういうふうに信じております。
  470. 中野四郎

    中野(四)委員 それは、国民の愛国心の欠如が戦争に負けた原因の一つでもあるかもしれない。陸海軍が相剋摩擦を起しておつたことが戦争に負けた原因であつたかもしれない。しかしながら、そのくらいなことでは、今日日本に流れておるダイヤの数と、とうていマッチしません。ちようど久米君も同じことを言つておる。これは、業者同士でいろいろ、お話もお聞きになつたでしようが、そういう場合もなるほどうなずけるのです。しかしながら、それだけでは、今日流れておるダイヤの数は納得できぬものがあるのです。だから、私は、そのほかのルートでどつか入つて来る、すなわち密輸入によるものか、あるいは営団、中央物資活用協会で買い上げた当時のものが流れて来るおそれがないか、—これは、こちらにある程度までそれぞれの証拠があつて言つておるのですが、あなたに言うべき性質のものではないから申し上げないのだが、一体そういうようなおそれはないのか。ほかにどつかから入つて来るルートがあるのかどいうことを聞いておるのです。
  471. 巽忠春

    ○巽証人 そのほかには何もありません。
  472. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、日本中に流れておるダイヤは、たとえば新橋から日本橋の果てまである貴金属商、こういうようなところの店頭は、まばゆいばかり近ごろ飾つておる。あるいは、借りたもの、預かつたものが飾つてあるかもしれません。営業上店に飾つておかなければ客を引きつけることができない。これはわかつております。そういうようなものにいたしましても、全国の貴金属商の表にあるもの、また裏にしまわれておりますものを見ますと—なかなか大量な数なんです。これは、今申し上げた三つの不正ルート、愛国心の欠如にしても不正ルートです。こういう不正ルートによつて今日日本中に流れておると考えなければならぬわけです。そこで、私がふしぎに思いますのは、お宅なんかでもそうだが、今までの証人が店先に飾つていらつしやるダイヤについて見ますと、これは業者仲間で大体取引したものです。先ほどあなたがおつしやつたように、高島屋とかあるいは松屋とかいう業者のくろうと取引がありましよう。こういう場合においては、貸した借りたでけつこうです。これをちよつとお前貸してくれ、それじやこの次取引しよう、仕切ろう、こういうことなら、それで受取りも何もいらないのです。しかしながら、しろうとの場合があります。お客様で、あなたのところのお得意さんがあります。たとえば、神田何々町何番地なにがしという人が、年がら年中あなたのところへ来て取引しておる。それをあなたのところで預かります。そして、それをあなたのところの店頭に飾る。それで売買します。こういう場合には、あなたのところでは、一切正確な帳面をおつけになつておりますか。これは、全部帳面をつければ、割合に値がかさばつて来る、ばかな金がかさばつて、税金にも関係して来るということはわかるのですが、全一部あなたの方で帳面につけておいでになりますか。
  473. 巽忠春

    ○巽証人 私の方では、そういう方のものは預かつておりませんので、そういうことは全然ございません。
  474. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、業者仲間だけの取引で、実際上におけるしろうと取引をしない、こういうことですね。
  475. 巽忠春

    ○巽証人 さようであります。
  476. 中野四郎

    中野(四)委員 業者仲間で預かつておるものをお売りになりますね。こういうものは、幾ら売れたかわかりませんね。業者の中で取引しておりますくろうとの古着屋でもそうですが、たとえば、市で、これをあなたに売ろう、それじやもらおうといつて、これをまたほかの市で売る。そうすると、売買ですから、利益に差異が出る。しかしながら、これは帳面につけなくたつてある程度まではぶけます。こういうことが考えられるのですが、今ここで言うては無理かもしれませんが、私はどうも納得ができないのだが、お宅ではどういう扱いをしておりますか。金高の点においても相当大きな金高ですね。しかし、それを一々つけて行けば、どういう結果になりますか、これは想像がつきます。そこで、幾らかの考慮はわかりますけれども、あなたの方ではどういう取扱いをしておりますか。
  477. 巽忠春

    ○巽証人 大体正確につけておるつもりでございますが、やはり抜けるものもたまにはございます。
  478. 中野四郎

    中野(四)委員 たまにはある……。実は、先ほども申し上げたように、私どもの方には専門家が来ておるのです。あなたがここでお話になつていらつしやつても、専門家がついておりまして、大体あなたの方の取扱いぶりも調べておるのです。それから、当該者がせつかくおつくりになりましても、中から情報をこちらに漏らしてくれる人もあるのです。従つて、あなたの方でどういう計画でおやりになつたかということも、およそ想像がつきます。同時に、今日国内に流れておるダイヤ数量も調べておるのです。現在どういう扱いを業者がしておるかということも、私ども納得しておるのですが、ただ、あなたがきようおいでになりましたから、お伺いしたのでありますが、これ以上追究することは悪いことですから、お尋ねいたしません。ただ、問題は、このダイヤモンドの処理にあたつて甘く考えておられた—甘い考え方があるなら、改めてもらわなければならぬ。なぜかならば、国家が必要として国民に訴えて供出を求めたのであつて、国民は中央物資交易営団や業者を太らせるために供出したのじやないのです。あくまでも、戦争に勝ち抜いて、暮しよい時代をつくりたい、国家のためにと思つて出したのです。それを、戦後における一部の人々の甘い考え方から、こういうものによつて私腹を肥やそうという人間があるならば、国民の愛国心を蹂躪するもはなはだしいと思うのです。私は、あるとは言いませんが、そういうお考えが片鱗だもありましたら、この機会にお改めいただきたいということをつけ加えて、私の質問を終ります。
  479. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、巽証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間ありがとうございました。  次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十五分散会